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アイゼンシュタインべトン

#獣人戦線 #ヨーロッパ戦線 #ゾルダートグラード

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#獣人戦線
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#ヨーロッパ戦線
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#ゾルダートグラード


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 鉄騎が躍り、硝煙が舞う、灰色の空。
 榴弾と小銃の行き交う戦場には、常に人や戦車、時にはトーチカも燃えているためか、この空が晴れる事は稀であった。
 獣人戦線は、ゾルダートグラードに面した戦況の一端。
 かつては開けた平原だった戦場には、幾度も爆弾が落とされ、銃の的にされないために長々と塹壕が掘られて行った。
 ヨーロッパ中を敵に回すゾルダートグラード軍は、それでも巨大勢力を誇っており、あらゆる戦線でも、質量ともに他国を圧倒するものであった。
 それでもなんとか塹壕を築いて膠着状態を維持しているのは、この世界の獣人たちが、はじまりの猟兵から戦う術を伝授され、抵抗活動を続けてきたからであろう。
「ふぅ~、まずいなぁこりゃあ」
 ぱらぱらと、土だか粉塵だかもはやわからないものが降りかかってくる塹壕の壁面に張り付けた木板に背を預けた虎の軍人が、ポケットから取り出した携行食を数口でもりもりと咀嚼しつつ嘆息する。
「選り好みしてる状況じゃねえだろ」
 その隣、鶏頭の軍人が聞き飽きたと言わんばかりに憎まれ口を叩きつつ、くしゃくしゃに折れ曲がった煙草の煙を吐く。
「いやぁ、味なんてもうわからんよ。飯の話じゃない」
「あん? じゃあ尚更だな」
 草食用フルーツ味とかすれかかった表示のある携行食を勧める虎に、鶏はいらんと首を振りつつ、銃を握り直し塹壕からほんの少し顔を出してはすぐに引っ込めて、疲労のこもった紫煙を吐く動作は、もう何度も繰り返したものだった。
 いつからこの戦争を続けているのか、覚えている者は少ない。
 少なくとも、若さを置き去りにして久しい二人の軍人が生まれるよりも前から、ずっと続いていたような気もする。
 虎の名前は、ヨナタン・フランツ・ガエターノ。どこの生まれだか知れたものではないが、国籍はアルゼンチンにあるらしい。
 筋骨隆々の大柄、なんでも食うし、頭も回る、歴戦の勇士でもある。ついでに言うと、この戦線に出張っている外人部隊のとりまとめもやっている。
 鶏の名前は、リチャード“ジャケット”・ウィリアムズ。元海軍で、流れ流れて外人部隊に放り込まれてそこそこ長い。
 口が悪く喧嘩っ早いが、勘が鋭く、これまでに何度も危機的状況を感知してきただけのセンスがあった。
 顔はどう見ても鶏だが人に近い階梯であり、白い羽毛だと目立つといってネイビージャケットを愛用している。ついでにヘビースモーカーで、年中煙を吹かしている。
「……|戦車《タンク》の増援はねぇのか?」
「本国にそんな余裕あると思うかい?」
「……言ってみただけだよ、クソ」
 付き合いが長いためか、それとも長引いた戦線のためか、言葉のやり取りには容赦がない。
 取り繕う余裕がないほど、味覚が麻痺する程、緊張と戦いの連続なのだ。
 そろそろ不眠と疲労が辛くなってくる程には、長らく戦線に居過ぎた。
「俺たちが引退する頃には、終わってると思ったんだけどな」
「引退して南国でバカンスっていうのも、悪くないねぇリチャード君」
「思ってもねーことをよ。こんなんじゃ、爺さんになっちまうぜ。っと、例の爆撃機だ!」
 飛行爆撃可能なパンツァーキャバリアのローター音を聞きつけたリチャードの鋭い声に、部隊は一斉に塹壕へ潜り込むことになる。
 そして空からの爆撃により、戦線は再び後退を余儀なくされ、徐々に獣人たちの部隊は削り取られていくのだった。

「獣人戦線の世界を知っているか? 獣から進化したという住人たちは、他所の世界からやってきたオブリビオンの超大国から侵略を受けているとのことだ」
 グリモアベースは、その一角。青灰色の板金コートにファーハットがトレードマークのリリィ・リリウムは、先刻発見されたという獣人戦線において発生した予知の内容を居並ぶ猟兵たちに説明するところであった。
「舞台はヨーロッパのとある戦線。この辺りは、ドイツを中心に周辺ヨーロッパを支配地域としている『ゾルダートグラード』を相手にしている所だな」
 獣人戦線の世界に進出している超大国は6つ。そのいずれもが、お互いを牽制し、派手に争っているという。
 もうそいつらだけでやってくれというお話だが、彼等が争うのはこの世界の支配権を巡っての争奪戦。一番の被害を被るのは獣人たちという訳だ。
「猟兵として覚醒していない獣人たちが必死の抵抗を見せているとはいえ、軍事力の差は大きいようだな。なんといったか……キャバリアとかいう、歩く戦車を持ち出して蹂躙しようという魂胆のようだ。ひどい話だな」
 キャバリアと言えばクロムキャバリアにおける戦いの象徴でもあった筈だが、ゾルダートグラードの用いるそれらはまた少し毛色が違うようだ。
 獣人たちの中には、それらを鹵獲、或は模倣して開発する者も居るようだが、今回の戦線で用いられることは無いらしい。
「だが、相手がその気なら、我々も手段を選ぶ必要はない。爆撃機もどきを同等のサイズでなぎ倒すもいいだろうし、猟兵諸君の中には生身でキャバリアを殴り倒した猛者も居る事だろう。手段は任せるよ」
 敵が塹壕掃除に用意したキャバリアを退治したあとは、敵側の築いた塹壕に乗り込む番だ。
「こちらに抵抗できるだけの力があると見れば、連中は巣穴にこもって様子を見る筈だ。索敵するなり、攻勢に出るなりして敵の戦線を挫く必要がある」
 それさえも抜けたなら、敵も今度は必死になる。
 本来は後詰の筈の戦力すらも、投じる羽目になるだろう。
「後ろに詰めている戦力はまだわからないが……定石に則るなら、そうだな……。随伴歩兵を伴った、戦車部隊かな。塹壕ができると、どうしてもそこまで攻め上がって残敵を倒さなくてはならなくなるからな」
 そうと決まったわけではないが、戦線を押し上げれば確実にぶつかる戦力が出てくるということには、警戒しておく必要がありそうだ。
 そうして大方の説明を終えると、リリィは猟兵たちを戦線へと送り出す準備を始めるのだった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文書書き、みろりじと申します。
 獣人たちの世界、初めてのシナリオとなります。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 既に、幾つかの同世界のシナリオが上がっているので、なんとなくお察しかとは思いますが、どうやら、まだまだグリモアを持つ猟兵が予知する事ができる場所は、ヨーロッパ一帯のようですね。
 これから徐々に、他の超大国の様子も明らかになっていくことと思います。これからの展開が気になるところではありますが、まずは、ゾルダートグラードに関連した事件ということで!
 さて、今回のシナリオは、集団戦→冒険→集団戦というフレームを使わせていただいております。
 爆撃機型のパンツァーキャバリアをどうにかこうにか倒し、塹壕戦を乗り越え、更に後詰に用意していた集団敵を倒すという展開になると思います。
 流れ的に、キャバリアに乗ったり塹壕にもぐったり、場合によってはけっこう忙しそうですね。
 例によって、最初の断章は投稿せず、2章、3章の冒頭にはちょっとした前章からのつながりを説明する内容を投稿予定ですが、プレイング自体は常に受け付けている形を取ろうかと思います。
 説明が今更になってしまいますが、それぞれの章のリプレイをお返しした際、勝利数に達した後は、プレイングの受付ができなくなってしまいますので、予めご了承くださいませ。
 こういう時に受付期間を設けないデメリットを感じなくはないですが、まあそれは、一期一会ということで。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
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第1章 集団戦 『爆撃機型パンツァーキャバリア』

POW   :    オートガトリング
レベルm半径内の対象全員を、装備した【両腕部から飛び出すガトリング砲】で自動的に攻撃し続ける。装備部位を他の目的に使うと解除。
SPD   :    キャバリアダイブ
【プロペラ飛行】によりレベル×100km/hで飛翔し、【機体重量】×【速度】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ   :    爆撃機編隊
レベル体の【量産型パンツァーキャバリア】を召喚する。[量産型パンツァーキャバリア]はレベル×5km/hで飛翔し【地上掃射ガトリング砲】で攻撃する。

イラスト:イプシロン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シプラ・ムトナント
援軍の報告は軍属の義務、まずは挨拶を。
「衛生兵のシプラと申します。援軍に参りました」

虎の方に鶏の方……ヨナタンさんにリチャードさんと仰るのですね。
お会い出来て光栄です、階級が判別出来ればそれでお呼びします。

さて、まずは敵キャバリアの迎撃です。
手持ちの火器では滞空するキャバリアを墜とすのは困難……『催眠の羊眼』を使うしかありませんね。

目を見開き、敵のキャバリアを見つめて。
無意識下でも、友好的な行動は分かるはず……同士討ち、ですよね?

抵抗するのなら、思考が鈍っている間に「吸着手榴弾」を【投擲】。コクピットに吸い付けて、爆破を行います。

……気持ちの良い戦い方ではありませんね。お目汚し、失礼しました。



 平原を揺るがす轟音は、迫撃砲のそれではなく、轍を引く車輛のそれでもなく、空気を裂くようなプロペラの羽音と、唸りを上げるエンジン音であった。
 古今、時代と共に兵器や戦略に変遷はあれど、いずれにおいても不変の道理の一つに、上方を制したものが優位に立つことは変わりない。
 重々しいローター音は、平原を走るしかない者たちにとっては死の羽音だ。
 鋼鉄の装甲と空を駆ける機動性を得た爆撃機型パンツァーキャバリアが、ひとたび地を嘗める様にして機銃を掃射すれば、多くの同胞が隠れた塹壕ごと土煙に塗れて、次の瞬間にはミンチにされているのだ。
「くっそー……あれ、何機墜とせるかなぁ」
「歩兵の豆鉄砲じゃねぇ。やっぱこれしかないんじゃない?」
 この辺りの戦線を取り仕切っている外人傭兵部隊。じわじわとやられている部隊の中でしぶとく生き残る隊長こと虎のヨナタンは、よっこいしょと鋼鉄の筒を肩に担いで見せる。
 バズーカやパンツァーファウスト……と言いたいところだが、大柄なヨナタンが担いでもなお大きく見えるそれは、いわゆる迫撃砲。120ミリの榴弾を射出する臼砲であった。
 なお、本来は車輪を付けてけん引するような重火器であり、砲身だけ持ち歩くにしても大変に重たく、個人で担いで使うようなものではない。
「そんなもんが、当たる訳ねぇだろ。どこに転がってたんだ、そんなもん!」
 鶏頭のリチャードが唾を飛ばしながら怒鳴る。無理もない。だって、本来の使い方は、曲射でもって遠くのポイントを迫撃するものなのであり、飛翔する爆撃機を狙うのは至難の業だろう。
 まして、相手の機銃は目視では間に合わない初速、距離と範囲を補える。相対すれば間違いなく先にやられるのは迫撃砲を担いだ馬鹿のほうだ。
「あの……」
「あぁん? 誰だぁ、被害報告なら後から……」
 トサカを逆立ててぷりぷりしている鶏男と大柄で厳つい虎男のところには、周りが激戦区という事もあってだれも近寄りたがらないところだったが、その少女はいつの間にか塹壕へと滑り降りて、膝立ち姿勢のままぴしっと敬礼をきめていた。
 色味を失ったような塹壕の木板と土壁の中でも白とわかるふんわりした髪と、くるりとねじれた角。
 細めた目つきは眠そうにも映るが、綺麗な姿勢からはそれとは感じられない義理堅さを思わせる。
 傭兵部隊に女性兵士は居なかった筈。見慣れぬ闖入者にリチャードの苛立ちも引っ込んだようだった。
「衛生兵のシプラと申します。援軍に参りました」
「ほーう、援軍……援軍? 援軍だってよ!」
「へぇー、そりゃあキミ……貧乏くじだったねぇ」
 丁寧な敬礼に鷹揚に返答すると、シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)に対する二人のおっさん傭兵の反応はそれぞれだった。
「俺はリチャード、こいつは隊長のヨナタンだ。援軍は願ってもねぇがな、衛生兵。生憎と薬や包帯で間に合う奴はいねぇぜ。見ろよ、撫でられただけで二階級特進できちまうぜ」
 怒りっぱなしかと思いきや、リチャードの口調は荒っぽいながらも諭すようなものであった。
 兵士である以上は、女子供とて同等に扱うとはいえ、なんだかんだでおっさんの領域に達している傭兵二人としては、軽々しく若者を戦地に放り込みたくはない心情があるのだろう。
 同じような扱いを、まだ少女の域を出ないシプラは何度か受けてきた事もあった。
 無論、軍人一家に生まれ、身も心も軍人として育て上げられたいいところのお嬢様であるシプラは、とうに覚悟が決まっているとはいっても、女子供だからとそのような扱いをされることに内心では不満もあった。
 しかし、年長者から受けるその扱いが、侮りからでないことに気づき始めたからこそ、シプラは頑としてそれを突っぱねずにはいられない。
「御心配には及びません。わたしはこれでも、戦えるほうですので」
「そうかい? 若者に無茶してもらいたくないんだけど……言って止まるような感じじゃないなぁ。リチャード君、なんとしても生きて帰る理由ができちゃったぞ」
「わかったよ。付き合えばいいんだろ。それで、プランはあるのか、衛生兵」
 豪快に歯を剥いて笑みを作るヨナタンに、リチャードは嘆息しつつ、猟兵であるシプラに何かを感じたらしい、その作戦を手助けすることになった。
 果たしてシプラの提示した戦闘スタイルは、彼女自身が矢面に立つものであるため、それはもう危険を伴うものであるが、この塹壕地帯に爆撃機に対する安全地帯など無い様なものだ。
「うーん、超危ないぞ、それぇ。ホントにやるの?」
「見る必要がある以上、わたしが目立たねばなりません」
「やべぇと感じたら、俺が引っ張り下ろす。それでいいな?」
 シプラの手持ちの火器では、空を飛んでやってくる爆撃機を迎撃する事は難しい。
 そこで彼女の奥の手の一つを使うことになったのだが、先述の通りシプラ自身を危険にさらす行為でもあった。
 塹壕の上に、一人佇む華奢な羊の少女が一人。
 暗色の軍服を着込んではいるが、銀の光沢をもつ髪と、透き通るような白い肌はとても目を引く。
 恐らくは、キャバリアのコクピット越しにでも、その顔はよく見えた事だろう。
 普段は力を制御するため薄くしか開いていない、はっきりと開いた赤い魔眼、【催眠の羊眼】も。
 嫌でも目に入るその少女の姿に、キャバリアを駆っていたパイロットは歓喜した。それは呆然と佇む女性兵士だろうか。
 戦場の残酷に触れてショックを受けているのだろうか。
 いやいや、狩りやすい的ならば逃すはずもない。
 機銃の照準に定めたその先に、最後にどんな表情をするのか、期待のこもった視線を向けるパイロットの目に、それは赤く妖しく輝いて見えた。
 ぼう、と思考が泳いだ。と感じたのも一瞬。好機と見た殺意もどこか浮ついて、その思考に異なる指向性が向けられたような、違和感を覚えた気もしたが、そんなことが在ったろうかと思い過ごしのようにも感じる。
 そういえば、敵を前にしていた筈だが、照準を向けていた衛生兵の識別は、どうやら味方。友軍がどうして敵方の陣地に居るのか、判断は付きかねるが、彼女を悪戯に巻き込んでしまう訳にはいかない。
 そこに言い知れぬ違和感があったにせよ、爆撃機のパイロットの意識をほんの少しでも停滞させ、友軍と思わせるのにはどうやら成功したらしい。
 地面に近い位置にまで接近しても銃撃してこないどころか、あまつさえ着陸体勢をとろうと変形すらし始めていた。
「……そう、同士討ちは、ダメですよね?」
 しっかりと視線を合わせつつ、シプラはそれが継続している間におもむろに手榴弾を取り出して、そのピンを抜く。
 二本のピンが刺さった吸着手榴弾は、一本は信管のロックを外すもので、もう一本は吸着呪術のロックを外すものだ。その名の通り、投げつければ吸着し、爆発する。
 狙いは外さず、既存の戦闘機と何ら変わらないキャノピーに張り付いた手榴弾は爆炎を上げ、その爆発で安定を失ったキャバリアは当たり前だが受け身もとらず落下して炎上する。
『な、どうした!? 友軍だぞ』
「お、そうなのかい? ごめんよ」
 泡を食ったように動揺を見せるキャバリア達。
 そして、その機に乗じ、シプラに続くように塹壕からひょっこり上半身を出したヨナタンの肩には迫撃砲が担がれていた。その砲身だけで200キロ近くあるはずだが、まあ細かい事は言いっこなしである。
「戦場で立ち止まったら、死ぬ。覚えときゃ長生きできるぜ、クソッタレども!」
 火を噴く砲身。爆裂するキャバリア。
 その熱風から逸れる様にして塹壕に再び降りたシプラの目は再び細められていた。
「……気持ちの良い戦い方ではありませんね。お目汚し、失礼しました」
「いいじゃねぇか。世ン中、きたねぇものの方が多いんだ。それに、俺は気持ちいい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
航空戦力が必要なようね。
鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する。

エクスターミネーターとシールドビットを展開、追従させて【最大稼働】でいく。
各部を翡翠色に輝かせて[推進移動、滑空]で接近、オートガトリングを[ 空中機動、盾受け]で防ぎつつ、大型フォースブレイドで[空中戦、鎧防御無視、なぎ払い]。目立つように近接戦闘を行いつつ[存在感、陽動、おびき寄せ]で低空まで連れて行く。地上部隊、攻撃するなら今よ。

