パンプキン・プラネット防衛戦
そのオブリビオンの名前は『星を喰むもの』 。
名前の通り、星を喰らう、惑星サイズの龍であり、天体単位での消滅をもたらす、まごうことなき大災害である。
かの龍は、今、一直線にとある惑星へ向かっていた。
あるいは、龍がその惑星を目指したのは、必然だったかも知れない。
なにせ……。
. I
( )△ W △( )
その惑星は、大きなかぼちゃの形をしているからである。
🎃
「トリック・オア・トリート! 皆様、仮装、してらっしゃいますか?」
三角帽子に黒いマント、パンプキン・クッキーが詰まったバスケットを片手に、羽島・理本(始まりの本を求めて・f37006)は集まった猟兵に向けて告げた。
「ハロウィンの起源は古く、古代アイルランドでのお祭りで――――って、うんちくはいいですね、すいません。今となっては世界中で親しまれているお祭りですが……なんで異世界や外宇宙でも同じようなお祭りがあるんでしょうね? 研究課題です」
とにもかくにも、理本が手を振るうと、グリモアベースに映像が投影された。
無数の星々が広がる宇宙空間には、巨大なかぼちゃが鎮座していた。
かぼちゃである。
厳密には、ジャック・オ・ランタンである。
つまり目と口が切り抜かれたカボチャのランタンである。
「こちらが、現在惑星サイズの超巨大龍型オブリビオンに絶賛食べられそうな、B29銀河フェスティバル・ギャラクシー第24惑星ハロウィン・プラネットです」
映像が引き気味になると、遠くに同サイズの龍が迫ってきているのが見える。
「多分見た目美味しそうだから寄ってきちゃったんですね」
本気か。
「なので、皆さんで頑張って倒して、本場(?)のハロウィンを満喫しちゃいましょう! 惑星を救った救世主なら、きっとみんな大歓迎してくれるはずですから!」
問題は、オブリビオンのサイズである。
惑星と同レベルの相手と、どう戦えばよいのか。
「えー、ハロウィン・プラネットの周囲はハロウィンパワーで満ちています。この惑星独自の力で、通常と異なる服装をすることで主観的な認識を拡張して外部に影響を与えることがで出来るみたいで――――えー、簡単に説明しますね」
コホン、と一度咳払いして。
「仮装やコスプレをしていると、すっごいダメージが通るようになります!」
だそうです。
「宇宙空間に出る手段がない人は、ハロウィン・プラネットのみなさんが外宇宙活動用仮装を貸してくれるので、それを着用してください。宇宙空間でも活動できる凄い仮装なんですよ!」
スペースオペラワールドは広いのでなんでもアリということらしい。
「…………そして、ハロウィンとは死者の霊を迎えるためのお祭りでもあります」
不意に真面目な顔になった理本は、少し寂しそうに微笑んで。
「もしかしたら、もう会えない人と、再会ができるかも知れません。ここはハロウィン・プラネット。宇宙のハロウィン概念が集まってできた惑星ですから」
それでは、いってらっしゃいませ、と手を振って、猟兵を転移させるべく、グリモアが強く発光した。
甘党
トリック・オア・トリート! お久しぶりです甘党MSです。
ハロウィンシナリオになります、スペースオペラワールドにはいろんな惑星があっていいですね。
◎用語解説◎
【ハロウィン・プラネット】
公転速度が1日1周なので毎日ハロウィンやってる凄い惑星。
🎃←おおよそこんな形をしていますが、文明レベルは地球よりは進んでいるようで、住民は皆何かしらの仮装をしており、既知のものから未知のものまで、いろんなお菓子や仮装があります。
治安は非常によく、誰にでもいいのでトリック・オア・トリート! と言うとお菓子がもらえます。
◆アドリブについて
MSページを参考にしていただけると幸いです。
特にアドリブが多めになると思いますので、
「こういった事だけは絶対にしない!」といったNG行動などがあれば明記をお願いします。
逆に、アドリブ多め希望の場合は、「どういった行動方針を持っているか」「どんな価値基準を持っているか」が書いてあるとハッピーです
◆その他注意事項
合わせプレイングを送る際は、同行者が誰であるかはっきりわかるようにお願いします。
お互いの呼び方がわかるともっと素敵です。
◆章の構成
【第一章】はボス戦です。
ハロウィン・プラネットを食べようと襲い来る『星を喰むもの』 を迎撃しましょう。
相手のサイズは惑星規模なので、こちらも対処法を考えないと行けません。
幸い、ハロウィン・プラネットにはハロウィンパワーが満ちているので、仮装している状態で攻撃すると大きなダメージが通るようです。
宇宙空間での活動に関しては、自前の装備やユーベルコードで対応できるならそれで良し。
なければ、ハロウィン・プラネットの住人にお願いすれば外宇宙活動用仮装を貸してくれます。
【第二章】は日常です。
星を救ってくれた猟兵を、惑星総出で歓迎してくれます。
1)死者の魂と邂逅する
2)ハロウィンを楽しむ
3)その他
の3つの選択肢があります、詳細は第二章に入ってからの公開となります。
第1章 ボス戦
『星を喰むもの』
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POW : 星の叡智
【自身が生まれてから滅んだまでの】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD : 生命の創造
自身の【牙】を代償に、1〜12体の【無機物生命体】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 龍の躯体
敵より【質量が大きい】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ボーリャ・コータス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニィナ・アンエノン
〇
仮装するだけで攻撃が通るなんて最高だよね!
どこでもこうならにぃなちゃんもいっぱい色んな格好するのになー。
うーん、戦場が月だったらウサギさんの格好したんだけど……宇宙の海って事で海賊で行こうかな☆
昔懐かしスペースシップワールドの透明な宇宙服を着て、ギガロドンの甲板に立てば気分は宇宙海賊!
目標、でっかい竜!撃てーっ!
とか言っても自分で撃つんだけどね、まぁ気分気分☆
ユーべルコードでガジェッティアレーザーをいっぱい作って【一斉発射】!
無機物生命体だって【貫通攻撃】で貫いて、本体にレーザーを当てちゃおう。
事前に【エネルギー充填】をしっかりやって、なるべくいっぱい撃てるようにしておこうっと!
