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ロスト戦記1~|深夜の襲撃者《ミッドナイトパニック》

#クロムキャバリア #ロスト戦記 #リ・ヴァル帝国 #ロスト共和国 #第一話

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● 戦火
 深夜。
 自由都市ウェルディンは戦火の只中にあった。
 突如現れた謎の軍勢は、ウェルディンの西側を南北に流れる大河から侵入。上流である北から突如現れた軍勢は、線路を挟み南北それぞれの地区に戦車部隊を展開。激しい戦闘が巻き起こった。
 宣戦布告もなしに起きた市街戦に、市民たちは逃げ惑う。防衛軍と侵入者の衝突は街を破壊し、戦うすべのない市民たちを蹂躙していった。
 自由都市ウェルディン北部。防衛軍が辛うじて戦線を維持する中、一機のキャバリアが息を殺すように駆け抜けていた。

 灯りの消えたビルの間から、炎が見える。花火のように光るオレンジの花びらが黒い都市のあちこちで舞い上がり、爆音と銃声がそれに続く。キャバリアのコクピットの端で小さくなった12歳の少年・エリクは、迫る死と破壊の気配に唇を噛み締めた。
 どうしてこうなったんだろう。鳴り響くサイレンに、訳も分からず逃げ出した。護衛のリズに押し込められるようにキャバリアに乗って、今はどこに向かっているのかすら分からない。
 聞きたいことはたくさんあったが、真剣な目で操縦桿を握るリズの横顔は真剣そのもので、声を掛けるのもはばかられる。戦闘を避けステルスモードを起動させたキャバリアは、静かに戦場を迂回すると裏路地に入った。
 路地に待っていた二つの人影を見たエリクは、安堵の息を吐く。リズと一緒に護衛をしてくれている二人のレプリカントは、リズ機に向けて手を振っている。思わず手を振り返したエリクは、開いたハッチから飛び降りると二人に駆け寄った。
「ハル! アキ! 無事だったんだね!」
「エリク様もご無事で安心しました」
 無事と再会を喜び合ったエリクは、ハッチの閉まる音に振り返った。そのまま立ち去ろうとするリズに、エリクは通信機のスイッチを入れた。
「リズ、どこ行くの?」
『私は、皆を守りに行きます』
「戦車だよ!? 危ないよ。ねえ、行かないで! 一緒に逃げよう!」
『……エリク君、其れは出来ません。私は、この町を守る防衛軍なのです。この町に住む人々を守ることが、私の使命なのです』
 冷静な声に、エリクは顔を青くする。ここに来るまでに見た戦闘は、エリクにとっては刺激の強いものだった。おそらくもっと酷いことになっているのに、リズはわざわざそこに行こうというのだ。
「駄目だよ! 滅んだって言っても、リズはリィズ王国の王女なんでしょう? 何かあったら故国の人たちはどうなるの?」
『だからこそです。王女とは、国の代表であり、国民を守る者です。本当に危険な時、守ってくれる人がいるのだと、思ってくれる人々が慕って集まってくるのです。そんな人々を守らないと言う選択は、私にはありません』
「……」
『……それが、絶望的な事であったとしても』
 決意を込めたリズの声に、エリクは息を呑んだ。真剣なリズの声に、何を言うこともできない。黙ったエリクを安心させるように、リズの優しい声が通信機から響いた。
『大丈夫ですよ。エリク君の事はハルとアキが護ってくれます。だから、私は、より多くの人を守りたいのです。……そうしないと、死んだお母様達に怒られてしまいますから』
「お母様に……」
 リズの声に、エリクはうなずいた。
「……わかった。気をつけてね。絶対に生きて帰ってきてね!」
 返事が返ってくる前に、通信が切れる。同時に響く爆発音に、エリクを庇ったハルとアキが焦りの声を上げた。
「エリク様、こちらへ!」
「地下シェルターへ急ぐぞ!」
「うん!」
 うなずいたエリクは、地下シェルターへの道を駆け出した。

● グリモアベースにて
「仕事だよアンタ達」
 冷徹な声で言ったパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は、集まった猟兵達を見渡した。
 自由都市ウェルディンという都市国家が、オブリビオンに襲撃されたのだ。ウェルディンに侵攻したオブリビオンの軍勢は、街を東西に貫く大きな線路を挟んだ南部にあるプラント研究所を制圧するために進軍を開始した。戦車部隊の大軍が投入され、迎撃に出た防衛軍と激しい戦闘が繰り広げられている。
「連中の狙いはプラント研究所の占拠だ。プラントがオブリビオン化したっていう事案もある。ここにある研究所がオブリビオンの手に渡るのは阻止しなけりゃいけないが、民間人の犠牲を無視する訳にいかない。幸い、同じ戦闘を別のグリモア猟兵が予知したからね。戦車部隊との交戦はそちらに任せて、アンタ達はこの戦闘に巻き込まれた民間人の救護に当たっておくれ」
 この戦闘で多数の死傷者が出ている。このまま放置すれば、犠牲者の数は増え続けるばかりだ。ここでどれだけ民間人を救助できるかで、今後の対応が変わってくるだろう。
 そこまで説明したパラスは、ふと眉をしかめた。
「民間人の救護に当たるのは第一だが……。予知にあったエリクっていう子供は、どうやら市庁舎まで辿り着けないでいるようなんだよ。しかも、何者かに追われている。エリクを追っている連中の正体は分からないが、子供を追い回すなんざ碌な連中じゃないことは確かだよ」
 エリクの正体は未だ不明。しかも彼を保護するために地下を探索すれば地上の救護はできない。どちらを選択するかは、猟兵に一任された。
「侵攻したオブリビオンの正体も目的も、現時点では不明だよ。危険な仕事だが、アンタ達ならやり遂げられる。必ず無事に帰ってきておくれ」
 パラスは猟兵達を見渡すと、グリモアを開いた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 今回は長野マスターとの連携シナリオになります。

リ・ヴァル帝国録~|侵略者《イントゥルーダー》 

 長野マスターのシナリオとは、時を同じくしていますので第一章の同じキャラクターの同時参加は不可となります。同時に送って来られた場合、両方却下させていただきます。
 行動は大きく分けて2つです。プレイングの冒頭にA又はBとお書きください。無かった場合はプレイングでどちらかに決めさせていただきます。
 時刻は深夜です。

【A】市民の救助
 戦火に巻き込まれた市民を救助します。怪我人の治療や瓦礫の下からの救助、戦車部隊の流れ弾から守ったりといったことを想定しています。戦車と直接戦闘はできません。
 Aを選んだ場合、エリクの保護はできません。
【B】エリクの保護
 地下通路に逃げ込んだエリクの保護に向かいます。居場所は不明ですので、探索するプレイングもお願いします。エリクを救助するには、猟兵自身が向かう必要があります。
 Bを選んだ場合、市民の救助はできません。

 選択によって、第二章の状況が変わります。
 プレイング受付開始は3/3(金)8:31~3/4(土)14:00頃まで。オーバーロードはいつでも受付します。
 なお、リズはこの後防衛軍としてプラント研究所側の戦線に加わったため、当方のリプレイには登場しません。
 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『キャバリアファイト、ゴー!』

POW   :    力こそパワー!火力で相手を圧倒するぞ!

SPD   :    速さこそスピード!避けて当てて翻弄するぞ!

WIZ   :    賢さこそインテリジェンス!作戦で罠にはめて完封してやる!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 地下道にて
 地下道に入ったエリクは、市庁舎へ続く道を急いでいた。要人達しか知らない地下通路を照らす灯りはチカチカと瞬き、無愛想な床の奥は影になっていて見えにくい。
 あれだけ大きかった戦闘の音も、ここには届かない。キャバリアで逃げている途中も、逃げる市民を何人も見捨ててしまった。自分だけ安全な場所へ逃げるという負い目が喉元までせり上がってきたエリクは、思わず立ち止まると振り返った。
「エリク様、どうされましたか?」
「ハル。ねえ、僕の護衛はここまででいいよ。二人は街のみんなを助けに行ってあげて」
「できません」
「俺達の任務は、エリク様の護衛だからね」
「アキまで! ……お願い! リズが王女としてやるべきことをやったなら、僕だってやるべきことをやりたいんだ、ロスト共和国大統領の息子として!」
「エリク様……」
「でないと、僕はお父様の息子を名乗れなくなっちゃう……」
「エリク様が今すべきことは、無事に市庁舎まで逃げることです。それが……」
「危ない!」
 アキの叫び声と同時に突き飛ばされたエリクは、大きく転ぶと同時に響く銃声に肩を竦めた。転がったエリクを立たせたハルが、振り返ると同時に銃を放った。
 いつの間に追いついたのか。現れた特殊部隊の姿に、エリクは目を見開いた。
「エリク様は市庁舎へ! ここを真っ直ぐ行って2つ目の角を右に曲がればたどり着くはずです!」
「行け! 奴らの狙いはエリク様だ!」
 応戦したアキが、背中越しに叫ぶ。迫る戦闘の脅威に後退ったエリクは、パニックを起こしながらも駆け出した。

※第一章は以下のフラグメントも参考に、自由にプレイングをお掛けください。

第1章『燃える都市』
POW : 瓦礫で下敷きになっている人々を救助する
SPD : 逃げそこなった人々を安全な場所へ誘導する
WIZ : 負傷者した人々を処置して命を救う
風間・敬人
【SIRD】【A】
エリクの保護に行くみんなとは、別行動っす。
とまれ、無線で連絡はとれるようにしておくっすけど。
んで自分は、市民の救助っす。こっちも大事なお仕事っすからね。
愛車の軽トラぶん回して、荷物運んで怪我人移送して、って息つく暇もないっすね。

現場で足りないものがあれば、レプリカクラフトでちょちょいとなっす。
できが良くなくて使い捨てになろうが、こんな現場では気にしない。
物がある方が大事っすからね。

さぁさ、老いも若きも男も女もみんな荷台に乗るっすよ。安全な後方に送るっすからね。運転がちょっと荒いのは勘弁す。
こんな状態じゃ、道が荒れてるんでね。


カシム・ディーン
A
竜眼号搭乗
「ご主人サマー☆リズちゃん助けにいかないの?」(銀髪少女
そうしてーのは山々だがなんかこっちに来たくなったんだよ
本当になんでか分からねーけど!


【属性攻撃・迷彩】
光水属性を戦艦に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源や音を隠蔽

「ご主人サマー☆住民の人達を助けるなら…効率的にやるならあれだよね♥」(にたぁ
うっがぁぁぁぁぁ!!!(絶叫
絶望のUC発動

幼女軍団
【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
住民を捕捉
怪我の状況も把握

「「ひゃっはー☆救出作戦だー☆」」
圧倒的物量で動けない人々を救助して負傷をきちんと処置
瓦礫は念動力でどかして救助

複数で救出して確実に命は守り切る

取り合えず…今を生きれるならな


文月・ネコ吉
【A】
暗殺計画とやらも気にはなるが
他の仲間が向かってる様だし任せておこうか
俺は市民の救助の方で動くとしよう

携帯など仲間との連絡手段を確保
連携・分担して救助活動に当たる

戦渦で失っていい命などあるものか
オーラ防御で護りを強化して
人々を庇い守りつつ
戦場に降らせるのは『鈍色の雨』
怪我人を回復、保護していこう

ケットシーだからって甘く見るなよ
瓦礫の下だろうと
体の小ささも活かして隙間から救助に向かう
怪力で瓦礫を支えて突破口を開こう

おいウミネコ(アイテム参照)、貴様も手伝えよ
それだけ元気に飛び回れるんだ
避難する人々の誘導ぐらいは出来るだろ
報酬を寄こせだと?
仕方ないな、後で美味い魚を奢ってやるからさっさと行け!


藤崎・美雪
【A】
【一応WIZ】
アドリブ連携大歓迎

この案件、あえてノータッチだったのだが
人手は欲しいだろうからお手伝いに馳せ参じました
…いや、私が関わるクロムキャバリア案件はだいたいネタなので(遠い目)

私は市民の救助活動に励むとしよう
指定UCで130体のもふもふさんを召喚し
逃げ遅れた人を片っ端から「救助活動」して救出してもらう
瓦礫をどかす必要があっても、数がいればどかせるはず
まさに人海戦術…いやもふ海戦術?

私自身は避難所にて「医術」で負傷者の治療に専念しよう
もし避難所がなさそうなら、比較的安全そうな場所を見繕ってもふもふさんの手を借り設立する
避難民に少しでも気を休めてもらうため、珈琲や紅茶も用意しておくよ




 深夜。
 広がる戦火を遠目に見たカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、絶え間なく続く銃声と破壊音に眉を顰めた。
 カシムが今いるのは、帝竜大戦艦『竜眼号』の|艦橋《ブリッジ》。艦長席に座り街を上空から見下ろすカシムは、蹂躙を開始する戦車部隊の戦線を遠くに見ると我知らずため息を零した。
 あの戦火の中には、以前関わったリィズ王国の元王女・リズがいる。光学迷彩で姿を消し、水の障壁で熱源や音を隠蔽した竜眼号を敵が認識することは困難。ここから戦線に急行して奇襲を掛ければ、戦車部隊に大打撃を与えられるだろう。だが。
「ご主人サマー☆ リズちゃん助けにいかないの?」
 ため息をつくカシムの隣に立った銀髪の少女・メルシーは、カシムを覗き込むと首を傾げる。怪訝そうなメルシーにもう一度ため息をついたカシムは、首を横に振った。
「そうしてーのは山々だが、なんかこっちに来たくなったんだよ」
「ふーん、なんで?」
「本当になんでか分からねーけど! ほら、さっさと動くぞメルシー。住民の避難は一刻を争うんだ」
「了解ですご主人サマー☆」
 愛らしく敬礼したメルシーは、大きな目をいたずらっ子の半月型に歪めると指ををワキワキと動かした。にたぁ、と擬音が聞こえてきそうな口元に嫌な予感が背中を滑り落ちるが、艦長席の高い背もたれはカシムを逃してくれない。大仰な背もたれと肘掛けは艦長を逃さないためにあるのか。
「住民の人達を助けるなら……効率的にやるならあれだよね?」
「うっがぁぁぁぁぁ!!!」
 絶望の絶叫を上げたカシムは、|対軍撃滅機構『戦争と死の神』《メルシーハルノヨウジョマツリ》を詠唱するのだった。


「「ひゃっはー☆救出作戦だー☆」」
 奇声を上げながら降下しては整列する軍団に、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は思わず遠い目をした。
 上空には光学迷彩を施した戦艦がいると分かってはいるが、地上から見上げれば何もない空間から美幼女の大軍団が突然飛び降りては整列するのだ。その数、およそ1360×10^4名。同数のキャバリア軍団もいるのだから恐れ入る。
 思わず苦笑する美雪に、文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)が声を掛けた。
「美雪も来たんだな。百人力だ」
「この案件、あえてノータッチだったのだが。人手は欲しいだろうからお手伝いに馳せ参じたまでだ」
「そいつは助かるっすけど、なんであえてノータッチだったんすか?」
 不思議そうに問いかける風間・敬人(軽トラ・f04208)に、美雪はふと真顔になるとため息をついた。
「……いや、私が関わるクロムキャバリア案件はだいたいネタなので」
「そうっすか。色々あるんっすね」
「だがカオスからは逃れられない運命らしい」
 諦め顔で空を仰ぐ美雪に、ネコ吉が少しだけ不安そうに呟いた。
「ここから市庁舎が見えるな。暗殺計画とやらも気にはなるが……」
 ネコ吉の視線を辿ってみれば、遠くに市庁舎が見える。自由都市ウェルディン屈指の高いビルは光が灯っていて、今まさにあの建物に向けて避難している人もいる。彼は大丈夫だろうか。
「SIRDの皆が行ってるから、大丈夫っすよ」
 少しだけ不安がにじみ出たネコ吉に、敬人は自信満々な笑みを浮かべると親指を立てた。エリクの救助には、敬人が心から信頼するSIRDの局長以下数名が向かっているから、大丈夫だ。そんな声が聞こえてきそうな絶対の信頼が滲む声に、ネコ吉は頷きを返すと戦場を見渡した。
「そうだな。他の仲間も向かってる様だし、任せておこうか。俺は市民の救助の方で動くとしよう」
「こっちも大事なお仕事っすからね」
「メルシー軍団も揃ってきたし、そろそろ作戦を立てよう。……可愛いもふもふさん達、私を手伝ってくれないか」
 美雪の詠唱に応えて現れたのは、130匹のもふもふな小動物ーー中型犬の群れだった。救助活動技能を持つ精悍な顔立ちの犬たちは、姿勢よく整列しては美雪の指示を待っている。幼女軍団も出現時に驚きはしたが、少しでも多くの人命を助けるためには人海戦術はとても有効な手段だ。ここにもふ海戦術が加われば鬼に金棒だ。
 複数で救出して確実に命は守り切ることができれば、取り合えず今を生きることはできる。後はそれを効率的に運用しなければ。
 額を突き合わせた三人は、上空のカシムとメルシーも加えて手早く作戦を立案する。幼女メルシーを132班に分け、130班それぞれに1匹ずつもふもふ犬についていってもらう。1班はネコ吉と共に救助作戦に参加し、1班は美雪の指揮で避難所の設営と怪我人の救護を行い、上空のカシムが全体を見て指示を出す。避難所はプラント研究所に開設されているから、そこを使わせてもらう。
「自分はまず避難所で資材を作るっす。それからは愛車の軽トラぶん回して、荷物運んで怪我人移送して、って息つく暇もくなりそうっすね」
「頼りにしてるぞ」
「よし、じゃあ行動開始だ!」
 掌を握った号令に、猟兵達は一斉に行動を開始した。


