壊れない歌の名は
●メーデー
世界が何故美しいのかと問う声があったのだとして、それに如何程の意味があっただろうか。
キミはなんと答えるだろう。
世界の煌めきは、人の涙で彩られているからだと答えるキミがいて。
生まれる傷が練磨を経て輝きを齎すからだと答えるキミがいて。
苦しみを得るからこそ、得難きものを得て掲げるのだと言うキミがいて。
数多在るいずれのキミもそれが正しくもあり、過ちであることを知っている。
平和を求めるから戦いがある。
戦いがあるから平和を求める。
不可逆ではない0と1との境目を生きる生命は、いつだって残酷なまでに美しい世界を満たしていく。
例え、それが何の意味のないことであると言及されるのだとしても――。
●ゾルダートグラード
獣人戦線。
それがこの世界の名である。
世界大戦が100年以上続く地球。
そして、獣人たちが住まい、異世界から現れたオブリビオンの『超大国』を相手に抵抗を続ける世界。
一人の赤髪の女性がいた。
美しい顔と脇腹に走る裂傷は痛々しく、けれど、その美しさを際立たせるようでもあった。サーコートを肩に引っ掛け軍帽を指先で跳ね上げると、その金の瞳に映る巨大モニターの向こう側から彼女だけに届く声が走る。
「それで? 私を雇うための金を、私自身で守れというのか?」
それはあまりにも無精がすぎるとオブリビオン『サロメサージェント』は首を傾げる。
オブリビオンの『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』。
ドイツと、その周辺ヨーロッパを支配する謎めいた機械帝国である。
各地に建造された鋼鉄要塞『グラード』は言うまでもなく。そして、改造獣人『|機械兵士《ゾルダート》』、二足歩行先頭車両『キャバリア』を量産し、圧倒的な軍事力で侵略を続ける『超大国』だ。
「この私にまさか宝物庫の番人をしろという者が居るとは思いもしなかったな。そして、このような木偶を私に押し付けて使えという。試作とは言え、オーバーフレームとアンダーフレームの拡張性を捨てた機体など……」
まるで己の趣味ではないというように『サロメサージェント』は頭を振る。
「私にとって必要なのは金だ。そのために戦っている。『サロメ』……『平和』と名乗るのは皮肉ではあるが、勝利で終われば『平和』などいくらでも捏造することができる」
ならば、というように『サロメサージェント』は己を雇う『超大国』、『ゾルダートグラード』のモニターに向かって指を立てる。
「まずはこの拠点にある全ての物資と金を私に払ってもらおうか。それが私という存在を雇う対価。高いとは言わせない。この私、『ノイン』を雇うのだからな――」
●歌
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。新たに見つかったと言われる新世界……『獣人戦線』のことは既に皆さんは聞き及んでおられるかと思います」
ナイアルテはいつものように微笑みながら会釈をする。
彼女の言葉に猟兵たちは頷くだろう。そう、『はじまりの猟兵』が存在したと言われる6つのオブリビオン『超大国』の侵略にさらされている世界。
それが『獣人戦線』である。
獣人達しか存在しない世界であるが、彼等は今も世界を侵略しようとする『超大国』に抵抗を続けているのだ。
その一つ、ドイツと周辺ヨーロッパを支配する機械帝国『ゾルダートグラード』が隠したとされる財宝庫の存在が予知されたのだ。
「はい……ですが、その財宝庫を奪うことが出来たのならば『ゾルダートグラード』の財力を削り取ることは勿論、各地で戦う獣人達を勇気づけることも出来るはずです」
だが、問題がある。
その財宝庫には当然警備が存在している。
簡易的な鋼鉄要塞である財宝庫には侵入者を排除する重火器が存在し、監視カメラは勿論、赤外線センサーが仕掛けられている。
さらに悪いことには『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』が無数に配備されており、一筋縄では行かないことが示唆されている。
それ以上に猟兵たちの道行きを阻むものがある。
「オブリビオン……『超大国』『ゾルダートグラード』に雇われた傭兵オブリビオン『サロメサージェント』です。彼女は財宝を守る最後の罠にして、最高の敵戦力。強力なオブリビオンであることは言うまでもありません」
ナイアルテの瞳が揺れている。
それほどまでに予知で見た『サロメサージェント』の力は強大なのだろう。
しかし、猟兵たちがやらねばならないことは変わりない。
世界各地で懸命に抵抗を続ける獣人たちのためにも、『ゾルダートグラード』の財宝を奪い取ったという報は彼等の士気を大いに上げることだろう。
「まずは敵財宝庫たる簡易型鋼鉄要塞に侵入し、トラップを躱し最奥へと向かいます。そして、警備の『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を打倒し、最後の番人である『サロメサージェント』を打ち倒すこと」
これが猟兵たちに課せられた使命である。
ナイアルテは再び頭を下げ猟兵たちを見送る。
戦いばかりの獣人戦線。
しかし、嘆いている暇はない。
いつだって、嘆く暇に失われていくのが生命なのだ。故に猟兵たちは躊躇うことを捨てなければならない。
己の生命を守ることも。
誰かの生命を守ることも。
等しく戦うことであるのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
新たな世界『獣人戦線』において『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』との戦いを繰り広げるシナリオになります。
今回は簡易型鋼鉄要塞に侵入し、最奥に秘された財宝庫の財宝を奪い取り、その一報を以て世界各地で抵抗を続ける獣人たちを勇気づけることを目的としています。
●第一章
冒険です。
財宝庫として予知された簡易型鋼鉄要塞の中は入り組んでおり、まるで宇宙船の内部のように入り組んでいます。
侵入者用のトラップや重火器、赤外線センサーなどが多く存在しています。
探索を進めて、財宝庫が存在する区画を目指しましょう。
●第二章
集団戦です。
簡易型鋼鉄要塞の内部を進む皆さんの前に突如としてオブリビオン『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の群れが迫ってきます。
鋼鉄要塞の内部は体高5m級の戦術兵器であるキャバリアでも問題なく行動できる通路の広さなので、敵も皆さんも行動に支障はでないでしょう。
これを撃破して、財宝庫へと迫りましょう。
●第三章
ボス戦です。
ついに最奥である財宝庫の前までたどり着くことができましたが、皆さんのまえに立ち塞がる一体のオブリビオンが道を阻みます。
オブリビオン『サロメサージェント』は恐ろしく強力な存在です。
彼女の存在があるということは間違いなく背後には財宝庫が存在しているということにもなるでしょう。
彼女を打倒し、お宝を奪取しましょう。
それでは、『獣人戦線』において『超大国』の侵略に抗う獣人たちと共に戦い抜く、皆さんの活躍を彩る物語の一片なれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『敵拠点侵入』
|
POW : 行く手を阻むもの全てを壊し、倒しながら進む。
SPD : 見つかる前に素早く目的地まで駆け抜ける。
WIZ : 機械類を無効化あるいは乗っ取り、こちらの味方につける。
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
簡易型鋼鉄要塞は、簡易型とは言え巨大な宇宙船を思わせるような構造物であった。
内部で『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を運用するのだから当然と言えば当然である。体高5mの戦術兵器が動き回っても問題ないほどの天上の高さと道幅。
しかし、それは侵入の容易さを示してはいなかった。
赤い赤外線センサーの明滅。
首をふるようにせわしなく動く監視カメラ。
重火器の銃口はいつでも侵入者を蜂の巣にできるようにギラついている。
そんな中を猟兵たちは如何にしてか進まねばならない。
全ては、この簡易型鋼鉄要塞の最奥に秘されている財宝を奪うためである。言うまでもなく財宝は『ゾルダートグラード』の財源の一つ。
これに打撃を与えることができたのならば、『ゾルダートグラード』も痛手を負うであろうし、また各地で戦う獣人たちもまた勇気づけられることだろう。
そうなれば、侵略に対する抵抗の機運が高まり、オブリビオンに対してい優位に戦うことができるだろう。
そのために猟兵達は危険としりながらも、その一歩を踏み出すのであった――。
サーシャ・エーレンベルク
【SPD】
別世界に来たような様相ね。その財宝の守護のために更に金をかけてるなんて、何が簡易型よ……。
時間をかけるつもりはない、ユーベルコードを使用して動体視力、反射神経を超強化する。
赤外線に触れた瞬間飛んでくる重火器の数々を回避し、飛んでくる銃弾、砲撃を竜騎兵サーベルで叩き斬り、ショットガンで監視カメラを破壊して突き進みましょう。
迷宮じみたこの要塞内で財宝の在り処を辿るのも限界がありそうだけど……それなら、防衛装置が多く取り付けられている場所を優先して捜索、突破するわ。
そこはまるで巨人の塒のような鋼鉄の要塞だった。
少なくともサーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は、『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞を見やり、そのような感想を抱くしかなかった。
「何が簡易型よ……」
どこをどう見ればそう思えるのかと思えるほどに簡易型鋼鉄要塞は、多くの罠やセンサーによって守られている。
重火器も目に付く範囲だけで相当なものである。
まだ宝物を守る竜のほうが可愛げがあるとさえ思えたことだろう。
宇宙船というものをサーシャは知らない。
どうしてこのような天井の高さが必要なのかもわからない。
けれど、彼女にははっきりしていることが一つだけあった。
「時間なんてかけてられない」
別世界に来たかのような要塞の様相と、その守護のために更に金を掛けるという本末転倒なる要塞の主の嗜好を横目に彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
月の魔力が体に纏われていく。
白狼たる獣人。
『戦場の白き剣』と呼ばれたサーシャの胸の内側に叫ぶものがある。
月よ、月よ!(シルバー・ムーン)と心臓の鼓動と共に力がみなぎっていく。
強化された動体視力と反射神経。
「さあ征くわ。最速最短で!」
踏み込む脚の筋が尋常ならざる速度を彼女に齎す。
白き剣と称される彼女の速度は圧倒的だった。一気に要塞内部に飛び込む。
赤外線センサーに彼女の脚が触れた瞬間、一瞬で重火器の銃口が狙いをつける。間髪入れずに放たれる弾丸は、要塞の地面をえぐる。
そう、えぐるしかなかったのである。
つい一瞬まで其処にサーシャは存在していたが、すでにもういない。
彼女の有り余る脚力は銃弾すら遅いと感じさせるものであった。
「本番はここからよ!」
そう、これは序の口だ。
まだ入り口に差し掛かっただけにすぎない。飛び交う弾丸は毎秒百にも届くであろう。けれど、その何れもサーシャを捉えることなどできようはずもなかった。
飛び込むようにして重火器の懐にサーシャは踏み込む。
手にした竜騎兵サーベルが、その銘を示すように白刃の煌めきを一閃させると重火器の銃身が切り落とされる。
さらに自身に向けられた不躾な視線。
監視カメラへと咆哮するような銃声を立て、ショットガンが呪術の弾丸を撒き散らして打ち砕く。
僅か数秒。
されど数秒の内にサーシャは事もなげに要塞の罠を打ち砕いて駆け抜ける。
「迷宮じみているわね……けど」
財宝を守るというのならば、近づけば近づくほどに仕掛けられている罠が濃密になっていくということ。
それならば答えは簡単だ。
罠の多い方に駆け出せば良い。
細かく考える必要など今のサーシャには必要ない。
なぜなら、今の彼女は月光を帯びているから。
戦いにおいても同様だ。
いつだって危険で厳しい道のりこそが生存への活路である。
同時にともに戦う者たちを救うことにもなる。勇猛果敢に戦うことは無謀と履き違えられることが多いだろう。
けれど、サーシャは知っている。
いつだって最初の勇気を振り絞った一歩こそが偉大なのだ。
故に彼女は危険など省みず、重火器の弾丸が荒ぶ鋼鉄要塞の奥深くへと、その危険な道程をこそ選んで突き進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
獅子魔王・レオニクス一世
【POW:行く手を阻むもの全てを壊し、倒しながら進む。】
フハハハッ!よいぞ!全てを蹂躙して歩んでこそ、獅子の魔王たる我が王道!!
悪のカリスマの覇気を纏い、存在感を撒き散らして正面から堂々と侵入してやろう!
その方が密かに潜入する者に取っても都合が良かろう!!
先ずは小手調べだ!我の配下の獅子獣人10人を召喚しよう!その炎を以て、破壊と恐怖をもたらすのだ!!
『偉大なる獅子魔王様の仰せの通りに!』
我も身に纏ったマントでパワーを増幅し、魔王笏から炎魔法として放って攻撃するぞ!
我こそは大魔王レオニクスなりっ!!
『獅子魔王様バンザーイッ!!』
目の前に道があり、己に障害が迫るというのならば、選択肢が二つあるものである。
即ち立ち向かうか、立ち退くか。
その何れかである。
けれど、獅子魔王・レオニクス一世(偉大なる大英雄・f40102)にとって、それは実質的に選択肢と呼ぶことすらないものであった。
行く手を阻むもの全てを壊し、倒しながら進む。
ただそれだけのことであったのだ。
無謀とも取れるかもしれない。
眼の前の簡易型鋼鉄要塞は、簡易型と謳いながら、その実多くのトラップにまみれている。それだけこの要塞の内部にあるであろう財宝が『超大国』である『ゾルダートグラード』にとっても重要なものであるからだろう。
獅子のたてがみを思わせるような金色の髪をなびかせ、しかして少女の如き姿をしたレオニクス一世は高く笑う。
赤外線センサーによって己を狙う重火器の銃口を前にした所で彼女は笑うのをやめなかった。
「フハハハッ! よいぞ! 全てを蹂躙して歩んでこそ、獅子の魔王たる我が王道!!」
彼女の一喝めいた言葉は要塞の内部に響き渡る。
しかし、それも僅かな時であった。
重火器から放たれる弾丸が彼女を襲う。
「先ずは小手調べだ!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
瞬間、彼女の眼前に立ち上るは炎の壁。否。壁ではなく、炎の魔王軍たる獅子の獣人たちであった。
彼等が手繰る炎が壁のように銃弾を溶かして落としているのだ。
「その炎を以て、破壊と恐怖を齎すとしよう!!」
彼女の生きてきた道筋は容易ならざるものであったのかもしれない。
溢れるカリスマの覇気を前には配下たる獅子の獣人たちは頭を垂れる。膝をつくように礼を尽くすのは戦場と成り果てた要塞の中であってさえ異質であったことだろう。
「偉大なる獅子魔王様の仰せの通りに!」
配下たる獅子獣人たちの声が重なる。
それはこれより彼女が進む道筋に障害が何一つ無いことを示していたことだろう。弾丸が迫っても関係ない。
身にまとったマントをヒロ返し、王笏より放たれた炎が飛び交う弾丸を尽く飲み込んでいくのだ。
「ぬるい。温いぞ! これでは密かに潜入する者たちのためにはならんではないか!」
レオニクス一世にとって、これは障害の内にも入ってはいないのだろう。
吹き荒れる炎が道を作り出す。
要塞の壁と天井を舐めるようにして吹き荒れる炎は、それだけで張り巡らされた罠を無力化していくのだ。
「だが、名乗らぬのもまた不義理というものであろう」
彼女は炎渦巻く要塞の内部にありて監視カメラを目ざとく見つければ指を突きつける。
息を吸い込む。
名乗りを上げるのならば今しかないだろうと思ったからだ。
そして、監視カメラの向こう側にいるであろうオブリビオンに対して突きつけるのだ。
己が名を。
己が偉業を。
「我こそは大魔王レオニクスなりっ!!」
「獅子魔王様バンザーイッ!!」
獅子獣人たちの喝采が炎と共にレオニクスの頬を心地よく撫でる。
あくまで威風堂々たる歩み。
己を王と自負するのならば、当然のことであるとレオニクス一世は思う。
これこそが己の歩む炎の道。
故に彼女は罠も、弾丸さえも意に介さず、ただただ破壊と恐怖を齎すためだけに悠然と歩みを進めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シプラ・ムトナント
凄まじい警備ですね……相当量の財宝がここにあるのでしょう、上手くいけば大打撃を与えられそうです。
幸いわたしの軍服は暗い色。髪の毛は目立ってしまいますが、フードを用意して隠せば問題ありません。極力暗がりを進むように心がけ、監視カメラによる発見を避けていきましょう。
しかし、赤外線や不可視のトラップなどは避け切れない可能性も高い。恐らく、一つにかかればさらに連鎖して状況は悪くなる。
その時は『催眠の羊眼』を即座に使います……この目で見たものは、無機物であってもわたしに友好的になる。
今のわたしなら、効果はもって2分ほど。|トラップ《あなたたち》の仕事は理解していますが……作動しないで、くれますよね?
目の前に広がる簡易型鋼鉄要塞の内部。
先行した猟兵たちが盛大に監視カメラや罠を引き付けてくれているおかげであるというべきであろうか。
しかし、それであっても凄まじい警備であることには違いないだろう。
「……相当量の財宝が此処にあることは間違いないのでしょう」
仄かな色の軍服の上からフードのついた外套を羽織ったシプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は己の豊かななウェーブのかかった髪を隠す。
これで全ての監視カメラが欺けるとは思っていない。
どちらにしたって強行突破しなければならないことになるのは目に見えていた。
けれど、先行した猟兵たちが引き付けてくれているのならば、この機に乗じて簡易型鋼鉄要塞の内部を進むのも悪くはない。
天井が高いのは恐らく『ゾルダートグラード』が擁する体高5m級の戦術兵器『パンツァーキャバリア』を運用するためであろう。
「……天井が高い。財宝を守る、というよりも侵入者を撃破するために内部で戦うことを想定しているかのような……」
これでは宝物のある洞窟に眠るドラゴン退治のようであるともシプラは思ったことだろう。
さしずめ、オブリビオンは宝物を守る番人たる竜。
しかし、それはあながち間違いではない。
それだけ此処を守るオブリビオンの力が強大であるという証左でもあるのだ。
「……やはり赤外線センサーは切れていませんか」
ここまで慎重に内部を進んできたシプラであったが、最奥に迫れば迫るほどにトラップの数が増えていく。
赤外線センサーだけではない。
多くの不可視のトラップも増えてきている。すでにシプラは、これに引っかからずに進むことができないできた。
しかし、進めば罠に連鎖的な反応を引き起こさせてしまう。
「肝要なのは最初のきっかけたる一つを作動冴えぬこと……状況が悪くなることだけは避けねばなりません……」
ならば、とシプラの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女の瞳は、催眠の羊眼(ヒュプノスシープス・アイ)。
赤く煌めく光が赤外線センサーへと向けられた瞬間、そのセンサーが放出していたレーザーが消失する。
「ええ、わたしは友軍。ならばセンサーは作動しない」
だが、急がねばならない。
この赤い羊瞳は確かに強力であるが、彼女の力量以上に作用しないのだ。
つまり。
「もって120秒……」
シプラは駆け出す。
視線を巡らせ、次々と監視カメラや重火器、諸々のトラップを停止させる。
「良い子ですね……|トラップ《あなたたち》の仕事は理解しています。敵の侵入を察知し、これを迎撃すること」
語りかける言葉は無機物に向けてのものであったが、しかし彼女の瞳が放つユーベルコードは無機物にさえ作用するのだ。
彼女の瞳が見たものは、全て彼女に利するものと変容される。
「ええ、ありがとう。作動しないで、くれて」
赤い瞳の輝きが失せるころ、シプラはセンサーの類の罠が仕掛けられたエリアを抜ける。
まだ天井が高い。
道幅も十分に広い場所だ。この先に、とシプラたち猟兵の求める物があるだろう。
しかし、彼女は気が付いた。
そう、ここからが本番である。
猟兵たちの侵入を察知したオブリビオン……その体高5m級の戦術兵器が動き始めたのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
クィル・ルーダス
なるほど強襲による強奪ですか
国民の士気の為にというのならば、そういう作戦もあるでしょう
…私にとっては、そこに闘争があるのならば問題はないのですが
…しかし、私に潜入するスキルは無いのですが
…仕方ありません、強行突破と行きましょう
|貫き通すは杭撃皇女《イナーシャルキャンセラー》…!
