銀河帝国攻略戦㉓~突破の一矢
●艦戦
「主砲解放――!」
艦長の指示により、戦艦の主砲が解き放たれる。
数分のエネルギーチャージを要するそれ。宇宙空間を横断する凄まじい速度で走った閃光は、あらゆる物質を分解する――はずだった。
実際、疵はつけた。数人の部隊であれば、通過できる程度の穴だが、攻撃は通るのだ。
だが――。
「く、修復が始まってる……」
「主砲はチャージ開始――しかし、次弾までにほぼ修復完了してしまうかと」
最早何度も体感したことだ。いくら撃てども、あの小さな穴しか開けられぬのなら、この戦艦だけで相手は倒せぬ。
せめてあの疵を広げる部隊さえ、或いは内部から破壊工作を行う人員がいれば。
思えど、今はこの戦線を維持するしかない。
帝国旗艦『インペリウム』を守る宇宙艦隊――『インペリウム護衛軍』は元より頑強。更にそれほどの修復力を備えているのであった。
●援護指令
即ち、インペリウム護衛軍を墜とす作戦ですわ、とジュマ・シュライク(多重人格者の死霊術士・f13211)は笑う。
「解放軍の戦艦だけでは、相手の艦艇を墜とすことができませんの。けれど、入口は作れる――そこへアナタ達を転送しますわ。アナタ達はそのまま侵入し、内部で指揮官を討ち取って頂戴」
猟兵が確かに指揮官を討ち取るというのなら、彼らもコア直通の入口を、気合いをいれて穿ってくれましてよ――ジュマはそう告げる。
道中の援護射撃は彼らに任せろ、ということだ。
つまり、猟兵達は『ただ指揮官を討ち取る』ことだけを考えればいい。
指揮官は一体。護衛もいない――とはいえ、大事な艦隊を任されている。強敵なのは言うまでもない。
「大事な一戦。宇宙の塵とならぬよう……くれぐれも、宜しくお願いしますわね」
黒塚婁
どうも、黒塚です。
戦場はボスのみが守っています。また、周囲に遮蔽物のない大部屋を想定しています。
道中は解放軍からの援護があり、簡単に突破できますので、皆様はボス戦のみに注力いただけます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
それでは、皆様の活躍を楽しみにしております!
第1章 ボス戦
『闇に堕ちたサイキッカー』
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POW : 3体のしもべ
自身が戦闘で瀕死になると【黒き四足獣と白き巨鳥、そして鋼の巨人】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : サイコスピア
【伸ばした腕】を向けた対象に、【サイキックエナジーで生み出した光の槍】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : ラプラスの鏡
【対象の背後】から【サイキックエナジーで生み出した光の鏡】を放ち、【鏡の中に閉じ込めること】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:おおやけさかな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠エルシー・ナイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リリト・オリジシン
汝の照らす光は、銀河帝国の行く末を照らすものなのであろうな
であれば、妾はその光を覆い隠し、喰ろうてやろう
怪力でもって振り回すは血染めの流星
遠心力を含めた一撃の重さ、容易く防げると思うでないぞ?
一撃、二撃と叩き込み、同時、その身体へと呪詛を叩き込んでやろう
サイキックの力が心に起因するのであれば、その心を蝕めば、攻撃にしても防御にしても、多少は違おう
心せよ。その恨み辛み、嘆きこそ、妾に捧げられしもの。そして、汝らの齎したものであると
敵の動きが鈍れば、ユーベルコードを乗せた本命の一撃を
その身より出でし僕ごと、纏めて喰らい、呑み干してやろうぞ
案ずるがよい
汝の罪もまた、妾が喰らうが故に
レガルタ・シャトーモーグ
護衛も無しで待ち構えているなんて、随分と余裕だな
…だが、そんな事は関係ない
俺たちの任務は、司令官を討ち取ること、だからな…
正面から飛び込んでも返り討ちにあうだけだ
一箇所に留まらぬように動きながら、敵の隙を探す
こちらに腕を向ける仕草をしたら即座に【オーラ防御】か【見切り】
多少の負傷は必要経費だ
問題ない
敵の攻撃に合わせて【カウンター】で一気に近づき「咎力封じ」で弱体化を狙う
上手くいっても深追いはせず、一旦距離を取り再度攻撃
【鎧無視攻撃】で背後から【暗殺】を仕掛ける
残念だったな
これで詰みだ
アルバ・アルフライラ
鉱石の体躯――成程、同胞か
…ふん、故に私が手心を加えるとでも?
