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桜朧世界のスヰートパーティー!

#サクラミラージュ #お祭り2022 #ハロウィン #御衣黄桜は月下にて咲く

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#サクラミラージュ
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#ハロウィン
#御衣黄桜は月下にて咲く


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「綺羅びやかだなー! 目が痛いくらいだ」
「おい」
「『常識に囚われない』を信条としたとある建築家によって手掛けられたそうだ」
「おい」
「ひゃー、中はもっと色とりどりなんだろ?  常識に囚われないにしたって、よくやるよ」
「おい」
「建築家一族らしいが、その中でも変わり者扱いをされているらしいしな。だが熱狂的なファンがいるのも事実――」
「聞け」
「「アッハイ」」

「――何故僕達までこんなことをしなければならない」
 金に似た、鮮やかな黄色で彩られた館の前。
 兎の耳と尾を制服の上から纏った學徒兵・御衣黄が、静かにキレていた――。


「戦争、新世界進出、やることやりたいことが多くて疲れてねェか? 甘いモンでも食って、英気を養おうぜ」
 なんて言い出したのは、この|世界《サクラミラージュ》出身の明・金時(アカシヤ・f36638)だ。
 聞けば、とある洋館でハロウィンに因んだイベントが行われると言う。
 その館は極彩色で彩られており、外壁は輝くような黄色、屋根と天井は晴れ渡る空のような青、床は豊かな芝生を思わせる緑、部屋の壁は情熱滾る赤をメインとした鮮やかな色ばかり――と、良く言えば派手、悪く言えば目が痛い、そんな様相なのだが。
「秋。黄色。甘いモン。何か思いつかねェか?」
 黄色くて甘い秋のもの。
 栗、南瓜、サツマイモ――辺りだろうか。
「そ。館の中では仮装パーティー兼、腕利きの洋菓子職人達が決められたテーマで腕を競ってる。そのテーマってのが――、」
 秋の味覚。即ち、今挙げられた野菜を使っての製菓対決だと言う。
 と言っても厳密に勝負を決めるわけではなく、お互い目の届く範囲で腕を振るうことで高め合いながら、美味しいお菓子でパーティー参加者を楽しませようね、といったコンセプトらしい。
「だから菓子は無料で振る舞われてるんだが、途中参加ながらそれを根こそぎ奪っていこうとしてるのが――」
 影朧、と言うわけだ。
 それも、仮装をした童の形をして。
「そいつらとしてはちょっとした悪戯、或いは食い気のつもりらしいが、いつ何時『万一』があるか解らねェだろ?」
 だから、悪戯で済む今の内に、転生を。
 それが出来るのは、猟兵だけだから。
「とは言え、だ。子供って妙なトコで聡いだろ。問答無用でとっ捕まえて次の生に送り出す、なんて鬼気迫る気配を感じようモンなら、乱入する前に逃げ出しちまうかも知れねェ」
 うん、言っていることはよく解る。
 が、そのにやーっとした口元がやたら愉しげなのは気のせいではない筈だ。

「てな訳で! お前らもちゃあんと、仮装して、菓子食って、パーティー楽しんで来いよッてこった!」

 や っ ぱ り か ! !


 ――と、これは余談なのだが。
「何せ天下の御衣黄様が、不本意ながら仮装してるくらいだ」
 やはり何処か愉しげに。
 独り言のように零した金時のその呟きに、もしかしたら一部の猟兵達は反応を示したのかも、知れない。


絵琥れあ
 小文字のヰは出なかった。
 それはそれとしてスイートポテト食べたい。
 お世話になっております、絵琥れあと申します。

 2章構成のハロウィンシナリオです。
 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:日常『極彩の館』
 第2章:冒険『華の帝都の追走劇』

 第1章では、色鮮やかな館で振る舞われる洋菓子の数々を楽しんでいただきます。
 メインはスヰートポテト、栗のショートケヱキ、南瓜のカスタプリンの3品。
 他にも食べたいものがあればご提案いただければ、該当の野菜が使われており、なおかつ大正時代にありそうなものなら採用させていただきます。
 (なさそうなもの、もしくは判断がつかないものについてはぼかした描写となります)

 また、この章では御衣黄、仁科、小鳥遊の學徒兵3人組が、仮装しつつ館の警備に当たっています。
 (過去に登場した人物達ですが、確認の必要はございません)

 第2章では、会場のお菓子を奪って逃走する影朧と鬼ごっこ(と、当人達は思っています)勝負です!
 華の帝都には人や建物が沢山――取り分け、今回の舞台は帝都の中でも『迷宮』とすら呼ばれる華やかさとは少し離れて入り組む路地裏です。
 加えて此処は影朧にとっては庭も同然であるらしく、闇雲に追いかけるのみでは取り逃がしてしまうでしょう。
 地の利を埋めるような対策が必要となりそうです。
 (なお、影朧は猟兵に捕まった時点で満足げに消えてしまいます)

 断章なし、公開された時点で受付開始です。
 それでは、よろしくお願いいたします!
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第1章 日常 『極彩の館』

POW   :    細かいことは気にせず力いっぱい楽しむ。

SPD   :    その場に馴染めるよう気を使いつつ楽しむ。

WIZ   :    何かハイカラな楽しみ方を思いついてみる。

イラスト:cari

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

灰神楽・綾
【不死蝶/2人】アドリブ歓迎
黒い狼男の仮装

製菓対決かぁ。もし飛び入り参加OKだったら、絶対梓も出場させたのにな
だって梓の作る料理は世界一、いや宇宙一美味しいからね~

最終的には全種類食べる気満々だけど
まず手に取ったのは南瓜のプリン
ハロウィンシーズンの定番おやつの一つだよね
ん~~、コクがあって美味しいっ
南瓜プリンといえばこの濃厚さがたまらないね

