第二次聖杯戦争⑨〜鬱々葱々〜
ゴーストタウン現象の舞台となった長町武家屋敷跡。
巻き込まれた一般人を救出できたとしても、「柱」と呼ばれる強大なオブリビオンを討伐しなければこの現象が解消されることはない。
「長町武家屋敷跡界隈で唯一建物と庭園を一般公開している家、野村家に『柱』がいました」
野村家のある場所を指差しながら、ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は話を聞くために駆けつけた猟兵達に語りかける。
「柱の名は『パッシヴグラース』。半人半獣ならぬ『半人半植物』のオブリビオンです」
植物らしく、根差した場所から移動することはあまり無いため見つけることさえ出来れば一斉に集まって猛攻撃をかけることは容易であろう。
だがこのパッシヴグラースには厄介な特徴がある。ネギめいた触手が生者と繋がっている限り絶対に死なないのだ。
「おそらく周囲には連れ去られた一般人が集められており、彼らを人質に取ってくるでしょう。対処法としてはしなもん・ここあペアと同じように『捕まえられた誰かと同時に殺す』か、『素早くネギの触手を切り取る』しかありません。もちろんオブリビオン以外の被害は出したくないので後者一択です」
もし人質がいなかったとしても、対面する自分達にネギを巻きつけてくる可能性も考えられる。
そこでパッシヴグラースを確実に刈り取るために、妖狐七星将の貪狼から「獅子王」が貸し出された。
「単独で攻め入った結果囚われてしまった……という事態をこれで回避できると思います。あと、前脚の強靭な爪でバッサリとパッシヴグラースを刈ってもらえたら最高ですね」
一方で大きな懸念点もある。ネコ科にネギは毒なのだ。
もしパッシヴグラースがその情報を知っていて、獅子王の口にネギ触手を突っ込んできたら……。
「まあ、獅子王がネギがダメとは貪狼さんから聞いてないので自分の考えすぎの可能性もありますが」
ともかく猟兵が突っ込むか、獅子王に突っ込ませるかは同行する猟兵達次第である。
「長町武家屋敷の解放まであともう一押しです! 皆様、後はよろしくお願いいたします!」
武家屋敷に根付いてしまった外来種を取り除く作業が、今始まった。
平岡祐樹
武家屋敷の戦いはまだまだ終わらない。お疲れ様です、平岡祐樹です。
このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
今案件にはシナリオボーナス「獅子王と連携して戦う」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
第1章 ボス戦
『パッシヴグラース』
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POW : ネギストーム
【ネギ触手乱舞】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 掛け算の法則
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【ネギ触手】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
WIZ : ミュージカルの貴公子
自身が【踊りと歌を披露している】いる間、レベルm半径内の対象全てに【歌声】によるダメージか【ダンスリズム】による治癒を与え続ける。
イラスト:魚春
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠平・胸盛」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
触手は嫌い…と言いたいところだけど
ネギか…それなら別に……(ぬるぬめが嫌いなだけ
触手はなんとかしてみる
だから万一のフォローと追撃は獅子王さんにお願いしたい
ネギには気を付けてね…!
自身に【オーラ防御】を纏い【空中戦】
歌が邪魔なら相殺狙ってみるよ
【歌唱】に【誘惑】を乗せてマイクで拡声
掻き消して効果を弱めたり
少しでも誘惑が効いてくれれば攻撃を全て僕に引き付ける
更に【集中力】と【気配感知】で人質警戒しながら紅色鎌鼬発動
敵の四方八方を操る鎌で囲み
可能なら敵ごと巻き込みながら触手をまとめて【なぎ払い】
万一一般人を人質にされたら巻き込みそうな鎌はストップしつつ
