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雪花の風

#UDCアース

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#UDCアース


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「UDCアースの世界にて、オブリビオンの出現が予知されました」
 グリモアベースの一角。
 集まった猟兵達に千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は話を始めていた。
 街の一角にある美しい花園に敵が現れ人々を襲撃する、そんな未来が見えたという。
「時刻は日中。冬の寒さも感じられる時分ですが、人通りも少なくないようです」
 一面に可憐な花が広がっており、カフェなどもあることから、平素から人の行き来はあるようだ。
 それを狙ってかどうかは判らないが──放置すれば人々が殺されてしまうのは事実だ。
「皆様にはその花園へ向かい、敵の殲滅をお願いしたく思います」

 現場について、とレオンは続ける。
「スノードロップの花が広く植えられている花園です。今の季節、見渡す限りに白く可愛らしい花が咲いていて、とても美しい眺めのようですね」
 石畳で舗装された道があり、花を見る際はそこを通るのだという。
 敵も凡そその道に沿って現れるはずだとレオンは言った。
「花を傷つけたくないと思っているのかは不明ですが──狙うのは人間だけでしょう」
 とはいえ、人々の避難は既にUDC組織がやっている。
 猟兵がやることは現場に向かい敵を迎え撃つことだけだと言った。
「敵は集団で襲来してきます。その殆どを占めるのが『黒翼の仮面』 です」
 蝙蝠のような姿をした、仮面型のオブリビオンだ。宙を飛ぶ能力を備えているので警戒をしておいてくださいと言った。
「敵の首領格は、『シリウス』という名のサイボーグであるようです」
 容貌は人の青年のようでもあるが、強力な戦闘力を備えた個体。
 邪神を崇拝する教団によって改造を施されているという情報もあるようだ。出来る限りの注意を、とレオンは付け加えた。
 そしてきらりとグリモアを輝かせる。
「美しい花に殺戮は似合いません。凶行を阻止するために──参りましょう」


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 UDCアースの世界での事件となります。

●現場状況
 スノードロップの花園。石畳の道が通っており戦闘はそこで行なえます。

●リプレイ
 一章は集団戦です。
 二章はボス戦になります。シリウスは自由を求める心を持ち、そう見える一般人や猟兵達に一方的な憎しみを抱いてくるでしょう。
 三章はカフェでの憩いの時間となる予定です。
 二章や三章からでもご参加頂ければ幸いです。
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第1章 集団戦 『黒翼の仮面』

POW   :    赤邪眼
【赤い眼から放出される光線】が命中した対象を燃やす。放たれた【闇属性を含んだ】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    超音波
レベル分の1秒で【音波による攻撃】を発射できる。
WIZ   :    急降下
【体当たり】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

三岐・未夜
な、なんか間違っちゃったヒーローマスクみたいな……?

……たまには、僕だってひとりでやれるようにならなきゃいけないんだ。いつも、団地のみんなに助けて貰ってばっかりだもん……僕だって、やれるんだ。
みんなを助けられる力が欲しい。

来い、柳切丸!
僕の、護身刀。
魔を退ける護りの刃。
敵の攻撃を柳切丸で弾きながら駆け出して、ゆめのはしを開いてその扇刃で斬り捨てるよ。【操縦、破魔、属性攻撃、誘導弾、範囲攻撃、援護射撃先制攻撃、全力魔法】
柳切丸に弾かせながら、僕自身に敵をより引き付ける。こわいけど、……大丈夫、僕には柳切丸もゆめのはしもあるから。やれるよ。【見切り、第六感、誘惑、催眠術、おびき寄せ、フェイント】



 こうべを垂れる白花が、綺麗な翠の茎に咲いている。
 冬の風はまだ冷たくて肌を刺すくらいだけれど、その花達はそよそよと揺れて春を待ちわびているかのようだった。
 花園は広くどこまでも白色が続いている。
 だからこの果てのない景色が少し落ち着かなくて──三岐・未夜(かさぶた・f00134)は瞳を伏せていた。
 青年のような見目の内では、まだあどけなさすら残る心が揺らめいて。表情にもかすかな不安が顕れていたろうか。
 それでも石畳の道を一歩踏んで、視線を上げる。
「……たまには、僕だってひとりでやれるようにならなきゃいけないんだ」
 呟いて歩むとその敵の姿が垣間見えていた。
 蝙蝠の群れ。
 遠目には一見そうとしか見えない集団。
 けれど近づけば、それが奇怪な姿形であることも理解されてくる。それはまるで──。
「な、なんか間違っちゃったヒーローマスクみたいな……?」
 未夜にとってもそれは即断しかねる敵だった。
 同時に油断の出来ない相手だとも識っている。あれは無数の人間を殺戮できるだけの力を持っている異形なのだ。
 未夜は胸の前で自身の手を握った。
 脳裏には団地の人達の顔が浮かんでいる。
(「いつも、みんなに助けて貰ってばっかりだもん……でも、僕だって、やれるんだ」)
 みんなを助けられる力が欲しい。
 今はなくても、それに手が届くのだと希望を持ちたい。
 だから“少年”は一歩も下がらずに手を伸ばしていた。
「──来い、柳切丸!」
 光が一瞬だけ明滅する。 
 その手に握られるのは護身刀。魔を退ける護りの刃。
 刀身から巡る破魔の力は未夜の全身に巡り、邪を祓えるだけの妖力を与えてくれる。同時、強く石畳を蹴って疾駆し始めていた。
 黒翼達は猟兵の存在を察知すると、細い鳴き声を音波にして射出してくる。
 空間の歪みが形を取る、透明の弾丸。
 文字通りの音速で飛来するその塊は、しかし衝撃に逸らされていた。未夜が素早く刃を振るうことで横方向へ弾いていたのだ。
 連続して右、左、斜め。
 未夜は軌道を見切って、勘を駆使して。奔りながら弾丸を退けていく。
 圧縮された時間の中では、僅か一瞬の油断が致命となるだろう。それでも未夜は音の渦を掻い潜って距離を詰めていた。
(「……大丈夫、やれるよ」)
 言い聞かせるように、或いは確信を表すかのように。
 はらりと開いたのは流麗な扇だった。“ゆめのはし”──やわらかにレェスが煌めく、星空の美しさ。
 その扇刃は厳寒のような鋭さも備えている。未夜は最後の音弾を左に弾くと、勢いを殺さずに廻転。艶やかに舞うが如く、眼前の黒翼を纏めて薙ぎ払った。
 数体が打ち捨てられた布のように散り散りに朽ちていく。
 これが第一歩。未夜は足を止めずに闘争へと走り込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルフトゥ・カメリア
蝙蝠みてぇだな。
……なんかいたよな、こんなマスク被ったアメコミヒーロー。
ま、こんだけ山と飛んでちゃ、気色悪ぃだけだけどな。
……スノードロップを荒らす訳にいかねぇし、さくさくと片付けるとするか。

流動金属型使い魔のNova.を操作し、【ロープワーク】で目の細かい網のように展開。
何匹か纏めて閉じ込めて引きずり落とし、手首の古傷を掻っ捌くことで溢れた地獄の炎で纏めて燃やして斬り捨てる。【破魔、鎧砕き、2回攻撃、怪力、フェイント、だまし討ち】

自分や周囲の猟兵への攻撃は【かばう、武器受け、オーラ防御、カウンター】で防ぎ、背面からの攻撃は翼の付け根から噴き出す炎で対応する。



 白妙の景色に、瑠璃唐草の蒼を映えさせる天使がいた。
「……確かに蝙蝠みてぇだな」
 身の丈の大翼で風を掴まえて、石畳へと降りるルフトゥ・カメリア(Cry for the moon.・f12649)。揺れる髪花を冬風に遊ばせるままにして、敵影へ赤椿の瞳を向けている。
 少々眉が顰まっているのは、敵の容姿が中々に類を見ないからか。
「……なんかいたよな、こんなマスク被ったアメコミヒーロー。ま、こんだけ山と飛んでちゃ、気色悪ぃだけだけどな」
 ゆるく首を振る。
 見渡せば可憐な花の絨毯。だけに、そこにいる羽の群集は如何にも景観にそぐわない。
 形の良い口元から少しため息を零すと、ダガーを取り出していた。
「スノードロップを荒らす訳にいかねぇし、さくさくと片付けるとするか」
 こつ、と歩み出ると刃を手元でくるりと廻す。
 するとその短刀が俄に形を変え始めていた。
 それは流動金属型生物“Nova.”──自在の姿を取るルフトゥの使い魔。薄く細く変遷し、網状になっていく。
 瞬間、ルフトゥはそれを斜め上方へ撃ち出していた。
 銀色に星を抱くそれは、宙を舞うと星空のように広がって──五体程を捕縛する形で閉じ込め、地に引きずり落とす。
 同時にルフトゥは手首の古傷に爪を立てていた。
 喰い込む痛み。構わず引っ掻くと皮膚が削れて、まるで蓋が外れたかのように獄炎が溢れ出す。
 一瞬空にまで立ち昇るそれは、鮮やかなネモフィラ色。眼前の方向に放射されることで拘束していた仮面蝙蝠を灼き、灰へと散らしていった。
 すぐ傍にいた別の個体が、ルフトゥに敵意を向けて飛来してくる。だがルフトゥはとっくにバスタードソードを構え、刀身にも炎を纏っていた。
「まっすぐ突っ込んでくる奴に不意を取られるかよ」
 花色を棚引かせて剣閃を奔らせ、秒の内に斬り捨てていく。
 背後に回り込んでくる個体がいれば、剣を差し向けるまでもなく。翼の付け根から焔を噴き出して焼き尽くしていった。
「さて、と」
 軽く視線を奔らせる。
 広い道を見渡せば、既に自分以外にも交戦に入っている猟兵の姿が見えた。
 負傷している者がいれば、無理矢理にでも守りきってやろうという気がルフトゥにはあったが──目を留めた姿には、どうやらその心配は要らなそうだと思い直す。
「なら、目の前の敵を叩くだけだな」
 首を鳴らして、火の粉で軌道を描く。道を塞ぐ個体も襲いかかってくる個体も、全て薙ぎ倒してルフトゥは敵の前線を破壊し始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンバー・ホワイト
美しい花を散らさないように、足元には気をつけて
こんなにも綺麗に咲いているんだもの、傷ひとつつけてはいけないな
こいつらは、花をを綺麗だと思う心を、持っていたりするんだろうか…少し気になってしまうけれど
人々を襲うワルイヤツラ、倒さなくちゃいけないな

