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アルカディア争奪戦㉗〜あなたがあなたである理由

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #虚神アルカディア #アルカディアの玉座

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「よォしやっとここまで辿り着いたな! お前らのこと、信じてたぜ……けどな、こっからが正念場だ」
 明・金時(アカシヤ・f36638)は神妙な面持ちで、集まった猟兵たちをぐるり、見渡す。
「俺はこれからお前らを、聖域の果ての黄金の玉座に送り込む。『虚神アルカディア』はそこにいる。どうも俺らに興味があるらしいが、それはそれとして強者の生命を奪うために、問答無用で襲いかかってくるだろうぜ」
 アルカディアは多彩な戦闘手段を持つ上、相対する猟兵それぞれに有効と思われる手段を切り替えて挑んでくると言う。
 こちらもそれに対応して、事に当たらなければならない。
「俺が今回確認できた、奴の戦闘手段は三つ……いや四つだな。お前らにはこれを打ち破って貰う。どれか一つ、自分が行けると思ったやり方でいい。慎重に選んで、全力で叩き潰してやってくれ」
 曰く。

 ――一つ『鏡戟戦』。
 アルカディアの虚ろな顔に『お前自身の顔』が写ったら、お前自身との戦いが始まる。
 お前に扮したアルカディアは、通常の攻撃手段と、お前の使用したユーベルコード使う。
 二つのユーベルコードで多重先制攻撃を仕掛けてくるって寸法だ。だが、勝機はある。
 この時、アルカディアの性格と行動パターンはお前と瓜二つになる。敵を知り己を知らば……そう、自分自身をより理解できている奴が、この戦いを制する。

 ――一つ『艦隊戦』。
 召喚された大量のアルカディア・オブリビオンとの空中集団戦だ。
 集団とアルカディアの先制攻撃、両方に対処しなきゃならねえ。
 飛空艇艦隊ガレオンフリートと上手く連携取って、一網打尽にしてやれ。
 敵の集団は、流星群を降らせる召喚獣を使役する召喚士たちだ。威力も範囲もデカいが、二回目以降の召喚には時間がかかるようだぜ。
 味方の飛空艇艦隊の勇士は……どうやら援護射撃と、歌と踊りでの支援を得意とする集団らしいな。会ったことのある奴もいるんじゃねェか?

 ――一つ『悪夢戦』。
 |拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》の攻略になるぜ。
 これは生命ある者の苦悩、欲望、憎悪を求めるアルカディアの全身から噴出したモンだ。
 雲海が充満すれば、たちまちお前にとっての『最悪の光景』を映し出す。だが絶望し、呑まれちまえば待ち受けるのは|消滅《おわり》だ。
 だが、よくある話だろ? それを上回る『強い意志』があれば、これを振り払うことは不可能じゃない。
 そうして絶望を乗り越えたお前らには、流石のアルカディアも驚きを隠せねえ。いや、憧憬すら覚えちまうようだぜ。
 この隙を突けば、アルカディアに攻撃を届けられる。逆に言えば、それが唯一の好機だぜ。逃せば次はない。

 ――一つ『片翼戦』。
 鏡戟戦と同様に、アルカディアがその虚ろな顔に人の顔を写す。但しこっちで写るのは『お前の大切な存在』だ。
 それは恋人かも知れねえし、親友かも知れねえ。家族や、猟兵じゃなくとも絆を結んだ相手、なんてこともあるかもな。
 そいつそっくりの声と口調で語りかけながら攻撃を仕掛けてきやがるぜ。厄介なのは顔から下はアルカディアのままだが、それでも『あれは本人だ』と感じてしまうらしい。
 だから大切な奴であっても、立ちはだかるなら手にかけるってくらいの強い意志が必要だ。でないと……手が出せねェ。
 もっと手っ取り早い方法もあるぜ。本人と一緒に戦うんだ。そうすりゃ間違えようもねェだろ?

「……とまァ、こんな感じだ。色々ややこしいが、どれも打つ手がないわけじゃねェんだ。お前ができることを、全力で。これを忘れなきゃ、お前らの勝利は揺るがねェよ」
 その手の中で、輝ける|フヰルム《グリモア》が回り始める。照らされた金時の顔は、猟兵たちの勝利を疑っていない。
 舞台は、聖域の玉座へと至る。
「行ってこい! 勝って大手振って帰るぜ!」


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 駆け足ですが最終決戦! そしてほんのり心情重視。

 ※Attention!!
 今回、筆者の体調が安定していないため、万が一想定以上のご参加をいただけた場合は全員採用がお約束できない場合がございます。
 また、そうなった場合の採用は先着順ではありません。
 私事で大変恐縮ですが、ご了承いただければ幸いです。

 戦争シナリオのため、今回は1章構成です。

 第1章:ボス戦『虚神アルカディア』

 戦闘手段を一つ選び、それに対応した戦い方でアルカディアに挑むことでプレイングボーナスがつきます。
 それぞれの詳細なプレイングボーナス条件は以下の通り。

 鏡戟戦:あなた自身の性格の裏をかく/敵の多重先制攻撃に対抗する。
 艦隊戦:飛空艇艦隊と協力して、敵の群れに対処する/アルカディアの先制攻撃に対処する。
 悪夢戦:自身にとっての『最悪の光景』を描写し、それを振り払う/雲海の噴出が止む一瞬を突く。
 片翼戦:大切な人を手にかける覚悟で戦う/大切な人本人と共に戦う。

 断章なし、受付期間はタグをご確認ください。
 それでは、よろしくお願いいたします!
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第1章 ボス戦 『虚神アルカディア』

POW   :    アルカディア・エフェクト
レベルm半径内を【|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【爆発気流】で加速、もしくは【猛毒気流】で減速できる。
SPD   :    アルカディア・インフェルノ
【石の剣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無限増殖植物群】」を放ち、ダメージと【呼吸不能】の状態異常を与える。
WIZ   :    アルカディア・ヴォイド
【万物を消滅させる虚無】を宿した【見えざる完全球体】を射出する。[見えざる完全球体]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

