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結晶シンメトリカル

#サイバーザナドゥ #お祭り2022 #ハロウィン #迅雷運輸

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#ハロウィン
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♪~
 義体疾走らせ 南瓜のごとく
 実験 改造 早くて ヤバい
 疾風 迅雷 届くよ ハロウィン
 運ぶ輝き クスリの輝き
 あゝ 迅雷運輸 迅雷運輸

●実験カフェにようこそ
 目映いネオンに照らされた繁華街。
 路地裏から続く地下への階段を下りれば、研究室の扉のような店の入口が見える。カフェバー『トゥルエノ』という名のこの店では現在、ハロウィンイベントが行われていた。
 サイバーな電飾で彩られた店内には実験器具を模したカトラリーや食器が並べられている。
 フラスコには透き通ったサイバーミントソーダが揺れており、ビーカーには蛍光色の炭酸ドリンクが注がれ、飲み口には合成フルーツが添えられている。
 更には試験管立てに並べられた数本の容器には七色のレインボーカラーのジュースが注がれ、奇妙に光るシロップで味付けをしていくオリジナルカクテルとして提供されていた。
 妖しげに飾り付けられた店内は、まるでマッドサイエンティストの研究室のよう。
 訪れた人々も研究者のような白衣姿や、フランケンシュタインの怪物めいたハロウィンらしい仮装をして雰囲気を楽しんでいる。他にも研究とは関係のない黒猫コスチュームや、南瓜頭の被り物をしている者もいた。

 特に人気のメニューは結晶カクテル。
 エメラルドグリーン、サファイアブルー、ルビーレッドにラピスラズリ。トパーズやサルファイエロー、アクアマリンにガーネット、トパーズグリーンやオパール、パールホワイトなど。
 様々な宝石の色をした合成ジュースの液体をフラスコや試験管、瓶などで二色以上混ぜ合わせれば、内部に不思議な結晶が生まれていく。
 六角形のルビーラズリ。ダイヤ型のエメラルドマリン、ハート型のガーネットサファイアなど、混ぜ合わせる種類によって形や色なども様々に変化するという。
 これ自体に毒性や危険性はなく、観賞用として持って帰ってもいいし、飴のように口に含んで食べてしまっても構わない。実験気分で自分だけの結晶が作れるということで流行っているそうだ。
 だが、問題は――。
 この店は、とある悪徳メガコーポの支配下にあるということ。

●結晶と甘い罠
「一見はハロウィンパーティーなんだが、何も知らず訪れた一般人には酷い未来が待っている」
 人々はいい頃合いで会場内に散布されるクスリで眠らされ、まとめて誘拐・監禁される。そのような未来が予知されたと語り、ディイ・ディー(Six Sides・f21861)は肩を竦めた。
 攫われた人々は機械化義体改造とクスリ漬けにされ、見る影もない姿にされる。それだけには留まらず地下闘技場に送り込まれ、死ぬまで使い潰されてしまうという。
「その運び屋を請け負っているのが、『迅雷運輸』ってメガコーポだ」
 人々が眠ってしまった後、トゥルエノには輸送用頭脳戦車『迅速ハコベールくん』が複数訪れる。彼らに一般人を運ばれてしまうような未来は避けたい。
「――ということで、イェーガー様御一行で予約を取ってきた。今夜は貸し切りパーティーだ! カフェバーのメニュー自体には健康を害するようなものは入ってないから、気にせず飲み食いしていいぜ」
 ハコベールくんが訪れる時間までは自由にパーティーを楽しめる。
 店の目玉だという結晶カクテル作りに挑戦してもよし。ジュースや酒を試験管やビーカーで飲むなどしてケミカルな雰囲気を味わっても良い。
 食事には合成ハムサンドや絶対安全肉寿司、天然養殖マグロ刺し、エレクトリカルアイスにサイバーパフェ、調合巣蜜パンケーキなど、様々なものがあるので食べてみるのもいいだろう。
 暫く楽しんでいると店内に煙のような眠り薬が散布されるが、猟兵ならば難なく耐えられる。
 その後にハコベールくんがやってくるが、眠りもせずに待ち構えていた猟兵に驚愕するだろう。向こうは運び屋任務を達成するために力尽くで此方を倒そうとしてくるが、返り討ちにしてやればいい。
「それじゃ潜入捜査パーティーに出発だ。皆、良いハロウィンを!」


犬塚ひなこ
 今回の世界は『サイバーザナドゥ』
 あやしいハロウィンパーティーを行っているカフェバーに潜入して楽しんだ後、やってくるオブリビオンを倒して事件を解決しましょう!

●第一章
 🏠『あぶないハロウィンナイト』
 実験室風の内装がハロウィン風に飾られたカフェバーです。
 フラスコやビーカー、シャーレなどの実験用具型の食器で飲み物や食事が提供されます。ハロウィンの特別ドリンク・結晶カクテルでは不思議な宝石のような結晶が作れます。
 お酒が飲める年齢や種族ではない場合、自動的にノンアルコールとして出されます。
 仮装の有無は皆様におまかせします。猟兵以外にお客はいないので自由に飲んで遊んで楽しんでください。
 ウェイターや料理人などは機械なので意思はなく、注文に対して自動提供したりムードのある音楽をかけてくれるだけです。この場で危ないことは起こらないのでご安心ください。

●第二章
 👾『迅速ハコベールくん』
 パーティーを楽しんでいると薬が散布され、ハコベールくん達が現れます。
 猟兵ならば眠くなることはありません。ハコベールくん達は頑張って皆様を拉致しようと襲い掛かってくるので返り討ちにしてあげてください。
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第1章 日常 『あぶないハロウィンナイト』

POW   :    何も知らないパリピと積極的に会話し、さりげなく守る

SPD   :    パーティ会場をうろつき、怪しい場所に目星をつけておく

WIZ   :    敵に気付かれないよう、密かに黒幕の情報を探る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

静寂・拝人
シャルル(f36639)と
仮装:マッドサイエンティスト
郷に入っては郷に従えだ。ここじゃ仮装じゃない方が浮くんだよ。
仮装は俺の趣味かだって?趣味だよ!
衣装は趣味だがちゃんとした依頼だからな?

それにシャルルはこう言うの好きだろ?
(結晶カクテルを指差しながら)
俺も好きだしな。
面白いじゃねぇか。やってみようぜ?

お前ならどんな結晶にしたい?
…サファイアなんてお前に似合いそうだぜ。
(言いながら合成したカクテルには見事に青い結晶)
ん、出来た。お前の目の色みたいだな。


シャルル・メリー
拝人(f36629)と
仮装:幽霊の花嫁
まさか仮装なんてものをすることになるとは…それにこの格好…拝人の趣味ですね。

自信を持って言うことじゃありませんよ…。
まぁ、拝人の言う事も一理あるのは事実ですからね。
依頼だから着てるんです。

(何故分かるのかと首を傾げつつ興味があるのは事実なのでカクテルの合成をしようと)
私が合成したい結晶ですか?
(ちらりと思いたものをイメージすると自然と『スモーキィクォーツ』になり)
貴方の電子タバコの煙みたい。



●煙水晶と蒼玉
 路地裏から続く地下への階段の先。
 研究室めいた扉を開けば、其処は不思議な空間が広がっている。
 実験器具に怪しいコード、サイバーに光る液体や手術台めいた大きなテーブル。其処にオレンジと黒の装飾が加わっているカフェバーはハロウィン仕様だ。
 白衣の裾を翻し、静寂・拝人(人生ゲーマー・f36629)は機械音声に案内された研究机の席に座った。彼の今宵の装いはマッドサイエンティストの仮装。
 そして、その後に続いて店に入ったシャルル・メリー(星に手を伸ばす・f36639)は幽霊の花嫁の装いだ。
「まさか仮装なんてものをすることになるとは……」
「郷に入っては郷に従えだ。ここじゃ仮装じゃない方が浮くんだよ」
 席についたシャルルは改めて自分の服装を見てみる。拝人はテーブルに置かれていた、空のフラスコを手にしながらシャルルに言い聞かせた。
「それにこの格好……拝人の趣味ですね」
「趣味だよ! 衣装は趣味だが、ちゃんとした依頼だからな?」
「自信を持って言うことじゃありませんよ……」
 シャルルは拝人に視線を返し、その手の中にあるフラスコに映る自分を見つめる。まるで科学者に生き返された花嫁のようでもあり、不思議な感覚がした。
 花嫁のヴェールがふわりと揺れる様は美しく、拝人は満足気に頷く。
 趣味だと開き直れるのはきっとこれが潜入捜査でもあるからだろう。猟兵の貸し切りになったカフェバーでこれから起こるはずだった悲劇は既にこの来店で阻止されている。
「まぁ、拝人の言う事も一理あるのは事実ですからね」
 依頼だから着てるんです、と念押しをしたシャルルは周囲を見渡す。
 店内にいるのは猟兵と、後は機械仕掛けの店員達だけ。後に戦いが控えているとはいえ、それまでは自由にこの雰囲気とメニューを楽しみ、味わえばいいだけだ。
 拝人は空中に浮かび上がったタッチパネルを軽く操作していき、或る注文をした。暫くして運ばれてきたのは実験器具めいた試験管セットに注がれた色とりどりのドリンクだ。
「それにシャルルはこう言うの好きだろ?」
 テーブルに置かれた結晶カクテルを指差しながら、拝人は薄く笑む。何故彼には分かるのかと首を傾げつつ、シャルルは結晶カクテルを瞳に映した。
「綺麗ですね」
「俺も好きだしな。面白いじゃねぇか。さっそくやってみようぜ?」
「ええ」
 何にせよ興味があるのは事実。ルビーのような赤、エメラルドめいた緑、ムーンストーンのような乳白色など色彩は様々だ。シャルルがどのカクテルの合成をしようかと考えていると、拝人が問いかけてきた。
「お前ならどんな結晶にしたい?」
 試験管のひとつを手にした拝人は、中で揺れる液体越しにシャルルを見ている。
 甘い香りと、爽やかな香りがカクテルから漂ってきていた。中には炭酸の泡が浮かび上がっているものもあり、どれも不思議な魅力を感じるものばかり。
「私が合成したい結晶ですか? そうですね――」
 シャルルは暫し考えてみる。ちらりと拝人を見てみると自然とイメージとして思い描かれるものがあった。それはスモーキィクォーツ。シャルルはグラスに煙水晶色のドリンクをそっと注いだ。
 淡茶色をした其処へ透明なドリンクを注ぎ足していけば、ゆっくりと試験管の中に結晶が生まれ始める。
 同時に拝人もカクテルを手に取り、緩やかに混ぜ合わせていく。
「……サファイアなんてお前に似合いそうだぜ」
 そう言いながら合成したカクテルにも結晶が生まれてき、見事な青い輝きを宿していった。
「ん、出来た。お前の目の色みたいだな」
「こっちは貴方の電子タバコの煙みたい」
 二人は視線を交わし、グラスをそっと掲げる。
 サファイアとスモーキークォーツのような結晶が試験管グラスの中で揺らめき、そして――。マッドサイエンティストと幽霊の花嫁の間に、ちいさな乾杯が交わされた。
 少し不思議で美しい、特別なひとときとして。夜は巡り、静かに更けていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カルマ・ヴィローシャナ

ウフフ……飲み放題に食べ放題、カルマちゃんの好きな言葉です
何たって大食いライブストリーマーでもあるんだからね!
予算の都合で制限してたけど! 無慈悲!

という訳で色んなお料理にチャレンジ&実食開始!
撮影と実況を交えつつ浴びるように酒を飲みます
酩酊(したふり)大食い(|アクジキXX《ブラックホール》で消化)した挙句
功夫なアレで酔拳の形を披露しまーす! イヤーッ!

そんでもって科捜○的なBGMと共に結晶カクテルの生成にチャレンジ!
一体これどうやって作るんだにゃん?
飽和水溶液的なアレよね、多分。知らないけど
折角だから夜の闇めいた紫の液体と月明りチックな白の結晶で作りたいな
カクテル生成も勿論配信しちゃう!



●夜に射す月光
 今夜、カフェバー『トゥルエノ』は貸し切り。
 路地裏の奥はサイエンス・アンダーグラウンド。暗くもサイバーな雰囲気で満たされた店内は、実験室や研究室のような装飾や内装になっている。地下への階段を下り、カフェバーの扉を開いたのはカルマ・ヴィローシャナ(|波羅破螺都計《ヴォイドエクスプロージョン》・f36625)だ。
「ウフフ……飲み放題に食べ放題、カルマちゃんの好きな言葉です」
 案内された手術台めいたテーブルに歩を進め、カルマはこれからのことに思いを馳せた。猟兵の貸し切り、つまりこの店の飲食代はなんやかんや経費で落ちる。遠慮せずに飲み食いしても全然大丈夫だということだ。
「今日は食べちゃうよ~! 何たって大食いライブストリーマーでもあるんだからね!」
 これまでは予算の都合で制限していたが、今夜な別だ。
 嗚呼、無慈悲。
 しかし、こうして客として振る舞うには楽しむことも大切だ。気を張り詰めた潜入では心が参ってしまううえ、配信したって撮れ高も盛り上がりもまったくない。
 それならば思いっきり飲んで騒いでハッピーになってしまえばいい。何せハロウィンだからね。――というわけでカルマは様々な料理やドリンクを好きなだけ頼み、チャレンジと実食を開始していく。
「ハローイェーガー! 今日はカフェバー『トゥルエノ』でハロウィン会にゃん☆彡」
 撮影と実況を交えつつ、カルマは画面いっぱいに並べたドリンクやフードを紹介していった。まずは乾杯をして浴びるように酒を飲みつつ一品目。
「これはお馴染み、天然養殖マグロ! 合成ワサビ醤油で頂きますにゃん」
 酒のつまみに丁度いいとしてカルマはじゃんじゃん食べていく。次は絶対安全肉寿司(肉がすごく小さい)を紹介し、更に次は合成ハムサンド。全力入荷されたという大吟醸まで、ノンストップで味わっていく。
「これはなかなかイケるにゃん」
 カルマは酩酊したふりで大食いを続行する。アクジキXXのブラックホールで消化した挙句、画面に向かって功夫なポーズで酔拳の型を披露していく。
「イヤーッ!」
 配信画面はコメントが流れ、良い食いっぷりだと称賛の嵐。
 そうして次は新たなBGMを流し、結晶カクテルの生成にチャレンジする時間となった。
 試験管に注がれたカラフルなカクテルは画面映えも抜群。香りを嗅いでみたり、画面の真ん前でゆらゆらと揺らしてみたカルマは軽く首を傾げる。
「一体これどうやって作るんだにゃん? 飽和水溶液的なアレよね、多分。知らないけど」
 軽快な口調で実況しながら、カルマは二本の試験管を手にした。折角の機会だ、好きに配合しても楽しいはず。カルマは今宵のような夜の闇を思わせる紫の液体と、月明りのような白のドリンクを混ぜていく。
 そして――。
「じゃーん、完成にゃん!」
 夜空に月光のヴェールが掛かったような六角結晶が出来上がり、合成は大成功。
 大いに盛り上がっていくライブ配信の中。カルマはとても上機嫌に、夜と月彩の結晶を掌で転がしていた。
 そうして、楽しい時は過ぎてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェレス・エルラーブンダ
【荒屋】
シーツをかぶった布おばけのかっこ
だいじょうぶだ、ここのあなからみえる
このせかい、すごいまぶしいだな

らむね、瓶のなかにぴかぴかがのこるのが似てる
るいのいろにしよう、きいろとみどり

ビーカーの中に勢いよく入れてまぜる
少しこぼしても気にしない
攪拌棒にからから何かぶつかる気配を感じ始めて尾を立て

できた?