敵の攻撃には翼に【オーラ防御】を張っておき備える
【見切り】も使って、攻撃を避けながら接近し、槍での【なぎ払い】で周囲の敵を落としてみせる

一時集中出来る間合いが作れたならば
気合いを込めて雪の焔を発動
鋭い槍が手元から溶けて消えるように、白い花を咲かせながら攻撃
全体を大きく狙って、敵の数を減らしていくぞ
雪の花びらと踊っておくれ、疲れて眠りについてしまえ



 道を見下ろす高空から漆黒色の影が降りてきていた。
 竜の少女──アンバー・ホワイト(星の竜・f08886)。
 白花と好対照な黒翼を広げて、夜色のフリルを風に揺蕩わせる。ひらりと着地する様が静かなのは、美しい花を散らさないようにと気をつけているからだった。
「本当に、綺麗に咲いているな」
 石畳を進み始めながらも、アンバーは無垢な表情で景色を見回す。
 雪のように清らかなスノードロップ。
 傷ひとつつけてはいけないと思うから、敵の方に向き直るが──蝙蝠の軍勢は現状、道に沿って進軍するばかりで花を傷つけてはいなかった。
 それが少女には少しだけ不思議だ。
(「こいつらは、花を綺麗だと思う心を持っていたりするんだろうか……?」)
 だとしたら分かり合える部分もあるのだろうか、と。
 そう思ったのはほんの一瞬だけ。
 この敵は何より人々を襲い、喰らいに来ている。だから手を取り合うのは無理なのだ──ならば。
「ワルイヤツラ、倒さなくちゃいけないな」
 少女は迷わない。美しい槍を携えると、氷上を滑るように高速で翔け始めていた。
 仮面蝙蝠は敵意を顕すように啼くと、真っ直ぐに羽ばたいてくる。少女への体当たりを狙っているのだ。
 が、それを簡単に許すアンバーではない。
 風を左方に追いやって、反作用で側転するように回避。地に足を着くと同時に横方向に廻転して、矛先で一体を薙ぎ払った。
 後続の個体が連続で飛来してきても、くるっと逆側に旋転して捕まらない。同時に槍で迎え撃つことも忘れずに、一体二体と敵を裂いていった。
 多方向から纏めてかかってくれば、さしものアンバーも容易な回避は出来ない。だが突進してくる敵を、白き光が弾いた。
 それは自身の翼に張っていた護りのオーラ。深い黒の鱗に瞬く耀きは、どこか澄んだ星空を想起させて──闇色の蝙蝠を近づけさせない。
 反動で後退した敵へ、アンバーは舞う。緩く螺旋を描くように槍を奔らせて、一網打尽にしていた。
 少女の傍から敵がいなくなれば、奥の蝙蝠達が距離を詰めようと集団で動いてくる。
 けれどアンバーは退かず。視界を埋めようとしてくる闇を──白き雪で迎え撃つ。心に気合を籠めると、槍をそっと翳していた。
 それが手元から溶けて消え、煌めく白色に変遷する。
 風にはらりと舞い始めるのは雪の焔(スノウホワイト)──ちいさくて美しくて、清廉な花びら達。
 たんぽぽの綿毛をふぅと吹いたように広がった白は、押し寄せる闇夜を覆ってしまうように蝙蝠達に降り掛かっていく。
 ──雪の花びらと踊っておくれ。
 ──そうして疲れて、眠りについてしまえ。
 雪花に触れると蝙蝠は砕けるように、或いは燃え尽きるように朽ちて消えていった。
 目の前に残るのはきらきら耀く雪の残滓ばかり。
 偽物の夜の帳を晴らした少女は、前進を再開する。斃すべき敵は、まだまだいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

京奈院・伏籠
年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず、ってね。
過去の残滓、変わらざる者…、オブリビオンに花園は似合わないよ。

さて、彼らは何を考えて律儀に道に沿って移動しているのやら。
この光景を見て心が洗われた、なんてことはないだろうし。
ま、こちらとしてもわざわざ花を踏み荒らすこともないだろう。

飛行型の敵ならまずは射撃で対応しよう。
ユーベルコードを拳銃のマガジンに付与して対空射撃。
当たれば魔力の鎖で動きを阻害できるって寸法だね。
動きが止まったら左腕のワイヤーショットを撃ち込んで他の敵の盾にしたり。
もしくは地面に引き摺り落として、近接攻撃が得意な猟兵と連携したりできるかな。


ヘンペル・トリックボックス
はてさて花を愛でる心があるのなら、十分に紳士の資格があると思うのですが──人を気付付けるのは紳士的にいただけない。まぁ、まずは取り急ぎ、無粋な仮面を花畑から追い出すところから始めるとしましょうか。

式神の群れによる【範囲攻撃】で対抗するとしましょう。鳥型は積極的に攻撃を、獣型は敵の光線が花畑に逸れた場合に身体を張って楯になってもらいます。出来る限り花畑を荒らさない方向での立ち回りを心がけますね。
万一式神の陣を縫って接敵された場合は極力石畳まで引き付けてから【見切り】、【カウンター】で仕込み杖を叩き込むとしましょう。

他の猟兵が苦戦するようであれば、何匹かそちらにも差し向けてアシストしますね。



 黒き翼達は、未だ羽ばたきを休めない。
 猟兵という抵抗勢力の出現によって敵の進軍速度は緩まりつつあった。それでも地平から現れる軍勢は尚敵意を露わに、園を羽音で包んでいる。
「さて──」
 と、見上げながら京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)は穏やかな表情を崩さなかった。
 UDC組織のエージェントであればこそ、今更異形の群れを目にした所で感情を崩すこともない。既に戦いが始まっているというのなら、かちゃりとハンドガンを手にとって前に歩むのみだった。
 それでもしいて気になることと言えば──。
「何を考えて律儀に道に沿って移動しているのやら。この光景を見て心が洗われた、なんてことはないだろうし」
「仮に花を愛でる心があるのなら、十分に紳士の資格があると思うのですがねぇ」
 呟くのはヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)。
 相貌には変わらずの飄然とした色を浮かべて、シルクハットの下から覗く瞳にも、特定の感情を窺わせない。
 差詰め正体不明の紳士。
 尤も、紳士を自称すればこそ“紳士的”でない敵に取る態度は、一つだけれど。
「人を傷つけるのはいただけない。ですからまずは取り急ぎ、無粋な仮面を花畑から追い出すところから始めるとしましょうか」
 手品か或いは奇術か。
 身振りもなく、ヘンペルはいつの間にか符の束を握っていた。カードのようにしゃらりと扇形に広げると、それを宙に落として風に踊らせていく。
 集いて唸れや獣の式。
 散れや羽ばたけ禽の式。
 囲め囲め、いついつ出遣る──。
 朗々と詠むと、ある符は羽を動かし猛禽の瞳を輝かせて。ある符は風に靡く毛並みを得て爪を尖らせていた。
 式群招来・獣聚鳥散陣(ジュウシュウチョウサンジン)。鳥獣の姿を取った式神の群れは、忠実な僕として敵の群れにぶつかり始めていく。
 低空を飛んで蝙蝠に喰らいかかるのは鳥型だ。鷲が獲物をついばむように、情け容赦もなく敵の羽を千切り、破り、命を喰らう。
 敵が無差別に抵抗を始めれば、その楯となるのが獣型。光線も音波も自身の体で防ぎ、射線を通さなかった。
 伏籠も前進し始める。
 敵数が加速度的に減り始めているとはいえ、未だ軍勢の半分以上は残存していた。だから少し進めばまだまだ無数の羽がそこにはいる──が、纏めてかかってくるなら都合がいい部分もある。
 伏籠はマガジンに拘束魔術を付与しながら敵陣に銃口を向けていた。
「これで少し、じっとしていて貰おうかな」
 瞬間、連続の発砲音を響かせて弾丸を踊らせる。
 術式付与・矰繳(バインドエンチャント)。
 命中した弾頭は弾けると同時に淡い光を帯状に広げていた。それは魔力の塊──鎖となって瞬時に絡みつき蝙蝠を拘束。縛り上げるようにその場に静止させていく。
 蝙蝠達は羽ばたこうとするも、身じろぎすらままならない。高度を落としていく敵に対し、伏籠は止まらなかった。
 放つのは機械の左腕に内蔵されたワイヤーショット。鋭い音を上げて飛んだ楔に流線を描かせて、次々に蝙蝠達の羽を貫いていく。
 伏籠はそのワイヤーを鞭のように操って、後続の敵に対する盾とした。
 未だ敵意漲らす蝙蝠達は、距離のある位置から音波を放ってきている──そのダメージを串刺しにした蝙蝠に肩代わりさせることで、敵数も手数も消費させていく。
 いつしか二人は敵陣の中枢にまで掃討の手を伸ばし始めていた。
 蝙蝠達は威嚇の声を聞かせるが、そんなものに動じる伏籠ではない。
「年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず、ってね。過去の残滓、変わらざる者……オブリビオンに花園は似合わないよ」
 マズルフラッシュを瞬かせ、前面の敵を拘束。そのまま地に引きずり下ろした。
 虫が這うように暴れる蝙蝠もいたが、ヘンペルはそれに対してステッキをくるりと携えている。
「夜会の仮面を気取るなら、散り際もスマートであって欲しいものです」
 そこまでは高望みかも知れませんが、と零しながら。
 刃が閃くのはそれが仕込み杖だから。刹那、縦横に踊らせた斬閃で蝙蝠を切り裂き、永劫の眠りにつかせていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジング・フォンリー
花を踏み荒さないようにするのは感心だが人を襲ってしまっては意味はないな…俺も花を踏み荒さないように気をつけてはみよう。