白兵剣戟士? 戦い方に似ているなんて奇遇ね。



 ヨーロッパの何処かに、それは何処にでもあるような平野で、それは日常的に畑に水やりをするような気楽さで、藁のように人が死ぬ。
 超大国による領土侵略は、いつだって先住民である獣人たちに厳しい戦いを強いてきた。
 それほどまでにゾルダートグラードの国力はすさまじいものであった。
 だがしかし、戦う者たちは悲壮であるとは思わない。
 そう思う余裕が無いとも言えるが、前向きに戦い続けなければ、それこそ植物のように刈られてしまうだけだ。
 彼等は声なき藁に非ず。いずれも名のある誰かであり、昨日そこで同じ火を囲んでクソまずいレーションをけなし合いながら食していた仲間だ。
 空気を揺らす重々しいエンジンとプロペラのローター音が、塹壕の中まで響く。
「クソ、ろくに火もつかねぇ。忌々しいトンボが飛んでるぜ」
 ぐしゃぐしゃに折れ曲がって、おまけに湿気ている煙草に火を灯そうとする鶏頭の傭兵リチャードは、激しい空震で手元が揺れるのを苛立たしげに舌打ちで誤魔化していた。
 平原を舞台とする戦線に於いて、碌に装甲車輌もなく、ありあわせの歩兵装備しか持ち合わせていない外人傭兵部隊は、末端も末端。正規兵ほどの軍資金も無く、装備も自己負担とくれば、戦線の維持にも響くし元から低い士気も下がる一方だ。
 対して相手はどうだ。迫りくる地上戦力に加え、空を揺らす震動の主、航空戦力は言わずもがなだ。
 さしもの歴戦の猛者とはいえ、大地に小皺のような塹壕を掘って、ちまちまと遅滞戦術を取る以外に戦線を維持する事は困難であった。
 風向きは常に向かい風。そう感じていたところに、不意に放りっぱなしの通信機に電信が入る。
 通信兵が負傷してしまったため、塹壕の片隅に血の汚れが付いたままの背負子ごと置き去りにされた通信機には、聞き慣れぬ少女の声が入ってくる。
『敵機を確認したわ。鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する』
「あぁ? 聞き違いか? ウチにそんな余裕あったのか?」
「さあ、奇特な傭兵でもいたのかねぇ?」
 傭兵の取りまとめ役でもある虎男のヨナタンも首をかしげるところだったが、その通信は悪戯でも何でもなく、直後に灰色の空を引き裂くような閃光が奔った。
 青みがかった翡翠色の閃光。イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は、その身に帯びたサイキックスラスターやウイングから光の軌跡を引いて空を駆ける。
 クロムキャバリアの技術で以て生み出されたらしい機械の身体は、少女の姿をしていながら高速飛行にも耐えうるものを持っており、空中に於いてはその機動性そのものが強力な武器になるという。
 平原の歩兵にとって爆撃機型パンツァーキャバリアが天敵となるというのなら、同じ空を駆けるイクシアはどうなるというのか。
「エクスターミネーター、シールドビット、ファイアリングロック解除。フォースリアクター、イグニション」
 華美にすら見えるであろう宝石のような透過部品で構成されるウイングやスラスター。その装備の一部が空中分解したかのようにイクシアから離れていく。
 いや、それらはイクシア自身のサイキックエナジーでリンクしており、彼女の盾であり矛でもあった。
 アームドフォート・エクスターミネーターの主砲が、パンツァーキャバリアの編隊を切り崩すべく射線で以て戦端を開くと、それをなぞるようにイクシアが高速で駆ける。
 各部飛翔用フォースドライブを【最大稼働】。敵陣が崩れたところに切り込んでいく。
『敵航空戦力……キャバリアじゃない! 人が飛んでいるのか?』
『撃ち落せ! 砲撃を連発させるな!』
 オートガトリングの掃射は、もともと地上戦力を掃討する目的だが、当然空中における格闘戦においても威力を発揮する。
 ひらりひらりと空中できらめく翡翠の翼が機銃掃射を振り切るが、流石に集団に集中砲火を浴びれば逃げ場を無くす。
 だがそのためのシールドユニットである。
 イクシアの周囲に追従するビットが光のバリアを展開し、機関部を守護しながら、イクシアを突撃させる。
『まずい、ぶつかる──うわぁ!』
 風を切り裂くゲイラの如く弾幕を掻い潜って、スピードに乗ったまま激突されたキャバリアから緑の光がこぼれ出る。
 体当たりしたように見えたイクシアは、その実、敵機体に着地するように張り付き、その手に握っていた大型フォースブレイドを突き立てていた。
「まず、一つ──」
 真っ二つに切り裂くように飛び立つと共にフォースブレイドで斬り払うと、別の目標へ向かって再びと飛ぶ。
 イクシアの得意とする戦いは、文字通りの格闘戦。
 戦闘機同士が後ろを取り合い、機銃で決着をつけるようなそんなものではない。
 ぶつけて、叩き斬る。これに尽きる。
 だが、流石にそれだけで多数を相手にするのは骨が折れる。
 地上に航空戦力の目が向かぬよう、敢えて目立つように立ち回るイクシアだが、そればかりやっていては流石に相手も察するというものだろう。
「二つ……くっ、追いついてきた!」
 二機目を切り裂いたところで、敢えてもたついたように見せかけ、地面に叩きつける様にして敵を低空まで誘導する。
『早く、奴を墜とせ。あいつは俺たちにとって天敵だぞ!』
 地面に落ちたところで退路を奪うべく、パンツァーキャバリアが囲うように降下してくるが、そこへすかさず、地上の傭兵たちの迫撃砲が炸裂する。
「よそ見しちゃあダメだよ。自分たちが優位だなんてのは、油断以外の何者でもない」
「まあ、誘導が無きゃ当たってねぇだろうがな。いい腕してるぜ。空中で白兵戦なんて、余程のバカじゃなきゃやらねぇ」
 地上からの攻撃が届く位置にまでまんまとおびき出されたところを、傭兵たちと力を合わせて次々と撃墜していく。
 そういえば、獣人戦線には白兵戦を得意とする白兵剣戟士なる者も居るようだが、奇しくもイクシアの戦いぶりは、空中という特異な舞台ではあっても、よく似ているらしい。
「戦い方が似ているなんて、奇遇ね」
 こんな銃弾飛び交う中ですら格闘戦を仕掛ける、ある種無謀な戦士。見かけたら、是非とも参考にしてみたい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「何時か此の世界の日本に行ってみたいので、少しでも此方で慣れておこうと思ったのです」
「肉食禁止…?いえ、先ずは戦闘です。獣人の皆様、ちゃんと防空壕に避難して下さいね」

UC「出前一丁・弐」
「殲禍炎剣のない此の世界なら、スピード勝負で簡単には負けません」
マッハ11で飛行
敵への襲撃ルートも攻撃回避ルートも第六感で選択
基本的には正対せず横や上下からぶつかっていく
獣人達が防空壕に退避しているので、必要以上に防空壕近くでソニックブームやダウンバーストを起こさないよう一応気を付ける

戦闘が終わったら獣人さん達とファーストコンタクト
緊張して意味もなくぱたぱた服を叩いてから質問
「あの…精進料理はお好きです?」



 戦場とはやや離れた位置から、土煙を上げるは戦闘とは関係のない車輛のお話。
 ここより先は、ゾルダートグラードの支配領域にほど近く、獣人たちの必死の戦い空しく、その戦線は日々後退を余儀なくされているという話だが、そうでなければあっという間にここも荒野と化していることだろう。
 寒村を抜け、桜色よりもちょっとピンクの強い目立つ装いの車輛は、愛らしい折り畳みの出窓屋根つきケータリングカー。
 いつでもどこでもパーラーを開店可能なこの改造キャンピングカーは、当然ながら戦闘用には作られていない筈だが、猟兵の持ち物が常識的とは限らない。
 いつでもどこでもということは、どんな場所にでも問題なく馳せ参じる性能が無くてはならないということでもあり、その車輛のシャシーとエンジンは特別製。ややもすると、戦車砲や機銃を満載したとしても、問題なく走行可能なほどにはタフな造りとなっている。
 多少の悪路など問題にならない。
 運転する御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、いつもお客さんに向ける笑顔もそこそこに、窓越しに移る戦火の傷跡と灰色の空を見上げて、不安と憂鬱に表情が曇る。
 なんと色褪せた場所だろう。
 異世界からの侵略を受けるこの世界には、きっとこんな場所がいくつもある。
 しかしながら、桜の精である彼女の生まれ故郷、サクラミラージュの帝都と酷似している超大国の存在もわずかにだか聞き及んでいる以上、そこに興味が向かない筈も無かった。
 今はまだ情報不足。猟兵たちが予知を通じて介入できる戦場は、まだゾルダートグラードの範囲に過ぎないが、数をこなせば確実に見えてくる筈だ。
 幻朧帝の治める帝国。果たしてどのような国なのか。
「まだ見ぬ帝国……きっとこの空の向こうに。いいえ、今は此方の戦場で、慣れておかなくては」
 ぐっとハンドルを握る手が強くなる。今はこの戦いに集中しなくては。
 そういえば、獣人戦線の人々は、その食性を平等にするため、あらゆる食事が植物由来のレーションであるという。
 カフェ好きとしては気にならない筈もない。
「肉食禁止……? いいえ、今は戦闘です!」
 初めての世界という事もあり、桜花はやや浮足立つ気持ちを引き締める。
 そろそろ平野に出る。
 どうやら戦況は芳しくない。
 猟兵たちの参戦によって、一番厄介な航空戦力をどうにか食い止めてはいるものの、やはり平原に塹壕を掘った歩兵たちにとって、上方を取られるのは戦略的に拙い。
 なるほど、爆撃機が相手。
 ならば、ケータリングカーでも十分に戦えるな!
 ガコン! とギアを上げ、車の速度を上げると共に、桜花は備え付けの有線マイクを手に取る。
 呼び込みとかにたまにつかうやつだが、今回は周囲の味方に注意を呼び掛けるためだ。
「獣人の皆様、ちゃんと防空壕に避難してくださいねっ!」
「なんだ、タンクの増援か!?」
「いや、あれは……出店だ!」
 塹壕から顔を出しつつちまちまと遅滞戦術を繰り広げるしかなかった獣人たちは、唐突に戦場に出現したドピンクの車輛に困惑するが、そんなことはお構いなしに、凄まじいスピードで平野を猛進するキャンピングカーが、おもむろに積み上がった土嚢を踏みつけると、その機体が大きくめくれ上がるようにしてジャンプした。
 その瞬間であった。
 桜花のユーベルコード【出前一丁・弐】が発動し、ターボエンジン搭載の車輛のタイヤは空転し、唸りを上げるのだが、機体速度はむしろ加速し、そこに新たな大地を見たかのようにカッ飛んでいく。
 いつでもどこでもパーラーを開けるという事は、空も同じこと。何を言っているか理解しがたいかもしれないが、そういう事である。
『高速で空域に侵入した未確認機あり! すごいスピードで近づいてきます』
『敵の戦闘機か? 姿は確認できるか?』
『く、車です! ピンクのキャンピングカーが!』
『何を言っている、車が空を飛ぶわけが──居たァー!?』
 爆撃機型パンツァーキャバリアの編隊が、その姿を正確に捉える頃には、既に桜花の機体はマッハ11にまで到達していた。
 微細なアクセル調整によって進入角や転進を調整し、むしろどういうメカニズムで揚力を得ているのかすら謎であるが、とにかくスピードに緩急をつけるたびにソニックブームとベイパーコーンで空気の断裂が起きていて、その動きは空戦を専門とするパイロットたちにも未知数であった。
 道なき道を、空を滑るように滑走するその車輛が、驚くべきことに空戦用のキャバリアを上回っているのだから、それは幻覚を疑いたくもなるものであった。
『く、回り込ませるな! どんな武器を装備しているかわからん!』
『しかし、あのケータリングカーに武器なんて──うわぁ!!』
 困惑するパイロットたちが空を走る車に向けてガトリングを掃射するが、回り込まれた一機が爆炎を上げる。
 ケータリングのための車輛に、武器など無い。速度と重量。それこそが最大の武器。
 つまり、体当たりで無理矢理叩き壊したのであった。
「あいたた、うふふ、戦場デリバリー。お気に召していただけましたかね」
 多少荒っぽい運転に、肩やら頭やらぶつけてしまったが、車はどうやら無事。
 そうして次々と空戦機に体当たりをぶちかまして撃墜していく。
 中には機能停止には至らなかった機体もあったが、それでも音速でぶつかられたキャバリアは空中制動を取れなくなり、落下を余儀なくされ、その過程で獣人たちに撃墜されていく。
 そんな中、桜花の車輛は普通に着地し、速度を落とすために派手に横滑りしつつ、片輪を浮かべてどうんと持ちこたえようやく停車する。
 今しがた音速を超えて激しい衝撃音と共にベイパーコーンを残していったような機体を前に、さしもの獣人たちも恐る恐ると言った様子で塹壕から顔を出すが、その車輛から降りてきたのは、緩やかなウェーブがかった髪の嫋やかな和装メイドさん。
 今までのド派手で無茶な運転が嘘のように清楚な装いで、ちょっと緊張したような笑みとしきりに服のあちこちを気にしてパタパタしていながらも、初めて目の当たりにする獣人たちに笑いかける。
「あの……精進料理は、お好きですか?」
 戦場暮らしの傭兵たちには聞き覚えのない単語。そして恥じらうギャップに、獣人たちは顔を見合わせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
ここが獣人戦線。幾らか話を聞いただけでも何かと気になる情報が出てきたけれど……
色々と確かめる為にも、少しずつ足場を固めていかないとな

とはいえ爆撃機を相手にしろとは。初っ端から中々大変な戦場に来てしまったもんだが
ま、できるだけの事はやってみよう

神刀の封印を解除。神気を纏う事で身体能力を強化
刀に金色の神気を纏わせて、廻・弐の秘剣【金翼閃】を発動。複数の斬撃波を空中に放つ
敵は早いがこちらの斬撃も早い。外れても残った斬撃痕に当たればダメージを受ける……速すぎるなら寧ろ躱しづらいだろう

あとは斬撃痕を足場にしつつ、神脚によって空中で再度のジャンプ
速度が落ちたキャバリアに飛び移って切り崩していこう



 怒号を掻き消す爆音。空を掻くエンジンとプロペラのローター音。舞い上がる土煙と悲鳴。
 空はもうもうと曇り、銃弾飛び交う平野に掘った塹壕が地に描いた気の根であるかのように、それはまさに生命線であった。
 敵陣に乗り込むに難しとする平原でこそ、銃弾を通さぬ射角を作るために掘られたそれらを、航空戦力はいとも容易く無意味にしてしまう。
 鉄の鳥を飛ばすのには、それなりに金のかかる投資が必要だ。
 幾多の戦場に空爆可能な戦闘爆撃機を飛ばせるのは、ゾルダートグラードの軍事力があればこそであろう。
 火薬、硝煙、血肉の焼ける嫌な臭い。
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)にとって、戦場の匂いとはそれであった。
 元軍属としては、世界を平定した帝都に生まれたとて、馴染みたくはない薫りであった。
 何処の世も変わらず、戦場に流れる悲惨な空気というものは存在する。
 ならば身近にも感じるものがある。きっと、この灰色に染まる空の向こうにも、帝都に酷似した国もあるのだろう。
「ここが獣人戦線。幾らか話を聞いただけでも何かと気になる情報が出てきたけれど……」
 深呼吸をすれば、乾いた土と戦場の匂いとが胸を染める。
 嫌でもこの場に立ち会うということを、思い至らせる。
 上の空で戦える状況ではない。
「色々と確かめるためにも、少しずつ足場を固めていかないとな」
 軍靴越しに感じる質感は、紛れもなくこの場にある悲劇を感じさせる。
 目標はきっとここには収まらないが、踏みしめるこの場所を守れずして、到達できるとは思えない。
「おい、そこはあぶねぇぜ、兄さん」
「ああ」
 状況を掴むために暫し戦場に立って周囲を見渡していた夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、近くの塹壕から声をかけられ、素早く身を投じる。
 そのすぐ後に、鏡介の立っていた地点が空から銃撃され、激しい豪雨でも通り過ぎたかのように土煙が上がる。
 豪雨どころではない。人間一人では抱えきれないほどの機銃を積んだ爆撃機の掃射は、地を抉り、嘗めるようなラインを描いた先は塹壕を支える木板すらも粉々に砕いていく。
 これではほとんど隠れる意味も無いが、身を隠せばそれだけ僅かばかりの生存率は稼げるという訳だ。
「ひでぇ所にお呼ばれされたもんだ。あんたもわけぇのに、貧乏くじを引かされたな」
 獣人の傭兵と思われる毛深い猫のような顔をした男は、使い捨てのグレネードランチャーの信管を伸ばし、大儀そうに担ぐと、慣れた様子で空を伺う。
 歩兵戦力の中では数少ない、航空機に対抗する武器ではあるが、パンツァーキャバリア相手にどこまで通用するのかは疑わしい。
 鏡介も頭を抱えるではないが、頭にかかった土埃を払うように髪をかき上げると、初っ端からなかなか大変な戦場に来てしまったもんだと嘆息する。
 が、愚痴っても仕方ない。別に無茶な仕事は初めてでもない。
「ま、できるだけの事はやってみるさ」
「そうかい、まあ、なんだ。こんなところに来ておいて難だが、命を捨てるようなマネはしなさんな」
 慎重に反撃の機会を伺いつつ、乾いた笑いを漏らす猫の傭兵に鷹揚に礼を述べつつ、鏡介は一人、塹壕を進み、ちりと感覚を研ぎ澄ませる。
 相手が何者であろうと、鏡介のスタイルは基本的に変わらない。
 軍学校であらゆる戦術、武器を学んだりもしたが、それでも命がかかっている戦場では、最も信頼するものを使う。
 いいや、それはきっと遠回しな理由かもしれない。
 自分には剣しかない。
 それとわかりつつも、心のどこかでそれを否定する。
 戦いは剣のみに非ず。されども、己が歩む道には、それしか無いのやも知れぬ。
 答えは出ないが、急ぐ旅路でもなく、道行くにこの力は不可欠とばかり、鏡介は神の力に手を伸ばす。
 相手は戦場兵器。鉄刀による理合の範疇に非ず。
 或は、本当に剣一本で頂に立つ者ならば、鉄の塊一本で、鉄の巨兵をも制すのだろう。
 生憎と、己はそこまでの狂人ではなく、儘ならぬ人の身ゆえに神の打ちたる刀を手に取る。
 安易だろうか。踏み込むに躊躇する理性と、力への渇望とが神刀を握る手を拮抗させるが、覚悟を決めた鏡介は、流れ込む力がその身を別次元へと高めていく感覚と共に、異なる理に足を踏み入れていく感触を心の中に感じる。
「神気開放……」
 きっと、使うたびに何も感じなくなっていく。流れ出る神気を身に受けることで、その身が変質していくことに。
 そうして、高まった身体能力と感覚は、先ほど通り過ぎた爆撃機型パンツァーキャバリアの気配を感じ取る。
 速い。仕留めきれなかったこちらを完璧に討ち取るために、今度は速度を上げてこちらを狙ってくる。
 神刀に纏う金色の神気が、帯のように周囲を漂うと、空気の微細な流れを感じ取ってか、わずかに揺らぐ。
 それを兆しと受け取り、鏡介は一息に塹壕の木板を駆けのぼり姿を晒すと、既に見えていたはるか遠くのパンツァーキャバリアへと、抜き放つ。
「煌めき舞え、金色の翼――廻・弐の秘剣【金翼閃】」
 音速を超える斬撃。乗せた神気、研ぎ澄まされた技量から生まれる剣気が刃となり、金色の翼の如き剣閃が衝撃波となって空を裂く。
 日の出のような残光を引く衝撃波は、光線の如く伸びてはるか向こうのパンツァーキャバリアの主翼を切り裂くが、
「浅い……!」
 相手のパイロットも然したる者。
 咄嗟に逸らした機体を完全に仕留めるには至らない。だが、距離がある上でそれは想定内。
 手応えが軽いと悟った鏡介は、素早く残光を追うように地を蹴った。
 神刀から溢れる神気を帯びて強化された神脚と、金翼閃によって描かれた残光は、そのまま足場としても機能するようだった。
 滑るように空を掛ける鏡介に、軍装の黒い裾が翻る。
 複数回振るわれた衝撃波の残光を辿り、キャバリアに対峙するも、空を飛ぶ相手はその機体速度からして人の比ではない。
「速いな。だが、そのせいで、墓穴を掘る」
『──!?』
 空を裂く黄金色の傷痕は、金属の主翼を切り裂く鋭さを保ったままであり、回り込もうとする機体の悉くを切り裂いていった。
 そして、仕留めきれずとも、傷つき機体速度の落ちた機体になら、高まった鏡介の足は追いつくのだ。
 森羅万象、遍くすべてを思いのままに切り裂くという神刀。
 その刃が届けば、物事はするりと片付くのであった。
「ちょっと高いな。うまく降りれるかな」
 光の粒子に変じて形跡を失っていく残光と共に、鏡介は流石に高く跳び過ぎたと、ぼんやり益体も無く思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャン・ジャックロウ
よっこらしょ、虎と鶏のオッサン達の横に座りながら地面に転がってた携行食を齧ってみるか……うわマズ、土齧ってた方がまだましな味だぜ。
おっと俺はアンタら念願の増援だぜオッサン達
。ゾルダートグラード軍服を着てるからって警戒しなさんな、ケヒヒヒヒ。

