「アックス&ウィザーズで」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)の話はそんな感じで始まった。
いわく、この時期アックス&ウィザーズでは様々な神を信仰する神殿で、その神様に感謝する祭典が開かれるらしいのだ。
「俺は神様なんて信じていないけれど、神様はいるとは思ってる。世の中はそれくらいの因果はあると思うからね。それはそれとして……」
リュカはいったん、言葉を切って。
「面白いお祭りを見つけたから今日はその紹介。割と雪深い田舎の村なんだけれども……」
いわく、村の近くに巨大な山があるらしい。
そしてその山のてっぺんから神獣に乗り、崖のごとき山肌を滑り落ちるようにして降りるという催事が、祭りの合図だ。恐いもの知らずの冒険者や、度胸自慢の若者たちにたいそう人気のある、スピード感あふれるお祭りである。
ちなみにその神獣。
「こういう格好をしていて……」
兎であった。
「毛並みの色はピンクで……」
わかりにくいと思ったのだろう。隣に棒人間が立っている。「サイズ比較用」と書かれているので、サイズ比較用だろう。
「目は緑で……あとは大体兎」
つまりはカラー違いの兎。人間が3人乗っても大丈夫そうな巨大サイズの兎。そういうことであった。
なお、一人目は耳にしがみつく。二人目以降は、前の人にしがみつくのがオーソドックスなノリ方である、
「普段は村で飼育されていて、人の言うことはよく聞く。そいつで山を駆け下りて、そのまま一直線に湖を目指す」
湖と言っても今は凍っていて、兎やみんなが乗ってもびくともしない。そこを全速力で駆け抜けていくのだ。
「ちなみに時刻的に、ちょうどこの時間に朝日が昇る。朝日が昇るのを見ながら、ひたすら東へ東へ走っていく。好きなだけ走ったら、このお祭りは終わり」
一応、広大な湖を渡り切ればお祭りとしては終了で、村の人々や兎たちは解散になるが、そのまま毎回氷の上を好きなだけ滑っていく若者たちはいるという。
なお、兎に乗る必要は、実はない。というのも……、
「このお祭り、大事なのは崖を駆け下りることと。次点で、湖の上を走ることなんだ」
だから、自前の動物やソリ、バイクなんかでもいい。
大事なのは、森に足を踏み入れること。
「この時期、この森の植物たちは種を落とす。植物としては少々、季節外れの種だね。気の上から落ちてくるものもあれば、雪の中にひっそりと混じっているものもある。それらは雪の上を走る兎や人々に引っ付いて、森を抜けだして湖に至るんだ」
湖に至った時、種は朝日を浴びて一斉に飛び立つ。それはとてもとても美しい光景で、まるで花が咲くようなのだと村の人々は言い、湖が見られることのできる村はお祭りのような騒ぎになる。誰もがその花々を見て、来年の恵みを願い、祈りをささげ、ついでに飲んだり食べたりして大騒ぎするのだ。
「飛び立ってどこかに行ってしまう種もあれば、地面に落ちて雪解けとともに流されていくのもある」
そうやって、命をつなぎ、次の春にもまた新を出すのだろう、と。リュカはそんなことを語った。
「命の巡りとかは割とどうでもいいけど、崖下りは結構好きな方だし」
何もない、ただ只管氷しかない。そんな道を太陽に向かってただ走るのも楽しいだろう。その通った後に花が咲くというなら、それはそれで楽しいと思うのだ。
「勿論、そういう景色を見ながら、村でお祭りを楽しむのもいいと思う」
折角だから、行ってみない。と、リュカはそう言って話を締めくくろうとした。……その時、
「あ」
と、何かを思い出したような顔をした。
「いや、道中に温水があって」
いわく。雪山を下りきったところで温泉のようなものがあるのだという。天然の、岩場と岩場の間にできた温泉だ。
とてもあったかくて、とてもあったかい。件の兎たちも大好きな温泉だ。
「兎たちは特に、人の心をよく読むらしいから。気が緩んだらそこに突っ込んじゃうかも」
そうしたら兎はもうてこでも動かないので、温泉を楽しむのもいいだろう。なお、服を脱ぐことはできないので、そこはご了承願いたい。
「ちゃんと氷の上まで走りたいとか、そういう人は気をつけてね。濡れたうえで氷の上を走るとか完全風邪確定だから」
ちゃんと温泉に浸かっても大丈夫。温泉水に溶け込んだ種は流れて川と合流し、川辺の植物や水中の植物になるのだから。と。
リュカはそう言って、話を締めくくった。
ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
状況は大体リュカが言った通り。
スケジュールは断章を追加し、その時に一緒に追加します(タグにも記載します)。
未成年の飲酒喫煙は禁止です。
また、温泉も性質上、着衣での入浴のみとなります。
コメディ感ある感じはオッケーですが、あまり度を越したものは流しますので、ご注意ください。
●補足説明
まず、兎は人が三人ほど乗れる巨大な兎です。
それ以上でも、それ以下でもありません。普段は温厚です。
そして、山道は急です。木々がたくさんあります。頑張って回避してください。
割と村の人々や兎たちは放っておくとスピード狂で只管速さにチャレンジしますが、
流されずにちゃんとゆっくり走って欲しいとお願いすれば、ゆっくり走ってくれます。
道中に天然温泉があります。兎は温泉好きですが、皆さんが心を確かに持っていれば素通りします。
ちょっとでも「あったまりたいな~」と思ったら突入されます。試練の時です。
でも別に最後まで走り切らなければいけない、ということはありませんので、兎に乗っていてもいなくともここでゆっくりしていくのはありです。
それから、巨大な湖の上を走ります。氷の上なので運転には注意してください。
(プレイングで指定しない限り、スピンして転ぶとか、そういうのはありませんが)
夜明けとともに、夜明けに向かって、水平線(?)をただひたすら走ります。
走っていると、今まで引っ付いてきた種が飛び立って、花が咲いたように見えるそうです。
ここに来るまで、種は雪にまみれていて、実のところはっきり視認することはできません(よくよく立ち止まって雪を払ってみれば、見つけることはできます)
と、お祭りの実行委員としてはそれで仕事は終わりです。
あとは、湖の上で飛び立つ花々をふもとの村で見ながら、ゆっくりお茶でもして新年の豊作を祈願することもできます。
村ではテラス席の喫茶店で湖を見ながらのんびりすることもできますし、
屋台なんかもたくさん出ています。名物は兎まんじゅうに花の種団子です。
食べ歩きしながらふと空を見上げれば、きらきら舞う花のような種に出会うことができるでしょう。
(花の種が飛ぶ様子は、断章に後述)
リュカが同行します。
最高スピードにチャレンジしつつ、適当にバイクを走らせて遊ぶ予定です。
でも食べ歩きだって、お声かけ頂ければ参加しますよ。
声をかけていただけると、とても嬉しいです。
第1章 日常
『花祭りの日』
|
POW : 全力で楽しみ尽くす
SPD : 色々な屋台や催しをハシゴする
WIZ : 少しの工夫で祭りをもっと楽しむ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「っっ、ぎゃああああああああああああああ!!!」
静かな山の中に絶叫が響き渡った。
「当たる。当たる当たる当たる当たるー!!」
「大丈夫、当たらないから!」
「い~~~や~~~。おーちーるー!!」
「しっかり、つかまってて!」
巨大な兎がぴょんと跳ねる。ぴょん、と跳ねるがその人蹴りて巨大なピンクの毛皮を着た神獣は、木々と木々の間を全速力で疾走した。
「兎さん、もっと早くお願い!」
「ちょ、やめてー!」
兎の耳をしっかりと持つ女性が兎に声をかけると、後ろの女性が悲鳴を上げる。心得た、とばかりに兎はスピードを上げた。人の言うことをよく聞く彼らは、人の声と声が正反対のことを行った時、自分の欲望に忠実になるのだ。
「ひっ!」
ひと蹴り。するごとに地面辛いだけを置いて浮遊する感覚。それを楽しいと思うものと、泣きたいと思うもの。目の前に迫った気を紙一重すれすれで回避して、次に迫った倒木は、ひと蹴り。高く高く飛び立って回避した。
真っ白な雪が、兎にも、乗り手たちにも付着する。
「はっはー!! 姉ちゃんたち、やるなあ!」
後ろから猛スピードで追いかけてくるおっさんは、犬ぞりに乗っていた。6頭もの犬を、行きぴったりで率いてものすごいスピードで彼女たちの兎に追いすがる。
「最速、目指してますから」
「なるほど! だが最速は俺のもんだ!」
「……負けませんっ」
「やーめーてー巻き込まないでー!!」
背後の悲鳴もなんのその。彼らは薄暗い森を疾走する。時に風に揺れて落ちてきた雪を頭上にかぶり。時に乱暴な足が地を蹴って、粉雪をまき散らし。
彼女たちは降りる。下へ。下へ……!
「へ」
そうして、一瞬だったのか何時間だったのかわからない死にたくなるような急降下の後、ふいに目に入った暖かい光景に後ろの女性が思わず素っ頓狂な声をあげた。
「あれ。え。あったか……」
冷たい。どこもかしこも雪まみれて冷たい。なのにどこからともなく、漂う気配がある。
どこだろう? 暖かい。このどこもかしこも冷たくて落ちるしかない世界の中に、ふんわりと穏やかな香りと幸せそうな……、
「あ、ちょ」
危ない。戦闘の女性が思った頃には遅かった。後ろの女性は見つけてしまっていた。その、
「おん……せん……?」
そう。天然の温泉に……。
と、思った瞬間にはもう遅かった。兎もまた、くるりとその温かい湯の方を向き、
「あ……あああ……!」
ざっばーん!!
