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【大いなる災い】豪華赫戦

#シルバーレイン #決戦 #大いなる災い #グリモアエフェクト #パシフィック・クイーン号

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「うーん」
 南天庵・琥珀(ナイトタイムドリーマー・f36445)は何やら考え込んでいた。
 彼にしては珍しく、闇雲に銀誓館学園の空き教室の一角で行ったり来たりし、立ち止まっては唸り、また歩き出す。その繰り返し。
「これは……悔しいけど、俺の手には余るかも知れないな……けれど、何とか手は打たないと……」
 ぶつぶつ呟きながら、何度目かの往復で琥珀が教室の扉に背を向けた瞬間。

「どうやら、お困りのようですね」

 鈴の音を転がしたような、女性の声。
 琥珀が振り向いた先にいたのは……、


「紹介するよ。洪・文曲……元は大陸妖狐の一員だったが、戦いを経て銀誓館学園の一員となりかつての|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》を戦った、俺にとっては能力者の先輩だ」
「よろしくお願いいたしますね」
 にこ、と微笑む文曲の耳がぴこぴこと揺れ動く。
 当時の彼女の姿を見たことがある能力者達は、皆一様に思っただろう。姿が、雰囲気が、当時と全く変わっていないと。
 どうやら理事長同様、運命の糸症候群により、当時の姿に戻っているらしい。
「まあ、私のことはいいじゃないですか。それよりも今日は、琥珀さんの……引いては皆さんの、お手伝いに来たんですよー」
「ちょっと予知のことで悩んでいたことがあったんだけど、文曲が情報をくれて助かった。お陰で何とか、大事にはならずに済みそうなんだ」
 ねー、とでも言い出しそうな様子で顔を見合わせる琥珀と文曲。その姿はおっとりした姉と穏やかな弟のやり取りのようで、何とも微笑ましい。
 呼び出し喰らっていなかったら、の話であるが。
「ああ、肝心の予知の内容だったな」
 猟兵達の催促の視線に気がついたのか、琥珀が思い出したように口を開いた。

「『大いなる災い』が現れた」

 いやそれ本当に呑気してる場合じゃない!!
 琥珀の告げた『大いなる災い』、それはこのシルバーレインにおいて、平安時代の能力者集団『平家』が、源平合戦の折に解き放った妖獣兵器の名前ではないか!
 かつては無数の妖獣を引き連れ、平家の宿敵・源氏を滅ぼすべく、その本拠であった鎌倉を目指し、現地の銀誓館学園の能力者達によって激戦の末に討ち果たされたのだが……これもまた、オブリビオンとして蘇ってしまったということか。
「あの時は私も、学園の敵として立ちはだかりましたねー。今だから思い出話に出来ますが……」
「まあ、色々あったが過去のことだ」
 其処、説明中断しないで。
「残留思念を撒き散らして無数の妖獣……化オブリビオンを創造するだけでなく、強力な雷を放ちながら進軍してくる、まさに『災い』だ。名前に偽りなしだな」
 そんな凶悪な存在がオブリビオンとして目覚め、かつてのように大移動を開始したと言う。
 市街地にそんなものが出現してしまったら。言うまでもなく、大災害レベルの被害が出るだろう。
「ですが朗報です。予知と情報を統合し、これを人里離れた場所で討ち取れる可能性が浮上したのです」
 ぴ、と人差し指を立てる文曲。
 彼女の言葉が真実なら、それは間違いなく朗報だ。
「当時、大いなる災いは海路で鎌倉を目指していました。今回も海に潜り、神奈川県の港で姿を現し、進軍を開始するようです」
「人気のない神奈川県の港。学園関係者なら、心当たりがあるんじゃないか?」
 そうだ、あるじゃないか。
 人気のない。即ち、ゴーストタウン。
 パシフィック・クイーン号!
「其処に押し留められれば、被害を抑えられる」
 そう言えば夏頃、琥珀がパシフィック・クイーン号絡みの事件を担当していたか、と誰かが思い出す。
「だが、油断は出来ないぞ。大いなる災い本体も勿論だが、奴はその能力で海から妖獣化オブリビオンとしてスガリの大群を生み出す。こいつらを蹴散らさないことには、甲板にいるだろう本体には辿り着けない」
「スガリが妖獣ですかー……何だか不思議な感覚ですね」
「無理もないさ。俺も未だに間違えそうになる」
 うん、其処のやり取りへのツッコミはもうやめよう。キリがない。
「それだけじゃない。こいつらを倒して大いなる災いに近づこうとすると、別のオブリビオンが乱入してくる気配があった。詳細は掴み切れなかったが、|我鳴鬼《がなりおに》と同等の能力を持っているみたいだ。これを放置して大いなる災いと戦うのは余りに危険すぎる」
「あ、我鳴鬼と言うのは当時の戦いで大陸妖狐が用意した特殊な鬼ですね。鬼としての能力に加え、広範囲の敵を一定時間行動不能にする叫びで動きを封じてきます」
 成程、その能力で大いなる災いとの戦いに横槍を入れられては堪らない。強敵を前に連戦となるが、撃破するしかないだろう。
「そいつを倒せれば、いよいよ大いなる災いとの決戦だ。本来なら正攻法で倒すのは難しい相手だが……猟兵の力があれば、何とか倒せるかも知れない」
 早めに手を打てることになったのも、猟兵達にとって有利に運ぶだろうと琥珀は言う。
 文曲の情報のお陰だ。ありがとう、と礼を告げると、文曲は笑顔で耳をぴこぴこさせていた。
「さて、色々と言いましたが。私にとっても学園のある鎌倉は、今や第二の故郷です。どうぞよろしくお願いいたします」
「俺からも、よろしく頼む。ついでに俺の分も一発入れてきておいてくれると、嬉しい」
 無茶言いおって!
 しかし、放っておけないことには違いない。|雪兎《グリモア》が煌めき跳ねるのを、猟兵達は静かに受け入れた。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 戦闘! 戦闘!! 戦闘!!! 全力を、ぶつけてきてください。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:集団戦『スガリ』
 第2章:ボス戦『???』
 第3章:ボス戦『大いなる災い』

 第1章では、パシフィック・クイーン号の停泊している港にて、海から現れるスガリの大群を相手取っていただきます。
 倒さなければ大いなる災いへの接近が困難を極めるのも勿論ですが、討ち漏らすと市街地へと向かい、その凶暴性で甚大な被害をもたらす恐れがあります。
 大いなる災い共々、港に留まっている内に倒してしまいましょう。

 第2章では、決戦を前に我鳴鬼の能力を持ったオブリビオンを撃破していただきます。
 現時点でその正体は判明しておらず、詳細な情報は開示されておりませんが、太陽の光を操り攻撃や視覚阻害を得意とする敵のようです。
 また、本来のユーベルコードとは別に、叫び声を上げることで麻痺状態に似た行動阻止を行います。

 第3章では、遂に大いなる災いの元に辿り着き、決戦を行っていただくこととなります!
 オブリビオンの創造と強烈な放電を放ち、現代社会をも容易く滅ぼしかねないまさに『歩く災害』の名を|恣《ほしいまま》にする強さです。
 しかし、今なら猟兵達は人里離れて全力で戦え、かつ敵も目覚めたばかりで本調子ではありません。何とか押し切りましょう!

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『スガリ』

POW   :    スガリツキ
【ベトベトした手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【生命力を吸い取るすがりつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    スガリボディ
自身の肉体を【もっとネバネバした粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    ベトベトフォール
【ベトベトした液体】を降らせる事で、戦場全体が【水辺】と同じ環境に変化する。[水辺]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:風音ちい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 海より、来たる。
 黄金の麒麟にも似たその姿は、しかし瑞獣に非ず。
 歩く天災。口からは残留思念を吐き出し、妖獣を生む。輝ける二本角からは稲妻を放ち、破壊をもたらす。
 その名は『大いなる災い』。
 さて、大いなる災いはひとつ高く嘶くと、打ち捨てられた船の甲板へとその前脚を掛けた。
 かつんと響く蹄の音。そして、それに応じるように、緑の影が水面から這い上がる。
 ヘドロの如き身体を有するそれらは、水場から生じる地縛霊。尤も、今となっては蘇った大いなる災いの配下である、妖獣化オブリビオンだが。
 夥しい数のスガリが港へと蔓延り、人の寄りつかない港を離れて、市街地へ。主の進む道を拓かんと、歩き出す。
 だが、そのような暴挙を許すわけにはいかない。
 ここが防衛線。猟兵達が、立ちはだかる。
 大挙して押し寄せようと、譲れない!
 災いの進軍を、阻むのだ!
神臣・薙人
【月灯】

大いなる災い…
そんなものを解き放つ訳には行きません
ええ、行きましょう
骸の海に還すために

お二人と共に接敵
敵を視認した時点で白燐桜花合奏を使用
可能な限り多くの敵を巻き込めるよう
位置は適宜調整
仲間が負傷した際は治療を優先

戦場が水辺になった際は
足元に注意
転んだり足を取られたりしないよう
しっかり甲板を踏み締めるようにします
スガリツキ・スガリボディは
白燐蟲での妨害を試みます

敵が戦線を突破しそうになった時は
声を上げて注意を喚起すると共に
行く手に立って移動を遮ります
可能であれば白燐蟲にも
手足に食い付かせる等、妨害を指示
蟲笛の演奏は可能な限り早く再開
皆さんが攻撃に専念出来るよう
出来る限りの事をしましょう


葛城・時人
【月灯】

大いなる災いがオブリビオン化だなんて
また鎌倉を目指すなんて絶対許さない
能力者の勝利が今更汚されるのも嫌だ

「さぁ全部を」
眦を決し甲板を見る
先ずあの口から出される妖獣を全て凡て
「骸の海に追いやろう!陸井!神臣っ」
起動し走る!

UCは白燐大拡散砲
色々UCを会得してきたけど
やっぱ使い慣れたアビリティからのが
身体に馴染むね

陸井から貰った玉杖の底で地を打つと
美しい音がした
「消えて!」
スガリの大群を指して
「無くなれ!」
裂帛の気合でククルカンを送り出す

同じ敵に相対する猟兵全てを癒し敵には死を
追い蟲も近接攻撃も行い攻撃は技能で躱し
前へ
頼もしい友人達と声を掛け合い完全殲滅し本丸を目指す
「まだだ!往くよっ!」


凶月・陸井
【月灯】

大いなる災いにパシフィック・クイーン号か
本当に今になってまた相対する事になるなんてな
悪いけどあの頃と同じように、必ず阻止させて貰う

まずは妖獣の相手だ
逃すつもりも、街への被害を出すつもりもない
「行くよ、二人とも」

基本的に可能な限り敵を街へ行かせないように立ち回る
接敵と同時にまずは射撃で二人の攻撃を支援しつつ
自分達へ敵の意識を向けるように攻撃し続ける

二人の攻撃を抜けたり俺達を無視して
街へ進む敵が出てきたら俺の番だ
その場合は即座に【水遁「水獄檻」】を使用し
逃がさないように閉じ込める
「悪いが、お前達の相手は俺達だ。行かせない」

鎌倉は今でも俺達にとって大事な場所だ
絶対、好きなようにはさせない




「大いなる災いにパシフィック・クイーン号か。本当に今になってまた相対する事になるなんてな」
 凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)が、ぽつり呟き天を仰ぐ。葛城・時人(光望護花・f35294)と神臣・薙人(落花幻夢・f35429)も倣うようにした。
 だが、碧空は今、海より来たる巨躯に阻まれ彼らの瞳に映りはしない。それはまさに黄金の暗雲、威嚇するように双角へと霹靂を纏わせて、生命を睥睨するもの。
 大いなる災い。
「そんなものを解き放つ訳には行きません」
「ああ、また鎌倉を目指すなんて絶対許さない。それに……」
 薙人に頷いた時人は、かつての戦いを思い出す。
(「能力者の勝利が、今更汚されるのも嫌だ」)
 協力と、犠牲。そしてその果てに、仲間達と共に掴み取った勝利。
 それを、こんな形で呆気なく無効試合にされるだなんて、堪ったものではない!
「悪いけど」
 はたとして、陸井を見遣れば時人の胸中を代弁するかのような、相棒の言葉。
「あの頃と同じように、必ず阻止させて貰う」
「ええ、行きましょう。骸の海に還すために」
 頷く薙人の横顔も、揺らがず、凛と。
 咆哮、ひとつ。
 碧海が、震える。
 海より緑の汚泥が這い上がる。港にひしめき、阻むもの全て押し流そうと歩き出す。
「行くよ、二人とも」
「ええ、準備は出来ています」
 引き締めた眦で甲板の大敵を射抜けばその口から溢れ出る残留思念。
 まずは、その尖兵たる妖獣を、逃さず遍く討ち取るのだ。
「さぁ全部を」
 この街を、この世界を、護る為に。
「骸の海に追いやろう! 陸井! 神臣っ」
 |起動《イグニッション》!


