●卑怯もラッキョウもあるものか
銀河帝国が滅び、外宇宙に居住可能な惑星が発見されてなお、スペースシップワールドの戦いはいまだ終わっていない。とりわけひとりのカリスマを中心に銀河帝国残党が|帝国継承軍《サクセション・フォース》を名乗るようになってからは、さらに戦火は増す一方である。
そんな状況にあって、むろんスペースノイドたちもただ手をこまねいていたわけではない。スペースシップワールドの兵士たちと異世界の者たちが手を組み、常に侵略者の魔の手から世界を守るべく奮闘努力を続けていた。その中でも新たな兵の養成は特に重要な事項といえた。そんなわけで今日も未来の戦士たちが教練艦と呼ばれる宇宙船の中で厳しい訓練を行っていたのである。彼らがこの艦に乗る理由はさまざまである。純粋に正義を信じるため、帝国軍により親しい者や帰る場所を失ったため……いずれにせよ、帝国軍と戦い、これを撃ち倒さんとする気概は皆一緒だった。
だが、それを黙って見過ごす帝国軍ではない。教練艦を襲撃し、戦士候補生を殺す事で戦力を削り、かつ死体をオブリビオンとして復活させて自らの戦力を増強するという一石二鳥の卑怯な策略が実行されようとしていたのであった。それを指揮するのは猟書家【ミニスター・ブラック】。
「よし、そんな卑怯極まりない●●●●野郎はぶっっっ殺すべきにゃ!」
グリモアベースにてアイクル・エフジェイコペン(クロスオーバー三代目・f36327)はいきなり物騒な言葉から入った。やめなさい。
「だってにゃあ。今回の相手ミニスター・ブラックてのは、真っ黒でごつくてでっかくていかにも強そうにゃのに、実際やってることは卑怯な策略使いまくりの裏技使いまくりの害悪野郎だって言うじゃあに゛ゃいの。男の風上にも置けないやつに゛ゃ!!」
半ば私情入っている気もするが、ドワーフらしく基本脳筋でパワー一本槍真っ向勝負なアイクルには、この類の相手にはどうしても嫌悪感があるようだ。
「しかも、しかもにゃよ。今回このブラック野郎は、卑怯者らしくむちゃくちゃ卑怯な手で来るらしいんに゛ゃ!」
なんというか卑怯者が卑怯な手でくるのはそりゃ当然だろうというのは置いといて。戦士として戦おうと志す者には大なり小なり理由があるだろうが、その中には割とトラウマめいたものが少なくない。今回ミニスター・ブラックはそこを突きにくるというのだ。訓練兵たちのトラウマを突き、増幅させ、精神的に自壊させることによって大した労力もなく潰せるという、やる側にとってはものすごく効率の良い、やられる側にとってはこれほど邪悪な事もない、そんな戦術である。
「にゃので、なんとかがんばってこいつをやっつけてほしいのにゃ!」
猟兵たちが向かった時には既に教練艦の侵略は始まっている。なのでまずは精神攻撃専門のブラックタール軍団が訓練生に襲い掛かりトラウマを与えている所に乱入し、こいつらを全員やっつける必要がある。その後で出てきたミニスター・ブラックを倒せば一件落着という流れだ。
「その過程で、敵さんはもしかしたらみんなのトラウマを突きに来るかもしれないけど、みんなならどーにかなると信じてるにゃ。なんとかがんばってほしいにゃ!」
アイクルの言葉はかなり精神論に傾いている気がしたが、それでも訓練兵たちの悲劇を見逃すわけにはいかないと、猟兵たちはスペースシップワールドに向かうのだった。
らあめそまそ
らあめそまそです。猟書家依頼をお送りいたします。
このシナリオにはプレイングボーナスがあり、プレイングにこれを取り入れる事で判定が有利になります。
プレイングボーナス(全章共通)……教練艦のフォースナイト達と共闘する。
猟兵ほど強力ではないですが、フォースナイト候補生は以下のユーベルコードを使用できます。
サイコキネシス:見えないサイキックエナジーを放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『ブラックタール部隊・悪夢の再来』
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POW : 悪夢の侵蝕
自身の肉体を【相手の精神を侵食する黒い流動体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
SPD : 悪夢の顕現
肉体の一部もしくは全部を【相手が恐ろしいと思う存在】に変異させ、相手が恐ろしいと思う存在の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ : 悪夢の克服
対象への質問と共に、【相手の記憶】から【悪夢を具現化した存在、または名状し難い獣】を召喚する。満足な答えを得るまで、悪夢を具現化した存在、または名状し難い獣は対象を【精神攻撃し、克服の仕方を実演するま】で攻撃する。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●タイガーホース
教練艦の中は阿鼻叫喚と化していた。
「ああっ……父さん!母さん!」
「化け物が、化け物が……」
「く、来るなあッッッ」
訓練兵たちは皆、ミニスター・ブラックが送り込んだ精神攻撃部隊により、それぞれが心に秘めていたトラウマを暴かれ、それを増幅されて苦しみの極致にあったのである。このままでは全滅は必至だ。
ブラックタール部隊の能力は以下の3種類だ。
【悪夢の侵蝕】は自身の肉体の一部を伸ばして相手に接触させて直接精神に触れるものだ。これで相手のトラウマを増幅させて精神崩壊に導いたり、トラウマのない相手にはストレートに精神の破壊を狙ってくる。なんとかがんばって回避するか、あるいは精神を強く持つか。
【悪夢の顕現】は相手がトラウマを抱く対象に自らを変化させる。それは外見的な変化のみならず能力すら模倣するという。もしそういう対象がない場合でも、変幻自在の動きで襲い掛かって来るためそれはそれで脅威である。
【悪夢の克服】は相手の記憶を読み、そのトラウマの対象を具現化するものである。精神的に乗り越える事ができればいいのだが、そう簡単に行くものではない。そういうものがない場合は純粋に強力な魔獣を呼び出してくる。
いずれにせよ、これらの攻撃は訓練生のみならず、助けに入った猟兵たちをもむしばむ事だろう。もしあなたに何か過去の重大な傷があるなら、どうにかそれを克服する手段を思いつけば、抵抗のための強い手段となるだろう。シリアスにするもネタにするも汝の欲するところを為すが良い。
もしトラウマなどないと言い張るなら、なんとか訓練生のトラウマを克服させてほしい。訓練生のトラウマは「帝国軍により親しい人を失った」「帝国軍により自らが重傷を負った」「帝国軍により艦を失った」等だ。
あとは……がんばってください。
エリン・エーテリオン
チーム☆
【情報収集・視力・戦闘知識・ハッキング・マヒ攻撃・属性攻撃・衝撃波・蟲使い・爆破・電撃・爆撃・神罰】
❝しっかりしろ!ジョニー!❞
訓練兵(ジョニーじゃない)を呼びかける虹神炎覇気から出て来たアルコと
❛大丈夫…落ち着いて、そう…辛かったね。でも今は立ち向かわなきゃいけないわ❜
アルコの彼女のミリアは訓練兵を慰めトラウマと向き合わせようと奮闘している
『わ"がる"よ"づらいよねぇ"』擬人化エキドゥーマは何かトラウマを刺激されたが何とか持ち直した様だ
『アイノツバサヲヒロゲマス!』
擬人化ブラッドムーンは範囲攻撃と弾幕と呪殺弾を敵にぶっ放していた。
訓練兵たちはトラウマを克服した様で
UCで攻撃してくれた
『ウ…私がマスターを守る!』
オフ時の口調に戻りかけたエキドゥーマが私を守りながら相手にハッキングとマヒ攻撃で動きを封じる
❝虹炎の縄跳び!❞
アルコが敵を縄属性に変更し敵を縄跳びで敵を吹き飛ばしながら衝撃波と電撃を撒き散らした
❛爆破蟲!❜
ミリアは蟲使いと爆破で敵を吹き飛ばす
…私っているのかなぁ。泣きそう
ソラウ・エクステリア
チーム☆
【情報収集・戦闘知識・視力】で状況把握
?!これは…昔。僕の声を奪ったオブリビオン!、昔なら怯えているだけだったけど今は負けない!エリンが恐怖に立ち向かう事を教えてくれたんだ!お前を倒…
「迷え…」
すよ!(無視)
「…あれ?」
『あっアイツは…』『あの子はいつも降臨するタイミングが最悪だわ…』ライズサンとエミリアーノが小さい声てを呟く
「ゴホン、私は時空し…」
僕はオブリビオンの音響弾と電撃を浴びせる
「えっ…あの…」
『お?俺の方に飛んで来たな〜』
ライズサンは念動力と呪殺弾を敵に放つ
「私のはな…」
『ごめんね!エスちゃん!今は戦闘中なの!』
エミリアーノは衝撃波と神罰と爆撃で敵は吹き飛んだ
「…」
敵はエスパスの方に飛んできたが
「ぐずっ…ぐずっ……」
凄まじい身体能力で片手を払って敵を真っ二つにしていた。(次元能力の次元斬)
凄い!誰だろう、いつの間にいたんだろう?貴女は誰ですか?
「?!やっとわた…」
あっ敵!音響弾!
「せめ…」
『げっ!ラーミア!くたばれ!』
ライズサンがブラックホールを生成した。
「…ぐすん」
リュカシオン・カーネーション
チーム☆
エリンとソラウと共に向かう
情報収集と視力と戦闘知識で状況を把握だ
な…何だと!
「く…何と卑劣な」
カオスシャークも呟く
『ぐうぐう』
アズリエルは寝ていた
『ラーミアなのだ』バァーン
ラーミア(丸くて可愛い梟)が出て来た…だと?!
《何が出てくるかと思ったら何ですか?!この梟は!》
アロナちゃんが叫ぶ
何ってラーミア(丸くて可愛い梟)だよ知らないの?
《知りませんよ!》
怒るアロナちゃんに対してラーミア(丸くて可愛い梟)は
『ラーミアは可愛いのだ』バァーン
《……捨てます》アロナちゃんは念動力をラーミア(丸くて可愛い梟)を浮かばせて
そのまま遠くに飛ばした
『ワハァァァァァン!』バァーン
突然発生したブラックホールにラーミア(丸くて可愛い梟)は吸い込まれ退場した
出オチかよ!
《一々ウザい梟ですね…》
「えっ…何すんの?シオン?」
仕方ないのでサメに衝撃波と神罰と電撃を纏わせる
そしてそのまま敵に投げる!
「ギャァァァァァ!」
敵とサメは派手に吹き飛んだ
《馬鹿馬鹿しいですね…》範囲攻撃で炎と風と水の魔法で敵を吹き飛ばす
●戦いは数だよ兄貴
フォースナイト候補生たちの悲鳴と嘆きで阿鼻叫喚地獄と化した教練艦内に真っ先に駆け付けたのはエリン・エーテリオン(邪神龍と虹炎の神と共に世界を駆ける元ヤンの新米猟兵・f38063)、リュカシオン・カーネーション(転生したハジケる妖狐と精霊王とカオスな仲間たち・f38237)、ソラウ・エクステリア(歌姫の時空騎士と時空龍の協奏曲・f38698)の3人であった。
「3人が同じ戦場に立つのはサクラミラージュの一件依頼だな!」
親し気に話すリュカシオン。実際この3人は互いに知り合い同士であるらしい。リュカシオンはエリンの師にあたるようだ。互いにゴッドハンドなのでその関係だろうか。にしても師のリュカシオンは17歳、弟子のエリンは16歳と、師弟ともに年若い上に近いのである。どういう関係なんだろう。まあ猟兵は年齢で判断できない存在であるわけだし、さらに両者ともここに至るまでにかなりいろいろあった感じなので、まあいいのかもしれないが。
「つい最近ぶりだね!」
快活に言うのはソラウ。エリンやリュカシオンとはかなり親しい間柄ではあるらしい。具体的な関係は後述するとして、ソラウのの言葉通り、前述のサクラミラージュの件が完了したのは本当につい最近の事であった。ある時は3人一緒に、別の時は3人のうちのふたりでと、幾度となくコンビやトリオを組んでさまざまな事件を解決してきた……と、思いきや。
「……あれ?そうだったか?」
頭にクエスチョンマークを付けたのはエリンだった。どうやらサクラミラージュの一件について、どういうわけだかエリンの記憶にはないようだ。
「ん?覚えてないのか?まあいいか」
「そうだね、そんな事より今は」
「ああ」
改めて3人は眼前の光景を眺めた。彼女らの目の前には増大するトラウマに苦しむ候補生たち、そしてそれを引き起こしているブラックタール部隊。今は過去の事を振り返っている場合ではない。目の前の事に対処することこそ先決なのだ。
「……卑劣だな」
いち早く状況を把握したリュカシオンがつぶやく。
「しっかりしろ!」
誰よりも早く飛び出したのはエリン。
「……あ……」
そして恐慌の顔を浮かべたのはソラウ。
かくして3人は事態に対処するのであった……が。実は彼女ら3人は知り合い同士という以外にひとつ、共通項があった。
「アルコ!ミリア!」
『応!出番かい!』
『大変な状況みたいね』
エリンが呼び出したのは二柱の虹炎の神【エストレジャ・アルコイリス】【エストレジャ・ミリアスリラ】。このふたりは恋人同士らしい。
「カオスシャーク!アロナフィナ!行くぜ!」
『これはなんと卑劣な……』
『事前に聞いていた通りの邪悪ぶりですね』
リュカシオンが連れているのは空飛ぶサメ【カオスシャーク】。サメなのに空を飛ぶし会話もできる。そして精霊王【アロナフィナ】。炎と水と風をつかさどる……四元素のうち3つ操るとはさすがは王。
「……」
『おい、顔色悪いぞソラウ、大丈夫か』
『大丈夫、だと思いたいけど』
蒼白になっているソラウを慮っているのは二頭の時空龍【ライズサン】【エミリアーノ】。それぞれ見た目はサイキックキャバリアとスマホであるらしい。
そう。彼女らはそれぞれ、猟兵仲間とは別に、様々な仲間を使役して戦うのだ。だがそれはきわめて正しいのだ。ひとりで勝てなきゃみんなで戦う。ましてや今の相手は集団だ。ならばこっちも数を頼む事になんの問題があるだろうか?いやない!
