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囀る声は花嵐

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●囀る声は意思を持たず
 忘却。『それ』は一度は誰かが抱くもの。
 異能・異形・怪異。誰かと異なる特徴を持つもの。
 忘れられたなら、其処に『それ』は無かったことになる。
 忘れられ続けたならば『それ』は其処に存在する理由を喪う。

 だから――女は『自身のことを最初に喪った』。
 そこには誰も居ないのです。皆、皆、忘れてしまいましょう。
 影朧なんて、いなかった。そんな力なんて、なかった。
 儚く終わり、存在が失われた『なにか』が居ただけだから。

 さあ微睡み、揺蕩いましょう。
 此処に居るのは、『留まる弱い』何者か。
 偽りの言葉を転がして。ただ、どうして其処に居たのかを、女は笑うだけで語らない。
 忘れた・忘れさせた・忘れている事を願った魂は――|烏啼《ナンナ》は啼く少女たちを手招き呼ぶ。
 この大きな影朧桜の根元には何も、なにも――埋まってなど、居ないとも。

●私は眠る
「なあ、アンタなら"桜の木の下に"何を埋める?」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)はふと問いかける。
 それは、文学的にも時折語られる題材だ。
「死体だ、タイムカプセルだ、と答える人間によッて異なるだろうが……埋めようとするものは、たいてい何かしらのアンタにとッて大切なものである筈だ、と俺様は思うわけだが」
 何を埋めると答えても、フィッダは猟兵の顔色を伺うだけだ。
「……影朧にも、そこに重い意図を残した魂はあるらしい。執着が、ときに人を悩ませるものでな。帝都桜學府のほうでも、対策を講じているくらいには、強力な影朧ッつーのはたまに出てくるものらしい」
 対象は影朧だから、今を生きる人類にすぐさま明確な悪事を行えるわけではない。
 だが周囲への影響力をじわじわと与えて、より悪い方へ転落させていくまでの道のりを整えられるわけにはいかない。
「講じられた秘策、その名も『魂鎮メ歌劇ノ儀』。名前が示すとおりに儀式、……アンタたちには、帝都桜學府が調査した影朧の過去を追体験するような"歌劇"の中で、「何らかの役」を演じ、戦ッて欲しい訳だ」
 大きな幻朧桜の下に該当の舞台は整えられているが、しかしその中で、"思うように"いつも通り、自由に行動すれば良い。
「影朧、|烏啼《ナンナ》は……過去に、願い星に叶わぬ夢を思い描いたという。願ッた事は、女にとッて些細ではない願いで――しかし叶うこと無く、それは桜の木の下に埋められることになッた。自死を行ッた女の遺体と共に」
 首を掻き切り終わった女は、忘れることをその次に願い続けた。
「揺蕩う女は、桜の木の下に埋まッたものを影朧となッたことで理解し、しかし忘れようとし、周囲に認知させまいと忘れさせようとする。女は秘密を、暴かれないように忘れさせようと動くだろうな」
 女の配下として、るーとしか鳴かない配下が硬いスコップで掘り起こそうとしている場に、君たちは出くわし――そしてそこから歌劇として幕が上がるのだ。観客は遠巻きに、存在する。
 歌劇は人のココロを動かすものだ。影朧の葛藤も、桜吹雪の向こうへ転生に向けさせる事だって、出来るかもしれない。
「丁度花祭、と称する夜祭がある日でなあ。同時に、影朧が絶望したほうき星が空を疾走る日でもある。アンタたちも、未来に何かを願えばいいさ。願う祈りが、あるのなら、だが」
 忘れさせたい影朧とはいえ、ショウの終わりにはきっと消えていく。
 故に、忘れる必要がない事を、願いに乗せて伝えてやるのもショウに立つ、猟兵の仕事というワケだ。
「大きな桜の樹の下で、お前たちは――何を見て、演じるんだろうなあ」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 サクラミラージュから春っぽいシナリオを。
 場所は、街外れの見上げるほど大きな幻朧桜の木下、です。

●簡単な概要
『魂鎮メ歌劇ノ儀』という歌劇の一員として、舞台を演じる役者として参戦します。
 歌劇への参加者は全員猟兵なので、普段どおりに行動するのは全く問題ありません。
 歌劇という名目のため、少し離れた所に観客が居ます。
 歌劇の講演内容はボスの過去を追体験するような、ストーリー。ボスの過去をなぞるようにして、この場に留まる災害となろうとする様を退けよう、浄化しよう、そんな流れになります。
 演じる役は、いくらでも増えますので、違う人が同じ役をやっても問題ありません。
 演じない、ならばそれも選択です。観客からは、"演じてる"ように見えるでしょう。

●一章『ルールー』
 集団戦。るーとしか喋らない、ボスを蘇らせるために土を掘る意思のない影朧群れ。
 ボスは、叶うのならきちんと蘇りたいと、自死した部分に思う葛藤があるのでしょう。
 影朧の身で、ルールーたちを差し向けて桜の下を掘ろうとします。

●二章『烏啼』
 ボス戦。ナンナ。ふわふわと、ルールーを配下に忘れさせようとする影朧。
 桜の下の『自分(死体)』を掘り起こせても、掘り起こせなくても、葛藤と苦しみを吐き出すでしょう。
 猟兵は、演じる役を優先して語ることも、役を脇において自分の言葉で語ることも出来るはずです。

●三章『ほうき星に願いを』
 葛藤が溶けて、過去の呪縛から解き放たれ、消えてゆこうするでしょう。その時、空には自然の星が降り注ぎ始めるのです。影朧が、いつか見た、いつか自分が願った星と同等の星が。
 ショウのクライマックス。影朧の苦難を労う、弔う、――あえて触れない。
 猟兵にはどれもを選ぶことが出来ます。影朧は、観客や出演者(猟兵)たちをみているうちに癒やされて消えていくことでしょう。同じ星を見た、貴方にしか出来ないことはきっとあります。

●その他
 ゆっくりめの運用になると思いますが途中参加、途中だけ参加は大丈夫な気持ちでいます。日常の相手に転送に協力したグリモア猟兵が必要ならば、三章ではプレイングにご記載をお願いします。募集期間はなるべくタグに。タグ記載時期を越えた頃にはサポートさんの採用を行って進めていきます。
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第1章 集団戦 『ルールー』

POW   :    るーるるーるるーるるー
単純で重い【シャベル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    るーるるるーるる
【死者の国の王の力】を籠めた【シャベル】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【猟兵としての在り方】のみを攻撃する。
WIZ   :    るるるるるるる
戦場全体に、【骸骨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●墓荒らし
 其処に埋まるものを識る人は居らず。
 誰からも忘れられた、何かは声をあげたりしない。
「るーるー」
 影朧の群れは重そうなスコップを振り上げて、さくさくと、土を掘り返す。
 決して、桜を傷つける意図は無く。
 ただ掘り返すために、行動を続けるだろう。
 放っておけば、影朧関連のものが顔を出すかもしれない、それ以外のものも発掘されてしまうかもしれない。
 停めるのならば、いまのうち。
ヴァンダ・エイプリル
アドリブ連携歓迎

違う世界に飛び出してみれば
なんだか重たい悲劇の匂いがするね
お望みならヴァンちゃんも一芝居打ちますよ!
役割は引っ掻き回しのトリックスターだけど!

うろちょろして相手を誘導
桜や味方から距離を取らせる
攻撃されても一旦は耐えるよ
叩かれても笑い続ける!
それがヴァンちゃんの在り方です!

下ばっかり見てたらもったいないよ~
せっかくお花も咲いてるんだし
流れ星も「落ちてくる」かもしれないよ?

引きつけたところでUC発動
魔法の効果で照明や吊り物を落下させて相手を範囲攻撃
…こんなもの吊るしてたかって?
まーそういうこともあるよ
ほら、歌劇ってなんでも起きるでしょ?

