摩天の樹上に蛇は躍る
――その地は、その世界は、終局を迎えようとしていた。
土は汚れ、水は涸れ、空気は淀み、あらゆる生命は絶え。
ただひたすらに枯れ果てた世界が、広がっていた。
そしてそこには、生命力が満ち満ちた唯一の巨木が……天に届かんばかりの高さの大樹だけが、存分に枝を伸ばし、青々と葉を生い茂らせ、威容を誇っていた。
歓喜の声が聞こえる。
神様は素晴らしい、私たちがお守りします、と。
太い枝の上には、異形の女たちが何人も、枝に絡まるようにして佇んでいた。
「はーっはっはっは! 今日も元気かのう皆の衆よ! お主らには今回、エンドブレイカー!世界で起こる事件を解決してもらいたい。
――いや、エンドブレイカー!の流儀に則ろうか。遠くない未来にエリクシルによって彼の地で引き起こされる|終焉《エンディング》を|破壊《ブレイク》してもらおう!」
グリモアベースにて、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は高笑いしながら猟兵たちを出迎えた。
「多くの都市国家からは離れた、辺境と呼ばれる地帯。南北に大きく拡がる広大な森林で事件は発生する。
……『大森林』。人類による正式名称は無い。他の世界よりずっと強いエンドブレイカーの人々ですら足を踏み入れることが難しい、様々な種族、野生の動植物が跋扈する大森林地帯だ」
過酷な世界ではあるが、そこに人類が含まれないだけで、弱肉強食の安定した生態系が成立しているともいえる。
「その大森林のとある場所、そこそこ冷涼な所にひときわ背の高い木があってな。おそらく他の地域から、たまたま種が運ばれてきたのであろうな。その辺りの木々は高さ50~60メートルぐらいなのに、その木だけが高さ100メートルぐらいと、文字通り頭ひとつ抜けて立っている。これにも名前は無いが、便宜上この樹を『大樹』と呼ぶぞ」
そして大樹には、半身半獣種族であるピュアリィ、その中でも下半身が蛇の『ラミア』と呼称される者たちが、つい最近になって棲みついたのだそうだ。
「はっはっは、要するに妾のような感じの体つきだと表現すれば分かりやすいであろう? 普通に戦闘力は高いし、知能もそれなりに高いし、皆が美人で誘惑の力を使って他種族をメロメロにできる! いや~、実に素晴らしい種族なのだ!」
尾の先を猟兵たちの方へ出して、ウインクしながらびたんびたんと地面を軽く叩く菘。種族は違うのだが、なるほど分かりやすい実例である。間接的に自分を持ち上げようとやたらラミアを褒めまくる菘を適当にいなし、猟兵たちは説明の続きを促す。
「身体の構造上、枝や幹に身を巻き付けて固定することが可能なので、ラミアは木登りが得意だし樹上の移動も巧い。それに普通の蛇と違って両腕もあるしな。木の上で日常生活を送っても、落下する可能性なんて全く考えられん。と、シティガールの妾でもそう感じるのだから、彼女らなら猶更であろう」
シティでガール? というツッコミはともかく。地面を歩く四足歩行の動物たちでは到達が難しい樹上に、安全な住居を構える。理に適った生態である。
「そこらの木々の枝を集めてうまく組んだ程度の、あまり本格的な建物ではないがな。雨風を凌ぐのには十分というぐらいの、人間基準だとスカスカな壁や床の小屋という感じかのう」
「現地の環境についてはそんなところだ。そして、現在進行形で起きている事件なのだが、その大樹が元気を無くし枯れそうになった、というのが事の発端だ。実はラミアたちの勘違いなのだがな」
大樹は元来、別の地域、別の気候に生えていたもの。冬の寒さに対応する形態に切り替わっただけに過ぎない。
「針葉樹と広葉樹の違いというやつだ。下層の森の木々は青々と葉をつけているのに、大樹だけは葉を落としているという事実にラミアたちは狼狽えた。この先、春になればまた枝葉は伸びて葉は茂るだがのう」
――大樹に再び生き返ってほしい。そんな強い願いに、エリクシルが応えてしまった。
エリクシルは、自分は大樹の化身だと、神であると名乗って現れ、ラミアたちの祈りをもって大樹をよみがえらせた。
「そう、願いは歪められておる。大樹は、大森林のあらゆる生命の生気を栄養として吸い取り奪い尽くし、それでも止まらず暴走し、やがてはエンドブレイカー!世界そのものを枯渇させて滅ぼしてしまうだろう」
ラミアたちは洗脳され、『神の眷族』として凶暴化してしまっている。
「今はまだ、大樹が変質され始めたばかりの段階だ。お主らを大樹の上に転送するとすぐに、エリクシルの洗脳を受け、大樹を守らんとするラミアたちとの戦闘になるだろう」
それに注意しなくてはいけないのは、戦場は、足場が大樹の枝……狭い上に、超高所であることだ。
「狭いといっても幅は数メートルはあるような太い枝だ。意図的に破壊や切断を狙わん限り、戦闘中に折れるほど脆くもない。ただ、踏み外すと100メートル以上落下してしまうかも、という懸念が加わると、精神的になかなか平時の調子を保つのは難しいかもしれんだろう?」
下層にある森の枝や、草木が生い茂る地面がクッションとなるだろうし、猟兵は頑丈だ。即死も大怪我もしないだろうが、戦場復帰まで時間もかかるだろう。
「足が生えている者は不便だのう。特殊な足場で戦闘となるのを想定して、各人で何か対策は考えておいてくれ。あとラミアたちも被害者だから、できれば殺さないでほしい」
相応に頑丈だからボコって戦闘不能にしてしまえば十分、エリクシルを倒せば正気に戻るぞ、と菘は苦笑した。
「エリクシルについては、予知ではちょっと詳しく情報が見えず、お主らに伝えられる情報は少ないな。人型をしているというのは確かなのだが。こいつとの戦いも引き続き樹上となるのを覚えておいてくれ。
それと、大樹に対するラミアたちの懸念は、エリクシルを倒した後でちゃんと説明すれば大丈夫だ!」
また、元凶を倒したら、正気に戻ったラミアたちが夜宴を開いてもてなしてくれるし、住み処で一泊させてくれるとのことだ。
「いや~、眼下に広がる大森林! 最高の展望であろうな! ……ちょっと落下の危険はあるかもしれんけど。寝たまま落下とかせんように注意していくれよ?」
最後に怖いことを言って、菘はグリモアを取り出す。
「はっはっは、では心の準備はできたかのう? 見事な解決を期待しておるぞ!」
そうして、猟兵たちは高き樹上へと転送されていった。
雨森
OPをご覧いただきありがとうございます。雨森です。
ピュアリィの中ではラミアが一番好きです。
今回の事件の舞台はエンドブレイカー!。都市国家からは遠く離れた辺境の過酷な大森林帯。そこの、一際に高く悠然と聳え立つ巨木の上が戦場となります。
●プレイングボーナス……第一章、第二章共通
「高所での、狭い足場での戦闘に適応する」
●第一章
ラミアとの集団戦です。
人語を喋り会話はできますが、凶暴化しており説得での解決はできません。
●第二章
黒幕であるエリクシルとのボス戦です。
敵の詳細は現時点では不明です。
●第三章
夜~翌朝の時間帯の日常です。大樹についてラミアたちに説明をする必要はありません。
樹上でラミアと共に夜の宴を楽しむ、少々危険な就寝、朝の絶景を堪能するなど、行動は自由に選択してください。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『ラミアの群れ』
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POW : スネイク・ホールド
対象の【身体】を【蛇の下半身】で締め上げる。解除されるまで互いに行動不能&対象に【無】属性の継続ダメージ。
SPD : テンプテーション・アイ
【誘惑の視線】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
WIZ : ラミア・ドレイン
【自分の肌や鱗】に触れた対象の【生命力や魔力】を奪ったり、逆に与えたりできる。
イラスト:月夜野サクラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セシル・バーナード
あーあ、綺麗なお姉さんが怖い顔してちゃ台無しだよ。ぼくはもっと違うことしたいな。
とはいえ、説得は出来ないし、速やかに無力化しようかな。
「全力魔法」「範囲攻撃」の雷球乱舞。お姉さんたちの攻撃の間合いに入らないよう、一方的に雷霆珠で攻め立てるよ。死なないようにはするから安心してね。
枝の上が戦場だと、迂回して回り込もうとする相手の動きが見つけやすくていい。そういう搦め手しようとする相手は集中して叩く。
加減を間違えて落としても、下の枝が受け止めてくれるなら安心だ。遠慮なく叩くよ。
今のうちに、可愛い感じのラミアを探し出しておこうっと。
さあ、いくらでも来るといいよ。返り討ちにしてあげる。
本来であれば葉をすべて落とし、枝のみの寂しい眺めになっているは季節のはずの大樹。
しかし今、大樹は、エリクシルの力によって不吉なまでに葉を青々と茂らせていた。
葉擦れの音がざわざわと響く中、セシル・バーナード(サイレーン・f01207)は高さに怯えることもなく、悠然と大樹の枝の上に降り立つ。
「お前は神を害するものだ! 殺す!」
長い身体を枝に絡みつかせ、セシルを睨みつけるラミアたちの顔は、憎悪に醜く歪んでしまっている。
「あーあ、綺麗なお姉さんが怖い顔してちゃ台無しだよ。ぼくはもっと違うことしたいな」
下半身の方はまた別にして、正気であればさぞや可愛く美しかっただろうに。
説得ができないならば、速やかに無力化すべし。叩きつけられる殺気を受け流しながら、セシルは戦闘態勢に入った。
