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狂気の処刑場を粉砕せよ!

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 暗い雲の覆う夜半。
 燭台に照らされた村の広場には、そこに住まうほとんどの住民が集められていた。
「この者達は民衆を惑わし、悪の道へ堕としめんとする魔女の容疑がかかっている! よって我らが主の命により、血の粛清を執り行う!」
 黒いローブを羽織った男――異端審問官が立つ場所は、急造で作られた処刑台である。
 群衆を睥睨するような高い位置には、恐ろしげな断頭台が据えられ、大斧を携えた大柄な処刑人が一人、その側に佇んでいた。
「罪人達を、前へ!」
 異端審問官の金切り声に応じ、兵士達によって、青い顔をした20名の男女が引き出されてくる。
 彼らは皆、ヴァンパイアに抗うための活動を行っていた、レジスタンス達だった。
 しかし今や敵に露見し、村の者達から反抗の気概を削ぐための見せしめとして、処刑されようとしているのである。
 縄できつく結び合わされ、処刑台の横で二列に並ばされた彼らは、異端審問官に罪状を読み上げられている間、悔しげに顔をうつむかせていたが。
「……今だっ!」
 その内の一人が自力で縄を抜け出し、広場を駆けて逃げだそうと試みる。
 だがその瞬間、暗がりの中から投げつけられた短剣に背中を刺され、ものも言えずに命を奪われたのだった。
「……無駄な事を。どうせもう、逃げられやしないのに」
 短剣を投擲したのは、物陰から広場の様子を眺めていた、血の臭いを漂わせるフードを被った一人の女。
「あ、あいつは、断罪の黒猫『キャット』!」
「姿を見たら死ぬって噂の、恐ろしく腕の立つ処刑代行人じゃないか……!」
「あんな手練れまで雇われているんじゃ、もう駄目だ……!」
 恐怖にざわめく群衆をよそに、キャットは仕事は終わったとばかり、再び闇へ姿を消す。
「これで裁くべき罪人は19人まで減った! さあ、次は誰に執行するべきか!」
 異端審問官が呼ばわると、兵士達に引き出されたレジスタンスが一人、処刑台へと上がらされていく。
 そうして断頭台に頭を固定されると、口には猿ぐつわと黒いフードがかぶせられる。
「不届きな魔女はこうなる運命という事を、今こそ見せつけてくれる!」
 異端審問官の叫びとともに、もがくレジスタンスの真上で処刑人が斧を振り上げ、その刃がぎらりと鈍く輝き――。

「猟兵のみんな、よく集まってくれたな! ダークセイヴァーで、オブリビオンに狙われている村を予知したぜ!」
 グリモアベースに集まる猟兵達へ『人間のガジェッティア』ロロック・ハーウェイが、事件の発生を告げる。
「件の村ではレジスタンスの潜伏が発覚し、やって来た異端審問官の軍勢によって、大々的な公開処刑が執り行われようとしているんだ!」
 このままでは残酷なる刑罰によってまた一つ、希望の芽が摘み取られ、抗おうという人々の気持ちまでも奪い去られてしまうだろう。
「そうなる前に、みんなにはこの処刑場へ殴り込んで、人々を救出して欲しい!」
 異端審問官による理不尽で一方的な処断を台無しにし、レジスタンス達を救い出す。
 それこそが、迫り来る破滅に一矢報いる事だと、ロロックは頷きかける。
「【POW】処刑台を襲撃し、処刑されようとしている人を助け出したり、【SPD】見張りの目を盗んで、レジスタンスの拘束を解いたり……【WIZ】刑場を見守っている人々を説得して、味方につけるのもいいぜ!」
 村の住民達はレジスタンスを秘密裏にかくまい、彼らがヴァンパイアから取り返した物資を受け取る事で飢えを凌いでいたが、現在では恐怖に負け、何もできないでいる。
 今の段階ではむしろ猟兵達の妨害をしかねなかったり、争いに巻き込まれる危険性があるため、説得をかけて彼らの支持を得たり、演説やパフォーマンスで鼓舞し曇った目を覚まさせておきたいところだ。
 処刑台には異端審問官と処刑人、数人の兵士が護衛についている。
 異端審問官に戦闘力はないが、巨大な斧を持つ処刑人と武装した兵士達はそれなりの使い手なので、早急に排除する術が必要となる。
 捕らわれているレジスタンス達には5人ほどの見張りが立っているため、迂闊に動きに気づかれると虜囚にも危険が及ぶ。
 なるべく隠密に徹したり、逆に速攻をかけたり、陽動を行うなど工夫すべきだろう。
「敵の中には不吉を告げる黒猫『キャット』って手強いオブリビオンがいるらしい。けどこいつは今の所処刑場から離れているから、警戒する必要はないぜ。救出の方に専念してくれ」
 処刑場へ乗り込む以上、騒ぎになるのは避けられない。遅かれ早かれ敵の増援が到着し、本格的な戦闘になるはずだ。
 その前に一人でも多くのレジスタンス達を救い、村から逃がす事が急務となる。
「やるべき事はたくさんだけど、全体を見ながら一つ一つ確実に遂行していく事が大事だ。皮一枚まで追い詰められても、そう簡単に処刑されてやるもんかってとこを、ヴァンパイアの奴らに見せつけてやろうぜ!」


霧柄頼道
 霧柄頼道です、よろしくお願いします。

●周囲の状況
 レジスタンス達が身を潜める拠点の一つとしていた、小さな村です。
 広場には処刑台が建設されて処刑場と化しており、ヴァンパイアの手先である異端審問官ならびに大柄な処刑人、まばらに立つ兵士達が睨みを利かせています。
 断頭台にはすでに一人のレジスタンスが固定され、異端審問官の長話が終わり次第首を落とされます。
 捕虜のレジスタンス達には見張りがついています。時間が経過する毎に一人ずつ処刑台へ上がらされ、殺されていきます。
 処刑台を遠巻きに見守り、村の住民達が集まっています。彼らの信用を得られれば、猟兵の指示に従ってくれるようになります。
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第1章 冒険 『魔女狩りを阻止せよ』

POW   :    異端審問官を力尽くで排除し、村人を救出する

SPD   :    刑場に突入し、異端審問官に捉えられる前に村人の拘束を解く

WIZ   :    周囲の村人を説得。味方につけ、処刑の中止を求める

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルフトフェール・ルミナ
……酷いことを。
救出の為に僕に何ができる?
隠密は不得意だ。住民は今恐怖してるから、勝てる、と思えなくては、言葉だけで説得は難しいだろう。

【POWかな?】
大前提として、他の猟兵の行動方針に倣うよ。

僕は、事情を知らない旅人の振りをして、集まってる人に紛れ込む。
「なんて酷い……」とか言い、周りに「酷すぎじゃないですか?」等囁きながら(きっと無視されるか突き出される)、処刑場へ動く。
同じ論調で異端審問官達を詰り、注意を引いて時間を稼ぐ。
襲われたら【カウンター】【敵を盾にする】で対応(村人の場合は振り払うだけで攻撃しない)。
ウィザード・ミサイルは、強襲を選んだ人が他に居て、一緒に暴れる場合にのみ使うよ。


阿紫花・スミコ
群衆の中に紛れて、観客の振りをする。
(コミュ力、言いくるめ)

他の猟兵たちの救出作戦にタイミングをあわせ動き出す。

「さて、はじめようか。」

ガン・ハイダー(ガンベルト)の迷彩を解き、黄金に輝く精霊銃「アヴェンジングフレイム」を引き抜く。右手で銃を腰の高さに構えながら、左手で擊鉄をはじき、6発の弾丸で武装した兵士を射撃。(ファニングショット、早業)

ワイヤーギヤでフック付きワイヤーを射出、蒸気とワイヤーの巻き取りの力で一気に処刑場へ。すぐに再びワイヤーを使って、できれば、一番危機的にある要救助者一人を救い出してその場を離れる。(空中戦)

安全を確保できたら、スーツケースからからくり人形を出し戦闘開始だ。


イデアール・モラクス
クク…吸血鬼の手先が異端審問ごっこだ?
笑わせる、なら本当の魔女が遊んでやろうではないか!

・行動
「エセ魔女を断罪するだけで異端審問官気取りか?
笑わせるな!」
付近の家屋の屋根に立ち、高い位置から大声で語り注目を集めて処刑を中断させる。
「我が名は魔女イデアール!
貴様らが審問官ならば、我が首を獲りに来るがいい!」
宣言と同時にUC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『高速詠唱』で斉射、審問官や処刑人、兵士らを『串刺し』にして鏖殺する。
「処刑なんかしてる暇はないぞ?
アーハッハッハ!」
これで奴らは処刑の手を止め、私を狙うしかなくなる。

※アドリブ歓迎


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

私は周囲の村人の説得、『鼓舞』を致しましょう。
彼らレジスタンスが処刑されては遅かれ早かれ私達も同じ破滅の途を辿ると。
今声を挙げずして、いつ声を挙げるのか。レジスタンスに恩を感じるならば声を挙げよと。
正義の騎士も味方してくれるぞ!とホワイトナイトで騎士を出現させ、分かりやすい力を視覚化させておきます。
これで少しでも村人が勇気を持ってくれれば……。

村人の方に数の利があります。
騒ぎ注目を集めれば救出の隙が生れるはずです。
他の猟兵と協力し、全員救い出してみせます。
もし村人鎮圧のため危害が及びそうな時は、ホワイトファングで敵の無力化や、村人やレジスタンスを『かばう』事も視野に入れます。


ニレ・スコラスチカ
【POW】
この世界そのものの異端であるオブリビオンが、よもや異端審問官を名乗ろうなどと。
一刻も早く執行すべきです。それがわたしの使命。

処刑台の周辺の人混みに紛れ、不審に思われる限界まで近付きます。そこから脇目も振らずに全力疾走。攻撃は全て【激痛耐性】で耐えて回避より突破を優先。
罪深い自称異端審問官までたどり着けば、その首狙って【罪滅】を。

少なくとも処刑どころでは無くなるはず。陽動にでもなれればよいのですが。


栗花落・澪
零と連携
呼び方→零さん

UC発動
常に片手で零に触れながら縄を解きに行く

被害者の体を傷付けないよう【見切り】
★鎌で縄を切る
縄が皮膚に密着し危険な場合
切れ目を入れて零や村人がちぎりやすく
解放した村人の耳元でまだ動かないでと小声

外野や被害者に害が及びそうな場合やバレたらUC解除
僕はその場に残り
村人達への攻撃妨害として
氷の【全力魔法、範囲攻撃】で地面を凍らせ敵を転倒
【歌唱、催眠】で微睡ませ
主に接近戦に強そうな兵士や処刑人を
風魔法で零の方に送る

今だ、皆逃げて!