恒星の熱で適温を保ち、文明が栄える惑星というのは、その龍にとっては極上に調理されたご馳走に等しい。
であれば、大口を開けて喰らいつきにかかるのは必然である。
『グジュルルルルルル…………ルォオオオオオオオオオオ!』
宇宙空間に空気はないが、その咆哮は確かに放たれ、響いた。
ただし、それは歓喜によるものではなく――――。
龍から見れば小さい、砂粒に等しいような|猟兵《てき》の姿を見つけたからに他ならない。
🎃
星の海を、一条の光が突き進む。
鮫である。
厳密には、全長20mにも及ぶ、鮫型の機械である。
その名も、超空間戦闘クルーザー、ギガロドン。
「目標捕捉ーっ! うーん、おっきいおっきい、普段なら出力に工夫するところだけど」
甲板立つニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)は、レーダーで感知した反応と、目視できる敵影を交互に見ながら呟いた。
「今回はらくちーん☆ 仮装するだけで攻撃が通るなんて最高だよね!」
あいつとかこいつとかそいつとか。
過去を振り返るだけで、厄介なオブリビオンがどれほどいた事か。
一方、この宙域では『仮装した者』に対する加護がある。
「どこでもこうなら、にぃなちゃんもいっぱい色んな格好するのになー」
着たい服も持っている服もいくらだってある。
チャイナにくノ一、プリンパフェを模したドレス――――そしてバニー・スーツ。
もし戦場が月だったら? 迷わずバニーを選んでいただろう。
しかしここは、カボチャを背景にした宇宙空間である。
だから、ニィナが選んだ|仮装《コスプレ》は宇宙海賊であった。
ふさふさな飾りが付いたパイレーツ・ハット。
豪奢に彩られたマント・コート。
そして黒ビキニ――――そう、黒ビキニだ。
これだけで、仮装感が120%アップする。つまり出力も120%アップだ。
ハロウィン・プラネットの宙域は、そういうルールで動いている。
『ゴシャルルルルルルルル――――――』
未だ遠くに見える――――実際に遠い、あれだけ大きいと、目測で距離など図りようもない――龍が、大きなあぎとをひらいた。
牙が1本、2本、と欠落し――それが別の異形に変じていく。
金属で構成された、蟲。
外見は、カボチャの天敵とされるウリハムシにそっくりだった。
もっとも、惑星サイズの個体が体の一部を切り落として生成したものである。
大きさ、質量共に、矮小な人類が抗える相手ではない――――――。
「――――なーんて思ってるなら、大間違いっ☆」
敵を押しつぶすべく、翅を広げたばかりの『蟲』が。
極太の熱線に貫かれ、焼けて、溶けた。
『!』
熱源は、一つだけではない。
ギガロドンの周囲に、百を超える大型のレーザー砲が浮遊していた。
全てが、龍に対して照準をあわせている――だが、所詮、20mクラスの機体に取り付けられた豆鉄砲に過ぎない。
それがいくら複製されようが、散った火花が巨人を焼くことはない。
――――普通ならば。
「目標、でっかい龍! 撃てーっ!」
宣言と同時に、一斉掃射が放たれた。
宇宙の規模からすれば、あまりにか細いその火は……宇宙空間を進むに連れて加速し、太く、長く、熱量を増し。
数秒後には、惑星すら穿つ槍の群となって、星を喰らう者をへと突き刺さる。
『ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』
生み出した生命など、大した壁にもならなかった。
続けざまに降り注ぐ火線は、龍の鱗を焼き切り、肉を貫く。
痛みに暴れて振り回した尾が、近くの小惑星にぶつかって、破砕した。
仮装している限り、その力は星に届く。
そして、もう一つ、文字通り見落としていることがある。
龍からすればあまりに小さい、ということは。
一度見失えば、どこに居るか捉えるのは、もう不可能だ、ということだ。
「えっへっへ――――」
オリジナルのガジェッティアレーザーを堂々と構えて、複製が火砲を浴びせている間にも。
着々とエネルギーを充填し続けていた――――ド本命の攻撃すらも。
「――――ファイヤーっ!」
知覚出来ぬまま生じ、気づいた時には手遅れになっていた威力の貫通レーザーが、龍に襲いかかる。
光線が巨体を貫き、龍の声なき絶叫が、宇宙空間に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
確かランタンに使われるカボチャって美味しくない、って聞いた覚えがあるけど……怪物には関係ねぇか。去年のジンニーヤの衣装でも引っ張り出して踊り狂いましょうかね!
食っていいのは喰われる覚悟があるやつのみ! ということで避けられないほど大量のカタリナの車輪を宙域に散布。それに触れた瞬間に龍の素揚げのクッキングスタートでござーいー。食えるかどうかは知らんけど。
あと熱が通るのに時間がかかっても、ご自慢の牙を持つ口が油に塞がれてたらハロウィン・プラネットに噛み付くことも出来なかろうて!
「すげぇ! あの龍を押し返しやがった!」
惑星の危機である。
ハロウィン・プラネットの住人たちも危機感の募る表情を浮かべながら、お菓子型人工衛星から送られる映像を、ポップコーンとコーラ片手に見守っていた。
「お、見ろよ! また誰か来てくれたぜ!」
首都パンプキングダムの一番でかい劇場スクリーンで戦いを見ていた誰かが叫ぶ。
「あれは――――ジンニーヤ! ランプの魔人だ!」
🎃
「確かランタンに使われるカボチャって美味しくない、って聞いた覚えがあるけどなぁ」
カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)が言う通り、ランタン用に使われるカボチャは、食用に適していない。
とはいえ、オブリビオンから見たらご馳走なのだろう、ダメージを負ったことでより一層食欲が増したらしい。
大顎は更に大きく開き、獲物を貪らんと迫ってくる。
「だがなぁ……喰っていいのは喰われる覚悟のあるやつのみ!」
カーバンクルが、宇宙の無重力に任せて舞い踊る。
さながら|千夜一夜《アラビアンナイト》に現れる精霊のごとく。
じゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
龍が更に惑星に接近したその時、耳障りの良い音が、宇宙空間に広がった。
多分、この宇宙は音がするっぽい。
🎃
『ガ!?』
不思議な文様が刻まれた、金属製の車輪。
龍は、それを知覚していても気に留めていなかった。
オブリビオンの視点からすれば、|宇宙残骸《デブリ》より小さな、障害物とすら呼べぬ代物だったからだ。
しかし、この『カタリナの車輪』は触れた部位を拘束し、高温の油でカラッと揚げてしまう力を持つ。
本来であれば180℃程度の油など恐るにたらない。龍の鱗はその程度では焦げ付きすらしないのだが――――。
ジンニーヤの仮装によって力を増したそれは、何百倍もの大きさに膨張し、弾け飛んだ。
こうなればもはや油を巻き散らかす爆弾そのものである。火炎放射器よりたちが悪い。
『グルルルルオオオオオ――――――!』
氷点下の宇宙空間をゆくオブリビオンですら、この温度には耐え難いようだった、大口を開けて進路を変える、が。
「ああ、|逃げるならそっち《、、、、、、、、》だよね」
その挙動を、読み切っていたかのように、龍の口腔に、ばらまかれた残りの『カタリナの車輪』が飛び込んだ。
「出来立ての小籠包を口の中に入れて噛んだ事ある? ――――ご愁傷さま」
噛みたくなくても容赦なく。
吐き出したくても躊躇なく。
油の爆弾は、龍の口腔を蹂躙した。
『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!?!!?!??!』
この痛みは、しばらくつきまとうだろう。
少なくとも、ハロウィン・プラネットをご機嫌で食べる、なんてことは、もう出来ないはずだった。
なにせ、舌も牙も粘膜も、マグマのような油に焼き尽くされてしまったのだから。
大成功
🔵🔵🔵
夕凪・悠那
○
宇宙ってすごい
そんなゲームみたいな惑星が……
いやあったな
そういえばキマフューってメンテとかいう理由でパッカーンした惑星じゃん(慣れすぎて気にしてなかった事実)
気を取り直して、仮装を兼ねた【英雄転身】
その役は"魔女"
特に惑星の魔女とかSSRとかではない普通の、魔女帽子とか被りつつ
サイズ感がアレすぎるけど、今回の回答はシンプルに
攻撃を効きそうなサイズで叩きつければいい
無機物生命体も[範囲攻撃]で纏めて蹴散らす
『Metis』起動
疑似魔術式、規模拡張――
くらえ、|流星群《シューティングスター》!
