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エピゴーネンは目を閉じた

#サイバーザナドゥ #超能力者狩り #サイコブレイカー #メガコーポ:Larfied《ラーフィード》 #執筆速度低下中(MSページ確認願います) #第三章プレイング受付:2/19~

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#サイコブレイカー
#メガコーポ:Larfied《ラーフィード》
#執筆速度低下中(MSページ確認願います)
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●ヘイフリック限界を踏み越えて
 ヒトは、生きている間にいくつもの夢を見る。
 目を閉じていても、開いていても。
「――この事から、細胞複製時のエラー……即ち『老い』は、機械化義体の発達により十分に克服が可能です」
 此処に集った若き科学者たちもまた、夢を見ていた。
 生命が生命である限り逃れられない苦痛を退けようとする、神をも恐れぬ所業。
 もっとも、この世界での神などとうに電子の檻に閉じ込められて久しいわけだが。

「では、頭脳を電脳化し、身体をすべて機械のものへと変えてしまえばヒトは永遠に生きられるのでしょうか? 残念ながら、我々の現在の答えはノーです」
 夢を実現するにはコストがかかる。
 もっとも、メガコーポに所属する彼らにはその分野の問題の解決は容易い。『解決』に際して発生する別の問題は、彼らにとっては些事である。
「何故不可能か。この問題を論ずるにあたり、我々は別の問いに答えを出さなくてはなりません……つまり、何を持ってヒトは『生きている』と定義されるのか……という事です」

●最初で最後の邂逅へ
「皆は、どういう死に方が良い?」
 その日、狼の耳を生やしたグリモア猟兵の言葉は、大変物騒な響きから始まった。
 まるでサイバー・マフィアが敵対者に告げるような剣呑な話題を、しかし彼女はニコニコと語る。
「まあ、この話はもうちょっと後に置いておくわね。今回皆にお願いしたいのは、サイバーザナドゥで超能力者の人たちを守って欲しいってお話よ」
 置いておくには過激な切り出しだったが、彼女に猟兵の困惑を気にかけるつもりはないらしい。
 女が話題にあげたのは、サイバーザナドゥで暮らす|超能力者《サイコブレイカー》たちの話だった。

 サイコブレイカーというのは、違法薬物の過剰摂取により生まれる『人造サイキッカー』を指す言葉だ。
 この、違法薬物を用いて生まれるという点が厄介で、その反社会的な特性から彼らはしばしば“狩り”の対象にされてしまう。
 メガコーポによる超能力者狩りは上層階級を中心に好意的に受け入れられ、警察やヤクザも含めた都市の殆どはサイコブレイカーの敵となる。
「けど、『人造サイキッカー』は汚職警察やヤクザに虐げられるストリートの人たちにとって、最後の武器と呼べるもの。違法というのもメガコーポにとっての都合の悪さが反映された点もあるし、サイコブレイカーだから捕まえて良いわけじゃないわ!」
 なにより、メガコーポはオブリビオンを尖兵として用いる。
 つまり超能力者狩りとは、オブリビオンによる大量虐殺でもあるのだから、猟兵として見過ごすわけにはいかないだろう。
 今回、グリモアが映した惨劇の未来も、そうした超能力者狩りの一つであった。
「まずは超能力者狩りを止めてもらうのだけど、その後にメガコーポの追撃を止めることも必要ね……これに関しては、サイバースペースから攻撃すれば良いと思うの」
 サイバースペースとは、生身そのままのように活動できる電脳空間。サイバーザナドゥのフリーポータルからその空間にアクセスすれば、メガコーポが超能力者を追う為の個人情報を保管している箇所を攻撃することも可能だ。
 無論、そこには相応の|オブリビオン《セキュリティ》が待ち受けるはずだが……それこそ猟兵の得意分野だろう。

「と、此処までが前提。皆に向かってもらう『ラーフィド・シティ』ではもう一つお願いしたい事があるわ」
 実にサイバーザナドゥらしい退廃と強欲と狂気が支配する街と、それを支配する製薬を主産業とする|巨大企業群《メガコーポ》、Larfied《ラーフィード》。
 都市とメガコーポの名前は分かっているが、その他の多くは謎に包まれている街こそ、今回の猟兵たちの戦場である。
 オブリビオンすらも支配下に置くこの世界を牛耳る|怪物《企業》の一角は、この世界を狂気と退廃に導く恐るべき敵だ。
 グリモア猟兵の要求とは即ち、この怪物を討つ為の準備だった。
「どういった活動を行っているのか、その過程で出る犠牲は何か……そもそも、彼らの目的は何か。それらを知るためのチャンスが、今回グリモアに映ったの」
 彼女が示したのは、一人の老人の姿。
 とはいえ、老人と一目で分かる者は少数だろう……彼は、全身を義体に置き換えたレプリカントのような出で立ちであった。
「この人は、今回狙われるサイコブレイカーの一人なのだけど……オブリビオンは絶対殺せと命令を受けているようだし、実際絶対死んじゃうわ」
 メガコーポが特に殺害を厳命した人物。
 確かになにやら匂うものがあるが、絶対に死ぬとはどういうことか。
「勿論、皆が守ってあげればオブリビオンには殺されないわ……けど、彼は自分の寿命を決めているようで、義体の機能が停止するタイマーの日付が、今日なの」
 つまり、放っておいても勝手に死ぬ。
 そんな相手を必死に始末しようとするメガコーポに注目すれば間の抜けた話だが、猟兵の側からすれば事態は深刻だ。
 メガコーポを打倒する上での何かを知っているかもしれないこの人物と会話できるのは、今回が最初で最後のチャンスなのだから。
「まあ、そもそも『自殺なんてダメ!』って考えもアリだとは思うわ。でも、きっと彼もよく考えて寿命を決めたと思うの。あんまり頭ごなしに否定しないであげてね」
 最初に死に方を問うてきたのは、そういう事だろう。
 友好的に接して情報を引き出すためには、その死を肯定するという選択も十分に考慮すべきものだ。

「さて、長くなった話を纏めるわね! まず必要なのは今行われる超能力者狩りを止める事と、その追撃を断つこと! そして、その合間に件の“死んじゃう人”に接触して、メガコーポの情報を聞けるだけ聞いてくる! それじゃあ、頑張ってきてね!」
 ぱんと手を叩いたグリモア猟兵が話を終えると同時に、その手にあったグリモアの光が強く瞬き、猟兵たちを呑み込んでいく。
 異世界へと旅立つ彼らを迎えるのは、どこか古ぼけた印象の機械の駆動音であった。


北辰
 OPの閲覧ありがとうございます。
 マジでありがとうございます。2500字近くあるぞ今回、北辰です。

 過去二回お届けした『Larfied』にまつわる事件、ようやく都市の中に舞台が移ります。
 というわけで、今回からのご参加もまったく問題ありません。なにせ初なんで、この街舞台にするの。
 1章の集団戦から、2章日常、3章ボス戦と進行していきます。

●舞台:ラーフィド・シティ
 製薬を主産業とするメガコーポを中心に発展した模範的ザナドゥ市街です。
 利益の為に人道は軽視され、企業は人体実験を平然と行い、享楽的な娯楽に多くの金と薬と命が消費されていく美しい街です。
 1章で皆様が降り立つのはサイコブレイカーが多く住まうストリート。
 ジャンキーたちの笑い声が絶えない明るい場所です。治安も悪いけど猟兵にはあんまり関係ないです。

●状況(1章)
 サイコブレイカーたちは既にオブリビオンに包囲されております。
 彼らを守るためには、オブリビオンたちの興味を強烈に引く何かの手段か、包囲を突破しサイコブレイカーに合流する手段が求められるでしょう。
 サイコブレイカーたち自身もまったく戦えないわけではありませんが、戦闘慣れしていない彼らはオブリビオンより明確に弱いです。

 過去にラーフィド・シティの関連シナリオ(『オーバードーズ・インセイン』、『未来世界のヘパイストスよ』)に一度でもご参加いただいた猟兵の場合、現地住民のコネクションを利用できます。
 土地勘のある彼らのサポートで、包囲が完成する前にサイコブレイカーたちに合流できるものとします。

●NPC
 “エピゴーネン”
 サイコブレイカーの中でも最年長の老人です。多分偽名です。
 グリモアで情報を得た猟兵たちしか知りませんが、オブリビオンたちの最優先抹殺対象でもあります。
 全身を義体化しており、老人とは思えぬほどに機敏に戦えることでしょう。
 とても今日死を予定している人間とは思えぬほどに明るく、力強く生きているように見えます。

 基本的に彼と会話できるのは2章ですが、1章でも軽い声かけはできます。

●プレイング受付期間
 1章プレイングは1/29の8:31から。
 その後の受け付ける期間に関しては、タグでの管理を行う予定です。

 それでは、狂気が築いた都市の中。
 頂上に作られるものは何か、それを知るための皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『スラム・ハッカー』

POW   :    クラッシュ・プログラム
対象に【肉体暴走プログラム】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    アクセラレーション・プログラム
自身に【超加速プログラム】をまとい、高速移動と【ショットガンからの散弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    クレイジーワールドプログラム
戦場内を【バグまみれのゲーム】世界に交換する。この世界は「【移動はゆっくりとした歩行のみ】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●勃発
「ひ、ひひ……ははは……」
「ふふ……そうだ、俺がこの世界のおうさまなんだぁ……」
 基本的に、このラーフィド・シティでは笑顔が絶えない。
 上流階級の人々はメガコーポが齎す自分たちの繁栄に確かな幸福を感じてほほ笑むし、その恩恵を受けられない貧しい人であっても、このように|偽りの幸福《ドラッグ》を得るならば簡単なのだ。

