第二次聖杯戦争㉑〜キリング・ホール・リバイバー
●キリング・ホール
さく、さく。
『るー……るー……』
「るー……るー……るー……」
遠く、スコップの音と、鳴く声が木霊する――。
「――トゥルダクよ、再会の悦びに啼いているのか」
|吾人《われわれ》の眼前には『生の世界』が、背後には『死の世界』が広がっている。
「地獄の獄卒よ、カクリヨは今も健在であるか」
|吾人《われわれ》の名は閻魔王『生と死を分かつもの』。
「……|吾人《われわれ》は既に『骸の海』なれば、戯れに世界へ滲み出すのもまた必定か」
――ふたつの三日月、|銀色の雨《シルバーレイン》の時代。
ああ、久しい。久しく忘れていた刻の話だ。
「いまや|吾人《われわれ》の前には万物が渾然となり、時すらも未来に流れるとは限らない」
境界を曖昧に。
未来さえも、背後から過去が捕まえれば"今"となろう。
「|吾人《われわれ》は、あらゆる時に顯現しうる、世界の宿敵がひとりである」
故に来たれ。過去に没した骸の残滓よ。
来たれ。来たれ。
深淵の扉に、臆さぬ過去から滲み出すものよ。
閻魔王の声を聴き、何者かが洗われる。
瞬間、|闇の大穴《キリング・フィールド》内に蒼氷が吹き荒ぶ。
空間内が氷に覆われて行く――。
●深淵の中の蒼氷
「闇の大穴が開いている、と聞いた。これは、――放置できないぞ」
フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は集めてきた資料を叩く。
「場所は金沢大学の工学部があッたといわれる『小立野』――であるべき場所だ。今は、あるとはいえない」
漆黒の大穴がポッカリとあいていて、地域一帯を飲み込んでいる。
「過去に、この世界の学生たち……能力者たちはこれを知ッている。|闇の大穴《キリング・フィールド》というそうだが、少しだけ異なる」
縦に深く大きな穴の中の『小立野』は、まるで「人類の過去から未来の全てが混ざったような町並み」になっており、おおよそ現代とはかけ離れてた歪さを持っている。
茅葺屋根の建物があればあばら家もあれば、現代建築の建物があり、建築中で鉄骨のみ工事中の建物も在る。遺跡のような廃墟が在り、何もない場所がある。
あべこべだが、それだけだ。
「……其処に閻魔王を名乗るオブリビオンは佇んでる。訪れた者だけ自動的に先制で攻撃してくるだろう」
闇の中に佇む存在は、滅ぼせるかはわからないがあれこそは『生と死をわかつもの』。
過去に出くわした能力者は、その名前で呼ぶかもしれない。
「しかし気をつけろ。ただで佇む存在があるわけないんだ、閻魔王は境界を曖昧にして――強大なオブリビオンを一時的に味方につける」
それは、時間を繰る蒼氷氷結の王。
「過去と未来の時間が歪む中に現れた『ブックドミネーター』もまた、|闇の大穴《キリング・フィールド》内を荒らすだろう」
書架の王が居る限り、|闇の大穴《キリング・フィールド》内は、氷による凍結が起こっている。
過去から未来の全てが混ざったような街並みも氷の向こうに閉ざされている。
|闇の大穴《キリング・フィールド》内で動くものは、閻魔王とブックドミネーター、それから猟兵だけ。
「攻撃は潜んでいた相手が早い。先制はとられるだろうが……でも、強敵を退ける力はお前たちのほうが高いはずだ。そうだろ?」
たとえどちらも強者でも。
俺たちの今に続く道のりは、過去を乗り越えてくる連続だったのだから。
「……なあ、やれるだろ?敵を倒し、書き換わッた土地を救うトコまで」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。
●概要
街を書き換えるように開いた|闇の大穴《キリング・フィールド》の中に敵がいる。閻魔王が時間を歪めて喚び出した強力なオブリビオン、ブックドミネーターが居ることで、キリングホール内の空間は凍りついている。
プレイングボーナスは『閻魔王と召喚オブリビオンの「先制ユーベルコード」に、両方とも対処する』。
●閻魔王
『生と死を分かつもの』。
