【サポート優先】道亡き道の迷夢
これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
あやかし達が惑いゆく。
それは――突然の事だった。
地が砕け、朽ち、その形を変えてゆく。
否、形が変わったのかどうかすらももはや判然としない。
ただ確かなのは……全ての“道”が喪われた事。
幻妖な螺旋回廊も、静謐の飛び石も、真っ直ぐの先に見えていた光明も。その全てが消え失せて、妖怪達は行くべき先を失った。
何処から来て、何処へ征くのか。
迷い子になった者達は、まるで悪い夢に惑うように……ただ当て所無く漂う。
そんな妖怪を、骸魂が飲み込んでゆくのはもはや避けられない事だった。
「――迷え、迷え」
誰かの声が聞こえる。
それはまるで呪いの言葉のように、右も左も失せた空間でいつまでも木霊していた。
「カクリヨファンタズムにて、オブリビオンが現れたようです」
グリモアベース。
エラ・ディフォニー(エルフの精霊術士・f39155)は集まった猟兵達に説明を始めていた。
大祓百鬼夜行の後も、カクリヨファンタズムは変わらず危機に晒されている。そして今もまた……幽世に異変が現れたのだと言った。
「現在、カクリヨファンタズムの世界からは『道』が失われています」
全ての道が朽ちた事で、妖怪達は自分達のゆく先を失った。そして迷子の世界となったそこで――骸魂に飲み込まれオブリビオンと化してしまったのだ、と。
だから、とエラは猟兵達を見つめて。
「妖怪達と世界を、救ってほしいのです」
「現場に降り立てば、すぐにオブリビオン達との戦闘となるでしょう」
今の幽世は道のない世界。
敵も四方八方から強襲してくる事と考えておくと良いでしょうと言った。
「骸魂の殆どは、『迦陵頻伽』へと変貌しているようです」
翼による飛翔や、格闘攻撃に警戒をしておくと良いだろう。
迦陵頻伽を退ければ、首魁とも言えるオブリビオンを見つけ出す事が出来るはずだ。
「その存在が、幽世から道を消す企てをした存在でしょう」
おそらくは強敵。
けれど猟兵ならば倒す事も叶うでしょうとエラは言った。
「この世界のオブリビオンは、妖怪を飲み込んで変身した存在です」
戦いにより打倒する事で、元の妖怪を救う事が出来る。
だからひとりも取り残さず、助けるために、と。
「戦いへ、参りましょう」
崎田航輝
このシナリオはサポート優先シナリオです。
カクリヨファンタズムでの戦闘シナリオとなります。
●現場状況
「道」の概念が失われた幽世。
地形の判然としない景色となっています。
●各章について
一章は集団戦で、『迦陵頻伽』との戦闘です。
飛翔能力と格闘攻撃が脅威となる相手です。
二章はボス戦、『土蜘蛛』との戦闘です。
広範囲に及ぶ攻撃や、命中率の高い攻撃が特徴の強敵となります。
第1章 集団戦
『迦陵頻伽』
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POW : 極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD : クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:yuga
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
スフィア・レディアード(サポート)
『皆さん、頑張りましょう!』
ミレナリィドールの妖剣士×鎧装騎兵、22歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(私、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は元気で、楽しい祭りとかが好きな少女。
武器は剣と銃をメインに使う。
霊感が強く、霊を操って戦う事も出来る(ユーベルコード)
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ミーヤ・ロロルド(サポート)
『ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!』
楽しいお祭りやイベント、面白そうな所に野生の勘発動させてくるのにゃ!
UCは、ショータイムの方が使うのが多いのにゃ。でもおやつのUCも使ってみたいのにゃ。
戦いの時は得意のSPDで、ジャンプや早業で、相手を翻弄させる戦い方が好きなのにゃよ。
口調だけど、基本は文末に「にゃ」が多いのにゃ。たまににゃよとか、にゃんねとかを使うのにゃ。
食べるの大好きにゃ! 食べるシナリオなら、大食い使って、沢山食べたいのにゃ♪ でも、極端に辛すぎたり、見るからに虫とかゲテモノは……泣いちゃうのにゃ。
皆と楽しく参加できると嬉しいのにゃ☆
※アドリブ、絡み大歓迎♪ エッチはNGで。
クオン・キマヴィス(サポート)
サイボーグのブレイズキャリバー×戦場傭兵
普段の口調は「非常に寡黙 (私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)」、戦闘中は「無機質(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)」です
UCは指定した物を使用し、損傷は気にせず行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
非常に寡黙で感情の起伏に乏しく、常に無表情でしかも口下手
身の丈よりも大きな鉄塊剣や高周波ブレード、ハンドガンやライフル、膝ドリル等に蒼炎を纏わせ、状況によって使い分けて戦います
話し始めは必ず「……」から。台詞に「!」は使用しない。あとはおまかせ。よろしくおねがいします
筒石・トオル(サポート)
「邪魔をしないでくれるかな」
「油断大敵ってね」
「ここは任せて」
正面切って戦うよりも、敵の動きを封じたり、属性防御を固めて盾や囮となったり、味方が倒し切れなかった敵にトドメを刺して確実に倒すなど、味方の安全性を高めるように動く。
ユーベルコード使用はお任せ。
使用しない場合は、熱線銃での援護射撃を主に行う。
人見知りではあるが人嫌いではないし、味方が傷付くのは凄く嫌。
戦うのも本当は好きではないが、誰かを守る為には戦う。
もふもふに弱い。敵がもふもふだと気が緩みがちになるが、仕事はきちんと行う……ホントだよ?
