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路端の花の女達

#サイバーザナドゥ #超能力者狩り #サイコブレイカー #シベカワ商会

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●彼女らの生きる道
 サイバーザナドゥの薄暗い裏通り。じめじめとした不快感の漂う暗がりで、一組の男女が向き合っていた。
「おい、いくらだ」
 男が女に下卑た顔で聞く。
 壁にもたれかかった女は無言で手を差し出し、指を立てた。男はその指の本数を鼻で笑うと、どしんと勢いよく壁に手をついた。
「冗談じゃねえ、薄汚えテメェらなんざこの程度で十分だろぉが?」
 男がもう一方の手で女の指を折り曲げようと力を入れる。
「うっ……」
 だが男がいくら力を入れても、女の指は動かない。そして女は、怖気づくことなく挑発的な態度で口を開く。
「そのイカ臭い指をどけなよ。そんなに金を払うのが嫌なら一人でマスかいてりゃいいんだ」
「テメェ!」
 男が逆上し、拳を振り上げた。だが、男は振り上げた腕を下ろすことが出来ない。まるで金縛りだ。
「くっ、ううっ……!!」
「それともあたしが相手してやろうか? 間違って千切っちまっても許しておくれよ?」
 くすりと笑う女から男が離れると、腕に力が戻る。じいんと痺れる腕の感触を確かめながら、男が叫んだ。
「っち、テメェ……|超能力者《サイコブレイカー》かよ!」
「わかったらとっとと失せな。お前みたいな奴、いくら積んだって妹達には手だって触れさせないよ!」

「おねぇ、大丈夫?」
 建物の隙間から少女が心配そうに顔を出した。その顔に、女はふっと顔を和らげて答えた。
「あたしは平気。お前達をゴミみたいな奴には売ったりしないさ」

 路地裏の少女達は、親からも見捨てられたストリートチルドレンだった。
 満足な教育も受けられずにいた彼女らに残された道は、自分自身を売ること。しかしその道も、蔑まれ軽んじられ、虐げられ……僅かな日銭すら稼ぐことも出来ずにただ身体ばかりが穢れゆく日々であった。
 だからこそ、彼女らを束ねるリーダーであるエミは、妹分たちの反対を押し切って違法薬物に手を出した。
 力さえあれば、奴らのいいなりにならなくて済む。朦朧とした意識の中で覚醒した力は、闇の中に微かに灯った希望であった。

 ――だが。

「嬢ちゃんよ、シベカワの連中が動き出すらしい。俺ぁ店を畳んで今晩にはここを発つ」
 馴染みの薬屋で、エミはクスリを手渡されながら聞いた言葉に愕然とした。
「そんな……どこへ行くのさ」
「そうさな、しばらくはヤマさんとこの世話になるさ。上前はねられんのは痛いが、守っちゃくれる」
「おやっさんか……」
 心当たりのある名に、エミが顔を曇らせる。ヤマさん率いるヤマシマ組といえば、この辺りでシベカワ傘下のヤクザと縄張り争いを繰り広げているヤクザ組織だった。
 エミも小さい頃に何度か助けてもらった記憶があり、今も時折、組員に無関係な客を装わせて、エミ達に仕事を与えている。
 ヤマシマ組がなければ、エミ達は何度野垂れ死んでいたかわからないだろう。
「けど、ヤクザはヤクザよ」
 エミが吐き捨てるように告げる。その言葉に薬屋は大きな溜息をついた。
「嬢ちゃんらもここらが潮時だろうよ。意地張ってないでどっかの組にでも……」
「わかってる、わかってるけどさ……」
 エミは妹達の顔を思い浮かべながら歯噛みするのだった。

 その晩、エミは悶々とした想いを抱えながら、何時ものように路地裏に立っていた。
 結局自分達の力では何も出来ないのか。生きていく為には、何者かの力を借りなければならないのか。このまま仕事を続けていくほうが危険ではないのか……。
 ぐるぐると纏まりのない思考を巡らせていると、エミは表通りのライトから長い影が迫っていることに気が付いた。
 客だろうか。雑多な思考は捨てて、エミは身なりを整える。
『対象より違法薬物を検知』
「えっ……?」
 エミが動くより早く、その影はコード状の触手を伸ばし、エミへと突き刺した。
『思考・体質改善プログラムを実施します』
「あっ、ああっ……」

●路端の花の女達
「サイバーザナドゥでは、超能力者狩りが横行しているのはご存知かしら?」
 エリル・メアリアル(|孤城の女王《クイーン・オブ・ロストキャッスル》・f03064)が集まった猟兵達に聞いた。
 サイバーザナドゥの超能力者は、多くがストリートに蔓延する違法薬物の過剰投与によって人為的に能力を覚醒させた者達、すなわちサイコブレイカーだ。
 そのような経緯があることから、メガコーポや富裕層等にとって超能力者達を狩ることは好意的に受け止められており、メガコーポは様々な理由をつけて彼らを公然と虐げてきた。
「そして今回もまた、新たな超能力者狩りが決行されることを予知しましたわ!」
 そう言って、エリルは予知した地域の情報を猟兵達に提供する。
「今回超能力者狩りにあうのは、ストリートチルドレンを束ねるエミという方と、そのグループですわ」
 グループ内の中に、超能力者はエミ一人。しかし今回の超能力者狩りでは、何の力もないエミの妹分達もまとめて捕獲しようとしているらしい。
「その手引をしているのはシベカワ商会という、オブリビオンの製造・販売を手掛けるメガコーポですわ」
 そんな会社が少女達を捕獲する目的など、いくらだって考えつく。しかしその末路は、どんなものであっても悲惨なものであろう。
「ですから、皆様にはその悪徳を阻止して頂きたいのですわ!」
 エリルはそう言って猟兵達に懇願するのであった。

「既に超能力者狩りはグループへ向かっていますわ。撃退は勿論、その後のことも考えなければなりませんわね」
 既にエミ達はシベカワに完全に補足されている。オブリビオンの撃退のみならず、住処の移動や、シベカワのデータベースから登録データの抹消までを行うべきだろう。
 エミ達は行く宛に心当たりがあるようだ。今の仕事から大きく変わることはないだろうが、今より安全は保証されるはずだ。
 エミ達の移動先については、調査や内容の確認をしてみてもいいだろうが、それはまず彼女らを助けてからだ。
「……では皆様、最後まで力になってあげてくださいまし!」
 そう言って、エリルはグリモアを輝かせ始めた。

 サイバーザナドゥに生きる少女達のゆく道は暗い。
 それでも、生きたい。その当たり前の願いの為に、猟兵達は骸の雨降る退廃の世界へと向かう。


G.Y.
 こんにちは、G.Y.です。
 今回はサイバーザナドゥでの物語をお届けします。

 ストリートの超能力者を狩る軍団から超能力者を守ることが目的となります。

 第一章は集団戦です。
 サイコブレイカーのエミが束ねるストリートチルドレンを、オブリビオンから守りましょう。
 エミは超能力が使えますが、能力の無い妹分達を守ることで手一杯となり、戦力にはなりません。
 第二章は日常です。
 エミ達はストリートを離れ、別天地を目指します。
 エミ達は移動先に既に心当たりはあるようです。皆さんはその移動先の調査を行ったりなどをすると良いでしょう。
 第三章はボス戦です。
 エミ達のデータを消すために、サイバースペースへと向かいます。
 しかしサイバースペースにはデータを守るオブリビオンがおり、特殊な力も持っているようです。オブリビオンを倒してデータの削除をしましょう。

 なお、過激すぎるプレイングはぼかす、描写されないなどの措置をする可能性がありますがご了承ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『TOR-MM8『ディーナオシーMk8』』

POW   :    メンタルケア:思考能力改善施術
【触手やコード端子 】に触れた対象の【思考】を改竄できる。また【記憶】を奪ったり、逆に与えたりできる。
SPD   :    ボディケア:体質改善ナノマシン投与
攻撃が命中した対象に【肉体改造用ナノマシン 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【目的に応じた肉体への改造或いは破壊】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    スキンケア:施術用薬液分泌
自身と武装を【体内機能活性化作用のある薬液 】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[体内機能活性化作用のある薬液 ]に触れた敵からは【肌の老廃物や角質、思考能力や抵抗の意志】を奪う。

イラスト:えな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レパイア・グラスボトル
家族と共に行動
おい、いくらだ?
家庭料理やジビエも良いけど、偶にはちゃんとした外食もよいだろうしな。
お代はグリモア猟兵が持ってくれるだろ。
あ、ワタシや女衆は別に良いぞ。あとガキ共には早いな。美味いものでも食ってろ。
そっちのなんか機械臭いのはいくらだい?
喧嘩を買う

戦うのは大人の家族だが一般人なので敵UCに無力

そっちに触られると面倒そうだな。
なら思考なんて関係ない手段を取らせてもらおうか。

黙示録世界の略奪者達が空を舞う
夜空に咲く火の華の様に
ただの爆発だが
触れられたら抱きつき爆発する

流れ弾を含め死人は決して作らない

そっちのヤク中女、後で診せろ。
不健康なヤツは見ていて不快なんでな。

製品仕様である



 じっとりとした路地裏に、女が一人立っていた。
「…………」
 足元を見つめ、纏まりのない思考を巡らせる。だがそのうちに、ふと、長い影が近付いてくるのが見えた。
 その女、エミは影に目を向け、身なりを整えようと髪をかきあげ、固まった。
 一人、二人、たくさん。長い影がいくつも伸びてきたからである。
「おい、いくらだ?」
 そんな集団の中心に立つ女レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)が言う。
 それが自分に向けられたものだと気付くのに、思わずエミは一瞬の間を要してしまった。
 モヒカン、肩パッド。ヤクザとはまた違った屈強なアウトロー達を引き連れた家族連れ。なかなかのインパクトである。
「家庭料理やジビエも良いけど、偶にはちゃんとした外食もよいだろうしな」
 そう言うレパイアの姿に、エミは試すかのように指を立てる。それを見てレパイアはふむと頷いた。
「お代はグリモア猟兵が払ってくれるだろ」
 どこからか抗議の声が聞こえてきそうだが、ともかく値段に頓着しないレパイアの姿に、エミは警戒を解いて数を数え始める。
「あ、ワタシや女衆は別に良いぞ。あとガキ共には早いな。美味いものでも食ってろ」
 レパイアがそう言って子供達を向こうへやると、エミは男の数を指折り数えて、にんまりと笑った。
「こんな大人数は初めてだ。待ってな」
 そう言ってひっこもうとしたエミに、レパイアは聞く。
「そっちのなんか機械臭いのはいくらだい?」
「え?」
 ぞろり。売から触手を伸ばした女達、TOR-MM8『ディーナオシーMk8』が、表通りの逆光を浴びて、路地裏に立っていた。
「……シベカワの」
 エミが眉間に皺を寄せて身構える。その彼女の視界を遮るように、レパイアが前に立った。
 ディーナオシーはレパイアをじっと見ると、機械的な口調で告げる。
『メンタルケアの必要性あり。思考能力改善施術を開始します』
 レパイアは笑う。
「その喧嘩、買おう」

 びゅんと伸びる触手が、レパイアや連れてきた家族たちへと迫る。
 あの触手に触れられれば、意識や記憶が改竄されてしまう。一般人である家族は、その攻撃には無力だ。
「触れられると面倒そうだな」
 レパイアは一瞬思案すると、にたりと笑った。
「なら思考なんて関係ない手段を取らせてもらおうか」

「「ひゃっはーーー!!」」

 瞬間、夜空をモヒカンが舞った。続けて棘付肩パッドも後を追うように飛んでゆく。
「心配するな! バラバラになっても治してやるから!」
 レイダー達はお腹に導火線のついた爆薬を巻きつけ、ディーナオシーへと向かってゆく。
『危険察知』
 ひゅんと触手がレイダーを絡み取り意識を奪う、が、爆弾は意思など関係ない。
 どぉんと爆発が巻き起こり、触手が吹き飛ばされた。続けて肩パッドがディーナオシーに突き刺さり、再びの爆発!!
 レパイアは爆発を見るや速やかにレイダーを回収、手早く応急手当を施してゆく。
 決して死人は作らない。乱暴な戦い方ながら、それが彼女の信条であった。
「そっちのヤク中女、後で診せろ」
 レイダー達の手当てをしながら、レパイアがエミに言う。
「あたし?」
「不健康なヤツは見ていて不快なんでな」
 そう言っているうちに、もう一つ爆発が発生した。爆発に巻き込まれたディーナオシーはそのまま倒れ伏し、動かなくなるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
金髪アングラ何でも屋風な姿をした分身と合体。
骸の海入りキャンディーを咥えてサイコブレイカーのご同類っぽく戦いますよ。

全身を覆うようにオーラ防御を展開。オーラ防御には電撃を纏わせておきます。敵は触れた瞬間に電撃で痺れて弾かれますよ。
敵が見えなくても電撃の弾けた先が敵の位置。拳に電撃入りオーラ防御を纏わせて怪力で殴りつけます。ドーピングのお陰でオーラも電撃も怪力もまあまあなパワーのはずです。
ゴーストは敵を捕捉できるなら憑依から自爆のコースで。

こっちはこっちで殺しておくので、そっちはそっちでご勝手にー。
シベカワぶん殴るのが今回の私のビズってだけなので。
(嘘ですが無償の善意よりは信用しやすいでしょう)



 サイコブレイカー『エミ』と、彼女の擁する少女達を狙った超能力者狩り。
 それを阻止すべく介入した猟兵達との激突によって、路地裏は大騒ぎになっていた。
 そんな路地裏の壁を背に、どこかアンニュイな表情を浮かべた少女がいつの間にか佇んでいた。
 どこかアングラな雰囲気が漂う少女はTOR-MM8『ディーナオシーMk8』へと歩き出すと、ディーナオシーは少女を認識して向き直ると、腕から伸びる触手に薬液を滲み出させた。
 ちゅ、と口に含んだキャンディーを手にとって、少女は笑う。周囲に漂うオーラに電撃が走り、迫る触手を弾き返した。
「あんたも……?」
 同類の雰囲気を感じ、エミが少女に聞く。少女は笑い、電撃の弾けた先に拳を振った。
 ばちんと空中で閃光が走り、透明化したディーナオシーを吹き飛ばした。
「超能力者狩りは厄介ですね」
 やれやれと言って、さりげなくエミを守るように立つ少女。
「こっちはこっちで殺しておくので、そっちはそっちでご勝手にー」
 ひらりと手を振って、言葉を続ける。
「シベカワぶん殴るのが今回の私のビズってだけなので」
 そう言い、キャンディを再び口に含む。
「とっておき、いきまーす」
 少女の名は新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)。正義の武装警官である彼女は、作り出した分身との合体によって姿を変えて駆け付けたのだ。
 骸の海を含むキャンディによるドーピングで、電撃も筋力も爆発的に上昇している。さらに。
「ゴースト、憑依からの自爆コースで」
 にこたまの呼びかけに応じ、周囲に攻性バーチャルゴーストが漂い始めた。そしてにこたまが手をかざすと、ゴーストが勢いよくディーナオシーへと突っ込んでゆく!
『施術機能損傷、体内組織に異常あり』
 ゴーストに入り込まれたディーナオシーが、おろおろと全身を揺らす。そして、ぼん、と音を立てて、ディーナオシーが爆散した。
「ほら、やることあるんじゃないんです?」
 爆散したディーナオシーを見下ろして、にこたまがエミに言う。
「……!」
 エミには守るべき妹達がいる。超能力者狩りを勝手に殺してくれるなら、エミは妹達を守ることに集中できる。
(「ま、嘘ですが無償の善意よりは信用しやすいでしょう」)
 そんなにこたまの想像は当たっていた。
「恩に着るよ!」
 そう言ってエミは妹達のもとへ向かってゆく。その背を見送り、にこたまは再び現れたディーナオシーに対峙する。
「正義の名の下に……ホールド・アップです」
 今の姿に見合ったような気怠げな口調で、にこたまは告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
女の子同士の触手プレイを眺めたいけど我慢我慢