・片翼戦

俺にとって大恩ある相棒
俺の死の意志を覆し
相棒と呼んでくれてから
ずっと一緒に戦って来た

最後の戦いまで、そして
学園に申し出たゴースト殲滅も

猟兵になってからも
ずっと

「どれだけフリしても無駄だ」
静謐に紡ぐ
「俺の相棒は此処に居る」

それとね、と継いで

「俺達は猟兵の前に生命使いでね。だからお前の
天敵だよ、命無き者」

「陸井!」
甘言は俺達には無意味だ
言葉も不要
名を呼び基点とし全霊で攻撃を

「能力者としての最強の技を受けるがいい」
アークヘリオン詠唱
技能もあらんかぎり駆使し蟲を舞わせ攻撃を躱し
相棒を護りつつ幾度でもUCを叩き込む

筆耕が終る
かけがえのない相棒の名をもう一度!
「陸井!」


凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

今回の戦争、これが最後だ
何が何でも倒して、此処で終わらせる

【片翼戦】

相棒はいつも大恩がって言う
助けてもらってるのは俺なんだけどな
どんな戦いでも背中に居てくれる
何処でも一緒に戦ってきた

銀の雨降るあの頃も猟兵になった今でも
一人じゃないから俺は戦える
「悪いが…お前は違うよ。俺の相棒は隣にいる」

どんな言葉をかけてきても冷静に
「全力で攻撃する。任せろ、時人」

敵UCによって呼吸不能になっても
相棒の攻撃を見ながら【戦文字「死龍葬弾」】を描く
攻撃や呼吸不能程度で俺の筆は止められない
弾を装填し、迷わず構えて放つ
「虚神アルカディア…此処で沈め!」

「諸悪の根源。お前は此処で滅びろ」




 ――虚神は生命に憧憬し、その貌に生命を映す。
『――|時人《陸井》、』
 偽りの面は、しかし何故か確かな説得力を持って、相対する者に真と騙りかける。
 今、かの神の姿は葛城・時人(光望護花・f35294)にとっては|相棒《陸井》に、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)にとっては|相棒《時人》に見えていることだろう。
『こっちだ、|陸井《時人》』
 相棒に、酷くよく似た声が呼ぶ。
 お前の相棒は、ここにいるぞと。
「――」
 時人も、陸井も、暫く言葉を発しなかった。
 相応の時を、静謐が支配する。
 それを破ったのは――時人だった。
「――どれだけ『フリ』をしても無駄だ」
 迷いなく。確かに。
 投げかけたのは拒絶の言葉。
「悪いが……お前は違うよ」
 陸井も、躊躇いなくそう言える。
 そうだ。自分の相棒は。
「俺の相棒は、」

 『隣にいる』じゃないか!

「「――|隣《此処》に居る!!」」


 ――時人にとって、陸井はただ共に戦うだけの相棒ではなかった。
 陸井は嘗て、死へとひた走っていた時人の意志を覆し、自分のことを相棒と呼んだ。
 それからは、彼と背を合わせて、ずっと共に戦ってきた。猟兵となる前、能力者だった頃の最後の戦いも。学園に申し出たゴーストの殲滅も。そして――猟兵となってからも、ずっと。
 ――陸井にとって、時人はただ共に戦うだけの相棒ではなかった。
 時人は、自分にいつも『陸井には大恩がある』と言う。
 だが、陸井は自分の方こそが、いつも時人に助けられていると感じている。どんなに困難な戦いでも、いつも彼は背中に在り、共に乗り越えてくれた。
 いつ如何なる時も、何処でもその姿は顧みればすぐ其処に在った。
 銀の雨降るあの頃も、猟兵になった今でも、一人じゃないから陸井は戦える。戦ってきた。だから。
 ――間違えようなど、あろう筈もない!
「それとね」
 時人が進み出る。
「俺達は猟兵の前に『生命使い』でね。だからお前の
天敵だよ、命無き者」
 頷いて、陸井も前へ。
「今回の戦争、これが最後だ。何が何でも倒して、此処で終わらせる」
 そして、勝って帰るのだ。
 仲間の元へ――相棒と共に!
「陸井!」
「ああ、全力で攻撃する。任せろ、時人」
 それ以上の言葉は要らない。
 だから、どんな甘言も|二人《俺達》には無意味だ!
『――|無限増殖植物群《ククルカン》、』
 蒼白く生気のない何かが、時人と陸井に巻きつく。
 いや、大丈夫だ。解っている。
 如何に時人の友の名を騙ろうとも、それはただの植物群でしかない。心の目が、ちゃんと真実を視ている。
「始まりの刻印よ、創世の光もて敵を討て!」
 |輝く始まりの刻印《アークへリオン》が、偽りを灼いていく。
 時人に纏わりつく根も、陸井の息吹蝕む蔦も。
「能力者としての最強の技を受けるがいい」
 そして、偽りの生命を宿さんとする命無き神も!
 陸井は、その間にも絶対の一撃を放つ『準備』を進めていた。
 呼吸を奪われても冷静に、前に立って戦ってくれる時人の動きを負って、宙に滑らせる戦文字。
(「大丈夫。攻撃や呼吸不能程度で俺の筆は止められない。それに――」)
「『|本物《ククルカン》』を見せてやる――来い!」
『きゅい――!』
 真の一鳴きが笛の音に応え、白き燐光を纏い偽りの白を食らう。
 準備を進める間にも自分を信じて、奮闘してくれる相棒のその背に、応えるためにも!
(「必ず仕上げる――!」)
 龍、一文字。だがまだ終わりではない。
 あと三頭の龍が要る。疾く、しかし焦らず、書き切る。
 そのために、相棒も全力を尽くしてくれている。
『水刃手裏剣奥義』
(「懐かしい名前だ。でも、解る。あれは、そうじゃない」)
 時人は知っている。陸井は既にその技を己のものとし、更に独自のものに昇華させている。何より、不可視は不可視でも、澄んだ水と虚無の球を、時人が間違えるわけがない!
 幾重にも結界を張り、虚無の消滅能力と相殺する。最後の一枚が割れる――その瞬間だった。
 四頭の龍が、一文字と成ってその姿を顕したのは!
「陸井!」
 もう一度、その名を呼んだ。
 今までもこれからも――かけがえのない、たった一人の相棒の名前を!
「ああ。行くぞ、時人!」
 ならば、陸井は応えぬわけにはいかない。
 四頭の龍が成す|死龍葬弾《ユーベルコード》が、弾道に墨色を伴った一条の弾丸が、偽りの相棒の――否、確固たる『敵』の、額へと迫る!
「虚神アルカディア……此処で沈め!」
 陸井の咆哮に、龍の弾丸が弾けた。
 ――虚神の額で、その偽りを砕くように。
 面が割れ、再び全てが虚ろなる存在へと還ったアルカディアが、雲海に溶けるようにして、消えてゆく。
「諸悪の根源。お前は此処で滅びろ」
 拒絶と共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【鏡戟戦】