ねーねー、梓もコレ食べてみなよ……あっ
あれは料理人モードに入っているな
今日はお客さん側なのに相変わらずだなぁ
でもああして研究しているということは
いつか研究の成果を披露してくれるはず
近いうちに梓のお手製のハロウィンスイーツが食べられるかもね(ワクワク


乱獅子・梓
【不死蝶】アドリブ歓迎
白い狼男の仮装

何で俺が出場するかどうかをお前が決めるんだ(苦笑いしながら小突き
まぁ、こんなにも立派な会場で菓子を作って
それを大勢の人に食べてもらえたら幸せだろうな

今回は食べる側として存分に楽しませてもらおう
まず手に取ったのはスイートポテト
サツマイモの味をダイレクトに感じられる菓子だな
しっとりとした口触り、優しい甘さ…うむ、美味い!!
大正時代は現在ほど材料や調理器具が豊富ではないと思うんだが
どうやってこの味を生み出したのだろう…
職人達の作る様を近くで見てみたいな

おっと、お前達も食べたいよな
おねだりしてくる仔竜の焔と零にも菓子を食わせてやる
あぐあぐと食べる姿は、うーん可愛い




 極彩の館にて、無彩の狼達が訪う。
 黒白の狼男の形で現れたのは灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)。纏うのは綾が黒、梓が白だ。
「製菓対決かぁ。もし飛び入り参加OKだったら、絶対梓も出場させたのにな」
「何で俺が出場するかどうかをお前が決めるんだ」
 ちょっと運営スタッフに確認してみようか、なんて検討し始める綾に苦笑しながら小突く梓。
 だが、綾は意に介した様子もなくけろりと。
「だって梓の作る料理は世界一、いや宇宙一美味しいからね~」
 手放しで褒める綾に、梓はやれやれと肩を竦めながらも。
「まぁ、こんなにも立派な会場で菓子を作って、それを大勢の人に食べてもらえたら幸せだろうな」
 周囲を見渡すと、お菓子を口に運べば綻ぶ来館者達の笑顔の幸せそうなこと!
 作り手冥利に尽きるという洋菓子職人達の気持ちが、梓には解る気がした。
「ま、今回は食べる側として存分に楽しませてもらおう」
 梓のその言葉に綾も異論はなく。
 勿論、最終的には二人共、お菓子全制覇する気満々なのだけれど、まず最初に綾は南瓜のカスタプリン、梓はスイートポテトを手に取って。
 |現代《いま》となってはハロウィンシーズンの定番おやつのひとつ、南瓜プリン。濃い黄金色のそれはこの時代を考えると珍しく滑らかな舌触りだ。
「ん~~、コクがあって美味しいっ。南瓜プリンといえばこの濃厚さがたまらないね」
 南瓜の甘みがふんだんに引き出されていながらも、しつこさはない。綾の舌の上でとろりと秋の恵みを感じさせる味わいが溶けてゆく。
 一方で、梓も色鮮やかで濃い黄色と、程よく食欲をそそる焦げ目のついたスイートポテトを口に運んで。
「サツマイモの味をダイレクトに感じられる菓子だな。しっとりとした口触り、優しい甘さ……うむ、美味い!!」
 味も食感も、現代人が慣れ親しんだものと比べても遜色なく、非常に食べやすい。
 つまりは料理人として、綾お墨付きの梓も認める美味しさです!
「大正時代は現在ほど材料や調理器具が豊富ではないと思うんだが、どうやってこの味を生み出したのだろう……」
「ねーねー、梓もコレ食べてみなよ……あっ」
 其処へ綾が南瓜プリン片手に声をかけるが。
 職人達の作る様を近くで見てみたいな……と、思案しながらそちらの方へ足が向いている様子の梓。滑らかで美しい白狼の尾も、その歩みに合わせてゆらりと揺れていた。
(「あれは料理人モードに入っているな」)
 今もスイートポテトを提供し続けている洋菓子職人と何やら二、三言葉を交わし、どうやら見学の許可を得たらしい梓の姿に、今度は綾が苦笑する。
(「今日はお客さん側なのに相変わらずだなぁ」)
 食べる側として、なんて梓が言ってたのに、とは思いつつも、研究熱心なその姿はやはり一人の料理人だ。
 自身に取り込める知識と技術があれば、職人の性か積極的に吸収してゆく。
 そしてその成果はいつか、綾の前にも披露してくれることだろう。
(「近いうちに梓のお手製のハロウィンスイーツが食べられるかもね」)
 綾は密かに、その日が訪れるのをワクワクと期待しながら。
 今日も一人の職人として邁進してゆく相棒の成長を、見守る。
「――おっと、お前達も食べたいよな」
 そんな梓の肩によじ登り、キューキュー、ガウガウと僕達にもちょうだい! と、主張するかのようにそれぞれ鳴く、炎の仔竜の焔と、氷と水の仔竜の零。
 思えば、先程から会場には甘い香りが漂っているし、主たる梓が美味いと言うのだから、それは食べたくなるというものですよね!
 今まさに丁度、追加のスイートポテトが焼き上がったので、洋菓子職人から直接それを貰って。
 それぞれにひとつずつ、手渡してやれば嬉しそうにあぐあぐと一生懸命に食べ始める仔竜達の姿は、梓だけでなく誰の目から見ても健気で愛くるしく。
(「うーん可愛い」)
 思わず梓が口元に浮かべた笑みもまた、深まるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「こんにちは、御衣黄さま。御衣黄さまも甘味目当てですか」
会ったら勝手に相席