いつもは体術で戦いがちなんだが今回は空を飛ぶ敵だ銃火器およびサイキック能力で戦おう。
【ヴァリアブル・ウェポン】使用。命中率を選択。【援護射撃】などでサポートしながら敵殲滅を目指す。敵攻撃は【第六感】【見切り】で回避。



 風が吹くと、花が仄かに甘く薫る。
 改めてそれが感じられる程度に敵数は減り、僅かな静けさも戻りつつあった。
 けれど前に進めば未だ残党と言うには多すぎる軍勢が見えるから──ジング・フォンリー(神躯108式実験体・f10331)は油断をしない。
「まだまだ敵は多そうだな」
 呟きながらチャイナ服を靡かせて疾駆。朱を引いた目元でしかと前を見つめ、敵陣との距離を測っていた。
「しかし──」
 声を零す。
 抜け目なく観察しながら、ジングが気になったのもやはり敵の動きだった。
 仮面蝙蝠は相変わらず道に沿って直進を続けている。
 凡そ判ってきたことは、少なくとも仮面蝙蝠はあまり深い思考を持って行動をしていないことだ。すなわち、命令に従って動いている部分が大きいということであろう。
「どうであれ花を踏み荒さないようにするのは感心だが──結局人を襲ってしまっては意味はないな……」
 そうなればこちらが取る行動は決まってしまうのだから。
 故にジングはかちゃりと銃を構えていた。
 体術を得手とするジングではあるが、銃火器の扱いにも同等に精通している。敵が空にいると見れば、臨機応変に戦術を変えることを厭いはしなかった。
 刹那、重い振動と共に銃声をエコーさせる。
 口径の大きい弾丸は短距離を豪速で駆け抜けて、一発で一体を四散させていた。そうして先ずは間合いを保ったまま、前衛で戦う仲間の援護を行っていく。
 敵の中枢が瓦解し始めれば、自身も射撃を続けながら少しずつ前進を再開した。
 時折遠くの宙が光って、反撃の光線が返ってくるが──それこそジングの修行の成果を発揮する時。
「……やられるものか」
 横へ転がるように跳躍。
 遅れて地を穿つ衝撃に追いつかれぬように、連続で飛来する光を全て見切り、その身のこなしを十全に見せていた。
 敵の攻撃に間隙ができれば、その隙に狙撃を再開、敵を次々撃ち落としていく。
 サイキックとしての力も駆使し、敵がミドルレンジに迫れば電流を放ち退けて。そうして前に奔っていけば徐々に敵の終わりも見え始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェレス・エルラーブンダ
ぴかぴか(ライカ:f04688)と

陽のひかりがまぶしくて
眩しすぎて、恐ろしいと感じるほど
声に、降り注ぐ海氷柱に振り向けば
さらに眩しくひかる存在があった

おまえ、なんで、

おんなが猟兵だったことにも
自分も同じ場所に立っていることにも驚いていた

『まもの』と『鉄のヒトガタ』を倒せばいいんだろう
……わかった

慣れない衣類もニンゲンのにおいも
いやでいやで仕方ないけれど
たべること、それはいきるためにヒツヨウなことだ

敵を引き付けるよう前衛でシーブズ・ギャンビットを用い攻撃に徹する
視界を覆うように飛び回る仮面がいれば投擲用のナイフで応戦

手を組んで戦うなんて
けれど、ああ、
芽生えたおもいに名が付けられなくて気持ちが悪い


ライカ・モンジ
作中フェレっちゃん(f00338)と偶然共闘する事に

戦闘躊躇うよーな綺麗な花畑だけどガサツなアタシが任されちゃったって事で諦めて欲しい!ゴメ〜ン!
敵の上空から地上に向けてbrinicleを展開
一箇所に数集めて一度に叩きたいけど…なーんか、この、大人しく刺されとけ〜っ!

ガサツなりに気を付けて戦ってるけど流石にフェレっちゃんも気付くかな
アハッ顔、顔〜♡驚き過ぎでしょフェレっちゃん!
どお?このひとヤマお手伝いしてくれたらお姉さんなんでも奢っちゃう♡

協力後敵の誘導をお願いしよっかな
そんでアタシはもっかい纏めてbrinicle!
討ち漏らしもお願いね♡

横目に見える彼女の表情に思わずこっちの目が細まっちゃう



 降り立った花園は、空気が澄み過ぎていて不思議なくらいだった。
 そこは慣れた瓦礫の山とは違う。
 暗雲の下の泥濘とは違う。
 文字通りに全く別の世界、というのは言い得て妙なのかも知れないけれど。
 それでもフェレス・エルラーブンダ(夜目・f00338)には真っ直ぐに空を見上げることが出来なかった。
 陽のひかりがまぶしくて。
 眩しすぎて、恐ろしいと感じるほどだったから。
「……」
 まるで穴ぐらから転がり出てしまった野良猫のように。
 美しい石畳も、鼻先を擽る花の芳香も、無限に広がる白の景色も──抜けるような青空も、全てが何時までも慣れない。
 その居心地の悪さの中には、或いは後悔にも似た気持ちもあったかも知れない──と。
 ふと聞き覚えのある声がして目を向ける。
 見えたのは降り注ぐ海氷柱。
 そしてそこに居る、もっともっと眩しくひかる存在。

 こつんこつんとブーツで戦場を駆けてゆく、人目を惹く姿があった。
 ふわりと揺れるヒョウ柄のシュシュ。靡く髪は宝石のようなターコイズブルー。美しいローズタンドルの肌が目に飛び込むのは、その衣服が丈の短いものだから。
 ライカ・モンジ(オー!ヴァレンタイン・f04688)。
 美しい見目に、ざっくばらんな印象も同居しているのは──何より本人の振る舞いもあってこそだろう。
「戦闘躊躇うよーな綺麗な花畑だけど……ガサツなアタシが任されちゃったって事で諦めて欲しい!」
 ゴメ〜ン! と声音を響かせながら手を翳し、上空に生み出すのは亜空間。
 瞬間、蒼き塊が降り注いだ。
 Brinicle(ブライニクル)──膨大な体積による海氷柱。青空よりも透明で澄んだ重みが、陽の光を浴びてきらきらと耀きながら蝙蝠達を襲い、潰していく。
 熾烈な威力によって敵は霧散するが、流石に一撃で前面の敵を一掃はできない。
「うーん、一箇所に数集めて一度に叩きたいんだけど……なーんか、この、大人しく刺されとけ〜っ!」
 えいえいっと再度柱を喚び出して、とりあえず散発的に敵の数を減らしていっていた。
 故に、その氷色と声音が印象的で──フェレスがライカの存在に気付いたのだ。
 ライカも見知った姿に目を向ける。
「あれ? フェレっちゃんだ」
「おまえ、なんで」
 フェレスは目を見開き、反応しかねている。
 ライカが猟兵だったことにも、自分も同じ場所に立っていることにも驚いていた。
 アハッとライカは口元に手を当てる。
「顔、顔〜♡ 驚き過ぎでしょフェレっちゃん!」
「……」
 その笑顔に、フェレスは憮然とした表情も返せない。間近だと一層その存在がぴかぴかとしたものに感じられて、心に眩しく思えてしまうからかも知れなかった。
 ライカはそんな少女に道の先を示す。
「どお? せっかくだし一緒に戦わない?」
「一緒に?」
「そ。このひとヤマお手伝いしてくれたらお姉さんなんでも奢っちゃう♡」
 それは単なる思いつきというわけでもなかった。少なくともこの戦場では、協力者がいたほうがライカにとって能力は使いやすい。
 だから敵のボスまで共闘を、というお願いに……フェレスは頷いた。
「『まもの』と『鉄のヒトガタ』を倒せばいいんだろう。……わかった」
 どちらにしろ、戦わねばならないことに変わりはない。
 慣れない衣類もニンゲンのにおいも、いやでいやで仕方ないけれど。
(「──たべること、それはいきるためにヒツヨウなことだ」)
 だったら、そのくらいはやってやる。
 すらりとダガーを抜くと、ライカと視線を合わせた。
 一瞬後に、フェレスは地を蹴って風になる。
 位置取りは最前衛。軌跡だけが残るような素早い斬閃で先ずは数体を斬って捨てた。視界を覆うように飛び回る個体があれば、投擲用ナイフを放って撃ち落とす。そのまま短時間だけ駆け抜けて、敵を惹き付けていった。
「じゃ、そろそろいくよ!」
 その声が聞こえれば、フェレスは飛び退くように後方へ宙返りする。
 間合いが出来た丁度その瞬間、ライカは海氷を顕現。纏まった多勢を一気に飲み込んで藻屑に変えていった。
「討ち漏らしもお願いね♡」
「……分かった」
 フェレスは頷き、周囲に散った数体を叩く。
 手を組んで戦うなんて、と思う心もあった。
(「──けれど、ああ」)
 芽生えたおもいに名が付けられなくて気持ちが悪くって。それでもそれはただ昏い気分というわけでもない。
 それは多分、さっき感じていた居心地の悪さとは別のもの。
 ライカも、横目に見える少女のその表情に思わず目を細めていた。
 この数瞬で、残りの敵の実に半分以上は退治したことになる。
 だからこそ気を抜かず。二人は戦いを続けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ワズラ・ウルスラグナ
一般人避難済みだと言うのに、思う存分暴れまわるのは難しそうだな。
無体な俺でも、残雪の銀世界めいた花園は荒らしてはならんのは分かる。
事を終えて花が無事ならば篤眺めていくとしよう。

