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銀河帝国攻略戦㉔~鉄の雨、降る

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 解放軍の分艦隊、その旗艦『バザード』の艦橋は、とあるオペレーターの報告により、興奮に包まれていた。
「レーダーに感あり!帝国旗艦『インペリウム』、捉えました!」
 幕僚団から、一斉にどよめきが漏れる。
 彼らが行軍してきたのは、ひとえにかの旗艦に座乗する皇帝を斃すため。
 その目標が見えたとなれば、彼らの意気が上がるのも道理と言えるだろう。
 分艦隊を率いる解放軍提督も、自らの背筋が伸びるのを感じていた。
 隣に立つ『バザード』艦長に問う。
「『インペリウム』への攻撃準備は、あとどの程度で整う?」
「砲兵科及び飛行科からは「いつでも戦闘開始可能」と返答を得ております。射程に入り次第、『インペリウム』への攻撃を開始できます」
 艦長は謹厳な態度を崩さず、そう答えた。
 戦艦『バザード』は、長く帝国への抵抗を繰り広げてきた歴戦の戦闘艦であり、その艦長もまた歴戦の古強者であり、老いた今でも乗組員全員から敬われる指揮官である。
 提督が旗艦を『バザード』に定めたのは、まさにこのためであり、事実、この困難な行軍の中で、艦長の冷静な判断力と、大胆な決断力に助けられた事は少なくなかった。
 帝国旗艦『インペリウム』との攻撃は困難を極めるであろうが、この艦長とならば戦い抜くことができるだろう。提督がそう考えていたその時。
 艦橋が赤い非常灯とブザーの音に満たされた。
「どうした!」
「『インペリウム』から飛翔体の反応あり! 光学センサーでも確認……ミサイルです!」
「馬鹿な……まだ本艦隊の射程距離の2倍はあるぞ!」
「提督、仮にも帝国旗艦です。そうした兵器があったとしても不思議ではありません」
「それは、そうだが」
「今は現実的な対処をするのが先でしょう。副砲、ミサイル迎撃用意! 対空砲も準備!」
 だが、状況は、古強者である『バザード』艦長の予想すらも上回っていた。
 オペレーターが悲鳴のような声で報告を上げる。
「敵ミサイル、射程外で多数の弾頭に分裂! 速度、更に増加! 捉えられません!」
 窓外の友軍艦隊に、飛来した多数の小型弾頭が突き刺さった。
 戦闘艦の装甲に、次々と痛々しい傷が刻まれる。
 或いは、その暇すらなく、爆発してへし折れ、轟沈する。
 戦艦『バザード』もまた、多数の衝撃で艦橋が揺らぐ。
「戦艦『ヴァルチャー』及び随伴艦『アイオライト』、轟沈! 戦艦『ストームブリンガー』、戦闘機母艦『バーベット』、巡洋艦『ルナプリンセス』、航行不能! 中破小破の報告、多数!」
 提督は、被害の多さに目を剥いた。たった一発の弾頭で、この被害なのか。
 艦長は、天井を見上げ瞑目する。
「なんだ、あの鉄の雨は……」
「この命中率の高さ、MIRV(多弾頭弾道ミサイル)か。提督、ここは射程外への退避を」
「ここまで来てか!」
「ここまで来たからこそ、です。敵射程外へと逃れなければ、全滅を待つだけです。此処まで我等を導いてきた猟兵も動くでしょう。どうか決断を、提督」
 提督は、決断した。
「……全艦回頭! 動ける艦は『バザード』に続け! 敵射程外へと逃れ、艦隊を……」
 だが、その命令はオペレーターの悲鳴で遮られた。
「『インペリウム』よりミサイル第二波接近! 先程と同じ兵器と思われます!」
『バザード』分艦隊の命運は、風前の灯であった。

「みんな、緊急事態よ!」
 クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)が緊迫した声を上げる。
「『クライングシェル』艦隊の制圧で、解放軍艦隊は、帝国旗艦『インペリウム』を射程に捉えようとしていたのだけど……『インペリウム対艦兵装群』の一斉射撃で、艦隊は大きな被害を受けてしまったの」
 一部艦隊からは反撃の砲撃も行われたが、射程が足りず、『インペリウム』到達前に消滅、有効なダメージを与えることはできていない。『インペリウム』撃破のためには、艦隊を有効射程まで進めなければならないのだ。
「そこで、私がお願いするのは『インペリウム対艦兵装群』、その中でも『鉄の雨』と呼ばれている多弾頭ミサイルを発射するサイロの破壊よ」
『鉄の雨』は、MIRVと呼ばれる多弾頭弾道ミサイルを広範囲に放つ。ただの散弾ではなく、弾頭の一つ一つが誘導能力を持っているため、命中率も高い。
 一本のミサイルが、何十本ものミサイルに相当すると言っても過言ではない。
「幸い、『鉄の雨』をはじめとする対艦兵装群は、艦を攻撃する能力は高いけど、至近距離の対象に攻撃はできないわ。だから、みんなには、肉薄してこの『鉄の雨』、対艦兵装群を撃破して欲しいの」
 ただし、銀河帝国も猟兵の転移攻撃については把握しており、防衛部隊を配置している。
「厄介なことだけど、防衛部隊を撃破して、解放軍艦隊の脅威である『鉄の雨』を沈黙させて。よろしくお願いするわね」
 クリスティーヌは猟兵たちに頭を下げるのだった。


西野都
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 というわけで、3本目のシナリオも戦争となります、西野都です。
 解放軍艦隊の進行を阻む、対艦兵装群のひとつ『鉄の雨』を撃破してください。
 そのためには、護衛の攻撃をかい潜った上で『鉄の雨』を攻撃する必要があります。
 どちらかだけでは成功となりませんので、ご注意ください。

 では、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『デルタ・ファイター』

POW   :    増援要請
自身が戦闘で瀕死になると【増援飛行隊 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    帝国軍の栄光のために!
【制御不能の高速航行モード 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    対宙銃撃
レベル×5本の【貫通 】属性の【機銃弾】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●インペリウムの扉
 帝国旗艦『インペリウム』上空。
 制式戦闘機「De108 デルタ・ファイター」で構成された飛行隊が、回遊する魚のように同じ場所を飛んでいる。
「こちらオプティオ1。現在『鉄の雨』空域は異常なし」
「ケントゥリオよりオプティオ1へ。引き続き哨戒を継続せよ。猟兵の転移による攻撃を食らってからでは遅いのだ。これは皇帝陛下の勅令である」
「了解ケントゥリオ。オプティオ小隊、哨戒飛行を継続する」
 4機のデルタ・ファイターの眼下には、金属製の巨大な白い筒、のようなもの。
 これこそが『鉄の雨』の本体である。帝国の敵には、上部の蓋を開き、鉄の雨をもたらす弾道ミサイルを発射するのだ。
 それは、帝国の威を示す記念碑のようにそびえ立つ。
 これらがある限り、『インペリウム』が揺らぐことはないだろう。
 だが、そのオプティオ1の思考は、僚機の報告で遮られた。
「オプティオ2よりオプティオ1、人型の存在複数が現れるのを確認!猟兵であると思われます!」
「……皇帝陛下はやはり慧眼であらせられる。ケントゥリオ、こちらオプティオ1。
 猟兵発見、奴らの実力を空戦で確かめる」
 紡錘形の編隊を組んだ4機のデルタ・ファイターは散開し、戦闘機動を開始した。
如月・アストレア
【SPD】
「対艦兵装なら似たようなの持ってるよ♪ かもん!くりむちゃん! からの、デストロイド☆ジェノサイダー!」


CMF(クリムゾンフレーム)を呼び出して騎乗からの6.5Mの人型に変形。
そして亜空間から対『艦隊』用超荷電粒子砲を取り出して構える、というか横の銃座に乗り込む。

「よーし、ぶっ飛ばしていくよー☆ 射線からは離れてねっ♥」

対艦隊用超荷電粒子砲が護衛ごとインペリウム対艦兵装群をなぎ払う!