それでも村人を狙う敵は足を狙い氷魔法攻撃
地面に固定して足止め
はいはいそっち行かないでねー

個人的には極力命は奪わない方針だが
零の方針には特に関与しない


天星・零
栗花落さんと連携

『声を上げてはダメです。助かりたければ声を上げてはいけません。』

☆【変幻自在の影の住人】

☆を一般人に紛れ込ませ処刑が行われても影の住人が囮になることで住民に被害がないようにしつつ、その間透明になりながらØで縄を斬り住民を助けようと



栗花落さんuc解除後

処刑台に人がいるなら処刑台に向かい護衛

☆と【首狩り女王の死刑執行】と共に妨害

送られてきた敵をØで切り刻む

必要に応じて【毒使い・呪詛】でマフェッドスレッドの猛毒や首を狙い容赦なく絶命を狙うまたは手首、足首を斬って直ぐに行動できなくさせる


万が一に備え常に【第六感】、敵を見逃し漏れがないよう【追跡】

どんな状況でも微笑んでいる


ノワール・コルネイユ
あまり悠長に構えている暇はない、か
審問官殿とやらを料理するのはひとまず後だ

村人は周りの者に任せ私は兵士の気を惹こう

逆上して狙いがこちらへ向くならよし
手駒が減って村人への追手が減るもよし
さて、軽く遊ぼうじゃないか
ご立派な武器が飾りじゃない所を見せてみるがいい

別働体の行動を確認しながら
物陰を利用して【目立たない】様に移動し
敵の虚を突ける場所、背後か頭上を強襲出来る位置を探す
仲間が行動を開始するか、敵が意図に気付いたら
【殺気】を振り撒き敵を急襲する

剣を抜いたらUCを攻撃力重視で発動し
相手が単体ならば【2回攻撃】
複数を相手する時は【範囲攻撃】で薙ぎ払う

村人に近い兵士を優先的に排除して
手早く数を減らそう



「この者どもは罪を犯した! ヴァンパイア様に逆らうという大罪を! ゆえにしかるべき罰を与えねばならない! 苦しみと痛みに苦悶しながら地獄へ落ちねばならない!」
 処刑場では、目を血走らせた異端審問官の演説が続いている。断頭台に捕らわれたレジスタンスの命は、もはや風前の灯火だ。
「……酷いことを」
 ルフトフェール・ルミナ(空を駆ける風・f08308)は群衆に紛れてその様子を見つめ、小さく息を漏らして思案を巡らせた。
(「彼らを救う為に、僕に何ができる?」)
 隠密は不得意だ。かといって住民は今恐怖しているから、勝てる、と思わせなくては――言葉だけでの説得は難しいし、猶予も限られている。
 ならばこの身を張ってでも、捕らわれている人々を助けに向かおう。できる事といったら、それくらいだ。
「あの~、旅の者なんですけど、なんだか大変な事になってますね。このままじゃあの人、死んじゃうんじゃないですか?」
 ルフトフェールは何も知らない旅人を装い、周囲の人々に囁きかけながら前の方へと移動を開始する。目指すは処刑場だ。
「仕方ねぇさ……ヴァンパイア様に逆らった者は、ただじゃすまねぇんだ」
「俺達だってなんとかしてやりたいけど、こうなっちゃもう……」
「それにしたって酷すぎじゃないですか? あの黒いローブの人の言ってる事も、めちゃくちゃですし」
 さらに、同じく旅人として入り込んでいたアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)もタイミングを合わせ、村人達に説得の言葉を投げかけ始める。
「このような無法がまかり通っていいわけがありません。彼らレジスタンスが処刑されては遅かれ早かれ私達も同じ破滅の途を辿るでしょう。明日のために、今こそ立ち上がるのです!」
「お、おいおい、滅多な事を言うもんじゃない……」
「こいつら、もしかしてレジスタンスの協力者か……?」
 ルフトフェールとアリウムの懸命の鼓舞も虚しく、四方から向けられる疑念の眼差し。
 二人は次第に処刑場の方へ押しやられるようになり、篝火に照らされる不気味な断頭台が見えて来た。
「ま、待って下さいよ。もうちょっとくらい話を聞いてくれても……」
「あなた達も以前はヴァンパイアに立ち向かう気骨を持っていたはず。ならば今声を挙げずして、いつ挙げるのか。彼らレジスタンスに恩を感じるならば声を挙げよ!」
 訴えかければかけるほど、恐怖、怒り、迷いと、村人達のないまぜになった感情が伝わって来る。
 そして二人はついに、異端審問官の面前へ突き出された。
「そもそも悪いのってあなた達じゃないんですか? こんなの魔女裁判もいいところですよ。弁護士を呼んで下さい、最高裁まで争いますから!」
 しかしルフトフェールは諦めず、審問官に向かって思いつく限りにしつこくまくしたて、注意をこちらへ引きつけさせる。
「おのれ、審判に異を唱えるか! ならば貴様らの首も断頭台にかけてくれる!」
 思惑通り、異端審問官は処刑台の床を蹴りつけ、唾を飛ばして怒鳴りつけて来た。
 こうやって挑発を続けていれば、処刑までの時間を稼ぐ事ができるはずだ。
「見よ、あの者達の醜悪な姿を! 大義は我らにあり! 正義の騎士も味方してくれるぞ!」
 一方のアリウムは人々の方を向いたまま説得を続け、そうしてすぐ傍に、白銀の騎士を召喚する。
「おお、なんと力強く勇壮な佇まい……!」
「正義……そうか、俺達はいつの間にか、そいつを忘れてしまっていたんだ……」
 二人がそれぞれ見せる悪へ対しての抗いに、村人達は息と生唾を飲み、とても強く心を揺さぶられているようだ……!

「愚民どもめ! まさか貴様らも我らに反逆するつもりか!?」
「だ、黙れ! 捕まえたレジスタンス達を解放しやがれ! こんな茶番はもううんざりだ!」
 そうだそうだ、と村人達から異議が巻き起こり、数で劣る異端審問官や兵士達は気圧されている。
 それを好機とばかりに足音を殺して処刑場を進むのは、UC『共暝の祈り』で透明化した栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)だ。
 縄で縛られているレジスタンス達の元まで辿り着くと、二人は端から順番にその縄を切断にかかる。
 澪はUCの性質上、常に零に触れており片手がふさがれている状態だが、彼らの身体を傷つけないよう静かに狙いすまし、薄紅色の鎌を繊細に振るって束縛部分を切り落とす。
 手元から指までがんじがらめの場合は、表面へ細かな切れ目だけを入れておく。
 そちらは両手の使える零がØで切断してくれるし、それが間に合わずともレジスタンス自身が頑張って力ずくで外せる、一石二鳥の工作である。
「うっ、な、なんだ……? 急に身体が軽く……しかも縄がほどけて……?」
「静かに……合図をするまで動かないでね」
「声を上げてはダメです。助かりたければ声を上げてはいけません」
「ふおっ……な、なんか耳元がこそばゆい……あふん」
 方や緊張気味に、方や微笑みながら囁きかける澪と零の言葉に、レジスタンス達もどうにか事態を把握してくれているようだ。

 その頃、処刑台付近ではまた新たな展開があった。
 レジスタンス解放のため、いよいよ暴動を起こさんばかりに熱狂する群衆。
 その人混みの中から、影の如く飛び出す少女がいた。
 ニレ・スコラスチカ(旧教会の異端審問官・f02691)である。人々を隠れ蓑に限界まで前へ出て、そして標的を捕捉するや、身を低めて飛び出したのだ。
 無感情な視線がまっすぐに見据えるのは、ぎょっとしたように立ちすくんでいる異端審問官。
 言葉を交わす事はなくとも、ニレから発せられる不吉な気配を敏感に感じ取っているようだ――。
「き、貴様も魔女か! 誰かそいつを殺せ!」
「この世界そのものの異端であるオブリビオンが、よもや異端審問官を名乗ろうなどと」
 世も末だ。もはや一秒たりとて放置できるものではない。
 立ちはだかる兵士達を前にしても、ニレは標的を視界から外す事なく、一切怯まず突き進む。
「状況が動いたね。さて、はじめようか」
 と、ニレの突撃を目撃した阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)も、熱気立ち上る群衆の中でおもむろに【ガン・ハイダー】へ触れ、光学迷彩を解除する。
「援護するよ」
 するりと集団から抜け出しつつ、黄金に輝く精霊銃【アヴェンジング・フレイム】を素早く引き抜き、右手で銃を腰の高さに構えながら、左手で擊鉄をはじく。
「いくよ!」
 その照準が敵を捉えた刹那、すかさず引き金を引いた。
 夜気を切り裂いて飛来する6発の銃弾は、ニレめがけて武器を振り下ろそうとしていた兵士めがけ、狙い過たず全てが着弾。
 粗悪な鎧など問題にならないとばかり、6発分の弾痕が次々穿たれ、瞬刻にして絶命せしめたのである――。
 とりもなおさず、スミコはワイヤーギヤからワイヤーを射出し、処刑台の柱へ引っかける。
 自身も蒸気とワイヤーの巻き取りの力で高々と飛び上がり、こちらを向いた敵兵の視界から瞬時に外れつつ、一気に処刑台の上へ。
「大丈夫? 今助けるよ」
 断頭台に固定されたままのレジスタンスを助け出し、フードも外して安心させるように笑いかける。
「あ、あんたは一体……!」
「ボクは味方。さあ、すぐにここを離れよう。――掴まって」
 恐る恐るしがみついてくるレジスタンスを小脇に抱えるようにして、スミコはもう一度ワイヤーを射出。
 異変に気がついた処刑人が振り返りざまに断頭台へ斧を振り下ろしたが、そこにいたのは零の作り出した【変幻自在の影の住人】、すなわち囮である。
 その間にスミコは軽々と空中へ舞い上がり、見事処刑台からの救出を達成したのである……!