どうせ俺だ、雨が降る。傘を差そう
はは、知っているとも“自分”のことだ。嫌と言うほど分かるとも!

戦いとは先読みだ。そうだろう、俺?
|面倒な者《猟兵本人》には|面倒な者《本人の写し》を食わせるに限る
いやはや実に神を騙るくせに随分と人間臭く巧妙なことだ!なあ、思うよなあ俺
本当に、不愉快な程だ

UCは躊躇いなく
で……俺に親はいない。疾うに死んだ
同じ?笑わせるな偽物――……お前、|親《アルカディア》がいるよなあ?生みの親!貴様の起因!
生憎俺は嘘が下手なんだ
だが俺のフリをしすぎたな

ああ残念……実に残念だ
俺はその偽りを笑うにとどめよう
だが、|これ《鬼雨》は許さんぞ

その騙りと共に死ね
俺は俺だけで十分だ




 ばさり、金の脚持つ鴉が羽を広げる。
 ――否、それは一本の傘だった。同時にぽつり、雨音が漆黒の羽を打つ。
(「はは、知っているとも“自分”のことだ」)
 他ならぬ、自分自身。
 御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は己を充分に理解していた。――しすぎていた。
(「――嫌と言うほど分かるとも!」)
 どうせ『俺』の先には雨が降る。
 『|俺』自身《御簾森・藍夜》の貌が、其処に在る。
「戦いとは先読みだ。そうだろう、俺?」
『ああ、心得ている。心得ているさ、俺』
 舌打ちは呑み込む。皮肉を込めて嗤ってやる。
 |面倒な者《猟兵本人》には|面倒な者《本人の写し》を食わせるに限る。理解できてしまう己がまた嫌になる。
 だがそれも、己が|人間《ひと》たればこそ。
「いやはや実に神を騙るくせに随分と人間臭く巧妙なことだ! なあ、思うよなあ俺、ああ本当に――」
 目の前の『俺』が何と答えたか、もう藍夜は聞いてもいなかった。
 ただ嗤った顔のまま、俯いた。目を伏せて、何も見てはいなかった。
「――本当に、不愉快な程だ」
 それだけだ。
 目の前の『俺』は、傘を差してはいないから。
 これで迷いなく、さよならだ。
「で……俺に親はいない。疾うに死んだ」
『解るよ。同じだからな――俺も』
 同一の存在であるからと。奴は言う。
 だが――藍夜は嗤った。
 |そんな莫迦な話があるか《・・・・・・・・・・・》と。
「同じ? 笑わせるな偽物――……お前、」

 |親《アルカディア》がいるよなあ――?

 目の前の貌が初めて、自分と違う顔をする。
 理解ができない? いいや誰より、お前がよく知っている筈だ!
「生みの親! 貴様の起因! |胞《はら》を痛めるだけが親だと思うなよ――!」
 もう目の前の貌は、|自分《おれ》を保てない。
 崩れた鏡合わせの何と滑稽なことか!
「生憎俺は嘘が下手なんだ、だが俺のフリをしすぎたな――」
 雨が降る。降り続いている。
 野晒になった|貌《おれ》が、血を吐いた。
 その赤すら虚無へと成り果てて、溶けてゆく。
「ああ残念……実に残念だ。俺はその偽りを笑うにとどめよう。だが、」

 ――|これ《鬼雨》は許さんぞ。

 貌も、生まれも。
 余りに大きなことを偽りすぎた。
 責め苛むように雨は降る。棘が胞に刺さる。
 虚無を、吐き出してゆく。
「その騙りと共に死ね」
 踵を返す。傘を閉じた。
 その頭上にもう、雨はない。
「――俺は俺だけで十分だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

高天原・光明
 欲しいなら来い、虚神アルカディア。貴様の望みは、俺が射貫いて終わらせる。

 放たれた植物群は邪魔になる周囲だけ〈爆撃〉で吹き飛ばし、飛来する矢を〈集中力〉〈視力〉で見極める。奴は俺、若し俺であれば飛来する矢の全てが必中ではない。敵を牽制した後に致命の一矢を届けるように射る。だからこそ、牽制の矢を敢えて受け、その後を回避。致命傷にさえならなければいい、返す一撃で仕留める。UC発動、〈スナイパー〉としての本領発揮といこう。狙うは武器と急所、俺ならどう躱すか、動きを読んで〈制圧射撃〉の矢を放つ。

 終いにしよう、アルカディア。俺は、俺自身には負けられない。

(SPDの【鏡戟戦】に挑戦、アドリブ等々歓迎)