ちなみにこれで全部ではないらしいぞ!まだまだ出てくるとか……描写力もってくれよ!
●
エリンの呼び出したアルコとミリアは早速訓練生たちを激励していた。
『しっかりしろ!ジョニー!!』
アルコは熱を入れて訓練兵に呼びかけた。ちなみにこの訓練兵の名はジョニーではない。ただ第一次大戦の時にアメリカの志願兵募集の文句が"|ジョニーは銃をとった《Johnny Got His Gun》"だったり、それに対する皮肉として作られた小説および映画が"ジョニーは戦場へ行った"だったりするので、なんとなく若い軍人さんにジョニーと呼びたくなるのはわかる気はする。
『傷は浅いぞ!しっかりしろ!!』
ぶんぶんぶんっ。胸倉つかんで前後にゆさぶったり、頬を叩いたりするアルコ。実に体育会系の兄ちゃんである。まあトラウマの克服になるかどうかはともかく、喝を入れる効果はあるかもしれない。
『大丈夫…落ち着いて』
対称的にミリアは冷静に、慈愛をもって訓練兵に呼びかけていた。
「ううっ、うう……」
『そう…辛かったね。でも今は立ち向かわなきゃいけないわ』
泣きじゃくる訓練兵の肩を抱き、頭をなでるミリア。ああ慈愛だ。バブみと言ってもいいかもしれない。ちょっとそこ代われ訓練生と言いたくなるところだが、ここはトラウマのある子に譲るべきであろう。
ふたりの神が訓練兵をケアしている間、ブラックタールは決して黙って見ているわけではない。介入にしてきたエリンにコピーすべきトラウマが見当たらなかったのか、純粋なる邪悪を具現化したような名状し難い獣を召喚した、が、そこに立ちはだかる者がいた。
『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』
『わ゛がる゛よ゛づら゛い゛よ゛ね゛ぇ゛』
妙にテンションが高い笑いをあげているのはブラッドムーン、訓練兵たちの様子に涙しているのはエキドゥーマ。ふたりとも人間の姿をとっているが、その正体は邪神龍と呼ばれる存在らしい。手始めにふたりを血祭にあげんと襲い掛かる邪悪な獣たち。だが。
『アイノツバサヲヒロゲマス!』
『ウ…私がマスターを守る!』
エキドゥーマが相手の精神に作用したマヒ攻撃で敵の動きを鈍らせ、そこにブラッドムーンが広範囲呪殺弾幕を浴びせかけるコンビネーションの前に獣たちは容易に前に進む事ができない。そして。
『おう!待たせたな!』
『私たちも戦いに加わります!』
訓練兵たちをどうにか復活させたアルコとミリアも合流する。アルコは名状し難い獣をひっつかむと、それを概念操作能力で縄状にする。そして縄跳びの要領で高速回転させると、あたかもボウリングの球がピンをまとめてなぎ倒すがごとくに暴れ回った。ミリアは爆発とともに蟲を戦場にばらまく。爆発の威力を耐えてもそこに蟲がとりつき体を蝕んでいくという二段構えだ。
「我々も加勢いたします!」
立ち直ったフォースナイト候補生たちも加わり、異形の獣たちは、そしてブラックタールたちは徐々に押されていった。そんな中。
「……私っているのかなぁ。泣きそう」
ひとり、ぽつんと佇むエリン。泣くでない。前線に出るだけが仕事じゃあないんだ。君のような者でなければ百戦錬磨のあらくれどものリーダーはつとまらないのだよ……たぶん。
●
一方、ソラウの思考を読み取ったブラックタールが召喚した獣は、ソラウのトラウマを呼び起こすのに十分なものであった。
「?!これは…昔、僕の声を奪ったオブリビオン!」
ソラウはクロノドラグマ星なる所に住んでいた歌姫だった。だがオブリビオンに襲われて、歌姫にとって命同然の声を奪われてしまったのである。その時の絶望たるや想像に難くあるまい。幸いにも現在どうにか声を取り戻す事はできたが、そのトラウマはそう簡単には払しょくできないものであろう。
「昔なら怯えているだけだったけど今は負けない!エリンが恐怖に立ち向かう事を教えてくれたんだ!」
だが今のソラウはかつての彼女ではない。精神を振り絞り、トラウマに敢然と立ち向かったのだ。どうやら声を取り戻してくれたのがエリンということだろうか。悪夢の獣を撃退する最善の方法は、トラウマの克服の方法を示し、それを実演することだ。克服をはかることは宣言した。あとはそれを実際に行うだけだ。
「お前を倒……」
『迷え…』
「……すよ!」
……なんかかぶってきたのを無視してソラウは堂々と言い切った。そう、結局オブリビオンによってもたらされたトラウマは、そのオブリビオン自身を倒す事で解決するのが最善なのだ。
『……あれ?』
「いっけー!」
ソラウは銃槍を振りかざすと、電撃をまとった音波を悪夢の獣に飛ばす。トラウマを払拭せんとする気合の込められた一撃は悪夢の獣を大きく揺るがせ崩しにかかる。
『……えー、あー、ゴホン』
「まだまだぁ!こんなもんじゃないよ!」
なんか知らないうちに出て来ていた第三の何かを、戦いに集中しているので気が付いていないのか、気が付いているけどあえてガン無視しているのか、まったく気にする様子もなくソラウは攻撃を続行する。
『あっアイツは…』
『あの子はいつも降臨するタイミングが最悪だわ…』
ライズサンとエミリアーノはどうやら気が付いたようだ。ただ間が悪いのはたしかにあるが、それ以上に人が戦ってる時に話しかけようとする空気の読めなさも正直かなり悪いような気はしなくもない。
『私は時空s』
『おっと!俺もそろそろ動かなきゃな!奴さん、こっちにも来やがったぜ!』
『……私の名はエs』
『ごめんね!エスちゃん!今は戦闘中なの!』
なんとしても名を名乗りたい謎の存在をあるいはガン無視し、あるいはてきとーにあしらいつつ、ライズサンとエミリアーノも悪夢の獣に攻撃を開始した。ライズサンの呪詛が込められた念動力、エミリアーノの爆発的な神聖なる力が炸裂し、悪夢の獣は次々に吹き飛んでいく。
『ぐずっ…ぐずっ……』
誰からもかまってもらえずついにぐずり始めた謎の人。その姿を見定めたのか、悪夢の獣が一匹その方向に向かっていった……が。
『あァァァんまりだァァアァ』
軽く振るわれた一撃で悪夢の獣は消し飛んでいた。そう、実はこいつ間が悪く空気も読めないが強いは確からしい。時空神を名乗るだけあって空間を操作する能力があり、今の攻撃もそれの応用であった。
「……凄い!誰だろう?いつの間にいたんだろう?」
その凄まじい力にようやっと第三の人に気が付いたらしいソラウ。って誰かは知らないのね。一応自分のユーベルコードで呼び出したようですが。無意識に発動するタイプなのだろうか。
「貴女は誰ですか?」
『?!』
呼びかけられて満面の笑みを浮かべたこの人……女性らしい。早速名乗ろうとした……が。
『やっとわたs』
「あっ!敵!!」
……ソラウはすぐに新手の獣へと向かってしまったのであった。
『…ぐすん』
……彼女の名はエスパス。時空神なのは間違いない。そしてその強さは折り紙付きな上、時間の経過とともにどんどん力を増していく、とのことであるが……なんか、強さ以外のところでいろいろと不遇のようであった。
●
そして、トラウマなんか知るか!とばかりに自分の思うように動く事を決めたのが、リュカシオンだった。謎の空飛ぶ鮫カオスシャーク、精霊王アロナフィナとともにオブリビオンに相対する。トラウマなどかけらもなさそうなリュカシオンに対し、ブラックタールたちは名状し難い恐怖の存在を召喚した。トラウマなど持たぬ者なら今からトラウマを植え付けてやればいいと言わんばかりの、根源的な恐怖を呼び起こさせる存在だ。
「さて、どうしてやろうかねえ」
『容赦する必要はない!ぶっ飛ばしてやろう!』
だが常人なら即SANチェックものな相手に対してもリュカシオンはまったくひるむ様子もない。同じく、これまた戦意高らかに意気込むカオスシャークと対照的に、アロナフィナは冷静な声をあげた。
『……いつの間に出てきて、あなたは何をしてるんです?』
『ZZZ』
寝ていたのは黒と白銀の龍アズリエル。天災邪神龍の二つ名は決して伊達ではなく、天然死を司る能力を持つらしい……が、残念ながら今回はこれ以上の出番はない。どうやら今回死んでいたのは自分自身だったようだ。爆睡的な意味で。
「いやー、相手が数で来るからこっちも数でって思ったんだけどなー」
『どうせならもっと役に立つの呼んでください』
後ろ頭に手を当てて笑うリュカシオンをジト目で見るアロナフィナ。
「おーけーおーけー。今度こそ!カモンなんかすごいの!」
気合とともにリュカシオンは右腕を振り上げると、指を2本立てて振り下ろす。瞬間、目の前の地面が光り輝き、円と直線が魔法陣を描き、爆発が起こり、光と轟音と煙が巻き起こり、それが去った所にいたのは……
「……」
『……』
いたのは……
『ラーミアなのだ』
ばばぁーん!!と集中線付きで出てきたのは……なんかフクロウ。
『何ですか?!この梟は!』
「何ってラーミアだよ!知らないの?」
当然のように言うリュカシオン。とりあえずアイテムにもユーベルコードにも設定にもない名前なので、このシナリオのために急遽でっちあげられた存在ではあるようだ。
『ラーミアは可愛いのだ』
ばぁーん!とさらに集中線付きで主張するラーミア。たしかに丸くて可愛らしいのだが。だが今求められているのは可愛らしさではない。ジト目でアロナフィナはたずねる。
『……あなた、何かできるんです?』
『可愛いのだ!!』(バァーン)
『……捨てます』
問答無用でアロナフィナは念動力でラーミアを浮かすと、そのまま遠くへと飛ばした。
『ワハァァァァァン!』(バァーン)
最後まで集中線付けたまま飛んでいったラーミア。
「ああっ!ラーミア(丸くて可愛い<重要)が!この人でなし!!」
『精霊ですので人ではありません』
『ワハァァァァァァァ』(バァーン)
その飛んでいった方向には。
『げっ!ラーミア!』
どうやらラーミア(丸くて可愛い<超重要)を知っているらしいライズサン。その顔には嫌悪感がありありと。
『くたばれ!!』
『ワハァァァァァァァ』(バァーン)
最後の最後まで集中線を残しつつ、ラーミア(丸くて可愛い<絶重要)はライズサンが発生させたマイクロブラックホールの中へと消えていった。南無阿弥陀仏。
『で、どうすんの?あいつら』
改めてブラックタール軍団と恐怖の獣軍団を指(?)指すカオスシャーク。どうやら突然形成されたネタ空間に入り込むのを躊躇したのかどうだかはわからないが、今まで黙って見ていてくれたようなのだ。
「そうだねえ……さっきお前、あいつらぶっ飛ばす言ったよなそういや」
『えっ…何すんの?シオン?』
むんず、と腕、もとい胸鰭を掴まれ、困惑するカオスシャーク。次の瞬間。
「お前の犠牲は無駄にはしない」
『あばばばばばばば!?』
突然、神聖な力が込められた電撃を伴う衝撃を全身に浴びせられ、カオスシャークは悶絶した。そして。
「そーら!ぶっ飛ばしてこい!」
投擲。
ちゅどーん。
大爆発とともにオブリビオンたちは吹っ飛んでいった。
「……お前の事は一生忘れないからな」
空の上で、半透明で笑顔を浮かべるカオスシャークに向け、リュカシオンは涙ながらに敬礼した。
『馬鹿馬鹿しいですね……』
ちなみに残りの敵はアロナフィナが精霊魔術でなんとかしてくれたそうな。
●
かくしてエリン、ソラウ、リュカシオンは三者三様のやり方で敵を倒していった。
一応追記すると、3人が召喚した者たちは神だったり龍だったりなんかすごいものだったりしてむちゃくちゃ強いのだが、理外の存在であるオブリビオンを相手にするならば、超常的な存在な彼らであっても本来なら容易に戦える相手ではない。
「我々も猟兵たちとともに戦うぞ!今こそ恩を返す時だ!」
今回のようにその力を十全に発揮できたのは、彼ら彼女らが助けた訓練生と結んだ絆の力が大きかった事は、明記しておかねばなるまい。
ともあれ、敵はその数をおおいに減らしていった。あと一押しでカタがつくだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クレア・フォースフェンサー
まだ修練途上にある者達のトラウマを突く、か
なるほど確かに卑劣な奴のようじゃ
今回の戦いだけでトラウマを克服することはできぬじゃろう
じゃが、そのきっかけを与えることはできるかもしれぬ
まずは自らの力が敵に通ずることを知ってもらおうぞ
あの身体に触れるとトラウマを呼び起こされるのじゃな
なに、当たらねばどうということはない
サイコキネシスで介入し敵の動きを鈍らせてもらおう
その間にわしが光剣をもって斬り伏せよう
【つか、トラウマって設定が固まっているキャラクターにあるものだし】
何か言ったか?