忘れてやんないよ
まだあなたを笑わせてないからね


蒼月・暦(サポート)
 デッドマンの闇医者×グールドライバー、女の子です。

 普段の口調は「無邪気(私、アナタ、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 嘘をつく時は「分かりやすい(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

無邪気で明るい性格をしていて、一般人や他猟兵に対しても友好的。
可愛い動物とか、珍しい植物が好き。
戦闘では、改造ナノブレード(医療ノコギリ)を使う事が多い。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ウルスラ・ロザーノ(サポート)
いつもテンション高いとは言われるなー、確かに誰に対してもフレンドリーな対応しようと心掛けとる
といっても銀誓館の学生時代から能力者をしてきたんでな
救えるもんはできるだけ救う、でも倒すべき敵は必ず討伐すべしっちゅー方針や

戦法はヒット&アウェイ型、戦場全体を広く利用して戦うで
基本は中距離
レーザービット射撃やナイフの蹴り込みで牽制しつつ、
エアシューズで、地上は高速で駆け回り、空中も地形とか足掛かりに利用して軽業のように跳ね回るよ
敵からの攻撃は、すべて見切って受け流したりの回避で凌ぐよ

攻め込む機会を見つけたら奇襲を仕掛けるで
一気に接近して、蹴撃やその斬撃波を叩き込む!
サッカーボールのシュートは必殺技や!



●桜の下には何が有る?

 わらわらと、スコップを持った影朧が歌うように啼きながら、桜の木の下を掘り返そうと集まっている。
『るー』
『るーるー』
「あやー!ちょっとちょっと、なにかと思ったらルールーやないの!」
 過去の戦いで何度もみたウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は当然のように"名前"という形を当てはめる。あれはそのように動くもの。スコップと少女のような面影。
 見間違えるはずもない。影朧としてこの地で群れるのも頷ける。
 あれは、個として意味をなさない。群れで有ることが全てである存在だ。
「アカンよー、その手で掘り返すのは!」
 桜の木の下に何が有る?そんなに下ばかり見て、どうするんだ。
 肩肘を張る必要は、ない。
「そうよ。そこにはなにかがあるかも知れないけれど、……顔をあげて?さあ、見上げるの」
 身軽に空中へ、桜の蕾に触れるように飛び出した蒼月・暦(デッドマンの闇医者・f27221)。
 ユーベルコードの力で空を、飛ぶように駆け、にこりと暦は微笑んだ。
「私の身軽な動きに、付いて来られるかな?」
「ボクならやれそーやなぁ!」
 フレンドリーなウルスラは、暦が空を駆けるようにルールーを誘導するのに触発されて、エアシューズを履く自身の気持ちに火を焚べる。エアライダーは自身の身体が空中を駆けるイメージを忘れない。
 近場のルールーを蹴り砕き、大ぶりの幻朧桜の幹を足がかりに肩を並べるように飛び上がった。
「あら、本当ね。ステキ。お空でダンスを踊っているようで、楽しいわ?」
 デッドマンの少女は明るく笑って、空中でいきなり翔ぶ向きを変えた。
 改造ナノブレードを構えて、ルールーが振り上げたスコップめがけて突っ込む!
「スコップは、人を叩くためのものじゃないの」
「せやで!土を掘る埋める!それだけのもんや!」
 魂が身体を呼び起こして物理的に蘇生させるなんて、この地でやるには物騒過ぎる。
 傷付いた弱い魂が墓荒らしをする様は当然ウルスラには見過ごせない。
「悪さをされる前に討伐すべしっちゅー方針なんや、大人しく眠っておいで!」
 暦がスコップでの攻撃を切り落とすようにふっとばす中で、ウルスラは奇襲を仕掛ける。
 卓越した瞬発力が生み出す蹴力。投げたボールは空の星へと至るだろう。
 |メディア《media》・|ルナ《luna》――半月よりも鋭く切り込む弾道弾が、ウルスラの蹴りから生まれる。
 所謂神殺しのセルフショートパスからの、ゴールがら空きのシュートであった。
『るー…?』
 ぼんやりした顔のルールーたちは避け損なって散らされる。
 番狂わせの、ボールは弾んで散らしたルールーの気配を桜の花びらの向こうへかき消した。
 それでも尚、さく、さくと掘り進めていこうとするルールーは存在する。
 数が多い影朧は、やはり厄介だ――。

「わあ、違う世界に飛び出してみれば……」
 すんすん、と不意に鼻を鳴らす。
 掠めていくのはふんわりと優しい桜の花の匂い。
 和ませるような気配が感じられて、どことなく心地良い。
 オオカミのヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)は、優しい桃色が沢山見えるこの世界で、しかし別の匂いも感じる。
「……なんだか重たい悲劇の匂いもするね」
 ニィ、と笑い、ヴァンダは愉快の気配を感じて緑の尾が元気に揺れた。
 ――世界はもっと、笑える場所であるべきだよ。
 歌劇として組まれているのなら、尚更追体験だって、少しだけ面白おかしくしたっていいんじゃない?
「上だけでいいの?ヴァンちゃんはこっちだよ?」
 一芝居打つならば、適材適所のトリックスターにお任せあれ。
 二人が空なら、ヴァンダは地上から――言葉通りに引っ掻き回して、あげちゃおう!
『るーるるるーるるー』
 ふらふらと、足取り覚束ない影朧たちがヴァンダの方に振り向いた。
 スコップを振り上げて、なにもないところを叩く。
 うろちょろと、素早く駆けるヴァンダには上手く当たらない。
 ――こっちだよ、こっち!桜の木の下から離れて歩いておいで!
 誘導するように立ち回れば、ふらふらと、ルールーたちは追いかける。
 足取りは遅い。全く速さなんて無い。それでも群れの中から追いすがる個体もある。
 振り上げられたスコップはヴァンダを叩くように動いたが、……"そんな志なんてありえない"在り方の否定を突然叩き込まれたような衝撃がヴァンダを叩いた。在り方の否定。それは、信念が強い猟兵ほど効くのだろう。
 地獄の裁判のように、心に影を落として戦いに影響を出すものだって居るだろう。
 しかし、ヴァンダは違う。叩かれても笑う仕草を崩さなかった。
「やりたいこと全否定?ううん、否定しきれてないね!」
 叩かれても笑い続ける!
 それがヴァンダの在り方だから。
「さぁーて、下ばっかり見てるといい景色も見えないよー?」
 離れて桜の木を見上げたら良い。空中戦をメインに添えた猟兵の暦だって手を振っている。
「こんなに綺麗な桜吹雪だよ!せっかくお花も咲いてるんだし、上を見上げて見てよー」
『るーるー…?』
 上を指差すヴァンダはニコニコだ。
「流れ星も「落ちてくる」かもしれないよ?」
 ルールーたちは、考える頭を持たないが顔を上にあげるだろう。
 何を言ってるのかを確認するように。音に気がついたのか、視線はふと、上を見た。
「何が見える?突然何が起こるかわからない、予想外の世界。それが"この世界"ってものでしょ?」
 ニカッ、と爽やかに笑ったヴァンダのユーベルコードが発動する。
 それは世界に奇想天外を引き起こす――|大混乱《サーカス》。
 今の気分は空に向いていた。力の発動は上空から起こるのだ。
 嘘から出た真。
 そんな言葉だって有るのだから――魔法はパチパチと耳に音を届けて、照明や吊り物を落下させる。
 それら全てがルールーを襲い、行動を妨害する力は広範囲で広がる。
「え?こんなの吊るした憶えがない?」
 ははは、そんなことないでしょー?ヴァンダは素知らぬ顔して、どこかで見ているだろう視線を探す。
「まーそういうこともあるよ。ほら、歌劇ってなんでも起きるでしょ?」
 予想外っていい言葉。
 だから思い出深く、残れば良い。
「忘れてなんてあげないよ。まだあなたを笑わせてないからね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。



