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第二次聖杯戦争⑩~未練の鎖

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #妖狐七星将『巨門』

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#妖狐七星将『巨門』


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●巨門と共に
 オブリビオン・フォーミュラ、『聖杯剣揺籠の君』。
 過去も、未来も、心も。全てを聖杯に捧げた彼女が引き起こしたのが、此度の第二次聖杯戦争だ。

 日本三名園のひとつにも数えられている兼六園。
 其処には大量のリリス化オブリビオンが集められ、危険な悦楽の宴の場へと造り替えられていた。
 無数のオブリビオンによって穢されつつある庭園に向かったのは、妖狐七星将『巨門』だ。
「さてさて、行こうかな。何のしがらみもなく「思いっきり殴っていい」なんて久しぶりというか、ほぼ初めてだもんな〜! さあ、がんばるぞ〜!!!」
 密かに猟兵に覚醒していたという巨門は大いに張り切っていた。
 妖狐勢力でも割と癖のある彼だが、此度の戦にはかなりのやる気を出している。既に巨門は敵陣へと斬り込んでおり、庭園にいる敵の露払いをしてくれているようだ。

「――というわけで、俺達も出陣だ」
 ディイ・ディー(Six Sides・f21861)は巨門と共に兼六園に突入し、奪還作戦を始めようと語る。
 多数のリリス化オブリビオンが繰り広げる悦楽の宴の中には、多くの一般人が囚われている。宴の周縁部を守る敵は巨門が勝手に闘争心全開で薙ぎ倒してくれらしい。
「此方の動きとしては、宴の中心になっている『地縛霊の少女』を倒すことだ」
 地縛霊の少女は永遠に続く未練の空間を作り上げている。
 リリス化してしまったことで元の未練を忘れ去っており、由来の分からない果たされなかった想いを爆発させてしまっているようだ。未練の鎖は一般人を絡め取っているが、地縛霊を倒せば解ける。
 地縛霊としては早々に成仏させてしまった方がいいだろう。自分が何であったか、何を未練としていたのかすら思い出せない状態で存在し続けるよりも、倒してしまう方が救いに繋がる。
「巨門はかなり自由に戦うみたいだから、真っ当な共闘は期待しないほうが良いぜ。一緒に戦おうと願ってもすぐに違う敵の方に行っちまう。だが、その分だけ戦闘においての働きは凄いみたいだ」
 ある意味では信頼してもいいと語り、ディイは今回の説明を終えた。
 そして、件の戦域――兼六園への道がひらかれてゆく。


犬塚ひなこ
 こちらは『第二次聖杯戦争』のシナリオです。
 妖狐七星将『巨門』(トップ画像の←の人です)と共に兼六園の奪還戦に向かいましょう!

●『地縛霊の少女』
 生前に強い未練を残して亡くなり、地縛霊として蘇った少女。
 現在は未練の本質を忘れてしまっており、リリス化オブリビオンとして宴の儀式を行おうとしています。
 周囲の有象無象達は巨門が倒してくれるので、皆様は地縛霊の少女を倒すことに集中してください。

●プレイングボーナス
『巨門が敵群を切り開いた隙を攻める/囚われた一般人を救出する』

 どちらのボーナスを使って頂いても大丈夫です。もちろん両方でもOK!
 巨門に構ったり、構わなかったり、戦い方も皆様のお好きな形でどうぞ。
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第1章 集団戦 『地縛霊の少女』

POW   :    湧き上がる悔しさ
【果たされなかった想い】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    囚われの囚人たち
対象の【テリトリーに迷い込んだ一般人達】に【テリトリーと繋がる未練の鎖】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[テリトリーに迷い込んだ一般人達]を自在に操作できる。
WIZ   :    永遠に続く未練の空間
戦場全体に、【自身の未練が果たされることのない空間】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:神戸爾

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィルバー・セラ
【アドリブ連携歓迎】
遠目で見てもとんでもねえ勢いで駆逐していくのがわかるぜ……
とまれ、撃破と救助だと後者だな。
あんま先に倒しすぎると焦って宴を早める可能性がある、
あの妖狐が片っ端から蹂躙し尽くす前に救出しときゃ後の憂いも断てるだろうよ。

【迷彩】の術式で【闇に紛れる】ことで気配を殺し、
風の【属性攻撃】魔術を応用しての【推力移動】で音を殺すことで敵に気取られぬように囚われてる一般人に接近。
邪魔されねえよう【無酸素詠唱】で【結界術】を展開、干渉を遮断した状態で【指定UC】で転移して救出する。
七星将って言われてんだから部下もいて陣営地もあるだろうから、
そこに連れてってその後然るべき場所へ案内するか。