ミニスター・ブラックとやらは、殺した者達をオブリビオンとして蘇らせると聞く
ならば、制服を着たあのブラックタール達も元は――
●設定考えるのも大変だよね
かなりの数の訓練生は解放されたが、それでもいまだにブラックタール軍団は健在であり、同時に地獄の苦しみを味わっている訓練生もまだまだ多数存在していた。
「まだ修練途上にある者達のトラウマを突く、か」
眼前の凄惨な状況に、クレア・フォースフェンサー(元星騎士・f09175)は険しい顔をした。
「なるほど確かに卑劣な奴のようじゃ」
クレアの心には、このような状況を生み出したブラックタール、そしてそれを操るミニスター・ブラックへの怒りが確かに湧いてくる。やがて出てくるであろうミニスター・ブラックは打ち倒すとして、だがまずは目の前の状況へ対処しなければならない。クレアは光剣を構え、腕を伸ばして訓練生の頭部に突き刺しているブラックタールに狙いを定めた。事前情報によれば、ブラックタールはこうして相手の精神に侵食してトラウマを増幅しているらしい。訓練兵は苦悶の叫びを上げている。それは間違いなく肉体的ではなく精神的な苦痛によるものだろう。
「しっかりせい!」
訓練生への叫びと共にクレアは斬りかかると、長い年月をかけて鍛錬に鍛錬を重ねる事によって生み出されたその一撃は狙い違わず伸ばされた触手を捉え、紙でも切り裂くかのごとくそれはあっさりと両断された。不意の一撃にブラックタールは飛びのくも、斬られたダメージ自体は大したことはなさそうだ。だがしかし、それよりも重要な事があった。
「うっ、うう……」
床に倒れ伏した訓練生の頭部からはかつてブラックタールの部分だったものは外れていた。おかげで脳内の記憶を探られ、そこから心的外傷を引き出されて延々と苦しめられる事からは解放されたようだ。だがその顔はいまだに苦しみに満ちている。
「……当然じゃろうのお」
沈痛の面持ちで、しみじみとクレアは言う。それは今新たに生まれた傷ではない。訓練生がそう遠くない昔に負った深手がいまだに治らず、どうにか必死に押し隠していたものだ。その傷は治りかけていたのか、それともいまだに医療用テープやら縫合糸やらで無理やり止めていたのか。いずれにせよ、それを無理やりに押し開かれたのだ。
(今回の戦いだけでトラウマを克服することはできぬじゃろう。じゃが、そのきっかけを与えることはできるかもしれぬ)
ただ言えるのは、なんとかして訓練兵には立ち直ってもらわなければならない。それは今回の戦いに勝利するためだけではない。彼ら自身の未来のためなのだ。
「おい、立てるかの?」
「ううっ……父さん、母さん……」
「悪いがわしはおぬしの両親ではないぞ」
再度の攻撃を狙うブラックタールを牽制しつつ、どうにかクレアは訓練兵を起こした。いまだ頭を抑える訓練兵に、クレアは呼びかける。
「そして悪いついでに頼むが、なんとかしておぬしにも戦わなくてもらわねばならぬ」
「……僕、いえ、小官に?」
「わしだけでは荷が重い相手かもしれぬゆえな」
それは半分は方便だ。クレアにはなんとかして、訓練兵に敵に立ち向かってもらわなければならなかった。改めて、クレアは光剣を手にブラックタールに相対する。ブラックタールの切断された腕は既に再生している。そして、その再生させた腕を不気味に変化させ、こちらの精神の侵食を狙っているようだ。
「手筈通りに頼むぞ」
「イ、イエス!サー!!」
わずかな時間で訓練兵を立ち上がらせ、さらに自分の指示に従わせた。このあたりはさすが教官経験者である。そしてクレアが戦闘態勢に入るのを待っていたかのように、ブラックタールが不定形の腕をクレアに伸ばす。
「今じゃ!」
「はい!」
クレアの指示に合わせ、訓練兵のサイコキネシスが飛んだ。いまだ未熟なそれはブラックタールの動きを完全に抑えるほどの力はなかったが、それでもなおその動きをある程度抑制する事はできた。
「古人も言ったのじゃ。当たらねばどうということはない、と」
クレアにはそれで十分だった。本来なら動きを遅くするまでもない。仮にくらっていたとしても、そもクレアにはトラウマ的な物があるかのかどうかは……まあ、なければそれはそれとしてSANチェックものの映像でも送り込んだのかもしれないが。ここは訓練兵に自らの力が敵に通じる事を知らせる事が重要だった。自信をつけることにより、将来的にはトラウマ克服に繋げてほしい、という事だったのだ。不定形の腕をかいくぐり、クレアは一気に敵に接近すると、繰り出された光剣はブラックタールの体を両断した。訓練兵の歓喜の顔に喜びつつも、クレアは別の事を考えずにはいられない。
(こやつも、あるいは元は……)
ミニスター・ブラックは殺した者達をオブリビオンとして蘇らせると聞いていた。実際、今回の目的も殺した訓練兵をオブリビオンにする事だったという。ならば今倒したブラックタールも……だが、仮にそうだとしても、結局倒す事でしか救うことはできない。クレアは次の戦いに備え、再度光剣を構えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「悪夢による攻撃…生体・精神体に危険だ、駆逐し撃滅する」
『マルチスタイル・サイコミュ・ファンネルビット』で警戒・捜索・索敵・連絡対応用ファンネルビットを創造し展開して猟兵と教練艦のフォースナイト達と連絡と連携を取りながらパルス照射をしながらソナー/精神ソナーで索敵/警戒をしながら発見次第猟兵とフォースナイト達とサイコミュ・ファンネルビット・テレポートを駆使しながらアルテミス・レーザーで先制攻撃をして、防御と回避と転移で協力にメインと考えながら機会があればレーザー攻撃を仕掛けます。
マルチ・リライズ・パルスで迎撃。
「悪夢とは生命の本能を利用する事象、返される気分はどうだ」
●今回はSPD統一だった
トラウマ的な存在の召喚、触手的な手段による接続および精神への直接攻撃が妨害され、ブラックタール軍団は第3の手段に取り掛かっていた。それは自らの体を相手のトラウマを呼び起こす姿に変えるものだ。見た目のみならず内面や能力すら変える事ができるとあれば、頭ではそれが本物ではないと知りつつも、心の奥底から来る恐怖に耐えるのは困難となるだろう。
「|適切対応可変型《マルチスタイル》サイコミュ・ファンネルビット展開」
教練艦内に入ったティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)言葉に合わせて無数の|漏斗《ファンネル》型をした超小型砲台群が瞬時に生成され、稼働を開始した。攻撃のみならず状況に応じて探知や通信等にも使用できるこの兵器で、まず精神攻撃を受けている訓練兵を探し、彼らの協力を得る事を狙ったものだった。ちなみにこのティティス、御年なんと7歳である。まあ人間ではないので単純に言える事ではないが、ちょっと7歳のスタイルではない。ついでに言うなら3姉妹の末妹らしい。下のお姉さんがもうちょっと情熱的な感じだったのに対し、ティティスはかなりクールなタイウのようだ。まあどうも実の姉妹ではないようではあるが。ちょっと複雑な感じだ。
そして訓練生を発見したが……ブラックタールの襲撃を受けていた。当初の予定ではティティスはこの場にとどまり、ファンネルビットを介した通話で訓練兵とコミュニケーションをとり、別の場にいるブラックタールの所で合流する手はずだったようだが、この状況ではティティス自身がそこに向かわねばならないだろう。
「悪夢による攻撃…生体・精神体に危険だ。瞬間空間移送!」
そして早速【サイコミュ・ファンネルビット・テレポート】を発動する。ユーベルコード複数使用するのはお姉さんと同じ傾向のようだ。そして転移した先で見たものは、姿を変えたブラックタールに恐慌をきたしている訓練兵。むろん、ブラックタールの姿が具体的に訓練兵にとって何を意味するかまではティティスには想像するしかないわけだが。かつて出会った強敵か、親しい者の仇か。それとも……ただ、いずれにせよ、危険な状況である事には変わりはない。ならばティティスのやる事は決まっていた。
「駆逐し、撃滅する」
それは機械的で冷静な声にも聞こえたが、その中には確かに敵手への怒りが込められていた。ティティスは動き出した。訓練兵が恐慌状態にある現状では、到底その協力を得る事はできそうにない。ならばまずは自分自身のみの力でなんとかしなくてはならない。
「アルテミス・レーザー!」
ファンネルビットから放たれた光速のレーザービームが立て続けにブラックタールに叩き込まれた。なかなか強力な光線だが、視認している相手でないと攻撃対象にならない特性があり、それがゆえにティティス自ら現場に赴く事になったのだった。レーザーをくらったブラックタールは変異を解除してもとの姿に戻り、訓練兵はその場にへたりこんだ。
「へたれている暇などない、銃を取れ」
機械的に訓練兵に言い放つと、改めてティティスはブラックタールと相対する。眼前のティティスにえぐるべきトラウマが見当たらないと判断したブラックタールは不定形を取った。その姿自体が気の弱い者ならば精神的な攻撃となるだろうし、不定形がゆえの不規則な軌道は戦闘においてもきわめて有用なものとなるだろう。ティティスは先制とばかりにアルテミス・レーザーを撃ち込むが、ブラックタールは不定形特有の移動能力に加え、ビットの角度から攻撃範囲を予測することでレーザーの軌道に入らない。ただブラックタールが手を伸ばすならすかさずファンネルビットによる反撃があるだろうから、ブラックタール側としてもなかなか攻撃に移れない。戦いは千日手の様相を呈してきた……が。
(そこで君の協力がいる)
一機のファンネルビットを通じ、ティティスは訓練兵に指示をだす。
「……僕に、ですか?」
(そうだ、手筈通りに頼む)
ファンネルビットを張り巡らせ、ブラックタールの予測困難な攻撃に備えつつ、再びレーザーによる攻撃を狙うティティス。それに対してブラックタールは発射前に射程外に回避しようとする……が、その動きが突然鈍る。
(よくやった)
「……はぁ、はぁ、はぁ……」
訓練兵がサイコキネシスでブラックタールの動きを抑えたのだ。ティティスは訓練兵に言い聞かせた。敵の注意は自分に向いており、そのため敵が訓練兵のトラウマを想起させる姿をとる可能性は低い、と。それでもゼロではあるまいが、訓練兵はどうにか恐怖を振り切ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
●
動きを鈍らせたブラックタールにレーザーが叩き込まれる。ブラックタールは反撃とばかりに不定形の腕を伸ばすが、ティティスは【|対応適切対処《マルチ・リライズ》パルス】でこれを防御した。ブラックタールの攻撃はティティスのトラウマを突いたものではなかったため、トラウマがブラックタールに跳ね返る事はなかったが、それでも攻撃に対する防御としては十分だった。そしてブラックタールに幾本ものレーザーが今度こそ突き刺さり、これを消滅させる。
「あ、あの……」
「話は後で聞く、今は敵の掃滅が先だ」
礼を言おうとした訓練兵をティティスは押しとどめた。そう。戦いはもう少しだけ、続くのだ。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
ほーん、精神の侵蝕ねぇ?
そういうのなら私の領分ね。
|封印を解く、リミッター解除、限界突破、オーバーロード《幼年期の夢に見た魅惑尽きせぬ領域、時間と空間を超越するただ一つの窮極的かつ永遠の“アリス”》
|継戦能力《魂が肉体を凌駕する》
|高速詠唱早業先制攻撃《タイムフォールダウン》、|重量攻撃《時間質量》操作により|マヒ攻撃、気絶攻撃、捕縛、凍結属性攻撃《敵の時は停滞する》
さて、|多重詠唱読心術《精神共鳴》によってフォースナイト達の|青春、情熱《厨二魂》を想起させましょう。聞こえますか、私は今あなたの精神に直接語りかけています。結界術でフィクションと現実の境界を曖昧にするわ。
ここまでくれば後はフィクションと自分を重ねあわせて主人公になりきってトラウマを克服するでしょう。後押しとして降霊で“本物”の呼びかけも加えましょ。
|勝利をこの手に《GET A GLORY》!