 軽トラに飛び乗った敬人は、美雪と一緒にまずはプラント研究所の避難所へ向かった。現地で指定された避難所なのだから、もう既にたくさんの人々が避難していた。
「こーれはやりがいがあるっすね!」
 腕まくりした敬人は、軽トラを止めると飛び降りた。荷台にも屋根の上にも、何なら美雪の膝の上にも幼女メルシーがいる。残りは駆け足でここに向かっているが、第一陣はこれだけいれば何とかなるだろう。
「よし、メルシー達。私は今から「医術」で負傷者の治療に専念する。心得のある者は来てくれ。一隊はこのコーヒーと紅茶を持って避難所の職員に渡して避難民達に振る舞ってくれるよう伝えてくれ。他は避難所の手伝いと救護補助だ」
「「らじゃー!」」
「包帯と消毒薬、持ってきたよー★」
「毛布と食料を配りまーす」
 キビキビ動く美雪と幼女メルシー達を見届けた敬人は、自分も避難所の職員に声を掛けるとレプリカクラフトで足りない物資を作成した。できが良くなくて使い捨てになろうが、こんな現場では気にしない。物がある方が大事なのだ。
 一通り手伝いを終えると、再び軽トラに乗ると街中へと向かった。パニックを起こして逃げ惑う人達の群れで軽トラを止めた敬人は、クラクションを盛大に鳴らした。
「さぁさ、老いも若きも男も女もみんな荷台に乗るっすよ。安全な後方に送るっすからね」
「き、きみは?」
「避難の手伝いに来たっす! 皆をプラント研究所まで運ぶっすよ!」
「助かった!」
 力強い敬人の笑みに、安心したように市民たちは軽トラックに乗り込む。健康な避難者を避難所までピストン輸送していた敬人は、上空を旋回する鳥の姿に現場へと向かった。


 時は少し遡る。
 犬の導きで崩落したマンションの前にたどり着いたネコ吉は、膨大な量の瓦礫の山を前に唇を噛んだ。ケットシーであるネコ吉の身長は42.9cm。一般的な人間の3分の1ほどの身長のネコ吉にとって、瓦礫の山は何倍にも大きく重い。だが、そんなことで怖気づくネコ吉ではなかった。
「ケットシーだからって甘く見るなよ。幼女メルシー達は瓦礫の撤去を頼む!」
「「了解!」」
「うんしょ、うんしょ!」
「そっち持ってー!」
 ネコ吉の指示に、幼女メルシー達が一斉に瓦礫の撤去に入る。自分も手伝っていたネコ吉は、聞こえてくる小さな声に耳をピンと立てた。助けを呼ぶ声が聞こえる。
「待ってろ! すぐ行く!」
 顔を上げたネコ吉は、身を縮めるとわずかな隙間に潜り込んだ。体が小さいということは、それだけ小回りが効くということでもある。人間に入れない隙間に入り込んだネコ吉は、柱の隙間から中に入り込むと大声を張り上げた。
「誰かいるか!」
「……っちだ!」
 聞こえる小さな声に、ネコ吉は駆けつける。瓦礫の間を潜り抜けたネコ吉は、そこに集まった人々に思わず安堵の息を吐いた。瓦礫と瓦礫の間にできた空間で身を寄せ合っているのは、親子らしい四人の男女。パジャマ姿のままの四人に、ネコ吉は声を掛けた。
「大丈夫か? 助けに来たぞ!」
「あぁ、ありがとう!」
「ねえ、この子が目覚めないの!」
 小さな子供を抱いた母親と思しき女性が、必死な声で訴える。子供の頬に触れようと手を伸ばしたネコ吉は、次の瞬間飛び上がった。
「危ない!」
 間一髪。崩れてきた小さな瓦礫から親子を守ったネコ吉は、頭に当たった瓦礫に一瞬意識が遠のきかける。フェードアウトしそうになる視界に入った親子の姿に、ネコ吉は意識を強引に引き戻した。
「戦渦で失っていい命などあるものか! 雨よ、降れ!」
 詠唱と同時に、優しい雨が降り注ぐ。癒やしをもたらす優しい雨に意識をはっきりと取り戻したネコ吉は、雨の治癒力を受けて目を覚ました子供に安堵の息を吐いた。
「ありがとう! ありがとう!」
「礼は助かってからだ。さあ、ここから出るぞ」
 ぶっきらぼうに言ったネコ吉は、全身で瓦礫を支えると出口を切り開いた。人が這って通れるほどの隙間を作ったネコ吉は、額に脂汗を浮かべながら避難を促した。
「さあ、逃げろ! あまり……保たない!」
「あ、ああ!」
 頷いた四人が、次々に隙間を抜け出す。それを見届けたネコ吉は、力が抜ける感覚に目を見開いた。しまった。一瞬力が抜けてしまった。瓦礫に埋もれるのを覚悟したネコ吉は、ふいに軽くなる荷重に顔を上げた。
「大丈夫か?」
「敬……人……」
 幼女メルシー達が撤去したから、すぐ近くまで寄れたのだろう。駆けつけた敬人が、ネコ吉の上にある瓦礫を支える。抜け出したネコ吉は、肩で息をすると敬人を見上げた。
「助かった」
「礼には及ばないっす」
 拳を突き合わせた敬人は、立ち上がると歓声に湧く避難民に声を張った。
「さあみんな、避難するっす! 軽傷者は軽トラに乗るっす! 重傷者は動ける人がこの担架でゆっくり運んで欲しいっす」
「で、でもどこを通れば安全なんだ……」
「……おいウミネコ、貴様も手伝えよ」
 惑う避難民に、ネコ吉は上空を見上げた。さっきから上空を旋回していたみゃーみゃー鳴くウミネコは、ネコ吉の隣に降り立つとふてくされたような声を上げた。
『えーめんどくさいなぁ。ウミネコに何させようっていうんだい?』
「それだけ元気に飛び回れるんだ。避難する人々の誘導ぐらいは出来るだろ」
『もちろんそのくらい朝飯前さ。でもその朝飯がなきゃ動けないねぇ』
「……つまり報酬を寄こせだと?」
『話が早くて助かるよ』
「仕方ないな、後で美味い魚を奢ってやるからさっさと行け!」
『了解!』
「さあ、行くっす! 運転がちょっと荒いのは勘弁す。こんな状態じゃ、道が荒れてるんでね!」
 得意げなウミネコに、思わず苦笑いが浮かぶ。避難所へ向かう一行を見送ったネコ吉は、休憩は終わりと立ち上がった。
「さあ、まだ助けを待つ人は多い。行くぞ」
「ワン!」
 吠えた相棒犬が、再び避難民を探して匂いを辿り始めた時、遠方で巨大な爆発音が響く。突然巻き起こった不穏な爆発音に、ネコ吉は駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネリッサ・ハーディ
【B】
SIRDメンバーと共に行動

市民の救助は他のSIRDメンバーや猟兵に任せ、私達はエリクさん達の救出及び保護を行います。また事前情報によると、|救出対象《パッケージ》を追跡中の敵対勢力が存在している模様。これと遭遇した場合、実力にて排除して下さい。…都市内で発生している破壊工作は、エリクさんを炙り出す為の陽動かも知れませんね。

UCの夜鬼を放ち、地下通路を捜索。エリクさん達だけでなく、敵の特殊部隊の痕跡を追跡すればエリクさん達に辿りつける筈です。
エリクさん一行を発見次第、無線にて救出任務に就いている味方に位置を伝えます。

グイベル01より各員、|救出対象《パッケージ》を発見、至急急行して下さい。


灯璃・ファルシュピーゲル
【B】参加 【SIRD】一員で連携

市街戦の最中に追跡へ投入されたという事は…相応の手練れでしょうし、少々厄介ですね(兵士の顔になり)

●事前に複数のフラッシュライト付き拳銃(以下、FL銃)を用意
●暗所対応でアクセサリの暗視装置を装着

瓦礫や金属片で音を立てないよう静穏重視しつつも迅速にクリアリングしながら地下を進攻

局長の夜鬼投入に合わせ指定UCで管狐達を放ち、エリク君や護衛、敵の使用している無線通信・ネットを辿らせ介入・盗聴させ。エリク一行と猟兵との連絡網を確保し安全に合流できるよう誘導。同時に敵側の動き・数・可能なら武器の発射音から装備状況の情報収集を図る

合流後は、保護要請で来ました。怪我は無いですか?と確認し、
大丈夫そうなら逃がしつつ迎撃戦へ

管狐を照明分電盤へ侵入させ短絡破壊。迎撃戦範囲を暗所にさせ敵の足を鈍らせつつ、一部の狐にFL銃を持たせた上で、周囲の物陰から散発的にフラッシュと射撃をさせ攪乱。自身は暗視と敵の発砲炎を利用し頭部を狙って狙撃して確実に排除するよう戦います

※アドリブ歓迎


御魂・神治
【B】

王族と対等に話出来るって事は、エリクって子は貴種なんか?
ようわからんけど、敵が死ぬ気で追いかけとるくらいやから重要人物なんやろな
天将、エリクの位置情報を【情報収集】で特定できるか?
ついでに少しでもエリクに関する情報も掴めたら、連中が追いかけてくる理由も解るかもしれん
エリク一行に合流したら、【結界術】で相手側の索敵妨害して、探知されへん様にする
天将に相手側から干渉があったら【データ攻撃】で逆浸したれ
ついでにアクセス源も【ジャミング】で消すか、偽装データでも紛れさせとけ
尻尾掴まれたら元も子もないしな


ベティ・チェン


「…要人警護?それならボクにもできる、かも」

「ドーモ、ユニオン=サン。ベティ、デス。汎用シノビ、レンタルプリーズ」
「借金ツライ…でも、がんばる」
「この地下で、子供を殺そうとする、服や装備に統一感がある、敵を。見つけたら、排除と、犬笛で連絡。お願い」
地下に汎用シノビ254人投入
敵を追えばエリクに追い付く理論展開
敵を排除しながらエリクを追う

「ドーモ、特殊部隊=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ」

「えと、キミがエリク、かな」
「ボクは、ベティ。ウエルディン救助の、仕事を受けた、1人」
「市庁舎まで送る、よ?」
エリクと合流したら肩に担ぎ上げダッシュで運搬

「キミは、子供だろ。捕まらないのが、仕事」


九十九・白斗
【SIRD】【B】
「仕事だよアンタ達」

いつものパラスのセリフが響く
去年のことを考えると、この声が聞けて嬉しいもんだ

さて、まずはエリクってガキを見つけないとな
局長と灯璃がいるからすぐ見つかるだろう
俺も一応【索敵】でエリクを探しておこう
この歳まで戦場で死ななかった【幸運】もある
何とかなるだろう

敵に襲われているなら【スタングレネード】の閃光と音でひるませて、【援護射撃】で味方の援護だ

俺はガキの相手は苦手なんで、エリクの相手は局長と灯璃に任せよう
タバコ吸いながら、ライフル片手に周りを警戒しておく

エリクだったか、もう安心だ
安全は保障してやるよ




 エリクが潜ったと思われる地下道への入り口近くに、雑居ビルがあった。人の気配のないビルの会議室を一時拝借したネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)は、集まった猟兵達を見渡した。
「市民の救助は他のSIRDメンバーや猟兵に任せ、私達はエリクさん達の救出及び保護を行います。また事前情報によると、|救出対象《パッケージ》を追跡中の敵対勢力が存在している模様。これと遭遇した場合、実力にて排除して下さい」
「うーん……。ようわからんけど、敵が死ぬ気で追いかけとるくらいやから重要人物なんやろな」
 頭を掻きながらそう指摘した御魂・神治(|除霊師《物理行使》・f28925)に、ネリッサは肯首の意を込め頷いた。
「エリク君には、旧リィズ王国の元王女・リズさんが護衛についていたという情報があります」
「王族と対等に話出来るって事は、エリクって子は貴種なんか?」
「情報によると、本人は『ロスト共和国大統領の息子』と名乗っていたようです」
「……要人警護? それならボクにもできる、かも」
 小さく手を上げたベティ・チェン(迷子の|犬ッコロ《ホームレスニンジャ》・f36698)が、作戦を提案する。それを軸に意見を求めたネリッサに、灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)が兵士の顔で手を上げた。
「特殊部隊が市街戦の最中に追跡へ投入されたという事は……。相応の手練れでしょうし、少々厄介ですね」
 灯璃の指摘に、ネリッサは表情を引き締める。確かにエリクが例え本当に大統領の子息だとしても、たった一人を追跡するために特殊部隊が投入されたのだ。エリクは予想以上に重要な人物なのかも知れない。
「……都市内で発生している破壊工作は、エリクさんを炙り出す為の陽動かも知れませんね」
 その可能性もあるが、今は情報が足りなさすぎる。憶測で物を判断するのは厳禁だ。思考を切り替えたネリッサは、黙ったままの九十九・白斗(傭兵・f02173)を振り返った。
「白斗さんは何か意見は?」
「無いな」
 ぶっきらぼうに言った白斗は、組んでいた腕をほどくとネリッサと灯璃に視線を向けた。
「局長と灯璃がいるからすぐ見つかるだろう。俺は傭兵だからな。指示に従い戦うだけだ」
「そうですか。働きに期待しています」
 無口な傭兵の作戦遂行能力はよく知っている。その後各猟兵のユーベルコードや技能を照らし合わせたネリッサは、改めて立てた作戦を確認した。
「……では、これより作戦を開始します。各員の奮闘を期待します」
「「「「了解!」」」」
 声と共に立ち上がった猟兵達は、速やかに会議室を後にすると地下道への入り口へ向かった。


「偉大なる深淵の主の下僕よ、我が召喚に答えよ」
「増えて群れなせ、小さき狐…|Lasst uns das Festival starten《≪さあ、お祭りをはじめましょう≫》」
 ネリッサの詠唱と同時に現れた夜鬼が、滑るように地下道を進む。夜鬼と同時に放った灯璃の管狐達は、迅速に拡散すると地下道の通信網に入り込んだ。
 ネリッサと灯璃が情報面から索敵を開始した隣では、ベティが物理面からの索敵をするべく拾って改造して貰ったスマートフォンを取出した。操作してしばし。どこに通じたのか、出た相手にベティは語りかけた。
「ドーモ、ユニオン=サン。ベティ、デス。汎用シノビ、レンタルプリーズ」
『`*#%*(?』
「……えと、今回のお代は、後で体(実働)で払わせて、ください……」
『’!&%”#A!』
「そんなセッショウな! ……借金ツライ……でも、がんばる」
 涙目になりながらもベティが拳を握った時、どこからともなく254人の汎用シノビが現れベティの足元にひざまずく。ベティはベティで大変そうだ。灯璃達の視線に気づいたベティは、ひとつ咳払いすると汎用シノビ達に向き合った。
「こほん。……この地下で、子供を殺そうとする、服や装備に統一感がある、敵を。見つけたら、排除と、犬笛で連絡。お願い」
「「「「御意」」」」
 一斉に頷いた汎用シノビ達が、音もなく地下道へ消える。気を取り直すように大きく息を吐いたベティの隣で、神治は相棒の人工式神・天将を振り返った。
「天将、エリクの位置情報を情報収集で特定できるか?」
『やってみるけど、期待はするなし』
「なんや。ついでに少しでもエリクに関する情報も掴めたら、連中が追いかけてくる理由も解るかもしれん思うてんけど」
『やるならせめてユーベルコード乗せや』
 それだけ言い置いた天将が、地下道へ消える。頭を掻いた神治に、ネリッサは声を上げた。
「では我々も地下へ潜ります」
「ほな、手分けして探そか」
「情報は、逐一、端末に入れて」
「了解」
「行くぜ」
 ネリッサに頷いた灯璃は、二番手で地下道へと潜る。分かれ道で別の道へと消える猟兵達を見送った灯璃は、次々もたらされる情報に意識を割いた。地下で交わされる数多くの無線やネット通信達に介入した管狐達は、盗聴して得た情報を逐一灯璃へと報告する。膨大な情報を処理しながらも、灯璃は足を緩めることはなかった。
 瓦礫や金属片で音を立てないよう静穏重視しつつも迅速にクリアリングしながら、地下を進攻する。夜鬼と五感を共有するネリッサを先頭に地下道を進んだ灯璃は、ふいに立ち止まったネリッサに続いて立ち止まった。
「グイベル01より各員、|救出対象《パッケージ》を発見、至急急行して下さい」
『了解』
「ありました。エリク一行の通信網です。これより通信を開始」
 管狐がつかんだ周波数にアクセスした灯璃は、エリクの護衛であるハルと通信を開始した。エリク一行と猟兵との連絡網を確保した灯璃は、安全に合流できるよう誘導を開始すると同時に敵側の動きや数、推測される装備状況を把握する。脳細胞をフルに活用する灯璃は、ふいに叩かれる肩に我を取り戻した。
「局長……」
「白斗さん達が敵特殊部隊と接触。今から現場へ急行します」
「了解」
 頷いた灯璃は、管狐とのリンクを解く。視界に色が戻り、平衡感覚が通常に戻る。調子を探るようなネリッサの視線に頷いた灯璃は、現場へと急いだ。