砲撃までの準備中は誘導兵器のワスプに護衛してもらうよ!

㉔の戦場全参加で全部ぶっ飛ばすぞー☆

【吹き飛ばし】


パル・オールドシェル
此処まで来て脱落せざるを得なかった彼らの無念は、感情を未だ理解しきれない僕でもわかります。
ヴァルチャー、アイオライトの分まで僕らが艦隊を守ります。
バザード分艦隊の再編まで……いや、再攻撃まで前衛は任せてください!

B装備ならば、航空隊を迎撃するには最適でしょう。
最高速度で敵の防空圏内に突入、追撃してくる敵戦闘機を人型機ならではのマニューバーとインペリウム表面の構造物を用いた三次元機動で確実に追い込み、ホーミングレーザーとマイクロミサイルで確実に撃墜していきます。
デルタ・ファイターといっても、こうも遮蔽物が多ければ性能は発揮できないでしょう!

敵を全滅せしめれば、砕氷撃でミサイルサイロを粉砕します!


竹城・落葉
 どうやら、敵は更なる兵器を活用してきたようだな。それ故に解放軍が戦えぬというのであれば、猟兵の出番という事だ!我は冷酷な雰囲気を醸し出し、無表情で『鉄の雨』へ向かうぞ。
 我は護衛の攻撃を掻い潜る。【第六感】で攻撃を読み、【残像】と【早業】で避けるぞ。また、【だまし討ち】と【フェイント】で攻撃の照準が合わぬよう工夫する。加え、『オルタナティブ・ダブル』で分身を作り、どちらが本物か分からぬよう工夫する。偽物を倒しても、すぐに『オルタナティブ・ダブル』を再発動するぞ。
 『鉄の雨』に到達したら、名物竹城で【早業】と【2回攻撃】にて確実に仕留める。UCを二つ使用する事が可能な場合、『支柱一閃』で斬る。




 アームドフォートを斬られた鎧装機兵が、高エネルギーの火球と化す。
 スラスターを破壊されたデルタ・ファイターが、推力を制御できなくなり、きりもみ状態で『インペリウム』の外壁に激突。その直下にいたスペースモヒカンの一団も、宇宙バイクとともに爆散する。
 解放軍艦隊を睨んでいた対艦レーザー砲が砕け散り、発令所と運命を共にする。
 帝国旗艦『インペリウム』。
 それを守る対艦兵器軍を巡る戦況は、刻一刻と帝国軍の劣勢に転じつつあった。

「よーし、目標はっけーん! 射線も通ってていい感じ☆」
 その混沌とした戦場に、場違いなほど明るい声が響く。
 赤茶の髪をツインテールでまとめ、デザイン的に際どい真紅の衣装で纏めた、如月・アストレア(クイック ビー クィーン・f13847)だ。
 背中の大型ブラスター「スティンガー」からは、青白い推進機の炎が噴き出し、彼女の飛翔を支えている。
 アストレアは、上空に向けて指を鳴らし、底抜けに明るい声を上げる。
「かもん! くりむちゃん!」
 声に応え、空間に同心円状の波紋が広がる。その向こうの、亜空間の海から浮上したのは、その名の通り真紅の機動戦闘機、CMF(クリムゾンフレーム)。
 通常空間と亜空間の界面に浮かんでいた戦闘機は縦に「立ち上がり」、機体軸部を回転させ腰部を構成。更に腕部を展開、手を広げて握り拳を作る。フレーム内に格納されていた頭部が飛び出し、カメラアイが真紅の輝きを放った。
 これぞ、戦場を駆け巡る、全高6.5mのCMF人型形態である。通称『くりむちゃん』。
 そして。
「かーらーのー! デストロイド☆ジェノサイダー!」
CMFが、波紋の中に腕を入れ、引き抜く。現れるのは、これまた真紅の、長大なバレルを持つ大型砲。
 これこそ、デストロイド☆ジェノサイダー。対『艦隊』用荷電粒子砲である。
 その力を誇るように、CMFは高々と粒子砲を掲げると、腰だめに構える。側面には人が乗れる程度の銃座があり、そこにアストレアが飛び込んだ。
「よーし、ぶっ飛ばしていくよー☆ 射線からは離れてねっ♥」
 照準は『鉄の雨』。砲口からは兇暴な光が溢れ始めた。

 オプティオ1は、デルタ・ファイターから軍用無線のチャンネルを開く。
「B51区画、対艦兵器群、完全沈黙! くそっ、猟兵め!」
「こちら第24護衛部隊! もはや我、戦力なし!」
「第502駆逐重騎兵中隊だ! 早くエネルギーパックをよこせ、早く!」
「最後に仏契(ぶっちぎ)るぜぇ! 野郎ども、夜露死苦ゥッ!!」
 もはや悲鳴に近い報告が飛び交っている有様だ。何が起きているかは子供でも分かる。
 だが、『鉄の雨』発令所であるケントゥリオの声は冷静であった。
「こちらケントゥリオ。戦況は劣勢に転じつつある。だが、だからこそ『鉄の雨』を守らねばならない」
 現在、まだ『鉄の雨』防衛部隊は損害を受けていない。
 また、他の対艦兵器群が数を減らす現状において、未だ健在の『鉄の雨』の戦略的価値は相対的に高まっている。
「ここから放たれるMIRVは、一撃で艦隊を撃破せしめる。『鉄の雨』が解放軍艦隊を破壊し尽くせば、猟兵も音を上げるだろう。そこまで守り抜けば、我々の勝利だ!」
「オプティオ1よりケントゥリオへ。貴官に演説の才があるとは思わなかった」
 皮肉交じりの返事を返すオプティオ1。
「ケントゥリオよりオプティオ1へ。……どの道、オブリビオンたる我等には、他に行く場所などないのだ。ならば、演説のひとつでも行って、戦意を上げもしよう」
 オプティオ1は、反論できなかった。
 彼自身も……いや、この戦場で銀河帝国に与する皆が共有する感情だったのだから。
「こちら、デルタ・アイ。ケントゥリオ及びオプティオ1、ご報告が」
 デルタ・アイは、デルタ・ファイターの早期警戒型『De108E』である。
 デルタ・ファイターの名の由来になった、3つのスラスター群のうち、機体上部のスラスターをレドームに換装し、コクピットを複座型にしてレーダー要員を乗せることで、索敵能力を高めたバリエーション機である。
 ジェネレーターとスラスター自体は高出力化しているものの、スラスター群を丸々一つ潰したことと複座化で機体バランスが崩れ、操縦性は原型機に劣るが、『インペリウム』外壁のような遮蔽物の多い場所では、索敵に重宝されていた。
「オプティオ1よりデルタ・アイへ。構わん、報告しろ」
「はっ。猟兵の反応の中に、ジェネレーター出力パターンが、他戦場で複数報告された猟兵と同一のものがあります」
 オプティオ1は、コクピットの中で思案した。

