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UDC-P、就活に悩む

#UDCアース #グリモアエフェクト #UDC-P

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●UDC組織江戸川区支部
「あ、猫塚さん、ちょっといい?」
「はーい?」
 ある日のUDC組織江戸川区支部。猫塚・咲希(過去は人の間を往く・f24180)はいつものように大学から帰ってきた時、組織の職員から声をかけられた。
 何事か、とそちらに行くと、職員は一通の封筒を咲希に差し出してくる。
「はいこれ、さいたま市支部の南條先生から、あなた宛に」
「ボクに? 手紙?」
 封筒を受け取りながら、咲希は首を傾げた。こんな現代でわざわざ手紙を、しかもUDC組織の職員でもない咲希に送ってくるとはどういうことだ。
「なんだろ……安藤先生、ハサミ貸して」
 職員からハサミを借りて、咲希は封筒の中に入った手紙を取り出す。差出人はUDC組織さいたま市支部職員、南條・泉。UDC-Pの保護や管理を行っている職員からの連絡事項だ。
「南條先生曰く、『猟兵の皆さんにお願いしたかったんですが、どこが窓口なのか分からなかったので、とりあえず猫塚さんにと思って……』って」
「……あー」
 困ったように話す職員に、手紙の内容にざっと目を通した咲希が声を上げた。
 さいたま市支部で保護しているUDC-Pについて、問題が発生しているとのこと。それへの対応を、猟兵にお願いしたいらしい。協力してくれたら謝礼も出すとのこと。
 なるほど、これは確かに咲希を経由して依頼しなければ、どうにもならない。
「うん、ボク達への|依頼《・・》ってわけだね。分かった、伝えておく」
 手紙をしまいながら、咲希は自室へ向かっていった。グリモアベースへ向かう前に、身支度を整えなくてはならない。

●グリモアベース
「皆ー、UDC組織から依頼があったんだけど、ちょっといいかな?」
 その後、グリモアベースにて。いつもの獣人姿に戻った咲希が、猟兵達に声をかけていた。
「うん、依頼の内容を話す前に、一つ確認ね。皆は『UDC-P』って知ってる? 世界に滲み出した過去……オブリビオンでありながら、世界を破壊する意思を持たない、安全なUDC」
 UDC-P。正式名称UDC-Peace。UDCアースに存在する怪異であり、オブリビオンでありながら、世界を破壊する意思を持たず、人間に敵意を示さないUDC。既に数十におよぶUDC-Pが、各地の組織で保護されている。
 そうしたUDC-PはUDCの実態、能力を知るために人道的な範囲で研究をされつつ、UDC組織の一員として組織内で暮らしている。種族によっては、かなり職員たちとも打ち解けているようだ。
「そういう、UDC-Pに対して『UDCとして持つ危険な特性を抑え、無害化を目指す』研究が開始されたんだ。これが成功すれば、UDC-Pの皆にもUDC組織の先生たちにも、もっと安心していてもらえる。最終的にはシャーマンズゴーストの皆みたいになってもらえればいいよね」
 そう話しながら、大きな耳をぴこんと動かした咲希は微笑んだ。彼女自身、UDC-Pと|間違われて《・・・・・》保護された、UDC組織で暮らす身。UDC-Pのリアルな姿も、よくよく見てきたことだろう。
 南條・泉から送られてきた手紙を見せながら、咲希は言った。
「つまり、皆にはこの研究のお手伝いをしてもらいたいってわけ。ついでにUDC-Pの持つ特性を調べてもらって、理解を深めてもらうってのもあるね」
 そう話す咲希に、猟兵たちも頷いた。保護し、共闘し、共に時間を過ごしてきたUDC-P。彼らが心穏やかに過ごせるなら、これほどいいことはない。
 と、咲希はそこで手紙の入っていた封筒をひっくり返した。
「で、ね。今回研究対象になるUDC-Pは、浦和区支部の『狗巻・祐也』君なんだ」
 封筒の中から取り出した二枚の写真を、咲希は猟兵に見せる。茶髪の穏やかそうな表情をした青年と、柴犬を思わせる犬獣人。この二枚の写真に映っているのは同一人物、彼こそが件のUDC-P、狗巻・祐也だ。
 UDC「街を征く獣人」は、変身技能を駆使して人間社会に紛れて生きる、獣人の姿をしたUDCだ。普通に過ごしている分には一般人と差はなく、戸籍も持っていれば家族もいる。しかしひとたびその本能が牙を向けば、人々を害し、世を混沌に陥れるのだ。
 祐也も元々、表向きは大学生として両親と弟と一緒に暮らし、裏では獣人仲間とつるんではボヤ騒ぎを起こしていたわけだが、今はそうした集団から離れ、UDC組織の一員として暮らしている。
「『街を征く獣人』の特性……あらゆるものに変身し、分身し、人間に紛れるって特性。狗巻君も十分に制御できるようになったんだけど、今は大学4年生。就職活動を考えなくちゃいけなくて、ストレスで不意に人数が増えちゃったりしてるんだって」
 曰く、祐也はストレスに苛まれると意図しない形で能力が発現してしまうらしく、気がついたら自分が隣りにいたり、柴犬そのものの姿になって丸まっていたり、ということがあるらしい。
 幸い今のところ、採用面接の場面でそれが出たことがないが、このままでは就活自体が覚束ない、と悩んでいるそうだ。
 ため息交じりに声を漏らす猟兵たちに、耳を触りながら咲希が言う。
「ただ、この人数が増えたり、人間に変身したりっていう特性も、ストレスフルな状況でも制御できれば強みだからさ。だから彼の就活についての相談にも乗って欲しいんだ」
 如何にUDCと言えど、表向きは戸籍を持つ人間で大学生。留年して事態を先延ばしにしたら親にも迷惑がかかる。ここでストレスの芽を摘んでしまうのが最適と、そういうわけだ。
 実験は祐也との対話と、模擬戦闘。どういう状況下で不意に能力が発現し、どういうストレスに特に弱いのかというのを、測る必要がある。祐也もUDCとして、敵意を向けられたら本能的に反撃する。愛用のギターを使った攻撃のほか、歌声による遠距離攻撃も行うようだ。
「実験と模擬戦闘が終わったら、池袋にでも遊びに行こうよ。浦和区支部の南條先生から、謝礼としてお金を結構貰えることになってるからさ。電車の中で遊ぶ相談とか、しない?」
 まだ18だから、ボクはお酒は飲めないけれど、と付け足しながら咲希は笑った。お金は十分にあるから、カラオケをしたりボウリングをしたり、あるいは居酒屋やレストランで打ち上げをするのもいいだろう。そうした相談を、電車の中でしよう、ということだ。
 説明を終えた咲希が、手紙と写真を封筒にしまってから手の中でグリモアを回転させる。彼女の後方に開いたポータルの前で、咲希がにっこり笑った。
「じゃ、そういうことで。皆、狗巻君のこと、よろしくね」


屋守保英
 こんにちは、屋守保英です。
 就職活動というと、あまりいい思い出がなかったりします。
 狗巻君も大学4年生で就活の時期。皆さんのお力を借りれれば幸いです。

●目標
 ・UDC-P「狗巻・祐也」の悩みを解決する。

●戦場・舞台
(第1章)
 埼玉県さいたま市浦和区、UDC組織・さいたま市支部の1階談話室です。
 UDC-P「狗巻・祐也」と話をして、彼の悩みを解決したり、彼の特性について踏み込んで調査します。

(第2章)
 さいたま市支部の地下1階、模擬戦闘用運動室です。
 ここで祐也との模擬戦を行い、「様々な刺激や攻撃への耐性」や「特定の攻撃に対する特徴的な反応」を確かめるための実験を行います。

(第3章)
 JR東日本 湘南新宿ラインの車内です。
 実験が終了し、UDC組織から謝礼を受け取った皆さんは、池袋に向かって移動中です。
 移動先の池袋で遊んだり、飲み会をしたりといった相談を、電車の中で行ってください。
 この章においては、グリモア猟兵の咲希も登場します。プレイングでお声掛けください。