の裏では|多重詠唱結界術《精神世界の中》で|大食い《えっちなのうみそおいしいです》してるわ❤
●精神のプロの私に精神攻撃で戦おうなどは10年は早いんじゃあないかな
猟兵たちと、猟兵によって解放された訓練兵たちの活躍により、敵の尖兵はほぼほぼ掃討されつつあったが、まだ多少の残存が残っている。同時に、いまだトラウマに苦しんでいる訓練兵も。
「ほーん、精神の侵蝕ねぇ?そういうのなら私の領分ね」
事前情報を反芻しつつ、教練艦内に降り立ったアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔王少女・f05202)の言葉は決して誇張でもハッタリでもない。まさにアリスこそ自他ともに認める精神系のエキスパートといえた……ただ、その方向性には多少偏りがあるようだが。具体的には、まあ大体称号から察していただければよろしいかと。
ともあれ、船内の未探索領域にて、さっそくブラックタールを発見したアリス。
「ふむふむ、そーいうタイプの感じなのね」
ブラックタールは不定形にした腕を訓練兵の頭部に押し当て、訓練兵は何やら苦悶の叫びを挙げていた。
「頭蓋骨越しに情報送り込むタイプなら、リカバリーもわりとできそうな感じね、脳みそ直接クチュクチュするタイプじゃなくって良かったわ、あれはキマればいいんだけど、加減が難しいし、治すの本当に大変だからねえ」
妙にまじめな顔をして実に専門家らしいコメントをするアリス。実際、これまでの例からも、腕さえひっぺがせばとりあえず精神の侵食を止める事はできるようだ。ならばさっそくとりかかるのみ。ブラックタールがこちらに気付く前にと、アリスは行動を開始する。必殺の混沌魔術を発動させるべく、力ある言葉を発する。
「幼年期の夢に見た魅惑尽きせぬ領域、時間と空間を超越するただ一つの窮極的かつ永遠の“アリス”」
これはアリスのユーベルコードの多くに共通するワードのようだ。かつてルイス・キャロルがその著作のタイトルにもしたひとりの少女は現代にいたるまで様々な人が様々な媒体をもって語るもいまだそれが尽きる事はない。ついにはその少女の名を冠する世界があるぐらいである。無数の少女が存在する中で、『ただ一つの窮極的かつ永遠』を名乗るアリス。それは大本たるルイス・キャロルの原作に存在するものなのか、それとも別の何かなのか。それを知ろうとするならば大いなる混沌の中に踏み込まねばならないだろうが……ともあれ、術式は発動した。アリスの魂が肉体という枷を破り、その能力が爆発的に増大し、時間空間その他もろもろがねじ曲がり揺れ動く。魔術の根本は言葉であるという。何者でもないものに名前を付け、存在を与える事、これが最も基本の魔術だという。ならば魔術とは根本的には秩序だったものであり、混沌と魔術とはそも相容れるものなのだろうか?などという疑問はブラックホールの中にでも投げ捨ててしまおう。そう、猟兵というものがそも理外の存在ではないか。
かくしてゆがんだ時の中で、アリスは。
「ううっ……敵が、敵が……ああ!窓に!窓に!!」
かつてトラウマを植え付けられた化け物を前に訓練兵は完全に恐慌状態に陥っていた。このままでは精神の崩壊は免れないだろうと思われた矢先、突如化け物はその動きを停止させたのだ。
(……ますか)
代わりに、声が聞こえてきた。
(聞こえますか)
「……え?」
(私は今あなたの精神に直接語りかけています)
精神。その言葉に、訓練兵はようやっと自分が見ている光景が現実の物ではない事を悟った。そうだ。自分は仲間たちとともにあのブラックタールと相対し、そしてやつの攻撃を受けて……そこから先の記憶がない。それはいい、いやあまり良くないのだが、ともあれ訓練兵は現状を理解すると同時に、新たな疑問が生じてきた。
「……って、小官の精神世界に入り込んで化け物を止めた貴殿はいったいどなたなのですか」
(その話は後で聞くわ)
声の主……アリスには、質問に答えるよりも優先せねばならない事があった。それは当然、訓練兵をトラウマから解放し、ともに敵と戦うように導く事。敵の精神コントロールから脱しても、回復できなければ全く意味がない。いわばここからが本番、精神のプロとしての腕の見せ所さんなのだ。
(いいこと?まずは目の前のそいつをやっちゃいなさい)
「……え?」
(できるでしょ?今のそいつはただのカカシよ)
「……」
その通りかもしれない。だが訓練生に植え付けられたトラウマが、攻撃を阻もうとする。今は止まっているが、こいつが動き出さない保証など……そこにアリスの強烈な檄が飛ぶ。
(あきらめんなよー!)
「え?」
(どうしてそこでやめるのよ!そこで!もう少しがんばってみなさいよ!ダメダメダメ!あきらめたら!)
「……うう……」
(周りの事思いなさいな、応援してる人たちのことを思ってみるのよ!)
「応援……」
そうだ。自分が今ここにいるのは自分だけのためではない。自分が知っている顔。今もまだ戦火に苦しんでいる人たち。もはや遠くに行ってしまった人たち。そういう人たちのために立派な戦士になって敵と戦うと決めたんじゃないか。世界に平和をもたらすために!
(そのために、私は少しだけだけど、背中押してあげるから!|勝利をこの手に《GET A GLORY》!)
もはや訓練兵に恐怖も逡巡もない。戦士としての暑い魂が燃え上がり、憎むべき敵の幻影に立ち向かう勇気が体中にあふれていた。
「うおおおおおおおおお」
いつしか訓練兵たちは、精神世界ではなく、実世界でブラックタールと戦っていた。アリスの混沌魔術により、フィクションと現実の境界すら混沌の名のもとに曖昧となっていたのだ。それでも訓練兵の勇気は確かに現実のものだ。アリスはほんの少しだけ、それを後押ししたにすぎないのだろう。
「|青春、情熱《厨二魂》に訴える……いつもながら、よく効くわね、これ」
……精神のプロとして。
余談であるが、さすがに訓練兵の力で普通なら敵の精鋭たるブラックタールとまともにやって勝負になるわけがないのだが、実はこのあたりもアリスの後押しがなされていた。簡単に言うなら、訓練兵の精神世界で激励コマンドを使うのと時を同じくして、ブラックタールの精神世界でもかなり暴れたようなのだ。具体的には……
「……ごちそうさま」
……詳細はちょっと語らない方がいいかもしれなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ミニスター・ブラック』
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POW : マジックブロウ
【魔力を籠めた拳】で攻撃する。[魔力を籠めた拳]に施された【魔力制御】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD : 追加装甲
自身に【漆黒の機械装甲】をまとい、高速移動と【自律行動するビット】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ボミングレイド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【着弾地点で爆発する魔法弾】で包囲攻撃する。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ムルヘルベル・アーキロギア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●卑怯者 この先行かせず スペースシップワールド
「やはり我が出る事になったか」
猟兵たちの前に現れた巨漢のブラックタール、ミニスター・ブラックは、尖兵の全滅という事態にもまったく動じた様子はない。
「だが我が来たからにはお前達に万に一つの勝機もない。猟兵が死んだらいかなる|闇の騎士《オブリビオン》になるか、見てみるのも一興といったところか」
武人を思わせる容姿や巨体に反し、ミニスター・ブラックは魔術士であり、かなりの策士だ。白兵戦主体だと敵に思わせるがためにこの体を作り上げてきたというのだから筋金入りの策士だろう。幸いにも猟兵はその事を知っているのでこれはミニスター・ブラックにとってアドバンテージにはならないが、それでもなお、こいつは強い。間違いなく。
ミニスター・ブラックの能力は以下の3種類だ。
【マジックブロウ】は魔力を籠めた拳による攻撃だ。魔術士だからといって肉弾戦が弱いという先入観を突いた卑怯な攻撃である。ミニスター・ブラック級の魔術士の魔力なら速度・命中率・威力の全てにおいて凄まじいのは間違いないが、ただでさえ強力な拳は寿命と引き換えにどんどん強化されるという。短期決戦で寿命を縮める事などおそらくデメリットとは呼べないだろう。
【追加装甲】は文字通り自らに追加の機械装甲を装着させることで、高速移動、および大量の|小型浮遊砲台《ビット》の使用を可能にするものである。不規則かつ高速に動きながら光線を放つビットはむろん脅威だし、ミニスター・ブラックは装甲で身を守りながら高速で猟兵の攻撃を回避すると思われる。寿命を削るデメリットはあるが、やはり短期決戦でそこまでの問題にはならないだろう。
【ボミングレイド】は範囲内の敵全てに複雑な軌道で飛ぶ魔法弾を大量に撃ち込むものだ。目標に向けて四方八方から飛んでくる魔法弾は、まともにくらったら一発だけでも致命的な威力が予想されるが、それが大量に飛んでくるのだ。なんとかして回避するか、防御するか、それとも別の手段があるのか。これは寿命に関するデメリットはないが、仮に寿命が縮まったとしても短期決戦なら以下略。
卑怯者のくせにいずれの能力も強力だが、ここでこいつを止めなければフォースナイト候補生たちの未来は失われてしまう。そもそもただでさえ猟書家は倒すべき相手なのだ。その、なんだ。なんとかこの卑怯者をどうにかしてください!!
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「卑怯で不遜、敗北を知って滅し駆逐されろ」
同タイプと把握して警戒しながらファンネルビットを創造して展開しレーザー攻撃をしつつテレポートで攻撃を空間飛翔して避け、回避も防御もギリギリになったら『マルチ・リライズ・パルスで』で受ける攻撃を即刻反射で迎撃します。
時間経過を見てアプロディーテ・フューチャーサイトで1分先の未来を見ながら機会を伺いながらヘラ・エウピションでで苛烈な猛攻を仕掛けます。
状況で戦法を変えようとしたらマルチスタイル・サイコミュ・ファンネルビットで最適化したファンネルビットで先制攻撃や反射防御用のファンネルビットを緊急に創造して対応させます。
●同じタイプのスタンドだな
憎むべき卑怯者。されど間違いなく強敵。だがティティス・ティファーナはそんな猟書家ミニスター・ブラックを前に堂々と言い放った。
「卑怯で不遜、敗北を知って滅し駆逐されろ」
『ほざきおるわ、彼我の差も把握できぬ分際で、猟兵も所詮この程度か』
ブラックは言った。猟兵『も』と。むろん、ここで猟兵と並び『この程度』と言われているのは、フォースナイト候補生だろう。ブラックによれば、かつてのフォースナイトは清廉さと狡猾さの両方を持っていたが、現在では清廉さしか残っておらず、それがゆえに取るに足らない存在に成り下がってしまったというのである。それがただの嘲笑なのか、あるいはかつて強敵と呼ばれた存在が(ブラックの主観では)弱敵になり果ててしまった事を割と本気で嘆いているのか。いずれにせよ、ブラックにとっては猟兵もまた、現在のフォースナイト程度の存在でしかないということであろう。
「敵手の力を見極めぬうちからその豪語、君もその程度でしかないようだな」
ティティスは真っ向から応じた。確かに、あるいはブラックは先刻のティティスの戦いぶりを見て、この言葉を発したのかもしれない。だからといって戦う前からこのような事を言われたのでは、さすがに不本意も極まれるというものだ。
『ふん、どちらが本当に不遜なのか、直にわかるだろう』
「その通りだ」
躱された言葉を合図とするかのように、互いに戦闘の準備を整えた。ブラックは【追加装甲】を装着、ビット軍を次々に出現させ、ティティスもまたファンネルビットを展開する。
(同タイプの戦闘スタイル、ならば手の内はある程度読めるはずだ)
思いつつも、同時にティティスは無数の小型浮遊砲台の脅威についても重々理解していた。だからこそ自分はこれを使っているのだから。またブラックもまた、この戦術の強みや対策はある程度把握できているに違いない。すなわち、純粋に技量、知識量が高い方が勝つ。
「|適切対応可変型《マルチスタイル》サイコミュファンネルビット!行け!」
『かかれ!ビットども!猟兵を潰せ!』
たちまち戦場は個人戦でありながら集団戦の様相を呈してきた。ティティスの涙粒型ビットとブラックの小型飛行機とも機械化された昆虫や鳥ともとれるような形状のビットが両者の間で激しくビームを撃ちあい、バリアを張り、ドッグファイトを繰り広げる。音と光が響き渡り、両軍のビットが次々に撃墜されるが、ティティスもブラックもその都度ビットを補充する。やがて敵の本陣に到達するビットも出てきたが、ティティスは短距離テレポートで、ブラックは高速移動による回避行動で、それぞれ容易に攻撃を当てさせようとしない。
やがて状況は徐々にブラックに傾いていった。同時に多数のビットをコントロールする集中力の差か、何か別の要因か。はたまた演出用ユーベルコードと判定用ユーベルコードの差か。いずれにせよ、ブラックのビットはティティスのビット群を追い詰めていく。ティティスのテレポートは味方……この場合はビットのことだ……の所にしか行けず、そのためビットの動きが制限されるとテレポート先もまた強い制限を受ける事になる。逃げ場も失われつつある。
『どうやら不遜なのはお前の方のようだな』
「それはどうかな……有害なパルスを反射する!」
勝ち誇ったようなブラックに対し、まだ底を見せていない事を示すかのごとく、ティティスは【|対応適切対処《マルチリライズ》パルス】を発動させた。本来の用法は状態異常や行動制限に対する反撃であり、今回のような純粋な攻撃に対しては用法外ではあるが、それでもある程度の攻撃は反射し、ブラックのビットは自らの放ったレーザーを受けて撃墜されていく。だが。
『ふん、所詮は悪あがきよ、いずれ我のビットはお前のビットを押しつぶし、やがてはお前を死に至らしめるだろう』
ビットの勢いで上回り、パルスによる迎撃も本来の力を十全には発揮できていない。ブラックの言葉はまさに現状を十分に反映したものであった……そう、現状を。
「……そんな未来は、私には見えないな」
それでもティティスは実際、現状ではなく、未来を見ていたのだ。稼げた時間はわずかだったかもしれないが、反撃のための準備をするには十分な時間だったのである。
『……ん?』
ブラックは訝しんだ。ティティスの動きが明らかに変わっている。ビットの動きがブラックのビットに適切に対応し、効果的に攻撃をしてくる。完全に傾きかけた形勢が徐々に押し返されようとしていた。ブラックはその理由を推測し、やがてひとつの結論に至る。
『さては未来を読んでいるな』
実際その通りだった。ティティスは【アフロディーテ・フューチャーサイト】でブラックのビットの動きを先読みし、適切にビットを配置、最善の迎撃をしてきたのだ。
『だがそれならそれでやりようはある、読まれようと決して防げぬ攻撃を行えばよいのだ』
ブラックは散会させていたビットを集中させた。読まれようと関係ない、いかなる防御もできぬような一点集中攻撃でカタをつけようというのである。それに対しティティスは。
「全武装展開、【ヘラ・エウピション】発動」
ビットのみならず、持てる全武装を全身に展開する。同じく一点集中攻撃の構えだ。
「撃て!!」
『発射!!』
互いの全火力が正面からぶつかり合い、中央で押し合いになり……
「……」
『うおおおおおおおおお』
両者の間で拮抗し集中されたエネルギーはたちまち飽和状態になり……
大爆発。
爆風の余波で、互いにいったん退かざるを得ない状況となった。が。
「……いいでしょう、戦果としては十分です」
ティティスは冷静に判断した。形としては両者痛み分けであるが、敵の魔力を削り、また敵は寿命を削りながらこちらを仕留める事はできなかった。戦況全体で見れば猟兵優位に傾いたと見て良いだろう。
『ふん、今ので仕留めきれなかったか、我もまだまだ甘いものよ』
何より、ブラックの表情が、明らかに勝利したもののそれではなかった。それこそティティスがブラックに打撃を与えたことの証明と考えてなんら差し支えないだろうと思われた。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ汝が為したいように為すがよい。
真の姿、幼年期の云々の元ネタはCoCよ。あれ、|某邪神《ヨーグルトソース》の別名を最後だけ私の名前にもじっただけだから、ってことで前章から引き続きオーバーロード。
ええっと……そのガタイでこいつ肉弾戦弱いって油断するやつおんの?てか、最近の魔法少女って格闘戦がデフォなとこもあるし、魔術士だからって白兵戦で油断する要素はないわね。
さて、|古来のWIZ式NINJA方式《全裸最強》で|継戦能力《ヒュンケる(動詞)》わよ。|封印を解く《武装をパージし》、|リミッター解除《溢れる生命エネルギーで全身を覆い》、|限界突破《見えちゃいけないとこは生命エネルギーが謎の光の代わりに隠すわ》。
|連続コンボ《天地魔と》げふんげふん|盗み攻撃《攻撃の機先を奪い》|早業先制攻撃《後の先》とるカウンター主体の構えで迎え撃ちましょう。
拳を振るう腕の間合い、腰を入れる胴の間合い、踏み込む足の間合い、走り込む歩の間合い、この間合いの内は我が決闘結界術の領域なり。覚悟はよろしくて?
