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大江戸英雄譚

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 華の大江戸、その一区画。
 そこに、因縁付けの下卑た笑いが木霊する。
「おいおいおい、この店はどうなってんだ! 客に虫を食わそうってか!」
「そんな、言い掛かりですよ!」
 腰に佩いた刀を鳴らし、落武者と見紛うばかりの浪人が見せしめのように大声を。
 なんだなんだ。と、衆目が見た先には蕎麦の中で蠢く黒光りの虫が1匹。
 だが、それは誰が見ても運ぶ前に気付くだろう。と言うようなもの。
 自作自演であることがバレバレのものであった。
「この落とし前、どうしてくれんだ! ああ!?」
「落とし前と申されましても……」
 凄む浪人。叩きつけた手が机を揺らす。
 見てくれはみすぼらしくとも、そこにある威圧感は戦場を知らぬ者の身を竦ませていた。
 その時である。
「知世を乱すは何者ぞ」
「だ、誰だ!?」
 響いた声は厳かに。応えた声には動揺が。
「世に蔓延る悪を討つが我が役目。義勇仮面、ここに推参」
 大見得切って現れたは仮面の武者。
 義勇仮面なる者の登場に色めき立つ衆目。最早、観客である。
 そして、始まるのは小悪党とそれを成敗する英雄という分かりやすい図式。
 衆目がどちらを応援するかなど分かりきったもので、決着もまたあっという間であった。
「ぐあっ、いたっ……親分、やりす――」
「成敗」
 一撃加えられた浪人が何かを言いかける前に、義勇仮面は浪人を店の外へとたたき出す。
 その後は最早お決まりである。
 思い出したように捨て台詞を吐いて逃げ出す浪人。
 義勇仮面は衆目の歓声を背に、多くを語らず町の影へと消えていくのであった。
 ただ、義勇仮面という名前だけを人々の間へと残して。

「と、まあ、ようは自作自演のヒーローショーのようなものなのですけれどねぇ」
 集まった猟兵達を前に、語り掛けるはハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 ヒーローショーと言えば聞こえは良いが、その自作自演が困りものなのだ。
 今はまだそれで大きな実害がある訳ではない。むしろ、知世を維持する抑止力の一端ともなっている。
 だが、それが続いた結果、義勇仮面という虚像を英雄視する人が増えすぎてしまった場合、影響力が大きくなったしまった場合、それが国盗りを開始した時に民意を得てしまう可能性も十分にある。
 あの義勇仮面が言うのだから、そうなのだろう。間違いないのだろう。間違っているのは幕府の方なのではないか。と。
 そうなれば、あとはオブリビオンの目論み通り、煽られた民衆による一揆、反乱、なんでもござれだ。
「だからこそぉ、まだこれが小さな芽である内に摘み取っておかないとなのですよぉ」
 そのためにすべきことは簡単だ。
 猟兵達が先んじて動き、義勇仮面が出てくる前に手下である浪人を叩きのめせばいい。つまり、猟兵達こそが英雄(ヒーロー)になればいいのだ。
「浪人達は結構手広く動いてるみたいでしてぇ、町をあちこち警邏していればぁ、すぐに見つかると思いますよぉ」
 もしくは、何かしらの当たりを付けて見張っておくのもいいかもしれない。
 どういうところを警戒するかは猟兵達に一任される。
 それらを叩きのめし続ければ、目論みを打ち砕かれた。と、義勇仮面なるオブリビオンは自分から出てくることであろう。そうなれば、あとはそれを叩くのみだ。
「ふふふ~。いっそ猟兵の皆さんもぉ、浪人相手の時やぁ、義勇仮面相手の時にでもぉ、ヒーローっぽく名乗りなんてしてみては如何でしょ~」
 ――お株を奪われた。と、より一層に、敵を煽れるかもですねぇ?
 そして、そんな一連の戦いが終われば、帰還まで時間もある。
 折角だからと江戸の町を、自分達の守った町を散策してみるのもいいかもしれない。
 大江戸観光ツアーというやつだ。
 食べ物に舌鼓を打つも良し、小物探しなどでお店を巡るも良し、のんびりするのも悪くないことだろう。
「皆さんこそがヒーローだと、知らしめてあげましょう。それでは、ここまでの案内はハーバニー・キーテセラ。皆さんの旅路の良きを祈って。いってらっしゃいませ」
 一礼と共に送り出すハーバニーの頭、兎耳のヘアバンドがつられて揺れていた。


ゆうそう
 オープニングに目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 銀河帝国との一戦もある中ではありますが、サムライエンパイアの世界での依頼を。
 自作自演のヒーローショーを打ち砕き、真なるヒーローが誰かを知らしめてあげましょう。
 1章では、基本的にぶらぶらしているだけでも事件にぶち当たりますので、介入時の名乗りなり、戦い方なりを。
 勿論、どういう所を重点的に見張りたいなどの指定やそれへどういう対応を取るかも指定して下さって構いません。
 皆さんのプレイング、活躍を心よりお待ちしております。

 2章、3章からの途中参加は歓迎ですので、遠慮なく。
 また、3章ではお声掛けがあればハーバニーも居ますので、御一人での参加が気後れされるようであれば、よろしければお使いください。
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第1章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月凪・ハルマ
目立つのはあんまり好きじゃないんだけどなぁ俺
……まぁ、これも猟兵としての役目か

◆SPD

それじゃ、まずは浪人探しだ
人の多い通りにでも行ってぶらつけば、肩がぶつかったとか
そういう些細な事でいちゃもんつけてる奴が居るだろう、多分

発見したら絡まれてる人を庇うように割り込み
「やれやれ、大人気ない。怪我をしたわけでもあるまいし、
そんな目くじら立てる程の事じゃあないでしょ」と、
わざと周囲に聞こえる様に言ってやる

矛先がこっちに向けば後はシンプル
浪人の攻撃を【見切り】で躱し、【ガジェットショータイム】で
召喚したネットランチャーを相手に発射して捕縛

名乗りは……別に異名とか二つ名なんて無いし
普通に名前だけで済ませる



 人々行きかう目抜き通り。
 活気あふれるが故に人も多く、騒動を起こし、人目を集めるには最適だろう。
「目立つのはあんまり好きじゃないんだけどなぁ、俺」
 そこに目を付け、見回り巡るは月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)。
 その身は人の姿なれども、その実、その本体はまた別にある。曰く、ヤドリガミに類する者だ。
 ぐるり視線を巡らせながら、ハルマは予見された事件のないものかと注意を怠らない。
 それを防いだ時にあるであろう衆目の集まりに対して、苦手意識を零しつつも、これも猟兵としての役目だ。と、自身を納得させる。
 そこには生来の人の良さと言うものがあったのだろうけれど、それ以上に、とある戦いを経て取り戻した過去の一部が影響していたのかもしれない。

「おうおう、どこ見て歩いてやがんだ! 目ん玉ついてんのか!?」
「なんだと!? 手前の方からぶつかってきやがったんじゃねぇかよ!」

 そんな彼の耳が、往来の喧騒の中にあっても響き渡るその声を遂に捉えた。
 目を向けた先には、浪人らしき姿とそれへと真っ向から食い下がる江戸の町人。
 典型的なイチャモン付けというやつだ。
 恐らく、この後に義勇仮面なるオブリビオンが登場するのだろうが、そうはさせない。
 忍びとしての心得も持つハルマは、なんだなんだ。と足を止め始め、人垣が形成されつつあるその周囲を縫うように、影のように音もなく、するりと抜ける。
「やれやれ、大人げない。怪我をしたわけでもあるまいし、そんな目くじら立てる程の事じゃあないでしょ」
 争う2人からすれば突然に、衆目から見てもいつの間に。
 取っ組み合いに発展し掛けていた2人の間に立ち、ポンと軽く肩に手を置き、ハルマは仲裁を申し出る。
 軽く置かれただけの手の筈なのに、重心を抑えられた2人は動くに動けない。
「なんで、動けない……ああ、糞、分かったよ」
「なんだ、手前がやんのか!」
 町人は動きを止められ、周囲が見えたのだろう。自分が衆目の的となっていると理解し、矛を収める。
 だが、騒ぎを起こすが目的の浪人はその矛を収めない。
 いや、むしろ、新たな火種に丁度良いとばかりにハルマへと牙を剥く。
「そう言うのが大人げないって言ってるんだけどな」
 矛を収めた町人の肩からは手を放しつつ、誰が悪いかを喧伝するかのように張り上げられた声。
 それに煽られた訳ではないだろうが、衆目の目がどちらに非があると見ているかは言うまでもない。
「うるせえ! 気取った風に言いやがって!」
 浪人の頭は怒髪天。
 ハルマの手を無理矢理に振りほどくことで鈍い痛みも身体へと走るが、それを無視して刀に手を掛け――。