そう言う訳で花は踏まん。
自他の攻撃が向かんよう、必要ならば飛行も駆使しよう。
その上で用いるのは戦獄龍滅劫。
武器改造でサルヴァに獄焔を纏わせ、剣圧と熱風で薙ぎ払う。
当たらずとも飛び難くなれば善し。光線や音波を熱で曲げられればなお善し。
最悪でも只々焼き斬っていくだけだ。

花園への被害が大きそうなら戦獄龍終極で巨大化し薙ぎ払う、或いは更に戦獄龍逆燐まで用いて守りと反撃に徹する。
ただ勝つだけでは足りんのだ。それが戦いと言うものよ。



 白花の間に、黒龍が降りてゆく。
 ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)はその爪で石畳をとらえつつ、美しい景色へ一度視線を巡らせていた。
「成る程──一般人は避難済みだと言うのに、思う存分暴れまわるのは難しそうだな」
 道幅は十分な広さがある。
 とはいえ、流れ弾が及ばぬ範囲は無尽蔵ではない。焔も膂力も、戦いにおける全てに膨大なものをもっているワズラにとっては尚の事だ。
 その上、戦いが進む今も花が無傷であればこそ。
「無体な俺でも、残雪の銀世界めいた花園は荒らしてはならんのは分かるからな」
 事を終えて花が無事ならば篤と眺めていきたい。
 ならばこそ花は踏まず、敵だけを蹂躙してみせよう。
 決めたワズラがその腕に握ったのは暴風龍サルヴァ──巨大で無骨、まるでワズラの戦い方、そしてその意志が形を取ったかのような鉄塊剣。
 並の刃なら、ワズラの威容と体躯に比して頼りなく見えてしまうだろう。
 だがそれは違う。ちりちりと立ち昇った獄焔を纏った刃は、見目ですら圧力を与える。柄を引くようにワズラがそれを構えると、たなびく陽炎が空気を揺らがせていた。
「さあ、闘争を始めようか」
 剛風の音。
 ワズラは高速で風を掻き分け、敵陣に肉迫していた。
 下段から殴り上げるように刃を振るい、剣圧と熱風を放つ。ほぼゼロ距離で撃たれた衝撃と炎熱に、蝙蝠の三体程が一瞬で消し炭になった。
 返す刀で、ワズラは剣を直下に振り下ろす。一呼吸の間もない出来事、だが襲った暴力は更に四体を散り散りに砕いていた。
 戦獄龍滅劫(ブレイズ・デストロイア)。
 剣を介して放たれるその戦獄はあまりに強力。飛んでくる光線や音波も、熱で歪められた空間を上手く伝搬せず、威力が軽減される。
 蝙蝠が体当たりに徹すれば、ワズラには好都合。纏めて斬り伏せ、火の粉へと散らしていった。
「これで終わりだな」
 敵の数も相応だったが、それでもワズラに対するには十分とはいえない。残存していた数体を塵に変えると、場に仮面蝙蝠はいなくなっていた。
 代わりに静かに歩いてきたのは一体の機械だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『繰り返される絶望』シリウス』

POW   :    切断
【右腕の単分子ブレード 】が命中した対象を切断する。
SPD   :    衝撃
【右腕の単分子ブレードにより衝撃波 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    光線
【右腕の単分子ブレード 】を向けた対象に、【レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクネウス・ウィギンシティです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●無限の傀儡
 それは邪神教団によって改造されたサイボーグだった。
 元から機械であったか、そうでなかったかも判らない。ただそれは邪神の種子を埋め込まれた実験体で、驚異的な治癒力と戦闘力を備えた個体だった。
「僕は傀儡。忠実に命令をこなさなければならない」
 声音に憎しみのような意志が滲んでいるのは、本来の心の欠片が残っているからか。
 機械人形は自由を求めても得られない。だから自由なものが憎い。
 故に殺し続ける。くびきが解かれるまで。
 おそらくそれは、永劫解かれることはないだろうけれど。
アンバー・ホワイト
人から改造されたサイボーグ…?
なんて酷いことを…
自由を知らなかったわたしだ、自由を求める強さ、よくわかる…それが手に入らない辛さも
わたしは、彼を助けてやれないけれど
全て終わらせて救ってやろう

古竜の息吹で竜を召喚し、その背に乗って接的する
攻撃には【見切り】と【フェイント】で細かく動くことで回避を試みて
受ける場合も【オーラ防御】による軽減を試みる

竜の放つ咆哮で攻撃した後、噛み付いて動きを捕らえさせたならば
竜の背から【ジャンプ】して飛び立ち、勢いにのせた槍で【怪力】任せに【鎧砕き】【串刺し】にしてやる

命令通りの攻撃などに、わたしたちは負けない!
護りたいと願ったもののある強さ、見せつけてやる!


三岐・未夜
…………やりづらいなあ……。
だってこのひと、元々実験体ってことは、その……被害者なんだよ、ね……?自分から進んで立候補して実験体になったとかじゃ、なければだけど……。

複雑な気持ちにはなるけど、早く終わらせなきゃ被害が増えるだけだから……おやすみなさいしよう。【祈り、破魔】
火の矢を生成して【属性攻撃】で火力を強化するよ。なるべく、他の猟兵が動きやすくなるようにもしたいし、弾幕張ってこ。【操縦、範囲攻撃、援護射撃、誘導弾、先制攻撃、全力魔法、生命力吸収】
自分への攻撃に対しては、【誘惑、催眠術、ハッキング】で思考を誘導して狙いを曖昧にし、【おびき寄せ、見切り、第六感】で避けやすいように動く。


ジング・フォンリー
実験体にサイボーグ…ここまでよく似た境遇のオブリビオンに出会うことになるとはな…一歩間違っていたら俺も彼とさして変わらない存在になっていただろうが…。
今の立ち位置は完全に違う。お前は人を傷つけるものであり俺はそんなお前を倒すものだ。

さぁ、終わりにしよう。破壊しよう。【第六感】【見切り】で攻撃を回避【気合い】をもって戦闘に集中。最後はUCを使用。

アドリブ絡み可


ルフトゥ・カメリア
命令、ねぇ。俺としちゃ、その発信元こそ教えて欲しいもんだな。
末端に用はねぇし、傀儡に言う言葉もねぇ。テメェは此処で永遠に眠ってろ。【祈り、破魔】

傀儡でしかないと言うなら、屠り続けたその手を止める為には機能停止させるしかない。救える者は救うけれど、救えないモノであるのなら死を与えるしかない。
手首の傷を広げる、より深く。溢れる炎が途切れないように。
溶かしてそのまま叩っ斬ってやるよ。【鎧砕き、2回攻撃、怪力、フェイント、だまし討ち】

自分や周囲の猟兵への攻撃は【かばう、武器受け、オーラ防御、カウンター】で防ぎ、背面からの攻撃は翼の付け根から噴き出す炎で対応。
護ることを本懐とする傲慢な守護天使。


ヘンペル・トリックボックス
「辛気臭い顔しているじゃあないですか、ご同輩。青い空、白い花畑──それすらも貴方には、疎ましく映りますか?」
同じ人形故に、過去に追い返さなければならない事が悔やまれてなりません……が。であればこそ、私は彼に問いましょう。『この景色を美しいと感じたのか』を。

フラワーウィンドを展開します。彼が感性を失った怪物であるなら手加減抜きの【全力魔法】を上乗せした【範囲攻撃】。人としての感性が残っているのであれば、目眩まし程度に降り注がせて仕込み杖による近接戦闘に持ち込みます。基本は打撃主体ですが、ここぞというタイミングでは【フェイント】と【だまし討ち】を織り交ぜた【カウンター】で居合い抜きを放ちましょう。


京奈院・伏籠
傀儡、ね。糸を切れるなら操り主を探すのがベターなんだろうけど。
…そう悠長なことは言ってられないか。
悪いね、御同輩。ここでは敵同士だ。

さて、まず注意すべきは腕のブレード。俺の腕はそこまで出力に特化していないし、取っ組み合いは避けたいところ。
次いで外見で気にかかるのは頭部…、あれはアンテナ? 感覚器?
フム、ちょっと試してみるか。

弾丸は炎精刻印弾を選択。味方と連携して拳銃で援護射撃。
クイックドロウはお手の物、ガンガン撃って魔力の炎を発生させるよ。
ダメージを狙うのはもちろんだけど、もし彼が熱情報をモニタしているなら多少の攪乱になるかな?
…それから、そうだね。可能な限り、花は燃やさないように注意しよう。


フェレス・エルラーブンダ
ぴかぴか(ライカ:f04688)と

やつあたりするな
自由だから幸福というわけでもない
……誰も彼も憎らしいと思うきもちは、わからんでもない

おんなの盾になり乍ら棘檻で攻撃
靴、手首、腿、胴
それは、ヒトを退けるための檻
隔絶、断絶、己が身、それこそが

傀儡の腕が己の方を向いていないことに気付く
何を狙って、

――ライカ!

