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アルカディア争奪戦⑯〜雨の切れ間を

#ブルーアルカディア #アルカディア争奪戦 #デイライト

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●拒絶の雲海を突破せよ
「六大屍人帝国にも到達し始めて、アルカディア争奪戦も半ばを超えた頃かな」
 グリモアベース、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は集まった猟兵達にそう切り出す。
「今回向かって貰いたいのは『アルカディア・スカイゲート』だ。ここには|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》放出能力をもつアルカディア・オブリビオンというのがいて、飛空艇も猟兵さえも消滅させてしまう雲海で全てを埋め尽くそうとしてくるみたいなんだ」
 現在は発見者であるオーデュポンに従って行動してるみたいだけど、ここを突破しないと先に進めない事には変わりないとヴィクトルは言う。
「それで|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》がこの空域に差し掛かっていて、このままだと消滅してしまうことになると思う。だから皆には、彼らがこの雲海に満ちた空域を突破する為に力を貸してあげて欲しいんだ」
 そうヴィクトルは説明して、
「まずアルカディア・オブリビオンは雲海放出と制御に集中しているみたいだ。自身の周囲を雲海で覆っていて攻撃は全て阻まれてしまうし、牽制も多分役に立たない。ただ視界があまりよくない事と、雲海放出の速度自体はそこまでではなくて、濃度や分布にムラーーさながら『空の道』とも言える道が現れるはず。そこを突いて一気に突破するのが今回の作戦の要になるだろう」
 刻一刻と状況は変わっていくが、時間をかければかける程|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》は広がって逃げ場も突破口も失われていくだろうね、とシャチは言い。
「あと、今回の|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》には『デイライト』って勇士のチームもいるみたい。二度猟兵達に助けられている恩義から、お願い事とかあったらできるだけ叶えてくれようとしてくれると思う。連携を取る事ができれば雲海突破をより確実にできるかもね」
 大変な|飛行《フライト》になるけど頑張ってね、とヴィクトルは締め括る。
 そして彼の手にした鍵型のグリモアが輝き、アルカディア・スカイゲートへ挑まんとする|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の飛空艇へと猟兵達を導いた。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 危険空域を突破しましょう。

 このシナリオはブルーアルカディアの『アルカディア・スカイゲート』の|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を突破するシナリオとなります。
 雲海放出能力を持つアルカディア・オブリビオンの術士は動かぬままに|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》へと|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を放ち消滅させようとしてきます。
 それを避けつつ雲海の切れ間『空の道』を探して空域を突破してください。
 下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……変形し続ける「空の道」を探して通る。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『空の道を探せ』

POW   :    雲海の影響に耐え、最短距離を強引に移動する

SPD   :    雲海の薄い箇所を見つけ出し、迅速に移動する

WIZ   :    雲海の動きを読み、最適なルートを導き出す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●雨往く|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》
 さらさらと日光が明るく照らす中に、霧のように細かな雨が降っている。
 そんな白き雲海に満たされた空域の中心に、一体の召喚獣がいた。
 獣でありながら魔術に通じ、天候を操り雲海と共に在る獣。アルカディア・オブリビオンである彼の獣は自身を中心に|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を放出し、更にはそれを自在に操作して|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》を消滅させようとしていた。
 その姿に慄くのは飛空艇の一つ、『デイライト』の勇士達。
『アイツは……俺達の大陸を襲った……!』
 一人の少年が指差し叫び、リーダー格のソレイユという青年は怒りに恐怖を混じらせた視線を雲海に覆われたオブリビオンに向ける。
 氷の杖、赤いスカーフ、酷く冷徹なあの獣は彼らの故郷を襲撃した魔獣の群を従えていたオブリビオンとそっくりの姿だ。
 同一個体であるかは分からない、寧ろ別物と考えた方がいいだろう。
 それでも彼の飛空艇の勇士達は故郷を失った日の恐怖を思い出し、動揺が広がっている。
『……大丈夫だ。今はこの空域を突破する事だけを考えよう』
 その動揺を鎮めるためにソレイユは殆どが年下の乗組員たちに呼びかけ、操舵手に号令を飛ばす。
 ふと気づけば彼の手は腰に帯びた細剣の柄にかかっている。
 ――その刃は、本来の彼の得意とする武器ではない。
 本来の武器は懐に秘めた――だが、それを使ってもこの場であの雲海に守られたオブリビオンを倒す事は不可能だろう。
 だから今は冷静に。ここまで来て消される訳にはいかないのだ。
 落ち着きをやや取り戻した乗組員達が操船にかかる中、ソレイユはどうやってこの窮地を乗り越えるかに思案を巡らせていく。