相場の三倍は出すので良ければデートしてくださいな
エミ達に結界術で防壁張っておきましょ

彼女達が欲しけりゃ奪ってみな
おびき寄せるように敵陣に入って、てけとーに呪詛の符を貼りつけて攻撃しとく
本命は懐に仕込んだ電撃属性攻撃の符にひたすら妖力を力溜めすること
気を抜けば大放電起こすよう過充電するぜ
スキンケアの餌食になって(冬の肌荒れを癒して)ツヤツヤになると同時に、思考能力が途切れて自動的にカウンターで炸裂、ショックで意識も覚醒する寸法だよ

ディーナオシーもオブリビオンに改造されたのかな
電撃によるマヒ攻撃が効いてるうちに八卦迷宮陣で幸せな夢のまま逝かせるぜ
おやすみ



「なあ」
 超能力者狩りの押し寄せる路地裏に現れた四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)がエミに声を掛けた。
 突然呼びかけられて、エミが怪訝な顔をする。そんなエミに燦は微笑み歩み寄ると、エミの耳に囁いた。
「相場の三倍は出すので良ければデートしてくださいな」
「えっ!?」
 エミが驚くと同時に、燦がエミに結界術を施した。結界による防壁がエミを守るように展開し、その様子に、燦は満足そうに身体を離した。
「よしっ、と」
 そうして今度はTOR-MM8『ディーナオシーMk8』へと向き直ると、挑発的な表情で告げた。
「彼女達が欲しけりゃ奪ってみな」

『スキンケア施術薬液分泌』
 ディーナオシーの触手から薬液が染み出して、燦たちに向けて伸ばし始めた。
(「女の子同士の触手プレイは眺めたいけど、我慢我慢」)
 そう思いながら、燦はエミへと伸びる触手に呪詛の符を張り付けて弾き返す。
「さぁてと……」
 燦は見えない触手を第六感で感知して、エミへと向かってゆくものを狙って呪符を投げつけてゆく。しかし、ディーナオシーの両手から伸びる触手の数は多く、符から逃れた健在な触手が燦へと迫る。
『施術開始』
「ひやっ」
 触手が燦に絡みついた。体内機能活性化作用のある薬液が燦の肌に塗りたくられ、触手がぬるり、ぬるりと肌を這い回る。
「ふぁあっ……」
 触手と薬液によるスキンケアが施されてゆく。薬液の効果は抜群で、なんともいえない心地よさとともに、冬の肌荒れが癒されてゆく。
 しかし、ディーナオシーのスキンケアは良いだけではない。
「あっ、ふ……んん」
 その気持ち良さに、思考能力、抵抗の意志を奪ってしまうのだ。
 こうすることで、シベカワは難なく対象の捕縛をするとともに、捕縛時の質の向上までも図っているのだ。
 燦も今、まさに思考能力が失われ、身体から力が抜けていこうとしていた。その時であった。
 ばちん、と激しいスパークと共に、燦に纏わりついていた触手が弾け飛ぶ。
『施術用触手断裂、施術中断』
「ふー、お肌がツヤツヤだ。ありがとな」
 思考能力が失われたはずの燦が、すべすべの頬を手でさすりながら笑っていた。
「こいつがちゃーんと、効いてくれたみたいでさ」
 そうして燦が懐から取り出したのは、電撃属性の符。そこに燦は妖力を溜め込んでおき、気を抜いた瞬間大放電を起こすように過充電していたのだ。
「さぁて、スキンケアも終わったところで……」
 一転、真剣な眼差しで燦が四王稲荷符を取り出した。
「御狐・燦が道満の名を借りて命ず。符よ、ここに八卦の結界を展開させよ。陰と陽の幻にて敵兵の足を封殺せん!」
 現れたのは八卦の結界。ディーナオシーを結界の中に取り込んで、妖力を集中させる。
「お前達もオブリビオンに改造されたのかな」
 燦が呟く。
「ま、幸せな夢のまま逝かせてやるぜ」
 そして、慈しみに満ちた言葉で告げた。
「おやすみ」
 その言葉と共に、ディーナオシーが眠るよう倒れた。そして、ディーナオシーは二度と目を覚ますことはなかった。
 ディーナオシーがどんな夢を見たのかはわからない。しかし、その表情はとても幸せそうであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

沖津・星子
えんらさん(f36793)と
義妹……ってまさか!あの子が来てるんですか!?
いえしかし、この子達を放って行く訳には……
それに恐らくこの誘拐犯の大本は……今は後にしましょうか

悔しいですけど確かに今の私では相手にならないでしょうね……
盾になれるように女の子達と敵との間に壁になるように立っておきます

……っつ、見えなくなった、ならもう下手に動くべきではない……!
攻撃を受けた瞬間だけは痛みでわかるはず、女の子達をかばうだけならこれでも!
尚攻撃されるようなら彼女らを怪力で抱えるだけ抱えてUCを使用、思考や抵抗力を奪い切られる前に全力で前身して攻撃を受け流します!
すいません、そちらはお願いします……!


把繰理乃・えんら
星子様(f31130)と
はじめまして、貴女の義妹様からのご命令によりお連れしに参りました。
……ですが状況がよろしくないようですね。
このような無粋な狩りなど見過ごしてはいられません、対処しましょう。

星子様は未だ猟兵の力に慣れてはいないようですね。
あれらの相手は私が行います、貴女はストリートチルドレン達を保護してください。

ナノマシン……ハッキングタイプの攻撃でしょうか?
落ち着いて逃げ足を踏んで距離を取りつつバグッテルシューターの貫通するレーザー射撃を撃ち込みます。
ある程度弱らせてからUC使用、触れることも適わないであろう勢いの体当たりです、可能なら複数巻き込みたい所ですね。



 沖津・星子(アリス適合者のアリスナイト・f31130)は戸惑っていた。
「はじめまして、貴女の義妹様からのご命令によりお連れしに参りました」
 サイコブレイカー『エミ』達を狙うTOR-MM8『ディーナオシーMk8』を倒しに向かった先で出会った猟兵、把繰理乃・えんら(嫌われ者のバーチャルメイド・f36793)にそんなことを言われたからである。
 だが、星子はえんらの言葉に一つ、心当たりがあった。
「義妹……ってまさか! あの子が来てるんですか!?」
 その問いに、えんらはこくりと頷いた。ならば、行かなくてはならない……だが、星子は躊躇いの様子を見せた。
「いえしかし、この子達を放っておく訳には……」
 ディーナオシー達は大群でやってきている。二人の猟兵の力が無ければ、エミ達はあっという間に捕らえられてしまうだろう。
「えぇ、状況がよろしくないようですね」
 星子の躊躇に、えんらも同意する。
「このような無粋な狩りなど見過ごしてはいられません。対処しましょう」
「それに恐らくこの誘拐犯の大本は……今は後にしましょうか」
 そう言い、星子とえんらはディーナオシーに向き直った。

「星子様は未だ猟兵の力に慣れてはいないようですね」
「……悔しいですけど、確かに今の私では……」
 星子は自身の力不足を実感する。だがそれでもやれることはあるはずだ。それを後押しするように、えんらが星子に言う。
「あれらの相手は私が行います。貴女はストリートチルドレン達を保護してください」
「わかりました!」
 星子はえんらから離れ、エミ達の元へと向かってゆく。
 それを見送ったえんらは、ディーナオシーの触手に注目する。
『ボディケア施術実施』
 ディーナオシーはボディケア施術のためにナノマシンを注入するのだという。
「ナノマシン……ハッキングタイプの攻撃でしょうか?」
 ともあれ、触手に触れてしまえば、きっとえんらの身体を蝕んでしまうだろう。
 まずは落ち着いて、えんらはバグッテルシューターを構えて距離を取りながら、触手への射撃を開始した。

『スキンケア施術実施』
 エミへと向かってゆくディーナオシーが、触手に薬剤を染み出させ始めた。その影響でディーナオシーの触手が透過し、見えなくなる。
「……っつ、見えなくなった、ならもう下手に動くべきではない……!」
 エミ達の前に立つ星子はそれでもその場にとどまり、エミ達の盾となった。
 ぬるりと冷たい感触、どこからか伸びた触手とその薬液が、星子へと絡みついたのだ。
「うぅっ……!」
 意外にも不快感は少なかった。だがその分、薬液の効果はみるみる現れ、星子の思考能力を奪おうとする。
「まだ、です!」
 さらに伸びてくる感覚。触手達はとうとう星子の守る先の少女達にまで伸びようとしていた。
「皆さん、私につかまって!」
 星子は精一杯の声で叫び。少女達を抱え込む。すると、星子の靴から無数の青い蝶が出現した。
「この場所からっ……離れます!!」
 青い蝶は星子の周囲を舞い、彼女と、彼女の抱えた少女達を一気に加速させる!
 絡んでいた触手も振り払って、星子たちは戦場から離れてゆく。そして、星子は薄れゆく意識の中で言った。
「すいません……そちらはお願いします……!」
「承知しました」
 答えたのはえんらであった。
「気を付けてください。私の動きは私自身にも読めません」
 直後、えんらの身体が超加速した。マッハ5.0にもなる、物理法則を無視したハヴォック・インパクトだ。
 勢いのままにえんらはディーナオシー達へと体当たり。ディーナオシー達は避けることも、触れることすら出来ないまま、彼方へ吹き飛ばされてゆくのであった。

 エミ達を狙っていた者達も含めて、オブリビオン達は一掃された。だが、まだ超能力狩りは続いている。迫り来る捕縛者の手からエミ達を守るため、そして義妹へ会う為、その先の黒幕へと向かう為に、二人は戦い続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミニョン・エルシェ
【散歩部】
私はお顔も知らないけれど
スティーナお姉様、旭叔父様の、とても大切な人。
ふむ。では、私にとっても、大切な人なのでは?

…あんな気炎を吐く叔父様を見るのは初めてかもしれません。それに、お姉様も。
ふふ。この場では不謹慎かもですが、お会いするのが楽しみです。
さて、私は私の遊撃を。戦場を支配してやりましょう。
【高速誘導弾】で【援護射撃】を行い、お二人では捌ききれない敵たちに『祓威』を使用。
判断ミスを誘発する特性上、ターゲットから薬物を検知出来なくなったり、使うべきプログラムを間違えたり…同士討ちなんて事もあるかもしれませんね?
もちろん、場の札は総て把握済み、逃さないのですよ!お姉様!


スティーナ・フキハル
【散歩部】
スティーナ口調

ここに姉ちゃんが来てる……あいつらを使役してる黒幕に惹かれて!
こんな所で好き勝手させられるか、行くぞ二人とも!

まずは旭兄ちゃん、『お願い』だ
『その子達にあいつ等の指一本触れさせるな』……そっちは頼んだよ!
ミニョンちゃん、あいつ等に手、届くか?いけそうならやってくれ!

さーてと……アタシはアタシで腹括っていくぞ、妹達のために体張ってるお姉ちゃんがそこにいるしな、と言いつつ解除後のために鎮痛剤飲んでっと。
UC使用、神も仏も無さそうな世界だけどヒーローくらい来てあげないとなぁ!
敵の攻撃を見切って自分の後方に衝撃波撃って突撃、カウンター気味に捨て身で尻尾の叩きつけ食らわせてやる!


水無瀬・旭
【散歩部】
そうか、追い続けてきた『星』が。…君が、来ているのか。
なら、『星』を隠す暗雲を晴らさないと、ね。

…スティーナさんの『|命令《ねがい》』、確かに承った。君の『正義』に味方しよう。
UCを発動し【救助活動】としてエミたちの直掩に着く。
スティーナさん。君も、無茶はするなよ。
行こう、ミニョン!

【呪詛】を込めた【誘導弾】で牽制しつつ、接近戦を仕掛けてきた敵は【怪力】で捕え、黒炎にて【焼却】。
燃やしたまま【スナイパー】で別の敵に投げ付ける。
鎧に当たっては、ナノマシンも肉体には届くまいが…万一の時には【継戦能力】で無理矢理体を動かそう。
守ろうという意思、生きようという願い。手折らせる訳にいくものか。



「ここに姉ちゃんが来てる……あいつらを使役してる黒幕に惹かれて!」
 サイバーザナドゥの路地裏、超能力者狩りの現場の前で、スティーナ・フキハル(羅刹の正義の味方・f30415)は叫んだ。
 シベカワによる超能力者狩りは、集められた超能力者達の情報をもとに行われる。それらを集めたデータベース、その管理者……そしてそれを追う者にスティーナは心当たりがあったのだ。
「そうか、追い続けてきた『星』が」
 スティーナとともにやってきた水無瀬・旭(両儀鍛鋼ロード・ハガネ・f25871)は遠い目をして呟いた。
「……君が、来ているのか」
 ぐ、と拳を握り、スティーナに言葉を返す。
「なら、『星』を隠す暗雲を晴らさないと、ね」

「私はお顔も知らないけれど、スティーナお姉様、旭叔父様の、とても大切な人」
 その隣、ミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)はスティーナと旭の顔を見て、ふむ、と頷いた。
「では、私にとっても、大切な人なのでは?」
 であれば、全力を出すのみだ。【散歩部】として集まった三人は、まだ見ぬ大切な人の為に、TOR-MM8『ディーナオシーMk8』達の殲滅を決意する。
「こんな所で好き勝手させられるか、行くぞ二人とも!」
「あぁ!」
「はい!」
 スティーナの号令に、旭とミニョンの二人は威勢よく応えるのであった。

