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第二次聖杯戦争⑱〜根絶の|ライスメキア《銀鈴花》

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #ハビタント・フォーミュラ #銀の五月雨

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●|銀鈴花《ライスメキア》
「あの歌はまだ歌えるか」
 亜麻色の髪が銀色の雨に濡れる。
 壮年の男性である彼、『皐月・エイル』はゆっくりと息を吐き出す。
 歌えない。
 己には歌えぬ歌である。
 故に彼は告げる。
 回転動力炉の付いた妖刀『銀の五月雨』を持つ能力者の学生『銀鈴・花』に問うのだ。
「はい、先生。歌えます。だから私は守ります。先輩方が守らんとしたものを。力及ばずとも。未だユーベルコードに目覚めぬ若輩であっても」
 銀誓館の学生である彼女は妖刀の柄を握り締め、強く宣言する。

 戦う力を育て、戦う術を教え、戦いを伝えた。
 自らの役割はもう終わったことを学園教諭である『皐月・エイル』は実感する。例え、彼女たち学園の未だ猟兵に目覚めぬ能力者が今後ユーベルコードに目覚めることがなくても、彼らならばという予感があった。
 何一つ彼らの気高さは損なわれることはないという予感は今、確信に変わる。
「僕は……いや、俺は君たちに伝えてきた。戦いに際してのこと。如何にしてかを。もう伝えることはない。違うな。もう君たちの中にはそれがある。後は君たちが紡いでいけ」
 その言葉に『銀鈴・花』たちは頷く。
 過去より紡がれた死と隣り合わせの青春は、何一つ無意味ではなかった。
 彼らの後進は見事に一人で世界に立っている。
 世界の滅びを前にしてもなお、彼女たちは頷く。

「『戦いに際しては心に平和を』……征きます――!」

●銀の雨降る
 驚異的な速度であったと言わざるを得なかった。
 猟兵の進撃速度は、恐らく『ハビタント・フォーミュラ』にとって予想外であった。
 いや、気がついていたのかも知れない。
 彼女が目論んだのは『闘神の渦』による世界結界の破壊。だが、過半数が阻止されてしまった結果をもっと重く受け止めるべきであった。
 自分が逃げる時間稼ぎには十分だと思ったのだ。
「仕方ないう! こうなってしまっちゃったものは、どうしようもないう。さすがに、こんなに早いなんて思わなかったう!」
 彼女の獣腕が天に掲げられる。
 その先にあるのは世界結界。

 神秘を感知させぬ存在。
「闘神の渦の破壊エネルギーを浴びて、砕けよ世界結界う! そして降り注げ、全ての神秘を根絶するもの『シルバーレイン』う!」
 その言葉とともに卯辰山の直上にひときわ強い『銀色の雨』が降り注ぐ。
 闘神の渦の破壊エネルギーは、世界結界の一部を崩落させたのだ。
 恐るべき力である。

 そして、彼女は『ブレインバイシクル』を駆り、逃走を開始する。
「それじゃあ後はよろしくう! うーちゃんはこのまま、すたこらさっさう!」
 姿を消す『ハビタント・フォーミュラ』。
 そして、卯辰山の直上より現れるのは、世界結界の真の姿。
『シルバーレイン』――またの名を『神秘を根絶するもの』。
「――」
 彼らは語らない。
 されど、その在り方は全ての『神秘を根絶するもの』。
 彼らは軍勢となりて、『銀色の雨』降る世界に降り立ち、その名の通り、あらゆる『神秘根絶』のために飛翔するのであった――。

●第二次聖杯戦争
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。シルバーレイン世界、卯辰山の直上の世界結界が闘神の渦の破壊エネルギーによって崩落し、『銀色の雨』が降り注いでいます」
 彼女の言葉は逼迫した事態を示していた。
 世界結界とは神秘による超常を阻むものである。
 この第二次聖杯戦争が行われていても一般人達が知覚できぬ原因の一つでもあるのだ。その世界結界の一部が崩落してしまったのだ。

「これを成した『ハビタント・フォーミュラ』は『ブレインバイシクル』による他世界への逃走に方針を切り替え、己の逃走を助けるために怪物『シルバーレイン』の軍勢を呼び寄せたのです」
 彼女の言葉が真実であれば、嘗ての戦いを知る猟兵は息を呑むだろう。
 そう、『シルバーレイン』は『神秘を根絶するもの』。
 即ち、超常現象を手繰るユーベルコードをも否定し、消し去るのだ。
 これにより殆どのユーベルコードが例外なく発動した瞬間に効果を喪うだろう。

「尋常ならざる相手です。しかも、それが単体ではなく大軍勢となって卯辰山の直上より飛来しているのです」
 即ち、超常を手繰るユーベルコードは何一つ頼れない状況である。
 しかし、ナイアルテは力強く拳を握り締めた。
 彼女は言う。
 いや、断言する。
 この程度で猟兵達が諦観に塗れることも、絶望に落ちることもないはずだと。
「確かに『シルバーレイン』の神秘を根絶するユーベルコード『神秘根絶』は強力です。苦戦は免れぬでしょう。ですが!」

 そう、彼女の拳が示していた。
 超常に由来せぬ純粋な肉体や技術。そう、徒手空拳。
 機械文明や知識。そう、ガジェットやキャバリア。
 それらを利用した攻撃やユーベルコードは『神秘根絶』の影響を受けないのだ。
 このためにこそ己の名が在ると示すように彼女は告げる。
「押し寄せる『シルバーレイン』の軍勢は、単体で見ても非常に高い戦闘力を有しています。ですが、皆さんの誰もが絶望していないことを私は知っています」
 彼女の瞳は爛々と輝く。
 そう、人は確かに殺されてしまうかもしれない。生命の埒外たる猟兵もそうだ。
 だが、負けるようには出来ていない。
 敗北を是としないからこそ、紡がれる未来が在ると知っている。

 死と隣り合わせの青春の日々は、青年期を過ぎた今をこそ推し進める力となるのだ。
「ならば、征きましょう――」


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。

 シルバーレイン世界の卯辰山直上にて崩落した世界結界の一部より襲来する世界結界の正体である戦闘存在『シルバーレイン』と戦うシナリオになります。

『シルバーレイン』は集団敵ですが、非常に高い戦闘力を融資、なにより神秘減少を否定し、消し去るユーベルコード『神秘根絶』を常時発動しています。
 殆どのユーベルコードも例外ではありません。苦戦は免れないと見ていいでしょう。
 しかし、『神秘根絶』は純粋な肉体や技術、機械文明を利用した攻撃やユーベルコードに影響を及ぼしません。

 プレイングボーナス………「神秘根絶」に対処する。

 それでは『第二次聖杯戦争』、現れた世界結界の正体『シルバーレイン』の軍勢。多くのユーベルコードを封じられながらも、彼らに立ち向かう皆さんの死と隣り合わせの青春の続き、その物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『シルバーレイン』

POW   :    銀の虹
【超常の存在を否定する意志と力】を宿した【銀色の虹】を射出する。[銀色の虹]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD   :    レインカッター
【銀色をした刃の雨】を降らせる事で、戦場全体が【神秘なき世界】と同じ環境に変化する。[神秘なき世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    滅神光線
【装備した『滅神詠唱兵器』】からレベルmまでの直線上に「神殺しの【光】」を放つ。自身よりレベルが高い敵には2倍ダメージ。

イラスト:新井テル子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

流茶野・影郎
神秘根絶か……でもな、夢一つ無い世界は面白くないんだよ

『虎紋覚醒』

忍者刀を片手に詠唱風車で牽制
回転動力炉が効かなくても風車が回れば爆発する

忍者刀は今はただのだんびらに過ぎないが、お前らを斬るには充分だ
牽制から刀で切りつけ、そこから流れるように蹴りを叩き込み
間合いを保ちつつ戦うさ
後はカウンター狙って刀と風車で迎撃

銀の虹は『力』の解釈次第だが
超常否定のみならそのまま突き進むし、ダメなら避けるか、適当な何かを盾にする
とりあえず試しに風車を投げてみれば分かるか

後は、どうしても行動が間に合わない時に――追加行動
痛いがそれくらいのリソースは構わない
「そうしないと守れないなら、いくらでもこの身砕いてやるさ」



 銀の雨が降る。
 それは世界結界が砕け、降り注ぐ光景であった。
『シルバーレイン』。
 その姿は嘗て死と隣り合わせの青春の日々に在りし存在であった。
 故に彼らの脅威は百も承知であったことだろう。
「『神秘根絶』か……でもな、夢ひとつない世界は面白くないんだよ」
 流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)は己のユーベルコードが封じられることを理解していた。

 しかし、それでもなお立ち塞がる。
 かの『シルバーレイン』は神秘を否定する。
 それは人魔共存たる世界を築き上げた己たちを否定するものであったことだろう。平和になりつつある世界の影で戦い続ける。
 今もな己は立っている。
 他世界を知り、そのエッセンスを取り込んだ覆面をかぶり、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 虎紋覚醒(ブラスナックル)。
 体に浮かび上がる紋様。
 されど、『神秘根絶』たるユーベルコードが、それを打ち消す。

