アルカディア争奪戦㉖〜大気に抗う狂気
●大気と魔力が凝縮されていく
アルカディアの玉座に近い空中庭園。そのひとつに凄まじく濃密な大気が凝縮されていた。
それはこの世界の大気そのものである帝竜『大空を覆うもの』であった。
世界全ての大気であるかの帝竜は、つまりこの世界の大気全てを消滅させなければ倒す事の出来ない無敵の存在。
そんな圧倒的な不死性を持つ帝竜は、ただ空中庭園でアルカディアの玉座に向かって何かを乞うていた。
『……わかっている 故にわたしは アルカディアを護る……だけど この戦いが終わったら 行かせてくれ……』
ただ虚ろに、何かに操られるかのように。
『わたしは洗脳されて『主』に仕えていた……だが そんな事はどうでもいい……わたしは『主』の側にいたいのだ……』
大いなる帝竜のいとまごいに、誰も答えを返す者はいなかった。
「いよいよアルカディアの玉座へと乗り込んで戦いも始まってるね」
グリモアベース、男装の騎士猫クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は集まった猟兵達にそんな風に切り出した。
「アルカディアの玉座は周囲四か所から支援を受けていて、それを断ち切らなければ攻略する事は難しい。皆にはその一つの攻略に向かって貰いたいんだけど……まず言っておくと、その敵を倒す事は不可能だ」
そうクーナはばっさりと言って、今回の作戦を説明し始める。
「空中庭園の一つに凄まじく大気が濃縮されている場所があってね。皆がいくとそれは帝竜『大空を覆うもの』として姿を現す。で、この帝竜はブルーアルカディア世界の大気そのもので、本気で倒すならこの世界の大気全てを消滅させないと無理で、当然そんな事できる訳がない」
だから今回は退けるだけになる、とケットシーは付け加える。
「大気が濃縮されてるんだけど、それと一緒に魔力もこの場所に濃縮されてるんだ。それを利用してユーベルコードを強化すれば大気そのものである大空を覆うものにダメージを与える事も不可能じゃない……と、思う。けれどそれをやる場合は狂気に駆られてしまうみたいで、言葉が全部ベルセルク言語……帝竜ベルセルクドラゴンとかが話してたような感じになっちゃうみたいなんだ。でもダメージ与えて散らす事ができれば支援は断ち切れるから、何とか頑張ってほしい」
難しい戦いになるだろうけど頑張ってね、そうクーナは締め括ると灯篭のグリモアを取り出して、猟兵達を濃密な大気の空中庭園へと転移させた。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
とても忠誠心の高い魔竜、もとい帝竜。
このシナリオはブルーアルカディアの『空中庭園』で『帝竜『大空を覆うもの』』と戦うシナリオとなります。
ブルーアルカディアの大気そのものである大空を覆うものは絶対に倒せませんが、凝縮した大気を散らす事ができれば一時的に権限を妨げる事が出来ます。
また、世界中の大気の凝縮に伴い魔力も凝縮されている為、それを吸収してユーベルコードを強化すれば大気そのものである大空を覆うものにもダメージを与えられるかもしれません。
ただし、それは同時に力ゆえの狂気をも孕みます。具体的には狂気に冒されると言葉が|ベルセルク言語《句読点と改行が使えない》になってしまいます(リプレイ上でも台詞はそう描写します)。
下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス:ベルセルク言語でプレイングを書く。
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それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜『大空を覆うもの』』
