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冬の花見とちょこれいと

#サムライエンパイア #グリードオーシャン #【Q】 #グリモアエフェクト #戦後

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#戦後


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 こんこ、こんこと。
 雪の降るその山は、見渡す限りの白い色で塗りつぶされている。
 降り積もった雪は、晩春まで解ける事はなく。
 葉の落ちた細い枝は、霜と雪を纏って。
 雪景色に霞む僅かな陰影が、辛うじて木の形を保っている。

 そんな、目も眩みそうな真白の山を、一人の男が歩いていた。
 随分と仰々しい大荷物を背負ったその男は、どうやら行商人であるらしい。
 仲間達には、そんな稼ぎにならない村に行って、一体何になるのかと。
 指を差され、笑われながらも。男はあえて、この雪深い時期に山奥の村を目指す。

 確かにそこは、住人も少なく静かな村で。これと言って、特産物がある訳でもないけれど。
 行商人の運ぶ干物や調味料、そして薬に「ありがとう」と言ってくれる村人の笑顔は、いつも温かく。
 更に、この山には……。
(「あぁ、咲いているな……」)
 白一色であった景色に、浮かび上がるような薄黄色の花。
 冷たい空気の中で、ふと鼻をくすぐる甘い香りが、遠い春を思わせる……そんな蝋梅の花が見られるから。
 一時、足を止めて。行商人はその光景に、しばし見入る。
 そこに……。

「おい! チョコレートを出せ!」
「……え?」
 突然響いた場違いな声に、行商人は目を瞬いた。
 この雪景色の中で、よりにもよって袖の短い異国の服を着た男たちが。いつの間にか、行商人を取り囲んでいる。
「お前、その荷物……さては商人だろう」
「ならばこの時期は、チョコレートを持っている筈だ」
「チョコレートなど許さんっ、リア充爆発しろ!!」
「り、りあ? ……ええと、何の事でございましょう?」
 格好も場違いなら、主張も意味が分からない男たちに、行商人は困り果て。
 とにかく、そんなものは持っていないのだと伝えれば。
「なに? それはつまり、あの村でチョコを全て売って来たという事か?」
「何てことだ! あの村はリア充の巣窟だってのか!?」
「リア充を許すなっ! チョコは全部俺たちのもんだ」
「おい、いくぞ野郎どもぉ!!」
 あまりに理解不能な状況に、茫然とする行商人を置いてけぼりにして。
 異国の服を着た男たちは雄たけびと共に、村の方へと突撃してゆくのだった。


「まったく……何て連中を持ち込んでくれたんだ」
 その顔に苦々しい色を滲ませながら、羅刹のグリモア猟兵……蛍火・りょう(ゆらぎきえゆく・f18049)は、事件の説明を始めた。

 場所は『サムライエンパイア』。
 しかし、今回事件を起こしているのは、『グリードオーシャン』のオブリビオンなのだと、りょうは言う。
 つまり、どういうことかと言うと……。
「今回暴れてるのは、コンキスタドールがサムライエンパイアに持ち込んだ、『外来種オブリビオン』と言うやつなんだ」
 本来、サムライエンパイアには居るはずのないこのオブリビオンは、今、とある山里を襲撃しようとしている。
 何やら、「チョコレートを出せ」とか、「リア充爆発しろ」とか。
 サムライエンパイアの住人達からすれば、全く持って意味不明な主張をしながら、村人たちに暴力を振るおうとしているのだ。
 しかも、このような外来種オブリビオンは、放置していると続々と増殖して被害を広げてゆくのだと言う。
「こんな騒々しいのに定着されたら、たまったものじゃないからな。手間を掛けさせて悪いが、一体たりとも逃さないよう殲滅して、村人たちを助けてやってくれ」
 ちなみにその外来種オブリビオン。力量はそれほど高くない。猟兵たちの実力があれば、苦戦する事もないだろう。
 一応、「チョコレート」や「リア充」と言った単語には鋭く反応してくるため、上手く使えば誘導なども行えるかもしれないが……真正面からぶん殴っても、猟兵達が圧勝するくらいの実力である事を、ここに明記しておく。

「……で、その外来種オブリビオンだが。倒すと何故か、大量の『ちょこれいと』を残していくんだ」
 先に何処かの世界で強奪でもしてきたのか、何なのか。
 出所はちょっと不明だが、しかし安全で美味しいチョコレートが大量に残される事になる。
「栄養もあって、美味しい菓子だからな。廃棄するのは勿体ないから、村の人たちで分け合えるよう、取り計らって貰えると嬉しい」
 しかしそのチョコレートは、村人たちから見れば。いきなりやって来た暴漢たちが残して行った、得体の知れない食べ物。
 安全だと言葉で説明しても、簡単には信じて貰えないだろう。
「でも、皆が率先して食べて見せれば、村人たちも安心するだろう?」
 ちょうど、幾つかの世界ではチョコレートが出回る季節でもある事だし。
 遠慮なく頂いて帰るといいだろう。

「それにこの村、実はこの時期に花見ができる場所があるみたいなんだ」
 それは、村人達と物好きな行商人くらいしかしらない、秘された花見スポット。
 冷たい冬の空気にも、雪にも負けずに咲く。蝋梅の花が見られる場所が、近くにあるという。
「村の人に聞けば、おすすめの花見場所なんかも教えて貰えると思うぞ」
 折角なので、花と雪とチョコレート。全部一片に味わってくるのも、悪くはないだろう。
 ……ただ、冬の山はとても寒いから。
「あったかい飲み物を持っていくとか……とにかく、風邪を引かないように。しっかり準備はしていってくれ」

 それじゃ、花見の前にちょっと煩い害虫の駆除を、よろしく頼む……と。
 りょうは、猟兵達を送り出すのだった。


音切
 音切と申します。
 サムライエンパイアの、二章編成シナリオをお届けに上がりました。
 一部の章のみでも、気軽にご参加いただけましたら幸いです。

【1章】集団戦
 雪深い山村で、ビックリするほど人の話を聴かない『海賊団員』との戦闘になります。
 弱いです……が、とても喧しいです。

【2章】 花見
 蝋梅の花を見たり、雪を見たり。
 あとは海賊団員が残していった、チョコレートをつまんだりできます。
 村人との交流も可能ですし、教えてもらった花見スポットで静かに過ごす事もできます。
 ゆるっとお好きに。

【その他】
 筆はとても遅いです。
 執筆に関して連絡がある場合は、マスターページにて行っております。
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第1章 集団戦 『海賊団員』

POW   :    身ぐるみを剥ぎなぁ!
【ナイフ】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    おとなしくしろぉ!
【敵の背後】から【アームロック】を放ち、【痛みと締め付け】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    働け奴隷共!
戦闘力のない、レベル×1体の【奴隷】を召喚する。応援や助言、技能「【かばう】」を使った支援をしてくれる。

イラスト:正成

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フェリチェ・リーリエ
な、なんということだべ…お前さん達、さては同志だべな!!(ガッ)
分かる、分かるべ!この時期にチョコレートでキャっキャウフフしてるリア充どもを憎む気持ち、嫉妬戦士たるおらには痛いほどよく分かる!
けどもな、惜しいことに…ここにはチョコレートでキャっキャウフフなリア充はいねえだよ…!
嫉妬戦士歴十うん年のおらが言うんだから間違いねえ!ここは大人しく退いて、他所のリア充どもを蹴散らしに行くのが賢明だっぺよ!

…と、本音で説得するけども一体残らず殲滅しろってのがグリモア猟兵からのオーダーだったかんなぁ…
どうもならんかったら指定UCで爆破するしかねえべな、すまん同志よ…!次に出てくる時は共にリア充爆破しよう!



 突然、村に押し掛けて来た男達……外来種オブリビオン『海賊団員』は、村人達の話も聞かず、高らかに叫ぶ。
 『リア充爆発しろ!』と。

「な、なんということだべ……お前さん達」
 会話にならず、困り切った村人達を庇うように。フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうななさい・f39205)は、海賊団員の前へと立ちはだかった。
「ん? 何だこの小娘は?」
 強面の海賊団員に怯む事なく、フェリチェの桃色の目は真っ直ぐに、海賊団員を見つめて……。
「分かる、分かるべ!」
 がしっと、力強く。
 まるで同胞を称えるかのように、その手が海賊団員の両肩を掴む。
「リア充どもを憎む気持ち、嫉妬戦士たるおらには痛いほどよく分かる!」
「お、おぉ……!」
 フェリチェと海賊団員は、互いに見つめ合い。

 ――都市国家のいたるところで、甘い香りが漂い始める時期……シャルムーンデイに、必ず『奴ら』は現れる。
 それこそ都市国家のそこかしこで、キャッキャうふふと。
 何なら、バレンタインデーとか言う名前で、実は色々な世界で同じイベントがあると知った今では、そのあらゆる世界に『奴ら』は蔓延り。
 頼んでもいないのに、全開の甘ったるいオーラを見せつけてくる迷惑者達……すなわち『リア充』。
 決して許すまじ。全力で爆発しろ! ――

 ……だいたいそんな思考を、互いの目の中に垣間見て。

「「同士よ!!」」
 フェリチェと海賊団員は、熱い握手を交わし。
 猟兵とオブリビオンという、本来越えられる筈の無い垣根を越えて。ここに、『リア充は一人も残さず爆破するべし同盟』が結ばれたのだった。

 呆然とする村人達を置いてきぼりに、海賊団員達から割れんばかりの喝采と爆破コールが沸き起こる。
「けんどな。ここには、チョコレートでキャっキャウフフなリア充はいねえだよ……」
「な、何だって!?」
「それは本当なのか、同士よ!」
 しかし、衝撃的なフェリチェの言葉に、爆破コールは鳴り止み。海賊団員達は息を呑んだ。
「嫉妬戦士歴十うん年のおらが言うんだから、間違いねえ!」
「くっ、何という事だ……」
 だが、居ないものは居ないので、落ち込んでいても仕方のない事。
「ここは大人しく退いて、他所のリア充どもを蹴散らしに行くのが賢明だっぺよ!」
「な……ならば俺達は、何処に向かえばいいんだ。教えてくれ、同士よ!」
「それは……」