●登場NPC
 狗巻・祐也(男性・22歳)
 UDC「街を征く獣人」、柴犬の獣人の青年。T都市大学システム理工学部4年生。
 ブリティッシュロックを聴くのとギター演奏が趣味。サウンドソルジャー相当のジョブで、ギターを用いて戦うことが可能。
 卒業を控え、就職活動を行っているが、なかなか思うように行かず悩んでいる。可能ならUDC組織の職員になりたい。

 過去の登場シナリオ。確認の必要はありませんが、彼の人となりが掴みやすいかと思います。
 『夜と放火と獣と人と』
 (https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=17827)

 『大祓百鬼夜行㉑~かくして彼は立ち塞がる』
 (https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34861)

 『ハロウィンに紛れる怪奇』(第3章に登場します)
 (https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=29163)

 南條・泉(女性・36歳)
 UDC組織 さいたま市支部勤務のUDC組織職員。UDC-Pの保護・観察担当。
 祐也の就職活動が難航していることについても心を痛めており、猟兵への助力を咲希へと依頼した。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『UDC-Pの特性を更に調べよう』

POW   :    頑丈な肉体で危険に耐えつつ、UDC-Pの身体を調べる。

SPD   :    UDC-Pの危険な性質を安全に調査する方法を編み出す。

WIZ   :    危険な性質が発現する、より詳細な条件を考察する。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狗巻・祐也「可能ならUDC組織のさいたま市支部で働きたいですけれど、縁故採用は気が引けます」
 UDC組織さいたま市支部。表向きは一般的な企業を装った建物のエントランス、置かれている呼び鈴を押すと、扉の向こうから南條・泉が姿を見せた。
「あ……猟兵の皆さん」
 猟兵の面々がこの日に赴く、ということは、既にグリモア猟兵から泉へと連絡が行っている。出迎え自体に驚いた様子はないが、泉は申し訳無さそうに頭を下げた。
「すみません、突然こんな依頼をしてしまって……私達が思っている以上に、狗巻君にとって就職活動がストレスみたいで」
 泉曰く、ここまで狗巻・祐也が自身の能力のコントロールを乱すということは、これまで無かったのだそうだ。大学生活も順調、サークル活動も問題なし。それがここに来ての大乱調ということで、職員も悩んでいるらしい。
「今回はUDC組織として、実験の一環で皆さんにご助力をいただく、と言う形になります。ですが……あまりその辺は気にせずに、彼の相談に乗っていただければと思います」
 泉の言葉に猟兵達は頷いた。知らない仲ではない彼のこと、力になれるならなりたい、と思うのは勿論のことだ。
 猟兵達の反応に安堵した泉が、建物内に猟兵達を案内する。
「では、談話室にご案内します」
 エントランスから通じる扉を開けて、廊下に入ってすぐに右手。そこがこの施設の談話室だ。UDC組織の職員の他に、施設内ならある程度の行動の自由があるUDC-Pがくつろぎ、会話をしている。
 そして談話室の隅のテーブル、そこに短い茶髪をした垂れ眉の青年が座っている。彼が、件の狗巻・祐也だ。
「狗巻君、皆さんが来てくれたわよ」
「あ……猟兵の皆さん。すみません、お手数をおかけします」
 泉の言葉に祐也が顔を上げ、猟兵達の姿を認めて立ち上がって頭を下げた。祐也の肩を優しく叩いて、泉は微笑む。
「大丈夫、皆さんならきっと力になってくれるわ。今、コーヒーを持ってきますね」
 猟兵に頭を下げつつそう言うと、泉は談話室から外に出ていった。流石に談話室に備えられているコーヒーを専有してしまうのは、他の利用者にとってもよろしくないのだろう。
 彼女の背中を見送って、祐也は改めて猟兵達に頭を下げる。
「じゃあ、その……よろしくお願いします」
 そう言って、彼は再び着席した。彼の向かいの席を引いた猟兵たちも腰を下ろす。これから、お悩み相談の時間だ。

●特記事項
 ・狗巻・祐也は就職活動についての悩みの他、能力のコントロールについても悩んでいるようです。
 ・現場には南條・泉も同席しています。また、談話室の中には休憩中のUDC組織職員、数名のUDC-Pがいます。
 ・コーヒーが苦手な方は緑茶もお出しできますので、プレイングで仰ってください。
キング・ノーライフ
能力の暴走か、
こういう時は一対一のが話しやすいかと一人で行く。

久しいな狗巻、話を聞いた身としてきてやったぞ。
何となく察しは付いているが…何をしたいのか決めかねているのではないのか?工学を学び、音楽をやり、世話になった職員の助けになりたいとなると軸が分からんのだ。

前にも言ったがお前が努力して育んだ物は確かにある、
更に縁も出来たのだろう?
何がしたいのか明確にすれば誰かが手を貸すかもしれんぞ、
まずはそこからよ。縁を頼るのは悪ではないしな。

後は面接対策で【神は神を呼ぶ】で邪神を呼ぶ、
ここの菓子はやるから攻撃はせず圧だけ掛けてくれんか?
邪神の本気の圧に耐えれたら平気だろうさ。
ダメならフォローするがな。



●南條・泉「街を征く獣人はその特性上、人間社会での活動が活発に見られます」
 まず最初に、祐也の前の椅子を引いたのはキング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)だった。
「久しいな狗巻、話を聞いた身としてきてやったぞ」
「あ……ノーライフさん。ありがとうございます、いつも」
 何度も依頼で顔を合わせ、交流もしているキングの姿に、祐也もホッとした表情を見せる。小さく頭を下げる祐也に、キングもうっすら笑みを浮かべながら椅子に腰を下ろした。
「気にするな。さて……そうだな」
 そう返すと、しばしキングは考え込む表情になった。言葉を選びながら、祐也の目をまっすぐに見返す。
「何となく察しは付いているが……何をしたいのか決めかねているのではないのか?」
 その言葉に祐也が僅かに目を見開いた。その祐也に小さく指を向けながら、キングは続ける。
「工学を学び、音楽をやり、世話になった職員の助けになりたいとなると軸が分からんのだ」
「あー……うーん」
 言われて、思い当たる節はあったのかもしれない。視線をそらして考え込んだ祐也は、ぽつりぽつりと言葉を吐き出した。
「正直、音楽を仕事にするつもりはないんです。趣味の範疇の方が純粋に楽しめますし……それに、僕の大学での専攻はシステム工学の中でも環境システム関連で、こう、人間の活動しやすい街や地域はどんなものか、を研究するのが中心で」
「ほう」
 その祐也の発言に、今度はキングが目を見開いた。音楽活動を趣味の範疇に留めるつもりだ、というのなら話は変わってくる。
 くいと顎をしゃくって先を促すと、小さく頷きながら祐也は続けた。
「だから、例えばここの組織で言うなら、UDC-Pであることを活かして、保護されたUDC-Pの過ごしやすい環境を作ったり、ストレスのたまらない生活システムを作ったり……そうした、暮らしやすい社会を作れたらいいな、とぼんやり思ってはいるんですが……なかなかうまく話せなくて」
 話しながら、再び祐也の視線がテーブルに向いた。彼自身、色んな会社を見てきて、色んな会社に履歴書を送っているのだろう。無論その会社ごとに志望動機は変わってくるが、「より良く暮らせる社会を作りたい」という思いは持っているらしい。
 思っていたより自分のやりたいことが定まっていることに、安心したようにキングは微笑む。
「その割には、自分のやりたいことを言葉にできているではないか」
 キングの言葉に祐也が顔を上げた。確かにここでこうして、キングに対して自分のやりたいことを言葉にできている。それはとても大事なことだ。
「前にも言ったがお前が努力して育んだ物は確かにある。更に縁も出来たのだろう? 何がしたいのか明確になれば誰かが手を貸すかもしれんぞ、まずはそこからよ」
 テーブルに肘をつきながら話すキングに、祐也がほっと息を吐き出した。胸のつかえが取れたかのような表情で口を開く。
「なるほど……何となく、自分一人でなんとかしないとと思っていたんですが、頼ってもいいんですね」
「そうとも。縁を頼るのは悪ではないしな」
 そう言いながらキングがちらと泉に視線を向けると、彼女もこくりと頷いた。勿論、採用にあたって能力試験や面接試験は受ける必要があるだろうが、知人の縁を頼っての就職活動は、何も悪いことではない。
 祐也の不安が少しは解消されたところで、キングはぽんぽんと手を打った。
「さて、後は面接対策か。とりあえず、模擬面接でもやってみよう。邪神」
 と、キングの隣の椅子にギザギザ歯の美少年が現れた。職種を操る邪神だが、今回は触手の出番はない。キングが邪神の前に、緑茶と茶菓子を置きながら声をかける。
「あー」
「ここの菓子はやる。ここに座ったまま、狗巻に圧だけをかけてくれんか?」
「うっ」
 そう言って祐也に手を向けるキングに、祐也の身体が強張った。
 少年の姿をしているが邪神である。神であることに変わりはない。そんな存在からの圧、何と言うべきか、恐ろしいという他はない。
「要は圧迫面接よ。邪神の本気の圧に耐えれたら平気だろうさ」
「うう……不安です……」
 しかし気楽な調子で言ってくるキングに、視線を伏せる祐也だ。そうこうするうちに、邪神が濃密でねっとりとした圧力を祐也にかけ始める。
「あー……」
「え……うぅ……」
 強い言葉で詰めてくるわけでもなく、ただ圧をかけてくる邪神に、何と言うべきか言葉に詰まる祐也だ。そのまま無言の時間が2分か3分か続いた頃、ぼふんと音を立てて祐也の腰から犬の尻尾が飛び出した。
「あっ」
「ふむ、まぁよく耐えたほうか。尻尾だけなら何とかなろう」
 慌てて腰を抑える祐也に、苦笑しながらキングはコーヒーカップに手を付ける。インスタントコーヒーを入れたプラスチックカップは、まだほんのりと温かかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

