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ベレシートに根源は舞い降りるか

#クロムキャバリア #レジスタンス共闘 #ACE戦記外典 #シーヴァスリー #フォン・リィゥ共和国 #ACE戦記

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●破壊者
 小国家『シーヴァスリー』は多くの小国家を滅ぼした。
『サスナー第一帝国』から『バンブーク第二帝国』に連なり、それ自体を滅ぼす。『フィアレーゲン』を、『八咫神国』を駆逐してみせた。
 猟兵たちは知っている。『シーヴァスリー』を生み出したオブリビオンマシンは、もうこの世界には存在していない。
 しかし、オブリビオンマシンによって思想を染め上げられた『シーヴァスリー』は、オブリビオンマシンなくとも歪められた思想のままに争いを拡大しようとしている。

『此処』と呼ばれていた未開地集落を襲ったのも、弱者を見つけたからに過ぎない。
 雪原の一角には大規模かつ、巨大なボーリング機械が存在していた。
 白煙を上げながら、その機械は大地に穴を穿とうとしているようだった。それは大規模な環境破壊と呼ぶに相応しい行為だっただろう。
 その大規模な環境破壊の現場に立つのは一人の男だった。
 彼は『シーヴァスリー』を今束ねる立場の要人であった。
「我等の安寧は地底に存在している。かつて在りし『バンブーク第二帝国』のように、我等が祖たる『サスナー第一帝国』が求めたのは『アンダーグラウンド』」
『シーヴァスリー』は未だオブリビオンマシンがもたらした歪んだ思想に染まっている。
 弱者を生み出し、それを担保にして己たちの豊かさを保証しようとしている。
 それが人の業であるというのならば、争いが絶えぬ理由であったことだろう。
 人はより良きを求める。
 他者より優れたるを求める。

 己が他者より優れていることを証明することは簡単だった。
 己自身を研鑽するよりも、他者を貶めればいいのだ。
 自らが向上することも、進むこともしなくていい。それは辛く険しく、厳しい道だったからだ。その道がいつだって正しい道であることは言うまでもない。
 けれど、誰もがその道を征くことはできはしないのだ。
「故に掘り進めるのだ。世界が我等を否定するのならば、我等が世界を否定しよう。誰もが強くはあれないのだ。誰もが弱さを肯定しなければならない」
『シーヴァスリー』を率いる男は告げる。

「故に我等は第三の帝国を名乗るのだ。『第三帝国シーヴァスリー』と! 諸君らは選ばれた民だ――」

●後続者
「確かにそれは簡単なことなのかもしれない。多く傷つくことをしなくても良い道なのかもしれない。けれど、それは人の弱さを肯定することだ。僕らは知っている」
 雪風が吹き付ける大地に四つの影があった。
 四つの影が見据えるのは、『第三帝国シーヴァスリー』の大地を穿つボーリング機械が密集する『アンダーグラウンド』へと進出するための雪原だった。

「ええ。人は弱い。けれど、それを否定しなければならない。どれだけ困難な道であっても。どれだけ険しい道でも。人は殺されてしまうかもしれなくても」
「負けるようには出来てはいまい。俺達はそれを知っている。あの人達のようにと願い、そして俺達の手にあったのは白紙の切符だった」
「だから、わたしたちは戦う。人の弱さと。征こう、みんな」
 四つの影の手が天に向けられる。

 嘗て『フォン・リィウ共和国』において『エイル因子』を持って生み出された『神機の申し子』たち。
『エルフ』、『ツヴェルフ』、『ドライツェーン』、『フィーアツェン』。
 彼らはその瞳に意思を宿す。
「――『セラフィム』!」
 虚空より現れるのは四機のサイキックキャバリア。
 それは嘗て『熾盛』とも呼ばれたキャバリア――『セラフィム』。
 その機体の色は一様に『赤』と『青』の二色を持つ。まるで人の心の善性と悪性とが内在することを示すように、彼らの元に降り立つ機体の色は左右非対称なれど分かたれているのだ。

「『シーヴァスリー』は、人の住まう大地を破壊しつくそうとしている。そうして地上に住まう人たちを地底の汚染物質で汚そうとしている」
 そんなことをさせないと『神機の申し子』たちは、たった四機で『第三帝国シーヴァスリー』に立ち向かおうとしていた。
「征こう。誰かが助けを呼んでいるのなら」
 皮肉にもそれは、嘗て『サスナー第一帝国』に立ち向かった『憂国学徒兵』、その最初の9人、『ハイランダー・ナイン』と始まりを同じくするものだった――。

●レジスタンス共闘
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。再びクロムキャバリアでの事件です。これまで多くの小国家を滅ぼしてきた小国家『シーヴァスリー』は、地底を目指し、大規模な環境破壊を行っています」
 それ自体に関しては猟兵が関与するところではない。
 けれど、そこにオブリビオンマシンの影があるのだ。
 これまで『シーヴァスリー』の人々はオブリビオンマシンによって操られるのではなく、思想自体を染め上げられていた。
 しかし、ついに『シーヴァスリー』の要人がオブリビオンマシンによって毒されたことを示す予知がなされたのだ。

「『シーヴァスリー』は『第三帝国』を名乗り、地底帝国の残滓が残るであろう『アンダーグラウンド』へと至るために大地を穿とうとしています。ですが、地底帝国が有毒装甲を有していたように、穿たれた地底から噴出する毒素は瞬く間に艦橋を汚染するでしょう」
 それは由々しき事態である。
 地底帝国が有していたオブリビオンマシンには有毒装甲……毒素を撒き散らし、人を殺すことだけを目的としたものもあったのだ。
 その毒素が穿たれた地底から噴出すればどうなるかなど言うまでもない。

「はい、ですが、それに立ち向かう方達がいるのです。彼らと協力して今回の事態を解決してほしいのです」
 言わばレジスタンスとでも言うべきだろうか。
 しかし、『シーヴァスリー』の数は膨大だ。レジスタンスの数はたった四機のサイキックキャバリア。
 それだけで彼らは『シーヴァスリー』のボーリング機械密集地帯を襲撃しようとしているのだ。
「無謀……そのものですが、彼ら『フォン・リィウ共和国』で生み出された『神機の申し子』たちであれば、まったく勝算がないわけではありません。しかし、予知ではオブリビオンマシンに彼らが敗北することが示されています」
 故に猟兵たちが共闘に向かうというわけである。
 それに小国家の中枢に救うオブリビオンマシンを撃破することは、猟兵達の役割だ。

 ナイアルテが再び頭を下げて、その瞳で猟兵たちを見やる。
「皆さんの戦いの軌跡が、一つまた結実したとも言えるでしょう」
 嘗てオブリビオンマシンによって心を歪められた『神機の申し子』たち。
 けれど、今は正しき道を己たちで掴み取って行動している。それは、猟兵たちの戦いが、何一つ無駄ではなかったことを示している。
「どうかお願い致します。彼らの伸ばした未来を、険しくも厳しい道行きに降りかかる悪意を」
 振り払ってほしいと猟兵たちをナイアルテは送り出すのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はクロムキャバリア、小国家『シーヴァスリー』による環境破壊を防ぐシナリオになっております。
 またこの環境破壊を目論む『第三帝国シーヴァスリー』を名乗るオブリビオンマシンに中枢を侵された小国家に反抗するレジスタンスと共闘するシナリオでもあります。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。

●第一章
 集団戦です。
 転移によって現地へと飛んだ皆さんは既に『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシンとレジスタンスである四人の『神機の申し子』たちが駆るサイキックキャバリアとの戦闘が始まっている光景を見ることでしょう。
 彼らはキャバリア操縦に適した『エイル因子』とサイキックキャバリアの性能によって単騎でも部隊を相手取ることができています。
 ですが、『シーヴァスリー』のキャバリアはオブリビオンマシン。
 次第に劣勢を強いられるでしょう。
 颯爽と加勢し、彼らを助けましょう。

●第二章
 冒険です。
 敵オブリビオンマシン部隊を撃破すると、『シーヴァスリー』の要人たちが戦いのどさくさで大型陸上戦艦と共に離脱する光景を見るでしょう。
 このままでは彼らを取り逃してしまいます。
 ですが、『神機の申し子』たちはむやみに特攻していたわけではありません。
 要人たちが逃走することを、そしてそのルートを見越していました。
 彼らの言葉に従い、迫る小型の陸上戦艦を撃破しながら、要人たちの乗る大型陸上戦艦を追いましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 要人たちが乗る大型陸上戦艦から飛び出してきた『黒幕』たるオブリビオンマシンとの対決となります。
 精鋭たる護衛機も飛び出しますが、そちらは『神機の申し子』たちが引き受けてくれます。
 皆さんは『黒幕』であるオブリビオンマシンの撃破に専念しましょう。

 それでは外典は次なる因果となるのか。オブリビオンマシンのもたらす戦乱を止める皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』』

POW   :    |数重《かずしげ》達による多段強襲攻撃
【短距離虚空潜航からの強襲斬撃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    関節・急所への斬突や体勢を崩す体当たり
【虚空】に消え、数秒後に出現し【介者剣法】による素早い一撃を放つ。また、【RX長巻を使い捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    囲んで長巻で斬る
【短距離虚空潜航を使い、数重で相手を囲む事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【出現からの強襲袋叩き】で攻撃する。

イラスト:イプシロン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 四機のサイキックキャバリアが雪原を駆け抜ける。
 虚空を潜航する特性を持つ量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』の部隊を相手取ってなお、『赤』と『青』の色を持つサイキックキャバリアは単騎で圧倒していた。
「『ツヴェルフ』、中央を崩してくれ!」
『エルフ』と呼ばれる『神機の申し子』が僚機を駆る『ツヴェルフ』に告げる。
 彼の周囲を俯瞰して動くことのできる戦術は、数で勝る敵を跳ね返す。
「ええ、『ドライツェーン』!『フィーアツェン』! 突き崩して突出してきた左右の部隊を頼みます!」
「食い破る! 任せておけ!」
「そちらには行かせない」
 たった四機。
 されど、その四機は単騎が戦術で持って戦略を凌駕する。

 だが、敵はオブリビオンマシンである。
「こいつら……! まさか『神機の申し子』たちか……!『フォン・リィウ共和国』の!」
『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシンに乗るパイロットたちは次々と撃破されていく部隊と、その反応が消失していく光景に驚愕する。
 だが、敵はたったの四機。
 普段であれば、彼らはその事実にたじろぎ、動揺しただろう。
 しかし、彼らは動揺しない。
 何故ならば、彼らは今キャバリアではなくオブリビオンマシンに乗っているのだ。
 そして、その機体にはある『戦闘データ』が補助として自分たちの操縦をサポートしてくれている。虚空潜航という能力と相まって、彼らの戦闘力は通常のそれとは一線を画す。
「だが、舐めるなよ。『エイル因子』があるからと言って!」
「そうだ! 俺達には! あの悪魔の戦闘データがある! いけよ!」
『武甲・数重』のモノアイセンサーが煌めく。
 それは剣呑たる輝き。
 禍々しき輝き。

 機体のフレームが軋むようにして、これまでのキャバアリアとは異なる尋常ならざる動きをオブリビオンマシンたちは見せつける――。
メサイア・エルネイジェ
神機の申し子?
はて?聞き覚えが…
あー!あの時ヴリちゃんのサブアームをお釈迦にしやがったアンサーおヒューマン部隊ですわね!
まだお弁償して貰っておりませんのよ!おこー!
終わりましたら取り立てに参りますのよ〜!

前回と同じくシーヴァスリーに数重ですのね
ではヴリちゃんも前回同様クロムジェノサイダーですわ!

相変わらずキャバぴょいしておりますわね!うー!キャバだっち!
今回はこちらから仕掛けますのよ〜!
シールドパンチ!ギロチンシザー!
するとキャバぴょいされますわね
ですが!攻撃の瞬間は必ず近寄ってきますし現れるのですわ!
そこに尻尾でスイングスマッシャー!わっしょい!
お肉を切らせずに骨を断つのですわ〜!



『神機の申し子』――それはメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)にとって苦々しい記憶の主達であったことだろう。
 彼女の駆る暴竜型キャバリア『ヴリトラ』のサブアームを破壊したアンサーヒューマン部隊。
 小国家『フォン・リィウ共和国』にて生み出された彼らをメサイアは最初思い出せなかったが、ふつふつと蘇る記憶におこであった。
「聞き覚えが有るに決まってるのですわ! まだサブアームのお弁償して貰っておりませんのよ! おこー!」
 全チャンネルで喚き散らされるメサイアのおこ発言に『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン、量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』のパイロットたちはあっけにとられたことだろう。
 戦場において、一体全体何を言ってるのかと思ったし、また同時に突如として現れた援軍に動揺したのだ。

「終わりましたら取り立てに参りますのよ~!」
「やばい。確実にあの人だ」
「見間違えるわけありませんよ、あの黒いキャバリアなんてそうそう居るものではありません」
「まずいな。『シーヴァスリー』をどうこう以前に、かの皇女殿下からの取り立てで俺達がやばいぞ」
「……どうしよう」
『神機の申し子』たちは皆一様に、援軍が来たという頼もしさと同時にメサイアの取り立てに怯えるようだった。

「何をごちゃごちゃと!」
 虚空に潜航して距離を詰める『武甲・数重』たちが迫る。
 それをメサイアは見やり、サブアームに備えられた大型盾を持って一撃を防ぐ。
「相変わらずキャバぴょいしておりますわね!」
「受け止めた! だが!」
 彼らの駆るオブリビオンマシンには『悪魔のデータ』が補助として活用されている。パイロットの技量がメサイアたちに追いつけないものであっても、補助をしてくれる戦闘データがあるのならば、通常以上の力を発揮することができるのだ。

 だが、メサイアは変わらなかった。
「うー! キャバだっち!」
 大盾で受け止めた『武甲・数重』の一撃にカウンターを叩き返す。
 巨大な盾より現れるギロチンシザーの一撃。
 けれど、『武甲・数重』はそれを虚空に飛んで躱す。
 機体の反応速度というより、補助をするデータのちからが大きいのだろう。最小限の虚空潜航でメサイアの、『ヴリトラ』の一撃を躱すのだ。

 だが、メサイアの瞳はユーベルコードに輝いている。
「案の定キャバぴょいされますわね!」
「キャバぴょいって何?」
「キミの愛機が走り出すのですわ~!」
「話が、いや、話も飛んでる!」
『神機の申し子』たちは愕然とする。
「ええ、虚空潜航に頼って彼らは必ず近寄ってきますし、現れるのですわ! となれば! ここに尻尾を置いておけば、勝手にあたってくれようというおのですわ~! わっしょい!」
 そう、それこそがエルネイジェ流横殴術(スイングスマッシャー)。
 王家の秘技。
 テイルスマッシャーの一撃は暴力の一撃。
 迫る『武甲・数重』たちが如何にオブリビオンマシンとなって強化されているのだとしても。
 一度メサイアが立ち合ったキャバリアに遅れを取ることなどない。

「これこそが我が王家の家訓が一! お肉を切らせずに骨を断つのですわ~!」
 振るわれる一撃が『武甲・数重』たちを尽く薙ぎ払い、その残骸を無惨にも雪原に降り注がせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
えー…またかよ!
シーヴァスリーお前ホントに…お前!
ボーリングするなら変なもん掘り起こさずに温泉でも掘り起こせよ!
……あの機械奪って温泉掘れば一儲け出来るのでは…?
よっしゃ!奪うか!