(「……さて、どうすっぺか」)
 ……正直、この先を考えていなかった。
 と言うか、フェリチェは最初からずっと、本音をそのまま喋っていただけだった。

 グリモア猟兵からのオーダーは、一体も残さない殲滅。
 それに、海賊団員をここから別の場所に誘導したとしても、そこでまた次の被害が生まれてしまう。
「む、骸の海……だべか」
 ……悲しいかな。
 運命はやはり、猟兵とオブリビオンの同盟を許してはくれないらしい。

「すまんっ、同志よ!」
「な、何をするんだ同士よ、うわーっ!」
 苦悶の表情を浮かべながら、フェリチェの投げるカボチャが次々と爆発して。
 海賊団員を容赦なく、骸の海に送り返してゆく。
「何故なんだ、同士よぉっ!」
 必死で手を伸ばす海賊団員の言葉が、フェリチェの胸を刺す。
 だが、その手を掴むことは、出来ないから。
「次に出てくる時は、共にリア充爆破しよう!」
 そう言って最後に投げたカボチャは、フェリチェの涙で少しだけ濡れていたという……(でも爆発はする)。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇津木・絋
うるっ……さいなあ……(据わった目&地を這う声
ここで寝る気は無いけどこのおじさん達うるさすぎる……(不機嫌そうに茨に変異した腕で地面をベシベシ

リア充リア充って……なんのことか分からないけど別にそんなのどうでもいいし、バレンタインはただ色んなチョコレイトが食べ放題になる日って思えばいいんじゃないの?
それでいいじゃん。その方が幸せじゃん。

ダメ? あぁそう。
まあどう答えようが倒すことには関係ないからいいか。八つ当たりさせて。
【安らぎを守る術】で海賊さんたちを攻撃。今僕がイラついてる原因は海賊さんだから庇われようが追撃してくれるでしょ。そのまま身体から伸びる茨で【捕縛】して締め上げて。



 ぽん、と。
 グリモアの転移によって放り出された世界は、まるで真新しいキャンバスのように。全てが白で満たされた世界で。
 静かに降る雪に、音を吸われて。本当ならば、とても静かな。
 静寂に満たされた世界でもある筈なのに……。

「リア充爆発しろ!」
「全て爆ぜろぉ!」
「ばーくーはっ! ばーくーはっ!」

 ……何なのだろうか、このバカ騒ぎは。
「うるっ……さいなあ……」
 絞り出すような。地を這うような、呟きと共に。
 微睡むようにぼんやりと、虚空を見つめていた筈の宇津木・絋(微睡む野薔薇の揺籃・f31067)の瞳は、騒音の元凶へと向けられた。

 この寒空の下、短い袖から素肌を晒して。明らかに場違いな服装で、野太いコールを上げている男達と、明らかに困った表情をして、それを諫めようとしている人達。
 どちらがオブリビオンで、どちらが村人なのかは、問うまでもない。
「ここで寝る気は無いけど……」
 小さく、溜息を吐いて。一歩ずつ雪を踏みしめ、男達へと近づいてゆけば。
 あまりに耳障りな野太い声が、徐々に音量を増して。
(「このおじさん達うるさすぎる……」)
 その、耐え難い不快感に。無意識に茨に変じていた絋の手が、ベシベシと雪を抉る。

「リア充リア充って……なんのことか、分からないけど」
 海賊船員と村人の間に、強引に割り込めば。
 ようやく、煩いコールは鳴り止んで。海賊船員たちが、絋の方へと顔を向ける。
「坊主には、まだちっと早い話だったか」
「お前も大人になれば分かるぜ」
 知ったか顔で、うんうんと頷く海賊船員に。
(「別にそんなのどうでもいいし」)
 とは、言わないでおいた。
 言ってしまったら、何だか余計に煩くなりそうな。そんな気がしたから。
 ……言わない代わりに、茨の腕は相変わらず雪をベシベシしていたけれど。
「バレンタインは……ただ、色んなチョコレイトが食べ放題になる日って……思えばいいんじゃないの?」
 一口にバレンタインと言っても、色々な側面があるというのに。
 何故わざわざ、自分な嫌いな方向に目を向けて、過剰に騒ぎ立てるのだろうか。
 過剰に騒ぎ立てられた事のある絋からすれば、呆れるような。腹立たしいような……少し、寂しいような。とても複雑な気持ちになる。
 最初から、良い所に目を向けてくれていれば。
 誰も傷つかずに、お互いに幸せだっただろうに……。

「何だと? 蔓延るリア充を許せってのか!?」
「恥知らずな連中を、野放しに出来るかよ!」
「あぁ……そう」
 オブリビオンに、何かを期待していた訳ではないけれど。
 到底、共感は出来ない回答に、再度絋の口からは小さな溜息が零れる。

 ……茨の腕が、騒めく。
 不快感は、いつしか怒りに変わって。
 もはや抑えるつもりもない茨の腕は、海賊船員を絡め捕っていた。
「おい、何だこれは!?」
「八つ当たりさせて」
 これ以上、何も語る事はないと。
 高まる絋のユーベルコードが、薔薇の頭を持つ騎士を呼び出す。

「おい、やめろ……やめっ――」
 騎士の振るう剣が、|煩《わずら》いの元を一つ。断ち切る。
 だが、まだ一つだけ。
 この地にはまだまだ、絋にとって|煩《うるさ》いものが多すぎて。
 ……この山村に静けさを取り戻すまで、薔薇の騎士は止まらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
彼らの想いそのものをバカにする気持ちはあまり湧かないけど
面白いからからかおうっと

ああ、バレンタインね
チョコレートをたくさん貰えて困っちゃう
なにより本命のあの子から貰ったチョコは格別なんだよね
にっこり笑って言う

いや嘘だよ?
そんな事実はないよ
でもそう言ったら彼らが怒るの目に見えてるんだもん
だったらそう言って
怒って向かってきたのを実力でねじ伏せて
敗北感いっぱいで骸の海に還ってもらったほうが面白いじゃない

素早い一撃を
攻撃回数を重視した解放・宵でいなしてにっこり笑いトドメを刺していく

俺は魂を喰う存在
だけど彼らの魂は喰わずに骸の海に還ってもらう
それが俺なりの彼らへの同情
わかってもらうつもりは全くないけどね



 綿のように柔らかな雪を、踏み固めながら。村の中へと進んでいけば。
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の耳に聞こえてくるのは、静かな山村には似合わない。荒々しい、男達の怒鳴り声。
「だーかーらぁ、大人しくチョコレートを出せって言ってんだよ」
「抵抗するって事は、さてはお前もリア充かぁ?」
 サムライエンパイアには、あまり馴染みのない単語が飛び交い、村人達はただただ困惑しているが。
 その意味を分かる者が聞けば、荒々しい男達……外来種オブリビオン『海賊団員』は、ただリア充が羨ましいだけなのだという事は、容易に分かる事。
 心を持つ生き物ならば、誰もが覚えうる『嫉妬』の感情が、少し困った形で発露しているだけだと言うのなら。その想いをバカにする気持ちは、あまり湧かないのだけれど……。

 にこり。
 サンディの顔に、とても穏やかな……しかし何故か、不穏な空気が感じられる笑顔が浮かぶ。
 もしも彼ら海賊団員達が、味方と呼べる存在であったのならば。
 彼らの気持ちを尊重しつつ、宥める言葉の一つも掛けてあげたかもしれない。
 しかしながら、あれらは敵。まごう事なきオブリビオン。そのように心を砕いてやる理由が無い。
(「面白いからからかおうっと」)
 ふふっ……と。
 サンディの口から零れた小さな笑い声は、無邪気なゆえに一層残酷であった。

「ああ、バレンタインね……チョコレートをたくさん貰えて困っちゃう」
「あ゛ぁ?」
 眉根を寄せて、わざと困り顔を作りながら。これ見よがしに大きな声で語り始めれば、サンディの思惑通りに。
 海賊団員の視線は、一斉にサンディの方へと向く。
「なにより……」
 横目にちらりと。その様子を確認したサンディは、渾身の眩しい笑顔で止めの一言を放った。
「本命のあの子から貰ったチョコは、格別なんだよね」

 ピキッ……と。
 海賊団員達のこめかみに青筋が立つ音が、擬音ではなく本当に聞こえた気がした。
(「いや嘘だよ?」)
 実際、そんな事実はないのだけれど。
「どうやら、爆破しなきゃならねぇリア充は、此処に居たらしいなぁ」
「おう、坊主。覚悟はできてんだろうなぁ?」
 サンディの想像通りに……というか、想像以上に。がっつりと挑発に乗って来た海賊団員の様子に、思わず噴き出してしまいそうになるのを堪えながら。
 にっこり笑顔の裏側で、サンディの手は『暗夜の剣』の柄に触れる。

「歯ぁ食いしばれや坊主!」
 この雪景色の中、己がシャツを豪快に破り捨て。身軽になった海賊団員達が、サンディへと迫る。
「爆発しろ、このリア充め!」
 繰り出されるナイフの素早い一撃は、唯人の命を奪うには十分すぎるものだが。猟兵達の力には遠く及ばない。
 海賊団員の攻撃の、始動を見て取り。その後に柄を握っても。
 抜き放った黒の一閃は、ナイフがサンディに届くよりも先に、海賊団員の体を切り裂いた。
「なん、で……」
 残酷なまでの実力の差を、まざまざと見せつけられて。
 驚愕の表情のまま、膝から崩れ落ちてゆく海賊団員の姿は、とても滑稽で。面白くて。

 ……けれど。
 骸の海へと向かうその魂には、触れないでおいた。
 ここまで、オブリビオンを貶めておいて。魂だけを見逃す事に、意味はあるのかと。
 仮に誰かに問われたとしても、理解を求めるつもりもない。
 それは、サンディの中だけで成立している、同情の形だから。

 魂を喰らう牙だけは、隠したままで。サンディは黒刃を振るい続ける――

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
夫の律(f38364)と参加

なんだこの場違いすぎる海賊の群れは?ここはサムライエンパイアだろ?まあ、バレンタインデーでリア充爆発しろという群れが湧いて出る事は良く知ってるが、関係ない人たちを巻き込むのは許さないねえ。

とにかく早く黙らせたいので、敵の攻撃を【残像】【心眼】で凌いだ後、律と二人がかりで【カウンター】気味に光焔の槍を容赦無く撃って一掃する。

まあ、リアルリア充に言われたくないと思うが、こうして傍迷惑なことしてるとかえって人に嫌われるということを忠告しておく。意味ない忠告かもしれないが、余りにも酷いんでね。

さあ、邪魔な乱入者は即刻骸の海に還りな!!