儀水・芽亜
就活ですか。学園の事務職員という身分では、専門家と言えませんね。進路相談は教員の皆さんのお仕事です。
それでも、学校の舞台裏を知る立場にあるというのは、プラスに働くと思いたいです。

まずは進路希望を伺いましょう。ご希望は事務職ですか? それとも営業? 肉体労働とか?
採用に有利な資格はお持ちですか? 代表的なのは自動車の免許です。
大学での専攻も教えてください。そこから就職先の分野を絞れると思います。
後は、面接を受ける企業を選んだ理由をしっかりと。

筆記試験は問題ないのですよね。面接がストレスと。
うーん、もう少し肩の力を抜いてありのままで臨んでもいいと思うんですけど。企業も優秀な人材を欲していますから。



●南條・泉「UDC組織さいたま市支部は、表向きは一般の企業としてカモフラージュしています」
 続いて椅子に腰掛けた儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は、困ったように眉尻を下げながら独りごちた。
「就活ですか。学園の事務職員という身分では、専門家と言えませんね。進路相談は教員の皆さんのお仕事です」
 銀誓館学園に事務職員として勤務する芽亜にとって、就職活動の相談を受けるのは本来の仕事ではない。しかし、就職活動は経験し、さらに学校という現場を知ってもいる。全く何も話せないわけではない。
「それでも、学校の舞台裏を知る立場にあるというのは、プラスに働くと思っています。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
 祐也に頭を下げると、祐也もぺこりとお辞儀をしてきた。彼が頭を上げるのを確認してから、芽亜は両手をテーブルの上に置く。
「狗巻・祐也さん、でしたね。それでは、就活に関わる要点を一緒にチェックしていきましょう」
 真面目な表情でそう声をかけると、祐也がもう一度頭を下げた。それを確認してから、芽亜は一つ一つ問いかけていく。
「まずは進路希望を伺いましょう。ご希望は事務職ですか? それとも営業? 肉体労働とか?」
「うーん、どちらかというと開発職ですね。システムエンジニアリングに近いというか……」
 芽亜の問いかけに、悩むようにしながら祐也は答える。なるほど、肉体を動かすような仕事ではないが、かと言って事務として裏方に徹する業務を志望するわけでもないらしい。
「なるほど。採用に有利な資格はお持ちですか? 代表的なのは自動車の免許です」
「マイクロソ○トのM○SはW○rd、Ex○el、PowerP○intで持っています。なのでアソシエイトも認定されています。あとは普通自動車第一種運転免許も、大学一年の時に取りました……運転する機会は、あんまりないですけど」
 芽亜が続けて問いかけると、祐也は指を折りながら保有する資格を挙げていった。オフィスソフトを問題なく活用できる、と証明されているのは強みだろう。芽亜が満足した様子で頷く。
「いいですね、しっかり履歴書に書ける資格をお持ちなのは重要です。大学での専攻も教えてください」
「システム理工学部 環境システム学科に所属して、都市環境デザインを専攻しています。主に、人間が活動しやすい街並み、地域がどんなものであるか、どんな街なら活動が活性化するか、を研究しています」
 続いては大学で学んだことの話だ。システム理工学部、と言ってもその研究対象は多岐に渡る。祐也の専攻範囲は都市環境に関わるものだ。小さく頷きながら芽亜がさらに問いを重ねる。
「なるほど……そうなると今まで履歴書を送ってこられた企業は、都市開発を行うような企業が中心ですか?」
「は、はい。ホテルとか、不動産会社とか……あとは鉄道会社にも」
 その問いかけに視線を僅かに宙に向けながら祐也が言う。聞けば、今まで15社ほどにエントリーして、履歴書を送ったらしい。
「後は、面接を受ける企業を選んだ理由をしっかりと教えてください。志望動機は定まっていますか?」
「一応は……会社によって動機は変わりますけれど、『より人間が活動しやすい街、都市を造るという目的』がはっきりしていて、そこに僕の大学で研究してきたことを活かせそうな企業を狙って、履歴書を送っています」
 芽亜の問いかけに、祐也は言葉を選びながら答えを述べる。つまりは大学で学んだことを活かせそうな、自分の知識を活かせそうな企業を選んでいるようだ。
 一通り話を聞いた芽亜が、こくりと大きく頷く。
「思っていたよりしっかりしていて驚きました。筆記試験は問題ないのですよね?」
「はい……SPIの成績も悪くはないです。面接前の適性検査は、だいたいパスしているので……」
 芽亜の言葉に祐也も頷いた。今まで履歴書を送った会社の内、面接試験に進めているのが10社ほど。それなりの割合で適性試験はクリアできているようだ。そのことに安堵したように息を吐く芽亜だ。
「うーん、もう少し肩の力を抜いてありのままで臨んでもいいと思うんですけど。企業も優秀な人材を欲していますからね」
「ありのまま……ですか」
 しかし芽亜の言葉に、祐也が困ったような顔をする。頭の上に柴犬らしい三角耳を出して見せながら、祐也は言った。
「何というか……それが一番怖いんですよね。ありのままを出そうとすると、獣人である僕の本来の姿を、見透かされてしまうんじゃないかって……」
「ああ……基本的に、偽って世を生きている存在ですものね」
 三角耳を指差す祐也に、芽亜が小さくため息を吐き出す。確かに街を征く獣人は、人間に姿を変えて人間社会で生きるUDC。彼らにとってはありのままを見せないで生きることが常だ。
 祐也の顔を見ながら、芽亜は小さく微笑んだ。
「勿論、面接の場で獣人の姿を曝け出すのは、いいことではありませんが……獣人だろうと人間だろうと、あなたという存在は変わりません。姿を偽っていても、素のままのあなたを、出すことは出来るはずですよ」
「が、頑張ってみます」
 芽亜の言葉に目を見開きながら、祐也は頷く。姿は偽っても自分を偽らなければ、彼の人となりは誰かに伝わるはずだ。そのことを確認して、芽亜はもう一度頷いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

杼糸・絡新婦(サポート)
関西弁口調。
とある忍者が使っていた武器・鋼糸【絡新婦】のヤドリガミ。
白い女物の着物を着用しているが、
名前沿った姿なだけで、オネエとかではなく中身はれっきとした男。

子供や親子中心に一般人には愛想よく接するが、
敵とみなしたら容赦なく叩く。
日常でも戦場でも自分のペースを崩さず、
フェイントや挑発、相手の動きを拘束するように阻害したり、
あえて誘い出してこちらに攻撃を仕向け、
自他へのすきを作り出したりする、戦闘スタイル。
また使えるものはなんでも使う。
元の持ち主の影響で、忍者らしい動きも見せる。

