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雷霆の旋律

#エンドブレイカー! #アルダワ魔法学園 #竜神山脈

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#竜神山脈


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●異世界より来たりし槌
 アルダワに存在する霊山、その名は『竜神山脈』。
 この竜神山脈に住まうドラゴン達は、かつて人類と共に災魔と戦った偉大な存在だ。現在も猟兵やアルダワの学生達と共に災魔との戦いを続けている者であり、世界の平和のために必要不可欠なのだが――今、ドラゴン達には異世界から訪れた侵略者の魔の手が迫っていた。

『う、あ……貴様、何をした……』
「ドゥフフ、可愛い妖精さんを埋め込ませてもらっただけですぞ」
 山脈の頂上付近に倒れ、呻き苦しむのは『雷霆竜』と呼ばれる竜神だ。エクレゼールという名を持つ雷霆竜の前には豊満な肢体を曝け出したラビシャンがいる。だが、先程に発された妙な笑い声と言葉はラビシャンからではなく、その肩に背負われた武器から響いていた。
『駄目だ、意識が、遠……く……――』
「拙者の目論見通りですな、ドゥフフ……。雷霆竜エクレゼールを我が手中に収められるとは。しかし、どうせなら美しい女性ドラゴン殿が良かったのですが、ドゥフ」
 倒れた竜の前で不穏なことを語っているのは、『滾る鎚ベリオルズ』と呼ばれる武器のマスカレイドだ。エンドブレイカーの世界から渡ってきた彼は、嘗ての使い手であるラビシャン女王・アルゴラの身体を乗っ取っている。
 アルゴラの意識はなく、その身も心もベリオルズの一部となっているようだ。
 彼の目的は強大な竜神をマスカレイドと無理矢理に合体させ、支配下に置くこと。竜神が洗脳されてしまい、敵に回ればアルダワ世界に混乱が訪れるだろう。
「ドゥフフ、あとは仕上げの洗脳ですなぁ。邪魔者が来ないよう山道にはトラップを仕掛けて……ドゥフフ」
 ベリオルズはエクレゼールに宿ったエリクシルを見下ろしながら、今後の算段を立てていく。不気味な笑い声が響く山脈には、不幸な終焉が巡り始めていた。

●雷鳴は邪悪に染まる
「みんなっ、たいへんだよ! マスカレイドが世界から飛び出して、アルダワに行っちゃったの!」
 慌てた様子で猟兵達の元に訪れたのは、アミナ・ユフィン(桜苺の星霊術士・f39067)だ。事件のあらましを語ったアミナは、すぐにはっとして仲間達を見渡す。
「初めましてのひとも多いから、まずは自己紹介からした方がいいよね。わたしの名前はアミナ! これまでエンドブレイカーとして戦っていたんだけど、かみさま……ええと、イヴ・ザ・プリマビスタちゃんの呼びかけで猟兵にも覚醒できたんだよ」
 どうぞよろしくね、と微笑んだアミナは落ち着きを取り戻し、予知された事件について語ってゆく。

 場所はアルダワ世界にある竜神山脈。
 其処に現れたのは、滾る鎚ベリオルズという名の喋る武器のマスカレイドだ。
「ベリオルズはエロトンカチさんとも呼ばれていた、わたしたちが以前に戦った敵だよ。ラビシャンの女王、アルゴラちゃんと行動を共にしていたんだけど、今はその身体を乗っ取って動いているみたい」
 敵にアルゴラとしての意識はなく、すべての行動は現代に蘇ったベリオルズによるものだ。
 彼は雷霆竜エクレゼールに何らかの形でエリクシルの妖精を埋め込みんだ。どうやら彼を完全に洗脳して配下戦力として扱おうとしている。
 妖精の力によって雷霆竜は意識を失っており、近付くものを無差別に攻撃する暴竜と化しているようだ。
「エクレゼールさんは本当はとっても良いドラゴンさんだって聞いたよ。普段は雲の中に住んでいて、雷撃や電流の力を正しいことのために使っていたみたい」
 彼の竜の雷撃は美しい旋律のように響き渡り、共に戦う者達に勇気を与えたという。
 今は操られている状態ではあるが、彼を取り戻す好機は必ずあるはずだ。たとえば、彼が持つ正義の心を呼び覚ますような熱い言葉や、真摯な思いを投げかけること。埋め込まれたタイニー・エリクシルのせいで戦いながら呼びかけを行わなければいけないが、言葉は決して無駄にはならない。
「うまくエリクシルだけを倒して、エクレゼールさんの正気を取り戻せたら――あとは元凶のエロトンカチさん……滾る鎚ベリオルズを倒すだけだよ」
 雷霆竜に願えば、ベリオルズ戦で一緒に戦ってくれるだろう。
 嘗て災魔を退けていた力を駆使して援護や攻撃を行ってくれるエクレゼールは頼もしい共闘者になる。

「だけどね、ベリオルズやエクレゼールさんのところに行くには、トラップ地帯を通らなきゃいけないみたいなの。歯車で作られた蒸気獣がうようよしている山道だから、十分に気を付けてね!」
「すぴきゅ!」
 道中の蒸気獣エリアについてアミナが語ると、その肩に乗っていた星霊スピカが鳴いた。どうやら猟兵達に応援の気持ちを送っているようだ。スピカを撫でたアミナは明るく微笑み、一片の曇りもない瞳で仲間達を見つめた。
「みんななら絶対に大丈夫。雷霆竜さんを救って、明るい未来を取り戻そう!」


犬塚ひなこ
 今回の世界は『エンドブレイカー!』
 アルダワ世界の竜神山脈にマスカレイドが現れました。頼もしい味方だった竜神を敵に堕とさせるわけにはいきません。救出に行きましょう!

●第一章:⛺『襲いかかる蒸気獣』
 竜神山脈の山道に配置された、凶暴な歯車蒸気獣との戦いとなります。
 狼のような素早いタイプ、イノシシのような力強いタイプ、鳥のような空を飛ぶタイプがいます。
 ボスのベリオルズさえ倒せば動かなくなるので、戦わずに上手く切り抜けてやり過ごす方法もありです。皆様のやりやすい形でご挑戦ください。

●第二章:👿『タイニー・エリクシル』
 妖精型のエリクシルを埋め込まれた、雷霆竜エクレゼールとの戦いです。
 タイニー・エリクシルの攻撃方法に加え、旋律のような美しい雷撃が飛んできます。この攻撃を止めさせるにはエリクシルへの攻撃と、エクレゼールの正義の心を呼び起こす熱い呼びかけが必要です。
 無事に雷霆竜を助けられたら、続く三章で一緒に戦ってくれます。

●第三章:👿『滾る鎚ベリオルズ』
 過去から蘇ったマスカレイド。ラビシャンの女王だったアルゴラの体を乗っ取っている、喋る武器です。
 アルゴラとしての言動は一切なく、不気味な笑い声を響かせるベリオルズとの決戦となります。相手は強敵ですが、雷霆竜の力を借りて倒しきってしまいましょう!

 皆様が三章で使うユーベルコードの属性によって、雷霆竜からの援護も変わってきます。
 🔴POW:雷霆竜が同時に攻撃に行ってくれる連携攻撃。
 🔵SPD:旋律の雷によるスピード増加の加護。
 🟢WIZ:雷の魔力援護によるUCの威力増加。
 詳しい状況などは三章開始時の追加文章で描写いたします。
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第1章 冒険 『襲いかかる蒸気獣』

POW   :    力ずくで破壊して押し通る!

SPD   :    見つからないようにやり過ごす!

WIZ   :    相手の行動パターンや状況を考えた作戦を立てる!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フリル・インレアン
ふえ?エロトンカチさん?
えっと、アルダワ魔王戦争にいたグラン・ギニョールさんのご親戚の方でしょうか?
ふえ?他人の空似じゃないかって、そうなんですか?アヒルさん。
アヒルさんもよく分からないのですか。
それじゃあ、気にしててもしょうがないですね。
さて、この先の蒸気獣さんは別に戦わなくてもいいんでしたよね。
でしたら、ふええ劇場で小さくなって飛んでいってしまいましょう。
これなら、蒸気獣さんに気付かれずに……って鳥さんもいたんでした。
念動力で鳥さんを抑えていますから、アヒルさん急いでください。


リューイン・ランサード
こんな口調で喋る猟兵さんをどこかで見た気がするなあ<汗>。

それは置いといて、災魔と戦った仲間でもあるエクレゼールさんを救出しなきゃ。
オブリビオンではないとしても、質の悪さはそれ以上かもしれないエロトンカチはここで倒します!

蒸気獣と無理に戦う必要は無いので、UC:式神具現で呼び出した式神達に、見つからないよう進行路を調査してもらい、蒸気獣の居場所を情報連携する。
その上で自分の周囲に結界術・高速詠唱で姿隠しの結界を形成。
目立たないよう忍び足で進んで蒸気獣に感づかれないよう通り過ぎたり、翼を使って密やかに空中移動したりして上手く抜けます。

突破できたら「さあ、これからが本番だ。」と気合入れて進みます。



●先陣を往く者
「ふえ? エロトンカチさん? もしかして――」
 竜神山脈に訪れたフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は、此度の黒幕として現れた存在、滾る鎚ベリオルズについて考える。
「えっと、アルダワ魔王戦争にいたグラン・ギニョールさんのご親戚の方でしょうか?」
 似た存在を思い出したフリルに対し、相棒ガジェットのアヒルさんが首を横に振った。どうやらアヒルさんは、違うかもしれないと語っているようだ。
「他人の空似じゃないかって、そうなんですか? アヒルさん」
「グワ……?」
「アヒルさんもよく分からないのですか。それじゃあ、気にしていてもしょうがないですね」
 喋る武器同士にどのような関係があるのか。それとも関係など存在しないのか。ここで考えていても仕方がないと判断したアヒルさんは早々に話を切り上げた。
 フリルも頷き、山頂に続く罠地帯を振り仰ぎ、そっと道中への気合いを入れた。
「エロトンカチかぁ……」
 同じく山頂を目指すリューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)も、喋る武器の特徴や口調に関してのことへ思いを巡らせていた。
 伝え聞いてきた喋り方で話す猟兵もどこかで見た気がするが、それはさておいて――。
「災魔と戦った仲間でもあるエクレゼールさんを救出しなきゃ。オブリビオンではないとしても、質の悪さはそれ以上かもしれないエロトンカチはここで倒します!」
「グワグワ!」
 リューインの決意の声を聞き、ガジェットアヒルも力強く鳴いた。おそらく頼もしい仲間としてリューインを認識したのだろう。フリルもぺこりと頭を下げ、仲間に信頼を抱く。
 頷きあったリューインとフリルは、歯車が重なりあった不思議な見た目の蒸気獣を見つめた。
 山道を闊歩している獣達は、幸いにもまだこちらに気が付いていない。
「さて、この先の蒸気獣さんは別に戦わなくてもいいんでしたよね」
「あの蒸気獣達と無理に戦う必要はありませんね」
 ここで倒しておかなくとも、元凶であるベリオルズさえ倒せば蒸気獣達は力を失う。後の戦いのことを思えば、体力は温存しておくに越したことはない。
「でしたら、ふええ劇場で小さくなって飛んでいってしまいましょう」
「僕は式神達にお願いします」
 フリルが発動したのは身長をミニマムサイズにする魔法劇場。式札に霊力を籠めたリューインが呼び出していくのは、彼の意志に応じて鳥獣変化や透明化する式神だ。
 少し待っていてください、とフリルに願ったリューインは見つからないよう式神達に進行路の様子を調査してもらっていく。蒸気獣がうろついている辺りや居場所の情報を得たリューインは、フリルをはじめとしたこの場に訪れた仲間達にもそのことを伝えていった。
 狼は素早く、猪は力が強いらしいが、相対しなければどちらの能力も意味がない。
「これなら、蒸気獣さんに気付かれずに……って鳥さんもいたんでした」
 アヒルさんの上にちょこんと乗ったフリルは地上から離れ、敵の死角を縫うように進んでいく。しかし、空には鳥型の蒸気獣が羽ばたいていた。
 はっとしたフリルと獣がお互いを認識したことで、一瞬だけ時が止まったような錯覚に陥る。
 しかし、すぐに動きだしたのはフリルの方だ。
「ふえぇ、アヒルさん! 念動力で鳥さんを抑えていますから、急いでください」
「グワワ!」
 フリルの咄嗟の機転によって正面衝突は防がれた。その間に相棒ガジェットが素早く飛んでいくことで窮地は避けられ、蒸気獣地帯からの脱出が叶う。
 その後ろ姿を見送ったリューインは安堵を抱いた。そして、次は自分が仲間に続く番だと心に決める。
 結界術を巡らせ、姿隠しの力を形成していくリューインは周囲を見渡した。姿は認識されずとも、物音で気付かれてしまうかもしれないので慎重に。
 忍び足で進んでいくリューインは蒸気獣に勘付かれないよう飛び立ち、密やかに空中を移動していった。
 緩急をつけて地上と空を進む彼はやがて、獣達が多くいる地帯から無事に抜ける。これで突破は完了。きっと残る仲間達もそれぞれの方法で切り抜けてくるだろう。
「さあ、これからが本番だ」
 気合い入れたリューインは拳を強く握る。そして、少し先を進んでいるフリルの後を追って駆け出した。
 その先に待つ、竜とエリクシルとの戦いに思いを馳せながら――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スカーレット・マカレッド
【POW】
なに?
あのエロトンカチまでもエリクシルの餌食となったか
情けないであるな
しかもあれだけ共に居たアルゴラの体を乗っ取るとは
…忌々しいにも程があるな

吾輩はこのカエンマルを携えて、蒸気獣に備えるぞ
吾輩の【居合】と【威厳】を以て、蒸気獣を斬り伏せようではないか!

