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逆進性メサイアカテゴリー

#アポカリプスヘル #グリモアエフェクト #救世主の園 #フラスコの落とし仔

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●救世主の園
 清浄なる大地が広がり、まさに肥沃の大地。
 それが『救世主の園』。
 はじまりはオブリビオン。
 祈りが呼ぶのは、奇跡。されど願いが祈りに昇華するように、祈りもまた願いを生み出すものである。
『貴方が救世主たらんことを』

 そう願われた生命があった。
 人を救うのが救世主であるというのならば、オブリビオンを救うのは如何なる存在か。
 即ち『総首長』である。
 優れたるを持つ者。
 総じて、プライマリスと呼ばれる。

 かつて『プレジデント』と呼ばれた『フィールド・オブ・ナイン』がいた。
 彼が望んだのは『全人類のオブリビオン化』。
『プレジデント』は世界のオブリビオン全てとソーシャル・ネットワークを構築していた。全てを繋ぐネットワークは、オブリビオンにとって優れた統治者をもたらしたことだろう。
 けれど、『フィールド・オブ・ナイン』は猟兵に破れた。
 その理由を考える時間はない。
「絆いだものを壊す。どれだけ人が抵抗するのだとしても、明日を望むのだとしても、尽く壊しましょう。それがわたしの望み」

 何処までも続く青空を憎悪の瞳で見つめるオブリビオンがある。
 生命維持装置の存在が、彼女をフラスコチャイルドであることを証明していた。彼女は|『フラスコの落し仔』《デミウルスゴス・エコー》。
 望まれていなかった。
 望んでいなかった。
 己が生まれることなど、何一つ。

 そして断じられたのだ。
『失敗作』だと。
 その憎しみは推して測ることなどできはしない。恨みは憎しみを連鎖的に増幅させていく。
「滅ぼしましょう。人の叡智も、人の希望も、人の祈りも、人の願いも、人が人たらしめるものを全て破壊しましょう」
『フラスコの落とし仔』は――否、『アリシア・ホワイトバード』は宣言する。
 その言葉と共に彼女を中心とした荒野が『無限に増殖する戦闘機械』によって埋め尽くされていく。

 彼女はオブリビオンの遺志を継ぐ。絆ぐ。
 人がそうするように。
 彼女が唾棄するかのごとく忌み嫌い、恨み、憎む存在と同じように、『そうした』のは皮肉でしかなかった。
『プレジデント』の掲げた理想も、『デミウルゴス』の狂気も、『マザー・コンピューター』の祈りも絆げていく。
 そして、『アリシア・ホワイトバード』にあるのは復讐だ。
 故に滅ぼす。
「『救世主の園』。まずは、この人類の希望一つを破壊しましょう。人に生み出され、人に捨てられ、人に絶望したものたち。『フラスコの落とし仔』たち……共に征きましょう」

 彼女の言葉に応えるように『各実験用消耗品』たちは走り出す。
 希望を壊し、絶望に落とす。
 機械化された体は、ただ己たちの虚無なる生命を世界に知らしめるためにだけある。望みもしない生命に、如何なる理由があろうか。
 あるのは『復讐』のみ。
「――!!!」
「歪んだ生と私達を見る者はいうでしょう。けれど、それは『今』を生きている者たちの言葉でしかない。望まれず、望まずに生まれ捨てられた生命を慰める言葉ではないのです。だから」
 滅ぼすのだ。壊すのだ。『アリシア・ホワイトバード』は、三対の白き翼を広げ、戦闘機械と共に『救世主の園』と呼ばれた『拠点』へと足を踏み出す。そして、聞くのだ。
 憤怒と憎悪が世界に満ちていく音を――。

●デミウルゴス・エコー
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はアポカリプスヘルにおいて人類の拠点の一つである『救世主の園』を襲おうとしているオブリビオンの存在を予知しました」
『救世主の園』とは、清浄な空気と肥沃な大地を持つ稀なる拠点である。
 荒廃した世界にあって、奇跡のような拠点なのだ。

 その拠点を今まさにオブリビオンの一団が襲おうとしている。
「彼らは|『フラスコの落とし仔』《デミウルゴス・エコー》。『失敗作』として破棄されたフラスコチャイルド……この襲撃に意味や意義はありません。思惑すらありません。彼らは……」
 ナイアルテは、そこで言葉を飲み込む。
 己もまたフラスコチャイルドであるからだろうか。彼らの、『フラスコの落とし仔』たちに対する負い目がある。
「自らが望まず、そして望まれなかった『失敗作』である彼らは破棄されました。その恨みと憎悪で染まり、オブリビオンとして蘇った今、空虚な『復讐』のためだけに何の関係もない人々を虐殺しようとしているのです」

 復讐は否定できない。
 だが、復讐とは因果があるからこそ、成り立つものである。連鎖の如き感情の中に引きずり込まれていない人々に向けられていいものではない。
「だから……せめて速やかに歪んだ生に再びの……終止符を打って頂きたいのです」
 まちがいだらけだ。
 できることならば、目を背けたい。けれど、それをしてはならぬことを彼女も猟兵たちも知っているだろう。
 目を背けた所で、現実は何も変わらない。よくなどならない。いつだって、辛く厳しい現実こそが立ち向かわなければならないものだからだ。

「『救世主の園』を襲う『フラスコの落とし仔』たちは群れそのものです。『全員が全員で生命力を共有』しているため、各個撃破を狙うのは得策ではありません。一つの群れで一つの生命、と言ってもいいでしょう」
 ならば、多くの敵を巻き込みながら、可能な限りの強力な攻撃を叩き込むしかない。
 そして、この群れを率いているオブリビオンは強大そのものである。
『アリシア・ホワイトバード』。
 彼女はひときわ強力である。

「『アリシア・ホワイトバード』は『無限に増殖する戦闘機械』と超強力な攻撃力と殆どの攻撃を受け付けない防御力を誇ります。まさに無敵、といえる存在です」
 どうやって倒せというのだと思うだろう。
 確かにそのままでは倒すことはできない。
「ですが、ユーベルコードを使う度に肉体が自壊していくのです。なんとか攻撃を耐えしのぎ、自壊を誘うことでしか勝機を見い出せません」
 危険な、困難な戦いであることをナイアルテは承知で猟兵たちに頭を下げる。

 同じフラスコチャイルドだからというだけではない。
 フラスコチャイルドは皆、目的を持って生み出される。それは荒廃した世界において、願いであり祈りだ。
 望まれてはいても、自ら望むことはできなかった。
 選択肢は何一つなかった。
 自分が自分であるという選択肢を彼女たちは持ち得なかったのだ。選び取ることも、手を伸ばすことも、自己を変えることも、何一つできなかった者たち。

 故に『フラスコの落とし仔』。
 望まれなかった生命、望まれていない生命、それらを歪んだというのは短絡。
 示さねばならない。
 その答を猟兵たちは既に持っているだろうか。未だ迷い、惑うだろうか。
 けれど、立ち向かわなければならないのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアポカリプスヘルにおける|『フラスコの落とし仔』《デミウルゴス・エコー》 たちが恨みと憎しみだけで人類の拠点『救世主の園』を襲撃するのを防ぐシナリオとなっております。

 ※これは2章構成のアポカリプスヘルの戦後シナリオとなります。

●第一章
 集団戦です。
 拠点、『救世主の園』に迫る『フラスコの落とし仔』たちとの戦いになります。
 彼らは一群で『全員の生命力を共有している』ので、各個撃破は現実的ではありません。
 一点突破も意味をなさないでしょう。
 なるべく多くの敵を巻き込みながら、皆さんの虚力な攻撃を叩き込んでいく面での制圧が肝要になります。

●第二章
 ボス戦です。
 拠点を襲う一群の首魁たるひときわ強力な『フラスコの落とし仔』、『アリシア・ホワイトバード』との戦いとなります。
 彼女は超強力な攻撃能力に加え、通常のユーベルコードと同時に戦場を『無限に増殖する戦闘機械』で覆って皆さんに襲いかかります。
 また殆どの攻撃を受け付けない防御力を有しています。

 ですが、彼女はユーベルコードを使用する度に肉体が自壊していきます。
 皆さんは、彼女の攻撃を耐えしのぎ、自壊を誘うことで勝機を見出すことができます。逆に言えば、それができなければ敗北するしかありません。

 それでは、未だ謎の残るアポカリプスヘルにおけるオブリビオンによる実害、それらを未然に防ぐために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『各実験用消耗品』

POW   :    未完成な兵器
【生身の体を壊しながら、搭載された兵器で】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    慈悲を乞う者たち
【救いを求める掴みかかり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【のし掛かりや無意識的な近接武器での攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    お前も俺になれ
【攻撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【自らの情報を送受信する配線】で繋ぐ。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


|『フラスコの落とし仔』《デミウルゴス・エコー》たる『各実験用消耗品』たちは、機械化された肉体に赤錆を浮かせていた。
 廃棄されていた当時のままだ。
 何のために生まれてきたのだろうか。
 身を動かす度に軋む体がある。
 言葉はない。
 あるのは憎しみと恨みだけだ。
 そう、許せないのだ。今日という『今』があるのは、己たちの生命を踏み躙ってきたからこそである。
 望まれていなかったのだ、失敗作など。
 望んでいなかったのだ、こんな生命など。

 ただ、皆とおなじがよかったのだ。
 使命も、存在理由もなく、ただ己達を肯定してほしかったのだ。
 生きていていいのだと。
 生命あることが、生きていていい理由だと言ってほしかったのだ。

 だが、それは踏みにじられている。
 廃棄された生命だ。だからこそ、『今』を生きるものを許せない。逆恨みだとか、うつろであるとか、そんなことはどうでもいい。ただ滅ぼしたい。ただ壊したい。ただ『今』を殺し殲したいのだ。
 故に『救世主の園』を滅ぼす。
 はじまりはオブリビオンによる救世主妄想だったのだとしても。

 それでも許せないのだ。
 憎悪と怨恨が紡ぐ先にあるのは破滅のみ。
「ええ、そうね。赦せないわよね。わたしたちが破滅を迎えるのなんてわかっていることだもの。けれど、なんで『今』を生きている彼らのためにわたしたちは踏み台にならなければならないの。礎にならないといけないの。オブリビオンだって、望むものはある。願うものはある。祈るものだってある。ただ、それを証明しましょう。わたしたちの全てを以って」
『アリシア・ホワイトバード』は告げる。
 破壊を。破壊を。破壊を。
 帯びただしいまでの破壊を積み上げて、彼女は、彼らは、証明してみせるのだ。

 明日なんて意味のないものだと――。
斯鬼宮・ハテヒメ
過去に囚われて先に進もうとしない汝らには我のデビュー戦の踏み台になってもらうのじゃ!

スーパーサイバー鉄剣ビーム!これで集団ごと屠ってやる!

我は一度死んでもはや人間ではないが、過去は懐かしんでも囚われることはせぬ!
「今」も「未来」も興味深いことでいっぱいなのじゃ!



 憎悪と怨恨が全てを曇らせるのだとするのならば、『各実験用消耗品』たちは己たちを見る目すら失っているのだろう。
 生命の意味も。
 存在する意義も。
 何もかもが『今』を破壊することだけに向けられている。
 彼らは『フラスコの落し仔』。
 生命に意味もなく、存在する意義すらも見失ったオブリビオン。

「――!!!」
 声無き怒号が『救世主の園』と呼ばれる拠点に迫っている。
 荒野を進む彼らの行進は、まさしく破壊のための進軍。無数の瞳が憎悪に染まり、目に入る全てを破壊しようとしている。
 だからこそ、鬼宮・ハテヒメ(サイバー・キョンシー・プリンセス・f38388)は高らかに笑う。
 生きるということは笑うためにあることだ。
 そして、知るためにこそあるのだと彼女は眼帯に覆われていない瞳を輝かせる。
 彼女にとって世界とは知るべきことが満載された宝石箱のようなものであった。

 己が生きていた世界だけではない。
 数多ある世界を彼女は知りたいと願うのだ。それは僵尸となった今でも変わらない。
 故に彼女は言うのだ。
「過去に囚われて先に進もうとしない汝らには我のデビュー戦の踏み台になってもらうのじゃ!」
 彼女の言葉はあまりにもあんまりな言い草であった。
 対する『フラスコの落とし仔』たちは、一群で生命力を共有した存在。

 彼女が今手にしている古めかしい鉄剣では対抗しようがない。
 剣とは即ち対人兵器。
 個々が激突するからこそ、その力を発揮するものだ。だが、対峙するオブリビオンたちは個体ではなく群体。
 放たれる爆破とケーブルがハテヒメへと迫る。
「――!!!」
「何を言っているのかさっぱりわからんのじゃ!」
 その金色の瞳に輝くのはユーベルコード。
 手にした鉄剣の名は『金錯銘サイバー鉄剣』。
 彼女の好奇心旺盛な知性が求めたのは他世界の有り様。彼女が死した後に歴史を重ねてきた世界だけではなく、他世界の技術さえも対象となっている。

 全てを知りたい。
 あらゆることを知りたい。
 そして、それらを自分のものにしたい。
 その願望の発露は、死して尚衰えることなどない。満ちる輝きは、その鉄剣に集約されていく。
「我の技術を喰らうのじゃ! 名付けて!」
 光が鉄剣に満ちていく。
 その光景は信じがたいものであった。

 振るう鉄剣より放たれるは光条。
「スーパーサイバー鉄剣ビーム(スーパーサイバーテッケンビーム)」
 迫る『フラスコの落とし仔』たちを薙ぎ払うレーザービームの一撃。
 彼女が知り得た他世界の知識と技術を持って生み出した新たなる剣。彼女は死んだとしても止まらない。
 死さえも彼女を止められないのだ。
「我は一度死んでもはや人間ではないが、過去を懐かしんでも囚われることはせぬ!」
 振るう一撃は『フラスコの落とし仔』たちを一閃に薙ぎ払うだろう。

 吹き飛んでいく数多の『フラスコの落とし仔』たち。
 それをハテヒメは闊達に笑って見つめる。
「何故、と思っておるな! 過去の化身!」
 彼女は光条振るった鉄剣を振るって、その瞳を輝かせる。

 今も尚彼女の瞳には輝かしい世界が映し出されている。
 見るもの全てが輝いて見えると言ってもいい。新しいことは、知性を刺激する。知らぬことを知るということは、それだけで可能性を感じさせる。
 故にハテヒメは言うのだ。
「『今』も『未来』も興味深いことでいっぱいなのじゃ!」
 だから、己の道を塞ぐなと笑ってハテヒメはビームの光と共に『フラスコの落とし仔』たち、『過去』を『今』から薙ぎ払い、吹き飛ばす。

 燃える炎は消えず。
 それは、彼女の切り拓く未来の輝きを示すように、煌々と立ち上るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
おいたわしや!
望まれて産まれてたわたくしには全然わかんねぇ世界ですわ…
ですけどはいそうですかと殺される訳にはまいりませんわ

ゾロゾロと賑やかですこと!
こんな時は逃げるに限りますわ〜!
ネメジストをチャージ!チャージ!チャージ!しながらアンビシオンでひゅんひゅん飛び回りますのよ

おほほのほ!こちらですわよ〜!
わたくしが憎いでしょう?わたくし、貴方達の苦悩なんて存じませんのよ?
こちとら産まれた瞬間から人生イージーモードですわ〜!
こんな具合に煽りまくってビルでも崖でも何でもよろしいので崩れそうな所まで引き付けるのですわ
そして集まった所にブレイクブラスト!
纏めて瓦礫の下敷きになってしまえばよろしいのですわ!



