#UDCアース
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●ハロウィンは永遠には続かない
ハロウィンが終わるのは10月31日の24時ではない。
いつだって魔を退けるのは太陽だ。
11月1日の朝日がハロウィンの終わりを告げる。
闇を切り裂く純白の光が変化の魔法を解いていく。
キョンシーの中身は生きた人間だった。
そもそもアメリカンなポリスがいる国じゃなかった。
アルコールが残る頭で今日の業務を確認する。
一睡もしていないはずなのに、あの馬鹿騒ぎの夜が全て夢だったのではないかと思えてくる。
「もう朝か…」
知らぬ誰かがぽつりと呟いた言葉に、知らぬ誰かが言葉を返した。
「いや、まだ夜は終わっちゃいねぇ!これはなぁ!白夜だ!」
言葉尻の怪しい酔っ払いの声だった。
白夜が見られる季節じゃない。そもそも白夜が見られる国じゃない。
しかし、誰もその言葉を笑わなかった。
そうか、白夜か。
なら夜も、ハロウィンも、まだ終わっていない。
ひとり、またひとりと化け物に戻っていく。
チョコレートを貪る。
甘味が舌先で溶けていく。何故か脳が痺れる。
アルコールを注げ。終わらない夜に乾杯しよう。
視界の端にオレンジの南瓜。
こんなに沢山飾ってあっただろうか。
白夜に乾杯するのはこれが初めてだっただろうか。
●ハロウィン延長戦
「ただの頭のイカれた[検閲済]集団だったらライブカメラで配信でもしてやろうかと思ったんだけどなァ、残念ながら原因はオブリビオンらしいぜ。」
誠に残念、とでも言わんばかりの表情のグリモア猟兵晒部・ちぃと(この《バーチャルキャラクター》は通報対象です・f34654)。
「邪神の操る毒にみーんな脳がやられたんだってよ。んで、どっかの馬鹿が言った“白夜”って言葉を信じ込んで10月31日から今の今まで馬鹿らしく馬鹿騒ぎ…まぁ、毒にやられる前も脳なしの[検閲済]だった可能性もまだ捨てきれねぇけどな。」
世間話終了、さっさと本題行くぞ。と彼は概要を電脳ウィンドウに表示した。
「このままだと毒と睡眠不足のせいでいよいよヤベーらしい。乱闘やら何やらが起こってめちゃくちゃ人が死ぬんだとよ。」
別に俺にはどーでもいいんだが、と言いながら彼が映し出されたパーティ会場は悲惨だった。
高そうなカーテンはビリビリに破られ、壁にはパンプキンパイがへばり付き、人々は割れた電灯の破片を踏みしめて好き勝手に騒ぎまわっている。
既に大勢はホールを飛び出してホテル中で暴れまくっている。
高級感のカケラもない。
「こんな低俗な[検閲済]パーティだけど入るには条件があるんだとよ。良かったな、そんな難しいモンじゃねぇ。仮装と手土産が必要らしい。」
仮装と手土産の質は問わない。
手作りとかして好きなだけ凝ってもいいし、その辺のディスカウント店で安価なものを適当に選んでもいい。
なんとゆるい条件だろうか。
潜入後はしばらくパーティ客に溶け込む。
好きに菓子やら料理やらを楽しんでいいし、暴徒化しそうな奴らをボコってもいい。
オレンジのかぼちゃは邪神の毒が仕込まれているから捨てるなり壊すなり食うなり無視するなり、お好きに。
「...んで、会場にのこのこと邪神が現れたらぶっ殺す。つーのが、俺の考えた完璧な作戦ってわけさ。ってことでさっさと行ってこい、質問は受け付けねぇ。」
“完璧な作戦”をヘラヘラとよそ見をしながらテキトーに説明したちぃとは、説明中とは打って変わって猟兵達に質問をする隙を許さないほど迅速にグリモアを起動し転送を開始した。
ミヒツ・ウランバナ
オープニングをご覧頂きありがとうございました。ミヒツ・ウランバナと申します。
気がついたらハロウィンが終わっていました。
第一章:潜入するために仮装やお菓子の準備をしましょう。
ホテルの近くにはお菓子や仮装が買えそうなディスカウントストアがあります。
ホテルのキッチンを使ってお菓子や料理を作っても大丈夫です。持ち込み用の食べ物を作ると言うと喜んで貸してくれます。
第二章:パーティを楽しみましょう。
会場は地獄絵図ですが沢山のパーティ客が持ち寄った多種多様のお菓子と料理は大量にあります。高級ホテルなのでそこそこいいお酒も揃っています。バーカウンターに忍び込んでも怒られません。
会場に飾られているオレンジのカボチャやカボチャ料理にはもれなく毒が混入しています。
毒カボチャは薬物のように脳の機能を低下させる香りを発しています。食べれば臓器がやられ吐血する程度の毒を持っています。
他の客の為に処理してもいいです。カボチャなので食べてもいいです。
第三章:ボス戦です。
グループ参加は2名までとさせていただきます。ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけるとありがたいです。
皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『邪教団の儀式に潜入せよ!』
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POW : 根性でどうにかして忍び込む
SPD : 上手く教団員に変装して忍び込む
WIZ : 口八町や捕まったふりで入り込む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御園・桜花
今年のハロウィン衣装(フランケンバニーさん)に着替え
大きめのマシュマロにチョコペンでお化けの顔を描いたものを大量に準備
クッキーに溶かしたホワイトチョコかけお化けマシュマロ接着
複数のタッパーにお化けクッキーと接着していないお化けマシュマロ入れUC「古木の宿」に収納
「マシュマロは此の儘ココアや珈琲に入れられますから、甘い物好きな方は此れで籠絡するとして。お酒好きな方はチーズや肉の塩気がある物の方が好まれますよねぇ…」
ピーマンや茄子、ズッキーニの肉詰め大量に作り海苔の佃煮や練りごまでお化けの顔を描く
ラビオリも作り同様にお化けの顔描きタッパーへ
「此れだけ料理持ち込めばきっと入れて貰えると思います」
銀の大きなバットにこぶし大の大きなマシュマロが一つずつ並べられていく。
かなりの量のマシュマロだ。パーティの全員に確実に行き渡る個数だろう。
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は湯煎して柔らかくなったチョコペンを手に取り、マシュマロ一つ一つに顔を描いていく。次々と白いマシュマロがシーツお化けに変身していく。
口をへの字に曲げたお化けらしいお化け。
舌を出したいたずらっ子のお化け。
にっこりと笑った可愛いお化け。
描き終わったらまたバットへ。そして隣の新しいマシュマロを手に取る。
小さなお化け達がバットの上にお行儀よく寝転んでいる。
その隣にはクッキーがケーキクーラーの上にマシュマロと同じように等間隔に並んでいる。
湯煎していたホワイトチョコレートの甘い香りがキッチンに充満する。
マシュマロに顔を描き終えた桜花はホワイトチョコをゴムベラでかき混ぜる。
溶け残りもなく、滑らかにチョコが円を描く。
ボウルを手に取り、クッキーの上に満遍なく垂らしてコーティングする。
クッキーの焼き色がホワイトチョコの白で塗りつぶされていく。
余分なチョコレートが重力でケーキクーラーの網目からクッキングシートへ落ちていく。
ホワイトチョコが固まる前に、桜花はマシュマロお化けを一人ずつクッキーの上に移動し、カラースプレーやアラザン、桜の花の塩漬けで足場を飾る。
立ち上がったマシュマロのお化けが桜花の丁寧な作業をじっと見つめている。
余ったチョコペンで「HAPPY HALLOWEEN」と土台に書いた。
「マシュマロは此の儘ココアや珈琲に入れられますから、甘い物好きな方は此れで籠絡するとして。お酒好きな方はチーズや肉の塩気がある物の方が好まれますよねぇ…」
完成したクッキーとマシュマロをタッパーに詰め、次々と彼女の袖口から無限倉庫へと収納していく。
既に全員に行き渡る量のお菓子を作った桜花だったが、お菓子に興味がない人たちにも手土産を持って行きたかった。
幸いにも、ここは高級ホテル。大きなキッチンの大きな冷蔵庫の中にはおつまみを作る材料が大量に揃っているようだ。
「...お酒好きの方の為にも、2品ほど何か作りましょうか」
そう言うと桜花は早速おつまみ用のいくつか野菜を選び始めた。
ピーマンは半分に切って、種とわたをとる。
なすはチクチクとするガクを一つ一つ丁寧に取り除き、中身をスプーンでくり抜く。
ズッキーニは縦半分に切って大きく作ってもいいけれど、パーティのみんなが取り分けやすいように、と輪切りにしてなすと同様に中身をくり抜く。
合い挽き肉と微塵切りの玉ねぎを合わせたタネをそれぞれに隙間がないように少しこんもりするくらい詰め込んで、肉だねが下になるようにフライパンに並べる。
パチチ、油の爆ぜる音。
肉だねに美味しそうな焼き色がついたら裏返し蓋をする。
2品目も同時に調理しておく。
ほうれん草を茹でて、食べやすい大きさに切る。モッツァレラチーズも同様に切る。
パスタ生地にそれらを並べて折り返して畳む。
空気を抜いて切り離し、フォークで端を留めたらお湯を沸かした鍋で茹でる。
十分弱も茹でれば、美味しいラビオリが出来上がるだろう。
ラビオリを茹でている間に大量の野菜の肉詰めを焼く。
ラビオリが茹で上がったら、ラビオリの第二陣を茹で始める。
その間に肉詰めに海苔の佃煮や練りごまで顔を描いていく。
ラビオリも、全て茹で終わったら顔を描く予定だ。
手を抜くことなんていくらでも出来る。
出来合いの料理や市販のお菓子を買ってパーティ会場に入ることもできるけれど桜花はそれをしない。
時間をかけて丁寧に手料理を作り、飾りつけまでする。
それはパーラーメイドとしての誇りなのかもしれないし、美味しい料理を食べて喜んでほしいという桜花の気質なのかもしれない。
それなりの時間をかけて、料理は全て完成した。
ピーマンの肉詰めを味見すれば、ほんのりと苦いピーマンと塩気の効いた肉だねの肉汁が口の中で混ざりいい出来栄えだった。
沢山のタッパーに料理を詰め込み、顔の描き忘れやソースのかけ忘れがないかを確認する。
「此れだけ料理持ち込めばきっと入れて貰えると思います」
まだ温もりの残ったタッパーをお化けマシュマロと同じように袖口に収納していく。
ホテルの空き部屋で仮装も済ませる。
身体に傷跡のあるフランケンバニーさんだ。ふわふわの尻尾のバニーガールの衣装とフランケンの肌が怖かわいい。
古木の宿から料理を取り出せるようにかぼちゃのランタンも手に持っておく。
「お料理、気に入って貰えると嬉しいですね」
パーティ会場は狂気に満ちているけれど、それでもパーティ客達は美味しいものを美味しいと思う心まで失ったわけではない。
「…そうだったらいいのですが」
転送前に見た映像を思い出し、ほんの少しだけ不安になる。
「まあ、なんとかなるでしょう」
持ち前の天然さで持ち直し、彼女はパーティ会場へと歩を進めた。
失敗
🔴🔴🔴
三上・桧
ハロウィンパーティ、行けていなかったのでちょうど良かったですね、火車さん
『まともなパーティではなさそうじゃがな』
まあ、この際内容には目を瞑りましょう。とりあえずハロウィンイベントに参加したという事実さえあれば満足です
さて、まずはホテル近くのお店で仮装と手土産を調達ですね