「先に手を出したのはそっちだからね」
「なんだと!?」

 ――まさに早業。浪人の初動を見抜いていたハルマの手の中。喚び出していたガジェットの銃口から捕縛網が投網の如く、浪人が刀を抜く前に広がった。
 その手際の良さには、思わず周囲から拍手の手。
 傍で推移を見守っていた町人は開いた口が塞がらない。内心では矛を収めていてよかった。と、胸を撫でおろしていたことだろう。
「おい、手前、これを解きやがれ!」
「はいはい、申し開きはまた違うところで聴くから」
 網に絡めとられた浪人の姿は地を這う虫の如く。
 それを引きずり、ハルマは観衆の輪を開き、進んでいく。
 ハルマの進む先、海が割れるように道が出来ていく。そこから注がれる視線は、手早い騒動の解決に対する感心の眼差しがばかり。
 そして、その背中に呆気に取られていた町人から声が掛かるのだ。
「お、おい。あんたは一体……?」
 その声に立ち止まり、振り返るハルマ。その顔には思案。
 名乗りもしてはと言われたが、さりとてハルマ自身に名乗る異名や二つ名などはなし。
「……月凪、月凪ハルマ。気ままな猟兵だよ」
 だから、彼は自分の名前だけを置いて、その場を去っていく。
 その若き背中にいぶし銀の色合いを見せながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月見・桜
【心境】
ここが大江戸ですか!
凄い活気ですね…!
よし!戦いが終わった後に行う観光の下見をしながら事件を探す事にしましょう!

【行動】
なぎなたで〈なぎ払い/鎧無視攻撃/2回攻撃〉を組み合わせた攻撃を行います。… ですが、あの落武者達…体が欠損すると素早く動ける様な気がします! なので、機動力を削ぐ様な部位を狙って攻撃します! 例えば足とか、胴体を真っ二つにするとかですかね?
敵の攻撃は、〈見切り/残像/盾受け/第六感〉で対処します!
《フォックスファイア》を使っても効果がありそうですね!

決め台詞は、「平和を脅かすのは見過ごせませんね!」とかでしょうか?

アドリブ・共闘歓迎です!


神代・凶津
相棒も毎回変わった依頼を見つけてくるよな。
まぁ、適当に町をぶらぶらしながら件のヒーローショー野郎共を見つけたら軽くひねってさっさと江戸観光といこうぜ。

「おうおう、天下の往来での傍若無人もそこまでだッ!いくぜ相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
巫女仮面見参・・・ッ!
・・・なぁ相棒、巫女仮面は少し安直じゃね?

まぁ、気を取り直して【風神霊装】でいくぜ。
纏う風でダメージを軽減しつつ、薙刀でバッタバッタと薙ぎ払ってやるよッ!

天誅、巫女仮面に敵はなしッ!
・・・相棒、やっぱり巫女仮面ってどうよ?義勇仮面とちょっとキャラ被ってるし。


【アドリブ歓迎】



 喧騒とは活気であり、人の多さを示すもの。
 人の波に眼を白黒とさせながら、月見・桜(妖狐の聖者・f10127)はそれを見る。
「ここが大江戸ですか! 凄い活気ですね!」
 桜の生まれは、とある隠れ里。
 そこに活気がないという訳でもないだろうが、やはり花の都たる大江戸。その人の多さには、圧倒されるものがあるのだろう。ましてや、少しばかり人見知りの気もある桜にとっては、それも宜なるかなと言ったところ。
 だが、そこに興味の光がないかと言えば、嘘にもなろう。
 警邏がてらにではあるが、江戸の通り――商店立ち並ぶそこを行ったり来たり。
 普段は名前と同じ色の着物を纏う桜だが、彩り豊かな絹には目も惹かれようというものだ。
 少しばかり早めの物見遊山。
 そのあどけない雰囲気には、微笑ましさを含んだ視線があちらこちらから。
 だが、人が多ければ、その分、悪意もまた潜むもの。それは静かに桜へと近付いてきていた。

 紅白の巫女衣装に艶やかな黒髪が揺れる。
「相棒も変わった依頼を見つけてくるよな」
 だが、そこに響いた声は男性のもの。
 すれ違った人が思わず、ぎょっとして視線を向けるが、そこに見えるのは相変わらず巫女姿の少女だけ。
 町中での巫女姿も変わっていると言えば変わっているが、特段おかしなところはない。しいて言うなら、鬼の面が違和感を覚えさせるぐらいか。
 それに、はて、聞き違いか。と、小首を傾げては去っていく。
「……いきなり喋ると、皆、驚きます」
「いいじゃねぇか。驚きたい奴には驚かせておけば」
 去っていく人の気配を背中に感じつつ、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と神代・桜は言葉を交わし合う。
 軽口は互いの関係が生み出すモノなのだろう。そこに険悪さというものはなく、じゃれ合うかのような雰囲気が感じられた。
 そんな2人も、江戸の町を警邏がてらにふらりふらりと物見遊山。
 そして、1つの声が耳に届いた。