タテガミのシナリオ上ではUC以上の攻撃手段を持ってはいないようです。
●呼び出されるオブリビオン
該当シナリオは「迷宮災厄戦㉕〜書架の王と凍る魔導書」
『 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=27622 』
よって、ブックドミネーターがSPD"蒼氷復活"で呼び出すのは、"蒼氷を纏った"帝竜です。
タテガミが執筆(依頼運用)を行った事がある『帝竜1体』が反映されます。
特にプレイングに何も書いてない人には、対象に有効な帝竜が。
プレイングに記載がある人は、その"帝竜"が喚ばれる認識が、良いと思います。
帝竜が出現しても倒壊しないレベルの時空が歪まされた広い広い空間です。
彼自身の武装は大きな本を開いての氷魔術、または単純な素手戦闘。
●その他
断章などはありません。|闇の大穴《キリング・フィールド》に訪れ、先制攻撃が起こるところからシナリオは始まります。㉒の制圧までに完結する見込みで運用しますので、場合により全採用が出来ないかもしれませんし、サポートさんを採用しての完結を目指す事もあるかもしれません。
可能な範囲で頑張ります。ご留意いただけますと幸いです。
第1章 ボス戦
『生と死を分かつもの』
|
POW : テンタクル・ボーダー
戦場全体に【無数の触手】を発生させる。レベル分後まで、敵は【死の境界たる触手】の攻撃を、味方は【生の境界たる触手】の回復を受け続ける。
SPD : キリングホール
レベルm半径内に【『死』の渦】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 閻魔浄玻璃鏡
対象への質問と共に、【無数の触手の中】から【浄玻璃鏡】を召喚する。満足な答えを得るまで、浄玻璃鏡は対象を【裁きの光】で攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空澄・万朶
シルバーレインの異形の一体とカクリヨの閻魔王が同一の存在……?
いや、今は考えている場合じゃないよね
前の戦いではブックドミネーターは近接攻撃が得意ではなかったそうだね
翼で自身の体を覆い、彼の物理攻撃と閻魔王の触手をガードする
翼に風穴を開けられたって構わないよ
立ってさえいられれば十分さ……!
竜神体(見た目は真の姿イェーガーカードと同じ)に変身し、欠損部位を修復する
※一人称が私になり、口調も堅くなる
防御力が上がっているので敵の攻撃は気にしない
『太刀風』で敵を斬り刻みながら突っ込んでいく
「その程度で私を止められるものか……!」
斬られた触手やブックドミネーターを回復している隙をつき、閻魔王の本体を狙う
●神風は此処に吹き抜けリ
深い闇は、光を通すような色を備えて居なかった。
空洞のように存在する|虚《うろ》。
ぼう、とする視線にはおおよそ漠然とした以上の意思を露出せず。
"それ"より後ろに"生"はなく。
"それ"より前に"死"はありえない。
『だからこその、"これ"だと』
閻魔王"生と死を分かつもの"により召喚されしいつか書架の王はわずかに不服そうに表情を歪める。
『いいだろう。此処は今や未来でも過去でも現在でもない』
空間は猟書家"ブックドミネーター"により支配された。
蒼氷が吹きすさび、空間は氷に閉ざされる。ぴたりと静止し、動くものは何一つ無い。
生と死を分かつものと、氷による時間を支配する力を扱う二人が揃う事は、在り得ざる一端であったことだろう。
本来ありえないだろう、遭遇。
本来ありえないだろう、共闘。
『訪れるべきではなかった|闇の大穴《キリング・フィールド》に没していくといい』
書架の王は共感を抱かない。知識をその身に、時間凍結氷結晶として自身の周囲に展開しキラキラと輝く蒼氷の翼を広げる。
『……今回もまた、あれは使わない。素手で十分だろう』
すう、と上がったブックドミネーターの大きな魔導書を抱えた、腕。