パーティパックのお菓子とかでいいですかね
『適当じゃな』
仮装は……蜘蛛の巣模様のマントがありますね。これが良さそうです(今年の南瓜行列SD)
同じデザインで動物サイズもありますね。火車さん、お揃いにしましょうよ
『妾も仮装するのか?』
当然でしょう、ハロウィンパーティなのですから
準備完了ですね。パーティに向かいましょう
「ハロウィンパーティ、行けていなかったのでちょうど良かったですね、火車さん」
『まともなパーティではなさそうじゃがな』
三上・桧(虫追いアリス・f19736)は転送前に見た映像を思い返す。
暴徒のようになった人々が素手でケーキを掴む。飛び交うパンプキンパイ。裂けたテーブルクロス。汚れたカーテン。割れた皿。
どこをどう見てもまともなパーティとは言い難い。
ハロウィンパーティだという事前情報がなければ悪ふざけ集団の大暴れと言われても信じてしまいそうな有様だ。
桧は一つ息を吐く。桧だって本当はまともなパーティに参加したい。
しかし、まともなパーティというのは10月31日の夜に始まって次の日の朝にはもう終わっているのだ。
「まあ、この際内容には目を瞑りましょう。とりあえずハロウィンイベントに参加したという事実さえあれば満足です」
ハロウィンイベントに参加した、参加していないというのは一年間のイベントステータスに大きく影響するとかしないとか。この際まともなパーティとかそういう事を言ってはいられない。
『それで良いのじゃろうか』
やれやれと火車さんも一つ息を吐いた。
「さて、まずはホテル近くのお店で仮装と手土産を調達ですね。」
パーティに参加する為には仮装をする事と手土産の持参が必須条件だ。
幸いにもちょうどホテルの近くには大きなディスカウントストアがあった。
食料から寝具までなんでも売ってる黄色のディスカウントストアは今日も深夜まで賑やか。
一人と一匹が入店するとスピーカーから流れる音楽がドンドンと出迎えてくれた。
「パーティパックのお菓子とかでいいですかね」
大から小までありとあらゆる大量のお菓子が天井まで並んでいる棚を眺めながら桧は言った。
『適当じゃな』
「適当でいいんですよ、こういうのは」
どうせ凝ったものを用意したって頭のおかしくなった客達に投げられ、潰され、おもちゃにされるのが目に見えている。だったらこちらがどんなに適当に用意したって文句は言えない。
とはいえ、あまりに量が少なくても潜入するときに面倒なことになりそうだ。
大袋のチョコレートが目の前にあった。パーティパックのお菓子の中でも一つ一つが小さいチョコレートは中身がいっぱい入っているような気がする。黄色いカゴの中に放り込んで、これでひとまず手土産の準備は完了だ。
棚のせいで狭くなっている通路を客と客の隙間を縫ってうろうろする。
しかし、中々ハロウィングッズは見当たらない。
既に店は早めのクリスマス模様。サンタクロースのコスプレとトナカイの着ぐるみが目玉商品として棚に並べられている。
「仮装コーナーはどこですかね」
『多分ハロウィンも終わったことじゃし、きっと店の隅の方に追いやられているのじゃ』
火車さんの読み通り、狭い通路の奥の奥の店の隅、ハロウィンの仮装達はポツンと50%の割引シールを貼られていた。
幸いなことに割引コーナーにしては内容が充実していて、キョンシーや狼人間、大人用子供用など様々な売れ残りの仮装達が隅っこに山積みにされていた。
桧はペラペラと仮装の山をめくっていく。
悪魔、囚人、キャラクター物、魔女、黒猫…ふと、一つの仮装で手が止まった。
「蜘蛛の巣模様のマントですね。これが良さそうです」
さすが虫追いアリスと言われるだけあって、こういったものには目がない。
黒い蜘蛛の巣をあしらった長いマント。きっと桧に似合うだろう。
マントの他にもカチューシャがセットで同封されていて、小さな蜘蛛の飾りが動くたびにゆらゆらと揺れるようになっている。
仮装をカゴに入れようと手にとった時にその下にあった仮装が見えた。
桧が選んだものよりもひとまわり以上小さい蜘蛛の巣マントだ。
おそらく犬や猫とお揃いにするためのものだろう。
カチューシャの代わりに胸元には大きな紫色のリボンがついている。
「同じデザインで動物サイズもありますね。火車さん、お揃いにしましょうよ」
『妾も仮装するのか?』
「当然でしょう、ハロウィンパーティなのですから」
ハロウィンパーティには仮装が必須である。
仮装しなければ火車さんも会場に入ることはできないのだ。多分。
有無を言わさずカゴに入れる。
パーティパックのチョコレートと二つの仮装をレジに通す。
ホテル近くでマントとカチューシャを身につけると、やはり虫追いアリスに黒い蜘蛛のマントはよく似合っていた。
「そんな顔しないでくださいよ」
不服そうな顔の火車さんにお揃いのマントを着せると二人はどこからどう見てもハロウィンパーティの招待客だ。
「準備完了ですね。パーティに向かいましょう」
かぼちゃのランタンと大袋のチョコレートを片手に二人はパーティへと歩き出した。
狂った終わらないパーティへ。
全てはハロウィンイベントに行ったという実績を得るために…。
大成功
🔵🔵🔵
アルジュン・ラオ
・心情
ハロウィンなるものを、ハロウィンが終わってから知りました、が……成程これなら少しはたのしめるでしょうか?
・行動
ラーディヤを肩に乗せて黒い猫耳をつけましょうか
そもそも物である私が人の姿の時点でこれは仮装と言い張っても宜しいかと?
無機物ノ寵愛も使えばそこまで目立つ事なく過ごせますかと
籠いっぱいの南瓜のマフィンをお土産に、お菓子や料理を楽しんで見たいものですね
おや、ラーディヤも食べたいですか?
……来年は、あの方と過ごすのも悪くはありません
10月31日を過ぎても終わらないハロウィンパーティ。
それはハロウィンが終わった後にハロウィンを知った|水煙草《シーシャ》にとっては都合の良い話だった。
しかも会場は狂気に呑まれているらしい。
「……成程これなら少しは楽しめるでしょうか?」
妖を護り抜くという狂気に取り憑かれたアルジュン・ラオ(鬼視ノ病・f30791)もここでだったら自由を享受できるだろうか。
黒い猫耳を頭に携えて、赤い視肉の相方“ラーディヤ”を肩にのせる。
「仮装はこれで大丈夫でしょうか」
ここで一つ疑問が生じる。
「そもそも物である私が人の姿の時点でこれは仮装と言い張っても宜しいかと?」
アルジュンの本体はシーシャだ。
ヤドリガミとなり、人の姿をとっている時点で言わば“人間の仮装”である。
つまり今のアルジュンは黒猫の仮装をする人間の仮装をするシーシャだ。
何だかマトリョーシカ方式でややこしい。
「…まあ、無難に仮装をして行った方が煩わしいことにならずに済みそうですね」
『人間の仮装です』と言って受付の人間に訝しげな顔をされても“無機物ノ寵愛”できっと何とかなるだろう。黒い毛並みを右手で撫で付ける。
───────────
会場ではあいも変わらずお菓子が飛び交っている。
右に飛ぶのはチョコレートケーキ
左へ飛ぶのはパンプキンパイ
狼男が投げたプディングを顔面に喰らったミイラが反撃とばかりにパンプキングラタンを素手で掴んだ時である。
黒い猫耳と赤黒の肉塊を携えた男が|会場《ハロウィン》に一歩踏み出した。
仄かに香るのは水煙草の煙。
仄かに、しかし確実に会場はシーシャの香りに包まれる。
会場に溢れる煙の匂いは毒南瓜の甘い匂いさえ掻き消してしまいそうだ。
嗅覚よりも中枢神経に甘く甘く訴えかけてくるその匂いに惹かれずにはいられない。
“せめてその瞳が自分の事を射抜いている時ばかりは”と狂気に染まった思考の中のほんの一欠片の理性でグラタンを皿へ戻したのだった。
彼の視界に入った化け物達はミイラと同様に次々とその振りかざしたケーキを投げるのをやめて、ある人はなるべく綺麗に整え、ある人はそのまま重力に任せケーキを手放し、ある人は放心状態のままその手のケーキを口に運んだ。
“無機物ノ寵愛”
アルジュンが目立たないようにと発動させたユーベルコードは図らずとも、人々の狂気をほんのわずかな時間押さえつけたのだった。
───────────
(…グリモアベースで見た時よりも少し静かですね。)
そんなことは露知らず、アルジュンは会場を見回していた。
破壊されたお化けのモニュメント
割れた風船の“HAPPY HALLOWEEN”
風通しのよくなった窓ガラス
オレンジ色の南瓜だけがツヤツヤとその形状を維持している。
会場に飾られている南瓜は全て毒入り南瓜だそうだ。かぼちゃ料理も例外ではない。
ハロウィンと言えば橙の南瓜が欠かせないというのにそれに近づけない、食べられないのは初めてのハロウィンとしては少し興が削がれるというものだ。
おそらく料理を取り分ける為に使う予定の皿だったのだろう。
綺麗な白く丸い皿がワゴンの二段目からアルジュンを見つめている。
アルジュンはそれを手に取り、籠いっぱいに持ち込んだマフィンを並べ始めた。
アルジュンのお土産はかぼちゃのマフィン。
生地にはバターとかぼちゃがたっぷり使われていて一口頬張れば両方の風味が口いっぱいに広がる。かぼちゃの甘味を生かすために砂糖は控えめ。
トッピングはかぼちゃの種。柔らかい生地のアクセントに種が口の中で砕ける。
オレンジとグリーンの見た目が楽しいマフィン。
どうかケーキ投げには使われませんように。
マフィンを並べたテーブルの上にはまだ暴徒達のおもちゃになっていない料理やお菓子がずらりと並んでいた。
「…これは自由に食べても良いんでしょうか?」
ぽつりとつぶやいた言葉。
当然答えられる脳を持っている人は周りにいない。ということは勝手に食べても何とも言われないという事だ。少なくとも料理で遊んでいる人よりはマシだろう。
「ハロウィンの醍醐味はお菓子だと聞きました」
アルジュンは大袋の中から顔を覗かせる小粒のチョコレートを手に取る。包み紙を剥がし、頬張る。じんわりと口内で甘さが溶けていく。カカオの香りが鼻を抜けていく。
チョコレートを口内で溶かしながら、ラビオリなど他の料理も取り分けていく。
至近距離から視線を感じた。
「おや、ラーディヤも食べたいですか?」
ラーディアはじぃっとアルジュンを見ている。
アルジュンは微かに微笑み、美味しそうなマシュマロの乗ったホワイトチョコクッキーをラーディヤへと差し出すのだった。
───────────
じわりとチーズの溶け出すラビオリを食べながら狂騒を眺めていると、なぜだかほんの少しだけ寂しいような、そんな気がした。
頭に浮かぶのはとある“鬼”。
あの方がもしここにいたら。あの方はどのようにハロウィンを過ごすのでしょう。
そんな事を考えても今年のハロウィンはもう終わってしまったのだから
「……来年は、あの方と過ごすのも悪くはありません」
大成功
🔵🔵🔵
天日・叶恵(サポート)
私なりの、お狐さまの矜持としてささやかなお願いがあればついでで積極的に叶えたいです
例えば、探しものを見つけたり、忘れ物をこっそり届けたり、道をこっそり綺麗にしたり、といったものです
それ以外では、オブリビオン退治に必要であればできるだけ違法ではない範囲でお手伝いしたいと思いまーす
戦闘については、昔は銀誓館学園で能力者として戦っていたので心得はありますー
補助や妨害といった動きが得意ですねぇ
あとは、白燐蟲へ力を与えて体当たりしてもらったり…術扇で妖力を込めたマヒ効果の衝撃波を出したり、でしょうか?
