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第二次聖杯戦争⑰~紅薔薇に沒む

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #ふたりでひとり

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#ふたりでひとり


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●薔薇と宝石
 金沢南総合運動公園にて。
 ふたりでひとりの能力を持つ、魔槌・しなもんと雪降・ここあは決死の覚悟を固めて戦っている。
 この領域にある薔薇園は今、奇妙な現象が起きていた。ふたりが覚悟を決めた途端に季節外れの薔薇が咲き乱れていったのだ。花々はふたりを覆い隠してしまうほどに多く、美しく咲き誇っている。
 だが、薔薇の中には異質なものが混ざっていた。
 花の中、枝の影、薔薇の傍ら。様々な場所に鈍く輝くものがある。
 それはエンドブレイカーの世界から到来せしもの、『万能宝石エリクシル』の輝きだ。
 次々と開花していく花々の最中、エリクシルは密かに萌芽してゆく。
 しなもんとここあ。
 互いを想いあうふたりの強い願いを叶え、世界を崩壊させるために――。

●願いを歪めしもの
「君達も感じたかい、あの萌芽……『万能宝石エリクシル』の気配を」
 エンドブレイカーでありグリモア猟兵でもある少年、イスルギ・アイゼンは(灰雨・f38910)は仲間達に語りかける。魔槌・しなもんと雪降・ここあが立ち塞がる戦場にて、埒外の存在が確認された、と。
 エリクシルとはエンドブレイカー世界からの侵略者『魔神エリクシル』のこと。
「しなもんとここあ達が抱く思いは恐ろしいほど、いや……逆に尊敬してしまうくらいに強い。それほどに強い願いを感じて、エリクシルは世界を越えて顕現しようとしているんだろうね」
 だが、まだ宝石の段階であり、魔神そのものは出てきていない。
 それゆえに此度の戦いはしなもんとここあ相手ではなく、エリクシルの萌芽を防ぐことに専念する必要がある。咲き乱れた薔薇は視界を遮るほどだが、その中に鈍い輝きがある。
 僅かでもその痕跡を見つければ、それが万能宝石がある証拠となる。周囲にはいくつもの宝石が萌芽しかけているので、発見したらユーベルコードを叩き込めば良い。
 幾つも、幾度も、それらが全て消え去るまで。
「エリクシルだけでもかなり厄介なんだ。皆の力を駆使して、宝石を見つけ次第すぐに破壊して欲しい」
 この世界にこれ以上の敵勢力を増やすわけにはいかない。
 そして、何よりも――。
「ずっとふたりでいたい、というしなもんとここあの願い。エリクシルはそれすらも歪めて叶えるだろうね。もっと残酷で、更に酷い状況として……」
 だからこそ、エリクシルは完膚なきまでに消し去って欲しい。
 静かに願ったイスルギは帽子を軽く被り直した後、信頼を宿した眼差しを仲間達に向けた。
 エリクシルなどに銀の雨降る世界を侵させぬためにも。今こそ猟兵の力が必要なときだ。


犬塚ひなこ
 こちらは『第二次聖杯戦争』のシナリオです。
 魔槌・しなもんと雪降・ここあの戦場に、万能宝石エリクシルが現れました。しなもんとここあ達との戦いは他の仲間に任せ、エリクシルの駆逐に向かいましょう!

●『エリクシルの薔薇を刈れ』
 戦場は金沢南総合運動公園。その中にある薔薇園です。
 内部は季節外れの薔薇が咲き乱れており、一見は美しい景色が広がっています。
 視界は花や棘だらけですが、ときおり花の中や物陰に鈍く光るものがみえることがあり、それが万能宝石エリクシルが萌芽している目印になります。

●プレイングボーナス
『薔薇の形をした「エリクシルの力の断片」をひとつ残らず滅ぼす』

 萌芽したばかりのものが多く、一撃で倒せるくらいですが数は多めです。
 ユーベルコードを使ったり、皆様の武器を駆使したり、エリクシルの滅ぼし方は自由です。
 薔薇は園に元々あった植物ではないので、遠慮なく刈り取ってくださっても大丈夫です。薔薇自体は無害なので残す選択をしてくださってもOK。お好きな形でどうぞ!
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第1章 冒険 『エリクシルの薔薇を刈れ』

POW   :    強烈なユーベルコードで万能宝石エリクシルを叩き潰す

SPD   :    増殖以上の速度で薔薇園の薔薇を刈り取る

WIZ   :    強い「願い」をぶつけ、エリクシルの反応を探る

イラスト:十姉妹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ブリュンヒルデ・ブラウアメル
イスルギ氏の依頼となれば受けぬ道理はない
ましてや|万能宝石《エリクシル》の策謀があるとなればな

ヴァルキリーのエンドブレイカーとしてバラの花びらが舞う金沢市の空を見つめ、UCを発動
奴らの思惑にとっての『|致命的な一撃《クリティカルヒット》』を繰り出してやる
そう言ってスカートの中から『サイキ・紫電の銃器』を取り出し、雷電を放射
次々とエリクシルにとって不幸な事に雷電が我の挙動を外れてエリクシルの力の断片を焼き滅ぼしていくぞ

