第二次聖杯戦争⑱〜神秘根絶のシルバーレイン
「第二次聖杯戦争への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は金沢市内の地図を広げ、語り始めた。
「各戦場の制圧は順調に進んでいますが、こちらの侵攻に対して『ハビタント・フォーミュラ』に動きがありました」
金沢市街を一望する卯辰山公園で戦いの趨勢を見守っていたハビタント・フォーミュラは、予想以上に早い猟兵の侵攻に「撤退」を決断した。この戦争を引き起こした事実上の元凶の1人でありながら、不利とみるや即座に他世界に逃走する選択を取ったのだ。
「ハビタント・フォーミュラは|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》に起こった戦争『ヨーロッパ人狼戦線2』を再臨し、戦争中に『闘神の渦』を投入し惨劇を生み出す計画を企んでいましたが、事前に動いた猟兵の活躍によってそれは阻止されました」
しかし、彼女が用意していた全ての『闘神の渦発動儀式』を阻止することは出来ず、残った「闘神の渦」を彼女は自らの逃走のために使うと方針を変更した。計画していた惨劇を引き起こすには不十分でも、それは世界結界にダメージを与えられる力を持っている。
「彼女がいた卯辰山の頭上には現在、ひときわ強い|銀色の雨《シルバーレイン》が降り注いでいます。それは闘神の渦によって崩壊した世界結界の一部が、その正体である戦闘存在『シルバーレイン』の軍勢に変形した事を示しています」
この『シルバーレイン』の軍勢を、ハビタント・フォーミュラは猟兵の足止めに使うつもりだ。超メガリス「聖杯」の力によって|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》の終盤に現れたという怪物。その脅威は神秘を否定するユーベルコード【神秘根絶】にある。
「【神秘根絶】は魔法や超能力といったあらゆる神秘現象を否定し、消し去る常時発動型のユーベルコードです。猟兵が使用する殆どのユーベルコードも、この例外ではありません」
この【神秘根絶】に加えてシルバーレインは1体1体が高い戦闘力を持ち、しかも集団で大量出現する。
苦戦は免れないであろう難敵だが、この軍勢を撃破しなければハビタント・フォーミュラを追跡することはできない。
「残念ながらハビタント・フォーミュラ本人は既に撤退した後のようです。ですが『1月15日』までにこの戦場を制圧できれば、彼女が逃走に使ったブレインバイシクルの痕跡を探し出し、逃走先に続く『|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》』を発見できると、リムのグリモアは予知しました」
故に、この戦いは時間との勝負になる。予知された期日までにシルバーレインの軍勢を倒し切ることができなければ、ハビタント・フォーミュラは行方知れずとなる。また何処かの世界で新たな事件が予知されるまで、彼女の暗躍を止められなくなるのは非常に危険だ。
「シルバーレイン撃破において最大の障害はやはり【神秘根絶】ですが……純粋な肉体や技術、機械文明を利用した攻撃やユーベルコードは、この影響を受けないようです」
猟兵の武器は決して「神秘」だけとは限らない。他世界で発達した科学的なテクノロジーや、鍛え上げた肉体の技などであれば、シルバーレインを打倒できる可能性は十分にある。世界結界を創り出した者も想定不可能な、この世界には存在しえない手段を用いれるのがこちらの強みと言えるだろう。
「戦争そのものの行方も気になりますが、ここでハビタント・フォーミュラの完全逃走を許すのは危険すぎます。どうか、皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、銀の雨降る卯辰山公園に猟兵を送り出す。
待ち受けるは世界結界の真の姿にして神秘を根絶するもの『シルバーレイン』。あらゆる神秘を否定し、忘却の時代を生み出した過去との戦いが幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオは逃走したハビタント・フォーミュラの行方を追うために、世界結界の化身である『シルバーレイン』の軍勢を撃破する依頼です。
このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……「神秘根絶」に対処する。
シルバーレインはあらゆる神秘現象を消し去るユーベルコード【神秘根絶】を、通常のユーベルコードとは別に常時発動しています。魔法や超能力のような「神秘的」な力はユーベルコードでも無効化されてしまうため、戦い方や攻撃手段を考える必要があります。
また神秘根絶を抜きにしてもシルバーレインの戦闘力は非常に高く、大軍勢で押し寄せてくるため大きな脅威になります。どうか全力で挑んでいただければ幸いです。
1月15日の更新時までにこの戦場を制圧できたら、シルバーレインを全滅させた後にブレインバイシクルの痕跡を探し出し、ハビタント・フォーミュラの逃走先に続く『|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》』を発見できます。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『シルバーレイン』
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POW : 銀の虹
【超常の存在を否定する意志と力】を宿した【銀色の虹】を射出する。[銀色の虹]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD : レインカッター
【銀色をした刃の雨】を降らせる事で、戦場全体が【神秘なき世界】と同じ環境に変化する。[神秘なき世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : 滅神光線
【装備した『滅神詠唱兵器』】からレベルmまでの直線上に「神殺しの【光】」を放つ。自身よりレベルが高い敵には2倍ダメージ。
イラスト:新井テル子
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山吹・慧
シルバーレイン……。
もう二度と会う事はないと思っていましたよ……。
そして神秘根絶ときましたか……。
中々の状況ではありますが、戦いようはあります。
ゆきましょう。(長剣を握り)
まずは炸裂弾をばら撒いて敵陣を光の【目潰し】と
爆発で攪乱しましょう。
そのまま囲まれないように注意しながら、
怯んだ敵を狙って【功夫】による打撃と
【グラップル】による関節技を仕掛けていきます。
そして敵の攻撃に対して【ジャストガード】からの
【受け流し】で隙を作り、長剣による【剣刃一閃】を
放ちましょう。
剣の扱いはあまり得意ではないのですが……、
もっと修練を積んでおくべきでした。
「シルバーレイン……。もう二度と会う事はないと思っていましたよ……」
それは神秘根絶を謳った一人の巡礼士が起こした事件。現代において『天空の戦い』と呼ばれる戦争で猛威を振るった、世界結界の真の姿『シルバーレイン』。彼らを使役できる者が喪われ、世界結界も消滅するに伴い、その存在は過去のものとなるはずだったが――こうしてオブリビオンと化した彼らと再び相まみえることになるとはと、山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)は表情を引き締める。
「そして神秘根絶ときましたか……。中々の状況ではありますが、戦いようはあります」
ただ存在するだけで神秘を否定するシルバーレインの能力は、この世界の全能力者の天敵だ。それでも彼には立ち止まれない理由があり、あの頃よりも成長した技がある。人狼騎士団で授けられた一振りの長剣を携えて、青年は銀の雨降る戦場に赴く。
「ゆきましょう」
慧の接近を認識したシルバーレインの軍勢は、無言のまま静かに近付いてくる。人間の形を模してはいても、人間性はまるで感じられない。ハビタント・フォーミュラに復活させられた彼らの使命は、ここに来る猟兵達を殲滅する事だけだ。
「まずはこれで撹乱しましょう」
そう言って慧はポケットから炸裂弾を取り出し、敵の目の前にばら撒く。神秘に由来する品ではないが、性能を強化した特注品だ。銀色の雨もかき消すほどの激しい光と爆発が起こり、シルバーレイン達の目を眩ませる。
「――……!」
シルバーレイン達が怯んだのに合わせて、慧は剣を握ったまま走りだした。囲まれないように注意しながら、隙をみせた敵に狙いを定め、接近と同時に拳を叩き込む。アビリティでもユーベルコードでもないただの格闘技だが、拳士として積み重ねた功夫は決して裏切らない。
「人の姿をしているのなら、この技も有効でしょう」
打撃で体勢を崩させてから、グラップルからの関節技に繋げる。極められたシルバーレインの腕がメキメキと音を立てて曲がり、そして折れる。苦痛を感じる精神は無くとも、四肢をもぎ取られれば戦力は落ちるだろう。
「…………」
そこに他のシルバーレイン達が【銀の虹】を放ってくる。傍にいる仲間が巻き添えを食らうのは一切気にしていないのだろう。超常の存在を否定する意志と力を宿した弾幕が、かつての|銀色の雨が降る時代《シルバーレイン》を思わせる規模で降り注ぐ。
「少し、懐かしさを感じますね」
慧は手足を折ったシルバーレインを盾にして銀色の虹から身を守り、防ぎきれない分は長剣でガードする。
ジャストなタイミングで刃を合わせることで、攻撃を完全に受け流し。そして攻撃後に生まれる隙を狙って、敵との間合いを詰め【剣刃一閃】を放つ。
「剣の扱いはあまり得意ではないのですが……、もっと修練を積んでおくべきでした」
白銀に閃く軌跡と、自戒の言葉から一拍遅れて、胴体を真っ二つに切断されたシルバーレインが崩れ落ちる。
若い頃から格闘技を主体に戦ってきた慧にとって、剣技が不得意というのは事実なのだろう。それでもユーベルコードの域に達した技と力は、神秘に依ることなくオブリビオンを討つ絶技と化していた――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクレツィア・アストリュード
神秘を否定する力の化身。
頼みとなるのは純粋なる力と技。
ならば、ボクが『答え』示すべき敵。
ボクの持てる力は、常軌こそ逸していれども人の技術によって生まれたもの。
なら、神秘なき世界にも適応はできる。
後は、刃の雨を弾く為の【念動力】での斥力場形成が可能ならそれで回避。
不可能なら、頑張って走って回避。SkyWalkerでの【空中機動】も交えつつ。
いずれにせよ、シルバーレインの攻撃は空中機動も交えた三次元機動で躱してゆく。
敵を刀の間合いに捉えたら、神殺樹刃を発動。
その身もまたオブリビオンなら…斬るだけ、だよ。
「神秘を否定する力の化身。頼みとなるのは純粋なる力と技。ならば、ボクが『答え』示すべき敵」
これまでの敵達とは異様な雰囲気をまとった、世界結界の化身『シルバーレイン』と対峙し、ルクレツィア・アストリュード(終極フラガラッハ・f30398)はそう語った。その剣で「全て」を斬ることは可能なのか、という「問い」に「答え」を求めた狂気の果てに生まれたアンサーヒューマン、それが彼女である。
「ボクの持てる力は、常軌こそ逸していれども人の技術によって生まれたもの。なら、神秘なき世界にも適応はできる」
神秘を否定するものを、神秘なき人の業にて斬る。そうすれば自分はまた一歩『答え』に近付けるだろう。
背負うのは身の丈を超すほどもある片刃反身の大太刀「The Answerer」。彼女はそれを何の苦もなく鞘から抜き放つと、無表情に構えを取った。
「…………」
シルバーレイン達は無言のまま一切の感情を見せず、戦場に銀色の刃の雨を降らせる。ルクレツィアはそれを弾くために念動力での斥力場形成を行おうとしたが――念じても力が生じる感覚はない。やはり魔法や超能力の類は【神秘根絶】に打ち消されてしまうようだ。
「それなら、頑張って走るだけ」
頼りになるのは強化された自分の肉体と、科学技術が生んだ装備品。彼女が履いているブーツ「SkyWalker」は斥力場を発生させ、ある程度の空中機動を可能にする。これを活かした三次元の動きで戦場を駆け回り、刃の雨を躱す姿は踊っているようにも見えた。
「――……」
標的を討つことなく地面を濡らした【レインカッター】は、世界結界が地球を守っていた時代と同じ、神秘なき世界に戦場を塗り替えていく。この環境はシルバーレイン達にとっては自分の一部のようなものであり、動きが見るからに良くなったのが分かる。
「なるほど。これが神秘なき世界、か」
しかし、この環境に適応したのはルクレツィアも同じだった。彼女を構成する要素は奇跡や神の御業などではない、人の業による産物。本人も自認していた通りに支障はなく、これまでよりキレのある動きで刃の雨の下を駆け抜け、敵との距離を詰めていく。
「その身もまたオブリビオンなら……斬るだけ、だよ」
常人の粋を超えた超高速機動で敵を刀の間合いに捉えたルクレツィアは、シルバーレインがその手に詠唱兵器を現出させるよりも速く【神殺樹刃】を放つ。すれ違いざまの刹那の間に、敵を捉えた斬撃の数は四つ――何が起きたかを認識する前に、確定的な死が訪れる。
「これで、終わり」
「――……!!」
バラバラに崩れ去り、小さな銀色の光となって消えていくシルバーレインを、彼女はもう振り返りもしない。
神秘なき世界を縦横無尽に駆け、神秘を根絶する過去を斬り伏せる。これが自分の「答え」であると、ここにはいない誰かに証明するように――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
神秘現象を根絶する…ってことはオーラ操作や念動力は通用しないってことか…
(「ま、そういうことね。本当に厄介だこと。でも黒影、機械や鍛え上げられた肉体は通用するらしいわよ。」と頭の中の教導虫が話しかける)
でも俺そんなに筋肉ないですよ?おまけに機械も得意じゃないし…
(「違う!{要塞蠍}があるでしょうが!これに乗って軍隊虫に攻撃させりゃあいいのよ!」)
なるほど!となると…光学兵の皆さんなら戦えるかな?