 アストレアは、CMFに構えさせた荷電粒子砲のチャージを完了させようとしていた。
「よーし、そろそろ行こっかなっ☆」
 荷電粒子砲のチャージは残り数秒。大型故に時間がかかるが、それももはや終わる。
 あとはトリガーを引くだけだ。そう思った時。
 CMFの装甲を、幾条もの機銃弾が掠めた。
「ふぇっ、敵!? ワスプはどうしてるの!?」
 砲撃準備中はCMFが無防備になるため、8機の誘導兵器「ワスプ」に守らせていた。
 簡単な指示にしか従えないが、護衛には十分、のはずだった。
「こちらデクリオン1、敵誘導兵器とエンゲージ。エアカバーは引き受ける」
「オプティオ1よりデクリオン小隊。協力に感謝する。本体はこちらで叩く」
 ワスプに対して果敢に攻撃を仕掛けるデルタ・ファイター小隊に、ワスプは釘付けにされていた。
 自爆しても、彼らは2機を巻き込んで爆発する。或いは兆候を見つけると、即座に撃破しに行く。
「なんで、手の内が読まれてるの!?」
「ワンパターンな上に、姿を晒しすぎたな。ならば、威力こそ暴威とは言え、対策もできる。猟兵の転移攻撃と何ら変わらない」
 彼らの声は、互いに通じたわけではないが、聞く者がいれば対比に聞こえただろう。
「オプティオ1よりオプティオ小隊。この機を逃すな。正面から粒子砲を破壊せよ」
 回転しながら旋回する独自のスタイルで、デルタ・ファイターの小隊は機銃掃射をCMFに仕掛ける。線を描くように銃弾が弾け、何発かの機銃弾が粒子砲に命中。
「うむむむむ、遅いのになっまいきー!それなら……!」
 照準は既に定まっている。できる限りデルタ・ファイターも吹き飛ばしたいが、当たりそうなのは1機しかいない。しかし、現状ではそれ以上望めないだろう。
 アストレアは撃鉄を引く。
「これが全力の……お仕置きビーム!!!」
 射線上の全てを破壊する光が走った。光を、幾つもの爆発が追いかけていく。
 その時、オプティオ1は気づいた。近距離での射線上に、デルタ・アイがいる。
「デルタ・アイ、回避しろ!ブレイク!」
 だが、荷電粒子砲の一撃は、直撃こそ免れたものの、デルタ・アイのスラスター群のひとつを消滅させていた。更に、その先の。
「こちらケントゥリオ!『鉄の雨』サイロ部に粒子ビーム命中!損傷箇所を至急確認させる!」
『鉄の雨』にも損傷を与えていた。
「デルタ・アイよりオプティオ1。これより本機は高速航行モードを使用します」
「オプティオ1よりデルタ・アイ。それは許可できない。ベイルアウトせよ!」
 通信の返事は返ってこなかった。
 その代わりに、デルタ・アイはたった一つのスラスター群で、CMFに突っ込んでいく。
 レドームの接続部が、スラスター群が、自壊し、螺旋状の炎を上げる。
 デルタ・アイは、無理な改造が祟り、フレームが脆弱化。高速航行モードを行うと自壊する欠点があったのだ。だが、それを使う頃には戦いは決しているということで、大きな問題にはならなかった。
 そして今、それはアストレアの目の前で起きている。
「な、なんでー!?」
「帝国軍に……皇帝陛下に、栄光あれ!」
 CMFにデルタ・アイの本体や残骸が激突し、ジェネレーターが誘爆した。

 この時、オプティオ1も、ケントゥリオも失念していた。
 ひとりの猟兵に殺到するあまりに、哨戒空域に穴が生じていることを。
 そして、その穴を猟兵が進んでいることを。

「……敵哨戒機、レーダーに感ありません」
 首を傾げ……てはいないが、疑問を感じているのはパル・オールドシェル(古き戦友・f10995)。「高速迎撃B型装備」として、推進器付きの増加装甲を纏い、脚部や肩部から青い炎を放ち、尖った足からは小さな翼状の斥力場発生装置を発生させ、擬似的なホバー移動を実現していた。
「我らが進んでいる場所が、敵から見つかりにくい場所だからではないか? そもそも、先に貴様は『大規模な移動をしている』と言ったところではないか」
 それと自らの足のみで並走するのは、竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)。ジャケットのように丈の短い青緑の羽織を、緑の小袖の上から羽織り、腰には一本の刀を佩いていた。
 木製の右近下駄が軽快な音を立てながら、疑似ホバーのウォーマシンに追走するのは、どこか奇妙ですらあるが、それが生命体の埒外である猟兵である、とも言えるかもしれない。
「それはそうですが、帝国の罠である可能性も残ります。デルタ・ファイターは単体では猟兵に劣るとは言え、数では侮れない相手です。いざとなっては、戦友、貴女を守りきれない」
 そう言うパルが擬似ホバーで走るのは、巨大なトンネルである。
 正確にはトンネル、とは言えないかもしれない。道こそハイウェイとして舗装されているが、上空は開いていて、等間隔に柱が横に走り、支えられている。
 半地下の搬入出路、或いはハイウェイ。航空戦力に見つけられにくい場所を、と選んだルートがここであった。
「守る、と言うが。そも此処に来るのであれば、それが剣の先にしかない事は、貴様も分かっているだろう」
 予知で得た情報が、パルの記憶野に蘇る。
 MIRVで沈んだ『バザード』分艦隊の戦艦『ヴァルチャー』と随伴艦『アイオライト』。
 戦いに赴けぬまま散った者の無念。それはパルにも理解できていた。
「……そうですね。前衛は任せてください、という言葉を、僕はまだ理解しきれていなかったようです」
 身をもって盾とする、という意識がどこかに残っていたのかもしれない、とパルは自己分析プログラムを走らせる。それだけでは守れないものもある、とB型装備に換装してきたというのに。
 だが、それ以上言葉を紡ぐことは許されなかった。
「レーダーに感あり。これは……」
「ああ、正気かと思うが」
「オプティオ1より各機へ。ここで迎撃する。くれぐれも壁や天井にぶつけるなよ。ぶつけるなら猟兵にだ」
 前方のトンネルの出口から、エンジンを無音で唸らせ、星間物質を裂いて、次々とデルタ・ファイターが高速でトンネル内に侵入してきていた。

「前衛は任せてください」
 まず前に出たのはパル。斥力場発生装置と推進機の出力を上げ、最大速度へ。
 逆光の中、機銃弾が雨のように降り注ぐが、滑るようにハイウェイを進む彼女は、そのまま壁を走り、床の強化コンクリートを砕く機銃弾を回避。
 デルタ・ファイターのスラスター群が体の右側を掠めていくのを尻目に、その背後へ。
前面推進器を断続的に吹かせて、デルタ・ファイターとの相対速度を減少。
手足を「大」の様に大きく広げる。
「こちらオプティオ4、敵ウォーマシンが後ろに!」
「デルタ・ファイターといっても、こんな閉所では性能は発揮できないでしょう!」
 全身の発振器から、小型ラックから、思い思いの白い軌跡と青い軌跡を描いて、マイクロミサイルとホーミングレーザーが殺到する。
 機体後部からパルの全力射撃を受けたデルタ・ファイターは、分解の間もなく爆発、熱と炎が傍らを走っていた落葉を通り過ぎていく。
「オプティオ4がやられた!」
「落ち着け、開口部を使って反転し、攻勢をかける。次は古風なブシドー風のあの女だ」
 デルタ・ファイターはトンネルの開口部へと一直線に上昇し、柱を抜けて上下反転、再びトンネルへと突入する。次の標的は。
「ほう、我を狙うか。さて、当てられるのか?」
 落葉は、無表情にバールのようなサムライブレイドのような何か、「名物竹城」を抜き放つ。反転し、突っ込むデルタ・ファイターへ、自分もまた突っ込んでいく。
 降り注ぐ機銃弾の雨。縦横無尽に、トンネルを埋め尽くすように降り注ぐ。
 古代の将が「サンダンウチ」と伝えたと言われる、閉鎖空間での飽和射撃である。
 だが。
(完全に同時ではない。そこには「ムラ」がある。そこを走れば回避は造作もない)
 第六感をも駆使して駆ける落葉に、機銃弾は当たらない。
「馬鹿な、サンダンウチだぞ!」
「練度が甘い。それでは我には当たらぬ」
 跳躍の刹那、コクピット越しに合うパイロットと落葉の視線。
 反射的にトリガーを引く。目の前の女が機銃弾で引き裂かれる。
 パイロットは歓喜した。
「こちらオプティオ3、猟兵を一人……」
「残念だが、外れだ」
 撃ち抜いたはずの落葉はかき消える。
 ユーベルコード【オルタナティブ・ダブル】の業による分け身だ。
 本物の落葉は跳躍して、デルタ・ファイターの上部で一閃。
 機体推力が失われ、コクピットのキャノピーに血しぶきが降りかかり。
 強化コンクリートを大きく削りながら、正中線で本体が2つに割れた次の瞬間、機体は爆発した。
「オプティオ2よりオプティオ1。これ以上の反復攻撃は不利です!」
「仕方あるまい。一度退くぞ。戦力を立て直す」
 残り2機のデルタ・ファイターは、トンネルの反対側へと飛び去っていった。