●チェックメイト
本題を始める前に……なるほどそっち方面の話題だったんですね。あのあたりの界隈は名前は様々なメディアで知ってはいるけどその詳細までとなるとなかなか取りこぼしが多いものです。しかし副王ってことはその上の魔王がいるのかなとかよしなしごとを考えてしまいそうになったところでさすがに脱線もこのあたりにして。
『お前は精神攻撃を得意とする猟兵だったな』
アリス・セカンドカラーの先刻の戦いについて、どうやらミニスター・ブラックはしっかりと観察して分析を行っていたようだ。さすがは卑怯な策略家である。
『我程ではないにせよ、ある程度の狡猾さは持っているようだ』
「あら、ほめてくれてるのかしら」
内心はともかく、強敵を前にしているとは到底思えぬほどのまったく変わらぬ様子で応じるアリス。ブラックの巨体と比べると、まさに大人と子供だ。むろん猟兵を体格で判断してはいけないわけだが。
『狡猾さはあるやもしれぬが、ならば真正面から潰すのみよ、剛よく柔を断つだ』
そして体格で判断してはいけないのは、オブリビオンもまったく一緒である。ミニスター・ブラックはその巨体に反して術を主体とする魔術士だ。では魔術士なら肉弾戦が弱いのか?答えは……ブラックが自らの技をもって示してくれることだろう。ブラックの両の腕に魔力が集まり、赤熱するかのごとく輝きだした。見るからに威力のありそうなそれを見て、アリスは。
(ええっと……そのガタイでこいつ肉弾戦弱いって油断するやつおんの?)
……うん。自分で書いておいて気が付かなかった。いやまあ、考えてみれば、体格で判断してはいけないといっても、確かに小柄な体で怪力は警戒しなくちゃいけないけど、大柄で非力ってあんまり考えなくてもいいよね。大柄だけど魔術士はギャップで良い。魔術士だけど肉弾戦強いもギャップ。では三段論法で大柄で肉弾戦強いはギャップになるかというと、そりゃならんわな確かに。
(最近の魔法少女って格闘戦がデフォなとこもあるし、魔術士だからって白兵戦で油断する要素はないわね)
ちょっと調べてみたけど、魔法少女の定義もかなり広い感はあるようで。筆者が知ってるのは変身とかしない関節技使いなわけですが。打撃系など花拳繍腿関節技こそ王者の技よ。ともあれ。
「いいでしょう。ならわたしも、剛の拳でお相手するわ!」
魔術士であるブラックが|素手喧嘩《ステゴロ》で来るならば、混沌魔術師たる自分も徒手空拳で相手するのが礼儀……と、思ったかはどうかはわからないが、ともあれアリスはなんかそれっぽい構えを取った。
『ほう、おもしろい、見せてみるがいい』
ブラックも構えをとり、慎重に出方を伺う。そしてアリスが動き出す……と、思いきや。
『……なんのつもりだ?』
いきなりアリスが構えを解いた。そして棒立ちになったと思いきや、何やらポーズを取る。それは一見、戦闘には適さない、隙だらけの姿に思えた。そして。
「変身!!」
気合の込められた叫びとともにアリスの体が光り輝いた。その姿がシルエットになり、その周囲を光線が螺旋を描くように回る。そして回転するシルエットはアリスの体の線をはっきりと描く……先刻まで着用していた衣装のラインは、そこには見られない。
『……??』
ブラックはここで攻撃しても良かったのかもしれない。だが優れた策略家たるブラックは深読みした。一見無防備なその姿だが、敵前でそんな大きな隙をさらすはずがない。ここで下手に手を出したら強烈なカウンターが来る可能性もまるきり否定はできない。ならば当初の予定通り、相手の攻撃を待って後の先を取るべきだろう。そう判断したのである。結果的には司馬懿が諸葛亮の空城の計をくらってしまった時のような状況になってしまったのかもしれないが……実際どうだったのかはわからない。
ともあれ。アリスの『変身』は完了した。光がおさまり、シルエットがもとのアリスに戻り……
『……なんだそれは』
「知らないの?古来からの伝統的な地下迷宮探索スタイルよ」
……とある地下迷宮を探検する者たちの中には、何も装備してない状態がもっとも防御力が高くなる者が存在するらしい。噂によれば彼らは忍者の一種らしいのだが。いやあれは別に全裸じゃないでしょたぶん。よく全裸全裸って言われるけど。ちなみに今ちょっと調べたら実際は無装備忍者はそこまで強くないらしいけど、まあそこはそれ。ともあれ、今アリスはそういう恰好だった。たしかによくあるお約束では一度全部クロスアウツしてから改めてコスチュームを着るのが普通なようだが別に普通でなくても良いのだ。詳細に描写しちゃったら怒られると思いきや、なんか一般向けのなんやかや仕様のようで、うまい事アリス自らの生命エネルギーやら艦内の照明やらで描写できないようになっているようである。訓練兵の皆様お疲れ様であります。
『……まあ良いわ、むしろ防具がない事は我にとっては好都合よ』
改めて両手を赤熱させたブラックと、光のみを纏っているアリスが対峙する。偶然にも、両者とも狙いはカウンターだった。互いが互いの動きを見定め、後の先を取ろうとする構え。一般論であるが、互角の達人同士ならば相手の動きを見てから動き出した方が有利なのだ。ましてや両者とも策略家だ。下手に手を出したらどんな罠が待っているかわからない。そして時間は過ぎていき……
「その拳がどんだけすごいかわからないけどね」
『……』
「確実に勝ちたいならそのまま待っている事をおすすめするわ……猟書家さん…!!」
アリスの言葉はすなわち、自分の構えがブラックに破れるはずがないというあからさまな挑発だった。むろんブラックとてそれは分かっていた。しかし、待っている間も自分の寿命は削れつつあるのは確かだ。このまま根競べを続けていて良いものか。逡巡はだが、一瞬で終わった。
『……いいだろう、乗ってやろう、その挑発に!』
ブラックの両腕がさらに輝きを増した。魔力制御の封印を一気に解除し、カウンターも許さずに一撃で決めるつもりなのだ。対するアリスは両腕を広げ、迎え撃つ構えを取る。ブラックは計算した。自らの攻撃力なら、一撃で十分に即死させる事ができる。
『死ねぇ!!』
そしてブラックはアリスの決闘結界術の範囲内に踏み込んだ。カウンター気味に拳を繰り出すアリスにかまう事なく、轟音とともに両の手を容赦なく叩き込む。計算上、一撃で倒せる拳を何度も何度も。やがてブラックは間合いを取る……が。
『……馬鹿な!なぜ生きている!』
「……今にも燃えつきそうなわたしの生命だけど……猟書家ごときにとらせてやるほど安くはないわっ……!!!」
アリスは立っていた。苛烈極まりないブラックの連撃を耐え。そして耐えた分、カウンターの拳をブラックに叩き込んでいたのだ。
『……ぐうっ!おのれ、この我が……』
ブラックは膝をついた。その胸元には、いくつもの凹み。その前で敵を見下ろし傲然と立つアリスの姿は、不死身の異名をもって知られた偉大な戦士を思わせるものであった。そういえばあの人も上脱いでたっけ。前述の忍者のみならず、鎧を着た人は脱いだ方が強いのだろうか。あの人とかあの人とかあの人とか。
ちなみにアリスは不死身なわけではなく、ユーベルコードによってダメージの効果が先送りになっただけらしいのだが、それが実際に発動するのはこの冒険が終わってからでも別にいいということでひとつ。
大成功
🔵🔵🔵
クレア・フォースフェンサー
誤認させるためだけに身体を鍛える、か
魔術の神様は随分と気前がいいのじゃな
剣術の神様は吝嗇でな
全てを差し出す者にしか本物はくれぬそうじゃ
この者達はわしとは違い、フォースもユーベルコードも扱える
いずれおぬしになど負けぬ騎士に育つじゃろう
それまではわしらが剣持つ盾となろう
――とは言え
あの者達と戦い未だ立っているとはさすがは幹部
チャンスは一度と見るべきかもしれぬ
光剣で相対しつつ、拳の封印の破壊を狙う
動きが大振りになれば好都合
反撃の機会を見極め、候補生達のUCによる敵の行動阻害に合わせて完全戦闘形態に移行
刀身を伸ばし、それまでの早さと間合いを超えて斬り伏せよう
如何に相手の誤認を誘うか
戦いの本質じゃな
キャロル・キャロライン
候補生を殺すだけなら教練艦ごと沈めればいい
そうしないのは死体を残す必要があるから?