 なにより、笑わないマトモな者は定期的にその数を激減させる。
「サ、|超能力者《サイコブレイカー》狩りだ! メガコーポのオブリビオンが来たぞ!」
 誰かの叫びと共に、ストリートに居た人間の一部が、その表情を一気に凍り付かせる。
 それは、この退廃の都市でもなお人間性を保ち続けてきた稀有な人々であり、往々にして本人であったり近しい人間が、略奪者から身を守るために超能力を手にしていたのだ。
 泡を食って逃げ出す者、家族を巻き込まないよう覚悟を決めて集まる超能力者たち。
 そんな混乱の中、一人の超能力者は隣に立つ全身義体の男に声をかけた。

「しかし爺さんも運がねえな……サイコブレイカーになってすぐこんな事になっちまうとは」
「確かに驚いたが、長く生きてるからね。こういう事もあるだろうさ、そら、急いで他の者から離れるぞ!」
 サイコブレイカーたちは、集団となって他の一般人から離れるように逃げていく。
 それを狩らんとするオブリビオンたちと……もう一方、彼らの知らぬ乱入者が来るのに、そう時間はかからないだろう。
ミリア・ペイン
要は体のいい理由をつけて市民狩りを楽しんでる訳でしょ?…ホントしょうもない組織ね
一刻も早く壊滅させましょ

【WIZ】《黒き怨恨の炎》
さて、皆には指一本触れさせないわ
到着次第【先制攻撃】からの【2回攻撃】で包囲網を爆撃して撤退路の確保

能力者達に戦わぬ様忠告
無茶な特攻で命を散らすなんて笑えないわ
兎に角今は私に任せて逃げときなさい

敵には【念動力】で周囲の物を浮かせて超能力アピール
注意を惹きつけ【挑発】

『お前達みたいな雑魚共、私一人で十分よ

移動が制限されてる分は手数で補い、接近されない様注意
炎を分裂させ【部位破壊】で足を狙い、機動力を削ぎつつ自分に近い奴から攻撃
弱った奴には炎を纏め強化、確実に止めを



●乱入者
 逃げる内に自然と一塊になった超能力者たちを、精神まで電脳化されたオブリビオンたちの狂笑が包む。
 彼らに投げかけられるのは、オブリビオンたちの声だけではない。
 狩られようとする超能力者の中に親しい者が居るのだろう、涙を浮かべ、どうか逃げのびてくれと虚しい願いを投げかける者たち。
 まさに人命が奪われんとするその様を、この上ない娯楽だと言わんばかりに囃し立てる|薬物中毒者《ドラッグジャンキー》たち。
 いずれにしても、サイコブレイカーたちをオブリビオンから救う力を持たぬことだけが共通していた。
「……皆、覚悟を決めよう。必死に戦えば、何人かは生き残れるかもしれない!」
 追い詰められた超能力者集団の中、重ねた年月故か比較的落ち着き払っているエピゴーネンはそれを悟り、自分たちの手で事態を打開するしかないと仲間たちを鼓舞する。
 だが、それを打ち消すもう一つの音。
「――駄目よ、無茶な特攻で命を散らすなんて笑えないわ。今は私に任せて逃げときなさい」
 決して大声ではない筈の少女の声が。
 禍々しい黒い炎を伴って、喧騒に包まれたストリートの中に放たれた。

「な、なんだ!?」
「argh……hee-hee!?」
 突然の轟音に、超能力者とスラム・ハッカーの双方に混乱が生じる。
 それから数秒経ってから彼らは、超能力者を包囲していたオブリビオンの一部が集中的に飛来した黒い炎に飲み込まれ、爆発と共に吹き飛ばされたことを悟った。
「超能力者狩り……要は体のいい理由をつけて市民狩りを楽しんでる訳でしょ? ……ホントしょうもない組織ね」
 そして次に、それを齎したと思われる声の主へと視線が集中する。
 その視線の先に居たミリア・ペイン(死者の足音・f22149)は、|継ぎ接ぎ縫い《パッチワーク》のぬいぐるみを傍らに浮かべたまま、呆れたような声と共にオブリビオンをじろりと見据える。
「Ppsyyycho……breeeaker……!」
 それは念動力を持つ超能力者の証明でもあり、先の先制攻撃も合わさってオブリビオンたちの敵意を一気に彼女へと集中させる事となる。
「ええ、こっちに来なさい……お前達みたいな雑魚共、私一人で十分よ」
 つまり……|ミリアの思惑通り《・・・・・・・・》だ。

「……っ、すまない、無理はしないでくれ!」
 あからさまな挑発をするミリアに、エピゴーネンを始めとした超能力者たちも彼女の意図に気づく。
 事情は呑み込めなくとも、強力な超能力者が救援に来たチャンスを逃がすまいと、彼らはミリアが穿った包囲の穴から逃走を始める。
「それでいいわ……さて、と」
 それを見送るミリアがオブリビオンに視線を戻せば、彼らはゆっくりと猟兵へと迫っていた。
 ふざけているのではない。この『ゆっくり』に逆らえば大きな不利を背負う事になると、ミリアも肌で感じていたのだ。
 このままゆっくりと囲まれ近づかれてしまえば、猟兵たるミリアとていいように袋叩きにされてしまう事は容易に想像がついた。
「なら、近づけなければいい話よね?」
 だが、相手に数と状況の利があるのなら、ミリアには|手《・》数と火力が味方する。
 悪霊の魂を込めた炎、百を超えるそれを一気に宙に浮かべると、ミリアはオブリビオンの群れを真っ向から迎え撃つのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

新田・にこたま
今日の私は武装警官ではなく謎の少女サイコブレイカーです。

…しょうがないでしょう!?我が故郷は人助けの時に武装警官として名乗り出ると間違いなく一悶着あって面倒なんですから!

見た目を変えた分身と合体し、ドラッグ入りキャンディーを咥えて参戦。

書き換えられた世界に合わせて一歩も動かず戦います。
電撃を纏わせたオーラ防御の壁を自分の前面に展開。それを手袋と袖で隠した義腕の怪力で敵に向かって殴り飛ばします。一連の攻撃の流れで使う技能はドラッグで強化されていますし、まあまあの威力になるんじゃないですかね。

サンダーサイコシールドマグナム!連打!

じゃ、適当に皆殺しにしておくんで、皆さんもゆっくり逃げてくださいな。


岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎

メガコーポが殺害を厳命した対象、というのに興味はありますがまずは差し迫った驚異への対処が先ですね。

現地の方のコネクションを利用して包囲が完成する前にサイコブレイカーの方達と合流し、オブリビオンによる攻撃から素早く守れる態勢を整えておきます。

敵の能力と装備から高速移動で肉薄してからの散弾銃による接近戦というものが想定されるので、ここは「石の鎖」ですね。

地形の泥濘化と敵を拘束する石の鎖があれば、敵集団は移動をかなり制限されるでしょうし、こちらを無視して超能力者達を狙うということも難しくなるはずです。

上手く動きを妨害できたら、カスタムカービンを使用した弾幕射撃により敵を攻撃します。



●遅滞戦術
 さて、超能力者狩りが始まるほんの少し前の事。
「この辺りがサイコブレイカーの方が集まるストリートなんですね?」
「ええ、流石に此処一か所っきりという事はありませんが、エピゴーネンと名乗る全身義体の男なら此処に居るはずです」
 地元住民の案内でストリートに現れたのは、岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)という名の女猟兵だった。
 見渡せば、道と家屋の境があまりはっきりしないこの地区には思いのほか多くの人間が暮らしているようだ。
 サラが目を細めて、メガコーポのオブリビオンが現れるならどの道からか、複数の襲撃方法を想定し警戒している間に、案内をしてくれた住民は一人の男に声をかけた。
「ああ、エピゴーネンさん! よかった、丁度此処に居たか!」
「ん? ああ、君はシティ外の……どうしたんだ、この辺りのろくでもない警官に見られたら、|賄賂《入場料》をふんだくられるぞ」
「失礼、用があるのは私なのです」
 全身義体の人物を見つけたサラも素早く駈け寄り声をかける。
 情報を引き出す以上あまり不躾な態度も取りにくいが、物腰を見るところ極端に話の通じない人物では無いようだ。
 ならば、急いだ方がいい。
「単刀直入にお伝えします。もうじき此処に、メガコーポがサイコブレイカーを狩りに来ます」
「なに? そんな、君は一体……」
 突如告げられた警告に対して、男がサラの正体を問いただす暇はなかった。
「サ、|超能力者《サイコブレイカー》狩りだ! メガコーポのオブリビオンが来たぞ!」
 逸脱を許さぬ企業の刺客は、すぐ傍まで迫っていたのだから。

「Hee……hahahaha!!」
 狂ったような、否、脳髄を強引に電脳化した為にまさに精神を崩壊させてしまったオブリビオン、スラム・ハッカーは耳障りな笑い声と共に現れた。
 メガコーポの命を受けて超能力者を狩りに来た彼らは、肉体を過剰に稼働させるプログラムを走らせて一気に獲物を包囲せんと走り寄る。
 命を削るユーベルコードでもあるプログラムの力は凄まじく、戦闘に慣れていないこの地のサイコブレイカーではまず逃げ切れはしないだろう。
「――ですので、まずはお逃げください。可能であれば、その後お話を」
「Gigiッ!?」
 ただし、オブリビオンの脚力が十全に発揮されるのは、彼らが走る路面がマトモならばの話。
 スラム・ハッカーが現れるより早く、サラが発動していた|戦闘魔法《コンバットマジック》によって、周囲の大部分はぬかるんだ泥地へと変化していた。
 なまじ強靭な脚力を得ていたばかりに、勢いよく泥に踏み込んでしまったオブリビオンたちは体勢を崩し、次々に転倒していく。
 もっとも、これだけで状況が解決するわけではない。
 サラの魔法はあくまで敵の接近を食い止めたに留まっているし、何よりもサイコブレイカーたちを逃がす都合上、ある程度は泥化していない『逃げ道』を用意する必要があった。
 当然、オブリビオンもその|隙《・》を逃すまいとショットガンを構えて接近し……。