他の鎌でフォローするか獅子王さんに任せます
「触手は嫌い……と言いたいところだけど、ネギか……。それなら別に……」
ぬるぬるヌメヌメが苦手なだけで、ただ単に伸び縮みする植物の蔓程度なら栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が不快感を催すことはない。
「触手もどきは僕がなんとかしてみる。だから万一のフォローと追撃は獅子王さんにお願いしたいな」
お願いされながら頭を撫でられた獅子王は猫撫で声をあげて応える。
「くれぐれもネギには気を付けてね……!」
そう念押しした上で澪は障子の影から庭園を覗き込む。縁側のすぐ側にある巨岩の上にそれは根付いていた。
まるでダンシングフラワーのように体を揺らしながら、謎の歌を熱唱するパッシヴグラースは寒い気候によって栄養を蓄えたのか少しだけ立派な体躯をしていた。
「聞いてて耳が壊れるほど音痴って訳じゃないんだね。……ということは敵を視認したら音量をはね上げるマンドラゴラタイプかな」
澪は愛用のマイマイクを取り出すと、パッシヴグラースの歌から半音ずらした音を出してハモリを仕掛ける。
突然の乱入者に引っ張られてしまわないよう意識してしまったパッシヴグラースの音程はめちゃくちゃになってしまう。
せっかく気持ち良く歌っていたのを邪魔されたパッシヴグラースは憤慨しながら両腕の葉身を伸ばして澪の口を塞ごうとしてきた。
『これでも鎌使いなんだよね』
澪は虚空から現れた紅色に澄んだ美しき鎌を掴むと、物陰に人質が隠されていないか警戒しつつ葉身を切り刻んでいく。
さらにパッシヴグラースの周りにも紅色の鎌が何本も現れ、囲みながらみじん切りにしていく。
しかしパッシヴグラースは切られたところから順次伸びて、先程まで自分の体だった物に根を沿わせて栄養を補給していった。
だがこのままではやられ放しで終わってしまうと本能で感じ取ったのか、澪のいる方向とは別の方角へ葉身を伸ばそうとした。
控えていた鎌がその先端を即座に切り落とし、その動きをつぶさに確認していた獅子王が強靭な脚で庭園を駆け、隠されていた人質を見つけ出した。
「やっぱり隠してたか……!」
澪は何重にも合わせた鎌をパッシヴグラースの葉鞘に向かって豪快に振るい、薙ぎ払う。
防御のために展開された葉身は何の意味も成さず、パッシヴグラースは土壁まで飛ばされて激突した。
大成功
🔵🔵🔵
天目・牟玄
……ネギ。……ネギ?
(半人半葱とはこれ如何に、といった感じの様子で小首を傾げている)
(・腕、脚、髪を刃に変化させて、UCを発動して人質に繋がっている触手を片っ端から切断。
・自分や獅子王を狙う触手も適宜切断。特に獅子王に向かう触手は念入りに排除。
・地面とくっついてるっぽい足元を特に狙って攻撃。)
「……ネギ。……ネギ?」
パッシヴグラースの説明に一度は納得しかけたものの、半人半葱とはこれ如何に、といった感じの様子で天目・牟玄(刃・f39474)は小首を傾げた。
そして実際に対峙してみると足は完全に一本のネギの白い部分で、服を模した部分や本来指があるところがネギの緑の部分。その中心に緑がかった体色をした青年がいるという風貌で、ルウの言っていた説明をようやく理解できた。
土壁からずり落ちながらも再び根を生やしたパッシヴグラースは地中からネギの触手を伸ばして人質を自分の体に繋いだ。
見つけた人質を屋内へ避難させてきた獅子王がパッシヴグラースのいる方向とは別の方角から臭ってきたネギの匂いに激しく吠え出す。
ネギの破片がうっかり口に入らないよう飛びかからずにまずは知らせること、というお願いをきっちり遂行する獅子王に応えるべく牟玄は腕や脚、髪を刃に変化させながらまるで竹馬に乗っているかのような音を立てながら庭園を素早く縦断する。
そして地面に気絶した状態で寝転がされた人質見つけるとその身を拘束するネギ製の触手を切り刻み、解放した。
『……覚えましたよ。』
本来のネギには地下茎など存在しないが、オブリビオンとなったことで得た特殊能力なのだろうか。パッシヴグラースは地中から伸ばした触手から生命力の供給が止まったのを感じ、再び拘束を試みる。
だが一度切った感じを覚えてしまった牟玄は止められない。先程よりも力を込めず、最低限の動きで、ネギの触手をみじん切りに刈っていく。
ここでようやくパッシヴグラースも牟玄と獅子王の存在に気づき、標的を変える。