所持する黒い狩衣を着た狐獣人の姿をしたからくり人形は、
かつての主人が作ったものを模したもの、名前はサイギョウ。



●南條・泉「街を征く獣人はその性質上、獣人の姿が人目につくことを極端に恐れるようです」
 杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)はゆっくり祐也の前の椅子を引くと、そこに腰を下ろしながらため息をついた。
「就職、なあ。自分にはあんまり縁のあるものあらしまへんけど、人間として生きていく以上、避けては通れないものやなぁ」
 人間ではない生き物なのに、人間らしく生きている。人間らしく生きるからこそ、人間の社会のルールに縛られる。難儀なものだ。律儀とも言える。
 そんな感情を抱きながら、緊張で身を固くする祐也へと絡新婦は微笑みかけた。
「そうやなあ、そう緊張せんと。飴ちゃん食べる?」
「あ……ありがとうございます」
 懐から飴玉の包みを取り出して祐也に手渡す。それを受け取った祐也が包みを開いて飴玉を口に入れた。柔らかな甘味が、身体の緊張を解してくれる。
 祐也の目元から力が抜けたのを見た絡新婦が、テーブルに片肘をつきながら言った。
「甘いもん口に入れたところで……あんさん、UDC組織に就職したとして、やりたいお事とかあるん?」
「やりたい事……」
 絡新婦の問いかけに、祐也が僅かに視線を落とす。やりたい事。それも就職を希望するUDC組織に入ってからの。
 僅かに沈黙の時間を作ってから、祐也がぽつりぽつりと言葉を吐き出した。
「僕は、人間と……人間の中で生きるUDCが、一緒に生きていきやすい社会を作れたら、って思うんです」
「ふうん?」
 彼の言葉に、絡新婦が面白そうな目で彼を見る。
 人間の生きやすい社会、それは勿論だ。UDCアースは人間の生きる世界なのだから。UDC怪物は世界の外から入りこんだ、いわば余所者。排除されるのが常とはいえ、彼は一つ一つ、しっかりと言葉を選びながら話していく。
「僕は……確かに人間を装うことは出来ますけれど、UDCであることは変えられないので。UDCが人間ではない、人間に敵対するものだと言うのなら、少しでも生きやすい社会にすることで、その傾向を和らげることが出来るんじゃないか、って」
 祐也の言葉に、絡新婦がすっと目を細めた。
 祐也がどこまで知っているかは絡新婦には分からないが、UDCは世界を害し、世界を破滅に導く存在だ。UDC-Pにその性質は薄い、あるいは見られないが、あくまでもイレギュラーな存在。大多数のUDC怪物は、つまりそういうもの。
「世界の敵で、人類の敵で、いずれ滅する定めのものだとしても、やろか?」
「……はい」
 絡新婦の言葉に、少し悩んだ様子を見せながらも祐也は頷いた。
 彼自身も、UDC-PであるとはいえUDCなのだ。他人事ではない、ということなのだろう。悩みながらも、彼は話す。
「僕には、猟兵の皆さんのこととか、UDCの本質とか、そういうのはあまり実感が持てないですけれど。UDC-Pの皆のことは、それなりに分かります。UDC-Pの皆にとっては、この組織の建物が社会です。職員の皆さんが家族です」
 隣りにいる泉にも視線を向けながら、祐也は言った。UDC-Pは基本的に、UDC組織の建物の外に出ることはない。彼ら彼女らの世界は、この閉じられた建物の中だ。
 UDC-Pとしては珍しく、大学に通い、人間の家族を持つ彼であっても、それを彼自身もよく分かっている。
「だから、UDC-Pの皆が生きやすいように、UDC組織の環境を整えていく……僕の学んだ環境システム学は、そういうところに活かせるはずです」
 そう話す祐也の瞳には光があった。その光を宿した目を見つめながら、絡新婦も薄っすらと笑う。
「ええやんか。あんさんはUDC……人間ではあらへんとしても、あんさんの身の回りを良くしよう、そう思ってはるんやろ?」
 そう告げると、目を細めて絡新婦は短く声をかける。
「頑張り」
「……はい。ありがとうございます」
 絡新婦の言葉に、祐也はもう一度頭を下げた。きっと、ここで話した彼の思いは、実る時が来るはずだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

明堂院・悠々子(サポート)
妖狐の陰陽師×精霊術士の女です。
普段の口調は「お狐モード(私、~くん、~ちゃん、ね、よ、なの、かしら?)」、敵には「守護者モード(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、かしら?)」です。
料理を作って他人にあげるのが好きなので、サポート寄りの動きをすることが多いかもです。
自分で戦う時は霊符を使って狐火や管狐を召喚します。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
アドリブ連携◎ エログロ× あとはおまかせ。
よろしくおねがいします!



●狗巻・祐也「お酒は飲める年齢ですが、酔っ払って能力が暴走したらよくないので、あまり飲まないようにしています」
 次に祐也の前の椅子を引いたのは明堂院・悠々子(人恋しお狐様・f38576)だった。先程まで組織の建物の給湯室を借りて、作っていたさつまいもスティックをテーブルに置く。
「時間も時間だし、小腹も空いたでしょう? 軽くつまみながらお話しましょう」
「さっき、作ったんですか? 温かい……ありがとうございます」
 さつまいもスティックに手を伸ばし、口に含みながら祐也が言う。ほっとした空気が広がる中、悠々子はテーブルに肘をつきながら口を開いた。
「さて、そうね……あなた、音楽活動が趣味ということだけれど、それを仕事にしたいタイプ?」
「いえ……そうではないですね」
 悠々子の問いかけに祐也はすぐに答えて首を振った。彼自信、趣味である音楽活動は趣味に留めるつもりだ。
「バンド活動は楽しいですけれど、それを仕事にするのは違うかなって。音楽はあくまでも趣味の範疇で楽しんで、仕事は仕事で、かなと」
 そう話す祐也に、満足そうに悠々子は頷く。趣味は趣味、仕事は仕事でメリハリを付けるのは大事だ。
「いいわね。仕事以外の趣味はとても大事よ。そうすることで人生は潤うわ」
 悠々子はそう言うと、自分もさつまいもスティックに手を伸ばした。ベイクしてほくほくになったさつまいもをつまみ上げながら、微笑みつつ彼女は言う。
「私も料理が趣味なの。造るのも食べるのも好き……でも、仕事は別にあるわ。料理を仕事にしようとは思っていない」
 さつまいもスティックを口に運びながら悠々子は話す。彼女の姿を祐也は静かに見ていた。
「それでいいのよ、その方が生きていて楽しいもの。楽しく生きるのが一番よ」
「そうか……そうですよね」
 そう話して笑う悠々子に、祐也もホッとした表情で微笑んだ。生きるには楽しいことがあった方がいい。楽しく生きられれば、それがいいことだ。
 もう一度さつまいもスティックに手を伸ばし、口に入れながら祐也は小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。なんだか、行けそうな気がしています」
「よかったわ」
 彼の言葉に悠々子も頷いた。祐也の気持ちは十分固まり心も決まったようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『街を往く獣人』

POW   :    俺達はどこまでも本気になれる
【獣の本能 】に覚醒して【魔獣形態】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    俺達は何人にだってなれる
レベル×1体の、【胸元 】に1と刻印された戦闘用【の『街を往く獣人』】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    俺達はどこにだって隠れられる
無敵の【何にでも変身できるようになる腕輪 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。

イラスト:相澤つきひ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狗巻・祐也「どちらかというと魔獣形態への変身は苦手で、仲間の召喚の方が得意です」
「さて、狗巻君の悩みも解決したところで次のステップに行きましょうか。場所を変えましょう」
 場が落ち着いたところで、泉が立ち上がって口を開いた。そのまま彼女についていって、祐也と一緒に施設の地下へ。地下1階の厳重に警備されている部屋に入って、泉はこちらを振り返った。
「ここは我が施設の模擬戦闘用運動室です。ここでUDC-Pの戦闘能力を確認したり、身体を動かしてストレス解消を行っています」
 部屋の中は装飾のない、壁や床が強固に補強された部屋だった。この部屋の中なら、UDCがいくらでも暴れられるというわけだ。
「皆さんには、狗巻君との模擬戦を行っていただきます。狗巻君に刺激やストレスがかかることで、それに対する耐性や反応を見るのが目的です。様々な攻撃を行ってもらえると助かります」
 泉が祐也に視線を向けると、祐也は部屋の隅に置かれていたギターバッグを手に取った。その中から一本のギターを取り出すと、はにかむように笑う。
「あまり、戦闘は得意じゃないですけれど……でも僕も、戦えないわけではないですから。程々には動けるはずです」
 そう言うと、ギターのネック部分を持って鈍器を構えるようにしてギターを持つ。眉尻を持ち上げながら、祐也は口を開いた。
「それじゃあ、よろしくお願いします……行きますよ!」
 言うや否や、祐也が床を蹴って飛び出してくる。それと同時に彼の両隣に、彼と同じ姿をした獣人が二人姿を現した。