 だがいまだ護衛の兵士達は健在であり、全力疾走するニレを始末すべく襲いかかって来る。
 するとそこへ、さらに背後から音もなく飛びかかったのは、ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)だ。
「審問官殿とやらを料理するのは任せよう」
 振りまかれる殺気に兵士達が振り向いたのも束の間、すでにノワールは左右長さの違う魔を祓う銀の剣を鞘走らせており。
「ご立派な武器が飾りじゃない所を見せてみるがいい」
 一閃、二閃と暗闇に光を奔らせ、美しく長い黒髪を揺らして着地するノワール。
 その背後では、兵士に刻み込まれた十字の傷口から血しぶきが噴き上がる。
「さて、軽く遊ぼうじゃないか」
 赤い瞳が迅速に敵の位置を再確認し、上体を起こしざまに回転しながら剣を薙ぎ払うと、激しい斬撃を受けた兵士達は踏ん張りも効かずに吹っ飛んでいく。
 一方のニレは処刑台へ駆け上がり、ついに異端審問官を間合いへ収めていた。
「や、やめろ、くるな、くるな異端があぁぁぁぁぁ!」
「断罪、執行します」
 恐慌に目を見開いた審問官へ死の宣告を浴びせるとともに、ニレは跳躍しながら生体拷問器の鋸を振りかざす。
 腕をばたばたさせるだけの審問官にその一撃を回避する手立てはなく、風を切って鞭のようにしなる鋸の刃が、奴の喉首を捉えて掻ききった。
「ぎゃぶっ……べぼっ……ぼぉ……!」
 審問官はぐるりと白目を剥き、引き裂かれた喉を押さえようと両手を伸ばしたが、あえなくその首は真後ろに垂れ下がり、肉を引きちぎりながらぼろっと背中側へ落ちた。

 指揮官だった審問官が突然の惨死を遂げた事で敵は浮き足立ち、狼狽する者、逃げ出す者、錯乱して見境なく襲いかかる者と、もう大パニックだ。
「今だ、皆逃げて!」
 UCを解除した澪の叫びに、縄の解けたレジスタンス達はわっと広場から逃走にかかる。
 澪自身はその場に残り、彼らを狙う兵士達を妨害するため、氷魔法で地面を手広く凍結。
 足を止めさせたり、転倒させたりと、皆が逃げるだけの時間を稼ぐ。
「はいはいそっち行かないでねー……零さん、敵を送るよ!」
 それでも対応しきれない敵はまとめて風魔法で弾き飛ばし、そうしてベルトコンベアめいて送られて来る相手を、待ち構えていた零がばっさばっさと斬って処理していく。
「ここまで来て犠牲者は出したくありませんからね。容赦なくいかせてもらいますよ」
 中距離の敵にはマフェッドスレッドを伸ばし、急所を引き裂いて即死させつつ、ならばと防御を固める相手には守りの薄い手足を傷つけて猛毒を注ぎ込み、動きを止めて確実に仕留めていた。
「中々骨のありそうな獲物だ……どれ、相手をしてもらおう……か」
 零が兵士達を食い止めている間、処刑台では首狩り女王ディミオスが鎌を携え、大斧の処刑人と相対していた。
 他の雑魚とはひと味違う気配に、ディミオスは牽制の鎖を投げつける。
 しかし処刑人は生命を吸う鎖の危険性を察知したらしく、突き出した斧で巻き取ると、その膂力でもって逆にディミオスを引き寄せにかかった。
 ディミオスはあえて鎖と一緒に引き寄せられながら、逆手に握り直した鎌を処刑人へ向けて斬り下ろす!
 弧を描く猛撃はしたたかに処刑人の肩口へ食い込み、悲鳴と鮮血をまき散らすものの、致命傷までには至らないようだ。
「食らう間際で急所をずらしたか……やるではないか」
 処刑人の反撃を鎌で受け止めつつ、ディミオスは軽く口元の骨を鳴らし、一騎討ちへ興じるのだった。

「わっとと、危ない危ない、大混乱だねぇ」
 ルフトフェールはちゃっかり敵を盾にしながら戻って来ると、逃げ惑うレジスタンスや群衆を庇うようにして自身を囮に、ウィザード・ミサイルを乱射して敵兵をぶっ飛ばしていく。
「どう、せっかくだし一緒に暴れちゃう?」
「そうですね……ともに人々を助け出しましょう」
 アリウムもルフトフェールと並んで壁となり、氷華の切っ先からホワイトファングを矢継ぎ早に打ち込んで足止めをしつつ、同時に声を上げて住民の避難に務める。
 処刑台付近では、ノワールとニレがまだ敵兵の輪から抜け出せずにいた。
「隙を作るから、包囲を抜けて戻って来て!」
 そこでスミコはからくり人形【ダグザ】を出すと、真っ向から突貫させて強引に囲みの穴を作り出した。
「支援はありがたいが……どうもそう簡単に逃がしてはくれないらしい」
 剣を構えるノワールの視野には、斧を振り回しながら走り寄ってくる処刑人の姿が映っている。
 ノワールはその場でのけぞると、真横に振り抜かれる斧を紙一重で回避し――そのまま半身を引き戻して、二対の銀剣を鮮やかに交差させた。
 二重の斬撃が処刑人へ叩き込まれるが、奴はまだ倒れない。
 それどころかすぐさま斧を持ち直すと、再びぶち込もうとして来るのだ。
 だが側面から鋸で斬りつけるニレに合わせ、ノワールも短剣で斧をいなしつつ、死角から長剣を突き入れた。
 両側からの同時攻撃を受けた処刑人は血を吐きながら動きを止め、斧を取り落とし――がくりと膝を突くと、ようやく息絶えたようだった。
「我が獲物が……抜け駆けされたか」
「悪いな、早い者勝ちだ」
 一歩遅れて駆け付けたディミオスがちょっと残念そうにしていたが、肩をすくめたノワールと無表情のニレは二人揃って処刑台からジャンプする!
 なおも来る追っ手を斬り倒しながら疾走し、仲間との合流を目指すのだった。

 と、処刑場での異変を聞きつけたのか、他の異端審問官や、敵の兵士達が援軍として押し寄せて来ていた。
「これは一体どうした事だ! 我らの面目に泥を塗るとは!」
「異端者どもめ! 残らず成敗してくれる!」
 憤慨しながら息巻く審問官達。
 しかしそこへ、艶やかながらも不敵な笑い声がどこからともなく響いてくる。
「クク……吸血鬼の手先が異端審問ごっこだ? 笑わせる、なら本当の魔女が遊んでやろうではないか!」
「なっ、なんだこの声は! どこにいる!」
「ここだよ、ここ」
 審問官達が周りを見回し、そして目にしたものは、家屋の屋根に傲然と胸を反らせて立つ、一人の魔女――イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)だ。
「まったく、エセ魔女を断罪するだけで異端審問官気取りか? 笑わせるな!」
 全てを睥睨するかのように視線を巡らせ、腕を広げて大声で語りながら、ここぞとばかりに注目を集める。
「なっ、何者だ! 名を名乗れ!」
「我が名は魔女イデアール! 貴様らが審問官ならば、我が首を獲りに来るがいい!」
 イデアールこそ、魔女扱いされているそんじょそこらのレジスタンスとは一線を画する、まさに暴力と悦楽の体現者。
 他の兵士達も思わず戦いや追撃をやめ、独壇場とも言えるイデアールの登場に目を奪われていた。
 そんな彼らが見たものは、魔女のたたえる捕食者めいた嗜虐的な笑みと――見る間に夜空を埋め尽くす、無数の魔方陣が放つ不吉な光。
「ままままま魔女だとぉ!? だ、誰か、奴をしょけ、処――!」
「――獲れるものならな! さあ魔力よ、我に仇なす尽くを串刺しにしてしまえ! 鏖殺魔剣陣!」
 イデアールの宣言と同時、空から流星群のように降り注ぐ魔力の剣が、集まっていた敵の増援へと襲い掛かる!
 雨あられと打ち込まれる剣の数々に、異端審問官も兵士もまんべんなく全身を串刺しにされ、地面や壁へ縫い止められ、断末魔を上げる隙もなく鏖殺されていく。
「処刑なんかしてる暇はないぞ? アーハッハッハ!」
 代わりとでも言うように、心底愉快そうなイデアールの笑い声が、魔力の剣の風斬り音にまぎれて響き渡っていた。
 捕らわれていたレジスタンス達は全員逃げている。彼らが盾や人質にされる心配さえなければ、あっという間にこんなものだ。
 審問官達ご自慢の処刑台もさながら針の山。数秒前まで威勢良く吠えていた敵の群れが骸となって転がる様を眺め、イデアールはニヤリと笑った。
「残念、串刺しの刑に処されたのは貴様らの方だったなぁ……? フフ……アーハッハ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『朱殷の隷属戦士』

