第二次聖杯戦争㉑〜悲劇の選択
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
閻魔王が言い放ったその言葉に、あなたは憤るだろうか。絶望するだろうか。それとも、哀れむのだろうか。
――美しいか、醜いか。恐ろしいか、優しいか。ともかくとしてあなたにだけは、それが自分の未来の姿だと「信じたくない理由」があった。
そして|未来のあなた《明らかな格上》はあなたを過去の自分として見つめて、漆黒の闇の中を閻魔王と共に佇んでいるのだった。
●グリモアベースにて
かつて金沢大学の工学部があったという小立野は、今や恐るべき『闇の大穴(キリング・フィールド)』と化していた。
漆黒の闇の中は、まるで『人類の過去から未来の全てが混ざったような町並み』。
その中央に、閻魔王を名乗る謎めいたオブリビオン「生と死を分かつもの」が佇んでいるという。
そして閻魔王は、その懐から『英雄』を召喚し、ひとりにつき2体(閻魔王+英雄)で猟兵達に襲いかかってくるのだとグリモア猟兵は説明した。
「その『英雄』というのが、閻魔王が≪その英雄はそなたが未来の姿のひとつ≫と言い張っているようです……。それも、自分の未来の姿だと|信《・》|じ《・》|た《・》|く《・》|な《・》|い《・》|姿《・》なのだとか……」
ラフィエル・ホワイトエデン(白の天使・f39153)は心を抉る戦いであることを予告する。
人生は|選《・》|択《・》|の《・》|連《・》|続《・》だ。
みんな無数の選択を重ねて、未来へと向かって歩くだろう。
だがその積み重ねた選択で、たった一度の選択で、天国にも地獄にもどちらにも転んでいく。
そしてあなたの身に起きることも千差万別、十人十色。
“人生を左右する出来事”が起きた時、今の自分には考えられない選択をしてしまう未来は本当に存在しないのだろうか――……?
「許せない選択をしてしまった未来のあなたとの戦いに勝つには、克服する気持ちを強く持って挑むことが鍵になります。どうかあなたの願いや理想を見失わないで……。あなたが勝つことで救われる未来が、きっと待っているはずですから」
ラフィエルは猟兵達の無事を心から祈り、グリモアの光が白く輝いて周囲を真っ白に染めた。
愛田ここの
こんにちは、愛田ここのです。
今回の戦争でのシナリオはこれが最初で最後の参戦となりそうですが、ひっそり参加させていただきます。宜しくお願いします!
●
『未来のあなたは、あなたの身に何が起きたのか』
『未来のあなたはどんな選択をしたのか』『今のあなたは、未来のあなたをどのように克服して戦うのか』
この3点がプレイングに記載されていると、ありがたいです。
心情も添えてくださると、個人的に書きやすいです。
アドリブやアレンジが出やすい作風ですので苦手な方はご注意ください。
採用は先着順ではありません。
早めに人数達成した場合は締め切りを早める可能性があります。
気持ちは全員採用を目指したいですが、遅筆なためなかなか難しいです。
流れてしまった場合はごめんなさい。
今回は1月22日頃までに完結できそうな分を、執筆する予定です。
もしも流れてしまった場合、送信可能の状態であれば再送していただけるとありがたいです。
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プレイングボーナス:「自分の未来の姿」を想起し、それを克服する/閻魔王と「未来の姿」の先制ユーベルコードに、両方とも対処する。
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第1章 ボス戦
『生と死を分かつもの』
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POW : テンタクル・ボーダー
戦場全体に【無数の触手】を発生させる。レベル分後まで、敵は【死の境界たる触手】の攻撃を、味方は【生の境界たる触手】の回復を受け続ける。
SPD : キリングホール
レベルm半径内に【『死』の渦】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 閻魔浄玻璃鏡
対象への質問と共に、【無数の触手の中】から【浄玻璃鏡】を召喚する。満足な答えを得るまで、浄玻璃鏡は対象を【裁きの光】で攻撃する。
イラスト:佐渡芽せつこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御梅乃・藍斗
未来の僕は、嗤っていました
弱い者を足蹴にし、強い者に媚を売り
弱きに勝る喜びと、強きに阿る楽さに堕した…快楽に魂を売った|僕《淫魔》の姿です
【音亡き聲】で範囲攻撃へは対処します
『恐怖を与える』くらいの響きで黙らせたい
見たくない姿、聞きたくない言葉へは『狂気耐性』で耐えましょう
僕は人を『かばう』気持ちや、他者への『礼儀作法』も持ち合わせている真っ当な存在だと言い聞かせて
確かに一時の欲に流されるのは簡単です
でも…矜持を失くした人間なんてなぁ、畜生と変わらねえんだよ!