「おっと、近づかせませんよ! そう、この謎の少女サイコブレイカーの目が黒い内はね!」
 妙なテンションで現れた女に吹き飛ばされていた。
「……あれは、そういう事ですか」
 常に冷静沈着であるサラが、そのクールさを保ったまま少しの間をおいて頷く。
 端的に言うと、あの謎の乱入者には見覚えがある。
 見た目は異なるが、あの装備と声色は新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)という少女のものだ。戦場を共にしたこともある彼女の情報を覚えていたのは、時に横のつながりが非常に重要となる|傭兵《サラ》の習慣のようなものだった。
「|何処のどなたか存じませんが《・・・・・・・・・・・・・》、ありがとうございます。そのまま退路の確保をお願いしますね」
 というわけで、サラはにこたまに気づかなかった事にした。
 自分を見つけた途端に目が泳ぎ出した少女を意地悪く追及する趣味は無いし、『武装警官を名乗ると話が拗れる』というにこたまの思惑には、彼女も同意できるのだから。

「任されました! サイコブレイカーの皆さん、此方から逃げてください!」
 というわけで、大変理解のあるサラの対応に内心胸を撫で下ろしながら、にこたまが超能力者たちの避難誘導を始める。
 流石本職というべきか、市民を安全な場所へと誘導するその様は手慣れたものであり、堂々とした彼女の言葉に超能力者たちも素直に従う。
「aa……run:crazy_world_program……!」
 一方で、オブリビオンの側もそのまま見逃すはずがない。
 泥に足を取られている事を逆手にとってか、空間に奇妙なノイズを走らせるユーベルコードが、周囲の移動速度を制限し始めた。
 これは彼ら自身にも影響を及ぼすユーベルコードではあるが、サラによる足止めを受けながら超能力者を追うのであれば実に有効な一手であった。
「これが私の超能力! サンダーサイコシールドマグナム!」
 そう、にこたまが居なければ。
 移動を制限するオブリビオンに対して、彼女はただの一歩も動かないまま対処を始める。
 膂力に長けた分身と融合した上で、にこたまはサイケデリックな色合いのロリポップを舌で転がす。
 サイコブレイカーへの擬態も兼ねた正義ではないドーピング。
 骸の海すらも取り込む危険なブーストをかけるにこたまが電撃を帯びたバリアを展開した次の瞬間、彼女は己が拳でバリアを殴り飛ばす!

「――連打ァ!」
 それも一つや二つではない。
 電撃を帯びたバリアは高い殺傷能力を持った質量弾のようなもので、自分のユーベルコードで回避が困難となっているスラム・ハッカーたちを次々に吹き飛ばしていった。
「なるほど、合理的ですね」
 それを見たサラもまた、己のユーベルコードによって石の鎖を展開し、オブリビオンたちを強く沼へと引き込んでいく。
 その手に握られるのはカスタム済みのアサルトカービン。彼女にとっても、移動の制限は支障なく克服できるものなのだ。
「じゃ、適当に皆殺しにしておくんで、皆さんもゆっくり逃げてくださいな」
 次々に屠られていくオブリビオンを尻目に、にこたまが超能力者たちに笑顔を向ける。
 それに若干の戸惑いの表情を浮かべながらも、超能力者たちは猟兵たちへの感謝と共に戦場を離脱していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノエル・カンナビス
(POW)

ふむ。こういう世界ですか。

経費他人持ちで現地調査に来ただけ、なんですけれどもね。
先に義務を果たしておきましょう。

……とは言っても、私のキャバリアでストリートに殴り込みますと、
街路ごと消し飛んでしまいます。
キャリアで戦車戦をしたところで火器は同じですし。
これが初陣になりますが、ガンシップで対地攻撃でもしますかね。

載せている機銃はクロム製の対キャバリア機銃ですから、
ショットガンの射程とは桁が違います。
[空中浮遊]からの撃ち下ろしで射的状態です。
[範囲攻撃]の一連射で一網打尽。移動の必要もありません。

何らかの手段で[空中戦]に持ち込んだとしても、
ガンシップの得意分野に踏み込むだけですよ。



●『傭兵』
『警告、警告。貴方は当シティにおいてLarfiedが保有する|空中権《・・・》を侵害しています。ただちにエリア外への退去を……』
「ふむ。こういう世界ですか」
 けたたましく鳴り続ける無線を聞き流しながら、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)はぽつりと呟いた。
 メガコーポによるサイコブレイカー狩り、それを食い止める為の戦力としてこのサイバーザナドゥを訪れた彼女の姿は、しかし超能力者たちの付近には無い。
「一企業が大それた話ではありますが……国家とでも捉えた方がよいのでしょうか」
 先ほどメガコーポの警告に含まれた空中権という言葉の通り、ノエルはガンシップを駆り、超能力者とオブリビオンを見下ろす形で空を飛んでいた。
 基本的にキャバリアやそれと共通する火器を使用した戦闘車を使用する彼女にとっては、いつも通りに戦うとただそこを通るだけでストリートを壊滅させてしまうだろう。
 それを解決する為の手段が、このガンシップというわけだが……。
『ただちに退去してください。警告に従わない場合、Larfiedは貴方の生命の安全を保障する事が困難となります』
「出ていかなければ殺す、を随分と回りくどく言うものですね。いえ、彼方は猟兵の存在を正確には把握していないのでしたっけ」
 シティに入った時からノエルのガンシップの無線が伝えているこの警告が問題だ。
 単純な兵器を差し向けてくるのなら今までのやり方で対応すればいいのだろうけど、この世界独自の|電脳戦《ハッキング》を仕掛けてきた場合、未知の手段で被害を被る恐れがある。
 現に無線は切ろうにも切れなくなっているし、情報の少ない相手にはそれなりの警戒が必要だ。

 ノエル個人の立場からすれば、別に警告に従って帰ってもいいのだ。
 いうなれば、自分の出費を抑えながら現地調査に来ただけなので、ひとまずの目的は達成している。
 とはいえ、あまりにも成果がないようだと今後の猟兵組織の|利用《・・》に差し支える恐れがあった。
「交通費分くらいは働かないとですね」
 そう考えたノエルが見下ろすのは、勿論サイコブレイカーを囲むオブリビオンの群れだ。
 彼女が機器を操作すればガンシップに搭載された機銃……対キャバリア用の大型の銃口がオブリビオン達を睨みつけた。
 狙うのは、超能力者を包囲するオブリビオン集団の最外部。
 キャバリアを直接持ち込むよりはマシと言えども、使用する火器のスケールはそのままなのだ。
 万一にでも守る側の超能力者たちに被害の出ぬよう離れた場所を狙う必要もあるし、包囲の内側、最も民衆に近づいた危険なオブリビオンは地上に居る猟兵が優先して片付けるだろう。

 ――狙いを付けたノエルが、引き金を引く。
 オブリビオンとはいえ、人間とさして変わらぬそれを血煙に変えてしまうには十分な兵力が地上を襲い、目標地点を制圧する。
 無線の警告を相変わらず無視するノエルがその戦果を確認し、一度シティ上空から離れるまでにかかる時間は驚くほど短かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月白・雪音
…振るわざるべしと学んだ武を振るい、業を重ねたこの身が死に際を選ぶ事はきっと叶わぬのでしょう。
されど、自らの意志を以て命の終わりを定めた者が企業によって殺められるを捨て置く理由もまた無し。
身を削る薬物を用いて尚自らの守らんとするモノが為に力を求めたとあらば、その想いは報われねばなりません。


以前の依頼において得たコネクションを利用し現場に最短にて急行
UC発動し怪力、グラップルによる無手格闘にて戦闘展開
見切り、野生の勘で敵の攻撃、軌道を予測し射撃体勢に入る前に残像にて肉薄、一撃一殺にて仕留める
撃破速度が足りなければアイテム『氷柱芯』を飛ばし巻き付け怪力にて振り回し、敵そのものを武器に周囲を一掃する



●慈悲の業
 理想の死というものがあるとして。
 月白・雪音(|月輪氷華《月影の獣》・f29413)が斃れる時に手にするものがそれだとは、彼女は思っていない。
 どれほどの力を得ようともそれに溺れず、振るうことなく争いを治める事こそが武の真髄と教えられておきながら、この身に幾つの業を重ねてきただろう。
「きゃあああ!? ……あ、あれ?」
「落ち着いてください、助けに参りました」
 そう己を評してなお、雪音はこの街に立っている。
 一見華奢ですらある細腕で超能力者の少女に向けられた散弾を|叩き落とし《・・・・・》、彼らを庇うようにオブリビオンたちに対峙する。
 今しがたの叫び通り、この超能力者の殆どは決して特別な戦士ではない。
 ただ、危険な薬物であっても手を出さねば、己と周囲を守れぬまでに追い詰められただけの普通の人々だ。
 だからこそ、雪音はまたその武を振るう。
 理想を遠ざける業というものがあるとして。
 それを背負う事は、誰かへ手を差し伸べない理由にはならないのだから。