 疾く、速く。
 敵群に迫る。押し留め、押し返すのはこちら側だ。
「敵を討て、皆を癒せ、」
「途切れぬ音色をここに重ねて、」
「「|白燐蟲《ククルカン/残花》!」」
 蟲達が花を光を歌を乗せて、戦場へと広がる。
 敵を裂き、喰らい、仲間に傷ひとつ負わせぬように寄り添う。
 動きの止まったスガリ達へと、より突出している個体から陸井の弾丸を突き刺した。
 派手に立ち回り、敵の数を減らし、獣の衝動の行き着く先を、誘う。
「色々ユーベルコードを会得してきたけど、やっぱ使い慣れたアビリティからのが身体に馴染むね」
 能力者時代から連れ立つククルカンがひとつ鳴くのに時人は笑みを深めて。けれどすぐにまた、表情を引き締める。
 同時に、薙人が短く告げた。
「環境変化、来ます……!」
 港に緑の雨が降る。
 澱みは留まり、一帯を水辺に告示した湿地へと変えた。
「足元に注意して、転んだり足を取られたりしないように……」
 動く度の一歩一歩を、しっかりと踏みしめるように心掛け。
 突破しようとする個体がいないかどうかも、入念に目を配り。
「! 葛城さん!」
 弾力を増した緑の汚泥が時人に迫るのを、薙人は蟲笛を繰り残花を喚ぶとその行く手を遮らせた。
 仲間を助け、敵に手出しなどさせはしない。薙人にとって時人と陸井は、かつてこの世界に生まれ落ちて生きてきた、その時から信の置ける仲間だった二人だ。絶対に、傷つけさせない。
「ありがとう! ……っ!」
「敵が戦線を突破します!」
 時人が気づき、薙人が声を上げた。
 ぬるり、汚泥を滑り突破を試みるスガリがいる!
 咄嗟に薙人は身を呈してカバーに入る。残花も群れて泥の腕や脚に食らいついた。
 それでも、潜り抜けようとする緑の前へと、陸井が立ちはだかった。
「ここは俺に任せてくれ」
 落ち着いた声音と表情は、静かに広がる水のように、聞く者を安心させる響きを持っていた。
 しかしその双眸には、強靭な意志の光を宿して。
 今は泰山の如く不動の構え。
 そして、放たれる。
「閉じろ、水獄檻」
 紡ぐ言の葉は短く。
 しかし、乱れ舞う水の苦無は瞬く間に広がり、スガリを捕らえる文字通りの包囲網となる。
 清水の監獄に世界の敵を閉ざして道を阻む。陸井の立つその爪先すら、越えさせはしない。
「悪いが、お前達の相手は俺達だ。行かせない」
 後ろは、相棒たる陸井に任せられる。
 信頼する薙人も、その調べで助けてくれる。
 時人の判断は早かった。未だ群れを成し押し寄せる前方だけを逸らさずに、明視して。
「消えて!」
 美しく、澄み渡る鎖と小環の音色。
 地を打った玉杖は、相棒から贈られた。想起するのは、彼らと共に駆け抜けた、死と隣り合わせの青春。
 踏み躙らせなど、するものか!
「無くなれ!」
 時人の裂帛の気合に応え、指し示す緑の群れへとククルカンは殺到する。
 銀河の如く、押し流す。そこに、仄かな紅も流れ着いた。
「支援します」
 その一言だけ告げて、薙人は再びその唇を笛へと戻した。重ねた音色は儚くも鋭い花嵐を伴って、仲間を助ける追い風となる。
 花と水と光とが、過去からの侵略者達を退け、未来への守護者達に加護を与え続けた。
 敵の数は、減りつつある。だが、まだまだこれから。げに恐ろしきは奥へと未だ控えているのだから。
「まだだ! 往くよっ!」
「はい……!」
 時人と薙人が、徐々に戦線を押し上げつつある。
 それを認めて、陸井もじりじりと水獄檻の包囲を狭め、牽制援護に射撃を重ねつつも防衛ラインを縮めるべく、その歩を進めた。
(「鎌倉は今でも俺達にとって大事な場所だ。絶対、好きなようにはさせない」)
 悠然とした佇まいの、その胸の奥、陸井は確かな信念を胸に秘め。
 仲間達と共に、戦い抜く。折れぬ心で、その敵を倒すまで!
(「必ず、護る」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山吹・慧
ふむ、文曲さんもお元気そうで何よりです。

そして大いなる災いですか……。
当時、僕はまだ学園に入っていませんでしたが、
中々大変だったと聞いています……。
今度は悲劇が起きないようにきっちり片付けましょうか。

パシフィック・クイーン号……。
ここを訪れるのも久方ぶりですね。

スガリの攻撃を【ジャストガード】で
【受け流し】ながら接近していきます。
そして、障害物を利用して囲まれないよう注意しながら
闘気を纏った【功夫】と【グラップル】による
接近戦で攻めていきましょう。
敵が集まってきたら【転玄脚・嵐】を放って
まとめて薙ぎ払い、残った敵には烈風を利用して
追撃を仕掛けていきます。

アドリブ等歓迎です。


南本・魔姫奈
【心情】
平家の兵器が元になって生まれた…オブリビオンだったかしら?
おとぎ話か漫画みたいな話が起きているなんて、こうして目の前に来ても実感ないわ
それでも、そんな訳の分からない話でわたしは死にたくないから

【戦闘】
「こんな奴ら、怖くない。行くわ、イグニッション!」

「(粘液状に変わるのを見て)ヒィっ、こっちへ来ないで!」
全力の「結界術」で攻撃を防ぐ

外見は可愛らしいけど…かなり凶暴なのね
変な好奇心は置いておいて、確実に倒さないと

「集中力」で「多重詠唱」で高めたUCによって、範囲で眠らせる
多分、動きが止まれば他の猟兵さんたちも戦いやすいだろうし

これが死と隣り合わせの学園生活ってことね、本当にやれやれだわ




(「ふむ、文曲さんもお元気そうで何よりです。そして大いなる災いですか……」)
 折角の再会だと言うのに、碌に思いを馳せる暇もない。厄介なことになったものだと山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)は穏やかな面立ちのまま、胸中で嘆息した。
(「当時、僕はまだ学園に入っていませんでしたが、中々大変だったと聞いています……」)
 能力者としての先輩達が、苦心しながら討ち果たした相手だ。猟兵と言えど、厳しい戦いとなるだろう。
 改めて、慧は碧空阻み待ち受ける黄金の巨躯を見上げた。そして、倣うようにもう一人。
 南本・魔姫奈(まつろわぬ霊の巫女・f38646)も、同じように。
(「平家の兵器が元になって生まれた……オブリビオンだったかしら?」)
 かつて源氏打倒の決戦兵器として投入されたのが、この大いなる災い。
 だが、現実味がなさすぎて、却って信じがたい。
(「おとぎ話か漫画みたいな話が起きているなんて、こうして目の前に来ても実感ないわ」)
 目の当たりにした今でも、悪夢なのではないかとさえ思えてくる。
(「それでも」)
 戦わなければならないのだ。
「そんな訳の分からない話でわたしは死にたくないから」
「ええ。今度は悲劇が起きないようにきっちり片付けましょうか」
 自分のために。学園のために。
 そして、この街と、この世界のために。
「こんな奴ら、怖くない。行くわ、イグニッション!」
 魔姫奈が口火を切り、慧も起動を。
 同時に災いは咆哮し、戦場が動く!


 海から這い出る汚泥の緑。
 その向こうには、かつての華やぎを失い沈黙を守り続ける大型客船の姿がある。
(「パシフィック・クイーン号……ここを訪れるのも久方ぶりですね」)
 かつては、絢爛豪華に着飾り夢喰らう背徳の船。廃れてしまえば、紛うことなき文字通りの幽霊船。
 慧も、能力者として幾度も足を運んだ場所だ。流石に老朽化こそ進んでいるが、手つかずの廃船は当時から殆ど変化がないように見える。
 それでも、様変わりしたと感じるのは、甲板にて慧達を睥睨する血色の眼をした災いの存在があるせいだろう。
 だが、今は。
「ヒィっ、こっちへ来ないで!」
 どろりと溶けゆく澱みの群れに、魔姫奈が本能的な恐怖を覚えて悲鳴を上げる。
 その一瞬の隙を突いて、スガリ達は魔姫奈へと飛びかかる。が、割って入った慧の振るう、星霊布纏った宿星剣が、敵群の攻撃をことごとく受け流し、掌打で闘気をぶつけて弾き飛ばした。
「あ、ありがとう」
 魔姫奈が短く礼を告げれば、慧は穏やかな微笑を浮かべて返した。そして、更に奥へと切り込んでゆく。
(「大丈夫、わたしもちゃんとやれる……」)
 能力者としての先輩である慧の奮戦に勇気づけられた。深呼吸ひとつして、魔姫奈も己を奮い立たせる。
 追撃が来る。だが、今度は。
(「行ける!」)
 後れを取るわけにはいかない。
 まだ少し怖いけれど、全力を振り絞り、自ら結界を張り、緑の群れを弾き返した。
「外見は可愛らしいけど……かなり凶暴なのね」
 正直なところ、好奇心が湧かないわけではないのだ。地縛霊、もとい妖獣化オブリビオンだと理解はしているが、外見だけなら比較的愛らしい相手であるし。
 だが、気を引き締めていかねばと、魔姫奈は切り替えた。
「確実に倒さないと」
 慧の後を追えば、彼は大群に包囲されていた。
 それでも、慧に狼狽する様子はなく。寧ろ。
「纏めてお相手いたします」
 これだけの数なのだ。このような事態も想定の内。
 脚に闘気を集中させ、描く円は嵐を巻き起こす!
「ただの回し蹴りとは一味……違いますよ!」
 |極超音速《ハイパーソニック》での回し蹴りが緑の大群を薙ぎ払い、吹き飛ばす!
 くすんだ埠頭の色が再び、その姿を現した。
「逃しません」
 辛うじて残り、或いは回避した敵にも、滞留し続ける烈風の追撃を浴びせんとした、その瞬間。
「眠りの符よ、行きなさい!」
「!」
 密かに詠唱を重ね、研ぎ澄まされた超常の力を以てして。
 魔姫奈の放った無数の導眠符が乱れ舞い、敵の反撃や逃走を許さず、意識を根こそぎ奪い去る。
 そして倒れ込んだスガリ達に待っていたのは、風の刃による消滅だ。
「支援、ありがとうございます」
「これでさっきのお返しになったかしら。……それにしても」
 オブリビオンとして蘇るゴースト達。
 奴らが現れ続ける限り、戦いは終わらない。
「これが死と隣り合わせの学園生活ってことね、本当にやれやれだわ」
 肩を竦める魔姫奈の言葉に、慧は己のその時代を懐古して少し、口元の笑みを深めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
『大いなる災い』、嫌な名前だぜ
あいつとの戦いに関しちゃ、自分の無力さを思い知らされたとか、ろくな記憶がねえ
だが、それだけにアイツが暴れることだけは絶対に止めてやる

【戦闘】
文曲が情報くれたってのはありがたい話だ
※文曲とは旧知の仲
「ここから先は通さねえ、イグニッション!」

「ダッシュ」でスガリとの距離を保ちつつ、「見切り」ですがりつきを回避
「魔力溜め」によるUCでまとめて吹き飛ばす

「てめえらに構っている時間はねえ。手っ取り早くやらせてもらうぜ。……天雨豪流」

そう言えば、文曲が戦場にいたのも、『大いなる災い』との戦いの時だったっけか
どうも、他の世界のオブリビオン以上に、再現みたいなのを感じるぜ




 かつて、銀誓館学園の能力者達を苦しめた『大いなる災い』。
 結果として、学園は勝利した。しかし、深い爪痕が残ったのも、また確かで。
(「『大いなる災い』、嫌な名前だぜ」)
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)にとっても、それは例外ではなかった。
(「あいつとの戦いに関しちゃ、自分の無力さを思い知らされたとか、ろくな記憶がねえ。だが、」)
 だからこそ、だ。
 繰り返すわけには、いかない。
「それだけに、アイツが暴れることだけは絶対に止めてやる」
 決意を口にして、その胸に落とし込む。
 後は、その言葉を真とするだけだ!
「ここから先は通さねえ、イグニッション!」
 カードが輝き、明滅する。
 その光が収まると同時、魎夜の手に握られていたのは紅と蒼の一対の刃。
(「文曲が情報くれたってのはありがたい話だ。これを活かさないとな」)
 飄々と微笑む彼女は、魎夜にとっても旧知の仲。
 かつては違う道を歩んでいた者同士。けれど、運命の糸は彼女を学園へと結びつけた。魎夜達の、仲間だ。
 その文曲がもたらしてくれた朗報だ。無駄には出来ない。
 まずは、緑の泥に塗れた港の大掃除を。
(「いちいち相手にしてたらキリがねえな。ここは纏めて片付けたいところだが、そのためには……」)
 今は雌伏の時だと魎夜は判断する。
 纏わりつく泥のような緑の腕が魎夜に迫る。その動きを見切って躱し、駆け出して距離を取り、翻弄する。
 敵の猛攻を避け続ける間に、魎夜は魔力を貯め続けていた。
 まだ、まだだ。もう少し、あと少し。
 さあ、今が頃合いだ!
「てめえらに構っている時間はねえ。手っ取り早くやらせてもらうぜ。……天雨豪流」
 不意に脚を止め、スガリ達を振り返り、蒼の切っ先を群れの先頭へ向けて。
 刃が煌めく。それを合図に、蓄積した魔力によって膨れ上がった激流が、泥汚れを全て押し流すべく、大口を開けてスガリの群れを呑み込んでゆく!
 勢いよく押し流されたスガリ達は、豪雨の巨砲の軌道上には一体も残りはしなかった。
(「そう言えば、文曲が戦場にいたのも、『大いなる災い』との戦いの時だったっけか」)
 今だから思い出話に出来ますが、と微苦笑を浮かべた文曲の姿を思い出す。
「どうも、他の世界のオブリビオン以上に、再現みたいなのを感じるぜ」
 これからも、かつての戦いの再現が幾つも起こり得るのか。
 そんな未来を予感し、魎夜は表情をより硬くした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
大いなる災い…倒した筈の敵の姿を見る事になるとはねえ
狐の文曲もそうらしいけど運命の糸症候群が有る辺り過去の敵はいずれお目に掛かることになりそうで戦々恐々だね

(泳げないので水辺は苦手。自分を欺して鼓舞しその場限りの言葉で【落ち着き、集中力】と気構えを戦闘状態へ。三砂を構え)
近い敵は【早業でなぎ払い、切断】
粘液まみれの甲板も【悪路走破で追跡】は緩めない
多数を相手取ると判断したらUCを撃つ
液体化してるなら身や動きをかなり削れるか?
弱った個体を【追撃】し仕留める
敵攻撃には【カウンター】で三砂に絡め取り逆鱗を刺し込み【毒使い】で弱らせよう
そのまま【怪力】と牙で引き裂くか【重量攻撃】で叩き潰すか

逃せないよ




 未だ黄金の色して碧空を背に隠す災いは、咆哮の合間にその口から残留思念を撒き散らしている。
 その度に海より這い出る汚泥も、また。
(「大いなる災い……倒した筈の敵の姿を見る事になるとはねえ」)
 土蜘蛛の女王達や、揺籠の君。酒井森・興和(朱纏・f37018)も、相見えてきた。他にも、かつて学園が総力を挙げて戦った存在の復活を幾つか耳にしている。
(「狐の文曲もそうらしいけど、運命の糸症候群が有る辺り過去の敵はいずれお目に掛かることになりそうで、戦々恐々だね」)
 運命の糸症候群。それは単に加齢や肉体年齢の変化が起こるだけの現象ではない。
 それは、オブリビオンとの因縁が結ばれている者に起こり得るもの。即ち、運命の糸症候群の発覚は、新たなオブリビオンの復活をも意味するのだ。
 ともあれ、今は目の前の憂いを。
 緑の泥が形を得て海から這い上がる度に、碧海が波立つ。泳ぐことの出来ない興和には水辺に苦手意識があった。
 だが、咄嗟の嘘で自分さえも欺いてみせる。
(「大丈夫。張り詰めた空気に似つかわしくなく、風も海も凪いでいる。近づかなければどうということはないね」)
 そう、己に言い聞かせて鼓舞し、心を研ぎ澄ませる。
 三砂を構えてからの動きは、速かった。近づく敵は纏めて薙ぎ払い、中心から真っ二つに切断する。
 足場もまた粘液塗れ、しかし悪路での動きにも慣れたもの。冷静に周囲を見渡し、群がる敵を一瞥し。
(「液体化してる個体が多いね。なら、このユーベルコードで身や動きをかなり削れるかも知れない」)
 敢えて極限まで敵群の接近を許し、緑の手が己に届くか届かないか、その間に至る一瞬を見極めて。
「八相、烈火」
 三砂を振り上げ泥ごと足元を打ち砕く!
 奔り抜ける高熱の炎が、蒸発させるようにスガリ達の身体をどろりと溶かしてゆく。
 消滅を免れた個体も、視界と呼吸を遮られているようで、足取りが覚束ない。
 すかさず興和は追撃を加えた。闇雲に反撃を試みる個体には、三砂で受けて絡め取り、朱き逆鱗から毒を流し込んだ。
 弱ったところを怪力と爪で引き千切り、また別の個体は重量を乗せた三砂で叩き潰して。
「逃せないよ」
 そうだ。逃して、なるものか。
 一体たりとも。そして、大いなる災いそのものも。
 ここには、興和の、興和達の、護ってきたものが、護るべきものが、沢山あるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、良い名前ではないか
大いなる災い、で固有名詞となっているとか知名度が素晴らしい!
だが妾もキマフュでは邪神で通るのでな(※自称)
どちらがよりヤバい奴かを示してやろう!