考えるよりも早く体が動いた
光線の一閃が身を焼く衝撃に歯を食い縛る

痛いことは嫌いだ
なのに
庇わなければ
傷ついてほしくない
頭のどこかで、そう思った

刃を構え直し
『なりそこない』と向かい合う

『おまえの、自由を、ゆるす』

命じられなければ動けないと云うのなら
ゆるしてやる
おまえの意志で、ころしに来い
私もそうする


ライカ・モンジ
フェレっちゃん(f00338)と共闘

個人的にはああいう可哀想な子見ると堪んない
どうやって揺さぶろうか…あぶな、あの子の手前まだイイお姉さんは演じとこ

フェレスへの遠隔攻撃をガードし立ち回り
brinicleの氷柱をガード代わりに喚び出し敵を閉込め行動不能を誘い
機会を狙い右腕の破壊を心掛ける
フェレスの被ダメが著しい場合には生まれながらの光で回復を

悲惨な人生ご苦労さま〜。…で?羨ましい?アンタの欲しいもの、アタシはぜえんぶ持ってる♡

ヘイト稼ぎも計算あっての事だったんだけどなぁ
庇うフェレスは予想外過ぎ
マズっちゃうなぁ…そうはなって欲しくないんだけど
狼狽えたフリながらも回復は素早く的確に
心は努めて冷静に


ワズラ・ウルスラグナ
願わくばせめて心くらい救いたいが、俺には良い方法が思い付かん。
だからせめて、その憎しみの全てを俺にぶつけるが善い。
少しは気が晴れるかも知れんぞ。

用いるのは戦獄龍終極、そして戦獄龍滅劫。
短期決戦仕様だ、有りっ丈の戦獄の焔で全身と武器を纏う。
敵の攻撃はブレードからのみ。最警戒し、致命傷だけは避ける。 
的がでかくなれば攻撃も受け易くなるだろうが、それで良い。
受け止め切れずに潰れては意味が無い、全身地獄化し技能で補強してでも最も心の籠った一撃だけは受け止める。
その上で、否定せずに両断する。

また腹が立ったら湧いて出るが善い。
その時はまた戦おう。
死ぬまで付き合ってやるとも。
そうするのが俺の自由だ。



 風が穏やかに白花を揺らす中、サイボーグは金属的な足音を鳴らして近づいてくる。
 青年の面影を残すそれを、アンバーは真っ直ぐに見つめ返していた。
「人から改造されたサイボーグ、なのか……?」
「昔の記憶なんて、殆ど残っていないけれどね」
 かちゃり、と刃を構えながら彼──シリウスは応える。
 普通の人間から多くのものをそぎ取り、代わりに兵器として必要なものを植え付けられた──声音にも仕草にも、そんな歪さがあった。
「僕に許されたのは殺戮のみ。こういうのを籠の鳥というのだろう」
 客観的に分析するようでも、自嘲するようでもある口ぶり。
 それがほんの少し自分の心にも触れるようで、アンバーは瞑目していた。
「なんて酷いことを……」
「…………ほんと、やりづらいなあ……」
 呟く未夜も、前髪の奥の瞳をその敵へ向ける。
「君……自分から進んで実験体になったんじゃ、ないんだよね」
「ああ。それだけは判る。だから、自由が欲しいんだ」
 決して手に入らない、自由が。
 シリウスは単分子ブレードを、横振りにして衝撃波を放とうとしていた。まるで青空に手を伸ばそうと足掻くような一閃。
 それは同時に猟兵にも届きはしなかった。
 ジングが発砲することで衝撃を相殺していたのだ。
「やらせないさ」
 微かに目を細めるサイボーグを、ジングもリロードしながら見つめる。
 その存在の辿ってきた道筋が、自分と重なって見えた。
(「実験体にサイボーグ……ここまでよく似た境遇のオブリビオンに出会うことになるとはな」)
 一歩間違っていたら、自分も彼とさして変わらぬ存在となっていたのだろうか?
 それは、判らない。
 だが今この時、自分とあの敵の立ち位置が違うことだけは確かだった。
「お前は人を傷つけるものであり、俺はそんなお前を倒すものだ。だから、決して退きはしない」
「そうだね。早く終わらせなきゃ被害が増えるだけだから」
 声を継ぐ未夜も、複雑な心は消えない。
 それでも戦わなければならないと知っているから。
「──おやすみなさいしよう」
 湛えた祈りは、破魔の力を手元に纏わせる。未夜が手をそっと翳すと、狐火のような焔が生まれていた。
 玄狐ノ性(ゲンコノサガ)。
 ぽつ、ぽつ、ぽつ、と数を増やした灯りは、無数の火の矢となり宙を飛ぶ。焔の雨は正面と頭上からシリウスを抑えるように弾幕となり、焼け付く衝撃を与えていった。
 ジングもそこに散弾を放ち、敵の全身を確実に穿っていく。
 弾丸も矢の火力も、金属の体を軋ませる威力。それでもシリウスは後方に下がることで弾幕から距離を起き、レーザーによって遠方からの反撃しようとしていた。
「君たちはそうやって自由意志で戦う。なら僕はそれも全部潰すだけだ」
 空間が歪むほどの光の塊を生成して撃ち出す──が。
 次の瞬間、機械の瞳が見たのは眩い白色の影。
 アンバーの顕現する古竜の息吹(ツガレシチカラ)──神話に在る白き竜。その背に乗ったアンバーは、吹き抜ける疾風となっていた。
 飛来した光を軌道をずらして回避すると、空いた射線に正面から向く。
「自由を知らなかったわたしだ、自由を求める強さ、よくわかる……それが手に入らない辛さも」
 手を伸ばしても永劫の距離にあって触れられない。
 自分の声が、ただ闇と自分の心にだけ反響して届かない。
 それを知っているから、彼が何を思っているのか誰よりも判った。彼が求める未来を得られないという事実も、また。
 ──わたしは、彼を助けてやれないけれど。
「全て終わらせて救ってやろう」
 竜はアンバーの意志をかたちにするように、鋭い咆哮を放つ。それが飛来した衝撃波をも虚空に消し、シリウスの刃先を粉砕していた。

 金属の破片が散って、風に消えていく。
 シリウスは僅かに苦痛を含んだ声を零していた。
「……、斃れて、それで救いが訪れるなんて、僕には思えない」
 それによって全てから解き放たれるとしても。
「自由を得られないまま死んでいくなら、きっと意味がない。僕は君たちとは違う」
「──だから、目についた全部をころすのか。やつあたりするな。自由だから幸福というわけでもない」
 フェレスはほんの少しだけ制すように言う。
 ただ、彼の全てを否定しきることもできない。誰も彼も憎らしいと思うその気持ちが判らないでもないから。
 だがそれ故に、こちらも迎え撃つ以外に出来ることはない。
 シリウスが欠けた刃を構えるが、フェレスは攻撃される前に行動していた。
 宙を飛ぶのは短刀。一撃だけに終わらず、二撃、三撃と角度をずらして投擲することで敵に自由を与えない。
 棘檻(イバラオリ)。靴、手首、腿、胴──潜ませた刃を投げ、飛ばし、敵の体を縛って切り刻み、抉っていく。
 それはフェレスの身につけた、ヒトを退けるための檻。
 敵はそれに動きを制限され、容易に反撃に出られない。それでも動作の少ないレーザーをその場から撃つことで反撃しようとした──が。
 空から冷気が顕れる。
「ちょっと、お邪魔♡」
 蒼く耀く影が落ちるのは、上方に巨大な氷塊が出現したから。ライカが間合いを取った位置から意識を集中し──亜空間を広げて召喚していたのだ。
 壁になるように地に落ちた氷柱は、敵のレーザーで砕けながらもその衝撃の全てをしかと吸収していた。
 無論、ライカは手数を消費させるだけで終わるつもりはない。
 心の中で円陣を描くようにして、さらに複数の亜空間を招来。敵の行動を封じるように前面を氷で閉ざすと──敵が惑った一瞬の隙をついて横合いから氷を飛ばす。
 弾丸の如き速度で襲ったそれは、シリウスの右腕に鈍い音を上げさせた。
「……っ」
 僅かに声を零して、シリウスは腕を押さえる。機能が不全になったわけではないだろうが、確かにその動きは鈍ったはずだった。
 無論それで斃れはせず、氷柱を斬り裂いて再び視界を広げている。表情には警戒も浮かんでおり、こちらの同じ手が二度通用するかは疑問だった。
 だからこそライカも油断はしていない。
 否、寧ろ──。
(「個人的にはああいう可哀想な子見ると堪んないんだけど」)
 どうやって揺さぶろうか──そんなふうに考えると、飄々としていた自身の表情が変わってしまいそうになるのを感じる。
 もちろん、すぐにそんな心は引っ込めた。
(「あぶな……。あの子の手前、まだイイお姉さんは演じとこ」)
 軽く首を振って思い直すも、敵を揺さぶるという作戦自体は行うつもりだった。
 だからライカは敢えて敵から己の顔がよく見える位置に立つ。
「悲惨な人生ご苦労さま〜。……で? 羨ましい? アンタの欲しいもの、アタシはぜえんぶ持ってる♡」
 手をひらひらとさせて語る声音が、文字通りに全て受け止められると思ってはいない。
 ただそれでも、機械の中の心は反応したようだった。
 シリウスはライカへ目を向けると閃光を瞬かせる。一直線に光線を撃って、こちらの心臓を貫く心算だった。
 が、その時。
「──ライカ!」
 目の前に影が飛んで、光が途中で遮られた。
 フェレスがとっさに跳んで庇いに入っていたのだ。
 光線の直撃は、肌を、身を、命を灼く程に強い衝撃で──フェレスはその苦痛に歯を食いしばる。
 痛いことは嫌いだ。
 なのに庇わなければと、傷ついてほしくないと頭のどこかでそう思った。だから、考えるよりも早く体が動いていた。
「フェレっちゃん──」
 ライカは少しだけ目を見開いてみせる。“ヘイト稼ぎ”も自身の中では計算あっての事だっただけに、庇うフェレスの姿は予想外に過ぎた。
「マズっちゃうなぁ……そうはなって欲しくないんだけど」
 表情は狼狽えたフリ、だが心は努めて冷静で、行動も素早い。生まれながらの光を瞬時に与えることでフェレスを即時に回復していた。
 フェレスはその温度を感じながらも、刃を構え直して『なりそこない』と向かい合う。
「おまえの、自由を、ゆるす」
 ──命じられなければ動けないと云うのなら、ゆるしてやる。
「おまえの意志で、ころしに来い。私もそうする」
 それはこの戦いで初めての、心からの宣戦だったろう。
 シリウスは首肯するようにブレードを掲げている。
「……勿論。僕にまだ意志が残っているのなら」
 言うと同時、斬りかかってきた。
 が、フェレスは素早く反応。今度はライカへ攻撃を向けさせる暇も与えず──刃の雨を降らせて敵の全身を裂いていく。