ひゃっほう! とばかりに全力で、温泉に兎は飛び込んだのであった。
あふれる湯。あたたかい湯。ふわん、と兎は沈んで、また顔を出す。そのころにはその目は細められ、すっかり温泉気分になっていた。
「わ。最速が。ちょっと、まだ……」
何を言っても、そうなってはしょうがない。大きな笑い声をあげて遠ざかっていく犬ぞりのおっさんを女性は恨めしげに見るしかない。もう一人は生き返ったー。とばかりにそのまま温泉に沈んでいた。
くつ、くつ、くつ、と、兎の笑い声がした。図体に似合わず、小さくてかわいい声であった。
犬ぞりは走る。心を強く保った人々を乗せた兎たちも走る。
魔の温泉地帯を抜ければ、湖はすぐそこであった。
木々が途切れ、唐突に視界が張れる。あれほどあった鬱陶しい障害物は今はない。後はただ、遠くまで続く水平線だ。
「っしゃああああ!」
間に合った。夜明けだ。果てないような水平線に彼らは駆けだす。果てはある。わかっている。この先には別の陸地がある。けれども今は果てはない。果てなき世界を朝日を追いかけて走る。それが、たまらなく楽しいのだ。
氷がぶつかり合う。彼らに降り積もった雪が風と共に落ちていく。……と、
ぶわっ、と、彼らの動きに沿うように、雪が舞い上がった。そうして、雪の中に隠れていた花の種を芽吹かせる。
朝日を受けて、それは舞い上がる。まず一番高く飛んだのは、いびつな楕円形を二つ持った何かであった。植物の双葉のようであり、プロペラのようでもあり、天使の羽のようでもある。それが天へと飛びあがる。真っ白い天使の羽が朝日に向かって飛んでいく。
それを追いかけるように、風に混じって、緑の種が飛んでいく。丸井丸井種はまるで雨粒のようにキラキラきらきら、沢山宙に浮かんでいる。ときどき、それにピンク色が混じる。それは変異種で、見つけた子供は幸せになれるんだよ。なんて、おじいちゃんが孫に語って聞かせていた。
続いて、茶色い種が走り屋の動きに合わさるように氷の上を滑った。踏まれても、蹴られても、かまわず。湖の上をすべる。それは一定の法則をもって動いているようで、そうでないのかもしれなかった。この城と緑と茶色の花の種を模した三食団子が、この村の兎まんじゅうに並ぶ名物の一つだ。
走り屋の動きに合わせて、風に舞い、時に落ち、そしてまた別の走り屋によって蹴散らされて空を飛ぶ種たち。それは偶然のようで、奇跡のようでもある。やがて彼らは、自分たちの芽吹くところに自然と流されていくだろう。それが、長い間続けられたこの村の営みだ。
そして、それを見ながら人々は祈り、感謝する。植物が当たり前に芽吹き、育ち、また種を落とす。そのサイクルを彼らは感謝して、その景色を見ながら宴会に興じるのである。
沢山の屋台がある。そこで買い物をして、湖のふもとで腰を下ろして食べるのもいい。勿論買い食いだっていい。ふと顔を上げれば、天使の羽が頭上を通過してどこかの山へと帰っていくのが見えるだろう。
はたまた、おしゃれなテラス席で緑の種から作ったお茶を飲みながら、のんびり過ごすのもいい。ほんのり甘みのあるお茶は、新年に飲むと次の一年風邪をひかないといわれている。
走り屋には参加できなくとも、ちょっとしたスケートを楽しむのもいいだろう。楽しみ方はなんだって。他人に迷惑をかけなければ、かまわないのだ。
その、神様以外に誰がこんな景色を作ったのかわからないような。そんな景色を見ながら、
誰かと過ごす時間は、そう悪いことにはならないだろう……。
●マスターより
改めまして、今年もお世話になり、ありがとうございました。
ふじもりみきやです。
そして新年も、よろしくお願いいたします。
ということでして。
状況は以上になります。
プレイング募集期間は、
12月31日(土)8:30~1月3日(火)20:00まで。
また、不慮のことで再送になる可能性があります。
その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを再送いただければ幸いです。
オーバーロードは、いつでもどうぞ。大歓迎です。
それでは、良い一日を!
コノハ・ライゼ
ジュジュちゃん、うさちゃん(メボンゴ)/f01079と
神獣には3人一緒に乗せてもらうわ
大変かもダケド宜しくね?
うさちゃんへ、じゃあ見晴らしのいい特等席をどうぞと肩車よろしく頭上へ案内
視界考えて後ろに乗る事にしたケド……ふふ、頼りにするわね
万一にも振り落とされない様彼女を支えるよう掴まっていくわ
疾走感に上がるテンションと裏腹に下がっていく体表温度
温泉……はダメよ、死んじゃうわ!
後の楽しみに取っておいて、先ずは前進!
無事湖につけば花舞うような景観に寒さも一時忘れ
それが疾走により舞い上がると思い出してつい笑いも漏れる
あらジュジュちゃんお鼻が真っ赤
そうね、美味しいものと、温泉も堪能していきましょうか
ジュジュ・ブランロジエ
コノさん(f03130と
家族の様な友達
『』はメボンゴ
大きな兎さん可愛い〜!
『ピンクうさちゃ!』
よろしくねと挨拶
『メボンゴ、今日はコノちゃにくっつきたい気分』
許可を得て頭によじ登るメボンゴ
『高〜い!』
私が先頭に乗るね
コノさん、しっかり掴まっててね
ふふ、なんだか安心するなぁ
それじゃ、行っくよー!
わー、早ーい!
ジェットコースターみたい!
楽しいね!
『きゃっきゃっ!』
そういえば温泉があるんだってね
そうだね、まずはゴールを目指そう!
『ゴーゴー!』
わ、本当にお花みたい……!
綺麗だね
えっ、ホント?
やっぱ冷えてたんだね
背中は温かかったけど、と笑う
ね、ね、後で兎まんじゅう食べにいこうよ
『お土産も買っていこうね!』
兎は、大きかった。
「大きな兎さん可愛い〜!」
『ピンクうさちゃ!』
ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)が思わず歓声を上げ、その相棒のメボンゴが副音声付きで兎に突っ込む。
『おかあさん? おかあさんなの……』
「ぶっ!」
ぶふふふふふふふふふん。
ジュジュによる副音声は、兎の鼻息によって吹き飛ばされる。危なかった。もう少しでメボンゴに鼻水がつくところであった。それは何とかぎりぎりのところで回避すると、隣でコノハ・ライゼ(空々・f03130)がもうどうにも止められないとばかりに爆笑していた。
「お、おかあさ……! 危なかったわね、うさちゃん……!」
『ぶー。もうお母さんじゃないー!!』
ぷいと横向くメボンゴに、ふふん、と割と興味なさげに目を眇める巨大兎。それがまた笑いを誘ってしまう。くつくつとお腹を抱えて笑いながらも、コノハは巨大兎の額を軽くなでた。
「じゃあ、神獣ちゃん。今日はこの三人で乗せてもらうワ。大変かもダケド宜しくね?」
「よろしくね!」
コノハに続いてジュジュも軽くお辞儀をする。それで兎は軽く鼻をそよがせた。大丈夫だ、乗れ。とそう言っているようで、
「ありがとー! じゃあ……!」
ジュジュがまず前にひらりと飛び乗った。その後ろがコノハだ。
『メボンゴ、今日はコノちゃにくっつきたい気分』
「はいはい。うさちゃん、見晴らしのいい特等席をどうぞ」
『わ~い!』
そして最後に、メボンゴはぴょんとコノハの頭の上に飛び乗る。コノハも両手を頭上にやって、落ちないようにその態勢を整えた。
「ジュジュちゃん、大丈夫?」
「はいっ」
身長差を考えての位置取りである。……が、
「かっ飛ばして見せます!」
ぐっ、と拳を握りしめるジュジュ。そしてコノハの頭の上で、メボンゴも、
『高〜い! 風を感じるぅ~!』
なんてまだ走ってもないのにご機嫌であるので、コノハはなるほど、なるほど、と頷いた。
「コノさん、しっかり掴まっててね」
「……ふふ、頼りにするわね」
そうは言いながらも、突然のことがあっても落ちないよう、しっかり兎にまたがってジュジュに万が一のことがないように支える。それに気づいて、ジュジュも楽しげに笑った。
「ふふ、なんだか安心するなぁ。……それじゃ、行っくよー!」
『はいよー……おぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』
ごー! とジュジュが片手を挙げた瞬間、兎が全力で走り出す。メボンゴの台詞が後ろへ後ろへと流れていった。
兎が跳躍する。いっそ月まで行けるかのような力強い蹴り。ひと蹴りと同時に雪が舞い散る。雪煙をまき散らしながら、兎は崖のような道を下へ、下へ。
「わー、早ーい! ジェットコースターみたい!」
目の前に木が! そう思った瞬間、ぐりんっ!と兎の体が曲がった。器用に大木の裾を掠るように避けて、もう一つ跳躍。岩を跳ね飛ばすように飛び越えて、先へ、先へ。
「楽しいね!」
『きゃっきゃっ!』
「ほんと、風になってるみたい!」
ジュジュが無邪気に完成をあげている。コノハはその疾走感に珍しく弾んだ声をあげながらそう答えた。ぶち当たる風が冷たくて、手足がほんの少ししびれている。けれどもそれすらも心地いい。冬の冷たさというのは、心地のいいものなのだ。……なんて。兎がバウンドして跳ねるのと同時に自分たちも跳ね上がりながら、コノハはそんなことを考えた。考えて……、
「そういえば温泉があるんだってね」
はっ。
何気なく言ったジュジュの一言に、コノハは反射的に声をあげた。
「温泉……はダメよ、死んじゃうわ!」
この寒さ。温泉に突っ込んだら勿論もう濡れるしかないだろう。そうなるとこれ以上の走行は不可能だ。というか、走行したら死ぬ。
「後の楽しみに取っておいて、先ずは前進!」
そして彼らの辞書にリタイアという言葉はない。ならば前に進むのみなのだ!