口に含めばなないろ、いろんな果物の味に目を白黒させながら
からん
底に残った黄緑色に歓声上げて

るい、るいのは?
わたしのは……よつば!

くもとはっぱ
はじめてみた草のひろばとおなじいろだ
あのときは自分のきもちがわからなくてきもちわるかったけど
いまはわかる、あそぶのも、たのしいのきもちも

……たべる!たくさん!


冴島・類
【荒屋】
白衣に片眼鏡
髪はぼさっとしまっどさいえんてぃすと風

フェレスおばけちゃん、周り見えてるかい?
大丈夫っぽいね…お耳出す穴もばっちりだ
うん、自然光と違うのが面白い

びー玉のことかな
此処のは色んな形になるんだって
早速試してみよう!
選ぶ君を見守りつつ
あくあまりんとらぴす、濃さの違う青で
心地いい青空が好きと言っていた気がするし

実験開始!ぐるぐるぐる…
ゆっくりでも大丈夫だよ
お、出来たかな?
こくり、飲んだ一口はふわしゅわ、不思議な口当たり
中にあるのは…小さな雲型

見せて見せて
僕のはこんなだったよ
楽しげな様が微笑ましく
ならそこにもうひとつ、雲型結晶を君に
ああ、それが成長ってこと

さ、ご飯もいっぱい食べていこう



●四葉と雲の彩
 ふわふわ、ゆらゆら。
 研究室めいたカフェバーに現れたのは、シーツを揺らした布おばけ。
 フェレス・エルラーブンダ(夜目・f00338)がぱたぱたと扉を潜っていく後に続き、白衣に片眼鏡を合わせた冴島・類(公孫樹・f13398)が顔を覗かせる。
「フェレスおばけちゃん、周り見えてるかい?」
 ぼさっとした髪を軽くかき分けながら、類はフェレスに呼びかけた。くるりと振り向いたおばけの正面にはまんまるな黒い穴があいている。
「だいじょうぶだ、ここのあなからみえる」
「大丈夫っぽいね……お耳出す穴もばっちりだ」
 布おばけの上にぴょこりと飛び出した耳を眺め、類は微笑ましい気持ちを抱く。周囲はハロウィンめいた飾りでいっぱいだが、元よりこの場はサイバーな光に溢れていた。
 この世界は少し眩しいからこれで丁度いい。そういった旨を語ったフェレスに頷き、類も目を細めた。
「でも、おもしろい」
「うん、自然光と違うのが不思議だね」
 二人は世界の様相を物珍しく見渡しながら、案内された席についた。ビーカーにフラスコ、試験管やリトマス紙などの実験道具で飾られたテーブルは興味をひかれる。
 今夜は猟兵の貸し切りであるため、時間までは自由に過ごして良い。メニューから気になるものを選んだフェレスと類は運ばれてきたドリンクを見つめた。
「らむね、瓶のなかにぴかぴかがのこるのが似てる」
「びー玉のことかな」
 色とりどりの七色めいた液体はキラキラと輝いている。結晶カクテルの仕組みを聞いたフェレスは試験管の中で揺れる液体を見つめていた。彼女が言いたいことを理解した類は微笑ましさを覚える。
「此処のは色んな形になるんだって。早速試してみよう!」
「やってみる」
 フェレスは真剣に混ぜるドリンクを選んでいく。
 少女が試験管を目の前に掲げる度に、その瞳に青や緑の色彩が映った。類はその姿を見守りながら自分も結晶にしたい色彩を選んでいった。
「るいのいろにしよう、きいろとみどり」
「じゃあ僕はあくあまりんとらぴす」
 フェレスは試験管からビーカーの中に液体を注ぎ、勢いよく混ぜていく。色がぐるぐるするところが面白く感じたフェレスは目を光らせていた。少し零しても気にしないのはご愛敬。
「こっちも実験開始!」
 ぐるぐる、ぐるぐる。類も楽しげに液体を混ぜ込んでいく。濃さの違う青を混ぜ合わせたことで、類の手元のカクテルは爽やかな色合いになっていく。心地いい青空が好きと言っていた気がするのできっと丁度いい。
 フェレスも更に混ぜる力を強くした。
 手にした攪拌棒が中に生まれた結晶にぶつかったことで、からからと大きな音が鳴った。反射的に尾を立てたフェレスの様子も可愛らしく、類はくすりと笑む。
「ゆっくりでも大丈夫だよ」
「わかった。……これで、できた?」
「お、出来たかな?」
 ビーカーの中に完成した結晶は自分だけの色。互いを思って作ったドリンクとカクテルはとても綺麗で、中の結晶も美味しそうな色合いをしている。
「じゃあ、乾杯しようか」
「かんぱい」
 類とフェレスはビーカーのグラスを掲げて色彩を重ねた。こくりと飲んだ一口はふわしゅわな不思議な口当たりで、類は少しばかり驚く。口に含めば、体中に七色が広がっていくかのよう。たくさんの果物の味を感じたフェレスは目を白黒させながらも、甘い味わいを楽しんだ。
 そうして、グラスの飲み物が少なくなった頃。
 からん、と音が鳴ったことでフェレスが底を覗き込む。液体越しには見えていたが、実際に目にした黄緑色に歓声をあげた。ビーカーを見つめた類も出来上がっていた結晶を瞳に映した。
「るい、るいのは? わたしのは……よつば!」
「見せて見せて。僕のはこんなだったよ」
 フェレスが見せてくれた四葉を見つめた類は、ふんわりとした雲型の結晶を示した。空に浮かぶ雲と優しい幸運を呼ぶ四葉は愛らしく、二人とも穏やかな気持ちになっている。
「くもとはっぱ。はじめてみた草のひろばとおなじいろだ」
「それならそこにもうひとつ」
 とても楽しげなフェレスの様子が微笑ましくなり、類は雲型結晶をそっとグラスの中に入れてやった。嬉しい思いを確かめたフェレスは、類に報告していく。
「あのときは自分のきもちがわからなくてきもちわるかったけど。いまはわかる」
 あそぶのも、たのしいのきもちも。
 その言葉を聞いた類は少女が前に進んでいるのだと実感した。
「ああ、それが成長ってこと」
「せいちょう」
 そうか、と頷いたフェレスは満更でもない様子でこくこくと頷く。そして、ふたつの結晶を暫し眺めた二人は次のメニューに目を向けた。合成や天然養殖などの変わり種のものばかりだが、味は保証されているらしい。
「さ、ご飯もいっぱい食べていこう」
「……たべる! たくさん!」
 類の誘いにフェレスは元気よく答え、知らない食べ物への興味をいっぱいに抱いた。
 可愛いおばけと研究者。二人のサイバーでサイエンスな夜は、こうして楽しく仲良く巡っていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】

仮装は暁と対で研究者風
いつものスーツの上に白衣と、今夜は眼鏡

人並みに飲まれないようにそっと暁を守りつつ手を引いて行こう
この国自体の独特な文化の一面だな
何気なくこういう面は新旧入り混じっている

実験?ああ、いいとも
(暁は確か12月生まれだったはず…)
6月は…俺?いいのか?
なら俺は―12月の、暁の石…
タンザナイト菫のような色の石か
…これを、こうして…お、出来た
タンザナイトの完成だ
そういえば宝石は石言葉が…“幸福な夜明け”
…本当、夜明けだよ暁は。俺の夜明け

どれ…綺麗だなすごく、綺麗…
へ?!貰って良いのか?あ、ありがとう…嬉しい
暁といると宝物が増えてしまうな…

あ、そうだ…さっきできたタンザナイト
ふふ、見ろ暁。少しお前の目に似てる―夜明けみたいな綺麗な色
俺からのプレゼント、受け取ってくれ

ならモクテル…ノンアルコールって意味のカクテルだ、それにしよう
俺のお勧め…なら暁がくれた石に似た色
ライラのモクテルを一杯
酸みのライムジュース、香りづけのオレンジと、炭酸で酒気分だな

俺のカクテルはカカオフィズを


楊・暁
【朱雨】

仮装はワンピース+ぺたんこ靴+頭に包帯雑に巻き
全部白い襤褸で血に見える模様入り
実験体の子供風

は―…
アングラ風の場所もバー自体も初めてで見入っちまう
…すげぇな…!
手ぇ引かれながら全部目新しくてわくわくしつつ席へ

藍夜!実験、してみてぇ!
確か、誕生石ってのがあるんだよな?(スマホで辿々しく調べ
えっと…6月…ムーンストーン、か
それっぽい色の…あった、これと…んー、じゃあ、この青緑っぽい奴混ぜて…

菱形の淡い青緑色の結晶かと思えば、光をあてる確度を変えると青緑が赤へ
藍夜っ、なんかすげぇのできた!(超嬉しい
ムーン…アレキサンドライト?になるのか?(スマホで色から石調べ
これ、藍夜にプレゼントだ

贈りあって嬉しくて瞳燦めかせ
壊さないようそっと掌に乗せ
…ありがとう。…ずっと、大切にする

実年齢は成人してるけど…ここじゃ飲めねぇから
気分だけでもカクテル楽しみてぇな
藍夜のお勧め、あるか?
…綺麗だな…
なんか、飲むの勿体ねぇ
グラスに見入りつつ、大切そうにちょびちょび飲み
…美味い。流石、藍夜のお勧めだな
口許綻ばせ



