何かあるんじゃないかと期待せざるを得ない場所
●実際名前ネタ以上のものではない
武蔵国久良岐郡横浜村、現在でいうところの横浜市金沢区富岡東にあたる場所に富岡八幡宮という神社がある。鎌倉時代に源頼朝が創建した神社で、鎌倉からちょうど鬼門の方角にある小山にあり、鎌倉を霊的に守護してきたとされている。江戸時代にも広く信仰を集め、そのため1627年に隅田川河口の永代島という洲に富岡八幡宮から分霊された『永代嶋(深川)八幡宮』が作られた。筆者の勘違いでなければサムライエンパイアはUDCアースでいうところの1629年にあたる(徳川家光公の年齢より換算)ので2年前ということになる。本当につい最近の事だ。永代嶋八幡宮は現在のUDCアースでは横浜と同じ『富岡八幡宮』の名で呼ばれている。
で、その横浜村の方の富岡八幡宮に、猟書家『望月鈿女』が襲撃してくるというのだ。彼女の目的はふたつ。まず神社は江戸幕府を霊的に守護する要であり、それを破壊する事で『クルセイダー』が目指す幕府転覆を前進させる事。そして呪いの秘宝『メガリス』の収集である。そのほとんどがグリードオーシャンにあるとされるメガリスだが、誰が言いだしたか知らないがその一部がサムライエンパイアのどこかに眠っているのだと言う……。
「まずこれだけは断言しておくのだ」
大豪傑・麗刃(24歳児・f01156)は集まった猟兵たちに説明した。
「富岡八幡宮にメガリスとやらは存在しないのだ」
グリモア猟兵がそう言うからには間違いないのだろう。それでも、一部の猟兵たちは何となく気が付いたかもしれない。望月鈿女が富岡八幡宮に目を付けた理由を。富岡八幡宮……なんとなく、猟兵にとっては実に親しみめいたものを感じる、心躍らせるような名前ではないか。まあそれ以上の理由はたぶん存在しないのだが。
「それでも頼朝公以来関東を霊的に守って来た場所であるのは確かなのだ。破壊されるわけにはいかないのだ」
今回の敵はかの魔軍将【弥助アレキサンダー】が憑装されている。富岡八幡宮は海に面しており、かつて弥助アレキサンダーが海軍を率いていた事、望月鈿女もまた海に深い関わりがある事を考えれば、敵は海から攻めてくると考えるべきだろう。海に慣れた者たちが相手とあって激しい戦いとなる事が予想されるため、猟兵も富岡八幡宮を守る戦巫女たちの助けを借りるのが良いだろう。戦巫女たちは神社や周囲の地形を知り尽くしている。『海に面した小山の上に立つ神社』のどこで戦うか、それを見極め、適切な協力を得る事が勝利への道となるだろう。
「そういえば富岡八幡宮は津波から人々を守ったという伝説があって、そのため『波除八幡』って呼ばれてるらしいのだ。せっかくだし、みんなも海から津波のようにやって来る敵を撃退して、伝説の再現をしてほしいのだ」
麗刃の一礼を受け、猟兵たちはサムライエンパイアは横浜村へと向かうのだった。
らあめそまそ
名前ネタがやりたかっただけ。らあめそまそです。サムライエンパイアの猟書家シナリオをお送りいたします。
このシナリオにはプレイングボーナスがあり、これをプレイングに取り入れる事で判定が有利になります。
プレイングボーナス(全章共通)……戦巫女と協力して戦う(猟兵ほど強くはありませんが、神社仏閣に詳しいです)。
繰り返しになりますが舞台は『海に面した小山の上に立つ神社』ということで、海上で迎え撃つか、陸上に上がった所を戦場とするか、なんらかの加護が期待できるかもしれない神社近くまでおびき寄せるか、全ては皆様の考えひとつです。
戦巫女たちにも戦ってもらうなら、猟兵ほど強くないですが一部の者は下記のユーベルコードを使用できます。
巫覡載霊の舞:対象の攻撃を軽減する【神霊体】に変身しつつ、【衝撃波を放つなぎなた】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『怨霊女武者』
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POW : 局流薙刀術
【薙刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 局流早射ち
レベル分の1秒で【矢】を発射できる。
WIZ : 落武者呼び
【鎧武者】の霊を召喚する。これは【槍】や【弓】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:游月
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●横浜評定
横浜村の近くに小田原城という城がある。かつてそこを治めていた(後)北条氏は『小田原評定』と呼ばれる重臣会議を月2回開き、そこで内政面での様々な方針を決定していた。が、羽柴秀吉が小田原城を攻めた際、その小田原評定において抗戦するか降伏するか、抗戦するとして野戦と籠城のいずれを選ぶか等でもめにもめ、結論がなかなか出なかった事が北条氏の滅亡を招いてしまった。この事から現在では『小田原評定』は『結論が出ないまま無駄に長引いてしまった議論』を指す大変不名誉な言葉になってしまったのである。
そしてそれときわめて似た状況が、今、富岡八幡宮で起こっていたのだった。強敵の襲来を察知した戦巫女たち(全員女性)だったが、その迎撃方針でもめにもめていたのだ。
「敵をこの地に入れるわけにはいかぬ!我々から海に討って出るべきじゃ!」
「海は敵の得意とする地、むざむざ死にに行くようなものぞ、それより山に誘い込む方が良いじゃろう」
「我らとて海は知っておる!それに山に籠ったとして、敵が来れば良いが、そのまま包囲されたらどうなる?我々は補給もなく干からびていくだけじゃ!」
「ならばいっそ神社の近くまで敵をおびき寄せるというのは?神の御加護を受ける事もできよう」
「自然の要害を自ら捨てる事になる!それに援護があるかもわからぬ状況で背水の陣を敷こうなど無謀もいいところぞ!」
このままでは議論が終わらぬままに敵に攻め込まれる事態となりかねない。猟兵ならば彼女に方針を示せば素直に従ってくれるだろう。その、なんとかしてあげてください。
●津波
猟書家【望月鈿女】はかつて戦巫女の祖のひとりとされた者であった。だがその生は人柱として海に投げ込まれた事で終わり、そして変わり果てた姿で蘇る事になった。
『皆様、よろしくお願いいたします』
その命を受け、船に乗った配下の者たちが一斉に進みだした。皆、海の戦にて斃れ、海の藻屑となった者たちであった。彼女らの目的は富岡八幡宮の破壊、そしてメガリスの探索であった(もっともメガリスは存在しないのだが)。そして鈿女の真の目的は、徳川打倒、そしてメガリスの使用による、これから自分同様に生贄にされる可能性のあるすべての戦巫女の救済であった。
むろん富岡八幡宮の陥落は、そこにいる戦巫女全ての戦死を意味している。戦巫女救済のために戦巫女を殺すとはなんという皮肉であろうか。そのような矛盾に気付かない程に鈿女の狂気は進んでしまったのか、それとも死をもって救済とするつもりなのか。はたまた……?
いずれにせよ、これから猟兵たちは尖兵である【怨霊女武者】たちと、そして望月鈿女とた戦い、打ち倒さなければならないのだ。怨霊女武者の能力は以下の3種類だ。
【局流薙刀術】は文字通りの薙刀による攻撃だ。シンプルだがそれがゆえに威力、命中率、攻撃回数を状況に応じて変える事ができる使い勝手の良い技だ。敵は数が多い上に、弥助アレキサンダーの憑装により能力も上昇しているので決して侮れないだろう。
【局流早射ち】は文字通りの弓矢での攻撃だ。シンプルだがその発射速度はきわめて早く、弥助アレキサンダーが憑装されたために弓矢の威力や射程距離も長く、さらに数で攻めてくる事を考えれば決して侮れないだろう(2回目)。
【落ち武者呼び】は槍や弓で戦う鎧武者の霊を呼び出すものだ。怨霊が霊を呼び出すのもなんか妙ではあるが、単純に敵の数が2倍になると考えればそれだけでも恐ろしい上に、弥助アレキサンダーの憑装も考えれば決して侮れないだろう(3回目)。
以上、尖兵とはいえなかなか厄介な相手ではあるが、こいつらを退けない事には望月鈿女と戦う事はできない。前哨戦はさっくりと終わらせて、本番に備えようではないか。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
確かに、何とも気になる地名ですぅ。
巫女さん達に接触、『地上の高台から、遠距離攻撃で海上の敵を狙う』様伝え、必要なら『FFS』で武装を提供しますねぇ。
更に『FMS』のバリアを防壁に配置、後ろから撃てる様にしておきますぅ。
私は【銀翼袍】を発動し飛行、『FCS』により『FRS』『FSS』を炸裂弾に換装し、『FDS』共々空爆を仕掛け、海上の相手を狙いますねぇ。
『認識阻害』を伴う『崩壊の波動』が有る以上、薙刀は当然届かず弓で此方を狙うのは極めて困難、抜けて来る分だけなら『FGS』の重力結界と『FAS』の障壁で防げますぅ。
泳いで地上に向かうなら、巫女さん達の遠距離攻撃の的ですので。
●東京湾大空襲
猟書家・望月鈿女が富岡八幡宮に攻め込んだのは、富岡という名に反応したがゆえ……という可能性がある、とぼかしてはおこう。ただ、どういうわけかその名に強く反応する猟兵がいたのも、また事実だった。
「確かに、何とも気になる地名ですぅ」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)もそのひとりだった。本当になんでだろうねえ。そのあたりはあんまり深い事は考える必要もないだろう。ということで、るこるは早速、あーでもない!こーでもない!と議論の真っ最中な富岡八幡宮に赴いたわけだが。
「失礼いたします~」
「おお!あなたはよもや猟兵どのか!」
るこるの声が通ると同時に戦巫女たちは一斉にその方を向いた。さすがにサムライエンパイア住人の、かの大戦を戦い抜き勝利した猟兵に対する信頼度は非常に高い。みな期待するような目でるこるを見た。そしてるこるもまた、彼女たちの期待に応えるのに十分な策を携えていたのであった。
「えっとですねぇ~、皆様にも手伝っていただきたいのですが」
「お安い御用ですとも!」
その頃海上では。
『行くぜ!目指すは富岡八幡宮だ!』
怨霊女武者に憑装された弥助アレキサンダーが猛っていた。
『秀吉殿の孫のために戦う事になるとはねぇ、ま、なんであろうと呼ばれたからには、俺は全力を尽くすだけだ』
オブリビオンを満載にした船団は一直線に富岡八幡宮へと向かっていった。そのまま上陸し、最短距離でこれを落とす勢いだ。
今や敵の軍団は八幡宮の山上からでもその姿が伺える程になっていた。
「では、手筈通りお願いいたします~」
「承知!」
るこるは戦巫女たちに祭器【|F《フローティング》|M《ミラーコート》|S《システム》】を託し、八幡宮の守りに加えて砲撃での援護をお願いした。そして自らはというと。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、その御印たる裳を此処に!」
|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|銀翼袍《ギンヨクノショウゾク》を発動、女神の衣を身に纏うと空高く飛びあがり、そのまま海へと飛んで行った。その速度はなんと13600km/h。約マッハ11である。ちなみに現行兵器だとF-22でマッハ1.58とされている。なにそれすごい。ちなみに女神の衣は日本神話風らしい。調べてみたが貫頭衣と振袖ぽい着物の2パターンがあるようだ。どちらの場合も色は白を主体として襟元や袖口が赤く、なにやら浮かんでいる布を首元から肩口にまとわせている事が多いようで。
『なんだありゃ!すごい速さで飛んでくるぞ!』
その姿を認めた弥助アレキサンダーが叫んだ。むろん、こんな高速で飛んでくるものなどきわめて限られている。弥助アレキサンダーは即座に確信した。猟兵が来たのだ。
『速かろうと見えるなら当てる!構えろ!』
怨霊たちは一斉に薙刀を構えた……のだが。
「では、いきますよぉ」