「まずは旭兄ちゃん、『お願い』だ」
 スティーナの言葉に、旭が頷く。
「『その子達にあいつ等の指一本触れさせるな』……そっちは頼んだよ!」
「スティーナさんの『|命令《ねがい》』、確かに承った」
 すると、旭の身体を堅牢な鎧が纏い始めた。他者の命令を承諾することで、旭は無敵の装甲を得ることが出来る。
「君の『正義』に味方しよう」
 その言葉とともに、ごぅ、と黒く揺らめく焔が旭を包む。他者の『正義』に味方をする、それが焔の、ハガネとしての在り様なのだ。
「ミニョンちゃん、あいつ等に手、届くか?」
 スティーナからの問いに、ミニョンは自信たっぷりに頷いた。
「えぇ、もちろん!」
 その様子に安心したように、スティーナも頷き返す。
「さーてと……アタシはアタシで腹括っていくぞ、妹達のために体張ってるお姉ちゃんがそこにいるしな」
 ぱん、と頬を叩いて、鎮痛剤を口に含むスティーナ。
「スティーナさん。君も、無茶はするなよ」
 そんなスティーナに旭は言うが、スティーナは問題ないと笑って返す。その様子に安心したか、旭はミニョンに向いて叫んだ。
「行こう、ミニョン!」
「はい!」
 ミニョンが応える。こうして、三人はTOR-MM8『ディーナオシーMk8』達の暴れる戦場へと向かうのであった。
(「……あんな気炎を吐く叔父様を見るのは初めてかもしれません。それに、お姉様も」)
 ミニョンが心の中で呟いた。二人がこんなになるまで大切な人というのは、どんな人なのだろう。そう思えば、自然とミニョンの口が緩む。
(「ふふ。この場では不謹慎かもですが、お会いするのが楽しみです」)

「ここは通さん」
 ディーナオシー達の前に、旭が立ちはだかった。背後には標的となったエミと、その妹達。旭は呪詛を籠めた誘導弾を放ち、ディーナオシーの触手を吹き飛ばしてゆく。
 そこにミニョンの援護射撃も加われば、まさに鉄壁であった。
 だが、ディーナオシーは被害を受けても臆することなく、旭達へと接近してくる。旭は接近してきた者をそれをむんずと捕らえ、纏った黒い炎で燃やし尽くす。
「ナノマシンも肉体には届くまい」
 燃え尽きる寸前に触手から放たれたナノマシンも、無敵の装甲はそれすらも弾いて黒炎に消えるのであった。
「さて、私は私の遊撃を」
 ミニョンが手を構え、意識を集中させる。
「|戦場《たたみ》はこの掌中に。女王の払いは、凡ゆる札を逃しません」
 そして、ミニョンの『手』が戦場を払った。まるで敵を『かるた』の札のように吹き飛ばしてゆく。
『検知プログラムに異常発生、視界内に異常検知』
 その力はただ吹き飛ばすだけではない。ディーナオシー達のプログラムの判断を鈍らせ、混乱させて戦場をかきまわす。
「よぉし、全力で行くぞ!」
 そこに、スティーナが飛び込んできた。ざわざわとスティーナの身体がざわめき、尻尾と耳が生えてくる。まさに妖狐といった出で立ちとなったスティーナの頭上に、オーロラが輝いた。だが、その変化は姿だけではない。スティーナの能力全てが倍増し、爆発的な力を内包していた。
「神も仏も無さそうな世界だけど……ヒーローくらい来てあげないとなぁ!」
 そう言って、スティーナが自分の背に衝撃波を放った。その勢いに乗って、一気にディーナオシー達へと加速すると、大きな尻尾をぶんと振った。
「後で同じだけ苦しんでやる!!」
 尻尾がディーナオシー達を次々と地面に叩きつけた。その重く強い一撃でディーナオシー達は攻撃の隙も無いままに機能停止してゆく。
「ミニョンちゃん、あっち!」
「もちろん、場の札は総て把握済み、逃さないのですよ! お姉様!」
 ミニョンがスティーナの声に応えて再び手を払う。そして、ディーナオシー達が吹き飛ばされた先にはスティーナの尻尾が。
「おりゃああっ!!」
 思い切り叩き潰されるディーナオシー達。こうした見事な連係により、大群だった敵は、ほぼ一掃されるのであった。

「守ろうという意思、生きようという願い。手折らせる訳にいくものか」
 嵐のような戦場の中、旭が鐵貫で敵を貫いて呟いた。
 エミの妹達は、旭の背に隠れながらも、彼等の雄姿を目に焼き付けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
「おらぁっ!」
エミの手が回りきらない妹分が危ないタイミングで割り込み
魔力でブーストされたケリで壁にめり込ませる
エミが助力に困惑するなら
「オレも『姉貴』なんでなぁ!」
とニヤリと笑う。血が繋がらなくても大切な家族を守りたい気持ちはよくわかるのさ

埋め込んだ敵の触手が頭を狙って突き刺してきてとっさにUCで切り飛ばす…が、切断された先端は頭部に触れる
「ん……?へ、まぁいいか!」
一瞬違和感を感じつつもそのまま暴れてエミが妹分たちを守りやすいように立ち回っていく

(思考改竄の為の疑似記憶セットを不完全な形で流し込まれていて後に悪夢とかを見るようになるのだが、それは未来の話)



 猟兵達の活躍により、TOR-MM8『ディーナオシーMk8』の超能力者狩りは瞬く間に鎮圧された。
「あ、あんたら……すごいよ!」
 標的となったエミは、瞳を輝かせて猟兵達を労う。シベカワの尖兵は全て倒れた。超能力者狩りの間の手から、エミ達は逃れられたのだという実感がこみ上げてくる。
「これだけやっちまえばシベカワだって……」
 そう言うエミの元に、物陰から少女が現れた。
「おねえ、大丈夫? 怪我してない?」
 少女が震える声でエミに聞く。エミはそれを安心させてやろうと顔を向けた瞬間、表情が凍り付いた。
 ぬるり、と暗がりから触手が伸び出てきたのだ。
『メンタルケア、施術開始』
 ディーナオシーである。超能力者狩りは、まだこの場に潜んでいたのだ。
「アンナ!!」
 叫ぶエミ。だが不意の出現に超能力をうまく使うことが出来ない……その時。
「おらぁっ!!」
 その掛け声とともに、ディーナオシーが凄まじい勢いで壁にめり込んだ。
「間一髪だったな!」
 蹴りを放ったレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)が言った。
「あ、あんた……」
 突然のことに面食らっているエミに、レテイシャはにやりと笑って言った。
「オレも『姉貴』なんでなぁ!」
 そして、魔力を集中させた手刀を、壁にめり込んだディーナオシーへと放つ。まだディーナオシーは稼働していたのだ。手刀によって蠢く触手が切り裂かれ、宙を舞う。
 その隙間をさらに一歩踏み込んで、レテイシャは指先に魔力を込める。
「……こうだ!!」
 どすりと手刀を突き刺して、ディーナオシーを貫いた。今度こそ、ディーナオシーは機能停止したのであった。
「ん……?」
 ぽとり、何かがレテイシャの頭に触れた。
 それは、今しがたレテイシャが切り裂いた触手の先端であった。それを指でつまんで一瞥すると、レテイシャは何か、違和感を覚える。
「……へ、まぁいいか!」
 深く考えることはない。レテイシャは先端を放り投げて、残るディーナオシーへと向かってゆくのであった。

『ピピ……第二陣手配完了……』
 最後のディーナオシーが、そんな断末魔を残して機能停止した。
「……やっぱり、あたしらがここにいることが完全に知られてるんだ……」
 エミはその言葉を聞いて、呆然と呟いた。
「どうするんだ?」
 レテイシャは尋ねると、エミは俯いた。どうしても踏ん切りがつかないという様子だ。
「……大切な家族を守りたいんだろ?」
 レテイシャが言う。血が繋がっていなくても大切な家族を守りたい気持ちは、レテイシャもよく理解していた。だからこそ、エミに想いが伝わったんだろう。
 エミは意を決したように口を開いた。
「やっぱり、ここまでだね……。あたし達も、ヤマさんのところへ行くよ」
 シベカワと対立するヤクザ組織、ヤマシマ組。ヤクザの傘下に入るのはプライドが許さなかったが、それでも、メガコーポという巨大組織から妹達を、自分を守る為にはそれが一番の道だったのだ。
 こうして、エミ達は住み慣れた路地裏を出立した。生きるための道、ヤマシマ組の元へ。

「……んー……」
 レテイシャがなんともいえない表情で頭を掻いた。先ほど触手が頭に触れた部分が、妙にこそばゆい気がするのだ。だが、あくまで気のせいだろう。レテイシャはそう思うことにして、路地裏を後にした。

 そして誰もいなくなった路地裏で、機能停止した筈のディーナオシーの口が開いた。
『ジジ……思考改善プログラム……疑似記憶……セット……20パー……』
 がくりと顔を落とし、今度こそ完全にディーナオシーは沈黙するのであった。

 その後、何故か悪夢がレテイシャをよく苦しめることになるのだが、それはまた別のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『ヤクザ経営の施設で楽しもう!』

POW   :    羽目を外して楽しむ。

SPD   :    程ほどに楽しむ。

WIZ   :    損をしないように楽しむ。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●別天地への決意
 ディーナオシー達を退け、超能力狩りは防がれた。しかし、エミ達の居場所は割れ、いずれ新たな敵が現れる。そんな状況に、エミは意を決して告げる。
「やっぱり、ここまでだね……。あたし達も、ヤマさんのところへ行くよ」
 シベカワと対立するヤクザ組織、ヤマシマ組。
 ヤクザの傘下に入るのは危険とも隣り合わせだ。それにヤクザに面と向かって助けを求めるというのもあとあとどうなるか分かった者ではない。
 何よりエミのプライドがそれを許さなかったが、それでも、メガコーポという巨大組織から妹達を、自分を守る為にはそれが唯一の道だと判断した。
「ごめんな、駄目な姉ちゃんで」
「そんなことない。おねえは凄いよ!」
 ひとしきり抱きしめ合ってから、エミ達は勝手知ったる路地裏を後にするのであった――。

●ヤマシマ組
「ふん……」
 報告を聞いて、ヤマシマ組の組長、通称ヤマさんが鼻を鳴らす。
 組長室で、ぴしっとしたスーツを着たヤマさんは、入ってきたエミと少女達をぎろりと睨む。
「エミに、ガキがこんだけか。それを保護しろってか?」
 葉巻に火を付け、ふぅーっと息を吐く。わざとらしいくらいに威圧的な態度で、エミ達へと告げた。
「ナマ言うんじゃねぇ。俺達も慈善事業やってるわけじゃねぇんだ」
 エミは口を真一文字に結んで、無言でヤマさんの言葉を聞き続けていた。
「働かざる者食うべからず。エミ、知ってるか?」
「知ってる。だからあたし達はあそこで稼いで、メシを食ってきた。タダ飯食わせろってんじゃないんだよ」
 エミがまくしたてた。その表情に、ヤマさんは笑う。
「はん、言うじゃねえか。ならよ……」
 懐から取り出したのは、いくつかの書類だった。
「カジノ、キャバクラ、風俗……他にも働き口はいくつもある。テメェらで選んで稼いできやがれ」
 続けて、カギと住所を書いたメモを机に置く。
「それと俺の持ちアパートだ。空き部屋が3つある。好きにしろ」
 そうしてヤマさんは背を向け、ふぅーと再び煙を吐く。
 あまりの手際の良さに、エミ達は呆然と顔を見合わせた。
「早く行け。時は金なりだろうが」
「あ、ありがとうよ……!」
 こうして、エミ達の新たな生活が始まろうとしていた。

●ヤクザの店で遊ぼうか
「皆様」
 エミ達を送り届けた猟兵達に、ヤマシマ組の組員が声を掛けてきた。
「この度はご苦労をおかけしました。お礼と言ってはなんでございますが……」
 そう言い、組員はいくつかの店が記されたカードを手渡した。
「当組経営の『レジャー施設』の無料券でございます。よろしければご利用ください」
 そこに記されていたのは、カジノ、キャバクラ、風俗……果てはメイド喫茶なんかまで。
 様々な業種が揃っていて幅広いが、やはりというかどこかアングラな空気は漂っている。
 エミ達もこれらの施設に通って仕事をすることになるのだろう。

 しかし彼らもヤクザ。完全に信用していい相手ではない。エミ達の身が本当に安全か、調査がてら視察してみてもいいだろうし、まぁもちろん、純粋に遊んでしまっても良い。

 だが、この後はエミ達の情報をシベカワのデータベースから消す仕事が残っている。遊べるのは1件くらいだろうか。
 しかしともあれ、ひとまず戦いの後の一息をついてみてはどうだろう。
レテイシャ・マグナカルタ
●事前
可能な範囲と時間でヤマシマ組の裏は探る
この世界基準でエミ達を任せて安心できるかって部分を

●遊ぶ
エミを買う…体じゃなくて時間の方をな
(盗聴盗撮の心配がない密室で情報提供&金銭的手助けしたいが無償の施しは違うだろうしあっちも許さないだろうから

事前の調査結果&何らかの形で教育を受けられる伝手の情報を渡す
人生の選択肢は増やしておくべきだ
んで方法としてはやっぱり『力』がいる
エミの選んだ手段もその一つだったし、ヤクザの庇護もそうだ
でも増やせるなら武力や超能力以外のもっと色んな種類の『力』があったほうがいい、妹たちも、もちろんアンタもな

後はオレの連絡先も『姉』友達として何かあれば助けに来るぜ



 暗い路地に看板がびかびかと派手に光る。まるで虫を誘うかのようなそれに記された矢印に目を向ければ、古ぼけたドアがライトに照らされていた。ヤマシマ組の経営する風俗店である。
 ヤマシマ組の庇護を受けてから、エミ達は早速仕事を始めていた。その内容は、路地裏の頃と変わらない。何故なら彼女達には、それ以外の稼ぎ方を知らなかったからだ。
「いらっしゃいませ……って、なんだ、あんたか」
 キャミソール姿のエミは、訪れた客……レテイシャの顔を見て安堵したような顔をした。
「命の恩人だからって、まけたりはしないよ?」
 部屋へと案内しながら、エミが冗談めかして言う。レテイシャは頷き、部屋のベッドに腰掛けた。
「でも驚いたよ。あたしの客は男が大半だから。あぁ、でも経験はあるよ?」
 そんな風に笑うエミを、レテイシャが首を振って制止する。
「今回オレはエミの時間を買いに来たんだ」
「はぁ?」

