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第二次聖杯戦争㉒〜せかいをこわすあいのうた

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #聖杯剣揺籠の君

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 ゆりゆりは、なにをしようとしていたのでしょうか。
 なにかとてもとてもつよいおもいがあったはずなのです。たぶん、それがあったからゆりゆりはふぉーみゅらだったはずなのです。

 ……でも、おもいだせません。

 せいえきとあいえきとたんじゅうのかわりに、「せいはい」にささげてしまったから。
 あたたかいおもいでも、どきどきしたきおくも、ぜんぶ、ぜんぶ、ささげてしまったから。

 なにをしようとしていたのか、なにがほしかったのか、わからなくなってしまいました。
 それなら、しんぷるにいきましょう。

 「せいはい」にぜんぶをささげたゆりゆりはせいはいで、「せいはい」はゆりゆりです。みんなをえっちにして、えっちないのちを|ゆりゆり《せいはい》にそそいで、ぜんぶをゆりゆりにして。

 ゆりゆりは、さいきょうに、なります。



「お疲れさまです。今回はイチゴチョコクレープにしました。食べながらで大丈夫ですよ」

 神塚・深雪(光紡ぐ|麟姫《りんき》・f35268)が、一同を迎える。一旦思い出してしまった|銀の雨降る時代《学生時代》の習慣は自然と出るようで、用意していたクレープを順に手渡していく。

「皆さんの頑張りで、月半ばにして戦場をほぼ制圧。流石です」

 深雪はそう言うと、金沢市街の地図を広げる。

「最後に待ち受けるオブリビオン・フォーミュラである「揺籠の君」は、この世界に残存していたメガリス「聖杯」の自分の全てを捧げてることで「聖杯剣揺籠の君」となり、金沢大学の連絡橋、アカンサスインターフェイスに居ます」

 聖杯の力で己の力を強めた揺籠の君は、アカンサスインターフェイスを中心に、生あるものたちを原初の欲に堕とし、その命を贄として更に力をつけようとしている。

「――と、いうのが現状なのですが、私が見た状況は少し違っています」

 アカンサスインターフェイスであることは間違いないのだが、その周囲は原初の欲望に塗り潰された空間ではなく、静謐な水晶の宮殿。そこで待ち受けるのは、三つの武器を携える「聖杯剣揺籠の君」。

 あらゆる物質を引き寄せる権能を持つ黄金の篭手「神の左手」。
 貫かれたものに宇宙の終焉まで癒える事のない毒を注ぐ「リリスの槍」。
 射程距離の概念が無く、ユーベルコードを全て喰らい奪う「聖杯剣」。
 これらは聖杯の力の恩恵を受けており、猟兵達に先んじて攻撃してくるのだという。

「見たものと現状に差異があろうとも、「揺籠の君」を倒さなければならないのは、変わりません」

 それに、万一手遅れになった場合は、三日程でこの世界は「揺籠の君」の贄としてその身を満たす力となり果てる。そしてそれは、「揺籠の君」は他の世界にも及ぶことになるだろう。

「この戦いさえ制すれば、|猟兵《わたしたち》の、勝ちです。厳しい戦いになるとは思いますが、宜しくお願いします」

 深雪は一同を見回し、クレープが食べ終わっていることを確認する。

「包み紙は私が頂きますから、食べ終わった方から順番にお送りしますね」

 そう言うと、グリモアの力を展開させ、順番に送り出していった。


白神 みや
 お世話になります、|白神《しらかみ》です。
 書きたいなって思ったシリーズその3、かつ、白神の第二次聖杯戦争最終戦になります。
 もしよろしければ、お付き合いください。

 『聖杯剣揺籠の君』との最終決戦です。
 彼女のユーベルコードによる先制攻撃と、手にする聖杯に強化された三つの武器への対抗策を立てる事がプレイングボーナスとなります。