真宮・律
妻の響(f00434)と参加

バレンタインは響から聞いたが、確かに独り身には厳しい行事だろう。でもバレンタインの風習もない所で騒ぎ立てるのは理解を得られないし傍迷惑だな。ただでさえこの世界にいないはずの集団だし、即刻退場だ。


【残像】【心眼】で敵の攻撃を凌いだら響と連携して黒雷の意志を発動、感電の状態異常を与えるとともに敵軍を一掃していく。

まあ、今のあいつらの状態では響の親切な忠告なんて聞かないだろうなあ。即刻この世界から消えて貰おう。



 しんしんと、雪の積もる山は白く。
 吐く息さえも、白に染まってしまう厳しい寒さの中。
 遠い春を想いながら、人々が慎ましやかに暮らしている山村には、野太い声が響き渡っていた。
「隠しても無駄だっ、さっさとチョコレートを出せ!」
「リア充は何処だ!」

「……なんだ、この場違いすぎる海賊の群れは? ここはサムライエンパイアだろ?」
 雪化粧をした山に現れた、薄手の半そでシャツを着た海賊団員という。
 もはや、何処からツッコミを入れればよいのかも分からない。あまりにちぐはぐな光景に、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は思わず眉を顰める。
(「まあ、バレンタインデーでリア充爆発しろという群れが湧いて出る事は、良く知ってるが……」)
 多くの世界で知られているイベントとて、全世界の全住人が知っている訳ではない。
 聞き慣れない単語を連発されて困惑している村人達を見れば、いい加減、喧嘩を売る相手を間違えている事に、気付いても良さそうなものなのだが……。

 溜息混じりに、夫である真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)の方へと視線を向ければ。
 響の視線に気付いた律もまた、苦い笑いを零す。
(「バレンタインは響から聞いたが、確かに独り身には厳しい行事だろう」)
 世界や地域によって、少しずつ内容の異なるイベントではあるけれど。いずれもその根本には、『恋愛』というテーマが据えられている。
 独り身の者が、肩身が狭いと感じる事も確かにあるのかもしれないが……しかし。
「バレンタインの風習もない所で騒ぎ立てるのは理解を得られないし、傍迷惑だな」
「関係ない人たちを巻き込むのは、許せないねえ」

 チョコレートやリア充と言われても、何の事か分からないのだと。
 困惑しながらも、必死に訴えている村人達の言葉が、海賊団員には届かない。
 オブリビオンであるがゆえに、思考が凝り固まってしまっているのか。あるいは、人の話も聞けない程に、過去の想いが暴走しているのか。詳細は分からないが。
 ただ一つはっきりしている事は、この状況をどうにかできるのは猟兵達だけであるという事。
「ただでさえこの世界にいないはずの集団だし……即刻退場だ」 
 その手に槍を。両手剣を持ち。律と響は、戦闘態勢に入る。

「そら。リア充がこっちから出向いてやったよ!」
「なにぃ、リア充だと!?」
 言葉で注意を引くのと同時、響の突き出したブレイズランスが、海賊団員の一体を貫く。
「やりやがったな! 働け奴隷共!」
 膝を付き、骸の海へと還ってゆく仲間を目にして。いきり立つ海賊団員の放ったユーベルコードは、鎖で繋がれた奴隷達を戦場へ呼び出した。
「リア充を許すなー!」
「ばーくーはっ! ばーくーはっ!」
「いいぞっ奴隷共。もっと声を張り上げろ!」

「……うるさいねぇ」
 奴隷達から湧きおこる爆破コールに、響は思わず耳を抑える。
 カウンターを主体に立ち回れればと思っていたが、どうやらこの海賊団員のユーベルコードは、守りに長けた力であるらしい。しかも非常に煩い。
 数の暴力という名の力を存分に発揮して、奴隷達の野太い声は村中へと響き渡り。
 そのあまりの声量に村人達も耳を抑えて、冷たい雪の上に蹲ってしまっている。

「こうして傍迷惑なことしてると、かえって人に嫌われるもんだよ」
 目に余る状況……この場合は、耳に余るというべきだろうか。
 そのような状況に、響は思わず海賊団員へ言葉を掛けるが。
(「まあ、今のあいつらの状態では響の親切な忠告も聞こえないだろうな」)
 その声は、やはり。律の想像通りに、大音量の爆破コールの中にかき消されてしまった。
 もっとも、仮に響の声が届いていたとしても……海賊団員が言うところの『リア充』に該当している彼女の言葉を、海賊団員が聞き入れる事は無いだろう。
「即刻、この世界から消えて貰おう」
 律の手に握られた両手剣が、黒い雷を纏う。
 滑らぬように、しっかりと雪を踏みしめ。律が両手剣を振り抜けば。
 低く、重い風切り音と共に。広がる黒い電が、奴隷たち諸共に海賊団員へと降り注いだ。
「あががががががが!?」
 海賊団員達が、体を震わせ。爆破コールが鳴り止めば。
 ようやく耳から手を離す事の出来た響きが、槍の穂先を海賊団員へと向ける。
「さあ、邪魔な乱入者は……」
 高まる響のユーベルコードが呼び出すのは、数え切れぬ程の魔法の槍。
「即刻、骸の海に還りな!!」
 勇ましい響の号令と共に、魔法の槍は。
 上げる悲鳴ごと、海賊団員達を飲み込んでゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
なんとも物悲しい集団っすね〜
向こうが嫉妬に狂うなら、こっちはパリピでテンアゲでいくっすかね
「ウェーイ! 盛り上がってるっすかー!?」
【霧影分身術】で男女様々なパリピの分身を作って騒ぐっすよ
海賊がアームロックを放っても、霧で出来た分身なので、霧散すればすぐ離れられる。逆に
「プロレスなら負けないっすよー」
と、海賊にヘッドロックかましたり、ジャーマンスープレックス決めたり、分身の誰かをレフェリーにして3カウント。
「ウィーーー!!!」
基本的にノリと勢いで動いているので、深くは考えていないです。パリピパワーで嫉妬をぶっ飛ばせ!!

アドリブ歓迎 あとはなんやかんやで



 普段は静寂に満たされているのだろう山村に、野太い声が響いている。

「リア充は何処だ? 匿うなら容赦しねぇぞ!」
「そんな名前の者は村には居ませんよ」
「ならチョコレートだけでも、さっさと出しやがれ」
「ですから、そのような物は知らないと……」
 もはや会話と呼んでいいのかも分からない、あまりに一方通行なやり取りに、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は呆れたように息を吐く。
「なんとも物悲しい集団っすね?」
 冬の山中に現れた、外来種オブリビオン『海賊団員』は、風情も無ければ、情緒も無く。
 おまけに、空気読み力すら備わっていないとなれば、当然のごとく彼女も居ないのだろう。
 そしてこのような、バレンタインとは縁の遠い場所で活動をした所で、彼らの間違った努力が実を結ぶ事はない。

「ちくしょうが! 俺達にはチョコの一つも渡せねぇってのか!」
「そんなことは言っておりませんよ……」

 うわぁ……。
 海賊団員達が白熱すればする程に、何だか見ているこっちが空しくなってくる。
 ただでさえ気温も低いと言うのに、このままでは気分まで落ち込んでしまいそうで。これ以上考えるのは止めようと、リカルドは思考をぶん投げた。
(「向こうが嫉妬に狂うなら、こっちはパリピでテンアゲでいくっすかね」)
 ぐちゃぐちゃと考え込むのは性に合わない。
 寒さだろうとオブリビオンだろうと、勢いでぶっ飛ばせばよいのだと。
 高まるリカルドのユーベルコードは霧を呼び、リカルドの様々な姿を模ってゆく。

「ウェーイ! 盛り上がってるっすかー!?」
「「「いぇーぃ!」」」
 被る仮面は同じ……だが、髪型も様々なら、一見すれば女性に見える者まで。
 様々な姿の分身体が、寒さも吹き飛ばす勢いで拳を上げれば。
「おい、あれはまさか……リア充どもかっ!?」
「くそ、いつの間にあんなに……!」
 そのあからさまな『私たちリアル充実してます』オーラに、海賊団員達も即座に反応して見せる。

 ――サムライエンパイア特別企画、バレンタインプロレスのお時間です!
 ここからは、実況リカルド(分身体)がエアマイクにて実況をお届けいたします。

 おぉっと、海賊団員。さっそくイケイケに技を掛けに来る……あぁ!?
 しかし、霧! 組み付いた筈のリカルドは霧になって消えてしまいました。どうやら分身体を掴まされてしまったようぞ、海賊団員!
「プロレスなら負けないっすよー」
 すかさず次のリカルドが、その腰に組み付ついたー!
 これは本体? 我らの本体なのか?
 あぁ……海賊団員、リカルドを振り払えなーい! その体が、浮いて……決まったー!
 ジャーマンスープレックス! 我らのリカルド、やはり本体でした!
 その力を持って、海賊団員の体を豪快に雪へと沈めましたー!

 海賊団員は、既にその身が骸の海へと還りかけている様子だが……あぁっと我らのリカルド。そのまま、容赦なく固めに入る。
 海賊団員、もう立ち上がれないのか!?
 ワン……、トゥー……、スリィー……決まりましたー!
 この初戦……制したのは、我らがリカルド本体です!――


「はて……今度は何が始まったんじゃろうか」
 そんなエンパイアプロレスを、観客の立ち位置から眺める村人達。
「よそ者の文化は、よーわからんなぁ」
 既に、状況を理解する事を諦めているもよう。
 それはそれとして、海賊団員をちぎっては投げちぎっては投げの大乱闘は、まだまだ賑やかに続いていくのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マシュマローネ・アラモード


モワ!
🍫💖チョコレート💖🍫
……に反応するのですわね?