POW   :    慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

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 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その時、暴動を鎮圧するため、広場へやってくる数十名に及ぶ一団があった。
 その名も『朱殷の隷属戦士』――ヴァンパイアの犠牲となり、忠実な走狗として蘇らせられ、呪われし武具を与えられた哀れな亡者達である。
 集団の中には、かつてこの村の住民だった者の姿もあった。
 けれどヴァンパイアに魂を縛られた傀儡達に、家族の声さえ届く事は決してない。
 住民達をも裏切りの罪人と見定め、無差別に襲って来るだろう。
 先ほどは力を貸してくれた村の人々が、今度は命の危機にさらされているのだ。
「反逆者どもに……死を……」
「ジョン! あなたジョンよね!? 私が分からないの!?」
「死を……死を……」
 その上村人の何人かは敵の中に親しい者の顔を見つけて足が止まってしまい、思うように避難できていない。

 迫り来る新たな脅威。ヴァンパイアへの反逆罪は、おいそれと踏み倒せるものではないのか。
 敵を倒し、人々を救う事ができるのか――それは猟兵達の手にかかっていた。
ルフトフェール・ルミナ
死んだはずの親しい人を見つけて、放って逃げるなんてできないよね。
『もう、自分の知っていたあの人はいない』
皆にそれを分かって貰って逃げてもらわないと。
ええい、一か八かだ。

【WIZで】
「あの戦士達は、もう、貴方達の知ってる人達じゃないんだ」
逃げるよう説得を試みるけど、それで納得はできないと思う。
だから、村人を庇い、敢えて朱殷の隷属戦士の攻撃を受ける。
「貴方達の大事な人は、こんな事、する人だった……?」
それで納得して逃げてもらえればいいけれど……。
そして魔術『大いなる冬』で動きを止め、村人が逃げる時間を稼ぐ。
僕の技は封じられるけど、後は二冊の魔導書で戦うよ。
この書は攻防に優れてるんだ。物理的にね。



「ジョン! 私よ、マリアよ!?」
 広場に残る住人達は、逃げ出す事もできずに立ちすくみ、愛する者に対しての懸命な呼び掛けを続けている。
(「死んだはずの親しい人を見つけて、放って逃げるなんてできないよね……」)
 むしろ、なんとかして目を覚まさせて、一緒に連れ帰りたい――あの頃に戻りたいと考えてしまうのが、人として当然というものだ。
 ルフトフェール・ルミナ(空を駆ける風・f08308)は、悲痛な叫びの一つ一つに耳を傾けながら、それでも、と意を決して踏み出す。
「あの戦士達は、もう、貴方達の知ってる人達じゃないんだ」
「そんな事ないわ! あの人はいつだって私の傍にいてくれた! あの日、ヴァンパイアの送り込んだ人狩りが来た時も、私をかばって、大丈夫だからって、うう……っ!」
 説得を試みるも、結果は思わしくない。
 けれど、『もう、自分の知っていたあの人はいない』――いくら苦しくても、辛くても、皆にそれを分かって貰い逃げてもらわなければ、愛しい人の姿をした死に引き込まれ、望まぬ末路を迎えてしまう。
「ええい、一か八かだ……!」
 ルフトフェールは自身を発奮させるみたいにぐっと身体に力を込めると、思い切って駆け出す。
 ちょうどその住人の前には、呪われた戦士が立ち、おぞましい武器を振り上げていて――。
「ジョン……」
 諦めたように目を閉じ、終わりを待つ住人。
 ――けれど彼女の元には、いつまで経っても、痛みも衝撃もやってくる事はなかった。
 おそるおそる目を開けば、そこには両腕を広げるようにして立ち、住人を見下ろすルフトフェール。
 ……その背中には、フレイルの一撃が突き刺さり、激しい出血が始まっていた。
「あ、あなた……どうして……!?」
 口の端から血の筋を垂らすルフトフェールに、愕然とする住人。
「ね、ねぇ……貴方達の大事な人は、こんな事、する人だった……?」
 ルフトフェールは足を震わせ、顔色を急速に青くしながらも、その場を動かずに彼女を庇ったまま――頬を引きつらせつつ、小さく笑いかけた。
「ジョン……ジョン、ごめんなさい、私……ああぁっ!」
 それでようやく現実と向き合う決心が出来たのか、若干錯乱気味ながらも、その住人はきびすを返し、駆け出していく。
「これで……良かったんだよね。痛いけど」
 ずる、と背中のフレイルが引き抜かれる感触にくらっときつつ、ルフトフェールは振り向きながら詠唱を開始する。
「我、己が体熱を代償に、異なる時、異なる地への途を開かん。三度の冬を経し世の吹雪、この世に阻めるものはなし」
 そうして開かれた時空の裂け目から強烈な吹雪が一挙に吹き荒れ、なおも追いかけようとする敵の戦士達を凍てつかせ、その足を釘付けにさせる。
 間髪入れず、ルフトフェールは懐から【魔術師実務奥義書】、そしてあらかじめ背中に仕込む事でこれまたちゃっかりダメージを軽減していた【古代・現代魔法語辞典】を取り出して、身動きの阻害されている戦士達へ殴りかかっていく。
 びしばしとぶん殴っては薙ぎ倒し、身体ごと魔導書を風車みたいにぶん回して大立ち回りを繰り返し、住人達が逃げられるよう最前線で時間を稼ぐのだ。
「この書は攻防に優れてるんだ。――物理的にね!」

成功 🔵​🔵​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

避難民をこれ以上惑わせるわけにはいけませんね。
これからの出来事を見ないようにと伝え、村人へ避難を促します。
引き続き村人の護衛をしつつ、必要であれば『かばう』事も厭いません。
知り合いが吸血鬼の犠牲者となりて、自分達に襲い来る状況。気持ちの良いものではありませんね。
私は護衛と同時に、余裕があれば後方から他の猟兵の援護も行います。
苦戦している味方へは『全力魔法』のホワイトブレスを使用し、必要であれば『槍投げ』で『串刺し』ていきます


本当なら操られた亡者と化した彼らも救いたい。しかしそれが既に叶わぬ夢物語。
死者を弄ぶ悪行に怒りを感じるのと同時に自身の無力感にもじわり暗い感情が湧くのを感じます


栗花落・澪
零と連携
呼び方→零さん

初めは零に戦闘を任せ
逃げ遅れがいないか空から確認

いれば【手を繋ぎ】
まずは想いを吐き出させる
混乱させたままじゃ届かないから

落ち着いたら背に庇い
★杖の【全力魔法】で花吹雪を放出
零のサポートを行いながら

ちゃんと見て
あんなに乱暴な人だった?

貴方達が後悔し続けている限り
彼等は安らかにはなれない
救いを願うなら今は逃げて
貴方達が…彼等の生きた証なんだから

【空中戦】で敵の上空に向かい
眩い光の【全力魔法】で視界妨害直後UCで【範囲攻撃】
銃口がこちらに向いたら【見切り】
翼を閉じての急速落下で回避後
魔力を炎に切り替えての全力魔法で別敵の銃口を狙い暴発狙い

零に攻撃の隙を作るため【催眠、歌唱】


天星・零
栗花落さんと連携

『栗花落さんは皆さんの安全の確保をお願いしますね』

『さて、人間なんかに構うより僕達と遊んでください。僕達も遊びたいので』

避難救助は栗花落さん任せ
グレイヴ・ロウを複数個並べる形で地面から突き刺し通せんぼの要領で敵を通させないようにする
UC【首狩り女王の死刑執行】を使い行動を制限したり攻撃したりする

