●
「お疲れ様です。六大屍人帝国の攻略、進めていきましょうか」
ウィノラ・シュレミール(天蓋花の人形劇・f26014)は猟兵達に笑顔を向けて、静かに口を開く。今回も六大屍人帝国の長との戦いのようだ。
「今回の相手は『オーデュボン』の皇帝パッセンジャーです。彼は無敵機械なるものに接続された強大な存在で、己の願いを叶えるためにアルカディアの玉座を目指しています。非常に強力な相手なのですが、|強襲作戦《ファーストアタック》にて『隠されていた弱点』なども把握されているようですね」
|強襲作戦《ファーストアタック》については猟兵達が『オーデュボン』と戦った際の報告書に書かれている。それらを参照すれば弱点についての情報は得られるだろう。
しかし、相手は強大な存在。弱点が判明しているとはいえ、簡単に攻略は出来ないだろう。
「パッセンジャーが接続されている『無敵機械』なのですが、非常に厄介な存在です。なんとこの機械、『自動的に周囲のあらゆる生命やエネルギーを吸い上げる』のですよ。吸い取ったエネルギーはパッセンジャーに注ぎ込まれ、彼を無限に回復し続けるのです。つまり……パッセンジャーに勝利するためには、このエネルギーの無限吸収と回復を乗り越えるしかないのですよ」
無限に回復するエネルギーより強力な攻撃を叩き込み続けるか。
エネルギーを吸収されないよう工夫するか。
あるいは『隠された弱点』を利用し有利な状況を作るか。
対抗する手段はいくつもあるだろうが、それをどう実践するかは猟兵次第だ。
「パッセンジャーの目的は『自身が死ぬこと』です。ですので私達が彼を倒せば、ある意味望みを叶えてしまうことにはなりますが……そのためにアルカディアの玉座に到達されたり、他の屍人帝国に勝たせるのは避けたいですからね。彼の望みに、立ち向かってみようじゃないですか」
無敵機械により死ねないことには同情の余地もあるかもしれない。
しかし彼と彼の帝国は過去のもの。
自死に世界を巻き込むならば、止めなければならないだろう。
「私達がアルカディアまで辿り着くまでも、きっとあと少し。ここは気合を入れて頑張っていきましょう!」
ウィノラの元気いっぱいの言葉と共に、転移ゲートが開く。
その先に待つのは――きっと熾烈な戦いだ。
ささかまかまだ
こんにちは、ささかまかまだです。
尽きぬ生命が果てる時。
このシナリオの難易度は「やや難」です。
●プレイングボーナス
無敵機械の無限吸収に対処する/敵の『隠されていた弱点』を突いて戦う。
パッセンジャーが接続されている無敵機械は「自動的に周囲のあらゆる生命やエネルギーを吸い上げ、パッセンジャーを回復し続ける」という性質を持ちます。
それを上回るほどの攻撃を叩き込む、何かしらの手段でエネルギー吸収を妨げる、隠されていた弱点を利用するなど対抗方法はいくつかあるでしょう。
思うままに戦って下さい。
●『『皇帝』パッセンジャー』
屍人帝国『オーデュボン』の皇帝です。
自死が目的ですが、自分を殺せるのはアルカディアの玉座か他の屍人帝国だと考えています。
そのため猟兵のことは全力で殺しに来るでしょう。
頑張って戦いましょう。
●
オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。
シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。
それでは今回もよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『『皇帝』パッセンジャー』
|
POW : パッセンジャー・ケイジ
レベルm半径内を【急激に狭くなる光の檻】で覆い、[急激に狭くなる光の檻]に触れた敵から【檻を構成するエネルギー】を吸収する。
SPD : パッセンジャー・レイ
着弾点からレベルm半径内を爆破する【魔導砲撃】を放つ。着弾後、範囲内に【攻撃型魔導ドローン】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : インビンシブル・チェンジ
自身の【無敵機械】を【抹殺形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
イラスト:ふじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リーベ・ヴァンパイア
皇帝パッセンジャー。会うのは……二度目だな(戦争前の偵察で目の前の存在に会っていた。正確には目視しただけだが)
(あの時、何故、此方を攻撃しなかったかのかは、分からない。もしかするとこの戦争を待っていたからかもしれない)
だが、何であれ、あの時、俺は貴方に見逃された
ゆえにその借りをーー返しに来た
行くぞ、皇帝パッセンジャー。貴方に終わりへのカウントを切らせて貰うーー!