 ――一つの飛空艇はそのような状態。けれど、この場の他の飛空艇も飲み込んだ全てを消失させる雲海には大なり小なりの恐怖を抱き、迷っていた。
 的確に|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を操る絶対防御の召喚獣オブリビオンが護るこの空域。
 糸口の見えぬ状況でそれをどのように突破するか――その取っ掛かりを与えてくれる存在の到来を、彼らは待ち望んでいる。
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

|蒼穹の世界《ブルーアルカディア》を救う為に…
そして…屍人帝国の野望を打ち砕く為にも…
さぁ行くぞ…私は処刑人…!

雲海の迷宮…
それを抜けねば先には行けぬ…!
彼等…勇士達を救う為にも…!

緋色の天使を抜き振るい[天候操作]の力で
[環境耐性と地形耐性]の加護を得て雲海の動きを鈍らせよう

さらに飛空艇に迫る雲海を【大焦熱地獄】を発動
迫る雲海と召喚獣を[範囲攻撃で吹き飛ばし]て焼き払ってしまおう

そして勇士達と協力して[視力と情報収集]で空の道を探し出そう…!



●処刑人は炎風と共に
 雨の雲海を往く|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》、その先頭の飛空艇の甲板に一人の猟兵が転移してきた。
「|蒼穹の世界《ブルーアルカディア》を救う為に……」
 モノトーンの武装を纏う彼女、仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)は鋭い目で眼前の|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》、そしてそれを操る召喚獣のアルカディア・オブリビオンを見据える。
 すらりとした兎のようなオブリビオンは冷徹に飛空艇を見据え、杖を翳し雲海を放ってくる。
 明らかにこちらに気付き、消滅させんと攻撃を仕掛けてきているのだ。
「そして……屍人帝国の野望を打ち砕く為にも……」
 対するアンナは天使の顔がデザインされた巨大な剣『緋色の天使』を抜いて、
「さぁ行くぞ……私は処刑人……!」
 自身を奮い立たせるように甲板を踏みしめる
 ――|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》を阻み消滅させる雲海の空域、ここを抜けなければ先に進むことは叶わない。
 この飛空艇を操る勇士達を救う為に、アンナは緋色の天使を振るい周囲の天候に干渉を開始する。
 自然的な、オブリビオンの制御にない雲海は飛空艇から離れていく手ごたえを感じる。だが、アルカディア・オブリビオンが杖から放出する|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》は、まるで召喚獣の手足のように飛空艇目掛け一直線に伸びてくる。
 命中すれば即消滅、飛空艇がやられれば勇士ともども雲海の藻屑となってしまう状況で、アンナは鉄塊剣を再び振るう。
「地獄の炎よ……罪人共を焼き尽し終焉を齎せッ……!」
 静かに、力強く詠唱しユーベルコード【大焦熱地獄】を発動すれば、|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》周囲の空域に終焉の炎纏う暴風が発生する。
 それは飛空艇を害するものではない、雲海と召喚獣のみに害を為す神風。一直線に伸びてきた|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》をその風量と熱で吹き飛ばすようにして阻み、その大半の軌道を逸らす事に成功する。
 僅かに残った雲海も、炎の暴風により齎された飛空艇全体を覆うオーラに阻まれ飛空艇を消滅させるには至らない。
「あの位置から突破できる……!」
 そして暴風で吹き散らし視界がクリアになった空域で、アンナが優れた視力で|雲海の切れ間《空の道》を見出して飛空艇の勇士達に叫べば、勇士達は即座にその指示に応え一気に加速する。
 空の道に差し掛かったタイミングでアンナは召喚獣を見遣る。
 雲海を操る召喚獣のオブリビオンは分厚い雲海に身を包み、終焉の炎の暴風を触れた瞬間に消滅させて防いで無傷のようだ。
(「分断されたか……」)
 そしてその間に周囲の雲海を操作していたようで、アンナの位置から他の飛空艇は確認できず、完全に分断されてしまったようだ。
 刻々変化する雲の濃淡故に、他の飛空艇もそれぞれで空の道を見出し突破していると信じ、アンナは追撃を避けるために後方を警戒するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キーヴィット・フィールヘクセ
【WIZ】
厄介な……直接叩いてやりたいけれど、それが出来ないのは何とももどかしいね。