奇妙な人たちですが、略奪されたチョコレートが居場所をなくしてしまうのは悲しいこと。

「モワ!こちらにチョコレートがありますわ〜!甘くておいしいチョコレート!」

誘い出して近づいてきたら、UCで、フルスイングして一掃してしまいましょう。

さて……モワ、これで一掃できましたわね。
チョコレート🍫を検分致しましょう!

「モワ!まぁ!結構美味しい!保管が雑じゃないか不安でしたが、これなら美味しいお菓子が作れそうですわ!」

食材を美味しくする|権能《プリンセス・エフェクト》を持つマシュマローネには、心躍る宝の山にしばらくあれこれ想像を膨らませて。



「モワ! 略奪されたチョコレート達がいるというのは、ここですわね」
 ウサギの耳のようなクリスタル製のティアラに、白い衣装の裾を揺らして。
 まるで、雪中を飛び跳ねるウサギのように。元気に声を弾ませるのは、マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)。
 広大な宇宙世界の王族である彼女が、何故このような異世界の僻地まで足を運んだのかと言えば……今回現れるオブリビオンは、倒すとチョコレートを残していくらしいと聞いたから。
(「奇妙な人たちですが……」)
 先ほどから、「リア充爆発しろ」等と。
 海賊団員達の使う言葉は乱暴で、マシュマローネにとってあまり聞き馴染みの無い単語ばかりで……中々、要領を得ないのだけれど。
(「モワ! チョコレート……に、反応するのですわね?」)
 それでも何とか、分かる単語を拾い上げていけば。どうやら彼らは、チョコレートを欲しているらしいと、何となく理解ができた。

 何処の世界から略奪してきたのかは知らないが、何の罪もないチョコレートを、彼らのような乱暴者の元に置いておくわけにはいかない。
 それに、チョコレートが居場所を失くしてしまうのは、悲しい事だと思うから。
「モワ! こちらにチョコレートがありますわ!」
 鈴を転がすような声で、マシュマローネは海賊団員達へと声を掛ける。

「何っ、チョコレートだと!?」
 その声に、素早く反応した海賊団員達は、振り返ると同時に目を見開いた。
「おい、若い女だぞ……」
 雪上に佇むバニーガール(海賊団員達にはそのように見えた)の姿を目にして、彼らの中に動揺が広がった。
「甘くておいしいチョコレート!」
 しかもそのバニーガールがおいでおいでと言わんばかりに、自分たちに手を振ってくれているではないか。
「つまり、俺達にチョコをくれるって事か!?」
「女神は、此処に居た!!」
 ギラリ、と。
 海賊団員達の目の色が変わる。

 ……と言うか、マシュマローネは「チョコレートがある」と言っただけで、一言も「チョコレートをあげる」とは言っていないのだが。
 勘違いを爆発させた海賊団員達は、もはや止まらない。
「うぉぉぉ、俺にもチョコをくれぇぇぇぇ!!」
 豪快に雪を蹴り、迫りくる海賊団員達を前にして。
 マシュマローネは、毅然とした表情で雪上に立ち。その手に金属質な杵を握る。
「モワ! 少々気安くてよ!」
 マシュマローネの胸に宿る王族としての誇りが、構えた杵にのエンジンに力を与えて……ぱっかーん!

 超速のフルスイング。
 そこから発した衝撃の波が、海賊団員達を纏めて吹き飛ばす。
「ぐわぁー!」
 いっそ見事な放物線を描いて飛んだ海賊団員達は、そのまま霧散し。骸の海への帰還を果たして。
 代わりにパラパラと降って来たのは……。
「モワ! これが、略奪されたチョコレートですわね」
 形も大きさも様々な、沢山のチョコレート。
 あの乱暴な海賊団員達に捕らわれていたとなれば、保管状態が少し心配な所だけれど。
「まぁ! 結構美味しい!」
 小さなチョコレートを、一つつまんでみれば。どうやら、その心配は杞憂に終わったようだ。

 パラパラ、パラパラと。まだまだチョコレートの雨は降り止まずに。
「これなら美味しいお菓子が作れそうですわ!」
 雪と共に、チョコレートが降り積もってゆく、魔法のような光景に。
 マシュマローネの瞳は、宝石のようにキラキラと輝くのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴北・誉人
【狼梅】

リア充を見せつければいいらしいぜ
恥ずかしさは今日は飲み込む

にしても寒いなァ
冷え切った手で饗に触れる
な、つめてえだろ?
手を離せなくなる
こっぱずかしいけどマジでさみい…!

繋いだ手をぽっけに入れれば
饗の体温最強
けど手だけじゃ足りねえ
もっとあっためろー!
狙うは饗の半纏の中のぬくぬく!
リア充全開でむぎゅっと横取りしに抱きつく

敵が釣れたらこっちのもの
UCで脇差を繰り太刀も抜いて斬り込む

手分けして片す気だったが
饗が触られンのは
やっぱ業腹で

つーか俺のンに触ろうとすんな

饗の背後に回った奴から斬る

チョコ?
なんだっていいよ
お前と一緒なら
エナガのチョコにはソワっとなる
でも
やっぱ二人で食えるンなら
形は関係ねえな


香神乃・饗
【狼梅】
食いつかれない様に耳元で小声
(っす!たっぷりりあじゅーっす!)

寒いっすか?
誉人の手を握り確認
ひゃ!冷えてるっす!

誉人のポッケ温かいっす!
温める様に指を絡めにこにこ

誉人、今年はどんなチョコがいいっすか?
去年と同じか、それとも
にゃあ!
抱きついてきた誉人に驚く
誉人、冷えてるっす!
ぬくぬくするっす!
半纏で包み温める

誉人に手を出す奴は
そういや、俺、今年はもうチョコを貰ったんっす
たーっぷり!
リア充のフリでフェイントで引き付け
誉人に見せ場を作りその陰で香神写し
こっそり暗殺っす

誉人、カッコいいっす!
チョコは食玩の残りで捨てるって言ってたっす
めっちゃんこ勿体ないっす

何でもいいならエナガチャンチョコっす



 音も無く降る雪が、全てを白く染める地は。吐く息までもが、白に染まって。
 降り立った猟兵達の体温を、刻一刻と奪ってゆく厳しい寒さの中……。
「リア充どもめ。隠れても無駄だぞ!」
「さっさと観念して、チョコレートを出しやがれ!」
 やたらと暑苦しい声が、山村に響き渡っている。

 時間がゆったりと流れているような、サムライエンパイアの厳かな空気をぶち壊す、この野太い声……間違えようもない。
 彼らこそ、討伐を依頼された外来種オブリビオン『海賊団員』なのだろう。

「……リア充を見せつければいいらしいぜ」
 村人たちに詰め寄る海賊団員を、鋭い視線で見つめていた鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)が、やや呆れを含む声で呟けば。
「っす! たっぷりりあじゅーっす!」
 海賊団員に気付かれぬようにと、香神乃・饗(東風・f00169)が、誉人の耳元でこっそりと囁く。

 リア充を見せつける……海賊団員を引き付けるのに、これ以上の手段は存在しないだろう。
 実は意識しなければ、相棒に対してデレを隠せない誉人なのだけれど。あえて意識してやれと言われると、やはり少し恥ずかしい。
 だが、これは人助けのため。必要な事なのだと、己に言い聞かせて。
 海賊団員達の怒声に割って入るように、誉人は声を響かせた。
「……にしても、寒いなァ」
 やはり少し、演技が過剰になってしまったけれど。
「あぁん? 何だ?」
 それで、海賊団員の注意を引けるのならば、安いもの。
「寒いっすか?」
 チクチクと刺さるような視線を感じながらも、饗が誉人の手に触れれば。
「ひゃ! 冷えてるっす!」
「な、つめてえだろ?」
 饗の口からは、演技ではない声が零れていた。

 耳や指先から体温を奪ってゆく、この地の寒さは本物で。
 思わず握り合った手を、誉人のコートのポケットに入れれば。
 伝え合う互いの体温が、鈍くなった指先の感覚を取り戻してくれる。

 飛んでくる野暮な視線も、ポケットの中までは届かない。
 じゃれ合う様に。温もりを確かめるように、指を絡めれば。
(「誉人のポッケ、温かいっす!」)
 饗の口元は、ご機嫌に弧を描く。
「誉人、今年はどんなチョコがいいっすか? 去年と同じか、それとも……」
 浮き立つ心のままに、今年のバレンタインについて語り始める饗だけれど。目があった誉人は、何故かニヤリと笑って。
「もっとあっためろー!」
「にゃあ!」
 空いている手を半纏の中に滑り込ませて、饗をむぎゅっと抱きしめる。
 これは、敵を引き付ける為……と、心で言い訳しながらも。
「誉人、冷えてるっす!」
 そう言って包まれた、半纏の中はぬくぬくで。饗の体温が心地よくて、どうにも離れがたい。

「くそっ、やっぱりあいつらリア充じゃねーか!」
「リア充を許すなっ。行くぞお前ら!」
 ……あともう少し、気付かないままでいてくれても良かったのだけれど。
 空気を読まずに、二人のリア充オーラに気付いてしまった海賊団員達が、戦闘態勢に入る。

「リア充め、引き離してやるよ!」
 抱きしめ合った態勢のまま、隙だらけに見える饗の背後へ。素早く回り込んだ海賊団員が、掴みかからんと手を伸ばす。
 互いの体に手を添えたまま、武器すら握っていない状態では、抗する術は無いかに見えた……だが。
「つーか、俺のンに触ろうとすんな」
 飛び込んできた、灰青い輝きが。海賊団員の腕を鋭く切りつけ、接触を拒む。
 二本の手が使えずとも、誉人のユーベルコードによって現れた数多の脇差『絶花蒼天』は、持ち主の心を表すように。
 饗の周囲を飛び回り、海賊団員を威圧する。
「ち、近づけねぇ……」
 最初の勢いを失い、思わず足を止める海賊団員に。
「そういや、俺、今年はもうチョコを貰ったんっす。たーっぷり!」
 饗は誇らしげに胸を張り。再び、嫉妬の炎に油を注ぐ。
「ちくしょうが!」
「リア充爆発しろ!」
 半ば自棄に、一斉に飛び掛かってきた海賊団員の包囲網に、逃げ場など無い。
 けれど、饗の呼び出した『苦無』は、静かに。的確に。
 誉人の背後を狙う海賊団員へと飛んだ。
 自身の守りは必要が無いから。絶対に守ってくれると、信じているから。
 饗もまた、迷うことなく。誉人の背中を守る事ができる。

 飛んだ苦無は、海賊団員の喉を突き。声を上げる間も与えずに、その体を雪に沈めて。
 誉人へと向き直った、饗の目に映るのは、やはり。
 饗の背後を狙ったのだろう敵が、誉人の脇差に切りつけられて。崩れてゆく様だった。
「誉人、カッコいいっす!」
 そう言って笑う饗の視線の先で、パラパラと。
 様々なラッピングをされたチョコレートが、雨の様に降ってくる。
 そう言えば、今年のチョコレートについて、誉人から返答を貰っていなかったような……?