敵とはいえ、果て無き願いをエリクシルの餌にされてたまるか
そう言いながら再び、引き金を引いて雷電を放つ



●紅と蒼
 澄み渡った空を見上げる。
 其処にはまるで、初めて見た空のような蒼が広がっていた。
 何処にでもある何の変哲もない青空だ。然し、それこそが尊くて美しい。
 流れてゆく風が髪を撫でたことで、ブリュンヒルデ・ブラウアメル(蒼翼羽剣ブラウグラムの元首たる終焉破壊の騎士・f38903)は視線を空から地に向ける。
 其処には蒼を侵していくかの如き、紅の光景が広がっていた。
「この状況、無視する道理はないな」
 薔薇として芽吹いていく鈍い光。その正体は万能宝石エリクシル。魔槌・しなもんと雪降・ここあが陣取る戦場に広がった薔薇は今も増殖を続けており、その中には幾つものエリクシルが萌芽している。
「ましてや|万能宝石《エリクシル》の策謀があるとなればな」
 ブリュンヒルデはヴァルキリーだ。
 それゆえに空を尊び、大切に思う心がある。薔薇の花弁が舞う金沢の空は一見するだけならば美しい。
 だが、この薔薇が空の色まで覆い尽くしてしまう未来は誰も望んでいないだろう。ブリュンヒルデは紫電の銃を構え、然と身構えた。鈍く輝く薔薇を視界に捉えたブリュンヒルデは凛とした眼差しを薔薇に向ける。
 ――終焉を破壊せよ、我が蒼き翼。
 其処から鋭く放たれていくのは蒼翼の終焉破壊。
 これがエリクシルの企みや思惑にとっての|致命的な一撃《クリティカルヒット》となるように。
 無限成長の魔銃から巡る攻撃には容赦がない。
 地を蹴り、紫電を繰り出し続けるブリュンヒルデは的確に|偽の紅薔薇《エリクシル》を貫いていった。
 放射される力は周囲の薔薇ごと悪しきを穿つ。
 空に舞う花は華麗に揺らめき、悪の芽が摘まれたことを示している。ユーベルコードによって圧倒的なまでの悪運を得ているブリュンヒルデは一歩も止まらず、戦場を駆け抜けた。
 薔薇が散り、宝石が砕ける。
 エリクシルにとって不幸なことに雷電が彼女の挙動から外れる。その動きによってエリクシルの力の断片が焼き滅ぼされていき、辺りには残骸が広がっていった。そして、それすらも跡形もなく消し去られていく。
「運命神が定めた脚本、それらを一撃で悉く覆す我らの命運を以て、その終焉に終焉を!」
 ブリュンヒルデは力の限り、萌芽しかけている最悪の終焉を打ち砕き続けた。
 しなもんとここあ。
 彼女達は敵ではあるが、万能宝石エリクシルなどにその願いを侵されていいとまでは思えない。
「果て無き願いを歪んだ宝石の餌にされてたまるか」
 万能宝石と呼ばれるのはその名だけ。エリクシルへ否定の意思を抱いたブリュンヒルデは、決して攻撃の手を緩めない。戦い抜くことを己に誓った彼女の瞳には未来が映っている。
「ここで滅べ、エリクシル」
 再び引かれた銃爪に込めた思いは強く、放つ雷電は戦場を眩く照らすほどに迸った。この花園に萌芽するエリクシルを全て滅ぼし尽くすまで、ブリュンヒルデの戦いは終わらない。
 取り戻すべきは少女達の尊厳と人々の平和。そして――何処までも澄み渡る、蒼き空の彩。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
エリクシルでっすかー。
そうでっすねー、ずっとふたりでいたい、を叶えた結果、二人以外の全てが滅びる……。
などという結末ならまだ“マシ”なのでっしょねー。
あの宝石で一番救われないのは願った方々ということが多々あるのでっしてー。
でしたら、ええ。
お二人のためとは言いませんが、誰も幸せにならないエンディングをブレイクしちゃおうなのでっすよー!
審美眼に優れたアーティストな藍ちゃんくんでっすが!
一人では時間がかかってしまうのでファンの皆様、お手伝い、よろしくなのでっすよー!
藍ちゃんくんに花園に隠れた宝石をプレゼントしてくださいなのでっす!
いえいえ壊してくれても良いのでっすがー!
と鼓舞しつつ自分も探すのです!


栗花落・澪
なんだっけ…歪めた願い
そんあな都市伝説を聞いたことある気がするけど
見た目綺麗なのにタチ悪いね
綺麗な薔薇は、害が無いならそのまま残しておきたいかな
数を捌く必要があるなら
おいで、分身達!

指定UC発動
現れた分身達と共に人海戦術
棘には気を付けてね
魔力共鳴で【気配感知】出来ないかな…
無理でも持ち前の【集中力】で薔薇の花々に埋もれる鈍い輝きを探し出す

また、分身達にも特徴を教えておき
もし見つけたら個々に対処するように連絡
小さいし弱いし自由奔放だけど
僕の分身だけあって使える力はほぼ同等だから
発見次第【高速詠唱】で雷魔法の【属性攻撃】
力を圧縮して周囲の薔薇を巻き込まないようにして
電気の衝撃で次々と破壊狙い