――――いくぞ、月光斬!

ユーベルコードとして編み出したアビリティだが、試し斬りとしては悪くない

吾輩は力づくで、このエリアを押し通るのである!
狼だろうがイノシシだろうが鳥だろうが、全て肉にする勢いで斬り伏せてやるぞ!

……ふっ、だが吾輩は猟兵としてはまだ未熟だからな
誰かと『共闘』も悪くなかろう
快く応じるぞ


マシュマローネ・アラモード
【星の皇女の冒険譚】

モワ?ここはアルダワ?以前は迷宮に参りましたが、随分と趣が違いますわね……。

ですが、歯車仕掛けの蒸気獣というのは、この世界の特徴とみて良いかしら!

優雅に切り抜けましょう!
UC、|華麗なる飛翔《ブリリアント・フルバーニアン》!
蒸気獣たちの弱点に吹き飛ばしの衝撃で早々に退場していただいて、山の頂まで参りましょう!
鳥型の蒸気獣が障害になるのでしたら、吹き飛ばしで乱気流を起こして墜落させますわ、先を急いでおりますの、ごめんあそばせ!

(弱い部位への吹き飛ばしで、バランスを崩しつつ、余計な戦闘は避けて飛翔、山道を素早く踏破して参りましょう!)
モワ!なんだかワクワクしてきましたわ!



●冒険の先に待つものは
 エリクシルの力はマスカレイドを蘇らせ、外の世界へと広がった。
 その話を聞いたとき、スカーレット・マカレッド(真赤な魔王・f38904)は気付けば肩を竦めていた。滾る槌ベリオルズといえばあの呼称と口調。どうあっても忘れ難いものだ。
「あのエロトンカチまでもエリクシルの餌食となったか」
 情けない、と言葉にしたスカーレットは現状を把握した後、この竜神山脈に訪れた。蘇生状態が上手くいっていなかったのか、エリクシルが妙な状況を作り出したのか、それともベリオルズの意志なのか。それは定かではないが、過去と大きく違うところもある。
「あれだけ共に居たアルゴラの体を乗っ取るとは……忌々しいにも程があるな」
 スカーレットは蒸気獣が闊歩する山脈の道を見据え、これから巡る戦いに思いを巡らせた。
 その近くには、マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)も訪れている。
「モワ? ここはアルダワ――」
 世界を越え、星の皇女の冒険譚は此処からも始まっていく。マシュマローネの記憶では迷宮の方が印象深いのだが、此処は高く聳える竜神山脈だ。
「モワ?? 以前は迷宮に参りましたが、随分と趣が違いますわね……。ですが、歯車仕掛けの蒸気獣というのは、この世界の特徴とみて良いかしら!」
 状況を整理したマシュマローネは、此処が何処であっても力を揮う決意を抱く。それにマシュマローネはスカーレットが近くにいることにも気付いていた。
 先を進む他の仲間もおり、不安や心配などはひとつもない。
 スカーレットもマシュマローネの姿を見留め、真っ赤な刀身の太刀――カエンマルを携える。蒸気獣に備えながら踏み出した一歩は、雷霆竜に救いの手を伸ばすためのもの。
「行こうか」
「優雅に切り抜けましょう!」
「吾輩の力を以て、蒸気獣を斬り伏せようではないか!」
 居合の技に加え、この威厳を獣達に見せつけてやればいい。そのように語ったスカーレットに続き、マシュマローネがユーベルコードを紡ぐ。
「絢爛無双に、きめましてよ! |華麗なる飛翔《ブリリアント・フルバーニアン》!」
 ブリリアント・フルバーニアドレス姿に変身したマシュマローネは地を蹴る。優雅に空へ舞い上がった彼女から放たれるのは王の気魄。マシュマローネが相手取るのは空の獣だ。
 スカーレットはその気を感じ取りながら、地上の敵へ攻撃を放っていった。
「――いくぞ、月光斬!」
 アビリティとしての力は今、ユーベルコードとして新たな技に昇華されている。試し斬りとしては悪くないはずだと考えたスカーレットは素早い一閃で狼型の蒸気獣を斬り裂く。歯車の一部が弾き飛ばされ、真っ二つに崩れ落ちた。
「吾輩達は、このエリアを押し通るのである! そう、力尽くで――!」
 次にスカーレットが狙ったのは猪突猛進な獣の方。
 狼であろうが猪であろうが、はたまた鳥だったとしても構わない。突進してくる猪を見据えたスカーレットは刃を切り返し、緩やかな弧を描く斬撃を放った。
「全て肉にする勢いで斬り伏せてやるぞ!」
 刹那、再び歯車の身体が斬り伏せられる。マスカレイドでもオブリビオンでもない存在が相手であるならば、この一刀だけで十分らしい。
 マシュマローネは地上のスカーレットの活躍を確かめながら、自らも鳥型蒸気獣を穿っていく。
 鳥である以上、突風めいた力には弱いはず。相手を吹き飛ばすほどの衝撃を解き放ったマシュマローネ。彼女の前を塞ぐものは何もいない。
「獣さん達には早々に退場していただいて、山の頂まで参りましょう!」
「ああ、それがいい」
 マシュマローネの呼びかけにスカーレットが応え、二人は連携しながら敵を蹴散らしていった。
 乱気流を起こしながら更なる鳥獣を墜落させ、マシュマローネは優雅に笑む。
「先を急いでおりますの、ごめんあそばせ!」
「……ふっ、だが吾輩は猟兵としてはまだ未熟だからな。その所作も力も頼りにさせて貰いたい」
 彼女の頼もしさを改めて感じたスカーレットは静かに双眸を細めた。
 そして、二人は先へ進む。
 必要最低限の攻撃に留め、余計な戦闘を避ければ次の戦いへの負担も減らせる。飛翔するマシュマローネは仲間を先導していき、スカーレットも山道を踏破するための道を拓いた。
「なんだかワクワクしてきましたわ!」
「まるで冒険のようだな。山頂に囚われた竜を救うための――」
「モワ! 絶対に助けましょう!」
 マシュマローネの軽快な言葉に快さを覚え、スカーレットは思いを強くする。
 其処から一気に地を駆け、空を翔けた二人は真っ直ぐに前を見据えた。次なる戦いの地は、すぐ其処だ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
ヴァルダ(f00048)と

以前より万能の宝石には縁があったアルダワ
己が生まれたこの世界が滅びゆくのを見ていられなくて、戦場に立った日を想う
今もすべきことは変わらない

貴女の手を取り飛竜の背へと
ああ、ヴァルダ
オレも迷いも憂いもない
行こう

全て相手していてはキリがない
道を塞ぐものだけ叩き落として最短で

飛竜の背に立つ
名を呼ばれれば既にネージュと共に魔法陣を織り上げている
守ると約束した
その言葉を違えない

君はネージュ
厳冬の雪精。冬の末姫
最果ての冷気を織り上げて
氷柱の流星群を
心からの信を置く竜槍と共に
進路上と近づく蒸気獣を叩き落とす
傷一つ、彼女たちにはつけさせない

見据えた先に雷が迸るのを見た
ああ、竜が待ってる


ヴァルダ・イシルドゥア
ディフさん(f05200)と
因果の糸が繋がる日が来ようとは
けれど。私は父様と母様の意思を継ぐ者
……参りましょう、ディフさん
あなたが共に居てくれるから、私は決して迷いません

飛竜翔にてアイナノアを呼び
その背に二人身を預けたならば高く空へと舞い上がり
出来得る限り最短距離で雷霆竜の許へ

鳥の姿を模した蒸気獣が覆う中空を前に
信をひとつにあなたの名を呼ぶ

彼が私を守ってくれているのが、わかる
ならば。私はあなたの道を切り拓く槍となりましょう
……アナリオン、アイナノア!

飛翔速度を上げて空中戦に持ち込む
力を込めた初撃で怯ませ弾丸の如く翔け抜ける
氷の流星に重ね竜槍で獣達を一息に貫く

ディフさん、――このまま、進みます!



●雷鳴より響く
 エリクシル。それは万能宝石とも呼ばれるもの。
 以前より魔法存在に縁があったアルダワ世界には現在、滅びの危機と魔の手が迫っている。ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は竜神山脈の頂を振り仰ぎ、思いを強く持った。
「雷霆竜と喋る槌か」
 己が生まれたこの世界が滅びゆく未来は阻止したい。そのように感じて戦場に立った日を想えば、静かな心の裡が奮い立つような感覚が巡った。
 平穏を守り抜き、過ごしてきた今もすべきことは変わらないまま。
「因果の糸が繋がる日が来ようとは」
 ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)も山脈の果てを瞳に移していた。思うことはあれど、それ以上に胸裏を焦がすような懐いもある。
 けれども、自分は父と母の意思を継ぐ者。父様、母様、と言葉にした後、ヴァルダは彼の名を呼ぶ。
「……参りましょう、ディフさん」
「ああ、ヴァルダ」
 ディフは彼女の手を取り、飛竜翔にて呼ばれたアイナノアの背に乗る。慈悲深き蒼炎の竜は静かに鳴き、二人を迎え入れた。その声を頼もしく感じながらヴァルダはディフの手を握り返す。
「あなたが共に居てくれるから、私は決して迷いません」
「オレも迷いも憂いもない。行こう」
 この先に巡る戦いへ向ける思いはきっと、重なりあっている。
 山頂に続く道や空に点在する蒸気獣達を見据えた二人は、飛竜と共に高く舞い上がった。
 地上の狼や猪獣は避けられるとしても、問題は空に舞う鳥型の獣だ。妙な音を響かせ、絡み合う歯車で出来た不思議な翼を広げる敵。あれは意志なきものでありながら、侵入者を狙い続けるものだ。
「全て相手していてはキリがないな」
 ディフは氷華の魔杖を構え、道を塞ぐものだけを叩き落とすと決めた。そうすれば最短でこの区域を抜けられるだろうと判断してのことだ。
 ヴァルダも出来得る限り、ひとときでも疾く雷霆竜の許へ向かおうと誓っている。
「ディフさん」
 鳥の姿を模した蒸気獣が覆う中空を前に、信頼を宿した言葉をひとつ紡いだ。ヴァルダから心を感じたディフは、ネージュと共に魔法陣を織り上げていく。
 守る。
 近いを込めて約束した。その言葉を違えないために。
「――君はネージュ」
 厳冬の雪精。冬の末姫。最果ての冷気を織り上げて。
 ディフの声に応えるようにネージュが力を巡らせていった。吹雪が空を覆う中で、ヴァルダは彼が自分を守ってくれていることを深く感じ取っていく。
 何よりも大切に、誰よりも大事にしてくれているのが手にとるように分かる。ヴァルダは瞼を一度だけ閉じてから、真っ直ぐ進む方向に眼差しを向けた。
 共に翔ける。そのことだけで懸念など何処かに消え去っていく。
 これまでに何度も、幾度もあなたに救われて、この手を引いて導いてくれたから。
(「ならば。私はあなたの道を切り拓く槍となりましょう」)
 次に呼ぶのは共に戦い続けてきたもの達の名。
「……アナリオン、アイナノア!」
 今こそ来れ、我を炎の――否、雷の頂へと導かん。
 蒼き炎を纏う飛竜と、輝ける者の名を冠する太陽の仔の槍が共鳴するように力を発する。其処へディフとネージュが繰り出す氷柱の流星群が巡り、空を覆い尽くしていった。
 心からの信を置く竜槍と共に進路上に飛んでくる蒸気鳥獣を叩き落とせば、道がひらけていく。
「傷一つ、彼女たちにはつけさせない」
「勿論、あなたにも」
 ヴァルダはディフの声を聞き、ただ護られるだけではないことを示す。
 飛翔速度を上げた飛竜は鳥を蹴散らし、まるで弾丸の如く戦場を翔け抜けてゆく。尾を引くように迸る氷の流星は鋭く、合わせて振るわれる槍撃が煌めきを描いた。
 鳥は堕ち、歯車が散る。
 その瞬間、見据えた先に雷が迸った。
 二人の視線が向けられた方向に轟いたのは、五線譜を刻むような横薙ぎの閃き。迸る雷鳴を耳にしたヴァルダは掌を強く握り締め、この先に待つ戦いを思う。
「ディフさん、――このまま、進みます!」
「ああ、竜が待ってる」
 あの雷鳴はきっと彼の雷霆竜の叫びであり、嘆きの咆哮代わりであるはず。
 悲しみの終焉を齎さぬため。そして、救いの未来を手繰り寄せるために。猟兵は山頂を目指してゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティアリア・ローゼス