艦隊の先頭となる飛空艇に同乗させてもらって、船首に陣取る。
『好転』の意味をもつアルカナ〈運命の輪〉を「アウレオール」から抜き出し、僕自身が使う探査術(【情報収集】)の効果を増幅させて空域全体へ術を展開。艦隊の通れそうな雲海の切れ間を探し出し続けよう。

ルートに関しては、術で拡声して(【属性攻撃】応用)、艦隊全体に知らせることにするよ。



●曹灰長石の結晶人が示す先
 |飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の一隻が炎の暴風を巻き起こし、対するアルカディア・オブリビオンが周囲の雲海を操り器用に飛空艇を幾つかの群に分断する。
 無理に合流しようとすればあの消滅の拒絶の雲海に飲み込まれてしまう――飛空艇それぞれで突破するのが最善となるだろう。
「厄介な……直接叩いてやりたいけれど、それが出来ないのは何とももどかしいね」
 そんな飛空艇艦隊の一隻――分断された今は他の飛空艇を数隻先導する位置にいる飛空艇に転移してきたラブラドライトのクリスタリアン、キーヴィット・フィールヘクセ(修行中の身・f36065)は苦い表情で遠くの召喚獣を見る。
 あの炎の暴風を受けて傷一つない、分厚い|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》の消滅の力は相当なものと言う事は見てわかる通りだ。
 船首に立つ彼は雲海を冷静に観察しつつ、絵柄と別に術式の刻まれた金属製のタロット『アウレオール』を取り出し、その中から一枚を抜き出した。
「……〈運命の輪〉か」
 正位置では『好転』を意味するそのアルカナの術式は、彼の探査術の効果を増幅させるもの。その補助を受けつつ体に彫りこんだ術式の一つを発動して可能な限り空域全体へと術を展開する。
(「まだどの飛空艇も消滅してはいないか」)
 転移した瞬間に確認した飛空艇の数と探査された飛空艇の数は一致している。そのうち一隻は空の道を見出したらしく、この空域から脱出しようとしているが他はまだ手間取っているようだ。
 更に探査術の範囲を絞り、雲海の濃度分布を探っていく。一定濃度以下なら消滅は免れられる、その上で道のようになっている位置を正確に割り出すのは中々難しい。
 それでも逆に、術で探れない――雲海に消滅させられている空域を割り出し、そこから無事に進めるだろうルートを逆算すれば、一本の道が見いだせる。
「この位置の真下、降下して前方やや左に空の道が見えた!」
 音の属性を持つ魔術で拡声し、後方に続く他の数隻の飛空艇に届く声で見出したルートを伝えるキーヴィット。
 アルカディア・オブリビオンが雲海を操りキーヴィットと続く飛空艇を阻もうとする。
 しかしオブリビオンとキーヴィットの乗る飛空艇との距離は十分離れていて、飛空艇は阻まれる前に空の道へと飛び込むことに成功する。
 決して油断は出来はしない。故にキーヴィットは刻々変化する雲海の僅かな変化にすら対応できるように探査術を展開し続け、そして彼の助力で飛空艇数隻は安全に空の道を進んでいくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
操縦は勇士さん達に任せ
普段から飛行しているから風を翼で受けたり雲の動きを観察することで
空中の風速、風量と雲海の流れを脳内で素早く擦り合わせ、計算
敵が放つ雲海だから普通と違うとはいえ
雲自体に意志が無い以上ある程度自然的特徴は出る筈
それを見極め空の道の位置を推測、共有

あとは…風さん達
聞こえたらちょっと手伝ってほしいな

勇士の皆さん
なるべく最短距離目指すから、焦らない程度でいい
安全運転の範囲で最高速度
お願い出来る?

【指定UC】発動
雲海自体への効果は期待出来ないけど
自然現象そのものである風へと【誘惑】を込めたお願いを
僕らが少しでも安全に道を通れるよう雲海の動きを抑えてほしいんだ
なるべく時間はかけないから