指先ほどのサイズの無数の雷霆珠が、セシルの周囲に生み出される。
「我が敵を穿て」
尾を引く閃光が、枝を伝い飛びかかってくるラミアたちへと突き刺さった。
「ぎゃっ……!」
「死なないようにはするから安心してね」
自身を中心として雷球を乱舞させるセシルの戦法は、高い効果を発揮した。いくらラミアが全方向から襲い掛かってくるにしても、枝を伝ってくる必要があるという大前提がある。セシルへと迫るルートは決して無数にはない。少なくとも、千を超える雷球を用いれば経路は封殺できる。
「搦め手を使う知能はあるんだね。でも、そこまで止まりかな」
「ひうっ!」
迂回して回り込み、セシルの視覚外の枝から襲撃をかけてこようとする相手を迎撃する。
雷撃を受けたラミアはびくんと大きく身を跳ね上げて気を失い、落下していった。……頑丈だし、下の枝が受け止めてくれるから命に別状はないはず。
「さあ、いくらでも来るといいよ。返り討ちにしてあげる」
遠慮なくラミアたちを倒しながら、同時にセシルはその中でも可愛い感じの個体に目星をつけていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
美しい蛇身だ
多少の色欲と、大きく異なる文化への興味が湧く
菓子折り持参しても戦闘不可避だしお相手しますか
勇気をもって樹上を走り幹から幹へとジャンプする
風を読んで空中浮揚し立体的に立ち回るよ
これが二足歩行だ、どやっと挑発しておびき寄せるぜ
『清薬』を飲んで持久力をドーピング
ラミア達を疲れさせたい
大樹も繁り続けては疲れると教える為にね
傷はつけねーぞ
寄られたら四王稲荷符を貼りつけて電撃属性攻撃で軽くマヒ攻撃を浴びせるに留める
調子乗って蛇身を妖しく撫でるのはご愛敬
ドレインされたら、耽美的に八重歯を突き立て吸血と生命力吸収で精気を奪い返すぜ
集まったら粘り蜘蛛糸で一網打尽にします
蜘蛛の巣に掛かる美女も絶景かな
大樹の枝に身を絡ませ、敵意を持って猟兵たちを睨みつけるラミアの群れ。そんな彼女たちを見つめ返す四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)の瞳には、むしろ好奇心が浮かんでいた。
美しい蛇身と美貌に、燦は多少の色欲と大きく異なる文化への興味が湧いてはいるのだが、いかんせん相手は穏便に応えてくれそうにない。
「菓子折り持参しても戦闘は不可避だし、お相手しますか……ねっと!」
勇気をもって枝の上を走り、勢いをつけて他の枝へと跳躍。
――僅かに視界に入った下界の絶景は、燦の心に鮮烈な印象を刻んだ。
身に受ける風を読んで体勢を調整しながら、軽快にラミアたちの間近へと着地。電撃の力を込めた霊符『四天王稲荷符』をラミアの身体に貼り付ける。
「きゃっ……!」
救うべき|ラミア《女の子》たちを傷つける気はない。倒れる仲間を無視して燦への反撃に迫る腕を、あるいは尾を、ステップして回避する。
「へえ、暖かい。こんな手触りなんだ」
燦を拘束しようと伸びてくる蛇身を、妖しい手つきで撫でながら避けていく。
「これが二足歩行ってやつだよー」
「このっ、調子に乗りやがって! ちょこまかと!」
戦況は、ラミアをおちょくりつつ逃げる燦と、それを追うラミアたちという構図になっていた。
するすると滑るように追ってくるラミアと、悪い足場を跳ねながら攻撃から軽やかに逃げる燦。両者の動きは対照的であった。
「なんで、捕まえられない……!」
「疲れちゃってるねー。大樹だって同じ、繁り続けては疲れるだけだぜ?」
実は『清薬』を飲んで持久力にドーピングをしているのだが、もちろん伝える気はない。そして諫言も、今は理解できなくても、後々理解してくれることを願った。
しかし狭い足場の逃走劇も無限には続かない。燦はいよいよラミアたちに追い詰められてしまう。
「こりゃ困った、なんてな!」
身体にぐるりと尾を巻きつけられるも、首から上は自由なまま。八重歯をラミアの首筋に突き立てて精気を奪い、弱まった拘束から抜け出る。
そして、ラミアたちは燦が仕掛ける罠に嵌まる。
「蜘蛛の巣に、掛かる美女も絶景かな」
特製の糸玉からぶわりと広がる糸。燦を取り囲んでいたラミアたちは、粘る蜘蛛糸によって一網打尽になり無力化されてしまうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ワオワオ・マダガスカル
ほほぉ、美しき女体じゃのぅ。
思わず、その胸にダイビングしたくなるのぅ。
もませてもらってもええかのぅ?
…てなこと言ってる場合じゃないな。
あの、エリクシルかのぅ…話を聞くに、願いを歪め指して叶える力を持つ者どもじゃな。
じゃったら、わしも大樹に登って対処するとするかのぅ。
なんせ、わしらは木の上で暮らすサルじゃ。
このあたりで行動するのに慣れとる。
てなわけで、木の枝を利用してラミアを【電撃】で気絶させたりマシンアームも使って立体起動してラミアを翻弄するのじゃな。
念のため、エレクトロレギオンを使って攪乱するのじゃな。
実はこの世界樹は春になれば再び緑に覆われるのじゃ。
ちょっとばかしの辛抱じゃ。
「エリクシルかのぅ……話を聞くに、願いを歪め指して叶える力を持つ者どもじゃな」
「殺す、殺す!」
神を害するものを排除すべく、殺意を漲らせる|半人半蛇のピュアリィ《ラミア》たち。その姿形は異形と例えられるもの、というのは主に人間にとっての常識でしかない。
「ほほぉ、美しき女体じゃのぅ」
最低限の衣しか付けていない、つまりは割と裸に近いラミアの身体つきを好色な視線で眺めて喜ぶワオワオ・マダガスカル(電脳オヤジモンキー・f39568)。
表情からはあまり窺い知れないが、内心はウハウハである。おっきな胸にダイビングしたくなるのぅ、とか思っている。
「揉ませてもらってもええかのぅ? ……てなことを言ってる場合じゃないな」
するすると素早く迫ってくるラミアの手を掻い潜り、ワオワオはぴょんと跳び上がった。
跳躍の先にあるのは、体重をかけたらすぐに折れてしまいそうな、あまりにも細い木の枝。
「ほい、ほい、ほいっと」
――ただしその判断基準は、人間やラミアであれば折れる、ではあるが。
ワオワオの種族はワオキツネザル、彼もそもそも樹上で生活する猿だ。こういうフィールドで行動するのには慣れている。そして体躯のサイズの違いもあり、ラミアよりも細い枝も移動に使えるのだ。
「このっ、待て!」
両手の他にマシンアームも活用して枝と枝の間を立体的に動き回り、ラミアたちを翻弄していく。
「そんで、ビリビリっとな」
「きゃっ!」
すっかりワオワオに追い縋るのに夢中になってしまったラミアは、彼が召喚したスタンガンのような電撃を放つ機械の攻撃を浴びて昏倒させられる。
気を失ったラミアも中々に色っぽいのぅ、などと相変わらずなことを考えつつ、しかしワオワオの軽快な機動は止まらない。
「実はこの世界樹は、春になれば再び緑に覆われるのじゃ。ちょっとばかしの辛抱じゃ」
今はまだ理解できないかもしれないが、目を覚ました時にはすべてが終わっているはず。
エリクシルの打倒を決意しつつ、ワオワオは次々とラミアを制圧していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
オーダー、大怪我負わさずに生け捕りー。了解したぜ。
大量に生産しておいたカタリナの車輪でラミア達を捕縛。拘束するのに慣れていても、される方に慣れてはおるまい。自分から車輪に絡みついてきたら手間が省けるけど、はてさてどうなるか。
身動きを取れなくしたらうっかり骨が外れないように加減しつつ大樹から離れたところへ出荷よー。
まだエリクシルの実物見れてないから、あんた達の身を守りながら壊せるか判別出来てないんでね? 悪く思うなー。万が一家壊しちゃったら再建してやるからー。
コルネ・ナッツ
ラミアに罪はない。悪いのはエリクシルじゃ。できるだけ穏便にすませたいのう。
地形耐性と悪路走破で樹上での不利を無しにできないかの。できなければ直線で動くことで枝からの落下を防ぐかの。
サイキックブラストで動けなくして鳩尾に一撃を入れて気絶させるかの。彼女らには罪はないからの。
今元に戻してやるからの。少しの辛抱じゃ。落ちないように樹上を移動してラミアたちを無力化していく。
もし樹上から落ちることがあったら空中機動で何とか動いて近くの枝にしがみつく。
アドリブ、連携歓迎
冷たく乾いた風が、太い枝葉の間を吹き抜けていく。
風は決して強くはない。しかし地表から100メートル以上、少々頼りない足場に立つ猟兵たちにとっては、僅かにでも身を揺らす力は不安をもたらす。
「オーダー、大怪我負わさずに生け捕りー。了解したぜ」
そんな状況にあって、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)は地の利の悪さを意に介さず不敵に笑い、ラミアたちをねめつける。
「ああ、ラミアに罪はない、悪いのはエリクシルじゃ」
その一方でコルネ・ナッツ(チョコ・f08366)は、事をできるだけ穏便にすませたいと不憫なものを見る眼差しを向けていた。
「接近戦するのね? だったらフォローするよー」
「承知したのじゃ」
コルネが枝の上を駆ける。悪い足場ではあるが、その足取りには躊躇いが見られない。できるだけ枝の中央を選んで真っすぐに走っていく。
「せい!」
あと数歩、ラミアたちと交戦が始まるというその手前でコルネは止まった。間近のラミアに向けて翳した掌から電撃を放つ。
