●汽車とハロウィン
――夜行特急列車、彗星。
各地の旅人や名士に愛用されている夜行列車では、ハロウィンの訪れを記念した催しが行われている。『眠らぬ夜のハロウヰン特急』と第された催しは其の名の通り、走る列車で夜通しパーティーをすること。
食堂車では特別メニューが用意されており、美味しいスヰーツが食べ放題。
カボチャのパイにオバケ団子、黒猫のブラッククリームソーダやスイート蜜芋パフェ、星の金平糖が飾られたふんわりパンケエキとハロウィンらしさがいっぱい。
一等景観車のカフェではパンプキンミルクティーに加えて香り高い紅茶や、高級な珈琲などが提供される。
辺りにも南瓜や蝙蝠の可愛らしい装飾が施されているので雰囲気も賑やかだ。窓の外を見れば、星が煌めく夜空や舞い散る幻朧桜の花弁が織り成す夜桜の景色をいつでも眺められるようだ。
乗客にも色とりどりのリボンや彗星型オーナメントなどの飾りが渡されるので、列車内の好きな場所に飾ってハロウィン気分を盛り上げられる。
今回は二等貨物車両の方にも展示があり、カボチャオバケやミイラ男、可愛い魔女などが模られたハロウィンパネルが用意されているので、暇があれば足を運んでみるのもいい。
また、寝台車両は眠るためのものではなくなっている。
今夜だけは真っ暗なオバケ屋敷風の雰囲気に装飾されており、『どこかに魔物が潜んでいるかもしれないが、特別なお菓子や宝物が隠されている』という触れ込みになっている。
真っ直ぐに通るだけの車両ではあるが、暗闇なので手探りで進むしか無い。特別なお菓子を探すためや、敢えて恐怖を味わいにいってもいいかもしれない。
これから始まるのは、楽しくて少しだけ怖い夜行列車の旅。
しかし、満を持して出発した彗星の車内には招かれざる客が訪れることになる。
「夜の列車だ! 遊ぼう、遊ぼう!」
「ここにあるお菓子もお料理も、宝物もぜーんぶボクたちのもの!」
「あはは、ボクらはスヰーツ怪盗団だ!」
「汽車の中で鬼ごっこもしようよ。絶対に楽しいよ!」
それはシーツを被ったオバケの仮装した子供の姿をした影朧だ。
群れを成して現れた彼らは途中の停車駅から列車に乗り込んだ。その後、乗客のことなどまったく気にせずお菓子を強奪していき、内部の装飾などを滅茶苦茶にしていってしまって――。
その夜、列車は悲しみの悲鳴で満たされた。
●怪盗団VS探偵団
ハロウィンイベントが行われる夜に力の弱い影朧達が現れる。
彼らは今はまだ人々に危害を加えてはいないが、放っておけば万が一のことが起こるかもしれない。
その前に彼らを捕まえて転生に導いてあげなければいけないと語り、ミカゲ・フユ(かげろう・f09424)は仲間達に事件の解決を願った。
「みなさん、猟兵の出番です。怪盗団を捕まえる探偵団になってください!」
現在、夜行列車で行われるハロウィンナイトパーティーが滅茶苦茶になる未来が予知されている。影朧は力のない子供達であり、ただ楽しいことをしたいだけだという。
それゆえに彼らが名乗る怪盗団に対して、探偵団を結成して挑もうというわけだ。
「影朧とはいえ、相手は子供です。力で解決するよりも鬼ごっこに付き合ってあげるといいみたいです」
彼らは車内に現れるやいなや、まるで追いかけっこを楽しむように無邪気に逃げ回りながらお菓子を強奪していく。しかし、猟兵が彼らを追いかければお菓子を奪う暇もなく逃げるだけになる。
ときには列車の天井や屋根の上にまで登っていってしまうようなやんちゃな子達だが、猟兵だって負けてはいないはず。影朧の子がどう動くか推理してみたり、持ち前の能力や思考力で対抗すれば良い。
「ひとり残らず、みーんな捕まえちゃってください。猟兵に捕まると影朧は満足するみたいで、幻朧桜の花びらに身を任せて消えていくみたいです」
鬼ごっこで遊んでもらったという楽しい思い出を抱いて、上手く転生できれば良い。
そっと願いを込めたミカゲは、次に夜行列車彗星に乗るためのサアビスチケットを仲間達に渡した。
「事情を話して、その夜の運行は猟兵だけの貸し切りにしてあります。影朧の子達が乗ってくる停車駅につくまで時間があるので、それまで夜行列車『彗星』でのハロウィンを楽しんでください」
景観車両のカフェでゆっくりと夜空を眺めるもよし。
寝台車両のオバケ屋敷で恐怖の宝物探しに挑戦するのもいい。
食堂車でスイーツ食べ放題を味わったり、貨物車両のハロウィンパネルを見物しにいっても構わない。後に控えている影朧怪盗団との鬼ごっこのためにも英気を養ったり、探偵団としての気持ちを高めておいたり、楽しい気持ちを抱いておくことも大事だろう。
ミカゲは傍らに控えている死霊の姉に笑いかけてから、仲間に信頼の眼差しを向けた。
「それではみなさん。夜行列車でのハロウィンを、めいっぱい楽しんできてくださいね!」
今宵、『彗星』で始まるのは――。
影朧スヰーツ怪盗団と、猟兵スヰーツ探偵団の楽しくて不思議な真っ向勝負だ。
犬塚ひなこ
今回の世界は『サクラミラージュ』
ハロウィン夜行列車に影朧の子が現れると予知されました。先に列車に乗り込んでハロウィンを楽しみつつ、乗ってきた影朧と追いかけっこをして捕まえましょう!
●第一章
🏠『列車に揺られて』
夜行特急「彗星」で行われているハロウィンパーティーに参加してください。
乗車時に渡された飾りで車内を彩ったり、景色を楽しんだり、スイーツを味わったり、探検してみたりとお好きにお過ごしください。あれもこれもと全部を色々やるよりも、絞って行動していただいた方がリプレイの密度がぐっと上がるのでおすすめです。
仮装は必須ではありませんのでご自由に!
(申し訳ありませんが、仮装おまかせは今回は行っておりません。ご了承ください)
●第二章
⛺『夜行特急「彗星」』
途中の停車駅から、おばけシーツを被った影朧の子達、自称『スヰーツ怪盗団』が乗り込んできます。
皆様は探偵団となって彼らを追う立場です。影朧の子達は汽車内はもちろん、天井や屋根の上などにも出現するので、追いかけたり先回りをして捕まえてください。
列車内には猟兵以外はいない状態なので、思う存分に追いかけっこが出来ます。
楽しい鬼ごっこが出来た場合、捕まった後に影朧達は転生していきます。
第1章 日常
『列車に揺られて』
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POW : まったりと食事
SPD : 車両を探検
WIZ : 外の景色を楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
灰神楽・綾
【不死蝶】◎
食堂車の特別メニューも美味しそうだし
カフェの珈琲も気になるなぁ
でも一番興味をそそられたのは…オバケ屋敷での宝探し
寝台車両をオバケ屋敷にしちゃうって発想が面白いよね
どんなお宝やお菓子が隠されているんだろなぁ
焔と零には拒否されちゃったから普通に進もうか
凝った装飾だな~とオバケ屋敷の雰囲気を素直に楽しみ
進みながらもあちこち触って宝を探していく
この柔らかい感触はベッドかな?
何かを隠すならベッドの下は定番だよね
ごそごそと手を伸ばし…おっ、何か発見
これは何だろう…暗いからよく見えないや
ゴールするまで何か分からないワクワク感も良いね
ゴールしたら一緒にせーので見せあいっこしようか
乱獅子・梓
【不死蝶】◎
オバケ屋敷か…となれば、ここは焔と零の出番だな!
恐怖に慄く可愛い仔竜達の姿を思う存分堪能して…
あれ?どうしたお前達?
ものすんごい力で俺にしがみついて意地でも離れようとしない
夏休みの肝試しのことを根に持っているな…
ただ真っ直ぐの車両をオバケ屋敷にして
それほど面白いんだろうか…と最初は思っていたが
真っ暗だから先が見えなくて、思った以上に広く感じるな
よし、俺も宝とやらを探してみるか
いてっ!!(どこかに頭をぶつける
真っ暗ゆえのアクシデントも色々あったが
何とか俺もお宝をゲット…!
