淀の涙、黒槍の又次郎に、血の紅花を纏わせり
●予知:播磨の温泉宿場にて。
サムライエンパイア。
そこは、江戸幕府の将軍、徳川・家光が治める日本に似た歴史を辿る島国の世界。
オブリビオン・フォーミュラ、第六天魔王『織田信長』の討伐に成功したのも今や昔。
他世界より訪れし『クルセイダー』の名の元に、「江戸幕府の転覆」を実現すべく暗躍する猟書家たちと猟兵の戦いが日夜繰り広げられていた。
そんなある日の夜のこと。
播磨国のとある宿場町に、寝泊りしている浪人がいる。
男の名は、又次郎。
逗留中のんびりと過ごしており、昼行灯と揶揄されながらも町の子どもに遊び相手として懐かれている気勢の穏やかな青年だ。
その正体は幕府軍の一員。オブリビオンたちとの戦いに参戦してきた武士である。
此度は戦いで負った腹の傷の湯治のために、この温泉地に訪れているのだった。
「ふう……鍛えててもひきつるもんだな、急所の傷は。
ま、この調子ならあと二、三日休めば完治するだろう」
土手っ腹に風穴が空いていたのだが、長らくの療養で無事に塞がっているようだ。
又次郎は少しでも早く職場に戻りたいと願いつつ、今宵も湯に浸かるために温泉に向かって歩いていた。
その前に、一人の女性が立ちはだかる。
又次郎は怪訝に思うが、揉めることはなかろうと黙って道を譲る。
だが女性は歩みを進めることもなく、涙をこぼしてじっと又次郎を見つめている。
「むむ……? 失礼、どこかでお会い致したか?」
「……ああ……何と嘆かわしい、何と悲しいことでしょう。
貴方の祖父は、勇猛果敢に奮戦し、忠義を尽くしてくれたというのに……。
その子孫である御前が……仇である徳川に胡麻を擂っていようとは……」
女性の言の葉を聞き、又次郎は目つきを変える。
療養中でも手放さぬ腰の刀に手をかけて、眼前の女に……オブリビオンに警戒する。
「そうか。お主、彼のくるせいだぁの郎党か。
度々耳にするぞ。豊臣の家臣だった者や、その血を継ぐ者を篭絡せんと近寄る魔性の噂。
お主が、涙剣……淀殿の涙か」
「許せない、赦さない。太閤様の御恩を忘れ、仇に与する裏切者。
今こそ、主のため、豊臣の世を蘇らせるために。
その身命を捧げなさい。
太閤様、どうかこの者に眠るあの者の血を呼び覚まし……怨敵を討つお力添えを」
猟書家『淀の涙』が手をかざすと、又次郎が面妖な黒い粘液に覆われる。
それこそ、クルセイダーの秘術『超・魔軍転生』!
魔軍将『豊臣秀吉』を憑装させ、又次郎の身体を乗っ取り配下としようというのだ!
「な、がっ! ぐっ、何と……! フェンフェン! むぅ! 拙者は、フェン!
ごとフェフェン又次郎フェン! この程度フェンフェンフェーン!」
『豊臣秀吉』に憑装させられ、変貌していく又次郎。
いつしか彼の自我は薄れていき、秀吉の依り代となる剛槍を手に立ち尽くす。
そして、獰猛な笑みを浮かべて、淀の涙と共に闇の中へと消えていくのだった……。
●招集:隠し将から救い出せ。
「ハロー、エブリワン! サムライエンパイアで猟書家の活動が予知されマース!
今回は、温泉地にて又次郎殿という武人が狙われてマース!」
グリモア猟兵、バルタン・ノーヴェがプロジェクターを用意して投影するのは、播磨国のとある宿場町の様子。
日が暮れているため人気はなく、今回の標的となった達人『又次郎』と、彼の身柄を狙う猟書家幹部『淀の涙』だけが映し出されている。
又次郎の祖父は大阪の役で豊臣方につき、戦死した猛将であるが故、その血筋を呼び覚ますことで強力な配下にする計画なのだろう。
このまま見過ごせば又次郎の人格はフェンフェン言ってる魔軍将『豊臣秀吉』に支配され、失われてしまうだろう。
「しかし、今ならまだ間に合いマース!
転移先では豊臣秀吉に憑装、すなわち装備として憑依させれているのデスガ、この装備を破壊することで解除することができるのであります!」
ズームアップされるのは、又次郎が握り締める黒い剛槍。
天下三名槍と呼ばれるような、全長10尺(3m以上)を超える長い槍だ。
その槍を手にした又次郎は、羅刹のオブリビオン、血花の紅鬼姫『真千代』の姿へと変貌を果たしている。
「血花の紅鬼姫『真千代』は生前から強い者を追い求め、戦い続ける戦い好きデース!
猟兵が姿を見せれば、逃げることなく嬉々として戦いを挑んでくるデショー!
その性格が反映されるならば、又次郎殿を救い出すチャンスがある訳デース!」
豊臣秀吉と真千代、二つの魂が混ぜ込められた又次郎は、強力だが憑装が完了しないうちは動きが不揃いとなるだろう。
馴染む前に叩けば、勝機を得やすいはずだ。
「無事に又兵衛殿を助けても、まだ淀の涙がその場に控えておりマス!
豊臣家が滅ぶ際に淀殿が流した涙から生まれた涙剣のヤドリガミのオブリビオンは、徳川幕府に報復するため全力で襲い掛かってくるデショー……。
この時、又兵衛殿に協力を要請すれば、淀の涙を抑えるために援護してくれるデショー!」
もっとも、戦闘続行不可能なダメージを受けていれば、その限りではない。
無理を押してユーベルコードを酷使させれば、再び療養生活に戻ることだろう。
できる限り、又次郎の身体を傷つけずに槍を狙った攻撃を行うのが良さそうだ。
「槍の又次郎殿を助け出せるのは、我輩たち猟兵だけであります。
皆様、ご協力をよろしくお願いしマース!」
バルタンがグリモアを起動し、サムライエンパイアへのゲートを展開する。
その先では、憑装に耐えようと苦しむ武士がいることだろう。
彼を救出するために、猟兵たちはゲートへと足を踏み出していく。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回の舞台はサムライエンパイア、播磨国の宿場町の路上です。
時間帯は夜、天候は晴れで、星や月の明かりが照らしています。
『憑装された又次郎を助け出すこと』が目的です。
第一章:血花の紅鬼姫『真千代』の姿に変貌した又次郎との戦闘です。
『超・魔軍転生』により、魔軍将『豊臣秀吉』を憑装されています。
又次郎自身の身体能力、豊臣秀吉のフェンフェン、真千代のユーベルコード。
まだ憑装して間もないため、それらがかみ合わない隙を狙うことをお勧めします。
第二章:猟書家幹部『淀の涙』との戦闘です。
流した涙を結晶化させて攻撃してきます。
第一章で助け出した又次郎に協力を要請すれば、有利に戦いを進められるでしょう。
プレイングボーナスは全章共通して、『豊臣家臣の子孫である又次郎を救出する/協力する』です。
登場人物:又次郎。23歳の人間の男性です。
徳川幕府に使える一般武士。とある戦で腹部に貫通ダメージを受けたが、生きてる。
多少身体が損傷しても立ち続ける根性は、先祖譲りでしょう。
憑装中は使用しないが、解放されれば《魔封一刃波》というユーベルコードを用いて、【刀】から【斬撃波】を放ち、【その威力】により対象の動きを一時的に封じることができる。
これによって、猟兵たちに頼まれれば『淀の涙』の戦いに助力することができます。
オープニング公開後、断章を公開します。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『血花の紅鬼姫『真千代』』