「なんですか、貴方達は!」
「おう、嬢ちゃんは不慣れそうだったからな、俺たちが江戸の町を案内してやるってんだよ」
 浪人の風体をした男たち。取り囲まれているのは桜。遠巻きに見、時に足早にと過ぎ去るのは町人か。
 あちらこちらをと眺める桜をいいカモに出来るとでも思ったのだろう。強引な声掛けへと至ったらしい。
 無意識ではあったが、桜の見事な囮捜査とも言えた。
 そして、桜はただの無害な少女ではない。猟兵なのだ。
 これが話に聞く……と、気付いた時、その瞳には毅然とした光が灯っていた。
 内に秘めたる刃を桜が解き放とうとした、その時。
「おうおう、天下の往来での傍若無人もそこまでだッ!」
 威勢よく響いたは凶津が声。
 誰もが振り向き見れば、そこには巫女の桜と掲げ持たれた鬼の面たる凶津の姿。
 浪人達が誰何の声をあげるより早く、2人が動いた。
「――いくぜ相棒ッ!!」
「――転身ッ!」
 一陣の風が吹き抜け、誰もが舞った砂ぼこりから目を守る。
 そして、その目を再度開いた時、そこには鬼の面を被り、風を纏う薙刀を持った巫女の姿が!
「――巫女仮面見参ッ!」
「なぁ、相棒、巫女仮面は少し安直じゃね?」
 大見得と共に、ドドンッと太鼓の音がした。そんな気がした。
 なお、凶津の疑問は風に呑まれて消えたとかなんとか。
 それに狼狽えるのは浪人達。
 本来であれば、ここで乱入してくるのは義勇仮面であったところ、別の仮面の者が乱入してきたのだ。
 どうする? どうするよ? やっちまえばいいんじゃね? よし、やっちまおう。と、交わす視線でコンタクト。
「なんだごらぁ! 見世物じゃねぇぞ!」
 輪を形成していた浪人が1人、刀を抜き放ち、峰でもって刃を振るう。
 それはしいて言うなら凡庸な一撃。だが、人を打ち据えるには十分すぎる一撃。
 脚を止めていた衆目の誰もが、その結果を予想して目を覆い――ドサリ。と、人一人が倒れるような音が響く。
 衆目が目を開いたそこに見たものは。
「御助力、感謝致しますね」
「おう、大丈夫か――って、なんだ御同業か」
 囲まれていた筈の桜が薙刀片手に輪を飛び出し、凶津が浪人を迎え撃った一撃と交わるかのように華麗なる一撃を見舞っていたのだ。
 ただの小娘と侮っていた浪人達に奔る戦慄の大きさは如何に。
 薙刀を手にする乙女が2人。その動きを捉えられた者はこの場には居ない。
 手を出してはならない者に手を出してしまったのでは。
 今更ながらに、それへ気付くがもう遅い。
 逃げようとした浪人の一部が衆目を前に、壁とぶつかったかのようにひっくり返る。
 そう。この場は既に、凶津が敷いた結界の内。逃げ場など、もうどこにもないのだ。
「そんじゃあ、お仕置きの時間だ。巫女仮面、行くぜ!」
「わわっ! 私も何か仮面を名乗った方が良かったでしょうか!」
「いや、それは別にいいんじゃね?」
 どこまでも生真面目な桜に、この名前のままでいいのだろうか。と悩む凶津はこっちに来なくて大丈夫。と返すのみ。
 そして、冗談のようなやり取りの中、解き放たれた2人は浪人達へと迫る!
 浪人達も慌てて刀を抜いて応戦の構えを見せるが、何もかもが遅く、覚悟すらが足らないのだ。
「腕の一つや二つ、覚悟してもらいますよ!」
 桜の刃には一閃一死の心意気。
 語る言葉の如く、その刃に乗った意思は腕の1つや2つ、ともすれば命さえも奪わんとする気迫に満ちていた。
 そして、奔る銀光は止まるを知らず、円を描く流麗なる動作で浪人達の手足を打ち据える!
 その優雅さとは裏腹に、その度、汚い悲鳴が1つ2つと増えていく。
 もしもの時には熱いお灸も、と零れ出していた狐火の火の粉が桜吹雪と舞い踊り、桜の戦舞台を彩付けていた。
 一方で、凶津の攻撃は豪快だ。
 浪人達の刃を身にまとった風で絡めとり、受け流す。
 そして、返す刃で薙いだ一閃に風が吹き抜け、浪人達を片っ端から吹き飛ばす!
 余さず吹き払う風はまさしく天津風。地に蔓延る穢れを祓うが如し。
 傍目から見れば、少女2人にこてんぱんとされる浪人勢。
 観衆からすれば、見た目からの判官贔屓。そこからの爽快なる一幕に歓声のどよめきがあがるのも致し方なしというもの。
 そんなどよめきを背景に、最後の1人を吹き飛ばした2人は背中合わせにびしりと大見得、
「貴方達のような平和を脅かす人は見過ごせません! これにて成敗です!」
「天誅、巫女仮面に敵はなしッ!」
 吹き抜ける風に舞い踊る火の粉の桜吹雪と、まさしくそれは歌舞伎舞台が如くの演出。
 本人達にその意図はなかっただろうが、その見事な構図に周囲からはやんややんやの大喝采。
 2人の猟兵による一幕は人々の口に乗り、その名前を広げていくのであった。

「……相棒。やっぱり巫女仮面ってどうよ? 義勇仮面とちょっとキャラ被ってるし」
 なお、喝采の中、小さく零れた凶津が不満は風に乗って溶け消えていったそうな。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
(出来るかぎり高い建物の上まで頑張って登る
登場シーンをしっかり見極める為、じーっと待機
ばれる。もしくはここぞという所で
気づいてもらうために「属性攻撃」にて敵の足元に火球を放つ
気づいてくれないならUC「範囲攻撃」「全力魔法」を放つ)

そこまでよ三下ども!あんたらの茶番劇なんて
この私!フィーナ・ステラガーデンが全てお見通しなのよ!
(ハーバニーから聞いたという事実は全力で忘れた)
例えお天道様が許しても、この私が許しはしないわ!むふーっ!(ご満悦)
とおっ!(飛び降り)

あ、なんか戦闘とか適当に格好良く!頑張るわ!
相手の態度次第では怒りに任せて暴れるわね!

(アレンジ、アドリブ、連携大歓迎)


御堂・茜
この御堂を差し置いて正義を騙るオブリビオン…見過ごせませんとも!
宇宙バイクたる愛馬に乗って市中を警邏致します

敵は目立つ為に人の多い場所に現れそうな気がします
人気の芝居小屋に参りましょうか
まあ、素敵な新作歌舞伎の公演…じゃなかった!
お待ちなさい、そこの方!
その悪事、御堂の【第六感】と【野生の勘】が見切りました
非道な行いはおよしなさいッ!

貴様は誰だと聞かれたら
大見得切って名乗って差し上げます
世の為人の為民の為、花咲く正義の茜色!
人呼んで暴れん坊プリンセス
御堂茜、参上です!

敵に詰め寄り【武器受け】で立ち回ったら
UC【控えよ〜】を発動します
天下の紋所を掲げ
見物していた方々にも御堂が正義と示しましょう!



 地を駆け、町駆け、人波越えて。
 愛馬たるサンセットジャスティスの蹄を鳴らし、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は町を往く。
 その嫋やかな表情とは裏腹。瞳には正義が輝き、悪は許さじ。と、巡る視線に悪を探す。
「この御堂を差し置いて正義を騙るオブリビオン……見過ごせませんとも!」
 いや、瞳だけでなく、案外言動にも出ていた。
 そんな茜が目を付けたのは、江戸町民が娯楽の場たる芝居小屋。
 赤提灯の彩り目を惹き、演者を示すのぼり旗。芝居小屋の入り口にかかるは演目の絵か。
 わいわいがやがや。
 人の活気に旗がはためき、出入り口に設置された人気役者の浮世絵は飛ぶように売れていく。
「良き活気。良き営み。これぞ、守るべき世界の一端というものでございましょう!」
 茜の視界に広がるそれに、その視線は和みを見せて、正義を持ってそれを守らんと胸中に宿す想いも新たに眺め行く。
 とは言え、警邏の最中、その視線が時折、芝居小屋の新作宣伝へと吸い込まれるのもご愛嬌というものだ。
 だが、その穏やかな時間も長くは続かない。

「――! ――!?」

 茜の正義の瞳は、耳は、魂は、悪の存在を決して見逃しはしない!
 その視界の先、購入した商品が不良品だなんだと揉めている人の下へと、愛馬を猛突撃させるのであった。

「お待ちなさい、そこの方々!」
「なっ、なんだぁ!?」
 突然現れた鉄の馬と茜の存在に面食らうは明らかな悪人顔の浪人が数名。
 圧を掛けるように取り囲んでいた売り子から、視線が茜へと移る。
「購入したものにケチを付け、小金を巻き取ろうとは。そのような非道な行いはおよしなさいッ!」
「んだと!? 不良品を売り払ってたこいつらが悪いんだろうがよ!」
 茜に囁く第六感。正義が齎す悪をかぎ分ける勘が、彼らこそが間違いなく悪であると囁いている。
 特に、目の前の浪人達からはジャスティスエナジーが微塵も感じられないのだ!
 ただでさえ浪人達が騒いでいたために集まっていた視線。それが茜の参戦により、衆目は更に集まっていく。
「第一、手前はなんだってんだ! 関係ねえだろうが! なんなんだ、手前はよ!」
 ――来た!
 これぞ、名乗り時である。と、茜の瞳が明るく輝く。
 武士道を、正義を極めた結果、己の身体すらも改造した直情ガールは今がその時と心を燃やす!
「世の為、人の為、民の為。花咲く正義の茜色!」
 どこからともなく、時代がかった音楽が流れ出る。
「――人呼んで、暴れん坊プリンセス。御堂茜、参上です!」
 掌を相手に突き付けて、ででん。と大見得、御堂茜が独り舞台!
 思わず、観衆から拍手の渦。
 それに、どうもどうも。と茜もつい応える。
 芝居小屋が目前故、演劇の一つとでも捉えられたのかもしれない。
 ――これは不味いのではあるまいか。
 そう感じたのは浪人達。本来であれば、これは自身達の親分である義勇仮面の名乗り処の筈。そのお株を奪われたのだから大慌て。
「くそっ、なんなんだよ! ええい、やっちまえ!」
 それは、ある種のフラグ――負けフラグというものであった。
 だが、それが回収される前に、また新たなる闖入者が現れるのである。