 神治と白斗と共に地下道を駆けたベティは、ネリッサからの通信に思わず眉を顰めた。
「グイベル01より各員、|救出対象《パッケージ》を発見、至急急行して下さい」
「了解! ……先を、越された。せっかく、レンタルした、汎用シノビの料金が……」
「まあまあベティはん。位置的にはこっちのが近いし、汎用シノビは特殊部隊の排除に使うてもろたら釣りもようさん来るやろ」
「だな。……目を閉じろ!」
 壁に背をつけた白斗が、声と同時にスタングレネードを放った。直後に広がる閃光と爆音。エリクに覆いかぶさるように庇った護衛と敵との間に立ったベティは、足を止めた敵特殊部隊にニヤリと笑った。
「ドーモ、特殊部隊=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ」
「……!」
 身構える特殊部隊を前にしたベティは、苦無状に短く出したフォトンセイバーを両手に持ち胸の前で交差させる。直後、跳躍。敵の只中に駆け込んだベティがフォトンセイバーを振るうたび、特殊部隊は声もなく倒れていく。
 ベティに呼応した汎用シノビ達も、特殊部隊に向けて一斉に攻撃を仕掛ける。体制を整えた特殊部隊が応戦を開始した時、アサルトライフルの音が響いた。
「遅いな」
 白斗が援護射撃で銃を撃つたび、特殊部隊に隙ができ味方に有利が生まれる。そこを見逃すベティではなかった。
 一気呵成に攻勢に出た猟兵達の攻撃に、特殊部隊はほどなく全滅するのだった。


 敵の最後の一人が倒れたのを見送った神治は、倒れた特殊部隊の前にしゃがむと棒でつついた。オブリビオンのはずだが、珍しく死体が消えていない。何か情報がないかと軽く調べてみたが、身元を示す紋章のようなものは何もない。
「なんや。これ見よがしにエンブレムくらい付けとき」
「情報がない、というのも一つの情報でしょう」
「せやな」
 奥の道から合流したネリッサと灯璃に顔を上げた神治は、軽く手を上げ立ち上がる。響く知らない声に振り返れば、護衛がエリクの無事を確認したり猟兵に質問したりと忙しい。とりあえずの無事は確保したが、ここはまだ敵地。神治にはやることがあった。
「さて。エリクと合流したんを敵さんに知られたらやっかいや。結界でも張って索敵妨害したろ」
「お願いします」
 頷くネリッサに、神治は周囲に結界を張る。これで情報を使って神治達を索敵したりすれば、手にとるように分かる。結界を張り終えた神治は、灯璃の声に視線を移した。
「……保護要請で来ました。怪我は無いですか?」
「俺たちは大丈夫だ」
「でも、エリク様が……」
 心配そうな女の声にエリクを見れば、膝を抱えた少年が殻に閉じこもるようにギュッと世界を拒絶していた。今まで平和な世界で生きてきた少年に、ここまでの逃避行は刺激が強すぎたのだろう。小さくなったままのエリクに、ベティはしゃがむと優しく声を掛けた。
「えと、キミがエリク、かな」
「……」
「ボクは、ベティ。ウエルディン救助の、仕事を受けた、1人」
「……」
 弱者の心に寄り添うようなベティの声に、エリクは顔を上げる。真っ青な顔色のままのエリクに、ベティはひだまりのような笑顔を浮かべた。
「市庁舎まで送る、よ?」
「……でも」
「キミは、子供だろ。捕まらないのが、仕事」
「……怖かった」
「うん」
「怖かったー! うわああああん!」
 大粒の涙を浮かべたエリクが、大声で泣き出す。感情を開放できた少年につられて思わず鼻をこすった神治は、結界術に感じる違和感に視線を向けた。
「なんや。今、感動のシーンなんや。邪魔せんとって。……天将」
『はい逆侵』
 受けた干渉に、天将が逆侵攻を掛ける。手痛いしっぺ返しを食らった敵性プログラムに、神治は何でも無いように言った。
「ついでにアクセス源もジャミングで消すか、偽装データでも紛れさせとけ。尻尾掴まれたら元も子もないしな」
『式神使いが荒い』
 軽いブーイングをこぼしながらも、天将はきっちり仕事をこなす。ネットワーク上の安全を確保した神治は、油断なく周囲を警戒した。


 エリクの泣き声が響く中、白斗は小さくため息をついた。
(「ガキの相手は苦手だ」)
 一般人のエリクにとってみれば、今回の逃避行は命がけで、世界が終わるかどうかと感じられたことだろう。だが、白斗にしてみれば比較的平穏に終わった逃避行だと思う。それは護衛の怪我の具合を見れば一目瞭然だ。
 護衛対象の精神が落ち着かなければ、移動もできない。ライフル片手に周囲を警戒した白斗は、手持ち無沙汰に煙草を取り出すと火を付けた。吐き出す紫煙に視線を感じて振り向けば、煙草の匂いにこちらを見たエリクと目があった。
 くせのある黒髪に大きな青い目。エリクの顔を初めてまじまじと見た白斗は、ふと脳裏に蘇った声に耳を傾けた。
『仕事だよアンタ達』
 いつものパラスのセリフが脳裏に響く。去年のことを考えると、この声が聞けて嬉しいもんだ。色々あってほぼ1年入院していたグリモア猟兵の仏頂面を思い出した白斗は、含み笑いをこぼすとエリクの前にしゃがんだ。
「おい坊主。エリクだったか」
「な、なに?」
「もう安心だ。安全は保障してやるよ」
「う、うん……」
 頷いたエリクの頭をかき回した時、感じる気配に鋭く振り返った。
「警戒! 敵特殊部隊に異変あり!」
「新手がようさん近づいとるで!」
 鋭く警告を発するネリッサと神治の声に、戦闘態勢を整える。倒したはずの特殊部隊は、上半身を起こすと銃を向けてきた。それだけではない。異変を察知した特殊部隊の大軍が、こちらに近づいてくる気配がする。
「管狐!」
 灯璃の声と同時に、照明が消える。照明分電盤に侵入した管狐が短絡破壊したためか、突然暗くなり銃声が響く。
「行くよ!」
「え、ちょっとわっ!」
「エリク、確保した、よ」
「これより退避を開始します。殿は務めます!」
「援護する」
 ベティに担ぎ上げられたらしいエリクが、驚きの声を上げると同時に灯璃の声が響く。走り出した白斗は、灯璃の援護に動いた。
 暗闇とフラッシュライト付き拳銃をうまく使い撹乱させる。敵の足が鈍ったところに暗視と敵の発砲炎を利用して頭部を的確に撃ち抜き排除していく。
 無駄のない戦闘行動に合わせて援護射撃を行った白斗は、味方を市庁舎へと退避させる。
「後少しで市庁舎……」
 言いかけたネリッサの声が、爆音にかき消される。通路の先で起きたらしい爆発音に、猟兵達は急行した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『クラッシュモール』

POW   :    BXS-Aビームスクレイパー
単純で重い【ドリルエネルギー弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    EPパワーオブカジバ
自身の【弱点であるキャタピラ】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    RS-Fスターマイン
【真上に打ち上げた弾が爆撃ドローン】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【爆弾投下】を放ち続ける。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● プラント研究所・避難所にて
 避難所へ身を寄せたサニーは、眠れずにいた。
 突然サイレンが鳴ったかと思えば、轟音と共に建物が崩れだした。家族で同じ寝室にいて奇跡的に離れ離れにも下敷きにならずに済んだ。
 ここに辿り着けたのは、避難誘導してくれた人達がいたからだ。彼らがいなければ、自分はどうなっていたことか。それに、もし襲撃が収まっても、プラントはしばらく動かせないだろう。
 プラント研究所の周囲には、プラントや関連施設に勤める人達が多く住んでいる。どれだけの犠牲が出たのか、皆目見当もつかない。
 大きく息を吐いたサニーは、避難所になっている講堂を照らす灯りを見上げた。
「本当に、なんでこんなことになったんだろう。夕方までメインプラントのメンテナンスしてたってのに……」
「本当だな」
 サニーのぼやきに、隣に座った中年の男性が答えた。彼は確か研究課の課長だったか。顔見知りに会えた安心感に、サニーは課長に近寄った。
「ログス課長。ご無事だったんですね」
「無事と言えば無事だがね。社宅のマンションで寝てたら突然崩れて。外に出たら銃撃されるしもうどうしようかと……」
 言いかけたログスの声を遮るように、突然轟音が響き地面が揺れる。慌てて立ち上がったサニーは、信じられないものを見た。
 避難所の床を割り、キャバリアが現れたのだ。モグラにも似た姿をしたキャバリアは、凶悪な蒸気を吹き上げると赤い目を光らせ機械的な声を発した。
『目標補足。RS-Fスターマイン起動』
 声と同時に真上に打ち上げた弾が、爆撃ドローンに変身する。現れた不穏なフォルムの爆撃ドローンは、高速で飛び回ると戦場にいる避難民全てにに弱い爆弾を放ち続ける。
 突然の攻撃に、サニーは妻と子に覆いかぶさった。

● 市庁舎地下道にて
 地上で起こる爆発音に向かおうとする猟兵達を、護衛のハルが引き止めた。
「待ってください! 地下シェルターに向かいましょう」
「地下?」
「有事の際は、司令部が地下に移るんです。サーバーなどの心臓部が全部地下ですから。このことを知っているのはほんの一握りの人しかいません」
「上は地下で決められたことを遂行する窓口って訳だ。……さ、エリク様」
「う、うん」
 床に降りたエリクと護衛二人は、地下シェルターへ向かおうとする。地上では戦闘が起きているようだが、エリクを守るならば地下へ行くしかない。
 エリクについて地下へ降りた猟兵達は、隠し通路を進む。厳重に秘匿され、幾度かの生体認証を潜り抜けた先のドアを抜けた猟兵達は、広いロビーのような空間に出た瞬間、悲鳴が聞こえた。機能性重視な室内にいた立派な身なりの人々が、パニックを起こし逃げ惑っている。原因を作ったのは、壁を破り現れたキャバリアだった。
 シェルターの壁を破って現れたモグラ型キャバリアは、開けられた穴から続々とシェルター内部に侵入すると赤い目を光らせ機械的な声を発した。
『目標補足。RS-Fスターマイン起動』
 声と同時に真上に打ち上げた弾が、爆撃ドローンに変身する。現れた不穏なフォルムの爆撃ドローンは、高速で飛び回ると弱い爆弾を放った。発熱体に向けて追尾する爆弾は、そこにいた人々にーーエリクにも向けて突き進んだ。

● ウェルディン某所にて
 戦車部隊の侵攻を受けた自由都市ウェルディンの一角に、闇に紛れる迷彩服を着た一団がいた。精悍な犬の横顔と弾丸をデザインした紋章を身に着けた一団は、どこへ向かっているのか。音もなく走る一隊は、不意に立ち止まった。先頭を走っていた人物が端末を覗き込むと、小さく息を呑んだ。
「どうしましたかマム?」
「これは……クラッシュモール! まさかあの男……!」
 マムと呼ばれた女はギリ、と奥歯を噛むと別方向へ駆け出した。副官らしい人影が、突然の方向転換に慌てた声を上げる。
「セレネ様!?」
「あなた達は作戦を遂行して! 私はエリクの方に行くわ!」
「アイアイ、マム!」
 何かを察して頷いた副官が、部隊を率いて先へと進む。
 混乱と混沌を包み込む闇は、未だ晴れる気配を見せてはいなかった。

※ ※ ※
 第二章は集団戦です。
 A班(市民の救助)の戦場は長野マスターのシナリオとほぼ同時にほぼ同じ場所での戦闘となりますので、A班に参加してくださった猟兵は長野マスター班にもご参加いただけます。
 B班(エリクの保護)の戦場は物理的に距離があるため、B班の戦闘のみにご参加いただければと思います。
 新規でご参加くださる方は、どちらの戦場でも大丈夫です。
 プレイングの冒頭にA又はBとお書きください。無かった場合はプレイングでどちらかに決めさせていただきます。
 どちらの戦場も、放たれたドローンからの爆弾は一般人を優先して狙ってきます。庇わなければ犠牲者が出ます。エリクも例外ではありません。庇うプレイングにはプレイングボーナスがあります。
 それでは、よろしくお願いします。
ネリッサ・ハーディ
【B】
SIRDメンバーと共に行動

先程、ハンマー05――ラムダさんより報告がありました。都市外部の防衛は成功。但し、無線傍受の解析により、何者かによって都市内部より戦車隊に指示を出していた公算大、と。どうやら、こちらが囮などではなく、本命だった様ですね。

敵の排除はフクス08(灯璃さん)とホワイト99(九十九さん)に任せ、エリクさん達を直接護衛します。UCの炎の精で来襲するドローンを迎撃し、撃ち漏らした分はG19Cを使って撃ち落としつつ、エリクさん達を守ります。

今回もエリクさんを守り抜くのが最重要目標です。とはいえ、敵の正体は以前不明…何時何処から仕掛けてくるかわかりません。最大限の警戒を。


御魂・神治
B

はー、邪魔なヤツ出てきよったわ
ドローンは熱源探知式か
初手水【属性攻撃】の低温【結界術】で目くらましや
で、あのキャバリアの相手は武神を天人形態にした天将が相手や
天将『サボり乙』
文句言わんと相手したれや、デカブツの対処はアンタの仕事や
てか、天将...最近喋り方おかしいで
天将『メタ・プログラムに変更履歴はありません、モーマンタイです』
やっぱおかしいで
まあ、それは後でええわ
ドローンのおかわりは勘弁してや
ワイはドローンを発破力を絞った『涅槃』で処理
天将は三神をスナイパーライフル形態にして
ヤツのドタマ目掛けて【破魔】の銃弾を【スナイパー】ヘッドショット決めたれや
此処は地下や、あんま派手には出来んしな


ベティ・チェン


「追跡者は、殲滅した。こっちの方が逃げられる、と思う」
エリク抱え来た道脱兎
エリク庇い外目指す
但しエリクが他者救助を願った場合のみ立ち止まる

「…キミに今、出来ることはない、と思う、けど?」
「子供の仕事は、回りの願いを糧に、大人になること。大人の仕事は、自分の選んだ仕事に誇りを持って、こなすこと。キミは今、大人になる?」
「ボクの今日の仕事は、ウェルディン救出・要人警護。キミを助ければ、充分」
「キミが今、大人になるなら。自分の安全より、市民の安全を願うなら。ボクはキミの、願いを聞く」
エリク確保最優先だがエリクを庇える場所があればそこにエリク隠し秘剣連打
敵機をスクラップにしてからまた抱え移動を繰返す


九十九・白斗
【SIRD】【B】
『フー33、フー33、こちらホワイト99、上の状況はどうなっている?』

地上の状況を聞こうと風間に連絡を入れる
ちなみにフー33は風間の、ホワイト99は九十九のSIRDにおける|無線符牒《ラジオコール》だ

どうやら、ドローンによる無差別爆撃が起こっているようだが、上は上に任せるしかないようだ

シェルター内でもドローンが飛び交っている
ドローンは俺が撃ち落とす
【スナイパー】としての腕前ならそこそこ自信はある
アンチマテリアルライフルなら、軍事用ドローンでも難なく落とせるだろう
「このくそ重たくて反動のひどい銃でカモ撃ちするのは骨が折れるが仕方ねえ、ドローンは何とかするから、エリクは任せたぜ」


