第二次聖杯戦争⑩〜 |Ξ《クサイ》
●読み方の揺らぎが多すぎる
日本三名園のひとつである金沢の兼六園は加賀藩5代目藩主の前田綱紀によって作られたのがはじめとされる。以降歴代藩主による改造に改造を経て今の姿となったものである。寛政の改革で知られる松平定信がこの庭園を称し、宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望の6つの景観を兼ね備えているとしたことから兼六園と名付けたとか。
その名園は今やリリスによる危険な悦楽の宴の場となっていた。
「今調べたんにゃけど、|幽邃《ゆうすい》ってのは『奥深くて物静かな事』、で蒼古は『古めかしい中に深いおもむきがある』って意味らしいにゃ。しかし、こうなっちゃったらそれも台無しだよにゃあ」
奥深さや物静かさやおもむきといった全てに無縁なアイクル・エフジェイコペン(クロスオーバー三代目・f36327)も、さすがにまじめな顔をしていた。
「地の文うるさい。ともあれ、みんな、これをどうにかしてほしいにゃ」
今回の敵は強力な遠距離攻撃の持ち主らしい。兼六園に侵入した猟兵は耐えず敵の超遠距離射撃にさらされることになる。そしてその敵は……。
「……なんてーか、じつに男くさい奴らしいんに゛ゃ」
実に嫌そうな顔をしながらアイクルは説明した。【試練の男女】なる今回の敵はマッチョでスキンヘッドな男だが、服装や立ち居振る舞いはどことなく女性ぽいという。多様性が認められてもいいかもしれない世の中だが、外見の自由は別にして好き嫌いを述べるぐらいはこちらも自由が認められたっていいだろう。
敵の能力は以下の3つだ。
【漢女の祝福】は奇声をあげながら全力でハグするものだ。見た目からして怪力そうだが、実際はもっとすごいだろう。これでハグされたら絶対絞め殺される。今回は奇声の方を飛び道具として飛ばしてくる。奇声で動きを封じてハグで絞め殺すコンボを狙ってくるらしい。
【漢女の贔屓】は投げキッスだ。これが命中すると多少能力が上がるらしいが、悪寒による継続ダメージが強烈なためメリットよりもデメリットがはるかに上回る形になる。なお仮に敵が猟兵の好みの外見だとしても悪寒は生じるらしい。そういうものだと思ってください。
【漢女の試練】は戦場に特殊空間を発生させ、猟兵に試練を与えるものらしい。具体的にはマッチョらしく鉄アレイやらプロテインやらマッチョな男やらが雨あられと降り注いでくるとか。当然試練なので当たるとものすごく痛い。それが何発も来ると思えば恐怖でしかない。
以上、どれも強力な能力なので無策では厳しいが、幸いにも猟兵にも対策があった。
「えっと、妖狐七星将の『|巨門《きょもん》』さんって人が、『餓蟇王』っていう妖獣を貸してくれるらしいんにゃ」
カンペを見ながらアイクルが説明してくれた事によると、餓蟇王は巨大なカエルの妖獣で、遠距離攻撃無効の能力を持っているため、これを盾にすれば奇声だろうが投げキッスだろうが鉄アレイだろうがなんだって防げるらしい。ただしデメリットがある。餓蟇王が遠距離攻撃を防いだ際、反動で油が飛び散るとか。仮にそれを猟兵が浴びてしまうと……。
「……ものっすごくくさくって3日はにおいが取れないらしいんに゛ゃ」
つまり猟兵は敵の男くささと味方のくささ、両方のくささを相手にどうにかしなきゃいけないのだ。今後の事もあるのでできれば餓蟇王の油は受けないように工夫した方が良いだろう。
「……その、にゃんだ。にゃんとかしてほしいにゃ」
本当に申し訳なさそうなアイクルの一礼を受け、猟兵たちは兼六園へと乗り込むのだった。
らあめそまそ
そういう目的だったら同じ三名園のひとつの……なんでもございません。らあめそまそです。戦争シナリオをお送りいたします。
今回のシナリオにはプレイングボーナスがあり、これをプレイングに取り入れる事で判定が有利になります。