 トンネルを抜けると、そこは大きく開けた場所だった。
 鉄のコロシアムのような広い円形の空間に、そびえ立つ白い碑文のようなサイロ。
「どうやら、あれが『鉄の雨』のようだな」
「はい。どうやら猟兵の誰かが先制攻撃を加えたようですね」
 アストレアの荷電粒子砲で、サイロの一部が損傷していた。装甲板が弾け、内部のフレームが露出している。それを、小さな虫のような作業機械たちが、装甲板を持ち寄り、樹脂を吐き出して、応急修理をしているようだ。
「ですが、まだ足りないようです。行きましょう、戦友」
「そのようだ。では参る!」
 パルの後方が光の粒子を纏ったかと思うと、推進器に火が、斥力場発生装置に光が灯り、急加速。落葉も、縮地の境地に至ったかと思われるほどの瞬発力で後に続く。
「破砕します!」
「――」
 ユーベルコード【砕氷撃】と【支柱一閃】。
 二人の攻撃は装甲板を穿ち、修理ロボットや基本フレームを断つ。
だが、まだ足りない。未だ『鉄の雨』は不気味な鳴動を続けている。
「レーダーに感あり。さっきのデルタ・ファイターが増援を連れてきたようです」
「長居は無用か。仕方あるまい」
パルと落葉は撤退する。次の猟兵に望みを繋げて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

村崎・ゆかり
止まない雨はない。それがたとえ、砲煙弾雨であったとしても。

黒鴉召喚で呼び出した式神を先行させ、できるだけ安全なルートを割り出しながら『鉄の雨』に向かう。
そこまでは派手なことはしない隠行進行。

『鉄の雨』のサイロに着いたら、派手に暴れるわ。
巫覡載霊の舞を舞いながら、なぎなたで「なぎ払い」「串刺し」で、敵護衛戦力を突破。
サイロに対し、火行の「属性攻撃」「範囲攻撃」「高速詠唱」「全力魔法」の不動明王火界咒で、炎に飲み込ませる。
発生する「衝撃波」が護衛戦力を翻弄してくれるはず。
立ち直る前に「破魔」を乗せた七星七縛符で、邪魔な護衛戦力を沈めながら戦域から離脱するわ。

解放軍艦艇に作戦成功は伝わってるかしら?



 帝国旗艦『インペリウム』の外壁には、様々な構造物が配置されている。
 荷物を搬入出するハイウェイ、兵装サイロや宇宙港など、様々な用途に分化したビル。
 ハッチからガイドビーコンが伸びて、デルタ・ファイターや巡洋戦艦が飛び立ち、帝国の威光を示すべく旅立っていく。
 その中でそびえる鉄塔に、村崎・ゆかり(紫蘭・f01658)は立っている。
 どんな用途があるかは彼女は知らない。知るつもりもない。
 重要なのは、『鉄の雨』の威容を見ることができること。ただそれだけ。
 紫の瞳の向こうで、それは白い肌を傷つけられながらも、未だ健在であるように見えた。
「『鉄の雨』なんて言うけど、あれは消える命と、それと繋がる命の涙雨よ」
 ため息を吐くと、掲げた手から、小さな紙がひらひらと飛び、『インペリウム』の空へと舞っていく。真空中では風も発生しないというのに。
 その紙が羽ばたくと、次の瞬間には鴉となり、四方八方へと飛んでいく。
 光と影の境界が濃い『インペリウム』外壁で、それらが気づかれることはなかった。
「さて、じゃあ行きましょうか。止まない雨はないんだしね」
 それがたとえ、砲煙弾雨であったとしても。
 最後の言葉を言い終える前に、ゆかりは身を躍らせ、赤いニットのカーディガンを波打たせた。