地面だけではなく壁や天井を蹴り、かかる慣性を消す事で普通ならあり得ざる機動を描き、全速で突撃します
それでも襲い来る銃弾はサイキックのシールドで弾き、障害はパイルバンカーで打ち壊します
ただ真っすぐに前へ、我が闘争の為に…!
※協力・アドリブ歓迎
『超大国』である『ゾルダートグラード』にとって財宝というものがどれほどまでに重要な意味を持つのかはわからない。
わからないが、しかし、それがオブリビオンの『超大国』に打撃を与えうるというのならば猟兵たちはやらねばならないことと理解しただろう。共に『超大国』に抵抗し続ける獣人たちの士気を高めるためには戦果が必要だ。
財宝の強襲と奪取はこれ以上無いくらいにわかりやすい戦果であるとも言える。
「そういう作戦もあるのでしょう」
クィル・ルーダス(杭撃皇女・f39666)は目の前にそびえる簡易型鋼鉄要塞を見上げる。
体高5m級の戦術兵器『パンツァーキャバリア』を運用するためだろう天井の高い要塞内部は宛ら巨人の砦のようであった。
故にクィルは脚を踏み込むことができるのだが。
しかし、敵が何も備えていないわけがない。
先行した猟兵たちが踏み込んだことによってトラップは作動し、また同時に多くが蹴散らされていた。
「……私にとって罠は意味をなさない。そこに闘争があるのならば罠の有無など関係ないのです」
自身が潜入に適した猟兵であるとは思わない。
そうした隠密行動に長けているとも口が裂けても言えない。だから、これは仕方のないことなのだと言うように彼女は無策で脚を踏み出す。
否。
無策ではない。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
強力なサイキックエナジーが身体に満ちるようにして覆っていく。地面をけって走り込む。同時に赤外線センサーが働き、重火器の銃口がクィルを狙う。
弾丸が雨のように降り注ぐ中をクィルは躊躇うこと無く飛ぶよう壁面を蹴って天井へと飛ぶ。天井に飛べば、また蹴って飛ぶ。
その繰り返しだった。
通常ならば慣性や衝撃といった影響を受けるはずだが、今の彼女はそれを無いものとするかのように飛ぶのだ。
慣性が生じないのならば急発進、急制動を可能とする。故に彼女の踏み込みは弾丸より早い。
『貫き通すは杭撃皇女』(イナーシャルキャンセラー)――それが彼女の名だ。
掛かるようにして飛び込んでくる弾丸をサイキックエナジーで弾き飛ばしながら、回転とづける銃身へとパイルバンカーの杭が撃ち込まれ、その鋼鉄の銃器を撃ち抜く。
「他愛ないです。この程度の縦断で私を止められると思われていることが」
クィルにとっては侮られていると思うことだろう。
生命の埒外。
それが猟兵であるというのならば、どれだけ危険な罠であろうと意味をなさない。
「ただまっすぐに前へ。我が闘争の為に……」
この先に己が求めるものが存在しているのかはわからない。
けれど、ただ一つ確かなことがある。
踏み込めば、踏み込んだだけ危険が己に降りかかる。そして、自ずとこの簡易型鋼鉄要塞に座すであろう強大なオブリビオンが自分の目の前に現れる。
その時こそ、クィルは歓喜に震えるのかもしれない。
どうしたって己の中にある闘争を求める心は抑えきれるものではない。
『超大国』と獣人達の抵抗はわかった。けれど、彼女は喜々とした感情を抑え切れないように縦断の雨の最中を飛ぶようにして駆け抜けていく。
もっと。
もっと闘争を。
闘争に必要なのは敵だ。即ちオブリビオン。
己の手にしたパイルバンカーの切っ先が剣呑なる輝きを放ち、獲物を求めるようにサイキックエナジーがみなぎらせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
高天原・光明
鋼鉄要塞からの軍資金強奪。決して簡単な仕事ではないだろうな。さらに一筋縄ではいかない強敵も待ち受けている。前座の機械仕掛けに、あまり時間はかけていられないな。
防衛機構を一つひとつ丁寧に潰して回るのは俺の火力では困難だ。ここは【SPD:見つかる前に素早く目的地まで駆け抜ける】ことにしよう。〈目立たない〉ように通風孔や配管、無造作に置かれた物資など、〈地形の利用〉で迅速に進むぞ。回避不能な自動銃座なんかは小銃の〈跳弾〉でまとめて黙らせることにしよう。
全く、鋼鉄要塞の名に恥じぬ見事なハリネズミっぷりだ。だが、針の穴ほどでも、必ず抜け道はあるものだ。先へ進ませてもらうぞ。
(アドリブ等々全て歓迎)
多くの猟兵が強行突破を試みる『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』の財宝を管理している宝物庫の如き簡易型鋼鉄要塞を前にして、高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)の選んだ道は単純であったが、困難な道であった。
要塞内部に仕掛けられた赤外線センサーや監視カメラ。
そうした目を欺くことはとてもむずかしいことのように思えただろう。
先行した猟兵たちが派手に目を引き付けてくれているからこそ、光明は己の仕事がやりやすくなっていることに気がつく。
「決して簡単な仕事ではないと理解しているが……」
あまり時間を掛けてはいられない。
なぜなら、猟兵たちの陽動じみた強行突破はいずれ、それ自体が囮であることに気が付かれるからだ。
「一筋縄ではいかない。敵の首魁もこれらの目的に直に気がつくだろう」
光明は故に体高5m級の戦術兵器の運用のために天井の高さも道幅も大きく作られている要塞内部の通気口の中へと忍び込む。
他の猟兵のように罠を一つ一つ潰して回ることは不可能だ。
ならばこそ、他の猟兵たちの行動を利用させてもらおうというのだ。逆に彼等もまた、そのつもりだろう。
猟兵の戦いは紡ぐ戦い。
誰か一人だけではオブリビオンに到底敵わない。
だからこそ、彼等は自分だけではないということを理解している。
宝物庫への道筋を誰かが見つけ出せば、自ずと他の仲間たちもたどり着くことが出来る。ならばこそ、光明は通気口の中を這うようにして進む。
「もとより戦術兵器の運用を想定しているのなら、こうした抜け道は管理しきれないだろうとは思っていたが……」
目論見通りであった。
通気孔の金網の向こうには多くのトラップが敷き詰められている。
赤外線センサーは特に多い。
敵がこちらの動向を把握するために使っているのだろう。重火器とは言え、猟兵を止められるとはそもそも思っていないのかもしれない。
ならば、どうしてそのような真似をするのか。
光明は理解する。
「こちらの戦力を、能力を見定めている、というのが正しい、のか?」
だとすれば敵は自分たちが思っている以上に戦い慣れていると言えるのかもしれない。
強大なオブリビオンであるという情報以上に、そちらの方に光明は怖気が走る思いであった。
明らかに己達の侵入を知りながら、足止めにもならぬ罠でもって、こちらの手の内を探り出そうとしているのだ。
「……全く、鋼鉄要塞の名に恥じぬ見事なハリネズミっぷりだと、要塞自体ばかりに目が言っていたのならば気がつくこともできなかったかもしれないが」
この要塞の主は強敵以上に難敵であることがうかがえる。
しかし、光明はこうして抜け道を見つけ出すことができた幸運を噛みしめる。
どのような城塞にだって抜け道は存在する。
それがどのような意味を持つのかを光明は知りながら、先を急ぐ。
敵の戦力は未だ計り知れず。されど時を逸すれば全てが御破算となるがゆえに通気口を急ぎ這いずって要塞の中心たる最奥に迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
ドイツにいるオブビリオンはドイツだ。
お前だくまー( ̄(エ) ̄)
さて、長い休暇も終えてそろそろオレも戦場で暴れようかな。
さて、いっちょかましてやるかくまー
【行動】
判定:POW
愛用のパンツァーキャバリア『ツキミヅキ』に乗って『騎乗突撃』くまー
騎兵隊(馬じゃない)参上くまー!
さーってと、簡易とはいえ、要塞は要塞。
突破は簡単とは言えないだろうが、まあやれることはやれるだけやりますか。
ツキミヅキを固定砲台(フォートレス)モードに変形させ、前面に火力を集中し『制圧射撃』で大爆破くまー。
たまやー、かぎやー。ひゃっはーーー。
『獣人戦線』はオブリビオンの『超大国』の侵略に抵抗する獣人たちの世界である。
故に如何なる理由があろうとも『超大国』は敵であるのだ。
何処にいようとも。
何処を侵略しようとも。
あまねく全てのオブリビオンは敵なのである。
故にオーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は長い休暇を終えたと一つ大きなあくびをして、長年愛用してきたパンツァーキャバリア『ツキミヅキ』を駆って、『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞へと飛び込む。
「騎兵隊、参上くまー!」
オーガストは、馬じゃないけどキャバリアだからいいだろうというそんな理屈で要塞に正面から突っ込む。
敵は要塞。
簡易型とは言え鋼鉄要塞の攻め難きを彼は長年の戦いの経験から知っているだろう。
巨大な要塞は可視かされた敵の勢力である。
突入したオーガストのパンツァーキャバリアにトラップの銃口が向く。
如何に体高5m級戦術兵器の運用を想定して道幅の広い要塞内部とは言え、窮屈であることに変わりはない。
「こちとら長い休暇を終えた後なんでな。そろそろ暴れたいと思う頃合いだろう、相棒」
コクピットでコンソールを叩くようにして『ツキミヅキ』の躯体を変形させる。
それは謂わば固定砲台……変形機構をロックすればもうオーガストのパンツァーキャバリアは一歩も動けなくなる。
だが、パンツァーフォートレスとも言うべき形態に変形した『ツキミヅキ』は体高5mとは言え、フォートレスの名を冠する存在へと変貌を遂げていた。
「いっちょかましてやるくまー!」
前面に全ての火力を集中させる。
ロックオンなんて気にしない。敵のトラップなど関係ない。
そこにあるのは撃ち抜くためだけの標的ですらない。
「突破は簡単ではないっていっても、やれるだけのことをやれば、大体のことはやれるように世の中なっているくまよ。だから」
トリガーを引く。
放たれる砲弾が、銃弾が、嵐のように荒び簡易型鋼鉄要塞の中に吹き荒れる。
先行した猟兵たちが強行突破を測ってなお、これだけの物量があるのだ。敵の目論見は一体なんであるかなど言うまでもない。
「突破出来るかどうか試しているような、そんな不躾なやり方はな……ロマンが足りてねぇんじゃあないか、くまー!」
荒ぶ砲弾と銃弾が鋼鉄要塞の内部で爆発を引き起こす。
弾薬や火薬に引火したのだろう。
オーガストの眼の前は爆発の光で埋め尽くされている。
ともすれば恐怖すら引き起こすほどの鮮烈な爆発。
「たまやー、かぎやー」
しかし、オーガストは笑う。
爆発こそ戦場。
蒸せるような火薬の香りこそが自身が戦場に身をおいていることを実感させる。
故にオーガストは感極まったように叫ぶのだ。
「ひゃっは――! 爆発はロマンくまー!!」
機体の前面を嵐のような銃弾で蹂躙して『ツキミヅキ』を変形させ、硝煙立ち上る要塞内部をオーガストは一気に駆け抜ける。
障害は避けるものではない。
ぶっ飛ばすものだというように――。
大成功
🔵🔵🔵
厳・範
お爺様、久々に依頼を受けた。
最初は半人半獣姿だが。
さて、行くか…。
花雪「お爺様、攻撃は私にお任せください」
修行も順調であるからな…任せよう。
UC【転変】を使い、本性の黒麒麟へ。
花雪「わたしは、雷公鞭を持ってお爺様の背へ乗りまして」
駆ける。微かに浮くから、設置罠の大半は無視できよう。
重火器も見切って回避してしまおうか。
花雪「監視カメラ?というものは、雷公鞭による雷撃攻撃を。たしか、こういう物は雷に弱いと聞きました」
そうだな。あと、その多節鞭で打てばよい。
砲身がねじ曲がるだけでも、致命的だそうだ。
花雪「なるほど。…しかしこの世界、お爺様の姿もよく馴染みますね?」
たしかにな。故郷の次に馴染む。
瑞獣たる半身、その四脚を跳ねさせ『超大国』の一つ、『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞を見上げるのは厳・範(老當益壮・f32809)であった。
戦場に脚を踏み入れるのは些か久方ぶりであると言える。
だが、戦いに際しての心構えが今更変わるわけではない。
「さて、行くか……」
共する宝貝人形である『花雪』が範の前に拱手でもって一礼する。
「お爺様、どうか攻撃は私にお任せください」
その言葉に範は、僅かにためらったのかもしれない。
いや、と考え直す時間がほしかっただけであったのかもしれない。
このような要塞に突入する際において手数というのは多いほうが良いだろう。
だからこそ、範は一つ頷く。
「修行も順調であるからな……任せよう」
ユーベルコードに輝く瞳。
己の肉体が黒麒麟へと変貌を遂げる。如何なる理屈からか、範の肉体の重さは通常の10分の1まで落ち、肉体自体が翅のように軽くなる。
足元に浮かぶ雲に一度乗れば、彼の身体はあらゆるものを置き去りにする速度を得るだろう。
背に『花雪』を載せる。
「さて、行くか」
「いつでも」
その言葉に一つ頷くと一瞬で範は要塞内部へと駆け抜けていく。
「目に見えぬ糸のようなものが張り巡らされているようですね」
「気がついたか。然り」
所狭しと設置された赤外線センサーは侵入者を感知し、重火器でもって範たちに弾丸を打ち込む。
それらを駆け抜けながら見やる。
羽が舞うようにして弾丸の雨の中を飛ぶ。
「監視カメラ? というものは雷に弱いのでしたね」
「鉄の箱であるがゆえに、内部まで雷を通しやすいというのは決定であろうからな」
「そして」
『花雪』が迫る銃弾を手にした宝貝で弾き飛ばす。
鉛玉を飛ばす武器。
弓矢よりも連射速度が段違いに早い。
しかし、その長い銃身は弾丸を打ち出すために敢えて長く作ってある。長いということはそれだけ弾丸を打ち出す時に生じる熱を発散し易いということだ。
「空冷で間に合わぬからこそ銃身を回転させ、連なった銃身で分散させているというわけだ。熱せられた鉄は如何なるか」
「よく曲がります」
故に、と『花雪』の放った他節鞭の一撃が設置されていた重火器の銃身を叩く。
折れるようにねじまがった銃身は、それだけで致命的だった。
銃身が歪めば、それだけで弾丸は打ち出せなくなる。
弓矢であれば、多少の無茶や補正はできるであろうが、鋼鉄の銃身をもつ重火器はそうも行かない。
「便利であるがゆえに、それに至るまでの行程が煩雑、というのは欠点であるな」
範は背に載せた『花雪』に言葉を紡ぐ。
「なるほど」
戦いにありて学ぶことは多い。
宝貝人形であってもそうなのだろう。
「それにしても、お爺様の姿もこの世界にはよく馴染みますね?」
「たしかにな」
獣人たちがオブリビオンに抗う『獣人戦線』。
階梯という獣人たちの形態も様々である。如何に猟兵が他者に見目でもって違和感を与えないのだとしても、似たような姿の者がいる世界というのは範にとって馴染むものであると言えたことだろう。
だからこそオブリビオンの好きにはさせてならないのだと範は雲の上を風が舞うようにして駆け抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
ゾルダートグラードの財宝庫、それだけでロクでもない臭いがする
中には無辜の人々から奪った財も少なからず在ることだろう
捕虜の口から銀の差し歯を引き抜いて没収したなんて噂すら聞くくらいだ
財宝庫を潤す為の所業を想像するだけで
一刻も早く|ここ《要塞》を破壊したくなる衝動に駆られる
UCで跳躍力を強化
赤外線センサーや監視カメラの探知にかかったとして
狙いを定める暇を与えなければ良い
壁や天井を蹴って三次元的機動を交えながら、ひたすら奥へ奥へと突っ切ろう
障害になる壁や重火器などは改造銃で撃つかパイルバンカーを見舞ってブチ抜くぞ
応報の時は来た
精々震えろ、クソッタレ
ドイツを含めた周辺ヨーロッパに侵略を行なう『超大国』。
それが『ゾルダートグラード』である。
彼等は機械化された部隊を手繰り、各地に鋼鉄要塞を築き上げては恐るべき力で獣人たちを圧倒する。
抗うことは即ち死に近づくということ。
されど抗わなければ支配という名の死が待つのもまた同然であった。
故にイーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は死したが、悪霊として、猟兵として再び戦場に舞い戻ったウサギの戦闘猟兵であった。
「クソッタレ、まったくもってロクでもない臭いがしてやがる」
ウサギの鼻を引くつかせながらイーブンは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
彼の胸の中にあるのは復讐の炎だけだった。
悪霊と成った今、ある記憶は朧気なものばかり。確かなことはオブリビオンを許せぬという感情だけだった。
視界に映る全てがろくでもないものであると彼は理解していた。
激しい衝動の全てが己の五体にユーベルコードの力を満たしていく。
ウサギの脚部が跳ねるようにして簡易型鋼鉄要塞の内部を蹴って飛ぶ。
常人では回避できないような赤外線センサーの網目すらもイーブンは容易にくぐりぬけるのだ。
「ああ、本当にまったくもって肥溜めのようなクソッタレな場所だな、ここは」
ここには財宝が在るのだという。
『ゾルダートグラード』の秘蔵する財宝。
それらはもとを正せば、無辜の人々たちから奪い取ったものであるとも言えるだろう。
戦争をやっているのだ。
当然のように起こり得ることもあるだろう。
それが如何にしてか死者の尊厳を凌辱するものであったのかも理解している。
理解していることと許容できることは別である。
だからこそ、イーブンの中に燃えたぎる復讐の炎は、ただただ、その事実を薪にして燃え盛らせるのだ。
「まったくもって、クソだな、これはな!」
跳躍する。
赤外線センサーを躱し、監視カメラをかいくぐる。
しかし、あまりにも厳重な警備。そして、他の猟兵たちの強行突破による騒動を加えれば、イーブンは仕方のないことだと割り切る。
「例え、俺を捉えるのだとしてもな!」
ああ、本当に吐き気がするほどの怒りが頭の中を占めている。どうしようもないほどに激烈なる感情ばかりが湧き上がってきては、己の脚を跳ねさせるのだ。
一刻も早く。
そう、疾く|ここ《要塞》を破壊したくなる。
完膚なきまでに。
二度と再建できないほどに破壊し尽くさねばならない。弾丸の嵐の中をイーブンは跳ねては飛ぶ。
エディプスの手招き(エディプス・タブー)など知ったことではない。
己の脚を突き動かすのはたった1つの感情。
復讐だけが己の胸にある炉を溶かすほどの熱を上げさせるのだ。
「応報の時は来た」
天井を、壁を、床を。
蹴れるものは全て蹴って跳ねるようにイーブンは突き進む。
障害になるものが現れれば、改造銃で撃ち抜く。貫けぬというのならばパイルバンカーの一撃で強引にぶち抜くのみである。
「精々震えろ、クソッタレ」
戦いの中で恐怖に震えるのは当然だ。
不安に駆られ、恐慌にさいなまれるのもまた然り。
だが、とイーブンは思うのだ。このようなクソッタレな状況を生み出した者たちを許してはおけないと。
このような戦いばかりが続く世界にした張本人たちこそが彼が口癖のように呟く……。
「クソッタレ共を一つ残らずぶっ飛ばさなけりゃあな!」
奪われた生命に購うことができるのは生命だけだ。
「|同点《イーブン》なんてクソッタレだ。|逆転《リバーサル》してやらねば、釣り合いが取れねぇんだよ――」
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁすっ!!