(「レーザーブレードを放つように遺伝子改造した芋虫だからね…いけるんじゃない?」)
よし!ではその作戦で行きましょう!
(UC【光殺鉄道】発動)
「神秘現象を根絶する…ってことはオーラ操作や念動力は通用しないってことか……」
(ま、そういうことね。本当に厄介だこと)
オブリビオンと化した世界結界の化身『シルバーレイン』が持つ、驚異のユーベルコード【神秘根絶】。普段から少なからず神秘的な力を利用して戦ってきた黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、頭の中にいる教導虫「スクイリア」と対策を話し合う。
(でも黒影、機械や鍛え上げられた肉体は通用するらしいわよ)
「でも俺そんなに筋肉ないですよ? おまけに機械も得意じゃないし……」
素の身体能力任せに殴りかかったとしても、あれだけの怪物の大軍に勝てるとは思えない。どうしましょうと首をひねる彼に、教導虫は「違う!」と脳内から叫んだ。別に無いものねだりをしなくても、解決のためのカギは手元に揃っているのだ。
(要塞蠍があるでしょうが! これに乗って軍隊虫に攻撃させりゃあいいのよ!)
「なるほど!」
スクイリアの言う「要塞蠍」とは、異世界で入手した兵庫用の|機動兵器《キャバリア》である。魔法や超能力の類を用いない機械文明の産物であるため、【神秘根絶】でも無力化はされないだろう。そして彼が使役する虫達も神秘的な生物という訳ではなく、高度なバイオテクノロジーの産物に近い。
「となると……光学兵の皆さんなら戦えるかな?」
(レーザーブレードを放つように遺伝子改造した芋虫だからね……いけるんじゃない?)
一度解決策が見つかれば作戦が纏まるまでは早かった。兵庫が案を出し、スクイリアが可否を確かめる、この二人一組の態勢が彼らの一番の強みかもしれない。経験と知識と二人ぶんの知恵があれば、神秘根絶も恐れるに足らずだ。
「よし! ではその作戦で行きましょう!」
さっそく兵庫は「要塞蠍」に乗り込み、卯辰山中の戦場に向かう。通常キャバリアは人型をしたものが多いのだが、彼の乗機はその名の通り蠍のような外見で、火器類は皆無、武装は鋏と尾のみという、重装甲に特化した多脚戦車型キャバリアである。
「…………」
この機体が戦場に姿を現すと、シルバーレインの軍勢は一斉に【銀の虹】を浴びせるが、それが取り柄なだけあって、少々の被弾では蠍の装甲はビクともしない。操縦席にいる兵庫は得意げな様子で笑みを浮かべていた。
「光学兵の皆さん! サイコロステーキのようにしちゃってください!」
敵の初撃が収まると、兵庫は【光殺鉄道】を発動。要塞蠍の中から小さな鉄道虫の群れを発進させ、一斉攻撃を行わせる。彼らが放つレーザーは神秘によるものではない、科学現象に基づいて束ねられたもの。世界結界でも阻むことのできない閃光の刃が、シルバーレイン達に浴びせられる。
「――……!」
無数の光の線が刹那のうちに駆け抜けていった後、連中の体は兵庫の宣言通りバラバラに切り刻まれていた。
並みの魔剣や妖刀よりも鋭い切れ味。運良く射程の外にいたシルバーレインにも、動揺が走るのが分かった。
「作戦成功ですね!」
(ええ、この調子で行くわよ!)
兵庫達はそのまま防御を要塞蠍で、攻撃を光学兵で行う戦法でシルバーレインを攻め立てていく。巨大な機械の蠍の指揮下で、レーザーを放つ芋虫の群れ――という光景は"神秘"では無いが、なかなか"非常識"である。
世界結界、ひいてはシルバーレインを創造した者達も、こんな力は想定外だっただろう。異世界より来たりし虫と不惑の尖兵が、神秘なき戦場を圧倒する。
大成功
🔵🔵🔵
アラン・スミシー
足を止めて撃ち合えるのならそれこそ好都合さ
なにせ私の武器は「余りにもありふれたもの」だからね、少しばかり因果をいじっていても、とても神秘とは言えないだろう
…魔法のようだって言われたらそれはそれで光栄だけどね
相手がその場から動かないなら戦い方ってのはあるさ
単に障害物に隠れながら銃器で撃ち落としていく、簡単さ
鉛玉が効くならどんな怪物だって倒せるはずさ
…弾と銃の数には余裕がある、もし前線にでて直接殴り合うような勇敢な猟兵がいたらその道を開くための援護くらいはしようか
「ここは私に任せて先に行くんだ」
さて、言った手前どこまで撃ち落とせるか…、ショータイムと行こうじゃないか
発破くらい用意すれば良かったかな
上野・修介
※アドリブ・連携歓迎
元より己の武器は素手喧嘩。
鍛えた身体と技、積み重ねてきた経験、あとは多少の意地のみ。
何一つ特別なモノは無い。
UCにしても元から在るモノに名前を付けて動作精度を上げているに過ぎず、そも『起動』させる必要すらない。
故にいつもと変わらない。
――為すべきを定め、心は水鏡に
調息、脱力、戦場を観据える。
目付は広く、敵の数と配置、周囲の状況を把握
「推して参る」
UCの攻防は適宜切り替え。
立ち回りはヒット&ウェイ。
姿勢は低く敵の懐から懐へ渡るように初動から足を止めず常に動き回る、あるいは近くの敵を遮蔽、もしくは殴る・蹴る・ぶん投げる等で投擲物として利用し、包囲と被弾を極力回避しながら殲滅。
「足を止めて撃ち合えるのならそれこそ好都合さ。なにせ私の武器は『余りにもありふれたもの』だからね。少しばかり因果をいじっていても、とても神秘とは言えないだろう」
魔法のようだって言われたらそれはそれで光栄だけどね――と嘯きながら、アラン・スミシー(パッセンジャー・f23395)は『シルバーレイン』の前で銃を抜いた。映画では怪物退治の定番といえる「ソードオフ・ショットガン」。神秘ではなく人の技術と殺意が作り上げた、現代ではもっとも"常識的"な武器だ。
「元より己の武器は素手喧嘩。鍛えた身体と技、積み重ねてきた経験、あとは多少の意地のみ。何一つ特別なモノは無い」
他方、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)に至ってはそのような銃すら持たず、鍛錬と実戦で磨いた総合徒手格闘の技術だけを武器に、怪物共と向かい合っていた。その無謀を現実に変える礎となっているのは強靭なる肉体と精神。ある種、下手な神秘よりも余程常軌を逸しているかもしれない。
「――……」
新たに現れた2人の猟兵に対して、シルバーレインの軍勢は【銀の虹】の射出態勢に入る。超常の存在を否定する意志と力を宿した彼らの攻撃は【神秘根絶】を抜きにしても高い威力を誇る。神秘による防御が行えないぶん、直撃すれば猟兵でも無事では済まないだろう。
「相手がその場から動かないなら戦い方ってのはあるさ」
対してアランはその様子から、敵がこれ以上先に自分達を進ませないようにしているのを確信。攻撃が飛んでくる前に近くの障害物に身を隠し、遮蔽を確保しながら撃ち合うスタイルを取る。アクション映画のような見栄えはないが、これが一番安全で簡単な戦い方だ。
「――為すべきを定め、心は水鏡に」
一方の修介は逃げも隠れもせず、調息、脱力し、戦場を観据える。目付は広く、敵の数と配置、周囲の状況を把握。平時から無意識下で行っている一連の「基礎」を意識的に行うことで、身体機能と動作精度を向上させるこの手法を、彼は【拳は手を以て放つに非ず】と呼ぶ。
「推して参る」
修介の言葉と、シルバーレインが【銀の虹】を放つのは同時だった。空中で軌道や速度を変えながら雨のように降り注ぐ幾つもの銀光。だが彼にはその全てが視えており、最小限の動作で的確に躱し、敵に近付いていく。
「へえ、大したものだね」
文字通り身一つで敵に立ち向かっていく修介を見つつ、アランは障害物の裏から銃を撃つ。ズドンと派手な音と共に撃ち出された弾丸は、攻撃直後のシルバーレインの顔面にヒットした。悲鳴を上げたりはしないが、衝撃で大きく仰け反っている。
「鉛玉が効くならどんな怪物だって倒せるはずさ」
遮蔽に身を隠してリロードを行い、撃つ時だけ僅かに、それも一瞬だけ姿を晒してトリガーを引く。一つ一つの動作に神秘性はなんら無いのだが、その全てが洗練された結果、攻防一体の隙のない戦法が完成されていた。
(……弾と銃の数には余裕がある、その道を開くための援護くらいはしようか)
足を止めての射撃戦を演じながら、アランは修介のほうに視線をやる。前線に出て直接殴り合うような勇敢な猟兵のために、ここで一肌脱ぐのも悪くない。彼を狙っている【銀の虹】に照準を合わせると、男はこういう時のお定まりのセリフを言った。
「ここは私に任せて先に行くんだ」
「――感謝する」
後ろから発砲音が聞こえた直後、前方からの攻撃が撃ち落とされる。的確な援護射撃に一言感謝を述べつつ、修介は好機を逃さず前に駆けだした。一度徒手格闘の間合いに入りさえすれば、そこからが彼の本領発揮だ。
「――シッ!」
姿勢を低くして敵の懐に潜り込んだ修介は、鋭い呼気と共に拳を打ち込む。ドゴォ、と重たい衝撃がシルバーレインの腹を突き抜け、胴体をくの字に曲げる。ユーベルコードの補助があるとはいえ、生身の人間の拳とは思えない威力だ。
「――……!」
猟兵の接近を許したシルバーレイン達は包囲殲滅を試みようとするが、修介はたった今殴り倒した敵を鷲掴みにしてぶん投げ、遮蔽兼投擲物として利用する。投げ飛ばされた敵と敵がぶつかって連携が乱れた隙に、また別の敵に接近して蹴り飛ばす。後はその繰り返しだ。
「――力は溜めず――息は止めず――意地は貫く」