るこるの周囲に浮かぶ【|F《フローティング》|R《レイ》|S《システム》】【|F《フローティング》|S《シールド》|S《システム》】【|F《フローティング》|D《デトネイト》|S《システム》】より猛烈な爆撃が開始された。大艦巨砲主義の時代は終わり、時代は飛行戦力へと移行……するのは300年ほど後の話である。
『くっ!おのれ猟兵!』
薙刀も届かない超高空から雨あられと降り注ぐ炸裂弾を必死で薙刀で振り払いながらそれでも全身するオブリビオン船団。だがこのままでは損害が大きい。ならばと超高速で飛び回るるこるめがけて、ひとりの怨霊女武者がハイジャンプを試みた。もとより大剣を使っていた弥助アレキサンダー、長物はお手の物だ。普通は竹槍で爆撃機は落ちないが、なにせ敵はオブリビオンだ。時として猟兵ばりに理の及ばない事もやってのける……の、だが。
「残念ですがそれは無理ですねえ」
『な!?』
怨霊女武者の薙刀は空を切った。だがそれは超高速で飛んでいたるこるに追いつけなかったがゆえではない。そも最初から関係のない場所を狙って飛んでいたのだ。そのまま自由落下して海に落ちる寸前に炸裂弾を喰らい、怨霊女武者は爆散した。るこるはただ飛んでいたわけではない。飛びながら、敵に認識阻害を誘発する波動を発散していたのだ。これにより怨霊女武者たちはるこるの姿を認識しきれなくなっていた。ならば命中率の低さを数でカバーと、本来POW系ではない弓矢の一斉発射で弾幕を張ろうとしたが、波動には物質崩壊の効果もあったためにその大半が落とされ、残りもるこるの【|F《フローティング》|G《グラビティ》|S《システム》】や【|F《フローティング》|A《エアロフォイル》|S《システム》】に防がれる。崩壊の波動はやがて軍船をも蝕み、やむなく船を捨てて海へと脱出した怨霊たちにもまた情け容赦ない砲撃が降り注いだ。るこるが託したFMSによる富岡八幡宮からの遠距離攻撃だ。
「さて、ひとまずはこのくらいでしょうかねえ」
『くっ、海戦には慣れているはずのこの俺が、メガリスさえあれば……!』
弥助アレキサンダーは悔しがったが、ない袖は振れぬというものだ。敵戦に大打撃を与えたるこるはゆうゆうと帰還し、敵軍はその姿を歯嚙みしながら見送るしかなかった。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
確かに何か惹かれる名前っすね〜。それはそうと撃退頑張るっすよ
「山で迎え撃つっすよ。その為の支援を頼みたいんすよ」
破魔矢をいくつか鏑矢に改造してもらい、【破魔】の力を込める。後は巫女さんで身軽な子の体を借りて戦闘に出る
「当てなくていいっすから、一定間隔で撃つっすよ」
鏑矢の音で戦場を清め怨霊達の動きを鈍らせるが、本当の狙いは鏑矢の音で自分の動く音を聞き取りづらくさせる事
「樹々のある中で、長物や弓がどれだけ使えるっすかね?」
樹々を飛び移りつつ、その反動で加速しながらUCによる破魔の力を込めつつ格闘戦を挑む
「リングが四角い密林なら逆も然りっすかね〜」
攻撃を加えては樹に飛び移り、一人ずつ確実に仕留める
葵衣・慧斗
何故か心が騒ぐ名前だな、この場所は
魂に刻まれていると言うかなんと言うか
戦巫女の方々は地形に詳しいのなら、手を借りる方が良いだろう
陸に上がったところで待ち受けたいから、その為に適切な場所を聞いておく
巫女さん達には神社を守っていて貰いたいな、戦闘に出てもらうのはちょっと
背後に心配が無い方がありがたい
後はこっちで引き受けるから
――イグニッション
(演奏時の姿:全身図に見た目が変わり)
始めましょうか
Dunkle Klangklinge
ベースを鳴らし闇色の刃を撃ち出して、攻撃を防ぐ
余った分でダメージを与えられたら良いのですが
音で刃を操りつつ、音の衝撃波に闇の属性を乗せて攻撃
まだまだ続けましょう、この宴を
鍋島・小百合子
POW重視
他の猟兵との協力・連携可
この地を守らんとする者らが言い争う時間すら惜しかろう
わらわも交えて策を練ろうぞ
戦巫女達から神社仏閣周辺の地形や天候について情報収集
集めた情報を以て戦場を定め、その場所に戦の心得と周辺事情に明るい戦巫女数名とUC「幻想狐武隊」にて召喚した女狐武者70名・妖術士31名・くのいち30名を配備し戦闘知識活用にて指揮
くのいちは斥候として敵群の動向監視並びに戦闘時の奇襲
妖術士は幻術で大軍の幻影で敵群を誑かす撹乱
女狐武者は戦巫女と連携しての敵群迎撃をそれぞれ指示
わらわはくのいち達に与して奇襲の陣頭指揮を執り、戦巫女と女狐武者が戦闘を開始したのを好機として長弓で援護射撃を行う
鹿村・トーゴ
今更幕府に楯突く?…とは思うけど戦が終わったのも爺様の時代だしなァ
さて巫女様方には山での応戦ご助力お願いしたく…て、悪りぃね突然(一礼して
オレは自在府持ちの羅刹、名は鹿村
巫女方がこの辺に詳しいのとオレが海より山より応戦が得意なのと
敵方に不利そな山間戦で追い詰めたいと思ってね
オレが敵を山間に引き寄せ弓を引かせる
その敵の背後を突いてくれない?(巫女UC使用は任意
>敵
陸上へ、神社までの山間へと退きながら誘い出す
被害抑える為【激痛耐性、情報収集、武器受け】活用
巫女達と共戦可域に到達でUC使用、敵UCへ【念動力でカウンター】相殺、攻撃
巫女達に囲ませた敵へ【忍び足】接近しクナイで仕留める【暗殺】
アドリブ可
●横浜上陸作戦
猟兵の第一陣が敵の尖兵に大打撃を与えた事は、富岡八幡宮で守りを固める戦巫女たちの戦意をおおいに上げる事になった。早速戦巫女たちは今後の方針について議論を開始した……
「敵は劣勢!これに乗じて今度こそこちらから攻め込むべきじゃ!」
「いや、優勢だからこそ守りを固めねばならぬ!山を利用して寄せてきた敵を迎え撃つべきである!」
「否!八幡宮に籠城(籠宮?)して神の御加護を得て戦うのが得策なり!」
……これではなんだか先刻と変わらぬ気がする。このめんどくさい状況を打破するためには、外部からの強力な勧告が役に立つであろう。そう、先ほどこの状況を解決した時のような。
「悪りぃね、突然」
「この地を守らんとする者らが言い争う時間すら惜しかろう」
まず入って来たのはともにサムライエンパイアをルーツとする人間と羅刹のふたりだった。鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)はかの名将の銘にあたる人物だし、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は飴行商……実は化身忍者だ。次いでサムライエンパイア外のふたり。狐面のヒーローマスクはリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)で、学生服に身を包んだ眼鏡の男は葵衣・慧斗(♰闇の幻想織りなす旋律♰・f38645)だった。
「何故か心が騒ぐ名前だな、この場所は。魂に刻まれていると言うかなんと言うか」
「確かに何か惹かれる名前っすね〜」
慧斗の言葉にリカルドが同意する。やはり富岡という名は、どういうわけか猟兵にとって何か訴えてくるような響きがあるようだ……あまり細かい事までは追求しない事にするが。
「ひょっとしてそなたらも猟兵であるか?」
「ああ、オレの名は鹿村。こいつを見てくれ」
代表してトーゴが天下自在符を出した。徳川家光公から猟兵に与えられる治外法権の証、徳川家の葵の御紋が入った手形は、戦巫女たちを猟兵たちを信頼させるに十分すぎるものであった。まあ先刻の猟兵をみるに、歴戦の猟兵たちが持つただならぬ雰囲気は天下自在符がなくとも彼女らの信頼を得るに十分なものだった可能性もあるが、猟兵の俺に証拠なんざいらねえんだとは普通はならない。出すものは出した方が良いのだ。
「おお……!」
たちまち戦巫女たちの間から歓声が上がった。猟兵の力はかつての戦争で、そしてつい先刻の活躍で実証済みだ。それが今度は4人なのだ。もはや勝ったも同然という気分になりかけたのを、それでもさすがに楽観的が過ぎるとどうにか引き締めなおし、改めて戦巫女たちは猟兵に問う。
「して、いったいいかにして戦うべきか?」
ここで猟兵の意見が割れてしまったら元も子もないが、幸いにも彼らの意見は一致していた。
「山で迎え撃つっすよ」
「そうだな、敵が陸に上がったところで待ち受けたい」
「オレは海より山が得意なんでね、あと敵方も山のが不利そだし」
リカルドが、慧斗が、トーゴが、口々に主張する。そして小百合子は。
「山ならわらわの策も使えそうじゃな」
特に反対する様子もなく、これまでもめていたのが嘘のように方針はあまりにあっさりと決定した。敵軍が東京湾より陸に上陸し、山に踏み込んだところを叩く。あとは細部を練るだけだ。慧斗と小百合子はこのあたりの地形に詳しい戦巫女より迎撃に適した場を聞き、リカルドは事前準備にいくつかの依頼をしていた。そして4人はそれぞれ、戦巫女たちと戦闘方針について確認を行った。あとは敵の上陸を待つだけであった。
『まだ戦いは始まったばかりだ!こっからが本番だぜ!』
怨霊女武者に憑装された弥助アレキサンダーが叫んだ。緒戦で軍船もろとも空爆を受けて少なからぬ打撃は受けたものの、そこはさすがに魔軍将が力を貸すオブリビオンである。かなりの数が東京湾より上陸を果たしていた。かのエンパイアウォーにてグリードオーシャンにルーツを持つ渡来人の弥助アレキサンダーが海軍を率いたのは道理だが、海賊とていざ島に上がれば陸上戦なのでそちらの経験もまああるだろう。
『全殺しにしてやれ!』
怨霊女武者たちは一斉に海岸を走る。目指すは眼前の山、そしてその上にそびえ立つ、富岡八幡宮である……だが。
「来たようじゃな」
その動きは既に猟兵に察知されていた。敵の先手を取り、小百合子が【|幻想狐武隊《アヤカシタユタウキツネノヨウヘイタチ》】で呼び出した女狐のくのいち達を斥候として放ち、オブリビオンの動きを逐一報告させていたのである。
「了解っすよ、では手筈通りに行くっす」
「ああ、そっちは任せた」
慧斗は既に既に先鋒として出撃していた。リカルドは戦巫女の体を借りて山へ、トーゴは敵が上陸した海岸へとそれぞれ向かい、小百合子は後詰めとして八幡宮に待機の構えをとった。そして。
「……始まったようじゃな」
海岸に爆音が響き渡る。これこそが戦いの合図であった。
●
「ここから先にお通しするわけにはいきません」
走り始めた怨霊女武者たちの前に慧斗はただのひとりで立ちふさった。戦巫女たちは他の猟兵たちとともに山に、そして神社にいる。戦巫女たちの同行の願いもあるにはあったが、
「背後に心配が無い方がありがたい、後はこっちで引き受けるから」
こう言って慧斗は断った。実際それが可能なだけの実力も、そして戦術もあった。
『ただの単騎で俺たちの前に立ちふさがるてか?ただの優男じゃあなさそうだが』
確かに見た目だけで見れば鎧と薙刀で完全武装している女偉丈夫、さらに言えば(生前は)アフロマッチョな偉丈夫である弥助アレキサンダーに比べ、無表情クール系で整った髪の毛をしているがどうしても野暮ったい黒ぶち眼鏡が気になる、どちらかといえば戦場に出るよりも図書館で本でも読んでいる方が似合っていそうな慧斗という対比となれば、戦いにもならないと思う向きもあるだろう。むろん猟兵を見た目で判断してはいけない事ぐらい弥助アレキサンダーにもわかってはいるだろうが、こういうのは勢いも重要なのだ。
「なるほど、見た目も重要ということでしょうか、ならばこれならいかがでしょうか」
伊達眼鏡を外すとイグニッションカードを取り出し、慧斗は高々と叫んだ。
「『|起動《イグニッション》!』
瞬間、その姿は変貌した。ストレートのロングヘアー、制服と同じ色をしているが真面目とはほど遠い攻撃的な服装、胸元にのぞく蝶のタトゥー、そして手にはほんの代わりに紺と黒のエレキベース。地味な学生は仮の姿、その正体はK♰Tを名乗るベーシストだったのだ。
「さあ、始めましょうか」
『ほう、なかなか気合入ったナリじゃないか!見た目だけじゃない事を願ってるぜ!』
愛用のベース『Flügel der Dunkelheit』を構えた慧斗に対し、怨霊女武者たちは一斉に弓矢をつがえて狙いを付けた、と思う間もなく矢が発射された。本来ありえない早撃ちに加えオブリビオンの数である。かつて東北の地で散った豪傑の様に慧斗の全身に矢が突き刺さる……と思いきや。