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POW : 一槍羅刹
自身に【殺気】をまとい、高速移動と【長槍の刺突による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 血花の紅備え
戦闘用の、自身と同じ強さの【紅備えの徒武者】と【紅備えの騎馬武者】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ : 血花の紅鬼姫
全身を【過去殺した者達の血】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:九重セト
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ピオニー・アルムガルト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:紅鬼姫が振るうは|日本号《豊臣秀吉》。
「フェンフェンフェン」
黒い粘液、隠し将『豊臣秀吉』に覆われた又次郎が再び姿を見せた時。
その身体は羅刹に変貌していた。
強者との戦いを求め続ける羅刹の女傑にして、オブリビオンに堕してなお戦い続ける修羅。
血花の紅鬼姫『真千代』。
その手に握られる黒い剛槍は、又次郎の祖父が振るったと言われる名槍だ。
そこに宿る豊臣秀吉が、フェンフェンと理解できない声を上げている。
その声を理解する真千代が、応答する。
「フェン、フェンフェフェン、フェン?」
「……ああ、戦場を用意してくれるというのだな。
太閤殿。いいだろう、この身体で江戸幕府を転覆させようではないか」
「フェフェン、フェン!」
「ほう? 猟兵が来るか……ん……。まだ、足掻くか又次郎」
かすかに感じる手足のしびれに、真千代が眉をひそめる。
完全なる憑装を果たすならば、淀の涙と共にこの場から離れるのが最適だろう。
だが、戦いを求める真千代に逃げるという選択はない。
「見ておれ、淀君。汝が選んだ達人の力、今ここでお見せしよう」
「フェン……。フェン、フェフェン!」
豊臣秀吉が、遠くで見守る淀の涙に何かを訴えるように声を上げ……そして、真千代と共に猟兵たちに向き直る。
月明りの中、達人の身体を支配せんとするオブリビオンとの戦いが始まる。
東雲・深耶
…決着を、つけるか
淀の涙を討つには、今このときが最後になるやもしれん
白先を用い、真千代の未来そのものを『切り裂く』事でUCの発動そのものを斬り伏せて反撃を封じ、そのまま距離座標を無視した時空間そのものを切り裂くという防御無視の遠距離斬撃を放つ
目覚めよ、又次郎殿!
過去は過去で現在は現在!
自らが囚われ、縋り、執着するのは弱さでは無いが…外界からその過去を以て脅かされるのは赦されざる大罪であり悪逆だ!
その|過去《罪悪》に抗うのだ、又次郎殿!
そう言って又次郎殿の意志に語りかけ、動きを鈍らせていくぞ
●其は全て断つ剣。
播磨国の宿場町の路上に、一人の猟兵が降り立った。
最初に姿を見せた彼女は日本刀を模った武器を手に、小さく呟く。
「……決着を、つけるか」
彼女こそ、異なる世界の日本の地に生まれ育った剣術小町。
明治の時代より続く旧華族の伯爵家にして軍事を司った旧家の令嬢。
純然たる術技を魔剣へと昇華させた白刃使い。
東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)。
猟書家『淀の涙』との宿縁を有する、熟練の猟兵である。
「淀の涙を討つには、今このときが最後になるやもしれん。……征くか」
今宵、この時を因縁を断ち切る機と見据え、深耶は戦場に馳せ参じた。
深耶は今、白騎士の力を宿す日本刀型の兵装を手にしている。
それこそ、未来を操る転生式次元干渉兵装・封縛刀『白先』。
空閃人奉流との適合率が高い魔を退ける刀である。
「だがその前に……。まずは、貴様からだな」
「フッ……待っていたぞ、猟兵。さあ、死合おうか」
深耶と、又次郎の身体に憑装した血花の紅鬼姫『真千代』が、対峙する。
深耶は凛々しく表情を引き締めて、油断なく『白先』を構えている。
真千代は凶悪に笑みを浮かべ、魔軍将『豊臣秀吉』を宿した剛槍を構えている。
「空閃人奉流流祖、東雲・深耶」
「我流、血花の紅鬼姫、真千代」
短く名乗り合い、二人の女傑が間合いを測り合う。
風もなく、音もない、月光が照らす静寂なる夜中。
先に動いたのは、真千代であった。
「疾ッ!!」
《一槍羅刹》。
真千代自身に殺気をまとい、高速移動と長槍の刺突による衝撃波の放射を可能とする凄まじい技である。
機動力も然ることながら、間合いの長い槍から放たれる衝撃波を回避するのは難事である。
だが、深耶の技はそれを無音で斬り伏せる。
「第一魔剣・それは世界に実体ある存在ならば全てを絶つ」
「……な、に……!?」「フェン!?」
真千代が技を放った直後、深耶の『白先』の刃が振り下ろされていた。
そして、真千代の技はいつの間にか消えていた。正面から打ち破られたのではない。
深耶は、真千代が放った《一槍羅刹》の発動そのものを斬り伏せていたのだ。
《一槍羅刹》を放ったという現象そのものを切断することで、発生するはずの衝撃波を打ち消したのである。
距離や対象の性質を無視する時空間切断剣術が、命中した対象を切断するユーベルコード。
《第一魔剣・幻も現も割する一振りの鋼にして空(ザイスルモノスベテノザンメツ)》。
空間の制約から解き放たれている為一度の斬撃で複数の座標に攻撃できる、深耶の魔剣の一つである!
「くはっ! 面白い、見えぬものすら切る剣か!」
「いかにも。真千代、貴様が私に近づくことは適わんぞ」
真千代の未来そのものを切り裂く事で、文字通りに機先を制する深耶。
前に出るならば眼前に、退くならば背面に。
深耶が『白先』を振るう度に、真千代の身体が、『|豊臣秀吉《黒い剛槍》』が斬りつけられ、技の初動が遮られる。
時空間そのものを切り裂くという防御無視の遠距離斬撃が檻となり、真千代の身動きを縛っていく。
そうして真千代に防御を強いて遠間を維持しつつ、深耶が又次郎に呼びかける。
「目覚めよ、又次郎殿!」
「っ!」
深耶の魔剣を凌いでいる真千代の手が一瞬震える。
姿かたちは変容しようとも、そこに彼はたしかに残っているのだ。
深耶は刀を振る手を止めることなく、又次郎の意志に語りかける。
「過去は過去で現在は現在!
自らが囚われ、縋り、執着するのは弱さでは無いが……外界からその過去を以て脅かされるのは赦されざる大罪であり悪逆だ!
……その|過去《罪悪》に、抗うのだ、又次郎殿!」
深耶の言葉が届いたのか。斬撃を受け流し続けていた真千代の腕がわずかに下がる。
わずかに生じたその隙を見逃さず、深耶の放った斬撃が槍と真千代に浅くない傷を刻みつける。
痛手を被った真千代が強引に身を躍らせて、深耶の檻から遠ざかる。
緒戦は程よい出だしとなった。
「ぐっ、ぬぅっ!」「フェン!」
「そうだ、又次郎殿! 私たちが手を貸す、だから共に戦うのだ!」
『白先』の刃が月明りに照らされ、白く輝いていた。
成功
🔵🔵🔴
鍋島・小百合子
SPD重視
豊臣遺臣の血族なれど志のある武士なれば捨て置く理由などなかろう
我が薙刀にて助太刀致す!