なんかおる!
あいつ等も温泉目当てか!
私の温泉は渡さないぞ!!
違う…?
それなら襲わんとこ…

【Code:P.D】起動
カートリッジ転送、フルロード
最大スケール、雷龍12体召喚
どれだけ素早く、虚空とやらに消えようと
面で攻撃し続けてれば、いずれ引っ掛かる
全雷龍で『ブレス攻撃』
雷のブレスでショートさせて動けなくしてやろう

私はその間にボーリングマシンの制圧に向かおう
折角良い物があるんだ
出来れば無傷で回収してお楽しみに使いたいよね



 小国家『シーヴァスリー』は幾度となく猟兵たちと対峙してきた。
 彼らの思想はオブリビオンマシンによって染め上げられている。故に彼らはオブリビオンマシンに乗らずとも破滅的な行いをしてきた。
 だが、ここに来て彼らはオブリビオンマシンを駆るようになっていた。
 量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』。
 それはつい先日未開地集落を襲った『シーヴァスリー』のキャバリアであったが、すでにオブリビオンマシンと化している。
「えー……またかよ!『シーヴァスリー』お前ホントに……お前!」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は呆れと共に戦場に転移する。

 彼女の視界に広がっているのは、オブリビオンマシンとなった量産型サイキックキャバリアたち。
 彼らの目的は地底帝国の残滓である毒素である。
 それを地底より掘り起こし、如何なる破滅的な作戦を成そうというのだ。
「ボーリングするんなら変なもん掘り起こさずに温泉でも掘り起こせよ!」
 玲は思わず、そう思った。
 いや、待てよ、と彼女は首を傾げる。
 顎に手を当ててシンキング。
 地底。ボーリング。温泉。
 そこから導き出されるのは戦乱の世界に疲れ果てた人々の心を癒やす極楽。

 即ち、金の匂いがするのである。
「よっしゃ! 奪うか!」
 そこからの玲さんの行動は迅速だった。ものすごく早かった。彼女は商機……もとい勝機を逃さぬ猟兵である。
 あの量産型サイキックキャバリアが邪魔だというのならば、完璧に排除してボーリング機械施設を奪取しようと目論んでいるのだ。
 これで一山当てれば、欲しかったあれもこれもそれもどれも全部思いのままである。
 目が銭の形をしているといわれても仕方ない。

「生身単身だと!? 馬鹿げたことを!」
『シーヴァスリー』のパイロットたちは雪原を奔る玲の姿にあざ笑うかのように、己たちのオブリビオンマシンの力を持ってすり潰さんとする。
 それを見た『ツヴェルフ』は目をむく。
「……あの、人は……!」
「俺達が知る人なのならば、援護は不要だ。わかっているだろう、『ツヴェルフ』!」
『ドライツェーン』は知っている。
 あの超常の人を。
 彼女は生身でキャバリアを圧倒するのだ。それも『エイル因子』を持つ『神機の申し子』たちをも圧倒してみせたのだ。

 それを知るからこそ、むしろ、自分たちが加勢に入ることは玲の邪魔になると理解しているのだ。
「なんかおる!」
 玲は、『赤』と『青』の色を持つサイキックキャバリア『セラフィム』の姿を捉える。
 だが、今の彼女は温泉しか見ていない。
 本当にクロムキャバリアから温泉が出るのかはわからないが、しかし彼女の目的であるボーリング機械を奪おうしているのならば、連中も一緒くたにぶっ飛ばすつもりなのだ。
「私の温泉は渡さないぞ!」
「えっ!?」
「ち、違います! 温泉は、その、なんなのかわからないですけど! 僕らは違います!」
『エルフ』たちの言葉に玲さんは漸く軽快の念を解く。

「なら襲わんとこ……とりま、カートリッジロード、プログラム展開。雷龍召喚――Code:P.D(コード・プラズマ・ドラゴン)!」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 模造神器のエナジーカートリッジが弾け飛ぶようにして放出される。
 それは一瞬でカートリッジ内のエネルギーを消費しつくしたことを示していた。
「攻撃……! ならッ!」
『武甲・数重』のパイロットたちが虚空に潜航して玲のユーベルコードの前兆を捉え、飛ぶ。
 しかし、玲は構わず空より舞い降りる雷で構成された龍たちの顎より放たれる広域のブレス攻撃で戦場の面という面を制圧するように埋め尽くす。

「どれだけ早く、虚空とやらに消えようと面で攻撃してればいずれ引っかかるってもんだよ!」
 吹き荒れる雷の海のごときユーベルコードに玲に迫ろうとしていた『武甲・数重』たちは次々と回路をショートされ大地に墜ちていく。
 それを『セラフィム』たちが戦闘能力を奪いながら疾駆していく。
「できれば無傷で回収して一儲け……もといお楽しみに使いたいんだから、傷つけないでよね!」
「あっはい!」
 玲は戦場に疾駆する『セラフィム』たちと共に『シーヴァスリー』のボーリング機械密集地へと踏み込んでいくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

撃墜王・キングオブエース
さて、この名に恥じぬ戦果を心掛けよう。

ACE(|戦闘騎形態《キャバリアモード》)で行こう。生憎、『|戦闘機形態《ファイターモード》』は今はまだ少しばかり調整中でね。だが幸い、武装はそれなりに揃っている!

『墜としてみせるっ!!』
対空飛行でUC発動!
ゆけ、ビット!
オーバーブーストマキシマイザー!!

『墜ちろ!!』



 小国家『シーヴァスリー』とレジスタンスである『神機の申し子』たる四人の戦いに介入した猟兵達は、まるで鏃のように戦場を穿つ。
「こいつらか、報告にあった未開地集落に現れたという手練れは!」
 オブリビオンマシンである量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』のパイロットたちは戦場に現れた猟兵達という戦力にたじろぎはしたものの、それは僅かな時でしかなかった。
 彼らは思想を歪められ、オブリビオンマシンによって狂気に囚われてなお、破滅の道を進むことをいとわない。
 彼らが駆るキャバリアは虚空潜航によって距離を詰めることができる。
 手にした長巻の一撃は視界の外から繰り出される必殺の一撃であったことだろう。

 だが、クロムキャバリア駆る撃墜王・キングオブエース(召喚獣「撃墜王」のキングオブエースパイロット・f39681)にとって、それは見てから反応することのできる類のものであった。
「この名に恥じぬ戦果を心がけよう」
 彼女の駆るクロムキャバリアが雪原を疾駆する。
「遅いッ!」
『武甲・数重』のパイロットたちは、戦闘データの補助を受けて一気に彼女の駆るキャバリアに一撃を見舞わんと囲うようにして虚空より飛び出す。 
 それを彼女のキャバリアは加速するようにして囲いを突破する。
 正面の一騎へとソードを叩きつけ、押し込むようにしながら雪原に叩きつける。

「私のキャバリアはあいにく少しばかり調整中でね。だが、幸いに武装はそれなりに揃っている!」
 蹴り飛ばすように一騎の『武甲・数重』を吹き飛ばし、雪原を切り返すようにして機体が身を翻す。
 さらに迫る敵を彼女は視認して笑む。
 こちらの息をつかせる暇などない怒涛の連続攻撃。
 ならばこそ、彼女の瞳はユーベルコードに輝き続ける。
「オーバーブースト・マキシマイザー……墜として見せるっ!!」
 彼女の瞳の輝きに呼応するようにクロムキャバリアのアイセンサーが煌めく。地面を舐めるようにして機体が凄まじい勢いで飛翔し、展開した武装が迫る『武甲・数重』たちのオーバーフレームの腕部を貫く。

 敵の攻撃の起点があの長巻であるというのならば、それを振るう腕部を狙うのは定石とも言える。
「機体と補助データは一流のようだが……それを駆る者の腕が追いついていないどころか足を引っ張るとは」
 雪原を舞うようにしてクロムキャバリアが射出したビットによって『武甲・数重』を次々と貫いていく。
 それはまさに彼女の名、キングオブエースに恥じぬ戦いぶりであったことだろう。

 肉薄する機体を見据え、彼女は一言呼気を漏らすように告げる。
 それは確定した未来を呼び込むようであり、また、同時に現実となる言葉。
「墜ちろ!!」
 バルカンの一撃が敵のアイセンサーを潰し、ライフルの一撃が長巻を弾き飛ばす。
 さらに振るったソードの一撃がオーバーフレームを切り裂く。
 一瞬の交錯。
 彼女の駆るクロムキャバリアの背後でバラバラに切り裂かれた機体が雪原に墜ち、さらなる戦果を求めてブースターの噴射光が瞬くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
シーヴァスリー……言った筈だ!殺してやると!!
杖よ!その生命を断て!

亡国の主【操縦】『惨禍抗体兵器』
叡智の杖、と言うの名の鋼鉄の棒、
生命に敵対せし武器をなぎ払い、敵を【威圧】
叡智等なく、時空を歪ませる魔力を秘めただけの杖。それで問題なない!
【念動力】杖の力で時空、即ち虚空を歪ませ【地形破壊】
潜航する数重達を強引に引き上げ出し【早業】
【怪力】で杖を叩きつけ、オブリビオンを破壊【恐怖を与える】

自分が壊すのはオブリビオンマシンだ。
そして、オブリビオンマシンの残滓も壊す!
お前らは生きているのか死んでいるのか、どっちだッ!!!

【瞬間思考力】数重達の動きを【見切り】
抗体兵器の【呪詛】で殺さず壊しにかかる!



 変わらない。
 顧みることなどない。
 人はより良きを求める。そういう生物だ。社会という集団で生きるのだとしても、結局のところ個でしかない。
 だからこそ、小国家『シーヴァスリー』は『第三帝国シーヴァスリー』を名乗る。
 己たちがより良き場所にあるためには、他の滅びなど関係ないと、地底にありし有毒素を地上に撒き散らさんとしている。

 その光景を前にして朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は咆哮する。
「『シーヴァスリー』……言った筈だ! 殺してやると!!」
 言葉で彼らは変わらない。
 オブリビオンマシンによって歪められた思想で染め上げられただけではない。オブリビオンマシンに乗ることによって、さらに歪みねじれた。
 彼らは破滅的な道をたどるのだとしても、己より良きものを生み出さぬためだけに他者を滅ぼに導かんとしている。

 故に彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「杖よ! その生命を断て!」
 小枝子の駆るキャバリア『亡国の主』が咆哮する。
 それは、禍々しき呪い同調することによって、叡智の杖という名の鋼鉄の棒――即ち、惨禍抗体兵器(ヨモヅイグザ)を振るうということ。
 生命に敵対する武器。
 その禍々しき呪いの輝きに『神機の申し子』が駆る『セラフィム』が呼応するように戦場を駆け抜ける。

「出力が上がった……!?」
「どういうことだ。何故、機体の……!」
「あの武装がそうさせるのか……考えることは後にしましょう」
 彼らがオブリビオンマシン、量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』と切り結ぶ姿を小枝子は見ていなかった。
 彼女にとって、この武装は時空を歪ませる魔力を秘めただけの杖でしかない。
 ただそれだけでいい。
 振るう一撃が虚空すら歪める。

「機体が、引き寄せられる……! 虚空潜航から引きずり出される!?」
 小枝子の瞳が見るのはオブリビオンマシンだけだった。
 そう、彼女が壊すのはオブリビオンマシンのみ。
 振るう一撃が『武甲・数重』の機体を打ち据える。装甲の破片が砕けながら、機体のフレームがきしみ、雪原にバウンドするようにして機体が吹き飛ばされた。
 小枝子の駆るジャイアントキャバリア『亡国の主』の顎が開かれ、咆哮が轟く。
「な、なんだ、あのキャバリアは……怒って、怒っているのか、キャバリアだというのに……!」
 影が落ちる。

『シーヴァスリー』のパイロットたちは見上げただろう。
 未だ機体が無事な者たちもモニターに映る『亡国の主』を前に身が震える思いであった。
「お前らは生きているのか死んでいるのか、どっちだッ!!!」
 小枝子は思う。
 思うのだ。悪霊であっても。過去しかなくても。未来など見えなくても。
 それでも、彼女は多くを見てきた。

 この戦乱の世界にあってなお、希望に手を伸ばそうする者たちを。
 苦難に満ちた、厳しくも険しい道をゆこうとするものたちを。
『神機の申し子』たちもその一つだ。
 だからこそ、小枝子は許せないと思ったのだろう。『シーヴァスリー』のやり方を。
 己たちの今の立場を護るためならば、他者を害していいという手前勝手な理屈を。
 それは死んでるように生きているだけにすぎない。
 だからこそ、小枝子は壊すのだ。
「お前たちの残滓を! 壊す!!」
 虚空に潜むことすら許さぬ生命に敵対する武器は、あらゆる障害を砕き、叩き伏せる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
『エイル因子』…か。
まあ、今はそんなこと考えている暇もないか。
因子なんて言葉で区別されて戦う子を強いてるモノも…この世界では見飽きたよ。


まあ、そんなボクの感傷なんてあの子たちには知ったことじゃあないみたいだね。
レスヴァントで出撃する。
パールバーティもいつも通り『ARICA』を搭載して、『援護射撃』をさせるよ。
敵集団に囲まれないように、アマテラスで敵機の位置を『情報収集』し『瞬間思考力』で把握し、『操縦』テクニックで回避しつつアストライアの『制圧射撃』で敵を翻弄。
うん、ダークマンティスの『エネルギー充填』は完了ね。
三式波導爆撃弾を敵集団に『範囲攻撃』でまとめて吹っ飛ばす。



 争いは終わらない。
 人の性が変わらぬ限り、それはどうしたって終わりの見えない因果のように思えただろう。
 戦乱渦巻くクロムキャバリア世界を見れば、その思いは一層強くなるものであったかもしれない。とりわけ、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとってはそうだった。
「『エイル因子』……か」
 それはキャバリア操縦に特化した因子。
『フォンリィウ共和国』にて生み出されたアンサーヒューマン部隊に組み込まれていたもの。
 考えるな、と思う。
 ユーリーは自分にそう言い聞かせる。
 ここは戦場だ。
 戦うことが以外の事を考えては死ぬだけだ。けれど、それでもユーリーは思考し続ける。考え続けることこそが、ただ戦いに身を投じるだけの者とそうでないものとを分かつものであると信じるのならば、ユーリーは辟易していた。

「『エルフ』、次が来る! 俺達を囲むつもりだろう。敵は狙いを変えたぞ」
「わかっているよ、『ドライツェーン』。引き付けて!」
 ユーリーは思う。
 これはきっと感傷なのだろうと。
 いまを生きている彼らにとって、自分の感傷は知ったことじゃないようだった。そうしなければという思いに駆られて戦いに赴いている。 
 誰かに強要されたわけでもなければ、そう追い込まれたわけでもなかった。
 彼らの手にあったのは白紙の切符だったのだ。
 これからどんなことをしようとも、何をなそうとも、それは全て自分たちで選んだのだと胸を張って言えるのが彼らだ。

「ならさ!」
 ユーリーは自身の白いキャバリア『レスヴァント』と共に雪原を駆け抜ける。
 僚機であるAI操作の『パールバーティ』と共に。
 悩む事はやめない。考えることはやめない。
 それを人は懊悩と呼ぶのかもしれない。
「例え、この世界では見飽きたものだったとしても!」
 迫る量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』たちの姿を捉える。敵の戦法はもうわかっている。
 虚空潜航による強襲攻撃。
 こちらの虚を突く戦法。
 ならばこそ、ユーリーはドローンから伝えられる情報を瞬時に精査して、その瞳で捉える。

「虚空から飛び出してくるっていうのなら!」
 キャバリアライフルから放たれた弾丸が『武甲・数重』たちが虚空より飛び出して来た位置に叩き込まれる。
 ユーリーにとって、すでに虚空よりの奇襲攻撃はパターン化されたものだった。
 敵が数で推して来るのならば、必ずそこには連携という名のパターンが存在する。それを戦術と呼ぶのならば、それを食い破るのみ。
「こいつ、俺達の動きを予測して……!」
「奇襲が失敗したらまた虚空に飛ぶ……うん、パターン通りってやつだよね!」
 背面の超巨大荷電粒子ビーム砲が水平に掲げられる。
「三式波導爆縮弾(サンシキハドウバクシュクダン)……装填。ダークマンティスのリミッター解除」
 ユーベルコードに輝く『レスヴァント』のアイセンサー。

 砲口より放たれた弾丸が大地を穿つ。
 それは凄まじき衝撃波を放ち、虚空にとぼうとしていた『武甲・数重』たちを尽く吹き飛ばす。
「考えることはやめてはならない。ただ何かの奴隷でいたいと思うのなら別だけどさ。考えるのをやめたっていうのなら」
 それはきっとこの争いの世界では楽な生き方なのだろう。
 流され、流されていくこと。
 けれど、ユーリーは流されない。
 自分の出自も。争いを厭う心も。
 何もかも考え続けなければ、きっと薄れて消えてしまうものであると知るからだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェイルシア・インパーサ
オブリビオンによって歪んだ時代は私達猟兵が正すのみ
今勇気あるもの達が民を救おうとしているのであれば、
助けぬ道理があるはずありません!

数を利をするのであれば更なる数で切り伏せましょう
奥義解放。守るべき故郷は既に失われていても、
民が帰るべき場所を護ることはまだできます

攻撃力?命中率?攻撃回数?
どれでもお好きに強化してください
あなた方は結局数でねじ伏せるだけ
膨大な魔力で全て流して差し上げましょう
律儀に近づいてくるのであれば花の奔流を間近で浴びることになりますわよ?



 オブリビオンマシンはいつだって人の心を歪める。
 歪められた心は世界に火種を撒き散らす。平穏の中にくすぶり続ける火種を。それはいつしか大きな火となって人々自身を焼く。
 だからこそ、猟兵はそれを正すために戦う。
 そして、今、かつて歪めれた者たちが、己たちの意思で戦おうとしている。
 アンサーヒューマン部隊、『神機の申し子たち。
 彼らは嘗て猟兵たちが戦った相手だ。戦うためだけに生み出された四人の若者たち。オブリビオンマシンに歪められてなお、それでも彼らは己の手にあった白紙の切符に行き先を書き込んだのだ。

 誰かのためになりますようにと。
 誰かの平穏のために戦うことを決めた彼らの瞳は、戦いの中にありながら悲嘆にはくれていなかった。
 それを、フェイルシア・インパーサ(騎士姫の造花・f04276)は己のキャバリア『偽神ガミザーヌ』と共に見つめる。
「今勇気ある者達が民を救おうとしているのであれば、助けぬ道理があるはずがありません!」
 フェイルシアにとっても、『偽神ガミザーヌ』にとっても。
 彼らは失ってはならぬ篝火だった。
 この戦乱の世界にあって、争いに叩き込まれても己を見失わない者たちがいる。
 勇気を持って濁流の如き時代に流されぬとしている。

「また手練れか……! しかもサイキックキャバリアだと!?」
 オブリビオンマシンである量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』は『偽神ガミザーヌ』の姿に目を剥く。
 この戦場にはサイキックキャバリアが無数に存在している。
 彼らが駆るオブリビオンマシンも量産型とは言えサイキックキャバリアだ。そして、四人の『神機の申し子』たちの駆るのもまたサイキックキャバリア。
 如何なる運命か。
 しかし、それをフェイルシアは省みない。
 今己が見据えるべきは、護るべきことだけだった。それが『願い』だった。

「数を利するのであれば、さらなる数で斬り伏せましょう」
 フェイルシアの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『偽神ガミザーヌ』のアイセンサーが煌めく。
 桜色のオーラをまとった無数の花嵐が解き放たれる。
 機体を中心にして放たれる嵐んは、一気に剣戟のように『武甲・数重』たちを取り込んでいく。
 虚空に潜航しようとしてももう遅い。
 フェイルシアのユーベルコードは、【悠久に咲き輝く愛すべき造花】(ラヴァブル・インパーサ)。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く限り、その花嵐は彼らを捉え続けるだろう。

「花が……」
 その光景を『神機の申し子』たちは見ただろう。 
 雪原に似合わぬ花。
 されど、その花を美しいと思う。その心があるのならば、とフェイルシアは微笑む。
 彼らの故郷は既に失われている。
 けれど、彼らは戦うのだろう。帰るべき場所を。誰かを護る事をやめない。ならばこそ、フェイルシアは微笑みのままに『偽神ガミザーヌ』のコクピットで、そのユーベルコードを発露し続ける。

「あなた方は結局数でねじ伏せるだけ。全て流して差し上げましょう。花の奔流を浴びて、その悪機と運命を共にしたくなければ脱出なさい」
 フェイルシアと『偽神ガミザーヌ』に近づくことすらできなかったオブリビオンマシンが次々と花嵐に飲み込まれて行く。
 人は傷つけない。
 歪め、火種を撒き散らすオブリビオンマシンのみを破壊するフェイルシアの花嵐は、雪原に桜の花びらを舞い散らせる。
 それはまるで春の訪れを待ち望むように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【シャナミアさんと】

わたしは【ネルトリンゲン】で出撃。

心意気は買うけど、ちょーっと頑張りすぎかな。
こういうときは、誰かに助けを求めてもいいんだからね。

そう、わたしたちとか、とか!