音を越えて、時間を飛び越え、誰よりも早く動いた男を眼前に見たのは空澄・万朶(忘レ者・f02615)。
迫ったその顔の向こう側で、戦場全体にぞぞぞと蠢く|無数の触手《テンタクル・ボーダー》は艶めかしく、生き物にも無機質なヒルにも見えなくなかった。
触れられたなら、どうしようもない悪寒を感じるものであると万朶は理解し、身を翻そうとするものの、ブックドミネーターを影に伸びる死の境界たる触手は際限なく伸びる。
追いすがるように、書架の王に結ぶ生の境界たる触手はきつく掴んでいる。
どこまでも伸び、どこまでも伸縮する。
抵抗するように飛び退き、状況を見据える万朶だが、どうしても振り切れない。
閻魔王の全ての攻撃は、ブックドミネーターの影に差し向けられ、圧倒的に不利――。
「シルバーレインの異界の一体とカクリヨの閻魔王が同一の存在……?」
――いや、今は考えている場合じゃないよね。
『どちらでも大差ない話だろう。名など、個体を記す全てにはなり得ない』
「……あー、そうともいいますね。前の闘いでは近接攻撃が得意ではなかったそうだね」
今回はどうだい。
挑発的に誘えば、書架の王は大きな魔導書を構え、思い切り物理で殴る構えを取る。
凄い速さで蒼氷を振りまきながら、逃げ場所などないと示すように閻魔王の触手を引き連れながら。
『秀でる必要がない』
「"合理的"ですね」
|知識の叡智《魔導書》でぶん殴られる瞬間、竜の翼を畳んであえて受ける。
自身の体を覆い、攻撃の被弾威力を和らげて。広げると同時に触手の伸びをガードした。
『お前が選ぶべきは、逃げ続けて堕ちるべきだったと思うが』
『ふむ……』
関心をしめすように呟くだけの閻魔王に対して、ブックドミネーターは挑戦的に蒼氷の翼を広げて評価を下す。
ガガガ、と翼に穿たれるは生と死、止まった時間に反する行動を行おうとする咎の重さ。
――違う。
死の境界たる触手が翼を貫いていた。風穴空き、絡め取られたならば一方的に攻撃を加えられるだけの"骸"と扱われてしまうかもしれない。
「穴を開けただけで、満足ですか。構わないよ、いやすごく痛いけど……立ってさえいられれば十分さ……!」
ごごごと万朶を中心に吹き荒れるのは"風"だった。
蒼氷の停止に従わず。生と死の境界たる触手の群れを蹴散らして。
「此処が過去でも未来でも今でもないのなら、ユーベルコードと使ったならば、きっとオレにだって出来るでしょう」
銘は|太刀風《たちかぜ》。力を凝り固めて作り上げた、一振りに"過去"との共鳴を願う。
自身の現在の姿を否定しよう。
今傷つく自身は"ありえない"。現在の姿を過去に重ねて、融合し"換わる"。
それは過去の姿だ。太刀風はとは常に、自身を示し、名が示すとおりに暴風と雷雲を呼ぶ|過去と現在の間《竜神体》となって、傷を癒やす。
「……ほら。私にも出来る」
『直せたところで、それでは攻撃手段になり得まい』
音速を超える移動で翻弄するブックドミネーターの攻撃も、防御力を上げたこの姿なら。
力で闘う戦士ではなく、知識で魔法を扱う者の威力を致命的とは思わない。
「でも、致命的にならなければ反撃の余地はある」
太刀風を手に、知識を司る書架の王を薙ぎ――触手の群れを激しく風の力を纏って切り伏せる。
「その程度で私を止められるものか……!」
斬られた触手を踏み、激しく切り結んでも閻魔王による援護回復を行われるのは見過ごせなかった。
万朶は回復手段を断つ。終わりなき闘いだというのなら、それでも受けて立とう。
無尽蔵という言葉等、それこそ"あり得ない"のだから。
雷雲が轟く。停止した時間など無いのだと。
生者である限り、我々は未来を求めて歩く"今を生きるもので"あると聴覚から訴えながら。
大成功
🔵🔵🔵
石蕗・つなぎ
連携歓迎
「二対一と言う状況は厄介極まりないわね」
「複数いるからこそ敵を盾にもとれるわけだけど」
先制攻撃は残像で惑わしつつ第六感にも助けて貰い見切って回避
避け切れなくてもオーラで防御や赤手で受ける、受け流すなど可能な限りダメージを軽減
凌げればUCで自己強化して反撃へ