作戦
あの攻撃、いや、檻から抜け出すのは……無理だな。範囲が広すぎる
となれば、【覚悟】を持って檻の中で戦うほかあるまい
……時間勝負だな
【ダッシュ】で敵へと接敵し、【早業】で【read・scythe】を発動し、【咄嗟の一撃、切断】で攻撃する
●
リーベ・ヴァンパイア(|Notwendigkeit《必要ゆえに》・f37208)がオーデュボンの皇帝と相見えるのは今回が二回目だ。
前回は敵地へと直接突入し、皇帝の姿を確認して帰還することとなった。
あの時に見た翡翠の瞳は前回と変わらぬ色合いのままだが、そこに宿る光はまったく異なる。
あの皇帝は今回こそ自分達を殺しに来るだろう。
(あの時、何故、此方を攻撃しなかったかのかは、分からない。もしかするとこの戦争を待っていたからかもしれない)
皇帝の視線から鋭い殺気を注がれつつも、リーベは思考を巡らせていく。
分かってる。自分達は前回何らかの事情で見逃されたのだ。そこにどのような思想があったのかは分からない。
けれどここまで来たのなら、やるべきことはたった一つ。
「あの時の借りを――返しに来た」
リーベは一歩前へと踏み出し、皇帝との距離を詰める。
皇帝の表情は変わらない。瞳にあるのは強い殺気と、同等の無関心。彼はただ邪魔する者を排除しにかかるだけだろう。
だったら、こっちも。
「行くぞ、皇帝パッセンジャー。貴方に終わりへのカウントを切らせて貰う――!」
リーベはクロスロッドを握りしめ、敵の元へ向かって駆け出す。
これは敵の懐へと突っ込む作戦。危険なのは百も承知で、それでも自分がやるべきだと、そう思えた。
「あの時見逃したつもりはない。だがそうだな、確かに今回は……貴様を殺そう」
自分の方へと向かうリーベを見遣り、皇帝はゆっくりと手を上げる。
そこから眩い光が零れたかと思えば、その輝きは戦場一帯を覆い始めた。
そしで出来上がるのはパッセンジャー・ケイジ――捕らえた者の生命を吸い尽くす光の檻だ。
(檻から抜け出すのは……無理だな。範囲が広すぎる)
リーベは咄嗟に周囲を見遣り、自分の状況を把握する。
檻からの脱出は不可能。おまけに檻は凄まじいスピードで縮まっていく。
それなら――まだ皇帝に届く間に、全力の一撃を叩き込むしかない!
「……時間勝負だな」
リーベは埒外の力を発揮して、クロスロッドを血の大鎌へと変えていく。
それを構えたまま、あとはひたすら前だけ目指して。
見えるのは自分を見つめる皇帝の、冷めた瞳。けれど今の自分なら――あの瞳に届くことが出来るはず。
「力を奪うことが出来るのは貴方だけじゃない……!」
最接近の瞬間を見極め、リーベは勢いよく地を蹴る。
そのまま刃を振るえば、的確に放たれた一撃はパッセンジャーの力を大きく削いだ。
後退の勢いで檻の一部も切り裂いて脱出すれば、九死に一生を得られたというところか。
戦いの始まりは見事にリーベの一撃が制したのだ。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
心情)エネルギーの無限吸収かァ、そりゃ大層な機械だ。マ・俺は命でもなンでもない暗がりだからイイとして。眷属どもが役に立てないか…イヤ・待てよ。確かあの皇帝、植物あるからッて立ってた猟兵に攻撃しなかったな?
行動)《植》を使って場に草木を生やす。さすがに戦場は覆えンが俺を隠すくらいはできる。そこに隠れて詠唱すませよう。吸われて草木が枯れりゃア魔導砲撃が来る、形態的にビームだ。つまり俺に影が伸びる。どっさり喚んだ髪刃で、砲撃の横通って一箇所に集中攻撃しよう。足の一本はブチ切りたいとこだがねェ。上手くいったらお慰み。どっちに転べど、俺の|宿《カラダ》は跡形もねェしな。ひ、ひひっ…。
●
少し離れた位置からでも『無敵機械』の存在感はよく分かる。
その大きな姿と中心に佇む皇帝を見遣り、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は目を細める。
「エネルギーの無限吸収かァ、そりゃ大層な機械だ」
病毒に戯ぶ神である逢真からすれば、機械の立派さに感心することはあれど脅威を感じたりはしない。
それでも眷属達と共に戦えないというのは些か厄介か。
「……イヤ・待てよ。確かあの皇帝、植物あるからッて立ってた猟兵に攻撃しなかったな?」
思い出すのは他の猟兵達の記録。
皇帝は植物の上に立つ猟兵達を攻撃することなく見逃した。その性質は使えるかもしれない。
「それじゃ、俺も似たようなことをしてみようかね」
逢真は一歩前に踏み出して、そこに自身の眷属を差し向ける。
広がるのは――色とりどりの毒持つ草花だ。
触れるだけで危険な植物も、ただ咲き誇るだけなら美しい。そして出来上がるのは、人一人をすっぽり隠せる花の壁。
「……あれは?」
皇帝も広がる花々が気になるようで、翡翠色の瞳をゆっくりと向ける。
出来上がった花の壁の裏側では、逢真が静かに戦いの準備を進めていた。
「ン、気付いたかい皇帝サン。俺は此処だよォ」
わざとらしく声を発し、自分の存在を知らしめて。
それでも皇帝本人は花の壁を攻撃したりしないだろう。ただ逢真が出てくるタイミングを探り、魔導砲撃の準備を進めるだけだ。