「肥前が女武者・鍋島小百合子!矜持ある武士としてお相手いたす!」
我が薙刀の武技を持って真千代との剣戟に臨みながら相手の動きを観察
動きに少しでも綻びがあればそれを見逃さず、反撃の一手として咄嗟の一撃を叩き込みつつ真千代の依代とされている又次郎に鼓舞を含めた言葉で呼びかける
又次郎殿も武士であるならば意地を持って抗ってみせよ!と
敵が紅備えの武者を召喚すればこちらはUC「冷厳冬将軍」発動
武者と真千代の攻撃を薙刀の武器受けで捌きつつ、霊力を込めた薙刀より戦場全体に敵味方を識別する猛吹雪を荒れ放つ(属性攻撃)
●朱と紅が差す刃の舞。
「豊臣遺臣の血族なれど志のある武士なれば捨て置く理由などなかろう。
我が薙刀にて助太刀致す!」
「ははっ……! いいぞ、猟兵! 血沸き肉躍るとはこのことだ!」
「フェンフェンフェン!」
次なる猟兵が、己が血に染められし血花の紅鬼姫『真千代』の前に現れる。
彼女こそ、肥前国が鍋島藩の亡き武将、鍋島直茂の姪子。
愛刀たる薙刀『竜王御前』を手にした義を重んじる女武者。
鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)である。
「肥前が女武者・鍋島小百合子! 矜持ある武士としてお相手いたす!」
「名のある武士が相手とは、一切の不服無し!
血花の紅鬼姫、真千代! 押して参るっ!」
瞬間、一足飛びに距離を詰めた二人の女傑が衝突する。
真千代もまた、長柄の武器を振るう猛者である。
小百合子の薙刀と真千代の黒槍が激しく打ち合い、剣戟を交える。
互いに相手の動きを観察し合い、足さばきを止めることなく立ち回る。
隙を作り、隙を見抜き、隙を突こうとして、隙を埋める。
熟練の武芸者同士の立ち合いが、夜闇に火花を散らしていく。
意気をぶつけ合い、息を吐かせぬ攻防。鎬を削る白兵戦が繰り広げられる。
「又次郎殿! 其方も武士であるならば意地を持って抗ってみせよ!」
「ぐぅ! 超・魔軍転生のわずかな綻びを狙うか……!」
その切り結びの最中にも、小百合子は又次郎への呼び掛けを重ねていく。
幾度の攻防の末、真千代の片脚が不意に動きを止める。
潜在意識下の又次郎が、意地を通して足止めをしたのだ。
その綻びを見逃さぬと、咄嗟の一撃を叩き込む小百合子。
だが、真千代もその斬撃を受けながら、衝撃を利用して距離を取る。
「だが、やられてばかりではないぞ! 出でよ、《血花の紅備え》!」
距離を稼いだ真千代が反撃の技を展開する。
小百合子と真千代の間に、徐に紅備えの徒武者と騎馬武者が召喚される。
ユーベルコード《血花の紅備え》によって生み出された、真千代と同程度の強さを持つ精鋭だ。
召喚している間真千代が戦うことはできず、真千代が手傷を負えば消えてしまうという弱点があるが、打ち合いで見抜かれた動きにはない騎乗攻撃を合わせた二体で攻め掛かれば、小百合子に有利を得られると踏んだのだろう。
真千代は傷口を抑えた状態で不敵に笑みを浮かべて、紅備えを走らせる。
「手勢を呼ぶことを卑怯とは言うまいな。かかれっ!」
「これも戦、承知の上よ。それに……このくらいであれば苦境とも言えぬのぅ!」
徒武者と騎馬武者が無言で刀と槍を掲げ、小百合子に襲い掛かる。
小百合子は静かに『竜王御前』を構え、霊力を込めて反撃のユーベルコードを発動させる。
真千代が手勢を召喚することを、小百合子は想定していたのだ。
「我が薙刀に込めしは猛烈なる寒波を纏いし冷気の渦……轟け!」
《冷厳冬将軍(アラシヲヨビシイテツクフユノキビシサ)》!
霊力を込めた『竜王御前』より、戦場全体に敵と味方を識別する猛吹雪を放つユーベルコード!
敵が一騎だろうと、三騎だろうと、その威力、技の冴えに陰りはない。
避けようのない猛吹雪が、真千代と召喚された紅備えたちに襲い掛かる。
氷結の状態異常を受け動きが鈍った徒武者と騎馬武者が小百合子にその獲物を届かせるよりも早く、真千代が凍傷を受けたことで召喚術式が解除される。
荒れ放つ冬将軍が駆け抜けた後には、剛槍を支えに膝を立てて震える真千代一人だけが残っていた。
「フェ、フェン……!」
「かは……! よもや、天候すらも操るとは……!」
「これもわらわの技よ。卑怯とは言うまいな?」
油断することなく『竜王御前』を構え直し、残心を解くことなく小百合子は真千代を睨み続けていた。
成功
🔵🔵🔴
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
はは、これは余程の手練れと見た。
だがな…そのフェンフェン鳴いとるものは邪魔なのよ。
誰かを助くために動くのも、わしらなれば。
負傷は既にしとろうし…阻止するのは難しいか。
なれば、攻撃を受けぬように見切り、巻くようにして受け流したりしよう。
四天霊障で弾いたりもするが。
又次郎殿は、今を生きる『武士』であろう!なれば、負けてはならんのだ。
この世を転覆させようなどという、悪辣な者に負けるな!
そう呼び掛けつつ、UCによる狼を発生させよう。これは、その鳴いとる奴にしか効かぬでな!又次郎殿には無害となる。
●紅に輝く魔を断つ狼の炎。
先行した猟兵たちによって負傷させられた血花の紅鬼姫『真千代』が、傷だらけとなった黒槍を手放すことなく次なる猟兵に向き直っている。
又次郎の身体を乗っ取っている彼女の前に相対するのは、猛き武人であった。
「はは、なるほど。これは余程の手練れと見た」
「ははは……! そういう貴殿こそ、只者ではあるまい!」
「フェン、フェンフェン!」
彼こそ、四人で一人の複合型悪霊。元は四人の人間が一人となって現れた猟兵。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)だ。
此度表に出て生きているのは、そのうちの三人目。
武の天才たる『侵す者』、馬舘・景雅(またち・かげまさ)が現れている。
「だがな……そのフェンフェン鳴いとるものは邪魔なのよ。
誰かを助くために動くのも、わしらなれば」
「そうか。だが、私と太閤殿を容易く討てると思うなよ」
景雅は、隠し将『豊臣秀吉』が憑装した剛槍と相似するかのような黒い槍『黒燭炎』を手に握り、真千代を見据えている。
手負いとなっても、滴る血がその身を赤く染めようとも、揺るがぬ真千代の戦意。
その気迫に臆することなく、景雅は目を細める。
「ふむ。(負傷は既にしとろうし……阻止するのは難しいか)」
「行くぞ! 猟兵っ!!」
全身を血化粧で覆う真千代。
それは彼女のユーベルコード、《血花の紅鬼姫》。
その身を過去に殺した者達の血で覆い、自身が敵から受けた負傷に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る能力だ。
ここ、景雅との闘いまでに受けて来た傷が、真千代の戦闘能力を増強させている。
その発動を阻止することは難しいと判断した景雅は、守勢に回る。
『黒燭炎』の柄で受け流し、機敏な足さばきで回避する。
「ふっ……! どうした、受けてばかりではないか!」
「……又兵衛殿。聞こえるな?」
苛烈に増す真千代の攻撃を受けぬように見切り、巻くようにして受け流していく。
的確に真千代の斬撃を防ぎ、刺突を避け、景雅は槍を振り上げることなく声をかける。
景雅は、真千代の中に残る又次郎へと語り掛けている。
「又次郎殿!