はいっ!|ステラ《犬》まいりましたっ
間違えました、|メイド《犬》まいりましたっ
はぁ、新たなエイル様の香り、寿命が延びます
あ、今日は相方遅れてきますので、天の声様がツッコまないと
私、延々とこの調子ですのでよろしくお願いします
さて、と
平和、木偶、ノイン様と気になる要素は沢山ありますが
エイル様の存在意義はメイドの私が証明します
まずはここを突破しますよ
『アンゲールス・アラース』装着&
【メイドズ・ホワイト】発動
これだけの広さがあれば
私ひとりが空中機動するには十分
飛翔の速度で振り切ります
あとは見罠必壊で
飛びながら『ニゲル・プラティヌム』で撃ち抜いていきますよ!
硝煙むせぶ最中にありて香るものがあったのならば、それを知る者は大いに叫んだであろう。
いや、叫ぶのだとしても多分一人だけである。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁすっ!!」
叫んでいた。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は特に臆面もなく叫んでいた。
此処がオブリビオンの『超大国』、『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞であるという事実さえ、彼女にとっては瑣末事であったのだ。
「はいっ! |ステラ《犬》まいりましたっ!!」
傍から見たら犬を自称するヤバいメイドである。
誰が見てもそう思える。
ヤバすぎる。
「はぁ、新たな『エイル』様の香り、寿命が伸びます」
怖い。
これは怖い。
他の猟兵たちの姿が見えなくてよかったと取るべきか、見えないからこそ好き勝手に叫んでいるとも取れた。
いつもの相棒が居ないからか、リミッターがかけられていないというか。制限がないというか。
どう考えても敵地で叫ぶのは自殺行為な気がするのだが、ステラは構わなかった。
「まずは此処を突破しますよ」
キリ、と今更取り繕っても無駄なのような気がするのだがステラに取っては関係ないことである。
彼女にとって最も重要なことは唯一つ。
そう一にも二にもなく『主人様』である。
「くんくんっ! これは香っておりますよ!」
何が、と誰も問わないので永遠に謎のままである。ツッコミが不在というのはこんなにも心細いものであったのだろうか。
それほどまでにステラは何時も以上に暴走超特急であった。
「メイドたるもの、この程度の要塞攻略は基本、ですので」
ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
いや、要塞攻略できるメイドという時点で中々にツッコミどころが満載しているように思えるのだが。
誰もツッコまない。
早く来てくれツッコミ。
いやさ、勇者。
「さあ、参ります。これだけの空間があれば、私一人が空中機動するには十分。故に!」
ステラは地面をけって飛ぶようにして一気に飛翔する。
背より広がるは天使の翼『アンゲールス・アラース』。
胸にある天使核より発露したエネルギーが翼のように迸り、ステラの身体を空中へと解き放つのだ。
「見敵必殺!」
黒と白金の二丁拳銃を携え、ステラは嵐のような速度で要塞内部へと突入していく。
吹き荒れる銃弾など彼女にとっては意味がない。
彼女は視線を送ることさえなく、手にした二丁拳銃で正確に罠の重火器を撃ち抜いていく。
まるで、そこにそれがあると理解しているかのような動きであった。
そう、今の彼女は超有能なスーパーメイドである。
超有能といったって限度があるような気がするのだが、彼女はただのメイドではない。もとより猟兵にしいて生命の埒外であるがゆえに。
そして、彼女が香るといった『主人様』の残滓を求める猟犬のようにステラは一気に要塞内部の最奥へと迫るのだった……。
ツッコミ不在を嘆いたが、本当である。
誰もこのメイドを止められないのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
ジャン・ジャックロウ
ゾルダートグラードの財宝を強奪するのが今回の仕事か。
『パンツァーキャバリア【グラオザーム】』に乗り【野良犬部隊】パンツァーキャバリア班に号令をかけるぜ。
諸君ッ!これより我々はゾルダートグラードの簡易型鋼鉄要塞に強襲をかけるッ!目標は最奥に秘されている財宝を簒奪ッ!
…さぁ、テメエら。ひとつ派手にいこうじゃあないか。
監視カメラや重火器を戦車砲や地上掃射ガトリング砲、時にはパワークローで破壊しながら進軍よ。多少の攻撃じゃグラオザームにゃびくともしねえぜ?
全機散開で要塞を散策。逐一『無線機』で報告を聞き情報収集しながら要塞を攻略していくぜ。
さあ、俺の財宝は何処かなぁ?
【技能・集団戦術】
【アドリブ歓迎】
嘗ては野良犬部隊(ノライヌブタイ)と呼ばれていた。
別に野良犬呼ばわりされていたことを恨んでいたわけでもない。いや、恨んでいたかもしれないが、まあ、別にそれはって感じであるともジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)思っていたかもしれない。
どっちみち、前線というのは命のやり取りである。
どうあったって命あっての物種という言葉がある通り、生きていなければ意味がないのだ。
「まあ、そういうことった、テメエら」
今回の仕事のあらましというやつを簡単にジャンは己の部隊のパンツァーキャバリア班に告げる。
言ってしまえば、古巣にお邪魔して、受け取り残っていた退職金を頂いて帰ろうっていう話なのだと彼はいつものように笑った。
「ケヒヒヒ。なあに、簡単なことだ。いいか、諸君ッ!」
ジャンの声はよく通る。
それ故に彼の部隊に存在する者たちは皆、その瞳をジャンに向けるのだ。
「これより我々は『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞に強襲をかけるッ! 目標は最奥に秘されている財宝の簒奪ッ!」
「オオオオオオオッ!!!」
咆哮が轟く。
いや、遠吠えとでも言うべきか。
己の身に宿る獣性の開放と言えばいいだろうか。
どちらにしたってやることは変わらない。
どれだけ要塞内部が数多のトラップで埋め尽くされているのだとしてもだ。
「どうやら先行した猟兵さんがたがいらっしゃるようだ。俺らは、ありがたくその轍を進ませてもらうとしようぜ。だが」
「オオオオオオッ!!!」
「そうだよな。いつだって野良犬部隊ってのは派手に行くもんだ。なら、行こうぜッ!」
『パンツァーキャバリア』が一斉に駆け出す。
アサルトライフルの歩兵たちが随伴し、ジャン自身もパンツァーキャバリア『グラオザーム』に騎乗し、一気に簡易型鋼鉄要塞の内部へと飛び込んでいく。
確かに罠と言うのは警戒すべきものであろう。
だが、すでに先行した猟兵たちが強行突破を仕掛けているというのならば、それは居わば踏み鳴らされたものであり、其処に在るとわかっている罠である。
ならば、それはもう罠と呼ぶものではなく、ただ踏み潰していくものでしかない。
「いよぉし、調子は良いようだな。歩兵は先行して状況を知らせ」
ジャンは無線機で野良犬部隊の歩兵たちとと連絡を密にする。
戦いにおいて情報というのは重要である。
刻一刻と変化していく戦場であるからこそ、その鮮度というものが重要になってくる。
無線機というのは本当に良いものである。
タイムラグが極端に少なく情報の更新ができる。
「さあ、俺の財宝はどこかなぁ?」
「俺達の、ッスよ!」
「はっ、それもそうだな。総員、ぬかるなよ!」
ジャンの言葉に部隊の兵たちが笑う。
イージーだと思った。同時にイージー過ぎるとも思えたことだろう。敵が此方の動きに気がついていないわけがない。
ならば、これはきっと己たちの総数を把握するための罠でしかないのだろうとジャンは結論づける。
本命は、この先。
いや、これよりもう一つ先か、とジャンは犬歯を剥くように笑いながら、呟くのだ。
「面白ぇ……」
それは獰猛なる獣性の発露だった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
わ~いおったからおったから~♪
ぜ~んぶもらちゃうぞ~♪
●ぎゅいいんぎゅいいん
くんくん、くんくん…
あっちのみずはにがいぞ~♪
こっちのみずはあ~まいぞ~♪
著作権フリーだから安心さ~!(安心かな?)
と【第六感】に任せてルート選定とトラップを回避していこう
さらに~これは競争?だからね!
クリアタイムを短くするために[ドリルボール]くんで壁をショートカットしたりUC『神撃』でドーーーーンッ!!とトラップを突破してさらにラップタイムを短縮するよ!
おったからおったから~♪
ぜ~んぶもらちゃうぞ~♪
アハッ♪
み~つけた~!
財宝、という言葉はいつだって魅力的な響きを持っている。
心躍るようにロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は声をはずませ、『超大国』、『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞の内部に足を踏み入れる。
其処は既に戦場であったし、また同時に猟兵たちの多くが強行突破することによって踏み潰されたものでもあった。
「わ~いおったからおったから~♪ぜ~んぶもらっちゃうぞ~♪」
鼻歌まじりにピクニック気分なロニにとって、目の前の光景は大したことではなかった。
いつも通りだと言えたのかもしれない。
猟兵の戦いは紡ぐ戦いである。
だからこそ、先行した猟兵たちの道は後続の者たちにとっては標となるのである。
「くんくん、くんくん……」
ロニは鼻を引くつかせる。
硝煙と火薬の臭いばかりがするのだが、ロニはよくわからなかった。
財宝の臭いというものがわかるのならば、誰も苦労はしないだろう。けれど、ロニは神性であるからか、その第六感とも言うべき勘でもって要塞内部へと足を踏み入れる。
恐るべきことに都合の良い事が起こるものである。
ロニのとったルートはどれがも罠がないか、もしくは猟兵達によって踏み潰された罠しか存在していなかった。
正直に言えばご都合的が過ぎるというものである。
「けど、どっちにしたって、こういうことだよね~♪」
自分の進む道が常に正しいと思うのであれば、それは誰も否定することのできない事実なのである。
神であるから、ではない。
自身がそうでると自覚的であるからこそ、世界が変わるというのは方便にも聞こえるかもしれない。
「さ~て、こういう時はタイムアタックだし、ショートカットが情動だよね! というわけで『ドリルボール』くん、よろしく~!」
ロニの言葉と共に掘削球体が要塞内部の壁面を削り取りながら一直線にロニの直感を元に掘り進めていくのだ。
罠なんて関係ない。
だって、全てを掘り進めていく内に、罠は全てすり潰していけるからだ。
「たまには運動しないとね! はい、どーんっ!」
時折、撃ち込まれる神撃(ゴッドブロー)。
それは気まぐれみたいに放たれ、要塞内部を破壊に導いていく。
「おったからおったから~♪ぜ~んぶもらっちゃうぞ~♪」
ロニにとってこれは戦いですらない。
ただの探検かピクニックの延長線上。
そこにオブリビオンが関わっているか、関わっていないかだけの差異でしかないのだ。
故に彼は止まらない。
立ち止まるということはそれだけ、タイムアタックの順位が下がるというものだ。どうせならトップを狙いたいと思うのが神性としての性なのかもしれないし、ロニが有するものであったのかもしれない。
「ま、どっちでもいいよね~アハッ♪」
最初にみ~つけた~! と言えるのならば、過程なんてどうでもいい。
そんな風にしてロニは、要塞内部を掘り進めるように壁を打ち抜きながら、さらに歩みを止めないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
随分と混沌とした世界だ事で
それを踏まえてもさあ…もうちょっとこう…!
世界観を読み込もうぜ!
SFに寄り過ぎてるじゃんこの要塞!!
責任者を出せ責任者を!!
ま、SFチックになってるならこっちの領分だから進みやすくはあるんだけどね
コンソールがあればそれを探して少し弄ってみよう
規格が違ってもなんかまあ、フィーリングで『ハッキング』
区画図とか罠の配置とかを読み取って目安にしよう
物理的なトラップ以外は無効化出来るなら無効化しよう
落し穴以外は何とかなるかな?
まあチャレンジチャレンジ
一通り堪能したら財宝庫を目指そうか
このまま弄ってたくもあるけども!
まあお仕事お仕事
奥にあるご褒美をゲットするのも楽しみだしね
『超大国』の一つ『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞。
その内部の様相は一言で言って宇宙船のようであった。
体高5mの戦術兵器の運用を想定しているからだろうが、天井は高く道幅も広い。そんな壁面や天井には所狭しとトラップを起動する赤外線センサーや監視カメラが設定されているし、重火器の銃口が此方を狙い続けている。
正直に言えば、厄介だとも思っただろう。
けれど、月夜・玲(頂の探究者・f01605)の感想は斜め上であった。
「随分と混沌とした世界だ事で。それを踏まえてもさあ……もうちょっとこう……! 世界観を読み込もうぜ!」
どう考えても『獣人戦線』という世界は地球でいう所の20世紀初頭。
そんな中に宇宙船のようなSFよりな造形などういうことなのだと玲は憤慨していた。聞く者が聞けば、そこ? と首を傾げるところであった。
「責任者を出せ責任者を!!」
とは言え、玲は文句を言いながらもしっかり仕事を為す猟兵である。
SFというか、スペースシップワールドに寄っていっているというのならば、むしろ其れは己の領分である。
スペースノイドとして、メカニックとして血が疼くというものである。
「コンソール、コンソールっと……あー、これか。流石に規格が違うか……」
玲はこういう場所だからこそメンテナンスハッチや搬入のためのシステムが組み込まれているであろうことを熟知していた。
宇宙船めいた内部構造であるというのならば殊更であろう。
しかし、彼女の知るものとは規格が異なる。
オブリビオン由来の技術であるというのならば、当然であろう。何せ彼等は過去の化身。過去がまじり、歪むからこそ、彼等は常なる存在ではないのだから。
「でもま、フィーリングだよね。こういうのは、っと」
玲はコンソールを弄り回しながらあれこそれやりはじめる。手っ取り早く言えば、ハッキングである。
全てが電子制御されているというのならば、これを無力化するためのコード、もしくは自軍である証明のようなものができれば罠を無効化することができるはずなのだ。
「えっと、うーん……なるほど。これってこういうこと?」
コンソールから要塞内部の情報を読み解いていく。
ざる、というほどではない。
けれど、玲にとっては難しくも易しくもない、という程度のレベルである。罠の全てを無力化はできないが、自身を自軍と認識させることは僅かな時間ながらできそうである。
「うんうん、なんでもやってみるもんだ。チャレンジ精神って大切!」
玲は息を吐き出す。
楽しかった、とも取れる。彼女にとって、これはレクレーションのようなものだ。ハッキングを楽しんだ、という程度のものなのだ。
「とは言え、このまま弄ってみたくもあるんだけども!」
でも、そうは言っていられない。
これはお仕事なのだ。お仕事を放っておいてお給金が出るのならばこんなにうれしいことはないのであるが、世の中どうやらそううまくは出来ていないらしい。
「奥にあるっていうご褒美をゲットするのも楽しみだしね。何があるのかな。財宝っていう位だから金銭ばっかりってことはないだろうし」
何かしらのロステク的なあれそれがあるといいな、と思うのは玲にとって都合がよすぎるだろうか。
けれど、この鋼鉄要塞内部を見やれば、そのような期待をしてしまうのもまた無理なからぬことであっただろう。
玲は己を『ゾルダートグラード』自軍と監視カメラに認識させ、悠然と、それこそ悠々と要塞内部を我が物顔で歩み、最奥にある財宝庫への道を歩くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』
|
POW : 試作型荷電粒子砲収束式
敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【荷電粒子】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。
SPD : 試作型荷電粒子砲連射式
レベルm半径内の対象全員を、装備した【大口径荷電粒子砲】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
WIZ : 近接防御火器システム
【全身に装備されている対空機関砲】で射撃している間、射程範囲内の味方全員の行動成功率を若干増やし、敵全員の成功率を若干減らす。
イラスト:良之助
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
多くの猟兵たちによって要塞内部の攻略は進む。
時に強行突破で。
時に隠密行動で。
それは猟兵たちが軍ではなく、個として動くからこそ敵を翻弄するものであったし、また同時に要塞内部を破壊と混乱に叩き落とすものであった。
しかし、この要塞を守るオブリビオンにとって、それは想定内であったようだった。
むしろ、如何にして防備を猟兵たちが突破してくるのか。
その対応に寄ってオブリビオンは猟兵たちの力を推し量ろうとしているような気配さえあったのだ。
それを証明するようにひときわ広い空間に機械音が響き渡る。
鋼鉄の地面を踏みしめるように体高5m……巨人とも見紛うパンツァーキャバリアが群れ為すようにして現れる。
それは自立型の無人機、『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の群れであった。
広い空間に出たのは恐らく、これらを猟兵にぶつけるため。
猟兵たちはこの要塞を守護するオブリビオンによって敢えて、この空間に誘導されたのだろう。
引き戻るにはあまりにも数が多い。
この『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の群れを突破するしか道はない。
鋼鉄の巨人は、そのアイセンサーをきらめかせ、対峙する猟兵たちを殲滅するべく、その尋常ならざる火力を向けるのだった――。
シプラ・ムトナント
誘い込まれた、という訳ですか……。
いえ、どのみち警備の排除は必要だったのです。あちらから出向いてくれたと考えましょう。
敵は5m級のキャバリア、こちらは生身。普通なら撤退ものですが、わたしとて戦闘猟兵。
ムトナント家の対キャバリア戦闘、ご覧に入れましょう。
あの構造ならば、脚部を根元から一本潰せば体勢を崩せる。
脚部の付け根、配線が剥き出しの場所を目掛けて吸着手榴弾を【投擲】。
上手く吸い付けて爆破出来れば、配線や関節部に直に損傷を与えられるはずです。
体勢を崩した所を狙い、頭部目掛けて『止めの一撃』……|散弾銃《レミー》での【零距離射撃】を行います。
そのアイセンサーごと、頭部を破壊しましょう。
目の前に広がる群れ。
それは敵であると認識するのならば、なんと恐ろしい体躯を持っていたことだろう。血の通わぬ鋼鉄の巨人。
思惑は人のそれであったとしても、振るう暴力は人の其れではない。
血の通わぬ生命のやり取り。
故に容易く奪うことができるものであることをシプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は戦場で知ったことだろう。
故に、己の中にあるのは羊毛にくるまれた臓腑ではなく。
祖父母より受け継がれてきた鋼の意志のみ。
「誘い込まれた、というわけですか……」
彼女は動揺することはなかった。
どれだけオブリビオン『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』が群れを為して己に迫ってくるのだとしても、彼女の中に在る鋼は決して折れることはない。
己を一振りの剣であると定めるのならば、折れぬことこそが己の本領。
故に彼女は踏み出す。
「確かに鋼鉄の巨人……5m級のキャバリアに対し、こちらは生身。普通なら撤退するものですが、わたしとて戦闘猟兵」
彼女を狙う砲口が光を湛える。
それは充填されたユーベルコードの輝き。
収束されていく荷電粒子を解き放つ砲塔は、その充填する時間に比例して必殺の威力を高めていく。
猶予はない。
迷う時間こそが敵に利することであるとシプラは知るからこそ踏み込むのだ。
「ムトナント家の対キャバリア戦闘、御覧に入れましょう」
踏み込んだシプラが手にしたのは吸着手榴弾。
それは投げ放てば鋼鉄の巨人たる『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』に吸着する。
しかし、分厚い装甲に阻まれているからこそ、パンツァーキャバリアは脅威なのだ。だが、弱点もある。
多くの戦場で、多くの生命が散った。
流れた血潮は川のように流れたが、しかしてシプラを最先端とする血族の命脈は絶えず紡がれてきたのだ。
例え、過去に敗北にまみれたのだとしても。
死に瀕したのだとしても。
それでも、過去から紡がれてきたものがシプラの脚を更に前に加速させる。彼女が放った吸着手榴弾は『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の関節部分に放たれ、その装甲に覆われていない鋼鉄を破壊するのだ。
「――……」
ぐらりと傾ぐ巨体。
次々とシプラは走っては、手にした手榴弾を投げ放つ。敵の的になってはならない。己より巨大な戦術兵器と相対する以上、足を止めることは自殺行為。
そして、敵は己を一撃で殺す手段を持っている。
ならばこそ、シプラは前に前にと踏み込む。
恐れを麻痺させるのではない。
恐れを乗り越える鋼の意志を持つからこそ、シプラは踏み込む。
手榴弾の爆発は、次々と『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちの体勢を崩していく。
「確かにパンツァーキャバリアは恐ろしい。ですが、人の痛覚通わぬが故に、損傷を理解できないというのならば」
体勢を崩した巨体を駆け上がり、シプラは宙を巻いながら眼下にある光湛える砲口を向けるパンツァーキャバリアの頭蓋の如き頭部を見下ろす。
手にした散弾銃の銃口がユーベルコードに煌めく。
それは止めの一射(クーデグラ)。
そして、彼女が告げることばは別れの言葉。
短く。
されど、端的に告げられる言葉は眼下にありし『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちの命運を知らしめる。
「|さ《Au》|ようなら《revoir.》」
放たれた弾丸が撃ち抜く装甲はパンツァーキャバリアを自律行動させる頭部パーツを打ち抜き、その躯体を残骸へと変えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
獅子魔王・レオニクス一世
(引き続き、炎の魔王軍を引き連れ)
キャバリアか……我が力を示すには丁度いい玩具よ!!
