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アルカディア争奪戦⑳〜鍍金の聖女

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「民の幸福を第一に願い、民の為なら他の何を擲ってでも護るべき強さを得る――その高潔な覚悟、オブリビオンへと変じてもまさに『聖女皇』。その称号は伊達ではありませんね」
 とんでもない皮肉もあったものである。
 要は『自国の民のためと言う大義名分さえあれば、他を顧みずやりたい放題やってもいいと思ってるのか』と言いたいわけだ、この虹目・カイ(金狐は虹を目指した・f36455)と言う|皮肉屋《おんな》は。
「ですが、ええ。我々はこの気高き志を持つ偉大なる女性を、ここで確実に討ち果たさなくてはなりません」
 マグナ聖帝国に君臨する聖女皇――ベアトリクス・マグナへと通じる道は、既に開かれた。後は決着をつけるのみ。
 しかし、皆の予想に違わず強敵だと、カイは言う。
「神にも匹敵すると言われる力を持つ、そうですからね。ユーベルコードの出力も、その辺の並み居るボスオブリビオンとは比べ物にもなりません。桁外れの一言でございますよ。規格外と言ってもいいですかね」
 まともに正面切ってぶつかれば、まず勝てない。
 この辺りはいつもの戦争での有力敵と同じではありますがね、と付け足した後。
「ですが、打つ手がないのであれば流石の私とて狼狽すると言うもの。ええ、ええ。付け入る隙はございますとも」
 にこり、と笑うカイ。
 何も心配していない、と言った様子だ。
「彼女は本来『鍵の船』と呼ばれる少女の力を得て、己の目的を成就させようとしていました。しかし、その企みは潰えた。今の彼女は『間に合わせの肉体』で顕現しているに過ぎません」
 肉体の主は、忠義者だったでしょうね――とカイは呟く。その献身は果たして報われているのだろうか、とでも言いたげに。
「まあ兎に角そういうわけでして。敵のユーベルコードは相対する者全てを薙ぎ払い、無に帰すほどに強力ですが。本来の力を取り戻せていないため、ほんの僅か、針の穴に糸を通すような隙間が――ユーベルコードの出力が、弱まる瞬間があるのですよ」
 この弱体化を、ベアトリクス自身も想定していない。その瞬間こそ、彼女の意表を突き、一矢報いる絶好の機会であると言う。
 果たして、その瞬間とは。
「単純明快。ユーベルコードを出し切るその直前です」
 完全に力を取り戻した彼女であれば、護るべき国の敵にそのような隙は与えない。
 だが、ユーベルコードが不意に途切れるようなことは、きっと今までなかったのだろう。威力が弱まるだけでなく、ベアトリクス本人の動揺も狙える筈だ。
 ただ、結局はユーベルコードの効果が切れる寸前なので、すぐに我に返ってしまうと言うので。躊躇うことなく、その一瞬の隙を逃さないで欲しいと。
「厳しい戦いになる――と言いたいところですが。皆様なら問題なく遂行出来る任務でございましょう。吉報をお待ちしておりますよ」
 気軽に言ってくれるが、これも彼女なりの信頼の証なのだろう。
 それに応えるべく、猟兵たちは彼女の掌で輝く|虹の天輪《グリモア》と、真っ直ぐに向き合った。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 その称号は、今も生き続けるものか。

 戦争シナリオのため、今回は1章構成です。

 第1章:ボス戦『『聖女皇』ベアトリクス・マグナ』

 敵の攻撃が僅かに弱まる瞬間――今回はユーベルコードを出し切る寸前を狙って反撃に出ることでプレイングボーナスがつきます。
 耐え切るか、避け切るか。皆様の判断に委ねます。最善を、掴み取ってください。

 断章なし、公開された時点で受付開始です。
 それでは、よろしくお願いいたします!
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第1章 ボス戦 『『聖女皇』ベアトリクス・マグナ』

POW   :    封印術「黄金沃野」
【黄金翼の輝き 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    封印術「武装崩壊」
【光輝く慈愛の波動 】を解放し、戦場の敵全員の【武器攻撃力】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ   :    封印術「神聖庇護」
レベルm半径内を【マグナ聖帝国 】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ベアトリクスに敬意を持つ者の行為】が強化され、【ベアトリクスに敬意を持たない者の行動】が弱体化される。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フレスベルク・メリアグレース
ええ、これは簡単にはいかないでしょう……
ですが、付け入る隙が無いわけはありません