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POW : 雷災体現
自身の肉体を「稲妻の【渦巻く漆黒の雲】」に変える。変身中、雷鳴電撃・物理攻撃無効・通電物質内移動の能力を得る。
SPD : 災害竜招来
自身の【肉体を構成する雲海】を代償に、1〜12体の【様々な災害を具現化したドラゴン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 魔竜真空波
全身を【触れたものを破壊する真空の波】で覆い、自身の【大きさ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
銀山・昭平
端的に言えばおらたちも雲海の魔力を吸い上げてこのドラゴンを追い払えばいいんだべな楽勝だべなこういう場合はおら自身の強化も最重要だべが皆で協力できれば最高だべなという訳で銀山流即席絡繰術弐式で魔力を効率よく集める蒸気絡繰を作り上げておらや他の猟兵たちを強化するべなそしておら自身もたっぷりと魔力を吸って更に武器改造と防具改造で装備を強化してこいつに対抗できるだけの力を得るべなあとはついでに近づいてきたなら咄嗟の一撃や暗殺で高威力の一撃を叩き込んで眼の前のドラゴンをぶちのめしてやるべやるべやるべおらはやるべ思いっきり狂気に飲み込まれてるべがとりあえずアレンジマスタリング歓迎ですよろしくおねがいするべ
数宮・多喜
ちょっと待てなんだこの思考の奔流はよぉうかうかしているとこのまま薬とも毒ともつかねぇ魔力を吸い込んでほらもうおかしくなってらぁやっぱ毒かコレはいや決めつけるのは早計だな何とかモノにして対抗手段を探さねぇとつってもこんな言葉遊びにもなりそうにない思考と言葉で雲海を相手取るのは不可能か異や不可能じゃねぇむしろこの言葉の奔流こそ思念を紛らす絶好の隠れ蓑って奴だなそうと決まりゃあ後は楽なもんさ立て板に水まな板に来いってこれは違ったかなそもそも鯉だ多喜はアタシだなもとい滝を登っても竜にすらならねぇがそもそも奴さん最初から竜だったかともあれこのコミュ力頼りの喋り倒しに載せ今はなんどきだと問いつつ電撃放つよ
エリー・マイヤー
魔力ですか。
そういう力学的法則無視気味のよくわからんオカルトパワーって、
個人的にはあんまり信用できないんですが…
まぁ四の五の言っている場合じゃありませんよね。
ということでありがたく使わせてもらいましょうか私のこの圧倒的念動力に凝縮された魔力を混ぜこんで使えば最強×最強でさらに最強の魔動力の爆誕ってわけですねヤバイですなんかちょっとIQ下がってきた気がしますよくわかりませんが今ならこの念動ハンマーならぬ魔動ハンマーでなんかバチバチ言ってるあの雲っぽいやつを一撃粉砕できるってことでしょうかできるってことですねそれじゃ魔動力で敵の攻撃を大気ごと吹き散らして阻止しつつ叩き込んでヒャッハーぶっとばせー
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
なんかもう色々言いたいことはあるんだけどとりあえず今回の戦争変な力を取り込んで戦う事多くて面倒なんだけどとりあえず何とかしようか向こうが雷雲で主な攻撃が電撃ならこっちも電撃で対抗したら体に流れる電流が減ってダメージを軽減できるよねついでに大気を散らすのが目的だから【轟嵐雷駆】で電撃を纏いながら突っ込んで吹き飛ばすのがいいかなそれはそれとしてこいつ倒せないしまたどっかで戦わなきゃいけないんだろうけど次もこんなことになるの嫌だなあまあそんなこと考えてても仕方ないしさっさと終わらせようか主とやらの所に行きたいんだったらさっさと消えてもらうよ
ルキヴァ・レイヴンビーク