外の世界でも、マスカレイドと戦うことになるなんてね
猟兵となっても、今までとやることは変わらない……悲劇のエンディングを破壊するため、頑張りましょう

蒸気獣達は倒さずとも、この道を抜けられればいいのよね
山道なら物陰もあるでしょうし、身を隠しながら蒸気獣達に近付きましょう
地上だけでなく、上空の鳥タイプからも発見されないよう慎重に
蒸気の獣なら音も発するでしょうし、目と耳を頼りに進むわ
敵が多くて進めない所ではある程度の数を射程に入れて、ヒュプノスを召還
まとめて眠らせて、先へと急ぎましょう

あなた達に用はないの
ここは通らせてもらうわね
偉大なる竜がエリクシルの洗脳に負けないよう……急がないと



●竜が待つ場所へ
 竜神山脈の頂に至る山道は蒸気獣で埋め尽くされていた。
 地上には獣、空には鳥。歯車で構成された不思議な見た目の蒸気獣達は侵入者を見つけ次第、襲いかかる。
「外の世界でも、マスカレイドと戦うことになるなんてね」
 異世界へと侵攻を始めたエリクシル。
 そして、過去から蘇ったマスカレイド達。
 ティアリア・ローゼス(青薔薇の星霊術士・f38962)は思いを巡らせながら、獣達の様子を確かめる。まだ此方に気が付いていない様子の蒸気獣達。それらは滾る鎚ベリオルズが此処に解き放ったものらしい。
 ベリオルズの気配や姿はまだ見えないが、悪しき雰囲気は感じ取れる気がした。
 エンドブレイカーとして。
 そして、新たに覚醒した猟兵として。
「変わったこともあるけれど、今までとやることは変わらないわね」
 ティアリアは青薔薇の大鎌を強く握り、これから始まっていく新たな戦いへ思いを馳せる。
 悲劇のエンディングを破壊するため――。
「頑張りましょう」
 己を奮い立たせ、前に進むための言の葉を紡いだティアリアは先へ踏み出していく。
 山道をうろついている蒸気獣達は倒さずに進める。動力源はベリオルズ由来となっているらしく、首魁さえ倒せば機能を失うと予測されているからだ。
「とにかく、この道を抜けられればいいのよね」
 ティアリアは周囲の地形をよく見極め、物陰に身を隠す。
 ある程度の距離を取りながら蒸気獣達に見つからぬよう、慎重に進んでいく。しかし、ティアリアが次の岩陰に隠れようとした瞬間。すぐ近くで蒸気が噴き出す音がした。
(……!)
 驚いた声を上げぬよう、口元を押さえたティアリアは息をひそめた。
 偶然にも岩の向こう側に蒸気獣が通りかかったようだ。しかし、その音がティアリアの助けにもなった。もし気付かずに踏み出していたら発見されていただろう。
 ティアリアはこれまで以上に慎重に、目と耳を頼りに進み続ける。だが、ある程度まで来たとき、これ以上はうまく進めないことを悟ってしまう。こうなれば星霊の出番だ。
「お願い、ヒュプノス。みんな眠らせてちょうだい」
 ティアリアが召喚したのは星霊ヒュプノス。羊の姿をした星霊はふわふわとちいさな身体を揺らし、催眠ガスを辺りに巡らせていく。非生命体にも効果のある睡眠の力は、辺りの蒸気獣を眠りに落としていった。
 先へ急ぐならば戦いは避けるが吉。
「あなた達に用はないの、ここは通らせてもらうわね」
 ヒュプノスを抱いたティアリアは、すっかり眠ってしまった歯車の獣達を見渡した。
 こうしている間にも偉大なる竜がエリクシルに洗脳され続けているだろう。先を急ぐに越したことはない。
「……急がないと。待っていて、雷霆竜さん」
 未だ見ぬ竜神を思い、ティアリアは果敢に進み続けた。この先に待つのは、操られた雷霆竜そのものとの戦い。そのことへの決意を固めながら――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐
聞くところによれば、アルダワ迷宮に封印されていた大魔王。ウームー・ダブルートゥはエンドブレイカー世界で滅ぼされた後に来訪したオブリビオン・フォーミュラであったとのこと
彼の者が力と姿を我が物としていたアウルム・アンティーカは、デビルキングワールドのラスボスに仮面が寄生した姿でありましたし。他世界であれば、帝竜ヴァルギリオスが再孵化したアルダワ竜神山脈の長・賢竜オアニーヴの呪いも正しくマスカレイドそのものでありましたか

胎動する魔神の断片は、既に出揃っていた
滅ぼされ、蘇りしものと。叶え、尊厳と存在を奪い尽くすもの
世界を蝕む病巣のなんと多きことか

世界の瞳とは異なる、世界移動の力
災魔、猟書家、そして3度目の禍厄がアルダワ世界を覆い尽くさんと目論むのであれば、それを阻止するのが猟兵たる我々の責務です
そしてこの拳を以て、侵略者への反撃の嚆矢といたしましょう

限界突破の怪力、念動力の雷撃を伴った焼却の拳で切り込み大暴れする『金剛夜叉・破邪顕正』
これで囮になることが出来れば幸いです



●世界の在り方
 新たに繋がった、エンドブレイカーの世界。
 そして、この世界。魔法学園の名にもなっている、アルダワの世界。
 竜神山脈に訪れた戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は或る考察をしていた。世界と世界同士は、元からある意味で繋がっていたのだろう、と。
 蔵乃祐は山道へと踏み出し、蔓延る蒸気獣に狙いを定める。
 此方を発見した歯車の獣達は牙や爪などを向け、一気に襲い掛かってきた。されど元より蔵乃祐は真正面から突破する気概でいる。
 力を巡らせ、金剛杵を持つ神霊へと姿を変えた彼は素早い一撃を繰り出す。
 蒸気獣を一閃でいなし、吹き飛ばした蔵乃祐は先へ進みながら考えを巡らせていった。
「聞くところによれば――」
 アルダワ迷宮に封印されていた大魔王、ウームー・ダブルートゥ。
 強敵として立ちはだかった相手を思い、蔵乃祐は思いを言葉へと変えていく。
「あれはエンドブレイカー世界で滅ぼされた後に来訪したオブリビオン・フォーミュラであったとのこと」
 今か数えて五年ほど前にエリクシルとの戦いに突入したエンドブレイカー達は、彼らを束ねる『11の怪物』のうち、ギルタブリルとムシュマフ、そして彼のウームー・ダブルートゥを撃破したと聞いた。
 あのアルダワ魔王戦争の時点にて怪物が到来していたのならば、他の事例もマスカレイドやエリクシル関連なのだと結論付けることが出来る。
「それに彼の者が力と姿を我が物としていたアウルム・アンティーカは、デビルキングワールドのラスボスに仮面が寄生した姿でありましたし」
 これまでの経験と出来事を照らし合わせていけば、真実も見えてくる。
 蔵乃祐の脳裏に浮かんだのは戦いを経てきた竜達。
「他世界であれば、帝竜ヴァルギリオスが再孵化したアルダワ竜神山脈の長・賢竜オアニーヴの呪いも正しくマスカレイドそのものでありましたか」
 帝竜戦役で大魔王の仮面に抗っていたオアニーヴ。それから生々流転沼に配置されていた帝竜ガルシェンもまた、世界を渡ってきたものだと語られていた。どういった巡りであのような姿や戦いに至ったかは不明な点がある。だが、点と点でしかなかった謎は徐々に線として繋がり始めている。即ち、それは――。
「胎動する魔神の断片は、既に出揃っていたということ」
 蔵乃祐は現状を見据え、竜神山脈の頂へと視線を向けた。時折、鋭い稲光が轟いているのは此度に囚われた雷霆竜が洗脳に抗っているからだろう。
 アルダワ世界を正しく守ってきた頼もしき竜神。彼が異世界からの来訪者によって、ただの敵の手先に変えられてしまう未来を訪れさせるわけにはいかない。オアニーヴのように成り果てるなど言語道断だ。
 仮面や万能宝石に良いようにさせる状況などあってはいけない。
「滅ぼされ、蘇りしものと。叶え、尊厳と存在を奪い尽くすもの。ああ、世界を蝕む病巣のなんと多きことか」
 蔵乃祐は嘆きにも似た言葉を落とした。
 その間も迫りくる蒸気獣に対し、蔵乃祐は限界突破の怪力を発揮していく。狼の牙は身を翻して避け、猪の突撃は念動力の雷撃を伴った焼却の拳で迎え撃つ。
 激しい熱が戦場となった山道に巡り、大きく迸った。
 猛進する猪獣の勢いに負けぬ力強さで以て、蔵乃祐は敵を千切っては投げていく。その姿を言葉にするならば勇猛果敢。敵の身体を構成する歯車が更なる一撃によって弾け飛び、相手はただの残骸と成り果てた。
 蔵乃祐はこうして敢えて派手に切り込んでいくことで自分を囮にしている。それによって、隠れ進む仲間が戦闘を避けられるように配慮してのことだ。
 その際も思うのは、エリクシルの妖精の力によって洗脳されかけている雷霆竜について。蔵乃祐の行動は他の者達の助けとなり、操られた彼との戦いへの備えとなっていくはずだ。
 次に襲い掛かってきた蒸気獣を穿ちながら、蔵乃祐は更なる思いを巡らせる。
 世界の瞳とは異なる、世界移動の力。
 災魔、猟書家、そして三度目とも呼べる禍厄。
「奇妙な力がアルダワ世界を覆い尽くさんと目論むのであれば、それを阻止するのが猟兵たる我々の責務です」
 どのような敵であれど、企みは阻止するのみ。
 そして――。
「この拳を以て、侵略者への反撃の嚆矢といたしましょう」
 山頂を再び見据えた蔵乃祐は、滑空してきた鳥型蒸気獣に拳を向けた。雷撃が迸ったことで相手の翼が壊れ、嘴は焼却の拳で以て打ち崩される。
 勢いを止めず、大暴れしていく蔵乃祐の姿はまさに破邪顕正。
 そして、鳥獣を落とした蔵乃祐は周囲を見渡した。地面には歯車と機構の残骸が散らばっている。猟兵の仲間達は先へと進んでおり、此処に立っているのは蔵乃祐のみ。
 蒸気獣をすべて打ち倒した蔵乃祐は呼吸を整え、頂に至る道へと踏み出した。
 空は晴れているというのに激しい雷鳴が轟く。それはまるで、雷霆竜の叫びのようにも思えた。蔵乃祐は真っ直ぐに前を見据え、山頂を目指す。
 その先に待つ未来を正しき形へ戻し、取り戻すために。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『タイニー・エリクシル』

POW   :    蜜の味
【額の宝石】を解放し、戦場の敵全員の【勝機】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
SPD   :    真の願いは内に秘め
戦場内に「ルール:【静寂】」を宣言し、違反者を【赤い結晶の檻】に閉じ込める。敵味方に公平なルールなら威力強化。
WIZ   :    星の砂子
【エリクシルの翅】からレベル個の【星の粒】を射出する。射出後も個々の威力を【光度】で調節でき、低威力ほど視認困難。

イラスト:すずや

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠仲佐・衣吹です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●エリクシルと竜神
 竜神山脈の一角、とある山頂にて。
 其処には普段ならばいないはずの大きな影が佇んでいた。
 雷撃めいた鋭利な金の翼と翠の体躯を持つ、竜神――その名は『雷霆竜エクレゼール』。
 普段は雲の中に住んでいるという雷霆竜には今、タイニー・エリクシルという妖精型の存在が埋め込まれている。四足で立つ雷霆竜の胸部には妖精の姿があり、静かに笑っていた。
『…………』
 エクレゼール自身は目を閉じており、何の言葉も発さない。意識をタイニー・エリクシルに奪われており、洗脳されている最中のようだ。しかし、ときおり苦しむ呻き声のような音も聞こえている。
 それだけではなく、彼の身体からは稲妻のような力が漏れ出していた。雷撃は妖精が制御しているような節も見えるが、制御下にないものも混じっていそうだ。
 此度の首魁であるベリオルズは何処かに行っているらしく姿が見えない。
 そして、其処に訪れたのは山道を突破してきた猟兵達だ。人の気配に気付いたタイニー・エリクシルは雷霆竜の身体を操り、敵意を此方に向けた。
「侵入者を排除します」
 淡々とした言葉を紡いだエリクシルの妖精は雷霆竜の翼を大きく広げさせた。刹那、意識を失った竜の口から鋭い咆哮が響き渡る。だが、次の瞬間。
『誰、か……僕、を……』
 意識を奪われているはずのエクレゼールから微かな声が零れ落ちた。おそらく彼もまた此方の気配を感じ取っており、洗脳に抗いながら助けを求めているのだろう。
 まだ、間に合う。彼を助けるためには呼び掛け続けることが必要だ。
 アルダワ世界のこと。彼が抱いているという正義と優しき心に訴えかける言葉。或いは負けないでと告げる、勇気を呼び起こすような思い。
 雷霆竜を救うための戦いが今、此処から始まっていく。
 