([全力魔法]×|特攻礼装《コスプレ》)
せっかくだから、攻撃のエフェクトを🎃にするくらいはしてあげるよ
「…………いや、そんな惑星ある?」
現に目の前にあるのだから仕方ないけれど、夕凪・悠那(|電脳魔《Wizard》・f08384)は宇宙を背景に思考する。
ちなみにこの星系の他の惑星は提灯とかクリスマスツリーの形をしたものまであるらしい。
「そんなゲームみたいな………………いや、あったな」
かつて『メンテナンス』とか言う名目で、パッカーンと真っ二つに割れた惑星があったことを思い出した。
もしこの滅茶苦茶感が宇宙のニュートラルだとするのなら、我々地球人は真面目に生き過ぎではないだろうか。
それとも宇宙進出して技術と文化が一周するとどこもこんな感じになるのだろうか。
「…………いやいや、とりあえず、やろっか」
幸い、この宙域は悠那にとっては戦いやすい。
なにせ――|普段からやっていることをそのままやればいい《、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、》。
ユーベルコード、《|英 雄 転 身《ロールプレイ・ヒーロー》》は、|仮装《コスプレ》と戦闘を同時に行えるのだから――――!
「電脳接続、記録参照、対象選択、――|転身開始《インストール》!」
自身の体をホログラフに包み込んで、一瞬の後。
「………ま、普通の魔女だけどね」
三角帽子、黒いマント、ちょっと飾りの付いたローブに、古典的な箒。
SSRのきらびやかーで露出もばーん、は趣味には合わないし。
ただし――――――。
「術式は、本物だよ」
ふわりと箒が浮き上がり、宇宙空間を文字通りの光速で走り抜ける。
軌跡に星の海が産まれ、人間規模では生涯かけても辿り着けないであろう距離を駆け抜けて、あっという間に龍の目前にたどり着いた。
『ゴギャ、ルアアアッツ! ゴギャツ! アアアアアアアアアアアアアアア!』
ここまでの戦闘で散々痛い目に遭わされたらしい、焼け焦げた口腔内から牙を除かせ、外敵を排除する生命体へと変じようとしていた。
「頑張るじゃん――こっちには、あんまり関係、ないけど!」
飛行してきた軌跡が、そのまま魔法陣となって、術式が編み上げられる。
厳密には、それそのものに、大したた意味はない。
空想を現実にすることこそが、|電脳魔《Wizard》の能力であれば――空想の種があれば、花は咲くのだ。
「『Metis』起動、疑似魔術式、規模拡張――――くらえ、流星群!」」
そこらにきらめく、全ての星の光が、爆発的に膨れ上がった。
『ゴ――――――――――――』
生み出され、今まさに襲いかからんとした生物ごと。
降り注ぐ流星が龍達を殴りつけ、つぶし、そして――――。
「っと、せっかくだし」
被害を受けぬよう、さっさと宙域を離脱した悠那は、ぱちん、と指を鳴らした。
「気分ぐらいは、ハロウィンにしてあげるよ」
大爆発。
爆炎の形は、まるでハロウィン・プラネットそのものだった。
大成功
🔵🔵🔵
ベルト・ラムバルド
【闇光】
○
「同行者にぞっこん惚れてる残念イケメン暗黒騎士」
宇宙にも龍がいるとはな!
この宇宙暗黒騎士ベルト・ラムバルド!
今はマスクを着けた仮面の男!その名も…ベルトラン・バルド!
愛しきアンナ・アンナを膝に乗せ、共にあのクソデカ龍を倒してやるぞ!
あ、アンナさんもう行っちゃった…
キャバリア操縦して突撃!
空中機動と瞬間思考力で動きを読みながら回避
召喚した生命体なんぞ二刀の剣振り回して鎧砕きと鎧無視攻撃で切り捨て切断してゆく!
こういう時こそ!こういう技が光るもの!
アンナさんには当たりませんように…!
サークランサー構えてUCで龍殺しの超巨大荷電粒子ビームを発射!
あの龍と生命体を範囲攻撃で焼き払ってやる~!
仇死原・アンナ
【闇光】
○
「同行者に勝手に惚れられてる処刑人」
操縦席狭いな…早く外に出たい…煩いし眩しいし…
あれが敵か…さっさと倒そう…
私は…あぁ処刑人の仮面を着けて…私はアンナ…アンナ・アンナ…!
仮面の女で処刑人だ!…これでいい?
[環境耐性]の加護を得て
操縦席からさっさと外へ出て地獄の炎纏いて[空中戦]を仕掛けよう
敵放つ生命体には鉄塊剣振るい[怪力と鎧砕き]で破壊してゆこう
仮面を着けようが着けまいが…私は処刑人…
終末の炎で焼き尽そうぞ!ベルト!当たっても恨むなよ!
[力溜めて]鉄塊剣を振り回し【炎剣レヴァンテイン】を発動
地獄の劫火纏う[斬撃波の範囲攻撃]を放ち[焼却]殲滅してやろう…!
…お菓子が食べたいなぁ
宇宙を、黒騎士が征く。
おお、見よその勇ましき姿は、星々の中にあって、一条の閃光となって駆け抜ける、強く、怪しく、しかし美しく輝く隕石の如く。
かの騎士の名はパロメデス――――そしてその機体を駆る者こそが!
「我が名は、宇宙暗黒騎士ベルト・ラムバルド! いやさ――今はマスクを着けた仮面の男!その名も…ベルトラン・バルド!」
ベルト・ラムバルド(自称、光明の宇宙暗黒騎士・f36452)、もといベルトラン・バルドは高らかにそう名乗りながら、戦闘宙域に接近していた。
「さあ、我が愛しきアンナ・アンナよ、共に悪竜を討ち倒さ――――あれ?
ほんの少し前まで、一緒に搭乗していたはずの相方、いや、マイ・ラヴァー、嫁? とにかく、彼女の姿がいつの間にか見当たらない。
「アンナ? アンナさーん?」
既に先行してしまった彼女を目指し、パロメデスは速度を上げるのだった。
??