●お願い
 MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
 先行でだしている槍男および分かつさんシナリオ完結後にプレイング受付となります。番号順です。
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第1章 ボス戦 『聖杯剣揺籠の君』

POW   :    うずまくいんよく
【神の左手】による近接攻撃の軌跡上に【いんよくのたつまき】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
SPD   :    せいはいうぇぽんず
【あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」】【癒える事なき毒を注ぐ「リリスの槍」】【対象のユーベルコード全てを奪う「聖杯剣」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    みだらなひとみ
【揺籠の君の淫靡な眼差し】が命中した部位に【淫欲に満ちた思念】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●其の「愛」は、世界を蝕み壊す
 真白な空間で、その女性はその肢体に似合わぬ幼い表情で、猟兵達を見た。

「りょうへい、ですか」

 その口から零れる言葉も、その表情と同じく幼い声音。なのに、酷く違和感があるのは、らしからぬ熱っぽい吐息を纏うからか。

「ゆりゆりと、えっちなことをしにきましたか?」

 首を傾げながら、蕩け咲くような笑みを浮かべた後、すっと纏う空気が変わる。

「いえ、ちがいますね。ちがう。あなたたちは」

 身体を震わせながら零す言葉は、猟兵に問う言葉ではなく、自問の言葉。

「おまえたちは」

 そうして向ける目も、変わらず幼さと、欲に蕩けたような熱を帯びているのは変わらない。変わらないのに、違うと、何かが警鐘を鳴らす。それと平行して、周囲の景色が微かな音と共に変わっていく。真白な欲の空間から、無機質で静謐な水晶の宮殿へ。

「|ゆりゆり《わたし》を、ころしにきたのですね」
鈴乃宮・影華
「ころしにきた」……まぁ、そうですね
かつてもこれからも、貴女の様な存在に対し、|私《生命使い》がする事はきっと変わらない
「――|起動《イグニッション》」
さぁ、戦争を終わらせましょう

先制の「左手」に引き寄せられるのは即死ではないので許容範囲として、「槍」と「剣」については
E.N.M.Aが操作する『ミーレス』の背中に隠され庇われる事で、一瞬だけなら凌げるかと
先制の一瞬をやり過ごせれば、指定UCを起動できます
「皆、行先はあの場所だよ!」
『伍光』から照射する光線、ゆりゆりに当てれば攻撃の軌道をずらせるかもですが
何も無い空へと私を「落とす」重力を発生させる事もできる、つまり移動できるというイメージが作れる
ならば引き寄せの範囲から、「槍」で狙われた一点から、「剣」で斬られる直線から――ゆりゆりが攻撃しようとした場所から一瞬で離れる事が可能です
そしてその逆――至近距離へ一瞬で移動し、黒の葬華で斬りつける事もできます

「鎌倉で友達が待ってるんです――貴女に|愛《殺》されてる暇は有りません」




「ころしにきた……まぁ、そうですね」

 鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は、今は水晶宮殿の大広間と化した空間に立つリリスの女王の成れの果てを見つめながら呟いた。

「ゆりゆりは、さいきょうをめざすんです。それをじゃまするのなら。ころしにきたのなら。|せいはい《わたし》は|ゆりゆり《わたし》をまもらなければならないのです」

 その身は未だ原初の欲の熾火に震えている。だが、それまでの、ただただ、周囲で欲に溺れ散った命を飲み干し、己の欲のままに貪る様と違って見えるのは、揺籠の君という残滓ではなく、捧げ注がれた聖杯の防衛機構が意思となり替わってその身体を動かしているが故なのか。

「かつてもこれからも、貴女の様な存在に対し、|私《生命使い》がする事はきっと変わらない」
「せいめいつかい……のうりょくしゃ。きっとおいしく|ゆりゆり《わたし》のちからになってくれたでしょうけど」