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行為はしません。
悲惨な状態のハロウィンパーティを見て、自分には何ができるだろうかと天日・叶恵(小さな神社のお狐様・f35376)は首を傾げて悩んでいた。
かぼちゃの毒を吸って狂い暴れている人達を鎮圧する事はできるけれど、彼らはあくまで“楽しいハロウィンパーティ”を自由に謳歌しているだけなのだ。
力を与えた白燐蟲を使って体当たりで全員吹き飛ばしてしまったり、術扇を使って衝撃波を出して麻痺させ動けなくしてしまうのは、何だか少し違う気がした。
(そういえば会場に入るには手土産が必要でしたね…)
ふと思い出したそれに、叶恵がハロウィンパーティですべき役割があった。
「みなさんがこれ以上毒入りのかぼちゃ料理を食べないように、美味しい手土産を用意しましょう!」
思い立ったが吉日。善は急げ。
叶恵は早速調理に取り掛かることにした。
───────────
先ほどチラリと会場を入り口から覗き見たところ、会場にはとても沢山の料理やお菓子が手土産として集まってきているようだ。
しかし、そのほとんどがグラタンやハンバーグなどの洋食やチョコレートやクッキーの洋菓子だった。
そろそろ洋食に飽きてくる人も出てくるのではないだろうか。
「簡単なものになってしまいますが、和風の食べ物を作りましょう」
そう言うと叶恵はテキパキと準備を始めた。
焼き海苔ときゅうり、そしてサーモンを切る。
ボウルの中に炊きたてのご飯をよそい、寿司酢を入れて切るように混ぜて酢飯を作る。
そして巻きすの上にラップを敷き、酢飯、焼き海苔、きゅうりとサーモン、おまけにエビをのせて、具材が崩れないように、しかしキツめに巻いていく。
これを2本作り、一本は酢飯にとびこをまぶしてオレンジ色に。もう一本はゆかりをまぶして紫色に。
食べやすい大きさに切って、オレンジ色と紫を交互に並べたら見た目もビビットなハロウィン巻き寿司の完成だ!
「…あれ、これってほとんどカリフォルニアロールですね。カリフォルニアロールは和食に入るのでしょうか?」
これは完成した後に悩んでも仕方がないことだ。
それにカリフォルニアロールが和食に入るか白黒つけようとすると大変なことになりそうな気がする。
結局はみんなが美味しく食べてくれればそれでいいのだ。
「さて、次はお菓子を作りましょう!」
お菓子も洋菓子ではなく和菓子。
白玉粉で求肥を作り白あんと混ぜ合わせて練り切りの生地を作る。
そう、作るのはハロウィン練り切りだ。
生地を着色して、ヘラなどを使って器用にジャックオランタン型に整形する。
中身はかぼちゃ餡だ。
当たり前だが毒なんて入っていない。
そのほかにも、コウモリ、お化け、黒猫…などなど。
中身は粒あん、こし餡、抹茶餡、チョコ餡などがランダムに入っている。
何が当たるかは食べてみるまでのお楽しみ。
完成したお寿司と練り切りがずらりと並べられたその光景はまさしくハロウィン。
ハロウィンカラーの巻き寿司。酢飯は艶々。具材はぎっしり。
練り切りは一つ一つ叶恵が手作りしているためそれぞれに個性があってとても可愛らしい。
それぞれを手にとり美味しそうに食べる人々の笑顔を想像して叶恵は微笑んだ。
───────────
「えっと、確か会場に入るには仮装も必要なんですよね」
幸いにも叶恵は針仕事には自信がある。
半額以下で叩き売りされる売れ残りに袖を通すことはなさそうだ。
とはいえ、コスプレイヤーの様に細部まで凝った衣装を作るほどの時間はない。
だけれども、叶恵は用意した布を裁断し、一針一針丁寧に縫い進めていく。
袖がまあるくなるように糸を通す。
スカートを、エプロンを、フリルの一つ一つを縫っていく。
最後に頭につける赤いリボンの糸の末端の始末を。
パチン、と糸を切る音。
白いタイツを最後に履けば全て完成だ。
鏡の前で縫い残しやほつれ、バランスの崩れがないかくるりと回って確認。
ふわりとフリルと狐の耳が揺れる。
鏡に写るのはアリスの姿の天日・叶恵。
「うん、これで会場に入れますね」
赤いリボンをキュッと伸ばし、最終調整完了。
お寿司と練り切りの詰まった容器を忘れずに持ち、会場へ向かう。
(早く皆さんの喜ぶ顔が見たいな。)
そう思いながら歩く姿はアリスと言うよりも赤ずきん。
どうか悪いオオカミには気をつけて。
成功
🔵🔵🔴
天城・千歳(サポート)
本体で行動出来る場所なら本体で、本体の入れない場所の場合は戦闘用リモート義体で行動し本体は義体からの情報を元に【情報収取】【戦闘知識】【世界知識】【瞬間思考力】を使い状況分析及び支援行動を行う。
戦闘状態になったら【誘導弾】の【一斉発射】による【範囲攻撃】で【先制攻撃】を行い、その後は【スナイパー】【砲撃】【レーザー射撃】で攻撃する。
敵の攻撃は状況に応じて【盾受け】で防御するか【見切り】【ダッシュ】【推力移動】を使った回避で対応。
味方とのコミュニケーションはリモート義体が【コミュ力】【礼儀作法】場合により【言いくるめ】を使って対応する。
協力体制を構築した味方に対しては、通信による情報支援を行う。
「まあ、そうでしょうとは思っていましたが…」
天城・千歳(自立型コアユニット・f06941)はホテルの詳細な構造図を見ながら呟く。
ホテルのホールの天井は高く、全高2m42.8cmのコアユニットでも自由に動き回れるほどだが、問題はホールの入り口にあった。
流石にホテル側も全高2m42.8cmのお客様の来場は想定していなかったため、コアユニットの状態では流石に入り口を破壊して入場することになってしまう。
毒の回ったホテルマンや客にそれを異常と感じられるかはわからないが、千歳としても入り口を破壊するなんて本意ではない。
「やはり最初からリモート義体を使用して諸々の準備を済ませた方が手間がかかりませんね。」
そう言うと宇宙戦艦の自立型コアユニットからリモート義体へ意識を移す。
これで市街地での“情報収集”が容易になった。
「手土産と仮装の用意をしなければいけませんね。とりあえず…あの百貨店へ行ってみましょう。」
心の中の買い物好きの部分が疼きながら、あくまで“任務達成”のために百貨店へとその足を向けた。
そう、あくまで“任務達成”のためである。
───────────
B3Fから13階からなるこの百貨店にはB3Fから11階には食品売り場はもちろん、おもちゃ、ブランド品、婦人服、アウトドア用品から果てには美術品まで取り揃えてある。その上に、ショッピングで疲れた体を癒すレストランやカフェが12階から13階まで並んでいる。
実はショッピングが好きな天城・千歳にとってここは天国と言って良いのではないだろうか。
「手土産と仮装…手土産と仮装…」と頭の中で呟きながら足の方はあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
十数件ほど店を回ったのちにようやく本題の手土産を探し始めるのだが、お菓子だけでも数百円で買えるクッキーから最高ランクのパティシエが腕によりをかけて作ったフィナンシェまでよりどりみどりである。
「ハロウィンパーティに最適な手土産とは一体何でしょうか?」
そうぽつりと呟きながら食品コーナーをじっくり見ていく。
これはあくまで“情報収集”である。決して買い物好きだからというわけではない、決して。
100年の歴史を持つ和菓子屋の一口羊羹。
厳選された材料から作られたバウムクーヘンに香り高いチョコレートをトッピングした一品。
バレンタイン御用達の高級チョコレートもハロウィンパーティには合うだろうか。
右に左に次から次に目移りしてしまう。
時間もだいぶ使ってしまった。
「ひとまず、気になったものは全て買ってしまいましょう。」
そう言って一つ二つと手土産が増えていく。
やっぱりウインドウショッピングではなく、実際に選んで買うのが一番楽しい。
ハロウィンパーティはいつだって飢えている。
千歳が持ってくる大量の手土産に、狼男もフランケンシュタインもみんな声をあげて喜ぶのではないだろうか。
───────────
「手土産に気を取られて仮装のことを忘れていましたね。」
百貨店の出口を潜った瞬間に思い出す。
じゃあもう一度中へ…とUターンしようとしたのをやめる。
手土産選びであれだけ店中を歩き回ってもやっぱりハロウィンの仮装らしきものはどこにもなかったような気がする。
むしろ少し早めのクリスマス仕様に百貨店は移り変わっていた。
ならば他の店を探してみようか。
いや、こんなに大きな百貨店にないのならきっともう何処の店にも在庫はないだろう。
さて、どうしたものか。
千歳は一ついいアイデアを思いついた。
超重装甲を防具改造の要領でリモート義体にあった形へと変形させてゆく。
用途は違えど、やっている事は普段とあまり変わらない。
戦闘用か、仮装用か。それだけの違いに過ぎない。
全高2m42.8cmのコアユニット用の超重装甲は外から中へと装甲を収納していき、あっという間にリモート義体用のパワードスーツの様な形になった。
本体と同じ青藍色の装甲。顔にはしっかりと電子ゴーグルが備え付けられ、青い光を放っている。
万が一戦闘になった時に備え、普段よりやや小型のブラスターライフルとラージシールドを両手に持つ。
そもそも一瞬で元の形状には戻れるようにしてあるので使うことはまあないだろう。
「これで準備は完璧ですね。」
リモート義体がパワードスーツ姿になったことで仮装も完璧だ。
きっと彼女が会場に入った瞬間、アメコミ好きなパーティ参列者の注目の的になり写真攻めに合うことは想像に容易い。
果たしてそれは全高2m42.8cmの自立型コアユニットが入り口を破壊しながらパーティにやってくるのとどちらがより映えるのだろうか。
毒まみれの脳にそれを考える知能はない。
成功
🔵🔵🔴
全会原・タイガ(サポート)
『やってやらぁ!』
人間のゴッドハンド×バーバリアン
口調:ぶっきらぼう(オレ、アンタ、だ、だぜ、だな、だよな?)