灯璃・ファルシュピーゲル
【B班】に【SIRD】一員として参加し密に連携

もとより虐殺目的とはタチが悪いですね。
迷惑な土竜には早々に自分の掘った墓穴にでも沈んでもらいましょう

エリク一行を物陰に避難させつつ、
アクティブ・フェーズドアレイレーダーを応用した、収束マイクロ波照射型のドローン迎撃システムを載せた無人車両(UGV)を指定UCで複数両作成し即時投入。まずは一般人防護のため、彼らを狙う敵ドローンを優先目標に排除させつつ、走り回らせ。一般人を守りつつ同時にUGVの動きで敵本体の注意を引かせ、味方が攻撃し易い死角を作り出せる様に敵への誘導を図ります

その間に自身は動き回りつつ、指定UCで徹甲炸裂弾と煙幕手榴弾・粘着式吸着地雷を適宜のタイミングで作成。先ずは徹甲弾で頭部のセンサー類狙いで狙撃(スナイパー)し目潰ししつつ、味方攻撃に合わせ近づきながら煙幕手榴弾を投擲し、味方と自身を隠しながら更に肉薄(偽装・忍び足・破壊工作)起動輪と装甲の薄そうな排気口部付近に取り付けて離脱し起爆。機動力を奪うよう狙います

アドリブ・絡み歓迎




 地下シェルターの壁を破って現れたクラッシュモールが、凶悪な蒸気を吹き上げる。赤い目を更に光らせたモグラに似た姿のキャバリアは、硬く無機質な声を上げるとドローンを真上に打ち上げた。
『目標捕捉。RS-Fスターマイン起動』
 何が起きているのか分からない。そんなことを全身で表現しながら硬直するエリクの前に、ネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)が躍り出た。
「フォーマルハウトに住みし荒れ狂う火炎の王、その使いたる炎の精を我に与えよ」
 詠唱と同時に生まれた123体の炎の精が空を駆け、エリクに向かう爆弾を迎撃して爆ぜる。落ちてくる破片からエリクを守ったネリッサは、なおも爆弾を放ち続けるドローンに向けて炎の精を差し向けた。
 爆音と同時にドローンが爆ぜる。最初にエリクを狙っていたドローンの破壊を確認したネリッサは、続けて参戦する猟兵達の姿にエリクを後方へと下げた。そのまま壁際へ後退するネリッサに、ベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスニンジャ》・f36698)が手を伸ばした。
「エリクを、こっちへ。追跡者は、殲滅した。こっちの方が逃げられる、と思う」
 ベティが示したのは、先程踏破した地下通路。扉は閉まっているが、エリクがいれば開けられるだろう。
「お願いします。今回もエリクさんを守り抜くのが最重要目標です。とはいえ、敵の正体は以前不明……。何時何処から仕掛けてくるかわかりません。最大限の警戒を」
「わかった。……さ、こっち」
「え、でも……」
 戸惑うエリクの手を引いたベティが、通路へと向かう。エリクをベティに託したネリッサは、通信機を手に取った。繋いだ先は、共有無線回路。外の状況も知っておきたい。
「グイベル01よりハンマー05、応答願います」
『その声は局長でございますね。局長、如何致しましたか?』
 冷静な声で即応したラムダの声に、ネリッサは続けた。
「要人警護班の状況に変化があました。各員に連絡します。地下道にて|救助対象《パッケージ》の確保成功。市庁舎地下シェルターへ移動後、敵性キャバリア「クラッシュモール」と遭遇。現在交戦中です」
『さようでございましたか。エリク様を一先ず確保出来たのは、幸いでしたが、どうやら予断を許さない状況でございますね』
「……現在の其方の状況は?」
『現状のわたくしめ共の状況でございますが……外の戦車部隊は殲滅致しました。ですが、戦車部隊を囮に、本体であるアーマーワン部隊が内部に侵入致しました。わたくしめの無線傍受の解析が正しければ、恐らく何者かによって都市内部より戦車隊に指示を出していた公算が極めて高い状況にございます。わたくしめ共は、このまま南地区の人々の救出作業とアーマーワン部隊の迎撃を行います』
『って訳で、|局長《 ボス 》。SIRD分遣隊から、そっちに誰かを派遣するのは無理だ』
 通信に割って入ったミハイルの報告に、ネリッサは頷いた。どの道、ここに来るまでの厳重なセキュリティを突破して増援を期待するのは無理がある。
「了解しました。ネコ吉さ……」
『……、ちょっと待て、クラッシュモールだって!?』
 驚いた様子で通信に出た文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)は、慌てた様子で矢継ぎ早に言った。
『民間人避難班は、プラント研究所内に避難所を作成して住民達の避難は完了した。だが避難所内にクラッシュモールが現れて、避難民を無差別攻撃してきやがった』
「こちらと同じキャバリアが?」
『ああ。今は避難所からの避難を……っ!』
「ネコ吉さん応答願います!」
 ネコ吉の通信がプツリ、と音を立てて途切れる。不吉な途切れ方に、共有回線を聞いていた九十九・白斗(傭兵・f02173)が即座に風間・敬人(軽トラ・f04208)に通信を入れた。
「フー33、フー33、こちらホワイト99、上の状況はどうなっている?」
『やばいっすやばいっす。あんな数のキャバリア相手に、どうしろって言うんすか?!』
「フー33、落ち着いて状況報告してくれ」
『どうしたもこうしたも、地下からモグラが出てきて爆弾爆発っすよ!』
「……どうやら、ドローンによる無差別爆撃が起こっているようだ。だが、上は上に任せるしかない。今からあちらに応援を送る訳にもいかないからな」
 慌てた様子の敬人を、冷静な白斗の声がなだめて報告を要約する。敬人は焦っているようだが、この調子だとすぐに冷静さを取り戻すだろう。ネリッサの読みは、続く敬人の声で肯定された。
『あーもう、あーもう……はぁ、覚悟を決めるっすよ、自分。ネコ吉さんは心配いらないっす。民間人もきっちり守ってみせるっすよ』
「了解しました」
 冷静になった敬人の報告に、ネリッサはひとつ頷く。どうやら、地上班も相当数の敵性キャバリアの襲撃を受けているらしい。これ以上通信するのは良くないと判断したネリッサは、短く檄を飛ばした。
「各員、健闘を期待します」
『『『了解!』』』
 一斉に響く声に、ネリッサは敬礼を返すとドローンにG19C Gen.5の銃口を向けた。


 ネリッサからエリクを引き取ったベティは、少年の手を引きドアへと向かった。しつこいドローンの爆撃から庇いながら進んだ時、ふいに後ろに引っ張られたベティは思わず立ち止まると振り返った。
「エリク。止まらないで。的に、なるから」
「ねえ、やっぱり僕も皆を助けに行く! みんなを置いて自分だけ逃げるなんて嫌だ! 体育の授業で護身術や格闘技を習ったから、きっと役に立てるはずだよ」
「……キミに今、出来ることはない、と思う、けど?」
 拳を握るエリクに、ベティは首を横に振る。例えエリクが格闘技の世界王者だったとしても、今この状況で前線に立たせるだなんてあり得ない。
「駄目」
「駄目じゃない! 僕はもう、自分を守って誰かが怪我をするのを見るのは嫌なんだ!」
 必死になったエリクがベティの腕をほどくと、戦場へ戻ろうとする。即座に腕を伸ばし、手首を掴んで引き寄せ拘束する。エリクはベティから逃れようと大暴れするが、それで抜けられるほど甘い拘束はしていない。涙目になりながら爪を立てるエリクを下ろしたベティは、動きを制限しながらも彼の目を覗き込んだ。
 エリクの目には、少年らしい正義感が満ちている。その心意気は良いが、どう背伸びしてもエリクはまだ12歳の少年で、猟兵でもない。彼のこれからを思えば、最前線に立つだけが人を救うとは限らないということを教えなければ。
「エリク。キミはまだ、子供だ。子供の仕事は、周りの願いを糧に、大人になること。大人の仕事は、自分の選んだ仕事に誇りを持って、こなすこと。キミは今、大人になる?」
 ベティの指摘に、エリクは唇を噛んだ。大きな目にいっぱいの涙を浮かべて、ポロポロと泣き出す。口を真一文字に結んで俯くエリクに、ベティは更に続けた。
「ボクの今日の仕事は、ウェルディン救出・要人警護。キミを助ければ、充分」
「そんな!」
「今のキミに、できることは何? 無闇に、敵に突っ込んで、爆弾の餌食になること?」
「……」
 首を横に振るエリクの前にしゃがんだベティは、少年の頬を撫でると笑顔を浮かべた。ベティはニンジャ。ニンジャは|雇用主《主君》に仕え、その望みを達成する者。エリクが将来人の上に立つ人間になるのなら、やるべきは自分で助けに行くことではない。
「キミが今、大人になるなら。ボクはキミの、願いを聞く。今のキミに、できることは何?」
「……お願い。もう自分で戦いたいなんて言わないから。だからここにいる皆を守って! ここにいる皆が死んじゃったら、市民達がどう復興していいか分からなくなる。道標を示す人が必要なんだ!」
「了解、エリク」
 頷いたベティは、エリクを再び抱えると戦場へと戻る。感情のままに行動していたエリクは、状況を判断し最善を選ぶことができるようになった。少しだけ大人になった少年に、我知らず笑みが浮かぶ。ネリッサと合流したベティは、エリクに向けて迫るクラッシュモールに偽神兵器を構えると得物を大きく振り抜いた。


 時は少し遡る。
 エリクを連れて通路の奥へと向かうベティを背中で守った灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)は、彼らを追いすがろうとするドローンにセミ・オートライフルを構えると続けざまに撃墜した。手際よく数を減らしていくが、ドローンは落としても落としても現れる。その全てが民間人を狙い続けるからキリがない。
「もとより虐殺目的とはタチが悪いですね」
「全くもってその通りやな」
 灯璃の隣に立った御魂・神治(|除霊師《物理行使》・f28925)が、頭上に水の結界を張り民間人を庇っていく。神治が増え続けるドローンに対処しようとユーベルコードを詠唱しようとした時、ドローンが撃ち落とされた。
「待たせたな」
 それだけ言った白斗が、アンチマテリアルライフルを構えるとドローンを次々と撃ち落としていく。撃ち漏らしたドローンが民間人へと迫った時、銃声が響いた。ネリッサが構えたG19C Gen.5から放たれる弾丸が、ドローンを沈黙させていく。見事な連携に、神治が口笛を吹いた。
「さすがやね。……って、エリク戻って来たんかい」
「私はエリクの護衛に入ります」
 戻ってきたエリクの姿に即応したネリッサが、ベティと共に護衛に入る。エリクに向けて攻撃を仕掛けるクラッシュモールにまぎれて、数機のドローンがふいに方向を変えた。奥の部屋に向けて飛んでいくドローンに、慌てた様子でハルが叫んだ。
「あの奥は司令室とサーバールームです!」
「まずいですね。……神治さんはあちらへの対処をお願いします」
「こっちは任せろ」
「了解や。……天将!」
『はいはい』
 灯璃と白斗の声に、神治は真剣な表情になると駆け出した。奥へ消える神治を見送った灯璃は、詠唱を開始した。
「少しだけ任せます。……Was nicht ist, kann noch werden.」
 詠唱と同時に現れたのは、アクティブ・フェーズドアレイレーダーを応用した、収束マイクロ波照射型のドローン迎撃システムを載せた無人車両(UGV)だった。屋内で使用することを考慮して小型・軽量化がなされている分レーダーの範囲は狭いが、シェルター内なら十分フォローできる。
 何より優れているのは、自走することだ。司令室は神治に任せれば何の問題もないが、ロビー以外にも部屋はある。車両を生み出した灯璃は、それぞれに指示を出した。
「UGV各車両に通達。一般人防護のため、彼らを狙う敵ドローンを優先目標に排除。他は各員の援護に回れ」
 灯璃の指示に、表示灯を光らせる。即座に動き出した車両に、灯璃は床を蹴った。
「ホワイト99、ドローンは任せます」
「このくそ重たくて反動のひどい銃でカモ撃ちするのか? 骨が折れるが仕方ねえ、請け負ってやるよ」
 軽口を飛ばしながらも、白斗は的確な射撃で一撃一墜を繰り返している。灯璃の相手はクラッシュモールだ。奴らを倒さなければ、戦闘は終わらない。
 徹甲炸裂弾と煙幕手榴弾・粘着式吸着地雷を作成した灯璃は、クラッシュモールの頭部センサーに向けて弾丸を放った。目潰しを受けたクラッシュモールが砲身を狂ったように動かすが、ふいに動きを止めた。何かスイッチが入ったように沈黙したクラッシュモールは、他のセンサーを起動させたのか正確に砲身を向けた。
『キャタピラ機動を放棄。EPパワーオブカジバ、FIRE!』
「させません」
 砲弾が放たれる直前に、UGVが体当たりを仕掛ける。バランスを崩したクラッシュモールは、天井に砲身が向いたまま主砲を放った。
 轟音と共に天井が破壊される。隙を突いた灯璃は、クラッシュモールに取り付くと粘着式吸着地雷を起動輪と排気口付近に取り付けた。
 距離を取り、起爆。爆発と同時に沈黙したクラッシュモールの陰から、別のクラッシュモールが姿を表す。こちらに向けて主砲を発射させようとするクラッシュモールが、白斗のスナイプで動きを止めベティの秘剣・神殺しの斬撃で沈黙する。
 見事な連携を見せた猟兵達は、クラッシュモールを全滅させエリクや民間人達を守り抜くのだった。


 ドローンを追いシェルター最奥部の司令室に移動した神治は、即座にドローンと民間人の間に水の結界を張った。その直後爆弾が分厚い低温の水に突き刺さり、威力を殺され地に落ちる。
 あのドローンが正確に民間人を狙うからくりは、おそらく熱源探知。水の結界で覆ってしまえば、探知能力もごまかせるだろう。思った通りの効果を発揮した水の結界に気を良くした神治は、続けて破魔爆散『涅槃』の詠唱を開始した。
「最後は爆発オチでもかまへんやろ?」
『良い訳あるか!』
 天将のツッコミを軽やかに無視した神治は、周囲に浮かぶ1240枚の護符をドローンに差し向けた。
 幾何学模様を描き複雑に飛翔する護符が、ドローンを次々に撃墜していく。やがて最後のドローンを撃ち落とされ、司令室につかの間の平穏が訪れた。大きく伸びをした神治は、水の結界の内側でなにやら囀る要人たちを無視して腕を組んだ。
「さて、これで諦めてくれたらええねんけど」
『難しいんじゃないかな?』
「まあ、モグラ叩きは終わってへんしな。キャバリアが来たら、天将が相手するんやで」
『サボり乙』
「文句言わんと相手したれや、仕事やろ」
『そんな! か弱い乙女に荒事をさせるなんて、なんて酷いお人なの?』
「天人形態にした天将なら、負ける訳あらへんやん」
 よよよ、と泣き真似をする天将に、神治は苦笑いを浮かべた。AIとは思えないほど人間臭い表情を見せる天将だが、昔からこんな風だったか。自信がなくなってきた神治は、頭を掻きながら天将を見上げた。
「てか、天将……最近喋り方おかしいで」
『メタ・プログラムに変更履歴はありません、モーマンタイです』
「やっぱおかしいで」
 突然AIらしい喋り方になる天将に裏拳ツッコミを入れた神治は、キャタピラの音を響かせながら現れたクラッシュモールに裏拳を向けた。
「まあ、それは後でええわ。邪魔なヤツ出てきよったし、はよ片付けんで」
『了解』
『目標捕捉。RS-Fスターマイン起動』
 部屋の中に入るなりクラッシュモールが打ち上げたドローンに、裏拳を印の形にすると大きく振り上げた。
「ドローンのおかわりは勘弁してや」
 神治の指示に宙を駆けた護符は、ドローンを次々と破壊していく。発破力を絞り爆発の範囲を狭めたドローンは、その場で爆発すると破片を床に撒き散らす。巻き起こる細かい爆煙が視界を塞いだ時、一発の弾丸が放たれた。
 煙が視界を塞ぐ中放たれた一撃が、クラッシュモールの頭を貫く。意味不明な機械音を発したクラッシュモールが最後にアイモニターに映し出したのは、三神をスナイパーライフル形態に変形させた天将の姿だった。
「でかした天将」
『たまにはこういう地味な仕事も良かろう』
「此処は地下や、あんま派手には出来んしな。……ほら、次のお客さんや」
『式神遣いが本当に荒い』
 次々現れるクラッシュモール達を、神治と天将は掛け合い漫才をしながらも倒していく。ネリッサ達と連絡を取り、クラッシュモールの全滅を確認した神治は、ふいに響く轟音に顔を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風間・敬人
【SIRD】【A】
やばいっすやばいっす。
あんな数のキャバリア相手に、どうしろって言うんすか?!
自分だけなら、尻尾巻いて逃げてるとこっすけど、
この状況で逃げたら後味が悪いなんてもんじゃないっす。

あーもう、あーもう……はぁ、覚悟を決めるっすよ、自分。
困った時のレプリカクラフトっす。
愛車の装甲にして、余裕があるなら個人で持てる盾も作って、
一人でも多くの市民を、安地へ運ぶっす。
襲われそうな人がいれば、愛車を割り込ませ。
隙あらばキャバリアを轢き壊すっす。
SSWの宇宙バイク改造軽トラ・無頼號を舐めるなっすよ!