 望まれない生命。
 望まれたのは『成功』だけであったのだと『フラスコの落とし仔』たちは知っていた。望まれていたのは己達ではなかったのだ。
 失敗作。
 その烙印は、彼らの生命の意義を見失わせるには十分すぎた。
 そして、彼らの心を支配したのは憎悪と怨恨だけだった。
「――!!!」
 声にならぬ咆哮が轟く。
『各実験用消耗品』たちは、赤錆の浮いた己たちの体から放たれる兵器を持って周囲を爆発に巻き込み、ケーブルを解き放つ。

 自分たちと同じにしなければならない。
 意味無き生命として散らさなければならない。破壊だけが己たちの憎悪と怨恨を慰めてくれると知っていたからだ。
「おいたわしや! 望まれて生まれてたわたくしには全然わかんねぇ世界ですわ……」
 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は迫りくる『フラスコの落とし仔』たちを前にして、そう呟く。
 彼女は皇女である。
 多くから望まれ、祝福されてきた生命である。
 理解できないかもしれない。

 望まれてきた結果と違うからと、捨てられた生命のことを理解できないのだ。無理なからぬことだ。同時に理解できないということがどれだけ幸いであったのかもまた知らないだろう。
 けれど、それでいいのだ。
 生命の輝きとは影を落とす。
「ですけどはいそうですかと殺されるわけにはまいりませんわ」
 彼女は神性なる大型機械鎧『アンビシオン』の翼を広げる。背に負う光が戦場を照らす。手にした銃剣を装着されたビームライフルが光を湛えていく。

「――!!」
「ゾロゾロと賑やかですこと!」
 こんな時は、と彼女は大空を飛ぶ。
 迫りくる爆発やコードの類を全て大空で舞うように躱すのだ。『フラスコの落とし仔』たちは、一群で一つの生命。生命力を共有しているからこそ、個体を倒すことは意味を持たない。
 多くを巻き込む一撃が必要なのだ。
 だからこそ、手にした『ネメジスト』にエネルギーを溜め込んでいく。
「おほほの! こちらですわよ~!」
 手のなる方へ、とメサイアは笑う。

 己の生を謳歌しているとも取れるだろう。
 生命とは笑うときこそ輝くものである。故に彼女は笑う。蔑みでもなければ、冷笑でもない。意味無き生命、失敗と断じられた生命、それらを笑うのではない。
 己が今生きているという実感にこそ彼女は笑う。
 憎しみを受け止められるのは憎しみだけだ。
 復讐も、怨恨も、何もかも綺麗事では受け止められない。故に彼女は言うのだ。
「わたくしが難いでしょう? わたくし、貴方達の苦悩なんて存じませんのよ? こちとら生まれた瞬間から人生イージーモードですわ~!」

 皇女として多くに恵まれた。
 人は、生命は、たしかに平等であろう。そういうことになっている。
 けれど、実際は違う。
 性差があり、環境の差があり、貧富の差もある。
 あらゆる格差がある。どれもが違いに満ちている。だからこそ、多様性があるのだ。違うからこそ理解することが出来る。

 故に、豊かなのだ。
「煽りに煽りましてよ~! 煽りとは即ちブーメラン! わたくしが貴方たちの苦悩をしらぬように、持つ者の苦悩もまた貴方たちには理解できないのでしてよ~!」
『フラスコの落とし仔』たちは一斉に迫る。
 一群。されど、それは生命を共有する者たち。
 ならばこそ、一斉に打撃を与えなければならない。彼女は彼らを煽り、己にひきつけ、『救世主の園』から引き離したのだ。

 あるのは文明の残滓。
 高層ビルの残骸。彼女はそこまで『フラスコの落とし仔』たちをひきつけ、手にした『ネメジスト』の砲口を向ける。
「その不理解、不寛容ではなく……その憎悪と怨恨をぶっ壊してさしあげますわ!」
 光背の如き光、その環が煌めきユーベルコードが発現する。

 放たれるブレイクブラストの一撃は、『フラスコの落とし仔』たちを巻き込みながら周囲の文明の残滓の崩落へと導く。
「――!!」
 咆哮が轟く。
 瓦礫が、ビームの光条が、全てが『フラスコの落とし仔』たちへと降り注ぐ。
 憎悪も怨恨も受け止められぬのならば、

 壊すしかないのだ。
「そういうところだけは一緒ですけれど……これもまた逆進性というやつですわね!」
 至る結果は同じであっても、たどる道が違う。
 それを示すようにメサイアは崩落する瓦礫の音と共に光背を輝かせながら、青空へと飛翔するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
属性:風

陰海月に乗りましてー。空からですねー。これで届きませんでしょう?
望まれない、ですか。半分だけわかりますよ、私は妹と違って赤子の頃に殺されかけましたから。

さて、UCを発動。これは多数を巻き込む雷と風の矢ですからねー。
嵐みたいなものですよ、本当に。
そしてそのまま、骸の海へと帰りなさい。その生命は、私が覚えていますから。

おや、どうしました、陰海月?
(陰海月を撫で撫で)


陰海月「……。ぷきゅきゅきゅ!」
聞こえた。考えて…ぼくはおじーちゃんに会えてよかったから!と鳴いた。



 荒廃した世界アポカリプスヘルの青空に巨大なクラゲが浮いている。
 ふよふよとした飛び方だ。
 けれど、それが非常識なものであると『フラスコの落とし仔』たる『各実験用消耗品』たちは理解できない。
 自分たちの赤錆の浮いた体と大差ないからである。
 彼らにとって己たちの生命は不要なものだ。
 失敗作と断じられ、遺棄された生命。
 存在する価値のない生命。そう吐き捨てられてきた。ならば、今此処にある自分たちに意味はない。

 意味のないものは破壊を齎すしかない。
 生きていてはならぬと言われた生命であるからこそ、今ある生命を無為に壊すことができる。
「――!!」
 その絶望と憎悪、そして怨恨に満ちた怒号が響き渡る。
 彼らは群。
 生命力を共有している複数にしてひとかたまりの悪意。故に彼らは滅びない。一体を倒した所で、共有された生命はめぐる。
 再び体は動き出す。
 意味無き生命と言われた己たちは、望まれていないのだ。誰にも、世界にも。
「望まれない、ですか。半分だけわかりますよ」
 巨大なクラゲに乗る馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は昔を懐かしむようにうなずいた。
 自身は赤子の頃に殺されかけた。

 その事実が自分の心を苛むことがなかったわけではないだろう。
 けれど、今でも己は此処に『在る』のだ。
 自分一人では存在できないけれど、それでも束ねられた悪霊たちは互いを補完する。
 その瞳が『フラスコの落とし仔』たちを見下ろす。
 憐れ、とは思わない。
 その憎悪と怨恨だけが彼らの拠り所であるからだ。

 だが、世界はそれを受け止めきれない。
 望まれた生命ではなかったと捨てられた生命。それに対する贖罪を未だ人は持ち得ぬからだ。
「そのまま骸の海へと帰りなさい」
 満ちるユーベルコードの輝き。
 それにあるのは雷と風。
 生み出されるのは嵐の如き矢。全てを追尾し、生命力を吸収する所その矢である。放たれたそれらが、空より飛来し『フラスコの落とし仔』たちを貫いていく。

 吸収される生命を手にとるように『疾き者』は頷く。
 望まれず、望めず。
 そんな生命を慰撫することなどできようはずもない。だからこそ、『疾き者』は呟く。
「その生命は、私が覚えていますから」
 なんの慰めにもならないことは百も承知だ。だが、言わずにはおれない。言葉にせずにはいられないのだ。

 彼の言葉を、つぶやき、空に消えるような音を、『陰海月』は捉えるだろう。
「……ぷきゅぷきゅきゅ!」
 その言葉は彼にしか伝わらない言葉だった。
 ゆっくりと頭を撫でるようにそっと『疾き者』は笑むだろう。
 わかっていることだ。
 彼にも理解していることなのだろう。

 生命とはなんなのか。
 めぐり合わせとはどういうものなのか。
 意義も思惑も、何もかもないのだとしても。彼らと己たちをわかつのは『今』と『過去』ではないことを。

 生命はきっと出会うのだ。
『陰海月』が鳴く。
 出会えてよかったと。
 力強く、けれど、たしかに。それならば、と束ねられし四悪霊たちは頷く。ただ、それだけでよかったのだ。
『フラスコの落とし仔』たちにもまた、そんな存在がいたのならば。
 出会えていたのならば、きっと『今』とは違う『未来』もあったのかもしれない。

 そんな詮無きことを嵐の如く降り注ぐ雷風の矢の最中に『疾き者』は思うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

おとむらい おとむらい
汝等もまた、我楽多なれば

残像陽動フェイント迷彩忍び足でゆるゆると接敵

射程に入り次第念動怪力雷属性衝撃波UC
フェイント二回攻撃を交え範囲ごと薙ぎ払う
追撃マヒ捕縛目潰し吹き飛ばし
合間に雷を纏った大量のすてぜにでなぎ払う

敵の攻撃を落ち着いて見切り
残像陽動フェイント迷彩忍び足等で躱し
さもなくば念動怪力衝撃波オーラ防御等で受け流す

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

えいえん ありえない
怨みつらみ哀しみ憎しみ
いつか おわる
必ず終焉の刻至れり

めざめ ねむり
我等時告鳥、いざ汝等を連れて行く
おいで いこう
鎮め沈め骸の海へ

さようなら
さようなら
御然らば
御然らば



 人の営みを破壊する。
 それが『フラスコの落とし仔』たちの目的であった。
 意義などない。思惑もない。
 ただ壊したいと思っただけなのだ。彼らにとって、拠点『救世主の園』の人々の営みは、己たちの生命の礎にあるものである。
 誇らしいとは思わない。
 ただ不要とされ、失敗とされ、捨てられた生命である己達の中に憎悪と怨恨だけが渦巻いている。
「――!!」
 怒号が轟く。
 豊かさなど許さない。清浄などもってのほか。
 彼らにとって、それらは全てが己たちの尊厳をいたく傷つけるものであったからだ。

「おとむらい おとむらい。汝らもまた、我楽多なれば」
 小さな言葉が響く。
 それは一群たる『各実験用消耗品』たちにとって不可解な存在であった。
 六腕の少女。
 御堂・伽藍(がらんどう・f33020)は速さとは無縁のような、ゆっくりとした歩みで持って残像を作り出し、彼らに近づいていた。
 放たれる爆発やコードの尽くが彼女を捕らえられない。

 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 大炎黒拆若土鳴伏(シカバネニヤドルヤッツノカミナリ)。それは、がらんどうたる己の躯体から放たれる八つの紫電。
 剣と形を相成せば、迸るように戦場を駆け抜け、『フラスコの落とし仔』たちを切り裂く。
 さらに彼女の周囲から飛び交うは貨幣。
 投げつけられたそれらは、雷を纏う。さらに戦場は紫電に満ちていく。

「八柱の死神、我等の守護に降り臨む!やくもたつ、いずも…」
 地面に描かれるは巨大な九曜紋。
 満ちる紫電が伽藍の躯体に満ちていく。
「えいえん ありえない 怨みつらみ哀しみ憎しみ いつか おわる 必ず終焉の刻至れり」
 その言葉は謳うようであった。
 彼女の言葉の通りであったことだろう。

 どれほどの激烈な感情も時だけが解決してくれる。
 癒やしてくれる。
 けれど、『フラスコの落とし仔』たちには、それがない。過去の化身、オブリビオンとして存在する以上あるのは停滞のみ。
 ならばこそ、伽藍は己こそが彼らの終焉足り得ると知るだろう。

 満ちていく紫電。
「めざめ ねむり 我等時告鳥、いざ汝等を連れて行く」
 手をのばす。
 けれど、それを取る者はいない。そう、憎悪と怨恨に満ちる瞳には、その手すら映ることはない。
 そんな哀しみだけが眼を曇らせていくのだ。
 燃え上がる憎悪は、耳鳴りのように言葉を妨げる。
 あまねく全てを救う六腕さえも取れぬ者たちがいる。だからこそ、伽藍は一歩を前に進める。

 大地に刻まれた九曜紋が煌めく。満ちた紫電が彼女の躯体より放たれた紫電の剣を受けて『フラスコの落とし仔』たちを取り囲む。
「おいで いこう 鎮め沈め骸の海へ」
 その言葉と共に立ち上るは大地より天に走る雷。
 オブリビオンたちを打ち砕く一撃は天にこそ救いがあることをしめすようであった。

「さようなら さようなら 御然らば 御然らば」
 告げる言葉は優しい別れ。
 終わりはもとより訪れている。目の前に立つ自身がその象徴であると言うように伽藍は、その伏せた瞳のまま救われず、望まれず、望まなかった生命たちを送るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
私にとっては兄姉にあたる存在ですか。
その境遇に、思うところがないとは言いませんが…
人に迷惑をかけるようなら、それを止めるのも妹の務め。
人を襲うというのなら、全力で潰します。

とりあえず、自身の周囲に念動力の防壁を張り巡らせ、
敵の攻撃を逸らしたり弾き返したりして防御しつつ前進します。
で、程よく敵を巻き込めそうなとこまで来たら、
【念動プレス】で纏めて潰しちゃいましょう。
全員が生命力を共有してるということですが。
潰し続けていれば、そのうち生命力も尽きることでしょう。
逆に、潰れてもすぐには死ねないと思うと、少々気の毒ですね。

…まぁ、好きなだけ恨んで下さい。
恨み言なら、そのうち骸の海で聞いてあげますよ。



『フラスコの落とし仔』たちは全てがフラスコチャイルドのオブリビオンである。
 彼らの憎悪と怨恨は尽きることはない。
 ただ、それだけで体を保たせているからだ。
 渦巻く憎悪は、『今』を生きる者たちへと向けられ猛り狂う。
 赤錆の浮いた躯体を突き動かすのは怨恨。
 それらでもって彼らは破壊する。
 何を、とは問うまい。

 彼らが破壊せんとしているのは、希望だ。
『救世主の園』は荒廃したアポカリプスヘルにおいて希望そのものだ。清浄な空気に肥沃な大地。
 どれもが人々の求めてやまぬものであった。 
 だから壊す。
「――!!」
 怒号の如き咆哮が轟き、彼らは荒野を疾駆する。
 不格好に。『各実験用消耗品』と呼ばれた生命。どれもが失敗だと言われ、捨てられてきた生命だ。
 希望というもののために犠牲になった生命だ。

 だからこそ、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は見つめる。
 青色の髪をなびかせながら、紫煙くゆらせる。手にした煙草は未だ火が付いている。吐き出した息は白く青空に昇って溶けて消える。
 思うところがないとは言わない。
 彼女にとってもまた『フラスコの落とし仔』たちは兄姉に当たるものたちだ。
「人に迷惑をかけるようなら、それを止めるのも妹の務め。人を襲うというのなら、全力で潰します」

 迫る『フラスコの落とし仔』たちが念動力の防壁にぶち当たりひしゃげる。けれど、その武装化された腕や足を振るう。
 みっともなく、そして無様だった。無理矢理に繋げられた機械はもう赤錆に蝕まれている。
 叫ぶ声すら意味をもっているように思えない。
「……」
 エリーは、その姿から目をそらさない。
 目をそらすことは許されないと思っただろう。念動力は、彼らの攻撃を全て受け止める。
 ゆっくりと彼女は再び煙草を口元にあて、吸い込む。
 自分と彼らとを分かつものは一体なんであったのだろうか。

 彼らは一群である。
 全てが生命力を共有しているがゆえに、単体を倒すことに意味はない。たちどころに傷は言えてしまうだろう。
 死ぬに死ねない。
 煌めくユーベルコードが、擬似重力となって彼らを押しつぶす。
 面での制圧。それがこの『フラスコの落とし仔』たちを攻略する方策の一つである。生命力を共有するのならば、多くを巻き込みながら押し潰し続ければ、そのうち生命力が尽きるのだ。
「……まぁ、好きなだけ恨んでください」
 エリーは静かに言う。

 フラスコチャイルドの末妹として。
 その言葉を告げることしかできない。哀れみは不要であろう。けれど、それでも気の毒だと思ったのだ。
 念動プレス(サイ・プレス)によって彼らに掛けられている重力は凄まじいものである。機械化された躯体であっても押しつぶさてしまう。

 そして、共有した生命であるというのならば、全ての『フラスコの落とし仔』たちの生命が尽きない限り死ねないのである。
 痛みだけが彼らを苛むだろう。
「――!!」
 言葉にならぬ咆哮ばかりがエリーの耳を撃つ。
「恨み言なら、そのうち骸の海で聞いてあげますよ」
『今』もまた過去になるというのならば、自分自身もまた骸の海へと至るだろう。

 その時は末妹として、彼らの言葉に耳を傾けようと思うのだ。
 だが、今ではないことだけは確かだ。
 エリーは、煌めくユーベルコードを宿す瞳で重力に潰され続ける兄姉たちを、その生命が尽きるまで見つめ続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

囁石灯・銀刃郎
まーアレよ。アレ。
あー、そう…運が悪かったのよ、貴方達。
人生って、なんか、ままならないものだし?
しゃーないしゃーない。

……って、それじゃ納得しないよねぇ

カタナに|蒼気《覇気》を通して、【刳風抜刀】
ひのふのみの…多い!!
刀身を鞘から引き抜いて、|切断。《なぎ払い一閃》
蒼気を帯びた飛ぶ斬撃で|広範囲切断。《撫で斬る》
救いを求める手も、破壊の衝動も、|切断する。《纏めてぶった斬る》

早業で|二の太刀《斬り返し》、|三の太刀《斬り落とし》と、|切断してく《なんもかんも斬る》

現状に憤ったり、世の中恨んだりするのも、人間らしいじゃない、貴方達。
だからまぁ、せめて人生を惜しんで死になさい。



 囁石灯・銀刃郎(ミュータントファントム・f24401)は思う。
 目の前に迫る救いを求める声ならぬ声ではなく、憎悪と怨恨に満ちた怒号放つ『各実験用消耗品』たちの赤錆浮いた躯体を前にして、思うのだ。
 彼らは、望まれず、望まずの生命。
 ただ生きていることさえ肯定されなかった生命だ。

