ティタニウム・マキアの飛動
●亜麻色の髪の男
自分が正義であるとは思わない。
ただ己が正しいと思うことをしているだけだ。きっとそれだけで理由は十分であったのだろう。
だから自分は走っている。
「なんつってな。いやまあ、仕方のないことではあるんだよ。より多くに手を伸ばすなら、より少ないものを切り捨てなくちゃあな」
今も自分は走っていると言えるだろうか。
自分がしたことは切り捨てたことだと言えないだろうか。
目の前にある存在を前にしてポーカーフェイスを崩さずにいられるだろうか。
「それで。こうしてわざわざこちらの時間を取らせたのだ」
「『メリサ』。業界最高峰の殺し屋と呼ばれているお前が来たのだ、無意味なことではあるまい」
巨大企業『ティタニウム・マキア』。
安心安全を売る大企業。
あらゆる点において彼等の表向きはクリーンなイメージしかない。その裏側でゴミ溜めの如き汚濁が蠢いているのだとしても、人々は恐らく気が付かない。
気が付かぬままに滅びゆく定めでしかなかった。
安心と安全。
その言葉自体を売りさばく彼等にとって、それ以外のことはどうでも良かったのだから。
「あんたたちが保管している『巨人』の一部。それが持ち出されてるぜ? あんたたちの言うところの『安心安全』の担保になっている重要なブツだ」
亜麻色の髪の男は黒い瞳で目の前の存在を見据える。
「それで。お前を雇えと?」
「いつからお前は営業をするようになったのだ」
「業界最高峰の殺し屋『メリサ』、その存在自体が我々にとっても捉えがたい」
「ある時は『圧殺』。ある時は『電脳死』。ある時は『暗殺』。ある時は『病死』。捉えがたき手法でもって『メリサ』はこの世界に群れ為すあらゆるものを殺す」
「故にお前の言葉は信じ難い」
その言葉は尤もであった。だから、亜麻色の髪の男は笑う。
恐れをこらえろと己の震える足に力を込めて、彼は言う。
「信じる信じないはどうだっていいだろう。後手に回ったのならば、あんたらは確実に負けるぜ――?」
●ハイウェイチェイス
「何が安心安全を売るメガコーポよ……!」
自動二輪のタイヤがハイウェイのアスファルトを火花散らしながら走り抜ける。
彼女の名は『ヘリドー』。
サイバーザナドゥにおいて、腕利きのハイウェイスター。
彼女の駆る自動二輪はあらゆる悪路を走破し、様々な入り組んだ走路を駆け抜ける。それほどまでの技量と性能のマシンを有していながら彼女は今追い詰められていた。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』――その本社から奪った物資を彼女は運んでいる。
彼女の手にあるトランクケースの中にあるのは機械化義体の腕部。
「この腕一本にこれだけの追手を差し向けるとか! どんだけなのよ、これ」
彼女を追う『マフィア・トルーパー』たちが乗るトラックからは重火器が火を噴き、ミサイルランチャーすら火線を引いて自分に飛ぶ。
あまりにも大仰しい。
それほどまでに『これ』が重要なものであったのならば、彼女は自分が嵌められたのではないかとさえ疑念を抱きそうになる。
彼女の依頼主は軽いノリで言ったのだ。
『ちょっくらおつかいを頼まれてくれよ』
「あの、男、は~ッ!!!」
何がおつかいだ。
これは完全におつかいの範疇を超えている。
放たれたランチャーの爆風が彼女の駆る自動二輪を煽る。車体が揺れ、彼女は義体化された体でもって自動二輪を己の手足のように手繰りながら体勢を整える。
周囲を取り囲む『マフィア・トルーパー』たちの銃口が『ヘリドー』に狙いをつけている。放たれる弾丸を躱しながら、彼女はあの亜麻色の髪をした男のこと頭から振り払う。
今は手にしたトランクケースを持ち帰らなければならない。
それが己の矜持。
『先代から継いだ『ヘリドー』の名、伊達じゃないってところ、見せてくれよな』
ヘラヘラと笑って言ったあの男の顔が彼女の脳裏をちらつく。
ここで諦めては彼女の沽券に関わる。
「やっぱり腹立つわ、あいつ――!!」
●ティタニウム・マキア
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の予知はサイバーザナドゥのハイウェイで起きる事件です」
ナイアルテが猟兵たちに示すのは一人のハイウェイスター。
鋼鉄の自動二輪を駆る彼女の名は『ヘリドー』。その名の通り、『燕』が飛ぶようにハイウェイを疾駆する運び屋である。
「彼女はどうやら巨大企業群『ティタニウム・マキア』の重要な『機械化義体の腕部』パーツを秘密裏に運んでいたようなのです」
だが、それは『ティタニウム・マキア』に察知され配下のオブリビオンに襲撃されてしまうのだという。
放置しておけば彼女は間違いなく殺されてしまう。
同時に『ティタニウム・マキア』の重要品ということは、クリーンなイメージの裏側にある犯罪行為を見逃すことになる。
「『ヘリドー』と呼ばれるハイウェイスターを救うことは勿論、奪われてしまうパーツの入ったトランクケースを奪い返さなければなりません」
敵は改造された装甲車のようなトラックを駆り、ハイウェイチェイスを行っている。
数の暴威で逃げる『ヘリドー』は追い詰められてしまう。
そこに猟兵たちは駆けつけなければならない。
「現場はハイウェイ。皆さんもまた改造バイクやそれに準ずる乗り物で乗り付け、彼女を救出していただきたいのです」
敵の数は多く、『ヘリドー』を追い詰める『マフィア・トルーパー』の駆る装甲車はハイウェイを疾駆しているため猟兵たちも移動しながらの攻撃になる。
そこがこの戦いの難しい所でもあったことだろう。
ここでトランクケースを奪われ、『ティタニウム・マキア』の犯罪行為の一端であるパーツを有耶無耶にされては、ますます隆盛を極めて行くだろう。
オブリビオンの影のある巨大企業群を放置してしまえば、必ず世界に破滅を齎す。
「どうかお願いいたします。ハイウェイスター『ヘリドー』さんを救い出し、『ティタニウム・マキア』が回収しようとしているパーツを奪い返してください」
ナイアルテは頭を下げ、猟兵たちをサイバーザナドゥのハイウェイに送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
サイバーザナドゥのハイウェイにおいて、巨大企業群『ティタニウム・マキア』の重要な品物である『機械化義体の腕部』パーツを運ぶ運び屋『ヘリドー』を追うオブリビオンたちをハイウェイチェイスにてぶっ飛ばすシナリオとなっております。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』は『安心安全を売る』巨大企業です。
そのクリーンなイメージの裏側では、これまでカルト教団やサイバースペースでの犯罪行為、ヤクザ事務所との繋がりなど後ろ暗いことを行ってきました。
その『ティタニウム・マキア』にとって重要な品物である『機械化義体の腕部』パーツが何者かによって奪われ、持ち出された後に運び屋である『ヘリドー』に渡ったようです。
●第一章
集団戦です。
ハイウェイにおいて運び屋『ヘリドー』を追い詰めるオブリビオン『マフィア・トルーパー』たちの駆る装甲車を蹴散らしましょう。
改造バイクや改造自動車などなど、ハイウェイを疾走するものを使って、追いかけましょう。
●第二章
冒険です。
皆さんの奮闘の最中、運び屋『ヘリドー』からトランクケースを奪ったオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は、すでにハイウェイの遥か彼方へと走り去っています。
ですが、皆さんの改造バイクや改造自動車、それに準ずるものであれば、まだ追いつくチャンスはあります。
●第三章
ボス戦です。
『ヘリドー』からトランクケースを奪ったオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』と、ハイウェイでチェイスを繰り広げながら戦いましょう。
オブリビオンである『ジンライ・ウォーカー』を打倒すれば、奪われたトランクケースを取り返すことができます。
それでは、『巨大企業群(メガコーポ)』、『ティタニウム・マキア』と戦いを繰り広げる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『マフィア・トルーパー』
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POW : 暗黒街の襲撃者
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【サイボーグアームと一体化した機関銃】の威力と攻撃回数が3倍になる。
SPD : 裏社会の惨殺者
【ブッチャーナイフを何度も叩きつける攻撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : 鉄の掟
自身の【組織からの命令を絶対に遂行するという掟】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
イラスト:滄。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
運び屋『ヘリドー』を追うオブリビオン『マフィア・トルーパー』たちの駆る装甲車は、たった一人の運び屋に対する戦力としては過剰であったかもしれない。
「必ず奪い返せとのことだ。トランクケースを傷つけずに」
「無茶を言ってくれる。ふっとばしてはいかんのか」
「やめておけ、上に何をされるかわからん。お前が明日の朝、どこかの海に浮かぶか、もしくは見る影もなく改造されて自分が自分であると認識できなくなるか……まあ、どちらにしたってろくな目にはあわん」
「ならもっと速度を上げろ。このままでは振り切られる。どの道やつに逃げられたら俺もお前も!」
『マフィア・トルーパー』たちは己たちの上位組織である『ティタニウム・マキア』の裏側を担う者たちであるという認識はある。
自分たちの上位組織、巨大企業群『ティタニウム・マキア』がそこら中に掲げている看板どおりの存在ではないことを知っているからこそ、恐ろしさを隠しきれない。
戯れのように放った言葉ですら、それが真実たらしめるだけの力を『ティタニウム・マキア』は有しているからだ。
そんな彼等を猛追を躱しながら運び屋『ヘリドー』は鋼鉄の自動二輪と共にハイウェイを駆け抜ける。
「振り切れるか……?」
このままでは不確定要素でもない限り彼女は逃げ切れない。
だからこそ、彼女は諦めない。
逃げ切ることが彼女の勝利であるといのならば、わずかにでも活路があるのならば其処に向かって邁進するのが自分である。
弾丸と爆風を切り抜けながら、彼女はハイウェイを切り裂く星となってオブリビオンが狙い続けるトランクケースの取っ手を強く握りしめるのだった――。
ドラッヘ・パンツァー
("大型筐体"に換装済み)
ティタニウム・マキナ……商売敵ではないが、性能試験も兼ねて止めて来いとのお達しである。
チェイスならば望む所、我自身が|頭脳戦車《マシン》である故な。
「ホバーウィング」を起動し"空中機動"で追跡を。
空からは直接進路を妨害しにくい、搦手を使うぞ。
「疑似感情機構」オフ……思考りそーすヲ追跡・妨害ニ特化。
「サーチカメラアイ」ニヨル敵車両ノろっくおんヲ実行。
「角部電子攻撃装置」起動、指向電波すたんばい。
『賢竜の命』実行……敵車両ノ制御しすてむヲ"ハッキング"。
進行るーと強制変更、壁面ヘノ激突事故ノ誘発ヲ試行シマス。
……製品寿命ノ低下ヲ確認。任務終了後ノめんてなんすヲ推奨シマス。
ハイウェイを疾走する自動二輪を追うのは装甲車。
オブリビオン『マフィア・トルーパー』たちは、それらを駆り一斉に重火器の引き金を引く。
放たれるランチャーの砲弾や銃弾が運び屋である『ヘリドー』を襲う。
しかし、そのどれもが間一髪のところでかわされる。
爆風すらも追い風にして走る星は正しくハイウェイスターと呼ぶに相応しいものであったことだろう。
だが、数とは暴威である。
『ヘリドー』を追う『マフィア・トルーパー』たちはしつこく追いかけ回し、必ずや彼女を捉えて殺すだろう。
「『ティタニウム・マキア』……商売敵ではないが、性能試験も兼ねて止めて来いとのお達しである」
ハイウェイに影が落ちる。
『マフィア・トルーパー』たちは、その影に怪訝な顔をして窓から空を見上げた瞬間、己がいかなるものを見てしまったのかを理解する。
影。
それは巨大な竜を象るものであった。
「な、なんだぁ、あれは!?」
「チェイスならば望む所、我自身が|頭脳戦車《マシン》であるゆえな」
反重力装置とプラズマ推進装置によって高速でハイウェイの空を飛ぶのは、ドラッヘ・パンツァー(西洋竜型試作頭脳戦車・f38372)の青い大型筐体であった。
正しくドラゴン。
その姿は青い巨竜として『マフィア・トルーパー』たちの義眼に映ったことだろう。
電磁迷彩でもなければ、ホログラムでもない。
実体をもった巨大な竜の体躯を再現した筐体が空を飛ぶ。
「な、な、ば、馬鹿げている!」
「どういう好事家が!」
『マフィア・トルーパー』たちにとって、それは規格外であった。
「『疑似感情機構』オフ……思考りそーすヲ追跡、妨害ニ特化」
ドラッヘのAIから感情を齎す機能が停止し、その演算領域を『マフィア・トルーパー』たちの『ヘリドー』を追う装甲車への妨害に切り替える。
竜眼を模したサーチカメラアイが装甲車を捉えた瞬間、ドラッヘの頭部、その角から電波が発せられ、装甲車の制御システムへとハッキングが仕掛けられる。
ハンドルを握っていた『マフィア・トルーパー』たちが困惑する。
自分が握っていたハンドルが急に切られたのだ。
前輪に伝わるハンドル操作は直角にハンドリングされた前輪をブレーキにつんのめるようにしてハイウェイに跳ねるようにして吹き飛ぶ。
賢竜の命(オーバーライド)たるドラッヘの電波は装甲車に存在する制御システムをハッキングし、さらに進路を強制的に変更させたのだ。
「ハンドルが勝手に……!」
「馬鹿野郎、オートにしているからそんなことに、マニュアルに切り替え……!?」
『マフィア・トルーパー』たちの同様はすぐさま走行車両にも電波していくだろう。
だが、ドラッヘのハッキングは容赦はなかった。
己の筐体は、その高性能さ故にこのユーベルコードを使うと製品としての寿命を削っていくのだ。
たとえ、自分が猟兵として覚醒していたのだとしても、それに変わりはない。
「……製品寿命ノ低下ヲ確認」
筐体のあちこちから軋む音がきこえる。
使用したのは演算領域と電波を放つ電子攻撃装置。その寿命が尽きようとしている。
「任務終了後ノめんてなんすヲ推奨シマス」
ドラッヘの青い巨竜としての筐体がハイウェイの空に飛ぶ。
その眼下では、ドラッヘのハッキングによって横転さられた走行車両が、後続の車両と激突し爆発炎上する光景が黒煙を上げていた。
その爆炎を背に運び屋『ヘリドー』は更に距離を稼ぐことだろう。
だが、ドラッヘのカメラアイは捉えていた。
装甲車の爆炎さえも物ともせず吹き飛ばし、さらに『ヘリドー』を追う一騎の義体を――。
大成功
🔵🔵🔵
堂島・アキラ
|まとも《クリーン》な|企業《コーポ》なんてもんがあるって本気で信じられるヤツの気が知れねえな。
ま、中身がどうあれ連中をぶっ潰すのがオレの仕事だ。今回も派手にいくぜ。
バイクに乗って追いかける。こいつならちょっと飛ばせばすぐに追いつく。
装甲車の後方から接近してユーベルコードを発動。無限ロケランで片っ端から吹き飛ばしてやるぜ!
こんだけ派手にやりゃあ運び屋を攻撃してる場合じゃないって気が付くだろ。
攻撃のターゲットがこっちに向けば運び屋の姉ちゃんも少しは逃げやすくなるはずだ。
その分オレの負担が大きくなるが大した事はねえ。本職にも負けねえドラテクで装甲車の攻撃なんざ軽く避けてやんよ。
「|まとも《クリーン》な|企業《コープ》なんてもんがあるって本気で信じられるヤツの気が知れねぇな」
堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)は、街中の至るところに掲げられている巨大企業群『ティタニウム・マキア』の広告看板を見やる。
『安心安全』を売る巨大企業。
あらゆるものに対して『安心安全』を齎し、それを保証する巨大企業群。
その言葉こそが『ティタニウム・マキア』の商品であるとばかりにクリーンな面ばかりが前面に押し出されている。
しかして、それがまともではないことをアキラは知っている。
同時にサイバーザナドゥに生きる人々もまたそうであったはずだ。
だが、『ティタニウム・マキア』は業績を上げている。『安心安全』という不透明なものを売りにして此処まで成長を遂げているという事自体が異様であった。
「ま、中身がどうあれ連中をぶっ潰すのがオレの仕事だ。派手に行こうぜ!」
アキラの駆るハイスピードバイクがハイウェイを疾駆する。
老舗バイクメーカー、ツルギ社製。
窮極の速さを追い求めるEDGEシリーズの最新モデルである。
「ああ、サイッコだぜ! こいつは! 飛ばせばすぐ追いつく!」
十分な加速性。
ハンドリングが指に吸い付くようであり、また同時にエンジンの振動が義体に心地よく響く。
タイヤがアスファルト切りつけるように吸い付き、猟兵の妨害を受けて横転した装甲車を難なく躱して一気に加速していく。
「まだまだ運び屋のケツを追っかけている連中がいるってんなら!」
運び屋『ヘリドー』を追う『マフィア・トルーパー』たちが駆る装甲車にアキラは一気に追いつき、サイバーザナドゥの歩く火薬庫(デンジャラスガール)と渾名されたアキラの手には、テロリスト御用達の無反動砲が握られていた。
その気配に『マフィア・トルーパー』が装甲車の窓からアキラの存在を認める。
瞬間、アキラの引き金は引かれていた。
放たれるランチャーの一撃。
いや、違う。
「オラオラ! 好きなだけくらわせてやるよ!」
放たれるランチャーの一撃が装甲車の背後をつくように爆炎を撒き散らし、衝撃を撒き散らしていく。
その爆風をアキラはハイスピードバイクの巧みなハンドリングで躱し、さらに猛追する。
「後ろからも来てるぞ! やつの仲間か!」
「なんであんなにランチャー連射できるんだよ!?」
「無限ロケランで片っ端からふっとばしてやるからよぉ! 動くんじゃあねえぞ!」
アキラが何か言うたびにロケットランチャーが火を噴く。
その攻勢は『マフィア・トルーパー』たちにとっては想定外であった。
「やつの仲間なら、むちゃくちゃだ!」
「てめえらのことなんて知ったことかよ!」
そうアキラに注目が集まれば運び屋『ヘリドー』の負担が減る。
逃げ切るためには彼女へのターゲッティングを減らす必要があるのだ。だからこそ、アキラはハイウェイでの大立ち回りを続ける。
装甲車に並べば容赦なく打ち込み、追い抜いてさらに後ろを取れば打ち込む。
とにもかくにも引き金を引きまくる。
爆炎がどれだけ上がろうが関係ない。
「オレのドラテクを、そんなへなちょこ弾で捉えられると思ってんなよ!」
冴え渡る疾走。
ツルギと名付けられたハイスピードは、その名の通りハイウェイにはびこるオブリビオンの影を切り裂くように爆煙と共に疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セイカ・ヤブサメ
【アドリブ連携OK】
ヘリドー…その名前は聞いたことがあるよ
モグリじゃなきゃ誰もが知ってるハイウェイ界の伝説、凄腕の|運び屋《キャリアー》…
まさか代替わりしてたとは思わなかったけどね
嬢ちゃん…いやヘリドー。
企業の刺客相手によく耐えたね、アンタの根性を見せてもらった駄賃だ
奴らの相手はアタシ達に任せな!