●汝が墓標を

 此処には矛盾が|蟠《わだかま》る。
 暴かれたくないのに暴かれたくて。
 忘れられたいのに、思い出して欲しい。
 どちらか選べない空気感を手向けに、幻朧桜の花びらが舞い踊る。
「…どちらを選んでも、どのみち悔やんでしまうんだろう?」
 左手に『蒼月』、右手に『月下美人』を握る北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283) は、掘り返す行動を起こし続けるルールー達を討伐するべき対象として見た。
 これらには自分の自我がない。考えて理解して動いていない。
『るー、るー』
 魂だけが此処に呼ばれた集団だ。
「そのまま掘ることをやめないのなら、俺は可能な限り討伐する。いいかな」
『るるるるるるる』
 集団が突然、同じ声で啼きはじめる。
 それは力が集合して作り上げる幻影の実体化。
 どこからともなく骸骨が地面から出没し、壁となり空を覆い尽くして迷路となって立ち塞がる。
 右左、どこからでも聞こえるルールーの鳴く声と、さくさくと掘り進める音で方向感覚が容易に狂う。
 邪魔ものであると認識されたがゆえに、時間稼ぎの庭へ迷い込まされたのだ。
 鳴き声は、精神に働きかける攻撃とも言えるだろう。
 攻撃力など無いが、どこにでも居るのだと打つべき相手の位置を惑わせる。
「……掘り終わるまで邪魔するな、とは思うわけだね。ふむ」
 わさわさと、時々揺れる骸骨は、とてもではないが二刀流では斬り結べない。
 このユーベルコードの迷路の対処は――シンプルに単純に一つ。
「良く出来てる。これも掘り返して復活させた骨ってやつかな……それなら申し訳なくも思うけど」
 では疵付けずに、対処を行おう。
 此処に発現するのは、眠るべき者たちのための――終わりと過去の終着点を此処に喚ぼう。
「共鳴りに啼く事をやめて、ただ眠ると良いよ。眠れや、眠れ、存在せし者達よ。海の底で永遠に」
 深く息を吐き、剣士は全身から――過去が沈む骸の海を展開する。
 闇技・蒼滅永眠波(アンギ・ソウメツエイミンハ)。
 例え出口は一つでも。迷路の強度がどんなにあったとしても。
 骸の海は、絡め取る――生を終えた魂を。
 迷路のある場所全てが戦場、であるのなら――骸の海が広がり続けられる場所全てにある過去は絡め取れるはずだ。過去は過去へ、還るものであるならば。
「さあ、眠り墜ちるといい」
 ずずずと進むは昏く命が尽く喰らい尽くす自我をもつ沼のように揺蕩う海。
 信条と問いかけても返る言葉はなく、語りを聞くには言葉持たない。
 まるで精神攻撃が如く啼く声を無力化したならば、――同時展開など出来やしないだろう。
 意思疎通する声を奪えば、ユーベルコードの迷路は意図も容易く崩壊する。
 再び鳴き出す前に、一体でも多く――その行動を地に伏し落とすのだ。
 さあ眠れ。墓荒らしなど、完全に為せぬままに。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
ここは黄泉還り桜のある帝都…何の願いの残骸と一緒に埋まったんだろーねェ
オレは『自死した女』を弔ったとゆーか埋めた男の役を

普段は葬式の墓掘りしてるが
今日は
見事な桜の下で哀れな女を見つけてしまった
野晒しじゃ別嬪さんでもそのうち凄惨な姿になる
仕事でも無いのに埋めてやったのはそんな同情からかねえ?

敵を目視し【忍び足】で接近
5本程のクナイのわっかを布状の猫目雲霧に通して纏め遠心力付けて振り回しUC準備
猫目雲霧の射程2m程に入ったらUC発動
強化したクナイを次々【投擲】
【念動力】で敵スコップへ当て相殺やスコップ叩き付ける敵へ【カウンターで串刺し、暗殺】すべく攻撃

折角眠らせたモノを無闇に起こすな?

アドリブ可



●目醒めるにはまだはやい

 数を散らされたルールーたちは桜のように散っていく。
 儚く散る個体の囀りが、少しずつ減っていく。
 その中に、新しく躍り出るは鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)の姿。
「此処の桜は、黄泉還り桜。しかも帝都の膝下ってんだ」
 死に溶けた魂と、何よりも寄り添う桜の下はそれこそ不思議が詰まっているだろう。
 ――何の願いがあったんだろうなあ。
 残骸と一緒に抱いたモノは、死者のもの。
「何周忌だって?弔いの席には呼んで貰わねェと」
 普段は葬式の、墓掘りをするのだというトーゴは、地面を指出して問いただす。
 弔われたのなら、弔ったものがいるだろう。
 "弔い埋めた男"を演じ、"自死した女"を思うように声を弾ませる。
『るー?』
「今日はこの後雨でも降るのか?湿り気があっていけねェ」
 雨は雨でも涙雨。見事な桜の下で哀れな女を見つけている。
 掘り返されるのを待つ、泣き腫らす気配が桜吹雪とルールーの鳴き声に乗っている気さえした。
「そっちは掘り返してそれで終える気だろ?野晒しじゃ別嬪さんもそのうち凄惨な姿になる」
 わかるだろ、と顎をしゃくってもルールーたちは首を傾げるだけだ。
 穴掘り作業を続けようとする様は、本当に話が通じる者たちではないのだとトーゴに思わせた。
「仕事でも何でもないのに埋めてやったのは、そんな同情からかねぇ……」
 だから掘り返してくれるなよ。
 弱き骸が例え、濃い誘い別の魂に切実を願おうとも。
「さあさ、仕事は辞めどきだ!」
 目視した後のトーゴを追える速度をルールーは持っていない。
 敵が来たのだと、ふらふら歩く足取りでスコップをぐぐんと振り上げる迫ってくる個体がチラホラと。
 五本程のクナイのわっかを布上の猫目・雲霧に通して纏め上げ、素早く次の動作の準備を開始する。
 ――さあ、来い。
 ぶんぶんと振り回し、かしゃかしゃと骸の足が間合いに入るまでその時間は続く。
 ひらひらと、桜の花びらが落ちていく様より遅く。
 刹那の瞬間それは来た。――コレなら届く。
 ――決して考えるタイプじゃないな。
「この距離なら届くだろ?」
 ――オレもお前たちも。
 素早くクナイを投擲したトーゴはニィと笑う。
 どこへ投げたのだ、と首を傾げたルールーが、トーゴ自身を直接狙うと踏んだのだ。
 敵対者が武器を当て損なった。では黙らせよう。
 そんな動作で、ルールーたちは一斉に鳴き始める。
『るーるるーるるーるるー』
 単純で重い、地域破戒さえ成せてしまう一撃を――きぃんと甲高い音が弾く!
 トーゴの念動力でUターンしてきた暗器の旋風は、羅刹が起こす武器嵐。
 念動力で相殺されたスコップの威力は、宙で霧散する。穿つ事ができなければ、土地もまた破壊されず。
 しかしそれだけでは終わらない。念動力で当てる向きは決して無作為ではないのだ。
「叩くべきがなにか、知ってるだろ?」
 無防備を晒す方向。または、同士討ちを誘ったのだ。
 がつんと激しい音がする。倒れ伏す音がする。壊れた骨の崩れる音も。 わらわらと烏合の群れが騒ぐより疾く、カウンターとして心の臓があるべき場所を串刺し次の抵抗を封殺する。
「折角眠らせたモノを無闇やたらと起こすな?」
 この舞台に上がるべきは、お前たちじゃない。

 なァ、――そうだろ?
 この場を支配するお前の声を、聞かせてみろよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『烏啼』