フリル・インレアン
ふええ、やっとたどり着きました。
ふえ?私は何もしてないって、ちゃんと念動力で鳥の蒸気獣さんを抑えていたじゃないですか。
それしかしてないって、そうかもしれないですけど……って、こんな話をしている場合じゃないですね。
あのエリクシルさんを倒さなければいけませんね。
勝機を奪うって、アヒルさんどうしましょう?
ふえ?そもそも私に勝機があったのかって、ないような気がしてきました。
でも幸運を付与するってことは強化効果ですね。
お洗濯の魔法で落としてしまいましょう。
幸運でエリクシルさんにお洗濯の魔法が当たりませんがエクレゼールさんは幸運を得てないですから当たりますよね。
そんな汚れた宝石は落としてしまいましょうね。



●幸運と勝機
 山脈の頂付近には不穏な空気が満ちていた。
 フリルはこれまでの険しい道中を思いながら息をつき、呼吸を整える。
「ふええ、やっとたどり着きました」
 アヒルさんの背から下り、通常のサイズに戻ったフリルは前方を見据えた。するとアヒルさんがグワワと鳴いてフリルの足元を軽くつついてくる。どうやらそれは自分の台詞だと言いたいらしい。
「ふえ? 私は何もしてないって……」
「グワ!」
「ちゃんと念動力で鳥の蒸気獣さんを抑えていたじゃないですか」
 抗議の視線を向けるアヒルさんに対し、フリルは自分の貢献度を示してみせた。しかし、返ってきたのはそれしかしていないではないかという眼差しだ。
「そうかもしれないですけど……って、こんな話をしている場合じゃないですね」
 このままではアヒルさんにお説教されると気付いたフリルは、目の前の雷霆竜を見つめた。
 目を閉じたままゆらりと巨体を揺らしたエクレゼール。その胸元に埋め込まれているのはエリクシルの妖精だ。タイニー・エリクシルはしかと瞼を開いており、雷霆竜の身体を意のままに操ろうとしているらしい。
「とにかく、あのエリクシルさんを倒さなければいけませんね」
「グワッ!」
 フリルが真剣な思いを声にすると、アヒルさんも気合いを入れた。そして、あのエリクシルの力を見極めたフリルは作戦を巡らせはじめる。
「こちらの勝機を奪う攻撃って……アヒルさんどうしましょう?」
 どの魔法で対抗していくべき。様々な考えを纏め、思考を整理していくフリルの傍ら、アヒルさんは簡単なことだと示す。その答えはというと――。
「ふえ? そもそも私に勝機があったのかって……そうですね、元からないような気がしてきました」
 認めてしまえば至極簡単。
 そして、相手が自分に幸運を付与するということは強化効果であると結論付けられる。
 そうなればフリルが此処で選ぶ魔法はただひとつ。
「お洗濯の魔法で落としてしまいましょう」
 たとえ小さな勝機であっても幸運になるというなら、エリクシルの妖精には魔法が当たらないかもしれない。だが、まだかろうじて洗脳に抗っているエクレゼールはタイニー・エリクシルと完全には同化していない。ならば幸運を得ていないということにもなるだろう。
「そんな汚れた宝石は落としてしまいましょうね」
 雷霆竜の身体から迸る雷を凌ぎながら、フリルは駆けていく。
 ただの身嗜みを整えるお洗濯の魔法と侮ることなかれ。フリルはこれまで様々な難関をこの魔法で切り抜け、戦場に勝利と転機を齎してきたのだから。
 そして、フリルの力はどんな頑固な汚れや効果をもはたき落とす連撃となっていく。
 この先に待つのは、エリクシルを無に帰す未来だけだと信じて――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティアリア・ローゼス


エリクシル……ずいぶん可愛らしい見た目になったものね

星霊バルカンの炎で攻撃
敵の放つ星の砂すら、焼きつくし無効化してやりましょう
エクレゼールの雷撃は、可能な限り回避
避けきれず傷を負っても、竜が気に病まぬよう気丈に

偉大なる竜よ、どうかエリクシルに負けないで
私達は外側からこれと戦うから、貴方はどうか心の内で戦って
災魔と戦った時のように、私達は今共に戦えると信じているわ
貴方にとってもきっとこの世界は大切なのでしょう。それを壊す側になるなんて、そんなことは決してさせない


ヲルガ・ヨハ


われは|夜半《よは》のヲルガ
異世界の猛き|同胞《はらから》よ、そなたは今何を願う?
何を、望む?

その雷ですべて滅ぼす事か?
それとも……

駆けるからくり人形の"おまえ"に懐かれ
白藤色の霹靂の「範囲攻撃」放つ
しきたりに従う道理はない
檻に閉ざされたとて破壊すればよい、幾度でも!
内側から檻を破壊せんとUC用い
ただ只管に
かの雷霆竜の胸元目指す

愛し世界を、景色を、護るべき存在を
まなうらに思い出せるなら
決して屈するな
抗う意志、即ち闘い続ける覚悟があるならば――

軍神たるわれは
その|希《のぞみ》を叶えよう――この拳を以て!
奏でる旋律が聞こえたなら
口許に笑み湛え、"おまえ"と共に駆る

無粋な石なぞ
打ち砕いてやろうぞ



●天に響く旋律
 雷霆竜の胸元に埋め込まれている宝石の妖精。
 タイニー・エリクシルを見つめたティアリアは強く身構えた。固く目を閉じたままのエクレゼールは時折、苦しげに低い唸り声をあげている。
 その傍ら、ヲルガ・ヨハ(片破星・f31777)も雷霆竜の姿を静かに見遣っている。
「エリクシル……ずいぶん可愛らしい見た目になったものね」
 見た目の上ではあのようなものだが、あれがエリクシルであるならば油断はできない。
 ティアリアは覚悟を決め、雷霆竜を操る妖精に青薔薇の大鎌を差し向けた。ヲルガは意識を奪われている様子のエクレゼールに向け、言葉を投げ掛けてゆく。
「われは|夜半《よは》のヲルガ。異世界の猛き|同胞《はらから》よ、そなたは今何を願う?」
 そして――何を、望むのか。
 その雷ですべて滅ぼす事か。それとも、と声にしたヲルガもそっと構えた。
 答えがないことは解っている。だが、こうして呼び掛けていくことこそが雷霆竜のため。ティアリアもヲルガに倣い、エクレゼールに己の名を告げる。
「私はティアリア。あなたのことは聞いているわ、エクレゼール」
 アルダワ世界を守る正義の竜だった、と。
 ティアリアは魔力を巡らせ、星霊バルカンを傍に喚ぶ。
 顕現した黒猫はまずティアリアの肩から大鎌の柄を伝い、刃に沿って滑るように飛んだ。其処から尻尾の炎を渦巻かせ、一気に火炎弾を解き放ったバルカンは鋭く鳴いた。
 それと同時にヲルガがからくり人形と共に駆ける。ヲルガは自らが『おまえ』と呼ぶ人形に抱かれており、其処から白藤色の霹靂を解き放った。
 静寂であらねばならぬというルールが敵から放たれ、赤い結晶の檻が広がる。だが、ヲルガは敢えて突き進んでいく。
「しきたりに従う道理はない。檻に閉ざされたとて破壊すればよい、幾度でも!」
 それは雷霆竜への言葉であり、己自身を示すことでもある。
 ヲルガは内側から檻――即ち、エリクシルの支配を破壊せんと立ち回った。ただ只管に、かの雷霆竜の胸元を目指して駆けゆく人形とヲルガは全力を巡らせている。
 更にタイニー・エリクシルは翅から星の粒を降らしてきた。
「あの星はよくないものだもの。焼きつくしてやりましょう、バルカン」
 飛来してくる星粒は妙に美しく光り輝いているが、ティアリア達にとってそれは悪しきものでしかなかった。煌めく星の間を縫うようにエクレゼールの雷撃が飛んできたが、ティアリアは素早く身を翻す。
 身をかすめた一撃が身体に鋭い痛みを齎してきたが、決して怯んだりなどしない。エクレゼールの雷撃でこちらが傷を負ったとしても、気に病まぬように。
 こんな痛みなど平気だと示すように、ティアリアは凛と立ち続けた。
「さあバルカン、もっともっと燃やしてちょうだい」
 気丈に振る舞うティアリアは魔力を巡らせ、バルカンに願う。その意志と思いに応えるように星霊バルカンが火炎弾を解き放っていく。
 ヲルガもエクレゼールをしかと意識の内に捉えながら、力をエリクシルにぶつけていた。
「愛し世界を、景色を、護るべき存在を――」
 其の、まなうらに思い出せるなら。
 決して屈するな。
 抗う意志、即ち闘い続ける覚悟があるならば、どうか共に。
 ヲルガとティアリアの狙いは勿論、あのタイニー・エリクシルのみ。
 雷霆竜の身体には傷ひとつ付けたくない。それに痛みよりも言葉を投げ掛けたいとティアリアは思っていた。青薔薇の大鎌で迫ってきた雷撃をいなしながら、ティアリアは呼び掛ける。
「偉大なる竜よ、どうかエリクシルに負けないで」
『…………』
「私達は外側からこれと戦うから、貴方はどうか心の内で戦って」
『……!』
 雷霆竜から答えは返ってこないが、言葉が届いている気配は感じられる。ティアリアは星霊と共にエリクシルの妖精を攻撃しながら、真っ直ぐに呼び掛け続けた。
「災魔と戦った時のように、私達は今共に戦えると信じているわ」
 貴方にとっても、きっとこの世界は大切なはず。
 それを壊す側になるなんて、そんなことは決してさせない。ティアリアの思いは強く、激しい雷と星が巡る戦場に向けられた。そして、ヲルガも果敢に立ち向かい続ける。
「軍神たるわれは、その|希《のぞみ》を叶えよう――この拳を以て!」
 刹那、天に向けて旋律めいた雷撃が迸った。
 猟兵に向けての攻撃ではない音を耳にしたヲルガは口許に笑みを湛えた。そうして、ヲルガはからくり人形と共に前へと踏み出す。繰り出されていく一撃は激しく、エリクシルのみを貫いていた。
「無粋な石なぞ、打ち砕いてやろうぞ」
「あと少しで助けられるから、待っていて」
 ティアリアも星霊と共に炎を巡らせ、妖精だけを屠る未来を見据えた。
 雷霆の旋律は響き渡る。
 悪しき未来を退け、正しき力を取り戻していくために。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
『きこえますか…エクレゼールさんきこえますか…今あなたの心に直接呼びかけています。』
と仙術の精神感伝術(≒テレパシー)で呼びかけ。

『アルダワ魔法学園の生徒として、あなたが世界を護る為に頑張ってきた事をよく知っています。どうか邪悪な妖精に負けないで下さい。僕も協力しますから。』と鼓舞。

敵の攻撃に対しては、結界術・高速詠唱で生み出した防御結界とビームシールド盾受け・オーラ防御で防ぎながら敵UC内容を把握。
アドヴェントパストで敵UCを無効化して生み出した隙を突き、自身の翼による空中戦で空を飛んで竜の胸部に接近。

光の属性攻撃・破魔・浄化を籠めたエーテルソードによる鎧無視攻撃・貫通攻撃で妖精のみ貫く!


マシュマローネ・アラモード


UC、|華麗なる飛翔《ブリリアント・フルバーニアン》!
モワ!厄介なUCですが、起点があるはずですわ!そこが弱点ならそこを潰しておくまで、ですわ!

そして何より、モワ、エクレゼールさんを助けること……これも試練ですわね、なるべく傷つけるわけには参りません。
雷霆と言えど、権能『斥力』(吹き飛ばし)で、空気抵抗、摩擦、雷霆の射線をずらして、こちらに届かないように……そしてエリクシルは額の宝石が力の根源とみましたわ、キネティック・パルサーとUCの一撃で『斥力』の圧を高めた渾身の一撃で損壊させましょう!

モワ、勝機を奪うなら、奪われる前に砕くまで、至ってシンプルですわ!


スカーレット・マカレッド
ふん、忌々しい宝石である
心優しき龍を苦しめ、洗脳させるとはな
吾輩は魔王であるが故、正義とは相反するが…此度くらいは助けてやらんこともないぞ
なんたってエクレゼール、お主は……身も心も、格好いいからな!

ふむ、助けを求めているのであるな?
良いだろう
この魔王が直々に手を差し伸べようではないか

愛刀カエンマルを振るいながら、【威厳】を以てユウシャノヒカリを輝かせる
エリクシルの妖精より強く、眩く、だ

弱るでない!
お主は強い雷霆龍であろう
吾輩達はお主を助けに来た
正義の意志を思い出すのである!

「光に呼び応えるのだ、雷霆龍!――デイブレイクソード!!」
そう宣言し、【居合い】で力を溜めて光の一撃を宝石へ振り下ろす!