右手を上げ、指を鳴らし、スピーカー! カモン!
はーっはっはっは! 数で押したらどうにかなるとか思ってもらったら困る!
せっかく水辺を生み出してくれたのだから、合わせてやるとしようか!

知っておるか? 水中の方が音速が速いことを
水に沈めたスピーカーから爆音を発し、まとめて共振で破壊してくれよう
まとめてド派手に消し飛ぶがよい!
それに仮に凌げたものがいても、待ち構えるのは妾の左腕だからのう?




 妖獣兵器にして、歩く巨大な天災。
 その名を『大いなる災い』と言う。
「はっはっは、良い名前ではないか。大いなる災い、で固有名詞となっているとか知名度が素晴らしい!」
 眼前の敵が冠する名であり称号を、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は惜しげもなく褒め称えた。
 その姿は、圧倒的な威容を前にしても、恐れの色ひとつ見えはしないもの。
「だが妾もキマフュでは邪神で通るのでな」
 と、言ってもそれは配信者としての自称なのだが。
 だが、ライブではそれが真実だ。神たるこの身に何を恐れることがあろう!
「どちらがよりヤバい奴かを示してやろう!」
 宣言すれば、その挑戦受けて立つと言わんばかりに。
 災いは咆哮を上げて、残留思念を海へと注ぎ込む。
 現れたるは小さき緑の泥人形が如きスガリの群れ。
 彼らの戯れで、港は絡みつくような粘液に塗れて湿り澱み、水辺と何ら変わらぬ様相に。
 しかし菘は意に介した様子などなく、右手を高らかに天へと掲げ。
「スピーカー! カモン!」
 パチンとひとつ指を鳴らせば、まさに戦場に現れた交響楽団のように、百を優に超えるスピーカーがずらりと並ぶ!
「はーっはっはっは! 数で押したらどうにかなるとか思ってもらったら困る!」
 確かに、ここに集まった猟兵の数は、当時の戦争とはまるで比べ物にならない。
 だが、猟兵の力はその創造力で無限に広がる。そしてそれは、菘も例外ではない!
「せっかく水辺を生み出してくれたのだから、合わせてやるとしようか!」
 とぷんとぷんと、菘は降り注いだ緑積み重なり『水中』と化した泥溜まりにスピーカーを次々沈めた。
 そもそも、このスピーカーはただのスピーカーではない。
「知っておるか? 水中の方が音速が速いことを」
 このスピーカーは、超高性能爆音スピーカーだ!
 推進装置と機械の翼をも有し、緑の水中を泳ぐスピーカーが余すところなく広がり、爆音でロックを奏で始める!
「まとめて共振で破壊してくれよう。まとめてド派手に消し飛ぶがよい!」
 はーっはっは! と高笑いする菘の周囲に広がる水の中、花火のように大量の緑が弾けた。
 これは堪らんと這う這うの体で自ら作り出した水中から逃れる個体もいたものの。
「仮に凌げたものがいても、」
 振るうは黒鱗の腕。神さえも殺したその。
「待ち構えるのは妾の左腕だからのう?」
 緑ひとつ握り潰され、ばちゅんと派手に弾け飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
文曲さんの懐かしい顔も拝めましたし、お勤めに精励するとしましょう。
『大いなる災い』、ここから先へは進ませません。

スガリが妖獣型とか、オブリビオンになると何でもありですね。
いいです。オブリビオンは殲滅するだけですから。

アリスランスを振るって敵を「受け流し」ながら敵群に切り込み、奥深く、それこそ港の縁にまで来たところで、「全力魔法」「範囲攻撃」のブラストヴォイスを「歌唱」しましょう。
味方を巻き込まないための敵中突破。さあ、私の|歌声《衝撃波》で弾け飛んでくださいね。

ついでに『大いなる災い』を遠くから「偵察」して、今後の方針を立てるとします。
あれをどうやって沈めるか。いえ、今は戦いに集中ですね。




(「さて、文曲さんの懐かしい顔も拝めましたし」)
 想起しつつもスマートな足取りで埠頭を踏む、儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)。
 能力者時代も第一線で活躍し続けた、その実力は猟兵となっても健在だ。
「お勤めに精励するとしましょう」
 詠唱、起動し、武装を纏うその所作は優雅ですらある。
(「『大いなる災い』、ここから先へは進ませません」)
 そして眼差しは凛と。
 世界の守護者たる猟兵にして、銀誓館学園の能力者。
 学園生から、職員へと立場が変わった今でも、なお。
 咆哮の後、緑の腕が埠頭の端を掴んだ。そして現れる姿には芽亜にも覚えがある。
(「しかし、スガリが妖獣型とか、オブリビオンになると何でもありですね」)
 文曲も零していたが、不思議な感覚だ。芽亜を含めた能力者達は彼らを、地縛霊として認識していたから。
 とは言え、である。
(「いいです。オブリビオンは殲滅するだけですから」)
 世界の敵であることに、変わりないのであれば。芽亜のやることは、ひとつだ。
 迫りくる緑はまさに粘液の壁。だが、小型故にハーフウォール程度だ。
「一個体は然程強敵ではありませんが。何せ数が多いですね」
 だから、決して油断しない。
 飛び込んでくる敵を、鴇色に煌めく一角獣のアリスランスで軽やかに往なして。
 芽亜自身も、鋭く切り込んでゆく。群れ成す敵の奥深く、港の縁まで。一歩間違えれば味方の支援も受けられない、そんな場所まで。
 だが、これでいいのだ。何故なら。
「これは味方を巻き込まないための敵中突破」
 もう、何に遠慮することもない。
 全力で、ありったけを広げて。高らかに、ともすれば災いにまで届かせるくらいの気概で以て。
「さあ、|歌唱《うた》いましょう。私の|歌声《衝撃波》で弾け飛んでくださいね」
 世界がコワレルほどの声で。
 人の声帯の限界を超えた絶唱が、空と海とを揺るがして!
 ぶるぶると震え、耐え切れなくなったスガリが一体、また一体と弾けて物言わぬ緑の泥と化す。
 束の間の静寂。この後もまた、第二波、第三波と続くだろう。その前に、芽亜は今一度、悪しき黄金の獣を仰ぎ見て。
(「さて、あれをどうやって沈めるか」)
 その算段を、密かに立て始めていた。
 直後、ずるりと粘る水の滑る音。
 来たのだ。第二波が。
「今は目の前の戦いに集中ですね」
 待っていろ、災いの獣よ。
 すぐに片付けて、引導を渡してやろう!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華
『大いなる災い』というと、私の入学前にあった戦いの一つです
文曲さんがぴこぴことアレしてたと聞いてます
そっかー、あれも骸の海から出てきましたかー……いや本当に呑気してる場合じゃないですね!?
今を生きる生命の為、また生命讃歌を謳うとしましょう

とりあえずまずは地縛霊スガリ……違った、妖獣化オブリビオン『スガリ』を倒さねばですね
背中に背負った『轟蘭華』に『ラドン』を搭載
スガリを敵、
他の猟兵を味方に設定して指定UCを撃ちます
あの頃とは違う――この戦場の全てが、今の私の射程範囲内です
「大人しく消えなさい――今度も、鎌倉には行かせないわ」




(「『大いなる災い』というと、私の入学前にあった戦いの一つですね。文曲さんがぴこぴことアレしてたと聞いてます」)
 ぜんぜんあやしくないですよ。的な、アレ。
 当時の文曲、そして戦争の仔細を、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は伝聞以上には知らない、が。
「そっかー、あれも骸の海から出てきましたかー……いや本当に呑気してる場合じゃないですね!?」
 逆光で陰る黄金の巨躯を目の当たりにして、改めて思う。
 伝聞以上には、知らない。だが、伝聞だけでも相当 苦しい戦いを強いられた相手だと聞いていた。戦況的なことに限らず、精神的な意味でも。
 先達が苦しめられた相手。それが、蘇って現れたのだ。
 ならばなおのこと、ここで確実に仕留めなければ。
「今を生きる生命の為、また生命讃歌を謳うとしましょう」
 生命根絶を拒絶し、今一度世界に希望を芽吹かせよう。
 それが、学園の能力者から猟兵となった、今の影華の役目だ。
(「とりあえずまずは地縛霊スガリ……違った、妖獣化オブリビオン『スガリ』を倒さねばですね」)
 海より出てぺたりぺたりと足音を立てる緑の群れは、影華にも勿論、見覚えがあって。けれどその有り様は変質している。非常にややこしい。
 だが、敵であるという事実。それが揺らがないのなら。
(「スガリを敵、他の猟兵を味方に設定。これで……」)
 背負った漆黒の大具足『轟蘭華』に多弾頭誘導弾発射装置である『ラドン』を搭載し、砲撃の準備が整ったなら。
「彼の力を以て世界に奏上する――あれは、此世に不要也」
 天へと向かい一息に射出された黒燐蟲が、黒い雨となって港一帯に降り注ぐ!
 緑を黒で塗り潰して上書きするように、それはスガリ達を侵食し、喰らい、呑み込んでゆく。
 かつての自分では、ここまでのことは出来なかったと、影華は胸中密かに噛み締める。
(「けれど、あの頃とは違う――この戦場の全てが、今の私の射程範囲内です」)
 出来ることの幅が、広がったのだ。
 そしてその力を、この世界の『普通』を、護る為に使えるのなら。
 影華は、力の行使を決して惜しみはしない。
「大人しく消えなさい――今度も、鎌倉には行かせないわ」
 スガリにも。
 そして、大いなる災いにも!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『アカツキノアルナ』

POW   :    暁ノ神は空に昇り
【闇を破り世界を照らす太陽の光】を放ち、命中した敵を【暖かくもその身を焦がす光】に包み継続ダメージを与える。自身が【居る場所を暗く】していると威力アップ。
SPD   :    光は世界を照らし
【太陽の光を浴びている】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    また一日が始まる
自身が装備する【鍵】から【降り注ぐ太陽の光】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【一定時間、盲目】の状態異常を与える。

イラスト:真夜中 足穂

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はディ・エルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 遂に、この場に集った全ての猟兵達が、大いなる災の待ち受ける甲板へと乗り込んだ。
 こちらを見下ろす大いなる災いは、目覚めたばかりで本調子でないのか、新たな妖獣を生み出すことなく静寂を保っている。
 この上ない、好機ではないだろうか。角から繰り出される雷には油断出来ないことに変わりはないが、今なら妖獣に煩わされることなく戦える!
 だが、猟兵達は思い出した。
 此処に、乱入者が現れるのだという予知を。
 それを証明するかのように、たんと軽やかに甲板を踏む靴音が、猟兵達の鼓膜を打った。
 ふらり、現れたその人影は、|太陽の石《ペリドット》の色を纏った少女だった。
「猟兵の方々ですね。お初にお目にかかります。アカツキノアルナと申します。どうぞ、私のことはアルナとお呼びください」
 礼儀正しく、けれどカーテシーではなくボウ・アンド・スクレープで挨拶するその姿は、少女でありながら騎士を彷彿とさせた。
 けれど、注視すればその両脚はモザイクがかかったように歪み、非常に不安定な存在であることが見て取れる。
 間違いない、彼女が我鳴鬼の力を得たと言うオブリビオンだ!
「早速ですが、本題に移らせていただきます。皆様に、お願いしたいことがあるのです。私に、皆様の生命エネルギーをいただけませんか、そうしなければ私は、自分の身体を保つことが出来ないのです存在していられなくなるのですそんなことは耐えられないいやだこわいたすけておねがい、あああぁぁぁ……!!」
 どうやら、かなり精神的に追い詰められているようだ。生命エネルギーとやらが残り少ないのかも知れない。いずれにしても、形振り構わず攻めてくるだろう。
 だが、苦悶の叫びを上げさせるわけにも、ましてや彼女を永らえさせてやるわけにもいかない!
 大いなる災いが調子を取り戻す前に、橄欖の少女を打ち破るのだ!
儀水・芽亜
アカツキノアルナですか。なかなかに愛らしい。儀水芽亜と申します。短い間ですが、どうぞよしなに。
では、相対を始めましょうか。

「全力魔法」深睡眠の「属性攻撃」「貫通攻撃」「破魔」でナイトメアランページ!
「蹂躙」なさい、ナイトメア!