「自分以外に聞き取れないなら、分かつものの傷も癒せないわよね」
ドミネーター自身は癒せるということでもあるので
「じゃあ、盾になって思う存分回復してて貰おうかしら」
赤手で掴んでLv10900相当の敵を盾にするで裁きの光を受けて貰い肉薄し
「からのシールドバッシュよ」
盾になってるドミネーターでLv10900相当のシールドバッシュを繰り出します
日留部・由穏
闇には光を、氷には熱を……というのも単純な考えですが。人々の過去と未来を守るためです、|私《たいようのかみ》がお相手いたしましょう。
流れゆく時間を曖昧にし、凍りつかせるとは、私には到底思いもつかない行いですからね。
ご質問には嘘偽りなくお答えします。
それでも攻撃してくる鏡は光線銃と白炎で砕きましょう。
何しろ私に鏡を向けるのです、通常は視界に難が出るかもしれませんが、負けていられません、視力には自信がありますよ。
鏡も触手も、本も氷も、癒されようとも億さず全て燃やし、溶かし続けてみせましょう。
UDCアースから離れて尚鮮やかな、あのカクリヨの世界を気にかける貴方が、流れゆく未来を信じてくださるまで。
●答えても、答えなくても
「二対一という状況は厄介極まりないね」
常に同時に動く。もしくは、――よく動くブックドミネーターを攻撃手に、どっしりと後ろで構えた閻魔王への手出しは難しい。
閻魔王を狙えば、援護に動く書架の王。
書架の王を打とうとすれば、今度は隙を狙われる。
石蕗・つなぎ(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35419)は蜘蛛の脚を極力畳み、被弾の可能性をなるべく最小限に抑えて――蒼氷の翼、ブックドミネーターの接近を、残像を残して躱す。
伊達に脚を備えているわけではない。
オーラで防御を最大に固めているからこそ、ひるまず身を戦場に置けるというもの。
蜘蛛の脚をわさわさとすることで、つなぎの居るべき居場所を錯覚させ、幻惑に訴える事も可能だ。
知的であれば在るほど、動くモノに目は奪われる。
致命的な攻撃だ、と第六感が告げた時は構わず赤手で対応して可能な範囲、弾く。
「私思うのだけど、複数いるからこそ敵を盾にもとれるわけだけど」
『問おう。可能と思う理由を』
厳かに問う声に、つなぎはこてん、と首を傾げた。
|蜘蛛糸の羽衣《クモイトノハゴロモ》は、身近な可能性を明るい方へと導く手段。
蜘蛛糸の可能性を纏い、自分の強化を行いながら、次の攻撃を見据える。
「二対一が厄介なら、こちらは更に上をいきましょう」
男は、話を遮って回答を繰り出す。そして赤の瞳を細めた。
「闇には光を、氷には熱を……というのもも単純な考えですが。人々の過去と未来を守るためです、|私《たいようのかみ》もお相手しましょう」
笑顔を崩さず、しかし、その内側に想う事は胸に秘める。
日留部・由穏(暁天緋転・f16866)は、ただ"神"としてそこにあった。
閻魔王も、書架の王も。
真偽は問わない。ただ、在るのなら等しく概念の前に姿を曝すべきと。
『答えよ。汝にとって生きるとはなにか』
問いかける疑問。小波にように揺らめく地獄のように生えて並ぶ無数の触手。
「単純ですよ。生きることは面白いですからね」
色々な発見。探索、探究を深める。
意思の疎通、交流。なんでも。
浄瑠璃鏡が触手の中より顔を覗かせて、光輝く裁きの光を放つだろう。
猟兵たちは颯爽と、直線的で傲慢な裁きを躱す。
由穏は白線銃と|私の慈悲《カミノジヒ》を持って輝きを焼き払って接触を断つ。
「31.6度の白日より、去り逝く貴方に餞を」
なんて、慈悲を差し向けてかき消す由穏は笑みを絶やさない。
「何しろ私に鏡を向けたのですから。それくらいは可能です」
通常は視界に難が出るかもしれないが、この場で負けて引き下がるわけにはいかないから。
「視力には自信がありますよ」
今を生きているはずの街を大穴の奥底で"過去なった廃墟"と書き換えられてしまわぬように。
|手遊《てすさ》ぶように、熱線を繰り、返答代わりに差し向ける。
