●何も知らぬ
「いたぞ!」
「逃がすんじゃない!」
サクラミラージュの表通りに面した百貨店・百越屋。度々盗人が出ると云う噺をご存知だろうか。
何故そんな噺をするのかって? それが私自身が盗人……いやこの名は美しくない。せめてそうだな、怪盗と名乗ろうか。
仕切り直しだ。私がその怪盗なのである。
怪盗自ら自己紹介するなど変な噺だろう? だがその可笑しな噺で笑っている君の顔が見たかったと言ったらどうする?
私は怪盗。性別年齢体躯は自由自在。君の見たい様に、知りたい様に姿を変える。其れ故、正体不明で或るが故に私はけして捕まりやしない。
何故こんな事をするのかって? ふふ、愚問と言えば愚問。しかし良い質問だ。
それは君の、君らの様々な表情を見たいのさ!
可笑しいと笑うか?
――其れは君の悲しみを、涙を盗みに来た私の手腕。
傍迷惑と呆れるか?
――其れは君の尊き時間を、暇を盗んだ私の手癖。
追い掛けて捕まえてみるか?
――其れならば私の足取りを、手取りを掴んでみるといい。
嗚呼けれど私にも盗めないものが或る。
其れは一体何だと君は思うだろう。
其れは――ときめきという、どんな宝石よりも眩く美しい人の感情さ。
君には得る事ができるかい? 其れならば此の私に見せて、魅せておくれ。
とっておきのときめきと云うものを!
●何も存じぬ
「傍迷惑ですよね」
目を細めて張りのある声量で言い放った後、琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は溜息を一つ零す。
「サクラミラージュの百貨店に出てくるという怪盗さんです。百貨店にあるものを盗んでいく方なのですけれども、百貨店の物を盗むだけで正体は不明。それも盗むのは宝石とか美術品……高価であるものならまだ分かります。でもそれだけに収まらず、ぬいぐるみやハンカチ、タオル、箸。ただの折り紙で折った鶴とか比較的安価とされるものまで盗むみたいなんです」
変なの、と言いたげな目線を横にして琴子は首を傾げる。
「まあでも百貨店ですからね、色んな物があって楽しいですよね。この間も……」
目を閉じながらもふふん、と言おうとした琴子は我に帰ってそうではないと咳払いを一つ零した。
「ま、まあ。様々なものがあって楽しいですし、何か買ってもいいんじゃないでしょうか」
ごそごそと持っていた篭の中から取り出した飴を一つ摘まんで取り出した琴子はその包装紙を解いて口の中に入れた。
「トリックオアトリート。世間はハロウィン……とはいえども、あげるのは何もお菓子ではなくともいいじゃないですか」
もごり。口の中で転がさずに頬に飴玉を止めておいた琴子の頬はぽこりと小さな円ができている。
「此れを機に何か良い物を贈るのも良いと思うんです。その場合、何と言えばいいのでしょう?」
未だ分からぬ言葉を暫し悩んでいたけれども分からない。だから今度調べておこうと考えた琴子は両手を差し出す。其の掌の上では新緑の木の葉が光を纏ってくるりと舞う。
「どうぞお気をつけていってらっしゃいませ。どうか其の心は盗まれません様に」
さけもり
さけもりです。大きめのお店は楽しくて好きです。
此方のシナリオのプレイング受付日時はタグ・MSページ及びTwitterをご確認下さい。
1章では百貨店でお買い物ができます。
地下には食材売り場と花屋。1階は化粧品、2階はブティック。3階は高級文房具。4階は呉服屋。5階はレストラン。屋上は本日閉鎖されております。
その他ご用命はコンシェルジュまでお伺いくださいませ。
2章では夜の百貨店にて盗人、もとい怪盗との対峙となります。断章の追加を予定しております。
手に入れたものの評価、想い出などを語れば賞賛の言葉が返ってくるでしょう。
追い掛けっこもお得意で、捕まえるには一苦労するかもしれませんが捕まえた暁にはその姿を現すかもしれません。
あなたはいったい何でしょう。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『贈り物選び』
|
POW : 楽しい物を選ぶ
SPD : 便利な物を選ぶ
WIZ : 癒やせる物を選ぶ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御簾森・藍夜
【朱雨】
ふふ、帝都での買い物というのも久々で面白い
暁、何か見たい物はあるか?