盲目の状態異常ですか。フリッカースペードを舐めてもらっては困ります。
目を閉じて視覚を捨て、音だけで周囲の様子を頭の中に組み上げてみせましょう。
響く剣戟の音。駆ける足音。武器が振るわれる風切り音。それら全てが私に戦場の在り様を教えてくれます。

それでは、改めてナイトメアランページを。
我鳴鬼の攻撃は音による麻痺でしたか? こちらも「歌唱」で相反する声を上げて対消滅させましょう。




(「アカツキノアルナですか」)
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は改めて、その少女の橄欖の色を己の金の世界に映す。
「なかなかに愛らしい。儀水・芽亜と申します。短い間ですが、どうぞよしなに」
 礼儀正しく名乗ってくれたのだ。ならばこちらも、それに倣うのが礼儀と言うものだろう。
 芽亜も丁寧に名乗り、礼を尽くす。
 だが、可愛らしくとも礼儀正しくとも、オブリビオンだ。
「では、相対を始めましょうか」
 芽亜がその手に裁断鋏『Gemeinde』を掲げれば、アルナも剣を象った鍵を構える。
「『蹂躙』なさい、ナイトメア!」
「始まりの陽光よ、私に力を!」
 悪夢駆ける来訪者ナイトメア。
 蹄の音立て、降り注ぐ暁光を裂いて真一文字に駆け抜ける。
 狙うは、暁を冠する少女のみ!
「くっ……」
 アルナの攻撃では、ナイトメアを止められない。
 ばかりか、同時に発動した芽亜の全力の魔法が、太陽の加護すら貫いて強烈な睡魔をもたらすのだ。
「!」
 だが同時、芽亜の視界にも異変が起こる。
 強い輝きに当てられたか、瞳に映る世界が黒く閉ざされてゆく。
 それでも、芽亜が狼狽えることはなかった。
(「私はフリッカースペード、歌を――音を極める者。舐めてもらっては困ります」)
 芽亜は、自らその目を閉じた。
 視覚を捨てることで、その他の感覚を、特に際立つ聴力を更に研ぎ澄ませ、音だけで周囲の様子を頭の中に組み上げて見せる。
(「響く剣戟の音。駆ける足音。武器が振るわれる風切り音。それら全てが私に戦場の在り様を教えてくれます」)
 たたらを踏む。何かがぶつかる。少女の呻き声。蹄の音が消えた。
 それでも起き上がる音と気配。戦いはまだ終わりではない。
「それでは、改めてナイトメアランページを。さあ、今一度この戦場を駆け抜けなさい、ナイトメア!」
 嘶き。蹄の音、再び。
 衝突する。鈍く重い音。入った。深く。
 吹き飛ぶ。華奢な体躯。打ち付けられる。衝撃に跳ねた。
「あ゛ぁああぁぁぁぁああぁぁッ!!」
「! ――♪ ――♪♪」
 悲鳴混じりの絶叫。
 対するように、芽亜はすかさず高らかに朗々、歌い上げた。
 世界が閉ざされようと、誰もその叫びに捕らえさせなどしない――そう、強い決意を込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・慧
名乗られたからには、こちらも名乗らねばなりませんね。
人狼騎士団の山吹慧です。
尋常に勝負……というわけにはいかないようですね、
その様子では。
ならば早急に骸の海に送るのが、せめてもの情けでしょう。

あえて正面から挑みましょう。
闘気を纏った【功夫】による打撃の【乱れ撃ち】で
攻めていきます。
敵の攻撃は【リミッター解除】した【オーラ防御】で凌ぎ、
叫び声による麻痺を受けた場合は【気功法】で
体中に気を巡らせて回復します。
「生憎、日光浴は好きではありませんので」
そして【学習力】と【集中力】で、この場の気の流れを読んで
【羅山靠・戒】を放ちましょう。




(「名乗られたからには、こちらも名乗らねばなりませんね」)
 騎士として、名乗られれば名乗り返すが道理。
 山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)もまた騎士として、礼を尽くしてその名を告げる。
「人狼騎士団の山吹・慧です。尋常に勝負……というわけにはいかないようですね、その様子では」
 改めてアルナ、もといアカツキノアルナの様子を窺えば、今は幾分か平静を取り戻しているように見える。
 だが、その呼吸は浅く、尚早と狂気を押し殺してなお瞳の奥にその色は、見え隠れしている。また、いつあの状態に陥るか、解らない。
 それを見逃す慧ではない。
(「ならば早急に骸の海に送るのが、せめてもの情けでしょう」)
 衝突は避けられない。出会ってしまった猟兵とオブリビオン――いや、そうでなくとも今のアルナには、他に選択肢がないのだろう。
 終わらせられるのは、猟兵しかいない。
「参り……ますッ」
 輝きを増す天光。
 慧は、臆さず敢えて正面から挑む。
 光の道を征き、素早く接敵。アルナが反応するより速く、闘気を纏い流れるような手刀の連打を叩き込む!
「く……ッ」
「まだまだ」
 強すぎる陽光には、極限まで練り上げた不可視のオーラを傘のように頭上に広げて阻み。
 渾身の後方蹴りを浴びせて間合いを取る。
「ッああぁぁああああ!!」
「!」
 不意の絶叫。
 慧の体中を駆け巡る、不快感。痺れと脱力。
 しかし、慧は冷静さを損なうことはなかった。
 腹式を意識した呼吸法で、息を整え全身に気を巡らせる。指先から、ゆっくりと動かしてゆく。
 大丈夫だ。動く。
「生憎、日光浴は好きではありませんので」
 こんなところで立ち止まってはいられないと。
 その決意があれば、自分はやれる。
 落ち着いて、場に巡る気の流れを読み解く。
 力が漲る。森羅万象が、力を貸してくれている。
 光も叫びも、物の数ではない。負ける気はしない!
「行きます」
 鋭く一点のみを、敵の芯だけを見据えて。
 甲板を勢いよく蹴って、跳ぶ。
 身に纏うは攻防一体の闘気。強固な護りすら打ち砕き敵を討つ、全身全霊の一撃だ!
「この一手で穿つッ!」
 膨大な気で身を固めて見舞う突撃が、橄欖の少女の身体をいとも容易く吹き飛ばす――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
凛々しいが錯乱したお嬢さん
僕も昔、世界に否定されて封印の憂き目に遭った身だ
存在不安を嘆く気持ちは解るのだけど
今の僕は護るものがある
貴方のお願いは聞けないねえ

相手が聞かずとも話し掛けつつ
三砂を手に距離を詰め【早業】と【重量攻撃、なぎ払い】遠心力も利用、石突も使い棒術めいた武器捌きで【2回攻撃】三砂を操り執拗に追い詰め【追撃】息を乱させ叫び声を上げさせない
敵の物理攻撃は【咄嗟の一撃で受け流】すが近距離は維持
敵UCは【集中力】で避けたいが陽の光を完全に、というのは難しい
ならば【落ち着き】耐えて
厄介なもの…彼女の叫び声を奪う算段を

【怪力】で引き寄せ【捕食】する様に敵の喉等食い破りを狙いUCの牙を立てる




「はぁ……ハァ……」
 ギリギリのところで、踏み留まろうとしている。
 平静を装い、それでも抑え切れぬ恐怖に狂気し荒れ狂う陽光。
 それが今の、アカツキノアルナだ。
「凛々しいが錯乱したお嬢さん」
 そっと、酒井森・興和(朱纏・f37018)は言葉をかける。
「僕も昔、世界に否定されて封印の憂き目に遭った身だ。存在不安を嘆く気持ちは解るのだけど……」
 理解は、出来る。
 だが、それでも。
「今の僕は護るものがある」
 決して、譲れないものだ。
 引くことの出来ない、一線なのだ。
「貴方のお願いは聞けないねえ」
「……クッ……」
 この言葉が、アルナに届いているのかは、解らない。
 それでもいい。これが答えだ。
 三砂を構えて瞬時に迫る。反応が遅れたアルナが、はっとした表情を見せた。
 目にも留まらぬ疾さでありつつ、重量を乗せて薙ぎ払う。そのまま遠心力でくるり反転、石突からの打突で連撃を重ねる。まともに喰らったアルナが呻き、よろめいた。
 距離を離そうと振るわれた鍵の一振りを、ひょいと回転させた柄で弾き返して、アルナへと再び向いた切っ先で追撃を。
「ハァ……ッ!」
(「うん、かなり呼吸は乱れてきている」)
 アルナの様子を、常時冷静に観察する興和。
 息も吐かせぬ猛攻に応じざるを得ない今の彼女には、叫び声を上げる余裕もない筈だ。
 それでも、何とか戦況を打破せんと、陽光を味方につけてぎらりと刺すように浴びせかけるアルナ。
(「極力避けていきたいところだけど」)
 興和の集中力を以てしても、天より注ぐ光を完全に避け切るのは困難を極める。
 それを理解しているからこそ、狼狽えず、落ち着いて、呼吸を整えて。
 僅かに身を焦がしながらも、この程度なら。
(「大丈夫、耐えられる」)
 それよりも厄介なのは、やはり我鳴鬼の絶叫の力。
 何より優先すべきことは、それを封じること。見誤ってはいけないと、自身を諭して。
(「ならば、声を『奪って』しまえば」)
 導き出された結論。
 答えが明確になってしまえば、興和が動くのは早い。
「!」
「鋏角衆、と呼ばれる我らの牙はダテではないよ」
 手首を捕らえる。折れそうなほど細かった。
 その細さでは、踏ん張ったところで興和の怪力には敵わず。
「――ぁ――!!」
 ずぶり、興和の牙がアルナの喉笛を裂く。
 空になった叫びに、力はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
【月灯】

残念ながら貴方の願いには応えられません
せめて、あるべき場所へ還しましょう

開戦時に白燐蟲を呼び出し
敵の周囲を照らすよう命じます
排除された際も都度呼び出し
敵の立ち位置が暗くならないよう留意
こちらはなるべく
太陽の光が当たらない位置を取ります

仲間が負傷もしくは麻痺した際は
桜花乱舞で治療・回復
自分が麻痺状態に陥った場合は
手足を強引に動かす等して
抵抗を試みます
その声…嫌いです

治療や回復の必要が無い時
盲目状態に陥った時は
白燐蟲に攻撃を指示
視覚が阻害されても
耳や気配に注意を払い
敵の動きに対処出来るよう意識
通常時・盲目時ともに
治療と回復を最優先
凶月さんと葛城さんが攻撃に専念出来るよう
私も全力を尽くします


凶月・陸井
【月灯】

それで追い詰められる気持ちは理解する
でもだからと言って、どうぞと渡すつもりはない
その奥にいる大いなる災いを倒す為にも
「そこを退いてもらうぞ」

神臣くんが回復して、時人と俺が全力で戦う
シンプルで、でも二人を信頼しているからこそできる戦い方

それに二人が放つ光があるから敵UCも対処できる
まずは時人と連携して銃と短刀で遠近織り交ぜて只管攻撃し続け
「人から奪うだけって言うのは、許されることじゃないからな」

相棒が全力の光を放つのと、神臣くんからの支援と同時に接近
敵は予想して回避をできるとはいえ二人の支援と
互いに触れられる程の距離だ
【水遁「爆水掌」】で俺も全力の一撃を放つ
「これなら…避け様がないだろ」


葛城・時人
【月灯】

太陽を纏うモノか
その光は誰にでも平等に降り注ぐが

「叶えさせない」
ナンバードと同じだ
俺達の命を啜って永らえて
お前がする事は火を見るより明らかだ

解ってる
生者に見えてもオブリビオン
二度目は無かったはずの存在だ
絶対に滅す
「人の命を糧に求める奴に渡す未来はない!」

アークヘリオンを詠唱
可能な限り空中機動や他技能も用い回避
高速・多重詠唱も駆使

瞳を闇に閉ざされても狼狽えず
「こんな事で俺が諦めると思うか?」
​ククルカンも放ち迎撃指示
神臣や陸井と声でも連携して
視界無くとも泰然と戦う

四方へ創世の光を幾度でも放つ
光で照らし焼き決して逃がさない

「お前の光と俺の光のどちらが」
いや問うまでもない…俺達が勝つ、必ず!




「わた、しに、生命、を……」
 ひゅうひゅうと喉笛の穴から音を立てながらも、アカツキノアルナはそれを求め続ける。
 疲弊と焦燥が積み重なるごとに、狂気が色濃くなってゆく。
(「それで追い詰められる気持ちは理解する」)
 凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は考える。
 自分が、アルナの立場だったら。徐々に自己の存在が薄れゆき、やがて消えると自覚して、冷静でいられるかと問われれば、即答は出来ないだろうと。
(「でもだからと言って、どうぞと渡すつもりはない」)
 まだ、陸井には生きてすべきことがあるのだ。
 そう、奥に控える大いなる災いを今一度討ち取ることも!
「残念ながら貴方の願いには応えられません」
「ああ、叶えさせない」
 毅然と。
 神臣・薙人(落花幻夢・f35429)と葛城・時人(光望護花・f35294)も、拒絶を。
(「太陽を纏うモノか。その光は誰にでも平等に降り注ぐが」)
 それは生者も死者も隔てなく。
 時人も光の使い手なれど、けれども眼前の死者を拒むのは。
(「ナンバードと同じだ。俺達の命を啜って永らえて……」)
 死へのカウントダウンを遅らせる為に、能力者を狩り続けてきたモノ。
 多くの同胞が犠牲になった。その許されざる所業と、アルナの求めているものは、何ら変わりない。
「お前がする事は、火を見るより明らかだ」
 更なる犠牲を。止めどなく、ずっと。
 錫杖を突きつける。さらりと揺れた清涼な音色が、時人の高潔な心根の証だ。
「せめて、あるべき場所へ還しましょう」
 薙人もひとつ、蟲笛を撫でて。
 自分の生命も、仲間達の生命も、終わらせはしない。
 そしてアルナの苦しみも、ここで終えると決意して。
「そこを退いてもらうぞ」
 レンズ越しの双眸が、鋭くアルナを射抜く。
「わたしに、また、いち、にち、を……」
 空気が漏れぬよう、喉を押さえながら、アルナが譫言のように繰り返す。
 さあ、終わりにしよう。