万が一に備え【第六感】、敵を見失わないように【追跡】しておく


家族や大切な人がせがんできても彼らの生を優先して倒す。

『はぁ、体だけで魂はない玩具ですね。ご本人とならお友達にはなれそうですが体だけの物は要らないです』

攻撃が来そうなら周りの霊に協力してもらい星天の書-零-で霊璧で【オーラ防御】



 家族や知り合いが吸血鬼の犠牲者となりて、自分達に襲い来る悪夢のような状況。
 気持ちの良いものではないし、誰もがその事実を直視できるとは限らない。
「ならばせめて、目を背けていて下さい……その代わり、絶対に足を止めないように」
 敵の姿や声色に触れさせて、村人達をこれ以上惑わせるわけにはいかない。
 対症療法だとしても、まずは彼らを避難させる事が第一だと、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は判断を下す。
 戸惑いながらも広場を離れる住人達を守るように位置取り、一刻も早く亡者達の苦痛を止めるべく、氷華を操って盾刃の突撃を受け流し、確実に反撃しながら応戦する。
「振り返らず、走り続けて下さい! 必ず私が守ります!」
 アリウムが奮戦する一方で、また別の場所では天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が、この混乱に立ち向かっていた。
「僕とディミオスが前衛を務めるので、栗花落さんは皆さんの安全の確保をお願いしますね」
「うん……任せて!」
 応じた澪は翼をはばたかせて飛翔し、上空から戦況を目視で確認する。
 元々村中の人間が広場に集められていたのである。逃げ遅れがいくらか目につき、澪はそうした者の前へ降り立つと、すぐに声をかけた。
「大丈夫……!? 早く逃げないと、危険だよ」
「む、無理だ……あそこに俺の恩師がいるんだ。見捨ててなんていけるわけがない!」
 うずくまったまま頭を抱え、乱暴にかぶりを振る男の手を、澪はそっと自分の手を差し伸べてくるむようにつなぎ、視線を合わせて囁きかける。
「分かるよ……誰だって、死んだ人に会いたい気持ちは同じだもんね」
「明日が命日なのに、どうしてこんな事に……やめてくれ、今さら現れて、俺の心を乱さないでくれ……」
 悲嘆に暮れてはいるが、澪がぬくもりを与え、根気よく声をかけ続ける事で、次第に落ち着きを取り戻してきたようだ。
 そんな澪へ、押し寄せて来る戦士達。
 しかしその矢先、だしぬけに複数の十字架が地面から突き出ると、まるで檻のように行く手を塞いだのである。
「さて、人間なんかに構うより僕達と遊んでください。僕達も遊びたいので」
 通せんぼをする風に十字架の前で佇み、微笑む零。
 ――その背後で、十字架に突き刺された敵戦士の残骸が、千々にちぎれて地面へ滑り落ちる。
「ヴァンパイア自慢の武具を備えし亡者どもか……少しは歯ごたえがあるといいが」
 向かい側から姿を現したディミオスが、そうこぼすや否や戦士達へ斬りかかる。
 零のグレイヴ・ロウ、そしてディミオスの鎌が両側から挟み潰すように戦士達を襲い、片っ端からみるみる殲滅。
 異端審問官や兵士達より強力な相手だが、それでも二人の敵ではない。
 そして澪も男を背に庇い、十字架の壁を挟んで戦う零を援護していた。
「罪を背負いし者達に、清浄なる裁きを与えん」
 詠唱を紡ぎ出しながら聖なる杖を振るい、純白の雪を彷彿とさせる鈴蘭の花に変化させると、十字架を乗り越えて来ようとする敵群へ浴びせかけ、零達の射程まで運んでいく。
「ちゃんと見て。貴方の先生はあんなに乱暴な人だった? あんな風に、誰かを呪うような声を上げる人だった?」
「それは……違う。あの人はいつも優しくて、怒る事なんて滅多になくて……だから、だから……っ」
「貴方達が後悔し続けている限り、彼等は安らかにはなれないし、そんな事はきっと望まない」
 でも、とすがるような目で見つめてくる男に、澪は真摯に頷きを返す。
「救いを願うなら今は逃げて。貴方達が……彼等の生きた証なんだから」
「……分かった」
 男がふらふらと路地の方へ走り去っていくのを見届け、澪も再び戦線へ飛び立つ。
「はぁ、体だけで魂はない玩具ですね。ご本人とならお友達にはなれそうですが、体だけの物は要らないです」
「さよう。差し詰めこ奴らは死者というより抜け殻……呪武具を破壊する方がまだ甲斐があるというものよ……」
 鎖を鞭のように振り回すディミオスも、どこか拍子抜けしている感じだ。
 とはいえ、敵の多くは住人達を守る零の方へと殺到している。おかげで見落としはないものの、その数は時間が経過する毎に増える一方だ。
「な、なあ、あんた、やめてくれ! 俺の息子がそこで苦しんでるんだ!」
「どうしてそんなひどい真似ができる! ちょっとでもいいから兄貴と話させてくれ!」
 おまけに後方では、住人のいくらかがまだ抗議の声を上げている。
 あらかじめ十字架で隔離していなかったら、状況はさらに混迷を極めていただろう。
「済みませんが、ここを通す事はできません……その方がお互いのためでしょうから」
 この十字架は生者と死者を分かつ線。零はそれだけにこりと微笑みかけ、向き直って【星天の書-零-】を取り出し、周辺の霊を集め始める。
 恐らくその中には、襲撃して来ている抜け殻達の霊も混じっていたのかも知れない。
 零を守護する壁の如く寄り集まる光景は、自らの肉体が大切な人達を害さないよう、始末をつけてもらうためであるかのようだった。
 一方澪は、敵の軍団が集結している方向へ飛行していた。
「これだけの数の敵を、零さんのところへ向かわせるわけにはいかないよ……!」
 彼らがこちらを見上げた瞬間にまばゆい光を発し、その視界をくらませる。
 再度plumes de l'angeを用いて空から攻撃しつつ、マスケット銃による対空射撃が始まれば素早く翼を閉じて急降下。
 落下しながらの回避に加え、澪は着地と同時に編み上げていた炎魔法を戦士達へと解き放つ。
 激しい火炎は戦士達の腕へと絡みつき、そのままマスケット銃に流れ込んで一気に爆発破壊、あるいは暴発を誘って怯ませる。
 しかし前列の敵を妨害しても、後ろからはまた別の敵が、攻撃直後で体勢が整いきれていない澪に銃口を向けており。
「させません……!」
 刹那、横合いからぶち込まれたホワイトブレスが澪を狙う敵を瞬時に氷結させ、続けざまに白い短槍が投げつけられる。
 悲鳴に似た音を奏でる叫喚者が物言わぬ敵の氷像を貫き、一拍置いて破裂させるように砕いてのけた。
「こちらの避難は完了しました、これより私も援護します」
 アリウムが槍を回収し、澪の元へと駆け付ける。
 まだ住人が避難しきっていないのは零のいる方面だ。二人がここで頑張る事で、そちらの動きもよりスムーズになるだろう。
「少しでも歌って支援するから、前の方は任せていいかな……?」
「心得ました、一人も通しません」
 額の汗を拭い、少し上がっていた息を鎮め、改めて旋律を歌い上げる澪。
 眠りの効力をもたらす歌声は徐々に戦士達の活動を鈍くし、やがてふらふらと微睡ませ始めた。
 直後に突撃したアリウムが鋭い刺突を見舞い、弱った敵から次々とトドメを刺す。
 時には零の方へも槍を投擲して援護しつつ、戦線を安定させていく。
 ……本当なら操られた亡者と化した彼らも救いたい。しかし実際に家族の声すら届いていない以上、誰にとってもそれは既に叶わぬ夢物語だ。
(「死者を弄ぶ悪行への怒り、同時に悲嘆や慟哭と行き会う度、じくじくと胸をえぐられる思い……私はなんと無力なのか」)
 得物を握る腕が重くなる。けれども、村人達の感じている心の痛苦はこんなものではない。
 ならば手放す事などあり得ない。アリウムにはまだ、できる事があるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

阿紫花・スミコ
(世の中には救えない命もある・・・ならば手の届く命を救おう)

そんなことを思いながら、からくり人形「ダグザ」の持つ巨大なこん棒で冷酷に凪ぎはらっていく。

「悪いけどボクは生きてる人間を救いに来たんだ。気持ちはわからなくはないけど・・・今はこらえて!」

住人達と敵の間に挟まるようなんとか立ち回る。
他の猟兵達と連携しながら攻撃のチャンスを伺う。

「ここだ!」

両腕を引き上げ、操り糸を強く引き上げると、ダグザの腰の歯車が軋みをあげて、回転する。巨大なこん棒を持ったダグザの上半身が高速回転し、遠心力を帯びたこん棒が敵を凪ぎ払う。

スピニングスイーブ・・・この人達には指一本触れさせない!


イデアール・モラクス
アレはもう命じゃない、お前達の知っている彼らじゃない!
アレもう虚の殻、お前達の知らないナニかでしかないのだ!
村人達よ、受け入れろ!
人は死ぬ!命は終わる!この世に永遠などない!

・行動
「未練を誘う愛情の殻、私が砕いてやろう!」
UC【隕石招来】に『範囲攻撃』で着弾範囲を広げ、『全力魔法』で隕石を更に巨大化させ威力を高め『属性攻撃』で炎を纏わせた上で『高速詠唱』を用いて唱え、敵陣に打撃を与える。
そして着弾地点の更地の上に立ち戦闘力を上昇させた上で【広範囲に炎の嵐を放つ超高威力の攻撃魔法】の術式を『範囲攻撃・全力魔法・属性攻撃・高速詠唱』により構築して放ち、敵を一網打尽にする。

※アドリブ歓迎


ノワール・コルネイユ
次から次に…今日は忙しいな
だが、こういう荒事の方がある意味じゃ気楽なものだ
何せ、目の前の奴を叩きのめしまくれば親玉に辿り着けるんだからな

…思うところもあるだろうさ
だが、別れの挨拶を済ますのは後にしてくれ

動けなくなっている村人と亡者の間に割り入って逃げる時間を稼いでやる
随伴は周囲の村人かそれを担う仲間に任せよう
相対する相手の攻撃を【見切り】つつ、武器で受け流し
前進を妨げるとしよう

亡者が多く、群がって来るなら
UCを発動、【範囲攻撃】で炎を広げ一体でも多く巻き込んで焼いてやる
損傷は親類に見分けがつく程度には留める様に努力しよう

痛みを恐れない、という点で亡者は大きな脅威だ
…加減が出来なくても恨むなよ



 広場は村人と敵の戦士で入り乱れ、金属音と怒号と悲鳴が飛び交うまさに恐慌のるつぼだ。
「次から次に……今日は忙しいな」
 ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)は忌まわしい戦士達と斬り結びながら、そうひとりごちる。
「だが、こういう荒事の方がある意味じゃ気楽なものだ……何せ、目の前の奴を叩きのめしまくれば親玉に辿り着けるんだからな」
 余計な事を考えなくていい。技の赴くまま、剣の奔るままに斬り倒していけば、いずれ必ず終わりは来る。
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)も乱戦のただ中で、からくり人形【ダグザ】を操り、敵の侵攻を瀬戸際で押し返していた。
 あの戦士達にはもう誰の言葉も届かない。かといって住人達一人一人を説得していては、敵を抑え込む暇がなくなる。
(「世の中には救えない命もある……ならば手の届く命を救おう」)
 今目の前で戦っている相手が誰にとっての親しい者であったとしても、ダグザの持つ巨大なこん棒で等しく冷酷に薙ぎ払っていく。
 例えそれで住人に恨まれても、甘んじて受け入れるだけの覚悟はある。この戦いに後悔はない。
「悪いけどボクは生きてる人間を救いに来たんだ。みんなの気持ちはわからなくはないけど……今はこらえて!」
 スミコはダグザにどっしりとこん棒を構えさせて敵を阻み、住人達の盾となるよう立ち回りながら、退避するよう訴え続ける。
「……思うところもあるだろうさ。だが、別れの挨拶を済ますのは後にしてくれ」
 ノワールも積極的に前へ出て敵を引きつけ、その前進を妨げにかかっていた。
 ぎこちない動きの戦士達がマスケット銃を構え、銀の弾丸を発射してくる。
「魔を封じる弾丸か……皮肉だな、お互いに」
 かざされる銃口の向きを把握し、弾道を見切りつつジグザグに駆け回り、的を絞らせまいと回避に専念。
 避けきれなければ剣を振るって銃弾を叩き落とし、そのまま矢のように敵陣へ肉薄するや、すり抜けざまに二剣で撫で切りにする。
「痛みを恐れない、という点で亡者は大きな脅威だ……加減が出来なくても恨むなよ」
 四肢を落としても這うように動き続ける亡者は見慣れたものだが、ここの住人にとってはそうではない。それが見知った者のなれの果てならなおさらである。
 スミコとノワールは住人達の嘆きの籠もった視線を受け止めつつも、決して手は止めない。
「派手に暴れて注目を引けば、それだけみんなが逃げるだけの猶予が作れる……!」
「そういう事だ。もう一踏ん張りするとしよう」