中村・裕美(サポート)
副人格のシルヴァーナで行動します
『貴方はどんな血を流すのかしら』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
裕美のもう一つの人格で近接戦闘特化。お嬢様口調だけどアグレッシブで享楽的
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】
槍を使うことがあれば、相手を【串刺し】にします
その他使えそうな技能があれば適宜使用する感じで
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー
電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します
あと、虫が苦手
七星・桜華(サポート)
『天魔御剣流免許皆伝、だからこそ更なる高みへと。』
『一か八かの勝負?そんな事しなくても私達の勝ちだね!!』
『勝った後は派手に騒ぐんだ!誰一人として倒れないようにね!!』
敵の数が多い場合は敵の強さで一体づつ倒すか複数を纏めて狙うかを第六感や野生の勘と言われる直感で即決する、また見切りの速さも早い。
闘う姿は舞っているかの動きで敵を魅了する、上空の敵が相手でも空中戦もできる。
攻守において残像を使い殺気や覇気が残像にまで残る程の濃密加減。
頑丈な敵が相手でも鎧等を無視した内部破壊系攻撃を当たり前のように使いこなす。
長期戦になっても敵の消耗と自身の回復に生命力を吸収して凌ぐ。
戦闘では先の先、後の先問わず。
「すごい、景色ね――」
崩れた大地の上に降り立ったスフィア・レディアード(魔封騎士・f15947)は、不安定な足元に体勢を直しながら視線を走らせていた。
“道”の失われた幽世。
そこは右も左も、前も後ろも無い荒れ地。
上下の感覚すらあやふやで……上を仰げばまるで地面と双曲線を為すような大地が、空の代わりに空間を閉ざしていた。
「出口も無いみたいだし……」
「にゃ、これじゃあ確かに迷子になっちゃうにゃ」
ミーヤ・ロロルド(にゃんにゃん元気っ娘・f13185)は僅かに眦を下げて、注意深く歩みだそうとする。
すると途端に方向感覚があやふやになるような酩酊感が、襲い来るのだ。
なれば妖怪達が迷わずに居られる訳もない。既に空間には、骸魂に飲み込まれて姿を変えてしまったであろう影が幾つも垣間見えていた。
その全てが……こちらの存在にも気づいて接近してくる。
ただ、その中でクオン・キマヴィス(黒絢の機巧少女・f33062)は――僅かな迷いも浮かべはしない。
「……敵ね」
そう、あれは紛れもなく敵。
正解の道の無いこの世界で、それだけは確かな事。
そして自分達がやるべきはその全てを斃す事。
今までやってきた、それを今回もまたやるだけなのだから、と。
「……四方から来ている。背を取らせずに戦うのが得策ね」
「ああ」
それに七星・桜華(深紅の天魔流免許皆伝・f00653)も頷いて、刃をすらりと抜いていた。
見据える敵はオブリビオン、迦陵頻伽。
妖怪を飲み込む事で、力と共に比類なき威容を手に入れた存在。
だが桜華は僅かな怯みもなく。
「倒せば妖怪達を全員救えるんだ。一体も残さず、行くよ」
「勿論ですわ」
応えるのは中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)。
否、今はその副人格――シルヴァーナが、臨む戦いに笑みすら湛えて。
「お相手して差し上げますわ。皆さん、参りましょう」
「……うん」
援護するね、と。
筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)も皆へ静かに言葉を返し、熱線銃を握る。
敵の数はこちらを遥かに凌駕していた。
それでもトオルが一歩も退かず、戦闘態勢を取ると……皆もまた敵へと奔り出す。
前進した猟兵に対し、最前の迦陵頻伽はまず高くへ飛翔。
高度の有利を取った上で、滑空しながらの物理攻撃を仕掛けようとしていた。
が、スフィアは魔剣を構えてそれを迎え討つ体勢を取っていた。
決して攻撃を甘んじて受けようとしている訳ではない。この剣を以て――正面からその一撃を逸らしてみせるつもりだった。
「負けないからね!」
迦陵頻伽はその言葉に対し、速度を上げる。
スフィアの戦意ごと、踏み潰そうとでもいうつもりだったのかも知れない。事実、急降下と共に放った蹴りは強力だった。
だがスフィアこそ、譲らない。
相手の爪に、刃を触れさせて――そのまま滑らすようにして横へ。火花を散らしながら狙い通りに攻撃を払いのけていた。
「次は、私の番!」
そして止まらず、返す刀で一閃。
苛烈なまでの斬り上げで、その一体を両断してみせる。
後続の敵勢は、それに驚異と憤慨を浮かべていた。こちらの実力を、見誤っていたという事だろう。