ふむ。ならぐるっと回りながら上、行ってみるのはどうだろう
ふと、暁が何かを見つけてじっと見るか等覗き込み
……暁?ん、あぁ確かにつけた物に似ているな
(欲しそうだが…)
――それは、買……そうか
(似合うと思うし―こっそり購入)
上までたどり着いたらレストランで休憩がてら軽食と茶を
うん、一棟にいろんな店があると中々楽しめたなら良かった
……でな、俺と揃いのようになってしまうが、その、これ
(そっとチョーカー包んだ箱を渡す
嫌でなければ、好きな時に使ってくれ
必要なければ捨てて――……そうか
なあ暁、俺が……その、暁につけても?
ん、似合ってる
楊・暁
【朱雨】
百貨店なんて初めてだ…!
いや、もう何があるかも分かんねぇし…
ん、そうしよう
物珍しさにきょろきょろ
―あ
見覚えあるデザインに足止め
…これ、藍夜が浴衣着てたとき、首につけてた飾りに似てねぇか?
お前とお揃いなら、欲しい…
けど、こういうの…似合うか分かんねぇし
苦笑滲み
全フロア回ってお腹も満たして紅茶でまったり
百貨店って、良く言ったもんだな…
本当に色んな店あって、楽しかった
…え?俺に…?(中身開け
…これ…(瞠目&喜び滲ませ
…嫌なんてことねぇし、捨てたりしねぇよ、絶対
ありがとう…大切にする
…でも、俺、なんか貰ってばっかりだな
ああ。付け方分かんねぇし
首許開け
…ついた?似合うか?(きょと
肯定にははにかみ
●櫻の雨降る國の店
「百貨店なんて初めてだ……!」
瞳を輝かせて百貨店・百越屋の大きな扉を潜り抜けた楊・暁(うたかたの花・f36185)は辺りをきょろきょろと見回す。
入口にいた獅子の銅像。天井にはシャンデリア。壁面の大理石。異国にも思えるその場所は気分が高揚するものの、普段見慣れた景色で落ち着かない。
一方、黒のスーツを纏った御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は懐かしんでいた。
「ふふ、帝都での買い物というのも久々で面白い」
何度か百貨店に足を運んだ事はあったけれども、隣にいる暁のはしゃぎように微笑みを浮かべる。
「暁、何か見たい物はあるか?」
「いや、もう何があるかも分かんねぇし……」
「ふむ。ならぐるっと回りながら上、行ってみるのはどうだろう」
「ん、そうしよう」
エスカレーターで2階に上り、ブティックのブランドが立ち並ぶ店舗の物珍しさに暁はきょろきょろと見回す。
「――あ」
見覚えのあるデザインに暁は足を止めた。これは確か……。
「……暁?」
「……これ、藍夜が浴衣着てたとき、首につけてた飾りに似てねぇか?」
「ん、あぁ確かにつけた物に似ているな」
「お前とお揃いなら、欲しい……」
「――それは、」
買えばいいんじゃないか。その言葉が藍夜の口から出てくる前に暁の言葉で塞がれた。
「けど、こういうの……似合うか分かんねぇし」
良いんだ、と苦笑いを滲ませた暁に藍夜は暫し考えた後にそうか、と呟いた。似合うと思うし――こっそりと購入をしていたのだが。
五階でございます。店内を見回る頃には足は疲れて、エスカレーターでエレベーターガールの案内でレストランへ辿り着いた二人は休憩がてら軽食で腹を満たして、口直しに茶を含んで休んでいた。
「百貨店って、良く言ったもんだな……」
椅子の背もたれにもたれ掛かって言う暁は足をぱたぱたと揺らしている。
「うん、一棟にいろんな店があると中々楽しめたなら良かった」
「本当に色んな店あって、楽しかった」
にへ、と微笑む暁に藍夜はごほんと咳払いを一つ。
「……でな、俺とお揃いのようになってしまうが、その、これ」
自身のポケットから取り出したのは小さな白い箱。赤色のリボンでラッピングされていて、何だろうと暁はきょとりとしていたものの、そっと渡された事に驚いていた。
「……え、俺に……?」
中身を開けていいのかと藍夜に確認すれば、うん、という頷きと共に返ってきてゆっくりとそのリボンを解き、箱を開けた。
「……これ……」
瞠目し、瞬かせてその顔に喜びを滲ませる。
「嫌でなければ、好きな時に使ってくれ。必要でなければ捨てて――」
「……嫌なんてことねぇし、捨てたりしねぇよ、絶対」
ぎゅ、と箱ごとを抱き締める暁に藍夜は内心良かった、と思いながら口元に笑みを浮かべて呟く。
「……そうか」
「ありがとう……大切にする。……でも、俺、なんか貰ってばっかりだな」
「俺があげたかったからいいんだよ。なあ暁」
「うん?」
「俺が……その、暁につけても?」
「ああ。付け方分かんねぇし」
襟が窄まった服の釦を外し、首許を晒して付けやすいように上顎を暁はあげた。その白い首に、飾りの留め具を外して藍夜は優しく、苦しくないかと尋ねれば平気、と呟かれる言葉に安堵しながら留め具を留める。
「……ついた? 似合うか?」