オブリビオンに傅くというならば、私は貴様を屠る迄の事
描いた魔方陣よりジャバウォックを召喚
伸ばした腕が此方を捉えぬよう
翼竜の背に騎乗、戦場を飛び回る事で敵の撹乱を試みる
…あまり乗り心地は良くないが、贅沢は言ってられん
素早く動くでな、上手く魔術が当てられるかの懸念はあるが些事に過ぎぬ
叶う限りの広範囲へ魔術を行使すれば済むだけの事
なに、間違っても猟兵達に当てようなぞ考えてはおらん
高速の詠唱で畳み掛けてくれようぞ
他の猟兵に出来た隙を埋めるよう魔術を行使
叶うならば回避の手助けをしたりと
出来得る範囲の支援は惜しまぬ
(従者、敵以外には敬語で話す)
ジャハル・アルムリフ
硬そうなものばかりだな、此処は
船――要は馬から墜とせということか
近くに他猟兵が居る場合は連携も重視
鏡を砕く、攻撃で気を逸らす等
危機あらば支援行動を
通るには貴様が邪魔らしい
ただ削るだけでは厄介、ならば
【竜血咒】を用いて戦闘へ挑む
槍の穂先は第六感と見切りを併用し
可能な限り急所への攻撃を回避
出来なければ激痛耐性を以て耐えながら
柄持つ腕の内側へと素早く駆け、反撃の黒剣を
連続で斬り付ける事で早期の撃破も狙う
しもべの3体は
可能ならば一体を別個体へ蹴り飛ばし激突させ
隙が出来れば間を駆け抜けて、直接指揮官を狙ってみる
出来なければ防御を固めながらの持久戦
…情けない報告など出来ぬのでな
斯様な船が棺とは豪勢な話だな
リオ・フェンブロー
[POW]
漸く、此処まで辿り着きましたか
我らの反抗、その身に刻んで頂きましょう
全武装を展開し、戦闘を
私では貴方を瀕死に追い込める気はしませんが……
一斉発射にて派手にいきましょうか
中距離にて、武装を展開。砲撃による援護をメインに
当たらずとも少しでも敵の気を引き、
他の猟兵たちが攻撃に向かう隙を作れれば
なに、派手にやるのは得意ですから
空中戦にて相手となりましょう
3体のしもべが出現した際はそちらの対応を
傷を受けたところで気にはしない
この目が残れば十分
それに、今日は死ぬ日では無い
死んで守れるものと、生きているから守れるものの天秤がまだこちらに傾いている
全武装展開
落とします、貴方ごとこの艦艇を
アレンジ歓迎
火狸・さつま
コノf03130と連携
流石艦隊を任される指揮官
一筋縄ではいかぬ感じ…だろうか
燐火にて仔狐をけしかけつつ雷火でも攻撃
一点集中で当たらぬとなれば
敵周辺を逃げる隙間なくすように
もしくは目眩ましになるよう出来るだけ広範囲へ【範囲攻撃】
コノへの攻撃は割って入り【かばう】事により
その隙にコノの攻撃が通るように
攻撃を【見切り・オーラ防御】にて防ぎ
ダメージを【激痛耐性】で凌ぐ
コノが仕掛けやすいよう敵の攻撃往なしつつ
標的にされぬよう常に動く
見切りにて当たると思える攻撃が狐姿に変化する事で身を小さくし躱せるならば
とっさに狐姿に変化し即人姿に戻り攻撃を繰り出す
窮地に陥り、味方共々危ない場合【捨て身の一撃】を繰り出す
コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と
至ってシンプル、その分強敵って事ネ
……楽しみだコト
『高速詠唱』からの『2回攻撃』狙い、【彩雨】を全周囲から敵に向け降らせるネ
今は浅い傷でも、沢山つける事が目標
次いでたぬちゃんの攻撃を目眩ましに接近
もう一度自身と逆方向から【彩雨】降らし敵の目を攪乱
「柘榴」で斬り付け『生命力吸収』で態勢も維持しときたいトコ
だって食いでがありそうじゃナイ?