●特記事項
 ・狗巻・祐也はギターを武器にして戦います。ユーベルコードはUDC「街を征く獣人」の持つ3つの他、サウンド・オブ・パワーを使うことが出来ます。
儀水・芽亜
なるほど、模擬戦用の部屋ですか。

そのギター、見たところ頑丈に強化しただけのようですね。
銀誓館学園の詠唱兵器には、スラッシュギターやギターマシンガンなんてものもありましたよ。それくらい、まだ常識の範疇です。
模擬戦も毎週学園でやっていましたし、その感覚でいきましょう。

祐也さんお得意の召喚術ですね。相手を数で圧倒すると。相手が少なければ有用と思います。
では相対を始めましょう。

私は毒の「属性攻撃」の本質の顕現で、揚羽蝶の群を室内一杯に放ちます。
毒は致死毒でなく麻痺毒。時間が経つほどに毒が回って不利になりますよ。
ギターの攻撃は「落ち着き」をもって「受け流し」ます。

相対が終われば「浄化」で毒を抜きます。



●狗巻・祐也「ギターはギブソンやエピフォンが特に好きです」
 鴇色の槍を手に持ちながら、芽亜は運動室の中を見回した。
「なるほど、模擬戦用の部屋を備えているとはなかなかですね」
 UDC-Pを抱える以上、彼らのストレス発散は考えないとならない。そういう時に、身体を動かすのはとても重要だ。それだけの事を考えて施設を備えていると言うなら、先見の明があると言えよう。
 そう思いながら、芽亜は祐也の握るギターに目を向けた。
「そのギター、見たところ一般のギターを頑丈に強化しただけのようですね」
「うっ……確かに、その、猟兵の皆さんの扱う楽器と違って、市販品を強化しただけのものですけれど」
 芽亜の言葉に祐也が言葉に詰まる。確かに彼の持つギターは市販品の、それもそこそこお手頃価格のギターを、物理戦闘にも耐えうるように強化したもの。猟兵の獣奏器やサウンドウエポンに比べると、武器としては貧弱だ。
「銀誓館学園の詠唱兵器には、スラッシュギターやギターマシンガンなんてものもありましたよ。それくらい、まだ常識の範疇です」
 そう容赦なく言い放つ芽亜に。歯噛みをしながらも祐也はギターを構える。と、即座に彼の周囲に何人もの柴犬獣人が姿を見せた。
「……っ、ですが、僕ならこういう戦い方も出来ますので!」
 多数出現した獣人が動き出す中、祐也がギターを通常の持ち方で構えて弦をかき鳴らす。奏でられる音楽のリズムに合わせて、獣人たちが一斉に躍動した。
 サウンド・オブ・パワー。音楽を聞いた者の戦闘力を高めるユーベルコードに、芽亜が小さく目を見開く。
「なるほど。自身と同じ存在を多数召喚し、それらをサウンド・オブ・パワーで強化する。そして相手を数で圧倒すると。理に適った戦法です」
 そう感心して見せながら、ギターを鈍器として使ってくる獣人たちをかわし、いなしていく芽亜だ。
 祐也の戦法は、一対一を多対一へと持ち込む力を持つ。この室内のようにある程度広さがあり、また数の有利を覆されない相手ならば非常に効果的だろう。
「相手が少なければ有用と思います。では相対を始めましょう」
 ただし、それは猟兵相手でない場合の話だ。芽亜がとん、と槍の石突で床を叩く。
「蝶は魂の鬼車。その魂を、その魄を、黄泉へと惹かれなさい」
 途端に、芽亜の足元から大量の、部屋の中を埋め尽くさんばかりの揚羽蝶が飛び出した。蝶の羽から撒き散らされる毒鱗粉が、部屋を満たして祐也の動きを止めにかかる。
「くっ……!?」
「この蝶の毒は致死毒でなく麻痺毒。時間が経つほどに毒が回って不利になりますよ」
 芽亜のはなった蝶の撒き散らす鱗粉の毒は、今回は動きを止める麻痺毒だ。攻撃手段が近接攻撃しか無い祐也にとっては致命的である。
「くっ、動きが……!」
「思ったように動けない、これもまたストレスであることと思います。そうした時、持てる力を活用して、しかし周囲に迷惑をかけない程度にどう動くか、これが重要です」
 そう言い放ちながら、芽亜は槍を振るって獣人たちを貫いていった。本体の祐也には手を出さず、しかし召喚された獣人には容赦せず。だんだんと数を減らされていく現状、祐也が苦々しく奥歯を噛んだ。
「確かに……社会で生きていく以上、思うように動けない状況はあると思います」
 自分の思いどおりにことを運べない状況など、生きていく以上いくらでもある。社会に出たら余計にそうだろう。
 だが、だからといって諦めて、流れに流されるだけでいいわけはない。祐也がもう一度足を踏みしめると、彼の隣に一体の獣人が姿を見せた。そのまま獣人にギターの弦を鳴らさせ、すぐさま前に飛び出させる。
「ですが、今なら!」
「なるほど、そう来ますか」
 獣人の振るったギターを、芽亜は槍の柄で受け止めた。既に出現している獣人が使い物にならないなら、新たに召喚して戦わせればいい。その機転は中々のものだ。
「いい機転の効かせ方です。きっとその思考力が、今後の役に立つでしょう」
 満足そうに微笑みながら、芽亜が槍を振るう。一閃した切っ先が獣人の身体を袈裟に切り裂き、その身体を消滅させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キング・ノーライフ
我は基本蹂躙か篭絡しかせんからな、加減が難しい。
狗巻に関しては手助けはしたがそれ以上せんでも自分の足で立てる奴だから救いという名の篭絡をするのは気が乗らんし、趣旨に反する。

では神の試練を一つ…【狸塚の呼び鈴】を使って【大狸囃子】、変化と音楽の力で何とか狸塚の音に対抗して見るがいい。これならば死ぬ事は無かろう。だが勝負は勝負、狸塚よ音圧で吹き飛ばして構わん。

経験や地力は狸塚の方が圧倒的、だが摸擬戦を見るに判断力とか悪くなさそうだな。では狗巻、ヒントをやろう、狸塚もお前同様にコンプレックスや弱さもある。以前のパーティーとかも思い出して対処してみろ。