でも今回は『申し子』さんたちが敵を倒すことが大事だよね。

ということで、みんなにご挨拶通信して味方であることを告げたら、
【Density Radar】のデータをみんなに転送。
【虚空潜航】だって、質量までは隠せないだろうからね。

シャナミアさんには遠距離からの援護をしてもらって、
わたしは【偽りの丘】を発動させて、敵の攻撃を無効化。
あとは『申し子』さんたちにがんばってもらうことにしよう。

「みんな、2分でお願い、ねー♪」


シャナミア・サニー
【理緒さんと】
さって傭兵さんとしてはスルーする案件なんだけど
フォン・リィゥは一回関わちゃったし
個人的に放っておけないからさ
理緒さん今回も乗っからせてもらうよ
作戦にも艦にもね

というわけで私も新兵器のお披露目といこうか!
レッド・ドラグナー|出撃《で》るよ!

ネルトリンゲンの甲板に陣取って私もサポートだ
【バックウェポン・アタッチメント】で肩部を重武装化
チョイスはフリージングパイル・シングルバレルシューター
どんな攻撃パターンにしたって
近接からの長巻の攻撃なんだろ?

なら攻撃に移る前にその場に固定する!
フリージングパイル、連続シュート!
一撃必殺にはなり得ないけど
戦況を変えるには十分
大盤振る舞いといこうか!



 低空をゆっくりと進む戦闘空母『ネルトリンゲン』の格納庫の中にキャバリアと共にシャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)は待機していた。
 戦場となった雪原の情報をキャバリアに打ち込んでいるのだ。
 雪原での戦いは良いデータ取りになるだろう。
 だが、こうした戦いは己を傭兵と定義するシャナミアにとっては避けるべきことであった。
 小国家同士とレジスタンスの戦いに介入することなど、本来はシャナミアはやらないことだった。
 けれど、小国家『フォン・リィウ共和国』とは一度関わったことがある。
「それに個人的に放っておけないからさ」
「そういうことだよねー。心意気は買うけど、ちょーっと頑張りすぎかな」
 艦橋から菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の声が響く。
 彼女が言うところの頑張りすぎ、というのは『神機の申し子』たちのことを指しているのだろう。
 かつて『エイル因子』というキャバリア操縦適正因子をもって生み出されたアンサーヒューマン部隊。
 その四人のことを示していた。

「こういうときは、誰かに助けを求めてもいいんだからね。そう、わたしたちとか、とか!」
 理緒は『ネルトリンゲン』から四機のサイキックキャバリアに通信を入れる。
「この声は」
「ああ! 猟兵という人たちだろう! 覚えているぞ!」
『フィーアツェン』と『ドライツェーン』が反応する。
 味方だと告げる言葉に彼らは空に浮かぶ『ネルトリンゲン』から送られてくるデータに瞬時に目を通す。
 アンサーヒューマン部隊であるからこそできる芸当だった。
「虚空閃光のデータ。これなら!」
「ええ、虚空潜航からの出現予測……!」
 そう、敵オブリビオンマシンは量産型とは言えど、サイキックキャバリアである。その虚空に潜む強襲攻撃は数で勝る彼らにとっては切り離せぬ戦術であった。

 だからこそ、理緒はデータを送り、アンサーヒューマンである彼らに役立ててもらおうと思ったのだ。
「私も新兵器のお披露目といこうか!『レッド・ドラグナー』|出撃《で》るよ!」
『ネルトリンゲン』の甲板の上に陣取る機体が肩部に備えられた武装をきらめかせる。
 バックウェポン・アタッチメント【BW-A】(バックウェポンアタッチメント)――それは単身の砲身が地上にある量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』たちを捉える。
「近接からの長巻の攻撃なんだろ?」
 シャナミアは敵オブリビオンマシンを見やる。
 彼らの最大の武器は、虚空潜航による距離を無意味にする奇襲攻撃だ。

 ならばこそ、攻撃に移る前に動きを止める。
 そうすれば、敵は近接武装しか持たぬ案山子になるしかない。
「フリージングパイル!」
『レッド・ドラグナー』の肩部に備えられた砲身から放たれる杭の如き砲撃が『武甲・数重』たちの足元を凍りつかせる。
「連射するだと……!」
「一撃必殺にはなり得ないけど、戦況を変えるには十分」
「そのとおりだ。動きを止めたキャバリアなど的にすぎない」
 そこに走り込む『神機の申し子』たちの機体。
 手にしたプラズマプレイドの一閃が『武甲・数重』のアンダーフレームと腕部を切り裂き無力化していく。

 さらに理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
 展開されるのは、偽りの丘(イツワリノオカ)。それは理緒の潜在意識から具現化された結界。
 この中にあっては、敵オブリビオンマシンの攻撃は、そのまま偽物を生み出し相殺される。 
 どれだけ虚空潜航によって奇襲攻撃を行うのだとしても、その長巻を振るった瞬間に理緒のユーベルコードから生み出された偽物が振るう一撃と激突して相殺されてしまうのだ。
「すごい。これ全体が幻影を生み出すどころか、瞬時に相殺するなんて」
「みんな、2分でお願い、ねー♪」
 理緒の声が通信で響く。
 たしかにこのユーベルコードは強力だ。
 しかし、時間制限があるのだ。2分以上使用すると理緒の生命が失われる。だからこそ、悠長にしてはいられないのだ。

「この一手で戦況はひっくり返せた。後は大盤振る舞いといこうか!」
 シャナミアの『レッド・ドラグナー』からフリージングパイルが放たれ続ける。採算度外視。杭の一つ一つが、それなりのお値段はするだろう。
 けれど、理緒のユーベルコードが時限性であるというのならば、ためらっている時間はない。
 敵の利は数。
 ならばこそ、ここで数的不利をひっくり返して置かなければならないのだ。
「でも大丈夫。みんないるからね。さあ、がんばってこー」
 理緒の言葉と共に四機のサイキックキャバリアと『ネルトリンゲン』、そして『レッド・ドラグナー』は『シーヴァスリー』の軍勢を斬り裂いて、進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

えーっと……。
今回はなんと言えばいいのでしょうか、後方母親面でしょうか?

いつのまにか『私の』とか言っちゃってますし、
『エイル』さんだけでなく、『エイル因子』を持っているみなさま、
「逃げて超逃げてー!」、って感じですね。

と思っていたら、痛ぁ!?
ステラさん、いつもより強くないですか!?
抗議しようと振り返ったら、怖っ! やばっ!

は、はい! 助けましょう! いますぐに!

こ、今回は数が多いですし、バンジーだと効率悪いので、演奏でいかせてください!
お願いします! どうかお願いします!

なんとか伏して頼んで、【Canon】を使わせてもらいますね。

って……ぶら下げられるのは確定なんですかー!?


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁす!!
さすがクロムキャバリア、エイル様の残滓が濃厚
私の子たち(?)もしばらく見ない間に立派になって……(後方母親面)
誰がやべーメイドですか(ツッコミ強)

それにしてもセラフィムを呼ぶとは……
いえ、考察は後にしましょう
何はともあれ、あの青と赤が彼らの生き方を示しているなら
ヒトとして自分の意志で生きているということなのですから

えー演奏するのー?
仕方ありませんねー
フォル!いらっしゃい(鳥型キャバリアを呼び寄せる)
では私は低空で飛びますので
【ファム・ファタール】いきます!
風圧で凍死しないようにしてくださいねルクス様
足場も使っていいですから



『第三帝国シーヴァスリー』と名を改めたオブリビオンマシンを駆る軍勢。
 それを切り裂くは、四機のサイキックキャバリアと猟兵達。
 勇姿と呼んでも差し支えのない戦場を切り裂く鏃の如き活躍を見やり、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は声高く叫ぶ。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁす!!」
 ものすごい叫びだった。
 その叫びに『第三帝国シーヴァスリー』のパイロットたちは一瞬、びくっと動きを止めたほどであった。
 それほどまでにステラの叫びは凄まじかった。
 クロムキャバリア世界。
 それはステラにとって『エイル』の残滓が濃厚であることを示していた。いや、彼女の嗅覚がなせる技であったと言えばいいのだろうか。
 もうなんていうか、説明不要なのではないかと思う。

「私の子たち(?)もしばらく見ない間に立派になって……」
 ステラは眦にキラリと光るものを見せていたが、それを振り返って見ていたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、えーっと……と背に流れる一筋の冷たい汗を感じる。
 そう、ステラは母親面しているが、アンサーヒューマン部隊として生み出された『神機の申し子』たちとは一切関係ないのである!
『エイル因子』と呼ばれるキャバリア操縦適正因子に『エイル』とついているだけで、ステラは母親面しているのである!

 そしていつのまにか『私の』と言い張っている当たり、確信犯である。
「『エイル』さんだけでなく、『エイル因子』を持っているみなさま、『逃げて超逃げてー!』って感じですね」
 ルクスはステラの奇行をそう表現するしかなかった。
 いやだって、そう言うほかないのである。そこに叩き込まれるはスリッパの一撃。
「誰がやべーメイドですか」
「痛ぁ!?」
 思わず言葉にデてしまっていたようだった。
 ルクスの悪いところである。心の中で留めておけばいいのに、ついつい言葉にしてしまう。雉も鳴かずば撃たれまいという言葉そのままであった。
 というか、いつもよりツッコミの威力が高いような気がする。
 抗議しようとしてステラの顔を見てルクスは口を噤む。

 今なにか言ったら第二撃が飛び込んでくることこの上ない。
「それにしても『セラフィム』を呼ぶとは……いえ、考察は後にしましょう。何はともあれ、あの『青』と『赤』が彼らの生き方を示しているのなら、ヒトとして自分の意思で生きているということなのですから」
 考察にはいったステラの顔は真剣そのものだった。
 いつもそれでいればいいのにとルクスは思った。
「フォル! いらっしゃい」
 その手に導かれるようにして現れるのは鳥型のキャバリア。
『フォルティス・フォルトゥーナ』。
 その姿を見て、ルクスは嫌な予感がした。これはまたあれであろうか。バンジーなのだろうか。

 いや、バンジーというか吊るされているというか、そういうあれなのではないだろうか。
 あれはもう嫌なのである。
 高いところから飛び降りるのは、何度やってもなれないものなのだ。
 だからこそルクスは瞬間的に伏して頼み込むのだ。見事なシームレス土下座であった。
「こ、今回は数が多いですし、バンジーだと効率悪いので演奏でいかせてください! お願いします! どうかお願いします!」
 その姿にステラは、えーって顔をしていた。
 演奏するのかーという顔であった。
 どちらかというと演奏されるとステラの耳が保たないのである。それなら、とステラは『フォルティス・フォルトゥーナ』の鉤爪にルクスを吊るす。

「ぶら下げられるのは確定なんですかー!?」
「はい、できるだけ離れておきたいので」
 風圧で凍死しないように気をつけてくださいね、とステラはニコリと微笑む。
 そういう問題だろうか! とルクスは抗議するのだが、バンジーよりはマシなのかなぁって吊るされながら、Canon(カノン)をバイオリンで奏でる。
 それは不協和音。
 戦場に響き渡る音色にオブリビオンマシンを駆る『第三帝国シーヴァスリー』のパイロットたちは、耳をふさぐ。

「さっきの叫びもすごかったが、この音も、すごい……!?」
「なんだこれは、耳をふさいでも音が! 音が響いて……!!」
 えっ!? とステラはオブリビオンマシンのパイロットたちの言葉を聞いて目をむく。
 もしかして、自分の叫びとルクスの演奏が同列に扱われてい!?
「言って良いことと悪いことがあるでしょう!」
 低空を飛ぶ『フォルティス・フォルトゥーナ』のファム・ファタールの一撃がソニックブームを生み、オブリビオンマシンを吹き飛ばしていく。
「いや、ステラさん、なんか今聞き捨てならない感じの返ししませんでした!?」
 ステラの愛の叫びとおなじように、自分の演奏が耳を塞がんばかりの、というのは聞き捨てならない。

 二人は戦場にあっていつも通りであった。
「いつも仲良しなのはいいことだね」
 そんな二人のやり取りを『神機の申し子』たちは、遠巻きに見やり、しかし戦場を突き進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルカ・スィエラ
ただでさえシーヴァスリー絡みの件だっていうのに、
嫌なものを思い出させてくれたわね……オブリビオンッ!!

コルヴィルクス装備のプロトミレスで出撃、UCで分身し、
姿が見えている機体を優先しステララディウスでの援護射撃+ルーナグラディウスでの突破斬撃で攻撃、姿を消したら出現に合わせてルーナグラディウスで迎撃よ

必要ならあっちの味方への援護射撃もするわ
……今脱落されてもフォローが余計に大変になるし
そっちの方が早く片が付くでしょ

……確かに敵の動きは前よりいいけど、戦法が変わらないし、その潜行の機構は解析済み、それに……
(……あの機体の動きに所々、見覚えのある癖がある気がするんだけど、でも一体どこで……?)



「ただでさえ『シーヴァスリー』絡みの件だっていうのに、嫌なものを思い出させてくれたわね……オブリビオンッ!!」
 アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)はキャバリア『プロトミレス』を駆り、雪原を突き進む。
 オブリビオンマシンのもたらす悲劇。
 それはいつだってこの世界に火種を撒き散らすものだった。
 一つの戦いが、さらに拡大していく。一つの争いが終ることは、一つの争いの始まりを意味する。
 この世界に戦乱が尽きることなく、いつまでも争いが続いている根底にあるのはオブリビオンマシンの存在があると言って良い。

 だからこそ、『第三帝国シーヴァスリー』がもたらさんとしている悲劇は、アルカにとって過去であっても、己の心をえぐるものであったのだ。
「こいつ……速い……ッ!」
 オブリビオンマシン、量産型サイキックキャバリア『武甲・数重』たちは迫る『プロトミレス』に虚空潜航による強襲攻撃を仕掛ける。
 だが、アルカにとって、それは一度見たことのある戦い方だった。
 おなじ機体と戦ってきたのだ。
 ならばこそ、アルカにとって、それは驚異ではない。
「出力全開……!いくわよ、“エネルギー物質化(マテリアライズ)”……!!」
『プロトミレス』のアイセンサーが煌めく。
 炉より発露する高エネルギーが物質化され、分身(マテリアライズ・ミラージュ)する。
 それこそが彼女のユーベルコード。

 実体化された高エネルギーは『プロトミレス』そのもの。
 本体である『プロトミレス』とおなじ能力を持つ分身はアルカの意思をもって戦場を駆け抜け、彼女の死角をカバーするように虚空より出現する『武甲・数重』を迎え撃ち、切り裂く。
「もう一騎いるだと!?」
「……たしかに敵の動きは前よりいいけど、戦法が変わらないし、その虚空潜航の機構は解析済み、それに……」
 振るう一撃が『武甲・数重』の機体を切り裂く。
 一度戦った相手に。
 それこそ一度勝利した相手に敗北を喫することなどアルカにはありえない。
 周囲を取囲む機体が次々と切り裂かれていく。

 それはアルカが引き付けた『武甲・数重』の隙をついて無力化する四機のサイキックキャバリア。
『赤』と『青』の装甲を持つ『セラフィム』と呼ばれる機体が一瞬でアルカの『プロトミレス』を援護したのだと知れる。
「……思いの外早く片付くわね」
「あなたのおかげです。まだ敵はいます。これだけ撃破すれば、敵はきっと」
「逃げ出すってこと?」
「はい。彼らは思想こそ歪められていますが、保身だけに長けています。必ず逃げようとするはずです」
『神機の申し子』たちとアルカは通信して、情報をやり取りする。

 たしかにボーリング機械のさきに展開していた陸上戦艦が移動を開始するように雪を舞い上げているのが見える。
「わかった。あれを追いましょう」
 アルカはそう告げ、雪原を駆ける。
 だが、彼女の胸に支えるものがあった。あの『武甲・数重』の動き。
 たしかに未開地で戦ったキャバリアと同型。オブリビオンマシン化しているとは言え、あの動きは見覚えがあった。
 どういうわけか、と問われたのならば、それはアルカのこれまで戦ってきた軌跡の中に答えがあるのだろう。

 それがどうにもアルカの胸をざわつかせ、嫌な予感を覚えさせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『敵艦隊を撃滅せよ』

POW   :    自らの装甲と火力を頼りに、敵艦隊へと突入する

SPD   :    速度と機動力を武器に、敵の迎撃網を突破する

WIZ   :    敵のデータリンクや索敵網を妨害し、敵の迎撃網を無力化する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あれだけ居た部隊が壊滅だと!?」
 巨大な陸上戦艦の艦橋で『第三帝国シーヴァスリー』を率いていた要人が口角泡を飛ばすように部下たちに怒鳴りつける。
 モニターに映し出されているのは自軍の機体がロストしたという証明ばかりであった。
 あれだけ数があったのだ。
 負ける道理などない。
 敵はたった四機のキャバリアと正体不明の援軍が十数機のみ。
 だというのに、数ですり潰すことができなかったのだ。

「一体何をしていたのだ! クソッ! 後退だ。ここは一時捨てる。連中が去った機を見て……」
「敵機、来ます!」
 モニターに映し出されているのは『赤』と『青』のサイキックキャバリア、『セラフィム』。
 その姿をみやり、要人たちは動揺した。
 これまで『グリプ5』周辺国家の歴史を振り返る度に名を示してきた『熾盛』と呼ばれる悪魔の如き機体と、それを駆る不世出の『エース』、『フュンフ・エイル』。
 その面影を見せるかのような機体が、此方を追っているという事実は、恐怖以上のものであったことだろう。

「退けっ! 早く退けっ!! 小型陸上戦艦は奴等を止めろ! 砲撃をしつつ後退し、我等が逃げ延びる時間を稼ぐのだ!」
 恐慌にも似た叫び。
 同時に要人たちは奥の手を切ることを決意する。
「『アレ』を出す準備を進めろ!」
「で、ですが、あれはまだ調整が……先の暴走のことも……」
「構わん!『アレ』を今出さずにいつ出すというのだ。化け物共にも化け物をぶつけるしかなかろうが! 運良く潰し合ってくれればよし。残った方を撃てば良いだけの話! 早くしろ!」

 猟兵たちは見ただろう。
 己たちの道行きを阻むかのように雪原を進む小型陸上戦艦と、その背後を行く大型陸上戦艦の姿を。
 あの大型陸上戦艦を止めねば、またこんな争いの火種が周囲に撒き散らされてしまう――。
メサイア・エルネイジェ
申し子の方々ー!生きておられますわよねー?
お修理代を頂くまで勝手にお亡くなりになられてはいけませんのよ〜!