「Hi――」
 残像がどうにか残るほどの速度で敵に肉薄した雪音の拳が相手の首を打ちぬけば、その一撃は命ごと頸椎を砕いて余りある。
 たとえ身体能力を加速させるプログラムをオブリビオンが使おうとも、常人の身体を粉砕する銃火器を猟兵に向けようとも。
 飛び掛かるオブリビオン達は彼女の拳に叩き落され、ショットガンの銃口を向けた瞬間、引き金を引くよりも雪音の蹴りが使用者もろとも粉砕する方が早いのだ。
 まさに一撃一殺と言うべき彼女の戦いに、しかし当の雪音本人だけが不足を感じる。
「Ha-Haahaha!!」
「うわっ、こっちからも……!?」
 オブリビオンの笑いと超能力者の怯えた声が、雪音の|後方《・・》から聞こえてくる。
 当然、雪音はその瞬間に跳躍し、オブリビオンの喉笛を掴んで引きはがすと同時にそれを握りつぶして仕留めるだろう。
 だが、それの繰り返しなのだ。
 オブリビオンは、超能力者を包囲する形でこのストリートに殺到していた。
 以前に雪音が救った人々の案内で急行できたからこそ、包囲の内側で超能力者を庇い続けていられるが、このようなモグラたたきの様相が続けば、いずれは不覚を取る事もあるかもしれない。

 それを正しく認識した雪音の答えは単純明快であった。
 一撃一殺で足りないのであれば、それ以上の力で敵を圧倒するまでだ。
「――皆様、どうか身をかがめてください」
 その儚げな容姿とは裏腹に、大きく通る雪音の声がストリートに響く。
 瞬間、超能力者たちは素直に姿勢を低くする。
 彼らも、この女性が自分たちを救おうとしてくれている事は分かっていた。
 それを確認した瞬間、雪音の手元からワイヤーアンカーが放たれる。
 極端に重量が先端に偏ったその道具は、精神が崩壊しているが故に先の警告を理解できなかったオブリビオンに巻き付き捕らえてしまう。

 ……徒手空拳で戦う雪音は、武器の類を携帯することがない。
 しかし、まったく扱えないかと問われればそれは違う。
「氷柱芯をそのまま振り回すのでは、重さが足りませんので――」
 捕らえたオブリビオンをそのまま振り回す彼女は、もはや嵐の具現と呼ぶべき圧倒的暴威となり。
 超能力者を囲む敵を、一気に吹き飛ばしてしまうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クゥ・クラウ
キャバリアには搭乗していない。

光翼を展開してストリートの上空を飛行。騒ぎのする方向に向かう。
超能力者たちとオブリビオンの姿を確認したら、見通しの良い場所に降り立つ。

『あれが件のご老人か。今日命が尽きるにしては、実に「健康」そうに見えるね』
AIのジョン・ドゥが端末越しに声を掛けてくる。この人がなぜ自分の寿命を定めているのか、どうして命を狙われているのか……。気になるけれど、いまはこの状況を何とかしないと。
人助けは、なるべくしたほうがいいから。

UC【召喚兵器『スカイフィッシュ』】。召喚門を開き、ドローンを呼び出す。
立体映像による分身を囮にして、ブレードを展開した複数の機体で包囲して攻撃させる。



●急降下
 常のものとは性質が異なるストリートの喧騒は大きくなる一方だった。
 サイコブレイカーを狙うオブリビオンたち、どうにか逃れようとする超能力者たち。
 そして、その戦いに介入せんと戦う猟兵たち。
 だからこそ、クゥ・クラウ(レプリカントのクロムキャバリア・f36345)がその現場を見つけることは難しい事ではなかった。
 翼の形をとる光を背負い、高所へと陣取った彼女の視線の先にいるのは、グリモアベースで名前が挙がった全身義体の老人だ。
『あれが件のご老人か。今日命が尽きるにしては、実に「健康」そうに見えるね』
 一人きりで立っているはずのクゥに、男の声が語り掛ける。
 彼女をサポートする相棒役であるAIジョン・ドゥの言葉はもっともで、追われながらも時に身体能力の劣る仲間を手助けする男に死の気配は感じられない。
 何故彼は死ぬことを決めたのか、何故メガコーポに命を狙われるのか。
 多くの疑問が思い浮かぶけれど、それは今問うべきことではない。
 この僅かな時間でクゥがどう動くかによって、きっと多くの人の命運が変わるのだ。
 さあ戦場に出よう。彼女の|初期設定《良心》が人を助けろと命じている。
 ……たとえ、救った人が死ぬのだとしても。

「召喚門、形成……開け」
『立体映像は僕が操作する。攻撃と自分の回避に集中してくれ』
 飛び降りるように身を投げたクゥの周りに、彼女と同じ姿の映像がいくつも浮かび上がる。
 高速突撃ドローン『スカイフィッシュ』により展開されたそれらは、本体であるクゥと同じように光の翼を広げ、ジョンの操作によって多種多様な動きでオブリビオンの注意を引き付けた。
 クゥとジョンの戦術の巧みさは、彼女たちが戦場に突入する|初期位置《・・・・》に現れる。
「Hi……Hahahahaha!!」
「これは……皆、チャンスだ!」
 高所からオブリビオンに突撃する形となった猟兵、それを迎え撃つスラム・ハッカーたちは当然頭上へと注意を向けていた。
 そうなれば当然同じ地面に立つ超能力者たちへの関心が薄まり、彼らが逃走するのにうってつけの好機が生まれる。
 空から降りてくる少女に感謝を向ける超能力者たちを認めながら、ジョンはドローンを一気に動かし回避機動を取らせていた。
『加速プログラムは銃弾まではカバーしていないね。これなら回避は容易だ』
 矢継ぎ早に放たれるショットガンの散弾も、地上を移動して近づいたのなら流れ弾を気にしながら、時には受け止める必要もあったろう。
 だが、クゥの背後は空中だ。気兼ねなく銃弾を躱す少女は飛行装備を一気に加速させ、落下するようにオブリビオンとの距離を詰める。
 一、二、三。彼女と共に突撃したドローンのブレードがオブリビオンを斬り裂き動きを止めれば、エネルギーハンドガンの弾丸がその頭蓋を撃ち抜いていく。

 鮮やかに強襲を成功させたクゥは、しかし次の瞬間また地上に飛び立つ。
『さあ繰り返しだ。作戦目的は全滅ではなく……』
「あの人たちが逃げ切るまで……大丈夫、やり遂げてみせる」
 十分な高さまで高度を上げたクゥとドローンが美しい弧を描くようにターンをすれば、オブリビオンを屠る急降下がまた再演されるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

篠上・八十一
アドリブ・共闘歓迎

【WIZ】(安っぽいライターに火をつけ、UC発動)
お前等が死のうが生きようが興味はねェ、ただ死にたくねェなら…(と言いかけ、死なせちゃ拙いのが居たなと思い出し)アー…やっぱ死にたかろうが関係ねェ。さっさと尻尾巻いて逃げちまいなァ!

鬼火で敵とサイコブレイカー共の間に壁を作るぜ。
ンで当ッ然、俺様の周囲も鬼火で護る!最優先だ。
…何か景色変わってねェ?ま、いっかァ。動く必要もねェだろ。
さァて?無鉄砲に突っ込んでくる馬鹿もいるだろうが、関係ねェ。
火の壁に触れた奴ァ鬼火を集めて、そのまま火達磨にしてやらァ。
俺様の気分を害した罪と罰だ。そらッ塵も残さず焼け死んじまいなァ!
(悪人面&高笑い)



●笑う
 さて、基本的にスラム・ハッカーは猟兵たちより弱い。
 此処の超能力者たちは戦闘に慣れていないが、そうでなければ現地住民でも十分に戦えるような練度であるので、それも当然の事だ。
 では、この戦いが楽であるかと言えばそれは違う。
 弱者を守らねばならない戦いというものは、ただ強敵に立ち向かうよりも困難である。
 その戦いに、必要なものを幾つか上げるとするならば、それは守るための強さと。
「お前等が死のうが生きようが興味はねェ、ただ死にたくねェなら……アー、やっぱ死にたかろうが関係ねェ。さっさと尻尾巻いて逃げちまいなァ!」
 時に絶望に屈してしまいそうになる彼らの心を引き上げるだけの、|存在感《みりょく》だろう。

 篠上・八十一(デッドマンの世界的スタア・f33367)の登場は、劇的と評するほかなかった。
 超能力者たちを追い立てるオブリビオンの行く手を阻むように放たれた鬼火は煌々と燃え盛り、自信に満ちた表情で現れた八十一をぼうっと照らし、その威風を高めていた。
(死なせちゃ拙いのはどいつだったか……いいか、全員逃がしときゃあ)
「さあ、この俺様自ら用意してやる花道だ。滅多にないぜェ? ここまでのサービスは!」
 超能力者を守るように展開したユーベルコードの炎。
 それを一か所だけ開き、道を作るように操作した八十一の声を受け、超能力者たちが移動を始める。
 が、その進みが妙に遅い。普段であれば、何遊んでいると八十一から激の一つも飛んだだろう。
「……何か景色変わってねェ?」
 そうしない理由は簡単。『遅い』という異常は八十一自身にも降りかかっていたのだ。
 八十一が逃がすためにユーベルコードを使うなら、オブリビオンは当然逃がさぬために同じ力を操る。
 彼らが操る世界を蝕む|誤作動《バグ》は、この状況下では非常に有用な力であった。

「――ま、いっかァ。動く必要もねェだろ」
 ただし、八十一を動揺させるには不足という他ない。
 そのまま逃げとけと超能力者を追い払うようなジェスチャーをした後、彼は鬼火を操作する。
 超能力者と自身を守る壁を作ったまま、それを広げていくだけだ。
 それだけで、オブリビオンは面白いように燃えていく。
「俺様の気分を害した罪と罰だ。そらッ塵も残さず焼け死んじまいなァ!」
 広がる炎は容赦なく敵を呑み込む。
 八十一の言葉通り、何も残らずに燃え尽きるオブリビオン達を見て、偉丈夫は高らかに声を上げる。
「Hi……Ha、Haa……」
「おうお前らも嬉しいか! 最期に拝むのが俺様の尊顔なんだから当たり前だよなァ!」
 オーバードーズで狂い切ったオブリビオンが燃やされながらに狂った笑いを上げれば、それに気を良くした八十一も一段と大きく笑い。
 先ほどまで喧騒に満ちていたストリートを最後に彩るのは、猟兵とオブリビオンの高らかな笑い声だけであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 日常 『癒しの一杯』