「ええ、仙人の仮装です」
仙服を仮装と言い張る

「そう言えば、御衣黄さまに言っていなかったことがあったと思いまして。見かけも実年齢も、私の方が年上です」
嗤う

「これでも昇仙して数百年の仙人です。尤も千年を越すまでは仙界では下っ端ですが」
スヰートポテト
栗のショートケヱキ南瓜のカスタプリン
頼みながら嗤う
持ち帰り可能なら全て十人前ずつ追加し壺中天の時のない部屋へ

「見た目だけ若い老人女性をロリババアと言うらしいですね。御衣黄さまも、今後は年齢は口にされない方が良いかもしれません」
「私は貴女のような揶揄い甲斐のある方は大好きですよ」
嗤う




「こんにちは、御衣黄さま。御衣黄さまも甘味目当てですか」
 聞き覚えのある声――鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)の声に気づいて、御衣黄はつと顔を上げた。丁度、仁科と小鳥遊は会場内を巡回でもしているのか、この場にはいなかった。
 冬季の装いは仙服だ。その出で立ちに向けられた、訝しげな御衣黄の視線に気づいてか、くつりと。
「ええ、仙人の仮装です」
 本人が仮装と言えば仮装なのだと。
 そう告げれば、御衣黄も追求しては来なかった。
「そう言えば、御衣黄さまに言っていなかったことがあったと思いまして」
 思い出したように、音の出ない程度に冬季は手を叩き――そして、嗤った。

「見かけも実年齢も、私の方が年上です」

 スヰートポテト、栗のショートケヱキに南瓜のカスタプリン。
 洋菓子を取り寄せながら浮かべる笑みも何処か剣呑だ。
「これでも昇仙して数百年の仙人です。尤も千年を越すまでは仙界では下っ端ですが」
 それでも、御衣黄だけでなく一部の皇族よりも永く生きている可能性すらあるのだと。
 十人前ずつ確保した洋菓子達を、壺中天の時のない部屋へと放りつつ、そして表情は崩さず、続ける。
「見た目だけ若い老人女性をロリババアと言うらしいですね。御衣黄さまも、今後は年齢は口にされない方が良いかもしれません」
「……」
 肩を竦めてそんなことを言う冬季の言葉を、御衣黄もまた、表情を変えることなく黙って聞いていた。
 しかしその瞳は、冬季の顔こそ見ていたものの、その瞳の青を見てはいなかった。
 不快に思っただろうか、と冬季は思った。尤も、だからと言って其処で気に病むような性質はしていない。それは冬季自身がよく理解していた。
 だからこその、続く言葉。
「――私は、貴女のような揶揄い甲斐のある方は大好きですよ」
 そして、嗤い。
 妖仙の、本気とも冗談とも取れぬ言葉。
 それを受けて、漸く御衣黄が、その口を開いた。
「成程な」
 腕を組み、目を閉じる。
 其処に、怒りや憤りは感じられなかった。
「仮にお前の言葉が真だったとして、お前が僕を若輩と言いたいのか、老耄と言いたいのか解りかねるが。まあどちらにせよ、だ」
 一度言葉を切った御衣黄が、此処に来て初めて冬季の瞳を見返した。
 彼女のその瞳は、まだ秋だと言うのに冬の夜空に冴えて白む月のように、何処までも、冷たかった。

「お前が僕を『侮っている』ということはよく理解した」

 靴音が、ひとつ響く。
 御衣黄は、もう青の瞳を見てはいなかった。
「それが解っただけでも、こんな格好をして警護に加わった収穫はあったと言うものだ。何せ今後、僕が関わる必要のない事象がひとつ、明確になったのだからな」
 遠ざかる背中に、冬季はふむ、と首を傾げる。
 怒っては、いない。あれは――一切の関心を失った者の瞳だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

きらびやかな場ですね…
少々、気後れしてしまいますが
葛城さんも一緒ですし
頑張りましょう

今回の影朧は
子供のような存在みたいですね
楽しく送り出せたらって
思います

書生風の姿で参加
みんな美味しそうですね
葛城さんはどれに…
楽しそうで嬉しいです
私は大丈夫ですよー
気圧されているだけですので!

あ、ぷりん
ぷりんは美味しいと決まっています
甘いものは良いですね
葛城さんも満喫されているようで
にこにこしてしまいます

御衣黄様達を見掛けた際は
カスタプリンを持って軽くご挨拶を
お疲れ様です
うさぎさん、似合っていますよ
警備のお仕事の合間にいかがですかと
プリンを勧めてみます
皆さんにも楽しんで欲しいですからね


葛城・時人
神臣(f35429)と!

影朧、今回は素直そう?
遊びながら送り出した猫のゴースト一寸思い出すよ

あとケヱキ!プリン!スヰートポテト!
俺が見逃す訳ないんだよ(満面の笑み)

