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アルカディア争奪戦㉖〜赫空に羽ばたく翼

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #帝竜『大空を覆うもの』

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#帝竜『大空を覆うもの』


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●創世の翼
 濃縮された大気が散り、再び凝縮していく。
 この世界の大気そのものである帝竜『大空を覆うもの』は何度も阻止されながら、それでも再び空中庭園へと顕現せんと繰り返す。
 かの帝竜はこの世界の大気全てを消滅させなければ倒す事の出来ない、無敵の存在。
 そんな圧倒的な不死性を持つ帝竜は、アルカディアの玉座に変わらず乞い続ける。
 帝竜ワームの中に感じた『主』の気配。かつて洗脳されて仕えていたがその事はどうでもよかった。
 ただ主の側にいたい――その想いはこの帝竜の根源的な衝動に由来するものなのか定かではない。
 その願いを叶えるために、かの竜はアルカディアを守り続ける。
 世界の根源の一つでもあるかのような帝竜は、その名の通りこの空中庭園を覆い顕現を試みるのであった。

「いよいよアルカディアの玉座へと乗り込んで、戦いも始まってるね」
 騎士猫クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は羽付き帽子を被り直しつつ、集まった猟兵達にそんな風に切り出す。
「周囲四か所から支援を受けるアルカディアの玉座、三つが断ち切られたから最後の一か所の攻略に向かって貰いたい。相手は倒す事は不可能だけど、今回はその顕現を阻止できればそれで私達の勝ちだ」
 そうクーナは言って、今回の作戦を説明し始める。
「撃退すべき敵の名は帝竜『大空を覆うもの』、空中庭園の一つに凄まじく大気が濃縮されていてそこに顕現しようとしているんだ。この帝竜はブルーアルカディア世界の大気そのもので、本気で倒すならこの世界の大気全てを消滅させないと無理なんだ」
 ただ、倒せはしなくても退ける事はできる、とケットシーは付け加える。
「一つ、予知があったんだ。あの場所に辿り着くと、魔力の篭った声が頭に響くんだ。具体的には『私は、もう待ちません。必ず会いに行きますから、今はこれで持ちこたえて……!』って感じらしいけど、その声が聞こえると皆は『赤い霧の翼』を生やした真の姿へと変身し、大空を覆うものを物理化して破壊する能力が得られるんだ。その力を使って十分ダメージを与えれば撃退できるんだけど……猟兵といえどその力を使うと負荷が酷いみたいで、長時間使用はできない。だから変身して一気に最大の攻撃を叩き込む必要がある」
 多分ユーベルコードの一撃が限度だろうとクーナは言う。
「難しい戦いになるだろうけどアルカディアの玉座まであと少しだ。頑張ろう」
 そうクーナは説明を締め括った。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 とうとう向こうから来てくれるようですが、まずは今を。

 このシナリオはブルーアルカディアの『空中庭園』で『帝竜『大空を覆うもの』』と戦うシナリオとなります。
 ブルーアルカディアの大気そのものである大空を覆うものは絶対に倒せませんが、凝縮した大気を散らす事ができれば一時的に顕現を妨げる事が出来ます。
 この戦場に訪れた猟兵達は、頭に響く不思議な少女の声と共に『「『赤い霧の翼』が生えた『真の姿』」に変身し、大気である大空を覆うものを「物理化して破壊する」能力』を得られるようになります。
 ただし、この力はあまりに強大で長時間使用し続ければ猟兵でも体が保たないため、変身と同時に最大最強の一撃を叩き込めみ素早く離脱する必要がありそうです。
 下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……「赤き翼の真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『帝竜『大空を覆うもの』』