きょとりと目を丸くして、今この場に鏡が無いのが心残りと言わんばかりに首を見下ろそうとするも自分では見えない。
「ん、似合ってる」
肯定の言葉に暁ははにかむ。
花を模したものが付いた、白色の雲の様な揺らめきの首飾りは首で可憐に咲いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・響
娘の奏(f03210)と参加
まあ、サクラミラージュに怪盗は付き物だが、百貨店に現れるのは困るね。
怪盗が現れるまで奏と買い物を楽しもうか。この世界は思い入れが深い。買い物も心ときめくね。
え、新しい化粧品欲しい?そうだね、奏も今年で19歳だ。少し大人っぽい化粧品揃えた方がいいか。
奏に赤いルージュや赤みのアイラインやアイシャドウを進める。ああ、セットで買おうか。このオールドローズの化粧品はアタシに?ありがとう。奏もいいセンスしてるじゃないか。
薔薇の香水も欲しい?買おうか。さて、とりあえず揃った。これで大人になる準備は出来たね?(真っ赤になる奏の頭を微笑んで撫でる)
真宮・奏
母の響(f00434)と参加
そうですね。私達家族もこのサクラミラージュで何人か怪盗と出会って来ました。今回は百貨店に現れますか・・・何て迷惑な。まあ、怪盗が実際に現れるまでお買い物楽しんでいいんですね?
はい、私ももうすぐ19歳ですから、大人の女性らしい化粧品が欲しいです。そうですね、少し赤みの強い化粧品に挑戦してもいいかも。お母さん、このオールドローズの化粧品似合うんじゃないですか?
あ、薔薇の香水も欲しいです!!(包みを抱えて満足そうな顔)大人になる準備は出来た?そ、それは・・・(顔真っ赤)
●薔薇の香る頃
サクラミラージュに怪盗は付き物……とはいえども、百貨店に現れるとなると困ると感じたのは真宮・響(赫灼の炎・f00434)だった。
「何か盗まれても困るしね」
「今回は百貨店に現れますか……何て迷惑な」
今日は母と娘である真宮・奏(絢爛の星・f03210)だけのお出掛けだけれども、自分たち家族もこのサクラミラージュで何人か怪盗と出会って来た。
危害を加えないのはいいかもしれないが、売り物を盗むだなんて良くない。百貨店に損害を与えている怪盗行為は見過ごせなかった。
「でも怪盗が現れるまで時間があるようだし……買い物を楽しもうか」
「まあ、怪盗が実際に現れるまでお買い物楽しんでいいんですね?」
この世界には思い入れが深く、買い物も心ときめくよねと言う響の顔は楽しそうで、隣にいる奏にも楽しんでほしいと思ったのだった。
「奏、何か欲しい物はない?」
「新しい化粧品、かな……」
「え、新しい化粧品?」
「はい、私ももうすぐ十九歳ですから、大人の女性らしい化粧品が欲しいです」
どんなものがあるかなんて知らないから、教えて欲しいと奏は響にお願い、と頼み込んだ。暫し悩んだものの、少し大人っぽい化粧品を揃えた方がいいか、と思い百越屋の扉を潜り抜ける。
「大人っぽいもの……っていうとやっぱり赤かね。ああでもいろんな赤があるから自分の手元とかに一回出して試してみるといいかも」
「そうですね、少し赤みの強い化粧品に挑戦してもいいかも」
「まずはアイラインやアイシャドウなんかどうかな」
美容相談員が何か御座いましたらお申し付けください、と頭を軽く下げて迎え入れてくれて二人はカウンターに並んだアイシャドウを指先で取っては手の甲につけてみる。
「うん、これいいかも。セットでもらおうか」
「あっお母さん、このオールドローズの化粧品似合うんじゃないですか?」
「アタシに? ありがとう。奏もいいセンスしてるじゃないか」
じゃあこれも、と美容相談員に渡して、お会計の準備に入る最中、ふわりと奏の鼻腔を掠める薔薇の香り。あ、と呟きながら薔薇の花束に埋もれたようなその香しい香りに奏は響に向かって両手を握りしめた。
「あ、あの店員さんがつけてる薔薇の香水も欲しいです!!」
「薔薇の香水も欲しい?」
「有り難うございます、では此方だけ先にお渡し致しますね。香りを是非お楽しみくださいませ」
簡素な紙袋に包まれた香水瓶を奏に渡し、美容相談員は他の商品を包んでいく。
「えへへ……」
胸に包みを抱えて満足そうに嬉しそうな顔する娘を横に、響は微笑んだ。
「さて、とりあえず揃った。これで大人になる準備は出来たね?」
「大人になる準備は出来た? そ、それは……」
どういうことなの、と言いたい唇は噛み締められていて俯き、奏は顔を真っ赤にしていた。
そんな慌てて大人にならんでもいいのになあと紅くなった奏の頭を微笑みながら撫でる響の姿を見た美容相談員は、仲が良いご家族ですねと呟きながら選んで貰った商品を包んだ紙袋をそっと渡す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルルマ・リュネール
【連×】 ◆素顔でお忍び
ふぅん。ここ怪盗に狙われてるんだ。ふぅん?