POW   :    好きなドリンクでまずは乾杯

SPD   :    安いがうまいと評判の料理を食べてみる

WIZ   :    店主や他の客との会話を楽しむ

イラスト:鹿人

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●会話
 |超能力者《サイコブレイカー》狩りのオブリビオンたちと、それを防がんと介入した猟兵たちの戦い。
 騒動の後、メガコーポの追跡を逃れるため、超能力者たちは散り散りにストリートを発った。
 これまで通りの暮らしは望めぬだろうが、ここ最近になって治安が良化しているというシティ外のスラムへと潜伏を決めた者も多い。
 まだ未熟なユーベルコード使いであれども、そのまま根付いてくれるのなら人々をオブリビオンから守る戦力になってくれるかもしれない。

 一方、戦いから数刻後、彼らの姿はストリートの片隅にある小さなバーにあった。
「まずは、お礼を言わせてほしい。君たちの助けが無ければ夥しい数の犠牲が出ていた事だろう」
 口を開いたのは、全身義体の老人エピゴーネン。
 彼は、自分と隣人たちを救ってくれた猟兵に深く頭を下げ、素直な謝意を示す。
 とはいえ、メガコーポが一度の失敗で諦めるはずもなく。
 超能力者狩りを完全に停止させるためには、敵が持つ獲物のリスト……超能力者の個人情報を電脳上から消去する必要があった。
「その為に、サイバースペースから攻撃をしてくれるというのなら……私も知っている事を話そう」
 ドリンクを勧めるエピゴーネンは、猟兵たちの素性を知る筈もない。
 だが、メガコーポに抵抗するこの異邦人たちへの心象は穏やかなものだった。

「まず、自己紹介から始めた方がいいだろうな……私はエピゴーネン、Larfiedから逃げ出した元科学者だ」
●マスターより
 この章ではエピゴーネンからメガコーポに関する情報を聞くことができます。
 皆様はこれまでのシナリオ、オープニングで描かれた描写ならば猟兵が登場していなくとも『予兆』として認識できています。
 成功数の都合上、少数採用になる可能性がありますが、どうぞお付き合いくだされば幸いです。
新田・にこたま
前情報から大体の予想はついていたので特に驚きはしませんが…まあ、信用できる肩書ではありませんよね。

それこそ、場合によってはUCで…すぐにはやりませんが。

少なくともメガコーポの襲撃に茶番感はなかった。彼がLarfiedと袂を分かっていることは事実だと判断します。

ただ、メガコーポなんてどれだけ疑っても足りないなんてことはありませんので。少しでも怪しい点を感じ取ったらUCの使用を検討します。大丈夫だとは思いますが。

とりあえず話したらスッキリできそうなことは全部言っておいた方がいいですよー。
色んな悪党を殺してきたから分かるんですが、未練というものは最期の瞬間にはいくらでも湧いて出てくるものらしいので。



●病
「――まあ、信用できる肩書ではありませんよね」
「……やはりというか、君たちは実に真っ当な感性をしているね」
 メガコーポの元科学者という名乗りを受けて、にこたまは思った事をそのまま口にすることにした。
 彼女の読み通り、不信を告げられた側であるエピゴーネンに気分を害した様子はない。
 このサイバーザナドゥにおいて、メガコーポこそ退廃と狂気の源泉であることは誰もが知るところ。
 その名を聞いたある者は悪魔を見たように恐れ、ある者は己が生命を守るため必死にこびへつらい。
 多くの者がその狂気と力を知るだろう存在の名を聞き、信用ならぬと語るその姿勢こそ、メガコーポに追われるサイコブレイカーにとっては距離を縮める助けになるのだ。
(少なくともメガコーポの襲撃に茶番感はなかった……自分から話す分には素直に話させておきましょう)
 もっとも、このやり取りで救われているのは、猟兵の側ではないかもしれないけれど。

「とりあえず、話したらスッキリできそうなことは全部言っておいた方がいいですよー」
 ――未練というものは最期の瞬間にはいくらでも湧いて出てくるものらしいので。
 付け加えた言葉は、重い実感の籠っていたものだった。
 多くの悪党の最期を見て来たにこたまの言葉に、エピゴーネンは少しだけ首を傾けて顎をさする。
 彼が生身の身体を残していたら困ったような表情を浮かべていたかもしれないなと、にこたまは何となく考えた。
「全部となると日が暮れてしまうな……ではまず、私がLarfiedに入社した180年前から……」
「ちょっと待ってください?」
 思わず、といった素振りでにこたまは彼の肩に手を置き、話を止めた。
 それと同時に、戦いの時から自分に融合させていた分身を介してユーベルコードを使用する。
 記憶を奪い、そのまま返す形で与える。相手に極力怪しまれぬよう素早くそれを行ったにこたまが確認したのは、エピゴーネンの年齢だった。
(実年齢……200歳!?)
 サイバーザナドゥにおいて、特別長寿の種族というのは存在しない。
 極めて高品質なレプリカントであったり、特殊なバーチャルキャラクター、神隠しで他の世界から流れてきた種族などが全くいない訳では無いだろうが、少なくとも目の前のエピゴーネンは全身を義体に置き換えただけの人間だ。

「人間……ですよね?」
「人間だよ。まだ、ね」
 にこたまの問いに、何処か含みのある返事をしたエピゴーネンが嗚呼と声を上げる。
 彼自身、猟兵達が街の外から来た人間だという事を失念していたのだ。
「前提の話からした方が良さそうだね。私が所属していたメガコーポ、製薬会社Larfiedの目的だ」

「彼らは病を根絶したいのさ……原初から我らを蝕む、『死』という病を」

成功 🔵​🔵​🔴​

篠上・八十一
アドリブ、共闘歓迎

(奢りの酒とグラスを片手にニヤニヤと意地悪そうな顔で肩を組む)
よ~ォ、爺さん。あんた、相当熱烈なファンがいるみてェだなァ?
で、何やらかしたんだァ?言ってみろよ、ホラ。
俺様が直々に助けてやったんだぜ?相応の礼をもらわねェとなァ?(頬ぺちぺち)

(話を出し渋る様子なら嬉々として絡み酒の真似事をしながら、素直に話された場合は拗ねたような顔で、情報を聞き出す)

…フーン?まァ、こんだけ聞けりゃあ上出来だろ。
そんじゃなァ、エピゴーネン。寝酒にゃァ良い酒呑めただろ?


クゥ・クラウ
「アナタは、メガコーポに狙われている。どうしてなの?」
エピゴーネンに尋ねる。何か重要な情報を持っているのかもしれないし、義体に特別な技術が使われているのかもしれない。
『|模造品《エピゴーネン》。或いは、その存在自体が禁忌なのか』
AIのジョン・ドゥが何かをつぶやいた。

「なぜ、アナタは死ぬの?」
本来、自殺なら止めるべきだと思う。それが道徳的で良心的な行動だから。
だけど……
このヒトが自らの死を定めた理由は、今の自分には完全に理解することはできないかもしれないけれど。ワタシが邪魔をしていいことじゃない、と感じる。
死んだ後にその体をどうすればいいか訊いておく。

「アナタの魂に、安らぎがありますように」



●最終実験
 ラーフィド・シティを支配するメガコーポ・Larfied。
 その目的が『死』の根絶であると告げられた猟兵たちに動揺はなかった。
「まあ、悪の結社の目的としちゃ王道のもんだよなァ」
 八十一が語る通り、世界を問わずこの手の話は多いのだ。
 生命が生命である限り苦しめられる老いと病。
 優れた能力を持つ多くの人間がそれとの戦いに立ち向かい、その最終系として夢想する目的だ。
 そう、多くの場合、死の克服は夢物語でしかない。
「アナタは、それが可能だと思っているの?」
「……少なくとも、この世界の科学はまだ、『不可能』の証拠を見つけてはいないからね」
 クゥの問いに対するエピゴーネンの声は暗かった。
 自分で、自分の言っている事を信じていないような不信が滲み、それを認識したクゥの相棒であるAIジョン・ドゥは小さく呟く。
『彼の意見……というより、Larfiedの考えなのだろうな。彼がメガコーポを抜けたのは、その辺りの意見の不一致か……?』
 それに対して、クゥが更に聞いてみるかと口を開きかけたその時。
「ところで、爺さん。あんた、相当熱烈なファンがいるみてェだなァ? あのオブリビオン連中、俺に次いであんたにお熱だったぜ?」
 細かい問答は面倒だとばかりに、八十一は大きな疑問に切り込んだ。