●金蓮花の少年は風に願う
 炎の暴風が吹く。|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》が空域に満ちていく。
 いくつかに分断された|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の一つに栗花落・澪(泡沫の花・f03165)というオラトリオの少年はいた。
 操縦はこの空域までやってきた勇士達を信頼し任せている彼は、甲板で風を受けながら雲の動きを観察する。
「……あの召喚獣に干渉されているみたい?」
 普段飛行している澪は何もない状態での空の風速や風量を体感で把握しているが、それと今この場で見える雲の動き――特に召喚獣の視線の先の雲の動きは明かに食い違っている。
 とはいえ、それ以外の雲海については大体の澪の感覚、予測と一致している。
「それを踏まえると……」
 脳内で演算し、雲海の濃度が薄い位置を幾つか算段し、かつ一番澪のいる飛空艇、そしてそれに続く|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》で向かいやすい位置にあるそれを割り出す。
「あとは……風さん達、聞こえたらちょっと手伝ってほしいな」
 再び甲板に出た澪が空に向かって呼びかけて、精霊からの反応があることを確認し、船内へと向かい飛空艇のリーダーにその情報を伝達した。
「勇士の皆さん、なるべく最短距離目指すから、焦らない程度でいい。安全運転の範囲で最高速度……お願い出来る?」
 伺うように澪が問えば、朝飯前だと強気にリーダーは胸を張り、そして魔術で周囲の飛空艇にその情報を伝達する。
 澪の提供した情報通りに飛空艇は進み始め、それを阻むように召喚獣のオブリビオンの魔術のせいか、雲海の流れが変わっていく。
 それを確認した澪はユーベルコードを発動、その視線を風――すなわち自然現象そのものへと向けて、お願いをする。
 呑み込んだあらゆるものを消滅させる雲海事態にその効果は期待できないだろう。しかし風であるならば澪の誘惑の対象にとれる。
「僕らが少しでも安全に道を通れるよう雲海の動きを抑えてほしいんだ。なるべく時間はかけないから」
 お願い、ね? と甘えるように風に語り掛ければ、澪のお願い通りに放出された雲海の接近を阻むように風の向きが変わり、そして|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》を加速させるように追い風が吹き始める。
 その風の導く先は空の道、アルカディア・オブリビオンが雲海を放出し天候を魔術で制御しようと風は飛空艇を守るように吹き続ける。
 風が空の道を維持する間に澪の飛空艇、そして引き連れた飛空艇は速やかに空の道を通り抜け、そして最後の一隻が空の道を抜けた直後に優しき風は静かに止んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブOK単独希望

時間の余裕はあんまりなさそうだね
できるだけ速攻で突破したいね
えと、デイライトさんたち、応答して?
今までの空域のデータを送ってほしいの
センサーと魔力感知で現状と風や気圧の動きを確認
予測演算で道を見つけるの

予測で見つけた道を確実にするには…、UC発動
炎魂たちを3個ずつ合体させて150個の少し大きいサイズへ
それらを予測で導き出した通路上に配置
熱を吸収したり放出したりで気圧差を調整して道を維持させて慎重に進むの
念のために魔力障壁の結界を展開しておくね

