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銀河帝国攻略戦㉖～狂った数式の謎

作者：雷紋寺音弥

●不可解な数式
「う～ん……難しいわね。やっぱり、どう考えてもおかしいでしょ、これ？」
　グリモアベースに集結した猟兵達の前で、パトリシア・パープル（スカンクガール・f03038）は、やっていられないといった様子で、何かが書かれた紙を投げ出した。
「とりあえず、集まってくれて感謝するわ。今回は、わたしの頭じゃ解決できそうにない話だから……」
　そう言って、パトリシアから告げられたのは、帝国旗艦インペリウムの科学技術センターに囚われている、科学者たちの救出だった。
「もう、知っている人もいると思うけど、念のため説明するわね。帝国旗艦に捕まっている科学者の人達は、巨大なコンピュータにケーブルで接続されているの。無理に引っぺがそうとすると、脳みそが焼き切れて死んじゃうっていうオマケつきで……」
　なんとも悪趣味なことをしてくれたものだが、しかし解除の方法はあると、パトリシアは告げた。もっとも、その方法というものが、一筋縄では行かないのだが。
「コンピュータとの接続を解除するには、操作パネルにコンピュータが提示する『謎』の『解答』を入力すればオッケーよ。で、これが、その謎ってやつなんだけど……正直、わたしじゃお手上げなのよね」
　そう言って、パトリシアは自分で放り投げた紙を拾い、改めて猟兵達に広げて見せた。そこに書かれていたのは、４つの数式。一見して、最初は何の変哲もない計算式に思われたが、二行目からは早くも理屈に合わない数式が並べられていた。

『80＋08＝88』
『82＋19＝68』
『26＋90＝86』
『10－18＝◆◆』

「一行目のやつは、まあ分かるわよ。計算式、そのままだからね。でも、二行目からは、式と答えが全然合ってないわ。それなのに、最後は引き算で、おまけに『◆◆』に当てはまる数字を入れろっていうのよ、これが……」
　この『謎』の解答を考えて欲しいというのが、他でもないパトリシアからの依頼だった。答えが解ったらコンソール画面の操作パネルまで転送するので、声を掛けて欲しいと続け。
「この人達の知識や技術は、戦争が終わった後、スペースシップワールドの発展に必ず役に立つはずよ。だから、一人でも多く、助けてあげたいところよね」
　そういうわけで、謎の解明はよろしく頼む。そう言って、パトリシアは猟兵達に、数式の書かれた紙を手渡した。

第1章 冒険 『中央コンピューターの謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、救出します。 SPD   :    素早く謎の答えを導き出した後、救出した人のケアを行います。 WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、救出します。 👑3 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●謎の計算式
　帝国に囚われた科学者を救うため、コンソール画面の操作パネル前へと転移した猟兵達。だが、いざ目の前にしてみると、問題の数式は確かに妙なものだった。
「なにこれ……計算機壊れた？」
　首を傾げる城田・紗希（人間の探索者・f01927）。しかし、本当に計算機の故障ならば、最初の計算式も間違っているはず。
「うーん、確かに、全然成り立ち、ません……？　１行目だけ合ってるのが、何かのヒントに、なりそう、ですけど……」
「ホント、なんなんでしょうね、この式？　最初だけ合ってるのが、逆に違和感ですよ」
　アニカ・エドフェルト（小さな小さな拳闘士見習い・f04762）と秦田・麻弓（びびりびりびり・f00217）も、どうにも攻めあぐねているようだ。首を捻るだけでなく、身体をねじったり、飛びながら回ったり。まあ、それで何かが閃くのであれば、物理的に視点を変えるのも悪くはなく。
（「逆さまに捻る、か……。なるほど、これはもしや……」）
　そんな中、無理やりな体勢から計算式と格闘している者達を眺めていた違法論・マガル（有耶無耶・f03955）は、何かに気付いたようだった。