「ああ、狭かった…………」
相乗りして戦闘宙域まで来たはいいが、そもそもキャバリアの設計上、二人乗りは無理がある。
ようやく外に出た仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)だったが、新鮮な空気を吸い込む、というわけにもいかなかった。
真空の宇宙空間で生命を維持できているのは、ひとえに、事前に着込んだ《処刑人の仮装》のおかげである。
「あれが、敵か…………」
地球から月を見るように。
敵のシルエットが視認できたとしても、それはまだ遥か遠くに居る。
だが、敵はもうこちらを認識しているし、こちらも敵を認識している。
巨躯は、人というささやかな生命を蹂躙すべく、牙から新たな軍勢が産まれだす。
――――猟兵との交戦を経て、直接対峙するのは状況が悪いと見たらしい。
生み出された生物が、さらに無数の生物を製造し始める。
一が十に、十が百に、百が千に、千が万に。
もはや果てなどわからぬほどの大軍勢が、あっという間に生産された――マトリョーシカのように小さくなっていくそれらだが、人間が比較することに、大して意味は無いだろう。
最小個体ですら、日本列島と同じ大きさの、金属でできた龍である。
人が抗う術など、無いだろうと言わんばかりに、龍の顔が笑みになった。
……それが、処刑人でなければの話だが。
取り出した、左右非対称の、表情が読めない仮面を、そっと顔に被せ。
「私は………私はアンナ………処刑人、アンナ・アンナ……」
『仇死原・アンナ』から『アンナ・アンナ』への仮装を、完全に終えて。
「命すら亡き、些末な群――――――終末の炎で焼き尽そうぞ!」
錆色の乙女。
鉄塊の如き、異形の巨大剣の先端に炎が灯り。
薙ぎ払いと同時に生じた火線が、仮装の力を得て、光速を超えて突き刺さり。
――――――爆炎が、宇宙の果てで連鎖した。
??
「ああ! アンナさん、もう始めてる…………!」
数十秒遅れて宙域にたどり着いた頃には、もう処刑人の炎が龍と眷属を薙ぎ払っていた。
自分の出番はないか? と思ったのも束の間。
「むっ」
パロメデスの肩に、アンナがふわりと着地した。
苛烈な攻撃を放った後とは思えない、すました表情。
『油断するな、ベルト』
「ん?」
『生き残りが居る』
爆炎の海を抜けて、眷属と本体がぞろぞろと迫ってくる姿が見える。
「――――速いのが居るな、|アンナ《、、、》、手の上に」
『任せる』
パロメデスのセンサーに反応。
3天文単位を一瞬で跳躍して、小型の金属龍が牙を剥き、迫っていた。
だが、龍の牙が装甲を噛むことはなかった。
「――任してもらえるのならば」
両断。
『騎士』の仮装は、刃の一閃に上限のない力を与えていた。
まして、アンナが手の上に居るというのならば。
僅かな傷すら、許されまい。
『まとめてくるな……薙ぎ払うか』
「了解、エスコートはおまかせを」
『ふん……』
ふわりと手から離れたアンナが、射線から外れたことを確認すると。
パロミデスは、手にした武装を正面に掲げた。
RBXSサークランサー。キャバリア用の巨大槍であるが、その機能は――――――。
「――――星を喰む悪竜よ。我が前に現れたことを不運と思え。貴様の前に居るのは宇宙暗黒騎士ベルト・ラムバルド」
役に入り込めば、セリフはスラスラと出てくるものだ。
「我が槍は神を穿ち龍を堕とす一閃――――受けよ!」
莫大なエネルギーが一瞬でチャージされ。
「 |邪龍殺しの聖槍《ドラゴン・キラー》! 」
仮装の力でもって、宙域に満ちる力を取り込んだ、龍殺しが火を噴いた。
細い火線が、徐々に徐々に太く、長く、拡散し、それらもさらに力強く唸りを上げる、
「――――アンナ!」
『ああ、道ができたな…………じゃあ』
その光に重ねるように、アンナ・アンナの剣が、再度唸る。
『さっさと片付けて…………お菓子でも食べにいこうか』
それは、神を殺す炎。
それは、時代を終わらせる終焉の引き金。
名前を《|炎剣レヴァンテイン《ブレイズフレイム・ラグナロク》》。
光と炎。
二つの神殺しが、螺旋となって束ねられ、龍の軍勢へ突き刺さる。
――――極光が、宇宙を満たした。
龍が生み出した全てが否定され、後に残るは、暗黒騎士と処刑人のみ。
『――――戻るには、また、乗らないと駄目か……』
「せ、狭いのは我慢してもらって……あ、そうだ、お菓子、ちょっともらってきたんだけど……」
『……食べる』
そんな破壊をもたらしたようには見えない、二人の会話が、音が伝わらないはずの静かな宇宙に、少しだけ響いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ナターシャ・フォーサイス
○
惑星規模、となると流石に大きいですね。
ですがそれでもなお、過去から蘇りし哀れな魂と言うのなら。
この手で、楽園へと導いて…いえ。
この場合は黄泉へと送って差し上げるべきでしょう。
何故なら今の私は、タロットの13「死神」の仮装をしているのですから!
【召喚術】で天使達もとい悪魔達を召喚し、【オーラ防御】【結界術】による防御結界を張りましょう。
機械の大天使ではなく死神へその身を変じ、聖祓器の強化と飛翔能力を得ます。
悪魔達で動きを封じ、【高速詠唱】【多重詠唱】【魔力溜め】で紡いだ特大の魔力を【範囲攻撃】用に巨大化させた鎌に乗せ、【全力魔法】の一撃として叩き込みます!
悪魔達にも攻撃に連動させ、支援攻撃をさせましょう。
敵の効果で外してしまっても、【2回攻撃】による隙を生じぬ二段構えでその命を刈り取ります。
死してなお、蘇ると言うのなら。
死神として、代行者として、黄泉へとその魂を送りましょう。
それは使徒としても同じこと。形は違えど、そこに在る【祈り】は本物なのですから。
『ゴァ、ルルルル…………』
度重なる攻撃を経て、体内に残ったエネルギーを総動員して、龍は身体の再生を図っていた。
全ては、ハロウィン・プラネットを喰らえば解決することなのだ。
であればこそ――――。
死神の鎌は、最後までその生命を刈り取らんと、首元に迫るのだ。
??