それとも、単純に苦しませるのが好きだからかしらね
楽しみを優先するような奴ならいいけど
そうじゃないなら、自分達を囮に使うぐらいのことはするかもしれないわね
一応、《サプレッサー》を艦の警護に当たらせておくわ
遠間ではビット
近接では魔力を籠めた拳
なかなか厳しいけど、やるしかないわね
《強化回路》で身体を強化
《スーツ》の機能を用いて駆けつつ《銃》で攻撃
敵の疲弊度合いを見切り《移動回路》で転移
《破壊回路》の力を込めた弾丸を至近で撃ち込む
貴方にトラウマがあるのか分からないけど
私達がトラウマになるくらいの痛みを与えてあげるわ
●年の功
「誤認させるためだけに身体を鍛える、か」
ミニスター・ブラックの巨体を見ながら、クレアは呟いた。それは独り言のようにも、眼前の敵対者に向けた言葉のようにも聞こえた。
「魔術の神様は随分と気前がいいのじゃな。剣術の神様は吝嗇でな」
光り輝く剣を抜きつつ、クレアは黒き巨体に相対する。
「全てを差し出す者にしか本物はくれぬそうじゃ」
『ふん』
クレアの言葉を、ブラックは鼻で笑った。
『才なきとはみじめなことよの』
文字通り、剣術に全てを捧げ、長き年月の果てにユーベルコードと呼べるほどにその技術を磨いた者と、魔術を磨きつつ、謀略詭計に対してもソースを割り振った者。クレアはむろんだが、ブラックもある意味においては求道者的な物を確かに内に秘めてはいたが、両者の方向性はその実真逆だった。
「才なきか、そうかもしれぬな」
長年に渡る鍛錬に果てに、ブラックのように魔術士でありながら謀略も拳技もという風にはいかず、自分には剣技しかない。それは一般人にとっては、いや、同じ猟兵から見ても神業にも等しい技術だが、クレア本人にはいまだ道半ばでしかない。剣の道は果てがなさすぎるのだ。
「じゃが、この者たちにはわしと違って才能がある。なにせ、わしとは違い、フォースもユーベルコードも扱えるわけじゃからな」
クレアは後方に控えるフォースナイト訓練生たちをちらりと見やった。この若さにして、既にサイキックエナジーを用いたユーベルコードを扱える者たちである。長年の修練の果てにいまだただの剣技しか使えない(周囲からすればその剣技はユーベルコード級になっているわけだが)自分とは天地の差だ。
「候補生を殺すだけなら教練艦ごと沈めればいい」
そこに別の女性が入ってきた。キャロル・キャロライン(処断者・f27877)だった。
「そうしないのは死体を残す必要があるから?それとも、単純に苦しませるのが好きだからかしらね」
これは難しい判断だろう。ブラックの狙いは死体をオブリビオンとして再利用することなので、死体が残るような殺し方をするのは理にかなっている。が、死体がなくてもオブリビオンになる例だってあるだろう。そして確かに今回、ブラックは訓練兵の精神を責めさいなみ、苦しめる方策をとった。それは純粋に勝利のための近道とは考えられるが、なにせオブリビオン、それも謀略家のやることなので、趣味と実益を兼ねている、というのもあながち否定はできないかもしれない。
「いずれにせよ、看過はできないわね。加勢するわ」
キャロルはクレアの横に並び、クレアは笑顔でキャロルを迎えた。
「おぬしが来てくれたなら心強いの」
フレンド欄を見るに、クレアとキャロルは知り合い同士のようだが、ふたりには実は奇妙な共通項があった。単に純白の衣装をまとった金髪でスタイルがいい女性、というだけではない。ともに、長年生きたのちになんらかの原因で若返り、戦いの経験と全盛期の肉体を持った者同士だったのだ。かたや外見年齢を、かたや実年齢を年齢として示しているが、それは些細な差異というものであった。
『ふん、要するに死にぞこないか』
その事を察したブラックだったが、それでもやる事は変わりはない。
『死者は死者のあるべき正しき道に導いてやるのが先達としての我の義務ということだな』
「それは違うな」
死者はオブリビオンとなるべし。今からでも遅くない、そう導いてやろう。暗にそう言ったブラックに、ふたりはきっぱりと言った。
「いかなる事情でこの姿になったかは検討もつかんが、与えられた命、世界の破壊ではなく維持のために使いたいものじゃ」
「せっかく人生倍に増えたのに、途中で終わったんじゃ、もったいないわね」
クレアは光剣を、キャロルは拳銃を、それぞれ構えた。加えてキャロルはブラックが猟兵を抑えている間に別動隊が教練艦を外部から攻撃するのではないかと考え、抑えのために|機動兵器《サプレッサー》を警戒に出していた。これで後顧の憂いはなく、目の前の相手に集中できるというものだ。
「敵は強いわね」
「ああ、分かっておる」
ブラックの連戦における戦いぶりから、クレアは猟兵と連戦していまだ立っているという結果を、キャロルはビットと拳による遠近両方に対応できる事を、それぞれ評価していた。
「チャンスは一度と見るべきかもしれぬ」
「なかなか厳しいけど、やるしかないわね」
『ふん、数にあかした攻撃とは、多少は頭を使ってきたようだな』
嘲笑うかのように言うと、ブラックは両手に魔力を籠め、赤熱させた。
『だが数だけ並べても戦力とは呼べぬ、少しは骨のあるところを見せてもらおうか』
確かに連戦のため、ブラックの体はところどころダメージを負っているようには見える。だが、その戦闘能力はいまだ健在だ。歴戦の猟兵ふたりがかりとはいえ、決して気を抜いていい相手ではない。
「いざ!行くわ!」
敵が戦闘態勢に入ったのを見て、クレアは光剣を構えて真っ向からブラックに突っ込む。キャロルは|強化回路《エンハンスサーキット》を発動、クレアとは反対側よりブラックに向かっていった。
『剣術使いならまだしも、銃使いも前に出るか。そういう戦い方をする者もいるらしいが、あまり推奨はできんな』
「言ってなさい」
クレアは至近距離で光剣を振るう。ブラックの赤熱した拳と光剣がぶつかり合うたびに、激しい光と音が響き渡る。キャロルはブラックを挟んでクレアと反対側より、ブラックの拳の射程外から拳銃を撃ち込むが、ブラックはクレアの相手をしているのとは逆の腕で弾丸を弾き飛ばす。ブラックとしてはキャロルの至近距離まで近づいて拳を叩き込みたいところではあるが、重力や慣性を制御するキャロルのスーツによる機動力と、クレアの猛攻に対処する必要により、それができずにいた。
『鬱陶しい、なら剣術使いを先に叩くのみよ』
一気に勝負をつけるべく、ブラックは魔術回路を開放した。寿命は削れるが、それでも今は早く終わらせる方が先決だ。まずクレアを、次いでキャロルを叩き潰す算段だった。それを見て、クレアが後方に飛びのき間合いをとった。猛攻に耐えきれないと判断したか。ブラックは一気に前に出て間合いを詰めようとした、その時。
「今じゃ!」
「ええ!」
これまでブラックと間合いを離していたキャロルが、いつの間にかブラックのすぐ後ろまで来ていたのだ。|移動回路《ムーブサーキット》を発動させ、転移したのである。
『小癪な!』
至近距離から拳銃を撃とうとしたキャロルを、体を半回転させて裏拳の要領で迎撃するブラック……が、突然、その動きが鈍る。
『……ぬ!?』
「くらいなさい!」
明らかに遅くなった攻撃を回避すると、キャロルは至近距離より|破壊回路《クラッシュサーキット》により威力の増幅された弾丸をブラックに撃ち込んだ。
『ぐううっ!?……よ、よもや!?』
ブラックの視線の先にあったのは、今弾丸を撃ち込んだキャロルでも、今しがた攻撃しようとしたクレアでもない。クレアの後方……そこにいた、フォースナイト訓練生たち。
『生意気な!未熟者ごときが!』
「如何に相手の誤認を誘うか、戦いの本質じゃな」
訓練兵たちに指示を行っていたのはクレアだった。猟書家が万全の状態であっては訓練兵たちの未熟なユーベルコードが通りづらい。だが隙を突けば……例えば、敵の注意の対象がクレアからキャロルに移った瞬間とか。そしてそこを狙い、訓練兵たちはサイコキネシスを使ったのだ。そしてブラックの動きが鈍った瞬間を突いたのはキャロルだけではない。クレアもまた、完全戦闘形態に移行するだけの時間が与えられていたのだ。
「あの者たちのために、わしらが剣持つ盾になろうぞ」
クレアの光剣が伸び、ブラックの想定を超える速度と間合いで飛んでくる。それと同時に、キャロルも零距離から拳銃を連射する。
「貴方にトラウマがあるのか分からないけど、私達がトラウマになるくらいの痛みを与えてあげるわ」
『お、おのれ猟兵どもおおおおおおッッッ』
伸ばされた光剣と、オーラでコーティングされた弾丸は、ミニスター・ブラックの体を確実に前後から貫いていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュカシオン・カーネーション
チーム☆
エリンとソラウと共に敵を倒す
情報収集と視力と戦闘知識で状況把握だ
敵が爆弾を投げてきたらオーラ防御と衝撃波で防ごう
爆心地から離れる
《シオンさんどうしますか?これでは近づけません…》
アロナちゃん大丈夫…
復活してきたサメを掴んで神罰と電撃を纏わせ敵に投げる
「えっ、ちょ…ギャァァァ!」
サメは爆発した
ゆ…許さねえ良くもウチの仲間を
《貴女がやったんでしょうが?!》
アロナちゃんからツッコミが入る
爆破と呪殺弾を組み合わせてスナイパーで飛距離を伸ばし鎧砕きと貫通攻撃で鎧を破壊しながらダメージを与える
《出来たならやってください!サメさんが無駄死にですよ?!》
ワリィ☆
相手はウチらを近づけないようにしてくる
どうしようと頭を悩ませていると…
『ラーミアなのだ』バァーン
『お姉さんがラーミアをブラックホールに投げたから仲間を呼んだのだ』バァーン
『ラーミアはダンスを踊るのだ』バァーン
ラーミア(丸くて可愛い)だ!
《ええ…》
『ラーミアは敵を倒すのだ!』バァーン
ラーミアは爆発など恐れずに増殖して敵を袋叩きにした
ソラウ・エクステリア
チーム☆
絶対にやっつけてやる!
『皆気を抜かないで!』『いくぜ、ソラウ!』
エミリアーノとライズサンも気合十分だ
情報収集と視力で戦況を把握するよ
相手の白兵戦主体と勘違いさせる計画に乗っているふりをするよ
でも魔道士なのは分かっているから
相手が来る前に次元雷針をセットしておくよ
僕は歌唱と範囲攻撃で仲間を鼓舞して攻撃力を上げるよ!
皆!頑張れ!
隙を見て音響弾と衝撃波で攻撃するよ
攻撃してきたら結界術と属性攻撃(反射属性付与)でカウンターを狙うよ!
『追撃だ!』(オーラ防御と属性攻撃【反射属性付与済み】)
ライズサンは呪殺弾と電撃で敵を追撃する
『逃さないわ!』(オーラ防御と属性攻撃【反射属性付与】)
凍結攻撃とマヒ攻撃を組み合わせた矢弾の雨を敵に降らせる
相手の爆弾は属性攻撃で反射属性を付与して全て反射するオーラ防御は他の人達にも付与するよ
『げっ!ラーミア!』『きゃあぁぁぁぁぁぁ!』
二人は突然現れたラーミアを見て驚いている
相手の動きが止まったところでUC発動!
僕を奮い立たせてくれたエリンとシオンに捧げる歌だよ!
エリン・エーテリオン
チーム☆
情報収集と視力のいつもの状況把握をしておくが…
❛エリン…アルコの力は完全に使いこなせていないでしょう?❜
ミリアの問いかけに私は無言で頷く
前にサイバーザナドゥの時に目の焦点が合っていなかったってエキドゥーマ達から聞いていたからだ…
❝ごめんな!エリン!❞
アルコは謝るが場所が変わると制御不能になるのは駄目だな…
『トベナイマドウシハタダノゲトウダ!』ブレス攻撃と焼却で敵に攻撃する
『それ!』
エキドゥーマはマヒ攻撃とハッキングで相手の動きを封じている
❛なら…私の力を使ってみる?❜
ミリアは虹炎の神の力が目覚めた時に一緒にいた存在(来年二人は結婚するらしい)
❛まずは落ち着いて、集中…❜
師匠とソラウが戦ってくれている間に
キィーンキィーン!
鳴り響け!反転しろ!魂の心音!
ミリアスリラ…降臨!
何か力が湧いて来たぞ!
敵のマジックブロウは崩壊再成して魔力破壊の呪いに変えて奴の魔力回路を侵食破壊する
アルコイリスと同じか…それ以上に制御が難しい!
私は敵の動きが止まった所で虹神炎を纏った衝撃波と怪力で殴り飛ばした
フラーウム・ティラメイト
これが猟書家ですか…
私達、因果獣の国の調査隊は猟書家を討伐するため現場に訪れる
『フラーウム、油断するなよ』
ソドムが私に声をかける
『猟書家は倒すべき相手だからね』
マーアリアも淡々と告げる
興味深いですがフォースナイト候補生の未来を奪うというなら…排除します
私は胸にある鳥の形の石を車のエンジンキーの様に回すと
『グォォォォォ!』
獣の雄叫びの様な声が響くと
根源的な恐怖を与える因果を喰らう者に姿を変える
(恐怖を与えると覇気と殺気を纏う)
敵は冷や汗をかいていたが恐怖を振り払って私に攻撃を仕掛ける
『やらせねぇよ!』
ソドムがオーラ防御で防ぎ、爆破でカウンターをくらわせる
『…』
無言だがマーアリアも衝撃波と電撃で敵を殴り飛ばす(鎧砕き)
私は全身の武器から光線で吹き飛んでいる相手に攻撃する
鎖を纏い神速飛行形態になり(戦闘機の様なイメージ)相手に突撃する因果断絶攻撃の剣を受け止めてるが腕が消滅する
『パン』
マーアリアが一言呟くと敵の身体に巨大な穴が開く(呪殺弾と迷彩)
終わりです
私は止めにチェーンソーの翼で切り裂いた
●戦いは数だよ兄貴(2回目)
既に満身創痍であるが、いまだに戦意旺盛であり、戦闘能力自体に陰りのなさそうなミニスター・ブラックを前にして。
「そういえば」
何気ない様子で、リュカシオン・カーネーションは傍らのソラウ・エクステリアとエリン・エーテリオンに呼びかけた。
「さっき、3人で組んだのはサクラミラージュの件以来って言ったけど」
「言ったよね」
「私はそれ覚えてないけどな」
「でも、思い返してみたら、それより後に組んだような気がするんだよな」
「言われてみれば……クロムキャバリアの時だっけ?」
「そう、それだ」
「あ、それなら私も覚えてるぜ。あったよな」
「ダークセイヴァーの時は?」
「あん時は別行動だった気がする」
「お待たせしました」
と、割り込んできたのはフラーウム・ティラメイト(因果獣と因果を喰らう者『オベイ』を宿す探究者・f38982)。3人とは旧知の仲のようで、何度か組んで戦っているようだった。
「おう!アポカリプスヘルの時ぶりだな!」
「エンドブレイカー!の時以来ですね」
「……組んだ事ないの私だけ?」
フラーウムを笑顔で迎える3人だったが、エリンの表情だけはリュカシオンやソラウのものとは多少違うようにも見えた……が、気を取り直して、4人は倒すべき相手を見る。
「ま、つもる話は後だな」
「そうだね」
「あれが猟書家ですか……」
「ぶっ潰してやるぜ!」
リュカシオン、ソラウ、エリン、フラーウムはそれぞれブラックを前後左右から取り囲む。
『ダメージは大きいようですが、油断は禁物ですよ、シオン』
「わかってるぜ」
リュカシオンに付き従う精霊王アロナフィナはいつものように冷静に話しかけ、リュカシオンもまたいつものような調子で応じた。
『皆気を抜かないで!』
『いくぜ、ソラウ!』
「絶対にやっつけてやる!」
戦いを前にして気合十分なソラウの横につく時空竜エミリアーノおよびライズサンもまた、戦いの時が待ちきれない様子である。
『アヒャヒャヒャヒャヒャ!』
『やれますか?エリン?』
「……大丈夫だ!なんとかしてみせる!」
武器に憑依した邪神龍ブラッドムーンは猛るように笑い狂い、スマホに憑依した邪神龍エキドゥーマは心配そうにエリンに呼びかける。内心の不安はあるが、見た目は精一杯の平静を装ってエリンはそれに応じた。
『フラーウム、油断するなよ』
『猟書家は倒すべき相手だからね』