●心に響く声
 雷霆竜エクレゼールに埋め込まれたタイニー・エリクシル。
 エリクシルの宝石の輝きは妖しく、星の欠片を振り撒く様子は美しさすら感じる。だが、あれは悪い未来を導くだけの厄介な存在に過ぎない。
「ふん、忌々しい宝石である。心優しき龍を苦しめ、洗脳するとはな」
 スカーレットは現状を見据え、タイニー・エリクシルへと敵意を向けた。その間も苦しむ唸り声は聞こえてきており、雷霆竜が抵抗していることが分かる。
 その様子を見つめたマシュマローネは先手必勝だと判断して、一気に力を解放する。
「――|華麗なる飛翔《ブリリアント・フルバーニアン》!」
 ブリリアント・フルバーニアドレス姿へと変わったマシュマローネが狙うのは雷霆竜の胸元。其処に宿っているタイニー・エリクシルだけを壊すのが目的だ。
 勇ましく凛とした様子で敵に立ち向かっていくマシュマローネ。
 その後に続き、スカーレットも愛刀のカエンマルを振るっていく。
「吾輩は魔王であるが故、正義とは相反するが……此度くらいは助けてやらんこともないぞ。なんたってエクレゼール、お主は……身も心も、格好いいからな!」
 雷を思わせる鋭利な金の翼は勿論、風の色のような翠の体躯。
 そして、未だ抵抗する心。
 どちらもスカーレットにとって好ましいものだ。マシュマローネと協力してタイニー・エリクシルを狙うスカーレットは強い眼差しで挑んでいく。
 その間、リューインは雷霆竜へ意識を向けていた。
「きこえますか……。エクレゼールさん、きこえますか……今、あなたの心に直接呼びかけています」
『…………』
 リューインの呼び掛けは聞こえているはずだが、返事はない。ただ苦しげな雰囲気だけは伝わってくるため、エクレゼールも必死に抵抗している最中なのだろう。
 届いているならば成功だと感じたリューインは更に呼び掛けを続けていった。
「アルダワ魔法学園の生徒として、あなたが世界を護る為に頑張ってきた事をよく知っています。どうか邪悪な妖精に負けないで下さい。僕も協力しますか」
 雷霆竜を鼓舞する言葉を投げ掛け、リューインは真っ直ぐな視線を向ける。
 敵の攻撃にも備えた彼はビームシールドを構えており、タイニー・エリクシルの動きにも気を付けていく。そして、其処に星の砂子の力が放たれた。
 タイニー・エリクシルの翅が揺らめくと同時に星の粒が射出される。
 エクレゼールの雷撃と折り重なった攻撃はリューインとスカーレットに襲い掛かった。されど、二人共それぞれの武器と防具で星屑を受け流す。
 それに続き、タイニー・エリクシルの額の宝石が奇妙に輝いた。
 はっとしたマシュマローネは自分達の力が吸い取られていくような感覚を抱く。
「モワ! 厄介な力のようですが、起点があるはずですわ!」
 何が奪われたとて勢いを止める理由にはならない。マシュマローネは敵の額を見据え、輝く宝石を見遣った。万能宝石エリクシルという名であるならば、あの部位が本体めいたものであるはずだ。
「そこが弱点ならそこを潰しておくまで、ですわ!」
 マシュマローネは果敢に攻め込んでいく。斥力を用い、空気抵抗や摩擦を呼んで雷霆の射線をずらせれば、雷撃だけはこちらに届かないように出来るかもしれない。
 全力を揮うマシュマローネに合わせ、リューインは結界術と高速詠唱で生み出した防御の力を巡らせた。
『う……君達、は――』
 そのとき、エクレゼールが微かな声を紡ぐ。
 それ以上の明確な言葉は続かなかったが、タイニー・エリクシルの支配から僅かでも逃れられたことは確かだ。スカーレットはエクレゼールの声を聞き、深く頷く。
「ふむ、助けを求めているのであるな? 良いだろう、この魔王が直々に手を差し伸べようではないか」
 カエンマルを振り上げたスカーレットは、威厳を以てユウシャノヒカリを輝かせた、赤い光はエリクシルの妖精に対抗するようにより強く、眩く煌めいていく。
 そして、スカーレットは光と共にエクレゼールに呼びかける。
「弱るでない! お主は強い雷霆龍であろう」
『……』
「吾輩達はお主を助けに来た。正義の意志を思い出すのである!」
『…………!』
 言葉での返事は聞こえなかったが、その代わりに雷霆竜の身体が反応していた。正義に訴えかける魔王の言葉は強く、竜の心に響いたはずだ。
 良い流れだと感じたマシュマローネはエリクシルの宝石を狙い続ける。
「手強い敵ですが……何より、モワ、エクレゼールさんを助けること……これもよりよい未来に進むための試練ですわね。そのためにもなるべく傷つけるわけには参りません」
 マシュマローネはエンジンを搭載した杵、キネティック・パルサーを大きく振り被った。次に放つのは、斥力の圧を高めた渾身の一撃。
「こんなもの、早々に損壊させましょう!」
「その通りですね。まずはあの星の粒を封じます」
 リューインはアドヴェントパストを明確なタイミングで発動させた。それによって時間属性の魔法がエリクシルの妖精に浴びせられていく。
「――世界に遍在するマナよ、時の流れを遡り穏やかなる過去を再現せよ」
 リューインは其処に生み出した隙を突き、己の翼を用いて飛び上がった。目指すはただ一点、竜の胸部のみ。光の属性と破魔、浄化が籠められたエーテルソードは一気にタイニー・エリクシルを貫く。
 それと同時にスカーレットも妖精のみを狙った一閃を叩き込みに向かった。
「光に呼び応えるのだ、雷霆龍! ――デイブレイクソード!!」
 凛と宣言したスカーレットは納刀した刃による居合いを解き放つ。溜めた力は全て光の一撃に込め、妖精が宿す宝石へと一気に振り下ろす。
 リューインとスカーレットの一撃はタイニー・エリクシルの宝石に罅を刻んだ。
 雷霆竜から妖精を引き剥がせるようになるまで、あと少し。
 マシュマローネは仲間達に頼もしさを抱き、自らも王の気魄で以て追撃を加えにいく。勝機が相手の幸運になっていようとも彼女達には関係ない。何故なら――。
「モワ、勝機を奪うなら、奪われる前に砕くまで。至ってシンプルですわ!」
 勝利とは奪い取るものではない。
 自らが引き寄せ、勝ち取り、手にするものなのだから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐

数年前からの本格的な活動が始まる以前より、アルダワ世界の守護者たる存在はずっと竜種でした
しかしオブリビオンを誅滅することが出来るのは猟兵だけ

それ故の学園地下迷宮。だからこそのアルダワ魔王戦争だったのですが。
どれだけ強大な力を以てしても十全たることはない闕如、守護竜の一翼を担う自負が、マスカレイドとエリクシルが付け入る『願い』の呼び水になってしまったのかもしれません
ですがこの世界の竜は、嘗ては災魔の軍勢と戦い抜き。決死の覚悟で大魔王を封印し、世界を救った英雄の種族であることに依然として変わりはなく
その献身と感謝に報いるは必然必定の理
そして
悪辣なる魔神の枷を砕き、雷霆の力を貸して下さい!

◆『破戒僧捕物帖』
武器受けと早業の分銅術で鎖を振り回し、『星の砂子』の無差別攻撃を防ぎます
見切りと視力技能で緩急も先読みすれば、視認困難でも問題は無く。クイックドロウ+投擲でエリクシルの翅を絡め取って追撃を封じ、空中戦+ジャンプからの飛び蹴りでタイニー・エリクシルに痛打を与えます



●竜の意志と戦いの理
 アルダワ世界に聳える霊山、竜神山脈に住まうドラゴン達。
 彼らはかつて、人類と共に災魔と戦った偉大な存在だ。ドラゴン達は昔だけではなく、今も猟兵やアルダワの学生達と共に災魔との戦いを続けている。
 アルダワ世界の守護者とも呼べる彼らを思う蔵乃祐は、実際に目の前にした雷霆竜エクレゼールを振り仰いだ。
「彼の竜が雷霆の旋律と呼ばれし者ですか」
 目を閉じ、苦しげに唸っている雷霆竜は洗脳に抵抗しているようだ。蔵乃祐は身構え、彼の胸に埋め込まれるように顕現しているタイニー・エリクシルを見据えた。
 アルダワ世界の守護者たる存在はずっと竜種だったと認識している。されど過去から滲み出るように出現していき、世界に蔓延るオブリビオンを誅滅することが出来るのは猟兵のみ。
 以前から現在の流れに思いを馳せた蔵乃祐は現状を確かめながら、拳を握り締めた。
「それ故の学園地下迷宮。だからこそのアルダワ魔王戦争だったのですが――」
 此処に現れたのはタイニー・エリクシル。
 万能宝石とも呼ばれた存在の欠片がこうしてアルダワ世界に訪れてしまっている。
 タイニー・エリクシルから解き放たれた攻撃を察した蔵乃祐は、分銅術で鎖を振り回すことで攻撃をいなした。射出された星の粒は当たれば痛みを齎すものだろう。
 だが、蔵乃祐はそれら全てを消し飛ばす勢いで防いでいく。
 されどそれに加えて、エリクシルが操っているエクレゼールからの雷撃が迸っていた。地を蹴った蔵乃祐は雷撃を既の所で避け切り、仕込み籠手を大きく振るう。
 エクレゼールの身体ではなく、タイニー・エリクシルだけを狙う一閃が解き放たれた。
 捕縄術によって狙うは妖精の翅。
 あの部位から星の欠片めいたものが放出されているならば、片翅だけでも封じたいところだ。光度を増す星の粒は厄介なものだが、蔵乃祐は的確に相手を狙い続けた。
 しかし、其処へ雷撃が加わる。
 それは悲しみと苦しみを宿した咆哮と共に解き放たれていた。蔵乃祐には雷霆竜の声が助けを求め、洗脳と支配に抗っているように感じられた。
 成程、と言葉にした蔵乃祐は身構え直しながら敵と雷霆竜を見つめる。
「どれだけ強大な力を以てしても十全たることはない闕如。そして、守護竜の一翼を担う強い自負がマスカレイドとエリクシルに付け入る『願い』の呼び水になってしまったのかもしれません」
 世界を渡ったエリクシルとマスカレイドは災いを齎すもの。
 だが、蔵乃祐は知っている。この世界の竜は、嘗ては災魔の軍勢と戦い抜いた存在。どのドラゴンも決死の覚悟で大魔王を封印し、世界を救った英雄の種族である。
 たとえ今の状況がこのようなものであっても、過去は依然として変わらない。それゆえに現在も誇り高き力と意志が健在であるはずだ。
『君、達……僕を――』
 そのとき、エクレゼールから微かな声が零れ落ちた。明らかに蔵乃祐達を認識しており、呼び掛けてくるような声だった。タイニー・エリクシルが猟兵の攻撃によって弱っている成果かもしれない。
「その献身と感謝に報いるは必然必定の理。そして――」
 蔵乃祐はエクレゼールに呼び掛け、全力を振るっていく。妖精が雷霆竜の身体を操ってくる雷撃は咄嗟に飛ばした戦輪で弾き返し、蔵乃祐は果敢に進む。
「悪辣なる魔神の枷を砕き、雷霆の力を貸して下さい!」
『……!』
 蔵乃祐の強い呼び声が響いた刹那、雷撃が止まった。
 エクレゼールの意志は確かに受け取ったとして、蔵乃祐はタイニー・エリクシルだけを貫く。翅を絡め取り、星の光を封じたが、蔵乃祐は気を緩めたりなどしない。
「後少しだけ耐えて頂けますか」
 雷霆竜へ思いが籠もった声を向け、蔵乃祐は敵の動きを見切った。目を凝らして光の緩急を先読みすれば、視認が困難であっても問題はない。
 そのままエリクシルの妖精のもう片翅を絡め取った蔵乃祐は相手の追撃を完全に封じた。
 好機を察した彼はひといきに跳躍する。エクレゼールの胸元よりも高く飛び上がった蔵乃祐は、しかと狙いを定めた。其処から繰り出すのは全力の飛び蹴り。
「終わらせましょう」
 次の瞬間、タイニー・エリクシルに見舞われた一撃は抗えぬ痛打を与えた。
 そうして、妖精との戦いは終わりに導かれていく。最後に待ち受ける強敵の気配を予感させながら――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルダ・イシルドゥア
ディフさん(f05200)と
エリクシル、万能なる宝石
嘗て、父様と母様が相対した――

迸る稲光は頂に座す主の叫びに似て
完全なる姿に非ずとも、雷霆の神を従えてしまうなんて
……いいえ。まだ、全てを奪われた訳ではありません
届かせましょう、ディフさん
私たちが諦めなければ……必ず!

アイナノアに騎乗したまま空中戦へ
極力防戦に徹し雷霆竜の御身に致命傷を負わせぬように
雷光の合間を縫うように飛翔し
四肢を、翼を、僅かな間でも押し留められるように臥籠守で縛り止め
今も抗い続ける自我へと呼び掛け続けます

気高き守護者よ、神鳴るものよ
守り続けて来たものに自ら手を掛けてしまう前に
貴方を今此処で繋ぎ止めましょう
人を愛し、人を慈しみ、守り続けて来た神々のひとはしらよ
どうか屈しないで
私たちが必ず、貴方をお救い致します

――ディフさん、そこに!