けれど無敵機械の方は皇帝よりも融通が効かないはずだ。あの機械が存在している限り、花の壁もいずれは生命力を吸い付くされるはず。
つやつやと艶めいていた花弁は少しずつ色を失い、葉や茎も萎れていく。
「……猟兵に用はない。消え失せろ」
そして完全に壁が塵へと変わる瞬間、皇帝が放つのは凄まじい光の砲撃だ。
けれどその攻撃を前にして、逢真はからから嗤い声を上げつつただ佇む。
眩い光は逢真の影を伸ばして、伸ばして――。
「ジェイ、髪を貸しとくれ」
呼びかけに応じたのは影の中、蠢くなにか。
なにかから伸びた髪刃は砲撃の合間をしゅるりと抜けて、一気に皇帝へと迫る。
次に聞こえたのは斬撃の音。肉が切られて、骨が断たれる音。
その音を味わいながら、逢真は光の中に呑まれていった。
「……奴は消えたか」
皇帝は切断された身体の部位を再生させつつ、周囲の様子を探る。
身体は元に戻せたが、そのために消費させられたエネルギーも相当なもの。無限機械の力は大きく削がれただろう。
けれど猟兵を一人殺せた、これなら結果としては上々か。皇帝がそう考えた瞬間――。
「ひ、ひひっ……上手く行ったか。なかなか楽しかったよ」
最後に聞こえたのは、死んだはずの逢真の声。
此度の|宿《カラダ》は消え去ろうと、朱ノ鳥はいなくならない。
不滅のはずの皇帝は、それよりも強固な不滅に消えない傷を刻まれたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
奴は死ねなくなると分かっていてその無敵機械とやらを身につけたのか否か……
まあ、答えがどうあれやるべきことは1つだが
今回使うのは利剣のみ。神刀も神気も抜き――完全に地力での戦いにはなるが、これで相手が吸収できるのは俺の素の生命力のみ
後は、どこまで削れるかの勝負……。ここは陸の型でいこう
まずは砲撃を凌ぐ。下手に連打される前に一気に接近してしまおう
思い切り接近しつつ、死角(人の視界外)に入り込む。何か効果があれば幸いって程度だが
ドローンの攻撃はパッセンジャーを盾にしつつ回避して、適宜攻撃を
攻撃を与える度に、こちらの攻撃の精度と威力は増していく……時間をかけられない状況だし、一気呵成に畳み掛けよう
●
皇帝の願いは自らの死。それは彼が『無敵機械』によって死ねなくなったから抱いた願いだ。
果たして彼はこうなることを理解して機械と繋がったのだろうか。脳裏に浮かんだ疑問と共に夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)もまた戦場へと足を運ぶ。
「……まあ、答えがどうあれやるべきことは1つだが」
相手の事情がどうであろうと、望みが何であろうと。その存在や行動が罪なき人々を傷付けるなら、倒さねばならない。
鏡介は利剣を鞘から抜きつつ、しっかりと柄を握る。
あれほど強大な相手と戦う時は神刀や神気の力を借りることも多いが、今回は違う。
無限機械に神の力を奪われれば、厄介なことになるのは予測がついたから。
だから今日は完全に地力の、そして自分の生命力のみを頼りにした戦いだ。ゆっくりと呼吸を整え、鏡介は静かに前へと踏み出す。
「後は、どこまで削れるかの勝負……。ここは陸の型でいこう」
大変な戦いこそ、冷静な心で挑まねば。
覚悟を決めた鏡介は勢いよく地を蹴り、一気に強大な敵へと迫る。
「俺は猟兵に期待などしていない。消え失せろ」
皇帝は迫る鏡介へと、淡々と無敵機械の砲口を向ける。
そこから放たれるは魔導砲撃、直撃すればダメージは凄まじいものになるだろう。
だから鏡介は――敢えて恐れず前へと駆ける。通り抜けた地点に砲弾が降り注ぐ音がしても、決して振り返らずに。
ひたすら前に進んでいけば、皇帝の位置までもあと少し。そこで鏡介は進む方向を変えて、無敵機械の影へと潜り込んだ。
「小賢しい。逃さんぞ」
皇帝の方は更に呼び出した魔導ドローンを操り、隠れた鏡介に攻撃を仕掛けようとしているようだ。
ならば、此方も大きく動こう。
「響け剣戟、一切を逃さずに――陸の型【爪嵐:響】」
鏡介は影から飛び出すと同時に、剣を構えて斬撃を繰り出す。
その刃は皇帝を切り裂くが、傷は浅い。引かれた赤い線はあっという間に塞がれてしまうが、それでも鏡介の顔に焦りの色は滲まなかった。
再びドローンが迫る気配を感じれば、機械の影に隠れて。無敵機械はとても巨大で複雑な構造をしているため、隠れられる部分も幾つかあった。
そしてチャンスを見つければ、皇帝へと一太刀入れるのも忘れない。
何度も何度も隠れて、飛び出て、切り裂いて。
鏡介の行動は皇帝からすれば、無駄なものにしか思えなかった。
「……いい加減にしろ。いつまでも逃げられると思うな」
「ああ、勿論そんなことは思っていない。俺は……この時を待っていたんだ」
次に皇帝が見た鏡介の顔には、確かな自信の色があった。
此度鏡介が振るった型は、戦えば戦う程相手を理解する性質を持っている。
そして十分な情報が集まった瞬間を見極めて――皇帝の前に飛び出し、刃を振り下ろす。
鏡介が放つ一気呵成の攻撃は無敵の力を踏み越えて、皇帝を大きく切り裂いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
御魂・神治
虚弱過ぎるから強引に生命維持装置に縛り付けられたんかこいつは...