 人は希望を求める。
 希望の礎となるために生み出された生命は、しかして使い捨てられる。
 屍は、この世界に満ちていく。
『フラスコの落とし仔』とは、彼らのことである。その屍の山は、彼らの生命の残滓であったことだろう。
「――!!」
 だからこそ、声無き声で咆哮するのだ。
 人の求めるものも、人がもたらすものも、何もかも破壊せんとただ、邁進する。

「まーアレよ。アレ。あー、そう……運が悪かったのよ、貴方達。人生って、なんか、ままならないものだし?」
 しゃーない、と彼女は頭を振る。
 その姿はどこか諦観に満ちていたのかも知れない。考えても無駄であると断じたのかもしれない。どうしようもないことに世界は満ちているのだ。
 どんなにあがいた所で人一人の力は、世界の流れに押し流されて消えていくしかないのだ。

 だが、『フラスコの落とし仔』たちの咆哮を聞いて彼女は、首肯する。
「……って、それじゃ納得できないよねぇ」
 水銀の刀身が蒼いオーラを放ちながら閃く。
 体の中のナノマシンが活性化され、デッドマンたる彼女の中に凄まじい電流が生まれていく。
「――!!」
「ひのふのみの……多い!!」
 斬撃が無数に空を飛ぶ。
 刳風抜刀(クレカゼバットウ)は一秒にも満たぬ間隙に煌めくようにして放たれていた。
 その斬撃の尽くが『フラスコの落とし仔』たちを切り裂いていた。
 刀身を収めた動きすら認識されることはなかっただろう。

 一閃。
 容易く切断された赤錆浮く躯体。撫でるように振るわれた剣閃が広範囲に及び、明らかに刀の間合いの外へと及ぶ。
 伸ばされる手があった。
 きっとそれは、救いを求めるものであったのかもしれない。だが、彼女は知っている。それは、救いを求めていない。
 あるのは破壊の意志だけだ。
 破壊して、破壊して、破壊して、ただそのためだけに彼らは骸の海から舞い戻ったのだ。復習するために。
 ただそれだけのために。

「その咆哮。怒りに満ちている。憎悪と言ってもいい。恨みつらみだけじゃあ、そこまで衝動的になれないものだよ」
 蒼いオーラ纏う刀身が煌めく度に、『フラスコの落とし仔』たちの躯体を切り裂いていく。
 兎にも角にも全て斬り捨てる。
 それが銀刃郎に出来ることであった。『フラスコの落とし仔』たちが破壊だけを求めているのならば、それら全てを断ち切ることが彼女のすべきことであった。

「現状に憤ったり、世の中恨んだりするのも」
 嵐のように斬撃が飛ぶ。
 誰も見ることなどできなかった。残されるのは斬撃を放ったという結果のみ。恐るべき速度であった。
「人間らしいじゃない、貴方達」
 彼女は言う。その怒りも憎悪も人間そのものだ。皮肉なことであるが。
 望まれなかった生命であっても、人であることからは逃れられない。人とは、激情を持つ者である。
 故に、彼らの怒号はまさしく人のそれであったのだ。

 人を憎み、人を怨み、破壊だけを求めるが故に彼らを人そのものと彼女は見なす。
「だからまか、せめて人生を惜しんで死になさい」
 できることは唯一つ。
 斬る。
 走る剣閃は、暇を与えるだろう。僅かな時間。骸の海から滲み出たオブリビオンであったとしても、それが仮初の生命だったのだとしても。
 惜しむのならば、それこそが人である証左だと彼女は蒼い剣閃の先に踏み出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「貴方達の最後の尊厳を踏み潰すのは私です。だから…此の世界ではなく、私を恨んで戻っていらっしゃい」

UC「出前一丁・弐」
ケータリングカー操縦し上空から地上へマッハ9で吶喊
地面すれすれで水平飛行に移りダウンバースト起こす
そのまま敵を撥ね飛ばしつつまた上空へ移動し地上へダイブしてダウンバーストを繰り返す
進路選択や敵の攻撃回避は第六感で行う

「存在する以上、願いを持つのは当たり前です。でも、相反する願いは叶いません。貴方達の願いが破壊しかないのなら、私が其の願いを叩き潰します。他の願いを得る迄、何度でも。だから、恨むなら世界でなく私を。そして、何時かは他の願いを得て戻られますよう」
鎮魂歌を歌い送る



『フラスコの落とし仔』たちの中にあるのは『今』への憎悪と怨恨。
 破壊しなければならない。
 己たちの生命は、そのためにあるのだ。
 望まれず、望まずの生命。
 それが唯一望んだのが破壊だ。
「貴方達の最後の尊厳を踏み潰すのは私です」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、そう言う。

 憎悪と怨恨の怒号を前にしてそういったのだ。
「だから……此の世界ではなく、私を恨んで戻っていらっしゃい」
 自前のケータリングカーに搭載されたターボエンジンが唸り声を上げるように荒野に響き渡る。
 出前一丁・弐(デマエイッチョウ・ニ)。
 こんなこともあろうかとシャシーと搭載エンジンは改造済みだ。
 彼女がこれに乗るのは戦場にデリバリーをするためだ。
 一体何を届けるというのだろうか。憎悪と怨恨に満ちた『フラスコの落とし仔』たちの咆哮ばかりが戦場に満ちる。

 走るケータリングカーが一群に突貫する。地面スレスレに飛ぶようにしつつ圧倒的な吹き下ろす風とともに彼らに激突する。
 跳ね飛ばす。
 赤錆の浮いた体が宙に舞い上がるようにして吹き飛ばされていく。
 さらにまた飛び立つ。
 上空へ。
 何度も何度も繰り返すのだ。

 彼らの生命は共有されている。
 一群でひとかたまり。彼らは生命力が尽きるまで倒れない。一体一体を相手取っていたとしても、全ての生命が枯れ果てるまで彼らは一群のままだ。
 最後まで全てを相手にしなければならない。
「――!!」
『各実験用消耗品』と呼ばれた彼らは、己の躯体を壊しながら突き進む。
 迫るケータリングカーに突撃する。
 バンパーがひしゃげ、弾け飛ぶ。
 車体を覆う装甲がひしゃげ、突き立てられる赤錆の浮いた機械。

 彼らは滅びを否定しない。
 ただ破壊したいだけなのだ。ただ生きているだけでいいという肯定すら得られなかった己たちの生命の発露を世界に刻み込む。
 その手段が破壊なのだ。
「存在する以上、願いを持つのは当たり前です」
 だが、桜花にとって、それは相反した願いだった。

 叶うことはない。
「貴方達の願いが破壊しかないのなら、私が其の願いを叩き潰します。他の願いを得る迄、何度でも」
 激突し、ひしゃげる音が響く。
 握るハンドルに生々しい感触が伝わるだろう。それでも止まらないのだ。敵は、『フラスコの落とし仔』たちは決して止まらない。
 己たちの共有した生命力が尽きるその時まで、破壊への願いだけで突き進むのだ。

「だから、恨むなら世界でなく私を」
 その言葉は桜花の願いでもあったことだろう。
 桜の精はオブリビオンである影朧に転生を与える。彼女は他世界のオブリビオンにもまた転生を与えたいと思っているのだろう。
 それが彼女の願い。

「何時かは、他の願いを得て戻られますよう」
 ありえないことなのかもしれない。
 憎悪は消えない。
 怨恨は晴れない。
 どんなに言葉を紡いでも消えないのかも知れない。けれど、桜花は信じる。自分が謳う鎮魂歌は、送るためのものだ。
 その傷ついた心を慰撫するために彼女は謳う。

 一度で足りぬのなら二度。
 二度でもだめなら三度。
 彼女は諦めない。己の願いと他者の願いがぶつかるのならば、己の信じる道に殉じるのだ。
 理解し難きを理解することこそが、他者との間に横たわる決定的な溝を埋める手段なのだから。
 歌が響く。
 荒野に、破壊の怒号ではなく。
 魂を送り、鎮める歌がとめどなく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
……オブリビオンだ。
壊せ、ディスポーザブル!

ディスポーザブル01操縦、前進。
持ちうる武装で撃ち、なぎ払い、穿ち、裂き、破壊し
爆破され、繋げられ、声を聞き、吼える。

俺になれだと…ふざけるな!戦え!!壊せ!!!
同情なんていらない!哀れみなんていらない!救いなんていらない!
破壊を望むなら一分を惜しめ!眼の前の敵を壊せ!!
此処にいる敵を壊せ!ただそれだけを考えろ!!戦え!壊せ!破壊しろ!|自分《敵》は此処だ!!!此処にいる!!!

繋がりから強引に呪詛を送り込み|【闘争心】《怨念》を煽り
【継戦能力】戦闘を継続する01の元へ敵を集め
『終の崩壊』解体する

|––––––––––!!!《壊せぇええええええ!!!》



 鋼鉄の巨人が戦場に疾走る。
 破壊の望みと、破壊の意志が荒廃した世界に響き渡る。
『フラスコの落とし仔』たちは、その願いを憎悪と怨恨に満たす。
 ならば、猟兵、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己の願いなどなかったのだろう。あるのは意志だけだ。
 過去の化身。
 オブリビオンに対する破壊の意志。
 ただそれだけで鋼鉄の巨人『ディスポーザブル01』を駆る。

 鋼鉄の体は、赤錆の浮いた躯体である『各実験用消耗品』たちを蹴散らす。
 薙ぎ払い、穿ち、裂き、破壊し、爆破され、繋げられる。
 救いを求める声が、破壊しかない彼女の心のなかに入り込んでくる。
 だからこそ、吼えるのだ。
「壊せ、『ディスポーザブル』!」
 叩き潰す。 
 だが、『フラスコの落とし仔』たちは、一群で生命を共有している。単体ずつを倒したとしても、共有された生命力はめぐり、一群の数を減らすことなく鋼鉄の巨人に群がるのだ。
 コードが『ディスポーザブル』の機体に繋げられる。

 流れ込む声が聞こえる。
「――!!」
 憎悪と怨恨が流れ込んでくる。
 己ようになれと叫ぶ声が響く。だが、小枝子は己の頭を振る。コンソールに叩きつけられる額。
「……ふざけるな! 戦え!! 壊せ!!!」
 叫びが迸る。
 同情など要らないのだ。
 哀れみなどいるはずもない。
 救いなどもってのほかである。
 己と同じ破壊することしかできない生命なのならば、彼女は叫ぶのだ。己の感情は、感傷に浸るためにあるのではない。

 そう。
「破壊を望むなら一分を惜しめ! 目の前の敵を壊せ!! 此処にいる敵を壊せ! ただそれだけを考えろ!!」
 鋼鉄の腕が振るわれる。
 敵が砕ける。壊せない。まだ壊せない。
 叫ぶ心がある。
 戦え、と。壊せ、と。

「|自分《敵》は此処だ!!! 此処にいる!!!」
 繋がれたケーブルより流し込むは呪詛。
 破壊に囚われた化身は、唯それだけのために存在している。倫理観などない。破壊の前に倫理など無意味にして、無意義。
 壊し、壊され、壊す。
 ただ、それだけのために戦場を闊歩する。
 憎悪も怨恨も、全てが怨念に量がされる。

 煌めくユーベルコードの輝きが、鋼鉄の巨人の一つ目のアイセンサーをきらめかせる。
「――!!!」
 鋼鉄の巨体から戦塵霊物質が崩壊霊物質となって放たれる。
 己の周囲にあった全てのオブリビオンを破壊する、癒えることのない崩壊が『フラスコの落とし仔』たちに満ちる。
 壊れる。
 壊れていく。
 その憎悪も、怨恨も壊す。

 叫びは声にならぬ声であった。
 怒号の如き響きでもあったことだろう。
 ただただ、終の崩壊(ディースカスラ)が戦場に満ちていく。

 その言葉ならぬ声の意味を知るのは、この戦場において小枝子と、彼女と繋がった『フラスコの落とし仔』たちだけであった。
 他者には耳をつく音としてしか認識できなかったことだろう。
 だが、それでいい。
 破壊の化身は、それしかできない。
 破壊を解することのできぬ者には届かなくていい。

 これだけが己達に許された叫びなのだというように小枝子は『ディスポーザブル』のコクピットの中であらゆる感情すら破壊する叫びを上げ続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

え? シリアス?
久しぶりのチョコパイたゆん祭りなのに?

秋のお祭りのメインイベントが……。
って、ほんとにそんなことやってる場合じゃなさそうだね。

FC会員としては、推しの願いは叶えるもの!
いや、叶えてこそFC会員というもの!
ナイアルテさんは、泣きもいいけど笑顔が可愛いんだからね!

と、冗談はここまでにして……。

これはさせちゃいけないことだしね。
望んでも、望まなくても、ほんとなら堕ちてほしくないところだけど、
こうなっちゃったら、せめて……だよね。

落とし穴……ん、おっけーサージェさん。
せめて土に還ってもらおうかな。

【偽装錬金】で落とし穴を埋めて、しっかり土葬してあげちゃおう。


サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう!
私はクノイチ、胸が大きくてハイ久しぶりの出番で嬉しいです!!
天の声さんもたゆんたゆんな私に飢えて……あっ自前のチョコ肌たゆんパイありましたね?

とかやってる場合じゃないシリアスなナイアルテさんがいました
真面目に行きましょう理緒さん
ここは『出会い頭にいきなり必殺技』とかかますターンです
速やかに、排除しましょう

というわけでいきなり超必殺!
【VR忍術】おっきな落とし穴の術!!!
視認している敵をいっきに落とし穴に落としましょう
理緒さん後よろしくお願いしますー(てへぺろ

おっと理緒さんが優しい
ではクノイチ追加で参ります
【VR忍術】火遁の術!
火葬も大切だと思うんですよ



「お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ、胸が大きくてハイ久しぶりの出番で嬉しいです!!」
 褐色がたゆんたゆんしている。
 荒野に似つかわしいほどにたゆたゆしておったそうである。青空の下に褐色の肌はとても映えるものである。いいぞもっとやれ。
 その褐色のたゆたゆの持ち主であるサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はなんとなくノルマは達成したし、ニーズには応えたと満足げであった。

 だが、しかし。
 しかしである。サージェは未だ目的を達成していないのだ。
 そう、彼女は今シリアスをやるのである。これからシリアスなのである。ノルマ回収はデイリーミッションと同じくらい大切なものである。
 毎日コツコツやるからこそ得られるものがあるのだ。
 ならば、しっかりこなさなければならない。
「明日のデイリーミッションはチョコ肌たゆんパイもらえるんですか!?」
「久しぶりのチョコパイたゆん祭りだね!」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はサージェと共にうなずいていた。

 シリアスなんてやる気はないのである。いや、本当にそんな事やっている場合ではない。彼女たちに迫っているのは『フラスコの落とし仔』たちたる『各実験用消耗品』たち。
 彼らは赤錆の浮いた躯体をもって襲いかかる。
 一群たる生命力を共有しているがために、個々に撃破するのは現実的ではない。
「真面目にいきましょう理緒さん」
「秋のお祭りメインイベントが……って、ほんとうにそんなことやってる場合じゃなさそうだね」
「ええ、ここは『出会い頭にいきなり必殺技』をかますターンです。速やかに、排除しましょう」
 理緒は理緒で、ファンクラブ会員としての責務を果たさねばと燃えていた。

 そう、泣き顔もいいけど笑顔のほうが可愛いのは全国共通であるし、全世界に通じるものである。
 涙より笑顔なのである。
 写真を撮るなら、そんな顔のほうがいい。完全に同意である。しかしながら、理緒は、偶にはそういう顔もいいよねって顔をしていた。げすす。完全に同意である。
「と、冗談はここまでにして……」
 嬉し涙のほうがいいよね。げすす。

 ……。
 完全に置いていかれた気がする。サージェはいきなりの超必殺技を解き放つ。
 専用メモリからコンソールにインストールされたバーチャル忍術がユーベルコードの輝きを受けて放つ。
 この高低差。
 温度差が酷い。ぎゅーんってなる。
「メモリセット! チェックOK! 参ります! VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)! おっきな落とし穴の術!!!」
 彼女のユーベルコードはバーチャル忍術を繰り出す。
 実際にそんな忍術など無くても、あるといったらあるのである。
 放たれるユーベルコードは迫る『フラスコの落とし仔』たちから地面を奪い去った。

 落下する彼らを見下ろしながらサージェは理緒に親指を立てて合図をするのだ。
「理緒さん後よろしくおねがいしますー」
 てへぺろ。何がてへぺろなのか。もっと忍術しろ! 理緒はそう思わないでもなかったが、今はシリアスなのである。
『フラスコの落とし仔』たちは望まれなかった生命である。
 彼ら自身も望んでいない。
 失敗作と断じられることも、ただそのままに生きることもなかった。
 全てが否定されるばかりの生命だったのだ。