 アルナが鍵を掲げれば、遍く光が降り注ぐ。
「光の花を――残花」
 薙人が喚んで奏でれば、残花は応えて白い花弁のようにアルナの周囲をひらり舞い照らす。
 光は光なき場所でより強く輝く。その輝きを、少しでも阻む為に。
 燐光を鍵で振り払おうとするアルナに、陸井と時人が仕掛ける。
(「神臣くんが回復して、時人と俺が全力で戦う。やることは、それだけだ。だが――」)
 |単純明快《シンプル》だが、陸井が時人と薙人を信じているからこそ、彼らと共に、真っ向から立ち向かえるのだ。
 それは薙人も――そして、時人にとっても。
「人の命を糧に求める奴に、渡す未来はない!」
 抗う光は始原。
 幾重にも唱え、太陽よりも強く光あれと。
(「生者に見えてもオブリビオン、二度目は無かったはずの存在だ」)
 苦しげなアルナの姿は、人間の少女に酷似したそれで、故に憐憫を誘うもの。
 だが、今を蝕む過去へと成り果ててしまった以上は、必ず、ここで滅すると。
 決意と共に、時人は咆える!
「始まりの刻印よ、創世の光もて敵を討て!」
「くう……っ」
 始原の光に灼かれ、身悶えるアルナへと、更に残花が輝きを伴い纏わりつく。
 すかさず陸井が追撃の一発を、その銃口から解き放つ。肩を穿たれアルナが仰け反った。そのまま、時人の動きに合わせて徐々に距離を詰める陸井。
「人から奪うだけって言うのは、許されることじゃないからな」
 穏やかに窘めるように、陸井は落ち着いて語りかける。だが、その言葉には壁があった。オブリビオンには決して越えさせない、一線の壁が。
 胸中穏やかでないアルナは、錯乱を深めて。
「いやだ……いやだ消えたくない、ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 世界を震撼させる絶叫。
 波すら僅かに揺れて、見下ろす災いの黄金の炎が如き鬣すら煽る。
「その声……」
 外壁の際で、陽光を極力遮断するよう位置取っていた薙人。
 平素、感情を揺り動かされても、それが大きく表情に出ることは余りない彼も、この時ばかりは細い眉を顰めて。
「嫌いです」
 確固たる意思で、跳ね除ける。
 身体に重く伸しかかる異変すら、その意思の力で。
(「大丈夫、動ける。自分の役目を果たさなければ」)
 狂い咲け、夢見草、花嵐。
 戦う二人の為に、舞台を彩れ。
 力が湧き上がる。陸井にも、時人にも等しく。
(「凶月さんと葛城さん、お二人が攻撃に専念出来るよう、私も全力を尽くします」)
 だから、迷わず行ってくれ、信ずる二人よ。
「わたしは、あしたが、ほしいだけ……!!」
 アルナの悲痛な訴えに、太陽は憐れむ。
 強い光で瞳を灼いて、これ以上愛し子を傷つけてくれるなと。 
「こんな事で俺が諦めると思うか?」
 だが、視界閉ざす暗闇すら物ともせず、進み続ける時人。
 止まるわけには、いかないのだ!
「神臣、陸井! 行くよ!」
「ああ、タイミングは任せる」
「私も合わせます」
 ククルカンを喚べば、残花と共に光を帯びてアルナへと食らいつく。
 気を取られたその刹那があれば充分。
「お前の光と俺の光のどちらが――」
 いや。
 問うまでもない。アルナにも、己にも。
(「俺達が勝つ、必ず!」)
 その為に、此処にいるのだ!
「今再び始まりの刻印よ、世界に光の柱を建てろ――!!」
 刻印から光、注ぐ一条。
 柱のように裁きのように、太陽の子に降る!
「あ゛、っ」
 指すような光の柱に包まれ、身動きも儘ならぬ少女の元へと。
 相棒の声を合図に、陸井が迫る!
 互いに触れられる程の距離。
 主の意思を受けた、白燐蟲達の支援もある。
「これなら……避け様がないだろ」
「!」
 アルナが息を呑む。
 それと、同時だった。
「一撃で、消し飛ばす」
 陸井の掌に、宿る水の術式。
 予測は出来ても回避は困難。今なら、解き放てる!
「終わりだ」
 体内の水分を一息に練り上げて、生み出した爆発的な気を、アルナの肉体へと流し込む――一撃必殺の、水遁『爆水掌』!
「――ぁ――ッ!!」
 轟音と共にアルナが弾け飛ぶ。甲板に身を打ち付けて、何度も跳ねた。
 傍目に見ても、大打撃を喰らったのは明らかだった。
「っ、と……」
 術式の断裂と、強烈な反動により陸井がよろめく。
 その背を、薙人と時人がしっかりと支えた。
 まるでそれが、当たり前のことのように。
 陸井は二人の顔を順に見て、また穏やかに微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華
っと、そういえばそういう予知がありましたっけ
妖獣のおかわりは……今のところ無さそう、ならこの少女に集中していい訳ですね
片づけるとしましょう

背中に背負った『轟蘭華』に『ラドン』『パラベルム』を搭載
一斉射撃で攻撃……回避されるでしょうけど、貴女の方もこの弾幕をすり抜けるのは難しいでしょう?
そうなると叫び声を上げるのでしょうが――それが今回の狙いです
頭の上に乗せた『サルウェ』を仮宿にしているE.N.M.Aに指定UCを発動してもらいます

E『エネルギーが足りないのでしょう?――そこで動かずじっとしてなさいな』

そう、じっとしていて下さい
動くと弾が外れますからね




(「っと、そういえばそういう予知がありましたっけ」)
 正体不明の乱入者。
 あの少女がそうかと、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は静かに頷いた。
(「妖獣のおかわりは……今のところ無さそう、ならこの少女に集中していい訳ですね」)
 見上げる災いの貌は、低く小さく唸り声を上げて矮小なる存在を睥睨するのみ。
 目にものを見せるのは、後だ。まず、すべきことは。
「さて、片づけるとしましょう」
 轟蘭華ががしゃり、音を立てて。
 ラドンが唸り、パラベルムが猛る。
(「回避されるでしょうけど、承知の上です」)
 一斉射撃。
 誘導弾と矢羽なき矢を、太陽阻む豪雨の如く、絶え間なく射掛け続ける!
「っ、く!」
「貴女の方もこの弾幕をすり抜けるのは難しいでしょう?」
 喉を片手で押さえているなら尚更ね、と。
 バランスを崩しがちな身体で脚がもつれる。逃げ回るばかりでは分が悪い――アルナは本能的にそう悟ったのか、痛みに顔を引つらせながらもすぅと息を吸い込んだ。
(「やはり叫び声を上げるのでしょうが――」)
 まさにそれこそが、影華の狙い。
 影華の頭上に乗る、八本足の蟻のような外見の現地調達型支援端末サルウェ――を、仮宿にしているE.N.M.Aに合図ひとつ送って。
「――ッああぁぁぁぁああぁぁ!!」
 細身の少女の身体から出ているとは思えない、パシフィック・クイーン号すら震わす慟哭に似た咆哮。
 それを真正面から受けて、影華は。
 ――平然としていた。
「ぁ、あ……?」
 直後、異変を覚えたのはアルナの方だった。
『エネルギーが足りないのでしょう? ――そこで動かずじっとしてなさいな』
「……貴女は……一体何を……!!」
 そう。
 動きを封じられたのは、アルナの方だ!
 アルナには預かり知らぬことだが、これはE.N.M.Aにより行使されたユーベルコードだ。
 敢えて敵からの状態異常や行動制限を受けると同時に、それを解除した上で、そっくりそのまま相手に返す、カウンターの魔法だ!
「そう、じっとしていて下さい」
「ッ……!」
「動くと弾が外れますからね」
 弾が、矢が、無限に精製されてゆく。
 再び、太陽すらも消し止める、雨が降る――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はーっはっはっは! 名乗られたのであれば返すのが礼儀!
妾は偉大なる邪神、御形・菘だ! よろしく頼むぞ!
とゆーかお主、妾のスゴい生命エネルギーを渡したらトークと洒落込めるのか?
なんてな、お主は人の話を聞かんタイプっぽいから却下だな!

麻痺とか盲目とか厄介だが、別に直接攻めるだけが妾の採れる戦法ではない!
此度はエモくクールにいこうではないか!
右手を上げ、指を鳴らし、さあ降り注げ花々よ!

はっはっは、見えはせんし光が熱ぅい! しかし幾重のオーラで防御しておるから耐えられんほどではない!
そして妾はガードに徹しておるが、その間も花々は止まらずお主目掛けて舞い振るぞ
さ~て、楽しい我慢比べといこうではないか!




「はーっはっはっは! 名乗られたのであれば返すのが礼儀!」
「!?」
 高らかに笑う声が聞こえて、アルナは顔を上げる。
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)がいつの間にかバルコニーの縁に立っていて、其処からアルナを見下ろしているのだった。
「妾は偉大なる邪神、御形・菘だ! よろしく頼むぞ!」
 訝しげな表情を浮かべるアルナに、菘はふと疑問を。
「とゆーかお主、妾のスゴい生命エネルギーを渡したらトークと洒落込めるのか?」
 そんな簡単な相手ならよかったのだが、なんて。
「なんてな、お主は人の話を聞かんタイプっぽいから却下だな!」
 平素の彼女なら――いや、平素でも何だかんだ強情そうだ。
 早々にそう断じて、ひらり甲板へ舞い戻りつつ、|怪人《オブリビオン》共へと鉄槌下す邪神様モードへ切り替える。
 さて、敵は麻痺やら盲目やら、厄介な状態異常を繰り出す難敵だと聞いてはいたが。
(「別に直接攻めるだけが妾の採れる戦法ではない!」)
 邪神様は、多彩な戦い方を心得ているものだ。
「此度はエモくクールにいこうではないか!」
 華々しく、スマートかつクレバーに。
 刮目して見よ、天から降り注ぐは光のみに非ず!
「さあ降り注げ花々よ!」
 右手を掲げ指を鳴らし、むせ返るほどの黄金の色は。
 太陽の花、向日葵の彩。降り積もり、そのあえかな吐息すらも|邪神《かみ》のモノ。
「っは、ぁ……!」
 アルナが黄金に溺れて喘ぐ。
 だが、威風堂々と立つ菘もまた、太陽にその身を灼かれて痛みを受け――、
「はっはっは、見えはせんし光が熱ぅい!」
 いや、それでも、からからと笑っていた。
 太陽よりも、強く。
「しかし幾重のオーラで防御しておるから耐えられんほどではない!」
 故に笑って見せるのだ。
 この程度なら、物の数ではないと!
「そして妾はガードに徹しておるが、その間も花々は止まらずお主目掛けて舞い振るぞ」
「……っ!!」
 声を上げることも儘ならず、藻掻きながら埋もれかけたままの瞳で菘を睨むアルナ。
 やはり正気であろうとなかろうと、強情な娘である。だが、悪くない。それでこそ、ボコり甲斐があると言うもの。
 強敵をエモく撃破してこそ、邪神様の強さが際立つのだ!
「さ~て、楽しい我慢比べといこうではないか!」
 邪神様は今日も、高らかに笑う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南本・魔姫奈
【心情】
敵は人間と似た風に見えるけど、まぎれもない敵
正直、猟兵としての戦いというのはまだ受け入れられていないけど、逃げても逃げ切れるか分からない以上、ここでやらないと

【戦闘】
「わたしだって、こんな所、怖くて怖くてたまらないわよ!」

「結界術」で叫び声による攻撃を防御
UCで攻撃を行い、「多重詠唱」で船の上にあるテーブル複数を囮として用い、「集中力」「リミッター解除」で大きめの建造物を使役してたたきつける

建造物を使役して自分が火の光の下に行かないようにする

「……ごめんなさい。あなたも怖かっただけなのよね」

後はあの大きいのが残っている
本当にあんなのと戦って、生き残ることできるのかしら?