YO!ゴロツキども!
アタシのハイウェイを走るにゃドレスコードがなってないようだ、うちの|連中《ヴァルキリーズ》に仕立て直して貰いな!
ヴァルチャーで乗り付けたらUCで呼び出した構成員をマフィアどもの車両に張り付かせて交戦開始だ
アタシはヘリドーの直掩に付きながらツイスターの【吹き飛ばし】をブチ込んでやる!
爆炎を上げるハイウェイ。
警察機構のパトランプが明滅するも、彼等の出番はどこにもなかった。
このハイウェイにおいて絶対であるのはスピードのみ。
横転し、ロケットランチャーによって破壊された装甲車を取り囲む警察たつに出る幕はない。
故にハイウェイチェイスは常に先頭をひた走る者にこそ脚光が浴びせかけられる。
「味方……!? いや、違うよね? 何あれ!? なんであんなに派手に……」
運び屋『ヘリドー』。
その名は業界屈指の運び屋として知られている。
燕のように飛び、軽やかにどんなものでも運び、去っていく。それが『ヘリドー』の名である。
裏社会では有名であった。
故にセイカ・ヤブサメ(ハイウェイの戦女神・f36624)は、再び飛び込んだ裏社会で、その名を聞いた時懐かしさを覚えたかも知れない。
もう二度と感じることのない感覚であったはずだ。
だが、彼女は戻ってきた。穏やかな日々を。幸せを。そうしたものが終わりを迎えたからこそ、彼女はヴァルガニー社製の大型二輪を駆り、ハイウェイを疾駆する。
その身に纏うのは『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』を象徴するレザーベスト。まるで翼のように羽ばたくそれが自身に並走してきた時、『ヘリドー』は目を丸くしたことだろう。
「あなた、それってまさか……!」
「『ヘリドー』……その名前は聞いたことがあるよ。モグリじゃなきゃ誰もが知っているハイウェイ界の伝説、凄腕の|運び屋《キャリアー》……まさか代替わりしていたとは思わなかったけどね」
彼女の言葉に『ヘリドー』は、その伝説と呼ぶに相応しい者が己と今並走していることにこそ驚愕するだろう。
『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』――その初代総長のみが袖を通すことを許されたレザーベストが今、横で風にたなびく。
「城ちゃん……いや、『ヘリドー』」
「は、はい! ま、まってまって。なんで『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』が、それもそのジャケット……!」
「それは今はいいさ。よく耐えたね。アンタの根性を見せてもらった駄賃だ。奴らの相手はアタシ達に任せな!」
セイカの大型二輪がアスファルトに火花をちらしながら後輪を滑らし、弧を描く。
綺麗なターンは、半月そのもの。
「YO! ゴロツキども!」
オブリビオン『マフィア・トルーパー』たちは見ただろう。
美しく翻ったレザーベストの裾が、そして己達を前に真っ向から相対する女傑の姿を。
彼等は知らなかったかもしれない。
いや、知る良しもなかったかも知れない。
なぜなら、とっくに彼女は引退していたからだ。だが、『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』の初代総長は舞い戻る。
この地獄の如き裏社会に。
そして、狂おしきハイウェイに。
「アタシのハイウェイを走るにゃ、ドレスコードがなってないようだ」
煌めくユーベルコードがセイカの眼光を照らす。
見据えるは迫る装甲車。
だからなんだというのだというようにセイカは告げる。
「うちの|連中《ヴァルキリーズ》に仕立て直してもらいな!」
親愛なる騎兵よ、集結せよ(ハイウェイ・ヴァルキリーズ)と招集されたのならば、どこへでも伴するのが彼等である。
『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』の構成員たちは、武装バイクと共に現れ、相対するように真っ向から『マフィア・トルーパー』が乗る装甲車へと飛び込んでいく。
重火器が乱れ打たれ、ハイウェイは戦場そのもの。
装甲車のあちこちがボコボコにされながらも、それでも運び屋『ヘリドー』を追う。
「くそったれが! なんで『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』がいるんだよ!」
「バイクごときが装甲車をどうこうできるわけねぇだろ! 轢き殺せよ!」
『マフィア・トルーパー』たちは止まらない。
だが、セイカは咥えていたタバコを宙に弾いて飛ばす。
火の付いていないタバコがくるりと回った瞬間、引き抜かれた散弾銃の銃口が向けられる。引き金を引くのにコンマ秒もかからない。
引き金を引くと決めたのなら、それはもう放たれたも同然であったからだ。
弾丸は装甲車を吹き飛ばし、跳ねるようにしてハイウェイに沈む。
そのままセイカは翻り、再び『ヘリドー』の直掩に着くように並走しながら、手にしたタバコを揺らして尋ねるのだ。
「よォ、ちょっと火ィとか持ってないかい――?」
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
はーい、お仕事承ったよ★
早速ローラーレッグを展開してダッシュで追っかけるよ★
大丈夫★どんな悪路だって全く上体を動かさずに駆け抜けられるからね★
うーん、そうだね★この状況で確実に止めるのならこれかな★
【シルキーちゃんに釘付け★】を使って、マフィア屋さんの視線や注意力を奪っちゃうぞ★目を逸らしちゃダメダメ★もちろん|この状況下《カーチェイス中》でも前を見るのは禁止だよ★
そして運よく事故らなかった標的には投げキッス……の代わりにタイヤ付近に『Ku-9』の|プレゼント《投射+爆破》で動きを止めて、デスブレイドで車ごと叩き潰しちゃうぞ★生き残りが居たら後詰めのロボットビースト達がお掃除しちゃうね★
ハイウェイに続々と転移してくる猟兵達にオブリビオン『マフィア・トルーパー』たちは装甲車を走らせながら驚愕する。
運び屋『ヘリドー』を追う彼等にとって猟兵の存在はイレギュラーそのものであった。
だが、同時に彼等は理解する。
猟兵たちが介入してきたからと言って彼等の使命は変わらない。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』からの指令は必ずや果たされなければならない。
彼等がそれを遂行できないということは即ち死であるからだ。
「なんとしても『ヘリドー』を捕らえろ! なりふりかまっていられるか!」
彼等は装甲車のアクセルをベタ踏みし、エンジンの唸り声を響かせながらハイウェイを疾走する。
「はーい、お仕事承ったよ★」
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は頭脳戦車たる筐体の如き体に備わった多脚を悪路走破用の換装脚部であるローラーレッグを装備してハイウェイを走る。
すでに猟兵達によって撃破された装甲車の残骸や、銃撃の痕が路面に刻まれているが彼女にとっては何の問題もなかった。
そう、彼女の脚部に装備されているローラーレッグは多脚である強みをまさに発揮していた。
通常の車輪であれば悪路の凹凸や浮石などに対応できない。
筐体を跳ね上げさせるし、ハイウェイで高速状態に至っているのならば、僅かなバウンドが生命の危険に繋がることもある。
「大丈夫★ どんな悪路だって全く状態を動かさずに動けるからね★」
そう、多脚であるということは、その駆動部はそのままサスペンションの役割を果たす。
柔軟に対応する脚部は、彼女の本体である筐体を僅かにも揺らすことなく荒れた走路を一気に走り抜けるのだ。
だが、問題はまだある。
たとえオブリビオンたちの装甲車に追いついたとしても、彼等は運び屋である『ヘリドー』ばかりを狙うだろう。
そうなっては追いつけたとしても本末転倒だ。
「猟兵たちに構うな! 俺たちが『ヘリドー』をやれば!」
肉切り包丁の如きナイフを振りかぶる『マフィア・トルーパー』。
『ヘリドー』の疾駆する背中に狙いを定めた瞬間、彼等は自分たちの義眼が別の場所を捉えるのを止められなかった。
「なっ……義眼のセンサーが勝手に……!?」
「はーいちゅうもーく★」
その言葉と共にシルキーのユーベルコードが輝く。
彼女の魅力が光となって発露される。
自己申告である。
だがしかし、彼女の解き放ったユーベルコードは『マフィア・トルーパー』たちの義眼を一斉に惹き付ける。
『ヘリドー』に狙いをつけていた彼等は否応なしに、シルキーちゃんに釘付け★(レッドヘリングシステム)なのである。
「シルキーちゃんから目をそらしちゃダメダメなんだぞ★」
無論、今がカーチェイスの真っ只中であるとしても、『マフィア・トルーパー』たちは視線を彼女から離せない。
視界を埋め尽くすのはシルキーの筐体のみ。
「ならっ! こいつから!!」
「あ、よそ見しちゃ禁止★ 事故っちゃうぞ★」
その言葉が放たれた瞬間『マフィア・トルーパー』たちの運転する装甲車が互いに幅が寄せられていたことに気がつけず、激突して跳ねて車体のバランスを崩してしまう。
蛇行しコントロールを失った装甲車がどうなるかなど言うまでもない。
凄まじい轟音を立てて一台が横転するも、一台はなんとかバランスを取り戻す。
だが、そこにシルキーの放った投射刃が突き刺さり、装甲車の弱点でもあるタイヤへと突き刺さり爆発を引き起こす。
「投げキッスの代わりだよ★」
そう笑ってシルキーは、後詰めのロボットビーストたちに横転した装甲車から這い出す『マフィア・トルーパー』たちを任せ、さらなるチェイスに繰り出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ベティ・チェン
「安心と、安全?そんなもの、元々あった?」
「ミドルクラス、とか。アッパークラス、とか。そういう人の、神話?」
「ドーモ、マフィア=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
ハイスピードバイクで後ろからマフィアに追い付いて挨拶したら急ブレーキ
即秘剣使用し急発進
前を走るマフィアが全滅するまで後ろから追い上げつつ急ブレーキ秘剣急発進のヒット&アウェイ繰り返す
「ハイクもサヨナラも、ないとか。メガ・コーポの使いのくせに、サンシタ?」
「ベイビー・サブミッション。ゲンさんが、言ってた。『非常に明るいボンボリの真ん前はかえって見にくい 』。追ってるつもりで、追われてた。だから、ボクが勝つ。チャメシ・インシデント」
サイバーザナドゥにおいて『安心安全』とはいかなるものであっただろうか。
義体化によって拡張されていくパーツや神経、記憶領域、そうしたものがの残された人体や接合することの安全性であっただろうか。
もしくは、常日頃の生活における争い諍いに巻き込まれぬための安心か。
電脳空間において保たれるセキュリティのことか。
いずれにおいても、それはいかなるもので担保にされるのかと問われれば金である。金次第で大抵のことが決着する。
それがサイバーザナドゥという世界であった。
ならば、そこに『安心安全』という言葉はあまりにも空虚に響くものであった。
しかし、巨大企業『ティタニウム・マキア』は『安心安全』を売る。
街中のあちらこちらに点在する看板のクリーンなイメージは、金という汚くも、しかして人をひきつけてやまぬものでもって保たれていた。
「安心と、安全? そんなもの、もともとあった?」
ベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)は、確かにそうつぶやいた。
彼女は記憶の欠損と混濁を有している。
だが、サイバーザナドゥで生きてきたのならばこそ、その言葉が存在していたことすら疑ってかかる。
金で大抵のことが解決するというのならば、真も偽りになり、偽りもまた真になりえるのだ。
ならばこそ、『ティタニウム・マキア』の売る『安心安全』とは即ち、ミドルクラスやアッパークラス、上層階級の者たちにしかない、下層の人間にとっては神話そのものであった。
だからこそ、彼女は駆る。
違法改造されたスピードバイクで一気にハイウェイを駆け抜ける。
ロケットエンジンの搭載された車体が破壊された装甲車の破片を踏み上げ、空を飛ぶように宙に浮かぶ。
だが、彼女は目をそらさなかった。
「ドーモ、マフィア=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
挨拶は大事である。
彼女のハイスピードバイクは即座に運び屋『ヘリドー』を追う『マフィア・トルーパー』たちの駆る装甲車に追いついた。
「ドーモ、ベティ=サン……!?」
挨拶と共に急ブレーキを掛け、制動する車体がうねるようにハイウェイに急停車する。
何故、と『マフィア・トルーパー』たちは思ったことだろう。
「秘剣・神殺し(ヒケン・カミゴロシ)」
ベティの手にした偽神兵器が振り抜かれ、前方を走る装甲車全てを捉える。
それは彼女が狙った地点まで到達するまで止まらぬ斬撃。
ハイウェイに刻まれた一文字が『マフィア・トルーパー』たちの装甲車を一刀のもとに真っ二つに、それこそ唐竹割りのように切り裂く。
爆炎が立ち上り、ベティの斬撃の凄まじさを見せつけるだろう。
「ハイクもサヨナラも、ないとか」
サンシタは、まったくもって使えないとばかりにベティはさらにハイウェイを走る。
彼女が追うのは『ヘリドー』を追い回す『マフィア・トルーパー』達のみである。
「ベイビー・サブミッション。ゲンさんが、言ってた」
未だ遠く走る『ヘリドー』と『マフィア・トルーパー』の装甲車。
前方を走っているのならば、彼女にとってそれは好都合であった。
「『非常に明るいボンボリの真ん前はかえって見にくい』。追ってるつもりで、追われてた。だから、ボクが勝つ」
ベティは偽神兵器を振るい、またハイウェイを走る。
彼女にとって、サイバーザナドゥでの戦いは常に日常茶飯事。
つまり、この世界流に言うのならば。
「チャメイシ・インシデント」
日本のチャブにチャとメシが出てくるくらいいつも通りの事、ということである。
即ち、彼女の前を走る者には生命など無い――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【POW】
アドリブや連携も大歓迎だ
「ハイウェイチェイスか。
お前の独壇場だな、相棒!」
エンジンが燃えさかり、ライトが赤く輝く
ソルブレイザーは転送と同時に加速
ハイウェイ上を閃光の如く駆け抜け、
一気に『ヘリドー』の元まで到着する
道中のトルーパー達を[騎乗突撃]でぶっ飛ばすぞ
「手を貸すぜ、ヘリドー!引っ付いてくる連中は任せな!」
UCを発動させて周囲のトルーパー達を一掃する
射程外に居る敵にはサンライザーの[誘導弾]を掃射し、
次々と装甲車を破壊する
「彼女よりも先にオレをどうにかする方が先じゃないか?
さあ来いよ、ブレイザインはここに居るぜ!」
意識をこちらに向けて彼女の安全を確保する
さあ、続きだ。やるぜ相棒!