人工呼吸器に繋がれた末期患者を思い出してしまうわ
檻は紫電符と爆龍符の【範囲攻撃】で植物を【焼却】、逆上させ殺戮形態の無敵機械を余計不安定にする
生命吸収は木【属性攻撃】の【結界術】で相殺、天将の【情報収集】で先読み回避や
オーデュボンの本体目掛けて『犬神』の呪詛弾を撃つ
アンタの化物染みた回復が仇になるで
癌細胞は秒で増える、無敵機械は回復を止めへん
アンタは癌の苗床、綺麗な姿も醜い腫瘍だらけで台無しや
綺麗な姿で大好きな植物と一緒に逝けると思うな阿呆が、独りもがき苦しみながら往ね
醜い姿が嫌なら【破魔】のヘッドショットで一思いに介錯したる
●
『無敵機械』も皇帝も、その姿を見たならば美しさを感じる者が多いだろう。
けれど御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は彼らの姿から強い違和感を感じ、眉を顰めていた。
「虚弱過ぎるから強引に生命維持装置に縛り付けられたんかこいつは……」
機械に繋がれ、生き永らえる。その様子は人工呼吸器に繋がれた末期患者を思い起こさせ、あまり良い気分にはならない。
けれどそう思ったからこそ活路は見出だせた。
神治は何枚もの符を構え、皇帝の前に姿を晒す。
「そんじゃ、行かせてもらうで」
臨戦態勢を取った神治へと向けられるのは、無数の光。皇帝の魔術か何かだろうか、光は檻として周囲を覆い始めた。
「俺は早く玉座へと辿り着かなければならん。邪魔をするな」
皇帝は光を次々展開しつつ、『無敵機械』をより攻撃的な形態へと変えていく。
そして無機質な瞳で神治を見下ろし、淡々と攻撃を行う――はずだった。
次の瞬間、彼の瞳に見えたのは真っ赤な炎。これまでの戦いで猟兵が利用してきた、草花の燃える風景。
「ん? どうかしたん?」
炎を広げていたのは神治が起動した紫電符と爆龍符。神治は明確な意志を以て植物を傷付けているのだ。
「貴様ッ……!」
広がる光景を前にして、皇帝の瞳には明確な怒りと殺意が宿る。
それに応じるように機械もより悍ましい姿へと変わり、凄まじい速度で神治へ食らいつこうとしているようだ。
「そんなに怒ったら足元掬われるで――天将!」
神治は相棒である人工式神を起動して、瞬時に迫る機械を観察する。
それに合わせて展開するのは、木の気を帯びた結界だ。
結界に宿る気配を感じたのか、迫る機械の勢いが弱まる。冷静さを失い咄嗟に行動を変えた相手なら、残っているのは多くの隙だけだ。
神治は符を仕舞うと同時に『天地』を構え、その銃口を皇帝本体へと向ける。
「内なる悪に蝕まれろ」
引き金が引かれ、銃弾が飛び出て、本体を撃つ。それだけならきっと、皇帝にとっては些細なことになるのだろう。
けれど今回は――そうならなかった。
「ッ……!」
皇帝の美しかった身体は急速に病魔に侵され、あっという間に腫瘍に覆われていく。
おかしい。ただの病魔なら、無敵機械で回復出来るはずなのに。
「アンタの化物染みた回復が仇になるで。この術、アンタとの相性ぴったりやったわ」
神治が放ったのは神器霊弾『犬神』。相手を癌細胞にて侵す、強固な呪術。機械が作動し続ける限り、皇帝を苛む最善の一手だ。
藻掻き苦しむ皇帝をよそに、神治は再び『天地』に銃弾を装填し、そして構える。
「綺麗な姿で大好きな植物と一緒に逝けると思うな阿呆が、独りもがき苦しみながら往ね。ただ醜いままでおるのが厭なら……」
――介錯くらいはしたる。
神治が放った破魔の銃弾は皇帝の頭を撃ち抜き、真っ赤な花を咲かせていった。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
オーデュボン皇帝パッセンジャー……
先般の『|強襲作戦《ファーストアタック》』の時に感じたプレッシャーからすると
同じ人物かと思うほどですが油断は禁物
付き合いも長くなりましたがこの辺で幕引きといきましょう!
真正面から叩きのめします!
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態に
天使核誘導弾装填、
【エールプティオー・プルティア】発射!
大きなダメージにならなくても
肉薄するまでの目眩しになるでしょう
その間に『エネルギー・イン・天使核』使用
エネルギーチャージの上で
【テンペスタース・クリス】突撃します!
光の檻がなんだと言うのです
囚われようとも振り切ってみせましょう
あとはエネルギー尽きるまで突撃するのみ!
さあ勝負です
●
皇帝は呼吸を荒げつつ、少しずつ身体を再生させていく。
それは『無敵機械』が活動しているからで、猟兵がそれだけの傷を皇帝に刻んだからで。
つまり――自分達は今、オーデュボン『皇帝』パッセンジャーと戦っている。
そのことを強く実感しつつ、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)もまた皇帝と相見える。
「あの時感じたプレッシャーからすると、同じ人物かと思うほどですが……」
|強襲作戦《ファーストアタック》の時は撤退したが、今は違う。
油断は禁物、皇帝との長い付き合いを今こそ幕引きにするために。
「――真正面から叩きのめします!」
ステラはガレオンの姿へと転じ、堂々と空を舞う。
目指すは真っ直ぐ皇帝の元だ。
皇帝もまたステラの姿を見据え、淡々と行動を開始する。
彼が腕を掲げれば、そこから溢れた光は周囲を覆う檻となった。
檻はステラを取り囲むよう、道行きを阻むように展開されていく。
「時間稼ぎの目眩ましにはなりますが……黙って取り囲まれはしませんよ」
ステラも負けじと艦載砲に天使核を装填し、そこから一気に誘導弾を放つ。
鮮やかな軌道を描いて飛び回る砲撃は次々に檻とぶつかり合って、爆ぜて白い煙を上げる。
その中を突き進んでいけば、檻の動きも少し鈍ったようだ。
次の攻撃に備えるならば今しかない。ステラは急いで『エネルギー・イン・天使核』を取り込んで、エネルギーを溜めていく。
相手に奪い取られるよりも早く、強く。必殺の一撃のため、ステラが目指すのは最短の行動だ。
しかし――そんな彼女の決意を阻むよう、いよいよ檻がステラの身体に触れた。
「! これは、なかなか……!」
急速にエネルギーが奪われていくのを感じ、ステラは更にエネルギーを補給していく。
あの皇帝も、他の屍人帝国も。こんな風に今を生きる人々を捕らえ、苦しめ、自分達の好き勝手に振る舞おうとしているのだ。
そんなものに――負けてたまるか!