「チョコ?」
 互いの背を狙う海賊団員を、サクサクと片付けながら。改めて、誉人へと問うてみれば。
「なんだっていいよ。お前と一緒なら」
 一緒に食べられるのならば、形は関係ない……と。
 そう言う誉人の言葉は嬉しいけれど、しかし選択を迫られている側としては「なんだっていい」という回答は、少し困ってしまう。
 チョコは食玩の残りだから、捨てられる……なんて。そんな話も聞いたりするけれど。
(「めっちゃんこ勿体ないっす」)
 食べ物が粗末にされるのは、悲しい事。それならば。
「何でもいいなら、エナガチャンチョコっす」
 卵型のチョコレートを食べてからでなければ、可愛いエナガチャンには出会えない。あのチョコレートにすると、悪戯っぽく饗が笑えば。
 誉人の口元にも、小さく笑みが浮かんでいた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
連携、アレンジ歓迎


放置してると増殖……放置しなければ増えゎしない、とかなぃ?
リア充がうらやまなら、自分たちでも“充実してみた”してみては。

わたし相手で充実かゎさておき『チョコ作りからご一緒してみません?』(UC)
必要な材料・機能ゎエヴリェニティタイムからおもむろに出すとして……ホットチョコとかなら、まぜて温めてすぐできそーかな。

なんて、わたしも料理経験ゎ乏しい方。もしか四苦八苦しても初の共同作業、みたぃな?
作る所から一緒に過ごとか、どんなにモテモテでもなかなかなくなぃ?

顔がイケメンでも負け組ゎいて。
女の子の作る手間ゃ気持ちとかを、汲んで理解ってシェアしてくれる人しか勝たん、な所ゎある気がする。



「リア充どもめ、さっさと爆発しやがれ!」

 この世界には、ジャンル違いと言うか。何と言うか……。
 真白に染まった山村に響く、荒々しくてちょっと歪な音――その声の主こそ、外来種オブリビオン『海賊団員』達。
 彼らのような外来種オブリビオンは、放置していると増殖してゆくという話だけれど……。
(「放置しなければ増えゎしない、とかなぃ?」)
 彼らの主張は、リア充が羨ましくて許せないというもの。
 言い換えれば「自分たちもリア充になりたいだけなのでは?」と、ノネ・ェメ(o・f15208)は首を傾げる。

「リア充がうらやまなら、自分たちでも“充実してみた”してみては?」
「ん? なんだこの女……」
 一言にリア充と言っても、人によって色々な意味があるから。
 ノネ一人で、彼らの希望を満たせるかどうかは、分からない。
 仮に希望を満たす事ができたとしても、それで彼らを無力化できる保証もないけれど……頭の中で音符を思い描くだけでは、その音は、誰にも伝わらないから。
「チョコ作りからご一緒してみません?」
 それならいっそ奏でてみようと、ノネは海賊団員に言葉を掛ける。

「チョコを……作る?」
「俺達が、か?」
 予想もしていなかった誘いに、海賊団員達は顔を見合わせ、困惑しているけれど。
 その声色に、嫌そうな響きは無かったから。
「ホットチョコとかなら、まぜて温めてすぐできそーかな」
 ティーセット『エヴリェニティタイム』を広げれば、いつでもそこがお茶会の会場。
 可愛らしいティーポットを手にして……。手にして……。

 さて、次はどうしよう?
 一緒に……と、お誘いはしてみたものの。ノネ自身、料理の経験が豊富という訳ではなく。
 中のミルクがちゃぷんっと音を立てるティーポットを手に、首を傾げていると。
「……それ、たぶん温めるんじゃねーのか?」
 見かねた海賊団員が、おずおずと声を掛けてくる。
「温めて、チョコを入れる……はず?」
「そんなんで出来んのか?」
「いや、俺に聞かれても……」
 どうやら彼らの方も、料理経験が豊富な訳では無さそうだけれど。
 共に試行錯誤、四苦八苦しながらも。持ち主の意を汲んでくれる賢いティーポットが、程よくミルクを温めて、チョコレートを蕩かして。
「お、おぉ……!」
 ティーカップへと注がれたホットチョコレートからは、白い湯気と甘い香りが漂ってくる。
「作る所から一緒に過ごすとか、どんなにモテモテでもなかなかなくなぃ?」
 容姿が整っていても、モテない者も世の中には居る。
(「女の子の作る手間ゃ気持ちとかを、汲んで理解ってシェアしてくれる人しか勝たん……な所ゎある気がする」)
 海賊団員達に、モテない原因があるのだとしたら……たぶん一番の問題は、容姿ではなくそこなのだと、ノネは思うのだ。
「これは……、これは……!」
 甘いカップに口をつけて。ほぅ……と白い息を吐いたノネの前で。
 海賊団員達は、豪快にカップを呷る。
「ちくしょう! 非モテの俺達には、甘すぎるぜっ……!」
「え?」
 そのまま一気に飲み干し、ニカっといい笑顔を見せた海賊団員達は。そのまま、霞のように姿が薄れて……骸の海へと、還っていった。

 リア充への執着が解けたから……だろうか?
 理由は、はっきりとは分からない。けれど、残されたティーカップは、確かに空っぽになっていて。
 共に作った時間……この甘い香りを、彼らは確かに骸の海まで持ち帰ってくれたのだろうと。
 ノネの唇には、小さな笑みが浮かぶのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『花見で一杯』

POW   :    花より団子。ひたすら食べて飲みまくる

SPD   :    まずは花見の準備だ。食べ物や場所の確保

WIZ   :    花見は風雅に。花をまずは愛でよう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「これはこれは。猟兵様とは知りませんで、とんだご無礼を……」
「お助け下さいまして、ありがとうございます」

 こんこ、こんこと。雪の降る山村に、ようやく静けさが戻って。
 状況が分からずただただ困惑していた村人達も、猟兵達が持つ天下自在符を目にして。ようやく、自分達は助けられたのだと状況を理解できた様子。
 しばし遅れて、息を切らせながら村に到着した行商人もまた、村人たちが無事であった事に胸を撫で下ろしていた。

「それで……これがその『ちよこれいと』という物ですか」
「また何とも珍妙な……」

 しかし、問題がまだ一つ残っている。
 海賊団員が消えるのと同時に、この世界に残されてしまった大量のチョコレート達。
 カラフルな包装のされた、一口サイズのものから板状のものまで。
 様々な大きさ、種類のチョコレートが、ちょっとした小山を作っている状況だ。

「これ……食べられんのか?」
「ばかっ、勝手に触るんじゃないよ!」
 異国の菓子に、村の子供達は興味津々の様子だが、やはり。おかしな暴漢たちが置いて行った食べ物に、大人たちはなかなか手を付けようとはしない。

 だがそれも、猟兵達が率先して食べて見せれば、安心してくれることだろう。
 春の遠いこの地で、手軽にエネルギーを補給できるチョコレートは、きっと重宝されるはず……村の危機を打ち払った今、猟兵達が帰りを急ぐ理由はないから。
 遠慮なく、好きなチョコレートを手に取って。冬の花を眺めて帰るのも、悪くはないかもしれない……。
フェリチェ・リーリエ
うう、すまんかったべ同志よ…お前さん達のことは忘れねえべ!

同志が残したチョコも無駄にはしねえべ、チョコに罪はねえしおらは料理人だ!
割烹着に着替え、クッキンタイムの始まりだべ!

サムライエンパイアはおら達の世界でいうアマツカグラみてえな感じだべ?今の時期みかんとか馴染みあるんでねえかな〜。
つーわけでテーマはみかん×チョコ!柑橘類とチョコは相性いいべさ、みかんのチョコがけというシンプルなものからみかんを生チョコと餅で包んだみかんチョコ大福、みかんシロップ入りのホットチョコレート…等みかんとチョコのスイーツを【早業】で【料理】。
うん、うまいべさすがおら!
騙されたと思って一回食ってみ、と村人にも勧める。



 雪深い山村に、静けさが戻って。
 自分たちは助けられたのだと知り、村人達は安堵の表情を見せている。
「うぅ……」
 だが、フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうはっさい・f39205)の表情は暗い。
(「すまんかったべ、同志よ……」)
 折角、同じ志を持つ者達と出会えたと言うのに……。

 出会いがあれば、いつかは別れの時もやってくるとはいえ。今回ばかりは、それが早すぎた。
 彼らが残したチョコレート……その一つを手に取って。
(「お前さん達のことは忘れねえべ!」)
 フェリチェは目を伏せ、海賊団員達を偲ぶ。

 だが、いつまでもここで立ち尽くしている訳にはいかない。
(「……チョコに罪はねえし、おらは料理人だ」)
 その手のチョコレートを、ぎゅっと握り。
「同志が残したチョコも、無駄にはしねえべ」
 フェリチェの魂に、再び火が灯る。
 割烹着へ袖を通して、フェリチェが立つのは、厨という名の戦場。