正面から相対する事
その胸に埋め込まれた妖精を示す事が叶えば
ディフさんの射程圏内までアイナノアを肉薄させます

この祈りが、降り掛かる不幸を祓えるよう
近い距離、奥底に眠る自我に届けるように名を呼んだ


ディフ・クライン
ヴァルダ(f00048)と

願いを叶える万能宝石、とはよく言ったものだ
それが誇張でないことは、彼女の故郷たる世界が証明している

偉大なる雷霆の神
さぞ苦しく、悔しいだろう
けれどまだその手が伸ばされているのなら
否、いなくたって
掴んでみせるのが猟兵だろう

ああ。行くよ、ヴァルダ
全て奪われる前に、彼自身を取り戻してみせよう

彼女と共に飛竜の背に
怪我を負わせたくはない
防ぎきれぬ雷には氷魔法を手繰り、幾重にも雪華重ねて防ぐ
氷は半導体だ
厳冬のオーラ纏い
雷霆竜の雷とて半減させてみせる

今もなお人と共にアルダワを守る雷霆の主
恩義を返す時だ
貴方に守ってもらったアルダワの民として
必ず貴方の手を取り
その闇を引き剝がすよ
もう少しだけ頑張って

――ひかりは、見えるかい?

『払暁の御手』『祓い浄める天満月』『昇華のひかり』
おいで、リュミエル

触れた光を束ね、一条の槍と成し

ヴァルダが指し示した宝石の妖精見据え
勝機を奪われ、不幸が齎されようと
それがこの身を襲おうと
この光を彼に届ける為
真直ぐに投擲した

不幸と宝石を切り裂く希望のひかりと成れ



●救いの光と神鳴の聲
 エリクシル、それは万能なる宝石。
 どのような願いでも叶えるとされる宝石は時折、妖精の形を取って顕現する。
「嘗て、父様と母様が相対した――」
 ヴァルダはタイニー・エリクシルを見つめ、両親から伝え聞いていた話を思い返した。アイナノアの背から見つめる雷霆竜は固く目を閉じており、満足に言葉を発することも出来ない様子だ。畏怖めいた気持ちを抱いたヴァルダは小さく掌を握っていた。震えるほどではないが、心がざわめいている。しかし、ヴァルダが抱いている妙な気持ちはディフの言葉によって掻き消された。
「願いを叶える万能宝石、とはよく言ったものだ」
「ディフさん……」
 はたとしたヴァルダは一人ではないことを改めて思い出す。
 ディフは静かな笑みを見せた後、真剣な眼差しを雷霆竜に向けた。胸元に埋め込まれるように顕現しているエリクシルの妖精。其処からは奇妙な魔力を感じる。
 万能という名が誇張でないことは、彼女の故郷たる世界が証明していた。そう感じていたディフの裡にはタイニー・エリクシルに対峙するための覚悟が宿っている。
 雷霆竜エクレゼールを乗っ取りかけている妖精は、稲光を迸らせていた。
 頂に座す主の叫びに似た雷鳴は激しく鋭い。
「偉大なる雷霆の神。さぞ苦しく、悔しいだろう」
「完全なる姿に非ずとも、雷霆の神を従えてしまうなんて……」
『……、……』
 ディフとヴァルダが雷霆竜を思うと、声なき意志と息遣いが彼から伝わってきた。苦しげな唸り声が聞こえているのは抵抗の証だろう。エクレゼールの声を聞いたヴァルダは凛とした眼差しを竜にそそいだ。
「……いいえ。まだ、全てを奪われた訳ではありません」
「まだその手が伸ばされているのなら――否、いなくたって掴んでみせるのが猟兵だろう」
「届かせましょう、ディフさん」
 ヴァルダは彼の名を大切なお守りのように呼んだ後、アイナノアに願う。目指すはただ一点、タイニー・エリクシルの眼前だけ。頷いたディフはこれから巡る戦いへの思いを言葉にする。
「ああ。行くよ、ヴァルダ。全て奪われる前に、彼自身を取り戻してみせよう」
「私たちが諦めなければ……必ず!」
 ヴァルダの声と同時に、轟く雷鳴が鋭く迸った。此方への攻撃でもあるものだが、ヴァルダとディフにはそれが雷霆竜からの呼び掛けのようにも聞こえた。
 アイナノアは素早く高く飛翔する。雷撃を避けられたことで安堵したヴァルダはアイナノアの背を撫でた。ヴァルダは極力、防戦に徹しようと決めていた。
 その理由は雷霆竜の身に致命傷を負わせないように努めるため。
 ヴァルダの意志を感じ取ったアイナノアは雷光の合間を縫うように飛翔していく。その間にディフが水魔法を手繰り、飛び交う雷撃を其方に引き寄せていった。
 だが、其処にエリクシルの翅から星の粒が射出される。ヴァルダのすぐ傍に飛んできた光の欠片は鋭い痛みを与えてくる。しかし、この痛み以上に雷霆竜は苦しんでいるはず。
 四肢を、翼を。僅かな間でもいい、押し留められるように。ヴァルダは召喚した樹木の精から芽吹かせた翠を巡らせ、タイニー・エリクシルを縛り止めようとしていく。
 ディフも幾重にも雪華を重ね、雷撃の方を防いだ。
「このくらいなら――」
 厳冬のオーラを纏ったディフは雷霆竜の稲妻に耐えた。氷の力は狙い通りに上手く巡り、戦場に広がっていく。
 タイニー・エリクシルは勝機を奪いながら額の宝石を光らせていた。その光と共に雷霆竜が苦しんでいると気付き、ヴァルダとディフは頷きを交わした。
 今も抗い続けるエクレゼールの自我へと呼び掛けなければ、この雷撃は激しく荒ぶるだけ。
「気高き守護者よ、神鳴るものよ」
「今もなお人と共にアルダワを守る雷霆の主よ、今こそ此方が恩義を返す時だ」
 ヴァルダの声に合わせ、ディフもエクレゼールに思いを投げ掛けていく。思うのはアルダワ世界を揺るがせ続けた災魔との戦いのこと。
「貴方に守ってもらったアルダワの民として」
『……!』
「必ず貴方の手を取り、その闇を引き剥がす。もう少しだけ頑張って」
 ディフがアルダワの者であること告げたことでエクレゼールから僅かな反応が返ってきた。それが好機だと感じたヴァルダは翠を解き放ちながら、そっと語りかけてゆく。
「守り続けて来たものに自ら手を掛けてしまう前に、貴方を今此処で繋ぎ止めましょう」
 人を愛し、人を慈しみ、守り続けて来た神々のひとはしらよ。
 どうか、屈しないで。
 願いにも似た思いを声として紡ぎ、ヴァルダは決意と誓いの言葉を雷霆竜に向けた。
「私たちが必ず、貴方をお救い致します」
『頼、む……どうか……』
 するとエクレゼールから微かな声が返ってくる。猟兵達がタイニー・エリクシルを弱らせていることに加え、ヴァルダやディフの呼び掛けが届いていることも大きい。
 ヴァルダは真っ直ぐに前を見据え、アイナノアを飛翔させた。
「――ディフさん、そこに!」
 胸に埋め込まれた妖精を示したヴァルダはディフを呼ぶ。射程圏内までアイナノアを肉薄させれば、後は彼が決めてくれると信じていた。
『君達は……』
 近付くディフ達の気配に気付いたのか、エクレゼールが僅かに目を開く。此処からが勝負だと察したディフは浄化の精霊の力を深く巡らせていった。
「ひかりは、見えるかい?」
 払暁の御手、祓い浄める天満月、そして昇華のひかり。
 ――おいで、リュミエル。
 触れた光を束ねたディフは、その力を一条の槍と成していく。この槍は雷霆竜を傷つけない。彼の者の身を侵す邪悪だけを貫く槍は真っ直ぐに竜の胸元に差し向けられていた。
 ディフが狙うのはヴァルダが指し示してくれた宝石の妖精だけ。
 たとえ勝機を奪われ、不幸が齎されようとも構わない。幸運だけで勝利できるほど猟兵の戦いは甘くないはず。エリクシルの妖精の翅から解き放たれる星の粒が身を襲おうとも、ディフは構えを解かなかった。
 ただ、この光を彼に届ける為に。
 そして、真正面から投擲された光の槍は輝きとなって周囲を満たしていく。
 ヴァルダは一閃を見守りながら、アイナノアと共に祈る。この思いが、雷霆竜やディフに降り掛かる不幸を祓えるように強く、深く――。
「雷霆竜エクレゼール様……!」
 殆ど間近の距離でヴァルダは呼びかける。奥底に眠る自我に届けるように、その名を。
 刹那、ディフの放った一撃がタイニー・エリクシルを深く貫いた。それはまさに不幸と宝石を切り裂く、希望のひかりそのもの。収束した光は美しき輝きとなって悪しき宝石を砕く。
 エリクシルの妖精は崩れ落ちるように竜の胸元から剥がれ、地面に衝突する前に消滅した。
 次の瞬間、煌めきを反射した竜の金翼が大きく広げられる。
 エクレゼールは完全に瞳を開き、宝石の残滓を振り払うように身体を震わせた。ヴァルダとディフは顔を見合わせ、自分達の願いと力が運命を切り拓いたことを確かめる。
 安堵した二人は、仲間の猟兵と共に改めて雷霆竜を見つめた。すると――。

『わーっ、すっごく苦しかった! やったぞ、助かったぁー!』

 それまでの苦しげな声とは裏腹に、妙に間延びしつつも明るく軽快な声が山頂に響き渡った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『滾る鎚ベリオルズ』

POW   :    ジェノサイドハンマー
予め【ベリオルズが力を溜める】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ファントムスタンプ
自身が触れた物体ひとつに【ハンマーの幻影】を憑依させ、物体の近接範囲に入った敵を【実体を持つ打撃】で攻撃させる。
WIZ   :    ランドブレイク
単純で重い【ハンマー(ベリオルズ自身)】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:志村コウジ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●旋律と共に
 猟兵達がタイニー・エリクシルを倒さんと総攻撃を仕掛けている頃。
「ドゥフフ、やはりアルゴラ殿の身体は美しい」
 山頂から少し離れたところでは『滾る鎚ベリオルズ』が操るラビシャンの女王、アルゴラの身体を見て悦に入っていた。彼は竜神山脈に誰も近付けなくなるよう、さらなる罠を仕掛けていたところのようだ。
「ドゥフ!? この気配は……!」
 しかし、途中で猟兵達が山頂に至っていたことに気付いたベリオルズは慌てて身を翻す。アルゴラの肉体を駆使して高く跳躍したベリオルズが雷霆竜エクレゼールの元に向かっていく最中――。

 猟兵達はエリクシルの妖精を倒し、雷霆竜を解放していた。
『いやぁ感謝感謝、大感謝だよ! よく僕のピンチに気付いてくれたねぇー!』
 正気を取り戻し、支配から抜け出したエクレゼールは金の翼を嬉しそうに揺らしている。見た目は美しく荘厳な雰囲気を感じさせるドラゴンだが、性格はとても明るいものらしい。
『助けてくれてありがとうね、君達。僕はエクレゼール。気軽にえっくんって呼んでくれていいよ!』
 妙に馴れ馴れしい、もとい親近感の湧く口調で雷霆竜は語っていく。
 曰く、昔ながらの重々しい喋り方ではアルダワの学生が萎縮してしまい、うまくコミュニケーションが取れなかったらしい。
 それゆえにエクレゼールはこうして気軽に振る舞っているようだ。
 まだ誰もえっくんという愛称は使ってくれていないけれど、と付け加えたエクレゼールは尾をくるりと丸めた。
『いやぁー、僕としても近付き難くて変な距離を置かれるよりは、みんなと仲良くしたいというか? だけどほら、山脈に来たのが変な喋るトンカチとは思わなくてさ。誰だろうって思って何となく近付いたらああなっちゃってさ。面目ないし、申し訳ない限りだよ……』
 どうやら雷霆竜は敵に利用されかけたことに対してかなり気にしているらしい。しゅんとした様子のエクレゼールだったが、すぐに顔を上げる。
 その瞳にはこれまでとは違う真剣さが宿っていた。
『もっとお礼を言って君達と楽しくお喋りしたいところだけど、アイツが来たみたいだ』
「洗脳を解くとは流石……と褒めておきましょうか、ドゥフフ」
 雷霆竜が視線を向けた先には滾る鎚ベリオルズが現れていた。威嚇の体勢を取ったエクレゼールの身体には雷が迸り始めている。ベリオルズも乗っ取っているアルゴラの身を操り、戦闘態勢に入っていた。
「ドゥフフ、こうなっては仕方がありません。皆殺しと参りますか」
 怪しい笑い声を響かせながら、ベリオルズは力を溜めていく。警戒を抱いた雷霆竜は猟兵と共に強く身構え、自らもベリオルズと戦う気概を抱いた。
『みんな、僕も一緒に戦わせて欲しい! だけど僕の力はまだ万全じゃない。だからトドメは君達に任せるよ!』
「拙者にトドメ? 面白いことを仰る、ドゥフフ……」
 エクレゼールが援護を行うという旨を告げると、ベリオルズが不敵に笑った。
 きっと此方に勝つ気でいるのだろうが、猟兵達とて負ける気はない。雷霆竜は鋭い敵意を滾る槌ベリオルズに向け、そして――猟兵を守り、力を高めるため雷が辺りに広がった。
 その軌跡が描くのは旋律のような音。凛と響く雷霆の鳴動と共に、最後の戦いが幕開けた。
 
フリル・インレアン
ふえ?あの人がエロトンカチさんですか。
グランギニョールさんとは全然違いますね。
グランギニョールさん達はなんだかんだいいながら仲がよかったですからね。
この人とは大違いですね。
とりあえず、恋?物語で気づかれないように近付きましょう。
私が至近距離にいればアルゴラさんまで攻撃を受けてしまうから攻撃できない筈です。
ふえ?……大きい。
なんで私はアルゴラさんの胸を掴んでしまっているのでしょうか?
ふえ?身長が足りないからって冷静に分析してないでアヒルさんも攻撃してください。


マシュマローネ・アラモード


うさぎさんですわ!
モワ!でも色々とおかしなところがあると思いますわ!