凝縮された魔力とやらを吸って吐いての深呼吸即ちベルセルク化と面白いそもそもこの鴉は狂気じみた性格をしていると知人に評判デスので大した変わらない気も致しマスが成る程魔力も頭の回転も早くなってきマシタねさて狩りをスタート致しマショウUC発動おいでませ我が眷属達お前達も鳴き声通常の10倍くらい喧しいデスよ魔力の影響デスかそうデスかさぁあの召喚ドラゴン達に向かって飛べ啄め闇にて災害をも覆い尽くし巻き起こす強風にて奴の雲海諸共吹き飛ばせその間にワタシは闇の魔力集中させた対の片鎌槍にて奴のビッグなヘッドを切り裂きマショウかワタシは鳥デスから雲を切り裂き飛ぶなんて当たり前の事なのデスよ
…舌の筋肉攣りそうデス
●|狂戦士達《ベルセルク》は大空に挑む
酷く濃密な大気に満ちた空中庭園へ猟兵達はやってきた。
(「魔力ですか」)
到着するなり煙草に火をつけつつ周囲を確認するエリー・マイヤー(被造物・f29376)はフラスコチャイルド、この濃密な大気の清浄さは毒にすら感じられるほど。
煙草越しに汚染した空気を一服し、この戦場の特徴について思考を巡らせる。
彼女は念動力を操る猟兵ではあるが、魔力という分野についてはよく分からずあまり信用していない。
力学的法則無視気味のよくわからないオカルトパワーーー魔力とはそんな認識だ。
このアルカディア争奪戦を駆け抜けてきたキマイラのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は微妙に何かを言いたそうな顔で形を成し始めた竜の頭部を見上げる。
携帯灰皿に灰を落とす。
「まぁ四の五の言っている場合じゃありませんよねということでありがたく使わせてもらいましょうか」
普段のクールでアンニュイな雰囲気のままエリーが一息に呟く。魔力はとうにエリーの身体を巡っている。
「端的に言えばおらたちも雲海の魔力を吸い上げてこのドラゴンを追い払えばいいんだべな楽勝だべな」
ドワーフの銀山・昭平(田舎っぺからくり大好き親父・f01103)もとっくに魔力をキメて言動がベルセルク言語化している。
「こういう場合はおら自身の強化も最重要だべが皆で協力できれば最高だべなこの絡繰を使えばお前なんてイチコロだべところでこれどう使う」
呟きながらユーベルコード【銀山流即席絡繰術弐式】を起動した昭平が掃除機のような蒸気絡繰を召喚してさくっと怪しげなスイッチを押してしまう。
その蒸気絡繰の使用法は単純、ただでさえ濃密な周囲の魔力を効率よく集め、猟兵達がより魔力を取り込み易くするためのもの。
「ちょっと待てなんだこの思考の奔流はよぉ」
宇宙カブに乗って空中庭園へやってきた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)も息を吸った瞬間に加速していく思考に思わず低く呟く。
「うかうかしているとこのまま薬とも毒ともつかねぇ魔力を吸い込んでほらもうおかしくなってらぁやっぱ毒かコレはいや決めつけるのは早計だな何とかモノにして対抗手段を探さねぇと」
思考全てが口から流れ出ていく、垂れ流さずにはいられない異様な衝動、それこそがこの膨大な魔力を吸収した代償。
蒸気絡繰の吸引力に引かれたか大空を覆うものが召喚した災害の竜十二匹が寄ってきているが些事だろう。
「面白いそもそもこの鴉は狂気じみた性格をしていると知人に評判デスので大した変わらない気も致しマスが成る程魔力も頭の回転も早くなってきマシタねさて狩りをスタート致しマショウ」
大きく息を吸って、吐いたオオガラスの妖魔、ルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)も一深呼吸でベルセルク化している。
「なんかもう色々言いたいことはあるんだけどとりあえず今回の戦争変な力を取り込んで戦う事多くて面倒なんだけどとりあえず何とかしようか」
ペトニアロトゥシカもばっちり魔力を取り込んで、そして駆け始めた。