POW   :    雷災体現
自身の肉体を「稲妻の【渦巻く漆黒の雲】」に変える。変身中、雷鳴電撃・物理攻撃無効・通電物質内移動の能力を得る。
SPD   :    災害竜招来
自身の【肉体を構成する雲海】を代償に、1〜12体の【様々な災害を具現化したドラゴン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    魔竜真空波
全身を【触れたものを破壊する真空の波】で覆い、自身の【大きさ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●赤き翼は棘のように
 ――その空中庭園の空は夕暮れのように赤く染まっていた。
 どこまでも澄み渡る蒼穹とは異なる、滅びを意味するような不吉な赤。
 幾度となく猟兵が挑み、彼らの活躍により何度も霧散させられ薄れた大気は、再び凝縮を開始し竜の頭部を形作り始めていた。
 何度散らされてもこの場に顕現しようとする帝竜『大空を覆うもの』――この世界の|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》、或いは空や大気そのものであるという言葉に偽りはない。
 猟兵達はその存在を再び散らし、帝竜の顕現を阻止するためにこの地へとやってきた。
 するとグリモア猟兵の語っていた通り、彼らの頭に不思議な魔力の篭った声が響いた。
『私は、もう待ちません。必ず会いに行きますから、今はこれで持ちこたえて……!』
 ――奇妙な感覚と共に、赤い霧の翼が真の姿を晒した猟兵の背から生える。
 赤き翼に宿る圧倒的な力は確かにあの大空を覆うものへの対抗手段になると猟兵が直感で理解、そしてそれが長時間使えるほど負荷は軽いものでは無い事も同時に把握する。
 世界の根源の一つにも数えられるだろう大気――それに干渉し物理化させる力はさながら刺さり外せぬ棘のよう。
 その力を一時借りた猟兵達は、今度こそ帝竜の顕現を防ぐ為に赤き空へと霧の翼を広げ、大空を覆うものへと挑む――!
御形・菘
今回の戦いではカメラは回さない、映像記録には残らないわ
…本来は、自らこの姿を晒す気はないのだけれど
誰かが切望するのなら、その声が聞こえたからには、ちゃんと応えなくてはね

…赤くて綺麗な翼ね
防御が触れた物を破壊するのなら、それはそれで好都合
全身にオーラを纏い致命傷は受けないよう軽減させるけど、負傷することはあまり気にせず、翼を使い全速で突撃して真空の波を突き抜けるわ
その方が攻撃の威力が上がるから

物理的な攻撃を受けるのは初めて?
私は元来右利き…普段の左腕並み、いえそれ以上の力を、今なら右腕でも発揮できるの
突撃を止めず勢いをつけたまま、私の拳で放ちうる最強の一撃、あなたのその大きな頭に叩き込んであげる



●それは記録されぬ姿
 滅びの色に染まりし空中庭園にて、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は赤き霧の翼を生やすと共にその真の姿を曝け出す。
 ラミアの如き腰から下の蛇身、そして異形の右腕は人の形に、禍々しき角や翼は黒から白へと変じ、手足を蛇の如き白鱗が覆っていく。
 それはどこか神聖さをも感じさせる姿。
 だが、普段回している首輪に模したカメラもドローンも今日は停止させており、この戦いは映像記録には残らない。
(「……本来は、自らこの姿を晒す気はないのだけれど」)
 あの謎の声、切望するようなその声は確かに邪神へと届いていたのだ。
 求める者がいるのであれば、
「ちゃんと応えなくてはね」
 普段よりも静かに、菘は動き出した。

 大気そのものである大空を覆うもの。その身体は顕現しつつある頭部だけであっても巨大だ。
 その巨体に真空波を纏い、恐ろしい速度で突撃してくる。
 破壊の真空波は分厚く、けれどその突撃に対し菘はオーラを纏い真っ向から突っ込んでいく。
 背の赤き霧の翼がちらりと視界に入る。
(「……赤くて綺麗な翼ね」)
 赤く綺麗な、だが恐ろしき魔力を宿したそれは強靭な猟兵であっても長時間の使用は不可能な代物。
 オーラと真空波がぶつかり、次の瞬間に菘の体は真空波の領域へと侵入すれば、次の瞬間には褐色の肌が傷だらけとなり鮮血が伝い真空波の中へと飛散していった。。
 大気そのものの巨体を誇り、そしてそのサイズに比例した威力の触れたものを破壊する真空波は菘が全身に纏ったオーラをも貫通し、傷を負わせていく。
 ――致命傷こそ防げているが長くは持たない。
 だから、負傷を気にせずに速度を上げる。白き悪魔の如き翼と赤き霧の翼を力強く羽ばたかせ、帝王竜の纏う真空波を一気に突っ切りつつ真空波越しに赤き翼より霧を浸透させ物理化させる。
 加速する菘の傷は既にイエロー、いやレッドゾーン。近づけば近づく程に強力になっているように感じる真空波にばらばらに引き裂かれそうだ。
 しかしその姿を変えても菘の――邪神のしぶとさに変わりはない。
 その負った傷/苦境こそが、彼女の最高の一撃を引き出す。
 ユーベルコード【ラスボスレッドゲージモード】、真の姿に新たに纏った禍々しきオーラに、ほんの一瞬物理化された帝竜が怯む。
「物理的な攻撃を受けるのは初めて?」
 返答を期待しない静かな声色で問いつつ、菘は右の拳を握り締める。
 普段の彼女の邪神の如き姿では、異形の左腕の一撃が全てをねじ伏せるかの如き最大の威力を発揮しているが、元来彼女は右利きだ。
 真の姿を晒した今では普段の左腕並み――それ以上の力を右腕で発揮できる。
 真空波を突っ切る速度を更に加速させ、禍々しきオーラを纏わせた拳で帝竜の頭部を殴りつけた。
 負傷に応じ彼女の力は増強される、それを最大限発揮して放たれた一撃に、巨大な頭部が大きく向きを変え勢いのまま空中庭園に叩きつけられる。
 持てる全力を賭した菘の強烈な一撃は、赤き霧の翼の力を借りて大気そのものに通じたのだ。
 だが、ここまで。赤き霧の翼を行使し全身を刻まれたような状態の菘に追撃は困難。
 故に後続の猟兵に託し、菘はこの戦場を離れるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニィエン・バハムート
帝竜はきっちり殴っておかないと私の精神衛生上よろしくないんですのよね。
誰が最強の竜王なのかを証明して差し上げなくては…ですの。