声を荒げて言い放ち、許し難い敵を【剣刃一閃】
『居合』『残像』にて確実に仕留めにいきます
険しい道でも、理想は抱き続けることに意味があるんだ
彼は嗤っていた。
弱い者を足蹴にし、強い者に媚を売って、弱きに勝る喜びを知り、強きに阿る楽さに堕した。
こんな生き方が身に染みついてしまったが故、かつての清廉さや品格は失われ、面影も無くなっていた。
彼は、彼であって彼では無かった。
誇りも人格も何もかもが歪んでしまった彼は……。
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|一《・》|つ《・》」
閻魔王がそう言った。
彼はあなただ。
たとえその姿を、あなたが受け入れられなかったとしてもだ。
「はぁ……、あの快楽に魂を売った|僕《淫魔》が僕の未来の一つだなんて――……冗談でも笑えないですね」
御梅乃・藍斗(虚ノ扉・f39274)は、激しい厭わしさを苦く味わい尽くしながら言った。
未来の彼が放つ咆哮は醜悪だった。さらに死の境界たる触手が無数に発生している。
それらを同時に相手にする藍斗は顔を顰めながら、激情のこもった声を上げた。
「――――最 ッ ッ ッ 低 な 気 分 だ ! ! !」
音亡き聲は可聴域を超えて漆黒の闇の中を轟かせ、無差別に世界を震撼させながら黙らせた。
未来の彼は藍斗の迫力に恐怖で腰が抜け、触手が奇妙な動きをしながら倒れていく中、藍斗は一気に詰め寄っていく。
ーーなぜ、こんな世界線が生まれてしまったのか。
藍斗は理解に苦しみ、彼の姿を見たり、耳障りな彼の言葉を聴くだけで、狂気に冒されてしまいそうだった。
しかし冷静に自我を保ちつつ、自身に言い聞かせる。
僕は人を『かばう』気持ちや、他者への『礼儀作法』も持ち合わせている真っ当な存在だと。
「確かに一時の欲に流されるのは簡単です。でも…矜持を失くした人間なんてなぁ、畜生と変わらねえんだよ!」
声を荒げながら言い放ち、藍斗は腰元に差す刀に手を添えて、鍔と栗形の間の鞘を握ったまま親指で鍔を押し上げ、素早く抜き放った。
そして高く飛ぶための歪な力が込められた、妖刀と呼ぶには余りに不格好な……三翼刀の刀身が冷たく光りながら振りかざす。
命乞いをする彼は許し難い敵ではあれど、その姿は人のかたち。
なにかを思い出しそうで気分が悪くなるけれど、藍斗は確実に仕留めようと揺るがなかった。
剣刃一閃。
刀身の光が残像となって彼に命中し、切断する。
そして藍斗に斬られた瞬間絶望した彼は、最後の力を振り絞って言った。
『理想なんてあったって無駄だ……! 散散苦しい思いだってしてきた筈だろ……!』
理想なんて捨てちまえ。
誇りなんて忘れてしまえ。
全て捨ててしまえば楽になる。
そう悪意に満ちて言い放っている彼に、藍斗は言い返した。
「たとえ険しい道でも、理想は抱き続けることに意味があるんだ 」
理想を捨てる気はない。
誇りだって失わない。
|僕《淫魔》|の《・》|よ《・》|う《・》|に《・》|な《・》|る《・》|ワ《・》|ケ《・》|な《・》|ん《・》|て《・》|な《・》|い《・》|だ《・》|ろ《・》。
すると彼は度肝を抜いて固まった。
そしてその後、笑っていた。
なんて真っすぐで。
なんて清々しいんだ。
ーーいつから僕はこの生き方を忘れてしまったのだろう。
もう昔のことは覚えていないけれど。
嘗ての自分を懐かしく思いながら、彼は安らかに瞼を閉じて消滅していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
石蕗・つなぎ
「ある意味で予想外かしら」
胸があり得ない程大きい自分に何とも言えない顔をする
他の別つもの戦で出てきた胸の全く成長してない自分へ対策しすぎたのかしらね
「過ぎたるは及ばざるがごとし、よ」
今、未来の一つを直視できたことで、流石にああはならないと克服
先制攻撃は残像で惑わし第六感にも助けられつつ見切って躱す
無理でもオーラで守り、赤手で受け可能な限り被害を減らす
「別に私怨とかじゃないから」
凌ぎきれなければ未来の自分を盾にも
「身体が大きいなら当てやすくていいわね」
凌ぎきれたならUCで反撃
「こっちと同じものを使ってくるのは厄介だけど、こちらには効かないものならね」
オブリビオンにしか効果がないUCで範囲攻撃
「ある意味で予想外かしら」
石蕗・つなぎ(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35419)は、なんとも言えない顔をしていた。
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
そう言い放った閻魔王の隣には、またしても胸が全く成長していないつなぎが――……かと思いきや。
まさかのその逆。
胸があり得ない程大きくなっていた未来のつなぎが居たのだった。
その未来のつなぎは、真剣な顔をして話を切り出す。
『あなたは今、分かつもの戦で見た未来の私との出会いを経て、胸が全く成長していない未来を変えたいと思っている……。そうでしょう?』
「なぜそれを……」
どきっとするつなぎ。
胸が成長していない未来を目の当たりにしてきたつなぎは、正直焦っていたのだ。
なんとかもうちょっと育ってくれないだろうか、と。
未来のつなぎは続けた。
『そこであなたはこれから、自分に出来る事を全部やって、ありとあらゆることを試すの。頑張って対策したわ……。でもその結果が、|コ《・》|レ《・》よ』
――ドンッ……‼︎
心の中で、迫力満載の効果音が響いたような気がした。
つなぎは息を呑む。
自分の秘めたポテンシャルには感心したけれど、それにしても大きすぎる。
「過ぎたるは及ばざるがごとし、よ」
この未来の姿も、つなぎにとっての理想とは程遠かったのだった。
但し今、未来の一つを直視できたことで、流石にああはならないとあっさり克服。
「成長は、ちょうどいい所でキープしておくわね」
そう誓った矢先、死の境界たる触手が容赦なくつなぎに襲い掛かってきた。
つなぎは反射的な速さでその場を離れ、残像を切った触手はそのまま地面を叩く。
そして触手が無数に発生して次々と襲い掛かるが、つなぎの第六感が冴え渡り、敵の攻撃を見切って躱しきった。
応戦を続けてオーラを纏って守り、赤手で受け止めて被害を減らしながら……と対処をするものの、戦ってもキリが無い――。
なのでつなぎは、思い切って未来の自分の体をお借りすることにしたのだった。
「別に私怨とかじゃないから」
『え……』
「身体が大きいなら当てやすくていいわね」
未来の自分を盾にして凌ごうとするつなぎ。
だがしかし未来のつなぎも触手に叩かれるのは嫌だったらしい。
触手に叩かれそうになる瞬間、思いっきり反撃して触手を倒してしまったのだった。
『敵とはいえ、未来の私を盾にするなんて……』
そして未来のつなぎは、破魔矢・時雨を放った。
だが広範囲に渡るUCとはいえ、焦りはしない。
「こっちと同じものを使ってくるのは厄介だけど、こちらには効かないものならね」
オブリビオンにしか効果がない未来のつなぎのUCを浴びながら、今度はこちらから破魔矢・時雨を放った。
そして矢の雨が降り注ぎ、勝敗の決着がつく瞬間を眺めらながら。
つなぎはほっとしつつ、そこで考えた。
今回は大きすぎたけれど……。
ちゃんと胸が成長する未来もあるのなら希望は広がるな、と。
美しいバストを目指して、明るい未来が楽しみになるつなぎなのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エスカ・ブランシェール
忌むべき未来の姿として、マスカレイドの仮面をつけた自分が登場
大方、エリクシルとの戦いに負けて、絶望してマスカレイドになっちまったってとこか?