 ベッドの上に、パサリと書類が並べられた。
「これがヤマシマ組の調査結果だ。オレなりに調べてみたんだよ」
「どうして?」
 エミはレテイシャの出した調査結果を見ながら聞く。調査内容には、ヤマシマ組と関係のあるメガ・コーポやヤクザ組織が羅列されている。その中に、シベカワの名は無い。
「エミ達がこれから安心して暮らせるかってさ」
「余計なお世話だよ」
 エミが照れくさそうに言う。まんざら悪い気もしないのだろう。
「まぁ……ヤマシマもお前達みたいなのを囲って、安く働かせてるってところはあるみてぇだけど」
 それでも衣食住の世話はしていて、生活に困るような働かせ方はしていない。エミ達にとってはそれだけでも破格だろう。その情報は、レテイシャにとっても安心できるものであった。
「それと……これだ」
 レテイシャが連絡先の書かれたカードを差し出した。
「家庭教師……?」
「ヤマシマを調べたら出てきた。まぁ勝手をやるにしても、その方がかえって怪しまれないだろ」
 レテイシャの言葉に、エミが困った顔をする。
「あたしは勉強なんて……」
「人生の選択肢は増やしておくべきだ」
 エミの言葉を遮って、レテイシャが告げた。その真剣な眼差しにエミはどきりとして、息をのむ。
「んで、方法としてはやっぱり『力』がいる」
「力ならさ」
 エミが超能力を使ってみせようとするが、それもレテイシャは首を横に振った。
「武力や超能力以外の、もっと色んな種類の『力』があったほうがいい。妹たちも、もちろん……アンタもな」
 教育によって得られる知識や知恵はも、そのレテイシャの言う『力』なのだ。それを理解して、エミは黙りこくってしまった。
 エミだって、この生活に満足しているわけではない。しかしこれが性に合っているようにも思えていたし、きっと一生こうして暮らしていくんだろうと思っていた。
「選択肢を増やす『力』……」
「あぁ、最後に選ぶのはエミだけどな」
 レテイシャが笑う。そして、もう一枚、カードを差し出した。
「あとはオレの連絡先。『姉』友達として、何かあれば助けに来るぜ」
「あぁ、ありがとう……!」
 果たして本当に教育を受けるなんて出来るのか、それはまだエミにもわからない。
 けれど、暗闇の中で一筋の光が射したような気がして、エミは瞳を潤ませるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
エミ達を足抜け不能なまで裏社会に関わらせるなと組長さんに伝言頼む
未来を慮ることで仁義を通してくれ

クラブでエミ御一行に接客してもらいましょ
メイドやホステスは許容だけど自分を安売りしないか心配だ…
お酌してもらって妹分を紹介や他愛もない趣味のお話でもするよ
アタシが女の子大好きってこともね

あは、妹分の目の前でソファに押さえつけて指を這わせるよ
取返しのつかないエロい要求を囁き、風俗の相場の三倍値で『お持ち帰り』を提示する
承諾するようだとお説教ですけどね
ヤマシマがだらしねえからシベカワがのさばるんだよ
妹分に心配かけるな
我を通せと言い聞かせるぜ

当然エミを買う気はない
赤い糸はアタシとは繋がってねーさ




 ヤマシマ組、組長室。
 エミ達が去ってがらんとした部屋の中で、組長の『ヤマさん』は葉巻をくゆらせていた。
「よ、組長さん」
 突然の気配にも驚かず、組長は声のした方へ振り向いた。
「……あんたらか、エミ達を助けたってのは」
 立っていたのは燦。組長は煙を長く吐いて、葉巻の火を灰皿に擦りつけた。
「あんま驚かないんだな」
「そんなことが出来るなら俺を3回は殺せるだろうよ。そうしないなら敵じゃねえ」
 今はな、と付け加えて組長はどしりとソファに座る。そして『用件は』とばかりにじろりと睨みつけると、燦は笑って言う。
「エミ達を足抜け出来ないくらいまで裏社会に関わらせるなって言いに来たのさ」
 その言葉に、組長は首を横に振った。
「関わるかどうかを決めるのは俺じゃねえ。……が、あいつらが望まないんなら俺だって関わらせねえつもりだ」
「そうかい。んじゃ、頼むぜ。未来を慮ることで、仁義を通してくれよ」
 そう言うと、燦はふっとその場から消えていった。開いた窓から湿った風が吹いて、組長は溜息をついた。
「……たく、どいつもこいつも俺を善人だと勘違いしやがってよぉ」


 ジャズのかかった、ムーディーな照明で照らされた店内で、ソファに腰掛けるいくつかのグループ。そこには必ず一人か二人の、煌びやかに着飾った女性がついて、客にお酌をしている。
 ここはヤマシマ組経営のクラブ。燦はそこにエミ達を連れてやってきていた。
 この店もエミ達に紹介された店のひとつだ。どちらかといえばこういう接客はあまり馴染みのないエミ達ではあったが、燦の頼みもあって、一度体験をしてみることにしていた。
「は、はいどうぞ」
 水で割った酒をエミが差し出して、燦はそれを受け取った。ぎこちない仕草に、燦は少し心配な気持ちになってくる。
(「メイドやホステスは許容だけど、自分を安売りしないか心配だ……」)
 エミ達が今までそういう生活をしてきただけに、楽な方に流されてしまいやしないかと考えてしまうのだ。
「なぁ、妹分も紹介してくれよ」
 燦がそう言うと、エミはハッとして、燦の逆隣に座る少女を指さした。
「あ、あぁ。まずはアンナ、こっちは……」
 そうして話題をつくっていけば、いつの間にかエミ達の緊張はほぐれ、徐々に話に花が咲き始める。
 他愛のない趣味の話、美味しかった食べ物の話。そして。
「なぁ、アタシは女の子大好きなんだぜ?」
 不意に燦がエミにしなだれかかった。
「そ、そうなのかい?」
 エミは突然のことに身体をこわばらせ、愛想笑いをする。
 今までもそういう客はいたから、別に大したことじゃないけれど、どうにもどぎまぎしてしまう。
「あっ……」
 エミが小さく息を漏らした。燦の指がエミの肌に沿って、するりと這ったからだ。
「あは、可愛い」
 燦は笑って、エミをソファに押さえつける。妹分たちに見せつける様にしながら身体を密着させると、エミの耳に息がかかるくらいまでに唇を寄せて、そっと耳元で囁いた。
「――……!」
 エミが大きく目を見開く。それをやってしまえば、きっと取り返しがつかなくなるだろうというくらい、淫靡な『お持ち帰り』の提案だ。
「ふふん。これでどう? さ・ん・ば・い」
 燦が指を3本立てて挑発するように笑う。その間も指を這わせることは忘れず、エミはもじもじと身体を捩る。
「…………」
 エミは目を泳がせて、妹達を一瞬チラリと見る。それから僅かに逡巡した後に、口を開いた。
「……いいよ」
 上目遣いで、燦を見つめるエミ。しかし。
「こら」
 燦がぺしりとエミの頭を叩いた。
「えぇっ、どうしてさ!?」
 エミが、訳が分からないという様子で抗議した。しかし燦はいたって真剣に言う。
「こんな誘いに乗っちゃだめに決まってんだろ? それに……」
 そこから始まるお説教タイム。
 燦の言葉の一つ一つはエミの耳に痛いものばかり。しかし、だからこそ、エミの心に深く刺さるものであった。
「だいたい、ヤマシマがだらしねえからシベカワがのさばるんだよ」
 そして、燦は妹達を一瞥して、エミに告げた。
「妹分に心配かけるな。我を通せ」
 燦から感じる確かな慈悲。厳しくも、優しくもあって、燦が確かにエミの事を想っていることがわかった。
「……うん、ありがとう」
 エミは滲む視界を隠すように俯いて、絞り出すように言葉を返すのであった。

「さぁって、アタシはそろそろ行くぜ」
 そう言って立ち上がった燦を、エミが引き止めた。
「なぁ、本当に誰も相手しなくていいのかい? さっきのは無しにしても……」
 その言葉を遮って、燦が笑いながら小指を立てた。
「赤い糸は、アタシとは繋がってねーさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

レパイア・グラスボトル
無料で遊べると聞いて大人までも子供みたいにはしゃいでいる
ということで他所の世界なので迷子にならないように集団行動する事前提で好きさせることにした
三大欲求よりも治療が上にあるレパイアには別の楽しみがある

エミやその家族、ヤマシマ組の関係者、レジャー施設の従業員等、病人怪我人を診る
口は悪いが治療自体は真摯で丁寧
治療用生体備品の本領発揮
治療費を払えそうな者からは貰う
必要経費として治療用の物資は【略奪】する

一部の医療に強い子供達も補佐や勉強についてくる
レパイアに似た子供(13歳くらい)もいる

礼儀のなっていない一部の客(患者)は子供達の医療技術向上のための教材扱いをする



「おい、ヤク中女。約束だろ」
 仕事を終えて帰り路についたエミの前に、レパイアが立っていた。
「や、約束ってなんだい?」
「忘れたのか。診せろ」
 ずいとレパイアがエミに顔を近付けてエミの顔をまじまじと見つめる。
「……ふん、部屋を借りた。ついてこい」
 そう言うと、レパイアはエミを臨時の診察室へと促すのであった。

「あん時の家族は?」
 エミが診察室を眺めて尋ねた。部屋の中には何人かの子供とレパイア以外に人の姿はない。
「無料で遊べると聞いてはしゃいでたからな、集団行動前提で好きにさせた」
 レパイアが椅子に座って言う。家族は、どうやらヤマシマ組から渡された無料券を大いに気に入ったようだった。
「あんたは行かないの」
「ワタシにはそれよりイイもんがある。おら、口開けろ」
 んあ、とエミが口を開くと、そこにレパイアがヘラを突っ込みライトを照らす。
 レパイアにとって三大欲求よりも強い楽しみが、治療であった。
 怪我や病気がないかを調べ、治療を施す。口は悪いが、仕事は真摯で丁寧だ。
 それがアポカリプスヘルで生まれた『治療用生体備品』の本領発揮であった。
「よし、終わりだ」
 レパイアはエミを一通り治療し終えると、さらさらとカルテを書いてゆく。
「薬を出しとくから毎食後に飲め」
 レパイアが隣に立つ子供にカルテを渡した。13歳くらいだろうか。まだ若いが、熱心にメモを取ってレパイアの医療技術を見て、学んでいるようだった。
 どこかレパイアに似た顔立ちが引っかかったが、エミは深く考えないままに、治療された箇所をぼんやりと眺めて呟いた。
「こんなにされたのは、初めてだよ……」
 ストリートではこんな治療など受けることは出来なかった。それどころか、風邪が命取りになる事すらあったのだ。それを思い返せば、じんと胸が熱くなる。
「おい、ボサッとするな。妹達も連れて来い」
 だが、感慨にふける間もなくレパイアがエミを部屋から追い出す。そう、まだまだエミの妹分達の診察が待っているのだ。
「それが終わればヤマシマ組の関係者どもだ」
 レパイアはにやりと笑う。この汚染されたサイバーザナドゥには、患者はどれだけでもいる。
 やがて、診察室には入れ代わり立ち代わり、ひっきりなしに人が出入りしていた。
 治療費は払える者からは払わせて、そうでないものはそのまま帰す。代わりに物資はその辺から略奪して、レパイアは次々とこの世界の人々を癒してゆくのであった。

 だが、この世界は何しろ治安が悪い。
「おいおいなんだぁ、お医者さんごっこかぁ?」
 中には室内の子供達を見て、そんな礼儀の無いことを言う男もいた。
 そんな奴であっても、レパイアは診察室へと通す。そして――。
「ひぃぃっ!!?」
 悲鳴を上げて、男が診察室から逃げ出した。
 レパイアはそれを見送って、子供達にひひっと笑った。
「今回の教材は、いい勉強になっただろう?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

隠神・華蘭
【エミside】
ちょいと色々ありましてただ今化術絶不調なのですが……
主の一大事に動かない訳にもいきませんからねぇ

えっちなお店に未成年を入れるわけにもいかないでしょう
わたくし達は助けたエミ様達のご様子でも見に行きましょうか
ご機嫌いかがでしょうか?といった具合で

……さてえんら、ちょいと電脳監査をお願いします
やくざ屋さんですから少々非合法なのはもう構いませんが、折角助けた彼女等がまたすぐ命の危機なんてことあっても困りますのでねぇ
そしてミニョン様、わたくしの代わりに化け、できますか?
ここはやくざ屋さんの地、監査中に邪魔されても嫌ですので
という訳でUC使って仮面に変化、ミニョン様に使ってもらいます


把繰理乃・えんら
【エミside】
お嬢様に来て頂きました。それでは皆で向かうとしましょうミニョン様

承知致しました、これよりエミ様達の今後の処遇を可能な限り確認します
UCを使用し9人の私達を召喚します、100にする技能はハッキングです
これならば痕跡が残らないよう侵入することも可能でしょう、電脳ゴーグルを展開し細心の注意を払いつつヤマシマ組の情報収集を行います
幹部の情報を確認出来ましたのでミニョン様にお渡ししておきます

手が余りそうですね……時間が許すなら先程戦闘を行ったディーナオシーから今回の黒幕に繋がりそうなものが無いかハッキングを駆使してこちらも探索を試みます
辿り着く前に罠など仕掛けられても弱りますので


ミニョン・エルシェ
【エミside】
ヤクザも裏稼業、真っ黒なのは分かりきっていますが、その度合いですね。
何があろうと、生き抜く気概はあるでしょうが…救った側の責任を果たしましょうか。

私は華蘭さん、えんらさんとヤマシマ組の監査を。
ふふ、華蘭さん直伝の化け術、しっかり活かしますよ!
ヤマさん…ではなく、当たり障りのない情報部門の幹部に化けておきますね。
体格を調整して…華蘭さんを顔に纏うのも不思議な感じです。ふふ。
『|組長《オヤジ》からの野暮用でよォ。
お前ら、コイツで遊んで来な』
化け術で精製した|お金《葉っぱ》を握らせて人払い。
えんらさんがハッキングしている間、私はUCでクロさんを飛ばして周囲を警戒しておきましょう。



 ストリートから離れたエミ達は、ヤマシマ組の息がかかった店で働き始めることとなった。
 たとえ狩りの対象である超能力者であっても、ヤマシマ庇護のもとであれば、シベカワもおいそれとは手が出せなくなる。だが、これで身の安全は保障されたかといえば、そうではない。
 何故なら、ヤマシマ組もまた、ヤクザ組織なのだから。

「お嬢様に来ていただきました」
 そう言うえんらの傍らに立つのは隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)であった。華蘭はちょっと怠そうな顔をしながらも、しっかりと頷いた。
「ちょいと色々ありまして、ただいま化術絶不調なのですが……主の一大事に動かない訳にもいきませんからねぇ」
 そうして集まった華蘭とえんら、そしてミニョンの3人。彼女達がこれから行おうとしていることは、ヤマシマ組の監査であった。
「ヤクザも裏家業、真っ黒なのは分かりきっていますが、その度合いですね」
 ミニョンの言葉に、華蘭も頷き、言葉を返す。
「やくざ屋さんですから少々非合法なのは構いませんが、折角助けた彼女等がまたすぐ命の危機なんてことあっても困りますのでねぇ」
「何があろうと、生き抜く気概はあるでしょうが……救った側の責任を果たしましょうか」
 ミニョンの言葉に三人は頷いて、ヤマシマの本部へと向かうのであった。