ハロウィン・プラネットの大気圏を超えた位置に、文字通り陣を構えたナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)からみれば、天体が降ってくるようなものだ。
もう全体像がつかめないほど惑星に接近した龍の姿は、住人たちからもよく見えるだろう。
大災害、どころじゃない。
牙の一つでも地表に食い込んだら、惑星に暮らす何十億、何百億という生命がまとめて死に絶えるのだ。
(戦いと、犠牲の規模が違う――――)
数多の戦場を潜り抜けてきたナターシャも、それは実感できる。
これが、宇宙規模の……スペースオペラワールドの戦いなのだ。
「ですがそれでもなお、過去から蘇りし哀れな魂と言うのなら」
“エリュシオン”が光を放つ。
眼の前の災害を滅ぼさんと、強く、熱く。
「この手で、楽園へと導いて……いえ」
通常時ならば、それは『楽園』へ魂を誘う救いの灯火であり、誘導灯であるそれは。
「この場合は、黄泉へと送って差し上げるべきでしょう」
光が、禍々しい、命を刈り取る形状へと変化した。
ナターシャの仮装は、タロットカードの№13、『死神』。
あまねくものに終焉をもたらす、死の神である。
🎃
龍からすれば、|宇宙残骸《デブリ》より小さいナターシャの姿など、そもそも視認できては居なかった。
とうとう|餌《かぼちゃ》を射程圏内に収めて、大きく口を開いた、その直後。
『!』
光の壁が、龍の進行を阻んだ。
天使である――普段は清廉にして高潔たる彼らは、今は惑星の加護を受けられる悪魔の姿をしているが、使える力は聖なるそれ。
無数の天使が円陣を組み、魔法陣の基として機能し、巨大な結界を形成していた。
物理的な荷重と、振り絞った底力を持ってしても、一ミリたりとも牙が進まぬ不合理。
『ゴ、ァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
怒りのままに体躯を震わせ、吼える。
もし結界がなければ、その咆哮の振動だけで、地表がめくれ上がり甚大な被害が出ていただろう。
拮抗はつかの間、龍の勢いは更に増し、ビシッ、と光の壁に亀裂が走る。
にたり、と口の端を歪めて、さらに力を込める。
ヒビは更に大きく広がり、結界を裂いて――――――パリン、と大きな音を立てて砕け散った。
『グルァアアアアアアアアアアアアアア!』
もはや食事の邪魔をする者はなく、遮るものもいない。
勝利の咆哮と共に、喰らいつく――――その瞬間。
結界の破片が、野太い光の鎖となって、龍の体を拘束した。
『!?』
惑星規模の巨体すら縛り上げる光鎖は、地上から見れば天から伸びる光の柱に見えただろう。
結界を形成する魔法陣の役割は二つ、龍の巨体を受け止めること、そして拘束魔術の下準備だ。
巨大な龍からすれば、裏で幾重にも展開していた、複雑な魔法陣の文様などどうあがいても認識できやしない。
「死してなお、命を貪る為に――蘇ると言うのなら」
いつの間にか、龍の首元には、鎌が押し当てられていた。
同規模――いや、それ以上に巨大な何かが、光に縛り上げられた龍に触れている。
|楽園の使徒《アンロック・イニシエート》。
天使ではなく、死神の仮装をまとって顕現したそれは――名前の通り、終わりなき命に終焉を与えるだろう。
『グル……――!』
後少しなのに。
ほんの少し、顎を閉じるだけでよかったのに。
それだけで、数多の命を、文明を、貪り、喰らい、飲み下し、力とできたのに。
「死神として、代行者として、黄泉へとその魂を送りましょう」
機械仕掛けの死神が、大鎌を振るう。
無慈悲に首は断たれ、断面から、龍の姿が、光の粒子となって堕ちていく。
あたかも、冥府に誘われるかのように。
「それは使徒としても同じこと。形は違えど、そこに在る【祈り】は本物なのですから」
かくして――――ハロウィン・プラネットを襲う危機は去り。
そして、祭りが始まった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『スペース墓参り』
|
POW : お供物をする
SPD : ギャラクシー経文を唱える
WIZ : 静かに祈りを捧げる
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
🎃お祭りの始まり🎃
『星を喰らう者』の危機が去ったハロウィン・プラネットは正しくお祭り騒ぎだった。
そこかしこでトリックオアトリート、お菓子といたずらの無限供給。
惑星をあげてのトンチキ騒ぎは収まる気配を見せない。
一方で。
ハロウィンは、死者を迎える祭り。
広い宇宙では幾多の命が散り、また巡っていく。
その概念を凝縮したこの惑星においては、『死者の魂と巡り会える場所』として機能する、いくつかのパワースポットがある。
世界も、時間軸も飛び越えて、その場所にいる縁者にまつわる死者の魂が、現れることもあるという……。
🎃 🎃 🎃
大変おまたせしました。
第二章開始になります、大まかに以下の通りになります。
1:ハロウィンを楽しむ
そこいらで惑星の住人がハロウィンをしています、お菓子をあげるも良し、もらうも良し、いたずらするも良し、されるのも良し、デートをするのも良いでしょう。
あると言えば大概のものはあるようです。お好きな概念をどうぞ。
2:死者と対話する
ハロウィンのちからが満ちたこの惑星のパワースポットでは、その場所に居る縁者にまつわる死者の魂と巡り合うことがあるようです。
死者は会話をするかも知れませんし、ただ微笑んでいるだけかも知れません。
形を伴わない、あやふやな存在であるかも知れませんが……たしかにそこに居て、その存在を感じ取ることが出来るでしょう。
どのような形でも、会えない人との、わずかな再会の一助になれたら幸いです。
3:他にやりたいことがあったらどうぞ。
31日いっぱいじゃなくて31日の朝までであることが完全に抜けていたので開き直って若干余裕を持っていこうと思います。
よろしくお願いいたします。
ベルト・ラムバルド
【闇光】
○
バカでかい南瓜の被り物を被りつ
いやぁ何とかなりましたねアンナさん!
このどんちゃん騒ぎ…まさにこれこそハロウィンって感じですね!
…お菓子に夢中で反応薄い…がっくし…
ハロウィン…いたずらも許された特別な夜…
ならば…その魅惑の唇に口付けしても大丈夫なはず…!
以前サクラミラージュの事件で口付けして痛い目にあったが…
あの時は結婚式を模した儀式故…だが今宵はハロウィン!
ハロウィンパワーでなら悪戯なキスも許される!
きめるのだベルト!菓子のような甘いキスを!
アンナさん…ぐぉ…!?
不覚…バカでかい南瓜の被り物のせいでキスが出来ん!!!
ただの頭突きになってしまった~!しまった~!
ぐぁー!!目がぁー!!!
仇死原・アンナ
【闇光】
○
大きな南瓜の被り物を被りつ
お菓子美味しいなぁ…
この星そのものがハロウィンで…どこもかしこも大騒ぎだ…
賑やかだね…お菓子美味しい……うん…美味しい…
死者の魂…
私には死者は見えない…何故なら…
彼等は常闇の世界の上層にいて…生かされているからだ…
終わりなき生き地獄の中を生き続けている…闇の眷属どもめ…
いつかその上層で…|義父《ちち》に逢えるのだろうか…?
私の知る人達に…そして…顔すら知らぬ母にも…
私に出来るのは…
…いつの日か彼等に逢える日が来る事を[祈る]だけだ…
…?…なんだベル…ぐぇ…!
………………………………
……………………目潰し…
二本指で目を潰し[部位破壊]しよう……ばーか…はぁ……
トリック・オア・トリート!
トリック・オア・トリート!
お菓子くれなきゃいたずらするぞ、くれてもいたずらするぞ! されてもお菓子をあげちゃうぞ!
人間に近い種族もいれば、獣人、不定形、幽霊からタコみたいな星人まで。
惑星をあげて、お祭り騒ぎの乱痴気騒ぎの馬鹿騒ぎ。
「いやぁ何とかなりましたねアンナさん!」
ベルト・ラムバルド(自称、光明の宇宙暗黒騎士・f36452)がくぐもった声をあげた。
なぜくぐもっているのか?