わ、すごい華やかだ
こういう場所、少し苦手そな神臣が
目をぱちくりさせてる
「賑やかだけど大丈夫?」

でもぷりん見て顔ほころんだね
よし俺も食べる!勿論全部!
一個ずつ味わって楽しんで二人で満喫
神臣のカッコ、休日の書生さんってカンジで良いなー

あ、この前の學徒兵たちだ、こんにちは
警備お疲れ様!
こやってまた会えるのも嬉しいな

仁科、小鳥遊、傷とかもう大丈夫?
御衣黄凄い似合ってるよー
浴衣に猫耳、猫尻尾なの見せ笑顔で
「ホラ俺もこんなだし、今日は楽しも?」




 出迎えるのは明朗快活な黄色。
(「きらびやかな場ですね……」)
 神臣・薙人(落花幻夢・f35429)も見上げて思わず圧倒される。
 思い思いの幻想的な装いの来館者達は数も多そうで、少々気後れしてしまうものの。
「影朧、今回は素直そう? 遊びながら送り出した猫のゴースト、一寸思い出すよ」
 懐かしげに笑む葛城・時人(光望護花・f35294)のその言葉に、彼が居てくれることを再認識して。
(「頑張りましょう」)
 頼もしい、彼が居てくれるのだから、大丈夫だ。
 そう、決意を新たにする薙人の傍ら。
(「あとケヱキ! プリン! スヰートポテト! 俺が見逃す訳ないんだよ……!」)
 笑顔の理由は懐かしさだけではなかった時人。キラキラしたオーラすら見える。
 今日の彼は浴衣に猫耳尻尾な化け猫風だが、心なしか頭に生えた黒の耳も上機嫌にぴんと立っている気がする。
 そんな二人で会場の門を潜り、一般の来館者達に混じって歩き出す。
「今回の影朧は子供のような存在みたいですね。楽しく送り出せたらって、思います」
 予知の話から察するに、きっと彼らはちょっとばかり悪戯は過ぎるものの、遊びたいだけなのだろう。
 薙人の温かく優しい言葉に、それがきっと最善だと微笑む時人。
 さて、一度館に足を踏み入れれば、爽やかな空と浴衣な芝生を思わせる天地。けれど見渡せば常識を覆すような、情熱に満ちた赤。
「わ、すごい華やかだ」
「そうですね……予想以上でした」
 ふと時人は薙人を見遣る。
 こういう場所は薙人は少し苦手そうだなと思っていたら、やはり目をぱちくりさせている様子だったので。
「賑やかだけど大丈夫?」
「私は大丈夫ですよー。ちょっと気圧されているだけですので!」
 二人、目をちかちかさせつつも、並ぶ洋菓子のテーブルを見つけて。
「みんな美味しそうですね。葛城さんはどれに……」
「全制覇!」
「楽しそうで嬉しいです」
 迷いなく言い切った時人の既に幸せそうな様子に、薙人の笑みも思わずほわりと深まる。
 けれど、そんな薙人自身もある一点に目を留めて。
(「あ、ぷりん」)
 秋色、濃い黄金色の南瓜プリン。
(「ぷりんは美味しいと決まっています」)
 だから薙人も、ひとつ手に取って。
 そんな彼の様子に、時人も目聡く気づき。
(「ぷりん見て顔ほころんだね」)
 少し、和らいだ緊張に安堵する。
「よし俺も食べる! 勿論全部!」
 有言実行!
 時人も南瓜プリンへと手を伸ばし、その美味しさを共有する。
「甘いものは良いですね」
 薙人の零した呟きに、うんうんと頷く時人。その様子に、時人がこの催しを心から満喫しているのが伝わってきて、薙人も思わずにこにこ。
 楽しい気持ちは伝搬する。そしてそれは、一方通行ではなく。
(「神臣のカッコ、休日の書生さんってカンジで良いなー」)
 そう、勿論薙人も普段とは装いを変えて。
 普段は桜織衣を始め、羽織に着物姿の多い薙人だが、今回はより知的さを際立たせる書生姿だ。
 少しずつ楽しむ余裕の出てきた姿は、時人と同じ世界に生まれ生きていた時の薙人と変わらない。それが嬉しかった。
「神臣、こっちのスヰートポテトも絶品だよー」
「本当ですか? では私もひとつ……あ」
 味わって楽しんで、二人で満喫していたところ、ふと薙人の視線が時人の背後へと向けられる。
 何かと思い時人も顧みてそれに倣えば、見覚えのある三人組。
「あ、この前の學徒兵たちだ」
「ご挨拶に伺いましょうか」
 彼らの分のプリンを手に、二人で声をかければ。
「こんにちは、警備お疲れ様!」
「お疲れ様です」
 まずは帽子の代わりに天狗の面を頭に乗せた小鳥遊が、ぱっと二人に顔を向けた。
「……あれ、こないだの超弩級戦力サン?」
「こら小鳥遊、失礼だろう。その節は、大変お世話になりました」
 次いで、帽子から鬼の二本角を生やした仁科が実直に頭を下げる。
 最後に玉兎な御衣黄が、何処か気怠げに顔を上げて二人を見た。
(「……疲れているような……?」)
 薙人は一瞬、そんな印象を御衣黄から受けた。が、すぐに御衣黄は先日と変わらぬ気難しげな少年に早変わりしてしまった。
「こやってまた会えるのも嬉しいな。ああ仁科、小鳥遊、傷とかもう大丈夫?」
 再会を喜ぶ時人に、お陰様でと仁科は返すが。
「仁科、病み上がりなんスよ。こないだやっとちゃんと傷が塞がったばっかり」
「小鳥遊」
 肩を竦める小鳥遊を仁科が睨む。
 二人のやり取りを、何処か他人事のように見遣っていた御衣黄だが。
「御衣黄様。うさぎさん、似合っていますよ」
「うんうん、御衣黄凄い似合ってるよー」
「えっ」
 突然話題を振られて戸惑う御衣黄。
「ホラ俺もこんなだし、今日は楽しも?」
「う……」
 トドメに時人が自らの猫耳や尻尾などを指して、笑顔でそう言うものだから、遂に御衣黄はほんのり頬を赤らめつつ、目を逸らしてしまった。
「おお、御衣黄が珍しく照れてる」
「小鳥遊」
 が、直後に茶々を入れた小鳥遊をぎろりと睨んだことで、またその肌は白く冷えた。
「ああ、そうだ。警備のお仕事の合間にいかがですか」
 御衣黄も何やら疲れているようだったしと、薙人が三人にプリンを配れば。
「うわ、ありがとうございます……!」
「ありがとうございます。いただきます」
「……ん、」
 皆、反応に差はあれ一様に受け取る。
(「皆さんにも楽しんで欲しいですからね」)
 彼らはこの帝都の為に、日々奮闘している學徒達だから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『華の帝都の追走劇』