故に迦陵頻伽は二体、三体と舞い降りてくるが……その頃にはスフィアも疾駆。自分から跳び、それらを斬り捨てていく。
そこへ別の敵が、左右から挟み込もうとしてきた。
如何なスフィアとは言え、一度に二体は切れまいと思っての事だろう。
が、スフィアの武器も一つではない。
まずは素早く抜き放った銃で、左の一体を撃ち抜くと――
「お願い!」
場に漂う霊魂に語りかけ、念力を放出させる。
その衝撃に右の一体が揺らいだところで……スフィアは跳びながら斬撃。複数で迫る敵も、その力で圧倒してゆく。
「にゃ、向こうからも沢山来るにゃ!」
ミーヤはスフィアと丁度逆方向に向いていた。
そちらからも、目に見えるだけで既に三体。翼をはためかす迦陵頻伽が低空に下りて、こちらの眼前に迫ってくる。
その速度はかなりもの、だが。
「捕まらないにゃ!」
ミーヤは真っ直ぐに接近した一体に対し、横へ素早く跳躍して回避。
その斜めから近づく敵も、直後に翻って間合いを取り……更にくるりと回転。猫の如き身軽さで、三体目の爪撃も空を切らせていた。
そのまま高々とジャンプをして再度間合いを取って。
「こっちにゃ!」
相手を翻弄するように大回りに奔り始める。
迦陵頻伽はそれを追わざるを得ないが、駆けるミーヤも高速。容易にその尾にも追いつく事は出来ない。
それでも少しずつ距離を詰めてくるが……ミーヤには想定内。
「そろそろにゃ!」
言って、手に取るのはガジェット。膨大なエネルギーをチャージし終え、いつでも発射出来る状態となったものだった。
そう、この追いかけっこは時間を作る為の策の一つ。
迦陵頻伽達はそれに気づき、ある個体は避けようと、またある個体は攻撃を阻もうと迫ってくる。
が、その全てがミーヤより遅い。
「いっけえにゃー!」
刹那、ミーヤの突き出したガジェットから、膨大な光量と共にエネルギーの塊が発射される。
空間に描かれた直線は、まるで全てを焼き尽くすように――迦陵頻伽を四散させていった。
こちらの戦力を鑑みてか、間合いをとって戦おうとする迦陵頻伽も居る。
その個体は物理攻撃に腐心せず、翼を広げて精神を蝕む音波を放とうとしていた。
だがその直前に、クオンは既に駆け出している。
(……この距離なら、届く)
それは自信でも過信でもない。
彼我の距離と己の速度を客観的に分析した、紛れもない事実。だからクオンは心を動かす事もなく――地を蹴って迦陵頻伽へ到達した。
それは丁度、その一体が音波を放ったのと全く同時。
その空気の振動がこちらに伝わる前に……クオンは膝部のドリルを駆動。強烈な一撃を相手の腹部へ撃ち込んだ。
くの字に躰を折った迦陵頻伽は、そのまま落ちてゆく。
間を置かず、横合いから別の個体が攻めてくるが――クオンも既に、落ちた敵の方は見ていない。最小限の動きで腕を伸ばし、そちらへハンドガンの引き金を引いていた。
マズルフラッシュが閃き、弾丸が飛翔する。
その一撃もまた、狙い違わず額を貫いて……二体目を沈めていた。
そこでようやく、クオンは最初の跳躍から着地する。
時間にしてほぼ一瞬。後続の相手が来るまで、ほんの一呼吸の余裕がある間に――クオンは身の丈を越える程の大剣を握っていた。
そして迫る迦陵頻伽へ、その刃を振りかざす
勝利へと奔るのに、クオンは最後まで冷静だった。
敵のように滅びを望んでいる訳でもない。殺意に導かれている訳でもない。
逆に、矜持とプライドを誇示しているのでもない。
それは多分、今のクオンの生き方そのもの。
だからこそ、生きるために――負ける選択肢はない。クオンは表情一つ変えぬまま、その刃で敵を討ってゆく。
迦陵頻伽達は徐々に劣勢を感じてか、こちらの裏をかこうとし始める。
前線の個体を捨て駒にして……戦いの動きが激化する間に、猟兵達の背後を取る事を優先し始めたのだ。
が、その個体群に立ちはだかる影があった。
「悪いけど、通さないよ」
それは先回りしていたトオル。
戦況を広く見渡して、不利を生む状況を潰して回っていた。
敵勢は、トオル一人なら突破できると驕ったか。音波を放ってこちらの精神を蝕みつつ、そのまま押し切ろうと飛ぶ。
だがその音波に……トオルは微動だにしない。
「甘く見ないでほしいな」
周囲に漂うのは、高熱による陽炎。
トオルは直前、炎の魔力を込めた熱線銃を辺りに放ち……空気を大きく揺らがせていたのだ。
それによって歪んだ音波は、更にトオルが操った風の魔力によって――途中で完全に立ち消えていた。
「少し、大人しくしていてもらうね」
それに敵が気づく頃には、トオルはさらなる射撃。翼を正確に焼き切って、自由な動きを奪い去ってゆく。
そこから、トオルは悪戯な深追いはしない。
一度踵を返して奔るのは戦線の反対側。そこにも同じく、仲間の背を取ろうとして動く迦陵頻伽達が居たのだ。
そちらの個体は既にトオルに気づき、近接攻撃を仕掛けてくる。
が、トオルはそれも予想済み。