プレイングボーナス:餓魔王を盾にして遠距離攻撃を防ぐ/餓魔王の脂を浴びないように戦う。
要は男くささと油くささの両方に対抗することが重要となるわけです。くさいなんて平気だとか思わずになんとか対策をとっていただければ幸いです。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『試練の漢女』
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POW : 漢女の祝福
【試練を耐えぬいた者への称賛の気持ち】から【昂る感情を抑えきれずに奇声】を放ち、【力加減を一切考慮しない全力のハグ】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 漢女の贔屓
【好みの人物(老若男女問わず)へ投げキッス】を放ち、命中した敵を【強化(全能力微上昇)しつつも、全身を悪寒】に包み継続ダメージを与える。自身が【体表の80%以上を露出】していると威力アップ。
WIZ : 漢女の試練
戦場全体に【試練の為の特殊空間】を発生させる。レベル分後まで、敵は【様々な試練と称した現象】の攻撃を、味方は【召喚した、戦闘力の無いサポーター】の回復を受け続ける。
イラスト:ひゃく
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィン・スターニス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ハリー・オッター
蛙ねぇ…あいつら、皮膚に毒持ってるしよ。
むしろ、俺達に取っちゃ、魚の方が好物ってだけなんだけどよ。
こうなりゃ、コンビニのビニール袋を幾つか持って、自分の体に合うように加工して装着する。武装にも耐水加工を施して、挑もう。
もちろん、頭の部分の目に当たる所は穴を開けている。いざというときは手で抑える。
てか、敵と対峙するが…筋肉野郎に抱きつかれたら、たまったもんじゃないから、遠距離からちょっとばかし【エネルギー弾】撃ってちょこまかしよう。
本気で来たら、蛙に防いでもらおう。
普通のカワウソより大きいけど、人間より小さいレベルじゃ、絶対死ねるハグは遠慮願うじゃん!!
その隙に敵を連続攻撃。
アドリブ歓迎
●賢い動物は科学にも頼る
「蛙ねぇ……あいつら、皮膚に毒持ってるしよ」
ハリー・オッター(カワウソ・f39388)は呼び名の通りのカワウソだ。種類としてはオオカワウソらしい。野生のカワウソは雑食性でカエルも食べたりするようだが、皮膚に毒のあるカエルも多く、最強クラスだとそれこそ人が死ぬレベルのものも存在する。そんなわけでハリーはあんまりカエルは食べないらしい。どっかのサバイバル番組でもわりとなんでも食べる主人公がヒキガエルは食べようとしなかったっけ。ただカエル食べないのは毒だけが理由でもないようで。
「むしろ、俺達に取っちゃ、魚の方が好物ってだけなんだけどよ」
割と好き嫌いの問題の方が大きいようであった。
そんなわけでカエルの毒に対してはなまじっかな人間よりも警戒心の強いらしいハリーは当然餓蟇王の油対策も万全に施した。用意したのはコンビニとかで普通に手に入るビニール袋だ。
「最近は有料になっちゃって不便だよなあ」
ぼやきながらもそれをいくつか用意して切り貼りすると、自分の体にぴったりなコートのようになった。たしかにビニールなら油は間違いなく通さない。コンビニのビニール袋だと臭いそのものを遮断する力は多少落ちるかもしれないが、まあすぐに脱げばたぶん大丈夫だろう。眼の所にだけのぞき穴を開けておいたので視界も大丈夫だ。いざとなれば手で抑えれば良い。
『あら、かわいいカワウソちゃんね』