クソでかいカボチャの被り物をしているからである。
重量もかなりのものであるはずだが、そこはそれ、鍛え上げられた騎士は頭を揺らすこともない。
通りすがった人々からは『すっげー……』『重そう』『トリック! って言いながら押したらどうなるかな』『やめよう』などといった声が聞こえるほどだ。
「うん、賑やかだね……」
「みんな笑顔で、よかったですね! 戦った甲斐がありました!」
惑星が潰えると怯えた恐怖から、全てが救われた反動で、人々は喜びに満ち溢れている。
お菓子をあげた方も、もらう方も、いたずらをした方も、された方も。
みんな、笑っている。
「まさにこれこそハロウィンって感じですね……アンナさん?」
「そうだな……この星そのものがハロウィンだ……」
……なんだか、隣にいる相棒のリアクションが雑な気がする。上の空というか、気が入っていないというか。
クソでっけぇカボチャの被り物のお陰で視界も全然明瞭ではない、何とか顔を横に向けると……。
「……………………」
「うん……美味しい……」
なんということでしょう、そこには無言でお菓子を片っ端から消費している仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)の姿が!
「トリックオアトリートー!」
「お姉ちゃんありがとー!」
「すごかったー!」
道行く人々が、彼女の持つ籠のなかに無尽蔵にお菓子を投げ入れていくので、手が自然に伸びて黙々と食べてしまうのである。
「お菓子美味しいなぁ……」
カボチャのパイ、パンプキンクッキー、マフィン……。
カロリーの塊のようなものだけど、カボチャを使ってるから野菜カテゴリに含まれるし、多分大丈夫だろう。
甘いカボチャと、焼き菓子の味が口いっぱいに広がる中で。
空を見上げる。広い広いスペースオペラワールド、輝く無数の星の先には、もしかしたらいま、こちらを見つめている誰かもいるかもしれない。
「………………」
目を閉じる。
お祭り騒ぎの中、『死者との再会』をしている者達が、いるはずだ。
自分もそうできれば、よかった。
言いたいことも、分かちたいことも、たくさんある。
けれど――――。
彼らの魂は、この星を訪れないだろう。
死してなお、それでも続く生き地獄という矛盾に、未だ囚われているからだ。
終わっているのに終わらせてもらえない苦痛を味わいながら。
いまも、まだあの場所に、存在しているのだ。
――――ああ。
ここに来てくれたら、どれほどよかったことか。
その願いがかなわないから――死神の鎌は、振るわれ続けるのだ。
(いつか――逢えるだろうか……)
その再会は、喜びになるだろうか、悲しみになるだろうか。
(私の知る人達に……そして……顔すら知らぬ母にも……)
その邂逅を、望んでいるだろうか、望まれているだろうか。
『その瞬間』が来るまで――わからない、誰にも。
「…………ん?」
考え込んでいる間、アンナは無防備だった。
だから、顔の真横に近づいてきたクソでっけぇカボチャに気づいたときには、もう回避不可能な位置にあった。
「ぐぇ」
ごがん、と小気味の良い音がしてごっつんこ。
頭部に鈍痛が走り――アンナの眼が、ぎろりとカボチャの向こうにいるベルトに向いた。
「………………………………」
無言で、抗議の視線を向ける。
いや、違うんです、とカボチャの騎士は抗弁した。
「い、いや、その、トリート、そう……トリートなんですよこれは」
ハロウィンとは、つまりイタズラが許された特別な夜。
物憂げに思索にふける彼女の横顔を見て我慢できようか。
そっと口づけを交えるぐらい、許されるのではないか……そう、だって今宵はハロウィン!
この惑星にはハロウィンパワーが満ちている! だから!
「……………………目潰し」
「ぐぁーーーーーーーーーー!!!!!!????」
長い指が容赦なくカボチャの隙間に入り込み、騎士の両目に突き刺さった、良い子は絶対に真似しないでね。
「……はぁ」
騒がしくて、空気が読めなくて、格好つけることばかり考えている相棒だ。
それでも、二人が一緒にいるのはきっと。
(……ばーか)
この胸を締め付けるような痛みを、忘れさせてくれるからなのだろうと思う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夕凪・悠那
○
2
そういえばハロウィンってそういうお祭りだったよね
だからって、まさかほんとに…ねえ?
外宇宙ってなんでもありだなーって
お母さんもそう思わない?
いざこうなると何話せばいいか悩むね
…ボクが目覚めた時にはもうお母さんはいなかったから
ちょっとショッキングなことは隠して、今までのことを話そうかな
* * *
――そんな感じで、この4年間が濃すぎてさ
ふと寂しさを感じるときはあるけど、ようやくいろんなことを受け入れられるようになってきた
お母さんはボクが危ないことしてるの反対する?
でもほら…この星からなら見えたかな
超巨大ドラゴン倒したとこ
ボクも結構強いし、頼りになる仲間も友達もいる
だから大丈夫
安心して、見守ってて
惑星を上げて盛り上がっていることを考えれば、そこは、あまりに静かな場所だった。
ハロウィン・プラネットの、カボチャのへたにあたる部分で、宇宙に広がる星々を、一望できる。
「……そういえばハロウィンってそういうお祭りだったよね」
デジタル人間である夕凪・悠那(|電脳魔《Wizard》・f08384)にとって、目の前でそれが起こるまで、実感のない出来事だった。
いや、そもそもハロウィン自体、彼女のいた世界じゃお祭り騒ぎの代名詞で、本来の役割なんて、忘れていたし……。
「だからって、まさかほんとに……ねえ?」
それ目当てに来た、というわけでもなかったから、困惑している、というのが正しいかもしれない。
外宇宙は、なんでもありで、宇宙は広くて、どんな不思議が起こってもおかしくないのだと……言い聞かせるしかない。
だって、これが嘘ならば、この再会も、なかったことになってしまうのだから。
「……母さんもそう思わない?」
本当にね、と言いたげに、女性――悠那の母親は――微笑んで、頷いた。
姿は見えていて、お互い認識できているけれど、向こうは、言葉は話せないようだった。
口は動いても、音にならず、空間を満たすのは、悠那の声だけだった。
それでも――――いろんな話をした。
別れはいつだったか。
悠那が戻ってきたときには、もう会えなかった。
「…………色々、あったんだ、聞いてくれる? ちょっと――――」
あんまり、ショッキングな話は、できないけど。
「――――長くなるけど」
例えば、星がぱっくり割れて、メンテを始めた話ぐらいなら、したっていいんじゃないかって。
🎃
声はないけれど、驚きも、笑いも、心配も、全部伝わってきて。
夕飯時に、今日こんな事があってさ、なんて話している時のように、自然に。
けれど、やっぱり母親は、母親で。
段々と、表情が曇ってきて、険しくなってきたのは。
言わなくても、伝わっているのだろう。
自分の子供が、戦いの渦中にいることに。
それはまだ終わっていなくて、これからも続いていくことに。
「お母さんはボクが危ないことしてるの反対する?」
言葉がなくても、顔を見ればわかる。
自分の理解できない世界に足を踏み入れた子供に……不安と、心配の入り交ざった表情。
そりゃそうだ。
やめて欲しいに決まってる。
けど――――。
「……この星からなら見えたかな」
悠那が手を広げれば、無限に広がるミルキーウェイを背景に。
「超巨大ドラゴン、ボク達で倒したんだよ、すごいでしょ」
超常の力を得た。
世界を渡り、数多の強敵と戦い、生き延びて。
頼りになる友達ができて、仲間がいて。
そしていま、ここに立っていることこそが。
「だから大丈夫」
悠那が生きてきて、乗り越えて、たどり着いたことの証明だ。
これからも、歩いていける事ができる、証だ。
「安心して、見守ってて」
涙よりも。
微笑みを手向けながら、大丈夫だからと言える強さを。
少女は、とっくに持っている。
――――そっか。
――――じゃあ、頑張れ。
――――でも、疲れたら、ちゃんと。
――――休んでね。
ほんの一瞬、瞬きの刹那に、もう、その姿は見えなくなっていた。
不思議と、寂しくはなくて……確かに、意思が繋がった、という確信と。
これからも、頑張ろう、と思う、強い決意。
「おっけ、了解」
きっと、返事は届いているだろう。
そうであってほしいと、思う。
「……トリック・オア・トリート」
星の手を伸ばしながら。
「素敵な|奇跡《いたずら》を、ありがとね」
その問いに、応じたわけではないだろうけど。
星が一つ、光の尾を引きながら、流れて落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
ナターシャ・フォーサイス
○
危機は去りましたか。
これで一安心、お祭りも楽しめると言うものです。
それで…何をしましょうか。
死者を悼みに…いえ。”あの子”はそうではないですしね。
『”私”は一度死んだようなものだけれど、エリーの中にいるでしょ。勝手に殺さないで頂戴?』
『それよりも、使徒として施すのが先じゃない?』
えぇ、そうですね。エリー。
では|施し《Treat》を。
死神たる今の私が用意するならば、人魂型のクッキーですとか、琥珀糖ですとか…
そう言ったものになるでしょうか。
沢山用意してありますから、どうか悪戯は避けてくださいましね?