六勇者の冒険の再現かよ、くだらねぇ!
死の境界たる触手を薙ぎ払いながら、ひたすら時間稼ぎ
最悪、UCの発動条件を満たせるまで生き残れればOK
「ようやく来たか……こっからが本番だぜ!
並行世界の自分の存在は、希望の未来の可能性
絶望する可能性がひとつなら、それを百の希望で塗り替える
百体以上の並行成果の自分を使って、全ての敵を一斉攻撃
触手を蹂躙し、野太刀と打撃のラッシュ系UCで粉砕
「絶望の未来を力づくでブチ壊す……それがエンドブレイカーだぜ、覚えときな!
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
閻魔王がそう言い放った。
隣に佇むのは確かに自分であるようだが、しかしその姿は忌むべき未来の姿――|マ《・》|ス《・》|カ《・》|レ《・》|イ《・》|ド《・》。
にわかには信じ難いが、全ての生命の敵と成り果てた自分だった。
「大方、エリクシルとの戦いに負けて、絶望してマスカレイドになっちまったってとこか? 六勇者の冒険の再現かよ、くだらねぇ!」
エスカ・ブランシェール(跳ね馬の群竜士・f39110)は自身が棘の憑依を許してしまった未来に憤激し、目に角を立てながら剛刃・愛染櫻を高く掲げて背面で大胆に抜いた。
圧倒的な刃長を誇る野太刀を構えて、対戦するのは死の境界たる無数の触手と、マスカレイドと化した未来の自分自身。
エスカは襲い掛かってくる漆黒色の触手を薙ぎ払って、次々と断ち切っていった。
しかし未来の自分の斬撃を刀で受けた瞬間に、大きな衝撃を受ける。
(「クソッ……。なかなか手強いじゃないか、未来のあたいは――……!」)
反撃できるような隙がまるで無く、なんとか競り合って喰らいついてはいるが、気を抜けば一瞬で命が取られかねない危機がエスカに迫る。
(「これ程の力を以ってしてもエリクシルとの戦いに敗れたってのか……!」)
必死にその場を凌ぎ続け、なんとか時間を稼ぐエスカ。
すると未来の自分は、深い絶望感を滲ませながら言い放った。
―― 変えられなかった終焉がある、と。
未来のエスカが憎んでいるのは、|万能の魔神《エリクシル》か、それとも自分自身か。
絶望を識った心は折れて、粉々に砕け散ってしまっていたのだった。
しかしそんな未来を見ても、エスカは怖気付いたりはしなかった。
「そうかよ。辛い思いもしてきたみてぇだが、随分弱気になっちまったじゃねえか。だがそれでも、|嫌《・》|で《・》|も《・》|思《・》|い《・》|出《・》|さ《・》|せ《・》|て《・》|や《・》|る《・》|ぜ《・》」
時は十分に満ちた。
するとある者達が、漆黒の闇に包まれた戦場に踏み入る。
そう、その者達は異なる世界線に存在する並行世界のエスカ達。
エスカはこの時をずっと待っていたのだ。
「ようやく来たか……こっからが本番だぜ! あんたがどうする事もできなかった終焉へ向かう前に、あたいが絶対に変えてやる! どんな絶望が待っていようとな!」
エスカが野太刀を突き出しながら叫んだのを皮切りに、総勢100人を超えるエスカ達が、それぞれの信念を胸に戦場を駆け抜けていった。
そしてエスカ達の野太刀による激しい連続突きが触手を貫いて、拳のラッシュで蹂躙する。
絶望する未来よ、思い識るが良い!
並行世界の自分の存在は、希望の未来の可能性。
絶望する可能性がひとつなら、それを百の希望で塗り替えてやる、と。
たとえどんな相手でも、不幸な|終焉《エンディング》を見れば叩き潰さずにはいられない|生《・》|粋《・》|の《・》|エ《・》|ン《・》|ド《・》|ブ《・》|レ《・》|イ《・》|カ《・》|ー《・》達は一斉に立ち向かった。
絶望に堕ちた己の不滅を|破《・》|壊《・》する為に――。
「絶望の未来を力づくでブチ壊す……それが|エ《・》|ン《・》|ド《・》|ブ《・》|レ《・》|イ《・》|カ《・》|ー《・》だぜ、覚えときな!」
すると、絶望に染まっていた未来のエスカの瞳に希望の光明が差し込んだ。
そして最期に救われた未来のエスカは、目に輝きを取り戻す。
――ならば絶望を越えて変えてゆけ、エンドブレイカー。
そう穏やかに笑いながら、希望に溢れた終焉を迎え入れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴鹿・小春
名前違っても逃がさない…センパイの仇だし!
英雄は…処刑人?呪剣は…持ってるけど折れてる、直せなくなった?
けれど力が必要だから一人頑張って…皆を頼らず?
誰にも頼らず切り捨て力を求める選択をした、なら僕は皆の力と合わせ乗り越える!