 幾度か、ゆかりの頭上をダイヤモンド型に陣形を組んだ、デルタ・ファイターが通り過ぎる。光を照り返し、キラキラと光るその機体を、影からそれを凝らせたように黒い瞳が見つめる。
 音もなく影から鴉は飛び立ち、路地の影から飛び出したゆかりは、それを追って走っていく。
 鴉たちは、全てゆかりの式神だ。五感を共有することで、鴉たちは彼女の目となり、耳となることで、敵の動向を観察し、敵の密度が薄い最適なルートを算出する。
 声もなく鳴く鴉。『インペリウム』には間違いなく異物だ。
 だが、光と影の濃い外壁部において、意外にもその濡羽色は誰にも気づかれることはなく、主のゆかりは、容易く隠形を成し遂げた。
 そして、彼女の眼前には『鉄の雨』を取り囲む、円形の鋼鉄広場がある。
 純白だったモニュメントは、あちこちが裂け、焦げ、歪んでいた。
 それでも、未だ解放軍艦隊にとって脅威なのは変わりない。完全破壊するまでは。
 構造物の狭間からはうって変わって、ゆかりは一直線に走り始めた。
 いつの間にか、紫に輝く硬質的な輝きを放つ刃の、薙刀「紫揚羽」が握られていた。
 紫の瞳と紫の刃が、一直線に『鉄の雨』を目指す。
 だが、それは敵に目を晒すことでもあった。
「こちらアクィラ1、後に続け! 補給中のオプティオ1に吠え面をかかせるぞ!」
 アクィラ1の号令一下、12機のデルタ・ファイターが殺到する。
 既に『鉄の雨』まであと一歩に近づいていたゆかりは、そのまま振り返った。
 走った時の慣性で、振り返った足がそのまま後ろに滑るが、ゆかりは足を踏み鳴らして、それを止めた。
「さぁ、それじゃ舞って、暴れましょうか!」
 すり足で、身を翻して回転し、薙刀を横薙ぎに一振り。
 その足の運び、回転、その全てが【巫覡載霊の舞】。神霊化の影響か、光の粒子が彼女の動きを追っていく。
 神を知らぬ者であっても、その存在を信じさせる程の神々しさが、そこにある。
「敵を前に足を止めるか! アクィラ2から8は続け! 9から12は背後から狙え!」
 神をも恐れぬデルタ・ファイター隊は、一個飛行中隊を分割。
 2個小隊、8機をゆかりの正面、4機を後ろに回り込ませ、挟撃態勢を取る。
 12対1。圧倒的な戦力に見える。
「攻撃開始!一人でも多くの猟兵を減らせ!」
 殺到するデルタ・ファイター。機銃弾が舞踊するゆかりに殺到する。
「なっ!?」
 羽のように舞い上がったゆかりは、そのままデルタ・ファイターの飛行高度に到達。
 舞踊の回転のままに、横一線に「紫揚羽」を振り抜く。
 果物を切るように、デルタ・ファイターが横一線に両断され、そのまま彼女を通り過ぎて、遥か後方で爆発した。
「アクィラ1がやられた!」
「落ち着け、アクィラ2! 指揮を引き継げ!」
(敵の動きが乱れてる……?)
 ゆかりが斬ったのが、敵の隊長機であることなど知るよしもなかったが、それでも彼女は、その隙を逃しはしない。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――!」
 高速で紡がれた真言が、投げられた白紙のトランプを業火へと変えた。
 文字通り、爆発的に広がった真空中の神炎は衝撃波を伴い、デルタ・ファイターの隊列を乱し、灼き、更には『鉄の雨』をも舐めていく。
 白い装甲が一瞬で赤熱し、泡を立て、溶け崩れる。
 更には。
「くそっ、制御が……!」
「ば、馬鹿、こっちに来るなぁっ……!」
 制御不能になった2機のデルタ・ファイターが、激突して2つの火球と化した。
 光量の増した戦場は、不気味なほどくっきりと『鉄の雨』の輪郭を際立たせる。
「ケントゥリオよりアクィラ2、何をしている!」
「こちらアクィラ2、相手はかなりの手練で……」
「それが理由になるか! 何としても『鉄の雨』を守り通せ!」
「り、了解!」
 デルタ・ファイター部隊は一旦上昇。反転し、地上に降りたゆかりに再び殺到する。
 機銃の曳光弾が降り注ぎ、白皙の頬を照らす。
「動きが読みやすいのよ!」
 ゆかりは胸元から数枚の護符を取り出すと、右手で作った剣指で星の形を描く。
 護符は七枚、星は七芒。
 即ち、是【七星七縛符】。
「行きなさい!」
 号令一下、飛び出した七枚の護符は、七星の結界を展開。
 1機のデルタ・ファイターを捕縛し、蜘蛛の巣の上の蝶のように空間に縫い止める。
「く、くそぅ、動けぇ!」
「もう1機、もらったわよ!」
 ゆかりはコクピットに「紫揚羽」を突き立てる。
 蜘蛛に捕食される蝶のように、デルタ・ファイターはオブリビオンとしての生を終えた。
 爆発の寸前、キャノピーを蹴って。
 ゆかりはそのまま跳躍、戦域を離脱していく。
(流石に符の数も危なかったしね)
「紫揚羽」での近接戦闘が多かったとは言え、【黒鴉召喚】と【不動明王火界咒】という多数の符を使う大技2発に【七星七縛符】。
 これらは、ゆかりの手持ちの符のほとんどを使い切らせていた。
 事実上、継戦能力は尽きたと言ってもいい。
「まあ、『鉄の雨』にダメージも与えたし、相手も追撃がない程度には怖がってくれたみたいだから、作戦としては成功ね。 解放軍艦艇に作戦成功は伝わってるかしら?」
 その答えを知る術を持たぬ中、ゆかりの姿は『インペリウム』の構造物群に消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レッグ・ワート
ちょいちょい戦場で会うヴォルフ(f09192)と出る。鉄の雨と護衛が相手だとさ。何か良い手は?

先ずは宇宙バイクにドローン組込んで同期処理しとく。寄ったり避けたり走り回る間の情報収集狙いだ。鉄の雨近くに武装があれば位置間隔や砲種、防衛部隊の各機練度、足場諸々に都合が良さそうなデブリや艦上あたり。ヴォルフは勿論、他に受信できそうな奴にもデータは回すぜ。

現地転送後は他の仲間と同時に仕掛けて散開、ゴッドスピードライドで速度と精度上げて鉄の雨へ。とまれその間護衛が複数追ってきてたら、追跡や逃げ足でフェイント緩急つけて見切り撒きたい。単騎が制御手放してきたら鉄の雨の近くで追われてやる。誤射がありゃ御の字。


ヴォルフガング・ディーツェ
何故か戦場で会う事が多いレグ(f02517)と
さーて、オレの機械技術で太刀打ち出来れば良いけど、ね…!

【調律・墓標守の黒犬】でわんこを召喚【騎乗】し併走
こちらは攻撃を掻い潜り接近する傍ら【戦闘知識】と持参品の高度情報体を活用、レグからの情報と合わせて敵の行動パターンや攻撃予備動作、標的傾向の分析を行うよ
判明した情報で自身の行動修正をしつつレグや仲間にも情報伝達
怪我の度合いが重いなら【調律・豊穣の神使】を展開してレグや自分の治療も行おう

護衛は【フェイント】を交えて躱しわんこと鞭での雷【属性攻撃】で蹴散らす
デルタにも仲間とタイミングを計りつつ同様に攻撃

オレ達、結構危険な橋を渡るの好きだよね、と!



●クレイジーモーターウルフ
 帝国旗艦『インペリウム』外壁部幹線道路。
 ハイウェイと同じく、主に搬入出などに使われる道路である。もちろん人の姿があるわけがなく、静まり返っていた。
 その無尽の道路を、1台の宇宙バイクと1頭の黒犬に騎乗した人狼が、ビルの間を縫う道路を駆け抜けていく。
 レッグ・ワート(其は脚・f02517)の宇宙バイクと、ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)が召喚したブラックドッグだ。よく戦場で会うという二人は、この『鉄の雨』撃破の依頼においても出会い、今こうして並走している。
「流石に撒けたかな?」
「どうだろうな、とりあえず3つ前の角からは付いて来てなかったが」
 黒いフードをはためかせたヴォルフの問いに、レグ(彼の希望により、以下この記述とする)は側面用の複数のカメラアイの絞りを変えつつ答える。
 同時に、ヴォルフが持つ「トートの叡帯」に組み込まれた高度情報体に、レグはデータをアップロード。データを一瞥したヴォルフは、思わず感嘆の声を漏らす。
「流石の仕事だね。ここまで詳しいなんて」
「こいつを組み込んどいてよかったぜ」
 バイクの胴の辺りを、レグは小突く。宇宙バイクの胴、フューエルタンクからヘッドライトにかけて、バイク自体のデザインとは全く異質なものが組み込まれていた。
 情報収集用のドローンだ。ヘッドライト周辺で、モノアイが稼働し、今も情報を取り込み続けている。
 レグは走行しながら、周辺の情報収集を行っていたのだ。
 データ処理の終わった高度情報体から、ホログラムで周辺の地図が表示される。先の地図は、現在もドローンが視覚情報を元に順次更新中だ。
 周辺兵器に関しては、ほぼ全てが対空砲。しかも対戦車砲に転用できた古代のものとは違い、完全に対空特化の作りをしている。これがほぼ等間隔に、互いをフォローし合う形で、ビルの上に配置されている。
「まぁ、普通はオレらみたいなのが来るなんて思わないだろうからなあ」
 ヴォルフが肩をすくめる。通常なら対応できない状況下でも即応できるのが、猟兵とグリモアの強みということだろう。帝国の対応が後手に回ってきたのも無理はない。
「ちゃんと学んで防衛部隊を配置する辺り、帝国怖えけどな!」
「あ、そっちに関してはオレがデータ集めてみた。いる?」
「おう、こっちの記憶野に直接送ってくれていいぜ……なるほどな」
 帝国の防衛部隊は、現在稼動しているのがデルタ・ファイターが8機。
 それ以外にもう2機いるが、こちらは猟兵との戦いで僚機の半分を失い、引っ込んだままだ。練度は先の8機より高く、こちらが出てくれば厄介になるかもしれない。
「まあ、出てくるかどうかは何とも言えん。当面、この8機が相手……うぉっと!」
 突如、レグがバイクのハンドルを大きく切った。横滑りする機体の過去位置の強化コンクリートが次々と穿たれ、砕ける。
 背後を見やったヴォルフが目を見開く。
「どうやら、噂をすればなんとやらってやつだね!」
 ビルの上から、三角のシルエットがいくつも現れる。その数、8機。
「アクィラ2より全機! 何度も猟兵にやらせるな! 今度こそ倒すんだ!」
 防衛部隊のデルタ・ファイターが2人に追いついたのだ。
 断続的に機銃掃射が加えられ、バイクと黒犬は蛇行しながら回避。鉄と黒毛を曳光弾が掠めていく。
「で、『鉄の雨』と護衛が相手だとさ。何か良い手は?」
「さーて、オレの機械技術で太刀打ち出来れば良いけど、ね……!」
「撒かないのかよ! 俺、そういう仕様じゃねえんだけど!?」
 レグが全力で突っ込む。彼は「逃がす」のが基本の仕様なのだ。
「いや、流石に分かってるよ。とりあえず、この先で合流!」
「了解!」
 言葉と同時に、レグのバイクが急ターン。テールが急激に振られて半円を描き、デルタ・ファイターの方を向くと、同時に出力全開。前部が浮き上がりながら、敵下方を通り抜ける。
「なっ、まさかこっちに!?」
 レグに気を取られるアクィラ2。一瞬、追うかどうか迷う。
 そして、目を正面に戻した時、ヴォルフと黒犬もまた消えていることに気づくのだった。

