【旅団】Special Spa
これは旅団シナリオです。
旅団「【Die Verfurlen】」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。
シルバーレイン、北海道札幌市すすきの。
同市随一の歓楽街の裏通り、ひっそりと隠れるように店を構えるカフェ『【Die Verfurlen】』。
その地下にある交流スペースに集った団員達を前に、団長たるニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)、通称ニーナは徐にこう言った。
「皆さん、温泉旅行に行きましょう!」
その一言に、一月ほど前の会話で温泉に行きたいとかそういう話をしていたことを思い出した団員達もいただろうか。
「はい、先日の温泉のお話以降、何処が良いかと色々探していたのですが、やっと決まりまして」
複数の世界まで範囲を広げ数多の候補を検討したが、今回はシンプルにということで本拠たるシルバーレインから選んだそうである。
「場所は北海道東部の山中にある温泉旅館となります。それなりの規模の旅館となっておりまして、雪深い峡谷の風景が一望できる露天風呂が一番の売りとなっているそうです」
通常の男湯女湯に加え、時間貸し制で混浴可能な家族風呂があり、そのいずれでも明け方に行けば日の出を拝むことが可能なのだそうな。
「家族風呂は水着着用は任意とのことです。他のお客さんはいないので多少は羽目を外しても大丈夫だと思いますが……やり過ぎはいけませんよ?」
念押しがフラグめいて聞こえてしまうとか言ってはいけない。が、流石に施設を破壊するような行為は避けるべきだろう。
また、旅館には温泉以外にも様々な施設がある。
「卓球も勿論可能なレクリエーションルームにゲームコーナー、あとはエステサロンでマッサージを受けることもできたりします」
他にもあるかもしれないので、こんな施設は無いかというのがあれば聞いて欲しいとニーナ。
「お食事はお部屋の方へ運んで頂く形となってます。山の中ではありますが、海からも比較的近いので色々なメニューが出るようですね」
因みに部屋は全員で一つの大部屋に泊まる予定だが、希望者あれば男女で分けることも考えているとのこと。この場合も食事は同じ部屋でとなるが。
「と、このような処となるでしょうか。それでは皆さん、楽しい旅行にしましょうね!」
そう結び、何やらウキウキした様子で準備を始めるニーナ。と、不意にその手を止めて。
「……えっちなことはダメですからね? ホントにダメですからね!?」
思い出したような|念押し《フラグ建立》であった。
五条新一郎
やっぱり温泉は良いものです。
五条です。
さて此度は第六猟兵本編では初の旅団シナリオ。温泉旅行です!
ポロリももしかしたらあるかもしれません。
●このシナリオについて
このシナリオは『旅団シナリオ』です。
旅団『【Die Verfurlen】』の団員であるPC様のみの採用となりますのでご了承くださいませ。
また、プレイング次第ではお色気強めの展開になる可能性もあります。
●舞台
シルバーレイン、北海道東部にある温泉旅館。
施設内容詳細はOPをご参照くださいませ。
●NPC
ニーナことニーニアルーフ(f35280)が同行します。絡みたい方はプレイングにてどうぞ。
お色気展開に巻き込むなどお好きにお使いくださいませ。
●プレイングについて
タグ及び旅団にてプレイング受付期間を設定致しますので、その期間内でプレイングを受け付けます。
お色気展開含めたアドリブ歓迎という方は、プレイング冒頭に『V』を付けて頂ければ、やり過ぎにならない範囲内でイロイロやらせて頂きます。
お色気展開に巻き込まれたくない方は、プレイング冒頭に『X』を付けて頂ければ、お色気展開からは距離を取る形で書かせて頂きます。
(特に記述無い方に関してはプレイングから判断致しますが『V』ありの方ほどがっつりお色気展開に絡むことはないと思われます)
それでは、皆様の楽しいプレイングお待ちしております。
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
👑1
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
秋月・華音
V
POW
「せっかくの旅行ですもの、水着で皆さんと温泉を楽しみますわ」
お気に入りの真っ赤なビキニを身に纏い温泉に行きますわ!
お風呂の後はどうしましょう?
お誘いがあれば応じてみるのも良さそうですわね。
「ふぅ、温泉最高ですわ…」
まったり皆さんと寛ぐ、癒しの時間ですわね…
肩こりも楽になりますし来てよかったですわ!
さて温まりましたし次の楽しみに参りましょう!
では温泉から出て…え?足元に石鹸?
ひゃぁ!?
だ、誰も巻き込んでいない事を祈りますわ!
み、水着が脱げて…最悪ですわー!
「気を取り直してエステですわ…」
先程の痴態は忘れてエステで癒されますわ!
特性のハーブティーを頂き、アロマ香る中施術を受ける…最高ですわね!
ニーナさんもエステ、参加されてるのかしら?
んっ♥オイルが暖かくてヌルっとして…え、目隠しをしますの?
「ひゃに、ひへぇぇ♥あっ♥ふあぁぁ♥」
どうしてですの、力抜けへぇ♥
こんにゃ、ぬるぬる、揉まれ、ひゃめぇ♥
でとっくすしちゃいますのぉ♥
りんぱ流されちゃいますわ♥
んひっ♥
おっきいのキますのぉ♥
リンドー・ハルノ
V
混浴と分かって来てるけどやっぱ躊躇うぜ
…クノイチは実際豊満だった?そっちじゃねえよ!
ほら、やっぱボロボロのツギハギだらけだしな
ってわけでニーナ、美容とか豊乳とか色々教えろ
別にいいだろ、オレ女らしい事あんま知らねえんだよっ
とか絡みつつサウナや温泉をメインに楽しむぜ
酒か?オレはやめとく
本当に21歳か誰にも分からねえし
…マッサージにオイル?まあいいけど、
変な事したら放電するからな?(じとー)
ひゃんっ!?
馬鹿野郎、変な声出させるなよ!
だからオレの胸を揉むな!
※経緯・下手人・反撃は一任
飯やカラオケには間に合えば付き合うが
自分の番じゃない時は月でも眺めて独り物思い
歌う時は夜のハイウェイに合いそうなテクノ
儀水・芽亜
X
北海道は、旅団までは来てもその他地方まで脚を伸ばす機会はなかったのですよね。ニーナさん、企画ありがとうございます。
温泉では、白の湯浴み着を借りて混浴温泉に入りましょう。
皆さん、『元気』ですねぇ。まあ、チラ見する程度なら? いえ、やっぱり目の毒です。
お食事は宴会場ですか。海の幸に山の幸、豪勢ですねぇ。
お酒がいける方は持ち込んだワインをどうぞ。シャルドネの'18年ヴィンテージです。お返しは、日本酒をコップでいただきましょう。
宴会場にはカラオケがあるのが常ですね。フリッカースペードとしては見逃せません。ヒーリングヴォイス込みで癒やし系のJ-POPを歌いましょう。
次はグリゼルダさんにマイクを渡して。
ロウガ・イスルギ
V
温泉旅行でリフレッシュといきますか!序にこの機会に親睦を深めるのもいいかも、な
まずはひとっ風呂!混浴?まあ見られても構わんぞ
抑々タオル位で隠せるサイズじゃないモンでね。ナニがとは言わんが!