そして一見価値のないモノも盗る、と
……ふふ、そういうこともあるかもね
高価な品よりずっと心を震わせるモノっていうのはあるから
まあ私は買い物に来ただけの普通のひとなんですけれど
へぇ……高級文房具かぁ
あんまり気にしたことなかったけどこだわってみてもいいかも
なにしろ人に見せるための文章を書くこともありますので
目をつけたのは幻朧桜の柄が入った万年筆
試し書きさせてもらおうかな
さらり、書いたのは『頂戴します』
ふふ、なんてね。これくださいな
さてと、あとはのんびり見て回ってようかな
ついでに侵入、逃走経路に使えそうなところに目をつけておく。一応、ね
●桜色の咲く頃に
「ふぅん。ここ怪盗に狙われてるんだ。ふぅん?」
昼に姿を現したルルマ・リュネール(怪盗リュネール・f31597)は百越屋の建物を下から上へ、上から下へと見上げ、見下ろしながら呟いた。
「そして一見価値のないモノも盗る、と」
今日は体のラインがはっきりと出る怪盗姿の服ではなく、完全なオフ。素顔も隠さずに私服姿でその敷地内へと堂々と入って行く。
唇を釣り上げて微笑むルルマはそういうこともあるかもね、と心の内で呟いた。
高価な品よりもずっと心を震わせるモノ。それは金銭や新しい・古いということで比べられるものではない。たとえどんなものでも心を震わせるモノは必ずある。
「まあ私は買い物に来ただけの普通のひとなんですけれど」
顔や体を彩り、飾るフロアを抜け、三階に辿り着いたルルマは硝子のショーケースの中に入っている筆、墨、インクの数々にそちらに足を進めた。
「へぇ……高級文房具かぁ」
あんまり気にした事はなかったけれど、こだわってみてもいいかも、とそのショーケースの中を覗き込むと店員が静かに頭を下げて、いらっしゃいませと声を掛ける。
「何かお探し物ですか?」
「ええ、ちょっと良い文房具を探しに。なにしろ人に見せるための文章を書くこともありますので」
「全て試し書きができますので、お気軽にお申し付けください」
「そう? ならこれを試し書きさせてもらおうかな」
目についた幻朧桜の柄が入った万年筆を指さした。ショーケースの中から取り出し、インクを補充してから手渡された万年筆にルルマはさらり、と白い紙に書いたのは――『頂戴します』の五文字。
「ふふ、なんてね。これくださいな」
お気に召して頂けたようで何よりです。そう告げた店員は万年筆を箱に丁寧に入れて、ルルマが出したお札と小銭を数えて手渡した。
「さてと、」
あとはのんびり見て回ってこようかな。そう辺りを見回しながらルルマは歩いて行く。
侵入するなら此処。逃走経路に使えそうなあの場所。目星を付けておく。
「一応、ね」
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
【犬兎】
ブティックの後文房具店へ
夏輝君もオシャレだから服選んでほしいし
あ、服はちゃんとメンズものでお願いね?(笑顔で威圧
文房具店は…勉強は苦手とはいえ、書き物は嫌いじゃないでしょ?
買ってあげたいものがあるんだ
ファッションセンスは今回は夏輝君にお任せするよ
選んでくれた組み合わせは一通り購入
え、服くらい自分で持てるよ?
まぁ、ありがとう…
文具店では真っ直ぐにインク売り場に
夏輝君、写真撮るの好きでしょ?