フハハハッ!!獅子魔王の名の下に命ず……「我を讃えよ」!!
『レオニクス陛下こそ偉大なる大英雄にございます!!』
ククッ……力が、漲って来るわっ!!
(獰猛な強者の牙を見せ、嗤う)
傀儡風情に我の偉大さは理解出来ぬであろうな。なればこそ、我が「《炎の審判》天から降り注ぐ裁きの炎》」に抱かれ、壊れ果てるがよい!!
どれ、少しばかり遊んでやろう。遠慮は要らぬ、せめてもの手向けだ!(魔王笏から特大の火球魔法を放ち)
ふむ……玩具には少しばかり、火力が強すぎたか?……フハハハッ!!
猟兵たちは誘い込まれた。
其れは事実であったし、またしかして退く理由にもなっていないことを知るだろう。
鋼鉄の巨人は、その砲塔に光を湛える。
ユーベルコードの輝きにして荷電粒子の収束。
その一撃はあらゆる鋼鉄を貫き、必殺の威力へと成さしめるだろう。
「キャバリアか……我が力を示すにはちょうどいい玩具よ!!」
獅子魔王・レオニクス一世(偉大なる大英雄・f40102)の瞳に宿るのは燃え盛る獅子の炎。
炎の審判たるは、己のユーベルコードであると吠えるようにレオニクス一世は戦場へと駆け出す。
獰猛なる牙を剥く姿は正しく百獣の王と呼ばれるに相応しいものであったことだろう。
「フハハハッ!! 獅子魔王の名のもとに命ず……『我を讃えよ』!!」
己に従う者。
それこそが魔王たる者の力の源泉であるというのならば、レオニクス一世は己を称える者の声を聞く。
耳朶を打つ称賛の声。
それが胸に去来させるのは誇らしさではない。
あるのは王である己が為すべきことをなさしめることを当然の行いとして認める自負のみ。
故に笑うのだ。
眼の前の鋼鉄の巨人でもって己の力を図ろうとするオブリビオンの策略めいた行動を嗤うのだ。
そんなものは無意味であると。
「傀儡風情に我の偉大さは理解で絹で朗な。なればこそ!」
己の対峙するということは己に逆らう者と同義。
掲げた掌が示す先にあるのは裁きの炎。
膨れ上がるユーベルコードの明滅放つ荷電粒子と炎とが激突する。
「壊れ果てるがよい!!」
荷電粒子の奔流と炎が周囲に撒き散らされ、その火花めいた熱量が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の装甲を溶かしていく。
熱せられたユーベルコードによる攻撃の余波はそれだけで彼等の装甲を焼き落としてしまう。
「少しばかり遊んでやろうと思うたが、な」
これでは己の力を示すどころではないとレオニクス一世は笑う。
どうあがいても目の前の『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』は彼女にとって玩具でしかない。
的である、とも言えるのかも知れなかった。
裁きの炎を手繰り、火球へと変えて解き放つ。
溶かし穿つような熱球は次々と『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を打ち抜き、爆散させる。
「ふむ……玩具には少しばかり、火力が強すぎたか? ……フハハハハッ!!」
レオニクス一世は笑う。
笑って、笑って、笑い続け、炎が満ちる戦場を破壊で満たしていく。
敵の『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』がどれだけ頑強に出来ていようとも、吹き荒れるように放つ炎を穿つ荷電粒子の光条が迫るのだとしても。
レオニクス一世は笑う。
笑って前に進むことこそが、王の務め。
先駆けを征く者にこそ後から続く者はついてくるのだ。
故に炎の道を血路とするようにレオニクス一世は爆炎の中を、さらに一歩前に進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
厳・範
花雪を乗せたまま。
なるほど。誘い込むことこそ狙いであったか。
花雪「お爺様…」
往々にしてあることよ、花雪。心配は要らぬ。
これを破ってこそ、猟兵なのだからな。
充填しきる前に【声雷】を使う。まあ、敵に道をあける気はないであろうが…。それが運の尽きよ。
花雪「見事に雷にうたれてますね…」
あれも『金属の塊』であるからな。どうしても通電してしまう。
無人機といえど…否、無人機であるからこそ、致命的となる。
遂行するのも、機械自身であるからな。
要塞というものは確かに威容でもって相対するものを圧倒するものである。
難攻不落の要塞とは斯くあるべし。
『ゾルダートグラード』の簡易型鋼鉄要塞は逆に簡易型であるがゆえに敵の油断を誘う構造をしていたのかもしれない。
体高5m級の戦術兵器を扱うからとは言え、高い天井と幅の広い通路というのは如何に罠を張り巡らせていたのだとしても侵入を容易なものへと変えるだろう。
「なるほど。誘い込むことこそが狙いであったか」
厳・範(老當益壮・f32809)は黒麒麟たる己の体躯の上に載せた宝貝人形の『花雪』が心配そうな声を響かせるのを聞いて身体を揺らす。
気圧されてしまっては元も子もない。
戦いにおいて、気というのは存外重要なものである。
戦意無き者は最早兵とは呼べず。
さりとて、戦意折れぬのならば、それは不屈の兵となるであろうから。
故に範は頭を振るようにして一つ嘶く。
「往々にしてあることよ、『花雪』。心配は要らぬ」
むしろ、と言うべきであっただろう。
このような窮地はこれからいくらでも襲い来る。
どんな困難な状況が、絶体絶命たる状況が我が身に降りかかるのだとして、己の心が揺らがぬ限り敵は己を打ち倒すことなどできないのだと知らしめるようにして範は迫りくる自立型『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の砲塔に湛えられた光を見やる。
砲撃の一撃は必殺の一撃。
放たれれば、それ自体が猟兵の身を灼くであろうし、宝貝人形である『花雪』もまた同様であろう。
それに恐れを覚える事自体は否定しない。
恐れを抱かぬ者は、己の生命さえもただの数字と化してしまう。それでは彼女が今まで体得してきたものの意味がない。
己の生命を見ることなきものに強さは宿らぬと証明するためにこそ範は己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
黒麒麟たる己が呼ぼ寄せる雷雲が戦場に満ちる。
「道を開けよ」
告げる言葉は令であれど律ではない。
ならば、その言葉にオブリビオンである『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』が従う謂れなどないのだ。
しかし、その令を退けようとするのならば話は別である。
己の声は雷。
そして、律である。
声雷(セイライ)は、天より降り注ぐ裁きの雷となって『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の躯体を撃つ。
「お爺様、これは」
「敵に道を開ける気はないであろうことはわかっておるよ。だが、だからこそ逆手に取る事ができる。この声は即ち令。勅でもなければ命令でもない。ただし、律を以て示すもの」
穿つ雷が迸り、高鉄の塊である『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』は、その膨大な雷の放つ電流によって神経とも言える電子回路をショートさせてしまうんだ。
「鋼鉄の躯体であるがゆえに通電してしまう。無人機と言えど……否」
「無人機であるからこそ、致命的となる、ですね」
「然り。如何に首魁の思惑があるのだとしても、遂行するのは機械自身。故に我の声に彼奴らは雷打たれ、その身を滅ぼすしかないのである」
範の言葉に『花雪』は頷く。
師でもあり育ての親でもある範の言葉を胸に刻む。
どれだけ絶望的な状況であるのだとしても、己の中にある力を、その知識を、あまねく出し切ってこその戦いであると知る。
諦めは敗北を意味する。
ならば、諦観をこそ振り払うのならば、その先に活路を見出すこともできようというものであろう。
それを範は『花雪』に伝え、降り注ぐ荷電粒子の雨の中を駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャン・ジャックロウ
部下達を待機させて1人で来たが案の定誘い込みかよ。
だがその先に有るんだろ?目的の物がよぉッ!
試作兵器ねぇ。奇遇だな、この『グラオザーム』もゾルダートグラードの試作実験機体なんだよ。
まあ、それを奪って猟兵の力で勝手に量産したんだがなッ!
せっかくだから性能比べと行こうかッ!
発射態勢の一機に高機動で接近してパワークローで砲身を無理矢理動かして別の機体がいる方に軌道を変えてやるぜ。
遠くの奴が荷電粒子を充填し始めたなら【アクティブキャンセラー】ッ!肩のレーザーキャノンで貫いてやる。
ヒュー、レーザー兵器なんてSFじみた物まで作るなんてヤベエな機械帝国。
まあ、俺が有効活用するんだがなッ!
【アドリブ歓迎】
明らかに罠だとジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)はイヌの獣人たる嗅覚で鋭く、その先のことを理解する。
待ち伏せ?
それとも罠か。
どちらにせよジャンは己一人が踏み込めば話が済むことだと脚を踏み出す。
そこにあったのは巨大な鋼鉄の巨人。
体高5mの戦術兵器。
それは己がよく知る兵器であったし、勝手知ったるものであった。
『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』。
「――へっ、試作兵器ねぇ。奇遇だなッ!」
放たれる光条。
それは荷電粒子の光条であった。これまで先行した猟兵たちがチャージの暇を与えずに『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を打倒してきたことによって短いチャージで当てることを選んできたのだろう。
ジャンは小賢しいと思ったことだろう。
けれど、ここまで来て止まる理由などない。
なぜなら、この先に己たちの目的の物、即ち財宝があると知るからだ。
「この『グラオザーム』も『ゾルダートグラード』の試作実験機体なんだよ」
ジャンの駆るパンツァーキャバリア『グラオザーム』が走る。
上半身に備えた砲身の長痛い方と、それを支えるアンダーフレームの脚部が高機動力を見せつけるようにして光条の砲撃を躱す。
「遅ぇっ!」
パワークローがうなり、『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の砲身を無理矢理動かして砲口を他の機体へと向ける。
放たれた光条が味方である別の『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の装甲を灼く。
「ヒュゥッ! 威力だけはあるみてぇだな! 厄介なことに!」
コクピットの中にアラートが響き渡る。
ロックオンされた、とジャンは理解してパワークローを開放して砲身を強引に曲げた機体の背を蹴って距離を取る。
ダメだ、と理解する。
どれだけ距離をとっても、荷電粒子砲の一撃からは逃れられない。
直感的に理解する。
それが野生の勘というものであったのならば、正しい。
「ならよぉ! 割り込み注意だッ、つってんだよ!」
研ぎ澄ます砲火衝動(アクティブキャンセラー)は、己の感覚を先鋭化させる。
向けられた砲口の殺気を感じる。
如何に無機物。
自立する無人機とは言え、照準を合わせれば、それがジャンの肌感覚に訴えるものがある。
あれには当たる。
直撃コースだと理解できる。
「だからよッ!」
『グラオザーム』の肩部に備えられたレーザーキャノンが己に狙いをつける『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を一瞬で貫く。
収束した荷電粒子が爆発を起こして機体を飲み込んでいく。
たまったものではないな、とジャンは笑う。
「ヒュー、レーザー兵器なんてSFじみた物まで作るなんてヤベエな機械帝国」
確かに敵に回れば脅威である。
けれど、奪えば?
答えは簡単だ。
奪えばこっちのものだ。
戦争をやっているのだ。それくらい多めに見てもらえるだろう。敵の武装を奪うことは確かにお綺麗ではないかもしれない。
「だがよ、こっちは戦争やってんだよ。綺麗事だけでやっていけるってんなら、そうするが」
そうでないというのならば、己の為したことは。為すことは誰も否定することはできないだろう。
「いいぜ、『ゾルダートグラード』よォ。じゃんじゃん試作でも実験でもするがいいぜ。その全部をひっくるめて俺が有効活用してやるからよォッ――!」
大成功
🔵🔵🔵
サーシャ・エーレンベルク
なるほどね、あの罠配置が次の罠に誘い込む罠そのもの、ってこと。
要塞の指揮官も色々と考えているようだけど……バカでかいパンツァーキャバリアたちをこれでもかって配置してるところを見るに、物量が一番手っ取り早いことも分かってるみたいね。
けれど、飛び道具で白兵剣戟士を撃退できると思ったら大間違いよ。
【聖戦剣戟陣】を発動、竜騎兵サーベル片手に接近するわ。荷電粒子の充填と発射に間に合いそうになければサーベルで荷電粒子砲を武器受けして反撃してみましょう。
それに、そんなデカブツじゃあむしろ粒子砲の盾にしてくれって言ってるようなものじゃない。
パンツァーキャバリアの砲撃死角に移動しながら、サーベルで斬り伏せる!
誘い込まれた、と眼の前の広がった空間をみやり、サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は理解した。
白い狼の耳が動く。
階梯に違いはあれど、しかし己の肌が告げている。
ここより先は危険な領域であると。野生の勘であるというのならば、きっとこれがそうなのだろうと直感的に彼女は理解していた。
くぐってきた修羅場の数だけサーシャは経験を積み上げてきた。
それは即ち、生きて還ってきたということに他ならず、危険を危険と認識しながら踏破することができたからだ。
「なるほどね、あの罠配置自体が次の罠に誘い込む罠そのもの、ってこと」
敵の指揮官も考えたことをする、とサーシャは一つ頷く。
目の前には鋼鉄の巨人。
体高5mの戦術兵器。
『ゾルダートグラード』と戦ってきたのならば、嫌というほど恐ろしさを身に叩き込まれてきた兵器。
それが無数に襲いかかってくるのだ。
砲塔に湛えられたユーベルコード、荷電粒子の輝きは、それだけで数多の生命を奪い取るものであると知る。
だが、彼女のはたじろぐことはなかった。
躊躇うこともなかった。
己は剣。
己の心が折れぬ限り、己の手にした剣もまた折れることはないのである。
「物量が一番手っ取り早いってこともわかっているみたいね。けれど」
息を吸い込む。
痛みは耐えられる。そして、その痛みが死に至るほどに致命的ではないというのならば。
「飛び道具で私を、『戦場の白き剣』と呼ばれた私を!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
きらめく光は、聖戦剣戟陣。
彼女の輝く姿は聖戦士。戦いにありて、その光り輝く姿こそが彼女の在り方。その存在一つで戦場に在りし友軍の戦意を鼓舞する者。
即ち、『エース』。
「――撃退できると思ったら大間違いよ」
放たれる荷電粒子の光条。
それを手にしたサーベルの一撃で切り払う。本来ならばあり得ない光景である。
ともすれば、その一撃でサーシャのサーベルが砕け散る運命すらあっただろう。けれど、その運命を覆すのがユーベルコードであり、猟兵である。
あまたある生命が紡いできたものがある。
猟兵たちが手繰り寄せた運命がある。
それらの全ては己の剣で切り開いて進むからこそ、サーシャは己を剣と規定する。
前に踏み出す度に肉体が軋む。
けれど、そんなことなど意味をなさい。
戦いの勝利を齎す。
ただそれだけのためにサーシャは鋼鉄の巨人『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』へと迫るのだ。
「飛び道具で白兵剣戟士を撃退できると思ったら大間違いよ!」
振るうサーベルの一撃が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の砲身を切り裂く。
音を立てて別の『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の砲身が己に向けられる。
その音を瞬時に聞き分けた狼の耳が動く。
視線を巡らせるまでもない。
切り裂いた鋼鉄の巨人の装甲を蹴ってサーシャは華麗に舞う。
彼女の白い髪が宙になびく。
翻る髪の合間から彼女の瞳がユーベルコードに輝き続ける。
「そんなデカブツを振り回しては……!」
『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の死角を盾にしながらサーシャは戦場を駆け抜ける。
「盾にしてくれって言ってるようなものじゃない」
踏み込む。
ただの一歩でいい。
その一歩を踏み出すだけで勝利に近づく。例え、己が傷つくのだとしても。
己の掲げた剣が、勝利への礎になるのならば、サーシャはその剣を翻す。振るう一閃は『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の脚部を切り裂く。
巨体が傾ぐ、崩れる音を響かせるのをサーシャは聞かない。
今の己は剣なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
いやー、噂の第六の猟兵たちと一緒に戦うとこんなに順調とはな。
少し前まではそろそろ撤退を視野に入れないといけなかったのに…。
頼もしい限りくまー。
【行動】
量産型のパンツァーキャバリアか…。
多勢に無勢だがなんとかなるか?