私の主な力は地震と雷…災害竜と同質の力では攻撃の効果が薄そうですわね。ならば、ここは純粋な『力』を叩きつけてやるだけですの!

敵の攻撃は【激痛耐性】で耐えながら自身の【封印を解く】ことで巨大な真の姿となり、UCで世界すらその身で支え続ける圧倒的な膂力を獲得。
その全てを【蹂躙】する【限界突破】した【怪力】を振るうことで大空の大気を纏めて吹き飛ばす威力の【衝撃波】を発生させて攻撃。

例え今は倒しきれなかったとしても!
次は全てを消し飛ばしてみせますわ!竜王バハムートの名にかけて!



●大気に挑みし世界魚
 白き蛇の娘に続き、赤き空の戦場へとやってきたのは竜の性質を宿したメガリスボーグがひとり。
「帝竜はきっちり殴っておかないと私の精神衛生上よろしくないんですのよね」
 彼女、ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)にとっては帝竜は放置できない存在。
 |竜王《自称》である彼女がいるのに帝王を冠する竜がいるなど見過ごせるわけがないのだ。
「誰が最強の竜王なのかを証明して差し上げなくては……ですの」
 そんな彼女の気配を察知し、大空を覆うものが召喚した災害の竜の群れが彼女目掛け高速で突っ込んでくる。
 竜の群れと接触するまでの数瞬にニィエンは考える。
 彼女の主な力は地震と雷だ。今まさに向かってきている蛇のように細長いあの災害を擬竜化したような竜の群れと恐らく同質の力であり、それでは攻撃の効果は薄いだろう。
 ならば、
「ここは純粋な『力』を叩きつけてやるだけですの!」
 真っ向勝負を選び、ニィエンは躊躇いなく真っすぐに災害の竜へと飛び込んでいく。
 強引に竜の隙間を突破せんとあの巨大な顕現しつつある竜の頭部目掛け駆けるニィエン。
 だが、災害の竜は直ぐに対応し鋭き牙をニィエンの体に突き立てる。全身に奔る激痛――それを嚙み殺しながら自身に掛けられた封印を解き、ニィエンは真の巨大なる姿を晒す。
 それは伝承でも地を揺らすという存在――黒く大きな体を有し、頭部は何もかもを喰らいそうな程に体に不釣り合いに大きい。
 青い翼は小さく手足も細く、どちらかと言えば水中を得意としそうなその大鯰のような姿は彼女の厭うものでもある。
 そしてその背の翼に並び、赤き霧の翼が生えた。大気を物理化する、創世の領域にあるような力を感じつつ、巨大な世界魚の姿を晒したニィエンはユーベルコードの力を解放する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
 絶叫、それは世界魚バハムートの力を敵を蹴散らす為に発揮する事を示すかのような声だ。
 世界を自らの身体で支え続けると伝えられる圧倒的な膂力――それを敵を蹂躙する為に行使すればどうなるか。
 ニィエンの尾が災害竜の一体の頭を叩き潰し、その怪力で群がる竜を容易く吹き飛ばす。
 世界の一部である災害ごときが、世界丸ごとを支える力に敵うはずもない。
 ただでさえ巨大なる世界魚の膂力、その限界を超えた怪力から放たれた衝撃波は赤き霧を纏い、大空を覆うものを構成する大気に浸透し物理化させながらそれを吹き飛ばす。
「あれを耐えるのですか……」
 大空を覆うものの身体は巨大なニィエンをしても更に巨大、数キロ規模の巨体全てを吹き飛ばすには至らない。
 それでも物理化して吹き飛ばされた部位の修復は酷く遅い。このまま畳みかける事ができれば霧散させる事は可能であろう。
 だが、赤き霧の翼の力を使用した反動がニィエンを殴りつけるかのように襲い掛かる。
 例え頑丈なニィエンでもこれ以上の戦闘続行は不可能だと悟った。
「例え今は倒しきれなかったとしても! 次は全てを消し飛ばしてみせますわ!」
 竜王バハムートの名にかけて――そう力強く宣言し、ニィエンは蒼き小さな翼を羽ばたかせ、戦場を離脱したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