ラミアは接触したら危険な相手だ。確実に当たる距離で攻撃を放ち、動きを止めた上で鳩尾に肘を叩き込む。
「ぎゃうっ!」
「おぬしらに罪はないからのう、大人しく眠っていてくれ」
苦鳴を上げて気を失うラミアの身を支え、枝へと横たえた。
そんな風にラミアを扱っているコルネに隙を見た別のラミアが、コルネへと迫る。しかし、カーバンクルがそれを阻んだ。
「させないよー!」
カーバンクルが勢いよく枝上を転がしたのは、巨大な車輪。間違いなくラミアたちが今までに見たことのない文明の利器。とはいえ、針とあちこちに付い鎖が絡んでいる禍々しい形状のそれは、本来の用途とは完全に逸脱してしまっているのだが。
カタリナの車輪と名付けられた拷問具が、いくつもごろごろと転がってゆき。ラミアに接近した時点で、一気に鎖を伸ばした。
「な、ああっ!?」
鎖に絡め取られるラミアたち。意外と力が強いはずの彼女たちが、鎖を振り払えない。
「拘束するのには慣れていても、される方には慣れておるまい。それ、出荷よー」
身動きが取れないように、ただし骨が外れるまではきつくならないように加減してラミアを巻き付けた車輪は、そのまま転がっていき落下していった。緑が濃い地点を一応選んだので、おそらく下の森の枝葉部分に引っかかることだろう。
「悪く思うなー。まだエリクシルの実物見れてないから、あんた達の身を守りながら壊せるか判別できてないんでね?」
「だったら、わしも協力しようかのう」
結果的に少々荒っぽい避難となっているが、この先のエリクシルとの戦闘に巻き込むのは本意ではない。コルネも無力化したラミアの身を放り投げて車輪に捕獲させていく。
「万が一家壊しちゃったら再建してやるからー」
順調なペースで、二人はラミアを樹上から引き離していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レオンハルト・シャルラッハロート
【薔薇園の古城】
・心情
ラミア…か。昔はギガンティアで散々相手したんだけど…、
彼女達もエンドブレイカーに覚醒出来る程変わったのはわかっている。
とは言え、エリクシルが絡んでるなら話は別。
気の毒だけど蹴散らすのみ。
・行動
「我は盾にして炎-そして悪を断つ剣なり!」
名乗りを上げた後、
グランスティードを発動して戦場を駆け抜ける感じで進む。
落下&状態異常に備えて、周囲にグリフォンとフェニックスを展開。
剣に魔法を纏わせてから二回攻撃やなぎ払って対応。
時折止まって戦況を把握しラミア達の様子を伺う。
「貴方達に恨みはないんだ。今は少し大人しくしてくれ」<まだ倒れてない敵に向かって
「“大魔女”の遺物め…待っていろ」
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】
■心情
エリクシルによって洗脳されているとは、ラミア達には気の毒ですけど
まずは目前のラミア達を何とかするのが先決ですわ。
■行動
レオンハルトと連携して戦いますわね。
「さぁ、レオンハルト……一緒に行きましょう!」
前衛はレオンハルトに任せる事にして
私は『プリンセス・ローズ』を用いての遠距離戦を行いますわね。
《二夕を導く遥かな薔薇》で武器の能力を強化して
【スナイパー】で敵に狙いを定めて攻撃しますわ。
落下しても大丈夫なように【落下耐性】で耐えて
【足場習熟】で不安定な足場にも慣れる様にしますわ。
敵のテンプテーション・アイは
【狂気耐性】で正気を保つ様に心掛けますわね。
おおよそ多くの猟兵にとっては、ラミアとはエンドブレイカー!世界の現地種族のひとつというだけの認識だろう。
しかし当のエンドブレイカー!世界の出身の者ならば、ピュアリィという種族の美しい外見に反した精強さを、否応なく身に染みて理解できている。
「ラミア……か。昔はギガンティアで散々相手したんだけど」
それは例えば、石の薔薇咲く遺跡で、あるいは巨大な車輪を持つ滅びた都市で、他にも様々な場所で。
殺意に満ちたラミアたちの姿に、レオンハルト・シャルラッハロート(ランスブルグの天誓騎士・f38951)は当時を思い出していた。例の仮面がどこにも付いていない、というぐらいの差異でしかない。
彼女たちも、エンドブレイカーに覚醒できるほど変わったというのは理解できる。が、納得ができるかはまた別の話。
獅子の兜の奥から苦い視線をラミアに送るレオンハルトの背中に、同行しているローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)がそっと手を添える。
「気の毒ですけど、まずは目前のラミアたちを何とかするのが先決ですわ」
「ああ、エリクシルが絡んでるなら話は別。悪いが蹴散らすのみ!」
洗脳されている彼女たちを倒すことは本題ではない。二人はラミアたちへ決然と挑みかかる。
「我は盾にして炎――そして悪を断つ剣なり!」
「レオンハルト……一緒に行きましょう!」
レオンハルトが雄々しく名乗りを上げ、ローズが応える。
星霊グランスティードを召喚して騎乗したレオンハルトは、枝の上を勢いよく駆けていく。フレイムソード『熾炎』を振るう――すると、紅炎湛える刀身より星霊フェニックスが飛び出した。またさらに、先駆けの供としてグリフォン『シュヴァルツェヴィント』も並走、いや飛行している。
「疾風迅雷!」
一瞬にしてラミアたちとの距離をゼロに詰めたレオンハルト。握る熾炎の刀身に満ちた力は、いつの間にか炎から電光へと変わり、輝く剣閃の連撃がラミアたちを薙ぎ払っていく。
そして樹上に雷光が迸る中、ローズは冷静にレオンハルトの支援を行っていた。
ローズが攻撃に用いるは、薔薇の精霊の魔法力を宿した銃。『プリンセス・ローズ』を華麗に構え、レオンハルトの突撃をなんとか回避し、体勢を崩しているラミアを狙い撃つ。
ラミアたちも後方からの銃弾には気づいている。しかしまずは眼前の暴れる人馬を無視できない。そして単純に、ローズは相当に『遠い』。
視線を向けても、魅了させるのも難しい距離。なぜそこから正確に攻撃が届くのか? ラミアの疑問は、銃弾によって意識もろとも掻き消された。
「どうして、何故神を害そうとする!?」
「貴方たちに恨みはないんだ。今は少し大人しくしてくれ」
未だ倒れずにいる激高するラミアへ、努めて冷静にレオンハルトは告げる。そして、生い茂る大樹の奥に居るであろう敵を睨みつけた。
「“大魔女”の遺物め……待っていろ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーオ・ヘクスマキナ
高所かつ狭い足場? いやぁ怖い怖い
で、先ずは敵戦力の殲滅じゃなくて鎮圧かぁ。工夫しないとだね
と言っても、移動や不意の落下にはグラップリングフックがあるからどうにかなるか
上を取ったり、距離を離したり。結構役に立つね
対象の間合いの外、中距離辺りを意識して立ち回ろうか
鎮圧にはUCと特殊ゴム弾の連携を使用
UCで北風を起こし、触れた部分を拘束
止まった相手から、順次マークスマンライフルでゴム弾と発生する電撃魔術を叩き込む
……流れ作業みたいになっちゃってるけど、数が多いんだから仕方ないよねコレ
赤頭巾さんには周囲の警戒とイザって時の近接戦を担当して貰おう
アウェーに居るのはこっちだしねぇ
猟兵たちの奮闘によって、まともに戦えるラミアたちの数はすっかり少なくなっていた。
そんな樹上の枝に、リーオ・ヘクスマキナ(|終わりつつある約束履行者《 リビングデッド 》・f04190)がふわりと足を着ける。
「高所かつ狭い足場? いやぁ怖い怖い」
下方を見て呟く声色に、深刻な感情は大して籠もっていない。いっそ剽軽さすら感じさせるその態度の内側で、リーオは今回の戦場での立ち回りについてを冷静に思考していた。
「近づかれないような距離で、先ずは敵戦力の殲滅……じゃなくて鎮圧だね」
そのままふわりと、身体を傾け枝の上から落下していく。
「それっ」
……と同時に、左腕を振り、グラップリングのフックが先に付いたワイヤーを射出。フックを枝に引っかけて勢いよく上方へと引き上がっていく。
|リーオ《敵》の予想外の挙動を思わず追ってしまったラミアが次に目にしたのは、こちらに向けてマークスマンライフルの銃口を向けるリーオの姿。
「なっ……!」
――攻撃を避けないと。本能的な直感に従って身体を動かそうとするも動けない。身体に走る衝撃がゴム弾とそれに付随する電撃だと気づけぬまま、撃たれたラミアは意識を閉ざした。
「お生憎様」
ただ、普段よりも冷たい風の流れをふと肌に感じたのだけが、強く印象に残った。
グラップリングフックをうまく役立たせ、リーオは上へ下へと器用に動き回る。
ラミアは樹上の移動には長けていても、空中の立体的な機動は専門外。ジャンプの途中に軌道を変えられるというのは明確なアドバンテージとなる。
接近戦を仕掛けてくる相手からは距離を放し、北風で拘束して、動きが止まった相手にゴム弾を撃ち込んでいく。
「……流れ作業みたいになっちゃってるけど、数が多いんだから仕方ないよねコレ」
選んだ戦法で相性の差を作ったのだから、もちろん問題などない。それに前哨戦で無駄に消耗する必要もない。
「アウェーに居るのはこっちだしねぇ」
念のため赤ずきんさんに周囲の警戒をしてもらいながら、リーオは残るラミアたちを軽快に次々と鎮圧していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『エリクシル・ペネトレイター』