果たしてこれはお菓子なのか、別のお宝か
お菓子だったら綾や仔竜達に食わせてやるか
と考えながらゴールを目指すのだった
●南瓜急行の夜
ハロウィンの特別夜行列車、その名は彗星。
今宵、出発した列車の中で繰り広げられるのは恐ろしくも楽しいハロウィンパーティー。
灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は仔ドラゴンの焔と零を連れ、彗星列車の中をゆっくりと歩いていく。
カボチャオバケにコウモリ、星や月型のオーナメントなど、車内には特別な飾り付けがされており、何処も賑やかで良い雰囲気だ。
「食堂車の特別メニューも美味しそうだし、カフェの珈琲も気になるなぁ」
「そうだな、どれも楽しそうだ」
きっと美味しいものばかりなのだろうと想像する二人も楽しげだ。どの車両も魅力的だが、何より一番興味をそそられたのは――。
「やっぱりオバケ屋敷での宝探しかな」
「オバケ屋敷か……となれば、ここは焔と零の出番だな!」
「キュ?」
「ガウー!?」
綾の発言に同意した梓が仔竜達の名を呼ぶ。嫌な予感を覚えた二匹は既に腰が引けていた。
「恐怖に慄く可愛い仔竜達の姿を思う存分堪能して……あれ? どうしたお前達?」
「キュウウ」
「ガウ……」
二匹はものすごい力で梓にしがみついており、意地でも離れない気持ちのようだ。おそらく以前に受けた仕打ちを覚えているらしく、完全警戒モードになってしまっているようだ。
「夏休みの肝試しのことを根に持っているな……」
「それはそうなるよねぇ。でも寝台車両をオバケ屋敷にしちゃうって発想が面白いよね。どんなお宝やお菓子が隠されているんだろなぁ」
綾は仔竜と梓の様子に笑みを浮かべつつ、寝台車の方に歩いていく。
当初の焔と零を先に進ませる予定は儚く崩れ去ったので、今回は綾が先頭だ。その後に二匹にくっつかれた梓が続き、寝台車両の扉が開かれた。
入口は紫色のライトに照らされており、骸骨の装飾がどどんと飾られている。
「凝った装飾だな~……と、急に暗くなったね」
綾が感心しながらオバケ屋敷の雰囲気を素直に楽しんでいると、ライトがふっと消えた。本当だ、と言葉にした梓は暗闇の奥を見据えてみる。しかし、何も見えない。
ただ真っ直ぐの車両をオバケ屋敷にして面白いのだろうか、と最初は思っていた。されど進む道がひとつしかないというのもなかなかのものだ。暗闇に対して動物は無意識に警戒を抱く。いつ、何が訪れるか見えないからだ。これはそういった本能に訴えかける出し物だ。
「真っ暗だから先が見えなくて、思った以上に広く感じるな」
「ガウウー!」
「キュ……」
まだ何も起こっていないが、仔竜達は怖い怖いと鳴いている。
綾と梓は二匹の可愛さを感じながら、ゆっくりと寝台車内を進んでいった。
進みながらあちこちに手を伸ばす綾は既に宝探しに意識を向けている。何処かから誰かが苦しむような唸り声が聞こえてきているが、綾はまったく気にしていない。
「この柔らかい感触はベッドかな?」
「よし、俺も宝とやらを探してみるか。――いてっ!!」
「大丈夫?」
「ああ、なんとか……」
途中、梓がおもいっきりどこかに頭をぶつけたことで唸り声は完全にかき消された。そのことでまた仔竜達が怯えてしまっていたが、梓も綾も宝探しに専念していく。
「何かを隠すならベッドの下は定番だよね」
「真っ暗なままだから手探りしかないな……」
「おっ、何か発見」
すると先に綾が硬い箱のようなものを手に取った。寝台車の備品ではなさそうな雰囲気だ。続けて梓も指先に触れたものを持ち上げてみる。
「俺の方も袋みたいなものがあった。枕じゃないだろうし、お宝か?」
「これは何だろう……暗いからよく見えないや」
「キュ! キュ!」
「ガウ~……」
綾も梓も無事に何かを見つけ、ひとまずのお宝探しは終了。真っ暗であるゆえのアクシデントもあったが目的は果たせたということだ。焔と零は怖さの限界らしく、早くここを出ようというように梓を急かしている。
「それじゃ、ゴールに行こうか」
「お宝の確認はそのときだな」
「何か分からないワクワク感も良いね。ゴールしたら一緒にせーので見せあいっこしようか」
そして、綾と梓は出口側の扉を目指した。
果たしてこれはお菓子なのか、別のお宝なのか。考えるだけでも期待が募る。
「お菓子だったら皆に食わせてやるか」
「ガウ!」
「キュー」
梓の言葉を聞いた焔と零は暗闇の中で期待の眼差しを向けた。
しかし、その後――。
ゴール前に待ち構えていた脅かし役の乗務員に驚いた仔竜達がパニックになったり、開けた宝箱にキャンディがたくさん詰まっていたり、袋の中は怖いドクロの仮装セットだったりと、楽しい(?)ことがたくさん訪れた。
そうして、ハロウィンの特別列車は夜を駆けていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真幌・縫
陽規くん(f36591)と
一等景観車両へ
ハロウィンの飾りも彗星のオーナメントも素敵だね。
今年の仮装はアリスだよ〜で陽規くんがチェシャ猫♪とっても似合ってるよ!
毎年仮装はしてるけど誰かと合わせて着るのは初めてだから嬉しいな♪
そしてハロウィンと言えばスイーツだよね。
どのスイーツも美味しそう…黒猫のブラッククリームソーダーも気になるし星の金平糖の乗ったパンケーキ…あれもこれもは食べれないからこの二つ。
お星様はね、陽規くんとの思い出もあるからまた陽規くんと食べたいなって。
ふふ、陽規くんとの思い出沢山増えたね♪
…!(突然ケーキを取られビックリしつつ差し出されたスプーンのパフェをパクリ)
ありがとう♪
天羽・陽規
縫(f10334)と
仮装:チシャ猫モチーフなサイバーパンク衣装
一等景観車両にいく
ふーん、この列車空飛んだりとかしないんだね
でも楽しそうな雰囲気だし友達と一緒だし
縫の衣装も、まぁまぁ似合ってるんじゃない?
仮装は初めてしたけど、こういうのも悪くないねっ
それにハロウィンって悪戯していいんでしょ♪
美味しそうなスイーツを食べながら、
縫の食べようとしてたパンケーキも横から頂いちゃうよっ
ふふ~ん、食べるなら僕にもちょうだいよね?
代わりに縫に蜜芋パフェ一口あげるねっ(スプーンであーん)
●ハロウィンスイーツと甘い悪戯
走り出した夜行列車。
窓の外の景色は流れていき、夜の光景を楽しめる。しかし今宵の彗星列車の見所はそれだけではない。
「陽規くん、こっちこっち」
真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)はぱたぱたと駆けていき、同行者の天羽・陽規(悪戯に笑う烏・f36591)を呼んだ。今行く、と返した陽規達が向かうのは一等景観車両の方。
「ふーん、この列車空飛んだりとかしないんだね」
「飛ばないよ。けれどハロウィンの飾りも彗星のオーナメントも素敵だね」
陽規が物珍しそうに周囲を見渡すと、こくりと頷いた縫が両手を広げる。そのままくるくるとその場で回ってみせた縫の仮装はアリスを思わせる可愛らしいエプロンドレスだ。陽規の方はチシャ猫をモチーフにしたサイバーパンクな衣装であり、ふたりともお似合いな雰囲気になっている。
「毎年仮装はしてるけど誰かと合わせて着るのは初めてだから嬉しいな♪」
「飛ばないのは少し残念かも。でも楽しそうな雰囲気だし、友達と一緒だからいっか」
「陽規くん、とっても似合ってるの」
「ありがと。縫の衣装も、まぁまぁ似合ってるんじゃない?」
「えへへー」
アリスと猫らしく、二人は会話を交わしていく。列車が揺れる度にオーナメントもゆらゆらと動いて、夜の電灯や列車内の光を反射して煌めいていた。外の景色も美しく、幻朧桜の花弁が夜空に舞っている。
きれい、と微笑む縫はこの時間を大いに楽しんでいた。
「仮装で歩いてるだけでも楽しいね♪」
「だな。仮装は初めてしたけど、こういうのも悪くないねっ」
「トリック・オア・トリートだよ!」
「そうそう、トリック。ハロウィンって悪戯していいんでしょ♪」
二人はそれぞれに興味をひかれた飾りや出し物を見ていく。暫し車両内のハロウィンらしさを眺めた後、縫は陽規を別車両に誘った。
「ハロウィンと言えばスイーツだよね」
次に向かったのは食堂車。
此処では特別メニューが用意されているらしく、スヰーツが食べ放題だ。
カボチャのパイは可愛らしく、オバケ団子はみたらしつき。黒猫の飾りが添えられたブラッククリームソーダはしゅわしゅわとグラスの中で泡が弾けている。
「どのスイーツも美味しそう……」
「すごいね、どれもこれも美味しそうなスイーツばかりだ」
「黒猫のブラッククリームソーダーも気になるし、星の金平糖の乗ったパンケーキも……えっと、もっと食べたいけどあれもこれもは食べられないからこのふたつにしようかな」
縫は一生懸命にメニューを選び、自分のトレイにとびっきりのスイーツを乗せた。陽規はスイート蜜芋パフェに興味を示し、そのひとつを手に取る。
すると――。
「トリックアンドトリック! 縫の食べようとしてるパンケーキも横から頂いちゃうよっ」
「わ……!」
悪戯をするときを狙っていた陽規が、縫の皿のパンケーキを素早く一枚取った。驚いた縫に対してにやりとチシャ猫のように笑ってみせた陽規は、片目を瞑って語る。
「ふふ~ん、食べるなら僕にもちょうだいよね?」
「お星様はね、陽規くんとの思い出もあるからまた陽規くんと食べたいなって」
「なーんだ、元からくれるつもりだったんだね」
「ふふ、そういうこと。だけどびっくりのサプライズだったよ」
「そっか……」
「陽規くんとの思い出沢山増えたね♪」
縫は陽規の悪戯を受け入れ、ふわふわと笑った。少し拍子抜けした陽規だったがこういう展開もまた楽しい。しかし彼もただ貰ってばかりではない。
「代わりに縫に蜜芋パフェ一口あげるねっ」
「……!」
スプーンを差し出した陽規は縫の口に蜜たっぷりのパフェを食べさせた。反射的にパフェを頬張った縫は甘くてとろける味をじっくりと味わった。
「ありがとう♪」
「どういたしまして、かな?」
二人は笑みを交わしあい、甘やかで楽しい時間を満喫していく。
仲良く巡る時間はこうして、想い出のひとつとなって互いの胸に刻まれていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふわぁ、夜行列車でハロウィンパーティーですって、アヒルさん。
……、その格好は名探偵アヒルさん。
そのとおりだよ、フリル君って、本当になりきっていますね。
えっと、それじゃあ探偵団だから私も美少女探偵ですね。
ふええ、私は助手なんですか。
やっぱり、そうなんですね。
事件は現場で起きているって、私達はその現場に来ているんですよね。
しかも、事件はこれからですし。
つべこべ言わず現場百篇だって、もしかしてパーティーを楽しんじゃダメなんですか?