 村人達にも馴染みある食材との組み合わせであれば、チョコレートも受け入れてもらい易くなるはず。
 このサムライエンパイアと言う世界が持つ独特の雰囲気に、フェリチェは心当たりがあった。
(「おら達の世界でいう、アマツカグラみてえな感じだべ?」)
 建築物や人々の装いが似通っているのなら、きっと食材も……。
「ほぅ、みかんでございますな?」
 フェリチェが取り出した、鮮やかな橙色の果物に。いち早く反応した行商人が、その名を口にする。
「んだ。今日のテーマはずばり、みかん×チョコだべ!」
 安心して食べて貰えるように、超級料理人としてのユーベルコードはあえて使わずに。
 一つ一つの工程を村人たちに見せるように、フェリチェは丁寧に作業を進めていく。
「まずは一品目、完成だべ!」
 最初の印象は、とても大事だから。
 チョコレートそのものの風味も感じやすい、シンプルなものを……と。
 フェリチェから差し出された『みかんのチョコがけ』に、村の大人達はまだ少し、迷う様子を見せる。

 だが、そんな大人達の後ろで、好奇心旺盛な子供達はそわそわと。何だかとても、落ち着かない様子。
 その視線はフェリチェの手元に……みかんのチョコがけに、注がれていて。
 フェリチェはあえて子供たち目の前で、その一房を自身の口に運んだ。
「うん、うまいべ!」
 口に入れた瞬間から、舌に絡むようなチョコレートの甘さと共に、広がる柑橘類の爽やかな香りが鼻をくすぐって。
 この相性の良さに着目した自分は「さすがだ」と、そう胸を張れば。
「俺も食べたい!」
 ぱぁっと表情を明るくした子供達が、大人の静止も聞かずに。一斉に、みかんのチョコがけへと手を伸ばす。
「あまーい!」
「俺、こんなの初めて食った!」
 大きな口を開けて、みかんのチョコがけを頬張った子供達の声が、賑やかに村内に響いて。
「騙されたと思って、一回食ってみ」
 顔を見合わせる大人達に、ダメ押しとばかりに。フェリチェが、みかんのチョコがけを差し出せば。
「はあぁ……確かにこれは、初めて食べる味ですな」
「なんと、甘露な……」
 ようやく一房、口に入れた大人達の顔に、柔らかな笑顔が浮かんだ。

 安心してもらえたのか、もう一房。更に一房と。村人達の手が次々に、みかんのチョコ掛けへと伸びる。
 その笑顔につられて、フェリチェの表情も緩むけれど……これは、まだ序の口。
 みかんチョコ大福に、みかんシロップ入りのホットチョコレート……フェリチェが用意しているレシピは、まだまだあるのだ。
「さぁ、二品目を作っていくだ」
「他にも何か作ってくれんのか?」
 目を輝かせる子供達の期待を一身に受けて、フェリチェは次の調理を開始する。

 賑やかな子供たちの声と、甘い香りが。
 真白の山村に、広がってゆく――

大成功 🔵​🔵​🔵​

マシュマローネ・アラモード


モワ!頑張ってチョコレートの魅力をお伝えしますわ!
玄米はありますか?UCで美味しくしますわ!

(ポンポン、玄米をポン菓子に変えて、サクサクのパフにしちゃいましょう!)

モワ!こちらに先程のチョコレートをしっとり絡めれば、美味しいチョコレート菓子の出来上がりですわ!

(ちょっと味見をして、サクサク)

うーん!とても美味しい!
我ながら良い出来ですわ!

さぁ!みなさんもどうかお召し上がりになってくださいませ!
きっとチョコレートの魅力に気付いていただけると思いますわ!

(無事にチョコレートを知ってもらえたなら、食の|権能《プリンセス・エフェクト》を持つものとしては大成功ですわ!)



 猟兵達の活躍によって、チョコレートを不当に拘束していた暴漢たちは、骸の海へと帰って。
 真っ白な山村には、平穏が取り戻されたのでした。
 めでたし、めでたし……。

 ……と、締め括るにはまだ早い。
 だって、マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)には、まだやらねばならない事が残っているのだから。

(「モワ! 頑張ってチョコレートの魅力をお伝えしますわ!」)

 海賊団員達が残して行ったチョコレートに、村人達は誰一人として手を付けようとはしていない。
 このままでは、味も品質も問題のない美味しいチョコレート達が、破棄されるという悲しい運命を辿ってしまう。

 ラモード星の第十二皇女として、食の|権能《プリンセス・エフェクト》を持つ者として、そのような状況を見過ごすわけにはいかない。
 この世界の民が、チョコレートを知らないと言うのなら。未知のものに警戒してしまうのは、仕方のない事だけれど……。
 それならば、異世界の民に新たな道を示す事もまた、修行の一つなのだと。
 幼いながらも、王族としての高き誇りを胸に宿すマシュマローネは、使命に燃える。

 チョコレートは、食べた人を幸せな気分にさせてくれる、素敵なお菓子。
 猟兵達に勧められて、仕方なく口に入れるのではなくて。出来れば、村人達が自分からチョコレートに手を伸ばしたくなるような……誰もが笑顔で、チョコレートを頬張れるような方法がいいと。
 マシュマローネは、思考を巡らせる。
 サムライエンパイアの文化に、人々の生活に。チョコレートが自然と馴染むような、そんな方法……例えば、お互いを合体させてしまうとか。

 きらり、と。
 マシュマローネの瞳に、閃きという名の光が宿る。
 向かうべき方向が定まれば、後は迷う事もない。銀糸の髪を揺らして、振り返ったマシュマローネは村人に問う。
「玄米はありますか?」
 玄米――まだ精白されていない小麦色をした米で、一体何をするのだろうかと。
 村人達の好奇心の視線を、一身に受けながら。
 チョコレート達の未来を願うマシュマローネの祈りは、ユーベルコード――食の|権能《プリンセス・エフェクト》を発現させる。
 
 ポンポン、ポンポンと。
 まるで、マシュマローネの祈りの応えるように。玄米が音を立てて、飛び跳ねて。
(「サクサクのパフにしちゃいましょう!」)
 みるみるポン菓子へと変化してゆく。
「これが猟兵様の御業ですか……」
「何か分かんないけど、すげー」
 その不思議な奇跡の光景に、村人達は目を丸くしているけれど。ここまでは、まだ下準備。
「モワ! こちらに先程のチョコレートをしっとり絡めれば……」
 指揮者が、タクトを振るうように。空をなぞるマシュマローネの動きに合わせて、蕩けたチョコレートが玄米のパフと混ざり合ってゆく。
 形を整えて、冷やして固めて。
 とんとん、と。マシュマローネが指し示す、指の動きに合わせて。
チョコレート達がお皿の上に、綺麗に整列したのなら……。
「美味しいチョコレート菓子の出来上がりですわ!」

 パフ入りのチョコレートが並ぶお皿を、村人達へと差し出せば。
 僅か十秒の間に起きた、奇跡としか思えない摩訶不思議な現象に、村人達からは驚きと感嘆の入り混じった声が零れる。
 ではここで、ちょっと味見を……。
「うーん! とても美味しい!」
 サクサクとしたパフの軽やかな食感と共に、チョコレートの香りが口いっぱいに広がって。出来栄えは上々。
「さぁ! みなさんもどうかお召し上がりになってくださいませ!」
 ふわりと。花の蕾が開く様に笑ったマシュマローネの笑顔に、村人達の警戒心も解けたのだろう。
 誘われるままに伸びて来た手が、チョコレートを掴む。
「これが、ちよこれいと……」
「あのね、口の中がね。いっぱい甘いよ!」
 初めての味。初めての触感に。大人達は目を見開き、子供達は目を輝かせて。
「あ、あの……もう一個貰ってもいいだろうか?」
「私も食べたい!」
「モワ! もちろんですわ!」
 お皿のチョコレートが、無くなっていくと共に。
 村人達には、笑顔が広がっていくのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
ふふっ、興味津々で可愛い
子供達の様子が微笑ましい
でも大人達の不安も当たり前だよね
これが彼らが必死に探してたチョコレートなんだけど
とっても美味しいんだよ
ここにもお団子とか美味しいお菓子があるけどさ
それとはまた違って夢中になれるんだ
というわけで今日はお団子じゃなくてチョコレートで花見をしたいんだけど
お勧めの花見の場所を教えてもらえる?

教えてもらったら花をじっくり見つめる
花には馴染みがなくて詳しくないのだけど
花の良さを親友に教えてもらって興味を持つようになった
たっぷり堪能してからチョコレートにも手を出そう
UCを発動して小人達を呼んで彼らにもおすそ分け
嬉しそうに食べる彼らと共に俺も美味しくいただこう



 山村を騒がせていた海賊団員達は、全て骸の海へと還って。
 静けさを取り戻した、村の中で……しかし、そわそわと。
 何だか落ち着かない様子を見せているのは、村の子供達。

 チョコレートという名前も、初めて聞くものならば。それらを包む、色鮮やかな包装紙も初めて見るもの。
 しかもそれは、美味しいお菓子なのだと猟兵達に言われれば。
 警戒心よりも好奇心が勝ってしまうのも、仕方のない事だろう。
(「興味津々で可愛い」)
 こっそりと、チョコレートに手を伸ばした男児が、母親叱られて。唇を尖らせている様子が、何だか可愛らしくて。サンディの表情も緩む。
(「でも、大人達の不安も当たり前だよね」)
 猟兵達は、これらのチョコレートに害がない事を事前に知っているけれど。
 それを知らない村人達が警戒するのは、当然の事。
 男児を叱った、あの母親も。子供を想うからこそ、正体の分からないものに近づけさせまいとするだろうと思えば。
「これが、彼らが必死に探してたチョコレートなんだけど……」
 山のように積まれたチョコレートの中から、一口サイズのものが沢山詰まった小袋を手に取って。
 サンディはゆっくりと、母子の方へと歩いてゆく。
「とっても美味しいんだよ」
「ほんと?」
 腰を落として、視線を合わせながら語りかければ。男の子はぱぁっと表情を明るくさせるが、母親はまだ少し、心配そうな顔……。

 しかしそこに、ふわりと。甘い香りが漂ってくる。
 どうやら仲間の誰かが、チョコレートを使って調理をしているらしい。
「ここにもお団子とか美味しいお菓子があるけどさ。それとはまた違って夢中になれるんだ」
 人の気持ちを穏やかにさせる、その甘い香りに。母親もようやく、表情を緩めて。
 サンディの言葉が後押しとなって、母親から許可をもぎ取った男の子が「俺も食べたい!」と、チョコレートの香りが漂う民家へと元気に駆けてゆく。
 チョコレートの処理……村人達の冬の蓄えについては、もう心配する必要はなさそうだ。