 レグとヴォルフは、『鉄の雨』周辺の円形広場へトップスピードで侵入した。
 数拍遅れて、
「逃がすか、猟兵!」
 アクィラ2以下8機のデルタ・ファイターも侵入してくる。
「本当にしつこいな、あいつら!」
「でも、『鉄の雨』周辺なら、多少暴れても大丈夫だよね!」
「ああ、好きにしてくれ!俺も何とかやってみるわ!」
 軽口を叩きながら、レグとヴォルフは二手に分かれ、『鉄の雨』から見て6時方向から、時計回りと逆時計回りに分かれて走り出す。
「こちらアクィラ2!3から5は私に続いて犬を追え! 6小隊はあっちのポンコツだ!」
 8機のデルタ・ファイターは、二手に分かれてレグとヴォルフを追い始めた。
 無音の唸りを上げて、戦闘機が二人に迫りくる。
 猟犬と獲物。そう考えていた戦闘機隊は、思わぬ代償を支払うことになる。
 最初にそれを思い知らせたのはヴォルフだ。
「いつまでも逃げてるわけじゃないってね!」
 ヴォルフの乗る黒犬は跳躍し、反転。
 『鉄の雨』本体の切り立った本体に爪を立て、そのまま走り始めた。
 デルタ・ファイターの方へ。
 手には鞭。振りかざせば雷が宿り、白く輝く。振るう音は亡者の苦鳴。
「う、うわぁぁぁぁっ!」
 鞭に打ち据え……いや、裂かれたデルタ・ファイターは『鉄の雨』にぶつかり四散。
 更にクロスレンジで黒犬の爪牙にかかったデルタ・ファイターも、同じ運命を辿った。
 勝利の咆吼は、真空中でもはっきりと響くのがわかった。

 続いては、レグ。
 彼は、銃撃をギリギリの所でかわし続ける。
 ジグザグ走行。急減速にアクセルターン。「当たりそうで当たらない」タイトロープ。
「おのれ、ちょこまかと……」
(さて、ひっかかってくれよ)
 デルタ・ファイター隊の苛立ちが頂点に達したと判断したタイミングで、リグはフルスロットル、速度を急激に上げる。
 あっという間に、デルタ・ファイターとの距離が離れていく。
「こちらアクィラ5! あのポンコツ、高速航行モードで片付けます!」
 アクィラ5の全スラスターがフルドライブ、急激にスピードを上げる。
「とっとと落ちろぉっ!」
 壁面を走るレグのバイクに対して、機銃弾を一斉射。
『鉄の雨』の外壁装甲に穴が開くが、お構いなしに撃ちまくる。
「うおっ、危ねえ……! けど、これで……!」
 レグは、急ブレーキを掛けた。車体を横に傾けて、つんのめって転ばないよう必死に操作する。
 だが、デルタ・ファイターは止まれない。高速航行モードとはそういうものだ。
 まして、建築物スレスレでチェイスを行っていた、となれば。
「て、敵が消え……うわぁぁぁぁっ!」
 アクィラ5が見たのは、コクピットいっぱいに広がった広場の床面。
『鉄の雨』基部にて、彼は壮絶な爆死を遂げ、爆発した機体は『鉄の雨』基部の装甲を深々と抉っていた。

「ふぅ、どうにかうまく行ったか……。全く、仕様外のことさせるなよ」
 再びバイクを走らせながら、レグはぼやく。
「オレ達、結構危険な橋を渡るの好きだよね、と!」
 追走してきたヴォルフが、レグの頭部を見てニヤリと笑い、彼は「好きでやってるわけじゃない」という言葉を必死で飲み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アララギ・イチイ
うふふ、今回はこの戦法で挑戦してみるわぁ

敵からかなり離れた場所に転移ぃ
その場で【無窮・刀塚】でアクア・アララギ号を26機複製よぉ
【迷彩】で船体を隠蔽、【操縦】等は支援ドローンにサポートしてもらうわぁ

解放軍・猟兵から敵位置など戦術情報を送信してもらうわぁ
戦術情報を元に敵速・方角・距離を計算して目標地点を定め、対艦魚雷【誘導弾】208本を【一斉発射】よぉ(可能なら第二斉射
魚雷の初期加速を行った後は慣性航行、熱放射などを抑えて目標地点に突進だわぁ
目標地点で魚雷の誘導・推進装置を再起動(時限式)、敵に向かって再加速&攻撃よぉ
弾頭には多弾頭の対空弾(飛行隊妨害用)やデコイ(レーダー妨害)を混ぜておくわぁ


ミスタリア・ミスタニア
ハハッ!精鋭だろうと戦闘機がオレら鎧装騎兵相手に制宙権握れると思ってるのか!
MIRVが攻撃目標とはいえ、まずはちょっと掃除しないとなぁ!

『空中戦、ダッシュ』で敵を翻弄するぜ、運動性が違うんだよ!
ビットを展開しての『援護射撃』で連携を阻害して、孤立した奴に突っ込んでパイルバンカーで『鎧砕き』の後に大型熱線砲(ブラスター・ランチャー)で『2回攻撃、零距離射撃』だ!
撃破した敵機は可能なら鉄の雨に向けて蹴っ飛ばすぜ!
敵の攻撃は『第六感、見切り』で避けて、無理ならビームシールドの『盾受け』か、鉄の雨を背後か敵との射線上に挟んで『敵を盾にする』ぜ!
護衛が減ったら鉄の雨にも【グリュンシュトゥルム】だ!


トルメンタ・アンゲルス
なるほど。鉄の雨、ですか。
温いですねぇ。嵐にすらならないなんて。
全て吹き飛ばしてやりますよ!

行くぞNoChaser!
変身!
『MaximumEngine――Mode:Formula』(ベルトの音声)

マシンベルトを起動しアクセルユニゾンを使用。
相棒を攻撃力重視の装甲とし、変身合体!
ブースターを吹かし、最高速でダッシュします!