無線で【野良犬部隊】パンツァーキャバリア班を配置につかせて敵のキャバリアを戦車砲で対空迎撃だ。百機を超える砲門に無事ではすまい。
後はのんびり塹壕の中でさっき齧った携行食の口直しに『極上厚切りステーキ肉』をあぶりながら吉報を待てばいいんだよ。
虎のオッサンも一枚どうだい?
鶏のオッサンはスキットルの酒の方がいいか?


【アドリブ歓迎】



「おいおい、なんだか、なんとかなってるみたいじゃないのぉ?」
 一進一退。いや、どちらかと言えば一退続きの戦場の風向きが変わり始めてきたのを、獣人たちは感じ取っていた。
 航空戦力をも継続的に投入できる軍事力を誇るゾルダートグラード軍を相手に、何某かの増援が加わったとはいえ、戦況を押し返そうとしているのは快挙と言ってもいい。
 それも、外人傭兵部隊はいわば寄せ集め。正規軍がほぼいない末端も末端である。
 既に捨てられていると見てもおかしくない、クソのような戦線に於いて、みじめな撤退戦を余儀なくされていた、その一番の矢面に立っていた虎の男ヨナタンは、今だ苦境を感じながらも向かい風が和らいだことを察知していた。
「とぼけたこと言ってんなよ。弾がそろそろ切れてきてんだよ。どうにかなっても、どの道じり貧だぜ。引き時を考えた方がよかねぇか」
 塹壕からこまめに頭を出しては敵方の塹壕から歩行部隊がやってこないよう牽制をかけている鶏頭の傭兵リチャードもまた、敵軍の航空戦力が薄くなったのを感じていたものの、戦線が長持ちしない事には苛立っているらしく、よれよれの煙草を赤熱させては身体に悪そうな煙を吐くのだった。
 幾つか増援が来ているのは間違いない。小規模だが、その力が絶大である事も戦況を見ればわかる。
 弾切れは深刻だが、そもそも弾が切れる程戦況がもっている事が奇跡的だ。
 だがそれを冷静に考えていられるほどこの戦場は生易しくないらしい。
 相変わらずこちら側は、敵軍の航空戦力に怯えながら、今か今かと攻め時を見ている地上戦力の侵攻を牽制して遅らせる事しかできない。
「おー、泥沼泥沼。ひでぇとこにお呼ばれされたもんだぜ」
 そんな、ほんの少しくらい優しくなった戦況のところ、二人の傭兵の傍、塹壕の土壁に張り付けた木板に寄りかかるようにして座り込むのは、これもまた新たな増援。
 他の者と同じように猟兵であるはずのその姿は、実にこの戦列に馴染む獣人の姿をしていた。
 何を隠そう、ジャン・ジャックロウ(野良犬共を統べる部隊長・f39920)は犬の獣人。この世界の出身なのである。
 着崩した軍服の上に乗る顔は雑種犬そのものだが、その顔つきは飼い主にたっぷり愛情を注がれた幸福な犬のそれとは程遠く、軍装をしているのに路地裏の饐えた臭いを纏っているかのような胡散臭さと鋭さがあった。
「んん? どっかで会ったかな? キミの顔、見覚えあるねぇ」
「よく言われる。アラン・ドロンそっくりだってな……うわマズぅ、土齧ってた方がまだマシな味だぜ」
 すっとぼけたようにジャンの顔を見て小首をかしげるヨナタンに、こちらもすっとぼけて、足元に転がってる携行食を拾い食いしては顔をしかめる。
 どうやらジャンが着込んでいる軍服に思うところがあるようだが、ヨナタンは気に留めず、目ざとく反応するのはリチャードのほうであった。
「おい、軍用犬。お前さんのベンチは向こうじゃねえのか?」
「おっと待ちなよ、俺はアンタら念願の増援だぜオッサン達。ゾルダートグラード軍服を着てるからって警戒しなさんな、ケヒヒヒヒ」
 手に持った銃を向けられぬまでも、座り込んだ目線の先に銃床をつく態度には、諸手を挙げて肩を竦め降参のポーズをとる。
 尤も、リチャードにも敵意はないようで、暗にお前も働けと促しているだけのようだった。
 敵であればそもそもこんなまどろっこしい真似はせずに、もう撃たれていたことだろう。
「なに、今からその証拠を見せてやるって、へへ」
 おっさんたちを働かせてばかりでは忍びない……などとは微塵も思ってはいないが、猟兵としての仕事はきちんとする。
 ゾルダートグラード軍から大脱走をかました使い捨て部隊の隊長は、曲がりなりにも軍人。構成員から隊長に至るまでろくでなししか居ない、生きるも死ぬも期待されぬがゆえに、過酷な戦場を生き抜くため、なんだってやってきた。
 その末路が粛清ときたものだから、生き汚い野良犬は飼い主にも平気で牙を剥くのだ。
 ろくでなしの悪漢。正義に目覚めたと嘯いて戦場に出ては、かつての所属に敵対する。
 恩に報いるのが忠犬であるならば、やられたことを忘れない野良犬はなんなのだろうか。
 どうだっていい。ムカつくから、やり返すだけだ。
 無線機を手に、ジャンは悪い笑みを浮かべつつ、部隊の者達に指示を下す。
「野郎ども、戦闘開始だ。派手にいこうぜ!」
 ろくでなしのパンツァーキャバリア班【野良犬部隊】が、一斉にその戦列を前進させる。
 戦車砲を積んだ灰色の歩行戦車グラオザームの部隊が、その砲塔を空に向け、一斉に砲撃を開始する。
「お望みのタンクだぜ!」
「あぁ? なんだってぇ!?」
 耳をつんざく一斉発射の中では、ヒステリックなリチャードの声も聞こえない。
 古今の戦場で、戦車と航空戦力は犬猿の仲である。どちらかと言えば、地上では最強を誇る車輛、戦車の方が分が悪い。
 主に前面装甲を厚くする戦車は、出入り口を含む上部装甲を薄くせざるを得ない。ゆえに、トップアタックにはどうしても弱く、戦闘ヘリや爆撃機は、その弱点を容易に突ける。
 ただし、今回ジャンが用意した歩行戦車部隊は100機以上。流石に数が違う。
 空気が揺れる爆音とともに空を染める火線が次々と爆撃機型パンツァーキャバリアを撃墜していくのを眺めながら、ジャンはガスヒーターに火を灯し、先ほどのどう考えても期限切れの携行食糧の口直しにと、厚切りステーキを焼き始める。
 砲撃の最中で、塹壕には土埃やらでひどい有様なのだが、肉の焼く匂いは殊更に違和感である。
「さ、吉報を纏うぜ兄弟。オッサンも一枚どうだい? 酒もあるぜ」
 ちゃぷちゃぷと水音を鳴らすスキットルを揺らす姿は、いかにも快楽主義らしい姿だが、確かに軍服には似合わない姿であった。
「いい神経してるよ。けどまぁ、ぼくはいらないかなぁ。今はどうせ、味わかんないだろうさ。でもうまそうだなぁ」
「ハッ、俺は寝てぇよ。何が悲しくて鶏が寝不足になってんだって話だぜ」
 過酷な戦場の中でも楽しくあろうとするその神経の図太さに、二人の傭兵は改めて長引いた戦場で心も体も疲弊しているのを感じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「どんな食事も糧食で再現出来るとは興味深い。加えて人間も居ないとは実に素晴らしい」
嗤う

「この世界は全域有りながらも混沌としているとか。妖仙として純粋に助力を惜しみません。…出でよ、黄巾力士火行軍」
嗤う

・砲頭から制圧射撃15体
・砲頭から徹甲炸裂焼夷弾で鎧無視・無差別攻撃で蹂躙15体
・上記2班をオーラ防御で庇う15体
上記45体を1隊として3隊計135体黄巾力士召喚
3隊を防空壕前に展開
獣人の被害を軽減しつつ攻撃開始
自分は風火輪
普段から連れ歩く黄巾力士は飛来椅で飛行し戦場俯瞰
竜脈使い全黄巾力士強化して継戦能力底上げ
損耗分は入換え命じ敵か召喚黄巾力士全損まで戦闘
敵の攻撃は黄巾力士にオーラ防御で庇わせる



 間違いなく、間違いなく、戦局は傾きつつあった。
 少なくとも、一方的な虐殺を遅らせるに過ぎなかった絶望的な遅滞戦術によってじわじわと自陣を削られるような息苦しさは、和らいでいる。
 他でもない、前に出る事を許さぬ、戦線を無理くり推し進めてくる敵方の航空戦力が大分数を減らしてきたのが大きい。
「すげぇな。噂の猟兵殿ってやつか。羨ましいもんだぜ」
 塹壕から顔を出して戦況を伺うにも、だいぶ余裕が生まれてきた。
 それでも、運悪く爆撃機型パンツァーキャバリアに見つかれば、ミンチになる可能性が高いのだが。
 幸いにして口の悪い鶏頭の傭兵、ジャケットことリチャードは、その手の勘が働くらしい。
「戦車に、戦闘機。うちの貧乏部隊じゃ考えられない装備だねぇ。弾薬費だけど、目玉が飛び出るんだろうなぁ。ウチに請求がこなきゃいいけどねえ」
 よっこらしょと掘りの荒い塹壕の地面に座り込み、鉄の筒を抱え込むように休憩を取る虎の男、この外人傭兵部隊を束ねる羽目に陥った年長者、ヨナタンはちょっぴり渋い顔で顎をもさもさとさする。
 2メートルを超える巨漢をして、その身長に届く巨大な筒は、いわゆる迫撃砲。遠ければ8キロ先を爆撃可能な臼砲で、戦車砲や自走砲ほどではないが持ち運びに比較的コストをかける必要が無いため、拾ってきたものである。
 が、個人が持ち歩くものでは当然なく、本来は車輪を付けて数人で運用する。不必要な部品を排除しても200キロ近い重量がある為、どちらにせよ常人が運用するのは馬鹿らしい持ち歩き方であった。
 ただ、こうでもしないと、空飛ぶ人型兵器に対抗できなかったのだ。
 弧を描く軌道の迫撃砲をただ撃つだけでは、まともにパンツァーキャバリアに当たりはしない。
 よくよく引き付けて、回避不能な距離から不意打ち気味に発射してようやく致命的な打撃を与えられる程度の品だ。
 重ねて説明するが、本来は離れた地点を地上から爆撃する兵器であり、空を直接狙うものではないのだ。
 少ない軍資金、日々摩耗する戦力。それらをかき集め、なんとか思いつく限りの抵抗法の中でも、飛びきり無茶な戦術だったが、さしものタフな虎とて、齢と疲労にはかなわない。
「……いやぁ、生活変えてぇ」
「言うなよ。切なくなる」
 長いこと戦場に居座り過ぎて、日常の感覚が遠くなってしまった二人の傭兵は、周囲を警戒しながらももう何度目かの休憩を取る。
 銃撃、砲撃、そんなものが鳴り響く中では、休めるものも休めないが、飯を食う暇くらいはある。
 とはいえ、食えるものと言えば消費期限の表記も読めないくらい古くなったレーション(フルーツ味)くらいのもの。
 味は土を齧るようなひどいものだが、疲労と睡眠不足、度重なる銃撃戦によるストレスからか、味はほとんど感じないのが幸いだった。
「食うかい?」
「いらん。タバコがありゃ平気だ」
 このやり取りも何度繰り返したか。
 しかし、今度は別の闖入者があった。
「それ、よければ一ついただいても?」
「あん? なんだ、おたくも援軍の一人か?」
 気が付けば、いつの間にか二人の近くに涼やかな男が一人立って、手を伸ばしていた。
 鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、ヨーロッパではなかなか見かけない帝都の詰襟姿であった。
 それだけでもなかなか奇抜だが、人を食ったようなどこか超然とした笑みを浮かべる姿は、戦場に於いてはあまりにも綺麗すぎた。
 土埃に塗れた者の中で、あまりにも綺麗に着飾る者は、怪しいという他に無い。
 ただ、敵対するにしてはあまりにも毒気を見せないので、そこは歴戦の傭兵らしく現場に居合わせるならそれはきっと味方だということで、顔を見合わせた後、レーションを手渡してきた。
 ぼろぼろに古びたパッケージは、1年や2年前とは思えないくらいほころびており、
「どんな食事も糧食で再現出来るとは興味深い。加えて人間も居ないとは実に素晴らしい」
 すっかり色味の抜けてしまった鉛色のパッケージにうっすら残るイラストをよくよく観察しようとふうっと息を吹きかけると、埃が舞った。
 どれだけお金が無いんだろう、この部隊。
 浮かべた笑みもどこか皮肉気であった。
「人間? 僕たちゃ、これでも人間のつもりだけどねぇ」
「ああいえ、いわゆるホモサピエンスというか……まあいいでしょう、細かい事は」
 獣から進化した獣人という文化圏は、どうやら独特らしい。交流自体は問題なさそうだが、細かなところに色々と突っかかりは生まれそうな気がする。
 が、まあ、そんな細かい事よりも、今は戦局を乗り切る事を考えねばなるまい。
 長い時を、転生を繰り返しながら生きてきたとも言う冬季は、妖狐の仙人。いや、人ではないのでこの場合は妖仙というべきだろうか。
 だが大妖といえども、航空戦力の地上掃射を正面から相手取るのは骨が折れる。
 キャバリアを生身で相手をするのは、猟兵ならば不可能ではない。ただし、簡単でもない話だ。
 そんな時には、同じようなサイズの兵器をぶつけるのが手っ取り早い。
 では仙人がロボットなんて持っているのだろうか。
 持っていた。
 正確には、冬季が独自に仙術で以て作り上げた宝貝、奇しくもこの世界にも戦略兵器の一端として存在を主張する歩行戦車とほど近い、『黄巾力士』であった。
「この世界は全域有りながらも混沌としているとか。妖仙として純粋に助力を惜しみません。……出でよ、【黄巾力士・火行軍】」
 けたたましい音とともに100体を超える黄金色の歩行戦車が戦列を作っていた。
 森羅万象を司る五つの行。仙術とは、そのいずれか用い、或は相克などを利用し、現象を作り出す。
 宝貝などはその一例で、物質化した成果の一つと言えるだろう。
 冬季とそう変わらぬサイズの精緻な機械人形。キャバリアを相手取るにはやや小ぶりだが、搭載する砲塔は決して引けを取らぬ筈だ。
 なによりも、数を用意して、それぞれに塹壕の防衛、攻勢に出れば、傭兵部隊に致命的に足りない手数を存分に補える。
 おまけに、獣人たちに不要な被害も出す事も無い。
「とはいえ、壊されてはつまらない。防衛部隊は、耐衝撃膜展開。ふむ……ここでは様子が見づらいですね」
 呼び寄せた黄金色の歩行戦車群に指示を飛ばしつつ、冬季自身も風火輪を靴裏に履いてふわりと浮き上がっていく。
 やはり戦場を俯瞰できる方が状況を把握しやすい。
「……来るぜ、兄ちゃん。気をつけな。ガトリングは戦車の天敵だ」
「御忠告どうも。まあ、最善を尽くしますよ」
 赤いトサカに何かを感じたらしいリチャードの忠告を受け、本格的に黄巾力士たちを行動させる。
 灰色の空の向こうに、エンジンの燃える熱を覚える。
 念のために普段から連れている黄巾力士の一機に飛行アタッチメントの飛来椅を装着させて随伴させると、彼を司令塔に攻撃タイミングを計る。
 パンツァーキャバリアの編隊がこちらの戦列に気づいたらしく、明らかにこちらを目指して飛び込んでくる気配があった。
「薬室装填、弾種、徹甲炸裂焼夷弾。各位斉射、はじめ」
 号令と共に、黄巾力士の頭部に備えられた砲が叫び声を上げるようにして火を噴く。
 地上から航空戦力を排除するのは、空中から地上を掃射するのと比べて、その難易度に大きな開きがある。
 二次元的に狙いをつければいい後者に比べ、空は三次元だ。自由度の違いがベクトル一つ分はあるのだ。
 ただ、それは、数が同じ場合の話。
 一斉に砲火を放たれたその一帯は、煙と紅蓮で染まる。砲火の波を受けたパンツァーキャバリアは、適当にぶれを持たされた面攻撃すべてに当ったわけではないが、全てを回避できる筈も無く。
 元より変形機構などというものを持たされた航空キャバリアは、様々な制約のもと、装甲を減らさざるを得なかったことも影響してか、ぼろぼろと爆炎を上げて墜落していく。
 だがしかし、鋼鉄の戦闘機は、それでも生身に比べればはるかに頑丈で、砲火で致命打を奇跡的に逸れた者もいた。
 いくらか被弾しながら、ガトリングで応射してくるその流れ弾が塹壕を土煙で埋めようとする。
 が、その前に立ちはだかるもまた黄金色の歩行戦車隊。防御フィールドを展開し、弾道を逸らして直撃を避ける。
 反撃があったのも、いわばそれだけのもの。
 不時着するように落ちるその機体がまだ動くとしても、その瞬間に多数の砲塔から狙いをつけられ、その次の瞬間にはハチの巣にされていた。
「やはり侮りがたい。破損した機体は、劈地珠から竜脈につなぎなさい」
 防御に回した黄巾力士にいくらか負荷がかかったところへ、すかさずフォローに回らせる。
 こんなこともあろうかと、力士たちには大地からエネルギーを吸収し、能力の底上げと簡単な破損なら修復可能な機能も搭載しているようだった。
 そうしていうちに、いよいよ航空戦力の増援が来なくなった。
 どうやら、現状で用意していた戦力は底をついたらしい。
 いや、これが全てではないだろうが、少なくとももうしばらくは、空中から奇襲を受ける心配はなさそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『地獄の塹壕戦』