●花よりも麗しく
 戦場一面に咲くのは赤い薔薇。
 美しくありながらも不気味さを感じるのは、其処に願いを歪める宝石が芽吹いているからだろう。
 その名は――万能宝石エリクシル。
 これは異世界からの侵略者『魔神エリクシル』達が、世界を越えてまで顕現しようとしている証だ。
「エリクシルでっすかー」
「なんだっけ……歪めた願い。そんな都市伝説を聞いたことある気がするけど」
 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は周囲を見渡し、次々と咲いていく花を瞳に映し込む。
 あの花々が咲く原因はしなもんとここあ――ではなく、ふたりの願いを感知して現れた万能宝石エリクシルだ。ただ一緒にいたいという願いは尊いものだが、猟兵としては看過できない領域にまで至っている。
「そうでっすねー、ずっとふたりでいたい、を叶えた結果、二人以外の全てが滅びる……。などという結末ならまだ“マシ”なのでっしょねー」
 藍はそっと薔薇に触れてみた。
 目の前のそれはただ其処に咲いているだけの普通の花だ。しかし、周囲にはそうではない薔薇が多く隠れている。
「見た目は綺麗なのにタチ悪いね」
 藍と澪はエリクシルが願いを歪めてしまうことを知っている。
 ふたりでいたい。
 ただそれだけの願いを叶えるために、エリクシルは他のものを犠牲にしてしまう。願いは別方向に歪められ、しなもんとここあ達が決して望まぬ未来が訪れてしまうかもしれない。たとえば、本当にふたりがひとりに融合してしまうだとか――。
 最悪の未来を想像した澪と藍は首を横に振る。
 しなもんとここあが猟兵として相対すべき敵であっても、彼女達が理不尽な終焉に巻き込まれるようなことは許せなかった。
「あの宝石で一番救われないのは願った方々ということが多々あるのでっしてー。でしたら、ええ」
 藍は身構え、双眸を静かに細める。
 見据えたのは鈍く光る薔薇。それこそが萌芽していくエリクシルがある証拠だ。
「お二人のためとは言いませんが、誰も幸せにならないエンディングをブレイクしちゃおうなのでっすよー!」
「綺麗な薔薇は、害が無いならそのまま残しておきたいかな」
 澪は薔薇の中からエリクシルそのものだけを狙うことを決め、視線を巡らせた。鈍い光はあちこちに見える。あれほどの数を捌く必要があるならば、使用するユーベルコードは決まった。
「おいで、分身達!」
 極めて小さい天使達を呼び出した澪は、エリクシルが光っている方向に指先を向ける。
 現れた分身達と共に人海戦術に挑むことを決意した澪は、藍と手分けをして薔薇園を進んでいった。
「棘には気を付けてね」
 澪は分身達にも特徴を教え、もし見つけたら個々に対処するように呼びかけた。そして、次に魔力を共鳴させてみる。そうすることで気配を感知することが出来ないかの試行だ。
 魔力のような感覚を辿った澪は、実際の目視でもエリクシルを探す。その際に澪は持ち前の集中力を駆使していき、薔薇の花々に埋もれる鈍い輝きを見つけていった。
 澪の分身達も直接的に薔薇型の万能宝石を狙い、次々と破壊しはじめる。
 その間、藍も同じように人海戦術作戦を取っていた。
「審美眼に優れたアーティストな藍ちゃんくんでっすが! 一人では時間がかかってしまうのでファンの皆様、お手伝い、よろしくなのでっすよー!」
 明るい呼び声に応えてくれたのは藍のことを藍する、スピリチュアルなファンたち。
 藍ちゃんくん、藍ちゃんくん、とコールする彼らは花園の奥へ進んだ。藍はファンに手を振り、今回のお願い事について呼びかけた。
「藍ちゃんくんに花園に隠れた宝石をプレゼントしてくださいなのでっす!」
 その声に反応したファン達は懸命に薔薇宝石を探していく。
 どうぞ、こちらです、あげる、といった声が方々から聞こえてきたことで、藍はこの作戦の成功を悟った。
 同時に澪も相当な数の薔薇宝石を破壊している。
 分身達は小さくて弱い。それに加えて自由奔放ではあるが、自分の分身であることは間違いない。
「次は向こうだよ!」
 澪はエリクシルの薔薇を発見次第、高速の詠唱を紡ぐ。其処から繰り出される雷魔法で力を圧縮した後に一気に解放する。周囲の薔薇を巻き込まないようにしながら、澪は電気の衝撃で以て次々とエリクシルを無力化した。
「これでどうかな?」
「どんどん壊してくれていい感じでっす! 藍ちゃんくんも頑張るのでっすよー!」
 澪の活躍を確認した藍はファンを鼓舞しつつ、自らもエリクシルを探して破壊していく。
 これ以上、悲しい未来を生み出させないためにも。
 懸命に戦い続ける猟兵達の周囲に、紅い薔薇の花弁が舞い上がった。その光景は美しいが、元凶が鋭い棘を孕んでいることは二人とも知っている。
 ただ只管に宝石だけを狙い打って壊す。
 薔薇のような、否、悪しき薔薇よりも麗しき彼らの戦いは此処からも続いてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルシエラ・アクアリンド
◎△
エリクシル…となれば微力ながらこの世界の力に
私達の世界を助けて貰った感謝も込め
それにどうにも後方支援が性に合うもので…昔から

自然や花は出来るだけ元あった状態に残したいから
対象は敵意がある物としようか
【結界術】が有効ならエリクシル以外は守りたいな
弓での【矢弾の雨】を基本としつつ数を見極めつつ
【気配察知】と織り交ぜた光華の雨で
破片だけを排除したいけど完全には無理そうかな
せめてごめんなさいと謝りつつ早々に片を付けたい

少し時間があれば軽くでも残った薔薇の手入れが出来れば良いな
願いは確かに報われない事もあるけれど邪な介入など以ての外
二人のを努力を信じ見守る事
それが私が一番力になれる事なのかも知れない