 体がひしゃげて、いびつに歪む。
 シリウスは苦しそうな顔で膝をついていた。殺そうと思ったものを全て殺してきた殺戮兵器は、そこまで追い詰められたことが始めてで、不思議そうでもあった。
「僕は、このまま死にゆくのかも知れないな……」
 それでも命令ならば戦うしか無いけれど、と呟いて。
 ルフトゥはその心を汲むよりも、ただ片眉を上げてみせる。
「命令、ねぇ。俺としちゃ、その発信元こそ教えて欲しいもんだな」
「そうだね。傀儡だというなら、その糸の操り主を探すのがベターなんだろう」
 伏籠も呟く──けれどそれが困難であることも判っていた。
「……悠長なことは言ってられないか」
 銃を手に取る。
 向ける視線の先では、敵も既に立ち上がっていたからだ。
「僕は末端。命令以外の事は出来ない」
「そうかよ。だったら、こっちもやることは同じだ」
 応えたルフトゥは手首に爪を触れさせる。
「末端に用はねぇし、傀儡に言う言葉もねぇ。テメェは此処で永遠に眠ってろ」
 屠り続けたその手を止める為には機能停止させるしかない。
 救える者は救うけれど、救えないモノであるのなら死を与えるしかない。
 護るべきものは、しかと護る為に。
 ルフトゥはその手首の傷を広げた。より深く。溢れる炎が途切れないように。
「溶かしてそのまま叩っ斬ってやるよ」
 瞬間、蒼く耀く地獄の炎が放射され、シリウスの全身を襲う。
 その衝撃によろめいたところへ、ルフトゥ自身も接近していた。翼の付け根から炎を噴射させ、猛烈な加速を見せながら。
「く──」
「一手遅えさ」
 刃で薙ごうとするシリウス、だが火の粉に尾を描かせたルフトゥは旋回するようにその側面に回っている。
 剣に纏わせた炎は尚熱く。振り下ろした一刀で機械の体に深々と傷を刻んだ。
 金属が溶解し、消えぬ亀裂となって敵の体に残る。シリウスは唸りながら、それでも踏み込んでこようとした。
 しかし伏籠が間合いを保った位置から銃口を真っ直ぐに上げていた。
「悪いね、御同輩。ここでは敵同士だ」
 躊躇わず引き金を引く。
 撃ち出したのは炎精刻印弾(イグニートハウル)──炎の魔術を付与した弾丸。着弾と同時に大きく燃え盛り、刃の一部を溶け落とさせた。
 伏籠は腕の出力はそこまで特化していないという自覚がある。だからこれは、至近での取っ組み合いを避けるための狙いでもあった。
 同時に、別の気になる部分もある。
(「頭部、か」)
 視線をずらす。シリウスに人と差異のある部分は幾らかあるが、その中でも頭部の機構が気にかかっていた。
(「あれはアンテナが、感覚器か──フム、ちょっと試してみるか」)
 連続して速射。狙い違わず、その部分を粉砕するように撃ち抜いた。
 すると敵の挙動が一層精彩を欠く。おそらくは動作の制動の一部を担っているものでもあったのかも知れない。
 狙いは成功。地に手をついて、シリウスは苦悶を見せた。
 その表情は同時に、厭世のものでもある。
 ヘンペルは腕を広げて少々視線を巡らせていた。
「辛気臭い顔しているじゃあないですか、ご同輩。青い空、白い花畑──それすらも貴方には、疎ましく映りますか?」
「……」
 顔を上げる彼を、ヘンペルは見つめる。
 同じ人形故に、過去に追い返さなければならない事が悔やまれてならない──それはヘンペルの偽らざる本音でもあろう。
 だからこそ、しかと問うておきたかった。
「貴方はこの景色を美しいと感じましたか」
 その心がこの花園を傷つけさせなかったのか、と。
 シリウスは一度視線を下げる。そして、そうだね、と声を零した。
「こんな花園を眺めていられる自由が、僕は欲しかった」
「──そうですか」
 ヘンペルは応えると涼風を吹かせる。
 それは、色彩豊かな花弁を含んだものだった。
 祝天に舞え楽曄の風(カレイド・パレイド・フラワーウィンド)──彼の心に訴えるように、その意識を惑わせる。
 それは目眩ましの作戦でもあった。けれど同時に、その花による攻撃はしない。せめて花はその美しさのまま、刃にはせず──振るうのは自身が手にした仕込み杖だ。
 横一閃に奔らせ、胴部を斬り裂く。シリウスはそれに吹き飛ばされ、体勢を崩した。
 ジングはそこへ走り込み、強烈な拳を打っていく。
「さぁ、終わりにしよう」
 その一撃、鳳凰天昇撃(ホウオウテンショウゲキ)は名の如く、雄大な鳳凰を召喚してシリウスの体を灼いていた。
 体の端々を朽ちさせながら、それでも彼は刃を振るう。
「まだだ。死なない限りは──斃れない」
 そして殺戮に邁進する。
 仮に望まずとも、それが機械に課せられた命令だから──けれど。
「命令通りの攻撃などに、わたしたちは負けない!」
 アンバーは纏った星色のヴェールでそれを受け切っていた。
 直後、竜に噛みつかせてその動きを捕らえると、自身は竜の背から跳躍。速度を得て槍を掲げる。
「護りたいと願ったもののある強さ、見せつけてやる!」
 まるで流星が墜ちるかのような一撃。矛先は機械の体を貫いて、シリウスを地に打ち倒していた。
 這いながら、彼は朦朧と起き上がろうとする。
「僕の殺戮は、命令だ。でもきっと……自由への嫉妬は、本心でもある」
 だからそれを欠片でも手に入れたいのだと、刃を支えに立ち上がる。その内奥はきっと人のように純粋でもあった。
「願わくばせめて心くらい救いたいが」
 ワズラは相対しながら呟く。
 それでもこの存在を救う方法が、明確な答えとして見つかることはなかった。
 故にただ、戦いの構えを取る。
「せめて、その憎しみの全てを俺にぶつけるが善い。少しは気が晴れるかも知れんぞ」
 その言葉は比喩ではない。
 全霊の一撃はこの身をもって受け止める──その気概と戦意が、ワズラにはあった。
 瞬間、溢れ出る獄炎が巨大なシルエットを取る。戦獄龍終極(マキシマル・アトモスト)──ワズラは封印を解き放ち三倍の体躯の大竜へと変貌していた。
 シリウスは満身創痍ながら、真っ直ぐに斬りかかってくる。ワズラは自身を焔の怪物へと変えて迎え撃ちながら、どこまでも逃げの手は打たなかった。
 勝つための戦いであるが為に、力は抜かない。受けきれずに潰れてもまた意味がない。それでも敵から退かず距離を取らず、至近で打ち合った。
 腹を抉られたシリウスは、斃れずに剣を振りかぶる。最も心の籠もったその一撃を、ワズラは躱さず体で受け止めた。
 敵と、その攻撃を否定しない。その上でワズラは剣を振り上げる。
「また腹が立ったら湧いて出るが善い。その時はまた戦おう。死ぬまで付き合ってやるとも」
 そうするのが俺の自由だ、と。
 放った一撃は烈火の衝撃を伴って、シリウスを両断した。
 火の粉が散り、灰が霧散してゆく。花が揺れる優しい風が吹くと、その残滓の全てが消えて静けさが戻っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『カフェで一休み』

POW   :    わいわいお喋りしながらお茶する

SPD   :    店内を楽しみながらお茶する

WIZ   :    まったりのんびりお茶する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●花の憩い
 人が戻り、平和が戻った。
 花園の美しさは元のままで、人も者も傷つかずに終わった。
 先んじて避難や情報統制も行われていたため、一般人で事件を知るものはほぼいないだろう。
 故に、そこにはもう穏やかな空気が漂い始めている。
 花を眺める者もいれば、カフェでコーヒーや紅茶、ケーキといった甘味を楽しむ者もいた。
 猟兵達もまた、すぐ近くにそのカフェが在ることに気づく。
 花風に吹かれながら、猟兵達の取った行動は──。
アンバー・ホワイト
ヘンリエッタ/f07026と

マダム、マダム!私が護ったこの花園!とっても美しいだろう!
とてもすてきな所だったから、マダムと一緒に来てみたかったんだ!
うんうん、美しいマダムにはお似合いだな!

白い花を眺めながら、カフェに立ち寄って
美しいものと、美味しいもの!さいこうだろう?

ケーキは何を頼もうか?名前を見てもわからないなぁ…マダム、私におすすめを選んでくれないか?
なるほど、ベリータルト!すごい!きれい!そうしよう!