 ぎゅ……ぎゅ……と。
 サンディが足を進める度に、柔らかな雪が音を立てる。
 村人達から教えられた花見場所は、あまり人が寄り付かない場所なのか。サンディの他に、人の気配も無く。

 耳に痛い程の静寂の中で見えるのは、しんしんと降り積もる雪の白さと。
 黒い、木々の陰影……そして。
(「これが……」)
 薄黄色の蝋梅――無彩色の景色に添えられた、文字通りの華。

 何故、冬に咲く事が出来るのかとか、花の持つ言葉……とか。そういう事は知らない。
 花という物自体に、あまり馴染みが無かったから。
 けれど、この花という物を慈しむ人が居る事を、サンディは知っている。

 積もる雪に抱かれて。ただ、咲き続ける蝋梅の花を見つめながら。
 花の良さについて語る、親友の声と言葉……その表情を思い出す。
 それまで、ただの景色の一部でしかなかった。気に留めてもいなかった花に、視線が向くようになったのは……間違いなく、あの親友の影響だろう。

 ……ふと、蝋梅を見上げていた視界に。
 サンディの茶色の毛先が、霜に白く染められつつあるのに気付いて。
 どうやら自分で思うよりも随分と長く、花を見つめ続けていたらしいと知る。
 折角貰ってきたチョコレートにも、全く手を付けていなかった。

 高まるサンディのユーベルコード――その呼び声に応えて。
 現れた水晶の小人達が「それは何?」と問う様に、サンディの手元……チョコレートへと視線を送る。
 何だか、さっきもこんな光景を目にしたような……?

 無邪気な小人達に、笑みを誘われつつ。
 一人一人にチョコレートを配ってゆけば。
 彼らには、ちょっと大きいチョコレートを抱きかかえて。
 ふわりと飛んだ小人達は、サンディの肩や蝋梅の枝にとまって、嬉しそうにチョコレートを頬張る。

 無彩色であった景色に、薄黄色の花と透き通る青が加わって。
 耳が痛い程の静寂も、今は、小さな笑い声がそこかしこから響く中。
 サンディが口に入れたチョコレートは、舌の熱でほろりと解けて。
 穏やかな時間と共に、甘い香りが広がってゆく――

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
せっかくのチョコなんで、【料理】してみんなに美味しく食べてもらいたいっすね〜
「この世界の住人に受け入れやすいチョコだと……やっぱお米っすかね〜」
お米を炒ってライスパフ状にしたり、お煎餅やおかきを砕いたりした物などを用意し、それに溶かしたチョコを絡めて固めれば、香ばしさと食感の楽しめるお米チョコの完成っすね
「これならお茶と一緒に飲んでも美味しいと思うんすよね」
作り方を教えておけば自分達がいなくなっても、余ったチョコの消費とかは問題なさそうっすよね
「あ、食べすぎると虫歯になるかもしれないっすから、ちゃんと歯の手入れはするようにっすよ」
後はお茶でも嗜みつつ冬の花の花見っすかね

アドリブ絡み歓迎っすよ



 真白の山村には静けさが戻って、事件はほぼ一件落着。
 残る問題は……そう、山と積まれたチョコレートの処理をどうするのかという、一点のみ。

 これを持ち込んだ海賊団員の奇行については、弁明のしようもないと言うか……する気も無いのだけれど。
 折角のチョコレートが彼らの行いのせいで、手も付けられずに廃棄されてしまうかもしれないと言うのは、あまりにも勿体ない。
「ちょっと、厨を借りてもいいっすかね?」
「え? は、はい……」
 狭いですが……と、申し訳なさそうな村人に案内されて。
 通された厨……その竈や、備蓄の食材に、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は視線を巡らせる。
「この世界の住人に、受け入れられやすいチョコだと……」
 チョコレートは、それそのものも美味しい菓子だが。様々な食材と組み合わせる事で、更に美味しく食べる事のできる可能性に満ちた食材でもある。
 チョコレートと縁遠いこの村にも、相性のよい食材はあるはずだと。そう睨んだリカルドの読み通りに、橙色の瞳は素早く目的の食材を見つけ出した。
「やっぱお米っすね」
 せっかくのチョコレート。最後の一欠片まで、みんなに美味しく食べてもらいたいと。
 そう思うからこそ、使い込まれた竈に火を入れて。
 この村でも作る事が出来るレシピで、リカルドは調理を進めてゆく。

「猟兵様は何をされてらっしゃるんだ?」
 戸口から興味津々に覗き込む村人達の視線を、背中に受け止めながら。
 まずはお米に火を入れて、香ばしいパフ状に。
 それから湯を沸かして……。
「あの、ちょこれいと……とやらを、使うのですか?」
 包装を解いて、チョコレートを取り出すリカルドの姿に、村人の一人が心配そうに声を掛けてくる。
 やはりまだ、暴漢たちが残していった物だという不安が拭いきれないのだろう。
「そうっす。こうして湯煎で溶かすんっすよ」
 そんな村人を安心させるように、軽い口調で返しながら。ボウル代わりの椀でチョコレートを溶かしてゆけば。
「何やら、いい匂いがするな……」
「花みたいに、甘い香りだねぇ」
 冷たい冬の空気の中に広がってゆくチョコレートの香りに、村人達からざわめきが起こる。
 その香りが、外にまで届いているのか。いつの間にか、ギャラリーの人数も増えていき。最初は戸口から覗き込んでいた村人達も、今は厨の中からリカルドを見守っていた。
「煎餅なんて、どうするんです?」
 不思議そうな村人に、「こうするんっすよ」と。
 ニカっと笑ったリカルドは、パキパキと煎餅を砕いてゆく。
「これなら、お茶と一緒に飲んでも美味しいと思うんすよね」
 ライスパフの他に、砕いた煎餅とおかきを、チョコレートに絡めたならば。
 あとは冷たい雪と外気が、チョコレートを固めてくれる。
「さ、お米チョコの完成っす!」
「また石みたいになった……」
 再び固形化したチョコレートを、思わずつんつんと。指で触れて確かめる村人達に、「美味しいっすよ?」と勧めてみれば。
 その軽い口調と、調理手順をしっかり見せていたことが、村人達の警戒を解いたのだろう。
 一人、また一人と。お米チョコレートを手に取って。
 しげしげと眺めてから……ぱくり。
「こりゃぁ、何とも不思議な甘露だな」
「俺はこんなの初めて食ったぞ」
 ポリポリと、美味しい音を響かせて。チョコレートを頬張る村人達の顔に、笑みが浮かぶ。
「折角だし、お茶でも入れましょうかね」
「でも、茶菓子には贅沢過ぎるな。こりゃ」
 そんな談笑が聞こえてくれば、もうチョコレートが廃棄される心配はないだろうと。
 安堵の気持ちと共に、リカルドの肩も少し軽くなる。
「ねぇ、もう一個食べていい?」
「遠慮なく食べるっすよ」
 チョコレートを強請る子供に、盛った皿ごと引き渡して。
「あっでも、食べすぎると虫歯になるかもしれないっすから、ちゃんと歯の手入れはするようにっすよ」
 最後に、注意事項を伝えたのなら。ここでやれる事は、全てやったと。
(「後は、お茶でも嗜みつつ冬の花の花見っすかね」)
 薄黄色の花の姿を求めて。
 リカルドは足取りも軽く、静かに村を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴北・誉人
【狼梅】

チョコを食える喜びより多さに圧倒されるも
その場で食べて見せる
包紙を剥がしパキリと割り食う
ン、んめえ

キラキラしてかァいいくなってる饗にチョコを差し出し
饗は食わんの?
食う?

村の大人には
コレはちゃァんと食えるよと
それ以上は言わない
食う食わんは個人の自由だからな

蝋梅を見に
梅にはとびきりの縁がある
先と同じように饗の左手を握る
薬指に嵌る環の感触を確かめつつ
口に残るチョコの甘さに笑む

ところでさ
チョコもらったって言ってたけど誰からもらったン?

え、あのウエハース…だったン

それでも饗がチョコを受け取ってたことが気に食わねえ
饗の交友関係にまで口を出したくねえし
でも、ちょっと…

俺が妬いて拗ねてたってお前は――


香神乃・饗
【狼梅】
すっごい量のチョコっす!
宝の山に目をきらっきら
誰かが食べてたら食べたくなるっす
誉人、俺にも一口欲しいっす!口を開き待ち構える
差し出されたチョコにかぶりつく
美味しいっす!満面の笑み

今年も咲く季節なんっすか
春が近いっす
優しい香りをかみしめ眺め
花は愛でても心はここにあると誉人の手を握り返す
安心する様に暖かく包み込む

お客さんっす!
配達に行ったら、食玩のおまけだけ欲しいからチョコは捨てるっていってたんっす
勿体ないっすから、捨てる予定のチョコだけ貰ったんっす
誉人のおやつにも出してたウエハースっす!
そうっす全部美味しくたべたっす!