POW   :    とにかく走れ。力の限り道を征く。障害物も退けたりしよう。

SPD   :    壁を伝って走ろう。建物の上を行こう。屋根を飛んで伝って追いかけるのだ。

WIZ   :    地図を読んで先回りしたり魔力で追いかけたり。様々な智慧で追跡しよう。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




『――キャハハハハハハ!』

 愉しげな子供の笑い声。
 不意にそれが、館内で幾つも反響する。
 それを猟兵達含め、来館者達が認識した瞬間だった。
「わっ! ……えっ?」
 最初に異変に気づいたのは、それでも洋菓子を作り続けていた職人達。
 残っていた材料ごと、会場内の洋菓子が全て消えてしまったのだ!
 同時に聞こえる、ぱたぱたと小さく軽やかな足音。
 子供と思しき数名の背中が、何処にそんな力があるのかパンパンに膨れ上がった白い袋を抱えて館の裏口を目指し、消えてゆく。
 まるでハロウィンの魔物と言うよりサンタクロース……なんて、悠長なことを考えている場合ではない。
 間違いなく、彼らが影朧だ!
「小鳥遊、出るぞ」
 學徒兵の仁科が、即座に打って出ようとする。
「御衣黄は此処に残って職人と来館者を――」
「馬ッ鹿、お前が残るんだよ!」
 だが、小鳥遊がそれを制した。
「傷口塞がったばっかりだろ! 開いたらどーすんだよ」
「今回ばかりは小鳥遊の言う通りだな。僕と小鳥遊で行く」
「……解った。済まないが任せる」
 仁科が頷くと、小鳥遊と御衣黄もまた納得したように頷き返し、裏口へと駆け出してゆく。
 人手が必要ならば、彼らの手を借りることも可能かも知れない。但し、彼らが納得出来る理由、もしくは信用が必要になるだろう。


 ――さて、追走劇の舞台は館裏口を出てすぐの路地裏だ。既に辺りは暗くなり、空には月が昇り始めている。
 影朧の速度は人間の子供のそれと同じ程度だが、地の利は彼らにあり。この路地裏、入り組んでいるし幾重もの分かれ道や袋小路などもあり、更に彼らはその軽やかな身のこなしで屋根や壁を歩くこともある。
 幸い、彼らは小さな南瓜をくり抜いて作った灯りを一様に持ち歩いているから、視界に捉えられている内は見失うことはないだろう。しかし逆を言えば、一度見失ってしまえば追跡は困難を極めるに違いない。
 見失わない方法、見失う前に捕まえる方法、或いは視覚に頼らない追跡方法、その他手段は問わない。
 どうにか地の利を埋めて、一夜限りの鬼ごっこを制するのだ!
灰神楽・綾
【不死蝶】アドリブ歓迎
おやおや、小さな怪盗さんのご登場だね
梓の愛竜・零の背に乗せてもらい帝都上空へ

南瓜ランプの光がチラチラと見えるから
上空を飛んでいる間は見失うことはないだろうけど
何か策が無いと、下に降りた瞬間に行方が分からなくなる可能性もあるね

梓と打ち合わせたら作戦実行
梓が火事(幻覚)を起こしている間に
影朧が通るであろう場所に先回りしておき
紅い蝶Phantomを通路、屋根の上などに飛ばせておく
来るルートが絞られていれば罠を張るのも容易い

そして影朧がそこを通り、少しでも蝶に触れた瞬間UC発動
蝶は紅い鎖へと変化し、影朧をぐるんぐるんに縛り上げて捕獲するよ
その鎖は俺以外には決して壊せない
観念してね


乱獅子・梓
【不死蝶】アドリブ歓迎
普通には追いかけるのは分が悪い
空から行くぞ!
成竜へ変身した焔の背に乗り帝都上空へ
綾にはもう一匹の愛竜、零を貸してやる

影朧は一見闇雲に走り回っているように見えても
最終的には路地裏の出口を目指していくはず
上空から観察し、彼らの進行方向を予測
その方向へ先回りし、UC発動
影朧の行く先で大規模な火災を起こしてやろう
もちろん本当に燃やすわけではなく、影朧にだけ見える幻覚の炎
ごく一部、炎に包まれていない空間を用意しておき
影朧がそこから逃げ出すように仕向ける
その方向には綾が待機しているとも知らずにな