犯人の侵入経路を割り出すぞって、
たしか普通に乗ってくるんじゃなかったでしたっけ、アヒルさーん。
●名探偵と助手のハロウィン
今夜は特別な運行の夜。
賑やかで少し妖しいけれど、とっても楽しい雰囲気が満ちている。様々なハロウィンのオーナメントで装飾された夜行列車は、夜の最中を駆けていく。
「ふわぁ、夜行列車でハロウィンパーティーですって、アヒルさん」
フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は走り出した列車内を眺め、楽しげに視線を巡らせる。呼びかけた先にはディアストーカーハットと落ち着いた色合いのマント風ジャケットを羽織ったアヒルさんがいた。
「……、その格好は名探偵アヒルさん」
「グワワ!」
普通に呼びかけても返事はしなかったが、名探偵を付けた途端にアヒルさんが勢いよく鳴く。
――そのとおりだよ、フリル君。
というようにハードボイルドに語っているようだ。
「本当になりきっていますね。えっと、それじゃあ探偵団だから私も美少女探偵ですね」
「グワ?」
フリルも探偵風の衣装に身を包みたかったが、アヒルさんが「何故?」というような眼差しを向けている。みなまで言われずともフリルにはその視線の意味がわかっていた。
「ふええ、私は助手なんですか」
「グワグワ」
「やっぱり、そうなんですね。それに事件は現場で起きているって……私達はその現場に来ているんですよね」
アヒルさんは遠い目をして語り、もとい鳴き出す。
フリルは冷静な突っ込みと疑問を言葉にしたが、アヒルさんは聞いていない。虫眼鏡を片手に車内をぱたぱたと走り回り、証拠品探しを始めている。
「しかも、事件はこれからですし……ふええ」
つべこべ言わず現場百篇。
現場にこそ事件解決への糸口が隠されているのであり、百回訪ねてでも慎重に調査すべきである。アヒルさん探偵は厳しく助手に指導していく。
景観車両のカフェに食堂車、今回は貨物車の方にも催しはある。どれも通り過ぎるだけでじっくり見られない状況にフリルは少し涙目だ。
「もしかしてパーティーを楽しんじゃダメなんですか? 犯人の侵入経路を割り出すぞって……たしか普通に乗ってくるんじゃなかったでしたっけ」
懸命なアヒルさんにしっかりとついていくフリルは、冷静な指摘を入れたのだが――。
「アヒルさん、待ってください。アヒルさーん」
問答無用でフリルを引っ張り回す相棒は聞いてはくれない。
しかしこれもまた、探偵らしくて良い過ごし方なのかもしれない。
――いざ、ぴよぴよ探偵団の出発だ!
大成功
🔵🔵🔵
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
夜行列車もロマンがあるけど
汽車の中で夜通しパーティーもイイね
食べ放題な美味しいスヰーツ制覇しちゃお〜
食堂車の特別メニューを眺めていって
カボチャのパイも、お団子も蜜芋パフェも良さそうだけど
ボクはやっぱり…星の金平糖が飾られた
ふんわりパンケエキが一番楽しみかなぁ
イチカ君はどれにする?なんて聞いたところで
食べ放題だから、どれ食べてもおっけーなんだけども
ハロウィン映えしそうな絵も沢山撮れそうだし
ふと賑やかな車窓から外も眺めてみれば
星が煌めく夜空に、舞い散る幻朧桜の夜桜の景色に…
夜はまだまだ長いだろうから存分に楽しもうねぇ
椚・一叶
トリス(f27131)と
朝まで平気で起きていられそうな気がする
ハロウィンの装飾に美味そうな菓子
加えて汽車
トリス、楽しみ尽くそう
これは何処に飾ろう
貰ったオーナメントを掲げ見ながら、食堂車へ
儂は蜜芋パフェにする
この季節、やはり芋は外せない
黒猫のブラッククリームソーダも、どういうものか気になる
…そうか食べ放題
きらり目光らせ、一先ず蜜芋の甘さを堪能しよう
確かに良いの撮れそう
ここでしか食べられない美味しい物も
ハロウィンらしい雰囲気も残しておきたい
今宵の幻朧桜はまた違って見える
あっという間に駆け抜けていくのに
いつまでも心に残りそうな
オーナメントは座った席に飾っておこう
長い夜は、ゆっくり進むと良いな
●秋色に飾られて
夜を走る列車は今宵、特別なひとときを齎してくれる。
鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)と椚・一叶(未熟者・f14515)は車窓から見える景色を瞳に映し、流れていく幻朧桜の花を見送った。
「夜行列車もロマンがあるけど、汽車の中で夜通しパーティーもイイね」
「これなら朝まで平気で起きていられそうな気がする」
エンデは視線を一叶の方に向け、乗車時に貰ったオーナメントを掌の中で揺らす。南瓜色にきらりと光った飾りは愛らしく、一叶も倣って眺めてみた。
ハロウィンの装飾に美味そうな菓子、加えて汽車の旅。
どの要素をとっても楽しいことばかりで期待も大きい。エンデは淡く笑み、食堂車の方へと一叶を誘う。
「今夜は食べ放題な美味しいスヰーツ制覇しちゃお~」
「ああ、トリス。今宵は楽しみ尽くそう」
エンデの誘いを受けた一叶もそっと頷き、その後についていった。その際、一叶がふと思ったのはオーナメントを飾る先。どの場所に飾ってもいいらしいが、それもそれで楽しい迷いだ。
「これは何処に飾ろう……と、到着したか」
「見て、イチカ」
エンデは前を示し、食堂車のテーブルにずらりと並んだ特別メニューを眺めていく。
カボチャのパイはハロウィンらしさがいっぱい。みたらしのオバケ団子は可愛らしく、甘やかな蜜芋パフェも心をくすぐられる。全てが良さそうでどれもこれも食べてみたいほど。
「トリスは何がいい?」
「ボクはやっぱり……星の金平糖が飾られたふんわりパンケエキが一番楽しみかなぁ」
一叶が問いかけると、エンデは夜の装いを纏う一品を示した。
食べ放題であるゆえにどれ食べてもよいけれど、こうして迷う気持ちも楽しいことのひとつ。
「イチカ君はどれにする?」
「儂は蜜芋パフェにする」
逆にエンデから問われたことで、一叶はこくりと頷いて答えた。
この季節、やはり芋は外せない。彼の主張も尤もだと感じたエンデも深く首肯した。
「後は……黒猫のブラッククリームソーダも、どういうものか気になる」
「遠慮せずに気になるものを全部食べてみようか。だって、食べ放題だからね」
「……そうか、食べ放題」
エンデの言葉を聞き、一叶はきらりと目を光らせる。その様子がまるで猫みたいだと感じたエンデは微笑ましくなり、一叶と一緒にテーブルに付いた。
先ずはパンケエキと蜜芋の甘さを堪能していき、この夜を楽しむことから。
蜜芋はその名の通り甘くてほくほく。添えられたクリームと一緒に味わえば、甘さが加わって更に美味しい味わいになっていく。さりげなく添えられた黒胡麻も味を引き立てるアクセントとなっていて実に良い。
「どう? おいしい?」
「美味い、流石は季節の味」
エンデからの質問に、満足そうに答えた一叶はゆっくりとパフェを味わう。
その様子を快く感じたエンデもパンケエキを切り分け、金平糖を散らしながらそうっと頬張った。ふかふかの生地に絡む蜂蜜とバター、金平糖の食感が合わさった味は幸せの証。
もちろん、お菓子のおともはハロウィンらしさ全開のブラッククリームソーダ。
しゅわしゅわと弾ける泡はまるで黒猫の悪戯のよう。
エンデは穏やかな気持ちを抱きながら、ふたたび車窓から見える景色に目を向けた。
「ハロウィン映えしそうな絵も沢山撮れそうだし、いいね」
賑やかな車窓から眺める光景は美しい。
星が煌めく夜空に、舞い散る幻朧の夜桜。灯る街の明かりは遠く、まるで自分達だけが不思議で楽しい異世界に訪れたかのように思える。
「確かに良いの撮れそう」
一叶も静かに笑み、今のひとときをじっくりと堪能していく。
ここでしか食べられない美味しいもの。ハロウィンらしい雰囲気も、ずっと記憶に残しておきたいと感じられた。特に今宵の幻朧桜がまた違って見えるのは、こうして共に過ごす時が良きものであるからだろう。
汽車はあっという間に駆け抜けていく。それなのに、いつまでも心に残りそうで――。
「夜はまだまだ長いだろうから存分に楽しもうねぇ」
「長い夜は、ゆっくり進むと良いな」
エンデと一叶は視線を交わし、甘くて賑やかな時を喜びあう。
二人が座った席に飾られたオーナメントもまた、とても楽しげに揺らめいていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月居・蒼汰
◎ラナさん(f06644)と
夜通しのパーティー
何だか響きだけでもわくわくしますね
ラナさん、夜更かしは大丈夫ですか?
俺は結構夜更かししちゃうほうなので
これくらいなら全然です
パンケーキやブラッククリームソーダに舌鼓
華やかなスイーツをスマホで撮りつつ
一枚いいですか?とラナさんとスイーツの写真も撮って
それから一緒にもう一枚
たくさん食べても大丈夫ですよ
この後いっぱい走りますから…!
前に夜汽車に乗った時はあまり見られなかったし
今度は夜空と夜桜の景色も楽しみたいですね
こうして当たり前に一緒に居ることが嬉しいのは同じで
カボチャのミルクティーもちょっぴり気になります!
なんて話に花を咲かせながらスイーツを楽しんで
ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)
夜通しだなんて、ちょっと悪い子みたいですね
家では夜更かしは禁止されているのでドキドキします!
蒼汰さんは?
夜更かしの言葉には少し心配で
その、お身体には気を付けてくださいね
濃い目に淹れた紅茶を頂いて
カメラに可愛いスイーツと微笑んで
折角だから、一緒に撮りませんか?
太らないか心配だけど…
誘惑に勝てなくて
見た目重視でお化けのお団子と黒猫ソーダを
はい、この後頑張ります!