貴殿は、今を生きる『武士』であろう! なれば、負けてはならんのだ。
この世を転覆させようなどという、悪辣な者に負けるな!」
「減らず口ばかり、ぬっ!」
上段に槍を振りかぶった真千代の手が一瞬、止まる。
又兵衛が景雅の声に応じて、隙の生じるこの瞬間に激しく抵抗して、真千代の動きを止めたのだ。
その隙を逃さず、景雅は四人の無念が集まった『四天霊障』を固めて槍の軌道を逸らし、地面に突き刺させる。
「わしに流れていた力よ、形になれ」
大地に黒槍を縫い留めた真千代に向けて、景雅がユーベルコードを発動する。
《四天境地・火(シテンキョウチ・ヒ)》。
131個の、紅輝の魔断狼の炎を放つユーベルコードである。
オブリビオンのみを焼く魔断狼の炎は、全てを個別に操作でき、さらには複数が合体することで強化できるのだ。
一般人に被害がないようにするにはどうすればいいのか。
義透たちが考えた末の、境地である。
「フェン、フェフェーン!!」
「ぐ、このぉぉぉ!!」
合体した紅に輝く魔を断つ狼の炎が、|日本号《豊臣秀吉》に纏わりついて焼き上げる。
それを持つ真千代にも火が及ぶが、燃えていくのはオブリビオンである羅刹の魂のみ。
彼女たちが憑りつく又兵衛には、一切の害は無い!
「なんの、これ、しき……!」
「わしが討つのはオブリビオンよ! 疾くと又兵衛殿の中から出ていけ!」
延焼した真千代が苦痛に悶える中、又兵衛を想う景雅は気を緩めることなく『黒燭炎』を構えて佇んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
夫の律(f38364)と参加
まあ、又次郎の祖父がどういう人物かはわかる。でも過去の因縁を今生きる人間に押し付けるのはどうかと思うね。
母として淀の気持ちは分からないでもないが。律、行くよ!!
律、敵の引き付けは任せたよ!!アタシは【忍び足】【目立たない】【迷彩】で敵の背後をとる。
敵の攻撃は【オーラ防御】【残像】で凌ぎ、【気合い】を込めて、浄火の一撃で邪心を焼き切る!!
馴染まないものを無理やり一緒にしてんだ。必ずズレが出る。それをつかせて貰うよ。
又次郎、先祖は偉大かもしれないが、今生きてるのはアンタ自身だ。今必要とされてるのはアンタだろう!!過去じゃない!!断固として争ってみな!!
真宮・律
妻の響(f00434)と参加
この世界の事は良く知らないが、要するに過去の縁に縋って今生きている奴に過去の先祖のように働けって事だろ?まあ、先祖の特徴は受け継いでるにせよ、今頃押し付けられてもなあ。
そんな勝手な奴の犠牲にされる又次郎はなんとか助けてやりたいな。
黄昏の使者と共に【残像】【遊撃】【陽動】を使って戦場を駆け回りながら召喚される武者の相手をする。【斬撃波】を【威嚇射撃】しながら本体の注意も完全にこちらに引き付ける。響が本体に確実に攻撃を打ち込めようにな。
余裕があれば響の攻撃に【音響弾】で追撃。
自分の人生の生き方は自分で決めるべきだ。過去がどんな生き方をしようとな。今生きてるのは又次郎だ。
●比翼連理の呼吸。
「この世界の事は良く知らないが、要するに過去の縁に縋って今生きている奴に過去の先祖のように働けって事だろ?」
そう呟く銀髪の男性と、その傍らに立つ茶髪の女性が姿を見せる。
真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)。
二人の子を持つ猟兵の夫妻は、肩を並べて播磨の地に降り立った。
夫の律は十三年の歳月を経て魂人として舞い戻り、猟兵としては新米の、戦士としては熟練の身の上として活動しているのだ。
「まあ、先祖の特徴は受け継いでるにせよ、今頃押し付けられてもなあ。
そんな勝手な奴の犠牲にされる又次郎はなんとか助けてやりたいな」
「まあ、又次郎の祖父がどういう人物かはわかる。
でも過去の因縁を今生きる人間に押し付けるのはどうかと思うね。」
律の眼前では、魔軍将『豊臣秀吉』が憑装している黒槍を握った血花の紅鬼姫『真千代』が立ち上がっている。
フェンフェンと鳴き声を上げる黒槍も、血に塗れた羅刹の女も、戦いを止める気配はない。
その様子を眺めて、妻の響が目を細め、真千代のさらに奥にいる黒幕に思いを向けている。
遠くから真千代の戦いを見守っている『淀の涙』の気持ち、子を想う母の気持ちを察しているのだろう。
「……母として淀の気持ちは分からないでもないが……。
律、行くよ!!」
「ああ、いつも通りに行こう、響」
響と律が息を合わせて動き出す。
敵を討つ為に……又次郎を解放するために。
走り出す二人を見据えた真千代が、ユーベルコードを起動する。
「二対一か、ならばこちらも合わせよう!
来い、《血花の紅備え》!」
真千代が剛槍の柄頭を地面に叩きつけ、紅備えの徒武者と騎馬武者を召喚する。
それらは真千代と同じ強さの戦闘力を有する、彼女の使役する精鋭兵だ。
召喚中は真千代が戦えないというデメリットがあるが、数と連携がそれを補う強みを発揮する。
「律、敵の引き付けは任せたよ!!」
「任された」
刀を抜き、槍を掲げる武者たちを見て、響が隠形を行う。
目立たぬよう夜の闇に溶け込む迷彩を施し、足音を忍ばせて敵勢の意識から身を隠す。
一方で律は、赤銅の両手剣『クレプスキュル』を抜いて武者たちに対峙する。
三体の敵を陽動するために、律は仰々しくユーベルコードを行使する。
「ま、使える手は使っておくさ」
「むっ!」
その名は《黄昏の使者(タソガレノシシャ)》。
戦闘服を着た傭兵が現れ、律と共に戦場を駆け回る。
残像を見せる程の機動力で騎馬武者を翻弄し、連続した攻撃や至近距離での斬り合いで徒武者を抑え込む。
時折、律が威嚇として真千代に斬撃波を放つことで、真千代の注意も引き付けている。
斬撃波を黒槍で受け流した真千代が舌打ち、次の手を模索する。
「くっ……数が拮抗しては、これでは動けない私が足を引っ張るか……。
ならばいっそ、解除して……」
業を煮やした真千代は《血花の紅備え》を解き自分自身で律に襲い掛かろうと判断した。
必殺の《一槍羅刹》を以てすれば、その高速移動能力と長槍の刺突による衝撃波の放射によって律と《黄昏の使者》をまとめて排除できるだろうと考えたのだ。
だが、その考えが実行されるより先に、背後に回った響が襲撃する。
「なら、その邪な心、アタシの情熱で焚き上げてやるよ!!」
「なに!?」
不意を討たれた真千代の背に、燃え盛る響の心に応じて赤く光る光剣『ブレイズフレイム』が突き刺さる。
その剣に宿るユーベルコードは、《浄火の一撃(ジョウカノイチゲキ)》!