『ひょえー! 振り向けば、死、あるのみ!』
「そういうことよ!」
メボンゴの言葉に真顔でそう言い切るコノハ。ジュジュも決意を込めた表情で頷いた。
「そうなんだね、まずはゴールを目指そう!」
一瞬、兎たちも二人の心を感じ取り温泉の方に向かいかけたが、心を強く持つことによってルートに戻る。
『ゴーゴー!』
メボンゴの声とともに粉雪が舞い上がる。そして……、
「わ、本当にお花みたい……! 綺麗だね」
走る。湖の上を走る走る走る。走ると同時にその足元から花の種が生まれて舞い上がっていく。
『ギャラクシー!』
彼らが走った後に舞う色とりどりの花。そして正面は、どこまでも続く水平線。
歓声を上げるジュジュ。思わずコノハはそのあまりの明るさに息をのんで言葉を失った。
「……ああ」
綺麗だな、と思って、そして、この景色は自分たちで作ったのだと気づく。
「……綺麗ねェ」
思わず、笑みが漏れた。自分たちの歩いた足跡が、なんて美しいものに変わるのだと。
「あらジュジュちゃんお鼻が真っ赤」
その感情を少し殺して、笑ったままコノハがそう言った。
「やっぱ冷えてたんだね。背中は温かかったけど」
ジュジュもコノハの私的に笑って、ちょっと鼻の頭をこする。
「そうネ、あとは美味しいものと、温泉も堪能していきましょうか」
それがあんまりに寒そうで、コノハがそう提案すると、
「えっ、ホント? ね、ね、後で兎まんじゅう食べにいこうよ」
『お土産も買っていこうね!』
ジュジュとメボンゴとともに、兎の耳もぴくりと揺れた。
「はいはい。神獣ちゃんも一緒にお風呂ね」
きっと今年も、いい年になりそうだ。……なんて。
飛んでいく種たちを見送るよう。コノハは天を仰いだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
兎さん…!もふもふ…♪
耳にしがみついても痛くないのかな…ごめんねー
僕のパーカーは魔法で編み込んでて濡れても平気だし
下に水着(男もの)着ておきます
なるべく兎の背中に全身を埋めてもふ…じゃなくて
風の抵抗を減らす
えへへ、速くて楽しい
木々はある程度は兎さんの回避に任せ
僕も気配を読んで耳元をぽんぽん叩いて軌道合図
信じてるからねー
途中までは順調に走行
けれど途中で温泉が見えたらうっかり
あ、あったかそう…とか思ってしまって
あ。
温泉に突入しちゃったら兎さんから降りて
ごめんねー、つい…
でも兎さん温泉大好きなんだっけ
ならいっか
僕も温泉好きなんだ
このままゆっくりしちゃおうね
と兎さんを撫で
ここからでも見えるかな
花の種
「兎さん……! もふもふ……♪」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はまず、ぼすん、と兎にもたれかかった。全身に兎毛を感じる。体温は澪より少し暖かくて、それがすさまじく心地よい。
抱き着くと毛は柔らかくてふわふわで。まさに至福。暫くそのもふっぷりを堪能していた澪であったが、やがてゆっくりと顔を上げる。
「耳にしがみついても痛くないのかな……ごめんねー」
そのままえいや、と飛び乗る澪。気にするでない、というようにふさふさと髭をそよがせる神獣。言語は解さないが、なんとなくその声が聞こえた気がして、澪はぴったりと兎の毛の中に全身をうずめた。
「これはね、風の抵抗を減らすためなんだからね!」
特に誰も聞いていないがひとまずそう理由を述べていく。別にもふもふ超気持ちいいから、なんて理由では断じてない。もふもふ超気持ちいいけど。
そんな澪の声を聞いてか聞かないでか、兎は澪を乗せて走り出した。ぴょーん、という放物線を描く跳躍をする兎だが、その跳躍の一歩が段違いだ。
「わ」
がくん、と体が揺れる。落ちる感触に思わず耳をつかむ手に力を込める。けれども兎は構わない、とでもいうように。飛んで、跳んで、跳んで、跳んで、そしてすさまじい勢いで落ちていく。落ちていくというか、駆け下りていく、というのだが、どうにも落ちていく、と感じるような速さであった。
「……!!」
凄まじい風の抵抗。胃が置いて行かれるような浮遊感。限界まで体を低くしていても当たる冷たい風。舞い上がる真っ白い雪の粉。
「えへへ、速くて楽し……っ!」
跳ねた。垂直の運動が突然体が右へと振れる。吹き飛ばされないようにしっかりと澪はもふ毛をつかむ。目の前に木。それを回避したのであろう。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
遠心力で持って行かれそうになるのを堪える。口からこぼれるのは悲鳴ではない。歓声だ。
「兎さん、左!」
もちろん、澪だってただしがみついているだけではいない。気配を読んで、木々や大きな岩の気配を感じると、軽くその耳の付け根を叩いて軌道を知らせる。
「信じてるからねー」
わかった。とばかりに兎が曲がり、時には跳ねる。何となく自分と兎さんが一体になった気がして楽しい。足元に岩、と、澪が叩くと同時に、ぴょーん、と兎は飛んだ。大きな跳躍。まるで月まで飛んでいけそうな……、
「あ」
と思ったら、木々を超えて跳躍した瞬間、地上に何か温かそうなものが目に入った。
「ああ……」
温泉だ。
そういえば体はすっかりと冷えていた。兎の跳躍で全身雪まみれだ。いくら魔法で編みこんで、濡れても平気なパーカーを着ているとはいえ、寒いものは寒いのだ。兎が蹴り上げる雪を時に全身で浴びたりなんかすれば、それはもう本当に……、
「あったかそう……」
思わず、ぽつりと澪は呟いた。不可抗力。仕方のないことだった。兎がそれにぴくりと花を揺らせた。揺らした瞬間、
「ああ、あー……っ」
兎が方向転換した。空中でくるりんと。見事な弧を描いて真っ逆さま。向かった先は、もちろん、
ざばーーーーーーーん!!
「ごめんねー、つい……」
そう、温泉であった。兎は温泉に全身で浸かり、そのまま足を折り、むふー。と湯の中に沈み込む。
もちろん、それは澪も同じだ。兎の背中に張り付いていた澪は、慌てて兎の背から降りる。水着を着ていた澪はまだ、走行を続行できるかもしれないが……、
「でも兎さん温泉大好きなんだっけ……」
兎は、動きそうになかった。そのまま顔の半分まで、温泉に身を浸し。そして目を閉じている。その表情がなんとも心地よさそうで、
「……ならいっか。僕も温泉好きなんだ。このままゆっくりしちゃおうね」
澪は兎にもたれかかり、ちょっと笑った。冷たい体にその温かさが心地よい。目を閉じればちょっと寝てしまいそうだ、なんて思いながら、兎を撫でる。
「……あ」
そうして落ち着いて空を見上げれば、空を飛んでいく天使の羽のような花のようなものが目に入った。よかった。ここからも見えた。
「また来年、きれいな花を咲かせられますように……」
思わず、祈る。飛んでいく花々に向けて。そして、
二人の体にたくさんついていた雪が、温泉に溶けて消えていく。後に残った小さな種が、ゆっくりとお湯とともにどこか新天地へと流れていった……。
大成功
🔵🔵🔵
ユディト・イェシュア
【月翼竜】
面白いお祭りですね
はい、これはもう修行にぴったりですね
UDCアースでは新年は卯年だといいますし
命の巡りのお手伝いをして素敵な一年を迎えましょう
うさぎさん、なかなかのスピードですね
木の枝にぶつかったり引っかかったりしないように
姿勢に気をつけ掴まります
湖の上をこんな風に駆け抜けていくのは新鮮ですね
うわあ、種が芽吹いて花に…
二人も見てるでしょうか
こんなに寒くてもちゃんと花が咲いて
命が巡って…
この村の人たちと同じように
感謝の気持ちを忘れずにいたいですね
うさぎさんを労いつつ
翼くんの淹れてくれるお茶を楽しみに
義姉が持たせてくれたサンドイッチをみんなで分け合い
この美しい光景を目に焼き付けましょう
リュート・アコルト
【月翼竜】
よおし翼
修行しようぜ!
俺と翼とユディト
三人揃えば修行だろ?(真顔)
兎に騎乗して地上を走るなんて初体験だぜ
クロは俺にしっかり掴まってろよ
それがお前の修行だ!
修行なんだから敢えて険しい道を行くぜ!
急斜面やゴツゴツ岩場を超えて
川を渡り谷を飛び越えて湖に向けてダッシュ!
朝日の中を駆け抜けるぜ!
対岸についたら小キャンプ
山を振り向けば見たことのない光景にしばし呆けて
あれが花か
綺麗だなぁ
走り疲れた兎を休ませてる間に
俺は火を興して湯を沸かすぜ
翼、あったかい茶を淹れてくれよ
ユディト、何か食い物持ってねえ?