準備を整えて兼六園に突入したハリーを、【試練の漢女】は早速補足した。
「げ……こいつぁ、やべえぜ」
ハリーは敵の姿を認めて愕然とした。でかい、あまりにでかすぎる。2mは間違いなくあるだろう。身長45.9cmの自分からしたら大人と子供というレベルではない。ちなみにオオカワウソの体長は100cm前後らしいが、ハリーの45.9cmは二足歩行での身長なので頭から尻尾までの全長を測定したらこれくらいになるのだろう。
「あの筋肉野郎にハグされたらたまったもんじゃないな、絶対に死ねるぜ!」
まずは遠距離の相手にはこっちも飛び道具と、ハリーはビームキャノンを携えて先制のエネルギー弾を撃ち込んだ。カワウソといえば日本で知られるコツメカワウソのような可愛らしい印象を持つ者もいるかもしれないが、オオカワウソは小型のワニすら襲い、ジャガーに対しても一歩も引かない戦闘民族なのだ。強大な相手であっても退く事を基本的には知らない。
『なかなかやるわね』
ビームを受けるもひるむ様子もなく、漢女が思い切り息を吸い込んだ。叫び声をあげる準備だ。
「やばい!それは遠慮願うじゃん!!」
それを察知するとハリーは素早く餓蟇王の後ろに隠れた。戦闘民族なオオカワウソも大型のワニにはさすがに勝てない。戦うべき相手を見極めてこその戦闘民族なのだ。次の瞬間、漢女の叫び声が響き渡るが、事前情報の通り餓蟇王はそれを見事に無効化した。同時に餓蟇王の表面から強烈な悪臭のする油が飛び、ハリーはまともにこれをくらう。
「よし、ビニール着てて正解だった……けど、あんまり長い事これでいたくねえな」
早い所戦いを終わらせるべく、ハリーは【ヘビーアームド・ウェポナイズ】を発動、餓蟇王に隠れつつ強化されたエネルギー弾を漢女に叩き込んだ。
『くうっ!?やるわね!』
「……おいおい、効いてるよな?勘弁してくれよ」
ハリーの願いとは裏腹に、まだまだ漢女は元気イッパイのようだ。それでも攻撃自体は間違いなく効いている。少しでも敵に多くのダメージを与えるべく、ハリーはさらに射撃を続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
貴方・あなた
「ドールズよ!我が意に従え!【|命令《オーダー》!】」
「|神《我》の名の下に、敵を撃滅せよっ!」
『承知しました、ご主人様!』
自分とドールズ全員を全技能100Lv状態に!
技能で餓魔王(敵を盾にする
味方をアサルトウェポンで武装させ、隠気のオーラ防御+結界術で覆い、敵味方の臭いと油を遮断!
大きな布を予め拾ってきて、超念動力+念動力でぐるぐる巻きにして敵UCの【体表の80%以上を露出】を阻害
そこへアサルトライフル、スナイパーライフル、ロケットランチャーで集団戦術+団体行動+音響弾+呪殺弾+スナイパー+誘導弾+援護射撃+貫通攻撃+爆撃+爆破+弾幕+一斉発射!
「肉片ひとつ残すな!」
『はい、ご主人様!』
●とんでもねえあたしゃ神様だあよ
『今度は女の子かしら?』
新たな侵入者を察知して迎撃準備を整えた【試練の漢女】がその視界に捉えたのは、貴方・あなた(わたしはあなた、あなたはわたし・f38681)だった。外見は8歳の女の子ではあるが、漢女の許容範囲は老若男女かなり広いらしい。
『うーん、これはあたしの渾身のキッスを差し上げなければ!』
早速超遠距離攻撃の準備に入る漢女を、あなたもまた捕捉した。
「げっ……」
あなたはというと、その許容範囲はそこまで広くはないようで、もともと同性嗜好がある上に、年齢の方は……詳細は不明だが、下はわりと広いかもしれないが上はよくわからない。ただ間違いなく言えるのは、今遠くにいる漢女は射程範囲外であるという事であった。精神面では女性方面の素養があるかもしれないが、それでもなお、であった。
「……消さなきゃ」