藤崎・美雪
【A】【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
長野MS班との共闘可

ちょっと待て!
この状況、かなりまずい!!
しかも私は攻撃や防御の切り札は一切持ってないんだが!?

まあ、叫んでいても仕方ないので
やれる限りで手は打とう
あー場慣れしている自分が恨めしい

優先すべきは避難民のガードか
ここは指定UCで「拠点防御」100レベルのハリセン持ちデフォルメ羊を9体召喚
クラッシュモールのRS-Fスターマインで狙われた避難民をかばうように仁王立ちさせ、身を挺して守ってもらおう
今回だけ投下された爆弾をハリセンで「なぎ払い」クラッシュモールに撃ち返しても構わん
とにかく、避難民を護ることが最優先ということで

…あ、攻撃は誰かに任せました


文月・ネコ吉
【A】
引き続き仲間と連携して行動
統哉達とも連絡を取り合い、防衛部隊のリズ達とも連携して動く
効率的に救助を行うには役割分担は重要だ
救助や誘導が必要な範囲は広いが
リズ達防衛部隊なら地の利も機動力もある
彼らが存分に動ける様に
此方は避難所の安全確保を中心に動くとしよう

オーラ防御を広げて人々を庇い守りつつ
戦場全体に『鈍色の雨』を発生させる
【鈍色の稲妻】で爆撃ドローンを破壊して敵機を迎撃
刀による攻撃も合わせて撃破していくと共に
【優しい雨】で人々の傷を癒す

成程、発熱体を追尾する爆弾か
ならばウミネコに松明を持たせよう
攻撃を人々から遠ざける為に上空へ誘導して破壊する
トリをオトリに…いや、何でもない

※アドリブ歓迎




 地下から続々と現れるクラッシュモールの群れに、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は一瞬意識が遠のいた。
 ちょっと待て。避難所とは安全地帯とだいたいイコールじゃないのか? 疑問が脳裏を駆け巡った美雪は、一瞬の現実逃避から復帰すると大声で叫んだ。
「ちょっと待て! この状況、かなりまずい!! しかも私は攻撃や防御の切り札は一切持ってないんだが!?」
「落ち着けって美雪。叫んでる暇はないぞ!」
「ぜーはーぜーはー」
 隣に立った文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)が、どうどうとなだめるように美雪の背中を叩くとそのまま駆け出す。民間人の避難に走るネコ吉に自分の両頬を叩いた美雪は、意識を切り替えると小さなチャームを掲げた。
「ネコ吉さんの言う通り、叫んでいても仕方ないのでやれる限りで手は打とう。あー場慣れしている自分が恨めしい。……もふもふさんもふもふさん、ちょっと色々お手伝い願えるかな?」
 詠唱が終わると同時に、ハリセンを携えたデフォルメチックな9体の羊が召喚される。キャラグッズになってもおかしくないフォルムの羊さん達は、ハリセンを手(?)の上でぱしーん! と叩くと美雪の指示を待った。やる気があって大変よろしい。
「優先すべきは避難民のガードだ。もふもふさん達、今回だけ投下された爆弾をハリセンで「なぎ払い」クラッシュモールに撃ち返しても構わん。ドローンで狙われた避難民を守ってくれたまえ」
「「「「「「「「「ンべメーーーー!」」」」」」」」」
「やはりその鳴き方か? 鳴き方なのか!?」
 美雪のツッコミを軽やかに躱したもふもふさんの一匹が、クラッシュモールを指差してフルスイングをする。攻撃はしないでいいのか? と問うている仕草に、美雪は首を横に振った。
「ンベメ?」
「なに? 攻撃はしなくてもいいのか、だと? 攻撃は誰かに任せた。残念ながら私は、攻撃のスキルもほとんど持っていないのでな」
「ンベメ」
 納得したンべメこと9体のもふもふ羊達は、拠点と定めた講堂に駆け込むと避難民達の防御に入った。拠点防御をレベル100で駆使するもふもふ羊さん達は、ある羊はもこもこ羊毛で爆弾を受け止め、またある羊は大リーガー並のフルスイングで爆弾を弾き飛ばしていく。
 もふもふさん達が防衛拠点を作り上げる間に、美雪は避難してくる住人たちに声を張った。
「さあ、防衛拠点はこっちだ! みんな、こっちに集まってくれ!」
「で、でもどうやって?」
「弟が2つ先の建物にいるんだ!」
。口々に言う避難民達に、美雪は唇を噛んだ。多くの人達がいる避難所の人々を防衛拠点に移動させるには、美雪だけでは無理な話だ。これから怪我人も多く出るだろう。拠点内での治療を施さねば、助かる命も助からない。
 唇を噛んだ美雪は、響く軽トラのエンジン音に顔を上げた。


 時は少し遡る。
 美雪を元気づけたネコ吉は、避難民達を攻撃するドローンを睨みつけた。クラッシュモール達が放ったドローンは、おそらく熱源を追尾する爆弾を放っている。ならば、熱源を撹乱してやれば攻撃を人々から遠ざけることになるだろう。共有回線の情報を聞きながら、ネコ吉はウミネコを呼び出した。
「ウミネコ!」
『なんだいネコ吉』
「この松明を持って飛び回れ! ドローンを上空に誘導して破壊するんだ」
『松明なんて熱いじゃないか』
「文句を言うな」
 軽いやり取りを交わしたネコ吉は、ウミネコに松明を持たせると上空へ放った。松明をくわえて飛び回るウミネコの姿に、思わずぽつりと呟いた。
「トリをオトリに……いや、何でもない」
 コホンと咳払いをひとつしたネコ吉は、聞こえてきた単語に思わず反応した。
「……、ちょっと待て、クラッシュモールだって!?」
『どうか致しましたか、ネコ吉様?』
 呼びかけるラムダの声に少し落ち着いたネコ吉は、こちらの状況を仲間たちに伝えた。
「民間人避難班は、プラント研究所内に避難所を作成して住民達の避難は完了した。だが避難所内にクラッシュモールが現れて、民間人を無差別攻撃してきやがった」
『こちらと同じキャバリアが?』
 確認するような声はネリッサだろう。頷いたネコ吉は、続けて状況を伝えた。
「ああ。今は避難所からの避難を進めるつもり……」
 言いかけたネコ吉は、ふいに途切れる通信に上空を見上げた。おそらく、共有回線の装置を破壊されたのだろう。のんびり喋っている暇はない。即座に切り替えたネコ吉は、まずドローンを止めるべく詠唱を開始した。
「雨よ、降れ!」
 手を振り上げると同時に降り出した鈍色の雨が、戦場全体を覆う。今まさに避難民達を襲おうとしていたドローンに鈍色の稲妻が直撃し、破壊する。避難民達の怪我を癒す雨は、もふもふさん達の拠点に向けて再避難する避難民達を元気づけ、先に進む力を与える。足止めされたクラッシュモールを倒そうと駆け出したネコ吉は、通信を知らせる音にスイッチを入れた。
『ネコ吉、聞こえるか? 其方の状況はどうなっている?』
 統哉の呼びかけに、ネコ吉は応える。
「統哉か、すまない。俺達のSIRD共有無線機が壊されてな。皆は無事だ」
『そうか。其方の戦力は足りているか?』
 統哉の問に、ネコ吉は一瞬考える。こちらの防衛も大事だが、避難所の外も大変な状況になっている。SIRD分遣隊から、そっちに誰かを派遣するのは無理だという情報もある。こちらに戦力を渡した結果、あちらが不利になっては元も子もない。
「取り敢えず、現状で何とかする。その上で一つ連絡だ。其方に向かったドローンを追う様にカシムが其方に向かったぜ。上手く連携して誰1人犠牲者を出さない様、お互いしっかりやろう」
『そうだな、情報ありがとう、ネコ吉。……生きて帰るぞ』
「当然だ」
 統哉らしい激励に笑みを浮かべたネコ吉は、クラッシュモールを止めるべく走り出した。


 一方その頃。
 風間・敬人(軽トラ・f04208)は焦っていた。突然現れたクラッシュモールの大軍は、容赦なく避難民達を攻撃している。あんな数のキャバリアの軍団、敬人が敵うはずがない。自分だけならば、とうの昔に尻尾巻いて逃げているだろう。
 だが、それもできない。敬人はここに、民間人の避難誘導のために来た。その敬人が逃げ出したら、後味が悪いなんてものではない。
 動かなければ。そう思っても、身動きができない。さっきから別働隊と通信をしているネコ吉の声が遠くに聞こえる。不自然に途切れたから何かあったのかと思いそちらを見るが、ネコ吉自身は無事だ。機材が破壊されたのだろう。ネコ吉も美雪も、必死に働いているが、敬人は動けない。足元から忍び寄る恐怖に立ちすくんだ敬人は、響く着信音に反射的に通信をオンにした。
『フー33、フー33、こちらホワイト99、上の状況はどうなっている?』
「やばいっすやばいっす。あんな数のキャバリア相手に、どうしろって言うんすか?!」
『フー33、落ち着いて状況報告してくれ』
「どうしたもこうしたも、地下からモグラが出てきて爆弾爆発っすよ!」
 一息にまくし立てた敬人は、言うに従って冷静さを取り戻す自分を自覚した。何も言えなかった時には行き場のなかった感情が、口に出すだけで少し心が軽くなる。そうなれば、やるべきことは自ずと見えてきた。
「あーもう、あーもう……はぁ、覚悟を決めるっすよ、自分。ネコ吉さんは心配いらないっす。避難民もきっちり守ってみせるっすよ」
『了解しました』
 局長の冷静な声が響く。そうだ。敬人は局長の信頼と期待を背負ってここにいる。それに応えられなければ、フー33の名が廃る。
「さあ、まずは避難っす!」
 愛用の軽トラに乗り込んだ敬人は、レプリカクラフトで愛車に装甲を施した。作りは粗いが、ちょっとやそっとじゃ壊れないよう頑丈な装甲にした軽トラに、同じ素材の個人で持てる盾を乗せてある。走り出した敬人は、クラッシュモールに襲われている避難民を見つけるとそちらに猛突進を仕掛けた。
「SSWの宇宙バイク改造軽トラ・無頼號を舐めるなっすよ!」
 尖らせた装甲が、クラッシュモールの横腹に突き刺さる。弱点のキャタピラに打撃を受けたクラッシュモールは、そのまま横転すると危険な音を発した。
『EPパワーオブカジバ、発動』
「危ないっす!」
 避難民に向けて主砲を向けたクラッシュモールがビーム砲を放つ直前、盾を持った敬人は避難民の間に割り込んだ。
 衝撃が盾の向こう側で響く。すさまじい圧を堪えた敬人は、駆けつけたネコ吉に止めを刺されて沈黙したクラッシュモールを確認すると避難民に笑いかけた。
「もう、大丈夫っす! この盾を持ったまま、あの軽トラに乗り込んでくださいっす!」
「ありがとう、助かったよ!」
 安堵の息を吐いた避難民は、盾を上方に翳しながら軽トラの荷台に乗り込む。荷台で小さくなった避難民を見送った敬人は、立ち上がったネコ吉に声を掛けた。
「助かったっすネコ吉さん」
「ああ。だが、状況が悪いな」
 眉を顰めたネコ吉に、敬人も頷く。鈍色の稲妻でドローンの攻撃は防げているが、クラッシュモールの数が一向に減らないのではこちらが圧倒的に不利だ。通信機を手にしたネコ吉は、まるで状況を読んだかのような着信音に応答した。それを機に駆け出した敬人は、避難民を次々と軽トラで防衛拠点に送り届けながら通信を傍受した。
『ネコ吉、そっちはどうなっている?』
「……何とか今の所、持ちこたえてはいるが……流石に限界が近い。正直戦力が足りて無い状況だ」
 冷静に答えたつもりだろうが、隠しきれない焦りが滲んでしまっているのが敬人が聞いても分かる。息を飲んだ統哉が通信から離れてしばし。再び通信口に出た統哉は、頼もしいことを言ってくれた。
『ネコ吉、リズと防衛隊の一部、アインが此から援護に向かう。其れまで何とか持ちこたえてくれ!』
「……了解だ。ならば何とか耐え抜いてみせるさ」
 通信を切ったネコ吉に、敬人も通信を切る。味方が現着するまで、まだ少し時間がかかるだろう。
「ここが踏ん張りどころっす!」
 身軽になった軽トラのアクセルを踏み込み、クラッシュモールを破壊する。その後逃げ遅れた避難民を荷台に乗せて、美雪の安全地帯へと送り届ける。被害を食い止めながら必死に避難民達を送り届けた敬人は、遠くから聞こえるキャバリアやセイルフローターの駆動音に安堵の息を吐いた。増援の先遣隊の銃弾がクラッシュモールを駆逐し始めた時、後方の敵キャバリアがふいに動きを止めた。
 何かを受信したクラッシュモールは、不意に地面を掘削して地下へと潜る。それを追いかけるように現着したリズ達がクラッシュモールを倒していくが、わずかに遅い。避難所の地面には、大きな穴がいくつも空いた。
 クラッシュモール達を見送った敬人は、急いで駆け寄ると地面の穴を覗き込んだ。黒々とした穴は地中深くで曲がると、どこか遠くへと消えている。曲がった先を見た敬人は、そのまま顔を上げる。視線の先にあるのは、自由都市ウェルディン屈指の高いビル。
「市庁舎、っすか……」
 あの地下では、仲間たちが別のクラッシュモールと戦っている。敬人が手を握り締めた時、ネコ吉が再び統哉に通信を入れる声が聞こえてきた。
「統哉。クラッシュモールが一斉に地下に潜った」
『……何? クラッシュモールが?』
「どこへ行ったのかは分からないが、差し迫った危機は去ったから安心してくれ」
 それからも続く二人のやり取りを聞き終えた敬人は、深い闇の凝る穴を見下ろした。クラッシュモールが向かった先には、この事件の黒幕の一人がいるに違いない。
 戦いは最終局面を迎えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『アマランサス・ラピート』

POW   :    BSロングビームライフル
【一瞬の隙も見逃さない正確な狙いの銃口】を向けた対象に、【高出力高収束のロングビームライフル】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    BXビームソード
【スラスターを全開に吹かすこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高速機動で間合いを詰めてビームソード】で攻撃する。
WIZ   :    RS-Sマイクロミサイルポッド
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【肩部マイクロミサイルポッド】から【正確にロックオンされたマイクロミサイル】を放つ。