 目の前の敵が何を言おうとも、何をしてこようとしても、影華がやるべきことは決まっている。

「――|起動《イグニッション》」

 いつも通り、カードを手に言葉紡いで、武器を携え、対峙する。

「さぁ、戦争を終わらせましょう」



「ころしにきたのであれば、|せいはい《わたし》はぜんりょくで|ゆりゆり《わたし》をまもるのです」

 そう言うと、|揺籠の君《聖杯》は影華へと手を差し伸べる。その差し伸べた手から影華に目掛け風が吹く。それはこの水晶宮殿の外で吹き荒び、生命を原初の欲を貪る贄へと貶める風。

「E.N.M.A。ミーレスの操作はお願いね」
『オッケー! 任せて』

 その言葉と共に、風を受け止めたのは体格の良い黒服のカタチをした護衛端末。影華が所持するAI、E.N.M.Aが操作をするそれらが、風を受け止め、廃材等の素材へと戻る。それらを遮蔽物として、影華は|リリスの女王の成れの果て《堕ちた聖杯》へ機巧の刃の光を放つ。

「皆、行先はあの場所だよ! 私を連れて行って!」

 影華は機巧の刃の光による重力操作で空へと「落ち」ながら、己の生命を代償に黒燐蟲を生み出し、その身を委ねる。その黒燐蟲は影華が望む先へと跳躍させる。すなわち、|聖杯剣揺籠の君《ゆりゆり》の、その懐へ。

「鎌倉で友達が待ってるんです」

 その手にするのは、大切な友から剣技の手ほどきを受けるために鍛えた、友の二つ名を借りた魔剣。猟兵ではない彼女は、今も鎌倉で影華の無事を信じて待っている。だから。

「――貴女に|愛《殺》されてる暇は有りません」

 拒絶の言葉と共に、剣閃が走った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
白夜さん(f37728)と。

記憶も心もないなんて、少し悲しいですね…
揺籠の君ほどの強大なリリスがそこまでしてでも壊したい骸の海って一体…? 

白夜さんとの連携を意識して動きます。

特に気をつけるべきはリリスの槍と聖杯剣ですね。当たったらその時点で詰みですから。
可能なら白夜さんの霧に私も紛れることで槍と聖杯剣の攻撃を躱せればと。
これまでの【戦闘知識】を活かして【第六感】で攻撃手段を予測、武器の軌道を【見切り】全力で回避。
どうしても避けきれない場合は【早業】で【結界術】展開。氷の壁を作り防御。


神の左手による引き寄せには抵抗せず、至近距離でキノコ帽子を叩き毒煙を発生させ【毒使い】で毒を吸い込ませます。
一瞬でも隙を作れれば十分です。

毒なり白夜さんの攻撃なりで連続攻撃が止まった隙を見逃さず【リミッター解除】腰まで届く長い髪に青い瞳、純白の着物を纏う真の姿に。そのまま【全力魔法】を込めた指定UCを放ちます。
貴女はたしかに強い、でも…記憶も心も失くした貴女に、譲れない想いを持って戦う猟兵は倒せません。


鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。

八坂との連携を意識して動く

フォーミュラのゆりゆりを倒すのが当面の目標ではあったけど。
あいつとんでもないチート武器手にいれやがって…
骸の海で何があったんだか。


とにかくリリスの槍と聖杯剣だけは絶対にくらうわけにいかねーな。
ブロッケンの原初の霧で【天候操作】、周囲に霧を発生させ霧が見せる幻覚で【残像】を作り囮にする他、これまでの【戦闘知識】から【第六感】で攻撃を予測し【気合い】で回避。
攻撃を避けきれない場合は大鎌を旋回させ攻防一体の構えを取り【武器受け】、闇のオーラを展開し【オーラ防御】で防ぐ。

霧はうずまくいんよくで消されるかもだけどむしろそれが狙い。引き寄せはあえて抵抗せず、間合いに入ったところで指定UC発動、紅い瞳に蝙蝠の翼を生やした真の姿に変身。
この姿にはなりたくねえけどお前を倒すためだ!
UC効果で爆発的に増大した戦闘力をもって【斬撃波】を連続で放ち意識をこちらに向けさせ八坂のUC発動に繫げる。
手段はいただけねえけど、骸の海ぶっ壊すってとこだけは覚えといてやるよ。