そう言って封印術『神聖庇護』の効果を受けながらも、わたくしはベアトリクス猊下のUCでその封印を受けず、寧ろ強化されて封印術のUCを出し切る寸前にわたくしのUCで機械化とタイム・フォールダウンの再現を以て戦っていきます
理屈は簡単、わたくしはベアトリクス猊下に敬意を払っているからです
オブリビオン化し、かつての意思が歪められようとも……
国民の安寧の為に思った慈愛、軽んじられる物でしょうか
少なくともわたくしは軽んじる事が出来ず、寧ろ敬意を払わない方が難しい
それに、猊下に敬意を抱いたから洗脳されると言うUCではないので




 慈悲と慈愛を以て邁進する、黄金の聖女皇。
 その威容を肌身でひしひしと感じながらも、フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)はそれを正面から見据えた。
 到底覆せない、力の差。それでも、引き下がることなどできはしない。
「ええ、これは簡単にはいかないでしょう……ですが」
 フレスベルクには、ある確信があった。
「――付け入る隙が無いわけはありません」
 それは、例の出力低下の件もそうだが。
「わたくしの国のため、民のため――わたくしの道を阻むのであれば、容赦はいたしません」
 凛と、高潔な眼差しで、聖女皇はフレスベルクを射抜き。
 掲げた手から光が漏れる。忽ちの内に彼女の愛した祖国が、白昼夢の中に蘇る。
 臣民を幸せに――ただそれだけの強い願いが込められた国。踏み躙る者には等しく罰を。
 立ちはだかるフレスベルクもまた、指先一つも動かせないほどの戒めを受ける――筈だった。
「――え?」
 聖女皇の愛した国はまだ、ここにある。
 けれど、フレスベルクに膝を着く様子などなく、寧ろ全身に活力が漲っているかのように、しっかりとした足取りで、立っていた。
「何故、」
「簡単なことです、ベアトリクス猊下。わたくしは貴女に――猊下に、敬意を払っているからです」
 オブリビオンへと変じ、嘗ての意思が歪められようとも。
 生前、国を愛し民を愛し、強く在りたいと願ったその志は、尊ばれるべきものだった筈だ。
 一国を統べる教皇として、フレスベルクにそれを軽んじることなど、どうしてできようか。寧ろ、敬意を払わずにはいられない。
(「猊下に敬意を抱いたから洗脳されると言うユーベルコードではありませんし」)
 仮にそうだとすれば危うかったが、現にフレスベルクの身体中を満たすのは、溢れんばかりの力だ。
 今、フレスベルクの想いはただひとつ。敬愛すべき仁君を、これ以上オブリビオンとして歪められないために――討つ。
「あ、ああ……わたくしの国が……」
 急速に輪郭を失っていく、幸福の国。
 今、その悲しみを、止めてみせる。
「刮目せよ。時の滅びを越え、今世界は蒼穹へと至る。其は機械にして時刻を掌握する者。我はかの者を従え、閉ざされし空を切り拓く――!」
 場に存在する『概念』と『時間』が、機械の神の姿を取って躍り出る。
 その渾身の一撃が、驚愕に目を見開く聖女皇の身体を、確かに貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
さすがは帝国を背負う皇帝というべきかな。
すごく強いな。
相手の攻撃を耐え切るっていうのは正直性に合わないけど、こっちの反撃で目を丸くする所を想像しながら、やらせてもらうよ。
こういうのは、向こうの絶対優位を崩すのが楽しいんだよ。

ここはガチガチに固めよう。
UC【山紫水明】を発動。【土の魔力】【水の魔力】を付与して、甲冑の装甲を土、水で重ねることで厚く強化。重さを増やすことで【吹き飛ばし耐性】も確保しよう。