対岸で舞う花を見ながら朝の時間を楽しもうぜ
…UDCアースは卯年かぁ
きっと兎をたくさん食う年なんだな
彩瑠・翼
【月翼竜】
兎おっきい!もふもふ!
…って、やっぱり修行になるんだね…知ってたけど(ちょっと遠い目)
兎さんもよろしく…って、
(リュートくんとユディトさんを追って跳ねる兎の速さに圧倒され)
思ったよりハードモード?!
(兎の耳にガシッとしがみつき振り落とされない様に必死)
(小キャンプでようやく一息)
ユディトさんいっぱい景色楽しんだ?
オレ、全く余裕なかったよ…(へろへろ)
走ってる時に受ける風は気持ちよかったな!
お茶?
うん、いーよ!
今日はね、いちごの紅茶を持ってきたんだ♪
頑張って淹れるよ、まかせて!
お茶とサンドイッチを食べながら
改めてゆっくり景色を楽しむよ
えへへ、こうやって皆で過ごせる時間がすごく嬉しいねっ
「よおし翼。修行しようぜ!」
リュート・アコルト(竜騎士・f34116)の明るい声音が、青空の下響き渡った。
「はい、このような面白いお祭り、これはもう修行にぴったりですね」
ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)も何やら穏やかにほほ笑みながらも、そんなことを言っている。
「UDCアースでは新年は卯年だといいますし、命の巡りのお手伝いをして素敵な一年を迎えましょう」
他意はない。そのまんまの意味である。ユディトは本気でそう思っている。勿論、隣でうんうん、と頷いているリュートも。……そのことを彩瑠・翼(希望の翼・f22017)はもちろん、わかっていた。「兎おっきい! もふもふ!」などと神獣の巨大兎に埋もれてもふもふ具合を堪能していた翼であったが、その兎毛にもっふりと埋まりながら、翼は遠い目をする。
「……やっぱり修行になるんだね……知ってたけど」
「俺と翼とユディト、三人揃えば修行だろ?」
「うん。そうだね……そう。そうなんだよね……」
真顔でリュートにそう返されれば、それ以上の言葉を最早持たない。すでに半分ほど死んだ目で、翼はもふ毛に顔をうずめる。あったかい。とても。
「兎に騎乗して地上を走るなんて初体験だぜ。クロは俺にしっかり掴まってろよ! それがお前の修行だ!」
しかしながら現実は非常である。うっきうきでリュートが兎に飛び乗れば、兎の体がわさわさと揺れる。黒竜も任せろとばかりにリュートの頭の上にしっかりと捕まっていた。ユディトがもう一羽に乗り込んで、「なかなか高いですね」なんて言っている。……これでは顔を埋めていられない。今日は三人で別々の兎に乗るので、こんな場所で置いてけぼりはそれはそれで寂しいのだ。翼はそっと顔を離す。それから恐る恐る、兎の上によじ登った。
「兎さんもよろしく……って」
「修行なんだから敢えて険しい道を行くぜ! 出発進行―!!」
優しく声をかけようとした翼の声はリュートの明るい声にかき消された。その言葉と同時に、リュートの乗った兎がすさまじい跳躍をする。
「おや。これは負けていられません」
涼しい顔をして、ユディトもまたしっかりと兎の耳を持って跳躍を開始した。
「急斜面もゴツゴツ岩場もなんのその! 川を渡り谷を飛び越えて湖に向けてダッシュ! ダッシュ! ダッシュ!!」
「はい。これはなかなかのスピードです。うさぎさんはともかく、俺が木の枝にひっかけてしまわないように……こう」
元気なリュートの声はわかる。そしてその後にユディトが静かな声でそれでもすさまじい勢いで駆け下りていく。そのスピードの中でも、丁寧な姿勢を心掛けているさまは素晴らしい。
「……」
そして残された翼は、ただただ。圧倒されてその行く末を見守るのであった……。否。
行く末を見守れるのであればそれでよかった……のだが!
「思ったよりハードモード?!」
はっとした。一呼吸。遅れて。翼の乗る兎もまた走り出した。この後どうなるかなんて目の前で見ていたから知っている。だからただただ翼はしっかり兎にしがみつく。徐々に上がっていくスピード。崖を下り降りる時の胃の浮く感じ。迫りくる崖。木々。そして粉雪。
「朝日の中を駆け抜けるぜー!」
「湖の上をこんな風に駆け抜けていくのは新鮮ですしょうね……!」
景色を楽しむ間もない翼の耳にはただ、風を切る音とリュートとユディトの楽しそうな声が届いているのであった……。
そんな崖下りと、湖上での走行は永遠のようで一瞬でもあった。
走って、走って、走って、走って。
雪積もる対岸にたどり着けば、小休止を取ることにする。
対岸はちょっとした広場のようになっていて、数は多くないが、キャンプをしたり焚火をしたりしながら湖の様子を見ている人たちもいた。
今までも景色が嘘だったみたいに、平和で穏やかな空気が流れている……なんて。
「ユディトさんいっぱい景色楽しんだ?」
その穏やかさが目に染みる。軽く目元をこすりながら、翼が息をつくと、ユディトが首を傾げた。
「ええ。翼君は見ませんでしたか?」
「オレ、全く余裕なかったよ……」
「でも走ってる時に受ける風は気持ちよかったな!」なんて笑う翼に、ユディトは瞬きをする。二人はちゃんと見られていただろうかと、走行中は思っていたのだ。多分、リュートは大丈夫だったと思うけれど……、
「おや……。でしたら、ほら。種が芽吹いて花に……」
「わ」
ふわ、とユディトが指さした先を翼は振り返る。ちょうど湖の上に、沢山の花々が渡っていくところであった。
真っ白い種、緑の種、茶色い種。飛行する高さが違うから、なんとなく色が湧かれていてそれも面白い。白い花はどんどん高くへ。それを翼は目で追う。
「こんなに寒くてもちゃんと花が咲いて、命が巡って……」
「この村の人たちと同じように、感謝の気持ちを忘れずにいたいですね」と。穏やかにほほ笑むユディトの隣で、リュートもまた、目を見張ってその光景を見つめていた。
「あれが花か。……綺麗だなぁ」
先ほどまでの騒がしさはどこへやら。ただ静かに、リュートもその花を見やる。クロノスがその頭の上、パタパタと羽を鳴らしていて、「クロもそう思うよなあ」。なんて、そんな言葉が口をついて出ていた。
「……っと、そうだ。湯を沸かしたんだった!」
そうしてしばし。三人して見惚れていた次第であったが、ふいにリュートがそんな声をあげる。ちょうど兎たちを休ませている間に、と思って、準備をしていたのだ。
「うん、ちょうどいい感じだぜ! 翼、あったかい茶を淹れてくれよ」
「お茶? うん、いーよ!」
リュートの言葉に、翼が顔を上げる。修業が始まるときよりもよほど明るい顔で、
「今日はね、いちごの紅茶を持ってきたんだ♪ 頑張って淹れるよ、まかせて!」
いそいそと準備を始めるのでユディトがほほえましそうにそれを見ていた。……見ていたら、
「ユディト、何か食い物持ってねえ? 花見ながら、朝食にしようぜ!」
「おや。……ああ、そうですね。義姉が持たせてくれたサンドイッチがありました」
お任せください。とばかりにユディトが朝食の準備を始める。
どういうわけか言葉が通じたのか。兎たちが自分達も食べる、とばかりに花を鳴らし始めた。
「……UDCアースは卯年かぁ。きっと兎をたくさん食う年なんだな」
そんな兎たちを見つめて、リュートがぽつん。兎肉はA&Wでもよく食べられているが、この神獣はどうだろうか。さり気なくその視線に気づいて兎たちはユディトの後ろに隠れようとするが、巨体なので全く隠れられていない。その様子に、思わず翼も笑った。
「えへへ、こうやって皆で過ごせる時間がすごく嬉しいねっ」
さあ、ゆっくりとお茶会を始めよう。
日が昇って、穏やかな太陽と共に飛んでいく花を見ながら、そんな他愛もない会話とともに彼らの新しい年が始まるのだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
リュカくん(f02586)と。
いやー賑やかで何か縁起よさそうなお祭りだねー。
一応年男…?っていうのになるらしいし水平線の果て目指して行ってみよっか。
これだけ大きいなら俺くらい軽々だろうし。
乗らせて貰う兎には挨拶を。ビーストマスターだし念の為。
俺もとことん風になりたい感じだから遠慮なくぶっ飛ばしてね。
森を駆け抜け湖へ。
ルート取り多少は指示するけど任せた方が大丈夫そうかな。
温泉の罠は…今はそれどころじゃないし、夜明けが俺を待ってる…!
湖を走りながら日の出を見つつ…すっごい爽快な気分!