マダムにはなぁ…ええっと…ガトーショコラはどうだろう、マダムに似合う色だ。それにほら、雪みたいにお砂糖がかかっていて可愛いだろう?

たからものみたいだ…!食べてしまうのがもったいないよ…!


ヘンリエッタ・モリアーティ
アンバー(f08886)と
この綺麗な花園を?君が?
……子供の成長というのはやはり、期待以上だ
はは、この私に綺麗な所を選ぶなんて、やはり私は顔の造詣もいいからね
私の娘は、よくわかってる

見慣れない白と眩い世界に、慣れない目は相性が悪い
……サングラスをかけよう
楽しそうにする娘の手前だしね

美しい景色に美味しいもの
勝者の贅沢にはちょうどいいね
……私も実は甘味に疎いんだ
あまり口に入れたことがない
ほら、栄養なら点滴で良かった
あ、これなんて似合う
王冠に赤いベリーがかかってる
勝者の君にピッタリだな
私の分も選んでおくれ?

まるで私たちみたいなケーキだな、白と黒で
たしかに勿体ない
……また食べに来ようか、ケーキ



 隠れていた春の匂いが表に出てきたように、風が心なしか暖かくなっていた。
 白花達は嬉しそうに揺れて、花弁同士を触れ合わせる。それがさらさらと響いて楽しげな音楽のようだった。
 アンバーはまるでそれに合わせて踊るように、爛漫に道を歩んでくる。
「マダム、マダム! 私が護ったこの花園! とっても美しいだろう!」
 振り返って見つめる先は、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)──その真人格“マダム”。
 少女に連れられてやってきた花園を、物珍しげに見回していた。
「この綺麗な花園を? 君が?」
「ああ、いっぱい頑張ったんだ!」
 アンバーは少しだけ誇らしげに笑みを見せる。
 その表情を目にしてマダムは成る程、と独りごちた。戦いに奮うその腕も、心も、子供の成長というのは期待以上だと感じながら。
 案内するようにアンバーはくいくい腕を引いていく。
「さあいこう! とてもすてきな所だったから、マダムと一緒に来てみたかったんだ!」
「はは、この私に綺麗な所を選ぶなんて、やはり私の娘はよくわかってる。何せ私は顔の造詣もいいからね」
「うんうん、美しいマダムにはお似合いだな!」
 マダムの言葉にもアンバーはこくこく頷いて石畳を進んだ。
 それに続いてマダムも歩んでいく。
 見慣れない白と眩い世界。光を苦手にする目とは少々相性が悪くて、一度瞳を細めた。
 楽しそうにする娘の手前もあるから、サングラスを付けて対処する。勿論、花の美しさはそれでも十二分で、眺めて楽しむのに問題はなかった。
 そうして微風に游ぶ花々を観賞しながら──二人はカフェへとたどり着く。
 それは可愛らしい白屋根の建物だった。
 絵本の中に出てくるような店構えが、花の景観に魅力的な彩りを加えている。アンバーは指さしてぱたぱたと駆け寄った。
「マダム! あれだ! 寄っていこう!」
「花園の中に小さなカフェ、か。いい立地じゃないか」
「うん! 美しいものと、美味しいもの! さいこうだろう?」
「勝者の贅沢にはちょうどいいね。休んでいこう」
 というわけで、二人で早速店に入って席に着いた。
 テラスにある席は少しだけ高さがあって、花園を見渡せる。花の香りも程よく漂う、そんな中でアンバーはメニューを手にとっていた。
「ケーキは何を頼もうか? 名前を見てもわからないなぁ……」
 表紙には色々な品の名が羅列してある。
 可愛らしい語感のものや興味を惹かれる名もあるが、まだまだこの世界について知らないことも多いアンバーだ。見つめつつ、頭には『?』も浮かんでいた。
「マダム、私におすすめを選んでくれないか?」
「ふむ……私も実は甘味に疎いんだ。あまり口に入れたことがなくてね──ほら、栄養なら点滴で良かったものだから」
 重くもない口調で呟いてみせながら──マダムは表紙をめくる。すると写真付きでメニューの説明が載っていたので、その一つを指した。
「あ、これなんて似合うんじゃないか」
 それはきつね色の生地とたっぷりの果実が眩しいタルト。
「王冠に赤いベリーがかかってる。勝者の君にピッタリだな」
「なるほど、ベリータルト! すごい! きれい! そうしよう!」
 娘が一も二もなく応えてくれると、マダムはメニューを差し出す。
「では私の分も選んでおくれ?」
「マダムにはなぁ……ええっと……」
 アンバーは暫し瞳を右左させてから、とん、と一箇所を指した。それは深いチョコレート色が目を惹く一品。
「ガトーショコラはどうだろう。マダムに似合う色だ。それにほら、雪みたいにお砂糖がかかっていて可愛いだろう?」
「いいじゃないか。それにしよう」
 マダムは素直に頷いて、注文する。
 品がやってくると──ほう、とそれを見つめた。
 真っ白の砂糖がまぶされたガトーショコラは確かに美しく、濃色との綺麗なコントラストを作っている。
「まるで私たちみたいなケーキだな、白と黒で」
「ああ、本当だ! それに……こっちもすごい!」
 アンバーがまじまじと見つめてしまうベリータルトは、綺麗な三角にカットされたピースに、宝石のような苺やラズベリーが乗っている。シロップでつやつやと光るのが魅力的で、アンバーも同じくらいに瞳を輝かせた。
「たからものみたいだ……! 食べてしまうのがもったいないよ……!」
「たしかに、勿体ないな」
 造形の美しさや、これを作る者の技術はマダムにも判る。だから眺めていたい気持ちも理解できたけれど──何よりケーキは食べてこそ。
 ふわふわのガトーショコラをひとかけ切って、口に運んでみた。するとカカオの香りが口に広がってから、溶けるように無くなってしまう。
「うむ──美味しい」
「とっても甘くて、粒がぷちぷちしてるぞ!」
 タルトをあむっと食べるアンバーも、弾けるベリーの瑞々しさに甘酸っぱさ、それと少しだけ塩気を含んだ生地の相性に、笑顔で食を進めていた。
 一緒に飲み物を啜ると、ぽかぽかと体も温まって心地いい。アンバーには何より、こうして二人で甘いものを囲めるのが楽しくもあった。
 そんな少女を見つめるマダムも、表情に目立つ変化を見せるわけではなかったけれど──そっと語りかけるように言う。
「……また食べに来ようか、ケーキ」
「うん! こよう! 今度も一緒だ!」
 アンバーもそれには、また無邪気な表情を見せていた。
 雪の名を冠する白花は、春を告げる花でもある。さわさわとそれが風に揺れるたび、一歩ずつ新しい季節が近づいてくる気がして──それがとても心地よかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ワズラ・ウルスラグナ
相変わらず逞しい事だ。善哉。

人や物はともかく花を守ったのは敵だった気もするな。
それが敵の自由意思だったのなら、少しは救われるだろうか。

折角だ、俺も花を見ながら茶でも貰おう。
花の善し悪しは分からんが見るのは好きだ。
愛用の道具袋とスカーフにも配ってある。戦場には勿体無くて持ち出せんが。

戦いとは不自由こそを楽しむ物だ。
手強い、挑み甲斐が有る、などと言ってな。
戦う事さえ許されないとしたら、それは酷く辛いかも知れん。
…いや、その過酷さを耐え抜く事を戦いと呼び楽しむかも知れんが。

駄目だな、切なくなれん。
だがそれこそ自由よ。
不自由を楽しみ、自由を謳歌する。
我が敵が俺を妬み討ちに来るのを楽しみに待つとしよう。



 石畳の道には既に人々が戻ってきている。
 彼らの大部分は、ここで危険な出来事があったことなど知らぬだろう。そして知っているものも組織の協力でまた日常に帰っていく。
 変わりない時間が続いていくこの世界を、ワズラは強いと思った。
「相変わらず逞しい事だ。善哉」
 満足気に呟きながら、ワズラもまたカフェへと歩んでいる。
 折角守ることの出来た風景だ。花を眺めながら憩うのもいいだろうと思ってのこと。
 早速入店してテラスの一角に着くと──店で一番ポピュラーな紅茶を頼むことにした。
 黒い鱗を風が撫でてくると、ワズラは花園を見やる。
 花はどれも無傷で、戦いの前と変わったところはない。それを暫し眺めて、一人のサイボーグの姿を思い出していた。
「人や物はともかく、花を守ったのはあの敵だった気もするな」
 傀儡となっていた機械人形は、殺戮には不要なはずの花への心を見せていた。配下の蝙蝠にすら命令をして、傷つけまいとするように。
「それが敵の自由意思だったのなら、少しは救われるだろうか」
 今も花は美しく咲き誇り、それが守られているのだから、と。
 紅茶がやってくると、ワズラはそれに口をつける。
 季節は丁度、春摘みの茶葉の旬を迎える頃。この紅茶もまた新しい葉を使っているようで、芯芽の多さから来る華やかな香りが新鮮な風味を生んでいた。
「成る程。美味だ」
 暫し味わいつつ花を見渡す。
 花の善し悪しは分からないと自分でも思っているけれど……こうして見るのは好きだ。
 今だって、濃色の花を配った道具袋とスカーフを愛用しているほどだ──勿体無くて戦場には持ち出せないが。
 或いはあの敵も同じような心だったのかも知れない。戦いに花を巻き込みたくなかったのだろう、と。
「自由、か」
 それでもワズラは、自分があの敵とは大きく違う所があるのだと知っている。
 何よりも戦いを望むこと。そして戦いとは不自由こそを楽しむものだと理解していること。
 手強いならば挑み甲斐がある。苦戦するならばそれすらも糧になる。
 戦うことさえ許されないとしたら酷く辛いかも知れないが──それでも、その過酷さを耐え抜くこともまた戦いと呼んで楽しむのかも知れない。
 不自由を楽しみ、自由を謳歌する。
 それが出来るからワズラは自由で、どこまでも彼とは違った。
 けれど──だからこそ、あの敵はそんな自分を妬み討ちに来るかも知れない。
 だとすれば、僥倖。
「それを楽しみに待つとしよう」
 花を眺めて平和な時を過ごしながら、頭にあるのは次の闘争。その時は如何な戦いが出来るだろうかと期待を胸に、ワズラは席を立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェレス・エルラーブンダ
ぴかぴか(ライカ:f04688)と

かふぇ
とは

おとなしく座っていたらいいのか
おんなの説明に頷いて
食べ方がむつかしくないものをあれもこれも

おまえが治してくれたからもう痛くない
みろ、残ってない

腕をぞんざいに突き出したなら
おんなはまた笑うだろうか
きんいろが三日月に撓む様をみると、擽ったい気分になる

不意に
おんなが声音を変えたなら目を丸く
それが自分を気遣うものだと理解したならがしがしと頭を掻いて
たのしみにとっておいた、甘い菓子の上の苺を突き出した

やる
……やる!