スキが見えたら、反撃開始。
ジェットエンジン『ベクター』で急加速して、甲冑の質量も合わせた体当たりで【重量攻撃】しよう。

押しつぶされる皇帝とかサイコーだね。




 光に灼かれる感覚。
 一身にそれを受けながら、シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)はひたすら耐えていた。
(「さすがは帝国を背負う皇帝というべきかな……すごく強いな」)
 本来、ただ耐えて好機を窺うという戦い方は、シモーヌの性に合ったものではない。不本意だが、逸って返り討ちに遭ってしまえば元も子もない。
 せめて最後まで耐え抜き反撃に出た瞬間、敵が驚愕に目を丸くするのを楽しみに、その時を待つのだ。
(「こういうのは、向こうの絶対優位を崩すのが楽しいんだよ」)
 勝利を確信して揺るがない、圧倒的な強さ。
 それを今から、ひっくり返して崩してやる。
 反骨精神で己を奮い立て、シモーヌは大地の恵みを、即ち土と水の魔力を幾重にも纏い、強固な鎧としてその身を確と固めていた。特に土の重量を増すことで、薙ぎ払われることなく踏み留まり続ける。
 抜かれてなど、やるものか。お前の吠え面を、この目で拝むその時までは!
(「まだか……? いや、焦るな」)
 未だ威力は衰えず。
 まだ。まだ続く。飛び出したい気持ちを抑えて、待ち続けて。
「――え、」
 不意に、眩く世界を埋め尽くす黄金が、途切れた。
「隙ありッ!」
 一瞬を、捉える。
 甲冑に仕込んだ渦動ジェットエンジン『ベクター』の最大出力で、息も吐かせず飛び込んで。
 その懐の柔い部分を狙って、甲冑の質量を乗せた全身全霊の当身を、抉るようにぶちかます!
「かは……ッ!!」
 肺の空気を吐き出すように、短く咳き込む聖女皇。
(「押しつぶされる皇帝とか、サイコーだね」)
 みしり、ぶつかったその細い身体から伝わる骨の軋む感覚。
 確かな手応えに、シモーヌはふと薄くほくそ笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

空桐・清導
POWで挑む
アドリブも大歓迎だ

「アンタは民より強さを取らされた。
そんなのはアンタにはきっと似合わねえし、民も悲しむよ。
だから、本当に、本当に遅くなったが、
アンタと、その肉体の人を救いに来た!!」
きっと怒るだろう
ならば、己の邪魔などするな、と
甘んじて受け入れよう
[気合い]をいれ、黄金の[オーラ防御]で攻撃を受け続ける
「なあ、聖女皇様。
アンタ、今、民の笑顔を思い出せるかい?」
UCを出し切る寸前にそんな問いかけを投げ、
超高速で間合いに入り込む
「もし思い出せないなら、アンタの強さは間違ってる!」
その瞬間、清導は[限界突破]
彼女さえも上回る力を拳にこめて叩き込む
「もっと早く、アンタと出会いたかったよ。」




 未だ折れぬ黄金の翼で、気高く神々しく君臨する聖女皇。
 だが、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)はその姿に、哀しささえ覚えていた。
 彼もまた、立場は違えど人々を護り、助ける存在――ヒーローであるが故に。
「アンタは民より強さを取らされた」
 オブリビオンとして蘇った彼女は、民を護るための手段が、最後に辿り着くべき目的になってしまった。
「そんなのはアンタにはきっと似合わねえし、民も悲しむよ」
 ――だから、と。
 清導は――超鋼真紅ブレイザインは、ここに来た。
「本当に、本当に遅くなったが、アンタと、その肉体の人を救いに来た!!」
 聖女皇と、彼女に準じた肉体の主とを。
 誰一人として、その紅蓮の手から取りこぼさないために!
 真っ直ぐに、目を逸らさずに告げれば、聖女皇もまた凛と言い放つ。
「救いなど、わたくしには必要ありません。求めてもいません。道を開けてください、さもなくば」
 翳される手。
 その手が、護る手ではなく、傷つける手になってしまったことが、清導には、無念でならない。
(「怒っただろうか。己の邪魔などするな、と。ならば俺は――甘んじて受け入れよう」)
 涼しげな顔の奥に隠された、激情を。
 裂帛の気合と共に、迫りくる黄金の輝きの波に、纏う黄金の気魄で以て、押し留める!
 黄金と黄金がぶつかり合う境界が、びりびりと激しく震動する。呑み込まれそうになるのを清導は堪えて、再び、澄み切っていた筈の空色の双眸を見据えて。
「なあ、聖女皇様」
 投げ掛ける。
 それはずっと、彼女へとぶつけるべき疑問だった。
「アンタ、今、民の笑顔を思い出せるかい?」
 面食らうように、聖女皇の瞳が丸くなる。
 幸福の国。そこにある筈の、彼女が望んだ筈の、民の笑顔。
 瞼の裏に、いつだって焼きついていた。
 ――筈、なのに。
 民、どころか。この身に殉じた『あの子』の輪郭さえも、朧げで。
「――?」
「もし思い出せないなら――」
 その瞬間、輝きが揺らいだ。
 清導が翔ぶ。目にも留まらぬ疾さで。
「――アンタの強さは間違ってる!」
 |超鋼真紅《ブレイザイン》、限界突破!
 全力の、その先へ。もっともっと、神にも並ぶその力を凌駕して。この拳に、全てを懸けて!
「おおおおおおっ!!」
 清導の、黄金を纏う紅蓮の拳が、聖女皇へと突き刺さり、歪んだ理想を打ち砕く!