背後に鏡の気配察知したら【彩雨】を集中し撃ちこむ事で破壊試みる
しもべを召喚されたら牽制に【彩雨】を向かわせ
自身は「柘榴」にて本体への攻撃を継続
コレまで付けた、付けられた沢山の『傷口をえぐる』ように捩じ込んで
より大きなダメージ狙ってくヨ
萌庭・優樹
目標がハッキリしてるッてのはいいですね
難しいコト考えなくて済みます
おれは、複雑なおはなしはニガテだけれど……
そういうことなら力になれるはずですからっ
【シーブズ・ギャンビット】で勝負です
スピード勝負で『先制攻撃』狙い
あいつの隙を突いた『フェイント』!
"風"を纏った『属性攻撃』となれば幸い
何なら『2回攻撃』のチャンスも窺いましょう
速さには自信があります
それに――おれの友達である
この武器に秘められた動物達の力も
信じてますから
この一手、おれの腕と
おれの友達の名にかけて
見切らせたくはありません!
敵の攻撃は、とにかく回避に努めます
どこから射線が通るかの『見切り』や
勘に頼って『第六感』もお役に立てればいいな
●少年
後方では銃撃戦の音がする。解放軍は主砲で穴を穿った後――猟兵達が中枢に辿り着くまで、兵を割き、艦隊戦ではなく白兵戦に移っていた。
戦闘は続行しているが、猟兵を追ってくる兵はない。
中央は機械で埋め尽くされ――まるで石室だ。
その中央に場違いなほどにこやかな表情を浮かべた少年がいる。
「鉱石の体躯――成程、同胞か」
アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の言葉は冷たく響いた。
しかしその視線は親しみを覚えるどころか、侮蔑を隠さない。
それはおそらく、相手にしても同じ事。
くるり、くるりと槍型のフォースセイバーを回しながら、サイキッカーは猟兵達を値踏みするように見つめると、軽薄な笑みを浮かべる。
「こんなところまでご苦労様。でも、無駄足にしてやるよ」
傲慢な物言いは彼の在り方。才を認められた存在なれば。
「随分と余裕だな」
ぽつりと零したレガルタ・シャトーモーグ(屍魂の亡影・f04534)――この広い空間に、部下もおかず、複数の猟兵を前にしてもそう吐き捨てる相手を、彼は淡淡と見やる。
「邪魔だからね。一緒に消し飛ばしちゃったら、勿体ないだろ」
サイキッカーの物言いは変わらぬ。
うむうむ、と――そんな彼を敢えて認め、リリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)は頷いてみせる。
「汝の照らす光は、銀河帝国の行く末を照らすものなのであろうな――であれば、妾はその光を覆い隠し、喰ろうてやろう」
負けじと尊大に言い放ち、彼女は赤い瞳を輝かせながら、血染めの流星を振り上げる――先端の棘付き鉄球がゆらりと揺れた。
既にレガルタが部屋の奥へと駆っている。視界の端にそれを捉えつつリリトは武器を掲げた姿勢の儘、軽やかに踊った。
躍動する猟兵達の後ろに控え、アルバは仕込み杖を手繰る。描いた魔法陣の中心へ、こつりと弾けば。
「其は『災厄』」
風を巻き上げ、羽ばたく名状し難き黒の翼竜が現れる――既にアルバはその背に乗り、次なる魔術を編み始める。
それを背に、好戦的な笑みを湛え、リリトがサイキッカーへ正面から迫る。
「容易く防げると思うでないぞ?」
遠心力で加速した鉄球が頭部を狙う――彼はそれを光の槍で受け止めようとして――誘うような彼女の視線に気付き、取り止め、身を低くして躱す。
その機を逃さず、レガルタが切り返す。ダガーを放ち、背後から追撃狙うリリトを助ける。
しかし、両者の腹を光の槍が掠める。自身を軸にサイキッカーが回転し、振りほどく。
その空間に風が渦巻く。部屋全体を揺るがすような広範囲の魔法行使。