触手は集中して見切り鮫剣で生命力奪いながら斬り払って凌ぐ。
英雄の攻撃は処刑の檻…呪詛の強い所探り罠の位置予測し回避。
殺戮ハウンドは斬撃波の範囲攻撃で纏め吹き飛ばし、チェーンソー剣はリミッター解除した怪力で強引に受け流す!
凌いだらUC起動!
英雄を蕗田君と共に畳みかけ仕留め、ファイナルキャノンを閻魔王の方に撃って貰い触手消し飛ばし、そこに一気に切り込む!
※アドリブ絡み等お任せ
鈴鹿・小春(万彩の剣・f36941)は忘れたことなんて無かった。
「名前違っても逃がさない…センパイの仇だし!」
小春には、死と隣り合わせの青春を生きてきた者としての想いがあった。
――好き勝手させるつもりは毛頭無い。
そう強く想いが込められた視線を注ぐ先には、人類の過去から未来の全てが混ざったような町並みの中佇んでいる閻魔王の姿があった。
そして隣には、処刑人を想わせる姿の未来の小春も、悲しい目をして佇んでいる。
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
処刑人となった英雄は、見るも無惨に折れている呪剣を握っていた。
直せなくなってしまったのだろうか。
それでも力が必要だったから、一人で頑張った結果なのだろう。
そして彼は、誰にも頼らずに切り捨てて、力を求める選択をした。
でもそれは、小春にとって悲しいことだった。
(「その道を選んだ僕は、皆のことを大切に出来ているのかな」)
小春が思い浮かべるのは、家族のこと、共に戦った使役ゴースト達のこと。
どんな未来を歩んだとしても、皆を大切に思う気持ちはきっと変わりはしないだろう。
けれどそんな皆にさえ、英雄は頼れなくなってしまっているようだから。
悲しい切なさで小春の胸は痛んだ。
そして敵の先制を察知すると、無数に伸びる死の境界たる触手に叩かれる寸前で瞬時に見切りながら躱していく。
|鮫剣《つうれん》で触手を斬り払いつつ生命力を奪ったが、同時に英雄が|処刑の檻《パニッシュメント》を発動させて休む間も与えなかった。
しかし小春は呪詛の流れを感じ取り、強く反応する位置を回避しながら、殺戮ハウンドを斬撃波で纏めて吹き飛ばし、チェーンソー剣での紅蓮撃をリミッター解除した怪力で強引に受け流す。
そして何とか全ての攻撃を凌ぎ切ったところで、小春はこの場にフランケンシュタインFWを召喚した。
「お願い、力を貸してくれないかな? |蕗《・》|田《・》|君《・》」
彼の名を呼ぶと、その姿を現した蕗田君は小春の為に戦おうとする圧倒的な迫力を屈強な肉体から解き放った。
彼は、学生時代から共に戦ってくれた頼りになる存在だ。
小春は目元を緩ませながら、懐かしさと勇気を貰って心が温まっていく。
「ありがとう。僕はやっぱり、皆が傍にいて欲しいな」
たとえどんな道や選択肢があろうとも、かけがえのない皆を頼る事が出来ずに切り捨てるなんてことはしたくない。
手を取り合って傍に居てほしい。
そして、皆が困った時も僕を頼って欲しいから――。
小春は蕗田君と共に英雄を畳みかけた後、無数の触手を掻い潜りながら駆け抜けていく。
そして真正面から見下ろしている閻魔王に、蕗田君がファイナルキャノンで触手を消し飛ばした。
すると切断された触手は再生を始めようとうねりだすが、それを小春は許さなかった。
「英雄の彼が誰にも頼らず切り捨て力を求める選択をした、なら僕は皆の力と合わせ乗り越える!」
小春は|鮫剣《つうれん》で一気に切り込み、閻魔王の苦痛に歪む声が戦場に響き渡るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
布施・命
未来のわし、な。嗚呼、思い当たる節があるわあるわ。
かつて戦で自分達の感情を優先した結果、無理をさせた多くの戦友の命を失った。
その贖罪の為に、己を顧みず戦い続ける事を選択したのが『英雄』だろうよ。
幸い今のわしは自暴自棄を克服して、こうして猟兵をやっている。友のおかげでな。そう、友のためにも、お前には負けない!
●対先制攻撃・その後
『集中力』で相手の初手判断に注力
未来のわしは、遠距離が得意な呪術系で変わらぬはず。対して今のわしだからこそできる『破魔』『受け流し』で術を破り、あるいは流し直撃を避ける。
閻魔めも触手や渦で来るなら同様だが、質問ならば何を問う?
わしが英雄のようにならなかった理由か?
友の心配までもをな、己の感情を優先して無下にするな!ということよ。
凌ぎ、ユーベルコードで飛翔を得たならば、全速力で奴らの懐まで飛び込む。で、先ずはスピードを乗せた定規での一閃!更には至近距離で式鬼や霊符の大盤振る舞いだ。喰らえっ!