そういえば、以前も夜汽車に乗りましたね
人魚との出逢いの日
あの時は初めて一緒に朝食を食べて新鮮だったけど
すっかり一緒に居ることが普通になったことが嬉しい
でも夜中に一緒に居られることは無いから
今日は沢山楽しみましょう
●特別で当たり前
夜を往く夜行特急列車、彗星。
その名の通り、流れる星の如く線路の上を駆けていく。
今夜は此処で夜通し、パーティーが開かれ続ける。ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は列車内の飾り付けを眺めながら、ドキドキした気持ちを抱いていた。
「夜通しだなんて、ちょっと悪い子みたいですね」
家では夜更かしは禁止されているので、今日は本当に特別な日。ラナがそわりとしている様子を見つめ、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)も胸中に巡る感情を言葉にした。
「何だか響きだけでもわくわくしますね」
それに加えて南瓜や可愛らしいオバケ、コウモリや黒猫などのオーナメントが車内で揺れている。列車内の催しも様々なものが用意されており、楽しみがたくさんだ。
蒼汰は車窓から見える幻朧桜の景色を眺めた後、隣のラナに問いかける。
「ラナさん、夜更かしは大丈夫ですか?」
「今日くらいなら平気だと思います。蒼汰さんは?」
「俺は結構夜更かししちゃうほうなので、これくらいなら全然です」
「夜更かし? その、お身体には気を付けてくださいね」
「もちろんです」
ラナは蒼汰が語った言葉に少しの心配を抱いた。しかし、蒼汰が明るく笑ってくれたのですぐに心配も何処かに消えてしまった。そして、二人は今夜の特別メニューが提供されている車両に向かう。
カボチャのパイ、オバケの形をしたみたらし団子、それから蜜芋たっぷりのパフェ。
ふんわりとした二段重ねパンケーキ、可愛い黒猫のクッキーが添えられたブラッククリームソーダ。其々に好きな料理を手に取り、席に付けば甘やかな笑みが咲く。
「乾杯しましょう、蒼汰さん」
「はい、乾杯です」
ラナは濃い目に淹れた紅茶を、蒼汰はクリームソーダを片手に、カップとグラスが軽く掲げられる。窓の外に揺らめく幻朧桜の花が紅茶に映り込み、ラナは穏やかな気持ちを抱いた。
「それではいただきます」
蒼汰はスマートフォンを取り出し、星の金平糖が飾られたパンケーキを写真に取る。ころりと皿の上で転がった様も何だか華やかでとても良い。魅惑のスイーツを撮りつつ、彼はラナにも撮影の許可を取る。
「一枚いいですか?」
「はい、どうぞ」
スイーツがよく映るように蒼汰に向けたラナはカメラに微笑んでみせた。蒼汰は良い写真が撮れたことを嬉しく感じながら、そっと礼を告げる。
「ありがとうございます。ラナさんと甘いものって、何だかすごく映えますね」
「そうでしょうか。折角だから、一緒に撮りませんか?」
「いいですね!」
蒼汰はラナの提案に大賛成の姿勢を示し、更にもう一枚をカメラに収めた。それから彼は金平糖が添えられたパンケーキを切り分けて頬張り、その味わいに舌鼓を打つ。
ラナも見た目が気に入ったオバケ団子をそっと口にしていき、優しい甘さを味わった。
「美味しいです」
ふわりとした笑みが零れ落ちる。ラナの様子に少しばかり見惚れてしまった蒼汰は、今こそがシャッターチャンスだと気付いてはっとした。しかし、今は甘さを味わうのも大切なこと。
二口目のパンケーキを食せば、蒼汰にも今のラナと同じような笑みが巡った。
そうして二人は甘い時間を楽しんでいく。
たくさん食べてしまうことが心配だったラナだったが、誘惑には勝てなかった。新たな二黒猫クリームソーダにも手を伸ばしたラナが罪悪感めいた思いを抱いていると気付き、蒼汰はにこやかに語りかける。
「たくさん食べても大丈夫ですよ。この後いっぱい走りますから……!」
「はい、この後頑張ります!」
その言葉を聞いたラナは笑顔を咲かせ、これから巡る探偵団としての時間にも思いを馳せた。
蒼汰は心地よさを抱きつつ、車窓からの景色を瞳に映す。
「前に一緒に夜汽車に乗った時が懐かしく感じます。あの時はあまり見られなかったし、今夜は夜空と夜桜の景色も楽しみたいですね」
「そういえば、以前も夜汽車に乗りましたね」
倣って窓の外を眺めたラナが思い返したのは、人魚との出逢いの日。
あの時は初めて一緒に朝食を食べたことがとても新鮮で、それが何よりも特別に思えた。けれども、あの日から自分達にとっての特別はたくさん増えていった。
一緒に居ることはすっかり当たり前になって、こうして過ごすことも普通へと変わっている。特別が消えたわけではなく、嬉しい想いがめいっぱいに満たされていった。
心からの嬉しさを抱いた二人は視線を重ね、笑みを交わしてゆく。
「そうでした、カボチャのミルクティーもちょっぴり気になっていたんです!」
「一緒に飲んでみますか? ふふ、今日は沢山楽しみましょう」
甘やかな話に花を咲かせ、二人は語り合う。
あの頃から二人の間には大切な縁が繋がり続けている。彗星が駆けてゆく線路のように――これからも、ずっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城野・いばら
◎
琴子(f27172)と昨年の南瓜衣装で
*一千一夜物語風の夜空の衣
異国からの乗客さんに成りきり
緑の妖精人形さんな、
可愛くて愛らしい妹と探偵活動よ
会場の催しも素敵だけど
今回は列車に隠されていると言う「特別なお菓子」の調査!
ええ、楽しみね
わ、寝台車両は別の雰囲気がある…
輝石ランプさんがとても頼もしいの
琴子、逸れないよう手を握ってくれる?
さて、探索するべきは何処かしら
まあ、流石琴子!
せいやと、ベッドに挑みます
おどかし不思議さんも楽しみだけど
…琴子を困らせてはだーめ
そっとベールで視界を遮って
琴子には楽しい夜を
お菓子を発見したらわぁとハイタッチ
ふふ、お味を確認する迄が調査だからね
会場に戻って頂きましょう
琴平・琴子
◎
いばらさん(f20406)と昨年の南瓜衣裳で
*緑色のボンネットとワンピース姿文化人形
いばらさんをお姉ちゃんと慕う妹として探偵活動のお手伝いです
「特別なお菓子」…一体何者何でしょう?
和菓子?洋菓子?昔懐かしの駄菓子?
うーん、見当もつかないです
持ってきた輝石ランプをかざしてからんころん音を鳴らし
ちょっとだけお姉ちゃんのお役にたてて嬉しい限り
ええ、琴子は此処におりますからね
ベッドの下…とかは無いですよね
じゃあふかふかお布団の中?
って、猫さんじゃないですもんね…
ぴゃっ
べべ、別に怖くないです、って、わあ
ベールで隠した列車の中は薄霧纏った夜明けみたいで綺麗
あっお菓子ありますよ!此処にあったんですね
●姉妹探偵団の不思議な夜
去年も袖を通した、お気に入りの仮装に身を包んで――。
乗車券を渡して汽車に乗り込めば、ハロウィンの不思議で妖しい世界に飛び込める。
城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は一千一夜物語めいた夜空の衣を纏い、異国からの乗客に成りきっていた。
その隣で衣装をくるりと翻したのは琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)。緑色のボンネットとワンピース姿の文化人形として、いばらをお姉ちゃんと慕う妹の役割だ。
「いざ、お姉ちゃんの探偵活動のお手伝いです」
「可愛くて愛らしい妹がいれば百人力ね。さぁ、探偵として頑張りましょう」
琴子から聞こえた姉という言葉に微笑み、いばらも意気込みを抱く。走り出した列車内は賑やかに飾られており、各車両での催しも様々。
どれも素敵だけれど、と言葉にしたいばらは静かに笑む。
「今回は列車に隠されていると言う『特別なお菓子』の調査を探しに行くわ!」
「特別なお菓子……一体何者なんでしょう?」
いばらと琴子の最初の目的は宝探し。和菓子か洋菓子か、それとも昔懐かしの駄菓子なのか。琴子は首を傾げながら想像を巡らせていく。
「うーん、見当もつかないです」
「ええ、だからこそ楽しみね」
いばらは謎があるからこそ良いのだと語り、寝台車両へ琴子をいざなっていった。他の車両とは違って真っ暗闇が広がっている場所はしんと静まり返っている。
「わ、寝台車両は別の雰囲気がある……」
「本当ですね」
少し怖々とした様子のいばらに気付き、琴子は一歩前に出た。持ってきた輝石ランプをかざした琴子は、からんころんと音を鳴らしながら闇の中を進む。
「輝石ランプさんがとても頼もしいの」
いばらはこれで怖くはないと感じ、揺らめくランプに照らされた琴子の顔を見つめた。その眼差しから感じるのは、頼りにしてもらっているという実感。
たとえほんの少しであっても役にたてているのならば嬉しい限り。そのように考えていた琴子の隣で、いばらがそうっと手を伸ばした。
「琴子、逸れないよう手を握ってくれる?」
「ええ、琴子は此処におりますからね」
「ありがとう、琴――きゃあ!」
しかし、二人が手を握りあった瞬間。窓も空いていないのに寝台の部分のカーテンが大きく揺れた。驚いたいばらが琴子の手を強く握ったことで、僅かな緊張が走る。
暫し警戒してじっとしていた二人だったが、それ以上は何も起こらなかった。気を取り直したいばらは寝台車両の探索を始めていく。
「さて、探索するべきは何処かしら」
「ベッドの下……とかは無いですよね。じゃあふかふかお布団の中? って、猫さんじゃないですもんね……」
「まあ、流石琴子! 猫さんじゃなくても可能性はあるわ」
やはり寝台車両と言えばベッドと布団が不思議ポイントだろう。琴子の案を聞いたいばらは再び意気込み、せいや、とベッドに挑む。琴子もカーテンを手でかきわけ、綺麗に整えられた寝台に上半身を潜らせた。
「ぴゃっ」
次の瞬間、琴子は骸骨のマスクを見て驚いてしまう。どうやらこうやって探す挑戦者の驚かせの為に飾ってあったらしい。はっとしたいばらはすぐに琴子の元に向かい、吊り下げられていたマスクを外す。
「琴子を困らせてはだーめ」
そっとベールで視界を遮ったいばらは、もう大丈夫、と琴子に告げた。妹分には楽しい夜を、と願ったいばらの気持ちは伝わり、琴子は平気だと主張した。
「べべ、別に怖くないです、けど……ありがとうございます」
驚かせの仕掛けには強がりを語っても、いばらの優しさには素直な気持ちを。
ベールで隠された列車の中は薄霧を纏った夜明けのようでとても綺麗だと思えた。そうして二人は宝物の大捜索を継続していく。先程の驚かせから考えれば、皆が寝台を探ると想定されているのだろう。それならばやはりベッド付近に何かが隠されているはずだ。
「あっお菓子ありますよ! 此処にあったんですね」
「わぁ、お手柄ね」
琴子が見つけたのは宝箱に入ったジャムクッキーとマカロンの詰め合わせだった。食堂車でも提供されていない特別なお菓子というわけだ。
お菓子を発見したことでいばらは口許を綻ばせ、琴子とハイタッチを交わした。
「ふふ、お味を確認する迄が調査だからね。会場に戻って頂きましょう」
「はい、そうしましょう」
二人は微笑みを重ね、寝台車の出口に向かっていく。探偵団の捜査はまだまだこれから。
琴子といばらは宝箱を大切に抱え、今宵の特別に思いを馳せた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィッダ・ヨクセム
【黒豹】◎
俺様は、袖ぶかぶかのキョンシーだ
合わせてゾンビメイクで完璧だろ、なあくろ?