災害の竜の群れが猟兵達に襲い掛かり、鴉の妖魔が対抗の為に行動を開始。
「我が眷属達力を貸して下サイおいでませ我が眷属達」
普段のヘラヘラした雰囲気はそのままにルキヴァが狂気じみた速度で滑舌良く詠唱すれば、ユーベルコード【箱船の鴉達】により108羽の大鴉の群れが召喚されガアガアやたら調子良く鳴く。
「お前達も鳴き声通常の10倍くらい喧しいデスよ魔力の影響デスかそうデスかさぁあの召喚ドラゴン達に向かって飛べ啄め闇にて災害をも覆い尽くし巻き起こす強風にて奴の雲海諸共吹き飛ばせ」
抑揚のない早口でルキヴァが指示すれば、災害の竜の群れに大鴉の群れが、殺到する。
濃密な大気の魔力で強化された大鴉、特にこの場に満ちる風の魔力は酷く相性がいい。
一撃離脱で龍を啄み瞳を潰し鱗を剥ぎ取って、巻き起こす暴風は竜を押し流し同士討ちへと導いていく。
大鴉の群れと共に駆け出すのは昭平と多喜、膨大な魔力を雑に武器防具の強化に使用した昭平の前に災害の竜が飛び出してきて、
「眼の前のドラゴンをぶちのめしてやるべやるべやるべおらはやるべ」
対する昭平は魔力で改造強化したレンチで殴り飛ばし、その上を宇宙カブが瓦礫をジャンプ台に大ジャンプ。
「つってもこんな言葉遊びにもなりそうにない思考と言葉で雲海を相手取るのは不可能かいや不可能じゃねぇむしろこの言葉の奔流こそ思念を紛らす絶好の隠れ蓑って奴だな」
会話など通じなさそうな災害竜の突進を空中で躱しながら流れる思考を口にしつつ、宇宙カブを加速させ大空を覆うものへと距離を詰めていく多喜。
火山の噴火の如きブレス、竜巻のような暴風が続いて襲い掛かるが多喜の言葉は絶え間なく続き、
「そうと決まりゃあ後は楽なもんさ立て板に水まな板に来いってこれは違ったかなそもそも鯉だ多喜はアタシだなもとい滝を登っても竜にすらならねぇがそもそも奴さん最初から竜だったか」
軽く冗談を交えながら思い切りよく宇宙カブを跳ねさせて回避、竜の背にタイヤを噛ませて加速。めぐる膨大な魔力がサイキックを強化しているのかもしれない。
それとは関係なしに今日はサイキックの調子はかなり調子がいいようにも思われる。
災害の竜の群れが殴り飛ばされ大鴉の群れに阻まれ、生じた隙に猟兵達は突破する。
「私のこの圧倒的念動力に凝縮された魔力を混ぜこんで使えば最強×最強でさらに最強の魔動力の爆誕ってわけですね」
早口で呟きながらユーベルコードを起動したエリー、その手元の空間が歪み――否、念動力に圧縮され混ぜ合わされた大気と莫大な魔力が光を屈折させる程に高密度になっているのだ。
「ヤバイですなんかちょっとIQ下がってきた気がしますよくわかりませんが今ならこの念動ハンマーならぬ魔動ハンマーでなんかバチバチ言ってるあの雲っぽいやつを一撃粉砕できるってことでしょうか」
正面からの殴り合いは得意としていないエリーだが、莫大な魔力を取り込んだ影響かその魔動ハンマーを構える動作の後、ペトニアロトゥシカと共に大空を覆うものへと襲い掛かる。
対する大空を覆うものの身体は黒雲と化し、雷光雷撃を猟兵達に叩きつけてくる。それに対してペトニアロトゥシカはユーベルコードを即座に起動し雷光と衝撃波をその身に纏う。
「全部吹き飛ばす向こうが雷雲で主な攻撃が電撃ならこっちも電撃で対抗したら体に流れる電流が減ってダメージを軽減できるよね」
この世界の大気そのものの雷撃はすさまじく、だが受ける側のペトニアロトゥシカも負けてはいない。
雷撃が嵐の如く降り注ぐ空中庭園を真っ向から突進で突き抜ける。雷撃を受けようが莫大な魔力を籠めたユーベルコードで纏った雷光で軽減、残りも強靭な生命力で耐え万象を喰らい前へ、前へ。
「それはそれとしてこいつ倒せないしまたどっかで戦わなきゃいけないんだろうけど次もこんなことになるの嫌だなあまあそんなこと考えてても仕方ないしさっさと終わらせようか」