●掌の中の宝物
 目映いネオンに照らされた喧騒を抜け、路地裏を進む。
 ハロウィンの時期であるからか、人波に飲まれないように歩く御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は楊・暁(うたかたの花・f36185)を気にかけていた。
 路地から続く地下への階段を下りていった先、扉を開いた藍夜は暁を手招く。
「こっちだ」
「は―……すげぇな……!」
 アンダーグラウンドめいた扉の向こう側に広がっているのは、研究室めいた空間。カフェバー『トゥルエノ』の中に入った暁は内装や雰囲気に思わず見入り、感嘆の声を零す。
「この国自体の独特な文化の一面だな」
 何気なく語ってみたが、この世界のこういった面は新旧が入り混じっている。藍夜もトゥルエノの内装や空気感を確かめ、双眸を薄く細めた。
「眩しくもあって、暗くもあるんだな。不思議だ」
「こっちに段差があるみたいだ。気を付けると良い」
「わかった!」
 藍夜に手を引かれた暁は周囲を見渡した。フラスコや試験管が並ぶテーブル。実験道具が揃えられた棚やケミカルな液体が入れられたビーカー。どれもが目新しく感じる暁は興味津々。
 その様子を微笑ましげに見つめる藍夜は、今宵に相応しい仮装に身を包んでいる。
 いつものスーツの上に白衣を羽織り、眼鏡を掛けている彼は研究者風の出で立ちだ。今夜だけの特別な格好をしているのは藍夜だけではない。
 暁は純白のワンピース衣装にフラットシューズを合わせ、頭に包帯を巻いている。敢えて雑な形で纏っている襤褸の包帯は、彼を実験体の子供のように見せていた。
 研究者と被験者。まさにこの場にぴったりであり、二人が元から此処に居たようにも思えるほど。
 彼らが案内された席は片隅の方だったが、揺れるライトが良い雰囲気を作り出している。カフェバーの全体の様子もよく見える位置なので丁度いい。
 実験ファイル風のメニュー表に目を通していく藍夜。その真正面に座っている暁は瞳を輝かせている。
「藍夜!」
「どうした、何か頼みたいものが見つかったか?」
「これ! 実験、してみてぇ!」
「実験? ああ、いいとも」
 暁が示したのはこの店の一押しの一品でもある、結晶カクテルの実験メニュー。
 ぜひやってみようと頷いた藍夜も好奇心を抱いている。
 そうして、二人のテーブルに運ばれてきたのは様々な色彩のドリンクが注がれた試験管だ。幾つもの試験管が並べられている台を瞳に映した暁は中を覗き込んでみる。
 透き通った液体は宝石の色合いをそのまま映し込んだようで美しかった。どの試験管からかはわからなかったが、中には甘い香りのものもあるらしい。
 アクアマリンやルビー、ラピスラズリなどを連想させるドリンクはずっと見ていても飽きなさそうだ。
 藍夜はひとつの試験管を手にとって軽く揺らしてみる。暁はそれぞれの色彩を確かめながら、自分のスマートフォンを取り出した。
「確か、誕生石ってのがあるんだよな?」
「ああ、生まれ月で違う宝石が設定されているな」
 暁の問いかけに答えた藍夜は、彼が十二月生まれだったことを思い出す。きっと自分の誕生石を知りたいのだろうと考えた藍夜は、答えを先に言おうかとも考えた。しかし、辿々しい操作ながらも何とか自分で調べようとしている暁を見守ることにする。
「えっと……六月は……」
「六月?」
 次に聞こえた言葉は意外なものだった。少し驚いてしまった藍夜が首を傾げると、暁は調べた宝石名を口にした。
「あった! ムーンストーン、か」
「……俺の誕生石? いいのか?」
「いいのか、って……そのために調べてたんだ。駄目だったか?」
 きょとんとした暁はどうして藍夜が不思議そうにしているのか分からなかったらしい。何せ元から六月だけを調べるつもりでスマートフォンを開いたのだから。
 彼の思いを理解した藍夜は、自然に口許に笑みが宿っていくことを感じた。
「なら俺は――暁の石……十二月の誕生石のタンザナイトにしよう」
 菫のような色の石を作り出したいと考えた藍夜は、快い気持ちを覚えている。暁も笑みを見せ、自分の実験カクテルに手を伸ばしていった。
「それっぽい色の……あった、これと……。んー、じゃあ、この青緑っぽい奴混ぜて……」
 暁は真剣かつ楽しげにドリンクを混ぜ合わせていく。
 藍夜も調合する液体の調整をしながら、実験時間への楽しさを抱いた。白衣姿であることで藍夜の姿は実によく映えており、暁はときおり彼を見遣っては双眸を緩めている。
 そして、藍夜もグラスを覗き込んだ。攪拌棒で混ぜたことで上手く合成が進んでいる。
「……これを、こうして……お、出来た。特製タンザナイトの完成だ」
「藍夜っ、こっちも! なんかすげぇのできた! 見て!」
 とても嬉しそうに耳をぴんと立てた暁は、フラスコに混ぜた液体を掲げた。彼のグラスの中に出来上がったのは菱形の淡い青緑色の結晶――かと思えば、光をあてる確度を変えると青緑が赤へ変化するものだ。
「どれ……綺麗だな。すごく、綺麗……」
「だろ! ムーン……アレキサンドライト? になるのか?」
 宝石名を確かめるため、スマートフォンを操作した暁はこの宝石に相応しい名前を言葉として並べた。透明に変わったドリンクの中で揺れる結晶は世界でたったひとつだけのもの。
 暁が作った結晶に目を奪われていた藍夜に向け、暁はグラスを差し出す。
「これ、藍夜にプレゼントだ」
「へ?! 貰って良いのか?」
「最初から藍夜のために作ってたからな。受け取ってくれないと困る」
「あ、ありがとう……。暁といると宝物が増えてしまうな」
 本当に嬉しい、と心からの言葉を告げた藍夜はフラスコごと結晶を受け取り、快い笑みを浮かべた。思えば宝石には石言葉があった。
 それは――幸福な夜明け。
「……本当、夜明けだよ暁は。俺の夜明け」
「何だか照れくさいけど、石言葉って面白いんだな」
 藍夜からの称賛を耳にした暁はワンピースからのぞく狐尾をぱたりと揺らした。照れ隠しのような仕草もまた彼らしく、藍夜は目を細める。
「あ、そうだ……さっきできたタンザナイト。ふふ、見ろ暁。少しお前の目に似てる」
 それは夜明けのような綺麗な色に染まっていた。
 グラスから結晶を取り出した藍夜は表面を優しく磨いていく。手の中でムーンアレキサンドライトと夜明けのタンザナイトを並べてみせた藍夜は、片方を暁に差し出した。
「暁。俺からのプレゼント、受け取ってくれ」
「俺に?」
 瞳を燦めかせた暁は贈り合うことになった結晶を手に取る。壊さないよう、宝物のようにそっと掌に乗せた暁は暫しタンザナイトを見つめていた。
「……ありがとう。……ずっと、大切にする」
「俺も同じ気持ちだ」
 視線を重ねあった二人は手の中の結晶から、其処に込められた互いの思いを感じ取る。二人で過ごす時間はかけがえのないひとときであり、今宵はこうしてずっと形に残る思い出も出来た。
 笑みを交わした藍夜と暁は、もう暫しこの夜を楽しんでゆく。
「んー……他にも色々メニューがあるんだな」
 実年齢は二十三歳ほどだが、見た目は飲酒が出来ない子供の状態だ。ここじゃ飲めねぇからな、と呟いた暁は手にしたメニュー表をぱらぱらと捲っていく。それから藍夜を軽く見上げた暁は期待を込めて聞いてみた。
「気分だけでもカクテル楽しみてぇな。藍夜のお勧め、あるか?」
「それならモクテルだな」
「モクテルって?」
「ノンアルコールって意味のカクテルだ。俺のお勧め……それなら、暁がくれた石に似た色の飲み物がいいな」
「じゃあそれで!」
 ライラのモクテルを一杯。俺のカクテルはカカオフィズを、と注文した藍夜は先程からずっと結晶を握っている。それほどに気に入ってくれているのかと思うと暁も更に嬉しくなった。そして、テーブルに運ばれてきたのは透き通った試験管に入ったモクテルとカクテル。
「酸みのライムジュース、香りづけのオレンジと、炭酸で酒気分だな」
「……綺麗だな。なんか、飲むの勿体ねぇ」
「そう言わずに。ほら、乾杯」
「――乾杯」
 藍夜がグラスを掲げたことで、モクテルに見入っていた暁もそれに倣う。カカオフィズを少しずつ飲む藍夜に合わせ、暁も大切そうにライラのモクテルを少しずつ味わっていった。
「どうだろうか」
「……美味い。流石、藍夜のお勧めだな」
 二人は再び口許を綻ばせ、特別な夜の味わいを確かめる。
 その傍らに置かれたふたつの結晶は、店に燈る灯を受けて美しく輝いていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】◎

髪を下ろし
水色のエプロンドレス
『アリス』の仮装
ええ、エスコートして下さる?
格好良い帽子屋さん?ふふ!

ここがカフェバー…!
でもお食事する場所では見た事ないようなものがいっぱいね!
ゆぇパパもカフェバーにお勤めなのよね?
お仕事してるお店ってこんな感じ?
う?そうなの?
カフェバーも色々あるのね

ルーシーはお酒……は、気になるけれど!
いつか大人になった時に最初の一杯をお願いするって決めているから
今はちゃんとジュースで
もちろん、その日を楽しみにしてるもの
うん、じゃあノンアルコールにするわ!

ねえパパ
結晶カクテルというの作ってみたいの
二色のジュースを合わせたら宝石が出来るなんてステキだわ
ルーシーはね、これにする!
底抜けの青に愚か者の金と呼ばれるパイライトが混ざるラピスラズリに
優しい月のような黄色のフローライト

混ぜれば
黄色に花の様に青が咲く
ティアドロップ型のラピスライト
うん……!黄色、ちゃんと残ってる
パパ、ルーシーこんなの出来たのよ!

パパのは鮮やかな赤と…蒼
とても…とてもキレイね!
ええ、カンパイ!


朧・ユェー
【月光】
白スーツに身を包みシルクハットを被って
『帽子屋』の仮装
可愛いアリス今日は何処へ行きましょうかねぇ
喉が渇いたので何処か

おや、カフェバー
食べるよりも飲む事を提供する場所ですからね
僕の働く場も兄が経営してるカフェバー
周りを見るとカフェバーというには異質
まるで実験室の様なカラフルな場
まぁ、それをサービスとしてお客様を喜ばせてるのがわかるのですが
同じ様な物は提出してますが、雰囲気が少し違います
この子に同じだと思われたらいけない気がした
貴女はまだダメです
最初の一杯は僕が作るという約束、覚えて下さってたのですね
ノンアルコールも提供してるみたいなのでそれを飲みましょうか

2種類が結晶に珍しい
おや、とても美しい結晶のカクテルが出来ましたね
まるでルーシーちゃんと僕の様

僕は真っ赤なガーネット、血の結晶の様な
心をザワザワさせる
それに蒼いサファイアブルー。この子の瞳の色の様な心が落ち着く
ガーネットサファイアに
嫌だった赤もこの子の色に包まれてホッとする色

では乾杯しましょうか?
美味しそうに飲む姿に優しく微笑んで



●結晶の国のアリス
 今宵、目指す先にあるのは地下の国。
 不思議でおかしな実験のワンダーランドに向かって歩いているのは、手を繋いだルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)と朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)のふたり。
「可愛いアリス、今日は何処へ行きましょうかねぇ」
「ふふ! もちろんこの先に決まっているわ!」
「では、参りましょうか。丁度、喉も渇きましたから」
「ええ、エスコートして下さる? 格好良い帽子屋さん?」
 今宵の二人の装いはアリスと帽子屋。
 ルーシーは髪を下ろしており、印象的な水色のエプロンドレスを身に纏っている。大きなリボンと一緒に髪が揺らめく様は可愛らしく、ユェーはその手をしかと握り締めた。
 そんな彼は白スーツに身を包み、紳士的なシルクハットを被っている。帽子屋がエスコートしてくれるとなればアリスの気分も高まっていった。二人の仮装は実にお似合いであり、地下に向かう足取りも軽くなる。
 そうして、二人はカフェバーに足を踏み入れた。
 実験室めいた扉を開けば、其処はサイバーでケミカルな店の中。実験台のような大きなテーブルの上にはビーカーやフラスコ、メスシリンダーやガラス棒などが飾られていた。
「おや、カフェバーでしたか」
「すごいわ、ここがカフェバー……!」
 落ち着いた様子で店内を見渡すユェーの傍ら、ルーシーは興味いっぱいな様子で目を輝かせる。ひとつずつの席に試験管やシャーレなどの実験器具があり、独特な空気感が漂っていた。
 それだけではなく、カウンターの奥には酒瓶やグラスがたくさん置いてある。
「でもお食事する場所では見た事ないようなものがいっぱいね!」
「食べるよりも飲む事を提供する場所ですからね」
 ルーシーはきょろきょろと辺りを眺めながら、ユェーについていく。そして、二人は案内されたボックス席に腰を下ろした。ユェーは少女の好奇心を快く思いながら、雰囲気を楽しんだ。
 テーブルに置かれていたメニュー表に目を通しつつ、ルーシーはユェーに問う。
「ゆぇパパもカフェバーにお勤めなのよね?」
「はい、僕の働く場も兄が経営しているカフェバーですね。ですが……」
「どうかしたの? お仕事してるお店ってこんな感じ?」
 興味津々のルーシーはユェーを質問攻めにしていく。苦笑しながらも店内を示したユェーは、自分が働く場所と此処は随分と違うのだと語った。
「ここはカフェバーというには異質ですね。まるで実験室の様なカラフルな場ですから」
「う? そうなの?」
「まぁ、それをサービスとしてお客様を喜ばせているのがわかるのですが……。お酒としては同じような物は提出してますが、雰囲気が少し違います」
 此処と自分の店が同じだと思われてはいけない気がした。何せ此処はメガコーポの息が掛かった場所だ。真っ当なカフェバーで働いているユェーは真剣だった。
 今宵、少女が知ったのはカフェバーにも色々あるのだということ。
 またひとつ知識を得たルーシーはメニューに手を伸ばし、ページをゆっくりと捲っていく。ノンアルコールのものもあるが、やはり目立つのはアルコール類の品だ。
「ルーシーはお酒……は、気になるけれど!」
「えぇ、貴女はまだダメです」
 お酒に興味を持っているらしいルーシーの様子に気付き、ユェーはメニューを閉じさせた。しかしルーシーも元から閉じるつもりだったらしい。
「大丈夫よ、パパ」
「飲むつもりはなかったということですか?」
「そうよ。だって、いつか大人になった時に最初の一杯をお願いするって決めているから」
 だから今はちゃんとジュースで、と笑ったルーシーは近くて遠い未来を夢見ているようだ。はたとしたユェーは以前に交わした約束のことだと気付いた。
「最初の一杯は僕が作るという約束、覚えて下さってたのですね」
「もちろん、その日を楽しみにしてるもの」
「ノンアルコールも提供しているみたいなのでそれを飲みましょうか」
「うん、じゃあノンアルコールにするわ!」
 ユェーの勧めに従い、ルーシーは子供でも飲めるドリンクを選んでいく。その中にはこの店の人気メニューでもある結晶カクテルも含まれていた。
 ぱっと表情を明るくしたルーシーは、これがいい、とカクテルを示す。
「ねえパパ、この結晶カクテルというの作ってみたいの」
「どれどれ……二種類が結晶に、ですか。珍しいメニューですね」
「そうなの。二色のジュースを合わせたら宝石が出来るなんてステキだわ!」
「それでは注文してみましょうか」
 ルーシーと一緒に結晶カクテルを頼むことにしたユェーは機械の店員を呼ぶ。少し不思議な感じはしたが注文の受け答えはスムーズに進んだ。そうして、暫くした頃にテーブルへ注文品が運ばれてきた。
「さて、実験を始めましょうか」
「はい、ドクター。じゃなくて先生? ふふふ!」
「ふふっ」
 実験を開始する際、ルーシーが冗談めかしてユェーを呼んだ。仮装とは裏腹な呼び名が妙にくすぐったく思えたので、ユェーも楽しげな笑い声を響かせる。
 台に並べられた試験管には色とりどりのドリンクが注がれていた。
「ルーシーはね、これにする!」
 そういって少女が選んだのは、底抜けの青に愚か者の金と呼ばれるパイライトが混ざるラピスラズリ。それから優しい月のような色をした黄色のフローライト色をしたもの。
 試験管からビーカーに液体を移し替えて硝子の攪拌棒でぐるぐると混ぜていく。そうすれば、黄色の中に花のような青が咲いていった。ティアドロップ型のラピスライトとして誕生した結晶宝石は、色を吸い込んで透明になったドリンクの中で揺れている。
「うん……! 黄色、ちゃんと残ってる」
「完成しましたか?」
「うん。パパ、ルーシーこんなの出来たのよ!」
「おや、とても美しい結晶のカクテルが出来ましたね。まるでルーシーちゃんと僕のようです」
 ルーシーが作り上げた結晶を眺めるユェーは双眸を細めた。
 褒められたことや、この色を選んだ意図を理解して貰えたことでルーシーはとても喜ぶ。そうして彼女はまだ手付かず状態のユェーの手元を見遣った。
「お次はパパね。どんな結晶を作りたいの?」
「僕は真っ赤なガーネットでしょうか。血の結晶のような――心をザワザワさせる色がいい」
 ルーシーの問いかけに答えたユェーは、更に其処へ蒼いサファイアブルーの液体を混ぜ込んでいった。隣で興味深そうに覗き込んでくる娘の瞳の色だ。心が落ち着く色彩を赤に混ぜていけば、液体の中にはガーネットサファイアとも呼べる結晶が出来上がった。
 あれほどに嫌だった赤も、ルーシーの色に包まれればほっとする色になる。
「パパのは鮮やかな赤と……蒼。とても、とてもキレイね!」
 ルーシーがユェーのことを思って結晶を作ったように、ユェーもルーシーを思ってくれていた。そのことが更なる嬉しさを運んできてくれたようで、少女は満面の笑みを浮かべる。
 ユェーも満足気な表情を見せ、結晶が揺らめくノンアルコールカクテルを見つめた。
「では乾杯しましょうか?」
「ええ、カンパイ!」
 グラスを手にしたユェーに続いてルーシーがドリンクをそっと掲げる。宝石は後で取り出してじっと見つめようと思っているが、今はグラスに入ったままで。
 乾杯の言葉が響いた後、二人は特別なカクテルの味わいを大いに楽しんだ。
「美味しい!」
「えぇ、良かったです」
 ルーシーが美味しそうに飲む姿に優しく微笑み、ユェーもグラスを傾ける。まるで互いの想いを飲み干していけるかのようで、心地よい気分になってゆく。
 とても不思議で、ちょっぴり大人気分を味わって――。
 アリスと帽子屋として過ごす宵のひとときは、ゆったりと巡っていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルト・プティング

狸耳&尻尾状態に自分の肉体を変化させ、緑の振袖を纏った仮装
親友のベアータ・ベルトット(f05212)さんと

この世界のお料理は初めて食べますけど、合成食品とかはボク的には割とお馴染みなんですよね
コアマシン産を思い出すというか…見た目のいかにも感はともかく、中身はそこまで大差はないのかな?
まぁ美味しいのでオールオッケー!