燃える情熱を籠めた一撃で、敵の肉体を傷つけずに対象の邪心のみを攻撃する浄化の炎である!
「ぐああああ!!」「フェ、フェンフェン!!」
「馴染まないものを無理やり一緒にしてんだ。必ずズレが出る。それをつかせて貰うよ!」
律たちの動きに意識を割かれ、そして身体の持ち主である又次郎が支配に抗うべくその魂を奮い立たせているがために、注意力が散漫となった真千代は響の接近に気づくのが遅れたのだ。
無防備に直撃を受けた真千代が、苦悶の絶叫を上げる。
そして、術者が傷を負ったことで《血花の紅備え》が解除され、自由に動けるようになった律と傭兵が真千代を挟み込む。
律は『クレプスキュル』を振りかぶり、《黄昏の使者》と共に『豊臣秀吉』が憑装した槍に斬撃を加えようとする。
「こ、の……|侮《なめ》るなっ! 《一槍羅……!」
響に反撃を、律に迎撃を試みようと、|日本号《豊臣秀吉》を回す真千代。
寿命を削るほどの威力を有する槍の攻撃にて迫る三人をまとめて薙ぎ払おうと力を籠める。
その身体に向けて、前後から響と律が声を張り上げた。
「自分の人生の生き方は自分で決めるべきだ。
過去がどんな生き方をしようとな。今生きてるのは又次郎だ。
豊臣秀吉じゃない、君が決めるんだ、又次郎」
「又次郎、先祖は偉大かもしれないが、今生きてるのはアンタ自身だ。
今必要とされてるのはアンタだろう!! 過去じゃない!!
断固として争ってみな!!」
真千代が、目を大きく見開いた。
身体が、動きを止めたのだ。
猟兵たちの言葉に呼応して、又次郎がついにオブリビオンの支配から脱却したのだ。
交錯する響と律の剣が、真千代と豊臣秀吉を両断する。
豊臣秀吉は亀裂が広がり、真っ二つに砕けた。
真千代は震え、変貌していた容姿が元の又次郎の姿へと戻っていく。
「フェン……フェ、フェン……フェン……」
「ああ……悔しいな……すまない、淀君……」
紅と黒のオブリビオンたちが消滅し、後には軽い傷を残した又次郎が残された。
息は荒いが、命に別状はないようだ。
「ぜぇ、ぜぇ、……ふぅ、かたじけない。助かりました、猟兵方!」
快活に感謝を告げる又次郎に真宮夫妻は微笑みで応じ、そして言葉をかけるより先に臨戦態勢を整える。
まだ気を緩める訳にはいかない。
達人を配下にするという計画を阻まれた猟書家幹部『淀の涙』。
落涙するオブリビオンが剣を抜き、猟兵たちに近づいてきているのだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『淀の涙』
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POW : 涙華・はなもまた君のために
自身の装備武器を無数の【流した涙を結晶化させて形成された桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 涙剣・君かみゆきのけふをはしめに
いま戦っている対象に有効な【流した涙を結晶化させ作り上げた激情兵装】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 涙雨・とてもないて眺めにあかし深雪山
【結晶化し鋭い針の如く降り注ぐ涙の雨】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
イラスト:猫月みらい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠東雲・深耶」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:淀の涙の想い。
焼け落ちる大阪城の中、彼女が初めて抱いたのは悲しみだった。
豊臣の世を終わらせてしまったことへの嘆き。
我が子を守れなかった悔しさ。裏切者たちへの憤り。徳川への恨み、怨み、憾み。
強い悲憤の情念で構成されたその魂は、徳川への報復を存在理由として成立していた。
「ああ、ああ……太閤様……太閤様……!
貴方様と、忌まわしき江戸幕府を滅ぼせると、豊臣の世を蘇らせられると……。
そう思いをかけていたのに……なのに……!
何故……何故、何故、何故っ!!」
はらはらと涙を落とす淀の涙。
その肉体は仮初であり、本体は手にする涙の剣である。
自刃した淀殿が流した涙が結晶化して生まれた、涙剣のヤドリガミ。
それが『淀の涙』の正体だ。
「超・魔軍転生を受け入れなさい、又次郎……!
お前の祖父、又兵衛の忠義に叛くというのですか……!」
憑装を解くために猟兵たちと共に奮闘し、血を流しながら身体を取り戻した又次郎が。
腰の刀を抜き、猟兵たちと並んで淀の涙に対峙する。
その眼差しには、微塵の迷いも揺らぎもない。
「……淀殿の涙よ。拙者とて、勇猛果敢な祖父の遺志を蔑ろにする不孝者ではない。
だが、な。今は徳川の治世なのだ。
拙者が生まれ出でたこの世は……徳川幕府の、将軍様の庇護のもと育まれた世界なのだ。
拙者の御恩は豊臣になく、徳川にある。なれば、我が奉公は徳川の民に向けられる。
この地、この時を生きる子どもたちを、未来を護るために、拙者は不惜身命するのだ」
再度憑装されないようにと、又次郎を後ろにして猟兵たちが前に出る。
今こそ、この悲しいオブリビオンを止める好機だと。
各々の刃を構えて、月下のもと対峙する。
「邪魔だてをするな猟兵共……!
私は、淀殿と、太閤様と、秀頼の!
豊臣の世界を取り戻すのだ……!」
絶え間なく流れ落ちる涙が結晶化して、淀の涙の周りを取り囲む。
桜の花びらに、激情兵器に、そして鋭い針の如く降り注ぐ雨に。
千変万化に形状を変える涙が、猟兵たちに襲い掛かる。
―――決戦の幕が、今上がる。
※猟書家幹部『淀の涙』との戦闘です。
第一章で助け出した又次郎は、猟兵に請われればユーベルコード《魔封一刃波》を行使して協力してくれます。(能力値の縛りはありません)
プレイングボーナスは、『豊臣家臣の子孫である又次郎と協力する』です。
東雲・深耶
真の姿、開放ーー|超克《オーバーロード》
そう言って黒髪が赤い紅い緋色の髪へと変貌していく
決着をつけようか、淀殿
信長の改革も豊臣の怨念も徳川の繁栄も、この世界に生きる人々の礎となっているか否かであろう
そして徳川は民に安寧を齎している…と言っても納得はできまい
|己の信ずる道を征け《アンウェービング・ディシジョン》、だ
我、エンパイアウォーに参戦出来ずとも、その因果を断ち切る刃となろう
空閃人奉流流祖、東雲・深耶、ここにあり!
UCを起動させ、流した涙を結晶化させ作り上げた激情兵装が作り上げられる未来そのものを断ち切り、因果を奪い尽くしていく
白先の力も開放し、淀殿の涙ーー少女の姿ごと、涙剣を白先で断ち切り破壊する!
これで終わりだ…もう、オブリビオンとして蘇る事は出来ない
宿縁を持った猟兵に敗れるというのはそういう事だ
だが…
そう言って、躯の海に帰る淀殿の因果に干渉
あるべき豊臣が繁栄した|未来《世界》へと帰るが良い
そう言って、淀殿と豊臣の一族がありふれた幸福を感受する可能性を見た後、帰還する
馬県・義透
引き続き『侵す者』のまま
又次郎殿の言うことはもっともでな。
それはわしらの誓いとも合致する。
早業にてUC使用。数が多いので、二人ずつ合体…一つだけ三人で合体な。矢を降らすように射かけよ!
そして又次郎殿。このときにそのUCを使ってほしい。
わしはその時に、接近しての刺突よ。激情兵装が出たとて、使い方を理解し、さらには動けなければ意味がないのよ!