 やはり、と思う。
 放たれた銀色の虹が影郎を襲う。
 吹き荒ぶような苛烈なる攻勢。ただ単体だけでも脅威となりうる『シルバーレイン』。
 その攻撃がユーベルコード封じられた彼に襲いかかる。
「やはりこれを超常とみなすか……だが!」
 否定されるのは神秘のみ。
 闘気は打ち消されど、しかし心の中に在るものまでは打ち消すことはできない。
 それほどまでに影郎の体に漲る力は強烈であった。

 例えユーベルコードが否定されても、己の鍛え上げられた心身までは否定できない。
「――」
 声無き声。
『シルバーレイン』は神秘を否定する。
 ただそれだけのために彼らは舞い降りるのだ。
 絶望的な光景であったことだろう。けれど、影郎は躊躇わなかった。『シルバーレイン』の頭部に突き刺さる風車。
 詠唱風車は回転動力炉がなくとも風を受ければ爆発する。
 吹き荒ぶ爆風の中を『シルバーレイン』たちが更に迫る。

「――」
「俺かお前か、どっちが倒れるか……勝負といこうか!」
 手にした忍者刀を振るい迫る『シルバーレイン』に立ち向かう。切りつけ、流れるように蹴りを叩き込む。
 間合いを保ち、駆け引きをするのだ。
 例え、己の体が傷つくのだとしても、それでも彼は進む。
「わかっていたことだ。苦戦することは。だが」
 理由にはなっていない。
 この場を退くことも。
『神秘を否定するもの』を前に立ち向わぬことも。
 そのどれもが影郎がこれまで成してきたことの轍。平和を求める心があった。
 誰もが笑っていられるような、そんな世界を夢見たのだ。

 それを否定される謂れは、世界結界にだろうとない。
 痛む骨身。
 血潮が皮膚を引き裂いて噴出する。
「そうしないと守れないなら、いくらでもこの身砕いてやるさ」
 咆哮する。
 彼の心にある闘気が、迸るように戦場に吹き荒れ、放つ拳が、刃が、風を巻き起こす。

 放たれた詠唱風車が次々と『シルバーレイン』の体に突き刺さる。
 だが、それを彼らは意に介さない。
 無意味だと笑うことも、嘲ることもなく、ただ淡々と影郎に迫る。
 そうだとも、と影郎は笑う。
 不敵に笑うのだ。
 夢見た世界はもう己達の指にかかる所まで来ているのだ。ならばこそ。
「俺はここに居る」
 彼の拳が、蹴撃が、咆哮が風を巻き起こす。
「だから叫ぶ――ルチャ影参上と」

 その風が詠唱風車を回し、『シルバーレイン』の躯体を凄まじき爆発で持って飲み込んでいくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルフィ・クロノラヴィット
アドリブ連携歓迎

【SPD】

あのフォーミュラ
逃走の時間稼ぎに
この様な…

『神秘根絶』なる能力を持つ
敵が御相手とは…

『しかしわたくしも…物理の方であれば、些かの覚えがあります故…』

味方とも連携
敵に囲まれぬ様
立回り

『アームドクロックワークス』を展開
『クロックハンズ・マルチライフル』も持ち
(神秘系の弾は使わず、物理系の砲弾等を装填)

【砲撃】や
【誘導弾】の【一斉発射】【弾幕】等で攻撃
近接時は
マルチライフルのブレードで
【切断】や【なぎ払い】

UCで
ナイトオブホワイトに搭乗
敵群を攻撃
(味方を巻き込まない様に)

『戦闘力は決して侮れぬ相手…油断は致しませんわ!』

敵の攻撃は
【見切り】【残像】【軽業】で
物理的に回避行動



『ハビタント・フォーミュラ』は『ブレインバイシクル』によって逃走した。
 その足取りをたどるためには、この戦いを疾く制しなければならないことは言うまでもない。
 彼女が引き起こした『闘神の渦』の破壊エネルギーは、世界結界の一部を崩落させ、銀の雨を降らせる。
 卯辰山の直上より迫るのは『神秘を否定するもの』。
 名を『シルバーレイン』。
 あらゆる『神秘根絶』するユーベルコードを放ちながら、戦場に存在する神秘全てを根絶やしにせんと迫るのだ。
「あのフォーミュラ、逃走の時間稼ぎにこのような……」
 ルフィ・クロノラヴィット(メイドオブホワイトラビット・f20031)は歯噛みする。
 空より舞い降りる『シルバーレイン』の力の脅威は言うまでもない。

 無数に降り立つ彼らの一体一体が、強力な力を有している。
 それに加えてユーベルコードを打ち消す『神秘根絶』。
 ユーベルコードを手繰る猟兵にとっては脅威以外の何ものでもない。
「――」
 声なき声と共に掲げられた手より放たれるのは銀色をした刃の雨。
 降り注ぐ刃は、次々と戦場を神秘を否定する世界へと変わっていく。
「『神秘根絶』……ユーベルコードを打ち消す力……しかしわたくしも……物理の方であれば、些か覚えがありますゆえ……」
 ミルフィは戦場を走る。
 敵に囲まれぬようにと走るも『シルバーレイン』の猛攻は如何ともし難いものであったことだろう。

 ユーベルコードの神秘性を殺すユーベルコード。
 その力はミルフィにとっても、他の猟兵にとっても脅威そのもの。
 ユーベルコードを使わずに戦わなかればならない。もしくは……そう、神秘に頼らず、己の肉体そのものをユーベルコードに昇華したものか、もしくは、機械文明によって神秘を駆逐するが如き力を有するものか。

 ミルフィは後者であった。
「巨大戦と参りますわ!ナイトオブホワイト・起動…!」
 彼女の身を包み込む時計じかけの兵装。
 ナイトオブホワイト・モードデュエル――それはまるで巨大な人型兵器そのものたる姿であった。
「皆様、しばしお離れになってくださいましね!」
 ミルフィを包み込んだ兵装が人型ロボットへと変形し、巨大化していく。
 神秘ではなく、時計じかけの兵装をもって変形させたロボの巨腕が『シルバーレイン』の放つ銀色の刃の雨を弾き飛ばしながら迫る。
「『クロックハンズ・マルチライフル』!」
 放たれる弾丸が炸裂し、砲撃でもって『シルバーレイン』を吹き飛ばす。
 だが、それでも銀色の刃の雨の猛攻は時計じかけの兵装の装甲を切り裂き、歪ませ、ひしゃげさせていく。

「この程度で……!『ナイトオブホワイト』が!」
 油断はない。
 決して『シルバーレイン』は侮っていい相手ではない。
『神秘根絶』たるユーベルコードが、機械がガジェットに影響を及ぼさぬのだとしても、単体だけでも強力であることは疑いようがない。
 躱し、それでも追撃してくる攻勢の一撃にミルフィは舌を巻く。
「反応も早い……! ですが、乱れ撃つのなら!」
 放たれる砲撃の雨が刃を打ち返し、さらにミルフィは残像残す凄まじい速度で戦場をひた走る。

 銀色の刃の雨は、しかし、それでも『ナイトオブホワイト』を捉え、装甲を切り裂く。
「ですが、これでおしまいですわ!」
 ミルフィの纏う時計仕掛けの兵装が巨大な腕へと変形し、その一撃が『シルバーレイン』の躯体を打ちのめし叩き潰す。
『シルバーレイン』が絶望齎す終焉の形であるというのならば、ミルフィは何一つ諦めない。
 彼女には視えている。
 壊すべきし絶望を。
 故に彼女は鋼鉄の腕と共に、これを打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…"怪力"に"写し身"、"血の翼"に"時間王"の術式も封じられている

…装備の類も特殊な能力の一切が使えない以上、私の手札の大半が機能していない状態ね

…それでも神秘を根絶するものよ、私はこう云うわ。""も問題は無い"…と

UCを発動して大気を●足場にする習熟した●軽業の超絶技法により空を駆け、
|●残像が生じる●忍び足《極めて特殊な歩法》による●迷彩を行いながら超高速の空中機動を行い、
積み重ねてきた戦闘知識を頼りに刃の雨を掻い潜り敵の首を大鎌でなぎ払い●暗殺する

…空を歩くのも、残像を見せる歩法もただの技術よ。何も特別な事では無い

…まあ、魔法を使った方がより効率が良いのは否定しないけどね



 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)にとって『シルバーレイン』の放つユーベルコード『神秘根絶』は最も相性が悪いものであったことだろう。
 彼女の肉体に宿る怪力も、写し身も、血の翼も、そして時間王の術式さえも封じられている。
 あらゆる術式を神秘として根絶する『シルバーレイン』の力は、リーヴァルディの四肢をもぎ取るかのようなものであったことだろう。
 リーヴァルディは己の手札を見やる。

 大半が捨札にするしかないほどの劣勢。
 銀色の雨が降り注いでいる。
 世界結界を壊す『闘神の渦』の破壊エネルギーによって出現した『シルバーレイン』はたしかに『ハビタント・フォーミュラ』を他世界に逃し、そしてその痕跡を追わせぬための時間稼ぎとしては十分すぎるほどであったことだろう。
「――」
 声なき声と共に放たれる『シルバーレイン』たちのユーベルコード。
 銀色の刃の雨がリーヴァルディに迫る。
 猶予はない。
 考えている時間もない。
 使える手札は殆どが意味をなさない。