エクレゼールさん、お力添え願いますわ!あの槌が本体のようですわね!

UC、|華麗なる飛翔《ブリリアント・フルバーニアン》!

牽制の雷撃があれば、わたくしの機動力の内に、|動作を収める《・・・・・・》こともできるでしょう!
『斥力』の吹き飛ばしで、槌の弱点、あの大きなうさぎさんと繋がっている部分を弾き飛ばしましょう!

……モワ、ちょっぴり、うさぎさん、わたくしとディテールが似ているのがモヤモヤしますわ……。
(最近のピュアリィは服をきちんと着ると聴いてはいるものの、縦ロールやティアラ、得物も似てたりでモヤモヤ😶‍🌫️)


リューイン・ランサード
この口調、やっぱりどこかで誰か喋っていたなあ~。
怖いというより、きもいから相手したくないけど、エクレゼールさんもいますし頑張ります<汗>。

パワーはスゴそうだから攻撃を受け止めての防御は悪手だな。つまり。
「当たらなければどうということはない。」
相手の動きをよく見て、第六感・瞬間思考力で攻撃を読み、自分の翼・空中戦・見切りで空を飛んで躱す等の方法でハンマーの直撃を回避。

エクレゼールさんの援護を受け、仙術で生み出した分身を囮にして攻撃を空振りさせた所にUC:ソウルスラッシュを使用し、エーテルソードでベリオルズ本体を斬ります。

身体は硬くて丈夫なのが自慢でしょうが、ならば魂を直接斬ってしまうまでです!



●喋る槌と猟兵の志
 今は雷霆竜エクレゼールと共に立ち向かう局面。
 背に頼もしさを覚え、フリルとマシュマローネ、リューインは敵を見つめる。巨大な槌を構えた、というよりは己自身を構えさせたベリオルズは不敵に笑っていた。
「ドゥフフ」
「ふえ? あの人がエロトンカチさんですか」
「操られているのはうさぎさんですわ! モワ! でも色々とおかしなところがあると思いますわ!」
 フリルは以前に呼ばれていたというベリオルズのあだ名を思い出しつつ、油断なく身構える。マシュマローネは本体である槌ではなく、嘗てアルゴラと呼ばれていたラビシャンの女王を瞳に映していた。
 あの身体に彼女の魂はなく、ベリオルズが自分のものとして扱っているようだ。不自然な形だと感じたリューインは、やはり既視感を覚えていた。
 相手はリューインにとって怖いというより、生理的に受け付け難いものだ。
「本当なら相手なんてしたくないけど……エクレゼールさんもいますし、頑張ります」
 意気込みを言葉にしたリューインは相手の出方を分析していく。その間にフリルは以前に出会った強敵のことを再び思い返していた。そう、喋る槌といえばグランギニョールだ。
「グランギニョールさんとは全然違いますね。あの人達はなんだかんだいいながら仲がよかったですからね」
 ただアルゴラの肉体を操っているベリオルズとは大違いだ。
 フリルがそっと息をひそめる中、マシュマローネは背後の雷霆竜に呼びかける。
「エクレゼールさん、お力添え願いますわ!」
『もちろん、任せてよ!』
「あの槌が本体のようですわね! 全力で参りますわ」
 ――|華麗なる飛翔《ブリリアント・フルバーニアン》。マシュマローネの声に応えたエクレゼールは翼を広げた。其処から繰り出されるのはマシュマローネと雷霆竜の同時攻撃だ。
 牽制代わりの雷撃が先ず鋭く走り、その稲妻を利用してマシュマローネが駆ける。
「わたくしの機動力の内に、動作を収める……こともできるでしょう!」
『何だって出来るさ。僕を見事に助けてくれた君達だからね』
 その間、一瞬。
 マシュマローネは斥力による吹き飛ばしで槌の弱点を狙う。つまりは、アルゴラと繋がっている巨大な手と腕の部分だ。槌を弾き飛ばしてしまえば相手も攻撃に移れないはずと考えたのだ。
「ドゥフフ、あなたも実に可愛らしい」
「……!」
 しかし、ベリオルズはマシュマローネを間近で見るために敢えて自らの身体で一撃を受けた。ベリオルズ自体に目はないというのに絡みつくような視線を感じ、マシュマローネは思わず息を呑む。
『こら、気持ち悪いことを言うなよ!』
 すかさずエクレゼールが強く敵を睨みつけ、威嚇の声をあげた。リューインも仲間のフォローに入るべく、喋る槌ベリオルズそのものを見据える。
「パワーはスゴそうだから攻撃を受け止めての防御は悪手だな」
 これまでの一連の動きを見ていたリューインはこのように判断していた。
 つまり――。
「当たらなければどうということはない」
 相手の動きをよく見ていくことに注力したリューインは攻撃を読もうと試みる。自分の翼を広げると同時にエクレゼールも動いてくれたらしく、鋭い雷撃がベリオルズに放たれた。
 雷霆竜に援護を任せたリューインはこのまま空中戦に入ろうと決める。出来る限り相手の攻撃は見切り、空を飛んで躱すことを心掛ける。
 ハンマーの直撃は手痛いものだが、リューインは決して押し負けない。
『その調子だよ、いけーっ!』
 エクレゼールは純粋な気持ちで猟兵達を応援してくれているようだ。フリルはこくりと頷き、派手に立ち回る仲間にも信頼を寄せる。
 マシュマローネやリューインが目立ってくれている分、フリルは隠密行動に入っていた。これはたったひとりで戦う状況では出来ないことでもある。フリルは仲間の存在に感謝しながら敵との距離を詰めていく。
 ――背後から忍び寄る少女の悪戯心が齎す恋?物語。
 発動しているユーベルコードのおかげでこれまで気付かれずに近付けていた。そして、ベリオルズの間近まで迫ったフリルは自身の手を伸ばして攻撃に移る。だが――。
「ドゥフ、そうはさせませんぞ!」
「ふえ?」
 自分が至近距離にいれば、敵の攻撃の際にアルゴラまで攻撃を受けてしまう。それゆえに攻撃はできないはずだと読んでいたフリルだったが、予想外のことが起こっていた。
 直前で気配に気付いたベリオルズがアルゴラごと振り返ったのだ。
「……大きい」
「そうでしょう、そうでしょうとも」
「ふぇえ、なんで私はアルゴラさんの胸を掴んでしまっているのでしょうか?」
 フリルは慌てて後方に下がった。伸ばした手は攻撃にもなっていたが、振り向いたアルゴラの身体の真正面――つまり胸元に触れることになってしまった。
「アルゴラ殿へのお褒めの言葉、感謝。ドゥフフ……」
「ふえ? 身長が足りないからって冷静に分析していないでアヒルさんも攻撃してください」
 フリルは相棒のガジェットからの静かな意志を受け、身構え直す。
 それを見てベリオルズは怪しく笑っていたが、ダメージを受けていることも確かだ。それに今はフリルだけを相手しているわけではない。
『今だよ、みんな。僕の力もめいっぱいに放つから!』
「は、はいっ!」
 エクレゼールによってフリルには速さの加護が与えられていた。
 フリルが二撃目を打ち込むタイミングに合わせ、リューインもソウルスラッシュを叩き込んでいく。振り下ろしたエーテルソードでベリオルズ本体を斬るべく、彼は全力を振るった。
 その間にも雷霆竜の稲妻が戦場を切り裂く。
 マシュマローネも更なる一撃を見舞うためにベリオルズの柄やアルゴラの腕を穿っていった。
「……モワ」
「どうかしましたか?」
「ちょっぴり、うさぎさん、わたくしとディテールが似ているのがモヤモヤしますわ……」
 その際、マシュマローネの元気がないことに気付いたフリルは問いかけてみる。するとマシュマローネはアルゴラと自分を交互に見遣った。最近のピュアリィは服をきちんと着るものだと聴いてはいるものの、髪型やティアラ、得物まで似てしまっている。それゆえにモヤモヤするのだとして、マシュマローネは唇を噛み締めていた。
「ふぇ……大丈夫です、それだけそのスタイルが強いということです」
『そうそう! それに僕は煌めいている君の戦い方が好きだよ。あのトンカチと違ってね!』
 フリルが励ましの言葉を告げると、エクレゼールがマシュマローネは唯一の煌めきを持っていると語る。リューインも頷き、ベリオルズへ再度の攻撃に入った。
「身体は硬くて丈夫なのが自慢でしょうが、ならば魂を直接斬ってしまうまでです!」
「モワ、そうですわね! 強く、気高く、美しく――」
「私達が勝たせてもらいますね」
 リューインの声に続き、マシュマローネとフリルが思いを言葉にした。
 目指し、掴み取ると決めたのは勝利のみ。猟兵達と雷霆竜の猛攻は此処からも激しく続いていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
ヴァルダ(f00048)と

頭を抱える
ヴァルダを出来るだけあれの視界にいれたくない
ネージュを彼女の肩に残して一人飛び降りた
視界に入れる前に倒す、これしかない

空中で魔法陣を編む

――王は来たれり

黒焔纏い
手には王の剣を
瞳に王の赤を宿らせて

ヴァルダ、エクレゼール様の先導を頼む
あとネージュもお願いね
貴女はダメ(即答)

いくよ、アナリオン
それから、えっくんも
力を貸しておくれ

呼んでほしそうにしていた名を呼んで
友を慕うような笑みを彼らに向けて

日輪の竜と雷霆竜
強大な竜たちと共に
力を溜める暇も余所見の隙も与えない
己の生命力たる魔力を代償に
王の導くまま剣を振るおう

あまり喋らないでくれ、べリオルズ
君の言葉は彼女らには毒だ


ヴァルダ・イシルドゥア
ディフさん(f05200)と
アイナノアに騎乗したまま空中戦を、……戦、を……
ディフさん?ディフさん!

背に居たはずの彼は既に居らず、肩に残された雪の姫君と目が合う
――エクレゼール様の先導を私に?
それは勿論構いませんが、ヴァルダも共に……だめ?どうして、

有無を言わさぬ笑顔
命じる前に飛輪翼の力で成長した姿をアナリオンが取れば
ラビシャンの女王と鉄槌を火炎の属性攻撃で包み込む

……ぼうっとしている場合ではありません!
エク……えっくんさま、続きましょう!

雷霆竜とアナリオン
二対の息吹を重ねるように合図を送りディフさんの援護を
雷と炎の包囲網、容易く掻い潜れるものではないと知り給え!

……もう、今日は皆へんですよ!