「もっと早く、アンタと出会いたかったよ」

 零した言葉は、黄金の風と共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

|蒼穹の世界《ブルーアルカディア》を救う為に…
そして…屍人帝国の野望を打ち砕く為に…
聖女皇…貴方を今一度封印する為に…!
さぁ行くぞ…私は処刑人…!

地獄の炎纏い[オーラ防御]の加護を得て敬意を払いながら
敵の攻撃と行動を[見切りつ情報収集]しよう

聖女皇…民の幸福を第一に思う貴方は君主として理想の姿だ…
だがしかし…残念ながら永遠の生はない…
貴方の愛した民は屍人に…国は冥府へとなられたのだから…
そして…ここはもう地獄なのだから!

敵の隙を付いて
【ここは地獄の一丁目】により聖帝国を地獄に変えよう
処刑人の[覚悟]を胸に地獄の炎纏う鉄塊剣を抜き振るい
[怪力と重量攻撃]で叩きつけてやろう…!




「|蒼穹の世界《ブルーアルカディア》を救う為に……」
 ゆらり、|漆黒《くろ》い影が伸びる。
「そして……屍人帝国の野望を打ち砕く為に……」
 はらり、|蒼然《あお》い炎が揺れる。
「聖女皇……貴方を今一度封印する為に……!」
 鉄の処女を伴って、立ちはだかるその者の名は。
「さぁ行くぞ……私は処刑人……!」
 猟兵にして処刑執行人――仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)!
 俄に世界は幸福の国へ。美しき楽園は民を護り、君主を護る。庇護を得たくば頭を垂れよ。
 アンナは自らの|蒼《ほのお》を纏いながらも敬意を以て、聖女皇と相対する。国を害することも、君主を除くこともせず。
 尤も、アンナが敬意を払う聖女皇は、過去の仁君としての彼女だが。
「聖女皇……民の幸福を第一に思う貴方は君主として理想の姿だ……」
 矢のように飛来する光を見切り、回避しつつも行動パターンの分析を続けながら、アンナは告げる。
「だがしかし……残念ながら永遠の生はない……」
「っ、」
「貴方の愛した民は屍人に……国は冥府へとなられたのだから……」
「……それでも、わたくしは……!」
 今からでも、護りたいのだと。
 その望みは尊いものだ――その言葉を放ったのが、嘗ての彼女であったなら。
 だが、彼女の生は遥か昔に終わりを迎えた。最期まで愛した、国と共に。
 ならばここは、彼女の愛した国などではなく。
「そして……ここはもう地獄なのだから!」
「――ッ!?」
 前触れもなく、楽園は儚く消え去った。
 現れたのは、変わり果てたかのような光景。
 地は荒れ果て獄炎が噴き出す、毎日が地獄。ここは地獄の一丁目。
 夢も希望もありはしない。けれど一度地獄に堕ちれば、失うものなど何もない!
「最早死を恐れる必要などない……なら……」
 処刑人としての覚悟を、矜持を。
 嘗ての聖女皇への敬意と、捻じ曲げられた|解釈《かこ》への反意を。
 その総てを胸に、付き従う|錆色の乙女《けん》へと地獄の炎を纏わせて、抜き振るう。
「――執行する! 行くぞ!!」
 風を切って、空間ごと薙ぎ払う。
 重い重い渾身の一撃が、聖女皇の身体ごと、過去を一息に両断する――!
「あ……ああああああっ!!」
 熱と裂ける肉の痛みに甲高い悲鳴が空を劈く。
 ――地獄の空は、夜のように昏かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎

あぁそうかい、自分の民の為ならば他がどうなっても良いか…。
それは自国民からは聖女サマだろうよ。だが、その守護されるべき民から外れた者達からすれば、お前はただの外道そのものだ。
俺は、お前に殺された罪の無い民達の怨念、その復讐の代行人と知れ。

放つUC『灼砲』で相手のUCを真正面から受け止め、粉砕してみせる!