まあわし、弱点が除霊なんじゃが。あったとして…霹靂がはね飛ばしそうな気がするのよな。
※
陰海月、こそこそ、ぷきゅ。
必要だったら乗せて浮くから、遠慮なく足場に使ってね!あ、高さ調節可能だよ!
護衛もするからね!
霹靂、万一護衛で義透の影にいる。クエクエ。
真宮・響
夫の律(f38364)と参加
・・・アンタには同情するよ。淀。叔父に生みの父を殺され、二度目の落城経験で母を失い。女の身で豊臣家の全てを託され、そして世の流れで滅ぼされた。
アンタも子を育てる一人の母親だけで良かったならば。もう、アンタは休んでいい。いいんだよ、もう。今は徳川の世なんだ。
【オーラ防御】【残像】【見切り】で敵の攻撃を凌ぎながら【ダッシュ】。竜牙で【気合い】を入れて斬り付け、【怪力】で【グラップル】で頬を思いっきりビンタし、【頭突き】で淀の涙の頭に一撃。
悪いが、又次郎は律と一緒に戦ってくれると嬉しい。リーチで補ってくれれば。
淀、もうアンタが頑張る必要はない。限界だろう?
ラウラ・クラリモンド
「覆水盆に返らず。ただ、こぼれた水をまた汲むことができるのは、あなた達オブリビオンではありません。」「私は攻撃を牽制程度に抑えつつ、味方の回復に努めましょう。」(常に又次郎さんの傍に居て、いざという時には【かばう】行動をとります。)
【SPD】で攻撃します。
攻撃は、【フェイント】や【カウンター】を織り交ぜながら、【貫通攻撃】と【鎧無視攻撃】の【ローズ・レイン】で、『淀の涙』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「私の役目は、少しでもあなたにダメージを与える事。そして、あなたに滅びを与える事ができる方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
真宮・律
妻の響(f00434)で参加
女性で3回の落城体験、身内を戦いで失い、女性の身で家一つの運命を背負った・・なるほどね、化けて出る理由は十分だ。
でももう淀の方、アンタの夢見る豊臣の世はもう過去のものだ。今は今生きるものに託すのがいいんじゃないかい?
又次郎、この槍で後ろから援護してくれるか?俺は【オーラ防御】【残像】で雨を凌ぎながら攻撃の準備をする。狙うは近接しての【切断】【重量攻撃】【貫通撃】を併せた迅雷の一閃だ。
:::アンタも苦労したんだな。彷徨いでる程に。親として苦労するのは当然なのも良くわかるんだが、もう休んでもいいんじゃないか?後の世に託すのも、支配者の役目かと思うが。
鍋島・小百合子
POW重視
他の猟兵との連携可
真の姿発動!
過去に縋る事で総てを無に帰そうとする淀の方と、
未来を見つめた上で総てを守らんがために槍を振るう又次郎殿
「そしてわらわが薙刀を振るうのはそこにある平和を守るためじゃ!」
UC「即興足軽兵招集」発動にて又次郎にUC製の無銘槍を伝授
これなれば鬼に金棒ほどに手に馴染むであろう
敵からの攻撃は全てわらわが受け止めるように立ち回り
とりわけ涙華は前方に風車の如く回しての薙刀の武器受けにて受け流し
他の猟兵と又次郎が攻撃に専念できるよう守りを厚くするぞ!
機が来れば又次郎への合図で奥義「魔封一刃波」を要請
それに合わせわらわも攻撃へ転じ薙刀の武技による咄嗟の一撃にて一閃す
●その涙を拭う時。
涙剣を抜き放つ幹部猟書家『淀の涙』を前にして、猟兵たちが整列する。
一同の先頭に立つ少女は静かに瞑目し……そして、その眼を強く開く。
「真の姿、開放―――|超克《オーバーロード》」
そう呟き、常ならぬ気迫を籠めた東雲・深耶の黒髪が、赤い紅い緋色の髪へと変貌していく。
燃えるような赤い瞳に合う髪を靡かせて、深耶の瞳は淀の涙をまっすぐに映している。
「決着をつけようか、淀殿。
信長の改革も、豊臣の怨念も、徳川の繁栄も……。
それは、この世界に生きる人々の礎となっているか否かであろう」
「礎、と……! 糧と申すか……! 我ら、豊臣の道行きを!
踏み台としてのさばるというのかぁ!! 徳川がぁ!!」
絶え間ない涙から零れる感情は、もはや言葉で止めることはできない。
徳川は民に安寧を齎していると告げたとしても、淀の涙は納得はできないだろう。
「……|己の信ずる道を征け《アンウェービング・ディシジョン》、だ。
我、エンパイアウォーに参戦出来ずとも、その因果を断ち切る刃となろう。
空閃人奉流流祖、東雲・深耶、ここにあり!」
全身全霊全力の、覇気に満ちた深耶が封縛刀『白先』を構える。
「……アンタには同情するよ。淀」
一方で、子を持つ母として、真宮・響は淀君への思いを呟く。
目の前で悲嘆し、憎悪し、狂おしいほど昂っているにいる|モノ《オブリビオン》は過去の残滓である。
淀君が過去に流した涙のヤドリガミである。
それでも、響は思わずにはいられない。
叔父に生みの父を殺され、二度目の落城にて母を失い、嫁いだ先では長子が夭折し、更には夫に先立たれ、女の身で天下の采配を託され、そして世の流れで滅ぼされた。
波乱万丈というにはあまりにも酷な人生を体現した存在を前にして、響は唇を引き締める。
「女性で三回もの落城を体験して、身内を戦いで失い、女性の身で家一つの運命を背負った、か……。
なるほどね、化けて出る理由は十分だ」
妻から淀君の話を聞いていた夫の真宮・律も、同じく思いを抱いているのだろうか。
細い視線が淀の涙に向けられているが、そこに怒りや憎しみは感じられない。
それでも。
「でも。もう淀の方、アンタの夢見る豊臣の世はもう過去のものだ。
今生きるものに後の世に託すのも、いいんじゃないかい?」
「アンタも子を育てる一人の母親だけで良かったならば。
もう、アンタは休んでいい。いいんだよ、もう。今は徳川の世なんだ」
「託せるものか、休めるものか……!
