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オクタゴンより来た男

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #チャンピオン・スマッシャー #力持ち #猟書家

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#猟書家


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●今回いつもとルールが違うのでご確認ください
 その村はアリスラビリンスにいくつもある、愉快な仲間達が暮らす村だった。他の村と比べてとりたてて特徴があるというわけでもないのだが、ただひとつだけ、明らかに他の村と違う所があった。
 それは……。
『ふはははははは!』
 ……猟書家チャンピオン・スマッシャーの襲撃をやたら受けまくっていた事であった。これまで3度襲撃し、猟兵たちの活躍で3度撃退されていたのだが、性懲りもなく4度目の出現をしたのであった。
「お前は……たしかフロンティアから来たんだっけ?」
「箱船って言ってた気もした」
「MSGじゃなかったっけ?」
『どれも違う!私はオクタゴンから来たのだ!』
 |八角形《オクタゴン》から?いつにも増して愉快な仲間たちにとってはわけがわからなかった。ただいつもと違うのはそれだけではなかった。チャンピオンはいつものようにリングとともに現れたのだが、そのリングがいつもの正方形ではなく八角形をしており、しかも周囲にはロープではなく金網が張られていた。
『私は君たちに勝負を挑む!覚悟のできた者から入って来るがよい!』
「いいだろう!俺がやってやる!」
 よく見たら金網の一部にドアがあり、そこから入れるようだ。早速力自慢のひとりの男スティーブが入っていった……が。
『オット!言い忘れていたが一度に入れるのはひとりだけだ。そして勝利するまで、出る事はできないぞ』
 いつの間にか、スティーブが金網に入る時に使ったドアは消えてなくなっていた。そしてリングに上がったスティーブの前には、前座とおぼしき戦士がひとり。間違いなく、チャンピオンの弟子かなんかであり、対戦相手だろう。
「上等じゃねえか!やってやるぞ!」

●繰り返しますがいつもとルールが違うのでよくご確認ください
「そして愉快な仲間たちはひとりずつ戦いに挑むのだが、結局全員負けてチャンピオンの配下になってしまうのだ!」
 今回も大豪傑・麗刃(24歳児・f01156)が担当するようだ。いつものおちゃらけた様子は微塵もなく、きわめてまじめな顔をしていた。
 基本的にはこれまでと一緒だ。チャンピオン・スマッシャーは『無限番勝負ロードオブグローリー』なるユーベルコードを発動する。これは相手の戦意を増大させて逃走を考えられなくし、かつ勝負で負かした相手を強制的に従わせてしまう、恐るべきユーベルコードである。で、逃げる事を忘れた力持ちたちがチャンピオンとその弟子たちに敗北するという流れはこれまでと同じである。だが今回は決定的な違いがあった。
「今回、きみたちはリングに入れない」
 入れない?どういうこと?当然猟兵たちは疑問を抱く。
「リングには既に愉快な仲間がひとり入ってチャンピオンの弟子と相対しているのだ。で、今回のリングは完全に一対一となる仕様らしいので、勝敗が決まるまで次の人が入れないようになってるらしいのだ」
 よくわからないがそういう事らしい。なので当然猟兵も入れない。んで猟兵が介入しないと愉快な仲間達は前の人が負けるたびにひとり、またひとりと突入していき、最後には全滅するという流れらしい。それはわかった。じゃあ猟兵は何をすればいいの?
「ズバリ、リング外から援護すればいいのだ」
 猟兵がリング内に入る事はできないが、それ以外の物、例えばユーベルコードとかなら通す事はできるらしい。そのため外からいろいろとやる事はできるのだという。愉快な仲間を強化するか、オブリビオンを妨害するか、それとも……具体的な方法は、各自の創意工夫に任されている。ただ、一応は|一対一《タイマン》の体裁があるため、直接ダメージを入れる行動は金網を通しづらいらしい。
「で、愉快な仲間が勝利したら、チャンピオンがリングに入って来るんだけど、そうなったらもう猟兵が金網に自由に出入りできるようになるらしいのだ」
 あとはいつも通りであろう。ただし金網の中ということもあり、いつもより狭いので空間を広く使うような事はやりづらいらしい。例えば空を飛んでチャンピオンの射程外から攻撃する、などという事はできないかもしれない。それだけ注意してくれればまあこれまで3回勝ってるし、今回も大丈夫だろう……たぶん。
「本当はわたしが行きたいのはやまやまだが、それやるわけにいかないので、わたしの代わりにみんながんばってほしいのだ!」
 麗刃は改めて、猟兵たちに頭を下げた。かくしていつもよりガチ風味な敵と戦うべく、猟兵たちはアリスラビリンスへと赴くのだった。


らあめそまそ
 よもやの第四弾。らあめそまそです。
 内容としては『箱舟より来た男』『フロンティアより来た男』『MSGより来た男』の続編ですが、これらを見ていなくても参加には問題はございません。
 正統派、デスマッチ、エンターテイメントと来て、今回は金網デスマッチ、あるいは総合格闘技な感じになります。

 プレイングボーナス(全章共通)……力持ちと一緒に試合に参加する。

 しつこいようですが再度書きますが、第1章では猟兵はリングに入れません。リング外から金網越しに愉快な仲間を援護してください。なお第1章は形式上集団戦ですが、全部かけてひとりの相手を倒していただく、実質ボス戦の形となります。そのため「愉快な仲間が敵をひとり倒した時点で猟兵が代わりに入る」事は不可能です。第2章ではいつも通り普通に戦えます。
 愉快な仲間は種族およびジョブ力持ちのユーベルコードのいずれか片方を使用できます。必要があればプレイングで指定してください。

 もっと愉快な仲間達:戦闘力のない、レベル×1体の【陽気な小人達】を召喚する。応援や助言、技能「【トンネル掘り】」を使った支援をしてくれる。
 びったんびったん:レベル×1tまでの対象の【尻尾や足】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。

 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『量産型機甲戦乙女『モデル・ロスヴァイセ』』

POW   :    モード・ラグナロク改
自身の装備武器を【徹底殲滅モード】に変え、【攻撃力】を上昇させると共に【防御貫通】能力と【高速連射】能力を追加する。ただし強すぎる追加能力は寿命を削る。
SPD   :    ヴァルキュリアバラージType-S
【最大速度レベル×100km/hでの飛翔】から、戦場全体に「敵味方を識別する【ミサイルの乱射】」を放ち、ダメージと【煙幕による命中力と回避力の低下】の状態異常を与える。
WIZ   :    高速狙撃光線銃『ミストルテインII』
【大型の狙撃銃を呼び寄せ装備すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【超高速のレーザーによる狙撃】で攻撃する。

イラスト:十姉妹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●【重要】プルミエールは出てきません
 繰り返しになりますが、状況を説明させていただきたい。
 猟兵たちが到着した時、愉快な仲間の力持ちスティーブは既にロープの代わりに金網が張ってあるリング内に入っており、対戦相手と相対している。猟兵はリング内に入れないので、なんとか外からスティーブを援護しなくてはならない。ただ一対一の状況という関係上のせいか、ユーベルコードか否かに関わらず、直接ダメージを与えるような行動は金網を通しづらくなっているらしい。が、それ以外ならわりとなんとかなるらしい。
 敵は今は亡き猟書家ロスヴァイゼの姿をしており、オリジナルには及ばないとはいえ、かなりの実力の持ち主だ。どうやらチャンピオン・スマッシャーに破れて弟子にさせられたらしい。猟兵の援護を受けたとしても非猟兵ではひとり倒すのがやっとだろう。ただ、ひとり倒しさえすれば、チャンピオン・スマッシャーが出てきて第2章突入となる。

 敵の能力は以下の3つだ。チャンピオン・スマッシャーの性質上、本来の能力から格闘技風のアレンジが加えてある。
【モード・ラグナロク改】は自らを超絶強化して攻撃力を上げるものだ。きわめてわかりやすい。寿命を削るデメリットはあるが、短期決戦ではたいしたデメリットにはならないだろう。
【ヴァルキュリアバラージType-S】は超高速で動きミサイルぽい技をかましてくる。金網の中という狭い場所では速度上昇はたいしたメリットにならないかもしれないが、速いのは強いのだ。
【高速狙撃光線銃『ミストルテインII』】は大型の狙撃銃ぽい技で敵を狙うものだ。近接戦で狙撃銃は効果が薄いかもしれないが、まあたぶんなんかの近接技に変更されるのだろう。
 いずれの能力も強力な上、猟兵が直接戦えないというきわめて制限された状況ではあるが、そこはそれ。皆様の創意工夫に心より期待するものであります。
ニコリネ・ユーリカ
この村に来るのも4度目!もう里帰りの気分
両親より会ってる友達に事情を聴いてリングへ
金網の檻に入っていく勇士を歌で鼓舞して送り出すわ


征けよスティーブ Let'sゴーファイッ!
征けぬ私の代わり 愛を抱き リングを踊って
愛し村を守るため マットに赫々と薔薇を咲かせるの~

――そう、咲かせるの!
UC製の温室から取り出した植物の種を金網の隙間へサンシャIN!
光属性の魔法を照らして成長させ、金網中に蔓を絡ませる
私に代わってこの子が援けるわ

必殺技は「くっっっさい息」
貴女がお店の花を買ってくれるまで浴びせるわよ(わるい顔

えっスティーブも臭い?
金網に繁茂した蔓をずらして穴を作るから
ここから新鮮な空気を吸ってね!