サイバーザナドゥのハイウェイは危険地帯であった。
常にそうであったように法令遵守などとは程遠い速度で車両が走り抜けるからだ。まるで速度メーターの限界まで踏み込まねばならぬとばかりにハイウェイは速度こそが全てであった。
だからと言って生命の危険に晒されていいわけがない。
けれど、ハイウェイに取り憑かれた者たちは皆、生命よりも速度を優先する。何よりも早く。誰よりも速く。
そのためだけに彼等は疾走する。
そんなハイウェイに鋼鉄の自動二輪を駆る運び屋『ヘリドー』がトランクケースを掴みオブリビオン『マフィア・トルーパー』に追い立てられている。
重火器から放たれる弾丸を躱しながら速度を維持するのは凄腕にハイウェイスターであっても難しいだろう。
じりじりと距離を詰められている。
「お前の独壇場だな、相棒!」
エンジンの中で炎が巻き起こり、テールランプがハイウェイの暗闇に軌跡を描く。
重厚なボディの武装オートバイがハイウェイを電光石火の如く走り抜ける。
それはまさに炎の矢のようであったことだろう。
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が駆る『ソルブレイザー』は加速し続け、一気にオブリビオンが運転し、他の猟兵達によって破壊された装甲車の残骸を躱して飛ぶようにハイウェイを走り抜ける。
「後方から来てるぞ! また猟兵だ!」
装甲車の運転席から『マフィア・トルーパー』が腕と一体化した重火器を後方より迫る『ソルブレイザー』へと放つ。
だが、その弾丸を躱し、一気にブレイザインは距離を詰めて突撃する。
装甲車が揺れるほどの衝撃。
その衝撃を受けながらも装甲車は、その車体を歪ませるだけだった。
放たれる弾丸を躱しながらブレイザインは『ヘリドー』に追いつき、声をかける。
「手を貸すぜ、『ヘリドー』! ひっついてくる連中は任せな!」
「え、あっ、ちょ……!」
次から次に現れる猟兵に『ヘリドー』は戸惑っているようでもあった。
けれど、猟兵たちが自分に味方してくれることはわかっている。
ならばこそ、彼女はうなずきアクセルを全開にして引き離す。その背中を、テールランプを見送りブレイザインは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
勇気と意志が体の内側から爆発するように、光焔が立ち上る。
それはまるで太陽そのものであった。
「まとめてぶっ飛ばす! ブレイヴゥ!ブレイズエクスプロージョォォォン!!!」
放たれた光が、後続の装甲車を一気に薙ぎ払う。
吹き飛ばされながらひしゃげる装甲車から飛び出す『マフィア・トルーパー』たち。
そこにブレイザインは立ちふさがる。
「彼女よりも先にオレをどうにかするほうが先じゃないか?」
「一人で立ちふさがったとて!」
その言葉を示すように後続の装甲車が次々とブレイザインを追い抜こうとする。だが、彼のはなったユーベルコードの光焔が装甲車を吹き飛ばす。
「遠慮するなよ、さあ来いよ!」
それは敵の注目を集めるものであった。
いや、むしろそれが目的であった。敵の数は多い。ならばこそ、『ヘリドー』の負担を減らすのならば、ここで自分に敵を集中させるのが最も良いことだとブレイザインは理解し、あえて敵を惹き付ける。
噴き荒れる光焔が『マフィア・トルーパー』たちを吹き飛ばし、焼き滅ぼす。
『ソルブレイザー』がハイウェイを疾走すれば、瞬く間に装甲車に追いつき車体を吹き飛ばす。
「ブレイザインは此処に居るぜ!!」
光焔を噴出しながら、ブレイザインは咆哮する。
ハイウェイに轟くように放たれる爆発は、今も尚彼が健在であることを示し、迫る『マフィア・トルーパー』たちを押し留め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
この荒廃した世界を何とかする為、頑張りますよ~。
早速この世界に順応してサイバー巫女クノイチスーツに身を包み、(乗り物必須なので)E●ママチャリを駆ってハイウェイを爆走(運転)する猟兵が一騎。
「大切なおつかいを最後まで全うできるようお手伝いします!」
常識で考えればママチャリでカーチェイスに加わる事など”ほぼ不可能”。
ですが《天賦の才》を用いれば60%まで成功率は跳ね上がり、更に念動力による加速や、AIさんのハッキングによる敵車両の走行妨害や、幸運による後押し(敵車両がぶつかり合う等で速度低下)も有って、追いつきます。
敵攻撃に対しては、ママチャリの力+運転・見切り・空中戦・空中機動でもって一時的に空を舞って回避したり、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受け使って敵攻撃を防いだりします。
(尚、ママチャリには事前に結界術・高速詠唱で防護を施し済です。)
お返しで、雷撃・雷の属性攻撃・神罰・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃・貫通攻撃による特大の雷をぬいぐるみさんの目から発射して、敵車両をまとめて破壊しますよ。
荒廃した世界。
骸の海が雨として降り注ぐサイバーザナドゥにおいて生身の人間は生きてはいけない。
故に体を機械化……義体化し、緩やかに滅びへと進む。
それがサイバーザナドゥ。
多くが享楽とのために金を使う。
より良きを求めるために金を求める。
そして、巨大企業群は金を持ってあらゆるものを支配する。
巨大企業『ティタニウム・マキア』が売るのは『安心安全』である。
その言葉がどれだけ空虚であるかを知るのはオブリビオンの存在を知る猟兵だけであったことだろう。
「この世界をなんとかするため、頑張りますよ~」
ハイウェイを疾駆するのはサイバー巫女クノイチスーツに身を包んだ大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)であった。
彼女のサイバネティックなスーツは、このサイバーザナドゥにおいては俗に言うニンジャと呼ばれるものを模したものであったことだろう。
ハイウェイを疾駆する彼女はさながら一陣の風のようであった。
しかし、彼女の騎乗するものは……。
「大切なおつかいを最後まで全うできるようお手伝いします!」
その言葉と共に風が走り抜ける。
いや、違う。
彼女が駆るのはママチャリであった。チリンチリンとベルを鳴らしてハイウェイを疾走するママチャリ。
まるで悪夢か幻か。
『マフィア・トルーパー』は装甲車と並走するほどの速度をはじき出すママチャリを幻視した。いや、現実である。
紛れもなく現実なのである。
「……疲れているのか、俺は。それとも義眼の調子がおかしいのか……!?」
『マフィア・トルーパー』は困惑していた。
違法ドラッグのキメすぎだったのかもしれない。
だが、彼の義眼が捉えているのは、ママチャリでハイウェイを疾走し、挙句の果てに猛スピードで装甲車と並走している現実である。
爆走と言っても良い。
常識で考えれば、絶対にありえないことである。
ママチャリでカーチェイスに乱入することなど。
ほぼ不可能。だが、ほぼ、ということは0ではないのだ。ならばこそ、その僅かな、か細い可能性を手繰り寄せ膨れ上がらせるのが天賦の才というものである。
ユーベルコードに輝く詩乃の瞳が言っている。
そう、0じゃあなければ六割にまで引き上げてみせると。
「さあ、行きますよ~」
あくまでおっとりした言い方であるが、その速度はちょっとおかしかった。
ママチャリを漕ぐ足があまりの速さにゆっくりと動いているようにさえ見えているのだ。
その速さを支えているのは彼女の強靭な足腰だけではない。
念動力でもって加速し、さらにはAIをハッキングし『マフィア・トルーパー』たちが運転する装甲車の補助システムを狂わせる。
走路妨害や、神性による幸運を後押し、追い風にして彼女は追いついているのだ。
「ば、馬鹿げてやがる!」
とにもかくにも並走する猟兵である詩乃を排除しなければならない。
『マフィア・トルーパー』が放つ重火器の弾丸が詩乃に迫る。
だが、その弾丸をママチャリの運転技術だけで躱しながら、さらに空を飛ぶのだ。
もうめちゃくちゃであった。
信じられないという言葉だけでは足りない。
正直に言って、常識から外れている。
「この程度、猟兵に出来て当然です。これはもう常識です」
詩乃の言葉がハイウェイに響き渡る。
いや、そうはならんやろ、と多くの猟兵たちは思ったかも知れない。けれど、今の詩乃はノリノリである。
ママチャリに乗っているだけに。
「お返しですよ! しびれちゃってくださいね」
ママチャリのかごに乗っている色々と権利的な問題が危ないぬいぐるみの瞳が輝く。
神罰の雷を宿す特大の一撃が装甲車を穿ち、『マフィア・トルーパー』をもしびれさせる。
「どんどんバンバンやりましょうね~」
あくまで微笑みながら雷を放ち続ける詩乃。
その姿はサイクリングに向かう女学生そのものであったけれど。いや、クノイチ装束の時点でママチャリとのミスマッチは否めない。最初に言うべきであったかもしれない。
しかし、彼女の駆るママチャリは事実、ハイウェイにおいても遜色ない速度を生み出している。
速度こそがハイウェイの大正義。
ならば、詩乃の駆るママチャリは、確かに正義なのだ。
故に彼女は装甲車を神罰の雷で蹴散らしながら、さらに迫りくるオブリビオンたちの義眼の調子を疑わせ、困惑のままに雷に寄る一撃で吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
●UC『神知』使用
【第六感】でここからいける!と思うポイントからヤクザ・トルーパーくんの車に飛び移る!
ヘイ!タクシー!
とヒッチハイクさながらに指をかかげてヤクザ・トルーパーくんに乗せてくれるよう訴えよう!
止まる気配が無いなら[叡智の球]くんに【ハッキング】をして乗っ取ってもらおう!
ヤクザ・トルーパーくん?[餓鬼球]くん放りだしといて!
●ブーーーーーン!ぎゅぎゅぎゅ!
[叡智の球]くんに【運転】してもらいながらカーチェイス!
ここはド派手に[ドリルボール]くんたちに併走あんど失踪あんど【蹂躙】してもらおう!
あ、なんとかいう運び屋くんは捲き込まないよう気を付けてね!
ハイウェイを走る装甲車の群れ。
それは運び屋『ヘリドー』を執拗に追跡する集団であり、彼等は彼女が持っているトランクケースの奪還を使命としていた。
しかし猟兵達によって阻まれ、また今まさに『ヘリドー』に逃げられようとしている。
それは彼等にとって死を意味するものであった。
『マフィア・トルーパー』たちは必死そのものだった。
装甲車のアクセルはベタ踏み状態であり、あらゆる障害を蹴散らすように装甲車はハイウェイを走り抜ける。
「ほんっとーにしつこい! まったく、まだ諦めないなんて!」
『ヘリドー』の声がハイウェイのアスファルトを切り裂く音によってかき消される。
だが、その声を標にするかのように未だ『マフィア・トルーパー』たちの駆る装甲車は彼女を追いかけ回すのだ。
「逃がすなよ! あのトランクケースさえ無事だったのなら、ほかはどうだっていいんだ!」
そんな『マフィア・トルーパー』は己の運転する装甲車の屋根が大きな音を立てたのに気がつく。
なんだ、と窓から身を乗り出して見上げた先にあったのは、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の顔であった。
にっこりと笑っていた。
『マフィア・トルーパー』は即座に手にしていたブッチャーナイフを振るい上げたが、そえよりも先にロニは『マフィア・トルーパー』の腕を掴んで外に放り出していた。
「ヘイ! タクシー!」
今言うことではない。
ロニは笑いながら装甲車の運転席に球体を押し込む。
このサイバーザナドゥで車両を制御しているシステムが積んであるのならば、それを利用して運転してもらおうと思ったのだ。
神様的ヒッチハイクと言われたらそれまでなのだが、奪った装甲車でハイウェイを疾駆するロニは風を感じていた。
「まあ、ただでは乗せてくれないと思ってたしね。さあ、『叡智の球体』くん、ごーごー!」
その言葉に応えるようにロニを乗せた装甲車がさらにエンジンをふかして走り続ける。
進路上には多くの破壊された車両の破片がある。
だが、装甲車はそんなもの意に介さない。
何故ならば、そういう悪路や悪条件の元に走破するために作り出されたものであるからだ。
自前ではなく奪う。
それがロニのやり方であったというのならば、それは賢いやり方であったのかもしれない。
「ブ――ン! ぎゅぎゅぎゅ!」
自分で運転しているわけではないけれど、ロニは口でそんな効果音を呟きながらハイウェイチェイスに興じていいる。
敵の進路妨害は掘削球体によって弾き飛ばし併走する全てを吹き飛ばしながら蹂躙していく。
出鱈目すぎる球体の蹂躙劇にオブリビオンたちは目を剥くしかなかっただろう。
「後続の車両はどうしたよ!」
「みんなやられちまってるよ! 残っているのは……俺たちばっかりだ! どうする!」
「どうするもこうするも……コンテナが無事だってんなら!」
『マフィア・トルーパー』たちの声をロニはハッキングしている『叡智の球体』から聞いて頷く。
ちょっとワクワクもしていたことだろう。
「何がでるのかな? ま、どうでもいいけどね! ヒッチハイク成功したし!」
してはいない。
どちらかと言うとカージャックである。
けれど、そんな細かいことを気にするようなロニではない。
ハイウェイを爆走する装甲車と共にロニは一気に『ヘリドー』を追うオブリビオンの装甲車を弾き飛ばし、さらに突き進むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
まあこの世界に限らず、大きな組織には後ろ暗いことの一つや二つや10や100はあるもんだけれど。パーツ一つに随分と大仰ねぇ。よっぽど何かしら拙いんでしょうけれど。
装甲車かぁ…拳銃とグレネードで相手するにはちょぉっと辛いトコねぇ。
ミッドナイトレースに○騎乗して|ラド《車輪》と|韋駄天印《迅速》で機動力を底上げ、●黙殺・砲列で|遅延のルーン三種《束縛・障害・停滞》の弾幕を展開。動き鈍ったところで構造〇見切って機関部に本命を●射殺でブチ込むわぁ。
弾丸に刻むのは|ウル《貫徹》・|帝釈天印《雷》・|ハガル《破滅》。どんな機械だろうと、中枢に高圧電流叩き込まれてまともに動くわけないわよねぇ?