影朧とはいえ子供を脅かすのは良心が痛むが
職人達が丹精込めて作った菓子を盗んだお仕置きだ




「おやおや、小さな怪盗さんのご登場だね」
「普通には追いかけるのは分が悪い。空から行くぞ!」
 黒白の尾を駆けると共に揺らし、狼男達は竜の背に乗り月夜の帝都へと舞い上がる。
 小さく、愛らしかった仔竜達は今や成竜の姿と成り。紅蓮の炎竜・焔は主たる乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)を、玲瓏たる氷竜・零はその相棒たる灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)を乗せて翼を広げた。
「南瓜ランプの光がチラチラと見えるから、上空を飛んでいる間は見失うことはないだろうけど」
 そう、綾の言う通り。
 空から路地を見下ろしたなら、その視界を阻むものは何もなく。
 子供の影朧達がぱたぱた駆けてゆくのに合わせて揺れる橙色の灯火も、見逃すことはない。
「何か策が無いと、下に降りた瞬間に行方が分からなくなる可能性もあるね」
「影朧は一見闇雲に走り回っているように見えても、最終的には路地裏の出口を目指していくはず……」
 進行方向が予測出来れば、例え見失っても打つ手はあると。
 上空から影朧達の動きを注視する梓に、綾も倣ってみれば。
 やがて、彼らが辿るであろう道筋が見えてくる。
「先回りするぞ」
「了解」
 互いに短く告げて、目指すべき地点へ降り立つ。
 そして、仕掛ける。
「焔!」
 梓に名を呼ばれた炎帝が、首をもたげる。
 帝都を揺るがすほどの咆哮と共に、吐き出した紅蓮が狭く暗い路地裏を赤く焦がす――!
(「勿論、本物の炎じゃない。これは影朧にだけ見える幻覚の炎、路地は燃えない――だが、」)
 悪戯好きの影朧とは言え、純粋無垢な子供達。
 これだけリアルな炎なら、偽物だとはそう簡単には気づくまい!
『キャ……ッ』
『わわわ』
 梓の読み通りに、炎に囲まれ焔に睨まれた影朧達が慌てふためく。
 だが、彼らはすぐに気づいた。自分達ほどの小ささなら――抜け出せる隙間があることに。
 きゃあきゃあと声を上げながら、影朧達は其処からするりと炎の海を抜けてゆく。遠回りにはなるが、路地の終わりに続く道筋。
 ――それが指し示された道であるとも知らずに。
(「その先にいるのは――」)
 影朧達が逃れた先も、また赤で彩られている。
 但しそれは、炎ではなく紅い蝶。はらりひらり、花弁の如く通路を埋め尽くしている。屋根の上に至るまで。
 とは言え、蝶は害のあるものではない。そう判断した影朧達は意にも介さず直進するも。
『――キャアアアアアア!!』
 影朧の一人が蝶に触れた瞬間、それは瞬く間に紅い鎖へと変わり――影朧を縛り上げ、地面へと転がしたのだ。
 菓子を詰めた袋がとさりと、力なく落ちる。その間にも、一人、また一人と紅に絡め取られてゆく。
「来るルートが絞られていれば、罠を張るのも容易いものだね」
 路地の奥、曲がり角の向こうから、綾が姿を現した。
 紅い蝶――Phantomの朧気な光を受けて、その輪郭が影朧達にも見えてくる。
 だが、見えたところでどうしようもなく。全員が地面に転がった頃、梓が焔を連れて合流した。
「あの抜け道はわざと開けておいたんだ。お前達が自然と綾の待機している方向へ向かうようにな」
「そういうこと。そして、その鎖は俺以外には決して壊せない。観念してね」
 梓と綾の言葉に、大人しく仰向けになる者、ぱたぱたと脚をばたつかせている者など、反応は様々だったが。
「影朧とはいえ子供を脅かすのは良心が痛むが……職人達が丹精込めて作った菓子を盗んだお仕置きだ」
 この菓子は、皆の為にと振る舞われたものだ。
 独り占め――いや独団占め?
 ともあれ、そういうのは、よくない。
 これに懲りたら『次の生』ではこんなことするんじゃないぞと、影朧達に告げれば。
『はぁーい』
 影朧達は元気よく返事をして、春霞のように消えてゆく。
 満足、したのだろう。呑気なものである。しかし、根は悪い子達ではなさそうだったから、きっと転生先でも律儀に言うことを聞いてくれるのではないだろうか。
 何とも人騒がせな子供達だったが、影朧達は無事に確保し、転生の輪に乗った。取り戻した洋菓子も、追走劇の果てに一部崩れたり歪んだりしてしまっているものはあるが、何とか無事だった。
 その事実に、梓と綾は顔を見合わせ――やれやれと、肩を竦めて苦笑するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神臣・薙人
葛城さん(f35294)と