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POW : 願いの雫
視界内の任意の対象全てに【液状化した願望宝石エリクシル】を放ち、物質組成を改竄して【体の一部】を崩壊させ、【捕縛】【猛毒】状態にする。対象が多いと時間がかかる。
SPD : 願望喰らいの獣
全身を【エリクシル】装甲で覆い、身長・武器サイズ・攻撃力・防御力3倍の【エリクシルの輝きを纏う肉食巨獣形態】に変身する。腕や脚の増加も可能。
WIZ : エリクシルギガント
対象の【魂】と【肉体】を【虚空から出現する巨大な宝石の腕】で締め上げる。解除されるまで互いに行動不能&対象に【宝石】属性の継続ダメージ。
イラスト:La Lune
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ベリル・モルガナイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
まるで盛夏の頃のように、瑞々しい葉を茂らせる大樹。
猟兵たち以外に動く者がいなくなった枝の上に、大樹の神を騙る『エリクシル・ペネトレイター』は姿を現す。
「あらゆる願いに優劣など存在しない」
まるで宝石のように透けて輝く手を伸ばし、青い葉をひとつ千切る。
「彼女たちは願った。私は応えた。私はそういう存在なのだから」
淡々と発せられる言葉からは、魔人の感情など窺い知れない。
「であるならば、自然であり当然の営為を邪魔する君たちは、望まれざる存在ということだ」
くしゃりと葉を握り潰す。
「君たちの願いは叶えられない。消えてもらおう」
セシル・バーナード
万能宝石の魔神が神を騙るか。いいよ、それなら神殺しをするだけだ。
次元障壁、多重展開。液状化エリクシルは、これで防ぐ。
そろそろ攻撃に回らせてもらうよ。
ペネトレイターの身体の一部を取り込む形で、「結界術」「鎧無視攻撃」「切断」の「属性攻撃」。
結界の内側に取り込んだ部分を抉り取る。(例えば腕だけ結界内に入れて技能を発動させると、腕がちぎれる)
結界の縁に沿って、空間断裂を走らせてるからね。防御は意味が無いよ。
純真なラミアたちをたぶらかした報いは受けてもらう。
さて、次はどこを抉ろうか。腕? 脚? 胴体? さくっと頭をちぎり取ろうか?
時限障壁を立てながら間合いを外されないように動き、確実に討滅するよ。
エリクシル、万能の魔人。歪めた形で願いを叶える者。
仮に歪められてしまったとしても、その権能の根本はまさに神に等しき力。
万能宝石の魔神を前にして、セシル・バーナード(サイレーン・f01207)は普段と何ら変わらぬ有り様であった。今更に神を騙る輩を相手して、何を恐れるものがあるのかと。
「いいよ、それなら神殺しをするだけだ」
「不遜極まりないな」
セシルに向け、腕を突き出すエリクシル・ペネトレイター。その手の先から、どろりと粘性を感じさせる液体が放たれる。光を反射してぎらぎらと輝く様は、不吉さを感じさせた。
が、セシルには届かない。
「抜かせないよ」
洪水のように押し寄せる液状のエリクシルが、不可視の何かに遮られる。
「壁……かね? 捉え圧し潰すつもりで放ったのだが」
エリクシル・ペネトレイターには如何なる性質のものかは分からなかったが、致命を意図した攻撃は多重展開された次元障壁に阻まれていた。
「そろそろ攻撃に回らせてもらうよ」
相手の攻撃動作を模倣するように腕を翳すセシル。しかしそこからは何も放たれず、エリクシル・ペネトレイターは訝しむ。
――攻撃に咄嗟に躱せたのは、神であるが故か。
「!」
「勘がいいね」
身体を捻るも、肩口がごっそりと抉り取られる。
不可視無音の『何か』、つまりセシルが攻勢に用いた次元障壁が、エリクシル・ペネトレイターを攻める。結界の縁に沿って空間断裂を走らせているため、防御などに意味はない。内と外に隔てられたら、切断されるのみ。
「純真なラミアたちをたぶらかした報いは受けてもらう」
「この……!」
再び液状エリクシルを放つも、やはり障壁に防がれる。
「どこを抉ろうか。腕? 脚? 胴体? さくっと頭をちぎり取ろうか?」
セシルが嬲るような口調になったのも仕方ないことだろう。彼の怒りは強い。
エリクシル・ペネトレイターは、不可視の障壁の断裂にひたすらに翻弄されながら身を削られていく。
大成功
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コルネ・ナッツ
おぬしは願いを歪んで理解してしまっておる。ここで止めるぞ。
樹上から落ちないように地形耐性と悪路走破で気をつける。
【サイキック・ロード】でサイキックの竜巻に巻き込む。
帰る気はないじゃろうから素直にダメージを受けておけ。
エリクシルギガントは見切りで避けられるなら避ける。食らった場合はオーラ防御と結界術で耐える。
オーラで少しでも動ける隙間ができたら小さな動きでも使えるサイキック・ロードを撃ちエリクシルギガントの解除を狙う。
おぬしの願いを実現する訳にはいかぬ。これ以上自由にはさせぬ。
必要以上に近づかないようにし、エリクシルギガントを警戒する。離れた位置からサイキック・ロードを放つ。
アドリブ連携歓迎
コルネ・ナッツ(チョコ・f08366)が太い枝の上を駆ける。
「おぬしは願いを歪んで理解してしまっておる。ここで止めるぞ」
「歪める? 私がそのような誤りを犯すはずがない」
あるいは、その歪曲はエリクシルとしては正しいことなのかもしれない。だからこそ、何もかも間違っているのだが。
「握り潰されるといい」
エリクシル・ペネトレイターによって虚空から生み出される巨腕。まるで宝石のように輝く腕が伸びて、身を掴もうとしてくるのをコルネはうまく躱す。悪い足場の不安定さにはまだ不安を残すが、コルネも移動には慣れてきている。
「……ちょこまかと」
いっそう大きく、大樹の幹よりも巨大かもしれない腕が、足場の枝に沿うように伸びてくる。
――避けられない。そう判断したコルネは、腕に捕まれる寸前に攻撃を放った。
「おぬしの願いを実現する訳にはいかぬ。これ以上自由にはさせぬ!」
サイキックの竜巻を生み出す。大樹の枝を揺らし葉を巻き込みながら進む竜巻は、エリクシル・ペネトレイターへと叩きつけられた。
「この程度の風で吹き飛ばされるはずも……なにっ!? ぐっ、あ……!」
たしかに強風とはいえ、さほど深刻な攻撃ではない。例えばバランスを崩して落下するような脅威もない。……そう判断したエリクシル・ペネトレイターの全身を駆け巡る、奇妙で強い衝撃。
「帰る気はないじゃろうから、素直にダメージを受けておけ」
結界を施し、身にオーラを纏い、|宝石の腕《エリクシルギガント》の締め付けに耐えているコルネが、エリクシル・ペネトレイターには聞こえないような小声で呟く。
サイキック・ロードはユーベルコードなのだ。そのダメージの根源は、風で物理的に傷つけることではない。そこに留まることを選択した時点で、問答無用でダメージは与えられる。
「しかし、仮に吹き飛ばされていたとしたら、果たしておぬしは何処に戻るのじゃろうな?」
腕の拘束から逃れつつも、コルネは倒れ込むエリクシル・ペネトレイターに対して警戒を続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
お前を『そういう存在』として作った神様は性悪だよ
すまんね
ラミア達を悪者にしたくないというアタシの願いのためにお前を殺す
一章同様に樹上を駆けジャンプで跳ね回り神鳴で斬りつけるぜ
二刀流で扱うアークウィンドを振るい風の衝撃波で牽制
広所に出て巨大化されるまでにダメージを蓄積させとくよ
意図的に深追いするぜ
巨大化されては攻撃通るか怪しいな…
守りに徹し上手く殺られたフリして転落するさ
風を捉え空中浮揚して落下を減速
神鳴納めて力溜めを始める
デカブツが輝きまで纏ってくれるんだ
風で生じた枝葉の隙間から見えた瞬間、敬意を乗せた奥義たる『断理の剣』で斬るよ
来世があるのなら正しく願いを叶える神様になれるよう祈ってやるさ
「お前を『そういう存在』として作った神様は性悪だよ」
あるいは悪趣味とでも言うべきか? エリクシルという存在の歪さは、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)を妙に不快にさせた。
そうあるべしとして生み出された、エリクシルも何者かの被害者なのかもしれない。
しかし、だ。
「すまんね、アタシの願いのためにお前を殺す」
――ラミア達を悪者にしたくない。その己の意志を優先させる。
両手に携えた、妖刀『神鳴』とダガー『アークウィンド』の切先をエリクシル・ペネトレイターへと突きつけ、燦は決然と言い放つ。
「それは不可能だ」
感情が籠もらぬ声とともに、エリクシル・ペネトレイターの身体が宝石のような装甲で覆われ、ゆっくりと肥大化していく。その姿は……。
「狼か」
わざわざ変身の完了を待つ理由などない。燦は素早くエリクシル・ペネトレイターへと斬り掛かった。
風を読み浮力を稼ぎながら、枝から枝へと軽快に跳ね移る。『神鳴』で斬りつけると、岩に打ち付けたかのような手応えが返ってくる。
「見た目通りの硬さじゃんか!」
宝石なのに自在に動くとはこれ如何に? 大した不条理だ。
カウンターで迫る噛みつきに対して『アークウィンド』による風の衝撃波をぶつけ、一気に離脱する。
戦いながらもエリクシル・ペネトレイターは次第に身体が大きなっていく。速度に任せて一方的に攻撃を当てているが、ダメージはどれほど蓄積されているか?