妬くな狸塚、試練を任せるのは信頼してるからよ。



●狗巻・祐也「人間は好きですけれど、人間になりきれない自分がもどかしくもあります」
 ギターを構える祐也の姿を見て、キングは小さく鼻を鳴らした。
「ふむ。我は基本蹂躙か篭絡しかせんからな、加減が難しい」
 これまでに何度も手助けはしたが、誰かに支えてもらわないと立てないような存在ではない。とあれば、篭絡するのは気乗りがしないわけだ。かと言って自分の持てる武器で蹂躙するのも趣旨に反する。
 しばし考えた後、キングは呼び鈴を取り出した。
「では神の試練を一つ。狸塚」
「はい、ご主人様」
 それを鳴らすと、従者の一人、狸塚・泰人が姿を見せる。くいとメガネを直す泰人に、キングは指示を出した。
「音を鳴らせ。音圧で吹き飛ばして構わん」
「ああ、承知しました。お任せください」
「うっ」
 指示を受けるや、泰人の前に巨大な太鼓が現れる。これから襲いかかってくる強烈な音圧に、祐也が僅かに身じろぎした。
 しかし泰人が待ってくれるはずはない。太鼓の前で構えながら泰人が声を張った。
「狗巻さん、行きますよ」
「は、はい! お願いします!」
 祐也も覚悟を決めて構える。他の職員たちが一斉に耳を塞ぐ中、泰人がばちを振るった。
「はっ!」
 そこから放たれるのは指向性を持った強烈な轟音だ。運動室の中の空気がビリビリと震える。迫りくる音波に、祐也がアンドロイドに変化しながら大きく右へと動く。
「く!」
「ほう、さすがの判断力だ」
 指向性のある音波なら、その範囲から離れればダメージはない。アンドロイドの身体なら耳を備えないようにも出来る。このあたりの判断力は流石だ。
 太鼓の向きを変えて祐也を狙い撃つ泰人と、大きく動きながら分身をして波状攻撃を仕掛ける祐也。攻防は一進一退だ。
 そこにキングが、うっすら笑みを浮かべながら声をかける。
「狗巻、ヒントをやろう、狸塚もお前同様にコンプレックスや弱さもある。以前のパーティーとかも思い出して対処してみろ」
「え、えーと……!」
 キングの助言を聞いた祐也が、思考を巡らせながら泰人に迫る。ギターの一撃を笛で防ぎながら、泰人が批判的な視線を主人に向けた。
「ご主人様、どっちの味方ですか」
「妬くな狸塚、試練を任せるのは信頼してるからよ」
 泰人の言葉にもう一度キングは笑った。
 その後、祐也がサウンド・オブ・パワーの歌に乗せながら泰人のコンプレックスや過去の失態を次々歌っていき、泰人が顔を真っ赤にして太鼓を叩くのをやめたという形で決着がついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー(サポート)
「戦闘は得意な方に譲りますよ」
自称偵察専門、宇宙出身の竜派ドラゴニアン青年


単純明快が信条、焦るとラフが混ざるも概ね穏やかな物腰です
宇宙や汚染地などの悪環境下に特に強く、
変装・偵察・工作など非戦闘活動を得意と自負する一方で
他猟兵達の戦闘関連の技量に感心しがちです
全部80点で100点は取れないタイプ


●特徴として
功夫・衝撃波による砲撃戦・結界術の3種が戦術の主体です
全て「偵察任務遂行のためついでに取得した」とのこと

こいつを活躍させるというよりも
話の調整役として扱ったほうが背後は喜びます
ストーリーや背景を描写する際の進行役や
負傷や撤退でオブリビオンの見せ場などの
演出素材としてもお役立てください



●狗巻・祐也「僕の能力については、とっさに使ってもすぐに戻せるように訓練を始めています」
 地下の運動室に連れてこられたベルベナ・ラウンドディー(berbenah・∂・f07708)は、ギターを構えて立つ祐也を前にして小さく嘆息した。
「模擬戦ですか……戦闘は得意な方に譲りたいんですけれどね」
 自分は偵察専門で荒事は専門外、他の猟兵のようには戦えない、と考えているベルベナだ。こうした戦闘を要求される場面では不向きと自認するも、模擬戦ならばある程度は気楽に構えられそうだ。
 首をこきりと鳴らしてから、ベルベナは祐也に頭を下げる。
「まぁいいです、単純明快に行きましょう。よろしくお願いします」
「お、お願いします!」
 互いにお辞儀をして、開始線に位置取り。そして功夫の構えを取りながら、ベルベナは真正面の青年を見据えた。
「では、行きましょうか」
 言うや、右手が踏み込みとともに突き出される。その手から熱と光を放つ衝撃波が螺旋を描き、祐也の身体に突き刺さった。
「うっ!?」
「この衝撃波は装甲を破壊します。早く抜け出さないと丸裸ですよ」
 衝撃波を放ち続けながらベルベナが話す。彼の放つ超竜巻は地中を掘り進めるのに使用するユーベルコードだが、こうして敵の装甲を剥ぐことにも転用できる。模擬戦には適しているはずだ。
 段々と身につけているパーカーやシャツが破れていく中、不意に祐也の身体が衝撃波の側方へと飛び出した。
「く……くっ!」
「ほう?」
 それを見て声を上げるベルベナだ。自分が放つ衝撃波の延長線上には、たしかに狗巻・祐也の姿がある。しかし飛び出して立ち上がってギターを振りかぶる祐也の服はあちこち裂けていた。先程まで攻撃を受けていたのは彼であろう。
 つまり、今この衝撃波を受けていて、がっくりと膝をついた祐也は、分身だ。
「もう一人『自分』を召喚し、その『自分』に突き飛ばさせて抜け出しましたか。機転が利きますね」
「召喚した僕も一番弱いレベルなら、攻撃に耐えきれずに程なく消える……それなら僕が二人に見えることもない、そう思ったので」
 ギターを振り下ろしてくる祐也に、腕でそれを受け止めながらベルベナは微笑む。たしかに、分身召喚の上手い使い方だ。とっさに召喚して行動させ、すぐに消せれば最高だろう。
「いい判断です。この世界ではそうした異能を表に出すわけにはいかないでしょうから。うまく活用できるといいですね」
「は……はい」
 腕を下ろしながらのベルベナの言葉に、祐也も小さく頭を下げてギターを下ろす。彼の反応に満足した様子で、ベルベナは運動室の壁際に腰を下ろした。

成功 🔵​🔵​🔴​

キャロライン・メイ(サポート)
ダークセイヴァーの貧民街の生まれ。生きるため、悪事に手を染めてきた。ある日商人から一振りの剣を盗み出す。剣は呪われており、その邪悪な魔力によって、呪われし黒騎士へとその身を堕とす。その冷酷な様を人々はアイスドールと呼ぶ。

自身の半生に強いコンプレックスを持ち、心の中では常に自己を否定し続けている。

ダーインスレイヴ~漆黒の魔剣による強力な一撃。
ライフドレイン~魔剣の血塗られた鉄鎖が無数の棘に変形し敵に突き刺さる。


※エロやグロNG
※5人以上まとめたリプレイNG



●狗巻・祐也「魔獣形態への変身は、威厳がないと他の獣人からからかわれることも多かったのであまりやりたくはないです」
 運動室に入ってきたキャロライン・メイ(アイスドール・f23360)は、手にしていた漆黒の魔剣を見ながら嘆息していた。
「模擬戦、か……殺せないというのは収まりが悪いが、そういうことなら仕方がない」
 UDC相手とは言え、研究のための模擬戦。相手を殺してはならないという制約が、キャロラインには何とも窮屈であった。だが、この刃で万一相手を殺してしまわないとも限らない。
 魔剣を運動室の壁に立てかけながら、キャロラインは泉に視線を向けた。
「木剣か、何かないか。刃渡りの長いものがいい」
「あ、ええと……木刀でしたら確かあったはずです。持ってきますね」
 問われると、思い出したかのように泉が倉庫に走った。持ってこられたのは赤樫の木刀だ。魔剣より少々刀身は短いが、使い勝手は充分だ。
 木刀を二度三度振り、感触を確かめてからキャロラインは前方を見た。
「ふむ……まあいいか。さて」
 そちらには祐也が、ギターを構えたままで所在なさげに立っていた。先程から、彼はそこでキャロラインの準備が整うのを待っていたのである。
「あ、あの……もう、始めて大丈夫でしょうか」
 申し訳無さそうに声をかけてくる茶髪の青年に、眉間にわずかにシワを寄せながらキャロラインはゆっくりと距離を詰めていった。運動室中央、開始線の引かれたところに無造作に立ちながら告げる。
「オブリビオンながら現代を生き、家族があり、人間として自分の足で立とうとする。眩しいものだ」
 ダークセイヴァーの貧民街の生まれ、生きるためには悪事も厭わずやってきたキャロラインにとって、UDCアースの日本でオブリビオンながら恵まれた暮らしをしてきた祐也は、どこか手の届かない存在と言えた。
 彼は今、人間社会で生きるためにその中に飛び込み、UDCでありながら『人間』として生きようとしている。自身の半生にコンプレックスのあるキャロラインとしては、何とも言えない思いがあった。
 その感情を振り払うように、合図もなしにキャロラインは床を蹴り、木刀を構える。
「だが、圧倒的な暴力を前にした時、貴様はどうする」
「わ……!?」
 突然の攻撃開始、祐也がまごつきながらギターを構えた。振るわれる木刀がギターのボディに命中し、補強のために取り付けられていた鋼材をへこませ、砕く。
 あまりの威力とギターにとっては命と言えるボディの損傷に、冷や汗をかきながら祐也が言った。
「容赦ないですね!?」
「模擬戦とは言え戦いだ、甘えるな」
 しかしキャロラインの刃に容赦はない。手にしているのが元々使う魔剣であったなら、瞬く間に祐也の身体は寸断されていただろう。
 破損したギターを投げ捨てながら、祐也が言う。
「出来ればそういう事にならないよう、知恵を巡らせるのは必要だと思いますけれど……やるしかないとなったら、やるだけです」
 そう言うや、祐也が床に両手をつけた。みるみる服が破け、全身から毛が生えだし、巨大な柴犬の姿になった祐也が牙をむき出して吠える。
「僕には、それを出来るだけの力はある!」
「道理だ」
 飛びかかってくる祐也の牙を、木刀を構えて防ぎながら、キャロラインはすっと目を細めた。
 祐也が木刀に噛みついてくる。荒い鼻息を間近で感じたキャロラインが、静かな声色で話す。
「生きるとは、戦いだ。戦うべき時に逃げないなら、生きられるだろう」
 そのまま木刀を一気に振り抜く。口を離してひらりと身をかわし、着地した祐也の瞳は、確かに輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘(サポート)
※語尾に「のじゃ」は不使用
はっはっは、妾、推っ参!
敵は決してディスらんよ、バトルを彩るもう一人の主役なのでな!
強さも信念も、その悪っぷりも誉める! だが妾の方が、もっとスゴくて強い!