何か気になったっすか?
全然そういうのじゃないっす!
からりと笑い飛ばして



「すっごい量のチョコっす!」
 村の中に散らばってしまったチョコレートを、一カ所に集めてみれば。
 こんもりと。出来上がったチョコレートの山に、香神乃・饗(東風・f00169)が目を輝かせる。
 海賊団員達の……あの薄着の一体どこに、これ程のチョコレートを隠していたと言うのだろう。
 見ているだけで少し胸焼けしそうな程の、予想以上に大きな山を作るチョコレートに、鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)は少々引き気味なのだけれど。
 出所は兎も角、チョコレートはチョコレート。紛れもない宝の山だと。
 どんな種類のチョコレートがあるのか、矯めつ眇めつ。浮き立つ気持ちが、そのまま仕草に出ている饗の様子には、思わず笑みを誘われる。

 板状のチョコレートを一つ、手に取って。指先に力を加えれば、パキリっと。
 冬の冷たい空気に、カチカチに固まったチョコレートが小気味よい音を響かせた。
 そのまま包装を剥がし始める誉人の姿に、村人達の視線が集まる。
 それを知りながら、あえて見せる為に。誉人はゆったりとした動作で、チョコレートを口へと運ぶ。
「……ン、んめえ」
 これで、少なくともチョコレートに害はないと、村人達には伝わるだろう。
 その上で食べるか食べないかは、村人達自身が決断する事。猟兵としてすべき事はここまでだと、誉人は線を引く。
「饗は食わんの?」
 だからここからは猟兵ではなく、鳴北誉人という個人としての時間。
 
 先ほどから、キラキラと。
 村人達から感じるものとは違う、期待に満ちた眩しい視線を、饗から感じて。
 誉人の表情も、思わず緩む。
 その手のチョコレートを示して、「食う?」と視線で問えば。
「誉人、俺にも一口欲しいっす!」
 美味しいものを誰かが食べていると、やはり食べたくなってしまうもの。
 大きく口を開けて、待ち構えていれば。
 誉人が差し出してくれたチョコレートを、その指先ごとぺろり。
「美味しいっす!」
 冷たい空気の中、オブリビオンを相手に体を動かして。ほんのり疲れた体に、チョコレートの甘さが染みわたっていくよう。
 鼻から抜けてゆく、花の蜜のような甘い香りに……饗は、ふと思い出す。
(「今年も咲く季節なんっすか」)
 この真白な景色の中に咲くと言う、梅の花の事を……。


 しんしんと。音もなく、雪は降り。
 耳に痛みを感じる程の静寂と、冷たさの中で。その花は咲いていた。
(「春が近いっす」)
 枝に、花弁に積もる雪に負けず咲く、薄黄色の花。
 雪の白さと、木々の黒さ中に、ささやかな彩を添えて。
 冷たい空気と共に胸に吸い込んだ芳香は、優しい春の気配を感じさせてくれる。

 そんな蝋梅の花を、ただ見つめている饗の背中を見つめて。
 目を細めた誉人の表情は、穏やかなようでいて、少しだけ寂しそうにも見えた。

 梅と言う花との縁を想い、饗の手を取れば。
 その薬指に嵌る環には、饗の体温が染み込んでいる。
 それを、確かめるように。あるいは、縋るように。誉人の指先が、環をなぞれば。
 その感触が、少しくすぐったくて。
 花は愛でても……そんな風に確かめずとも。心はここにあるのだと、示すように。
 誉人の指を、饗の指が絡め捕り。包み込むように握り返す。

 相変わらず、饗の体温は温かい。
 指先に、掌に。伝わる熱が、誉人の心臓を高鳴らせて。
 上がる体温に、口に残るチョコレートの余韻が、再びふわりと。
 誉人の鼻をくすぐってくる。

「……ところでさ」
 しかしその甘い香りに、心に引っかかっていた疑問を思い出して。
 饗を見つめる誉人の目に、鋭さが戻る。
「チョコもらったって言ってたけど、誰からもらったン?」
 海賊団員を引き付ける為に、今年は既にチョコを貰ったと言っていた、饗のあの言葉。
 嘘ではないのならば、誰に貰ったと言うのか。
 じーっと、見つめてくる誉人の視線を受け止めながら。
 その視線の鋭さを、特に気にした様子もなく。問われた饗は笑みを浮かべて。
「お客さんっす!」
 何でもない事のように、事の次第を語り始める。
 いわく。
 配達に行ったら、お客さんが蒐集している食玩の話を聞かされて。
 欲しいのは食玩だけだから、チョコは捨てると言うものだから……。
「勿体ないっすから、捨てる予定のチョコだけ貰ったんっす」
 と言うか、誉人もそのチョコレートを知っている筈なのだ。だって、そのチョコレートは……。
「誉人のおやつにも出してたウエハースっす」
「え、あのウエハース……だったン」
 地味に衝撃的な事実を、こうもさらりと告げられは。少々反応に困ってしまう。
「そうっす。全部美味しくたべたっす!」
 そう言って笑う、饗の顔は本当に無邪気で。
 それ故に、誉人の心は一層もやもやしてしまうというか、何というか……。

 分かっている。
 饗はただ、捨てられるチョコレートが、勿体なかっただけ。
 それ以上の意味は何も無いのだと、頭では分かっていても。心の方は……。
「でも、ちょっと……」
 饗の交友関係にまで、口を出したくはないと。
 そう考える冷静な思考と、胸のもやもやがせめぎ合い。誉人は言い淀む。
「何か気になったっすか?」
 そんな誉人の様子を見て取った饗は、やはり。
「全然そういうのじゃないっす!」
 他意の無い無邪気な顔で、からりと笑い飛ばすのだ。

 その表情、在り様は、あまりに澄み過ぎていて。
 直視できずに、誉人の視線は薄黄色の花へと逃げた。
 一陣の寒風が、蝋梅の香りを攫って。

(「俺が妬いて拗ねてたってお前は――」)
 僅かに残るチョコレートの余韻も。今は、少しだけほろ苦い……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
連携、アレンジ歓迎


 まずゎかたちからこのサムエンの景色に染まってこーかな。
〝音纏〟で和っぽぃ装いに。

 キレィ……あれが蠟梅ってゆーんだ。桜のお花見ならわたしも行った事あるけど、梅のお花見ってあんまりきかなぃよーな? でもいってみれば春の先どりの、そのまた先どりって感じだょね? ふふ。

 ぁ。村の皆さんゎ、この世界的に先進的かもしれないちょこれーとを、しかと味わってどぞ。茶色いのゎほかの猟兵さんも食べてみせてたんじゃなぃかと思うので、わたしゎホワイトイチョコをいただこーかな?

 ぁ、これかわいーかも。チョコの色を活かしてちゃんと白だし、かたちもばっちりうさぎだぁ。……まって? 逆に食べれなくない??



 静かに、静かに。降る雪が音を吸って。
 踏みしめる雪の音が、白い息遣いが。大きく聞こえるくらいの、静かな音の世界。
 サムライエンパイアという、ゆったりとしたリズムを刻む世界に。
(「まずゎかたちから、このサムエンの景色に染まってこーかな」)
 装いから入ってみるのも、また一興。
 ノネ・ェメ(o・f15208)の意思に応えて、書き換わる0と1の羅列が、まるで魔法のように。
 瞬き一つの間に、纏う衣の形、色を、変えてゆく。
 サムライエンパイアの世界なのだから、当然テーマは『和』。
 衣装の質感が反物へと変わって。そこに、季節の花でもあしらえば十分にそれらしいけれど……今は、冬だから。
 真白の世界に馴染むように、添える柄は立花とウサギ。

 装いも新たに。
 着物風のワンピーススタイルとなったノネは、ぎゅっ……ぎゅっ……と。
 踏みしめる足で雪の音を奏でながら、真白の道を歩く。
 目指すのは、村人達から教えて貰った、お花見のスポット。

 足を進める程に、村が離れる程に。
 人々の声、息遣いは遠のいて。
 周囲は、耳に痛い程の静けさに包まれてゆく。
「キレィ……」
 真っ白な色と、凍てつく空気に満たされた静寂の世界で。
 浮かび上がるように咲くのは、薄黄色の花。
(「あれが? 梅ってゆーんだ」)
 桜の花ならば、ノネもお花見をした経験があるけれど。
(「梅のお花見ってあんまりきかなぃよーな?」)
 何となく、花見と言われると桜のイメージが強いのは、やはり。誰もが待ち焦がれる、春を象徴する花だからだろうか。
(「でもいってみれば春の先どりの、そのまた先どりって感じだょね?」)
 この辺りは、春が遅い地域なのだと聞いている。
 季節の移り変わり……そのテンポが遅いがゆえに。
 冬らしい真白の景色と、春を思わせる花が、共に在る事できる。
 そんな、特別なセッションを前にして。ノネの口から、小さな笑みが零れる。

 その小さな吐息は、いつしか、小さな鼻歌に。
 ゆったりと、この地に冬に。いつか来る春に、思いを寄せるメロディを奏でながら。
 ノネの足は再び、村の方へと向かう。
「ぁ。村の皆さんゎ、この世界的に先進的かもしれないちょこれーとを、しかと味わってどぞ」
 そう。村の中央に、どーんと鎮座したままのチョコレートの山。
 その存在を思い出したからこそ、ノネは村まで戻って来たのだ。

 村人達は未知の食材に、警戒心を抱いているという話だったけれど。
 花見を終えて戻った村は、何だかあちこちから賑やかな声が聞こえてくる。
 それも、オブリビオンが騒いでいた時のような、煩いものではなくて。心が和むような、賑やかな笑い声。
(「ほかの猟兵さんも食べてみせてるのかな?」)
 ふわりと。ノネの髪を攫った寒風に、チョコレートの甘い香りを感じて。
 きっとそうなのだろうと、ノネは結論付ける。
 では、自分はどうしようか? 思考は、しばし……。
(「わたしゎホワイトイチョコをいただこーかな?」)
 一口にチョコレートと言っても、色々な種類があるから。
 例えば、他の猟兵たちが茶色いチョコレートを食べて見せたとして。
 村人たちが手に取って開けたチョコレートの中に、ホワイトチョコやストロベリーチョコが入っていたら……?
 これはどういう事なのかと、村人達がまたビックリしてしまうかもしれない。
 だから、チョコレートの山からノネが探すのは、変わり種のチョコレート。
「ぁ、これかわいーかも」
 しかして、ノネの涼やかな青の瞳は、この雪景色にぴったりのチョコレートを見つけ出す。
「チョコの色を活かしてちゃんと白だし」
 滑らかなホワイトチョコレートが象るのは、今、ノネが纏う衣にもあしらわれているウサギさん。
 ちょこんとお座りしたウサギさんと。後ろ足で立ち上がるウサギさん。
 それから、雪中をぴょんと跳ねるような元気な姿のウサギさんも……。
 様々なポーズで並ぶ、可愛らしいウサギさんのチョコレートに。ノネの表情も思わず緩むけれど。
(「……まって? 逆に食べれなくない??」)
 桃色をした、ストロベリーチョコのつぶらな瞳と目があってしまったら。
 なかなかどうして、食べる決心の付かないノネなのでした……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月13日


挿絵イラスト