 だが。

 そう、だが、とリーヴァルディの瞳はユーベルコードではなく、己の意志に輝く。
「……それでも『神秘を根絶するもの』よ、私はこう云うわ」
 漲る意志と共に彼女は迫る『シルバーレイン』の軍勢を見やる。
「“何も問題無い”……と」
 そう、彼女の体にある術式の全ては否定される。
 しかし、彼女がこれまで練磨し、積み上げ、研鑽してきたものは決して消えない。
 自分よりも強大な存在と渡り合うために。
 重ねてきた経験がある。

 彼女の瞳は絶望も諦観も是としない。
「吸血鬼狩りの業・刃心影の型(カーライル)」
 迫る銀色の刃をリーヴァルディは足場するように蹴って舞い上がる。
『シルバーレイン』たちは見上げたことだろう。
 銀の雨降る世界にあっても、リーヴァルディはあらゆる足枷を嵌められてもなお、高く舞い上がる事ができる。
 何も彼女を捉えることはできない。

 大気すら足場にするかのような歩法。
 それによって彼女は銀の刃の雨の最中を自在に走り抜ける。それはそう呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
 空中を駆ける。
 彼女の姿鮮烈であり、またその瞳が残光を残し、『シルバーレイン』に迫る。
「――」
 根絶しても根絶しきれぬものがある。
 轍のように紡がれてきた軌跡がある。リーヴァルディがこれまで多くの者たちの意志を継いできたように。
 彼女の体躯に満ちる術は、全て昇華している。
『シルバーレイン』の手が揮われるよりも早く残像残すリーヴァルディが、その背後に回り込んでいた。
「……その首、貰い受ける」

 リーヴァルディの手にした大鎌の一閃が『シルバーレイン』の首を切り裂く。
 なめらかな傷痕だった。
 それもまた彼女の練り上げたものの一つだ。
 首が跳ねるように回転し、銀の雨降る空より落ちる。
 リーヴァルディは、空中にありてそれを見下ろして告げる。
「……空を歩くのも、残像を見せる歩法もただの技術よ。何も特別な事ではない」
 あらゆる術式を封じられてなお、リーヴァルディは己の意志を絶やすことはない。繋がれ、紡ぎ、受け継いだという心があるからこそ、彼女は此処まで戦ってきたのだ。

「……まあ、魔法を使ったほうがより効率が良いのは否定しないけどね」
 だが、それでも負ける気はしない。
 手にした刃の刀身に映るリーヴァルディは、いつもと変わらぬ横顔を見せ、銀色の刃の雨の中をただ、いつものように歩くように躱し、閃光のように振るう一撃で『シルバーレイン』の首を刎ねるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
歌うのでっす。
生命に歌を。
銀誓館の学生でもなければ、能力者でもない藍ちゃんんくんですが。
でもだからこそ歌える歌もあるのです!
ヒト、それをカバーと呼ぶのです!
この歌は傷を癒やしはしないでしょう。
ダメージを与えることもないでしょう。
でも、それでも!
心を奮い立たせることはできるのでっす!
心を震わすことはできるのでっす!
藍ちゃんくんは力を得たから世界に藍を叫んだのではないのです!
世界に、自分に胸を張る。
それが藍ちゃんくんなのでっす!
シルバーレインの皆様は胸を張れまっすかー?
皆様の神秘根絶は力無きヒトに生きて欲しいという誰かの祈りだったのです!
無力にし滅ぼす力ではないのです!
届け!
届け!
命の歌よ!



 無駄と知ってもやらねばならぬことがある。
 世界があって、世界に自分がいるのならば、己という存在を問いかけるのではなく、叫ぶようにして謳わなければならないのだと紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は叫ぶようにして声を張り上げる。
 生命に歌を。
 銀誓館学園の学生でもなければ、能力者でもない自分。
 あの歌は歌えない。
 しかし聞こえているのだ。

 生命の煌めきが世界に在る限り。
「――」
 その歌声に答えたわけではないだろう。
『シルバーレイン』の手にした『滅神詠唱兵器』から放たれる光条が藍の体を穿つ。
 神秘を根絶するユーベルコードは、藍のユーベルコードを無意味なものと返る。
 打ち消され、どうしようもないほどに藍は己の力が消えていくのを感じただろう。

 確かに生命賛歌は歌えない。
 けれど、だからこそ歌える歌があるのあと藍は知る。
「ヒト、それをカバーと呼ぶのでっす!」
 藍テール(アイチャンクン・アオゾラステーッジ)。
 それは青空のごとく澄んだ歌声。
 心なきものにすら感情を呼び起こす魂の歌。
 その歌事態が『シルバーレイン』をどうこうすることはなかった。

「でも、それでも!」
 心を奮わせることができる。
 頂上を根絶するユーベルコード。神秘を否定するもの。
 全てが藍のユーベルコードの煌めきを奪うのだとしても、藍の歌声だけは奪われない。
 世界を震わせるのはユーベルコードの力ではない。
 自分の、この歌声こそが世界を震わせる。
 確かに歌うだけではどうしようもないことばかりだろう。
 けれど、己の心が奮い立つ。
「藍ちゃんくんは力を得たから世界に藍を叫んだのではないのです!」
 自分が今此処に在るということに胸を張る。

 自分という存在がどんなものであり、どんなことを成し、どんなものを歌うのか。
 それを示してみせる唯一つの方法が歌うということなのならば。
「それが藍ちゃんくんなのでっす!『シルバーレイン』の皆様は胸を張れますかー?」
 その言葉に応えるものはない。
 ただ滅神の光条が降り注ぐ。
 それは銀の雨にも似ていたことだろう。

 歌は神秘。
 されど、音の波長でしかない。
 そこに意味を見出す事ができるのは、人ならではであったことだろう。人ならざりしものが聞いたところで、その歌は音にしかすぎないのだ。
 だが、藍の歌声は心なき者にすら感情の如き波を呼び起こす。

 これが『魂の歌』だ。
「『シルバーレイン』、皆様の『神秘根絶』は力無きヒトに生きてほしいという誰かの祈りだったのです! 無力にし滅ぼす力ではないのです!」
 故に藍は渾身の力を込めて、喉が張り裂けんばかりに歌う。

 届け。
 届け!
 祈るように、その思いを込めるよるに藍は歌う。
「命の歌よ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
神秘と科学の境界はなんぞや
それはきっと人の英知
人が理解し再構築した|神秘《UDC》なら神秘根絶も怖くない
…はず!
当たって砕けろ砕いてみせるさシルバーレイン

あと、早々に逃げやがったあん畜生も追っかけてやらないとね!

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
それじゃあ、少し力任せにいこうか!
【アームデバイス起動】
外装、部分転送
『斬撃波』でシルバーレインを牽制し、バランスを崩させて外装の腕で掴む
良い棍棒見っけ!
これをぶんぶん振り回して周囲の敵を『吹き飛ばし』、最後は剣で『串刺し』!
銀の虹は剣や外装で『武器受け』
超常を否定する力も、機械の前ではただの光だよ
ドンドンぶんぶんしていくよー!



『神秘と科学の境界はなんぞや』
 その問いかけに『シルバーレイン』は答えない。
 彼らにとって『神秘根絶』たるユーベルコードの力は、常に発露するものである。
 自分たちの意志でもって発動されるものではない。
 己達が此処にあるという事実が全てを示している。
 超常を否定する力。
 世界結界によって第二次聖杯戦争の有様すら人の瞳には触れないだろう。銀色の雨はそれを示すようでもあった。
「――」
 声なき声。
『シルバーレイン』は答えない。
 そして、目の前の神秘を否定するように銀色の虹が放たれ、戦場に駆け抜けていく。

 もう一度問おう。
「神秘と科学の境界はなんぞや。それは――」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は己を追尾する銀色の虹を己の呼び出した外装たる攻撃用外部ユニットでもって受け止める。
 ひしゃげる内部の機構。
 だがまだ動く。
 確かにあの一撃は尋常ならざる力を持っているし、また同時に此方の神秘を否定する。
 だが、しかし、それだけだ。
 それだけのことなのだ。

「それはきっと人の英知。人が理解し再構築した|神秘《UDC》なら『神秘根絶』だって怖くない……はず!」
 玲は抜き払った模造神器を振るう。
 それは玲が見て、知り、そして詳らかにした神秘の力。
 だが、知るがいい。
 人は有史以来あらゆる現象を手繰り寄せ、知り、そして手繰るようになってきたのだ。
 炎然り、雷然り。
 プロメテウスは、炎を齎す。
 そして、人の叡智は神のみが持つ雷すらも操り、神話を終わらせたのだ。

 故に彼女は銀色の虹すら巨大なアームデバイスでもって受け止める。
「当たって砕けろ砕いてみせるさ『シルバーレイン』」
 銀色の虹を蒼い残光放つ模造神器の刀身が弾き飛ばす。いける、と玲は拳を握りしめる。
「――」
『シルバーレイン』たちが一斉に、その手から銀色の虹を解き放つ。
 玲に迫る虹は、複雑に軌道を変えながら包囲するように迫る。
 しかし、玲は『シルバーレイン』にこそ突き進む。道は己の後にしか生まれない。しかし、それはもう道ではなく轍というのだ。
 だからこそ、玲は己の前に横たわる暗闇の如き未来を己の中にある英知でもって照らし、道と為して走る。