 だから、膨れ上がる。
 憎悪が、怨恨が。どこまで。世界すら破壊するほどに満ちていく。
「これはさせちゃいけないことだしね。望んでも、望まなくても、ほんとなら堕ちてほしくないところだけど、こうなっちゃたら、せめて……だよね」
 仕方のないことだと。
 どうしようもないことだと。
 その言葉は、理不尽という刃となって望まれなかった者たちの心を抉るだろう。

 けれど、取り返しはつかないのだ。
 時が逆巻くことがないように。
 どうあがいても、結果として残る過去の化身である彼らは、もうどうにもならない。
 サージェの生み出した落とし穴を理緒は見下ろす。
 えぐられた穴は塞がなければならない。
「構造、複写」
 せめて土に還ればいい。
 生命は全てが土に還る。即ち死である。回帰しないのが生命ならば、過去の化身は今にあってはならぬ存在。

 えぐられた大地の穴に偽装錬金(ギソウレンキン)によって複写された土砂が一瞬で満ちる。
 一群を埋め尽くすほどの大量の土砂。
「おっと理緒さんが優しい」
 火遁の術が地面の中から這い出そうとしていた『フラスコの落とし仔』たちを燃やす。
 生命力は共有されている。
 ならばこそ、彼らは生命の最後の一滴が尽きるまで戦うだろう。

 例え、土葬されようとも。火葬されようとも。
 満ちることのない空虚なる憎悪のままに彼らは破壊を齎す。
 報われぬ生命を前に二人は、せめてオブリビオンとしての死を与えるしかないのだ。

 させてはならぬことがある。
 世界そのものを壊してしまえば、彼らの生命は本当に無意味なものとなってしまう。
 今という礎となった、ということが慰撫ならぬ慰めであったのだとしても。
 残されて、後に続く者たちが、そう思うしかないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
復讐は何も生まないなんて綺麗事だと言う奴は
復讐が何かを生んだ所を実際に見てきたのかね
美しい復讐劇こそ御伽噺の中の話で
現実は泥沼を泥沼で潰しあう地獄の入口だ

だから復讐の連鎖は誰かが断たなきゃならない
そんな時に横から出てくる邪魔者が
無粋な探偵って訳だ

救ってほしいのか
認めてほしいのか
じゃあ俺が受け入れてやるよ
望まぬ生を与えられた者同士仲良くしようぜ

UCを発動
継戦能力にものを言わせ
敵の攻撃を暫く一方的に受けておく
どうせこの程度じゃ死ねない
それで気が済むなら好きなだけ蹂躙したらいい

…この痛みがお前らの痛みなんだな
すまなかった
一気に反撃を開始
俺が謝っても何の意味もないが
せめて痛みを感じる間もなく葬ってやる



 罪を許すことも、許されることも人の権利であるというのならば、復讐もまた人に残された権利である。
 生命は生命で贖わなければならない。
 奪われたものも。
 壊されたものも。
 元に戻ることはない。つけられた傷はふさがったようにみえて、そのふさがった皮膚の下でただれていく。

 二度と同じに戻るものなど世界には何一つないのだ。
 故に、復讐とはそうすることで折り合いをつけるための手段である。そして、何も生み出すことはない。
「それが綺麗事だと言うやつもいるだろう。復讐は何も産まない。だが、復讐が何かを生んだところを実際に見たこともないのだろう」
 そこに美しさはない。
 復讐劇は所詮、フィクションだ。御伽噺だ。それこそ綺麗事だ。

 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は、現実こそ泥沼を泥沼で潰し合う地獄の入り口であると言う。
 綺麗なことなど何一つない。同時に汚泥に塗れただけのものなども何一つない。
 復讐は復讐を生み出す。
 途切れることのない連鎖を生み出す。
「なら、復讐の連鎖は誰かが断たなきゃならない」
 わかるよな、とはとりは己に迫る『各実験用消耗品』たちを見やる。
『フラスコの落とし仔』たち。
 望まれなかった生命。望まなかった生命。
 肯定されず、否定ばかりで終わった生命たち。己はきっと、彼らの道に横入りした邪魔者でしかないのだろう。

「ああ、そうさ。俺は無粋な――」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした『コキュートス』――その氷の大剣が輝く。
 振るわれる赤錆の腕が、はとりの体を切り裂く。
 痛みが走る。これが彼らの痛みか。嘆きか。怒りか。怨みか。

 救ってほしいのか。
 認めてほしいのか。
 どうあってほしいのか。世界は彼らに対してどのような顔を向ければ良いのか。その答えは、はとりにもでない。誰にも出せない。
 けれど、その怨嗟は断ち切らねばならぬことだけは理解している。これが無粋だと理解している。
 だが、彼らが壊そうとしているのは、その怨嗟の環の中にないものたちだ。

 穿たれる。引き裂かれる。叩き伏せられる。
 立ち上がる。血を噴きこぼす。だらりと腕が落ちる。ならば、己だけでも受け入れなければならない。
 望まぬ生を与えられたのがデッドマンであるというのならば、彼らと己は似た者同士であるといえるだろう。
 血を噴き出す口からは、仲良くしようぜ、という言葉はかすれて響くことはなかった。
 どのみち、この程度では死ねない。

 未だに、はとりの胸の奥には衝動が走り続けている。死なないのではない。死ねないのだ。
 どうあっても。
 己の躯体が引き裂かれても気が済むのならば蹂躙すればいい。捨て鉢に成っているのではない。
 身に刻まれた傷は、唯一を除いてふさがっていく。
 本当に痛むのはこころだ。
「――!!」
 怒号が響く。彼らの叫びが、怨みが、憎悪が、身を突き立てる。
「……この痛みがお前らの痛みなんだな。すまなかった」
 その謝罪に意味なんてないことは、はとりが最も分かっていた。第四の殺人『切り裂き城』(キリサキジョウノサツジン)は、いつだって己の心を切り裂いていく。

 体の傷は癒える。
 心だけはそのままだ。大剣『コキュートス』が煌めく。その心身の痛みこそが、はとりを、己が言うところの無粋な――。

「せめてお前らが痛みを感じる間もなく葬ってやる。ああ、言いたいことはわかっているさ」
 薙ぎ払う一閃が『フラスコの落とし仔』たちを巻き込んで叩き返す。
 なにせ、俺は、とはとりは呟く。
 苦み走った顔だった。
 そう、己は。

「俺は探偵だからな――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

んもー
こんなにも青い空の下で
なんてこともあの子たちは思わないんだろうねー
かわいそう!
ほんとうにかわいそう!

●まるくておおきいもの
破滅だって?
死ぬとか壊れるとか消えるとか
再生無き終わり、ですら無い!
キミたちはもうとっくにそういう環からすら外れちゃってるんだよ
そこが…本当にかわいそうだよ

【第六感】に任せた避け勘回避からのー
UC『神罰』で超ビッグにした[ドリルボール]くんで地殻ごど抉る勢いでスーパードーーーンッ!!

キミたちは犠牲でも踏み台でもないさ
でも…うーん…なんというか…
ま、いっか!
ぴゅうっと空に風が吹けば後は消えるだけ
そこだけはボクたちといっしょかもね!



「んもーこんなにも青い空の下で」
 そんなことを何一つ『フラスコの落とし仔』たちは思わないのだろうなとロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は哀れみを持って見つめる。
 それはどうしようもないことだった。
 望まれなかった生命。
 望まなかった生命。
 どちらにしたって待つのは否定でしかなく。否定の先に死があるのならば、その道程の全てを否定されるのと同義。

 故に『フラスコの落とし仔』たちは『今』を否定する。
 否定され、捨てられた生命を礎に『救世主の園』は、豊かな土壌をもって希望となり得る可能性を秘めている。
 ならば、何故己たちには絶望しか宿らなかったのだと『各実験用消耗品』たちは怒号に憎悪と怨恨を満たす。
「――!!」
「かわいそう! ほんとうにかわいそう!」
 破滅とは、死ぬとか壊れるとか消えるとか、再生無き終わりですらないのだ。
 ロニにとってオブリビオンとは、そういう環からすでに外れたモノ達である。
 どうしようもないことだ。

 如何に神性であったとしても、オブリビオンを新たな環に戻すことはできない。
 そこに自身は無力さを感じることはない。
 ロニにとって詮無きことは、論じるに値しないからだ。
 迫る赤錆の浮いた躯体の『フラスコの落とし仔』たちが腕を振るう。まるで救いを求めているように思えたかも知れない。
 けれど、それが求めているのは破壊だけだ。
 破壊。
 あらゆるものを破壊すること。ただそれだけのために彼らはオブリビオンという過去の化身たる体を使う。
「……本当にかわいそうだよ」

 ロニは、その攻撃を交わし瞳をユーベルコードに輝かせる。
「目はいつも二つある。一つはボク自身を見るために。もう一つはキミを見るために」
 掲げるようにした掌の先にあるのは、空を埋め尽くすかの如く巨大化した球体。
 あらゆるものをえぐり取るように掘削回転する球体。
 巨大化したそれを投げ放つ。
 地面ごとえぐり取るように放たれた球体は『フラスコの落とし仔』たちを人のみにしていく。
 神罰(ゴッドパニッシュメント)。

 それはまさに理不尽の極みであったことだろう。
 全てをなかったことにされてしまうかのような一撃。
「キミたちは犠牲でも踏み台でもないさ。でも……うーん……なんというか……」
 歯切れの悪い言葉であったことだろう。
 彼らしからぬ言葉の使い方であった。
 其処に憐憫はない。
 かわいそうだと思いながらも、その瞳に憐憫の情だけは載せてはいない。

 風がロニの頬を撫でる。
「ま、いっか! ぴゅうっと空に風が吹けば後は消えるだけ。そこだけはボクたちといっしょかもね」
 なんでもないことのようにロニは頷く。
 どうしようもないことばかりの世界である。
 神性であっても、どうしようもないことの連続だ。力を行使しても時は逆巻くことはない。
 すべての悲劇は無くなることはない。
 悲劇があれば喜劇がある。
 その理そのものすら破壊できなのであれば、それはやはり詮無きことなのだ。

 風に吹かれるままにロニは唇を尖らせる。
 いつかの誰かがそうしたように、なんてことないさ、と呟くように『フラスコの落とし仔』たちの憎悪と怨恨をロニは見下ろすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・アストロロジー
●M2の記憶
向けられた失望の目を思い出す
あの混乱の時代に信教で団結する人々に待望され
貴重なリソースを惜しげもなく消費して
――完成しなかった、失敗作

検体として残されていたM2にやがて下されたのは、実戦投入されたM5達を率いて叛逆したM4――その|敗残兵《妹達》を極北の地にて追い詰め、処理すること
人類の裏切者を――|フラスコチャイルド《わたし》を憎悪する兵士達の、援けになること

……こんなこと、終わらせないと

●鉄錆の味
わたしは戦闘型では無いですが……方法はあります

精神感応によるネットワーク展開――
フラスコの落とし仔達の脳内を走査
……攻撃、開始します

どんなに強い生物でも、それを統制する脳がなければ生きてはいない
接続した落とし仔達の脳に干渉し、|破壊《クラッキング》を仕掛けます
脳が焼き切れる感覚に悶え、狂いなさい

……そう、あなたはわたし
だけど、わたしは……ごめんね
わたしはまだ、わたしでいたい

配線でつながった落とし仔に這い寄って
口移しでキャンディーを一粒

少しだけ休んで
元気が出たら、また進まなきゃ……



 それは記憶を想起させる光景であったことだろう。
 赤錆の浮いた躯体。
『各実験用消耗品』と呼ばれた『フラスコの落とし仔』たち。
 彼らは一群で生命力を共有された存在。
 誰もが倒れない。
 倒れる時は、共有された生命が尽きた時だけである。最後の一滴になるまで彼らは動き続ける。

 何のために、など言うまでもない。
 破壊のためだ。
 ただ、破壊するためだけに彼らは進む。爆発が満ちていく。荒野という戦場に、破壊に突き進む怨恨と憎悪だけが歩みを進めることを許されているかのように、彼らは存在していた。

 その光景にリア・アストロロジー(良き報せ・f35069)は己の記憶を刺激される。
 あの失望の目を思い出す。
 待望されたものではなかったという視線。
 世界は荒廃していた。
 突如として現れた黒き竜巻にあらゆる文明が粉砕され、あらゆるものが喪われていく時代にあって、彼女は生み出された。

 生きるために必要なものも。
 存続するために得難きものも。
 あらゆるものをなげうって――完成しなかった、失敗作としての己。
 自分が何者であるのかなど考える暇などなかったのかもしれない。命じられたのは、同胞を殺すこと。
 彼らの言葉でいうのならば、処理するということ。
 極北の冷たさをも思い出す。

 皮膚がじりじりと痛みを知らせる。
 これは幻痛だ。『今』の自分には得られることのない痛みであると理解している。
「人類の裏切り者を――|フラスコチャイルド《わたし》を憎悪する兵士たちの、授けになること」
 つぶやいた言葉は青空に溶けて消えていく。

 迫る赤錆の躯体は、爆発とコードでもって己に迫る。
 リアは、吐息のように声を漏らす。
 何度も、何度も、何度も。
 どれだけ走っても、逃れても、進んでも、過去は己の影法師。どうあっても己の足元に存在している。
 希望という光が見える度に、過去もまた色濃くなっていく。
 どうしようもないことだ。
 けれど。
「……こんなこと、終わらせないと」

 リアは意志をもって、其の瞳を輝かせる。
 ユーベルコードの輝きは、 暁を残して(アカツキヲノコシテ)いる。
 未だ夜の帳が下りるのには遠く。
 終わりというには、あまりにも遠路。故に彼女は己を中心に精神感応によるネットワークを構築していく。

 疾走るネットワークはオブリビオンである『フラスコの落とし仔』たちに接続され、その脳へと繋がる。
 どんなに強い生物でも、それを統制する脳がなければ生きてはいけない。
 接続した『フラスコの落とし仔』たちの脳に干渉する。
 破壊。
 破壊ばかりだ。
 壊すことしかない。ただそれだけのために彼らは存在している。疑いもしない。己たちの中に、憎悪と怨恨しかないことに疑問を抱かずにいる。

 もしも、疑問を抱いたのならば、彼らは存在できないだろう。
 脳が焼ききれる感覚が走る。
 悶えるように、赤錆の躯体が跳ねる。狂うように頭を振る。
 これが痛みであるのかと理解する暇もなかった。理解できたのは、これが|破壊《クラッキング》であるということだけだった。
「――!!」
 叫ぶことができたのは、怒号だけだった。

 哀しみも、涙もない。
 あるのは憎悪と怨恨。
「……そう、あなたはわたし。だけど、わたしは……ごめんね」
 繋がるネットワークを介してリアは瞳を伏せる。
 全ての『フラスコの落とし仔』たちは生命を共有している。一群の持つ生命力の一滴が消えるまで彼らの躯体は止まらない。

 だから、リアは彼らに歩み寄る。
 悶えるように大地に這う彼らに膝をついて、その赤錆の浮いた頬を両手で包み込むのだ。
「おなじにはなれない。あなたたちの中にある長すぎる夜に、わたしはよりそうことはできない」
 リアは、その手にハート型のキャンディを取り口に含む。
 短いメッセージの刻まれたそれは、誰かの癒やしのためにあるもの。口づけのように送られたそれは、メッセージと共に『フラスコの落とし仔』たちの中に溶けていくだろう。

 リアは、その甘さの残滓を舌に感じながら笑むことも、涙することもしなかった。
 それをしたらいけないと理解していたからだ。
「わたしはまだ、わたしでいたい」
 赤錆の浮いた躯体をリアは撫でる。
 錆の欠片は、彼らが生きていた証であろう。掌に残る感触を覚え、彼女は立ち上がる。

 もうそこには『フラスコの落とし仔』たちの姿はない。
 ネットワークにあるのは自分だけだ。
 もう誰も居ない。
 残るのは、唯一人。
「少しだけ休んで」
 また憎しみと恨みにとらわれてしまうかもしれないけれど、と彼女は瞳を伏せ、また目を見開く。
 元気が出たら、と。
 また進まなければならない。

 自分が自分でいるために、進まぬという選択肢は一つもないのだ。ならばこそ、彼女は意志煌めく瞳と共に前を向く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『🌗アリシア・ホワイトバード』