抜けたの!
あそこにオブリビオンがいるのかな?
炎魂たち、行ってきて
雲の周辺に配置して熱量を奪って空間ごと凍り付かせるの



●人狼少年は熱奪う炎に道を
 ――雨が降る。
 日の光はそのままに、顔を薄っすら湿らせるような霧雨から甲板をしとど濡らすように雨足は強まっていく。
 炎を鎮める為のオブリビオンの天候操作なのか、ただの偶然なのかは判別はつかない。
「時間の余裕はあんまりなさそうだね」
 飛空艇の一隻に転移していた人狼の少年、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)が呟く。
 アルカディア・オブリビオンが放出する雲海は嵩を増し、雲海の薄い空域が段々狭められている事が視覚的にも判別できる。
 このままでは完全に逃げ場を封じられ、|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》の藻屑にされてしまう事は想像に難くない。
「あそこにいるのがオブリビオン……」
 その|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》を放出する召喚獣のオブリビオンの姿は遠くながら今の位置からでも視認できる。
 淡々と事務的にすら見える所作で杖から雲海を放出するオブリビオン、けれど殺気は明らかにこの空域にやってきた飛空艇全てに向けられていて、攻撃のタイミングを伺っているようにも見えた。
(「できるだけ速攻で突破したいね」)
 時間は向こうの味方だ。速やかに突破する為に、ロランは乗船している飛空艇の主に相談し、他の飛空艇と連絡を取れないか確認する。
 この|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》は通信用の装置で他の飛空艇と連携を取っていたようで、それはロランも利用する事ができるようだ。
「えと、デイライトさんたち、応答して?」
 装置に向かってロランが呼びかければ、一拍置いて青年らしき声で応答が返ってくる。
 ロランがこの状況で彼らに連絡を取った目的は一つ、
「今までの空域のデータを送ってほしいの」
 今いる飛空艇でもロラン自身の魔術で風速や気圧等のデータは取れる。だが、離れた二点からの観測データがあればより正確なものとなるだろう。
 予測演算を行うに、まして生命がかかった状況ではデータの正確性は出来るだけ担保したい。
 向こうから装置越しに伝えられるデータを元にロランがデータ処理、雲海の薄いルートを予測・算出する。
 だがそれは刻一刻と変動するこの空域の雲海で常に安定しているようなものではない。それを確実にする手立てが必要だとロランは思考する。
「……向こうに向かえば空の道があるの。慎重に進めば大丈夫、だよ」
 飛空艇の主にロランが言って、そのまま甲板に出る。
「エントロピー移動術式、展開。リアライズ完了。分離、解放。オペレーション、スタート」
 機械音勢のように抑揚のない声で詠唱しユーベルコードを起動すれば、少年の足元に描かれた陣から蒼き魔術の炎魂が130出現し、それらが3つずつ融合して40と少しのやや大きな炎魂となる。
 炎魂はロランの意志に従って全速力で加速する飛空艇の先に向かい、彼の予測で導き出された空の通路上に配置されていく。
 魔術の炎塊は空の道に熱を放出、或いは熱を吸収して空の道の内へと|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》を侵入させぬようにして道を維持していく。
 アルカディア・オブリビオンはそれを阻止するために雲海を放出するが、放出速度と通路までの距離もロランの計算の内。この速度で十分振り切れる筈だ。
 そして放たれる雲海を躱しつつオブリビオンと最接近したそのタイミングで、更にロランが動く。
「炎魂たち、行ってきて」
 せめて一矢喰らわせんと、すれ違った瞬間に空の道を維持する為に展開していない魔術の炎を放ち、アルカディア・オブリビオンの周囲に展開させたのだ。
 対象から熱量を奪い凍らせる魔術の炎、それにより雲海に守られたオブリビオンを空間ごと凍結させてしまおうという狙い。
 だが、蒼き炎魂が周囲に展開し熱を奪い始めた瞬間。
 召喚獣の杖からこれまで以上の量で雲海が溢れ出し、周囲に展開していた炎魂を呑み込み消滅させた。
 想定していたよりも雲海の放出速度が速い。その上で雲海の防御を過信している訳でもなく、必要なら対抗してくるようだ。
 しかしオブリビオンが雲海を放出し周囲の炎魂を消滅させる間に、ロランの乗った飛空艇は既に空の道をかなりの距離進んでいた。時間稼ぎには十分だっただろう
 そして、
「抜けたの!」
 ロランの明るい声と共に、|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》満ちる空域の向こうへと飛空艇は脱出したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォー・トラン
ユーベルコード【精霊召喚魔法】で風の精霊を呼び出して強風を吹かせてもらう。
ここにアルダワ流精霊術の[天候操作]魔法も加えてこの空域に大嵐を引き起こしてやったなら、拒絶の雲海をコントロールするアルカディア・オブリビオンは雲の維持に普段以上の労力を費やさざるを得なくなるではないだろうか。
だってそうだろう。
雲が全て吹き飛ばされてしまっては艦隊の侵攻を止めることができなくなってしまうのだから。

でもそんな嵐の空を航行できるのかって?
できる!!!
なぜならば今この場所には飛空艇艦隊の勇士がいるからだ。
あたしが嵐で雲に対抗している間に全速で突破してもらいたい。

勇士諸君、そして風の精霊。
皆、頼んだよ。



●精霊術士と陽光は風と共に
 |拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》の空域に最後に残ったのは『デイライト』と言う名の勇士の飛空艇だった。
 勇士の少年少女の間にはピリピリとした空気が漂っている。脱出の為の空の道を経験の浅い彼らでは見出せず、状況は刻一刻と悪くなっていくばかりだからだ。
 ルートについては別の飛空艇からの少年らしき声の助言もあったが、雲海の変動が激しく経験の浅いこの船の勇士達では迂闊に踏み込む度胸もなく、中々その座標にまで到達できない。
 このままあの召喚獣の手によって雲海の藻屑となってしまうのか――、ソレイユと言う名のリーダーが弱気になった時、
『……なんだ? 風が……』
 先ほどまで吹き荒れていた炎の暴風、そして不思議な何かに魅了されているような風とは違う強風がデイライトの飛空艇を包んでいた。
 そして周囲の空域を見れば、上方に突如出現した黒き嵐の雲が|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》を散らすかの如く猛烈な雨風を起こしている。
 ――甲板にいつの間にか、一人の人狼の女が立っていた。
 魔法の杖を携えた彼女の力かとソレイユは思い、そして同時に別の不安が胸に去来していた。