「娘さん1人に大の男が複数で、恥を知りなさい!」
 響き渡る朗々とした少女の声。
 だが、その発生源を探すも、どこにもその姿は見当たらない。
「くそっ、次から次に誰だ!? 姿を見せやがれ!」
 浪人達の誰何の声。
 お約束と言えばお約束。
 狼藉を働くためとは言え、芝居小屋に来るぐらいだ。案外、そういったことに付き合いがいいのかもしれない。
「ここよ!」
 中天にかかる陽光の輝きが、人影を地面に投げかける。
 その人影の先を追い、すべての人の視線がそこへ。
 それは芝居小屋の屋根に堂々と立った金色の少女――フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)!
 背中に背負った陽光が照らす中、そこにあっても染められぬ黒の外套をはためかせ、その頭には同色のとんがり帽子。その黒の中で、風に吹かれて金色の髪が揺れ、紅の光が瞬き揺れる。
 どうやって登った。とか、いつの間に。とか、そういったツッコミは幸いにもなかった。
 むしろ、新たな演者の登場と勘違いしたのか、見守る観衆の拍手はより一層の熱さを増す。
 中には、よっ、待ってました! なんて、調子のよい声も。
「そこまでよ三下ども! さっきからの悪事もこの私、フィーナ・ステラガーデンがお見通し!」
 屋根の上からこっそり浪人達の悪事を見守り、登場の時を待ち構えていたのだ。
 浪人達が売り子に絡み始めた時から、それは全てフィーナの知るところ。
 勿論、これはフィーナが自分で集めた情報なのだ。胸を張っていい。
「例え、お天道様が許しても、この私が許しはしないわ!」
 びしり! と空に輝く陽を指し示すように掲げあげた指先を、許しはしないわ! の言葉と共に浪人達へと突き付ける。
 まさしくそれは名乗りであり、決め台詞。
 拍手の渦は更なる強さでもって、それを彩るのだ。
 その様子には、フィーナも思わずご満悦。
 とおっ! と掛け声も高らかに、屋根から地上へダイビング。ふわり、猫が舞い降りるように軽やかなその身のこなし。着地もまた鮮やかに。
 大丈夫。乙女のスカートは鉄壁なのだ。舞い降りる風にめくれる心配はない。

 周囲の観客――主に男性(浪人含む)の一部から残念そうな溜息。その隣に女性が居る人は叩かれるか、軽蔑の眼差しを漏れなく贈られていた。
 閑話休題。

 見事な着地を見せたフィーナは茜の傍に陣取り、互いに目配せ。そこにあるのは猟兵同士の以心伝心。直情型で似通っている部分もあるが故だったのかもしれないが、なにはともあれ。
「役者は揃ったわね!」
「ええ、では、勧善懲悪と参りましょう!」
 問答無用の悪役退治が始まった!
 言うが早いか、フィーナの焔が弾丸の如く、地に弾け――流石に、周囲への影響を考えて、全力の一撃は控えめに――浪人達の足が見事なタップダンスを刻む。
「くっ、糞! 散れ、散れぇー!」
 浪人達が散開し、茜にその刃を向ける。だがしかし、それは悪手というものだ。
 彼女の業は近距離だからこそ、余計に力を発揮する!
「この紋所が目に入らぬかぁー! でございます!!」
 近づいてきた相手へ天下自在符を叩きつけ、その勢いのまま正義の拳が浪人へと突き刺さる!
 それは浪人を吹き飛ばし、地に伏せさせるに十分な一撃。
 紋所の使いどころが若干違う気もするが、それはそれ。これでいいのだ。
「兄貴ぃー!?」
 吹き飛ばされたのは浪人集団の纏め役であったのだろう。リアクション役でもあった彼が倒され、浪人達へと動揺が走る抜ける。
 そして、拡がっただけの集団など、フィーナにはただの的。
「所詮、大根役者。茶番劇でしかなかったわね! 消し飛べえええええええええ!!」
 ちょっと抑えめな爆発が、浪人達を呑み込んだ。
 爆発であっても、芝居小屋を燃やさないようにコントロールをしてあった辺りは流石と言える炎の魔女であった。

 舞いあがった土煙が、まるで紙吹雪のように降り注ぐ。
 観客の目前には黒焦げで倒れ伏す浪人達の姿。
 その向こうには天下御免の紋所を掲げた茜とフィーナの姿。
 それはまさしく、時代劇における終幕の様子を表しているのであった。
「御堂屋ー!」「ステラガーデンって、屋号でいいのか?」「いい伊達姿だったぞー!」
 そして、それを包む熱気の渦は熱く高らかに。
 2人の名前を江戸市民の中へと沁み込ませていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『乱世の名将』

POW   :    八重垣
全身を【超カウンターモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    八岐連撃
【一刀目】が命中した対象に対し、高威力高命中の【七連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    永劫乱世
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【復活させ味方】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なあ、聞いたか。巫女仮面の噂」
「俺はいぶし銀な仕事人の姿なら見たぜ!」
「桜色の少女が浪人達を千切っては投げ、千切っては投げ、痺れたねぇ!」
「暴れん坊プリンセスに炎の魔女が、また大立ち回りをやってたらしいぜ!」

 狼藉者を叩きのめす猟兵達の話は町のあちらこちらでもちきりに。
 その報告を拠点で身体振るわせ、聞き知るは仮面の大男。そう、義勇仮面である。
「何故だ。計画は完璧だった筈! 何故、我が事為す前に全てが終わって……侮るべかざるは猟兵達と言うことか!」
 叩きつけた拳が拠点を揺るがす。
 傷だらけの浪人達が申し訳なさそうにしているが、猟兵達の活躍を褒めるべきであり、彼らを責めるはお門違いと義勇仮面は怒りを呑み込む。
「ならば、次は違う行動を考えねばな。問題ない、また伏せれば良いのだから」
 浪人達を労い、解散させた義勇仮面は1人、次にどうするべきか思案する。
 だがその時、拠点の扉が音を立てて開かれる!
 そこに姿を現したのは浪人――ではない! 拠点を突き詰めた猟兵達の姿!
「よもや、よもやここまで先回りするとはな……こうなっては致し方なし。貴様らを破り、今暫しに姿を晦ませるとしよう」
 刀を抜き放ち、威を放つ義勇仮面。
 これに雲隠れを許してはならない。
 猟兵達も各々に態勢を整え、それを迎え撃つのであった。
月見・桜
ようやく会えましたね… 義勇仮面!
さぁ!…覚悟はよろしいですか?

【行動】
今回は、皆様の援護をします!
刀による攻撃が危険ですね… 他にも仲間を復活させる能力があるようです。刀は〈盾受け/見切り/第六感/残像〉
で対処…出来るでしょうか?
敵の仲間を復活させる術や他の技は、《巻き付く守護霊》で封じます。
あまり長い時間は使い続ける事が出来ないので、その間に皆様は大技を決めちゃってください!
敵に隙があれば、〈スナイパー/視力/援護射撃/鎧無視攻撃〉を使うのも良さそうですね!

アドリブ・協力歓迎です!


フィーナ・ステラガーデン
世のため人のため!影ある所に猟兵あり!
あんたの企み!悪行三昧も!
やっぱり私達がぜーーーんぶまるっとお見通しなのよ!
さーさーしんみょーなおなわをちょーだいするのよ!
(大変気に入った様子でヒーロー演技継続中)

じゃ!出来るかぎり仲間達と連携して戦うわ!

なんか復活させて操ってきたら「属性攻撃」で燃えてもらうわ!
市民なら杖で殴るわよ!容赦しないわ!
隙を作るためと、後ろに背負ってる旗を燃やす為に
「高速詠唱」UCで炎の蝙蝠を消しかけるわ!
大きな攻撃は仲間に任せたいわね!
だから畳み掛けるチャンスが出来れば仲間に合図を送るわよ!
ヒーローは力を合わせて戦うものなのよきっと!