バトルや行動は常に生中継+後で編集しての動画配信(視聴者が直視しては危ない系は除く!)
いかにカッコ良く魅せるか、見映えの良いアクションが最優先よ
とはいえ自身の不利は全く気にせんが、共にバトる仲間にまで不利を及ぼす行動はNGだぞ?

戦法は基本的に、テンションをアゲてボコる! 左腕とか尾で!
敵の攻撃は回避せず、受けて耐える! その方がカッコ良いからのう!
はーっはっはっは! さあ全力で来るがよい、妾も全力で応えよう!



●狗巻・祐也「猟兵の皆さんは異形の姿を見せていても全然周りが違和感を持たないの、すごいし羨ましいなと思っています」
 ずるりずるりと蛇の下半身をくねらせながら、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が運動室に姿を見せる。そのまさしく異形の姿に、祐也も泉も小さく目を見開いていた。
「はーっはっはっは! 妾、推っ参!」
「わ」
 バーン、と効果音がなりそうなくらいの言葉に、祐也が小さく声を漏らしていた。ライブストリーマーである菘はとにかく、目立つのが第一。カッコ良く魅せるのが第一だ。
「模擬戦、大いに結構! 敵はバトルを彩るもう一人の主役、殺してしまっては配信の後味も悪い!」
 自信満々にそう言いながら、早速撮影用ドローンを展開する菘だが、ふと祐也に視線を向けながら声をかける。
「あ、ちなみに妾、バトルは生中継する主義なんだが構わんか?」
「え、あー……」
 その言葉に祐也は視線を逸らした。今後社会に出ていくにあたって、自分の顔がインターネット上に晒されるというのは大変によろしくない。折角就職を決めても、UDCであることがインターネットタトゥーとして残っては大打撃だ。
 少し考えてから、祐也はサビ柄猫の獣人に姿を変えて帽子をかぶり直す。
「この姿でならいいですかね、僕の本来の姿でもないですし」
「姿を自在に変えられるというのは便利なものよのう」
 街を征く獣人はその姿を、およそ想像しうる何者にも自在に変化させることが出来る。自分の本来の種族とは違う獣人に変身するのもお手の物だ。これならこの配信がインターネットに流れたとして、祐也にダメージは入らない。
 頷くと、菘はドローンを起動させた。映像の記録とストリーミングサービスへの配信がスタートしたのを確認して、菘がドローンの方に向き直る。
「あーあー、始まっとるな? 『妾がいろんな世界で怪人どもをボコってみた』、今日はUDCアースの埼玉県さいたま市、株式会社ユースフルよりお届けであるぞ!」
 ちゃんとUDC組織さいたま市支部のカバー企業の名前を出すことも忘れない。そうしてから、菘は祐也の姿を配信に映した。ドローンを動かして構えを取る祐也の姿を余すところなく映していく。
「今回ボコる怪人はこれなる猫の獣人である! 鋭い爪、引き締まったしなやかな肉体、爛々と光る瞳……ふふふ、妾の相手に相応しい!」
 緊張した様子で表情を固くする祐也に、菘は悠然と微笑みながら声をかける。
「さて、配信が秒で終わらぬように耐えてくれるな?」
「が、頑張ります!」
 菘の言葉に祐也もしっかと返事をする。場が整ったところで菘が高らかに声を上げた。
「では、バトル開始じゃ!」
 ドローンが一気に二人から引いていくと同時に、菘が前へと飛び出した。蛇特有の素早い動きで一気に距離を詰める。
「妾の主義、敵はテンションを上げてボコる!」
「単純明快ですね……!」
 巨大な左腕で殴りかかってくる菘を、後方に下がっていなしながら祐也が声を上げた。菘の拳の威力は今更論じるまでもない。殴られたら一発KOは間違いないだろう。
 だからこそ、祐也は一気に分身を召喚した。
「ですが、こちらの人数が多ければどうですか!?」
「ほほう、物量作戦と来たか!」
 菘を取り囲むように召喚された数十人の祐也。同じ姿の猫獣人がずらりと並ぶ様に、菘は目を見開いた。
 こうして分かりやすく画面映えする能力はいい。さすがはUDCアースのオブリビオン、果てはバンド活動経験者。ストリーミング配信というものをよく分かっている。
「いいぞいいぞ、大変に配信映えする絵面だ!」
 快哉を上げながら菘は大きく身を捩った。振り抜かれた尻尾が祐也の胴体を打ち据え、分身の身体を引きちぎるように両断していく。
「うわ……!」
「数が多くても妾にはこの自慢の尾がある! 何とするものでもない!」
 一気に分身の数を減らされた祐也が驚きの声を上げると、菘は大きく声を上げながら笑った。これはなかなか、配信が盛り上がる戦闘になりそうだ。コメントの読み上げが既に追いついていない。
「はーっはっはっは! さあ全力で来るがよい、妾も全力で応えよう! 『妾がいろんな世界で怪人どもをボコってみた』、まだまだ配信継続中!」
 そう声を上げてから都合8分、最終的に祐也が叩きのめされてがっくりと膝を折るまで配信は続いた。最後に菘が祐也と握手をして健闘を称え合う場面は、大変に盛り上がったということだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『普通列車で行こう』

POW   :    素直に寝て過ごす

SPD   :    窓の外の風景や他の乗客を観察して過ごす

WIZ   :    携帯ゲーム、スマホ、小説を見て過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狗巻・祐也「UDC豊島区支部には時々足を運んで、共同で研究をしたりしています」
 模擬戦を終えて、祐也が深く息を吐きながら肩の力を抜く。運動室で実験の記録を取っていた泉と、それに付き添っていた咲希も、安心した様子で声をかけてきた。
「はー……」
「はい、これで今日の実験は終了となります。皆さん、お疲れ様でした」
 これで実験の名目での祐也のお悩み相談は終了だ。猟兵たちと話し、ぶつかりあい、彼もきっと何かを得てくれたことだろう。泉が微笑みながら猟兵達に話しかける。
「狗巻君も、今日のことできっとコツを掴んでくれたと思います。あとは狗巻君自身の頑張り次第ですね」
「そうですね……ありがとうございました、皆さん」
 頷いてから、祐也もぺこりと頭を下げた。彼の就職活動が問題なく進むかは、今後の彼の働き次第だ。
 泉が手に持っていた封筒を二つ、咲希へと手渡しながら言う。
「猫塚さん、はいこちら、皆さんへの報酬。ついでに豊島区で使える街遊びクーポンも入れておいたから」
「わーい、ありがとう南條先生」
 封筒を受け取った咲希は尻尾をぴんと立てながら返した。中身は十数万の現金と、豊島区で使えるクーポンが人数分。これだけあれば、結構遊べそうだ。
 運動室から出るように促した咲希が、うっすらと微笑みながら猟兵達に言う。
「じゃ、池袋まで行こうか。電車の中で遊ぶ算段とか立てようよ」
 その言葉に頷きながら、猟兵達も運動室を出ていく。仕事は終わった。遊ぶまでの時間は、電車移動の中で相談をしていこう。