「……あまり乗り心地は良くないが、贅沢は言ってられん」
僅かに苦々しく眼下を見つめつつ、アルバは指先に力を籠める。ジャバウォックはあまりにも速く、細かな制御が効かぬのだ。
――猟兵達に隙はない。近距離を詰める二人に、部屋全体を制することも可能な一人。だが、サイキッカーは魔法の風を掻き消しながら、不敵な笑みを浮かべる。
「甘いよ」
言うなり、彼は腕を天へと差し向ける。
意図を読み、逃れるように翼竜は翼を返す。然し――広い中枢空間ではあるが、折り返しの際には僅かに詰まる――そこを狙われた。
させじとリリトとレガルタも仕掛けていくが、動きは見切ったとばかり、躱された。
強い光が収束し、槍が放たれる――。
そこへ。
「硬そうなものばかりだな、此処は」
黒剣を振るって、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)が飛び込んできた。
船――要は馬から墜とせということか、自身の感覚へ落とし込むよう、ひとりごち。
「纏え」
その全身に無数の呪紋が刻まれる――向上した身体能力により、まさしく瞬く間に距離を詰めると、無造作に斬り払う。
しかし――それだけで風が啼き、いくつかの機械が弾けた。それほどの剣風を繰る代償は命であるが。遥か先尽きるものと、今を比べるは無為。
サイキッカーは力を制御しきれず、光の槍は翼竜の尾を掠めて天井を貫いていった。
そのまま、ジャハルは畳み掛ける。
光の剣とちかいの剣閃が目にも留まらぬ速さで噛んでは離れる――幾度目か、互いに渾身の一振りを叩き合って、間合いの外へ退いた。
ほんの少しジャハルは天を仰ぎ――黒髪が遮って、その姿は確認できぬが。
「無茶をなさる」
「ふん、遅いわ」
静かに咎めれば、アルバは唇を笑みで歪めた。
新たなる闖入者の気配を察し、サイキッカーが入口へと向き合えば――次々と、猟兵達が飛び込み、仕掛けて来た。
「ちょいと遊ぼうか」
火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)が鋭い視線を敵へと送る先、ぽつ、ぽつと。愛らしい仔狐の形を成した狐火が浮かぶ。
「煌めくアメを、ご堪能あれ」
無機質な部屋に広がる青い燎原へ、降り注ぐは色彩変える水晶の針。
コノハ・ライゼ(空々・f03130)がきらりと薄氷の瞳を輝かせる。
対を成すような両者の攻撃へ、サイキッカーは光の槍で自身を守りながら、素早く後方へと駆ける。
更に、サイキックエナジーで生み出した光の鏡をコノハの背へと差し向ける。
それを許さぬよう、萌庭・優樹(はるごころ・f00028)がいつしか距離を詰めていた。風を纏い、風の如く、彼女は鋭く研がれたダガーを翻す。
一閃、返してもう一閃。応じるサイキッカーの心の乱れに乗じて、後方からの砲撃が精製されかけた鏡を砕く。
漸く、此処まで辿り着きましたか、穏やかに刻む言葉は空中から。
「我らの反抗、その身に刻んで頂きましょう」
漆黒のアームドフォートの砲口を次は敵へと差し向け、リオ・フェンブロー(鈍色の鷹・f14030)は微笑んだ。
取り囲まれた少年は、それでも表情から余裕を失わず。ひらひらと存外優雅に猟兵達を躱して見せた。
「流石艦隊を任される指揮官。一筋縄ではいかぬ感じ……だろうか」
首を傾げたさつまに、コノハはますます口の端を持ち上げた。
「至ってシンプル、その分強敵って事ネ……楽しみだコト」
「目標がハッキリしてるッてのはいいですね、難しいコト考えなくて済みます」
一度距離を取り直した優樹が低く構えて同意する。
「――落とします、貴方ごとこの艦艇を」
静かながら圧のあるリオの宣告に、サイキッカーは槍をくるりと回転させて再び笑った。
「解放軍どももお前らも……全部全部、壊してやるさ」
●応酬