ツキミヅキで『騎乗突撃』くまー。
オレッちの『野生の勘』が囁くくまー。ほいほいっと(危険を感知)
うん、ツキミヅキを『自動射撃』モードに設定して飛び降りるくまー。
ツキミズキで注意を引き付けてるうちに、荷電粒子砲を充填している敵にライフルのアマロックでストライク・イェーガーで攻撃くまー。
脅威を優先に排除するのは常識だな。
かつての戦いを思い出す。
静寂とは真逆の砲火荒ぶ戦場。
逃げ惑うことも前に進むことも憚られた戦場。
泥と血潮にまみれた記憶を想起させる鋼鉄の巨人をオーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は見上げる。
「いやー、噂の第六の猟兵たちと一緒に戦うとこんあに順調とはな」
数多ある罠も関係なかった。
強行突破する者もいれば、隠密行動を取るものもいる。
けれど、全てがオブリビオンの罠を突破するという一点においてのみ共通している。誰もが同じ目的に向かって走っているのならば、道は紡がれていく。
ただ一人で出来ないのだとしても、前を進む者が紡いだ道を後に続く者に残すことができたのならば、こんなにも道は開かれるのだとオーガストは知る。
「少し前まではそろそろ撤退を視野に入れないといけなかったのに……頼もしい限りくまー」
パンツァーキャバリア『ツキミヅキ』が走る。
己の中の野生の勘が言っているのだ。
時間を掛けてはならないと。時間を駆けるほどに対する鋼鉄の巨人『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の、あの砲塔は己を必殺せしめると。
「多勢に無勢だがなんとかなるか?」
突撃じみた突進で『ツキミヅキ』が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』に迫る。
それは愚直な突進とも言えただろう。
けれど、オーガストはコクピットの内部で『ツキミヅキ』を自動操縦モードに切り替える。
射撃武装を放ちながら『ツキミヅキ』が疾駆する。
「『ツキミヅキ』、頼んだ、くまー!」
背面ハッチからオーガストが這い出して、肩部アーマーをつかむ。
ひょっこり巣穴から顔を出したような形になるが、状況はわかっている。他の猟兵たちもいる。
ならば、己がすべきことをオーガストは理解していた。
『ツキミヅキ』が疾駆し、『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の注意を引き付ける。
あの荷電粒子砲は打たせてはならない。
チャージと比例して命中率も上がるユーベルコードなのだとオーガストは察知していた。
「ゴー、ストライク・イェーガー! くまー!」
肩部アーマーから手を離し、オーガストは地面を転がるようにして走る。
目の前にあるのは荷電粒子をチャージし終えて『ツキミヅキ』に砲撃を放とうとしている『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の姿。
手にしたアサルトライフルの銃口を向ける。
瞳はユーベルコードに輝いている。
「脅威を優先に排除するのは常識、くまー」
引き金を引く。
荷電粒子を砲塔に送り続けるチューブ。それを狙ったアサルトライフルの弾丸が吸い込まれるようにして宙を飛ぶ。
炸裂した一撃が火花を散らしながら『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の内部へと誘爆させるように撃ち込まれるのだ。
膨れ上がる鋼鉄の躯体。
内部より広がる爆発が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を吹き飛ばす。
その残骸を身に受けながらオーガストは笑う。
「自律行動しているのだとしても、この程度なら、恐れるに足りないくま――」
大成功
🔵🔵🔵
クィル・ルーダス
相手も当然、備えがしてあるという事ですね
当然、望む所です……が、この程度で私を止められるとは思わないで欲しいものですね
一番脅威になりそうなのはあの砲台ですね、逆に機関砲程度ならサイキックの盾で弾けそうです
砲台のある腕とは反対方向から回るようにサイキックの盾を張り、接近
足元に来たら|杭撃機《パイルバンカー》により足を破壊し、体勢を崩します
そのあと、砲台に対し『壊杭撃』を叩き込み、破壊します
こうすればあとは何とでもできるでしょう、数が多いので対峙している相手以外の攻撃にも気を付けなければいけませんね
これで終わりではないでしょう?先を急ぎましょう
※協力・アドリブ歓迎
「相手も当然、備えがしてあるということですね」
広がる空間。
そこは体高5m級の戦術兵器が群れを為して行動を起こしても問題が無いほどの空間だった。
まるで此方をここに誘引するための罠であったと言わんばかりの光景であった。
しかし、クィル・ルーダス(杭撃皇女・f39666)に動揺はなかった。
「当然、望む所です」
脚を踏み出す。
如何に目の前に鋼鉄の巨人が迫るのだとしても、彼女は止まらない。止まる理由もなければ、退く理由もない。
だから、進む。
それに、だ。
「……が、この程度で私を止められると思わないでほしいですね」
踏み込む。
敵の攻撃で脅威となり得るのは、あの砲塔。
荷電粒子を収束させて放つ砲撃。あれは猟兵に対しても必殺と高い命中率を誇る。それを直感的に悟る。
だからこそ、回転する砲塔を避けるようにサイキックの盾を張りながら旋回するようにしてクィルは走る。
機関銃の弾丸は脅威にならない。ならば、クィルは構わず走る。手にしたパイルバンカーの一撃が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の脚部を撃ち抜く。
ぐらりと傾ぐ身体。
敵の脅威は確かにあの巨体なのかもしれない。
けれど、こちらは生身単身。
戦い方に気をつけるのならば、巨体がアドバンテージになるとは限らないのである。また生身でないからこそ、己の躯体の異常を痛覚でもって知覚することができない。
「例え、電気信号でエラーが出ているのだとしても。血の通わぬ鋼鉄の身体は!」
さらに踏み込む。
一本の脚部を破壊しただけでは、まだあの巨体を支えることができる。
敵の体勢を突き崩す。そのためには。
「もう一本!」
砕けた脚部を蹴るようにして対角線上へとクィルは飛ぶ。手にしたパイルバンカーの杭が打ち出され、その脚部を撃ち抜く。
軋む鋼鉄の脚部。
破片が頬をかすめながらも、クィルは冷静だった。
その瞳がユーベルコードに輝く。
それは地上からではなかった。体制を崩した『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』は倒れ込みながら、そのアイセンサーで見ただろう。
宙を舞うようにして飛びかかるクィルの姿を。
荷電粒子を収束した砲塔が向けられる。だが、遅い。
「|壊《ブレイク》……|杭撃《バンカー》ッ!」
きらめくユーベルコードを湛えた瞳。その手にしたパイルバンカーのいち撃破あらゆる防御や耐性といったものを無きものとする。
無敵たる能力であろうと。
いや、無敵と称されるものをこそ食い物にする一撃が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の装甲を撃ち抜くのだ。
炸裂する一撃が爆炎を上げる。
しかし、既にそこにクィルはいない。
降り立つ姿は優雅。そこに硝煙の香りすら似合わぬというようにクィルは軽く被りを振る。
「これで終わりではないでしょう?」
先がある、と知るからこそクィルは最奥から感じる重圧に視線を向けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
誘い込んだ?
劇薬を飲んだの間違いだろう
対キャバリア戦なら任せてもらおう
記憶は定かでなくとも
技術は身に染みついている
狩りの時間だ
悠長に充填する暇は与えない
速攻で距離を詰めて機体へ駆け登る
この|改造銃《デカブツ》は元よりキャバリアを仕留める為のものらしい
銃に括り付けられたパイルバンカーを直に押し当てて、まずは目立つ砲塔から部位破壊だ
大口径の徹甲弾と鉄杭を同時に叩き込もう
地形すら変わる威力の反動を利用して跳び、また次の標的を狙う
照準を絞らせないように、なるべく動き続ける事を意識しよう
ウサギに追い立てられる気分はどうだ?
クソッタレの屑鉄ども
この簡易型鋼鉄要塞を守るオブリビオンは過ちを冒したとイーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)はかすかに思う。
それはまだ確信めいたものではなかったけれど。
しかし、曖昧な記憶の中に燃えるような復讐心が、それを確信に変える。
そう、己たちは猟兵。
オブリビオンにとっての猛毒。
「誘い込んだ? 勘違いするな。俺達は劇薬だ」
イーブンは走る。
敵の攻撃は確かに強烈だが、苛烈ではない。
必殺と高い命中率を支えるのはチャージの時間だ。
ならば、裏を返せばチャージの時間さえ与えなければ良いだけの話だ。
記憶が定かではないのだとしても、対キャバリア戦闘は己の身体に染み付いている。故にこれからは。
「狩りの時間だ」
イーブンのウサギの脚力が唸りを上げるように肉体を支える骨身をきしませる。
踏み込んだ地面が割れるほどの衝撃。
彼の脚力は、ウサギの獣人であるからこそ尋常ならざる速度を生み出す。これは逃げ出すための力ではない。
眼の前の敵の喉元に喰らいつかんとする前進のために力だ。
「食らえ」
イーブンの手にあるのは大口径の対戦車ライフル。
しかし、其れは些か不格好な姿をしていた。ライフルの長身たる銃身だけではなくパイルバンカーと擲弾投射機をくくりつけられているのだ。
まるで荒唐無稽な有様だった。
けれどイーブンにとっては、それが対キャバリアにおける必殺の武器であるという革新がある。
「この|改造銃《デカブツ》は元よりキャバリアを仕留める為のものらしい」
荷電粒子が収束された一撃がイーブンを襲う。
けれど、イーブンのウサギの脚力は、己に狙いをつけるより早く飛ぶ。
飛翔するように高く飛び上がったイーブンは手にした必殺の一撃を叩き込む。元より互いに必殺の一撃を持つのならば、先に手を出した方が負ける。
そう、初手を譲るということは、草食たるウサギにとって当然のこと。
先手必勝など嘯くつもりはない。
もとより。
「お前たちの罠など食い破るのさ。俺を草食と侮ったのなら」
それが命取りだとイーブンはパイルバンカーを叩き込む。
さらに徹甲弾が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』に叩き込まれ、衝撃波が荒ぶ。イーブンの身体を吹き上げさせるほどの一撃は容易に周囲の鋼鉄要塞の壁面を破壊しながら、標的を撃滅させるのだ。
過剰にも思える一撃。
されど、イーブンには構うことなどなかったのだ。
「ウサギに追い立てられる気分はどうだ?」
散々にこれまで追い回されてきたのだ。
ウサギとて牙はある。
ならば、今度は己が突き立てる番だと言うようにイーブンは爆風荒ぶ中を歩む。
己の中にある復讐心が燃える。
燃えて、燃えて、燃え盛る。消えることのない炎は、己の身を灼くほどであったけれど。それでもその炎を消したいとは思わないのだ。
なぜなら、それこそが己の原動力。
奪ったものに報いを与えよと叫ぶ復讐の炎こそが、イーブンの中にある唯一なのだ。
そして、燃え盛る残骸に向かって吐き捨てるのだ。
「クソッタレの屑鉄ども――」
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーんこの世界観無視具合…
クロムキャバリアかな?残念獣人戦線でした!
全く、数揃えれば良いってもんじゃないよこんにゃろー!
要塞内部にバトルフィールド用意してるんじゃないよ!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:C.S】起動
時間加速し高速移動
敵の荷電粒子砲の砲塔から逃げながら接近していこう
荷電粒子砲の余波は『オーラ防御』でシールドを張りやり過ごす
砲塔の可動範囲を確認して射線を予測しながら接近していこう
接近しさえすればこっちのもん!
装甲の隙間を狙って剣戟を与え、配線を切断し下から斬り崩していこう
先ずは足、お次はセンサー!
武装へのエネルギーラインも『斬撃波』で斬って対処!
宇宙船の内部かと見紛う簡易型鋼鉄要塞。
その中を征く月夜・玲(頂の探究者・f01605)が見たのは、広大な空間。
体高5mの戦術兵器を扱うのならば理解できなくもないが、わざわざこれを用意しているということは自分たちは罠にはめられたということだ。
けれど、それ以上に玲は頭痛がする思いであった。
なぜなら、この『獣人戦線』は20世紀初頭の世界観であったはずだ。いや、そもそも機械帝国やらなんやらと数多の世界の関与を思わせる『超大国』が侵略を進めているのだから、ないこともないはずである。
「けどやっぱりこの世界観無視具合……クロムキャバリアかな? 残念獣人戦線でした! みたいなノリ!」
とっちらかりすぎであると、玲は叫ぶ。
さらに迫る『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の群れ。
「全く、数揃えれば良いってもんじゃないよこんにゃろー! 要塞内部にバトルフィールド用意してるんじゃないよ!」
抜き払った模造神器の蒼い刀身が励起するように輝く。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
敵の武装の恐ろしい点は、あの荷電粒子砲である。あれが連射されるということは、それなりの技術力を『ゾルダートグラード』は有しているということになる。
そして、撃ち込まれる荷電粒子の光条は恐ろしく早く、そしてなおかつ群れ為すという点において圧倒的な面制圧能力を持っている。
「なら、こっちも加速すればいいってことでしょ! 封印解除、時間加速開始」
Code:C.S(コード・クロノシール)が紐解かれる。
模造神器に施された封印が解除され、ぐにゃりと玲の視界が歪む。
否。
世界がゆがむ。
手にした模造神器はユーベルコードにきらめき、その蒼き刀身を残光のようにして『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちの間隙を縫うようにして駆け抜ける。
今の加速した彼女を誰も捉えることはできない。
圧倒的な速度を前にして『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちの照準は合わない。
照準を合わせる必要がないのだとしても、しかし、面制圧は今の玲にとっては無意味だ。
放たれる弾丸が早いからこそ面制圧は意味を成す。
けれど、玲には己に降り注ぐ数多の荷電粒子の弾丸を全て捉えている。
見えているというよりも、認識できている、という方が正しいだろう。
迫る弾丸の全てを尽く躱しながら、玲は地面をけって飛ぶ。
「接近しさえすれば、こっちのもん! 下手に砲塔なんて備えているから、そんなことになる!」
踏み込んだ玲の模造神器の刀身が配線を切り裂き、『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の脚部を切り裂く。
切り崩すようにして玲の刀身が舞う度に鋼鉄の巨人は傾ぐように躯体を傾けさせる。その膝を蹴るようにして玲は駆け上がり、センサーを串刺しにし弾き飛ばす。
「これってだるま落としみたいだよね!」
残骸へと成り果てた『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』を蹴飛ばし、玲は次なる敵を見据える。
解体するようにして斬撃を揮って理解できた。
敵の要はやはり荷電粒子の砲塔。
これを強みにするための四脚であり、それ以外はおまけでしかない。
なら、と玲は己の迫る光条の雨をかいくぐりながら、模造神器の刀身より放たれる衝撃波でもって鋼鉄の巨人たちに配されたエネルギーラインを切り裂き、次々と無力化していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ドドーンと[ドリルボール]くんで壁を突き破って堂々入場ーッ!
フフーン!なるほどエリアボスってやつだね!
用意されたチャレンジって感じかー
ゲームっぽくて好き!
●タイムアタック!
チャージ攻撃するっていうなら当然速攻だよね!
[ドリルボール]くんABCを前に立ててとっかーーん!
例えすぐに撃てても強い攻撃は連射できない!到達できる!と【第六感】で勘案してから突撃ーっ!
距離を詰めて[ドリルボール]くんでギャリギャリギャリ!っと装甲を削ってー…UC【神撃】でドーーーンッ!!
これはけっこう高得点だよね!
クリア報酬はなにかなー?
え、レアドロップとか無いのー?
んもー
簡易型鋼鉄要塞の内部に作られた広い空間。
そこにひしめくようにして存在していた鋼鉄の巨人たち。
『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちは猟兵たちとの戦いで数を減らしてはいたが、未だ輝く砲塔から荷電粒子の一撃を叩き込み続ける。
際限ない戦いの渦。
猟兵たちのユーベルコードによって、また一体と崩れ落ちていく。
けれど、それでも自律無人機である『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』に動揺はない。
ただ命ぜられた行動を取るだけだ。
即ち、猟兵を消耗させること。すり潰すこと。
物量は確かに猟兵たちにとっては無意味であったのかもしれない。けれど、度を過ぎた物量は如何な猟兵であっても疲弊を招くものである。
「ドドーンと壁を突き破って堂々入場ーッ!!」
だが、そんな膠着したような状況を突き崩すようにして掘削球体が壁面を突き破って突入してくる光景は、如何なるものであっただろうか。
「フフーン! なるほどエリアボスって感じ! 用意されたチャレンジって感じかー!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は突入してきた掘削球体の上に立ちながら、笑う。
「ゲームっぽくて好き!」
攻略方法はもう見えている。
何故ならば、敵の攻撃は全てチャージが起点となっている。
あの荷電粒子の砲塔は確かに脅威である。
高い威力と命中率を誇るのならば、確かに猟兵であれど無事ではすまないだろう。だからこそ、ロニは掘削球体を前面に並べ立てる。
放たれる『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の砲撃が掘削球体を貫く。
荷電粒子の光条は高い威力を捨てれば即座に撃つこともできるだろう。けれど、ロニにまでは届かない。
盾とした球体の陰からロニは有り余る膂力で持って球体を押し込む。
「当然、初撃を防いだのなら、速攻で決めるものだよね!」
そう、すぐに撃ち込むことができるのだとしても、即座に連射はできない。ならば、自分が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』に到達することはできるとロニは理解する。
第六感が告げているのだ。
己がこのまま突き進めば良いのだと。
そうすることで拓ける道もあると理解しているからこそ、ロニの瞳はユーベルコードに輝く。
「これは結構な高得点を狙えるんじゃない?」
放つ球体が掘削機構を回転させる。
その刃が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の装甲と激突して火花を散らす。砲塔がチャージを終えて荷電粒子の収束ビームを放つ瞬間、ロニは球体の陰から飛び出し、その拳を握る。
それこそが彼のユーベルコード。
輝く拳は、神撃(ゴッドブロー)の一撃をもって『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』へと叩き込まれる。
地形を破壊するほどの衝撃波と共に『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちが吹き飛ぶ。
その瓦礫と化した戦場の上に立ち、笑う。
「ふっふーん、クリア報酬はなにかなー?」
レアドロップとかあると嬉しいんだけどなーとロニは首を傾げる。
『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の残骸の上でロニは少し待っていた。けれど、待てど暮せど、そうしたものは訪れない。
「なーんだ。折角楽しいゲームだって思っていたのになぁ。でも、ま、いっかー」
ロニは次こそは、と思う。
この先に待つ存在ならば何かレアドロップが狙えるのかもしれないと――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
いかにパンツァーキャバリアの群れとて
|広域へ攻撃することに定評のある相方《光の勇者》がいればこの程度……
ってあれーーっ!?