呪いで女性の体になった不良男子です。荒々しい性格ですが曲がったことが嫌いで困っている人がいれば迷わず助け悪には怯まず立ち向かいます。
豊満な自分の体型を気にしており、からかわれたりすると怒ります。
戦闘は武器を持たず自らの肉体と呪いの力で発動するユーベルコードで戦います。
呪いの力によって発動する一部のUCは本人の意思とは無関係に発動してしまうことが多く、追い詰められてヤケクソになった時を除き肉体に変化が起きたら驚いたり恥ずかしがったりします。
シリアス、ギャグ、お色気、アドリブ連携何でもOK
「ようするにそのやべぇかぼちゃ全部ぶっ壊せばいいんだろ?いいぜ、やってやらぁ!」
そう息巻いてディスカウントショップへ駆け込んだのは全会原・タイガ(男は度胸!女でも度胸!・f23916)だ。
オブリビオンが作り出す毒を撒き散らすかぼちゃのせいで人々がおかしくなり、ハロウィンが終わった今でも一切眠ることなくパーティを続けているらしい!
そのハロウィンパーティには参加者が持ち込んだ美味しいお菓子や料理が大量にあり、自由に食べていいらしい!
眠ることもできず狂い続けるなんてあまりにも可哀想だ!
なんとしてもパーティの参加者を助けなければ!
………ぐぅ、と腹の虫が鳴いた。
───────────
「手土産とー…仮装だったな」
黄色いカゴを手に店内を物色。
やはりこういったディスカウントショップはお菓子が主力商品なのか、入り口のすぐそばに広くて種類豊富なお菓子がわんさかと棚に積んであった。
…ごくりとよだれを飲み込む。
「手土産!手土産なんだから一個テキトーに選べばいいんだよ!」
自分用ではなくあくまで手土産だと叱咜しつつ、一番手の近くにあった小さなロリポップキャンディをカゴに入れる。
「…流石にこれだけじゃ手土産って言えねーか」
じゃあこれも、とウォンバットが印字されたチョコ入りクッキーの大入り袋をカゴに入れる。
ふと、目の前を見ると150%増量中のポテトチップス(うすしお)が目に入った。
「甘いもの食った後ってしょっぱい物食いたくなるんだよなー」
それを手に取りほぼ無意識にカゴに入れる。
「そうだ!コーラコーラ!ポテチにはやっぱりコーラだろ!」
一番大きなサイズのコーラをどかどかと、売り場が空になるまでカゴに入れまくる。
タイガのなかで何かスイッチが入ってしまった。こうなるともう止まれない。
大量のカゴとカートを携えて、食べたいものと飲みたいもの全てをカゴに入れまくる!
自社ブランドの大きなどら焼き。ミックスラムネにミルクキャラメル。ホワイトマシュマロ。ポテチ(のりしお)。ビーフジャーキー。クランチチョコレート。ポップコーン。駄菓子の50個セット。かりんとう。ドーナツ。きなこの林。かずのこの村。海外輸入のグミ。ハニーバターチップス。オレンジジュース。羊羹。一口チョコパイ。ジャガイモスティック。やわらかクッキー。青のりせんべい。柿の種。ミルクコーヒー。酸っぱいぐみ。あまじょっぱい煎餅。アソートキャンディ。ポテチ(コンソメ)。海老煎餅。ソーダ水。三角いちごチョコ。白黒クッキー。ポテチ(ブラックペッパー)。一口バウム。クラッカー。サルサスナック。業務用チョコレート。
結局売り場の全てのお菓子をカゴに入れ尽くし、ウキウキとレジへと運ぶ。
レジ担当の金髪バイトがまさしく“お菓子の山”を見て放心している。
「あっ、そうだ仮装も必要だったな。それレジ打ちしといてくれ!」
タイガがそう言うと、聞こえているのかいないのか、とにかくバイトは焦点の合わない目をしながら頷くのであった。
───────────
「どういう事だよそれ!」
「ですからハロウィンの商品ですとー…そこになければ無いですね」
季節物の売り場には既にクリスマス商品が並べられている。
強いて仮装と言えるのはサンタの服やトナカイのツノ程度だが、果たしてこれでハロウィンパーティに入れるだろうか。
「なあ、頼む!どうしてもハロウィン用の仮装が必要なんだ!何かないか裏の方を見てきてくれねぇか!」
タイガが頭を下げると渋々ながらも、品出し担当のバイトはバックヤードへと仮装を探しに行った。
数分すると店員は先ほどよりも渋い顔をしながらこちらに戻ってきた。
「あの〜…これしか無かったのですが…」
そう言いながら商品を手渡した。
パッケージには「“カウ”ガールセット」と書いてある。
|牛《COW》という文字が見えて真の姿や今年の水着が脳裏にチラつくがカウガールなら牛を手懐ける方!何も問題はない!
「ありがとう!助かったぜ!」
商品を受け取ると、未だお菓子を全てスキャン出来ていないであろうレジへと戻っていくのであった。
───────────
「おいおい嘘だろ…」
ハロウィンパーティの会場のホテル。その着替えブースでタイガは項垂れていた。
その手には「“カウ”ガールセット」
“カウ”ガールセットの中身を開けてみると中身は、ホルスタイン柄ビキニ、カウベル付き首輪、ツノ付き牛耳。
「“カウ”ガールってそっちかよ!!!!!」
通りであの店員が渋い顔をしていたわけだ。
仕方ない、別の仮装を買いに行こう。
いや、あのディスカウントストアにもうこれしかないのなら仮装なんて何処にも売っていないのでは?
仮に何処かにあったとしても、手土産は既に預けてしまった。今頃次々とみんなに食べられてしまっているに違いない。
さっきから何も食べていなくてお腹はぺこぺこだ。
「うっぐぐぐ…ちくしょーーー!!!!」
数分後、会場に“カウ”ガールが現れることは言うまでもない。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『邪悪はお祭りの裏に』
|
POW : 屋台の食べ物を全制覇する勢いで歩き回り、足で探す
SPD : 射的や輪投げなどに挑戦しつつ、探りを入れる
WIZ : のんびり祭りを楽しむ態を装い、聞こえてくる会話や周囲の光景に違和感がないか探す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ハロウィンは永遠に続く
24時を何度まわっても10月31日は終わらない。
むしろこれからが本番だと、魔女も狼男も骸骨も眠気をキャンディの甘さでトばして気を狂わせている。
さながら全員ゾンビのようだ。それでも脳みそを砂糖漬けにするのがハロウィンのルール。
ビリビリに破けたカーテン。足裏から滲み出た血液。
宙に浮かぶはずの風船もとっくに萎んで部屋の隅で忘れ去られている。
とっくの昔にお化け屋敷になってしまったホテルも、ハロウィンの魔法で素敵な洋館に見える。
誰かが焼いたパンプキンパイ。コンビニで買ったホイップを皿が真っ白になるまで絞ってやる。
プラスチックのジャック・オ・ランタン。中には安価な一口チョコレート。
勝手に作ったアレキサンダー。つまみはウイスキーボンボン。
楽しくって、狂っていて、何度白夜を迎えてもハロウィンは終わらない。
どこかで鳴いた猫の声。
誰の耳にも届かず、人々はただ南瓜の甘い毒を吸う。
アルジュン・ラオ
・心情
おやおや、まだ終わらないのですね
成程我々も長い夢の中にいるようなものですが…これは終わらせねばなりませんね
・行動
引き続き無機物ノ寵愛を使いつつ、そろそろ邪神のことも探しましょうか
ふむ。私たちが見落としてる所はありませんでしょうか、不自然な膨らみ、寧ろそこになくてはならないものがないだとか?
皆様の会話に耳を傾けながら、ひとつ2つなにか食べて
ふむ、輪投げなどはしたことがありませんでしたね
何かしら情報が手に入ると良いのですが
アルジュン・ラオ(鬼視ノ病・f30791)は無機物ノ寵愛を放ちながら会場内で邪神を探していた。
無機物ノ寵愛で多くの暴徒は押さえつけられているが…彼の目の前を美味しそうなチョコレートケーキが飛んでいく。
(おやおや、まだ終わらないのですね)
無機物ノ寵愛を放っても未だに人々は毒のかぼちゃで気を狂わせている。
ぐるぐると目を回し、眠る暇もないといった様子だ。それもこの会場にきて飽きるほど見た。
いや…この光景を見慣れてしまった、ということは…成程我々も長い夢の中にいるようなものか。
(…これは終わらせねばなりませんね)
|水煙草《シーシャ》の甘い煙が、賞味期限切れの甘い毒と混ざる前に。
…とはいえ、その時はまだ遠い。
ハロウィンパーティの|醍醐味《お楽しみ》を逃してしまっては勿体無い。
目の前のテーブルにはアーモンドたっぷりのフロランタン。
一つ手に取り、サクリ、頬張った。バターの香ばしいクッキーとハチミツとアーモンドのカリカリと歯ごたえが楽しい味わい。
それに片手で食べられるところが、邪神探しのお供にはちょうどいい。
───────────
破れたカーテンの下。シャンデリアの上。ドアの影。
(不自然な膨らみ、寧ろそこになくてはならないものがないだとか…)
フロランタン片手にアルジュンは会場中を探し回る。
今までに我々が見落としているようなところはないか…ヒントを探すため暴徒の集団に近づき、会話に耳を傾けようとした時。
「ヨォ、兄ちゃん。遊んでいかないかい。」
暴徒の中に混じっていたスタッフと思わしき男性に声をかけられた。
「ここじゃいつの間にかケーキ投げが流行っちまって…輪投げなんて誰も遊んじゃくれねぇんだ。な、遊んでいかねぇかい?もちろん無料!景品もあるぜ!」
ジャジャーン、と言わんばかりに手を広げて見せたそこにはボロボロの輪投げセット。
的の棒は9本中4本折られ、得点の数字はケーキやら何やらの汚れで見えなくなっていた。