どうやら、色々な所から情報を集めてるご様子で。
尤も、対応できるかは別ですがねぇ!

音速を超えた超スピードで、物理法則を無視した軌道で残像を残しながら撹乱し、ブレード等で敵機を落としながら鉄の雨に突撃。

コアマシン、出力最大!
極限まで加速し、鉄の雨を追撃のブリッツランツェで蹴り穿つ!



●解放の光、煌く
「サイロ損傷率60%! これ以上は発射そのものが不可能になります!」
『鉄の雨』発令所で、悲鳴をあげるオペレーター。ミサイルサイロの状態を示すモニターは、各所が真っ赤に染まっている。
 既にその損傷は基本フレームにまで及び始めていた。
「……もはや、やむを得まい。MIRV発射準備! 照準は先の解放軍艦隊!」
「正気ですか!? 最悪、サイロ内で暴発します!」
 発令所指揮官、「ケントゥリオ」は天を仰ぐ。その向こうの、解放軍艦隊を見据えて。
「現状、もはや『鉄の雨』の失陥は免れまい。それは分かる。……だが、我らにも意地がある! 最後の一発、何としても解放軍に届かせるのだ! これが、我らにできる陛下への最後のご奉公だ……頼む」
 ケントゥリオは、部下に頭を下げる。一瞬舞い降りる沈黙。
「MIRV発射準備了解! 発射シークエンス、開始します!」
「ミサイル運搬開始!30秒後に第2フェイズへ移行!」
「まもなく、オプティオ1及び2の補給も完了、エアカバーに回るよう要請します!」
『鉄の雨』は、最後の一撃に向けて、動き出した。

 アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は、『鉄の雨』からかなり距離を置いた兵装サイロの上にいた。この戦場に現れた猟兵の中でも、最も遠くに離れた位置である。
 転送事故ではない。あえてこの場所を選んだのだ。
 彼女の前でホバリングしているのは、潜水艦の形態を取る宇宙戦闘機「アクア・アララギ号」。何らかの力場が働いているのか、床と船底の間の景色が歪んでいるように見える。
「うふふ、今回はこの戦法で挑戦してみるわぁ」
 彼女が手を翻すと、眼前の「アクア・アララギ号」の輪郭が歪み、二重写しのようにブレ、分かれ……2機の「アクア・アララギ号」となる。
 続けて、2機が4機、4機が8機、8機が16機……気づくと26機もの「アクア・アララギ号」がアララギの前に揃っていた。これだけの数がいれば、敵機や防空用レーダーにかかりそうなものだが、その気配はない。光学・電子ともに隠蔽されているのだ。
「データリンク確認ねぇ、細かくて楽ができるわぁ」
 受信したデータは、この戦場に挑んだ猟兵の残したものだ。対空兵器、周辺地形、敵戦力などが詳細に記されている。アララギは、それを「アクア・アララギ号」の操縦サポートを行う支援ドローンに共有させる。
 その時。アララギの頭上を三角のシルエットが何機も通り過ぎていく。
「あらら、誰かもう始めちゃってるのかしらねぇ」
 宴に遅れは取るまいと、アララギは嗜虐的な笑みを浮かべ、総勢26機もの「アクア・アララギ号」にある命を下した。

 一方その頃。
「ハハッ! 精鋭だろうと戦闘機がオレら鎧装騎兵相手に制宙権握れると思ってるのか!」
『鉄の雨』を囲むビルの谷間を、ミスタリア・ミスタニア(宇宙を駆ける翠の疾風・f06878)軽鎧装の推進器を断続的に吹かし、飛び抜けていた。
 その後ろを、何機ものデルタ・ファイターが追いすがる。
「握れるかどうかではない。握るのだ。こちらオプティオ1、敵は鎧装騎兵1人だが、数で侮るな。侮った者から死ぬぞ」
「アクィラ2よりオプティオ1へ。分かっている……!」
 機銃弾での一斉斉射。砲煙弾雨の群れを、ミスタリアは豊満な肉体を包む軽装型鎧装の機動力で、右に左にかわしていく。
「MIRVが攻撃目標とはいえ、まずはちょっと掃除しないとなぁ!」
 ミスタリアの声と同時に、伏せられていたアームドビットの射撃と、ダガービットの突撃が前衛のデルタ・ファイターに襲いかかる。
「か、回避っ!」
 狙われたデルタ・ファイターは、推進器の推進方向を偏向させ、急上昇。急激な動きの変化により、辛くも回避する事に成功する。
 だが、それはミスタリアの予想するところ。
「運動性が違うんだよっ!」
 ミスタリアは急回転して振り返り、推進器を切ると、慣性のままにビルに足を付け、再跳躍。再び推進器を吹かして急加速、上昇したデルタ・ファイターにパイルバンカーの一撃を見舞う!
「う、うわぁぁぁぁぁっ!」
 戦闘機の外殻が砕け、内部構造がむき出しになったところに、大型熱線砲の銃身をねじ込み、トリガー。乗員もろともコクピット部が蒸発し、ミスタリアが飛び退るとともに大爆発を起こした。

「なるほど。『鉄の雨』、ですか。温いですねぇ。嵐にすらならないなんて」
 そうした戦闘を見ている、もうひとりの猟兵。名を、トルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)。愛車「NoChaser」を猛然と走らせながら、遠くに見える、傷ついたモニュメントを見上げる。
 猟兵の攻撃で立て続けに損傷を受けた『鉄の雨』は、当初の白亜の姿を既に留めていない。黒く変色し、装甲は剥離し、内部フレームすら見える酷いものだ。
 それが、白煙を噴き出している。攻撃の熾火によるものかと思ったが、その間隔は規則正しく、何らかのシークエンスが動き出している、というのはわかった。
「まあ、相手が何をしようが、全て吹き飛ばしてやりますよ!
 行くぞNoChaser!
 変身!」
『MaximumEngine――Mode:Formula』
 腰のマシンベルトが感応し、走行したまま「NoChaser」は変形し、トルメンタに装着されていく。装着が終わった時、現れたのは一人の鋼の戦士。
 その姿は『モード・フォーミュラ』。「NoChaser」が持つ3つの形態のうち、攻撃力を最重視した形態である。
 一斉に背部の推進器が唸りを上げ、彼女は凄まじい速度で走っていく。
「どうやら、色々な所から情報を集めてるご様子で。
 尤も、対応できるかは別ですがねぇ!」