POW   :    積極的に攻撃を仕掛ける

SPD   :    敵の潜んでいそうな箇所を探す

WIZ   :    敵の作戦を読み、その裏をかく

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 敵の航空戦力は、ひとまず尽きらしい。
 しかし、それは今だけの話。
 ゾルダートグラード軍の戦力は強大で、いつ砦からの増援がやってくるかわからない。
 ただ、今この瞬間、あと数時間、いや、あと数日、一週間か?
 とにかく航空戦力の補充がされないうちは、獣人たちがパンツァーキャバリアの空襲を恐れる心配はなくなった。
「さて、チャンスではあるんだよなぁ。虎の旦那、無茶して突っ込んでみるか?」
「馬鹿言っちゃいけないよリチャード君。うちが万年、貧乏な傭兵部隊なのを忘れちゃダメさ。なけなしの補給物資が届くまで、追撃戦は待たなきゃねぇ」
「だがよぅ、備えが尽きてるのは向こうだって一緒じゃねぇか。待ってたら、また振り出しだぜ」
 もどかしい気持ちを抑えるかのように、リチャードはくわえ煙草を嘴の端っこで噛み嚙みしている。
 猟兵たちの助けもあって、航空戦力が尽きている今こそ、攻め上がるチャンスである。機会は今を置いてないだろう。
 数日先にはまた相手の航空戦力が補充され、再び爆撃の憂き目にあう可能性もある。
 それに、対抗できてしまったというのが、膠着状態を作り出してしまった。
 こちらに反撃できるだけの余力があると感じたのか、向こうも塹壕にこもって持久戦をやるつもりらしい。
 地力を持ち出されてしまっては、軍事力の差がもろに出てしまう。
 補給を待ってから攻め上がるか、今ここで攻勢に出て向こう側の塹壕に切り込んでいくのか。
 判断に迷うところであった。
「味方をしてくれる連中だっている。塹壕を攻略してる間に、補給が来るかもしれねぇさ」
「そういう冒険はあんまりしたくないんだがねぇ……。ま、そうだな。この追い風は、今しかないって気もする。君の直感を信じよう、リチャード」
 そうして、疲弊しながらも傭兵部隊は、強固に引きこもった塹壕へと攻勢を仕掛ける事となった。
 無謀な作戦でもあったが、いずれ待っていても地獄がやって来るならば、こちらから出向くという、少しばかりねじの外れた判断を下したのは……おそらく、もうみんな疲れて眠たかったからだろう。
シプラ・ムトナント
打って出るという訳ですね、承知しました。

……ですが、少しだけお時間を頂けますか?
『前線救護術』を使い、救急カバンに入れてきた物資と【医術】を用いて皆さんの治療を。軍用品の効果が大きく高まり、即効性も増すんです。

ヨナタンさんにリチャードさんも、良ければお身体を診させて下さい……先程は無茶に付き合って頂き、ありがとうございました。

手当が終わったら、塹壕の攻略に移ります。
このまま、ヨナタンさんとリチャードさんと協力して参りましょう。
|散弾銃《レミー》は遭遇戦に強い、塹壕の探索には合っています。

怪しい地点には吸着手榴弾を【投擲】。
荒っぽいクリアリングですが、吸い付けてしまえば投げ返すのは困難ですので。



 今や荒野となり果ててしまったこの戦場は、昔はそれなりに植生も豊かで、見晴らしのいい広い野原をプレーリードッグなどのげっ歯類が広く生息していたらしい。
 こうしてゾルダートグラードという超大国の侵攻が無ければ、今も自然豊かな光景が広がっていたかもしれない。
 だが今やここは戦場。乾いた風に野は枯れて、両軍見合ってプレーリードッグのように土を掘っては、大地にしわを描くかのように塹壕を築いていた。
 そう、ここはもともと見晴らしのいい平原。
 そんな場所で撃ち合いなど、できる筈がない。
 まともな遮蔽が無いからこそ、両軍ともに塹壕を築いてモグラのように地に伏して、時折顔を出しては攻め込まれぬように牽制に銃撃を加える。
 それが泥沼の塹壕戦であった。
 だが、そこに転機は訪れた。
 敗北必至の戦線に齎された猟兵たちによる助勢。それにより、最大の懸念事項であった航空戦力を削いだ今こそ、攻め入る時。
 そうして、獣人たちは、平原という死地を越え、敵方の塹壕へと攻撃を仕掛けようというのだ。
 だがすでに、味方は疲労困憊。度重なる攻防に寝る事もままならず、疲れている事にすら気づかぬ獣人たちは、幽鬼の如く塹壕から這い出てくる。
 一つ一つの挙動にすら疲労を感じさせる彼等の姿に、戦線に加わる猟兵の一人シプラ・ムトナントは思わず声をかける。
「あの……」
「なんだ、衛生兵。俺たちも前に出るぞ」
「打って出るのは承知しました……ですが、少しだけお時間を頂けますか?」
「これからって時に、なんだってんだ?」
 外人傭兵部隊、その中の一人、鶏頭の男リチャードは、苛立った様子でくしゃくしゃの煙草を噛み噛みしている。
 単純に短気で血の気が多いという訳ではない。据わって血走った眼もとには疲労の色が濃く浮き出ており、明らかに睡眠が足りていない。あと煙草も吸い過ぎである。
「皆さんも、少し冷静になってください。せめて、いくらか手当てしてからにしませんか?」
 率先して飛び出していこうとするリチャードをなんとか塹壕に引っ張り戻して、傭兵たちを一瞥すると、シプラはおもむろに医療カバンを引っ張り出す。
 そういえば彼女は衛生兵。リチャードですらそう呼んでおきながら、彼女の戦闘力の高さにうっかり失念していたらしい。
「ああ、僕たちはともかく、怪我してる連中も、疲れてるのもいっぱいいるもんねぇ。一度意識しちゃうと、立ち上がれないと思って考えないようにしてたんだよねぇ」
 カバンから次々と取り出される医療物資を前に、こりゃあ手当させてやるまでテコでも動かないと悟り、隊長格であるヨナタンが腰を下ろすと、皆釣られたように浮足立った様子を納めてシプラの支援を受けるのであった。
 シプラの持ち込んだ物資は、あくまでも個人が持ち歩ける分だけであったものの、その手並みは流石に慣れたものだった。
 【戦線救護術】……おおよそ全ての修練を要するものに熟達へ至る術があるとするなら、それは戦場における医術を素早く、的確に行うための技術であった。
 粉塵で目を痛めた者がいれば、素早く洗浄液と眼帯を用意し、銃創に苦しむ者がいれば、消毒からピンセットで残留物を摘出し縫合してガーゼと包帯を巻く。
 軍人一家に生まれたシプラは、軍用の使用に長けている。その効果は、最前線で使用する為、もとから効能が強いが、適切に用いることで更に即効性を発揮する。
「ああ、ありがてぇ……目も開かないくらい痛かったのが、楽になった」
「肩に入ったままの弾がつかえて腕が腫れてたんだが、調子が戻ってきた。これならいけるかもしれん」
 負傷した兵たちは、口々に感謝を口にする。
 というか、こんな状態で敵陣に突撃をかけようと考えていたのだろうか。
「ヨナタンさんにリチャードさんも、良ければお身体を診させて下さい」
「って言ってもな。俺たちは別に、大した怪我は負ってないぜ」
「じゃあ、これと、これを」
 肩を竦めるリチャードに、ふぅと嘆息し、カバンから取り出したのは栄養剤とビタミン注射であった。
 それぞれヨナタンともども手渡すと、用法と用量を説明する。
 一種のドーピングに近いものだが、賦活剤の類と比べればその効果も反動も微々たるものであろう。
「こういうまともなのは、久しぶりだねぇ。3時間後にぶっ倒れるやつとかなら、何度か試したかなぁ」
「早死にしますよ」
「長生きできると思っちゃいなかったからなー。煙草はねぇのか?」
「早死にしますよ?」
 ぶちぶちと文句を言いながらも、注射を受けつつ栄養剤を掻っ込む二人は、やはりとうに全盛を過ぎているのだろう。
 日々衰え、壊れやすく、既にいくらか壊れ始めてなお酷使して戦場に立ち続けているその肉体は、完治しないものも多い筈だ。
「……先程は無茶に付き合って頂き、ありがとうございました」
「なあに、お陰で拾った命だ。なんぼでも付き合うとも」
「俺は勘弁だな。ガキの前じゃ、気を使って煙草が吸えねぇ」
 改めて屈強な傭兵たちに礼を述べると、頼もしいような遠回しに戦列から突き放すような返答が返ってきた。
 そして、ある程度の補給と治療を行った後、傭兵たちはシプラと共に敵方の塹壕へと突撃を仕掛ける。
 今度こそは本来の使い方で用いられた迫撃砲をあいさつ代わりに、その粉塵に紛れるかのように急いで平原を突っ切り、滑り込むようにして掘り下げた塹壕へと駆け降りた。
「鉄条網に引っかかんなよ。視界が急に悪くなるからな。長物は持ち歩くんじゃねぇぞ!」
 ネイビージャケットのリチャードが率先して飛び込んだ先へとマシンガンで弾幕を張る。
 一緒になって飛び込んだシプラも彼等とは反対側をカバーしつつ、視界の途切れる土壁を注視しつつ、|散弾銃《レミー》を構える。
 塹壕内でも取り回しのきく銃身を切り詰めたいわゆるソードオフ。
「天幕があります」
「わざわざ突っ込んであげることはないよ。さっきのアレは残ってるかい?」
「! 了解!」
 どうやらシプラの向く方向の先には、物置なのか雨避けなのか、シートを張ったポイントがあった。
 敵兵が隠れている可能性は大いにあったが、見通しの利かないところにわざわざ踏み込んでいく必要はない。
 先ほどキャバリアに使ったものと言えば、吸着型グレネードだ。
 素早く投げ込み、炸裂すると、中に駐留していたらしい敵兵が爆風と共に吹き飛んだ。
 運よくそこから逃れて飛び出してきた敵兵にも、散弾銃を浴びせて素早く制圧。
「いいね。ここは行き止まりかな。突き当りの休憩所って感じに見える……リチャード君が当たりを引いたねぇ」
「我々も向かいましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「もう直ぐ戦闘に行かれるのです?お時間全く無しですか?」

「皆様お腹が空いてらっしゃるようでしたので、温かいものを振る舞ってからと思ったのです」

UC「花見御膳」
ケータリングカーに積んだ食材使用し体力回復効果のある豚汁擬き(豚肉代わりに大豆ミート)大量作成
カトラリー無しで汁と一緒に飲めるよう具材は全て小さめにカット済み
横にゴミ箱置き競技の給水所の様に紙コップ受け取り飲んで直ぐ捨てて行軍可能にする

「元気無しでは突撃も出来ませんもの。せめて機敏に動ける程度に回復してから移動されるべきかと思ったのです」
元気な兵士に配り終わったら傷病兵の所で回復効果のある豚汁擬き再配布
片付け終わったら自分も車で後を追う



 男たちは戦いに行く。
 それは、きっと、どの世界でも変わらないのだろう。
 サクラミラージュでかつて帝都が全国を平定した時のように。
 女性の兵士が居ないではないが、全体から見れば多いとは言い難い。
 それは、この獣人戦線の幾つも存在する最前線においても同じように見える。
 ましてや、ここは境遇の悪い貧乏部隊が取り仕切る、控えめに言っても、まぁひどい現場である。
 正規兵がとっくに匙を投げて引かざるを得ない場所を、なんとか引き延ばし、引き延ばして被害を最小限に抑えて緩やかに負けるための部隊だ。
 正規軍の尻拭いと言ってしまえば簡単だが、そんな言葉ほど簡単に片が付くほど生易しい場所ではない。
 勝ててしまっているのは、本当に奇跡であった。
 猟兵という規格外の存在無くしては、彼等は遠からず死亡していただろう。
 好き好んで女性が志願して出てくるような場所ではないのだ。
 二束三文の安請け合いで命を擲つ、屈強で明日も無い敗残兵。
 此方に名誉など無いのかもしれないが、これが勝てる見込みを見たならば。
「馬鹿な夢を見ちまったかねぇ……」
 塹壕から顔を出し、身を屈める様にして銃を担いで平野に出るのは、先発組にやや遅れて敵方の塹壕へと向かう獣人の一人であった。
 特に負傷なく、元気があるほうの連中はもう攻勢を仕掛けているようだが、彼は流れ弾に被弾していたのをわずかな補給物資で応急手当していたために、先発組から外れていたようだ。
 自慢ではないが、彼は自身を生き汚いと思っていた。
 ゾルダートグラード軍に国を追われ、職にあぶれた彼は、頼れる親類もおらず、その身一つで食っていくには、なけなしの若さ以外に何も持っていなかった。
 生きるためになんだってやった彼にとって、どこへ行っても鼻つまみ者の外人傭兵部隊は居心地がよかった。
 ここには殺し合いしかない。だが、国籍の違う同胞たちの個人主義を含めても、戦う時は戦列に並び立ち、戦う技術と情報、愚にもつかない話を共有する。
 そんな適切な距離感、最低なりの礼節があった。
 隣の奴の下着の柄まで知っているのに、そいつの事情を知らない。知ったら、居なくなった時に辛いからだ。
 自分たちは家族じゃない。時には、昨日同じ飯を食った奴を踏み越えていかなくてはならない。
 だがふと、一人になり、弱ってしまうとダメだった。
 故郷に帰りてぇ……。本当は死にたくなんかない。
 痛みの残る身体を引きずり、敵陣へと行軍する兵士の孤独な鼻先を、ふと懐かしい薫りが掠める。
「スープの、匂い……?」
 独特の発酵したような癖のある匂いは未知の香りだったが、男はそれに故郷の幻を見た。
 果たしてその先には、一台のちょっと目立つケータリングワゴンが駐留していた。
「え、え、皆さんもう直ぐ戦闘に行かれるのです? お時間全く無しですか?」
 広げた店先に立つのは、和服にエプロン……帝都で言うところのパーラーメイドのお仕着せなわけだが、そんなものに馴染みがある筈もない獣人の兵士たちは、ギョッとしつつも強烈に胃袋を刺激する匂いにつられてやってくるのであった。
 御園桜花は、桜の精。その特徴的な淡いピンクの緩やかな髪を抱く顔つきは、戦場とは無縁と思えるほど穏やかな笑みを浮かべているが、忙しない手つきはちょっぴり慌てているようにも見える。
 それもそのはず、敵の攻勢が緩くなったと思ったとたん、敵陣に踏み込もうと決断するや、すぐさま編成し始めるのだから、慌てもする。
 パーラーメイドよろしく、お客さんがお疲れかどうかは、見ればわかる。というか、火を見るよりも明らかだった。
 極度の疲労と空腹。そんな兵士たちを前に、炊き出しをやらいでか。
 あまりにも性急、休憩も無しに敵陣突撃を敢行しようとする獣人たちに慌てこそした桜花であったが、伊達に給仕はやっていない。急な団体さん、ウェルカム。ますますもって、給仕根性に火が付いた桜花は、すぐさまケータリングカーに用意した食材と相談してユーベルコードを発動する。
 【花見御膳】によって、時間を圧縮したかのような素早さで作り上げたのは、寸胴いっぱいの豚汁……。厳密には、肉食不可能な獣人たちにも安心な大豆ミートを用いたモドキではあるが、味わいに違いはさほど出ないはずだ。
「皆さま、お手透きではないようですが、お腹は空いていらっしゃるでしょう。温かい飲み物を用意しましたので、まずは身体を温めましょう!」
 その手並みは、まさしく熟達のメイド。
 カトラリーを用いずとも、片手で食べられるよう、具材は小さく、器も紙コップを用い、ゴミ箱も併設されている。
「さあ、並んで、さっと飲んで、気合を入れましょう」
「お、おう……」
 有無を言わせぬ勢いで、獣人たちを並ばせて手早く均一に豚汁を配膳していく。
 戸惑っていた獣人たちだが、紙コップ越しにじんわりと暖かなスープを一口すすれば、その効能は絶大であった。
 すきっ腹を刺激する香りに誘われるまま流し込む、豚汁の味わい。
 塩気と柔らかな甘さの溶け込んだスープは、歯を使わずともほぐれていくほど煮込まれた野菜と大豆肉と合わさって、至福の一杯であった。
「ああ、懐かしい。初めて飲むはずなのに」
 身体に染み渡るような滋味深い豚汁は、日本とは遠く離れたヨーロッパ戦線には馴染みが無いものの、野菜のうま味の溶けだしたスープで想起されるのは故郷の味であった。
 冷えて乾いた身体を、温め、潤すかのようなその一杯で、死んだような目つきだった獣人たちは気のせいかその毛並みまで整ったかのようだった。
「うまかったよ。しかし、なんだってこんなタイミングでスープを?」
「元気無しでは突撃も出来ませんもの。せめて機敏に動ける程度に回復してから移動されるべきかと思ったのです」
 生きる気力を取り戻した兵士ににこりと笑顔で答えると、桜花は残りの豚汁モドキを、今だ塹壕に転がっている傷病者たちにも振舞いに行く。
 その背を見送りながら、あれもまた戦い。と感じ入った獣人の兵は、ずり落ちかけた銃のベルトを正し、戦地へと向かうのであった。
 そして、一通り配り終えた後、桜花もやや遅れ、簡単な清掃と荷物を車にしまい込むと、エンジンに火を入れる。
 そう、向かうは先発隊の旅だった、敵陣の塹壕。
 先発隊にはまだ、豚汁が振舞えていない。なんとしても、生き残ってもらわねば。
 轍から砂煙を上げて、ケータリングカーが戦場を駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャン・ジャックロウ
おいおい、頭のネジが外れちまったのかぁ?虎と鶏のオッサン達?
そんな寝不足疲労困憊なツラで攻勢に出た所で、ゾルダートグラードにボーナスタイムかと思われちまうぜ?
せっかく助けに来たのに寝不足で犬死にされるのは流石に笑えねえぜ。
アンタらは少し休憩しときな。
追撃はこっちでやっとくからよ。まさか忘れちゃいねえだろ?今アンタらには100機以上のパンツァーキャバリアが味方にいるって事をよ。