「記憶も心もないなんて……」

 水晶の広間に立つ|揺籠の君《堕ちた聖杯》と相対した八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)は悲しげにそう零した。詩織はかつて銀の雨降る時代を駆け抜けた能力者の一人だ。それ故に、かつての揺籠の君の強大さも知っている。だからこそ、彼女が何故骸の海を壊すことを望むのか知りたいとさえ思い、ここまでやってきた。

「あいつとんでもないチート武器手にいれやがって……」

 その傍らに立つ鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)もまた、銀の雨降る時代を、オブリビオンとなる前の揺籠の君との戦いを経験した者。オブリビオン・フォーミュラである揺籠の君を倒す事を考えこの地へ、後輩である詩織と共に赴いたのだ。

「ふたり、ですか」

 二人の知識と記憶にある変わらない面差しだが、どこか静謐な表情を浮かべる揺籠の君が、二人を見つめる。

「|ゆりゆり《わたし》なら、きっといっしょにおいしくいただいたでしょう。
 でも、|せいはい《わたし》は|ゆりゆり《わたし》を「さいきょう」にするために、あなたたちのいのちがほしいんです」

 武器を構え対峙する二人に向け、|揺籠の君《堕ちた聖杯》が囁くような声で武器を持たぬ手を差し伸べて囁く。対峙する距離は離れているにも関わらず、その声はまるで二人の傍元で囁かれたように、はっきりと届いた。欲に蕩けた吐息がその耳に触れたかのような錯覚すら覚え、互いに眉を顰めた。

「骸の海で何があったかはしらねぇが」
「この世界を、好きにさせるわけにはいきません!」

 今此処にいるのは、オブリビオン・フォーミュラ。揺籠の君の姿をしているが、その身を動かしているのは堕ちた聖杯であり、この世界を滅ぼさんとする存在。
 それと相対する二人は猟兵。世界を骸の海とオブリビオンより護るため、世界に選ばれた存在。
 故に二人はその手に携えた武器を構える。
 
「……|せいはい《わたし》は|ゆりゆり《わたし》をころすものから|ゆりゆり《わたし》をまもらなければ」

 武器を向けられた女が、その言葉と共に手にした武器を掲げ、その穂先を二人に向ける。嘗て聖杯にその身を委ねた男が手にしていた槍と似た姿をしていながらリリスの毒蛇を纏うそれは、傷付けたものに猛毒を注ぐ槍。それが無造作に振るわれた。
 とはいえ、能力者として猟兵として戦いを積んでここに立つ二人に比べれば、武器を持つ経験も、それを以て戦うという経験も、遥かに劣る。

(とにかくリリスの槍と聖杯剣だけは絶対にくらうわけにいかねーな)

 白夜はブロッケンの力を利用し、濃霧を展開させた。視界を遮られた女が、勢いでよろめきながら武器を振り抜いて霧を裂いた。
 そのまま続いた槍や剣での連撃も、武器の重さに振り回されるような大振りな動きで、経験を積み重ねてきた二人であれば避ける事は容易いものだった。
 それでも、経験則に外れた攻撃が、二人の動きを掻い潜って襲い掛かってきたが、詩織の氷の防壁が受け止め、白夜の大鎌が受け流していなしていく。

「く……っ。やっぱり、ひとすじなわではいかないですね」

 攻めあぐめたのか、女が黄金の籠手に護られる左手を差し出した。その手が、手招くように揺れる。
 その動きに呼応するように空気が身体を撫でたような感覚がした。ぞわりとした総毛立つ感覚と共に、白夜の生み出した霧が押し退けられ、二人の意思とは関係なく空気が二人の身体を押し動かす。