アレンジ、アドリブ、連携大歓迎



 腰に佩きたる刀をまずは二振り抜き放ち、義勇仮面は猟兵達を圧するかの如き姿を見せる。
 過去、乱世を生き抜いてきたその姿は伊達ではない。
 だが、それに臆する猟兵達でもないことは確かだ。
「世の為、人の為! 影ある所に猟兵あり!」
 1歩、前に進み出たのはフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)。
 その声も高らかに、まるで詩を吟じるかのように朗々と詠いあげる。
「あんたの企み! 悪業三昧も! やっぱり私達がぜーーーんぶまるっとお見通しなのよ!」
 まさしくノリに乗っている様子のフィーナ。
 その後ろで、零れ出た感情を示すかのように、背中で焔が揺れる。
「ようやく会えましたね……義勇仮面!」
 その勢いへと続くかのように、桜色の少女――月見・桜(妖狐の聖者・f10127)もフィーナの隣へと並び立つように、1歩前へ。
 手にした薙刀の刃が焔の光を反射して、鋭い光を見せつける。
 それは、毅然とした今の桜自身を表しているかのようにも。

「さあ! 覚悟はよろしいですか?」
「さーさー、しんみょーなおなわをちょーだいするのよ!」

 桜とフィーナ。2人の声が繋がり、義勇仮面が企みを打ち砕かんと気迫を叩きつける!
「お見通し……まさしく、そのようだな。よもや、ここまで追い詰められようとは、猟兵達、誠に天晴よ!」
 ――だが、まだ我とて諦めはしておらん!
 喝!
 義勇仮面も負けじと声を張り、互いの気迫が宙でぶつかる。
 それは渦を巻き、空気をかき混ぜ、嵐が如き風を互いに吹き抜けさせた。
 そして、それが戦いの開幕を報せるラッパとなったのだ!
 圧する風を切り裂くように、桜が、猟兵達が義勇仮面の下へと走る!
「永劫乱世。我が同胞よ、来たれ!」
 だが、それを容易く許すものではない。
 義勇仮面が一声に応じ、猟兵達とそれとを分かつように、その間へとかつて戦場で死した古兵達を数多招き寄せる。
 それは首魁の頸を取らせまいと猟兵達を押しとどめ、その数の利でもって押し返す!
「なるほど! 戦闘員ってやつね!」
「1人1人は私達に及ばずとも、数は厄介です!」
 近付く古兵達を燃やし、蹴り飛ばし、杖で殴り。忙しなく動き回る中でも、フィーナはその瞳を輝かせる。
 それへ応える桜も、古兵の刃を薙刀で受け止め、逸らし、返す刃で一息に叩き斬る!
 見れば、他の猟兵達も同様にそれぞれがそれぞれに対応している様子が見て取れた。
 桜の言うように、この数は厄介だ。だが、それも個別に対応しているからこそ。
 ならば。
「ヒーローは力を合わせて戦うもの!」
 音頭を取る様にフィーナが声を張り、猟兵達は1箇所へと円陣を組むように密集する。
 互いが互いをフォローし合うその姿。それはまさに鉄壁の如く。堅城の如く。
 だが、それだけでは足らない。今度は打って出るための力が必要なのだ。
「私に考えがあります! 一瞬の道さえ切り拓いて頂けたなら、古兵の群れは私がどうにかします! そのために、どうか皆さんの力を!」
 散っては生じ、散っては生じを繰り返す古兵の集団。
 そのような相手に持久戦は不利。
 それが故、桜は1つの覚悟を決め、それを打開するための行動へと移る。
 だが、そのためにも他の猟兵達の協力は必須。そのための願い。
 そして、その瞳に宿した覚悟の光へと応えない猟兵など、ここには居なかった。

「攪乱ね! まっかせなさい!」
 言うが早いか、行動へと移すはフィーナ。
 華麗にくるりと舞うように。杖から零れる炎の光を残滓として、魔法陣を描き出す。
 それへと呼応するかのように、古兵相手に周囲へと撒き散らした焔の残り火がざわりざわり。風に煽られたものとは、明らかに違う動きを見せ始める。
 ――大丈夫。今の私に刃は届かない。
 目の前では敵を押しとどめる仲間達。その存在の安心感よ。
 だからこそ、フィーナは十全な用意を持って、それを発動するへと至らしめるのだ!
「次は私の番って訳よ! ほら! 役に立ちなさい!」
 残り火が無数の蝙蝠の群れとなり、一斉に敵の足元から鳴き声を、翼の音を騒音の如くに立て鳴らし、飛び立つではないか。
 それは一撃受けるだけで消える程度のものであったが、その100を超える数は敵の隙を生み出すには十分過ぎるもの。
 慌て、対処しようとする古兵達の壁を越え、義勇仮面の元へと殺到する!

 炎の蝙蝠が飛び立ち、それに浮足立った敵の隙間。そこに、はっきりと義勇仮面の姿が桜には見えた。
 その二刀でもって蝙蝠を払い、直撃は避けたようだが、数の利はそれを越えて義勇仮面が背中に背負う旗をも燃やしていた。
 そして、旗印が燃やされる、失われるというのは大将に何かがあったと思わせるもの。
 例え、その目で見て大丈夫と分かってはいても、沁みついた乱世の心が浮足立っていた古兵達の心を更に掻き乱す。
 ――ええ、ええ、十分過ぎる隙というものです。
 今はそれを言葉には表さない。
 桜が手にした火縄銃。その銃口の先で、スコープの先で、蝙蝠を払い続ける姿がこちらに気付いては困るから。
 ただ、願いを叶えてくれた仲間達への感謝を胸に、祈りの指先が、カチリ。と、引き金を引いた。
「狐さん、お願いします。少しの間、わたしに協力して下さい」
 霊力の弾丸に乗り、狐の守護霊が無人の野を駆けるが如くに戦場の空気を切り裂く!
 そして、それは見事に義勇仮面の身体を射抜き、絡めとる様に纏わり憑く。
 その効果――捕縛した対象のユーベルコードを封じるそれは、確かに発揮され、既に召喚されたそれは消えないが、新たなそれの出現が止まったことは、誰の目にも見て明らかであった。

「あまり長い時間は押し留められません! どうか、その間に決着を!」
 桜の額に浮かぶは玉の汗。それは命を削っての御業。
「雑魚相手は私に任せなさい! その分、キツイのをお見舞いしてやってよね!」
 フィーナは指揮者のように眷属を繰り、残った古兵達を分断し道を作り出す。
 2人の献身が作り出した道。それへと応えるべく、猟兵達は駆ける!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御堂・茜
むむ…敗走した兵を責めぬとは!
単なる悪党と思っておりましたが
敵もひとかどの将にございますね

馬ロボに【騎乗】して戦闘
大太刀のリーチと馬の脚を活かし
拠点内を駆けながら【怪力】で刀を振り回し攻撃を
永劫乱世で何か出てきたら一緒に斬ります
移動中に生じる【残像】で敵の目をくらまし
通常攻撃は回避を狙います

カウンター中は接近せず
刀より【衝撃波】を飛ばし遠距離から攻撃
不測の事態は【気合い】でなんとか!

貴方が正義を騙る目的は何です?
それが正であれ邪であれ
いずれ滅びをもたらすならば
心を鬼にし成敗致します
正義とは我が前に散る者の志を背負う覚悟ですッ!

止めはUC【完・全・懲・悪】で
義勇仮面の名、この胸に刻み往きましょう


月凪・ハルマ
いやもうがっつり自作自演じゃん
義勇仮面が聞いて呆れる

いっその事、やらせ仮面とでも改名すれば?

◆SPD

※サポート中心、他猟兵との連携前提で行動

しかし八刀使いときたか
接近戦はちょっとやめといた方がいいかな

という訳で、まずは【忍び足】で相手の死角に
以降は相手の斬撃が届かない距離を保ちつつ
【早業】【投擲】技能込みの手裏剣で攻撃し続ける

相手の攻撃は【見切り】【残像】で回避を試みる
躱しけれなければ魔導蒸気式旋棍での【武器受け】も

【八重垣】を使われたなら、対抗して【ガジェットショータイム】
トリモチ弾込みの拳銃型ガジェットで相手の手足を狙い
敵の行動を阻害する

何が目的かは知らないが、それも此処で終わりだよ


神代・凶津
さあ見つけたぜ、義勇仮面ッ!
てめえの悪行もここまで、年貢の納め時だぜッ!
【雷神霊装】でいくぜ。

「派手に決めるぜ相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
巫女仮面見参・・・ッ!
・・・うん、もう慣れた。

高速移動で翻弄しながら一気に距離を詰めこの雷撃を纏った妖刀の斬撃をたっぷり食らわせてやるぜッ!