「壊せ、斬り裂け、我が音こそ最強の刃……【Dunkle Klangklinge】!!」
ベースをかき鳴らすと、そこから飛び出した110本ほ闇色の刃が矢を迎撃したのだ。音の衝撃波に闇属性が乗った刃は矢を破壊すると、そのまま怨霊女武者たちに襲い掛かった。
『くっ!小癪な!』
慧斗の音楽はアフロヘアーな者の音楽性には合致しなかったようで、弥助アレキサンダーは顔をしかめたが、それよりも矢の嵐を迎撃してなおこちらを攻撃できる猟兵の力には驚嘆せざるを得ない。弥助アレキサンダーはさらに矢の密度を高める事で無理やり潰そうとするが、慧斗の周囲に闇の爆発が連続して起こり、容易に狙いを定まらせてくれない。
「……これは……」
実のところ慧斗も少し戸惑っていた。慧斗のソロステージを彩るようなこの演出は、本来予定になかったものだ。よもや来ないはずの戦巫女が来たのだろうか。まあ少なくとも敵ではないということで考えるのは後にして慧斗は闇の演奏をさらに継続した。
「まだまだ続けましょう、この宴を」
なお、この『演出』が小百合子が送り込んだ女狐の妖術師による幻影である事が判明したのは、もう少し後の話である。
●
『おのれ猟兵!』
慧斗をまるきり無視するわけにもいかないが、足止めをくらい続けて肝心の八幡宮が落とせないとあっては本末転倒だ。弥助アレキサンダーは数の優位を活かし、慧斗にあたる兵を残しつつ別動隊を八幡宮に向かわせた。その一隊の前に立ちはだかったのがひとりの羅刹……トーゴであった。
「よっ、急いでるトコ悪いな」
『ぬう!新手の猟兵か!立ちふさがるなら容赦はせぬぞ!』
八幡宮を攻め落とすのが第一目標であるが、猟兵を放置するわけにはいかない。弥助アレキサンダーは怨霊女武者たちをトーゴに向かわせた。先刻の猟兵のような攻防一体の広域破壊攻撃ができる者などそうはおるまい。今度こそ弓矢の嵐で猟兵を討ち取ってくれようと、一斉に弓矢をつがえて狙いをつけ……
「おっと!これはたまったものじゃないな」
トーゴはあっさりと敵に背を向けて逃げ出した。ほんの少し前までトーゴがいた場所を矢は空しく通り過ぎた。
『逃げるか猟兵、賢明な判断ではあるが、逃がすわけにはいかん!』
怨霊女武者たちは走りながら矢を撃ちつつトーゴを追う。さすがに走る事にかけては化身忍者のトーゴに分があるようで、オブリビオンはなかなかこれに追いつけずにいたが、さすがに飛び交う矢を躱しながらの逃走はトーゴにとっても楽な事ではなく、少なからぬ手傷は負わされたが、修行によって痛みに対しかなりの耐性を持っていた事で速度を落とす事はない。
(にしても、今更幕府に楯突く?とは思うけど戦が終わったのも爺様の時代だしなァ)
逃げながらそんな事をトーゴは考えていた。まあ生者なら盤石の体制な幕府を倒そうなどとは考えまいが、なにせ敵はオブリビオン、過去の残滓なのだ。ならばいつまでも執念が消えてなくならないのもある程度は仕方のない事かもしれない……そうこうしているうちに気が付いたら地形は平地から山岳へと変わっていた。
「……よし、そろそろ、かねえ」
トーゴは足を止めた。すぐさま怨霊女武者たちが追いついてきた。
『もう逃げなくていいのか?』
「安心しろ、もう逃げない」
『覚悟ありってことか、上等だぜ!』
怨霊女武者たちが弓を撃つ。同時にトーゴは懐に手を入れた。その時だった。
『……な、何だ!?』
突然、怨霊女武者たちに向けて矢が雨あられと降り注いできたのである。同時に戦巫女たちと女狐の武者が現れ、怨霊女武者たちに斬りかかったのだ。
「よし、狙い通りだな!」
これがトーゴの作戦だった。敵を山間部までおびき寄せて戦巫女たちと挟撃し撃滅するのが狙いだったのである。それは見事に成功した。さらに懐から黒曜石の鏃【黒曜箭】を取り出すと、それを次々と投げて怨霊女武者たちが放った矢を撃墜した。
「よし、うまくいったようじゃの」
後方にて小百合子は会心の笑みを浮かべていた。
戦巫女たちと共に怨霊女武者たちを迎撃した女狐の武者たちは、偵察を行ったくのいちや、慧斗を援護した妖術士と同じく、小百合子が【|幻想狐武隊《アヤカシタユタウキツネノヨウヘイタチ》】で呼び出した者たちだったのである。さらに自ら長弓を引き、くのいち達とともに怨霊女武者に矢を撃ち込んだのである。
「じゃが、まだまだ仕事は残っておる。あちらは鹿村殿に任せ、次はリカルド殿の方に向かうぞ」
『くっ!だがまだまだ!』
怨霊女武者たちは薙刀に切り替えて戦巫女たちや女狐武者たちと戦おうとする。だがその腕にトーゴの投げた黒曜箭が突き刺さった。黒曜石の鏃には毒が塗ってあり、怨霊女武者は腕がしびれてまともに薙刀を振るう事ができない。
「羅刹には馴染み深い石だ、こんな芸当もこの鉱石ならでは、だねェ」
『お、おのれぇ』
そのまま駆け込んできたトーゴはクナイで怨霊の喉元を一閃、そのまま一言を発する事もなく女武者は倒れて消えた。
「さあて、あとは残りをちゃっちゃとやっちゃおうかね」
『ち、ちくしょうめぇ』
弥助アレキサンダーを憑装された怨霊女武者であるが、トーゴの鏃で弓矢を封じられた上に包囲をされた状況では、さすがに不利は明らかな状況であった。
●
別の一隊もまた山に到着していたが、その耳には奇妙な音が聞こえていた。
『……これは……』
音は一定の間隔で聞こえてくる。ヒュウ、と風を切るような音だ。その音に妙な不快感を覚えつつも、オブリビオンたちは山中を進んでいく。だが……
『……むう……明らかにおかしい』
体をむしばむ違和感がどんどん強くなっている。間違いなく自分たちは富岡八幡宮に向かっているはずだ。八幡宮の聖なる気が怨霊を拒絶しようとしているのだろうか?いや、それにしてもまだ八幡宮までは距離があるだろう。この距離で魔軍将を憑装されたオブリビオンが影響を受けるとは思えない。だが、確かにその身を蝕んでいるのは、聖なる気であった。
「よし、次じゃ、構えよ」
音の正体は鏑矢と呼ばれる、矢の鏃の根本に鏑と呼ばれる構造を付けた事で独特の音が出るようにしたものであった。かつてのサムライエンパイア、ちょうど富岡八幡宮が作られた頃には、戦いの合図として互いの陣営が鏑矢を撃ちあう事がならわしとされていた。さすがに徳川が天下統一する頃には風習としてはすたれて久しいのだが。八幡宮の破魔矢を鏑矢に改造し、そこに破魔の魔力を注ぎ込んだ事で文字通りの『破魔』矢と化したのである。
「撃て!」
自らも弓矢をつがえる小百合子の合図で、戦巫女たちは一斉に鏑矢を放った。これは先刻と違い、敵に当てるための射撃ではない。聖なる鏑矢の音で怨霊を弱らせるのが目的だったのだ。そして鏑矢の作成、そして弓の発射を戦巫女たちに依頼したのは……。
『!!??』
突然、ひとりの怨霊女武者が消えた。弥助アレキサンダーは何があったのか、すぐに悟った。
『敵襲か!?さては猟兵?』
破魔の鏑矢の音で動きを鈍らされているとはいえ、一体のオブリビオンがあっさりと消えた……おそらくは既に倒された、のである。ホラー映画で正体のわからない化け物にひとり、またひとりと殺されていく者たちの気持ちはちょうどこんな感じだったかもしれない。耳を澄ませて敵の位置を探ろうとしてはみたものの、鏑矢の音のために猟兵が動く音も聞こえづらい。
『よもや敵の本当の狙いは……』
「気づいたようっすね」
どこからともなく聞こえてきた声。おそらくはそれほど遠くないどこかにいるのだろうが、オブリビオンたちにはその姿は捕捉できない。そう、声の主、リカルドが鏑矢で音を出した理由は、自らの動く音を聞き取りづらくさせる事にあったのだ。
「樹々のある中で、長物や弓がどれだけ使えるっすかね?」
『ええい!隠れてないで出てきやがれ!猟兵!』
苛立ちを隠しきれぬように叫ぶ弥助アレキサンダー。それに呼応するかのように、木々が揺れた。
「これが|自由の光《Luz en libertad》っす!」
突然樹上から現れたひとりの戦巫女。その頭には狐の面……リカルドの姿。樹上より猛烈な勢いで飛んできたリカルドは、そのままひとりの怨霊女武者に飛び蹴りを食らわせると、他のオブリビオンが反応するより早く、その勢いで女武者とともに再び樹々の中へと消えていった。
『ちいっ!すばしっこい奴め!』
リカルドが消えた方向に殺到するオブリビオン軍団。その方向にいたのは、手足を折られ、全身に打撲痕を残して既に絶命していた怨霊女武者。その姿はやがて消え失せ骸の海へと還ったが、リカルドの姿はどこにも見当たらない。
「リングが四角い密林なら逆も然りっすかね〜」
『卑怯者め!姿を現せ!!』
「八幡宮を襲おうなんてひどい事する人に卑怯者とは言われたくないっすね」
言葉とともに再度現れると、瞬く間に次の怨霊女武者が倒されて、そしてすぐさまリカルドは消えていく。その打撃や飛び技、|関節技《ジャベ》は見事なものだったが、さらにその一挙手一投足にはしっかり破魔の力が宿っていて、それが怨霊への攻撃力を上昇させていたのである。怨霊女武者たちは数で上回りながらも、地形を活かし、さらに戦術面で上回ったリカルドにひとり、またひとりと確実に倒されていったのだった。
●
各地で優勢に戦いを進めていた猟兵たち。そしてさらに決定的な事が起きた。突如鬨の声があがり、さらに大軍が現れて怨霊女武者たちを襲撃し始めたのである。
『な、なんだあ!?』
どこから現れた敵なのかわからず、これには弥助アレキサンダーも戸惑うばかりであった。そして同時に現れたくのいちの一団。それを率いていたのは……
「そろそろわらわも暴れたくなってきたのじゃ!」
これまで他の猟兵や戦巫女たちのバックアップに徹していた小百合子が長弓を手についに前線に出てきたのである。実のところ大軍は妖術士が呼んだ幻影だったのだが、敵の士気をくじくには十分なものであった。そして何より、小百合子は本物であり、その実力もまた、確かなものであった。
「貴様らも弓を使うようじゃが、弓とはこう撃つのじゃ!」
既に他の猟兵や戦巫女との戦いで乱されていた怨霊女武者たちにもはや抵抗する力は残されておらず、薙刀も弓も通じずに、小百合子の弓、慧斗の音楽、トーゴの体術、リカルドのルチャの前に次々と倒されていった。
かくして猟兵たちの活躍により、上陸を果たしたオブリビオンはその大半を失う事になったのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アウロラニア・ミーマメイズ
アドリブ・連携歓迎
名前からして大変霊験あらたかなお所の様子
益々もって踏み荒らさせる訳にはいきません
まずはお祈りを
|他の神格を奉る場所《ヨソサマノオウチ》へ行くのにご挨拶を欠かしてはいけませんからね
神として
戦巫女の方々の手もお借りします
神地防衛において、現地の神職の面子を尊重するに越したことはありません
戦闘では[Answerer]で身を守りつつ[Darkstar]で飛行
【遍く射徹す星穹の兆し】で戦場を翔けて敵数を削ぎ、数多の船に触れるよう残した光線に[エネルギー供給]し[焼却]
すれ違いざまに[Blue Moon]で幾らか灼き斬っても良いですね
総崩れにした所を、陸から悠々と始末して頂きましょう
●東京湾海戦
猟兵たちが怨霊女武者たちを迎え撃っているまさにその頃、富岡八幡宮の境内に乾いた拍手の音が響き渡った。拍手の回数は2回、その後で一礼。いわゆる二礼二拍手一礼は戦後に一般化した作法であり、江戸時代は神社によってまちまちだったようだが、実際どうだったかの資料がないのでご勘弁願いたい。拝礼を行っていたのはアウロラニア・ミーマメイズ(星天統べる女神・f39790)だった。
「|他の神格を奉る場所《ヨソサマノオウチ》へ行くのにご挨拶を欠かしてはいけませんからね、神として」
本人の言う通り、そして通称が示す通り、アウロラニアは神だった。ちなみに富岡八幡宮には蛭子尊、一般的に言う恵比須様と、八幡大神(応神天皇)が併せ祀らている。恵比須様は海の守り神だし、八幡大神は勝運の神だ。ただでさえ海戦の前に参拝するにはこれ以上ない場所であるが、加えて『ヒトの手に余る技術』を司る女神であるアウロラニアとは立場や役割を異にはしていたが、同じ神として敬意もあっただろう。そしてもうひとつ。