暗都・魎夜
【心情】
我鳴鬼の性質を帯びた、我鳴鬼型オブリビオンって奴だな
意外と世界によってオブリビオンにも違いがある訳だ

【戦闘】
「アルノちゃん、で良いのか? 『大いなる災い』を倒したらこの場を去ってくれるなら、俺の生命エネルギー位あげるけど、どうだ?」

「天候操作」で雨を降らせて太陽の光を遮断
叫びによるマヒは「環境耐性」で抵抗
「悪いけど、太陽も雨も俺の味方だ。ここで逃げるなら、俺も追いはしねえよ」

UCを発動して戦闘
「生命力吸収」を逆利用して生命エネルギーを譲渡したうえで、「斬撃波」による「切断」で攻撃する

「せめてもの手向けだ。最期の時だけはせめて、自分をしっかり持ってくれ」

骸の海とやらの中では、安らかにな




 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)の目の前にいるのは、細身の少女。本当にただの少女に見える。
 足元が、モザイクのような不自然な歪みに覆われていなければ。
(「我鳴鬼の性質を帯びた、我鳴鬼型オブリビオンって奴だな」)
 そう、彼女は紛れもなく、間違いなく、|世界の敵《オブリビオン》。
(「意外と世界によってオブリビオンにも違いがある訳だ」)
 さて、問うだけ問うてみようか。
「アルナちゃん、で良いのか? 『大いなる災い』を倒したらこの場を去ってくれるなら、俺の生命エネルギー位あげるけど、どうだ?」
 彼女もまた、倒すべきオブリビオン。それは魎夜も理解している。
 だが、この後にはあの大いなる災いとの戦いが控えている。消耗は避けたい。
 それに今なら、仲間達がかなりアルナを疲弊させてくれている。受け入れる理由にはなる筈だ。
 とは言え、である。
「いえ、……いえ。解っていたのです、本当は。私の申し出は、到底受け入れられるものではないと。ですから、ですから! 私は、わたしは、ちからづく、でも……ッ」
「……はぁ」
 余り期待はせず、であった。
 そして実際に、この答え。まあ、遠慮する必要が一切なくなった、と思えばいいだろう。
「いやだ、こわい、きえたくないいきていたいだから、だから……っ」
「わたしだって、こんな所、怖くて怖くてたまらないわよ!」
 聞くに耐えないと、南本・魔姫奈(まつろわぬ霊の巫女・f38646)が叫ぶ。
 戦うのは、未だに怖い。それは、消えたくないという彼女の願いと、似ているかも知れない。
 だからこそ、聞いていられなかった。決意が揺らいでしまうような気がして、それを振り払うように。
(「敵は人間と似た風に見えるけど、まぎれもない敵。正直、猟兵としての戦いというのはまだ受け入れられていないけど、逃げても逃げ切れるか分からない以上、ここでやらないと」)
 己の心の内に、確認する。
 折れないように、まっすぐに立つ。
 魎夜が、更に前へと進み出た。魔姫奈を護るように、そしてアルナに言い聞かせるように。
「悪いけど、太陽も雨も俺の味方だ。ここで逃げるなら、俺も追いはしねえよ」
 最終通告と共に、喚ぶのは暗雲。
 降り注ぐは|銀雨《シルバーレイン》。そう、雨雲は太陽の光を遮断する!
 アルナもそれを上回る光で裂こうとするも、消耗が激しく、力が思うように奮えない様子。
「あああああぁぁぁぁぁぁ……!!」
 魎夜と魔姫奈には、その叫び声が慟哭のように聞こえてならなかった。
 痛い。
 怖い。
 消えたくない。
 誰か助けて。
 その願いを彼女の望む形で叶えることは、きっともう誰にも出来ない。
(「なら、せめて」)
 全力で、彼女を消しに行く。
 その為には立ち止まれない。魔姫奈は蓬莱の玉枝を振り、結界を展開。我鳴鬼の力を押し留める。
「お願い、来て」
 短くそう呟いて、周囲の無機物に降霊を。
 宿るは英霊と成った源氏の将ら。彼らにアルナを任せ、更には甲板上のテーブルにも英霊を降ろす。
 彼らに護られながら、機を窺う。
「せめてもの手向けだ」
「え……」
 アルナの脚のモザイクが、僅かながら輪郭を取り戻す。
 魎夜が顔をしかめていた。生命力を削った代償。
 分け与えたのだ。自ら。
 それでも、彼女が後には引けないことも、解っていたから。
「最期の時だけはせめて、自分をしっかり持ってくれ」
 アルナの瞳に、戸惑いの色が浮かぶ。
 少しだけ、正気を取り戻したのかも知れなかった。
「今なら……!」
 魔姫奈が動いた。
 折れながらも半分以上が残っていた柱に、今喚べる最強の英霊を降ろし、向かわせる。
 無機物となった己の身体に慣れていないのか、その歩みは遅い。それでも。
「行って……!!」
 魔姫奈の願いに、英霊は応えた。
 大振りの一撃を、判断力が鈍ったままのアルナへと、叩きつける!
「うぁ……ッ」
 跳ねるその身体へと、魎夜は二刀を振るう。
 斬撃波がその身体を両断した。アルナは驚きに目を見開くばかりで、声も上げなかった。
 魎夜は願う。少しでも、苦しみから解放されればよいと。滅することでしか、それが出来ない事実が歯痒くあれど。
 分かたれた身体が甲板の床に叩きつけられ、動かなくなった。
 魔姫奈がそっと、その頭を抱く。
「……ごめんなさい。あなたも怖かっただけなのよね」
 そして、その瞼を下ろしてやった。
「せめて骸の海とやらの中では、安らかにな」
 崩れゆく。
 その最期を、魎夜がその両目で、看取る。
 魔姫奈は祈るように目を伏せ――そして、暗雲晴れた天を仰ぐ。
(「後はあの大きいのが残っている」)
 咆哮、ひとつ。
 自ら手を下さねばならぬと、理解したというわけか。
(「本当にあんなのと戦って、生き残ることできるのかしら?」)
 正直なところ、不安でしかない。今でも魔姫奈は逃げ出したくて堪らない。
 だが、やらねばならない。その気持ちの方が、強いのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『大いなる災い』

POW   :    雷鳴の刻印
攻撃が命中した対象に【癒えない稲妻型の傷跡】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【呪いを帯びた雷撃】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    群れなす災い
自身の【身体を覆う金色の装甲】を代償に、1〜12体の【金色に輝く麒麟型オブリビオン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    破壊の電流
自身が装備する【角】から【放電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【感電と機械使用不能】の状態異常を与える。

イラスト:高芭タカヨシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 瞼を下ろされたアルナの全身にモザイクが広がり、そのまま陽光に分解されるようにして、消えてゆく。
 やがてその姿が完全に虚空に溶けた――まさに、その瞬間だった。

 ――オオオオオオォォォォォォ……!!

 咆哮。
 雷鳴のように重く轟くそれが、戦いの合図だ。
 今や大いなる災いは、攻撃の準備は整ったと言わんばかりに眼光炯炯と猟兵達を回視し、その角が徐々に帯電し始め、仄青く光る。
 びりびりと、痛いほどの圧迫感を覚える。桁外れの覇気で猟兵達を威圧せんとする。
 だが、今なら勝機はある。
 幸いにして、大いなる災いはやはり本調子ではないらしく、パシフィック・クイーン号の甲板に前足をかけるばかりで上がってこようとしない。
 万一上がられようものならこの大型船でさえ転覆しかねないので、その心配が潰えたのは一安心だ。しかしそれ以上に猟兵達に有利に働くのは、敵がこちらの攻撃を避けようがないと言うことだ!
 勿論、その不利を補って余りあるほどの高火力な攻撃や、厄介な状態異常、そして自ら生み出す増援による数の暴力で、猟兵達の猛攻を跳ね除けようとするだろう。
 だから、それ以上を。ありったけの力を、出し惜しみなく。
 持てる全ての力と知恵と、そして勇気を以てして、この戦いに、終止符を!
儀水・芽亜
いよいよ『大いなる災い』との決着の刻ですね。
遠慮なくいきます。ナイトメアライドで「騎乗」して、ランスを振るって突っ込みます。

眷属のオブリビオンは、討滅よりも擦り抜けを優先して、「騎乗突撃」の勢いで置き去りに。どうせ本体が滅びれば消える代物でしょう。

目の前に『災い』が迫ってきました。もはやあれこれ考える余裕はありません。
狙うは、妖獣兵器の眼球。「軽業」まがいに客船の壁面などを足場に跳躍して、その目にアリスランスを投げつけます。目から脳までの「貫通攻撃」、通りますか!?

一撃を放った後は、他の仲間と合流して、ヒーリングヴォイスを「歌唱」することで、皆さんの負傷を軽減させます。


御形・菘
なるほど確かに厄介極まりないし厳しい!
お陰で装着マイク類は機能停止、ドローンカメラ類は望遠で撮影せねばならんとはな
さすがは大いなる災い!

オーラのモードを切り替えて、用途としては引き続き全身のガードに回そう
光の次は電流か、自然現象的なのが流行りか?
感電させられようが進攻は止めん! 身体が動きづらかろうが、臆さず這ってでも接近するとも
それに、ビリビリで身体をほぐしてくれて感謝をしたいぐらいだ!

狙うのならば前足で満足せず、よじ登る感じで出来れば頭まで向かいたいのう
極めた雷撃を披露してくれたお礼に、エモさと物理と、そして勇気の到達点を見せてやろう
はっはっは、邪神の一撃、渾身の左腕をブチ込んでくれよう!




 見上げる黄金の巨躯。
 その色は禍々しく輝き、存在するだけで圧倒的な威圧感を覚える。
 だが、今更怯むような猟兵達ではない。
「いよいよ『大いなる災い』との決着の刻ですね」
「なるほど確かに厄介極まりないし厳しい!」
 冷静に油断なく、鋭い金の眼差しを向ける儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)と。
 言葉とは裏腹に、呵々と大胆不敵に笑う御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。
「お陰で装着マイク類は機能停止、ドローンカメラ類は望遠で撮影せねばならんとはな。さすがは大いなる災い!」
「あら、準備がよろしいですね」
 強敵を前にしても、『邪神様』としての余裕を崩さない菘。返す芽亜の言葉にも震えはなく、寧ろ凪いですらいる。
「さて。では、遠慮なくいきます。悪夢の襲歩、ご覧に入れましょう」
 虚空より現れた|白馬《ナイトメア》にひらり跨り、芽亜は駆ける。その手に鴇色の|槍《ランス》を携えて。
 群れなす麒麟の姿を取った眷属は、槍捌きで軽くいなして置き去りに。足止めにかける時間すら惜しい。
(「どうせ本体が滅びれば消える代物でしょうしね」)
 大局を見据えねばならぬ。不要な戦いは避けて、全力を出し切るべき相手に専念を。
 同時に菘も動いていた。
 纏う邪神の証たる黒いオーラのモードを切り替える。全身の護りに回せば臆することなくあの巨躯を目指して滑り込む。
 その動きに気づいた大いなる災いは、迸る蒼雷で行く手を阻もうと、その角の輝きを放つ。
「光の次は電流か、自然現象的なのが流行りか?」
 などと菘が呟いた直後――なんと雷が、菘へと直撃する!
 びりびりと痙攣する痩身が強張り、倒れるまでに時間はかからなかった。
 芽亜にもその一連の音は聞こえていたが、もう振り返ってはいられない。無事を祈るしかない。
 だが、その心配は『幸いにして』杞憂に終わる。
 倒れ伏しながらも、がばと顔を上げた菘が、声を張り上げ笑ったのだ。
「あっはっは、この程度で妾の進攻を止められると思うてか! 寧ろビリビリで身体をほぐしてくれて感謝をしたいぐらいだ!」
 文字通り、甲板を這いながらも進み続ける菘。その姿は大蛇――否、飛翔する前の龍にも似て。
 身体に痺れは残るが、その動きに怯えや躊躇いは微塵も感じられない。徐々に速度を上げて迫りつつある。
 改めて芽亜は、目の前の敵に集中する。大いなる災いはもう目前だ。
(「もはやあれこれ考える余裕はありません。狙うは――」)
 駆け出したその時から、決めていた。
 眼球。手痛く、なおかつ後に続く仲間達に繋がる一撃を決めるのだ。
 白馬は甲板から離れ、壁面を走り出す。軽やかに跳躍して、宙へと躍り出る。
 迎撃しようとした大いなる災いの動きが、俄に止まった。
 菘が、その前脚にしがみついている――否。
「前脚程度じゃ映えんからなあ。ここは頭まで向かいたいのう!」
 よじ登り、頭部を目指している!
 振り払おうと身体を揺らす大いなる災いだが、全身を満足に動かせない状態では限界がある。
 とうとう、菘は黄金の炎のような鬣を掴み、その頂へと至った。大いなる災いは振り払うのをやめ、再び雷撃で菘を撃ち落とそうとするが。
 動きのある抵抗をやめたことで、芽亜の狙いが定まった。
「目から脳までを貫通する、この一撃――通りますか!?」
 槍を構えて、一息に放つ。外せない、外さない!
 ざくり、指し貫く音が確かに芽亜の鼓膜を揺るがして、その一撃に仰け反る衝撃が、菘にも伝わる。
(「極めた雷撃を披露してくれたお礼に、エモさと物理と、そして勇気の到達点を見せてやろう」)
 そう、まさに、今が絶好の機会!
 神をも殺す黒き左腕が、黄金をも呑み込まんと禍々しいまでの気魄を纏って唸る!
「はっはっは、邪神の一撃、渾身の左腕をブチ込んでくれよう!」
 増幅されたオーラと共に、脳天を打ち砕く!
「――――――!!!!!!」
 苦悶の滲む咆哮。
 大いなる災いが暴れ、今度こそ菘が振り落とされる。受身は取ったが、かなり無茶を通した。
「大丈夫ですか? 回復しますので、こちらへ」
「うむ!」
 敵の勢いは苛烈。
 だが、先陣を切った二人は、見事に乗り切って見せたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山吹・慧
大いなる災い……話には聞いていましたが、
確かに巨大ですね……。
ですが、先日の戦争ではもっと巨大な敵と
戦いましたからね。
大きさには惑わされませんよ。

序盤は闘気の【エネルギー充填】を行いながら
【残像】を伴う動きと【フェイント】で
敵の攻撃を回避していきます。
感電を受けてしまった場合は、
浄黒から賦活するエネルギーを自身に放ち
気合いを入れて【吹き飛ばし】ましょう。
この程度では怯みませんよ。
闘気が満ちたら、炸裂弾を投げて攪乱した後、
【功夫】による打撃の乱れ撃ちからの
【リミッター解除】した【天勁・散華】を放って
一気に攻めましょう。


酒井森・興和
お嬢さんは逝ったか…

…大いなる、ねえ
間近で見ると大きさに困惑するよ
【落ち着いて覚悟】を決めよう
冷静を欠けばさっきのアルナお嬢さんの二の舞だ
敵はまだ身軽に動けない
敵UC放電は【集中力と気配感知】で意識しつつ墨糸を結わえた逆鱗と飛斬帽を【投擲】し甲板に糸を打ち込みUC呼焔の仕込みを

敵UC発動時は角の様子を【追跡】
【誘導弾と対空戦闘、受け流し】活用し海水を吸わせた墨糸結んだ逆鱗を【カウンター】で投げ撃ち避雷針とする狙い
空気は電気を通さないから糸は燃えるだろうけど感電を防げれば御の字
即、イグニッションカードを掲げUCを発動
僕の技は天変地異並みの敵に比べれば知れているが多少なりのダメージは負わせるだろう