影朧の悪戯にも困ったものですね
鬼ごっこ、受けて立ちましょう

可能なら、御衣黄様と小鳥遊さんにも
協力をお願い
迅速な解決のためにも
手分けした方が良いと思いますので
葛城さんに合わせて
残花をお二人に帯同させます

全ての影朧が視界内にいる間に
影朧を追跡し取り付くよう
残花に指示
光量は最大に

その後も
影朧を追い掛けつつ
残花の光で攪乱
屋根や壁を歩く素振りがあれば
残花に噛み付かせて阻害

行く手を阻めそうな箇所には
桜絨毯を使用
逃げ道を塞ぎます
巧く追い詰められたら
速やかに確保
その際も
取り逃しが無いよう注意

ふふ
葛城さん楽しそうですね
…この影朧達は
捕まると消えるそうですが
桜の輪廻には乗れるのでしょうか


葛城・時人
神臣(f35429)と

御衣黄と小鳥遊を呼び止め
「これ、どうぞだよ」
とUC白燐奏甲詠唱
勿論神臣と自分にも

視覚阻害で気付かれず追えると伝え
神臣と蟲たちを沢山出し
二人に残花ちゃんとククルカン帯同させる
「先導頑張るんだよー?」
明滅や声で返事したら撫でて褒めて

白燐蟲に目くらましは効かず過たず追えると説明
「鬼が捕まるのが鬼ごっこだよって
影朧たちに教えてあげよう」

残りのククルカンたちにも追跡指示

自分も追い空中機動も使って
誰かが追いつめた所に回り込めるなら確保

「ほら、御用だ御用だ」
御衣黄たちには分かんないかもだけど
俺の世界の捕り物の決め文句だよと教えて

取り返せたら笑顔でお疲れ様を
「さ、持って帰ろ!凱旋だよー」




 秋の夜空に月は煌々と照っている。
 今宵、帝都を舞台に開演されるは追走劇。
「影朧の悪戯にも困ったものですね」
 そう、呟く神臣・薙人(落花幻夢・f35429)の浮かべる微苦笑は、しかし何処か穏やかで優しい。遊び盛りで悪戯好きの子供を相手にした時のような。
「鬼ごっこ、受けて立ちましょう」
 揺れる橙色の灯りにゆるりと、宣戦布告。
「ああ御衣黄、小鳥遊。ちょっと待って」
 鬼は、猟兵達だけではない。御衣黄ら學徒兵達も、影朧を追う仲間だ。
 葛城・時人(光望護花・f35294)はそんな學徒兵二人を呼び止めて。
「これ、どうぞだよ」
 皆に力を――そう呟くように唱えて、橙ではなく白い灯りの群れを學徒兵達に、そして、自分達へと齎して。
「ククルカンか」
「御衣黄、名前覚えてくれたね」
「仲間の名前くらいは当然だろ」
 残花も、と頷く御衣黄に、顔を見合わせて笑い合う男性陣。
 と、話の続きは鬼ごっこの後で。四人、學徒兵達に並走して、薙人が口を開く。
「迅速な解決のためにも、手分けした方が良いと思いますので……協力をお願い出来ませんか」
 御衣黄と小鳥遊に改めて問えば、まずは小鳥遊がニッと笑って見せて。
「仲間の恩人の頼みとありゃあ断れませんって。なあ御衣黄?」
「……ん」
 どうやら『仁科の命を救って貰った』と認識しているらしい小鳥遊が、御衣黄に同意を求めた。彼女自身も訂正するつもりはないらしく、淡々と頷く。
「ありがとうございます。では、残花も」
 ほわり穏やかに微笑み、まあるくふわり愛らしい残花が粉雪のように皆の周りを包む。
「これで、ククルカンの視覚阻害で気付かれず追える」
 その煌めきは灯でもあり、視覚に働きかける光でもある。
「先導頑張るんだよー?」
『きゅい!』
 時人の指示に明滅しながら鳴いて応えた一匹を、時人は撫でて褒める。
 薙人もまた、残花達の一匹を指先に止めて囁く。
「全ての影朧が視界内にいる間に追跡し、取り付いてきてください。光量は最大に」
 その言葉に心得たとばかりに数匹の残花達が、速度を上げて影朧達を追った。
 光纏う白燐蟲達に目眩ましは効かない。南瓜色の灯火にも惑わされず、過たず追えると時人は語り。
「鬼が捕まるのが鬼ごっこだよって、影朧たちに教えてあげよう」
 何処か楽しげな時人の声音に、更に白燐蟲達が飛び立つ。星のように雪のように、ちかちか、きらきら、燐光が路地裏を明るく照らす。
『キャー!』
 時折、追いついた個体がちかっと一層輝きを増し、撹乱する。
 壁や屋根に逃げようとする影朧にも残花が噛みつき、ククルカンが衣服を引っ張り、光満ちる場所から逃さない。
 代わりに時人が軽やかに虚空を蹴って、屋根の上へ。月がその横顔と、魔性の耳と尾を照らした。
「あっいいな! 俺も!」
「小鳥遊」
 呆れる御衣黄を余所に、目を輝かせた小鳥遊がしゅるりと細く長い薄布を袖から抜き取り、微かな風に乗ってふわりと飛び上がった。
「小鳥遊さんは、もしかして……」
「……ああ、奴は羽衣人だ」
 光の道を往く桜の精二人にして書生と玉兎はその時、確かに飛ぶ天狗を見たのだった。
 そして突き当りに差し掛かり、左右への分岐路をひらり、飛び降りた化け猫と天狗がそれぞれ塞ぐ!
「こら、通行止めだ!」
『わあ!』
 小鳥遊に追い立てられ、逃げようとした先にも時人がおり、既に彼は一人捕まえている。
 慌てて引き返そうとした残りの影朧達の前に現れたのは。
「はい、其処までですよ」
『うわー!』
 追いついた薙人が、目の前ににふっかふかの桜絨毯を敷き詰める。
 クッションのように柔らかく弾むそれは、影朧達をぽよんと弾き返した。
 動きの止まった影朧達を、四人がかりで確保していく。
「ほら、御用だ御用だ」
「ふふ、葛城さん楽しそうですね」
 大捕物を成し遂げた時人が、茶目っ気たっぷりにそんなことを言うのを、薙人も柔らかく微笑んで見つめる。まるで悪戯をした弟や妹に対する兄のようだ、なんて。
「ゴヨー……?」
「ああ、御衣黄たちには聞き馴染みないかもだけど。俺の世界の捕り物の決め文句だよ」
 首を傾げる御衣黄に、時人が説明する間。
 捕まりながらもきゃっきゃと笑う影朧達をふと見遣って、薙人は思う。
(「……この影朧達は捕まると消えるそうですが」)
 桜の輪廻には乗れるのだろうか。
 悪戯好きではあるが、まだ幼く無垢な子供達――次の生に辿り着いて、やり直す機会はちゃんと与えられるのか。
「――あ、」
 その時。
 はらり、幻朧桜から舞い散る花弁が影朧の一人の薄紅の頬に触れ。
 影朧はくすぐったそうに笑うと、そのまま、春霞のように消えてゆく。
 一人、また一人と同じように消えゆくのを見て――きっと、大丈夫だ。そう、思えてほっと安堵する。
「さ、持って帰ろ! 凱旋だよー」
 洋菓子の袋を抱えて、お疲れ様とにこやかに響く時人の声に、もう一つ安堵して。
 薙人も、彼らと共に、会場へと戻るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シリルーン・アーンスランド
夫の陸井さま(f35296)とご参戦を…

誰も漏らさぬよう、この上悪しきものにならぬよう
「今なら間に合うのですもの。頑張りましょう」
陸井さまと語り合い意を強く致します

UCは月の斬撃を
攻撃の為でなく此度はあくまで足場を得るため
「それでは陸井さま…鬼ごっこへ参りましょう」

同時に詠唱し虚空へ斬撃を放ちます
建造物には絶対当てぬよう気を付け
互いに足場にて空を駆け鬼さんたちを探しますわ

灯を見つけましたら陸井さまと舞いおり捕まえます
「此処までですよ」
軽くはお叱りしますが頑是ないお子たちですから
言葉には気を付け柔らかく
お返し下さるなら、褒め撫でて差し上げたく存じます