 目を逸らさずに、前を見据える。
 其処に在るのは、己の貌。
「欲しいなら来い、虚神アルカディア。貴様の望みは、俺が射貫いて終わらせる」
 高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)の瞳が敵を射る。
 己であれど――否、己だからこそ。世界を滅ぼすものなら打ち破って見せると。
『踊ってもらうぞ』
「――言ってくれる」
 己の声で、己のようなことを言う。
 だが、乱されることはない。心は静かに凪いでいた。
 降りかかるは矢の雨――だけではない。混じるあれは植物群だ。それに紛れるようにして、牽制とただ一矢、必中の矢が飛来する。
 目眩ましの緑を即席のダイナマイトで吹き飛ばす。露わになる矢を、その数を、その軌道を、研ぎ澄まされた双眸で見極めて。
(「奴は俺――若し俺であれば、飛来する矢の全てが必中ではない」)
 敵を牽制した後に、致命の一矢を届けるように射る。それが光明の『一発必中』の技、そのひとつ。
 故に、光明は敢えてその矢を受けた。但し、本命ではない、牽制の矢のひとつを。自身が反攻に転じる、その機に動けるよう、軽い矢傷で済むように。
(「致命傷にさえならなければいい、返す一撃で必ず、」)
 仕留める。
 一発必中、これが|高天原・光明《おのれ》の弓だと知らしめてやる。
 一際毅く疾く来たる、彗星の如き必中必殺の一矢。だが、見切った。既のところで咄嗟に身を捻って敵の必中を崩してやる。
「――『スナイパー』としての本領発揮といこう」
 今度こそ、構えた弓を引き絞る。
 此処に至るまで、数多の獣と影朧――オブリビオンを射貫き屠った六尺の和弓。此度も決して、外しはしない!
(「狙うは武器と急所、俺ならどう躱すか、動きを読む――読み切って見せる」)
 制圧。群れる矢の雨霰。
 矢は全てを穿たん勢いで、流星群にも似て敵へと注ぐ。
 敵もまた己の思考で身を翻し、必殺の一矢の回避のみに注力し、牽制の被弾は止むなしとばかりに突き進むけれど。
(「他ならぬ俺だ。読めている」)
 既にその、必殺の一矢は。
 必中の名の下に、己の仮面の前へと迫っている!

「終いにしよう、アルカディア。俺は、俺自身には負けられない」

 その言葉に応える如く。
 仮面は――此処に射貫かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
●鏡戟戦

自分自身との闘い、って訳ね。
いいわ、私の弱点がそのままなら簡単よ。

敵の二重先制コードはそのまま発動させ、後手で【超★筋肉黙示録】を発動する
一見すると敵本来のコードの分不利に見えるけれど、敵の性格や思考が「私」と同じになるのなら、むしろ逆
【超★筋肉黙示録】は、己の肉体の絶対性を信じるが故に無敵と化すコード
そのため、それ以外(今回の場合は【アルカディア・エフェクト】)を使うという行為そのものが弱点と化す
綻びのある無敵は無敵に非ず、無敵の筋肉で気流も雲海も突破してパチモノ未満になった虚神をぶん殴るわ

なんでもかんでも使えばいいってものじゃないのよ、勉強になったわね?




(「自分自身との闘い、って訳ね」)
 目の前に佇むのは、自分の貌をした神。
 荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)を模した、意思ある鏡。
「いいわ、私の弱点がそのままなら簡単よ」
 大胆不敵にふっと笑んで、ユーベルコードを発動。
 |超★筋肉黙示録《ハイパー・マッスル・アポカリプス》――読んで字の如く。己の肉体、筋肉のみを信じ、その強い信頼を以て並ぶ者なき力を手に入れるのだ。
 だが――そう。敵は、つかさ自身。
 敵もまた無敵の力を手に入れ、加えて戦場には既に|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》が充満している。完全に後手に回ってしまったつかさが、圧倒的に不利な状況だ……!
『私らしくもないわね。戦う前から勝負を諦めたのかしら?』
 余裕の笑みは、つかさそのものを映すかのよう。
 だが――つかさは、それに負けじと、強がりでなく、また笑って見せた。
「いいえ。寧ろ――逆よ!」
 つかさは、今もなおこの場において己が、己の筋肉こそが最強であると、疑ってもいない!
『その余裕ごと、打ち砕いてあげ――、ッ!?』
 猛毒の気流が壁となり、つかさを阻む。
 そして気流の中から現れた、つかさの貌した神の拳がつかさへと突き刺さる――が!
 つかさはよろめくどころか呻き声すら上げず、涼しい顔を崩すことなくカウンターパンチをお見舞いする――!
『ぐ……ッ!?』
 理解ができない、自分は無敵の力を手に入れた筈。
 そう言いたげな顔なのも、お見通しと言わんばかりにつかさは語る。
「|超★筋肉黙示録《このちから》は、己の肉体の絶対性を信じるが故に無敵と化すコードよ」
 そう、己の肉体を絶対のものと信じるならば。
 ――肉体に依らない力になど、頼る必要がないのだ!
「拒絶の雲海なんかに頼った時点で、|己《わたし》の肉体に絶対的な信頼を寄せられていない証拠。綻びのある無敵は無敵に非ず――私の敵じゃないわ」
 そして、一度瓦解した『無敵』は、もう持ち直せない!
「此処まで鍛え抜いてきた筋肉が、そして|己《わたし》自身があれば――気流も雲海も関係ない。パチモノ未満になった|虚神《おまえ》を、」
 この拳で。
 最強の筋肉と共に!
「ぶん殴るわ!」
 渾身の右ストレートが、虚構を完膚なきまでに砕く。
 偽りの無敵が崩壊し、崩れた端から雲海に消えてゆく。
「なんでもかんでも使えばいいってものじゃないのよ、勉強になったわね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪・兼光
アドリブとかお任せ