エミリヤ・ユイク
いまの私にできることは「囚われた一般人を救出する」ことくらいしか出来ませんので、それを中心にして動きます。ただ、もしも敵がきたらサムライブレイドをつかい剣刃一閃で斬ります。
ですが、そうならないように、隙を見つつ慎重に行動していきます。
一気に救出するのではなくて、隙を見つつ少しずつ少しずつ慎重かつ冷静に救出していこうと思います。敵との接触は極力避けていこうと思っています。



●尊き命を守る者
 日本三名園のひとつ、兼六園。
 その内部は現在、危険な悦楽の宴の場へと造り替えられている。
 其処で嵐や暴風の如く暴れているのは――妖狐七星将のひとり、『巨門』だ。
「がんばるぞ~!!!」
「遠目で見てもとんでもねえ勢いで駆逐していくのがわかるぜ……」
 フィルバー・セラ(|霧の標《ロードレスロード》・f35726)は離れたところから響いている巨門の声や、敵が倒されていく戦闘音を耳にしていた。
 敵であれば厄介な妖狐だが、今の巨門は味方だ。
「すごい……」
 エミリヤ・ユイク(実験体の剣豪拳士・f39307)も巨門の動きを見つめていた。
 はたとしたエミリヤは頭を振り、やるべきことを見据える。それは宴の中に囚われている一般人の救助。
「いまの私にできることは囚われた人達を救出することくらいしか出来ませんが、精一杯頑張ります」
「そうだな、撃破と救助だと後者だな」
 エミリヤの言葉を聞いたフィルバーが頷き、二人は救助活動に向かうことにした。
 幸いにも巨門が道を開いてくれている。
 その戦闘の仕方はともかく、囚われた人々への最短経路もあいているようなものだ。
「あんま先に倒しすぎると焦って宴を早める可能性があるからな。あの妖狐が片っ端から蹂躙し尽くす前に救出しときゃ後の憂いも断てるだろうよ」
「はい、その通りだと思います。行きましょう」
 エミリヤは万が一に敵がこちらに来た時のことを考え、サムライブレイドを構えた。
 いざとなれば剣刃一閃で斬る気概でいるが、出来る限りこの刃を使わないほうが好ましい。もしも一般人に少しでも怪我があるといけないからだ。
 フィルバーとエミリヤは互いが視認できる距離を保ちながらも二手に分かれた。
 迷彩の術式を巡らせたフィルバーは闇に紛れることで気配を殺すことを試みる。そして、風の魔術を応用して推力移動を行っていき、音を殺すことで敵に気取られぬよう立ち回った。
「よし、一人目だ」
 囚われていた一般男性が倒れていることに気付き、フィルバーは手早く接近していく。
 同様にエミリヤも少女を見つけ、そっと近寄っていった。
 隙を見ながら慎重に行動すれば敵を誘き寄せてしまうこともないだろう。
「大丈夫ですか?」
「う、ううん……」
 エミリヤが声を掛けた少女は弱っているようだが、命に別条はないようだ。
 まずは彼女を助け出すことを決めたエミリヤは優しく肩を支えた。囚われている人々を一気に救出してしまうと、首魁に気付かれてしまう可能性もある。
「いいですか。隙を見ながら、少しずつ少しずつ慎重に出口の方まで行きましょう」
「はい……」
 エミリヤに掴まった少女はこくりと頷いた。
 早く全員を助け出したいという気持ちは強い。焦る気持ちがないといえば嘘になるが、エミリヤは冷静に救出活動を続けると心に決めていた。
 敵との接触を避けていけるのは、やはり巨門の存在が大きい。
「退け退け~!」
 再び遠くから聞こえてきた妖狐の声は実に楽しげだ。エミリヤは彼が味方で良かったと改めて感じながら、少女を無事に宴の外へと連れ出した。
 同じ頃、フィルバーも男性を助け出すことに成功している。
 誰にも邪魔されないよう、無酸素詠唱からの結界術を展開していた彼は、魔弾・異空の門を発動していた。
 フィルバーは干渉を遮断した状態で人々を転移させることが出来るのだ。手際よく周辺の人々を救出していったフィルバーは兼六園の外を見渡した。
「安全な場所は……」
「七星将って言われてんだから部下もいて陣営地もあるだろうな。もしくは銀誓館の助けが入れる所か。そこに連れてってその後然るべき場所へ案内するか」
 エミリヤが人々を連れていく場所を探していると、フィルバーが的確な意見を出す。
 しかと頷いたエミリヤは特に弱った少女をしっかりと抱き締め、安全な区域へと移動していく。フィルバーも力を駆使しながら救出活動に勤しんだ。
 こうして、人々の命と安全は守られた。
 戦局がどのように動くかは未だ誰も知らないが、二人は後で立派な功労者として皆に甚く感謝されることになる。そのことだけは間違いない。
 そして――兼六園での戦いは激しさを増していく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
なんだろう…向こう見ずというか、
あんまり妖狐に向いてない妖狐なんですかね…巨門さん

