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第二次聖杯戦争⑳〜磨居捕迂夢

作者：トルシ

●｜金沢港《シルバーレイン》
「生命の槍『ディアボロスランサー』は、次の宇宙へと飛び去ったであるか。
　この宇宙に生命を誕生させた時のように、新たな宇宙に生命を撒いているのか」
　雷鳴と共に現れた蒼き鎧を纏う男は空を見上げる。
　遠く彼方の宇宙を往く生命の槍を見据えているかのように語る。
「だが、許せ。
　原初、汝が唯一『槍の持ち手』に選んだ我は、オブリビオンとして蘇った。
　我は……生命に絶望したのだ。
　我が骸の海で何を見たかは語らぬが……槍よ、汝は怒るであろうな」
　それは共に在った盟友に対して、これから行なう所業に対する謝罪。
「そしてこれから為す事を、赦さなくとも構わない。
　……我は槍持つ男『｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》』！
　生命存亡の危機が為拵えておいた「強制テレポート術式」を、我はこれより悪用する！
　槍よ、疾く我が手に戻れ！」
　その瞬間、次の宇宙へと旅立った『ディアボロスランサー』は突然消え去り、｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の手に納まっていた。

「槍よ、戻って早々すまぬが初仕事である。
　この世界に新たな生命を生み出す！
　生誕せよ！！」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》が『ディアボロスランサー』を振るうと新たな生命体が誕生する。
　その新生命体は｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の数倍から個体によっては数十倍の大きさを持ち、外敵からの攻撃にも耐え抜く頑強な身体を持っていた。
「我が汝らに名を授けよう。
　汝らは｜磨居捕迂夢《まいほうむ》と名乗るとよい。
　そして、汝らの軍勢を｜磨居多云《まいたうん》と呼ぼう！」
　だが、｜磨居捕迂夢《まいほうむ》は｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の言葉に反応を示さず、「ギギギ」と音を立てると｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を自身の体内に引きずり込んだのであった。
「我が神気に中てられ狂ったか。
　やはり、生命は愚かである」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》はふかふかのソファに腰かけ呟いたのであった。
　金沢港を埋め尽くす｜磨居多云《まいたうん》の中で‥‥‥。

●グリモアベース
「あの私、何か見間違いしたでしょうか？」
　フリル・インレアン（大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557）が正月ボケをして予知を見間違えたという訳ではなく、残念ながらこれが事実であった。
「えっと、すみません。
　『第二次聖杯戦争』も気が付くとだいぶ進んでてだいぶ出遅れてしまいましたが、戦場の制圧をお願いします」
　フリルはぺこりと頭を下げる。
「ここ、金沢港に現れた槍持つ男『｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》』さんですが、
　このシルバーレインの世界で次の宇宙へと銀誓館の能力者さん達の一部を載せて旅立っていました『ディアボロスランサー』を強制テレポートさせて自身の手に持っています。
　『ディアボロスランサー』の中にいる銀誓館の能力者さん達は時間を停止させられて閉じ込められているみたいですが、｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》さんを倒せば元の場所に無事に帰れるようです」
　フリルの説明を聞いていたかつてのシルバーレインを知る猟兵から声が上がる。
　『ディアボロスランサー』が巨大な槍である事を、
　そしてそれを持つ｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の数十倍の新生命体に驚愕が走る。
「いえ、｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》さんは大柄な成人男性ぐらいの身長です。
　『ディアボロスランサー』もそれに合わせてサイズが小さくなったみたいです」
　それを聞いてほっとするが、それでもあの『ディアボロスランサー』を扱う｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は強敵である。
「そして、｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》さんが『ディアボロスランサー』の能力で生み出した新生命体ですが、お家の姿をしています！」
　そこが1番の不自然なポイントだったが、生み出されてしまった以上、仕方がない。
　『住居生命体』とでも呼べばまだ格好がつくが｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》はなんと｜磨居捕迂夢《まいほうむ》と名付けてしまった。
「その｜磨居捕迂夢《まいほうむ》さんが｜磨居多云《まいたうん》を形成して金沢港を埋め尽くしています。
　その｜磨居多云《まいたうん》の中にいる｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》さんを倒してきてください」
　フリルは猟兵達に再び頭を下げお願いした。

第1章 ボス戦 『都怒我阿羅斯等』

POW   :    天地開闢の祝詞槍 詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【純粋生命力 】属性の【ディアボロスランサー】を、レベル×５mの直線上に放つ。 SPD   :    舒弗邯閼智（ソブルハンアルチ） 【全身に生えた七本の蒼き角 】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、［全身に生えた七本の蒼き角 ］が尽きるまで【ディアボロスランサー】で攻撃し続ける。 WIZ   :    魂よわだつみに還れ 【ディアボロスランサーから生命の奔流 】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。 イラスト：いもーす 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●
　ぐびぐびぐび
「ふむ、ぬるいな。
　我にとっては氷点下壱百九拾六度の液体窒素であってもぬるく感じる。
　それにこのマッサージチェアなる座椅子も壱千萬ボルトでは毛ほど感じぬ」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は暴走発狂する｜磨居捕迂夢《まいほうむ》からの一般人なら即死するような歓迎にも平然としていた。
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は強敵なのである。
　強敵が現れた時の前振りがやけに多いかもしれないが、猟兵はこの強敵を倒さなければならない。