「名前からして大変霊験あらたかなお所の様子、益々もって踏み荒らさせる訳にはいきません」
富岡八幡宮の名が持つ特別な響きが、神として、あるいは猟兵として、強く感じるものもあったのだろう。いずれにせよ、参拝をすませたアウロラニアはその足で戦巫女たちの所に向かった。ちょうど他の猟兵たちが上陸したオブリビオンを殲滅した時であり、戦巫女たちはひと休みしていると思いきや。
「敵はおおよそ片付いた!皆疲労しておるだろうし、ここは神社に籠って敵の出方を伺おうぞ」
「否!今こそこちらから討って出て、いまだ海上に残る敵を殲滅するべきじゃ!」
この後の方針をめぐってまた富岡評定に突入していた。このままでは埒が明かない。
「あの、よろしいでしょうか」
「おお、そなたは猟兵殿か!」
さすがに3度目ともなると話が早い。期待するような戦巫女たちの視線が集中する中、アウロラニアは断言した。
「ここは討って出るべきです、そのために皆様方にもご助力を願いたいのですが」
当然戦巫女たちに異論はない。戦巫女たちは地形を知っているのみならず、この地を守る者としての矜持もあるだろう。彼女たちの面子を立てる事も、助力を得る立派な理由になるだろう。
『猟兵どもめ、まだ俺は負けたわけではないぞ』
緒戦において空爆を受け、上陸戦でも撃退されと、怨霊女武者たちは確実に大打撃を受けてはいたが、それでもまだ怨霊女武者たちに憑装されている弥助アレキサンダーの戦意は旺盛であった。既に青丸は11個をはるかに超え、怨霊女武者に勝利の目はないのだが、そのような事を気にする様子もない。
『鈿女殿の手を煩わせるまでもない、残存兵力を結集し、最後の一戦を挑んでくれよう』
残された軍船と兵力を一か所に集中させ、乾坤一擲の一戦を挑む構えであった。窮鼠猫を嚙むの言葉もある。ましてや猫などではないオブリビオンならばその脅威は改めて語る必要もないだろう。
『戦巫女ども、猟兵ども、覚悟して待っていろ!今からそっちに向かってやるぞ』
「その必要はありません」
『何!?』
突如戦場を切り裂いた声の方には、超音速で飛んでくるアウロラニアの姿があった。その桃色に輝く左目が生み出す飛行能力は、ユーベルコード【|遍く射徹す星穹の兆し《ジ・ユビキタス・メテオ》】によりマッハ5を超える。現在最強の主力戦闘機を超える速度だ。その背中には3枚6対のエネルギー翼が羽ばたいていた。
『そちらから来たか猟兵!今度こそ射落としてくれる!』
残されたオブリビオン亡霊武者は一斉に弓を構えてアウロラニアを狙う。高空から空爆を行った先刻の猟兵と異なり、今回は海面スレスレを飛んできていた。あの時は飛んでいる猟兵を落とす事ができなかったが、二度は、そしてこれ以上は不覚を取るまいとの壮絶な気迫がこめられている。怨霊女武者たちは【局流早射ち】と呼ばれる超絶の技巧により、構えから間を開けずに撃つことができるのである。たちまち凄まじい数の矢の嵐がアウロラニアを襲った。
「させません!」
だがケルト神話における魔剣と同じ名を持つアウロラニアの翼が前方に展開され、飛んでくる弓矢を燃やし尽くして持ち主を守った。そしてアウロラニアはそのまま飛行を続ける。ガトリング砲のように撃ち込まれる対空射撃を回避しつつ戦場を飛び回ると、敵とのすれ違いざまに|プラズマ大剣《Blue Moon》が振るわれ、さらに|回答者《Answerer》の名を持つ翼がアウロラニアを包み、それ自体が攻勢障壁となり、怨霊女武者たちや軍船にダメージを与えていく。
『おのれ猟兵め!ちょこまかと!』
飛行機雲を思わせるような光を後に残しつつ、さらにアウロラニアは飛び回る。弥助アレキサンダーの怒りもこれを捉える事ができない。
『だが、そんな勢いがいつまでも続くとは思えねえ!いずれはそのエネルギーも尽きるだろ!そうなった時はお前の最期だ!』
「いえ、もう終わりです」
『何?』
アウロラニアは動きを止めた。決してガス欠に陥ったというわけではない。もう飛び回る必要がなくなったのだ。そのための布石は十分に打った。あとは作戦を実行するだけだ。
「あなたの全てを灼き祓う」
『!!??』
これまで軌道に残してきた光にアウロラニアはエネルギーを送り込んだ。たちまち光が高熱を発し、軍船もろとも爆発する。高速突撃と、軌跡に残した光線による焼却。この二段構えの攻撃に残存オブリビオンは壊滅状態に陥った。そしてアウロラニアは陸地に向けて呼びかけた。
「あとはお任せいたします」
海岸線には戦巫女たちの姿。アウロラニアは最後のとどめを彼女たちに譲る事にしたのであった。たちまち生き残りのオブリビオンの上に矢が雨あられと降り注ぎ、やがてすべてのオブリビオンが海に沈んでいったのである。
(ち、ちくしょう……だが、次はこうはいかねえぞ……)
心底悔しそうな弥助アレキサンダーの声が響き渡り、やがて消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『望月鈿女』
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POW : 巫覡載神の舞
対象の攻撃を軽減する【寵愛と加護を齎す海神を降した神霊体】に変身しつつ、【万象を裂く花弁を操る神楽舞、強烈な水流】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 貴方様の罪が赦されるとお思いですか?
対象への質問と共に、【対象の人生が全て書かれた巻物】から【罪状を読み上げ、罪に適した変幻自在な神霊】を召喚する。満足な答えを得るまで、罪状を読み上げ、罪に適した変幻自在な神霊は対象を【精神的に追い詰めるのに最も効果的な手段】で攻撃する。
WIZ : 貴方様は犯した罪の数を覚えておいでですか?
【抗えない、魂を絡め取るような玲瓏たる声】が命中した対象の【喉の内部、咽頭や食道】から棘を生やし、対象がこれまで話した【嘘、食事を含む奪ってきた生命】に応じた追加ダメージを与える。
イラスト:静谷
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠雅楽代・真珠」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
弥助アレキサンダーが憑装されたオブリビオン軍団を撃破した猟兵たちだったが、休む暇は与えられなかった。海の上を歩いて、それがやって来たのだ。
『やはり此度も、わたくしが出る事になってしまいましたか』
猟書家・望月鈿女。鈿女といえば日本神話における女神・|天鈿女命《アメノウズメノミコト》が連想される。日本神話において鈿女は猿田毘古神と結婚したが、のち猿田毘古神は海難に合い溺死した(という説もある)。望月鈿女は自らが海に死し、のちに海神と結ばれて今の姿になったとされる。これは鈿女の名を持つ者にもたらされた宿命なのか、それともただの偶然なのか。
『立ちふさがるというのでしたら、まことに可哀想ではございますが、ご容赦するわけには参りませぬ』
いずれにせよ鈿女の目的、富岡八幡宮の破壊を成し遂げさせるわけにはいかないのだ。
望月鈿女の能力は以下の3つだ。
【巫覡載神の舞】は神霊体に変身するものだ。この状態自体がダメージ軽減の効果を持つ上に、神楽舞による花の嵐の攻撃や強烈な水流は非常に威力が高い。攻防一体の能力のため、これを打ち破るには万全の攻撃手段と防御手段を練って挑む必要があるだろう。寿命を縮めるデメリットはあるが、こと短期決戦においてはまったく問題となることはないだろう。
【貴方様の罪が赦されるとお思いですか?】は相手の人生を書物の形で現し、その中における罪状を読み上げ、それを元に精神的に追い詰めるというなかなかトリッキーな技だ。精神は肉体に作用するため、肉体的ダメージもかなりのものとなるだろう。なお具体的にどんな罪を犯したかはプレイングに書いてほしいけど、MSにお任せでも良い……その場合はなるべく怒らないでね。
【貴方様は犯した罪の数を覚えておいでですか?】は相手の喉の中にトゲを生やすものだ。その効果は『これまでついてきた嘘』『これまで奪ってきた命』の数に応じて増えるという。些細な嘘ぐらい誰だってついただろうし、殺生には食事も含まれる……このあたり言いたい事は山の様にあるだろうけど、残念ながら議論しても仕方がない。いずれにせよダメージは大きいだろうし回避する手段あったら筆者が教えて欲しいぐらいだ。
以上の様に猟書家だけあって非常に厄介な能力がそろっているが、それでも彼女を倒さない事にはこの地に平穏は訪れないのだ。その、なんだ。なんとかしてください。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
まあ、此方も退ける状況では有りませんからねぇ。
巫女さん達は退避を。
『FAS』を使用し飛行、『FMS』のバリアと『FES』の対水結界、『FGS』の重力結界を展開しますねぇ。
『花弁』『水流』は物質故に重力の影響は受けるでしょうし、『FES』の『破損による無効化』も併せれば、【UC】発動まで防ぐだけなら問題有りません。
【乳壓覃】を発動し『乳白色の光』を放射、範囲内に『超重力』による[重量攻撃]を行いますねぇ。
此方は『UC解除』の効果を持ちますので、『神霊体』で軽減しても僅かなダメージが入れば、打消した上で攻撃可能ですぅ。
後は『FRS』『FSS』の[砲撃]で[追撃]しますねぇ。
●戦巫女はおいてきた、この闘いにはついていけない……
戦巫女は神の御霊をその身に降ろす事で超常の能力を得るジョブだ。その代表とされる【巫覡載霊の舞】は文字通り『巫覡』(神に仕える者で『巫』は女性『覡』は男性を指す)が神霊を我が身に載せる舞だ。なので戦巫女の祖と呼ばれる望月鈿女もまた同様のユーベルコードを扱う。当然鈿女が降ろすのは自らを加護する海神であるがゆえに、その名は【巫覡載『神』の舞】となる。
『異端の神を信奉する者よ』
そんな鈿女の前に立ちはだかる夢ヶ枝・るこるは豊饒の女神、またの名を豊乳女神を信奉する宗教団体に属している。明らかに鈿女の神とは異なる神であるが、さすがに異教徒である事は基本的には罪ではない。サムライエンパイアにも様々な神がおり、それぞれに信徒がいる。ごく一部の例外を除けば、異教徒だからという理由で敵対したりは普通はしない。
『無謀にも、あなたはわたくしの前に立ちはだかろうというのでしょうか』
鈿女にとって、るこるに罪があるとすれば、まさにこの一点であった。幕府の霊的守護拠点である富岡八幡宮の破壊、そしてグリモアの有無の確認(ないことは確定しているが)。これら全ては今なお生きている戦巫女たちすべての救済のため。その目的こそ正義であり、阻む者は悪だ。これこそが鈿女の行動原理といえた。
「そう言われましても」
自ら信じる神を異端と言われ、いつも笑顔を絶やさぬるこるもさすがにちょっとむっとした顔をした。まあ、オブリビオンの言う事だし、異教徒が信じる神はみんな異端ぐらいの意味なのだろう、たぶん。すぐにいつもの笑顔に戻しつつも、
「此方も退ける状況では有りませんからねぇ」
はっきりと断言した。真っ向からの敵対の宣言である。戦巫女の救済のために由緒ある神社とそこに住まう戦巫女の全滅など、明らかに普通ではない。このような歪んだ目的を達成させるわけにはいかないのだ。
『なれば』
むろん鈿女とて、猟兵が退く事などない事ぐらいわかっていた。それでもなお一度は警告したという形式は時として重要になる。海上で対峙する両者。3対のオーラ翼で浮遊するるこると、海上に立つ鈿女の視線が交錯しあう。
『無益に命を落とす事になろうとも、お恨みめされるな』
瞬間、鈿女の姿が変わった。同時に明らかに戦闘力が上昇したのが見て取れた。これこそ神霊体、鈿女を愛する海神の力を借りている状態だ。さしものオブリビオン、猟書家であってもなお神の力は強大に過ぎ、その力は鈿女自身の命を削っていくものではあるが、短期決戦においてはいかほどの影響となろうか。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その裁きのその裁きの徴標をここに!」