「それに私、ご質問には嘘偽りなくお答えしますが」
『……ふむ』
問いかけた質問とは異なるが、閻魔王には由穏の言葉が嘘であるようには思えなかったようだ。
攻撃が揺らぐ――だが、もう一人の返答には満足していないようで、鏡から放つ裁きの光は止むことがない様子。
つむぎの躱した所を狙いすまし、鈍器として扱う魔導書による物理攻撃がブックドミネーターから放たれる。
――なんて攻撃範囲の短い。
――近距離の攻撃過ぎる。
鈍器での頭狙い。すぐに理解した。
「ねえ。わずかでもそこで対空すると危ないよ」
『……?』
由穏の、熱いとも痛いとも感じない無の白い炎が、ブックドミネーターの蒼氷の翼を焼く。
言葉通りに焼き、貫き撃ち落とす。書架の王は膝をつく。
堕ちた有翼の使い手は、こうなれば無力だ。
「鏡も触手も、本も氷も、如何に癒やされていようとも。さず全て燃やし、溶かし続けてみせましょう」
此処に物質としてあるのなら、焼けないものはないのだと。
"神"はそう言葉で圧す。
『……私の氷が、凍らせた時間がその程度で溶かせるものか』
「うん、溶けてるようには見えないけど、でも……今はバッチリ私達をお喋りしてるものね」
じゃあ、自分以外が聞き取れない詠唱とやらも、今は"詠唱不可"状態だよね。
つむぎは、がしり赤手で掴かんで離さない。
『なに、を……?!』
襟が締まり、首が締まる。呼吸の確保を無視すれば、自身への回復だけは維持できる。
ブックドミネーターは即座にもがき離脱しようにも、つむぎの"お前を盾にしてやる"という姿勢は微動だにしなかった。
「見ての通り。私、質問には答えてないもの……ほら、みえるでしょ?」
裁きの光はつむぎへ向かって放たれて、さっと掴んだ書架の王を盾にすることで防ぐ。
「じゃあ、こうして盾として堂々と、思う存分回復してていいよ。私、やりたいことを否定しないもの」
じゅう、と焼ける音。肉が焦げるニオイが辺りに広がる。
鼻を付くニオイだが、つむぎは気にしない。
盾にされた書架の王は逃げられない。
裁きの光が直撃し――そして回復を繰り返し、死なぬほうが辛いサイクルは出来上がる。
「ああ……貴方も異質だ。生と死をわかつ誰かであって、閻魔王でもあるように振る舞う…………のでしたら」
UDCアースから離れて尚、鮮やかなあのカクリヨの世界を気にかける貴方の心があるのなら。
「流れゆく未来を信じてくださるまで、私たちはこうして"意思疎通"を図るのでしょう」
貴方が望む、適切な方法で。
話し合いで納得をいただけないのなら、最後は――そう。物理で示しましょう。
「肉盾はね、盾として使うよりは、適切に――シールドバッシュするのがいいよ」
ブックドミネーターの耳元で囁いて、つむぎはドミネーターで相当威力のシールドバッシュを叩き込む。
がつ、と頭と頭がぶつかる鈍い音。お前の味方で、お前を穿つ。
どちらも痛手で、どちらも痛い。
「闘いって、こういうのでしょ?やればできる、が私の答え」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルドラ・ヴォルテクス
【先制対策】
リミッター解除、限界突破。
問答か、何故、死に抗うか、ならば答えられる。
俺の使命は、救世の剣となる事、それは今を生き、明日を信じて生きる者の未来を奪還し、それを奪う不条理を破壊する事。
二対の機構剣よ、唸れ、詠唱をかき乱せ。
【ジャガンナート】
UCを発動、ジャガンナート化した後は破壊の剣となり、チャンドラー・エクリプスをチャクラムに変え、触手を切断して行く。
ラプチャーズの爆破で詠唱をかき乱し、ブックドミネーターをUCの破壊者の力で蹂躙、分つ者も回復を断ち、問答の果てにとめどなき怒涛の各武器の封印とリミッターを解除した限界突破の力で蹂躙し、染み出した海へと還す。
●満足したか、なら消えろ
目標を目視した時点でルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)は全力だった。