あ、カクテルはボクは断然赤色でっ
そうですね、昔は感情で赤くなる瞳は恥ずかしかったですけど…その赤色も素敵だってベアータさんが褒めてくれたから、前ほどではなくなりました
それにほら、なにせ赤はベアータさんの色ですから
だから今のボクの、一番大好きな色なのですよ

えへへ、お互いこうして堂々とお酒を飲めちゃう年になりましたねっ
おめでとうございます、です!
こちらこそ末永くよろしくお願いしますです!
あれ、末永くってこういう時に使うんであってましたっけ?

カクテルを混ぜる時は、キラキラと見つめ
えへへ、なんか占いみたいで楽しいですねっ
とっても素敵な形になったなら、食べずに持ち帰っちゃおうかな?


ベアータ・ベルトット

狐の耳と尻尾を装着した、赤い振袖姿

大好きなメルト(f00394)と

見た目実験場だし料理もケミカルだし、ホントに安全なんでしょうね…?(言いつつむしゃむしゃ)
ん、美味しい…!意外とイケるわねぇサイバー飯

本命の結晶カクテル(アルコール)の方はどうかしら
メルトが選んだのは…赤?
へぇ。アンタ赤い目を恥ずかしがってたの、ちゃんと克服できたのね。まぁ実際カワイイし、良いコトだわ…へ?私の色……?
そ、そうっ!ありがとっ(嬉しすぎて尻尾をふりふり)

じゃあ、私はこれにしましょうか
綺麗な翠色のカクテルを手に取って

ほっ、ほら。今日はアンタの振袖がすごく目立ってるからさ!すっごく綺麗だなーって思って
(それに、メルトの瞳の色だもの。私も一番、大好きだよ)

そういえば、日本では成人のお祝いにこの衣装を着るのよね
改めて20歳おめでとう。これからも…(ずっとずっと)よろしくね
っ。……うん、合ってるわよ。末ながーく、ね

じゃ、さっそく混ぜてみましょうか
(…な、なんでだろ。
ムダにドキドキするわ。ヘンな形になりませんように…)



●心に宿る色彩
 今宵はハロウィンの特別な夜。
 其々の仮装を身に纏い、地下への階段を下りていくのはメルト・プティング(夢見る電脳タール・f00394)とベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)の二人。
「ここであってる?」
「大丈夫そうです。ちゃんとトゥルエノって書いてあります」
 路地裏のカフェバーの扉を見上げたベアータは隣に立つメルトに確かめる。こくりと頷いたメルトは此処が目的の場所に間違いないとして扉に手を掛けた。
 少しばかり軋んだ音を立てて開いた扉の向こう側には、サイバーな光に満ちた光景が広がっている。
「ベアータさん、こっちみたいです」
「いま行くわ」
 機械の案内音声に従って進んでいくメルトは狐の耳と尻尾を装着している。彼女が赤い振袖の裾が揺れる様に目を向けたベアータもその後についていった。
(メルト、やっぱり可愛い……)
 そんなベアータも今宵は仮装姿だ。狸耳と尻尾を揺らしている彼女は緑の振袖を纏っている。狐と狸の装いは和の雰囲気であり実に愛らしいものだ。案内された席に腰を下ろした二人は向かい合わせに座った。
 ぴこぴこと動くベアータの狸の耳に注目したメルトは思わず笑む。
「お料理、頼んでみましょうか」
「そうね。適当に何か注文してみましょう」
 メルトとベアータは一緒にメニューパネルを覗き込み、気になったものを頼んでいった。まずはやはり天然養殖マグロ刺し身。此処に来るまでに通ってきた通りの看板にも堂々と書かれていたものだ。
 次は蛍光色に光るレタスが添えられた合成ハムサンドと、ネオンめいた色合いのエレクトリカルアイス。どれもこの世界らしいものばかりだ。
 注文してから割とすぐに運ばれてきたメニューを眺めてから、ベアータは少しの警戒を抱く。
 周囲は研究室めいた作りになっており、二人が座ったボックス席も実験台のような見た目だ。辺りには内部に泡が昇っているフラスコが幾つも並べられており、空の試験管にすら雰囲気がある。
「見た目は実験場だし料理もケミカルだし、ホントに安全なんでしょうね……?」
「大丈夫です。ほら、絶対安全肉寿司っていうものもありますよ」
 やや不安げなベアータに対してメルトはメニューパネルに表示されている料理を指差した。それが逆に怪しさを増すのだが、無邪気なメルトに無粋なことを言うのは憚られる。
「メルトが言うなら平気ね。それじゃあ、いただきます」
「はい、いただきましょう!」
 ベアータ達はメス風のナイフや薬匙のようなスプーンを手にしていき、料理を味わっていく。最初はマグロに難色を示していたベアータだったが、それを口にした途端に表情が輝いた。
「ん、美味しい……!」
「本当ですね、こっちのハムサンドも食感がいいです」
「意外とイケるわねぇサイバー飯」
「はい、一口どうぞ」
「あ……えっと、うん。いただくわ」
 ベアータが合成醤油と人工わさびに感心していると、メルトが食べかけのハムサンドを差し出してきた。
 味のお裾分けだろうことは分かっていたが、急に呼びかけられたベアータは妙に意識してしまう。しかしせっかくの好意を断ることもできない。味が気になるのも本音なので、ベアータは平静を保ちつつ頷いた。
「あ……こっちも美味しい」
 一口齧ってみれば先程の照れも何処へやら、味への感想が零れ落ちる。
 良かったです、と笑ったメルトはベアータが嬉しそうにしている様子を見つめた。その間に他にも注文した品が運ばれてきており、二人はたくさんの料理をシェアしていった。
「この世界のお料理は初めて食べますけど、合成食品だと思うと何だか懐かしいです」
「確かにメルトは慣れていそうね」
「ボク的には割とお馴染みなんですよね。コアマシン産を思い出すというか……見た目のいかにも感はともかく、中身はそこまで大差はないのかな?」
 エレクトリカルアイスを薬匙でちまちまと味わいながら、メルトは考えを巡らせてみる。されど途中からアイスのフレーバーが変わっていき、その味に夢中になっていったメルトは大胆な結論を出す。
「まぁ美味しいのでオールオッケー!」
「こうして二人で色々味わえたものね」
 口の中で光る冷たさは妙に味わい深く、ベアータも楽しげに笑った。その背では狸の尾がふわふわと左右に揺れており、彼女が実に楽しいと感じていることを示している。
 そうして、次は大人の時間。
「さて、本命の結晶カクテルの方はどうかしら」
「楽しみですね」
 二人は今宵、アルコール入りのドリンクを頼んでいた。運ばれてきた試験管台には色とりどりのカクテルが並べられており、美しい色彩が店内の灯に当たって煌めいていた。
「綺麗ですね。あ、ボクのカクテルは断然赤色でっ」
「……赤? へぇ」
 メルトが真っ先に赤い色を選んだことに対して、ベアータは変化を感じていた。以前ならばメルトは赤以外を選ぼうとしただろう。好きな色が違うものであるならばそれでいいのだが、敢えて赤を選ぶということは――。
「アンタ、赤い目を恥ずかしがってたの、ちゃんと克服できたのね」
 良い成長だと感じたベアータは嬉しげだ。
 するとメルトは試験管の中で揺れる赤を見つめ、次にベアータに視線を向けた。
「そうですね、昔は感情で赤くなる瞳は恥ずかしかったですけど……その赤色も素敵だってベアータさんが褒めてくれたから、前ほどではなくなりました」
「まぁ実際カワイイし、良いコトだわ」
 メルト曰く、好きではなかった記憶は消せないものの、ベアータと過ごす過程で徐々に好きになっていったとのことだ。それからメルトは上機嫌に試験管を軽く掲げ、ベアータの頬の横に並べてみる。
「それにほら、なにせ赤はベアータさんの色ですから」
「……へ? 私の色……?」
「だから今のボクの、一番大好きな色なのですよ」
 昔は恥ずかしくて仕方がなかったが、やがて嫌いではないくらいになり――今は大好きな色になった。
 それは勿論、ベアータの赤い髪をこれまでずっと隣で見てきたからだ。自分が宿している色というものだけではなく、親友――それ以上にもっと想える相手の色として、赤を認識できるようになったという。
 メルトの眼差しは何処までも真っ直ぐで、ベアータの頬が赤くなる。
「そ、そうっ! ありがとっ」
 そっけなくお礼を告げたように見えるベアータだったが、その尾は先程以上に振られていた。ふりふりと動く彼女の狸尾が可愛いと感じながら、メルトはカクテルを混ぜ合わせはじめる。
「じゃあ、私はこれにするわ。さっそく混ぜてみましょうか」
 ベアータも翠色のカクテルを手に取り、メルトの姿を試験管越しに透かしてみた。
「翠、ですか?」
「ほっ、ほら。今日はアンタの振袖がすごく目立ってるからさ! すっごく綺麗だなーって思って……それに、メルトの瞳の色だもの」
 ――私も一番、大好きだよ。
 最後の言葉だけは音にせず、想いだけに留めたベアータは心の底から微笑んだ。その笑顔を見るだけでメルトも幸福な思いに満たされ、心地よくなっていく。
 メルトは赤に赤を重ね、ベアータは翠にほんの少しの藍色を混ぜていた。硝子の攪拌棒で混ぜていくカクテルの中には、少しずつ結晶が出来上がっていっているようだ。
 その中で二人は何気ない会話を交わしていく。
「えへへ、お互いこうして堂々とお酒を飲めちゃう年になりましたねっ」
「そういえば、日本では成人のお祝いにこの衣装を着るのよね」
「それなら私達は今日をお祝いの日にしましょう。おめでとうございます、です!」
「改めて二十歳おめでとう。これからも……」
 ――ずっとずっと。
 まだ心に秘め続けている想いは胸の奥に隠して、ベアータは言葉を続ける。
「よろしくね」
「こちらこそ末永くよろしくお願いしますです! あれ、末永くってこういう時に使うんであってましたっけ?」
 メルトはベアータを瞳に映し、明るく告げた。
 ふと気付いた言葉遣いが間違いではないかと首を傾げたメルトに対し、ベアータは言葉にできない思いを抱いた。自分がそっと隠してしまった思いと、メルトが声にしてくれた思いは同じだったからだ。
「……っ。……うん、合ってるわよ。末ながーく、ね」
「はいっ!」
 二人の眼差しが重なり、大切な想いが巡っていく。
 そうしているとカクテルの中に掌に収まるほどの結晶が揺れ始めた。見てください、とグラスを示したメルトはキラキラした様子に期待を馳せる。
「えへへ、なんか占いみたいで楽しいですねっ」
「どんな形になるか楽しみね」
「とっても素敵な形になったなら、食べずに持ち帰っちゃおうかな?」
「それもいいわね。さて、私達の形は――」
 グラスを持ち上げてわくわくしているメルトに倣い、ベアータも硝子の向こう側を見てみる。しかし、どうしてか胸の奥がきゅんとしている。
(……な、なんでだろ。ムダにドキドキするわ。ヘンな形になりませんように)
 そして――。
 二人の結晶は次第に同じ形になっていった。内部にはハート型のような小さな結晶があり、それを覆うに六角形の結晶が生まれている。
「綺麗……」
「本当に素敵な形です……」
 ベアータの結晶は藍色のハートが翠で包まれており、メルトの方は濃い赤を薄い赤色が覆っている。まるで二人の想いがそのまま宝石になったかのようだ。顔を見合わせ、くすぐったい気持ちを抱いた二人は微笑みあう。
 その笑みは他の誰にも見せることのない、深い幸福と親愛に満ちたものだった。
 そうして、二人の夜は今日も穏やかに更けてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻


此処がさいばぁ、と呟いて興味深く辺りを見回す
私とイザナは白衣だよ
ほら研究員みたいだろう?ホムラは…ネクタイを巻いて胸を張っている

サヨと神斬は魔女と魔法使いか!
可愛いねサヨ
良く似合う

そうだね
イザナの料理はそこらの実験物より刺激的だから神斬に任せよう
私はサヨの作ったのを食べる

普段と違う姿に胸も高鳴る
そうだろう、イザナ
隣に行けばいいのに
先手必勝で私はサヨの隣に座るよ
料理も変わっている
私はこのパンケーキにするよ
造られたものとは…噫、でも変わらず美味しい
サヨにも食べさせてあげるよ
サヨは絶対安全肉寿司…お墨付きだが…心配なら私が先に…あっ!!
神斬に先を越された!
そのサヨの笑顔は私が咲かせたかったのにっ
ホムラが慰めてくれた

…気がついたか、神斬
先程からサヨとイザナは結晶カクテルの方ばかりみている…これは、酒を飲む気だ
阻止するよ!
サヨ、お酒は駄目だと同志にも言われているだろう!
ノンアルコールの結晶にしよう
どんなのが出来るかな

変わったストローだね…噫、それも悪くない
いいじゃないか
甘いご褒美、だろう?


誘名・櫻宵
🌸神櫻


さいばぁなカフェよ!