しかし自らの存在を刃物へと変換した牟玄を締め付けようにも勝手に触手は千切れ落ちていく。そして獅子王に向けた触手もその前に陣取る牟玄の手によって立て続けに輪切りにされていった。
「……いい加減……面倒」
どれだけ刈っても刈ってもドクダミのように生えてくる触手に嫌気が差した牟玄は大股で走り出し、パッシヴグラースの懐に飛び込んでいく。
飛んで火に入る夏の虫だと抱き抱えようとする腕をズタズタにしつつ、しゃがみこんだ牟玄はパッシヴグラースの葉鞘をローキックで切断した。
葉鞘が一度切られてしまえば地中を這い回らせる策は再生し切るまで取れなくなるはず。
地面と繋がる支えを失って倒れ、慌てて腕を伸ばして起き上がったパッシヴグラースは牟玄の予想通り、ネギをしばらく地面から生やさなくなった。
大成功
🔵🔵🔵
アルジェン・カーム
ネギは体にいいのと風邪にも有効ですよね
でも猫には毒でした
であれば獅子王さんにはフォローをお願いしましょう
【オーラ防御】
獅子王さんに覇気の障壁を展開
万が一ネギが突っ込まれないようにします
【戦闘知識】
人質の位置の把握
またネギの動きも分析
【空中戦・念動力・弾幕】
ケルベロス展開
念動光弾を乱射して動きを弱め(一般人は狙わない
UC発動
【二回攻撃・切断】
宝剣で一般人と敵をつなぐネギ触手を切り裂き
敵に拳と蹴りを叩き込み
空気の断層で切り刻み
獅子王さんと連携して再び切り刻み
爪との連携を続けて分断する
残念ですが…貴方は料理にも薬も使えなさそうですね
貴方の齎すこの世界の|終焉《エンディング》…破壊させて頂きます
「ネギは体にいいのと風邪にも有効ですよね。でも猫には毒でした」
くすりと微笑んだアルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)は獅子王に覇気の障壁を展開する。
これでもし万が一ネギが突っ込まれても、それが消化器官に触れることはない。
物影が多い庭園であるが目視できる限りに人質の姿はなく、抉られたパッシヴグラースの下半身はまだ浅く土に埋まっているだけだ。
「貴方の齎すこの世界の|終焉《エンディング》……破壊させて頂きます」
自律浮遊機動能力を持つ三つの砲身を持つ射撃兵装がパッシヴグラースの動きを抑制すべく念動光弾を乱射する。
対するパッシヴグラースは体を思いっ切り捻り、反動をつけて両腕のネギ触手ごと体を回転させてそれに対抗してきた。
ネギ触手に激突した念動光弾が炸裂して辺りを強い光で照らす中、アルジェンは満を持して宝剣を抜く。
『風よ、世界を巡る風よ…我が武としてその力を示せ…白虎門…開門!』
そして正面から突入して高速で振り回されていたネギ触手をみじん切りにし、パッシヴグラースの体を露出させる。
そこにすかさず風を纏った超高速の拳と脚の連撃を喰らわせ、超音速で放たれた不可視の空気の断層の斬撃が表面を削って瑞々しい液体を全身から漏れ出させる。
土に根を生やし終えたパッシヴグラースは千切られた葉身に栄養を集中させることで伸ばし直して防壁を再展開しようとしたが、音もなく忍び寄ってきた獅子王の巨体による重い一撃がその思考を途絶させる。
「残念ですが……貴方は料理にも薬も使えなさそうですね」
人の形をして自由意志で動くネギなんて額をつけて頼まれても食べたくはない。
獅子王が連撃を加えてパッシヴグラースの視界を振り回す中、距離を取っていたアルジェンは助走をつけて高々と飛び上がる。
その踏切音を契機に下がった獅子王と入れ替わるように振り下ろされた大剣が常に丸見えだったパッシヴグラースの頭部を真っ二つに裂いた。
だが人間のようで人間ではないパッシヴグラースはそれで意識を失うことなく、自分の頭を両脇から押さえてくっつけようとする。だが水分が抜け出てしまった体はすぐに離れた。
大成功
🔵🔵🔵
黒墨・凱
※アドリブ・連携歓迎
『』内はウェイヴの言葉です。
ネギ……何でもOKな万能野菜だけど、このネギは間引かないとダメだな。
『終わったらねぎまでも食いに行くか』
ああ、そのためにもきっちり倒さないとな。
獅子王さん、俺が動きを止めるから思いっきりブン殴ってやってくれ、よろしく。
あっちからこちらを捕らえてくれるなら好都合。敢えてUCを受けて彼我が連結されたら一気に肉薄してUCを使って逆に締め上げてやる。その際、触腕の1本はフリーにしておく。
同時に死なないとダメなだけでダメージは通るんだろ? 獅子王さん、やっちまえ!
頃合いを見て触腕に持たせたウェイヴで撃ってネギ触手を焼き切って離脱。
距離を取ってもう一発だ!