勇者辿り着いていないのでは!?
想定外なのですが!?
ええい、仕方ありません
|エイル様《主人様》への愛で乗り切ります!
【テールム・アルカ】起動
ハイペリオンランチャーとパルスマシンガンを
人の大きさにリサイズして召喚
『アンゲールス・アラース』を装着して空中機動
空から攻めます
いかに自律型の機動兵器とて
空を飛び回る人間には反応しきれないでしょう?
さぁ、やりましょうか!
ハイペリオンランチャーの範囲攻撃で牽制したら
パルスマシンガンで撃ち抜く作業
上から下から思う存分叩き込んで差し上げます!
猟兵たちの戦いは紡ぐものである。
誰かの戦いの痕は轍となって道となるだろう。どれだけの困難であっても、先征く者たちが排したのならば、その先へともっと先へと道を広げていくのだ。
「いかにパンツァーキャバリアの群れとて|広範囲へ攻撃することに定評のある相方《光の勇者》がいればこの程度……」
眼の前に群れる『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちをみやっても、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は余裕を保っていた。
何故ならば、彼女が常々手を焼いている勇者の音色は、自分にも被害が及ぶこともあれど、しかしてその広域攻撃の凄まじさをもってすれば、鋼鉄の巨人たちであってもひとたまりもないはずだった。
しかし、残念なことに今回のステラは一人なのである。単独行なのである。
「……ってあれ――ッ!? 勇者たどり着いて居ないのでは!?」
此処は私に任せてステラさんは先へ! とかそんなやり取りがあったのかどうかはわからないが、ステラに取っては少なくともこれは誤算だったのだろう。
想定外の事態にステラは自身を狙い放たれる雨のような荷電粒子ビームの中を駆け抜ける。
「ええい! 仕方ありません。居ないものをねだったところで! こんなときは!」
そう、こんな時には!
「|『エイル』様《主人様》への愛で乗り切ります!」
あ、これはダメそう、と一般人なら思っただろう。
それほどまでに目の前に広がる光景は絶望的であったのだ。
群れる鋼鉄の巨人たちの砲塔から放たれ続ける荷電粒子ビームは痛烈なる一撃。鋼鉄の装甲ですら容易く貫き通すであろうし、また熱線の如き一撃は生身では到底耐えられそうもないからだ。
けれど、ステラは違う。
猟兵であるという以前に彼女はメイドなのである。
メイドは主人あってこそ。
ならば、彼女の愛は叫ばれるべきであったのだ。強烈なる自己暗示にも似た叫び。
彼女の愛は、多分、きっとそんな感じのものであった。
誰がなんと言おうとも己は『主人様』のメイド。
その確固たる自身があるのならば、彼女の瞳はユーベルコードに輝き、リサイズされたキャバリア武装であるハイペリオンランチャーとパルスマシンガンを両手に携え、天使の如き風の翼をはばたかせ、一気に飛ぶのだ。
迫る光条を躱し、さらに飛び込む。
「如何に自立型の機動兵器とて、空を飛び回る人間には対応しきれないでしょう?」
引き金を引いて放たれるハイペリオンランチャーの一撃が『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の周囲に放たれる。
牽制の一撃。
爆風が荒ぶ中をステラは華麗に飛ぶ。
「さぁ、やりましょうか!」
爆風を切るようにしてステラは地面をスレスレに飛び、パルスマシンガンの弾丸をばらまく。『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』の弱点は露出しているケーブルや関節。
ならば、ステラは敵が巨体であることを良いことに縦横無尽に風の翼でもって飛び回り、その急所に弾丸を打ち込み続けるのだ。
「慣れてしまえば簡単な作業ですね。上から下から思う存分叩き込んで差し上げます!」
撃ち込まれる弾丸は爆炎の中であっても狙い過たず。
『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』は、翻弄されるままに撃破されていく。
炎が巻き上がる中、ステラは見ただろう。
数多の残骸を積み上げることしかできなかった『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』たちが這い出してきていた通路の向こうに、煌めく瞳とすさまじい重圧を放つ存在を。
そう、それこそが『平和』の名を冠する傭兵たるオブリビオン。
この簡易型鋼鉄要塞の主にして、最大の障害――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『サロメサージェント』
|
POW : サージェントグレネード
【軍服】から【手榴弾】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD : ツインガン
レベル分の1秒で【2丁拳銃】を発射できる。
WIZ : デス・レイ
自身の【拳銃】から、戦場の仲間が受けた【負傷】に比例した威力と攻撃範囲の【殺人レーザー】を放つ。
イラスト:sawada2
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
現状だけ見るのならば猟兵たちに戦いの趨勢は傾いているのだろう。
罠を突破され、群れの如き『試作兵器実験用パンツァーキャバリア』は全てが残骸へと成り果てた。
爆炎上がる空間において、空気が熱に揺らめく。
陽炎の如き向こうに一つの人影が現れる。
「見事だ。いや、全く以て。想定内であるけれど、想定外でもある。オブリビオンある所に猟兵あり、というところだろうか」
サーコートを肩で覆うようにして現れたのはオブリビオン『サロメサージェント』。
『平和』の名を冠しながら、しかして戦いをこそ望む者。
『超大国』、『ゾルダートグラード』に雇われた傭兵である。
彼女が只者ではないことは猟兵たちも理解しただろう。
相対するだけで尋常ならざる重圧を感じる。『超大国』を渡り歩いてきた、とい言葉を信じるのならば、その力が強大であることを認めるしかない。
「諸君らを此処まで疲弊させたのならば、あのガラクタも役に立ったと云うべきだろう。少しの役にも立たないと思っていたが、中々どうして」
前口上が長くなってしまった、と『サロメサージェント』は笑う。
己の勝利を信じているのではない。
ただ、目の前の戦いをこそ楽しむように彼女は首を傾げる。
「どうしたんだ。猟兵。不意打ち、騙し討ちはしないのか。べらべらと喋っているのは、別に諸君らとおしゃべりをしたいわけじゃあないんだ」
笑う『サロメサージェント』はまた首を反対側に傾げる。
「いつでも来いってことだよ――」
ジャン・ジャックロウ
ヒュー、えらいべっぴんさんのご登場だな。
今からでも俺に雇われないか?倍の金額出すぜ?是非ベッドの上で俺の警護をして欲しいんだが……駄目か?
ヒャッハッハッ、じゃあ仕方ねぇッ!勿体ねぇが敵なら始末しねえとなッ!
『グラオザーム』の戦車砲を喰らいなッ!生身で何処までキャバリアの相手が出来るかなッ!?
2丁拳銃の連射?豆鉄砲で何が……ちょい待てッ!?
キャバリアの脆い部分に正確に弾を叩き込み続け…不味いッ!?脱出だッ!
ちぃ、あの連射はヤベエ。【アクセラレイター・ビースト】ッ!
高速移動で避けながら銃剣で応戦よ。気を抜いたら蜂の巣にされちまいかねない。
お宝が目の前ってのに厄介この上ないぜッ!?
【アドリブ歓迎】
「ヒュー、えらいぺっぴんさんのご登場だな」
ジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)はパンツァーキャバリア『グラオザーム』のコクピットの中から軽口を叩く。
彼の瞳に映るオブリビオン『サロメサージェント』は確かに、彼の言葉通りの見目の美しさがあった。
けれど、それがその通りではないことをジャンは猟兵であるがゆえに知るだろう。
あれは滅ぼさなければならないもの。
どれだけ美しく見えようが、あれが存在している限り世界は破滅に導かれてしまう。
「褒めてもらってなんだけれど、私と君とでは同じ道を歩めないのでね」
瞬間、彼女の手にしたハンドガンから銃弾が放たれる。
いや、放たれた、と知覚した瞬間に彼女の手が跳ね上がっていたと云うべきか。恐るべき速度で抜き打ちしたハンドガンの弾丸が『グラオザーム』の装甲をえぐる。
「いい腕をしてるじゃあないか。今からでも俺に雇われないか? 倍の金額を出すぜ? 是非ベッドの上で俺の警護をして保身だが……」
「娼婦のマネごとをするつもりはないよ。だが、倍の金額というのは魅力的だな。とは言え、それだけ出せるということは、君から貰うより、奪ったほうが楽しそうだ」
「なら交渉は決裂ってやつだな!」
叩き込まれる『グラオザーム』の戦車砲。
放たれた弾丸はしかして『サロメサージェント』を傷つけることはなかった。
すでに彼女の身体は爆風の外にある。
早すぎる。
本当に生身なのかと思うほどの速度で『サロメサージェント』は爆炎上がる戦場に紛れるようにして飛ぶ。
いや、それ以上に恐るべきは。
「ッ、また被弾ッ?」
装甲をえぐる音が響く。
嫌な予感がした。それはさらに連続して弾丸が装甲に当たる音を奏でることで確信に代わる。
「コイツまさかッ!」
「確かに分厚い装甲をしている。けれどさ」
『サロメサージェント』は生身だ。
生身でパンツァーキャバリアに肉薄するなどありえない。いや、あり得ないことを仕出かすのがオブリビオンであり、ユーベルコードである。
今叩き込まれてる銃弾は、恐ろしく正確に同じ箇所へと撃ち込まれているのだ。
それを理解した瞬間、ジャンはコクピットで緊急脱出のレバーを引く。
パンツァーキャバリアの優位性を即座に捨てた判断に『サロメサージェント』は笑う。
「良い判断だ。そのままパンツァーキャバリアに固執していたのなら、君はあれを棺桶にしていたところだよ」
だが、とさらに叩き込まれる弾丸。
敵は爆炎の中であってもジャンの姿を捉えているかのように二丁のハンドガンの引き金を引いている。
やばい、と思った瞬間彼の瞳がユーベルコードに輝く。
己の中にあるのは獣の本能。
それを具現化したかのような真紅の疾風を纏い、ジャンは弾丸の軌跡を横目に見やる。
「ほう、躱すか。生身のほうが早いとは」
「抜かせ! 超えるぜ、レッドゾーンッ!」
それは、血に餓えた獣の神駆(アクセラレイター・ビースト)。
圧倒的な足で疾走するジャンの身体は弾丸よりも早い。気を抜けば、それだけでハンドガンの銃弾が致命打になり得る。
だからこそ、ジャンは集中する。
己の中の獣の本能に従う。
銃剣を抜き払い、近接戦闘に持ち込むのだ。
「速いな……これは気を抜けない。大した男ぶりだと言っておこうか、君」
「ハッ! 今更かよッ!」
銃剣がハンドガンを跳ね上げる。
カードが浮いた。仕留められる。
そうジャンが気が付いた瞬間、ハンドガンの銃口がジャンの眉間に突きつけられる。だが、その刹那に満たぬ瞬間にジャンは首を傾け、銃弾をかすめながら踏み込む。
「まったくよぉ! お宝が目の前にってのに厄介この上ないぜッ!?」
振るう銃剣の一閃が『サロメサージェント』の胸を切り裂く。
血潮が走り、『サロメサージェント』は痛みにあえぐでも無く、笑う。
「いいね。君。名前を聞いておこうか。覚えておきたい」
「始末しなきゃならねぇ敵に名乗る名前なんてねぇよ!」
さらに叩き込まれる斬撃をもって、ジャンは答えと為し、圧倒的な速度の中で繰り広がれる剣戟と銃声に塗れるようにして『サロメサージェント』を追い詰めていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シプラ・ムトナント
【薬品調合】した軍用麻酔と回復薬の入った軍用注射器を取り出し、『用法用量の不遵守』を使用……痛覚が麻痺し、スピードと反射速度が向上します。
乱用ですが、【激痛耐性】は充分です。
いつでも来い、というのなら……参ります。拳銃弾では、止められませんよ。
一発でも被弾を少なくするために、左右に方向を変えながら全力で接近。
無傷でなくても構いません、手足さえ動けばそれで良い。
距離を詰め切り次第、|散弾銃《レミー》による【零距離射撃】を。
……わたしはこの戦いが、|寿命《いのち》が、|故郷《フランス》の平和の為になると信じています。
貴女が平和の名を冠しているのなら……聞かせて下さい。貴女は、何の為に戦うのですか。
胸を十字に切り裂く鮮血の痕を見た。
其れは紛れもなくオブリビオン『サロメサージェント』が胸に刻んだ傷跡であった。
どれだけ強大なプレッシャーを放つ存在だとしても、傷つけられぬ道理はなかったということだ。
それだけがわかればよかった。
自らの選んだこと。
その道筋の先にあること。
何故自分が戦うのか。その理由をシプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は改めて実感する。
手にしたのは軍用麻酔と回復薬の入った注射器。
その針の切っ先をシプラは躊躇うことなく己の皮膚へと突き立てる。
液体が押し込まれるとシプラの瞳が見開かれる。
そこにあったのは絢爛たるユーベルコードの輝き。
そう、己は選んだのだ。己の意志で。己の意義を世界に問うべく。
「いつでも来い、というのなら……参ります」
彼女が己に投与した薬剤は、確かに己の傷の痛みを紛らわせ、また同時に癒やすもの。
しかし、それは用法用量を遵守していればの話だ。
今、彼女は用法用量の不遵守(オーバードーズ)を以て、目の前のオブリビオンに迫る。
目まぐるしく変わる戦場。
吹き荒れるように爆煙が立ち上る戦場にありて、シプラは『サロメサージェント』を見据える。
「ああ、来たまえよ。私は……此処だよ、君」
トントン、と余裕であるのか『サロメサージェント』は己の額を示してみせた。
同時にシプラの四肢を穿つ弾丸。
ハンドガンを向けたことすら知覚させぬ圧倒的な速度での抜き打ち。放たれた弾丸はシプラの身体を貫通した。
ならば戦える。
銃弾が身体の中に残っていることのほうが問題なのだ。
「ッ、……!!」
「へえ、悲鳴も挙げないか。中々気丈なお嬢さんだと言っておこうか。だが」
「――ッ!」
シプラは歯を食いしばるようにして前のめりに駆け出す。
敵の銃弾が見えない。
銃口のゆらめきさえも感知させぬ速度でハンドガンからは弾丸が放たれている。悔しいが、敵の速度のほうが上だ。
けれど、シプラは痛みを無視する。いや、感じないようにしている。
軋む骨身も、何も感じない。ただ、己の肉体が限界を超えて、まるで傷つけながら壊れながら前にすすんでいるかのような錯覚さえ覚えさせる。
痛覚は己の肉体への異常を知らしめるものであり、同時にリミッターでもあるのだ。
だが、シプラは今、それを外している。
痛覚を麻痺させ、ただ只管に前に進むために彼女は飛び込む。
弾丸を受けても止まらない。
何発受けても彼女は止まらない。手足が動けばそれで良い。
「へえ、恐れなく。痛みなく。けれど、それは危ういとは思わないかい、お嬢さん」
「わたしは!」
ハンドガンの銃口が額に突きつけられる。
遅れる時間の流れの中、シプラは見ただろう。己の額、眉間に向けて放たれる弾丸を。されど、彼女は絶望していなかった。
訪れる未来が如何に死を突きつけるのだとしても。
それでも彼女は絶望しない。
神速の弾丸を、神速の反射で躱す。限界を超えた神経が焼き切れる。だが、シプラは構わない。神経が焼ききれたのならば、繋げれば良いのだ。
オーバードーズによって撃ち込まれた回復薬が神経を再生させ、弾丸撃ち込まれた傷を塞ぎ、シプラを前に進ませる。
「……わたしはこの戦いが、|寿命《いのち》が、|故郷《フランス》の平和の為になると信じています」
銃身の短く切り落とされた散弾銃を『サロメサージェント』の腹部に突きつける。
胴体は最も大きな的だ。
致命的な場所を狙っても、恐らく躱される。
ならばこそ、彼女は少しでも弾丸が当たる勝率を引き上げるために人体の最も多く占める腹部に銃口を押し付ける。
引き金を引くのに躊躇いはない。
己の手に在る|散弾銃《レミー》は初陣で贈られたものだ。だから、負けない。負けてはならないと知るからこそ、シプラは託す。
「貴女が平和の名を冠しているのなら……聞かせてください」
「なにをだい?」
引き金が引かれる。
弾丸が炸裂し、神速の反応を持ってしても『サロメサージェント』は躱しきれなかった。
腹部をえぐるように叩き込まれた弾丸は、彼女の脇腹にさらなる傷を刻み込むことだろう。
血潮に染まる羊毛は、されど揺れることなく。
「貴女は、何のために戦うのですか」
その問いかけに『サロメサージェント』は血潮を撒き散らしながら笑っていうのだ。
「言うまでもないさ。『平和』のために。知っているかい、猟兵。『戦いに際しては心に平和を』ってね。だから」
「なら、どうして戦いを撒き散らすのですか!」
銃声は疑問をかき消すように。
されど、シプラは己の限界を超えて、己の信じる『平和』のためにこそ、戦うことを示すように『サロメサージェント』を追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サーシャ・エーレンベルク
そっちこそ、悠長に構えていていいの?
油断する気もない。要塞内の罠やキャバリアの行動があなたの定めた期待値に達していたのなら……私の力量もまだ想定通りだった言うことね。
それなら私も、白き剣として本気を出させてもらいましょう。
あなたの想定を超える力を以て。
手榴弾の投擲後、爆発には猶予があるはず。
【凍冰戦域】を使用してオーラを纏い即ダッシュ。
爆発も、そして爆発までの期間も炎も、私のオーラに触れれば全ての時間が停滞し氷結するわ。それは爆発の衝撃波だって例外じゃないの。
私に銃口を向けるのも結構。銃弾の時間さえも停滞するオーラの領域を越えられるのならね。
8倍になった白き剣の一撃、受けてもらうわ!