「良い棍棒みっけ!」
 外部ユニットの武装腕が『シルバーレイン』の体をつかみ、振り回す。
 つかめる部分があるのならば、彼女の生み出した武装腕は、あらゆるものを振り回し、叩きつける。
 砕ける『シルバーレイン』の体。
 だが、まだ消えない。
 ならば、これは棍棒だ。誰がなんと言おうと棍棒だというように玲の乱暴な理屈が神秘根絶する者さえ押し通るように『シルバーレイン』の体を振り回す。
「超常を否定する力も、機械の前ではただの光だよ」
 振るう。
 ただそれだけで『シルバーレイン』同士が激突し、ひしゃげる。

 彼らが生命であったのならば、そのデタラメさに悲鳴を上げたかも知れない。
 けれど『シルバーレイン』は悲鳴すら上げない。
 砕け、ひしゃげ、玲の明らかにしたUDCの一撃が彼らの体を切り裂く。
 彼女の云うとおりだ。
 如何に超常を否定するユーベルコードがあるのだとしても。
 その性質を理解し、その本質を知るのならば。
「その光だってもう怖いものじゃあないんだよ!」
 振り回し、砕けた『シルバーレイン』の躯体を放り投げ、玲は銀の雨の降る戦場の向こう、逃走した存在』の背を見つめるようにして瞳を細める。

「早々に逃げやがったあん畜生も絶対追いかけて、追いついてやらないとね――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロジャー・カニンガム
|頭脳戦車《私》は機械文明の産物。
|神秘《オカルト》とは程遠い存在である私は、まさに奴らとやり合うのにうってつけですね

おっと…無駄話はここまで。
スケジュールも押していますから、速やかに殲滅してしまいましょう
射程内の敵にターゲットマーカーを設定し、後方に控える火力支援部隊と連携した集中砲火を浴びせていきます
相手はどうやら攻撃も対超常存在に特化しているようですが、損害は少ないに越したことはありません
迂闊に射線に入らないよう、支援部隊ともども敵の挙動には注意を払います



『神秘根絶』――そのユーベルコードの力は猟兵達の四肢をもぐかのようであった。
 ユーベルコードは手繰る猟兵によって千差万別。
 規則性はあれど、その柔軟性は言うまでもなく驚異的なものであったことだろう。故にオブリビオンと対峙する上でユーベルコードは必要不可欠だったのだ。
 だが、『闘神の渦』の破壊エネルギーによって崩落した卯辰山の直上より舞い降りる『シルバレイン』たちの『神秘根絶』は、あらゆる神秘由来のユーベルコードを打ち消していく。
「――」
 声なき声が響き渡る。
 その声は、『シルバーレイン』たちより紡がれる音であった。
 放たれる滅神詠唱兵器よりの光条。

 それが戦場に降り注ぐ。
 まるで銀色の雨が全てを塗りつぶすかのように。神秘の悉くを否定するように。
 だが、とロジャー・カニンガム(兎型歩行戦車RIT-17/S・f36800)は跳ねるようにして戦場を走る。
 彼は頭脳戦車。
 機械文明の産物。
 鉄の躯体は、いかなる神秘も内包していない。
「|神秘《オカルト》とは程遠い存在である私は、まさに奴らとやり合うのにうってつけですね」
 ロジャーはウサギを模したかのような躯体、その頭部のカメラセンサーで『シルバーレイン』を見やる。

 手にした滅神詠唱兵器より放たれる光条は今も降り注いでいる。
「おっと……無駄話は此処まで」
 ロジャーは己の中にあるタスクを処理していく。
 これは第二次聖杯戦争のスケジュールだ。この惨状を引き起こした『ハビタント・フォーミュラ』は逃走を開始している。
 すでにこの戦場からは姿を消している。
 だからこそ追わなければならない。此処で『ハビタント・フォーミュラ』を逃すということは、他世界にまた此度のような脅威を撒き散らすということである。

 それは看過できるものではない。
「押しているのならば、速やかに殲滅してしまいましょう」
 彼のアイセンサーが煌めく。
 それはユーベルコードであるが、神秘ではなく機械文明の粋を集めたユーベルコードに昇華した技術である。
『シルバーレイン』を移すカメラアイが一気に飛翔する彼らをロックオンする。
 ターゲットマーカーが放たれる。

 それがユーベルコードにまで昇華した技術が見せる技であった。
「標的を設定しました」
 後方に控える火力支援部隊(ファイア・サポート)にロジャーは通信を入れる。
 カウントが返ってくる。
『シルバーレイン』の放つ光条を躱しながら、ロジャーはターゲットマーカーの煌めきを見やる。
 やはり、と思う。
『シルバーレイン』は神秘だけを否定する。
 人間が培い、発展させた機械文明を否定しない。
 ロジャーが今もこうして活動できていることが証左に過ぎない。故に彼のアイセンサーは正しく目の前の光景を捉えていた。

 彼の後方に詰める火力支援部隊と連携したキャノン砲が一気に火を噴き、飛翔する『シルバーレイン』たちを吹き飛ばしていく。
「なるほど。やはり対超常存在に特化しているようでうね。ならば、私たちにはただの熱線兵器でしかない。ですが、損害は少ないに越したことはありません」
 ロジャーは後方の支援部隊にも迂闊に射線に入らないように伝える。
 敵の挙動はすでにカメラアイが情報を集め続けている。
『シルバーレイン』は超常こそを狙い撃ちする。
 その力は尋常ではない。
 けれど、機械文明の粋を集めた己達頭脳戦車であれば、これに対抗することができる。

 発展した科学は極まれば魔法と変わらないという言葉が頭をかすめる。
 未だ己達の躯体は魔法に至らないのかもしれない。
 けれど、それでも今という時を、誰かのために駆け抜けるという行いは『業務』以上だっただろうか。
 それともそれ以上でも以下でもなかっただろうか。
 どちらにせよ、ロジャーは己の役目を果たすため、銀の雨降る戦場を支援部隊と共に砲火の雨によって塗りつぶすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿


神秘根絶が相手なら、
ユーベルコヲド、超統合群体機・零號!

阿穹羅に搭乗して、偏向フィールドで受け流し、推力移動と空中機動で対空戦を仕掛けていこう!
ジヰニアスキュウブは散開させて阿穹羅のレーザー射撃で追い込んで、爆撃でまとめて倒していこう。

銃スキルをキュウブにも付与して、弾幕や制圧射撃による援護、一気に集合して超射程のスナイプなど華麗に披露していくよ!

機械文明の力が通るなら、ぼくの庭だね。
キャバリア、超機械、戦う術ならまだまだたくさんあるってことさ!
神秘とは対極の科学の極致、存分に力を発揮するよ!



 キューブ状のボデーが銀色の雨降る卯辰山に翻る。
 その光景を見上げるのは国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)であった。
 彼女の瞳の向こうにあるのは、『シルバーレイン』。
『神秘を否定するもの』――『神秘根絶』をなすユーベルコードを発露させる存在の姿であった。
 彼らの手が天に捧げられた瞬間、戦場に満ちるのは銀色の刃の雨であった。
 その刃の雨を百数体に及ぶ多目的立体機動型機械群が弾き飛ばす。
「『神秘根絶』が相手なら、ユーベルコヲド、超統合群体機・零號(バリアブル・ジヰニアスキュウブ)! 行くよ! 創造の可能性は無限大さ、だから!」
 鈴鹿の瞳がユーベルコードの輝きを発露させない。
『神秘根絶』たるユーベルコードの力で打ち消されているのだ。

 だが、そんなことなど関係ない。
 彼女の生み出した、いや造り出した多目的立体機動型機械群は、そのキューブ状の躯体を宙に走らせる。
 それは彼女が生み出したガジェット。
 鈴鹿は己が造り出したキャバリア『阿穹羅』に乗り込み、銀色の刃の雨降り注ぐ戦場を走る。
「――」
「何言っているのかわからないけどさ!」
 鈴鹿が駆る『阿穹羅』の前面に張り巡らされるのは変更フィールド。刃を受け流し、推力を増した脚部のブースターが噴射する。
 走る、というより飛ぶ。
 キューブ状の機械群と共に走り抜ける戦場は、まさに機械文明の独壇場であったことあろう。

 確かに『神秘根絶』はユーベルコードを打ち消す。
 魔法やそれに類する神秘の尽くを打ち消し、存在を許さない。
 だからこそ、鈴鹿は人の可能性というものを示してみせる。彼女がこれまで培って来たものが在る。
 己は天才だ。
 他者も己を天才だと云う。
 だからこそ、やらねばならない。示さねばならない。
 人の道は神秘の光だけで照らされているものではないのだと。己のユーベルコヲドは、今もなお己の中で膨れ上がるように、その力を昇華させんとしている。
「機械文明の力が通るなら、ぼくの庭だね」
 機械群から放たれる銃撃が『シルバーレイン』を穿つ。
 そこにさらにレーザー射撃が追い込み、爆撃で持ってさらに撃ち落としていく。

「――」
 声無き声が満ちる。
 それは嘆きでもなければ怒りでもなかった。
 神秘の存在を許さぬ光。
 けれど、鈴鹿にとって、それはただの光にしか過ぎなかったことだろう。
「キャバリア、超機械、戦う術ならまだまだたくさんあるってことさ!」
 人の歩みは、ただ一本の道に非ず。
 鈴鹿がそうであるように、神秘に憧れ、神秘を再現しようとして科学が発展したというのならば、『シルバーレイン』たちの放つ『神秘根絶』は鈴鹿には意味をなさない。
 彼女の天才性は、今という時に発露して、世界を守る。