●ハメ技
「この村に来るのも4度目!もう里帰りの気分!」
 チャンピオン・スマッシャーによる過去4回の襲撃全てに対処したニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)にとっては、これはもう慣れた状況と言っても過言ではなかった。たしかに3回目の時に既に故郷言ってた気がするから、4回目ともなると、それはもう。
「お!来てくれたんだ嬢ちゃん!」
 当然村人たちとも顔見知りであった。ニコリネにとっても親の顔より見た知り合い……ってそれはさすがにもうちょっと親の顔を見ようよと言いたくはなる。なんらかの原因で見られないのだったらごめんなさい。
「って、もう始まってるのね」
「そうなんだよなあ」
 村人から話を聞き、事前情報が間違ってない事は確認できた。既に愉快な仲間の力持ちスティーブはリング内に入っており、敵である【量産型機甲戦乙女『モデル・ロスヴァイセ』】……長いな。以下『敵』で。ともあれ敵と相対している。
「容赦しないぜ!かかってきやがれ!」
『不可解です、口を動かす前に来ればいいものを』
 敵は既に【モード・ラグナロク改】を発動しており、やる気十分……なのだろう。なにせオリジナルのロスヴァイゼと同じで無表情の上に口調からも感情が感じられないので詳細はわからない。
「本当に手は出せないのね」
 ニコリネは改めて状況を確認した。リングを覆う金網はスキマだらけに見えるが、事前情報によれば攻撃は通しづらいらしい。そしてたしかに自分が入るための扉などは見当たらない。ならばニコリネが行う事は……
「せめて勇士を歌で送り出すわ!」
 なかなか妥当な選択ではある。昔から戦いに挑む戦士を音楽で激励する試みは洋の東西を問わず行われてきた事だ。ある時は敵に対する純粋な戦意を高揚させ、ある時は横に並ぶ戦友、あるいは銃後で待つ者のために戦う意思を固めさせた。


征けよスティーブ Let'sゴーファイッ!
征けぬ私の代わり 愛を抱き リングを踊って
愛し村を守るため マットに赫々と薔薇を咲かせるの~

 バラといえば花言葉は愛。村に対する愛をもって、バラのように華麗に優雅に戦い村を守ってほしい。まさにそんな気持ちのよく表れた歌であった。
「おう!ニコリネ!来てくれたんだ!見てろよ!こいつをやっつけてやるぜ!」
 声が届いたのか、スティーブはニコリネの方を向いて豪快な笑顔を見せた。一方で敵はというと。
『見た所ユーベルコードでもない、ただの音と判断。理解不能です。そも愛などという曖昧なもので戦いの趨勢が左右されるなどというのは論理的には実に非合理的発想です』
 敵の言葉は一理なくはない。実際の所、本当の窮地に陥った時、それこそ生死の狭間に置かれた場合、精神的な物が生還につながる例は数限りなくあるのは確かだが、そもそんな状況に陥った時点で全体的に見れば敗北なのだ。むしろ精神的な物を過剰に重視する方が兵をそんな状況に陥らせやすいような気も……っと。
「うざってえ!そんなにやりたきゃ、本当にやってやるぜ!」
 そうだった。この戦いはそんな大規模な戦いではない。それこそ個人の精神力が左右するような状況の戦いなのだ。改めてスティーブは必殺のびったんびったんをくらわすべく敵に向かう。が、これは明らかに無謀だった。完全武装の相手が万全の準備で待ち構えているのだ。
「ここで私の出番!」
 だがスティーブには猟兵がついていた。ニコリネは魔法で温室を出現させると、そこから植物の種を取り出し、金網の隙間から投げ込んだ。さらに光属性の魔法を浴びせかける。
「サンシャインをサンシャin!」
 ……種や光魔法を金網越しにリング内にinさせる事と、太陽をかけたようだが。サンシャとは一体。ともあれ光を浴びた種は瞬く間に発芽して成長する。
「おおっ!?」
『……何事か、これは』
 さすがにこれにはリング内のスティーブも敵も虚を突かれたようで、戦いをしばし中断するほどに驚いていた。
「言ったでしょ、咲かせるって!」
 ……うん、たしかに歌にそうありましたけど、その花はどう見ても薔薇ではない気がします。なにかもっと禍々しい、凶悪な面構えな感じの花っぽい何かがついておりますねえ。
「ところで」
 ニコリネはリング内の敵さんに呼びかける。
「お花はいりませんか!」
 その言葉をキーワードとしたかのように、凶悪な花が口を開けて体に悪そうな色のブレスを吐いた。
『……ぐうっ!?』
 どうやらかなりの悪臭らしい。機械なら無効と思いきや、人間並みに高度なセンサーを積んだのが裏目に出たのか、あるいは機械を狂わせる作用があるのか、巻き込まれた敵は人間の様に苦しんでいた。
「貴女がお店の花を買ってくれるまで浴びせるわよ」
 実にいい笑顔のニコリネ。【|招かれざる《unbidden》|植物《green》】の名は植物そのものと、それを強引に売りつけようとする押し売り行為の、まさにダブルミーニングになっていたのだった。むろんそのような物を買う意思など敵には生じず、そのためニコリネの言葉通りに猛毒ガスの濃度がどんどん上がっていく……と、いうことは。
「な、なんだこりゃ!たまらんッッッ」
 当然スティーブもくらうのであった。
「あら、ごめんなさいね」
 あわててニコリネは蔦を使って空気穴を作り、激しくせき込みながらもスティーブはどうにか呼吸を行った。痛み分けに見えなくもないが、それでもスティーブの被害は最小限に抑え、敵には打撃を与えられた。緒戦の成果としては上々と言えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「やー、なんか大変なことになってるっすね」
とりあえず、陽気な小人達でアイテムを通せるトンネルを通して欲しいっすね

「さて、自分なりの支援をしとくっすか」
UCで【料理】を作り、スティーブに渡す。ついでに風【属性攻撃】で臭い匂いは除去っすよ
「チキンたっぷりのタコスっすよ。遠距離攻撃ばっかのチキンな敵なんて食らってやるっすよ。まあ、とにかく食うっす!」
料理のリアクションでスティーブの服が弾け飛び、その中から現れるのはメキシカンなレスラースタイルのスティーブ
「さあ、鶏のごとく高く駆け上がるっす!」
戦闘力の上がったスティーブに指示を出して技を繰り出させる
「そこでチキンウィング・アームロックっす!」