田抜・ユウナ
真の姿…グリモアと同化した両眼『千里眼』が顕現。
『妖刀封じの留め金』を許容一杯まで<リミッター解除>し、『悪刀の怨念』をまとって限界まで身体強化。埒外の<視力>で攻撃を<見切り>、回避して肉薄したら、渾身の正拳を叩き込む。
自分の翼で飛ぶなんて生まれて初めてだけど、これも<視力>で構造・原理を<見切り>、自らの<功夫><戦闘知識>に落とし込む。

敵UCは【七織の鞘】で対策。
…わかってる。相手は格上、私の力で折れる言霊ではない。
だから名折れの<呪詛>は、雷災体現の「体」の一字に集中。「体」→「休」へと言霊をねじ曲げ、完封とはいかなくても活動を鈍らせされたら、と。



●探索者は雷災の名を折り
 災害の竜が蹂躙され、崩壊した空中庭園へ現れたのはエルフの探索者、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)。
 既に赤き霧の翼を背に広げ真の姿を晒した彼女の両眼はグリモアと同化し、赤き千里眼が顕現している。
 その瞳に映される景色は一面の赤、大気そのものである大空を覆うものは薄いながらもこの空中庭園全体に広がっていて、渦巻く黒雲へと変化しつつある竜の頭部はそれが濃縮されたものだと視覚的に理解できる。
 封じられし妖刀の柄を強く握る。これ程巨大で強大な相手にどれほど力が通じるのか――不安を押し殺すように、妖刀の封印を許容範囲の限界まで解除する。
 封印解除により妖刀より溢れ出した悪刀の怨念は所持者たるユウナへと纏わりついて、そこに渦巻く漆黒の雲から雷撃が放たれる。
 千里眼でそれを見切り、瓦礫を蹴ってそれを回避しつつ黒雲の帝竜の頭部へとユウナは駆けだす。
 叩きつける嵐の如く、連続で降り注ぐ稲妻は恐ろしく早い。埒外の視力を持ち怨念で身体能力を強化したユウナであっても回避はかなり際どい。
 砕けた瓦礫を足場に連続で跳ねながら、降り注ぐ雷撃の隙間を見出して背の赤き翼を羽ばたかせ一気に飛び立つ。
 自身の翼で飛び立つのは生まれて初めてとなるが、彼女の眼は最も効率的に羽ばたける構造や気流をも見出していて、それを彼女自身の功夫と豊富な戦闘経験で実現してみせる。
 手の届く距離にまで迫った大空を覆うものの頭部を前にユウナは思考する。
(「……わかってる。相手は格上、私の力で折れる言霊ではない」)
 ユーベルコード【七織の鞘】、法力を籠めた鞘を用いた呪術による一撃で相手の名とその霊威や能力へ干渉するそれは、赤い霧の翼をもってしても大空を覆うものという強大な存在を折る事は出来ないとユウナは直感していた。
 故にその呪詛を一点に集中させてユーベルコードを起動する。
『七織は名折り。名折れたもれと唱えれば、名無し形無し能も無し』
 詠唱と共に、鞘より溢れた怨念を纏った拳を大空を覆うものへと叩きつけた。
 赤き霧は大空を覆うものを物理化させ、同時に呪術が大空を覆うもののユーベルコードへと干渉、すると渦巻く雷雲の漆黒が薄れていく。
 ――大空を覆うもののユーベルコード【雷災体現】、その『体』を『休』へと捻じ曲げて本来の能力を歪めたのだ。
 一部だけであるから完全に能力が失われた訳ではないが、空中庭園へ降り注ぐ雷の勢いはかなり減じている。
 後方から大きな鳥のような何かが飛んでくる気配を感じる。別の猟兵だろうか。
 だが、それを振り返る余裕はない。赤き霧の翼を使った反動は、ユウナの身体を苛み始めている。
 大空を覆うものから離脱し空中庭園へと着地したユウナは、赤き霧の翼を解除して戦場を離脱するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルキヴァ・レイヴンビーク
赤い霧の翼が両腕に絡む様に広がり
一鳴きすれば我が身は本性たる人間大の巨大鴉へと変貌する
漆黒の翼に紅き羽を重ね、帝竜目掛けて飛び立ちマショウ