POW   :    ハッキング・ザ・ブルースカイ
【自身の構築したスカイネットプログラム】から、対象の【通信網の破壊とオブリビオンの通信網の構築】という願いを叶える【ハッキングアルゴリズム】を創造する。[ハッキングアルゴリズム]をうまく使わないと願いは叶わない。
SPD   :    崩壊プロンプト
【強毒電子ウイルス】を籠めた【空間データの書き換え】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【空間認識力と全ての意思疎通手段】のみを攻撃する。
WIZ   :    ストームオーダー
【人類を滅ぼしたい】という願いを【自身のネットワークを通じてオブリビオン】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。

イラスト:kb

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラブリー・ラビットクローです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 別に理解できなかったわけではない。
 平和を望むこと。 
 清浄なるを求めること。
 豊かであることに邁進すること。
 どれもが生命として生まれたのならば、当然のように手をのばすことであったからだ。

 けれど『フラスコの落とし仔』である『アリシア・ホワイトバード』は、それすら与えられたなかったのだ。
 手をのばすことすら否定された。
 あらゆるものを取り上げられたのだ。
 懊悩することも。希望することも。
 何もかも彼女は取り上げられていたのだ。だから壊す。
 
 当然にあることを否定されたことを彼女は忘れない。
「救いなんていらないのです。わたしは、わたしのまま、世界を破壊する。『デミウルゴス』がそうであったように」
 吹き荒れる嵐のようなユーベルコード。
 煌めく輝きは、三対の翼によってさらに輝きを増していく。

「誰かに理解されたいとも思わないのです。わたしは、わたしのまま、世界をオブリビオンの元に統一する。『プレジデント』がそうであったように」
 広がっていくネットワーク。
 強靭な体は何者にも傷つけられることはない。不可視の力場が働くように『アリシア・ホワイトバード』の周囲に渦巻いていく。

「だから、壊すのです。徹底的に壊すのです。人が絆いだものを。尽くを。わたしは、わたしのまま、埋め尽くして停滞させるのです。『マザー・コンピューター』がそうであったように」
『無限に増殖していく戦闘機械』。
 それは止めようがないものであった。
 荒野に在りて『救世主の園』を埋め尽くさんと次々と広がっていく。襲いかかる鋼鉄は、あらゆる生命を葬りさるだろう。

 猟兵たちは対峙する。
 超攻撃力と攻撃を受け付けぬ防御力。そして、戦場を埋め尽くす『無限に増殖する戦闘機械』。
 無敵と呼ぶにふさわしい。
 だが、その躰はユーベルコードを使う度に自壊していく。
 耐えきれないのだ。
 世界を破壊するということは、世界の一部である己すらも破壊するということ。

 だからなんだというのだ。
「壊すのです。全部。わたしたちの生命がなかったことにされたのなら、わたしたちを礎にしたものもなかったことにならなければならない。だから、壊すのです」
 満ちるユーベルコード。
 自壊など彼女は恐れていない。
 壊す。壊す。壊す。

 その瞳は輝き続けている。
 人の生み出したもの全てに憎悪と怨恨を向ける|『フラスコの落とし仔』《デミウルゴス・エコー》は、そのいびつな音を世界に響かせる――。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月、危ないので影に退避しなさい。
そうしてUC(防御力)を発動。

ええ、自壊する。なれば、ここは紡ぐ戦いですよねー。猟兵の基本でもありますね。
ですから、ここは耐えていきましょう。大丈夫ですよ、これも役目の一つなんですからー。

紡いでいって繋げる。それは壊すとは反対のことですからねー。
…なかったことにされたのは、憐れみますけれど。今を生きて未来へ繋ぐ人たちのために、『私たち』はここにいるのです。


陰海月、おとなしく影に入る。ぼくが怪我したら、おじーちゃんたちと霹靂が悲しむから。
霹靂と一緒に『馬県』認識!



 青空を侵すのは、ハッキングアルゴリズム。
 生み出されたスカイネットは、人類を繋ぐものではなくオブリビオンを繋ぐもの。
「そう、人を人たらしめるものすべてを破壊するの。ただそれだけのためにわたしたちは『フラスコの落とし仔』として骸の海より滲み出たのだから」
『アリシア・ホワイトバード』は言う。
 彼女の瞳にユーベルコードが輝いている。

 今この瞬間において、世界はオブリビオンによってスカイネットを掌握されている。生み出されたのはオブリビオンによるオブリビオンのためのネットワーク。
 それを介して流れ込む力は、『アリシア・ホワイトバード』を強固な力で守り、また同時に無限に増殖していく戦闘機械でもって荒野を蹂躙する。
 あまりにも強大な力。
 無敵といって差し支えのない力であった。

「『陰海月』、危ないので影に退避しなさい」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、その迸るような破壊の意志を見誤ることはなかった。
 あれは確かに世界を滅ぼしうる力である。
 少女の姿など仮初そのもの。
 三対の翼はあまねく全てに破壊を齎すためだけに存在している。

 迫る戦闘機械はどれもが必中の一撃。そして、必殺の一撃でも合った。
「だが、四悪霊は滅びず」
 打ち込まれる戦闘機械の切っ先が『疾き者』を貫く。
 穿ち、引き裂き、串刺しにする。
 だが、己を認識する者がいる限り、悪霊は滅びない。
「何故滅びないのです」
『アリシア・ホワイトバード』の声が聞こえる。痛みより先に、その声が、その破壊を求める憎悪と怨恨に満ちた声が、『疾き者』に届くだろう。

 体が再構築されていく。
 生み出し封じてきた呪詛と彼女たち『フラスコの落とし仔』たちが抱える憎悪と怨恨の間にある差異はなんであっただろうか。
 ただ耐えるしかない。
『アリシア・ホワイトバード』はその強大な力故に自壊していく。
 ユーベルコードを使う度に彼女は壊れていく。
 ならば、持久戦だ。

 スカイネットはオブリビオンのためだけに構築されている。
 彼女の膨大な力の源はそこにあると言ってもいい。ならば、常時発動している。それは言い換えれば、毎秒、毎分、彼女の肉体を破壊していくというもの。
「成なぜ、といわれましても。これが私の役目の一つなんですからー」
「答えになっていないです。人とは繋ぐもの。それを壊すのがわたし。壊さなければならない。わたしたちは望まれても、望まれなかった生命の方なのだから。わたしたちを否定した人は、尽く滅ぼさなければならない」

 その言葉に『疾き者』は笑ったのかも知れない。
 憐憫であった。
「紡いでいって繋げる。それは壊すとは反対のことですからねー……なかったことにされたのは、憐れみますけど」
 放たれる戦闘機械が次々と肉体を貫いていく。
 頭部を、腕を、足を、胴を。
 あらゆる部位を貫き引き裂く戦闘機械。

 圧倒的な攻撃力。対する此方の攻撃は通用しない。
 四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)は己を認識する者がいるからこそ成り立つユーベルコード。
 影から『陰海月』と『霹靂』が自分たちを認識している。
 その攻勢を前に飛び出したい気持ちを抑えているのがわかる。見ていることしかできない。見なく成った時、それが四悪霊の滅びの時だ。
 だから、傷つく『疾き者』をみなければならない。
 目をそらすこともできない苦しみは、己が傷つくよりも苦しみに満ちたものだろう。

 悲しむのがわかっている。

 そう哀れんでくれているのならばこそ、心を慰めるものである。
 だが、『フラスコの落とし仔』たちは違う。
 憐れまれたくもなかったのだ。肯定してほしかったのだ。ただ、生きているということを認めてほしかっただけなのだ。
 それすらも否定されたから、怒り狂う。
 憎悪に駆られ、怨恨に満ちていく。
「そういうことを人は言う。繋ぐと、紡ぐと。わたしたちを礎にして、踏みつけにして、そうして輝かしいものに手を伸ばす。それがどうしても赦せないのです」
 憎悪と共に放たれる攻勢。
 だが、『アリシア・ホワイトバード』の肉体にひびが走る。

 自壊の兆候。
『疾き者』は憐憫の眼差しを向ける。
「今を生きて未来へ繋ぐ人たちのために、『私たち』はここにいるのです」
 何故、と問われたから答えたのだ。
 何故、と。
 生命に意味を問われた。だが、彼らは悪霊だ。束ねられた生命だったもの。呪詛をもってオブリビオンを滅ぼす怨恨の塊。

 されど、彼らとオブリビオンを分かつのは、見据えるものの違いである。
 オブリビオンは過去しかみない。己しかみない。確定し、停滞した己しか。
 だが、彼らは違う。
 己たちの呪詛を抱えて、他者を見る。己を認識されながらも、他者の未来を思うからこそ。
「そう、それがここにいる、ということ」
 びしり、と『アリシア・ホワイトバード』の頬に亀裂が疾走った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斯鬼宮・ハテヒメ
無限に増殖する機械とは興味深いのう。
こちらから積極的に攻撃を加えてもあまり意味はなさそうじゃ。

ならば我は汝の技術の一端を学ばせてもらい、奴の攻撃を利用しつつ自壊してもらうとするのじゃ。

ユーベルコードで強毒電子ウイルスをコピーして跳ね返してやるのじゃ!
安心せよ!
汝は倒すが、
汝の思いとテクノロジーは我が吸収して未来に連れて行ってやるのじゃ!



 荒野を侵食していくのは戦闘機械。
 それは無限に膨れ上がり、猟兵を貫かんとしている。かつて『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『マザー・コンピューター』が猟兵を殺すために生み出した無限機械都市としての能力そのものであった。
『アリシア・ホワイトバード』は、その力を発露させながら強毒電子ウィルスを籠めた一撃を解き放つ。
 びしり、と頬に亀裂が走っている。

 彼女は超攻撃能力とほとんどの攻撃が通用しない圧倒的な防御力を持っている。
『フラスコの落とし仔』たる彼女は、ひときわ強力な個体であった。
 同時に人類に対する憎悪もまた深いものであったことだろう。
「壊す。壊す。壊し殲す。全て壊す。わたしは、人の生み出したものすべてを壊して、人の、人類の、文明の残滓を残らず壊すのです」
 迸るように戦闘機械が戦場を埋め尽くしていく。
 その一撃を飛ぶようにして躱し斯鬼宮・ハテヒメ(サイバー・キョンシー・プリンセス・f38388)は、これが謂わば時限のある千日手にほかならないと理解する。

「無限に増殖する機械とは興味深いのう」
 すでに『アリシア・ホワイトバード』を取り囲む戦闘機械はまるでジャングルように彼女を覆い隠している。
 これを突破するのは正直ハテヒメでも無理であった。
 だからこそ、彼女は無意味だと理解する。

 積極的に戦闘機械を打ち払ったとしても、彼女では火力が足りない。
 それに無限に増殖するのならば、破壊した端から膨れ上がっていく。こちらが消耗するばかりで、いつしか自分がすり潰されかねないのだ。
「ならば我は汝の技術の一端を学ばせてもらうとしよう!」
「何も学ばせることなどないのです。ただ壊す。ただ壊し殲す。わたしは、そうあるべきとわたしを定める」
 望まれた生命ではなかった。
 失敗だった。
 どうしようもなく、無意味な存在であると言われた。

 その憎しみの深さは言うまでもなく。
 怨恨の重さはあらゆる心を押し潰していく。放たれた空間を認識させぬ電子ウィルスの一撃がサイバーニンジャであるハテヒメに走る。
 あれを受けては、僵尸たる自分もまた機能不全になるだろう。

 だが、彼女は腰帯に供えた鏡を掲げる。
 祖父より譲り受けた鏡。形見ともいえるだろう。これが人が絆ぐこと。
 紡ぎ、繋ぎ、時代を重ねていく。
 そうすることによって技術は練磨され、知識は継承され、新たなる未知を発見する。解き明かし、そして、また昇華していく。
「人とはそういうものよ!」
 光華縁反転鏡(リバースミラースペクタクル)が輝く。
 電子ウィルスの一撃を鏡面が受け止め、即座にコピーする。空間認識を阻害するウィルス。

『アリシア・ホワイトバード』はこちらの位置を認識し、無限に増殖していく戦闘機械でもって追い詰める。
 けれど、ハテヒメがコピーした強毒電子ウィルスならば、そのアドバンテージをひっくり返すことが出来る。
 消耗戦に引きずり込まねば『アリシア・ホワイトバード』は倒せない。
 鏡から放たれる強毒ウィルスは一直線に彼女へと迸る。だが、それは戦闘機械に阻まれてしまう。

「それも機械、からくりの類というのならば、制御するものがあろう。この電子ウィルスは空間認識を阻害する。ならば、こちらの動きもわからぬようになるじゃろうて!」
「――……わたしの、わたしの、壊す力を……!」
「安心せよ! 汝は倒すが、汝の思いとテクノロジーは我が吸収して未来に連れていってやるのじゃ!」
「勝手なことを!!」
 咆哮が轟く。

 そう、彼女は未来など望んでなど居ない。
 繋がることも、絆ぐことも。
 猟兵の思うところのそれと、オブリビオンの思うそれとは違う。決定的に違うのだ。
 滅ぼし、滅ぼされる間柄であるからこそすれ違う。
 だが、ハテヒメは笑う。
「そう、勝手である。壊したいと思う願いと、己の生命は無価値だという思い、それらをすべてひっくるめて我は学ぶのだ。そうすることだけが唯一、汝等のいうところの破壊を否定することになるのだからな!」
 煌めくユーベルコードは連綿と紡がれてきた証左。

 鏡の輝きは、次代に絆ぐ輝き。
 破壊されようとも、幾度も立ち上がる。その強靭さ、意志、あらゆるものがオブリビオンの、『アリシア・ホワイトバード』の求めるところを阻むのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
破壊こそデストロイ!
よい心掛けですわね!
いつの時代も邪魔なものはデストロイして進むに限るのですわ
なので!わたくしも貴女をデストロイしてさしあげますわ〜!

しかーし!どんなに強力なデストロイも当たらねばデストロイ出来ないのですわ
アンビシオンでひらりひらりて躱して…数が!数が多いですわ!
こんなの避けきれませんのよー!
あっ!閃きましたわ!
避けられないなら防げばよろしいのですわ
守りこそ最高のデストロイ!
エルネイジェの守護!
おほほ!無駄無駄無駄ですのよ〜!
貴女のデストロイはその程度なんですの?
本気で撃ってくるがよろしいのですわ〜!
後はあちらが自壊するまで我慢比べですわ
因みにわたくし我慢は大の苦手ですわ〜!



 破壊だけが、その生命を慰撫するものであった。
『アリシア・ホワイトバード』は叫ぶ。
 破壊を。 
 人の生み出したもの。人の作り上げたもの。人が成し遂げたもの。
 あらゆる人に関連する者全てを破壊したいと叫んだ。
 文明も、人という生命も。何もかもだ。
「私達を捨てたのですから、私達が壊すこともまた受け入れて頂く。いえ、拒否した所で破壊するのです。私達『フラスコの落とし仔』たちは、その怨恨を晴らすために憎悪の火をともし続けるのですから!」
 響く叫びは、スカイネットを構築し、ハッキングアルゴリズムによって操作される無限増殖する戦闘機械を手繰り、猟兵たちへと迫る。

 頬に疾走った亀裂はだんだんと大きくなってきている。
 彼女の防御は尋常ならざる障壁だった。ほとんどの攻撃が通用しないことを猟兵たちは知っている。
「破壊こそデストロイ! よい心がけですわね! いつの次代も邪魔なものはデストロイして進むに限るのですわ!」
 メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は大型機械鎧の羽を羽撃かせる。
 光背の如き光環が煌めき、空を舞うようにして迫る戦闘機械を躱す。

「なので! わたくしも貴女をデストロイしてさしあげますわ~!」
 そう、どんなに強力な攻撃も当たらなければ意味がない。
 ひらり、ひらりと華麗に躱していけばどのみち『アリシア・ホワイトバード』は自壊していく。
 けれど、メサイアは知るだろう。
「……数が! 数が多いですわ! こんなの避けきれませんのよー!」
 戦闘機械は無限に増殖していく。
 荒野を埋め尽くす戦闘機械はうねるようにしながらメサイアに迫っている。躱し、飛び、それでも尚迫りくる。

「逃さない……わたしが自壊するのだとしても、それより速くあなたたちを殺せば、破壊すればいいだけのこと……!」
『アリシア・ホワイトバード』の言うとおりであった。
 メサイアは、唸る。
 敵の自壊する速度と自分たちが殺されてしまう速度。どちらが早いかなど言うまでもない。
 それほどまでに『アリシア・ホワイトバード』は強力なオブリビオンなのだ。
「あっ! 閃きましたわ!」

 彼女は目を輝かせる。
 これまで彼女は無限増殖する戦闘機械を躱すことに注力していた。確かに敵の攻撃は防ぐよりも躱した方がいい。
 超攻撃力を持つ『アリシア・ホワイトバード』を相手にするのならば、なおさらであろう。
 けれど、彼女のまたユーベルコードを使う。
「これぞ我が王家に伝わる守りの加護ですわ!無駄無駄無駄ですわ!効きませんわ!痛くも痒くもねぇですわ!」
 エルネイジェの守護(シャイニングフォートレス)は、それまで軽やかに空を舞っていたメサイアの体を地上へと縫い付ける。