「光の檻が、なんだと言うのです。囚われようとも振り切ってみせましょう……!」
ステラは前方に風の盾を展開し、一瞬だけ檻を突き飛ばす。
そのまま風を纏って発動するのは渾身のテンペスタース・クリス!
ステラの身体は流星のような勢いで突き進み、光の檻すら突破して、ただただ皇帝の元へと迫る。
「さあ勝負です」
咄嗟に防御の構えを取った皇帝の元へ飛び込めば、凄まじい衝撃が周囲を揺らした。
その向こうで大きく傷ついた皇帝と機械を見遣る。きっとここが、自分の至るべきだった場所。
長い戦いの末に、ステラはようやく皇帝へと一矢報いたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ネフラ・ノーヴァ
共闘、アドリブOK
花を慈しむ気持ち、よく分かる。美しき貴公も永遠に愛でていたいが、これも運命、せめて美しき刹那の花を咲かせてみせよう。
赤い薔薇を一輪、髪に飾って赴く。いくらかでも攻撃の手が緩めば幸い、間合いを詰めてUC染血散花で刺突し続けつつ、返り血を吸収し続ける。
さあ、先に果てるのはどちらかな?
●
激しい戦いが続き、戦場の様子も少しずつ荒廃してきている。
その中に、ふいに一輪――鮮やかな赤が咲く。
皇帝が視線を向ければ、そこには赤い薔薇を髪に飾ったネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)の姿があった。
ネフラもまた皇帝の視線に気付き、顔を上げて優雅に微笑む。
「花を慈しむ気持ち、よく分かる。美しいものは良いものだ」
囁かれたネフラの言葉に皇帝は何も返さない。ただその視線は無機質で、静かで。
彼は本当に草花にしか関心を示さないのだろう。その冷たい有り様を、ネフラは美しいと思う。
中性的な皇帝自身も、巨大で荘厳な『無敵機械』も。目の前にある全てが美しく、ネフラは思わず笑みを深める。
けれどその表情とは裏腹に、構えるのは血棘の刺剣。戦いに向けた鋭い武器だ。
「美しき貴公も永遠に愛でていたいが、これも運命、せめて美しき刹那の花を咲かせてみせよう」
宣言と同時にネフラは高く飛び上がり、真っ直ぐに皇帝の元を目指した。
迫るネフラを拒絶するよう、皇帝は淡々と魔導砲撃の準備を進める。
しかし――彼の表情は先程よりもほんの僅かに険しい。
その様子を確認し、ネフラは髪飾りを皇帝の方へと向ける。思った通り、彼は飾りとなっていても生花を攻撃するのは厭うのだ。
だから結果として、放たれた砲撃は中途半端な軌道を描く。その合間をひらりと抜けて、ネフラは更に皇帝へと肉薄した。
「血の花を咲かせるがいい……!」
接近の瞬間を見極めて放つのは鋭い刺突だ。刺剣は皇帝の白い肌を裂き、真っ赤な血を迸らせる。
勿論傷は簡単に防がれてしまうだろう。それでもネフラは止まらずに次の攻撃を繰り出す。
切って、塞がれて、切って、塞がれて。その繰り返しを阻害するのは、無限機械から飛び出したドローンだ。
「無粋だな。私の楽しみを邪魔しないでくれ」
ネフラは空中でひらりと舞い踊ると、あっさりとドローンを撃ち落とす。その様子にも皇帝は少し眉を顰めていた。
「……おかしい。貴様は十分疲れているのではないか? 何故こうも動き続けられる?」
「ふふ、それは貴殿のお陰だ」
皇帝の疑問に応じるよう、ネフラが掲げたのは自分の腕。彼女の腕は皇帝からの返り血により真っ赤に染まっていた。
そう、血。吸収出来る血さえあれば、ネフラはどこまでも動ける。それが強く美しい者も血ならば、尚更だ。
「さあ、気が済むまでやり合おうじゃないか。先に果てるのはどちらかな?」
ネフラは優雅に、そして妖艶に微笑み再び剣を振るう。
彼女の斬撃は何度も何度も皇帝を切り刻み、無限の力にも傷を刻んでいったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
リアラ・アリルアンナ
自らの死を望む事自体も理解しかねますが、
その為に世界を…無辜の市民を巻き込む行為は許されません!
結果的に幇助する形になるのは癪ですが、望み通り抹殺します!
周囲のエネルギーを無限に吸収するというのは厄介ですが、
それが装置を介して行われているのならば、付け入る隙はそこにあります
ハッキングによるパラメータの改竄、ジャミングやデータ攻撃によってプログラムの不具合を誘発し、装置を機能不全に陥らせます
また、UCによって味方に付けた周囲の植物にリアラ達への攻撃を遮ったり、
吸収を肩代わりしてもらいましょう
これで完全にとはいかずとも、即座に干からびる事はないでしょう
このチャンスを逃さず、最大火力を叩き込みます!