「ぐあっ!」
エリクシル・ペネトレイターの狼形態への巨大化がほぼ完了したのを見越し、燦はあえて前脚による攻撃をまともに食らって吹き飛んだ。
「そのまま墜ちろ」
……エリクシル・ペネトレイターの誤算は、空中でどれだけ強力な一撃を入れたとしても、衝撃で後方に吹き飛ばされるだけだと理解していなかったことだろう。力強さは、空中戦では決定的な勝利要素にはなり得ない。
燦は吹き飛びながらも、落ち着いて『神鳴』を鞘に納める。身を捻りつつ風を受け体勢を立て直し、落下速度を緩和。図ったように、鬱蒼と茂る下層の森の、とある太い枝へと両足で着地する。
深く呼気をひとつ。限界まで集中。闘気を、妖力を、全身に巡らせる。
空を、見上げる。
風で生じた森の枝葉の隙間に、ぎらぎらと輝く宝石の輝きを視――、
「――斬る!」
「!?」
世の理を一切合切無視した居合抜きが、敬意を乗せた斬撃が発生し、巨狼へと叩き込まれた。
「来世があるのなら、正しく願いを叶える神様になれるよう祈ってやるさ」
その身に纏うエリクシルが砕け散りゆく様は、とても美しかった。
大成功
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カーバンクル・スカルン
宝石差別はんたーい! 「あんたをぐちゃぐちゃに砕く」って願いも叶えるべきだと思いまーす!
というのはジョークとして……ラミアが枯れてない大樹を枯れたと勘違いしたのが、今回の問題の大元。生き返らすどころか現在進行形で生きてるんだからあんたはそもそも願いに応えてねーんだよ。歪曲もいい所だ。
そんな詐欺師はさっさと制圧して黙らすに限る!
大量生産したカタリナの車輪を展開して【五馬分屍】をやらせてもらうわ! いくら何物も溶かす液体を持っているとはいえ、その2本の腕じゃこの物量を相手しきれまい!
さっさと粉々に砕け散りやがれ。……やっぱり願いは叶えてもらうんじゃなくて自分にやり遂げるに限るわ。
「宝石差別はんたーい!」
クリスタリアンという種族がエリクシルという存在を快く思えないというのは、ある意味当然のことだろう。どこかのエメラルドよりも更に邪悪な存在だ。
「『あんたをぐちゃぐちゃに砕く』って願いも叶えるべきだと思いまーす!」
おどけた態度ながらも、エリクシル・ペネトレイターに殺気を叩きつけるカーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)。
「なるほど。しかしそれでは皆の願いが叶えられなくなる」
それに対して、淡々と生真面目に返すエリクシル・ペネトレイター。
「ラミアが枯れてない大樹を枯れたと勘違いしたのが、今回の問題の大元。生き返らすどころか現在進行形で生きてるんだから、あんたはそもそも願いに応えてねーんだよ。歪曲もいい所だ」
「歪曲されていようが、願いに応えるということが重要だろう。そもそも勘違いしようが願いは願いだ」
「……ああ、そうかい。」
噛み合わない議論を続ける理由などない。狂った論理を論破してやる必要もない。
此処に至っては、眼前の存在を砕き停止させること。物理で解決が相応しい。
「そんな詐欺師は、さっさと制圧して黙らすに限る!」
高く吠え、カーバンクルは『カタリナの車輪』を大量に生産して一気にエリクシル・ペネトレイターへと嗾けた。
さながら暴走する車たちのように、禍々しいフォルムの巨大な車輪の数々が枝の上を転がっていく。
「できるものならな」
エリクシル・ペネトレイターが翳した腕から、液状エリクシルが放たれる。それに触れた車輪は動きが止まり、溶けて崩れていった。
エリクシルと車輪の勢いは拮抗している、かに見えた。
「上から、だと」
「いくら何物も溶かす液体を持っているとはいえ、その2本の腕じゃこの物量を相手しきれまい!」
奔流が衝突しあっている上方を、更に、跳ねるようにして車輪が飛ぶ。車輪だからといって別に転がすだけではない、投げるなり飛ばそうがカーバンクルの自由。あえて転がる車輪たちだけで拮抗状態を作らせておいて、その上で追撃を仕掛けたのだ。
車輪から伸ばされた鎖が、エリクシル・ペネトレイターの四肢に絡みつく。
「さっさと粉々に砕け散りやがれ」
捕縛され、攻撃が中断させられたエリクシル・ペネトレイターに、交通事故のように車輪が殺到していく。
「……やっぱり願いは叶えてもらうんじゃなくて、自分にやり遂げるに限るわ」
エリクシル・ペネトレイターの身が砕かれていく光景に、カーバンクルはスカッとした表情を見せるのだった。
大成功
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ワオワオ・マダガスカル
こやつが、エリクシルか。
んじゃ、これをやるか。
この空間を『物理攻撃禁止』に指定するのじゃ。
これで、一切の物理攻撃が出来なくなるのじゃからな。
わしか。
無頼銃でレーザーや電撃によって敵に攻撃するのじゃ。
ほれほれ、やってみそ?
無駄じゃ。
「こやつが、エリクシルか」
ワオワオ・マダガスカル(電脳オヤジモンキー・f39568)はすげない様子でエリクシル・ペネトレイターを眺めた。
これで外見が麗しい女神であったなら目の保養にでもなったのだろうが、残念ながら色気要素が絶無の敵に対して手心を――女神だったら手加減するのかと問われたら、もちろん選択肢には入れるのを考慮するだろう――加える理由など無い。
「君のような者でも、私を止めることを願うのか?」
「そりゃあな。むしろなんで、あんたはそんなことが許されると思っとるのよ?」
エリクシル・ペネトレイターの発言は、ワオワオの外見からの判断なのだろう。それこそ野性動物に見えるのだから、ラミアの常識に近いのではないかという。実際には、彼はまさに対極のような存在なのだが。
「他人、いや他猿を見た目で判断しちゃいかんよ。んじゃ、これをやるか」
ゴーグルを装着すると、超高度コンピューターを起動。
――瞬間、世界は緑に包まれた。
「これは、……数字?」
だがこの緑とは、植物のそれではない。ワオワオとエリクシル・ペネトレイターを包み込むように、無数の緑色の0と1の羅列が発生したのだ。
少し身構えはしたが、それら数字が自分に対して何も作用しなかったため、エリクシル・ペネトレイターは巨大な宝石の腕を生み出してワオワオへと掴みかかる。
が、その巨腕は、何故か軽い動作で身を躱したワオワオを掴み損ねる。
「……なに?」
今この電脳空間は物理攻撃が禁止されている。攻撃を行うこと自体は可能、しかしそれを命中させるのは果てしなく困難。もちろんそんなルールをエリクシル・ペネトレイターに説明する必要はない。
「ほれほれ、やってみそ? 無駄じゃがな」
戸惑いながらも叩きつけてくる拳を悠々と避けながら、ワオワオは『|無頼銃《ブライガン》』を使い、レーザーや電撃を放つ。
それに抵抗などできず、エリクシル・ペネトレイターは攻撃を食らってしまうのだった。
大成功
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リーオ・ヘクスマキナ
「そういう存在」? んー、ソレは確かに仕方ない。悲しいけれども
願いの叶え方とかを変えてくれれば、あるいは共存だって……けどそうしないっていうなら、エリクシルは危険だ。残念だけど、排除させてもらうしか無いねぇ
グラップルフックで三次元移動しつつ、中距離から短機関銃で継続射撃
枝の先端の方の、しかし敵が大型化しても然程問題ない場所まで後退しつつ誘い出す
大型化したらチャンス
決め手が無くて追い詰められたフリをしつつ、誘導と時間稼ぎ
枝葉に隠れてコッソリ敵後背に回り込んでもらった赤頭巾さんが、行使権を移行したUCを発動
後ろからの巨大な豆の木の突進で、一部の枝諸共樹上から叩き落とし、落下距離+豆の木で叩き潰す
エリクシル。エンドブレイカー!世界を終焉に導くもの。
それの意志や意図が、一般的な生命体とどれほど異なっているのかは分からない。しかし猟兵すべてにとって絶対の大敵と捉えられているかといえば、必ずしもそうだとは限らない。