バイク走らせてるリュカくん見かけたら手を振って。
このまま端まで競走してみない?と誘ってみるね。
※アドリブ絡み等お任せ
ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)はピンク色をした兎をじっと見つめた。
周囲にはたくさんのピンク色をした兎や、それに乗る人や、出発に向けて暖を取る人なんかでにぎわっている。
「いやー賑やかで何か縁起よさそうなお祭りだねー」
こういうざわざわとした雰囲気は、結構好きだ。誰にともなくつぶやいたら、兎が房、と耳をそよがせたので、ヴィクトルはその頭を撫でて丁寧にお辞儀をして挨拶をする。
「俺もとことん風になりたい感じだから遠慮なくぶっ飛ばしてね。あと一応年男……? っていうのになるらしいし水平線の果て目指して行ってみよっか」
よろしく、という意味をを込めて軽く耳の付け根を叩けば、任せろ、というように鼻が揺れたのでヴィクトルもまた大いに頷いた。
「失礼します」
それからひょいと飛び乗っても、兎がびくともしないことに割りと感動した。軽々、という表現がとてもしっくりくるくらい軽々と、ヴィクトルは兎の背に収まる。……と、
「わ」
走り出した。一気に跳躍する。その動きに思わず声が漏れる。
ぴょん、と跳ねる感覚。跳ねるとともに山の中に躍り出る。雪を踏み荒らし、崖を下るように下へ。下へ。下へ。
「うっわ……!」
早い。凄まじく速い。降りるというか、もはや落ちていく感覚に心の中でヴィクトルは完成をあげた。なぜ心の中でかというと、口を開けていると雪が入ってくるからだ。
「……!」
目の前に迫る木々を紙一重でよけ、崖を飛び越える。時折気付けば耳をつかむことにより意思疎通を図るが、そこまでしっかりとした指示はしない。何となく、こちらの方へと。ヴィクトルが思えば兎がそれに合わせてくれる。
「あっと、言う間、だなあ……!」
切れ切れに走る声。舞い上がる雪、雪、雪。気づけばあっという間に山を下っていた。仄かにどこからか、温かそうな湯気が走る気配がする。そういえば温泉があったな、なんて、記憶の隅で考える。
「今はそれどころじゃないし……、夜明けが俺を待ってる……!」
もうずいぶん空が白い。太陽はまだ出ていないから、なんと魔化に合わせたい。何となく届く暖かそうな気配を振り切って、ヴィクトルが走って走って走れば……、
「うわ……!」
視界が開けた。かなたまで続く水平線。そこから昇る朝日。雪が舞い散る。
「すっごい……爽快な気分!」
最早遮るものはなく、思わずヴィクトルは大きく声をあげた。それに合わせるように、雪が飛び散り、花の種となり、ヴィクトルが走るに合わせて飛び立っていく。
前方、兎ではない物体がものすごい速さで走って行くのを見た。リュカだ。ヴィクトルは声を張り上げる。
「リュカくん! あけましておめでとう」
「ん、おめでとー」
「折角だから、このまま端まで競走してみない?」
声を張り上げる。こんないい天気だ、全力で走るのは、きっと楽しいだろう!
陽光に向かって、ただ走る。それだけがなんと心地よく、楽しいことか。
今年もまた、楽しい日々になるに違いない……。
大成功
🔵🔵🔵
リオン・リエーブル
【LL】
ひかりんにウサギレースを申し込む!
いざレース勝負でライに乗られるとおにーさんに勝ち目はないからね
ウサギライドなら負けないよー?
なぜなら!おにーさん特製ドリンク(UC)を飲んだハッスルうさぎさんが相棒だからね♪
さあうさりん!
ひかりんとウゴを追い抜いて
一番に湖というゴールまで駆け抜けるのだ!
テクニカルな走りには力技でGO!
ショートカットでウサギさんと大ジャンプ!
雪だと思っていた着地地点はホッカホカの温泉で
盛大な水柱を上げて温泉に入っちゃえばそのぬくぬくから抜けられる筈もなく
ウサギの背中によりかかって温泉を楽しんじゃうよ
遠くなっていくひかりんとウゴの背中を手を振って見送ろう
はぁ~極楽極楽
櫟・陽里
【LL】
観る系レースかと思いきや乗る?!
正直動物とのふれあいは自信ないが顔には出さない
俺が勝つに決まってんだろ!
よーし今回の相棒頑張ろうな?(おそるおそる)
名前はうさぎGO…略して“ウゴ”
(ウゴに足ダン!される)
あっ気に入ってないっぽい!
は?おにーさんのドリンク?ヤバくない?
まぁそんな邪道には負けねーけどな!
作戦はピッチ走法
高く跳びすぎると地面を蹴る数が減る
障害物をこまめに避け蹴りの加速機会を増やす
でもウゴとのコミュニケーションに難あり
掴む場所とか探り探りなのが伝わっちゃうらしい…
その上おにーさんウザいとか貶し合ってる大声が気に障るのか
見事にコースアウト!
明後日の方向に消えていくのであった…
「ひかりん……」
リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)は今、至極真面目な顔をしていた。
いつもの明るいおにーさんが、今や戦いに赴く兵士のような顔をしていた。
そうして徐に、櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)に指を突きつける。
「たった今より、ウサギレースを申し込む!」
「おう。……おう!?」
指を突きつけられた陽里の方は、鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしていた。
「申し込む……って、申し込まれたのか!? 俺が? 観る系レースかと思いきや乗る?!」
「そうだよ。当たり前じゃないか!!」
さっきからそう言ってるじゃないか、というような顔をするリオン。いや、さっきからも何も今初めて聞きましたが!? としきりに目を瞬かせる陽里。
「いざレース勝負でライに乗られるとおにーさんに勝ち目はないからね。ウサギライドなら負けないよー?」
だが、そんな陽里の戸惑いをわかっているのかいないのか……たぶんあれはわかっていてやっている……、リオンは得意げに解説をする。相手に考える暇を与えない畳みかけっぷりである。自分の相棒たる神獣・巨大兎を優しくなでながらも、ふふん、と得意げにリオンは己の作った究極のエナジードリンクを陽里に示した。
「なぜなら! おにーさん特製ドリンクを飲んだハッスルうさぎさんが相棒だからね♪」
飲んだ対象を戦闘力増強と疲労を感じなくなるオーラで包み、24時間の自動回復能力と各種耐性を与えるとかいう割と本気な飲み物を示されて、なるほど、と陽里は己の状況をかみしめる。……これは、不利だ。正直、陽里にとって動物とのふれあいは、まったく自信がないジャンルである。
陽里にできるのは、とにかくただ速く走るだけ。走ろうと努力するだけ。そこに可愛いもふもふの入り込む余地なんてありはしない。……だが、
「なんであろうと関係ない……。俺が勝つに決まってんだろ!」
だからと言って、操縦に関することはだれにも譲れない!
例え謎の多いピンクの巨大もふ塊だったとしても、乗って、レースをするといわれるなら……陽里は、受けて立たないわけにはいかないのだ!
「……よ、よーし今回の相棒頑張ろうな?」
その後。恐る恐る巨大兎をなでなでする陽里が見られたのであるが、その時の陽里はちょっとどう表現していいのかわからない顔をしていた、という。
「名前はうさぎGO…略して“ウゴ”、で、ど、……ぶ!」
だん!
ものすごく不機嫌そうに地団駄(たぶん)を踏まれた!
雪が舞い上がってもろに陽里の顔にかかる……!
「あっ気に入ってないっぽい……!」
「ふふん。うさりんと僕との絆を見せてあげようねー!」
ちょっと、雪かけないで……! と言いたげな陽里の隣で、リオンはよしよし、と兎を撫でてひらりと飛び乗る。
「さあうさりん! ひかりんとウゴを追い抜いて、一番に湖というゴールまで駆け抜けるのだ!」
「あ、ちょ、いきなりスタートかよ!!」
そしてリオンは走り出した! 一切の容赦ない滑り出してあった。
陽里は慌てて兎に飛び乗る。飛び乗った時には、
「は? おにーさんのドリンク……ヤバくない?」
ものすごい速度とジャンプ力でかける兎に目を丸くした。ていうか、周囲の兎あんなに速度出てないぞ……!
「まぁそんな邪道には負けねーけどな! 行こうぜ、ウゴ……ウゴコ!!」
とっさに名前を変更してみる。走り出した兎はなんとなくそこはかとなく不機嫌そうであったがとにかく走り出してくれた。飛び立つと同時に雪が舞う。雪がたくさん、たくさん、飛び散って。陽里やリオンの体にも引っ付くのであった。
「さあ、踏みつぶせ、踏み倒せー♪」
だん、だん、だん!
強化された兎が全力で走ると、それだけで大地が震えるようであった。
「こ、の、や、ろ~~!!」
走るたびに豪快な雪柱が上がる。勿論それは前に後ろにと接戦を繰り広げる陽里にも直撃する。陽里としては、こまめに障害物をよけ、歩幅を狭くして地面をける回数を増やすことで加速機会を増やし、そして障害物も避けやすくするという非常に堅実な走り方を選んでいるのである。
「やっほーい。それ大ジャンプ!」
「この、うるせー!!」
ぴょーん。と巨大な岩をよけようと、リオンの兎は大ジャンプした! まるで月まで飛んでいきそうな勢いだ!
「……お?」
だが。
木々を飛び越え、高く高く跳躍。そうして木の生えていない広場のような場所に降りる。ただ雪が積もっているだけのなだらかな…………あれ。なんだかちょっとあったかい気配がしない?