●鶏肉フルコース
「やー、なんか大変なことになってるっすね」
 狐面なヒーローマスク、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)はこれまで2度チャンピオン・スマッシャーと戦っている。うち1回はこの村だ。当然今回が3度目の戦い(うちこの村2回)となるわけだが、今回は猟兵がリング内に入れないという変則的な形式に多少戸惑っているようだ。ただ、戸惑いの原因はそれだけではないようで。
「ゲホゲホゲホ……ううっ、やっぱきついぜ!」
 リング内にいまだ漂う悪臭は敵のみならずスティーブをもいまだ苦しめていた。むろん空気穴のおかげでスティーブの被害は敵よりも抑えられてはいたが、それでもまあ、これではちょっと戦いづらいだろう。
「つーことで、みんなにお願いしたい事があるっす」
 まずリカルドがやった事は、場外で応援している愉快な仲間達に頼んで【もっと愉快な仲間達】を使ってもらい、リング下に通る穴を作ってもらう事だった。金網の隙間からは通らないような大きなものをスティーブに渡すつもりのようだ。掘削作業の間にリカルドは別の事をしていた。その渡す物を作っていたのだ。
 穴が掘り終わった時点でリカルドの作業も完了していた。で、まず最初にやった事は風の魔法を使って悪臭を除去する事だった。ちなみに開通した穴に魔法や物は通るが、人間およびそれに類する物、そしてダメージを与える物はなんか謎な力のせいで通らないようだ。このあたりは理屈で考えてはいけない。
「おっと、やっと楽になったぜ!これで戦いやすくなった!」
 喜ぶスティーブだが、条件はむこうも一緒だ……いや。
『愚かです、その悪臭に守られていた事にも気づかないとは』
 一緒ではなかった。相対する量産型機甲戦乙女『モデル・ロスヴァイセ』(長いので以下『敵』)の言う通り、実際、スティーブの方が敵よりも悪臭の影響が小さかった以上、それがなくなった今や、スティーブに与えられていたアドバンテージも消えているのだ。悪臭の影響が消えたところで敵は速度を重視した【 ヴァルキュリアバラージType-S】を発動、高速移動でスティーブをかく乱して一気に決める構えのようだ。
「……だからこそ、自分がここにいるわけっす」
 むろん、リカルドもそれは承知していた。アドバンテージが失われたならば、新たなアドバンテージを付加してやればいいのだ。そして、それこそが穴を掘ってまでリング上にいるスティーブに渡したかった物。リカルドお手製の……
「ん?これは食い物か?」
「チキンたっぷりのタコスっすよ」
 タコス。トウモロコシや小麦粉で作ったトルティーヤという薄焼きパンに肉や野菜などをのせ、あるいははさみ、サルサと呼ばれるトマトソースをかけて食べる料理である。今回はリカルドの言う通り、鶏肉が使用されているらしい。その心は。
「遠距離攻撃ばっかのチキンな敵なんて食らってやるっすよ。まあ、とにかく食うっす!」
「なんだかわからんが、喰えばいいんだな?じゃあさっそくいただきます」
 リング上、それも敵を前にしてではあるが、まあせっかくもらったんだからと早速タコスを口に運ぶスティーブ。次の瞬間。
「!!」
 目がアップになり、かっ!と見開かれた。集中線付きで。
「おおお、こ、これは……新鮮な野菜とジューシーな鶏肉が」

(あまりに長すぎるので中略。たぶんトリップしながら空を飛んだり宙に浮いた食べ物とたわむれたりしているものと思われます)

「……これは……これは……うー!まー!いー!ぞおおおおおおおおおおッッッ」
 天に向けて目と口からレーザー光線を発しながら絶叫するスティーブ。副作用か筋肉が盛り上がり、バルクアップのために服がはじけ飛び、いつしかスティーブは黒パンツ一丁の覆面レスラーと化していた……あれチャンプじゃねこれ。あれは赤パンツか。一方こちらのマスクは食べたものが食べたものである以上、当然鶏を模した感じである。以前どっかのお笑い芸人がやってたような。
「ナイスリアクション!そういうのを待っていたんすよ!」
 実に理想的なパワーアップを果たしたスティーブに大喜びのリカルド。対して……
『……理解不能です』
 あまりに不自然極まる一連の流れに、手を出す事も忘れて見ていた敵さん。だがさすがにこうなっては攻撃を敢行しないわけにもいくまい。
『猟兵、先ほど言いましたね「遠距離攻撃ばっかのチキンな敵」と。見当違いを修正させます』
 言うなり敵さん、高速でケージ内を縦横無尽に動き回ると、両足からスティーブに飛んできた。プロレスでいうミサイルキックだ。どうやらチャンピオンによって強制的に特訓させられて身に着けたようだ。スティーブに一撃を与え、さらに休む事なく飛び蹴りを敢行してくる。まさにミサイルの乱射である。
「負けてられないっすね!さあ、鶏のごとく高く駆け上がるっす!」
「カブローン!」
 しかしスティーブも負けてはいない。リカルドの指示で巨体からは信じられないほどの速度で動き出した。ちなみに飛んでいるのはその巨体だけではなく、理性も飛んでいるらしい。リカルドの指示がなければただただ暴れ回るだけだったことだろう。
「そこでチキンウィング・アームロックっす!」
「カブローン!!」
 そしてついにスティーブが敵を捕らえた。飛び蹴りの足を掴むと、そのままグラウンドに持ち込んだのだ。そして腕を極めにかかる。ダブルリストロックとも呼ばれる関節技だ。
『……ひとつの単語で自らの行動を縛るのは、賢いとは言えない』
「そういう事は勝ってから言うっすよ」
 チキンにはじまりチキンに終わる。冷静なツッコミとも、悔し紛れともとれる敵の言葉を受け流すと、リカルドはさらにスティーブに攻撃の手を強めさせるのだった。始めたからには最後までチキンと、もといキチンと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
またプロレスか!
しかしまぁ、ネタも尽きないもんだねぇ……
まさか金網デスマッチとはビックリだよ。
でもまぁ良いさ、「手」は出さねぇ。
「口」は目いっぱい出すかもしれないけどねぇ!

そうさ、セコンドとしてのアドバイスは通じるんだろ?
だったら『コミュ力』でスティーブを『鼓舞』して戦ってもらおうじゃないのさ!
ま、口先じゃ根性論ばかり言い放つけどね。
もちろんタネは仕込んどくよ。

戦術論……プロレス学に則りつつ勝利を目指したアドバイスは、
スティーブへの|意思疎通《テレパス》で伝えるよ。
獲物は逃すな、敵の力を利用しろ……そして最大のピンチは最大の勝機!
狙いすました一撃を『カウンター』の大技でひっくり返してやんな!



●モップはヅラにはならんだろう
「またプロレスか!」
 ええ、またなんです。猟書家が滅びない限り終わらないのです。そのおかげで今やアリスラビリンスはアスリートアースと並ぶプロレスのメッカなのです。まあ、正統派なのはあきらかにむこうなのですが。
「しかしまぁ、ネタも尽きないもんだねぇ……まさか金網デスマッチとはビックリだよ」
 かく言う数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はこの村に来るのは2回目だった。しかし今回は、前回とあまりに違うルールが違い過ぎて、こんな言葉も出てくるというものです。しかもただの金網ではなく、猟兵が敵に直接手を出せないという変則ルール。このあたりの無軌道ぶりは、さすがは猟書家がらみといったところであろう。
「でもまぁ良いさ、手は出さねぇ」
 オブリビオンの決めたルールなら、基本それに従わなければならないのが猟兵のつらい所である。その上で敵を破る事にカタルシスがあるとも言えるのだが。そんなわけで、多喜も覚悟を決めたようで、はっきりと言った。
「『手』は、な。『口』は目いっぱい出すかもしれないけどねぇ!」
 にやりと笑いつつ。

「へん!大したこたぁねえな!」
 リング上の戦いは徐々にスティーブ有利に傾いていた。が、いまだ相対する【量産型機甲戦乙女『モデル・ロスヴァイセ』】(長すぎるので以下『敵』)は、少なくともその表情は冷静なままであった。
『外部からの介入があったとはいえ、一般人にしてはしぶとい相手』
 とはいえ不利な状況にある事は理解している。ならばやる事は戦術の変更だ。これまで行ったのは、身体強化、機動力による空中殺法である。敵はいまだ出していない第三の戦術を用いる事にした。すなわち、一撃必殺の技に賭ける事である。敵は上半身をかがめると、両腕を前に出した。レスリングの構えなのだが、そんな事はスティーブにはわかっていない。
「なんだそのへっぴり腰は?」
 有利な事もあり、真正面から敵に殴りかかりに行くスティーブ。だがそこに。
「スティーブよけろーっ!!!」
「!?」
 多喜の声が飛んだ。反射的に相手から間合いを離しながら横に逃げるスティーブがいまいた場所を、レーザー光線のような超高速のタックルが通っていった。
「……あっぶねえ……」
 さすがのスティーブも冷や汗をかいていた。あのまま無警戒に突っ込んでいたら、敵の超高速タックルに足をとられ、そのままグラウンドに持ち込まれていた事だろう。
『余計な邪魔が入りましたか、ですが次はありません』
 敵はすかさず次撃の構えに入る。それに対応して身構えるスティーブに、多喜はリングサイドから声をかけた。
「安心しろスティーブ!あたしがセコンドについてやるから百人力だろ!」
「……お、おう!それでどうすりゃいい?」
 タックルかわせた事があったので、スティーブも多喜をすぐ信頼したわけだが、しかしそれに続いたのは。
「度胸と根性だ!」
「……え?」
「世の中気合さえ入れれば大体なんとかなる!」
『愚かな』
 敵は嘲笑するでもあきれるでもなく、表情を変える事もなく冷静に切って捨てた。
『そんな根性論でどうにかなるなら誰も苦労などしません』
「やってみなきゃわかんないだろ!」
 言ってのける多喜だったが……

(……聞こえるか……)
(……え?脳に直接?)
 実際は多喜とて根性論でどうにかなる敵ではない事ぐらいは分かっていた。威勢のいい事を言っているその裏ではきっちり思念派波を用いてスティーブにまっとうな指示をしていたのだった。
(いいか、これからあたしがプロレス学に則った戦術論でアドバイスするから、しっかりついてこいよ)
(お、おう!)