「わたくしは、……わたくしは」
 玉座に至らずとも強大な力を振り翳しても。
 なお、好機を探り、挑んてくる猟兵たちにより、確実に疲弊させられながらも。
 それでも、聖女皇が、理想を求めるその歩みを止めることは、なかった。
「愛する民のため、国のため……諦めるわけには、行かないのです……!!」
 決死の覚悟だった。切実な宿願だった。
 その言葉を受けて、ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は――深く、深く溜息を吐いた。
「あぁ、そうかい」
 民を、国を想う気持ち。そこに偽りは確かにないのだろう。――だが。
「自分の民の為ならば他がどうなっても良いか……」
 自覚はないのかも知れない。或いは、割り切ってしまっているのかも知れない。
 だが、どちらにせよ、聖女皇が進んだ道の後には、何も残りはしないのだ。彼女が愛し、慈しんだもの以外は、何も。
 彼女の掲げる理想とは、悲願とは、そういうものなのだ。
「それは自国民からは聖女サマだろうよ。だが、その守護されるべき民から外れた者達からすれば、お前はただの外道そのものだ」
 手を差し伸べられない者に、待っているのは楽園どころか地獄――否。無だ。
 ならば、ヴェルンドの為すべきことは、唯一つ。
「俺は、お前に殺された罪の無い民達の怨念、その復讐の代行人と知れ――!」
「!」
 ヴェルンドの身体から、爆発するように膨れ上がる敵意を察したか。
 聖女皇は黄金の翼を広げ、手を翳す。降り注ぐ光が敵を灼かんとする。
 だが、敵を、この身をも焦がすほどの熱なら。
「――受け止めてやる」
 真っ向から、光線の如く放たれる獄炎が広がり、光すらも焼き千切らんと轟き渡る!
 掌が痺れる。重圧で押し返され、弾け飛びそうになる。
 だが、耐えろ。折れぬ心で抗い続けろ。
 炎が全てを捻じ伏せるまで!
「ぶち抜け――!」
 やがて。
 ふと、掌にかかる圧が急速に軽くなり。
 押し寄せる光の壁は砕かれ、地獄の炎が聖女皇の身体を翼ごと包み、呑み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

シリルーン・アーンスランド
夫の陸井さま(f35296)と

強敵でございましょう
ですが愛する夫と共に同じ戦場へ赴ける
この幸運は何事にも代えられぬものにて
「必ずや、勝利を」
陸井さまと頷きあい、戦場へ

相対しましたら戦闘の前に偉大なる方にまず一礼を

貴女さまのご仁慈、強く感じております
堕ちて尚、民の為に立たれますそのお志は
何よりも尊く御立派にあられます
ですが
「さればこそ…わたくしどもは」

メガリス・さまよえる舵輪を起動致します

「貴女さまに踏みにじられる、貴女さまの民でない
無辜の方々を…護りたく存じます」

攻撃を受けてもひるみませぬ
「ロボさま…どうか」
最大級のお力添えを願い出て
陸井さまの攻撃までのお時間を
ロボさまの攻撃にて得たく存じます


凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と一緒に

紛うことなき強敵だな
だからこそ、愛する妻と共に突破する
「行こうか、シリル」
頷きを返して戦場へ

神にも匹敵する力か、上等だ
相対して畏敬の念は感じるかもしれないが
怯みも折れもするつもりは無い
完全に力を取り戻していない此処で絶対に倒し切る

「不幸を与える力なんかに負けないよ」
今俺の傍らには妻が居てくれる
その幸福があるから、どんな不幸にも耐える

敵からの攻撃はひたすら耐え凌ぎ
手元で【戦文字「死龍葬弾」】の文字を描き続け
敵のUCが弱まる瞬間を狙って前へ出る
「シリルも、ロボもありがとうな」

描いた文字を装填し、銃口を敵へ
幸福を纏っていようと問題ない
「この一撃で、終わらせる!」




 傷つきながらも懸命に、邁進を続けるその姿。
 黄金の翼と、細く儚い身体で歩み続ける聖女皇。
 戦いの場へと降り立った凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)とシリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は、吹き荒ぶ風の中で身を寄せ合い、敵を――聖女皇ベアトリクスを、静かに見据えていた。
 遠目にも、感じる。儚げで嫋やかな女性の姿をしていても、紛うことなき強敵であると。
 だが、恐れることはない。隣には愛する人がいて、支え合い、立ち向かって行ける――その事実の、何と心強いことか。
 これ以上の幸運はなく、何事にも代え難い。シリルはそう思う。そして陸井も。
「行こうか、シリル」
「必ずや、勝利を」
 頷き合って、駆け出す。
 ――聖女皇の、残滓の下へ。