乱戦の最中でも一つ一つの所作を雑にせず、余分な力を抜き落ち着いた心持ちで戦う修介。様々な武術と数々の"喧嘩"を基礎にした彼の格闘術は独自の流派として昇華されており、近接戦ではシルバーレインといえど勝ち目はない。そして射撃戦においては、後方からアランが【足止め】を続けている。
「さて、言った手前どこまで撃ち落とせるか……、ショータイムと行こうじゃないか」
【銀の虹】を撃とうとする敵を優先して狙い、発射を阻止、もしくは弾丸自体を撃ち落とす。ショットガンの弾が切れればライフルや拳銃も使って、射撃の手を休めない。演奏と呼ぶにはいささか情緒がないが、無骨な拳に合わせた演出としては良いかもしれない。
(発破くらい用意すれば良かったかな)
そんな事を考えつつアランは銃器を操り、鉛玉を怪物達にプレゼントする。止まない銃声にシルバーレインが浮き足立てば、その懐から懐に渡るように、修介がやって来て拳を見舞う。初動からずっと足を止めずに常時動き回っているのに、彼の呼吸は乱れてすらいない。
「――そこだ」
淡々と、重く、鋭く、撃ち込まれる拳や蹴撃が、神秘の否定者に引導を渡す。神秘とは無縁の力で『過去』に立ち向かってきた彼らの戦果は、理解できぬ者には奇跡のようにも思えよう。しかし、それを現実としたのは紛れもなく彼ら自身の実力だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ
「神秘根絶ね。へっ!“ブレイザイン”は超科学の結晶!
神秘じゃない、人の努力の結晶だ!」
神秘根絶の中でも以前変わりなく滾る力を確認しながら、
ソルブレイザーを転送して騎乗する
「いくぜ、ブレイズビートル!
ハイパーソルブレイザー、出撃!」
シルバーレインの群れに真正面から[騎乗攻撃]
更にサンライザーとハイパーソルブレイザーの
キャノン砲に[エネルギー充填]
「まとめて持ってけ!ハイパーソルバースト!!」
無数の[誘導弾]を[一斉発射]、
キャノン砲からは極太ビームを放つ
戦場を駆け巡りながら次々放って暴れ回る
シルバーレインからの攻撃は[気合い]で耐える
「まだまだ!オレは止まらねえ!」
「神秘根絶ね。へっ! "ブレイザイン"は超科学の結晶! 神秘じゃない、人の努力の結晶だ!」
あまねく神秘を否定する『シルバーレイン』を前にしても、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が臆する理由は皆無だった。その訳は本人が語った通り。その身に纏う真紅の機械鎧――ヒーローズアースで生まれた高度なテクノロジーが、彼の力の源だからだ。
「来い、ソルブレイザー!」
【神秘根絶】の中でも依然変わりなく滾る力を確認しながら、彼が叫ぶと一台のバイクが転送されてくる。
ヒーロー「超鋼真紅ブレイザイン」の専用バイク「ソルブレイザー」。それに跨った彼はエンジンの咆哮を轟かせながら、立ちはだかる怪物達に挑む。
「いくぜ、ブレイズビートル! ハイパーソルブレイザー、出撃!」
【合体『剛炎勇車』】の宣言と共に、空から舞い降りた"鋼炎虫"ブレイズビートルがソルブレイザーの追加武装として合体する。より重厚な装甲と、電光石火のスピードを手に入れた鋼の騎馬は、清導を乗せてシルバーレインの群れに真正面から突っ込んでいく。
「…………」
対して敵は無言のまま手をかざし、超常の存在を否定する意志と力を宿した【銀の虹】を射出する。だが既に述べられた通り、清導の能力及び装備に神秘的な事象は関わっていない。飛来する銀色の虹はバイクと乗り手の装甲を傷付けはしたが、突撃の勢いを落とすことは叶わなかった。
「効かねえ!」
加速を緩めるどころかエンジンをますます吹かす清導。その機械鎧に張り巡らされたエネルギー供給ラインが赤く輝き、搭載された砲撃用超兵器「サンライザー」及びハイパーソルブレイザーのキャノン砲にエネルギーが充填されていく。
「まとめて持ってけ! ハイパーソルバースト!!」
高らかに技名を叫べば、装甲に内蔵された無数の誘導弾が発射され、二門のキャノン砲からは太陽のように熱いビームが放たれる。銀色の雨の輝きに包まれた戦場を、真紅に塗り替えるほどの閃光。神秘や奇跡ではない、人の叡智が生み出した光だ。
「……――」
咄嗟に回避行動を取ろうとしたシルバーレインを誘導弾が追い込み、ガードの上から極太ビームが撃ち貫く。
避けることも防ぐことも叶わない。ヒーローの必殺技とはそういうものだ。清導は戦場を縦横無尽に駆け巡りながら、目についた敵に次々同じ攻撃を放って暴れ回る。
「どうだ!」
その姿はさながら紅き稲妻。何とか彼の勢いを挫こうと、残ったシルバーレイン達が一斉に反撃してくる。
空中で軌道を変え、バイクを包囲するように飛来する銀色の虹。流石にこれを避けることはできず、装甲部に浅からぬ損傷を受けるが――。
「まだまだ! オレは止まらねえ!」
清導を支えるのは科学だけではない。胸の奥で燃える正義の心と気合いが、ヒーローが立ち上がる原動力だ。
傷の痛みなんて知るものかと、愛騎を走らせる彼の背中でマントが炎のようにたなびく。それはヒーローがここに居るという何よりの証明。滾る想いを乗せたサンライザーの閃光が、歪んだ白銀を打ち破っていく――。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
…地獄の炎が…使えない…
…だが…この世界を救う為に…武器を振るおうぞ…!
さぁ行くぞ…私は処刑人…!
[覚悟]を胸に灯して
鉄塊剣と妖刀を抜き振るい敵と戦闘
敵の攻撃と動きを[心眼と気配感知]で見切りつ
[ダッシュとジャンプ]で回避しよう
妖刀を抜き振るい[鎧無視攻撃で切断]してゆき
鉄塊剣を振り回して【慈悲深き乙女の一撃】を叩きつけて
[怪力と重量攻撃]で敵群を殲滅し[蹂躙]してゆこう…!
例え地獄の炎が…呪われた力が使えなくとも…私は処刑人…!
一匹たりとも逃がすまいぞ…!覚悟しろッ!!!
「……地獄の炎が……使えない……」
常日頃から自分の中で燃え盛る、もっとも身近な武器のひとつだったブレイズキャリバーの力。それを行使できない違和感を仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)は実感していた。『シルバーレイン』による【神秘根絶】は、この世界に由来しない異世界の神秘にも確かに影響を及ぼすようだ。
「……だが……この世界を救う為に……武器を振るおうぞ……!」
地獄の炎は否定されても、胸に灯る「覚悟」という名の火は消えない。呪われし処刑人の一族として鍛えられた技と、処刑を実行するための道具の数々がまだ残っている。右手で鉄塊の如き巨大剣「錆色の乙女」を、左手で妖刀「アサエモン・サーベル」を抜き放ち、彼女はシルバーレインの大軍と対峙する。
「さぁ行くぞ……私は処刑人……!」
静かな言葉遣いに秘められた並々ならぬ気迫。それに反応してか、シルバーレイン達はアンナを見るなり【銀の虹】を撃ってきた。超常の存在を否定する意志と力を宿した銀色の輝きは、世界結界と|銀の雨《シルバーレイン》の化身である彼らを象徴する技だ。
「……見切った……!」
しかし。歴戦の処刑人であるアンナは、肉眼よりも鋭い心眼で攻撃の気配を察知し、変化する銀の軌道上から飛び退いた。大型武器の重さを感じさせぬほど彼女の動きは機敏であり、時には軽快なダッシュで、時には豪快なジャンプで、敵の攻勢をくぐり抜けていく。
「人の形をしているのなら……どう動くかも分かる……!」
白兵戦の間合いに肉迫したアンナが妖刀を振るうと、シルバーレインを包む外套状の装甲が切り裂かれ、四肢が斬り落とされる。伝説にある首斬り処刑人の名を冠したカタナ、その切れ味は呪いを差し引いても凄まじいの一言。使い手の技量が合わされば、斬れぬ咎人などいるものか。
「お前達に苦しむ心があるかは知らないが……この一太刀で苦しみを絶ってやる……!」
さらに鉄塊剣による【慈悲深き乙女の一撃】が叩きつけられると、周囲にいたシルバーレインが纏めて吹き飛ばされる。驚異的な重量と怪力にものを言わせたシンプルな一撃は、標的に苦痛を感じる間もなく死を与える。容赦なき慈悲の斬撃が敵を銀色の粒子に粉砕していった。
「例え地獄の炎が……呪われた力が使えなくとも……私は処刑人……!」
純然たる肉体の力と処刑人の技術だけで、アンナはシルバーレインの群れを蹂躙していた。【神秘根絶】何するものぞと、妖刀を振るい、鉄塊剣を振り回す。暴風の如き戦いぶりを前にして、敵は近付くことさえできずにいた。
「…………」
シルバーレインに感情の起伏などはないが、警戒を強めているのだろう。剣の間合いに近寄ろうとはせずに、遠距離から【銀の虹】で仕留めようとする。しかし一度勢いに乗ったアンナをその程度で止めることはできない――錆色の乙女のひと薙ぎで、銀色の虹はあらぬ方向に吹き飛ばされた。
「一匹たりとも逃がすまいぞ……! 覚悟しろッ!!!」
そのままアンナは離れていたシルバーレインに駆け寄り、裂帛の気合と共に大上段から鉄塊剣を振り下ろす。
地形ごと粉砕ずるほどの猛烈な一撃によって、敵は逃げる間もなく銀の雨に還る。神秘を否定しようとも否定できないその力は、まさに人の人たる意志と技、そうとしか呼べないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
龍巳・咲花
まさか歴史で習っただけ存在と相まみえるとは驚きでござるが、先輩方が一度既に通った道でござるからな、拙者も遅れをとるわけにはいかぬでござる!