「――近づけばどうにかなると思うなら、大間違いだよ」
相手の爪による一撃が迫るのと同時。トオルは水の魔力と共に熱線銃を発射。強烈な水蒸気の爆発を起こし……衝撃を相殺していた。
その爆発は、敵の注目を集めて囮になる目的にも一役買ってくれる。
「さあ、こっちだよ」
仲間の邪魔となる個体は、全て引き付けるように――トオルは巧みに戦場を駆けてゆく。
敗北の可能性を察した迦陵頻伽達は、狂乱するように突撃してくる。
シルヴァーナはそれに対し、艶やかな笑みを浮かべていた。
「あら、素敵ですわね」
――自ら斬られにくれるなんて、と。
その瞳に浮かぶのは享楽的な戦意。
一体の迦陵頻伽がそれに敵意を返すよう、声を響かせて……シルヴァーナの心を意のままに操ろうとする。
が、その声に当てられたのはシルヴァーナではなく、その残像。
「ふふ」
こちらですわよ、と。
シルヴァーナが姿を現したのは声を放っていた迦陵頻伽の横合い。
その個体ははっとしたように視線を向けるが……その頃にはシルヴァーナはナイフを抜いていて。
「見せて頂きますわね」
刹那、一閃。
迷いのない斬閃が、迦陵頻伽の首筋を掻き切って――血の海にその命を沈めていった。
別の敵個体は激憤を浮かべるように飛翔。シルヴァーナを取り囲む動きを見せる。
が、シルヴァーナはとん、と地を蹴って再び残像を見せる。
その姿が消え、別の残像が見えた頃には……シルヴァーナ本人はまた別の間合い。
優雅に、戯れるかのように――シルヴァーナはいつしか包囲からも抜け出して敵の後方。再びナイフを奔らせ、血溜まりを広げていく。
包囲も通じない。
その事実に如何な思考を巡らせたか。迦陵頻伽達は寄り集まって、力押しをするようにその全員で正面から迫ってきた。
それは確かに脅威ではあったろう。
だが正面からの近接戦こそ、シルヴァーナの得意分野だった。
「良いですわよ」
小細工なしで参りましょう、と。
軽くステップを踏むように、至近へと舞い至ったシルヴァーナは――相手の攻撃を全て紙一重で躱して反撃。
真っ直ぐに槍を突き出して、迦陵頻伽達を纏めて串刺しにしていた。
残る迦陵頻伽達は、小細工も無駄だと悟ったろう。
一直線に羽ばたいて、真っ向からの勝負を挑んできた。
だから桜華もまた刃を構え、正面から相対する。
「来なよ」
紛れもない実力で、勝ちを手に入れてみせよう、と。
桜華は意気を込め疾駆。まずは刀で一閃、裂帛の斬撃を放ち……眼前に来ていた一体を斬り捨ててみせた。
すると後続の敵が爪での斬撃を返そうとするから――桜華はそれを刀で受け止め鍔迫り合い。
暫し相手と至近で睨み合う。
「やっぱり、力は尋常を超えてるね」
桜華は眼前の超常の存在に対し、素直に言ってみせる。
でも、と。
「こっちも、強い相手との戦いなら数え切れないほど経験してきたんだよ」
だからただ強い敵だからと、押し負けはしない。
ただ速い敵だからと、後れは取らないのだと。その一体を斬り裂くと高く跳躍し――空中の一体にも迫っていた。
その迦陵頻伽は、はっとしたように翼を羽ばたかせ、横方向に距離を取ろうとする。
だが桜華にとっても――空は自身の間合い。瞬間、逆方向に剣風を放つ事で速度をつけてその個体へ追いつき……一閃を加える。
そしてその反作用を利用して更に飛び上がると、ひらりと身を返し。回転しながらの斬撃で別の一体諸共両断してみせた。
軽やかに、疾く。
桜華の舞うような鮮やかな動きに、相手は為す術もない。
最後の一体が音波を放って抵抗しようとするが……桜華はそれすらも素振りの衝撃で吹き飛ばして。
「その命は、妖怪達のもんだ」
返して貰うよ、と。
放つ剣撃が迦陵頻伽を斬り裂き――骸魂を散らせていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『土蜘蛛』
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POW : 赤手紅蓮撃
自身が装備する【巨大な手甲】から【妖気を宿した一撃】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【魔炎】の状態異常を与える。
SPD : 生気吸収
【背中から生やした蜘蛛の足】を向けた対象に、【それを突き立て生命力を奪うこと】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 土蜘蛛の檻
レベル×5本の【麻痺】属性の【蜘蛛の糸】を放つ。
イラスト:のはずく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「御狐・稲見之守」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
四条・眠斗(サポート)
ぅゅ……くぅ~……あらぁ?