POW   :    欺瞞
命中した【深緋の月影で増幅or植え付けた対象自身】の【異能・異形・怪奇に対する負の感情】が【自死へと誘う花々(形状や種類は種々雑多)】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    零和
【周辺一帯を夜さりに変化させ、紺青の月影】を降らせる事で、戦場全体が【あらゆる攻撃・現象を無効・遮断する空間】と同じ環境に変化する。[あらゆる攻撃・現象を無効・遮断する空間]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    微睡
【異能・異形・怪奇を忘れさせ隠したい】という願いを【薄桜の月影から生命・霊体・創造物の無意識】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はスキアファール・イリャルギです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●女の声は花嵐
 桜の木の下から『死体』を掘り起こす事は叶わなった。
 掘り進める作業を行うルールーたちの囀りが少なくなると、今度は女がふわりと猟兵の前に現れる。
 |烏啼《ナンナ》は笑う。華でも咲くように優しい気配を出しながら。
「其処には何も、ありません。皆様、忘れてしまいましょう?」
 そこに喪したのは、叶わぬ願いを抱いた女。
 骸は何も語らない。しかし影朧であるならば――語る口はあるものだ。
「『私が一番、貴方を愛する人でありますように』」
 星に願って、しかし叶わなかったその願い。
 既に終えた話だ。女の秘密は他人に口無し。
 クチナシの花が所構わず咲き誇る。桜の木の下にも、白いクチナシの花が入り乱れて咲いた。
 世界に影響を出すほど強い後悔の念は、花となって想いを誇る。
 想いを自らの自死を通じて封じ、忘却を強く願う"呪い"に変じさせていくばかり。
「『聞いた事は忘れてください。私の慕う殿方はを――』」
 今も存命でいらっしゃることでしょう。
 しかし、いきているからこそころして、忘却の中へ引きずり混んでしまいたくなりますから。
 女の出没は空気が換わる。
 だんだんと、陽の落ちる帝都に染まる桜ではない色の花の中、微笑み女は嘆くのだ。
『いいえ今の話は、どうか忘れてください。此処に女は居なかった。此処に影朧などいなかったのです』
 喪った女は、知った存在からも奪い忘却を望むだろう。

 隠した女の秘密を欠片でも聞いた貴方様。
 どうか、此処で――出会ったことさえ忘れていってください。
キノ・コバルトリュフ
エリンギ!今日は楽しくハイキング!!
シメジ、なんだか周りが騒がしいね。
でも、キノたちは気にしなーい。
キノ?スピちゃんどこに行ったのかな?
シイタケ、おいしいお菓子とか用意したのに。
帰ってきた、どこに行ってたの?
軽く運動でもしてきたのかな?
マイタケ、それじゃあ、いただきます。



●星霊スピカの導き

「うーん、そうだなあ」
 足取り軽く、通りすがったキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)。
 周囲の騒がしさ、湿っぽさ。気にせずハイキングを続けるつもりだったが、ふと足が止まる。
「シメジ、ジメジメなのは嫌いになれないけどねー」
 顎に手を当てて、んー、と悩む仕草のキノはキノコ笠を揺らす。
「あれ?」
 重さがいまいち一つ足りない。
 星霊スピカ、スピちゃんがいつのまにかいないのだ。
「あれれ、あれれ?キノキノ?」
 視線を振って、きょろきょろ見渡してもスピカの姿は見当たらない。
『お探しものですか?』
「うん、スピちゃんが見当たらなくて」
 怪異であり、異形の女。
 影朧へも分け隔てなく接するキノは、|烏啼《ナンナ》にとっては不思議な存在に映った。
『見つからないモノは、忘れてしまっては如何でしょう』
 怪しい風が吹く。日が落ち始めて、顔を覗かせた月から降りてくる優しい光。
 薄桜の月影が落ちる場所に、無意識を呼び起こす願いを落とす。
 "此処に居る骸"から"同じ存在とも言える影朧"は願うのだ。
 忘れてしまえばいいのだと。自分の事と関係がなくても。
 忘れてしまえば、――探す労力も、何も要らないのだと微笑んで。
 月影は広い範囲に広がって影響を与えていく。
 忘れた上で、"無意識に賛成する魂"が周囲から影響を与えていく。
 忘れ去られていく、散りゆく桜のように――超常の存在、認識がおぼろげに。
「キノキノ、でもそれじゃあ」
 ――忘れられた子が寂しくなっちゃうよ。
「きゅう!」
 鳴き声と共に、キノコ笠の上に何かが着地する感覚。
 スピカは踊る。額に頂く煌めきを、星のように輝かせながら。
 月影落ちる暗がりに、輝く一番星となって輝けば、――忘れ隠す力にだって打ち勝てる。
「マイタケ、どこ行ってたの?お散歩?美味しいお菓子のあるカフェーに行こうよ」
 スピカダンスで逸した忘却の時間を利用して探していた子を見つけたキノは、自分のいるべき世界へ戻っていく。ハイキング、そして食べ歩きと見聞を広げる、そんな冒険心溢れる日常へ。
『……忘れないほど強い、絆……』
「シイタケ、うん!スピちゃんとこれからも夢を叶えるために頑張るんだぁ」
 貴方も頑張ってね、なんて少しズレた返事をして去っていくキノは、本当に不思議なピュアリィだったことだろう。神楽巫女は祈りや清めを訴える「神火」の使うもの。
 キノ自身は使っていなかったが、代わりに踊られたスピカダンスは清めの力そのモノであった。
 鳴き声と、可愛い踊り。安らぎの齎し方は此処それぞれの研究から生まれるもの。
 キノの術は共にある星霊スピカの煌めきが導く――貴方の願いと魂に安らぎを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リィンティア・アシャンティ(サポート)
「お手伝いしましょうか? がんばります!」

礼儀正しくほわほわと穏やかな雰囲気の妖精騎士
妖精のルノを連れている
たまにルノの友達、猫王さまもいることがある

戦闘では前衛だったり後衛だったり、周囲の人たちとの連携を大事しつつ、武器を持ちルノと一緒に戦う
自分がやれることを精一杯に

使用するUCや他猟兵さんとの共闘はご自由に
お任せします!


惑草・挧々槞(サポート)
東方妖怪の悪霊×猟奇探偵の、いわゆる猫又よ。100歳を超えてから年齢は数えてないわ。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、たまに真顔で冗談を言ったりして揶揄ってみたりするのが趣味ね。

UCは指定した物をどれでも使用するつもり。ランダム選出されたもの以外も勝手に使って貰って構わないわ。
多少の怪我は厭わず積極的に行動。だって、お化けって死なないものだから。自爆する技も幾つかあるしね。

ただ、他の猟兵さん達に迷惑をかける行為はしないように心掛けているわ。
あと、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしないつもり。🔞とか以ての外よ。

後はおまかせで。よろしくね。



●勿忘草を識るものは

『忘れてください。私が此処に現れたことを』
 暴かないでください(認識してください)、そして改めて忘れて欲しいのです。
 語る|烏啼《ナンナ》 は矛盾に微笑む。
 異能の力を発動する影朧は隠して、忘れさせる力を高めて発揮する。
 薄桜の向こうには大きく月が登り始めている――生命や霊体、構造物に無意識に問う。
 宿るモノも、自我を忘れ自分を忘れ、誰かを忘れ、願いを忘れたくは無いか、と。
「でも少なくとも、影朧として貴方はそこにいるわ?」
 消えてなくなったりしない。惑草・挧々槞(|浮萍《デラシネ》・f30734)は静かに瞳を細めた。
「人は人なの。自分の齢を忘れてから出直して貰っても?」
 東方妖怪であり、自身の年齢を正しく認識しない挧々槞にとって、女の想いは儚く映った。
 揺蕩いたいのなら、それもよし。
 朧げの魂に対する言葉は"猫"妖怪には、戯れに映ったものである。
「魂が自分の形を忘れていないの。それは、影朧になっても人は人、という証でも有るの」
 全てを忘れてほしくない。隠したいが、暴かれたい。
 ささやかな矛盾は人間ならでは。
「私?私は此処に居ないかも知れないけれど、些細なことよ」
 風が桜を攫うと同時に、にゃあん、と猫の声が可愛らしく響く。
 どこからともなく聞こえたその声の場所を、探すものは数多く。
 しかし、それは挧々槞の|猫可愛がり猫かぶり《プリティフォニィ》。
 幻朧桜の木下に、可愛らしい猫が一匹尾を揺らす様が|烏啼《ナンナ》の瞳に映り込む。
『……猫、さん?』
 今此処に居た"誰か"はどこへ消えたのだろう。
 自分が見失った相手の事を、|烏啼《ナンナ》は探す。
 忘れて欲しい、と確かに願った。だが先に消えて欲しいだなんて、思ってなどは――。
「ほら、…そういうところ」
 猫は喋る。否、喋ったと思う頃には"それが猟兵であることを隠した姿"だと女は気が付いただろう。
「忘れた後になって困るのです。忘れてしまわなければ良かったと、悔やんでからでは遅いのですよ」
 桜吹雪に混ざり、翔ぶのは妖精・ルノである。
 それは|エルフヘイムの妖精が起こす風《フェアリーストーム》だ。リィンティア・アシャンティ(眠る光の歌声・f39564)と共に有る妖精が、|烏啼《ナンナ》の隙をついて針剣を振りかざしながら魅了の気配を振りまいて飛び続ける。その場に居て、と釘つけるように、リィンティアの言葉を促すように。
「自分以外にも忘れて欲しいと願うなら、先に実行される覚悟だって持たなければ、ですよ」
 妖精騎士は、言葉で語る。
 決して驚異として映らなかった弱い魂に、語りの口を向けるのだ。
 |終焉破壊者《エンドブレイカー》としても、それが正しいと思わずに居られなかったのだ。
「……貴方は本当に、すべての人に認知されて忘れさられて、それでイイのですか?」
 良いと思わないからこそ、そうして転生を望まず此処に居るのでしょう。
「貴方は未練がありますね、忘れようと強く願った事を悔やんでいますね」
「本心から本心から忘れてほしいと願っては……」
 ――いないのでしょう?
「あなたの恋が実らなかった苦痛が、忘却の果に癒えると、信じたかったのでしょう?」
 二人の猟兵の真相を見つけんとする言葉の群れに、|烏啼《ナンナ》はたじろぐ。
 願いの根底を晒され、暴かれたなら――自分は此処に居るのだと証明されてしまう。
『……癒えない傷は、隠すに限ります。でも、それでも』