「頼んだよ」
 グリモアベースより転移してこのデイライトの飛空艇へとやってきた彼女、フォー・トラン(精霊術士・f12608)という淡い青眼の精霊術士は状況を確認するや否やユーベルコードを起動し、周辺に住む精霊を呼び出していた。
 この雲海の領域に住まう風の精霊――その力を借りて、飛空艇を後押しするようにして雲海の薄い位置へと導いていく。
 それに合わせアルダワ流精霊術で天候へと干渉する魔法を行使し、風の精霊の協力も受けながら空域全体に大嵐を引き起こしているのだ。
 ただの自然現象である暴風、それは|拒絶の雲海《アルカディアエフェクト》自体を崩したりすることはできないだろう。
 しかしその雲をコントロールするオブリビオンにとっては災難だ。放出していた雲海が暴風に流されるなどすれば、|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の侵攻を止める事ができなくなってしまうのだから。
 雲海を現在位置に留める為、普段以上の労力を魔術に費やす事になるオブリビオン。当然その集中力は乱れてしまい、このデイライトのみに集中する事はできなくなるだろう。
 ――一方で問題もある。この嵐の空をデイライトの幼き勇士達が航行できるのか、と言う事だ。
 だからフォーは甲板から艇内へと入り、暗い顔をしたリーダーであるソレイユを情熱的に鼓舞する。
「……嵐の空を往けるか不安なんだろう?」
 フォーの言葉にソレイユは一瞬躊躇い、それを認めた。
 ついこの間強烈な積乱雲に吞み込まれた経験はあるが、この消滅の雲海に満ちた空域は流石に経験がないからだ。
「そうか。……でもね、あたしは言うよ」
 フォーは一旦区切り、そして、
「――できる!!! なぜならば、今この場所には飛空艇艦隊の勇士がいるからだ」
 そう、堂々と言った。
 この空域にやってきた飛空艇艦隊、このデイライトもそれを形成する一隻であり、技量や装備の条件で他の飛空艇に劣るという訳ではないのだから。
「あたしが嵐で雲に対抗する。その間に全速で突破してもらいたい」
 勇士諸君、皆、頼んだよ。そう言ってフォーは再び甲板に戻っていった。
『……そうだな。俺達はやれる、やり切って見せなければ』
 静かにソレイユが呟き、顔を上げる。その表情からは愁いは消え去っていた。
 フォーが天候操作の魔法を再び行使している中、飛空艇が速度を上げた。
 明確な目標――助言にあった座標へと向かう為に、勇気を振り絞り進むことに決めたようだ。
 ならばそれを助けるのがフォーの役割。
「風の精霊、頼んだよ」
 そう呼びかけながら嵐をより強くし、オブリビオンの雲海制御、放出を阻む。
 飛空艇もかなり揺れているが、覚悟を決めているからか嵐の中に時折混じる雲海の濃い空域を避けつつも目的地へとほぼ一直線に向かっていく。
「ああ、大丈夫だったみたいだ」
 フォーの先に見えるのは、いまだ失われなかった希望の空の道。
 後方のアルカディア・オブリビオンは雲海を腕を伸ばすかのように真っすぐ放出してくるが、それを振り切る速度でデイライトの飛空艇は空の道へと飛び込んだ。
 追い縋るように後ろから迫ってくる雲海を振り切りつつ、濃度の薄い道を全速で進む飛空艇はやがて青空へと飛び出す。
 危険な雲海の領域を脱した若き勇士達の飛空艇を迎えるのは、先に脱出した|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の飛空艇。
 いつの間にか、雨は止んでいた。

 かくしてアルカディア・スカイゲートを突破した|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》と猟兵達は次の戦場へと向かっていく。
 この先に待ち構えるのは六大屍人帝国、そしてその先に控えるアルカディア。
 戦いは更に過酷なものになるだろう。だが、|飛空艇艦隊《ガレオンフリート》の勇士達はそれを恐れることなく、希望を胸に前を見て進んでいくのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月19日


挿絵イラスト