くろは何着ててもやッぱ似合うなあ、流石だ!
そんな小道具いつの間に(きょとん
メインは探索に置くぜ?
甘いの多くて目移りしそうだから適当にもぐもぐしとく
俺様ニコニコだ、甘味ぱらだいす!
今日はくろが一緒だからな
|黒豹《クロ》のブレスレットは無しだ
あれはアンタの代理だもん
アンタが居るなら留守番だぞ
俺様、おばけはこわくねー!けどお菓子は俺様も探したいなー?
くろがお菓子を食べない分全部俺様のだからな!
ッて意気込むけど……何かしらでビビると、くろにベッタリするから
こ、こわくねーーし!
バカくろ!ずりーぞ、ッてぽかぽか叩くとするよ
杜鬼・クロウ
【黒豹】◎
仮装は西部ガンマン
玩具の銃も持参
探偵団になれっつー依頼だが、かけ離れた格好しちまったか(銃撃つポーズ
俺だから何着ても似合うだろ(どや顔
俺以上に気合い入ってる誰かサンがいるケド
あァ、お前が楽しそうで何よりだ(フィッダの頭わしゃり
黒豹(クロ)はどうした?
甘い香りには目を瞑り探索
楽しく宝物探し
列車内で南瓜祭が楽しめるたァ新鮮だぜ
寝台車両がオバケ屋敷なンだと
先輩の格好見たら逆にお化けが驚くンじゃね?
(どさくさに紛れて俺も脅かしてみっか)
ハハ、凄ェ顔してるぜ(頬つん
おう、食え食え!
菓子も好いてるヤツに食ってもらった方が嬉しいだろうよ(全て渡す
宝物探し後、ハロウィンパネルを背景にスマホで記念撮影
●サプライズ・パラダイス
ゆらり、ゆらり。袖を揺らして、乗降口へぴょんと飛び乗る。
ゾンビメイクでばっちり決めたキョンシー姿で彗星に訪れたのはフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)。続いて夜行列車に乗ってきたのは西武のガンマン姿の杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)だ。
「なかなかに完璧だろ、なあくろ?」
フィッダはメイクを指差し、自分の仮装を示す。
走り出した列車の中でぶかぶかの袖が揺らめくさまはまさにキョンシーだ。あァ、と笑って頷いたクロウも持参した玩具の銃を構えてみる。
「探偵団になれっつー依頼だが、かけ離れた格好しちまったか」
言葉とは裏腹にクロウは銃を撃つポーズをしてみせる。キョンシーとガンマンという組み合わせは不思議だが、今宵は特別な夜なのだから何でもありだ。
「くろは何着ててもやッぱ似合うなあ、流石だ!」
「そ、俺だから何着ても似合うだろ」
「しかし、そんな小道具いつの間に?」
どや顔をするクロウの傍ら、フィッダはきょとんとしていた。ガンマンにはやはり銃だということで用意してきたらしく、それもまた実によく似合っている。
そして、二人は夜行列車の探索を始めることにした。
色々な車両で様々な催しが行われているので、きっと何処に行っても楽しいだろう。
まず彼らが向かったのはビュッフェを行っている食堂車。ハロウィンだけの特製メニューがずらりと並ぶ様子は壮観で、フィッダの瞳に輝きが映った。
「甘いの多くて目移りしそうだな!」
それならば適当に皿に取っていって、偶然の出会いを味わっていけば良い。
もぐもぐと甘味を味わっていくフィッダは上機嫌だ。クロウはそんな彼の頭に手を伸ばし、わしゃりと撫でてやる。
「俺以上に気合い入ってる誰かサンがいるケド」
「俺様ニコニコだ、甘味ぱらだいす!」
「あァ、お前が楽しそうで何よりだ」
クロウも満足そうに双眸を細め、フィッダが食事を楽しむ様を眺めた。そうしているとフィッダがクロウに目を向け、楽しい理由を語る。
「今日はくろが一緒だからな」
「そういや、|黒豹《クロ》はどうした?」
「|黒豹《クロ》のブレスレットは無しだ。あれはアンタの代理だもん」
アンタが居るなら留守番だぞ、と話したフィッダはパンケーキやパフェをぺろりと平らげた。そうか、と答えたクロウは更にフィッダの頭を撫で、甘い香りには目を瞑る。
それから再び探索は続いていく。
次は楽しく宝物探しだ。寝台車は今夜、真っ暗闇の恐怖ゾーンになっているという。
「列車内で南瓜祭が楽しめるたァ新鮮だぜ。寝台車両がオバケ屋敷なンだと」
「俺様、おばけはこわくねー! けどお菓子は俺様も探したいなー?」
「先輩の格好見たら逆にお化けが驚くンじゃね?」
暗闇の中の静けさを裂くように二人は進む。フィッダが意気揚々と進む後ろ姿を見遣り、クロウはちょっとした悪戯を思い付いた。
(どさくさに紛れて俺も脅かしてみっか)
その様子に気が付いていないフィッダはというと、隠されているお菓子への思いを馳せている。そして、フィッダは何かを見つけて手を伸ばした。
「なんだこれ。くろ、見て……くろ?」
「…………」
フィッダが振り向くとクロウの姿が何処にもなかった。名を呼んでも返事はなく――不思議に思った瞬間、わ、という声と共にカーテンの裏からクロウが登場する。
「……!! ……くろ!?」
「ハハ、凄ェ顔してるぜ」
驚きすぎて絶句したフィッダに笑いかけ、クロウはその頬を指先でつついた。はっとしたフィッダはクロウにべったりとくっついていようと心に決めながら、ぽかぽかと彼を叩く。
「こ、こわくねーーし! バカくろ! ずりーぞ!」
「ちょっとした悪戯だって」
「ゆ、許すけど……! くろがお菓子を食べない分全部俺様のだからな!」
フィッダは先程に見つけた特別なお菓子袋を手にしており、悔しそうにしていた。どうやら中身は南瓜キャンディの詰め合わせらしい。
クロウはからからと笑いながら、フィッダに頷きを返した。
「おう、食え食え! 菓子も好いてるヤツに食ってもらった方が嬉しいだろうよ」
それから暫し、寝台車両を抜けるまでフィッダはクロウにひっついていたという。宝物を探した後の彼らは貨物車両のハロウィンパネルコーナーへ向かう。
其処に並んだ二人はパネルを背景にして、記念撮影を行い――。
楽しくて少し怖い。けれども思い出に残る夜はこうして、ゆっくりと過ぎてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーシー・ブルーベル
【心彩】◎
インバネスコートと帽子を被って
今日のルーシー達はタンテイさんの仮装ね!
列車と事件とタンテイはワンセットって聞いた事あるの
ふふー、なゆさんのお姿ステキ
難事件もすぐに解決してくれそう!
そうね、ふたりならきっと
あっという間に解決だわ
気合を十分に込めた所で
ぐう、とお腹がなく
……えへへ。聞こえてしまった?
まあ、なゆさんも
お腹がすいては何とやら、よね
ええ、食堂車へ行きましょう!
テーブルの上はお化けさんが大集合!
ふふーそうよね
おいしく頂くのが主役さん達へのレイギだもの
でも、うーん
どれもとてもミリョクテキで迷ってしまうの
ブラッククリームソーダ?ってどんなお味なのかな
うん!ルーシーもブラックソーダと、この蜜芋パフェにするわ
グラスを手に
眠らぬ夜に乾杯!
パフェをスプーン一杯にすくって一口
……なゆさん、大変
大事件よ
おいしくてルーシーほっぺたが落ちてしまいそう!
パンケーキもステキね
じゅわり、解ける……!?
いいの?ぜひ!
ルーシーのパフェも是非ぜひ!
お試しあれ、よ
スイーツの交換こって
よりおいしくなる魔法よね
蘭・七結
【心彩】◎
探偵と聞いて連想する姿と云えば
やはり、この衣装かしら
畏まった外套を羽織ったのなら
頭部には帽子を頂きましょう
ふたりの探偵の誕生、ね
ルーシーさんもよおく似合っているわ
共に難事件を解決しましょうね
なんて、戯れるように微笑んで
耳に触れる音色に瞬いて
ふふりと微笑が溢れ出でてしまう
実は、わたしも
甘い香りに連られてしまいそうなの
お腹を満たしに往きましょうか
揃い踏みの甘味の愛らしいこと
眠らぬ夜に相応しい
収穫祭の主役たちのお出ましね?
ステキな彼らの晴れ舞台なのだから
たんと戴いてしまいましょうか
ふふ、本当ね
何れも美味しそうで惑ってしまう
星の金平糖が耀くパンケエキに
ブラッククリームソーダを頂戴しようかしら
かちり、と乾杯をしましょうか
ぱちぱちと弾ける心地に心が踊るようだわ
柔いパンケエキをひと口掬って口内へと
――まあ、美味しい
じゅわりと解けていったわ
ルーシーさんもひと口如何?