お戦艦を止めるにはやはり艦橋を狙うべきですわ!
ヴリちゃん!インストレーションウェポンコール!ゲイルカイゼル!
スピードを超強化!
一気に接近致しますのよ!

ミサイルはマシンガンで撃ち落とし!対空砲は気合いで避ける!主砲は…そうそう当たりませんのよ〜!
取り付いたら対空砲をお静かにさせるのですわ
ヴリちゃん噛み付き!ヴリちゃん引き千切り!
ある程度壊しましたら艦橋に這い上ってご挨拶に伺いますのよ
ヴリちゃん!ジェノサイドバスター発射準備ですわ!
ほらほら怖いでしょう?早くお逃げにならないとお花畑ですわよ〜!



 猟兵たちの活躍によってオブリビオンマシンの軍勢は退けられた。
 だが、戦いは終わらない。
『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちを乗せた大型陸上戦艦を止めなければ、この戦いは終わらないどころかさらなる戦火を拡大させるだろう。
 彼らにとっての目的は弱者を作り出すこと。
 自分たちが高みに昇るのではなく、自分たち以下を生み出す事によって、自分たちの優位性を高めようとしているのだ。
 そんな彼らが往く先々で戦火の火種を撒き散らすことなど想像に固くはなかった。
「申し子の方々ー! 生きておられますわよねー?」
 その通信を受けた『エルフ』は答える。

「はい、おかげさまで。でも、心配は……」
 無用だと伝えようとして、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)の続く言葉に彼らは凍りつく。
「お修理代を頂くまで勝手にお亡くなりになられてはいけませんのよ~!」
 それがメサイア流の冗談であったのかもしれない。本気であったのかもしれないけれど。
 ともかくとして、四人はこれはいよいよもって本格的に修理代をどのようにして工面すべきかを悩まなければならなくなってしまっていた。

 そんなやり取りのさなかに打ち込まれるのは大型陸上戦艦を護るように展開した小型陸上戦艦の砲撃。
 彼らは決死の覚悟であったことだろう。
「撃て! 撃ちまくれ! 連中を食い止めろ!」
 ハリネズミのように放たれる砲火を前にメサイアは『ヴリトラ』に告げる。
「弾代もばかにならないのにバカスカ打ちまくっておりますわね! お戦艦を止めるには、やはり艦橋を狙うべきですわ! ヴリちゃん!」
 メサイアの言葉に答えるように『ヴリトラ』のアイセンサーが煌めく。
 それは瞬きの間に終える変身換装(チェンジングウェポンシステム)。
 それまで格闘特化仕様であったクロムジェノサイダーから、高機動仕様であるゲイルカイゼルへと装備を即時換装した『ヴリトラ』が咆哮する。

 迫る砲火を縫うようにして戦場を駆け抜ける疾風のごとき速度で『ヴリトラ』は一気に小型陸上戦艦へと肉薄する。
 迫るミサイルをマシンガンが撃ち落とし、爆風の中を斬り裂いて飛ぶ。
「速い……! あの機体、武装を換装するのか! それもタイムラグなしで!」
「あそこまでシームレスに換装できるというのは、やはり……サイキックキャバリアとおなじシステムを使っているということ……?」
『神機の申し子』たちは自分たちよりも早く小型陸上戦艦に肉薄した『ヴリトラ』の背を見るしかなかった。

 それほどまでに黒き暴竜である『ヴリトラ』の速度は尋常ならざるものであった。
 対空砲など無意味であるというように空中を蹴るようにして軌道を変えた『ヴリトラ』が小型陸上戦艦の甲板を蹴って己を狙う主砲の砲門に突撃し、その砲身をひしゃげさせる。
「取り付いたのですわ~! さあ、ヴリちゃん、ここからですわ~!」
 メサイアの指示と共に『ヴリトラ』が咆哮する。
 鋼鉄の牙が対空砲を噛み切るようにして引き裂き、甲板上に叩きつけられた鉤爪の一撃が、装甲を紙のように切り裂く。
「対空砲がっ! 主砲は何を……ぐわっ!」
 揺れる船体。
 ぐらつく陸上戦艦は、メサイアの駆る『ヴリトラ』の猛攻の前に傾ぐようにして爆発を引き起こしていく。

「これがヴリちゃん噛みつき! ヴリちゃん引きちぎりの威力ですわ~!」
 さらに『ヴリトラ』が艦体を駆け上がり、小型陸上戦艦の艦橋に取り付く。
 その赤いセンサーを艦橋に居た者たちは恐怖と共に見るしかなかった。
 口腔に備えられたジェノサイドバスターの砲身が湛える光は、滅びの光そのもの。自分たちの死を予見させる輝きに彼らは怯えすくむ。
「ほらほら怖いでしょう?」
 メサイアは接触回線で告げる。
 彼らの目の前に広がる光は、確実に彼らの命を奪う。だからこそ、メサイアは脅すのだ。この陸上戦艦を無力化させるにはたしかに艦橋を潰すのが速い。

 けれど、それ以上に簡単なのは、弱者を生み出すためだけに行動する『シーヴァスリー』の国民性を利用すること。
 自分より強き者には恭順を示す。いや、この場合は、慄いて己の生命を優先させるしかない。
 だからこそ、メサイアはあえて告げるのだ。
「早くお逃げにならないとお花畑ですわよ~!」
 その言葉を皮切りに艦橋に在った者たちは逃げ出す。それを見やり、メサイアは小型陸上戦艦の一隻を容易く無力化し、『ヴリトラ』の咆哮と共に。
「おほほほ! 暴力! 何事も暴力ですわ~!」
 高く笑うのだ。
 それをみやり、『神機の申し子』たちは、本当にどうにかしてなけなしのお金で修理代を収めなければ、末代までメサイアが取り立ててくる光景を幻視するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
はぁ?
逃げるだと…。
こういう敗戦時に責任とるのが責任者でしょうが!!
戦場にはあなたたちの命令で戦った兵士がのこされている。
彼らを置いて自分たちだけ逃げるだと!!

レスヴァント、『オーバーブースト・ラストスパート』発動。
『肉体改造』された、この肉体の限界を『限界突破』した高速機動で一気に追いかける。
殲禍炎剣はこの粒子を信じて無視する。小型も無視。
だって彼奴ら許せないから!!

射程に捉えたら、アストライアの『制圧射撃』で大型を破壊して止めてやる。



 心がささくれる音を聞いたが気した。
 戦場は猟兵が支配した。オブリビオンマシンの殆どは戦闘能力を無力化され、雪原に崩れ落ちている。多くのパイロットは無事であったけれど、オブリビオンマシンによって歪められた心根のせいか、茫然自失の体であった。
 だからこそ、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は己の心がささくれたのを自覚した。
 それはきっと怒りであったから。
「はぁ?」
 彼女が見つめるモニターの先にあるのは小型陸上戦艦が大型陸上戦艦の退路を確保するように展開する光景であった。

 恐らくあの大型陸上戦艦には『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちが乗っているのだろう。
 だから逃げる。
 わからないでもない。
 小国家とはいえ、要人たちはトップに立つものたちだ。彼らがいれば再起も可能であると考えるのも無理なからぬことであったし、また同時に事実であろう。
「逃げるだと……」
 キャバリア『レスヴァント』のコクピットの中でユーリーは顔を伏せる。
 その表情が如何なるものであったのか、ユーリー以外……いや、彼女自身も見ることは出来なかった。
 
 だが、はっきりとわかる。
 そこにあったのは怒りだった。
「こういう敗戦時に責任取るのが責任者でしょうが!!」
『レスヴァント』のアイセンサーが煌めく。
 ユーベルコード。
 その発現を示すかのように機体から撒き散らされるようにして放出されるのは、『殲禍炎剣』に感知されなくなる特殊粒子だった。
 僅かな時間しか放出できないことを難点としているが、しかしそれは『レスヴァント』を大空へと飛翔させるには十分すぎる時間であった。

「オーバーブースト・ラストスパート!」
「急速に接近する機影あり! ……キャバリアだと!?」
「なんだ、どういうことだ!」
 大型陸上戦艦に乗る要人たちはモニターに見える白いキャバリアを知るだろう。
 暴走衛生『殲禍炎剣』によって空に蓋をされた世界。
 空を高速飛翔する物体は必ず、暴走衛生に撃ち落とされる。しかし、ユーリーの機体は、それをわずかながら無視する。
 空を奔る白い槍の如き機体。
 それは一気に小型陸上戦艦の砲撃を躱し、大型陸上戦艦を目指す。

「戦場にはあなたたちの命令で戦った兵士が残されている。彼らを置いて自分たちだけで逃げるだと!!」
 ユーリーにあったのは怒りだ。
 上に立つものには立つものの責務がある。だからこそ、上に立つものは尊ばれるのだ。けれど、『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちに、ユーリーは尊ぶべきものを見つけられなかった。
 己たちの生命おしさに他者の生命を差し出す愚かしさに、彼女の怒りは拭き上げるようであった。
 だが、小型陸上戦艦の砲撃の雨を抜けることは至難だった。
『神機の申し子』たちですら、それは不可能だと思ったのだ。
「無茶だ、それは!」
「砲撃が止まない。でも……!」

 だが彼らは見ただろう。
 不可能を可能にするのが『エース』だというのならば、ユーリーはそれを成す。
 なぜかと問われたのならばユーリーはこう答えるだろう。
「だって彼奴ら許せないから!!」
 飛翔する『レスヴァント』が砲撃の雨にさらされても大型陸上戦艦を追う。
 構えたアサルトライフルの銃口が大型陸上戦艦を狙う。
 放たれる弾丸は、大型陸上戦艦の装甲を貫くだろう。だが、それでは足を止めきれない。けれど、時間を稼ぐことはできる。
「早くやつを撃ち落とせ! 何をしている!」
 逼迫した状況に要人たちは慌てふためくだろう。

 よもや、この状況で自分たちを狙ってくる者がいるとは思わなかったのだ。
 それが彼らの誤算であり、また同時に彼らの切り札を切らせる要因にもなったのだ。吹き荒れる砲火の中、ユーリーは見るだろう。そして、感じるだろう。
 禍々しき重圧を、その巨大な陸上戦艦の内部から――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
あれにシーヴァスリーの要人が載っているのか。
あそこにオブリビオンマシンがいるのか。
次の歪み、螺子狂れる戦場は…!!

亡国の主【空中浮遊】RXSハルバードを脇構えにし、
メガスラスター【エネルギー充填】

そこにいるかァアアアッッッ!!!

【闘争心】爆発『吶喊弾雨』飛翔最高速!!
人工魔眼【瞬間思考力】と【動体視力】で小型陸上戦艦認識、
【空中機動】ジグザグ軌道を取ってすり抜け様にハルバードで武装や戦艦下部を【切断】切り刻み壊しながら大型をつけ狙う!!

要人は殺さない。この戦いの後始末をつけさせる為に。
自分が今壊すのはッ!お前だぁああああ!!!

【第六感】大型の中にいる、
オブリビオンマシン目掛けて激突先制攻撃!!



『亡国の主』のアイセンサーが輝く。
 それは剣呑なる輝きにして、争いの惨禍を見つめるものであった。朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は見た。
 この戦場から逃れようと大型陸上戦艦が小型陸上戦艦を盾にして後退していく様を。
 それを追う猟兵のキャバリアを見た。
 しかし、止められない。
 あの大型陸上戦艦は、尋常ならざる装甲を持っている。
 だからこそ、とも言える。
 彼らは己の保身ばかりを考えている。それは当然であったのかもしれない。
『第三帝国シーヴァスリー』は、弱者を生み出すことによって己達の地位を確立する。研鑽んでもなければ、努力でもない。

 ただ弱者を生み出し踏みつけるだけの思想。 
 それが『第三帝国シーヴァスリー』という小国家だった。
 彼らの目的は『今』を保持すること。
 停滞にも似た現状維持のためだけに己以外の全てを弱者に仕立て上げることだけを目的にしている。
「あれに『シーヴァスリー』の要人が乗っているのか。あそこにオブリビオンマシンがいるのか」
 小枝子は『亡国の主』の中で睨めつける。
 人工魔眼に火が灯るようであった。
「次の歪み、螺子狂れる戦場は……!!」
『亡国の主』が狙いをつけるように砲火荒ぶ戦場にハルバードを構える。背部のメガスラスターに光が集まるようにしてエネルギーを充填していく。

 敵を追う。

 ただその一念に小枝子は力をため、そして吐き出すように咆哮する。
「そこにいるかァアアアアッッッ!!!」
 迸る叫び。
 それと共に飛ぶ『亡国の主』。
 小型陸上戦艦から放たれる砲撃が身を撃つのだとしても、関係ないというように飛ぶ。速度を緩めることなく、小型陸上戦艦の合間を縫うように飛ぶ。いや、滑るように滑空する。
 その速度は尋常ならざるものだった。
「要人は殺さない。この戦いの後始末を付けさせるために」
 必要だと小枝子は冴えわたる思考の中で迫り来る砲火を躱す。
 雷撃のように走る『亡国の主』は小型陸上戦艦を躱し、そのハルバードの一撃を振るい上げる。

 見据える先にあったのは大型陸上戦艦。
 そこに『居る』と理解できる。
 感じ取れるというのならば、小枝子の背筋に怖気が走る。
 そこに『居る』のは。
「自分が今壊すのはッ!」
『悪魔』だ。そこにいるのは相対するものに絶望を味合わせる『悪魔』の如き存在。
 だが構わない。
 膨れ上がる重圧。
 それは魔力が爆発的に膨れ上がり、爆風を生むように大型陸上戦艦の内部より放たれる。

「お前だぁああああ!!!」 
 小枝子が、『亡国の主』が振り下ろしたハルバードの一撃が、膨れ上がった衝撃波に阻まれる。
 大型陸上戦艦の内部にいるオブリビオンマシンが何かしたのかもしれない。
 弾き飛ばされるハルバードが宙を舞う。
 そして小枝子は見ただろう。
 ハルバードによって切り裂かれた大型陸上戦艦の装甲の奥に赤く輝くアイセンサーの輝きを。
 それが己の背筋を走り抜けた怖気の正体であると――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲

……逃げてくれるなら此処の確保に全力尽くしたいんだけど
いや、うん分かってる…
まあ、後で確保しにくれば良いという事にしよう!
うん、予約!
壊すなよ!絶対壊すなよ!!