正面からリリトが力で迫り、同じくジャハルが超然たる速度と膂力で押す。
予想も付かぬ動きで遠近構わず仕掛けるレガルタに、多彩な動きを織り交ぜながらも速さで刻みに掛かる優樹。
直接結ぶ彼らの攻撃をサイキッカーは拡大した光の槍で押さえ込む。
アルバがジャバウォックを駆りつつ魔術を落とし、対角から、リオが全武装を以て掃射する。
そして仔狐と青い炎を繰りながら、さつまが文様の拡がった尾から黒雷を発し、彼と五月雨に降る水晶の針を目眩ましに、コノハが柘榴を手に迫る。
繰る力と直接渡り合う刃、どちらが疵付けようが構わぬ――彼と、仲間達が仕掛ける起点となるならば。
「だって食いでがありそうじゃナイ?」
喜悦に深めた笑みと対照的に、サイキッカーの表情が歪んだ。
飛び散る朱の珠は己のもので、しかし剣が啜る命は相手のもの。
「この……!」
怒りの儘に、槍を振り回す。波濤の乱撃が、猟兵達の頬や腕に傷を刻んでいく。
やはり感情の昂ぶりが力となる――それが負の感情であらば、より強く。
忌々しいものよの、とリリトはひとりごち。己の血を無造作に拭う。
相手が戦艦の指揮官となるものの実力を持つ存在だと身に染みて実感していた。
これを打ち破るには――剣を高く掲げ、ジャハルが仕掛ける。
アルバの起こした風が、彼の背を押し、またサイキッカーの動きを阻む。
それでも振るってみせた光の刃が彼の肩を貫けど、黒い瞳はひたと相手を見つめ、姿勢に揺らぎはない。
いっそ前に槍を突き出したのが悪かった。少年の目前でジャハルは沈む。低い姿勢から右脇へと深く斬り込む。返し、二撃。強烈に斬り上げれば、鉱石の肌が砕けて飛散する。
ぐるりと取り巻く青火と虹色に色を変える水晶が畳み掛ける。
手枷が、片腕を括る。然し他は断ち切られた。レガルタは直ぐに飛び退いて、その間を優樹が埋めた。
畳み掛けようとアームドフォートの砲口を差し向けたリオが、暴風に吹き飛ばされた。
「――認めるかッ!」
顔をしかめつつ、吼えたサイキッカーの前に、三体のしもべ――黒き四足獣と白き巨鳥、そして鋼の巨人があった。呼びだされた瞬間、獣と巨人が至近の猟兵達を蹴散らし、巨鳥が風を起こして空中にあるものを吹き飛ばしたのだ。
ジャバウォックはその場で何とか踏みとどまったが、それが受ける負担はアルバにも還元される。
「大丈夫ですか」
ゆえに決して彼も壮健とは言えぬ状態ではあるが、リオを案じて声を掛ける。不意をつかれ壁に叩きつけられたリオは、ええ、と応え身を起こしたが――その額に一筋の朱が流れ、銀髪を汚している。
機を逃さぬとばかり、転回してきた白き巨鳥の嘴が、二人を襲う。
咄嗟、アルバは流星の軌跡を描く杖手繰り、圧縮した詠唱と共に、炎を走らせる。合わせ、轟く砲撃がそれの額で弾けた。厭って急上昇し、巨鳥はひとたび退く。
それを見送りながら、リオは笑みを零した――この目が残れば十分、と。
「それに、今日は死ぬ日では無い――死んで守れるものと、生きているから守れるものの天秤がまだこちらに傾いている」
沈む青の瞳でひたと相手を見据え――提案があるのですが、と横に並んだリオの言葉に、アルバは一度スターサファイアの瞳を瞬いたが、不敵な笑みを刷いて構え直す。
「そうですね……それでは、時間稼ぎお願いします」
巨鳥を一撃で仕留める魔術を組むには――高速詠唱をもってしても、僅かでも時間が必要だった。
お任せあれ、長く編んだ銀髪が風に揺らめかせ、リオは再びアームドフォートを広く展開する。
「派手にいきましょうか――全武装展開」
漆黒のアームドフォートを展開し、更に魔力を乗せる。放たれた強い光が、風を唸らせ迫り来る巨鳥と彼とを結ぶ。
焦げる匂いが届く。然れど、鳥は止まらぬ。互いの間を繋ぐ光の帯は短くなっていく。
「待たせたのう」