嘗ては大陸妖狐の暴力装置担当という話でしたが
|末っ子気質《構ってちゃん》みたいなので…
そういうとこだぞ…ということなんでしょう

◆手裏剣投げ+無拍子
巨門さんの黄龍拳士の技に先んじて、早業+投擲の影縫いで『未練の鎖』に操作された一般人の動きを足止めします

巻き添えとか全然気にしない人でしょうあなた??そういうとこだぞ!!!!
風使いの加速に合わせて読心術+かばうで一般人の位置取りに気を遣いつつ
クイックドロウ+切り込みでテリトリーごと地縛霊の少女達を切り裂きます

愛欲の儀式と現世への未練
噛み合ってない故の欠落なのでしょうね…


ニーニアルーフ・メーベルナッハ
…初めて敵として戦った時よりは落ち着いているとはいえ、巨門さんは相変わらずですね…。
ですが、昔よりは弱くなっているといってもあの暴れぶり。
頼らせてもらうとしましょう。

巨門さんが切り開いた進軍経路から敵中に突入、ボスである少女のもとを目指します。
討ち漏らしが襲ってくるなら赤手で斬りつけ【焼却】してしまいましょう。

…それにしても、悔しさ、ですか。
…かつての聖杯戦争で双子の妹を亡くしたことを思い出します。
私も重傷の身だったとはいえ、彼女の窮地に何も出来なかった後悔。
ですが、悔やんでばかりではいられません。それでも、生きている以上は前に進まねば…!
邪魔は、させません…!
(ボスに肉薄しUCを叩き込む)


紫・藍
すごいのでっす、すごいのでっす!
巨門のおにいさんがばっさばっさと薙ぎ払ってくのでっす!
藍ちゃんくん、大助かりなのでっす!
沢山のファンに向けて歌うのも大好きでっすが!
今日のライブはお嬢さん達だけに向けた歌ですので!

歌うのでっす。
お嬢さん達に届けと歌うのでっす。
自分でも分からない未練に縛られたお嬢さん達。
忘れてしまったから永遠に未練を嘆くしか無い?
いいえ。いいえなのでっす!
忘れてしまったから、解消できないから、救われないだなんてあってはならないのでっす!
藍ちゃんくんの歌は、理屈も条理も超越して問答無用で癒やすのでっす!
癒やすのは心、攻撃するのはリリスとしての存在!
おやすみなさいなのです、お嬢さん。


御鏡・幸四郎

巨門が味方……
情勢って変わるものなのですねえ。
いえ、なんでも有りません。
そちらはお任せします。あてにさせてもらいますね。

未練の内容すら忘れてしまっているとは、悲しい存在です。
時間があれば話の一つも聞いて、推理してあげられるのですが……
今は人々の救出を優先させてもらいます。

操られた一般人の攻撃を躱し、受け流しながら雑霊をチャージ。
人々を自在に操作できるとは言っても、自身が戦うよりは動きが
甘くなるでしょう。
チャージが完了したら雑霊弾雨を発射。
「降り注げ!」
狙いは一般人を繋ぐ未練の鎖です。