「神秘とは対極の科学の極地、存分に力を発揮するよ!」
 その言葉とともに空を駆け抜けるキューブ状の機械群。
 止まらない。
 戦場に満ちる炸裂音。
 全てが鈴鹿の生み出した超機械によるものであった。否定などさせはしない。魔法と見紛うのだとしても、これは人が紡いできた歴史の一つだ。
 神に祈らず。
 自然をみやり、そして己の手に手繰り寄せ、それを我が物としていく。

 人の歩みを否定などさせはしない。
 いつの日にか神秘すら否定せずに、暴き、己の手のうちに収めてみせる。
「それが傲慢だっていうのなら、まだ科学の極地は見えない。ぼくは至って見せるよ、科学の頂点まで!」
 鈴鹿は『阿穹羅』の放つレーザー攻撃で『シルバーレイン』を焼き切りながら、戦場を席巻するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
銀鈴さん、また会いましたね。『神秘根絶』は私たちの世代が否定し乗り越えたもの。あなた方が受け継いでくれて嬉しく思います。
では、『|世界結界《シルバーレイン》』との戦いを始めましょうか。

やはり使える手札は少ないですね。学生の皆さんは離れていてください。私が単独で敵陣に切り込みます。あなた方を信じていないのではなく、巻き込まないために。

竪琴を小脇に抱え、「歌唱」「楽器演奏」「範囲攻撃」「衝撃波」でブラストヴォイス!
この技は、あくまでも空気を伝わって作用する物理的なもの。神秘は補助だけです。本質を考えれば、十分な効果が見込めるはず。

『戦いに際しては心に平和を』――自身が歌に飲まれないための楔です。



 銀誓館学園の能力者たちは、己達の手繰る力が著しく低下していることに気がつく。
 違う。
 否定されているのだ。
 神秘を根絶するユーベルコード。
『シルバーレイン』の発露する力によって、学生能力者『銀鈴・花』たちは力を振るえない。これを彼女たちは伝え聞き、知っている。
「ですが、だからといって退く理由にはなってないのです。私達の先輩たちがそうであったように!」
 あの歌はまだ聞こえている。
 生命賛歌。
 かつての死と隣り合わせの青春を送った先人たちの思いを彼女たちは確実に受け継いでいる。

 彼女たちの前に立つ者がいた。
「そのとおりです。『神秘根絶』は私達の世代が否定し、乗り越えたもの。人魔共存。あなた方が受け継いでくれて嬉しく思います」
 誇らしくさえ思えるだろう。
 これが己達が守ろうとしたもの。
 育もうとしたもの。
 自分たちが仮に此処で倒れたのだとしても、それでも受け継がれ紡がれていくのだと儀水・芽亜(共に見る希望の夢/夢可有郷・f35644)は確信する。
 そして、告げるのだ。
 それは時に残酷な言葉であったことだろう。

「皆さんは離れてください」
「ですが、私達だって!」
 その言葉に『銀鈴・花』たちは各々詠唱兵器を握りしめる。芽亜はそうではないと頭を振る。
「あなた方を信じていないのではないのです。ただ、巻き込まないために」
 そう、自分たちの世代は『神秘根絶』手繰る『シルバーレイン』と戦っている。 
 否定してきたのだ。
 神秘もまたこの世界の一部であるはずだ。
 ならばこそ、芽亜は竪琴を小脇に抱える。紡がれているものを見て、知った。

 あれら学生たちは己が守らねばならぬものである。
 しかし、多くのユーベルコードを打ち消される現状に置いて、彼女が取れうる択は多くはない。
 手札が少ないとも言い換えることができたであろう。
 けれど、彼女は己の喉に手を触れ、そして手にした竪琴をかき鳴らすように弾くのだ。
「――コワレロ、『銀色の雨』!!」
 ブラストヴォイスより放たれるのは、人間の声帯を超えた絶唱。
 喉がちぎれると思うほどの声量で持って放たれる大音量は、迫る銀色の刃の雨をも吹き飛ばす。

 その勢いは凄まじいの一言であった。
 しかし、神秘を否定するユーベルコードはこれを防げない。
 何故ならば。
「これもまた私の力。神秘ではなく、本質そのもの。私の声は――」
 世界をも壊す。
 壊れろと叫ぶ声は、音の波に過ぎない。故に神秘を含むのだとしても、抜け落ちるものは僅かに過ぎない。
 芽亜は迸る音の中で聞く。

『戦いに際しては心に平和を』

 その言葉は楔だ。
 芽亜もまた理解するだろう。あの言葉は己に言い聞かせる言葉だ。
 恐れを踏破するためのものであっただろうか。
 それとも己を奮い立たせるものであっただろうか。
 否、と芽亜は放たれる絶唱の中思うのだ。
 あの言葉は、自分自身が飲み込まれぬためのものだ。他と己を、己と世界をつなぎとめる鎹に変わる楔。
 あの学生たちの心を見たように。
 芽亜の戦いを、その背中を見て育つものがいる。

 その形容し難い感情に芽亜は迸る声量を乗せ、『シルバーレイン』を打ち倒すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人のはずだが、今はただの一人

『疾き者』こと外邨義紘
一人称:私 のほほん忍者
武器:漆黒風

そもそも悪霊なので、神秘根絶とは相性が悪すぎますね。
かろうじて来れたのは、外見の元となってる私ですしー。

ええでも…だからこそ出来ることがあります。
【四更・風】…私の本来持っているものを高めたこれに、神秘は存在しません。武器だって、生前から使っている『何の変哲もない』物なんですから。
跳躍も、残像も…目立たずに近づき暗殺する技術も…生来のもの、培ってきたもの。
だからこそ、あなたたちは敗れるのです。


陰海月と霹靂、危ないのでお留守番。



 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は頭を振る。
 卯辰山の直上の世界結界が『闘神の渦』の破壊エネルギーによって崩落して舞い降りた『シルバーレイン』たち。
 彼らが発現する神秘を否定する『神秘根絶』たるユーベルコード。
 その力の波は、悪霊たる彼らを否定する。
「その力の在り方。わからないでもないですね」
 ならば、『疾き者』が一人ここに存在できるということ事態が奇跡的であったのかも知れない。
 辛うじて来れた、と理解できた時『疾き者』は何故己であるのかを理解する。

 神秘。
 そもそも悪霊である己は相性が悪すぎる。
 こうしている間にも見を引き裂かんばかりの痛みが走る。
 銀色の刃の雨が降り注ぐ。
「ええでも……だからこそできることがあります。いえ、やらねばならぬことがあります」
 ただ、静かに構える。
 その立ち姿、所作は、凛と張り詰めた空気を思わせるものであったことだろう。
 迸る銀色の刃の雨。 
 その攻勢を前にして『疾き者』は一歩も動くことはなかった。
 どんなに強烈な攻撃が来るのだとしても、己の存在そのものを否定するかのようなユーベルコードが己という存在の姿を辛うじて保たせているのも。

 全てに意味が在る。
 己達が悪霊であることも。
 四つの悪霊を呪詛で束ねていることも。
 元となった姿が己の姿であったことも。
「ユーベルコードはきらめかない」
 だが、それでいい。
 手にした棒手裏剣は脱力より、一気に己の足から腰に、そして胴を駆け巡って、腕へと伝導する。

 それはユーベルコードに昇華した肉体の練磨の果てに至る極地。
 己の技量に神秘は介在しない。
 神頼みも、神通力も。
 何もかも必要としない。己の人生において、それは当然のことだったからだ。己が敵と定めた『シルバーレイン』を穿つのに、ユーベルコードの輝きは必要ない。
「ただ、穿つのみ」
 放たれた棒手裏剣は圧倒的な速度で宙を走り、『シルバーレイン』の眉間を貫き、さらにその胴へと次々と叩き込まれていく。

 放たれる銀色の刃の雨も、すでにそこには『疾き者』の姿はない。
 跳躍している。
 世界結界が崩落した卯辰山の直上へと駆け上がるようにして『疾き者』は飛ぶ。その気配を『シルバーレイン』たちは感じ取ることはできなかっただろう。
 そう、これも練磨の果てに得たものである。
 生来のもの。
 培ってきたもの。
 それらの全てが何一つ無意味ではなかったのだと教えてくれる。
「これが人の紡いできたもの。だからこそ、あなたたちは敗れるのです」
 放つ棒手裏剣が知覚出来ぬほどの速度で『シルバーレイン』たちを撃ち抜き、穿つ。

 落ちる躯体を見下ろすこともない。
 ただ、そこに在るのは自分が討つべきものであり、己はなすべきことを成したのだという結果でしかないことを『疾き者』は知り、銀の雨降る戦場を走る。
 どれだけ己の身を削る神秘を否定するユーベルコードが発露するのだとしても。

 それでもやらねばならぬことがある。
 放つ一撃は重たく。
 己の……いや、己達の敵を敗北させるために戦場を走り抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
神秘否定の世界結界を破って訪れるのが神秘根絶なのか
この世界の生命や神秘は存在を赦されない程の悪だと?
壮大な理なぞ僕には解らないが
僕は過去を生き延び今も生きてる
ならば為す事は無闇な死の否定
一度は結界に封印された身、ハンデは【覚悟。落ち着き】
もし死んでも次代が居る
僕は忘却期前の女王が頑丈に生んで下さった身一つで抗おう