この結論はあなたにとって必然といえた。早速あなたは戦闘用美少女人形である|自動人形《オートマトン》『ドールズ』たちを呼び出した。
「ドールズよ!」
『参上しました!』
「我が意に従え!【|命令《オーダー》】!」
この【|命令《オーダー》】は、あなたが他者に命令する事によって、あなた自身と命令を受けた者……この場合はドールズたちを指す……の全技能を100に上昇させるものである。
『イエス!ご主人様!』
むろん、次に言うべきあなたの命令は決まっていた。
「|我《神》の名の下に、敵を撃滅せよっ!」
『承知しました、ご主人様!』
……多少複雑な話になるが、あなたは自分を神だと名乗ったが、それは半分は正しく半分は正しくないかもしれない。種族で言うならあなたは【召喚獣(神)】なのだ。なので神と名乗ってまったく間違いではないかもしれないのだが……まあ深い事考えると深淵にハマりそうな感もあるので神でいいのかもしれないが。
攻撃準備を整えたあなたに向けて、漢女は必殺の投げキッスを放ってきた。当たっていないにも関わらず、なぜか悪寒を感じさせる。あなたは素早く餓魔王の後ろに隠れ、これを盾にする事で必殺キッスを防ぐ。今度は飛び道具を防いだ事による餓魔王の油が襲ってくるも、それに対する備えもあなたは怠りない。あなたが身にまとう隠気には消臭の効果もあった。それを強化して防御壁のように使用する事で、あなたは悪臭のある油から身を守った。
『こしゃくな小娘ね!もう一度くらいなさい!』
再度投げキッスを連発する漢女。防御できているとはいえ、この威力はなかなか厄介とみたあなたは、威力を弱体化させる策をとることにした。どこからか大きな布を拾ってくると、それを超念動力で操り、強化された念動力で漢女の所まで運ぶと、漢女の全身を布でぐるぐる巻きにする。
『きゃっ!な、なんなのよこれ!』
これは漢女の投げキッスが、体表の大部分を露出させていないと弱体化する事を突いた良い策だった。
『ええい!こんなもの!』
それでも漢女はそのパワーで布をひっぺがさんとするが、まさにそれこそ、あなたの期待していた隙ができた瞬間だった。そこを狙い、ドールズたちが銃火器を装備して一斉に攻撃態勢を取ったのだ。
「総員!構え!」
『はい、ご主人様!』
「撃て!」
壮絶な一斉射撃が情け容赦なく漢女に叩き込まれた。
『な、なによこれあばばばばばば』
弾丸の嵐にダンスを踊るかのように跳ね回る漢女。だが、あなたはまだまだ容赦などしない。オブリビオンに、気持ち悪い存在にかけるべき情けなど一片たりとも存在しないのだ。
「肉片ひとつ残すな!」
『はい、ご主人様!』
大成功
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黒木・摩那
普段であれば、遠距離攻撃が得意な相手ほどカモなのですが、今回の相手はちょっと違いますね。
むしろ近くに寄りたくないタイプです。
これはもう餓蟇王を借りる一択ですね。
もっとも、その餓蟇王も臭いという問題はありますが、まだ対応の方法はありますし。
まずは臭い対策。
魔法剣『緋月絢爛』にUC【トリニティ・エンハンス】の【水の魔力】と【風の魔力】を付与して、剣で水の膜を作ります。
これを餓蟇王との間に張って、脂が来ないようにします。
餓蟇王を盾に、攻撃はヨーヨー『エクリプス』で。
ヨーヨーに【電撃】を付与。
軌道を【念動力】でジグザグに操作することで回避困難にしつつ、殴っていきます。
●てめえら許さねえ
「普段であれば、遠距離攻撃が得意な相手ほどカモなのですが」
という黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は近接戦が得意なのだろうか。遠距離戦を主体とする相手に対し、攻撃を回避しながら近づき、白兵戦でカタをつけるのが本来の戦い方なのだろう。