悪戯を受けるのも、それはそれで楽しいのですけれどね。
施し、施される。そのような感じでいきましょう。
ハロウィン・プラネットの危機は去った。
祭りは盛大に行われ、あらゆる場所が喧騒に包まれている。
それは、猟兵達が――ナターシャがもたらした平和であり。
「これで一安心、お祭りも楽しめると言うものです」
結果そのものは、満足して受け入れるけれど、さて。
「それで……何をしましょうか」
そう、危機は去り、戦いは終わり――もう、猟兵としての役割としては終わっている。
祭りに興じるのも、有りかもしれないが……いま、ナターシャが繁華街に出向けば、誰もが彼女をたたえ、感謝を述べ、ありとあらゆる接待をしてくれるだろう。
気持ちは嬉しいけれど。
感謝は受け取れるけれど。
それを心地よいと思えるかどうかは、また別問題で。
「……死者を、悼みに」
行くにしても、この戦いでは民間人の被害は、ゼロだった。
ならいっそ――――自分の。
「いえ」
一瞬、頭をよぎった思考は、首を振って消去する。
「”あの子”は、そうではないですしね」
肯定するように。
『”私”は一度死んだようなものだけれど、エリーの中にいるでしょ』
頭の中に、声が響|く《かない》。
『勝手に殺さないで頂戴?』
よく知った声が聞こえ|る《ない》。
『それよりも、使徒として施すのが先じゃない?』
それは、自分の中にあるモノが、自分の中で反響しているだけだから。
「えぇ、そうですね。エリー」
たとえどれだけ騒がれようと。
楽園へ導くものとして、初志貫徹。
でなければ、道は開かれない。
🎃
思っていたよりは、騒ぎにならなかった。
と言うか、大騒ぎしていたし――考えたら、目立ったのは馳せ参じてくれた天使たちの方で、戦いの規模からすると、ナターシャ自身は豆粒の様なサイズだったわけで。
その上で、惑星規模でやっているお祭りなのだ。例えば、小さな村に足を向けてみれば、静かに祭りに興じているような所だってあるものだ。
「トリック・オア・トリート! えーっと、おねーさん、何の仮装?」
「ふふ――死神です」
「ひぇええ! じゃあトリート! トリートで!」
なんて、怯える子供に、透き通る、結晶のような物を渡してあげる。
「へ? なにこれ、宝石?」
「に、見えますか? 琥珀糖という、お菓子です」
寒天と、砂糖と、色素で作る、ほんのりと甘い、固形のゼリーとでも言うべきか。
ハロウィン・プラネットのお菓子文化は、こちらで言うところの洋風に傾いているらしく、初めて見る宝物のようなお菓子に、目をキラキラと輝かせる子供に、ナターシャも小さな笑みを浮かべる。
「おーい! みんなー! 見てみてー! すっげーお菓子もらったー!」
…………となれば、当然、子供は自慢するわけで。
「えー、何々ー?」「うわ、綺麗ー!」「俺もほしー!」
「トリックオアトリート!」「お菓子くれなきゃー!」「いたずらするぞー!」
人口の少ない村だと思っていたのに、どこに潜んでいたのやら。
ぞろぞろと現れるイタズラっ子達には、流石に目を丸くしたけれど。
「沢山用意してありますから……どうか悪戯は避けてくださいましね?」
一人に、一袋ぐらいなら、なんとか間に合いそうだ。
悪戯を受けるのも、それはそれで楽しいものだけれど。
お菓子を施し。
感謝を施される。
今日は、そのような感じで行きましょう。
「トリック・オア・トリート」
明日からも、この言葉が、愉快な星に響き続けますように。
大成功
🔵🔵🔵
ニィナ・アンエノン
よっし、危機は去った!
それじゃ切り替えてハロウィンを楽しもう!
トリックオアトリート!スペース海賊のお出ましだぞ☆
にぃなちゃんはお菓子も好きだけど悪戯も大好き!
向こうがお菓子はあげない!って言って来たら、冗談でしたとか言う隙もあげない!
間髪入れずに飛び付いて背中におぶさっちゃおう。
ちなみにお菓子をくれた場合はぎゅーっと抱きついてお礼するぞ!
海賊だから手段は選ばない、目標は出会う皆をびっくりどきどきさせる事だ!
にぃなちゃんはやっぱり生きた人とお祭りを楽しみたいんだよね。
それならもう、街の皆とお話しながら美味しいお菓子やお酒で盛り上がるしか無い!