●ひっくり返せば？
　まともに計算しようにも、そもそも正解に辿り着けない計算式。しかし、頭を物理的に捻ってみた結果、それぞれが同じことに気が付いた。
「……あれ、合ってる」
「これだと、成り立って……？」
　顔を見合わせる紗希とアニカ。そう、彼女達は気が付いたのだ。この計算、そもそも見るべき方向が、反対であったということに。
「手書きだからわかりにくいけど、これデジタル数字を半回転させたやつじゃない……！」
　目の前の靄が晴れたような表情になり、紗希が言った。そういえば、計算式に使われている数字も、何故か１だの０だの８だのといった数に偏っていた。それもこれも、デジタル数字にした場合、反対から見ても形が変わらない数しか使っていなかったからだ。
「計算式をまるごと一度上下逆転、ひっくり返してるな。逆立ちして……いやしないが。そうすると計算式が正しく見えてくる」
　同じく、マガルも答えに気が付いたようで、紙をひっくり返して仲間達へと見せ。
「１問目の答えがそのままなのは、０と８は逆転させても読み方が変わらないからだな。２も１も同様に、逆転させても読み方が変わらない。逆転して読み方が変わるのは６と９だ。それぞれが、ひっくり返すと互いの数として読めるようになる」
　２問目は、89＝61＋28を逆転させて68に、３問目は98＝06＋92を逆転させて86に。ここまで来れば、後は容易い。もはや救出は目前だと、意気揚々とパネルに向かう紗希だったが。
「『◆◆=81+01」だから……」
「ちょ、ちょっと、待って、ください！　最後の式、足し算、じゃなくて、引き算、です！！」
　間一髪、入力直前でアニカが紗希を制止した。折角、謎が解けたのに、ここで慌てて誤入力し、救出失敗となったら洒落にならない。
「ああ！　そ、そうでした……正解できて、浮かれていたかも。危ない、危ない……」
　ほっと胸を撫で降ろす紗希。ならば、ここは自分が入力しようと、続けてアニカがパネル前に立つが。
「答えは『81-01』で80……っとと、危ない、です。答えも逆に、書かないと、です」
　いざ、入力する段階になって、自分も初歩的なミスをしそうになり思わず踏み止まった。
「慌てるな。時間は十分にある。こういう時こそ、冷静になることが大切だ」
　人命が掛かっている以上、迂闊な行動で失敗するわけにはいかない。慎重に、デジタル数字に書き換えた数式を反転させて、マガルは改めて紙を見せ。
「ひっくり返して計算したら、80=81-01だから……もう一回ひっくり返して08……かな……？」
　今度こそ、本当の正解を導き出し、麻弓が代わりに操作パネルの前に立った。
「私、頭悪いから、これで違ったらもうわかんないですよー」
　そう言いながらも慎重に入力すると、果たして機械が反応し、繋がれていた科学者の身体が排出される。どうやら、無事に正解に辿り着けたようだ。
　安堵の溜息を吐きながら、猟兵達は忌まわしき機械から解き放たれた、科学者の下へと駆け寄った。

●未来への希望
　謎の数式を解き明かし、猟兵達はまた一人、囚われの科学者を無事に助け出すことに成功した。
「うぅ……こ、ここは……。わ、私はいったい……」
　機械との接続が断たれたことで、紗希の作ったクッションに寝かされていた科学者が、衰弱しつつも意識を取り戻したようだ。
「大丈夫でしたかー、分かりますかー、大変でしたねー」
　思わず声を掛ける麻弓だったが、助け出された科学者は、どうにも状況が飲み込めていない。もっとも、それも仕方のないことだろう。今はとにかく、少しでも体力を回復させて、早々に離脱できるようにしなくては。
「これで、安心、してくれると、いいな、です」
　衰弱した科学者の体力を回復させるべく、アニカは聖なる光の洗礼を放つ。代わりに自分が疲弊してしまうのが欠点だが、刃を重ねる戦いをしたわけではないので、まだまだ体力には余裕があるのは幸いだ。
「……そういえば、スポーツドリンクも預かった気がします」
　思い出したように紗希が飲み物を取り出し、科学者に手渡せば、それを飲んだことにより、ようやく歩けるくらいには回復したようだ。
「さて……そろそろ、離脱した方がいいだろうな。治療をするにしても、ここでは応急処置に限られる」
　頃合いとばかりにマガルが促し、麻弓がそれに頷いた。未だ足取りがふらつく科学者を立たせると、歩き易いようにと肩を貸し。
「危なくないように、ちゃんとくっついてて下さいねー」
　謎解きで使った頭から煙噴きながらも、笑顔を向けることだけは忘れていなかった。
　この戦いが終わったら、彼ら科学者達の知識や技術は、スペースシップワールドを発展させるための重要な役割を担うことになる。その時を無事に迎えるためにも、この戦争に勝利せねばならない。
　残す敵は、銀河皇帝、ただ一人。最終決戦の予感を胸に秘め、猟兵達は助け出した科学者と共に、帝国旗艦を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年02月20日