茶葉探訪:茶葉の歌声
ディル・ウェッジウイッター
猟兵になって早数か月。様々な世界を渡るようになって改めて痛感したことがあります
それは、お茶は星の数ほどあるという事です。
ティーソムリエたるもの全てのお茶をいただきたいところですが私の身は一つ。ただの人間の生きる範囲で全てをなすのさすがに間に合いません
なのであなたのお力をお借りしようかと
よろしければあなたの郷里の、もしくは今まで見聞きしてきたお茶のお話について教えていただけませんか?
●
お茶やお茶会についてお話しください。グリモア猟兵さんの故郷の話でも、言い伝えでもお茶とお茶会にまつわれば何でも大丈夫です
世界はアリスラビリンスにしてますが他の世界の話でも大丈夫
文体自由。レポート形式でもグリモア猟兵さんが口述する形でもなんでもOK。なんならPCを出さなくてもいいです
最大文字数より文字数が少なくても大丈夫です
●キャラについて
人当たりが良く穏やか、時折茶目っ気をみせるティーソムリエ。ちょっとしたことでは動じない。マイペースともいう
紅茶が大好き
●NG
恋愛描写、性描写、公序良俗に反するもの
以上、よろしくお願いします
パステルカラーのひどく可愛らしいテーブルに、レースのテーブルクロス。その上に並べられたお菓子は、用意した茶葉に合うものをとディル・ウェッジウイッターが厳選したものだ。
――猟兵になって早数ヶ月。様々な世界を渡るようになって改めて痛感したことがあります。
お茶は星の数ほどある、それはとうに分かっていたことではあるが……自身が様々な世界と繋がるということで、更に未知のお茶が何十倍にも増えたのだ。喜ばしいことであると同時に、困ったことにもなった。
ティーソムリエとしてすべてのお茶を試してみたいと思うのは、ごく自然なこと。様々なお茶を飲み様々なお茶を知ることは、お茶への造詣を深め、ティーソムリエとしての質の向上にも繋がる。
何よりディル自身の知識欲や好奇心が、それを欲しているのだ。
だがさすがに、ひとりですべてのお茶を知るというのは無理難題に等しい。長命種ならまだしも、ディルは定命の者である。
そこで彼は、同じく様々な世界を渡るグリモア猟兵の力を借りることにしたのだった。
*
「いただきます」
ディルの求めに応じた少女は、ぴんと背筋を伸ばしてティーカップへと口をつける。所作の美しさを見ると、厳しく育てられたのであろうことがわかった。
「私の話で、ディルさんの期待に応えられるといいのだけれど」
銀色の髪を揺らして微笑む彼女の名は、|神童・雛姫《しんどう・ひなき》。|日本《・・》で暮らす少女ではあるけれど……その背に白翼を、その髪に多重花弁の可愛らしい花を宿す姿を、ディルは見たことがあった。
「どんな話でも構いませんよ」
ディルの答えに頷いて、彼女は微笑む。お茶の香りが気に入ったと告げる彼女に焼き菓子の乗った皿を差し出してみれば、彼女の瞳が輝いたものだから。
大人びた雰囲気の彼女にも、年相応の部分があるのだと知れた。
「私がまだ、とても小さかった頃。母と二人で暮らしていた頃に、母が淹れてくれたお茶が素敵だったの」
今日は対話の時間だから。向かいに座ったディルも、カップに手を伸ばす。
「茶葉の段階では普通の茶葉と変わらないのよ。母がいつもと違うティーポットに入れたから、なぜだろうって思ったの。
その理由はね、お湯を入れると判明したわ」
雨の帳がすべての音を遮断したかのように、静寂に包まれたその日。ティーポットに茶葉を入れた母親は、『耳を澄ませて』と告げたのだという。
火から下ろしたばかりのヤカンから、ゆるりとポットへとお湯を注ぐ――すると。
「――お茶が歌い始めたのよ」
「それは、さぞ驚かれたことでしょう」
「ええ」
古の言葉だろうか、幼い彼女には歌詞の意味はわからなかったけれど。その歌声が人ならざるもののものであることはわかったという。
「その茶葉にはね、精霊の力が宿っていたのですって。お湯を入れることでその力が発揮されて、歌が終わる頃にはお茶は飲み頃になっているのよ」
「とても素敵ですね」
お茶は、子どもでも飲みやすいクセの無さと甘さ、まろやかさを兼ね備えていて。ミルクを入れずともコクがあるが、入れると更に美味だという。
「いつか私もそのお茶に出会ってみたいものです」
そのようにエンターテイメント性の高いお茶ならば、ティーソムリエとしてどのような形で給仕するのが最も効果的だろうか――つい、そちらへと思考が向いてしまう。
「ふふ、そのお茶は持ってこれなかったけれど……その時聞いた歌なら」
披露しても? と小首を傾げる彼女。それを断る理由は、ディルにはない。
「是非お願いします」
天上の旋律に耳を傾けながら、お茶を飲む。それはとても贅沢な時間のように感じた。
成功
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