 星に願いたいほどに。
 この願いは、叶えたかったものでした。

 |烏啼《ナンナ》の頬を涙が伝う――ように見えた。
 桜の雨が強く吹雪く。そんなものは、ありませんでした。
 女の力は、起こった事象すらかき消すように働いた。
 願いのか弱さに反比例した、野放しにしてはいけない力である。
「……だから、魂は人であると私はいうのよ」
 攻撃を逸らされたらそれ以上攻撃の手を加えてこない――貴方はか弱い、恋する女の成れの果て。
 誰かの幸せのために手を引いて、自分の弱さに耐えられなかった――救われるべき、魂だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
女と恋の秘密はどの世界でも繋がってんのかなァ
一途で不憫で我が儘で
語らずもその死に様が雄弁だったんじゃね?
亡骸を見た見ず知らずの人は
だから騒がず何事も無いかのように葬った
…多分ね

死んだ人がとりあえず安息出来ればいい
オレもそー思うしな

敵の攻撃を【念動力】で軌道逸らし【野生の勘】で躱したい
異形や何やって化身忍者のオレにはまァ身内だが嫌悪ひとつ無いかってゆーと嘘だ
けど自死は無い
日蔭者の忍びにも矜恃はあり自死は有るまじき考えだからねェ
敵攻撃の被弾にも【激痛耐性】で耐えきり【追跡】し、念動で棒手裏剣を【投擲】→UCへ繋ぐ【暗殺】
さあご婦人
一度棒手裏剣が刺されば逃げ場は無い
まずは一度鎮まってくれよ

アドリブ可



●|人の口には戸は立てられぬ《死人にクチナシ》と言うだろう

 めそめそと、顔を覆う仕草を魅せる女。
 |烏啼《ナンナ》は湿っぽい空気感を作り始める。
『貴方も、強い眼をしてらっしゃるのね』
 鹿村・トーゴを前に、女が発した言葉もまた、悲しげを彩った。
「まーな、女と恋の秘密はどの世界でも繋がってんのかなァ」
 女へ、ではなくふと口をついて溢れる。
 誰かと誰かのなしというのは、どうしてこうも悲恋を結んで咲こうというのか。
「良くも悪くも見る機会は、あったようななかったような」
 在ると断言すれば、あの涙から女の業が溢れて"世界"に絡め取られかねない。
 トーゴの見える幻朧桜越しの月は深緋の影を落として迫ってきている。
『……どちらでしょう。欺瞞に溢れた言葉にも、思いますが……でも、それなら私が望むこともおわかりでしょう?』
 "忘れて欲しい"願いはただ一つだけ。"消させて欲しい"忘却は結果論の話。
 感情に訴えかける|願い《呪い》は、命中したなら厄介なことになる――予感は図り知れず。
「いーや、言葉を"隠す"ならそのままで居るべきだろうさ」
『……おや』
「語らずもその死に様が雄弁だったんじゃね?」
 骸は語らず葬られたのなら、自死した影朧もまた語る口はないだろう?
 影朧である以上、話す口は当然あるが――話せば未練の糸も綻びだすかも、知れない。
「それ以上は――オレが隠してしまおうか」
 死後、葬ったのは誰だと想う。
 自害した女を、手厚く"弔った"奴が居るということだ。
「亡骸を見た見ず知らずの人は、騒がず何事も無いかのように葬ったんだろーし…多分だけど」
 ならば語らずの華は、咲かせ過ぎては桜が見劣りしてしまう。
 此処に咲く花は、桜と――|烏啼《ナンナ》の想いを形にしたような足元の"クチナシ"の花。
 もぞりもぞりと根を地面に抜き出して、クチナシの花の一郡はひとつの化け物となって蔓を大きく伸ばしてトーゴを絡め取ろうと動き出す。これは女の攻撃手段――想いの花の蔓は、矛盾を毒のように染み渡らせる。
「死んだ人がとりあえず安息出来ればいい。オレもそー思うしな」
 ――だから、出会ったからには一期一会ってな。
 忘れてくれと頼まれて、忘却まみれのオーラに巻かれたって、トーゴの意思は折れない。
 念動力――意思の強さは、此処までの磨き上げた実力が、これまでの生き方が後押しする。
 後先考えずに、そうと決めたら動くのみ。
 野生の勘が働いた、全てのクチナシの根を躱しきり、|烏啼《ナンナ》のよく見える大舞台で――笑う。
「化け物だ、異形や何やってーの?影朧だ、異能だっつーのは、化身忍者のオレにはまァ身内だが嫌悪ひとつ無いかってゆーと嘘だけど」
 だが、それも在る故のトーゴなのだ。
 全てをもしも忘却に喪うのなら、それはもう別人となる。
『では』
「いーや、それらに絡まれて貫かれたとして、だ」
 ガッ、と片足に食い込みぶわああと自死を誘うクチナシの花が勢いよく花開いていく。
 生命力を吸って咲き誇る花だ、倦怠感が襲うものだが――トーゴは強く踏みとどまる。
「……ほらみろ、自死はない。日蔭者の忍びにも矜恃はあり自死は有るまじき考えだからねェ、死ぬときは諸々、必要な場所でなきゃいけねェのさ。オレの死は当然"此処じゃねェ"」
 ざくりと刺さった棘のような根は確かに振りほどくのが困難な程で、抜けない。
 しかし、突き刺さっているからこそ、|烏啼《ナンナ》はクチナシの花の傍または影にいると見通せる。
「さあさ、それで終わりかい?」
 トーゴは動かず、しかし念動力を利用して棒手裏剣を投擲する。
 |呼子針《ヨブコノハリ》は、翔ぶ。
「“降りて隠形呼ぶ細声の糸を辿れや爪月の”……追って貫け隠形鬼。さあご婦人、逃げ場は無いが、どうする?」
 こちらにやった事をそのまま替えそう。
 禍言を込めた平凡な棒手裏剣が一度刺さったなら、逃げ場はない。
 逃さず貫き、射抜くだろう。
「まずは一度鎮まってくれよ」
 ご婦人、どうせ――嘆きの果てに自分への"認知"欲しさに暮れていたんだろう?
 陰日向に咲く、クチナシの花として。どうする?オレたちが、今日此処で認識した。
 忘れることを拒み、忘却を願うアンタを、こうして此処で"|影朧《ご婦人》"、瞳に捉えてるんだがねェ?オレの言葉についぞ言い返す言葉もなく、なんだか静かに嗚咽に泣き濡らす声が聞こえてくるなァ。ほら、アンタは自分から身を引いた――イイ女だが、潔すぎた女、ってーこったろ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァンダ・エイプリル
アドリブ連携歓迎

忘れるなんて無理だよ?
あなたもヴァンちゃんも、もう舞台の上なんだから!