純然たる体技勝負ということでござるな!
降り注ぐ銀色の刃の雨を躱しながら、手裏剣で牽制攻撃を仕掛けつつ相手の動きを読み、動きた先に向けて鋼糸付きのクナイを投擲し相手を絡め捕るでござるな!
間髪入れず鎖鎌の鎖部分を相手の身体の一部に巻き付け、地面に叩きつけそのまま引き寄せるでござる!
更には自らも相手へ飛び込み、速度を乗せた正拳突きと回転蹴りを組み合わせた連撃を叩き込むでござる!
〆に鎌で斬りつけ、飛び退きながらの手裏剣とクナイを投げつけるでござるよ!
「まさか歴史で習っただけの存在と相まみえるとは驚きでござるが」
それは世界結界と聖杯の喪失に伴い、二度と復活することはないと考えられていた存在。ハビタント・フォーミュラの陰謀によりオブリビオンとして蘇った『シルバーレイン』を見て、龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)は驚きつつも手裏剣を構える。
「先輩方が一度既に通った道でござるからな、拙者も遅れをとるわけにはいかぬでござる!」
かつても撃破された記録が残るなら、決して無敵の存在ではない。【神秘根絶】の危機を阻止した偉大な先達に倣って、彼女は勇ましく一歩を踏み出した。この戦場ではあらゆる神秘現象が否定される――龍陣忍者として学んだ忍法や龍脈の力などは、ほとんど使えないと考えるべきだろう。
「純然たる体技勝負ということでござるな!」
忍術にばかりかまけた温い鍛錬をしてきたつもりはないと、自負をもって走りだす咲花。そんな彼女の頭上に降り注ぐのはシルバーレインの【レインカッター】。神秘なき世界に環境を塗り替える、銀色をした刃の雨だ。
「………」
敵は無言のままこの雨の中を自由に動き回り、咲花との距離を詰めてくる。刃の雨と共に包囲を敷くことで、標的を追い詰めるつもりだろう。しかし彼女も簡単にやられはしない――俊敏な体捌きで刃の雨を躱しながら、手裏剣で牽制攻撃を仕掛けつつ相手の動きを読む。
「……そこでござる!」
神秘なき環境に適応したシルバーレイン相手だと、ただの手裏剣では本当に牽制程度にしかならない。だが、次に相手がどこに動くかを先読みした上で、咲花はもう一度投擲を仕掛けた。今度放ったのは「龍糸銕線」を取り付けたクナイ。付与術式の効果は発動せずとも、強靭なる鋼の糸が敵を絡め捕る。
「捕らえたでござるよ!」
間髪入れずに鎖鎌「ムシュマフ・クロウ」の鎖を相手の脚に巻き付け、力一杯引っ張って地面に叩きつける。
無様に引き倒されたシルバーレインは、一瞬何が起きたか分からずに「……?」と首を傾げていたが、それが立ち上がるまでの猶予を与えるつもりは無い。
「拙者の体術をお見せする時でござるな!」
そのまま相手を引き寄せつつ、自らも相手に飛び込んでいく咲花。接近の速度を乗せて繰り出すのは正拳突き「龍顎拳」。小さな少女の拳がシルバーレインの巨躯に叩き込まれ、僅かに相手をのけ反らせた。それだけなら大したダメージでは無かっただろうが――。
「まだでござる!」
休みなく放たれた回転蹴り「龍尾脚」が、鋭い円弧の軌跡で敵を打つ。その直後にはまた正拳突きで追撃。
一撃の軽さを手数で補う連撃の極み。それが彼女の会得した【龍顎龍尾龍撃乱舞】だ。突きと蹴りを組み合わせた猛ラッシュを受けて、敵は反撃に転じることができない。
「これで〆にござるよ!」
連撃の最後に鎌で斬りつけ、飛び退きながら手裏剣とクナイを投げつける。蓄積された打撃のダメージにダメ押しを加えられて、ついにシルバーレインは動かなくなった。咲花はすぐさま鎖鎌の鎖を手元に引き戻し、拳法の構えを取りつつ叫ぶ。
「さあ、次は誰にござるか!」
戦場にいるシルバーレインの数はまだ多い。だが神秘を否定するこの環境で、神秘に頼らず敵を倒せたという事実は大きい。あとは体力が許す限り戦い続けるだけ。今の世界を守る新たな世代の1人として、若き能力者は勇躍するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
暗躍する手合いを逃がすと碌なことにならないというのはこれまでの歴史も証明している
次の企みが始まる前に、ハビタント・フォーミュラは始末したい所だが……そのためにはこの戦いを乗り越える必要があるか
まずは先手を取って、一番近い所にいるシルバーレインに対して澪式・拾の型【征伐】の歩法で無造作に接近
間合いに入った所で利剣を抜いて斬り捨てる
斬ったシルバーレインを盾にして攻撃を防ぎつつ、まだ生きていれば止めを刺して、次の敵へ接近
尤も、奴らが同士討ちを避けるような思考を持っているかは分からない
俺と仲間、諸共撃ってくる可能性を考慮して、できるだけ早く移動
敵が躊躇しないようなら、盾にする動きには拘らないようにする
「暗躍する手合いを逃がすと碌なことにならないというのはこれまでの歴史も証明している」
その手の輩は誰にも気付かれないよう水面下で準備を整え、表に出てきた時には手遅れというケースも多い。
猟兵には予知の助けがあるとはいえ、全ての陰謀を未然に察知できるほどグリモアも万能ではないと、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は理解していた。
「次の企みが始まる前に、ハビタント・フォーミュラは始末したい所だが……そのためにはこの戦いを乗り越える必要があるか」
自分を追ってくるであろう猟兵の足止めとして、ハビタント・フォーミュラが顕現させたのは世界結界の化身『シルバーレイン』。【神秘根絶】を担う無機質な兵士達は、無言の圧をもって鏡介の前に立ちはだかる。奴も厄介な置き土産を残していったものだ。
「なるべく手早く済ませよう」
そう言って鏡介は刀に手をかけ、敵が動きだす前に先手を取る。一番近い所にいるシルバーレインに狙いを定めて、仕掛けるのは澪式・拾の型【征伐】。間合いを誤認させる独特の歩法によって、無造作に接近を試みる。
「お前を斬る――」
「……――!」
シルバーレインがハッと気付いた時には、いつの間にか彼は間合いに入っていた。抜き放たれた利剣【清祓】の斬撃が、袈裟懸けに敵を斬り捨てる。神秘の力に頼らずとも、鍛え抜いた剣豪の技は神秘に匹敵するものであり――相手は銀色の雨を血飛沫のように噴き出して、動きを止めた。
「………!」
それを見た他のシルバーレイン達は巨大な『滅神詠唱兵器』を顕現させ、次々に襲い掛かってくる。神秘殺しの極みとも言える彼らの装備と、そこから放たれる【滅神光線】は、純粋な兵器としても高い威力を誇る。下手に被弾するのは得策とは言えない。
「盾がいるな」
そこで鏡介はたった今斬り倒したシルバーレインを盾にして、攻撃を防ぎつつ次の敵に接近する。仲間の刃や光線を受けたそいつが完全に死亡・消滅するまでの間に、間合いを詰めきって再び刀を一閃。敵の数を減らすと共に、また新しい「盾」を確保する。
(尤も、奴らが同士討ちを避けるような思考を持っているかは分からない)
この戦法を取ってからも敵の攻撃が緩まないところを見るに、どうやら期待はし過ぎないほうが良さそうだ。
こちらと仲間、諸共撃ってくるのであれば、できるだけ早く移動する必要がある。盾はあくまでその場しのぎの物と割り切って、あまり拘るべきではないか。
「敵が躊躇しないようなら、俺も動きを変えなければな」
状況はいささか厳しいが、それでも最悪と言うほどではない。相手に間合いを見誤らせる【征伐】の歩法は、射撃攻撃をくぐり抜けて接近する上で非常に有効だ。距離感の誤認識により誤射を誘発するだけでなく、気が付いた時には彼はもう、すぐ傍に立っている。
「お前を斬る」
一太刀ごとに発せられる宣告は決して外れることはなく。銀の雨降る戦場で、鏡介の利剣が銀の斬閃を描く。
1人、また1人と増えていくシルバーレインの屍は、神秘に依らぬ彼の技量がいかに高いかを物語っていた。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
神秘根絶に神殺しか
邪神だけ消えて僕だけ残るとか
都合のいい展開になったりしないかなぁ
世の中そんなに甘くありませんの
晶が痛い思いするだけですの
まあ、そうだよね
試しに当たってみるのもリスク高いし
素直に避けるよ
ワイヤーガンを利用して高速移動したり
ワイヤーガンを詠唱兵器に撃って
狙いを逸らしたりして回避しようか
普段はガトリングガンの弾を
その場で生成してるけど
今回は予め創って持ち込んでるよ
生成してしまえば