『今度こそ逃がしません』
(来るぞ!高速タックルだ!猟兵戦法No.8!敵の力を利用しろ!)
 多喜の指示を受け、スティーブは低い姿勢で高速で突っ込んできた敵に上からかぶさると、そのまま潰しにかかった。格闘技で言う所のがぶり、あるいはスプローリングポジションだ。このまま4点あるいはバックマウントまでもっていければスティーブは大幅に有利になる。
『……まだです』
(相手が抵抗するぞ!猟兵戦法No.1!獲物は逃がすな!)
 そうされてはたまらないとなんとか逃れようとする敵。だがスティーブは上から細かい打撃を入れる事で相手の動きを封じる。徐々に敵の動きが鈍り、とどめとばかりにスティーブは後方から裸締めを仕掛けようとする、が。
『……それはいささか無理があります』
 敵はまだ生きていた。スティーブが技をかけようとした瞬間に体を入れ替え、素早くスティーブの後方に回ったのだ。逆にバックマウントをとられる形になったスティーブ。一転して窮地に陥ってしまった。
「くっ!?」
(あきらめるな!猟兵戦法NO.7!最大のピンチは最大の勝機!)
「おおうっ!」
 多喜の言葉に気力を震わせたスティーブは、敵を背中に張り付かせたまま起き上がってみせたのだ。このあたりは力持ちの面目躍如である。そしてそのまま後方に走ると、敵を金網に激突させた。
『くっ……予想外の力です』
「そこだ!やっちまえ!」
「おう!獲物は逃がすな、だったよな!」
 ひるんだ敵をつかむと、必殺のびったんびったんをくらわすスティーブ。今や戦況は完全にスティーブに傾いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
「待ってたわよ!チャンピオン!」
う~ん、この人の技も受けてみたかった……なんて言ってもしょうがない、しっかりアドバイスしていきましょう。ぐぬぬ。

「要は、手を出しちゃいけないだけよね。」
UCを使ってリング上に真っ黒いぷよぷよを多数召喚、スティーブにクッションやジャンプ、隠れるのに利用するように伝えるわ。ジャンピング・びったんびったん、なんてどうかしら。
敵のタックルを妨害したり、狙撃の視界を遮ったりするのにも使うわ。

「うん、その苦痛の先にこそ、生きる道はあるわ!」
スティーブが攻撃を喰らったり喰らわせたりするたびに羨ましい顔をする。所々無茶なことを言うので適当に流して聞いて。



●耐えの美学
「待ってたわよ!チャンピオン!」
 と言いつつアリスラビリンスに降り立ったヴィルデ・ローゼ(苦痛の巫女・f36020)は、この村に来るのは2回目だ。どうやら前回のチャンピオンとの戦いはヴィルデにとってもかなり刺激的なものであったようで、わりとチャンピオンの襲撃を楽しみにしていたようだ……が。
「う~ん、この人の技も受けてみたかった……」
 最初にやる事はセコンド業務と聞き、心底残念そうな顔をしたヴィルデ。苦痛の女神をあがめる巫女として、確かに今リング上にてスティーブと相対している【量産型機甲戦乙女『モデル・ロスヴァイセ』】(以下『敵』)は、ただでさえ重武装に見えるし、そもそも猟書家の量産型なので間違いなく強そうだしと、できることなら自分がリングに上がって相対したい気持ちはかなり強いようであった。だがまあ言っても仕方のない事だ。苦痛を味わう事は、この後で来るであろうチャンピオンとの戦いでいくらでも体験できるだろうし。
「なんて言ってもしょうがないわ、しっかりアドバイスしていきましょう……ぐぬぬ」
 とりあえず、今は気持ちを切り替えて、リング上で戦うスティーブに助言しつつ、適度に介入して勝利に導く事にしたのであった……未練はどうしようもなさそうだが。
「要は、手を出しちゃいけないだけよね」

 リング上ではスティーブが有利に立ち回り、敵は機械であるにもかかわらず、肩で荒い息をついていた。
「おう、どうした!存外大した事なかったな!」
 言ってのけるスティーブだが、むろんこの優勢が猟兵の援護あってのことぐらいはわかっていた。それでも有利な時に威張って見せるのは精神的優位を得る点でも重要な事もあるのだ。
『もう勝ったつもりでいるのですか、これだから愚者は度し難い』
 敵の言葉は虚勢であるが決して虚偽ではない。もともとの一般人とオブリビオンの差はあまりに大きく、そのため今は優勢なスティーブであっても少しでも気を抜いたら一瞬で状況をひっくり返されてもまったく不思議ではないのだ。
「よっしゃ!行くぜ!」
 それでも結局スティーブのやる事は変わりない。真正面から突っ込み、必殺のびったんびったんを食らわせるだけだ。むろん敵としてもだまってそれをくらうわけにはいかない。
『またそれですか、馬鹿の一つ覚えとは、まさにお前の事』
 突っ込んでくる相手にはカウンターが有効と、敵は【高速狙撃光線銃『ミストルテインII』】を発動させた。大型の狙撃銃が遠距離の敵を正確に狙い撃つがごとく、量より質を重視した一撃必殺の技が狙いだ。例えば今で言うなら、無防備に真正面から突っ込んでくる相手に対し、低い姿勢でタックルを狙って足を払い、グラウンドに持ち込んで関節を折るか絞め落とすかするのだ。そう、こんな風に……

「おわ!?」
『?』

 その時不思議な事が起こった。
 スティーブの足を払うかと思われた敵のタックルが空を切ったのだ。スティーブの体は敵のはるか上にいた……走っていたはずのスティーブが次の瞬間宙を舞っていたのだ。ジャンプをするような予備動作もなく、である。
「うまくいったわ」
 その理由をリングサイドにいるヴィルデだけが知っていた。つい先刻までスティーブがいた所には黒いぷよぷよしたものがあった。ヴィルデが召喚した夜の精、夜の静寂の具現化である。これは極めて柔らかく弾力があり、それ自体に戦闘能力はないが応用力が高く、様々な用途に使用できるのだ。
「のわああああああ……あいて!」
 結果的に必殺のタックルは回避できたとはいえ、予期せぬジャンプでは態勢を保てるものでもなく、スティーブは受け身を取れずにリングへと落下した。夜の精が受け止めたので高さの割にダメージは抑えられたようではあるが、それでも痛い物は痛いようで。
「あててててて……」
 後頭部をさするスティーブを見ながら、ヴィルデはぽつり。
「……今度、私もあれやってもらおうかしら」
 ……実に苦痛の巫女らしい感想を口に出したのだった。
「え?」
「油断しないで!来るわよ!」
「お、おう!」
『わけのわからない現象がそう何度も続くはずがあるまい』
 再度タックルを狙う敵。だが。
「頼むわ!」
『?……!!??』
 ヴィルデの合図で、夜の精は今度は敵の顔面に張り付いたのだ。それでも超高速タックルはスティーブを捉え、リングに倒すまでは行ったが、視界のみならず聴力や嗅覚までも封じられたとあっては関節技にまでは持っていくのは難しい。どうにかスティーブはパワーを活かして関節地獄からは逃れたが、倒れた時や関節を極められかけた際の痛みに顔をややしかめていた。
「うん、その苦痛の先にこそ、生きる道はあるわ!」
「え?」
 実にうらやましそうな顔をしながらヴィルデが言うのは果たしてアドバイスなのだろうか。まあ痛みを乗り越える事で人間成長するものではあるのでまるきり間違いではないのだろうが。
「ともあれ!今が好機よ!決めちゃいなさい!」
「お、おう!!」
 敵は夜の精をなんとか顔から剥がそうともがいている。剥がされる前に決着をつけるべきだ。そう判断したスティーブは全力で敵に近寄ると、今度こそ持ち上げて何度もリングに叩きつけた。再度、必殺のびったんびったんが炸裂したのだ。
『……くっ……猟兵の介入があったとはいえ、不覚……』
 度重なる攻撃に、今度こそ敵は動けなくなった。そしてリングサイドでは。
「……ああ……あれ、私にもやってほしい……」
 ヴィルデが心底うっとりとした顔をしていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『チャンピオン・スマッシャー』