纏うのは魔女の仮装、もちろん師匠も魔法使いの仮装!
蛇の使い魔──こと美珠だって今日はかぁいい魔女蛇なのよ
ふふふ、実験室といえば魔女よ!
カムイとイザナは……はっ!白衣ですって?!
マッドサイエンティスト……たしかにおじいちゃんの料理はマッド過ぎて食べれたもんじゃないもんね
うふふ、冗談よう
おじいちゃんの料理はおじい様専用だもの
あーんしてもらうといいわ
私はカムイにしてもらうから!

早速トリックオアトリートよ!
実験の末に完成した甘味みたいにも見えてきたわ
カムイは調合巣蜜パンケーキ?ブレないわね…
普通のと味は変わってるのかしら?
私は絶対安全肉寿司よ!
……本当に安全なのかし…あっ、師匠!
美味しかった?
本当に安全ね!

そしてやっぱり……お酒!お酒よね、イザナ!と乗せようと思ったら
あれよあれよと遠ざけられて
……カムイと師匠…息ぴったりね
ノンアルコールの結晶カクテルを
ふふ、こんな時の為に持ってきたのよ
ラブラブストロー!

はい、まずは師匠達からね
少しばかり…甘い悪戯なら
赦されるでしょ?



●今宵、甘い悪戯を
 此処は未来的でありながらも退廃的な雰囲気を宿す世界。
 サイバーザナドゥの或る街の路地裏へ進み、地下に続く階段を下りれば、其処は――。
「さいばぁなカフェよ!」
 誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)は開いた扉の奥に広がる光景を見つめ、ひらりと衣装を翻す。今宵に纏うのは魔女を思わせる衣装。隣に立つ神斬は魔法使いの仮装をしており、櫻宵の使い魔として蛇の美珠が巻き付いていた。
「可愛いね、サヨ」
「ふふ、美珠も褒めてあげて。今日はかぁいい魔女蛇なのよ」
 カフェバーの内装や雰囲気よりも先に、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は愛しき櫻宵を称賛する。するりと動いた美珠が櫻宵の肩まで昇ってきたことで、カムイは双眸を緩めた。
「勿論だよ。みんな可愛らしいよ。しかし、此処がさいばぁか」
「ふふふ、実験室といえば魔女よ!」
 櫻宵は少しよくわからないことを言っていたが、彼がそう言うならばその通りなのだろう。
 あまり深くは考えず、興味深く辺りを見回したカムイは店内に歩を進めていく。身に纏っている白衣の裾が揺れ、その後ろをホムラがぱたぱた羽ばたいていく。周りに気を取られて落ちそうになったホムラに気付き、イザナがそっと掌を差し出す。
「ぴ!」
「大丈夫だったか?」
 同じく白衣姿のイザナの手に乗ったホムラはネクタイを巻いていた。今日のホムラはかっこいい、というように胸を張った雛鳥はそのままイザナの頭の上に移動した。
「白衣が似合っているわね」
「研究員みたいだろう? たしかまっどさいえんてす……てぃすと、だったかな」
 最初に互いの衣装を見たとき、まさかの白衣姿に驚いたものだ。カムイは衣装通しのときから櫻宵達に微笑ましく愛おしい気持ちを抱いており、ずっと見ていても飽きないと感じていた。
 少しばかり自信がなさそうに名前を呟いたカムイに向け、櫻宵は納得した表情を見せる。
「マッドサイエンティスト……たしかにおじいちゃんの料理はマッド過ぎて食べれたもんじゃないもんね」
「……噫」
 櫻宵が何気なく言葉にしたことに対して神斬は曖昧ながらも静かに頷いた。イザナは何か言いたげに神斬と櫻宵を見つめていたが、無言の圧だけに留まっている。誤魔化すように歩を進めた櫻宵は、案内されたテーブル席についた。
 ソファは半円状になっており、大人数でも座れるものだ。
「うふふ、冗談よう。おじいちゃんの料理はおじい様専用だもの」
「そうだね、イザナの料理はそこらの実験物より刺激的だから神斬に任せよう。私はサヨの作ったのを食べる」
「あら、師匠の隣にいかないの?」
「そうだろう、イザナ。隣に行けばいいのに」
「いや、その……」
「おいで、イザナ」
 普段の有様を思い返した櫻宵とカムイは、神斬とイザナを隣同士にしようと勧めた。すると神斬自身がイザナを呼び、隣にそっと収めた。先手必勝で櫻宵の隣に腰を下ろしていたカムイは静かに笑み。二人を交互に見遣った櫻宵もくすりと咲った。
「あーんしてもらうといいわ」
「そして、サヨへのあーん役は私が頂くよ」
「ええ、私はカムイにしてもらうから!」
 カムイがやきもちを焼かないように、そして本当にしてもらいたいと思っている櫻宵は彼に甘えている。まるで魔女が真面目な研究員を魔法の世界に誘っているような光景だが、ハロウィンなのでこれも愉快だ。
 普段と違う櫻宵の姿を間近で見つめたことで、カムイの胸も高鳴る。
 櫻宵はメニュー表を手に取り、今宵の楽しみのひとつでもある料理を注文していった。
「早速トリックオアトリートよ!」
 合成ハムサンドをはじめとして、絶対安全肉寿司や天然養殖マグロ刺し、エレクトリカルフレーバーアイスにサイバーフルーツパフェ、調合巣蜜の甘々パンケーキなど種類は豊富。
 櫻宵が色々とチョイスした結果、次々と運ばれてくる料理に目を向けたカムイは興味津々だ。
「料理も変わっている。やはり私はこのパンケーキにするよ」
「やっぱりカムイは調合巣蜜パンケーキ? 食べると思ったから頼んだけれど、ブレないわね。でも、これって……実験の末に完成した甘味みたいにも見えてきたわ」
 櫻宵はテーブルの上の料理を見渡し、ホムラも不思議そうに皿の周りを回っている。
「ぴぃ!」
「天然であるのに造られたものとは……」
「普通のと味は変わってるのかしら?」
 カムイと櫻宵は少し注意しながらも実験器具めいたカトラリーに手を伸ばす。まずパンケーキを切り分けたカムイは躊躇なく巣蜜ごと口に運んでいく。
「噫、変わらず美味しい。サヨにも食べさせてあげるよ」
「ええ、あーん。……本当ね、良い甘さだわ」
 さっそく願いを叶えてくれたカムイに微笑みを向け、櫻宵はパンケーキを味わう。カムイも蜂蜜たっぷりのケーキを幸せそうに頬張り、世界を越えても変わらぬ味わいに舌鼓を討った。
「それじゃあ次はこっちの試食ね」
「サヨはまず絶対安全肉寿司を食べるのかい。お墨付きだそうだが……心配なら私が先に……あっ!!」
「……本当に安全なのかし……あっ、師匠!」
「毒見をするなら任せてもらおう」
 櫻宵の心配をしたカムイが腕を伸ばす前に、神斬が先に寿司を口に運ぶ。暫くしても特に変わった様子は見えず、神斬はもくもくと絶対安全肉寿司を食していた。
「美味しかった?」
「とても美味しいよ。安心して食べていいみたいだね」
「師匠が言うなら本当に安全ね! いただきます」
 華が咲くように口許を綻ばせた櫻宵は、イザナと一緒に寿司を食べていく。その横ではカムイが項垂れ、何故もっと早く動けなかったのかと後悔していた。
「くっ……神斬に先を越された! そのサヨの笑顔は私が咲かせたかったのにっ」
「ちゅちゅん?」
 肩を落とすカムイの肩の上で、ホムラが慰めるように羽根をぱたぱたしている。櫻宵もよしよしとカムイを撫でてやったことで落ち込みモードは少し後に治った。
 そうして、美味しく楽しい時間が過ぎていく最中。櫻宵は少し悪い顔をしつつイザナを呼ぶ。
「こうきたらやっぱり……お酒! お酒よね、イザナ!」
「ん? 噫、此処はああいったものも扱っているのか」
 二人の視線は先程から他のテーブルに運ばれていく結晶カクテルの方に向いていた。ひそひそと話し始めた二人はどうやらアルコールを摂取しようとしているらしい。
「――カムイ」
「気がついたか、神斬。……これは、酒を飲む気だ」
「そのようだね。これはいけないな」
「阻止するよ!」
 神斬に名を呼ばれたことでカムイは神妙に頷いた。櫻宵達に酒を飲ませればどうなるかは目に見えている。彼らは酒が入ると妙に積極的になって大胆なことをしでかしてしまうのだ。カムイや神斬が標的になるのは慣れているのでいいのだが、このままでは仲良く並んでサイバーハロウィンクッキーを摘んでいる美珠とホムラが危ない。
「サヨ、お酒は駄目だと同志にも言われているだろう!」
「え、でも……」
「酒はやめてノンアルコールの結晶にしよう」
 カムイは櫻宵が注文しようとしている手を握り、神斬もイザナに首を振ってみせた。
「イザナ、わかっているね?」
「……駄目なのか?」
「一切いけないということもないよ。ただ、酒を飲むのは私の前だけにして欲しい」
「そ、そうか……」
 そうでなければ今宵はホムラや櫻宵やカムイが、イザナに何度も戯れの口付けされることになるだろう。そして、イザナの甘え上戸は櫻宵にも受け継がれている。
 神斬とて嫉妬するわけではないが、やはりそういった姿を他者に見せたくない気持ちもあった。自分だけの、という神斬の言葉に反応したイザナは渋々ながらも納得したようだ。
「わかったわ。……それにしてもカムイと師匠、息ぴったりね」
「ほらサヨ、運ばれてきたよ。これでどんな結晶が出来るかな」
 テーブルに置かれた数々の試験管の中には色とりどりの液体が注がれている。櫻宵達は迷わず桜色のドリンクを選んで混ぜていった。そうすることでグラスの中に花の形をした結晶が現れはじめる。
「うつくしいね」
「酒ではなくとも飲んでみたいな」
「あら、イザナがまず飲んでみる? ふふ、こんな時の為に持ってきたのよ。じゃーん、ラブラブストロー!」
「変わったストローだね」
 結晶を取り出した後、ノンアルコールカクテルの方に興味を持ったイザナ。そのことに気付いた櫻宵は二本が繋がってハート型になっているストローを取り出した。
「はい、まずは師匠達からね」
「噫、それも悪くない」
 不思議そうにしている神斬に対し、櫻宵とカムイはストローを刺したグラスを寄せてやった。
「イザナだけではなく私も?」
「いいじゃないか。甘いご褒美、だろう?」
 戸惑う神斬に向けてカムイも悪戯っぽく笑んでみせる。イザナは真っ赤になっているが喉が渇いているらしく、場の勢いに乗せて片方のストローに手を伸ばす。柔らかく瞼を瞬かせた櫻宵もイザナと神斬をくっつけるように背を押した。
「飲むぞ、神斬」
「い、イザナ!? もしかして酔ってないかい。いや……酔っていなくてそれか」
 参ったな、と呟いた神斬も流石に照れているようだ。しかし、彼はイザナに誘われて断るような神ではない。その様子を見つめる櫻宵は実に楽しげだ。
「ふふ。少しばかり……甘い悪戯なら赦されるでしょ?」
「噫、今宵は楽しくなりそうだね」
 カムイも淡く笑み、この場に満ちている雰囲気を心地よく思っていた。
 こうして、ちいさな悪戯が巡った甘い時間は過ぎていく。喧騒の中にある平穏もまた、快いものだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『迅速ハコベールくん』

POW   :    強制お荷物お預かり機能
【モノアイから放つトラクタービーム】が命中した物品ひとつを、自身の装備する【装甲内部の格納スペース】の中に転移させる(入らないものは転移できない)。
SPD   :    超スーパーお急ぎ便機能
【最適な脚部に換装し、衝突上等走行ルーチン】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    安心安全お届け機能
全身を【脚部を引っ込めた対衝撃防御形態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●運ぶよハコベールくん
 賑わいと穏やかさ、両方を宿すひとときは終わりを告げる。
 ハロウィンの雰囲気に染まっていた店内は急に照明が落とされ、妙な空気に包まれた。周囲から散布される眠り薬が瞬く間にカフェバー内を満たしていき、今宵を楽しむ者達を眠らせようとしている。
 其処に響き始めたのは、なんとも不思議な社歌だ。

♪~
 義体疾走らせ 南瓜のごとく
 実験 改造 早くて ヤバい
 疾風 迅雷 届くよ ハロウィン
 運ぶ輝き クスリの輝き
 あゝ 迅雷運輸 迅雷運輸

『任務開始。――ミッションコード、トゥルエノ』
 音楽を流しながら店内に侵入してきたのは、頭脳戦車達。ハコベールくんと名付けられている機体はまず出入り口を封鎖した後、眠っているはずの人間を回収しにかかる。
 しかし、今夜のカフェは猟兵だけの貸し切り。眠り薬は一般人にしか効かないものなので、この場にいる者達は誰も眠ってなどいなかった。戸惑うような仕草を見せたハコベールくんは、起きている猟兵をサイバーアイに映す。
『エラー発生』
『緊急事態、緊急事態』
『総員、戦闘準備。――ミッションコード、バトル』
 本来ならば一台につき一人を捕まえたら、あとは改造工場までドライブしていくだけの簡単な任務だったはずだ。
 ハコベールくんは猟兵が放つ戦意を察知し、戦闘態勢に入った。
 それまで流れていた迅雷運輸の社歌は止まり、そして――此処から戦いが幕開けていく。
 
静寂・拝人
シャルル(f36639)と
仮装:マッドサイエンティスト
お、敵さんが来たみたいだな。
店内の機器の【ハッキング】をする時間はたっぷりあったしな準備は出来てる。
ああいう機械の敵相手ならこれが有効だろう。
UC【Behavior control】
うまく行ったらUCを封じることができるはずだ。
そうすれば少なくともシャルルが腕をぶっ壊すような戦い方をしなくてすむだろ?