アルバムに色々メモ書き込んでるのも見るし
勉強は苦手だけど日記は時々書いてるっぽいし
僕も以前自分専用のインク作った時は凄く心が弾んだから
夏輝君も作ったらいいんだよ
何色でもさ
セットでガラスペンも買って行こう
小林・夏輝
【犬兎】
服なぁ…澪に着てほしい服は色々あるけど
キャミ系の服に上着合わせるスタイルとか…あっ、ハイ
澪は男とはいえ特徴でもある可愛さは潰したくねぇし
たまにはダボっとした着こなしもアリじゃね?
ズボンは足首くらいで折ってだらしなくならないように
帽子やアクセはこう…いや、こっちの組み合わせの方がいいか?
買った服は全部持つ
澪には何も持たせる気は無ェよ、言わねぇけど
で、俺に買ってあげたいものって?
インク…そういや俺黒ばっかだな
えっ、日記気付いてたのお前…!?
うわはっず…いやでもそこまで考えてくれたのは嬉しいわ
何色でも…どうせなら身内全員分の色揃えてみるか
んで、澪も一緒に使おうぜ
カラフルな日記も楽しいだろ
●虹色に染まる日々
二階。ブティックフロアーはメンズ、レディースの服が混在しており、その境界も曖昧だった。
君はお洒落でしょ。そう栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に言われて小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)は付いてきた。
「服なぁ……澪に着てほしい服は色々あるけど」
ちら、と夏輝が見たのはレディースの服の数々。
「夏輝君もオシャレだから服選んでほしいし」
「キャミ系の服に上着合わせるスタイルとか……」
「あ、服はちゃんとメンズのものでお願いね?」
にっこり。可愛らしい顔の笑顔の表情はどこか威圧感のあるもので、夏輝の言葉を遮っていく。頭の中にふわふわと浮かんでいた案が掻き消されていった夏輝は素直に答えた。
「あっ、ハイ」
「ファッションセンスは今回夏輝君にお任せするよ」
とは言っても夏輝が考えるのはやはり澪の普段の装い。比較的女性が着ているような装いが多いものの、今回の要望はメンズ。だけれども特徴でもある可愛さは潰したくない。可愛らしい服は夏輝にとってはあまりよくわからないけれども、普段目にする澪の装いは桃色だったり、ふわふわした装いだったり、どちらかと言えば女性が着ていても違和感が無いものばかり。それと、きっちりとした畏まった装いも多かった気がする。
だから今回は敢えて。
「たまにはダボっとした着こなしもアリじゃね? 例えばなんだけど、デニムのサロペットにシンプルなTシャツとか組み合わせても良いと思うし。ズボンは足首くらいで折ってだらしくならないように。帽子やアクセはこう……いや、こっちの組み合わせの方がいいか?」
手にしたのはベレー帽と野球帽。そして夏輝の視線の先には腕時計か懐中時計。どれがいいかと組み合わせている内に野球帽と腕時計に決めた様だった。
選んで貰った組み合わせは一通り買った澪の手にはそこそこ大きめな紙袋……がある筈。それをひょいと軽々しく持った夏輝を見上げる。
「え、服くらい自分で持てるよ?」
「買った服は全部持つよ」
澪には何も持たせる気は無い夏輝はそれを肩越しに背負って、歩きはじめる。
「で、俺に買ってあげたいものって?」
「こっち! 買ってあげたいものがあるんだ」
エスカレーターで一つ上の階へと上がり、澪は真っ先にインク売り場へと足を進めていく。
「夏輝君、写真撮るの好きでしょ?」
文房具売り場に寄ったのは夏輝が勉強は苦手とはいえ、書き物が嫌いではないことを澪は知っていた。
「アルバムに色々メモ書き込んでるのも見るし、日記は時々書いてるっぽいし」
「インク……そういや俺黒ばっかだな。えっ、日記気づいてたのお前……!?」
空いた手で口元を隠し、目線をずらすも、頬はほんのりと赤く染まっている。
「僕も以前自分専用のインク作った時は凄く心が弾んだから夏輝くんも作ったらいいんだよ、何色でもさ」
「何色でも……どうせなら身内全員分の色揃えてみるか。んで、澪も一緒に使おうぜ」
目を伏せてにっ、と夏輝は澪に笑い掛け、何色がいいかなとショーケースの中を見つめる。
色褪せる事のない顔料インク。彩り豊かな染料インク。輝きを増したラメ入りインク。どれがいいかなと考える二人。
「カラフルな日記も楽しいだろ」
様々な色を試せるように硝子ペンも一緒に買って、日々を彩って行こう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『帝都の闇を往く』
|
POW : 犯罪者から情報を引き出す
SPD : 貧民窟で情報を集める
WIZ : 娼婦から情報を聞き出す
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●私はいったい何でしょう?