POW   :    グローリーチャンピオンベルト
自身の【チャンピオンベルト】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    キス・マイ・グローリー
【プロレス技】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ   :    アイ・アム・チャンピオン
自身の【攻撃を回避しないチャンピオンとしての信念】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。

イラスト:草間たかと

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●しつこいようですがプルミエールは出てきません
『くっ!私はまだ……』
 もはや勝ちの目のないにも関わらず、いまだ戦う意思を失っていない【量産型機甲戦乙女『モデル・ロスヴァイセ』】だったが。
『お前はよくやった』
 いつの間にか、チャンピオン・スマッシャーがリング内に入ってきていた。
『ボ、ボス、私は』
『あとはゆっくり休むがいい!』
『!!??』
 制裁のパンチ一発を受け、量産型ロスヴァイセはリング外へと飛んでいった。ちなみにその時一瞬だけ金網が開き、すぐに閉じたらしい。そしてリング上のチャンピオン・スマッシャーはおおいに吠えた。
『お遊びはここまでだ!ここから先はこの私!チャンピオン・スマッシャーが相手になろう!我と思う者はかかってくるがよい!!』
 こうなったらさすがに一般人のスティーブには荷が重すぎる。幸いにも、本来対戦者以外が入れないはずの金網にチャンピオンが無理やり入った事により、猟兵もまた金網内に自由に入る事ができるようになったようだ。今度こそ猟兵が大暴れする時だ!!

 チャンピオン・スマッシャーの能力は以下の3つだ。
【グローリーチャンピオンベルト】は自分の攻撃回数を9倍にする恐るべき技だ。そのうち1度は味方を攻撃しないと寿命が減ってしまう弱点があるが、チャンピオンはリング外の量産型ロスヴァイセを殴る事でデメリットを回避するらしい。なので実質的には攻撃回数8倍ではあるが、それでも十分な脅威だろう。
【キス・マイ・グローリー】はプロレス技を当てた相手を家に帰るかダメージを受けるかを選ばせる技だ。本来【無限番勝負ロードオブグローリー】との合わせ技で、相手は家に帰る事を選ばずダメージを受ける、というものだが、そも猟兵が逃げ帰るわけにもいかず、今回は仮に家に帰る事を選んでも天井に衝突した後リングに叩きつけられ結局ダメージとなってしまう。チャンピオンからは逃げられないのだ。
【アイ・アム・チャンピオン】は攻撃をあえて受ければ受けるほどパワーアップするというものだ。実にプロレスラーらしい技である。むろんチャンピオンとて攻撃を受け続ければいつかは力尽きるので諸刃の剣ではあるが、それだけに超絶強化度は非常に高いことだろう。無策で攻撃だけしていては危ないかもしれない。
 以上、どれも強力だ。付け加えるなら金網の外からリング内への攻撃を通さない特性は残っているので、リング外から金網内に一方的に攻撃ということはできない。それでもなおこのチャンピオンを倒さない限り、村に平和は訪れないのだ。その、なんだ。なんとかしてください!
ニコリネ・ユーリカ
めちゃ頑張ったわね、スティーブ!(肩ぽん
金網の外で見守るばかりの私に、これ以上彼に「戦え」とは言えない
だからお願い、私に「戦え」と言って
この村を守る意志を受け継ぎ、私は再び「グレート-O-ハーナ」になる!

UCで王者を倒すに相応しいスーパープロレスコスチュームを出現させ
(ちょっとお着替え行ってきまーす)
持てる全ての技能を使ってチャンピオンに挑むわ

技を受けても私の故郷デンマーク/UDCEには帰らない
花屋を始める時「一人でやっていく」って決めたもの
敗者の姿なんて、今も心配してるママには見せられない
ダメージを堂々と受け取った後、自ら鼓舞して立ち上がり
不利な体格差を寧ろ活かし、機動性で勝負を仕掛けるわ!



●マイフェアレディ
「ようやっと出てきたかチャンピオン!」
 多くの助けをもらった結果であるとはいえ、猟兵でもない身でスティーブはよく戦った。そして量産型ロスヴァイセに勝利した。とはいえ、さすがに限界が近いようで、肩で息をしている状態だった。
「この勢いでお前もやってやるぜ!」
 にも関わらず、その闘志だけは全く衰える様子もない。連戦も辞さない構えだ。これも【無限番勝負ロードオブグローリー】の効果がゆえだろうか。だがそんなスティーブを押しとどめる者がいた。
「めちゃ頑張ったわね、スティーブ!」
 金網の外にいるニコリネ・ユーリカが、スティーブの肩を叩きながらその労をねぎらったのである。
「嬢ちゃん、どうやって手を?」
「そんな事はいいじゃないの!それよりも!」
 本来対戦する両者以外出入りできないオクタゴンリングに、チャンピオン・スマッシャーが無理やり侵入した事で、猟兵もまた金網内に入る事ができるようになった。腕を入れる事ができるのもそのためだったが、それは今説明すべき事ではなかった。それよりも言わねばならない事があるのである。
「お願い、私に『戦え』と言って!」
「え?」
「これまで金網の外で見守ってばかりの私には、これ以上あなたに『戦え』とは言えないわ!」
「嬢ちゃん……」
 この時、スティーブには確かに戦意は残っていた。だがニコリネの情熱と、花屋でつちかわれたちょっとの営業トークは、無限番勝負ロードオブグローリーで増幅されたスティーブの戦意を上回ったのである。
「おう!スマンが後は任せた!あいつをぶっ飛ばしてやってくれ!」
「ご用命、たしかに承りました!」
 戦い抜いた者だけに許される笑顔と、村を守る使命に満ちた者の笑顔。笑顔が交錯し、ふたりは手と手をぶつけあった。ここに本来シングルマッチではありえないはずのタッチによる交代が成立したのである。