団長がエステ行くとの情報を得たので施術師に紛れて直々に労いましょ
防音バッチリの個室用意しましたんで是非どうぞ!
身体も心も揉み解しましょうぞ、精出して(意味深)頑張ります!
(もし団長以外も希望者いたらVX選択に応じ対応)
ふう、一仕事したら腹減ったなあ、飯だメシ!
酒もあるとは嬉しいな、頂こう
カラオケもあるのか?まあ歌は遠慮しとこう観る専門で!
夜も更けたしゆっくり寝るか……
あれ、アンタ?続きがご所望か。喜んで……
至宝院・樹沙羅
V
みんなとの親睦も深められるし、温泉好きとしては願ったり叶ったりね。ハメを外しすぎないか心配だけれど、団長さんが見ていれば大丈夫よね……?
露天風呂でゆったり。雪国の空気の冷たさとお湯の温度差が癖になるのよね。少しのぼせてきたから湯船の縁で休憩を。タオルは巻いているけれど、すっかり濡れて張り付いて透けてしまっているわね。時折ロウガさんの隠しきれない物を目で追ってしまったり。あくまで医学的な好奇心よ?
みんなでご飯を食べてお酒を飲んで、カラオケの後廊下でばったりロウガさんに遭遇。お風呂の事を思い出して、まじまじと体を観察してしまうわ。不躾なお願いだと思うけれど、少し獣人の体を診せてもらえないかしら?
グリゼルダ・クラウディウス
X
雪山の温泉旅館とは風情があるな
皆と共に日頃の疲れを癒すとしようか
此方の温泉は、見事な雪化粧の渓谷の風景が一望できるのか
湯の温みに包まれながら、この景色を肴にして、杯を傾けるとしよう
温泉のあとは、豪勢な食事を堪能するとしようか
どれも美味だが、余は、特にこのジビエ料理が気にいったぞ
この野趣あふれる味こそ、竜の晩餐に相応しい
温泉に馳走と、良い具合に酒も回ってきて、心地良い気分だ
興が乗ったぞ
特別に、余の美声を聞かせてやるとしよう
選曲は「ユーベルコード」だ
ニィナ・アンエノン
V
わぁい、温泉だぁ!
ここでいわゆる裸のお付き合いをして親睦を深めようって事ね、にぃなちゃんそーゆーの得意だから任せて☆
まずはやっぱりお風呂だよね!
家族風呂ならしっかり距離を縮めて触れ合えちゃうぞ☆
まずは団長のニーナちゃんをお誘いして……他の子も来てくれると嬉しいな、誰でも大歓迎!
いっそ湯船がぎゅうぎゅうになるくらい誘いたいぞ☆
お風呂で気持ち良くなった後は、軽くお酒とか飲んでまて気持ち良くなっちゃおう。
あ、マッサージあるの?
にぃなちゃんも混ぜて混ぜて!
しっかり隅々までほぐして欲しいな。
じゃあ次はにぃなちゃんがマッサージしてあげる!
オイルとか使って、お風呂以上のお肌の触れ合いをしちゃうぞ☆
彩波・いちご
V
皆で来て一人男湯というのも寂しいので、わりと私にはいつものことでもありますし、普通に混浴には来ていますけれど…
…もしかして私の性別勘違いしてる人とかいたりします?いませんよね?
ともあれ、ニーナさんはじめ旅団の皆さんとも湯船の中で談笑を
ニーナさんも駄目押ししてましたし、さすがにお約束なえっちな展開はありませんよね?
脚を滑らせて転んだり、その際に誰かの何かを掴んだり揉んだり、私の性別に気付いて興味津々になったりとか…ハメ外したりとか…ないですよね?(フラグ
ニーナさんと何かあってスイッチ入らないかは心配ですけども(フラグ2
後はマッサージとかいいかもですね?
受けるだけでなく、する側も体験したり?
天音・すず
アタシはこういうのは初めてだからお手柔らかに頼むぜ!
優しくしてくれよな…。
まずこれをキッカケに、みんなと仲良くなりてえな。
温泉?混浴?
どちらも大歓迎だぜ!
風呂上がりには、旅館のゲームコーナーで誰かと卓球対決とかやりたいぜ。
あとはゲーセンとかによくあるパンチングマシンとかあったらやりてえな。
これでよろしく頼む!
詠雛・歩音
V
温泉で親睦を深める…いいわね、裸の付き合いってやつよね。
というわけで温泉へ。浸かりながらお話とかしてみたいわ。
景色も皆も綺麗ね。
リンドーさんはそんなに卑下しなくてもいいと思うの。ね、ニーナさん。
触られることがあったら恥じらいつつも受け入れて
お返しに触ったりするわ。(お相手はお任せします)
お酒は飲めないけど食事はいただくわ。
本当に豪勢…これほどのお食事は滅多に食べられないから、ちょっと感動よね。
カラオケもあるのね。(神としての)得意分野だけど…今回は聞き役に徹していましょう。
上手な歌も、上手ではなくても楽しく歌うのも、どちらもいいことだから
聞いてるだけでニコニコしちゃうわね。
シルバーレイン、北海道東部の某所。雪深き山中の温泉旅館を訪れた、旅団『【Die Verfurlen】』の団員たる猟兵達。
「ほう、実に風情のある旅館であるな」
その店構え、そして玄関へ一歩踏み入って一行を迎えた光景。それらを見渡し、グリゼルダ・クラウディウス(氷銀竜・f39138)は口元を綻ばせる。相応の年月を重ねたのであろう古めかしさはありつつも、確と整えられ清掃された様相からは、寂れたり草臥れたりした印象を感じさせぬ。
「此処ならば存分に日頃の疲れが癒せそうだ」
「おう、温泉でリフレッシュといきますか!」
期待を高めるグリゼルダに応えて、ロウガ・イスルギ(白朧|牙《我》虎・f00846)が豪快に笑う。その表情には温泉への期待がありあり浮かんでいた。
「序に、この機会に親睦も深めるのもいいかもな」
そして温泉といえば、とロウガが一言呟いたその直後。
「いいわね、裸の付き合いってやつよね」
「裸のお付き合い! 任せて、にぃなちゃんそーゆーの得意だからっ☆」
何処か楽しげな笑みを浮かべつつ詠雛・歩音(光奏神姫・f21126)が宣うに続き、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)がはしゃぎ気味の反応を見せる。何やら大いに期待している様子であるが、果たしてどのように得意だというのだろうか。
「あー、アタシはこういうのは初めてだからお手柔らかに願いてえな……」
そんな二人の様子に、天音・すず(強化人間のゴッドハンド・f36901)は気恥ずかしげに頬を掻く。視線も明後日の方向へと泳いでいた。
「し、親睦を深められるのは願ったり叶ったりなのだけれど……」
至宝院・樹沙羅(戦場の癒し手・f36063)もまた、不安そうに歩音とニィナの様子を見ている。元々温泉好きというのもあるので親睦を深めること自体に異論は無いのだが、流石に羽目を外し過ぎるのは心配である。
(団長さんが見ていれば大丈夫よね……?)