さてと、最後に一撃カマして置きマショウかね?
聞こえマスか? この青き大空に散った者の声
屍人帝国の君主達、数多の魔獣、そして偉大なる名も無き勇士
彼らの無念、悔い、怒り、悲しみ
大空たる貴方は受け止める覚悟はお有りか?
この負たる感情を此処に集め、この鴉が全て叩き付けマショウ
闇にて身を覆い、全力速度にて帝竜に吶喊――貫きその姿全て吹き飛ばす!

最早ユーは顕現するだけの力も残されていないデショウが…
暫くこの世界の大気で在られる以上、大人しくして頂かねば、ね?



●宵に鴉は飛び立って
 落雷降り注ぐ空中庭園を駆けていくエルフの少女の背を、退廃の色を纏うルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)は灰の瞳を細め見つめていた。
 渦巻く黒雲から絶え間なく放たれる雷鳴と電撃は空舞うもの、そして近づかんとするもの全てを撃たんとしているかのようだ。
 その雷を突破して一撃を喰らわせる――その難しさを思い、だがルキヴァは不敵に笑む。
「さてと、最後に一撃カマして置きマショウかね?」
 ワタリガラスの妖魔である彼の腕に絡みつくようにして赤き霧の翼が広がり、鴉の一鳴きと共にルキヴァの身体は本性たる巨大鴉へと変貌する。
 濡羽色とも例えられる漆黒の翼に重なる赤き霧、その力は猟兵が長時間制御しきれるようなものではない感じながらルキヴァは巨大なる帝竜へと静かに問う。
「聞こえマスか? この青き大空に散った者の声」
 それはルキヴァが感じ取るこの空に満ちる負の感情。
 屍人帝国の君主達、数多の魔獣、そして偉大なる名も無き勇士――この空に散っていった彼らの無念、悔い、怒り、悲しみ。
 この世界の大空たる貴方は、それらを受け止める覚悟は有るのか、と。
『……わかってくれ わたしは『主』の側にいたいのだ……』
 竜の答えは問いそのものに答えるものではなく、ただ自身の望みを、"主”とやらへの渇望を訴えるものだけだ。
 ――ある意味それは自然現象の有り方としては正しいのかもしれない。自然現象は小さき生物の想いなど気にも掛けず、そのまま在るように在るだけなのだから。
 けれどルキヴァはその気にも掛けられない声――感情より生じた闇をユーベルコード【遺恨の代行者】によりこの場へと集め束ねていく。
 生者死者問わず、アルカディアの玉座への空中庭園に集う大気のように負の感情が集い、ルキヴァを覆っていく。
「――アナタ達の怨み悔やみ、ワタシが晴らしマショウ」
 灰から緑へと変じた眼を光らせ闇を身に纏い、赤い霧を纏った黒翼を羽ばたかせて大鴉は帝竜目掛け全速力で飛び立った。
 帝竜の変じた渦巻く黒き雷雲はルキヴァへと雷を降り注がせるが、黒き大鴉はそれを躱しながら帝竜へとぐんぐん距離を詰めていく。
 その途中、エルフが拳を叩き込むのと同時に雷雲の黒が薄れ雷の勢いが弱まる。
 その隙を見逃さずルキヴァは一気に加速して雷雲にその体を飛びこませる――それはあらゆる物理攻撃を無効化し雷雲そのものと化している大空を覆うものに対して酷く無謀な行いにも見て取れる。
 だが、漆黒の翼に重なった紅き霧が無敵の帝竜を物理化させ、干渉可能な存在へと貶めており、負なる感情の闇を纏い大鴉は黒く渦巻く雷雲を一直線に突っ切った。
 そして、ルキヴァが抜けた瞬間、黒雲は彼の軌跡に沿って弾け薄れていく。
「最早ユーは顕現するだけの力も残されていないデショウが……暫くこの世界の大気で在られる以上、大人しくして頂かねば、ね?」
 ルキヴァは確かに手応えを感じていた。
 だが、
『……わたしは『主』の側にいたいのだ……』
 低く大空を覆うもののは呟いて、再び空中庭園の一角へとしつこく濃縮せんと動き始めていた。
 追撃にかかるべきなのだろう。だが赤き翼の反動は大きく、これ以上の戦闘は不可能だとルキヴァの身体は警告を発していた。
 赤き霧の翼を解除し、大鴉は自前の漆黒の翼を羽ばたかせて大空を覆うものから離脱するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
ロランさん(f04258)と挑みます。