「生まれ直して来られたならまた遊びましょうね」


凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と参加

ちょっとしたお手伝いにって感じだけど
シリルの言う通り、まだ本当に間に合うから
「今ならちょっとした悪戯を楽しんだ子達、だからな」

UCは【神速「空閃」】を使用
攻撃には絶対に使わず
愛する妻と空の鬼ごっこへ進もう
「あぁ、行こうか。シリル」

予想通り空からなら灯がよく見えそうだ
残した足場で影朧を傷つけないよう注意し
上から前を塞ぐように現れて止めるよ
そのまま捕まえられそうなら確保して
「ほら、此処は行き止まりだぞ」

止めた後に叱るのはシリルに任せよう
急に現れた俺だと影朧達も怖いだろうし
何より、包み込むような優しさが大事だと思うから
「この子達に今必要なのは、きっとシリルの言葉だよ」




 子供のまま止まった時で、影朧となった存在。
 『鬼ごっこ』を楽しんでいるだけの彼らは、まだ悪戯で済む内に、やり直せる。
「今なら間に合うのですもの。頑張りましょう」
「ああ。今ならちょっとした悪戯を楽しんだ子達、だからな」
 間に合うからこそ、誰も漏らさないように。
 間に合う内に、これ以上の悪い存在にならないように。
 動きを阻害しにくい程度の軽めの仮装に身を包んだシリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の夫婦ふたり、語り合い決意を強くする。
「それでは陸井さま……鬼ごっこへ参りましょう」
「あぁ、行こうか。シリル」
 何処までも優しく、ふたり微笑んで。
 その脚を絵筆として、帝都の虚空をキャンパスに、道標を描いてゆく。
 空へと至る月と風の道は、影朧達や帝都の建物を傷つける為のものではなく。空へと駆け上がり、路地を一望出来る空へと辿り着く為。
 屋根よりも高い場所。其処から、縦横無尽に駆け回る橙の灯火達が見える。
 さあ、空の鬼ごっこの、始まりだ。
「予想通り空からなら灯がよく見えるな。あっちだ」
 灯火を目指すように、再び道を描く。
 空の道を描く陸井がシリルーンの手を取り共に降りる。次いでシリルーンもまた月の道を描き、軽やかに舞い降りた。
 そうして丁度、地上に降りた時に影朧達と鉢合わせる地点を予測し、其処を目掛けて階段状の道標を描き駆け下りて行ったなら。
「ほら、此処は行き止まりだぞ」
「此処までですよ」
『わー!』
 挟み撃ちするように、影朧達の元へと舞い降りた陸井とシリルーンに、無垢な影朧達は解りやすく驚く。
 彼らがそのまま固まっている内に、急ぎ確保した。丁度この影朧もペアで、彼らが最後の影朧らしい。
 ばつが悪そうに座り込む影朧達は、ちゃんとよくないことをしたという自覚があるのだろう。
 だからこそ、それで許さず叱ってあげられる誰かが必要だ。だがそれは、自分がすべきことではないと陸井は判断した。
「シリル」
「ええ……」
 シリルーンも、その意は汲んだものの、本当にいいのだろうかと遠慮がちに陸井を見れば。
「この子達に今必要なのは、きっとシリルの言葉だよ」
 急に現れた大人の男性である自分がその役割を担ってしまえば、影朧達が怖がり必要以上に萎縮してしまうかも知れない。
 それ以上に今、彼らに必要なのは、包み込むような優しさだと思うから。そしてシリルーンはそれが出来る女性であると、陸井は共に過ごす中で確信しているから。
「解りました。それでは……」
 応えるようにふわりと微笑み、改めて影朧達に向き直るシリルーン。
 屈み込んで視線を合わせ、諭すように言葉を紡ぐ。
「よろしいですか? 誰かのものを、許可なく持ち去るのは、いけないことです。想像してみてくださいませ……楽しみにしていたお菓子を、知らない誰かに全て食べられてしまったら……悲しくはなりませんか?」
 元より柔和な性質であるシリルーンではあるが、まだ頑是ない子供達であることは重々承知しているから。
 言葉には細心の注意を払って。叱れども語気が強くならないように、柔らかく。表情も、厳しいものにならないように。
『……うん』
 素直に頷く影朧達。
 これなら、これ以上諭さずとも大丈夫そうだ。
「相手の気持ちになって考えることが大切なのですわ。そのことを、どうか忘れないでくださいませね」
『はーい』
 ちゃんと返事をしてくれた影朧達には、シリルーンも笑顔を向けてその頭を撫でた。きゃあと嬉しそうに笑う影朧達。
「……あ」
 その光景を、微笑ましく見守っていた陸井が、気づく。
 もう、お別れの時間だ。
 影朧達の姿が、春霞のように帝都の空へと溶けてゆく。
 けれどその表情は何処か満足げで。
 鬼ごっこも楽しかった。父母の代わりに、優しく叱って導いてくれる大人にも出会えた。
 旅立つには、きっといい日だ。
 そう信じて、夫婦ふたり、送り出す。
 優しい微笑みを湛えたまま、彼らの姿が見えなくなる、その瞬間まで。
「生まれ直して来られたならまた遊びましょうね」
 シリルーンの言葉に、影朧達は確かに笑みを深くして。
 そして、彼らは帝都の夜桜に導かれ、消えていった。
 巡り廻る輪廻の道に、正しく乗って往く為に。
 陸井とシリルーンに、見守られながら。
「シリル、俺達も帰ろうか」
「はい、陸井さま」
 ふたりもまた、ふたりの道へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月30日


挿絵イラスト