この世界にある弾丸と変わらないからね
とはいえ限りはあるし
それなりには重たいから
範囲攻撃で牽制してシルバーレイン達を
ある程度纏めたらUCを使用
この世界より少し進んでるかもしれないけど
ちゃんと科学の産物だからね
「神秘根絶に神殺しか。邪神だけ消えて僕だけ残るとか、都合のいい展開になったりしないかなぁ」
とある事故から邪神と融合してしまい、ひとつの肉体にふたつの心が同居する身となった佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、眼前に立ちはだかる『シルバーレイン』の軍勢を眺めながらそんなことを呟く。あらゆる神秘を否定すると言うのなら、邪神の力だって対象内だとは思うのだが。
(世の中そんなに甘くありませんの。晶が痛い思いするだけですの)
「まあ、そうだよね」
頭の中から聞こえてくる邪神の声と、晶の意見も同じだった。あの怪物達のユーベルコードが神秘とそうでないものを細かくふるいに掛けるように区別してくれるとは思えない。連中が装備している『滅神詠唱兵器』は、普通に人間が食らっても痛いでは済まなそうな代物だった。
「試しに当たってみるのもリスク高いし、素直に避けるよ」
(それが良いですの)
シルバーレインの軍勢が襲い掛かってくると、晶はワイヤーガンを近くの木の枝に放ち、ワイヤーを巻き取る力を利用して高速移動する。【神秘根絶】の効果範囲にあっても、これらの道具や武器は普通に使えるようだ。
「…………」
「おっと、危ない」
こちらに砲身を向けて【滅神光線】を放とうとする敵がいれば、今度は詠唱兵器にワイヤーガンを撃って狙いを逸らす。くいっとワイヤーに引っ張られて逸れた照準は、誰もいない空間を神殺しの光で撃ち抜いていった。
「今度は僕の番だね」
避けているだけでは勝てないからと、晶が取り出すのは「携行型ガトリングガン」。この銃の弾丸は普段なら邪神の物質創造力を利用してその場で生成するのだが、今回は【神秘根絶】を考慮して、予め創って持ち込んだ弾丸を装填済みだ。
(生成してしまえば、この世界にある弾丸と変わらないからね)
ぐっとトリガーを引き絞れば、銃身が高速で回転を始め、けたたましい轟音と共に弾丸の雨がばら撒かれる。
創造過程はさておけばただの鉛玉、しかしその殺傷力は人類の歴史が証明している。シルバーレインに対しても効果は十分あるようで、弾幕を浴びた敵群は大きく後退していた。
(とはいえ限りはあるし、それなりには重たいから)
いつもと違って残弾を意識しつつ、晶は銃身を左右に振って攻撃範囲を広げ、敵を牽制しながら誘導を行う。
弾幕を避けるシルバーレイン達は、知らず知らずのうちに自分達が一箇所に集められているのに気付いていない。ある程度纏めたところで、彼女は満を持して【試製火力支援無人航空機】を呼んだ。
「さて、派手にいってみようか」
通信を受けて卯辰山上空に到着する無人航空機。その機体から大量の小型ミサイルが発射され、複雑な幾何学模様を描きながらシルバーレインを包囲攻撃する。仮面じみた彼らの顔が、その瞬間驚いているように見えた。
「この世界より少し進んでるかもしれないけど、ちゃんと科学の産物だからね」
機械文明の発達が生み出した兵器の力は、神秘根絶にも否定されぬ"常識"の範疇。だが、その威力は先ほどのガトリングガン以上であることは言うまでも無い。火力支援の標的にされたシルバーレインの群れは、逃げる間もなく爆発と炎に包まれ、跡形もなく消し飛ばされていった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
神秘根絶…私にとってはまさに天敵ですね。
そう”かつての私”にとっては。
しかし私は猟兵となり、様々な世界で活動する中で、本来なら得られない力を得た。
これもまたその一つ(サイバー巫女クノイチスーツ着用)。
それでは行きますよ!
迷彩機能で姿を隠し、《フルバースト・マキシマム》によりスーツの各所から手裏剣やレーザーを一斉射撃。
スナイパー・貫通攻撃・レーザー射撃と併せてシルバーレイン達を撃ち抜きますよ。
敵に見つかって攻撃されたなら、第六感・心眼で相手の攻撃を予測して、見切りで躱します。
近接戦闘では雷月の2回攻撃・鎧無視攻撃で斬り、迷彩で隠れ、敵を盾にしたり、レーザー射撃・貫通攻撃で戦い抜きますよ。
「神秘根絶……私にとってはまさに天敵ですね」
異世界の女神、すなわち神秘そのものと言える大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は、眼の前にいる『シルバーレイン』達を見てそう呟いた。あらゆる神秘を否定する彼らの存在は、神秘の力に頼る者では手も足も出ないだろう。
「そう"かつての私"にとっては」
しかし彼女は猟兵となり、様々な世界で活動する中で、本来なら得られない力を得た。現在着用している「AI搭載型サイバー巫女クノイチスーツ」もまた、その一つ。タイトな忍装束に機械装甲とヘッドギアを組み合わせた、SF作品の住人のようないでたちは、普段の装いとはまるで別物だ。
「それでは行きますよ!」
詩乃が懐刀を持った手で印を組むと、スーツに組み込まれた迷彩機能が作動し、敵の視界から姿をくらます。
忍法や魔法ではない、科学の力だ。よってシルバーレインの【神秘根絶】でも無効化することはできず、忽然と消えた彼女の行方を追って敵は右往左往し始めた。
「一斉発射です!」
その隙に彼女は【フルバースト・マキシマム】を発動、スーツの各所から手裏剣やレーザー等の全武装を一斉に放ち、シルバーレインの軍勢を撃ち抜く。ただの乱れ撃ちではない本人の技量の高さもあって、それらは正確に標的の弱点を捉えていた。
「――……!」
思わぬ奇襲攻撃によるダメージを負ったシルバーレイン達。だが攻撃が飛んできた方角を辿れば、迷彩機能を見破れずとも大まかな射手の位置は分かる。超常を否定する意志と力を込めた【銀の虹】が、お返しとばかりに解き放たれた。
(流石に、これに当たる訳にはいきませんね)
科学の力を身に纏っていても、詩乃自身が超常の存在であることに変わりはない。第六感を研ぎ澄ませ、心眼で相手の攻撃を予測して、軌道を見切る。途中で速度や軌道が変化するのは厄介だが、向こうもこちらの位置を完全に特定した訳ではない。クノイチスーツの運動補助もあれば回避は可能だった。
(このまま撃ち合うよりは、接近戦に持ち込みましょう)
数的不利で炙り出されるのを危惧した詩乃は、まだ迷彩が活きているうちに姿勢を低くして敵陣に飛び込む。
懐にもぐり込むように間合いを詰め、懐刀「雷月」で素早く2度斬りつける。オリハルコンで鍛造された彼女の愛剣は、籠められた神力が作用しない状況でも鋭い切れ味を保っていた。
「……!!」
切り裂かれたシルバーレインの体から、銀色の雨が血のように吹き出す。反撃が来る前に詩乃は再び迷彩で姿を隠し、移動しながら次の標的に向かう。見つかって袋叩きにされないためにも、ここはヒット&アウェイの戦い方が一番適しているだろう。
「最後まで戦い抜きますよ」
姿を晒さずに戦場を駆け回る、クノイチらしい立ち回りで敵を翻弄していく詩乃。シルバーレイン達は闇雲に銀の虹を降らせて逃げ場をなくそうとするが、彼女は斬った敵を盾にして身を守り、さらにその裏からレーザーを放つ。
「……?!」
盾ごと貫通するレーザーの閃光が、シルバーレインの頭部を撃ち抜く。異世界で飛躍的に進歩した科学力は、神秘の天敵たる彼らにとっての天敵だった。女神がこれまでに歩み培ってきた力が、本来なら敵わぬはずの敵を駆逐していく――。
大成功
🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
【鉄拳】
キミ、猟兵だね?
ちょっと付き合って欲しい
出だしは防戦で体力を温存してくれ
合図の後は、勿論アクセル全開で頼むよ
先陣を切って敵の軍勢に攻撃
「トラップダイス」をばら蒔き起爆
マヒ毒の煙で猛攻を弛めつつ(▲マヒ攻撃・▲時間稼ぎ)
「仕掛鋼糸」で拘束(▲ロープワーク)、▲ぶん回し
「Sfz.275」で切りつけ▲切断、▲零距離射撃
負傷に構わずこれらを絡めて
インファイトに持ち込み激戦を繰り広げよう(▲グラップル)
OK待たせた、勝ちに行くぞ!!
【指定UC】から得られた敵の攻撃パターンで
自分は回避しつつ、紫崎君の次の安全地帯を先回り射撃
弾痕を踏んで戦って貰おう
攻撃読み切った相手に猟兵が負けるかよ!!