くっつかないと悟るや否やパッシヴグラースの割れた頭の間から葉鞘が伸び、新たな頭を形成する。前の頭は動きを止め前衛的な衣装の襟のようになった。
「ネギ……何でもOKな万能野菜だけど、このネギは間引かないとダメだな。」
『終わったらねぎまでも食いに行くか』
腰元から聞こえてくる声に黒墨・凱(反撃怪人イカウンター・f32446)は頷く。
この金沢にはブランドネギがあると聞く。勝利の美酒のお供には最適だろう。
「ああ、そのためにもきっちり倒さないとな。獅子王さん、俺が動きを止めるからまた思いっきりブン殴ってやってくれ、よろしく」
凱の頼みに、獅子王は「当然だ」と言わんばかりに低い唸り声を上げる。
やる気満々の猟兵達と獣を前に出来たばかりの頭で歯軋りしたパッシヴグラースは凱に向かって葉身の触手を伸ばす。凱は避けようともせずにそれを甘んじて受けると、自らその懐に飛び込んでいく。
そしてネギが絡みついていないところから体に内蔵されている触腕を展開し、逆に抱きついた。
『捕まえたぜ!』
体内にある水の通り道を締め上げられたパッシヴグラースの顔色がみるみる悪くなり、打ち上げられた魚のように口をパクパクし始める。
「同時に死なないとダメなだけでダメージは通るんだろ? 獅子王さん、やっちまえ!」
そんなことはない、という言い分をパッシヴグラースは苦し紛れに述べるがそんな顔をしながら言われたところで信じるに値しない。
完全に絞められ、新たなネギ触手を展開できないパッシヴグラースを獅子王は一方的に嬲った。
「そんじゃ、そろそろ俺様も……」
獅子王が満足したところで凱は一本だけ浮かせていた触腕に持っていたウェイヴの引き金を引いてネギ触手を焼き切り、自身も拘束を解く。
解放されて全身に水が行き渡る快感に酔ったパッシヴグラースは自分本体にも銃口が突きつけられていたことを、弾に当たるまで気づかなかった。
大成功
🔵🔵🔵
御梅乃・藍斗
ねぎ…ああ味噌汁とか豆腐に載ってると美味しいですよね…じゃなくて!
寄生植物みたいな感じでしょうか、趣味が悪いことで
人質までとっている以上は猟兵としては駆逐せざるを得ませんね
獅子王さんにはフォローや人質の救出に動いてもらいましょう
協力者に無用な犠牲を強いるわけにはいきません
【煽動スル影】で敵に切りつけ、こちらに注意を惹きつけます
そのあとは【剣刃一閃】で応戦および人質に伸びる触手への対処を
『居合』『残像』『傷口をえぐる』で攻撃の精度と威力を増しつつ
『受け流し』で攻撃をいなします
人質や獅子王さんに攻撃がいきそうになれば『かばう』で間に入りたいですね
「ねぎ……ああ味噌汁とか豆腐に載ってると美味しいですよね……じゃなくて!」
1人ノリツッコミを披露したところで、御梅乃・藍斗(虚ノ扉・f39274)は息も絶え絶えなパッシヴグラースを見遣る。
「寄生植物みたいな感じでしょうか、趣味が悪いことで。人質までとっている以上は猟兵としては駆逐せざるを得ませんね」
ゴーストタウンはまだ解消されておらず、人質も「救出した」といえどもまだこの敷地内にいる。これまでの戦いの間に敷地全域に根を張り巡らせていれば、先達が匿っている場所に魔の手を伸ばすことはいつでも出来てしまう。
「獅子王さん。もうこの庭園に人質がいないのであれば、万が一に備えて人質の周りの警護をお願いします」
藍斗の指示に獅子王は頷き、屋敷の中に下がっていく。
これまで獅子王には結界で口内ガードをした上で破茶滅茶に暴れ回ってもらったわけだが、これ以上協力者に無用な犠牲や消耗を強いるわけにはいかない。
いいとこ取りとかごっつぁんゴールとか言われてしまうかもしれないが知ったことではない。
摩擦で焦げた風穴からいい匂いを漂わせるパッシヴグラースに向けて藍斗は高々と飛び、上段から切りかかる。
パッシヴグラースも当然防御はしてくるが、その動きは弱々しい。頭や胴体を両断されても激しく抵抗していたオブリビオンの突然の消耗に裏を感じた藍斗は嘲笑った。
「『弱いですねぇ! 本気出したらどうですか?』 こんなんじゃわざわざ出てきた甲斐がない!」
見え透いた挑発にパッシヴグラースは頭に血を上らせ、自身の体を治すために伸ばしていた触手も全て、藍斗を嬲るための策に転換してしまった。
「やっぱり手を抜いていましたか! いいでしょう、こちらも全力で迎え撃たせていただきます!」
その言葉で相手の口車に乗ってしまったことにパッシヴグラースは気づいたが、時すでに遅し。
自分を包囲した上で放たれる触手の乱舞を藍斗は愛刀で受け流しては切断し、尽く薙ぎ払った。
ズタズタになった葉身が周囲の地面を彩る中、藍斗は刀身を鞘に戻して、再度パッシヴグラースの元へ突撃する。
パッシヴグラースは地面に隠していたネギで貫こうと伸ばすが、捉えたと思った藍斗の体は何の感触も残さずに歪んで消える。
そして正真正銘の本物は居合抜きでパッシヴグラースの葉鞘を真っ二つにし、返す刀で頭部を縦に両断する。
どれだけ切られ穿たれてもしぶとく生き残り続けていた変な植物の生命力はついに尽き、目のような部分から汁を垂らしながら消滅していった。
大成功
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