イラスト:御崎ゆずるは

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルイン・トゥーガンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 クラッシュモールの襲撃から市庁舎の地下シェルターを守った猟兵達は、司令室にいる市長の許へと向かった。ライアンと名乗った壮年の男は、猟兵達の姿に安堵の表情を浮かべると両手を広げた。
「クラッシュモールを撃退してくれた人達だね。ありがとう。エリク君の護衛ということは、ロスト共和国の人かな?」
「違います市長。彼らは……」
 一緒に司令室に入ったエリクが説明しようと口を開いた時、ふいにメインモニターにノイズが走った。画面全体が白と黒の砂嵐に変わってしばし。画面に映し出されたのは、縛られ猿轡を噛まされた一般職員と思われる人々の姿だった。彼らの周囲は武装した特殊部隊が取り囲み、精悍な犬の横顔と弾丸をモチーフにした紋章をつけている。
「アンドリュー副市長!」
『市庁舎の地上部分は占拠したわ』
 若い女の声が響くと同時に、画面が切り替わった。次に画面に映し出されたのは、闇に紛れる迷彩服を纏った少女の姿だった。侵入者達のボスらしい姿に、市長は鋭い声を上げた。
「君達は何者だ? 何が望みだ!」
『私達の要求は一つ。エリク・レナトゥスの身柄をこちらに引き渡すことよ』
「そんなこと、できる訳がなかろう!」
『ここにいる職員達が、どうなってもいいの?』
「待って! 僕は行くよ。だから、みんなを解放して!」
 画面の前に駆け出したエリクは、画面の少女に向けて叫んだ。睨み合ってしばし。一つ頷いた少女は、冷静に指示を出した。
『解放するのは、エリクを引き渡してからよ。今から十分後に市庁舎前広場まで来なさい』
 それだけ言った少女が通信を切り、沈黙が訪れる。猟兵や市長を振り返ったエリクに、ハルが怒りも顕に詰め寄った。
「エリク様! どうしてあのようなことを言ったのですか! あの女が付けている紋章は、ロスト本国で活動するオブリビオンのテロリストのものです。あそこにいるのは、幹部のセレネでしょう。奴らに捕まったらどんな目に遭わされるか……!」
「そんなの、関係ない!」
 叫んだエリクは、興奮した面持ちで叫んだ。
「あの子がロスト共和国の人間だっていうなら、なおのことだよ。僕を狙う理由なんて知らない。でも、そのせいでどれだけの人が死んだの? 家を無くしたの? これ以上、ウェルディンの人達に迷惑なんて、掛けられない!」
「エリク様……」
「お父様に捨てられた僕にどれだけの価値があるか分からないけど、それでこの戦争が終わるなら、僕は行くよ」
「俺たちも行くぜ!」
「私たちはエリク様の護衛ですから」
「ハル、アキ、ありがとう。猟兵の皆さんも、ありがとうございました」
 ぺこりと頭を下げるエリクの前に立った市長は、エリクに手を差し出した。
「私も行こう。市長として見守らなければ。他はここに残って被害状況の確認を続けてくれ」
「市長……! 分かりました。お気をつけて!」
 エリク達を見送った職員達が仕事を再開した時、ふいに轟音が響いた。壁を突き破って現れたクラッシュモール達は、赤い目を光らせると再びドローンを地下シェルターに放った。

※ ※ ※
 第三章はボス戦です。
 地上に出たエリクを迎えにセレネが現れますので、こちらへの対処をお願いします。ボスはエリクを連れ去ろうとします。セレネはオブリビオンです。
 市庁舎を占拠した特殊部隊はキャバリアに乗っていません。

 第二章の判定の結果、地下へ潜ったクラッシュモール達が地下シェルター内部に現れます。第二章と同じ行動を取りますので、地下にいる一般人を守るプレイングにはボーナスがあります。
 第二章のA班は、クラッシュモールが開けた穴を通って地下シェルターに移動することもできます。ボス戦に介入する場合、地下ではありませんので地上を急行すれば戦闘に参加することができます。
 B班はどの戦闘に参加することもできます。
ただし、長野マスターのシナリオとは時を同じくしていますので同時参加はできません。

 クラッシュモールのユーベルコードは第二章と同じです。
 市庁舎内の特殊部隊は、以下のユーベルコードを使っています。
自身が【セレネの指示に従っている】いる間、レベルm半径内の対象全てに【麻痺性の高圧電流】によるダメージか【与えた特殊な糧食】による治癒を与え続ける。

 第二章の判定の結果、リズが応援に駆けつけてくれます。彼女はいずれか一箇所の戦場の応援に入ってくれます。応援を要請する場合は、プレイングに記載をお願いします。
 場所が別れた場合、優先順位は【A】<【B】<【C】です。要請が無かった場合、市庁舎周囲の民間人の避難誘導をするためリプレイには登場しません。
 リズのユーベルコードは以下の通りです。
UC名:自由都市を守る其の為に
20体の【自由都市所属防衛クロムキャバリア】を召喚する。[自由都市所属防衛クロムキャバリア]は【救出or支援攻撃】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。

 今回の戦場は三箇所です。どこか一箇所を指定してください。
【A】ボスと戦闘
 市庁舎前広場でアマランサス・ラピートに搭乗したセレネを迎撃します。セレネはエリクと接触すると抱えあげてそのまま撤退します。エリクを捕らえるまでは撤退しません。阻止しようとした場合、建物内にいる民間人を殺害するよう指示を出します。
 セレネが撤退してもシナリオは成功となります。
【B】民間人保護(地下シェルター)
 地下シェルター内に現れたクラッシュモールを倒して、中にいる要人たちを守ります。クラッシュモールは第二章と同じく、無差別に民間人を殺しにかかります。
【C】民間人保護(市庁舎内)
 市庁舎内で人質にされている人々を解放します。特殊部隊はセレネに忠誠を誓っているため、人質を殺害するのに躊躇はしません。
 
 それでは、よろしくお願いします。
風間・敬人
【SIRD】【B】
あの地下へ潜ったクラッシュモール、逃げたなんてことはないっすよねぇ。
あそこに主犯がいるんすもんねぇ。
という事は、地下にも要救助者がいるっすよねぇ。
ならば急がねばっす。
クラッシュモールのあけた穴を通って、無頼號突撃っす。
地下でも乗り回せればいいんすけど、ダメなら一旦降りて、
救助者を自分の足で回収して回るっす。
上でクラッシュモールのやり方は分かってるっすから、
効率よく救助していくっすよ。

レプリカクラフトは、基本盾作るっすけど、こいつの真骨頂は現場で柔軟に対応できる事っすからね。
その場その場に合わせて、最適なものを作って、絶対に安地まで運ぶっすよ。


文月・ネコ吉
【B】
リズにはCの市庁舎の援護を頼みたい
武運を祈る

俺は敵機を追って地下へ行く
誰一人死なせるものか
人々を守る、俺達はその為にここへ来た!

仲間と連携して行動
素早く状況確認して情報共有

人間形態の真の姿となり戦闘力強化
オーラ防御展開し
一般人を背に庇い守りつつ
叢時雨の日本刀を手に戦う

敵の動きを見切り『咎力封じ』使用
【拘束ロープ】でキャタピラを止め
【手枷】でドリルを封じ
【猿轡】でドローン放出口を塞ぎ
敵の動きを封じつつ
刀で確実にトドメを刺していく

爆撃ドローンが放たれた場合は
衝撃波でドローンを破壊
トリ吉が囮となり爆弾を誘導しつつ
爆破の影響が広がらない様に
凍結の属性攻撃で破壊して人々への被害を防ぐ

※アドリブ歓迎




 クラッシュモールが開けた深い穴を覗き込んだ風間・敬人(軽トラ・f04208)は、闇の奥へと消えたモグラの後ろ姿を睨みつけた。
「あの地下へ潜ったクラッシュモール、逃げたなんてことはないっすよねぇ。あそこに主犯がいるんすもんねぇ」
「撤退した可能性は低いな」
 敬人の隣で穴を覗き込んだ文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)は、眉間に皺を寄せながら深く頷くと通信を繋げた。交わされる通信を聞きながら、取り逃がした機体に考えを巡らせる。あの機体は民間人を殺害するべく放たれた機体だ。市庁舎の地下シェルターが制圧されたのなら、そちらに行った可能性が高いがまだ分からない。
 苦々しい思いで奥歯を噛み締めた敬人は、背中から吹き付ける風に振り返った。応援に来てくれた自衛軍のリズは、ハッチを開けると敬人とネコ吉に向けて一礼した。
『皆様、ご無事の様で何よりです。この都市の人々を守る為にも私達、ウェルディン防衛隊20機は、これより皆様の援護に入ります』
「それはありがたいっす!」
 クラッシュモールを撃破した機体能力や統率力を見ても、リズがこちらに応援に来てくれるのは心強い。だが、どこを手伝って貰うべきか。考えを巡らせた時、ネコ吉が顔を上げた。
「……リズ。リズには市庁舎の援護を頼みたい」
『了解しました』
「俺と敬人は敵機を追って地下へ行く。誰一人死なせるものか」
 拳をきつく握り締めたネコ吉の目には、人々を守るという並々ならぬ決意が宿っている。その意志を頼もしく思う敬人だったが、自分だって負けてはいない。もう揺らがない。
「地下シェルターは自分達と無頼號に任せるっすよ! だから、リズさんは人質の解放をお願いするっす」
 自慢の軽トラの荷台を軽く叩いた敬人は、決意を込めて頷く。二人の意志を受け取ったリズは、ハッチを閉じると即座にキャバリアを起動させた。
『全機行動開始、市庁舎の猟兵の皆様と合流します! ……エリク君達の事は、お任せ致します、皆様』
「武運を祈る」
 敬礼するネコ吉に敬礼を返して市庁舎の方へと消えるリズ機の背中を見送った敬人は、急いで無頼號に乗り込んだ。慣れた手付きでエンジンを掛け、ネコ吉に声を張る。
「さあ、ネコ吉さんも乗るっす! キャバリアのキャタピラが通れた道を、無頼號が走れない訳がないっすから!」
「頼む」
「しっかり掴まっててくださいっす! 無頼號、突撃っす!」
 短く言ったネコ吉が助手席に乗り込んだ直後、頼もしいエンジン音を上げながら無頼號が地下へ向かう道を駆け下りた。自慢の軽トラはキャタピラが通った道を走れないほどヤワではないし、何より地下にも要救助者がいるのなら急いで行って助けなければ。
 決意を込めた敬人は、クラッシュモールの背中を追いアクセルを踏み込んだ。


 敬人の運転する軽トラに乗り込んだネコ吉は、激しい縦揺れをいなしながらヘッドライトに照らされた悪路を睨みつけた。避難所を襲撃していたクラッシュモールから、できる限り人々を守った。だが、守りきれずにこぼれ落ちた命もある。これ以上は許さない。一機残らず叩き切る。だが、戦っている間に民間人に被害が出てしまっては本末転倒だ。迷うネコ吉の心を読んだかのように、敬人はハンドルを握りながら叫んだ。
「要救助者を安地に運ぶのは任せるっす! ネコ吉さんはクラッシュモールの破壊をお願いするっす」
「敬人……」
「上でクラッシュモールのやり方は分かってるっすから、効率よく救助していくっすよ。こっちは任せて、ネコ吉さんは心置きなくクラッシュモールを退治して欲しいっす!」
「分かった。そっちは任せた」
 サムズアップする敬人にサムズアップを返したネコ吉は、地下シェルターに到着した直後真の姿を解放した。
 無頼號が完全に停車するより早くドアを開けたネコ吉は、叢時雨の柄に手を掛けると一気に解き放った。一呼吸で抜かれた刀身から放たれる衝撃波が、今まさに爆弾を放とうとしていたドローンを破壊する。破壊されても尚鋭い刃の屑となったドローンの破片はしかし、ネコ吉が張ったオーラに阻まれ落下する。民間人を背中で守ったネコ吉は、再び現れたドローンを見上げた。このまま防御していては、いずれ爆弾にすり潰される。だがネコ吉はもうしばらく堪えるだけでいい。
 納刀したネコ吉の脇を通り抜けた敬人が、民間人との間に割って入り盾を構えた。不格好な盾を構えた敬人は、突然のことに硬直する民間人に手を伸ばした。
「こっちっす!」
「た、助かった……!」
 硬直から解放された民間人の気配が消える。敬人は言葉通り、取り残された民間人を守り避難させている。ならばと上空を見上げたネコ吉は、相棒のトリ吉に叫んだ。
「トリ吉!」
『了解!』
 一瞬だけ視線を交わらせたトリ吉は、飛び立つとドローンの誘導に入る。突然現れたネコ吉の姿に赤い目を光らせたクラッシュモールは、キャタピラを吹かせると突撃を開始した。
『侵入者発見。迎撃モード機動』
「遅い!」
 叫んだネコ吉は、拘束ロープをキャタピラに放った。高速回転するキャタピラに絡んだ拘束ロープは車軸に絡み、弾かれたように動きを止める。その隙に機体に登ったネコ吉は、ドリルに手枷を嵌めると猿轡でドローン放出口を塞ぐ。
 もし初見で当たったのならば、ここまで手際良くはできなかっただろう。だが、クラッシュモールと戦うのはこれで二度目。連中のやり口も弱点も見切った今なら、確実にユーベルコードを封じられる。EPパワーオブカジバを起動させようとうごめくクラッシュモールの上に立ったネコ吉は、抜刀した叢時雨を背中から突き立てた。
「人々を守る、俺達はその為にここへ来た! お前たちはここで退場してもらうぞ」
『起動不能起動不能キド……』
 狂ったように機械音を発したクラッシュモールが、ふいに沈黙する。叢時雨を引き抜いたネコ吉に、敬人の声が響いた。
「ネコ吉さん! 民間人は全員、会議室に避難させたっす!」
「分かった。俺はこのまま掃討に入る」
「守りは任せるっす!」
 頷いたネコ吉は、床を蹴り次のクラッシュモールに立ち向かう。
 地下シェルターに放たれたクラッシュモールが全て沈黙するのに、さしたる時間は掛からなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン


「ホントに、捨てられたら。護衛なんて、ない」
「キミが行っても。次の戦争が始まる、だけ。あそこの人達も、殺されて終わる、だけ」
「エリク。流されて、全部他人のせいにして。悲劇の主人公ぶって終わりにする、つもり?」
「キミが、自分の価値を、知らなくても。今のキミ自身に、価値なんてなくても。他者がキミに値段をつけて、キミを奪おうとする、なら。戦え。キミ自身の、ために」
「キミが彼らに、身を渡すのは。キミ以外助からない、1番卑怯な、自己保存の道だ。状況に、逃げるな。戦え。自分と、みんなのために」
「楽な方に、逃げちゃダメだ。考えるのを止めて、ごまかしちゃダメだ。みんなキミのために、来た。キミが信じて、キミも戦え」
エリクの後追い影から支援
エリクに広場で敵に話したりゆっくり姿を見せたりの時間稼ぎ依頼
敵機がエリクに手を伸ばした(又は攻撃した)瞬間にUCで飛び込み雷撃乗せた偽神兵器で敵機の腕切断
そのままエリクかっ拐って物陰飛び込む
飛行も駆使
エリクを安全圏に連れ込んだら偽神兵器構え突貫
コクピットごと敵を刺し貫く


九十九・白斗
【C】SIRDメンバーと共に行動
じゃあちょっくら行ってくるぜ局長
(手早く情報をまとめた局長から指示を受ける。俺と灯璃が市庁舎、風間がシェルター、局長がエリクの警護だ)
エリクだったか?人質は俺らが救出する
何の心配もねぇぞ

市庁舎に見張りがいるなら【スナイパー】の腕の見せ所だな
手早く狙撃して見張りを倒し侵入する

灯璃と部屋を調べながら【索敵】して、敵を発見しだい倒し、気づかれないように注意しながら人質のいる部屋を見つける

人質のいる部屋を見つけたらスタングレネードをほおりこんで突入
【UC:援護射撃】で灯璃をサポートする

今回は美雪という猟兵も同行するらしい
どこかで見たことがあるような気がする


ネリッサ・ハーディ
【A】
SIRDメンバーと共に行動

帝国、共和国に加えテロ組織ですか…いよいよ事態は混迷を極めてきました。いずれにせよ、今回はエリクさんと市長、そして市庁舎の人質の安全確保が最優先事項です。

セレナの元へ向かう前に、エリクさんと市長にセレネと何かしらの会話や|交渉《ネゴ》を行って貰い、時間を稼ぐ様に頼みます。セレネと上手く会話を合わせ語らせ時間を引き延ばして下さい。テロリストは大抵、主義主張を語りたがるものです。

その後市庁舎前広場を一望できる物陰に潜み状況を無線で全猟兵に伝えながら監視。市庁舎内制圧に向かった灯璃さん達の報告を待ちます。
市庁舎制圧・人質の救出に成功の連絡があり次第UCの黄衣の王を召喚、セレネ機の動きを封じ、その隙にエリクさんらの身柄を安全な場所に脱出させます。その後セレネ機を攻撃し、可能であれば撃破及びセレネの身柄の拘束を試みます。

…やはり、オブリビオンの目的は、戦火を激化させる事の様です。可能ならばロスト共和国大統領、そして帝国の皇帝に、一度状況の説明をする必要がありますね。


フロース・ウェスペルティリオ
【SIRD】【A】

ウチの本命はエリクさんの護衛。
ポケットサイズのナノさん(タルツムリ姿)を忍ばせておけば、ウチ自身がエリクさんの側に居なくても、エリクさんを応援したり、敵の情報を収集したり、技能で「かばう」や「援護射撃」もできそうかなぁ、と。
まぁ、ミサイルにロックオンされてしまうのは困る……あれ、別に困らないねぇ、うん。
ミサイルに当たっても飛び散るだけだし、集まれば問題ないよね。

ウチはこの章が初参加だし、市庁舎とは別の建物の屋上に陣取れたら良いなぁ。
あちらも、タダでエリクさんを連れてくるとは思ってないだろうし、市庁舎から意識を反らす意味でも狙撃の構え(弓矢)をしておこうかと。
エリクさんを引き渡しても人質を解放しない可能性もあるのだし、構えるくらいは許して欲しい所。
でも、許さずミサイル撃ってくれたら油断を誘えてなお良し。遠慮なく(こっそり)広場組に合流するよー

あ、小指の爪サイズのナノさんを皆さんの耳付近や広場内各所に付けておこう。
情報共有できるので、通信機より状況把握が早いよねぇ。たぶん。


灯璃・ファルシュピーゲル
【C】SIRDメンバーと共に行動

Ja,と局長へ返事しつつ、市長から庁舎の簡単な見取り図、
推測可能なら人質の位置、それと警備・電気系統の配置を【情報収集】し頭に叩き込むと同時にUC:ウロボロスアーセナルでリモート爆弾を作成

庁舎への潜入は隠密性を重視し、建屋の破片やガラスを踏んで音を立てない様静かに迅速に進み。角や物陰での伏兵に注意しながらルームクリアリング。会敵時はサイレンサーを使用して、音を極力立てないように頭部と通報阻止に通信機狙いで射撃し処理(先制攻撃・暗殺)

捜索がてら、収集情報をもとに警備・電気系統が入った中継盤に爆薬をセット(破壊工作)人質部屋を発見次第、九十九さんへ合図しつつ起爆。照明を消しつつ爆破音で視線を誘導して投げ込まれる閃光弾に注目させるよう図ります。

同時に指定UCで狼達を召喚し一気に吶喊させ。手を出される前に人質直近の敵からまず襲い掛からせ、人質から敵を引き離し守りつつ。武器を持つ腕・頭を確実に撃って制圧していきます。

※制圧含む現在情報は即時に局長へ報告

※アドリブ歓迎


御魂・神治
【A】

えっらい派手なお迎えやないかい
悪いけど、アンタはお迎えする側やないで
お迎えされる側や

天将、武神にワイを乗せろや
三神はツインハンドガン形態や
連中の殺害命令を【ハッキング】で妨害せえ
ついでに【データ攻撃】で連中の通信機器の類を全部オジャンにしたれ

赤いデカブツの処遇やけどな
先ずは三神の【弾幕】でマイクロミサイルの類を対処
...はぁ、そう来ると思ったわ
対処に手ぇ取られとる隙にライフルでぶち抜くつもりかいな
その一撃は【結界術】で極力相殺しつつ【クイックドロウ】で『天神』お見舞いしたる
ちなみにワイのこの一撃目は壊す為ちゃう
本丸は上からくるで!気ぃつけな!