ええ、行けます。
誰の声か分かりませんが、この翼と変身……使わせて頂きましょう。
時間もありません。
自前の翼も使い、全速力で【空中戦】を挑みます。

先鋒が来ました。
炎の【属性攻撃】や【ブレス攻撃】を用い、ロランさんと連携してドラゴンを牽制します。
倒せなくても構いません。
少々の攻撃は【激痛耐性】で耐え、とにかく突破して空を覆うものの所に向かいましょう。
上手く行けば【全力魔法】のユーベルコードをロランさんの錐が空けた穴に撃ち込み、内部から出来る限りの広範囲を【焼却】してしまいます。

ええ、上手く行けば良いのですが……変身を解き、手を取って助け合いながら離脱しましょう。


ロラン・ヒュッテンブレナー
ハロちゃん(f13966)と連携して顕現阻止なの

この声がグリモアさんの言ってた…
ハロちゃん、行けそう?
ぼくも、行けるよ
(上着を脱ぎ捨てて狼型の月光を纏って赤い翼を生やした真の姿へ)

空を4つ脚で走る様に駆けていくよ
来たよハロちゃん、ドラゴンが
UC詠唱、大量の天狼の魔剣【ルプス】を生成
ハロちゃんの炎に合わせて長剣で切り裂き、レイピアで炎を誘導し、大剣で防御してたたき落とすよ
数多くの戦場を共にしてるコンビネーションを見せるの
脚と翼を止めずにまっすぐ突き抜けよう!

すべてを大剣にしてぼくたちの前で巨大な錐の様にして、そのまま大空を覆うものを貫くの!

やったよ、ハロちゃん
手を繋いでそのまま離脱なの



●刃と狼は大気に抗う
 再び空中庭園の大気が集束、濃縮を開始せんとする中、二人で空中庭園へとやってきたハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)の頭に魔力の籠った不思議な声が響く。
 この力で今は持ち堪えて――そう願う声は少女のような優しき声。
「この声がグリモアさんの言ってた……」
 ハロの頭に響いた声は、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)という人狼の少年も聞いていたようだ。
「ハロちゃん、行けそう?」
 問うロランに対し、
「ええ、行けます。ロランさん」
 ハロは首肯する。
「誰の声か分かりませんが、この翼と変身……使わせて頂きましょう」
 声と共に背に生えた赤き霧の翼に視線をやって、ハロは真の姿を開放する。
 少女の手足が赤竜のそれへと変わり、そして赤い霧の翼と赤竜の翼を同時にばさりと広げる。
「ぼくも、行けるよ」
 赤竜の姿へと変ずるハロと並ぶように、上着を脱ぎ捨てて狼の月光を纏うロランも背に赤き翼を広げている。
 二人は翼を広げ、帝竜『大空を覆うもの』へ最後の一撃を喰らわせるために空中庭園の床を蹴り、滅びの色の空へと飛び立った。