「……そうか、私が最優先の抹殺対象。逃げ出したのは50年以上前の事なのに、どういう事だ……?」
「はいソコで頑張って、心当たり思い出そう! 俺様が直々に助けてやったんだぜ? 相応の礼をもらわねェとなァ?」
 元メガコーポの人間に猟兵の事情を明かしすぎるのも危険が伴う。
 状況証拠からエピゴーネンにメガコーポの殺意を納得させた八十一が、絡み酒のような状態で彼を追及する。
 それに対するエピゴーネンの言葉は少ない。何かを隠しているというよりも、本人が言う通り、何故そうなっているのかが分かっていない様子だった。
『エピゴーネン……模倣者や模造品という意味を持つ言葉だね』
 それに対して発言をしたのはジョンであった。
 クゥの方から聞こえた男性の声に一瞬エピゴーネンは顔を上げるが、此処は電子技術の発達したサイバーザナドゥ。このような接触の仕方もあるだろうと、彼の動揺はすぐ収まる。
『何故、君はそう名乗るんだい? 君にとって、君自身が模造品だと?』
「……私の身体は、Larfiedにおける高い権限を持つ科学者、役員たちが持つものと同じ造りだ。私自身が、『高い地位の科学者』だったからね……その成果だけ掠め取って、彼らの狂気を止めることも無く逃げ出した自分の恥知らずな行いを忘れぬよう、その言葉を名前にしたんだ」
 それまで、猟兵への感謝から積極的に話を進めていたエピゴーネンの声が小さくなる。
 メガコーポの核心に近い立場に居た彼にとって、メガコーポの暴走から逃げ出して、その後かつての仲間がシティに齎した退廃と悲劇から目を逸らし続けていた事実は、大きな恥であり罪悪感を覚えているのかもしれない。

「さっきの猟兵との話じゃ200年生きたって? ――それだけ生きたから、後は罪滅ぼしに死んでやろうとでも思ったか?」
「……なんでも知っているのかい? 君は……」
「俺様だからな。目の前に居る奴がどう考えてるかなんて丸裸よ」
 こうなると、エピゴーネンの胸中をまるで気にしない八十一の傲岸不遜な態度が寧ろ良い方向に作用していた。
 猟兵に、彼のこれまですべてに寄り添ってやる時間はない。
 堂々とした態度で、しれっとエピゴーネンが予定する自死に関する情報も既知であると伝えた八十一に、老人は恥じ入るような態度のまま言葉を返す。
「情けない話だが、生きていられるなら生きていたと思う。私のままで、生きていられるなら」
「あん?」
「機械化義体とサイバースペースのような電脳技術で、肉体的な死を遠ざけることはできる。だが、そもそも人間の精神は長く生きるのに向いていないのかもしれないんだ」
 端的に言えば、無理やりに延命した人間はその精神を大いに疲弊させる。
 完全に精神が壊れ、狂死するのであればまだいい方で、完全に精神が変質した人間が生きながらにしてオブリビオンへと変貌した事例もあるのだと彼は語る。
「Larfiedが製薬事業を中心に発展したのも、精神の変調を抑える上で投薬が分かりやすい対抗手段であったから、という事情もあるんだ」
 どこか懐かしむような声色で、彼は己が知るメガコーポの始まりを呟いた。

「……まあつまり、私自身そろそろ限界が近いようでね。発狂して暴れまわったりオブリビオンになるよりは、自分で機能を停止させてしまう死に方がいいのさ」
「……そう」
 男の結論に、クゥはただ短く返した。
 命は大切にするべきで、自殺は止めるべき。これが彼女の知る道徳だ。
 けれども、命の天秤のもう片方の皿にかけられているのは彼の尊厳とでもいうべきもの。
 それを犠牲にしてでも生きるべきだとは、彼女には言えなかった。
「死んだ後はどうするの? 体に何か処置が必要なら手伝うけれど」
 その上で、彼女が選んだのは慰めの言葉だった。
 ただ、この老人の魂に安らぎがある様にとの良心から発せられた言葉。
「ああ、体なら……体?」
 だが、それに返事をしようとしたエピゴーネンの動きが、止まった。

「……私の身体は、メガコーポの幹部と同じものだ。今もメガコーポに居る彼らの方がより洗練されているだろうが、基本的な設計思想は変わらない」
「ああ、ついさっきあんたがそう言ったな」
「私の身体は、もう殆どが造り物。死んでも適切な処置を与えれば動き出す……そこに宿る意思が『私』であるかは、怪しいものだが」
『……それはもうオブリビオンなのでは?』
 デッドマンである八十一が、じろりとジョンが宿るクゥの髪飾りを睨む。
「今更私を殺すというのは……『回収』がしたかったんじゃないか?」
「……何のために?」

「実験だ。自分たちを裏切った、自分たちと同じ体を使っての……彼らの『不死』は、思ったより完成が近いのかもしれない」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

岩社・サラ
アドリブ歓迎

例の老人はメガコーポの科学者だった人物ですか…メガコーポが殺害を厳命するということはそれだけ知られたくない情報を知っているのでしょうね。

またとない機会ですし前から気になっていたことを尋ねてみます。

以前関わった案件でメガコーポが偶然生み出してしまったレプリカントが関わっているものがありました。

レプリカントが生み出されるような工程を経て生産される物体を何故製薬会社が欲しているのか、という点が以前から疑問でした。
私はあまりこの世界に詳しくないですが、レプリカントというと機械的なものを連想してしまい製薬会社とは繋がらないのですよね。

そういった部分について心当たりがあるか質問をしてみましょう



●観測
 猟兵が、メガコーポに関わっていた老人から引き出した情報。
 人類原初の夢と言っていい代物、『不死』を今なお求める狂気のメガコーポLarfied。
 限りある命を延命した際に生じる精神の崩壊により、実現が不可能であったその目的。しかし、今日起こった裏切者を狙った超能力者狩り。
 それは、Larfiedの幹部たちと源流を同じくする身体を持ったエピゴーネンを使って実験を……限りなく完成に近い最終段階のそれを行うつもりなのではないか。
 エピゴーネンの推測も混じっているが、これまで得た情報を頭の中で整理したサラが、男へと言葉を投げかける。
「以前関わった案件でメガコーポが偶然生み出してしまったレプリカントが関わっているものがありました」
「それは……いつ頃の事かな」
「半年ほど前です」
 サラの言葉に、エピゴーネンは考え込む。
 彼自身が持っていない答えを、知っている情報の断片から導き出そうとしているような、深い思案の素振りだ。

「私はあまりこの世界に詳しくないですが、レプリカントという機械的な技術を製薬会社が扱っている事に違和感がありました。貴方の仰る、不死を実現する為の肉体を作る為でしょうか」
「いや、物理的な問題を排除する為の義体化技術はとうに手に入れているはずだ。何十年も前に逃げ出した私がこんな体を持っているのだから……半年前か」
 全身義体の腕を振りながら、老人は更に思考を進める。
 サラへと向けられるアイカメラは、頻繁にピントを調整していた。
「そのレプリカントについて、もう少し教えてくれないか」
「タロスという名前で、幼い男性型です。兵器利用も出来るほど頑丈だそうですが、これはメガコーポも意図していなかった特性だったようです」
「義体の為に技術研究をするにしても、自分の身体に戦闘能力まで付与しなくていいからな……それこそ護衛のレプリカントを作ればいい」
「メガコーポから逃げ出した形になっていた所を我々が保護しました。現在の居場所は伝えられませんが、研究所の他の仲間を心配しつつも健康に過ごしています」
「研究所には、まだ複数人のレプリカントが居るわけか」
「いえ、一部人間も混ざっているようで。いずれも子供と言っていい年齢だそうです」
「……まさか」
 いくらかの問答を経て、老人の様子に変化が訪れた。
 手で顔を覆ったまま天を見上げ、何か恐ろしい事に気づいてしまったような振舞で。

「……心当たりがありますか?」
「昔……まだ大半の人間が正気を保っていた頃、延命での精神崩壊を解決する為にある計画が提案された」
 その名を、『クオリアプロジェクト』。
 エピゴーネン曰く、余りの非人道性ゆえに封印されたものだった。
「クオリア……主観的意識などを意味する言葉でしょうか」
「もっと曖昧に『感じ』と訳されたり、感性と呼ばれたり……非常にあいまいで、複雑な概念だ」
 その、あいまいで複雑な『心』をいかに守るかが、Larfiedの研究のテーマだったと言っていい。
 長く生きると精神の均衡が崩れるというなら、それは何故か。
 どのような要因を持って心が壊れるのか、逆に健全な心を保っている人間に見られる要素とは何か。
 あいまいで神秘的なそういった領域を如何にして数値と物質で観測するか……それがプロジェクトの目的であった。
「単純に、メンタルが強いと呼ばれる人間が居るだろう? そういった存在を人工的に作る。人間と変わらぬレプリカントを用いる案もあれば、遺伝子操作や投薬によってデザインされた人間の子供を想定した案もあった……それが前提の話だ」
「……続けてください」
 男が、言いよどむ。
 この街で様々な狂気と退廃を見て来た筈の男が。

「理想的なクオリアを観測する為の計画だ。観測と言うのはつまり……脳細胞の細部に至るまでを、なるべく完璧な状態で確認する事」
 そこに精神崩壊を防ぐための要素が見つかったのなら、十分な実験を行ってから不死を求める幹部たちにそれを適用する。
 言ってしまえばそれだけだが、その『観測』が問題だった。
「恐らくメガコーポが計画しているのは……多くの子供を用いた、生体解剖実験だ」

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『サイバー・プリースト』

POW   :    我が啓蒙の証を見よ
【骸の海のさらなる過剰摂取により『真理』】に覚醒して【常に変化と膨張を続ける『渾沌の怪物』】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    破滅は救いなり
【骸の海に沈むことが救いだという、破滅】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【戦意喪失と自殺衝動】の状態異常を与える。
WIZ   :    これこそが我が教義である
レベル×1体の【破滅の教義に感化された従僕】を召喚する。[破滅の教義に感化された従僕]は【骸の海】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。