(「お嬢さんは逝ったか……」)
 咆哮が鼓膜を揺るがしてなお、酒井森・興和(朱纏・f37018)は少しの間、アルナが横たわっていたその場所に視線を落としていた。
「大いなる災い……話には聞いていましたが、確かに巨大ですね……」
 山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)が、静かに呟く。
 聞きしに勝るその威容。人の矮小さを思い知らせるように佇む意思持つ兵器。
「ですが、先日の戦争ではもっと巨大な敵と戦いましたからね。大きさには惑わされませんよ」
 積み重ねてきた経験が、慧の闘志を後押しするのだ。
 泰然と構える。其処に、興和もいよいよ顔を上げ、並ぶ。
「……大いなる、ねえ。間近で見ると大きさに困惑するよ。……けれど」
 退くつもりなどないのは、興和とて同じこと。
 心を落ち着けて、覚悟は決めた。大丈夫、自分は今、冷静だ。
(「冷静を欠けばさっきのアルナお嬢さんの二の舞だ」)
 だから、己を強く持って、難敵にも当たろう。
 敵が身軽に動けない今は、まさに好機なのだ。
 慧が闘気を高め充填し、残像を伴い敵の照準をぶらしながら駆け抜ける。
 興和は墨糸を結わえた逆鱗と飛斬帽を手に取り、甲板へと投げて差し込んだ。
 響く雷鳴。空は黄金に阻まれてなお碧いまま。
 青天の霹靂――否。破壊の雷が、降る。
 直撃すれば無事では済むまい。
「先行します」
 慧が、敵の攻撃を自らへと誘発するように動く。だが、むざむざと喰らってやる気など、毛頭ない。
 陽動を交えながらも臆せず進み、その懐へと着実に近づいていく。
 一方、興和はひとつ息を吐いて、集中。意識を帯電する蒼へと向けて、他を無にする。
 か細い雷光の流れさえも見逃さず、その動きを視線で追って。
「――危ない!」
「!」
 興和の声が慧の耳に届くのと、ほぼ同時。
 咄嗟に急所を庇った慧の右腕に、蒼の槍が落ちる!
 整った慧の眉が微かに歪む。
 そう、微かにだ。
 痛みも痺れも、感じ取っている。だが、畏れて戦意を喪う程度の覚悟で慧は、此処に立っているわけじゃない!
「この程度では怯みませんよ」
 浄黒。慧の手を覆い、その気で以て敵を打倒し、己に賦活の恵みさえ与えるもの。
 動かぬ腕に掌添えて、その気合を解き放ち、爆発させる!
 肉体は傷つけず、蝕む痺れのみを吹き飛ばしたのだ。
 そして、大いなる災いの攻め手が慧に割かれている間。
「封じさせて貰おう」
 第二波が来る前に、興和は墨糸を繰り逆鱗を投げ打つ。
 来る槍の雨は、それに吸い寄せられるように軌道を変えて、衝突し、弾けて消えた。
 墨糸には海水を吸わせていたのだ。そして、逆鱗を避雷針として誘導を。
 糸は燃えるがすぐに切り離して。即座に詠唱。
「――|起動《イグニッション》」
 同時。
 興和によって張り巡らされた糸は矢に転じ、燃え上がる。
「八糸、禍炎」
 八角八連の白熱火矢と成り、滝落としの如く降り注ぐ!
「僕の技は、天変地異並みの敵に比べれば知れているが――」
 雨垂れ石を穿つと言う。
 一本一本は細い糸のような矢でも、連なり続ければ無視出来ない力となるはずだ!
 それに、此処には、続く仲間がいてくれる。
 慧も、その一人だ!
「一気に攻め入ります」
 突き刺さる炎に大いなる災いが気を取られている間。
 大いなる災いの意識が、再び猟兵達に向く前に、慧は炸裂弾を投擲。散らばる破片が前足の黄金に突き刺さる。
 それ自体にダメージは然程ない。慧もそれは期待していない。
 本命はやはり、磨き上げた己の業!
「|起動《イグニッション》――さあ、この一手、」
 限界を超えて、魂が肉体を凌駕するほどの勢いで。
 流れるような、しかし苛烈な功夫による連打を。
 そして――百を優に超える、聖なる気の弾丸を。
「逃しは、しません」
 力の限り、叩き込む!
「―――ォオォ―――!!!!!!」
 大いなる災いが、振り洗うように暴れる。
 未だ健在。疲労の色は見えないが、それでも。
(「効いている」)
 興和は、確信する。
 猟兵達の攻撃は、目には見えずとも確かに、大いなる災いへとダメージを与えている!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴乃宮・影華
さて、デカブツが動き出しましたねぇ……
改めて見上げると、さっきまでぶっ放していた重火器が頼りない豆鉄砲に思えてきます

E『なら、もっと大きい武器を使うというのはどう?』

――そうね、やっちゃうか
「|神機召喚《アクセス》――レガリア・ベルクス、|起動《イグニッション》!」
『影光』を使い飛翔、『蓑蟲』『ケルベロスⅣ』自動射撃スタンバイ
向こうもお供を召喚したようですが、その分装甲が薄くなってるとのE.N.M.Aの分析結果を受け
指定UC起動
エネルギー弾や呪殺弾を派手にぶっ放し弾幕を形成、麒麟型の間を無理矢理押し通って大いなる災いの下へ
抜き放った『影蘭』で以て斬刑に処してやりましょう




「さて、デカブツが動き出しましたねぇ……」
 いよいよか、と鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は空すら覆う巨獣を仰いだ。
「改めて見上げると、さっきまでぶっ放していた重火器が頼りない豆鉄砲に思えてきますね」
 轟蘭華とて大型の兵器だ。影華が背負えば何も知らぬ者から見れば、使い物になるのか疑いたくなるほどだ。変形可能とは言え、基本的にはそれほどまでに大きい。
 その轟蘭華が、子供の玩具に見えるほどの大きさ。何もかもが圧倒的にして、規格外。それがこの、災いの名を冠した生物兵器なのだ。
 だが、影華が呑まれることはなかった。そしてそれは、擬似人格を搭載する戦闘支援AI――『E.N.M.A』も。
『なら、もっと大きい武器を使うというのはどう?』
「――そうね、やっちゃうか」
 出し惜しみはなしだ。
 E.N.M.Aの提案に短く頷く影華。直後喚ぶのは、一度は力を失った蟲達に代わり彼女に力を与えた白き神機!
「|神機召喚《アクセス》――レガリア・ベルクス、|起動《イグニッション》!」
 舞い降りる白光。影華が繰り、巨悪へと立ち向かう。
 その背から伸びる黒翼は、黒燐蟲が変じた機翼。羽ばたいて、攻撃準備を。
 黒燐の砲弾宿した蓑蟲とケルベロスⅣが、影華の意思ひとつで自在に動き、漆黒の火を噴き黄金を侵食して、爆発する。
 対抗すべく、大いなる災いが取った択は、手数にして肉壁の構成。
 自身を小さくしたような姿の麒麟型オブリビオンを、複数体喚び込んだ。
「っと、向こうもお供を召喚したようですね」
『ええ、けれど自身の護衛を召喚したオブリビオンに任せた結果、敵の装甲そのものが薄くなっているわ』
 そう、金色の装甲が剥がれている箇所こそが、護衛の代償。
 ならば、其処を攻めるまでだ!
「彼の力を以て世界が変わる――我等の進軍、最早止まらず」
 持てる力の全てを黒燐蟲の助けで注ぎ込み、呪いとエネルギーを変換した無数の弾丸を展開。己と敵の周囲を全て埋め尽くす如く弾幕を張り、自動射撃の支援も受けて、敵中を強行突破する!
 多少の無理も負傷も今は振り切って。全ては渾身の一撃で、確実にその大元を断つ為に!
「――斬刑に処します」
 抜き放つ影蘭。その黒き燐光の宿る刃で以て。
 ふわり、風が薙ぐように軽やかに、しかし確かな鋭さで、黄金の鎧脱ぎ捨てたその箇所を、斬り捨てる!

成功 🔵​🔵​🔴​

神臣・薙人
【月灯】

【真の姿】
10歳前後の子供
瞳が桜色

これが大いなる災い…
直接対峙するのは初めてですが
ここで食い止めましょう
今の私は、共に戦えるのですから
…お背中、お守りします

開戦後、即座に真の姿へ変化
葛城さん・凶月さんの両名が
桜花乱舞の範囲に入るよう
適宜立ち位置を調整
お二人が負傷・状態異常になった場合は
桜花乱舞で治療します
自分が感電等で動けない際は
可能な限り早く戦線に復帰出来るよう
強引に体を動かす等して
抵抗を試みます
相手が誰であろうと
私のするべき事は変わりません
お二人が攻撃に集中出来るよう
力を尽くすのみです

回復・治療の必要が無い時は
白燐蟲で攻撃
その際、可能であれば
凶悪さん・葛城さん両名と
同時に攻撃が当たるよう調整します

群れなす災い発生時には
麒麟型オブリビオンに食らい付くよう
白燐蟲に指示します
こちらに近い位置にいるものを
優先して攻撃するように心がけ
少しでも戦力を削れれば…

大いなる災い本体に
動きや攻撃の兆候等が見られれば
声を上げてお二人に注意喚起します
それと共に自分は治療に回れるよう
体勢を整えおきます


葛城・時人
【月灯】

真の姿:月光鎖の錫杖携える能力者・大人

確かにコピーなんだろう
あの時のコレはもっと最悪の災厄だった
でも侮りはしない
俺が新たな力を得たように
こいつも

絶対に上陸させるものか!

此処に俺が全幅の信を置く仲間が二人いる
絶対に勝てる
二人に毅然とした顔で声で
「護ろう、全てを」

巨大な敵を
「力なき者の盾となる為に」
錫杖で真っ直ぐ指す
今俺は猟兵だが十全な能力者でもある
「幾度でも立ち塞がろう」

「俺達の力…今一度受けて見ろ!」

白燐剣光大神楽詠唱
白燐蟲は光剣に
光剣は禍つ災いを焼き縫い留める
此処から一歩たりとも動かさせない!

技能等で回避はするが受傷は度外視出来る
俺の知る最高の癒し手が此処に居るから
「神臣任せた!」
どれ程喰らっても引く気は一切ない
幸いは何万人で止めたものを
劣化した今ならこの人数で押し切れる所

切れたら即再詠唱

縫い留めるだけでは足りない
自分でも更に攻撃を
俺の戦闘の動きに併せ
無限に出る​|白燐蟲《ククルカン》と共に
幾度でもどれ程強くても

そして俺の最高の相棒も此処に居る!
「陸井っ!」

必勝を期し連動し貫く


凶月・陸井
【月灯】

真の姿:起動時の全盛期の姿

まさかまた相対する事になるとは思っていなかった
でも、また俺には力も、それに心強い仲間達も居る

「あぁ、行くぞ。相棒」
相棒に言葉と笑みで返し
あの頃は送り出す立場だった神臣くんにも言葉を
「背中は任せた。頼むよ、神臣くん」

回復は神臣くんに、動きを止めるのは時人に
それぞれ仲間達の力を信じて
「二人が居てくれるからな。俺は、全力で攻撃する!」

戦闘開始と同時に真の姿になり
即座に【戦文字「水晶」】を使用
死龍葬弾の力を水晶の文字に宿して不可視の文字を射出
突出しすぎないよう、支援の範囲外にならないよう
二人との距離も意識して戦う
「さぁ…開戦だ!」

群れなす災いには銃撃と文字の力でなぎ払い
感電には最初から喰らう覚悟で耐えきるけど
神臣くんの回復も信じて俺は全力で攻撃を続ける

相手が文字を迎撃して反射してこようと
何度でも此方からも反射し続け
力を叩き込むまで反射を続け
敵が不可視の攻撃に対処できず
そのまま全力の力を打ち込めるなら
俺は全力で何度でも水晶を打ち込む
「何度でも、お前を倒す為に!」




「これが大いなる災い……」
 まさに圧巻。
 その巨獣を見つめぽつり零すのは、淡い桜の色宿すあどけない少年。
 しかしそれこそ、桜の精へと転じた神臣・薙人(落花幻夢・f35429)の真の姿。
「まさかまた相対する事になるとは思っていなかったな」
「ああ、でも……確かにあれはコピーなんだろう」
 薙人が視線を移した先には、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)と葛城・時人(光望護花・f35294)の背中がある。
 彼らもまた、『能力者』としての全盛期の姿に変じていた。己の力を、一番引き出せる姿に。
「あの時のコレはもっと最悪の災厄だった。でも、侮りはしない」
 過去の模倣であれ、本来の力を出し切れていないとは言え。
 油断して勝てるような相手ではない。相対して、改めて時人はそれを感じ取っていた。
「俺が新たな力を得たように、こいつも」
 オブリビオンとして、今一度、彼らの前に立ちはだかる。
「でも、また俺には力も、それに心強い仲間達も居る」
 言い切る陸井の声に、瞳に、迷いはなかった。
 だから、彼の仲間は安心して、戦場に立つことが出来る。それは相棒たる時人も同じく。
「――絶対に上陸させるものか!」
 君と共に在れば、負けはない。そう、信じられる。
 信じれば、力が湧き上がる。この戦いも、勝利で終わらせて見せる!
 そして、彼らを支え続けてきた薙人も、例外ではなく。
(「私は直接対峙するのは初めてですが……ここで食い止めましょう」)
 嘗ては、信じて、送り出すことしか出来なかった薙人。
 彼らのことは、いつだって信じていた。けれど、自らの手が彼らの力になれないことを、歯痒く思うことはどうしたってあって。
 けれど、今は違う。
(「今の私は、共に戦えるのですから」)
 だから、自分も戦おう。
 信じる仲間が、存分に力を奮えるように。
 それが、薙人の戦いだ。
「……お背中、お守りします」
 小さく零した決意の言葉も、二人の耳には届いたようだ。
「背中は任せた。頼むよ、神臣くん」
 薙人を顧みる陸井は、そう言って悠然と微笑んだ。
 時人も、言葉はなくともニッと広角を上げて信頼の意を示す。
 ああ、あの時と変わらず、けれどあの時より強くなった二人だ。
 彼らを、今度は同じ戦場で支える為に、薙人は此処に来たのだ。
(「此処に俺が全幅の信を置く仲間が二人いる。絶対に勝てる」)
 それを今、証明してやる。
「護ろう、全てを」
「あぁ、行くぞ。相棒」
 毅然と時人が告げれば、陸井も言葉を返し。
「さぁ……開戦だ!」
 押し潰すかのように轟く咆哮すらその気魄で跳ね除けて、動き出す!