●守るべき心
 辺り一面に咲き乱れる薔薇。
 美しくも、鋭い棘を隠している花々を見渡す。戦場を覆い尽くしていく程に増殖する薔薇を瞳に映し、ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は頭を振った。
「エリクシル……」
 その眼差しの先には鈍く輝く光がある。それこそが萌芽しはじめている万能宝石だ。
 ルシエラは真珠が連なる弓を構える。その一部に飾られている蒼水晶が美しく煌めいた。薔薇が放つ鈍い光とは正反対の清浄な輝きを見下ろした後、ルシエラは気を引き締める。
「となれば微力ながらこの世界の力にならなければね」
 自分達の世界を猟兵達に助けて貰った感謝も込めて、次はルシエラが力を揮うときだ。
 この戦場にいるバビロンの獣、ここあとしなもんとの戦いは他の者に信を託す。それに加えて、ルシエラはどうにも昔から後方支援の方が性に合っているようだ。なれば、向こうの戦場よりも此処に立つことが相応しい。
 ルシエラは最初に見つけたエリクシルを意識しながら、天に弓を差し向けた。
 狙うのは自然や花以外。即ち、悪しき宝石のみ。
 ――|光華の雨《ライトレイン》。
 対象を敵意があるものだけに狭めたルシエラは、一気に矢を解き放つ。天に昇った一糸は其処から大きく広がり、無数の光矢となって地上に降り注ぐ。
 花々は出来る限り、元あった状態のままで残したい。優しい思いを抱いたルシエラは結界術を張り巡らせ、エリクシルのみに光の矢を向けた。
 刹那、鈍い光を放つ薔薇が砕け散るように地に落ちる。
 それが薄れて消えていく様子を確かめたルシエラは次の標的に目を向けた。今の一撃で複数個のエリクシルを潰せたようだが、まだ四方八方に光が明滅している。
 薔薇の花が咲く部分には勿論、本来なら花が咲かない枝や、薔薇の木の影にまで宝石が現れている。
 寧ろ其処まで不自然であるならば逆にやりやすい。そのように判断したルシエラは矢弾の雨を降らせていき、一気にエリクシルの悪意を摘み取っていった。
 更には気配を察知していき、鋭い敵意を織り交ぜた光華の雨で以て悪を排除する。
 だが、ルシエラはある程度の犠牲にも気付いていた。
「本当は破片だけを排除したいけど……ごめんなさい」
 やはり完全には無理なこともある。余波で散った薔薇の花弁が空に舞い上がっていく様を見送り、ルシエラは懸命な力を振るっていく。
 花を散らしてしまっている以上、早々に片を付けたい。
 エリクシルの萌芽を抑え続けるルシエラは、心に決めたことがある。この戦いと駆逐が終わった後、薔薇園の手入れをすることだ。
 それがこの戦場で戦っている、互いを想い合う少女達への手向けにもなるはず。彼女達とて歪んだ形で願いを叶えられるのは本望ではないだろう。
「願いは確かに報われないこともあるけれど、邪な介入など以ての外よ」
 あの二人の努力を信じて、見守る。
 それこそが自分として一番力になれる事なのかも知れない。
 ルシエラは咲きゆく薔薇の最中、空を見上げた。降り注ぐ光の矢は目映い程に煌めき、そして――。
 またひとつ、悪しき宝石が砕け散った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
彼女達の覚悟と想いの強さ
断つ、ことに対し
罪悪感を覚えるのは…避けたいが

形を歪めて叶えるのが万能宝石なら
其れは、止める
斃さねばならぬとしても
せめて互いを想うこころは
其の儘に還せたらと

覆う薔薇の守護を、縫い探すなら
地面に触れ喚ぶのは
薔薇の葉型の式
さ、欠片を探そうか

願いに反応すると言う欠片
この地で馳せるものを強く念じよう
目的を果たすだけではなく
咲いた実際の薔薇達は刈らずにいたいんだ
私情も混じった
なんとも欲張りな願いだが

宝石の煌めきを見つけたなら
逃がさない
自身と瓜江で手分けすることで多数をと
一つずつ
なるべく周囲を傷つけぬよう
自身は破魔を込めた刀で斬り
瓜江は摘み取り砕く

君が侵して良い願いは
何処にもないよ


城野・いばら

うん、お互い思い合って重なった糸は
とっても強くて、美しいね
きっと、バラさんが思わず咲き出しちゃう程に
そんなあのコ達の願いを、ムリに歪めてしまうなんてダメ
…奪う側の私が言える立場ではないとしても
たとえそれが、バラの下の秘密でも
暴かせてもらうわね

想いに呼応し咲いたコ達は悪くないの
出来る限りバラさん達は傷付けないように
蜂さんや蝶々さん達なら、
生い茂る茨の中でもすいすい動けるはず
エリクシルを探し、場所を知らせてくれるようお願いを
他の猟兵のアリスにも教えてあげてね

私は不思議な薔薇の挿し木の特徴を活かして、
特に奥まった宝石さんを中心に
伸ばした茨で捕まえて
浄化を籠めた棘で属性攻撃したり、怪力で砕いていくわ



●花護
 薔薇園を前にして思うのは、少女達の覚悟と想いの強さ。
 それこそがこの花々を咲かせているのだと思うと、冴島・類の(公孫樹・f13398)心が軋むように傷んだ。されど、オブリビオンを断つことに対して罪悪感を覚えるのは避けたい。
 それでも類は心を持っている。嘗て、少女達が侵した悪事を知っていても、二人が想い合う心まで否定する者にはなりたくなどなかった。それに加えて今は花を断つ理由もある。
「形を歪めて叶えるのが万能宝石、なら――」
 其れだけは、何としても止める。
 少女達をいずれ斃さねばならないとしても、想いを歪められる苦痛まで与えたくはない。
 せめて互いを想うこころは、其の儘に還せたら。
 だからこそ、類は駆けゆく。
 覆う薔薇の守護を縫い探していくならば。類は片膝を地に付き、土に手を添えた。
 其処から召喚されていくのは、その地に根付く植物の葉型の式。
 喚び起こされた薔薇の葉は類の思いを受けて動く式となっていき、周囲の万能宝石に対抗する術となる。
「さ、欠片を探そうか」
 萌芽している最中の悪しき宝石を見つけるべく、類は周囲の様子を探った。
 察知したのは鈍く光る薔薇。それと同時にいとおしい彩を宿す者の気配も感じられた。離れてはいるが、同じ戦場にいるのだと思うと、心に勇気が満ちる。