紫崎・宗田
【鉄拳】
共闘か…いいぜ
さっさとぶっ倒すぞ
破殲を盾として使用し【武器受け】
敵の攻撃は【気合い】と溢れ出る【闘争心】で耐え
【指定UC】発動
回避しながら攻撃合図を待つ
搦め手の類いは苦手なんでな…
代わりに、喧嘩は任せろ
後手取った分本気で行くぜ
【戦闘知識】を元に地形や敵味方の配置を利用し立ち回り
セノサキから得た情報から攻撃は【見切り】回避
攻撃直後の隙を狙った【早業】での【カウンター】や
【鎧を砕く】程の【怪力】から繰り出す拳や
【衝撃波】を起こす程の威力での蹴り技
手近な一体を掴んで【ぶん回し】
周囲の個体を散々巻き込み【吹き飛ばし】た後他の個体の方に投げ飛ばす等
空手、柔道、単純な暴力など多彩な格闘技で相手取る
「キミ、猟兵だね? ちょっと付き合って欲しい」
「共闘か……いいぜ。さっさとぶっ倒すぞ」
激しい銀の雨が降り注ぐ卯辰山公園前で、レモン・セノサキ(|Gun's Magus《魔砲使い》・f29870)はたまたま近くにいた猟兵に声をかけた。この世界の言葉を使うなら「運命の糸」が結ばれたと言うところか。提案を受けた紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)にも、特に断る理由はなかった。
「………」
彼らの前に立ちはだかるのは世界結界の化身『シルバーレイン』。何人同時でかかって来ようが彼らは意に介さず、ただその全てを阻むだけだ。あらゆる神秘現象を拒む【神秘根絶】は既に発動しており、攻め方や守り方については少々考える必要があるだろう。
「出だしは防戦で体力を温存してくれ。合図の後は、勿論アクセル全開で頼むよ」
「仕方ねえな。あまり待たせないでくれよ」
軽く作戦の打ち合わせを行った後、まずはレモンが先陣を切る。ポケットから取り出して敵陣にばら撒くのは時限式発煙弾「トラップダイス」だ。手のひらに収まるサイズの小さなサイコロから、大量の煙が噴き上がる。
「………」
それは煙幕として多少の目くらましにはなったが、シルバーレイン達は構わず攻撃を仕掛けてくる。装備した『滅神詠唱兵器』から放たれる【滅神光線】の輝きが、戦場を銀色に照らしながら二人の猟兵に襲い掛かった。
「神殺しか。悪いが俺は羅刹なんでね」
宗田は赤狼の紋様が入った巨大斧「破殲」を盾にして、滅神光線を受け止める。神秘を根絶せんとする銀光の余波が身を焼くが、溢れ出る闘争心と不屈の気合いが苦痛を上回った。これしきの事で否定されるほど、ヤワな戦歴を歩んできてはいない。
「少し無茶をするよ。情報が必要だからね」
一方のレモンは姿勢を低くして直撃だけは回避しつつ、多少の被弾を覚悟で強引に敵との距離を詰めていく。
その手に握っているのは「仕掛鋼糸」。ベルトに組み込まれた小型回転動力炉は【神秘根絶】の影響を受けて停止しているが、手動での運用は可能だ。
「………?」
シルバーレイン達は近付いてくるレモンに再度攻撃を仕掛けようとしたが、武装を構える動きがぎこちない。
先ほどのトラップダイスの煙に仕込まれていたマヒ毒が、遅れて効果を発揮し始めたようだ。敵の猛攻が弛んだ隙を突いて、魔砲使いはインファイトの距離に迫る。
「解析開始」
仕掛鋼糸をさっとシルバーレインに絡ませ、拘束しつつ振り回して他の相手にぶつける。敵が体勢を崩したところで抜き撃つのは、愛用の二挺ガンナイフ「sfz.275」だ。零距離から撃ち込まれるレミントン弾が、標的の胴体に風穴を開ける。
「――……!」
これを受けて脅威を認識したシルバーレイン達は、戦場に【レインカッター】を降らせ始めた。神秘なき世界に環境を塗り替える銀色の雨は、そのまま全ての猟兵に対する範囲攻撃にもなる。無数の刃の雨から身を守りつつ戦うのは、レモンと宗田にとっても簡単なことでは無かった。
「まだか?」
「もう少し」
大斧を振り回して雨を回避しながら宗田が問いかけると、レモンからは短い返答。彼女は刃の雨に打たれるのも構わず、至近距離でシルバーレインとの戦いを続けていた。sfz.275の刃で敵を切りつけ、自分もまた切られる。そうして数々の負傷を重ねることで、敵に最も有効な戦闘法則を発見するのが彼女のユーベルコードだ。
「OK待たせた、勝ちに行くぞ!!」
「その言葉を待ってたぜ」
激戦の末に【戦闘知識・極】を完成させたレモンは、口元に笑みを浮かべて合図を出す。それを聞いた宗田も口の端をつり上げ、溜めに溜めた闘争心を爆発させるように、【喧嘩上等】とばかりに敵陣へと飛び込んだ。
「搦め手の類いは苦手なんでな……代わりに、喧嘩は任せろ。後手取った分本気で行くぜ」
相手よりも遅れて行動を開始した場合に、戦闘力を数倍に向上させるのが彼のユーベルコードだ。持ち前の戦闘知識を元にして敵味方の配置や地形を瞬時に把握し、刃の雨をすり抜けながら敵に肉迫する。そして正面から繰り出された拳には、神秘ならずとも人外の怪力が宿っていた。
「!!」
外套状の装甲を砕く一撃で、シルバーレインの体躯が吹き飛ぶ。逆襲に転じた猟兵の勢いに、敵は明らかに動揺している様子だった。この機を逃さずレモンは冷静に、入手した敵の行動パターンに基づいて助言を飛ばす。
「紫崎君、右に2歩動いて。3秒後に9時方向からビームが来る」
「おうよ」
言われた通りに宗田が移動すると、光線が彼のいた場所を紙一重で掠めていく。傷だらけになってまでレモンが得た情報には、それに見合うだけの価値があったようだ。機械的でどこか薄気味悪かった敵が、今は手のひらの上のように感じられる。
「ありがとよセノサキ。これなら思う存分暴れられるぜ」
宗田は光線を撃ったやつの直後の隙を狙って、目にも留まらぬ早業で脚を蹴り上げる。羅刹の脚力はそれだけで激しい衝撃波を起こし、離れていたシルバーレインをボールのようにふっ飛ばした。神秘現象を封じられようが、元々の肉体能力と多彩な格闘技が彼の武器だ。
「次はお前か?」
「……!」
手近な所にいた一体の腕を掴んでぶん回し、周囲の個体を散々巻き込んでから、他の個体の方に投げ飛ばす。
型にはまらない単純な暴力を披露したかと思えば、空手や柔道などの技巧的な打撃や投げ技も使って多数の敵を相手取る。その技の多彩さにシルバーレイン達は対応しきれなかった。
「紫崎君、これに乗って!」
一方、解析を完了した後のレモンの主な仕事は宗田のサポートだ。戦闘法則をもとに敵の攻撃を回避しつつ、彼の次の安全地帯を先読みして銃を撃つ。地形や建築物に刻んだ弾痕を足場にして戦ってもらおうという訳だ。
「助かるぜ」
普通の人間では不可能な小さな足がかりでも、宗田にとっては十分だ。弾痕を踏んで安全地帯を確保しつつ、並み居る敵を殴り、蹴り、投げる。たまさか生き延びたとしても、追撃の銃弾が確実にシルバーレインを仕留める寸法であった。
「こうなりゃもう、神秘根絶がどうとか関係ねえよな」
「攻撃読み切った相手に猟兵が負けるかよ!!」
宗田とレモンの言う通り、残りのシルバーレイン達はただ二人の手玉に取られる雑兵の群れに過ぎなかった。
降り続ける銀の雨、だがその数は順調に減りつつある。これ以上ここで時間をかけるつもりはないと、二人はさらに攻勢を強めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
随分と見切りをつけるのが早いわねぇ…それだけこっちの勢いが想定外だったんでしょうけれど。
この手の「全部放り出しての逃走に躊躇いのない手合い」って捕まえるの大変なのよねぇ…
神秘根絶、かぁ。たしかにものすごぉく面倒だけど…実のとこ、あたしの場合「面倒」以上じゃなかったりするのよねぇ。
魔術こそゴールドシーンに代行してもらってるけれど、あたしのUCはほとんどが技術昇華型。影響がないとは言わないけれど、十分立ち回れるわぁ。
グレネード○投擲による爆撃に紛れて切り込み、瞬間思考力で敵の動きと隙を見切って鎧無視の先制攻撃で急所を突く――ヒトを殺すときに、別に何も特別な事をする必要はない。そうでしょぉ?
「随分と見切りをつけるのが早いわねぇ……それだけこっちの勢いが想定外だったんでしょうけれど」
計画が頓挫し、自分の身に危険が迫ればすぐさま撤退。判断としては合理的とも言えるが、敵に回すと厄介な相手だと、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は眉をひそめた。結局この戦争では一度も戦場に現れぬまま、ハビタント・フォーミュラは逃走してしまったのだから。
「この手の『全部放り出しての逃走に躊躇いのない手合い』って捕まえるの大変なのよねぇ……」
早い内に尻尾を掴んでおかないと、それこそ延々と追いかけっこをする羽目になるかもしれない。それを防ぐためには、ここで逃走先の手がかりを見つけること。障害となる『シルバーレイン』の軍勢と対峙した彼女は、すっと銃のホルスターに手をかけた。
「神秘根絶、かぁ。たしかにものすごぉく面倒だけど……実のとこ、あたしの場合『面倒』以上じゃなかったりするのよねぇ」
あらゆる神秘現象を否定、無効化する常時発動型のユーベルコードは凶悪だ。だが、それでティオレンシアに打つ手が無くなった訳ではない。微笑みの表情を崩さぬまま、細めた目蓋の向こうから相手の出方をうかがう。
「魔術こそゴールドシーンに代行してもらってるけれど、あたしのユーベルコードはほとんどが技術昇華型。影響がないとは言わないけれど、十分立ち回れるわぁ」
その言葉に秘められるのは己の技量に対する確かな自信。シルバーレイン達が【レインカッター】を降らせようと動きだしたタイミングで、彼女は数発のグレネードを投げ込んだ。科学技術が生み出した火と煙と爆発の衝撃が、神秘の根絶者達を吹き飛ばし、その眼を眩ませる。
「………!?」
至近距離での爆発によりシルバーレインの視界が煙に覆われた時、それに紛れてティオレンシアが切り込む。
瞬間的に思考を加速させて敵の動きと隙を読み、稲妻の如き早業で銃を抜く――愛用のシングルアクション式6連装リボルバー「オブシディアン」は、一切神秘の要素を持たない鉄の塊。だが、それから放たれる鉛玉は、彼女が戦いにおいて最も信頼するものの一つだ。
「まずは一人、ねぇ」
雨に紛れて鳴り響く発砲音。装甲の隙間を縫って急所を撃ち抜かれたシルバーレインは、糸が切れた人形のように倒れ込み、銀の雨に還っていった。すぐさまティオレンシアは照準を変更し、次の標的に弾丸を打ち込む。
「あたしの前に立ったんだもの。逃げられるわけないでしょぉ?」
その発言の通り、ティオレンシアに銃口を向けられた者で、彼女の弾丸から逃げられた者は皆無だった。銃に特別な力が宿っている訳でも、弾が目標を追尾するわけでもない。ユーベルコードの域にまで高められた純粋な射撃技術が、鉛玉を不可避の魔弾に変える。
「――……!」
適宜グレネードの投擲も交えつつ、敵が何か仕掛けようとするたびに出鼻を挫き、先制射撃で撃ち落とす。
適切な位置取り、急所を見切るセンス、まるで体の一部のような銃捌き。ひとつひとつは常識的な動きだが、その全てが極めて洗練されており、シルバーレインに付け入る隙を見せなかった。
「――ヒトを殺すときに、別に何も特別な事をする必要はない。そうでしょぉ?」
魔道など無用、派手さなど不要。銃弾が急所に当たれば、それだけでヒトは死ぬ。神秘とは無縁な冷たい理をもって、ティオレンシアは敵を討つ。銃声がひとつ鳴るたびに、シルバーレイン達が順番に数を減らしていく。
これぞまさに達人技。結局この戦いが終わるまで、彼女の涼しげな微笑が揺らぐことは無かったという――。
大成功
🔵🔵🔵
フラーウム・ティラメイト
今回のUCはオマケ
常に第六感と気配感知と索敵を発動
頑張りましょうねオベイ…
『ケー!』
オベイは返事をしてくれた
『だるいのぉ〜帰ったら駄目かのぉ?』
駄目です…
ソニアも今回はUC無しで参戦してくれます
情報収集で敵の配置確認して視力で相手の癖や動きを確認する
敵の攻撃は結界術かオーラ防御で守って爆破でカウンターする
鍵剣に切断属性(属性攻撃)を与えて範囲攻撃で周りに攻撃して影縛り
その時敵を鎧無視攻撃で貫通します
『シルバーレインめっちゃウザいのじゃあ!』
ソニアは怪力で敵に攻撃して蟲笛を使って凍結蟲(凍結攻撃)を呼び出して相手の動きを止める
『行くぞ!フラ犬!』
はい!