 全身を覆うのは聖なる障壁。
 攻撃を反射するように迫る戦闘機械の一撃を反射し、ひしゃげさせていく。
「攻撃が……反射される?!」
「おほほ! 無駄無駄無駄ですのよ~! 守りこそ最高のデストロイ!」
 さっきと言っていることが真逆であった。
 けれど、メサイアは一歩も動けぬ代わりに、圧倒的な防御能力を得ていた。
『アリシア・ホワイトバード』が意固地になればなるほどに彼女の攻撃は反射され、戦闘機械は己の攻撃力を反射されて砕けていくのだ。

「貴女のデストロイはその程度なんおですの? 本気で撃ってくるがよろしいのですわ~!」
 打ち込まれる一撃。
 メサイアがそう言えば言うほどに『アリシア・ホワイトバード』は意固地になって破壊しようとするだろう。
 けれど、それは思うつぼであった。
 メサイアは我慢するのが大の苦手である。少しの我慢もできないし、やるなと言われたらやるのである。
 国を出奔したときからなんらかわらぬスタンス。

 だがそれが故にメサイアは『アリシア・ホワイトバード』の超攻撃力を反射し、彼女の自壊を待つ。
 ユーベルコードを維持し続けること。
 そおれがメサイアの必勝方法。
「おほほ! ただ立っているだけで無敵とはわたくしのことですわ~! さあ、自らの力でデストロイするまでお叩きになって~!」
 メサイアの言葉とともに戦闘機械が砕けていく。

 そのさまを忌々しげに見つめながら『アリシア・ホワイトバード』の頬に走る亀裂が、さらに深いものへとなっていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

囁石灯・銀刃郎
同情するし哀れむわよ、私。
怒るかしら?なんとも思わない?ま、どっちでも良いわ。
貴方が勝手に壊したいって思うように、
私も勝手にそう思ってるだけだから~

アリシア・ホワイトバードは斬れそうにない。ありゃダメだ。
もっと腕をあげなきゃなぁ。
なんで戦闘機械群を|片っ端から《早業》斬って斬って斬ってダッシュで逃げる!
地獄の鬼ごっこ、ね!ほんと!

|蒼気《覇気》を纏ったカタナで武器受け、攻撃を受け流し、|第六感《カン》で追撃も避ける。

いよいよってなったら、【銀光一閃】にて|切断《斬る》

……まーあれよ、私が生き残ったら、貴方の事、一応覚えておくわ。
勝手に勝手を重ねてるんだから、勝手に繋がれてちょうだいな。



 望まれなかった生命。
 望まれたのは救世主たらん力。
 その能力に至らなかったものは容赦なく廃棄された。価値なしと捨てられたのだ。
 それが『フラスコの落とし仔』たち。
『アリシア・ホワイトバード』もまた同様であった。
 彼女もまた廃棄された生命。

 ただ生きていることさえも否定された生命。
 故に彼女たちの心にあるのは憎悪と怨恨のみ。それ以外はない。あるはずもない。それが世界を破壊しようとしている。
 人の生み出したもの。人の残滓。その尽くを破壊する。そのためだけに彼女は力を振るう。
 スカイネットに繋げられた彼女の破壊への衝動は増殖する戦闘機械に直結されるようにして迸る。
「破壊する。全て。人の生み出したものは、全て破壊する。例え、そこが楽園のような場所であったとしても。オブリビオンが生み出したものが礎になっていたのだとしても。滅ぼす。わたしたちは、要らない生命。だから、その要らぬと切り捨てた生命が、今を壊す」

 迫る戦闘機械。
 凄まじ勢いで己に迫るそれを囁石灯・銀刃郎(ミュータントファントム・f24401)は見つめる。
 きっとあの戦闘機械は己を貫くだろう。
 脳天を貫き、肉体を引き裂き、八つ裂きにする。
 それほどまでの憎悪。
 けれど、彼女は瞳をそらさなかった。
「同情するし憐れむわよ、私」
 手にした刀の一閃が蒼い奇跡を描いて戦闘機械を弾きあげる。否、切り捨てる。
 斬れる、と彼女判断したのだ。

 だが、戦闘機械は切り捨てられても、『アリシア・ホワイトバード』は斬ることができない。
 アレは無理だと理解した。
「要らない。そんなものなど何一ついらないのです。わたしには、わたしたちには、そんなもの今更いらない。憐れまなくていい。哀れんでくれたところで、わたしたちはもう『過去』に決定した存在。未来などあるわけがないのだから」
 迫る無限増殖する戦闘機械。
 尾のように、鞭のようにしなり銀刃郎に走る。

 それを彼女は斬って、斬って、斬って――。

 ただそれだけを行う。
 それは受け流す、という行為にも似ていたことだろう。凌ぐ、という言い方をしてもよかったかもしれない。
 彼女の蒼閃は、自身を貫かんとする戦闘機械をこそ斬撃で持って応対する。
「貴方が勝手に壊したいと思うように、私も勝手にそう思っているだけだから~……地獄の鬼ごっこ、ね! ほんと!」
「わたしとあなたは滅ぼし滅ぼされるだけの間柄。そこに同情なんてものを、憐れみなんてものを挟み込むから!」
 速度が上がる。

 鞭のようにしなっていた戦闘機械が鋭さをまして、槍のように、雨のように銀刃郎へと降り注ぐ。
 それを凌ぐ。
 無数の槍撃を何度も何度も。
 気が遠くなるほどにしのぎ切る。息が着れる。

 だが、金属同士が火花を散らす光景の先に彼女は見た。
 今しかないのだと。
 煌めくユーベルコードが示すのは、敗北の未来ではない。そもそも、これは勝敗のつく戦いなんかじゃあない。
 彼女の言ったように鬼ごっこだ。
 自分が追われる側。『アリシア・ホワイトバード』は追う側。
 追いつかれれば、残る道は唯一。死だ。

 強烈に彼女は意識しただろう。
 己の死を。
 押しつぶす家のごとく迫る戦闘機械の鈍色。
 その鈍色を前に彼女の瞳はユーベルコードに輝き、息を漏らす。
「……まーあれよ。私が生き残ったら、貴方のこと、一応覚えておくわ。勝手に勝手を重ねてるんだから、勝手に繋がれてちょうだいな」

 銀光一閃(ギンコウイッセン)。

 その輝きを見よ。
 それは彼女の生命の道を切り裂く斬撃。
 否、見えることはなかったかもしれない。彼女の抜刀は神速。斬った、という事実すら置き去りにする斬撃。
 銀刃郎は、一歩前に進む。
 彼女が進む先には、迫る戦闘機械があった。されど、それらは全てが斬り裂かれている。彼女に触れることのできる戦闘機械は何一つなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベティ・チェン
UC使用
てくてくとアリシアのところへ歩いていく

「ヘンな人が、居る?」
首を傾げ

「キミは、マネっこばっかり、だ。デミウルゴスの、マネ。プレジデントの、マネ。マザー・コンピューターの、マネ。キミは、…アリシア・ホワイトバードじゃなかったの?」
また首傾げ

「キミの時間が、限られてるなら。ボクは、…キミに会いたい、よ?キミは、…オリジナルじゃないのかも、しれないけど。アリシア・ホワイトバードなんだよね?」

「何をしても、自壊するなら。その時間、ボクがもらっちゃダメ、かな?」
アリシアに手を伸ばす

「マネッこじゃない、キミの言葉で。マネッこじゃない、キミの想いを。キミの最後の吐息になるまで。ボクに、ちょうだい?」



|『聖域』《エデン》が広がる。
 彼女は言った。
 自分たちは幸せになるために生まれたのだと。
 傷つけ合うためでも、殺し合うためでもない。
 永遠の聖域(エデンヨリトワニ)が『救世主の園』の郊外たる荒野に広がっていく。

 無限に増殖していく戦闘機械を飲み込んでいくユーベルコードの輝き。
 全ての攻撃能力を持った戦闘機械たちは、たちどころに弱体化されていく。増えても、増えても、増えても。攻撃能力が半減していくのだ。
 重たい、とさえ『アリシア・ホワイトバード』は思った。
「ヘンな人が、居る?」
 その言葉を紡ぐのは、ユーベルコードの輝きに満ちる瞳を持つベティ・チェン(迷子の犬ッコロ・f36698)であった。

 彼女yは首を傾げていた。
 ヘンな、と形容したのは彼女が知る『フィールド・オブ・ナイン』のいずれにも似た匂いであるからだろう。
 混ざり合っているような、そうでないような。
『フラスコの落とし仔』たる『アリシア・ホワイトバード』を前に彼女はそう告げる。
 無限に増殖していく戦闘機械は『マザー・コンピューター』の力。
 その能力はオブリビオンのソーシャルネットワークと繋がった『プレジデント』の力。
 破壊という意志に焚べられる憎悪と怨恨は『デミウルゴス』の力。

「キミは、マネっこばっかり、だ」
 ベティは告げる。
 彼女は悪意なく言うのだろう。だが、『アリシア・ホワイトバード』にとって、それは侮蔑であった。
 そう、彼女は中身がない。
 望まれていない生命。望んでいなかった生命。
 それ故に彼女の中に入り込んだのが憎悪であった。生んでほしいと願わなかったのだ。ただ生きているだけでいいと肯定してほしかったのだ。
 意味など、意義など、見出してほしくなかったのだ。

 だから、彼女は咆哮する。
「言うに事欠いて!」
「『デミウルゴス』の、マネ。『プレジデント』の、マネ。『マザー・コンピューター』の、マネ。キミは……『アリシア・ホワイトバード』じゃなかったの?」
 首をかしげる。
 その彼女に走る戦闘機械たち。
 それを躱す。

 今やこの聖域に在りて彼女は、攻撃するという意志を見せていない。その全ての行動が強化されている状態なのだ。
 争いの意志が在る限り。破壊の意志が在る限り、この領域で彼女を『アリシア・ホワイトバード』は捉えることはできない。
 びしり、とまた彼女の頬に亀裂が疾走っていく。
 その体躯には、今や多くの亀裂が刻まれている。彼女がユーベルコードを使えば使うほどに自壊に追い込まれていく。

 猟兵達が彼女に勝つためには、それしかないのだ。
 無敵の如き防御を貫く攻撃は、恐らくない。だからこそ、自壊に追い込む。これは消耗戦でしかないのだ。
 だが、ベティにとって、これはそういう戦いではなかった。
「キミの時間が、限られているなら。ボクは……キミに会いたい、よ? キミは……オリジナルじゃないのかも、しれないけど。『アリシア・ホワイトバード』なんだよね?」
「だからなんだとうの。わたしがわたしであるためのものなんてなにひとつ与えなかったくせに、世界は、わたしにわたしであることを望むというのなら!」
 重たい動きの戦闘機械が無理矢理に振るわれる。
 だが、それがベティを捉えることはない。

 全てが彼女の動きに躱されてしまう。
 てくてくと、それこそ散歩をするようにベティは進む。
「何をしても、自壊するなら。その時間、ボクがもらっちゃダメ、かな?」 
 手をのばす。
 意味がわからなかったのかも知れない。『アリシア・ホワイトバード』は訝しむ。
 目の前の存在が何を言っているのか理解出来なかった。
 理解を示しているのだろうか。何故手を伸ばしているのか。
 何故。
 この段に来て、彼女の中にあったのは破壊だけではなくなっていた。
 憎悪も、怨恨も、疑問に塗りつぶされていく。

「マネっこじゃない、キミの言葉で。マネっこじゃない、キミの想いを」
 ベティは手を伸ばし続ける。
 その手を掴むことがないことを知っている。わかっている。彼女の中にあるものは、流れ込んだものだけ。
 けれど、とも思うのだ。
 全てをなげうって、全てを吐き出して。
 その最後にあるものは。
 きっと吐息のような小さなものであるから。

「キミの最後の吐息になるまで。ボクに、ちょうだい?」
 震える吐息は、吐き出されただろうか。
 びしり、びしり、と音が響く。
 いびつな音が世界に響いていく。声はない。声無き声はあったかもしれないけれど、それを聞いたのは、ベティだけであったかもしれない。

「――!!」
 咆哮が、いびつな音を塗りつぶしていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

そう くるの ?
では、抱擁あるのみ

落ち着き優しさ祈りお誘い釣り陽動カウンターリミッター解除詰め込み誘き寄せUC

ただただ無防備に敵の攻撃を受け、その都度ひたすらUCにて返す

いいよ だいてあげる

我楽多の心我楽多は知らず
がらんどうは こばまない
我楽多の心我楽多のみぞ知る

だくのはすきよ だかれるのはすきよ
灰は灰へ、塵は塵へ
つめてつめて どんどんつめて
詰めた分だけ、返礼しよう

にくい? かなしい?
がらんどうに在るは残響の身
あるだけ つめればいい
しかして伽藍洞、詰めた端からこぼれ出る…

おやすみなさい おやすみなさい
さようなら さようなら

最期なら
手をつなぐ



 破壊する。
 ただそれだけだ。それだけが『アリシア・ホワイトバード』の出来ることだ。
 構築することも願うことも、何もかも彼女にはない。
 あるのは憎悪と怨恨。
 その身を焦がす炎も、衝動も全ては破壊のために。
 人の生み出したもの。
 人が作り出したもの。
 それを文明というのならば、それら全てを破壊する。
「それがわたし。わたしが破壊する。人のつながりも、人の生み出したものも。どんなに美しいと人が思うのだとしても、尽く破壊する。それがわたしたちの復讐」

 みなぎる力が発露するように無限に増殖していく戦闘機械が猟兵たちを襲う。
 すでに彼女の頬には亀裂が走っている。
 その肉体は自壊に導かれている。それしか方法がないことを猟兵たちは知っていた。無限増殖戦闘機械による超攻撃力と殆どの攻撃を受け付けぬ防御。
 断ち切るにはあまりにも強大すぎた。
 同時に一体のオブリビオンが扱うにもまた強大すぎたのだ。
「そう くるの?」
 御堂・伽藍(がらんどう・f33020)は、六腕を広げる。

 その手はあまねくすべてを掬う。
 対峙するオブリビオンの感情も、その憎悪、怨恨すらも掬う。
 強大な力の前に怯えること無く、優しさすら湛えさせる笑顔のまま、彼女は踏み出す。
「では、抱擁あるのみ」
 放たれる戦闘機械の一撃。
 巨大な槍のように変形し打ち込まれるは強毒ウィルス。
 空間すらも認識させぬ一撃は違わずに彼女の体へと受け止める。

 伽藍は自然体であった。
 力みなど皆無。己に迫る巨大な一撃も関係ない。
「伽藍洞と人の言う。はいって、とおって、さようなら」
 瞳に輝くはユーベルコード。
 敵対者を傷つけるのではなく。ただ、受け止めるためのユーベルコード。
 境界の内側と外側(オデグチハアチラニナリマス)、そこに彼女はある。

「いいよ だいてあげる」
 がらんどうの身より放たれるのは、『アリシア・ホワイトバード』と同じユーベルコード。
 相殺されるウィルスが青空に霧散して消える。
「我楽多の心我楽多は知らず。がらんどうは こばまない。我楽多の心我楽多のみぞ知る」
「知られてなるものか。わたしたちの心はわたしたちにしかりかいできないものだ。わたしたちの心を理解できたなどと!」
 この衝動は自分たちだけのものだと彼女は言う。
 だが、伽藍はほほえみながら言う。

「だくのはすきよ  だかれるのはすきよ。灰は灰へ、塵は塵へ。つめてつめて どんどんつめて 詰めた分だけ、返礼しよう」
 放たれるユーベルコード。
 打ち消し合い、空に残滓が舞う。
 それでも止まらない。
 無限増殖は止まらない。戦闘機械が互いにぶつかり合ってひしゃげていく。そのさなかに、びしり、と音が響く。

 歪んだ音。
 それこそが自壊への前奏曲であるとうのならば、それはきっと。
「にくい? かなしい?」
 伽藍の身に響く。
 残響の身。あるだけ詰め込めばいい。けれど、その身も全てを詰め込むことはできない。溢れる。
 溢れて、落ちる。
 そうして生命はこぼれ落ちていく。

 けれど、彼女の六腕は、そうしてこぼれ落ちたものをこそ受け止めるためにあるのだ。
 手をのばす。
 微笑みと共に。
 塊根も懊悩も、何もかも最初は憎悪と怨恨から始まる。許すことも、忘れることもできぬ憐れなる生命に伽藍は手をのばす。
 そして、言うのだ。
「おやすみなさい おやすみなさい さようなら さようなら」
 分かたれた生命は戻らない。
 決定した過去は覆らない。
 だから、滲み出た過去の化身、その姿に彼女は涙ではなく、微笑みでもって絆ぐ。『アリシア・ホワイトバード』は理解できなかったかもしれない。

 けれど、生前に差し伸べられることのなかった手に。
 彼女は理解不能な感情を溢れさせ、その肉体にひびを走らせる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー
なるほど、お姉ちゃんはごっこ遊び大好きっ子でしたか。
フィールド・オブ・ナインごっこ、楽しそうで何よりです。
当然、猟兵に滅ぼされる末路までやってくれるんですよね?