「ミニョン様、わたくしの代わりに化け、できますか?」
 本部前の物陰でで、華蘭がミニョンに尋ねる。ミニョンはふふっと笑って、自信ありげに頷いた。
「華蘭さん直伝の化け術、しっかり活かしますよ!」
 そんな返答に華蘭は安心して頷き返すと、むん、と妖力を集中させる。
 どろんと変化したのは仮面であった。それは身に着けた者に化け術の力を与える仮面。それをミニョンは被ると、変身する姿を思い描く。
「体格を調整して……華蘭さんを顔に纏うのも不思議な感じです。ふふ」
 少しおかしさがこみあげて、ミニョンがくすっと笑う。そのうちにも、ミニョンの姿は大きく変わり、見事、その姿はヤマシマ組の幹部のものとなっていた。
「さぁ、いきましょう」
「はい、ミニョン様」
『おっと、今の俺はヤマシマ組の兄貴だぜ? ……なんて』
 などとミニョンが冗談めかしつつ、二人はヤマシマの本部に足を踏み入れた。

 組の一角のサーバールーム。ここには組のシノギに関する情報などだけではなく、周辺組織の情報など、ヤマシマにとっては死活問題となる情報が詰まった重要な部屋である。
 その隣に繋がった情報端末室に、幹部に扮したミニョンが一人、ふらりと訪れた。
「兄貴、お疲れ様です! こんなとこにどうしました?」
 端末室で仕事をしていた男達が勢い良く立ち上がった。ミニョンは手を振って顔を上げさせつつ、部屋の中へと歩いてゆく。
『|組長《オヤジ》からの野暮用でよォ。お前ら、コイツで遊んで来な』
 懐から取り出したのは、20枚ほどの札束。それを一番手前の男に握らせ、肩を叩いた。
 男達は顔を見合わせて金を確認すると、腰を勢いよく直角に曲げた。
「あ、あざす!!」
 そう言ってそそくさと去ってゆく男達。彼らが十分に部屋から離れていったのを確認すると、ミニョンはきょろきょろと周りを見渡し、小声で言う。
「もういいですよ、えんらさん」
 その言葉に、物陰からえんらが現れた。
「ここはやくざ屋さんの地、監査中に邪魔されても嫌ですのでね」
 えんらを情報端末室に招き入れながら、仮面に変身した華蘭が言った。
「ミニョン様、なかなかの化け術です」
「ふふ、ありがとうございます」
 ミニョンは照れくさそうに笑った。彼女が男達に渡した金も、ミニョンが化け術で精製した葉っぱであるが、しばらくはバレないだろう。時間は十分に作ることが出来た。
「……さてえんら、ちょいと電脳監査をお願いします」
 華蘭が言うと、えんらが深く頷いた。
「承知いたしました。これよりエミ様達の処遇を可能な限り確認します」
 そう言って、サーバールームへと入り込んだえんら。そして――。
『お呼びでしょうか』『お呼びでしょう』『お呼びでしょ』――。
 えんらが突如、10人に増えた。
 えんらは自身の身体を構成するバグデータを分離させ、分身を作り上げたのだ。
「さて、ハッキング開始いたします」
 電脳ゴーグルを展開して、えんらがサーバーへと接続する。これならば高速かつ、痕跡を残すことなく情報収集が可能だろう。細心の注意を払いながら、えんらは深い電脳の海へと潜ってゆく――。

「何人か戻ってきます」
 サーバールームに顔を出したミニョンがえんらに告げた。ミニョンはえんらがハッキングをしている間、ミミズクのクロを通して周辺の警戒を行っていた。
 変装がバレたわけではなさそうだ。単純に遊び終えたか、何か急ぎの仕事でも思い出したのだろう。
 そんな報告にも落ち着いた様子で、えんらが言う。
「情報収集、終了いたしました」
「それじゃ、撤収です!」
 華蘭の号令に従い、3人は本部を後にするのであった。

「ご機嫌いかがでしょうか?」
 仕事終わりのエミのもとに、華蘭がやってきていた。
「あんたは、あの人達の仲間かい?」
 エミの問いに華蘭は頷いた。
「ちょっと様子が知りたくて」
「あんたら皆心配性だな。……ふふ、まぁ、おかげさまで、やっていけそうだよ」
 笑うエミの表情は、どこか晴れやかですらあった。
 そんなエミの背中を見送る華蘭に、えんらが近付いてくる。
「ヤマシマ組は、エミ様達のようなストリートで路頭に迷った人物をよく保護しているようです。理由は他に比べて低賃金な労働力とするため」
 ですが、と言葉を続ける。
「同時に住居の手配や医療提供など、最低限以上の生活保障を行っております」
「そのまま使い倒されたり、危険なことをさせられたりとかは?」
 華蘭の問いに、えんらが答える。
「現状では確認出来ておりません」
 その報告に、華蘭は僅かに安堵した。ひとまずは大丈夫だろうと思えたからだ。
「それと」
 えんらが付け加える。
「先程のディーナオシーよりシベカワの情報を収集しました。エミ様達のデータが管理されているサイバースペースは、管理者であるオブリビオンの力によって、常に精神を変調させる効果が発生するようです」
「……ありがとう、えんら。皆様に報告しなくてはいけませんね」
 こうして、3人は仲間達の元へと向かう。
 エミ達を捕捉し続けるデータを消去するため、そして、そこで待つ者との決着をつけるため――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
風俗に行って一番若い女の子を指名。
エミさんたちが働く際に一番肉体的に厳しいのはここでしょうし色々確認しておきます。

女の子が部屋に来たらベッドに一緒に座り手を繋いでUC発動。
私に好感を覚えるような記憶を『強制捜査』で一時的に与え『おねだり』で普通なら答えちゃいけない質問に答えてもらいます。
雇用条件だとかスタッフからの扱いだとかヤクザたちの裏話だとか…程々にスキンシップを交えつつ聞き出し、全部が終わったら与えた記憶や守秘義務のある情報を話してしまったという記憶を奪ってさよならです。

必要悪と言う言葉は嫌いですが…ある程度良心的かつ弱者の受け皿になれる組織であるなら、潰すのは後回しにしてあげましょう。



 ヤクザの稼業といえば、クスリ、水商売。
 ヤマシマ組にしてみても、それはあまり変わらない。
「いらっしゃいませ♪」
 そのヤマシマ組の息がかかった風俗店では、まだ少女とすら言えるほどの女がにこたまを出迎えた。

 女に連れられながら、にこたまは店内を観察する。
(「エミさん達が働く際に、一番肉体的に厳しいのはここでしょうし、色々確認しておきましょう」)
 その為に、今回にこたまは、店内でも一番若い女を指名していたのだ。
 二人は部屋に入ると、ベッドに隣り合わせで腰掛ける。最初に声を掛けてきたのは女のほうだ。
「うふふ、お姉さん初めて?」」
 微笑む女に、にこたまがそっと手を触れた。
「もう、忘れちゃったんですか?」
 にこたまの言葉に、女はきょとんとする。が、僅かな間を置いた後、ぱぁっと顔が明るくなった。
「あぁ、ごめーん! そうだったわよね?」
 突如として、女は親し気に語り始めた。これがにこたまの『正義ではない強制捜査』。女に偽りの記憶を与えたのである。
「じゃあ、今日はどうしよっか?」
 そう言ってしなだれかかって密着してくる女の肌に触れて、にこたまは告げた。
「実は、お願いがあるんですが……」
「……いいよ、なんでも聞いて?」
 続けて『正義ではないおねだり』。これで女は、普段は答えちゃいけないような質問にだって答えてくれるようになった。
「ここの仕事は辛いですか?」
「んっ……そうねー、やっぱり大変な時はあるかなぁ」
 女は少し考えて答える。
「キモいおっさんとかー、キモいおねだりしてきてマジ無理」
 どうやら、普通に仕事上の愚痴のようだ。
「スタッフは優しい?」
「そうねー、ふつー?」
 理不尽な要求をするでもなく、淡々と仕事をこなす。ただし、特段配慮が行き届いているという感じでもないようだ。
 良くも悪くも普通。劣悪というわけではない程度なのが、いかにも安い風俗店という印象であった。
「あ、そうそう、今度来る子がさ、おじさんの良く知ってる子なんだって」
 にこたまがぴくりと眉を動かした。おじさんとはヤマシマ組の組長のことだろう。
「なんかね、凄い頑張ってる子だから、しっかり仕事教えてやれーってさ、うるさいの」
「……」
 くすくす笑う女に、にこたまは少し、肩の力が抜けた気がした。

「必要悪という言葉は嫌いですが……」
 店を後にして、にこたまは呟く。今回話を聞いた女からは、今日の記憶を奪ってある。きっと猟兵がこんな調査をしていたことなど、ヤマシマ組の耳に入ることはないだろう。
 ともあれ、ヤマシマ組は保護した女達にはそれなりの扱いをしているらしかった。
 ある程度良心的で、弱者の受け皿となる組織であるならば……にこたまは去り際、小さく呟いた。
「潰すのは後回しにしてあげましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

水無瀬・旭
【バーside】
10年以上も探し続けてきた『星』は、泣くとか、抱き締めるとか、気の利いた言葉とか。
想いが報われた時に想定していたものたちが吹き飛ぶくらい、意外とあっさり見つかったのでした。

君は、あの頃のまま…綺麗なままだね、星子さん。
俺はすっかりおじさんになってしまったよ。
……どうにも、参ったなぁ。
…伝えたい事、話したい事が渋滞しているので、スティーナさん、任せた!

そういえば、星子さんは中々の健啖家だったっけか。
ああ、俺も費用は持つよ。
折角おじさんになっているのだから、それくらいの甲斐性は見せ…
……いや、無料!レジャー無料券!無料だったはずだぞう!
(積み上がる皿に、心底ホッとする男であった)


沖津・星子
【バーside】
私の宿敵がいる気がするのにバーに寄ってる場合ではない……と言いたいですけど
まさか二人共ここに来ているなんて……一先ず落ち着きますか

あ、あの……旭さんお久しぶりです……スティーナも
急に居なくなってしまって本当に申し訳ないです……
いやそんな旭さん、おじさんだなんて……私はむしろ歳と外見が合わなくて逆に困るといいますか……(しばし無言)

……は?いやいや何分裂してるんですかこの子……ミエリってえぇ……
貴女本当自由ですね相変わらず……ミエリさん?も姉がこうじゃ何かと大変でしょう?

はぁ、何かこう悩んでも良くない気がしてきました
そうですね、食べましょう久々に!
ええとコレとコレとコレと……


スティーナ・フキハル
【バーside】
スティーナ口調 ★部分はミエリ
そんな訳で一番アレっぽくないヤーさん経営バーに3人で寄ってみたのだが……

ちょ、ちょっと義姉ちゃん、他に言うことないの!?
折角昔なじみの3人が揃ったってのにさー!
うぇ!?だー分かった任された、とりあえずアタシは言うことがある
星子義姉ちゃん、帰って早々悪いけど妹増えてるから
紹介しとく、ってUC使用、妹呼び出し!

★は、はじめまして星子義姉さん、ミエリといいます
スティーナお姉ちゃんの妹、です……はい
そんな大変なんてこと……ありますけど
ま、まぁ積る話もあると思いますが一先ず戦いの前に腹ごなしでもします?

えっミエリおま……義姉ちゃんに食いモンは……金足りるかな



 ヤマシマ組は自分の縄張りで沢山の店を持っている。
 多くは水商売であるものの、落ち着いたシックなバーもいくつか存在していた。
 そのうちの一つの店のテーブル席に、星子はどこか落ち着かない様子で座っていた。
(「……一先ず、落ち着きましょう」)
 星子はこの事件の奥に感じる宿縁に、少々気が気ではない状態であった。
 さらに、エミ達を狙うオブリビオンの追撃だって来てもおかしくないのだから、遊んでいる場合ではないようにも思えていた。
 すぅ、と息を吸って、吐いて。そして。
「あ、あの……」
 目の前に立つよく知る二人……旭とスティーナを前にして、おずおずと口を開けた。
「旭さんお久しぶりです……スティーナも」
 旭とスティーナは、それを感慨深げに聞いている。
「急に居なくなってしまって、本当に申し訳ないです……」
 星子は申し訳なさそうに俯きながら、二人に言う。
「……」
 沈黙。静寂。
「ちょ、ちょっと義姉ちゃん、他に言うことないの!?」
 その状況に真っ先に突っ込みを入れたのはスティーナであった。
「折角昔なじみの3人が揃ったってのにさー!」
 ねぇ、と旭に目を向けると、旭はぼうっと、星子を見て、物思いに耽っていた。

 10年以上探し続けてきた『星』。それが今、意外なほどにあっさりと見つかった。
 泣いたり、抱きしめたり、何か気の利いた言葉を言ってみたり、旭もこの時のために色々と考えてきたのだが、そんなものは全部吹き飛んでしまった。
 それでも、確かに、探し求めていたものは見つかった。その気持ちは、旭の胸をいっぱいにさせてくれる。
「……君は、あの頃のまま……綺麗なままだね、星子さん」
 ようやく口を開いて告げたのは、そんな素直な気持ちと、僅かな自虐。
「俺はすっかりおじさんになってしまったよ」
「おじさんだなんて……私はむしろ歳と外見が合わなくて逆に困ると言いますか……」
 旭からの言葉に、星子は僅かに頬を染めて、苦笑いで返す。
「…………」
「…………」
「…………」
 静寂。沈黙。話したいことは沢山ある筈なのに、どうにも言葉が出てこない。
 スティーナはそれをによによと眺めている。
「……どうにも、参ったなぁ」
 旭は頭を掻いて、困った顔をする。そして。
「スティーナさん、任せた!」
「うぇ!?」
 突然の無茶振りに、スティーナが目を見開く。うー、と僅かに唸った後に、バンとカウンターを叩いた。
「だー、分かった任された!!」
 スティーナがそう叫び、立ち上がる。
 スティーナは星子に向き直って、告げる。
「とりあえずアタシは言う事がある。星子義姉ちゃん、帰って早々悪いけど……妹増えてるから紹介しとく!」
「えっ?」
 衝撃告白だ。あまりのことに星子は目を点にして、状況が呑み込めていない。そんな星子にはお構いなしに、スティーナが意識を集中させる。
「ミエリ!」
 その呼びかけと共に、スティーナが分裂した。
「……は?」
 星子がぽかんと口を開いた。情報の大洪水である。
「は、はじめまして星子義姉さん、ミエリといいます」
 ぺこりと礼儀正しくお辞儀をするミエリに、面食らっていた星子はハッと我に返りお辞儀を返す。
「スティーナお姉ちゃんの妹です……はい」
 スティーナから分裂したミエリは、顔こそそっくりだが、両眼が赤く、二本の角が生えている。また、分裂の影響だろう。スティーナも、瞳の色や角に変化が見られた。
 だが、そんな違いをはっきり詳しく認識する暇もなく、星子は困惑しきりであった。
「いやいや何分裂してるんですかこの子……ミエリって、えぇ……」
 と、なんとも信じられないといった様子で呟く星子。
「貴女本当に自由ですね相変わらず……」
 ともあれ、目の前の現実は受け入れなくてはならないと、星子はミエリに向き直る。
「ミエリさん? も……姉がこうじゃ何かと大変でしょう?」
「そんな大変なんてこと……ありますけど」
 ショックを受けるスティーナをよそに、ミエリが苦笑いする。
 そうしてようやく状況が呑み込めてきた星子が、ふぅ、とため息をつく。
「はぁ……何かこう、悩んでも良くない気がしてきました」
「ははは、そうだね」
 旭が頷く。旭もまたそんな三人のやり取りに、緊張の糸がほぐれ始めていたようだ。そんな時。
「ま、まぁ積もる話もあると思いますが……一先ず戦いの前に腹ごなしでもします?」
 ミエリがそんな提案をした。
「えっ」
 スティーナがギョッとした顔をした。対して星子はその言葉に目を輝かせ、手をぽんと合わせる。
「そうですね、食べましょう久々に!」
「そういえば、星子さんは中々の健啖家だったっけか」
 嬉しそうな星子を見て、旭が言う。しかし、スティーナは大分心配そうだ。
「いや、義姉ちゃんに食いモンは……金足りるかな」
「ああ、俺も費用は持つよ。折角おじさんになっているのだから、それくらいの甲斐性は見せ……」
 そこまで言いかけて、旭が固まった。
「ええとコレとコレとコレと……」
「星子さん?」
 ででんとテーブルに並ぶ料理の数々。そして消えてゆく料理、積み上がってゆく皿。
「…………」
「こちらおかわりお願いします」
 さらに、皿が重なった。
「……いや、無料! レジャー無料券!」
 旭が思わず、貰った券を取り出し叫んだ。
「無料だったはずだぞう!!」
 ああ、こんなちっぽけな紙切れが今は輝いて見える。これならば、星子の食事も今回ばかりは全部チャラになる筈だ。
 命拾いをした……と、旭は心の底からホッとするのであった。