私はまだ何も成し遂げられていないのに……!」
それでも。
目の前で嘆く猟書家が人々の安寧を脅かすならば。
それを阻むために、響と律は拳を握り剣を構えるのだ。
「覆水盆に返らず。一度起きてしまったことは元に戻せません。
ただ、こぼれた水をまた汲むことはできます」
新たに増援として播磨国へと駆け付けたのは、黒で統一されたゴシックロリータ風のドレスに身を包んだ銀髪の女性。
ラウラ・クラリモンド(ダンピールのマジックナイト・f06253)。
白兵戦も魔術の行使も得意とする、熟練の猟兵だ。
「もっとも、それを為すことができるのは、あなた達オブリビオンではありません。
又次郎さんたち、今を生きる人たちの役割です」
「認めぬ、断じて認めぬ! 私は、必ずや豊臣の世を再興させるのだ……!」
淀の涙の猛る想いを受けてもなお、ラウラは笑みを絶やすことなく佇んでいる。
他の猟兵たちと又次郎を掩護するべく、ラウラは静かに魔力を練り上げて、妖艶に微笑みを湛えている。
「又次郎殿の言うことはもっともでな。それはわしらの誓いとも合致する」
他の人格と変わることなく表に出続けている、馬県・義透の内の『侵す者』。
馬舘・景雅は黒槍『黒燭炎』を構えたまま、誰よりも早くユーベルコードを使用する。
淀の涙が動くよりも先に、備えを万全にするためだ。
「援護の者たちよ、ここに」
景雅が用いるのは、《それは兵のように(ヘイニジョウセイナシ)》。
陣笠に1と刻印された戦闘用弓足軽を召喚する召喚系ユーベルコードである。
その数、実に131体。
さらに合体させれば、数字が合計されてよりいっそう強くなるという仕組みを持つ兵たちだ。
流石に路上を埋め尽くすほど現れた足軽の数が多すぎるため、景雅の指示で早々に合体していく。
「とはいえ数が多いのでな、二体ずつ合体させ、……一つだけ三体で合体な」
「ほう、都合がよいのう景雅殿。それではわらわも力添えをしよう」
陣笠の数字を2と3に変えた弓足軽たちの前に立ち、鍋島・小百合子が薙刀『竜王御前』を高々と掲げて、ユーベルコードを発動させる。
「我は誓う、全ての者を守ると……! 皆よ、我に続くが良い!」
「「「おおおおおお!!」」」
《即興足軽兵招集(ソッキョウアシガルヘイショウシュウ)》。
小百合子の号令に意を同じくした者たちの戦闘力を増加させる弓矢や手槍といった武器を与えるユーベルコード。
それは、武器と戦を司る悪魔『キメイエス』の恩寵か、それとも小百合子の魂による具現化か。
景雅が呼び出した足軽たちが、次々に弓矢や手槍を手にして強化されていく。
突然の軍勢を見て呆気に取られていた淀の涙が気づいた時には、行き渡った武器を手にする精鋭の兵団が構築されていた。
「過去に縋る事で総てを無に帰そうとする淀の方と、未来を見つめた上で総てを守らんがために槍を振るう又次郎殿。
そしてわらわが薙刀を振るうのはそこにある平和を守るためじゃ!
この場に集まったわらわたちの志も同じであろうよ」
小百合子が、出現させた無銘槍を又次郎に伝授する。
与えられた者の身の丈に合うよう如何様にも変化するその槍は、又次郎の手によく馴染む。
「これなれば鬼に金棒ほどに手に馴染むであろう。
又次郎よ、共に戦おうぞ!」
「……応ッ! 後藤又兵衛が子孫、又次郎!
未来のために、猟兵方と共に征こう!」
「多勢であろうと、猟兵共がいようと! 私の望みは、本願は、成就させてみせる!
消えろ、猟兵! お前たちは、豊臣の敵は! 私が排除する!」
月下。オブリビオンと猟兵たちの、戦いが幕を開ける。
●その有様は波濤の如く。
淀の涙が動き出す前に、ラウラがユーベルコードの起動を行った。
「私は攻撃を牽制程度に抑えつつ、味方の回復に努めましょう」
ラウラが腕を広げると、戦場全体に薔薇の花びらの雨が発生する。
黒と白が入り乱れる二色の薔薇の花びらが、淀の涙に稲妻を、味方の猟兵たちに癒しの雨を施していく。
「これは、この花はいったい……!」
「綺麗な薔薇には棘も有るのよ」
そのユーベルコードの名は、《ローズ・レイン》。
これより戦いが終わるまで、涙の雨が降り注ぐことはない。
戦場はラウラの薔薇に包まれるのだ。
「っ! ああああ!!」
「私の役目は、少しでもあなたにダメージを与える事……」
黒い薔薇に覆われて稲妻による攻撃を浴びる淀の涙。
あらゆる鎧を無視し貫通する電撃が、その身を、その手の涙剣を痛めつける。
激情に駆られた淀の涙は、流した涙を結晶化させて兵装として組み立てる。
ユーベルコード、《涙剣・君かみゆきのけふをはしめに》。
いま戦っている対象に有効な効果を発揮する兵装が、薔薇の稲妻を引き寄せる避雷針の柱となって乱立する。
黒薔薇によるダメージを抑えた淀の涙が、濡れた眼でラウラを睨む。
「この……|猟兵《イェェェガァァァ》!!」
「そして、あなたに滅びを与える事ができる方に繋げる事です」
ラウラを斬り刻まんと、次なる激情兵装を召喚しようと手をかざす淀の涙。
だが、攻勢に出る前に身を護る兵装を作り出したその一手遅れた猶予を、他の猟兵たちが見逃さない。
深耶を先頭に、景雅が、小百合子が、響と律が、そして65体の足軽たちが、白薔薇の中を突き進む。
癒しの力を施す《ローズ・レイン》の白薔薇を纏わせて、淀の涙へ接近する。
その文字通りの軍勢を前にして、淀の涙は諦めない。屈しない。
標的を後衛のラウラから迫る猟兵たちへと瞬時に切り替え、《涙剣・君かみゆきのけふをはしめに》を再稼働させる。
作り出すのは、大軍を相手取るための激情兵装。
大坂城を砲撃した、『カルバリン砲』だ。
「吹き飛ぶがいい!」
砲術を体得せずとも、淀の涙は大砲の使い方は身をもって知っている。
使い方を理解できれば、激情兵器の威力は強さを増す。
砲弾代わりに射出される結晶化した涙は榴弾のように猟兵たちを、足軽たちを襲う。
各々が防御や回避の姿勢を見せる中、深耶が『白先』を振りかぶる。
真の力、権能のリミッターを解放した『白先』がその能力を発揮する。
「白先略奪・それは骸の海より蘇りし存在の勝利の可能性全てを奪う!」
《白先略奪・骸の海より蘇りし者の道は白き闇のみ(シラサキリャクダツセシショウリセシミライ)》!
未来を操り干渉する兵装『白先』の機能を最大限まで振り絞り、未来を切断するという奇跡を実現させるユーベルコード!
猟兵に勝利する未来、その要因となる力全てを断ち切り、その因果を深耶自身へと「幸運」という形で還元させる!