うわっ真っ暗!
これじゃ何も見えないや!
【おどろかす】にはぴったりだね!

UC発動
烏啼さんの持ってるランプを頼りに【武器を投げつける】でプレゼントを投げる
箱自体は届かないよね
でも……中身はどうかな?
予想できないなら必ず命中するはず!

出てくるのは……暗闇を晴らすような眩しい光!
いつか願った一番星を烏啼さんにプレゼント!

確かに想いは届かなかった
でもその想いは嘘じゃなかったでしょ?
そんな眩しい恋を忘れるなんてヴァンちゃんが許しません!
全部全部吐き出したらさ
笑って次の場所に行こう!

綺麗事かもだけど、その方が笑えるでしょ?



●いつか見た星を

 涙に揺れる女の声は、ヴァンダ・エイプリルの耳を擽る。
『……忘れてください。忘れて欲しい、だけですから』
 十分に泣いていて、忘れてほしくなんて無かったと悔やみ続ける声。
 本心だろうが揺れ動き続ける心は、"どちらも真実、追求したいものではない"と思えて仕方がなかった。
「忘れるなんて無理だよ?忘れさせようも、ダメ」
 此処は骸が眠る桜の傍でも。
 影朧として、強く"死"を隠し、"願い"を隠し忘れさせたい感情だって、ヴァンダからすれば横に置きたい現象だ。
 世界を動かす仕掛け人が此処に居るのだ。
 悲しみに泣くならそれはいい。悔しくて泣くのも、嘘と偽って微笑むのも構わない。
 傷ついた魂である影朧の目的まで、否定したいとはひとつだって思わなかった。
 自分と相手が居るなら此処は――。
「あなたもヴァンちゃんも、もう舞台の上なんだから!」
 "役者"は泣くだけじゃだめなのさ。"覚えて"貰うのが誉なのさ。
『舞台役者だというのなら、貴方には舞台から降りて貰うしか……』
 |烏啼《ナンナ》の抵抗。女の意地。
 自身の感情に矛盾を抱き続けようとしながらも、異能の力を振るうのだ。
 |零和《ぜろわ》と名付けた、特殊な空間――夜が深まる黒い闇が、すぅうと落ちる。
 周辺一帯を夜さりに変化させ、幻朧桜越しに落ちる紺青の月影は色を濃くしてヴァンダの上から空間を広げた。
「うわっ、真っ暗!」
 明かりさえ飲み込む闇の色の中で、声は響く。
「これじゃ何も見えないや!」
『そうでしょう?此処にはなにもありません。忘れるのは都合がいいはずです』
 ――でも、これなら逆におどろかすにはぴったりだね。
 焦りではなく更に一手先を考えるヴァンダは、仕掛けていくための準備する。
 この空間には逆らわず、むしろ乗ってしまえの精神で。月影を中心に広がるあらゆる攻撃・現象を無効・遮断し足元にクチナシの花が咲く空間――ならば、こうしよう!
「さーて、箱には何が入っているかなー?ヴァンちゃんも知らないけどー!」
『貴方、なにを……』
「ヴァンちゃんと貴方の出会った記念日にプレゼントの進呈でーす!受け取り拒否自体をお断り!」
 箱自体は届かないだろう。
 ――でも、……中身ならきっと届くよね。
 ぶん、と中身をつかんで投げる!目標は、|烏啼《ナンナ》自身が抱える明かり。
 ランプの明かりだけが舞台に広がる静かな明かり。だからこそ、そこをめがけて|プレゼント《投擲》!
 当てることは不可能だ。何故ならすぐにプレゼントが着弾するから。
『貴方は何は投げて…わ、あ…!?』
 |烏啼《ナンナ》の元へ渡されたもの。

 それは、光。
 暗闇を晴らすような眩しい光だ。

「それはね、お星さまの輝き!いいよね、眩しいよね!」
 何を隠そう、貴方が願った"一番星"。
 隠された一番星が、貴方の元へ届いたのなら――驚くんじゃない?
『……眩しい、あの日見た、お星さまによく似ています』
「でしょー?"思い出した"?確かにね、貴方の想いは届かなかった」
 でも想いは嘘なんかじゃなかった。とびきり強く光る、星にふさわしいものだった。
 星のようにキラキラで、乙女のように願った日のことを覚えているのだと言うのなら。
「そんな眩しい恋を忘れるなんてヴァンちゃんが許しません!」
『……眩しい、でしょうか』
「うんうん、ニコニコ注目しちゃうくらい綺麗な恋じゃない?」
 全部全部吐き出したらさ、笑って次の場所へ行ったらいいんだよ。
 未練全部、星に願って上書きしちゃおうよ。今の貴方にはきっと出来るもん。
「綺麗事かもだけど、その方が笑えるでしょ?」
 美人さんが泣き続ける舞台なんて、物悲しいよ。
 綺麗な恋をしたんだって、胸を張って。
 遠い明日を、別のステキに出会いたいって"いつか"を願いに行こうよ。
 貴方の力で深まった闇が溶けて、ほら――本物の星が、此処にたくさん、落ちて来そうだよ?

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ほうき星に願いを』

POW   :    逢いたい人がいる。

SPD   :    叶えたいことがある。

WIZ   :    今は、わからない。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●星流れる花祭

 "舞台"を見ていた観客も、夜空に流れる星に気がつくと、少しずつ意識を空に散らしていく。
 今日は、"ほうき星が空を疾走る日"。
 星が大量に流れて空を埋めるのだそうだ。キラキラと、夜空には白い星の軌跡が残っては消えていくのが見える。
 幻朧桜の枝の向こうにヒカリの筋を残しながらキラキラと空を染める光が見えるのだ。
 観客たち同様に、|烏啼《ナンナ》もまた、空を見上げている。
 言葉を探すように、少し気持ちを軽くした――恋した女の気分を隠さずに告げながら。
『あの星は"吉凶が交差する"のだそうです。星に願えば悪いことはイイことに、イイことは悪いことに変ずることがあるのだと。迷信といえば、そうでしょう……ですがこの帝都には"影朧"や"祈り"なんて、色々不思議はありますから』
 不思議な桜が咲き、夜桜として花びらを散らす遠き日に女は星に願った。
 もしかしたら"好いた貴方"に願いが届くかもしれないと――淡い希望を抱きながら。
 しかし願いのチカラは女を救わず、女の未練のトリガーともなった星たちでもある。
『……この祭りは、星に願うだけの催し。何があるわけでもなく、願う人が居るだけです』
 数時間の間、星は降り注ぎ――そして願いを乗せて落ちて消える。
 いつ叶うのか、願いが叶うのかは"その時になってみないとわからない"が、それでも"人間"というのものは時に自然のチカラにすがりたくもなるのだ。女もそう。

 桜の花はいつでも咲いているが、桜が"吉"ならほうき星は"凶"である。
 桜の木の下から、あえて願うのは――"星と桜"が交差するから、というのが催しの始まりらしい。
 桜の木の下に何が埋まっているか、という話と同じくらいに誰かが広めて、いつの間にか記念日となった日でも在る。
『……少しだけ、今から未来を願ってみたくなりました』
 隠さずに、偽らずに、忘れさせずに。
 うっすらと、未練が晴れそうなのか消えていきそうな気配の薄さを持つ女は、猟兵をちらりとみて、再び空を見上げなおす。気にしている。もしくは、言われた言葉を受け止めようとしているのだろう。
 舞台役者がまもなく舞台を降りようとしているのは、猟兵の目から見ても明らか。
 しかし、君たちもまた、舞台役者としてそこにいる。
 これからする行動を選択するのは、――君たち次第だ。
キノ・コバルトリュフ
エリンギ!今日は楽しくハイキング!!
シメジ、なんだか周りが騒がしいね。
でも、キノたちは気にしなーい。
キノ?スピちゃんどこに行ったのかな?
シイタケ、おいしいお菓子とか用意したのに。
帰ってきた、どこに行ってたの?
軽く運動でもしてきたのかな?
マイタケ、それじゃあ、いただきます。