るこるもまた、自らの信じる神の力を借りるべく祈りを捧げる。【|豊乳女神《チチガミサマ》の加護・|乳壓覃《シロキギョウシュクノナラク》】……『壓』は『圧』、『覃』は『深い』を意味する。その効果はすなわち……
『異端の神の力など発揮されるわけには参りませぬ』
先手を打ち、鈿女が神楽舞を舞った。どこから舞い飛んできたのか、たちまち戦場に花吹雪が舞い踊り、花弁は刃となって血しぶきの華を散らさせるべくるこるに襲い掛かる。
「させません!FMS!FGS!展開ですぅ!」
るこるとしても対策は既にとっていた。12枚の円盤と16本の錫がるこるの周囲に浮かび展開され、バリアと重力結界がるこるを守る。飛んでくる花吹雪が障壁にぶつかり、激しく火花を散らす。二重障壁は鈿女の攻撃を防いではいるものの、そこはさすがに猟書家の攻撃。るこるの祭器もやがて煙を吹き、ひとつ、またひとつと落とされていった。
「……ですが、間に合いました!」
鈿女の攻撃をなんとか防ぎ切り、るこるのユーベルコードが発動した。るこるを中心として乳白色の光が放たれたのである。その範囲は半径LV×50m……6800m。6.8km。戦場が海上で良かった。当然鈿女も十分に射程範囲に入る事になる。
『……くっ、こ、これは……』
たちまち鈿女の全身を強烈な脱力感が襲った。『壓覃』すなわち『深い圧』。鈿女を襲っているのはまさにそれであった。凄まじい重力は中性子星に匹敵するとされている。具体的には角砂糖1個が数億トンになるぐらいとのことらしい。こんなもの猟兵かオブリビオンの上澄みでもなければ耐えられまい。加えて乳白色の光にはユーベルコード解除の効果があるのだ。さすがに猟書家レベルのユーベルコードを一瞬で全てはぎ取るまでにはいかなかったようだが、それでも神霊体の力が徐々に削られていくのを鈿女は確かに感じていた。
「さすがにやりますねぇ……FRS!FSS!起動ですぅ!」
超重力とユーベルコード減弱で徐々に弱っていく鈿女に追撃をかけるべく、20台の球体と12枚のビームシールドを展開した。これで鈿女に砲撃を仕掛けようとした……のだが、鈿女にはまだ手段があった。
『異端の神の信徒が、調子に乗らぬ事です』
たちまち海が荒れ、大津波がるこるを飲み込まんと襲い掛かって来る。戦場が海上であった事が鈿女にとっては幸い、るこるにとっては最大級の災いとなったと言えよう。【乳壓覃】の超重力で津波の威力は抑えられてはいるが、それでも人間ひとりぐらいたやすく飲み込む力があるだろう。だがるこるはそれに対しても備えがあった。
「ですが、こんなこともあろうかと!FES発動ですぅ!!」
20枚の布が浮かび上がり、対水属性の結界が張られたのである。加えてかなり数を減じたとはいえ先に張ったバリアに重力結界、【乳壓覃】の超重力にユーベルコード解除効果も加え、そして津波はるこるを飲み込み……
「……あ~、びしょびしょですぅ」
神器をほぼ全て失い、それでもるこるの体はまだ空中にあった。まだ海水浴にはちょっと早い時期に全身に海水を浴びはしたが、強烈極まりない大津波を耐え抜いたのである。
『……異端の神の信徒よ』
ここで鈿女がさらに攻勢を仕掛けていたら、さすがのるこるも危なかったかもしれない。だが鈿女にその余裕はなかった。超重力とユーベルコード解除の力は確実に鈿女の体力を奪っていたのである。ここで仮に猟兵を退けたとしても、代償として自分が撤退に追い込まれたなら本末転倒だ。鈿女の目的は猟兵の打倒ではなく、富岡八幡宮の破壊なのだから。
『拾った命、大切にする事です』
鈿女はそのまま陸の方に向かっていった。るこるもまた追撃するだけの力は残っていなかった。それでも間違いなく鈿女に少なからぬダメージは与えたのである。戦果としては十分だろう。
「……まあ、後は皆様にお任せいたしましょう」
今は体力を回復させるのが肝要。そう判断し、るこるは八幡宮へと戻っていった。戦いはまだ長いのだ。
大成功
🔵🔵🔵
鍋島・小百合子
WIZ重視
他の猟兵との連携・協力可
たとえ神の位なれどもののけの類に堕ちてしまえば同じ事よ
武士として成敗いたす
「最初に言うておく。わらわが奪うてきた命などとうに数えきれぬわ!」
敵の声は魂に響かせる故抗えぬであろうが可能な限り聞かぬよう耳に栓をしておく
ついてきた嘘はそこまで多くなかれど、己が命を長らえさせんがために殺生し喰ろうてきた命など星の数よりも多かろうよ
己が全うにも生きる為じゃ。言い訳はせん
喉に棘の痛みがくれば激痛耐性で持ち堪えつつ、雀の囀りほどに小さく弱った声でUC「神鏡浄化光」発動
目から発する浄化と神罰の力を込めし光にて敵を撃ち貫く(鎧無視攻撃、目潰し、貫通攻撃、属性攻撃併用)
●言葉には言葉を
壮絶なる海戦を経て、望月鈿女は東京湾より上陸を果たした。だがさすがに鈿女とてこのままなんの障害もなく富岡八幡宮に辿り着けるとは思ってはおるまい。その表情は隠されており、伺い知ることはできないが、間違いなく襲撃を予測しているだろう。万全の態勢で待ち構えている敵を攻撃しなければならない、これも猟兵の宿命であった。
「ここから先、通すわけにはいかんのじゃ」
鈿女の前に立ちふさがった鍋島・小百合子も、その事については十分な覚悟を持っていただろう。それでも鮮やかな朱糸威は伊達ではない。サムライエンパイアに生まれ育った女偉丈夫として、エンパイアを脅かす輩を許すわけにはいかないのだ。たとえその相手が……
『貴女様はこの世界の者ですね』
あくまで静かに望月鈿女は言った。この時代に生きる武人なら間違いなく徳川の禄を食む者と考えるのが普通であり、徳川打倒を目指すクルセイダー以下の猟書家、オブリビオンとは敵対する立場である。それでもなお問いかける。
『ならば、わたくしの事についてはお気づきのはず。それを知りつつなおわたくしの前に立ちはだかるというのですね』
これは疑問あるいは勧告のように聞こえるが、さにあらず。確認である。無論、小百合子の答えは決まっていたし、それは鈿女の予想の範疇の言葉であった。
「たとえ神の位なれど」
小百合子の前にいるのは、エンパイアにおいて武人と同様に多大なる敬意を受ける戦巫女、その祖と言える人物である。だが。それ程の人物であろうと。
「もののけの類に堕ちてしまえば同じ事よ」
今はオブリビオン、それも猟書家である。ならば取るべき対応はたったひとつ。
「武士として成敗いたす」
『……そう仰るものとわかっておりました』
わずかに首を垂れて嘆息し、すぐに鈿女は顔を上げた。その表情を伺う事はできないが、間違いなく猟兵への敵意に燃えているであろう。その声は静かであったが、その事だけは確実に感じ取れるような、あまりに冷たい声であった。
「最初に言うておく」
対抗するかのように小百合子は気合を込め、声を張り上げた。
「わらわが奪うてきた命などとうに数えきれぬわ!」
『ほう』
小百合子の言葉に鈿女は違和感を覚えただろうか。というのも、それは鈿女がこれから使用しようとしていたユーベルコードを前提としたものだからである。とはいえ、望月鈿女の出現は今回で9回目だ。さすがに猟兵側にも鈿女の使うユーベルコードは周知されているだろうし、3種類のうちふたつは猟兵の『罪』を問い、それに訴えかけるものなれば、まあ威圧感を与えるためにも自分からこの話を持ち掛ける事も、まあありえる話ではあっただろう。もしかしたらあえて鈿女に狙いのユーベルコードを使わせるためにこのような事を言ったのかもしれない。
『いいでしょう、ならば数限りない罪の報いをお受けいただきましょう』
鈿女の声が質を変えた。まさしくそれは事前に聞いていた通りの、じつに玲瓏たる声。魂の奥底に響き渡るような声を防ぐために小百合子は耳栓をしてこれを防ごうと試みるも、それはあたかもまるで鼓膜を経ずに聴神経に、そして大脳に直接届くような錯覚を伴い、確実に小百合子の魂を揺さぶりにくる。わかっていても防ぐ事などできまい、そして『罪』の報いは必ず受けさせる。そんな信念の込められた声であった。
「……!!くうっ!ぐぐぐッッッ」
喉に激痛。来るのはわかっていた。嘘をついた事はそう多くないと思えども、こと殺生ということになれば、ただでさえ武人として刀槍を振るい、多くの邪悪なる者を自らの手で討ちとって来た身である。彼らの逝った先が地獄とやらか、あるいは骸の海とやらかは知らぬ。ただ罪なき民を守り、そして自らが生きるためには必要だったのだ……生きるためといえば食もそうだ。鈿女は他者が潰して肉とした生き物を食する事すら罪と呼ぶようだが、小百合子は自ら獣を狩り、それを食してきたのだ。
(己が命を長らえさせんがために殺生し喰ろうてきた命など星の数よりも多かろうよ。己が全うにも生きる為じゃ。言い訳はせん)
全て覚悟の上。それであってもこの激痛は耐えがたいものがあった。戦場に痛みは付き物、慣れていたはずの感覚ではあったが、自らの内より出でる痛みは外部からの矢傷刀傷とは明らかに違う。武人としての意地で小百合子はどうにか食道気管を襲う激痛に耐え、口を開くとそこからは声ではなくおびただしい量の血。それでもなお小百合子は声を発した。それは雀の囀りほどに小さく弱った声であったが、それでも確実な声。
「……我は……」
『ほう』
鈿女の声はこれまでと変わる事なかったが、感心したような、あきれたような、そんな響きがあった。一体どのような視線で、喉を貫く激痛に、何より常人なら明らかに致命的となりうる攻撃に耐えた小百合子を見ていたのか、それはさすがにうかがい知る事はできない。いずれにせよ、である。
『もはや貴女への罪は下されました』
同一の罪について重ねて処罰を受ける事があってはならない……|二重処罰の禁止《ダブル・ジョパディ》という言葉など知らぬだろうが、鈿女の考えは要するにそういう事であった。
『ですがこれ以上動くと今度こそ本当に命を失いかねません。ここより去りなさい、せっかく拾った命、無駄に散らす事もないでしょう』
「……そうは……いかんのぅ」
猟兵として、名将の姪として、サムライエンパイア武人として。小百合子の背後には富岡八幡宮があり、戦巫女たちがあり、さらには江戸幕府が、エンパイアに住まう無辜の人々がある。決して退くわけにはいかないのだ。
『ならば好きにするがいいでしょう』
眼前の相手は立っているだけで精いっぱいであり、行く手を遮る事などできやしまい。放置しても構わないだろう。そう判断し、鈿女は小百合子を放置して富岡八幡宮へ向かおうとした。だが……
「……我は……」
小百合子の執念は、魂は、鈿女の想像をはるかに超えていたのである。確かに今の小百合子には指一本すら動かす事はできないだろう。それでも小百合子はきわめて小さいとはいえ声を出せた。それで十分だったのだ。目には目を、歯には歯を、声には声を。
「……我は……放つ…輝く神鏡に……当てられし……聖なる……光の柱……」
その名は【神鏡浄化光】。詠唱時間に応じて威力を無限に上昇させるユーベルコードである。聞こえぬほどの小声で、十分すぎる程に時間をかけて詠唱を行った。あとは発するだけだ。最後の言葉は十分すぎるほどの気合を込めて。
「……貫け!」
小百合子の目より発せられるは血塗られた不浄すら滅する聖気と祝福に満ちた光。それは願い違わず、背を向けていた無防備の鈿女に叩きつけられた。
『……!!??』
瀕死の猟兵にまだこんな力が残されていたとは。自らの迂闊を呪いつつも、それでも鈿女は小百合子を顧みる事なく、前進を続ける。小百合子にはもはやそれを見送る事しかできなかったが、それでも鈿女に与えたダメージは多大であり、自身の役割は果たしたと確信していた。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
猟書家か…
巫女方には安全圏まで退いて貰お
あ、ひとつ教えて
オレも無駄死にしたかないし
いざって時の撤退路を、ね(ひそひそ
巫女の撤退確認しUCで全強化
代償流血は【激痛耐性】と猫目雲霧を額に巻き目視阻害を防ぐ
幼少からの殺し訓練、その延長のお役目
騙しと色と毒でお役目の布石を打つ
好いた娘だって殺めた
罪が?赦される?オレら忍びが?