「今回の相手はちょっと違いますね。むしろ近くに寄りたくないタイプです」
だが今回の相手はいつもと勝手が違っていた。外見からして強烈なある意味の存在感を放つ【試練の漢女】。しかも見た目が近寄りがたいだけではない。その必殺技は体格を利したベアハッグなのだ。なので遠距離戦主体の相手ではなく、遠距離戦もできるインファイターというのが正しいのだろう。接近戦はむしろ相手の領域に踏み込みかねないのだ。
『うーん、これは実に可愛らしい女の子が来たわね』
摩耶を認めた漢女は実に素直な感想を持った。なにせ黒髪ロングヘアーで眼鏡っ娘は琴線に触れるものがたしかにあるだろう。男女両方の感性を持ち自然と許容範囲が広くなる漢女が感情揺れ動かされる事があってもまったく不思議ではない。
「来ますか」
絶叫が来る事を察知した摩耶は餓蟇王の後方に隠れた。このような相手なので、巨門から餓蟇王を借りるのは摩耶にとっては当然の選択といえた。この時ユーベルコード【トリニティ・エンハンス】を使用し、愛用の魔法剣『緋月絢爛』に水の魔力と風の魔力を付与する事も忘れない。餓蟇王から出る油が臭いというデメリットを承知のうちで借りるからには、その対策も当然必要となるのだ。
『覚悟なさいな!』
漢女の絶叫が兼六園を揺らす。その衝撃は餓蟇王によって防がれ、摩耶に影響を及ぼす事はない。餓蟇王によって生じた悪臭のある油が飛んでくるが、摩耶は冷静に先刻水と風の魔力を付与した『緋月絢爛』で水の膜を作った。水と油という言葉にもあるように、水と油は混じりあう事がなく、混ざるための界面活性剤となるものが存在しないので、水の膜は油を弾き、摩耶にそれが降りかかるのを防いだ。
『あーもう!どいつもこいつも!そんなにあたしのハグが嫌なの!?』
「それは嫌よ」
気に入った男女がなかなか自分の愛を受け入れてくれない事にぶち切れぎみの漢女に冷静に答えると、摩耶はヨーヨー『エクリプス』を取り出した。ヒーロー戦争で入手したこのヨーヨーは、摩耶の意思でその質量を自在に変化あせ、さらに刃を出し入れする事もできる強力な武器だ。摩耶はエクリプスに電撃をまとわせ、漢女に飛ばした。ヨーヨーは山なりの軌道で餓蟇王を飛び越えると、そのまま漢女に向かっていく。
『なによこんなもの!簡単によけ』
回避行動をとりつつ発せられた漢女の言葉は最後まで続く事がなかった。念動力により操作されたエクリプスはジグザグの不規則な軌道で回避すべき方向を定まらせようとしない。|日食《eclipse》において太陽が見えなくなるかのごとく、ヨーヨーの軌道が見えなくなる。漢女がどこに逃げようと地獄の果てまで追いかけてくるかのようだ。やがて鈍い音と、大質量を叩きつけられた上に電撃を流し込まれた漢女の悲鳴が聞こえてきた。
「……ちょっと浅かったかしら」
摩耶は再度エクリプスを飛ばす。近寄りたくない相手を、近寄る事なく完膚なきまでに打ち倒すべく。
大成功
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フィルバー・セラ
【アドリブ連携歓迎】
……いや、いくら何でも臭いキツすぎんだろオイ!!
流石に俺でもしんどいが!?
しかも視線がめちゃくちゃ痛ェ!!寒気がするわ!!
俺にそういう趣味はねえんだとっとと骸の海に還れ暑苦しい!!!!
【多重詠唱】で風【属性攻撃】魔術と【結界術】を組み合わせ
空気の壁を貼って餓蟇王の背後に安全地帯かつ呼吸できる範囲を確保!!
いやホントありがてえよ餓蟇王さんとやら、この礼はかならずするからよ……
よ――――しあとは殺すだけだな!!
【呪詛】を込めた【指定UC】の【呪殺/誘導弾】をひたすら撃つ!
さっさと風化しろ!!あるいは石化しろ!!一言たりとも喋んじゃねえ!!
その視線を俺に向けるなッッ!!!!