「何度だって、咲いてみせましょう。大切な仲間を護る為なら――」
 薙人の決意の言葉が、そのまま具現化したかのよう。
 夢見の蕾は花開き、淡紅の彩で世界を包む。禍々しく奔る蒼すら攫ってしまうように。
 桜色の世界を往く。並んで飛ぶ残花達の気配を近くに感じながら。
「力なき者の盾となる為に」
 時人が翳した錫杖は、鎖に宿る月光の綺羅を誇示するように突きつけて。
 清浄の輝きで、その悪しき光すら打ち破らんと。
「幾度でも立ち塞がろう」
 能力者としての力と、猟兵としての力。
 その全てを駆使して、全力で!
「俺達の力……今一度受けて見ろ!」
 錫杖を握る手とは逆、添えていた手を虚空に翳す。
 その手に握るは、潔く白き光の剣。禍つ災いを焼き浄める白き燐光の剣だ!
「穿ち、奪い、縫い留めろ! ククルカン!」
 剣舞の如く流れるような太刀筋から、真白き光の刃が生まれる。
 それは大いなる災いの巨体をも深く裂くと同時、眩い光が弾けて白み、その視界を奪い去る。
 既に片目を味方によって潰されていたのだ。続けざまに狙われた、眼で認め識る世界――最早それは、大いなる災い自身のものですらなくなった。
 万一の的確な反撃の可能性すら、これで潰し切る。
(「此処から一歩たりとも動かさせない! それに陸井の新たな力は――、」)
 時人の意識が陸井に向く。
 まるでそれを測ったかのようなタイミングで、陸井から迸る超常の力の気配が色を濃くした。
「二人が居てくれるからな。俺は、全力で攻撃する!」
「……! ああ、任せた!」
 痛みと痺れに苛まれても、薙人が癒してくれる。
 新たな力を行使する上でのリスクも、時人が零に近づけてくれる。
 薙人が、時人が、陸井を信じてくれているように、陸井も二人を信じているのだ。揺らぐことなく!
 そして、その事実を指し示す間にも――否、二人が動いていたのと同時、既に陸井の猛攻は始まっていた。
 今も『何か』、大いなる災いに着弾している不可視の『何か』が、大いなる災いの鎧の如き黄金を砕きつつある!
(「不可視の戦文字、そして潰した視界――それらを覆す手段がない以上、もう奴に反射は出来ない」)
 新たなる戦文字――『水晶』。
 その名の如き透明な水で描かれたニ文字は、死龍葬弾――龍四文字の力を内包して大いなる災いを穿つ!
 その存在を認め、跳ね返されれば陸井にそのまま戻ってきてしまう、というリスクはある。だが、それも時人が潰してくれた。躊躇うことなど何もない!
「オ、オォ、オオオオオオ!!」
「! お二人共、来ます!」
 残花達に的確な指示を出すべく、敵の動きに注視していた薙人が、ただならぬ気配に声を上げた。
 敵の姿が見えぬならばと。
 それでも敵が、確かに其処にいるならばと。
 大いなる災いは、無差別に雷嵐を巻き起こし、自らの目の代わりとなる存在を喚ぶ!
「く……っ、流石に……!」
「弱っていても『大いなる災い』か……!」
 陸井も時人も、知識と経験でこの局面を乗り切ろうとする。
 だが、他を一切省みない暴虐は、時に何より厄介な猛撃となるのだ。
 全てを躱し切れないか――そう過ぎった矢先。
「――負けません」
 桜の色が、より濃く世界を埋め尽くす。
 幾度、蒼に裂かれても。再び塗り潰すようにして。
「負けるわけには、いかないんです」
 自分を信じてくれる、そして自分が信じたい、仲間達の為に!
 薙人は限界を超えて、癒しの花を、風を、世界を、散らされぬよう、壊されぬよう、護っているのだ。その中にいる二人を、護る為に。
 自らも蒼の鎖に苛まれながらも、振り払うようにその手で空を薙いで。
「相手が誰であろうと、私のするべき事は変わりません。ただ、力を尽くすのみです」
 全ては二人が、憂いなく戦い抜けるように。
 二人の信頼に、応えたいが為に。
 ならば、時人も、陸井も。
 その献身に、報いねばなるまい!
「神臣、任せた!」
 桜舞う世界で響く時人の声に、薙人は確と頷いた。
 元より、彼も陸井も、多少の負傷は覚悟の上だった。
 最初から、薙人のことを信じていたのだから。
 薙人の癒しの力あればこそ、勇猛果敢に攻め立てていたのだから!
(「俺の知る最高の癒し手が此処に居る。だから、倒れるなんて考えてない。引く気は一切ない!」)
(「俺達は信じて、攻めるだけだ。最初から、そのつもりで動いている。お前が何をしようと今更、変わりはしないさ」)
 さあ、後は倒すだけ!
「ククルカン!」
 再度、光の剣舞で視界を奪った時人も攻勢に転じる。
 白燐蟲を喚び、薙人の残花とタイミングを合わせて攻撃を指示。自らも月色で三日月を描いて敵を穿つ。
「幸いは何万人で止めたものを、劣化した今ならこの人数で押し切れる所だ」
「ああ。だからこそ、攻めの手を緩めちゃいけない。何度反撃されても、それを上回る勢いで、何度でもだ!」
 再び、陸井によって描かれる不可視の文字。
 それでも気配に気づいた配下達が、跳ね返そうとするけれど。
「何度でも、お前達ごと穿ってみせる」
 フリーの個体に弾丸を打ち込みつつ、押し返されたニ文字を更に、陸井からも跳ね返す!
 何度でも、その力を叩き込むまで、決して折れはしない!
「――残花」
 薙人もまた、白燐蟲の名を呼ぶ。
 白く抜いて透き通るような無数の燐光が、最前列の敵に纏わりつき、食らいついた。
「其処だ!」
 狙って、陸井の文字は其処を着弾点と定めた。
 遂に、返し合いの応酬は終わり、突破口が開ける。
「俺達は諦めない。何度だってお前を倒しにかかる。どれほど強くても、頼もしい癒し手と――そして、俺の最高の相棒も、此処に居るのだから!」
 時人の光が三度災いの世界を灼いて。
「陸井っ!」
「行ってください!」
「ああ、やってやろう。何度でも、」
 仲間を信じ、世界を護る。
 その意志を一つに束ねて、勝ちに行く!
「何度でも、お前を倒す為に!」
 目には見えずとも一際大きな水晶が、大いなる災いへと射出され。
 弾けた其処から飛び出した四龍が、その喉元へと喰らいつく――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

南本・魔姫奈
【心情】
話によるとご先祖はこんなものと戦っていたということ
わたしが知らなかっただけで、世界にはこれ程に恐ろしいものが満ちていた

でも、そんなものに滅ぼされるなんて冗談じゃない
昔の因縁なんて知ったことじゃない
わたしは今、こんな所で殺されてやる訳にはいかないの

【戦闘】
破壊の電流に対しては、「結界術」で対抗して、戦場に残る

猟兵になって3か月のわたしが歴戦の猟兵たちと同じように戦えるなんて思えない
だけど、わたしの中にある月帝姫の力であれば、猟兵たちを支えることくらいはできる
この場に残るのは怖いけど、逃げてあいつにおびえ続けるのはもっと嫌
だったら、ここで戦う方がまだマシなはず

「ご先祖さま、あなた達のことは何も知らないけど……力を貸して!」

「集中力」「多重詠唱」「リミッター解除」で力を集めて、猟兵たちにUCで支援を行います

これ程の怪物が闊歩していた忘却期
備えのない状況でこんなものと戦っていた「かつての戦い」
そして始まったのが今の戦い

こんなもの、いつまで続くのかしらね


暗都・魎夜
【心情】
オブリビオンになっても、このレベルの眷属を大量に連れてこれるんだから、こいつは『大いなる災い』
としか言いようがねえ
このクラスの妖獣兵器ともなると、対処法は「強いから気を付けろ」としか言いようがねえ

こっちも覚悟を決めるとするか

【戦闘】
さっきの一戦でこっちも本調子とは言えねえが、向こうも本調子じゃねえのはありがたい
この船から先には行かせねえ

「見切り」「地形の利用」で雷鳴の攻撃をよけながら回転動力炉をフル稼働で「魔力溜め」

「あんなもの食らったら、こっちも身が持たねえな」

昔、アレが暴れたときには多くの犠牲を払うことになった
今度はここでキッチリと蹴りつけてやるさ

十分に魔力を集めたところで、「全力魔法」「リミッター解除」「捨て身の一撃」によるUCを解き放つ
「全力の一撃で確実に仕留めてやる。受けてみやがれ、ストームブリンガー最大最強の奥義!」

その後、まだ暴れるようなら焼き尽くすまでUCを維持

戦闘が終わったら、「除霊」「浄化」でゴーストタウンの掃除も
あれほどの相手である以上、妙な影響与えそうだ




「……わたし、知らなかった」
 ぽつり、零れた囁くようなか細い独白は南本・魔姫奈(まつろわぬ霊の巫女・f38646)のもの。
 知らなかった。先祖が、こんな化け物のような敵と戦っていたことを。世界には、これ程に恐ろしいものが満ちていたことを。
 魔姫奈が知らなかっただけ。これが、|銀の雨が降る世界《シルバーレイン》の真実だったのだ。
(「――でも、」)
 恐怖は拭えない。今だって震え上がりそうだ。
 けれどそれより強く湧き上がる、確固たる感情がある。
「そんなものに滅ぼされるなんて冗談じゃない」
 昔の因縁、明らかになった真実――そんなことは、魔姫奈の知ったことではない。魔姫奈の戦う理由は、其処にはない。
「わたしは今、こんな所で殺されてやる訳にはいかないの」
 魔姫奈自身が、生きて前に進む為に。
 その為に、彼女は敵に、恐怖に立ち向かうのだ!
「オブリビオンになっても、このレベルの眷属を大量に連れてこれるんだから、こいつは『大いなる災い』としか言いようがねえ」
 其処に進み出たのは、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)だ。
 彼はまさに、|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》の英雄。オブリビオンとして蘇ったものではない、オリジナルの大いなる災いとも、直に相見えている。
 一筋縄では行かない相手だ。それを、身を以てよく知っている。
「このクラスの妖獣兵器ともなると、対処法は『強いから気を付けろ』としか言いようがねえ」
「……っ」
 息を呑む魔姫奈。それだけの相手なのだ。
 実際に相対した相手の言葉だ。重みがある。
 だが、魎夜も魔姫奈や他の猟兵達を尻込みさせるつもりで言ったわけではない。ここに集まった時点で、彼らは覚悟を決めてきていると、魎夜自身も確信しているからだ。
 魔姫奈も、決意を新たに敵を見据えた。生半可な覚悟ではやられる。けれど、もう決めたのだ。理不尽な死から、抗う為に戦うのだと!
「こっちも覚悟を決めるとするか」
 薄明の眼差しが、倒すべき敵を射抜く。
 先の一戦、我鳴鬼の力を得ていたアルナとの戦い。魎夜も消耗しており、本調子とは言えない。しかし、幸いにして敵も本調子ではないようだ。
 加えて、味方の攻撃で疲弊の色が濃くなりつつある。倒し切るなら、今しかない。
「この船から先には行かせねえ」
 蒼の奔流降り注ぐ戦場を、魎夜は駆ける。彼が雷撃を回避しつつも引きつける間、魔姫奈はその場に留まり結界の構築を始めた。
(「猟兵になって三ヶ月のわたしが歴戦の猟兵たちと同じように戦えるなんて思えない」)
 今の自分の力量くらい、自分自身がよく解っている。
 経験の差は、どうしたって埋められない。それを痛感している。
(「だけど、わたしの中にある月帝姫の力であれば、猟兵たちを支えることくらいはできる」)
 出来ることは限りがある。
 ならば、限りある中で今の自分に出来ることをやるだけだ。
 そう、彼女を駆り立てるのは。
(「この場に残るのは怖いけど、逃げてあいつにおびえ続けるのはもっと嫌」)
 此処で味方に任せて離脱することだって出来た。
 けれども、それは問題の先送りにしかならないのだ。怖くても、後悔しない選択をしたかった。
(「だったら、ここで戦う方がまだマシなはず……!」)
 踏み留まる。
 しっかりと、踏みしめて。
 自分も味方も守る、その為の結界で死の再来に抗うのだ!
「!」
 展開された結界が、降る蒼を阻む。
 それでも稲妻は弾け、守られた世界を揺るがした。
「あんなもの食らったら、こっちも身が持たねえな」
 フル稼働で魔力を溜め続ける、魎夜の詠唱兵器、その回転動力炉。
 変わらぬ彼の戦い方。能力者としての下地が其処にある。嘗ての戦いに、思いを馳せる。
(「昔、アレが暴れたときには多くの犠牲を払うことになった」)
 学園の仲間達。決死の覚悟で力を貸してくれたゴーストチェイサー達。
 彼らの犠牲の上に、学園の勝利は成った。その事実を、忘れたことなど一度もない。
 失われた命が、戻ってくることはない。それでも今は、犠牲を出さずにあの日の再来を、止められるかも知れないのだ。
 ならば、戦わないという選択肢は、魎夜にはない!
「今度はここでキッチリと蹴りつけてやるさ」
 魔力は充分に集まった。
 回転動力炉が、音を立てて唸る。
 さあ、[起動]せよ、詠唱兵器!
 限界など突き抜けて、この身すら擲つ覚悟をくれてやる。
 最大出力で、生命の敵を粉砕する一撃を――!
「全力の一撃で確実に仕留めてやる。受けてみやがれ、ストームブリンガー最大最強の奥義!」
 炎が、電光が、総て灼き尽くさんと鮮烈に輝いて。
「十万億土まで、ぶっ飛ばす!」
 爆炎と化して、泰山の如き巨躯すら赤く焦がすのだ!
 だが、弱っていても嘗て学園を苦しめた相手。そう簡単には倒れない。
「ォオ、オオォォ――!!」
 咆哮に、魎夜の方が吹き飛ばされそうになる。
 だが、負けられない。負けるわけには行かない!
 火力を維持し続ける。たとえ立っているのがやっとになっても、この魂に、肉体を凌駕させて見せる!
 歯を食いしばり、耐える。身体が悲鳴を上げる――その時。
「ご先祖さま、あなた達のことは何も知らないけど……力を貸して!」
 冴え冴えと、魔姫奈の声が空へと響く。
 魎夜の身体が、光に包まれた。途端、力が湧き上がってくる。
 |月帝姫《ルナエンプレス》のもたらす月の光が、その祈りに応えて、力を与えてくれる!
「……行ける!」
 魔姫奈を顧み、今は視線だけで礼を告げて。
 再び、大いなる災いへと向き直る。
 今度こそ、ご退場願おう!
「消し飛べッ!!」
「ォ、オオオオオオォォォォォォ――――――!!!!!!」
 咆哮。否、断末魔。
 光に呑まれ、黄金の巨獣は爆散するように、砕け散る。
 空は、|黄昏の色《きんいろ》に染まりつつある。
 だがそれは、猛る悪しき黄金ではなく。
 優しく、生命を包む金色だった。


「さて、妙な影響与えないように……っと」
 魎夜は、パシフィック・クイーン号の浄化に取り掛かっていた。
 弱体化してなお、あれほどの猛威を奮った相手だ。この船が元はゴーストタウンだったこともあるし、慎重になりすぎるということもないだろう。
 魔姫奈は、甲板から沈む夕日を見つめていた。
 もう、空を遮る敵は、此処にはいない。
 だが、忘却期にはこんな怪物が闊歩していて。
 |銀の雨が降る時代《シルバーレイン》は、備えのない状況でこんなものと戦う日々だった。
 そして、始まったのが今の戦い。終わりの見えない、戦いの日々。
「こんなもの、いつまで続くのかしらね」
 続く戦い、強敵の予感に、魔姫奈はそっと、目を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月16日


挿絵イラスト