敵へ、アルバは冷ややかに囁いて――ジャバウォックの鉤爪で、巨鳥を押さえ込む。そして直接杖を叩きつけ、全てを焼き尽くす炎を裡に放った。
頭上でそれが灰と化していく間に、地上では獣と竜が踊る。
「貴様が俺の相手か……足りんな」
ジャハルは獣を睨めつけ、剣を鋭く重く叩きつけると、そのまま力任せに吹き飛ばす。
黒い旋風に弾かれた獣は巨人の足元に背を強か打つ――それだけで両者が破壊されるわけではないが、そこには既に大振りに鉄球を振りかざしたリリトがいた。
「ただ大きいだけの輩、妾の障害となりえぬわ」
言葉通り、遠心力を乗せた一撃は獣の腹と、巨人の脚を砕く。
蹌踉めいた巨人を水晶の雨が襲い。すれ違いにジャハルと目配せ――任せろ、という返答を受け取ったコノハは、さつまと共に奥へと駆った。
しもべが翻弄される様を忘我と見つめる、少年の元へ。
●穿鑿
陰から虚を突いて、レガルタが再び枷を放つ――今度こそ、口、腕、身体を拘束し、槍を封じる。
軽やかに地を蹴って、優樹が躍りかかる。
「この一手、おれの腕とおれの友達の名にかけて!」
眼前にダガーを振り下ろしたかと思うと、ふわりと、風が撫でる。相手が驚く間に、脇腹を掻き斬る。
鉱石の肌は動物のそれと手応えは違うが、しっかりと削り取った。
「貴様らァ!」
サイキッカーは形相を変えて吼える。彼は元々その実力を過信し闇に落ちた才子である。この状況で諦念を抱くことはない。
怒りにまかせ、元の射程より伸ばせぬ槍を振るう。
詰めていたさつまが咄嗟に狐に変化して、それは空を斬った。
「コノ!」
「たぬちゃん、ありがとネ」
コノハの声に人型に戻ったさつまは低い姿勢を維持し、尾より黒き雷を叩きつけ――共に、嬉々と笑う男が腕を振るった。
狙うはそれの身体を斜めに走る刀創。抉るように、ナイフを滑らせる。
深々と、刃が貫く。吹く血はない。しかし身体が割ける疵がはっきりと見えてしまうのは、どんな気分なのだろうか。
強い痛み、死への恐怖、様々なものがサイキッカーの胸の裡に渦巻き、心を縛る。彼らはこの瞬間のために様々な力を小さな疵として、刻みつけてきた。
サイキックの力が心に起因するのであれば、その心を蝕めば、攻撃にしても防御にしても、多少は違おう――リリトの読み通り。
呪詛は確かに彼の身を蝕んでいる。光の槍は随分と威勢を失い、最早殆ど維持できぬ。
「心せよ。その恨み辛み、嘆きこそ、妾に捧げられしもの。そして、汝らの齎したものであると」
彼女はより大きく回転をとった。低いところから高いところへ、より強い負荷をかけて。
「その身に宿した罪咎、妾が喰ろうてやろうぞ」
鉄球を叩きつければ、血と呪いで形成された竜がリリトの身より出でて、サイキッカーを呑みこんだ。
鉱石の体に走る亀裂が深まり、サイキッカーは馬鹿な、と思わず零した。
だがもう彼を守るものは何も無い。しもべは屠られ、槍も使えぬ。鏡を精製する精神力もない――頭部をみしりと圧する音。指先は既に砕けている。
「いッ……!」
「残念だったな――これで詰みだ」
それが何を叫ぼうとしたか、解らぬ。その前にレガルタがその頸に刃を押し当て、思い切り引いた。
サイキッカーは三分割に砕け、地に叩きつけられて塵と化した。
暫しの沈黙の後――船が大きな音を立てて、傾いていく。猟兵達はすぐに転送されるであろう。
広々とした空間は光を徐々に失っていき。まさしくただの石室と化している。
「斯様な船が棺とは豪勢な話だな」
それを一望し、淡淡と零したのはジャハルであった。
――かつて少年の形をしていたものの残骸は、それを如何に聞いただろう。
案ずるな、赤い瞳を細めてリリトが囁く。
「汝の罪もまた、妾が喰らうが故に」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