ノンストップで行こう☆
全長30mを越えようかというクソデカいカボチャの馬車のてっぺんに、彼女は居た。
しっかりとマストを立てて、帆に描かれたドクロのマークは、まさに陸路を征く海賊船である。
いや、海賊馬車といったところか、海ってなんだろう、多分人の海を泳いでる。
勇ましき海賊帽、ご立派なカットラス、リボルバー・ピストル。
そう、スペース|海賊《パイレーツ》ことニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)ちゃんである。
「トリック・オア・トリート~!」
「「「トリック・オア・トリート~!!!!!」」」
|惑星《ほし》を救ってくれた英雄自らの祭り参加である、そりゃあ盛り上がろうというものだ。
あちらこちらから、一目ニィナを見ようと詰めかける見物客達の声援に応じて手を振れば、熱狂はさらに盛り上がる。
「お菓子くれなきゃ~?」
「「「いたずらするぞ~!!!」」」
「じゃあ、お菓子ちょうだ~い☆」
「「「おおおおーーーー!!」」」
テンションは最高潮、勢いも最高潮。
取り掛かる人々が次々に馬車に向かってお菓子を投げ入れる。
割れようが形が崩れようがお構いなしだ、ちゃんと食べられればそれでオッケー。
しかし、スペース|海賊《パイレーツ》ニィナ船長の目はごまかせない。
「とう!」
「わぁ?!」
いきなり海賊馬車から跳躍すると、観客の一人の背中に、勢いよく抱きついた。
ガタイの良い青年だが、締まるところは締まり、でているところはでているニィナである。
そんな勢いで密着されれば、あたるものがあたって大変、青少年にナンカヨクナイ。
「見~た~ぞ~! お菓子くれなかったなぁ~? イタズラだーっ!」
「うわ、でっか……じゃなかった! 勘弁してくださ…………あります! お菓子あります!」
「ほほう?」
「こ、これ、カボチャの……ママレード……」
「わ、美味しそう~、じゃあ、これはお礼だ!」
「ウワー!!!!!!」
差し出されたお菓子を受け取ると、今度は正面から抱きつくニィナ船長。
つまり前か後ろかの差なのであって、青年はあえなくノックダウン。
海賊は手段は選ばない――今日はハロウィン。
出会う全員を、びっくりどきどきさせて、一生思い出に残る最高の一日にしていくのだ。
死者と出会う機会は、確かにあったかもしれないけれど。
それよりも、今を生きる人々と、お祭りを楽しみたい。
美味しいお菓子、美味しいお酒、まだまだ続く大騒ぎ。
楽しまなければ、大損というものだ。
「みんな~! ニィナちゃんについてこい! ノンストップで行こうっ☆」
わぁ、と歓声が上がって、歩く道の後ろに行列ができる。
彼女を中心とした大騒ぎは、三日三晩続くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
黒炎の盾使ってふっくら膨らんだホットケーキを量産して、ハロウィン・プラネットの住民と交流を持ちますか。
トリックオアトリート、お菓子くれなきゃいたずらすんぞー。お菓子をくれたらホットケーキをお返し。悪戯してくるようならホットケーキを避難させて火力増強。
パワースポットに行って死者との対話はしていかないの、って? ……別にあの人も私にかけたい言葉なんてないでしょ。お互い不機嫌になるのが分かっていて叩き起こすほど私は畜生ではないよ。
ITEM NAME:黒炎の盾
TEXT :炎を発する特殊な金属製の巨大な盾。その気になれば直火焼きも鉄板焼きも出来る。
>その気になれば直火焼きも鉄板焼きも出来る。
……ということで。
カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)は愛用の盾に薄く油を引いて、お玉からゆっくりと注ぐように生地を落とした。
火力の強弱は自由自在――ホットケーキをふくらませるには、弱火でじっくりと時間をかけることだ。
卵白混ぜ込み…………とまあ、細かいレシピは置いといて。
「ふーむ、我ながらいい出来じゃない?」
ある程度焼けて食べれる状態になったら、屋台のように待ち構える。
焼き立てで、バターも蜂蜜もすぐ溶けるような温度のものをそのまま提供できるというわけだ。
「お、すげー、うまそー、これ何ー?」
甘い匂いにつられたからか、早速子供が寄ってきた。
カボチャの被り物をしているが、多分男の子だろう。
「ホットケーキ。この|惑星《ほし》にもあるでしょ?」
「えー、俺見たことないよー」
「……そうなの? ま、いいけど。言っとくけど、お菓子と交換だからね、トリック・オア・トリート」
「うげー、ケチだなあ姉ちゃん」
「ちなみに、イタズラしたら」
鉄板にされた黒炎の盾の端から、ごう、と一瞬だけ、火柱が上がる。
「こうだから」
「…………んじゃ、これと交換――――は、駄目かな」
なんとなく言葉遣いも改まった子供は、ポケットから、小さなキャンディを取り出した。
普通に考えれば、勿論『釣り合う』とはいい難いのだけれど――――。
「いいよ、ほら。トッピングはそっち、好きにかけて」
紙皿にホットケーキをのせて、渡してやる。
「へ、いいの? キャンディ一個だよ?」
「別に儲けたいわけじゃないって。そういうお祭りでしょ? 今日は」
「…………そっか、へへ、さーんきゅ!」
ケーキを受け取って、嬉しそうに駆けていく子供の背を見送った――矢先。
「うまそうな匂いがするー!」
「俺もたべたーい!」「あたしもー!」
「すっげ! ケーキだー!」
ぞろぞろわらわらと、次から次へと、カボチャをかぶった子どもたちがやってきた。
あまり人通りの無いところに店を構えた(?)つもりだったが、あっという間に列が形成されている。
しこたま作ったつもりだったが……。
「あーもう、順番に並ぶ! そこ、割り込みしない! 全員分作ってやるから!」
わぁ、と歓声があがり、黒炎の盾は、その日ものすごく酷使されたという。
🎃
「おや、失敬……猟兵の方ですよね」
最後の一人にホットケーキを渡し、やっと一段落したところで。
入れ違いに、カーバンクルの前に現れたのは、仮装はしているが、最低限、といった風体の、壮年の男性だった。
「この度は、ありがとうございました。流石にもうダメかと」
「いいって。お礼言われたいわけじゃないし」
必要だったから戦って、それが終わったから、せっかくだし、祭りに参加している。
ただ、それだけだ。
「なんと謙虚な…………おお、そうだ、会いたい方とは、お会いできましたか? それを目当てに、他の星から来る方もいるのですが」
その問いに、カーバンクルは、ふぅー、と少し長い息を吐いた。
それは、ある種無遠慮な質問に対する憤りだったのかもしれないし、単に溜まった疲労がこぼれ出たのかもしれない。
どちらだかは、彼女にも、多分わからなかった。
目線を落とし、黒炎の盾についた焦げを削ぎ落としながら、小さくつぶやく。
「……別に、みんながみんな、それ目当てなわけじゃないでしょ?」
「確かに、これは失礼しました……ですが、貴女が来てくれたおかげで、子どもたちは楽しそうです、ありがとうございました」
「だから、お礼を言われることじゃないって――お返しももらって」
その瞬間、違和感を感じて、不意に顔を上げる。
そこには、誰も居なかった。
ホットケーキを受け取って、賑やかに騒いでいた子どもたちも、いつの間にか、どこにも居ない。
ただ、カーバンクルだけがそこに立っていた。最初から、何も居なかったかのように。
「……なるほどねー」
ハロウィンは、死者の祭り。
この惑星は、死者が還る星だ。
つまり、そういう事なんだろう。
あるいは……これも、ちょっとした、イタズラなのかもしれない。
『会いたい方とは、お会いできましたか?』
「別に、あの人も私にかけたい言葉なんてないでしょ」
まあ、楽しそうだったからいいか、と、再び、黒炎の盾の掃除を再開する。
「お互い不機嫌になるのが分かっていて、叩き起こすほど私は畜生ではないよ」
だから、これで良いのだ。
死者への手向けは、もう終わったのだから。
大成功
🔵🔵🔵