 一方のイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)も、立ち止まってすすり泣く住人や硬直している住人に対して、正気づくよう喝を飛ばしていた。
「よく見ろ、アレはもう命じゃない、お前達の知っている彼らじゃない! 見せかけだけの虚の殻、お前達の知らないナニかでしかないのだ!」
 相変わらず屋根の上に立ちながら全体を見渡し、厳しくも力強い言葉を放って住人達の心を震わせる。
「村人達よ、受け入れろ! さもなくば死ぬぞ!」
「でも、でもっ、あの人はまだ生きて……っ!」
「人は死ぬ! 命は終わる! この世に永遠などない!」
 大きく腕を振ってイデアールが叫び、そのまま精神を集中させて魔法の詠唱に入る。
「我招く無窮の厄災に慈悲は無く、汝に救いと希望の一切も無し……!」
 イデアールの頭上、空高くに魔法陣が禍々しい光とともに浮かび上がり、その奥からとてつもない質量――巨大隕石がのっそりと現れ始める。
「やめろ、やめてくれーっ!」
「あの人を殺さないでぇっ!」
「目を覚ませ! 未練を誘う愛情の殻、私が砕いてやろう!」
 住人達の泣き叫びには耳を貸さず、イデアールは一層の魔力を注ぎ込んで隕石を一回りも膨れ上がらせ、まるで大気圏を突破して来たかのように、紅蓮の業火を纏わせていく。
 狙うは広場中央、処刑台の残骸。スミコとノワールが囮となってくれているおかげで、敵が列を成して押し合いへし合い詰めかけている。
「後ろ髪すら引かれんよう、粉々に消し去ってやる!」
 イデアールが両腕を振り下ろした途端、ついに隕石が急降下を始めた。
 空を焼き焦がすように突っ込んで行く隕石が、密集する敵集団めがけて綺麗に叩き込まれ――。
 耳を覆いたくなるほどの轟音、薙ぎ払われんばかりの振動、そして肌をひりつかせる熱気が村中を揺さぶった。
 爆煙の如く噴き上がった土煙が晴れると、そこにあったはずの処刑台は敵の戦士もろとも微塵と消え失せ、ごっそりとえぐれたクレーターだけが残っている。
「今のうちに、みんなこっちへ!」
 スミコは呆然としている住人達を叱咤して強引に連れ出し、その更地を横断し始めた。
 だが向かう先には新たな増援の戦士達が現れ、包囲を狭め始めているではないか。
 けれどスミコは慌てず騒がず、落ち着いてダグザの両腕を引き上げ、操り糸を手繰って強く引き上げる。
 するとダグザの腰の歯車が軋みをあげて稼働し、ぐおんぶおんと猛烈な勢いで回転し始めたではないか。
 その間にスミコは振り返り、引き連れている住人達のグループへ素早く呼び掛ける。
「みんな頭を低めて!」
 住人達が言われた通りにしゃがみ込んだ刹那、こん棒を握りしめたダグザの上半身が駆動音とともに目にも留まらぬ高速回転、凄まじいまでの遠心力を帯びていく!
「ここだ――!」
 ダグザの溜め込んだパワーを、スミコが一息に解放した瞬間。
 スミコ達を中心に囲んでいた敵の群れを、ダグザのこん棒がまとめて豪快に薙ぎ払う。
 吹き荒れる圧倒的暴力。壊音が遅れて響き渡り、当たりの良かった敵などは鎧ごと木っ端微塵に粉砕され、わずかな破片だけを残し弾け飛んだ。
「スピニングスイーブ……この人達には指一本触れさせない!」
 どこか臆したように立ち尽くす敵の生き残りへ宣言してから、スミコは改めて住人達とともに安全な場所への強行軍を再開した。
 こうして大きな一団の退避は済んだものの、まだまだまばらに逃げ遅れた住人の姿があり、敵に狙われ続けている。
 だからイデアールは迷う事なく更地の上へ降り立つと、さらに魔力を増大させながら新たな術式を組み上げ始めた。
 そこへノワールも合流し、簡易詠唱によって炎を呼び出すと、時間稼ぎの意味も含めて戦士達へ放つ。
「せめて、顔の見分けがつく程度には損傷を留める様に努力しよう」
 高波のように広がった炎は、群がる敵を覆い込んで武具を溶かし、肉をあぶって骨を焼き、まったく寄せ付けない。
「消し炭になるがいい!」
 そして詠唱を完成させたイデアールが、遠慮なく魔力を解放。
 発動した魔法は熱量、火力ともに申し分なき、炎の嵐。
 周囲に立ち昇る無数の火柱が絡み合って燃え盛り、端から端まで敵勢を呑み込み、速やかに灰へと還していった。
 それが終われば、残ったのは文字通りの灰ばかり。
 顔どころか原型すら留めない有様に、ノワールは小さく苦笑するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『断罪の黒猫『キャット』』

POW   :    武骨な薙ぎ払い
【豪快な大剣による薙ぎ払い】が命中した対象を切断する。
SPD   :    月華乱閃
【居合の構え】から【無数の斬撃】を放ち、【斬撃と衝撃波】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    アサルトコンバット
【短剣の投擲と格闘術】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ウインド・ノーワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ヴァンパイアに操られた悲しい敵も、生者を救うという鉄の信念で撃破した。
 また、住人達の避難も終わり、あたりは静かなものである。
 猟兵達はレジスタンス達どころか、この村そのものも救う事ができたのだ――。

「また仕事が増えた……逃げたレジスタンスも、探し出して始末しなきゃ」
 刹那、不意に夜闇の中から、静寂を破って一人の少女の声がする。
 ゆっくりと進み出て来たのは、断罪の黒猫『キャット』。
 ヴァンパイア側についた、不吉を呼ぶ凄腕の処刑代行人である。
 異名通りの猫を思わせる均整の取れたしなやかな肢体に、軽装ながらも様々な武装を備えた彼女の瞳に光はなく、全てを諦観した冷たい闇が凝っていた。
「どこまで行ってもこの世は地獄。ならせめて速やかに命を絶ち、解放する事こそが私の使命」
 キャットは無表情のまま背中の大剣を引き抜き、正眼に構えながら猟兵達を睨み据えた。
「物わかりの悪いあんた達に、死こそが唯一の救いって事を、教えてあげる」
阿紫花・スミコ
「救済?死を受け入れることが救いだってのか?」
からくり人形「ダグザ」の持つ巨大な棍棒を振るいながら、リーチを生かして、敵と接近しすぎないようにたちまわる。
「お前たちはいつもそうだ。自分が奪われる立場になることを微塵も考えてない・・・!」
他の猟兵と協力し、一撃一撃を確実に命中させていく。

攻撃の隙があれば、再びスピニングスイーブで連続攻撃を叩き込んでやる!

人形の上半身が高速回転を始め、超重量の棍棒を持ったダグザが回転。その回転の中に敵を巻き込む!

「だったらボクが・・・いや、ボクとダグザが、すべてを奪ってやるよ!」

吠えるスミコ。

(怪力、フェイント、ダッシュ、学習力、視力)


イデアール・モラクス
救い?
それを決めるのはお前じゃないんだよ、仔猫ちゃん。
救いなんてものは自分で勝ち取るしかない、平穏、享楽、混沌、自由、何を求めるにせよ自ら勝ち得なければそれは救いにはならぬ、ただのお節介だ。

・行動
「まぁそんなに死が欲しいならくれてやるよ、この私がなぁ!」
UC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『高速詠唱』を用いて連射。
「近寄らせると思ったか?」
魔剣は命中したら敵を壁か地面に『串刺し』にして縫い止めた上で『属性攻撃』で刀身から闇属性の触手を生やし体内を蹂躙して『傷口を抉り』ながら血を『吸血』させ『生命力を奪い』嬲り尽くす。