●竜と奏でる音
 相対するは喋る槌ベリオルズ。
 彼の妙な笑い声に反して、感じる威圧感は重々しかった。かなりの力を秘めている相手であり、油断は出来ない。だが、ディフにとってそれ以上に気に掛かることがある。それはあの言動だ。
「あれは流石に……」
 頭を抱えたディフは思っていた。ヴァルダを出来るだけあれの視界にいれたくない、と。
 次の瞬間にはもう心は決まっていた。
 ディフはネージュを彼女の肩に残し、一気に竜の背から飛び降りた。自分達はこれまでアイナノアに騎乗していたゆえ、地上にいるベリオルズからは見えない位置に居られた。
 即ち、視界に入れる前に倒す。
 これしかないと判断したディフの行動は素早かった。ヴァルダが更に戦意を高める直前、このまま二人でアイナノアに乗ったまま戦おうと決めていた時に行動に移ったのだ。
「ディフさん? ――ディフさん!」
 彼の名を呼んだヴァルダは少しばかり混乱した。一緒に背に居たはずの彼は既に見えず、肩に残された雪の姫君と目が合うのみ。その間に降下していくディフは空中で魔法陣を編んでいた。
 着地すると同時に初撃を叩き込む狙いのようだ。
 ――王は来たれり。
 淪落せし騎士王の力を巡らせたディフは、黒焔の魔力に覚醒する。激しい焔を纏った彼の手には王の剣があり、その瞳には王の赤が宿っていた。
「ヴァルダ、エクレゼール様の先導を頼む」
「エクレゼール様の先導を私に?」
 声だけが聞こえたことでヴァルダは首を傾げた。ディフは喋る槌ベリオルズに立ち向かいながらも上空に声を響かせていく。ベリオルズは力を溜めているが、あの様子ならば見切れるだろう。
「あとネージュもお願いね」
「は、はい。それは勿論構いませんが、ヴァルダも共に……」
「貴女はダメ」
 上空から聞こえたヴァルダの声に対し、ディフは即答する。もし愛らしいヴァルダがベリオルズの餌食になったら、と考えるだけでも忌々しい。それほどにあれは女性の敵めいたものだ。
「だめ? どうして、――」
「どうしても」
 降下したディフは頭上を見上げており、有無を言わさぬ笑顔を向けていた。意味が分からずに戸惑ってしまったヴァルダが疑問符を浮かべる中、アナリオンが飛輪翼の力で成長した姿を取る。
「アナリオン、あなたも……?」
 不思議な思いを抱きつつ、ヴァルダも戦いへの思いを向けた。狙うは嘗ては喋る槌の相棒のような立ち位置だったという、ラビシャンの女王の身。
「……ぼうっとしている場合ではありません!」
 その鉄槌を火炎で包み込むべく、ヴァルダは気を引き締める。その間にエクレゼールが雷撃を放ってくれており、敵への牽制を行ってくれていた。
『色々複雑な気持ちはわかるよ。けど、こんなときこそ全力で行こう!』
「いくよ、アナリオン。それから、えっくんも」
『もちろん!』
「ああ、力を貸しておくれ」
 エクレゼールの言葉を聞いたディフは友を慕うような笑みを彼らに向けて、改めて願う。愛称を呼ばれて嬉しい気持ちを覚えたのか、エクレゼールは尾をふわふわと揺らしていた。
「エク……えっくんさま、続きましょう!」
『おー!』
 続けてヴァルダにも呼ばれたことでエクレゼールが張り切り始める。巡る雷撃は歌のような音を響かせ、雷霆の旋律となって轟いた。
 雷霆竜とアナリオン。二対の息吹を重ねるようにヴァルダが合図を送れば、それらはディフの援護となる。雷と炎の包囲網は激しく、ヴァルダは強く言い放った。
「この協奏、容易く掻い潜れるものではないと知り給え!」
 ヴァルダはディフとネージュ、竜達の力を真っ直ぐに信じている。エクレゼールも此方に信頼を抱いてくれているらしく、攻撃の端々にその意志が感じられた。
 ディフも攻撃の合間に日輪の竜と雷霆竜を見つめる。強大な竜達と共に戦えるならば何の懸念もなかった。相手がこれ以上の力を溜める暇も、余所見の隙も与えたりなどしない。
 己の生命力たる魔力を代償にしたディフは、宿る王の導くままに剣を振っていった。すると此方の猛攻に耐えきったベリオルズが怪しい笑い声を響かせる。
「ドゥフフ……なかなかの使い手。されど拙者も――」
「あまり喋らないでくれ、べリオルズ。君の言葉は彼女らには毒だ」
 しかし、その言葉をディフが遮った。
 エクレゼールとアイナノア、それにアナリオンまでもがディフに同意を示すような様子を見せている。ヴァルダは未だに分からないといった様子で皆を見渡した。
「もう、今日は皆へんですよ!」
「気にしなくてもいい。それよりも今はあれを倒そう」
「……わかりました」
 少しばかり釈然としない気持ちもあったが、ヴァルダはディフの声に頷きを返す。猟兵の攻勢に押されたベリオルズは徐々に追い詰められている。決着が付く時は間もなく訪れるだろう。
 輝ける翼竜が翼を広げていき、黒焔の魔力が巡り、雷霆の旋律が鳴り渡った。
 戦いの終わりを目指し、猟兵と竜は戦う。
 マスカレイドとエリクシルが導く未来など、完膚なきまでに壊してしまうために。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戒道・蔵乃祐

滾る槌ベリオルズ
大魔女スリーピング・ビューティーが配下、鋼語りのジュウゾウが作りし喋る武器ですね?
伝説の刀匠がマスカレイドに堕していたならば、鍛えた武具も野望を受け継ぐということでしょうか

その思想は使い手を選ばない究極の武具を鍛えることに執心していたと
であれば確かに、持ち主を武具の傀儡にしてしまう故の鋼語り。ラビシャンの女王アルゴラでは無く、喋る武器のあなたが主体で復活するのは筋が通っているかもしれません

付属物としてでしか世に存在することが出来ない彼女は
此処に体は在れど何処にも居ないのでしょう
ならばその残滓、この拳で引導を渡すことが、せめてもの供養にならんことを祈る他ありません

◆『怪力乱神を語らず』
金丹仙薬によるドーピング+激痛耐性で限界突破の怪力を引き出し、金剛身の武器受けとジャストガードで『ジェノサイドハンマー』を真っ向から受け止める力比べ
エクレゼールさん?えっくんさん?は雷撃で隙を突いて下さい

崩しが上手くいけばグラップルからの重量攻撃による叩き付け
宿業砕くは武具ではなく人の業故に



●砕かれし野望
 いざ、相対するのは滾る槌ベリオルズ。
 猟兵に対抗するべく動き出した敵は、周囲にハンマーの幻影巡らせながら、ベリオルズ自身が繰り出す一撃で以て周囲ごと破壊しようと動いていた。
 蔵乃祐は金丹仙薬を用い、己の力の限界を超えながら対抗している。
 槌の一閃が迫ろうとも怪力で押し留め、耐えた。
「ドゥフフ……やりますな」
 ベリオルズは蔵乃祐に称賛する言葉を向けてくる。
 蔵乃祐はこちらに対して力を溜めている相手を見据え、冷静に問いかけた。
「大魔女スリーピング・ビューティーが配下、鋼語りのジュウゾウが作りし喋る武器ですね?」
「よく知っていらっしゃる、ドゥフフ」
 怪しく笑ったベリオルズは肯定したが、それがどうかしたのかといった様子だ。その間、アルゴラの身体を操ったベリオルズは蔵乃祐に容赦のない槌撃を見舞った。
 重い衝撃が走ったが、咄嗟に金剛身で受け止めたことで致命打にはなっていない。
「伝説の刀匠がマスカレイドに堕していたならば、鍛えた武具も野望を受け継ぐということでしょうか」
 次の一手はまともに受けぬよう、蔵乃祐は地を蹴る。
 跳躍をしたことで距離を取った彼は追撃を受けないよう立ち回っていく。
 その際、蔵乃祐は考えを巡らせる。
 ジュウゾウと呼ばれていた彼の者の思想は伝え聞いていた。
 使い手を選ばない究極の武具を鍛えることに執心していたようだ、と。
「どうでしょうなぁ」
 ドゥフフ、と相変わらず快くはない笑い声が響いている。
 ベリオルズの声は不快さを感じさせるものだ。そのように思えるのは、やはりマスカレイドとしての悪意が滲み出ているからだろうか。
 蔵乃祐とベリオルズは互いに距離を取り合っている。
 見切られやすい力溜めであることを相手も理解しているのか、蔵乃祐を警戒しているようだ。
「――であれば確かに、持ち主を武具の傀儡にしてしまう故の鋼語り。ラビシャンの女王アルゴラでは無く、喋る武器のあなたが主体で復活するのは筋が通っているかもしれません」
「成程、貴方は思慮深い上に力もある、と……ドゥフフ」
 蔵乃祐が語ったことを聞き、ベリオルズは興味のような感情を向けた。
 彼自身に目はないが、代わりにアルゴラの生気のない瞳が蔵乃祐を見ている。更に相手の視線は猟兵の背後に控えている雷霆竜エクレゼールにも向けられた。
『へぇ、そういう相手だったんだね。それなら納得がいくよ!』
 エクレゼールも蔵乃祐の言葉に頷き、ベリオルズを強く見つめている。援護や攻撃の準備は万端という様子を蔵乃祐に示した雷霆竜は、身体に電撃を流しはじめた。
 蔵乃祐も気を計りながら、ラビシャン女王のアルゴラと喋る槌ベリオルズを視界に捉える。
「付属物としてでしか世に存在することが出来ない彼女は、此処に体は在れど何処にも居ないのでしょう」
「その通り。拙者としては喋るアルゴラ殿も欲しかった次第ですが……」
 ベリオルズは残念そうに語った。
 彼なりにアルゴラのことは気に入っていたらしい。だが、あのような姿になってまで蘇るのならば、意志まで復活しなくて良かったのかもしれない。
 蔵乃祐はアルゴラを静かに思い、首を横に振る。
「ならばその残滓、この拳で引導を渡すことが、せめてもの供養にならんことを祈る他ありません」
 両手を重ね、死した者への思いを紡いだ蔵乃祐は一気に地を蹴った。
 ――怪力乱神を語らず。
 相手がジェノサイハンマーで打って出るなら、こちらはそれを掴んでやればいい。
 激痛が走るだろうが、耐性はある。限界の更に向こう側へ至る力も兼ね備えている蔵乃祐だ。渾身の怪力を引き出した彼はハンマーを真っ向から受け止めにいく。
「エクレゼールさん?」
『はいはーい! 遠慮せずにえっくんでいいよ!』
「では、えっくんさん? は雷撃で隙を突いて下さい」
『了解!』
 エクレゼールに呼び掛けた蔵乃祐は頼もしさを感じていた。たとえ一人では乗り越えられないことであったとしても、自分とエクレゼールの二人――そして、仲間がいるならば越えられる。
「天下御免の露払い! ……否、決着を」
「なんですと!?」
 振り下ろした己ごと掴まれたことでベリオルズが焦りの声をあげた。
 崩しが上手くいったことを察した蔵乃祐は、グラップルからの重量攻撃による叩き付けを見舞う。其処に加わっているのは雷霆竜による鋭い電撃だ。
 旋律のように響く稲妻の音に重なるように、重い衝突音が鳴る。
 それは不協和音などではなく、確かな連携の証となって竜神山脈の一帯に響き渡った。
「拙者の、新たな道が……。拙者ごと砕かれよう、とは……ああ、アルゴラ殿……」
 ベリオルズの槌に罅が走り、苦しげな声が零れ落ちる。マスカレイドとして蘇り、エリクシルの力を振り撒く存在であるならば撃滅するのみ。
 蔵乃祐は最後になるであろう一撃を見舞うべく、怪力を駆使していく。
「宿業砕くは武具ではなく人の業故に」
 ひときわ大きな音が鳴り渡った刹那、喋る槌ベリオルズは完膚なきまでに砕かれて散った。
 蔵乃祐をはじめとした猟兵は壊れて消えていく者達を見下ろす。
 アルゴラの身体も、その耳に宿っていた禍々しい仮面も、そしてベリオルズ自身も。すべて最初から其処にいなかったかのように消滅していった。


●雷霆竜の贈り物
 こうして竜神山脈に訪れていた危機は去った。
 雷霆竜エクレゼールは見事に敵を討った猟兵達を見渡した後、深く頭を垂れる。
『ありがとう』
 それは先程までの明るい調子ではなく恭しい雰囲気だったが、それほどに彼が感謝している証だった。それから嬉しげに双眸を細めた雷霆竜は普段の軽い様子に戻る。
『猟兵くん達、すごいねぇ! アルダワ魔法学園の子と同じで頼もしいや!』
 にこにこした様子のエクレゼールは尻尾をぱたぱたと振っていた。
 竜ではあるがまるで犬のようにも感じられ、猟兵達は微笑ましさを覚える。しかし、エリクシルに支配されていたエクレゼールは随分と疲弊しているようでもあった。
『あいたたた……。君達と戦えるくらい元気なつもりだったけど、ちょっと疲れたな……』
 本当はもう少し猟兵と過ごしたかったらしいが、無理をしてまた危機に陥るのも失礼だと判断したようだ。エクレゼールは上空を見上げ、大きな雲を示す。
『僕は住処に戻るよ。休めば元の力も戻るだろうからね』
 暫しのお別れだ、と雷霆竜は告げた。
 翼を広げたエクレゼールは何枚かの羽根を自分で喋み、猟兵達の前にふわりと落とす。
『君達の何人かは、僕のことをえっくんと呼んでくれただろう? とっても嬉しくってねぇ。だからさ、友情の証としてこれを受け取っておくれ!』
 勿論、まだ呼んでいない人にも、と付け加えたエクレゼールは今後にもぜひ愛称で呼んで欲しいと願った。
 この場に訪れた猟兵全員に渡されたのは――。
 金色に光る、雷霆竜の羽根。
『僕自身が馳せ参じられるわけでも、さっきほどの力が巻き起こるわけじゃあないけどね。これに強く念じれば君達を害する者に向かって雷撃が走るよ』
 もし何かあれば使って欲しいと伝え、エクレゼールは明るく笑った。
 勿論、この羽根を使うかどうか、持ち帰るか否かも猟兵それぞれの判断次第だ。使わずに仕舞い込んでもよし。お守りとして持ち歩くのもよし。どうするかは自由だ。
『それじゃあ僕はいくよ。またね、勇敢で頼もしい猟兵くん達……いいや、僕の友達!』
 そして、雷霆竜エクレゼールは飛び立った。
 いつかまた逢えることを願って、雲の住処に帰っていくドラゴン。猟兵に背を見送られるエクレゼールは最後に空中でくるりと回転してみせた後、白い雲の中に消えていった。
 猟兵達の手の中で輝く羽根は、彼が語った通り――確かな友情の証だ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月04日


挿絵イラスト