いつの間にか始まってましたかぁ~?
さっさと事件を解決しないとぉ、安心してもうひと眠りできませんからねぇ~。
ユーベルコードは出し惜しみしても仕方ありませんからぁ、
一気に片づけるつもりでやっちゃいましょう~。
案ずるより産むがやすしともいいますしぃ、躊躇うよりはいいですよねぇ~?
こう見えてもぉ、腕には少し自信があるのですよぉ~。
それにぃ、様子を見てる間にまた眠くなっちゃっても困っちゃいますしぃ。
荒事じゃなくてぇ、楽しいことならめいっぱい楽しんじゃいましょう~。
のんびりできるところとかぁ、動物さんがたくさんいるところなんか素敵ですよねぇ~。
※アドリブ・絡み歓迎
ロラン・ヒュッテンブレナー(サポート)
※絡みアドリブOK
※感情が尻尾や耳によく表れる
※人見知りだが【優しい】性格で育ちのいいお坊ちゃま
※戦闘時は魔術器官と電脳空間の演算力を用いて知略で戦う
※「ぼく」「~なの」「~さん
体のあちこちにつけた魔道具の回路を起動し(【高速詠唱】)、
狼の嗅覚聴覚視覚(【聞き耳】【暗視】)を駆使した【情報収集】と、電脳空間からの【ハッキング】で敵戦力を分析(【学習力】)
適切な魔術(UC)を組み合わせたり【乱れ撃ち】する
防御は【結界術】で作る【オーラ防御】壁や、
小柄な体系と狼の機動力(【ダッシュ】【残像】)を使う
仲間を守り、敵には【勇気】をもって容赦ない作戦・攻撃を行う(【全力魔法】)
小宮・あき(サポート)
お困りの方がいる、と聞いて参りました。
スポット参戦のような形でフラリと。
◆性格・人柄
敬虔な聖職者として猟兵に目覚めた、人間の聖者。
です・ます口調の礼儀正しい少女。
ピンクの髪に、透き通る水色の瞳が特徴的。
ふふ、と微笑み愛らしい見た目で佇んでいますが、
本業は商人。ホテル経営者。冷静で非情な心も持ち合わせています。
既婚者。
神と夫に報告できない行動は、絶対に取りません。
◆戦闘
UC「神罰」
半径レベルmの【範囲攻撃】です。
強力なスポットライトのような光の【属性攻撃】で物質を透過します。
媒体は【祈り】。敬虔な聖職者の祈りは【早業】【高速詠唱】で発動。
最後衛で距離を取り戦います。
◆冒険
基本『お任せ』です。
ナーダ・セッツァー(サポート)
顔を隠し、喪服に身を包み、兄弟と半分に分けたロザリオを身につける。
兄弟と同じ装丁の仕込み杖を持ち、隠すのは槍。
オラトリオの翼は出さない。
髪に咲く花は山荷葉。
弱者を救済し、悪を裁く。
全ては亡き我が神のため。
憐れなるモノに神の御加護を。
その為ならばこの身が、手が紅く染まろうと悔いはない。
尊大な口調だが他人を下に見ている訳では無い。
他人には他人の価値がある。
だが我が神を侮辱するのは万死に値する。
神のみもとに逝くがいい。
戦闘は仕込み杖(槍)での肉弾戦、又は硝子のような山荷葉の花を風に舞わせて切り刻む。
回復?殺られる前に殺れば必要ないな。
シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦
称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。
複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!
天日・叶恵(サポート)
私なりの、お狐さまの矜持としてささやかなお願いがあればついでで積極的に叶えたいです
例えば、探しものを見つけたり、忘れ物をこっそり届けたり、道をこっそり綺麗にしたり、といったものです
それ以外では、オブリビオン退治に必要であればできるだけ違法ではない範囲でお手伝いしたいと思いまーす
戦闘については、昔は銀誓館学園で能力者として戦っていたので心得はありますー
補助や妨害といった動きが得意ですねぇ
あとは、白燐蟲へ力を与えて体当たりしてもらったり…術扇で妖力を込めたマヒ効果の衝撃波を出したり、でしょうか?