回避>【第六感、集中力、気配感知】
被弾は即致命傷と見て躱すが多方面や回避困難と判断で三砂、飛斬帽を盾に【受け流し】
攻撃>主に三砂を使用【怪力、重量攻撃】急所の特定はせず【早業で2回攻撃】【足払い、狩猟】めいて敵を捕捉出来ればUC
発動せずとも敵の躰を武器に振り回し叩き付け投げて攻撃を続行



 卯辰山の直上より現れるのは『神秘を否定する者』――即ち『シルバーレイン』である。
 その存在を酒井森・興和(朱纏・f37018)は知っていただろう。
 崩落する世界結界。
 降りしきる銀色の雨。
 その光景。その絶望。そして、渇望。
 人魔共存は成し得た。今という時間がそれを証明している。
「神秘否定の世界結界を破って訪れるのが『神秘根絶』なのか」
 その言葉には怒りが満ちていただろうか。

 これが世界の理である。
 世界結界は神秘を超常として人に認識させぬ力。即ち『神秘根絶』。それはユーベルコードすらも例外ではない。
 あらゆる神秘は『シルバーレイン』の前に無意味へと堕ちる。
 しかしだ。
 そう、しかしである。それを興和は否定する。
 壮大な理なぞ己には理解らない。
「僕は過去を生き延び今を生きてる。ならば為すことは無闇な死の否定」

 そう、興和は知っている。
 この世界の生命や神秘は存在を赦されないほどの悪ではない。
 嘗ての戦いが証明している。
 今もなお己が生きていることが何よりの証明で証拠だ。これを否定などさせない。させてたまるものかと叫ぶ心が、あの日、あの時、死と隣り合わせの青春のさなかに響いた生命賛歌を想起させる。
「――」
 声無き声。
『シルバーレイン』たちが手を掲げ、神秘たる興和を否定する。
 放たれる銀色の虹が宙を走る。

 一度は世界結界に封印された身。
 鋏角衆たる己は、そうであったのだ。一度は世界結界に否定された。
 死はすぐ傍にやってきている。あの銀色の虹が、そうだ。
 けれど、と興和は笑う。笑むのだ。こんな状況であっても。
「もし死んでも次代が居る」
 あの学生たちも、己が守らんとしている者たちも、次代だ。己という存在は鎹だ。次につなぐための。
 紡ぐための存在。
 ならばこそ、忘却期以前に生まれた体を持って、これに抗うのみ。
「この身一つで戦う……女王が頑丈に生んでくださった。それはこのときの為にあるのだ」

 迫る虹を見やる。
 速い、と思う。だが、わかる。
 致命傷を避ける。あらゆる判断を即座に行う。手にした飛斬帽を盾にし、きしむ骨身と共に虹の一撃を受け流す。
 痛みが走る。
「だが、それがどうした!」
 走る。手にした方天画戟を『シルバーレイン』に叩き込む。瞬時に打ち込まれる二連撃。
 それでも止まらない。
 己の体は駒のように。足を払い、『シルバーレイン』の躯体を崩す。

「『神秘根絶』、そのためだけの存在! 戦うためではなく否定するためだけに存在するものに!」
 その瞳はユーベルコードに輝くことはない。
 されど、その手が掴むのは『シルバーレイン』の躯体そのもの。
 純然たる肉体がユーベルコードに昇華した瞬間だった。

「負けはしない!」
 確かに神秘は否定される。
 しかし、今の興和の膂力は通所のそれを凌駕する。『シルバーレイン』の脚を掴んだ彼は、叩きつける。
 尋常ならざる力。
 それは彼が鋏角衆であることも起因しているのだろう。
 鍛え上げられた肉体。
 死と隣り合わせの青春を駆け抜けてきたからこそ、到れる境地がある。
 故に興和は裂帛の気合と共に『シルバーレイン』を叩きつけ、投げつけては、『神秘根絶』の力すらも跳ね除けるように戦場を引き裂くように戦うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霞・沙夜
【路子さんと】

シルバーレイン……。
わたしたちがここにいるのだから、いても不思議ではないですね。
それならば、今度こそしっかり葬って上げましょう。

『神秘』が効かないとしても、わたしの糸なら問題ありません。

路子さん、亡霊はここで断ち切っておきましょう。
わたしが前に出ますので、背中はお任せいたします。

シルバーレインの直接攻撃が路子さんまでいかないように注意しつつ、
背中をフォローしてもらいながら、糸を扇状に広範囲展開。

両手で【繰り糸】を繰って【妖斬糸】で、
迫ってくるシルバーレインを切り刻んでいきましょう。

猟兵となり、いまいちど戦いの場に身を置いたわたしたちに、
過去に囚われている暇はありません。


遠野・路子
【沙夜と】
あれがかつて父たちが相対した神秘の敵
…記念写真を撮っておこう(すまーとふぉんでぱしゃぱしゃ

冗談はさておき
アレは私達の天敵…というより私の天敵
私のユーベルコード、全部神秘だし
でも沙夜の言う通りだね
過去はここで断ち切る
前は任せた
私は後ろから援護する

私はゴーストだけれども
父より受け継ぎし弓術
武者の皆が拵えてくれたこの弓がある
さぁ覚悟はいい?
シンプルに素早く
矢を番え放ちを繰り返す
悪路王流矢打ち、とでも言えばいいかな?
沙夜には当たらないように
空より至る無数の何かで勝負するのは私の家の基本だよ

シルバーレイン
あなた達を乗り越えたからこそ私達新世代ゴーストがいる
だからこそ私は負けるわけにはいかない



 意義を問う。
 その存在の意味を。生命というものはそういうものである。 
 世界に対して真摯に問いかけるものである。己が如何にして存在し、如何なる意義を見出すのか。
 そして『神秘根絶』たるユーベルコードを手繰る『シルバーレイン』は、あらゆる神秘を否定する。
「『シルバーレイン』……わたしたちがここにいるのだから、居ても不思議ではないですね」
 霞・沙夜(氷輪の繰り師・f35302)は見上げる。
 その威容を。その姿を。その存在を。
 彼女は嘗て見たことだろう。
 死と隣り合わせの青春の日々に。戦いの日々に、相対した存在と再び見える。

「あれがかつて父たちが相対した神秘の敵……」
『悪路王』、人魔共存を掲げたゴースト。
 彼を父に持つ遠野・路子(悪路王の娘・f37031)は『シルバーレイン』を見やる。そして、その手にしたスマートフォンでぱしゃっとやってみせるのだ。
 記念撮影を行っておこうというのだ。
 後で父や母に見せてあげようと思うのだ。
 それは神秘たる父母の敵であるが、しかし、それを前にしても己が在るという事実。それを伝えたいと思ったのだ。

「今度こそしっかり葬って上げましょう」
 沙夜は迫る銀色の虹を見上げる。
 それらはあらゆる角度から襲い来る神秘否定の光。
 その光の前ではユーベルコードは輝きを喪う。しかし、妖斬糸(ヨウザンシ)は違う。
「アレは私達の天敵……というよりも私の天敵」
「路子さん、亡霊は此処で断ち切っておきましょう。わたしが前にでますので、背中はお任せいたします」
 そう、路子は次世代ゴーストである。
 彼女の存在こそが、かつて銀誓館学園の学生能力者たちが選んできた選択の意味を齎す。

 人とゴーストが手を取り合って世界を共有できる。
 殺し、殺されるだけではない第三の道を選び取ったのは、先人達が弛みない努力を続けてきたからだ。
『シルバーレイン』は、しかしてその努力を否定する。
 あらゆる神秘を否定する力を持って、これをなそうというのならば。
「そうだね、沙夜の言う通りだね。過去はここで裁ち切る」
「背中はお任せ致します」
 沙夜が走る。
 手にした糸は、神秘ではない。
 例え神秘が宿るのだとしても、これまで彼女が積み上げてきた技量はユーベルコードに昇華している。

 肉体を鍛え、練磨した技術でもって敵を倒す。
 扇状に展開した糸が『シルバーレイン』を捉える。
 両手で手繰る操り糸。それは彼女の背後で佇む人形と繋がっていた糸だ。しかし、それは今は外され、守るためにこそ広がっている。
 これが己の答えだ。
 どれだけ神秘を否定するのだとしても、否定しきれぬものが世界にはあるのだ。
「この糸に切り裂けぬ物はありません」
 そう、例え銀色の虹であっても例外はなく。
 迫りくる『シルバーレイン』を細切れに切り刻みながら、背に追う路子をかばう。

 後ろには行かせない。
 けれど、空中で機動を変える銀色の虹は路子に迫る。
 あれなる神秘を許してはならないと。存在を否定するユーベルコードの発露が彼女に迫るのだ。
 路子は静かに瞳を伏せる。
 それは諦観ではなかった。彼女の心にあるのは、ただ一つ。 
 己の名の意味である。

『己の心が指す路を進みなさい』

 その言葉があるから今の己が在る。
 母の言葉が己を突き動かす。父の技が己の手にある。武者の皆が拵えてくれた弓がある。
 全てが無意味でなんかないのだ。
「どれだけ『シルバーレイン』が私を、私達を否定するのだとしても。私はゴーストだけれども」
 それでも否定してはいけないものがあると彼女は知っている。
 だからこそ、伏せた瞳開かれる。
 扇状に広がる沙夜の糸が己を守ってくれている。 
 だが、人魔共存の証が己であるというのならば、守られるだけではだめだ。守らなければならない。
 共に立つというのならば。