【野良犬部隊】キャバリア班、追撃を始めるぞッ!戦車砲で威嚇砲撃しながら前進ッ!塹壕を見つけたら『地上掃射ガトリング砲』で内部を綺麗に掃除してやれ。
ヒッヒッヒッ、どっちが狩られる側かたっぷり教えてやんなッ!


【アドリブ歓迎】



 行けども行けども、そこは土の壁。
 見晴らしが良過ぎるからこそ掘り込まれてた塹壕は、敵味方もその規模を正確に把握していないほど広域に及び、ただの一本に入り込むにも、そこからすべてに通じているというような、そんな都合のいい展開は待ち受けてはいない。
「ふー、ここも外れと……あー、しんどくなってきたねぇ」
 浅いもの深いもの。敵陣に広がる塹壕の広さは、そのまま軍の規模に比例するものかもしれない。
 あらためて、敵陣に網目状に広がる塹壕地帯の広さを思い知り、隊長格のヨナタンは、敵兵を粗方片付けた小さめの塹壕に身をうずめる様にして座り込む。
 さしものタフガイとはいえ、立って走り回っても頭が出ないくらいに掘られた塹壕を出たり入ったり、まして自分の把握していない迷路のような道々を攻略しつつ、敵襲にも備えなければならないというのは、思いのほか神経と体力をすり減らす。
 このままその辺の土嚢でも枕代わりに、土に埋もれて寝ててもバレやしないのではないか、などと不謹慎なことを考えなくもないが、次に目を覚ました時はあの世かゾルダートグラード軍の施設の中かと考えると、落ちかけた瞼も気合で開けるしかない。
「どうだいリチャード君。あんまり長引くと、混戦になって面倒くさくなると思うんだよねぇ」
「だからってぇ、退けるかよ今更ァ」
「でもねぇ、広いよここ」
 ぶちぶちと小言を交わしつつ、疲れた体に鞭打って、仕事だけはきっちりこなす。
 彼等が戦う理由は、たかだか二束三文の雇われ金。その奥底には、獣人の生活圏を守るためという大義名分も多少はあっても、直接的な理由は明日の飯である。
 リスクの方が大きい戦いを、他にやる奴がいないからお鉢が回ってきて、仕方なく飯の為にやっているに過ぎない。
 得られるものなどいつだって少ない。そんな貧乏くじを引かされ続ける貧乏部隊は、多少おかしくなきゃやっていられない。
 そう、
「おいおい、頭のネジが外れちまったのかぁ? 虎と鶏のオッサン達?」
 先行する二人にやや遅れる事、周囲を適当にぶらぶらと注意を払いつつ、ざざっと制圧済みの塹壕に滑り降りてくるのは、敵方ゾルダートグラード軍の制服をだらしなく着崩した雑種犬の男。ジャン・ジャックロウ。
 胡散臭い井出達に、胡散臭い顔立ち。戦場だろうと構わず骨型クッキーを齧る姿は、軍装でありながら俗っぽい雰囲気がぬぐえない。
「よっこらしょーっと、そんな寝不足疲労困憊なツラで攻勢に出た所で、ゾルダートグラードにボーナスタイムかと思われちまうぜ?」
「うるせぇワンちゃんだぜ。てめぇ後ろからついてきて、楽するつもりじゃあねーんだろうな、おぉーん?」
「ケヘッ、落ち着きなよ旦那ァ。カルシウムにゃあ、卵の殻がいいって言うぜ」
「鶏に向かって言うじゃねぇか。このトサカ見てみろ。殻かぶってるように見えるってのか?」
「まあまあ、騒いでる時じゃないでしょうよぉ」
 掴みかからん勢いのリチャードに両手を上げて肩を竦めるジャン。戦いで気が立っている戦友を適当に宥めすかしつつ、ヨナタンはちらりと一瞥して、ジャンに先を促す。
 ただ嫌味を言いにわざわざついてきたわけではないだろう。
 胡散臭い悪漢にこそ見えるが、彼の実力は本物である。
「せっかく助けに来たのに寝不足で犬死にされるのは流石に笑えねえぜ。
 アンタらは少し休憩しときな」
「……余計なお世話、と言えるほど手が余ってはいないからねぇ。ここはご厚意に甘えようかね」
「追撃は任しときな。まさか忘れちゃいねえだろ?今アンタらには100機以上のパンツァーキャバリアが味方にいるって事をよ」
 そうしてジャンが通信機で合図を送ると、彼の部下たちである【野良犬部隊】の駆るパンツァーキャバリア隊が唸りを上げて進行してくる。
 それならわざわざジャンが此処に来る必要はなさそうなものだが、広く塹壕の為に掘られているここいら一帯は、迂闊に踏み入るとキャバリアの足元をすくわれやすい。
 そんなものでダメになるようなキャバリアではないが、進行ルートはある程度選んでおかなければ、戦列を乱す事になってしまうからだ。
 これでもジャンは、部隊を率いてきた。そこに一つの翳りも無いと言えばウソになるかもしれないが、必要とあらば率先して鉄火場に足を運ぶ程度には、覚悟は決まっている。
「キャバリア班、追撃を始めるぞッ! 戦車砲で威嚇砲撃しながら前進ッ! 塹壕を見つけたら『地上掃射ガトリング砲』で内部を綺麗に掃除してやれ」
 指示を送ったすぐ後に、周囲に耳をつんざく爆撃音と粉塵が上がった。
 あらかじめ先発隊が食いついた塹壕は避けて、まだ敵の余力を見越したポイントへ向けての戦車部隊の侵攻。
 装甲と火力を伴った戦列は、それそのものが要塞のようなものだ。
 おまけにそれらは、歩兵よりも素早く動く。
「どんな塹壕でも、戦車用の花道は取っとくはずだ。そっから食い込んでいけ!
 ヒッヒッヒッ、どっちが狩られる側かたっぷり教えてやんなッ!」
 5メートルサイズの巨兵から見下ろされ、逃げ場の封じられた掃射は、ひとたまりもない。
 曳光弾のオレンジの火線が大地に穿った塹壕の線をなぞれば、それは容易く戦果を挙げた。
「ん? 寝ててもいいぜ。まあ、ティータイムくらいは休めるだろうさ」
「なわけあるかよ。耳おかしくなるわ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
アドリブ歓迎

戦局は有利に進んでいるけれど、判断力が低下した状態では大きなミスを起こしかねない。
傭兵たちには決戦時刻まで休息を勧める。

その後、傭兵達とは離れた位置を飛行しながらデコイドローンを展開。
身を隠さず[存在感、索敵、情報収集、撮影]、怪しい場所には[威嚇射撃]を行う。うまく反応してくれたら[陽動、おびき寄せ]を使い敵部隊の分断を試みる。通信機能で[情報伝達]をまめに行いつつ充分に休める時間を稼いでみせる。



 戦局は傾きつつある。少なくとも結果だけを見れば、ゾルダートグラード軍が攻められているようにも見える。
 だが、実のところは、豊富な資材があるわけではない外人傭兵部隊は、相次ぐ戦闘の中、交代要員もままならない。
 絶賛体調不良を押しての塹壕攻略戦。
 勝手知ったる自陣とは異なり、相手の豊富な人的物的資材から構成された塹壕の規模は、獣人側と比べ物にならない層の厚さを誇っていた。
 かつて、日本がまだ城を築いていた頃は、攻め入られたときに歩兵をかく乱するいわゆる迷路のような造りをしていたとも言う。
 この塹壕は、平原における撃ち合いの間仕切りともなりながら、攻め入られたときの防壁の役割も担うらしい。
 その巨大迷路めいた塹壕に四苦八苦する獣人たちを、イクシア・レイブラントは空中から見ていた。
 あんな疲労困憊の状態で攻め入っても、判断力が低下した状態では普段の能力すら発揮できないのではないだろうか。
 助けに入るのは容易いかもしれないが、イクシアが助けられる数は限られている。
 それに、空から近づき過ぎれば、そこに味方がいると教えているようなものだ。
 装甲に覆われ、近接戦闘用モジュールを積んだイクシアが銃弾にさらされるのはこの際問題ではない。
 既に事態が動いている以上、この状況下でどのようにして獣人たちの被害を抑えるのか。
 考えている時間はそれほどないが、ひとまずは塹壕の情報を把握する事が大切だろう。
 とにかく行動。そうしてまずはデコイドローンを射出展開する。
 強行索敵型デコイドローンは、その名の通り空撮などの本来の使い方の他、立体映像を用いた囮などにも使用できる。
「傭兵部隊の侵攻はそれほど深くない。こちらで敵を誘導して……」
 自分が矢面に立つだけでは、いつも通りだ。
 わかりやすく空中から多数のホログラムと共に接近する事で、その狙いは一つに絞らせないが、降り立つのはいずれも獣人部隊とは遠い。
 いや、敢えて離れた位置に降り立つことで、傭兵部隊を危険にさらす事が無いようにする狙いだった。
 狭い塹壕の中で大型のフォースブレイドは満足に振るえない。
 おもむろに足元に転がっている敵兵の銃器を拾うと、あえて目立つように威嚇射撃で怪しげな天幕などに撃ち込んでいく。
 ドローンたちもあえて姿を晒す事で敵兵をおびき寄せて、敵勢力の分断を試みていた。
 そうして幾つかの塹壕に敵をおびき寄せて沈黙させると、イクシアは通信回線を開く。
 先ほどの戦闘で利用した回線がまだ生きていれば、それは傭兵部隊と交信できる筈だ。
『こちらは安全よ。負傷者や疲れている者がいるなら、連れてきて』
 先ほどの戦いぶりを見て知っていた獣人たちが幽鬼のような足取りでなんとか辿り着くと、敵のいなくなった塹壕の前で、イクシアは唐突に青白い輝きを放つ。
 イクシアの飛行パーツや装甲に幾つか見られる碧い透過部品は、彼女のサイキックエナジーを増幅させる機能があり、その輝きも紛れもなくそれであった。
「な、なんだ……なんだか、安心する輝き……うーん」
 ぼうと光るその輝きに魅入られるかのように、傭兵部隊はバタバタと倒れていく。
 イクシアの【静かなる子守歌】の思念波が、光と共に流れ込み、疲労した兵たちを眠りへと落とし込んでいく。
 その眠りは、彼等を急速に癒す効果がある。というよりも、急速な治癒のために眠りへと促すものであった。
『おい、どうした。応答しろ……くそ、やられたか』
「安心して、彼等には決戦の時間まで休んでもらうわ」
 眠り落ちた兵士たちの通信機から流れてくる別部隊に代わりに応じると、イクシアはその返答を待たずに再び飛び上がる。
 彼等が安心して休息を取れるよう、一人もここへ通すわけにはいかない。
 後詰の部隊に対抗する余力は、少しでも残しておかなくてはならない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
まずはなんとか凌ぎきったが、相手の増援が来ればどうなるかはわからないか
それに俺だって爆撃機相手に、何度もあんな曲芸をしたくはないし
少々の危険は承知の上で、叩けるうちに叩いておこう

神刀を片手に、合の型【澄心】を発動
周囲の環境と合一した神気を纏うことで諸々の感知から逃れる……と言ってもここは戦場。何かしら特殊な装備等で探知される可能性はあるので油断はせずに
各種痕跡や気配などから索敵して塹壕を進み、敵を見つけたら不意打ち上等で切り倒していこう
とはいえ、今ここで大立ち回りをするつもりはない。敵が複数集まっている地点を見つけた場合は記録するのみにとどめておこう

適当なところで切り上げて、情報共有だな



 広大な平原を遮るような建造物はなく、両軍がまみえた戦場は、かつては野原が広がる自然豊かな大地であったという。
 それも今は昔。砲弾と戦車の轍に踏み荒らされた戦火の波が、この一帯を変えてしまった。
 その波は、ゾルダートグラード軍の勢力圏を広げるたびに波及する。
 お金のない外人傭兵部隊が取り仕切るこの戦線とて、もう少し前までは正規兵が居た。
 だが勇猛果敢に挑んだ者たちは戻らず、獣人たちは戦力を減らすままに戦線を引き下げることしかできなかった。
 ゆえに、押し返している現状が半ば奇跡のようなものだ。
 勝ちすぎているといってしまってもいい。
 攻め上がるには、あまりにも手勢が足りない状況。それでもなお、敵方の塹壕地帯に乗り込もうというのは無謀という他ない。
 だが、今しかないのだ。
「ああ、まだ足がしびれる。落下傘無しは、さすがにきつかったかな」
 夜刀神鏡介は、軍靴越しに足の主に踵がびりびりとした余韻を残すのを誤魔化すようにつま先で地を打つ。
 航空爆撃機に変形するパンツァーキャバリア部隊は、この戦線を地獄と化していた元凶であった。
 なんら対策らしいものもなく、ただ耐え忍ぶだけであった航空戦力を、猟兵たちは打ち破り、その結果として負け続けていた戦線に膠着状態が生まれたのであった。
 鏡介もまた貢献した一人であり、なんと空飛ぶパンツァーキャバリアを相手に地上から生身で撃墜を試みたところであった。
 結果として、複数機を撃墜するには至ったのだが、生身で空を飛んで斬りに行くのはいささか無茶があったらしい。
 その身に神気を帯びて超人と化していた鏡介であったが、飛行機の生息圏からパラシュートも無しに着地するのは流石に堪えたようだ。
 軍学校時代には降下訓練も行ったが、改めて落下傘の重要性を思い知る形となった。
 だがまぁ、落下したその足で、既に鏡介は敵方の塹壕に潜り込んでいたりするのだが。
「やれやれ、あんな曲芸はもう御免だ。少々危険な橋だが、叩けるうちに叩いておこう」
 早足と砲弾に紛れこむようにして、塹壕に潜り込むのは成功したが、ここから先はそう楽な道ではないはずだ。
 造りの荒かった獣人側の陣地と比べて、ゾルダートグラード軍側の塹壕地帯はなかなかに広大だ。
 向かい側から見ただけではどこに穴が開いているかわからず、詳しく精査しようにも、ご丁寧にシールド付きのガンタレットが敷設されていて、地上から攻略しようものなら真っ先に的にされてしまうことだろう。
 地道に塹壕を進んで潜んでいる敵を叩いていくしかない。
 キャバリアという脅威はひとまず失せているものの、ひとたび塹壕の溝に降りてしまえば、視界は利かなくなる。
 神刀を手に、鏡介は呼吸を整えて集中する。
 神の打ち鍛えたともされる刃からは、常に神気が溢れ、その時点で持ち手を選ぶ武器ではあるが、神器を使うからには神気の本質にある程度通じていなくてはならない。
 まして剣。刀の至る奥義の一説に、身刀合一というものがある。即ち、刀と扱う身体が一つであるという半ば暗示のようなものである。
 曰く、手足のように刀を使えと云う。
 曰く、自然と一体となって刀を使えと云う。
 神の気を放つ刀に近づき過ぎれば、それは人でなしに近づくということにもなるだろう。
 剣の道に通じれば通じる程、それを理解し、神気というものが森羅万象に遍く流れを以て偏在するものであるとも思い至る。
 これは、そういうものを感じとる奥義の一つ。
「我が心は静にして無。合の型【澄心】」
 極めて薄く、周囲の環境、偏在する気の流れに合わせる様にして神気を纏う事で、鏡介はその存在を希薄にする。
 もはや、誰もが彼を見る事も聞く事も、嗅ぐことすらできなくなっているに違いない。
 静かに音も無く、塹壕を駆ける。
 散発的な、獣人側の塹壕を牽制するような銃撃音が聞こえてくる方へと素早く塹壕の中を駆けるが、そこには風を切る何かがあるとは誰も気付けない。
 その違和感に偶然気付けたとしても、その時には既に、
「うぐ……なん、え……?」
 塹壕から乗り出して軽機関銃を鳴らしていたゾルダートグラード軍の兵は、下半身から力が抜けて身体がずり落ちるのを感じるが、踏ん張りが利かない。
 思わずもたれかかるように反対側の土壁に座り込むが、じわりと濡れる足元が赤黒く染まるのと、そういえば周囲の仲間が倒れているのにもようやく気づいた。
 皆、いつの間にか斬られていた。
 一刀両断、というよりも、急所を最小の斬撃で仕留められ、気づかぬうちに脱力して倒れ込んでいるような様子だった。
 それほどまでに完璧に景色に溶け込んだ鏡介であったが、その歩みは慎重であった。
 相手方の装備は侮れない。
 タレットと言い、軽機関銃と言い、手入れもよければ性能も折り紙付きのようだ。
 何らかの検知器が今の自分を捉えるかもしれないと思うと、慢心は抱けなかった。
 そして幾つ目かの曲がり角越しに様子を伺うその先に、シートを張った簡易的な屯所のようなものを見つける。
 まだこちらは騒ぎになっていない。
 踏み込むべきだろうかと思案するが、急襲して一息に片付けられる規模かどうか微妙な所だ。
 ここで無茶をするのも、後詰の部隊を相手にする余力に差し障るとも限らない。
「っ!」
 と、不意に背後に気配を感じ、思わず鏡介は畳んだ手を伸ばすようにして刀の切っ先を突き出す──前に、止まる。
「……おっと、気づかなかったぁ……」
「……あんたか。お互い、無事だったな」
 切っ先を向けた相手に見覚えがあると感じて手を止めた先には、毛深い猫の傭兵。先ほどの戦いでも見かけた味方だ。
 鏡介の動きに反応して胸元のナイフに手が伸びていたのを、安堵しながら撫で下ろすのだった。
「この先、何かあるのかい?」
「休憩所か、屯所か……一息には無理だと思うから、記録して情報を共有するのがいいかなとね」
「慎重だな。いい教官を持つと、長生きができるもんさ」
 鏡介の話を聞き、傭兵はよいしょっと先ほどのグレネードランチャーを引っ張り出す。
 なるほど、こういう時は、こういった武器が役に立つ。
 とはいえ、長らく刀で戦ってきた鏡介が、そのスタンスを崩すのはあまりなさそうなものだが。
 恐らく轟音が鳴り響くのを察し、鏡介は適当なところで切り上げるべくその場を去るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「掌で5mなら、全長100mもあれば充分でしょう。全て掘り返してしまいなさい。…行け、真・黄巾力士」
黄巾力士を全長100mまで巨大化させ直接敵の塹壕に手を突っ込ませ塹壕自体を大地から抉り取り破壊させる(ついでに敵を握り潰しても頓着しない)
攻撃が集中すると思われるので黄巾力士がすぐに破壊されないよう竜脈使い能力底上げ
オーラ防御も使用させたままにする
自分は風火輪で空中から戦場俯瞰
竜脈使う合間に雷公鞭振るい敵の攻撃や構想が活発そうな場所に雷を落とす
自分への攻撃は仙術+功夫で縮地(短距離転移)して回避