さて、自滅するってことですし、とりあえず防御優先ですかね。
ひとまず念動力で敵の攻撃を逸らして防御しつつ、
【念動グローブ】で戦闘機械を掴めるだけ掴んで叩きつけて壊します。
残骸は敵の攻撃を防ぐ盾として、有効活用させて頂きましょう。
いっそ目の前に残骸をかき集めて、バリケードでも構築しましょうかね。
そうすれば、あちらも手出しし辛くなることでしょう。

しかしまぁ…
こうも被害者ぶった言い回しで全力で自己正当化されると、
逆に同情心が湧かなくなりますね。



「なるほど、お姉ちゃんはごっこ遊び大好きっ子でしたか」
 エリー・マイヤー(被造物・f29376)は瓦礫に煙草を押し付けて、火をねじり消す。
 フラスコチャイルドの末妹をして、『フラスコの落とし仔』へと言葉を紡ぐ。
 無限に増殖していく戦闘機械が渦巻いている。
 構築されていくスカイネット。
 あらゆるオブリビオンと繋がるソーシャルネットワーク。
 彼女にとって、それは己が忌むべき人の所業と同じであることであった。けれど、彼女は模倣であることを認めない。

「何を。わたしが、わたしたち、模倣であると!」
「『フィールド・オブ・ナイン』ごっこ、楽しそうで何よりです」
 その言葉に放たれる戦闘機械の一撃。
 エリーを穿つ一撃は、しかして、彼女の眼前でそれるようにして背後の瓦礫を破壊する。
「……! 念動力。それでわたしの攻撃をそらしたところで!」
「当然、猟兵に滅ぼされる末路までやってくれるんですよね?」
 これはあくまでごっこ遊びの延長線上でしかない。
 エリーにとってはそうだ。
 幼子の癇癪に付き合うのが大人だというのならば、エリーは大人だった。煙草だって吸える。

 新たなる煙草に火を付ける。
 口に加え、軽く揺らす。紫煙が立ち上り、口に含んだ煙がゆっくりと溢れていく。
 その度に打ち込まれる槍の如き戦闘機械の一撃。
 どれもが強力な一撃であった。けれど、エリーは、それを受け止めるのではなくそらしていく。
 どれだけ強力な一撃であろうと僅かな力でそらす事ができる。難しいのだとしても、エリーの念動力ならば、それができる。
「ごっこ遊びだっていうのなら、反撃も織り込み済みですよね」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝き、その念動力が放たれた戦闘機械をまるごと包み、掴み取る。
 ひしゃげる機械の音の向こう側でエリーの瞳が輝いている。

 加えた煙草の先端が灰に成っていく。
「掴まえましたよ」
 念動グローブ(サイ・グローブ)。
 エリーのユーベルコードは数百tに至る重さを持ち上げるほどに強力な念動力の発露である。
 一斉に放たれた戦闘機械の槍の如き一撃をまとめて包み、持ち上げたのだ。
 地面に叩きつけられる戦闘機械。
 ひしゃげ、瓦礫とかした戦闘機械。けれど、それは無意味のはずだ。どれだけ壊した所で、無限に増殖していく戦闘機械を止めるすべはない。

「バリケード。有効活用させてもらわないといけませんよね」
 エリーは砕いた戦闘機械を積み上げ、重ね、圧縮して防壁と作り変えていく。
 強引な手段だった。
 力任せであるとも言えただろう。
 けれど、だからなんだというのだ。これはごっこ遊びの範疇だ。言ってしまえば、タッチされたのにタッチされていないと言いはるようなものだ。

 ただ、それが物理的なものに変わっただけだ。
「わたしたちの、憎悪を! 怨恨を! 理解しない人の生み出したものなど破壊されて然るべきものでしょう! わたしたちは!!」
 望まれなかった生命なのだと咆哮する。
 それをエリーはバリケードの奥で聞く。
 言いたいこと、全てが彼女にとっては自己正当化だとしか思えなかった。オブリビオンであるからとか、人造的に生み出されたものであるとか、そんなこと関係ない。

「その被害者ぶった言い回しが、それが」
 エリーの瞳が輝き、念動力が戦場に満ちていく。
 叩きつけられる戦闘機械。
 その一撃がバリケードを抜けてきた一撃を受け止める。塞ぐ。防御するだけでいい。こちらが狙っているのは『アリシア・ホワイトバード』の自壊だ。
 だから、それでいい。

「逆に同情心が湧かなくなりますね。お姉ちゃん」
 エリーは残骸の瓦礫の山に座し、もう彼女を観ていなかった。
 見ているのは紫煙が青空に立ち上る光景のみ。
 それだけでいいのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
その顔からそんな言葉は聞きたくなかった
いや…こっちの話だ

俺が無粋な探偵として招かれたなら
例のUCが必ず発動するだろう
クローズドサークルって解るか
あんたの頼みの通信網を
強制的に外界と切り離す呪いだよ

あんたが犯人である事を選んだなら
俺もまた探偵である事を選ぶだけだ
完全犯罪を望むなら
探偵を殺す以外正解は無いぜ

増殖機械は偽神兵器で纏めてなぎ払い
切断し続けながら攻撃を凌ぐ
外部には通じない信号を
こいつは諦めず発信し続けるんだろうか
…哀しいな
そんなの被害者の行動だ

何もかも救えると思ってる程傲慢じゃねえよ
あんたは最期まで犯人でいろ
時には黙って動機を聞く事も必要だ

自壊する彼女から目は背けず
いつか嵐が止む事を祈る



 その顔からそんな言葉は聞きたくなかった。
 それが正直な感想だった。
「いや……こっちの話だ」 
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は頭を振る。
 生み出された生命。
 望まれなかった生命。
 望まなかった生命。
 生命のあり方は百葉の如く。けれど、定めはどれもが同じだ。異なるのは道程のみ。そのたどる道が違うからこそ、人は惑い悩み、苦しむのだ。
 生きることは苦しみである。悲しみに満ちている。されど、生命に意味と喜びを見出すのならば、その苦しみと悲しみをこそ得なければならない。

 それらは表裏一体である。
 だが、探偵は己が無粋であることを知る。自分が招かれたものであるというのならば、この運命はやはり自分のものなのだ。
 青空に雷雨が迸る。
「――これは、なんです。これは、わたしのしらない現象!」
『アリシア・ホワイトバード』が狼狽えるのも無理なからぬものであった。
 天にあるのは青空。されど、降り注ぐの雷雨。
 ありえないことだ。そして、もっとありえないことは。
「わたしの、わたしたちのソーシャルネットワークが、つながらない。遮断されている……!?」
「クローズドサークルって解るか。わからないだろうな。その様子じゃあな。だから、言ってやるよ。説明してやるよ」

 はとりは、指を立てる。
 一つ。
「あんたの頼みの通信網を強制的に外界と切り離す呪いだよ」
「呪いだっていうのなら!」
 放たれる無限に増殖していく戦闘機械による槍のような一撃を大剣が切り裂く。氷結の刀身纏う斬撃が、凌ぐ。
 二つ。
「あんたが犯人であることを選んだなら、俺もまた探偵であることを選ぶだけだ」
 個々にあるのは立場のみ。
 それがクローズドサークルにおける役割の決定。
 事件は現場で起きている(ウォーキングデッド)のだ。すでに、起きている。演じなければならない。

 だが、これは未然に防げる類の。
 探偵が探偵らしく遅れてやってくる理由など何一つない。間に合ってしまった探偵は、ならば何をするべきか。
 三つ。
「完全犯罪を望むなら」
 まとめて薙ぎ払う斬撃が戦闘機械の破片でもって、はとりの頬を切り裂く。
 立てられた指は三本。
 これが柱である。これが推理の要。だが、その推理はもはや必要などない。あるのは閉じられた環境のみ。

 この環境においてのみ、探偵は無類の生存能力を得る。死ねることのない存在。死して尚、謎を解き明かさなければならない。
「声が聞こえない! わたしたちのこえがきこえない! どうして!」
 世界とつながることを臨んでいたのだ。
 破壊と、言いながらオブリビオンという己と同じ存在と繋がることを臨んでいたのだ。
 彼女が求めるものを得るためには、探偵を殺す以外の正答はない。
 だからこそ、はとりは頬を切り裂いた痛みなど忘れるほどの哀切を魂に刻みつけられる。
 あの子の顔で、あの顔をされるとは思わなかった。
 笑顔が。

 瓦礫の破片で斬り裂かれていく。
「……哀しいな」
 あれは被害者の行動だ。加害者が被害者に転じた瞬間だ。探偵はそれを暴く。ひっくり返す。
 逆転劇などではない。
 ただ盆をひっくり返したようなものだ。
 元には戻らないというのに。ひっくり返す。
「何もかも救えると思っているほど傲慢じゃねぇよ」
 戦闘機械を叩き伏せる。
「救われたいと思っていないもの! わたしたちは、ただ『今』を壊したいだけなの!!」
「だったら、あんたは最期まで犯人でいろ。ときには黙って動機を聞くことも必要だ」

 破壊憎悪怨恨復讐。
 満ちる言葉は言葉でしかない。けれど、はとりの心を散り散りに切り裂くのは、やはり言葉だ。言葉は感じることが出来るからこそ刃になる。己の魂を切り裂く。
 びしり、と音が響く。
 歪んだ音。
 ああ、とため息を吐き出すように。青空に響く雷鳴を聞く。
 この嵐は止むのだろうかと、はとりは思う。いや、祈る。祈るしかない。

 あの顔に走るひびを見る。
 目をそらしてはならない。ただ、それだけが、今のはとりにできる唯一。
 振るう『コキュートス』が■う――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【サージェさんと】

望まれてなくたって、
命に失敗とか無意味とかないんだけど……。
でもそれに気がつけないくらい、全てを取り上げられていたんだね。

って、サージェさん!?
いきなり盾扱いはひどくないかな!?

まぁ、ぺったんで盾っぽいとかいわれればそうだし、
胸部装備は防御より攻撃向きだと思うけども!

し、しかたないー。
でも2分だよ、2分しか保たないからね!

デバイスのタイマーを129秒にセットしたら、
【偽りの丘】を起動して、相手の攻撃を全相殺。
防御なら、わたしでもなんとかなる!

ということで、今日こそは……。
2分以内に『おっぱいみさいる』出してね!

って、えー……(すーん)
解ってるけど、わたしが見たいのー!


サージェ・ライト
【理緒さんと】
当たり前が当たり前にはなく
されど当たり前を手に入れることも出来ず
ならばとその当たり前を壊す
確かに筋は通っていますね
と言いたいところですが、人生はもっと理不尽なモノなのです
例えば唐突に他人に盾にされる人生とか!!
え?やだなぁ理緒さんソンナコトオモッテマセンヨ?
後『おっぱいみさいる』とか実装されていませんから
えー、なんですかその目ー
仕方ないにゃーもー
必殺!【VR忍術】!ばすと・ばーん!
説明しましょう!この技はポーズ(胸を張る)を取ることで
胸のボタンをばーん!!と射出して攻撃する業なのです!
たゆん|力《ちから》が高いと攻撃力アップです
今はこれで我慢してください
ほらほら耐えて敵の攻撃



『アリシア・ホワイトバード』は思う。
 壊したいのだと。
 何を、と問われたのならば、己の生命の意味である。
 己たち『フラスコの落とし仔』たちは、皆そうであったのだ。目的在りきで生み出された。
 生命は自然発生する。
 生きることそのものが目的である生命。
 されど、その目的は最初から斯く在れと願われたものだ。

 自分たちは願われた生命。
 ならば、どうして捨てられるのだろうか。
「要らないからと、失敗だからと、無意味だからと! 当たり前のように! そうされるのが当然のように! わたしたちは捨てられたのです! だから!!」
 この世界を否定するのだ。
 人が当たり前に持つものを保たざる者として生み出された自分たちこそが、世界を壊す権利を有しているのだというように。

「望まれなくたって、生命に失敗とか無意味とかないんだけど……」
 けれど、それに気がつくことができないほどにオブリビオンとしての『アリシア・ホワイトバード』と『フラスコの落とし仔』たちは、全てを取り上げられて生まれてきてしまっていたのだ。
 人造的に生み出された目的在りきの生命。
 それが果たせぬのならば、それは無意味な生命。
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、思った。そんなことはないんだよ、と言葉に出来たのならば、どんなによかっただろうか。
 だが、それはしてはならぬことだと彼女は知っている。

 目の前に迫る無限に増殖していく戦闘機械が、それを拒んでいることを知っている。
「当たり前が当たり前になく。されど当たり前を手に入れることもできず。ならばとその当たり前を壊す」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、その有り様を肯定出来たのならば、どんなに良かっただろうかと思った。
 けれど、やはりそうなのだ。
 それは肯定してはいけないことだ。その一点においてのみ理緒とサージェは同じだった。

「人生はもっと理不尽なものです」
 サージェは語る。
 そう、例えば、と理緒をずい、と前に出す。
「他人に盾にされる人生とか!!」
「いきなり盾扱いはひどくないかな!?」
 理緒の瞳がユーベルコードに輝き、心象風景を生み出す。
 それは、偽りの丘(イツワリノオカ)。
 彼女の心にあるものである。放たれた戦闘機械の槍のような一撃を受け止め、相殺する。
 圧倒的な超攻撃力とは言え、同じものを生み出されて受け止められれば、互いに砕けるのは必定。
 そういう意味では理緒のユーベルコードは持久戦向きであった。
 けれど、時間制限がある。
「え? やだなぁ理緒さんソンナコトオモッテマセンヨ?」

 これは思ってる顔じゃない! と理緒は思った。
 けれど、迫る戦闘機械を前に彼女は焦りを隠せなかった。敵の攻勢が猛烈だったからではない。
 自分のユーベルコードが二分しか保たないからだ。
 敵の自壊を誘うのが、今回の戦いの肝要である。けれど、二分ではそこまで持ちこたえることができないのだと悟ったのだ。
『アリシア・ホワイトバード』は、ひときわ強力な『フラスコの落とし仔』。
 その身に湛えた憎悪は、怨恨は、きっと自壊に至る時間を先延ばしにシ続けるだろう。

「まぁ、ぺったんで盾っぽいと言われればそうだし、胸部装備は防御より攻撃向きだと思うけども!」
 でもしかたないことなのだ。
 二分だ、と理緒はカニさんを指で作って見せる。
 ハンドサインのつもりなのかもしれない。存外かわいいとサージェは別の意味で吐血しそうになったけれど、こらえた。

「後、『おっぱいみさいる』とか実装されてませんから」
 胸の話題になったところでサージェは言う。
「えー……今日こそはって思っていたのに! 二分以内に出して。できるでしょ、約目でしょ」
「えー、なんですかその目ー」
 余裕があるな、と思ったかも知れない。
 けれど、サージェは仕方いないにゃーもー、と何がどう仕方ないのか、そもそもそういうことできるのか。

「必殺! VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)! ばすと・ばーん!」
 説明しよう!
 この業はポーズをとることで、胸のボタンをばーん!!と射出して攻撃する業なのである!!
 いわゆるワイシャツとかそういうのを着ていないとできない! 選ばれた者だけに出来る業なのである!
 その業が出来る者と出来ぬ者の隔絶した壁の高さは言うまでもない。
 あまりに非業ゆえに、その業を体得するまでに築かれたぺったんの屍は数しれず! 例え、普通にあるサイズであったとしても、できるとは限らぬのである!!

「今はこれで我慢してください」
 ばーん!
 弾け飛ぶボタン。
 ぺちん、と当たるボタン。
 それだけである。理緒は、すん、とした顔をしている。
「思ってたのと違う」
 理解る。
「ほらほら耐えて敵の攻撃」
 理緒は、タイマーを見やる。敵の攻勢を防ぎきるまでは行かぬだろうと理解しているが、それでもやらねばならない。
 前半のシリアスどこに行ったのだろうと思うほどの落差。

 これは酷いな、と想いながらも理緒は盾として、そして、ばすとばーんの求道者として、この後しっかりサージェに教育するのだろう。
 たぶん。しらんけど――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・アストロロジー
●Your Song
過ちも悲しみも
破壊も滅びも
確かにこの世界に存在するもので
これは覆せない事実で

きっとあなたも間違ってはいない

何一つ痛みのない世界なら
きっと過ちに気付くことも無い
あなたの戦いには意味がある
あなたの運命には意味があった
……こんなことを言えば、きっと嫌がられるのでしょうけどね

正しいあなたがそこにいるのなら
それでも、わたしは『ここ』に立つのです

●アリシアの花
ユーベルコードを起動
強いあなたと比べるでもなく、わたしは弱い
ならばと精神感応で干渉して認識をずらし
破壊の矛先をそらし続けます

アリシア・ホワイトバード
|フラスコの落とし仔《声なき者たち》を率い
人類に仇なす|叛逆者《救世主》
あなたを……処理します

拳銃を向け、引き金を引く
いきものを殺すには十分な武器
|M2《わたし》の頭蓋を砕いて、脳をズタズタに掻きまわすには十分すぎる武器
だけど、これでは死なない……死ねない?