先制攻撃がある場合は第六感を利用して可能な限り避ける

避けきれないならキャリーバッグを使った盾受け
呼吸不能を防げるか、オーラ防御と浄化込みで無理なら諦めて継戦能力を使ってタイムアタック開始

中々のイケメンじゃァねぇか
嘘だ
瞼の形がコンブレックスで見てるだけで不愉快だ(鏡戟戦希望)

ユーベルコードで鳥メカの指示に完全にしたがって攻撃する

俺はこのメカ共の指示を信じ切ってなくてな必ず、効率がいいと思うと無視してユーベルコードを解除して攻撃するだよ

特にでちこお前の指示は信じてない

はっ、だったら認めさせてみな

好きなように技能を使って、駄マスターを勝利に導いてくれ




「――ッと、」
 緑の群れが飛来する。
 第六感を研ぎ澄ませて軌道を見切り、回避。だが追尾する光線弾が呪いを孕み、曲線を描いて迫り来る。
 眉根を寄せて、キャリーバッグを眼前に翳した。浄化のオーラが壁となり、弾を灼く。
 ――改めて、雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)は相対するその顔を見上げた。
 紛れもない、己の貌。
「中々のイケメンじゃァねぇか」
 軽口一つ叩いて。
「――嘘だ」
 すぐに撤回した。
 瞼の形が見ているだけで不愉快になるほどのコンプレックスで。
 更に不快なのが、その虚ろなままの肩に二羽の鳥らしき何かが止まっているのが見えるのだ。
 その正体を、兼光は知っている。何せ今、己も喚び出そうとしていたものだ。
「でちたちのニセモノでち!! ゆるさないでちー!!」
「でちこ、五月蝿い」
 喚び出した鳥――否、鳥メカ二羽の内、でちこと呼ばれた片一方がぴーちくぱーちく騒ぎ出した。
「俺はこのメカ共の指示を信じ切ってなくてな――」
「でち!?」
「必ず、効率がいいと思うと無視してユーベルコードを解除して攻撃するんだよ」
 でちこが嘘でしょみたいな顔で兼光を見た。
「特にでちこ、お前の指示は信じてない」
「なんででちかー!!!!!!」
 不本意!! とバサバサ抗議するでちこ。
「でちたちもお役に立つでち!!」
「――はっ、だったら認めさせてみな」
 其処まで言うなら、模倣の神すら倒して見せろ。
 兼光はその身体の制御を、|二羽の戦術AI搭載の鳥メカ《でちことベージェ》に開け渡した。
「好きなように技能を使って、この駄マスターを勝利に導いてくれ」
「まかせるでちー!!」
 主と|AI《おのれ》の偽物すら、凌駕して見せろ!
 敵は|盾《キャリー》を持たないが、オーラ防御は厄介だ。で、あれば。側面を狙ってブラスターからの誘導弾の乱れ撃ち。更にもう一波、追撃。光線の雨に、模倣の神は護りのオーラを集中させていく。
 手薄になった逆側面に、気配を消してすかさず滑り込んだ。そして零距離からの不意討ち――確殺の一発を、即頭部へと叩き込む。
 兼光の貌が、その仮面が、|顳顬《こめかみ》から罅割れる――!
『が……ッ、……っぱ、信用、ならな……』
「なんてこというでち!!」
「ソイツは俺じゃねぇ。あと煩い」
 かくして、兼光の貌した神は討たれ、雲海へと消え失せた。
 ――が、でちこたちが兼光に認められるのは、まだ先の話のようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
えくるん(f7720)と片翼戦

確かにえくるんだと思い込まされてしまったら打つ手がない。
えくるんを手に掛けなければ救えない世界なら救う価値もない。えくるん以上に大切なものなんてどこにも存在しないのですから。

でも、わたしの隣にはえくるんがいる。
えくるんが居てくれるならわたしはお前なんかには負けません!

全力魔法でスピードを限界突破させたスケルツァンドに騎乗し、念動力で浮力を与え、更に結界も展開して空中戦。

えくるん!乗って!

元から視覚に頼らないわたしには不可視だろうと関係ない。
第六感で球体の動きを見切り、回避しつつ愛唱・希望の果実を歌ってみせましょう。

隙を見つけたら素早く接敵。

えくるん、今なの!


七那原・エクル
七那原・望と片翼戦に参加
望と一緒に行動

さすが敵の総大将ってところだね、とんでもないプレッシャーを感じる

しかも望の顔や口調を使ってボクの動揺を誘おうとしてくるとは…

ボク一人だったら危なかったかもしれないけど、こちらには本物の望と一緒だから、そんな精神攻撃なんかへっちゃらだぃ!

敵攻撃への回避行動は望に任せるとして「万物を消滅させる虚無」ボールの軌道に注意しないとだね、不可視の超常を可視化するマトリクスバイザーで、万物を消滅させた何もない空間を捉えるようにするよ、空間のあらゆる大気成分も消してるなら、何もない空間の軌跡を辿って探す