と、旅館の女将と挨拶を交わしている団長、ニーナの背中へと頼るように視線を向けるが。それはそれで不安は拭えない気もするししないかもしれない。
挨拶の後、部屋への移動を始めたところで、ニーナの隣を歩む儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)が声をかける。
「思えば、北海道って札幌まではともかく他の地方へ足を伸ばす機会が無かったのですよね」
「あー……そういえば確かに」
実感をもって頷くニーナ。兎角広大な北海道だが、銀誓館学園としての活動の場はほぼほぼ札幌に限られており、他の地方へ行く機会は皆無に等しかった。精々、毎年春に知床半島カムイワッカのファンガス群生地を訪ねるぐらいだっただろうか。
「ですので、今回は良い機会を作って頂けたということで……ありがとうございます、ニーナさん」
「いえ、私の方こそご参加ありがとうございます」
互いに礼を伝えあう二人。勿論、此度の機会を楽しみたいという意志は共に同じく。
「せっかくの旅行ですもの、皆さんと一緒に色々楽しみたいですわ!」
一歩後ろで二人の会話を聞いていた秋月・華音(荘厳華麗・f33304)の言葉に、二人も後に続く一同も頷くのであった。
●
部屋に荷物を置いた一同は、早速目玉の温泉へと向かう。混浴の家族風呂を借りているので、此方で楽しむ方向だ。
「わぁい、温泉だぁ!」
脱衣所から浴場へと足を踏み入れ、ニィナが嬉しそうに声を上げる。中心に岩で囲いを作った露天風呂があり、傍らには洗い場。溢れる湯気が、如何にも温かそうな様相を呈する。
「ん……っ。流石に寒いわね……でも、これでこそよね」
真冬の北海道ということで外気はとても冷たく、樹沙羅はタオルを巻いた身体をぶるりと震わせる。だが、この空気の冷たさと湯との温度差こそが快を齎す。温泉好きの樹沙羅ゆえにこその趣向と言えた。
「ほら、リンドーさんも一緒にね?」
「お、おぅ。オレも水着持ってくりゃ良かったかな……」
裸体を晒す歩音に手を引かれて浴場へやってくるのはリンドー・ハルノ(|疾風迅雷の参頭狼《トライウルブス》・f36633)。外気に露なそのバストは豊満である。
「リンドーさんもスタイル良いんだし、そんな恥ずかしそうにしなくても良いのよ?」
「いやそっちじゃねえよ、ほら、オレの身体って、こう……」
歩音の指摘に乳白色の頬を朱に染め、恥ずかしげに呟くリンドーが示すのは、その身に幾つも走った継ぎ接ぎのライン。死んだ筈の彼女が有するその肉体は、不死なる者たるを示すが如く肉を継ぎ合わせたかのような接合線が随所に入る。
「そんなに卑下しなくたって、それもそれで魅力的なのに。ねぇ、ニーナさん?」
「……え、あ、そ、そうですね……」
リンドーのそんな様相も、彼女の魅力を損ねるものではないと判ずる歩音、傍らのニーナへ話を振るが、何故か返答が鈍い彼女。見れば、視線は歩音ではなく、別の方向を見ている。何処かといえば――
「……うん? 気になるのか団長?」
視線に気付いたロウガが振り向く。其処にあった『もの』は、大変に大きかった。一応タオルで隠そうとはしていたが、完全に収まりきっていない。ニーナの視線は、其処にこそ突き刺さっていた。
「ふぇ!? い、いえいえいえいえいえそんなことは!? ロウガさんのがすっごく大きくて目を離せなくなっていたとかそういうことは全くありませんからー!?」
気付かれたことにパニックを起こす余り、彼の言葉を実質全面肯定してしまいつつたじろぐニーナ――と、そこに。
「え!?」
「あ……きゃーっ!?」
丁度そこに歩み寄っていた人影にぶつかり、たじろぐ勢いでバランスを崩してしまってそのまま転倒。相手を下敷きにするような形で、うつぶせに倒れてしまった。
「はうぅぅぅ……」
「もごっ、もごもご……っ!」
目を回すニーナと、その胸に顔を埋められてもがく人影の主――彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)。浴場に入っていきなり起こったこの事態。とらぶる体質の彼と、自爆体質のニーナが合わされば、最早起こらない方が異常とすら言えた。
「元気ですねぇ」
「うむ、元気だ」
そんな騒動を、湯浴み着姿の芽亜と裸体を晒すグリゼルダが一歩退いた位置から眺めていた。
入浴前からひと騒動ありつつも、早速温まるべく一同は湯へ浸かってゆく。最初に入っていったのはニィナだ。
「よーし、皆でぎゅうぎゅう触れ合っちゃおう☆ ほらニーナちゃん、こっちこっちー☆」
「えぇっ!? あ、ちょ、ちょっと待ってくださいー!?」
ニィナが手を伸ばしニーナを抱き寄せにかかる。驚くニーナだがニィナの手を拒むつもりは特に無いらしく、ほぼ無抵抗でニィナの手に引っ張り込まれてゆくニーナであった。
「ニーナとニィナで実際ややこしいな!?」
文字でなら区別はつくものの、音にするとほぼ同じである。思わずツッコミを入れてしまうリンドー。
「そんなリンドーちゃんもむぎゅー☆ 歩音ちゃんもー!」
「あ、アイエエエエ!?」
「あらあら、スキンシップね♪」
そのニィナに引っ張り込まれ、思わず妙な悲鳴を上げてしまうリンドー。更に歩音も引っ張り込まれるが、此方は寧ろ自分から引き込まれていった。のみならず。
「折角だし、華音さんといちごさんと……樹沙羅さんとすずさんも引き込んじゃいましょうか」
「お、そうだねー! 華音ちゃんといちごちゃんも樹沙羅ちゃんとすずちゃんもいらっしゃーい☆」
などとニィナに囁いて、二人がかりで華音といちごと樹沙羅とすずを引っ張り込みにかかる。この流れに気付いていなかった四人人に反応などできよう筈もなく。
「え、ちょ、な、何ですのー!?」
「ま、待ってくださいー!?」
「あ、あの、これは……!?」
「いやだから優しくしてくれってー!」
そのまま為す術なく、四人ともがニィナを中心とした輪の中へ引き込まれてしまった。
「えへへへへ、むぎゅー☆」
湯船の中、八人で密着しあうその状態に、満足げなニィナ。外気で冷やされていた身体が温まってゆくのが感じられるだろうか。
「……こ、こういうのも悪くはない……かしら?」
「そ、そうですわね。力を抜いてまったりすれば……はふう」
温泉の熱が身体に浸透してゆく感覚の心地良さには変わり無い。そう思い至った樹沙羅の言葉に、華音も同意し。身体の力を抜き、赤いビキニだけを纏った肢体を湯の中で寛げれば。
「はぁ……温泉最高ですわぁ……」
一気に表情が緩み、心底癒されている様が全面となった。とても気持ち良さそうである。