「敵の塹壕などない方が侵攻しやすいでしょう?戦後に必要になったら再構築しますから、安心して下さい」
嗤う



 広大な平野を掘り返して、大地に小皺を刻み付けたかのような塹壕地帯。
 その規模は、ゾルダートグラード軍の国力を示すかのように広大であり、また複雑に入り組んだものであった。
 ただただ広い塹壕を展開して掘り進めるだけではなく、人や物資、果ては戦車の通るための高架を作るべく、石材や木材を組んでいる場所もあれば、万一攻め込まれたときの為に敵方からはその全容が見えづらく、また容易に入り込まれぬよう塹壕の上を掠めるかのようにガンタレットを備えた見張り台も敷設されている。
 莫大な資金を投じて敷かれた陣を、ただの歩兵部隊で攻略するのは、それはもう骨の折れる仕事であり、案の定、打って出ると息巻いていた獣人部隊の侵攻は、それほど進んではいなかった。
 いや、塹壕に潜り込みさえすれば、狭い場所もあって一度に相手取る人数差は出にくくはなる。
 しかしながら、それはあくまでも一度に相手にする数の差であって、敵の総数は正規軍の去った外人傭兵部隊とは比べるべくも無く。
 撃っても撃っても、土壁の向こうから兵隊が湧いて出る状況には、さしもの屈強な傭兵たちも疲労の色を隠せない。
 銃弾は早々に尽き、鹵獲した小銃、スコップやナイフで奇襲を仕掛けるなど、本格的に塹壕戦の泥沼の様相を呈してきた。
 兵力の差は歴然。しかしながら、獣人部隊がほとんど脱落する事も無く戦えているのは、ゾルダートグラード軍の向いている先が、自分たちの塹壕に入り込んだ者たちではなく、戦場を渡り歩いてくる勢力に向き合わなくてはならなかったからだ。
 猟兵たちの能力は、それこそ破格のものである。
 ある者は戦車部隊を率い、ある者は一人で一軍を相手取る。
 そして、ある者の一人、鳴上冬季もまた、人型の戦車の姿を取る秘宝の一つ、宝貝『黄巾力士』の集団を矢面に立たせ、戦線を支配していた。
 集団で戦列を成し、敵弾をものともしない金色の輝きを持つ、なんとも目立つ歩行戦車の足を成す無限軌道が唸りを上げると、そのやや後ろの空域を風火輪を履いた冬季が見下ろしていた。
「近道をしたつもりでしたが、存外に回り道でしたね」
 ふうと息をついて浮かべる笑みに焦りはなく、敵の視線を主戦場となる平野に向けさせていたのも狙い通りと言わんばかりの涼やかさであった。
 そして、この塹壕戦も間もなく終わりを迎えるであろうことを、冬季は察していた。
 疲労を残す獣人たちだけならまだしも、彼等を助け、時には治療し、別方面から塹壕を攻略する別の猟兵たちの活躍により、塹壕地帯から向けられる攻撃は、徐々に当初の激しさを失いつつあった。
 一番の懸念事項であった航空戦力を欠いた今、地上で戦車にかなう戦力はない。
 装甲車をハチの巣にするガンタレットの機関砲も、対戦車ロケットですらも、地脈から力を得て防御フィールドと能力の底上げを加えた黄巾力士に大したダメージを与えられるものではない。
「しかしながら、貰いっぱなしというのもよろしくない。返礼をおかなくては」
 竜脈の力で戦車を強化していればそうそう後れを取る事はない筈だが、あまり使い過ぎても荒野が再生する力を奪ってしまいかねない。
 それに、機体は無事でも大地を抉られては戦列を乱しかねない。
 敵の火力を幾つか削ぐ目的で、冬季は雷公鞭を振るい、戦場に雷を落とす。
 距離もあるので命中率にやや不安があったが、幸いにしてここは平野であり、厄介なガンタレットはその特性上、やや高い位置に置かざるを得ない。
 幾つか銃座を潰し、獣人たちが苦戦しているであろう活発な交戦地点にも助け舟を出していると、いよいよ力士隊が塹壕地帯に到達してしまった。
 そうなってしまえば、もう勝利したも同然。
 とはいえ、迂闊に戦車砲を撃ち込めば同士討ちが気になる。
 砲を封じられた戦車は、ただの装甲車か? 否である。
「掌で5mなら、全長100mもあれば充分でしょう。全て掘り返してしまいなさい。……行け、【真・黄巾力士】」
 先行する黄巾力士の内の一機が、ぐんぐんと巨大化する。
 通常の科学力ではなく、仙術によって開発された不思議な秘宝の一つである宝貝。
 そこに通常の常識は当てはまらない。
 100メートルにまでその全長を拡張した黄巾力士のその腕部は、山を切り拓くかのような巨大重機のショベルにも匹敵する。
 冬季が自分の手を使ってひいふう、と大雑把に計算したものではあったが、その意図、用途はまさに重機のそれであった。
 洗濯板の如く刻み込まれた塹壕を、その手で無理矢理掘り起こし、埋め立てる。
 ばくん、ばくん、と大地が砕ける轟音と土石が力任せに混ぜっ返される。
 石や枕木で組まれた壁も、高架も、簡易的に組み上げられたトーチカも、もはや関係なく、掘り起こして埋めたてる、至極単純な動きの前に敵兵諸共巻き込んでいく。
 握り潰すのが石材や木材、もしくは敵兵であったも関係なく、黄巾力士はひねりつぶしていった。
「うへぇ、ペッペッ! 土木業者入れたって知らせは聞いてねぇんだけどなぁ!」
 埃まみれになった獣人たちの一部に、非難めいた声をかけられる冬季であったが、
「敵の塹壕などない方が侵攻しやすいでしょう? 戦後に必要になったら再構築しますから、安心して下さい」
「そういう話じゃなくってねぇ!?」
 涼やかに笑って聞き流す冬季に、頭にかかった土埃をざらざらと払う獣人の兵士は肩を竦めるのであった。
 ともあれ、敵側の塹壕は、これで使い物にならなくなったはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『オブリビオン戦車隊』

POW   :    タンクキャノン
【戦車砲】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    超大国の改造成果
自身の【車体】を【長距離砲撃形態】に変形する。変形中は攻撃力・射程が3倍、移動力は0になる。
WIZ   :    タンクデサント
X体の【随伴歩兵】を召喚する。召喚された個体の能力値・戦闘力・技能は自身のX分の1。

イラスト:aQご飯

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「おう、在ったぜ! 向こうさんの電文だ。あー……なになに」
 少ない戦力を絞り出し、決死の覚悟による塹壕戦は、猟兵たちの助力によって制する事が出来た。
 もはや、この塹壕に残っている敵兵は居ない。
 あちこち固定武装も潰してしまったため、万一奪い返されてもすぐには復旧できないはずだろう。
 後ろ向きばかりの思考だが、これまでに負け続けた部隊は、常に後ろ側を警戒する癖がついている。
 それに、この勝利はまだ完全ではない。
 塹壕まで繰り上げた戦線は、まだ危険にさらされている。
 塹壕地帯の心臓部でもあるらしい、簡易的な前線司令部らしき天幕を見つけた傭兵の一人、リチャードは通信機の記録を漁っていた。
 電文の書き写しの紙を、やや視線を遠くして読む。
 そこには、彼等が欲しがっていた後詰の部隊の詳細が記されていたようだ。
「おー、やっぱり戦車だよねぇ。平原の先の塹壕を潰すとなりゃあ、戦車と随伴歩兵ってのが定石だ」
 それが不要なほど航空戦力が充実していたとはいえ、爆撃機を飛ばすより陸上戦車と歩兵のほうが、コスト的には優しく、確実だ。
 どちらの方が人的被害というコストが高いかどうかは、この際言うまでもない。
 彼等が、獣人たちが航空戦力に手も足も出ない内に押し込めて、戦車部隊で確実に潰す算段であったのだろう。
「だがしかし、僕たちは勝っちまった。ここまで来たら、もう後戻りはできんよなぁ」
「だな。しかし戦車かぁ。今度こそ|銃弾《タマ》がねぇが、鹵獲できた分は使えそうなのか?」
 倒れた折り畳みテーブルを起こして腰かけつつ、もさもさの顎をさする隊長格のヨナタンは、リチャードの問いに答える代わり、一抱え程もあるロリポップのおばけみたいな筒を見せる。
 使い捨ての対戦車兵器として知られるそれはパンツァーファウストというロケットランチャー。正確には無反動砲だが、ようするにまぁ、戦車に効果のある歩兵武装であった。
「こいつがありゃあ、戦車はなんとかなるかもな。撃てる距離まで近づけりゃな」
「こういうのもあるぞ」
 続いてテーブルに長い銃と鉄の箱を乱雑に置く。
 魔女の箒のように長いそれは、いわゆる現代で言うところの対物ライフル。
「パンツァービュクセ。こんなもん、本当に通用すんのかぁ?」
 かの超大国は、とんでもないものをひっきりなしに開発していたと聞く。
 可変して空を飛ぶパンツァーキャバリアをはじめ、砲塔が二本ある戦車。列車砲。
 そして、歩兵により持ち運び可能な対戦車ライフルなどもそうだ。
 大型の徹甲弾を使う以外は、ほとんどスナイパーライフルと変わりないそれは、戦車の装甲を貫くために生まれたのだが、時代と共に急速に進化し装甲も厚くなった戦車にはもはや効果を発揮しないと言われていた。
 そのため、役割を戦車に限定しない方向で、あくまでも対物用としての開発が進んだのが現行の対物ライフルである。
 射程約2キロを誇る狙撃銃は、物を打つ目的で、うっかり人を撃ち抜いてしまう事もあったものの、戦車を撃破したという話は聞かない。
「まあ、使えるものは何でも使っておこうよ。どうせ拾い物だしさ。さあ、いざ行かん。最終決戦へ。なんてねぇ」
「ハッ、映画じゃ、そういうことを言う奴は早死にするんだぜ」
 塹壕のあちこちに残った武装郡、そして拾ってきたライフルを手に取ると、乾いた笑いを浮かべつつリチャードはヨナタンと共に天幕を後にする。
 手当と補給を終えた後、彼等は戦車部隊を迎撃に出る。
 交信記録を律儀にとっていた資料によれば、戦車部隊は、まだこの塹壕地帯が落ちたことを知らないようだ。
 今なら連中の不意を突くこともできるかもしれない。
 ここで勝利を得ることができれば、それがたとえ一時のものだとしても、一国の危機を救う一手になるやもしれない。
 そう信じる者はこの部隊には居ないのかもしれないが、二束三文の雇用金の為に、傭兵たちは最後の戦いに臨むのであった。
ジャン・ジャックロウ
いざ行かん、最終決戦へ…ヒャッハッハッ、こういうのは派手に幕を切らなきゃな。
虎と鶏のオッサン達、先陣は俺達【野良犬部隊】が行かせてもらうぜ。
パンツァーキャバリア班、俺の『グラオザーム』を持ってこいッ!
そうだ、ヨナタンのオッサン。この残りの『極上厚切りステーキ肉』をやるよ。この戦いが終わって味がわかるようになったら食いな。リチャードのオッサンには後で部下に安眠枕でも届けさせてやるよ。アンタらとの戦うのは案外楽しかったからな。お互い生きてたらまた会おうぜ。

グラオザームに搭乗して、キャバリア班と共に強襲をかける。
全機、戦車砲一斉発射ッ!
その後、生き残りの戦車部隊を各個撃破していけッ!


【アドリブ歓迎】



 塹壕地帯からさらに戦線を上げたポイントは、まだ争いの形跡が生々しく残る山林の麓。
 山間を越え、緩やかな下り坂になると、ようやく山道が安定して視界も晴れてくる。
 険しく切り拓かれていない山々を地上から越えるのはリスクがある為、狭まった森深い山間を越え、平原つまり塹壕地帯へと続くわけだが、かつて貿易の要衝、関所にもなっていたこの場所の戦闘は激しく、それだけに完膚なきまで叩き潰された。
 一面の焼け野原となった麓は今や瓦礫跡すらちらほら見える程度で、何もない。
 何もないからこそ、我が物顔で進む部隊は油断する。
 後詰として派兵されたオブリビオン戦車部隊は、随伴する歩兵をその装甲の上にのせてのんびりと行軍していた。
 彼等には弛緩した雰囲気があった。
 それも仕方のない話。彼等が担当するのは、爆撃機による空爆の後処理だ。
 空爆、空襲によって叩き潰した塹壕に生き残った食べ残しをつついて処理する係なのだ。
 激しい砲火の中を歩く必要はない。
 風の音すら聞こえる閑散とした荒れ野をゆっくりと歩み進めて、逃げ遅れた者達の抵抗を優しく確実に手折る、簡単なお仕事だ。
 故に彼等は弛緩する。油断する。
 だから気にも留めなかった。
 この先の塹壕地帯がいやに静かである事も、もはや雌雄は決したものと。
 電信の返答が無いのも、戦いに勝利し浮かれていて滞っているものと。
 そこまで油断する程、ゾルダートグラードとは圧倒的であったのだ。
「あーれまあ、ありゃあ行楽気分だわ」
「いい気なもんだな。こっから、いくつか頭をすっ飛ばしてやろうか」
「うーん、そいつはちょっとなあ。奇襲を仕掛けるなら、引き付けてドーンとやりたいよねぇ」
 山間を抜けてくる戦車部隊を遠目から確認していた傭兵部隊のヨナタンとリチャード。
 対戦車ライフルの有効射程ギリギリからでも、彼等の弛緩した雰囲気は伝わってくる。
 ここまで視線を潜り抜けてきた傭兵ならば、その相手はちょろい。かと言われれば、別にそうでもない。
 戦車は地上最強戦力だ。生半可な銃器では歯が立たず、その踏破力は、生半可な堡塁やトーチカなど踏み潰してしまう。
 その火砲の威力は、言うまでもない。
 歩兵しか居ない傭兵部隊では、容易に相手ができるものではない。
 だからこそ対戦車装備を重点的に用意してきたヨナタン達だったが、それだけでは勝算は薄い。
「オーソドックスな戦車持ってきたじゃねぇか。虎と鶏のオッサン達、先陣は俺達【野良犬部隊】が行かせてもらうぜ」
 彼等と同じく、ライフルの狙撃スコープ部分だけを引っ張ってきて状況を見ていた犬の獣人ジャン・ジャックロウがにやりと笑う。
 敵方からの離反者。いや、どういう運命のめぐりあわせか猟兵に覚醒したジャンの率いる部隊は、パンツァーキャバリアによって成る歩行戦車部隊。細かくすれば歩兵も居るのだが、そこは今は割愛。
 素行も品性も悪い雑種犬の悪そうな男。しかしながら、その手腕は視線を潜り抜けるに十分なものを持っているのは、これまでの戦いでもよくわかった。
「そりゃあ心強いけどねぇ。それはつまり、連中の間合いで戦うってことでもある」
「慣れっこだよ。これでも矢面に立ってきたんだぜ? ウチのはそんなヤワじゃねぇさ。ケヘヘ」
「うーん、まぁ、出たとこ勝負でやってみようか」
 ぐっと拳を突き出す屈強な虎男に、反射的に拳を合わせると、ジャンはやや気後れしたように肩を竦めて、
「そうだ、ヨナタンのオッサン。これやるよ。さっき焼いてたステーキ肉のあまりさ。戦いが終わって、疲れも取れたらよ。うまさにたまげるぜ」
 使い古しのメスキットを押し付けると、すたすたと自分の部隊のもとへと駆けていく。
「おい、俺にはねぇのかよ!」
「リチャードのオッサンには後で部下に安眠枕でも届けさせてやるよ。アンタらとの戦うのは案外楽しかったからな。お互い生きてたらまた会おうぜ」
 大股を広げて指で銃を撃つようなジェスチャーを送ると、軽々しい敬礼と共に今度こそ振り返らずに行ってしまう。
「ああいうのって、映画だと死にそうだよねぇ」
「バカ言え。簡単にくたばるようなタマかよ」
 肉の香り漂うメスキットの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、お互いに顔を見合わせ、傭兵たちは配置につく。
「俺の『グラオザーム』は?」
「火が入ってます。いつでも行けますぜ」
 そしてジャンもまたパンツァーキャバリアに乗り込むと、同系統の歩行戦車を率いる野良犬部隊が歩を進める。
 大した作戦はない。
 こちらから強襲を仕掛ける以上のものは、混戦になってしまえばほとんど意味が無くなる。
 細かな差があるとしても、こちらの砲撃が届くという事は、相手の砲も届くという事だ。
「各隊、一斉射の後は、各個撃破を目指せ。不利と見たら突破を狙ってくるはずだ。なるべく、進路を妨害して……そうだな、混戦に持ちこめ。こっちのが器用だ」
 緩やかな下りを利用し、その斜面に伏して機を見ていたジャンは、敵戦車の車体をカメラに据えると、部隊に合図を送った。
「全機、戦車砲一斉発射ッ!」
 通達を送ったその瞬間、敵戦車に同乗していた歩兵がこちらに気づいたようだった。
 微妙な所だ。が、気づかれてしまえば撃ち洩らしが出る可能性が出るか。
 機内で舌打ちを漏らそうとするジャンだったが、慌ててこちらを指さそうとする敵歩兵の頭が次の瞬間に吹き飛ぶのが見えた。
 狙撃! リチャードがやったのか。
「流石、年の功だぜ」
 ニヤリとした口元から漏れた言葉は、鳴り響く砲撃に掻き消された。
 騒ぎ出そうとした歩兵がいきなり撃ち殺され、呆然とする戦車上に間髪入れずに砲弾が降り注いだ。
 緩んでいた空気が緊張に至る一瞬を切り崩す銃弾と、戦闘態勢に至る前に降り注ぐ砲弾。
「前に出るぜぇ! 続けッ!」
 重々しい装甲を纏った鉄騎が、爆炎を上げる戦場へと歩を進める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シプラ・ムトナント
ロケットが撃てる距離まで近寄れて、ライフルが撃てる隙が作れれば良い訳ですね……承知しました。
ヨナタンさん、リチャードさん。もう一度無茶をやりますので……お付き合い、頂けますか。