【Code:U.G】起動
地面から少し浮いて飛翔し、速度を上げて陸上戦艦へ近付こう
全域に自重で潰れる程の重力照射し、進行を阻害しよう
敵の攻撃は複雑に軌道を変えながら回避、防ぎきれないものは『オーラ防御』で全身をガード
小型陸上戦艦に追いついて接近したら、ブリッジを探そう
場所が分かったらオーラのシールド全開
速度を上げてダイレクトエントリー!
お待たせウーバー猟兵です!
『念動力』で乗員を『吹き飛ばし』て制圧
最後はブリッジを潰して無力化していこう



 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちを乗せた大型陸上戦艦が撤退していく様を見つめる。
「……」
 言葉はない。
 ただ見送るばかりであった。
 生身単身でキャバリアを相手取った彼女がさらに小型陸上戦艦を相手取ることは、正直荷が勝ちすぎているように思えたことだろう。 
 少なくともサイキックキャバリアを駆る『神機の申し子』たちはそう思った。
 ただでさえ、オブリビオンマシンに生身で打ち勝つ存在なのだ。
 流石に陸上戦艦をどうこうはできないと思ったのだ。

「……逃げてくれるなら此処の確保に全力を尽くしたいんだけど」
「……えっと」
『フィーアツェン』は困惑していた。
 それはつまり、逃げないのならば陸上戦艦をどうこうする、ということなのだろうかと嫌な汗が頬を伝う。
 本当に?
 生身で?
「いや、うんわかってる……」
 やらなきゃならないってことは、と玲は何もいわないでいいと手で制する。正直『フィーアツェン』は、えぇ……と思っていた。
「まあ、後で確保市に来れば良いということにしよう! うん、予約! 壊すなよ! 絶対壊すなよ!!」
 壊した暁にはどうなるかなど言うまでもない。
 生身でキャバリアをどうにかできる上に陸上戦艦すらもどうにかしようとしている超常の存在を敵に回すということだ。

 残された『シーヴァスリー』のパイロットたちはコクコク無言で首を縦に振るしかなかったのである。
「さってと、お仕事お仕事ってね! 温泉パラダイスが私を待ってるんだから、手早くちゃちゃっとやってしまおう。重力制御開始」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 Code:U.G(コード・アンロック・グラビティ)――それは重力制御を行うユーベルコード。
 地上よりわずかに浮いた身体が大地を滑るように飛び、一気に小型陸上戦艦へと迫る。
「正面! 何か、来ます!」
「なんだ、何が……!?」
 猟兵たちの追撃から要人たちの乗った大型陸上戦艦を護るために小型陸上戦艦は砲撃を行っていた。
 その砲火の雨の中を飛ぶものを彼らはレーダーに捉える。
 だが、彼らは見ただろう。
 モニターにあるのは玲が飛翔する姿。

 生身単身で陸上戦艦を相手取ろうとする超常の存在を。
 砲撃の一撃を空中で自在に軌道を変え、玲は一気に砲塔との距離を詰め、手にした模造神器の一閃で砲身を切り裂く。
「えーとブリッジは……と、其処か。陸上戦艦だけあって、わかり難いなぁ!」
 玲の前面にオーラが張り巡らされ、己自身を弾丸に変えて彼女はブリッジのシールドをぶち抜いて飛び込む。
「ダイナミックにダイレクトエントリー! おまたせウーバー|猟兵《イェーガー》です!」
「な、ななな、なんだ!? 何事だ!」
「おっと、じゃまじゃま」
 玲の振るった模造神器からの衝撃波が念動力によってブリッジに居た乗員たちを外に吹き飛ばす。

「こういうのはブリッジさえ潰してしまえば無力化できるって相場が決まってんだよね」
 玲は無人になった小型陸上戦艦のブリッジを見回し、その手にした模造神器を掲げる。
 瞬間、重力制御によって得られた力がブリッジを自重でひしゃげさせ、生身で陸上戦艦を沈めてみせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

そうです! 
もちろん仲良しではありますけど、
ステラさんの叫びとわたしの演奏は全然別物ですよ!

なんと言いましても、わたしの演奏はヤバくな……。
ソウデスカ、エンソウカイヲゴキボウデスカ(ハイライトゆらりと)

ほらまたしれっと「私の子」とか言ってますし、
万が一いえ百万が一、わたしの演奏がヤバかったとしても、
ステラさんの比じゃないと思うんですよ。ね、天の声さん。

って、ステラさーん!?

なんでまたぶら下げなんですかー!
仲良しなんですから、一緒に乗せてくれてもいいじゃないですか!?

わ、わかりましたよぅ……。
こうなったら【ボレロ】でわたしの魂を響かせますよ!
わたしの情熱が燃えて雪崩ますよー!


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
なか、よし……?(宇宙メイド顔)
いえ、仲良しなのは否定しないのですが
私の|叫び《愛》とルクス様の|破壊魔法《演奏》は異次元のものでは??
誰がやべーメイドですか
ルクス様の演奏の方がよっぽどやべーと思うのですが!
アッイエエンソウカイハエンリョシマス

さておき、私の子供たち(?)の言う通り
逃すわけにはいきません

ルクス様行きますよ
空から追いかけます!
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態&【テールム・アルカ】起動
キャバリアサイズのパルスマシンガンを装備
電磁装甲弾の連射&制圧射撃を仕掛けて足を止めましょう
ルクス様は演奏してください演奏
ふっ、飛空艇形態の私ならルクス様の演奏だって耐えられるはず、はず



『神機の申し子』たちは、その二人を仲良しだと評した。
 たしかに見ようによっては息ピッタリであったように思えただろう。それは間違いではなかったのかもしれない。
「なか、よし……?」
 背中に銀河を背負ったステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はちょっと困惑したメイド顔をしていた。
 メイド顔ってなに。
「いえ、なかよしなのは否定しないのですが」
 ステラはたしかに己のキャバリアに吊るしたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)との仲が険悪であるとは思わない。
 けれど、と思うのだ。
 多分、彼らは自分とルクスを一括りにカテゴライズしているのではないかと。

「違う?」
『フィーアツェン』が首を傾げる様子が伝わってくる。
「私の|叫び《愛》とルクス様の|破壊魔法《演奏》は異次元のものでは??」
 ステラはそこだけはどうしても否定したいと思ったのだろう。
 それはルクスも同様であった。
「そうです! もちろん仲良しではありますけど、ステラさんの叫びとわたしの演奏は全然別物ですよ!」
 二人して息ピッタリである。
 そんな風に『ドライツェーン』は思ったが空気を読んだ。いつもやかましいことこの上ない男であったが、こういう時は口を噤んだ方がいいと学んでいるのである。
 猟兵に関わるようになってから、そういうことには敏感になっているのである。

「なんと言いましても、わたしの演奏はヤバくな……」
「そうかな? 音楽の素養のない僕ですらやばいと思ったよ」
『エルフ』がさらっと言う。
 言いにくいことをズバっと言う。
「そうです。ルクス様の演奏の方がよっぽどやべーと思うのですが!」
「いえ、あなたも大概でした」
『ツヴェルフ』がきっぱりと言う。
 ステラは私の子供たち(?)は言うことが違うと何か別の感情を覚えていた。

「ソウデスカ、エンソウカイヲゴキボウデスカ」
 だが、今はその時ではない。
 ルクスのハイライトが家出しているぞ。
「アッイエエンソウカイハエンリョシマス」
 なんで片言なのかなと『神機の申し子』たちは思ったけど、突っ込まなかった。ここで突っ込んだら、これから先ずっとツッコミをさせられると悟ったからである。
 しかし、そんな漫談をやっている場合ではないのである。。
『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちを乗せた大型陸上戦艦が撤退しようとしている。彼らを逃してはならない。

「ルクス様いきますよ。私の子たちの未来のために!」
「ほらまたしれっと『私の子』とか言ってますし」
 ルクスはぶら下げられながら思った。
 万が一いや、百万が一、自分の演奏がヤバ駆ったのだとしても、ステラの比ではないと思うのだ。
 ルクスは心で思う。
 天の声に同意を求めるのである。いや大概かなって思うんだけどな。喧嘩両成敗でどっちもどっちってことで一つどうかなって。
 あっ、ハイライトは点描で戻しておきますね。

「空から追いかけます!」
 ステラが飛空艇へと変身し、ルクスを『フォルティス・フォルトゥーナ』から受け取って吊るして空をゆく。
「って、ステラさーん!? なんで!? なんでまたぶらさげているんですかー!? 飛空艇なんですから甲板の上でよくないですか!?」
 ルクスの言葉にステラは微笑んだ。
「いえ、この方が効率がよいのです。吊るしてしまえば、音の指向性をもたせれば上には響かせないで良いのです。そうすれば、演奏から逃れられますから」
 にこし。
 ステラのほほえみが見えるようであった。
 飛空艇に吊るされたルクスは、しゃーないなーとばかりに演奏を開始する。
 情熱のボレロは敵味方を識別する。 

 本来ルクスの演奏は無差別音波兵器じみたものであるが、この情熱のボレロは違う。
 彼女の情熱は撃つべき敵を見定める。
 小型陸上戦艦を無力化するのに弾丸は必要ない。そう、ルクスの演奏で三半規管にダメージを与えれば良い。
 如何に陸上戦艦と言えど、それを動かす人員たちの三半規管まで守ってはくれないのである。
「これならば……ふっ、ルクス様の演奏だって耐えられるのです。さあ、ルクス様、存分に!」
「はぁい。なら、今夜は演奏会ですね!」
「それはお断りします!」
 そんな二人を見やり、やっぱりなかよし、と『フィーアツェン』はキャバリアのコクピットで頷くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【シャナミアさんと】

撤退っていうのは選択肢の一つだけど、
旗艦が味方を盾にして逃げるっていうのは、ねー。

とはいえ!
平和に暮らしている人に迷惑かけたんだから、同情も手加減もしないよ。

「『希』ちゃん!」
『時限シールド展開確認。全砲門、および【M.P.M.S】スタンバイ』

【Internal Rush】を発動させて突っ込むよ。

相手を攪乱しつつ敵陣の中に入ったら、
シャナミアさんにも出撃してもらっちゃおう。
「進路クリア……でもないけどいけるよー!」

シャナミアさんが無事出たのはいいんだけど……。

『狙いをつける必要もない、とにかく撃てば敵に当たるぞ!』
「……『希』ちゃん?」
『ちょっと言ってみたかったんだよ』


シャナミア・サニー
【理緒さんと】
いつも思うけど
戦争引き起こす上層部は基本的に最悪だな最悪
こういう輩は潰したいんだけどオブリビオンマシンの影響ってことで
命だけは助けてやろう、命だけね
理緒さんは大変|殺《や》る気のようだけど

よっし、レッド・ドラグナーでるよ!!

希ちゃんのアドバイス通りならとにかくぶっぱかー
ならこれだね
【BW-A】で肩装備を重武装化
チョイスはレゾナンスクレイモア・ツインスクエアポッド
当たれば装甲で留まって高周波振動を叩き込む特別製散弾
電気系統もまとめて壊してあげるから覚悟しな!
一発ぶっ放したら後は標準兵装で
ツインバレルライフルで落とす!

いやー艦橋は平和だねえ
希ちゃんのボケなんて珍しいものみれた



 戦いにおいて撤退とは敗北を肯定することである。
 これまで小国家『シーヴァスリー』は多くの小国家を滅ぼしてきた。 
 己たちの向上のためではない。弱者を生み出すためだ。己たちが踏みつけるための弱者を生み出すために彼らは争いを引き起こす。
 自分たちが辛く険しい道をゆくのではなく、他者に弱さを強いることで己たちの優位を保ちたいと願ったのだ。
 それは言わばマウントとおなじであったことだろう。
 他者より優れたるものを持たぬが故に、他者を減ずることに注力する。
 だが、それは人の性としてある意味で正しいことなのかもしれない。
 持たざるものができることは、持つものの足を引っ張ること。それだけでしか、持つ者に勝利することはできないからである。
「いつも思うけど戦争を引き起こす上層部は基本的に最悪だな最悪」
 シャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)は己の駆るキャバリア『レッド・ドラグナー』のコクピットから地上を見下ろす。

 彼女のキャバリアが座すのは戦闘空母『ネルトリンゲン』の甲板上であった。
「旗艦が味方を盾にして逃げるっていうのは、ねー」
 わからないでもないことなのかもしれない。
 旗艦を沈められれば、頭を潰されたも同然だ。だからこそ、逃げる。正しいと言えば正しい。
 けれど、と菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は思う。
「平和に暮らしている人に迷惑をかけたんだから、同情も手加減もしないよ。『希』ちゃん!」
『ネルトリンゲン』に次元断層シールドが展開される。
 空に浮かぶ『ネルトリンゲン』は陸上戦艦をして的であった。砲火が嵐のように迫ってい。
 それを次元断層シールドが受け止め、爆風に船体が揺れる。

『『時限シールド展開確認。全砲門、および【M.P.M.S】スタンバイ』
 サポートAIの音声が響き渡る。
 それは『ネルトリンゲン』そのものを弾丸のようにして地上にある小型陸上戦艦の群れの中に突っ込ませるという力技だった。
 敵陣の深くまで一気に食い込む『ネルトリンゲン』の甲板上でシャナミアは笑う。
「こういう輩は消したいんだけど、オブリビオンマシンの影響ってことで、生命だけは助けてやろう、生命だけね」
 シャナミアは周囲に存在する小型陸上戦艦を見やる。
 艦隊戦はたしかに艦船が花形であろう。しかし、キャバリアは戦術兵器だ。人型の鋼鉄の巨人が戦術を手繰ることにこそ意味がある。

「進路クリア……でもないけど、いけるよー! シャナミアさん!」
「よっし、『レッド・ドラグナー』でるよ!!」
 その言葉と共に『レッド・ドラグナー』が敵陣深くに食い込んだ『ネルトリンゲン』から飛び出す。
 それを合図に『ネルトリンゲン』の砲門が開く。
『狙いをつける必要もない、とにかく撃てば敵に当たるぞ!』
「……『希』ちゃん?」
 いつもと様子の違う『希』の言葉に理緒は首を傾げる。
 なんかテンションが違うようなきがするのだ。AIにテンションなんて存在するのだろうかと思わないでもなかったが、高度に発達したAIであれば冗談も言うだろう。
 それを証明するように『希』は茶目っ気のように声を弾ませて言うのだ。
『ちょっと言って見たかったんだよ』

 それを聞いてシャナミアは笑う。
「いやー『希』ちゃんのボケなんて珍しいもの見れた。なら!」
 バックウェポン・アタッチメント【BW-A】(バックウェポンアタッチメント)が換装される。
 砲身を捨て、装着されるのはクレイモアボックス。
 展開されるハッチに並ぶのは高周波震動弾。
 散弾のようにばらまかれる特殊弾は一気に小型陸上戦艦の装甲に突き刺さる。
「キャバリア武装が、陸上戦艦の装甲を抜けると思うなよ! 回頭! 敵空母を……」
 たたけ、とは続かなかった。
『第三帝国シーヴァスリー』の小型陸上戦艦の乗員たちは金切り声のような音を聞いただろう。
 それはシャナミアのはなった特殊弾が立てる音。
 弾頭が装甲に食い込み、高周波震動を船体全てに伝えるのだ。それは電気系統まで全て震動で破壊する一撃。
「覚悟しな! 全部まとめて壊してあげるから!」
 手にしたツインバレルのライフルが小型陸上戦艦の足を止めるように放たれ、爆発を引き起こす。

 その爆発を背にシャナミアは『ネルトリンゲン』の艦橋から聞こえてくる理緒と『希』のやりとりに微笑む。
 戦いの中にあっても艦橋は平和だ、となんともおかしみのある空気に弛緩せずとも、しかし笑むのだった――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェイルシア・インパーサ
自身に忠誠を誓う者たちまで駒として使い捨てるのですか……
其の性質がオブリビオンによって歪んだもの?それとも……

いえ、これ以上は言うに及ばずですわね
ここに集う兵達よ!
命が惜しければ今すぐ此の場を去りなさい
あなた方を受け入れる場所は此処だけではないはずです

魔力を自身に包み込んだ上で逆向きに噴出、推進力としますわ
インパーサの奥義にはこのような使い方もありますのよ
主砲の角度から外れたところから突撃
副砲やミサイル程度なら魔力で弾けるでしょう
肉薄したら噴出した魔力をそのまま振りかぶって戦艦に叩きつけましょう
精々装甲と砲台を剥がす程度の威力にとどまりますが
あなた方はこれでも刃を納めるつもりはありませんか?



 戦いにおいて指揮官というものは責任を負うものである。
 しかし、それは戦いが終わった後に訪れる問題だ。だからこそ、彼らは、『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちは逃げる。
 小型陸上戦艦を盾にして、大型陸上戦艦でもって撤退を開始する。
 逆に言えば、彼らさえ生きていれば、逃れることができれば『第三帝国シーヴァスリー』の野望は、弱者を積み上げた上にある繁栄は終わらないのである。
 それが争いを生み出し、戦火を拡大させるものであったとしても、彼らはかまわないのだ。
「あれらを近づけさせるな!」
 口角泡を飛ばすように号令を放つ要人たち。

 彼らの命令に従って小型陸上戦艦が猟兵たちの道を阻むように展開し、砲火を持って寄せ付けようとしない。
 それを見やり、フェイルシア・インパーサ(騎士姫の造花・f04276)は頭を振る。
「自身に忠誠を誓う者たちまで駒として使い捨てるのですか……」
 フェイルシアは『偽神ガミザーヌ』の中で瞳を伏せる。
 それは、人の性質か。それともオブリビオンマシンによって歪められたものか。
 どちらであっても、と思う。
 人の業は人が払わねばならない。

 言及したところで事実は変わらない。
 己たちが強者たる道を選ぶよりも、弱者を積み上げる頂きにあることを望んだ者たtなのだ。
 ならばこそ、フェイルシアの瞳が輝く。
「ここに集う兵達よ! 生命が惜しければ今すぐ此の場から去りなさい」
 彼女の言葉に猟兵の攻撃を受けて挫傷するように崩れた陸上戦艦から脱出した人員たちが顔を上げる。
 誰も彼もが傷を追わずにはいられなかった。
 オブリビオンマシンに歪められた思考。それはオブリビオンマシンがいなければ、消えていくものであった。
 だからこそ、フェイルシアは呼びかける。

「あなた方を受け入れる場所は此処だけではないはずです」
 これまでしてきた業が消えるわけではない。拭い切れるものでもない。けれど、とフェイルシアは他者を信じたいと思うのだ。
 桜色のオーラをまとった機体が、【悠久に咲き輝く愛すべき造花】(ラヴァブル・インパーサ)たる所以を示す。

 舞い散る花嵐。
 機体を覆うそれは、砲火をそらす。
 ミサイルも、弾丸も、迫る者を全てそらし、爆風の中を『偽神ガミザーヌ』が疾駆する。
「最果てより想う…かつて栄えた理想郷、朽ちて変わらぬ我が忠誠!受け継がれし騎士の奥義、今こそその身に焼き付けなさい!!」
 振るう斬撃の一撃が小型陸上戦艦の砲門を切り裂く、花嵐が軌道を成す推進装置を破壊し、小型とは言え陸上戦艦をその場に崩れ落ちさせる。

「あなた方はこえれでも刃を納めるつもりはありませんか?」
 装甲を引き剥がしながらフェイルシアは告げる。
 敵の戦意をくじく。
 今はそれでいい。自分たちが強者であると錯覚するような、熱にうだるような日々はもうないのだ。だからこそ、フェイルシアは己の振るう剣の刀身が見せる剣呑たる輝きを持って、彼らの頭を冷やすように力を示す。
 彼らは場の空気に流されただけだ。
 そう信じたい。水が上から下に流れるのとおなじように。抗いがたいものなのだ。流され、一つの意思に身を任せることの心地よさは言うまでもない。

 だが、と思う。
 より良きを求める時、人は意思でもって示すことができるのだと。
 それをフェイルシアは信じたいと願うように己の力を示し、人々に己の振り上げた拳を下げる勇気を願うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇宙海賊戦艦・ギャラクシア号
それじゃ、艦隊戦と行こうよ!陸上戦艦VS宇宙戦艦……ってね!