「『そういう存在』? んー、ソレは確かに仕方ない。悲しいけれども」
願いの叶え方とかを変えてくれれば、あるいは共存だって。リーオ・ヘクスマキナ(|終わりつつある約束履行者《 リビングデッド 》・f04190)はそのように考える者のひとり。
ただし、それは今後発生しうる可能性に対しての話。すでに起こった事は別問題だ。
「私を理解してくれるのかね」
「いや? あなたは既に事を進めてしまっている。残念だけど、排除させてもらうしかないねぇ」
「そうか、残念だ」
エリクシル・ペネトレイターは、エリクシルの硬質な毛皮を纏う熊へと変貌していた。
樹上に熊が居る、というのは中々に恐ろしい光景だ。重量級の巨塊の突進をリーオは跳躍して躱す。左手からフック付きワイヤーを別の枝へと伸ばして引っ掛け、振り子のようにして離れては戻りながら短機関銃を射撃する。
連続で響く硬質な着弾音は、しかし熊の巨体にはあまり効いているように見えない。
「あらら、これは少々しんどいかな?」
とはいえ、さして困ってもいない風を装いながらも、リーオは射撃を続ける。……少なくとも、エリクシル・ペネトレイターにはそう見えるように誘う。
決め手を欠いているリーオを迫る壁のようにじりじり追い詰めていくエリクシル・ペネトレイター。ついには周囲には立体機動に活用できる枝葉もない、枝の先端へと到達した。
「爪に割かれるか噛み砕かれるか、君の願いは?」
「だったら墜落死だ、ねぇ!」
「!?」
突如エリクシル・ペネトレイターを襲う、背後からの衝撃。
浮遊感の中で振り向いた先に見えたのは、あまりにも巨大な長く伸びる豆の木。大樹に寄生するその根本には、赤い頭巾を被った何かが居た。
「――!」
エリクシル・ペネトレイターを、弾き飛ばすのではなくまるで先端で銜えるようにして、豆は伸び続ける。
そして、100メートル以上も下の地面へと。落下速度も加えた凄まじい勢いそのままに、叩きつけるのだった。
大成功
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レオンハルト・シャルラッハロート
「-忌まわしき“大魔女”の遺物め、叩き砕いてやる」<怒りを込めて
UC発動後、腕を二本追加し、槍斧で相手の攻撃を薙ぎ払い、返す刃で敵に叩き込む。
その後で熾炎と刃にまとわせた炎とで攻撃。
(体の崩壊対策にはグリフォンが対応)
防御はオーラ防御と受け流し。
状態異常には星霊フェニックスの聖炎で浄化させる。
「-誰も“他人”の運命を壊させはしない。貴様はここで砕け散れ!」
ボスを撃破できたら、
兜を外して、仲間たちに感謝の意を込めて一礼。
そして「-彼女(ラミア)達は無事だろうか?」と複雑な表情を浮かべながら呟く。
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】
■心情
願いを叶える……それが必ずしもその者にとって幸せを与える訳では無いですわ。
そんな存在、見過ごす訳には行きませんわね。
■行動
薔薇の刻印(UC)を使用して戦いますわね。
レオンハルトに前衛を任せ、私は後方からの精霊銃でのサポート攻撃を
メインに行いますわ。
足場の悪い所でも【落下耐性】により、落下の衝撃を和らげるように戦い
《プリンセス・ローズ》を敵に向かって放つ。
攻撃が命中したら、茨の刻印による追加攻撃を与え続けますわね。
敵が私から半径135m以内に居る様な位置取りを意識し戦いますわ。
敵のエリクシルギガントは【第六感】で虚空から出現する腕を察知し
【見切り】で避ける様にしますわ。
憤怒に満ちた、地を這うような唸り声であった。
「――忌まわしき“大魔女”の遺物め、叩き砕いてやる」
レオンハルト・シャルラッハロート(ランスブルグの天誓騎士・f38951)にとってエリクシル・ペネトレイターとは、末端のひとつに過ぎずとも、速やかに砕き潰すべき怨敵だった。
大樹の上へと戻ってきたエリクシル・ペネトレイターの傷は既に深い。だが痛みを感じていないのか? その態度はあくまでも落ち着いているように見える。
「私としては、そこまで君に何か恨まれる心当たりはないのだが」
「黙れ!」
対話する理由など無い。レオンハルトはオリハルコンの装甲を身に纏い、|守護巨神《ゴーレム》へと変状していく。
「逸らないでくださいな」
そんな相方の様子を窘めつつも、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)とて止める気などない。
「とはいえ、願いを叶える……それが必ずしもその者にとって幸せを与える訳では無いですわ」
「願いを叶えたのに幸福を感じないとは。意味が分からないな」
「……ええ、ええ。そうでしょう。だからこそ、あなたのような存在、見過ごす訳には行きませんわね」
声に蔑みを込めつつ、ローズは眉を顰めた。
|守護巨神《ゴーレム》と化したレオンハルトが一歩進むたびに、大樹の太い枝すらもゆさゆさと揺れる。両腕に加えて、更に二本の腕を生やしており、フレイムソード『熾炎』と槍斧『シュトルム』を握っている。
そこにエリクシル・ペネトレイターが伸ばしてきた|宝石の腕《エリクシルギガント》に、ローズが精霊銃から放った銃弾が命中する。
「退け!」
硬質な音を立てて、宝石の腕に罅が入った。そこにレオンハルトが両手持ちの武器を二本、凄まじい膂力をもって薙ぎ払う。砕かれながら弾き飛ばされていく腕には目もくれず、レオンハルトの突撃は止まらない。
「おおおおおっ!」
両の刃には炎を纏わせて駆ける。続けざまに襲い掛かる液状エリクシルを被ってしまうも、オーラを纏って防御を行い、精霊フェニックスによる聖炎で身を浄化させながら、なおも炎の巨神は止まらない。
「なんだ君は、何がそこまでさせる」
慄くエリクシルペネトレイターに、後方のローズが放った弾丸が当たる。
「……ぐっ! 薔薇、だと?」
傷ついた箇所には鮮やかな薔薇の刻印が刻み込まれ、あたかも棘のように身を蝕んでいく。
結果として、そちらに気を取られたことがエリクシル・ペネトレイターの致命的なミスとなった。
「――誰も“他人”の運命を壊させはしない。貴様はここで、砕け散れ!」
「――!!」
斬り、砕いて、溶かす。
力強き炎刃の双閃が、エリクシル・ペネトレイターの身を、速やかに消滅させていった。
残心を取りつつ暫し、漸く完全にエリクシル・ペネトレイターが消えたことを確認し、レオンハルトは兜を外す。そして、皆に対して感謝の意を込めて一礼した。
「――|彼女《ラミア》達は無事だろうか?」
そして、複雑な表情を浮かべながら呟くのだった。
大成功
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第3章 日常
『キャンプをしよう!(ハードモード編)』
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POW : 広い空の下で飯を食べよう!(超強い野生動物の襲撃に怯えつつ)
SPD : 広い空の下で野営地を作ろう!(超強い野生動物の襲撃に備えつつ)
WIZ : 広い空の下で焚火をしよう!(超強い野生動物の襲撃に構えつつ)
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
そろそろ日が暮れ始め、空が夕闇へと色を変えようとする大森林。
偽りの願いで繁った大樹の葉が、あたかも早回しの映像のように急速に散っていく光景は、不謹慎ではあるかもしれないが美しかった。
猟兵たちは、樹上に作られたラミアの集落に招かれていた。
「あ痛たた……。いやあ、なんか悪いことをしちゃったね!」
怪我のことなど大して気にせず、けらけらと陽気に笑うラミアたち。木の板ではなく、加工していない枝どうしを草縄で束ねたものを組み上げた建物は、とても隙間が多いが頑丈そうではある。
ただし床のスカスカ具合は結構恐ろしい。這って進むラミアたちには関係ないが、場所によっては脚が入り込むぐらいの隙間が空いている。
「この樹、冬には葉が散るのが普通だったんだね。教えてくれてありがとう!