「|ゆりゆり《わたし》をまもって、|ゆりゆり《わたし》をつよくする。いっせきにちょうです」

 二人の身体を抱き締めるようにその手を伸ばされた、その瞬間。詩織が手にしていたキノコ傘の帽子を一叩きする。ぼふりと毒の煙が女の顔に向けて吹き出した。

「……ど、く?!」

 女が狼狽えたその瞬間こそ、二人が虎視眈々と待ち受けていたタイミング。二人は一瞬視線を交わすと、その身の枷を解き放つ。
 氷雪に包まれた詩織は、そのルーツである雪女らしい純白の着物姿に、普段はかっちりと結った髪を風に躍らせる。
 その傍らの白夜もまた、血風を纏い、その身に眠らせる貴種ヴァンパイアの力と姿を目覚めさせる。

「この姿にはなりたくねえけどお前を倒すためだ!」

 白夜はその背に蝙蝠の翼をはためかせ、武器を振るい斬撃を刃と成す。幾重にも放たれたそれが確かに女の身体へ傷を刻む。

「貴女はたしかに強い」

 その斬撃は続く詩織の攻撃の為の標。女が白夜の攻撃に対処している間に、詩織のユーベルコードの発動準備は終わっていた。

「『神をも殺す、凍てつく月光をくらいなさい』」

 その言葉と共に、宙に座す月が青白く煌めく。そこから差す月光の帯がリリスの女王のカタチをした聖杯を真っ直ぐに貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
【花護】

聖杯に「想い」を捧げ何をしたかったか忘れてしまったゆりゆり
敵だけれど、それが哀しい

「今の貴方は、もう揺籠の君ではなく。強さのみ求める化物」
この世界の平穏の為に倒す!
真の姿…本来の4歳児に戻り全力放出!

みだらなひとみは可能な限り【第六感】回避!
操作される位なら爆破結構っ!
【オーラ防御】と【激痛耐性】で出来るだけ食い止め!
「最強目指すなんていう、安っぽい悪役に負けるなんて、私の矜持が許さないんですっ!」

聖杯の三武器への対応は…
神の左手→引き寄せられたら、あえて乗り至近距離でUC発動
リリスの槍→【第六感】回避、無理なら【医術】で応急処置し【毒耐性】
聖杯剣→【第六感】回避、【魔力溜め】【高速詠唱】【全力魔法】【多重詠唱】を組み合わせ、何回奪われても諦めない!

このメンバーが揃っていて、負けるはずが…ないっ
「何より勝ってしあわせになるという『欲望』がある限り、それを失った貴方に負ける道理は…ないっ!」

寿命削ってでも、創生樹刀連発!
切って斬って伐って!
「御機嫌よう、然様なら…せめて良い終末を」


凶月・陸井
【花護】

真の姿:「護」の字を背負った、大人になった頃の全盛期の能力者

確かにこれは皆の言う通りだ
どうして今そうしているのかという疑問も
哀しくて哀れと感じる程の様子も
今の揺籠の君の様子を見ていたら思わず考える
でもだからこそ、此処で止めないといけない
そして止められるのは俺達だけだから
「気になる事も、考える事もあるけど…まずは倒そう」

戦闘開始と同時に前へ出る
後衛の仲間達に攻撃が向かないようにと
突出した自分へ意識を向けさせれば
皆が回避しやすくなると踏んで
それに猛攻を凌ぐのも傷を負うのも慣れてる
「さぁ…終わらせに来たぞ」

引き寄せは抗わずに近づく手間が省ける意識で
槍と剣は覚悟・武器受け・見切りを使用して寸前で回避
せいはいうぇぽんずもどれだけの連続攻撃であろうと
集中を切らさずにギリギリで回避し続ける
「っと、今のは危なかった」