今なら直せそう?シャルルがそんなことを言うとわな。ハロウィン楽しんでもらえた様でよかった。
そうだ言いそびれてたが…その衣装似合ってるぜ。


シャルル・メリー
拝人(f36629)と
仮装:幽霊の花嫁
敵出現確認。
店内の機器にハッキングを…まったく、油断も隙もありませんね。
まぁ、ただ遊んでるだけより偉いですけど。

拝人のUCで敵の動きが鈍ったら
UC【クイックドロウ】で攻撃。

…パーツを吹き飛ばしても今の拝人の格好なら直してしまいそうですけどね…
別に私だってハロウィンを楽しむくらいします。
…貴方が選んだ衣装なんですから貴方好みではあるでしょうが…………貴方の格好も似合ってますよ。



●Hacking and Blaster
 狂気の科学者が白衣を緩やかに翻せば、傍らの花嫁のヴェールが揺れる。
 拝人とシャルルはカフェバー内に現れた敵影を確認した後、それぞれの反応を返していく。
「お、敵さんが来たみたいだな」
「敵出現確認」
 対する迅雷運輸、もとい迅速ハコベールくんは二人を要注意人物だと認識したようだ。眠り薬を十分に散布した上で眠っていない対象となればそう判断せざるを得ないだろう。
『――捕獲、或いは殲滅対象と見做す』
『直ちに行動に移ります』
 ハコベールくんは脚部をこの戦闘に最適な形へ換装していく。
「甘いな。店内の機器をハッキングする時間はたっぷりあった。こっちが後れを取るとでも?」
 だが、拝人はそれを阻止するために動いていた。
 バグデータにハッキングデータ、それからウィルスデータ。それぞれの力を巡らせた拝人はハコベールくんの動きを見事に鈍らせた。更なるデータを送り続ければ完全に動きを止めることも可能だろう。
 見事な手際には密かに感心しつつ、シャルルはちらりと彼を見遣る。
「店内の機器にハッキングを……? まったく、油断も隙もありませんね」
「いいだろ、既に準備は出来てたんだ」
「まぁ、ただ遊んでるだけより偉いですけど」
 シャルルは拝人の実力をそっと認め、床を蹴り上げた。花嫁のドレスがその勢いによって揺れる様は、まるで美しき幽霊が死後の世界に手招きをしているかのように幻想的だ。
 熱線銃を構え、クイックドロウで敵を穿ったシャルルは素早く身を翻した。
 それまで彼女がいた場所にハコベールくんが突っ込んできたのだが、その連続攻撃は失敗に終わる。其処へ更に拝人がバグやウィルスを仕掛けていき、自分ですら攻撃を止められないハコベールくんを惑わせた。
「ああいう機械の敵相手ならこれが有効だろう」
 これがすべてうまくいったならば、相手の行動を完全に封じられる。そうすれば少なくともシャルルが腕を壊すような戦い方をしなくて済む。それが拝人の狙いでもあった。
「動きが止まったようですね」
「よし、今だ」
「承知しました。遠慮なくいきましょう」
 拝人が頷いたことでシャルルが更なるブラスター攻撃を放ち、敵を次々と撃ち貫いていく。その際、シャルルはハコベールくんの外装や内部パーツを抉るように狙いを定めていた。
 素早く撃ち貫かれていくハコベールくんの一部が剥がれ落ち、見事に崩れた。
 為す術もない相手を見遣り、拝人はふとあることに気付いた。
「ん? なにか落ちたな」
「吹き飛ばしたパーツでしょうか」
『制御……操……、……失――』
『作戦、失敗……』
 戦う力を失ったハコベールくんは途切れがちな音声を流した後、そのまま動かなくなる。その内容が気になった拝人は壊れた敵のもとへ駆け、落ちたパーツを拾い上げてみた。
「制御だとか、操作と言っていたような……。しかし損傷しているな」
「今の格好の拝人なら直してしまいそうですけどね……」
 すると、隣に歩み寄ってきたシャルルが少しばかり可笑しそうに語った。拾ったパーツから彼女の方に視線を移した拝人は僅かに驚いたような顔をする。
「今なら直せそう? シャルルがそんなことを言うとはな」
 彼女にそう評価されたことで拝人は考える。もしかすれば、この謎の制御パーツを持ち帰れば修復できるかもしれない。何かの役に立つ予感もしていた。
 何にせよ分析や利用は帰ってからになるだろう。そう考えた拝人は、静かに笑む。
「つまりはハロウィン楽しんでもらえたってことだ。それならよかった」
「別に私だってハロウィンを楽しむくらいします」
 彼の言い草に心外だと返したシャルルは静かに肩を落とした。拝人は頬を掻きながら、此処に来る前からずっと思っていたことを言葉にする。
「そうだ。言いそびれてたが……その衣装、似合ってるぜ」
「貴方が選んだ衣装なんですから、貴方好みではあるでしょうが……」
 当たり前のことを、と言いたげなシャルルは、暫し沈黙した。そして、シャルルは拝人を軽く見上げる。
「…………貴方の格好も似合ってますよ」
 その言葉は彼女なりの称賛とお礼でもあるのだろう。
 花嫁のヴェールは揺らぐ。今夜に巡った不思議で楽しいひとときのように、淡く――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェレス・エルラーブンダ
【荒屋】
うたがきこえる
はやくてやばい……じんらいってなんだ?

カメみたいなきかいがいっぱい
わるもの!だれもつれていかせない
かいぞうされるの、きっといたいだからな

布を勢いよく脱ぎ捨てればわらわないチェシャのできあがり
布が落ちるよりも速くシーブズ・ギャンビットによる2回攻撃を叩き込む
きかいなんかより、わたしのほうがうんとはやい!

相手が怯んだなら次の敵に飛び移り
るいがとどめをさしやすいように
残像交えモノアイが視認できないくらいもっともっとはやく

菓子ももってないわるものは、はろいんの、……ま、まなー
まなーいはんだから、いたずらでやっつける!

掲げられた提案に数度瞬く
片手を上げて、こつん

おばけたちの、かち!


冴島・類
【荒屋】
明かりが落ちたってことは、来たか
うーーん、なんと言うか…耳に残る曲調
あ、迅雷は激しい雷って意味だね

不要な薬漬けで違う姿になんて
望まぬ変身はさせないとも

お化けさんからちぇしゃ猫へ
素早く転じた後の身軽さに、瞬き
そうだね…彼らより、フェレスちゃんの方がずっと速いや
補足されぬような、高速でのやり取りの間に生まれる隙を見逃さぬ為
光線や攻撃を見切り避けつつ、機を伺い
ちぇしゃ猫さんの一撃によろけたら、そこで倒せるよう
刀に相棒から借りた風の魔力で強化し、斬る

はろうぃんに持ち帰るのは
得たお菓子と笑顔だけ、じゃないとね
さあ、お帰りいただこう

無事終われば、お疲れ様と笑み
こう言う時は…拳でも合わせてみる?



●お菓子のかわりに悪戯を
 暗闇と静寂。そして、響く謎の歌。
 耳に届いた奇妙な音楽と歌詞に対し、フェレスは尻尾を逆立てた。コミカルな雰囲気でもあるが、彼女はその歌が悪いものであると本能的に感じ取っている。
「はやくてやばい……?」
「明かりが落ちたってことは、来たか。うーーん、なんと言うか……耳に残る曲調だ」
 迅雷運輸の社歌である曲を聞き、類も妙な感覚を抱いた。フェレスは類の服の裾をひっぱり、歌の中でわからなかった部分について問いかけてみる。
「じんらいってなんだ?」
「あ、迅雷は激しい雷って意味だね」
「ごろごろぴかぴかするやつか」
 納得したフェレスは目を凝らす。暗闇になったとはいえど次第に目は慣れてくるもの。視線の先で動いているのは、此方を危険対象だと認識した迅速ハコベールくんだ。
「カメみたいなきかいがいっぱい」
「不要な薬漬けで違う姿になんて、望まぬ変身はさせないとも」
「わるもの! だれもつれていかせない。かいぞうされるの、きっといたいだからな」
『痛み、苦しみ無しの改造コースもございます』
 類とフェレスが敵意を向けたことに対し、ハコベールくんの一体が機械音声を流した。しかし、最終的に改造されるのならば心に苦痛が訪れるに違いない。
 フェレスはそれまで被っていた穴あきおばけ布を勢いよく脱ぎ捨てた。
 ハコベールくんの視界を覆うようにひらりと揺らめいた布。それが床に落ちる直前、ハコベールくんに鋭い連撃が叩き込まれる。あまりの衝撃に揺らぐハコベールくんは驚愕するようにモノアイを点滅させた。相手も速く動こうとしたが、その前にフェレスが先手を取ったというわけだ。
『!?』
「きかいなんかより、わたしのほうがうんとはやい!」
 布が落ちた瞬間、其処にはチェシャ猫姿のフェレスが現れていた。わらわないチェシャの少女が行った瞬間的な攻撃は見事なものだ。
 素早く転じた後の身軽さに、類は幾度か瞬いた。
「そうだね……彼らより、フェレスちゃんの方がずっと速いや」
 可愛らしさの中に力強さと頼もしさを感じた類も、素早く攻勢に入った。カメめいた形をしていても相手には素早さも戦闘力もある。モノアイが光り輝いたことで身を反らした類は、トラクタービームを避けた。
 それは先程のフェレスとハコベールくんが繰り広げた高速の応酬と同じ。その間に生まれる隙を見逃さないよう、類は光線の軌道や攻撃のタイミングを見切っていく。
「まだまだやれる」
「頼むよ、可愛いちぇしゃさん」
 フェレスの意気込みを耳にした類は機をうかがい、追撃の心構えを抱いた。刹那、フェレスの鋭い攻撃がハコベールを再び大きく揺らがせた。その一撃の直後、類は刀に相棒から借りた風の魔力を宿した。
 強く踏み込み、斬る。
 それによってハコベールくんが両断され、其処から妙なパーツが飛び出した。
「なんだこれ」
『制御……不能……奪――』
 それを拾ったフェレスが不思議そうな顔をしている最中、倒れたハコベールくんは妙な音声を流しながら倒れた。
 その様子を見ていた他の個体が後方に飛び退く。相手が怯んだのだと察したフェレスはすかさずそちらに飛び移り、類に尻尾で合図を送った。
「もっともっとはやく」
 速く、疾く、素早く。残像を交えれば相手のモノアイはフェレスを認識しきれなくなる。其処へ連撃を見舞ったフェレスはハコベールくんの上に乗ったまま宣言した。
「菓子ももってないわるものは、はろいんの、……ま、まなー。まなーいはんだから、いたずらでやっつける!」
 ――とりっくおあとりーと。
 そのトリックだけを見舞い続けたフェレスに続き、類も一気に攻撃に入った。
「はろうぃんに持ち帰るのは、得たお菓子と笑顔だけ、じゃないとね」
「菓子のかわりがこれかも」
 類が風の魔力を迸らせる中、フェレスは先程に掴んでいた謎のパーツを示す。何か重要な物の気がしたが、今は目の前の敵を完全にやっつける方が先。
「さあ、お帰りいただこう」
 類の掛け声に合わせ、フェレスはハコベールくんを穿ちにかかる。
 そして、二人の前にいた敵は完璧に壊された。
「やったな」
「お疲れ様」
 無事にかたを付けたことを確かめ、類は可愛らしいチェシャ猫へと笑みを向ける。さて、こういった時はどうするべきか。類は少しだけ考えた後、掌を握って差し出した。
「拳でも合わせてみる?」
「それがいい」
 提案に数度瞬いたフェレスは、そのままこくりと頷いた。掲げられた拳に合わせて片手を上げて――。
「せーの」
「おばけたちの、かち!」
 こつん、とちいさな音を立てながら交わされたのは勝利の合図。
 交わした視線の中には快い気持ちと、ハロウィンへの不思議でおかしなな思いが宿っていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カルマ・ヴィローシャナ
なーにが運ぶ輝きクスリの輝きよ
薬事法違反で即時処分だっての
さて、食べた分はカロリー消費しなくっちゃね!

って……ちょっ危ないっての! 今度は道交法違反!
突っ込んできたハコベール君を|功夫《カラテ》で見切り回避
そーいう事するならこっちにも考えがあるわ

|懐中時計型のデバイス《ユーベルコード》を起動
私が支配する過去――荒んだ廃墟の記憶を再現
スラムの人々や障害物の幻影を大量に呼び起こして
ハコベール君の処理落ちを狙う
止まらないんでしょ? ほらほら、どんどん増えるわ!

駄目押しに空中の|遮導《ドローン》から|制圧射撃《ブラスター》の牽制で
隙を見出しカルマドミネーションの斬撃波でやっつける!
イヤーッ! 成敗ッ!



●疑似乱戦成敗
 店内の照明が落ち、電波が妨害された。
 冷静に、寧ろいつも通りに配信を終えたカルマは敵が現れた方向を見遣り、肩を竦める。
「なーにが運ぶ輝きクスリの輝きよ」
 それまでのストリーマーとしての明るい雰囲気とは逆の呆れた声色が紡がれた。どうやら迅雷運輸の社歌であり、ハロウィンの特別バージョンらしいが、それを受け入れて褒める心算など欠片もない。
 薬事法違反で即時処分だっての、と呟いたカルマは身構えた。
「さて、食べた分はカロリー消費しなくっちゃね!」
 辺りは暗いが相手の動きくらいは察知できるだろう。そして、カルマが攻勢に入ろうとした瞬間、衝突上等走行ルーチンを起動してきた。
 ローラータイヤモードに換装したハコベールくんは容赦なくカルマに迫ってくる。
「――って……ちょっ危ないっての! 今度は道交法違反!」
 突っ込んできたハコベールくんに対し、カルマは素早く身を翻した。|功夫《カラテ》の極意で以て相手の動きを見切り、回避した彼女は反撃に移っていく。
「そーいう事するならこっちにも考えがあるわ」
 カルマは|懐中時計型のデバイス《ユーベルコード》を起動していった。其処から周囲に広がっていくのは彼女が支配する過去。荒んだ廃墟の記憶を再現したカルマはハコベールくんを指差した。
 迅雷運輸の手先に向かっていくのはスラムの人々。更には障害物の幻影を大量に呼び起こすことで迅速モードを混乱させ、攻撃を当たりにくくさせる狙いだ。
 それに加えて相手が機械であるならばやりようもある。
 そう、ハコベールくんの処理落ちが狙えるというわけだ。生半可な挙動では高性能戦車を惑わせることなど不可能だが、カルマのユーベルコードを以てすれば容易となる。
「止まらないんでしょ? ほらほら、どんどん増えるわ!」
『目標、消失。コード、エラー…エラー……』
 狙い通り、ハコベールくんは標的としてのカルマを見失ってしまっている。その間に幻影が更に増えていき、ハコベールくんの処理能力を大幅に低下させた。
 そして、最後は駄目押し。
 空中の遮導ドローンから制圧射撃ブラスターの牽制攻撃を行わせ、一気にハコベールくんを穿つ。其処に隙を見出したカルマは周囲の原子を光粒子に変換したカルマドミネーションを振るった。
「イヤーッ! 成敗ッ!」
 斬撃波は頭脳戦車を見事に貫き、その機能を完全に停止させる。
 その瞬間、貫いた部位の近くから何かのチップが落ちた。そのことに気付いたカルマは手を伸ばしてみる。どうやら後付けされたパーツらしく、それだけが外れてしまったようだ。
「これって……? 何か良いものの予感!」
 何かの予感を覚えたカルマは、やや損傷したチップを手の中で転がした。
 気になることはあれど、此度の事件は此処から解決の道を辿るだろう。カルマの配信を見ていた人々がカフェバー・トゥルエノに訪れてみたが閉店していた――という未来が訪れるのは、もう少し先のことだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】
暗いのは怖くない
でも暁とはぐれない様に気を付けて戦闘を
あれ一機持ち帰ってもバレないかな…バラしたい

さて仕事
梟葬を構え転倒を狙い跳弾
…なんだあれ丸く―…うん、全然。驚きも無く動けなさそうだな…いいのか?あれ
いや、だがしかしなるほどな
それこそ、機械に相手に有効かは分からんが―!UC

「運んだ人間は未だ生存しているか?