「――ここで歩みを止めることは許されません。わたくしの、護るべきもののために……!」
 ふらつきながらも止まろうとはしない、聖女皇の眼前へと、二人は姿を現した。
 不快気な表情を最早隠しもせずに、聖女皇は二人の姿を瞳に捉える。
 その中でシリルは、怯むことなく優雅に一礼して見せた。
 偉大なる方、確かに慈悲と慈愛深かった、聖の名を冠する嘗ての仁君へと。
「貴女さまのご仁慈、強く感じております。堕ちて尚、民の為に立たれますそのお志は、何よりも尊く御立派にあられます」
「ならば道を、」
 にべもなくシリルの言葉を拒もうとした聖女皇へと、ですが――と続けて。
「さればこそ……わたくしどもは」
 過去に歪められた仁君『だった』彼女を、止めなければならない。
 最大限の礼は尽くした。けれども聖女皇が、踵を返すことがないのも理解している。
 だから陸井は、シリルを護るように一歩前へと進み出た。
「神にも匹敵する力か、上等だ」
 陸井とて、その力を前に畏怖の念を覚えなかったと言えば、嘘になる。
 けれど、陸井の刃が――護るための『|刀《ここころ》』が、ここで折れよう筈もなかった。
 冷静に、思い返す。今なら聖女皇は、完全に力を取り戻していない。
「――此処で絶対に、倒し切る」
 言うや否や。
 陸井の背後で、がしゃりと重い金属音がする。
「貴女さまに踏みにじられる、貴女さまの民でない無辜の方々を……護りたく存じます」
 シリルの想いに応えて『彼ら』は顕現する。
 あの日、絆を結んだ友が。戦いの末に託された魂が。
 ――『|さまよえる舵輪《メガリスロボット》』が!
「不幸を与える力なんかに負けないよ」
 妻に、その願いで己に力を貸してくれる、頼もしい存在に、陸井は一度だけ短く、シリルへと視線を向ける。
 傍らに、愛する人の存在を強く感じる。
 その幸福を、噛み締める。それだけで、強く在れる!
 愛する者に、光り輝く慈愛を。害する者に、その身を滅ぼす拒絶を。聖女皇から向けられる波動が、二人の詠唱兵器諸共に薙ぎ払おうとするも。
「ロボさま……どうか」
『ふ、あの世から喚ばれて来てみれば、車使いが荒いものだ。――だが、任せておけ』
 憎まれ口を叩きながらも、その機神の如きメガリスロボットは泰山と見紛うほどの巨躯を広げて敵意を受け止める。
 彼――否、彼らの護りを得た陸井とシリルは、その影響を殆ど受けずにやり過ごす。
「キャプテンさま、ハナさま、皆様……感謝いたします」
 反撃の電流光線を放つ彼らに、陸井も思わず微笑みを向け。
「シリルも、ロボもありがとうな」
 勿論、シリルにも。
 ――その一方で、仕込みも忘れない。
 手元では龍の字、四つ。描き続けて。
 好機に、解き放つ。そのための備え。
「く、このような――」
 如何なメガリスロボットと言えど、聖女皇の力の前には防戦一方だ。
 だがそのお陰で、聖女皇の方も、陸井とシリルにその強力なユーベルコードを届けられない!
『……ここまでのようだ』
「ロボさま!」
 限界を超えたメガリスロボットが、消滅していく。
 だが同時――邪魔者を一掃せんと放たれていた波動も、止んだ!
「今だ!」
 既に龍四文字――戦文字『死龍葬弾』は成り、文字の弾丸を装填した陸井の銃口が、聖女皇を捉える!
 聖女皇はメガリスロボットの力を奪い、自身の幸運へと変換したかも知れない。
 だが、運は、運だ。
(「幸福を纏っていようと、問題ない」)
 ならばそれを上回る意志と、実力で以て。
「この一撃で、終わらせる!」
 シリルが拓いてくれた道、無駄になどしてなるものか。
 研ぎ澄ませた心で確と狙って――放つ!
「――ッ!!」
 メガリスロボットを退け、気が緩んだか。
 その龍四頭、聖女皇へと喰らいつく!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎

【WIZ】

ベアトリクスさん
初めましてです…

丁寧にご挨拶し対峙

オブリビオンさんになって
かつてのご意思が歪められても

国や、国民の方々を想う
そのお心…

貴女とご対峙した
先々の方にも

貴女に
敬意を払われた方も
少なくなかったと思います…

私も
その一人です…
(UCの「神聖庇護」を受けつつ、UCを出しきる寸前に
こちらもUCを放ち戦い)