「いや切り替え早くねぇかな」
思わずすずからのツッコミが入る。が、彼女としてもこの温泉が気持ち良いことを否定する意志は無いので、すず自身もまた身体の力を抜いてリラックスしていた。
「良いじゃない、細かいことは気にせず楽しみましょう? 風景もとても綺麗だし――」
そんなやり取りに余裕げな笑みを浮かべつつ歩音。視線を一時、温泉の端から見える峡谷の雪景色へと移す。深く広い峡谷の雄大な景観が、陽光を浴びて煌めく様はとても美しいが。
「――皆も、とっても綺麗だしね?」
徐に視線を己と密着する皆に向け直し微笑む。視線が合ったリンドー、再び恥ずかしげな表情を赤く染めて。
「いやだからオレはそんな……ニーナとかの方がよっぽど綺麗じゃねぇかよ」
「ふぇ!? い、いえ私もそんな……」
歩音に加えリンドーにも言われ、ニーナもまた負けじとばかりの勢いで赤面する。
「ってか何でそんな美人なんだよ、美容とか豊乳とか色々教えろよっ」
「と、特に大したことをしているわけではー!?」
「あ、にぃなちゃんも知りたいなー☆ ニーナちゃんの魅力の秘密!」
「ニィナさんまでー!? ふぁ、そ、そこはやめ、あぁんっ!」
半ば照れ隠し気味に絡んできたリンドーに加え、ニィナまで乗ってきたことに半ばパニック状態のニーナ。何やら漏れてきた妙な声は果たして誰が何をしたのか。
因みに、一つ思い当たる節として返ってきた応えは『蟲』だそうだ。即ち彼女の体内に巣食う白燐蟲と黒燐蟲の影響ではないか、とのこと。
「あ、あの、皆さんそんなに動かれると、色々当たって……!」
一方、彼女達とも密着するような状態になっているいちごにとっては気が気ではなかった。何しろ誰かが動くたびに、同じく密着している誰かの身体が押し付けられてくるのだから。
「気にすること無いと思うわよ? ご褒美みたいなものだと思えば」
「そういうわけにはいきませんよっ」
自分もいちごに密着する状態となっていることにやや恥じらいを感じているようではありつつも、其も悪くはないとばかりに歩音が告げるが。確かに現状密着しあっている女性陣は全員が豊かな肢体の持ち主故に、密着すればその肉感が余すところなく伝わってきて大変に心地良い感触を齎すのだが。其を役得と考えるより先に羞恥を感じるのがいちごであった。
「と、とにかく、そろそろ離れないと……あ、あれ、腕が……」
これ以上は自分が気まずい、ということで密着状態を脱しようとするいちごだが。見ると、腕が何処かに引っかかってなかなか抜けない。引き抜こうと前後へ動かしたり、手指を動かしたりしてみるが。
「んぁぁぁぁっ♪ ふぁ、そ、そこはだめですぅぅ♪」
「ってニーナさん!? こ、これはまずい……」
何やらニーナが甘い喘ぎを上げ始めた。彼女と何度か任務に赴いた際の事態から、この状態のニーナの危険性をいちごは知っていた。即ち。
「はぁぁ、もっと、もっとしましょぉ……っ♪ 皆さんでぎゅーって、むぎゅーってぇ♪」
「やっぱりぃぃぃっ!!」
即ち、すっかり普段の理性が飛んでしまい快楽主義者の本性が出てしまった状態、『スイッチが入った』と表現される状態である。暴走を始めた欲求のまま、いちごへ抱きつきにかかるニーナ。更に。
「いちごちゃんー、もっともっとぎゅーってしようよー☆」
「もう結構ですぅぅぅ!?」
逃げようとしていたいちごに気付いたニィナも抱きついてきて。結果、ニーナとニィナのサンドイッチ状態となってしまったとか。
「ああ、団長さんがあんなことになって……」
ストッパーとして頼りにしていたニーナが寧ろ一番暴走している状況に、思わず目を逸らす樹沙羅。と、その時。
「……うん?」
少し離れた位置で湯に浸かりつつ見守っていたロウガと視線が合う。いや、微妙にズレていた。それは湯の中、彼の下半身へ――
「樹沙羅もコレが気になるのか?」
「っ。……え、ええ。正直に言えば」
視線の行方にロウガが気付き、言及されれば樹沙羅の身が跳ねる。とはいえ、下手な隠し立ても良くない。素直に、彼の大きなそれを見ていることを認めるが。
「でも。あくまでも、医学的な好奇心よ?」
「ん、そっか」
続けられた樹沙羅の言葉が本心か否かを問うのも無粋だろう。それ以上の追求はせず、ロウガは頷いた。
「やはりあちらは元気ですね」
「そうだな。だがまあ、大いに結構なことではあるだろう」
そんな騒ぎをやや距離を取って眺めつつ、芽亜とグリゼルダは落ち着いた様子で湯に漬かる。此方は純粋に温泉と風景を楽しんでいるようだ。
騒がしい一角から、リンドーとすずが離れるのが見える。どうやら併設のサウナに向かうようだ。其方も悪くはなさそうだが、今はやはり。
「しかし、話に聞いていた通りの見事な眺めであるな」
グリゼルダは視線を外へと向ける。深く切り立った渓谷は遠くまで広がり、麓の街の風景と、その先の海までが垣間見える。谷間を埋める木々は無論のこと深く雪を被り、岩肌共々に見事な雪化粧を施された姿を其処に晒す。
「全くです。温泉と共にこのような風景を堪能できるというのは、とても素晴らしいですよね」
頷き、芽亜も眼下に広がるその光景を見渡す。初めて目にするその光景は大変に美しく。
「この眺めを肴に、一つ呑むとしようか。芽亜もどうだ?」
と、其処でグリゼルダが傍らから持ち出してきたのは徳利と二つの御猪口が載った盆。曰く、旅館からのサービスで地酒が提供されたのだとか。
「では頂きましょう。好みはワインですが、日本酒も良いものです」
頷き、御猪口を手にする芽亜。互いに相手へ酌をしあい、くいっと一杯。
「――うむ。美味い。湯の温みの中で美しき風景を肴に盃を傾ける……至上の一時だな」
ほぅ、と一息つきながら実感と共にグリゼルダ。芽亜もまた、酒の味わいを堪能するように瞳を閉じているようで。
「やはり、こういうのも良いものですね。……実は今回、夕食の際に呑もうとワインを持ち込んでいるんです」
ややあって瞳を開くと、口にした酒の味わいを語るに続いて切り出す。ほう、と興味深げなグリゼルダ。
「勿論、旅館の方からの許可は得ています。今回の為のとっておきですので、ご期待くださいね」
「それは楽しみだ。期待しておくとしよう」
請け負う芽亜に、笑みと共にグリゼルダは頷いた。
やがて家族風呂の利用時間の終わりが近づいてきた。名残惜しさを感じつつも、湯より上がってゆく一同。
「ふう、肩こりも随分と楽になりましたし、来て良かったですわー!」
華音はとりわけ堪能したといった様子で湯より上がる。次の楽しみへと向かうべく歩き出した、その時である。