ありがとう、嬉しいわ
交換をし合える喜びに微笑んで
甘くて幸せなひと時を過ごしましょう
●幸福が交わる時
探偵と聞いて連想する姿と云えば――。
畏まったインバネスコートと凛とした雰囲気のディアストーカーハット。
蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)とルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は列車に乗り込み、自分達の様相を改めて見遣る。
「今日のルーシー達はタンテイさんの仮装ね!」
「ええ。やはり、この衣装かしら」
ルーシーがびしりと指先を天に掲げると、軽く帽子を被り直した七結が微笑む。楽しげに視線を重ねた二人はお揃いの仮装に身を包み、彗星列車の中を歩いて行く。
「列車と事件とタンテイはワンセットって聞いた事あるの」
「ふたりの探偵の誕生、ね。ルーシーさんもよおく似合っているわ」
「ふふー、なゆさんのお姿ステキ。難事件もすぐに解決してくれそう!」
探偵団となった二人は互いの装いを褒めあった。まるで姉妹探偵のようで傍から見ても微笑ましい組み合わせだ。七結はルーシーに真っ直ぐな視線を向け、ふわりと双眸を緩めた。
「共に難事件を解決しましょうね」
「そうね、ふたりならきっとあっという間に解決だわ」
戯れるように微笑んだ七結に向け、ルーシーも笑顔を咲かせる。どんな事件が訪れても解決できる予感も気持ちも、そして気合いも充分。しかし、そのとき。
――ぐう。
ルーシーのお腹の虫が可愛らしく鳴いた。
耳に触れる音色の正体は七結にもすぐにわかってしまう。少し瞬いた後、七結はふふりと微笑を零した。
「……えへへ。聞こえてしまった?」
「実は、わたしも甘い香りにつられてしまいそうなの」
「まあ、なゆさんも」
恥ずかしさでいっぱいになりそうなルーシーに対し、七結は優しく語りかける。そんな彼女の気遣いを感じ取り、同じ思いを抱いていたことに嬉しさを感じたルーシーはほっとした気持ちを抱いた。
「お腹を満たしに往きましょうか」
「ええ。お腹がすいては何とやら、よね。食堂車へ行きましょう!」
最初に向かう場所はこれで決定。
手を取り合った二人はハロウィンの特別メニューが提供されている食堂車両へと歩を進めた。
カボチャの顔が可愛いパイにみたらしが掛かったオバケ団子。黒猫が添えられた不思議なブラッククリームソーダはしゅわりと弾けていて、季節らしさがたっぷりの蜜芋パフェは魅惑的。
星の金平糖が飾られたふんわりパンケエキは彗星という名の列車にぴったりだ。
揃い踏みの甘味を眺めた七結は愛らしさを感じた。ルーシーもわくわくした気持ちを胸に、ちょっぴり怖くて可愛らしいお菓子達を見つめる。
「お化けさんが大集合!」
「眠らぬ夜に相応しい収穫祭の主役たちのお出ましね?」
多くが秋らしい食材を使ったものであり、季節の巡りを感じるものばかり。七結はルーシーを外の景色がよく見える席に誘っていく。
「ステキな彼らの晴れ舞台なのだから、たんと戴いてしまいましょうか」
「ふふーそうよね、おいしく頂くのが主役さん達へのレイギだもの」
今夜は遠慮などいらない。
ルーシーもめいっぱいに味わう気持ちを前にして、ずらりと並ぶハロウィンの料理を見渡した。しかし、不意に少女の顔がほんの少しだけ曇る。
「でも、うーん。どれもとてもミリョクテキで迷ってしまうの」
「ふふ、本当ね。何れも美味しそうで惑ってしまいそう」
悩む様子のルーシーだったが、その瞳は輝いていた。七結も色とりどりのテーブルを眺め、まずは何を食べようか選んでいる。そうして、彼女が選び取ったのは星の金平糖が耀くパンケエキと、ブラッククリームソーダ。
「こちらを頂戴しようかしら」
「それはブラッククリームソーダ?」
「ええ。黒猫が愛らしくて、素敵ね」
「うん! ルーシーもこのソーダと、こっちの蜜芋パフェにするわ」
飲み物はお揃いがいいとして、ルーシーも気になったものをチョイスした。そうして向かい合って座った二人はクリームソーダのグラスを掲げる。
「眠らぬ夜に乾杯!」
ルーシーの言葉と共にふたつのグラスが重なり、かちり、とちいさな音が響いた。
一口、こくりとソーダを味わえば、ぱちぱちと弾ける心地が巡る。心が踊るような感覚を抱いた七結は、探偵二人で楽しむ時間にそっと思いを馳せた。
まだ夜は始まったばかりであるのに、今でもこれほどに快いならこの先にも期待を抱ける。
その間、ルーシーはパフェをスプーンいっぱいにすくっていた。ぱくりと思い切って頬張った後、ルーシーは神妙な顔をして七結を見つめる。
「……なゆさん、大変」
「どうかしたのかしら」
「大事件よ、おいしくてルーシーほっぺたが落ちてしまいそう!」
「まあ」
あまりにも真剣なルーシーの様子が可愛らしくて、七結はちいさく微笑んだ。そして、七結も柔いパンケエキをひと口掬って味わっていく。
「――美味しい」
「パンケーキもステキね。そちらのお味はどう?」
「じゅわりと解けていったわ」
「じゅわり、解ける……!?」
ルーシーは七結の感想に興味津々。その眼差しが更に心地よさを運んできてくれている。七結はパンケエキをそっと切り分けていき、少女に柔い笑みを向けた。
「ルーシーさんもひと口如何?」
「いいの? ぜひ! それじゃあ、ルーシーのパフェも是非ぜひ!」
頂けるならば、と嬉しい顔をした少女は交換ことして蜜芋パフェのグラスを差し出す。七結はスプーンを伸ばし、味わいを一緒に楽しめるひとときに感謝を抱いた。
「ありがとう、嬉しいわ」
「お試しあれ、よ」
交換しあえる喜びは更なる微笑みとなり、七結とルーシーは甘い味わいを確かめてゆく。線路を走っていく彗星の中、感じるのはかけがえのない思い。
窓から見える幻朧桜や夜の街の情景は美しく、二人は食事と景色を楽しんでいく。
車窓には角度によっては探偵姿の自分達も映って見え、特別な気分にもなれた。ひらり、ひらりと外を流れていく桜の花弁の目を向けた後、ルーシーは満面の笑みを浮かべる。
「スイーツの交換こって、よりおいしくなる魔法よね」
「その通りね。不思議なハロウィンの魔法もかかって、とても好い気分ね」
ルーシーの笑顔と七結の微笑みが重なったことで、あたたかな気持ちが咲き誇った。
さあ、甘くて幸せなひとときを。
二人で過ごす時間はまだまだ、これからも続くのだから――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『夜行特急「彗星」』
|
POW : 一等景観車両のカフェで、景色を楽しみながら乗客の様子を観察する
SPD : 二等貨物車両に潜り込み、預けられた荷物等に不審物がないか調査する
WIZ : 一等寝台車両を巡回し、乗客と会話しながら不審な点がないか調べる
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●怪盗と探偵
夜行列車、彗星で巡る夜のひととき。
猟兵達がそれぞれに楽しい時間を過ごした後、彗星は或る駅に停まった。
暫しの停車時間の最中。事前に予知されていた子供の影朧が夜行列車に近付いてきて――。
「夜の列車だ! 遊ぼう、遊ぼう!」
「ここにあるお菓子もお料理も、宝物もぜーんぶボクたちのもの!」
「あはは、ボクらはスヰーツ怪盗団だ!」
「汽車の中で鬼ごっこもしようよ。絶対に楽しいよ!」
影朧達はぱたぱたと駆けていき、あっという間に彗星の中で燥ぎはじめた。シーツを被ったオバケの仮装をした子供達は無邪気だが、飾りを外したり、大きな音を立ててみたたりと何でもかんでもやりたい放題。
中には連結部分から屋根に登って危険な鬼ごっこをしている者もいるようだ。
今回の列車には猟兵しかいないが、影朧の子をこのままにしておけば、いずれ誰かに被害が出るかもしれない。
そうなる前に鬼ごっこに付き合ってやり、楽しい気持ちを感じさせてやれば影朧の子は満足するらしい。
走っている列車にも幻朧桜の花弁が届くため、そのまま転生の流れに送ることもできる。
されど、影朧の子ことスヰーツ怪盗団は好き勝手に走り回っている。
其処で猟兵探偵団の出番というわけだ。
地道に追いかけて捕まえるか、大捕物風に派手に立ち回っていくか、見事な推理をして子供が向かいそうなところに行っておくか。楽しい気持ちさえあれば、子供達の捕まえ方は自由。
――いざ、スヰーツ探偵団の出動だ!
フリル・インレアン
ふええ、アヒルさん、なんで私は寝台車の真ん中でハロウィンのお菓子を抱えて正座をしているのですか?
スヰーツ怪盗団がお菓子を狙ってきても助手が手に持っていれば取られる心配はないって、
だったら正座をしている必要はないじゃないですか?
それは名探偵アヒルさんの推理に必要なことだからしょうがないって、そんなって、なんで電気を消して行くんですか?
寝台車だから、しょうがないって、しょうがあると思いますよ。
ふええ、痛いですって髪は引っ張らないでください。
帽子も持ってかないでー。
あの、アヒルさんお菓子全部持ってかれましたよ。
そのおかげで油断したスヰーツ怪盗団を一網打尽にできたって、私がいる必要ありましたか?