私も…
貴女とは
似た様な立場みたいなもの
でしょうか…

最も私は…厳密には
『まだこれから』
ですけど…

貴女の
その崇高な御意思
敬意を以て
見習いたく思います…

そのUCは
苦痛や外傷はありません…

オブリビオンさんの
貴女を
猟兵として…
こんな形でしか
止められない私達を
どうか
お許し下さい…




「ベアトリクスさん、初めましてです……」
 今、聖女皇の前に立っているのは、傍目にはか弱く幼気な少女――アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)。
 ちょこんとスカートの裾を摘み、童話の国から飛び出したような少女は最大限の礼を尽くして聖女皇へと挨拶を。
 しかし彼女もまた――|聖女皇《オブリビオン》を止めに来た、ひとりの猟兵である。
 眉根を寄せる聖女皇を前にして、アリスは今、心からこの現状を憂いていた。
 戦いが避けられないこと――嘗ての、純粋に民と国を愛する心だけがあった『ベアトリクス』には、聖女皇はもう、戻れないことを。
「オブリビオンさんになって、かつてのご意思が歪められても、国や、国民の方々を想うそのお心……」
 話を聞いた時から、アリスは感銘を受けていたのだ。
「貴女とご対峙した先々の方にも、貴女に敬意を払われた方も、少なくなかったと思います……」
 そして、私もその一人です――と。
 伝えずには、敬意を表さずには、いられなかった。
「言葉では何とでも言えましょう……わたくしは、揺らぎません……!」
 後に退くなどあってはならないと。
 見よ、美しき我が国をと、聖女皇は世界を塗り替える。
 アリスは――ただ、哀しげに目を伏せた。
「私も……貴女とは似た様な立場みたいなものでしょうか……尤も私は……厳密には『まだこれから』ですけど……」
 アリスもまた、由緒正しきフェアリィハート家の息女――大公女として生まれ、ゆくゆくは君主となる運命を定められた身。
 彼女の理想もまた、仁愛を以て君臨する存在。だからこそ。
「貴女のその崇高な御意思……敬意を以て、見習いたく思います……」
 顔を上げ、真っ直ぐに聖女皇を見つめるのだ。
 この世界は――愛されたこの国は、聖女皇への敬愛に満ちた世界。外敵を拒みはするものの、苦痛や外傷を与えるものではない。
 ましてや、純粋に聖女皇への敬意に満ちたアリスであれば、なおのこと。
 そして、やがて幻想の国はあるべき姿へと戻る。
 アリスの手には、空色煌めく|英雄剣《ヴォーパルソード》が煌めいている。
「オブリビオンさんの貴女を、猟兵として……こんな形でしか止められない私達を、どうかお許し下さい……」
 今はそれが、理想という名の妄執に囚われた彼女を救う手立てなのだと信じて。
 アリスはその懐へと飛び込むと、聖なる光焔で聖女皇の『歪み』を、灼いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
不幸の連鎖の果てと認識してる
最たる不幸はベアトリクスが雲海に呑まれて|歪められ《オブリビオン化し》たこと
本当の彼女なら聖帝国を貶めないさ

神聖庇護で弱ったフリはしておく
帝国の先兵たちの攻撃を神鳴で受け流し、符による結界術で耐え凌ぐ
こんな暴力的な国だったの?
寂しく問うぜ

神聖庇護の最高潮寸前で演技をやめるわ
アタシは聖帝国絡みの冒険で女皇の善性も、楽園であることも確信している
オブリビオン化前のベアトリクスに敬意とまだ見ぬ友情を感じているんだ