鎖を断ち切ったことで動揺する少女の下に走り込み、ガンナイフを一閃。
少しでも未練を断ち切れることを祈ります。



●断ち切るは未練
 思い返されるのは懐かしき時代。
 妖狐七星将の巨門が敵陣に斬り込んでいく背を見つめ、ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)と御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は時代の移り変わりを感じた。
「初めて敵として戦った時よりは落ち着いているとはいえ、巨門さんは相変わらずですね……」
「巨門が味方……情勢って変わるものなのですねえ」
 ニーニアルーフも幸四郎も、嘗ての戦いを知る者。複雑な心境はあれど、あの巨門と共闘できる機会が訪れていることは確かだ。何か言いたげな幸四郎だったが、何でも有りません、と首を横に振った。
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)も何か考え込んでいる。
「なんだろう……。向こう見ずというか、あんまり妖狐に向いてない妖狐なんですかね、巨門さん」
「だけどすごいのでっす、すごいのでっす! 巨門のおにいさんがばっさばっさと薙ぎ払ってくのでっす!」
 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は巨門の戦いぶりを見つめた。
 遠目からでも分かる活躍は目を見張る者がある。
 一騎当千の力は猟兵化したことでなくなってしまったようだが、それでも十分だ。
 すると其処へ、巨門の笑い声が響いてきた。
「あはは! 楽しい~!」
「嘗ては大陸妖狐の暴力装置担当という話でしたが、|末っ子気質《構ってちゃん》みたいなので……そういうとこだぞ……ということなんでしょう」
 蔵乃祐がはうまく言葉を濁しながらも的確な言葉を選んだ。
 彼が肩を竦める中、藍はわくわくした気持ちを抱いていた。あの巨門が味方であるならば頼もしいからだ。
「藍ちゃんくん、大助かりなのでっす!」
「ですが、昔よりは弱くなっているといってもあの暴れぶり」
「あちらはお任せして、あてにさせてもらいましょうか」
「ええ、頼らせてもらうとしましょう」
 ニーニアルーフと幸四郎が再び巨門のいる方向に目を向けると、振るわれた赤手がオブリビオンを纏めて穿つ瞬間が見えた。視線に気付いたらしい巨門は軽く振り返り、笑った――ように見えた。
 口許は隠れているので雰囲気だけだったが、任せて欲しい、とでも言っているようだ。彼が敵であったならば恐ろしかったが、今はああして戦って貰える。
 ニーニアルーフは頷き、巨門が切り開いた進軍経路から敵中に突入していく。
 目指すは地縛霊の少女。
 藍も仲間に続き、敵として立ち塞がる少女に目を向けた。
「沢山のファンに向けて歌うのも大好きでっすが! 今日のライブはお嬢さん達だけに向けた歌ですので!」
 藍は未練の少女達に自分の歌を披露しようと決めている。
 未練の中身すら失ってしまった少女を救うには、倒すしかない。ニーニアルーフは途中で巨門の討ち漏らしが襲ってくるかとも思っていたが、実に上手く道が開かれていた。
 赤手を装備した腕を地縛霊の少女に差し向け、ニーニアルーフは焔を巡らせる。
「……来ないで」
 対する地縛霊は消えかけそうな微かな声で呟く。
 宴の儀式の中心になっている存在だが、彼女は命じられたままに動いているだけ。何が未練でこの世に蘇ったのか、そもそもそれすら失ってしまっているようだ。
「未練の内容すら忘れてしまっているとは、悲しい存在です」
「悲しさの中に悔しさも見えますね」
「時間があれば話の一つも聞いて、推理してあげられるのですが……」
 幸四郎とニーニアルーフは未練の鎖を見据えた。前線には出されていないが、地縛霊の少女のテリトリーに迷い込んだ一般人達が鎖に繋がれている。
「今は人々の救出を優先させてもらいます」
「僕も一般人に向かいましょう」
「私は少女の気を引きます!」
「藍ちゃんくんは正面から歌うのでっす!」
 一行は左右と前面に分かれ、それぞれの目的を成すために進んだ。
 蔵乃祐は巨門に続いており、黄龍拳士の技に先んじて、早業からの投擲の影縫いを放っていく。狙うは未練の鎖そのもの。操作された一般人の動きを足止めすることだ。
 しかし、次の瞬間。
「まだまだ行ける! うん、行けるよ~!」
 巨門の声が響いたかと思うと近くで大きな衝撃音が鳴った。咄嗟に一般人の前に飛び出した蔵乃祐は間一髪で飛んできた残骸を受け止める。
「巻き添えとか全然気にしない人でしょうあなた?? そういうとこだぞ!!!!」
「え?」
 叫ぶ蔵乃祐の言葉が理解できていないのか、それとも分かった上でやっているのか。巨門は耳をぴこぴこした後、更なる敵を倒しに向かっていってしまう。