「――え?」
足の裏に感じる、ぬるっとした硬い物体の感触。直後、思いっきり後ろへと流れてゆく足。その反動で、華音の身体は前方へと跳躍してしまう。
「……ひゃぁぁぁぁっ!?」
「え……わわわわ!?」
そしてその先にはいちごがいた。全く対処行動を取れぬままに激突してしまう両者、その勢いで数度転がって漸く止まったその時には。
「い、いちごさんー!? さ、最悪ですわー!?」
停止した二人は、何がどうしてそうなったのか、いちごの顔が華音の豊かな胸の谷間に埋まるような状態となっていた。しかも回転の途中で水着が脱げてしまったらしく、その胸は完全に晒け出され、しっとりとした乳肌で以て気絶したいちごの顔を余すことなく包み込んでしまっていたのだった。
●
「き、気を取り直してエステですわ……」
そんな痴態を演じてしまったことに気落ちしつつも、其を忘れようと自分に言い聞かせる華音。
彼女が今いるのは、旅館に併設されているエステサロン。夕食までの時間を使って、一部メンバーと共に受けに来たものだ。
デトックス効果を促進する為、と出された特性のハーブティーを飲めば、身体の中に温泉で温まったものとはまた別の熱が熾きるのが感じられる気がしてくるとか。
「さ、災難でしたね……」
そんな華音の隣、ニーナもなんだか恐縮げな様子で座っていた。温泉を出る直前まで散々痴態を演じていたのが大変に恥ずかしかったらしい。
「もー、そんな気にすることないのにー☆」
「いや、そういうワケにはいかねぇだろうよ……」
あっけらかんと言ってのけるニィナと、そんな彼女に突っ込みを入れるリンドー。今回エステを受けにきたのはこの四人である。
「それでは皆さん、個室の方へどうぞ」
やがて施術士の男性が案内に訪れる。其に従い、四人は其々に個室へ入ってゆく。
そして個室内にて。
「……え、目隠しをしますの?」
渡されたアイマスクでの目隠しを求められ、戸惑う様子を見せる華音。だがプロの指示ならば、と大人しく従う。
「め、目隠し……ですか……? な、なんだか……いえ何でもないです」
ニーナは妙にドキドキしながら目隠しを装着する。恐らくマゾ心を刺激されている。
「わー、目隠しされてイロイロ触られちゃうって、なんだかイケナイ感じだねっ☆」
ニィナは更に直接的な表現で感想を口にしつつ目隠しを装着。
「目隠し……? まあいいけど、変なことしたら放電するからな?」
リンドーは唯一警戒心を示し、じっとり睨みながら脅しを加えつつも。指示には従う。
一方、別室――施術士達の待機スペースでは。
「……何で私はこっちにいるんでしょう……?」
戸惑いを隠せない様子のいちごが其処に居た。
「いいじゃないか、自分の手で皆をリフレッシュさせてあげようってな」
応えるのはロウガ。ニーナや華音達がエステを利用するとの情報を得た彼は、こうしていちごを誘って共に施術士に志願したのである。
「まあお客さんと顔見知りだってなら、お任せしても良いでしょう」
との責任者の判断により許可も出た。いちごは未だ戸惑っているようだが。
担当はそれぞれ、ニーナはロウガが、ニィナはいちごが。華音とリンドーはサロンの施術士達がそれぞれ担当する流れとなった。
まずは華音。着用していたバスローブを脱ぎ、全裸でベッドにうつ伏せとなっている。
「ひぁぁんっ♪ オイル、ぬるぬるしますのぉ……♪」
その背へ施術用のオイルが垂らされれば、背筋を震わせて甘い声を漏らす。元々が敏感な体質の彼女、更に目隠しまでした状態でオイルが垂れてくれば其に感じる刺激の程は結構なものだ。
「んぁっ、ふぁ、っは、はぁぁ、あはぁぁぁぁ……♪ しゅごぉい……からだじぇんぶ、にゅるにゅるしますのぉぉ……♪」
そのまま全身へとオイルが塗り広げられていけば、生暖かくぬるぬるとしたオイルに全身を包まれる感触に甘い喘ぎが漏れてしまい。身体からはすっかり力が抜けてしまった様子。
そんな身体へ、いよいよ本格的な施術が開始。施術士の両手が、大きく盛り上がった尻から細く引き締まった腰にかけてをぬるりと押し揉めば。
「ひぁぁぁぁっ♪ はひっ、ひゃに、ほへぇぇぇぇ♪ ふぁぁぁぁぁ♪」
漏れ出るは蕩けきった嬌声。背中や尻から全身へ流し込まれるかのような快楽の感触が、肉体を思い切り脱力させて、代わってえも知れぬ快感を流し込んでくる。
「ひから、ぬけちゃ、はぁぁぁ、はひぃぃぃぃぃ♪」
完全に無抵抗と化した華音は、施術士の手の動きに合わせて蕩け切った喘ぎを上げて身悶えし。口の端からは涎さえ漏らしてしまって。
「んぁぁぁぁぁっ♪ こ、こんにゃ、にゅるにゅるもまれ、ひゃめれふのぉぉぉぉぉぉ♪」
更に大きく突き出た双房をも揉みしだかれれば、柔らかな乳肉が指の間で弄ばれる感覚に只々翻弄されて喘ぎ鳴く。
「あひぃぃぃっ、で、でとっくすひちゃいまふのぉぉぉぉ♪ りんぱ、りんぱながされひゃいまふわぁぁぁぁぁ♪」
全身に注がれる猛烈な快楽が流れ巡るその感覚に悶絶する華音、限界へと至るまでは然程長くなく――
「んひっ、お、おっきぃのキまふのぉぉぉぉ♪ んぉほぉあぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
そして快感の頂へと押し上げられて。そのまま、果てていった。
一方のリンドー。
「ひぁっ!? な、なんだこれ、ぬるぬるして……っ」
背中へと塗り広げられてゆくオイルの感触に、戸惑いの声を漏らすリンドー。其は背中から尻、脚へと至り。
「んぁ、っふぁ、はうぅぅ……っ。ば、馬鹿野郎……っ、変な声出させるなよ……んぁぁぁっ!」
施術士の手が動くたびに漏れてしまう甘い声。己の口からそんな声が出てしまうことが信じられない、と思わず文句が出てしまうが。
「はぅっ!? んぁ、っふぁ、はふぁぁぁぁぁ! む、胸を揉むんじゃねぇ……!」
更には腹を経由して、形よく大きく膨れた双の肉房をも揉み回されれば。抗議の声を上げつつも、注がれる快感に思わず反撃も忘れてしまって。
「はひぃぃぃぃぃっ♪ ふぁ、な、なんだこれ……っ、こんなの知らな……はぁぁぁぁぁんっ♪」
そして本格的に始まる施術。快感のツボを的確に抉り抜くかのような指の圧力が、未知の快感をリンドーの身へと注ぎ込んできて。思わず蕩けた声が漏れてしまう。
「ふぁぁぁっ、んぁ、は、あはぁぁぁぁっ♪ やめ、やめろぉぉぉ……っ、こんな、こんなのはっ、ふぁ、は、あぁぁぁぁぁんっ♪」
尚も全身をマッサージされれば、全身を駆け巡り満たしてゆく快感。未知の感覚に恐怖を覚え制止にかかるリンドーだが、施術士の手は止まらず、彼女自身も最早抵抗叶わず。