イラスト:100

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ムルヘルベル・アーキロギアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●最期に目にするものは
「この回線だ。此処からアクセスすればメガコーポの保安部門……今回の超能力者狩りに使われたサイコブレイカーたちの追跡データがあるセクションに辿り着く」
 超能力者狩りを完全に食い止めるには、企業が保有するサイコブレイカー達のデータを破壊する必要がある。
 それをもってこの騒動に決着をつけるべく、サイバーザナドゥの電脳空間……サイバースペースへと侵入した猟兵たち。
 現実世界となんら変わらぬ体の感覚に戸惑う者もいる中、彼らを迎えたのは見覚えのない初老の男だった。
 そうは言っても、猟兵たちに動揺はない……Larfiedの電脳領域への案内を買って出たエピゴーネンの電脳上での姿が、身体を機械化義体に換装する前のものであることは、事前に聞かされていたからだ。
「先ほど、チラとだけデータが保管されている領域を超能力で確認してみた……やはり番人が居るな」
 彼自身もサイコブレイカーであるエピゴーネンによると、番人として電脳上に存在するオブリビオンにも自分と同じ気配を感じたとのこと。
 同じとはつまり、|超能力者《サイコブレイカー》としての力だ。グリモアの予知で猟兵に知らされたオブリビオンの能力の他にも、念動力での干渉に注意を払うべきだろう。

「恐らく、彼も命を引き延ばし続けて……限界を超えたのだろう。私やメガコーポ上層部の未来の姿という訳だな」
 不死を求めるLarfiedが解決できていない精神の崩壊と、それに伴うオブリビオンへの変貌。
 語る男の表情には、現実での機械の身体には浮かべられなかった、警戒と納得が入り混じっていた。
 そこに今なお生き続けるLarfiedの幹部たちがそうなる事への警戒心はあれど、彼自身がオブリビオンとなる危険への恐怖はもうない。
 ――生きたまま電脳空間に入った猟兵たちと違い、現実のエピゴーネンの身体はもう機能を停止していた。
 彼の身体がメガコーポの手に渡れば恐ろしい実験が進行してしまうと予測できた以上、後ほど跡形もなく粉砕する手筈も整えられている。
「恥知らずにも命に縋りつき、その過ちも償わぬまま生きながらえてきた私が言えることではないが……どうか、堕ちてしまった仲間たちに脅かされる無辜の人々を守って欲しい」
 それを見届けたなら、彼の精神は電脳上からログアウトし、もう帰る身体も無い魂はようやくこの世から消滅するのだろう。
 |だからこそ《・・・・・》、穏やかな表情を浮かべる老人は。
 感謝か謝罪か、あるいはそのどちらも込めた深い礼と共に、メガコーポのオブリビオンが待つ電脳セクションへと向かう猟兵たちを見送るのだった。
藍沢・瑠璃(サポート)
【性格】
自分に自信がなくて基本的にネガティブな思考ですが臆病というわけではなく意外と思い切りはいい性格をしています。
強い相手には相応にビビりますが弱そうな相手(集団敵)には基本的に強気です。
普段は敬語で一人称は「ボク」です。
【戦闘】
ボス的にはビビりつつもなるべく油断させて隙に怪力を生かした接近戦で圧倒しようとします。基本は接近戦しか能がありません。
集団的では一転して強気になって敵陣に突っ込んで格闘で蹂躙したり怪力で(文字通り)ちぎっては投げして戦います。
基本的に接近戦しか能がありません。


水心子・真峰(サポート)
水心子真峰、推参
さて、真剣勝負といこうか

太刀のヤドリガミだ
本体は佩いているが抜刀することはない
戦うときは錬成カミヤドリの一振りか
脇差静柄(抜かない/鞘が超硬質)や茶室刀を使うぞ

正面きっての勝負が好みだが、試合ではないからな
乱舞させた複製刀で撹乱、目や足を斬り付け隙ができたところを死角から貫く、束にしたものを周囲で高速回転させ近付いてきた者から殴りつける
相手の頭上や後ろに密かに回り込ませた複製刀で奇襲、残像やフェイントで目眩まし背後から斬る、なんて手を使う
まあ最後は大体直接斬るがな

それと外来語が苦手だ
氏名や猟兵用語以外は大体平仮名表記になってしまうらしい
なうでやんぐな最近の文化も勉強中だ



●番人
「――セキュリティへの侵入者を確認。|削除《デリート》作業を開始します」
「ひえっ……!? このサイバースペースでデリートされた時って、どうなってしまうんですかボクたち……!」
「ねっとわぁく上でもこうして生身同然に動けることを考えると、死ぬと思っておいた方がいいかもしれないね」
 メガコーポの電脳データベースを守るオブリビオン、『サイバー・プリースト』の無貌が招かれざる客たちに向けられる。
 それにたじろぐ藍沢・瑠璃(ヤドリガミのゴッドハンド・f37583)と、落ち着いた様子で言葉を返す水心子・真峰(ヤドリガミの剣豪・f05970)。
 二人ともが太刀を携えたヤドリガミである彼女たちの目的は、プリーストが守るサーバーのデータだ。
 故に、番人さえ出し抜いてしまえば強力なオブリビオンとわざわざ戦う必要もないわけだが……。
「侵入個体の高出力エネルギーを確認、変形機能の制限を解除……『哀れな定命の者たちよ、我が啓蒙の証を見よ』」
 侵入した猟兵たちの力量を確認したプリーストは、その身を戦闘に適した物へと変形させていく。
 シルエットとしては人間の形を留めていたオブリビオンはぼこぼこと膨れ上がり、無秩序に手足を生やした肉塊の怪物へと変貌するのだ。
「……あれを無視してサーバーを壊そうとしたら、酷い目に合わされますよねぇ?」
 声が震え、無意識に語尾が伸びてしまう瑠璃へ、真峰は苦笑を浮かべて頷く。
 サイバースペースの性質上、サーバーの|不正改竄《クラッキング》に高度なハッキング技術は不要のはずだが、あの敵に背を向けて作業を進めるのは自殺行為だろう。
 二人のヤドリガミは意を決し、眼前の敵へと対峙するのだった。

 骸の海の過剰摂取により、暴走にも近い強化を遂げたオブリビオンの剛腕が電脳世界を揺らす。
「うわぁ、ひええ!? どうしてボクばかり追うんですかー!」
 それに追い回されるのは、もっぱら瑠璃である。
 ユーベルコードにより本体である太刀を周囲に浮かべる真峰に対して、瑠璃は一見して無手であった。
 その為か、まず脅威度の低い相手を排除しようと考えたオブリビオンに優先的に狙われる羽目になったのだろう。
「うーん、早めに助けてあげたいけど……結構厄介だね、これは」
 一歩引いた立ち位置から敵を見る真峰の額には、一筋の汗が。
 瑠璃に気を取られているオブリビオンは一見して隙だらけなのだが、そこへ攻撃を加えれば自分も一緒に追われることになるだろう。
 この状況を活かすなら初撃の奇襲で相応の痛手を与えたいのだが……ここで敵の使った変貌のユーベルコードが問題となる。
「原形を留めてないから首も眼もどこにあるのか……何処を斬れば怯むのかな」
「何処でもいいから助けてくださいぃ!」
 肉塊となった敵の急所がわからず、真峰は観察を続ける。
 依然として瑠璃は悲鳴を上げながら逃げているのだが、あれで彼女は動けるのだ。
 巨大な腕を振り回すオブリビオンの攻撃を躱しながら元気に走り回る彼女のお陰で、分析の時間は十分にあった。

「敵脅威度を修正。精神ハッキングを開始……『子よ、恐れるな。破滅は救いなり』」
 が、それで動きを見せるのはオブリビオンの側である。
 一向に捕まる気配のない瑠璃の足を止めるべく放たれたのは、精神を削るオブリビオンのユーベルコード。
 背を向けて逃げていた彼女は、恐ろしい事にその波動を無防備に受けてしまい……。
「――何されたんですか!? 助けてぇぇ!」
「あぶな……おお?」
 真峰の心配をよそに、元気に走り続けていた!
 そう、オブリビオンが今使っていたユーベルコードは、敵の心を折り戦意の喪失と自殺衝動を誘発させるもの。
 ――元々|心が折れ《ビビっ》てる瑠璃には大した効果が無かったのだ。

「……効果なし。原因を分析……」
「するなら、立ち止まってする事だな!」
 ユーベルコードの無効化に動揺したのか、一瞬硬直してしまうプリーストの隙を真峰は見逃さない。 
 彼女が操る太刀の嵐がオブリビオンへと殺到すれば、それはそのまま敵の身体を縫い留める楔となる。
 そして、複製の最後の一本は走り続ける瑠璃の下へと向かい。
「峰に乗れっ! 好機だ!」
「え、ええっ!?」
 言われるがままに眼前に現れた太刀を踏みつけた瑠璃が、そのままの勢いで空中へと飛び出す。
 坂になるように配置された太刀を足場に跳躍した彼女は、当然これまでと真逆の方向……逃げていたオブリビオンへと身体を躍らせて。
 咄嗟の判断でオブリビオンに突き刺さった太刀を掴んだ彼女の怪力は、敵の巨体を浮かせて地に叩きつけるに十分なものであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。



●|超能力《サイコブレイク》
 猟兵からの攻撃を受けたオブリビオン、サイバー・プリーストはその脅威の認識を改める。
 即ち、常日頃サイバースペースに侵入する取るに足らないハッカーたちではなく、真にメガコーポを脅かし得る存在が現れたのだと。
「変形機能拡張……ユーベルコード再行使」
 彼は汚染物質である骸の海を更に取り込み、より強く、より混沌とした身体へと変貌する。
 圧倒的な膂力と質量で、敵を蹂躙する為に……。

「――それを、見逃すわけにはいかないな!」
「ッ!?」
 瞬間、巨大化するオブリビオンの身体を大きな衝撃が襲う。
 衝撃の正体は、白を基調としたサイキックキャバリア『アクアブループラチナⅡ』が撃ち込んだ大質量の銃撃であった。
 キャバリアの中で機体を操るアス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)は、先制攻撃にを与えたプリーストを油断なく見据える。
 相手の身体的優位性はキャバリアの運用で対抗できるが、そもそもがメガコーポのサーバーを守る特別なオブリビオンだ。
 ただ力で上回ればよい相手ではないと、アスは敵の行動を注視する。