敵の猛攻が止まったら俺達のターンだ
【戦文字「死龍葬弾」】を使用し
手元で文字を書き上げて装填
皆の攻撃に合わせて揺籠の君の懐へ飛び込み
零距離で必殺の弾丸を放つ
「俺達は、絶対に負けない」


神臣・薙人
【花護】

全てを忘れてしまったのなら
ここで終わりにしましょう
揺籠の君

開戦と同時に真の姿へ変化
白燐蟲を呼び出し
眼差しを自分や仲間が受けないよう
光で撹乱を命じます
自分でも周囲に散開して
眼差しが一点に集中しないよう留意
部位の操作には全力で抵抗
爆破された場合は速やかにUCで治療します

その後は白燐想送歌を使用
自分や仲間の負傷時
もしくは武器封じが解除された時は
その都度再使用します
治療範囲から仲間が外れないよう
立ち位置は調整します

治療や武器封じの必要が無い時は
白燐蟲で攻撃
光による撹乱も継続します
頼みましたよ残花

リリスの槍
聖杯剣には警戒
動きの兆候が見られた場合は
仲間に注意を喚起すると共に
白燐蟲に腕や手に噛み付かせて
狙いを逸らします
少しでも回避等の助けになれば

神の左手には抵抗せず
接近して白燐蟲による攻撃を継続
引き寄せが止まれば
再度距離を取って攻撃します

全てを聖杯に捧げてしまった時点で
もう貴方はかつての貴方ではない
骸の海を憎む理由すら分からないのなら
ここであるべき場所へ還しましょう
二度と戻って来られないように


葛城・時人
【花護】
真の姿:全盛の能力者・大人・錫杖装備

葉薊のトゲの上に座すこいつに聞きたい事があった
意味ない事かも知れないけど
前の戦いで聞いた『アーカイブ』という言葉も気になってる

「なあ、お前が忘れた中身は…聖杯に入ってるのか?」

保持されてても撃破しかないのは自明、だけど
だけど何時か見る事が出来るなら
「お前が何でこんな事したかが判るのかも、な」

言い仲間の皆と即戦闘態勢を取り
真の姿を解放し全技能をフル活用対応
「最強には決してならせない…俺達が居るからな!」

引き寄せは基本抗わず
槍と剣は空中機動、結界術などで躱す

「全員で絶対欠けず…あいつの所まで往く!」

もし皆に槍や剣が向かえば技能でもかばい弾いて見せる
ククルカン達にも号令
「頼む!皆を護ってくれ!」
神臣の残花ちゃんとも可能な限り呼応

どれ程の猛攻でも、桜吹雪と白燐蟲の群れ、全員の力全てで
「絶対に終わらせる!」

至近に来たら白燐剣光大神楽詠唱
瞳は焼いた!これで視認攻撃は不可能!
「後は頼む!」
高速・多重詠唱で二撃、三撃目も叩き込む
「人をお前の餌にさせはしない!」




 彼等が広間へたどり着いた時、水晶宮殿の主は玉座にしどけなく座していた。
 女王たるものの威厳のように見えなくもないが、花護の猟兵達には、その姿は異なって見えた。

 其々に想いを抱いて無言で対峙していた中、口を開いたのは葛城・時人(光望護花・f35294)だった。

「なあ、お前が忘れた中身は……聖杯に入ってるのか?」
「なかみ、ですか?」

 その言葉に女は首を傾げる。その声音も、仕草も、彼が知る「揺籠の君」のそれだった。しかし、時人はこの戦争の最中に遭遇した、闇の淑女から耳にした言葉が気にかかっていた。
 自分達は、目の前の|揺籠の君《聖杯》のように、ただ戦う為の機構に成り果てているわけではないのだから。分かり合えなくても、意味の無い事だったとしても、言葉を重ねるのは無駄ではないと思う心が、言葉を重ねようとする。

「そうだ。お前は……いや、お前達は」
「わたしはせいはいであり、ゆりゆりです。
 |ゆりゆり《わたし》は|せいはい《わたし》にめいじました。|ゆりゆり《わたし》のかわりに、すべてのせかいのためになけと」