●星霊とこれからも一緒に

「キノキノ、スピちゃん美味しい?」
「きゅっ!」
 桜の花びらがちょこんと載ったあいすくりんを出すカフェーにおいてキノ・コバルトリュフは舌鼓を打っていた。今日限定の流れ星型トッピングが可愛らしく、カフェーの中は賑わっている。
 スピカダンスというひと仕事を終えた星霊スピカは冷たいあいすくりんをもっもっと頬張っている。
 いやよく見ると、ぺろぺろ舐めている!
 これはがっついているようで頭がキーンとしないように対策する賢い行動だ!
 日頃一緒に過ごすスピカを眺めて、キノはニコニコしつつ自分も同じあいすくりんを楽しむ。
「今日はなんだか人がたくさん賑やかだねー」
「にゃ」
 控えめに、一緒に喚ぼうサーチウィズフレンズ。
 たまには貴方も。キノは星霊バルカンも同席させる。
 美味しいものは、皆で食べたほうが美味しいもん。
 尻尾の先に炎が灯る黒い猫はぺろりと前脚を舐めて、ちらり。
 スピカの方は尻尾を振って、友好的に迎えるのだが――バルカンもまた猫、気まぐれにツンと明後日の方向へ顔を背ける。
「キノノ?どうかした?」
「……」
 星霊バルカンは空を見ている。大きな黄色い瞳にきらん、と光の軌跡が映り込む。
 細い瞳孔がきゅ、と細くなり――関心に合わせて大きくなった。誰よりも真面目に、バルカンは星を見ていた。
 星霊は、なにかと星や空に興味があるのだろうか。それともただの、気まぐれか――。
 テラス席に座るキノたちの上には星がキラキラと輝いている。
 色んな人が話している"ほうき星"らしいが、願いは自分で叶えると決めているキノにとっては"輝く光"以上には映っていなかった。あのエリクシルの問いだって跳ね除けてみせたのだから、決意は硬い。
 いつかを夢見る理想は、自分自身で叶える。誰かの後押しは今のところは必要ないのだ。
「キノキノ、本物の空はとっても綺麗だから、眺めちゃうんだよね~」
「きゅう!」
 じゃあその間に、あいすくりんを食べちゃうけど良いよね!
 バルカン用に購入した分へ、スッと手を伸ばすとバルカンは尻尾の炎を強めに燃やして素早くたしんと前脚で叩く!猫の俊敏な動きからは逃れられなかった!ジ、と眺めてくる眼力は強くしかし言葉こそないが、バルカンが自分用に手を出すな、と怒ったのは誰の目から見ても明らかだ。
「キノ?冗談だよ、美味しいもの沢山食べよー!」
 皆で一緒にね、と呟いた頃空で大きな星が弧を描いて流れていった。
 キノコつむりの冒険はこれからも、夢が叶うまで続くのだ。
 星霊たちが主人にどちらも明るい鳴き声で返答する。
 残りと笑ったキノがキノコの笠を揺らし、スピカが定位置に飛び乗った。
 星霊術士と星霊の普段と変わらない穏やかな時間が、ゆっくりと流れていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァンダ・エイプリル
アドリブ連携歓迎

あーよかった!
前を向かなきゃ願ったものも叶わないしね
迷信でもいいんじゃない?
叶うまで願うのって結構疲れるし
寄りかかれる何かがあるのは必要だよ

【SPD】
おっとっと、真面目になりすぎちゃいました!
せっかくなんでヴァンちゃんもお願いごとをしちゃいます!
でも考えると難しいな…

言いつつ想像するのは自分の世界のこと
戦火の情景が蘇るけどぐっと堪えて
一日でも早くみんなに笑顔が戻るよう【祈り】を

へ?ヴァンちゃんも何か隠してないかって?
…たしかに!けど忘れようと思ったことは一回もないよ!
ヴァンちゃんの笑いは目を背けるためじゃなく、向かっていくためにあるんです!
あ、また真面目な雰囲気になっちゃった…


藤堂・こずゑ(サポート)
あまり見た目妖狐っぽくないけど、妖狐なの

右目を何とか見せない、見ない様に生きてるわ
妖狐な部分は出したくないから…

依頼に拘りは無いわ
誰とでも連携し、どんなのでも遂行してみせるわよ
日常パートはアンニュイな感じでクールに過ごすわ
一応喜怒哀楽はあるつもり

戦闘パートは古流剣術で挑むけど…
流派は忘れちゃった
マイナーだから廃れちゃったみたい

振るう刀は宵桜(ヨイザクラ)ね
可愛いでしょ

大気の流れを読んで攻撃したり避けたり、後の先を得意とするわ

UCはどれでも使用し、攻撃するUCばかりだけど…
他の猟兵との連携などで避けて敵を引き付ける必要がある時は『流水の動き』を使ってね

後はマスター様にお任せするわ
宜しくね



●こうして世界は面白く回るのさ!