 同時刻、城野・いばら(白夜の魔女・f20406)もこの領域に訪れていた。
 いばらは薔薇に覆い隠された二人の少女に思いを馳せている。
「……うん」
 お互いを思い合って重なった糸は、とても強くて美しい。いばらはそっと手を伸ばし、傍に咲いている赤い薔薇に触れてみた。エリクシルではない花もまた綺麗に咲き誇っている。
「思いの強さの証なのね。きっと、バラさんが思わず咲き出しちゃう程に」
 ここあとしなもんという、未だ幼い少女達。
 世界の敵になったとしてもふたりきりで戦うことを決めた、花の標。されど其処には彼女達の純粋な願いまで歪めてしまうものが潜んでいる。
「そんなあのコ達の願いを、ムリに歪めてしまうなんてダメ」
 奪う側の自分が言える立場ではないとしても。
 たとえそれが、バラの下の秘密でも――。
「暴かせてもらうわね」
 いばらは屠るべき輝きを持つ花を探すため、踏み出していく。近くに親しみを抱く気配を感じ取りながら。今はまだ遠くとも、同じ志と意思を持っているであろう、彼と力を合わせていく為に。

 類は願いに反応すると言う欠片に念じる。
 この地で馳せるものを強く、強く思うことで万能宝石を誘うことができる故だ。
 目的を果たすだけではなく、咲いた実際の薔薇達は刈らずにいたい。薔薇という形をしたものへの私情も混じっているが、可憐で無垢に咲く花を散らすことをよしと出来なかった。
(なんとも欲張りな願いだけど――)
 ただ、必要なものだけを散らせるのみ。
 すると類の思いに反応したらしい宝石が鈍く光った。その煌めきを頼りに駆けた類は瓜江を呼び、視線を巡らせる。視界に捉えた宝石の輝きは複数。
「――逃がさない」
 自分は右へ、瓜江は左へと駆けさせた類は刀を振り下ろす。宝石化した花弁は砕けるように散っていき、瞬く間に消滅していく。同時に瓜江も幾つかの宝石を壊したらしい。
 輝きは消え去ったが、新たに萌芽しかけているものも増えてきた。
 確実に、一つずつを潰す。
 心に決めた類は周囲の花を可能な限り傷つけぬよう立ち回り、破魔を込めた一閃を振るっていく。切り裂く類に対し、瓜江は花そのものを摘み取るように腕を伸ばした。
 そして、悪しき薔薇宝石は着実に消し去られていく。

 その頃、いばらもエリクシルを探し続けていた。
「想いに呼応し咲いたコ達は悪くないの」
 出来る限り普通の薔薇達は傷付けないように立ち回っていったいばらは、素敵なお友達を呼んでいる。陽気な蝶々はひらりと薔薇の園を舞い、働き者の蜂達は花の合間を縫うように飛んでいった。
 蜂や蝶々達なら、このように生い茂る花園の中でも自由自在に翔けることができる。
「エリクシルは……そこにあるのね」
 いばらは万能宝石を探し出し、場所を知らせてくれた蜂の後を追う。
 そして、幾つかのエリクシルが伸ばした茨によって散らされた。花の形をしたものが壊れゆく様を見るのは心地いいものではなかったが、あれは偽物だ。
 他の猟兵のアリスにも教えてあげて、と告げたことで蝶々は仲間の元――特に彼のところにも向かうだろう。いばら自身も不思議な薔薇の挿し木の特徴を活かし、枝葉の奥を探していく。
「見つけた」
 奥まったところに咲いていた宝石を発見したいばらは、これ以上の萌芽を止めるために茨を巡らせた。
 その棘には浄化を籠め、時には怪力で以て砕いて、いばらは願いを歪ませるものを穿つ。そして、駆けていくいばらは開けた場所に辿り着く。
 蝶々が導いた先にあったのは幾つもの鈍く光るエリクシルと、そして――。
「君が侵して良い願いは、何処にもないよ」
「そうよ。歪められる願いなんて、何処にもあっちゃいけないの」
 瓜江と共に宝石を砕きに掛かる類。その傍に立ったいばらは荊棘を解き放ち、悪しき紅薔薇を散らせた。
 ひらり、ふわりと花弁が空に舞う。
 消えゆく花を見送りながら、二人はそっと視線を交わした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シアン・マグノリア
エリクシル!
また碌でも無い気配がしますよー!
二人で居たい、という気持ちは純粋で素晴らしい物です
それすらもエリクシルは歪めようとするのですね
せめて、お二人が納得出来る終わりを―

【SPD】
さーて、悪い薔薇は刈り取っちゃいましょう!
害のない薔薇は、なるべく残したいですね
この薔薇に、罪はありませんし!
「範囲攻撃」にて「イヴ・ザ・プリマビスタの紋章」を描きましょう
エリクシルの薔薇を「敵」と認識すれば、普通の薔薇には攻撃当たらないようには、なりませんかねー?
エリクシルの気配は、嫌と言う程に覚えています
「気配感知」でエリクシルの薔薇の気配を出来るだけ感知します
届かなかった攻撃は「追撃」にて追い打ちを
私、「幸運」値は高いので、きっとなんとかなる筈です!
笑っていれば、大丈夫の精神ですよ

毎度毎度の事ですが、本当にエリクシルは碌な事を引き起こしませんね!