『わかった』と言うには居住まいが悪く
『やくそく』を結ぶには勇気が足りず
けれど、

おまえのことは、きらいじゃない
だから……
つぎは、気をつける
それでいいか


ライカ・モンジ
フェレっちゃん(f00338)とお茶シバく

さっきは危ない目に合わせてごめんねぇ…
嫁入り前の大事な身体がぁ〜!キズ残ってない?

お詫びとばかりになんでも好きなもの&目に付いたもの頼ませて
2人用のテーブルがはみ出ちゃいそうな賑やかさ
残った分は勿論全部食べるし問題ナシ♡

デザートに夢中になってる彼女に向けてポツポツと
ねぇ?今度またああゆう状況になった時は、考え無しに飛び込まないって約束しよ。

…なんつって〜♡いつもとキャラ変しててもツッコミなしね〜♡
次はちゃんと頭っから作戦立ててバトろ!も〜っといいコンビになれそうじゃない?アタシたち♡

お詫びのイチゴはさり気なく遠慮なく一口で♡
ンフ♡どんな顔するんだろー?



 穏やかな風の中、フェレスとライカはカフェに寄っていた。
 野良猫少女は戦いが終わったら帰ろうと思っていたのだが──ライカがその裾をちょっと引っ張って連れてきたのだ。
 テラスの席に座り、ライカはへぇ~と見回す。
「結構おしゃれなカフェだね?」
「かふぇ、とは」
 フェレスは物珍しそうに見回すしか無い。
「どうすればいいんだ。おとなしく座っていたらいいのか」
「そうそう。あ、メニュー見てね~」
 ライカは品書きを対面に広げてから、改めてを覗き込む。
「それより、さっきは危ない目に合わせてごめんねぇ」
 嫁入り前の大事な身体がぁ~! とフェレスの手を取ってみたりする。
「キズ残ってない?」
「へいきだ。おまえが治してくれたからもう痛くない。みろ」
 と、フェレスは攻撃を受けたところをぞんざいに突き出してみせた。
 そこは治癒の効果もあって傷痕はない。よかった~とライカが笑うと、その金色の瞳が撓む様に少しだけ、擽ったい気分になったりする。
 それからライカはメニューのうちの幾つかを指してみせた。
「お詫びに何でも頼んでいいからさ。ほら、食べたいものとか目についたものでも何でも言って?」
 フェレスはいまいち勝手がよくわからなかったが、取り敢えずここが飲食店だということ位はわかる。
 だから適当に、食べ方がむつかしくないものをあれもこれもと頼んでみた。
 すると時間を待たせずに品々はやってきて、一気にテーブルが華やかになる。苺のショートケーキにタルトタタン、ザッハトルテとどれも美味しそうだ。
 始めて目にするような食べ物達を思わずまじまじと見つめてしまっていると、ライカがフォークとスプーンを渡してくれた。
「さ、食べて食べて」
「ああ」
 頷いて、フェレスは早速ショートケーキにフォークを入れて一口大に切る。
 柔らかいスポンジ部分と仄かに果実の香るクリームを口に運ぶと、その芳醇な甘さに少しだけびっくりしてしまうほどだった。
 自分が今まで通りに生活していたら、あまり味わうことのなかったであろうもの。そして一人でなかったら訪れていかなかったであろう場所。
 口に広がる美味さとその感覚が、何だか不思議な気分を運ぶ。
 タルトタタンもバターと焼いたりんごが香り高くて食欲を唆っていた。そちらもフォークで刺してぱくりと食べると、さっくりとした食感と深い甘味がまた魅力的だ。
 スイーツはどれも美味で、紅茶と一緒に味わうそれらにフェレスはいつしか夢中になっていた。
 暫し微笑ましげに眺めていたライカは、ふと声を落としてぽつぽつと口を開く。
「……ねぇ?」
「──?」
「今度またああゆう状況になった時は、考え無しに飛び込まないって約束しよ」
 フェレスは手を止める。
 ライカの声音があんまりに静かに思えたから、驚いたのだ。
 だから少々目を丸くして見つめ返してしまったけれど──直後に、ライカはそんなフェレスの表情に笑みをこぼした。
「…なんつって〜♡ いつもとキャラ変しててもツッコミなしね〜♡」
「……」
 フェレスはちょっとだけ鳩が豆鉄砲を食った表情、けれど。
「次はちゃんと頭っから作戦立ててバトろ!」
 ライカが朗らかに言ってみせると、フェレスはそれが彼女が自分を気遣っているためなのだと気付いた。
 だから一度だけ目を伏せて。
 それからがしがしと頭を掻いて、フォークでケーキの上の苺を刺す。
「やる」
「?」
「……やる!」
 楽しみにとっておいた赤色。それを声と共にライカにぐいっと突き出していた。
 『わかった』と言うには居住まいが悪くて。
 『やくそく』を結ぶには勇気が足りず。
 けれど多分、気持ちには応えたかったから。
「おまえのことは、きらいじゃない。だから……つぎは、気をつける。それでいいか」
「……ふふっ」
 ライカは笑むと、ぱくり。苺を遠慮なく一口で食べてしまう。
 それに目を見開いたフェレスの表情に、楽しげに言った。
「も~っといいコンビになれそうじゃない? アタシたち♡」
「……」
 フェレスは知らんとばかりに一瞬だけ目を背けるが……それでもすぐに視線を戻す。
 何せ、まだまだスイーツは残っている。だからそれは食べなくてはならない。
 テーブルにいっぱいのそれを、ライカも一緒に食べる。すると穏やかな時間が流れて──風も不思議と、それほど冷たくはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジング・フォンリー
カフェか…あまりこういうところで寛いだことはないのだが…花園のまえで陣取るよりはこちらで眺めた方がいいか…。ホットコーヒーを一つお願いします。

スノードロップの花は可愛らしいな…あのオブリビオンは感情さえ自由は無いように言っていたが…それなら何故花を踏まなかったのだろうな。命令されたから?命令とは大抵効率を優先する。わざわざ道に沿って歩かなくてもいいのだろう。ならばもしかしたら…彼だけの感情があったのかもしれないな。



 白花の道で、短い白の髪がさらさらと揺れる。
 ジングは石畳を歩んでカフェの前へとやってきていた。どこかメルヘンの世界のもののようにも見える建物を見上げて、足を止める。
「カフェか……あまりこういうところで寛いだことはないのだが……」
 それでも花園の前で陣取るよりかはこちらで眺めた方がいいと思った。それに、少しの高台から花園を見渡してゆったりする、というのも悪くはないかもしれない。
 決めると入店して、テラス席に着いたのだった。
「ホットコーヒーを一つお願いします」
 それだけ頼むと景色を見渡す。
 花園は遠方を見つめると白一色だ。そこから視線を段々近距離に近づけていくと、花の造形が確認できるようになって、茎の翠色とのコントラストも映えてくる。
 広い敷地に一種類の花だけが植わっているからこその眺めだ。
 と、そこで丁度コーヒーが来たので少し啜ることにした。
 香りのいい湯気を上げるそれは、程よい茶褐色。焙煎度合いはミディアムからハイローストといった具合で、まろやかさと苦味がバランスしていて美味だ。
 ふう、と白い吐息をして、ジングはまた花を眺める。
「スノードロップの花は可愛らしいな……」
 一輪一輪には派手な華美さはない。けれど控えめに斜め下を向いた花は、ランプシェードのように花弁を広げていて可憐だ。
 そうして美しさを感じるたびに、ジングには斃した敵のことが思い出された。
「あのオブリビオンは感情さえ自由は無いように言っていたが……」
 ならば何故、花を踏まなかったのだろう、と。
 それはずっと気になっていたことでもある。
 彼自身は傀儡だった。だとしたら命令されたからだという理由も考えられるが──命令とは大抵効率を優先する。少なくともあの場でわざわざ道に沿って歩む必要はなかっただろう。
 だからこそ──。
「そこには彼だけの感情があったのかもしれないな」
 彼には確かに幾ばくかの心が残っているようだった。その中には、花を荒らしたくないという気持ちもまた含まれていたのだろう。
 だとすれば、こうして美しい花を守れたことは彼にとっても意味のあったことだと、ジングにはそう思えた。
「花も、いい香りだな」
 芳香を含んだ風は、時間を経るごとに暖かくなっていくようだ。
 春が来るとはこういうことなのだろうとジングは少し思って──また暫し花を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月03日


挿絵イラスト