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行為はしません。
「ぅゅ……くぅ~……、ここが戦場ですかぁ」
四条・眠斗(白雪の眠り姫・f37257)は転移の酩酊感に眠さを増した目を擦り、降り立った空間を見回していた。
“道”の失われた幽世。
先陣の猟兵が敵の大半を退けたそこには、静謐が満ちている。
ただ、強大な気配もまた残っていて――
「あれが幽世を変えた元凶、みたい」
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)はそっと口を開いて前方を指していた。
左右も上下も、あらゆる道筋の無くなった空間で……猟兵達の前へと現れるのは一体の異形。
ひたりと地に降りると、その周囲の大地が朽ちては歪んでゆく。
『迷え、迷え』
世界から道を消したオブリビオン、土蜘蛛。
わんわんと空間に響く声音と共に、今も全てを迷夢に誘おうとしている。
『道はいずれ、朽ちゆく。導くものはいずれ、居なくなる。あらゆる存在は最期には、自身の足元すら視えなくなってゆくのだ』
「故に自らが一足先に、全てに迷いを与える――それが君の願いか」
ナーダ・セッツァー(地に満たせ神の威光・f35750)は土蜘蛛へ言葉を投げた。
一つの思考として、一つの信仰として……決してそれを根本から否定する訳では無い。
「確かに、生けるものは皆迷い子と言えるのだろう」
だが、と。
同時にナーダの声音は鋭い色も帯びていた。
「なればこそ迷い方も、標も、迷い子自らが決める権利がある。力を以て他者へ迷いを無理強いする正当性が、何処にあるものか」
『一度迷いへ落ちれば、全ては些細な事』
出口のない迷いに入りこめば、どうせ救いは得られない。
だから迷い子の意思など問題でないのだと――そう土蜘蛛は言って憚らなかった。
けれど。
「――そんな事は、ありません」
小宮・あき(人間の聖者・f03848)は静かに……けれど力強く首を振った。
「迷い続ける人はいるでしょう。未だ救いに届かぬ人もいるでしょう。けれど迷いは、救いとは無縁ではありません」
少なくとも、オブリビオンに作り出された迷いでなければ、と。
言葉に土蜘蛛は顔を歪める。
『私を斃すとでもいうか』
「ああ、そのつもりだよ」
真っ直ぐに言ってみせたのはシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)。
かつりと一歩踏み出して、土蜘蛛を見据える美しい相貌には……敵への怯みも恐怖の色も、微塵も浮かんでは居ない。
「元より、世界を好き勝手に変容させ、弱者をいたぶる――そのような悪行が許されると思ったか」
ならば討たれるのは道理だ、と。
言葉に、皆も同じ心で戦闘態勢を取る。
「妖怪さん達も逃しておきましたよー」
と、皆へ合流するのは天日・叶恵(小さな神社のお狐様・f35376)。
先の猟兵の戦いによって姿を取り戻した妖怪達を、後方へと逃し……その安全を確保していた。
だから後は、斃すべき敵を斃すだけ、と。
「さあ、がんばりましょうかー」
言って前へ踏み出すと、皆もまた頷き戦いへ奔る。
『ならば貴様らも、道と共に朽ちてゆくが良い』
迫る猟兵達へ、土蜘蛛は巨大な腕を大きく振るって糸を放った。
それは直接猟兵へ届く前から、その周囲の空間に留まるように形を成し――いつしか閉鎖空間を作り出してゆく。
「あらぁ?」
そして眠斗が視線を巡らす頃には……眼前をも塞がれ、文字通りの檻になっていた。
眠斗はなるほどぉ、と頷く。
「これでは身動きが取れませんねぇ」
『――閉ざされた白き檻で迷いながら死するが良い』
時間が過ぎるごとに、それは網目すらなくなってゆく。土蜘蛛の声も遠くに聞こえ、ただその残業だけが残っていった。
が、眠斗は慌てていない。
「では、こちらでぇ~」
と、言ってぐっと握るのはヤドリギで編んだローブ。
その端は、壁の一部に挟まれている。完全に檻が閉ざされる直前、眠斗が隙間に放っておいたのだ。
そこへ魔力を巡らすと……糸の檻が軋む音を響かせる。
ローブの端々から植物の槍が生まれ、檻を破壊していたのだ。
硬質になるほど、その組成を破壊する衝撃には弱くなる。次には槍が放射状に飛び出し――檻を粉々に粉砕していた。
『……!』
土蜘蛛がはっとして、何かの言葉を発する暇も与えない。
眠斗は直後にはひらりと前へ跳んで、土蜘蛛へとローブを投擲していた。
風にうねったローブは、眠斗の意を汲むかのように土蜘蛛に巻き付いてその躰を縛り付ける。
「せっかくですからぁ、全力ですよぉ~」
眠斗は持てる魔力をそこへ注ぎ、再び植物の槍を顕現させる。
無数に生えたその槍は、零距離から土蜘蛛を襲う。そうして抵抗を許す間もなく、幾重にも躰を穿ち貫いていった。