「ふむ、輪投げなどはしたことがありませんでしたね」
「おっ!そりゃちょうどいい!楽しいぜ〜輪投げは」
ほいほいっ、といくつかの輪をアルジュンに押し付けるように渡してきた。
「…あの、何点取れば景品がもらえるのですか?」
「あ〜?何点でもいいぜ。輪投げはやるだけで価値があるからな!いいぞ〜輪投げは、奥が深い!あのなぁ」
輪投げについて得意げに語り出したところで思い出した。そうだった。彼も暴徒の一員だった。
(まあ…とりあえずやってみましょうか)
数えてみたところ輪の数は12。
的棒に向かってヒョイ、と投げてみる。
思っていたより輪投げというものには力はいらないらしく、ヒュンと遥か奥に飛んでいく。
(なるほど、これは力技というより技術の遊びですね)
二つ目の輪を、先ほどよりも力を弱めて狙う。
輪の内側に棒がかかり、くるりくるりと回転しながら地に落ちる。
「お見事〜!」
先ほどまで輪投げについて一人で得意げに語っていた男が、半分裏返った大声で輪投げ男は叫んだ。
その後も、三つ四つと輪を投げていく様子を男は興奮した様子で見ていた。
結果的には12輪中8輪が的棒にかかった。
「…これは成功ですかね?」
「初めてでこれだろ?すげぇなアンタ!ほれ、景品だ!」
真っ黒の飴玉が詰まった袋をこれでもかとドサドサっと手渡した。
「すげぇんだぜこれ!見た目じゃ味は全くわかんねぇが、色んな味のキャンディが入ってんだ。それになんとビックリ!…ベロの色が変わるんだよ!真っ赤とか青とか緑とかに!」
「はあ、そうなのですね」
小さな石炭のようなキャンディを一つつまむとシャンデリアにすかしてみる。
中心が藍色みがかっているということはこれはきっとアルジュンの舌を青色に染めるのだろう。
「さて、味は一体どんな味でしょうか」
ころり、ころり、口内で飴玉が溶けていく。
じわりと広がるのは本物とはほど遠い、お菓子のいちご味。
「なるほど、黒くて青くていちご味とは…彼が言うようにビックリですね」
何処から迷い込んだのだろう。灰色の猫がカボチャの上で丸まっている。
猫は首を持ち上げてアルジュンをじぃっと見つめた。
アルジュンは猫の目の前で屈み、舌を出した。
「どうです?青色に染まっていますか」
「ああ、赤い舌が真っ青に染まってるぜ」
動物と話すことができるアルジュンにとって猫が喋る事は別におかしなことではない。
「ふふ、そうですか。…これであの方を驚かせるのも面白そうですね」
そう言ってアルジュンは悪戯っぽく笑う。
猫はうーんと伸びとした。
「なぁお前。あんまりみんなの邪魔しないでお前も“はろうぃん”楽しめよ」
そう言うと素早く走り去った。
その尻尾にはカボチャの蔦、橙のまあるい南瓜の実。
「まさか…あの子が?」
思わぬところに邪神は潜む。
アルジュンは猫の行手を追うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
三上・桧
思ってた以上に混沌としていますね、火車さん
『ホテルの従業員が哀れでならん』
後片付けが大変そうですねぇ
パーティ会場の片隅あたりで、馬鹿騒ぎを眺めながらのんびり食事
もちろん、毒カボチャ料理は食べずに
『で、馬鹿騒ぎしている連中はどうするんじゃ?』
放っておいていいんじゃないですかね。大人しくさせる手段も思いつきませんし
後であの人達が社会的に大ダメージを受けようが、自分には関係の無い話です
……まあでも、大きめのケガをした人がいれば治療はしておきましょうか(生まれながらの光)
猫の鳴き声がしますね
『妾は鳴いておらぬぞ?』
パーティ会場の片隅のテーブルでは三上・桧(虫追いアリス・f19736)とその相棒の猫又『火車さん』は馬鹿騒ぎを眺めながらのんびりと食事をしていた。
もちろん、毒カボチャで作られた料理は食べない。
桧が食べているのは大勢が持ち寄った手土産や高級ホテルお手製のハロウィンメニューだ。
料理やお菓子たちはその多くが参加者のおもちゃと成り果てている。
パリピに絡まれない様に右に左に避けながら、まだ彼らが手をつけていない料理をバイキングのように取り分けたら結構な量になった。
長くておしゃれな名前の蟹の何かは、どうやら蟹の味噌と何かをソースにして、マッシュポテトの様なものと海の香りを添えたらしい。
「この料理、なんて名前でしたっけ火車さん」
『長くて横文字が多かった、ということしか覚えておらぬ』
「まあ、美味しいのでどうでもいいですかね」
一旦箸休めでマフィンに手を付ける。
このマフィンにはカボチャが使われているが、猟兵らしき人が手土産で置いていったものだ。毒の心配はなさそうだ。
バターたっぷりのもふもふマフィンはカボチャの種がいいアクセントになっていて、ほのかに甘くて美味しい。
火車さんも美味い美味いと蟹の何かやマフィンを食べている。
猫にはバターもカボチャの種も食べさせるのはあまり良くないが猫又なので大丈夫なのだろう。多分。
「思ってた以上に混沌としていますね、火車さん」
『ホテルの従業員が哀れでならん』
「後片付けが大変そうですねぇ」
たった今目の前で椅子が宙を舞い、地面に落ちて壊れた。
歓声が上がる。
残念なことに椅子を投げたのはホテルの従業員らしく、歓声を上げたのも従業員の集団らしい。
正気に戻った後、この惨状を見てもう一度発狂しないことを祈るばかりである。
『で、馬鹿騒ぎしている連中はどうするんじゃ?』
「放っておいていいんじゃないですかね。大人しくさせる手段も思いつきませんし」
ガラスの割れる音。
今度は若い女の集団が窓を破壊したらしく、割れたガラス窓をバックに自撮りをしている。
撮った写真の編集を猟兵顔負けの早業で完了させ、さっさとSNSのアカウントに投稿してしまった。
「…後であの人達が社会的に大ダメージを受けようが、自分には関係の無い話です」
あくまで自分達はUDCに対処するためにやってきたのだ。
グリモア猟兵も今回の依頼はUDC退治と楽しむことだけと言っていた。
だから積極的に後片付けをしたり、その後のケアをするのは自分達がすることではなくUDC組織のやることだ。
そしてUDCの現れていない今は自由時間でOK。
『まあ騒いでおるだけじゃし放っておいても大丈夫じゃろうな』
そういうわけで目の前で繰り広げられる喧騒をつまみに、桧はクッキーを食べるのだった。
───────────
「おい!流石にそれはマジぃって!」
暴徒たちの繰り返される乱痴気騒ぎも食傷気味になり、桧はしばらく食事に没頭していたが周囲の様子が少し変わった。
人々は揃って上を見て何か言ったり、指を刺したりしている。
どこを蔦って行ったかわからないが、シャンデリアの上で男が包丁を振り回しながら喚いている。
「このシャンデリアが気にくわねぇってんの!ぶち落としてやる!」
そう叫びながらシャンデリアに包丁を振り下ろす。
金属と金属がぶつかる嫌な音がする。
宝石がいくつかポロポロと地面に落ちていく。
「あれ、落ちますかね。」
『シャンデリアか?それともあの男か?』
「男の方です」
『十中八九、落ちるじゃろうな』
と火車さんが言い終わる前に、イカれた男は勢いよく地面に落下した。
落ちた男は血を流してピクリとも動かない。
ドッと沸き立つ笑い声。狂気じみた寒気を感じる。
もちろん助けようなんて人は一人もおらず、その様子を笑うだけ笑ったら各々好きな場所に散っていった。
「…まぁ、自業自得ではありますが」
誰も気づかない様に男に近づき、聖なる光を彼に当てる。
見た目に大きな変化は無いが代わりに、グォォと彼から盛大な寝息が聞こえ始めた。
『放っておくんじゃなかったかのう?』
「目の前で人が死んだら料理が美味しく食べられなくなるじゃないですか」
はー、疲れた。と、桧はニヤニヤと笑う火車さんを横目に席に戻ると小さなチョコレートを口に放り投げた。
───────────
にゃーん。
猫の声に桧はキョロキョロとあたりを見渡した。
「猫の鳴き声がしますね」
『妾は鳴いておらぬぞ?』
「確かに聞こえた気がするんですが」
ざわめく人々。食器の割れる音。ケーキの潰れる音。
にゃーん。
「あ、ほら。そこにいますよ」
ちょうど灰色の猫が出口から外へ出ようとするところだった。
「あの猫、ちょっと尻尾が不思議な形ですね」
『そうじゃのう…追うか?』
「いえ、まだ先ほど取ってきたラビオリを食べていないので」
『お主は相変わらず、マイペースじゃのう。』
ため息の代わりに、火車さんの口から鳴き声が漏れた。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「ハーイ! ワタシがサポートに来た、バルタンデース!」
支援しマース! アドリブ連携歓迎デース!
普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
得意な技能:【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】と【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】デスネ!
荒事であれば武装を使用してクリアしマース!
移動中や探し物など、その他冒険なら適切な技能でくぐり抜けマース!
単独で進んでもOK、他の猟兵の方の補佐に回ってもOKデスヨー!
公開しているアイテムはどれを使っても大丈夫デース!
バルタンズのお小遣いも支払いマスので、心置きなくどうぞデース!
よろしくお願いしマース!