●威風堂々、名探偵アヒルさん
影朧の子達が彗星に乗り込んできてから、少し後。
「ふええ……」
寝台車両の真ん中では、僅かな灯りしかない暗闇の中で座らされているフリルの姿があった。その近くにはアヒルさんが潜んでおり、周囲をきょろきょろと見渡して警戒を続けている。
「アヒルさん、なんで私はハロウィンのお菓子を抱えていなければいけないんですか?」
膝にはお菓子が詰まった籠。座り方はきっちりとした正座。
疑問しか抱くことの出来ないフリルは名探偵アヒルさんの作戦に協力している。助手としてのフリルにこの状況の説明をするべく、アヒルさんは身振り手振りで語っていく。
フリルがお菓子を抱いている理由。それは――。
「スヰーツ怪盗団がお菓子を狙ってきても助手が手に持っていれば取られる心配はない、ってことですか?」
「グワ!」
その通り、というようにアヒルさんは胸を張った。
しかし、そろそろ足が痺れてくる頃だ。ふかふかのベッドの方に移動させて貰ったとはいえど時間が経てば経つほどにフリルにとっての苦行になっていく。
「ふぇ……だったら正座をしている必要はないじゃないですか?」
「グワ~」
「名探偵アヒルさんの推理には必要なことだからしょうがないって、そんな……」
そう、ユーベルコードは既に発動している。ふええ劇場『名探偵アヒルさん』の力は、フリルが正座をさせられている時間に応じて行動が成功に導かれるもの。つまりフリルの足の尊い犠牲によってアヒルさんが活躍できる最高の、もとい最適な技というわけだ。
「って、なんで電気を消して行くんですか?」
最後に残っていた小さな常夜灯を消していったアヒルさんはフリルから少し離れる。寝台車だからしょうがない、というわけらしいがフリルにとっては怖いだけだ。
「しょうがあると思いますよ……って、ふええ!?」
そのとき、ぱたぱたと駆けてくる幾つもの足音が聞こえ始めた。
「お菓子の気配だ!」
「奪え奪えー! わーっ!」
暗闇の中で子供達の声が聞こえたかと思うと、正座のフリルの方に近付いてくる。驚いたフリルは思わず身構えたが、アヒルさんにこれ以上動くなと言われていた。
「ふええ、痛いですって髪は引っ張らないでください」
「わーい!」
「可愛い帽子だねー!」
「帽子も持ってかないでー。だ、だめです……!」
どたばたした騒ぎが巻き起こる中、フリルは帽子だけはしっかりと死守した。
だが、お菓子はひとつ残らず奪われてしまう。子供達が去っていったかと安心したフリルだったが、続けて通路の方から更にばたばたした音が聞こえてきた。
「グワッワ!」
「わー! 何だこの子!」
「アヒル? アヒル探偵だ。すごいすごい!」
「うわぁ、捕まったー!」
鳴き声と楽しそうな悲鳴が止んだ後、寝台車両の常夜灯が点灯した。
「あの、アヒルさんお菓子全部持ってかれまし……あれ、子供達が捕まっています」
「グワッ!」
「そのおかげで油断したスヰーツ怪盗団を一網打尽にできたって、私がこうして座っている必要ありましたか?」
「グワ?」
なんと、名探偵アヒルさんによって此処に訪れた怪盗団は見事に捕まえられていた。フリルは腑に落ちない疑問を抱いたが、アヒルさんは首を傾げて誤魔化している。
何にせよ、これで怪盗団の影朧は無事に確保できた。楽しかったらしい影朧の子も満足気な顔をしている。彼らの姿はゆっくりと薄れていき――そうして、静かに消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
お菓子を取っちゃう怪盗団かぁ…
イタズラ好きなハロウィンって感じだね
今日は探偵役として、お仕事も頑張ろっと
鬼ごっこする子は寄っといで〜と
本物の羅刹なイチカ君が言うと迫力スゴいね
挟み撃ち作戦だねぇと了解、了解
竜槍のニールにも竜姿で手伝って貰おうかな
待ち伏せ役はイチカ君に任せて
少し離れたところで待機しとこうか
反対側にニールも置いてるし何とかなるなる〜
すばしっこく追いかけっこしてるなぁ、と
隙を見たら回り込んで挟み撃ちにしていって
運動後の腹ごなしには、また食堂車を覗くのも良いし
…それにしても愉しい光景が見られて
そのうちボクもイチカ君となら
全力鬼ごっこしてみたくなったかも?
椚・一叶
友のトリス(f27131)と
菓子も料理も…?
ガキならば多少は許してやってもいいが
全部は許さん
儂が食うぶん無くなる
鬼ごっこ、本物の鬼が来てやった
トリスと一緒に挟み撃ちしてやろう
悪ガキ共、儂らにかかればあっという間な筈
自分では認めたくないが、儂のこ…小柄は有利かも
菓子や料理がある所で待ち伏せたら
全速力で追いかけ、おらーと叫んで奴らの注意を儂に向けさせる
隙を見てトリスに回り込んでもらおう
挟み撃ちの機会は集中
トリス、そっちに行った
なんだかとても動いた
…そしたらまた腹減った
ガキ共、少しぐらいなら菓子くれてやる
儂らのように大人な振る舞いしてれば盗まずとも食える
…トリス、全力じゃなかったのか…?と半眼に
●南瓜とオバケと鬼ごっこ
「お菓子を取っちゃう怪盗団かぁ……」
停車駅から発車した彗星の中、軽く外を見遣ったエンデは頬を掻く。
影朧の子が乗り込み終え、様々な車両を巡っているのだろう。賑やかになることは悪くないが、一叶としては気になることがあった。
「怪盗……盗むのか。つまり、菓子も料理も……?」
「多分そうなるかな。イタズラ好きなハロウィンって感じだね」
彼の疑問に答えたエンデは今も聞こえている足音に耳を澄ませる。どうやら影朧の子達はカフェや食堂車両にも向かっているらしい。一叶も気配を探りながら静かな思いを抱いた。
「ガキならば多少は許してやってもいいが、全部は許さん」
儂が食う分が無くなる、と呟いた一叶は真剣だ。エンデはそんな様子もまた彼らしいと感じ、これから始まるであろう追走劇に思いを馳せた。
「そうさせないための猟兵だよ。今日は探偵役として、お仕事も頑張ろっと」
「一網打尽にしてやろうか」
一叶も影朧の子捕獲作戦への思いを抱き、拳を力強く握った。
そして、二人は鬼ごっこに最適な場所へと移動する。食堂車のメイン部分で暴れてしまうのはよくないが、座席が並んだ端の方ならば良いだろうと判断してのことだ。
「さぁ、こっちこっち。鬼ごっこする子は寄っといで~」
「鬼ごっこ、本物の鬼が来てやった」
エンデと一叶は其々の位置に陣取り、オバケシーツ仮装の子供達を呼んでいく。腕組みをした一叶が放つ覇気のようなものはすべて料理や菓子への思いから来ているようだ。
「本物の羅刹なイチカ君が言うと迫力スゴいね」
「挟み撃ちしてやろう」
「良い作戦だねぇ。了解、了解」
一叶からの作戦提案に頷いたエンデは竜槍のニールを呼んだ。竜の姿になったニールも手伝う気満々でエンデの傍に控えた。そうして彼らは役割分担を決めていく。
待ち伏せ役は一叶。其処から少し離れたところで待機するのがエンデ。ニールは反対側に配置することで取り逃がしを防ぐ布陣だ。
エンデ達が呼びかけ続けたことによって、声に誘われた影朧の子が集まってきている。
「悪ガキ共、儂らにかかればあっという間な筈」
一叶は近付いてくる気配に集中していき、考えを巡らせた。
(自分では認めたくないが、儂のこ……小柄な体躯ならば有利かもしれん)
不本意ではあるが、こういった場合に素早く的確に動き回れることは良いことだ。特にお菓子を守るためならば何でも利用していくのが最適だ。
一叶は座席のひとつにパンプキンパイが入った籠を置いていた。
甘い香りがするので、影朧の子はまんまと引き寄せられることだろう。そして――。
「鬼ごっこの声がしたのってこの辺? だれもいないよ?」
「聞き間違いだったのかな?」
「あれ、ここにお菓子がある!」
オバケシーツの子達はきょろきょろと辺りを見渡している。遊んでくれる人がいると思ってきたのだろう。その中のひとりがパイの籠を発見した、次の瞬間。
「おらー」
「え!?」
「うわあ、鬼だー!」
「逃げろ逃げろー!」
姿を現した一叶が声を響かせながら子供達を追いかけていく。一度は驚いた子供達だったが、すぐに楽しそうな声をあげて駆けていく。全速力で子供達を追う一叶は素早く立ち回り、彼らに気付かれないように逃げる先を誘導していった。勿論、まだ敢えて捕まえない塩梅だ。
(すばしっこく追いかけっこしてるなぁ)
どたばたと駆け回る子供と一叶の様子をうかがいつつ、エンデは微笑ましさを抱いた。
そのまま注意を自分に向けさせ続けた一叶は座席の合間にいる友に視線を送る。その眼差しを受けたエンデは頷き、子供達が通りかかる瞬間を狙った。
「トリス、そっちに行った」
「任せて」
「何? まだ鬼がいたの!?」
「しまったー!」
一瞬の隙を突いたエンデは前に回り込み、二人の子供を捕まえた。挟み撃ち作戦は成功、と思いきや残りのひとりは合間を擦り抜けて車両の出口に向かおうとしている。
「まだ逃げるか」
「へへー、捕まえてみるといいよー!」
一叶が身を翻して追う中、影朧の子は振り向きながら逃げていった。しかし、一叶は薄く笑っている。何故なら、その先にはエンデが配置したニールがいるからだ。
「うわあ、まだ何かいる!」
「捕獲完了」
ニールの存在に驚いた子は、後ろから追いかけてきた一叶によって見事に捕まった。
怪盗団と探偵団の戦いは其処で幕引きとなる。
捕まった子供達は大捕物がとても楽しかったらしく、満足そうにけらけらと笑った。
「兄ちゃんたちすげーな!」
「こんなに面白かったの、久しぶりだよ」
「うん、なんだかすっきりしたよ」
子供達はオバケシーツを脱ぎ捨て、元の少年の姿に戻る。満面の笑みを浮かべている彼らの姿は薄っすらと消えていっており、彼らが満足したことを示していた。
「こっちも楽しかったよ」
「ガキ共、少しぐらいなら菓子くれてやる」
エンデは消えていく子供達を見送る。カボチャのパイを回収してきた一叶も頷きを返し、静かに告げた。差し出されたパイを手に取った少年達は声を揃えて笑う。
「ありがとう!」
「儂らのように大人な振る舞いしてれば盗まずとも食える」
最後に来世へのアドバイスを告げた一叶は手を振る。そうして、影朧達はゆっくりと転生への道を歩んでいった。見送りを終えた二人はほっとした思いを抱き、任務の完了を確かめる。
「なんだかとても動いた」
「結構な鬼ごっこだったね」
「……そしたらまた腹減った」
「じゃあ運動後の腹ごなしに、また食堂車を覗いてみようか」
「そうしよう」
何せ今夜は夜通しハロウィンパーティーが開かれている。もう一度、美味しいものを味わっても許される日。二人は食堂車両へ向かいながら、先程までの事を思い返す。
「それにしても愉しい光景が見られてよかった。そのうちボクも全力で鬼ごっこしてみようかな。イチカ君とならできるかも」
わくわくした様子で語ったエンデは満足そうだ。しかし、一叶はあることに気が付く。
「……トリス、全力じゃなかったのか……?」
「あ、しまった」
半眼になって問いかける一叶の言葉を聞き、エンデは慌てて口許を押さえた。
何にせよ楽しい時間だったことは間違いない。一叶とエンデ、そしてニールは視線を交わしあった後、甘い香りとあたたかな光に包まれた車両へ踏み出していった。
彗星で巡るハロウィンのひとときはまだまだ此処からも続いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
琴平・琴子
◎
いばらさん(f20406)と
引き続き文化人形衣裳で
こら!列車内で走ると危ないですよ!