●
リアラ・アリルアンナ(リアライズユアハピネス・f36743)からしてみれば、皇帝の願いは理解出来るものではなかった。
自らの死を願う。そんなことを本当に望む者がいるとは。
けれどそれ以上に思うのは強い怒り。その想いを胸に、リアラは皇帝の前に立つ。
「あなたの望み自体も理解しかねますが、その為に世界を……無辜の市民を巻き込む行為は許されません!」
リアラの使命は市民の幸福を保つこと。それを脅かす反逆者がいるのなら、どこにだって駆けつける。それが自分の役割だ。
「結果的に幇助する形になるのは癪ですが、望み通り抹殺します!」
「猟兵如きが俺を殺せると思うな。枯れ果てて消え去れ」
リアラの意志が籠められた叫びと裏腹に、皇帝の呟きはひどく冷たい。
その声と共に響くのは――『無敵機械』の重い駆動音だ。
『無敵機械』が蠢いた瞬間、リアラは思わず足に力を籠めて立っていた。
漠然と行われていたエネルギー吸収が、明確に此方を目標にし始めたのだろう。
(これが周囲のエネルギーを無限に吸収する能力……! 確かに厄介、ですが……)
相手が巨大な機械だからこそ勝機はある。そしてそれを手繰り寄せるための手段も。
リアラは両手を掲げ、周囲の様子を見遣る。戦場は荒れているが、それでもここは皇帝の土地。被害を受けていない植物だって沢山残っていた。
「さあ、共に手を取り合いましょう! それはとても幸福なことなのですから!」
汝の隣人を愛せよ。リアラの呼びかけに応じ、植物達はしゅるしゅると少女の周囲に集まっていく。
そうして出来上がるのは立派な植物の壁だ。リアラはその後ろに身を隠し、ちらりと皇帝を観察する。
『無敵機械』の方はより大きく緻密な形へと変形し、此方に狙いを定めているようだ。それでも攻撃してこないのは――植物の壁があるから。
けれどいつ機械が動き出し、何らかの手段で攻撃してくるかは分からない。リアラは急いでハッキングシステムを起動し、無限機械を解析していく。
「……出来ました! どれだけ凄い装置でも、機械は機械です!」
「……何だ?」
リアラが叫ぶと同時に、『無敵機械』ががたりと揺れる。
同時にほんの僅かな時間だけだが生命力吸収も止められた。相手が機械だからこそ、ジャミングやデータ攻撃といった手段で対抗出来たのだ。
タイムリミットまであと僅か。作り上げた隙を最大活用すべく、リアラは壁から飛び出して――。
「反逆者パッセンジャー、覚悟して下さい!」
構えたZAPガンで渾身の一撃を放つ。飛び出した光は見事に皇帝を穿ち、そのエネルギーを削っていった。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
エネルギーがどこまで含むかわからないけど
魔法を使う分数で押すしかない、かな…
防御が必要な時は【高速詠唱】で即座に【オーラ防御】を張り
吸収前に解除を繰り返し
基本的には回避重視で魔力は攻撃に極振り
【指定UC】発動
大量の【破魔】を宿した炎の鳥達を
敢えてバラバラのままパッセンジャーさんに攻撃
一部は手元に防御役としても控えておき
万一攻撃に向かわせた鳥の一部が破壊されたとしても
即座に次の鳥を攻撃に補充できるように
いつかは回復されるとしても
ある程度のダメージの蓄積と
高熱の痛みで少しでも怯みが生じたらその隙にUC解除
★鎌を用いた【なぎ払い】からの即持ち替え連続斬りで攻撃
鎌は魔力じゃないからね
本命は、こっちだよ
●
未知の敵に挑む時は、いつだって緊張するものだ。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はゆっくりと呼吸するように意識しながら、皇帝の元へと足を運ぶ。
(エネルギーがどこまで含むかわからないけど魔法を使う分数で押すしかない、かな……)
自分に出来る最大限を考えて、澪は静かに魔法の詠唱を始めていく。
そんな彼を出迎えるのは――抹殺形態と化した『無敵機械』と、それを駆る皇帝だ。
「何か考えがあるのかもしれないが……邪魔だ、消え失せろ」
皇帝は淡々と澪を潰そうと、無敵機械をけしかける。
まずはここが一つの賭け。敵の様子を観察し、澪は相手の能力を探る。
(動きは……対応出来る範囲、かな。強化してるのはきっと攻撃関係だね)
インビンシブル・チェンジによる強化が速度以外なら対応もまだやりやすい。澪は心の内で安堵の息を溢しつつ、朗々と魔術の詠唱を終える。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて」
呼びかけに応じ現れるのは無数の炎の鳥達だ。その様子にパッセンジャーは少しだけ眉を顰める。
けれど心配しないで。あなたの植物を攻撃するつもりはないから――その思いもそっと隠しつつ、澪は鳥達に更に声をかけた。
「そっちの子達は僕の傍に残って。残りの子達は……お願い、皇帝の元へ向かって!」
鳥達はこくりと頷くと、指示通りに空を舞う。
彼らは炎の翼を広げ一気に皇帝の懐へと飛び込もうとするが――。
「……この地で炎を振るうな」
無敵機械が首を擡げたかと思えば、そこから撃たれた光線が鳥達を撃ち抜く。その威力は凄まじく、澪の傍を通り過ぎた余波ですらかなりの熱さだ。
恐らく皇帝は無敵機械の攻撃力を高めている。厄介ではあるが、それを利用することだって出来るはずだ。
「まだまだ。鳥さん、もう一度頑張って!」
澪は再び炎の鳥を召喚し、皇帝目掛けて発射していく。
それに対し皇帝が返すのは、やはり光線で。それだけなら先程と同じ、だけど違うのは――。
炎と光線がぶつかり合い、大きな熱と煙が生まれて。澪は最低限の防御魔術を展開しながら、その中を全力で突っ切っていた。
「魔法の攻撃なら吸収されちゃうかもしれないからね。だから本命は……」
皇帝に肉薄すると同時に、澪が構えたのは薄紅色の鎌だ。
清鎌曼珠沙華の花弁がはらりと開くと同時に――展開されるのは凄まじい斬撃の嵐!