「ハーイ!UDCアースを歩いてたらメイドの仮装と間違えられてハロウィンパーティにやってきマシター!バルタンデース !」
時は数分前に遡る…
「メイドのコスプレ!?いいねいいね!手土産、ナニコレ!?チョコカップラーメン!?みんなで食べてみよーぜ!おねーさん入って入って!」
「ワッツ!?なんですか急に!アーレー!」
回想終了
そんなこんなでパーティ会場にほぼ拉致の形でやってきたバルタン・ノーヴェ
(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は会場の様子を見て唖然としている。
「オーノー!パーティ会場じゃなくてお化け屋敷デース!」
割れた電球や床に落ちた料理、破れた壁紙を見てメイド心をくすぐられまくるバルタンだったが、彼女の持ってきた“チョコ味手作りカップラーメン”に興味津々の輩たちに囲まれていて掃除をしにいくことができない。
「ねぇチョコ味のカップ麺なんてコンビニに売ってたっけ?」
「NO!このカップラーメンはバルタンの手作りデース!」
「スッゲー!バルタンって技術派なんだ!てかカップ麺って手作りできんの?すげー!」
“チョコ味手作りカップラーメン”は存在だけでIQの下がった人々に気に入られてしまった。
これだけべた褒めされて、バルタンも鼻高々である。
「バルバル!バルバル!バルルルルルルル!」
バルタンがべた褒めと質問攻めに合っているうちにミニ・バルタンが3分をお知らせした。
「Oh!3分経ちましター!伸びないうちに皆さんお召し上がりくだサーイ!」
ほかほかと立ち昇る湯気は甘ーいココアの匂い。
具材はカップラーメンの質以上のチャーシュー、メンマ、小葱、メンマの代わりのチョコレート。
麺は普通。
「いただきまーす!」
こういったいわゆる“ゲテモノ”に類する食べ物は食べるまでが花である。
食べてテンションが上がる人はそう多くない。
「あっま!マジであっま!」
「チョコ溶けると余計にあっまぁ!」
「チャーシューの塩味ありがてー!」
「麺は…普通だな!」
しかし、酒を飲んだ時以上にIQが下がりまくっている人々はテンションが上がる側の人間だった。
「みんなが喜んでくれてバルタンも嬉しいデース!」
しかし、“チョコ味手作りカップラーメン”で和気藹々としていたのはここまでだった。
「慣れると案外イケるかもなー!」
「お前馬鹿舌かよ!ウケる」
馬鹿、という言葉に眉間がピクリと動く。
「は?テメェ今なんつった?やんのかコラ」
馬鹿という言葉を発した者の襟首を掴み上げる。
「あ?馬鹿舌って言っただけだろうが!やってやるよボケ!」
まるで内容は子供の喧嘩だが雰囲気は一気に悪くなる。
知能が下がっている人間はちょっとのことでカッと頭に血が登ってしまう。
そして、元々はケーキをおもちゃにして遊んでいた輩どもである。
当然のように、彼らは“チョコ味手作りカップラーメン”を手に取った。
「NO!バルタンのカップラーメンは武器でもおもちゃでもありまセーン!」
二人がお互いに顔にチョコカップラーメンをかけてやろうとカップ麺を手に取る。
次に何が起こるかいち早く察知したバルタンはいつものご奉仕で培った手ほどきで、二人の手からカップ麺を奪い取る。
次に二人は武器にしようとした割り箸をバルタンに奪い取られ、その次は近くにあったフォークを、皿を、ナイフを。
奪い取っては正しい位置に。バルタンが来る前よりも綺麗にテーブルは整っていく。
その様子は大道芸と言われてもおかしくない。周りはもうバルタン達の謎のコンビネーションに夢中である。
「もう、いいかげんにしなサーイ!」
喧嘩をしているふたりの首根っこを掴み、ぐるぐるとぶん回す。
そうして二人の目が回った頃に椅子にストンと座らせる。
その様はまるでアクション映画のワンシーンの様だった。
ふんっと腕を組んだバルタンに向けられる拍手喝采。
袋詰めのお菓子や投げ銭まで飛んでくる始末だ。
最初はワッツ!?と驚いていたバルタンだったが、鳴り止まぬ拍手とブラボーの声には流石に照れ笑いをしつつ頭を下げるのだった。
───────────
「さっきのすごかったよバルタン!」
「へー!バルタンって本当にメイドなんだ!」
「じゃあ、なんで大道芸までできんの!?」
「さっきのもっかいやってよ!」
「バルタン!」「バルタン!」「バルタン!」
熱狂は渦を巻き、いつしかバルタンは会場の一部で祭り上げられていた。
「よくわからないデスが、みんなが楽しそうでよかったデース!」
最初に何をしようとしていたかなんてすっかり忘れたバルタンは、バルタンコールの中綺麗な笑顔でサムズアップするのだった。
成功
🔵🔵🔴
御園・桜花
仮装:フランケンバニーさん
作った料理やお菓子をタッパーに詰め更に大きな段ボールに入れ重ねてガラゴロ台車で運び込む
「ハッピーハロウィン!追加でお料理をお持ちしました」
作ったお菓子や料理を彩りも考え手際よくお皿に移し替えたら各テーブルに配膳
皆の騒ぎ具合や疲労度をそれとなく観察
全テーブルに配布し終わったら引っ込んで見えにくい場所からUC「桜の癒やし」
皆が睡眠して回復するよう促す
「際限なくずっと起きて騒いでいたら、命に関わりますもの。可能なら眠って回復していただきたいのですけれど…効くかどうかは半々ですよね?其れに…演出でなく敵対行為と取られても、文句は言えません」
見つかりにくい所で観察とUC続行
バァン!と入口の扉が勢いよく開かれる。
なんだなんだ、と睡眠不足で脳の回らない化け物たちもそちらを振り向く。
会場に飛び込んできたのはフランケンバニーさん。
肌の傷とふわふわ尻尾がチャームポイントの怖かわいいバニーさんだ。
そんなバニーさんがガラゴロとしっかりとした業務用の台車で大きな、とても大きな段ボールで何かを運び込んできた。
どうしたどうした、と毒で脳がやられた野次馬がゾロゾロ集まりだした。
フランケンバニーさんが何を始めるのかみんな興味津々の様子だ。
「ハッピーハロウィン!追加でお料理をお持ちしました」
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が大声で言うと、暴徒たちはワァっと歓声をあげた。
段ボールから出てくる出てくる大きなタッパー。
みんながタッパーに群がる前に、お皿に移し替えていく。
一つ一つ違う顔をしたおばけマシュマロ。
おばけマシュマロとトッピングをのせたホワイトチョコクッキー。
玉ねぎとトマトのピリ辛ソースのかかったチーズ入りラビオリ。
ピーマン、なす、ズッキーニの栄養たっぷり野菜の肉詰め。
全部全部、桜花が手間と心を込めた逸品だ。
彩りや配分を考えて手際よく移し替えて、パーラーメイドとしての仕事を生かした皿運びで各テーブルに配膳していく。
「さあ皆さん、どうぞ召し上がってください!」
再び人々から歓声が上がると、ケーキを投げていた連中も会場を破壊して遊んでいた連中も次々に席について口に運び始める。
持ち寄りのパーティは時間が経ってしまうとどうしても料理は冷めてしまうし、元々常温で楽しむ料理ばかりになってしまう。
桜花が作った出来立ての料理は心のそこからじんわりと身体を温めてくれる。
各テーブルから次々に「美味しい!」の声が上がり、それを桜花は微笑んで見ていた。
しかし、彼女は猟兵としての本分をしっかり弁えていた。
これはビールに合うぜ、とビールサーバーを破壊するもの。
うまいうまい、とフォークまで飲み込もうとするもの。
こくりこくりと船を漕いで上手く食べれないでいるのに、毒がキマったのか急に覚醒しガツガツと貪り始めるもの。
正気じゃない。
一瞬正気を取り戻しそうになる瞬間はあるが、結果としては誰一人として正気じゃなかった。
桜花は倒れ汚れた“HAPPY HALLOWEEN !”のパネルの裏に身を隠した。
「際限なくずっと起きて騒いでいたら、命に関わりますもの。可能なら眠って回復していただきたいのですけれど…効くかどうかは半々ですよね?其れに…演出でなく敵対行為と取られても、文句は言えません」
そう呟きユーベルコード『桜の癒し』を会場全体に放った。
ひらり。はらり。
桜の花びらが落ちてくる。
なんだなんだと皆上を見上げ、思い思いに声をあげた。
「え?春?ウケる冬来なかったんだけど」
「てかめっちゃ映えね?動画とろ!」
「虫だ!大量の蛍だ!」
「違う!これは虫じゃなくて雪だ!冬が来たんだ!」
「宇宙人だ!」
「超常現象だ!」
「オーブ!」
「ね〜めっちゃ盛れた〜」
ギャアギャアと喚いていた会場の人々がひとり、ひとりと静かになる。
そして次々と倒れるように眠りにつき始めた。
先ほどまであんなに五月蝿かった会場が静寂に包まれる。
魔女が目の下にメイクで施した青黒いクマは本当に深く深く目の下に刻まれていた。
毒で吐血したのか、ミイラ男の真っ白な包帯は口の周りだけドス黒い赤で染まっていた。
翌日の仕事で使う予定だったのだろう会議の資料は踏まれすぎてもう何が書いてあるかわからない。
「皆さん、本当にゆっくりお休みください」
桜花は誰も起こさぬように、会場に溶け込むほど静かにそう呟いた。
───────────
みんな静かに寝ているのは良いけれど、会場自体は大惨事。
桜花は少しだけでも…と、せっせと後片付けを始めた。
寝てる人々が顔や身体を切らないように、ガラス片や尖ったものは真っ先に拾い集めてまとめておく。
オレンジのカボチャは毒カボチャ。よく見るとこの会場に根まで張っていた。
料理にも使えないのでこれも後で本体をまとめて処分するためにタッパーを運んだ大きな段ボールに入れていく。
壁や床のドロドロ汚れは拭き掃除をする前に、ドロドロ自体を取り除いて…
「にゃーん」
入口の方から猫の鳴き声がした。
振り返るとそこには灰色の猫がいた。
迷い込んでしまったのだろうか。それとも誰かの飼い猫だろうか。
「あなたはどこの子ですか?」
猫の元へ寄って手招きすると、フシャー!と威嚇された。
『みんなを眠らせたのはお前か!これでは“はろうぃん”が終わってしまうではないか!』
頭の中に響く声。フゥ゛ーと低い唸り声。
猫のくるりとした尾からくるりくるりと現れたのはカボチャの蔦。
その蔦から一つ、また一つ、とあの毒を放つカボチャが生えてくる。
桜花は掃除用具を片付ける。
「皆さんをこの様な目に合わせたのはあなただったのですね」
ただのパーラーメイドではない。
桜の精のパーラーメイド、そしてシンフォニアの御園・桜花がそこには立っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ねこかぼちゃさま』
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POW : 毒心
自身からレベルm半径内の無機物を【有毒生物】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD : 惨毒
【カボチャ】から、戦場全体に「敵味方を識別する【毒虫の大群】」を放ち、ダメージと【毒】、【恐慌】の状態異常を与える。
WIZ : 怨毒
【カボチャ】から、【猛毒の爪と牙】で武装したX体の【灰色の猫】を召喚する。X=自身の精神消耗度(0〜10)の2乗。
イラスト:らうん
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「三上・くぬぎ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
その猫はいわゆるただの野良猫だったが、気がついた時には既に邪神でもあった。
邪神であったが別に何かをするわけでもなかった。
尻尾のカボチャに光合成をさせるために昼間はホテルの前の日向で昼寝をし、夜にはホテルのコックからこっそりとご飯をもらって暮らしてきた。
ホテルの人に限らず人間は好きだった。撫でてくれるしご飯もくれる。
その邪神…もとい猫にとってホテルは大好きな場所だった。
ある時からホテルの人々が慌ただしく何か準備し始めた。
何やら近く“はろうぃんぱーてぃ”なるものがこのホテルで開かれるらしい。
このホテル初めての企画で皆一丸となって飾り付けやら何やら大忙し。
しかしなぜかとても楽しそうだった。