渦巻く黒雲への突進は大気を吹き飛ばし、だがすぐさま数キロにも及ぶ膨大な大気はその部位を埋め合わせ修復する。
しかし修復の速度は莫大な魔力に干渉されたからか、それ程早くもない。
ユーベルコードにより稲妻渦巻く漆黒の雲と化し物理攻撃を無効化する特性を持っている今の大空を覆うものだが、莫大な魔力で干渉しているからかその特性も突破できているようだ。
それも踏まえた上で、何となく今の魔動力ならそんな理屈で散らす事ができるとエリーは予感した。
それが妄想か現実かは分からないが、練り上げた念動力と魔力の感覚は間違いなく現実、故に。
「できるってことですねそれじゃ魔動力で敵の攻撃を大気ごと吹き散らして阻止しつつ叩き込んで」
ペトニアロトゥシカの突進に続き黒雲へとエリーが突っ込んでいき、振り廻す。
大気の帝竜に比肩するほどの広範囲の雲が弾け散った。
「今なんどきだ」
突然の問いかけの言葉が帝竜に放たれる。多喜のユーベルコード【|時縛る糸《クロノスタシス》】、受けたものの主観時間を130秒止める思念波が大空を覆うものへと命中する。
しかし圧倒的に巨大で頑丈な帝竜は即座にその呪縛を振り払う。強大な大気そのものの帝竜だから莫大な魔力をもってしてもその思考に干渉するのは難しいのかもしれない。
ただ、このユーベルコードにはもう一つ特性がある。
「今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんどきだ今なんど」
極短時間――1秒に130回もの速度で発射可能な思念波を、多喜は莫大な魔力を利用して大空を覆うものへと連続で放つ。
一度で1秒以下しか主観時間を止められなかったとしても、それを重なれば十分な隙を作り出せる。
動きを鈍らせた大空を覆うものに昭平が手裏剣を投擲、黒雲の纏う雷撃は強化したツナギの耐久力任せに耐えつつレンチと鉄梃二刀流で躍りかかる。
掃除機型の蒸気絡繰は相変わらず濃密な魔力を吸引し続け、蒸気機動式万能絡繰レンチを改造改造さらに鉄梃も改造し気体そのものに干渉し吹き飛ばす程に強化、それを以てドワーフは大空を覆うものの頭部を横から滅多打ちにする。
「やるべやるべやるべおらはやるべ」
抑揚のない平坦な声で呟き真顔の二刀流で大気の帝竜を殴り続ける様は|狂戦士《ベルセルク》そのもの。
更に大鴉の群が暴風を巻き起こし大空を覆うものを構成する大気の拡散を妨げつつ一点に集中させ、そこに両手に対の片鎌槍携えたルキヴァが黒翼広げ飛び込んでくる。
その姿はさながら飛翔する鳥そのもの、闇の魔力を凝縮した刃が帝竜の頭部を深々と切り裂いて、
「ワタシは鳥デスから雲を切り裂き飛ぶなんて当たり前の事なのデスよ」
大きく頭を切り裂かれた大空を覆うものに多喜が拳に全力の魔力を籠めた電撃を纏わせ、切断面に至近距離から拳を全力でぶち込んだ。
それに続いてエリーが魔動ハンマーを振りかぶり、
「潰れてくださいヒャッハーぶっとばせー」
抑揚のない平坦なベルセルク言語でエリーは呟きつつ2.78ギガトンもの威力の超巨大魔導ハンマーで雷電化した大空を覆うものの鼻面を叩き潰すと、
「主とやらの所に行きたいんだったらさっさと消えてもらうよ」
最後にペトニアロトゥシカの雷光の突進が切り裂かれ叩き潰された帝竜の大気の身体へと突っ込んで、そして吹き飛ばし拡散させたのであった。
少し様子を見るが、すぐに再度顕現しようとしてくる気配はなさそうだ。
「これで終わり、ですか」
エリーが呟いた。いつの間にかベルセルク化も解けて言葉も正常に発せられている。
「……舌の筋肉攣りそうデス」
ベルセルク化から復帰したルキヴァが呟く。とにかく喋り通しだった戦いは、猟兵達の勝利に終わったのだ。
そして次の戦場へと向かう為、猟兵達は速やかに空中庭園を後にしたのであった。
大成功
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