敵の追撃の回避は受け流しに、飛翔による超スピードと自由軌道も活かして攪乱だ。
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
閻魔王が言い放ったその言葉を、布施・命(銀誓館の元符術士・f35378)は確と受け止め、否定はしなかった。
「未来のわし、な。嗚呼、思い当たる節があるわあるわ」
命は己の過去を思い返しながら、閻魔王の隣に立っている英雄に視線を注ぐ。
英雄は明らかに憔悴しているようで、全身は傷だらけ。更に己を粗末に扱っているのか、身も心も削れて窶れ果てていた。
そんな英雄が何を想い、何の為に戦うのか――。
命には分かるような気がした。
嗚呼、分からなくもないからこそ、彼が自分であるという証。
英雄を誰よりも理解していたのは、他ならぬ|命《ジブン》なのだった。
「わしには分かる。分かっている……。どうしてわしに、その未来が生まれてしまうかを」
そう言いながら命は眉を寄せ、握る手に少し力が入る。
思い起こされるのは、今も脳裡に焼き付いているあの戦いの決断と――その結果だ。
悔やんでも悔やみきれない心の痛みが、いつまでも心に焼き付くように刻まれていて、今も残り続けている。
悼み、嘆いて、悔やんだあの時のまま、ずっと。ずっと。
「かつて戦で自分達の感情を優先した結果、無理をさせた多くの戦友の|命《いのち》を失った。その贖罪の為に己を顧みず戦い続ける事を選択したのが『|英雄《お前さん》』だろうよ」
命が推察する中、英雄は俯いて視線を下に向けた。そしてうんともすんとも言わず、何も語らないまま沈黙していた。
すると命と英雄の両者を見据えていた閻魔王が、興味を示しながら笑みを深め、口元に弧を描く。
「……人よ。|吾人《われわれ》には英雄が苦しんでいる悲しみの根源を、そなた自身にも持ち続けているように見える。何故、そなたは英雄のようにはなりたくないと望む。英雄とそなたは何が違う?」
そして命に問い掛けると共に、奇妙な動きをしている無数の触手の中から浄玻璃鏡が出現した。
浄玻璃鏡は、満足な答えを得るまで裁きの光を放ち続けるというもの。
閻魔王によって変貌させられた真っ暗な闇の様相の中、鮮烈な光が命に向かって放射し始める。
命は鏡から放たれている裁きの光を集中してか見つめ、身を躱しながら回避した。
そして決心している眼で閻魔王に視線を注ぎ、己が導き出す答えを示す。
「わしが英雄のようにならなかった理由か? 友の心配までもをな、己の感情を優先して無下にするな!ということよ」
「ほう。友とな……」
「ああ、そうだ。自暴自棄だったわしが、それを克服できたのも、こうして猟兵をやっているのも、すべて友のおかげでな。そう、友のためにも、お前には負けない!」
閻魔王に言い放ちながら、決意を抱く命。
浄玻璃鏡の裁きの光はいつの間にか消滅していた。
しかしその合間に動きを見せた英雄の行動を、先回りして見極めるべく注力を注ぐ。
(「未来のわしであるならば、遠距離が得意な呪術系で変わらぬはず――」)
そう予測した瞬間、英雄が呪術を放った。
読みが的中した命は、猟兵となってから身に付けた破魔で術を破り、受け流した。
そして凌ぎきれば、深呼吸をして心を整え、イグニッションカードを手にして一声叫ぶ。
「――――|起動《イグニッション》!」
一瞬にしてかつての戦装束である緑色の神主服姿となった命は、飛翔能力の呪いを秘めた翼符を己に身に付けた。
すると呪いの能力により飛翔を得て、体が軽くふわりと浮く。
途中、命を防ぎ止めようと閻魔王の触手や英雄の呪術による邪魔が入るものの、素早く回避しながら自由軌道を活かして相手を撹乱させた。
そして勢いそのまま失速させず、全速力で飛び込む先は英雄の懐。
命は更にスピードを乗せつつ、刀身に赤い退魔文字が明滅する漆黒の鋼――「剣のような長定規」を引き抜いて、飛翔しながら霞の構えをした。
「戦いに身を置くのも此処までだ。わしが楽にさせてやる」
そう言って、光の如しの速さで貫いた一閃。
あまりにも一瞬で、英雄は事態の把握に少し時間を要したが。
嗚呼、なるほど。
――敗けたのか、と。
理解した瞬間に、強張っていた目元が柔らかく緩んだ。
そして安らかに瞼を閉じながら、幻のように消えていったのを、命は見届ける。
その眼差しは悲しく、辛く。けれどまだ戦いは終わっていないから、と強く気持ちを持ち直して切り替えて。
「…………次はお前だ、閻魔!」
命は叫び、再び飛翔して閻魔王の懐に潜り込む。漆黒の闇のような敵の体に突き刺す一閃。
命が使役しているおキツネ様とおタヌキ様も姿を現すと、おキツネ様は閻魔王に噛み付き、おタヌキ様は見た目にそぐわぬ怪力で体当たりしながら押し込んだ。
そして少し体勢を崩す閻魔王に、命は数多もの霊符を投げ放つ。
「大盤振る舞いだ、喰らえっ!」
強い呪力を込められた札が閻魔王に次々と貼り付けられていき、命は術を掛ける。
すると霊符の呪力が発動し、解き放たれた瞬間、閻魔王の叫びがどこまでも遠くまで轟くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
私のジョブ、黒燐蟲使いとは
獲物を喰らう呪いの蟲を体内で飼い慣らすものです
それを踏まえて『未来の私』は――
「あぁ……貴女はもう人じゃない、ヒトの形をした蟲の巣です」
自我を放棄して蟲達に言われるがまま動いているだけ
大方、未来の脅威か何かに直面して絶望したという所でしょうか
先制してきた『死』の渦はオーラ防御を全開で対抗
奪われた生命力は|めしや3《視肉》を喰べて幾らかは補填
足りない分は真の姿に変身して誤魔化しましょう
その後『伍光』の光を浴びて「落ちる」ように閻魔王へと急速接近、
指定UCを起動し攻撃します
あれ程の巨体、奪われた分以上の生命力を奪えるはずです
全身にある無数の口を開いて襲ってくる『私』には
|黒の葬華《長剣》で斬撃波を放ち迎撃……できるはずです
先程感じたように、『私』は思考を停止して蟲達に言われるがまま
そして蟲達についてはかれこれ20年以上の付き合いです、行動パターンの先読みは容易い事です
真の姿に変身した今なら、身体能力の向上分も埋められるでしょう