 時人の言葉を遮るように女は玉座から音もなく立ち上がり、語る。

「今の貴方は、もう揺籠の君ではなく。強さのみ求める化物……なのですね」
「そうして全てを忘れてしまったのなら、ここで終わりにしましょう」

 遮られてもなお、言葉を繋ごうとした時人の前に、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)と神臣・薙人(落花幻夢・f35429)が立つ。

「そうだな。気になる事も、考える事もあるけど……まずは倒そう」

 更に、時人の傍らに凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)が立つ。

「……そう、だな」

 時人の抱くこの戦いの裏に根を張る疑念。全てを聖杯に捧げてしまった事を哀しいと思うキアラの想い。それらを察し語る陸井の言葉は、疑念の根を手繰ろうとする時人の心に染み入る。故に、時人は絞り出すような声と共に、手にした錫杖を握りなおすと、倒すべき相手をはっきりと見据える。

「|せいはい《わたし》は|ゆりゆり《わたし》をがいするものをはいじょします。
 そうして|せいはい《わたし》をみたしなさい、りょうへい」

 |揺籠の君《聖杯》のその言葉と共に、四色の風が逆巻く。桜花纏う風が、緑葉纏う風が、白光纏う風が、水纏う風が、踊る。それは、花護の猟兵達が其々に枷を解き放った、力の奔流。|桜舞う幻朧《サクラミラージュ》で生まれなおした姿により近くなった薙人、本来の年相応の幼子の姿に還ったキアラ。そして、巻き戻った時を在るべき様に戻した時人と陸井。
 この水晶宮殿での最後の戦いが、始まる。



「さあ、|ゆりゆり《わたし》のちからになりなさい」

 |揺籠の君《聖杯》がそう言いながら、猟兵達を手招くように手を差し伸べる。

「最強には決してならせない……俺達が居るからな!」

 拒絶の意を込めて時人が声をあげると、|白羽の白燐蟲《ククルカン》が同意をするように鳴き声をあげながら舞う。煌きを纏うように見えるのは、薙人の白燐蟲、残花が主の意に従って、|白羽の白燐蟲《ククルカン》と連れ舞うからだ。
 輝き纏う白燐蟲の舞は、|揺籠の君《聖杯》の視界を妨げる。

「ひかりが……でも、|せいはい《わたし》はしせんだけではないですから」

 白い燐光に視界を灼かれながらも|揺籠の君《聖杯》は黄金の籠手を纏う左手を掲げる。その手が差し伸べられた先に割り込むように前に出たのは、陸井。そのまま差し伸べられた手に手繰られるようにその身体が|揺籠の君《聖杯》の方へと滑る。

「うぇぽんず。どくをそそいで、ちからをうばいなさい」

 その手にある、リリスの毒蛇を纏う槍が無造作に振るわれる。銀の雨降る時を駆け抜け、この世界がグリモアの導きと繋がれた頃から猟兵として戦ってきた陸井である。傷を負う事も、それによる影響も覚悟の上で、短刀銃で受け止め、いなす。何より、陸井は独りで戦っているのではない。その背後に立つ仲間達が居る。

「……うぇぽんず?」

 槍に続き振るわれるはずだった大剣が動かない事に、|揺籠の君《聖杯》が訝しむ。その視界に煌めく光を再び認識すると共に、違和感に気付く。

「うた……」

 |揺籠の君《聖杯》が耳にしたのは、薙人が歌う白燐想送歌。さながら大剣そのものが燐光を放っているかのように、その歌に力を得た白燐蟲が大剣に纏わりついている。

(……頼みましたよ、残花)

 癒えぬ猛毒を注ぐ槍も厄介だが、ユーベルコードを喰らう大剣は此方の力を大幅に削ぎかねない。万一、薙人の力を得た残花の力を振り払ってくるならば、その予兆を見逃すまいと見据えながら薙人は歌う。