天誅、巫女仮面に敵はなしッ!
・・・相棒、実は気にいってるだろコレ。


【アドリブ歓迎】



「敗走した兵を責めぬ姿は敵ながら天晴。ひとかどの将にございましたか」
「さあ捉えたぜ、義勇仮面ッ!」
 切り拓かれた道を駆け抜け、突き進むは、馬上の御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)と地上の神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)。
 その1歩1歩は瞬く間に距離を埋め、すぐさま互いを互いの刃が領域へと置いた。
 勢いは殺さぬ。むしろ、利用する。
 正義の大太刀が上段から立ち割るように、妖の輝きを放つ刃が掬いあげるように下段から。
 轟。と、風を巻き込む両者の一撃。鋼すらも断たんとするそれ。
 だが。
「見事。しかし、一つ二つでは足りぬな」
 八重垣。そう例えられる義勇仮面が防の奥義。
 幾重にも重なった垣根の如く、その防御が生み出す鉄壁の護りは八重の如くにその身を守る。
 そして、この奥義はそれに留まらない。防いだ後の返しこそが本命!
「――その頸、落とすが良い!」
 茜と凶津の刃を止めた義勇仮面の二振りが、否、二つに留まらぬ八つの刃が2人を討たんと迫りくる!

「随分と性急じゃないか。やらせ仮面」

 茜が二振りを大太刀巧みに受け流し、同様に凶津も刃と護りの結界にて二振りを受け流す。
 残る四振り、その行方。それが2人を断たんとした時、響いたは気負いのない声。いや、煽りの声か。同時、弾ける火花が4つ。
 それは四振りの軌道に入り込んだ、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)が投擲の業。
 ハルマの手裏剣が義勇仮面の刃を逸らし、2人の危機を救ったのだ。
「八百長……その通りである」
 飛び退く茜と凶津の2人。それを見送り、義勇仮面はやらせの言葉を受け止め、認める。そこに憤りは見られない。
 憤りでもして隙を見せればと構えていたハルマであったが、それを為せぬことに舌打ち一つ。
 追撃を仕掛ければ、目の前のハルマが一撃を許すと義勇仮面も感じていたのだろう。それ故の自制。そして、ハルマの存在をしっかりと見る。
 飄々とした雰囲気の内にある忍びの技術。先の一合でそれを肌で感じ取っていた。
 ――誰からも目を離すは拙いか。
 だが、油断ならないのはハルマのみではない。
 初撃こそ凌がれたものの、茜と凶津の一撃も義勇仮面の手へと痺れを僅かに残している。
 それがあったからこその、ハルマの軌道逸らし成功でもあったのだ。
 相対する誰もが一筋縄ではいかない存在。それを義勇仮面は心の内に焼き付ける。

「やはり、単なる悪党と言うだけではありませんね」
「いや、助かったぜ。兄ちゃん!」
 繋いだ首を撫でつつ、礼を述べるは茜と凶津。
 大事ないなら良かった。と、手を振り、応えるハルマ。
 その間も、誰もの視線は義勇仮面から外れていない。
 互いの実力が拮抗するが故の膠着。
 しかし、時間は相手に利するものであり、猟兵達へと利するものではない。
 古兵を抑え、留めてくれる者達がいつまで持つか。それが途切れた時、押し切られるのは猟兵達であろう。
 ならばどうするか。
 ――ヒーローは力を合わせて戦うもの!
 さて、誰の言葉だったか。だが、そうなのだ。互いの長所を生かし、合わせ、敵を凌ぐが唯一の活路でしかないのだ!
 互いに目配せ、役割確認。そして、3人の猟兵達は動き出す!

「派手に決めるぜ相棒ッ!」
「――転身ッ!」
 ――巫女仮面見参ッ! ……うん、もう慣れた。ていうか、実は気に入っているだろ、相棒。
 天を裂き、地へと落ちる神鳴る威。
 踏み込む1歩1歩に轟音が響き、ジグザグと高速で動くその姿たるや、まさしく稲妻の如し。
 一心同体となった凶津と神代・桜は、身の内より溢れ出る力に自身が翻弄されぬよう、歯を食いしばり、命を削り、その身に馴染ませていく。
「手前の悪行もここまでだ!」
 雷光残し、刃が奔る!
「確かに、それは迅かろう。強かろう。しかし、我が守りを抜けると思うな!」
 八重の護りと雷光が噛み合い、白光が目を晦ませる。
 一撃の重さは初撃へと比するに非ず!
 それを示すように、義勇仮面が受ける刃は一振りではない。
 全ての刃を使い、その一撃を受け止めている!
 だが、確かに義勇仮面はそれを受け止められていたのだ。
 これでもまだ届かないのか? 否! 受け止めさせたのだ!
 妖刀に凝縮された雷が解き放たれ、刀を通して義勇仮面のその身を焦がす!
「これが年貢の納め時ってな! 今だッ! やれッ!」

「八刀使いときたら接近戦は不利……とは言え、押し留めて見せたのは凄いね」
 ――なら、俺もしっかりやらないとだ。
 ハルマの姿が静かにぶれる。
 残像を残す程の速度で地を、宙を駆け巡り、その姿を至る所に残していく。
 それはまさしく影分身。
 そして、幾人ものハルマが同時にそれを――手にした手裏剣を解き放つ!
 四方八方、手裏剣の雨霰。
 勿論、敵を抑え込んでいる凶津に当てる程、その腕は生温くはない。
 影すら残さぬ速度で飛来したそれは狙い過たず、義勇仮面の腕に、足に、胴にと音を立て、突き立っていく!
「ぐっ!? お、おぉぉぉぉぉ!!」
 痛みの声――ではない。それは呑み干し、気を吐くように雄叫びあげた義勇仮面が動き出す!
 せめて、自身を抑え込んでいる凶津を討たんと、一振り残し、七振りを掲げる。
 そこから繰り出されるは八岐の――

「はい、そうですか。となる訳がないよね」

 ――連撃は繰り出されない。繰り出せない。
 掲げた刃を絡めとる様に張り付いたそれ。足に粘りついたそれ。
 手裏剣の影で撃ちだされていたトリモチ。それが義勇仮面の動きを止めていた。
「何が目的かは知らないが、それも此処で終わりだよ」

 蹄が地を踏み鳴らし、麗しの着物が風を孕んで宙を舞う。
 防御は最早考えなどしない。裂帛の気合を込めた大太刀の刃が残光を残して奔る。
 ――その刹那。

「貴方が正義を騙る目的は何です?」
 茜は凝縮した時間の中で、それを問う。
 茜の瞳には正義が燃えている。だが、その焔は激しく燃えるいつものそれではなく、静かに灯る焔。
 義勇仮面の行動の是非を問わんと、彼女はそれを投げかけたのだ。
「我らはいずれ滅びを齎す者――」
 オブリビオンがオブリビオンである以上、それは必然。
 過去より沁みだしたそれは、必ず現在を埋め尽くし、世界を滅ぼす者だ。
「――だが、そのために流れる血は少しでも少なく、流れる時が来るのは少しでも遅い方が良かろう?」
 応えがあるとは思っていなかった茜の目が、僅かに見開かれる。
 その視線の先、仮面の奥では苦笑いのような表情が浮かんでいる。茜の勘がそう囁き、何故だか、そうなのだろう。と、理解出来た。
 茜の瞳に示される義勇仮面の正義量は、不明。
「その心意気がなんであれ、いずれ滅びを齎すならば、心を鬼にし成敗いたします」
「義勇とは言うが、あの男が言ったように八百長。偽勇、偽善でしかない」
 ――故に、悪として討たれるは当然。

 そして、時間は元の速さを取り戻す。
 大太刀の刃が義勇仮面の身体を断ち抜け、鞘へと戻る。
「我が正義とは、我が前に散る者の志を背負う覚悟ッ! 義勇仮面の名、この胸に刻み往きましょう」
 宣誓するかのような完全懲悪。
 そして、大江戸を騒がせた狼藉者が一党の首魁は、ここに討たれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『大江戸ツアーへご案内』