「……拡張機能展開。コード、『サイコブレイカー』」
「これは……くっ!!」
 だからこそ、無貌のオブリビオンの|視線《・・》に気づけたのだろう。
 アスが半ば直感でキャバリアを操作すると、アクアの装甲の端が握りつぶされたかのようにひしゃげた。
 メガコーポが狩ってきた超能力者から得た力だろうか、不可視の力場で攻撃し始めるオブリビオンの勢いはすさまじく、アスは絶え間ない回避運動を余儀なくされる。
 このままでは、操作の負荷に疲弊するアスが捉えられるのも時間の問題だろう。
 しかし、だ。
 状況が不利であるならば、望む方向に天秤を傾ける……その手段が猟兵には存在する。

「――撃ち貫け、イーグルショット!!」
 アスの叫びと共に、キャバリアの銃器が火を吹く。
 放たれた弾丸はオブリビオンの足元に着弾すると、電脳空間であるはずのそれにヒビを入れ粉砕するのだ。
「エラー発生、不可解な空間異常を確認……」
 本来破壊できないはずの電子の足場を壊す、|奇跡《ユーベルコード》。
 それにより体勢を崩したプリーストの集中の断絶を、アスは見逃さない。
 素早い操作でオブリビオンに肉薄するキャバリアの手に握られるのは、巨躯の機械兵に相応しいサイズのフォースセイバーであり……。
 その一閃は、まっすぐに敵を斬り裂くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

新田・にこたま
もう戻ってもいいかもですけど、変身した時は最初から最後まで変身したままでお仕事を完遂します。顔はいくつかあった方が便利でしょうし。

それにしても…アプローチの仕方が間違っている気がしますし、他のメガコーポの上層部とかでは既に確立してそうな気もしますけどね、不老不死。
このサイバースペースを生きる電脳生命体になるとかで。

ま、その辺はどうでもいいです。どうせそいつらにはもう不老不死の未来なんてやって来ない。私が近い将来、きちんと全員殺してやりますから…!

敵の歌の効果をUCで反射。それが救いだと言うなら勝手に沈んでいなさい。止めませんから。お好きにどうぞ。

…案外、彼も早く死にたかったのかもしれませんね。


岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎

元よりマトモな企業とは思っていませんでしたが、想像以上ですね……考えるのは後です。今は目の前の敵を倒しましょう。

通常の力だけではなく超能力を持っている敵ですか…
超能力の発動の条件は不明ですが自らが持つ力と併用してとなると複雑なことは出来ないでしょう。
とりあえず目視した対象に発動できる能力と仮定し、UCを利用して戦います。

ただし、UCの連続使用は体力を著しく消費するので、戦闘知識に基づき遮蔽物として使えるサイバースペース内の障害物を探しそれに身を隠すことでUCの使用時間は抑えていきます。

敵の召喚した従僕をカービンの弾幕射撃で殲滅しつつ、集中力を高めた狙撃でオブリビオンを攻撃します



●天寿
「元よりマトモな企業とは思っていませんでしたが、想像以上ですね……」
 電子の世界にて、サラの嘆息混じりの声が響く。
 エピゴーネンから得たメガコーポの目論見は、率直に言って正気の沙汰ではなかった。
 目的も、手段も。何もかもが狂気で捩子くれたそれを考えると、頭痛すらしてくるような錯覚を覚える。
「それにしても……アプローチの仕方が間違っている気がしますし、他のメガコーポの上層部とかでは既に確立してそうな気もしますけどね、不老不死」
 対するにこたまは、半ば呆れすらも籠った言葉でLarfiedの目論見を評する。
 彼女の言う通り、他のメガコーポでも高級な義体や各種科学技術により、極めて高度な不死性を実現しているはずだ。
 成功するか、意味があるのかも怪しい実験を繰り返して同じものを求めるこの街のそれは、狂気どころか妄執とすら感じられるものだった。
「極めて高度……では満足できないのかもしれませんね。此処の人々は、精神というあいまいな部分の永続も求めているようですし」
 そのような事を話しながら、彼女たちは目的の場所に辿り着く。
 それはメガコーポが超能力者たちの情報を収めたネットワーク上のサーバーであり、それを守るオブリビオン、サイバー・プリーストの姿だった。
 猟兵達を見て、戦闘態勢に入るプリーストに人らしい意思は感じられない。
 その様を見たにこたまが淡々と銃を構えて。
「ま、その辺はどうでもいいです。どうせそいつらにはもう不老不死の未来なんてやって来ない。私が近い将来、きちんと全員殺してやりますから……!」
 力強い宣言と共に、その嚆矢となる銃弾を放つのだった。

「おっと」
 プリーストに届く前に、銃弾がピタリと止まる。
 その様を見たにこたまがヒョイと首を曲げると、直前まで彼女の頭があった空間を跳ね返った弾丸が通過していった。
「あれが|超能力者《サイコブレイカー》としての力ですか……どう見ます?」
「今の一回で判断するのも危険ですが、一般的な念動力に見えますね。視認したものに力を加えて、操作や破壊をする力です」
 問うにこたまも、答えるサラにも動揺はない。
 オブリビオンが超能力を使う事は分かっていたのだ。来ると分かっているのなら相応の対応をして、その詳細を分析すればいい。
「超能力者として、極端に強力ではないかと。自らが持つ力と併用してとなると複雑なことは出来ないでしょう」
「つまり、一気に攻め立ててキャパを圧迫しましょうって事ですね!」
 いくらかの言葉を交わした後、にこたまは勇ましく敵の下へと踏み込んでいく。
 当然、オブリビオンがそれを黙って見ているはずもなく、迫りくる猟兵を迎撃する為の力を行使し始めた。

「企業の脅威となる生命体の接近を確認。ユーベルコードを再生します……『子よ受け入れよ、破滅は救いなり』」
 それは、歌であった。
 終末思想じみた破滅を崇拝する内容の、レコードに刻まれたような感情の失せた歌。
 勿論ただの歌ではない。ユーベルコードとしての特性が備わったそれは、聞くものの心を冒し死へと引きずり込む危険な代物だ。
 だが。
「すみませんね――性能が違うんです」
 それは、にこたまに搭載された保護プログラムを突破できる代物ではなかった。
 彼女自身が破滅させた家族の置き土産は、今もなお少女の心を守り死を誘う歌を跳ねのける。
「システム異常、システム異常……『これこそ救いである』……警護継続に支障をきたします。予備プログラムを起動」
 自身の放ったユーベルコードを跳ね返されたオブリビオンの身が震え始めると、機械的な音声と共に新たな動きを見せる。

 予備プログラムと呼ばれたそれは、プリーストに付き従うような従僕たちの軍勢であった。
 反射のユーベルコードを持つにこたまに念動力での捕縛は悪手と考えたのだろう……それ自体は正しい。
「おや、素直に出てきてくれましたね」
 だが、その正しさはにこたまへの対応として評した場合の話。
 |戦術迷彩装置《タクティカルカモフラージュ》を展開し、透明化を用いてにこたまの背後に隠れていたサラがカスタムカービンを構えれば、次の瞬間には銃弾の嵐が従僕たちを襲う。
 プリースト本体ではない従僕たちの耐久性はそこまでの強度は無いのか、不意を打った形となった銃撃に対して次々と倒れていってしまう。
「さあ、後は集中攻撃で本体のキャパシティを……おや?」
 鮮やかに敵の軍勢を片付けるサラがプリーストに意識を向けた時、そこには明らかな異常があった。

「警護を継続……『救いを』……業務の続行を『救いを』我らの理想を『終わりを』……」
「……これは」
「反射したユーベルコードが効きすぎたんですかね。あるいは……」
 念動力を向けてくるかと思われたプリーストは、機械的な言葉と儀礼めいた文言を繰り返し立ち尽くしていた。
 その黒い影に覆われた顔に、にこたまの銃が向けられれば。
「案外、彼も早く死にたかったのかもしれませんね」
 決着は、あっけないほどに短い銃声でつけられるのだった。

●永眠
「……ありがとう。超能力者たちと、彼を救ってくれて」
「お知り合いでしたか?」
「分からない。恐らく面識はあったと思うが、ああなってしまっては誰だったのか……」
 猟兵たちがサーバーのデータを焼き切り、サイバースペースにログインした地点に戻ってきた時。
 迎えた老人はとても穏やかな顔をしていた。
 それは、彼の最後の隣人であった超能力者たちの危険が去ったことへの安堵であり……自分と同じ過ちを犯したオブリビオンの終わりに対するものでもあった。

「一応、今ならサイバースペースで生き続ける選択肢もありますが?」
「いや、そのつもりはない。そうすれば、あの司祭となった彼と同じ結末しか待っていないだろうからね」
 提案に首を振った老人に、猟兵もそれ以上の言葉をかける事は無い。
 その反応に笑みを浮かべた老人は、目を閉じて。
「……我々は、過ちに気づくのが遅すぎた。技術の発展の末、神の領域すらも思うがままにできると思い込み、多くを巻き込み歪めてしまったんだ」
 その懺悔は、独白にも近いものだった。
 猟兵たちに聞かせてはいるけれど、どうしろという言葉はない。

「崩壊の末に、己すら失った彼を見て確信した。我々は過ちを犯した……そして、それを打倒する君たちこそが正しいんだ。絶対に」
 ともすれば無責任ですらある、それでも確信に満ちた声で猟兵を肯定した老人の姿が、電脳から消える。
 その後には何も残らず……天寿を見失った命は、もうこの世界の何処にも居なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月23日


挿絵イラスト