「今日はいないな……警備良し!」
「次は屋上か……ん? なんだこれは」
「なっ、鍵が開いている!」
「奴だ! 奴が出たぞ!」
夜の帳が落ちる頃。其れは現れる。
そう其れとは即ち私の事!
賑やかな警備員達の目と監視カメラを欺き、懐中電灯の光を潜り抜け、屋上へと我先に辿り着いたはそうこの私。
嘗ては賑やかで誇りに満ち溢れていた遊具達集う屋上遊園も錆と埃に塗れた廃屋よ。
「居たぞ! こっちだ!」
階段を駆け上がる音が近づいてくる。けれども扉は開かない。何故ならば君達警備員はお呼びではないのだからね。
諦めて階段を駆け下りる音が聞こえればその扉は再び開かれる。
「待っていたよ探偵諸君……いや、この場合猟兵諸君と名を改めた方が良いかね。私は怪盗。この百貨店・百越屋を賑わせるもの。いやはや、お騒がせして大変申し訳ないね。けれどもこれは君達が私を引き寄せたんだ」
引き寄せたのはその煌めき。輝き。眩い光だ。
其れは何処にも有って何処にも無い。身近に有って身近に無い。
「私は良い、綺麗、愛らしいと思ったその心が、感性が美しいと思ったまで。其れは誰にでも有ったとしても誰もが表現できるわけではない。今宵の私は怪盗ではなく客人として君達の美しさが見たい」
さあさ魅せておくれ。君の美しさを。
さあさ見せておくれ。君の輝きを。
「君が美しいと思ったその全てを!」
――私かい? 私はただのしがない影さ。言っただろう? 性別年齢体躯は自由自在。君の見たい様に、知りたい様に姿を変える。其れ故、正体不明で或るが故に私はけして捕まりやしない、と。
影故に、その姿は誰も掴めやしないのさ。無論君が望むなら。君の思うまま、君の望む姿になったっていい。
其の輝きが羨ましい。けれど奪えぬ。手に取れぬ。其れだけがただ恨めしい。
其の美しさは決して私の手には取れない。
小林・夏輝
【犬兎】
追いかけっこなら得意だぜ
これでもUDCの学校では元陸上部だったし
素早い【ダッシュ】と
少しでも引っかけられる場所があれば
改造腕時計から射出するワイヤーも駆使したワイヤーアクションで追いかける
この服選んだのは…なんつーか、俺さ
澪は男らしくとか、頼られる人になりたいとか言うけど
俺としては可愛いままでいてほしいわけよ
あ、見た目は勿論なんだけど
多分これから先、澪の身長が伸びたとしても
イケメンな好青年になったとしても
俺らにとってはずっと護りたい対象だし
そのままでいてほしいんだ
あ、コイツ恋人いるしそういう意味じゃなくてな
見た目とか年齢とか関係ない
俺らにとって大事な家族で、いも…弟みたいなもんだからさ
栗花落・澪
【犬兎】
追いかけっこはあんまり得意じゃないけど…
こっちには夏輝君がいるもんね
だから僕はいざとなったら空気の動き、音、におい
五感全てを使って気配を辿りサポート
基本的には夏輝君に任せるよ
で…なんだっけ
買ったものについて話せばいいんだっけ?
夏輝君にも言ったけど…
大好きな色で、夏輝君や皆がくれる日々を日記に綴る事が
僕には凄く嬉しくて
皆がくれる思い出
皆で作る思い出
文字だけの僕よりも、写真と共に残す夏輝君の方が
きっと毎日をより鮮やかに記録してくれるだろうし
色を通して家族を思う時間は、心が温かくなるから
夏輝君にも知ってほしいし、共有したい
僕にとっては、思い出全てが美しいものだから
今妹って言おうとしなかった?