「まあこの世界に限らず、大きな組織には後ろ暗いことの一つや二つ、十や百はあるもんだけれど」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はバイク型UFO、即ちヒーローカーたる『ミッドナイトレース』を駆り、その魔術文字によってさらなる加速を得て、ハイウェイを疾駆する。
彼女の言葉どおり巨大企業群『ティタニウム・マキア』もまたその一つである。
『安心安全』を売る企業。
そのキャッチフレーズは、クリーンな看板とは裏腹な事業内容によって支えられている。
街中のあちこちに立ち並ぶ看板はどれもが清廉潔白。
けれど、猟兵たちはもう知っている。
『ティタニウム・マキア』の下部組織は多くの非合法な業務を行っている。
カルト教団を始め、電脳空間における違法行為。
さらにはヤクザ事務所との繋がり。
多くが黒と判断されるものであったが、巨大企業群『ティタニウム・マキア』は巨大故に、黒を白に塗りつぶすことができる。
完全なる白でなくてもグレーゾーンを生み出すのだ。
「けどパーツ一つに随分と大仰ねぇ。よっぽど何かしら拙いんでしょうけれど」
そんなこと忖度する義理などティオレンシアにはない。
だからこそ、彼女は『マフィア・トルーパー』が駆る装甲車に迫り、そのユーベルコードを宙に刻む。
刻まれた魔術文字。
それは遅延のルーン文字。即ち、束縛、障害、停滞の三種。
そのルーン文字は弾幕と成って放たれる。それが黙殺・砲列(デザイア・バッテリー)。
「手数の多さは即ち強さ。『ゴールドシーン』、お願いねぇ?」
弾幕として放たれる魔術文字を受けた装甲車の車輪が急停止し、速度に乗っていた車体が跳ねるようにしてバウンドして回転する。
「……!? 急にエンジンが止まった!?」
「馬鹿野郎! 急に……!」
困惑が『マフィア・トルーパー』たちの中に広がっていく。
爆炎を上げる装甲車。
だが、さらにその脇を抜けてさらに迫る装甲車がある。
「数が大いにしたって限度があるでしょうに」
ティオレンシアは細められた瞳を薄っすらと開け、その手にしたペンの形をした鉱物生命体に祈る。
刻まれた魔術文字は貫徹と雷、そして破滅。
「|ウル《貫徹》、|帝釈天印《雷》、|ハガル《破滅》……どんな機械だろうと、中枢に高圧電流叩き込まれてまともに動かないわよねぇ?」
これまでの魔術文字の弾幕は、あくまで足止め。
敵の装甲車の機動力を奪い、運び屋である『ヘリドー』を追いかけさせないための布石。
ならばこそ、今はもう遠慮をする必要など無い。
ティオレンシアの手にした『ゴールドシーン』が指し示す先にある装甲車に叩き込まれる魔術文字の弾丸は、雷を放ちながら装甲の分厚さなど無視するかのように、その車体の中枢に走り抜け、その制御盤を撃ち抜く。
高度に成長した機械であろうと鋼鉄の車体にとって最も警戒すべきは電流である。
対策が行われていたのだとしても、ティオレンシアの放つ魔術文字は複合されている。
即ち、貫徹と破滅。
「必ず意味を為すわよぉ?」
走る雷が装甲車を内部から破壊し、膨れ上がるようにして爆炎を上げる。
ハイウェイは最早戦場そのものであった。
ティオレンシアはしかし見ただろう。
爆炎の向こう側で揺らめくようにして装甲車のコンテナが開くのを。
そして、その奥にある双眸の如き輝きが灯るのを。
あれこそがオブリビオンの本命。
「『ヘリドー』……『燕』なんて、空を飛ぶしか出来ない。ここはハイウェイ。地に足をつける者こそが最速……!」
砲弾のように射出される双眸の主。
その姿をティオレンシアは見ただろう。
瞬間的な速度だけで言えば、猟兵たちにすら捉えられない速さ。
まさに迅雷の如き疾駆が猟兵達の間隙を縫い、『ヘリドー』へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『ハイウェイチェイス』
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POW : 邪魔する奴を体当たりで跳ね返す
SPD : 最高速度でかっ飛ばす
WIZ : 敵の移動ルートを読み、別ルートから攻める
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それは迅雷。
装甲車のコンテナから飛び出した一つの影が猟兵たちの間隙を矢のように走り抜け、一気に運び屋『ヘリドー』に迫る。
一瞬の出来事だった。
「……!?」
『ヘリドー』は反応すらできなかった。
自身の義体である腕ごとトランクケースが奪い去られ、ねじ切られるようにして破壊され自分の腕が合った部位を驚愕に満ちた瞳で見ることしかできなかった。
「『これ』は返してもらう。運び屋『ヘリドー』。『燕』の名を持つもの。空を征く者の名を持つがゆえの傲慢。地を這うものの実直なる歩みを知らぬ者。私は『ジンライ・ウォーカー』。まだ名を持たざりし『ミルミギ』たらんとする者」
故に、と『ジンライ・ウォーカー』は凄まじい速度で『ヘリドー』を捨て置きハイウェイを疾走する。
その速さは瞬間的な速度で言えば、猟兵達をも凌駕するものであったことだろう。
多脚であるがゆえの瞬発性。
どうにかして『ジンライ・ウォーカー』に追いつかねばならない。
「私のことはいいから! なんとかするから……もし、あなた達が私の『おつかい』を手伝ってくれるっていうのなら!」
あのトランクケースを取り返してくれと、彼女は願う。
その願いに猟兵たちは応えるように、ハイウェイの彼方へと走り去ろうとする『ジンライ・ウォーカー』を追うのであった――。
ドラッヘ・パンツァー
「空を往く者の名を持つがゆえの傲慢」か……同じく、空を往く者として黙って居られぬ。
ヘリドー、であったか。その願い、確かに聞き届けた。燕の固き意志は、この竜が引き継ごう。
「ホバーウィング」による"空中機動"でウォーカーが走り去った方向へ飛行。まずは視認できる範囲まで近づくぞ。
各部出力"限界突破"、速度を上げる……メンテナンス箇所が増えるばかりであるな。
「サーチカメラアイ」の視認範囲に敵を捉えた後は、「疑似感情機構」のオフと共に『賢竜の予知』を。
……敵機確認、ろっくおん完了。敵行動ぱたーんヲ演算、予測。
「鼻部二連速射機銃」偏差射撃開始。敵進行るーとノ妨害、及ビ当機ヘノ攻撃ヘノ対処ヲ実行シマス。
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』の速度は凄まじかった。
運び屋『ヘリドー』からトランクケースを一瞬にして奪い去り、ハイウェイを疾駆する姿は正しく迅雷の名に相応しいものであったことだろう。
「空を征く者の名を持つがゆえの傲慢か……同じく空を征く者として黙って居られぬ」
ドラッヘ・パンツァー(西洋竜型試作頭脳戦車・f38372)は竜型の大型筐体を持って空を飛ぶ。
ハイウェイの空から見下ろす視界は、彼方へと走り去らんとしている『ジンライ・ウォーカー』を未だ捉えていた。
多脚でもって悪路であっても簡単に走破せしめ、瞬発性能であれば他の追従を許さぬとばかりに走り去っていく。
「『ヘリドー』、であったか。その願い、確かに聞き届けた」
「お願い!」
その言葉と共にドラッヘは空へと舞い上がる。
地にありて疾駆する者と空を征く者。
どちらが速度に優れているものかを示すための追走劇が今まさに幕を上げる。
彼女の筐体、その翼が羽ばたくと同時に各部から排熱された白い煙が立ち上る。
だが、その翼がすべてを吹き飛ばすかのように羽ばたけば、反重力装置とプラズマ推進装置によって得られた力が一気に彼女の筐体を弾くようにして空を飛ばせる。
それでも尚、彼方。
「『燕』の固き意志は、この竜が引き継ごう」
どれだけの意志を重ねたとしても、義体の性能差は如何ともし難い。
だからこそ、ドラッヘは自身のメンテナンスの箇所が増えることをいとわずに出力を上げていく。
熱を持つ筐体。
排熱が間に合わないのか、その鱗の如き装甲が赤熱するようでもあった。
「見つけた……演算開始……敵機ノ行動ぱたーんヲ予測」
疑似感情機構を切って、その演算領域を予測に切り替える。
『ジンライ・ウォーカー』の走路の予測。
どこに向かおうとしているのかを予測できたのならば、そのルートを算出することができる。
賢竜の予知(カリキュレイション)たるAIの演算能力は最大限に発揮され、牽制の鼻部に備えられた二連速射機銃の射撃を開始する。
撃ち込まれた弾丸を即座に躱す『ジンライ・ウォーカー』。
「無駄だ。私の脚部性能は貴様たちを圧倒している。どれだけ弾丸を放とうとも」
しなるように多脚が跳ね、その義体をもって『ジンライ・ウォーカー』はハイウェイを疾駆していく。
それはドラッヘにとって予測されたものであった。
弾丸を打てば必ず躱す。
躱すとわかっていたのならば、その進路方向を変えざるを得ないように導けばいい。
「敵進行るーとノ妨害」
「チッ……ルートを再算出。変更。それでも!」
ハイウェイの路線切り替えを行った『ジンライ・ウォーカー』が走る。
空から見下ろすドラッヘにはわかる。
『ジンライ・ウォーカー』が目指す場所が。
それはハイウェイから市街地に入り込むインターチェンジ。
彼女の義体能力であれば、ハイウェイよりも市街地の走路のほうが猟兵たちを撒くのに適している。
ならばこそ、その市街地へと侵入させぬことこそが肝要。
「はいうぇいコソガ敵機ノ檻」
ドラッヘの放つ射撃が市街地への侵入を許さず、速度こそが全てのハイウェイに未だ『ジンライ・ウォーカー』を閉じ込めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
んー、今既にお仕事の途中なんだけど……まあ元々その予定だったしね★
後ブツの強奪シーンだけど撮れるなら撮っておくね★
ロボットビースト達を放ってー…蒼い鳥にホログラム偽装した撮影・配信ドローン『ことりちゃん』も広域展開、偵察させて行き先を把握、味方に配信しちゃうよ★
|BlueBird is Watching YOU!《蒼い鳥はいつもきみを見てるよ★》
それとー……あったあった★
さっきの装甲車でまだ使えそうなやつにー……『センジュハンドユニット』の『端末侵入用ニードル』でハッキング、コネクター接続してUCを使って追っかけるぞ★追いついたら後ろからぶつけ…追い立てて都合のいい場所へと誘導するよ★
運び屋『ヘリドー』の仕事と猟兵の仕事は重なる部分があれど基本的に異なるものであったことだろう。
彼女の仕事は物品を運ぶこと。
猟兵の仕事はオブリビオンを打倒すること。
重なれど異なる。
故に『ヘリドー』は願ったのだ。
「んー、今既にお仕事の途中なんだけど……まあ元々その予定だったしね★」
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は頭脳戦車たる筐体型の体に備えられたカメラをウィンクさせるようにシャッターを切る。
「後、ブツの強奪シーンだけど撮れるなら撮っておくね★」
「疑ってないよ。今まで助けてくれた人をさ」
『ヘリドー』の腕はトランクケースを奪い去ったオブリビオン『ライジン・ウォーカー』によってねじ切られ、ハイウェイに落ちている。
その腕部を手にとって『ヘリドー』は手をふる。
後は頼んだと言う彼女の声を背にシルキーの筐体型の躯体はハイウェイを走る。
ロボットビーストたちを解き放ち、蒼い鳥に偽装したドローン『ことりちゃん』をシルキーは飛ばせる。
「うん★なるほど! 行き先はやっぱり巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルのある場所だね、このルートだとさ★」
シルキーはドローンから伝わる情報を精査して、そう結論づける。
偵察と撮影を兼ねるドローンの情報は、味方である猟兵たちにも伝えられる。
「|BlueBird is Watching YOU!《蒼い鳥はいつも君を見てるよ★》 なんてね。それとー……あったあった★」
シルキーはハイウェイを疾駆しながら、横転してはいるものの、比較的無事な装甲車に近づき、そのカメラアイをユーベルコードに輝かせる。
「それじゃシルキーちゃんコネクト・オーン!」
殲滅機構・規格外兵装(オーバードーズ・イレギュラーウェポン)。
それはシルキーの箱型筐体から出現した精密作業用ハンドであった。
先端からは端末侵入用ニードルが飛び出し、装甲車に接続する。システムでもって運転サポートがなされているのならば、シルキーは、それを掌握支配することができる。
比較的無事だった装甲車を選んだのはそのためだ。
彼女は装甲車の上に乗り上げ、一気に暴走寸前のエンジン出力をもっていっきにハイウェイを駆け抜ける。
彼女のユーベルコードは、掌握した兵器や機械の出力を上げる。
まるで暴走し自壊するかのように異形へと変形し、負荷限界にひた走るのだ。
「これならまだ追いつけるよね★」
シルキーは爆走を続ける装甲車と共に『ジンライ・ウォーカー』を追う。
限界を超えたエンジンが炎を上げる。
けれど、その勢いは止まらない。
「――……! 自損覚悟というわけか」
「ううん、追いついたらぶつけてやろうと思って★」
シルキーは装甲車の上から『ジンライ・ウォーカー』に迫る。
この装甲車を彼女のぶつけようとしても、恐らく瞬発性能によって躱されてしまう。
そもそも彼女の目的は今此処で『ジンライ・ウォーカー』を仕留めることではない。
彼女が『ティタニウム・マキア』本社ビルに到達しないように都合の良い場所へと追い立てることである。
あのトランクケースの中身が『ティタニウム・マキア』にとって重要な物品であるというのなら、それを取り返すことがただ撃破するより良いことであるようにシルキーには思えたのだ。
「壊れるまで暴れちゃうぞ★ さあ、とつげーき★」
シルキーの言葉と共に接続用コネクターが切り離され、彼女の筐体がハイウェイに飛び降りる。
『ジンライ・ウォーカー』が降りようとしていたハイウェイのインターチェンジの入り口を装甲車が塞ぎ、彼女は進路変更を余儀なくされる。
「市街地へ入れば逃げ切れるというのに!」
「だからーそれはさせないってば★」
シルキーはさらにローラーレッグを展開して『ジンライ・ウォーカー』を追う。
まだ追走劇は終わらない。
トランクケースも奪い返していない。
ならば、まだシルキーはハイウェイを疾走するしかないのだ――!
大成功
🔵🔵🔵
セイカ・ヤブサメ
【アドリブ連携OK】
SPD
野郎、なんて速さだ…!
しかもサイバネ多脚とは言え脚一つでハイウェイを走り抜けやがるとは…
…上等だ!韋駄天勝負ってんならこっちも走り屋の意地がある!
ヘリドー!タバコの火の恩返しだ、ちょっとアンタの荷物を取り返してくる!
|走り屋《バイカー》は度胸、ビビったら負けさ!
ヴァルチャーのアクセルをフルスロットル、【限界突破】の爆走【運転】だ!
周囲の車両やジンライ・ウォーカーが撒き散らした障害物は車体ごと【スライディング】や【勝負勘】を働かせながらの【見切り】でスピードロスを抑えつつ回避しながら徐々に距離を縮めてやる!
ハイウェイはアタシの庭だ、逃げ切れるとは思わないことだね!
圧倒的な速さ。
それが『ジンライ・ウォーカー』の名の由来であったのならば、その瞬発性は猟兵すらも凌駕するものであった。
支えるのは多脚。
その多脚は地を這う者であるがゆえ。
「野郎、なんて速さだ……!」
セイカ・ヤブサメ(ハイウェイの戦女神・f36624)は運び屋『ヘリドー』の腕部をねじ切った瞬間を捉えることができなかった。
それほどまでの速度だった。
「しかもサイバネ多脚とは言え脚一つでハイウェイを走り抜けやがるとは……」
尋常ではなかった。
それにトランクケースを奪われた。
あれには巨大企業群『ティタニウム・マキア』の重要な物品が収められている。
『ジンライ・ウォーカー』はそれを奪い、ハイウェイを疾駆している。
「……上等だ! 韋駄天勝負ってんならこっちも走り屋の意地がある!」
セイカは己が羽織るジャケットが、背負うものがなんであるのかを己こそが最もよく知っている。
『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』。
大型二輪の後輪が空転し、その名の重さを知らしめるようにエンジンが唸りを上げる。
「『ヘリドー』! タバコの火の恩返しだ、ちょっとアンタの荷物を取り返してくる!」
「無理はしないで! アイツ、多分殺し屋の類だよ!『ミルミギ』って言ってた!」
その言葉にセイカは拳を突き上げる。
「|走り屋《バイカー》は度胸、ビビったら負けさ!」
今更だというようにセイカはアクセルをフルスロットルでハイウェイを疾駆する。
『ヘリドー』の言葉もわかる。
敵は、『ジンライ・ウォーカー』は巨大企業群『ティタニウム・マキア』のオブリビオンだ。
ならば、彼女が心配するのも頷ける。
けれど彼女はビビらない。
身に宿した胆力が漲るように発露する。マシンの限界を引き出す。エンジンの唸り声は今日もご機嫌でるあるとセイカは思っただろう。
周囲に破壊された装甲車や一般車両の残骸が散乱している。
ネジ一本であっても浮石のように車輪を浮かせるだろう。
けれど、彼女の勝負勘は衰えていなかった。初代総長の名は伊達ではないのだ。
「……追いかけてくる。この悪路を二輪で?」
「ああ、そうさ!」
セイカのハンドリングが冴え渡る。
障害物など障害にはならない。スピードのロスを避けるために彼女は、あらゆる状況を見切る。
まるで自分の手足のように。
鋼鉄の車輪はセイカにとって第二の脚そのものであったことだろう。
撒き散らされる障害物も車体を横滑りさせて切り抜ける。
「普通じゃない……!」
「ハイウェイはアタシの庭だ、逃げ切れるとは思わないことだね!」
他の猟兵によって『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと至るインターチェンジへの道をことごとく潰され、迂回路を走っているのだとしても『ジンライ・ウォーカー』は己が今追い込まれているという事実を認識する。
じわり、じわりと己の背に迫るものがなんであるのかを彼女は知らなかった。
それは焦燥というものだ。
追う者がいるのならば、追われる者がいる。
彼女は今まさに追われる者となった。
セイカというコンドルが今、地を疾駆して彼女の背を捉えている。
獰猛なる瞳。
如何なる者も彼女からは逃れ得ぬと言わんばかりの輝き。バイクのドライビングテクニック一つで彼女は『ジンライ・ウォーカー』の側道に追従し、追い立てるようにエキゾーストを撒き散らしながら追いかけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ベティ・チェン
「キミは。自分すら、騙して。それすら気づかぬ、オロカ者?」
スピード落としジンライの真横を飛行
「ドーモ、ウソツキ=サン。ベティ、デス。キリステ・ゴーメン!」
真横を飛行しながら偽神兵器振るい敵の腕や足の切断狙う
勿論市街地に降りる側には近付けさせない
丁々発止しながら会話
「ホントに、気にしないなら。羽や空なんて、口にしない。魚は泳ぐことは求めても、空を泳ごうと、思わない。空が、飛行が、気になってしょうがないから。自分すら、騙す。だってキミは、マッハで走れない」
「ボクは、作られた神の、なりそこない。キミは、まだタダビト。その、偽神の腕。自分に付けて、階梯を、上がれ」
敵の腕や足切断
そこに接合するよう促す
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は多脚の義体でもってハイウェイを疾駆する。
瞬間的な最大速度は確かに迅雷の名を恣にしている。
だが、猟兵達によって目的地である巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと至るハイウェイをのインターチェンジへの侵入をことごとく封じられていた。
故に彼女は市街地に降り立ち、猟兵たちを撒こうとしていたのだ。
けれど、それさえも邪魔される。
「……邪魔を!」
「キミは。自分すら、騙して。それすら気づかぬ、オロカ者?」
その言葉は『ジンライ・ウォーカー』のすぐとなりにで発せられていた。
彼女はその言葉に目を見開く。
瞬間的に悟った。
今多脚を跳ね上げなければ己は切り捨てられると。雷のような瞬発性でもって『ジンライ・ウォーカー』はハイウェイの地面を蹴り上げる。
跳躍した其処に斬撃の痕が刻まれる。
「……ッ!」
「ドーモ、ウソツキ=サン。ベティ、デス。キリステ。ゴーメン!」
ベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)だった。
彼女の偽神兵器の斬撃が『ジンライ・ウォーカー』に放たれ、それを躱された。いや、それは構わない。
彼女にとっての目的は、『ジンライ・ウォーカー』を市街地に降ろさないことだった。
ハイウェイの真ん中に追いやられた彼女は忌々しげに疾駆する。
それしか選択肢はないというようにベティはユーベルコードに輝く瞳でもって彼女に追いつく。
凄まじい速度。
偽神降臨(ギシンコウリン)によって飛翔する彼女は『ジンライ・ウォーカー』に問いかける。
「ホントに、気しないなら。羽や空なんて、口にはしない。魚は泳ぐことを求めても、空を泳ごうと、思わない。空が、飛行が、きになってしょうがないから。自分すら、騙す、だってキミは、マッハで走れない」
ベティの言葉は『ジンライ・ウォーカー』を見透かす瞳のようであったのかもしれない。
確かに『ジンライ・ウォーカー』は速い。
けれど、それは義体の特性故である。
瞬発性は迅雷のように。けれど、それが持続できるものではない。だから、猟兵たちに追い詰められる。
「黙れ。私は未だ『名』を持たざる者」
「ボクは、作られた神の、なりそこない。キミは、まだタダビト」
「黙れと言った!」
跳ねる義体。
一瞬で飛翔するベティの側面に回り込む『ジンライ・ウォーカー』。
挑発であったのかもしれない。そうであったのだとしても、ベティの見透かすような言葉に彼女は憤る。
彼女はまだ名を持たない。
『ティタニウム・マキア』の要する殺し屋としての名を持っていない。
サイバーザナドゥにおける殺し屋の名。
それは自分が一角の人物であることを知らしめるために必要なものであった。
けれど、まだ足りないのだ。
正体不明の殺し屋、業界最高峰と言われる『メリサ』。
怪力無双と呼ばれる『アイレオ』。
電脳を泳ぐ大鯨『ケートス』。
解毒できぬ毒を刺す『クヌピ』。
「だから! 私が!!」
「その、偽神の腕」
ベティの偽神兵器の斬撃が『ジンライ・ウォーカー』の腕を切り裂く。トランクケースを持たぬ腕。ベティを叩き潰さんとした腕を切り裂く。
「自分に付けて、梯子を、上がれ」
促す言葉。
けれど、『ジンライ・ウォーカー』は走る。それはできないというように。彼女は走ることしかできない。
愚直であっても。
それでも彼女は名を欲するために走るのだ。
「やっぱり、ウソツキさん」
ベティは、ハイウェイをひた走る『ジンライ・ウォーカー』をさらに追いかける。
互いの主張は交わらない。
激しく激突することでしか猟兵とオブリビオンは交われない。互いに滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないからこそ、ベティは偽神兵器を振るう――。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
出遅れてしまいましたがハイウェイスターは無事のようですね…ひとまずは安心しました。
では、ここからは追跡ですね。逃亡犯を追い立てるのは警察の本業、決して逃がしませんよ。
ミニパトでハイウェイを疾走し、ミニパトからUCでドローン9機を召喚。今回のドローンは追跡技能特化型です。
ドローンを周囲に飛ばし、敵の位置情報や敵までのルート情報を即座にリアルタイムで導き出させ続けてドローンのナビ通りに敵を追跡します。
まあ、最終目的地は本社ビルなのでしょうが…現時点では連中の本拠地を叩くには情報も何もかもが足りていません。それに、本社ではなく一旦別の拠点に隠れるかもしれない…一時も見逃さないように注意して追います。
『ジンライ・ウォーカー』はオブリビオンである。
彼女が奪い去ったトランクケースは巨大企業群『ティタニウム・マキア』にとって重要な物品であった。
運び屋『ヘリドー』から奪い去ったそれを抱えたままハイウェイを疾駆している。
そんな情報を受け、なおかつハイウェイで多発した装甲車の横転事故を要約に警察機構は重たい腰を上げて急行するのだ。
だが、そんな重い腰の警察機構よりも素早く飛び出していた者がいる。
そう、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は正義の武装警官である。
巨大企業群は当然のように警察機構と癒着している。
彼等の犯罪行為の多くは見逃されている。けれど正義の武装警官である彼女にとって、それは些細な問題であった。
ハイウェイにパトランプの赤い明滅が走り抜ける。
それは彼女のミニパトだ。
いや、ミニパト、か? と誰もが思ったかも知れない。だが今、彼女の駆る四輪装甲車……もといミニパトに対して疑念を抱ける者はハイウェイにはいなかった。
「逃亡犯を追い立てるのは警官の本業、決して逃しませんよ」
神経接続によってコントロールされたミニパトから九機のドローンが飛び立つ。
最新鋭軍用ドローンである翁丸ドローン(オキナマルドローン)は、電脳無線によって、にこたまとつながっている。
周囲に飛び立ち、上空から戦況を把握するのだ。
「出遅れてしまいましたが……件のハイウェイスターは無事のようですね」
ひとまずは安心だと、にこたまはドローンから送られてくる情報を見やる。
猟兵たちの追撃によって運び屋である『ヘリドー』からトランクケースを奪い去ったオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は未だハイウェイを疾駆している。
彼女が向かっているのは言うまでもなく、巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルである。
だが、その道に通じるインターチェンジは猟兵によって塞がれ、迂回をせざるを得なくなっている。
また同時に市街地に降りることさえも封じられているのだ。
言ってしまえば袋のネズミ。
ハイウェイこそが彼女の檻となっている状況。
「ですが、まだ油断はできません。どこから市街地に降り立つかわからない」
そうなれば、あの『ジンライ・ウォーカー』の瞬発性を活かして、市街地に紛れ込まれたら最早追いつくことはできない。
直線が多く、また遮蔽物が少ないハイウェイで彼女を仕留めなければならないのだ。
「最終目的地は本社ビル……現時点では連中の本拠地を叩くには情報も何もかもが足りていません」
それに、とにこたまはドローンから送られてくる情報を注視する。
猟兵を撒くために別の拠点を目指すために進路を変更するかもしれない。
「インターチェンジは全て封鎖を」
ドローンを介して、にこたまはハイウェイのゲートを全て閉鎖する。
越権行為であると咎められるかもしれない。
けれど、それは正義のためである。
全ては彼女の心の中に燃える正義が肯定してくれる。
彼女は警察という組織の一員である。末端でもある。物事には順序立てなければならないものがある。
けれど。
きっと彼女はこういうだろう。
それはそれ、これはこれ、と。
彼女の正義は、炉心に燃えている。サイバーザナドゥの腐敗を嘆き正義を行使することを決意した武装警官たる彼女を止められる理屈は、ない。
「さあ、『ジンライ・ウォーカー』。正義の名の下にホールド・アップです!」
にこたまはハイウェイを逃亡し続ける『ジンライ・ウォーカー』を目指し、四輪装甲車を跳ねさせるようにスピードを上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
引き続き《天賦の才》を使用してママチャリ爆走中。
トランクを取り返す為には市街地に逃がしてはまずいですね。
AIさんによるハッキングでハイウェイ上の車を操作して、『ジンライ・ウォーカー』さんがハイウェイがら降りられないように出口を塞ぐ。
でもこのままでは埒が明かないのも確か。
ですのでカーブが見えてきたら、第六感で彼女が取りそうなルートを掴んで、ママチャリの力で空を飛びつつの念動力による加速・空中機動でショートカット。
頭上を押さえて、ぬいぐるみさんの目から電撃・雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃にて広範囲に網のように広がる雷を発射!