 こうして、三人が再会した夜は過ぎてゆく。
 三人が会えなかった時間、その空白を埋めてゆくかのように笑い合って、英気を養ってゆく。
 これから後に待つ、星子との宿縁の戦いのために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『マッド・スマイリー』

POW   :    赤の薬品【自己強化型】
自身の【体に赤い薬品を注射することで戦闘特化状態】になり、【時間経過と共に理性を失い脚力が強化される】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD   :    青の薬品【依存誘発型】
自身の【作った青い薬品を成果に応じて与えること】を代償に、1〜12体の【薬品に依存し機械化義体に改造された人間】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    緑の薬品【継続散布型】
戦場全体に【緑の薬品を気化させた霧】を発生させる。レベル分後まで、敵は【薬品の過剰摂取による身体機能へ】の攻撃を、味方は【慣れた薬品の接種による多幸感を伴う心身】の回復を受け続ける。

イラスト:果島ライチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は沖津・星子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ひとしきりヤマシマ組の仕切る店を遊んだ猟兵達に、報告が入る。
 シベカワが送り込んだ超能力者狩り……その名簿が記録されたデータベースへの道がはっきりと繋がったのだ。
 サイバースペースに潜入し、その空間を破壊すれば、データベースは抹消されるだろう。
 そうすることで、ようやくエミ達は超能力者狩りの手から完全に逃れたと言えるのだ。

 だが――。

 そのサイバースペースは、研究室のような場所であった。真っ白な床、真っ白な天井。壁一面に備え付けられた棚には超能力者達の個人情報が詰まった名簿が収められ、時々ひとりでに開いては、光の粒子のような情報が浮かび上がり、どこかへと飛んで行く。
 部屋の中央には、フラスコや試験管など、様々な実験器具が置かれたテーブルと、白衣を着た女――オブリビオン『マッド・スマイリー』がいた。
「ふふふ、ここまで来たのね」
 フラスコを回しながら、マッド・スマイリーが笑った。
 すると、ぼぅ、と手にした試験管の中から薬品が飛び出して、研究室中に霧散する。
 その薬品の効果であろうか。猟兵達の精神に異常が発生し始めた。

 ある者は意識が混濁し、ある者は逆に興奮を覚える。
 怒り、悲しみ、喜び、恐怖。様々な感情が薬品によって過剰に刺激されて暴走、意識のコントロールを困難にしたのである。

「ふふふ……」
 マッド・スマイリー。このサイバースペースを守るオブリビオン。
 彼女は通常のユーベルコードの他に力を用いることの出来る強敵『サイコブレイカー・オブリビオン』であった。
 その力によって、この空間では何らかの感情一つが暴走してしまうようだ。
 自身の感情を律し、あるいは膨らんだ感情をうまく利用し、戦う必要があるだろう。
「さぁ、実験台になって貰うわ……あははは!」
 マッド・スマイリーは、実に楽しそうにに笑うのであった。
レパイア・グラスボトル
嗤い返す
家族も笑う

ワタシとキャラ被ってないか?
誰だ、あっちの方が美人とか言ったのは。

世界によっては笑顔は獲物を狩る顔とか色々言われるが、黙示録世界の医者にすれば健康に生きる為の特効薬である
感情の暴走は自覚するが医療用生体部品部分が冷静に状況を診察する
家族は兎も角、自身の感情は全て後付けである

ま、クスリに頼っての笑いなんて詰まらん物だけどな。
賢者になるにはまだ早いぞ。

一通り遊んでスッキリした家族に
黙示録世界産倫理観を無視した強化薬を家族に投与
治療法はレパイアの製造時点から刻み込まれている
どの様に感情が暴走しようが治療するという製品仕様にブレはない

レイダーも元は普通の人間
昔はサイボーグ技師だったヤツや薬品によって強化され機械義体に対して有利に戦えるヤツがいるかもしれない
戦闘力は高くないが人数が揃えば大抵の事はできる

家族は皆、既に暴走している
暴、楽。そして少しの情
忘却の嵐を前に未来に絶望したその日から
結局難しい事は脳みそからパージしていつも通り本能のままに好き勝手やるのだが



 マッド・スマイリーの研究室へと現れたレパイアとその家族たち。
「ふふふ……」
 マッド・スマイリーの笑いに、レパイアも笑い返す。
「ははは」
「「ははははは」」
 家族も合わせて笑いだす。
「……ワタシとキャラ被ってないか?」
 そんな疑問を投げかけた瞬間、レパイアの耳がピクリと動く。
「誰だ、あっちの方が美人とかいったのは」
 地獄耳である。だが、それでもレパイアは笑い続けている。
「ふふふ、ははははは!」
 それは、このサイバースペースがもたらす感情の暴走。
「……まぁ、クスリに頼っての笑いなんて詰まらんものだが」
 レパイアの言葉に、ピクリとマッド・スマイリーが反応した。
「何を言っているの?」
 マッド・スマイリーが訝しむ。レパイアは勿論、彼女の連れてきた家族達もみな、感情を暴走させている筈だ。その感情の波に流されて、正常な判断など出来る筈ない。ましてや、笑いながら『つまらなさ』を語るなどと。
「賢者になるにはまだ早いぞ」
 そうレパイアが家族へと呼びかけると、家族は笑いながら彼女の元に集結してきた。
「暴、楽。そして少しの情」
 レパイアの言葉に続いて、家族達が前に出る。
「忘却の嵐を前に……未来に絶望したその日から」
 手をかざし、告げた。
「家族は皆、既に暴走している」
「「「ひゃっはぁあああー!!!」」」

「くくく……元気がいいじゃない!」
 迫る家族達に、マッド・スマイリーも笑いながら青い薬品を取り出した。それにつられるように、機械化義体が現れると、彼らはスマイリーの前に立ち、迎え撃たんと立ちはだかる。
「世界によっては、笑顔は獲物を狩る顔とか色々言われるが、黙示録世界の医者にすれば健康に生きる特効薬だ」
 そのレパイアの言葉の通りかどうか、家族達の動きは生き生きとしていた。
「ひゃはっ!」
 サイボーグ技師の一人は、巧みに機械化義体の装甲の隙間に電流を流し込み、義体をショートさせる。
「略奪だぜぇ!」
 レパイアの処方した薬品……それもアポカリプスヘル産の、倫理観を一切無視した強化薬を服用した男は、得た腕力で敵を思い切り殴りつけ、関節をひしゃげさせた。
「な、何故なの!?」
 次々と倒れてゆく機械化義体達に、マッド・スマイリーは困惑する。
 レイダー達は感情の暴走など一切関係ないかのように襲い掛かってくる。機械化義体達がいくら痛めつけたところで、後から後から、傷を塞がれた者達が再びやってくるのだ。
 こんな状況、冷静ではいられないこの空間で有り得ない、そうマッド・スマイリーは考えていた。だが。
「結局難しいことは脳みそからパージして、いつも通り本能のまま好き勝手やっているのだ」
 種明かしとばかりにレパイアが語る。彼女は敵の攻撃によって負傷したレイダーを治療をし続けていた。
 薬品を傷口に注射し、手早く縫合する。その手つきは冷静そのものであり、それはレパイアの医療用生体部品によるものでもあるのだが、同時に、レパイアはこうも語る。
「あいつらはともかく、ワタシの感情は全て後付けだ」
 治療を受けたレイダーが立ち上がる。まるで全快したかのように飛び跳ねた彼は、再び敵群へと駆けてゆく。
 これでは、まるで勝負にならない。たった12体の義体は、不死身のレイダー軍団に悉く蹂躙され、残るはマッド・スマイリーただ一人。
「あぁああっ……!?」
 軍団の波に押し流されてゆくマッド・スマイリー。それを見送りながら、レパイアは笑いながら告げた。
「どのように感情が暴走しようが、治療するという製品仕様にブレはない」

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
ディーナオシーを作ったのアンタかい?
返答問わず怒りで眩暈するが抑え込むぜ
憎悪の剣は後味悪いんだ…

神鳴で受け流しながら守りに徹する
改造人間の数が手に負えられなくなったら煙幕焚いて目潰しし、盗賊ノスヽメを発動させて気配を消します

盗賊道具の中から端末取り出して、怒りを忘れるほどにハッキングに没頭するぜ
エミ達の情報の出所やシベカワについて、また改造手術の可逆性などデータを奪う
口座残高を盗るのはご愛敬
放置プレイした改造人間に禁断症状が出れば薬を浪費させられるかな

作業終われば怒りを解放して研究室をぶっ壊すぜ
女史と改造人間はアークウィンドの風属性衝撃波で吹き飛ばす
研究の全てが壊れる様を眺めてな
デストローイ♪



 超能力者狩り達のデータが収められたサイバースペース。その主マッド・スマイリーの力は、来たものの感情を暴走させるというものであった。
「ディーナオシーを作ったのはあんたかい?」
 その空間の中で、燦はマッド・スマイリーに尋ねた。
 至極冷静な言葉。しかし、その言葉の端々には怒りの感情が見え隠れする。
 その様子に、マッド・スマイリーは楽しそうにしながら答えた。
「ふふふ、あの子達? あれはこの会社から貰ったモノよ。薬を注入したのは私だけど……気に入ってくれたかしら?」
 くすくすと笑うマッド・スマイリーに、燦は眩暈を覚え、今にも飛び掛かりそうな身体を抑え込む。
(「憎悪の件は後味悪いんだ……」)
 握ろうとした拳で神鳴を掴み、燦が身構える。
「気に入らなかった? それならこちらはどうかしら?」
 マッド・スマイリーが青い薬品を掲げると、周囲に機械化義体となった人間達が現れた。
 青の薬品に依存し、それを求めてサイバースペースへと召喚されたのだ。
「さぁ、行きなさい」
 その指示に従って、改造人間達が燦へと向かってゆく。
「ちぃっ……」
 燦が神鳴で攻撃を受け流すが、12体にも及ぶ改造人間達の波状攻撃に対しては、刀一本では手数が足りなくなってくる。
「なら、こうする!」
 燦が足元に何かを投げつけた。すると、突如もうもうと白い煙が上がり、改造人間達の視界を奪ってゆく。
「手あたり次第攻撃するのよ!」
 マッド・スマイリーの号令にあわせて、改造人間が煙幕の中を闇雲に攻撃するが、燦の手応えは無い。
 それもそのはず。既に燦は改造人間達の前からいなかったのだから。
「やってろやってろ……さぁて」
 燦がいたのは、壁の棚。厳密には棚の形に可視化されたデータの塊である。燦はその棚に向けて、盗賊道具のハッキングツールを取り出すと、データへのハッキングを開始した。
「エミ達の情報の出所は……はぁん、あの辺の商売敵って感じか」
 店を構えて営業している者達にとっては、エミ達は邪魔者でしかなかったのだろう。ストリートでたむろする超能力者などは、この世界においてはゴミ同然。そこにシベカワの利害が一致すれば、彼らの一掃など簡単に計画されてしまう。
「それから、改造手術の可逆性は……と」
 続けて燦が奪ったのは、煙幕に惑わされている改造人間達の情報である。
 薬に依存し、機械化義体に改造された人間達……。この世界において生身の人間は存在しないが、その度合いを調整することは出来るだろう。優れた技師であれば、ある程度元の身体に戻すことも不可能ではなさそうだ。
「んで、と……」
 一通りのハッキングを終えて、燦は改造人間達に向き直る。
「うぅ……」
「あぁあ……」
 煙幕の中から呻き声が聞こえる。依存している青の薬品による禁断症状が発生しているのだ。
 あれならもう、満足に戦うことは出来ないだろう。ならば、あと。は
「いくぜ! 全部ぶっ壊してやる!!」
「……そっちよ!!」
 マッド・スマイリーが叫ぶより早く、燦が怒りに身を任せ、アークウィンドを振り上げた。
「デストローイ!!」
 風が逆巻き、激しくうねる。衝撃波が研究室ごと敵群を吹き飛ばし、この空間を破壊してゆく。
「あぁあっ、私の、私の研究が!!」
 壊れてゆく空間とともに消えてゆくデータに発狂するマッド・スマイリー。その姿に、燦が告げた。
「研究の全てが壊れる様を眺めてな」
 なお、マッド・スマイリーの口座残高がゼロになっていたのは、ご愛敬である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
UC級の薬物…面倒な…!
体内の循環器系システムによる毒耐性と浄化機能はありますが焼け石に水ですね…。
感情暴走のせいで明らかに動きが鈍り、その場から動けなくなります。
元々、私って根の精神性が暴力的というか…そんな感じなので。

しかし、だからこそ私はそんな自分を律するために礼儀作法を修めました。(というか幼少期に見せた暴力性を見兼ねた家族が習わせた)
礼儀作法、礼法とは誠意が形になった作法…まずは無様な体勢をやめて姿勢を正す…形から入ることで心が少しは切り替わる…!