「最強目指すなんていう、安っぽい悪役に負けるなんて、私の矜持が許さないんですっ!」

 キアラが|揺籠の君《聖杯》に向けて叫ぶと共に手にした杖を振るう。

「『九つの世界内包せし宇宙樹よ、小さきヤドリギに御身が天地開闢時空道行の光を一欠け与え給え……唯一孤独な栄光なりとも、敵討つ力を我に!』」

 詠唱と共に紡ぎ編まれるのは、世界のはじまりの力。世界を創生する力を光の刃に変え、|揺籠の君《聖杯》へと向けて振り放つ。創生の光が|揺籠の君《聖杯》を穿ち貫くように爆発する。

「……せいめいのらちがいのちから。あなたたちを、ちからにできれば……!」

 爆風の向こうから|揺籠の君《聖杯》が、小さき猟兵を手中に収めんと手を伸ばす。

「何より勝ってしあわせになるという『欲望』がある限り、それを失った貴方に負ける道理は……ないっ!」

 その手に引き寄せられながらも、キアラは創生の力を幾重にも振るう。己の裡をチリチリと削られるような感覚を覚えるのは、己の|命《寿命》をも使い創生の刃を強化しているからなのだろう。

「人をお前の餌にさせはしない!」

 創生の力が起こす爆風を盾にして駆けた時人が、手にした|白羽の白燐蟲《ククルカン》が転じた光剣を振るう。剣そのものの刃と共に、剣舞のように振るわれる剣の軌跡をも|揺籠の君《聖杯》へと牙を向き、眩き軌跡がその視界を灼く。

「……後は頼む!」

 時人が声をかけた先には、キアラと時人の攻撃の間に自身のユーベルコードを装填した、陸井が居た。装填された戦文字は龍が四つ組み合わさった文字。画数の多い事で知られるその字は、画数が多い程強いという戦文字の性質と恩恵を受け、必殺の弾丸となり短刀銃の弾倉でその時を待つ。

「俺達は、絶対に負けない」

 静かに、はっきりと紡がれた言葉と共に、その|銃弾《戦文字》は解き放たれる。主の声音とは正反対とも思えるような四重の咆哮と共に、|銃弾《戦文字》は|揺籠の君《聖杯》を貫いた。

●斯くして歪な「愛」は否定される
 |揺籠の君《聖杯》の身体と水晶宮殿は少しづつ砂のように崩れていく。対する花護の猟兵達もその様を見守りながら、徐々にその姿が「今の」姿へと戻っていく。

「……|せいはい《わたし》が|ゆりゆり《わたし》としてここにいたなら」

 どう対峙し、どう応えたのか。揺籠の君が知った事実を彼等が知ったならば、彼等がどう応えたのか。それは、「もしも」の話であり、詮無い話である。起きてしまった事は戻らないのだ。

「全てを聖杯に捧げてしまった時点で、もう貴方はかつての貴方ではない」

 それ故に、零れ落ちたその悔恨とも疑問ともつかぬ言葉を薙人は否定した。起きた事を覆す事は出来ないからこそ、猟兵は|骸の海から滲みだす過去《オブリビオン》を骸の海へ還すのだ。

「……のうりょくしゃ、せかいをかえたものたち。りょうへい、いのちをこえたものたち……」

 その先に続く言葉は遺される事は無かった。水晶宮殿よりも先にその主が、砂塵となって虚空に溶ける。程なくこの水晶宮殿も主に続き虚空へと溶け消えるのだろう。宮殿が溶け消える前にと、猟兵達はこの地を後にする。
 その直前、時人は|揺籠の君《聖杯》が最後に立っていた場を振り返る。

(もしかしたら、何時かお前が何でこんな事したかが判るのかも、な……)

 声なき呟きに応えるものは無く。ただ、砂塵を纏う風だけが其処に在った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年03月26日


挿絵イラスト