●追い掛けっこはそこまで
「追いかけっこなら得意だぜ!」
姿を現した怪盗の後ろ姿を見つけ、小林・夏輝は走り出す。これでもUDCの学校では元陸上部であったし、素早いダッシュで追い掛けるも距離はあり、追い付きそうにない。
「あっちだよ!」
追かけっこはあんまり得意じゃない。けれどもれなら夏輝の役に立てると栗花落・澪は屋上全体を可能な限り見晴らせる場所へと移動し、夏輝と怪盗の距離を理解した。此方には夏輝がいる。追い付けない訳がないと確信している。空気の動き、音、匂い。怪盗はあっち、と指を差せば夏輝は確と頷いた。
ならば、と今は稼働していない回転ブランコの上、ブランコを吊り下げる鉄鋼にワイヤーを改造腕時計から射出し、引っ掛け、ワイヤーを巻き取って飛んで距離を詰めていった。
怪盗が柵を目の当たりにして、二人が追い詰めたと背後を取れば、怪盗は一歩下がってやれやれと両手を挙げて首を左右に振るった。
「で……なんだっけ。買ったものについて話せばいいんだっけ?」
「にしては逃げてたけどな……」
「ハハッ、追い掛けられれば逃げたくなるのが性というもの」
さあ聞かせておくれ。マントを翻し、夏輝の方を向いて両手を広げる怪盗の顔は笑っている様にも見えた。
「この服を選んだのは……なんつーか、俺さ。澪は男らしくとか、頼られる人になりたいとか言うけど、俺としては可愛いままでいてほしいわけよ」
「ほう?」
「あ、見た目は勿論なんだけど多分これから先、澪の身長が伸びたとしてもイケメンな好青年になったとしても。俺らにとってはずっと護りたい対象だし。そのままでいてほしいんだ」
「愛に形は其々。それは友愛かね? それとも恋慕かね?」
「あ、コイツ恋人いるしそういう意味じゃなくてな」
成程成程。そう頷く怪盗は唇を釣り上げて、その顔を澪に向けた。
「夏輝君にも言ったけど……大好きな色で、夏輝君や皆がくれる日々に綴る事が僕には凄く嬉しくて」
澪の失われた記憶。何処か忘れているもの。それは確かに透明で何もないけれど。皆が暮れる思い出。皆で作る思い出。それらによって彩られる。
「文字だけの僕よりも、写真と共に残す夏輝君の方がきっと毎日をより鮮やかに記録してくれるだろうし」
「成程、色鮮やかな日々ということか」
「色を通して家族を思う時間は、心が温かくなるから。夏輝君にも知ってほしいし、共有したい」
胸の辺りでぎゅうと拳を掴んで澪は目を伏せた。
「僕にとっては、思い出全てが美しいものだから」
うん、うんと頷く怪盗は柵に腰掛け二人の言葉に耳を傾けていた。夏輝はそう語る澪の手を取ってぎゅ、と握る。
「見た目とか年齢とか関係無い。俺らにとって大事な家族で、いも……弟みたいなもんだからさ」
「今妹って言おうとしなかった?」
「ハハッ、美しい家族愛だ!」
両手を叩いて笑う怪盗に二人の視線は其方へと向く。
「時に恋心さえも盗んだと言われる私だが、家族愛は美しくとも盗めやしない! その絆、確と魅せてもらったよ」
柔く微笑む怪盗は瞳を閉じる。
――家族。それは私にあったのかさえ分からないが、強固な絆は私には盗めないな。切っても切れぬものを盗める程、私は非道ではないのでね。
大成功
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御簾森・藍夜
【朱雨】
いいぞ
“見せて”やるのは
“見せ”るのは
別に俺はお前に一切の興味は無いな、残念ながら
だが、
いいだろう見せよう俺手中の砡を見せよう(暁の肩を抱いて
俺の大切な人
俺の手中の砡
勿論最高に素敵で愛らしく優しく賢く真面目で繊細で常に気遣いを忘れず努力を惜しまず――心から、信じられる。
―何者にも代え難い人。俺の朝。俺だけの|あかつき《暁》。
今日は実に素晴らしい日だった
暁に渡したい物が渡せたし―何より、お前に似合う物を見つけられた
(暁の襟の釦を開け
やはり暁には黒より白の方よく似合うな。綺麗だ
…うん、石も朱で、花のデザインも四片で暁らしい
この雲ラインのデザインが俺と揃いの作品で、本当に良かった……な?暁
楊・暁
【朱雨】
「俺に良い考えがある!」って言ってたけど…
そういう時のあいつ
大抵ぶっ飛んだこと考えてるんだよな…
隣で語り始めた藍夜をきょとんと見つつ
抱き寄せられ目をぱちくり
(…ん?
(…え!?
(ちょ…お前っ…
(何語り始めてんだよ人前でえええ!
最初は普通に聞いているものの
続く賛辞にどんどん恥ずかしさが込み上げ顔が赤くなり
藍夜を見上げガン見して魚のように口をぱくぱくさせて
怪盗と藍夜を交互に見ながら
あっ、いや、これは、その、らっ、らんやが、大袈裟なだけで…!(顔真っ赤
流れるような所作で首許の釦を外され
付けたままのチョーカーが顕になり更に赤面
えっ、あっ、それは…そう、だけど…
って見られてんだろ恥ずかしすぎる!!