それにしてもどうやって帰るんだい? 夜は下は結構危険だし、食事と寝床を用意するから泊っていきなよ」
事件を解決していつでも転移で帰還は可能だが、せっかくラミアたちが歓待してくれるのだから受けてもいいだろう。
ぐつぐつと煮える、何かの木の実を鍋として使った料理。大森林の生物らしきものの串焼き。木の実のジュース。
夜宴が終わったら、満点の星空を眺めながら超高所での就寝。そしてきっと素晴らしい夜明けの絶景が見られることだろう。
戦いの疲れを癒すべく、猟兵たちは身を休めるのだった。
コルネ・ナッツ
宴か、ありがたく御馳走になろう。先程は殴ってしまってすまなかったの。
あまり食べたことがない物ばかりじゃな。これは木の実がそのまま鍋になるのかの? 串焼きも元の生物が何かは気にしないでおこう。
満点の星空の下で眠るのも悪くないのう。今いる所が高いから他の物に邪魔されずに星が見られる。
明日は早起きしてぜひ日の出を拝もう、そう決意して就寝する。
まだ宴を続けるラミアや猟兵の声を聞きながら眠りにつくのだった。
都市国家のどれもから遠く離れ、人の営みの光がまったく存在しない世界。
しかし空には星が輝き、料理の炎は暖かく、猟兵とラミアたちを照らしていた。
「先程は殴ってしまってすまなかったの」
「あはは、いいっていいって! あんたらの方が強かったんだし、騙されてたのに気づかせてくれたからね」
ありがたくご馳走になるコルネ・ナッツ(チョコ・f08366)の謝罪も快く受け入れるラミアたち。強いものが正しい的な論理だが、それが大森林のルールなのだ。
それはともかく。
「あまり食べたことがない物ばかりじゃな。これは木の実がそのまま鍋になるのかの?」
ぐつぐつと煮込んでいる鍋として使われているのは、ヤシのような何か硬い果実の殻。中身は食材になったのだろう。
「焦げてきて使えなくなったら取り換えるけど、結構長持ちするよ」
「なるほどのう」
頷きつつ、具体的に食材の元を詮索するのは止めた串焼き(噛み応えがあるというか結構硬い)を頬張るのだった。
食事を堪能した後は早めに就寝することにしたコルネ。
雨避けのためらしく枝葉を被せた屋根はあるが、ほぼ露天のような状態で、これまた枝々で組まれたベッドに寝転がる。
なるほど、満天の星空とはまさにこういう光景なのか。視界には満天の星々。もちろん高所なので他の何かが視界を邪魔することはない。
「明日は早起きして、ぜひ日の出を拝もうかのう」
まだ宴を続けるラミアや猟兵の声を聞きながら、ゆっくりと眠りにつくのであった。
大成功
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セシル・バーナード
やあ、歓待ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えて一晩泊まっていくよ。
出される料理をただ食べるだけじゃ申し訳ない。ぼくからも返礼をさせてもらうよ。
ヴァイオリンを穏やかに「楽器演奏」しながら「歌唱」して、「誘惑」的な玲瓏の声色を流す。
後はいい反応してくれたラミアたちの側で食事して、夜の予約だ。
夜中に待ち合わせ場所でラミアたちと落ち合って、少しくらいの物音じゃ他に気付かれない家へ案内してもらう。
寝間着のポンチョを脱ぎ捨てると、もういつでも用意OK。玲瓏の声色で来てくれたことに改めて感謝を述べると、ラミアたちにも胸の布を外してもらって、今回の依頼の本番に挑ませてもらおう。
愛そうか、愛されようか?
「やあ、歓待ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えて一晩泊まっていくよ」
にこやかに微笑みながら、夜宴にてラミアの歓待を受けるセシル・バーナード(サイレーン・f01207)。
セシルとラミアたちとの会話は弾んでいる。それこそ種族の特性なのだろうか、出会って僅かで、戦いもした間柄なのに、双方の距離が当然のように近づいていく。
「出される料理をただ食べるだけじゃ申し訳ない。ぼくからも返礼をさせてもらうよ」
取り出したヴァイオリンを奏で、心地よい響きの歌声が樹上に響く。セシルの生み出した穏やかな音と旋律は、ラミアたちを魅了していった。
――そして、ラミアの中でも演奏に特に良い反応を示した娘たちと目くばせをする。彼女がたちこっそりと身振りで示したのは、ラミアたちの住居の中でも端の方の家だった。
「お邪魔するよ」
「あはっ、いらっしゃい」
深夜、皆が寝静まった頃。申し合わせた家を訪れたセシルを待っていたのは、先ほどの数名のラミアたち。
家に入ると、一応寝間着として着ていたポンチョをセシルは脱ぐ。
「来てくれて嬉しいよ、ありがとう」
「まあね、歌声聞いてグッと来たんだもの……逃しちゃう理由なんてないでしょ?」
にこりと笑う口から舌が長く伸び、セシルの顔をちろちろと撫で舐める。ぐるりとセシルと取り囲むように立つ様子は、ある意味で正しく捕食者の姿だった。
ラミアの手が、セシルの胸の布を外していく。裸を見たラミアたちが嬉しそうに笑った。
「わお、素敵ぃ」
「それじゃ、愛そうか、愛されようか?」
「どちらでも。……いえ、両方とも。夜は長いんだから」
セシルは、今回の依頼の本番へと挑むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ワオワオ・マダガスカル
うむ、宴会とは、有難い限りじゃのぅ。
宴とは、すなわち、無礼講じゃ。
モノも飲むし、木の実とかは遠慮せずに食べるのじゃ。
床とかがスカスカとかは、わしゃ、気にせぬ。
元から樹上で生活する者の身なんでじゃな。
どのみち、そのおっぱいプリンプリン、揉んでいいか?
なに、嫌じゃと?無礼講のはずじゃが。
まぁ、よいわ。
こんだけ高い木の上からは夜明けはさぞ素晴らしい光景が見えるのじゃな。
存分に食事を堪能しているワオワオ・マダガスカル(電脳オヤジモンキー・f39568)。
「うむ、宴会とは有難い限りじゃのぅ」
宴とはすなわち無礼講。せっかく出された食事を遠慮する方が却って失礼というもの。大きな葉っぱで作られた皿に盛られた硬い木の実を、殻ごとぽいぽいと小気味よく口に運び、名前を知らない熟した果実(林檎とか梨系で、味は酸っぱめであった)を齧る。
木の床とも呼べないような造りのところに座っているが、ワオワオがそんな不安定なロケーションを気にすることはない。元々樹上で生活する身なのだから、それこそ腰を落ち着けるには十分な場所、という括りに入るだろう。
「それにもてなしてくれるのは美人ばかり、眼福眼福じゃ」
「あら嬉しい~」
肌の露出が多いラミアたちに囲まれて上機嫌なワオワオ。なお状況的には、蛇に囲まれて捕食される寸前の小さい猿、ような危険な絵面であったりするが、もちろんそんな弱肉強食的な現象は(今回は)起こらない。
「のう、そのおっぱいプリンプリン、揉んでいいか?」
「え~、嫌よぉ」
とはいえ、さすがにエロ親父全開な行為はダメなのだが。
「あらら。まぁ、よいわ」
高い木の上からは夜明けはさぞ素晴らしい光景が見えるだろう、そんな風に切り替えてワオワオは食事と楽しむことにしたのだった。
……と、思っていたら。
「およ!?」
すすっと、後ろに回り込んでいたラミアが、ワオワオへとぎゅっと身体を押し付けてくる。
「先にいちいち許可を取るんじゃなくて、触っちゃってごめん、で良いんだからね?」
顔を近づけてワオワオの耳元で囁くラミアの顔は、まさに捕食者の笑顔を浮かべていたそうだ。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
絶望せずに「知らなかったけどそういうものだったんだ!」ってなってくれる相手で良かったわ。最悪菘さん呼び寄せて「ラミアでも分かる! 理科の特別授業」って題の寸劇でもやるか、って思ってたから。
にしてもカタリナの車輪でガリガリやっといて良かったわ。下に叩き落とした子達も一応死んでないし……とジュース片手に下を闊歩するヤバイデカイ獣を見やる。
……あ、アイムノットエリクシル。オーケー? こういう風評被害を無くすためにも奴らガンガン処分していかないとな……。許すまじエリクシル。
宴の中でくつろぎながら、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)は安堵していた。
巨木が伸ばす枝々に付いていた葉はもうすっかりと消えてしまい、今は枝だけの寂しい姿となっている。開けた視界はそういうものだと清々しく感じるが、なるほどあれだけ生い茂っていた緑がこうも変化してしまったら、ラミアが大樹の寿命が来たと勘違いしても仕方なかっただろう。
「あー、絶望せずに『知らなかったけどそういうものだったんだ!』ってなってくれる相手で良かったわ」
理解されずに『再び大樹を殺した』猟兵たちと戦う、なんて流れになったら最悪である。
最後の手段として|グリモア猟兵《菘》を呼び寄せて『ラミアでも分かる! 理科の特別授業』って題の寸劇でもやるかと企図していたカーバンクル。なるほど驚きの作戦だが、成功する可能性は結構高いかもしれない。何より本人が相当ノリノリでやりたがる。
それはともかく。
――オオォォォォォッ!!
「にしても、カタリナの車輪でガリガリやっといて良かったわ。下に叩き落とした子たちも一応死んでないし」
木の実の器に入った何かの果汁を飲みながら、床部の広い隙間から真っ暗な下方を見る。
先ほどから聞こえてくる音には、木々の葉擦れや風の音以外に、明らかに何かの吼える声などが混じっていた。
大森林の夜とは、生き物が寝静まる静寂の夜ではない。夜行性の生物が存分に闊歩する、ともすれば昼間以上に過酷な世界だ。
「……わお」
目が合った。間違いなく目が合った。
下方に見えた二つの光は、間違いなくこちらを見上げ睨む瞳。隙を見せたらこちらに襲い掛かってきそうな殺気を持つ、そいつのサイズは……えっ、つまり下の森からは頭が出ちゃってる背の高さなわけ?