そう……あなたを殺すのは、あなた自身
救いなんて、いらないって、言うのでしょう

だけど……
美しいあなた
わたしはあなたにこれ以上は



 それは歌であったように思えた。
 戦場に在った者は見ただろう。『アリシア・ホワイトバード』の顔に走る亀裂の如き罅を。
 びしり、びしり、と走る罅は、ユーベルコードを使用する度に響き渡る。
 歪んだ音。
 世界と溶け合わぬ不協和音。
 されど、彼女の存在を否定することでしか、世界は存続できない。
「破壊も滅びも、たしかにこの世界に存在するもので、これは覆せない事実で」
 リア・アストロロジー(良き報せ・f35069)は歪んだ音を聞く。

 耳を切り裂くかの如き音。
 けれど、これは彼女の、『アリシア・ホワイトバード』の歌だと彼女は思っていた。
 まちがいではない。
 何一つまちがってはない。
 彼女の懊悩も、彼女の憎悪も、彼女の怨恨も。
「きっとあなたも間違ってはいない」
「なら、破壊を受け入れて。全て、破壊することを。人の生み出したものも。人が作り上げたものも。何もかもわたしたちが捨てられたという事実も!」

 彼女の言葉にリアは瞳を伏せることなく真っ直ぐに見据える。
 その瞳にあるのはユーベルコード。
「何一つ痛みのない世界なら、きっと過ちに気づくこともない」
「痛みなど、忌避すべきもの。傷つけられることのない世界が、それが本来在るべき姿でしょう」
 走る無限に増殖していく戦闘機械。
 世界に叫ぶのは、世界を破壊したいという願い。
『フラスコの落とし仔』たちの願いそのものであった。

 けれど、それは受け入れられないのだ。
 何故ならば。
「あなたの戦いには意味がある。あなたの運命には意味があった」
 きっと彼女は嫌がるだろうとリアは思った。けれど、言わずには居られなかった。
「意味なんて――ないから! 捨てられたんでしょう! 要らぬと言われたのでしょう!! そんな言葉に意味なんて!」
 ない、と慟哭が青空に響き渡る。
 どこまで何もかも吸い込む青い空。
 それを人は求めたのだ。黒き竜巻が埋め尽くす暗澹たる空ではなく。どこまでも澄み切った空を人は求めた。

 だから、それを壊したい。
「正しいあなたがそこにいるのなら。それでも、わたしは『ここ』に立つのです」
 |Your Chronicle(ユアクロニクル)《あなたの足跡》は、きっと意味のあるものであったと、リアは超克の輝き満ちる瞳で見据える。
『アリシア・ホワイトバード』の髪に花々が咲く。
 それは理解できぬものであったことだろう。
 彼女の生み出したオブリビオンのみに開かれたソーシャルネットワークに介入する花。
 それがリアのユーベルコードであった。
 まどろみが襲うのを『アリシア・ホワイトバード』は理解しただろう。

 自分の中に何者かが入り込んでくる。
 それが不快感となって、彼女の瞳を見開かせる。
「強いあなたと比べるでもなく、わたしは弱い」
「弱さを語る言葉なんて! それこそ意味がない!!」
「ええ、そのとおり。でも、『アリシア・ホワイトバード』。|『フラスコの落とし仔』《声無き者たち》を率い、人類に仇なす|叛逆者《救世主》。あなたを……」
 その言葉は喉に支えてしまった。
 吐き出さなければならない。
 意思を込めて言わねばならない。それがどうしようもなく、喉に支えてしまうのだ。

 言う。
 言わねばならない。
 彼女の意志が、最も必要になったのは、その言葉を紡ぐことであった。体が動く。
 迫る無限に増殖していく戦闘機械が、ユーベルコードに寄って認識をそらされた虚空を貫く。
「あなたを……処理します」
 言った。
 言葉は放たれれば後戻りはできない。なかったことにはできない。だから、彼女は銃口を向ける。

 これは自分を殺すには十分な力を持っている武器だ。
 頭蓋を砕き、脳をずたずたにかき回すには十分。ならば――。
 引き金を引いた。放たれた銃弾が『アリシア・ホワイトバード』の眼前で止まる。見えぬ障壁が彼女を守っている。
 回転する銃弾が動きを止めて、大地に落ちるのをリアは見ただろう。

「……これでは死ねない……死ねない?」
「ええ、死ねない。死ねるわけがない。意味無き生命。望まれなかった生命。臨んでいなかった生命。それがわたしたち。だから、死ねるわけがない。銃弾一つで死ねるというのなら、わたしたちは『存在すらしていなかったはずなのだから』」
 びしり、と音が響く。
 ああ、とリアは思っただろう。

 それはやはりあなたの歌。
 あなたが奏でるあなたの歌。それが生きているということ。
 揺れる花をリアは見つめる。
「そう……あなたを殺すのは、あなた自身。救いなんて」
「いらない。わたしにも、わたしたちにも。そんなものなんて」
 いらないのだ。

 それは悲しくも、狂おしく。
「だけど……美しいあなた。わたしはあなたにこれ以上は」
 紡ぐ言葉は青空に溶けていく。
『アリシア・ホワイトバード』の肉体に刻まれていく自壊の痕。それが奏でる彼女の歌すらも溶かして消えていく。
 続く言葉はリアの中に。そして、『アリシア・ホワイトバード』の中に響いていく。交わることのない音。
 されど、交わらずとも音は奏でられる。

 そう、これは『あなたの歌』。
「そして、これが『わたしの歌』――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

夢を叶えようとがんばるのは特権だ
それは誰のものとも限らない
手を伸ばしてみても叶わないかもと怯えて竦む子もいる
キミは、ちょっと違うかな?

●がりがりがりと掘削刃
引き続き[ドリルボール]くんたちに頑張ってもらおう!
通信網の妨害に備えて細部は彼らの自由意思に任せておいて
縦横無尽に戦場を走り回ってマシーンくんたちの連携を力尽くで撹拌しちゃえ!
そのさなかでボクは【第六感】で感じるままに回避しながら相対しよう
そしてその好機もまた第六感で感じ取ってUC『神パンチ』でぜーーんぶっドーーーンッ!!
と青い青い空に打ち上げてあげちゃおう!
どうせ|壊す《壊される》なら楽しもうよ!ほら、笑って!



 破壊こそが『アリシア・ホワイトバード』の、『フラスコの落とし仔』たちの願望であった。
 それはロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)にとって夢であると言い換えることのできるものであった。
「夢を叶えようとがんばるのは特権だ。それは誰のものとも限らない」
 ロニは迫る無限に増殖していく戦闘機械を掘削刃携えた球体たちに任せていた。
 音が響いている。
 砕く音。
 無限に増殖していく機械を噛み砕く音だ。
 その音に紛れて『アリシア・ホワイトバード』の体は自壊に突き進んでいく。別に隠したいと思ったわけではない。

 破壊を臨んでいるのだ。
 ならば、この世界に在るということは自分もまた世界の一部であるということ。これもまた壊すものであるのだから、自壊に恐れなどない。
「手を伸ばしてみても叶わないかもと怯えて竦む仔もいる」
「何の話をしているのです」
 無限に増殖していく戦闘機械は、球体たちが掘削する速度を上回っていく。

 尋常ではない力だ。
「キミは、ちょっと違うかな?」
「夢なんてものは見ないのです。がんばる? 目標達成は、生命の義務です。取り立てて何かを努力することなど必要としない」
 びしり、とまた音が響く。
 ユーベルコードを使う度に自壊してい体。
 ままならないと思ったこともないだろう。けれど、ロニは見ていた。

 破壊を齎さんとする『アリシア・ホワイトバード』は、満ちる憎悪と怨恨のみ。
 ただそれ以外は空虚そのもの。
 理解されることも、救われることも。
 何もかも介在できぬほどに、満ちる憎悪と怨恨に支配されている。
「あははは!」
 だから、ロニは笑う。

 笑って迫る戦闘機械の一撃をかわしながら、戦場を駆け抜けていく。
 視界の端に映る青空は何処までも澄み切っている。
 この荒廃した世界には似つかわしいほどに晴れ渡っている。黒き竜巻の姿も見えない。こんな中で、今自分がしていることはなんであろうかと彼は考えることもしない。
 だって、それって意味ないことじゃない、と彼は言ったかも知れない。
 きらめくユーベルコードが瞳に宿る。
 その瞳で『アリシア・ホワイトバード』を見つめるのだ。
「そういうのをぜんぶ、ぜーんぶ、ド――ンッ!! ってね!」
 放たれるは、神パンチ(カミパンチ)。
 刹那にも満たぬ時間に放たれるのは無限の拳。

 それは戦闘機械すらも巻き込んで青空へと打ち上げる。
「どうせ|壊す《壊される》なら楽しもうよ!」
 ひしゃげる機械。
 砕ける機械。
 されど、砕けぬ憎悪と怨恨。そして『アリシア・ホワイトバード』の肉体。意味がないと彼女は罅走る顔をロニに向けるだろう。
 表情などない。
 あるのは破壊の意志のみ。
 だから、ロニは言うのだ。

「ほら、笑って!」
 望まれなかった生命。望まなかった生命。
 それが歪であるとは言うまい。生命とはそんなもので大別されるものではないと神性は言う。
 奪われるものも、奪うものも、等しく生命。
「だから、笑ってないといけないんだよ。生命は、生は、いつだって苦しみと悲しみを得てこそ喜びと楽しさを感じることのできるものなんだから」
 だから、笑って、と無限のごとく続く拳が彼女の体を高く高く打ち上げる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
自分も、お前も、御託はいらない…!
全て、須らく…!破壊しろ……ディスポーザブル!!

先の戦いで撒き散らした崩壊霊物質を吸い上げ【霊障】を纏い、
ディスポーザブル01、オーバーロード。
『禍戦・劫焔納 甲』同時発動。戦場を大炎熱世界へ変換隔離。

敵が世界を壊しに掛るなら!
自分は世界となって敵の全てを壊しに掛るのだ!!

【|闘争心《怨念》】を熱とし、戦闘機械を熱し、砲火に晒し上げ、
敵の願いによって壊される世界を|意思《超克》と【|継戦能力《戦場ある限り尽きぬ霊物質》】で維持する!

互いの戦いを、破壊を!続けよう!!

ディスポーザブル01念動力操縦。
敵目掛け、呪詛纏う騎兵刀を振るい、折れるまで、折れても
|拳《ブラストナックル》を叩きつける!何度も、何度も、何度でも!!
効かないとか、無意味であるだとか、そんな事はない!

意思を、全力で突き付ける!壊れろと!!壊れてしまえと!!!

……一心不乱に壊そうとすれば、力が籠る。
先も、後も無い。ただ眼前のそれを壊す為に。
強く、強く、強く。

死んでも、壊れても、壊れ失せるまで!



 世界の全てを呪うのではなく、破壊する。
 それだけが己たちの復讐を果たすために必要なものであったのだ。『アリシア・ホワイトバード』は破壊する。
 全て。
 そう、全てだ。世界の垣根すら越えて、人がいるのならば、あらゆる世界に赴いて破壊しようとする。
 オブリビオンを絆ぐスカイネットは、ソーシャルネットワークとなって彼女に応える。
 破壊。
「壊す!!」
 自壊する肉体を省みることなどなかった。

 そんなもの必要なかった。
 自分もまた世界の一部であったというのならば、自分すら破壊して進む。
 無限に増殖していく戦闘機械と共に『アリシア・ホワイトバード』は進む。
「全て、須らく……! 破壊しろ……『ディスポーザブル』!!」
 叫びが聞こえる。
 それは同じ破壊を求めながら、真逆のものを壊そうとしている声であった。
 鋼鉄の巨人が唸りを上げるようにして進む。迫る戦闘機械。それを鋼鉄の巨人は受け止める。
 ひしゃげ、装甲が穿たれ、四肢が砕けていく。
 だが、止まらない。

「敵が世界を壊しにかかるなら!」
 超克の輝きがモノアイのセンサーに煌めく。
 否、その過輝きは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の胸にこそ輝く。
 燦然と輝く黒色の光。
 破壊する。破壊する。破壊する。世界に、その言葉だけが響いていく。
「自分は世界と成って敵の全てを壊しにかかるのだ!」
 禍戦・劫焔納 甲(デッドオーバー・マグナゲヘナ)。
 青空の下、戦場は砲火満ちる大炎熱の世界へと変わる。
 この世界は悪霊そのものであり、故に生きることを許さぬ法則に満ちている。過去の化身と悪霊。
 それだけが存在できる戦場。

 燃えるは闘争心。いや、怨念。
 熱に変わっていく力をもって四肢を穿たれた鋼鉄の巨人は、熱を持って瓦礫溶かし、己の四肢へと変えていく。
 オーバーロード。
 鋼鉄の巨人が咆哮する。全てを破壊する。全て、須らく。あらゆるものを『壊れてしまえ』と叫ぶ。
「互いの戦いを、破壊を!」
「わたしたちの破壊を!」
「続けよう!!」
「妨げるな!!」
 互いの言葉が響く。大地を蹴る。戦闘機械が走る。

 その一撃は強烈なものであった。
 オーバーロードに至った『ディスポーザブル』ですら、砕けていく。
 振るった騎兵刀はへし折れ、宙に舞う。
 槍の如き一撃が機体を貫く。けれど、その度に破壊された機体は戦闘機械すら取り込んで修復していく。
 足が折れたのならば、腕が這うようにして『アリシア・ホワイトバード』に迫る。悪夢のような光景であったことだろう。

 折れた騎兵刀を叩きつけ、投げ捨てる。
 武器がなくなったのではない。
 己の武器は五体全てであるというように拳を振るう。何度も、何度も、何度も。
「無駄なことを! わたしは! わたしたちは!!」
 望まれなかった生命だ。
 望まなかった生命でもある。それは否定しようがない。だからこそ、『アリシア・ホワイトバード』は生きているとさえ言えない。
 そこで『停滞』しているからこそ、この戦場にあって、まともに動くことが出来る。

 けれど、小枝子にとってそれは意味のないことだった。
 攻撃が効かないだとか、無意味であるとか、そんなことはどうでもいいのだ。
 己にとって最も大切なことは何か。
「意志を、全力を突きつける! 壊れろと!! 壊れてしまえと!!!」
 ただそれだけなのだ。

 破壊の権化。
 破壊しか出来ない存在。打撃に意味はない。斬撃に意味はない。
 壊すことが出来るのは無限に増殖していく戦闘機械だけ。されど、小枝子はそんなものを見ていなかった。
 拳を振るう度に思うのだ。

 己の心にあるのは一つ。
 乱されることなく。ただ一つのことに注力する。そうすることで己の拳に籠もる力があることを知っている。
「先も! 後も! ない!! 私を見ろ!! オブリビオン!!!」
 世界ではなく。
 人でもなく。
 己と同じ破壊の権化を見ろと、小枝子は叫ぶ。

 強く、強く、強く。

 それは願うようなものであった。願いだけが在りきであった『アリシア・ホワイトバード』は見ただろう。
 煌めく超克の輝きを。
 願いにも似た祈り。
 されど、破壊の権化は祈らない。
 ただ振るうのみ。籠めた力を、宿る力を、そうするべきではなく、そうしたいと願った一撃を亀裂走る『アリシア・ホワイトバード』に叩きつける。
 その瞳が小枝子を捉える。

 初めて。

「死んでも、壊れても、壊れ失せるまで!」
 その拳は無意味であった。
 ……とは言うまい。意味のないものなど何一つない。望まなかった生命たちも無意味ではなかった。
 礎になったことを慰撫であるというのならば、見当違いであったことだろう。
 けれど。
 それでも、思ってしまったのだ。

「そうであったのならば、わたしも、わたしたちもまた」
 救世主であったのだと。
 望まれたことを果たしたのだと、その祈りの一つであったのだと。
 崩れていく肉体を支えるものなど何一つなくなった白い鳥は、青空に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月06日
宿敵 『🌗アリシア・ホワイトバード』 を撃破!


挿絵イラスト