炸裂する散弾の銃撃を受けてなお、血潮撒き散らすばかりでオブリビオン『サロメサージェント』は霧散することはなかった。
彼女は笑っていた。
あの傷は尋常ならざる痛みを引き起こすものであったはずだ。
先行した猟兵のユーベルコードはどれもが強烈であったし、苛烈であった。けれど、サーシャ・エーレンベルク(白き剣・f39904)は違和感を覚える。
刹那的な行動ではない。
そんな行動をするものがわざわざ罠を仕掛け、物量で此方を疲弊させるような真似をするだろうか。
「そっちこそ、悠長に構えていていいの?」
その言葉に『サロメサージェント』は笑う。
「良いともさ。結局私は影法師だ。過去、世界に見せた人物が落とした影でしかないのだよ。ならば『今』を生きる君たちは!」
サーコートの袖から放たれる手榴弾が炸裂し、凄まじい炎をサーシャに見舞う。
強烈な威力だ。
けれど、サーシャは見ただろう。
宙に放り投げられた数多の手榴弾。
それは一つや二つではなかった。
まるでこの簡易型鋼鉄要塞ごと自分たち猟兵を爆殺せんとするかのような量。
「あなた……! 自分ごと!」
「いいや、そのつもりはないさ。こうするのが確実だろうと思ってね」
「私達の力量もまだ想定通りだったということね」
「いや、実に見事だと思うよ。諸君らの力というのは……けれどね」
己を影法師だと宣う『サロメサージェント』は笑う。
炸裂する爆発の最中に見える彼女の瞳は、どこかつまらなそうだった。
それが己たちに対する落胆であったのかはわからない。けれど、サーシャは些事だと、それを切って捨てる。
そう、些事だ。
あの爆発だって迫っているが、触れなければ意味がない。
飛び交う銃弾も。
迫る砲撃も。
どれもが己の生命を脅かすには己に触れねばならない。ならば、サーシャはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
見よ。
これより先に広がるは、凍冰戦域(フリーレン)。
戦いに勝利を齎す『戦場の白き剣』のきらめきを見よ。それはユーベルコードにして、白銀のオーラ。
その放出されたオーラを『サロメサージェント』は目を細めて見つめる。
「世界を……いや、違うな。これは自らに迫る攻撃だけを減速凍結させるユーベルコードか」
「ええ、その通り。爆発も、そして爆発までの期間も炎も、私のオーラに触れれば全ての時は停滞し氷結する!」
だからこそサーシャは前に踏み出す。
爆発に飲み込まれれば己は滅びるだろう。死ぬだろう。
けれど、それ以上に恐ろしいことをサーシャは知っている。己の心が折れること。己の剣が折れてしまうこと。
人は負けるようにはできていないのだ。
連綿と紡がれてきたものの先に己は立つ。
故に己に迫る全ての攻撃は凍結せしめるが、己は前に進み続けることを宿命づけられている。
「自らの喉元を鋒に突きつけるかのような……そういう恐れを君は知らぬというのかい」「いいえ、私は知っている。恐れを知らぬということは、恐れを克服したことにはならない。知らぬことを知るがゆえに、人はその暗闇の如き見通すことのできない未来を勇気でもって照らすのよ」
振るう竜騎兵サーベルの一閃が宙に舞う手榴弾を切り裂き、振り払う。
爆発は起こらない。
全ては彼女の轍の後にて残されるばかり。
踏み込む。
己の手に宿る力。
それは今や8倍を数える鮮烈なる一撃。その一撃を前に『サロメサージェント』は理解しただろう。
あの斬撃を受けてはならないと。
「似ているな、君の戦い方。そうして人は前に進むことを知るからこそ、直向きに死に向かっているのだと!」
ハンドガンの銃口がサーシャに向けられる。
けれど、それは意味がない。
白銀のオーラが弾丸に触れた瞬間、その場に停滞する。
「受けなさい、白き剣の一撃!」
振るう斬撃は『サロメサージェント』の身体に深々と傷跡を残す。
強化された斬撃の一撃は、まさしく勝利を呼び込む剣たる所以を知らしめるように、轟音と共に簡易型鋼鉄要塞に響き渡るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
高天原・光明
問答無用か、それも良いだろう。ならば、俺と貴様の間に交わされるのは銃弾と鏃だ。互いに手段を選ぶ必要は無いだろうな?
全く隙のない奴を打ち倒すには、一撃必殺を狙うのが最善か。〈覚悟〉を決めてダクトから躍り出て相対し、奴の僅かな動きも見逃さないよう〈集中力〉を高めよう。
奴の銃口が動いたら勝負に出るぞ。射線を〈見切り〉、【UC:虚より飛翔せし魔弾】(SPD)を発動だ。二丁拳銃のマズルフラッシュ、その閃光に身を隠すようにし、奴の急所目掛けて矢を放とう。致命傷以外は勲章として受け止ってやるさ。
いつでも来い? それはこちらの台詞だ。先に抜け、一射で終わらせてやる。
(アドリブ負傷等々全て歓迎です)
白い閃光のような斬撃の一撃がオブリビオン『サロメサージェント』の身体に撃ち込まれる。
血潮が走る。
その赤い鮮烈なる光景を持ってしても『サロメサージェント』の顔から笑みが消えることはなかった。
戦いを楽しんでいる。
己に刻まれる傷こそ己の存在の証明であるというように笑っていた。
「次は」
彼女の視線はダクトを見上げる。
己が見られている、と高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)は視線に乗る殺気とも異なる重圧に怖気が走る。
生命のやり取りをしながら、そこにあったのは単純な楽しみを見出すだけの幼子の如き未成熟。されど、その身に宿った暴力は本物だった。
だからこそ、光明はダクトから降り立つ。
まったくもって隙がない。
これほどまでの使い手を相手にして小細工は不要であると理解する。
「問答無用化、それも良いだろう」
「ああ、私達の間にそれは不要だろう。語らった所で相互理解などできようはずもない。諸君らは猟兵で私はオブリビオンだ」
銃声と同時。
いや、銃声よりも早く光明の身体を穿つものがあった。
弾丸。
『サロメサージェント』のハンドガンが放った弾丸だ。恐るべき早打ち。それがユーベルコードであると光明は理解するだろう。
僅かな動きも見逃さない、と集中していてなお、これである。
恐るべきことである。
だが、光明は走る。
弾丸が肩を射抜く。
頬をかすめる。
そのどれもが痛みを与えるものであったが、致命的な部分を光明は幸運なことに避けることができていた。
彼の瞳がユーベルコードに輝く。
己と『サロメサージェント』の間に言葉はいらない。
かわされるべきは銃弾と鏃のみ。
互いに手段は問わない。問う理由がない。純然たる争いの前に言葉はなんと無意味なことだろうか。
「いつでも来い?」
それはこちらのセリフだと光明は歯を食いしばる。
ハンドガンの弾丸は光明の身体を射抜く。
奇しくも互いに獲物は銃と和弓。
「猟兵、どうした。私は隙だらけだぞ」
挑発にも似た言葉と共にハンドガンが光を放つ。マズルフラッシュ。
それは確かに己の視界を染め上げる。
けれど、同時に閃光は『サロメサージェント』の瞳を塗りつぶす。故に光明の姿は彼女の視界から消える。
皮肉にも己の射撃で彼女は光明を刹那とは言え見逃すのだ。
構えた和弓を引き絞る。
数多の獣と影朧を射抜いた弓は、光明の腕と一体化するような感覚を与えてくれる。己が思うままに矢は宙を駆け抜けるだろう。
「虚より飛翔せし魔弾(デア・フライ・シュッツェ)」
そのユーベルコードの名を告げる。
それは彼の技術がユーベルコードにまで昇華したことを示す。故に放った矢は閃光を射抜くようにして走り抜け、『サロメサージェント』の片目へと突き刺さる。
光明は、その一射に掛けた。
弄ぶようにして弾丸を弄した『サロメサージェント』は、その一射で致命的な打撃を、その身に受けることになる。
それが後に続く者たちの勝利への鎹となり、まだ同時に楔となるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イーブン・ノルスピッシュ
連携アドリブ歓迎
平和が聞いて呆れる
邪魔をするなら、まずはお前からだ
このクソッタレの要塞もろともに粉砕してやる
踏み締める足元から炎が噴き上がる
手榴弾の有効範囲に入る前に引火させて誘爆を狙おう
失敗したとしても被弾は気にしない
火中を突っ切って、構えた改造銃を撃ちながら吶喊しよう
地面スレスレを疾走するように跳び、加速した勢いを全て乗せてパイルバンカーを起動
|衝撃《インパクト》から数瞬遅れて炎が追従する
それでも足りなければ銃の引き金を引いて、炎を纏った徹甲弾を焚べよう
空の弾倉を落として次を叩き入れる
発熱する銃身の蜃気楼越しにサロメを睨み据える
地獄は見えたか? クソッタレ
矢の一射がオブリビオン『サロメサージェント』の片目を射抜く。
しかし、頭蓋を射抜くには至っていない。彼女は潰れた眼球を捨てるように矢を引き抜いて笑う。
笑っているのだ。
「いやぁ、たまらないな。これが戦いというものだ。誰もが滅びに向かっている」
『サロメサージェント』は『平和』の名を冠する。
故に彼女は戦いを求める。
戦いの果に平和があるというのならば、己こそが正しいのだというように。
「何が平和だ。聞いて呆れる」
イーブン・ノルスピッシュ(戦闘猟兵・f40080)は頭を振る。
目の前にあるのはオブリビオンだ。
『平和』を冠していながら、戦乱を求めるものだ。己の欲望のために。ただそれだけのために他者を貶めてもかまわないという思考。
それによってどれだけの平和が脅かされてきたのかをイーブンは身を以て知っている。
「邪魔をするなら、まずはお前からだ。このクソッタレの要塞諸共に粉砕してやる」
踏み出す足元から炎が吹き荒れるようにしてほとばしる。
燃え上がる炎は、イーブンの中にある炎と同義であった。
身を走り抜けるは激情。
止められようはずもない。
「良い炎だ。情熱的だとも言えるし、そうでもないとも言える。ひりつくような肌の感覚。毛皮に覆われていては感じ取ることのできない激情だよ、君」
『サロメサージェント』が放つ手榴弾をイーブンの解き放った炎が空中で飲み込み爆発を炸裂させる。
爆炎が空を天蓋のように覆い尽くす最中にイーブンは駆け抜ける。
失敗など元より考えていない。
己の行動が成功しようが、しまいがどうだっていい。
イーブンの瞳はユーベルコードに輝いている。
彼が見据えるのはオブリビオンのみ。
あれが己の滅ぼさなければならないもの。滅ぼしても飽き足りないもの。
故に、己は身を焦がす。
オレステスの業怒(オレステス・アヴェンジ)に!
「ぬかせよ、クソッタレが……!」
爆炎の中を切り裂くようにしてイーブンの改造銃より放たれた弾丸が走る。それを『サロメサージェント』は隻眼となりながらも躱し、手榴弾は投げ放つ。
地面をスレスレに飛ぶようにして走るイーブンの背中を焼くように炎が走る。
痛みがジリジリと己の身を焼く。
痛みが走る。
けれど、それ以上にイーブンの頭を占めるのは憤怒。
炎のような憤怒。
ただそれだけだ。それしかない。故にイーブンは隻眼となって視界の半分を失った『サロメサージェント』へと迫る。
改造銃はパイルバンカーを備えている。
その杭を叩き込む。
ハンドガンの銃身が受け止めている。
「遅かったね」
「知るか。速いか遅いかなどこの際!」
そう、意味がない。己は突きつけたのだ。眼の前の存在を打倒する。それだけのために。
振り抜く拳ようにパイルバンカーが炸薬の薬莢を弾き飛ばしながら鋒を『サロメサージェント』に叩きつける。
数瞬遅れて炎が追従する。
それはこれまで『サロメサージェント』がばらまき、イーブンが炎で誘爆させてきた手榴弾の炎。
それが空気を膨張させ、さらにパイルバンカーの杭を後押しするのだ。
ハンドガンを貫き『サロメサージェント』の肉体に撃ち込まれる杭。
肩。
まだ浅い。けれど、イーブンはパイルバンカーの衝撃に吹き飛ばされながらも、その蜃気楼の如き先に『サロメサージェント』を見やる。
己が味わった地獄の万分の一。
されど、地獄には変わりなく。
「地獄は見えたか? クソッタレ――」
大成功
🔵🔵🔵
クィル・ルーダス
居ましたね、今は言葉は要りません…参ります
全開、『貫き通すは杭撃皇女』!
相手の投擲する手榴弾の範囲から外れるようサイキックの盾を併用し不規則に避けながら前進します
距離が遠ければ投げる距離分余裕がありますから避けやすいでしょう
前に出れば手榴弾の爆発に自身を巻き込まないように、火力を抑えて来るはず…その分、余裕は減りますが
ある程度接近したのならば、ただ一度だけ行える奇襲をします
相手が手榴弾を投げた直後に私のサイキックで止め、爆発させましょう
これ位なら今の私の力でも十分止められるでしょうから
そしてそれを目くらましに|爆風《衝撃》を無視し、正面から飛び掛かり、杭撃機を撃ち込みます
※協力・アドリブ歓迎
矢の一射がオブリビオン『サロメサージェント』を隻眼へと至らしめ、鉄杭の一撃がハンドガンを貫き、彼女の胸を穿つ。
されど、彼女は笑っている。
通常ならば、すでに死んでいてもおかしくない。
けれど、オブリビオンであるがゆえか。
彼女は笑って存在している。
「痛みだ。久方ぶりだと言っても良い。猟兵。諸君らはよくやっていると思うよ。私はね」
笑っている。
ただ戦いを楽しんでいる。
滅びを前にしてもなお、彼女は笑っている。恐れは皆無。故に笑う。楽しいと。これこそが争いの醍醐味だというように。
「……今は言葉は要りません」
クィル・ルーダス(杭撃皇女・f39666)は『サロメサージェント』の前に立つ。
対峙して分かる。
この重圧。只者ではない。これまでの猟兵たちのユーベルコードを叩き込んでなお存在していられるという特異性にして尋常ならざる耐久力。
「そうだろうね。けれど、こうも思っているのではないかな? 君ができるのは刹那の一撃による強襲であると」
「……参ります」
言葉は不要と言った。
クィルの瞳がユーベルコードに輝く。
己の名を知らしめる。
「『貫き通すは杭撃皇女』(イナーシャルキャンセラー)ッ!」
漲るサイキックエナジー。
全身にまとわれるそれは、力の奔流となって己を取り巻く衝撃と慣性を消し去る。
吹き荒れるようにして迫る爆炎がある。
『サロメサージェント』の放った手榴弾。その炸裂する炎がクィルを襲うのだ。
けれど、その眼前にクィルは脚を踏み出す。
ためらってはならない。
躊躇いは刹那の間隙を生み出す。『サロメサージェント』が尋常ならざる技量を持っているというのならば、その刹那にさえ付け込んでくるだろう。
だからこそ、クィルは踏み出す。
ただ一度行える奇襲。
そのためだけにクィルは己をパイルバンカーの杭のように研ぎ澄ませる。
「何を考えているのか。わかるよ。けれど、それは」
放たれる手榴弾をサイキックエナジーが受け止め、握りつぶす。
爆炎がクィルのサイキックエナジーを砕くようにして広がっていく。爆風が吹き荒れる。
視界を埋め尽くす閃光と熱。
肌を焼く痛みは、しかしクィルの感覚をみなぎらせる。
「一人で戦うのならば、でしょう」
クィルは知っている。
猟兵の戦いとは絆ぐもの。
繋いで、紡いでいくもの。数珠つなぎに。そうやって己たちよりも強大なオブリビオンたちを打倒してきたのだ。
唯一人で戦うオブリビオンと共に並び立つ猟兵たち。
己の一撃さえも『サロメサージェント』にとっては、僅かなほころびしか生まないのかもしれない。
けれど、そのほころびを広げていくのが猟兵であるのならば。
「私たちは、一人ではない。だから」
撃ち込まれるパイルバンカーの一撃が爆煙の中から飛び出す。
その一撃は『サロメサージェント』が万全であれば躱された一撃であろう。しかし、猟兵たちのユーベルコードが紡いできた傷跡がそれを許さない。
『サロメサージェント』の身に刻まれた傷。
とりわけ、致命的であったのは隻眼へと成り果てたこと。
その視界の半分を暗闇に落としたからこそ、クィルの一撃は『サロメサージェント』に叩き込まれる。
「これが!」
これこそが猟兵たちの戦いだというように紡がれたユーベルコードの輝きを手繰り寄せるようにしてクィルの杭撃の息をつかせぬ二連撃が『サロメサージェント』の身体を貫く――。
大成功
🔵🔵🔵
オーガスト・ガンバレル
【心境】
「一つ忠告してやる。」
「―戦場では、無駄口たたいた奴から…死んでいくッ。」
【行動】
遠隔操作でツキミヅキの『自動射撃』モードを継続させる。
さて、お嬢さん…もうねんねの時間だぜッ!!