ソニアはブレス攻撃で私は衝撃波を敵に放った。
「頑張りましょうねオベイ……」
『ケー!』
フラーウム・ティラメイト(因果獣と因果を喰らう者『オベイ』を宿す探究者・f38982)の呼びかけに答えて、鳥型の封印石に封じられた「オベイ」が鳴く。彼女らの前に立ちはだかるのは世界結界の化身『シルバーレイン』。その数は大分減らされてきているが、まだ銀色の雨が止むことは無い。
『だるいのぉ~帰ったら駄目かのぉ?』
「駄目です……」
一緒に連れてきた因果獣ソニアは、心底嫌そうにしていたが。【神秘根絶】の影響下であの怪物達を倒すためには、1人でも味方は多いほうがいい。因果を操る彼女達の技やユーベルコードは、この戦場ではほとんど使えないのだから。
「来ますよ」
フラーウムはじっと目を凝らして相手の様子を窺い、仕掛けてくる気配を第六感で察知する。巨大な詠唱兵器を天に掲げ、シルバーレイン達が発動するのは【レインカッター】。銀色をした刃の雨が、戦場全体を神秘なき世界に塗り替えんと降り注ぐ。
「気をつけて」
『痛いのじゃあ!』
オーラの結界で身を守り、爆破でのカウンターを狙っていたフラーウムだが、やはり【神秘根絶】の影響で術が機能しない。やむを得ず「鍵形の黒剣」で切り払いながら、多少の被弾を覚悟の上で距離を詰めていく。なお特に防御策など考えていなかったソニアは思いきり食らっていた。
「やられてばかりではいられません」
相手の配置と癖や動きは、事前の情報収集で把握している。なるべく多くの敵を巻き込めるよう踏み込んでから、フラーウムは鍵剣を力いっぱい振り回した。鋭利に磨き上げられた漆黒の刃が、シルバーレイン達の身体を切り裂く。
「………!」
装甲を貫通するほどの切れ味は、純粋に武器の性能とフラーウムの才覚に依るものだ。鍛錬で身に付けた技能を【天賦の才】で底上げする。神秘根絶でも無効にできない攻撃はシルバーレインも多少予想外だったようで、挙動に動揺が現れていた。
『シルバーレインめっちゃウザいのじゃあ!』
追い討ちをかけるように突っ込んできたのは因果獣ソニア。存在自体が神秘そのものな彼女は悪態を吐きながらシルバーレイン達に殴りかかり、力任せに地面に押し倒す。そして「因果獣の蟲笛」をぴいと吹き鳴らすと、瓢箪の中にしまっていた蟲達を呼び出した。
『大人しくするのじゃ!』
蟲が持つ神秘や超常の能力も大部分封じられてしまっているが、それでも大量の群れに纏わりつかせれば動きを止める効果はあろう。ブンブンと飛び回る蟲達に、シルバーレインの注意が逸れた瞬間を彼女らは逃さない。
『行くぞ! フラ犬!』
「はい!」
ソニアは口からブレスを、フラーウムは鍵剣を振り下ろして衝撃波を、シルバーレイン達に同時に叩き込む。
生態と技術のみを用いた渾身の攻撃は、神秘の根絶者達を捉えて吹き飛ばし――その身が銀色の雨に還るのを見届けて、彼女達はふうと息を吐くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
リュカシオン・カーネーション
よーし今回はウチだけでやるか!
技能は神秘では無い
常に【第六感・気配感知・迷彩・見切り】を発動
情報収集と視力で瞬時に状況を把握して相手の動きや癖を見抜く
敵の攻撃はオーラ防御と反射属性の防御で敵に攻撃を反射する
食らえ!
ウチはアズリエルから斬撃波を放つ
範囲攻撃で敵を攻撃する
次!
軽業で回避して敵に衝撃波と音響弾(貫通攻撃と鎧無視攻撃持ち)で周りの敵に攻撃する
『ガブッ!』
カオスシャークが衝撃波で攻撃して敵に噛み付いた
止めだ!
『おらー!』
私達は鎧無視攻撃と貫通攻撃を発動して衝撃波と斬撃波を敵に放った
「よーし今回はウチだけでやるか!」
あらゆる神秘が否定されてしまう戦場に、存在自体が神秘みたいないつもの仲間を連れてくるのは忍びない。
そう考えて1人でやって来たリュカシオン・カーネーション(転生したハジケる妖狐と精霊王とカオスな仲間たち・f38237)の表情は、いつもと変わらぬ自信に満ち溢れ、ソロだからと不安がる様子はまったく無い。
「おっ、きたきた」
状況は既に把握している。彼女が【神秘根絶】の効果範囲に踏み込んですぐに、『シルバーレイン』の軍勢もこちらを認識していた。彼らの敵意は銀色にきらめく刃の雨――【レインカッター】となって戦場に降り注ぐ。
「痛った!」
反射効果を付与したオーラで攻撃を敵に跳ね返してやろうと思ったリュカシオンだが、【神秘根絶】の影響で上手くいかなかった。刃の雨に切り裂かれ、眉をひそめた彼女はお返しとばかりに「天災邪神鎌龍アズリエル」を振るう。
「食らえ!」
豪快に振り抜かれた刃は斬撃波を生み、遠距離にいるシルバーレインを纏めて薙ぎ払う。こちらの技は神秘とは関係ない、【天賦の才】で磨かれた彼女自身の技術だ。切り裂かれた敵は銀色の雨を血飛沫のように撒き散らしながら、その活動を停止した。
「次!」
なおも降り続く【レインカッター】を、軽業めいた身のこなしで回避しながら、リュカシオンは次の敵に狙いを定めた。雨の向こうにいる敵の姿を凝視し、その気配や動きの癖をよく見極めて、今度は衝撃波と音響弾を撃ち込んでやる。
「……!」
轟音と共に突き刺さった弾丸は、そのままシルバーレインの装甲を穿ち、貫通する。身体に風穴を開けられた連中がフラリとよろめいた、その直後――地を這うように忍び寄っていた「カオスシャーク」が、彼らの背後から襲い掛かった。
『ガブッ!』
カオスシャークの鋭い牙がシルバーレインに突き刺さり、そのまま噛みちぎる。さらに暴れまわるサメの巨体は衝撃波を周囲に撒き散らし、近くにいた敵をなぎ倒していく。これもまた神秘とは関係のない、獰猛なる生物の暴力である。
「いいぞ!」
敵の陣容が崩れたのを見て、リュカシオンも積極的に追撃を仕掛けていく。普段は破天荒な振る舞いでも歴戦兵としての実力は確かなものであり、勢いに乗りだせば誰にも止めることは出来ない。一度ペースを掴んだ後の彼女は敵に反撃の隙を与えなかった。
「止めだ!」
『おらー!』
リュカシオンとカオスシャーク、二人による衝撃波と斬撃波の同時攻撃が、怒涛の勢いで戦場を蹂躙する。
どんな強固な装甲があったとしても、この威力の前では関係ない。バラバラに吹き飛ばされたシルバーレインの身体は銀色の雨粒まで分解され、虚空に散っていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
日輪・黒玉
神秘根絶、ですか
強力な力のようですが、相手は選ぶようです
そして、誇り高き人狼の狩りは自らの力を研鑽した技
純粋な力比べと参りましょう
下手な出し惜しみは危険と判断
初手から全力の速さで一気に【ダッシュ】で駆け抜け、射出した虹から【シャンプ】【スライディング】を交えた立体的な動きで翻弄しながら逃げ続け、速度と軌道変更の限界まで避け続けます
限界がきたところで一気に振り切り、蹴りを打ち込み敵を両断
ふーっ、ふーっ……!
まだ、黒玉は走れますよ……! 次!