そんなわけねーだろ
ん…開き直っても冷静にならねーと
(ギリと腕を噛んで敵を見て)
…幻がミサキでも昔殺した敵でもやるさ
生き残ってから後で悲しませて貰う事にしてるんでね
神獣、敵へ低く駆けつつ
手裏剣を天地左右から【念動力で投擲、串刺し】
前方から手にしたクナイで裂き斬り狙い【暗殺】
アドリブ可
●|失われた過去そのもの《オブリビオン》に過去を責められたくない
「猟書家か……」
これから相対する敵の事を考え、鹿村・トーゴはつぶやいた。トーゴ自身、サムライエンパイアの猟書家とは何度も戦っている。特に今川義元とは数限りなく干戈を交えてきた。なんとかその全てに勝利し、生き残っては来たが、その全てが激戦であり、まぎれもない強敵だった。そして望月鈿女とは今回が初対決だ。強敵である事は間違いないが、それと同じくらいにトーゴの心にのしかかって来るのは、その戦闘スタイルであった。
「……人生の、罪か」
これまでだってさんざん向き合ってきた事だし、おそらく生きていく限りは決して逃れる事のできないもの。よりにもよって今回の相手はそれを真っ向からぶつけてくるというのだ。
「ま、なるよーになる、か」
これまでの猟兵同様、トーゴもただのひとりで鈿女を迎え撃つ事にしていた。戦巫女たちは全て引き上げさせた。その時に冗談めかして言ったものだ。
「あ、ひとつ教えて。オレも無駄死にしたかないし、いざって時の撤退路を、ね」
戦巫女は笑わなかった。あくまで真顔で真剣に、地元を知り尽くした者しかわからないような退路を教えてくれたのである。親切心が身に染みた。自分たちのために強大な敵に立ち向かう猟兵を、心底心配してくれたのだ。ならばこそ、自分は生き残らなければならないし、そして勝利しなければならない。鈿女が来る前にと、トーゴは【降魔化身法】を発動させた。危険な者たちの力を借りて自らを超強化するユーベルコードだ。リスクは大きいが得られる物もそれに伴って絶大だ。副作用への対策として六尺手ぬぐいを頭に巻いた。あとはこれまでの鍛錬が物を言うだろう。
そして。
「おいでなすったか」
懐の手裏剣を改めて確認し、クナイを握りしめたトーゴの前に、ついに望月鈿女が現れた。
『猟兵よ』
トーゴの出現にも鈿女は動揺する様子を全く見せなかった。猟兵が立ちはだかる事は予測の範疇だったのだろう。あくまでその声は静かで、眼前の敵に対する害意や嫌悪感といったものを感じさせない……むろんそれは見た目上のものでしかないのだろうが。そしてその手には広げられた巻物。あれこそ事前情報で聞いた、トーゴの人生が書かれているという巻物なのだろう。
『……貴方様の犯した罪は莫大なものです』
それはまさしく、裁判官が被告に対して罪状を読み上げる時の言い方だった。裁判官は被告の罪に対していかなる嫌悪感を持とうとも、それを表面上に出す事なく、ただ事実のみを淡々と読み上げる。被告の犯した罪状、そしてそれに対する罰を。
「知ってる」
クナイを手に即座に斬りかかる予定だったトーゴだったが、降魔化身法の副作用によって生じた流血で初動がわずかに遅れた。痛みは鍛錬で耐え、額に巻かれた手ぬぐいで血が目に入る事は防げたが、それでもなお、鈿女の動きを妨げられない程のダメージがあった。そして。
『貴方様の罪が赦されるとお思いですか?』
罪。忍者として生まれ育ってきたトーゴにとって、生きるとはある意味では、それ自体が罪を重ねる事であった。殺し、騙し、盗み、そしてそれらはそこで終わるものではなく、時としてそれを布石としてさらに大いなる破壊と殺戮に繋がるものであった。罪が罪を呼びさらに大きな罪となる。幸いにも……あるいは災いか……トーゴにはそのための才能があった。体術、忍術、武器、薬物、人心掌握の術、様々な事を徹底的に叩き込まれた。そしてその過程で……
『この娘の事を覚えていますね』
「……やはり、あんたが来たか」
鈿女が呼び出した変幻自在の神霊とやら。そいつがとった姿はひとりの少女……ミサキ。幼少期からずっと一緒に育ってきて、わけあって自らの手で殺める事になった、大好きだった女の子。それを機に抜け忍となったトーゴは猟兵となり、オブリビオン退治という純粋に世界のためになる仕事をやれるようになったのは間違いなく幸運な事であった……が、それでも過去が消えたわけではない。まるで眼前のオブリビオンのように。
(ミサキが来るか、昔殺した敵が来るかって思っちゃいたけど、本当に来ちまったか)
敵の能力を聞かされた時から予想はしていたので驚きもなかった。ただ、それでも。
『覚えておいでですね、そして貴方様の犯した罪も』
「……罪が?赦される?オレら忍びが?そんなわけねーだろ」
トーゴはクナイを構えた。ユーベルコードの副作用にもようやっと体が慣れたところだった。目の前の神霊とやらを斬り、そして鈿女も斬る。やるべき事は決まっていた。
『赦されないとお思いでしたら、その報いをお受けなさい、貴女様に相応しき、罰を』
神霊のミサキが刀を構えた。その顔は……
『トーゴ』
笑顔だった。掛値のない、笑顔。
『大好きだよ』
「……」
いっそ自分に憎悪を向けて罵ってくれた方がトーゴにとってはまだ気が楽だったような気がする。その姿は本当にかつて在りし日のミサキそのもので、しかもそれは思い出や悔恨という名のスパイスによって間違いなく美化された、思いつく限り一番美しいミサキの姿をしていた。これを自らの手で再殺しなければならないのであれば、それは確かに相応しい罰であるかもしれない……あるいは軽すぎる罰と言えるかもしれないが。
(ん……開き直っても冷静にならねーと)
トーゴは腕を噛んだ。その心は既に決まっていた。
(生き残ってから、後で悲しませて貰う事にしてるんでね)
軽く体を動かす。行ける。そして前傾姿勢をとると一気に……駆け出した。ミサキの姿をした神霊も素早く反応し、超絶強化したトーゴの動きについてくると、渾身の斬撃を繰り出してきた。
(……あ、やっぱ、本人じゃねーや)
刃をかすめたトーゴの頬からわずかに流血していた。だがそれが逆にトーゴを冷静にした。あの時と比べてトーゴの腕は格段に上がっている。そのトーゴについてくれているのだから、少なくとも眼前のミサキは本人ではありえない。ならば容赦の必要もあるまい。さらに速度を上げ、手裏剣を複数枚同時に投げると念動力によって神霊の上下前後左右から飛んできた。さすがにこれら全てを落とす事はできず、神霊に次々と突き刺さると、そのままトーゴは一気に間合いを詰めてクナイ一閃。斬り裂かれた神獣はミサキの笑顔を保ったままで消滅した。
『これ以上、罪を重ねるのはおやめなさい』
「あんたに何が分かる」
動揺も見せぬままに新たな神獣を呼び出そうとした鈿女をトーゴのクナイが斬り裂いた。
「……」
大ダメージを受けながらも鈿女は富岡八幡宮の方へと去り、降魔化身法の代償を精神力と戦闘への高揚感で抑えていたトーゴは電池が切れたかのように動きが止まっていた。
(……まだ、終わったわけじゃあないからな)
悲しむのは生き残ってから後で。そして今はまだ、その時ではなかった。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
引き続き巫女さんの体を借りて戦い挑む
「罰すること前提の質問なんて、元々アンタが満足すわけないっすよね?」
向こうが巻物から罪状を読み上げようとするなら
「やめた方がいいっすよ〜。自分の罪は読み上げるの大変っすよ〜?」
猟兵に目覚める前は多くの犯罪に手を染めてきたし、猟兵になってからもオブリビオンなど多くの命を奪ってきた自覚はある。だから
「罪状を読むなんて隙を与えていいんすか?」
読み上げ終わる前に【シーブズ・ギャンビット】で相手を攻撃する。ついでに【2回攻撃】【盗み攻撃】で巻物も奪っておく
「ついでに罪状も追加っすかね」
加速するために巫女さんの服を脱いだ事は後できっちり怒られとく。下に何着てたかはお任せ
●どちらかというとコラテラルダメージのたぐいなので罪に入るかわからない
改めてになるが、リカルド・マスケラスはヒーローマスクだ。
ヒーローマスクといえばキマイラフューチャーにそのルーツがあるとされる空飛ぶマスクあるいは仮面めいたきわめて特異な種族であり、そんなのであっても他世界の人たちに違和感を抱かせずに普通に人々の中に溶け込める猟兵の特性は改めてすごいなと思わせてくれる、その際たる種族といえよう。で、名前からしてヒーローなものだから、やっぱりヒーローめいた性格の者が多い、のかどうかはわからない。ただ基本的に住民が明るく楽しくやってるキマイラフューチャーに関連しているなら、少なくとも性格は陽性なものが多いような気はする。で、リカルドはというと、多少チャラい感じはあり、なんかだらしがなくて女好きで巨乳派ではあるのだが、それでも基本はヒーローめいて弱気を助けて平和な世界を望んでいるらしい。なんだけど……よくよく見ると過去が実験体だったり、故郷が犯罪都市だったりと、なーんか過去ありそうだなあ、と、ちょっと気になる項目もあるようで。なんでこんな関係なさそうな事を本文前に延々と書いたのかというと……まあ、いずれ分かりますということで。
怨霊女武者戦に引き続き、リカルドはひとりの戦巫女の頭に乗っていた。ヒーローマスク特有の戦い方だ。
「また引き続きお世話になるっすよ~」
「猟兵様のお役に立てるなら光栄です!」
「そう言っていただけると自分もうれしいっすね~」
うれしいのは戦いに協力してくれた事、そして戦巫女ちゃんが先ほどの戦い自分の望んだ動きを表現してくれた事も当然だがそれだけでもなくて、白衣に緋袴、その上から千早という典型的な紅白の巫女装束に身を包んだ戦巫女ちゃんが実にリカルド好みの体形(具体的には前述)だったからというのもあるとかどうとかだが、それはまあ今口に出して言わなくても良い事だ。ともあれリカルドたちは敵が来るのを待ち受けているのだが。
「震えてないっすか?」
「そ、そんなことないです!武者震いです!」
リカルドの言葉に気丈にも戦巫女ちゃんは言うが、むろんただの強がりである事ぐらいリカルドにもわかっていた。なにせよりにもよって敵は望月鈿女。彼女たち戦巫女の偉大なる祖のひとりとされる伝説的人物なのだ。それがどういう流れなのか戦巫女たちが住まう富岡八幡宮を攻めに来たというのだから、動揺しないはずがないだろう。
「大丈夫っすよ、自分がついてるっす」
なるべく平静を保ちつつリカルドはこう言うしかなかった。