「やめ、やめろぉぉぉぉっ♪ オレはこんな、こんなのはぁぁぁぁぁ♪ はぁぁぁ、あふぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
その圧倒的な快楽の波に押し流されるまま。リンドーは一際高く甘い声を上げて、果てていってしまった。
「さぁて団長、身体も心も思いっきり揉み解しましょうぞ!」
「え!? ロウガさん何で、ひぁぁぁぁんっ♪ んぁ、これはぁぁぁぁぁ♪」
ニーナのところへと入室したロウガ、早速その背へとオイルを滴らせてゆく。急にロウガが現れたことで驚いたニーナだが、オイルを背中に塗られれば溢れる快感に身体が脱力して。
「大丈夫ですよー、オレに全部任せてくださいな」
「ぁひっ、ふぁ、んぁぁぁぁぁ♪ そ、そんなトコまでぇぇぇぇぇ♪」
背中から尻、胸。肉の膨らんだ部位を集中的に塗り広げていけば、ニーナの声は瞬く間に甘く蕩けて。完全に脱力しきった身体は最早無抵抗。
「おー、団長この辺凄く凝ってますな」
「きゃふぁぁぁぁぁぁっ♪ そこっ、そこしゅごいきもちいぃれふぅぅぅぅ♪ もっと、もっとぐりぐりってぇぇぇぇぇぇ♪」
快楽のツボと思しき部位をロウガの指が圧迫すれば、スイッチの入りきったニーナは盛大な嬌声でもって快感を叫び。発情しきった全身をがくがくと痙攣させてしまう。
「よーっし、それじゃあ仕上げといきましょうか。精出していきますよぉ!」
「はひっ、んぁ、んふぉぁぁぁぁぁぁぁ♪ 奥ぅぅぅぅぅぅぅ♪ 奥までぐりぐり届いてっ、んぁ、っふぁ、はぁぁぁぁ♪ あふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
ロウガの特別マッサージメニューにより、己の奥の奥までを激しくマッサージされてニーナは一際激しく喘ぎ鳴き、四つん這いの状態で腰を振りさえもして。最終的に白いオイルを身体の中にしこたま塗り込まれていったとか。
「しっかり隅々までほぐしてね、いちごちゃんっ♪」
「は、はいっ」
オイルでぬめるニィナの身体を、細い手指で揉みほぐしてゆくいちご。背中や太腿はしっかりと刺激して快感を送り込んでゆくも。
「ぁふっ、んぁ、っふぁ、はふぅぅぅぅ♪ もっとぉ……おっぱいとかお尻とかも、いっぱいしてぇぇ……♪」
「そ、そんなことは……っ、わ、分かりました……」
そうした部位を避けていたことをニィナに悟られれば、最早誤魔化すことはできず。彼女の膨らみを揉み捏ね搾りたてれば、甘い喘ぎ声と共にニィナの背筋がぞくりと震え、快感の深さを雄弁に物語る。
「こう、こうですか……っ!」
「はひぁぁぁぁあぁぁぁ♪ それっ、それいぃのぉぉぉぉぉぉ♪ イクっ、もうイっちゃ、っふぁ、っはぁぁぁ、あふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
そのまま胸から尻、其処に至る身体各所を入念にマッサージされ続ければ、溢れる快感が全身を駆け巡り、増幅を重ね――そして果ててゆく。
「はぁ、はぁ……これで、どうでしょうか……あぁっ!?」
ニィナを一度頂へと導き、これで一仕事終えたと見たいちごだったが。突如、その身を逆に押し倒される。
「えへへ、今度はにぃなちゃんがマッサージしてあげるねぇ♪」
恍惚の笑みで告げる全裸のニィナ。そのままいちごの身へとのしかかり、オイル塗れの全身で以て、彼の身を余すことなく撫で回し揉み捏ねていったとか。
●
エステに向かった者達が各々大変な状態になっているその頃、その他の面子は何をしているのかといえば。
「せいっ!」
「はっ!」
「とりゃっ!」
「ふっ!」
交互に響くすずとグリゼルダの声。合間にピンポン玉の跳ねる軽快な音。
此処は旅館のゲームコーナーに併設された卓球場。卓球で誰かと勝負したいというすずの要望にグリゼルダが応え、こうして対戦と相成ったものだ。
勝負は一進一退、お互いがリードを奪い合う互角の展開。既に両者ともポイントはマッチポイントを超えているが、どちらも決勝点を入れられず幾度もデュースを繰り返している。
それでも現在はグリゼルダがアドバンテージを取っている状況。次でポイントを取れれば彼女の勝ちだ。
「まさに実力伯仲ね……」
「どちらが勝つか全く予想できませんね」
観戦する樹沙羅と芽亜も、勝負の行方を固唾を飲んで見守っている。
「流石にとってもレベルの戦いになってるわねぇ」
審判役を務める歩音も、長く続いたその戦いがどう決着するか見逃さぬとばかり、往復するピンポン玉を注視する。
そして、決着の時は訪れた。
「せぇいっ!」
すずの振り抜いた渾身のスマッシュが、グリゼルダ側のコートを力強く打ち、そして跳ねる。このままグリゼルダの脇を抜けるか――そう見える程の絶対的な速度で放たれたスマッシュは、しかし。
「はぁっ!」
「んなっ!?」
グリゼルダのスイング一閃。振るわれたラケットが見事にボールを捉え、打ち込まれてきたのに倍する勢いで打ち返す。すずも反応こそするものの、打ち返すことは叶わず。そのまま、すずのコートを打ったピンポンは卓球場の端まで飛んでいった。
「いやー、惜しかったなぁ! でも楽しかったぜ!」
「うむ、良い勝負であった」
負けはしたが試合は充実していた、ということですずは晴れやかに笑っていた。グリゼルダの方も満足げな様子である。
「もう一勝負といきたいけど時間が微妙かな……うん?」
予定では確かもうすぐ夕食の時間の筈、と時計を確かめ唸るすず。だが部屋へ戻るにもまだ早い気がする。卓球場を出てゲームコーナーを見回し――それを視界に認めた。
「お? こいつは……」
それはパンチングマシン。鎖で吊ったサンドバッグを殴ることでパンチ力を計測する、シンプルな形状の代物だ。
「ヘビー級ボクサーのパンチにも耐える強度です、ってあるわね。これなら全力でいっても良いのかも?」
横に書かれた説明を歩音が読む。猟兵の全力で殴るとなると壊れてしまう可能性も考えられるが、これなら最悪でも壊れるまではいかないだろう。
「おお、そいつは有難いぜ。それじゃ、遠慮なく……」
ならばと獰猛な笑みを浮かべるすず。コインを投入し、マシンの準備が整ったのを見れば、拳をぐっと握りしめて、大きく振りかぶって――
「……おぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
雄叫び、踏み込み、拳を大きく振り抜いて――サンドバッグの中心点を、渾身の勢いで以て殴り抜いた!