一瞬だけでも精神を研ぎ澄ませ、私にトドメを刺そうと近づいた敵にカウンター。右腕に電撃と怪力を込めて。

逆転勝利は心臓に悪いですね…。



「UC級の薬物……面倒な……!」
 サイバースペースに侵入したにこたまは、この空間の持つ力、感情を暴走させる力の作用によって、身体の動きを鈍らせていた。
「う、うぅ……」
 体内に備わる循環器系システムによる浄化機能では、この空間の力を十分に解毒することは出来ない。にこたまの動きは次第に弱まり、ついにはその場でうずくまり、動けなくなった。
「ふふふ、良い格好だわ」
 マッド・スマイリーがそんなにこたまを見下ろしつつ、赤い薬品を取り出した。
「あははは、この薬を試す絶好の機会。そのままでいてちょうだいね?」
「くっ……うぅ……」
 悠々と自身に薬品を投入してゆくマッド・スマイリー。その姿をただ見ることしか出来ず、にこたまが苦虫を噛む。
 にこたまの元来の性質、暴力性の高い精神性。それが今、感情の暴走によって逆に作用して、身体がまったく動かない。
(「しかし、だからこそ……」)
 暴走する感情の中でにこたまは思い返す。
 その暴力性を持つ自分を律する為に、礼儀作法を修めたことを。
 それが親からの指導であるとしても、にこたまの得たものは、今も確かに身体に染み込んでいる筈だ。
「礼儀作法、礼法とは……」
 にこたまがまるで呟く。
「誠意が形になった作法……!」

「あはははははっ!!」
 マッド・スマイリーが足を大きく上げる。そして、踏みつぶすかのように勢いよく叩きつけた。
 その瞬間。不意ににこたまの身体が傾いた。
「……なっ!?」
 どぉん、と床を砕くマッド・スマイリーの蹴り。ほんの僅かな動きで、にこたまは敵の攻撃をかわしたのである。
「もう、気は済んだでしょう……!?」
 ほんの一瞬、僅か一瞬。それでも、にこたまの精神は鋭く研ぎ澄まされていた。
 右腕は自然に拳を握り、電撃を纏わせる。無防備になったマッド・スマイリーへと、腕に力を籠めてゆく。
 誠意を形に。マッド・スマイリーが蹴りを放った瞬間、にこたまは無様にうずくまるその身体をただし、背筋を伸ばしたのだ。
 それは、心を切り替え、精神を統一する心の余裕を生み出し、力強いカウンターの一撃へと変換される!
「あぁああっ!!?」
 電撃の弾ける音が、サイバースペース中に響き渡った。にこたまの拳は、マッド・スマイリーの身に深く突き刺さっていた。
「はああああっ!!」
 その勢いのままにこたまが拳を振り抜いた。マッド・スマイリーが電撃とともに勢いよく吹き飛んで、データの収納された棚へと叩きつけられた。
「逆転勝利は、心臓に悪いですね……」
 はぁ、はぁと荒い息を上げながら、にこたまが呟いた。これまでににこたまの築いてきたものが、薄氷の上の勝利を掴んだのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
ぐっ、これは…
薬品で意識が朦朧した所に緑の薬品をさらに使われ五感を感じ取る神経が過剰になって苦しむ
さらに脳の記憶を司る部分にもダメージを受けて一章の疑似記憶が今だけ開いて
敵に勝利したのが敗北に
敵地からの脱出が捕らえられ酷い目にあったりと
一時的に記憶が書き換えられる(無力感や敗北感を植え付けて|洗脳《思考改善》させるもの)

薬の影響もあってまともに動けなくなってしまうが、義父や義弟妹たち、大切な友人、そしてここに来る前に見た、エミの瞳に宿った|涙《ひかり》を思い出し、魂を震わせる
たとえ体が動かなくても、できる事ぁまだある!!
詠唱無UCを発動、動かない体を魔力で包んで、自身が大砲の弾のように突撃体当たりを行う
球形の魔力が蒼い竜のシルエットに変じて相手を飲み込み、データサーバー毎大爆発



「ぐっ……これは……!」
 サイコブレイカーオブリビオンたるマッド・スマイリーの作り上げた世界は、意図せずとも感情を暴走させてしまう。
 レテイシャはぐわんと脳を揺さぶられたような、眩暈のような感覚を覚えていた。
 足に力が入らない。強い無力感に苛まれるレテイシャに、マッド・スマイリーは怪しく微笑みながら、悠々と近付いてくる。
「ふふふ、おまけしてあげるわ」
 手にした試験管に注がれた緑の薬が、ふわりと気化して漂った。
「うっ……あっ……!!」
 レテイシャがうずくまる。緑の薬の作用が神経系を敏感にし、レテイシャに『ありもしない記憶』を呼び起こさせた。
「そ、そんな……あぁ」
 この事件の発端、路地裏で起きたことが、今、レテイシャを苦しめはじめた。
 敗北の記憶、無様に逃げ出そうとした記憶、そして、捕まえられてしまった記憶。
「こ、こんなの……うぅっ」
 敗北感がレテイシャにのしかかる。レテイシャの頭の中から響く数々の記憶は、今の彼女の気持ちをも敗北へと傾かせた。
(「何故抗う必要がある? もう負けたんだ。それを認めて楽になれよ」)
 心の中でレテイシャが語り掛ける。それを、レテイシャは首を振って否定する。
「黙れ、オレは……あぁっ」
 突如、ぞわぞわとした恐怖心が湧き上がった。記憶の中で、捕縛されたレテイシャに待っていたのは死よりも酷い仕打ちであったからだ。
「い、嫌だ……!」
(「それはオレが抵抗したからだろ? そうしなきゃさ……」)
 悪魔の囁きがレテイシャを苦しめる。じわりと視界が歪んで、瞳からぽたりと一滴の涙が零れ落ちた。
「…………!」
 はっとして、レテイシャは目を開いた。
 涙。つい最近、誰かのそれを見た筈だ。
「……そうだ……!」
 敗北、恐怖、無力感。それら全てに押し潰された心の奥から、小さな光が漏れ出した。
 その光の中から浮かび上がってくるのは義父、義弟妹、大切な友人達の顔……。それらが思い浮かぶ度に、レテイシャの心の中の光は強く、大きくなってゆく。
「忘れてたぜ……!」
 身体はうまく動かない。それでも足にだけは力を入れて立ち上がったレテイシャは、身体を踏ん張らせてマッド・スマイリーへと立ち向かう。
(「何故、オレはここにいる? 負ける為じゃあないだろう」)
 魂を震わせ、心を燃え上がらせる。
(「屈する為じゃ、ないだろう!」)
 たくさんの負の感情を押しのけて、レテイシャの記憶の中に浮かび上がったのは、涙。
「なぁ、エミ!!」
 エミの瞳に宿った|涙《ひかり》であった。その光は、数々の負の感情を吹き飛ばし、レテイシャの魂を再び燃え上がらせたのだ。
「うふふふ、まだそんなに叫べるなんて、興味深いわ!!」
 マッド・スマイリーが緑の薬品をさらに撒き散らす。だが、その薬が効こうと効くまいと、もはやレテイシャには関係ない。
「たとえ身体が動かなくても……できる事ぁまだある!!」
 レテイシャの龍の翼が蒼く輝きを放った。その翼から放出される魔力がレテイシャを包み込み、球体となって浮かび上がる。
「うおおおおっ!!!」
 魔力がレテイシャの身体を加速させ、自身を大砲のように撃ち出した。
「あぁああっ!!?」
 驚愕の声を上げるマッド・スマイリー。その瞳に映ったものは……蒼い竜。
「くらええええっ!!」
 蒼い竜のシルエットへと変化した魔力の砲弾が、マッド・スマイリーを呑み込んだ。
 その勢いのままレテイシャはデータの収められた棚へと突っ込み、巨大な爆発を巻き起こした。
 データが吹き飛び、燃えて消えてゆく。レテイシャの魂を掛けた一撃は、超能力者達を守る大きな一撃となったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

隠神・華蘭
【散歩部】
ほぅ、面白い術を使いますね
え、わたくし?変わってないように見えると?
そりゃそうでしょう……増幅させたのは『人間への憎しみ』のようですが
常に煮えくりかえっているものを今更増やされたところで、ねぇ?
狂気耐性でどうにでもなりますとも
しかしこれは……あちらと班分けたのは正解だったかもしれませんねぇ

あえて止めませんよミニョン様、一網打尽にしますのでそのままお願いします
まずは両手に狸火を灯して、と
えんらが動けそうにないのでわたくしが化術で尻尾を伸ばして巻き込みおんぶしてそのまま残像が残る速さで逃げ足駆けです
霧で動けなくなるまでは続けましょう
その後UC使用、炎の渦で焼き払ってさしあげます


把繰理乃・えんら
【散歩部】
うう……怖い……動けない……
も、申し訳ございませんお嬢様、ミニョン様……
『臆病』風に囚われてしまいました……あ、足が竦んで……震えが止まりません……

な、お嬢様何を!?
おんぶされたまま戦うなんてそんな……や、やむを得ません
時間稼ぎだけでも致します、敵の間を駆け抜けてください!

バグッテルシューターのレーザー射撃を無理にでも撃ち続けます
そしてスマイリー含めて敵の近くを通った際に……怖いですけど……
手を伸ばして触れUCを使用します
ミニョン様が前衛をなさっている間にテレパシーで思考侵食、これで鈍ってくれるはず

うぐっ……この者の実験の記憶が……なんて気持ちの悪い女……
は、早く仕留めてください!


ミニョン・エルシェ
【散歩部】
叔父様とお姉様が大切な方と再会出来たのは、とても喜ばしい事。
だけど…
鎗を教えてくれたのは。
共働きの両親に代わって、可愛がってくれたのは。
私の、叔父様、なのに。

気にしないで下さい、えんらさん。
別離への恐怖と寂しさ、私も結構キツイです。
…少なくとも、死別の寂しさは、彼女を斃せば『今は』遠ざけられますね。

捨身の超近接戦を挑みます。先に征きますね、華蘭さん。
強化された相手に常に密着して正面を取り続け、常に敵を盾にする状態に持ち込みます。
敵が攻撃モーションに入ったら、逆撃に移行。
青いフラスコを【偽写】で叩き割ります。
代償を得られなければ、じき自壊するでしょう。

…いい加減、私も叔父離れですね。


辺津・澄華
「何故殺した」「何故間に合わなかった」
昔倒した敵達と救えなかった人達の声が聞こえる、が
少し静かにしていてくれと帽子を押さえる
成程、増幅されたのは『罪悪感』か
元々常に聞こえてて慣れてはいるけど大分強くなっているな、狂気耐性でどうにかなるだろうか

さて、あの子の父の仇……まぁお前のオリジナルがやったことだ、記憶に無いだろうが
私からも借りを返しておくよ

薬頼みの身体強化か……なら私は少々情けないが娘達頼みだ
UC使用、これで私の方が速く動けるし、冷気で近寄るのは厳しいだろう
尚且つ向こうは理性が無くなるときてる、ある程度読心術で動きを見切れるはずだ
フェイント混ぜた蹴りの連続コンボをボディに一点集中させてやる


スティーナ・フキハル
【ふるでら】ミエリ口調 ★だけスティーナ

うっ……と呻いて崩れ落ちるもすぐに起き上がる
すみません、お姉ちゃんが危なかったのでUCを使って交代しました
痛みへの恐怖……お姉ちゃん、一瞬で限界になっちゃったみたいです
元々苦手なのに今日は痛みの反動受けるUCなんて使ったから……もう

まず星子姉さんと旭さんに氷結耐性を追加した結界を与えます
続けて私の体から出る冷気を念動力でこの戦場の大気の下層に固定して
更に衝撃波を薬の霧へ、上に撃ち上げる感じで!
こうして霧と冷気別の層を作れば私達が吸わないようにできるはず!
後は飛び回りつつ爪で切断攻撃、トドメは任せます!

★(布槍から)ゴメン最後の最後に……おかえり姉ちゃん!


沖津・星子
【ふるでら】
こいつ、この女間違いない、お父さんを殺した!
いえ違う、あいつはとっくに死んでるはず、でも、でも……!!
何がそんなに可笑しいんだ、ずっと笑って!!
嗚呼駄目、怒りで我を忘れそうに、落ち着きます、狂気耐性で少しでも……!
跪いて息を整えている間に手の包帯を取って傷を抉ってUC使用します
誰だか分からないけど、今だけは代わりに戦ってください!

旭さん……ミエリさん、もう、大丈夫です、いけます
今目の前に正義を振るってくれてる人がいるのにこれ以上蹲ってられません……私だって、昔はしがないヒーローだったんですから!
闘争心を奮い立たせてジャンプ、捨て身の跳び蹴りを撃ち込みます!

……はい、ただいま、ですね


水無瀬・旭
【ふるでら】
『悪』たる俺は『正義の味方』に成れぬから…
誰かの『正義』の味方になった。
…だけど、目を背け続けた俺の『正義』に、お前が油を注いでくれた。
灼かれて後悔するがいい。

ミエリさんか。君も無理はするなよ!
そして、奴は星子さんの…?
どちらにせよ、怒りに身を任せては危険だな。
【陽動】として改造人間に相対し、星子さんとミエリさんの負担を減らす。
科学者への射線が通ったら、UCを発動。
弾芯、二重焼戻しにて装填。
【スナイパー】にて目標を捕捉。
【エネルギー充填】完了。
『大切な者』たちを護るのは、『正義』だ。他の誰でも無い、俺にとっての!