「わかってます、気を抜く事はありません」
そしてフラーウムも他3人と同様に頼もしい仲間を連れていた。黒髪の男性はソドム、赤髪の女性はマーアリア。ふたりは因果獣と呼ばれる存在であるらしい。
『ふん』
圧倒的多数に包囲された形にはなったが、それでもなお傲然とブラックは応じた。
『有象無象が、取り囲んだ程度でこの我に対して優位をとったつもりでいるのか』
その言葉は決してハッタリではない。その場にいる全員が、それを認めていた。だが退くわけにはいかない。
「興味深いですがフォースナイト候補生の未来を奪うというなら…排除します」
真っ先に動いたのはフラーウムだった。胸にある鳥の形の石を掴み回転させる。
「グォォォォォ!」
瞬間、古いガソリン車が差し込んだキーを回す事でエンジンがかかるかのごとく、獣の雄たけびを思わせる声が響き渡り、その姿が異形と化した。その目は渦を巻き、両腕からは牙を思わせる剣。背部には翼のように配置されたチェーンソーふたつ。その姿を見る者に恐怖を抱かせる程の覇気を纏っている。
『ハッタリが!そのようなものを我が恐れると思うてか!』
だがブラックは生じようとする恐怖を猟書家としてのある種のプライドと策略家としての冷静な精神ではじき返した。フラーウムはブラックに恐怖を生じさせ、精神を乱して攻撃を誘い、後の先を狙っていたのだが、どうやら誘いには乗ってこない……と思いきや。
『我が必殺の攻撃を受けるが良い!』
フラーウムの狙いは半分だけ当たった。予定外だったのは、近接攻撃ではなく遠距離攻撃だった事、そしてフラーウムのみならず、ブラックを取り囲む全員に等しくもたらされた事であった。ブラックが右手を掲げると、そこから一筋の光が天に昇り、やがてそれが何百何千にも分かれて降り注いできたのである。|爆撃急襲《Bombing Raid》の名が示す通りの苛烈な攻撃が、4人とその仲間たちを襲った。
「これは……さすがは猟書家、なかなか興味深い圧力です」
『言ってる場合か……ともあれ!やらせねえよ!』
『……』
フラーウムは迫る魔法弾を全身の武器から放つ光線で迎撃する。ソドムはオーラで防御し、マーマリアは衝撃波と電撃で撃ち落としにかかる。これらは本来、拳で来たブラックへの反撃として用意したものではあるが、それでも雨あられと飛んでくる魔法弾をどうにか防いでいた。
「わっと!」
敵を観察して状況の把握につとめていたリュカシオンの所にも魔法弾は容赦なく降り注ぐ。アロナフィナと共にオーラを張って防御するが、あまりの圧力に防戦一方に追い込まれようとしていた。
「みんな!がんばれ!」
『言われなくても!』
『結構きついけど……大丈夫!』
当初ソラウはブラックが『魔術士は白兵戦に弱い』と思わせる策略を張っていた事を察知、それに引っかかるフリを狙っていたが、この苛烈な攻撃の前では演技をする余裕もない。なのでソラウ自身はトラップの用意に専念、魔法弾の迎撃はソラウの歌によるブーストを受けたライズサンとエミリアーノが担当していた。ふたりはオーラによる防御で飛んできた攻撃を反射するも、反射した弾は新たな攻撃の前に相殺され、再度弾の雨が降ってくる。
そしてエリンは……
『エリン…アルコの力は完全に使いこなせていないでしょう?』
エリンはミリアステラの呼びかけに無言でうなずいた。
二柱の神、アルコイリスとミリアステラは先ほど人の姿をとって外に出ていたが、今はエリンの纏う虹神炎覇気の中に戻っていた。エリンは他の3人がブラックと戦っている間に自ら宿す神の力を引き出すつもりだったのである。だが以前アルコイリスの力を行使した際、その精神が不安定だった事を後に知らされたのである。
『ごめんな!エリン!』
「アルコは悪くないぜ、悪いのは私だ」
いずれにせよ、今のエリンにはアルコイリスの力は制御できないかもしれない。ならばどうしたものか。
『トベナイマドウシハタダノゲトウダ……トオモッテイタガッ!』
『エリンはやらせません!それ!』
そんなエリンのところにも容赦なく魔法弾は降り注ぐ。エリンを守るべく、ブラッドムーンがブレスを吐き、エキドゥーマが魔法弾をハッキングし、どうにか防いではいるが……。
『ふはははははは!やはり数がいようと、荒れ狂う大河に虫けらが挑むようなものであったな』
ブラックの哄笑。実際、包囲している側の猟兵たちは窮地にあると言っても過言ではない。どうにか苛烈極まる攻撃を防いではいるものの、皆、反撃の術を見いだせずにいた。決して猟兵たちやその仲間たちが弱いわけではない。猟書家が強すぎるのだ。このまま猟兵たちが押し潰されるのが先か、ブラックの魔力が尽きるのが先か。
『シオンさんどうしますか?これでは近づけません……』
「そうだなあ……おっ?」
『どうしました?』
必死で防衛に専念していたリュカシオンとアロナフィナの所に現れたのは。
『……ったく、ひでえ目にあったぜ』
空飛ぶ鮫カオスシャークだった。つい先刻、敵の大軍に投げられて散華したはずの、あいつだ。なぜ生きてるかって?いんだよ細けえ事は。
「……アロナちゃん、どうやら大丈夫みたいだ」
『……シオンさん、まさか』
「そのまさか」
リュカシオンは戻ってきたばかりのカオスシャークの腕……もとい胸鰭を掴んで。
『えっ、ちょ…ギャァァァ!』
再度神罰と電撃を流し込む。ひでえ。全く容赦ねえ。そして。
「そーら行ってこい!」
つい先刻のように、投擲。
『……む?』
魔法弾を浴びながら爆散することなく飛んでくる高質量物質を認め、ブラックはわずかに顔をしかめた。
『ふん、反撃する力があるとは、少々見くびっていたようだが、所詮悪あがきよ』
だがブラックはあくまで冷静に、拳に魔力を籠めると、その飛んできた何か……カオスシャークを迎撃する。
『アバーッ!!』
赤熱した拳で思い切り殴られたカオスシャークは、またも爆散した。
「ゆ…許さねえ!よくもウチの仲間を!!」
『貴女がやったんでしょうが!?』
怒りに打ち震えるリュカシオンに、冷静にツッコミを入れるアロナフィナ。半透明で空に浮かぶカオスシャークは、さすがに今度は笑顔とはいかず、額に青筋を浮かべていたようにも見えた。
『……むむ……』
カオスシャークを撃墜したブラックだったが、なんとも奇妙な表情をしていた。サメを殴った時の感覚が、うまいこと表現できないが、自分にとってはあまり好ましくない感覚に思えたのである。
そしてカオスシャークの死は決して無駄ではなかった。ブラックがカオスシャークを殴った一瞬、ほんの一瞬ではあるが、魔法弾の嵐が弱まった。これは戦況を変えるには十分な時間だったのである。
「今です!」
攻撃が弱まった隙にフラーウムは鎧をまとい、戦闘機を思わせるフォルムの神速飛行形態をとった。そしてブラックに向けて一気に突っ込んでいったのである。
『小癪な!』
ブラックは魔法弾の弾幕でフラーウムを迎撃するが、フラーウムの高速回避と、ソドムとマーマリアによる後方からの援護射撃で魔法弾を寄せ付けない。板野サーカスを思わせるような空中戦ののち、ついにフラーウムはブラックの至近距離に接近した。
「排除します」
『不遜!!』
フラーウムの剣とブラックの拳がぶつかり合う。フラーウムの剣は因果を操り、敵に回避も防御も許さずに確実に狙ったものを破壊どころか消滅させるものである。だがブラックの拳は消えなかった。膨大すぎる魔力でフラーウムの因果操作を跳ね返したのだ。返す拳をフラーウムはどうにか回避した。絶対回避を宿す因果眼をもってしても『どうにか回避』である。因果獣神皇の力で無限強化復活する体を得たフラーウムであるが、猟書家の前にはその法則すら破られかねない。
「……実に興味深いです」
フラーウムは口調も表情も変えずにいたが、それでも現状が自分にとって危険ある事は認識していた。
『シオン!このままではサメさんが無駄死にの上にフラーウムさんも危ないです!』
「わーってるわーってる!」
フラーウム同様、ブラックに生じたわずかな隙を突いてソラウが反射の防御結界を張った事で、猟兵たちはブラックに攻撃を行うだけの余裕を得ていた。フラーウムを援護すべく、リュカシオンは爆発する呪殺弾による超遠距離攻撃を撃ち込み、ライズサンの呪殺弾と電撃が、エミリアーノのマヒ効果のある凍結矢が、ブラッドムーンの焼却ブレスが、エキドゥーマのハッキングによるマヒ攻撃が、次々に叩き込まれるも、ブラックの魔法弾の嵐が容易に届く事を許そうとしない。わずかに届いた攻撃もマジックブロウの前に叩き落される。猟兵側に反撃のターンが回りはしたが、それでも相手を押し込める所までは行けていない。このままフラーウムが戦線離脱に追い込まれたら、また戦況は猟兵側不利に陥ってしまうだろう。
『なら、私の力を使ってみる?』
「ミリアの?」
エリンはいまだミリアスリアの力を行使した事がない。いわばぶっつけ本番という事になる。逡巡は、だがわずかな時間だった。力強くうなずいたエリンに、ミリアスリアは続ける。
『いい返事ね。じゃあ、まずは落ち着いて、集中……』
「さて、もう一押し、なんか欲しいトコだけど……」
リュカシオンは頭を悩ませていた。ソラウはトラップの設置と防御結界の維持に忙殺され、フラーウムは最前線でブラック相手に苦戦を強いられている。そしてエリンはいまだ動く気配がない。
「アロえも~ん、なんかない?」
『誰がアロえもんですか、それを考えるのが貴女の仕事でしょう』
傍らのアロナフィナににべもなく突き離され、さてどうしたものかと考えていると……
『ラーミアなのだ』(バァーン)
きっかけはあまりに意外な所からやってきた。前章でブラックホールの彼方に消えていったはずの、ラーミア(丸くて可愛い<重要)があまりにも自然にそこにいたのである。
「ラーミア(丸くて可愛い<最重要)だ!」
『ええ……』
そしてリュカシオンはあまりに自然にそれに対応し、アロナフィナは絶句していた。一体どこからどうやってここに戻って来たのか。そしてリュカシオンはなぜその事についてまったく疑問を抱く様子がないのか。言いたい事は山の様にあった。そんなふたりの様子など構う事もなくラーミア(丸くて可愛い<超重要)は続ける。
『お姉さんがラーミアをブラックホールに投げたから仲間を呼んだのだ』(バァーン)
集中線付きで堂々の言ってのけるラーミア。
『いや、確かに投げたのは私ですが、ブラックホールを呼び出したのはライズサンさんで』
『ラーミアはダンスを踊るのだ』(バァーン)
……話を聞け、という気力も失せたアロナフィナ。いつの間にか全く同じ姿をした仲間たちと踊りまくるラーミア(<丸くて可愛い<烈重要)。
そして。
『ラーミアは敵を倒すのだ!』(バァーン)
と、大量の仲間たちと共にブラックへ向かっていった。
『……なんか、戦ってくれるみたいですね』
「いんじゃね?」
『……はぁ……』
『げっ!ラーミア!』
『きゃあぁぁぁぁぁぁ!』
遠くから、ライズサンとエミリアーノの悲鳴が聞こえてきたような気がした。
『……ふん』
襲い掛かって来るラーミア(丸くて可愛い<激重要)の大軍に、フラーウムは体勢を立て直すよい機会と見て離脱をはかり、ブラックはわずかに顔をしかめた。それは先刻カオスシャークを殴った時の嫌な感じとよく似ていたのである。同時にブラックはその嫌な感覚の正体を悟った。
『ギャグキャラか』
ギャグキャラ。それはことシリアスに身を置く者なら誰もが恐れるものであった。いささか雑な言い方になるが、その本質はいわば世界の改変である。フラーウムが行う因果操作に近いかもしれない。本人も気が付かないうちに世界の法則をねじ曲げ、その場一体をギャグの空気にしてしまうのだ。その中ではシリアスキャラは知らず知らずのうちにペースを乱され、本来の実力を出せなくなる。逆にギャグキャラはある種の不死身、無敵状態となる。時としてオブリビオンフォーミュラですらその陥穽に陥ってしまう。付け加えるならば、結果として訪れるネタ死というのは、筆者は大好きだが、やられた者にとってはこれ以上の屈辱はないことだろう。
『よろしい、ギャグキャラへの対処法を見せてやろう』
だがブラックは冷徹に言い放つと、ラーミアの大軍に魔法弾を情け容赦なく叩き込んだ。不死身のラーミアは魔法弾など効かないかのように進軍を続け、やがてブラックを包囲するが、ブラックは全く構わず魔法弾の雨を降らせ続けた。やがて。
『ギャグキャラの対策、それはギャグ空間に捻じ曲げられた時空を、シリアス、バトルの空気に変える事』
一番わかりやすいのは、相手をギャグキャラとして扱わない事だ。間違っても不死身の相手に対して冷や汗などかきながら「なぜだ、なぜ効かん」とか絶対言わない事。あくまで倒せる相手、ただの雑兵として冷徹に対処する事。そうすれば……気が付いた時にはラーミアの大軍はブラックの周囲で目を回してのびていた。不死身かもしれないが、それは戦闘不能にならない事とイコールではないのだ。
『あとは発生源である猟兵を叩けばいいだけの事。さすればこいつらも消えてなくなる事だろう』
「なるほど、勉強になりました」
手を叩きながら言ったのはソラウだった。
「おかげでライズサンもエミリアーノも今後は困る事はないでしょう」
いやいやいやいや困る困る、と手と首をぶんぶん振るライズサンとエミリアーノに構わず、ソラウは続けた。
「この事には本当に感謝してます……そして、君を倒す絶好の機会をくれた事にもね」
『ほう』
時空騎士銃槍を構えたソラウの周囲には、いつの間にかライブ会場を思わせる空間が形成されていた。さらにその周囲には魔法弾がいまだに降り続いている。防御結界とライズサンやエミリアーノの迎撃でどうにか防がれているが、いつまで持つかわからないだろう。
『この状況で大口を叩くとはな、余程自信があるということか』
この時のためにソラウは必死で準備をしてきた。時間を稼いでくれたライズサンとエミリアーノ、そしてリュカシオンやフラーウムたち、そして今準備を行っているエリンのためにも、ソラウは失敗するわけにはいかない。失敗したら……おそらく防壁は破られ、ソラウは戦線離脱に追い込まれ、そして戦線は崩壊するだろう。
「僕は前にオブリビオンに時空の間に落とされて声を奪われた……」
フラウは時空騎士銃槍を握りしめた。
「けど絶望していた僕を励まして奮い立たせてくれたエリンとシオン!これはふたりに捧げる歌だよ!」
宣言と同時に、ソラウがあらかじめ仕掛けていた無数の次元雷針がブラックを取り囲んだ。【虹時空歌・エーテリオン・リュカシオン】と名付けられたそれは、次元雷針に囲まれた者に大ダメージを与える効果があるものだった……が、事態はそれにとどまらなかった。この時、ブラックの周囲には。
『……なのだ……』(バァーン)
おびただしい数の、KOされたラーミアの群れ。次元雷針はその死体(アロナフィナ『いや生きてる生きてる』)の上に立てられる形になったのだ。結果として、ソラウの必殺のユーベルコードに、ラーミアのわけのわからないパワーがプラスされ、相乗効果でなんかすさまじい事になり……。
『うぎゃああああああああ』
……すさまじい、それはもうすさまじい威力になったのだった。
『か……かなりのダメージはくったが……』
だがまだブラックはしぶとくも生きていた。
『きさまらゴミをかたづけるぐらいの力はのこっているぞ』
猟書家の意地で最後まで戦い抜こうとするブラックだったが。
「鳴り響け!反転しろ!魂の心音!ミリアスリラ……降臨!」
「エリン!」
「エリン!」
「エリンさん!」
「みんな、待たせたな」
黒髪は虹色に、その瞳は赤く染まり、ついにエリンが戦場に降り立ったのである。
「うおおおおおおおお」
猛烈な勢いでブラックに突進するも、実際その戦意とは裏腹に、エリンは……
(ぐうっ!?アルコイリスと同じか……それ以上に制御が難しい!)