「……はい」
戦巫女ちゃんの厳しい顔に変わりはないが、体の震えは止まった……ように感じられた。リカルドとて不安が全くないというわけでは決してないだろう。だが、自分が怖がっていては戦いなんかできやしない。ましてや赤の他人をけしかけて戦わせる事など。
「……大丈夫っすよ」
もう一度だけ、誰に聞かせるでもなく、リカルドはつぶやいた。そして永遠に思える程の長い、それでいて、それほど長くなさそうな時間の果てに。
『戦巫女がわたくしの前に立ちはだかるとは』
現れた望月鈿女は静かに述べた。覚悟を決めたはずの戦巫女ちゃんだったが、さすがにその表情は凍り付き、体の震えが止まった代わりに動きそのものが停止したように見えた。
『心配ならさずとも、わたくしは貴女様たち戦巫女を救いにここに来たのです。あるべき場所にお戻りなさい、さすれば悪いようにはいたしませぬ』
「せっかくの申し出ですが、お断りいたします」
きっぱりと答えた戦巫女ちゃんに対し、鈿女は嘆きも怒りもせずに淡々と応じた。
『なるほど、現世の戦巫女もそれなりに気骨が残っているご様子、わたくしの頃を思い出すよう……それとも』
鈿女がわずかに顔を上げた。その視線……その顔を覆う『雑面』と呼ばれる紙に描かれた目ではあるが……が戦巫女ちゃんの頭部にいるリカルドに向けられた。
『そこな猟兵から何か吹き込まれでもしたのでしょうか』
「ん~……」
リカルドとしては別に戦巫女たちに共に戦うことを強要したつもりもなく、あくまで自由意志に任せたものであり、今戦巫女ちゃんがこうしてリカルドに協力してくれているのも彼女自身の希望のはずなのだが、それをここで言っても仕方あるまい。
『猟兵よ』
そんなリカルドの様子を全く気にする事がない様子で、先刻同様に鈿女は巻物を取り出し、リカルドの人生と、その中の罪を晒し上げて『罰』を与えようとした鈿女にリカルドは。
『貴方様の罪が赦されるとお思いですか?』
「やめた方がいいっすよ〜。自分の罪は読み上げるの大変っすよ〜?」
「え?」
そうなの?と驚愕な表情の戦巫女ちゃん。確かに現在のリカルドの様子から、かつて大量の罪を犯したなどというのはちょっと考えられない。まあ他人が過去どんな人物でどんな事をやってきたかとかなかなか知る事もないのだろうが。そして実際、リカルドは猟兵になる前はこう見えて多くの犯罪を犯してきたらしい。犯罪都市で育ってきたのは伊達ではないということか。そして猟兵になってからは……一般的にはオブリビオンを殺す事は犯罪とはみなされまい。だが鈿女みたいなオブリビオンからすれば、それもまた罪に入れられてもおかしくはあるまい。
『……これは……なるほど』
むろん相手の罪が大きければ大きいほど鈿女にとっては好都合だ。だがそれを読み上げようとする前に、リカルドが動き出した。待ち時間をたっぷり使って作戦を練っただけの甲斐はあったようだ。
「罰すること前提の質問なんて、元々アンタが満足すわけないっすよね?」
それはシーフの基本技能【|盗賊の手口《シーブズ・ギャンビット》】。速度上昇を最優先とし、鈿女がユーベルコードを発動させるよりも早く先制攻撃を狙った一撃だった。
『!?』
狙いすました一撃は鈿女の巻物を奪い、返す刀でその喉元を狙って強烈無比な斬撃を見舞うと、そのままリカルドは離脱していった。時間をかけたら再度巻物を復活させ、今度こそユーベルコードの発動を招きかねない、という判断だった。
「……ついでに罪状も追加っすかね」
「……え?」
闘いに必死で、戦巫女ちゃんは自らの様子に全く気が付いていなかった。シーブズ・ギャンビットで移動攻撃速度を上げる手段は身軽になる事であった。例えば……服を脱ぐとか。そして戦巫女は当然下着とかつけていなかったのである。結果はもうお分かりであろう。
「……いやああああああああ」
響き渡る悲鳴。この後ふたりの間にどんな会話が為されたか、そしてリカルドの罪が具体的にどんなものだったのか。一番最後みたいな微罪で数だけやたら多かったのか、それとも結構シャレにならないものだったのか。そのあたりは皆様の御想像にお任せすることにいたしましょう。
大成功
🔵🔵🔵
アウロラニア・ミーマメイズ
アドリブ歓迎
続けて戦巫女の皆さんに援護して頂きましょう
【天つ輝けし抱翼の顕れ】を用い、[Darkstar]の[推力移動]、[空中機動]を駆使
[心眼]で[見切り]躱し、[エネルギー充填]した[Blue Moon]、[Answerer]の手数と出力任せの[焼却]に[貫通攻撃]、[2回攻撃]で反撃毎[なぎ払い]戦います
最後の一撃は[リミッター解除]も
確かに寿命を削って戦うあなたに対し、私は一撃が致命傷になるリスクを負いました
この程度で神たる私は死にませんけれどね?
配下壊滅後に出て来たあなたに対し、私は神職の皆さんと協調して当たりました
今も隙を埋めて頂いてとても助かっています
でも、これらはあなたの敗因においては些細なことです
本当に笑ってしまう様な間の悪い話なんですよ
望月鈿女、あなたのその身体……神霊体、即ち『エネルギー体』ですね?
ならばこの瞳……[Quasar]からは逃れようが無い
時空と共に限り無く集束され、私がこの手と翼から注ぎ込むエネルギーで灼き尽くされながら、一条の閃光となり果てなさい‼︎
●神と代行者
立ちふさがる猟兵たちと激闘に激闘を繰り返し、かなりのダメージを負いつつもこれを次々と突破し、気が付いた時には望月鈿女は富岡八幡宮の目と鼻の先にまで迫っていた。
『これが富岡八幡宮ですか』
鎌倉時代より関東の地を守って来た、そして現在もなお江戸幕府の守りを担う神社である。その荘厳にして神聖なる空気は戦巫女の祖たる鈿女には常人以上に感じるものがあったのだろう。だからこそ、この地を破壊するために訪れたのだ。だがむろんそれを黙って見過ごすわけにはいかない。だからこそこれまで猟兵たちは鈿女の前に立ちはだかって来た。そして今も、またひとり。
「ここから先へは一歩たりとも通すわけにはいきません」
いや、ひとりではなかった。アウロラニア・ミーマメイズの背後には富岡八幡宮の戦巫女たちがいたのだ。猟書家という強敵と相対するにあたり、戦巫女には安全な後方に下がってもらい、後顧の憂いをなくした上で戦いに挑む猟兵が多い中、アウロラニアは戦巫女と協力する道を選んだのであった。
『異界の神よ』
鈿女はアウロラニアを真っ向から見た。その声はあくまで冷静である。これから戦おうという相手であっても、敵意のようなものを見せない。だが無論それは平和的な解決を意味するわけではない。
『この世界の事は貴女には関係のない事、ここより立ち去るならば、わたくしは貴女に手出しする事はいたしませぬ』
わずかな嘘ですら罪とする鈿女の言葉なれば、おそらくは嘘偽りを言ってはおるまい。仮にアウロラニアが逃走を選ぶなら、鈿女は宣言通りにこれを見逃す事だろう。だが。
「生憎ですが、それはいたしかねます」
アウロラニアはきっぱりと言った。確かに|この世界《サムライエンパイア》は自分のいた世界とは違う。だが猟兵として、いやそれ以前に神として、目の前の悲劇を見過ごす事などできやしないのだ。自分と同じ神の住まう社、そしてその神社に使える戦巫女。これは守らねばならないものだし、ひいてはこの神社が守る人々を守る事に他ならない。
『いいでしょう、ならば後悔ならさぬことです』
鈿女は自分が信じ、そして自分を寵愛して加護を与えてくださる海神を自らの身に降ろし、神霊体へと姿を変えた。オブリビオンであっても海神は寵愛を与えてくれるのか、それとも海神こそが鈿女をオブリビオンへと堕落せしめた張本人だったのか。知る者は本人以外、誰もおるまい。
「哀れな人ですね」
海神以外に寄る辺もなく、戦巫女の救済という目的は既に狂気によってゆがんだものになり果てている。それを果たすためならその戦巫女をすら殺す。自分の様に生贄となるぐらいなら自らの手で楽にした方が良いという考え。そんな鈿女をアウロラニアはそう称した……が、この言葉は、それだけを根拠としてたわけでは決してなかったのである。この時点でアウロラニアには見えてしまったのだ。勝ち筋が。
「皆様、よろしくお願いいたします」
後方の戦巫女たちに呼びかけつつ、アウロラニアは【|天つ輝けし抱翼の顕れ《ザ・ブレイジング・ホライゾン》】を発動させた。背中の3対6枚のエネルギー翼[Answerer]が巨大化し、そこから湧き出るエネルギーがアウロラニアを包み込んだ。それに呼応するように桃色の左目[Darkstar]が、両掌の[Blue Moon]が、輝きを増す。海神を降ろして強化した鈿女に対抗するためにアウロラニアもまた自らの力を強化する事を選んだのであった。
『見せていただきましょう、異界の神の力を』
鈿女は扇を手に一指し舞った。それはわずかな動作ではあったが、戦巫女の祖たるに相応しい、優雅にして幽玄な舞だった。が、それはただ美しいだけではない。危険を伴った美だ。鈿女の舞に合わせるかのように、どこからともなく桜の花びらが舞い飛んでくると、危険な刃の嵐と化してアウロラニアに襲い掛かって来た。アウロラニアは超高速で飛ぶと、飛んでくる花弁を振り切り、それでもなお追いついてきたものは躱し、あるいは[Blue Moon]で生成したエネルギーの刃でなぎ払った。また地上の戦巫女たちも自分の寿命を削れるリスクを承知で【巫覡載霊の舞】を使用し、なぎなたからの衝撃波で花弁を撃ち落としてくれたのである。
『情けないことです』
あくまで鈿女の声は冷静であったが、それでもなお失望と侮蔑の響きが強く感じ取られた。
『いやしくも神ともあろうものが、異教を奉ずる巫女の助力を借りるとは』
「今も隙を埋めて頂いてとても助かっています。あなたは配下壊滅後に出てきましたからね」
アウロラニアは全く動じることなく堂々と返す。戦巫女たちと協力して事に当たるアウロラニアと、自分以外には海神しか信じる者のいない鈿女。おそらくわかりあえるものではない。
『貴女には神としての矜持はないのですか』
鈿女は扇より強烈な水流を発した。これは花びらと違い、戦巫女の衝撃波では撃ち落とせるものではあるまい。だが今度はアウロラニアは逃げない。
「矜持なら私にもあります!」