土蜘蛛は僅かに呻きながら、一度間合いを取ろうとする。
おそらくは予期していたものより、こちらの力が高い事に焦燥したのだろう。
だがロランがそこへ間隙を与えず攻め込んでいた。
「逃さないの」
奔りながら起動させるのは、体の端々につけた魔道具の回路。そこへ巡る魔力と魔術器官を同期、共鳴させて――ロランは淡く美しい輝きを纏っていた。
こちらの攻撃を危惧し、土蜘蛛は高く跳び上がる。
だがそこもロランの射程内。
すぅ、と息を吸い込むと、そこへ渦巻く光を凝集させて。
「――るぅぉおおお!」
放つのは高らかに響き渡る遠吠え。その音に魔力とオーラが乗って……苛烈な衝撃の塊となっていた。
真下から飛んできたその一撃を、土蜘蛛は躱しきれない。弾ける光と共に直撃し、大きく空へ投げ出された後地へ落ちた。
『……!』
呻く土蜘蛛は、それでも即座に立ち上がると――次には真っ直ぐに迫ってくる。
射撃を脅威と見て、近接戦闘に持ち込む狙いだろう。確かにその速度は目で追うのも難しく……そして振り上げら得た腕も強大。
だがロランに焦りはなかった。
何故ならば――その土蜘蛛の動きは直前には全て把握済み。
動きながら電脳空間で計算を奔らせ、土蜘蛛の速度、軌道、直近の未来の予測経路を全てはじき出していたのだ。
だからロランは、振り下ろされた腕を……僅かに体をずらしただけで回避する。
そうして土蜘蛛が瞠目する頃には、再びその呼吸に魔力を秘めていた。
土蜘蛛に回避は、させない。同時に放った音の塊を至近から撃ち当てて――土蜘蛛を大きく吹き飛ばしてゆく。
『おのれ――』
倒れ伏した土蜘蛛は、憎しみの声音と共に這い上がる。
『私を否定しようと、迷うものは消えぬ。ならば道を奪うものも、消えはしない』
「だから悪しき行いが許される――そう思うならば、誤りだ」
言葉を返したのはナーダだった。
そのまま喪服の裾を靡かせて、高く跳ぶ。
その手に掲げられたのは杖……否、仕込み槍。悪しきものを討つ為に、研がれた刃。
「如何な道理を嘯こうと、悪戯に他者を害するならばそれは悪だ。道理の前の、理だ」
――そして悪しきものは、裁かれる。
刹那、下方へ突き出された穂先が深々と土蜘蛛の体へ突き刺さる。
濁った血を噴出させ、土蜘蛛は大きくよろめいた。
それでもこちらが近づいた事を好機と見たか。その頑強な手甲を掲げ、力の限りに振り下ろしてくる。
ナーダはそれを槍の柄で受け止めた。
それは確かに他者の命を軽々と奪ってしまえるだけの、大きな力だ。その恩恵で、このオブリビオンは自身の道理を通してきたに違いない。
力があれば、己の信ずるところを形に出来る。
逆に言えば、崇高な命題も力がなければ形に出来ない。
だがそんな事は――ナーダは誰より判っている。
その為に、あらゆる覚悟をしているのだから。
力は決して心の強さではない。
けれど、それが求められると言うのなら。
「……力を見たくば、見せてやろう」
瞬間、狂気的なまでの殺意が漲る。
土蜘蛛が押し戻されたのは、それに怯んだだけではないだろう。
莫大なまでに増したその力を以て、ナーダは一閃。手甲を抉り裂きながら、土蜘蛛の躰に消え得ぬ斬閃を刻み込んだ。
黒色にも似た血の跡が、点々と続いている。
それは呼吸を整える為に大きく後退する、土蜘蛛の零していったもの。
だが空間を下がっていく土蜘蛛は、それを気にしない。ここは道なき世界……自分の居場所を示す道筋もすぐに消えるだろう。
その間に体力を回復し、奇襲を仕掛けるつもりだった。
――が。
『……?』
土蜘蛛は違和感に周囲を見回す。
自身のいる空間、否、もっと広い視界全体が――眩く光り輝いていた。
「離れようとも、無為なことです」
響く声は、あきのもの。
瞬間、光は目に見える全てを染めるほどに光量を上げて……まるで形を持つ巨大な柱のようになっていた。
それは聖なる力によって悪しきものを灼く、文字通りの“神罰”。
『……!』
土蜘蛛は自身が攻撃されていることに気づいたが、既に遅い。
広範囲を包むその輝きは、決して土蜘蛛を逃す事無く……その全身に凄まじいまでの苦痛を与えた。
光が晴れて、土蜘蛛はようやくあきの姿を確認できる。
だが最後衛とも言えるその位置は容易に辿り着けるものではない。
それでも土蜘蛛は敵意を浮かべ、あきを排除しようと疾駆。背に蜘蛛の足を生やして体を穿たんとするが――
「届かせません」
世界が再び、光り輝く。
敬虔なまでの祈りは、無辜の命へ仇なす存在を決して許しはしない。その心が、意志が、光の柱を一層強いものとする。
直撃を受けた土蜘蛛は、煙を零しながら言葉を吐く。
『愚かな、事を……迷いに落ちれば、祈りなど無駄だというのに』
「いいえ。祈りは、心を強くする」
時にそれは、迷いすらも振り払うだろう。
悪しき迷いを生み出すその元凶を、今焼き尽くさんとするように。