なんて、リオンが思ったのを最後に、兎は雪の下に隠れた温泉に無事、突入した。
「うわっぷ」
巨大な水柱が上がる。結構深くて、もうそれだけで心地いい。兎の方も、やったぜ、とばかりにすぐ雪を振り払って温泉に沈み込んだ。
「は~。ぬくぬく~」
やばい。抜けられない。兎にもたれかかり、目を細めるリオン。その切り替えの早さは素晴らしい。最早完全に温泉楽しむモードである。
一方……、
「温泉! そうか。温水の川がたぶんあんな感じで走ってて……」
地形を見て、陽里が温泉の位置を察する。
「ウゴ! よけろ。反対側に反対側に反対側に……ど、わわわわわわわわあああああああああああ!」
果たして、兎は急転換した。呼び方が気に入らなかったのか掴む場所が気に食わなかったのか恐る恐る探りながら掴んでいたのが気に入らなかったのかおにーさんことリオンとの大声でのやり取りが気に入らなかったのかそもそもコミュニケーションに難があったのかもしくはそのすべてなのか……、
「ちょ、お前、どこ行く、どこへ……!」
「いってらっしゃ~い。昼食までには帰ってきなよ~」
湖とは全く違う方向へ走って行く陽里と兎を、リオンはひらひら、手を振って見送る。さて、どこに向かっているのかは、きっともう誰にも分らない。
「はぁ~極楽極楽」
だからリオンは、のんびり温泉に浸かることにする。冷えていた体が温まり、今年も楽しい一年になりそうだなあ、なんて、そんなことを感じるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャルファ・ルイエ
お祭り、参加したいです!
種を運ぶためのお祭りって素敵ですし、オルトゥスと思い切り走る機会ってそういえばあまり無かったですから。
せっかくなら一番を目指したいですし、リュカさんをお見掛けすることがあったら競争しませんかってお声がけしてみますね。
そちらの方が楽しそうです。
小竜のウィルと猫のレディは、箒のシリウスに固定した籠の中に入れて。
お祭りを見下ろす特等席で空から着いてきて貰いますね。
村に着いたら、皆で揃って屋台を覗いて、おいしいものを食べる約束です。
ちゃんと暖かい恰好をしたら、黒豹のオルには【絆花の誓約】で大きくなって貰って、背に乗って首元にぎゅっとしがみついて。
空はシリウスが早いですけど、地面や森ならオルだって負けません。
山を駆け下りて、樹々の合間を縫って、氷の上を水平線に向かってひたすら駆けて。
肌にぶつかる冷たい空気を感じて、すごい速さで流れていく風景を視線の端で追いながら、真っ直ぐに前を見つめて。
まるでひとつになったみたいな一時は、きっと素敵な時間と景色ですもの!
シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)にとって、緑混じりの金の目をした黒豹、オルトゥスに乗る機会はそうそうなかった。
だからその話を聞いた時、思わず目を輝かせたという。
「お祭り……」
しかも種を運ぶため何て素敵な理由。そして思い切りオルトゥスと爆走しても誰にも気を遣わなくていいという事実。
「参加したいです! 折角なら一番を目指したいです!」
「……お姉さん、なんだかすごい気合いだね」
「リュカさん、競争しませんか!?」
ちょうど通りがかったリュカに、シャルファはワクワクした声音で声をかける。いつになくやる気である。弾むようなその声に、うん? とリュカは首を傾げつつも、
「いいけど。なんだか以外」
「今日のわたしは、張り切っていますから!」
「うん、それはまあ、なんか見ればわかる」
楽しそうです、と言い切るシャルファに、リュカはちょっと笑って、まあ、俺は無茶はしないけど、手加減もしないよ。なんて肩を竦めて了承のしるしとするのであった。
そうと決まれば早速である。小竜のウィルと猫のレディは、箒のシリウスに固定した籠の中に入れて、空から見守っていてもらうことにする。
「今回は厳しい戦いになるから……みんなには安全なところにいて欲しいのです」
なお、参加するのは戦闘ではなくお祭りなのだが、とりあえずそれに突っ込む人はいない。シリウスが軽く体を揺らす。上空の良くお祭りが見下ろせる場所から彼らはシャルファを追うことになっていた。
「村に着いたら、皆で揃って屋台を覗いて、おいしいものを食べましょうね」
だが、大事なのはこの戦いなのだ。暖かい恰好をして、オルトゥスと魔力を共有する。それにより風と闇を纏い大きくなったオルトゥスにシャルファは騎乗する。首元にギュッとしがみつくと、オルトゥスは任せろ、とばかりに軽く鼻を鳴らせて顔を上げた。……彼はいつだって、言葉少なく。けれども確実にシャルファを守ってくれるのだ。
だから、シャルファは心配していなかった。空をゆくならばシリウスの独壇場だが、このような森を行くのであればオルトゥスだって負けてはいない。
「それじゃあ……」
いこう! という声を聴くとともに、オルトゥスが走り出した。一直線に、崖のような森へと踊り出す。
「……!」
冷たい空気が肌を刺す。崖に飛び込んだ瞬間、一瞬、胃が置いて行かれるような浮遊感がある。
「オル……!」
オルトゥスの名を呼ぶ。心配するなというように、オルトゥスの体が跳ねる。周囲の兎とは違う、明らかに力強くしなやかなその動き、隣に聞こえる爆音は多分リュカのバイクで、遠くに犬ぞりが走る音なんかも聞こえる。
「……!」
雪煙が舞う。思わず目を閉じたくなるのをシャルファはこらえた。落ちるように降りていく。オルトゥスは無駄に跳ねず、最低限の動きでしなやかに、下へ、下へ……。
「ふ……!」
紙一重で避けた樹の幹が揺れ、それと同時に雪が落ちる。雪を全身で被りながらも、それがまた風で流れていく。
「わ……あ!」
そうして、走って走って走って。走った先で世界が開けた。
木々が途切れる。そして一気に開ける視界。どこまでも続く湖と、何一つない水平線。前方には誰もいない。ただ、ひたすら氷しかない世界にオルトゥスは踏み込む。
「ああ……」
シャルファとオルトゥスに降り積もった雪が風に吹かれて飛んでいく。飛ぶと同時に様々な種が雪の下から顔を出す。白と青しかない世界に色がさす。緑、白、茶色。三色の美しい種が今、空へと飛び立っていく。
「……っ!」
それでも、シャルファは振り向かなかった。ただオルトゥスと、ただ只管に駆ける。冷たい空気も、青い空も。それらを全身に感じながら、しっかりと前を向く。
そうすると、まるで世界と一体化しているような気持になって。もう、紡ぐ言葉もない。オルトゥスの体温だけを感じながら、どこまでも続く氷の向こう側から、シャルファは、輝く太陽が世界を照らしていくのをただ目を見開いて見つめ、そうして世界を感じていた……。
大成功
🔵🔵🔵
歌獣・苺
【苺夜】
わぁ~!さすが可愛さも、ふかふか具合も、大きさも神獣級!
確かに、UCで大きくなったロイねえといい勝負かも!
この子たちの足の筋肉
凄くスピードが出そうな子たちばかり…!
なら、ルーシーが前
私がその後ろに乗ろうかな!
私が後ろで神獣さんの耳を持ちつつルーシーを体で支えれば振り落とされることもなさそうだし!
よーし!いざしゅっぱ──って
わわー-!?
は、早!?うわーー!大ジャンプ!?
待って木!木!ぶつかる~~~!!!
…ふぅ!ルーシー大丈夫…?!
あ、おんせ…ってダメダメ!
今は湖に行かなきゃ!
今回は少し激しいけど
生き物に乗って地を駆け抜ける
この爽快感がたまらなく好き
すごいね!
氷の上なのに上手く走ってる!
芽吹きの、時…!すごく綺麗…!
…まだまだ
心身共に未熟なところはあるけど
そんな私たちも私たちなりの
素敵な花を咲かせられるといいね!
どんな花を咲かせるか気になり
こっそり飛び立つ種を
いくつか捕まえてルーシーと半分こ
──さ、景色の次は兎まんじゅう食べにいこっか!
そっと手を差し出し握れば
屋台へ向かって足を進めた
ルーシー・ブルーベル
【苺夜】
苺、こちらの神獣さんが乗せて下さるって!
神獣さんって可愛くて大きいのね
大きくなったロイさんと同じ位かな
前側と後側、苺はどちらに乗りたい?
ふふ、優しいね。苺
ではお言葉に甘えてルーシーは前側に乗るわ
しゅっぱ……わあわあ!!!
急降下のぞわぞわする感覚
木にぶつかる、ぶつかる!
瞬く間に変わっていく景色に目がぐるぐる
ううう……ありがとう、大丈夫よ
でも苺が一緒に乗って下さらなかったら落ちてたかも
温泉が視界に入ってきたけれどぐっとガマン
ええ、全部が終わった後にしましょう
今は、真っ直ぐに湖へ!
顔にあたる風は冷たいけれど
雪を巻き上げて走るのは気持ちがいいね
すごい、今湖の上を走ってるわ
向こうから陽光がさす
芽吹きの時だわ!
次々種を割って芽が生えて
なんてキレイなみどり
彼らは今、全力で生きてるのね
ええ、ええ
苺もルーシーも、沢山の花が咲くといい
きっと苺なら出来るわ
あら、それは種?
半分わけてもらった種を大事にしまう
あの館でも咲いてくれるかな
いいわね
兎まんじゅう、気になってたの!