予想外の攻撃に皇帝の行動は一歩遅れ、彼の身体も花弁と同じく真っ赤に染まる。
澪の勇気ある行動は、見事な成果として花開いたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
ロランさん(f04258)と共に挑みます。
無敵、無限……そんな物が斬れるでしょうか。
いえ、一人では無理でも二人の力で無限吸収に抗ってみましょう。
作戦としては単純に接近し、光の檻ごと敵の【切断】を試みると言うだけの事。
ロランさんの結界術が檻に干渉して、一瞬でも猶予を作ってくれれば十分。
敵が草木に対して思い入れがあるならば、それを利用する事も厭いません。
私のほぼ全ての力、そして【気合い】をこの剣に込め、ユーべルコードで斬りかかります。
檻の弱い所があればそれを【見切り】狙えればより良いですね。
更にロランさんの追撃が加われば、きっと敵の吸収を上回る事も出来るでしょう。
後は最後の力で撤退を……!
ロラン・ヒュッテンブレナー
ハロちゃん(f13966)と共に挑むよ
誰かが作ったものなら、無敵も無限も存在しないの
例えそうだとしても、突破してみせるの
ハロちゃんとなら、できるはずなの
ハロちゃんが切り込む隙を作るから、待ってて
狼の脚力で一気に接近、相手UCの光の檻に囲まれたら、桃の闘気で結界を張るよ
この大地の草木の精霊よ、ぼくたちに力を貸して!
この土地自体から力を一瞬だけ借りて、光の檻を抑えるよ
あなたの土地の草木の生命力、あなたに吸収できる?
今だよ!
結界をUCに書き換え
草木の生命力を借りた浄化と変化の光を受けてみるの!
数種類の魔力と継続ダメージで飽和攻撃なの
く、ハロちゃん、ここまでなの
支えながらジャミング魔術を使って撤退なの
●
降り立った地点は激戦区より少し離れた場所。それでも伝わる圧倒的な威圧感は、恐らく皇帝と『無敵機械』のものだろう。
「無敵、無限……そんな物が斬れるでしょうか」
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は『リトルフォックス』をぎゅっと握り、ぽつりと呟く。
これまでも強敵とは戦ってきた。それでも此度の相手はとても分厚い壁のように感じられて。
そんな彼女の思いを察してか、隣に立つロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は友人の瞳をじっと見つめた。
「誰かが作ったものなら、無敵も無限も存在しないの。例えそうだとしても、突破してみせるの」
「……そうですね。今までもそうしてきました」
「うん! ハロちゃんとなら、できるはずなの」
力強い友人の言葉に、ハロも小さく笑みを零す。そうだ、自分は一人じゃない。
「一人では無理でも二人の力で無限吸収に抗ってみましょう……行きましょう、ロランさん」
「一緒にがんばろうね!」
小さくも勇ましい猟兵達は、二人並んで戦場を目指す。
皇帝の冷たい視線が此方に向いても、決して怖くなんかない。
「ハロちゃん、ぼくが切り込む隙を作るの。だから待ってて」
「ええ、分かりました。いつでも飛び出せるようにしておきます」
皇帝が動き出すより早く、ロランが勢いよく前へと飛び出す。
狼の足が力強く大地を踏みしめ、限界まで前に。ロランの道行きを阻むのは、皇帝が作り上げる光の檻だ。
「威勢だけは十分だが、貴様らに俺を殺せるとは思えん。せめて無限機械の糧となり消え去れ」
皇帝は小さな猟兵を見下ろし、そのままエネルギーを吸収しようとするが――微かに漂う甘い香りが、ふと思考を食い止める。
「この大地の草木の精霊よ、ぼくたちに力を貸して!」
ロランが声を張り上げ結界を展開した瞬間、甘い香りはより強まる。その源は彼の持つサシェだ。
仙界の桃の精から譲り受けた香はロランに力を与え、彼をこの世界の精霊とより強く結びつける。
そして出来上がるのは――鮮やかな草花で満たされた精霊の結界だ。
「あなたの土地の草木の生命力、あなたに吸収できる?」
ロランの言葉を受け、皇帝が返したのはハッとした表情だ。
一瞬漂った桃の香り。周囲に広がる色とりどりの植物。それらを傷付けることを、皇帝はほとんど無意識に厭っていた。
その間だけは檻の力も無限機械の力も弱まる。つまり――突き進むチャンスだ!
「――今だよ!」
「ありがとうございます、ロランさん。任されました!」
次の瞬間、花々の香りを振り撒くように一陣の風が吹く。
その中央を駆けるのは、何よりも力強く突き進むハロだ。
「地に淀みし邪、月明かりに抱かれ、夢に還れ。それは汝の揺り籠……精霊達よ、もう一度その力を貸して!」
ハロの突進に合わせるように、ロランが次の魔術を展開していく。
桃の精とこの地の精霊、彼らから借りた魔力を再変換し組み上げるのは月光結界。
その光は皇帝の檻を跳ね飛ばし、友人の突き進む道を作り上げた。
その中をハロはただただ、ひたすらに突き進む。
鼻を擽るのは植物の甘い香り。此度の作戦は皇帝の思い入れを利用したものだけど、手段を選ばないのも一つの強さだ。
出し惜しみせず、全ての力を使って、勝って、帰る。
やるべきことは沢山あるのだから、足を止める訳にはいかない。
ハロの赤い瞳が見据えるのは、跳ね飛ばされた光の檻だ。その中でも特に弱っている箇所を見極め、ハロは小さな身体を潜り込ませた。
「……ここです!」
レイピアを檻へ突き立てれば、感じられる重みは予想よりも遥かに重い。
自分一人なら跳ね返せるかは分からなかっただろう。けれど後ろには、支えてくれる友人がいる!