戦闘開始後、わたしは陽動に回ります。
随伴歩兵を一人ずつ排除し、戦車本体へも射撃を。ただの散弾では装甲に弾かれるでしょうが……侮られる位で丁度良い。
立ち止まらず走り続けて注意を引き、お二人の元へ戦車を誘導。

十分な距離まで引きつけられたら、|衛生兵《メディック》の名をお呼びください。
『メディック・トリアージ』の力でお二人の元へに転移します……これで巻き込まれる心配はありません。
鹵獲品の火力、彼らに教えて差し上げて下さい……!



 戦いが始まった。
 激しい急襲から、相手の弛緩した空気は一瞬にして戦闘の苛烈なそれへと移行するであろう。
 楽勝ムードの歩兵を乗せた戦車部隊は、時間を置くごとに強敵へと変化してしまうことだろう。
 外人傭兵部隊は基本的には歩兵しか居ない。最も戦えるであろうヨナタンとリチャードですら、長距離移動以外は自分の足で戦場を駆ける。
 自陣の塹壕から攻め上がるには、あまりにも段階をすっ飛ばしているため、武装はもとより心許ないのであった。
 贅沢は言っていられない。常に何でもそろっているのが戦場ではなく、極めつけにこの戦線を担う傭兵部隊はそうとうに貧乏だ。
「どうだいリチャード君。弾は足りそうかい?」
「今ンとこはな。だが、戦車を撃つのは無理だな。そうとう当たり所が良くなきゃ、通らねぇ」
「やっぱ、いいとこ、こいつをぶち込むしかないかぁ」
 敵の塹壕地帯で鹵獲した大型ライフルと無反動砲といって対戦車兵装。
 しかしながら、重装甲の戦車を相手取るには、その装備さえあればいいという訳ではなく、運用法に沿った使い方をせねば効果を十分に発揮できない。
 人の身で戦車を破壊するのは常人には不可能に近い。
 対戦車兵器を正しく運用出来て、初めて破壊に至るのである。
「つまり、ロケット砲が撃てる距離まで近寄れて、ライフルが撃てる隙が作れればいい訳ですね。承知しました」
 せっせと遠くから戦車の随伴歩兵を撃ち抜いていくリチャードと、スポッター役に徹するヨナタンの後ろで、衛生兵のシプラ・ムトナントは思案する。
 味方の治療などが主な仕事の衛生兵だが、シプラは猟兵。その力は慮外のものであり、常人とは一線を画すものである。
 平たく言ってしまえば、彼女であれば戦車とも戦える。
 しかし、相手もオブリビオン。その在り方もまた常識とは異なる。
 元より戦車に対抗するものではない武装で、何とかなるものだろうか。
 軍人としての素養が、その戦略を打ち出していた。
 兵器は、使うべき時に使えてこそである。
「ヨナタンさん、リチャードさん。もう一度無茶をやりますので……お付き合いいただけますか?」
 勇気をもってその戦略を二人に伝えると、虎と鶏は顔を見合わせ、うーむと難しそうに唸る。
「いいかい、シプラ君。戦車の恐るべき武装は、巨大な砲だけじゃない。近づかれた場合の武装が必ず用意されているものなんだよ」
「近接の散弾砲などですね。知っています」
「もっと言やぁ、質量そのものが脅威だ。おまけに随伴の歩兵が居る」
「そのためにライフルで戦車を狙えていないと推察します」
 軍人一家で育ったシプラにとって、その類の知識は一般教養だ。
 はきはきと応えるシプラの様子に、二人のオッサン傭兵はふぅと肩を竦める。
 どうやら引き留めるものではなく、気を付けろと言っているのだ。
「わかってんなら、もう何も言う事ぁねぇな。つまんねぇ怪我をするなよ。嫁の貰い手が居なくなるからな」
「リチャード君、そりゃあセクハラだよ。シプラ君、君の事だ、一人でも渡り合えるとは思うけど、命は惜しむくらいの価値観は捨てないようにね」
 ちょっぴり渋い顔のまま、傭兵二人はシプラの力を認めているらしく、その作戦に否やはないらしかった。
 かくしてエールを送られるままに、シプラはその手に銃を持ち、戦車に突撃を仕掛ける。
 その作戦とは、パンツァーキャバリアに対して行ったようなものと基本的には変わらず、自らを囮として戦車をキルゾーンにまでおびき寄せるものであった。
 空を飛ぶ機体ほど即応はすまいが、戦車を引っ張るにはまず必要な事がある。
 敵の砲口を見ない事。
 それが見える時点で、危険地帯である。
 戦車砲とは元来、対人用の武器ではない。ただ、射線上に居れば、例外なく破壊されるというだけだ。
 だが対人用の武器でないそれは、人一人を相手取るに過分な火力と引き換えに断続的に撃ち続けることができないという弱点もある。
 その時点で恐るべき兵器ではない。
 側面から駆け寄り、砲撃の射程外に回り込むシプラは、敢えて身を晒すように散弾銃を大きい動作でぶっ放す。
「ぐわぁ!?」
 こちらに気づいた随伴歩兵を吹き飛ばす、銃身を切り詰めた散弾銃の火力は頼りになるが、それはマンストッピングパワーに長けているというだけであり、銃弾に使用されているベアリング弾程度では、戦車の重装甲を嘗める音を立てるだけだ。
「ラッパ銃じゃ、怪物は倒せないぞ」
「くっ……」
 戦車の砲塔、車体が旋回する。側面に備えた近接散弾砲が向くよりも前に、シプラは飛び退くようにして素早く駆ける。
 本来はその場に留める様に回り込むものだが、敢えて姿を晒すようにジグザグに移動しつつ巧みに追撃を躱しつつ、シプラは散弾銃の銃弾を補給。
 誘導するためとはいえ、近づき過ぎれば、近接用の副砲に狙われる。
 だが、そこは攻撃ポイントでもあった。
 近接用の武装があるということは、周囲を確認するためののぞき穴があるはずなのだ。
「一体でも多く……少しでも多くの手傷を……!」
 脇腹越しに撃つ|散弾銃《レミー》が火を噴くと同時に散弾をばら撒く。
 倒れるのは歩兵のみで戦車にダメージは見られないが、一瞬だけ振り向いた際に、側面の車体にのぞき窓が罅割れているのが目に入った。
 もうどれほど歩兵を片付けたろうか。そこにもう一発入れることができれば、副砲手を傷つけることができる。もっと威力のある銃なら、操縦席にも被害が及ぶかもしれないが……。
 思った瞬間、視線の向いていたのぞき窓が爆ぜた。
 シプラが撃ったのではない。その銃創は散弾のそれではない。
 対戦車ライフルが、戦車の前面装甲を正確に貫く事は至難。だが、装甲の薄い場所ならば?
 がくんと、明らかに戦車の動きが鈍った気配があった。
「|衛生兵《メディック》!」
 鋭い声が聞こえた。
 その瞬間、シプラは【メディック・トリアージ】によって、叫んだヨナタン達の傍にまで一瞬にして移動する。
 それは本来、負傷兵などのところに要請された際に、迅速に駆けつけるためのユーベルコードなのだが、物は使いようである。
「鹵獲品の火力、彼らに教えて差し上げて下さい……!」
 戦車は動きを止め、シプラは一瞬にして危険地帯から逃れ、残すところは致命的な隙を得た戦車と……それを射程内に納めた無反動砲を構えたヨナタンであった。
「どうだい、生贄の羊はうまかったかい? お代は高くついたな」
 |戦場の拳《パンツァーファウスト》の名に相応しい弾頭がどす黒いバックファイアと共に射出され、戦車の横腹に激突。空震を伴う爆炎が吹き上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
最後は戦車部隊か。まあ、爆撃機よりは幾分マシだ
なにせ、飛び回らずとも刃が届く……というのは冗談で、生身で相対するには危険すぎる相手には違いない

変わらず神刀を手に、まずは塹壕に隠れて戦車の接近を十分に待つ
背後を突けるまで待つのは少々悠長だし、側面からの攻撃を狙おう
戦車は急に止まれない……って事はないが、側面から現れた歩兵に対して即座に狙いは定められまい

神気によって強化した身体能力で全力疾走。随伴歩兵を斬撃波で排除しつつ戦車の元へ
戦車砲はタイミングをあわせて切り払う

廻・伍の秘剣【灰桜閃】による連続攻撃を一点に叩き込み、続く神気の爆発で破壊しよう
敵部隊が対処してくる前に、どれだけ落とせるかが重要だな



 どおん、どおんという激しい音もどこか遠くに、濡れた布を被ったかのように聞こえる。
 塹壕地帯を抜けて更に山道へと差し掛かろうという緩やかな傾斜のある地点には、荒れ果てた土地だけがあった。
 戦争の傷跡を生々しく残すこの場所に、身を隠す場所など見当たらないというほどに、建物らしいものはなく、わずかばかりその痕跡を残すだけだ。
 痕跡だけあれば充分であった。
 そこは、なにかの建物があったであろう、土地の溝。かつて行われたであろう基礎工事のために掘られた穴であった。
 建物が倒壊し、朽ちて露になった穴は、人工というよりかは天然に近い塹壕になっていた。
 崩れかけの瓦礫片よりかは弾避けに十分と判断した猟兵、夜刀神鏡介はそこに身を潜め、戦いの音色が近づくのを息を潜めて待ち受けていた。
 味方の戦力が、相手の戦力とぶつかっているのがわかる。
 今や傭兵部隊も、猟兵の力の助けも伴い、ゾルダートグラード軍の後詰部隊が油断していたのもあったかもしれないが、十分に通用している。
 それでも、勢いに乗って勘違いしてしまうほど、鏡介はシンプルな脳味噌をしてはいない。
 相手は戦車だ。地上戦力として、これほど強力な相手もそうそうない訳である。
 重装甲、大火力。その踏破性は、周囲の瓦礫を楽々と乗り越えてしまうだろう。
 だが、基本的には楽に通れる場所を選ぶ。塹壕地帯へ続くつもりなら、この穴の付近を通らぬ筈がない。
 尤も、この戦力を前に、まだ目的地が無事であると考えるのはおめでたいが、それでも進もうというのは、アホかそれとも剛の者であろう。
「まあ、爆撃機よりは幾分マシだ。なにせ、飛び回らずとも刃が届く……」
 冗談めかして一人笑う。
 たしかに、空飛ぶ爆撃型パンツァーキャバリアよりかは、相手にしやすい。が、それはあくまでも比較対象がおかしいだけであり、相手が悪いのには違いない。
 だが刀を手にした以上は、巨大な相手であろうと斬らねばなるまい。
 地に接していれば踏ん張りも利く分、斬りやすい筈だ。ただ、斬る場所は選ぶべきだろう。
「神刀開放──」
 この戦場で、もう幾度目か、鏡介は神気を帯びた刃をその手にする。
 剣を学び、生きる道の一つと定めたからこそ、溢れ出す神気に身を焦がされる感覚の危険性を覚える。
 超人と化すその力を帯びる事、それによる万能感は、容易に心を煮溶かし、蕩けさせる。
 なんでも切れる。何でも手に入る。なんだってできる。
 その力をあらん限りに使ってみたいという、絶え間ない欲求が心を揺さぶってくる。
 故にこそ、刀は人を選ぶのだろう。
 自らを破滅させない強靭な肉体と心を持つ、剣の使い手を。
 激流のような力の奔流に流されまいという静かな心が、怪物と変じていく鏡介の肉体をまだ人足らしめていた。
 今度は戦車を斬れる。──否、斬らねばならぬ。
 歓喜する様に湧く心を鎮め、その気配を悟れば、それは今しがた脇を通ろうとしている所であった。
 隙を突くならば背後だろうか。否、それでは悠長であるし、この戦場、背後には目が付いて居よう。
 仕掛けるならば、今!
「戦車は急に止まれない……って事はないが、側面から現れた歩兵に対して即座に狙いは定められまい」
 穴から飛び出した鏡介が、その足を地に噛みつかせ、低く駆けるのを、どれくらいの兵が見たか。
 随伴の歩兵は、こちらを向いていなかったが、運の悪い事に砲塔はこちらに首を回していた。
 だが、こちらの方が速い。
 全力で駆ける鏡介の姿を目に留める歩兵はなく、戦車の砲手もまた見つけたとて撃ち込むに至るまでには数秒を要する。
 戦車砲とは、大掛かりな機械に違いない。だから自走し、装甲で覆われているのだ。
 剣の間合いには遠いが、神刀から生じる神気は、斬撃を伸ばす程度の事はできる。
 歩兵の軍装程度なら、容易く切り裂ける。
「がぁっ!?」
「ぎゃあっ!?」
 刃の閃きを垣間見たと思った時には、その身は切り裂かれ、駆け抜ける黒い人影が風のように吹き抜けた後であった。
 戦車砲の砲口が見えた。これが見えた瞬間、普通は危機感を覚えるか絶望する。
 建物を一撃で破壊するような破壊兵器の射線に居るのだ。無理からぬこと。
 身体を低く、肉薄する鏡介の眼前のそれは、直撃はすまいが、弾道上は死の空間に違いなく、撃たれればその身を裂くには想像に難くない。
 が、それでも、
「俺の方が、速い……!」
 砲口が暗黒から火花のオレンジ、砲弾の灰に染まる順番まで見据え、前傾に傾いた鏡介の目と、担いだ神刀は同じ高さにあった。
 振り下ろす刃が、その切っ先に手ごたえを返したその直後に、戦車砲はその砲弾を吐き出すよりも前に斬り伏せられ、その砲口を物騒な花に変える。
 最大の武器を封じたとはいえ、戦車の武器はそれだけではない。
 すかさず副砲が鏡介を狙うに違いなく、戦車そのものを黙らせねばならないならば、そこで止まるわけにはいかない。
 砲弾を切った緊張を逃さぬまま、切るように漏れた息を吸い直し、振り下ろした刀を帰す動きで次なる剣へと繋げていく。
 狙いは副砲──の、のぞき穴。
 足を止めぬ踏み込みからの切り上げに留まらず、続けざまの三回攻撃を想定し、身体に動きを馴染ませる。
 刀で斬られれば人は死ぬ。
 が、簡単に斬らせてくれぬが、怪物相手というもの。
 それ故に、三度も一点を捉えて斬るという恐るべき剣が生まれた。
 神気を帯びた斬閃が重なる様は、五分、八分、満開と咲き乱れる灰色の桜を彷彿とさせた。
 浄化の桜は、斬りつけた一点から花びらのような神気をまき散らせ、やがて爆ぜる。
 はじけ飛ぶように爆炎を上げる戦車を背後に、息をついた鏡介は周囲を望む。
 前線を抜けてきた戦車は一台ではあるまい。
 容易く片付けたようにも見えるが、こんな無茶な戦いがいつまでも続けられるとは限らない。
「対処される前に、どれだけ落とせるかな」
 油断のないその横顔には笑みも焦りも無い。対処されれば、それを切り崩すまでだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「雲霞の如く涌き出る雑兵に一々付き合うのは面倒です。そう思いませんか」
嗤う