差し伸べられた手を、きゅっと握って
「わぁ~!」
歌獣・苺(苺一会・f16654)が思わず歓声を上げた。完成をあげると同時にふわふわした耳が軽く揺れる。
ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)はふーっと両手に息を吹きかけながら、そのもふもふした毛だまりたちを見つめた。
山頂には様々な兎がうろうろとしていた。ここから好きなうさちゃんをお借りしていいらしい。どれでもいいそうなのだが、どれでもいいといわれるとちょっと悩むところがある。ルーシーは軽く首を傾げながら、一人一人。声をかけるようにその顔を覗き込んでいく。
「さすが可愛さも、ふかふか具合も、大きさも神獣級! それにこの子たちの足の筋肉……。凄くスピードが出そうな子たちばかり……!」
凄い。すごい素敵。もふ毛に覆われた足までしっかりと観察している苺に、ルーシーは思わずくすくすと笑う。
「大きくなったロイさんと同じ位かな?」
可愛い。そして大きい。それでルーシーが思い出すのは、苺が大事にしているオネエ猫だ。ああ、と苺もその美しい姿を思い出して、軽く両手を叩く。
「確かに、大きくなったロイねえといい勝負かも!」
「でしょう? 一緒に並んだらきっと素敵なの……ふぁっ」
むぎゅ。
何やらルーシーに巨大な鼻づらが押し付けられて、ルーシーはびっくりして視線を苺から正面へと移す。何やら仲良くおしゃべりしていた二人が気になったのか。神獣兎が一羽、ルーシーに顔をこすりつけに来ていた。
「苺、こちらの神獣さんが乗せて下さるって!」
いいの? と鼻の上あたりを撫でると、いいよ、と兎が目を細めて答えたような気がしたので、ルーシーはこの子に決める。よしよし。苺も一緒に頭を撫でる。よしよし。
「前側と後側、苺はどちらに乗りたい?」
「なら、ルーシーが前。私がその後ろに乗ろうかな!」
撫でながらルーシーが問うと、苺は少し考えて、
「私が後ろで神獣さんの耳を持ちつつルーシーを体で支えれば振り落とされることもなさそうだし!」
完璧な作戦。どうかな! と提案するので、ルーシーは顔を上げる。
「ふふ、優しいね。苺。……ではお言葉に甘えてルーシーは前側に乗るわ」
「えへへ。ルーシーの安全は私に任せておいて!」
どんと胸を叩きながら、一緒に兎に乗り込む。前述通り、ルーシーが前で苺が後ろだ。それから苺が長く伸びた兎の耳をがっちりと掴むと、ルーシーは割としっかり兎さんに固定される。
「ふわ~~。なんだかとってもあったかいのね!」
「本当ね! なんだかとってもぬっくぬくで……」
兎の体温と、お互いの体温。それだけでなんだか幸せな気持ちになる。幸せな気持ちになりながら、意気揚々とルーシーは片手を挙げる。
「それじゃあ、しゅっぱ……」
「よーし!いざしゅっぱ──」
苺もまた、ルーシーの声に合わせて掛け声をかけようとした。……その、次の瞬間。
がくん! と兎が動いた。唐突に。一瞬に。
ジェットコースターなら、ゆっくりレールを登っていく時間があっただろう。そんな暇すらなかった。兎は二人の声に合わせるように天を見た。その次の瞬間。
「わあわあ!!!」
「って、わわー-!?」
高々と大ジャンプをしていたのだ。待ってましたとでもいうかのような跳躍であった。
二人の悲鳴を乗せて、兎は飛びあがる。そしてもちろんその先は崖のような山である。落ちる……!
「わ。ぶつかる……ぶつかる!」
「待って木! 木! ぶつかる~~~!!!」
落下地点にある木を、だん! とひと蹴りしてさらに高く、高く。ルーシーが悲鳴を上げる。苺は悲鳴をあげながらも、必死に兎の耳をつかんでルーシーを落とさぬように支えた。気の上に落ちる衝撃。それから再び飛び上がる衝撃。空中を浮遊している感覚。
「は、早!? うわーー! 大ジャンプ!?」
「あうーっ! 雪、雪が……!」
兎が弾丸のように跳ねるたび、大量の雪が舞い上がる。苺と兎でガードされているが、ルーシーも構わず、その雪をかぶる。目まぐるしい変化に、なんだか目がぐるぐるしてきた。
「……ふぅ! ルーシー大丈夫……?!」
次は右への急カーブだ。それを何とか支えながら、苺はようやく、ルーシーに声をかけた。相変わらずのスピードであるが、ようやく慣れてきたのである。
「ううう……ありがとう、大丈夫よ。でも苺が一緒に乗って下さらなかったら落ちてたかも……」
対するルーシーはちょっとぐったりしていた。頭がゆらゆらする。大丈夫? と苺はちょっと心配そうに視線を落とした。
「ルーシーが辛いなら……」
ぐっと我慢していた。先ほどから漂ってくる仄かに暖かそうな気配を。苺はちらりと、そのどこかに意識を向ける。……温泉だ。
「おんせ……」
少し辛いなら、ゆっくりしていかない? と言いかけて、視線を落としてルーシーの表情を見て苺は首を横に振る。
「ってダメダメ! 今は湖に行かなきゃ!」
「ええ、全部が終わった後にしましょう。今は、真っ直ぐに湖へ!」
決意に満ちたルーシーの表情に、苺もうなずいた。ルーシーが大丈夫なら、苺だって大丈夫だ。だって、
「うん! 今回は少し激しいけど……、生き物に乗って地を駆け抜ける。この爽快感がたまらなく好き!」
「ええ!」
頬にあたる冷たい風を感じながらも、生き生きとした苺の言葉にルーシーの声も弾む。浮遊感、疾走感。そして雪を巻き上げながら走るその心地よさは、他にはないものだから。
「気持ちいいね!」
つらい。怖い。だけど……楽しい! そんなルーシーの気持ちがこもる声に、苺も笑う。応えるように兎が、ぐんとスピードを上げた。
木々が立ち並ぶ山を抜け。そうして少し中利の平地の森を抜け、そして湖に出る。
視界が開けるのは一瞬だ。一瞬のまばゆさの後、世界はどこまでも続く水平線に支配される。
空が青い。湖の凍る青と、遠い遠い空の青。そこに、兎は突入する。
「すごいね! 氷の上なのに上手く走ってる!」
「ええ。今湖の上を走ってるわ!!」
苺の歓声に、ルーシーも顔を上げる。氷の上をただ只管。滑るのではなく、駆けていく。その力強い足取りに、かぶっていた雪が振り落とされる。振り落とされると同時に飛び立つ様々な種子。
同時に湖の向こう側から太陽が顔を出す。冷たかった身体が徐々に暖かくなっていく。
「芽吹きの……時だわ!」
そうすると世界は一瞬で様々な色に包まれる。空と湖の青と氷と雪の白しかなかった世界に、ルーシーたちの足跡を残すかのように一瞬に植物たちが顔を出した。
「これが、芽吹きの、時……! すごく綺麗……!」
ルーシーの、口から自然とついて出た声を苺も思わず反芻する。芽吹きの時。それは何とも瑞々しくて、幸せな音がした。
「ええ。なんてキレイなみどり……。彼らは今、全力で生きてるのね」
顔を上げて、振り返る。飛んでいく緑に、白に、茶色に。その色を見る。たった今目覚めた命は、たった今から生きるために様々な世界へと旅立っていく。
「……まだまだ、心身共に未熟なところはあるけど……」
そのすべてが、無事に行くべきところに行き、その生涯を全うできるわけではないだろう。
そんな思いが胸をよぎり、苺は一度、深呼吸をする。……たとえそうだとしても、この種たちは精いっぱい生きている。
「そんな私たちも私たちなりの、素敵な花を咲かせられるといいね!」
ね! と笑う苺の笑顔はきらきらしていた。だから、ルーシーもなんとも嬉しくなる。嬉しくなって、
「ええ、ええ。苺もルーシーも、沢山の花が咲くといい……。きっと苺なら出来るわ!」
笑って、そう答えた。その答えがあんまりに嬉しくて、苺は天へと手を掲げる。
「じゃあね、これ……」
掲げた手に、飛び込んでくる沢山の種。三色が自然と飛び込んでくれば、
「あら。種を?」
「うん。半分こしようよ。どんな花が咲くか、見てみたいでしょう?」
今日のひの、その思いを忘れないように。苺はルーシーに、花の種をちょうど半分、手渡す。
「あの館でも咲いてくれるかな……」
大事にしまいながら、ルーシーは呟く。
「わからないけど……私も育てるからどちらかが咲いたら、見せ合いっこしようよ」
「ああ……そう、そうね。ルーシーだって、きれいに咲かせて苺に花を見せてあげるわ!」
「うん、楽しみにしてるね!」
植物のことだから、絶対咲くなんて言えないけれども、
きっと、いくつかは花開くだろう。その時は、どれが咲いたか、なんて、見せ合いっこするのも良いだろう。
そうこうしている間に、兎は減速する。……旅の終わり、対岸につくのだ。
鼻の種はこれからだけれども、兎の旅はこれでおしまい。ほんの少し名残惜しそうな顔をするルーシーに。
「──さ、景色の次は兎まんじゅう食べにいこっか!」
さっと兎から降りた苺が手を差し出した。まだまだこれからだ、というような苺の口ぶりに、
「いいわね。兎まんじゅう、気になってたの!」
ルーシーも笑って、その手を握りしめた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メルト・プティング
アドリブ歓迎
大好きなベアータ(f05212)さんと参加
絶叫マシンは乗る前はワクワクしてるけど乗ったら後悔するタイプ
わぁ、ピンクの兎さん可愛いですね
以前ベアータさんに頂いたぬいぐるみのベルルにそっくりの子に乗りましょ!
えへへ、ベアータさんの後ろにぎゅーってして駆け抜けるの、楽しそうだなぁ
なんだかまるで、冬空の下のドライブみたいだなぁ、なんて
…そう思ってたんですよ!山下りが始まるまでは!
思ってた三倍早いし急勾配ぃ!やあああ!!たすけてえええ!?