彼女の機器部分を電流で故障させて、後続の猟兵さんに繋げますよ。
ママチャリがハイウェイを爆走している。
それは後に警察機構に伝えられた情報であった。
多発した装甲車の横転事故。ハイウェイは混沌めいた現場へと変わっていたし、また警察機構が巨大企業群と癒着を当たり前のように起こしているからこそ、この事態に動き出すことの初動が遅れたのは仕方のないことだった。
けれど、後々に集まった情報の中には奇妙な目撃証言がいくつかあった。
その中の一つが上記である。
爆走するママチャリ。
しかもペダルを漕いでいるのはクノイチルックな女性であった。
あまりにも非現実的。
あまりにも不可解。
しかし、それは事実である。ハイウェイに設置されていた多くの速度超過防止用カメラには、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)がママチャリで疾走疾駆している姿が収められていたのである。
「AIさん、ハッキングでハイウェイ上の車を操作して『ジンライ・ウォーカー』さんがハイウェイから降りられないように出口を塞いでくださいな」
彼女の着込んだ特殊なニンジャスーツにはAIが搭載されている。
そのAIが周辺の車両にハッキングし、操作してインターチェンジの出入り口をことごとく塞ぐのだ。
他の猟兵たちの妨害も相まって『ジンライ・ウォーカー』はハイウェイから脱出することが困難となっていた。
「とは言え、このままでは埒が明かないのも確か」
詩乃は速度では『ジンライ・ウォーカー』には追いつけないと理解する。
いや、そもそもママチャリでハイウェイに乗り込んでいる時点で、相当におかしなことになっているのだが、詩乃はかまわなかった。
彼女にとって、それは些細な問題であった。
ママチャリだろうがなんだろうが、彼女が駆る以上オブリビオンの悪事を見逃す理由にはなっていない。
追いつく可能性が絶無であるというのならば、確かに彼女の天賦の才も無意味であっただろう。
けれど、『ジンライ・ウォーカー』にないものを詩乃は持っている。
それは、ショートカットである。
『ジンライ・ウォーカー』は大地を疾駆する多脚の義体を持つ。瞬発性は凄まじいものであった。
逆に詩乃はママチャリであるが、念動力を持つ。
その念動力があれば!
「ショートカットです!」
彼女の第六感が告げている。そのカーブが見えてきたのならば、ハンドルを右に! インド人を右に、ではない。
切り替えたハンドルによってママチャリは空を飛ぶ。
些か権利的にやばい光景になってはいるが、彼女の念動力は空飛ぶママチャリとなって大胆なショートカットを果たす。
「……頭上を抑えられた!?」
『ジンライ・ウォーカー』が驚愕するのも無理なからぬことである。
いつのまにか敵が自分の頭上を飛んでいるのだから。しかもママチャリ。もう滅多なことでは動揺はしないだろうと思っていたが、実際に空を飛ぶママチャリをみれば、誰もが動揺するだろう。
「天網恢恢疎にして漏らさず! 網目のように広がる雷は逃げられませんよ!」
放つ雷が『ジンライ・ウォーカー』の義体を撃つ。
帯電する義体。
敵が機械化されているというのならば、電流の一撃は動きを鈍らせるかもしれない。
詩乃は一人で戦っているのではない。
敵が逃げに徹し、また自分がそれに追いつけないというのならば、後に続く猟兵に託すのみ。
故に彼女は雷の網でもって『ジンライ・ウォーカー』を追い詰めハイウェイにさらなる都市伝説として噂されるようになるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
堂島・アキラ
いきなり現れて好き勝手やるのはオレだけの特権だ。それを何様のつもりだあの野郎。
しかも空がどうのこうのと御託並べた上にオレを無視していきやがった。さすがにカチンときたぜ。
オレの愛馬を舐めんじゃねえぞ!絶対に追いついてやるからな!
瞬発力はヤツが上でも最高速度なら負けてねえんだよ。それを見せつけてやる。
どこ行くつもりだコラァ!止まってオレと勝負しろや!
あの野郎のケツにロケランをブチこむ!……といきたいところだがさすがの瞬発力で避けられちまう。
なら先読みしてヤツが向かおうとする先にロケランを撃ち込んで進路妨害してやる。
今のオレはなぜか勘が冴えてる。怒り過ぎて逆に冷静になっちまったのかもしれねえ……。
オブリビオン『マフィア・トルーパー』たちが駆る装甲車のコンテナから飛び出し、いっきに運び屋『ヘリドー』の持つトランクケースを奪い去ったオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』の姿は、あっという間に見えなくなっていた。
あまりにも鮮やかな奪取劇。
彼方へと走り去る『ジンライ・ウォーカー』の姿を認め、堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)の可愛い顔に浮かぶのは血管であった。
音が鳴るのならば、『ビキィ』とかそんな感じであった。
「いきなり現れて好き勝手やるのはオレだけの都県だ。それを何様のつもりだあの野郎」
流石にアキラはカチンときていた。
いきなりである。
あんまりにもいきなりであった。
どう考えても礼儀がなっていない。いや、そんなことよりもアキラが気に食わなかったのは、散々に御託を並べた上に。
「オレを無視していきやがった」
こんなに可愛い己を。
無視したのだ。一瞥もくれることなく。『ジンライ・ウォーカー』が見ていたのは運び屋『ヘリドー』だけだった。
それがまた癪に触る。
「オレの愛馬を舐めんじゃねえぞ! 絶対に追いついてやるからな!」
唸りを上げるエンジンが同意を示すように出力を速度に変えてハイウェイを飛ぶように走り出す。
ツルギ社製のハイスピードバイクは、まさしく、刀身の鋭さを示すようにアスファルトを斬りつけながら走り抜ける。
障害物などまるで意に介さないかのようなハンドリング。
装甲車の残骸を飛び越えるようにして走り抜ければ、アキラは見た。
猟兵達によってインターチェンジへの侵入を阻止され、市街地へと降りることも封じされた『ジンライ・ウォーカー』が妨害を受けている姿を。
それを認めた瞬間、アキラの我慢の限界(ヒートアップ)はすでに超えていたのかもしれない。
「どこ行くつもりだコラァ! 止まってオレと勝負しろや!」
アキラはロケットランチャーを構える。
視界に『ジンライ・ウォーカー』の姿が見えた瞬間に躊躇うことなく引き金を引く。
放たれるランチャーの一撃が『ジンライ・ウォーカー』を捉える。
だが、それを瞬時に多脚の義体を持って飛び跳ねるようにして躱す『ジンライ・ウォーカー』。
最大速度はこちらが上のはずだ。
だが、瞬発性能は確実に『ジンライ・ウォーカー』の方が上である。見てからロケットランチャーの一撃を躱すことなど容易であったのだろう。
「チッ! ダメか……!」
だが、アキラは怒りにまかせて引き金を引くことをしなかった。
躱されたことは理解している。
敵の瞬発性能が高いせいだ。闇雲に撃ったところで出費がかさむだけであるとアキラは理解したのだろう。
怒りが振り切られたせいか、アキラの頭の中はクリアーだった。
いや、勘が冴えているともいえるだろう。
怒り過ぎて逆に冷静になったのかもしれない。
「なら、てめえの進路妨害だろうが!」
放つロケットランチャーは『ジンライ・ウォーカー』ではなく、彼女が市街地に降りようとしていた地点を狙って爆風を撒き散らす。
敵の狙いはトランクケースを巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルに運び込むことだ。
ならばこそ、ハイウェイという檻から脱しようとするだろう。
それをさせない。
市街地に乗り込まれては、あの多脚義体は猟兵を更に凌駕する。圧倒的な瞬発性能で逃げ切られてしまう。
だからこそ、ハイウェイから出さない。
囲い込み、このハイウェイという戦場でケリをつける。
「だだっ広い、平な場所ではなぁ! てめえの多脚も性能の全てを発揮できねぇだろうが!」
躱されるのならば爆炎で進路を塞ぐ。
アキラの冴え渡る勝負勘が告げる。
今此処で『ジンライ・ウォーカー』の足を止める。それこそが勝利への道筋であると――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
●引き続きUC『神知』使用
くぅーっ!インド人を右にーーっ!
なんてこったい!このマシンじゃ追いつけにゃい!
んー…
レースゲーならガーッと直線ショートカットとかするとこかなー
●ジツトビル街ヲ見ル
いやダメだ…それじゃ別のゲームになっちゃうもの!
ここは名前を出しちゃいけない某レースゲーム風にお邪魔アタックをして距離を詰めよう!
[球体]くんを【第六感】に任せ空へ次々【投擲】!空中で大きくなっていって彼女と彼女の進路…ハイウェイに降り注ぐ!
そして直線で彼女を捉えたら…今だよ[叡智の球]くん!【リミッター解除】!!
一度限りの超加速で彼女を追いぬくよ!!
これでレースはボクの勝ちだね!!
「くぅーっ! インド人を右に――っ!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の叫びがハイウェイに響き渡る。
装甲車を乗っ取った彼はハイウェイをご機嫌にかっ飛ばしていたが、運び屋『ヘリドー』からトランクケースを奪い去った『ジンライ・ウォーカー』に引き離されるばかりであった。
それほどまでに『ジンライ・ウォーカー』の速度は凄まじいものであった。
瞬発性能も尋常ではなく、大抵の攻撃は躱されてしまう。
「なんてこったい! このマシンじゃ追いつけにゃい!」
ロニは早々に理解してしまっていた。
神知(ゴッドノウズ)あるからこそ、絶対的な差というものを知ってしまうのだ。
これがレースゲームであったのならば、ガーッと直線ショートカットをするところであるのにと彼はハイウェイの眼下にある市街地を見やる。
じっと。
じっと見つめるのだ。
別に装甲車だからいいのではないかという思いが僅かであれど彼の中に湧き上がる。
「いやダメだ……それじゃ別のゲームになっちゃうもの!」
現実なのである。
ゲームではどれだけ街を破壊しようが、砕こうが構わない。けれど、サイバーザナドゥの現実世界では、それはやってはならないことである。
「んー……じゃあ、こうしよう! 球体くん!」
ロニは装甲車の運転席から身を乗り出して、次々と球体を投げ放つ。
それは投擲と呼んでいいものであったし、放たれた空中でどんどん膨らむように巨大な姿へと変わっていく。
その投擲が狙ったのは『ジンライ・ウォーカー』ではなく、彼女の進路であった。
敵の最終目的地は巨大企業群『ティタニウム・マキア』である。
これまで他の猟兵がそうしたように、その進路を妨害するということは『ジンライ・ウォーカー』の瞬発性能を最大限に引き出す市街地への侵入を防ぐという意味では有効であった。
ただ、放たれる球体がハイウェイを尽く破壊していく。
アスファルトを砕き、破片が飛び散る中を『ジンライ・ウォーカー』は雲なく飛ぶように躱して疾走するのだ。
美しさすら感じさせる迅雷の瞬き。
「無駄だ……!」
「ううん、無駄なんかじゃあないんだよ! 直線でキミを捉えることができたからね! 今だよ『叡智の球』くん! リミッター解除!!」
奪い取った装甲車のエンジンが唸りを上げる。
凄まじい咆哮を上げるように装甲車がハイウェイの直線を走り抜ける。
これは一度限りの超加速。
一度使ってしまえば、装甲車のエンジンは焼付き使い物にならないだろう。
だが、それでいいのだと言うようにロニは装甲車の上で風を感じる。
暴風と言っていいほどの強烈な風を受けながら、『ジンライ・ウォーカー』の背を捉える。
いっきに抜き去り、ロニは笑って振り返るのだ。
「これでレースはボクの勝ちだね!!」
その言葉は確かな勝利宣言であった。
これがレースであれば、の話だ。だが、『ジンライ・ウォーカー』にはそのつもりはない。
なぜなら、これはレースでもなんでもない。
ただ『ティタニウム・マキア』が持ち出されたトランクケースの中身を奪い返すための戦いであるのだ。
「……そうだっけ?」
ロニは某レースゲームのお邪魔アタックにかまけて、本来の目的を忘れて『ジンライ・ウォーカー』を抜き去ってしまったが、結果として彼女の市街地への侵入を防ぐことに成功するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
くっ……私としたことが出遅れるとは……
|エイル様《主人様》を探る切欠になりそうな|あの男《メリサ》が
出てきているならこの事件追わないわけにはいきません
現地調達した装甲厚めのハイスピードバイクを
メイド服で乗りこなしましょう
ええ、メイドに不可能はありません
【メイドズ・ホワイト】なら
いかなハイウェイチェイスでも反応しきってみせましょう!
フルスロットル!