『来るか猟兵!』
 本来【無限番勝負ロードオブグローリー】の影響で倒れるまで戦い続けるはずの相手が普通に金網外に出た事は、先に自分が乱入した事もあり、チャンピオン・スマッシャーはそれをあっさりと認めた。猟兵と戦えるとなればさらに僥倖。これを打ち倒す事ができれば、一般力持ちよりも量産型ロスヴァイセよりもさらに優秀な手駒を入手する事になるのだ。
『相手にとって不足はなし!さあ存分にやりあおうぞ!』
 意気込むチャンピオンだったが……
「あ、ゴング待って!」
『何?』
「ちょっと準備をね」
 言うなり、ニコリネは金網を通る事なく、そのままどこかに行ってしまった。
『……』
 ひとり残された形になったチャンピオンだったが、猟兵がそのまま戻ってこないなどという事は考えられない。宣言通りに準備を行い、いずれはリングに戻って来るだろう。直立不動で腕組みをしたまま、チャンピオンはその時を待った。
 そして。
「デービデビデビ!」
「おお!!」
 現れたその姿に観客は沸いた。前回大暴れしたグレート-O-ハーナが村に再臨したのである。そして今度こそ金網に入ってきた。その姿を見たチャンピオンは、しかし小揺るぎもしない。
『ふん、見た目は立派だが、実力はどうかな?』
 どうやら前回の戦いの記憶はないようだ。だが外見に関しては認めるような発言をしたあたり、今回総合格闘技のテイストで現れたチャンピオンだったが、やはり根っこはプロレスラーだったようだ。
「やってみればわかるわ!」
 かくして今度こそゴングが打ち鳴らされ、ニコリネとチャンピオンは中央で向かい合う。普段のようながっぷり四つではない。間合いを取り、細かい打撃を出しながら組み付く隙を伺う展開だ。
『ほう、それなりにできるようだな』
 チャンピオンはニコリネの技術を認めざるを得なかった。これこそニコリネのユーベルコード【Fair Lady N】の効果だった。言語学者の指導によって花売り娘が淑女へと変わるごとく、スティーブの依頼を受け入れた事により、持てる技能が大幅に強化されるのだ。
「当然!」
 豪語するニコリネはその後も互角に渡り合っていたが、それでももともとの能力と格闘の技術に優れるチャンピオンは、ついにニコリネからテイクダウンを奪い、馬乗りになる。どうにか両足を突っ張って耐えるニコリネだが、このままマウントポジションまでもっていかれたらまずい事になる。
『さて、ここからどうするかね?猟兵』
 チャンピオンは単にどうやってこの状況から逃れるかを問うているだけではない。タックルからの一連の動作により、ユーベルコード【|Kiss My Glory《我が栄光に屈服せよ》】が発動するのだ。むろんニコリネの答えは……
「敗者の姿なんて、今も心配してるママには見せられない!」
 帰宅なんてできるものではない。ニコリネの故郷はUDCアースのデンマークだった。家を出た時、これからは自分ひとりでやっていくと決めたのだ。最初は移動販売車を買い、やがて農場を買い、まだまだ先は長いがそれでもどうにかこうにかやっているのである。道半ばで故郷に帰るわけにはいかないのだ。親の顔問題はなんとなく事情把握できたところで、帰還を拒否した事でダメージが襲い掛かって来る。
「くっ!!……でも、おかげで気合が入ったわ!」
『何!?』
 体格差を活かし、ニコリネは素早くチャンピオンの巨体から逃れた。そしてチャンピオンの剛腕に取りつくと、全身の力を込めて関節技を極めたのである。その素早さたるや、|貴婦人《Fair Lady》の名を冠するスポーツカーのごとく。Nを倒したらZとなる。アルファベット最後の文字、それすなわち、究極の意味。
『くっ!おのれ!』
「デービデビデビ!」
 どうにか関節技をはずしたものの、チャンピオンの右腕に与えられたダメージは決して小さくない。ニコリネ、いやグレート-O-ハーナの勝ち誇った高笑いがリング内に響くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
「ほんとにまあ、性懲りも無くきたっすね〜」
違う個体とは分かっていても、そんな感想を抱かざるを得ない

「さて、リングロープはなくとも『ロープ際の魔術師』の妙技、とくとご覧あれっすよ」
リングロープの代わりに金網を蹴って飛び回り、【空中戦】を仕掛ける
「アンタの弟子とどっちが上っすかね?」
などといって飛び回るが、おそらく手数の問題で最後は捕まる。そうなったら、後続のために相手の体力を削りにかかる
「後は、任せたっすよ」
そういって【忍法・微塵隠れの術】で自爆
「こっからは、応援に回らせてもらうっすよ〜」
本体のお面はいつの間にか穴などを通ってリング外に脱出しており、呑気にな感じで応援に回っとく



●忍者戦法
「ほんとにまあ、性懲りも無くきたっすね〜」
 リカルド・マスケラスがそうこぼしたくなるのもわからなくはない。なにせ、なにせだ。チャンピオン・スマッシャーがこの村に来たのは4回目だが、アリスラビリンス全部を合わせれば9回目なのだ。8回負けてもなお現れるその執念深さは敬意に値するかもしれないが、なにせ猟書家なのでこんなやつに敬意なんぞ示したくはないのでここはあきれるのが正解なのだろう。まあオブリビオンなので9回来たといっても、いわばオリジナルが骸の海に存在するコピーみたいなものだから、ある意味では本人が9回来たともいえるし、逆に9回全員別人ともいえるのはなんとも面倒くさいもので。いずれ時が来ればチャンピオンも本当に滅びる事があるのかもしれないが、その時まではまだまだ現れ続けるんだろう。
 ともあれ、リカルドは金網に入っていった。青い髪で白い肌の、どこか軽薄そうな笑顔の青年であったが、あくまでリカルドはヒーローマスクであり、本体は頭部にある狐面の方である。スティーブにかぶってもらう手もあったかもしれないが、さすがに消耗しているスティーブにこれ以上動いてもらうのも気が引けた。それにスティーブではできない技もあるというものだ。
『ふん』
 どちらかというと細身な感じのリカルドの……本体?分身?まあいいや。ともあれ体を見て、鼻で笑ったチャンピオンだったが、これは威圧、あるいはチャンピオンとしての威厳を見せる意味が大きいだろう。むろんチャンピオンだって猟兵を体格で判断してはいけない事ぐらいは重々承知だろうし、実際先刻体格では圧倒的に勝っているはずの相手に不覚をとったのだ。
「人を見た目で判断すると痛い目見るっすよ」
『まあよいわ、かかってくるがいい』
 改めてチャンピオンはリング中央でファイティングポーズをとる。それに対しリカルドは真っ向からぶつかる事はしなかった。小兵なら小兵ならではの戦い方があるのだ。
「さて、リングロープはなくとも『ロープ際の魔術師』の妙技、とくとご覧あれっすよ」
 言うなりオクタゴンリングの中を縦横無尽に駆け回り始めたのだ。チャンピオンが追おうとしても、その機動力を存分に活かして影すら掴ませない。ようやっと追い詰めたと思ったら、なんと金網を蹴飛ばして高々とジャンプ、画面端から容易に脱出してみせる。
『おのれ!たしかに逃げ足だけは速いようだが、逃げてばかりでは勝てんぞ!』
「心配ご無用っす、じゃあそろそろ行かせてもらうっすよ」
 激高するチャンピオンに、ついにリカルドは攻めに転じた。再度、三角飛びでチャンピオンの頭上を飛び越えると見せかけて、急降下で強烈な飛び蹴りをくらわせてみせたのだ。
『ふん!ちゃんと蹴れるではないか!だがまだまだ蚊が刺したようなもの!』
「蚊トンボとて2回刺せばライオンとて殺すっす、すなわちアナフィラキシーショックっすよ」
『ぬう、ポエット!』
 チャンピオンの挑発に対し、ニンジャのように見事な返しを見せるリカルド。むろん2回ぐらいで倒せる相手でないことぐらいはリカルドも承知していたが、ここは気合で負けない事が重要なのだ。その後もリカルドはヒットアンドアウェイで細かい打撃を与え続けた。華麗にチャンピオンの攻撃を回避しているように見えるが、実際は楽な事ではない。チャンピオンの苛烈な攻撃はただでさえ回避が困難な上に、一度捕まった終わり、というプレッシャーが常に付きまとっているのだ。一方でチャンピオンもリカルドを捕まえられない事へのいら立ちは徐々に募っていた。掴みさえすれば勝負が決まる事、それを成し遂げられない事への、ストレス。そしてついにチャンピオンは爆発した。
『ええいちょこまかと!こうなったら一気に勝負を決めてくれる!』
 チャンピオンが吼えると同時に、腰のベルトが輝き始めた。チャンピオンベルトは栄光の象徴であり、光輝いた事でその栄光をベルト自らが示しているように、全ての観客が思った。そしてそれはただのハッタリではない。
『覚悟しろ猟兵よ!』
 チャンピオン必殺のユーベルコード【グローリーチャンピオンベルト】の効果で、その攻撃回数は9倍になる。そして9回攻撃でチャンピオンはリカルドを捕らえんと……
『グワーッ!』
 ……訂正。9回のうち1回は場外の量産型ロスヴァイセに行ったようだ。8回攻撃がリカルドに襲い掛かる。正直チャンピオンの力なら8回も9回もさほど違いはないような気はするのであった。そしてついにチャンピオンはリカルドにタックルを決めたのである。
『……よ、ようやっと捕まえたぞ猟兵』
「あちゃー、ベルトが光ったのは伊達じゃあなかったっすねえ」
 マウントポジションをとられたという圧倒的不利な状況にも関わらず、相変わらずの調子を崩していないリカルド。虚勢か、それとも……どっちにせよチャンピオンのやる事は決まっていた。顔面に容赦のないパンチを降り注ぎ、相手が嫌がった所を前から絞めるか、背中を向けた所を後ろから絞めるか。
「……みんな」
 どこか吹っ切れたような、すがすがしい顔で、リカルドは場外の猟兵たちを見た。
「後は、任せたっすよ」
『!!??』
 その様子に何かを察したのか、チャンピオンは飛びのこうとしたが。
「遅いっす!」