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
閻魔王が言い放った言葉を、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は真剣な顔で聴いていた。
英雄が影華の未来の姿のひとつだというのなら、なんと残酷で絶望的な未来なのだろうか。
|黒《・》|燐《・》|蟲《・》|使《・》|い《・》とは、獲物を喰らう呪いの蟲を体内で飼い慣らすもの。
それを踏まえて『未来の私』は――。
「あぁ……貴女はもう人じゃない、ヒトの形をした蟲の巣です」
意思も。自我も。
影華の中に在った筈の心が余す事なく、蟲達に全部喰い荒らされてしまっている。
もはや彼女は、ただ蟲達の言われるがままに動く『蟲の巣』であるも同然。
影華は表情を強ばらせながら、少し目眩を感じつつ眉を寄せていた。
何故こうなってしまったのだろうか。
呪いの蟲達は確かに強力だが、宿主である影華を完全に支配するにはかなりの時間を要した筈だ。
それに飼い慣らしていた蟲達が領域を越えて喰らい尽くしていくのを、自身が気付かなかったとは考え難い。
身も心も浸食されて蝕まれていく感覚が、『未来の私』にもあった筈なのに。
……だとすれば、考えられる事はひとつ。
身も心も何もかも蟲達に自らの意思で明け渡して、そのまま考えることを放棄してしまったのだろう。
(「そうなるに至ったのは、大方、未来の脅威か何かに直面して絶望したという所でしょうか」)
真相は闇の中。
ただ一つ確実に言えることは――。
この未来は間違いなく、影華が信じたくない未来だったということだ。
「|起動《イグニッション》」
イグニッションカードを取り出し、その一声で、影華が瞬時に武装する。
そしてその直後、閻魔王のキリングホール――『死』の渦が広範囲に発生した。
暗闇の世界が、更なる漆黒へ。
黒い渦は野に咲く草花を瞬時に萎れさせて、生命力を一気に吸い上げていった。
影華もキリングホールに巻き込まれてしまうが、自身のオーラを全開に放って、死の渦に対抗して弾く。
そして影華はなんとか耐え切ってみせたものの、『死』を間近に感じるような暗闇の渦を浴びた事で、体力は消耗していた。
そこで、此処は回復をしながら立て直そうと|めしや3《視肉》を取り出す。
影華は、ずっと小刻みに動いている視肉を掴むと、そのまま口に入れて喰べ、嚥下した。
「やはり|人《・》|類《・》|に《・》|は《・》|ま《・》|だ《・》|少《・》|し《・》|早《・》|い《・》|味《・》ですね。でも持って来ていて正解でした」
|めしや3《視肉》は食べ物としては抵抗がある見た目をしているが、実は優れた万能食。
食べたことにより力が蓄えられて漲ってくるのを感じつつ、しかしまだまだ足りない、と更なる補填をする為、影華は真の姿へと変身する。
一時的に視力が改善され、掛けていた眼鏡を外す影華。
そして暗赤色のマフラーを引き上げて口元まで覆い隠しながら、重力変動光照射刀『伍光』の光を浴び、「落ちる」ように閻魔王へと急速接近する。
――|黒燐憑依法(摘食)《ファントムカンパニー・スナックタイム》。
無数の黒燐蟲が影華の左腕から激しく飛び交って、大きな漆黒の狼を形成した。
蟲の大群はまるで飢えた狼が喰らい付く瞬間のように鋭い牙を剥いて、閻魔王に噛み付く。
閻魔王は叫びながら振り落とそうと身動ぐが、影華は左腕を離さなかった。
「あなたが奪った生命力……返してもらいます」
閻魔王が今迄奪って来た生命力を全部取り返すかのように影華は奪って、奪って、奪い尽くす。
奪われてしまった生命力よりも、それ以上の生命力を吸い取り続けていく。
そして左腕を離した瞬間に、全身にある無数の口を開きながら襲いかかる『未来の私』に、|黒の葬華《長剣》で斬撃波を放つのだった。
『――――ッ!』
『未来の私』の中に居る蟲は、何故……と言いたげに、ざわつきながら蠢めいている。
蟲達は、影華の隙を突いて、攻撃を仕掛けた筈だった。
けれど斬りかかられたのは、|自《・》|分《・》|達《・》の方だなんて……。
そんなふうに動揺している蟲達を眺めつつ、影華は答えた。
「驚きましたか? 20年以上の付き合いです、先読みは容易い事ですよ」
未来の『私』は思考を停止して蟲達に言われるがままだった。
つまり『未来の私』の主体は『蟲』達である。
だからこそ、なんとなく分かってしまう。
何を考え、何を想い、どう行動するつもりなのかを――。
敵は『未来の私』だということもあって、明らかな格上の相手だったが。
真の姿に変身した今、身体能力の向上により開いていた差を埋める事が出来た上、相手をよく知り尽くしていたことが、勝敗の鍵を握ったようだ。
「さようなら、未来の私。……それから、|あ《・》|な《・》|た《・》|達《・》も」
影華は、心を喪った空っぽの目をしている『未来の私』に視線を注ぎながら呟いた。
すると斬撃波によって割れていた部位から黒煙のようにもくもくと蟲達が溢れ出した。
そのまま逃げ去って生き延びようとしているのだろうか。
だが――……。
蟲達がどこかへ向かうことは叶わず、赦されなかった。
最期まで足掻くように飛び交っていた蟲達が、儚く散って消滅していく。
そしてそんな蟲達と共に、『未来の私』も。
“ありがとう”と消え入るような声で御礼を言い残し、影華の前から静かに消え去っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。
未来の自分は、紅い瞳に蝙蝠の翼、黒いマントを翻し、生き血を求める紛うことなき吸血鬼の姿で。
うわぁ…あれが俺かよ…
自分が求める『普通』とはかけ離れた姿にげんなり。
…でも、本能的に理解してしまう。いくら普通を求めたところで自身が吸血鬼である事実は変えられず、暴走すれば容易に怪物に成り果ててしまうであろうことを。
さしずめ、敵への怒りのまま真の姿に変身してそのまま理性をなくして戻れなくなったってとこか…
生憎と俺が好きなのは血じゃなくてトマトジュースでな、戦うのはあくまで日常を取り戻すためだよ。ただの吸血鬼になってたまるかっての!