「さぁ覚悟は良い?」
 体に染み込んだのは『悪路王』仕込みの弓術。
 引き絞った弦が弾かれると同時に放たれる矢が『シルバーレイン』の頭部を撃ち抜く。
「空より至る無数のなにかで勝負するのは私の家の基本だよ」
 何一つ否定させはしないと路子の瞳はユーベルコードではないなにかの輝きを放つ。
 キラキラとした輝き。
 それを沙夜は知っていたことだろう。
 あの死と隣り合わせの青春の日々を生きたからこそ、自分はあの輝きを知っている。

「猟兵となり、今一度戦いの場に身を置いたわたしたちに、過去に囚われている暇はありません」
 自分の背には轍が連なる。 
 過去と成った青春の日々。あの死と隣り合わせの青春の日々。
 しかし、懐かしさと共に誇らしさも生まれるのだ。

 そして。
「『シルバーレイン』、貴方達を乗り越えたからこそ私達新世代ゴーストがいる」
 共に路を歩む者がいてくれる。
 その喜びは、何ものにも代えがたいものだ。
「だからこそ私は負けるわけにはいかない――」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

すてらさんはきょうもぜっこうちょうでした、まる。

ああああ!ダ、ダメですよステラさん!?
耐性のない人にその圧は致死量です!

あれ?お知り合いの方なんですか?
い、いえ。知り合いでも、やっぱりその圧は……。

……質問そこですか?(すん、と表情消え)

って、ス、ステラさん、あれ!あれ!

ああ、やっぱり見ても聞いてもくれません……そうだ!

このままだとエイルさんにまで危害の及ぶんじゃないかなー?

ふぅ、今日もわたしいい仕事しました。

え?わたしもいくんですか?
わ、わかりました! わかりましたから!

え、えっと、えーいこうなったら勇者は度胸!
【カプリス】を喰らえー!

ステラさん、絶対受け止めてくださいね!?


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りがします!!
ええ、私のメイドセンサーが間違いなく!

ってあら?銀鈴・花様ではありませんか?
くんくん……やはり貴女がこの世界のエイル様への道標
さぁ教えなさい!
エイル様は水着とメイド服とどちらが好きか!

なんですかルクス様今忙しい……え、それどころじゃない?

エイル様に危害が及ぶというのなら
このステラ死力を尽くして神秘根絶を滅ぼしましょう
フォル!いらっしゃい(鳥型キャバリアを呼び寄せる)
ルクス様乗って
空に制限のないこの世界なら!
【ファム・ファタール】いきます!
フォルを止められると思わない事ですね!
足場はばらまきました
ルクス様後はいつも通り物理でお願いしますね



「|『エイル』様《主人様》の! 香りがします!!」
「すてらさんはきょうもぜっこうちょうでした、まる」
 日記をつけている場合ではないのだが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はまたかーという顔をしていた。
 こうなったステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は止めるだけ無駄である。
 こういう流れになってしまった以上、逆らうことは意味をなさない。 
 どうあがいてもこういうことになってしまうのだ。
「ええ、私のメイドセンサーが間違いなく!」
 言っているのだとステラの形の良い鼻がひくひくしている。見て! この鼻腔が捉えた香りを! とステラの目が輝いている。

 ルクス的には香りは見えないし、そんなこと感じられるのはステラだけだし、仮にそれが真実でなかったのだとしてもステラにはなにか視えているのかもしれない。
 そう思わせるだけの妙な説得力があったのだ。
「……え?」
「ってあら?『銀鈴・花』様ではありませんか?」
 ステラは目ざとく、卯辰山にやってきていた学生の能力者である『銀鈴・花』を見つける。
 そんな彼女にステラは鼻を鳴らして近づく。 
 えなに怖い。
「くんくん……やはり」
 何がやはりなのだろうかとルクスは思ったかも知れない。まーた始まったとも思ったかも知れない。
『銀鈴・花』はなんかちょっとビビっている。それはそうであろう。

「やはり貴女がこの世界の『エイル』様への道標。さぁ教えなさい!」
「な、何をです!?」
「『エイル』様は水着とメイド服とどちらが好きか!」
 ぐわ!
 そんな擬音が聞こえそうなほどの顔の圧であった。ものすごい圧であった。『銀鈴・花』は完全にビビって萎縮してしまいそうだった。
「ああああ! ダ、ダメですよステラさん!? 耐性のない人にその圧は致死量です!」
 また出禁世界が増えてしまうとルクスは慌てて間に入る。
 ハイ離れて離れてブレイクッ! というやつである。しかし、『銀鈴・花』はそんなステラに臆することなく一歩を踏み出していた。

 ルクスはこの圧の中一歩を踏み出す彼女を見て驚愕する。いやでもステラの圧はすごいのである。どう好意的に解釈してもダメな感じであるのだ。
「……っていうか、質問そこなんです?」
 今更であるがステラの二択は、なんかこう完全に狙っている。水着とメイド服。さり気なく自分のレパートリーを選択肢に入れている辺りがこう、巧妙だなぁと思わないでもなかった。すん、とした顔になってしまう。
「『先生』は! そういうの、興味ないと思います! たぶん! いえ、きっと! メイド服とか水着とか! た、たしかにメイドさんは素敵かと思いますけど!」
 なんかどもった言い方をしている。
 あ、やっぱりな、と思わないでもなかった。ステラがどう思っているかわからないが、ルクスには両者の間になんか見えない黒背景でぴしゃんと弾ける稲妻を見た気分であった。

 完全に自分だけ置いてけぼりであった。
「……って、ス、ステラさん、あれ! あれ!」
 そんなキャットファイトを尻目にルクスは漸く気がつく。卯辰山の直上より迫る無数の『シルバーレイン』たちの姿。
 神秘を根絶せんとする虹を手繰る敵。
 その姿をみやり、ステラの肩をがくんがくんと揺らすのだ。
「なんですかルクス様今忙しい……」
「ああ、やっぱり見ても聞いてもくれません……!」
 ぴこんとルクスは思いつく。
 こういうときのメイドは、てこでも動かないが、簡単に動かせることがあるのだ。
「このままだと『エイル』さんにまで危害が及ぶんじゃないかなー?」
 キラーワードであった。
「それどころじゃないですね!?」
『銀鈴・花』もステラもルクスの言葉に目を剥く。マジでこんな事している場合ではなかった。

 ステラは頷く。
「勝負は一旦預けておきましょう。『エイル』様に危害が及ぶというのなら、このステラ死力を尽くして『神秘根絶』を滅ぼしましょう」
 掲げた掌に応えるように『フォルティス・フォルトゥーナ』が飛来する。
 鳥型のキャバリアは『神秘根絶』の影響を受けない。
「ルクス様、乗って。空に制限のないこの世界なら!」
 ステラの言葉と共にルクスは、今日もいい仕事をしたという額の汗をぬぐっていた。
「え? わたしもいくんですか?」
「当たり前でしょう」
 じろ、とステラの眼光が圧となってルクスを襲う。ちょっと怖い。いやかなり怖い。慣れててもあの圧である。

「わ、わかりました! わかりましたから!」
 共に飛翔するキャバリアと共にステラとルクスは『シルバーレイン』に迫る。
「ファム・ファタール! あなたの測度で全てを蹴散らしなさい!」
 飛翔に寄るソニックブーム。
 音速を超えるキャバリアの速度は神秘に依存しない。ただ機械文明の結晶である。
 人は神秘を己の手に収め、神秘を殺す。
『神秘根絶』のように否定するのではなく、純然たる知の結晶によって乗り越えて己がものにする。
 それを示してみせるのだ。
 音速をぶち抜いた機体が残した三日月型の鎌の如き風の刃は、足場と成って戦場に残る。

「ルクス様、足場はばらまきました。いつもどおり」
「え、まさか降りろと?!」
「はい。そのとおりです。いつもどおりと言ったではないですか」
 マジで言っているのかこのメイド、とルクスは思った。だが、目がマジである。勇者ならできるでしょ、と誰と比較しているのだろうか。多分『エイル』である。『エイル』様ならこの程度やりますよ、と言わんばかりの顔であった。
 比較対象がおかしい!
「え、えっと、えーい!」
 勇者は度胸である。
 ブンブン振り回す巨大バイオリン。もうこうなったやるしかない。ルクスは足場となった空気の刃の上を駆け抜けていく。

 その一撃を『シルバーレイン』に叩き込みながら、もし、この足場が失われたどうなるんだろうと一抹の不安がよぎる。
「ステラさん、絶対受け止めてくださいね!?」
 返事はなかった。
「いや、本当に受け止めてくださいね!?」
「はいはい、わかりました」
 おざなり!
 だが、それがいつものことであることをルクスは知っている。なんだかんだ言ってきっちり仕事をしてくれるのがステラというメイドなのだと、その点においてはちゃんと信じているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
人工魔眼、機械絆は…よし、使える。
超能は難しいが、|思考補助《瞬間思考力》には十分だ!!

|ディスポーザブル01を【操縦】《本来の性能に戻された量産型キャバリア》
ホーミングレーザー射撃、【制圧射撃】を行いつつ、
【継戦能力】01の重装甲で刃の雨を【武器受け】し強引に操縦【早業】
パワークローの【怪力】でシルバーレインを掴み、握り潰す!