アマロックの『乱れ撃ち』で手榴弾を迎撃空中破壊。
『悪路走破』して一気に間合い詰める。
今のオレは本気(マジ)モード。
そして夜の森の神モードだッ
白兵戦の間合いに近づいたら、邪魔なのでアマロックを投げ捨てる。
そして、自前の爪を伸ばして切り裂く攻撃だ。
『恐怖を与える』これが死というものだッ
隻眼成り果てたオブリビオン『サロメサージェント』を穿つパイルバンカーの連撃。
身を穿つ一撃は強烈そのものであり、猟兵たちの攻勢は苛烈だった。
だが、それでもなお『サロメサージェント』は立っている。
どれだけの血潮が流れるのだとしても、彼女は己が存在している限り、戦うことをやめないだろう。それは生きるために戦うこととまったく意義を異なるものとするものであった。
「生きるために戦うものがいるのだとして、私は戦うために生きているんだよ。だから」
だから、笑う。
これが活きているということだと云うように彼女は笑って手榴弾をばらまく。
炸裂する爆発は凄まじい。
その爆炎の中を一騎のパンツァーキャバリアが走り抜ける。
熱は装甲を歪ませるだろう。けれど、『ツキミヅキ」と名付けられたパンツァーキャバリアは自動車撃モードで弾丸をばらまき続ける。
「一つ忠告してやる」
オーガスト・ガンバレル(8月のキムンカムイ・f39985)は『ツキミヅキ』のコクピットからではなく、爆炎昇る戦場の最中から生身単身で『サロメサージェント』に迫る。
「なんだい?」
「――戦場では、無駄口叩いたヤツから……死んでいくッ」
「至言だ。けれどね」
さらにばらまかれる週榴弾の爆発がオーガストの身体を灼く。
痛みが走る。
けれど、それ以上にオーガストは手にしたアサルトライフルの引き金を引く。
投げられた手榴弾を打ち抜き、直撃弾をなんとしても避けながらオーガストは一気に間合を詰める。
そこにはふざけた様子などなかった。
「お嬢さん……もうねんねの時間だぜッ!!」
「困るな。お嬢さん扱いは。そういうのは!」
爆炎の中を走るは銃弾と二人の兵士。
片や『平和』を冠するオブリビオン。
片や夜の森の神を示す威容を持つ猟兵。
互いの視線は交われど、その道は交錯するばかりである。即ち別離。共に歩むつもりなどない。元より歩めることもない。
過去の化身が今を歩むことが歪なことであるように。
「邪魔だよな、こういうのはッ!!」
オーガストが咆哮する。
手にしていたアサルトライフルの弾丸が尽きれば、それを投げ捨て、夜の森の神と恐れられた威容を以て『サロメサージェント』に飛びかかる。
爆風など今更意味をなさない。
己のクマとしての肉体を誇るのだ。
「ハッ、それはロマンに欠けるとは思わないか」
「ロマンってのはな、生き方そのものだよッ! 俺に言わせりゃ……ただ戦いを求めるためだけに『平和』を冠するなんてのは!」
振るう爪の一閃が横薙ぎに『サロメサージェント』の身体を切り裂く。
血潮が走る。
躱しきれない。そう。彼女は隻眼と成り果て、猟兵たちのユーベルコードで傷を刻まれている。
だが、それだけではない。
オーガストの威容が発露するのは、相対するものに根源的な恐怖を呼び起こすものであった。
自然において人とは脆弱な生命であることを思い知らせるように、思い出させるように。
その咆哮は戦場を揺るがす。
「ロマンに欠けるってことだよ、オブリビオン。そんでもって、これが死というものだッ」
振り下ろされる一撃が『サロメサージェント』の視界を塗りつぶす。
夜の森が連れてくる恐怖の体現者のように――。
大成功
🔵🔵🔵
厳・範
お爺、黒麒麟のまま。
花雪「なっななな」
(半裸なのにびっくりしている)
あの姿、ということは…よほどの自信があるのだろうよ。
花雪、再びよく捕まっておれ。全力で避けねば、危うい。
花雪「わ、わかりました」
手綱になっておる八卦衣の作用で、避ける先の誤認はできよう。
そして…【使令法:金魚】。目標はただ一人のあの女性である。
…そしてそこへ、雷公鞭による落雷攻撃も合わせよ。花雪。
花雪「はっはい!」
花雪には刺激の強い敵であったか…。
花雪「うう、まだまだ修行が足りません…」
「なっなななな」
黒麒麟へと変じた厳・範(老當益壮・f32809)の背に在る宝貝人形『花雪』の動揺は尤もなことであろう。
オブリビオン『サロメサージェント』の見目は麗しい美女であった。
けれど、問題なのはその出で立ちであった。
サーコートを肩に引っ掛けているのはいい。ただ、問題なのは上裸であったことだった。肌を隠さぬ女人の態度に同性でありながらも『花雪』は動揺してしまっていた。
「あの姿、ということは……よほど自信があるのだろうよ」
範はそう断じる。
見目にとらわれてはならない。
重圧がそれを教えている。猟兵たちのユーベルコードを数多受けてなお、あの重圧なのだ。
隻眼と成り果て、鉄杭を叩き込まれてもなお。
「そういうことだね。私にとって傷は痛みを齎す以上に、私が此処に『在る』ということを知らしめてくれるものだ。だから」
『サロメサージェント』は笑う。
この戦いが楽しくて仕方ないのだと。痛みさえも愛おしいというように笑っているのだ。
「『花雪』よ、再びよく捕まっておれ。全力で避けねば」
瞬間光が明滅する。
それは弾丸が放たれたということにほかならない。
けれど、範は己の肉体が弾丸を受けたことを知る。
あまりにも速い抜き打ち。
弾丸を放った、という音さえも遅れてくるかのような速さ。
早すぎる。危うい、と言葉にするよりも早く範は駆け出す。
「お爺様ッ!」
「大事無い。だが」
躱しきれない。それほどまでにあのユーベルコードにまで昇華した早打ちは尋常ならざる業であった。
幸いであったのは、他の猟兵の攻撃に寄ってハンドガンの一つを失っていることだろうか。
もしもあれが、二丁同時に放たれていたのならば。
致命傷を避けることはできなかっただろう。
「来たれ」
戦場を包み込む爆炎の中を範は走る。
ユーベルコードの輝き。空を泳ぐようにして金魚が走る。
使令法:金魚(ジンユー)は、その身寄り生み出した水球でもって爆撃するかのように『サロメサージェント』を頭上から襲う。
降りしきる水が爆炎を打ち消し、さらに『サロメサージェント』の身体を押しつぶすかのような圧倒的な水量で襲いかかるのだ。
「『花雪』よ、合わせよ」
「はっ、はい!」
うむ、と範は思う。
敵とは言え『花雪』には『サロメサージェント』の姿は刺激的過ぎるのかもしれない。ともあれ、修行が足りない、ということにほかならない。
戦場にあって、それは時に隙を生み出すものであったからだ。
彼女の手にした鋼鉄製の多節鞭が走る。その一撃を『サロメサージェント』はハンドガンで受け止めて笑う。
「いい一撃だ。『次』が楽しみだな」
「うう、あんなこと言われています……!」
見て良いのかわからない、というように『花雪』が目を覆う。
まったく、と範は思うかもしれない。
修行不足、と断じるは簡単だが。それでも、範は思う。今を切り抜けること。それをなさしめる事ができなければ、『次』もないだろう。
「『花雪』よ、集中せよ。その多節棍は、雷の力を振るうことができるのならば」
「は、はいっ!」
宝貝。
雷公鞭を振るう『花雪』は未だ自身が未熟であることを自覚し、しかし、その手繰る宝貝の一撃を『サロメサージェント』に叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
わーい来たよ財宝部屋!
それでキミが番人ってわけだね!
フフーン、ダンジョンってのはそうでなきゃね!
●どっかんどっかん
わぉ、ダンジョンの中で手榴弾なんて派手にやるね!
でも派手にやるのならボクだった負けないぞー!
と、ビッグ[超重浮遊鉄球]くんを要塞を壊す勢いでどんどん投てきしていこー!
でもこれはあくまで囮、状況を渾沌とさせるために布石!
場が荒れれば荒れるほどボクの【第六感】は冴え渡るからね!
そして崩れる瓦礫で混乱させればめっけものとUC『神撃』でドーーーンッ!!
うんうん、やっぱりお宝っていうのはゲットするまでが楽しいよね~
後は…埋まっちゃったからがんばって掘りだそう!
「わーい来たよ財宝部屋」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は球体の上から飛び降りて笑う。
その様子を傷を追い隻眼と成り果て、身より鉄杭を生やすように受け止めたオブリビオン『サロメサージェント』は軽く笑った。
「まだだよ。財宝がほしいのならば、私を倒してからでないとな。とは言え」
「キミが番人?」
「ああ、諸君らが求める財宝という意味では残念ななことになっているとは思うがね」
どういうことだとロニは首を傾げる。
財宝があるから此処を守っていたのではないかとロニは思ったのだ。けれど、『サロメサージェント』は軽く笑って首を傾げる。
「この鋼鉄要塞で諸君らを迎え撃つために大分使ってしまったからな。目減りしている、という意味だよ」
「それって横領っていうんじゃない?」
ロニはその問いかけに対する返答が手榴弾であることを、その瞳でみただろう。
炸裂する爆発がロニの身体を撃つ。
だが、その爆風の中をロニは走る。
「わぉ、ダンジョンの中で手榴弾なんて派手にやるね! でも派手にやるのならボクだって負けないぞー!」
「諸君らと戦うためだからな。別に壊れてしまって構わないってことさ」
次から次に放たれる手榴弾。
その爆風を前にロニは超重浮遊鉄球を持ち上げ、投げ放つ。
まるでピッチャーのように投げ放たれる球体はノーコントロールと云うべきか、要塞のあちこちに跳ねては破壊していく。
無論、それが当てずっぽうでもなければ、無策ではないことを『サロメサージェント』は気がついていた。
「あくまで囮、ということかい。考えるものだな。状況を混沌とさせるための布石、かな?」
「そうだよ! 場が荒れれば荒れるほどボクの第六感は冴えわたるからね!」
「経験則ではなく、ただの直感と来たか。だが、悪くはないな。ただ、それが自身だけに備わっているものだと思っているのなら」
『サロメサージェント』は笑っている。
楽しんでいる。
ロニと同じように、この状況を楽しんでいる。
崩れる鋼鉄要塞の瓦礫の合間さえも彼女は蹴って飛ぶ。ロニの前に飛び込み、己ごと手榴弾の爆発に巻き込もうとするような無謀なる戦いを繰り広げる。
「そういうのって嫌いじゃないけどさ!」
ロニは笑う。
楽しい、と思うことが共有できているのに、互いが猟兵とオブリビオンであるがゆえに共に並び立つことを許されない。
わかっていることだ。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないのだ。
相互理解できている、と思うのは過ちだ。ただの錯覚に過ぎない。だからこそ、ロニはその拳に宿るユーベルコードの輝きを解き放つ。
躊躇いなどない。
あるのは唯一つ。己の拳が敵を穿つということだけ。
「どーんっ! ボクを崇めてもいいんだよ! 神様だからね!」
撃ち込まれるは、神撃(ゴッドブロー)。
信心なき者にすら神々しさを感じさせる拳の一撃は『サロメサージェント』の身体を打つ。
痛烈なる一撃。
その一撃が彼女の身体を大地に叩きつけ、要塞に亀裂を走らせる。
「ダンジョンっていうのは、やっぱりお宝をゲットするまでが楽しいんだよ。それを先に全部使っちゃうなんて、あくどいにも程があるよ!」
でもでも、とロニは笑う。
もしかしたら、まだ残っているかもしれない、と。
なら、それを掘り出すのもまた楽しさの一つだというようにロニはカラカラと破壊の痕の上で笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
随分と余裕じゃないオブリビオン
戦いを楽しむタイプかな?
ま、雇われ侵略者なんてそんなもんか
じゃあ本気でやり合おうじゃないか
引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを持ち戦闘態勢に
最速で【Ex.Code:A.P.D】起動
肉体変換、転身…プラズマドラグーン!
悪いけど、物理攻撃は無効化させて貰うよ
2丁拳銃による攻撃をこれで無効化し接近して近距離戦闘へ
雷鳴電撃を剣に纏わせ『なぎ払い』『串刺し』の連撃でサロメサージェントへ攻撃を仕掛けよう
連続して叩き込んで削っていこう
ズルい…とは言ってくれないでよね
傭兵って言うなら分かるでしょ、勝利は何よりも優先されるって
後、服はちゃんと着た方が良いよ!
瓦礫と化した鋼鉄要塞の空間。
その先にあるのは言わずともわかる。財宝を溜め込んでいたと言われる宝物庫であろう。
しかし、番人たるオブリビオン『サロメサージェント』は首を傾げるようにして立ち上がり、反対側へと首を傾けて笑う。
隻眼へと成り果て、身に穿たれた鉄杭は、引き抜けば己の血潮を撒き散らすばかりと知るからこそ、放置されたままであった。
猟兵たちのユーベルコードが効いていないわけではない。
けれど、彼女は笑っていた。
「ふぅ……痛みが肌に走る。心地よいとは言わないけれど、ああ、そうだね。活きているって感じるよ」
彼女の笑みに月夜・玲(頂の探究者・f01605)もまた首を傾げる。
「随分と余裕じゃないかオブリビオン。戦いを楽しむタイプかな?」
「そうだね。分別するのなら、きっとそうなのだろう。私は生まれる前から戦うことが決定づけられていたものだからね。戦うために生まれたのなら、戦う中に楽しさを見出すのは当然じゃあないかな?」
その言葉に玲は首肯する。
「ま、雇われ侵略者なんてそんなもんか」
「そういうものだよ。戦って生きるという報酬を得る。財宝だとか金銭だとかは私にはあまり関係ない。ああいうものは」
「使わないと意味がないってことだね。どうせ、その背後にある宝物庫っていうのも、大方使い切ってるって感じなんでしょ。もったいなー」
「それは同感かな。あんな試作兵器ばかり使うのは気が引けたが」
「後さ、服はちゃんと着た方が良いよ!」
「毛皮を被ると鈍るってだけさ」
その言葉を最後にユーベルコードが輝いたのは同時だった。
ハンドガンの一丁を失ってなお、『サロメサージェント』の早打ちの一撃は速かった。
『閃光』と紛うほどの一撃。
だが、玲の身体は稲妻の龍と融合した姿に変貌していた。
それは弾丸を無効化するユーベルコード。
Ex.Code:A.P.D(エクストラコード・アヴァタールプラズマドラグーン)。
もしも、このユーベルコードが間に合わなかったのならば、玲はすでに亡き者とされていただろう。
それほどまでの脅威を『サロメサージェント』が感じていたとも言えるし、またそれが正しいと証明するように玲の変貌した姿は一気に彼女へと迫る。
「悪いけど、物理攻撃は無効化させてもらうよ」
「そう来るか……」
「ズルい……とは言ってくれないでよね」
肉薄する玲の手にした模造神器の蒼い刀身が煌めく。
残光を見せる斬撃の一閃が『サロメサージェント』の身体を切り裂く。血潮が噴出する。けれど、『サロメサージェント』は笑っていた。
物理攻撃を無効化したことによって『サロメサージェント』は有効な攻撃手段を玲に叩き込むことができない。
「傭兵っていうんなら分かるでしょ。勝利は何よりも優先されるって」
「ああ、その通りだ。別に卑怯だとか、そんなことを云うつもりはないよ。ただ、なんというか……ああ、そうだな。これが」
『サロメサージェント』は玲の振るう二刀を前に笑う。
戦いに愉悦を見出しているからではないと玲は理解するだろう。
これが、と呟く『サロメサージェント』の唇が言葉を紡ぐ。
「――『既視感』というやつか。わからないものだな、運命というやつは」
振るわれる斬撃をハンドガンの銃身が受け止める。
だが、振るう二刀はすでにハンドガンを一丁失っている『サロメサージェント』にとって防ぎきれるものではなかった。
放たれる斬撃が彼女の身体を切り裂き、玲は振り返ることなく告げるのだ。
「何を言っているかわからないけど、勝手に『既視感』を覚えないでくれるかな。少なくともこっちは初対面だってば」
その斬撃の後に玲は雷光と共に駆け抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
…(通信端末を見て無言
|相方《勇者》合流できず
まぁこんなこともありますよね
では|メイドらしく《クールに》戦うとしますか
『ニゲル・プラティヌム』を使って
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!
お互い二丁拳銃ですが戦い方が違う様子
私の場合、間合いを詰めることが出来れば!
野生の勘と聴覚(聞き耳)頼りに攻撃をかわしていくとしましょう
もちろん真正面から
不意打ちなど、|エイル様《主人様》の好みではありませんし
貴女の知る『エイル』様もそうではなかったのですか?
平和を求めるから戦いがある
戦いがあるから平和を求める
いつまで経っても私たちは|青《希望》と|赤《絶望》)の間を行ったり来たり
ですから
『戦いに際しては心に平和を』
私はこの言葉を胸に戦うのです
平和という名でありながら戦いの中で生きる
貴女もまたこの言葉を体現するものだと思っていましたが
違うのですかね?
探りが当たるかどうかはともかく
サロメからの反応を引き出しましょう
これがいつかエイル様に至る道となるはずです
とはいえ、この世界のエイル様はどこにいるのやら
『戦いに際しては心に平和を』
その言葉は幾つかの世界で耳にすることのあった言葉だった。
誰が最初に言った言葉なのかはわからない。
空の広がる世界で響いた言葉であったし、暗闇満ちる世界でも闇に吸い込まれもした。
戦乱が渦巻く世界でも砲火にかき消えたこともあった。
でも、だからこそ、とステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思う。
黒と白金の二丁拳銃を構える。
奇しくも互いに獲物は二丁拳銃。されど、オブリビオン『サロメサージェント』の手にあったのは一丁のハンドガンだけだった。
彼女はすでに多くの猟兵たちのユーベルコード受けて満身創痍。
刻まれた傷跡は数知れず。
隻眼と成り果て、鉄杭は幾度となく叩き込まれた。血潮で彩る身体なれど、それでも彼女の顔に浮かぶのは苦悶でもなければ悲痛でもなかった。
在るのは喜悦のみ。
戦いを前にして。傷を受けてなお。彼女は笑う。
それが己の生命の実感であるというように、己の意義であるというように笑うのだ。
「不意打ちなど、|『エイル』様《主人様》の好みではありませんし」
真正面からステラは走る。
『サロメサージェント』は首を傾げ、そして、また反対側に首を傾ける仕草を見せて手榴弾を投げ放つ。
爆風が吹き荒れる最中に『サロメサージェント』はやはり笑っていた。
穿たれた隻眼の奥でユーベルコードが輝く。
「君は勘違いをしているようだから、言っておくけど。彼の好みはそうではないよ。彼は常に取れる最適解を最善へと押し上げることをこそ最上としていたよ。正攻法も不意打ちも、彼にとっては全てが当価値なんだよ」
爆炎の中を『サロメサージェント』はステラに迫る。
両手にした拳銃から弾丸が放たれるのを『サロメサージェント』は躱す。頬をかすめて血潮が走っても構わなかった。
「貴女の知る『エイル』様はそうではなかったのですか?」
「君のいう所の『エイル』というのはどれのことを言っているのかな。いや、君はどれほどのことを知っているというのだろう」
超近接戦闘を可能とする|『銃の型』《ガン=カタ》による打突と銃撃はまるで輪舞曲のように戦場に音を奏でる。
ロックを外される。
銃から弾倉を引き抜かれ、その一瞬にステラは銃底で『サロメサージェント』の隻眼たる死角から殴打を放つ。
「『平和を求めるから戦いがある。戦いがあるから平和を求める。いつまで経っても私たちは|青《希望》と|赤《絶望》の間を行ったり来たり……ですから!」
銃声が響き渡る。
だが、ステラの腹部を蹴り込む『サロメサージェント』の一撃が距離を離し、手榴弾が彼女の頭上に降り注ぐ。
爆裂なる一撃がステラの身体を打ち据え、爆炎の中に彼女を巻き込んでいく。
痛みが走る。
裂傷が血を噴出させ、それでもなおステラは立つ。
その瞳にある輝きを『サロメサージェント』は笑って見やる。
「『戦いに際しては心に平和を』、かい。だが、間違っているよ、猟兵。青と赤は、希望と絶望なんてものじゃあない」
『サロメサージェント』は身に撃ち込まれた鉄杭を引き抜き投げ捨てる。
血が噴出しつづけ、杭を撃ち込まれたままにしていたからこそ止血されていた状況を己が捨てる。
「青と赤は人の性だと知るんだね。青は善性。赤は悪性。揺れ動くからこそ、人の心は一色には染まらない。一色に染まるものは、表裏一体だからこそ、見分けがつかないものだよ。君は。過ちを胸に戦うというのかい?」
その言葉はステラの胸をえぐるだろう。
だが、『サロメサージェント』は見ただろう。
その瞳に在る輝きを。
それはユーベルコードの輝きではなく。
|超克《オーバーロード》に至る輝き。
「平和という名でありながら戦いの中で生きる。貴女もまたこの言葉を体現するものだと思っていましたが」
ステラは踏みしめる。
脚が震える。痛みが体中をきしませる。
どうあがいても届かぬものに己が手を伸ばしている自覚がある。けれど。
「違うのですね?」
「ああ、そうだよ。私は『平和』を冠する争いの体現者。故に」
何度でも現れる、と彼女は笑う。
過去の化身は、滅ぼし切れるものではない。故に彼女は笑う。笑って、大量の血を失いながら戦いに身を投じる。
そのためにこそ己が在るのだと信じて疑わぬ者を前にステラが出来ることは唯一つのみ。
「ならば、私は至るためにこそ戦うのです。貴女のいう所の過ちが私の道を断つのだとしても。私の前に広がる暗闇を照らしてくださる光こそ!」
それが己が抱く感情であると知るから、ステラは爆風の中をかいくぐりハンドガンから放たれる弾丸をかすめながら、その銃口を突きつける。
引き金を引くのに躊躇いはなかった。
撃ち込まれた弾丸が『サロメサージェント』を貫き、その身体を霧散させる。
『サロメサージェント』の唇が動く。
壊れない歌の名を呼ぶように。その唇が形作るもの。
それは『暁の歌』――。
大成功
🔵🔵🔵