攻撃時はステルス潜航させていたハイドフェザーの熱線砲で薙ぎ払ってやる




「さすが敵の総大将ってところだね、とんでもないプレッシャーを感じる……」
「えくるん……」
 虚神アルカディア。
 その貌を見据える七那原・エクル(ツインズキャスト・f07720)の表情は硬く、寄り添う七那原・望(封印されし果実・f04836)が握る手にも力が籠る。
 その理由は、エクルにも嫌というほど理解できた。
(「しかも望の顔や口調を使って、ボクの動揺を誘おうとしてくるとは……」)
 確かに、これでは非常に手が出し難い。
 隣に愛する人がいてすらこうなのだ。独りだったら……と思うと、ぞっとする。
 望も、同じ想いをを痛いほど感じ取っていた。
(「確かに、えくるんだと思い込まされてしまったら打つ手がない」)
 視界を封じられている望に、敵の貌は見えない。にも拘らず、相対するのは|最愛の人《エクル》であると錯覚しそうになる。
(「えくるんを手に掛けなければ救えない世界なら、救う価値もない。えくるん以上に大切なものなんて、どこにも存在しないのですから……」)
 それほどまでに、この愛は深く天秤に掛ければ世界をも凌駕する。
 けれど、そうはならない。
「でも、わたしの隣にはえくるんがいる」
 確かな温もりが、この掌の中に在るのだから!
「えくるんが居てくれるなら、わたしはお前なんかには負けません!」
 応えるように、エクルも望の手をぎゅっと、握り返して。
 希望の大樹に示した|絆《あい》と|希望《おもい》は、決して違えない!
「ボク一人だったら危なかったかもしれないけど、こちらには本物の望と一緒だから、そんな精神攻撃なんかへっちゃらだぃ!」
 だから、|偽物《おまえ》は二人の世界に要らない――!
 その手が離れる。けれどそれは、また繋ぐため。
「えくるん! 乗って!」
 再びエクルへと手を伸ばした望は、白き光翼を宿した宇宙バイク――奏空・スケルツァンドへと騎乗していた。
 エクルは呼吸するようにその手を取って、ひらり飛び乗る。望の全力魔法で速さの限界を超えたスケルツァンドが念動力による浮力を得て、蒼穹を貫く光矢の如く空翔ける。
(「元から視覚に頼らないわたしには、不可視だろうと関係ない――」)
 結界を展開しながらも、視覚の代わりに第六感をフル稼働、気配や空気の振動も頼りに迫る虚無をすり抜けてゆく。
「La la la――♪」
 そうして紡ぐは愛の歌。|最愛《エクル》に捧げる希望の果実。
 どうか虚空にすら響いて。真に愛する人の力となるために!
 歌声から想いが溢れて降り注ぐ。力が漲るのを感じながら、エクルは暗視ゴーグル型の多次元視覚センサー機器・マトリクスバイザーを装着。不可視の存在や領域に作用する超常を可視化し、探知を可能とする。
(「あの『万物を消滅させる虚無』ボールの軌道に注意しないとだね」)
 回避に注力してくれている望の献身に応えるためにも、やり遂げなければ。
 視界に捉えるべきは球体の軌道、即ち万物が消滅した、虚無の空間。大気さえも存在しない、いわば限定的な真空の道。
(「読めた! なら、あそこからなら……!」)
 エクルが望の耳元で囁く。
 ひとつ、頷きを返した望は機を窺う。球体を限界まで引きつけて――くるりと空中で大きく回避。
 偽りの|最愛《かお》持つ虚神の懐へと潜り込むように、虚無の道を避けて旋回、紆曲――そして、突撃!
「えくるん、今なの!」
「任せて、望っ!」
 エクルは零距離から全身全霊の一撃を――叩き込ま、ない!
 望もまるで動じず、何事もなかったかのように、スケルツァンドをぐんと急上昇させた。二人の様子に偽りの貌はやはり、訝しむ様子を見せて。
 ――次の瞬間、正面の二人に気を取られて無防備になっていた虚神の背後を、何かが一息に灼き尽くす!
 崩れ落ちる貌が最期に見たのは、予めエクルがステルス潜航させていた、熱線砲と光学迷彩システムを搭載した鳥獣機――|灰鉄巧・霞鳥《ハイテック・ハイドフェザー》の姿だった。
 灰と成り、雲海へと攫われてゆく虚神の残滓を天上より見下ろす二人にもう、迷いはない。
「望は――」
「えくるんは、」
「「この世にひとり、いればいい!!」」
 そう――ボクの、そして、わたしの隣に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

片翼戦:大切な人を手にかける覚悟で戦う、ね。そこはもうすでに通り過ぎた道。猟兵に目覚めた『あの日』、私が討った|『あの子』《アリス・ロックハーツ》は異母姉にして|親友《こいびと》だった。到底勝てる実力差ではなかったけど、私が今こうしてあるのはそれを『あの子』が望んだからだろう。
私が『あの子』を討つのが、未だに私がエミュり続けている『あの子』の望み。だから私は何度だって『あの子』を討つ!
呼吸不能にされても私の中の『あの子』が生命維持をしてくれるわ。
|リミッター解除、限界突破、オーバーロード!|継戦能力《魂が肉体を凌駕する》
|高速詠唱早業先制攻撃、気絶攻撃、マヒ攻撃、凍結属性攻撃、時間稼ぎ《タイムフォールダウン》で時間質量を凍結させ自身を加速。
コレが私の|『罪深き刃』《ユーベルコード》、あなたの過去を踏みつけ未来を奪い|幸運《御都合主義》を押し通す。
ああ、肉体を欲し生命になることを望むだったわね。|化術肉体改造、大食い《融合することで叶えてあげるわ》