 大 爆 発

『……お、おのれ!!』
 近接での自爆攻撃。全てはこのための布石だったのだ。戦闘不能にこそ陥らなかったものの、これにはさすがのチャンピオンもダメージは大きい。そして当のリカルドは爆発して死体も残らなかったのか、その姿はリング上に見当たらない……と、思いきや。
「こっからは、応援に回らせてもらうっすよ〜」
『き、貴様!いつの間に!』
 忍法・微塵隠れの術。爆発で目くらましをする間に自分は地面に潜って隠れる術である。決して相討ち狙いの自爆技ではないのだ。リカルドは倒れる事なく生き残り、それでいて敵には大きなダメージを与え、きっちりと自分の役割を果たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルデ・ローゼ
さあ、行くわよチャンピオン!
一度や二度の負けでおしまいなら、そろそろあなたも終わりじゃないかしら!?自分に甘いのはいけないわよ?と挑発。

序盤はお互い身体が温まるまで打ち合いといこうじゃない?UC「神気纏装」を使ってあらゆる耐性と適応を4桁レベルにして技の応酬を愉しむわ。

身体も会場も温まったところでUC「神霊領域」を使用。此れより此処は、我が神域。オクタゴン中に茨の蔓が蔓延るわ。
この蔓に打たれると、チャンピオンはダメージ、私は回復という寸法ね。

終盤は大技デスティーノを決めていきたいわね。



●痛みに耐えてよく頑張った
 今金網を通り八角形のリングに上がったヴィルデ・ローゼこそ、この試合を最も楽しみにしていた人間のひとりかもしれない。苦痛の女神の巫女であるヴィルデは、先ほどのスティーブと量産型ロスヴァイセの試合の時も、ダメージを受ける両者をちょっと特別な目で見ていたぐらいである。そんなものだから、先刻までチャンピオンが腕折られそうになったり大爆発に巻き込まれた時も、なんやかやな感じの視線を向けていたような気がしないでもない。
「さあ!行くわよチャンピオン!」
 ともあれヴィルデはチャンピオンに向けて堂々と言い放った。布地面積が小さすぎて素肌部分が多少多すぎる気がする衣装に観客の目が釘付けになるが、むろんチャンピオンはそのようなものに動揺などはしない。
『ふん!威勢だけはいいようだが、その細腕でどこまで私に盾突く事ができるかな』
 確かにヴィルデの腕はずいぶん細いようだ。他はそうでもない感じがしなくもないが。そして体つき以上に細くないのが、精神だった。チャンピオンに言われっぱなしではなく、逆に言ってのけたのだ。
「一度や二度の負けでおしまいなら、そろそろあなたも終わりじゃないかしら!?自分に甘いのはいけないわよ?」
 あからさまな挑発である。あるいはこれでチャンピオンの攻撃がより苛烈になる狙いがあったかもしれない。それに対しチャンピオンも再度言い返す。
『何を言うか!私は負けた事などないわ!』
 このあたりは、この第2章単体でみるなら、チャンピオンの言い分は自分はあくまでダメージを受けただけであり、まだ敗北したわけではない、という事なのだろう。一方で猟兵側としては、猟兵ひとりの獲得した青丸が赤丸より多い以上、その場面では勝利という事になるだろうか。プロ野球で言うなら、ペナントレース143試合の全結果をもって勝敗を決めるか、あくまで1試合ごとの結果でみるか、という差であろうか。あるいはシナリオ単位で見る場合、チャンピオンはこれまで8(うちこの村3)回負けているが、チャンピオンとしては最後に勝利すればよいのであり、それまでは何度骸の海に戻ろうがそれは敗北ではないのかもしれない。まああんまり屁理屈ばっかり言っても仕方ないのでこのあたりにしておくが。
 いずれにせよ、これ以上は口を動かす段階ではない。肉と肉、骨と骨、魂と魂をぶつけ合う時だ。
「苦痛の女神よ、汝の褜を此処へ!」
 早速ヴィルデはユーベルコード【|神気纏装《セイクリッド・ブレス》】を発動させた。ちなみに『褜』はエナあるいはホウと読み、赤ちゃんが産まれた時に一緒に出てくるもの、すなわち胎盤や臍の緒やその他もろもろを指す。後産とも言う。
『ほう、何を見せてくれるのかな?面白い、やってみたまえ』
 チャンピオンは相手の足を狙ったローキックから入った。相手が女性だろうと露出多かろうとまったく容赦のかけらもない。ローキックの連打で相手の足を殺し、動きを封じてから料理する、格闘技では定番といえるムーブだ。
「なんの!」
 それに対し、痛がる様子すら見せず逆に蹴り返すヴィルデ。なんとなく観客が違和感を覚える中、下段蹴りのみならず中段の蹴りや殴打も交えた激しい打撃の応酬が為された。チャンピオンの剛腕と剛脚から繰り出される打撃が強烈なのは当然として、ヴィルデの攻撃も細腕とはいえ猟兵なので痛くないはずもなく、互いの肉体が赤く染まっていく。
『なるほど』
 さすがに違和感を覚えたチャンピオンが口を開いた。
『なんだかわからんが、それが貴様の技か』
 チャンピオンが触れたのはヴィルデの打たれ強さであった。人間誰しも苦痛を覚えれば実際のダメージは別にして動きが止まる。指先にほんの少し傷がついただけでも行動が大きく阻害されるものなのだ。それなのにヴィルデはチャンピオンが渾身の打撃を何発も叩き込み、さらに【キス・マイ・グローリー】の力で追加のダメージを与えているにも関わらず、その動きは戦闘開始時と変わる事がない。
「……やっと……気付いたみたいねぇ……」
 そしてヴィルデはチャンピオンの言葉を肯定した。実際ヴィルデの激痛耐性はすさまじい数値になっていたのである。【|神気纏装《セイクリッド・ブレス》】の効果は、あらゆる『耐性』『適応』の技能レベルの超上昇である。別の猟兵が技能レベル上昇させていたが、その数値は一律100だ。それに対してヴィルデのはレベル×10。現在ヴィルデのレベルが108なので……技能レベル1080。おいおい。そりゃあどんなに痛くても耐えるだろうなあという数値である。
「……いい攻撃だわぁ……」
 ただ、痛みに耐えられる事は痛みを感じない事とイコールではないようだ。ヴィルデの白い肌は体全体が打撃による傷と腫れで赤くなっていたが、顔だけはなんか別の理由で紅潮している感じに見えた。人間誰しも痛いのは嫌いだが、たまーに痛みが大好きな人もいる。そんな人だって限界以上の痛みを与えられたら体の防御反応として意識を消失させる事でこれ以上の痛みをシャットアウトするのだが、今のヴィルデはその限界がはるか上に存在している状態であり……まあ、そういうことだ。
『なるほど』
 それならそれでチャンピオンが取るべき手段は決まっていた。今のヴィルデは痛みには耐えているが、ダメージそのものをカットしているわけではない。ならば、ダメージを与え続ければいずれは倒れるのだ。純粋なダメージレースなら自分が負けるはずがない……だが。
「……そろそろあったまってきたわねえ……」
 打撃技の応酬で、プラスなんか別の要素のため、会場の熱気は最高潮に達していた。そしてヴィルデの体も十分あったまっていた。ウォーミングアップ的な意味だけではないかもしれない。今こそ、チャンピオンの予想を上回る隠し玉を使う時だ。
「苦痛の女神よ、汝が試練と祝福を此処へ!」
 追加のユーベルコード【|神霊領域《セイクリッド・ドメイン》】が発動し、オクタゴンリング内を荊の蔓が発生し、たちまちのうちにリングを覆いつくしていく。
『な、なんだこれは……ぐわっ!?』
 さすがのチャンピオンもこれには驚愕したが、それだけでは終わらなかった。蔓の鞭がチャンピオンを攻撃し始めたのである。蔓はチャンピオンのみならずヴィルデをも打ちすえにかかったが。
「あんっ、こ、これ、いい……」
 ……なんかむしろ体力回復してるんですけど。
『お、おのれ!どMめ!!』
「それは……最高の誉め言葉だわぁ……ともあれ!ここで一気に決めるわ!」
 ヴィルデは荊の蔓でダメージと行動阻害を受けているチャンピオンに一気に駆け寄ると、その腕を取ってひねりながら背後を取り、そこから相手の首を取ると、それを支点として鉄棒の逆上がりの要領で一回転、そのままチャンピオンの首をリングに叩きつけた。相手の運命を決める制御不能な大技デスティーノだ。
『ぐぼわっ!?』
「……やっぱり最後はプロレス技で決めたいわよねえ……ふうっ」
 大技が爆発し、会場全体が爆発した。そしてヴィルデの何かも、爆発したとかしなかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】

はッ、ようやくお出ましかい!
しかしメインまで金網デスマッチたぁいい趣味してるじゃないのさ!
まあいい、一気にベルトを奪取してやろうじゃないの!