●
　石川県金沢港に突如出現した集合住宅？団地？
「コチラの素敵な豪邸、ツヌガ……ナンダッケ？」
「名前覚えてない、ラッシーでいいよもう。
　おじゃましまーす」
　レモン・セノサキ（｜Gun's Magus《魔砲使い》・f29870）と栗花落・澪（泡沫の花・f03165）は1軒のお宅の前に立っていた。
「ええと、ラッシーさんのお宅だそうです！
　ラッシーさんお寛ぎ中おじゃましまーす♪」
　ガチャリと玄関のドアを開けるとものすごい勢いで生命の奔流がレモンと澪を押し流そうとする。
　生命の奔流を耐えきったレモンは
「ってアホかぁぁ！！
　開けていきなり先制攻撃ってアリなんかぁぁ！！
　私達は訪問セールスじゃないぃぃ！！
　それに！金沢全域をベッドタウンにするつもりか！！
　住宅供給過多で叩き売り待った無しだわ！」
「おーセノサキさんツッコミが冴えてるぅ。
　これが本場のお笑いというやつ？」
　同じく生命の奔流から押し留まった澪の目の前を明らかに食べるようではないクリームたっぷりのパイが通り過ぎる。
「あ、ウェルカムデザートは結構でｓ……。
　｜ぶっ《（顔面hit）》
　パイ投げオーブンレンジ邪魔やねん！
　ってウチ関西出身ちゃうよ？！」

　なんとか門前払いを押し切り、｜磨居捕迂夢《まいほうむ》の中に入った二人はリビングでくつろぐ｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の姿を目撃する。
「ラッシー平然としてるけど、これもう地獄絵図だよね」
　エアコンから炎と吹雪が交互に吹き荒れ、テレビからは眩い閃光が放出されていた。
「ってちょ、うわわ、椅子が僕を食べようとしてくるぅ！」
　澪に椅子が群がり始めた。
「澪ちゃん大丈夫か？」
「ホラーハウスだおもしろーい」
　澪はひょいひょいと躱していく。
「火を吐くな吹雪を吐くな寒暖差凄すぎるからっ！
　もー、壊していいんだよね！？」
「うん、家の中を敵ごと滅茶苦茶にしてやろう！
　穿て、砕け、吹き飛ばせ。我等の前に於いて、万難など枯の葉の如きと知れ！
　こンのスットコドッコイ、はよ海へ還れ！」
　レモンは【｜天雨豪嵐《テンペストフィールド》】を放ち室内に『戦いの暴風雨』を巻き起こす。
　その暴風雨の中を舞い踊るかのように澪は飛び回る。
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》目掛けて炎や雷の魔法攻撃を放ちつつ、｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》に群がる電化製品に誘爆させていく。
「あ、そろそろ限界、回収よろしくぅ」
　元気に飛び回っていた澪が突然止まり眠り始める。
　先ほどから発動させていた【Pousser la limite《プーセ・ラ・リミット》】の効果時間が切れたようだ。
　6倍にまで強化された身体能力でもなければ家具が飛び交い荒れ狂う暴風雨の中を飛び続ける事なんて不可能であった。
　効果時間が切れ、昏睡し墜落する澪を受け止め、レモンは窓から外へと飛び出す。
「おじゃましました！」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●
「滅びを行わんとする男が磨居捕迂夢？
　港を不法占拠した分際で？
　良いだろう此処が戦場だ！
　戦場こそが自分の居場所だ！！
　引き籠り歴で勝てると思うなァアアア！！！」
　金沢港に突如出現した住居生命体｜磨居捕迂夢《まいほうむ》の群体｜磨居多云《まいたうん》の入口で朱鷺透・小枝子（｜亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》・f29924）を乗せた｜ディスポーザブル01《重装甲量産型キャバリア》はBX変形フォースサーベルを構える。
　だがその瞬間、｜磨居多云《まいたうん》の中から津波のように生命の奔流が｜ディスポーザブル01《重装甲量産型キャバリア》を押し流した。
　｜磨居多云《まいたうん》の広場でディアボロスランサーを振るった｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は呟く。
「強き生命の力を感じ出てきてみたがこの程度であったか」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は溜息をつきながらその場を去ろうとする。
「此処が！此処こそが！
　自分の｜棲家《居場所》だと言っただろう！！」
　｜磨居多云《まいたうん》の上空から｜ディスポーザブル01《重装甲量産型キャバリア》が現れた。
　戦場こそが自身の居場所と考える小枝子の意思が小枝子を戦場に呼び戻した。
　｜ディスポーザブル01《重装甲量産型キャバリア》は再びBX変形フォースサーベルを構える。
「ディスポーザブル！！」
　高層ビル型｜磨居捕迂夢《まいほうむ》をぶった切りながら、｜ディスポーザブル01《重装甲量産型キャバリア》は｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》へと突撃する。
「これでも喰らいやがれ！！！」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を掴み上げ、地面へと叩きつけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●
「ディアボロスランサーに選ばれていながら、命を根絶しようとするなんてね。
　そんな裏切り者、許すわけにはいかないんだよ」
　穂村・耶子（甘党残念剣士・f35497）は1軒の‥‥‥いや1体の｜磨居捕迂夢《まいほうむ》の庭からリビングのソファに腰かけ寛いでいる｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を指さし告げる。
　だが、その指先はあっちへ行ったりこっちへ行ったりと忙しなく動く。
　それもそのはず、｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を乗せたソファはあっちへこっちへと駆け回りロデオ状態である。
　天井に何度も頭をぶつけては風穴を作りながらも｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は語る。
「我は汝ら生命に絶望したのだ。
　汝は骸の海へと至ったことがない故、知らぬであろうが我が骸の海で見たものこそが生命の真実であると言えるであろう。
　裏切ったというのであれば、我を先に裏切ったのは汝ら生命の方である」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は唯一『ディアボロスランサー』に『槍の持ち手』として選ばれる程の器を持つ男であった。
　その｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》が生命に絶望し生命の敵となる程のものが骸の海にあったのであろう。
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は暴れまわるソファに腰かけたまま『ディアボロスランサー』を構え突き出す。
　『ディアボロスランサー』の先から生命の奔流が溢れ出し、耶子目掛けて放たれる。
　放たれた生命の奔流は｜磨居捕迂夢《まいほうむ》の室内と外を隔てる窓を‥‥‥突き破らず｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》が天井に開けた穴から抜け出し耶子に襲い掛かる。
　耶子は真正面から生命の奔流を受け止める。
　生命の奔流に飲み込まれても尚、その場に立ち続けている。
　何が耶子をその場に留めているのかそれは、
「そのUCは、僕には効果ないから関係ないね
　だって、今の僕は決まった「住処」なんてない根無し草だし
　放浪生活は伊達じゃないんだよ」
　耶子は淡々と言ってのけた。
　周りを見れば生きているけど家ならたくさんあるが、耶子には帰る「住処」がない。
　それが｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の先制攻撃の対策となった。