POW   :    蕎麦や寿司、うなぎ屋などのお江戸ファストフードを堪能

SPD   :    浮世絵や貸本屋など庶民が日常的に楽しんだ文化に親しむ

WIZ   :    落語や歌舞伎などの大衆芸能を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 万事平穏。すべて世は事もなし。
 活気づく通りには人々の様々な表情が浮かび、流れている。
 それは喜怒哀楽の様々。
 だが、そこに世界の破滅などといったものは一つも関わって等いない。
 猟兵達の活躍により守られた世界がそこにはあった。
 ならば、少しばかりここで過ごすのも良いことだろう。
 華の大江戸。その気になる場所へと、猟兵達はそれぞれに足を運ぶのであった。
フィーナ・ステラガーデン
【pow】
もーーー食べられないわ。
(すでに今回の報酬を全て使い切る勢いで食べ歩きに食べ歩き
日陰になっている所の椅子の上で倒れている。
傍には妹へのお土産の食べ物どっさり)

んー。(倒れながら町並みを見て)
この世界は平和ね。
ダークセイヴァーでは英雄(ヒーロー)とかありえないわよ。
(などと1人呟きながら、誰かが会話に絡んでくれるなら嬉しいし
いないならいないで、最終的にまた元気になって食べ歩きを再開する)

(なんか適当にアレンジ、アドリブ、改変、プレイングとまったく違う!等々
ご自由にしていただけると嬉しいです)


月見・桜
【POW】を選択

義勇仮面も成敗しましたし、これでようやく大江戸観光が楽しめますね!
それにしても、先程から声をかけられるのですが… もしかして、わたしも有名人になったのでしょうか?

【行動】
先程の戦いで、寿命が少し削れてしまいましたので、美味しくて体に良いものが食べたいですね!
体に良い食べ物… う〜ん、うなぎとかでしょうか?
そういえば、ここの近くに美味しいと評判のうなぎ屋さんがあるそうなので、そこに向かいます!
わたしの故郷では、うなぎは滅多にお目にかかる事は無い、超が付くほどの高級食材でして… 実は食べた事が無いのです… なので、うなぎ丼… 楽しみです!

アドリブ歓迎です!



「おい、あれってまさか」
「あの! もしかして……?」
 義勇仮面との一戦も終わり、日常の平穏を取り戻した大江戸の街。
 月見・桜(妖狐の聖者・f10127)も、ひと時の平穏を楽しまん。と、町を行く。
 何をしようか。何を見ようか食べようか。
 だが、行くところ行くところで向けられるのは視線、視線、視線。そして、時に実際に声を掛けられ。
 桜色の少女。
 そう、町人達が噂する場面を耳にもしたが、まさか実際に声を掛けられたりしようとは。
 好意は嬉しいもので、にこやかに対応も。だが、それが重なり続ければ多少の負担にもなろうというもの。
「名前が売れるというのも、大変なものなのですね」
 だからだろうか、少しだけ人の気配が少ない場所へと自然に足が運ばれたのは。
「あら、あれはもしかして」
 そこで桜は少しばかり見慣れた色を見つけた。

「もーーー食べられないわ!」
 ごろり転がる長椅子の上。
 陰を作り出してくれている庇の外の空は吸い込まれるような青空で、はち切れんばかりのお腹の重さに引っ張られて、そのまま自分が落ちていきそうな錯覚が。
 だけれど、実際にはそんなことはなくて、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は満腹感と、舌鼓を打った料理の数々の味を思い出して悦に浸る。
 蕎麦も良かった、寿司も良かった。他にも鯛飯、筍、豆腐に鰯。
 数々の料理が今やフィーナの腹の中。
 まさに江戸での食い倒れ道中である。
 そして、その猫のように細められた眼差しと綻んだ口元。それを見れば、それがフィーナにとってどういうものであったかは想像も付こうというものであった。
 目一杯に楽しんでいるように見えるが、その隣、寝転ぶフィーナの傍には山と積まれたお土産の数々。
 それは食べ物であったり、小物であったり、浮世絵であったり。
 それらは姉の帰りを待っているであろう妹へのもの。
 ――喜んでくれるかしら。喜んでくれるわよね。
 横目にそれを眺めて、フィーナは近くて遠い世界にある大切な宝物を思う。

「ご休憩ですか?」
 寝転ぶフィーナに 話しかける/影が差す。
 見つめる先で金色が頭をもたげる。 / もたげた視線の先には桜色。
「あら、確か貴女は」
「はい、月見桜です。先刻はお疲れ様でした」
 互いに互いを認識し合ってご挨拶。
 戦場では共にしたこともあったが、名前を交換し合ったのは始めてか。
 隣、いいですか? と問う桜に、フィーナは、どうぞ。と、体を起こして場所を開ける。
 沈黙。天使が通り抜ける。
「んー、この世界は平和よね」
 その沈黙を破ったのはフィーナ。
 出自の世界に思いを馳せていたが故、違う世界の街並みに想いがぽろり。
「様々に世界はありますが、まだ平和な方なのかもしれませんね」
 猟兵として様々な世界を渡り歩く桜も、それへ相槌を打つように。
「ダークセイヴァーでは英雄とか、ありえないわよ」
 フィーナの脳裏に広がるのは過去の光景。
 そこに英雄が、ヒーローのような人が居たのなら――。
 それが無意味な仮定とは分かっていても、時にIFを考えてしまうのは致し方のないことだろう。
「ダークセイヴァー……まだ私は依頼で赴いたことはありませんが……」
 アンニュイな雰囲気を醸し出すフィーナに、桜はどう声を掛けるべきかと思案する。
 簡単な慰めを口にすることは簡単だ。
 だが、それは果たして正しいのだろうか。
 奇跡の人と里では呼ばれようとも、桜もやはり今を生きる1人の人であり、まだあどけなさが残る少女なのだ。
 それ故、悩む。悩んで、お腹が、くぅ。と小さく鳴った。
 赤面ものであった。
 慌て、お腹を押さえて音を隠そうとする桜であったが、その音はしっかりとフィーナの耳の奥に。
 だが、桜を責めることなどできない。
 戦いで生命力を削った身体にはエネルギーの補給を訴える権利があるのだから。
 しかし、慌てるその仕草が一層の保護欲を擽る。
「ぷっ……あっはっははは!」
 思わず噴き出たフィーナの笑い声。そこに先刻までのアンニュイな雰囲気はない。
「わ、笑わないでください!」
「ごめんね。お腹、空いてるのかしら?」
 顔を赤らめ恨めしそうな瞳を向ける桜。
 人々に声を掛けられ、相手を頼まれ、としている間に食いっぱぐれていた事情を語る。
 それに、フィーナの一層の笑い声が響いて、また桜は恨めし気に。
 最早、その会話に先程までの昏い、アンニュイな雰囲気はない。
「なにか、美味しくて体に良いものでもと思っていたのですが」
「そうね……なら、鰻とかどうかしら! 私もまだ食べてないし!」
 会話する内にお腹に隙間が出来たのだろう。フィーナは新たな味の追求を試みんとするのだ。
 鰻。
 桜の故郷では滅多に口にすることができない高級食品。
 勿論、桜がリサーチした中にもそれは候補としてあがっていた。
 そして、こうやって機会が出来たのに逃す手があるだろうか。いや、ない。
「そういえば、美味しいと評判のうなぎ屋さんがあるそうですよ」
「それだわ! なら、ここで会ったのも何かの縁。折角だから案内して貰えるかしら!」
 旅は道連れ。1人で食べる御飯も悪くないが、複数で囲む御飯ならまた違った味わいもあることだろう。
 明るい明るい空の下。2人の少女は賑やかに陽の下を歩いていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月凪・ハルマ
オブリビオンとしての性質と、当人の気質が
必ずしも一致する訳じゃない、か