●悪しき芽を摘む為に
「――エリクシル!」
 見渡す限りの薔薇、薔薇、薔薇。
 其処に潜む万能宝石の気配を強く感じ取りながら、シアン・マグノリア(天空に紡ぐ詩・f38998)は身構えた。
 銀の雨が降るこの世界にはエリクシルなど存在しなかったはずだ。しかし今、こうして目の前に萌芽しているのならば、放っておくことはできない。
「また碌でも無い気配がしますよー!」
 シアンは鈍く輝く薔薇を視界に捉え、即座に摘み取った。
 それと同時に宝石の花弁がはらりと落ち、エリクシルだったものは砂粒のように崩れ落ちる。
 萌芽しかけているだけのものならばこうして無力化することも容易。されど、問題はその数だ。願いの強さに応じているのか、エリクシルの薔薇は次々と現れている。
 願いの主は、ここあとしなもん。この戦場に立っていた少女達を思ったシアンは頭を振った。
「二人で居たい、という気持ちは純粋で素晴らしい物です」
 けれど、と呟いたシアンは次の標的を探すために駆けていく。
 ただ純粋に、ふたりの少女が寄り添い合っているだけならば許してやりたい。だが、彼女達はオブリビオンとして世界の敵となっている。それに――。
「でも、それすらもエリクシルは歪めようとするのですね」
 万能宝石と呼べば便利なもののように思えるが、その実は願いを捻じ曲げるだけのもの。ふたりでひとり、という力を持つ少女達が一緒に居たいと願うならば、エリクシルは世界の崩壊すら叶えてしまうだろう。
 きっとそれは少女達が願ったものとは正反対の形で為されるはずだ。
 たとえば、自分達以外に誰もいない世界が出来上がること。
 或いは誰にも邪魔されない場所に飛ばされるが、其処は人間が生きてはいけない環境であるとか。一度、エンドブレイカーがエリクシルに、街に蔓延る棘の残滓を代償として、街の人が望む本当の平和を願った。
 だが、齎されたのはなんとも不思議な紫色の木。
 それさえあれば人々は働かずとも飢えることはなくなる。だが、それは果たして本当の平和だったのだろうか。
「思い出すだけも気分が悪くなりますねー」
 エンドブレイカーとして解決した事件ではあるが、エリクシルの願いの叶え方は実に恐ろしいものだ。
 だからこそシアンは、この現象を止めたいと強く思っている。
 せめて、ふたりが納得出来る終わりを。
 そのように願ったシアンは掌を強く握り締め、この場にある全ての薔薇宝石を散らすことを決めた。たとえどれほどのエリクシルが萌芽しようとも、それらが全て消え去るまで。
「さーて、悪い薔薇は刈り取っちゃいましょう!」
 シアンは改めて周囲を見渡した。
 咲き乱れる花々は戦場を覆い尽くすほどだが、すべてが散らす対象というわけではない。元から薔薇園に咲いていた冬薔薇もあれば、エリクシルの影響を受けて急成長したものもある。
 散らすべきは宝石のみ。
 害もなく、罪すらない薔薇はなるべく残しておきたい。シアンは鈍い光が集っている箇所を見つけ、すぐさま創世神の紋章を描いてゆく。
「この薔薇にも、ふたりで一緒に居たいという思い自体にも罪はありませんし!」
 互いを想い合う、少女達の感情まで否定することはしない。
 今、此処で敵とすべきはあの輝きのみ。
 シアンはエリクシルたる薔薇宝石にのみ狙いを定めた。
 鈍い光を創世の輝きで塗り替えていくが如く、イヴ・ザ・プリマビスタの紋章が迸っていく。
「うん、思った通りですねー」
 エリクシルの薔薇だけを敵と認識すれば、普通の薔薇には攻撃は当たらない。自分が視認したものならばこの理屈が通じると悟ったシアンは紋章の力を広げていった。
 棘と大魔女の戦いを経たシアンは、エリクシルの気配は嫌と言う程に覚えている。
 それゆえに直感は勿論、あの独特の気配を感知することも容易い。シアンはエリクシルの薔薇の気配を辿りながら、新たな萌芽を見つける度に紋章を描いた。
「次は……向こう!」
 紋章の力が届かずとも、シアンは果敢に立ち回り続ける。
 散りきっていない薔薇宝石に狙いを向けたシアンは、鋭い追撃で以てそれを砕いた。よくよく見れば本来ならば薔薇が咲かないような土の上や、枝葉の隙間にもエリクシルの花が顕現しはじめていた。
 偶然の発見ではあるが、それは持ち前の幸運が導いてくれたものだろう。
「まだまだたくさんあるようですが、きっとなんとかなる筈です!」
 シアンは笑みを浮かべ、更なる紋章の力を解き放っていく。
 悲しい出来事や苦しい戦いであったとしても、笑っていれば大丈夫。いつも抱いている精神を決して忘れず、力を揮い続けるシアンは真っ直ぐに前を見据えた。
「毎度毎度の事ですが、本当にエリクシルは碌な事を引き起こしませんね!」
 再び、万能宝石について言葉にしたシアンは軽く肩を竦める。
 されど其処には笑顔があった。
 咲かせるならば悪しき薔薇ではなく、笑顔の花を。
 きっと、それこそが良き未来を引き寄せる秘訣だ。シアンの戦いは此処からも、更に激しく巡ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

唐桃・リコ

……オレは、あきとずっとふたりでいたい。
あいつが死ぬときがオレの終わりでいい
そう思ってたけど、最近また終わって欲しくねえって、ずっと思ってる
あいつの寿命を伸ばして、オレとずっと一緒にいて欲しい
信じて、縋って、助けてくれんなら、なんでもする
……お前らの気持ちも、きっとそういうこと、なんだろ

神様って、結局オレたちの思い通りにはしてくんねえよなあ!
苛立ち紛れにDevourで蹴り壊す
だからオレは、足掻いて、何でも食らいついて、オレの力にして
あいつの命を救う手段を探す!
棘も花も全部ぶっ壊す
かけらが散っても、体を掠めても知ったことじゃねえ
光るものを探してぶっ壊す

本気のやつを弄ぶんじゃねえ
全部まとめてぶっ壊してやる!!