 ――思えば遠くへ、とは。
 果たして、何処の詩人の言葉だったろうか。
(「大切な人を手にかける覚悟で戦う、ね」)
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔王少女・f05202)にとって、其処はもう既に通り過ぎた道だった。
 顔を上げれば、懐かしい『あの子』の貌が其処に在る。
(「猟兵に目覚めた『あの日』、私が討った|『あの子』《アリス・ロックハーツ》」)
 彼女は異母姉にして|親友《こいびと》だった。それでいて――どうしようもなく、遠い存在に成ってしまった。
 実力の差は歴然、火を見るよりも明らかで。それでもと手を伸ばした、アリスが今、こうして在るのは。
(「それを『あの子』が望んだからだろう」)
 今なら解る。虚しさはどうしたって付き纏うが。
 それでも今、望まれて此処に自己は在る。その意味をきっと、自分は理解できている。
「私が『あの子』を討つのが、未だに私がエミュり続けている『あの子』の望み。だから私は何度だって『あの子』を討つ!」
 宣告。
 同時に、無限の緑が『あの子』の貌した|虚神《モノ》から伸びる。アリスの首を、身体を、気道を締め上げようとする。
 だが、構いやしない。
(「呼吸不能にされても私の中の『あの子』が生命維持をしてくれるわ」)
 ――リミッター解除、限界突破、オーバーロード! |継戦能力《魂が肉体を凌駕する》!
(「|高速詠唱早業先制攻撃、気絶攻撃、マヒ攻撃、凍結属性攻撃、時間稼ぎ《タイムフォールダウン》で時間質量を凍結させ加速する――!」)
 『あの子』の声で呼び、振る舞い、そしてアリスを死へ――否、虚無へと追いやろうとする|虚神《モノ》の下へ。
 その時空跳躍とも呼ぶべき加速で束縛すら振り払い、|混沌魔術師《ケイオト》は|混沌《ケイオス》を行使する。
 だがその刃は、|混沌《ケイオス》と呼ぶには余りに真っ直ぐに見えた。
「コレが私の|『罪深き刃』《ユーベルコード》――」
 小さなその手で、何かを|掬い《救い》取ろうとして。
 収まり切らぬソレが掌の上から、指の隙間から零れ落ちたとて、取り零されたそれは『罪』と呼ぶべきものか。
「あなたの過去を踏みつけ未来を奪い|幸運《御都合主義》を押し通す」
 それもまた『罪』だと言うのなら。
 |私《アリス》はそれを拾い集めよう。
 形作られた『罪』を『刃』へと変えて、未来を切り拓こう。それが、遺された者の『贖い』であり、きっと今はまだ遠い『許し』――。
「ああ、肉体を欲し生命になることを望む、だったわね」
 『あの子』の貌は、深々と突き刺さる刃の前に既に形を失いつつある。
 それでも、|仮面《ペルソナ》であると理解っていても――『あの子』の願いは叶えたい。
 だから、その願いも――。

「――|化術肉体改造、大食い《融合することで叶えてあげるわ》」

 神をも食らう。
 |虚無《オブリビオン》すら呑み込む|混沌《ケイオス》が、|混沌魔術師《ケイオト》が、此処に居る。
 それでも、生きてと――『あの子』が、そう、望んでくれたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神塚・深雪
片翼戦

シェル(f35465)と一緒に。

楽観的な状況ではないんですよね。
そう思いつつ戦場へ来た私の目の前に現れたのは。唯一無二の伴侶の貌。明らかに違うのに。それなのに、そうだと思わされている自分がいて、そのせめぎあいに歯を食いしばれば。肩に触れる「本物の」伴侶の感触と、声。

「……ん。そうよね。此処に、居る。私の伴侶は、此処にいる……!」

許せない。赦さない。唯一無二の伴侶を模倣するなんて。だから、躊躇う理由なんてない。迷わない。

――今、仮初の解放を

真の姿を解き放って。使ったユーベルコードは伴侶と対で創った、互いのためのもの。
私自身はどうとでもなるけど、シェルが心配だからと放ったそれと、同時に自分に届いたユーベルコードの力は、対のものだったことに、思わず笑みが浮かぶ。だって、嬉しいじゃないですか。こういうところが、シェル。

シェルの攻撃を嚆矢に地を蹴って。迫る攻撃は技能を以ていなし流して。強化された攻撃を武器に乗せて攻撃を。

真の姿:白い翼に髪と同じ毛色の狼耳。其れは彼方に眠る、正しく『真の』姿


シェルリード・カミツカ
片翼戦

雪(f35268)と。

共にと乞われた戦場で、現れたのは。

いや、うん。コイツを模倣するとはまた思い切ったことを。
と、思いつつも流されそうになりつつ、傍らを見れば、予想通り。
こういう事には滅法弱いのは嫌というほど知っている。だから、その肩に手を置いて。

「雪。……俺は、此処にいる」

言いながら自分も伴侶が正しく傍らにいる事を再確認する。
コイツを軽々しく模倣しようとする存在に怒りを覚えつつも、それは表には出さずに。
真の姿を解き放つ伴侶に、併せるように真の姿を解き放つ。
あまり軽々に晒して良いものではないと思うのだが……併せてやる程度の空気は読む。

間違いなく突撃していくであろう無鉄砲な伴侶に、ユーベルコードを使えば、ほぼ同時に対で創…らされたそれの力が届く。
苦笑しつつもその力の恩恵にはあずかって。
弓で牽制をし、剣で防御をカウンターを。技能を駆使しつつ、相手のとの距離をみて武器は切替。

真の姿:髪と同じ毛色の狼耳と翼、耳辺りの側頭部からも髪色と同じ小さい翼。其れは彼方に分かたれ、封じられた『真の』姿




 カタストロフが、近づいている。
 刻一刻と、タイムリミットが迫り来る。猶予はもう、殆どない。
(「楽観的な状況ではないんですよね」)
 夫であるシェルリード・カミツカ(|黄金《きん》の|鳳皇《ほうおう》・f35465)を伴って聖地へと赴いた神塚・深雪(光紡ぐ|麟姫《りんき》・f35268)の表情は硬い。
 この戦争も大詰め。残すところはこれから相見える相手、虚神アルカディア。確実に、追い詰めてはいるのだ。
 だが、日が傾く毎に焦燥を覚える。月が昇る毎に心急く思いがする。
 自分たちも、何か力になれることはないか。いてもたってもいられず、玉座へと至って。
 ――息を、呑む。
 目の前に現れたのは、唯一無二の伴侶の貌。
 深雪にとってのシェルリード。シェルリードにとっての深雪。
(「共にと乞われて来てみれば。いや、うん。コイツを模倣するとはまた思い切ったことを」)
 馬鹿な真似を、と一笑に付すことだって、シェルリードにはできた筈だった。現に、本物の深雪は彼の隣にいるのだから。
 だと言うのに、流されそうになる。真と偽の境目が、意思に反して曖昧になりかける。そんな中で、傍らに目を遣ったのは、再確認の意が半分。そしてもう半分は。
「……っ……」
 白い肌から更に血の気を失い、唇を引き結ぶ深雪の姿が其処に在ると、半ば確信めいて予感したからだ。
(「明らかに違うのに。シェルは|隣《ここ》にいるのに、……それなのに、」)
 |そう《シェル》だと思わされている自分がいて、考えたくもないのに、違うと声を大にして言いたいのに、できなくて。そのせめぎあいに歯を食いしばる。
 間違える筈もないのだ。ただ、深雪は、少し考えすぎるきらいがあり、加えてシェルリードを真に愛している、から『こそ』。
 こういったことに滅法弱いのだと、他ならぬシェルリードがよく知っていた。
 だから、その肩に手を置いて、その名前を呼ぶのだ。