 最高速度で飛翔するハロ、ロランも纏う狼型の月光の形に合わせるかのように手足で空を蹴って空を駆けていく。
 赤き翼を宿す負担も相当なものだ。何れにせよ時間を駆ける余裕がない事は明白で、急がねばなるまい。
 そんな二人を認識した帝竜は十二の災害の竜を二人に向けて放つ。
 十二の災害竜はバラバラの軌道で恐ろしい速度で逃げ場を封じるよう迫ってくる。
「来たよハロちゃん、ドラゴンが」
 ロランの呟きにハロはこくんと頷き、
「先鋒が来ました。それでは――行ってきます」
 最高速度で翼を羽ばたかせるハロ、それを迎撃するように暴風と豪雪、そして雷の災害を現したかのような龍が向かってくる。
 大きく息を吸い、赤竜の火炎ブレスで向かってくる災害竜を牽制する。それに龍の速度は緩むが、空へ咆哮すると同時に空からの雷がハロを撃つ。
 雷に焼かれる苦痛に耐えつつハロは速度を緩めず災害竜の竜の横をすり抜けそのまま加速し引き離していく。
(「やはり倒し切るのは難しいですね」)
 ――あの災害の竜達は片手間に倒し切れるものではない。
 故にハロはブレスでの牽制、足止めに留めんとするが、恐らく対処としてはそれで正しいのだろう。
 しかし牽制だけでは振り切れそうにない、そう判断したロランはユーベルコードの詠唱を紡ぐ。
「電脳空間アクセス。剣戟プログラム起動。天狼の魔剣【ルプス】生成、プログラム同期。オペレーション【狩狼】開始」
 低く抑揚のない人工知能のような声でロランが詠唱すれば、彼の身に着けていた天狼の魔剣【ルプス】が131本複製される。
 元々その魔剣は破邪の結界を剣の形にしたものだ。故に複製したそれらを変形させ、レイピアと大剣、そして元の長剣の三種の刃がロランの周囲に展開する。
 ハロの放ったブレスの火炎に合わせ、念力で操られる長剣が災害の竜を切り裂いた。更に炎はレイピアに導かれるまま、左右から挟撃せんとする災害の竜達に叩きつけられ、速度が僅かに緩んだ突撃を大剣が防ぎそのまま切り返し叩き落した。
 阿吽の呼吸は数多くの戦場で共に戦ってきた中で鍛えられたコンビネーションによるもの。
 火炎と三種の剣を操り災害の竜の攻撃を防ぎ追撃を振り切って、ロランとハロは手足翼を止めず減速無しに大空を覆うものへと迫っていく。
 ――一刻も早く突破し、あの帝竜を討つために。
 その意志の通り、二人は大空を覆うものの眼前へと到達する。
 攻撃の為に速度を止める、そんな選択肢は二人にはない。
「いくよ、ハロちゃん」
「ええ、上手く行けば良いのですが……」
 予め打ち合わせていた通り、ロランの複製剣が全て大剣の形を取り、二人の正面に束ねられ鋭い錐を形成する。
 赤い霧の翼の力を乗せた複製剣の巨大な錐は、ロランとハロ二人の道を切り開くかのように大空を覆うものを物理化させながらその内部まで深々と食い込んだ。
 だが、災害の竜への迎撃で力を使っていたからか、その錐の一撃では致命傷には届かないようで大空を覆うものの活動は止まらない。
 ――しかし補い合うのが二人と言うもの。
 赤い霧の翼の力を全開にしたハロが、全魔力を籠めて封印を解除しつつユーベルコード【インフェルノ・ブリンガー】を起動する。
「今こそ命を燃やす時……受けなさい! インフェルノ・ブリンガー!!!」
 放たれた球状の業火は赤い霧の力も合わさって、大空を覆うものを内側から物理化させつつ焼き払っていく。
 元々超自然的な物すら燃やし尽くすとされる炎だ。いくら大気そのものとは言え物理化した状態で焼かれぬ道理はない。
 奥深くまで抉られ、更に内側から焼き尽くす火炎。その二つが決め手となり、大気そのものたる大空を覆うものはとうとう限界を迎えてしまう。
 その手ごたえを感じた二人、ハロの手をロランの狼の手が取る。
「やったよ、ハロちゃん」
 その言葉にハロも笑んで返し、そして崩壊を始める大空を覆うものの体内から外へと赤竜の翼広げたハロが引っ張る形で脱出する。
 大気へと溶けるように消失していく大空を覆うものから脱した二人は、真の姿を解除すると共に空中庭園へと着地する。
 狼の少年と剣の少女が手を取り合いながら二人で見上げた空からは不吉な色はすっかり去って、そこには猟兵達の勝利を祝福するような青が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年10月10日


挿絵イラスト