最高速度で追跡します
何でもできるメイドを舐めない事です
併走まで追い付いたら幅寄せアタックは基本
下手に反抗や反撃してくるようなら……仕方ありませんね
たまには暴力に訴えるとしましょう
『ニゲル・プラティヌム』で連続射撃
バイクのタイヤを狙うとしましょうかね
巨大企業群『ティタニウム・マキア』。
安心安全を売る巨大企業。
その中に合って持ち出された義体のパーツが今、『ジンライ・ウォーカー』が運び屋『ヘリドー』から奪い返したトランクケースの中にある。
そのパーツが『ティタニウム・マキア』にとって痛手であることは最早言うまでもない。
『マフィア・トルーパー』の駆る装甲車の数や、『ジンライ・ウォーカー』の性能を見れば明らかである。
「くっ……私としたことが出遅れるとは……」
だが、そんなことなどお構いなしとばかりにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は歯噛みする。
「|『エイル』様《主人様》を探る切欠になりそうな|あの男《メリサ》が出てきているなら、この事件追わないわけにはいきません!」
彼女の目的は別に『ティタニウム・マキア』を追い込むことではなかった。
真に追い込みたいと思っているのは、別の人物。
彼女が『主人様』と言って憚らない存在である。そういう意味では確実にずれているのだが、それでもステラは現地で調達したハイスピードバイクを駆り、ハイウェイを疾駆する。
メイド服で跨る鋼鉄の騎馬。
それはハイウェイのアスファルトの上であろうが、なんであろうが関係ない。
彼女が見据えた目的を達成するためならば、如何なる場所であっても走るのが彼女のメイド道である。
そう、彼女は超有能なスーパーメイドなのである。
ユーベルコードに輝く瞳が爛々と輝いているのは、『主人様』と公言して止まぬ存在の情報を追い求めるがゆえ。
ちょっと怖い。
「ええ、メイドに不可能はありません。如何なるハイウェイチェイスでも対応しきってみせましょう!」
フルスロットルである。
現地で手に入れたハイスピードバイクの唸り声を上げるエンジンは、もう悲鳴じみている。
ステラの運転は決してメイドの嫋やかな雰囲気、貞淑なるものではなかった。
まるで猛獣が獲物を追い詰めるように疾駆するように荒々しく、ハイウェイの残された多くの装甲車の破片や残骸をこともなげに躱して飛ぶように走り抜ける。
テールランプの残光が刻まれるたびに、メイドとは一体、という疑念が湧き上がってくるが、古来よりメイド服と日本刀がマリアージュするように、拳銃とキャットガーターがワンセットのように、鋼鉄の騎馬たるバイクに跨り翻るメイド服スカートのフリルが眩しいのと同じように!
メイドとは如何なる状況においても光り輝くものなのである。
「なんでもできるメイドを舐めない事です」
「……!」
度重なる他の猟兵たちの妨害によってハイウェイから脱する機会を失っていた『ジンライ・ウォーカー』はいつの間にか並走してきているステラに驚愕する。
「たまには暴力に訴えることにしましょう」
表情を変えることなくステラはハイスピードバイクの座乗から二丁一対の拳銃を構え、引き金を躊躇うことなく引く。
たまには?
たまには、とは? いつもではないかというツッコミは聞こえてこない。
今日は単独行であるから、誰もステラにツッコまないのである! しかし、その銃弾は『ジンライ・ウォーカー』を捉えることはなかった。
その義体たる多脚でもって発揮される瞬発性能は、凄まじい。
高速機動を行っている最中であっても、何ら問題ないというように銃弾をかわし、さらなるハイウェイの彼方へと『ジンライ・ウォーカー』は走り去る。
「往生際が悪いですね。ならば、世界の果てまででも追いかけ回してみせましょう。全ては|『エイル』様《主人様》のために――!!」
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【POW】アドリブや連携も大歓迎だ
『ヘリドー』の言葉に強く頷く
「あのトランクケースはオレに任せてくれ!
ばっちり取り返してみせるさ!
さあ、やるぞブレイズ・ビートル!機炎合体だ!!」
機械で出来たカブトムシとソルブレイザーが
炎を纏いながら変形合体していく
合体が完了すると炎を振り切って超加速を開始する
「へっ!流石のパワーだな!
さあ、振り切るぞハイパーソルブレイザー!!」
サイドに増設されたキャノン砲と
サンライザーに[エネルギー充填]
[一斉発射]して道中の敵をなぎ払う
更にバイク前方のホーンによって
強化された[騎乗突撃]で近づいた敵を吹き飛ばす
「見えてきたな…。
ケリをつけようぜ、ジンライ・ウォーカー!」
トランクケースを奪われた運び屋『ヘリドー』の言葉を彼方に置き去りにするようにオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は凄まじい速度でハイウェイを駆けていく。
まさに迅雷の名に恥じぬ速度であった。
あまりにも速い。
圧倒的な速度。
もはや追いつけぬと『ヘリドー』は落胆したかもしれない。
けれど、その落胆をこそ燃やし尽くすかのように空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の声がハイウェイに響き渡る。
「あのトランクケースはオレに任せてくれ! ばっちり取り返してみせるさ!」
その言葉に『ヘリドー』は顔を上げるだろう。
俯くことなど何一つないとブレイザインは『ソルブレイザー』のエンジンを唸らせ、前をむく。
奪われたのならば奪い返せばいい。
単純なことだと言うようにブレイザインは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「来い、ブレイズビートル!」
その言葉と共に現れるのは鋼鉄の甲虫。
角兜を模したかのような合体武装が『ソルブレイザー』と合わさる。
それこそが彼のユーベルコード。
「機炎合体! |機炎合体!ハイパーソルブレイザー!!《合体『剛炎勇車』》」
炎を纏い合体を果たした車体がハイウェイを切りつけるようにして疾駆する。炎が噴出し、超加速がブレイザインの体を軋ませる。
「へっ! 流石のパワーだな! さあ、振り切るぞハイパーソルブレイザー!!」
車体に合体したパーツ、側面に配されたキャノン砲がエネルギーを充填する。
『ジンライ・ウォーカー』を追うハイウェイには多くの障害物が残されている。
これまで猟兵たちが撃破してきた『マフィア・トルーパー』たちの乗っていた装甲車もまた進路を阻むものであった。
それをキャノン砲から放たれる一撃が薙ぎ払い、さらにそれでも排除できぬ装甲車は前面に配された兜甲虫の如きホーンでもって吹き飛ばす。
横転した装甲車すら弾き飛ばす突撃。
それほどの質量と激突して尚、『ハイパーソルブレイザー』の速度は落ちない。
炎が彼の背中を押している。
どこまでも走れと言うかのように巻き起こる炎がハイウェイに軌跡を刻む。
「……炎。鬱陶しい……!」
『ジンライ・ウォーカー』は猟兵たちの妨害によって市街地に降り立つこともできず、またハイウェイから巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社ビルへと至るインターチェンジにも侵入できずにいた。
他の猟兵たちが紡いできた戦いが結実しようとしている。
ならば、ブレイザインは躊躇わず、その背中を追う。
「見えてきたな……」
フルスロットルで追いすがる。
敵の瞬発性は凄まじいものだった。
放たれるキャノン砲はまるで当たらない。あの多脚の義体が、その瞬発性を生み出している。
相手はトランクケースを抱えているというのに、まるで当たらない。
「邪魔立てばかりを!」
「ケリをつけようぜ、『ジンライ・ウォーカー』!」
ブレイザインの声がハイウェイに響き渡る。
追走劇を彩る炎。
それが呼び込むのは、最後の戦い――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ジンライ・ウォーカー』
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POW : ブルータル・ウォーキング
単純で重い【義体化脚部】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : アンチトラフィックジャム・メソッド
自分の体を【周囲に構わず突撃させる】させる攻撃で、近接範囲内の全員にダメージと【転倒】の状態異常を与える。
WIZ : ブラックワーク・オーバードーズ
【休憩なしでの連続勤務】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
イラスト:ヘッツァ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠高峰・勇人」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は猟兵たちの妨害によってハイウェイから脱する機会を失っていた。
彼女の目的は運び屋『ヘリドー』の運んでいたトランクケースを奪取し巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社に届けること。
猟兵たちを振り切ってハイウェイからインターチェンジに侵入し、市街地へと降り立てば最早彼等に自分を捉えることなどできない――はずだった。
だが、猟兵たちはその目論見を見切るように走路を妨害し、インターチェンジを封鎖してみせた。
幾度かあった市街地へと降り立つ機会も尽くが潰されてしまったのだ。
「忌々しいな。私をこれで追い詰めたつもりでるのが!」
片腕を失いながらもトランクケースは離さない。
背面の義体にトランクケースを固定し、『ジンライ・ウォーカー』は、己の義体の出力を上げていく。
これまではただハイウェイを疾駆するためだけに回されていた出力が、今は猟兵たちを排除するために高められていく。
此処からはハイウェイチェイス。
走りながらの高速戦闘。
これまでの『ジンライ・ウォーカー』とは違う。
確実に猟兵を排除するために、迫る彼等に己の全性能をもって相対する強敵としての姿を見せつける。
「邪魔立てをするのなら、排除するまで。お前たちはここで徹底的に潰す――」
ドラッヘ・パンツァー
……敵機ノ戦闘態勢移行ヲ確認。
思考りそーすヲ戦闘行動ニ分配……応戦ヲ開始シマス。
「ホバーウィング」ニヨル飛行状態ヲ維持。「鼻部二連速射機銃」ノ牽制射撃ヲ続行、近接戦闘ヘノ移行ヲ誘導。
敵機ノ近接戦闘態勢ヲ確認後、当機ハはいうぇいニ接地。
「ハイスピードモーター」ヲ最大駆動……"限界突破"、及ビ"ダッシュ"すたんばい。
当機ノ損傷ヲ度外視シ、近接攻撃ニ合ワセたっくるヲ実行。"重量攻撃"ヲ行イマス。
攻撃後、「脚部格闘機構」・「尾部格闘機構」ニヨル"グラップル"ヲ実行。
えらーヲ無視シ、激突・被弾ニヨル故障部分モ強制使用。
逃走妨害ト同時ニ『火竜の息吹』せっと……"零距離射撃"ニヨル火炎放射ヲ開始シマス。
手にしていたトランクケースを義体の後方にマウントしたオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』の瞳が輝く。
それは義体の性能を戦闘に特化させるためであり、ハイウェイを疾走しながら迫る猟兵に対しての対抗措置でもあった。
ただ逃げるだけ。
ただ運ぶだけであったのならば、そのような力は必要ない。
義体のパフォーマンスが向上し、これまでとは比較にならぬほどの戦闘力の発露を見せる『ジンライ・ウォーカー』は、その下半身の巨大な蟻のような義体を持って猟兵を叩き潰さんと跳躍する。
空に在りて、ドラッヘ・パンツァー(西洋竜型試作頭脳戦車・f38372)は跳躍した『ジンライ・ウォーカー』の戦闘力の推移を正しく計測していた。
「……敵機ノ戦闘態勢移行ヲ確認。思考りそーすヲ戦闘行動ニ配分……応戦ヲ開始シマス」
未だ自分の大型筐体は推力でもって空に在る。
だが、その距離を簡単に詰める『ジンライ・ウォーカー』の跳躍の速度は凄まじい。
近接戦闘へと誘導することが目的であったが、鼻部の機銃から放たれる弾丸は牽制にすらならなかった。
「竜であろうと」
「敵機ノ接近ヲ確認」
ドラッヘの巨体がハイウェイに降り立ち、脚部に内蔵されていた高性能モーターが唸りを上げる。
空ではなく、地にありても竜は竜である。
四足歩であるが、凄まじい速度でドラッヘはハイウェイのアスファルトを砕くようにしながら疾走する。
追いすがる『ジンライ・ウォーカー』は、その言葉すら意味をなさぬように一瞬でドラッヘの眼前に迫る。
限界を超えた機動。
だが、それでも『ジンライ・ウォーカー』には余力があるようであった。
「空に在りし傲慢を地に在りても発露できると思うな!」
揮われる蟻の如き義体の一撃がドラッヘに叩き込まれる。
機体がきしむ。
メンテナンス箇所がまた一つ増えた、と理解するよりも速くドラッヘは己の機体の限界を超えていく。
損傷は度外視。
それは機体を十全に保つべし、という義体としての理念を捨て去るものであった。
己の巨体はそれだけで質量攻撃になる。
高性能モーターが唸りを上げ、その巨体が『ジンライ・ウォーカー』に激突し、吹き飛ばす。
「ッ……! このっ!」
だが、その蟻の義体たる体は圧倒的な巨躯であるドラッヘすらも止めてしまう。
ドラッヘの脚部が蹴り上げるも、それでもアスファルトに多脚がしがみつき、その衝撃を受け止める。
「えらーこーどノ検出ヲ感知」
だが、ドラッヘは構わなかった。
尾部による打撃で『ジンライ・ウォーカー』を打ちのめし、その尽くを受け止められる。
激突によって内部フレームは軋み、破損していく。
それでも構わない。叩きつけ、ひしゃげ、打ちのめす。すでにドラッヘは自分の、当機の損害を無視している。
壊れたのならば直せばいい。
ただそれだけなのだ。
故に強制的に破壊され、ひしゃげた尾を尚も叩きつける。
「ピピッ……こーど認識、"火竜の息吹(フレイムスロワー)"せっと。火炎放射ヲ開始シマス」
ドラッヘのカメラアイが煌めき、瞬時に口腔パーツが開く。
これまで打撃を与え続けていたのは、このときのために惹きつけていたのだ。
ゼロ距離での火炎放射。
それを如何なる瞬発性能を有していたとしても躱せる距離ではない。
放たれた炎は、『ジンライ・ウォーカー』の装甲を溶かすようにハイウェイに走り、あたり一面を炎の海へと変える。
「コレデ逃走ハ妨害完了」
ドラッヘは炎と共に蒼い鱗の如き装甲を赤熱させながら、白煙と共に排熱し、その口腔より放たれる炎をもって『ジンライ・ウォーカー』を焼滅させんとするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
まずはことりちゃんを戦場の上で待機させ、相手の攻撃に対してはローラーダッシュで回避に専念していくよ★幸い悪路には強いもんね★
相手のUCの回避に合わせて「敵が地形を破壊する瞬間」も撮影、さっき撮った「荷物を強奪する映像」と一緒に、運び屋さんと荷物にはぼかし処理で情報を保護してネット上に映像を流しちゃう★
おまけにこっちもUCを使用、ホログラム映像でのフェイントに合わせて煙玉を投擲、「炎上」させちゃうよ★
事情を知らないで映像を見ればあなたは「運び屋を負傷させ荷物を強奪し、ハイウェイを破壊して逃げる強奪犯」だもんね★
あなたの依頼主さんは「我が社から奪われた」「大事な荷物」を取り返してもらっただけだ…なんて、自分の失態と弱みを大勢に明かしてまで、顔バレして炎上してるあなたのフォロー……してくれるかなっ★
猟兵の放った炎がハイウェイを包み込む。
だが、オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』の義体脚部が地面を踏み鳴らした瞬間、炎は衝撃波と共に吹き飛び尋常ならざる速度で持って猟兵達との距離を詰める。
「この程度で私が止まるとでも思ったか!」
吹き荒れる衝撃波は単純で重たい一撃であるがゆえ。
その一撃をければ如何に筐体の頭脳戦車であるシルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)であっても危ういものであったことだろう。
だからこそ、彼女は回避に専念する。
脚部に備わったローラーダッシュでハイウェイを駆け抜け、『ジンライ・ウォーカー』の一撃を躱す。
幸いに多脚同士の戦いである。
「おんなじ悪路を走破するにしたってアプローチの仕方が違うんだぞ★」
彼女の脚部は四脚。
対する『ジンライ・ウォーカー』の脚部は六脚。
その可動範囲は脚部が多ければ多いほどになめらかなものとなるだろう。
けれど、シルキーの脚部は四脚。
さらにローラーが備えられ、多元的な動きが可能となっている。
攻撃を素早く躱して体勢を整えるという意味ではシルキーが回避行動に専念しているのは正しい判断であったのかも知れない。
「ちょこまかと逃げ回るばかりで、私に勝てるとでも」
凄まじい一撃が踏み鳴らされるたびにハイウェイの地面を砕いていく。
その様子をシルキーはホログラムで偽装されたドローンで撮影している。
何故、そんなことをしているのかと問われれば、シルキーはいつものように笑っていうかもしれない。
「火のない所に煙は立たぬ……つまり、煙が出てるなら、それは燃えてるわけだね★」
「何を意味のわからないことを……!」
放たれたけ煙玉。
それを『ジンライ・ウォーカー』は苦もなく多脚で蹴り飛ばす。
判断を誤った、とシルキーは思っただろう。
無論、自分ではない。『ジンライ・ウォーカー』が、である。
彼女のは成った煙玉はユーベルコード。触れた瞬間に燃やすユーベルコードである。
何を燃やすのかと言えば実体ある『ジンライ・ウォーカー』本体を、ではない。
彼女の社会的な地位を、その存在証明を燃やすのだ。
「……!?」
「今ね、『運び屋を負傷させ荷物を強奪し、ハイウェイを破壊して逃げる強奪犯』としてあなたをネットワーク上に流してあげたんだよ★」
それは『ヘリドー』たちやトランクケースをボカして保護した映像であった。
『ジンライ・ウォーカー』が『ヘリドー』を遅い、そのままハイウェイを疾駆する。
さらにシルキーを襲う多脚の一撃がアスファルトを砕く様すら映像になっている。これはいわゆる炎上。
物理的に炎上させるだけではなく、シルキーのユーベルコードは社会的に『炎上』させることさえ可能なのだ。
これまでのシルキーの動きは『ジンライ・ウォーカー』にとっては不可解なものであった。
攻撃してこないで、ただ躱すだけ。
なんのために、と思っていたが自分を衆目に晒すことが目的であったのだろう。
「だからなんだ。私が晒されたところで何の意味がある。私のバックについているのは巨大企業群『ティタニウム・マキア』だ」
警察機構と当然のように癒着しているのであれば、たとえハイウェイを破壊した容疑で捕まったのだとしても、即座に釈放されるだろう。
ただそれだけのことだ。
シルキーのやったことは意味のないことだと『ジンライ・ウォーカー』は笑う。
けれど、シルキーおっまた不敵に笑うのだ。
「そうかもね★ けど、あなたの依頼主さんは『自分の会社から奪われた』『大事な荷物』を取り返してもらっただけだ……なんて公表するかな? それこそ敵対する巨大企業群に対してアドバンテージを握られるだけだと思うんだけど★」
シルキーは炎上していく『ジンライ・ウォーカー』の社会的な立ち位置を憂うように筐体を動かす。
そう、『ティタニウム・マキア』にとって『ジンライ・ウォーカー』は居なくてはならぬ存在ではない。
代わりになるものはいるのだ。
ならばこそ、彼女を社会的な炎上から助ける謂れはない。
「自分たちの失態と弱みを大勢に明かしてまで顔バレして炎上してるあなたのフォロー……してくれるかなっ★」
シルキーは微笑むようでもあったことだろう。
頭脳戦者の筐体では表情はわからない。
けれど、確実にいえる事がある。
「私を尻尾きりにすると、それで私を!」
たとえ、炎上が収まったとしても、シルキーは構わなかった。
目的は唯一。
『ジンライ・ウォーカー』を揺さぶることだ。
彼女が揺さぶられれば揺さぶられるほどに猟兵たちに戦いの趨勢は傾く。
ならばこそ、シルキーは加工した動画をあちこちのネットワーク上にばらまく。サイバースペースや、あらゆる場所に投稿される動画。
これらを一々処理するだけの煩雑さと『ジンライ・ウォーカー』を切り捨てることは、一体どちらが楽だっただろうか。
「答えはもうでてるよね★ キミを手助けに来る者はいないってことだよ★」
シルキーはそう告げ、社会的に燃え盛る『ジンライ・ウォーカー』を前に多脚たるローラーダッシュで踊るように彼女を翻弄するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セイカ・ヤブサメ
【アドリブ連携OK】
(タバコを一服しながらジンライに追いつき)
ヘリドーは殺し屋だって言ってたが
ミルミギ…へっ、さしずめ兵隊アリってところか?