アイン・アルブス
【A】
同戦場の他猟兵とはがっちり連携!
※「リ・ヴァル帝国録~|侵略者《イントゥルーダー》」2章の結果、リズと一緒に駆けつけた扱いで

ボスにエリクを渡したら何されるかわからないよ!
私がボスに行くから、リズは【C】で民間人の保護をお願い!

うーん、猟兵側に私以外のキャバリア乗りがいるかわからないなあ
キャバリア乗りの私がひとまずボスを抑え込んでみるね
指定UC発動後、高速飛翔で一気に距離を詰めてボスに体当たり!
転倒させられればそれでよし、ダメでも密接したらオッケー!
民間人殺害の指示を出しそうになったら即座に全武装一斉射撃「零距離射撃」で黙らせるよ!
これなら指示を阻止できようができまいが、至近距離からある程度ダメージは蓄積できるはずだよね
まあ、指示を出されても、リズと他の猟兵たちが居れば民間人殺害は阻止できると思うけど

ねえ、セレネだっけ?
ひとつ聞きたいんだけど、どうしてエリクがほしいの?
ロスト共和国に対する人質にするなら特殊部隊に攫わせるほうが早いのに
なんで街を破壊して誘き出したんだろうね?


藤崎・美雪
【C】
アドリブ連携大歓迎
同戦場内他猟兵との連携は特に緊密に

…あー
内部からの手引きがあったのかこれ
そりゃあ、要所狙いで押さえられるはずだわ

対テロの鉄則は「テロリストには屈しない」って聞いたことがあるが
エリクくんが行く気な以上、ちょいとこっちが不利だなー
今はエリクくんが向かうまでの時間を稼ぎつつ人質を救出するしかないか
…ま、やるだけやってみますか

基本的には回復専念
物陰に身を隠しつつ「歌唱、優しさ、鼓舞」+指定UCで歌いながらオーロラ風を吹かせ
同一戦場内の猟兵たちを回復+再行動させて特殊部隊排除を手助け

リズにももちろん応援要請
私のいる【C】で20体のキャバリアと共に民間人の保護及び解放を頼む
救出が難しそうなら、特殊部隊と民間人の間に立ちはだかってもらうだけでもいい

可能なら戦闘終了後、副市長を速攻で捕縛して尋問
さーて、どうしてあの連中に手を貸したのか、答えてもらおうかー?
答えないなら、私のもふもふさんが全身くすぐり倒すぞ?
(演出で【もふもふさんと遊ぼう】発動、針剣攻撃という名のくすぐり攻撃♪)




 時は少し遡る。
 興奮した面持ちのエリクがセレネとの通信を切ると、そのまま何の準備もなく地上へ向かおうとする。肩を怒らせながら歩く少年の前に立ったベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスニンジャ》・f36698)は、ゆっくり手を広げると出口への道を遮った。
「エリク。少し、落ち着いて」
「どいてくださいベティさん」
「キミが行っても。次の戦争が始まる、だけ。あそこの人達も、殺されて終わる、だけ」
「そんなことさせない! そのくらいのこと、僕にだってできるはずだよ!」
 食って掛かるエリクに、ベティは静かに首を横に振る。例えエリクが命がけでセレネを説得したところで、あちらが一言指示を出せば人質はあっさり殺されてしまうだろう。あちらはエリクの精神状態や人質の命に忖度する謂れは無いのだ。
「エリク。きみがセレネのところに行っても、人質を解放する保証、ない」
「そんな!」
「流されて、全部他人のせいにして。悲劇の主人公ぶって終わりにする、つもり?」
「……!」
 ベティの指摘に、エリクは強く唇を噛み締めた。何か言おうと口を開くが、意味を成さない小さな呼吸音が出るばかりで。それでもと大きく首を振ったエリクは、強気な口調でまくしたてた。
「でも、僕が行かなきゃ確実に人質は殺される。そんなの嫌だよ! 捨てられた僕のために、父さんは絶対に動かない……」
「ホントに、捨てられたら。護衛なんて、ない!」
 叫んだベティは、エリクの二の腕を掴むと目を合わせた。ベティに親の記憶はない。気がついたらサイバーザナドゥでニンジャだった。生きるのに必死で、ただただ必死で毎日をこなすばかりで。生活のために命を売り買いするような環境で、自分の価値を自分で認められなければどうなるか。隣にいたあの子はどうなったのか。
「キミが、自分の価値を、知らなくても。今のキミ自身に、価値なんてなくても。他者がキミに値段をつけて、キミを奪おうとする、なら。戦え。キミ自身の、ために」
「戦う……?」
「キミが彼らに、身を渡すのは。キミ以外助からない、1番卑怯な、自己保存の道だ。状況に、逃げるな。戦え。自分と、みんなのために」
「でも! 僕が行けば解決するんだろう?」
「楽な方に、逃げちゃダメだ。考えるのを止めて、ごまかしちゃダメだ。みんなキミのために、来た。キミが信じて、キミも戦え」
「僕が、僕を、信じて戦う……」
 呆然と呟くエリクと視線を合わせたベティは、深く頷く。ベティの視線から逃れるように俯いたエリクは、一つ頷くと顔を上げた。さっきまでの無謀な正義感や興奮が消え、落ち着いた決意の色をしている。
「分かった。僕も戦うよ」
 静かな強さを目に浮かべたエリクに、ベティは微笑んだ。


 落ち着きを取り戻したエリクに、フロース・ウェスペルティリオ(|花蝙蝠《バットフラワー》・f00244)はエリクの背中を明るく叩いた。
「大丈夫。ウチの本命はエリクさんの護衛だからね。先にこれを渡しておくよ」
 若干青い顔色をしたエリクを元気づけたフロースは、ユーベルコードを詠唱するとポケットサイズのナノさん(タルツムリ姿)を123体召喚した。フロースの周囲にふよふよ浮かぶのは、カタツムリに似た黒い姿。よく見なくても愛嬌のある姿のナノさんを一匹捕まえたフロースは、戸惑うエリクに手渡した。
「この子には戦闘する力は無いんだ。けど応援や助言、情報収集と聞き耳に魅了とか言いくるめでサポートしてくれるんだ。エリクさんの力になってくれるよ」
「ありがとう!」
「皆にも渡しておくね。小指の爪サイズだから邪魔にならないし、耳の近くにつけておけば情報共有もできるよ。通信機より状況把握が早いよ。たぶん」
「ほお、こらええモンやな」
 感心したようにナノさんを受け取った御魂・神治(|除霊師《物理行使》・f28925)は、一通り眺めると耳元につけた。少し腕を伸ばしたナノさんはピアスのように耳元に取り付き、頭を動かしても外れないし違和感もない。天将と通信のテストをする神治は、不安そうに呟くエリクに振り返った。
「あそこで、僕は何をすればいいの?」
「エリクさんと市長は、時間を稼いで下さい」
 落ち着いたエリクに歩み寄ったネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)は、机に市庁舎前広場周辺の地図を広げると広場の真ん中に赤い駒を置いた。続けて市庁舎側に大小の駒を一つずつ。地図を見下ろしたエリクは、怪訝そうに首を傾げた。
「時間……?」
「はい。セレネと何かしらの会話や交渉、ネゴを行うのです」
「交渉やネゴ……。そんなこと、僕にできるかな?」
「交渉術は必要ありません。上手く会話を合わせ語らせ、時間を引き延ばして下さい。テロリストは大抵、主義主張を語りたがるものです」
「のんびり喋ったり、広場にゆっくり姿を見せたりも、大事」
「分かった。何を聞こうかな……」
『あ、ねえ。質問が思い浮かばないなら、こんなこと聞いて欲しいな』
 共有回線を開いたアイン・アルブス(“白の”アイン・f29962)は、かねてから考えていた聞きたいことをエリクに伝える。素直に了承するエリクに、ベティは自分の駒をエリクの隣に置いた。
「ボクは、エリクを物理的にボスから引き離す、よ」
「ほな、ワイと天将はボスを追い込もか。考えがあるから、ここまで追い込んだってや」
「了解しました神治」
『他にキャバリア乗りもいないし、そこまで押し込むのはあたしの役目だね』
 少し離れた場所に駒を置く神治に、アインも自分の駒を置く。完成してくる盤面に、フロースは自分の駒を右側のビルの上に置いた。
「ウチはここからセレネを狙うよ。弓矢で狙撃の構えをしとけば、市庁舎から意識を逸らせるハズ。通信の確保は任せてね」
「お願いします。私は左翼側ビルから全体の指揮を取ります」
 ネリッサが自分の駒を置いた時、ネコ吉から通信が入った。避難所側の現状を説明したネコ吉は、続けて応援が入ることを報告した。
『あと、リズが応援に入ってくれることになった。どこか手を借りたいところはあるか?』
『ボスにエリクを渡したら何されるかわからないよ! 私がボスに行くから、リズは民間人の保護をお願い!』
『そうだな。私もそれがいいと思うぞ』
 明るく手を上げていそうな雰囲気のアインに、藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)も同意を示す。他に異論も無いことから、リズは人質の救出を手伝ってくれることになった。
『じゃあ決まりだな。……リズ。リズには市庁舎の援護を頼みたい』
『了解しました』
『俺と敬人は敵機を追って地下へ行く。誰一人死なせるものか』
 ネコ吉の決意に、盤面を見ていた灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)は、駒の一つを市庁舎へと置いた。
「私は市庁舎の民間人保護に向かいます」
「俺も行こう」
 灯璃の駒の隣に自分の駒を移動させた九十九・白斗(傭兵・f02173)は、ふと顔を上げると美雪に尋ねた。彼女はどこかで見たことがあるような気がする。
「美雪はどうするんだ?」
『私も市庁舎の救援に行こうと思うが、今はまだ避難所なんだ。リズさんのキャバリアに同乗させてもらうことにするから、潜入はしないでおくよ。私を待たずに始めてくれ』
「分かりました。……市長、庁舎の見取り図を要請します」
「ああ」
「あと推測される人質の位置、警備・電気系統の配置を……」
 市長にいくつか質問した灯璃は、リモート爆弾を作ろと思い手を掲げたが、既でやめた。市庁舎内で何があるか分からない。使い所は他にもあるだろう。
 全ての駒を置き終えた盤面を見下ろしたネリッサは、猟兵達を見渡した。
「帝国、共和国に加えテロ組織ですか……。いよいよ事態は混迷を極めてきました。いずれにせよ、今回はエリクさんと市長、そして市庁舎の人質の安全確保が最優先事項です」
「Ja,」
「じゃあちょっくら行ってくるぜ局長」
 生真面目に敬礼する灯璃の隣で散歩にでも行くかのような気楽さでアサルトライフルを担ぎ上げた白斗は、エリクに近寄るとしゃがんで視線を合わせた。
「……エリクだったか?」
 ふいに声を掛けられたエリクが、驚いて体を弾かせる。思わず警戒するエリクの肩を大きな手で叩いた白斗は、見上げる視線に力強い笑みを浮かべた。
「人質は俺らが救出する。何の心配もねぇぞ」
「……うん!」
「さあ、作戦開始です」
 ネリッサの声に、猟兵達は一斉に動き出した。


 地下通路を抜けた灯璃は、隠し通路を抜けると市庁舎に続く地下道に出た。警備隊との戦闘があったのだろう。床にはガラスや割れた蛍光灯、砕けた建屋の破片が散乱していて片付けられる様子もない。現在のところ人の気配は無いが、敵も警戒しているだろう。いつ哨戒の敵兵と出くわしてもおかしくはない。
 破片を踏まないよう細心の注意を払いながら、奥へと進む。わずかな気配に後ろを振り返れば、白斗も同様に気配を消しながらついてくる。伏兵に注意しながら角の壁に背中を預けた灯璃は、ガラスを踏み割るわずかな音に後ろを振り返った。
 ほぼ同時に鳴る二発のわずかな銃声。クリアした角からふいに現れた二人のテロリストがこちらを視認する。敵も不意の遭遇だったのだろう。一瞬の硬直を見逃さず頭に一発弾丸を叩き込んだ灯璃は、しゃがんだ姿勢で銃を撃つ白斗を見下ろした。
 声もなく倒れる二人のテロリストの死体を確認した灯璃は、再び奥へと歩みを進める。静かに、そして素早く確実に。最低限の敵を排除しながら進んだ灯璃と白斗は、ついに人質が囚われた部屋の前までたどり着いた。
 壁に背中をつけ室内を確認した灯璃は、反対側の入口から室内を確認した白斗と連携し敵の人数を確認。リズに連絡を入れ白斗に合図を送ると詠唱を開始した。
 合図を受けた白斗は、無言のまま目線で頷くと手にしたスタングレネードを室内に放り込んだ。
 直後に放たれる真っ白な閃光と、耳を塞ぐ爆音。同時に室内に入った白斗は、アサルトライフルを構えた。
 突然の音と光に怯んだ特殊部隊に発砲。数人沈黙させた時、復帰した敵がこちらに銃を向けてきた。その直後、黒い霧が現れた。
「Sammeln!Praesentiert das Gewehr!・・・・仕事の時間だ、|狼達《Kamerad》!」
 室内に突如現れた黒い霧から、狼のような影の群れが現れる。特殊部隊に踊りかかった影の狼に怯んだ隙を突き、武器を持つ腕・頭を確実に撃って制圧していく。
 瞬く間に敵を制圧した灯璃は、即座に通信回路を開くとネリッサとリズに報告を入れた。
「フクス08よりグイベル01。市庁舎の制圧及び民間人の保護完了。これより屋外に確保した安地への移送を開始します」
『ありがとうございます。どうか皆様、ご無事の程を』
直後響くキャバリアの駆動音。キャバリアハンガーから侵入したリズ隊は、中央吹き抜けを一気に飛翔すると民間人を避難させるべく手を差し出した。