●紲
 ふたりでひとり。
 互いが傍に居れば、他には何もいらない。学校も、家も、これまでの生活も――世界すらも。
 そんな風に決意した少女達、しなもんとここあ。
 彼女達の在り方と願いに応じて、戦場には美しい薔薇が咲き乱れた。
 唐桃・リコ(Code:Apricot・f29570)は少女達の強い思いを感じ取り、拳を強く握った。
 あれほどに想い、それほどに共存を願う相手。大切で、大事で、自分よりも優先する対象がいるということに、リコは不思議な親近感と共感めいた思いを抱いていた。
「……オレは、あきとずっとふたりでいたい」
 リコが言葉にしたのは、自分が想う相手の名前と存在のこと。
 ずっと、あいつの隣に居たい。
 ――あいつが死ぬときがオレの終わりでいい。
 裡に宿っていた思いを確かめるように、リコは胸元に掌を添えた。
 周囲では新たな薔薇が咲きはじめ、中には鈍い光を放ち始めているものもある。戦場で戦う少女達だけではなく、リコが抱える願いにもエリクシルが呼応しはじめたのだろう。
「終わりだって認める。そう思ってたけど、最近は――」
 頭を振ったリコは、自分の中に新たに芽生えた思いについて考えた。辺りの薔薇が次々と咲き乱れていくように、リコの胸の中にも違う思いが芽吹き始めていた。
「何でだろうな。また終わって欲しくねえって、ずっと思ってる」
 リコは己の願いを言葉にすることでエリクシルの薔薇を引き寄せようとしている。されどこれは打算ではなく、あの少女達の思いと願いを受けて、自然に言葉として出てきた思いだ。
「あいつの寿命を伸ばして、オレとずっと一緒にいて欲しい。そのためなら何でもする、って」
 叶えてやろう、とでも語るかのように薔薇が咲く。
 怪しく鈍い光を潜めながら、万能宝石はリコの望みを侵そうとすべく萌芽する。
 リコはそのことを認識しながらも、敢えて願いを声にしていく。
「信じて、縋って、助けてくれんなら、妙な宝石にだって願いたい。なぁ、ここあ。しなもん。……お前らの気持ちも、きっとそういうこと、なんだろ」
 だからこそ薔薇は奇妙なほど美しく咲いた。
 抱く想いと祈り、願いが強ければ強いほどに万能宝石は呼応する。だが、その願いの叶え方は受け入れられない。歪んだものにしかならないとリコは知っていた。
 きっと少女達は幸せなかたちでは一緒にいられなくなる。
 リコが望む願いが宝石に叶えられたとしても、魂のないあいつが自分の傍にいるという結果になるのだろう。
 そんなことを認めてはならない。リコは彼の器が欲しいのではなく、その心ごと隣に居たいだけだ。エリクシルが神様のようなものだとしても、縋ってはいけない存在なのだろう。
「なぁ……神様って、結局オレたちの思い通りにはしてくんねえよなあ!」
 しなもんとここあだってそうだっただろう。
 力を得なければ、戦いに巻き込まれなければ、ごく普通の小学生として生きていられたかもしれない。ただの少女として、ずっと二人は傍に居られたかもしれない。
 だが、運命の神がいるとしたら、今の状況は皮肉でしかない。
 内なる人狼の狂気を纏ったリコは高く跳躍した。裡に秘めた苛立ち紛れ、鈍く光る薔薇を蹴り壊す。
「エリクシルだっけか。お前らの力は要らない」
 凛と宣言したリコは更なる蹴撃を放ち、集っていた薔薇の花を一気に蹴散らした。それによって萌芽していた宝石が散り、砂のように崩れていく。
「オレは、足掻いて、何でも食らいついて、オレの力にして――あいつの命を救う手段を探す!」
 棘も花も全部、全ての悪を壊す。
 獣化した爪と牙で花を散らし続けるリコに容赦はない。新たにエリクシルが萌芽しようとも、即座に位置を捉える。どれだけかけらが散っても、身を掠めて傷を作ったとしても止まらない。
 自分の怪我など知ったことじゃねえ、と言わんばかりにリコは爪を振るい続けた。
 光る気配があれば地を蹴り、独特の香りがあると感じれば、すぐに探して破壊する。それは己の主張代わりであり、かの少女達への意思表示でもあった。
 たとえふたりが世界の敵であろうとも、互いを想い合う心だけは認めていたい。
 オブリビオンは倒さなければならないもの。
 だが、其処にある心を無視して戦うだけの者にはなりたくなかった。何より、彼女達の思いはリコが抱く想いとよく似ている。少女を認めることこそが、リコ自身の生き方の宣言にもなる。
「本気のやつを弄ぶんじゃねえ。願いは――自分で叶えるものだ!」
 エリクシルを穿っていくリコは戦場で声を轟かせてゆく。
 次々と散らされる薔薇は力を失っていき、ただの薔薇だけが戦場に残されていた。しかし、強い願いに惹かれるように新たな薔薇が咲きはじめる。
「全部まとめてぶっ壊してやる!!」
 最後のひとつまで散らし尽くしてやると心に決め、リコは駆けていく。
 想いの果てにあるものが、どうか――少しでも美しい終わりであるように願って。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラウム・オラージュ
生まれ変わっても魂が捻れてもずっと一緒、かあ

脆い感情を棘は好む
蝕まれ、死することを拒み続けて『ほんとのねがいごと』さえ忘れちまう
そんな仮面憑きを何人も見てきた

大魔女はもういない
なのに……骸の海から生まれるオブリビオンってやつは
終焉を更に捻じ曲げるクソ野郎の集まりだってのがわかってきた

『歪な願い』をコイツらは好む
沢山の想いを束ねたそれは好き勝手に解釈できるからだ
がしがしと頭を乱暴に掻いて、二振りの刃を引き抜いた

腹たつったらねぇよなあ!
よその世界まで来たっててめぇの押し付けがまかり通るわけねぇだろ!

来い!