…改めて。おかえり、星子さん。
…やっと、『星』を追う旅も、終えられる。



●対峙
 星子には予感があった。
 だから、骸の雨の降るこの世界に、星子は現れた。
「こいつ……この女」
 サイバースペース。エミ達のデータが記録されたその空間。
 研究所のような真っ白い空間の中央で笑う女、マッド・スマイリーを見て、星子は予感を確信へと変える。
 そして――。
「間違いない、お父さんを殺した!!」
 血相を変えて星子が叫んだ。だがすぐに、自分に言い聞かせるように呟いた。
「いえ違う、あいつはとっくに死んでるはず……」
 冷静になれ、と自身を律しようとしても、心が抑えられない。
「でも、でも……!!」
 どうしても心がざわめいてしまう。それはこの空間の持つ感情を暴走させる力もあるだろう。だが、今星子から湧き上がる気持ちは、きっとそれだけでは説明できない。
「ふふふ……」
「何がそんなに可笑しいんだ、ずっと笑って!!」
 叫ぶ星子。その顔を見れば見る程、マッド・スマイリーは腹を抱えて笑い始めた。
「嗚呼……っ!!」
 星子が呻くように叫んだ。怒りで我を忘れそうになる。それを落ち着かせようと、星子は必死に、何度も心に言い聞かせようとする。
 でも――。そうやって何度も何度も、堂々巡りを繰り返す。そんな時であった。
「星子さん、怒りに身を任せては危険だ!」
 耳に飛び込んできた声に、星子はハッと我に返った。それは旭の声であった。

「……『悪』たる俺は『正義の味方』に成れぬから……誰かの『正義』の味方になった」
 旭は、この空間の中にいて実感していたことがあった。
 このサイバースペースは、感情の暴走を促す力が渦巻いている。旭も仲間達と同様に、自分の中で膨れ上がる想いは確かにあった。だが。
「目を背け続けた俺の『正義』に、お前が油を注いでくれた」
 旭が鎗を手にしながら、星子の前に出て告げる。
「灼かれて後悔するがいい」
「ふふふ、ならその炎、消してあげるわ」

●それぞれの想い
 マッド・スマイリーが用いた力は、人に普段押し殺していたような思い、常に自身が感じている気持ちを膨れ上がらせる。
「うう……!」
 それは、バーチャルキャラクターのえんらであっても例外では無かった。
「申し訳ございません、お嬢様、ミニョン様……」
 えんらが身体を小さく震えさせながら言った。瞳は揺れ、顔は青ざめている。
「あ、足が竦んで……震えが止まりません……」
 えんらが感じている恐怖。その源は、心の中で吹き荒れる臆病風。
「ほぅ、面白い術を使いますね」
 華蘭が飄々と言った。その様子は普段からどこも変わっていないように感じられる。
「お嬢様は……お変わりないのですか?」
 華蘭の様子に、えんらが尋ねた。すると華蘭は笑って返す。
「そりゃそうでしょう」
 華蘭が膨れ上がらせた感情は『人間への憎しみ』。
「……常に煮えくり返っているものを今更増やされたところで、ねぇ?」
 言いながら、華蘭が周囲を見渡す。
「しかし、これは……」
 華蘭がこの戦場、もう一方の班へと目を向けてから、もう一度、えんらとミニョンを見る。
「あちらと班分けしたのは、正解だったかもしれませんねぇ」

「叔父様とお姉様が大切な方と再会できたのは、とても喜ばしいこと……」
 ミニョンが言い聞かせるように呟く。今、二人が共にある光景はきっと祝福されるべきことなのだ。
「だけど……鎗を教えてくれたのは」
 こみ上げる思いを言葉にして、その感情をはっきりと自身に自覚させる。
「共働きの両親に代わって、可愛がってくれたのは……」
「私の、叔父様、なのに……」
 失う事への恐怖、寂しさ。そして、暗い感情が湧き上がってミニョンを縛る。それでもなんとか気丈に振る舞い、自身の震えを悟らせないようにしながら、怖がるえんらに勇気づけるように語る。
「気にしないでください、えんらさん」
 言いながら鎗を持ち、マッド・スマイリーへと向き直るミニョン。
「別離への恐怖と寂しさ、私も結構キツいです。けれど、少なくとも……」
 ちら、と向こうの班を見てから告げる。
「死別の寂しさは、彼女を斃せば『今は』遠ざけられますね」
 鎗を構えて、腰を低くして力を溜めるミニョン。
「先に征きますね、華蘭さん」
 同時にミニョンが走る。華蘭は、あえてそれを見送った。
「止めませんよミニョン様。一網打尽にしますので、そのままでお願いします」
 両手に狸火を灯しつつ、華蘭もマッド・スマイリーへと対峙するのであった。

●それぞれの戦い
「さて、それじゃあこの子達の相手をしてもらおうかしら」
 マッド・スマイリーが笑いながら青の薬を掲げると、戦場にそれを求め、改造人間達が出現した。マッド・スマイリーの作った薬に依存する、中毒者達である。
「こっちだ!」
 それにいち早く反応したのは旭であった。改造人間達に鎗を振い、改造人間達を薙ぎ払ってゆく。
いまだ満足に落ち着くことの出来ていない星子の為の時間稼ぎ。その間にも、星子は息を整え、立ち直ってくれるはずだ。
「ふふ、やるじゃない」
 改造人間達と旭の戦いぶりを眺めながら、マッド・スマイリーが笑う。12体もの改造人間の手数の前では、猟兵達の攻撃もマッド・スマイリーには簡単に届くはずがない。そう、油断をしていた。
「少し静かにしていてくれ」
「……えっ?」
 マッド・スマイリーが気配を感じ、振り向いた。
 そこには中折れ帽を被り、マフラーで口元を隠した女性……辺津・澄華(妖狐のヒーロー・f37402)が立っていた。
「なるほど、増幅されたのは『罪悪感』か」
 帽子を押さえ、澄華が語る。彼女の耳には今も、倒した敵や救えなかった人々からの怨嗟の声が響いているようだ。
「元々聞こえなれてはいるが、大分強くなっているな……」
 そう言いながら、澄華がじろりとマッド・スマイリーを睨む。
「さて、あの子の父の仇……まぁ、お前のオリジナルがやったことだ。記憶にないだろうが……」
 帽子を被りなおして、告げる。
「私からも借りを返しておくよ」

「あはは、私がこういう戦いも出来ないと思っているの?」
 突然現れた澄華を前にして、マッド・スマイリーは笑っていた。仲間の猟兵達は改造人間の相手をしていて、援護は無い。たった一人であれば……と取り出したのは、赤の薬。
 それを腕に注射すると、マッド・スマイリーの力がみるみる上昇していくのが感じ取れた。
「薬頼みの身体強化か……なら、私は少し情けないが娘達頼みだ」
 そうしてチラリと見るのは、同じ戦場にいるスティーナと、星子の姿。
「力、貸してもらうぞ……」
 澄華の全身に羅刹の妖気が巡り、脚力を増幅させる。
「これで私の方が速く動ける」
「こけおどしだわ!」
 そう言って蹴りを放とうとするマッド・スマイリーであったが、その攻撃は羅刹の妖気から生まれる冷気によって阻まれてしまう。
「なおかつ、理性がなくなるのでは、動きを見切るのは容易いな」
「うぅぅぅっ……!!」
 マッド・スマイリーの赤の薬の欠点は、徐々に使用者の理性を失わせることであった。
 その分キック力は上昇するが、その蹴りすら、単純すぎる動作を完全に澄華に読まれてしまっている。
「これが、私の分だ」
 マッド・スマイリーの蹴りを受け流し、澄華が脚に力を籠める。狙うはボディ。放たれた高速の蹴りが、マッド・スマイリーに叩き込まれてゆく!
「ああああっ!!?」
 マッド・スマイリーが吹き飛ばされる。
 これが、戦況を大きく変えることとなった。

●ぶつける想い
 澄華の攻撃で壁に吹き飛ばされたマッド・スマイリーは、ふらふらと身体を起こしながら悪態をついた。
「くっ……やってくれるわ……!」 
 薬の力が切れ、頭が再び回り始める。こうなれば、とマッド・スマイリーが懐から取り出したのは、緑の薬品。それを叩き割って霧に変えれば、心身の回復が見込めるだろう。だが、それは鋭い蹴りの一撃で阻まれることとなった。
「誰だか分からないけれど、今だけは代わりに戦ってください……!」
 それは星子によく似た白いドレスの女であった。
 星子が平静を取り戻すまでの間の代わりとして呼び出した存在だ。外した包帯の下の傷を抉って流れる血は生々しいが、その戦闘力は頼もしい。

「さて、わたくし達も行きますよ」
「な、お嬢様何を!?」
 えんらが驚きの声を上げた。華蘭の尻尾が伸びてえんらを巻き込んで、そのままおぶったのだ。
「動けそうにないのですから、最適でしょう?」
「そ、そうではございますが……」
 おんぶをされたまま戦うというその状況に、えんらは戸惑いを隠せない。だが、自身の震える足では確かに走ることもままならない。
「や、やむを得ません。時間稼ぎだけでも致します……! 敵の間を駆け抜けてください!」
 その言葉に華蘭は大きく頷いて、一気に駆け出した。残像が残るほどの超高速移動である。
 バグッテルシュータ―での射撃をしながら、前衛として戦いを続けるミニョンの脇を抜けて、えんらがおそるおそる手を伸ばした。
「うっ……!?」
 触れれば、テレパシーで相手の思考を侵食する。えんらの感染型同化バグに、マッド・スマイリーの動きが鈍る。だが、同時にえんらも顔を歪める。
「うぐっ……この者の実験の記憶が……」
 双方向にテレパシーが繋がって、えんらにマッド・スマイリーの記憶が入り込んだのだ。
 その記憶の光景を、えんらは一言で言い表す。
「なんて気持ちの悪い女……」
「ほ、め、言葉……ね、ふふふ」
 怪しく笑うマッド・スマイリー。その手には緑の薬品が。
「は、早く仕留めてください!」
 しかし遅かった。薬品を入れた試験官は割れ、気化した霧が発生する。
「けほっ……! 結構、効きますね……!」
 華蘭がむせる。緑の薬品は、慣れていないものの身体機能をマヒさせる。だがそれでも、華蘭は動けなくなるまでは、と、えんらを背負って走り続けていた。
 だが、それも限界が近い。そんな時であった。
「さ、寒い……!?」
 マッド・スマイリーが戸惑う。突如、戦場に冷気が広がり始めたのだ。
 冷気に押し流され、霧が、上空へと押し上げられてゆく。その発生源は、スティーナであった。
「すみません、お姉ちゃんが危なかったので、交代しました」
 いいや、スティーナではない。ユーベルコードによって表に出てきた妹の人格、ミエリである。
「ミエリさんか!」
 鎗を振いながら、旭がミエリに告げる。
「はい、お姉ちゃん、痛みへの恐怖で、限界になっちゃったみたいです」
 路地裏での戦いが響いているのだろう。痛みの反動を受けることを条件に肉体を超強化したことが今響いたようだ。その痛みが襲ってくる恐怖心が空間の力に煽られて、スティーナは倒れ込んでしまっていた。
「元々苦手なのに、今日は痛みの反動受けるユーベルコードなんて使ったから……もう」
  咄嗟にミエリが表に出てきたことで事なきを得たが……とミエリは小さく溜息をつきつつ、衝撃波を放って霧をどんどん上空へと押し上げてゆく。
「これで、霧は吸い込まないように出来た筈です!」
「ありがとうミエリさん、君も無理はするなよ!」
「はい!」
 旭の言葉に、ミエリはしっかりと頷くのであった。

「あれが、青の薬品ですね」
 改造人間との戦いを繰り広げながら、ミニョンはマッド・スマイリーの持つ薬品に狙いを定めていた。
 改造人間とは常に密着し、正面を取り続ける。こうすることで敵は同士討ちを嫌って攻撃の手を緩めてしまう。
 そうすることで、多対一であっても優勢となる状況を作り続けていたのだ。だが、それでも改造人間達は強力だ。まともに全員を倒していては、どれほど消耗するかもわかったものではない。
 だからこそ、虎視眈々と、ミニョンはその時を待っていた。
「うぅう……クスリ……クスリを……!!」
 改造人間達に禁断症状が生まれ始めた。そして今、マッド・スマイリーは浮足立っている。
「……今!」
 攻撃の一瞬を見抜いて、ミニョンが武器を構える。
 爆焔の蜘蛛のオーラがミニョンに宿り、燃え上がる蜘蛛の糸が噴き出した。
「貴方の技には遥かに及ばずとも。……松永弾正・久秀公、骨喰の技をお借りします!」
 改造人間の一撃を蜘蛛の糸が絡め取った直後、ミニョンによる魔刀の斬撃が放たれる。
「ああっ!?」
 その一撃は次元を超え、マッド・スマイリーの手にしていた薬を叩き割った。
「あぁ、クスリ、クスリぃ……!!」
 改造人間達がどよめき始める。もはや新たな薬がなければ、ここにいることも叶わない。
「代償を得られないなら、自壊するしかありませんね」
 ミニョンの言葉通り、改造人間達は次々と倒れてゆくのであった。

「射線が通った!!」
 待ってましたとばかりに、旭がその姿を変容させた。
「フェルム、プラス、クロム、プラス、ニッケル。ロード・ハガネ、己が『悪』を以て『悪』を誅戮する」
 無敵の装甲姿へと変わった旭がマッド・スマイリーに狙いを定めて呟く。
「弾芯、二重焼戻しにて装填……。目標を捕捉、エネルギー充填完了」
 そして、叫ぶ。
「『大切な者』たちを護るのは、『正義』だ。他の誰でも無い、俺にとっての!」
 必殺筆誅の鎗がマッド・スマイリーに放たれた。

●宿縁の決着
「こ、の……っ!!」
 猟兵達からの攻撃を受けて、マッド・スマイリーが叫ぶ。もはや、限界は近付きつつある。
 そんな敵の正面に立つ者がいた。
「旭さん……ミエリさん、もう、大丈夫です」
 それは星子であった。怒りを克服し、凛とした表情でマッド・スマイリーを見つめると、告げる。
「今、目の前に正義を振ってくれる人がいるのに、これ以上蹲っていられません……」
 ぐっと全身に力を籠め、闘争心を奮い立たせる。
「何をする気か知らないけれど!!」
 だが、それを阻止すべくマッド・スマイリーが赤い薬品を取り出した。自身の肉体を強化するつもりだ。
「させません!!」
「うぅっ!?」
 ミエリの爪が、マッド・スマイリーの腕を切り裂いた。赤の薬は手元から弾かれ、床に落ちて割れた。
「そ、そんなっ……!!」
 マッド・スマイリーが星子から背を向けた。この場から逃げ出そうというのだろう。だが。
「炎の渦で焼き払ってさしあげます」
 華蘭の両掌から上がった炎が大きな渦となって、サイバースペース全体を覆い尽くしていた。燃え盛る火炎の壁に阻まれて、もはや、マッド・スマイリーには逃げる手すら失われていた。
「私だって、昔はしがないヒーローだったんですから!」
 そう叫び、星子が空へと舞った。
「たあぁぁああーっ!」
 渾身、捨て身の飛び蹴りだ。空中から放たれたその一撃はマッド・スマイリーへ吸い込まれるように、一直線に加速してゆく!
「きゃ、きゃあああぁぁーっ!!!?」
 爆発的な威力を秘めた蹴りが、マッド・スマイリーへと炸裂した。激しいエネルギーは周囲を巻き込み、華蘭の炎の渦と合わさって巨大な爆発を生み出した。
 その勢いは超能力者達のデータベースを丸ごと呑み込んで、激しく燃え上がる。
 こうして、エミ達のデータを載せたサイバースペースは、焼却されたのであった。

●旅のおわり
 全てが終わり、猟兵達は宿縁に決着をつけた星子のもとへと集まっていた。
 過去から繋がった縁、初めて繋がる縁。様々な縁が繋がって、一つになって、今猟兵達はここにいる。

「……いい加減、私も叔父離れですね」
 寂しそうにしつつも、どこかすっきりした顔でミニョンが呟く。
 その目線の先には――。

「ゴメン最後の最後に……おかえり姉ちゃん!」
 ミエリの持つ姉妹語りの布槍から、スティーナの声が響いた。
 その声に星子が笑いかけつつ、ふと、正面に立つ人へと顔を向けた。

「……改めて」
 こほん、と咳ばらいを一つして、旭は星子をしっかり見つめる。
「おかえり。星子さん」
「……はい、ただいま、ですね」
 星子は少し照れた様子で笑った。
 その笑顔に、旭のこれまでの想いがこみ上げて。
(「……やっと『星』を追う旅も、終えられる」)

 旭の旅は終わった。
 だが、その終わりは、始まりとなった。

 『星』とともにゆく、新たな旅の――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月23日
宿敵 『マッド・スマイリー』 を撃破!


挿絵イラスト