 時は少し遡る。
 リズのキャバリアに同乗した美雪は、交わされるやり取りに眉間に眉間に寄った皺をもみほぐした。
「……あー。内部からの手引きがあったのかこれ。そりゃあ、要所狙いで押さえられるはずだわ」
「……そう、ですね。しかし一体、誰が手引きを……?」
「目星はついているがな。とっちめて吐かせなければ、はっきりとは分からぬよ」
 リズの言葉にため息をついた美雪は、市庁舎の制圧に向かう灯璃と白斗にやって欲しいことを依頼した。
 それにしても。テロリストの要求に即応して身柄引き渡しの場に行くと言ってしまったエリクの行動に、思わず腕を組んだ。対テロの鉄則は「テロリストには屈しない」と聞いたことがある。本来ならばのらりくらりと要求を躱しつつ交渉して、人質を解放もしくは犯人の身柄確保が鉄則なのだろうが、エリクにその知識は無かったのだろう。
「うーん。エリクくんが行く気な以上、ちょいとこっちが不利だなー。今はエリクくんが向かうまでの時間を稼ぎつつ人質を救出するしかないか」
「其方は灯璃様達の成功を信じることこそが最善でしょう」
「そうだな。じゃあ私たちのミッションは、制圧でき次第民間人を避難させて安全確保か。……ま、やるだけやってみますか」
「ええ、そうですね」
 狭いコクピット内で肩を鳴らした美雪は、リズと共に裏手の空き地に降り立った。あの建物の中にどれだけの人質がいるかわからないが、数人ということはないだろう。人質を解放できたのならば、一刻も早く安全圏へ連れ出さなければ。再び人質に取られてしまっては元も子もない。
 多少手荒なことにもなりかねず、そうでなくても負傷者はいるはずだ。空き地に降りた美雪は、半数のキャバリアを連れ市庁舎へ向かうリズ機の背中を見送った。残り半数は空き地の警備をしてくれている。やがて市庁舎を制圧したという連絡を受けて待つことしばし。リズの部隊が民間人達を連れて、空き地へとやってきた。続々と集まる民間人達の救護に走った美雪は、響く銃声に顔を上げた。
 排除したはずの特殊部隊が、こちらにゲリラ戦を仕掛けてきたのだ。リズの部隊も対応に入るが、相手は隠密行動に長けた特殊部隊。攻撃を防ぎ反撃をしても、一撃当たれば良しとばかりに連続攻撃を仕掛けてくる。
「まったく、しつこい連中だ!……己が意志を最後まで貫き通す者に、オーロラの加護を」
 腹立たしげに息を吐いた美雪は、大きく息を吸うと詠唱を開始した。極光に包まれしトッカータの調べに乗った温かな七色のオーロラ風は、キャバリアのパイロット達を鼓舞し、励まし再行動させる。手数において勝ったリズ隊の隊員が、特殊部隊を次々に倒していく。ようやく収まったと思った時、倒れた特殊部隊がゆっくりと起き上がった。再び始まる攻撃に、美雪とリズ隊は対応を迫られる。
 気味の悪い攻防は、特殊部隊が撤退するまで続くのだった。


 その頃。
 市庁舎近くの雑居ビルの屋上に陣取ったフロースは、弓矢で現場を狙いながら市庁舎前広場の様子を伺っていた。すぐ近くでの護衛はできないが、こうしてビルの屋上から見守ることはできる。柵の間から現場の様子を見守っていたフロースは、肩の上に置いたポケットサイズのナノさんの声に耳を傾けた。
『ね、ねえ。大丈夫かな? なんだか怖くなってきちゃったよ』
「大丈夫。何があっても、きみは僕たちが守るから」
『う、うん』
「それに、今なら誰だって情報収集や言いくるめもすることができるよ。だから大丈夫」
 緊張に震える声を初々しいなあ、など思いながら見守っていたフロースは、123体のタルツムリ姿のナノさんが集める情報に意識を向けた。遠方から高速で飛来する赤い機体が見える。おそらくあれがアマランサス・ラピードーーセレネだろう。他に機影は見えないから、単騎でやってきたのか。
「そろそろ来るよエリクくん」
『う、うん』
 視線を戻したエリクを確認したフロースは、精神を集中させると現場を見下ろした。アマランサス・ラピードの赤い機体が、エリクの前に降り立つ。フロースとネリッサが見守る中、護衛のハルとアキがエリクと市長を挟むように立ち、警戒を強めている。待つことしばし。市庁舎前広場に降り立った赤いキャバリアを前にしたエリクに、セレネは手を伸ばした。
『よく来たわねエリク。逃げ出したかと思ったわ』
「にっ……逃げないよ! きみみたいなテロリストに屈したら、お父様のお名前に傷をつけることになるから!」
『お父様のお名前、ね』
 くつくつと含み笑いを浮かべたセレネは、差し出したキャバリアの掌を軽く動かした。早く乗れ、と促すような動きに、エリクは一歩下がると顔を上げて声を張った。
「ね、ねえ! どうして僕を狙うの? 僕なんか攫ったって、これっぽっちもいいことなんか……」
『あんたが父親の息子だからよ』
「僕はお父様に捨てられたんだ! 6歳の時にお母様と本国から出されて以来、お父様とは一度も会ってないし故郷に帰る許可もくださらない。お母様のお葬式にだって来なかったお父様が、僕のことを……」
『あんた達の親子関係がどうであろうと、関係ないの。私は別に、あんたが死のうが起き上がろうが知ったことじゃないわ。でも私達は、あんたに死なれると困るの。ついでにウロチョロされるのも迷惑よ』
「そんな! じゃあ、きみは僕を捕らえるためにこの街を破壊したの?」
『思い上がるんじゃないわよ。あれだけの戦力があったら、本国の戦争に投入しているわ』
「じゃあ、どうして街を破壊したの!? 僕だけを狙うんなら、こんな戦い、いらなかったんだよね?」
『あの黒服の考えなんて、知ったことじゃないわ。さあ、お喋りは終わりにして……』
 手に乗らないエリクに業を煮やしたように、キャバリアが手を伸ばす。掴んで持ち上げようとする素振りを見せたアマランサス・ラピートの腕がふいに弾け飛んだ。
「連れて、行かせない!」
 巨大な偽神兵器を操ったベティは、電光の速さでアマランサス・ラピートの腕を断ち切るとエリクを抱き上げ、再び飛翔する。そのまま物陰に飛び込もうとした偽神兵器の背中に、BXビームソードが叩き込まれた。
『エリクを渡しなさい!』
 全開に吹かしたスラスターで加速したビームソードが、偽神兵器を袈裟懸けに切り裂く。大きくのけぞり動きを止めた偽神兵器にとどめを刺そうとビームソードを振り上げた時、赤い機体が不意に大きくのけぞった。
「オーバーブースト・マキシマイザー起動!」
 クロムキャバリアに搭乗したアインが、高速機動でアマランサス・ラピードに体当たりを仕掛けた。獲物に食らいつく一瞬の隙を突いたアインは、一気に距離を詰め偽神兵器と引き剥がしにかかる。ゼロ距離まで迫ったアインは、全搭載武装の砲門を解放すると一斉射撃を仕掛けた。
「至近距離からのゼロ距離射撃、受けてみなさい!」
『小うるさい蝿が! どきなさい!』
 全身が真っ白になるほどの一斉射撃に防御姿勢を取ったアマランサス・ラピードは、攻撃を受け切ると再びスラスターを全開放してアインに斬りかかった。クロムキャバリアの装甲をも切り裂く攻撃はしかし、無数の禍々しき触手によって遮られた。
「The Unspeakable One,him Who is not to be Named・・・さぁ、貪り尽しなさい」
 詠唱と同時に現れた|邪悪なる黄衣の王《ザ・ウィキッド・キング・イン・イエロー》が、無数の触手でアマランサス・ラピードを飲み込まんと迫る。黄衣を纏った不定形の魔王に、大きく下がり触手を回避すると通信機のスイッチを入れた。
『特殊部隊ククヴァヤ! 人質を殺害しなさい! ……応答しなさい!』
「問題ありません。通信は神治さんと天将の妨害電波で無効化済みです」
「まあ、指示を出されても、リズと他の猟兵たちが居れば民間人殺害は阻止できると思うけど」
『通信を邪魔していい気になっているようだけど、連絡は通信機器を通すだけじゃないわ』
 そう言った直後、セレネは空中に向けて信号弾を発射すると大きく飛び退いた。
 戦いは最終局面を迎えようとしていた。


 大きく飛び退き距離を取ったアマランサス・ラピードは、地面を蹴り飛翔すると肩部マイクロミサイルポッドを開いた。
『これがあんた達の通信機ね!』
 正確にロックオンされたマイクロミサイルが、次々にナノさんを撃ち落としていく。雨のようなミサイルに浮遊するナノさんが全て撃ち落とされるのを屋上から見ていたフロースは、慌てた声を上げた。
「わあっ! ミサイルにロックオンされてしまうのは困る……あれ、別に困らないねぇ、うん。ミサイルに当たっても飛び散るだけだし、集まれば問題ないよね」
 小さく肩を竦めたフロースは、屋上からヒラリと飛び降りると戦場に合流する。派手な花火のように散るナノさんの姿に紛れた神治は、アマランサス・ラピードに吶喊を仕掛けた。神治の攻撃を盾で受け止めたセレネに、神治は不敵な笑みを浮かべた。
「えっらい派手なお迎えやないかい」
『エリクを渡せば、すぐにでも帰ってあげるわ』
「悪いけど、アンタはお迎えする側やないで。お迎えされる側や」
『ならば精一杯もてなしなさい!』
その直後、肩部マイクロミサイルポットの全砲門を開けたアマランサス・ラピードは、続けざまにマイクロミサイルを放った。
『マイクロミサイルに貫かれて死になさい!』
「お断りや!」
 ツインハンドガン形態に変形させた三神を構えた神治は、正確に降り注ぐマイクロミサイルに向けて続けざまに銃弾を放ち迎撃する。狙いが正確な分弾道を正確に予測した神治は、弾幕で生まれた爆煙がまるで煙のカーテンのように視界を塞ぐのを見て不敵な笑みを浮かべた。
「……はぁ、そう来ると思ったわ」
 煙幕の向こう側にうっすら見えた赤い影が、神治の一瞬の隙も見逃さない正確な狙いの銃口を構えているのが見える。次の瞬間放たれたロングビームライフルの砲撃が、煙幕を割り武神の胸部を貫かんと収束しながら放たれた。
「対処に手ぇ取られとる隙にライフルでぶち抜くやなんて、常套手段で読めとんで! 天将!」
「対光線結界を多重展開します」
 他の防御を捨てた天将が、神治の声に応えて結界を多重展開する。アマランサス・ラピードとの間に張られた多重結界は、破壊されながらも確実に威力が削がれていく。その直後、神治は両手に持ったハンドガンをセレネに向けた。
「こっちに銃口を向けとる間は、確定で動かんやろ! 『天神』の攻撃、お見舞いしたる!」
 狙いを定めて一撃。神器銃『天誅』から放たれた銃弾はカウンターのようにアマランサス・ラピードの装甲に深いダメージを穿っていく。ライフルを手放したアマランサス・ラピードは、防御姿勢を取ると不敵に笑った。
『その程度の攻撃で……』
「四の五の言わずに黄泉へ帰れや」
 神治が冷酷な声で言い放った直後、アマランサス・ラピードの胸部装甲が絶対貫通の轟雷に貫かれる。轟雷が消えた時、胸部装甲に大きな風穴を開けたアマランサス・ラピードが地に落ちる。コクピットを真っ黒に焦がした赤い機体は、地上に激突すると爆発四散した。


 黒く焦げた地面を検分したネリッサは、焦げ臭い地面を確認すると機体の破片を拾い上げた。あの攻撃と爆発では、セレネを捕らえることは不可能だ。
 セレネ撃破後、特殊部隊は潮が引くように撤退していった。通信によると、地下シェルターの民間人も守りきれたようだ。遠くから聞こえていた激しい戦闘音も今は止んでいる。あちらも片付いたようだ。今回の襲撃はいくつか腑に落ちない点があったが、これ以上情報は得られそうにない。
「可能であればセレネの身柄の拘束を試みたかったのですが、仕方ありませんね」
「神治が、雷で貫かなくても。私が偽神兵器で、突貫したよ」
 続く戦闘と特殊部隊の奇襲からエリクを守り抜いたベティが、拳を握り締めて主張する。ベティに頷いたネリッサは、美雪の声に振り返った。
「やれやれ。やっと退いてくれたか」
「お疲れ様です美雪さん」
「副市長とやらを連れてきたぜ」
 敬礼した灯璃の後ろから現れた白斗は、ロープでぐるぐる巻きにされた副市長の身柄をぞんざいに地面に置いた。
「おお、ありがとう。どうにもこいつがきな臭くてな」
 ハリセンをパシーンと手の中で叩いた美雪は、副市長の前にしゃがむと鼻先にハリセンを突きつけた。
「さあて、副市長。どうしてあの連中に手を貸したのか、答えてもらおうかー?」
「……」
「答えないなら、私のもふもふさんが全身くすぐり倒すぞ?」
 美雪の脅しもさることながら、副市長の周囲は猟兵達が固めいている。万が一にも逃げ出されるおそれはない。恐れおののいた副市長は、ふいに笑い出した。
「崇高な人類の夢を理解しない愚か者が!」
「なに? どういうことだ?」
 眉を顰めた美雪が色々手を尽くして尋問するが、副市長は黙秘を貫く。諦めて当局に委ねた美雪に、ネリッサは目を細めた。 
「……やはり、オブリビオンの目的は、戦火を激化させる事の様です。可能ならばロスト共和国大統領、そして帝国の皇帝に、一度状況の説明をする必要がありますね」
 そう言った直後、一条の光が世界を照らし出した。夜明けを告げる眩い光は自由都市ウェルディンを照らし出し、その被害を明らかにしていく。

 長い夜が明け、新しい朝が来る。赤い光に照らされた猟兵達は、夜明けの光に目を細めるとそれぞれ帰途につくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 深い闇が淀む何処とも知れない場所に、セレネが現れた。猟兵の攻撃で黒焦げになったはずのセレネは、傷一つ無い姿で足早に歩くとふいに歩みを止めた。
 淀んだ闇が吹き溜まり、光さえ吸い込むような黒が人の形を作り出す。いつの間にかそこにいるフードを目深に被った男に、セレネは食って掛かった。
「こんなところにいたのね、黒服。……今回の契約違反は、どう落とし前をつけてくれるのかしら?」
「契約違反? はて……何のことですかな?」
 フードから見える白い口元が、わずかに歪む。嘲笑するような声に苛立ちを顕にしたセレネは、腹立たしげにまくし立てた。
「とぼけないで! 今回の起き上がりの実験、エリクを殺さず身柄を引き渡す契約だったわよね? なのにあんたの特殊部隊を差し向けた挙げ句クラッシュモールを放り込むなんて、殺すって言っているようなものじゃない!」
「その通りですね。実際、エリク殿は殺されなかったではございませんか、契約通りに」
「それは猟兵が介入したことによる結果論に過ぎないわ。相手先との契約も守れないだなんて、商人失格ね」
 心からの軽蔑も顕に嘲るセレネだったが、黒服は小さく肩を竦めるような気配を見せるだけだった。
「そもそも、契約の本旨は、『ウェルディンのプラントの共同利用』及び『我々への起き上がり技術の提供の代わりに我々からの機体提供』でございます。エリクの引き渡しに関しましては、『可能であれば』という条件だったのは間違いございません」
「っ……!」
 反論しようと口を開きかけるが、そのまま言葉を飲み込む。黒服の男の言う通り、エリクの引き渡しは書面では交わしていない。言った言わないの不毛な問答を繰り広げる暇があれば、次の手を打った方が得策だ。
「……まあいいわ。結果的にエリクは無事だったのだし。こちらの手に入らなかったのは残念だけど、しばらく泳がせておくわよ。プラントの共同利用の件は、また後日席を設けるわ。それでいい?」
「……ええ、勿論。其れで構いませんよ……」
「私は行くわ。せいぜいこちらの戦火でも広げていなさいな。武器商人さん」
 昏い声に鼻を鳴らしたセレネは、踵を返すとその場を立ち去った。やがて朝日の中へ戻ったセレネは、深く息を吐き出した。
「胡散臭い男」
「セレネ様」
 スッと現れた副官の姿に、セレネは思わず安堵の息を吐く。あの男がいる場所は闇が深くて、息苦しくてかなわない。
「そちらの首尾はどう?」
「黒服からのキャバリア兵団の納品を確認しました」
 そう言って差し出す目録に目を通したセレネは、一つ頷いた。これだけあれば、当座は大丈夫だろう。
「そう。こちらもプラントの共同利用の件については後日席を設けることになったわ。当初の目的は達成ね」
「セレネ様。あの男、今後も信用するのですか?」
「信用はしないわ。でも、プラントを手に入れるまでは利用させてもらう。私達が欲しいのは、使えば無くなる|消耗品《キャバリア》じゃなくて新たに生み出せる|生産拠点《プラント》よ。そうでなければ勝てないわ。私達の戦争に」
「はい。全ては……」
「そうよ。全ては……」
「「グランマのために」」
 意志を確認しあった二人は、朝焼けの中いずこかへと立ち去るのだった。

最終結果:成功

完成日:2023年03月23日


挿絵イラスト