当日はいつもより多くの人がホテルを訪れた。
猫もその分多く撫でられた。
華やかな衣装に身を包んだ人々が“はろうぃん”を楽しむ様子を見て、猫も幸せだった。
しかし何故だろうか。時間が経てば経つほど悲しそうな人が増えていくのだ。
「ハロウィンが終わってほしくない」
「こんなに楽しいのに、なんで終わってしまうのだろう」
猫は自分を齧る小動物と人間が悲しむのが嫌いだ。
そして悲しいかな、猫はやはり邪神であった。
『いつも世話になっている分、今度は人間のために|邪神《じぶん》ができることをしよう』
────────────────────────────────
その結果、人々は今も眠れず毒で気を狂わせて笑っている。
猫には、邪神には、人間の倫理や普通というものがわからぬ。
ただこうやって、笑って騒いでいるということはみんな喜んでいるに違いない。
“はろうぃん”が終わらなければみんな永遠に楽しんでいることができる。
それを邪魔する人たちは“ホテル”のために“みんな”のために───毒の量を少し増やして長く眠ってもらうしかない。
御園・桜花
「お、お猫さまが敵…」
ぐらりと体が傾ぐ
「お猫さまの望みは何でも叶えて差し上げたいですけれど。今回は…ごめんなさい」
UC「侵食・花霞」
花霞と化し南瓜も虫も全てすり抜けお猫さまの元へ
通過後の場所は電撃で焼け尽くす
花霞の儘ぐるぐるとお猫さまを中心に動き続け、お猫さまが存在しなくなる迄電撃で焼き尽くす(本人的にはうろうろお猫さまの周囲で毛並みを撫でている感じだが実際にやっている事はえげつない)
「貴方が本当に只のお猫さまだったら。貴方の望みは誰も害さずに済んだのに。貴方の望みは、貴方を愛した人達を殺しかねない望みだから。骸の海へ、お還りなさい。そして次は、普通のお猫さまに転生を…皆に愛し愛されますよう」
…
…
妙な間が場を支配する。
破魔の銀盆を構えても、待てど暮らせど、本体は出てこない。
「…何もしてこないのか?」
灰色の猫が直接、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)に話しかける。
「あれ…お猫さまが喋っている…ということは…邪神は…」
「いかにも、私が邪神、お前たちのいうUDCというやつだな」
そう言って目の前の灰色の猫は顔を洗う。
「お、お猫さまが敵…」
目の前の猫は邪神本体ではないと、配下、もしくは依代の類だと思い込んでいたのだ。
ぐらりと桜花の体が傾ぐ。
桜花はお猫さまが好きだ。お手製のお猫さま貢ぎグッズ“三種の神器プラスワン”を持つほどに。
それだけでも十分すぎるほどの苦痛だが、ねこかぼちゃさまの毒の効果で垣間見た、あの猫の過去のなんと純粋に猫らしいものか。
人に愛され、人を愛した猫そのものだった。
それにやった事は確かに人々を苦しめたが、その行動原理に悪意はなく恩返しの気持ちという。
なんと、悲しい事だろう。
「何もしてこないならこちらからいくぞ…!“はろうぃん”を終わらせる訳にはいかないのだ!」
灰色の猫の尻尾からは、普通の猫にあってはならないカボチャの蔦が伸びていた。
カボチャの蔦は急速に成長し、黄色の可愛らしい花をつけ、みるみるうちに大きなカボチャが育っていく。
過剰な成長でカボチャにヒビが入る。
その隙間から、いつ寄生したのだろう、いつここまで育ったのだろう。
多足の毒虫がうじゃうじゃ、わらわらと我先に這い出す。
その毒虫の大群は桜花を目指してケーキで汚れたホールの床を這いずり進んでいく。
「お猫さまの望みは何でも叶えて差し上げたいですけれど。今回は…ごめんなさい」
桜花は桜鋼扇を広げる。
その瞬間、毒虫の、ねこかぼちゃさまの視界から完全に消えた。
その目の前には桜、桜、白みがかった桜吹雪。
過去を纏った幻龍桜の花吹雪は此の世の物理法則を変じて、稲妻のごとき速さで移動する桜花を花霞の絶景のように見せていた。
毒虫も、かぼちゃも、霞など捉えることはできない。
花霞はゆっくりと、しかし他の全てに捉えられないほどの速度で灰色の猫に近づく。
白む霞は南瓜も虫も全てすり抜けていく。
しかし、その跡に残るのは電撃で焼け焦げたカボチャの残骸と毒虫の黒く焼けた死骸だった。
そうして彼女はねこかぼちゃさまの元へ歩み寄ると、その手が届くように身を屈める。
花霞がねこかぼちゃさまを包み込む。
「貴方が本当に只のお猫さまだったら。貴方の望みは誰も害さずに済んだのに。貴方の望みは、貴方を愛した人達を殺しかねない望みだから。骸の海へ、お還りなさい。そして次は、普通のお猫さまに転生を…皆に愛し愛されますよう」
そうして再びこのホテルに戻ってこれるようにその手に祈りを込めて。
────────────────────────────────
しかし、その祈りはあまりにも悲しい。
花霞の纏うは雷撃。
桜花本人はねこかぼちゃさまの毛並みを撫でているつもりでも、ねこかぼちゃさまにとってはまさに疾風迅雷。
周りを桜吹雪が覆ったと思えば、次の瞬間には敵に送り込んだ毒虫が焼け焦げ、かぼちゃは砕かれ、自らまでもが電撃に身を貫かれている。
「な、何が起こったというのだ…!」
一瞬の出来事に混乱する思考。
電撃に打たれ続ける動揺でごちゃごちゃになっていく頭の中で微かに感じ取った、優しい手つき。
「骸の海へ、お還りなさい。そして次は、普通のお猫さまに転生を…皆に愛し愛されますよう」
その祈りの言葉。
稲妻は痛いけれど、みんなが終わらせたくないと願った“はろうぃん”を邪魔されるのは悔しいけど。
けれど何故だろう。その手つきを猫は知っている。
自分を慈しむその手は自分が心から愛した人間たちから撫でてもらった時のあの暖かく優しい感覚と同じだ。
稲妻に貫かれる痛みや心のイガイガがどこか遠くに感じる。
まるで白い霞の向こう側に隠れてしまったような、不思議な感じだ。
それでも、やっぱり暖かくて優しく撫でてくれる手が灰色の猫は大好きだった。
今はこの優しい手に甘えていたいと、ゴロリ寝転んだ。
花霞は消えない。
ぐるぐる、ぐるぐるといつまでも動き続ける。
UDCの、邪神の、ねこかぼちゃさまの存在を消し去るまで。
その存在を電撃で焼き尽くすまで。
それは人によってはえげつなく、残酷で残虐な行為に見えるだろう。
しかしその中には確かに猫の転生後の幸福を願う桜花と、その暖かい祈りの手を享受する人を愛する可愛らしい灰色の猫がいたことは花霞の外には消して見えぬ、知られぬことである。
大成功
🔵🔵🔵
アルジュン・ラオ
・心情
お前が妖であったならば私はお前を愛したでしょうに
いえ、邪神とはいえあやかしでしょうか
愛おしい、私の……
・行動
【狂気耐性】は必要でしょうか
それを使用しつつ、infernusにて攻撃を
無機物ノ囀リにて石化が与えられたら僥倖ですが、兎に角皆様が攻撃した所を狙って攻撃すると致しましょう
あぁ愛おしい、狂おしい。
その命、救って(殺して)差し上げましょう
ホールに追い詰められた灰色の猫を見てアルジュン・ラオ(鬼視ノ病・f30791)は思う。
(お前が妖であったならば私はお前を愛したでしょうに)
青年の姿をしたシーシャは流れに流され辿り着いた幽世で“妖を護り抜く”という誓いを立てたのだ。
もし、あの猫が邪神ではなく妖であったら。
──────いや
邪神とは何か、一体誰がどう決めたのだろう。
邪神とは、邪なる神とは妖と何が違うのか。
人に災いをもたらすのが邪神なら、妖だって人に災いをもたらすものもいる。
妖が化け物なら、邪神だって化け物だ。
邪神が人を迷わすなら、妖だって人を迷わす。
妖が人智を越えた存在なら、邪神だって人智を越えている。
邪神が神なら、神となる妖もいる。
邪神とは、妖とは、邪神とは、妖とは、邪神とは、妖とは
そうしてアルジュンは一つの答えにたどり着く。
くつり、と彼の喉から笑い声が漏れる。
「いえ、邪神とはいえあやかしでしょうか。愛おしい、私の……」
そう呟いた“妖を護り抜く”という狂気に取りつかれたシーシャの青年の瞳は、狂乱に満ちた青色に輝いていた。
今まで本当にあのハロウィン客の中にこの狂気が紛れていたのだろうか?
甘く満ち、頭を狂気で満たすカボチャの香りも彼の脳にはもう届かない。
(あぁ愛おしい、狂おしい。)
料理も、お菓子も、ハロウィンも
彼の脳にはもう届かない。
真っ直ぐ見据えた灰色の猫のなんと愛しいこと。
「その命、|救って《殺して》差し上げましょう」
────────────────────────────────
カボチャの毒が効かないと見た灰色の猫は、身に力を込めホールをカボチャの蔦で満たしていく。
そしてその蔦からは自分の身丈と同じほどのカボチャがみるみるうちに、しかも大量に成長していく。
パカ、と一斉に成長しきったカボチャが割れると、中からは紫の鋭い爪を持つ灰色の猫がカボチャと同じ数だけ生まれた。
同時に猫はアルジュンを同じ声で威嚇し同じ声で唸り声をあげる。
その口には爪と同じように紫色の牙。
爪でその身を裂かれれば、牙でその身に噛みつかれれば
甘い狂気が直に身体の中で暴れ出すだろう。
しかし、今のアルジュンはそのようなことを恐れたりはしない。
先ほどの威嚇の鳴き声さえも愛しく感じてしまうほどに既に狂っているのだから。
その手には鬼棍棒。鬼灯の描かれた土鈴が持ち手で揺れている。
灰色の猫が一匹、その毒爪を振りかざし飛びかかった。
ちりんっ
土鈴の音が鳴った。
弾き返される猫。壁に衝突した音がやけに重い。
猫の姿は毒爪を振りかざし飛びかかったままの姿で石となっていた。
ユーベルコード【|無機物ノ囀リ《ガラクタノサエズリ》】
相手がその身を強化している場合、その身を石に固めてしまう。
続いて何匹毒を持った猫が飛びかかって来ても同じこと。
その短い爪が、口の中に隠れた牙がアルジュンに届く前に彼はその手の中の2m程の鬼棍棒“infernus”を振るう。
その棍棒の重い一撃を食らった猫は一匹、また一匹と吹き飛ばされ石と化して壁にめり込んでいく。
まさに地獄の門ようだ。
その棍棒を振るうアルジュンは恍惚に笑っている。
棍棒を振るうたびに愛しい妖を|救う《殺す》ことができているのだ。
これ以上の幸福はない。
カボチャから生まれた最後の一匹が石化すると、うっとりとアルジュンは微笑んだ。
「私の愛おしい妖達の声はどうでしたか?」
“infernus”には凝縮された恨みの念が込められている。
その恨みは如何にして生まれたのか。誰に向けられたものなのか。
少なくともこれを愛しいと賞するアルジュンの妖へ向けられた狂気とは計り知れないものなのだろう。
カボチャから生まれた猫がいなくなった事に気がついた本体は、急いで次のカボチャの準備を始めるが、遅い。
カボチャの蔦はアルジュンが振るった鬼棍棒により引き千切れ、急速に育っていたカボチャはしおしおと萎え、蔦ごと枯れてしまった。
アルジュンが棍棒を振り上げた。
先ほどまでの同胞達への攻撃を見ていた邪神は足早に会場の飾りに紛れ込ませておいたカボチャに身を隠す。
しかし、鎧をも砕くその棍棒の威力を前に無惨にもカボチャは中身を撒き散らし粉々になった。
もう|邪神《あやかし》が逃げる場所は何処にもなかった。
「嗚呼、愛しい私の妖…貴方の命も救って《殺して》差し上げましょう」
そう言ってアルジュンは再び“infernus”を振るう。
チリンッ
鈴の音が鳴った。
大成功
🔵🔵🔵
飯綱・杏子(サポート)
あの|食材《オブリビオン》を狩ればいいっすね? 任せるっす。
とりあえず|ヒト型《ヒューマノイド》でなければ食うことを考えるっす。
宇宙船やリビングアーマーの類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるっす。
何なら味付けでどうにかするっす。
一応【毒耐性】持ちなんで、毒は利かないっすよ。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす。
多少の怪我は厭わず積極的に飲み食いします。他の猟兵に迷惑をかける絡み酒はしないっす。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する絡み酒はたぶんしないっす。
あとはおまかせ。よろしくおねがいするっす!