…まさか気に触ったかい?
なに、企業に飼われてるようじゃその程度だって話さね
使いっ走りならガキだってできる
伝説だ最高峰だってのは誰もがビビるような事をやって泊付けて漸くスタートラインだ
そうだな…じゃあ箔付けにアタシの首でも落としていくかい?
戦女神の首だ、安くはないよ?
※戦闘
ムラクモを鞘ごと肩に背負っていつでも抜けるように手を添えながら一騎打ちだ!
奴の速さは一級品、ならその速さを凌駕した居合を打ち込んでやる!
アンタの迅雷とアタシの絶技、どっちが上か勝負だ!
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』にとって、その名は特別なものであった。
『ミルミギ』。
殺し屋というものに業界という単語が付随することが許されるのであれば、その名は知られたものであったのだろう。
ハイウェイに運び屋『ヘリドー』の名が知られているように。
また嘗て数多の伝説を築き上げた『ハイウェイ・ヴァルキリーズ』があったように。
名を以って体と為す。
それを己の至上命題に置き換える者もまた少なからず。
「へっ、さしずめ兵隊アリってところか?」
タバコに一服を終えたセイカ・ヤブサメ(ハイウェイの戦女神・f36624)はエギゾーストパイプから立ち上る排気煙と共に紫煙をくゆらせ、エンジンの音をハイウェイに響かせる。
「だからどうした。その程度の煽りで私を揺らがせようなど」
『ジンライ・ウォーカー』の踏み込みの速度は凄まじいものであった。
だが、その突撃をセイカは躱す。
己が駆る鋼鉄の乗騎の後輪を滑らせ、『ジンライ・ウォーカー』の名を示すかのような突撃を間一髪で躱したのだ。
「……!?」
「揺らいでいるぜ、『ジンライ・ウォーカー』……まさか気に触ったかい? なに、企業に飼われているようじゃその程度だって話さね」
「ふざけるな!」
ハイウェイを『ジンライ・ウォーカー』の義体多脚が蹴りつけ、今度こそセイカを肉塊へと変えようと突進してくる。
その突進をセイカは見据える。
単調な動きだ。
確かに速い。下半身の義体の重量を重ねているからこそ、その突進は意味を持つ。あの一撃を受けては、自身も危ういだろう。
だが、あくまで単調。
直線的すぎる動きは数多の修羅場を切り抜けてきたであろうセイカにとっては、あまりにも愚鈍にすぎた。
「使いっぱしりならガキだってできる」
紫煙を吐き出す。
息を吸い込む。
僅かな一拍の間隙。その最中にこそ、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
伝説とは如何なるものであろうか。
最高峰とはどのような高みを指すのか。
その答を知る者は多くはない。何故ならば、其処に居たりし者しか実感することが出来ないからだ。
そして、至る者こそが痛感することが一つだけ共通している。
それは――。
「伝説だ最高峰だってのは、誰もがビビるようなことをやって泊付けてようやくスタートラインだ」
ずらり、と音がしたような気がした。
少なくとも『ジンライ・ウォーカー』には、そう聞こえた気がしたのだ。
だが、その瞬間彼女はそれが過ちであると理解しただろう。
己が相対しているものこそ伝説と呼ぶに相応しい存在であった。
「“魅”せてやるよ、居合極めしアタシの絶技を!」
セイカの声が遅れて聞こえる気がした。
いや、ずれているのは己であると『ジンライ・ウォーカー』は自覚しただろう。
放たれるは。
猟兵技巧・祖新突居合(ユーベルコード・ソニックイアイ)。
一閃の煌めきがセイカの背より放たれた瞬間『ジンライ・ウォーカー』の下半身の多脚義体の胴を切り裂く。
血潮の代わりに噴出するは、電流火花。
散る花は、まさに迅雷を超えたかのような剣閃の一撃。
「アンタの迅雷とアタシの絶技……どっちが上か、わかったろ?」
未だ泊をつけるには及ばぬとセイカは超振動により赤みを帯びた刀身を収める。
そう、戦女神の首は安くないのだと、その伝説は語らずとも剣閃で以って刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
ママチャリで爆走しつつ、「ニンジャが使うならママチャリでもカーチェイスや高速戦闘できるのです!」と某ニンジャ作品に影響受けた理屈を相手に語ります(根拠ないですが)。
とはいえチェイスしながらの戦闘では致命傷を与えにくいのも確か…。
💡と良いネタもといアイデアが。
地に足を付けている『ジンライ・ウォーカー』は手強い。
でも地上から引き剥がされたら?
おもむろに付け耳を装着し、手の動きの角度を上手く調節して《猫招きの術》を使用。
相手を地面から空中に引き剥がして、そのまま詩乃に引き寄せる。
降車して雷月に電撃・雷の属性攻撃・神罰を籠め、衝撃波と共に鎧無視攻撃・貫通攻撃で彼女の身体を貫く。
「ハイクを詠みなさい」
火花散らすは斬撃の痕。
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は、その胴に刻まれた傷跡を見る。
打倒しなければならない敵。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない明確な敵を前にして彼女には逃げるという選択肢はなかった。
けれど、彼女は走る。
足を止めての高速戦闘。
それこそが彼女の独壇場であるはずだった。下半身の多脚義体は、まだ動く。
「ならっ!」
吹き荒れる力。
衝撃波がハイウェイに走る。
けれど、その衝撃波を切り裂くものがあった。
それは大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)が足を回し漕ぐママチャリであった。
あまりにも非現実的な光景。
ハイウェイにママチャリである。チリンチリンと鳴るベルの音がどこか場違いであった。
「ニンジャが使うならママチャリでもカーチェイスや高速戦闘できるのです!」
絶対何かよからぬものから影響を受けているのは間違いない。
何か創作物に触れたのだろう。
そういう意味では詩乃はわりかしわかりやすい神性であったのかもしれない。
「とは言え、チェイスしながらの戦闘では致命傷を与えにくいのも確か……!」
彼女の頭上にエクスクラメーションマークが輝く。
あ、これは絶対に良からぬことであると誰もが思っただろう。
詩乃がそういう顔をした時は大抵そんなときである。
良いネタもといアイデアがひらめいた瞬間なのである。
「だからなんだというのだ!」
突進してくる『ジンライ・ウォーカー』。
けれど、彼女は見ただろう。
ユーベルコードに輝く瞳を。詩乃がつけ耳をした上で可愛らしい笑顔を浮かべているのを。
一体全体どういうことなのか。
馬鹿にしているのかと『ジンライ・ウォーカー』は憤る。
その笑顔を粉砕すべく突進する。
けれど、いつまでたっても『ジンライ・ウォーカー』は自分が詩乃に近づけぬことを悟る。
明らかにおかしい。
そう、今の詩乃はネコ耳装備のクノイチキャット!
彼女のユーベルコードによって生み出されたのは次元断層。
空間に生み出された空洞は『ジンライ・ウォーカー』を遠ざけ、そして!
「こっち来るニャン♪」
猫招きの術(ネコマネキノジュツ)である。
手招きの、くいっ、くいっ、ていうあれである。それをした瞬間、『ジンライ・ウォーカー』は一瞬で詩乃に引き寄せられる。
ママチャリから降りた詩乃はにゃんにゃんしている。
何だその可愛いあれは! どうなっていやがる! そういうあれな雰囲気を醸し出しつつ、詩乃の手招きは終わらない。
抵抗しようとしても無駄である。
ユーベルコードによって生み出された空間的空洞は一度引き込まれては、水が下に落ちるのと同じように、吸い寄せられ、逃げようにも逃げられないのである。
「ハイクを詠みなさい」
あ、これ完全に色んな意味で間違ったニンジャ知識を得た詩乃さんである。
輝く懐剣。
その雷満ちる刀身が引き寄せられる『ジンライ・ウォーカー』へと放たれる。
斬撃は防御など意味をなさないだろう。
そう、今がハイクを詠む時である。
往生際が悪いことは許さない。
辞世の句をもって死せることこそが、ニンジャから敵対者に与えられる慈悲の心である。
いや。
その。
絶対間違った知識だと追うものだが!
それすらも凌駕する詩乃の神罰込めた雷が『ジンライ・ウォーカー』の義体を貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
チッしぶとい
バイクに乗って牽制だけならともかく
本格的に戦闘となると…この世界は今の私には相性が悪い
|エイル様《主人様》の香りでもあればまた別なのですが……無い?無いですか?
……ちっ
ですがどんな時もできることをやるのがメイドの務め!
脳内エイル様の命令|ご用命《オーダー》を受けて
【バトラーズ・ブラック】発動です!
トランクケース奪還任務、完遂させます!
引き上げた技能をフル活用
突撃してくるジンライ・ウォーカーの動きと軌道を見切りつつ
こちらもバイクに乗ったまま突撃!
衝突の直前にバイクごとスライディング態勢へ
加速とバイクの重量で足元をかっさらう捨て身の一撃を!
もちろん私は華麗にジャンプで回避しますけども!
雷が『ジンライ・ウォーカー』の義体を貫く。
片腕を既に失っていた彼女にとって雷の一撃は対策を講じられていたとしても、負荷として義体に損傷を齎す。
その以前に刻まれた斬撃の痕は、彼女の瞬発性を支える義体を苛む。
「忌々しい……! どいつもこいつも!」
己の邪魔をする、と彼女は吐き捨てる。
だが、未だ義体の瞬発性能は猟兵を凌駕している。多脚で持って跳ねるようにして飛ぶ姿は、確かに迅雷そのものであったことだろう。
「チッ、しぶとい」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思わず舌打ちしていた。
メイド的に舌打ちって大丈夫なのかと思わないでもなかったが、今の彼女はスーパーメイドである。大抵のことは許される。
しかしまあ、なんというか、いまいち気乗りがしないのかもしれない。
有り体に言ってやる気が満ちてこないのである。
「|『エイル』様《主人様》の香りでもあればまた別なのですが……」
香りでやる気出すメイドってイズ何。
ステラは鼻を鳴らす。
しかしながら、ここはハイウェイである。どれだけ鼻をスンスン鳴らしても、香るのはエギゾーストばかりである。排気煙ばっかりである。
「……ちっ」
ヤダ怖いこのメイド。
「ですが、どんな時でもできることをやるのがメイドの努め!」
ステラは舌打ちから立ち直る。立ち直る?
彼女はコンセントレーションを高める。集中をコンセントレイトである。意味わかってる? 極限まで高められた集中力は、ステラの脳内に疑似『主人様』を作り出す。
その幻影みたいなあれが言うのだ。
告げるのだ。
かの敵を討てと。
いや、生半可なアレではダメである。メイド警察に突き出されてしまう。
『オブリビオンを倒して、ステラ。あのトランクケースを取り返さなきゃ』
これである。多分。
キラキラとしたエフェクトが彼女の脳内幻影に付け足され、微笑みながら告げる『主人様』の幻影が手を伸ばす。
煌めくステラの瞳。
それはユーベルコードの輝き。
バトラーズ・ブラック。それは他者からの命令を承諾したがゆえに生み出される具現化された闇によって、ステラの技能を全て高めていく。
漲る力。
主人様パゥワー漲るステラは一瞬で『ジンライ・ウォーカー』との距離を詰める。
「速いっ……!?」
「逃しませんよ! トランクケース奪還任務、完遂させます!」
顔がやばい。
バイクに乗ったまま突撃してくるメイドの顔がやばい。
その顔は『ジンライ・ウォーカー』の背筋を凍らせるほどの迫力であった。
このままでは衝突する。
だが、次の瞬間『ジンライ・ウォーカー』はステラの姿を見失う。
どこに、と思った瞬間、ステラは彼女の多脚義体の足元をバイクごとスライディングで滑りぬけ、後輪を滑らせながら回転するように多脚を巻き込んで足払いのようにして打ち込むのだ。
「スライディング……! だが、このまま圧殺して……!」
「完璧なる『主人様』のメイドである私がそんな鈍重な攻撃を喰らうものですか」
バイクが多脚によって破壊される。
爆発が起こり、『ジンライ・ウォーカー』の体が爆ぜるようにして吹き飛ばされる。けれど、ステラは華麗に宙を舞うようにして躱し、着地する。
そう、今のステラは完璧スーパーメイド。
断じて、ハスハスと臭いを嗅ぎ回る|メイド《犬》ではないのである――!
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
はぁ…やぁっと追いついたわぁ。レースならまだ何とかなるけれど、チェイスだと…ちょっと何か手を考えないといけないかしらねぇ。
まずは●黙殺・砲列で|遅延のルーン三種《束縛・障害・停滞》の弾幕を展開。「周囲に構わず突撃」ってことは、弾幕も妨害も気にせず突っ込んでくるってことよねぇ?多少なりとも動きを鈍らせて、○クイックドロウからの●明殺でカウンター決めるわぁ。
弾丸に刻むのは帝釈天印・ユル・ティール――即ち、「雷」にて「終焉」を齎す「勝利の剣」。逃げに徹されたらだいぶ困ったけれど…やる気になってくれたのなら、打つ手はいくらでもあるのよぉ?
ハイウェイにおけるカーチェイスは、『ジンライ・ウォーカー』の性能を十全に引き出すものであった。
ただ逃げ切るだけであったのならば、簡単なことであったはず。
けれど猟兵たちは追いつくよりも先に彼女の進路を妨害していた。
ハイウェイから市街地に飛び出してしまえば、益々『ジンライ・ウォーカー』の多脚義体に寄る瞬発性能で引き離され、逃げ切られてしまう。
だからこそ、ハイウェイから出さぬようにインターチェンジの入り口を潰し、進路を妨害し、さらには市街地に侵入することすら許さなかったのだ。
その手際は共に同じ戦場を渡ってきた猟兵同士にとっては言葉にしなくても行えるものであったのかもしれない。
それほどまでに『ジンライ・ウォーカー』は囲われていた。
だからこそ、ここで猟兵を仕留めるしかないと相対することを決めたのだ。
「だが、此処まで追い込まれるとは……!」
義体の胴体に刻まれた傷跡。
爆炎の中、『ジンライ・ウォーカー』は立ち上がる。
猟兵に打撃を受けて尚、まだ彼女は動く。背後の義体にマウントされたトランクケースを巨大企業群『ティタニウム・マキア』の本社まで送り届ける。それがなされぬうちには倒れることすら自身が許さない。
「はぁ、やぁっと追いついたわぁ」
そんな『ジンライ・ウォーカー』の背後から聞こえる声が在る。
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、他の猟兵から遅れて、戦場に到達する。
レースならばまだなんとかなる。
けれど、追走劇を繰り広げるには、彼女のヒーローカーにはもう少し手を考えなければならないことがあったのかもしれない。
「ともあれ、こうして追いついた。なら」
「黙れ。貴様たちと語る言葉はない!」
多脚義体が足を打ち鳴らし、一気にティオレンシアに迫る。
圧倒的な瞬発性能。
その踏み込みは神速の領域に達していることだろう。その突撃を受けてしまえば、ティオレンシアはヒーローカーごと転覆させられてしまう。
だからこそ、ティオレンシアは魔術文字による弾幕で『ジンライ・ウォーカー』の動きを止める。
「周囲が見えていないわね。だから、こんな簡単な罠にかかる」
『ジンライ・ウォーカー』の瞬発性能は確かに優れている。
けれど、優れているがゆえに直線的な動きしかできない。ティオレンシアはそれがわかっているからこそ、置き弾幕たる魔術文字を刻み、その動きを阻害するのだ。
完全には止まらないまでも、目に捉えられぬ速さではない。
「どんな硬い鎧にも、貫くべき継ぎ目はある」
引き抜かれるシングルアクションのリボルバー。
『オブシディアン』と名付けられた、本来はガンプレイ――即ち、曲芸打に向けて改造が施されたリボルバーの撃鉄が起きる。
その瞬間を『ジンライ・ウォーカー』は見ていただろう。
だが、その瞬きはあまりにも遅かった。致命的でもあった。
「――あなたの隙、丸見えよぉ?」
煌めくは、雷。
轟くは、終焉。
放たれるは、勝利の剣。
撃鉄が弾丸を叩く。瞬間、爆発的な加速を受けて放たれるは、魔術文字の煌めき。
故に明殺(ポーラスター)。
放たれた弾丸は、『ジンライ・ウォーカー』に迫る。身を捩る。躱せる。いや、躱せはしない。
「逃げに徹せられたら、だいぶ困ったけれど……やる気に成ってくれたのなら、打つ手はいくらでもあるのよぉ?」
ティオレンシアの細まった瞳が笑みの形を作る。
弾丸は『ジンライ・ウォーカー』の体を貫き、雷を迸らせながら、背から刀身を覗かせるように力の奔流を生み出す。
追走劇に終焉を齎す。
ティオレンシアの弾丸は、そう告げるように『ジンライ・ウォーカー』を穿つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
堂島・アキラ
やっとやる気になったみてえだな。最初からそうしてりゃいいんだよ。
お前ら企業の犬っころはみんなオレのオモチャみてえなもんなんだからな!