八坂、俺らあんな化け物じゃねえよな?
触手は大鎌で【なぎ払い】つつ、闇のオーラを纏い【オーラ防御】と【武器受け】で先制攻撃に対処。
ほんとは使いたくねえけどお前を葬るためなら多少寿命削ってもいい!
指定UC発動、あえて赤い瞳に蝙蝠の翼を生やした真の姿に変身。
この姿になったってちゃんと戻れるって証明してやるよ。
爆発的に増大した戦闘力をもって大鎌で【切断】。
八坂・詩織
白夜さん(f37728)と。
未来の自分だというそれは、腰まで届く長い髪を持ち、冷たい瞳で凍気を纏う恐ろしくも美しい雪女の姿で。
(貴女は、『愛した人からは愛されない』『大切な人は皆私から離れていく』ことに絶望した私、なんですね…)
今まで、片想いの恋が叶った試しはなかった。告白されて付き合った大学時代の彼氏とは自然消滅。
かつての天文部の仲間とはなかなか再会も叶わず。
そして…すぐ傍にいる大切な人には、関係が壊れるのが怖くて本当の気持ちを告げるなんてできない。
でも!猟兵になって出会った今の仲間達も大切だから。
過去や未来に囚われるより、今を生きたい!
はい、私達の力は大切なものを守るためにあるんですから…!
あれが、白夜さんの真の姿…
寿命を削らせるなんてさせません、戦闘を早く終わらせるため私も真の姿を開放、未来の私と同じく長い髪に青い瞳の雪女ですが…
私は絶望なんてしません。
先制攻撃には氷のオーラを纏い【オーラ防御】、【結界術】で氷の結界を展開。
隙を見て結界を解き【全力魔法】を込めた指定UCを放ちます。
鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)は、閻魔王が召喚した英雄へと視線を注ぎながら、げんなりしていた。
「うわぁ…あれが俺かよ…」
なぜなら閻魔王曰く未来の白夜だという英雄は、自分が求める『普通』とは、あまりにもかけ離れていた姿だったからだ。
「|そ《・》|の《・》|英《・》|雄《・》|は《・》|そ《・》|な《・》|た《・》|が《・》|未《・》|来《・》|の《・》|姿《・》|の《・》|ひ《・》|と《・》|つ《・》」
白夜が見た英雄の瞳の色は紅く、生き血を求めている眼光は妖しく輝いていた。
蝙蝠の翼が生えて、黒いマントを翻すその姿は、紛うことなき吸血鬼。
「さしずめ、敵への怒りのまま真の姿に変身して、そのまま理性をなくして戻れなくなったってとこか…」
自分が吸血鬼になる未来なんて、本当は信じたくはないのだが――。
……でも、本能的に理解してしまう。
いくら普通を求めたところで、自身が吸血鬼である事実は変えられないのだと。
そして力が暴走してしまえば、容易に怪物へと成り果ててしまうであろうということを。
意気消沈して肩を落としている白夜の心を、知ってか知らずか。
英雄は白夜の心を揺さぶろうとする。
――本能の赴くままに身を委ね、暴走を受け入れてみると良い、と。
――血の味はこの世の何よりも格別で、一度味わえば、日常には無い刺激で満たされる筈だと。
しかし白夜は、そんな英雄の言葉を跳ね除け、真剣な目つきで睨み付けながら言い返すのだった。
「話は終わりか? 生憎と俺が好きなのは血じゃなくてトマトジュースでな。それに、俺が戦うのはあくまで日常を取り戻すためだよ。ただの吸血鬼になってたまるかっての!」
時を同じくして、傍で共に居た八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)も、衝撃で目を見張りながら英雄と対立していた。
表情が悲しげに曇る英雄は、腰まで届くような長い髪をなびかせ、瞳の色も眼差しも冷たく、零れる吐息は冷やりと氷の音がした。
その姿は息を飲んでしまうほど恐ろしくも美しい――神秘的な凍気を纏った雪女。
溢れだした悲しみが、彼女の満たされない心を凍らせているようだった。
「私には分かります。だって貴女は、私だから」
詩織は英雄を見つめながら、心が切ない気持ちになっていた。
なぜなら、詩織には英雄の胸の痛みが我が身のように分かってしまうのだから。
(「貴女は、『愛した人からは愛されない』『大切な人は皆私から離れていく』ことに絶望した私、なんですね…」)
今まで芽生えた片想いの恋は、叶った試しはなかった。
大学生になってから告白されて付き合った彼氏とは、自然と離れていってしまった。
それに青春時代を共に過ごした天文部の仲間とも、なかなか再会が叶わないままで。
そしてすぐ傍に居る白夜の方へと視線を注いだ詩織は、胸が締め付けられて切なくなっていく。
……彼は、大切な人。
けれどもしも想いを伝えたとしたら、今の関係が壊れるのではないかと怖くなって。
だからこそ本当の気持ちを告げるなんて、出来ないままだったから。
(「人を愛する気持ちは、どうしてこんなにも苦しいのでしょう。愛も、恋も、寂しくて堪らない。――でも!猟兵になって出会った今の仲間達も大切だから。過去や未来に囚われるより、今を生きたい!」)
前を向いて見据えた詩織の眼には、温かな愛が滲む。
そして胸元に添えていた手に力が入り、心に暖かさが浸透していく。
詩織には、詩織を先生と慕う生徒達が居る。
月や星を愛して、天体観測を楽しむ仲間が居る。
そんな皆からの愛と、皆への愛が、敵と立ち向かう勇気を詩織にくれた。
「八坂、俺らあんな化け物じゃねえよな?」
「はい、私達の力は大切なものを守るためにあるんですから…!」
――|悲しい未来の可能性《英雄》に負けたりなんかしない!