 戦場に飛び込んできたトルメンタに最初に気づいたのは、オプティオ1であった。
「オプティオ1より各機。新手の鎧装騎兵がハイウェイに侵入。攻撃開始、敵からの反撃に注意せよ」
 3機のデルタ・ファイターが低空飛行に移行。トルメンタを追い始める。
 だが、その動きは彼女からすれば緩慢にしか映らない。
「そんな動きで、俺に攻撃を当てられるとでも思いましたか!?」
 トルメンタはジグザグに走り始めた。超高速のまま、鋭角に動く。
 その動きは、明らかに物理法則を超越している。
「こちらアクィラ11! 攻撃が当たりません! 当たってるはずなのに!」
 それは残像。超高速で動き続けるトルメンタが作り出した錯覚の産物。
 当てたとしても、次の瞬間にはかき消えるだけ。アクィラ11は虚像を撃っているだけだ。
 鋭角の横ジグザグは、唐突に縦への動きに変わる。
 姿勢を低くしてダッシュするトルメンタ。推進機の力を受けて跳躍し、横回転しながら、腕から展開されたプラズマブレード「Aureole」を振り抜く。
 超高熱のプラズマの刃は、容易に戦闘機を切り裂く。後方で爆発。音が追いつく前に再跳躍、今度は後ろ飛びでデルタ・ファイターの推進部を破壊。爆発がもう一つ増える。
「ひゅぅっ、またイカれたのが来やがったぜ!」
 口笛を吹いて、ミスタリアが彼女なりのやり方で、トルメンタを称賛。
 機銃弾をムーンサルトの要領で回避し、銃弾の向こうで大型熱線砲を発射。また1機のデルタ・ファイターが火球に変わる。
「そっちも大概ですがねぇ!」
 トップスピードで機銃弾を置き去りにしながら、トルメンタも笑った。
 キルマークを増やしながら、2人は確実に『鉄の雨』に迫っている。
「くそっ、あいつらを落とせば終わるはず……な、なんだ?」
 レーダー画像が明滅し、ブラックアウト。
 次の瞬間。突如2機のデルタ・ファイターが穴だらけになり、爆発した。
「楽しそうじゃない、私も混ぜてほしいわぁ」
 アララギが、2人の鎧装騎兵に通信を送る。あの兵装サイロの上からだ。
「嫌がらせのつもりだったけど、見事にハマったわねぇ」
 実は、アララギは「アクア・アララギ号」を広く展開して、同時に魚雷を放っていた。そのほとんどは対艦用のものだ。『鉄の雨』を意識してのものである。
 魚雷は、初期加速の後は慣性で前進。低空の上に推進器を使わなかったため、デルタ・ファイターのレーダーには引っかからなかったのだ。
 更に、そのうちの幾つかには、レーダー妨害用のものや、対空用の散弾弾頭も混じっていた。嫌がらせのつもりだったが、これが見事に敵機を撃破した、というわけである。
「アクィラ2よりオプティオ1! どうする、残り3機だぞ!」
「もはや『鉄の雨』への阻止は叶わぬか。ならば発射まで守り抜くのみ。オプティオ2、アクィラ2、付き合ってもらうぞ」
「オプティオ2、了解」
「アクィラ2……仕方ない、了解だ!」
「では、最期の攻撃を開始する。帝国の栄光は守り抜け」
 オプティオ1は、もはや「『鉄の雨』を守れ」とは言わなかった。

『鉄の雨』は、サイロ上部を開き、周囲の熱排出用のスリットから白煙を吐き出していた。
 中には、白いミサイル。多段式になっており、最上段が赤く塗られている。
 この中に入っているのが、何十もの小型弾頭だ。
 一度放たれれば、何隻もの艦船が沈む。鉄の雨の一滴が、これだ。
 そして、発令所ケントゥリオは、再びそれを放とうとしていた。

「MIRVの発射が近いみたいですね!」
 高速で円形広場に飛び込んだトルメンタが『鉄の雨』を見上げる。
「ははっ、だったらMIRVもろともぶち壊すだけだろ!」
 空から進入したミスタリアは、『鉄の雨』を見下ろす。
「違いないわねぇ。早く爆発四散するのを見たいわぁ」
 こちらはアララギ。遠距離からだが、情勢は「アクア・アララギ号」のデータから把握できている。
「んじゃま、行くぜぇぇぇぇっ!」
 最初に飛び出したのはミスタリアだ。大型熱線砲を構えて『鉄の雨』に肉薄する。
 オプションとして取り付けられているパイルバンカーが、鈍い光を放つ。
 だが、デルタ・ファイター隊も残り3機になりながらも、抵抗を続ける。
「ここが最後だ。俺にとっても、お前にとっても……!」
 オプティオ1が上方から侵入、下降しながら背面向きのままで射撃を加える。
 戦闘機乗りの間では「スプリットS」と呼ばれる技法だ。ミスタリアの脇腹スレスレを機銃弾が掠め、デルタ・ファイターが通り過ぎていく。
「クソッ、邪魔すんじゃねえ!」
 熱線を放つが、捉えきれない。機体は再び高度を上げていく。
 トルメンタにも機銃弾の斉射が迫る。
「オプティオ2、攻撃します!」
 トルメンタはハイウェイでも見せたジグザグ機動で回避するが、『鉄の雨』側に着弾が多く、近寄らせない意図なのは明白だ。
「敵さんも必死ですねぇ!」
「あと少し、あと少し持ちこたえてくれ……MIRV発射までの残り時間は!」
「30秒です!」
 ケントゥリオが発射シークエンスの進行を管理しつつ、戦況を凝視する。
 発射すれば勝ち、という一事のみを信じて。
 その間も、サイロの中をMIRVがせり上がっていく。欠落した装甲の隙間から徐々に現れるMIRVの姿に、ミスタリアは時間がないことを悟る。
「時間がねえ! MIRVが出てくるぞ!」
「その前にお前の命をもらう!」
「1騎、撃破します!」
 突撃をかけるアクィラ2とオプティオ2。
 前後から機銃弾が放たれ、ミスタリアを挟み込む。一歩間違えれば互いに命中するが、帝国の戦闘機乗りたちは、それに臆しなかった。
「いい度胸してるぜ……けどなっ!」
 ミスタリアは急上昇。前方から迫るアクィラ2を躱し、すれ違いざまに推進機にパイルバンカーを撃ち込む。
 ジェネレーターが致命的な損傷を起こし、停止。そこにオプティオ2が突っ込んでいく。
「てめえら2機とも、ぶっ飛んじまえ! 【グリュンシュトゥルム】!」
 渾身のユーベルコード。放たれた大火力の熱線が、既に破壊されていたアクィラ2を消滅させ、そのままオプティオ2に命中、弾き飛ばされたオプティオ2の機体は、『鉄の雨』のサイロに衝突、大きく揺らがせた。
「ここが勝負どころねぇ。全魚雷再加速、ぶち抜いちゃってぇ!」
 アララギの号令一下、慣性で進行していた魚雷たちが急速に速度を上げた。
 うち一本が、円形広場に飛び出してくる。まっすぐ、MIRVに向かう。
「あれだけは……やらせん!」
 射線に、オプティオ1が飛び込む。着弾、爆発。
 魚雷の爆発は、MIRVに直接命中することはなかった。
 しかし。
「一本だけだと思ったぁ?」
 放たれた魚雷は合計208本。うち1割ずつがレーダー妨害や対空弾頭装備型だが、残り170本以上が対艦用。しかし、オプティオ1のレーダーもまた妨害されており、それに気づくことはなかった。
 結果。
 100を優に超える炎の華が、『鉄の雨』に咲き誇った。
『鉄の雨』が、戦闘機隊の守ってきた「帝国の栄光」が、大きく揺らぐ。
「これでとどめです!コアマシン出力最大!」
 プラズマジェットで極限まで加速したトルメンタは跳躍、その光を全身に帯びる……!
「決して逃がさん!【追撃の……ブリッツランツェ】!」
 必殺の蹴撃が、『鉄の雨』を貫く。
 トルメンタは、数百メートル離れた場所に着地。
「ここまでか……皇帝、万歳……!」
 立ち上がった瞬間、『鉄の雨』は最後の爆発とともに、完全に砕け散った。
 誇りを賭けて猟兵と帝国のぶつかりあった戦場は、『鉄の雨』の爆発とともに次々と誘爆。
 兵装サイロが爆発し、ハイウェイが砕け。
『鉄の雨』周辺は陥没し、サイロ地下のミサイル格納庫も崩落。
 ミサイルが連鎖爆発し、一角は完全に破壊された。
 解放軍艦隊に降り注いだ『鉄の雨』は、ついに止んだのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月25日


挿絵イラスト