オレを踏みつぶそうってか?やれるもんならやってみな。
ヤツ自慢の義体の脚を掴んでさらに加速!ハイウェイを引きずり回してやるぜ。
地面に叩きつけ、壁面に叩きつけ、ボロボロにした後はテキトーに放り投げる。
壊れちまったオモチャにもう用はねえ。ま、さっきオレを無視したのはこれでチャラにしてやるよ。
足を止められた時点でオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』の敗北は決定していたのかもしれない。
足を止めぬことこそが蟻たる己の本分であることを忘れたわけではない。
だが、彼女にとって猟兵は倒すべき存在である。
己の前に立ちふさがる脅威であり、壁であり、乗り越えなければ彼女が求めるものは未来永劫手に入ることはない。
だからこそ、彼女は踏みとどまる。
斬撃も、弾丸も、炎も、雷も。
蟻は意に介さない。
前に進み続ける。故に。
「私はそう在りたいと願っていたんだ! そうでなければ!」
咆哮が轟く。
「やっとやる気になったみてえだな。最初からそうしてりゃいいんだよ」
堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)は、獰猛に笑う。
このサイバーザナドゥにおいて巨大企業群とは即ち力の象徴である。
金が集まり、人が集まり、欲望が渦巻いていく。
そうして巨大企業群は力の巨人如き威容を誇るようになるのだ。
「お前ら企業の犬っころはみんなオレのオモチャみてえなもんなんだからな!」
迫る『ジンライ・ウォーカー』。
瞬発性能は消耗しても尚、その力を発揮するだろう。
アキラは瞳で見る。
確かに速い。あの多脚義体は的確に自分の頭部を踏み潰そうとしている。だが、見るがいい。アキラの瞳は未だ恐怖にも絶望にも濡れていない。
あるのは不敵な笑みばかりだ。
「オレを踏み潰そうってか?」
煌めくはユーベルコードの光。
灯る瞳の輝きは、アキラの義体の出力を上げる。
ハイスピードバイクが出力を受けて疾走し、踏みつけようとする多脚の一撃を躱す。
「やれるもんならやってみな!」
尚迫る義体の多脚の踏み潰し。
それを躱しながら、アキラは手をのばす。いや、真っ向から踏みつけの一撃を受け止める。義体のフレームが軋み、人工筋肉が弾け飛ぶのを感じただろう。
けれど、ここからが火事場の女子力(リミットブレイク)の魅せどころである。
「オレを舐めるんじゃねえええ!!」
咆哮と共に掴んだ『ジンライ・ウォーカー』の多脚。
そのままに尋常ならざる出力を持って彼女の体を持ち上げる。地面に叩きつけ、ハイウェイの壁面に叩きつけ、さらに何度も何度も叩きつける。
義体の破片が飛び散る。
トランクケースはハイウェイのアスファルトの上に転がっていく。
「ガッ……はっ……!?」
「まだまだこんなもんじゃあねえぞ!」
こいつはオレを無視したのだとアキラは叫ぶ。
叩きつけ、何度も何度も義体を破壊していく。グシャグシャにひしゃげた義体は、もはやハイウェイを疾走疾駆していた頃の面影などどこにもなかった。
あるのはひしゃげ、崩れた体のみ。
もはやハイウェイを走る迅雷の如き速さはなく。
あるのはひしゃげた多脚義体の破片。
「壊れちまったオモチャにもう用はねぇ」
砕け散る最中にアキラは『ジンライ・ウォーカー』を放り捨てる。
既に興味は失せた。
それに、とアキラは朗らかささえ感じさせる笑みでもって、破壊の痕を振り返る。
「ま、さっきオレを無視したのはこれでチャラにしてやるよ――」
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
くっマシンは限界だね!
次抜かれたら追いつけない…!
つまりここで取るべき作戦はゴールまでの先行逃げ切り一択!!
ん?なんか違ったような?
●オジャマボール
ふっふっふっ!ボクより先は行かさないよ!
と[球体]くんたちをゴロゴロ後ろに転がしていって進路妨害をしていこう!
そ~れそれ~♪
人の行き先に|モノ《石》を置くのって楽しいなー♪
ロニロニ教のホーリーバイブルにもボクがオジャマ好きだってそう書かれてるし張り切っちゃおう!
もう見切ったって?というタイミングを【第六感】で読んで油断と為して逆に突く!
飛びかかってボク自身が飛んでUC『神撃』でドーーンッ!
報酬アイテムはこっちの総取りだね!
「くっ、マシンは限界だね! 次抜かれたら追いつけない……!」
限界を超えた装甲車の走りは、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)にとって予想外であったのかもしれない。
すでに装甲車は喪われている。
ともあれ、ロニがすべきことは一つだけだった。
「つまりここで取るべき作戦はゴールまでの先行逃げ切り一択!」
そう高らかに言い放つが、ロニは何か違うような気がするとハイウェイで一人首をかしげる。
そう、これは競争劇ではない。
追走劇であったのだ。
根本からして目的が違っていた。ロニがやっていたゲームの影響のせいだったかもしれない。
先にゴールラインを割ったら勝ち! というわけではないのだ。
だからこそ、ロニはその勘違いをしたままにオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』へと迫る。
「あれあれ、もしかしてもうお邪魔アイテムにベコベコにされちゃった感じ?」
彼の視線の先には、ひしゃげた義体の多脚を持って立ち上がるオブリビオンの姿があった。
瞬発性能は喪われ、トランクケースはどこかへと弾き飛ばされている。
だが、それでも彼女はぼろぼろに鳴りながら立っていた。
「……まだだ。貴様たちの全てを滅ぼして……!」
義体は変えればいい。
それがサイバーザナドゥでは叶う。金さえあれば、壊れた多脚などすぐに換装できるのだ。
「おおー、やる気十分だね! まだまだファイティングスピリットは燃え尽きていないようだ! なら!」
ロニは球体たちを解き放ち、ハイウェイを封鎖する。
これで退路は断たれた。
逃げられることはない。そもそもあの義体の状態では逃げようにも逃げられないだろう。
「そ~れそれ~♪ 人の行き先に|モノ《石》を置くのって楽しいなー♪」
軽快に笑いながらロニは、自身を神として崇めるロニロニ教の聖典に書かれているように、お邪魔好きたる本領を発揮する。
張り切りすぎて球体でハイウェイが渋滞を起こしている状態であるが、そんなことは知ったことではない。
軋む義体でもってロニの攻勢を躱す『ジンライ・ウォーカー』の力量は凄まじいものであった。
躱す動きも最小限。
完全に見切っているといえるだろう。
「この程度……!」
「もう見切ったって? そういうのを油断っていうんだよ!」
ロニの体が飛ぶ。
どれだけ速く動くのだとしても、放り投げられる球体は彼女を取り囲んでいく。
ならば、そこに隙が生まれるのだ。
「はい、どーんっ!」
放つ神撃(ゴッドブロー)の一撃がハイウェイの地面を砕き、瓦解させる。
瞬発性能を発揮する『ジンライ・ウォーカー』にとっては容易いことであったかもしれないが、けれど、今の彼女は義体を損傷させられ消耗している。
砕けるハイウェイを蹴り上げて飛ぶので精一杯だった。
「くっ……!」
ハイウェイに取り付き、瓦解するアスファルトから逃れた彼女の頭上に飛びかかる影がある。
言わずともわかる。
それはロニの拳。
「逃げられないよ! 報酬アイテムはこっちの総取りだね!」
撃ち込まれる拳の一撃が『ジンライ・ウォーカー』の背を砕く。
やっぱりまだ別の何かと勘違いしているロニは、勘違いしたままに自分の分け前を主張するように拳を突き上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
ホールド・アップです!大人しく投降しなさい!
追いついたらすぐにサイバー軽機関銃を持って窓から身を乗り出し、UCを発動しながら大声で勧告します。勧告しながら攻撃もしますが。
まあ、普通は否定一択ですよね。仮に沈黙したとしても投降の意思を行動で示さなかった場合、それも否定です。
否定された場合、敵の移動能力は喪失します。そうなれば高速移動を利用した敵の攻撃もほぼ無力化できるでしょう。
敵の動きが止まったらそのまま跳ね飛ばしましょう。敵は急に動きが止められたところを跳ねられるわけですから面白いぐらい威力が出そうですね。
フリーダムブレイズがあれば防げたでしょうに…。
走り屋どもよりは楽な追跡対象でしたね。
拳の一撃がハイウェイのアスファルトを砕く。
瓦解するハイウェイから這い出したオブリビオン『ジンライ・ウォーカー』は、しかし追撃を受けながら這々の体で逃れる。
逃げなければ、と思ったわけではない。
すでにトランクケースは何処かに弾けて飛んでいった。
あれを探さなければならない。
猟兵の迫る攻勢を躱し、あれを探し出し、そして本社ビルへと向かう。
できるだろうか、という思いが僅かに彼女の中をめぐる。
けれど、できるできないのではなく、やらなければならないのだと彼女の義体化された体が動く。
「ホールド・アップです! 大人しく投降しなさい!」
パトランプの赤い明滅と共に放たれる言葉。
サイバー機関銃を手にとってミニパトという名の装甲車両の窓から身を乗り出す、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)。
彼女の言葉は、それそのものがユーベルコードであった。
武装警官式交渉術(ブソウケイカンシキコウショウジュツ)。
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』に対する警告でもあり、また要求でもあった。
投降。
それを考えた時『ジンライ・ウォーカー』の中にあったのは、その言葉に対する意味だった。
「投降したとて、私には意味がない!」
そう、投降したからといって自分の身の安全が保証されるわけではない。
ここはサイバーザナドゥだ。
警察機構にすら巨大企業群の手が及んでいる。投降し、身柄を確保されれば、必ず殺される。
口封じ。
ならば、彼女は拒否するしかない。
それしか選べる択がないことを、にこたまもまた理解していた。
「そうですよね。否定するしかない。沈黙もまた否定です」
駆動する義体。
未だ瞬発性能は喪われていない。このハイウェイから脱することができたのならば、まだ猟兵に勝利する目もあるだろう。
その一点においてのみ、彼女の意志は未だ潰えない。
彼女の心が折れるまで、いくら義体を砕かれようとも戦いは終わることはないのだ。
それを証明するようにギシリ、と彼女のひしゃげた多脚義体が軋む。
にこたまの交渉術によって、最早彼女はこのハイウェイから動くことが出来ない。
「……!」
「自由への情熱が、その炎があなたの中にあったのならば、私の交渉術もはねのけることができたのでしょう。ですが」
にこたまの駆る装甲車が止まった『ジンライ・ウォーカー』を跳ね飛ばす。
言っても投降しない。
ならば、無力化するしかない。
他の猟兵たちが彼女の力を削ぎ落としていたことも無関係ではないだろう。
砕ける義体の破片が装甲車のルーフにあたって、甲高い音を立てる。にこたまは装甲車から降り立ち、ひしゃげるように落ちた『ジンライ・ウォーカー』を見る。
まだ動く。
その事実は恐るべきことであったが、彼女にとってそれは些細なことでしかなかった。
目の前にあるのはオブリビオン。
犯罪行為に手を染めた者である。
自分は正義を行使することを決めた正義の武装警官。
きっと『ジンライ・ウォーカー』にもやむにやまれずの理由があったのかもしれない。やんごとなき事情があったのかもしれない。
「やはり、それはそれなのです。別なのです」
だから、にこたまは躊躇わない。
オブリビオンの存在は必ず世界を破滅させる。
このサイバーザナドゥが緩やかに滅びゆく世界なのだとしても、徒にその歩みを早める必要はない。
それはきっと彼女の中にある正義と相反するものであったことだろう。
「あなたは……そうですね。走り屋共よりは楽な追跡対象でしたね」
にべにもなく、にこたまは告げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ベティ・チェン
「キミは、バカだ」
「無駄な制約が、多すぎる。なんで、その腕を、付けなかった」
「本当に、名持ちになりたかったら。誰を敵に回しても。メガコーポの思惑なんて、無視しても。キミはそれを、手に入れるべきだった。キミは、メガコーポには叶わないと、自分に制約を付けた。メガコーポのイヌだと、自分で認めた。ただのイヌに、名がつくわけがない」
「名もなき幾万幾億のメガコーポのイヌと同じく。ここで、無様に死ね」
地上50cm程度を飛翔したまま電撃帯びた偽神兵器掲げマッハ9で激突
敵を突き抜け爆砕する
「ハイクも詠めない、たった1度の機会を無駄にした、サンシタに。サンズ・リバーの渡し賃くらい、恵んでやる」
小銭を投げる
オブリビオン『ジンライ・ウォーカー』の義体の背部にマウントされたトランクケースは、猟兵の攻撃によって弾き飛ばされた。
音を立ててトランクケースはハイウェイのアスファルトを滑るように回転し壁面にぶつかる。
「キミは、バカだ」
ベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)は、『ジンライ・ウォーカー』のぼろぼろになった義体を見下ろしてそう告げる。
心からそう思うのだろう。
彼女の瞳にはゆらぎはなかった。
名を求める者。
自身を知らしめる名。
それを求めた者の末路がこれであったのならば、この結末はベティにとってバカだと言うに相応しいものであったのかもしれない。
軋む義体。
それでもなお立ち上がろうとする。
「無駄な制約が、多すぎる。なんで、あの腕を、付けなかった」
「それが私の仕事だからだ。なりふり構わないのが美徳とされるものもある。私は私自身の力で証明したかっただけだ!」
軋む多脚を押すように『ジンライ・ウォーカー』の突撃がベティを捉える。
だが、ベティは一瞬で突撃を飛ぶようにして躱す。
いや、実際に飛んでいるのだ。
彼女の所持する偽神兵器。そこに偽神降臨(ギシンコウリン)によって齎された力の発露。
ユーベルコードの輝きが、彼女の体を『ジンライ・ウォーカー』の攻撃から身を翻して躱す。
「本当に、名持ちになりたかったら。誰を敵にまわしても。メガコーポの思惑なんて、無視しても。キミはそれを、手に入れるべきだった」
「巨大企業群『ティタニウム・マキア』の恐ろしさを知らぬものが!」
伸ばされる手があった。
己が切り捨てた腕ではない手。
『ジンライ・ウォーカー』の手がベティへと振り降ろされる。
その執念、その執着。
どれもがベティにとっては、意味のないものだった。
彼女の言葉はベティにとっては障害そのものだった。壁そのもので、打ち破らねばならぬものだったのに。
けれど。
「キミは、メガコーポには敵わないと、自分に制約を付けた。メガコーポのイヌだと、自分で認めた。ただのイヌに、名が付くわけがない」
「ほざくな!」
振り降ろされた拳を受け止めるは偽神兵器。
迸る雷撃がハイウェイの空に紫電の軌跡を刻み込む。
ベティの腕が揮われた拳をつかみ、一気に空へと飛翔する。空に在りて、地を走るものを思うのは愚かなことであっただろうか。
否である。
ベティは誰にもそれを言わせはしない。
「名もなき幾万幾億のメガコーポのイヌと同じく。ここで、無様に死ね」
否定はしない。
だが肯定もしない。
振るうは雷撃伴う一撃。大地に叩きつけられた『ジンライ・ウォーカー』は、奇しくもその名と同じ迅雷の一撃によって大地に叩きつけられ絶命する。
砕けて霧散していく義体。
それを背にベティは指で金属硬貨を弾く。
「ハイクも詠めない、たった一度の機会を無駄にした、サンシタに」
サンズ・リバーは優しくはない。
だからこそ、ベティは渡し賃を恵むように金属硬貨を霧消していく『ジンライ・ウォーカー』の義体に投げ放つ。
選べた者。
掴めた者。
それができなかった者。
分かつのはいつだって意志であり、運でもある。
だからこそ、ベティはゆっくりとその場を後にする。名を得ることに執着したものが、名を残すことができぬという世の理を胸に。
ただ、その残滓を背に彼女はハイウェイを後にするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