『電撃』のサイキックオーラを身に纏いながらリングインし、
リング中央でのロックアップから『グラップル』での打撃と投げの攻防に徹するよ。
ま、チャンピオン相手だ。
どんどんぶん投げられて金網へ何度も叩きつけられるだろうさ。
そう、『電撃を纏ったまま』ねぇ。

流石にダメージもキツいけど、気合と根性で聖句を紡ぐよ。
そうさ、上がる会場のボルテージとリングを包む金網が【黄泉送る檻】を成してくれる筈!

動きを止めたところに掟破りの投げ返しでキメに行くよ!



●電流爆破デスマッチ
『ええい!私はまだ負けてはおらん!』
 4(9)度目の襲来も失敗に終わる事が見えてきたが、それでもまだチャンピオン・スマッシャーは意気軒昂であり、その戦意はいまだ衰える事なく、それに伴って身体能力も重傷を負っているとは思えないには全盛期にきわめて近い物を感じられた。窮鼠猫を嚙む。ましてや窮チャンピオンともなれば……
「はッ、ようやくお出ましかい!」
 そんなチャンピオンに、数宮・多喜は気合なら決して負けてはいないとばかりにケンカ腰で向かい合った。おおよそスポーツにおいて精神力が大事なのは当然としても、特に格闘技とテニスは技術もさることながらメンタル面が大きく左右するスポーツだ。最後まで王者たらんとするチャンピオン・スマッシャーの意地と、強敵の前に立つ多喜の勇気。より強い方がこの戦いを制する事だろう。
「しかしメインまで金網デスマッチたぁいい趣味してるじゃないのさ!」
 気合が入りまくっているせいか、体中から電撃のようなものを発しながらリングに入って来る多喜。
「まあいい、一気にベルトを奪取してやろうじゃないの!」
 いや違う。それは少年マンガのように増強しまくったパワーや戦意やその他もろもろのものが体内におさまりきらなくて放電のような形で外部に放出しているわけではない。文字通りの放電現象だったのだ。多喜は電撃のサイキックオーラを身にまとっていたのだ。だがチャンピオンはその事を特に問題にしようともしなかった。
『小細工か?それともハッタリのつもりか?まあいい、別に何をやってこようと、私はチャンピオンとして真っ向から受け止めて全力で叩き潰すのみよ』
 そう。猟兵とオブリビオンの戦いに制限はあっても禁じ手は存在しないのだ。そも最初にチャンピオンの方が制約かかりまくった試合形式を挑んできたので、猟兵が多少変な事をやっても何か言う権利はないのかもしれなかった。
「行くぜ!」
 多喜は真っ向からチャンピオンに突っ込んでいった。体格差のある相手なのは分かっている。無謀のそしりは免れまいが、これも多喜の気合の見せ方だった。そして多喜の突撃をチャンピオンもまた真っ向から受け止めた。
『ふん!気合だけは認めてやってもいいがな』
「そりゃどうも!」
 オクタゴンリングにおける総合格闘技の体裁ではあるが、いわゆるアマレスや柔道の組み合いとも違ったプロレス特有のロックアップと呼ばれる組み合いがリング中央で展開されていた。双方が技術と体力の全てを活かして有利なポジションを探り合い、関節を極めにかかり、そして投げ飛ばさんとする一連の動き。だが両者が均衡を保っていたのはそれほど長い時間ではなかった。やがてチャンピオンが多喜を抱え上げ、リングへと叩きつけたのだ。
『そいや!』
「くっ!!」
 受け身を取るもチャンピオンの怪力によるボディスラムのダメージは決して小さくない。さらにそこに【キス・マイ・グローリー】の効果が足されるのだ。当然自宅に帰るわけにはいかない多喜にダメージが追加された。
『はっはっは!大口叩いておいてそのザマか!』
「へん!こんな程度何だい!」
 嘲笑うチャンピオンに、闘志衰える事のない多喜はすぐに立ち上がり突っ込んでいく。組み合いがダメなら今度は打撃とばかりに全力で蹴りやパンチを繰り出すも、チャンピオンの剛腕一発で金網にまで吹き飛ばされ激突する。
 その後もチャンピオンの一方的な攻撃が続いた。多喜はチャンピオンに殴られ、蹴られ、投げられ、いいようにいたぶられた。その上でキス・マイ・グローリーによる追加ダメージまで飛んでくるのだ。だが多喜はその度に立ち上がった。やられてもやられてもなお、何度も、何度でも。
「ターキ!ターキ!!ターキ!!!」
 ただでさえ猟兵寄りの会場の応援は、いまや完全に多喜一色になっていた。
『ふん!いくら応援などしても無駄よ!』
 チャンピオンの豪語は本心からのものか、あるいは自分が完全アウェーであり、応援など決して受ける事がない事を自覚しているからこそ来たものなのか。
「……to……」
 フラフラになりながらも、それでも多喜は立ち上がる。猟兵に敗北は許されない。とりわけ敗北が即相手の軍門に下る事を意味する今回のような形式では。その口からは言葉のようなうめき声のような何かが漏れ出ていたが、その意味を取れる者は会場にはいなかった。
「……ash……」
『しぶといやつめ!ならばこれで勝負を決めてくれよう!』
 チャンピオンは虫の息の多喜の背後を取ると、そのまま高々とジャンプした。天井にまで飛んでいき、金網に多喜の頭を激突させると、落下中に後方に270℃体を回転させる。うつ伏せの多喜は腹部からリングに落下し、その上にチャンピオンがのしかかる形になる。位置エネルギー、運動エネルギー、そしてキス・マイ・グローリー、それらすべてが多喜に襲い掛かり……

 そんな中でも、多喜は必死に言葉を紡いでいた。
「……|ashes to ashes《灰は灰に》,|dust to dust《塵は塵に》……」
 それは旧約聖書の冒頭、創世記にある一節だった。楽園を追放され、不死の身ではなくなったアダムとイブの運命を父たる神が述べたもの。生きとし生ける者すべての運命を述べたものであった。だが多喜の言葉はそれで終わりではない。これは生者のみに対する言葉ではない。そう、目の前のオブリビオンにも……!必殺の一撃を受け、それでも観客たちの大歓声で意識を繋ぎとめた多喜は、最後の一句を発した。
「……|past to past《過去は過去に》!!」

 次の瞬間、オクタゴンを取り囲む金網が一斉に輝きを発した。
『何!?』
 驚愕するチャンピオン。そして倒れたままの多喜が、叫ぶ。
「収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 多喜はただただ無策に攻撃を受け続けていたわけではなかった。それは単に気合と根性を示すだけではない。電撃を帯びた多喜の体が何度も金網に叩きつけられた事により、金網自体が電気を帯びてチャンピオンを取り囲む事になったのだ。そしてその状態で聖句を唱えた事で、多喜の必殺技が完成した。その名は【|黄泉送る檻《サイキネティック・プリズン》】……まさしくオブリビオンを骸の海に還す、最後の一手だった。
『ぐああああああああああ』
 四方八方からサイキックブラストを受け、これまでの戦いでダメージが蓄積していたチャンピオンは悶絶した。今回の戦いで最も大きな悲鳴だっただろう。そして響き渡る大歓声に後押しされるように、多喜はゆっくりと、立ち上がった。
「プロレスだったら」
『……お、おのれ……』
「やっぱり最後は投げ技で決めないとだよなあ!」
 形勢は完全に逆転した。投げには投げでお返しすると言わんばかりに、多喜はチャンピオンに正面から組み付くと、大外刈りとのど輪落としの複合技をくらわせた。プロレスでいうところのロックボトムだ。
『!!!!????』
 リングに背中から叩きつけられたチャンピオンに3カウントは必要はなかった。動かなくなると、その姿が霧のように掻き消えていったのだ。灰は灰に、塵は塵に、土は土に、そして過去は過去に。

(……だが私は必ず戻って来るぞ……)

 スティーブをはじめとした愉快な仲間たちの大歓声の中で、消える直前、チャンピオンがそう言ったのを確かに多喜は聞いた気がした。多喜は虚空に向けてぼそりと言い返した。
「ちっ、しつっけぇ奴だなあ……嫌われっぞ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月02日


挿絵イラスト