「後は暴走する｜磨居捕迂夢《まいほうむ》だけど、これはUCで対抗しよう。
　相手より巨大化すれば食べられることもないはず」
　耶子は手にした刀の柄に取り付けられた『モラストラップ』を上空へと投げる。
「モラの助、君に決めた！
　ジャイアント・マックス！」
　上空へと投げられた『モラストラップ』がもこもこと大きく膨らみ始める。
　みるみるうちに巨大化した『モラストラップ』は100ｍ級の巨大モーラットになった。
　巨大モーラットに飛び乗った耶子は、
「ほらほら！　早く出て来ないと、家ごとぺしゃんこにしちゃうよ！」
　一応の忠告を｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》にするが出てきたばかりで遊び足りない巨大モーラットがその言葉が｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》に届く前に｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》のいる｜磨居捕迂夢《まいほうむ》にじゃれつくように飛び掛かっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●
「｜磨居捕迂夢《まいほうむ》とは中々厄介ですわね。
　快適に過ごせると思いきや、中は地獄の様ですわ」
　ローズ・ベルシュタイン（夕焼けの薔薇騎士・f04715）はそっと窓から中を覗き込む。
　燃え盛る炎と凍てつく吹雪を交互に吹き出すエアコン、眩い閃光を出し続けるテレビ、室内を｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を乗せ縦横無尽に跳ね回るソファ、そしてそれを追いかけるかのように駆け回る椅子。
　まさに地獄と言えるような様相であった。
「む」
　中を覗き込んでいたローズはふと｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》と目が合ってしまった。
　ローズに気が付いた｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は『ディアボロスランサー』をローズへと向ける。
　そして、『ディアボロスランサー』から放たれた生命の奔流に乗り｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を乗せたソファを先頭に｜磨居捕迂夢《まいほうむ》の家具達が飛び出してきたのだ。
「ちょっ、それは聞いていませんわ！？」
　窓がガラガラと開き、ローズを飲み込まんと｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》達を乗せた生命の奔流が溢れ出してきた。
　生命の奔流の中でローズは抗っていた。
　自身の周囲に展開した赤く咲き誇る薔薇のようなオーラは生命の奔流の中でも散ることなく咲き誇っていた。
「我が放つはじわりじわりと棘の痛みを与えし薔薇の矢…慄け！」
　ローズが天高く右手に持った薔薇を掲げると、天より数多の薔薇が降り注ぐ。
　それは【｜風嵐薔薇矢雨《アメノゴトクフリソソグハトゲヲマトイシバラノヤ》】。
　降り注ぐ数多の薔薇が｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》や｜磨居捕迂夢《まいほうむ》の家具に突き刺さり、薔薇の矢が纏った風と樹と破魔を複合させた魔力が傷口から痛みを増大させていく。
「我が生命に討たれるとは‥‥‥」
　｜都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》の身体が霧散し消えると共に住居生命体群｜磨居多云《まいたうん》もまた消滅していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年01月16日