『大丈夫…貴女なら出来る、落ち着いて……』
ミリアスリアの激励を受け、じゃじゃ馬を乗りこなすかのように、エリンは必死で力を制御していた。
『未熟者の分際で!身に余る力は身を滅ぼすと知るがいい!』
大ダメージを負ったブラックだったが、それでもなお持てる魔力の全てを拳に乗せ、エリンを迎え撃つ。そこに……
「加勢します!」
体勢を整えたフラーウムもまた、ブラックに突撃していた。
『一度敗れた者が図々しくしゃしゃり出てくるではないわ!』
だが腕は2本ある。片方でエリンを、もう片方でフラーウムを迎撃すれば済む話だ。ブラックは万全の体勢を整え、その時に備える。そして……
『ぱぁん』
マーマリアの一言でブラックの腹部に凹みができた。狙い通りに大穴を開けるには至らなかったが、それでもなお傷ついたブラックの防御を打ち破り、わずかではあるが打撃を与える事ができたのだ。ブラックの顔が苦痛にわずかにゆがむ。そして次の瞬間、エリンの拳とフラーウムの剣が、ブラックを捉えたのだ。
「ぶっ飛べぇ!」
「終わりです!」
これまでのダメージの蓄積、そしてインパクトの瞬間にわずかにできた隙もあり、ふたりの攻撃はついにブラックの膨大な魔力を上回った。エリンの拳はブラックの魔力回路を再構成崩壊させ、フラーウムの剣は今度こそブラックの拳を因果断絶せしめた。そしてとどめとばかりに虹神炎を纏ったエリンの拳と、フラーウムのチェーンソーの翼がブラックに叩き込まれた。
『ば、馬鹿なああああああああ』
猟書家ミニスター・ブラックの、それが最期と……
大成功
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●
……は、ならなかった。
『はぁ、はぁ、はぁ……』
もはや勝利どころか生還すらおぼつかない状況。それでもなお、せめて一兵でも多く骸の海に送らんと、どうにか戦闘態勢を整え、ミニスター・ブラックは戦場を彷徨い歩く。最後に戦うべき相手を求めて。
そしてブラックの眼前に現れたのは……
アリス・セカンドカラー
お任せプレ汝が為したいように為すがよい。
UCを切り替えることで先送りにしたダメージを喰らう。即死をエンドブレイクして|継戦能力《魂が肉体を凌駕し》食いしばり踏みとどまる。これにより指定UCの瀕死になる発動条件を満たす。
『アリスがヤられたか』
人型の夜空とも言うべき|『夜』《デモン》が
『だが、アリスは我ら四天王最弱。|我らがかわいい妹分《癒やしのマスコット枠》よ』
|息止め、道案内《黄泉路に誘う》処刑鎌を掲げし冥府の女王が
『その|我らがかわいい妹分《癒やしのマスコット枠》を傷つけしこと万死に値する』
移動に伴い割れる空間と漏れ出る紫電のみが存在を示す『ナニカ』が
『『『その罪、死を持って贖え!!!』』』
秘密結社オリュンポス腐海四天王達が部下を引き連れて召喚される。
|大食い《遍くエナジーを食らう》四天王達は、魔力だろうが運動エネルギーだろうがそのエネルギーを食らうことで攻撃を無効化スるでしょう。飽和で自滅?吸収効率が最低ならロスが多くて飽和は起こらないわよ?
存在するにもエネルギーは必要よね。
●やっぱり戦いは数だよ兄貴
どこかにて。
「アリスがヤられたか……」
「フフフ……奴は我等四天王最弱……」
「猟書家ごときに負けるとは猟兵の面汚しよ……」
「いやいやそれはないから」
「あと負けたわけでもなさそうだし」
「あ、やっぱり?」
「いずれにせよ」
「可愛い妹分がヤられたのは面白くないな」
そして舞台は戦場に戻る。
「……」
いきなりだが、アリス・セカンドカラーは死んでいた。
いや、この言い方は正確でないかもしれない。ただ、そうとしか見えなかったのもまた確かだ。ただのひとことも話す事なく、閉眼して壁にもたれかかりつつ、ただ座っていたのである。その顔はあまりに安らかで、むしろ微笑みすら見せていたのである。まるですべてに満足しているかのように。
『なるほど』
猟書家にして狡猾なる魔術士ミニスター・ブラックは、先刻戦った猟兵の姿を認め、すぐに何があったかを悟った。
『やはりあの攻撃を受けてただで済むはずがなかったか』
猟書家が、そのありったけの魔力を拳に籠め、さらにそれを全力で何発も何発も放ったのだ。普通はこうなる。おそらくはなんらかの手段を用いてダメージを先送りにしたということなのだろう。普通なら死んでもおかしくないが、よくよく見たらアリスはまだ生きていた。本当にギリギリのところで魂が肉体を凌駕したようである。このあたりはさすがは猟兵といったところであろうか。ただHP1ではない。おそらくはアレと違い、HP1と死亡の中間があるシステムなのだろう。
『いずれにせよ、放置はしておけぬ』
ブラックはなけなしの魔力を拳に籠めた。既に自らも動けているのが奇跡的な程に傷ついている身。それでも死にかけの猟兵にとどめを刺す事ぐらいはできる。せめて一兵でも多く骸の海に送る、そのために自分はこうして生きているのだ。ならばそれを果たさねばならぬ。
『猟兵よ、よく戦ったと誉めてやろう、だがこれで終わりにするぞ』
ブラックの情け容赦のない拳がアリスに叩き込まれようとした、まさにその時。
「……静かにしろよ」
突如、声が響き渡った。
『何奴!』
新手が出てきたとあっては放置してはおけない。死にかけた猟兵にとどめを刺すのはいつでもできる。それよりも声の主に対応するのが先だ。魔力を籠めた拳を構え、ブラックは油断なく周囲を見渡す。
「今アリスははじめて安らかに眠っているんだ……」
声はひとつではなかった。
「きっと生まれてはじめて…戦いも宿命も忘れて…」
「傷ついた心と身体をいやしているのよ……」
「……なあ……アリス……!」
『能書きはいいからとっとと出てくるがよいわ、まとめて相手をしてくれようぞ』
時間をかけた事もあり、死にかけのはずのブラックは今や戦闘能力だけみればほぼ全盛期のそれに等しいところまでもってきていた。その矜持をもって、ありったけの威厳を言葉に込めてまだ姿を現さぬ敵に向け声を発するブラック。
「アリスは我ら四天王最弱」
「|我らがかわいい妹分《癒やしのマスコット枠》よ」
「その|我らがかわいい妹分《癒やしのマスコット枠》を傷つけしこと万死に値する」
そして空間にひびが入り、まるでガラスのように割れたかと思うと、そこに現れたのは。
「「「その罪、死を持って贖え!!!」」」
彼(女)らは人呼んで『秘密結社オリュンポス腐海四天王』。アリスが生命の危機に陥ると助けに来る頼もしい仲間達であった……が。
『ちょっと待てい自分ら!』
どういうわけかブラックがストップを入れた。
「なんだよ人がせっかくかっこよく決めたってのに」
不満そうな四天王たちだが、ブラックにはどうしても言いたい事があったのだ。
『自分ら、オリュンポス不快四天王らしいがのお!』
「不快じゃなくて腐海ね」
『一緒や!』
「なんで急にエセ関西弁に?」
『どうでもええやろ!んで?それぞれあれか、ユベコのイラストに載ってる3人か?ひとまずそういう前提の元で話するな。で、自分らそれぞれ』
人型の夜空とも言うべき『|夜《デモン》』
|息止め、道案内《黄泉路に誘う》処刑鎌を掲げし冥府の女王
移動に伴い割れる空間と漏れ出る紫電のみが存在を示す『ナニカ』
『まあ仰々しい呼び名は正直我ら猟書家もあんまり他人の事言えへんからええんやけど。で、なんか夜っぽい感じのと、鎌っぽそうな武器持ってるのがいるから、たぶんそれぞれ当てはめるんやろなあ。のこりひとりがあんまりイメージに合わない感じやけど、まあ消去法で当てはめるでええやろ。で、それぞれが【浸空師団】【溶海師団】【蝕陸師団】らしいと。誰がどれかもわからへんけど、まあそれはてきとーでええやろ』
「要するに何が言いたい」
『要するにや。オリュンポス秘密結社四天王名乗ってるのにや』
ブラックは一度言葉を止め、そして。
『オリュンポス所属がアリスしかおらへんやないか!』
繰り返しますが、ユーベルコードのイラストに出てる4人が四天王という仮定のもとにおける話です。そしてそれに対する返答はといえば。
「いんだよ細けえことは」
『……確かに、我とした事が細かい事にこだわりすぎていたようだ』
……存外あっさりカタがついたようであった。
『いずれにせよ、だ』
エセ関西弁もいつの間にかなくなり、改めてブラックは新手に抗するべく、魔力を籠めた拳を構える。結局やる事は一緒なのだ。可能な限り敵を骸の海に送る事。新手が来ようとその方針には全く変わりはない。
『残された全ての力をもってかかろうではないか』
もはや寿命が縮むことなど考慮する必要はない。いつの間にか復活していた魔力回路を全開放すると、四天王を名乗った3人組に向けて突撃を敢行した。だが……ここでUCの解説を見てみよう。
【オリュンポス腐海四天王】:自身が戦闘で瀕死になると【四天王とその配下の師団】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
すなわち、ちょうど前回瀕死になった事と前回のこれで、ユーベルコードのコンボになっているわけだ。高い戦闘力ということだし、アリスが四天王最弱というぐらいだからおそらくアリスより強いのだろう。それが3人(+配下の師団)である。そしてアリスと同じ攻撃手段とは?先刻やった相討ち覚悟の|カウンター戦術《てんちまとう》はユーベルコード由来なので、ユベコを変えた後には使えない。では……?
『……な、なんだ!?』
ブラックは急激に自分の魔力が失われていくのを感じた。あれだけ膨大な魔力が、である。連戦に次ぐ連戦で魔力は大幅に失われはしたが、それでも生命力を削って魔力に変換することで全盛期同様の魔力を保持していた。その生命に等しき魔力が、失われている。
「知らなかったの?」
四天王が言う。
「あの子は……アリスは、サイキックヴァンパイア」
『ヴァンパイアだと!?』
「他者のエナジーを吸収する存在」
それがすなわち『同じ攻撃手段』の答えだった。四天王たちはまさに|大食い《遍くエナジーを食らう》者達だったのである。ブラックの攻撃に費やすエネルギー全てを吸収していったのだ。違う点があるとすれば、サイキックヴァンパイアではない彼(女)らは、相手のエネルギーを吸収はできるが、それを十分に取り込む事ができず、その多くが体外に排出される。だが結果的には今回はそれがブラックにとっては不幸だった。吸収したエネルギーが過剰になることがない、すなわち満腹を知らないためにいくらでも吸収できるのである。
『ば……ばかな……この我が……』
ブラックの動きが止まった。魔力が吸収されて枯渇し、ただでさえ欠乏気味にあった生命力すら吸収されたのだ。さすがの猟書家もこれでは存在を保っている事はできない。
『おのれ……猟兵め……』
やがてその姿すらも薄れていき、最初から存在しなかったかのように消えていった。猟書家ミニスター・ブラックは、今回の最期であった。
(……だが……我は必ず戻って来るぞ……)
「……猟兵に敬礼!!」
救われたフォースナイト訓練生たちが一斉に敬礼の姿勢を取る。次に危機が訪れた時は、自分たちが助ける側に回るのだという強い使命感を込めて。そして訓練生たちは目覚める事のないアリスの方を向いた。
「……アリス・セカンドカラー殿に敬礼!」
訓練生たちとともに、他の四天王たちもアリスに敬礼をしていた。
「……本日をもってアリスを永世名誉四天王とする……!!」
「……ひどいわねみんな……ちゃんと生きてるわよォ……!!」
大成功
🔵🔵🔵