激情兵器『カルバリン砲』が、猟兵や足軽たちを吹き飛ばすという未来が断ち切られ、粉々に破壊される。
自らのユーベルコードが砕かれ、淀の涙が驚愕して動きを止める。
「これは……!?」
「皆! 今のうちに、畳みかけるんだ!」
「応! 援護の者たちよ、矢を降らすように射かけよ!」
景雅が弓足軽たちに号令を発し、矢の雨を放つよう指示を出す。
弓なりに放たれた矢が薔薇の花びらに紛れ、淀の涙を覆うように降り注ぐ。
逃げられないように取り囲む矢の檻に閉じ込めて、猟兵たちの接近する間を稼ぐ。
「くっ、このくらいで……! 落ちるものか!」
小百合子の《即興足軽兵招集》で強化された弓矢が、淀の涙に傷をつける。
だが、その本体はあくまで手にした涙剣。
仮初の身体がどれだけ傷つこうと、血を流そうと、……激痛をもたらそうと。
淀の涙は止まることはない。
渾身の一撃を放った深耶が呼吸を整えている間に、四人の猟兵が淀の涙へ接近する。
本体である涙剣を握り締めた淀の涙が肉薄してきた猟兵たちと切り結ぶ。
「鍋島小百合子! 参る!」
「わしもおるぞ。如何に激情兵器といえど、動けなければ意味がないのよ!」
小百合子が『竜王御前』を振り回して立ち回り、勇猛に斬りかかる。
景雅が影に潜んでいた大きなミズクラゲの『陰海月』を足場に使い、空中から『黒燭炎』による刺突を巧みにくり出す。
線と点、二種類の攻撃に淀の涙は次第に防御を固めていく。
「行くよ、律!」
「ああ。いつも通りに」
小百合子と景雅が果敢に攻め込む中、響と律は残像が出るほどの速度で駆けまわる。
淀の涙の意識が景雅と小百合子に集中する、その隙を見逃すことなく二人は同時に切り込んだ。
光剣『ブレイズフレイム』と両手剣『クレプスキュル』を手に、目を合わせることもなく連携攻撃を叩き込む。
「この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいな!!」
「良く狙えば、当たるって寸法さ」
「ッ!!」
武器が命中した対象を切断するユーベルコード《竜牙(リュウガ)》が。
近接斬撃武器が命中した対象を切断するユーベルコード《迅雷の一閃(ジンライノイッセン)》が。
淀の涙のその手中、涙剣を挟むようにして断ち切った。
「っ、やったのか?」
「まだよ備えて」
又次郎の傍らに控えるラウラが、気を引き締めるよう短く窘める。
猟兵たちも、誰一人としてこれで終わったとは思っていない。
淀の涙から距離を取り、震える淀の涙の動向に注意している。
淀の涙が、叫び声を上げる。
●恩讐のその果て。
「あ あ あ …… あ”あ”あ”あ”あ”!!」
喉が枯れんばかりに絶叫を上げる淀の涙。
眦を決して零れ落ちた涙が、二つに分かたれた涙剣が、無数の桜の花びらに変化していく。
結晶化した桜の花びらによる、広範囲攻撃ユーベルコード。
《涙華・はなもまた君のために》が発動したのだ。
ラウラの黒薔薇と白薔薇の中に紛れた無色の桜。
いまや、その全てが淀の涙の本体といえるだろう。
猟兵たちと又次郎を狙い、涙の嵐が吹き荒ぶ。
「桜の花、か。破邪や除霊の性質があるかもしれんのう。助かったわい、陰海月」
「ぷきゅ!」
『陰海月』が素早く景雅を呑み込んで、涙華の刃から景雅を守る。
「淀、アンタは……これほどに、苦しんでいるのに、まだ止まらないの?」
「淀の方、アンタも苦労したんだな。……彷徨いでる程に」
響と律は互いにオーラ防御を重ね合わせ、涙華の雨を凌いでいる。
「ここは通さぬ! 致命傷さえ避けられれば、問題はない!」
「助かる、小百合子……!」
小百合子は居並ぶ弓足軽たちが刻まれないよう、真の姿を開放して鎧具足に身を包み、『竜王御前』を前方に向けて風車の如く回すことで受け流している。
その小百合子の背に庇われ、深耶は最後の一撃のために力を溜めている。
「又次郎さん。気にせず、技を放つ機をうかがってください。
私が傷一つつけさせはしません」
「……心得た……!」
そしてラウラがオーラ防御を張り巡らし、又次郎を身を挺して護り抜いている。
淀の涙と猟兵たちによる、我慢比べの持久戦だ。
猟兵たちの身に多少の傷がつこうとも、白薔薇色の雨がたちまち回復させていく。
十秒、一分、それ以上……果たして、どれだけ時間が過ぎたのか。
だが、淀の涙の攻撃も、永遠に続けられるものではない。
《涙華・はなもまた君のために》の勢いが衰え、再び元の涙剣の形状へと戻ろうと収束していく。
「っ! ここだっ!」
その瞬間、又次郎が槍を振るった。
刀から斬撃波を放ち、その威力により対象の動きを一時的に封じることができるユーベルコード。
《魔封一刃波》が槍の穂先から放たれ、淀の涙の身動きを封じた。
「 ” ” ” ” ”っ!!」
もはや音の意味も分からない叫びを上げて、淀の涙が手を振り上げる。
収束した涙剣を再び振るおうと、再度ユーベルコードを使おうとする。
そうはさせぬと深耶が最後の力を振り絞り、小百合子の陰から身を乗り出して『白先』の斬撃を放とうとする。
―――パァン!
その直前に、その淀の涙の頬を……駆け出した響が思い切り平手打ちする。
予想外の動きに、深耶も、そして淀の涙も、硬直する。
「……? ……ぁ……ぇ……?」
「いい加減に……もう、目を閉じて。もうアンタが頑張る必要はない。限界だろう?」
「……ぁ……」
殺意のない一撃が、想いの込められたビンタが、淀の涙を放心させていた。
張りつめていた激情が一気に解け、淀の涙が膝をつく。
響は、淀の涙の額にコツンと頭を当てる。
淀の涙を抱えるように、寄り添うように触れる。
もうこれ以上抱える必要はないのだと、訴えるように。
「もう、いいの……もういいのよ、……茶々」
「……っ……あ、ああ……」
戦場を覆っていた薔薇の花びらの吹雪が止み……誰ともなく長い息を吐く。
猟書家との戦いは、ここに幕を下ろすのだ。
●松も桜も八千世へん。
淀の涙の身体にひびが入る。
仮初の身体だけでなく、収束して再構成された涙剣の刀身も、だ。
《竜牙》と《迅雷の一閃》によって断たれていた本体の損傷は、確かに淀の涙の命脈を断ち切っていたのだ。
このまま見送れば、淀の涙は再び骸の海へと帰り、時を経て再び策謀するだろう。
だが、淀の涙との宿縁を有する深耶が砕けていく彼女に歩み寄る。
「……これで終わりだ……もう、あなたがオブリビオンとして蘇る事は出来ない」
「……ああ……そう……そう、なのね……」
淀の涙が、顔を俯かせる。
オブリビオンは過去の化身であるがゆえに、倒してもいずれ別の過去を元に蘇る。
だが、宿縁を持った猟兵に敗れれば、そのオブリビオンの再出を永遠に防ぐことになる。
完全に、滅ぼすことができるのだ。
あとは、深耶がトドメを刺せば、因縁に決着がつく。
「……私は……豊臣のために……何も、為せず……何も、報えず……何も……」
「だが……」
そう言って、深耶は躯の海に帰ろうとする淀殿の因果に干渉する。
『白先』で断ち切り、奪った因果を―――幸運を用いて、淀の涙に還元する。
未来を操る次元干渉兵装による、転生式。
「……顔を上げて。ちゃんと、見てくれ」
「……、……え? ……あ、ああ……!?」
面を上げて、再び涙をこぼす淀の涙。
だがその雫は悲哀ではなく……温かな希望に、喜びによる落涙であった。
目を見開く淀の涙には、逝く先の光景が映っていた。
「捨……拾……!」
「あるべき豊臣が繁栄した|未来《世界》へと帰るが良い、淀殿」
深耶は、淀の涙が、豊臣の一族がありふれた幸福を感受する可能性を見せ、転生させたのだ。
幸せに笑いながら消えていった淀の涙は、もう蘇ることはない。
「……これにて、一件落着だな」
「うん。お疲れ様」
響が深耶に笑いかけ、二人は後ろにいる仲間たちに振り返る。
武装を解いた足軽たち。安堵の表情を見せる又次郎。
そして、景雅、ラウラ、律、小百合子。
共に戦った猟兵たちが、淀の涙の昇天を見届けていた。
勝鬨の声の上がらない、夜更けに得られた静かな勝利。
誰も犠牲になることなく、円満な決着をつけることに成功した猟兵たちは、満ち足りた様子で帰還するのだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2022年10月19日
宿敵
『淀の涙』
を撃破!
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