●特記事項
 ・この章は浦和駅から池袋駅に向かうまでの電車内です。池袋到着後の場面は描写しません。
 ・この章にはグリモア猟兵の猫塚・咲希が同行します。プレイングで言及いただけましたら登場します。
儀水・芽亜
電車ですね。あんまり騒ぐわけにはいきませんか。祐也さんのギター、聞いてみたかったんですけど。

豊島区に着いたら、まずは食事ですね。せっかくお金があるんですから、居酒屋じゃなくイタリアンのお店にしませんか? パスタにピッツァにワイン各種。それだけ食べれば満足がいくでしょう。

二次会はカラオケボックスを希望します。ええ、色々歌いますよ。伊達にフリッカースペードじゃありませんから。
幸い、著さk(世界結界により検閲削除)
まあ、今時の曲をJ-POPからアニソンまで歌うつもりです。
とはいえ、明日もお仕事ですから、残念ながらあまり遅くまではご一緒出来ません。
祐也さんも、今は就活のことは忘れて楽しみましょう。



●南條・泉「」
 湘南新宿ラインの快速、平塚行きの車両内。芽亜は祐也、泉と一緒になって吊革につかまりながら電車に揺られていた。
 元々は二人とはUDC組織の建物で別れる予定だったのだが、どうせ仕事が終わったのなら、と芽亜が声をかけたのだ。幸い祐也にも泉にもその後の予定はなく、許可も降りたのでこうして同行しているわけである。
「電車ですね。あんまり騒ぐわけにはいきませんか。祐也さんのギター、聞いてみたかったんですけど」
 残念そうな顔をして芽亜が言うと、泉が困ったように眉尻を下げつつ言った。
「申し訳ありません、時間的な制約もありまして」
「そうですね、また機会があったら組織に遊びに来てください。だいたい毎日、談話室で演奏しているので」
 祐也も苦笑を見せながら芽亜に声をかける。確かに、これから先に耳にする機会はきっとあるだろう。聞けばバンド活動もやっているとのこと、演奏を目にする機会は出来るはずだ。
 ともあれ、池袋までさして時間はかからない。早速池袋に到着した後の話を始める芽亜である。
「豊島区に着いたら、まずは食事ですね。せっかくお金があるんですから、居酒屋じゃなくイタリアンのお店にしませんか?」
「ああ、いいですね。東口の方にイタリアンのいいお店があるんですよ」
 芽亜の言葉に泉がこくりと頷いた。話によると東口からほど近くに、名の知られたイタリアンレストランがあるとのことだ。UDC組織の豊島区支部の職員とも、何度かそこで食事をしたことがあるらしい。
 行ったことのある店なら間違いないだろう。満足した様子で微笑みながら芽亜が続けて言う。
「いいですね、ではそこで。二次会はカラオケボックスなどどうでしょう?」
「カラオケですか? 確かに二次会としては鉄板ですし……僕もよく行くので問題はないですが、大丈夫ですか?」
 二次会の話もしだした芽亜に、祐也が目を見開いた。芽亜が学校職員であることは祐也も話に聞いている。学校職員ならば翌日は仕事があるだろうに、と心配したのだが、ゆるりと微笑みながら芽亜は返した。
「ええ、色々歌いますよ。伊達にフリッカースペードじゃありませんから……んん、まあ、今時の曲をJ-POPからアニソンまで歌うつもりです」
「あら、意外とカバー範囲が広いですね」
 芽亜の言葉に泉が言葉を漏らした。ちょっと言い淀んだ彼女の、言いかけそうになった言葉は心のうちに秘めて。音楽に親しみがあるのは芽亜も一緒だ。
 そこまで言って、芽亜は祐也にもう一度微笑みかける。
「とはいえ、明日もお仕事ですから、残念ながらあまり遅くまではご一緒出来ません。祐也さんも、今は就活のことは忘れて楽しみましょう」
 社会人たるもの、翌日の仕事はしっかりこなさなくてはならない。芽亜の言葉に祐也も頷いた。
「は、はい。ありがとうございます」
「そうですね、お仕事に響いてはよくありませんし……狗巻君も、社会人になったら大学生の時みたいに無茶は出来ないんだから、気をつけてね」
 彼の隣に立つ泉も、念を押すように祐也に声をかける。社会人としての未来がようやく見えてきたらしい祐也は、泉の言葉にしっかりと頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キング・ノーライフ
上手く行ったようで良かった。
しかし電車は乗れるが普段は【ヴァーハナ】だから新鮮だな。

そういえばと【神は神を呼ぶ】で邪神を呼ぶ、
昨年の夏に海で優勝した時の景品をくれてなかったなと折角なので池袋にスイーツ食べ放題の店があったので連れていくと伝える。
いつもより沢山食べて良いぞと頭を撫でながら。

ただ嬉しいのは分かるが触手で菓子を食うなよ、
流石に勘のいい人間が気付いて発狂されても困るでな。

ただ我も楽しみたいし、子供のような邪神の行動は素直過ぎて読めん。そこのグリモア猟兵の…猫塚よ、折角ならお前も来るか?こやつの優勝景品故に従者を連れていけなくてな。
料金は我が持つぞ。



●南條・泉「無事に就職が決まった暁には、UDC組織として狗巻君のバックアップをする所存です」
 他方。キングは誰に付いていくでもなく、同じく平塚行きの快速電車に乗っていた。
 普段はヴァーハナでの車移動が中心のキング。こうして電車に乗って移動するのは、あまり経験がない。
「上手く行ったようで良かった。しかし電車は乗れるが普段はヴァーハナだから新鮮だな」
 窓の外を高速で流れていく風景を見て目を細めながら、キングは心なしか嬉しそうに言った。何はともあれ、無事に依頼は解決。これほどホッとする瞬間もない。
 と、そういえば隣の席に空きがあるのを見て、キングはその座面をぽんぽんと叩いた。
「ああ、そういえば」
「あー?」
 呼び出されたのは少年姿の邪神だ。ちょこんと電車の座面に座った邪神が、不思議そうな顔をしてキングを見上げる。
 と、キングはその頭にぽんと手を置きながら、優しく言った。
「昨年の夏に海で優勝した時の景品をくれてなかったな。折角だから、池袋にスイーツ食べ放題の店があったので連れていこう」
 昨年夏の、花火の上に誰が一番い続けられるかの勝負だ。あの時は邪神が勝利を収めたのだが、あの時の「勝った者に何か用意する」の約束を、まだ果たせていなかったのだ。
 ちょうど池袋には某スイーツ食べ放題の店がある。そこなら、邪神のご褒美にはちょうどいいだろう。
「いつもより沢山食べて良いぞ」
「あああ!」
 キングの言葉に嬉しそうに声を上げた邪神の、襟元からにゅるりと触手がはみ出た。それを近くで見ていた咲希が思わず静止の声を上げる。
「あ、ちょっと」
「こら、嬉しいのは分かるが電車の中で触手を出すのではない。それにたくさん食べれるからと触手で菓子を食うなよ。流石に勘のいい人間が気付いて発狂されても困るでな」
 キングも邪神の触手を手で抑えながらぴしゃりとたしなめた。邪神がその触手を顕にしたところを見られたら、それはそれで混乱を生みかねない。
「あぁー……」
 しょんぼりとしながら触手をしまう邪神だが、その表情はどうにも納得がいっていなさそうな様子だ。
 その姿にキングはふむと口角を下げた。邪神はまだまだ子供らしく幼い。それ故に行動が読みきれないところがある。邪神にかかりきりになっては、せっかくの食べ放題を楽しめないのはありそうだ。
「ただ……ふむ。そこの、猫塚といったか。折角ならお前も来るか?こやつの優勝景品故に従者を連れていけなくてな。料金は我が持つぞ」
「あ、いいの? じゃあご相伴に与ろうかな」
 そしてキングから声をかけられた咲希が、予想しない声掛けに目を見開いて答えた。
 無事に仕事は終わったし、このくらいの役得はあっても良いはずだ。咲希は密かに、泉と祐也にも感謝の言葉を心のなかで述べるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年11月06日


挿絵イラスト