避け損ねても多少の傷は構わず、一体でも多く敵を狩るために足を止めずに戦場を駆け抜けていきます
「神秘根絶、ですか。強力な力のようですが、相手は選ぶようです」
いくら『シルバーレイン』でも、あらゆる猟兵の全ての能力を無効化出来るわけではない。それは日輪・黒玉(日輪の子・f03556)の目からも確認できた。否定されるのは魔法や超能力のような神秘現象と、それに由来した道具や攻撃手段と言ったところか。
「そして、誇り高き人狼の狩りは自らの力を研鑽した技。純粋な力比べと参りましょう」
下手な出し惜しみは危険と判断した彼女は、初手から全力の速さで走りだす。頭を低くし、ピンクのツインテールを風になびかせた、まさに獲物を狙う狼の如き疾走。これを見たシルバーレインの軍勢も、即座に迎撃の構えを取った。
「…………」
無言のままシルバーレインが放つのは【銀の虹】。超常の存在を否定する意志と力を宿した銀が、矢のように標的目掛けて射出される。対する黒玉はジャンプやスライディングを交えた立体的な動きを取り、この攻勢をくぐり抜けんとする。
「私の速さに付いてこられますか?」
彼女の健脚と機敏さは猟兵の中でも群を抜いているが、銀の虹も射出後に速度と軌道を変更することで標的を追い詰めようとする。突然不自然なカーブを描いたり、急加速したりする敵の攻撃は、次の動きを予測することが困難。それでも少女は負けじと走り続ける。
「負けません……!」
相手が攻撃の挙動を変えるなら、それ以上に変幻自在な動きで翻弄してみせる。時には地を這うように低く、時には天を舞うように高く。人狼の運動能力を限界まで引き出した動きは、黒玉の肉体にも相応の負荷を強いる――だが、それだけの意味はあった。
「動きが止まった……そこです!」
「――……!!」
攻撃速度と軌道変更の限界がきたところで、彼女は一気に【銀の虹】を振り切り、敵の懐まで駆け抜ける。
疾走の勢いを乗せて放つ【黒玉狼の一蹴】は、まるで鋭利な刀のように、シルバーレインの胴体を真っ二つに両断した。
「ふーっ、ふーっ……!」
なんとか最初の敵を倒した黒玉だが、そのための疲労は少なくなかった。呼吸は荒く、肌にはびっしょりと汗がつたい、酷使された両脚が苦痛を訴える。おまけに周囲を見回せば、敵はまだ大勢いるという厳しい状況だ。
「まだ、黒玉は走れますよ……! 次!」
それでも彼女は音を上げず、足も止めず、次の獲物に向かって走りだす。再び攻撃が飛んでくる前に、自分の間合いに持ち込み、蹴りを打ち込む。神秘に頼らぬ純然たる肉体と鍛錬の力が、また1体のシルバーレインを撃破した。
「次っ!」
それからも黒玉は全力で戦場を駆け抜け、一体でも多くの敵を狩るために奔走する。シルバーレインの反撃が再開すれば、流石の彼女も疲労に伴って避け損ねるケースが増えてくるが、多少の傷くらい構いはしなかった。
「まだ、まだ走れます……!」
――体力が尽き果てるまでに、黒玉がその脚で倒したシルバーレインの数は、十や二十ではとても足りない。
人狼の意地とプライドに賭けて彼女が戦場に刻み込んだ戦果は、戦いの流れを決める大きな一助となった。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…こうしてこの場に居るだけで、溜めていた魔力が霧散して力が封じらていくのが分かる
…神秘根絶。魔法や呪術、血の力を扱う私とは相性最悪の手合いのようね
…だけど、それだけで倒されてあげるほど私の業は易くは無いわ
第六感が捉えた敵の戦意や殺気から敵UCの軌道を先読みして見切りUCを発動
戦闘知識から不要な神経や臓器を含むあらゆる"無駄な動作"を省く|奥義《技術》を編み出し、
限界突破した超高速で攻撃を受け流しながら切り込み大鎌をなぎ払うカウンターを放つ
…たとえ何の強化も施さなくても、極限まで無駄を省けば人は吸血鬼以上の速度が出せる
…これはそうね。|吸血鬼狩りの業・一閃の型《カーライル》とでも名付けましょうか
「……こうしてこの場に居るだけで、溜めていた魔力が霧散して力が封じらていくのが分かる」
普段から当然のように使っていた力。故郷では常識的に存在した魔法や神秘が否定される感覚を、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は味わっていた。この世界の"常識"を長らく定義付け、それに反する存在を放逐してきた世界結界。これが、その真の力だというのか。
「……神秘根絶。魔法や呪術、血の力を扱う私とは相性最悪の手合いのようね」
今、ハビタント・フォーミュラの介入により真の姿を現した世界結界は、『シルバーレイン』という名の怪物として猟兵の前に立ちはだかる。多彩な術式、神との契約、血統の異能――その全てを封じられた今の彼女に、果たして立ち向かう術はあるのか。
「……だけど、それだけで倒されてあげるほど私の業は易くは無いわ」
狼狽える様子を見せず、毅然と戦場に立つリーヴァルディに、襲い掛かるは数多の【銀の虹】。超常の存在を否定する意志と力が込められた銀色の輝きが、標的を惑わせるように軌道と速度を変化させながら迫ってくる。
「…………」
それを放つシルバーレイン達は無言。だが戦意や殺気らしきものは皆無ではないと、リーヴァルディの第六感は感じ取っていた。ユーベルコードの操作が彼らの意思によるなら、それを捉えることで軌道を先読みできる。敵の殺気が強まる瞬間に合わせて、黒衣の少女は身を翻した。
「……吸血鬼狩りの真髄を知れ」
銀の閃光が身を掠めながらも、紙一重で回避に成功したリーヴァルディ。すかさず彼女は【吸血鬼狩りの業・元型】を発動し、目の前の敵を倒すための技をイメージする。あらゆる神秘を無効化する無敵の吸血鬼がいたとして、それを狩るためにはどうすれば良いだろうか。
(……あらゆる"無駄な動作"を省き、攻撃の速度を向上させる)
知識と経験から導き出した結論は極限の効率化。不要な神経や臓器を含んだ、戦闘とは関係ない全ての動作を排除し、限界を超えた行動速度を実現する。まばたきを止め、呼吸や鼓動すらも最低限に抑えた彼女は、まるで人形のような佇まいで敵を見る――。
(……いける)
想像が確信になった瞬間、リーヴァルディは大鎌"過去を刻むもの"を構えて走りだす。軽く地面を蹴っただけなのに、異常なまでの初速と加速――応戦する敵の【銀の虹】を無駄のない所作で受け流しながら、敵陣の懐に切り込んでいく。
「……たとえ何の強化も施さなくても、極限まで無駄を省けば人は吸血鬼以上の速度が出せる」
神秘の力に頼らずして編み出した新たな|奥義《技術》。渾身の膂力で振り切られた大鎌が、芸術的なまでに洗練された軌道で標的を薙ぎ払う。避ける暇もない漆黒の一閃が過ぎ去ったあと、シルバーレイン達の身体は真っ二つに両断されていた。
「……これはそうね。|吸血鬼狩りの業・一閃の型《カーライル》とでも名付けましょうか」
斃れたシルバーレインが銀の雨に還っていくのを見届けながら、リーヴァルディは新たな奥義に名を付ける。
純粋な人の力と技だけで人外の敵を狩る感覚。これを覚えておけばいつか役に立つ時があるかもしれないと、静かに鎌を握りしめながら。
大成功
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剣未・エト
真なるシルバーレイン、世界結界のもう一つの姿、神秘成す詠唱銀とは似て非なるもの
この身は|神秘《ゴースト》、故に神秘根絶はUCのみならず存在そのものを消し去らんと圧をかける
刃の雨降る神秘な無き世界で苦しみ倒れそうになるけれど、必死に足に力を込める
この足は、この体は、両親より生まれゴーストなれど肉から成る身、まだ、耐えられる…!
ゴーストだから得られた人外染みた身体能力と怪力だけど、それを発揮する体そのものは神秘とは異なる
園内に置かれた石碑などを足場に建物の屋根へ、そこからさらに跳躍し運動エネルギーを位置エネルギーに変えて敵に物理の体当たり
共に地上に落下したらその場にあるポールや岩を武器に殴るよ
(真なるシルバーレイン、世界結界のもう一つの姿、神秘成す詠唱銀とは似て非なるもの)
新世代ゴーストの剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)が、実際にそれを目にするのはこの戦争が初めてのことだ。全ての神秘を根絶するために、聖杯の使い手によって顕現させられた『シルバーレイン』――その本来の目的は、終わらぬゴーストの脅威から生命を守るためだったという。
「うっ……!」
戦場となった卯辰山公園に足を踏み入れた瞬間、激しい苦痛と脱力感がエトを襲う。その身は|神秘《ゴースト》、故に【神秘根絶】は彼女のユーベルコードのみならず存在そのものを消し去らんと圧をかけてきていた。気を張っていなければ、すぐにでも膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
「…………」
追い討ちをかけるように、シルバーレイン達は【レインカッター】を降らせ、戦場の環境を塗り替えていく。
刃の雨降る神秘な無き世界は、ゴーストの存在を完全否定する領域。息が詰まるような苦しさに倒れてしまいそうになるが、エトは必死に足に力を込める。
「この足は、この体は、両親より生まれゴーストなれど肉から成る身、まだ、耐えられる……!」
新世代として生まれた|自分《ゴースト》は、既にこの世界の一員なのだと証明するように。強固な意思を瞳に宿し、刃の雨を受けても倒れることのない彼女を見れば、敵は直接引導を渡さんと迫りくる。無機質なその手に握られた『滅神詠唱兵器』は、単純な武器性能だけでも通常の詠唱兵器と同等以上だろう。
「行くよ、反撃だ……!」
滅神の刃が振り下ろされる寸前、エトは両脚にありったけの力を入れて走りだした。園内に置かれた石碑やベンチを足場にして建物の屋根へ駆け上り、そこからさらに跳躍。ゴーストだからこそ得られる人外染みた身体能力だが、それを発揮する体そのものは神秘とは別物だ。
「………!」
高々と跳び上がったエトはそのまま、自分を見上げるシルバーレインの頭上より落下。運動エネルギーを位置エネルギーに変えた体当たりが、彼女の全体重を乗せて敵にぶち当たる。神秘的な要素など何もない、ただの物理攻撃だ――だからこそ、効いた。
「……! ……!」
「まだだ!」
体勢を崩したシルバーレインと共に地上に落下したエトは、その場に落ちていたポールを武器に殴りつける。
詠唱兵器ではなくても、ゴーストとしての膂力なら拾った物でもとりあえずの武器にはなる。憧れの『金色の剣士』とは程遠い、泥臭い【アドリブ戦法】だが、今はこれが最適解だ。
「やあっ!」
何度も何度も叩きつけるうちに、シルバーレインの体から銀色の雨が血のように滴り、外部装甲が砕け散る。
剥き出しになった中身に向かって、エトがポールの先端を思いきり突き立てる――が、押し込みが足りない。敵は押し倒された体勢から詠唱兵器を握りなおし、反撃の一撃を食らわそうとする。
「これなら、どうだ!」
エトは咄嗟に近くに転がっていた岩を持ち上げ、杭打ちのハンマーのように力いっぱいポールに叩きつけた。
それが最後のひと押しとなって、ポールが敵を貫通する。串刺しにされたシルバーレインはビクリと痙攣してから動かなくなり、銀色の雨に還っていった。
「はぁ、はぁ……やった」
勝利を確認し、荒い息を吐くエト。その他のシルバーレインも、別の猟兵達の手によって駆逐されたらしい。
銀の雨が上がり、戻ってきた青空を見上げ、ゴーストの少女は神秘根絶の脅威が去ったことを実感した――。
――かくして世界結界の真の姿にして、神秘の根絶者『シルバーレイン』の早期撃破に成功した猟兵達。
逃走したハビタント・フォーミュラの行方は不明だが、まだ手がかりは残っているはずだ。|全能計算域限界突破《エクスマトリックス・オーバーロード》の痕跡を発見し、彼奴を追い詰める。それはこの戦争後に猟兵に課される、新たな使命となるだろう。
大成功
🔵🔵🔵