いつもより出力が低いか…??
まぁとにかく進め!!01は1機でも戦える!!死んでも進め!!
この身が砕け散ってもだ!!!

パルスアトラクター【マヒ攻撃】電磁音波を放射。
すかさず【追撃】RX騎兵刀でなぎ払い、メガスラスター【推力移動】
やおらに浮いて、巨体で【重量攻撃】押し潰す!



『シルバーレイン』は『神秘を根絶するもの』である。
 彼らのユーベルコード『神秘根絶』はあらゆるユーベルコードの輝きを失わせる。猟兵にとって、それは四肢をもがれるようなことであっただろう。
 オブリビオンと対峙する時、ユーベルコードは必須である。その力無くば世界を守ることはできない。
 だからこそ、『シルバーレイン』は脅威であった。
「人工魔眼、機械絆は……よし、使える」
 だが、その驚異を前にしても何一つ損なわれぬ戦意があった。

 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己を兵士であると定める。
 自分が何者であるのかを知らずとも、自覚できぬのだとしても、それでも己の意味を己自身で定めることができたのならば、ユーベルコードを封じられようとも小枝子は戦うことをやめはしない。
「『ディスポーザブル』!」
 小枝子は本来の性能に戻された量産キャバリアに乗り込む。
 常なる己の戦い方をもって操るキャバリアの挙動が鈍く感じる。自分を支える超能も、思考も、何もかもが鈍く感じることだろう。

 だが、それのどこに意味がある。
「自分は兵士であります。己が戦うと決めたのなら、それを遂行してみせる。何があろうとも!」
 迫る銀色の刃の雨をホーミングレーザーで撃ち落としながら、小枝子は『ディスポーザブル01』の重装甲で撃ち落とせなかった銀色の刃を受け流しながら強引に突き進む。
 やはり機体が重たい。
 彼女の能力、ユーベルコード、それらでもって超常的な性能を発揮していた『ディスポーザブル01』は、その神秘性を否定された今、凡百の性能しかない量産型キャバリアに身をやつす。

 だが、それでも関係などなかった。
 唸るパワークローが走り、『シルバーレイン』の体を掴み上げる。
「いつもより出力が低いか……」
 握りつぶせない。それどころか、パワークローのアンカーを『シルバーレイン』は引き剥がしながら、その腕部を銀色の刃の雨でずたずたに引き裂くのだ。
 力の根本が違う。
 地力が違うのだと言ってもいい。
「とにかく進め!! 一機でも戦える!! 死んでも進め!! この身が砕け散ってもだ!!!」
 ひしゃげたアームでもって『シルバーレイン』に叩きつける。
 跳ねる躯体を追うようにして小枝子は『ディスポーザブル01』と共に戦場を駆け抜ける。

 逃しはしない。
 自分が戦うと決めたのならば、それを意地でも完遂するのが己という兵士であると知るからこそ、小枝子はキャバリアを駆る。
 進め、という言葉が頭の中で反芻する。
 それしか己にはできない。
 愚直に進むことしか。それだけをこれまでもしてきたのだ。己の身がどうなろうとも構わない。
 戦うことで守られるものが在るのならば、小枝子は喜んで己の身を捧げたことだろう。破滅的な行為だと誰かは言うかも知れない。
 けれど。

「それでも進め! ディスポーザブル!!」
 戦塵侵撃(アクティブ・キャバリア)。
 胸部装甲が弾け飛ぶようにして顕にした音響兵器。
 パルスアトラクターのは電磁音波を放射し『シルバーレイン』を打ち据える。如何に『神秘を根絶するもの』であろうとも純然たる機械文明のちからまでは防げないのだ。
 ならばこそ、すかさず踏み込む。
 手にした騎兵刀を振り払い、一気に推力を持って押し切る。
 跳ねるように『シルバーレイン』の躯体が大地に叩きつけられ、更にその上に飛び込む巨体があった。
「押しつぶす!」
 小枝子の駆る『ディスポーザブル01』は、その巨体の重量と共に騎兵刀を振り下ろし、有り余る重量で持って強引に『シルバーレイン』の躯体を叩き切る。

 フレームが軋み、騎兵刀は捻じ曲がる。 
 だが、それでもかまわない。
「……まだ来るか。いいや、そうだ。そのとおりだ。『神秘を根絶するもの』……自分を否定するもの。ならば! 自分は!!」
 戦うのだと。 
 ただそれだけのためにある一兵士でしかないのだと知らしめるように小枝子は銀の雨降る戦場を己の戦意一つで押し切るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
随分と見切りをつけるのが早いわねぇ…それだけこっちの勢いが想定外だったんでしょうけれど。
この手の「全部放り出しての逃走に躊躇いのない手合い」って捕まえるの大変なのよねぇ…

神秘根絶、かぁ。たしかにものすごぉく面倒だけど…実のとこ、あたしの場合「面倒」以上じゃなかったりするのよねぇ。
魔術こそゴールドシーンに代行してもらってるけれど、あたしのUCはほとんどが技術昇華型。影響がないとは言わないけれど、十分立ち回れるわぁ。
グレネード○投擲による爆撃に紛れて切り込み、瞬間思考力で敵の動きと隙を見切って鎧無視の先制攻撃で急所を突く――ヒトを殺すときに、別に何も特別な事をする必要はない。そうでしょぉ?



 卯辰山の直上の世界結界が崩落し、舞い降りるは『超常を根絶するもの』たち。
 その名を『シルバーレイン』。
 彼らの力は超常を否定する。
 この第二次聖杯戦争において戦場と成った市街地でさえ、人々は戦いに気がつくことはない。それは世界結界があればこそである。
 超常に耐性のないものたちは、見えざる狂気に陥る。
 それを守るために世界結界があるのだ。
 
 故に『シルバーレイン』は超常を否定する。
 猟兵達の手繰るユーベルコードもまた同様であった。
「随分と見切りをつけるのが早いわねぇ……それだけこっちの勢いが想定外だったんでしょうけれど」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は『闘神の渦』による破壊エネルギーでもって世界結界を削り、オブリビオン・フォーミュラの強化を狙った『ハビタント・フォーミュラ』がすでに逃走し、他世界に渡ったことを知る。
 今まで積み上げてきたものを簡単に切り捨てることのできる判断を『ハビタント・フォーミュラ』が行えたということは、彼女の目的がただ単にオブリビオン・フォーミュラの強化だけでないことを示していたことだろう。

「この手の『全部放り出しての逃走に躊躇いのない手合い』って捕まえるの大変なのよねぇ……」
 だからと言って逃走した『ハビタント・フォーミュラ』を捨て置くことなどできよはずもない。
 逃げたのならば追えばいいだけの話だ。
 追うの早めた時が、『ハビタント・フォーミュラ』の目論見を成就させる時なのだから。
「とは言え、追いかける前にこっちをなんとかしないとなのよねぇ……『神秘根絶』、かぁ」
 面倒だとティオレンシアは思う。
 大変なことに面倒なことが重なっているのが現状である。

 迫る『シルバーレイン』より放たれる銀色の刃の雨。
 その降りしきる中をティオレンシアはグレネードを投擲し、広がる爆風の中に紛れるようにして走る。
 思考はクリアだ。
 爆風の中をためらうことなく進むことができる。
 結局の所、とティオレンシアはユーベルコードの輝きを失ってなお、己は何も揺らぐことはないことを知るのだ。
「確かにものすごぉく面倒だけど……」
 けれど、『面倒』以上ではないのだと彼女は切り替える。

 ユーベルコードを使えば、多くのことが可能になる。
 彼女が手にした魔術は、多くが代行してもらえるものであったし、手間も力も省くことができる。
 けれど、ティオレンシアという猟兵においてユーベルコードとは、己の経験、技量、練磨の全てを持ってして昇華したものである。
 影響がないとは言わない。
 普段より工程が増えた程度にしかティオレンシアは思えなかった。
「愛用の銃もある。五体も満足。なら――」
 もはや、己の技量が『シルバーレイン』に通じないとは思わなかった。

 爆風に紛れるようにしてティオレンシアは『シルバーレイン』に迫る。
 不意打ち。
 彼女は『シルバーレイン』の背後に達、その手にしたリボルバーの引き金を引く。
 愛用にリボルバーは手に馴染んでいる。
 意識しないでも弾丸を撃ち出す事ができる。
「――ヒトを殺す時に、別に何も特別な事をする必要はない」
 そう、女性の身であっても、このリボルバーは、ただの弾丸一発が優位にある者を覆すことができる。
 指一本動けばいいのだ。
 ならばこそ、ティオレンシアは薄く笑む。
 いつものように。
 変わらぬように。 
 ただ、己から逃れることの出来ぬ事実を示すように、手にしたリボルバーから放たれ『シルバーレイン』を撃ち抜く弾丸を捉える。

「射殺(クー・デ・グラ)、簡単よねぇ? そうでしょぉ?」
 微笑みの向こうにあるのは、『神秘を根絶するもの』を撃ち抜いたという結果のみ。
 如何にユーベルコードを打ち消されようとも。
 決して打ち消せぬものがあると示すように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月11日


挿絵イラスト