「やー、よかった!前を向かなきゃ願ったものも叶わないしね」
 落ち込む背中ように黒や闇を引きずる影朧|烏啼《ナンナ》を叩くような明るい声で、ヴァンダ・エイプリルは笑った。
 あえて触れない。触れるのはマナーに欠ける。
 笑いとは、当然のように――言葉と態度と意思疎通からやるべきだ。
 手が出たならば、笑いのバランスは実力行使(物理)になってしまう。
 影朧と語り合ってわかり合ってみたっていいじゃないか。
「ヴァンちゃんは、迷信でも良いんじゃないかなって思うんだ。ねえ!そこの人はどう?」
「……私も、そう思うの」
 突然の指名を受けて、こくり、と控えめに同意を示す藤堂・こずゑ(一閃・f23510)は、人の波から外れてやってくる。
 クールで知的に|宵桜《ヨイザクラ》へ手は添えるだけ。
 こずゑは影朧救済機関「帝都桜學府」が學徒兵。今回の舞台を整えた裏方で動き続けていた一人でも在る。
 影朧へと訪れるべき魂の慰めは、普段の戦いと同じでは少し足りない。
 故にこれが儀式は行われていた。愛刀へと手を添えたままでいるのは、もしもの事があってはならないと気を抜かずに居るから。
 ――勿論、起きないとは思うのだけど。
「ありゃあ?ちょこっと硬めの人を増やしちゃったかな?」
「一応喜怒哀楽はあるつもりなのだけど」
 片目を意図的に隠すこずゑはすぐに待ったと声を掛けた。
「おお!ナイスツッコミ!」
 気持ちがいい程の笑顔を浮かべてサムズアップするヴァンダはとても自由。
『……ふふ』
 つられて|烏啼《ナンナ》が憂いなく、流れに引っ張られて笑った様子をみせたのはそんな彼女たちのやりとりを見たから。
『以前、一人で願った私と違って、願い等は持たないのですか?』
 強い願い。叶えたい願い。
 叶って欲しい胸に抱く仄かな願い。
「いやー、叶うまで願うのって結構疲れるし、寄りかかれる何かがあるのは必要だよ」
 たまには"願い"を横に寄り道してみたり、棚に上げて遊んでみたり。
 まっすぐに願い続けるのは"本当に強い願い"を持ち続けられる人がやること。
「人助けする人は、人を助けるのに"意味"や"理想"を持つ方が多いけれど……それだけする人は確かにいないわ」
『いないのですか……?』
「例えばコイバナだってそう。"こうだったらいいのにな"を語ったり、想像したりはしても……絶対、を狙い続ける人はあまり多くないの」
 ――願いにはしり続けられる人は、心がとても強い人。
 ――出来ない人は、辛抱強く"いつか"を夢に抱ける人。
 希望の持ち方は人それぞれ、とこずゑは語る。
「押しつぶされる人だっているから……挫折に立ち向かえる人だって、未練として思い続ける人だって、強い人だと思うわ」
 強い人は強い。ただ、命の損得が含まれていない人だっている、というだけのこと。
 影朧が押しつぶされて命を断った事は、支えられる人がいなかった悲しい話でもあった。
「あー、あー……おっとっとぉ、真面目になりすぎちゃいましたぁ!」
 話を重くするのは其処まで!ヴァンダは持ち前の明るさで、世界に向き直る。
「せっかくなんでヴァンちゃんもお願いごとをしちゃいます!」
『貴方は、……どんな願い事を?』
 空を見上げて、星を見た。ほうき星は流れていく。まるで水槽の中の魚を見ている気分になるくらいに、たくさん。
「んん~いざ考えると難しいな……」
「"真面目"に考えすぎなくてもいいんじゃない?」
「へ?」
「貴方、私にはそういう人に見えたから」
 偶然であった猟兵たちの間でさえ、そんなフワッとした会話が生まれるのだから。
 願おう、と思った時に感じたことを口に出したとして、深層を覗けるものなどいない。
「おおう、じゃあ"みんな元気になーれ"で!」
 ヴァンダの頭に過った光景は、自分の世界だ。
 戦火の情景は日々絶えない。だが、サクラミラージュのこの帝都とはもちろん違う。
 此処に在る火は|篝火《桜》だ。生き物が灯る明かりだ。
「具体的には"みーんな笑顔になりますように"!ヴァンちゃんはそのためなら祈っちゃうぞー!」
『貴方らしい気もします。でも、……』
 |烏啼《ナンナ》は訪ねようとして、しかし、やめた。
「へ?ヴァンちゃんも何か隠してないかってやつ?尻尾ぶんぶんしてた?」
 オオカミ的特徴を見抜くとはお主やるな!だが、それはフェイクだ。
 いいや、フェイクということに言いくるめていこう。
「お見事…そうたしかに隠したことはある!けどね、忘れようと思ったことは一回もないよ!」
 忘却で幸せになれることは一握り。
 覚えていながら、片隅に思い出すのは"悪いこと"じゃない。
「ヴァンちゃんの笑いは目を背けるためじゃなく、向かっていくためにあるんです!」
「じゃあ、貴方の夢が世界に響きますように、とかを祈っておこう」
 こずゑはあえて、そう口にする。自分の夢は自分が叶えるもの。
 叶うといいよね、という思いを星に願うのだって、それはこずゑの自由である。
「あ、また真面目な雰囲気になっちゃった…?」
『成程。大丈夫ですよ、私も、ひとつ願おうと思います。明日より先が"素敵な日"になりますように』
 過去の魂は、明日を夢見てみようと"願う"。
 独りぼっちではなく、願いを笑わず肯定する少女たちと一緒に。
 くすぐったくなるほどに、"優しい時間"は過ごしている。その体は、はらはらと桜の花びらを散らして、徐々に隅から消えいこうとしている――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
あっ、今夜は何かの流星群?
(星が好きなので素でうれしそうに空を指さして)
なかなか星が流れるのには出会えないもんだ、オレも二刻(四時間)見上げて5、6個だったし
さあ、ご婦人、命と引き換えてしまうほど恋にのめり込んだ女の事はいずれ忘れられてしまうけど
あんたの魂と亡骸を取り込んだ桜はきっとまだ長いことこの世界に根を張るよ
死んだ理由は洗い流して貰いなよ
でもその思い人の男を思う気持ちまで消さなくてもいーんじゃない?
そいつの幸せを願って生まれ変わるのもアリじゃね?

星は地に降り桜は空に降る
積もる恋慕の名残は人の世に、ってね
お客…帝都の民がきっとあんたの良い来世を願って送ってくれるよ
さよなら、ご婦人

アドリブ可



●もう一度願ってみたって良いんじゃねーか?

 大きな桜の向こうに広がる空で、星が流れていく。
「あっ、今夜は何かの流星群?」
 予知を聞いて後先考えず訪れた鹿村・トーゴは今日という日の星空を、今知った顔で笑った。
 当然、縁起などではなく、素の笑顔であった。星は好きだ。旅する空に必ず在る"明かり"。
 キラキラと輝く黒を貫く輝きだ。
『ほうき星、だそうです。何故だかこの日に殺到するので記念日なのだとか』
 戦闘意欲を失い、静かに消えていこうとしている|烏啼《ナンナ》は、控えめに聞かれた事を答える。
「ほう。星が光るのは毎夜で見ても、なかなか流れる場面には会えねェんだよなあ」
 体感でも落ちる星、横切る星は――平均的に二刻(四時間)眺めて、五や六がやっと。
 流星のように殺到して流れるとなると話は違う。
「こうも落ちる星なら、願う数はそりゃあ人の数かもなあ」
 この場に集った帝都の人間やその他諸々、幻朧桜の枝葉が届く場所から願いが発されるのだろう。
 此処は不思議の帝都。星の流れる夜の帝都だ。
 不思議な力は、湧いて現れてもなんら不思議は無い。
「……さあ、ご婦人」
 トーゴに視線を流されると、|烏啼《ナンナ》は身じろぎをする。
 いざ"呼ばれる"と、自分が此処から離れる瞬間が来たのだと、物寂しい思いが女の内側を埋めるのだ。
 土の下で埋まる、骸と同じ呼吸なんてできなくなる昏い気持ちと一緒に。
「命と引き換えてしまうほど恋にのめり込んだ女の事はいずれ忘れられてしまうけどさ」
 忘却はいずれ訪れる。
 強引に行わなくても、時間が記憶を錆びさせるから。
「あんたの魂と亡骸を取り込んだ桜はきっとまだ長いことこの世界に根を張るよ」
『……時間に身を任せて、行くのが良いと貴方はいうのですね』
「ああ。此処じゃあ魂は廻るってんだろ?死んだ理由は洗い流して貰いなよ」
 痛みを引き連れた死の刹那。
 この場に留まり続けた未練の終わり。
 幻朧桜と、桜の精に導かれてそろそろ還るのが良いだろうとトーゴは言う。
『……』
 悲しそうな雰囲気をだした|烏啼《ナンナ》へ、言い繕うように訂正を加える。
「あくまで、自死した記憶だってーのさ」
『え?』
「その思い人の男を思う気持ちまで消さなくてもいーんじゃない?」
 そういう気持ちを遺したまま、還ってくる事だって出来ると小耳に挟んだことも在る。
 全てを無くして還る存在も在るが、"大事な人の傍に"戻ってくる"魂"というのは実際、ある。
 この世界の巡りはきっと、星よりも太陽と月のような関係だ。
「そいつの幸せを願って生まれ変わるのもアリじゃね?」
 笑うトーゴは、そういう願いは"捨てなくて良い"のだと女に持たせてやった。
 "想う"ことを諦めなくてもいい。"此処に留まるよりは"その願いは"叶うはず"だと。
『そう、ですね……私の"恋"を忘れずにいたいです』
 女は大量の花びらとなって、散るように消えていく。
 少しずつ身を溶かすように、幻朧桜の花びらと混ざるように。

 星は地に降り、桜は空に降る。
「積もるる恋慕の名残は人の世に、ってね」
 此処には綺麗な色が染まる。
 そして願い続けて、旅に出ると良い。
「お客……帝都の民がきっとあんたの良い来世を願って送ってくれるよ」
 ――さよなら、ご婦人。

 女は、華やかで恋する少女のような明るい声を一つ遺した。
『ありがとう、私、……あなたのことが、すきだったの。ずっとすきよ、愛しています』
 囀る声は、花嵐。ほうき星に願いを乗せて、女はこの場より消え去った。
 遠くで見守っていた帝都の民の喝采が、猟兵たちの耳にだって届く。
 こうして"忘却を望む影朧"は、記憶に残って転生を望まれた。
 いつか、いつか。
 また――あなたのもとへ。
 ほうき星が願いを叶えるのが先か、幻朧桜が齎すのが先か。
 それは、――"叶ってみてから"のお楽しみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月14日


挿絵イラスト