●あいのかたち
俺に任せろ、って御簾森・藍夜に楊・暁は本当に任せていいのだろうかとは思っていた。けれども柵に腰掛けている怪盗の動きは身軽で尚且つ、直ぐにでも逃げ出してしまいそうだったことから此処は大人しく要求を呑むしかないだろう。
けど、そういう時のあいつ。大体ぶっ飛んだこと考えてるんだよな……。
真面目な顔してとんでもない事をするのは凡そいつものことだとは思っているが……それは怪盗の目にどう映るのだろうか。
「さあ見せてくれ、魅せておくれ。君達の、君らのとっておきのときめきというものを」
いいぞ。“見せて”やるのは。“見せ”るのは。――此処に或る。
「別に俺はお前に一切の興味は無いな、残念ながら」
けれども。見せてくれと言われたからには。
「いいだろう見せよう俺の手中の砡を見せよう」
暁は自分の隣で語り始める藍夜の顔をきょとんと見つつ、自身の肩に手が乗って抱き寄せられた事に大きな瞬きをして目を見開いた。
……ん? 今藍夜は砡と言った。その砡はてっきり藍夜の掌の中にあると思っていたのに。
「俺の大切な人。俺の手中の砡」
其れが此れだと言わんばかりに少しだけ体を寄せる。その行動に暁は言葉にしないものの動揺していた。
「勿論最高に素敵で愛らしく優しく賢く真面目で繊細で常に気遣いを忘れず努力を惜しまず――心から、信じられる」
――ちょ……お前っ……。何を言っているのだ、と言い掛けた唇は声にならず震えるだけ。
何語り始めてるんだよ人前でえええ! 其れを目の当たりにして無表情と平気で居られるわけもなく、暁の顔は平然としていた表情から、藍夜の続いた賛辞に恥ずかしさが込み上げて顔が赤くなっていく。そんな彼の方を見上げ見つめ、魚の様に口をぱくぱくさせるだけ。
「――何者にも代え難い人。俺の朝。俺だけの|あかつき《暁》」
素晴らしい! そう手を掲げて拍手を送る怪盗と平然としているようにも見えた藍夜の二人の顔を交互に見て、狼狽えながらも頬を赤く染めた暁は弁解をした。
「あっ、いや、これは、その、らっ、らんやが、大袈裟なだけで……!」
「君の顔も満更ではないようだが?」
顔色を指摘された暁は言葉に詰まってその場に固まる。
「明けない夜が無いように昇る朝日、それを淡く迎え入れる夜月――何て素晴らしい夜明け。朝と夜のデュオとはいやはや」
続きをどうぞ、と怪盗の手は片方は頬杖をつき、もう片方は差し出していた。
「今日は実に素晴らしい日だった」
桜の花弁散る最中、藍夜は暁の襟の釦を開けた。付けた侭のチョーカーが顕になって、元より赤かった暁の顔が更に赤くなっていく。
「暁に渡したい物が渡せたし――何より、お前に似合う物を見つけられた」
「えっ、あっ、それは……そう、だけど……」
「やはり暁には黒より白の方がよく似合うな。綺麗だ。……うん、石も朱で、花のデザインも四片で暁らしい」
黒手袋越しの指先で石を転がす藍夜に暁は目を閉じて唇を噛み締める。
「この雲ラインのデザインが俺と揃いの作品で、本当に良かった……な? 暁」
「って見られてんだろ恥ずかしすぎる!!」
限界だった。人前が居る前でそんなにも言われたら……そう、辺りを見回すと怪盗の姿は無く、ただ桜の花弁だけが散っていた。
●君らよ美しく或れ
素晴らしい物を見た。
――其れは高級な絵画よりも高価なもの。
輝かしい物を見た。
――其れは幾重のカットを施された宝石よりも眩いもの。
美しい物を見た。
――其れは私が熱望しても奪えないもの、盗めないもの。
羨ましいと思う事も、妬ましいと思う事は無い。私は既に過去の亡霊、影朧。
嘗てはただの怪盗だった。
人々が胸躍らせるものが詰まっているという百貨店は怪盗にとって格好の目星。
時に人の恋心さえ盗む事はあったけれども、其れでは私の心は揺れ動かなかった。
手にしたら分かるのだろうか。――違う。
奪って見たら分かるのだろうか。――違った。
それでも人が心胸躍らせる其の気持ちは分からなかった。
だから私は聞きたかった。其の心を、其の気持ちを、何に心を躍らせたのか。
其れらは私にはけして奪えぬ、与えられぬ、美しい日々を重ねてきたからなのだね。
「然らばだ諸君」
怪盗たるもの、何時でも美しくなくては。ならば散り際までも美しく。
君たちの手向けの花となろう。
大成功
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