辺りに轟然と響き渡るインパクト音。殴られたサンドバッグは筐体上部へと叩きつけられ、そのまま吊るす鎖を支点とした振り子運動を暫し続ける。傍らのデジタル表示が目まぐるしく数値を変え、計測中であることを示す。果たして、表示されたすずのパンチ力は――
『999.99』
猟兵としても怪力に秀でる方であるすず、堂々の|表示上限突破《カンスト》であった。
●
ゲームコーナー組が部屋に戻ると、既にエステ組も戻ってきていた。
「お、戻ってたか。エステはどうだっ――」
すずが声をかけようとしたが、彼らの雰囲気を察し言葉が途切れる。
華音とニーナは心ここにあらずといった風に呆けた表情を晒し。
リンドーは遠い目をして窓から外を見上げたまま硬直状態。
いちごは顔を真っ赤にして所在なさげな様子で。
ロウガは何やらやりきった表情をしており。
ニィナはやたらツヤツヤした顔をしていた。
「――何があったのかは、あまり聞かない方が良さそうかしら」
「そのようね……」
歩音と樹沙羅も察してそう結論づけ。
「凄かったよ☆」
ニィナのあまりにも端的なその感想を、ひとまず全てとするのであった。
ともあれ、程なくして訪れた仲居が夕食の準備のできたことを告げに来たので、一同は移動を開始。
その頃には、放心していたエステ組も立ち直ったようだ。
「さーて、飯だメシ! どんなのが出るかねぇ」
夕食の場である宴会場へと最初に足を踏み入れたのはロウガ。期待しつつ辺りを見回せば、きっちり人数分の膳の上に種々様々な料理が並べられていた。
「おー、どれも美味しそー☆」
「山の幸に海の幸、豪勢ですねぇ」
目を輝かせるニィナと、感嘆の念を口にする芽亜が其々着席する。事前の情報通り、山中ではあるが海の傍でもあるということで、山と海と其々の料理が幾つも並んでいる。
「新鮮な魚介に山菜……ってか。こういう飯もあるんだな……」
「本当に豪勢……ちょっと感動よね」
リンドーは並べられた料理をまじまじと見つめる。オーガニック食材が貴重なサイバーザナドゥの出身である彼女にとり、純然たる自然の恵みというべき料理群は物珍しく映るのかもしれない。
歩音にとっても、出自が一般人というのもあってかこれほどの御馳走は滅多に食べられぬということで、感嘆を覚えるところであるようだった。
「それでは皆さん、此方をどうぞ」
仲居達が飲み物を持ってきたところで、芽亜も立ち上がる。その手には一本のワインボトル。
「今回の為にお持ちした、シャルドネの'18年ヴィンテージです。今回のお料理にも合うものかと」
近年屈指の当たり年である18年産の白ワインだ。成人済みの面子のもとへ向かい、手ずから注いで回る。
「白ワインかー、美味そうじゃねえか」
「透き通ってて綺麗だねー☆」
「ワインってあんまり飲まねえから興味あるな」
「芽亜さんのお勧めだし、美味しそうよね」
ロウガとニィナ、すずと樹沙羅へ順番に注いでいき。
「先程言っていたワインだな。これも楽しみにしていた」
露天風呂にてワインの件を聞いていたグリゼルダも杯を受ける。
「あー、オレは止めとく。本当は未成年ってオチもあるかも知れねえし」
曰く記録上は21歳ということになっているが、その真偽は自分自身にも分からず本当に成人という保証が無い、という理由でリンドーは辞退。よってこれで全員だ。
返杯として日本酒を注いでもらった芽亜が着席し、未成年の面子へジュースが行き渡れば、ニーナがグラスを手に立ち上がり。
「えー、と。皆さん、今回はお誘いにお応え頂きありがとうございます」
即ち乾杯前の挨拶。年明け早々に訪れたこの世界――シルバーレインの|破滅《カタストロフ》の危機を乗り越え、尚も数多の世界を舞台に戦いは続くと言えど。戦うばかりが猟兵の生ではない。こうしてのんびりと寛ぐ時間があっても良い筈だ――といったことを一通り語った後。
「というわけで、今日は一日思い思いに過ごして日ごろの疲れを存分に癒して頂ければと。それでは――」
一旦言葉を切れば、全員がグラスを手にして。
「――乾杯!」
「「「「「「「「「「乾杯ー!!」」」」」」」」」」」
ニーナの音頭に合わせて、11人が一斉にグラスを掲げ。宴の始まりである。
「んー、とても美味ですわ!」
早速料理に箸をつけた華音が、その味わいに頬へ手を当てうっとりと笑む。お嬢様育ち故に舌が肥えているだろう彼女にとっても、此処の料理は満足のいく味である様子だ。
「ええ、どの料理もとても手が込んでいて味わい深いです」
いちごも頷き、一つ一つの料理をじっくりと味わってゆく。その味を覚えて、自身が管理人を務める寮の料理レパートリーに加えられないかと考えているかもしれない。
「美味い飯に美味い酒、最高だな!」
「うんうん、どっちも美味しいー☆」
ワインを味わい、料理を味わい。其々の美味ぶりに楽しげな声を上げるロウガに、ニィナもほろ酔い気味の笑顔で同意を示す。
「そうね、芽亜さんのワインもまた美味しくて……料理の味わいを引き立てていると思うわ」
味わうようにワインをゆっくり口に含み、飲み下し。ほぅ、と小さな吐息を吐きつつ樹沙羅。芽亜のワインはとても好評のようだ。
「気に入って頂けたら幸いです。今回の為に奮発した甲斐があるというもの」
応える芽亜も嬉しげな笑みを見せつつ、日本酒と料理とを味わう。この酒もまた、料理と互いを引き立てあう大変美味な代物と言えた。
「うむ、この鹿肉の串焼きともよく合っている」
グリゼルダもワインの味わいを賞賛しつつ、串に刺さった肉を齧って食す。所謂ジビエ料理だ。
「あら、思ったよりワイルドにいくのですね」
「意外か? この野趣溢れる味わいこそ竜の晩餐に相応しい、と余は思うが」
率直げな芽亜の所感に、グリゼルダも意外そうな反応を見せる。元々は永久凍土に住まう氷竜たる彼女、野生の獣肉こそ食べ慣れた味と言えるのかもしれない。
勿論、その趣向を否定する意志は芽亜にも無い。何より、自分の持ち込んだワインと共に楽しめているなら幸いである、と応えるのであった。
「………」
一方、リンドーは手にしたカニの足を真顔で見つめていた。厳密には、そこから引っ張り出した身を。
「あら、リンドーさんカニは苦手?」
其に気付いた歩音が声をかける。食べきったカニの殻を、傍らの殻入れに移しつつ。
「いや、苦手ってワケじゃなくてよ……珍しくてな」
「珍しい?」
リンドーの応えに、歩音は鸚鵡返ししつつも、やっぱりサイバーザナドゥではオーガニックなカニも珍しいのだろうか……と考えたりしたが。
「ああ、身が紫色じゃないカニとか初めて見た」
「……紫……?」
予想外の答えに目を丸くする歩音。曰く、そういうカニなら安く買えるらしい。
「でもやっぱ、流石にオーガニックだよな。このカニも他の料理も、全部美味い」
頷き、カニの身へとかぶりつくリンドー。その頬が僅かに緩むのを見て、楽しんでいるならそれで良いか、と歩音は納得したとかなんとか。