※アドリブ歓迎



「救済? 死を受け入れることが救いだってのか?」
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)は、平然としたキャットに憤りの表情を覗かせていた。
「お前たちはいつもそうだ。自分が奪われる立場になることを微塵も考えてない……!」
「分かるからこそよ。こうやって、安息の死を与える事で……むしろ感謝されたいくらい」
「それを決めるのはお前じゃないんだよ、仔猫ちゃん」
 イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)もまた、小馬鹿にしたような冷笑を浮かべる。
「救いなんてものは自分で勝ち取るしかない。平穏、享楽、混沌、自由……何を求めるにせよ自ら勝ち得なければそれは救いにはならぬ、ただのお節介だ」
「……ヴァンパイアと似たような事を言うのね。力を信奉する支配者と同じ、強者の哲学」
「そうとも! だが、それが摂理というものだ……ことに、この世界においてはな」
 数多の世界にはそれぞれルールがある。暴力だけが全てとは言わないが、どんな形でも戦わなければ何も得られないのは同じ事だ。
「まぁそんなに死が欲しいならくれてやるよ、この私がなぁ!」
 おしゃべりはここまでとばかりに中空へ魔方陣を描き出し、そこから魔力の剣を星の数ほど生み出すと、キャットめがけて一斉発射!
 間断ない剣の雨を、けれどキャットは小刻みにステップする事で回避し、軽傷を負うだけに留めていた。
「その魔法は遠くから見えてた。派手なだけで、魔力の無駄……考えが甘いわね」
 性質はとっくに見切ったとでもいうように、キャットは柳のような体捌きで無数の剣を避けつつ、イデアールへと着実に距離を詰めてくる。
「なら、ボクの人形は見えていたのか?」
「っ……!」
 イデアールが魔剣をリロードする間隙をフォローすべく、スミコが送り込んだからくり人形ダグザが突撃し、その巨大な棍棒を脳天から打ち落とす!
 大地を砕く一撃をとっさに横に転がって逃れるキャットだが、ダグザは体格差と棍棒のリーチをフルに活かし、追い立てるように得物をぶん回す。
 キャットはたまらずダッシュで間合いを取ると、そのままイデアールの方へ猛然と肉薄していく。
「近寄らせると思ったか?」
 しかしその頃には新たな魔剣の装填も済んでおり、待ち構えていたイデアールは不敵な笑みを浮かべ。
 サービス増量した剣をより爆発的な勢いで連射し続け、地面を墓標の如く埋め尽くす。
 キャットは徐々に回避するスペースを狭められ、ならばと投げつけた短剣もあっさり剣に叩き落とされた。
 距離を離されていたダグザも追いつき、棍棒による狙い澄ましたフルスイング!
 キャットもついに足を止めざるを得なくなり、手にした大剣で攻撃を受け止めようとする。
 だがダグザの猛打はそんなガードもろともやすやすと突き崩し、振り抜かれる棍棒はものの見事にキャットの脇腹を打ち据えていた。
「く……!」
 軽く血痰を吐いたキャットは腰の刀に手をかけると、抜き放ちざまに剣閃を走らせ、ダグザの棍棒を跳ね上げる。
 それにとどまらず発生した衝撃波が、ダグザの巨体を後方へと押し戻していった。
 ――瞬間、死角を通って迫る一本の魔剣が、キャットの肩を射貫く!
「ぅあっ……!」
「アーハッハッハ! やっと捕まえたぞ! 無愛想かと思ったら、存外可愛い声で鳴くじゃないか、子猫ちゃん!」
 建物の残骸に縫い止められたキャットを確認し、イデアールは間髪入れずその剣へ闇の魔力を送り込む。
 するとどうだろう、剣の刀身が発光したかと思うと、ぐじゅりと溶け出すように形状を変え――そこから見る間に、名状しがたい複数の触手が生えて来たではないか。
 肩の魔剣を抜こうとしていたキャットもその光景にぎょっとしたのか、一瞬動きを止めてしまい、それがより致命的な隙を招く。
「あ……うぁぁぁぁぁっ!」
 触手達は枝分かれしながらキャットの肩の傷口、背中、首筋、おまけに口腔へ凶暴に蠢きながら侵入すると、内部でうじゅぐじゅとねぶり回すように暴れ狂う。
「さあお仕置きの時間だ、滑稽に悶え狂え! たかが剣一本、すぐに引き抜けると思ったか? それこそ油断したなぁ!」
 その上触手に血を吸い立てられ、生命力を奪われ、触手を噛み切ろうとするキャットの顔は歪みきっている。
「な……めるな……!」
 キャットは刀で触手をがむしゃらに斬りつけると、束縛を断ち切りよろめきながら離れて。
「今だ!」
 今度はダグザとともに接近していたスミコが操り糸を操作し、人形の上半身を激しく回転させ始める。
「なっ……!」
「安息の死を与える? ふざけるな……だったらボクが……いや、ボクとダグザが、すべてを奪ってやるよ!」
 キャットが振り向いた時には、その視界いっぱいに、超速回転するダグザの全身が映り込む……!
「スピニングスイーブ!」
 腹の底からスミコが吠えると同時、その荒々しい気迫をダグザが受け取ったかのように、暴風を纏った超重量の棍棒が、敵を打ち砕かんと連続で襲い掛かる。
 息もつかせぬ高速回転の滅多打ち。いかに回避力の高いキャットといえど、からくり人形らしい精密なフェイントを交えた殴打をしのぎきれるはずもなく。
 最初に何度か刀で受け流す金属音が響いた後は、回転そのものへ呑み込まれるように身体が浮き上がり、凄まじい打撃音とともに宙高く吹っ飛ばされた。
「かはっ……」
 鮮血をまき散らし、受け身も取れず倒れ込むキャット。
 すでにして衣装はぼろぼろだが、意外にも即座に立ち上がってくる。
「……同じ手は、二度は食わない」
 虚ろな無表情の奥に、爛々と光る殺意の煌めき。口にする言葉も、まんざらはったりではないのだろう。
 スミコは油断なく、イデアールは悠然と、血に染まったキャットと対峙するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノワール・コルネイユ
御明察のとおり、物分かりが悪くてな
貴様のいう唯一の救いとやらには抗わずにはいられんのさ

さて…気に食わん女だが中々の使い手らしい
ならば、加減も遠慮も要らんだろう?

真正面から相対して周りが仕掛ける隙を作ろう
斬り合いでは【第六感】を働かせて
致命的な一撃を受けることだけは避けよう
イヤな予感という奴には鼻を利かせておかねばな

力負けしないよう、長剣二刀流の攻撃力重視でUCを発動
【2回攻撃】で手数も稼ぎ、余所見する隙は与えない
面白くなって来たところだ。もう少し付き合え

貴様は気に食わんが…この世は地獄。同感だな

だが…その地獄で足掻くこと。
それこそが私に課された定めなんでな

誰が何を言おうと、死ぬまで抗ってやるさ


天星・零
栗花落さんと連携

【毒使い・呪詛】の技能を活かしマフェットスレッド、Ø、グレイヴ・ロウを使い戦闘

万が一のことがないよう【第六感】を働かせつつ単調にならない為と敵を翻弄する為【フェイント】(例えば手を敵の顔前に出して敵の視界に死角を作って見えない所から攻撃するなど)を入れつつ戦う



UC【首狩り女王の死刑執行】を使い、戦闘に参加させ、攻撃、妨害などを担当させる
がそれは囮にも使う。敢えて大きな巨躯を見せることで相手をそれに気をそらして、死界からØを急所めがけて投げる


また、終盤までは零だけで戦い二人になれるのを悟られないようにし、最後辺りで【オルタナティブ・ダブル】を使い【騙し討ち】



キャラ口調ステシ参照


栗花落・澪
零さんと連携

死が救いになるという考え方も状況次第じゃ間違いではないね
でも…今が、未来が
地獄かどうかはあんたが決める事じゃない

あんなに必死に生きようとしてる
それを勝手な言い分で壊させないよ

★杖を手に、得意の【空中戦】による機動力で翻弄
零やディミオスの作戦で注意が僕から逸れたらその隙に背後に周り
氷の【全力魔法】で太ももの武器ホルダーや刀の鞘と鍔の間を狙い
凍結させる事で次の武器を抜き取りにくくする作戦

短剣の投擲は杖をバトン状にクルクル回す事で弾き飛ばし
攻撃強化仕掛けて来て防ぎきれないようなら【オーラ防御】と組み合わせ

そっちが強化するなら
こっちだってそうするまでだよ

UCを発動し
ほら、これで互角でしょ?


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

この光の射さない世界で死を救いとして捉えてしまうのは仕方のない事なのかもしれません。
しかしそれでも死が救いであって良いはずがありません。
人間に希望を見出している私だからこそ、否定したいのです

他の猟兵と共闘し、近接戦を仕掛けます。
私が前へ出る事により、後衛に下がる猟兵に被害が及ばないようにします。
敵の格闘術や剣捌きの腕前は侮れませんね。ホワイトパスで少しでも実力を埋めれれば良いのですが。
『武器受け』や『鎧砕き』、『激痛耐性』を駆使し、有利に事を運びたいですね

あの敵は未来の私なのかもしれません。
人間に絶望し、全てを諦観した私の未来。
願望に近い否定をし、恐怖心を振り払って敵に正対します!