錬製カミヤドリ!
レーザー射撃に砲撃にミサイルをじゃんじゃん発射ぁ!!でも破壊は最低限にとどめるよ!壊しちゃったらお金にならないからね!赤字は回避!!

「ほらほらぁ!無駄な抵抗はやめて、大人しく投降しなさーいっ!」ずどーんっ!!

あ!私が撃破・鹵獲した戦艦は私の物だからね!!文句あるっ!?
スペースオペラワールドに持って行って売り飛ばせば、何G(ガルベリオン)かにはなるでしょ!にひひっ♪

あ、それと!今回の依頼の報酬もGで支払い頼むよっ♪



 猟兵たちの攻勢は凄まじいものだった。
 逃げる大型陸上戦艦の盾となるように展開した小型陸上戦艦をものともず肉薄している。その恐ろしさは要人たちを追い立てるものであり、また同時に猟兵の苛烈さを示すものであった。
「宇宙海賊戦艦・ギャラクシア号(スペースパイレーツバトルシップパイロットヤドリガミ・f39721)、此処にありってね! それじゃ、艦隊戦と行こうよ!」
 彼女は百年使われた改造宇宙船に宿った魂であり、また人型の肉体を得たヤドリガミである。
「陸上戦艦VS宇宙戦艦……ってね!」

 この空に蓋をされたクロムキャバリアの世界にあっては実現しようのない対決であったけれど。
 しかし、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
 錬成カミヤドリによって複製された砲門とミサイルが己に迫る砲火の嵐を真っ向から受け止めるようにして放たれる。
 爆風が雪原に荒ぶ。
 凄まじい熱量の奔流が彼女の頬を撫でるだろう。
「なんだ、あの火力は……!? 連中、我等と同じ艦隊を持っているというのか!?」
『第三帝国シーヴァスリー』にとって、それは脅威であった。
 敵の戦力は多くて十数機のキャバリア。
 だからこそ、小型陸上戦艦の砲門による飽和攻撃で要人たちの乗った大型陸上戦艦を逃す時間を稼いでいるのだ。

 だが、その目算はギャラクシア号のユーベルコードによって複製された大量の火器によってご破算となるのだ。
「ほらほらぁ! 無駄な抵抗はやめて、大人しく投降しなさーいっ!」
 放つミサイルやレーザー射撃が次々と放たれる砲撃を撃ち落とし、さらには小型陸上戦艦の装甲を貫き爆発を引き起こす。
 その光景を見やり、彼女はいっけない、と砲撃を弱める。
 破壊は最小限に止めようとしているのだ。
 なぜかと問われれば、壊してしまってはお金にならないからである。彼女は火器を大量に放出している。
 如何にユーベルコードで複製できるのだとしても、それは限りがあるものである。

 複製しきれなかった分は、彼女のポケットから捻出されるのだ。
 ならばこそ、赤字は回避したいと思うところである。
「私が撃破、鹵獲した戦艦は私のものだからね!! 文句あるっ!?」
 彼女は破壊した陸上戦艦をそのまま持って帰って売り飛ばそうとしているのだろう。これだけの艦隊なのだ。
 売り飛ばせば、一体どれほどの額になるのだろうかと今から皮算用を始めているので等う。
「にひひっ♪ 今回の依頼の報酬もG払いにしてらもうっと♪」
 お金は天下の周り者という。
 自分がそれを回すという快感にも似た感覚は、器物から肉体を得てこそ得られたものであろう。
 故にギャラクシア号は、今日も、これからも元気に火力でもって敵勢力を打ちのめし、その戦利品で持って大量のGを獲得せんと戦場を渡り歩くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルカ・スィエラ
逃がす訳、ないでしょう……!!
確かに少数のキャバリア相手ならその布陣は意味があるのでしょうけど、
|上ががら空き《・・・・・・》よ……ッ!

【ルクス・ソリス集束モード】で最も遠くの敵艦を狙い、出来れば逃げようとした方向を塞ぐ感じで艦の近くを狙い威嚇射撃、無理なら艦橋以外の艦体へと高空からの超精密砲撃を叩き込む

砲撃後、そのままプロトミレスで突撃、艦の駆動系を近接斬撃と遠距離へのツインGランチャーで無力化をしつつ距離を詰めていく…! 
まだ聞きたい事があるのよ、殺しはしない

(……見覚えのある動きの戦闘データ、無数の陸上戦艦……フォン・リィゥの件を思い出す……もう「黒幕」はいない筈なのに、嫌な予感がする)



『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちを乗せた大型陸上戦艦は撤退を始めている。
 それも小型陸上戦艦を盾にして。
 たしかに、と思う。
 撤退戦において旗艦を沈められるわけにはいかないということも。それは戦場にあれば理解できるものであった。
 けれど、彼らは己の保身のためだけに力を振るう。
 弱者を生み出し、踏みつけることによって今の地位を確保したいという保身のみでもって彼らは行動しているのだ。

 だからこそ、アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は告げる。
「逃がす訳、ないでしょう……!!」
 キャバリア『プロトミレス』のアイセンサーが煌めく。
 アルカの瞳は既に捉えている。逃げる旗艦たる大型陸上戦艦を、そしてそれを護るように展開する小型陸上戦艦の姿を。
 粒子通信が走る。

 それは一瞬のことだった。
 己から最も遠い小型陸上戦艦。そして逃げる大型陸上戦艦。
 ユーベルコードに輝くアルカの瞳は、すでにもう『それ』が“見えている”のだ。
「『ドラグレクス。私達の敵に、光の裁きを」
 その言葉と共に空間転移でもって機竜『ドラグレクス』が飛ぶ。
「たしかに少数のキャバリア相手ならその布陣は意味があるのでしょうけど」
 彼女は見据える。
 たかが十数機のキャバリアに敗走する艦隊。
 その艦隊が敵の進路を妨害するのならば、この空に蓋をされた世界にあっては平面だけを意識していれば良い。

 けれど、彼らは知るべきだったのだ。
 己たちが相対しているものがなんであるのかを。
「|上ががら空き《・・・・・・》よ……ッ!」
「……!? 直上に転移物体あり!? なんだ、これは……高エネルギー反応!」
 小型陸上戦艦の人員たちが驚愕する。
 それは一瞬の出来事だった。
 まだ自分たちのもとにはキャバリアが到達していない。
 だというのに、突如として現れた物体が其処にあるとレーダーは告げているのだ。己たちのいる陸上戦艦の直上。

 そこに在ったのは一騎の機竜。
「『ドラグレクス』!」
 アルカの言葉と共に『ドラグレクス』の口腔より放たれるのは、XXX-01Dα ルクス・ソリス集束モード(ルクス・ソリス)。
 光条の一撃は、一瞬で小型陸上戦艦の足を止める。装甲を貫き、爆発が空へと舞い上がる。
「まだ聞きたいことがあるのよ、殺しはしない」
 アルカは『プロトミレス』と共に戦場を疾駆し、小型陸上戦艦の駆動系を破壊しながら大型陸上戦艦へと迫る。

 そう、知りたいことがある。
 彼らが駆った量産型サイキックキャバリアの挙動には見覚えが在った。
『プロトミレス』に搭載されているデータにも該当するものがあった。さらに陸上戦艦。それは小型とは言え『フォン・リィゥ共和国』を思い出させる。
 最早『黒幕』はこの世界にいない。
 なのに、湧き上がるものがある。
 言いようのない予感。
「あなた達の機体に搭載されていたデータは……」
 アルカは背筋が泡立つのを感じただろう。
 これを人は重圧――プレッシャーと呼ぶ。己の予感が、確実に近づいている。

 それを、その根源が今、首をもたげるように大型陸上戦艦の内部より這い出そうとしていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『武甲・飛翔数重』

POW   :    |変剣《ハヤワザ》
【超高速三次元機動状態】に変形し、自身の【受け流し技能】を代償に、自身の【攻撃回数と回避性能】を強化する。
SPD   :    |柔剣《カウンター》
【RX刀で攻撃を受け流し、超高速三次元機動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【カウンターの一撃】で攻撃する。
WIZ   :    |剛剣《セツダン》
【受け流しや防御ごと叩き斬る斬撃】が命中した対象を切断する。

イラスト:イプシロン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は廿鸚・久枝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 大型陸上戦艦の引き裂かれた装甲を内側から破るようにして一騎のオブリビオンマシンが這い出す。
 ゆっくりと。
 それは緩慢とも取れる動きであった。
 一見すればそれはひどく隙だらけの動きであったことだろう。
 オブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』 は『まるで人間のように』周囲を見回す。
「起動した! 起動したぞ!! これで奴等もおしまいだ!!」
 大型陸上戦艦の艦橋で『第三帝国シーヴァスリー』の要人たちは笑う。
「『フュンフ・エイル』の戦闘データ! そして『ユミルの子』――『ノイン』の素体! この二つを合わせた究極のキャバリアがあれば!!」
 ジャイアントキャバリアの脳なき頭部に収められたのは嘗て悪魔とも救世主ともいわれた不世出の『エース』の戦闘データをコピーした脳を模した機械。

 そして、『ノイン』と呼ばれる『ユミルの子』の素体。
 それにサイキックキャバリアの装甲を鎧のようにかぶせた機体がオブリビオンマシンとして、猟兵たちの前に姿を現す。
 共をするように数機の量産型サイキックキャバリアが大型陸上戦艦から飛び出す。
「あの機体……! 悪寒の正体はこれか!」
「ああ、どうやらそのようです。頭が、割れるように痛い……あれのせいだというのですか」
「頭に響く! 滅ぼせと頭の中で、響いて!!」
「他の機体は、私達に任せて」
『神機の申し子』たちが、一騎のおぞましく重圧を放つオブリビオンマシンを護衛するように飛び出してきた量産型サイキックキャバリアたちを抑えるようにして動く。

 猟兵たちは己たちが倒さなければならないオブリビオンマシンを見据える。
 だらりと脱力したように佇むオブリビオンマシン、『武甲・飛翔数重』のアイセンサーが猟兵たちを捉える。
「――……」
 声なく。
 そのコクピットブロックに人は存在していない。
 無人機。 
 されど、伝わる重圧は明らかに並の『エース』のそれではないと知れるだろう。

 此処から先は瞬き一つが命取りになると猟兵たちは理解する――。
朱鷺透・小枝子
お前が、元凶か!!

弾き飛んでいったハルバードに目もくれず、
亡国の主【推力移動】【闘争心】がRX騎兵刀の破壊呪詛物質を展開
【解体属性攻撃】二振りのRX騎兵刀を以って斬り掛ろうとして、
超高速で飛んで来た数重に弾き飛ばされる。
【継戦能力】崩壊霊物質の【ブレス攻撃】
更に【追撃】BS-B戦塵縛鎖大量展開高速広範囲【捕縛貫通攻撃】!!

まだだ!壊せ!壊せ!!

超高速三次元機動状態の飛翔数重を【第六感索敵】
感じ取り騎兵刀で【切断】攻撃!

壊せ!!!|大破壊翼!!!!《カスラージクライム》

【瞬間思考力】近接攻撃に対して『大破壊翼』発動。
【カウンター】超々巨大翼を数重に向け生やし【武器受け】
そのまま、薙ぎ払い落す!!



 ゆっくりと、それこそ緩慢といえる動きでオブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』は大型陸上戦艦から這い出す。
 それは時に悠然と、と称されるものであったが見るものに威圧感を与えるような生々しい動きでもあった。いや、恐れを抱かせるほどのものであったというのが正しいのだろう。
 ビリビリと肌を焼くようなプレッシャー。
 しかし、そのプレッシャーを切り裂くように朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は見据え、叫んだ。
「お前が、元凶か!!」
 オブリビオンマシンはゆっくりと頷くような所作をしてみせたのが以外であった。

 首肯。
 そうだと言わんばかりに二刀をだらりと下げた脱力の体勢。
 無造作そのものと言える挙動。 
 だが、次の瞬間小枝子は見ただろう。己が駆る『亡国の主』に向けられた刃の切っ先を。
 知覚できぬほどの踏み込む。
 虚空潜航!
 いや、違う。
「踏み込み……!」
 圧倒的な踏み込み。まるで武芸の天才といわしめられたかのような存在と、気配を遮断する忍びをあわせたかのような動きだった。

 知覚の外側からの踏み込む。
 その斬撃の一撃を小枝子が破壊呪詛物質を展開して生み出した騎兵刀で受けられたのは幸いだった。
 勝負は一瞬。
 もしも、小枝子がそれをしていなければ、今頃『亡国の主』は横一線に薙ぎ払われていたことだろう。
 だが、迫る斬撃はさらに一瞬。
 二刀の斬撃は選択を強いることすら許さぬ速度で振るわれる。赤いアイセンサーが残光の宙に刻む瞬間こそ見えることはない。
「ッ……!」
 即座に振るった騎兵刀の二振りが弾き飛ばされる。呼吸すら許されぬ瞬間的な斬撃。

 さらに払われる斬撃に『亡国の主』の装甲が切り裂かれる。
「まだだ!」
 放つ崩壊物質のブレスが広範囲に放たれる。
 だが、それはオブリビオンマシンに届かない。虚空潜航によって短距離を細かく飛翔しているのだろう。
 次の瞬間には己の視界から消えていた。

「壊せ! 壊せ!!」
 己の中の何かが言っている。
 恐れなどない。恐れ以上に己の中にある破壊への意思を信じろと。恐怖は乗り越えられる。だが、破壊の意思は乗り越えられない。
 なぜなら、それこそが己を体現する唯一であるからだ。
 破壊。
 そのために己はあるのだと小枝子は知るからこそ、視覚外から放たれる二刀の斬撃を振り返りざま受け止めるのだ。
 びしり、と亀裂が走る音が響く。

 完全に敵の武装を砕いたと小枝子は理解した。
 だが、それは過ちだった。
 砕けたのは己の騎兵刀。
 振るわれる一撃が『亡国の主』の両腕を寸断させる。
 何たる絶技。燃えるような痛みが走る。けれど、それ以上に小枝子の人工魔眼がユーベルコードに輝き燃えるように解き放たれる。
「壊せ!!! |大破壊翼!!!!《カスラージクライム》」
 背に生えた破壊の権能持つ超々巨大翼が戦場に広がる。如何に虚空潜航を用いるのだとしても、この範囲を躱すことはできない。
 
「――……」
 しかしである。
 その不可能を可能とするのが、目の前のオブリビオンマシン。
 虚空に飛び、さらに迫る翼をマニュピレーターで抑えるようにして機体を反転させる。
 破壊の権能持つ翼。
 それを、その威力を、逆に回避の力に変える。恐るべき技量だった。
「速い……が! しかしッ!!」
 小枝子の瞳が輝く。カウンターが来るのはわかっていた。必ず来る。どんな体勢からでも、局面からでも、目の前のオブリビオンマシンは必ずや己に一撃を与えてくる。
 両腕を寸断されてもなお、小枝子の人工魔眼は真っ赤に燃えていた。
 己が成すべきことを知っているからこそ、飛び込む。踏み込むのだ。
 破壊するためには踏み込まねばならない。

「お前はッ!! 踏み込むものだと私は知っている!! ならば此処で壊れていけ!! 過去の残滓ッ!! オブリビオンマシン!!!!」
 故に小枝子の振るう巨大な翼が幾重にもオブリビオンマシンを取り囲み、その翼の薙ぎ払いの一撃が、虚空に飛ぼうとした刹那をはたき落とすように振るわれ、『武甲・飛翔数重』を大地に叩きつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
戦場では冷静さを失ったモノから死ぬ…。
ボクとしたことが頭に血が上りすぎたようだ。すまないレスヴァント。

あれが彼奴らの切り札か…。
なんだよ結局は他力本願のかたまりじゃないか。
奴らはただ吠えるだけか!!

そんな情けない奴らにボクらは負けない!
回避とカウンタ特化機か、長引けばこちらが不利か…なら!
アマテラスで敵の機動を『情報収集』『瞬間思考力』でタイミングを『見切り』
キャバリアキックをお見舞いし、追撃のキックで敵のカウンターを『カウンター』だ!!