リミッターに抑制等必要ない。
限界突破の状態こそが、最適解だと理解した。
『汝に問おう。何故に死に抗うか』
閻魔王はルドラへと直接声を投げかける。
時間凍結を起こし、零時間詠唱を用いるブックドミネーター……すなわち、猟書家であり書架の王は静かだ。
その場において、唯一の共感者たる閻魔王の傷を、半ば無心で癒やし続ける。
彼の理論を絡めた詠唱は、猟兵には聞こえない。
会話にも参加しない。ただ、ブックドミネーターは、攻撃の手を緩める事もしなかった。
その手には魔導書。蒼氷の翼を広げ、自身が囮と使われようとも"自身の共感者"が成す事を否定しない。
書架の王の"非力な攻撃"をどこ吹く風と無視し、しかしルドラは応えるのだ。
「問答か。変わったやつだ。だが、その内容ならば答えられる」
『|吾人《われわれ》へただ、結果のみで答えよ』
「死に抗うのは使命の為だ。俺の使命は、救世の剣となる事、それは――」
ルドラの返答に耳を傾けながら、無数の触手が沸き立ち蠢く。
ぞぞぞと立ち並ぶ触手たちはブックドミネーターの時間凍結した空間を捻じ曲げて出没し、浄瑠璃鏡を発生させてルドラへの向ける。
鏡は何も写していない。闇ばかりが写っていた。
鏡は闇色に輝く"裁きの光"を発して、ルドラへと差し向けられる。
冥府の裁判。閻魔王による、問いかけに答えぬものへ差し向けられる攻撃。
閻魔浄瑠璃鏡は、閻魔王を満足させた時その効力を落とすもの。
試練を与え、それでも応えるものにかの閻魔は傾聴の姿勢を崩さない。
地獄の獄卒ではない以上、ブックドミネーターは彼の姿勢には従わず。
ルドラを遊撃で攻め続ける唯一の囮兼尖兵として、唯一の回復補佐役として立つ。
さあ、二対の機構剣よ、唸れ。
かの詠唱をかき乱せ。
終わりなき回復の輪廻を、――断て。
発動するルドラの|不可抗の蹂躙戦者《ジャガンナート》。
「今を生き、明日を信じて生きる者の未来を奪還し、それを奪う不条理を破壊する事」
『ほう』
「希望は滅びてはならない。故に、俺は死に抗う」
無数の触手がすぅう、と消える。
生と死を分かつものの前で、返答した内容は。
かの存在を満足させるにふさわしかったのだ。
『汝が抗う理由は、なんと期待溢れるものであるか』
生。死。虚無。閻魔王から感じる気配は"希望も絶望もありはしない"。
その場に潜む者であるかどうかさえ、ルドラには疑わしく映る。
しかし、攻撃の手を緩めてやることもしない。
「書架の王。正しく俺を、止めてみせろ!!」
止め処なき破壊の剣は、非力な氷の使い手をまず狙う。
攻撃の止んだ閻魔王は後回し――チャンドラー・エクリプスをチャクラムに変え、草原のように生える触手を切断して行く。
此処に触手など必要ない。
街並みに触手など、存在しなくて良い。
『……これだから死と生の間で時間を超えるものは、何を考えているかわからん』
ため息をつく書架の王は、持ち前の知識力から己の終わり悟る。
ブックドミネーターが、閻魔王との共感力を絶ったのだ。
問答の果てにこそ今はある。
ルドラの怒濤の各武器によるリミッター解除の乱舞を引き起こす。
時間の停まる闇の大穴でも、嵐は起ころう。
ただし、単なるそよ風にあらず。
その風は、閃剣に煌めき希望を刻み悪を根絶する輝き。
限界を超えた威力での攻めは、応答も質疑も、逃走せも行わせない。
さあただ此処で滅びて還れ。
染み出した海の向こうへ、明確な死と生の境界を超えて帰ってしまえ。
ルドラの動きが止まった時。
大穴に猟兵と敵対した相手の姿はどこにもなかった。
閻魔王も、ブックドミネーターもどちらもだ。
どう滅び、どう消えたのかさえわからないが――もう此処には居ない。
生と死を分かつものが消えたなら、本来の死者は留まれない――のかもしれない。
あの存在が逃走したというのなら、いつかまた再び出遭う。
今は、この場所から消えた事象だけが――どこまでも紛れもない答えであることだろう。
大成功
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