「分かったの! 月光結界――Culla della luna!」
ロランは結界魔術を収縮させ、光の矢を編み上げる。
それをハロは示した箇所へぶつければ、更に檻は大きく揺らいだ。
「ハロちゃん、お願い……!」
あとは友人を信じるだけ。ロランも精一杯魔術を展開しつつ、突き進む友人の背を見遣る。
自分を包み込む月の光を感じつつ、ハロはただただ視線を前へと向ける。
輝く檻の向こう、荘厳な機械に覆われる皇帝の姿。後は彼の元に辿り着くだけなのだ。
(大丈夫、ロランさんの魔術は成功した。それと私の力が合わされば、こんな檻だって……!)
ハロはありったけの力を身体に籠めて、更に一歩前へと踏み込む。
その歩みに合わせるようにリトルフォックスは炎を纏い、より大きな姿へと変身しはじめた。
「……何だ、その力は?」
「あなた、には……きっと理解、出来ないものです……!」
ただ己の願いのためだけに世界を壊し、配下ですらも時に切り捨てる。そんな冷酷な相手には、分かってもらわなくても構わない。
ただ自分達は今この瞬間を、共に全力で突き進んでいるだけなのだから。
「――はぁぁぁぁぁああッ!!!!」
ハロの渾身の突撃は星を砕く勢いと変わり、とうとう光の檻を突き破る。
そのままの勢いで炎と刃が皇帝を切り裂けば、荘厳な機械は傷付けられ、無敵の言葉は嘘へと変わった。
ロランは全力を出し切ったハロの手を引いて、皇帝が再び動くより早く戦場を離脱する。
再び並んで行く二人の顔には、安堵の笑みが浮かんでいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
――君の珠玉を傷つける気はない
だからこそ、雨を
パッセンジャー、君にも君の|草花達《愛するもの》にも注ごう
儚い命を尊ぶ死ねずの君は、此度こそ花ともに眠ると良い
回復追いつかぬほどのUCの鉛雨を贈る
回避の時も花を傷つけないように神経を張り巡らせ立ち回る
避け切れない全ては開いた鴉で受け止め、花に当たらず空へ撥ね上げるように
パッセンジャー、君の本意ではないだろう?余波で草花が傷付くのは
だから天気雨の回復でより美しく草花が芽吹き綻んだらいい
勿論、俺は君に譲れないものがある
君も俺に譲れないものがある
それでいい
パッセンジャー、その草花達と共に行け
花へ|命《雨》の餞を
皇たる君へ、鉛雨の葬送と瑞々しき花の餞を
●
これまでの戦いで『無敵機械』の力は大きく削がれ、戦場もすっかり荒廃していた。
けれど残った草花を守るよう、皇帝は再び立ち上がる。
その姿を前にして、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)はゆるり微笑み言葉を紡いだ。
「――君の珠玉を傷つける気はない。だからこそ、雨を」
君にも、君の|草花達《愛するもの》にも。
藍夜の歩みに応じるように、戦場に降り注ぐのは柔らかな藍色の雨。雨粒が植物達に注ぎ込まれれば、彼らはつやつやと煌めいた。
しかし皇帝に降り注ぐ雨は他のものより幾らか重い。ざあざあと降るのは雨粒ではなく――嵐のような弾丸だ。
「貴様……!」
皇帝は魔導砲撃で弾丸を跳ね除け、藍夜へ向けてもその砲口を構える。
パッセンジャー・レイの威力はきっと凄まじいだろう。けれどただ回避するだけでは、意味がない。
藍夜は出来る限り周囲の状況を確認し、咄嗟に細巻の傘を開いた。
次の瞬間、腕に感じたのは凄まじい衝撃。黒い傘は強烈な砲撃を受け止めてくれたが、衝撃は全て軽減出来る訳ではない。
「儚い命を尊ぶ死ねずの君は、此度こそ花ともに眠ると良い……だから、俺も、君の花は全力で守ろう」
軋む腕をどうにか上に掲げれば、合わせて傘と砲撃も天を向く。
身体は大きく傷んだが、それでいい。藍夜が意識を向けていたのは、周囲の植物達だ。
「パッセンジャー、君の本意ではないだろう? 余波で草花が傷付くのは」
「……ああ、そうだ。だから猟兵、お前だけを殺す……!」
藍夜の言葉に応じつつ、皇帝は再び砲口を構える。今の一撃で猟兵は十分に弱った、だからもう一度防御は出来ないはず――。
そんなこと、分かっている。分かっているのに、皇帝の瞳は揺れている。
それは藍夜の周りにも、自分の周りにも、雨粒を受けて咲き誇る草花の姿があったから。
人ならざる機械のようでありながら、誰よりも人間らしい反応。皇帝のそれを、藍夜は好ましく感じていた。だからこそ――敬意をもって倒すのだ。
「勿論、俺は君に譲れないものがある。君も俺に譲れないものがある。それでいい。パッセンジャー、その草花達と共に行け」
ざあっと雨が強くなれば、草花はより強く美しく伸びていく。
それと同時に鉛雨も強くなり、皇帝の身体を強かに打つ。ここまでの戦いで皇帝の力は削がれていた、もう限界だろう。
花に|命《雨》の餞を。皇たる君へ、鉛雨の葬送と瑞々しき花の餞を。
鉛の雨の中、花の褥に倒れ伏す皇帝を見遣り、藍夜は暫し目を伏せる。
「……心配するな。君の花に降り注ぐのは、雨だけだ」
皇帝の身体が雨に溶けるように消えていけば、戦場に残るは猟兵達と草花だけだった。
●
こうして皇帝は倒れ、戦いは終わりを告げる。
無敵と称される徒花を打ち破り、猟兵達は未来への道を花咲かせたのだ。
大成功
🔵🔵🔵