ギリ、と親指の腹に牙を立てて血の代わりに迸る棘を張り巡らせる
呼ばうは闇、幾重にも重なる夜の翼、闇に紛れ目を眩ませながら
鴉たちと共に二回攻撃を叩き込み少しでも素早く多くの宝石を砕く

世界を渡れる力を手に入れたつもりかもしんねえけどな
俺たちの目を掻い潜ろうなんて100年はええんだよ!
……わかんねえだろうな、なんでも叶えられるお前らには

――終焉ってのはな。心に救いが、落とし所がなくちゃ、だめなんだよ



●救いは何処に
「生まれ変わっても魂が捻れてもずっと一緒、かあ」
 それはきっと元から歪で、けれども少女達にとっては唯一のものだった。
 ラウム・オラージュ(闇鴉・f39070)は戦場に広がる紅薔薇を見渡し、静かに身構える。
 脆い感情を棘は好む。
 これまでに出遭ってきた出来事を思い返しても、そのことはよくわかった。
「蝕まれ、死することを拒み続けて『ほんとのねがいごと』さえ忘れちまう、そんな仮面憑きを何人も見てきた」
 ラウムは頭を振る。
 どれだけの終焉を視てきただろう。助けられた命もあった。しかし、そうではなかったものも多い。
 己が自ら選ぶのではなく、他者に歪められた上で死を迎えるしかなかった者もいた。その原因であり元凶、諸悪の根源であった大魔女スリーピング・ビューティーはもういない。
「もう倒したはずなんだ。なのに……骸の海から生まれるオブリビオンってやつは……!」
 世界の仕組みを恨みたくなるほどに残酷だ。
 現に今、この戦場にいるふたりの少女達も願いを歪められようとしている。いくらこれまでに悪事を重ねてきたとはいえ、本当はただの小学生だったはずだというのに。
 ふたりでいたいという彼女達の純粋な思いすら、エリクシルに利用されかけている。
「わかったぜ、終焉を更に捻じ曲げるクソ野郎の集まりだってのが!」
 ラウムは鈍く光る薔薇を視界に捉え、強く地を蹴った。
 万能宝石は歪な願いを好む。
 沢山の想いを束ねたそれは、エリクシル側が好き勝手に解釈できるからだ。
「コイツらはそういうやつだもんな」
 まずは蹴撃で一閃。萌芽したばかりの薔薇は脆く、たったそれだけで砕け散った。
 これが大きく強く成長すればより危険なものになるだろう。ひとつを壊したまではいいが、周囲には新たな光が次々と生まれはじめている。
「キリがねえ!」
 ラウムはがしがしと頭を乱暴に掻いた後、二振りの刃を素早く引き抜いた。夜鶯の名を宿す刃は空からの光を鋭く反射した。鈍く輝くエリクシルの光に負けないほどに輝いた刃を、ラウムはひといきに振るう。
「腹たつったらねぇよなあ!」
 苛立ちは隠さないでいい。ラウムの刃は次の薔薇を砕き、更にもうひとつの薔薇も切り裂いた。
 宝石が散りゆく中、彼は身を翻す。
「よその世界まで来たっててめぇの押し付けがまかり通るわけねぇだろ!」
 別の方向で輝くエリクシルを両断しながら、ラウムは己の力を身体中に巡らせていった。
 そして、それをしかと呼ぶ。
「――来い!」
 ギリ、と親指の腹に牙を立てれば、血の代わりに迸る棘が顕現した。棘を張り巡らせたラウムが呼ばうは闇。それは自らの棘を餌に飼い慣らした渡鴉の群れだ。
 幾重にも重なる夜の翼は闇に紛れ、目を眩ませながら戦場を翔ぶ。ラウムは連れる鴉達と共に次々と攻撃を叩き込んでいった。素早く、疾く、少しでも多くの宝石を砕く為に。
 紅薔薇が現れる度に棘を巡らせ、鴉達を疾走らせていき、着実にエリクシルを壊し続ける。
 その際にラウムの胸裏に浮かんだのは、これまでの戦いのこと。
 様々なことが一気に溢れそうになる。それはきっと、間近に万能宝石エリクシルが顕現し続けているからだろう。己の中の棘を巡らせて薔薇を狙い打つラウムは、強く拳を握った。
「世界を渡れる力を手に入れたつもりかもしんねえけどな、俺たちの目を掻い潜ろうなんて百年はええんだよ!」
 宣戦布告にも似た言葉を向ける先には、新たな薔薇が芽吹いている。
 その萌芽はほとんど自動的のように見えた。其処に願いがあるから咲く。それだけであると語られているかのようで、ラウムの胸に妙な痛みが走る。
 だが、ラウムは真っ直ぐに悪しき花を見つめ続ける。闇鴉が左右に舞い、咲いた薔薇を散らしていく中でラウムは再び力を巡らせた。
「……わかんねえだろうな、なんでも叶えられるお前らには」
 刹那、夜鶯の刃が振り上げられる。
 宝石が割れる小さな音が響いたかと思うと、吹き荒れる嵐の如き鴉の連撃が叩き込まれた。
「――終焉ってのはな、」
 幾度も視てきた。
 これでいいと思ったとき、これこそが終わりだと認めたときに、その人にとっての満足な終幕となる。そうならなかった者は皆、棘やエリクシルに心や在り方を歪められたものばかりだった。
 だからこそ――。
「心に救いが、落とし所がなくちゃ、だめなんだよ」
 次の瞬間、最後の薔薇が貫かれる。
 戦場に満ちていた色濃いエリクシルの気配はなくなり、薔薇園からも禍々しい気が失われた。


●二度と醒めぬ、ふたりの終焉へ
 そして、薔薇園の中心で彼の少女達が倒れる。
 薔薇の形をしたエリクシルは猟兵によって全て壊され、闘い続けた者の力が戦いを終幕に導いた。この世界が彼女達にとっての悪夢ならば、きっと――悪しき紅薔薇に沒む夢もまた、望まぬものだったはず。
 ふたりでずっと、一緒に。
 少女達の願いは歪められぬまま。こうして此処に、在るべき終焉が齎された。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月18日


挿絵イラスト