自らの信徒であろうがなかろうが、異教徒の手を借りてでも、人々を守るという矜持。[Answerer]が羽ばたくと、強烈なエネルギーの奔流が真っ向から水流と衝突した。アウロラニアと鈿女のちょうど中間で押し合いとなり、もうもうとした水蒸気があがる。拮抗しているように見えた押し合いは、だがやがてアウロラニア有利に傾いていた。ともにリスクを負っての攻撃。鈿女が寿命を削っているのに対し、アウロラニアは防御を完全に捨てて攻撃力に全振りしており、あらゆる攻撃が致命傷となる状態だった。
「致命傷程度で神たる私は死にませんけどね?」
口ではそういうアウロラニアだったが、たぶんだが実際に攻撃を受けたら死にはしないかもしれないが死の寸前で強制的にグリモアベースに帰還させられていた可能性は決して低くはなかっただろう。だが、目の前にいるのはこれくらいの気合を持たなければ倒せない相手なのだ。その気合がアウロラニアの本来の限界以上の物を出させていたのである。鈿女のリスクが将来効いて来るものであるのに対しアウロラニアのリスクはまさに今効いて来る事なのも関係していたかもしれない。
「あなたの敗因を教えてあげましょう」
『少し押している程度でもう既に勝った気でいるのですか』
それは互いが負ったリスクの差か、あるいは協力者の差か、はたまた神そのものと神を奉じる者の差か……否。これらは要因となりえたかもしれないが、もっと決定的な要因があったのである。
「本当に笑ってしまうような間の悪い話なんですよ」
『!!??』
アウロラニアは左右異なる色の瞳、オッドアイの持ち主だった。桃色の左目[Darkstar]は推進力を生みだし、先刻見せた通りの高速移動を可能にするものだ。そして虹紅の右目は……時空の理である|仕事をする能力《エネルギー》そのものを操るものであった。魔法、光、炎、雷等、物理学的に仕事をする力のあるもの全てを集め、純粋なる破壊の力と変える能力。
「望月鈿女、あなたのその身体……神霊体、即ち『エネルギー体』ですね?ならばこの瞳……[Quasar]からは逃れようが無い」
虹紅の瞳が輝く。仮にアウロラニアと望月鈿女の戦いが全体局面の最序盤だったら、あるいは互いが必殺の攻撃を撃ちあっている状況でなく、鈿女が万全の態勢でこれを受けていたならば、いかに神の力とはいえ猟書家たる鈿女は海神の力でこれを跳ねのけたかもしれない。だがそれは所詮は『仮に』の話だった。鈿女に与えられた海神の力が徐々に削られ、それに伴ってアウロラニアの[Answerer]、[Blue Moon]からのエネルギーはさらに勢いを増していく。
「灼き尽くされながら、一条の閃光となり果てなさい!!」
『……見事です』
恨み言ではなく、敵手への称賛。あるいは生前そうであったと思わせる、戦巫女の祖たるに相応しい人格の片鱗を見せながら、望月鈿女は膨大なるエネルギーの奔流に飲み込まれていった。
大成功
🔵🔵🔵
葵衣・慧斗
通すわけにはいかないですね
巫女の方々には本殿まで下がっていて頂きましょう
それなら、こちらも遠慮なく力を振るえる
自身が持つメガリス――エウテルペの横笛を取り出す
これが欲しいのでしたね?
渡しませんけれど
Bete für meine Flügel
行け、切り裂け
横笛が姿を変えた手に刃物持つ黒衣の花嫁人形を向かわせ、攻撃を
嘘、奪った命?
それがどうしました
血を吐いてでもインカムを通し叫び声を衝撃波へと変えて更に追撃
これが貴女の歌――受け止めました、ではこちらも全力を込めて返させて頂きますよ
戦闘が終われば、イグニッションを解いて元の学生服姿へ
任務完了、ですね
眼鏡を外し海の方を見遣り
…元の海に戻ったみたいだ
●メガリスならば出自は問わない
『……ま、まだです』
猟兵との連戦に次ぐ連戦は、さすがの猟書家・望月鈿女の体力をも極限まで奪い去っていた。普通に考えればこれ以上の戦闘継続はさすがに無謀であったが、オブリビオンとしての本能、あるいは戦巫女の祖としての使命感のようなものが鈿女の足を先に進ませていた。さもなくとうの昔に撤退を考えていた事だろう。これ以上立ちふさがる猟兵がいないのであればこのまま進撃するのは当然ではあるが、仮にこれ以上の交戦を行う事になるならば……。
「ここから先、通すわけにはいかないですね」
果たして猟兵は現れた。葵衣・慧斗は怨霊女武者との戦いにおいて既に|起動《イグニッション》しており、愛用のベースギターを手に万全の戦闘準備を整えていた。戦巫女たちを本殿へと下がらせ、後顧の憂いを断ち、万全の態勢だ。疲れ切った鈿女には荷が重い相手かもしれない。とうに青丸の数は11をはるかに超え、もはや勝ちの目はない。一瞬、本来オブリビオンにはありえない撤退の二文字が脳裏に浮かぶが、慧斗としても鈿女を前に進ませられないのと同様に、逃がす事もまたありえないのであった。ここで鈿女を討ち取ってもまた骸の海から出てくるかもしれないが、少なくともそれで出てくるのは今回と同じ強さの鈿女だ。仮にここで鈿女を逃がしたとしたら、次に出会う時により強大なオブリビオンとなっていないとも限らない。そして幸運な事に……鈿女にとってはこれ以上なく不運な事に、慧斗には鈿女を逃がさない手段が与えられていたのである。
「あなたはこれが欲しいのでしたね?」
『……それは!』
慧斗が取り出したのはルビーで装飾された金の横笛だった。それを見た鈿女の声色が覿面に変化した。それこそまさに鈿女が探し求めていたもの。富岡八幡宮のみならず、サムライエンパイア中の寺院や神社を襲撃していた原因。
『メガリス……』
それはグリードオーシャンにあるとされる呪いの秘宝である。それを手にした者は生きてユーベルコードに覚醒し『海賊』となるか、呪いに耐えきれず死して|コンキスタドール《オブリビオン》となるか、ふたつにひとつ。その一部がサムライエンパイアに流れ込んでいるという噂をもとに、鈿女はエンパイア中を探し回り、その力をもって戦巫女を救済しようとしていた。
だがメガリスはグリードオーシャンにのみあるわけではない。慧斗が持っているメガリス……エウテルペの横笛。ギリシャ神話に登場する文芸の女神ムーサの一柱エウテルペー。『快を与えるもの』『抒情詩のムーサ』と呼ばれ、その手には横笛か、アウロスというダブルリードの縦笛があったとされている。その名を冠する横笛は銀の雨降る世界のものであった。シルバーレインのメガリスは所有者に多大なる力を与えるが、それを上回る破滅的なデメリットを同時に及ぼすものであった。そして慧斗はメガリスと必ず巡り合う運命にある人間……メガリス・アクティブだったのだ。
『それを渡していただきましょう』
富岡八幡宮にはメガリスが存在していない事をうすうす感じ取っていた鈿女であったが、よもやこのような形で求めていたメガリスを目の当たりにしようとは。さすがに想像力の範疇を超える出来事であった。それならば、どうあっても退却するわけにはいかない。
「渡しませんけれど?」
当然の返答。鈿女のひどくゆがんだ目的にメガリスを使わせるわけにいかないのは当然としても、それ以上にエウテルペの横笛は他の誰でもなく、強い結びつきを持つ慧斗が持つべき物だ。だがもはや鈿女としてもなりふり構っていられないようだ。
『力づくでもいただきます』
「やれるものならやってみるがいいでしょう」
もはやこれ以上の言葉はいらない。あとは力と力でぶつかり合うだけであった。
「Bete für meine Flügel……さあ、気高く美しく歌いなさい――|我が翼《meine Flügel》よ!」
『貴方様は犯した罪の数を覚えておいでですか?』
その声は同時に発せられたものでありながら、その性格を異にしていた。慧斗の呼びかけに応じ、エウテルペの横笛は翼を持った黒衣の花嫁人形と姿を変えた。その手には殺戮刃物。一方で鈿女の言葉は眼前の敵たる慧斗に向けられたものであった。
「!?」
瞬間、慧斗は血を吐いた。メガリス・アクティブとして普通の人間、食事は普通に摂るし、菜食主義者でもヴィーガンでもありはしない。喉に生えた棘でおびただしいダメージを負い、仮に声帯をやられでもしたら配信者としては大打撃となった事であろう……が。
「……行け!斬り裂け!」
やっと絞り出した声は花嫁人形への指令だった。人形の目が輝くと、音もなく鈿女に突撃して連続で9度の斬撃を仕掛けた。ユーベルコード【九死殺戮刃】は本来9回攻撃のうち一度は味方を攻撃しないと自らの寿命を削るデメリットがあるが、人形はそのような事を構う事もなく平然と全ての攻撃を敵へと叩き込んでいった。
「……嘘、奪った命?それが……どうしました」
『それ以上はおやめなさい、それ以上は貴方様の命も保証はできませぬ』
「これが貴女の歌――受け止めました」
自らに及ぶ攻撃を止めさせるためか、本気で敵対する相手の事を案じているのかは知らないが、血を吐きながら言葉を止めない慧斗を止めようとする鈿女だったが、そのようなものを聞き入れる慧斗ではない。それどころか、逆に言葉に力を込めたのだ。
「ではこちらも……全力を込めて返させて頂きますよ!」
声がインカムを通して衝撃波となり、鈿女を襲った。そこにさらに人形も容赦なく斬撃を入れていく。もはや趨勢は完全に決まっていた……そして見よ、富岡八幡宮の方向を。
「お待たせしましたぁ~!ようやっと復活ですぅ!」
「わらわはまだ暴れ足りないのじゃ!」
「まだ戦いは終わったわけじゃねーからな!」
「しっかり最後まで決めてやるっすよ!」
「今度こそ、あなたはここで終わりです!お覚悟を!」
「みんな……もう大丈夫なのですね」
『お、おのれ猟兵~!!』
……
猟書家・望月鈿女が骸の海に還っていったのは、それから間もなくのことであった。
(ですがこれで終わったわけではありませぬ……今度こそ、戦巫女たちを救わねば、そのためならばわたくしは何度でも……)
「……任務完了、ですね」
イグニッションを解いてもとの学生服姿に戻った慧斗は伊達眼鏡を外した。東京湾はつい先刻まで激戦が繰り広げられていたとは思えない、静かな風景を取り戻していた。
大成功
🔵🔵🔵
●次回予告(大嘘)
かくして猟兵たちの活躍で、猟書家・望月鈿女は倒され、富岡八幡宮は守られたのであった。
しかし!サムライエンパイアに富岡の名の付く神社仏閣はまだまだ存在する!富岡の名に惹かれ、また次の望月鈿女が現れないとは限らない!例えば上野国『富岡』町(現在は群馬県富岡市)にある|貫前《ぬきさき》神社とか……
……え?貫前神社が富岡市になったのは戦後のこと?じゃあサムライエンパイアの頃の富岡町にあったわけじゃなかった??
……
えっと……
戦え猟兵たちよ!!