それぞれが大切にしている想いを胸に抱きながら、二人の叫ぶ声が同時に重なった。
「「|起動《イグニッション》!」」
白夜は、赤く染まった三日月型の刃を持つ大鎌を握り締めた。
詩織は、髪を解いて、瞳が青に染まり、白い着物を身に纏って武装する。
そして無数の触手が発生する戦場を見つめながら、2人は一緒に立ち向かうのだった。
「行くぞ、八坂!」
「はい!」
白夜は詩織よりも前に出ると、身の丈程の長さがある大鎌を操って黒の触手を薙ぎ払った。
更に襲い掛かってくる英雄の姿も視界に入り、弾き飛ばす為に闇のオーラを放つ。
だが、白夜は目を見開いた。
赤い大鎌で大きく振った英雄の一撃が、闇のオーラに直撃した瞬間、破られてしまいそうになった。
なんとかこの場は凌ぎながらも冷や汗を垂らし、彼の強さを思い知ることとなる。
そして、それは詩織の身にも起こる。
氷のオーラを身に纏って結界を展開し、先制を弾き返していたが、その一方で術が破られてしまう危うさを感じてしまっていた。
英雄とは未来の可能性の姿である。
それはつまり、今の自分よりも強く、格上であることを暗に意味していた。
「そんな……相手がこんなに強いなんて。」
詩織が息を飲みつつ、絶望感を味わって落ち込んでいた。
一方で緊張感が高まっている自分達とは対照的に、英雄は余裕すら見受けられていた。
そして閻魔王によって変貌させられた街並みが視界に入って、心臓の鼓動が速くなっていく。
街は闇に飲まれ、既にもう数えきれない程の人々の命と日常が奪い尽くされてしまっている。
『|闇の大穴《キリング・フィールド》』を間近で目視しつつ、敵を睨みつけながら並々ならぬ覚悟で打ち破ろうとしたのが白夜だった。
「世界救うとか柄じゃないし、ほんとは使いたくねえけど……!」
――お前を葬るためなら多少寿命を削ってもいい!
敵を赦すつもりはなく、白夜は真の力を解き放った。
すると貴種ヴァンパイアの血が騒いで、夜闇に包まれた世界の中、白夜の叫びが響き渡る。
「白夜さん……!」
詩織は、彼が真の姿へと変身するのを見て動揺を隠せなかった。
なぜなら彼が真の姿となった時、それは、戦闘能力が爆発的に増大する代わりに寿命を削ることを意味するのだと知っていたから。
それでもあえて真の姿に変身することを選んだ白夜。
閻魔王や英雄、そして詩織に対しても宣言する。
「この姿になったってちゃんと戻れるって証明してやるよ」
白夜が変貌する姿は英雄とよく似た姿だった。
赤い瞳に蝙蝠の翼を生やした吸血鬼そのもの――だがしかし、妖しく輝いている赤い瞳の奥には、彼の優しさと平穏な生活を守りたい心が滲んでいた。
(「あれが、白夜さんの真の姿…」)
詩織は、白夜の真の姿を見るのは初めてだった。強い緊迫で不安になりながら、息を飲んで見つめる。
本当はなりたくない姿だっただろう。けれど彼は敵を倒す為に真の力を解放した。
白夜の想いを受け止め、尊重したい。だがその一方で、彼の命が削られていくのは耐え難くて。
頭は彼の事でいっぱいだった。そして詩織自身も覚悟する。
――一刻も早く、戦闘を終わらせるため。
今ここで、自身も真の力を解き放つと決めた瞬間、瞳の青が益々雪の煌めきを眩くして、英雄とよく似た雪女の姿へと変貌するのだった。
「寿命を削らせるなんてさせません」
大切な人の命を守る為。
解き放つそのUCの名は――|月煌絶零・永劫《アブソリュートルナ・アイオーン》。
隙を見て氷の結界を解いた瞬間、自身の最大の魔力で青白い月光を生成した。
その光は、神をも殺す光。
全てを凍らせ、眩き月光の帯を放つ魔法。
「私の持てる力の全てで、貴女を打ち破ります――!」
そしてこの一撃で決着をつけようと全てを掛けるために、己の限界を超えて放つ全力魔法の力の源となるのは、彼を想う|愛《・》だった。
そしてその大きな愛を見つめていた英雄は、凍えていた瞳に優しい光が滲む。
なぜ詩織がそこまでするのか。英雄は、まるで我が身のように感じていた。
(『――だって貴女は、私だから』)
そして自身に目掛けて直進する月光を、佇みながら見据えて。
そして自ら受け入れるように光を受け入れ、微笑みを浮かべる。
――貴女は見失わないで、貴女の大切な愛を。
愛によって一際美しく溢れる圧倒的な光と共に、英雄は幻のように消えてゆく。
更に同じ頃、白夜も大鎌を全力で振り回し、英雄へと斬りかかっていた。
その斬撃には己の命を掛けて爆発的に増大した力により、全てを切り裂く力が込められていた。
「これで終わりだ――――――!」
英雄は切断され、目を見張る。まさか、と言いたげな目付きで後退っていき、白夜を見つめながら手を伸ばした。
だが勿論、白夜が英雄に情けをかける筈もなく。
「俺は平穏な生活を送りたいんだ。身も心も吸血鬼になった自分なんて、もう二度と見たくもねえ」
英雄は白夜への敗北を認めるように瞼を閉じた。そして白夜に見届けられながら、そのまま消滅するのだった。
「残るは|閻魔王《あいつ》か。あともう一息ってところか?」
「そうですね。決着を着けてしまいましょう」
白夜と詩織は、力を合わせながら閻魔王を同時に攻撃する。
すると断末魔の叫びが響き渡った。
そして街に閻魔王の姿が消え去ると共に、二人も真の姿から元の姿へと戻っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