落ち着きの無い怪盗さん達ですね
怪盗とはもっと華麗でスマートである筈なのに
たのしいお歌?咳払い一つ零して内心は久方振りの歌に不安
開かれた小さなうたごえに目を細めて微笑む
ええ、誰にも負けないお歌を披露してあげましょう
いばらさんと小さなうたごえの声に合わせて歌うのも
非難されずに歌うのはやはり楽しくて
やっぱり私はお歌が好きで
あのねといばらさんに耳打ち
こんなお歌は如何?
♪おいでと手招きするのはだあれ
そうよこっちにいらっしゃい
ミルクにお砂糖 紅茶に珈琲
楽しいお茶会の始まり始まり♪
悪戯よりも楽しい一日は過ごせましたかね?
城野・いばら
◎
琴子(f27172)と
引続き一千一夜物語衣装
慌ててお宝を探さなくても
会場にたっぷりお御馳走があるのに
そうだわ
怪盗さん達に此処よって教えてあげましょう
んふふ、たのしいお歌で!
小さなうたごえの皆に、歌唱で手伝ってもらい
琴子、どたばたに負けない大きなお歌を届けよう?
♪ぱんぷっぷっぷー パンプキン
あーまいお菓子は こっちだぞ
ぐるぐるキャンディ さくっとクッキー
それとも ふわふわパンケーキ?
さぁおいで 南瓜は笑って ご招待♪
初めて聞いた琴子の歌声
高らかに澄んでいて
もっと聞きたいと咲って
うん、と耳寄せば…まあ素敵!
飲み物も揃えばお茶会の始まりね
歌でお誘い作戦成功し
皆が集えば合唱会
ね、悪戯よりも楽しい夜を
●歌で綴る夜
騒がしい足音が聞こえたかと思うと、目の前を影朧の子達が駆けていった。
嵐のように過ぎ去っていった子供達は燥いでおり、このままでは彗星の中が荒らされるだけになってしまう。
「こら! 列車内で走ると危ないですよ!」
「へへーんだ!」
琴子は後ろ姿に向けて注意を呼びかけたが、オバケシーツの子は振り返らずに走り去った。いばらはあっという間に消えていった影朧の子を思い、軽く肩を竦めた。
「慌ててお宝を探さなくても会場にたっぷりの御馳走があるのに」
「落ち着きの無い怪盗さん達ですね」
いばらに頷き、琴子も困ったような表情をみせる。本や舞台でよくある怪盗ならば、もっと華麗でスマートであるはずなのに。そんな風に零した琴子は子供達が走っていった方に目を向けた。あの調子ならば、再び出会っても素早く逃げ回っていくだろう。
いばらは少し考え込んだ後、名案を思い立つ。
「そうだわ、怪盗さん達に此処よって教えてあげましょう」
「それはいい案ですね。でもどうやって?」
瞳を瞬かせた琴子はいばらの引き寄せ作戦に同意した。問題はどうやって自分達の方に影朧の子をひきつけるかだ。お菓子はきっと食堂車の方でめいっぱいに奪うだろう。それならばもっと別の方法が必要だ。
しかし、いばらはしっかりと案を考えていた。
「んふふ、たのしいお歌で!」
「たのしいお歌?」
思わず聞き返した琴子はきょとんとして首を傾げる。いばらは箱を開き、小さなうたごえの仲間達を呼ぶ。其処から飛び出したのは花弁、蝶々、小さな愉快な仲間たち。
「琴子、どたばたに負けない大きなお歌を届けよう?」
「はい……! こ、こほん」
いばらの呼びかけに応えた琴子は咳払いをひとつ落とした。勢いよく返事をしたはいいものの、内心には僅かな不安があった。久方振りの歌がうまく歌えるかが心配になったのだ。
されど、小さな仲間達の声や姿は愛らしい。仲間たちもこうして歌い始めているのならば大丈夫。ほっとした気持ちになった琴子は目を細めて微笑む。
「ええ、誰にも負けないお歌を披露してあげましょう」
「それじゃあ、楽しい時間のはじまりね」
いばらは指揮をとり、仲間たちに合図を送る。いばらが楽しげに歌い始めたことに続いて、琴子もそうっと声を合わせて声を響かせていく。
♪ぱんぷっぷっぷー パンプキン
あーまいお菓子は こっちだぞ
ぐるぐるキャンディ さくっとクッキー
それとも ふわふわパンケーキ?
さぁおいで 南瓜は笑って ご招待♪
いばらの声が導く旋律に合わせて愉快な仲間たちが歌う。
琴子もいばら達と一緒に歌い、楽しさを抱いた。誰にも非難されずに歌えることも、皆と共に同じ思いを抱いて声を重ねられることも嬉しい。
そうして、文化人形と一千一夜の姫の歌声は彗星の中に木霊していく。
「やっぱり私はお歌が好き」
「ふふ、よかった」
いばらは初めて聞いた琴子の歌声をとても心地よく感じていた。最初はおずおずとした雰囲気があったが、次第に伸びやかになった声は高らかに澄んでいる。
もっと聞きたい、と咲ったいばらは心からの笑みを浮かべていた。
少し離れた車両の方からは影朧の子の声も聞こえてきている。歌が聞こえるぞ、どこだどこだ、と探しているような雰囲気もあり、二人は顔を見合わせて微笑んだ。きっと、もうすぐ作戦は成功するはず。
そして、ふとあることを思いついた琴子が耳打ちをしていく。
「あのね、いばらさん。こんなお歌は如何?」
「うん……まあ素敵! 飲み物も揃えばお茶会の始まりね」
耳を寄せたいばらはふわりとした笑みを返した。それから、次に続いた歌詞は――。
♪おいでと手招きするのはだあれ
そうよこっちにいらっしゃい
ミルクにお砂糖 紅茶に珈琲
楽しいお茶会の始まり始まり♪
「お茶会? どこどこー?」
「楽しいお歌だ。ぼくも一緒に歌いたいな!」
すると影朧の子達がぱたぱたと駆けてきた。オバケシーツを翻して近付いてくる子供達は歌に夢中で警戒心や逃げる素振りはみせていない。おいでおいで、と手招きをしたいばらと琴子は影朧の子と手を繋ぐ。
「つーかまえた」
「さぁ、一緒にお歌をうたいましょう」
にっこりと笑ったいばらはさりげなく子供達を捕まえていった。琴子も驚かれぬように笑みを見せ、集った皆で合唱会を始めていく。
ららら、るるる、とハミングをする子供達も楽しげだ。
もう一度パンプキンとお茶会の歌を響かせた二人は、影朧の子達に笑いかける。
「悪戯よりも楽しい一日は過ごせましたかね?」
「ね、悪戯よりも楽しい夜でしょう?」
琴子といばらが問いかけると、子供達の姿がゆっくりと薄れていった。誰かがいつの間にか開けたのか、放たれた窓の外からは幻朧桜の花弁が吹き込んできている。
「楽しかった!」
「ふふ、お菓子もいっぱい貰ってきたよ」
子供達は幻朧桜を纏いながら、別の車両で猟兵から貰ってきたというお菓子を見せてくれた。
そして――影朧の子はオバケシーツを脱いだ。
「僕たち、もう行かないといけないみたい」
「とーっても面白かったよ。私達と遊んでくれてありがとう!」
「もしちゃんと生まれ変われたら……お姉ちゃんたちみたいな人と、また会いたいな……」
消えゆく子供達の素顔があらわになったことで、彼らの笑顔が見えている。
琴子はそっと彼らを見送り、いばらはまたねと告げて手を振った。
「いばらさん、もう一度歌っていいですか?」
「もちろん! きっと、あの子達を送ってあげるのにぴったりだわ」
琴子からの申し出を受け、いばらは頷く。
再び二人が響かせた楽しい歌は、彗星の如く夜を駆ける列車に響き渡っていった。
●探偵団の大勝利
暫し後、彗星列車からはすべての影朧が消えた。
怪盗団と探偵団の勝負は楽しく仲良く、穏やかに終わりを迎えた。
楽しかったという言葉を残して、桜と共に去った子供達。皆に幸せな来世が訪れることを願い、猟兵達は夜行列車の外に流れていく景色を見つめた。揺らめく幻朧桜の花弁はすべてを包み込むように舞っている。
こうして、夜通し続くハロウィンの夜は楽しいままで続く。
線路を走る彗星の最後尾にはそれまではなかったものが現れていた。きっと影朧の子達が何処から引っ張り出して来て飾ったのだろう。今宵のことを示す文字と装飾、それは――。
🎃『Happy Halloween!』👻
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