あきはどこまでも清廉な心で、光を瞬かす。その煌めきが確かに土蜘蛛の命を、刻々と削ぎ始めていた。
負傷を深めた土蜘蛛は、下がるでもなく逆に前進をしてきた。
自身が朽ちるよりも先に、こちらを全滅させるしかないと判断したのだろう。
「ならば、相手をしてやろう」
言葉と共に精霊銃をその手に握るのはシェーラ。
どの道、この土蜘蛛は討たねばならぬ存在。ならばこの力を以て戦おう、と――まずは真っ直ぐに銃口を向けて引き金を引く。
瞬間、煌めくマズルフラッシュと共に精霊の魔力が撃ち出され……土蜘蛛の肩口を穿つ。
『……!』
その一発は強烈だったろう、土蜘蛛は大きく体を反らすように体勢を崩した。
それでも止まらずこちらへ迫ろうとする、が。
シェーラこそ、動きを止めていない。発砲し終わった銃を逆の手に持ちながら、元の手にもう一丁の精霊銃を構えていた。
その間隙は、ごく僅か。二連続で衝撃を浴びせるように……その銃による射撃が土蜘蛛の同じ傷口を貫いた。
今度は耐えきれず、土蜘蛛は足を止める。
その中でも四肢を張って、倒れまいとするが――シェーラはそれも許さない。
「少し、倒れていてもらおうか」
幾つもの精霊銃を、ジャグリングするかのように。間断なく、光を照射するように射撃を加え続けていった。
その衝撃に足を射抜かれ、土蜘蛛は言葉通りに倒れ込む。
『小癪な、事を――!』
激憤を浮かべるように、土蜘蛛は這いながらも手甲で殴打を仕掛ける。
が、その腕を振り切る事が出来ない。
それもまたシェーラの銃技。
幾つもの精霊を飛び交わせ、先んじて動きを抑えさせていたのだ。
「悪行の報いは、大きいぞ」
そしてシェーラ自身が、至近から銃撃。強烈な衝撃の雨を浴びせて、土蜘蛛の躰に風穴を開けていった。
苦悶を滲ませながらも、土蜘蛛は退かない。
もはや逃亡は無為と悟っているのだろう。こちらの戦力の牙城を崩そうと、先陣の只中へ自ら飛び込んでくる。
それは土蜘蛛の膂力と能力を鑑みれば脅威でもあるが――
「通しませんよー」
言葉と共に美しい術扇を振るうのが、叶恵だった。
ゆるりとした動きから生まれるのは、単なる鋭い衝撃波ではない。
そこには叶恵の込めた濃密な妖力が揺蕩っていて……命中と共に土蜘蛛の全身に戒めの力が行き渡り、その躰を麻痺させていた。
『……!』
土蜘蛛は懊悩を見せながらも、身じろぎをしようと足掻く。
だが叶恵もそれを看過はしない。
「今のうちに、出来る事はしておかないとですね」
言いながら手を翳すと――そこに一つ、二つ。幾つもの光が瞬き始めていた。
他でもない、叶恵の白燐蟲。叶恵が力を注ぎ込む事と、その光が大きく、そして眩くなって……一斉に空中へ飛び出した。
白燐蟲はそのまま、剛速で体当たり。自身らが衝撃の塊となるように、強烈な威力で土蜘蛛を空中へ煽り、地へと叩きつけさせる。
だが土蜘蛛もそれで倒れず……麻痺から解かれた事を好機にして再び突撃をしてきた。
今度は麻痺される前に距離を詰めて討ち取ろうという狙いだろう。が――その視覚が突如光に閉ざされる。
それは叶恵が白燐蟲を止めず、目眩ましに向かわせていたからだ。
土蜘蛛は僅かにふらつき、叶恵を見失う。
「うまく行きましたねー」
その頃には、叶恵は余裕をもって土蜘蛛の横合い。
妖力を目いっぱいに込めた術扇で、至近から衝撃波を放ち……土蜘蛛の全身を鋭く斬り裂いていった。
『……朽ちるのは、道だけで良い』
ここで倒れるものか、と。
土蜘蛛は綻びた体で立ち上がり、最後まで殺意を発露する。
だからその毒牙が迫る前に……ロランは咆哮。音弾を真正面から撃ち当てて、その進行を阻んでみせた。
「……今の内に」
「ああ」
ロランに応えたシェーラは銃を連射。煌めく光を舞わせるように、幾重もの衝撃を重ねて土蜘蛛を貫いてゆく。
再びよろめく土蜘蛛が、体勢を直す前に……白燐蟲を飛ばすのが叶恵。体当たりで足を払わせ、大きく転倒させた。
「後はお願いします」
「ええ」
応えるあきが光の柱を降り注がせて、土蜘蛛の体を朽ちさせながら逃げ場をなくすと――そこへ奔ったがナーダが槍を突き刺して。
「最後だ」
「了解しましたぁ」
眠斗が植物の槍を無数に飛ばし、土蜘蛛を霧散させていった。
趣深い飛び石。
幻妖な螺旋回廊。
竹が空に伸びる庭。
景色が元の形へと変遷し、全ての道が幽世に蘇ってゆく。
妖怪達もひとり残らず救われて、ありうべき姿に戻っていた。
彼らの感謝の言葉を聞きながら、猟兵達は自分達の世界へと戻ってゆく。それを見届けた後、妖怪達も自分達の時間へと帰っていった。
そこは美しい幽世の世界。
迷えるものも、そうでないものも。
皆が自身の道を進み、その先を目指してゆく。
成功
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