●
『あらぁ、いい男ねえ』
敗色濃厚になっているにも関わらず、【試練の漢女】の欲望はいまだ衰えを見せない。当然その視線は新たな挑戦者であるフィルバー・セラ(|霧の標《ロードレスロード》・f35726)にも向けられる事になったわけだが……。
「……いや、いくら何でも臭いキツすぎんだろオイ!!流石に俺でもしんどいが!?」
フィルバーが返したのは当然といえば当然の、あまりにも強烈な拒否反応だった。敵の野郎くささと餓蟇王のくささのダブルパンチな戦場ではあるが、この場合フィルバーが怒っているのは当然前者であろう。
「しかも視線がめちゃくちゃ痛ェ!!寒気がするわ!!」
『嫌がるトコも可愛いわねえ』
「俺にそういう趣味はねえんだとっとと骸の海に還れ暑苦しい!!!!」
エクスクラメーションマークを4つも重ねて激高したフィルバー。クールな美形のように見えて意外に性格はホットなようだ。まあ普段冷静な人だってそうもなろうということなのかもしれないが。
『んもー!失礼しちゃうわね!そういう人には悲しいけど試練あげちゃうから!』
漢女が咆哮をあげる。たちまち戦場全体が特殊空間で覆われる。絶えず強烈な遠距離攻撃が降り注いでくる危険な場所だ。一方でオブリビオンは特殊空間の中ではオブリビオンは4倍のパワーを持つ事ができる……かどうかはわからないが、常時回復のバフを受けるらしい。
「ちっ!だが、準備はしてきたぜ!」
フィルバーは餓蟇王の背後に隠れた。むろんこのままでは自分も餓蟇王の油を浴びる事になるが、フィルバーは風の魔術と結界術を組み合わせる事で風の結界を張った。やがて雨あられとダンベルやら何やらが降り注いできたが、それらは餓蟇王ががっちりと防いでくれた。餓蟇王からの油は風の結界で防ぎつつ、自分が呼吸できるだけのスペースもバッチリだ。
「いやホントありがてえよ餓蟇王さんとやら、この礼はかならずするからよ……」
礼を述べつつ、余裕もできたところで改めてフィルバーは強烈な殺意を漢女に向ける。
「よ――――し!あとは殺すだけだな!!」
長い棒が気合の入り方を実に示している。フィルバーは愛銃『Crimson Rouge』を構えると、呪詛を注ぎ込んだ。たちまち弾丸が自動生成され、装填される。それはまさに|魔弾《Freikugel》であった。かの有名なオペラで7発用意された魔弾は、今回はその数530。拳銃ならばほぼ無制限に等しい量といえた。しかも7発中1発に罠が仕込まれている原作と違い、その全てを意のままにできるのだ。
餓蟇王を盾にしつつ、フィルバーはそれを容赦なく漢女に叩き込んだのである。弾丸は降り注ぐ障害物をも物ともせず、不規則な軌道を描きながら狙い違わず目標へと吸い込まれていった。確実な死をもたらす弾丸を何発もくらい、さすがの漢女も悲鳴を……
『ぐお』
「さっさと風化しろ!!あるいは石化しろ!!」
『うぐわ』
「一言たりとも喋んじゃねえ!!」
……あげられなかった。ひどい。断末魔ぐらいしゃべらせてくれたっていいじゃないかと思わないでもないが、まあ正直気持ちはよーくわかる。ただでさえ悪辣な計画を張り巡らせているオブリビオンだ。これくらい情け容赦なくきっちとやってしまって何も問題はないだろう。
「その視線を俺に向けるなあああああああッッッ!!!!」
それすらも拒否され、徹底的に、これ以上ないほど徹底的にすり潰され、漢女は辞世のハイクすら詠めずに消滅したのだった。
かくして、いろいろな人にいろいろな感情を残しつつ、ひとつの戦いが幕を閉じた。
だが第二次聖杯戦争はまだまだ続く。皆様の次の戦場でのご健闘をお祈りいたしております。
大成功
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