そうして一同が食事を楽しむこと小一時間。
「さて、宴もたけなわ……ということで」
徐に立ち上がった芽亜、会場手前に設置されたカラオケセットのもとまで行くとそのスイッチを入れる。即ち。
「カラオケ大会の開催、と参りましょうか」
フリッカースペードでもある芽亜、カラオケができると見れば見逃す手は無いと考えたそうで。故にこその、カラオケ大会の開催宣言であった。ニーナも驚きはしているが、やることに異論は無いようだ。
「おおー、良いぞ良いぞー!」
「わーい面白そー☆」
「皆の歌う歌、楽しみね」
芽亜の開催宣言を受け、歓声を上げてみせるロウガとニィナ、期待を寄せる歩音。尚、ロウガと歩音は参加せず観戦に徹する構えとの事。
「それでは、先ずは言い出しっぺの私が歌うとしましょうか」
自分が言い出したのだから自分が最初に歌うのが筋だろう、と。芽亜は曲を選択しマイクを握る。と、流れだすのはローテンポの優しげなメロディ。
「あ、この曲は……」
その曲調にはニーナも覚えがあるようだった。10年ほど前に人気だった、癒し系と評判の女性ソロシンガーの楽曲だ。
『―――――♪』
そして歌いだせば、響く歌声もまた穏やかで優しく。評判通りの、心も体も癒されるような――否、身体に関しては比喩でなく癒される歌声であった。具体的にはヒーリングヴォイス。
やがて曲が終わり、芽亜は一礼を以て静聴への謝を告げれば。皆揃って拍手で以てその歌を讃えてみせた。
続いてステージに上がったのはいちごだ。猟兵としての活動の合間、地元ではローカルアイドルとしての活動もしている彼、音楽となれば黙っているわけにはいかない。
「本職アイドルとして頑張りますよっ」
そして流れだす曲は、かつて一世を風靡した少女四人組ダンスグループの歌うウィンターソング。30年近く前というかなり古い歌だが、自分よりも上の世代へのアピールの一環として古い曲も覚えたということかもしれない。
『―――――♪』
歌い出せば、そこはやはりプロとしての安定感ある歌いぶり。振り付けまでも完璧に再現しきり、見事に最後まで歌い踊ってみせるその姿は、まさしく本職のアイドルのそれであった。
「次は……リンドーさん、如何です?」
歌い終えたいちご、次に歌う面子は誰かと見回してリンドーへと声をかける。窓から空の月を眺めて何やら物思いに耽っていたリンドー、反応までにやや間があったが。
「オレか? ……まあ良いか、折角だし一曲歌ってみるかな」
気付けば少々恥ずかしげながら拒否感は見せず。ステージへと上がって歌う曲を選ぶ。
流れ出したその曲は、疾走感溢れるアップテンポなテクノナンバー。といっても、ハイテンションというよりはムードに寄せた感じの曲調で、夜のハイウェイが似合う雰囲気だ。
『―――――♪』
そして其に合わせて歌う歌声はノリ良くも心地良き響きを伴って。聴き入る一部メンバーが、曲に合わせて身体を揺らしていたとか。
「……………」
そんな皆の歌う様子を、グリゼルダは楽しげに眺めていた。今はニーナが、何やら歌なのか語りなのか判断に迷う曲を、妙に情感籠った歌い方で歌っていた。お揃いねとかなんとか。
芽亜から貰ったワインも既に三杯目、良い具合に酒が回ってきたのもあり、堪らなき心地良さを感じる。其処に届く歌声、気分の高揚を覚えるには充分であったようで。
『……ありがとうございました。では、ええと、次はどなたか――』
やがて歌い終えたニーナが、次に歌う面子をと探し始めた。其を見たグリゼルダ、徐に手を上げれば。
「――興が乗ったぞ。特別に、余の美声を聞かせてやるとしよう」
不敵な笑みと共に、参加を宣言した。
応えたニーナからマイクを受け取り、歌う曲を選択。流れ出したその曲は――
「――あら。この曲は確か……」
「これって、ついこないだ知った曲じゃなかったか?」
華音もすずも、その曲が『何』であったか思い当たる。それは先日到達した新世界『獣人戦線』から齎された曲、その名も『ユーベルコード』。猟兵達の行使する業と同じタイトルは、果たして如何なる意味を持つものだろうか。
だが、それは今考えることではない。今はグリゼルダの歌うその曲を聴く時だ。激しくも何処か哀愁を纏ったドラムとピアノの音が絡み合うイントロを経て、グリゼルダは歌い始める。
『♪息を絶つ誰かが 遥か空に手を伸ばす 見上げた昏い星が夙に滅びていることも知らず』
原曲キーのかなり高い曲ではあるが、グリゼルダはその音程に無理なく合わせて歌ってみせる。其に聴き入る一同。
『♪嗚呼 流れる血の色も鼓動の音も 生きてるあなたを彩る 命を紡いで』
走り出すメロディに合わせて、流れるが如く歌声が紡がれる。そしてサビへと至る直前、一瞬曲が止まった瞬間に紡がれる詞は。
『『m'aider』』
その一言を、グリゼルダのみならず何名かが共に呟いただろうか。ともあれ、再び響きだすメロディと共に曲はサビへと至る。
『♪この世を滅ぼす愛で 芽生えた想いを終わらせて 咲いた悼みが散った夜に 心なんていらないと哭いた』
強く響きだすドラムに負けることなく、グリゼルダの歌声は強く、美しく流れる。一層高くなる音程を前に、キーを落とすでも音が割れるでもなく。
『♪0と1の狭間に鎖された現実に堕ちながら 残酷なまでに美しい世界を見た』
その高音域をも見事に歌いきった姿に、誰からともなく拍手が上がったのだった。
●
そうして宴は終わり、夜も更けて。就寝しようと皆が部屋へ戻ってゆく中で。
「――あ。……ロウガさん」
その最後尾を歩く樹沙羅が、己のすぐ前を歩くロウガへと声をかけた。
「うん? どうした、樹沙羅?」
気付いたロウガが振り向くと、樹沙羅は思わず視線を彼の身体へと向けてしまう。浴衣から大胆に晒け出された胸板、引き締まった四肢。そして、その浴衣越しにも存在感を示す、股間の『それ』。
「……その、不躾なお願いだと思うのだけれど」
否、見ている場合ではない。おずおずと、然しはっきりと。本題を切り出す樹沙羅。
「少し……|獣人《あなた》の身体を、診せてもらえないかしら?」
頬を赤らめつつ、その頼みを口にした樹沙羅の内心は、あくまでも医学的な好奇心によるものか、それとも。其は定かならずとも。
「風呂での続きをご所望、ってことだな。喜んで……」
納得したかのようにロウガは頷く。『どちら』であれ、応えることは吝かではない。
そうして、密かに部屋へ戻る道から外れていった二人が、何時部屋に戻ったのか。其は恐らく、当人達のみぞ知る。
●
ともあれ、斯くの如く『【Die Verfurlen】』の猟兵達11名は温泉旅館での一時を過ごしてきたようだ。
願わくば、此が皆にとって素晴らしき思い出の一つとなることを――。
大成功
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