「雪。……俺は、此処にいる」

 軽率に片翼を模倣し人心惑わさんとする虚神に憤りながらも、今は胸の奥にしまって。
 何かと、先に行ってしまいがちな彼女の手を引いて、連れ戻すのはシェルリードの役目だ。
「……ぁ……シェル……」
 その温もりが、互いの存在を強く認識させる。
 シェルリードにも、そして、深雪にも。
 よく知っている。温度も、感触も。深雪のよく知る、シェルリードだ。彼が、確かに傍らに居ることの、何よりの証だ。
「……ん。そうよね。此処に、居る。私の伴侶は、此処にいる……!」
 添えられた手を取る。
 そして、真っ直ぐに最愛を模した|貌《てき》を睨めつける。
 ――違うと、解る。もう、大丈夫だ。
(「許せない。赦さない。唯一無二の伴侶を模倣するなんて。だから、」)
 最早躊躇うこともない。
 迷いは、もうない。

「――今、仮初の解放を」

 彼方より呼び起こされし、白狼の姫。
 傍らに佇むのは解き放たれし、金狼の士。
 真の姿にして揃いの翼持つ二人は比翼にして、対。
「……ふふ。併せてくれた?」
「あまり軽々に晒して良いものではないと思うのだが……空気は読むさ」
「それ言っちゃいますか」
 軽口を叩きながらも、幾分か深雪の表情は和らいでいることに気付き、一先ずはシェルリードも安堵する。勿論、己も深雪も、敵へと向ける視線は鋭いもののままだが。
「――我を縛るは白銀の檻。黄金の鍵以て今刹那の解放を!」
「――我に宿るは銀の祝福。黄金の翼と共にあれ」
 そして合奏のように共に唱えたのは、唯一半身の絆結ぶ祝福の言葉。愛しき伴侶に加護よあれ。金銀の光翼が降り注ぐ。力を授ける。
 対となる|超常《ユーベルコード》は揃って深雪が編み出したもの。片割れの金をシェルリードに託して。それが重なり合うこの瞬間が、どうしようもなく幸福で。
「……何を笑っている?」
「だって、嬉しいじゃないですか。こういうところが、」
 ――ねぇ、シェル?
 言葉にせずとも伝わる心が、愛しい。
 喜色満面の深雪に苦笑しつつも、その力、想い、シェルリードも全て受け止めて。受け取って。
 自分自身はどうとでもなるけど、|伴侶《シェル》が心配だからと放った深雪のそれと、間違いなく突撃していくであろう無鉄砲な|伴侶《みゆき》へと贈ったそれとが、今互いに、偽りの片翼を討つための力となる!
「――行くぞ、」
 鳳凰が、シェルリードの手の内で翼を広げた。
 引き絞られた弓が、開戦の一矢を放つ。それを合図に、深雪は地を蹴った。
 迫る虚無の球体は、白銀に輝ける光のオーラを壁としてぶつけてその接近を遅らせる。深雪が先行する間、押し寄せる植物群はシェルリードが射抜き続けながら、じりじりと距離を詰める。
 後方で支えてくれるシェルリードの負担を少しでも減らせればと、深雪は敢えてやや後退し、正面突破ではなく虚神の背後へと回り込むような進路へと脚を変えた。すると今にもシェルリードに迫りつつあった植物群の一部を、虚無が呑み込み始めたのだ。
 シェルリードは武器を持ち換える。翼の弓から、蒼光宿して透き通る神剣へ。虚無の手から逃れた植物群を、的確に切り払ってゆく。前線で戦う深雪の憂いが少しでも薄らぐように。
 傍らに在らずとも、常に互いを想い、その助けとなるべく動いた二人に、片翼だけを模した虚神が押され始めるのは時間の問題だった。
『|雪《シェル》、』
 懇願するように、その名を呼ぶ。
 此処に居ると、縋る。
『|シェル《雪》!』
 ――今更だ。
 それをするなら、いの一番にやっておくべきだった。
 互いの存在を確かなものとし、迷いを振り払った二人は最早完成された両翼だった。
「シェル!」
「――雪、」
 そう、これが。
 本物の、声。愛した声は、これなのだ。
 今なら、迷わずそう言える。もう二度と、間違えない!
「これで終わりだ」
「消えてください。この世界から――私たちの、前から!!」
 深雪が背後に迫ると同時。
 シェルリードも、既に間合いに模倣の神を捉えていて。
 蒼穹の色を映して、煌めく透明の刃、一対。
 比翼連理の絆が此処に実を結び、偽りを断ち切る|決定打《トドメ》となる――!

 ――アアアアァァァァアアアア――!!

 咆哮のような、慟哭のような。
 空風の声は虚ろに響き、蒼穹の一部へと吸い込まれて消えた。
 静寂が、聖地を支配する。雲海は晴れ、玉座は天の光を受けて再び黄金に輝く。
「――帰りましょうか、シェル」
 深雪がシェルリードへ向けた、その笑顔も。
 負けず劣らず、晴れやかに輝いている。
 だからふと、柔らかく、シェルリードも微笑み返して。
「ああ、帰ろう」
 二人の家へ。娘の待つあの場所へ。
 繋いだその手を固く、握り締めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月28日


挿絵イラスト