 溜息をついた蔵乃祐は風を纏って加速していき、人々の位置取りに気を遣いながら攻勢に入った。そのテリトリーごと地縛霊の少女達を切り裂く。そうすることで人々の救出に繋がるだろう。
 しかし、その瞬間。地縛霊の少女が果たされなかった想いの感情を爆発させていった。
「悔しい……どうしてこんなに、苦しいの……!!」
 途端に地縛霊が宿す霊圧めいた力が増大する。身構えたニーニアルーフは襲ってくる衝撃を受け止め、重く響いた痛みを堪えた。少女から感じる思いは切なくて苦しいものだ。
「……悔しさ、ですか。わかりますよ、その気持ち」
 ニーニアルーフはかつての聖杯戦争のことを思い返した。双子の妹を亡くしたことを思い出した彼女は唇を強く噛み締めた。無力感や絶望を覚えたときのことは忘れられない。
「私も重傷の身だったとはいえ、彼女の窮地に何も出来なかった後悔がありますから」
 ニーニアルーフは静かに俯きながらも、更なる霊圧を赤手による打撃で押し返す。悔しさを抱くからこそ、自分も地縛霊の少女も戦うしかないのだろう。
 過去を思うと胸が傷んだが、ニーニアルーフは果敢に立ち向かい続ける。
 その間、蔵乃祐と幸四郎は操られた一般人の攻撃を躱していた。操られているとはいえ、彼らを傷つけることは出来ない。繰り出される攻撃を受け流しながら、幸四郎は雑霊をチャージしていく。
「みんな、あの人達を倒して……」
「人々を自在に操作できるとは言っても、自身が戦うよりは動きが甘くなるでしょう」
 地縛霊の少女が紡いだ虚ろな言葉に従い、一般人達が苦しみながら迫ってきた。だが、幸四郎は決して慌てることなく対処していく。チャージを完了させた幸四郎は狙いを定め、雑霊弾雨を発射した。
「降り注げ!」
 狙いはただひとつ。地縛霊の少女でも一般人そのものでもなく、人々を繋ぐ未練の鎖のみ。
 ゴースト・スコールはそれぞれ一点のみを鋭く貫いた。
 蔵乃祐も得物を投擲することで鎖だけを外していき、人々を支配から解放していく。
 其処に合わせて藍が詩を紡ぐ。
 それは藍ちゃんくんのあるがままの祈りや願い、心を籠めた、理屈も条理も超越した穏やかで優しい歌。
 お嬢さん達に届け、と告げた藍は高らかに歌う。
「自分でも分からない未練に縛られたお嬢さん達。忘れてしまったから永遠に未練を嘆くしか無い?」
「…………。そうじゃ、ないの?」
 藍の言葉に対し、地縛霊の少女が声を震わせながら問いかけ返した。
「いいえ。いいえなのでっす!」
 忘れてしまったから、解消できないから、救われない。
 そんなことはあってはならない。
 藍の思いは確かな歌となって地縛霊の少女を包み込んでいく。癒やすのはその心、攻撃するのはリリスとしての存在だけ。どうか、と願った藍は更なる歌声を響かせ続けた。
 そして、ニーニアルーフが地縛霊の少女そのものへと攻撃を見舞いに向かう。
「悔しいこと、苦しいことは今も消えませんが……悔やんでばかりではいられません。それでも、生きている以上は前に進まねば……!」
 地縛霊に肉薄したニーニアルーフは赤手を大きく振り上げた。
 はっとした少女が後退ろうとしたが、時すでに遅し。
「邪魔は、させません……!」
「終わらせて頂きましょう」
 叩き込まれた紅蓮撃が敵を切り裂いて燃やした直後、幸四郎によるガンナイフの一閃が繰り出された。更に蔵乃祐の手裏剣が鋭く敵の身を穿つ。
「愛欲の儀式と現世への未練。噛み合っていない故の欠落なのでしょうね……」
 蔵乃祐はやりきれない思いを抱いていが、敢えてそれ以上の言葉は紡がなかった。
 その場に倒れ込んだ地縛霊の少女の鎖は完全に切り落とされている。一般人達もすべて解放されており、別働隊として動いていたフィルバーやエミリヤによって安全な場所に救出されていた。
 仲間達はこの場の勝利を確信し、各々の思いを言葉にする。
「少しでも未練を断ち切れることを祈ります」
「おやすみなさいなのです、お嬢さん」
 ただ、その冥福を。
 幸四郎と藍は消えゆく地縛霊の姿をしかと瞳に映した後、そっと瞑目した。
 
 そして、危険な悦楽の宴となっていた兼六園は解放されていく。
 能力者、及び猟兵達は敵陣を切り開いた巨門に労いの声をかけようと思っていた。だが、当の巨門はひらりと身を翻して何処かへ向かってしまっていた。おそらく隅々まで残党を退治するつもりなのだろう。
 遠くから、楽しかったなぁ、なんて声が聞こえたことで猟兵達は顔を見合わせた。
 きっと、それもまた巨門らしさなのだろう。
 猟兵達は頷きを交わし、そして――次なる戦場へ向かっていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月04日


挿絵イラスト