自分は風火輪
黄巾力士は飛来椅で飛行
黄巾力士にオーラ防御で庇わせたまま、戦場全域を囲めるように空中で巨大な陣を描いていく

「ちょうど皆さんが人目を惹いてくださっているのです。1度で全てを無に帰す方が楽でしょう?戦闘後の築陣も、何もない方がやりやすいというものです」
嗤う

陣で囲んだ球形の内部に颶風を生じさせ戦車も歩兵も地面も等しく滅する
一応球の下部四分の一で戦場全域が入るように陣を描くので、時間も掛かるがそこそこ上空で戦場より広い範囲を陣で囲んでいく

「彼らも戦車相手のバンザイアタックはしないでしょう。ならば充分間に合います」
嗤う



 大地を揺らす砲撃と、重装甲を引きずる履帯の金属音。
 それは、過去に落とされた獣人たちの兵を伴って、再び戦禍をまき散らさんと山間を越えてやってくる。
 列を成してやってくるその戦車の軍隊は、本来ならば必要十分な数があればよかった筈。
 しかしながら、緩やかな丘陵を下りてくる重金属の虫たちは、それこそ洞穴をつついたかのようにぞろぞろと姿を現すではないか。
「チッ、思ったよか多いぜ。何考えてんだ。掃討目的に用意する数じゃねぇぜ」
 鶏頭の傭兵、リチャードが瓦礫を台座に、戦車の出足を挫くべく対戦車ライフルを撃ち込むが、目立った成果は上がらない。
 舌打ちと共に蹴飛ばす弾薬ケースは、一つや二つではない。
 鹵獲した兵器と銃弾を、ありったけ、必要以上に用意していたつもりだったが、これでは恐らく足りる事はないだろう。
 序盤に調子に乗って大盤振る舞いしすぎたろうか。
「ふーむ、向こうの無尽蔵さをちょっと甘く見てたかねぇ。こっちも虎の子が尽きちゃったら、いよいよ後ろに戻って拾い直しって羽目になるなぁ」
 虎男のヨナタンも、残弾の心配をし始める。
 明らかに足りないのは、用意した自分が一番わかっているが、改めて確認する気になれないのだ。
 定石通りに考えた方が悪かったのか。
 塹壕の相当の為に用意されていた後詰の部隊の規模を見誤るとは、痛恨の至りだ。
 しかし、この場に於いて空から俯瞰する目が、けぶり始める空気を吸ってほんのり眉をしかめながらも薄く嗤う。
「どこもかしこも、この始末とは。雲霞の如く涌き出る雑兵に一々付き合うのは面倒です。そう思いませんか」
 風火輪を履いて火を噴く輪を足裏に、緩く腕組みする鳴上冬季ははるか遠くを見ていた。
 暗い空の視線の向こうまで、恐らくはこの戦禍が続いているのだろう。
 もちろん、豊かな自然や獣人たちの営みの形跡が残っている場所もあるだろう。
 しかしながら、少なくともこの戦場で見晴らしの利くところから目を向けた先には無謀の荒野があるばかりだった。
 愚かしいと笑うならば、それで済む話。だが、いちいち壊されるのは問題だ。
 冬季を突き動かす衝動は、いつだって好奇心。未知への探求。真実の探求。
 それらを見聞きする前に灰燼と化してしまうのは、腹が立つ。
 どれほどの時を生きたとて、子供らしい気持ちを捨てきれない。
 それは己の目で確かめるのだ。勝手に壊してもらっては困る。
「流れを断ちに行きましょうか。キリがあれば、決着になりましょう」
 ちょうど、最前線は味方がドンパチやっているため、自ら矢面に立つ役割はひとまずお終いだ。
 もう面倒くさいから、まとめて……といいたいところだが、相手が思った以上に多いとなれば、その根元をまずは断っていこう。
 飛来する砲弾も銃弾も、気にすることなく、冬季は飛来椅を装着した歩行戦車型の宝貝『黄巾力士』たちを伴い、メインの戦線を飛び越えていく。
 その目は既に、増援の途切れ目を見ていた。
 さしもの戦車部隊ももう打ち止め。だが、それにしても多すぎる。
 数を想定に入れていなかった以上、これは取り逃す可能性も大いに出てきた。
 冗談ではない。痛み分けなど、国力のある方が長期的に強く出られるのには違いない。
 明確な打撃になり得るならば、勝利以外に無いのだ。
 空中で散会した黄巾力士たちは、戦場を取り囲むようにして陣を形成する。
 が、ちょっと広く間を取り過ぎる。これでは戦車砲も満足に届かないのではないだろうか。
 いや、空中だからとて射程が伸びるにしても広くとった陣形は、戦車砲を浴びせるためではなく、戦場のほぼ全域に方陣を組むためであった。
 武力で以てぶつかり合うための陣形ではない。これは、大規模な術を用いるための陣であった。
 黄金色の軌跡を残す空に描かれる陣形。それが目立たない筈も無く、中心点に居る冬季は真っ先に狙われるのだが、空に向かう攻撃は傍に仕える黄巾力士の防御膜で防いでいく。
 長くはもつまい。地脈からやや離れてしまった力士たちは、即時回復とはいかぬらしい。
 だが、もう陣は成った。
 八角形のそれぞれの辺に浮かぶ八つの紋と、中心に描かれる太極。
「木火土金水相生せよ、木金火水土相勝せよ、相乗せよ相侮せよ生ぜよ滅せよ比和せよ比和せよ比和せよ比和せよ……万象流転し虚無に至れ!」
 雷公鞭を振るい、空に敷いた陣に火を入れるかのように迸らせる雷が、車輪と化した陣を回す。回す。
 【八卦天雷陣・万象落魂】は、五行による相克、相勝を、天雷という発端を与えることで流転させ、回しまわし続ける事により、破壊の颶風を作り出すもの。
 立てに横に回る陣形は球と化し、そこに抱かれた全てを巻き込んで、嵐が吹き荒れる。
 嵐などというには生易しい。それは本当に風と呼べるものか。
 打ち付けるはまさに颶風。重力が敵に回ったかのような、浮遊と激突。空気に流され、押しつぶされる。
 それは、戦場内の、獣人たちが最前線で戦う場所のみを綺麗に残し、合流する筈だった残りの増援を綺麗さっぱり球形の黒い渦に飲み込んでいくものであった。
「ちょうど皆さんが人目を惹いてくださっているのです。1度で全てを無に帰す方が楽でしょう? 戦闘後の築陣も、何もない方がやりやすいというものです」
 これで残弾の心配はなくなった。とばかりに、雷公鞭を手元に手繰ると、ふうと息をつくようにして冬季は嗤う。
 逃げ道も、増援も残さない。
 ただし、決着だけは委ねる形で、一時の静寂を心地よく感じるかのように、肩を竦める。
 さあ、あとは残敵を頑張って片付けるのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「実は私、戦争はそんなに得意ではないのです」
戦車部隊眺め

「でも何時か幻朧帝国に続く道が今、此処にしかないのなら。ごめんなさい、私は私の願いの為に、貴方達を磨り潰します」
UC「侵食・花霞」
戦場を稲妻の如き速さで移動する花霞と化す
戦車部隊の間を縦横無尽に通り抜け
雷鳴電撃
物理攻撃無効
通電物質内移動
の能力により戦車内の機器をショートさせ乗員を焼き尽くす

「幻朧帝が何れ程今上帝に似た方なのか確かめたい。世界を守り、世界を揺らがす今上帝。似た方なのか違う方なのか、其れとも御本人さまなのか。屍山血河を築いても、私は其れを確かめたい。ごめんなさい…何時か貴方達も、転生が叶いますよう」
元の姿に戻ったら鎮魂歌歌う


イクシア・レイブラント
連携、アドリブ歓迎。

地上戦力ばかりに気を取られていない? あなたたちの敵は|空《ここ》にもいる。
対空攻撃が苦手そうなタンク部隊に対し、上空から[推力移動]で接近、大型フォースブレイド[鎧防御無視、なぎ払い]。一撃離脱を行いエクスターミネーターを展開、[レーザー射撃、弾幕、威嚇射撃]を行う。
【超大国の改造成果】で長距離砲撃形態に変形するなら狙い通り。[存在感、陽動、おびき寄せ]で攻撃を空に誘い[瞬間判断力、空中機動]で回避。こちらも【強襲支援】を行い、傭兵部隊の突撃を促し、隙が生まれ次第自身も突撃。

長大な砲台は空の私を狙いやすい分、地上に対しては使いにくいものよ。
さあ、今こそ勝負を決する時よ。



 どこまで行っても、この道は荒野であり、目新しい建造物を見つけては、それは文明の形跡というよりかは、戦う場所を急いでこさえたような物しか無かった。
 今や、ここは戦うための大地と化していた。
 もちろん、ここがその場所に選ばれたに過ぎず、もしかしたら獣人たちが住処にしている国にはもっと豊かな場所も残っているのかもしれない。
 されども、ここは戦場。幾たびも踏みつけられ、押しやられ、萎れた花すらも地面の染みと化すほどまでに踏みにじられた、血まみれの荒野だ。
 壊れた瓦礫と、緩やかな山道へと通ずる道のりには、まだ数を残す戦車の一団。
 戦っているのは、二束三文の為に命を懸ける決死の獣人たち。
 対するのは、既にどこかで息絶えてしまったであろう、過去になり果てたこれもまた獣人たち。
 悲しいかな、生命は戦いの宿命から逃れることはできない。
 こういった武力による営みも珍しくはなかったのだろう。
 だが、過去からやってくるオブリビオン。まして、超大国としてよその世界から侵略を仕掛けてくるゾルダートグラードとの戦いはどうだ。
 これは滅びへ向かう戦いではないのか。
 世界は、過去を骸の海へと捨てながら、それを推進剤とするかのように未来に進む。
 どこかの世界では、時間に質量があるという考え方を提唱した者も居たという。
 あながち間違いではないのかもしれない。
 無限に流れ落ちていく過去を礎に、人々は未来へと進むのである。
「──飛ばないの?」
 戦車部隊と獣人傭兵部隊がぶつかり合う最前線を目前にして、やや目立つ淡いピンクのキャンピングカーが停まり、運転席から人が降りてくる。
 憂いを帯びたような桃色の髪から見える桜の枝は、桜の精の特徴である。
 荒野を駆け、空を駆け、パンツァーキャバリアと激突したりもしたキャンピングカーにへこたれたところは一分とて見られないが、常からにこやかな御園桜花の顔に、客に接するような笑みは薄れていた。
 上空から声をかけられ、思わずそのままの顔で振り向いてしまうほどに、少しばかり荒んでいたのだろう。
 その彼女の勇姿を目の当たりにしていただけに、空飛ぶレプリカント、イクシア・レイブラントは、憂鬱な横顔に思わず声をかけてしまったのであった。
「実は私、戦争はそんなに得意ではないのです」
 穏やかな口ぶりだったが、その瞼の向こうには故郷のサクラミラージュの光景があった。
 おおよそ、どこの国、類まれな秘境であっても、あの世界には常に桜が咲いている。
 日常的過ぎてそれを忘れてしまいそうになるほど、花で溢れた世界である。
 それだけに、数々の世界、とりわけ猟兵が駆り出されるような戦場で花一つないような荒んだ光景を目にすると、気落ちしてしまう。
 それが、桜の精だからなのかはわからないが……。
 そして、聞くところによると、彼女の故郷に関わりの深いであろう場所が、この世界の何処かにもあるという。
 そうであるならば、どうしてここに桜はないのか。当たり前に在る筈の、幻朧桜が。
 考える程に、心がざわつくのを止められない。
 確かめなければならない。
「でも何時か幻朧帝国に続く道が今、此処にしかないのなら。ごめんなさい、私は私の願いの為に……!」
 いかにひどい生い立ちを持とうとも、それを恨まず、戦いの場に於いても敬意を忘れず、この戦場に於いても味方を助けるために行動していた桜花であったが、彼女は今、自分の目的の為に手を汚そうとしていた。
 故に、人々に喜んでもらうための車輛は用いない。
「そう、車でキャバリアに突撃なんて無茶な真似してたのも、必死な理由があったのね」
 決意したように眉間に力のこもる桜花を横目に、イクシアはどこか得心したような様子で、再び飛び上がる。
 人型の機械のボディ。その身が場所を選ばずに飛べるよう、全身に施されたサイキックエナジーを増幅させる透過パーツを碧く光らせ、その出力を増していく。
「私は剣。ただの一本の剣であればいい。きっとこれからも、貴女のようにはなれないわ。料理を振舞っていたときのあの笑顔、優しさ。私は、羨ましいと思う」
 そう言って、イクシアは閃光を引きながら戦場の空へと飛んでいく。
 まるで一本の剣である事を体現するかのように空を裂く煌めきが、やがて高高度からほぼ垂直に落下し、一台の戦車を強襲。強襲、というより、落下したように打ち付けたイクシアは、身の丈ほどもある大型フォースブレードを突き立てていた。
 戦車の砲塔を本体ごと貫いた光の刃が高熱で装甲を焼き切り、それらが電子機器をショートさせ、やや遅れて砲弾の火薬にも引火し始める。
 それを待たず、すぐさま離脱と共に、爆発炎上する戦車の煙の中でイクシアは装備を展開する。
 キャバリア戦でも用いたエクスターミネーターによるレーザーで弾幕を張り、攻撃後の隙をカバーしつつ上空へと離脱。
「地上戦力ばかりに気を取られていない? あなたたちの敵は|空《ここ》にもいる」
 白兵戦を目処に構築されたイクシアの戦闘プログラムは、常に矢面に立つことを強いられる。
 そのために生まれ、恐らくはそのために燃え尽きていく宿命なのかもしれない。
 戦うための剣。本来ならば、心も言葉も必要なかった筈なのに、どういうわけか、彼女にはそれがあった。
 敢えて姿を晒すイクシアの全身に施されたサイキックパーツから余剰エネルギーが光となって漏れ出す。
 寡黙な彼女にしては、少しばかり喋り過ぎたろうか。
 らしくないことをしたかもしれない。だが、力強くも儚く決意を固めるあの桜の精に、何か一言言っておきたかったのだ。
 少し考え事をしていたせいだろうか。いや、十分に時を稼ぐのは、策の一つであった。
 常に矢面に立ち、その身から淡い蛍火のような輝きを湛えるのは、いつだって注目を集めるためだ。
 強敵と一騎打ちをするときも、敢えて味方の攻撃の瞬間を作り出す時にも、導きの明かりであり、剣であり続ける。
 誘蛾灯に群がるかのように、戦車部隊の目は見事にイクシアへとくぎ付けとなった。
 空を撃つには仰角が足りぬとあれば、超大国の科学力で変形し、高射砲のように仰角を取る。
 それこそが、彼女の狙いであった。
「長大な砲台は空の私を狙いやすい分、地上に対しては使いにくいものよ。
 さあ、今こそ勝負を決する時よ」
 多くの砲口が自分の方に向こうとも、イクシアは怯まず、敢えて立ち向かうかのように空中で軌道を変えて降下する姿勢を見せる。
 そのほうが表面積が減って当たる確率が下がるというのもあったが──、
 豆粒ほど小さくしか見えぬイクシアへと、誰もが目を向ける最中、それは瞬きほどの素早さで誰かの視界をよぎった。
『──貴方達を、磨り潰します』
 紅い。それは、目眩の時に一瞬だけ目に映るような瞬きの様であった。
 【侵食・花霞】。桜花の身体は、稲妻の如き素早さで移動する桜吹雪と化し、視界から外れた一瞬のうちに、戦場へと駆け巡っていた。
 桜の精であるなら、その身を桜に変じる事は可能かもしれないが、稲妻の轟くかのような視認すら難しいそれは、まさしく比喩ではなく雷と化して、歩兵のみならず、鉄の装甲をも透過し、戦車内の電子機器を次々とショートさせては貫いた兵士たちを超高電圧で焼いていった。
 その一瞬で、主だった戦車の多くは擱座していたが、
「エクスターミネイター展開、索敵完了。【強襲支援】を実行する」
 残す戦力は余すところなく、エクスターミネーターの弾雨と共に急降下するイクシアが切り裂いていった。
 光線の雨と、駆け抜ける花の雷光。それらがひとしきり輝いたのち、火と煙を上げる車輛は動くことなく、オブリビオン化した歩兵たちも炭となり黒い何かになって風と消えていた。
 銃弾も爆発も、すべて消えた戦場は、何かが焦げる嫌な臭いを残し、静かな風だけが吹き抜けていた。
 怪我人に肩を貸して歩む者、疲れ果てて瓦礫に背を預ける者、敵の生き残りが居まいか銃を片手にうろつく者。
 いずれの獣人も言葉は少なく、喜んでいる様子も無かった。
 その中に、桜花は瓦礫と化した戦場に一人佇む。
 見上げるのは戦禍にけぶる灰色の空。
「幻朧帝が何れ程今上帝に似た方なのか確かめたい。世界を守り、世界を揺らがす今上帝。似た方なのか違う方なのか、其れとも御本人さまなのか。屍山血河を築いても、私は其れを確かめたい。ごめんなさい……何時か貴方達も、転生が叶いますよう」
 静かに歌い上げる鎮魂歌は、滅び去ったオブリビオンを想うものであり、そして、屍のように疲れ果てた兵士たちの生きた証を確かめるかのようなものであった。
 生きる者はその歌を聞き、倒れていった者たちを想う。
 碧い閃光が、尾を引いて戦場を去っていく。次の戦いに向かったのかもしれない。
 ここには、まだ、同じような戦いで溢れている。
 国を越えて、海を越えて、また違う何処かに。
「なんだよ、みぃんな暗い顔してよ。やっとゆっくり寝れるんだぜ?」
「気持ちのいい戦争なんて、この世にはないのさ。だってさぁ、それで喜ぶようじゃ、延々と終わらないじゃない?」
 鉄、石、コンクリート。そんなありふれたものが、何もないこの場所にも形を成していたということを、思い出す事ができる様に。
 歌と共に刻まれる、苦い思い出と決意とが、きっとこの先を進む明星となるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月04日


挿絵イラスト