「……あ、アイムノットエリクシル。オーケー? こういう風評被害を無くすためにも、奴らガンガン処分していかないとな……」
今回はたまたまラミアの願いだったが、これがもっと巨獣だとかがヤバい願いを――例えば最強になりたいとか――願ったら、それだけで普通に世界が危ない。
「許すまじエリクシル」
洒落にならない現実を見据え、カーバンクルは気を引き締めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
名乗って礼を尽くしてから
乙女に傷はよくないよ
歓迎の前に医術の符で手当させて欲しい
ドサクサ紛れに人ならざる部位を見たり触ったりするよ
綺麗だから気になっちゃったと天然で誘惑するぜ
種族的に毒にならないか確認した上でお土産の暗黒純米吟醸を出して酒盛りしましょ
倫理に反しない限り出されるものは口にする、意外と美味いかもしれないし
アタシもどたばたクッキングで甘味を振舞うぜ
いっぱいお喋りして異種族ライフを知りたい
服とかピュアリィの仕立屋なんてあるのかな?
酔って寝入って襲われて
巻かれて一晩も悪くない
蛇の匂いとピュアリィの香気に酔いそうだ
恋人いるのでえっちなことは嗜めるよ
仲良くできるのが幸せだ
また来ても良いかい?
「乙女に傷はよくないから、手当をさせて欲しい」
「そう? それじゃ遠慮なくお願いするね」
まだ日が暮れる前の頃。大樹の事情を説明して納得してくれたラミアに、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は負傷の手当ても申し出ていた。
旺盛な生命力ゆえそのまま少し安静にしておけば傷はすぐ治ってしまうのだろうが、治癒が早い方がもちろん助かる。治療道具を物珍しそうに見ているラミアに服を脱ぐよう促し、燦はぺたぺたと医術の符を貼っていく。
「ソコは怪我してないんだけど?」
そして、裸になることをほぼ気にしていないラミアの、人間とは異なる部位。つまり鱗に覆われた下半身をドサクサ紛れに触ってみたりする。すべすべとして、暖かい。
「いやあ、綺麗だから気になっちゃった。それにさ、気付いていないだけで傷があるかもしれないじゃん?」
「あら、それはたしかにね?」
熱っぽい視線が交錯し、互いに意を理解して微笑みあうのだった。
「いやあ、美味しい料理だね!」
燦は土産の暗黒純米吟醸を提供し、大森林では入手できない持ち込みの食材を使っておつまみや甘味を作り、盛大に酒宴を開いてた。ラミアたちは本格的に調理された料理の味に舌鼓、大好評である。
「そっちの料理も美味いじゃん!」
ラミアたちの料理を食べてみて褒める燦。意外と、と言うと失礼かもしれないが、『住』という要素で不安が少なくなった分、衣や食という分野に生活の余力を回しているようだ。
「へえ、ピュアリィの仕立て屋なんてあるの?」
「蜘蛛とか山羊系の娘たちとかね。狩りを手伝ったり木の実と物々交換したりさ」
……などと。知恵を持つ種族同士であれば、争うだけでなく共存するパターンもあるようだ。
なお、すっかりべろんべろんに酔って寝入ってしまった燦は、先ほど治療したラミアに襲われてしまうのだった。
別に燦もウブではない。ただラミアとするとなると、ちょっとプレイの予想がつかなかったが。まあ凄かった。
「……尾でぎゅうってして動けなくしたまま、長い舌を奥まで突っ込んでくるとか……」
ああ、星がとても綺麗。指じゃなかなか届かないところをぺろぺろ。凄い。
再びの訪れを約束しつつ、蛇の匂いとピュアリィの香気に酔いながら。身体を尾に巻き付かれたままで、燦は幸福感に包まれて眠るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レオンハルト・シャルラッハロート
【薔薇園の古城】
・心情
-そもそも、散々ピュアリィ等を蹴散らしまくったボクに仲良くなれる資格は-
と悩んだ後で、かつて世話になった人の言葉を思い出す。
『そんな時は、美味しい物を差し出せば大抵丸く収まるモンさ!』
その後、ローズ(f04715)に話しかけてからは彼女に行動を合わせます。
・行動
まずUC発動後、周囲にグリフォンとフェニックスを展開。(警戒の為)
その後は野営地の設営を手伝います。
その間、(兜を脱いで)ランスブルグの名物料理を
「これ、皆さんの口に合うかどうかはわかりませんがどうぞ」
と言って差し出します。
宴が終わったら一礼した後、
「ありがとうございます。家族への土産話が一つ増えました」
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】
■心情
悪い事をしてしまったのはお互い様ですわ。
私達の方こそ、貴女方を傷つけてしまって済みません。
それに、元々悪いのは洗脳する側ですので、お気になさらずに。
■行動
レオンハルトがピュアリィたちと仲良くなれる為の仲介を務めますわ。
「諸悪の根源はエリクシル、それは私もラミア達も同じ筈ですわ」
「今は互いに争うべき時ではありません、きっと猟兵もラミアも、仲良くなれますわ」
そして私からは【薔薇園狂詩曲】をラミア達に披露して
楽しませてあげますわね。
「どうでしょう、楽しまれたでしょうか?」
あとは、用意されている料理とかを皆で食べて、楽しく過ごしましょう。
ラミアたちがそろそろ夜食の支度を始め、猟兵たちもそれを手伝ったりくつろいだりと三々五々に行動していた頃。
総じて賑やかな彼ら彼女らとは離れた場所で、レオンハルト・シャルラッハロート(ランスブルグの天誓騎士・f38951)は、俯きながら独り佇んでいた。
ラミアたちの賑やかな声を背に受け、しかしレオンハルトの心境はあまり芳しくもない。
――そもそも、散々ピュアリィ等を蹴散らしまくったボクに仲良くなれる資格は……。
先程の戦闘時の勇士然とした心境はすっかり身を潜め、ネガティブな感情ばかりが浮かんでくるのだが。
「……ああ」
ふと視界を上げた先に広がるのは、すっかり葉の落ち果てた大樹の枝々、そして夕暮れに染まる眼下の大森林。人類が今までに誰も、そしてこれからもほとんど見ることができない壮大な景色。
それを目にして、レオンハルトはかつて世話になった人物の言葉をふと思い出した。
『そんな時は、美味しい物を差し出せば大抵丸く収まるモンさ!』
そう、立ち止まって悩んでいても何も進まないと。行動に移そう。良い方に表情を変えたレオンハルトは、少し離れて様子を見ていたローズへと、ラミアへの謝罪を提案を持ち掛けるのだった。
「本当に、済みません」
「別にそこまで謝らなくても! 後に残るような傷でもないしさ、こっちは本気で殺すつもりだったから悪かったよ」
「悪いことをしてしまったのはお互い様ですわ。私たちの方こそ、貴女がたを傷つけてしまって」
謝罪する二人に対するラミアたちの反応は、拍子抜けするほどに至って明るいものだった。
必要だから獲物を狩る、必要だから敵を殺す。逆に言えば必要がなければ争う理由もない。むしろラミアは大樹の生態を教えてくれてありがたいとまで考えていた。これで来年の冬に葉を落とそうが驚きはしないし、もちろんこれからもずっと、この安寧の棲家を自分たちは死守してやろうと決意している。
「それに元々悪いのは洗脳する側ですので、お気になさらずに」
「いやほんと、そんなことする奴がいるなんてねえ!」
とまあ、そんな風に喋っているとキリがないので、レオンハルトたちは野営地の設営や調理の手伝いをすることにした。
レオンハルトは周囲に|グリフォン《シュヴァルツェヴィント》とフェニックスを展開する。他に外敵は居ないのかと問うたところ、鳥など――やはりというか獰猛で巨大なサイズ、ラミアですら餌として大爪に捕まえられてしまうような――が襲ってくることもあるのだとか。念のための警戒である。
そして夜宴の調理を手伝いつつも、自分で持ち込んだ食材を使いランスブルグの名物料理を仕込んでいく。
「これ、皆さんの口に合うかどうかはわかりませんが、どうぞ」
初めて兜を外した彼の容貌を見てラミアたちがざわめく。もっとも、共にいるローズのほんの少し棘のある視線に気づいて色気を出すのは控えるのだが。
「ありがとう! わ~、美味しい!」
嬉しそうに料理を食べていくラミアたちを見て、ようやくレオンハルトは相好を崩すのだった。
「諸悪の根源はエリクシル、それは私もラミア達も同じ筈ですわ。今は互いに争うべき時ではありません、きっと猟兵もラミアも、仲良くなれますわ」
そして双方の融和を見届け、ローズももてなしのヴァイオリンを取り出す。
「お聞きになって、私の奏でる旋律を」
即興の響きは荒々しく、そして美しく。大森林に生きる生命を象るような、強い調べ。
大樹に滋養の如く、ヴァイオリンの演奏が染み渡る。
「――どうでしょう、楽しまれたでしょうか?」
ラミアたちと、そしていつの間にか静聴していた他の猟兵たちの万雷の拍手を受け、ローズは優雅にお辞儀するのだった。
宴は続き、そして終わる。
レオンハルトは改めて、ラミアたちに頭を下げた。
「ありがとうございます。家族への土産話が一つ増えました」
「それは嬉しいわ! だったら、是非とも私たちのことはいい感じに言っておいてね?」
「ええ。都市国家の外、辺境にも、素敵な|者《ピュアリィ》たちがいたと」
皆で料理を食べ、楽しくお喋りをして、そして自然と解散する流れに。そのまま大樹の上で一泊する者もいれば、すぐに帰還する者も居るだろう。
エリクシルのひとつを打ち砕き、そして猟兵たちは、次の戦いへ向かうための英気を養うのだった。
大成功
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