嘘ならば、その嘘がお前を壊す
だが良かったな?今宵は暁の綺麗な炎と共に―
視認で判断を付ける機械なら幻楼火で影響を及ぼせそうだ

ありがとう、暁
おっと危ない―ほら、こっち(おいで、と肩を抱き寄せ
暗い所為かはやり多少の混迷がある…離れないようにした方がいいな
(抱き寄せた暁を白衣の裡へ入れ


楊・暁
【朱雨】

俺も暗闇は怖くねぇけど、藍夜の位置は常に認識しとく

ハコベールくん…って、もしかしてあれ、亀か?
迅速で…亀?亀でいいのか?
え?あれも調べんのか?…好きだな、藍夜…

隠し持ってた一刃赤心を眼前に構えUCで先制攻撃
敵に炎を嗾ける
ダメージはあんまり与えられてなくても、マヒ攻撃で回路壊せねぇかな

…なんか丸くなった、けど…あれじゃあ、動けねぇんじゃ…?

――藍夜!今だ…!
藍夜のUCと合わせて再度UC発動
簡単な任務程、気ぃ抜くなって教わらなかったか?

お疲れ様、藍夜――っとと…
何かに躓きそうになれば抱き寄せられて
(…へ??(きょとん
顔赤らめつつ思わず見上げ
離れないように…って、手ぇ繋ぐくらいでいいだろ…!



●雨と炎が織り成す未来
「――暁」
 店内の照明が落とされた直後、藍夜は暁の名を呼んだ。
 闇は怖くはないが、いつの間にか引き離されてしまうことへの懸念はある。暁も同じことを思っていたらしく、藍夜の気配がすぐ傍に感じられる距離に近付いた。
 身構えながら二人が見据えた前方には迅速ハコベールくんの影が蠢いている。
「ハコベールくん……って、もしかしてあれ、亀か? 迅速で……亀? 亀でいいのか?」
 暗さに目が慣れてきたことで暁は首を傾げた。名前と見た目があべこべなことが気にかかったらしいが、それは製作者のみが知ることだ。藍夜も目を凝らし、迅雷運輸の手先として現れたものを確かめていく。彼はどうやら機械仕掛けの運搬用頭脳戦車に興味を抱いたようだ。
「あれ一機持ち帰ってもバレないかな……バラしたい」
「え? あれも調べんのか? ……好きだな、藍夜」
 倒したハコベールくんの持ち帰りと解体を目標に設定したらしい彼を軽く見上げ、暁は口許を緩めた。実に藍夜らしいと感じていたからだ。
 藍夜は気を引き締め、梟葬を構えた。暁も隠し持っていた一刃赤心を眼前に掲げる。
「さて、仕事だ」
「早く片付けるか」
 二人が頷きあった次の瞬間、術式の雨と揺らめく幻想炎が広がった。敵に炎を嗾けた暁に合わせ、藍夜は敵の転倒を誘うために跳弾を狙っていく。
 それをまともに受けたハコベールくんの一体が脚部を引っ込め、対衝撃防御形態を取った。
「……なんだあれ丸く――」
「なんか丸くなった、けど……あれじゃあ、動けねぇんじゃ……?」
「うん、全然。驚きも無く動けなさそうだな……いいのか?」
 二人が疑問を抱く中、ハコベールくんから社歌に似たメロディが流れはじめる。

~♪
 安心安全お届け機能
 運ぶ輝き 絶対 守ろう
 自信を持って お届けします
 安心安全 迅雷運輸

「……何だ?」
「お届けのテーマソングか」
 暁は呆気にとられ、藍夜は冷静な判断を下した。
 はっとした暁は丸くなって動かないハコベールくんを改めて見遣り、更に強く身構えた。
「ダメージはあんまり与えられてなくても、回路だけ壊せねぇかな」
「いや、だがしかしなるほどな」
 その言葉を聞いた藍夜は案を思い付く。それこそ、機械に相手に有効かは分からないが防御を突き崩す方法がないわけではない。既に術式雨は巡らせているため、後は相手からの言葉を引き出すだけだ。
「運んだ人間は未だ生存しているか?」
『今回の任務で運んだ人数、ゼロ』
「それが嘘ならば、その嘘がお前を壊すことになる」
 本当だろうな、と更に問いかけた藍夜に対し、ハコベールくんは何も答えなかった。
 おそらく事実を淡々と述べたのだろう。生存以前にこの個体が非道な運びを行ったことはない。つまりは何らかの被害が起こる前に抑えられたということだ。
「そうか……。だが良かったな? 今宵は暁の綺麗な炎と共に――」
「――藍夜! 今だ……!」
「ああ」
 視認で判断を付ける機械なら幻楼火で影響を及ぼせる。暁の呼びかけに答えた藍夜は棘を巡らせた。相手の言動に虚偽はなくとも人間を改造する手伝いをしているという罪過は相当なもの。
「簡単な任務程、気ぃ抜くなって教わらなかったか?」
「そのまま潰れて燃えちまえ!」
 藍夜の鬼雨が迸り、暁が放った幻楼の焔が戦場に激しく躍った。ハコベールくんが炎に見入るような仕草をした後、パーツの継ぎ目が剥がれ落ちるように分離した。
 絶対防御とも思われた電脳戦車のボディは燃やし貫かれ、戦う力を奪っていき――。
 其処から落ちた何かのチップに気付き、藍夜はそれを拾い上げた。更に解体したい気持ちもあるが、このパーツが妙に気にかかる。やはり調べてみようと心に決め、藍夜はチップを懐に仕舞い込んだ。
「お疲れ様、藍夜」
「ありがとう、暁」
 其処へ暁が歩み寄ってきた。
 静かに笑った藍夜の手前で、暁は転がっている機体の残骸に躓きそうになる。
「――っとと……」
「おっと危ない。ほら、こっち」
 おいで、と肩を抱き寄せた藍夜は暁の転倒を防いだ。
 まだ店内の明かりは戻っておらず、薄ぼんやりとした視界しか確保できていない。目が慣れているといっても気を付けるに越したことはない。
「暗い所為かはやり多少の混迷がある……離れないようにした方がいいな」
「……へ??」
 彼に抱き寄せられ、白衣の裡へ入れられたことで暁がきょとんとする。藍夜を見上げた暁は思わず顔を赤らめ、此処がまだ暗闇で良かったと思った。
「離れないように……って、手ぇ繋ぐくらいでいいだろ……!」
「それなら手も繋ごうか」
「そうじゃねぇ……! あ、明るくなるまでだからな……」
 対する藍夜は暁の手をそっと握り、笑みを深める。彼は暁が言いたいことの意味がわかっているのだろうが敢えてそんな行動に出ている。暁は不思議な気持ちを覚えながら、暫しその胸に身を預けていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルト・プティング

ベアータ(f05212)さんと参加
お酒に弱くて現在酩酊状態

カクテル、綺麗で美味しかったれふね~
うふふ、すっかり気持ちよくてぼーっとしちゃうのです
シャキッとなんて難しいこと言われましてもぉ

なんか周囲に派手な音が響いてるけど、だんだん瞼が重くなって
あれ、なんかピカーってなったら暗くなりましたね…電気消しました?
強制お荷物お預かり機能を受けちゃっても、全然気づけずぼんやり

そしておっきな音と一緒に視界が明るくなれば、眼の前に世界で一番大好きな人の顔
なんかボク、どっかに仕舞われてた?
えへへ~ベアータさんはボクの来てほしい時に来てくれるんですねぇ
つかまれと言われてギューっと抱きついて、安心感でまたぼんやりと…

はえ?たたかう?あー、あのまるいロボっぽいのぶっ飛ばせば…?
はぁい、やっちゃいまぁす♪ベアータさん、見ててください♪
目についた重そうな家具や調度品を《念動鉄槌》で塊状にして持ち上げて、ぶんぶん振り回しちゃうのです
わぁ、なんかこれもぐらたたきみたいでちょっとたのしいのですよぉ
ぷちぷち潰しちゃお~


ベアータ・ベルトット

酔いどれメルト(f00394)と

敵のおでましね。迎え撃つわよ、メルト
って声をかけてみればこの娘は…ホントお酒弱いんだから

ほらっ、シャキッとしなさい!行くわよ!

機腕銃を展開し、弾幕めいた自動射撃で敵を牽制

メルト、そっちは大丈夫?…ってあれ、いない?
あの娘どこ行ったのよ!?

…ちょっと待って。向こうに逃げてく機体がぶら下げてんのって…さっきメルトが作った赤い宝石!?
ま、まさかあの中にメルトが!?

着物が乱れるのも構ってられない、ブーストきかせてとにかくダッシュ!
がっちり拘束して、格納スペースからメルトを助け出すわ

つかまんなさい!
…うわ!ちょ、ちょっと強すぎだって…!(ドキドキ)

メルトを攫おうだなんて…許さない!
怒りのBEAを敵に思いきり叩きつけてやる

メルト、大丈夫?…みたいね。無事で本当に良かったけど…まったく、心配かけて
ふにゃふにゃしてたら喝を入れてやりましょ

飲んでも飲まれるなってあれほど言ってるでしょ!いいからアンタも戦いなさい…って

ちょっ!?アンタここお店の中…や、やりすぎなのよーッ!!