結界を爆ぜさせ敵を吹き飛ばし、ダッシュでベアトリクスに迫るぜ
今は止めることしかできないことを詫びて、強化された伍式の矢を零距離射撃で浴びせる

仮初の身とはいえごめんな




(「――これは、不幸の連鎖の果てだ」)
 四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は聖女皇の道を塞ぐように立ち、ぐっとその姿を見据えて、胸の奥に呟きを落とした。
 燦は、そう認識していた。聖女皇の民と国を想う気持ちは本物の筈。それが他を犠牲にしてでも――とまで考えるようになってしまったのは、竜災などの悲劇に見舞われすぎてしまったためだろう。
(「最たる不幸はベアトリクスが雲海に呑まれて|歪められ《オブリビオン化し》たこと――」)
 己と国を捻じ曲げられ、理想さえも変質した。
 根底にある慈悲と慈愛は、何ら変わっていないのに。
 そうでなければ、彼女自身がこんな形で、愛する国を貶める筈がない。
「わたくしの邪魔をするのなら――容赦はいたしません!」
 世界が姿を変えていく。聖女皇に愛され、その膝下で民が幸福を甘受する。邪魔立てする者は、何人たりとも許しはしない。
 うう、と燦は膝を折り頽れる。全身から力が抜ける感覚に、我が身を掻き抱き震えながら。
 紅雷纏う神鳴で攻撃を受け流す構えも、符による結界術で耐え凌ぐ備えもあるが――それでも。
「こんな暴力的な国だったの?」
 寂しげに苦しげに、そう問いを投げかければ。
 ぴくりと、聖女皇が僅かに反応を見せた、気がした。
(「自国の民以外に犠牲を強いてしまう自覚はあるのか。今の彼女がそれに胸を痛めているかは、計り知れないけど――」)
 不意に国が、蜃気楼のように消え失せる瞬間があって。
「あ……っ」
 聖女皇に動揺の色が浮かぶ、まさにその時。
 燦は、先程までの弱々しさが嘘のように、すっくと立ち上がった。
「もう、演技は必要ないよな」
「――まさか」
「ああ。アタシは聖帝国絡みの冒険で女皇の善性も、楽園であることも確信している」
 オブリビオン化前のベアトリクスに敬意と、まだ見ぬ友情さえも感じているんだ、と。
 何故、敬意を向けていながら歯向かえるのか。
 聖女皇には不可解で、理解ができない。だがそもそも、根底が間違っているのだ。
 彼女を敬いつつもこの場に赴いた猟兵たちは、彼女に抗うのではなく――止めに来たのだから!
「今は、止めることしかできなくて。仮初の身とは言え――ごめんな」
 結界が、爆ぜる。
 衝撃で僅かに吹き飛ぶその身目掛けて駆け出して。
「苦痛なく安らかに、彼岸の向こうへと渡り給う――」
 慈悲の炎。箒星のように五本。
 聖女皇の、胸を灼く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…かつての貴女は国を想い、民を愛する清廉な女王だったのかもしれない

…だけど今のお前は力を望み、力を求め、世界に破滅をもたらそうとしている

…たとえどんな過去があり、どんな理由があったとしても、
今のお前の存在を許容する訳にはいかない

…滅びるがいい、聖女皇。二度と目覚める事なく、せめて安らかに…。

UCを発動し超絶技法の●迷彩術式により●残像のように自身の実体を希薄化し、
異次元の●軽業で世界の外側に潜り骸の海の●足場に習熟した●忍び足で気配を遮断し、
敵UCが弱まった瞬間を暗視して見切り世界の外側から敵の死角へと切り込み、
生命力を吸収し治癒を阻害する呪詛を纏う大鎌をなぎ払う早業で●暗殺を試みるわ




「わたくしは、……わたくしは……」
 度重なる猟兵たちの猛攻に遭い、聖女皇は今や息も乱れ、立っているのもやっとという有様だった。
 それでも、玉座へ辿り着かんという意志だけは、折れない。悲願を叶えるべく、玉座を目指し続けるのだ。
 確かに、そこには民と国への強い想いがあるのだろう。
「……かつての『貴女』は国を想い、民を愛する清廉な女王だったのかもしれない」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はその姿に、過去の彼女の面影を確かに見た。
 ――だが、それだけだ。
「……だけど今の『お前』は力を望み、力を求め、世界に破滅をもたらそうとしている」
 過去は、過去だ。
「……たとえどんな過去があり、どんな理由があったとしても、今のお前の存在を許容する訳にはいかない」
 灰は灰に。塵は塵に。
 在るべき場所へと、今、還そう。
「道を、開けなさい――!!」
 最後の力を振り絞り、聖女皇の全身から、聖なる波動が放たれる。慈愛は愛する者のため。邪魔立てする者は、拒絶する。
 波動が、リーヴァルディの正面を掠めた。咄嗟に飛び退くと同時、その存在がすっと薄れて、希薄になる。
「何処です……!」
 聖女皇は己のユーベルコードを持続させながらも、リーヴァルディの姿を探した。だが、視界に捉えることができない。
 限界を超えて高められた迷彩技術と残像が、それを許さないのだ。
 そのまま彼女は異次元の軽業で、世界の裏側へと滑るように潜り込む。骸の海の足場にすら習熟したその足取りで、音もなく忍び寄る。
 やがて聖女皇が大きく息を吐き、放たれていた力が急速に弱まる――その瞬間を、待っていた。
「……その首、貰い受ける」
 機は熟した。
 再び、表の世界へとすり抜けて。
 死角から、生命奪い治癒をも阻む呪詛纏う大鎌を、目にも留まらぬ疾さで振りかぶり、一思いに――薙ぎ払う!
「あ、」
 ――すぱり、と。
 人形の首を落とすように、聖女皇のそれが、驚くほど呆気なく、胴と離れた。
 断末魔の叫びを上げる暇さえ、なかった。
「……滅びるがいい、聖女皇。二度と目覚める事なく、」
 それでも。
「せめて、安らかに……」
 祈る。嘗ての聖女皇のために。
 夢の中では、愛する者たちに囲まれた、愛しい楽園へと、還り着けるように――。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年09月17日


挿絵イラスト