もう早いやら怖いやらで必死にベアータさんにしがみつきます
温もりを感じれば少しは恐怖感が和らいで…いや焼け石に水ですね?!
それ以上に早い怖い早い!!
ベベベアータさん?ちょ、ちょっとだけでいいから速度、速度を…!!
涙目で懇願しますが速さと怖さで口が、口が上手く回らないのです!
あれ?なんかむしろ加速してません!?
ああ、なんだかベアータさんとの色んな思い出が景色と一緒に流れてく
これが…走馬灯…?
しっかりしがみつきながらも、頭はぼんやりしてきちゃって
おそら
きれい
ベアータ・ベルトット
アドリブ歓迎
大好きなメルト(f00394)と
絶叫マシン耐性あり。野生の血が目覚めてスピード狂に
ふふっ、確かにちょっと似てるかもね
良い?ベルルを名乗るからには、最後までしっかり走んなさいよね。後でご褒美あげるからさ
兎に念押ししてからスタートを…ッ!め、メルトがぎゅってしてきてる…!
背中に感じる温もり…くすぐったくて心地好くて、なんだか落ち着かな…って速ーッ!?駄目よ、集中しなさい私!
必死にしがみついてる内に…あぁ、何故だか血が滾ってくる
…良いわ。このスリル、堪んないわねッ!
他の参加者を追い抜いて、もっと速く!もっともっと…!
五感と野生の勘を研ぎ澄まし、完璧な操獣キメてやるわ!
あっはっは!楽しいわねぇメルト!
…うん、よく聞き取れないけど、大分テンション上がってるみたいね。あんなに叫んでるもの!
もっとトバしてほしいのかしら…?「わかったわ!私を信じて、しっかり掴まってなさい!」
もうすぐ湖。種が舞う景色は、きっとすごく綺麗なんでしょうね…メルトに早く見せてあげたいわ
…さぁ、最後まで突っ走るわよ!
メルト・プティング(夢見る電脳タール・f00394)は後悔していた!
しかしながら、何に後悔すべきであろうか。メルトは薄れゆく景色の中そのことを思い出してみる。
それはきっと、そう。最初から。否。大好きなベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)とお出かけしたこと自体は後悔していない。後悔すべきではない。となると……、
「わぁ、ピンクの兎さん可愛いですね」
最初は、メルトのそんな言葉から始まった。その笑顔に、ベアータも思わず頬が緩む。メルトはどの子に抱き着いたものか、きょろきょろまずは周囲を見回して、
「あ! あの子、ベルルにそっくり……! あの子に乗りましょ!」
己が以前、ベアータにもらったぬいぐるみとよく似た兎を見つけた。駆け寄って、もふっと体の中に埋まるようにして抱きしめる。全身にもふみを感じる。とても心地いい。
このまま眠れそうな頃合い……なんて思っているところに、ベアータがあとからゆっくり追いかけてきて、
「ふふっ、確かにちょっと似てるかもね」
じっと兎を覗き込んだ。
「……良い? ベルルを名乗るからには、最後までしっかり走んなさいよね」
あとで聞くと、ベアータ曰く、いい目をしていた、とのことであった。
「後でご褒美あげるからさ」
その言葉に、兎はうれしげに鼻をそよがせる。
「可愛いです……!」
その仕草に、思わずメルトは歓声をあげていた。そんな歓声を上げるメルトを、ベアータもまたかわいい……と思いながら見ていた。
「と、とにかく、乗るわね」
「はい!」
いつまでもそうしてにこにこしていても始まらない。ベアータがコホンと咳払いをしてそう言うと、メルトはこくこくとうなずく。二人して兎に乗り込んだ。ちなみにベアータが前、メルトが後ろである。
(えへへ、ベアータさんの後ろにぎゅーってして駆け抜けるの、楽しそうだなぁ……)
ぎゅ。止めるとはベアータの腰に腕を回して抱き着く。
(なんだかまるで、冬空の下のドライブみたいだなぁ……)
二人して可愛い兎に乗って、ぴょーんと空を飛ぶなんて。それだけでかわいいです。と想像するメルトがいる。それと同時に、なぜかバイクっぽいものにまたがって、二人乗りでドライブをしているような想像も頭をよぎる。それもまたかっこよくて素敵です。なんて想像するメルトがいる。
一方ベアータの方はというと……、
「(め、メルトがぎゅってしてきてる……! 背中に感じる温もり……くすぐったくて心地好くて、なんだか落ち着かな……はっ。私ったら、なんて)……って」
何やらドキドキしていた。していたと思うと同時に、何を合図にか兎がぼすん! 土地を蹴った。まさに跳躍は空を飛ぶように。雪をまき散らしながら高々と跳ねる。
「速ーッ!? 駄目よ、集中しなさい私!」
「ひゃ、ひゃあああああああああああああああああ!?」
ひと蹴り。それが高かった。そして早かった。一気に兎は跳躍し、木々が連なる雪の山の中に突っ込んだ。
メルトは後悔した。今までに考えていたことがすべて吹き飛んだ。吹き飛びながらもただひたすらベアータにしがみついた。
「やあああ!! たすけてえええ!?」
降りる。降りる降りる降りる降りる落ちる! 時々すさまじい勢いで曲がって振り落とされそうになる! ベアータの悲鳴もなんのその。兎は軽々雪の上を跳躍し、駆け落ちるようにしており、すさまじい勢いでぐりんと回る。
「……」
「ベ、ベアータ、さん……!」
押し黙ったベアータに、メルトは悲鳴のような声をあげる。これはつらい。きつい。怖い。きっとベアータもそうに違いない。一旦、止まってもらえないか。兎に頼んでみよう。そう、メルトが言いかけた……その時。
「……良いわ。このスリル、堪んないわねッ!」
ラン、とベアータの片目が輝いたのを、メルトは見ることができなかった。
「へ。ひゃああああああああ!?」
「ほらほら。もっと速く! もっともっと……! 何もかも追い抜いて、行くわよ、頂点へ!!」
「!?!?!?!?!?」
完全に野性に目覚めたベアータと、既に混乱の極みでどう声をかけていいのかわからないメルト。
「ほら、そこ。紙一重。そのあとジャンプよ! できるだけ高く飛んで飛んで、速攻で落ちる!」
完璧な操獣、キメてやるわ! とばかりに兎に指示を出すベアータ。そしてベアータの館通り、兎は素晴らしいパフォーマンスを示した。それがメルトにとって幸か不幸かはわからない。とにかく、二人は落ちるようにして駆け下りていく。粉雪まき散らしながら、前を走るあらゆる乗り物・生き物を振り切って。
(うう……っ!! 温もりを感じれば少しは恐怖感が和らいで……いや焼け石に水ですね?!)
しかしそんな景色をメルトが見ることはできない。ただ彼女にできることは、ひたすらベアータに引っ付いているだけである。そうすれば死なない。多分死なない。落ちない。怖くない! いや、やっぱり怖い!
「それ以上に早い怖い早いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
メルトの悲鳴は、雪を踏み荒らす兎の爆音に紛れて消えていった。
「あっはっは! 楽しいわねぇメルト!」
ベアータもまた、楽しげに声をあげる。雪の音に紛れてよく聞こえないが、
「すごく元気な声! 大分テンション上がってるみたいね!」
「――――!! ――!!!!!!(ベベベアータさん? ちょ、ちょっとだけでいいから速度、速度を……!!)」
明るく凄まじく楽しそうなベアータの声に、メルトは思わず声をあげる。叫ぶように人語を発しようとする。
けれどもその声は雪に紛れて遠くに消えていく。寒さと怖さと速さで口がうまく回らないのもある。涙目の懇願も、ベアータが前に乗っているので見ることはできない。
故に何を感じてしまったのか。ベアータはそうか、と、はっ、と顔を上げる。
「わかったわ! 私を信じて、しっかり掴まってなさい!」
任せなさい、という頼もしいお言葉。危ないからやっぱり後ろは振り返らない。ついでにベアータの「もっとトバしてほしいのかしら……?」というつぶやきは聞き取れなかった。聞き取れていたらきっと全力で対抗していただろうが……、
「――――!?(あれ?なんかむしろ加速してません!?)」
はたして。兎の速度がまた一段と上がった。
「よーし。あそこから一気に、大ジャンプよ!」
そして高々とジャンプして、すさまじい勢いで落ちていく……。
木々を追い越すくらい高いジャンプ。それでベアータは周囲の様子を把握する。もうすぐ湖だ。幸いなことに夜明けには間に合った。
(きっと朝日が昇って種が舞う景色は、きっとすごく綺麗なんでしょうね……メルトに早く見せてあげたいわ)
落ちながら、ベアータは思う。一方……、
(これが……走馬灯……?)
まるで空中にほおりだされるような感覚を味わいながら、メルトの意識は遠のいていく。確かなのは抱きしめた体の温かさだけ。視界の隅にそれまでのたくさんの思い出が、巡っていく。
「おそら、きれい……」
ああ。この世界はなんて美しいのか……。霞む視界。その声はかろうじてベアータに届いた。ベアータもまた、満面の笑みを浮かべる。
「そうね! きっと湖から見る朝日は綺麗だと思うわ! ……さぁ、最後まで突っ走るわよ!」
つながっているようでつながっていない会話。そしてその言葉とともに、もっと早く! とベアータは念じる。それを訂正する機会を逸したまま、メルトはしっかりベアータにしがみついたまま意識を手放したのであった。
絶対に、一緒に生きて帰る。そんな強い思いを抱きながら……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