「この光の射さない世界で、死を救いとして捉えてしまうのは仕方のない事なのかもしれません」
「だが御明察のとおり、私達は物分かりが悪くてな」
 アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)とノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)は、キャットを見据えてそれぞれの意思を告げる。
「それでも死が、救いであって良いはずがありません」
「そういうわけで、貴様のいう唯一の救いとやらには抗わずにはいられんのさ」
 先んじて仕掛けたのはアリウムだ。
 スピードにはスピードで対抗すればいい。ホワイトパスを発動する事で五感の鋭さを底上げしつつ、重量の軽い氷華を握って斬りかかる!
「分からないわね……どれだけ悪戦苦闘したところで、生き地獄が長引くだけなのに」
「いいえ。人間に希望を見出している私だからこそ、否定したいのです……!」
 技巧を凝らした刺突を繰り出せば、キャットも太刀を掲げて剣先を逸らしてくる。
 そうして軽業のような足捌きで懐へ飛び込み、剣閃と蹴りを交互に織り交ぜアリウムの急所を狙う。
 けれども、その度に発生するかすかな空気の乱れ、敵の息づかい、近づく血の臭い――その一つ一つからアリウムは敵の挙動を先読みし、守りを固めて凌いでいる。
「さて……気に食わん女だが中々の使い手らしい。ならば、加減も遠慮も要らんだろう?」
 キャットの注意が自身から逸れるや否や、ノワールも躊躇せず攻めかかった。
 長剣でもって唐竹割りに斬り下ろし、避けられれば逆の手に握った2本目の剣で斬り上げ、踊りにも似た剣技で踏み込みと攻撃を途切れさせない。
 アリウムが五感ならノワールは第六感だ。嵐のような速さで二刀流乱れ打ちを放ちつつも、常に直感をフル回転させ、迫る死そのものを嗅ぎ取る風に、皮一枚のところで反撃を躱し続ける。
 キャットは刀から大剣へ持ち替え、今度は力任せに切り返しを図って来た。
「格闘術のみならず、単純な膂力もかなりのレベルですね……しかし!」
 アリウムもまた【アイスブルー】へと武器を変え、両手持ちでかざす事でその猛打をガード。
 大剣を鼻先で防いだため、押し寄せる衝撃だけで二の腕が痺れ、その上振動で片眼鏡まで割れてしまうが、腰から足まで踏ん張りをきかせて押しとどめる。
 キャットはそのまま大剣を真横へスライドさせ、ノワールを横薙ぎの要領で寸断しようとして来た。
 ノワールも長剣を交差させ、襲い来る大剣を挟み込むように受け止める。
 盛大に火花が散り、ぎりぎりと軋む両者の腕が、力の拮抗度合いを示していた。
「くっ……小癪な奴ら!」
 思うように攻めきれない事に業を煮やしたのか、キャットは強引に大剣を引き戻す。
 突然力を抜かれて軽くたたらを踏むアリウムとノワールめがけ、目にも留まらぬ速度で短剣を引き抜き、投擲しようとして――。
 突如として目の前を横切った、飛翔する栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に出鼻を挫かれた。
「その短剣で僕を捉えられる?」
「どいつもこいつも、邪魔ばかり――!」
 眉根を寄せて踏み出そうとしたキャットだが、その瞬間、いつの間にか周囲へ張り巡らされていたワイヤーに、全身を絡め取られた!
「焦りはミスを呼びますよ……取り返しの付かないミスを」
 愕然とするキャットを見つめ、天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)がマフェットスレッドを手繰りながら微笑みかける。
 アリウムとノワールの共闘、そして澪の攪乱。全ては布石。
 三人がかりで陽動を行っていたのは、この時――零がワイヤーを張り巡らし、駆け回る獲物を捕える罠を完成させるためだった。
「みなさんがこれだけ戦ってくれたんです、罠に気づかないのも無理はありません」
 キャットをフォローするような語り口だが、零がワイヤーを緩める事はなく、むしろより強くキャットを縛り上げていく。
 四肢を拘束され、暴れれば暴れるほどに締め上げられ、キャットはうめく。
 この体勢では武器もろくに使えないだろうし、後は煮るなり焼くなり、勝負は決まったようなもののはずだ。
 が――。
「こんな……もの!」
 なんとキャットはワイヤーが手首を切断していくのも構わず、無理矢理に刀を振り回すと、ワイヤーの大半を切り落としてしまったではないか!
 片手がぽろりと地面に落ち、キャットは息も絶え絶えに後退する。大剣も同じように放り捨ててあるが、どのみちあの腕ではもうまともに取り回す事はできないだろう。
「どっちにしてもあんた達は絶対死ぬ。私に出会ってしまったんだから……」
 殺意を込めて睨み付けるキャットの正面に、ゆっくりと伸びる巨大な影がある。
「ワイヤーで捕えた程度では、諦めぬか……なればこそ、殺り甲斐がある」
 佇んでいたのは、首狩り女王ディミオス。
 キャットが罠から逃れると同時に切迫し、鎌を振り上げていたのだ――。
「うあっ……!」
 振り下ろされる鎌に胸部を切り裂かれながらも、キャットはディミオスを蹴り飛ばし、反動でさらに別方向へ逃れた。
 けれどその動きも読み通りとばかり、零が死角からØを投げつける!
 だが、キャットは恐るべき反射神経でもって刀を振るい、命中寸前でØを叩き落とし。
 素手になった零めがけ、捨て身の勢いで猛然と肉薄してきた。
 しかしそれすらもフェイント。キャットが刀を振り上げた間隙を見計らい、零の呼び出したグレイヴ・ロウが、地中から斜めに伸びてキャットの腹部を穿ち抜く。
「ぐはっ……!」
 目を剥くキャット。がくがくと足を震わせ、刀を杖代わりになんとか立っているような有様だが、その背後には澪が回り込んでいた。
「死が救いになるという考え方も、状況次第じゃ間違いではないね」
「っ……!?」
 澪の発動する氷魔法がキャットのつま先から足首までを凍結させ、蔦の如く伸びる霜が太ももの武器ホルダーまで這い上がっていく。
「でも……今が、未来が地獄かどうかはあんたが決める事じゃない」
 澪の脳裏では、避難させた村の人々の悲しげな声と、それでも歩き続けようとする瞳の中に込められた意志が、刹那によぎっていた。
「苦しくても、あんなに必死に生きようとしてるんだ……! それを勝手な言い分で壊させないよ!」
 武器ホルダーは完全に氷結し、のみならず鞘の中ほどまでも凍てつかせ、キャットから短剣と、居合の技を封殺してのける。
 キャットは歯を食いしばり、足の肉ごと出血させながら氷をはぎ取ると、同時にかろうじて引き抜いた短剣を振り向きざまに澪へ投げつけた。
「そんな死にもの狂いで戦えるのに、人の生きようとする意志だけは認めないんだね……」
 突っ込んでくる短剣に対し、澪はバトンのように短くした杖を目の前でクルクル回転させる事で弾き飛ばすと、その脇をノワールが駆け抜けて。
「またあんたか……!」
「面白くなって来たところだ。もう少し付き合え」
 軽口を叩くノワールだが、叩き込む太刀筋に淀みはない。
 キャットが弱って来ているためか二刀による波状攻撃も直撃が増え、敵はついに真っ向からの打ち合いを嫌って間合いを離し始める。
「貴様は気に食わんが……この世は地獄。同感だな」
「だったら、こんな戦いが無駄な事くらい理解できるでしょ!?」
「だがあいにく……その地獄で足掻くこと。それこそが私に課された定めなんでな」
 キャットの振るう刀の切っ先はなお鋭く、こめかみにかかる髪の毛先を散らされながらも、ノワールはふっと笑む。
「誰が何を言おうと、死ぬまで抗ってやるさ」
 動き回っている内にキャットの氷も溶けてきたらしく、再び使えるようになった武器ホルダーから、片手で器用に短剣を投げ放った。
 標的はまたも澪だ。先ほどの氷魔法は相当の脅威と見られたらしく、短剣を残らず使い、その全てを攻撃力重視にした上で排除しようと目論んでいるのである。
「そっちが強化するなら、こっちだってそうするまでだよ」
 すると澪はおもむろに清浄な歌声を上げて、広場周辺に飾ってある花壇から花弁を呼び寄せると、それらを刃のように回転させ、飛来してくる短剣群を包むように防ぎ止める。
 直後、日光を浴びたかのように輝く花畑が澪を中心にして広がり、湧き上がるオーラが続けざまに投げ込まれる短剣を、かきんと弾き落とした。
「ほら、これで互角でしょ?」
「ならこれは止められる……!?」
 今度はキャット本体が駆け寄って来て、澪を両断しようと血に濡れた刀を叩き下ろし――。
 その間に割って入ったアリウムが、アイスブルーの刀身で一撃を受け止めていた。
 互いに言葉を発せぬ程呼気を止め、満身込めての鍔迫り合い。
 生気のないキャットの双眸を見据え、アリウムもまた自身の裡にある黒い何かを、鏡写しの如く突きつけられる。
(「彼女は、未来の私なのかもしれません……人間に絶望し、全てを諦観した私の未来」)
 心の闇に身を委ね、人の持つ力を否定し、生の苦しみから少しでも早く解放してやるべく破滅へ殉じる、苦悩を捨て去ったどこか穏やかな自分。
「違う……! 私の選んだ道は、そんな簡単で、生やさしいものではない……!」
 甘い誘惑にも近い恐怖心を振り払い、アリウムはしっかりと相手に正対する!
「気に入らないわね。その目……むきだしの感情が!」
 渾身の力を絞り出すアリウムに、キャットはたまらず剣を弾いて下がる。
 と、そこへ併走するように、零が追いついて来た。
「そろそろ決着をつけましょうか」
「望むところよ……!」
 挑発にも近い零の言葉にキャットは乗り、走りながらの鋭利な斬撃を繰り出すが。
 瞬時、【オルタナティブ・ダブル】により零と夕夜に別れた二人に回避され、硬直する。
「また一手……」
「……ミスったな!」
 上体の泳ぐキャットへ、零と夕夜はここぞとばかりにグレイヴ・ロウ、そしてØを両側から突き出す!
「ぐは……ぁ……!」
 前と後ろから串刺しにされたキャットは、しゃにむに刀を振り回して二人から身を離すも、がくりとくの字にくずおれて。
「……認め、ない……生きるための、戦い、なんて……む、いみ……」
 ばたりと倒れ込むと、それ以上はもう起き上がる事なく、染みのようになって消えていくのだった。

「降りかかる困難ならば、死ねば楽になれる。……それだけとは、私は思いたくないのでしょうね」
「まぁ、好きなだけ考えるがいいさ。夜は長いからな」
「この一面の花畑が、この村に温かな加護と、未来を祝福してくれるよう祈るよ」
「処刑台の代わりの、新しい村のシンボルですね」
 荒れた大地にもきっと花は芽吹く。例えそれが、人々の涙を吸った土だとしても。
 この闇に満ちた世界では、きっと一筋の希望となってくれるのだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月22日


挿絵イラスト