 激昂は人の神経の箍を外す。
 それは普段抑え込んでいる限界を引き出すものであったし、瞬発的な力の増強ともなるだろう。
 だが、言ってしまえばそれは瞬発力であった。
 持続できる力ではない。
 そして、往々にして瞬発的な力を使い果たした後というのは大きな隙が生まれるものである。混乱極まる戦場においては致命的であった。
「戦場では冷静さを失ったモノから死ぬ……」
 一つの真理だった。
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)はそう理解していたし、自らも冷静さを失うことなどないと思っていたことだろう。

 だが、実際には違ったのだ。
 頭に血が上った。
 他者を蹴落としてまで逃げのびようとする醜悪さを前に彼女は己の機体に掛けた負荷を詫びるように呟く。
「すまない『レスヴァント』……」
 機体のフレームが軋む音が聞こえる。
 この状態で敵と相対しなければならないことに不安を覚える。
 けれど、同時に不安を覚えるということは冷静さを取り戻しているということでもある。不安はネガティヴな思考ではない。
 一見そうであるのだとしても、現状を正しく認識できる力が戻っているということは、ゆらりと動くオブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』を前にしてユーリーにとっては事態が好転したことを示していた。

 だが、次の瞬間、白い『レスヴァント』に肉薄するのは黒い機体があった。
 一瞬の踏み込み。
 見えなかった、とユーリーは即座に認めた。虚空潜航などという生易しいものではない。それを使っていないという事実がユーリーの背中を粟立たせる。
「ッ……彼奴らの切り札か……!」
 これが、と理解した瞬間に振るわれる斬撃を躱す。
 頭部のセンサーがそれだけ切り裂かれ、死ぬ。

 だが、ユーリーは考え続ける。思考を止めない。ここで一瞬でも思考を止めれば、己が死ぬだけだと理解しているからだ。
「なんだよ結局は他力本願の塊じゃないか! 奴等はただ吠えるだけか!!」
 情けない、と思う。
 自分たちは何もしない。自分たちは研鑽しない。自分たちは険しき道を進まない。
 誰かの得た、得難きものをかすめ取ることしか考えていない者たち。
 それが『シーヴァスリー』だ。
 
 ならば、ユーリーは吠える。
「そんな情けない奴らにボクらは負けない!」
 斬撃が『レスヴァント』の装甲を切り裂く。息をつかせぬ連撃。まるで皮膚一枚を削ぎ落としていくかのような斬撃。
 ギリギリのところで致命傷を避けているのだ。
 ユーリーの瞬間的な思考が迫る周囲の情報の洪水から読み解いていくのだ。
 脳に負荷が掛かる。
 頭痛がするほどの燃える思考。

 その最中に戦場を俯瞰してみているアマテラス――ドローンから送られてくる情報が途絶する。
「やられた……!」
 オブリビオンマシンは空に浮かぶドローンさえ、斬撃で一瞬のうちに片付けてしまっている。虚空潜航によって距離は意味をなさない。
 その一瞬すらすぐさま『レスヴァント』に詰めてくるのだ。
「……どれだけ、技量が高められようとも!」
 振るうソードの一撃が『武甲・飛翔数重』に叩き込まれる。完全に取った、と思った。
 だが、その一撃は見えぬ障壁に阻まれる。
「フィールド……!? なにこれ……! でもっ! 砕いた!」
 ソードの一撃がフィールドを砕く。
 行ける、とユーリーは確信する。敵の動きはカウンターを中心にしている。ならばこそ、ユーリーは敵の斬撃にあえて踏み込む。
 カウンターのカウンター。
 後の先。その先。燃えつくような脳神経の先にこそユーリーは勝機を見出し、その一撃を放つ。

「アンリミテッドモード起動!」
 ぐるりと機体が反転するように回転する。それは勢いを増した挙動。人体の構造をもしている以上、人型である以上、『レスヴァント』もまたその理に影響される。
 後ろ回し蹴り。
 その一撃は、キャバリアキック。
 カウンターの先を求めた一撃が重力フィールドをまとった一撃をオブリビオンマシンに叩き込み、その思考の焼き尽く先にある勝利にユーリーは手をかけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
これではお請求どころではありませんわ〜!

無人機なのに無人機ではない気がしますわ!
お速いですわね!近寄ったら三枚おろしにされてしまいそうですわ〜!
イオンブースターのおダッシュで動き回りますのよ〜!
しかしこれでは反撃できませんわ!
こういう時には…インストレーションウェポンコール!
シャドウプレデター!
目眩し力を超強化!

スモークディスチャージャーで周囲を真っ暗闇に致しますのよ!
ジャミングでレーダーもお釈迦にして差し上げますわ!
おほほ!何も見えなければお斬りになれないでしょう?
EMPガンをおシュート!
お掃除の際にうっかり静電気をバチらせてしまったおパソコンみたいになってしまえばよろしいのですわ〜!



 これ以上は近寄れない。
 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は即座に理解した。
 それは本能的なものであったし、直感的なものであった。
 オブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』。その頭部に搭載された戦闘データは脳を模した機械の形をしていた。
 以前、『フュンフ・エイル』の戦闘データを搭載した機体はあったが、いずれも機体との相性がよくなかった。故に硬直もしたし、動きもちぐはぐだった。
 けれど、目の前のオブリビオンマシンは違う。
 二刀を構え、猟兵たちの攻勢を捌き切っている。
 恐るべき敵だと理解したのだ。

「無人機なのに無人機ではない気がしますわ!」
 メサイアの駆る『ヴリトラ』はイオンブースターの速度でもってオブリビオンマシンの攻撃を振り切ろうとしていた。
 動き回り、此方に攻撃の隙を与えない。
 しかし、オブリビオンマシンのアイセンサーは輝いたまま。
 まるで脱力するように二刀を構えた腕はだらりと落ちている。けれど、しかし、その実、隙が全く存在しない。
 敵の攻撃はなくとも、こちらから攻撃することもできない。
「……――」
「おしゃべりもしないなんて不気味そのものでしてよ~! それに反撃ができませんわ!」
 焦れる。
 
 だが、此の戦いは先に動いた方が負けるとメサイアは己の本能がそう告げているのを理解している。
 無策で飛び込めば三枚おろしにされてしまうとさえ思えてしまうし、その未来を幻視できてしまう。
 それほどまでの技量。
 これが不世出の『エース』。
「こういうときには……! インストレーションウェポンコールですわ〜!」
 ユーベルコードが輝く。
 それは即時武装を換装するユーベルコード。
 一瞬にも満たない時間で機体の装備を付け替え、特性を変えるユーベルコードだった。しかし、オブリビオンマシンは、その一瞬に踏み込んでくる。
 0から1に即座にスイッチを切り替えるように『ヴリトラ』に肉薄する機体。

 そのアイセンサーの剣呑たる輝きにメサイアは息を呑む。
 振るわれた二刀の斬撃が『ヴリトラ』を切り裂く。
「変身換装(チェンジングウェポンシステム)――お色直しの時間もいただけないのでして~!? そういうのってレディに対して無礼だと思いませんこと~!?」
 だが、オブリビオンマシンが斬り裂いたのは、まやかし。
 そう、『ヴリトラ』が換装した武装は『シャドウプレデター』。
 電子戦特化仕様。
 背鰭状のジャミングブレードから発せられる制御信号がオブリビオンマシン認知を妨げたのだ。

 斬り裂いたのは虚空。
 しかし、それを瞬時にオブリビオンマシンは修正してくる。
 返される刃。
 その軌跡をメサイアは見ただろう。
「直撃コースですわ! でもっ!」
 放つスモークディスチャージャーが周囲を闇に落とす。さらにアームに装備された電磁波が放たれ、オブリビオンマシンの動きをわずかに鈍らせる。
 その一瞬で『ヴリトラ』は身を翻し、テイルスマッシャーの一撃を見舞う。
 刀で受け止められはしたものの、危機は脱したと言えるだろう。

「お掃除の際にうっかり静電気をバチらせてしまった、おパソコンみたいになってしまえばよろしいのですわ~!」
 踏み込む。
 迂闊には近づけないとわかっていた。だが、それでは勝利から遠ざかるばかりだった。
 テイルスマッシャーの一撃は受けられたが、しかし当たったのだ。
 ならばメサイアは踏み込む。
 どれだけ敵の技量が高かろうが、踏み込まねば勝てないというのならばメサイアは踏み込むのだ。

 電磁波の一撃を敵が受けなかったのは、やはり敵位置を正確に測れぬことを厭うからだろう。
「なら、バチバチにバチらせてさしあげますわ! あ、それ! バッチバチですわ~!」
 踏み込んだ『ヴリトラ』の腕部から放たれる電磁波の一撃がオブリビオンマシンの内部にジリジリと見えぬダメージを蓄積させ、メサイアは迫る斬撃の一撃を躱し、三枚おろしになる未来、その幻視を振り払うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
オブリビオンマシンに戦闘データを加えて出来上がった物かー…
うーん厄い厄い
作って使ってるつもりが、使われてるんじゃ世話無いね


【断章・機神召喚】起動
剣士型っていうなら、こっちも剣戟戦で相手しようじゃない
召喚した右腕を『念動力』で浮かし、軌道を私とリンク
機動力に自信があるみたいだけど…剣がメインならば!
『斬撃波』で牽制、当たらなくても相手の軌道を誘導出来ればそれでよし
奴が此方を攻撃してくるタイミングをコントロールする!
そして後は…相手より疾く動けば良し
意識を集中構えて『第六感』も駆使して敵の攻撃を読む
『カウンター』右腕の連撃で『2回攻撃』
後の先、思考と反応を極限まで疾く
『薙ぎ払い』奴を斬り裂く!



 その黒いオブリビオンマシンは不気味そのものだった。
 猟兵たちの攻勢は決して手ぬるいものではなかった。けれど、その尽くを凌ぎながら、二刀と虚空潜航を用いた三次元戦闘を繰り広げていた。
 明らかにこの空に蓋をされた世界での戦いではない。
 そして、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、そのオブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』の動きに違和感を覚えただろう。
 二刀。
 奇しくも己もまた二振りの模造神器を振るう猟兵である。
「オブリビオンマシンに戦闘データを加えて出来上がったものかー……うーん厄い厄い」
 戦闘データは『フュンフ・エイル』のもの。
 機体はジャイアントキャバリアを素体にサイキックキャバリアの装甲をかぶせてある。
 これが『第三帝国シーヴァスリー』の切り札なのだろう。

 かつて、彼らの前進である『サスナー第一帝国』を滅ぼした悪魔の力を己たちの手にしたのだ。
 奪われるばかりであった己たちがついに得たのは他者を弱者に叩き落とす力。
 だが、それはオブリビオンマシンによって歪められた結果である。
「作って使ってるつもりが、使われてるんじゃ世話ないね」
 生身単身でオブリビオンマシンに迫る玲に『武甲・数重』は動揺することも侮ることもなかった。
 それは確実に『知っている』動きだった。
 玲が超常の存在として、キャバリアに匹敵する力を持っていると『知っている』動きだった。

「……――」
「剣士型っていうなら、こっちも剣戟戦で相手しようじゃない。偽書・焔神起動。断章・機神召喚の章の閲覧を許可。術式起動」
 断章・機神召喚(フラグメント・マキナアーム)によって呼び寄せられた機械でできた右腕が玲の念動力とリンクする。
 振るう刀身から斬撃波が牽制として放たれる。
 それを前にしてオブリビオンマシンが取った行動は玲と瓜二つだった。手にした二刀で斬撃波を飛ばし、互いの一撃を相殺し合う。
 当たらなくてもいいと玲は思っていた。
 そう、敵の機動を誘導できればそれでいいと思っていたのだ。
 
 だが、それはオブリビオンマシンにとっても同様だったようだ。
 同じ二刀流。
 動きが似通っている。いや、わずかにオブリビオンマシンの動きには、他の動きの癖が残っているようにも見受けられる。
「……――」
「動きが同じ……いや、似てるってこと? なら!」
 三次元の高速機動。
 オブリビオンマシンの斬撃は嵐のようであった。まるでこちらの手の内を読まれているかのような感覚。いや『知られている』と玲は理解しただろう。
 まるで機械で出来た巨腕を用いた戦いを一度見ているかのように虚空潜航を交えた跳躍で、逆に玲が誘い込まれている。

 はっきりと言えば窮地に立たされていた。
 けれど、玲の瞳はユーベルコードに輝いている。例え、手の内を知られているのだとしても、玲は関係ないと割り切る。
 敵の動きをコントロールしきれないのならば、敵が己の力量を押しは掛かるのならば!
「相手より疾く動けば良し!」
 嵐のように迫る『武甲・数重』の二刀の斬撃。
 その嵐の如き斬撃を玲は見据える。己が二刀を振るうのならばどうするか。それを発展させるのならばどうするのか。

 目の前にあるのは鏡そのもの。
 ならば、その鏡より疾く己が動くだけだ。振るわれる二刀の斬撃を二振りの模造神器が蒼い残光を走らせ弾く。
 だが、それを上回る一撃が玲に振り下ろされる。
 その閃光の如き光景を玲は見ただろう。
 後の先。
 思考と反応を極限まで疾く。

「超えてくるっていうなら――」
 機械腕が斬撃の一撃を受け止める。だが、もう一刀が振るわれる。
 ぐるりと機械腕が空中で回転し、手にした模造神器がオブリビオンマシンの斬撃を払う。
 踏み込む。
「さらにその先に」
 後はただ踏み込むだけでいい。

 玲は手にした模造神器を交差させるように斬撃を放つ。
 それはオブリビオンマシン『武甲・数重』の胸部装甲を十字に切り裂く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【シャナミアさんと】

『エイル』さんの戦闘データとか『ユミルの子』とか……。
気持ちはわからなくもないけど、とんでもないものを開発してるね。

でもそのデータ持ってるの、あなたたちだけじゃないんだよー♪

シャナミアさんの機体に全データを転送。
『希』ちゃんの解析結果とリンクしてもらって、サポートするよ。

それにね……。
データしかないってことは、無人機ってことだよね。

遠慮なく破壊できるし、
なにより、データは壊れたら終わりなんだよ?

【ストラクチュアル・イロージョン】を発動させてじわじわとデータを浸食。
どこまで壊せるか解らないけど、目指すは行動不能まで、だね。

せっかくだからあの機体、鹵獲できないかなぁ。


シャナミア・サニー
【理緒さんと】
自分たちに都合のいいエースを作り出そうなんて
人の命を何だと思ってんの

こういうのは全力で……えー理緒さんアレ鹵獲すんのー?
しゃーない艦長の言うことは聞きましょう
【バックウェポン・アタッチメント】換装いくよ!
ライトニングバレット・ツインロングライフルを肩装備にセット
標準兵装のツインバレルライフルと合わせて
銃身が焼き付くまで弾幕撃ち続けてやる!ってね!

理緒さんからもらったデータをフル活用
エースのデータであろうともアンタはエースじゃないからね
わかってる攻撃くらいなら私でもよけきれるっての!

理緒さんがデータを壊す
私が接続を物理的に壊す
超高圧電流を叩き込む弾丸喰らってタダで済むと思うなよ?



 不世出の『エース』。
 それが『フュンフ・エイル』という存在である。敵対するものからは悪魔と。味方からは救世主と呼ばれた技量。
 小国家『グリプ5』周辺においては、その名は憧憬と畏怖でもって語られる。
 故に、それを求めるのは必然であったのかもしれない。
「『エイル』さんの戦闘デーーたとか『ユミルの子』とか……」
 気持ちはわからなくもないと、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は思う。
 けれど、それがオブリビオンマシンとして立ち塞がる、この状況は猟兵たちをして窮地に追いやっているといえるだろう。
「とんでもないものを開発してるね。でも」
 そう、理緒は、でも、と付け加える。
 
 どれだけ窮地に追いやられても、目の前に迫るオブリビオンマシンが脅威であったとしてもだ。
「でも、そのデータ持ってるの、あなたたちだけじゃないんだよー♪ シャナミアさん!」
「はいよー!」
 理緒の言葉にシャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)に答える。
 戦闘空母『ネルトリンゲン』の甲板上から赤いキャバリア『レッド・ドラグナー』がバックウェポン・アタッチメント【BW-A】(バックウェポンアタッチメント)によって換装されたライトニングバレット・ツインロングライフルの砲身を地上に在るオブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』へと向ける。
 照準を合わせようとした瞬間に、距離など無意味というように甲板上に虚空潜航によって飛ぶオブリビオンマシンのアイセンサーをシャナミアは見ただろう。

 そして、次の瞬間『レッド・ドラグナー』の機体に走る衝撃。
 斬撃を受けた、と理解できたのはシャナミアが高い技量をもっているからだろう。此の初撃で並のパイロットは終わる。
 衝撃と共に機体を交代させ、甲板上を後ずさる。
「間に合った……!『希』ちゃんの解析結果とリンクしてサポート!」
「嘘でしょ」
 シャナミアが呟く。
 さらに踏み込んでくるオブリビオンマシン。
『ネルトリンゲン』の甲板を切り裂きながら二刀の斬撃が『レッド・ドラグナー』に迫る。 
 それを既の所で躱し、シャナミアは『希』のアシストがなければ、完全にやられていたことを悟る。

 肩部に備えられたロングライフルの砲身から放たれる弾丸。
 それは弾幕と呼ぶに相応しいものであった。
 銃身が焼き付くほどの高速連射。嵐のような弾丸を『武甲・飛翔数重』は手にした二刀と虚空潜航で躱しながら距離を詰めてくるのだ。
「……ッ! こいつ……!」
 銃弾の嵐の中を平然と前に進んでくる。
 一歩たりとて後退することなどオブリビオンマシンにはないようだった。
「無人機なんでしょ、こいつ!」
「うん! だけど……無人機なら遠慮なく破壊できるし、何よりデータは壊れたら終わりなんだよ?」
 理緒の瞳がユーベルコードに輝く。

 その輝きを受けて『武甲・飛翔数重』のアイセンサーが煌めく。
「……――」
 それはまるで理緒のユーベルコードを予見していたかのような動きだった。
 理緒のユーベルコード、ストラクチュアル・イロージョンはウィルスによって機体の内部から破壊するユーベルコードだ。
 侵食するウィルスは、機体の制御系を壊す。
 シャナミアが物理で。理緒がデータを壊す。それがこの二人の作戦だった。
 けれど、オブリビオンマシンはそれを理解しているようだった。

 まるで『知っている』ようであった。

「……一発、一発当たれば……!」
「『希』ちゃん、敵の動きの予測データ! 偶然でもなんでも引き寄せる!」
 これが『エース』というものならば、過去に在りし『エース』など全てが不要であるといわざるをえないほどに、目の前のオブリビオンマシンに搭載された『エース』のデータは尋常ならざるものであった。
 けれど、二人は諦めない。
 理緒は鹵獲できないかと言った。シャナミアは正直難しいと思った。

「だけどさ、自分たちに都合の良い『エース』を作り出そうなんて、人の生命をなんだと思ってんのって話だよね!」
『希』のアシストを受けて『レッド・ドラグナー』がオブリビオンマシンに飛び込む。
 虚空潜航で逃げられるかもしれない。
 けれど、理緒は理解している。そしてシャナミアは確信する。
 矛を交えたからこそわかる。
 眼の前の敵は、戦いにおいて退くことをしない。
 愚直とも言える邁進の如き歩みをやめないものなのだ。

 ならばこそ、シャナミは飛び込む。
「理緒さん、鹵獲は諦めて。このままだと」
「『ネルトリンゲン』が沈む、ねー……せっかくだからと思ったけど、シャナミアさん!」
『レッド・ドラグナー』が『武甲・飛翔数重』に組み付く。
 二刀が密着状態からでも翻り、『レッド・ドラグナー』のアンダーフレームを切り裂く。
 ぐらりと傾く身体。
 しかし、次なる一撃が飛び込んでこない。理緒のはなったウィルスがオブリビオンマシンの動きを止めたのだ。

「どんな状況だって……ひっくり返してみせるっ!!」
 ロングライフルの砲身がオブリビオンマシンに向けられ、ゼロ距離の躱しようのない一撃が叩き込まれ『ネルトリンゲン』の甲板上から『エース』を漸くにして排除するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

(ステラさんを恐る恐る見て震え上がる)

あああああ、やっぱりー!?
『エイル因子』をくだらないことに使ったりするから、
『ステラさん』が『超ステラさん3』に進化しちゃってるじゃないですか!
こうなるとわたしにはもうどうにもできないですよ!