●重なる心
「敵のおでましね。迎え撃つわよ、メルト」
「ふわぁ……」
 現在は既に敵が襲来している状態。戦いの幕が上がり、後はきっちりとかたを付けるだけなのだが――。
 只今、メルトは酩酊状態。
 飲める歳になったといえ、アルコールの耐性は人それぞれ。特にお酒に弱いらしい彼女はふわふわしていた。
「カクテル、綺麗で美味しかったれふね~」
「ええ、美味しかったけど……メルト? 何だかちょっととろけてない?」
「うふふ、すっかり気持ちよくてぼーっとしちゃうのです」
 ベアータがメルトを気にかけているが、本人は眠たげに目元を擦っている。周囲に派手な音が響いており、店内の明かりが落とされていることは何となくわかっていた。
 だが、メルトは状況を理解しきれていない。
「あれ、なんかピカーってなったら暗くなりましたね……電気消しました?」
「消したんじゃなくて消されたのよ。ほらっ、シャキッとしなさい! 行くわよ!」
「シャキッとなんて難しいこと言われましてもぉ」
 ベアータが呼びかけてみても、メルトは未だ心地よさの最中。シャキっとどころかふわっとしたままであり、焦点も定まっていない様子だ。
「この娘は……ホントお酒弱いんだから」
 此処は自分が頑張らなくてはいけないと感じ、ベアータはいつも以上に気を引き締めた。
 敵は愛らしいフォルムをしているが、人を捕獲して運ぶ力強さと頑丈さを兼ね備えている。メルトだけは守りきると心に誓ったベアータは機腕銃を展開していく。
「誰も捕獲させたりしないわ!」
 弾幕めいた自動射撃を行うことで、ベアータは敵を牽制していった。
 メルトも酩酊状態ではあれど、敵を目の前にすれば戦ってくれるはず。背中合わせになって死角を減らそうと考えたベアータはメルトの背面に現れた敵を相手取っていく。
 しかし、メルトはぽやぽやとしたままハコベールくんを見つめているだけ。
『コード実行、強制お荷物お預かり機能』
 モノアイから放たれたトラクタービームがメルトを捉えた。そのまま荷物としてお預かりされてしまったメルトは、ハコベールくんの装甲内部の格納スペースに入れられてしまう。
「ふゃ……?」
 かなり危険な状態だが当の本人は何が起こったか理解が及んでいなかった。ひんやりとした暗闇は妙に心地よく、メルトは格納スペースの中に寝転んでしまう。
(――宇宙みたいな……冷たくて、静かで……)
 此処では外の音も遮断されている。
 メルトは自分の身体を抱くように丸くなり、酩酊感の中でぼんやりとしていく。心地よさは続いているが、もしこのままひとりぼっちで暗闇を揺蕩うことになったらどうしよう。
 ふとした思いがメルトの裡に生まれ、しんと冷えた感覚がゆっくりと広がっていく。それまで、その手に握っていた結晶宝石がなくなっていることにも気付けないまま――。
 その頃、その外ではベアータが果敢に戦い続けていた。機腕銃で敵を撃ち抜いていったベアータは一体目のハコベールくんを打ち倒した。それと同時に振り返った彼女は後ろにいるはずのメルトに声をかける。
「メルト、そっちは大丈夫? ……ってあれ、いない?」
 急いで辺りを見渡してみてもメルトが戦っている気配はなかった。
「あの娘どこ行ったのよ!?」
 もしかして身を隠しているのか。それとも――と、考えた瞬間、ベアータの視界にあるものが入った。ちょっと待って、と口にしたベアータ。その瞳には赤い宝石が映っている。
「向こうに逃げてく機体がぶら下げてんのって……さっきメルトが作った宝石!?」
 おそらくメルトが捕獲されたときに落ちたのだろう。
 ハコベールくんの頭部に引っかかっている赤い結晶は間違いなく、メルトのものだ。
「ま、まさかあの中にメルトが!?」
 現状のまずさに気が付いたベアータは急いでハコベールくんのもとへ駆けた。内部は見えないもののメルトが中にいるのならば、着物が乱れるのも構っていられない。
 床を蹴り上げたベアータはブーストをきかせ、電脳戦車が退散する直前に側面に回り込んだ。
「この……っ! メルトを返しなさい!」
『却下。この個体は施設にお運びします』
 するとハコベールくんが音声を響かせる。ベアータはその言葉を聞き、がっちりと頭脳戦車を拘束した。メルトをただの個体扱いされたことに加え、実験改造施設や無慈悲な地下闘技場に送られると聞けば怒りも湧いてくるというもの。その中でも至極冷静に、赤い宝石を確保したベアータは強く言い放つ。
「私の大切なメルトを攫おうだなんて……! 絶対に、許せさない!!」
 ベアータは頭脳戦車を力任せに掴み、格納スペースの扉をひといきに引き裂いた。
 大きな音が響いたかと思えば、メルトの視界が急に明るくなる。
「……つめたくて、さむくて、ひとり――……はえ?」
 心細くなりはじめていたときに見えたのは、此方に手を差し伸べているベアータの姿だ。
 ベアータさんだぁ、と声にしてふわりと笑ったメルトは、眼の前にいる世界で一番大好きな人の顔を見つめた。
「なんかボク、どっかに仕舞われてた?」
「いいから早くつかまんなさい!」
「えへへ~ベアータさんはボクの来てほしい時に来てくれるんですねぇ」
 伸ばされた手を取ったメルトは起き上がり、そのままの勢いでベアータに抱きついた。心細さは何処へやら、メルトの心は再び快さに包まれる。安心感からかメルトはベアータを抱きしめ、首元に顔を埋めていた。
「……うわ! ちょ、ちょっと強すぎだって……!」
「ベアータさんの匂い……えへへ」
「や、ちょっと、そんなにぎゅってしたら……! め、メルト……」
 ドキドキとそわそわと、他にも言葉にできない感情でいっぱいになったベアータはなすがままにされている。その中でほんの少しだけメルトを抱きしめ返したベアータは、電脳戦車の上から飛び退いた。
 再び捕まってしまわぬよう距離を取った彼女は、自分の隣にメルトを下ろす。
「メルト、大丈夫?」
「はーい……平気ですよぉ」
「……みたいね。無事で本当に良かったけど……まったく、心配かけて」
 先程のドキドキを何とか抑え込み、ベアータは戦闘態勢を取る。しかし、メルトはまだふにゃふにゃしているようだ。活を入れてやるためにベアータは鋭く言い放った。
「飲んでも飲まれるなってあれほど言ってるでしょ! いいからアンタも戦いなさい」
「たたかう? あー、あのまるいロボっぽいのぶっ飛ばせば……?」
 ふんわりと着物を翻したメルトは柔く身構える。そうよ、と答えたベアータが怒りのバグベアズ・アイを敵に思いきり叩きつけていく中、メルトはこくりと頷いた。
「はぁい、やっちゃいまぁす♪ ベアータさん、見ててください♪」
「……って、メルト?」
 メルトは目についた重そうな家具や調度品を念動鉄槌で塊状にしていく。それを念動力で軽々と持ち上げてたメルトは勢いのままにぶんぶんと振り回していった。
「ちょっ!? アンタ、ここお店の中……いえ、悪者の店だから別にいいんだけど……」
「わぁ、なんかこれもぐらたたきみたいでちょっとたのしいのですよぉ」
 驚くベアータを他所に、メルトは全力の粉砕撃で以てハコベールくんを潰していく。言葉通りのもぐらたたき、もといカメたたきゲームは容赦なく行われている。
「ぷちぷち潰しちゃお~」
「や、やりすぎなのよーッ!!」
 メルトの後ろに隠れているベアータは、どんどん破壊されていくハコベールくんを見つめる。その後はメルトの快進撃を見守ることしか出来ず――。
 そうして、メルトが疲れて眠気を覚えるまで破壊は続いた。
「ふぁ……」
「メルトったら、仕方ないわね」
 眠そうにもたれかかってきたメルトを支えながら、ベアータは先程に回収しておいた宝石を見遣る。掌の中に収まっているふたつの結晶は淡く輝いていた。
 取り戻せてよかった。心の底から安堵したベアータは、そっとメルトに身を寄せる。
 ハートの形をした結晶もまた、こつりと音を立てて触れ合っていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】◎

はこべーる君
カメさんみたいで少しかわいいね
ただお仕事してるだけ、なのかもしれないけれど
人を攫ってしまうのはダメなのよ
もしゆぇパパが攫われたりでもしたらルーシーは困ってしまうわ
改造ももちろんダメ
ロボット……!?どんなパパもきっと格好良いでしょうけども
パパは全部、今のパパのままでステキです!
ふんす、と意気込むも
あ、あら?何だかパパ、怒ってる……?
だ、だいじょうぶよ
パパがいるからそんな事にはならないわ!ねっ

『瑠璃色の人形劇』
ブルーベルの小刀「星花刃」に指先を滑らせ
にじむ赤を代償に
光線はこの小刀で遮るわ
それで星花刃が転移されてもむしろ好都合
内から解いてしまいましょう

ひゃっ、は、はい!
ううう
だってパパも、いつもグールさん起こす時やってる事なのに…!
むう
本当はルーシーだってパパが少しでも傷がつくのはイヤなのよ?

わああ、パパ
笑ってらっしゃるけれど笑っていないわ
攫うって言葉はパパにはキンシね
ルーシー、ようく覚えた
ふふ……!そうね
パパを怒らせないように気を付けるわ
こんな風に!と、ぎゅうっと


朧・ユェー
【月光】◎

おや?本当にカメさんみたいな形の戦車ですね
ちょこちょこ動いて可愛らしい
確かに人を攫うのは良くないですね
僕がですか?改造した僕はどんな感じでしょうか?
ロボット僕?ですかねぇ
ふふっ、ありがとう御座います
ルーシーちゃんもそのままのルーシーが僕は良いです
それにルーシーちゃんを誘拐して勝手に改造なんて
ふふふふふふっ
そんな事僕は許しませんし想像するだけでもダメですねぇ
怒ってる?ふふっ大丈夫ですよ
えぇ、そんな事させませんよ

光線を防いでくれてありがとうねぇ
後でその指は消毒して手当てです!
僕は大丈夫ですが
ルーシーちゃんの綺麗な白い指に傷をつけるのはいけません
おや、すみません。気をつけます

射影
ベラータノー瞳に敵の内部を写し出す
死神の力を込めて解体、爆破を続け

さて一つ一つ解体しましょうかねぇ
にこにこと

おや?ルーシーちゃんどうしましたか?
それは大事な娘ですもの
片手でひょいっと抱き上げて
攫われたら大変です
ぎゅっとしてくる娘に
優しくにこりと笑って頭を撫でる



●怒りと学びと二人の絆
 敵が現れたカフェバー内では戦いが始まっている。
 ルーシーは自分達の前に出現した電脳戦車、ハコベールくんをじっと見つめてみた。
「あれがはこべーる君? カメさんみたいで少しかわいいね」
「おや? 本当にカメさんみたいな形の戦車ですね」
 ユェーもハコベールくんを眺め、迅雷運輸製の機体を観察していく。見た目は愛らしい部類ではあるが、かれらがこれから行おうとしているのは非人道的な輸送任務だ。
「ただお仕事しているだけ、なのかもしれないけれど人を攫ってしまうのはダメなのよ」
「ちょこちょこ動いて可愛らしいですが、確かに人を攫うのは良くないですね」
 ルーシーとユェーは頷き、敵へと戦意を向けた。相手も此方が戦って抵抗する気であることを察知したようだ。ルーシーは相手の出方をうかがうために強く身構える。
『標的確認。捕獲します』
「ホカク?」
「おやおや、いけないことですね」
 その際にふと巡ってしまった想像は、ユェーが攫われてしまったらどうしよう、という思いだ。ハコベールくんとユェーを交互に見遣ったルーシーは不安そうな顔で言葉を紡ぐ。
「もしゆぇパパが攫われたりでもしたらルーシーは困ってしまうわ」
「僕がですか?」
『ご安心ください、迅速な改造で新たな世界へご案内します』
 するとハコベールくんの機械音声が二人の耳に届く。はっとしたルーシーはユェーの前に立ち塞がり、ちいさな両腕を大きく広げた。その視線はとても強く、絶対にそんなことはさせないといった雰囲気だ。
「改造ももちろんダメよ!」
「改造された僕はどんな感じでしょうか? ロボットの僕ですかねぇ」
「ロボット……!?」
 ユェーは捕まる気などないが、何となくの想像を言葉にしてみる。驚いたルーシーは思わず想像してしまったらしく慌てて首を横に振った。
「どんなパパもきっと格好良いでしょうけども……パパは全部、今のパパのままでステキです!」
「ふふっ、ありがとう御座います」
 ふんす、と意気込むルーシーに対してユェーは笑顔をみせる。
 だが、ルーシーは彼の異変に気付いてしまった。その微笑みに妙な闇が宿っているように思えたのだ。普段から彼をよく見ている少女にしかわからないほどの変化だったが、間違いない。
「あ、あら?」
「ルーシーちゃんもそのままのルーシーが僕は良いです。それにルーシーちゃんを誘拐して勝手に改造なんて……ふふふふふふっ」
 ユェーは普段以上に笑っている。やはり何かを思っているようだ。
「何だかパパ、怒ってる……?」
「そんな事僕は許しませんし想像するだけでもダメですねぇ」
「たしかにダメだけど……パパ?」
「怒ってる? ふふっ、大丈夫ですよ」
 ルーシーが戸惑って少し怯えてしまうほどの敵意が頭脳戦車に向けられていた。ルーシーは何とか彼を宥めようとしてぱたぱたと両腕を振ってみる。
「だ、だいじょうぶよ、パパがいるからそんな事にはならないわ! ねっ」
「えぇ、そんな事させませんよ」
 ユェーは変わらぬ笑みを湛えたまま、ルーシーに頷いてみせる。
 この怒りを鎮めるにはハコベールくんを倒してしまうしかない。ルーシーは自分もユェーも捕まるわけにはいかないとして、ユーベルコードを発動させていく。
 ――瑠璃色の人形劇。
 ブルーベルの小刀である星花刃に指先を滑らせ、代償にしたのは滲む赤。滴る血の力で刃に更なる殺傷力を与えたルーシーは一気に切り込んでいく。
「パパ、光線はルーシーがこの小刀で遮るわ」
 もしそれによって星花刃が転移されても、むしろ好都合だ。敵を内から解いてしまえばいいだけ。ルーシーが果敢に攻勢に出る中、ユェーはぴくりと眉をひそめた。
「ルーシーちゃん?」
「ひゃっ、は、はい!」
 その声には怒りが混じっており、ルーシーは思わず飛び上がった。
「光線を防いでくれてありがとうねぇ。ですが、後でその指は消毒して手当てです!」
 注意と共に飛んできたのは鋭い視線。
 どうやらハコベールくんへの怒りに加え、ルーシーが自分を傷つけたことにも怒っているようだ。ユェーからの眼差しを受け、ルーシーはしょんぼりする。
「ううう……だってパパも、いつもグールさんを起こす時にやってることなのに……!」
「僕は大丈夫ですが、ルーシーちゃんの綺麗な白い指に傷をつけるのはいけません」
 少女の言い分に対してユェーは反論する。
 すると、むう、という不服そうな声が帰ってきた。ルーシーは自分が特別扱いされていることは嫌ではないが、それで対等になれなくなることが嫌らしい。
「本当はルーシーだってパパが少しでも傷がつくのはイヤなのよ?」
「おや、すみません。気をつけます」
 はたとしたユェーは素直に謝り、それでも、とそっと告げた。
 そうして彼もユーベルコードを巡らせていく。
 射影――ウツシミ。
「この瞳で君を写すよ。どんな事でもね」
 ハコベールくんの中身や弱点を写し出すべく、ベラーターノ瞳がきらりと光る。闘気と恐怖、死神の力を流し込んでいったユェーは完膚なきまでの解体と爆破を続けていく狙いだ。
「さて、ひとつひとつ解体しましょうかねぇ」
 にこにことした表情で攻撃を続けていくユェーは容赦がない。
 その笑顔はいつもの優しい彼のものではない。そのことを知っているルーシーは恐々としていた。
「わああ、パパ」
「おや? ルーシーちゃんどうしましたか?」
 慌てるルーシーの声を聞きつけ、ユェーはそっと振り返る。その頃には数体のハコベールくんが床に伏しており、動く機能を完全に失わされていた。
「パパ、笑ってらっしゃるけれど笑っていないわ。攫うって言葉はパパにはキンシね」
「それは大事な娘ですもの」
 ユェーは片手でひょいっとルーシーを抱き上げて、静かに微笑んだ。ハコベールくんを倒したからか先程よりは幾分か柔らかい笑顔になっている。彼を怒らせてはいけないと実感したルーシーはぽつりと呟く。
「ルーシー、ようく覚えた」
「おやおや」
 ユェーは何かを学んだ様子のルーシーに視線を向け、頭をそっと撫でた。
「攫われたら大変です」
「ふふ……! そうね、パパを怒らせないように気を付けるわ」
 こんな風に! と、腕を伸ばしたルーシーはユェーにぎゅうっと抱きついた。ユェーは愛しい娘に優しく笑いかけ、事件が解決したことを確かめる。
 そのとき、ユェーは何かが落ちていることに気付いた。
「おや?」
「何かしら。拾ってみましょう、パパ」
 ルーシーもハコベールくんの残骸の傍に転がっている何かを見つめる。ユェーが手を伸ばしてみると、それは何かのパーツらしいことがわかった。
 奇妙に明滅するパーツ。その正体を知れるのは、もう暫し先のこと。
 不思議そうに首を傾げるルーシーとユェー。そんな中でも二人の手と手はしっかりと繋がれており、彼らの絆が何よりも強いことを示していた。


●NEXT Lightning Transportation
 カフェバー、トゥルエノに現れたハコベールくんはこうして全て打ち倒された。
 誰への被害もなく、改造もされない未来を手繰り寄せたのは他でもない――果敢に戦った猟兵達だ。
 しかし、迅雷運輸の暗躍は続いていくだろう。それに加えて此度に一部の者が手に入れた謎のパーツ、或いはチップがある。これがどのような展開を導き、どんな事件が巡っていくのか。
 それは未だ明かされぬ、未来への繋がりだ。
 
 To Be Continued.

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月06日


挿絵イラスト