「あの|食材《オブリビオン》を狩ればいいっすね? 任せるっす。」
飯綱・杏子(飯テロリスト・f32261)は猫の尻尾の蔦に生えるカボチャを見ていた。
“食材”という言葉にねこかぼちゃさまは反応した。
(しめしめ…コイツ、このカボチャをただのカボチャだと思っているな?)
事前情報で共有された、オレンジ色のカボチャは全て毒カボチャという事実。
猟兵達が毒カボチャ料理を決して口にしなかったことからねこかぼちゃさまは、仕掛けの毒カボチャを勘付かれていることに薄々気づき始めていた。
しかし、こいつはどうも違うようだ。
「これは私が攻撃に使うためのカボチャだから、食われてしまっては困るなぁ」
そう言って会場に仕掛けていた毒カボチャの一つに前足をかける。
そうして攻撃に見せかけてわざと杏子の足元にそれを転がしてやる。
杏子はゴロンゴロンと転がってきたカボチャを持ち上げ、しげしげと観察する。
「結構重いっすね。中身がぎっしり詰まっているんすかね。美味そうっす。見た目も形も匂いも…普通のカボチャっすね。んじゃ、いただきます。」
彼女はバリっとカボチャの皮の硬さなど気にも留めない様子で生の毒が沢山仕込まれたカボチャに齧り付いた。
シメた!
ねこかぼちゃさまは思ったが、何か様子がおかしい。
普通ならカボチャの毒で脳が破壊されているはずなのに、彼女はどうも狂気に陥っている様子はない。しかも吐血などの症状も皆無である。
ひとつ異常なことと言えば、彼女は酔っ払ったように頬を赤らめ、美味しそうに二口目をいただこうとしているところである。
そう!飯綱・杏子という猟兵は様々な|食材《オブリビオン》を求めてあらゆる異世界を旅する食道楽の悪魔である!
そしてあらゆる毒に耐性を持っているので、ねこかぼちゃさまの毒は一切利かない。
しかし、毒物で酔う特異体質である。
どんどんと彼女の口調が崩れ始める。
「うん、ワタシ、このカボチャ気に入ったアル!もっとないアルか?」
千鳥足で彼女はねこかぼちゃさまにふらふらと近づいていく。
「な、なんだこの女!化け物か!」
素早く身を翻し、距離をとる。
このままでは自分の尻尾と同化しているかぼちゃまでカリカリと…
小動物のトラウマを思い出した。
兎にも角にも尻尾のカボチャをもぐもぐされるのだけは避けなければ。
足元に散らばっている食器の破片を有毒生物へ変化させる。
他の毒ならば。そうだ、きっとカボチャの毒が効かない特異体質なんだと邪神は自分を落ち着かせる。
「ん?また美味しそうな食べ物が出てきたアル」
邪神が一番聞きたくない言葉だった。
毒で酔っ払った杏子は、ひらりはらりと有毒生物を酔拳の要領で捕獲していく。
そして、一匹、もう一匹と口に放り込む。
咀嚼音。
「蛇は肉も弾力があって、毒もスパイシーで美味しいアルなぁ」
有毒生物もダメとなるとこっちにはもう撃つ手がない。
毒カボチャ入りの料理を手当たり次第投げつける。
てっぺんにホイップを絞ったカボチャプリン。焼き目のこんがりついたカボチャグラタン。
サクっと揚がったカボチャコロッケ。濃厚なカボチャのポタージュ。
カボチャとチーズのオーブン焼き。
どれも、口にした客達はみんな気を狂わせてハロウィン以外のことを考えられなくなっていた。
杏子は一つ一つ、まるで普通の料理を食べているかのように胃袋へ納めていく。
恐ろしい。この女は恐ろしい。
自らの攻撃を美味しい美味しいと食べていく杏子に邪神が恐怖していた。
「あれ、あの美味しいカボチャ、まだそこにあるじゃないアルか!」
杏子の目が完全に猫の尻尾のカボチャをとらえた。
ねこかぼちゃさまは威嚇でフシャーと鳴きながら距離を取ろうと右へ左へ。
しかし杏子の毒酔拳の動きはまるで予想がつかない。
右へ行くと思ったら左へ。じゃあ今度は右だろうと思えば左に。
もはやねこかぼちゃさまは|食材《狩られるもの》の側に立たされていた。
「こら〜、猫ちゃんだめでアルよ〜。カボチャはおもちゃじゃないアル〜。ワタシに渡すアルよ〜」
がっしりとカボチャを捕まえられ、ねこかぼちゃさまは宙ぶらりんになった。
ジタバタと暴れても、威嚇しても杏子には生きのいい食材にしか見えていない。
さぁっと顔が青くなっていく。
「じゃあ、いただきますアル〜!」
「にゃぎゃぁーーーー!!!」
ねこかぼちゃさまの断末魔が響いた。
成功
🔵🔵🔴
三上・桧
あの猫さん、色合いが火車さんに似ていますね。もしかしてご親戚ですか?
『たまたまではないか? 灰色の毛並みなんぞ、それほど珍しくもなかろう』
そうでしょうか……?
さらに猫さんが増えましたね。素敵です
では、こちらも猫さんを呼びましょうか
【仔猫召喚】で誘惑技能を持つ仔猫さんたちを召喚
可愛らしいでしょう?
誘惑であちらの猫さんたちの気を引いている隙に、邪神に接近
ロケットランチャーの砲身を尻尾のカボチャに思いきり叩きつけます
邪神とはいえ、猫さんを攻撃するのは少々気が進まないので……
ハロウィンはもう終わりですよ
『周りの連中も一生分楽しんだじゃろ』
三上・桧(虫追いアリス・f19736)は神妙な面持ちで邪神と化してしまった猫…“ねこかぼちゃ様”を見つめる。
「あの猫さん、色合いが火車さんに似ていますね。もしかしてご親戚ですか?」
ねこかぼちゃさまの体の色について真剣に考えていただけだった。
三上・桧。邪神の前でもマイペース。
『たまたまではないか?灰色の毛並みなんぞ、それほど珍しくもなかろう』
「そうでしょうか……?」
「さらに猫さんが増えましたね。素敵です」
『妾は猫又じゃが?それにあやつも猫ではなく邪神じゃぞ』
「同じようなものだと思いますよ?猫又も邪神も猫も」
どういう括りなのだろうか。
しかし、桧がそうだというのだからきっと彼女の中ではそうなのだろう。
「では、こちらも猫さんを呼びましょうか。もっともっと猫さんがいた方が素敵です。」
普段は虫追いアリスの桧も猫が大好きだ。
猫は、そこにいればいるほどいい存在である。
桧は火車さんの描かれたあやかしメダルを懐から取り出し、突き付ける。
ユーベルコード『仔猫召喚(サモン・キティ)』
あやかしメダルが光り輝く。
眩いほどの光がおさまればそこには9体の灰色でピンク瞳の子猫が召喚されていた。
「む、何をするかと思えば…子猫ではないか」
呆気にとられるねこかぼちゃさまに桧は
「ええ、可愛らしいでしょう?」
と答える。
「可愛らしいが…こんなの攻撃に…ふふ、おいやめろ、くすぐったいじゃないか」
いつの間にか9体の子猫たちはねこかぼちゃさまを取り囲み、小さな舌で毛並みを舐めてみたり、長い蔦の葉っぱをおもちゃに戯れていた。
「なるほど…これは、確かに攻撃だ…。私一人では到底面倒を見切れん。」
困った困ったと言うねこかぼちゃさま。
その顔は確かに笑顔だった。
「いや困った…こちらも応戦するしかないなぁ」
そう言うとねこかぼちゃさまは南瓜を九つ急成長させる。
成長しきって割れた南瓜の中からは灰色の猫が九匹。
猛毒の爪はしまって、牙で子猫を傷つけないように決して口を開かない。
ねこかぼちゃさまの配下の灰色の猫たちはそれぞれ子猫の相手をし始めた。
尻尾を使って器用にあやしたり、共に寄り添って猫団子を作ったり、思い思いにくつろいでいる。これが猫だ。
「わぁ、素敵な光景ですね。」
『しかし、先ほどはたまたまと言ったが…よくもこんなに姿の似ている猫がいっぱい集まったのう』
桧が召喚した子猫九匹。毛並みは灰色。瞳はピンク。
邪神の召喚した配下の猫九匹。毛並みは灰色。瞳は片方がピンクのオッドアイ。
「…それで、火車さんのご兄弟はどちらですか?」
『だから親戚ではあらぬと』
────────────────────────────────
猫たちが戯れる素敵空間をしばらくの間、のほほんと見ていたがこのまま終わることはできない。
「名残惜しいですが、そろそろお開きにしますか」
『そうじゃのう。あやつらは今回の元凶となった邪神じゃからな』
子猫たちに紛れてごろりと寝転んでいるねこかぼちゃさまに桧は近づいていく。
その手には“慈救砲”
不動明王の真言が刻まれた“ロケットランチャー”である。
桧はそのロケットランチャーの砲身を振り上げ──────ねこかぼちゃさま本体ではなく、尻尾の先の南瓜を破壊した。
それにハッとして立ち上がるねこかばちゃさま。
「貴様…!何故、何故!私を狙わなかった!こんなにだらしなく無防備だったのだぞ!」
意味がわからない、と言いたげなねこかぼちゃさまに桧は言う。
「邪神とはいえ、猫さんを攻撃するのは少々気が進まないので……」
目をパチクリとさせる邪神。
数秒の間の後、先ほどと同じようにごろんと寝転んだ。
“慈救砲”による浄化が尻尾の先から始まっている。
「そうか…お前も、猫を愛するものだったのだな」
「ええ、猫は大好きです」
「…ホテルの皆もそうだった」
配下の九匹の灰色の猫は既に溶けるように浄化されていった。
もうすぐ、ねこかぼちゃさまもそうなるだろう。
「愛されたなぁ、沢山。野良猫としては贅沢な程の生を私は生きた。」
「もし、来世があるならまたこのホテルに帰ってきたいですか?」
ねこかぼちゃさまの消えゆく身体を撫でながら桧は邪神に問う。
「当たり前だ」
そう言い残すとねこかぼちゃさまは完全に透明になり、浄化されていった。
「邪神に来世はありますかね?」
『さぁ、どうであろうな。でも、あったらいいのう。』
にゃあ、と一つ鳴いて火車さんは桧の肩に飛び乗った。
窓の外から一筋の光が差し込んできた。
暗い街並みが白み、朝の訪れを太陽が知らせる。
誰ももうそれを白夜だなんて言わなかった。
猟兵の一人が眠らせた客の一人に近づき、桧は屈む。
「ハロウィンはもう終わりですよ」
聞こえていないだろうけれど、一応教えてあげた。
『周りの連中も一生分楽しんだじゃろ』
周囲の人々もいい寝息を立てている。
きっと明日にはみんな各所でこっ酷く怒られるのだろう。
でも今だけは、ほんのりと消えゆく残り香を懐かしみながら満足そうにケーキまみれの寝顔を晒すのだった。
大成功
🔵🔵🔵