コレも猟兵としての役目とはいえ、
なんかスッキリしないな

……いや、やめだやめだ

こういうのは忘れていいってものでもないけど、
必要以上に考えすぎても身動き取れなくなっちゃうからな

気分を変えるために、ちょっとその辺ぶらぶらしてこよ
なんか面白い物はないかな……と

そういや、浮世絵ってある意味ポスターとか
チラシみたいな面があるって聞いたことあるな

なら直近の話題なんかも絵になってたりする?
もしそうなら、義勇仮面の絵なんかもあったりして

……けどまぁ、それくらいならいいか

皆、今でも彼を正義の味方と思ってるんだろうし
今更事実を伝える必要もないよな



 猟兵が、自分達が守った世界を横目に、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は街を歩く。
 そこにはなんでもない人々の日常が広がっていた。
 それこそ、あの事件の一幕などなかったかのように。
「オブリビオンとしての性質と、当人の気質が必ずしも一致する訳じゃない、か」
 その光景に思い出されるのは、交戦の末、倒したオブリビオンの姿。
 今際の際の瞬間を思い出し、ハルマは1人考えを巡らせる。
 あれは間違いなく世界に破滅を齎す敵でもあったけれど、同時に、過去を生きた人でも――
「……いや、やめだやめだ」
 オブリビオンを倒すのは猟兵の役目。だが、あの存在に何かスッキリしないものがしこりの様に心へ残る。
 それが考えを堂々巡りとさせているのだ。
 だがら、ハルマは、やめだ。と口に出すことで、その思考の堂々巡りを断ち切る。
「こういうのは忘れていいってものでもないけど、必要以上に考えすぎても身動き取れなくなっちゃうからな」
 一見すればドライとも取れる考え方。
 だが、あれはあれで、そういうものだったのだ。そういう風に曖昧なものを曖昧なままに是とすることは、誰にも出来ることではない。
 常に真理を追究し続けることも大切だが、それをそのままに受け入れることもまた大切なのだ。
 そして、ハルマにはそれが出来たのだ。
 だから、これでこの話はお終い。
 思考を打ち切り、立ち止まったハルマの足。ふと、気付き、顔を挙げれば、そこには人だかり。
 何やら人気を集めている店があるようだ。
 人垣の隙間からチラリチラリと垣間見えるのは絵か本か。
 なるほど、絵草紙屋のようだ。
 視線を外し、再び足を踏み出そうとした、その刹那。ハルマの瞳はそこにあるものを捉えた。
「ちょっとごめんよ」
 人垣の波を難なくすり抜ける姿は、いつかを思い出させるもの。
 そして、辿り着いたその先に置かれた幾つもの絵。
 それはどこかで見たことのあるような人達の姿。その内に描かれる1人は、鏡でも見慣れたもの。
 だが、ハルマが手に取ったそれには――

 『町の狼藉者は許すまじ 我ら江戸の義勇なり』

 ――ハルマを含めた猟兵達に加えて、仮面の大男も描かれた勢ぞろいの1枚。
 手に取った顔に浮かぶは苦笑い。
 だけれど。
「まあ、それくらいならいいか」
 ここに描かれているのは、曰く、夢なのだ。人々が正義の味方と思い描いた者達への夢。
 それをわざわざ壊す程、ハルマの心は人情に疎いものではない。
 ――今更、事実を伝える必要もないよな。
 ハルマは被った帽子を僅かに深くし、それをそっと戻して元居た道へ。
「さて、他に何か面白い物はないかな、と」
 そして、ふらりふらりと歩み始めた物見遊山の足取りは、僅かに軽さを取り戻していたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・茜
義勇仮面…不思議な敵でした
ですが!
これでまた一歩世界平和に前進です!

頑張った自分へのご褒美として
浮世絵を買いに参ります!
ハーバニー様もご一緒にいかがですか?
御堂の馬にお乗り下さい!

浮世絵は時代を写すもの
江戸庶民の流行の最先端
『とれんど』にございます
皆様の雄姿も早速絵になっているやも!
暴れん坊プリンセスは…
…ない?

気を取り直し
御堂の目当ては武将様の合戦絵です!
幸村様、なんと勇壮たるお姿!
政宗様、本日も輝かしい!
やはり戦国武将は皆のヒーローにございますね!
…あら?

ご覧下さいハーバニー様!
この絵、義勇仮面に似ておりませんか?

ふふふ、御堂にはそう見えます
オブリビオンは悪ですが
絵に罪はございませんとも!



 蹄の音も軽やかに、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は通りを行く。
 その音の軽やかさを示すかのように、その表情は明るいもの。
 義勇仮面なるオブリビオンを倒し、その覚悟を背負うことで、世界はまた一歩、平和へと歩みを進めたのだから。
 だからと言う訳でもないが、頑張った自分にはご褒美というものが必要だ。
 信賞必罰は世の常。それを乱すはやはり正義に非ずというもの。
「ですので、御堂は浮世絵を買いに参るのです!」
 ぱかりぱかりと進めるその背中、御一緒如何? と、道すがらに偶然にも拾ったハーバニーへと茜は目的を明らかとする。
「ふふふ~、頑張った自分にプレゼントはぁ、女の子の嗜みですからねぇ」
 馬の動きに合わせて、ハーバニーの兎耳ヘアバンドもゆらりゆらり。
 見目麗しい少女が操る馬に、バニーガール姿の少女。
 これはいったいどのような組み合わせか。と、道行く人もついついと驚きに目を丸くする。
 中には、おや、あれは? と、茜の姿に目を留める者も。
 だが、2人はそのような視線をさらりと流し、会話を続けるのだ。
「浮世絵は時代を写すもの。江戸庶民の流行の最先端、『とれんど』にございます!」
 もしかしたら、そこには自分の姿もあるのでは。
 そんな茜の期待も仄かに、遂に2人は目的地へと辿り着く。
 人だかりは出来ているようだが、はてさて、その結果は?

「……ない?」
「見る限りではないようですねぇ」
 浮世絵の一角を探すも、そこにそれらしきものはない。
 あるのはいつの世も鉄板。戦国武将の絵姿だ。
 一抹の期待は儚く散って、思わず、ずーん。と、背負う影も濃く。
 だがしかし! と、心を切り替え、視線を前に。
 茜は心の強い子なのだ。
 それに、一番の目当ては別物……そう、売れ筋商品たる武将達の姿なのだから!
 川中島合戦がある、源平合戦がある。時代を問わず様々な合戦を描いた浮世絵の数々。
「茜さんはぁ、どれ推しとかってあるんですかぁ?」
 描く時代の様々をみて、目移りする茜にハーバニーが問う。
 そして、それは茜の心のスイッチを押すものだ。
「よくぞ聞いて下さいました!」
 手に取るは真田幸村、伊達政宗。口伝に聞くその勇壮さ、輝かしき。話はそれに留まらず、浮世絵に描かれる武将達の1人1人を丁寧に、情熱を込め、茜は語っていく。
 それを身振り手振りで語る姿は、年相応の少女のそれ。
 全身で好きを表す茜の姿には、思わずハーバニーの笑みも深く。
「――やはり、戦国武将は皆のヒーローにございますね!」
 そして、その熱意は周囲へと伝播し、気付けば合戦浮世絵も飛ぶように売れていく。
 これには思わず店主もニッコリ。
「お嬢さん、いい語り口でしたよ。そのお陰で、浮世絵もほら完売間近だ」
 ――お礼と言ってはなんだけれど、お嬢さんにはこれをあげよう。
 そう言って差し出された1枚の浮世絵。
 それは――
「まあ!」
 1人の武将の姿を描いたもの。
 仮面を被り、八刀を佩き、背負いしその勇将。
 それはまるで、あの義勇仮面のようにも。
「ご覧下さい、ハーバニー様! この絵、義勇仮面に似ておりませんか?」
「おやぁ、細部は異なりますがぁ、確かにそのようにも見えますねぇ」
 嬉しそうに浮世絵を掲げ見せる茜の姿。
 その絵姿はただの偶然だったのかもしれない。
 だが、オブリビオンが過去からのものであるのならば、あれが名のある将兵であったのなら、こういうことだってあるのかもしれない。
 そういった可能性もあるかもしれないと言うだけではある。
 だが、それでいいのだ。
「ふふふ、御堂にもそう見えます。オブリオンは悪ですが、絵に罪はございませんから!」
 真実がなんであれ、茜はそれに似た浮世絵を大切そうに抱え、輝く笑顔で笑っているのだから。

 後日談の後日談。
 絵草紙屋を出たところで、茜はとある絵に名前を一筆頼まれる。
 それは、馬で駆ける暴れん坊プリンセスの姿を描いた――。
 彼女がそれを手に入れられたかどうかは、また別のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月28日


挿絵イラスト