ま、まぁどちらにしても、
ステラさんと同じくらいやべーゴーレムは倒さないといけないですけどね!

あのゴーレムはステラさんが自分でぶっとばしたいでしょうから、
わたしは今回フルサポートです。
【クラリネット狂詩曲】でヒールかけっぱなしにしちゃいますね。

さ、ステラさん、元祖やべーパワーを見せつけてあげてください!

……わたしの演奏はヤバくないですからね?


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
だからぁぁぁぁぁぁ!!!
どうしてぇぇぇぇぇ!!!
混ぜるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
|エイル様《主人様》の香りが死んでるでしょう?!
素材の良さを殺してさらに味も不味いとか!!
この無能が!!

ルクス様潰しますよ完膚なきまでに砕いて潰して滅ぼします
オーケー?

フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリア召喚)
ではルクス様行ってきます
サポートは任せました
【テンペスタース・クリス】
フォルごと突撃します!
ちょっともうルクス様の演奏以上に存在を許せませんので!

ところでこれまでにハイランダー・ナインのノイン様の情報って出てましたっけ?
あまりにもさらっと出ていて整理が追い付いていないのですが?



 戦闘空母の甲板上から叩き落されたオブリビオンマシン『武甲・飛翔数重』は空中で姿勢を変えることなく虚空潜航でもって地上に降り立つ。
 胸部装甲に刻まれた十字傷。
 ひしゃげた装甲。
 内部から電子系を破壊しようとした電流の迸りを受けながら、それでも赤いアイセンサーはきらめいていた。
「……――」
 不世出の『エース』。
 そのデータを頭部に有するオブリビオンマシンは、しかし斃れない。

 その様子を見やり、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は恐る恐るといったふうに見上げる。
 正直に言うと怖い。
 この空気を震わせるような重圧はオブリビオンマシンだけはないことを鳥型キャバリアから吊るされながら彼女は理解していた。
 絶対にこの、ビキバキ言う音は自分の頭上から響いているのだ。
「だからぁぁぁぁぁぁぁ!!! どうしてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
 ものすごい声だった。 
 それは声と呼ぶにはおこがましいほどの咆哮であった。いや、なんというか、もう情念というのを通り越しているかのような叫びであった。
 空気を震わせて引き裂かんばかりの声。

「混ぜるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は叫んでいた。息継ぎとかどうしてるんだろうと思わないでもなかったが、それでも彼女は叫んだ。
「|『エイル』様《主人様》の香りが死んでいるでしょう?! 素材の良さを殺してさらに味もまずいとか!! この無能が!!」
 ものすごい誹り方であった。
 そこまで言わんでも、と思うほどにステラは怒っていたし、ルクスはやっぱりー!? と思っていた。
 うーわ、と思った。
「『ステラさん』が『超ステラさん3』に進化しちゃってるじゃないですか!」
 怒髪天を衝くとは此のことである。
 もうこうなっては自分では止められない。どうしようもない。ステラの怒りが鎮まるのはきっと……。

「ルクス様潰しますよ完膚なきまでに砕いて潰して滅ぼしますよオーケー?」
「アッハイ」
 ルクスはコクコク頷くことしかできなかった。
 怒りすぎて逆に静かになるタイプであった。まだ叫んでいてくれた方がよかったとルクスは思った。
 それに今まだ自分が『フォルティス・フォルトゥーナ』に吊るされている現状がちょっと怖い。
 どちらにしたってあのオブリビオンマシンは倒さなければならないのだ。
 どっちがやべーかといわれたら、ルクスはよく知るステラのほうがやべーと思った。
「あのゴーレムはステラさんが自分でぶっ飛ばしたいでしょうから、今回はわたしがフルサポートいたしますので、一端おろしてくださいね」
 ルクスはニコッと微笑んだ。
 今は笑顔である。笑顔でステラの怒りに同調しつつ、難を逃れなければならない。
「では」

 ルクスをおろしたステラは鳥型キャバリアに騎乗し、即座に飛び立つ。
「は、はーい! じゃあ、クラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)で!」
 ルクスの奏でる演奏は気合が入っていた。
 常時、味方を回復し続けるバフ。それによってステラをサポートするのだ。
 ヤベーやつにはやべーやつをぶつけんだよ! というものすごい理論が頭のどこかに浮かんだ気がしたが、ルクスは構わなかった。
 だって、どっちもやべーなのならば!
「ステラさんのが元祖ですから! 元祖やべーパワーを見せつけて上げてください!」
 いや、ルクスさんの演奏も大概にやべーとおもいましたまる。
「……わたしの演奏はヤバくないですからね?」
 やばいやつはみんなそう言う。

 そんなルクスの演奏を背に受けて、ステラは飛ぶ。
 敵が虚空潜航による跳躍を見せるのならば、その跳躍の隙すら与えぬ超加速で持って地面スレスレに『フォルティス・フォルトゥーナ』は飛ぶ。
 ユーベルコードに輝くは、風の盾。
 テンペスタース・クリスは十字のオーラをまといながら、一気に『武甲・飛翔数重』の間合へと飛び込む。
「――……」
 圧倒的な加速。
 本来であれば、敵はその攻勢を前に後退するか躱すかを選択するだろう。
 けれど、オブリビオンマシンは違った。
 前に踏み出した。

 その踏み出した一歩にステラは驚愕するだろう。
 いや、許せないという思いが勝る。この場合は!
「ルクス様の演奏以上に存在を許せませんので! それは!!」
 それは言い過ぎだと思った。
 けれど、ステラにとって、目の前のオブリビオンマシンはそうした存在だった。歪められたもの。前に踏み出す戦い方も。己の身を厭わぬ戦い方も。
 そして、自分たちを『知っている』かのような戦い方も。
 何もかもが許せなかった。
「空を駆ける事で、他に後れを取るわけにはいきません!」
 斬撃と機体が交錯する。

 刹那の邂逅。
『フォルティス・フォルトゥーナ』の機体の装甲が引き裂かれる。しかし、それは瞬時にルクスのユーベルコードで修復される。
 だが、『フォルティス・フォルトゥーナ』の突撃はオブリビオンマシンの身体を吹き飛ばす。
「ただ混ぜるだけで、まがい物にしかできないのなら!」
 そういうのは怒りを買うだけだとステラは衝撃波と共に前に進む戦い方をするオブリビオンマシンを否定するように吹き飛ばし、後退させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルカ・スィエラ
くっ…!やっぱり、フォン・リィゥに現れた神機は……!
もしあれがテストケースなら、連中がこの機体で打ち止めにするとも思えない
誰かに利用されていようがいまいが、力欲しさに「オブリビオンマシンを新造する」なんて真似する連中、放置できる訳ないでしょう…!!

アルカレクスへと融合合身、戦法自体は同じでも速度は段違い、意識を集中しこちらへの踏み込みに対し攻撃タイミングを見切り、受け止めるより弾くように防御フィールドを使っていくわ

三次元機動というのなら、空中での機動を行うタイミングに合わせてUCを使用、超重力で地面へと落とし体勢を崩して、その隙にドラグカプトでの砲撃とドラグキャリバーでの追撃を叩き込む……!



 黒いオブリビオンマシンの動きは尋常ならざるものであった。
 小国家『フォン・リィゥ共和国』で対峙したオブリビオンマシンにも同様の戦闘データが搭載されていたことをアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は知っている。
 けれど、と思う。
 今にして思えば、あれはテストケースであったのではないかと。
 あの神機は本当に『フォン・リィゥ共和国』が建造したものなのか。
 思考がまとまらない。
 あれが本当にテストケースであったというのならば、あれを生み出した者たちが、あの黒いオブリビオンマシンで打ち止めにするとは到底思えなかった。
「誰かに利用されていようがいまいが、力欲しさに『オブリビオンマシンを新造する』なんて真似する連中、放置できる訳無いでしょう……!!」

 己の胸の中にあるのは炎立ち上る光景だけだった。
 その名は悲劇という。
 オブリビオンマシンがもたらすものを彼女は知っている。
 滅びと死しか彼らはもたらさない。だからこそ、アルカは許せないと思ったのだ。その思いに呼応するように『プロトミレス』のアイセンサーが煌めき、機竜が空より舞い降り、融合していく。
『アルカレクス・ドラグソリス』へと変貌を遂げた機体のコクピットでアルカの瞳がユーベルコードに煌めく。
 意思がある。
 例え、オブリビオンマシンが悲劇を撒き散らし、周囲に破滅と死をもたらすのだとしても。

 あの炎の中には己がいるのだ。
 己のような者を出さぬためには、己が前に踏み出さなければならない。
「――……」
 ゆらりと胸部に十字傷を追ったオブリビオンマシン『武甲・数重』が人のような所作でニ刀を脱力した腕部で握りしめ、一瞬で踏み込んでくる。
 それは虚空潜航を用いた距離の詰め方ではなかった。
 まるで0から1にスイッチするかのような急加速。集中していたはずだ。アルカは敵の攻撃のタイミングを見切ろうとしていた。

 だが、それは徒労に終わったと言えるだろう。
 迫るニ刀を前に防御フィールドを展開しようとした刹那に振り抜かれたニ刀の斬撃が『アルカレクス・ドラグソリス』の装甲を切り裂く。
 一瞬の斬撃。
 見えなかった、と思うよりも早くアルカは張り巡らせた防御フィールドでオブリビオンマシンをはじき出す。
 けれど、それさえも躱すように虚空潜航による三次元機動でもって『武甲・飛翔数重』は一瞬で距離を詰めてくるのだ。
「……躱せ、ない……! ならッ!」
 アルカは後退しなかった。
 後退する意味がなかった、とも言える。けれど、それは同時に己の破滅を示していた。あの黒いオブリビオンマシンに敗北する。
 その事実をアルカは真正面から見据える。
 技量差は埋まらない。
 ならばなんとすればいいのか。

 そう、踏み込むだけだ。
 己はそうすることしかできない。過去を振り返って見ても、あの過去は消えない。あの悲劇は起こらなかったことにはならない。
 ならばこそ、アルカは踏み込む。
 振るわれるニ刀の刺突を前に恐れなく踏み込み、防御フィールドが刺し穿たれるままに己の機体の装甲で受け止める。
 だが、その瞬間、アルカの瞳は強烈に輝きを解き放つ。
「対象設定、フィールド構築! 重力制御……!!」
 吠える。
 戦うことでしか悲劇を否定できないのだというのならば、アルカは戦って眼の前のオブリビオンマシンを否定する。

「押しつぶしなさい! Gプレッシャー(グラビティプレッシャー)!!」
 超重力が『武甲・飛翔数重』を押さえつける。
 虚空潜航はできない。何故ならば、刺突の一撃が今もなお『アルカレクス・ドラグソリス』の装甲に突き刺さっているからだ。
 逃さぬとばかりにアルカの機体からドラグカプトが砲撃を加え、オブリビオンマシンを爆風の中に飲み込ませる。
「――……」
 己を省みないアルカの決死の一撃が『武甲・飛翔数重』の背面の虚空潜航ユニットを打抜く。
 赤いアイセンサーが明滅する。
「あの悲劇を、他の誰にももたらさないためには!」
 アルカは叫ぶ。
 手にしたドラグキャリバーの一閃。
 それはアルカの中にある悲劇を否定するもの。他の誰にも、と彼女は言った。そのために振るう一撃はオブリビオンマシンを袈裟懸けに切り裂く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェイルシア・インパーサ
※アドリブOK
ふふ、ようやく起こして頂けましたわね
あなたを倒せばシーヴァスリーは変わる、変わらざるを得なくなる
大将を討てばと簡単にまとまる話ではありませんが
当面の侵略行為は困難になることでしょう
ですので私達は決して負けるつもりはありません!

魔力を帯びた[残像]を複数展開して多重攻撃といきましょう
影とは言え触れればただでは済みません
[フェイント]で攻撃を誘発させて[見切り]で回避
もちろん本体は間合いから離れ隙を伺い……

とでも思いました?
本体は今あなたと斬りあっている私
間合いから離していたのはただの囮
残像に攻撃した隙は逃しませんわ
ひっそり[高速詠唱]で育んだ夢の大木をその身に受けると良いでしょう



 漸く、とフェイルシア・インパーサ(騎士姫の造花・f04276)は己のキャバリア『偽神ガミザーヌ』と共に戦場を疾駆する。 
 猟兵たちの構成を持って漸く手傷を負わせることのできたオブリビオンマシン。
『武甲・飛翔数重』の力は、不世出の『エース』の戦闘データと機体の性能と合わさって、これまで猟兵たちを多数相手取ってもなお健在であったのだ。
 けれど、漸く。
 オブリビオンマシンの背面ユニットが穿たれ、その機体に叩き込まれてきた猟兵たちのユーベルコードが、これまでの動きから更に一段落とすようにじわじわと蝕んでいく。
「あなたを倒せば『シーヴァスリー』は変わる、変わらざるを得なくなる」
 赤いアイセンサーが煌めいている。
 それは些かも衰えぬ戦術の脅威をフェイルシアに知らしめることだろう。

 そう、目の前のオブリビオンマシンは只者ではない。
 尋常ならざる操作技術によって統合された『エース』そのもの。
 だが、フェイルシアは構わなかった。
 己が何故剣を手に取ったのかを知っているからだ。
 代用品。偽物。偽り。
 そのどれもが影として製造されたミレナリィドールであるフェイルシアを示す言葉であったことだろう。
 最早、彼女が存在する理由はない。

 だが、彼女は剣を手に取っている。
 己がイルシアであることを辞めようとしない。
 此処でかのオブリビオンマシンを打倒すれば、当面の侵略行為は困難になるはずだ。ならばこそ、悲劇は起こらない。
 自分が剣を手に取らずとも変わらなかった事。 
 されど、己が剣を手に取ったからこそ変わったこともある。

「どこまでも」
 そう、呟く。
『偽神ガミザーヌ』が踏み込む。敵は後の先を取るオブリビオンマシン。
 手にしたニ刀は、踏み込んだ瞬間に嵐の如き斬撃を見舞う。装甲が削れ、無数に展開した残像すらも尽く切り裂く。
 撹乱など無意味であるといわしめるかのような絶技。
「どこまでもどこまでも」
 フェイルシアは呟く。
 回避が間に合わない。敵は此方の残像を的確に切り裂き、本体であるフェイルシアを目指すように斬撃を振るっている。

 隙など与えないとばかりの嵐の如き攻勢。 
 されど、フェイルシアは見ただろう。これまで他の猟兵たちが積み上げてきた攻勢の傷跡が、かのオブリビオンマシンの動き、その精彩を欠くように作用していることを。
「偉大な冒険は続いていくものですわ。紡がれ、つなぎ、そして」
 フェイルシアの瞳がユーベルコードに輝く。
 残像を展開していたのは時間稼ぎでしかない。
 己自身を囮にし、そして残像で目眩ましをしたに過ぎない。得意げに斬り裂いていた残像はたしかに魔力を持っていたし、それ自体が攻撃であるように思わせるには十分だった。

 しかし、フェイルシアの目論見は別にあったのだ。
 そう、彼女が今まで育て上げたのは。
「グロ・グリーンジャック・グロ・アヴァンチュール……育まれた夢の大木は」
 そびえ立つ大樹。
 それは『武甲・飛翔数重』の背後より倒れ込むようにして打ち下ろされる一撃。
 豆の木。
 見上げ続ける空。
 此の蓋をされた世界にあって、いつか空に届きますようにと願うユーベルコードが生み出した大樹。

 その巨大質量の一撃が。
「その身に受けると良いでしょう。見果てぬ夢は夢のままにはいたしません」
 必ず其処に至って見せるという意思がある限り、人の歩みは止まらないのだ。
 己が剣を取ったように。
 そうあるべきと、そうあれかしと願った自分がいるのならば。
 フェイルシアは大樹に押しつぶされ砕けたオブリビオンマシンの明滅するアイセンサーの煌めきを見下ろし、己の道行きへと視線を戻すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月11日


挿絵イラスト